したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が900を超えています。1000を超えると投稿できなくなるよ。

【場】『 私立清月学園 ―城址学区― 』

794村田 瑛壱『ディズィー・スティック』【高2】:2020/06/07(日) 20:36:21
>>793

「・・・耳を洗いたくなるような話だこった」

自分でも知らぬ間に、とんでもない厄介ごとを抱えてしまったらしい。
今知った事柄は、おそらくそのスジの人間がかぎつければタダでは済まないものだろう。
そして自分はそれに対処する『術』を持たない・・・『今のところは』。

「あんたらの好意は喜んで受け取ろう。その・・・『音仙』って人にも、すぐに連絡をしてみるよ。」

「自分で自分のことがわからないままなんじゃあ・・・夢見がよくないからな。」

795小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』【高3】:2020/06/07(日) 21:01:41
>>794

ヤジ「しっかし、発現の自覚ない奴とはなぁ」

「君は少し無防備すぎる。通り魔めいた事件は今は耳にしませんが
そのような性質の人物と巡り会うかも知れないんですよ」

村田を見送りつつ、耳の穴を指で軽く掻くヤジへ小林は忠言する。

ヤジ「それでも『そう言う奴』だって知る事が出来る。
虎の尾かどうかは、触れて見なければわからないんだからな
……安心しろよジョー 俺達は『ジョジョ』なんだ。
今は聳え険しくても、何時かは頂上まで行けるさ」

「そう 願いたいものですね」

村田を見送った二人は、暫し時間を置いて学園を出る。
 『ジョジョ』 気高くも手を伸ばすのには遥か彼方の場所へと向けて

796逢瀬 泰葉『ガンジャ・バーン』:2020/06/08(月) 00:24:20
昼休みとなり自由気ままに過ごす生徒たちの喧騒から離れた図書室。
そこに逢瀬は居た。机の上に大量の本を積み上げて。

「内なる無神経を啓発しろ。世界一鈍感な男になれ」

一種の開き直りだ。だが、人間が『地獄』から逃れる術は他に無い。
大抵の人間は『地獄』へと堕ちる。
生まれて死ぬまでに脳へと刻まれる他者の『死』は、確実に精神を疲弊させるし、老いは緩やかに余裕を削ぐ。
きっと『地獄』は脳の中にあるのだろう。
人は寿命で死ぬのではなく自分自身の心に殺されるのだ。

「眠たい。寝たくない」

起きていたい。夢は嫌いだ。
誰か来てくれさえすれば眠気も晴れるだろうか。

797小鍛治 明『ショットガン・レボルーション』【高三】:2020/06/08(月) 00:53:35
>>796

「ここは寝る場所じゃないわよ」

そう、声が聞こえた。
積み上げた本の塔、その向こうに立っている人間がいる。
手には大量の本を持ち、それを本棚に収めていく。

「なにか、お悩みでも?」

798逢瀬 泰葉『ガンジャ・バーン』:2020/06/08(月) 07:47:58
>>797
「うーん、大した悩みじゃないよ。
 どうやって美しく『破滅』するか。
 それを考えてただけだよ」

今しがた読み終えたばかりの物を本の塔の上に置く。
本読みなら多少は知っているかもしれない有名作品だ。
死者の国を夢見る特殊部隊の男が後進国に虐殺の嵐を巻き起こす言語学者を追う、という内容だった。

「邪魔かな? すぐに出てくよ」

本を片付けようと立ち上がった逢瀬の左頬の大きな火傷が少しだけ髪の間から見えるかもしれない。
首筋、腕、にも大小の火傷が見える。

「………」

一家心中から生き残り高校三年まで昏睡状態だった男子学生が現れた。
既に学校中の噂となっているが虐めの標的にはなっていない。
部活内で後輩から金銭を巻き上げる運動部の上級生に捕まるも、無傷のままで生還し、絡んだ上級生も無傷という不思議な事件も起きているらしいが…

