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【ミ】『フリー・ミッションスレッド』 その2

103小石川文子『スーサイド・ライフ』:2016/06/13(月) 22:26:58
>>94

――『普通』……。そう、『普通』ね……。

眼前に広がる何の変哲もない『普通』の光景――これが他の工場ならば、それで何も問題はない。
しかし、ここで製造されている金平糖は、普通とは言えない代物なのだ。
『普通の工場』で『普通ではない商品』が出来上がるというのは、やはり矛盾しているように思える。
そこで、考え方を変えてみることにした。
『あの金平糖は、本当にこの工場で製造されたものなのだろうか?』と。
馬鹿げた発想かもしれないが、会社のホームページに記載してあるからといって、
それだけでここが製造地だと断言する根拠になるとは限らない。
もしかすると、それさえもカモフラージュの一つであるという可能性も否定できなくはない。
仮に、ここで製造されている金平糖が普通の金平糖だとしたら、とりあえず矛盾はなくなる。
『普通の工場』で『普通の金平糖』が製造されているというのは当たり前だからだ。
その場合、では『例の金平糖』はどこで製造されているのかという謎は残るが、
ひとまずこの仮説を確かめてみたい。
それを確かめる方法は簡単だ。
ここで製造されている金平糖を食べてみればいい。
幸い、廃棄用の金平糖が入っているらしい箱が、送り込んだ『目』を通して見える。
多少見た目が悪かったり、品質が劣っていたりしても、
原材料や製造方法が同じである以上、それは根本的には同じもののはずだ。
もし、それを入手することができれば、疑問を一つ解消することができるだろう。

「興味さん……。私が確認した限り、工場の中は『ごく普通』で、変わった所はなかったわ。
ただ……廃棄用の金平糖が置かれているようなのだけど……。
  それを調べてみれば、『あの金平糖』が本当にここで作られたものかどうかが分かると思うの……。
  それで……一つ考えがあるのだけど……」

そこで、自分が見聞きしてきた内容を有菜に伝えると共に、自分の案を彼女に提示したい。
まず、自分が天文台への道を聞きに立ち寄ったという体裁で、工場に踏み込む。
そして、合図をしたら、その後で有菜に出てきてもらい、取材の申し込みをして欲しいというものだ。
いきなり道を聞きに来れば怪しまれるかもしれないが、
そのすぐ後でマスコミ関係の人間である有菜が出てくれば、相対的にこちらへの注意は薄れるだろう。
民間人の自分と、ライターである有菜を、すぐに結びつけて考える可能性も低いはずだ。
そのチャンスに行動を起こし、廃棄されるであろう金平糖を少しだけ頂きたい……。

  「――そうね……。私が『この辺りの土地には不慣れなもので……』と言ったら、
   出てきてもらいたいのだけど……。そして工場の方達をできるだけ引き留めておいていただけると、
   とても助かるわ……。それから――もしも取材させてもらえることになったら、
   右側にある部屋のことを聞いておいていただけないかしら……?」

こちらの案は、これで終わりだ。
もし、有菜に他の提案や意見があるなら、それを聞いておこう。
なければ、行動に移る準備をしておく。
まず、持ち物の中から、ハンカチと化粧品の口紅を取り出して、
バッグのすぐ取り出せる場所に入れ替えておく。
そして、右手の薬指にしている指輪をそっと外し、バッグの中のポケットに大事にしまう。
続いて、有菜からは見えないようにして、何気ない動作で『右手』を手首から切り落とす。
そのまま体から離さずに、浮遊させた状態を保つことで、
切断した部分が袖の部分で隠れて分からないようにしたい。


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