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【ミ】『撃的』
576
:
『その拳はデルタを描く』
:2021/05/25(火) 01:25:09
>>575
(東雲)
三人の『視線』を受け止め、『東雲』は両目を瞑って考え込む。
『一勝』となる『東雲』は、この闘いで勝利すれば『B級』への挑戦権を得られる。
勝利すれば『B級』に上がるも、それは『C級』との断絶を意味する。
三人は黙したまま、その視線のみで答えを迫る。
ややあって、『東雲』は重い口を開いた。
>「─────『マサ』サン、いっちょ闘りましょうや」
「フ、フ、フフフフフ」
「ハァーッハッハッハァ!
『東雲』はん、解っとるやあないかぁ!」
『マサ』は勝ち誇ったかのように笑い声を張り上げる。
『湯河原』は窓枠でグッタリと細身を項垂れさせており、
『菅谷』はその大きな掌で頭を抱え込んでしまった。
>「『湯河原』サン、『菅谷』サン、すいません。
>また闘う機会が来たら、必ず指名させてもらいますけぇ」
「クッ……。仕方ないか。
だがな、俺を袖にしてまで選んだ『相手』だ。
冷えた試合にしたら、金網をブチ破って喝を入れるぞ」
「そーだぜぇ! 『アリーナ』で磨いたヤジの四十八手!
外野からガンガンぶち込んでやる! 覚悟しとけっつうの!」
『東雲』が頭を下げると、二人は荒っぽい語調で『東雲』をどやす。
不服はあるものの、試合に駆け付けてくるのは間違いないようだ。
二人は窓枠と勝手口、それぞれから『ラクアクア』を出ていく。
「『吉田』はん。ギミックはいつもので頼んます!」
「それじゃあな、『東雲』はん。
――――首洗って、待っとれや」
試合が決まると解れば、『マサ』もまたガラス戸を潜って去っていく。
上機嫌な『マサ』であったが、最後の言葉はドスの利いた声色だった。
陽気な口振りに隠れた『闘志』。彼もまた、『アリーナ』のファイターだ。
「い、いやー。何はともあれ、試合が決まってホッとしました。
――――あの三人は、いずれも『B級』の昇格まで『王手』を掛けました」
言葉通りに安堵の息を零した『吉田』は、
遠目にもバッチリと見えるヒョウ柄の背中を見送っている。
Bランカー
「ですが、『タダヒト』さんの下に集う、『海の壁』を前に、
惜しくも昇格を逃した。――――ですが、いずれも『実力者』」
「この試合、私も楽しみでなりませんね……」
『吉田』はメガネの奥にある温和な瞳を僅かに光らせた。
彼もまた『裏方』であり『アリーナ』の一人。好カードは逃さない。
「さあ、ルールは今更の話でしょう!
試合を有利にする『ギミック』を一つ、用意できます」
『ギミック』の選定。前回は『網籠』がステージに用意されている。
無論、これを拒むのも選択肢の一つだが、『マサ』が去り際に告げた一言。
彼は自身の闘いに有利な『ギミック』を使い慣れている、そう聞こえる言葉だ。
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