「あっ、サプリ飲むの忘れた」

799小鍛治 明『ショットガン・レボルーション』【高三】:2020/06/08(月) 22:18:21
>>798

慣れた手つきで本棚に本を戻していく。
小鍛冶明は図書委員だった。

「別いいたいのなら、いればいいわ」

自分の決めることじゃない、と言葉を続けた。
白い肌、黒い髪に黒い目。
冷たそうな人間だった。

「……」

横目で逢瀬の姿を確認する。
どこかで聞いた人のような気もするが、自分が相手のことをよく知らないことを理解している。

「貴方、美しく破滅したいの」

「どうして」

淡く微笑みながら、確かに逢瀬にそう言った。

800逢瀬 泰葉『ガンジャ・バーン』:2020/06/08(月) 23:24:15
>>799 
「うん、なら居座らせてもらうね」

積み上げられた本の中から一冊の小説を手に取る。
紹介文にユートピアの臨界点と書かれた本だ。
そこそこ有名な小説なのだが、これを書いた作者は既に死んでいる。

「私は夏休みとか蝉が好きなんだ。
ほんの一瞬だけど輝きを放つ美しい姿に憧れと恐怖を感じる」

「けど、ずっと美しいままではいられない
桜は綺麗だけど散れば小汚ないゴミ。
人生も桜と一緒。それ以上生きていると醜くなってしまう前に散ってしまいたい」

主人公たちが自殺を図るシーンで手が止まる。
彼等には美しくなれる未来が待っているのに勿体ない。

「こう見えても精神年齢は小学生なんだ。
一家心中で独りだけ生き残って残されたのは火傷だけだよ。まさに現代へと蘇った『化石』みたいだよね?」

「全てに置いてかれた挙句、将来はどうなるのか分からない。でも、あっさり将来を決めつけて死ぬのは両親と同じで醜い」

「人生で一番美しい時を、それ以上は醜くなってしまうという一瞬に到達したい」

「そういえば、君は将来の夢とかあるのかな? 参考にしたいけど駄目かな?」

801小鍛治 明『ショットガン・レボルーション』【高三】:2020/06/09(火) 00:22:55
>>800

「貴方にはそんな瞬間が来るのかしら」

微笑みを浮かべたまま、小鍛治はそう言った。
くすくすと小さく笑いながら。

「その夢は果てないわ」

「貴方が美しさの絶頂だと思える日が本当に来るのかしら」

小鍛治明はそう発する。
果てのない夢を実現するためにどこまで上がるのか。
その果てを見るのはいつになるのか。

「私の夢。そういうのはあまりないけれど」

「強いて言うなら、幸福であることよ」

「自由で私ひとりがただそこにいる」

小鍛治の手の中に現れたものがある。
銃剣が付けられたショットガン。

「そのためならなんだってやるわ」

802逢瀬 泰葉『ガンジャ・バーン』:2020/06/09(火) 02:25:13
>>801
「かなり傲慢で奇妙な夢だけど…夢…
 そうか、これが『夢』なんだ。
 曖昧な願望でしかなかった、これが」

「私自身が美しくなくてもいい。
 誰かを美しくするための『破滅』
 そうすれば、私の『破滅』も美しく…」

昔から作り上げた物を破壊するのが堪らなく好きだった。
何度も壊しては作り壊しては作り続けた。
理由を両親に聞かれても衝動的なものを伝えられるわけがなく、今の今まで自分も分からなかった。
きっと自分は始まりから終わりまでが完璧なものを作りたかったのだろう。

「君の幸福は君独りだけが佇むものなのかな?
うーん、でも気高い感じがするね。
石ころのように沢山転がってるワルの求める自由とは違う感じ」

「穢らわしく飢えない。気高く飢える。
 そんな感じだといいなぁ」

本を閉じて小鍛治の方を向く。
知らぬ間に銃剣付きのショットガンを手にしている事に気がつき、驚いたように瞬きをする。
何となく自分の持つ力と根が同じ気がした。
意思の力。スタンドと呼ばれる存在。

「銃剣付き…? 格好良いスタンドだね。
 シンプルに強いって感じだ」

「私の『ガンジャ・バーン』より率直。
 そして、銃は独立のイメージが強い
 君の夢の内容からして多数相手に有利
 となる能力を持ってそうだ」

「ショットガンだからね」

自分の爪先を軽く小突いて『ガンジャ・バーン』の花を発現。
独特だが不快ではない甘い香りがするかもしれない。

「大体は、私のスタンド能力も分かるんじゃないかな?」

ふらふらと窓からの風に揺られる花は力強さの欠片もない。
ただ、甘い香りを放つだけの貧弱なスタンドにしか見えないが…

803小鍛治 明『ショットガン・レボルーション』【高三】:2020/06/10(水) 01:18:39
>>802

「そう、破滅は美しい」

頷きながら、言葉を返す。

「だって、しがらみは邪魔でしょう」

「なんてことの無い人のために時間を浪費するのは悲しいわ」

その顔と同じくらい冷たく言葉が流れ込む。
ひとつひとつ、さも当たり前かのように振る舞うのだ。

「これはね、『ショットガン・レボルーション』」

「貴方のそれは……破滅を呼ぶんでしょう?」

「だって貴方、そういう顔をしているもの」

花には触れなかった。
ただ、銃をくるくると回しているだけだ。

804逢瀬 泰葉『ガンジャ・バーン』:2020/06/10(水) 20:54:36
>>803
「…いや、私はそう思わないよ。
 だが、孤独を貫いた末の『破滅』は
 気高く美しい一面も持っている」

