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【ミ】『フリー・ミッションスレッド』 その2

127小石川文子『スーサイド・ライフ』:2016/06/28(火) 22:32:52
>>126

  「今日は色々とありがとう……。さようなら。もし縁があったら……その時は、また会いましょう……」

自分の家に帰ることを告げるヨポロに、感謝の言葉と別れの挨拶を贈り、手を振ってその後ろ姿を見送る。
だが、やはり『電話』という言葉には、少し違和感があった。
童話の世界から飛び出してきたようなメルヘンチックな小人達には、
『手紙』辺りが似合っているような気がしたからだ。
しかし、人間の子供のような彼らのやりとりを見ていると昔の記憶を思い出す。
自分の少女時代も、同じような内容の言葉を、友人と交わし合った経験があった。
なんとなく微笑ましい気持ちになり、ふっと笑みが浮かんだ。
それはともかくラポポとロポポの母親を見つけなければ。
彼らの話では、ここにいるはずだが……。
しかし――どうやら捜す必要はなかったようだ。

  「――あら……」

突如として響き渡る怒鳴り声が耳に届き、思わず軽く目を見開く。
声の主がラポポ達の『真面目な母親』であり、
その怒りが子供達から恐れられているらしいことは一目で分かった。
不安げなラポポ達の顔を見返して、『できる限りのことをする』という意味のアイコンタクトを送る。
無断で外出したことがバレて叱られる――さっきは懐かしい気分だったが、
これもある種のノスタルジーと言える。
ラポポの言うように、『逃げる』というのも一つの選択肢ではあるが、この場合あまり適切とは言えないだろう。
そういった問題の先延ばしは、得てして自分の首を絞めることに繋がるものだ。
それに――責任の一端は自分にもある。
自分がここに来たのは、こちらが頼んだからであり、
連れてこられたのではないし、それによって迷惑を被った訳でもない。
少なくとも、この点では彼らに非がないことを明らかにしておかなければ、
自分の頼みを承諾してくれた二人に申し訳ない。

  「はじめまして……。
   差し出がましいことを言うようですが、お子さんを心配するあなたのお気持ちは、よく分かります。
   ですが、私がここに来たのは、私が二人に案内を頼んだからなんです。
   だから……部外者の私が口を出すことではないと承知していますが、
   そのことでは二人を責めないであげてもらえませんか?」

それだけを言って、言葉を切った。
自分が果たすべき責任としては、もう十分だ。
むしろ、これ以上は口を挟むべきではない。
あとは家族の問題であり、他人が口出しするのは失礼に当たる。
しかし――。

  「それから――図々しいお願いで大変恐縮ですが……
   私に免じて、今回だけは二人を許していただけないでしょうか……?」

最後まで言い切ると、二人の母親に向かって頭を下げた。
家族の問題に対して、部外者が口を出すべきではない。
それは確かに理解している。
しかし、自分は二人に『恩』があるのだ。
だからこそ、その『恩』に報いるために、どうしても一言口添えしておきたかった。


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