「敢えて私は繋がりを作ろうと思うよ。
 私が人生で最も美しい瞬間、その一瞬を
 誰かに覚えてもらいたい」

この点に関しては好みの違いで優劣は無い。
もしかすると彼女も、私のように決定的な『破滅』を経て生き残ったのかもしれない。
無関心で冷たい感じが父に似ているが人嫌いなのだろう?

「ヘンリー・ダーガーを知ってるかな?
17歳で孤児院を脱走し、19歳から清掃員を始め、1万5,000ページ以上のテキストと300枚の挿絵から成る物語を40年も費やし完成に近づけた方だよ」

「死後、彼の遺品を整理する大家は
 『非実在の王国で』という原稿を発見。
 所詮は身寄りの無い下宿人のゴミ。
 だけど、大家は『価値』を見出だした」

「『孤独』な男の『破滅』が価値を得た。
 彼の『孤独な破滅』は一種の美に昇華
 されたんだ」

「私は彼を美しいと思うよ」

      ポコッ
             ポコッ

逢瀬が発現した『ガンジャ・バーン』と呼ばれる花が2つに増殖した。
ちっぽけな花のヴィジョンに力強さは無い。
しかし、『増殖』の速度が異常だ。

「本体の生死に関係なく増殖する『無差別型スタンド』」

「『ガンジャ・バーン』を摂食すると、その生物は『草食恐竜』に近づいていく。
そして、次第に瀕死の『草食恐竜』そのものに成り果て、最後は『草食恐竜の化石』へと変貌させられてしまう」

「植物が『草食恐竜』を『絶滅』に追いこんだ学説を再現する。それが『ガンジャ・バーン』の能力」

こいつの事を私は気に入っている。
扁平足の者が自分のそれを補うデザインまでピッタリ好みの靴を手にしたような…

「ところで、そんなに私は不吉な感じの顔をしてるのかな? 不細工なんだ…」

805小鍛治 明『ショットガン・レボルーション』【高三】:2020/06/10(水) 22:15:17
>>804

「……そう」

破滅。
逢瀬の願望を聞いて、やっと小鍛治は目線を逸らした。

「知ってるわ」

「読んだことはないけれどね」

図書委員だからか、それとも彼女の性質なのか。
それから、咲いている『ガンジャ・バーン』へと銃剣を向けた。

「……別に、そういう意味じゃないわ」

「貴方の持つスタンドですもの、破滅を呼ぶものでも不思議じゃないでしょう」

「少なくとも貴方の目はそう言ってたし、この花を見る表情もそういう感じだったんじゃないかしら」

くるくると銃がまわる。
『ガンジャ・バーン』から逢瀬の胸元へ照準が切り替わる。


「『ショットガン・レボルーション』の効果は『革命』強さか速さを逆転させる」

冷たい目が逢瀬を見ていた。

「まだ眠いのなら、これで起こしてあげましょうか」

806逢瀬 泰葉『ガンジャ・バーン』:2020/06/10(水) 23:36:03
>>805
「長い眠りから目覚めた気でいたけど、
 君のお陰で半分ぐらい『目覚めた』」

                 ポコッ
    ポコッ    
             ポコッ

                    ポコッ

『ガンジャ・バーン』の花が四本に増えた。
このまま放置すると始末が面倒だ。
学生鞄から瓶を取り出して花を摘み取り密閉空間に封じ込める。
生殖を封じられた『ガンジャ・バーン』の花はボロボロとヴィジョンを消失させていく。

「そういった観察眼は歳上には敵わないね
 もし、『ショットガン・レボルーション』
 とやらが複数に効くなら『無敵』に近い」

「しかし、私の『ガンジャ・バーン』と少し相性が悪い。 森林を食い尽くす『草食恐竜』という圧倒的な強者。
 その弱肉強食より上の次元で進化と繁殖と進化を繰り
 返した『ガンジャ・バーン』とは…」

「それとこれとは話が別で今、撃たれたら
 私は確実に死ぬ。間抜けな感じに」

ちょっと自分の間抜けさがツボに入って少し笑う。
笑ってる場合じゃないが面白いのだから仕方ない。
最初から戦うつもりで繁殖させた状態の『ガンジャ・バーン』は無敵に近い。
彼女に支配した弱っちい鼠だとか鳥を差し向ければ、強弱など関係なく『鱗』で弾丸を防ぎ、逃げる程度はできるかもしれない。
今さっき枯らしてしまったが。

「どんな願望を持ったら強弱の革命なんて
 不思議な能力に目覚めるのか。
 私が教えた代わりに少しだけ教えてくれ
 ないかな?」

807小鍛治 明『ショットガン・レボルーション』【高三】:2020/06/11(木) 19:46:55
>>806

「そう、それは良かったわね」

表情は変わらない。
本当に目覚めたことを良かったことと思ってるかは彼女のが知っている。

「別にここで内臓をばらまいてもらわなくてもいいのよ?」

「銃弾の威力も反転してしまうから、子供くらいの力しか出ないのよ」

もちろん、速度を反転すれば通常の弾丸相当の威力にできるが。

「どんな願望?」

それを聞かれて小鍛治は黙った。
少なくとも、そんなことを考えたことは無かった。
自分にとって『ショットガン・レボルーション』は自分の手や足と同じものだ。
あるのが当然の代物。

「気付けば持っていたわ。だから、どこまで私の精神に絡みついてるのかは分からない」

「強いて言うなら、革命とは強さの逆転だからじゃないかしら」

「私には他人の強さなんて関係ないもの」

「私は私の思う通りにするわ」

808逢瀬 泰葉『ガンジャ・バーン』:2020/06/11(木) 22:55:52
>>807
「君の傾向からして強い怒り悲しみなどの
 方向性が強く出ているとは思えない。
 どちらかと言えば自然体の君の在り方
 が反映されているようにも思える」

「何者にも自分の在り方を歪められたく
 ないけれど、君の自由な在り方は社会の
 方からすると少数派に過ぎず、それに
 打ち勝つべく無意識にそれを発現した
 のかもしれない」

「君の強さは弱肉強食より上の次元だ。
 他人の強さなんて気にしないぐらいに
 君は強いんだ」

彼女の他人の意など気にも留めない生き方に多少は憧れる。
意識せずとも気高く生きられるというのは精神が成熟している証。
おそらく彼女にそんなつもりはないだろうが。

「名前を教えてもらってもいいかな?
 私の名前は逢瀬 泰葉。高三だよ。
 中身は小学六年生だけどね」

腕時計の時間を見ると昼休みの終わりが近い。
自分の読んだ本を片しながら彼女の顔を見る。

「『破滅』以外にも美しいものを見つけら
 れて良かった。
 君の『気高い孤独』が不変であることを
 祈っておくよ」

「あと、少し微笑んでたのも綺麗だった」

それだけ伝えると図書室を出て行く。
ほんの少し甘い香りを残して…

809小鍛治 明『ショットガン・レボルーション』【高三】:2020/06/11(木) 23:33:53
>>808

「そう。ありがとう」

逢瀬の言葉に小鍛治は素っ気なく返した。
彼女は自分の性質に自覚的なのかもしれない。
どこまでも自分の道を歩くなら、自分の道を理解しないといけないから。

「小鍛治明よ。小さな鍜治屋は明るいで小鍛治明」

「さようなら、逢瀬くん」

810氷山『エド・サンズ』【高一】:2020/06/14(日) 21:18:12

   ―――ヒュッ!
           ストッ!


        ―――ヒュッ!
               ストッ!

―――深夜、清月学園校内の弓道場
普段は物音ひとつない静謐な空間であるはずのそこに弓弦の音が静かに鳴る
見ると制服姿の女子が一人、矢を射っている

『コノ前負ケタノガクヤシイカラッテヨォォ〜〜
 何モコンナトコロデ練習スル事モナインジャネェカァァ〜〜〜?』

「何を言っているんですか?
 街中で弓矢の練習なんて危ないですし、警察に通報されちゃいますよ
 ここなら人目もつきませんし、静かに練習できます」

人影の姿は一つ
だが、『特別な才能』の持ち主がいれば囁くような男の声も聞こえるかもしれない

811ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』【インコ】:2020/06/14(日) 22:08:54
>>810

    バササササササァッ

一羽の『ハゴロモセキセイインコ』が夜空を舞う。
学校付近を通りかかった時、奇妙な『音』が聞こえた。
『研究の余地あり』――そう判断する。

      フ ッ

高度が5mを切った時点で、
『正体』を秘匿するために『ハロー・ストレンジャー』を発現。

      ス ィ ィ ィ ィ ィ――――――ッ

                      トスッ

      グライド
上空から『滑空』を行い、音もなく弓道場に着地する。
月明かりに照らされて、その姿が徐々に露になっていく。
古代ギリシャ風の装束である『キトン』を身に纏った、
青・白・紫のポンパドールヘアの女。
両腕は『羽毛』で覆われ、背中には『翼』が備わり、
踵には『蹴爪』が生えている。

「――――こんばんは」

月光の下で、『鳥人』のような女が声を掛ける。
『学校関係者』とは思えない。
そもそも『深夜』なのだから尚更だ。

812氷山『エド・サンズ』【高一】:2020/06/14(日) 22:27:08
>>811
「あっ どーも、こんばん・・・・・・わ?」

突然現れた奇妙な風体の女性
和やかに挨拶をされたためつい、普通の挨拶を返してしまうが・・・・

ワンテンポ置いて気が付く
まず、普通ならこんな時間・こんな場所にいるはずのない女性であり
そもそも、『恰好』がとても怪しい・・・・異様である

「そっ そういえば聞いたことがあります・・・・・・ッ! 『清月学園七不思議』!
深夜に弓道場で練習していると突然現れる『女性のお化け』っ!
あれ? 弓道場でしたっけ?音楽室でしたっけ? まあいいや!
逃げようとすると時速120kmで追いかけてくるけど、落ち着いて話をすれば大丈夫とかいう、あの!


あれ?ポマードを投げつけるんでしたっけ・・・・? まあいいや!」


「こんばんわ、いい天気ですね?」

早口でうろ覚えの噂話を呟いていく、詳細は全然覚えていない
そもそもこの学園に七不思議なんてあったかも割と怪しい
うろ覚えの噂話をもとにまずは天気の話を切り出した!(夜だけど)

813ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』【インコ】:2020/06/14(日) 22:50:21
>>812

この女が『七不思議』かどうかは不明だ。
しかし、怪しいのは間違いない。
もし誰かが見ていたとすれば、
『七不思議の一つ』に加わっていたかもしれない。

「はい、今夜は空気が澄んでおりますから。
 この時間は気温も下がっていて過ごしやすいですね」

    ザッ

「ただ、コンディションを崩しやすい時期でもありますから、
 体調管理には気を遣いませんと」

          ザッ

「『病気』になると大変でございますから」

                ザッ

「どうぞ、お気を付け下さい」

一歩ずつ近付きながら、挨拶に対して丁寧な挨拶を返す。
ごく普通の自然な光景。
ここが『深夜の学校』であり、
目の前にいるのが『鳥人のような女』でなければ。

「――失礼ですが、ここで『何』をなさっておいでで?」

手の中にある『弓』を見つめる。
見た事があるような気もするが、今一つ記憶が曖昧だった。
何か……『遺伝子』に刻み付けられているような……。
遠い昔の『旧いイメージ』。
不思議と、そんな感覚を覚えた。

814氷山『エド・サンズ』【高一】:2020/06/14(日) 23:07:54
>>813
「これはご親切にどうも
最近は暑い日が続いててクーラーを使う日も多かったですからねー
今日みたいな日にもエアコンを使ってたら冷えちゃうかもですね」

(ちょっ ちょっとずつ近づいてきてる・・・・!
 でも、『お化け』にしては凄く理性的で穏やかなような・・・?)

『深夜の学校』 『鳥人のような女』
非常に怪しげな要素であるが、『怪談話』としてはありえなくもない話である
突然の状況に困惑しつつも『怪談話』の真っただ中にいる事に多少の興奮を覚える


「これですか? えーっと・・・ちょっと事情があって『道具』の練習がしたくなりまして・・・
公園とかで練習すると警察を呼ばれたりしますからねー
ちょ〜〜〜・・・っとこっそり忍び込みましてコソ練してたわけですよー」

手に持った『弓矢』を『鳥人』に見せる
『矢』には矢じりはついておらず、代わりに松ぼっくりのような構造物がついている
『蟇目鏑』と呼ばれる非殺傷用の矢である

815ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』【インコ】:2020/06/14(日) 23:27:37
>>814

「『コソ練』」

「『コソ練』――なるほど、『コソ練』ですか」

繰り返し発音し、『新たな言葉』を記憶する。
『言葉』とは『知性の欠片』。
それらを集積する事が、『人間研究の進捗』に繋がる。

「『こっそり忍び込む泥棒』の事を、
 『コソ泥』などと呼んでおりますね」

「すなわち、『こっそり忍び込んで練習する事』を、
 『コソ練』と呼んでいらっしゃる訳ですか」

「お蔭様で、また一つ『勉強』になりました」

そして、『弓』から『矢』に視線を移す。
頭脳の片隅に引っ掛かっているものが何なのか。
それが少しずつ分かりかけてきたような気がした。

「よろしければ、使って見せて頂けませんでしょうか?」

「――――私、『コソ練』に『興味』がありますので」

顔を上げ、少女に視線を向ける。
少女とは別に、『男の声』も聞こえてはいた。
しかし、今は放っておく。

816氷山『エド・サンズ』【高一】:2020/06/14(日) 23:47:58
>>815
「・・・・『コソ練』
そ、そうですね〜、本当はこっそりとやる練習の事なんですけど
実際、私、こっそりと忍び込んじゃってるわけですし うん、それも『コソ練』です!」

こっそりと忍び込む部分を強調されると少しだけ罪悪感がチクリとする
だがまあ、ばれなければ『コソ練』の枠内でいいだろうと自分の中で納得する

「使ってる姿・・・・・ですか? わかりました
えぇっと・・・・まずはこうやって思い切り引いて・・・・ んっ・・・ ぎっ!」

『射』の姿を見せるために弦を引き絞る氷山
だが、弓の張力に筋力が負けているように見える
練習を始めたのは最近の事なので筋力も技量もまったくの『素人』なのだ!

「はっ!」

       ―――――ヒュッ!
                   ストッ!


放たれた矢は『的』とは全然見当違いの方向へ飛んでいく


『マッタクヨォォ〜〜〜ッ 全然駄目駄目ジャネェカァァ〜〜あきはヨォォ!
 弦ハモットコウ「グッ!」ト引キ絞ッテ 目線ハ両目デ「ガッ」ト合ワセルンダゼェ!』

ズズズズ・・・


最初に聞こえた『男の声』が再び聞こえる
いつの間にか・・・・氷山の背後に『人型のヴィジョン』が出現していた
彼は今の氷山の『射法』に不満を隠そうともしない口調だ・・・・

817ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』【インコ】:2020/06/15(月) 00:13:17
>>816

「なるほど、これが『コソ練』ですか」

      グルゥ――――――ッ

「大変興味深いものを拝見させて頂きました」

見当違いの方向へ飛んでいった矢の軌道を、
体ごと動かして見送る。
弓矢の『実射』を目の当たりにしたのは初めてだった。
よって、『失敗した』とは思わなかったようだ。

「――――…………」

         グ 
            リ ィ 
                ン ッ

無言のまま、オーバーな程に首を大きく傾げる。
『鳥類』の眼は、『哺乳類』と違って、
『顔の側面』に備わっている。
これは、より広範囲を見渡すためだ。
その反面、正面方向を見る事は不得手としている。
こうして顔を傾ける事によtって、
ある程度は欠点をカバーする事が可能になる。
もちろん、これは『鳥の状態』の話であり、
『ハロー・ストレンジャー』を発現している今は、
『必要ない動作』だった。
しかし、『体に染み付いた癖』というのは、
なかなか抜けないものだ。

「――大変興味深いものを拝見させて頂きました」

818氷山『エド・サンズ』【高一】:2020/06/15(月) 00:30:59
>>817
「あー・・・だいぶ変な方向に飛んで行っちゃいましたね・・・
いやもう、数本しか射ってないはずなんですけど、腕がもうプルプルして・・・

・・・・・というか、『さんずさん』の指導がいい加減なだけじゃないですかね」

最後の方は小声で後ろの『スタンド』に聞こえるように言う


>         グ 
>            リ ィ 
>                ン ッ

『鳥類』が行うぐるりと首を回す動作は・・・・人間が行うとすごく怖い
一般的に鳥類の頸椎の数は人間よりも多く、構造的に可動域が広くなるという
スタンドに頸椎などはないだろうが、それでも鳥類レベルの首の動きは脅威であるだろう

「ひっ!」

だからびっくりして驚いても仕方がないことだ ケッシテ『ヒヤマ』ガビビリナワケデハナイ

「あ、あの〜〜何かお気に召さないことでも・・・?」

>「――大変興味深いものを拝見させて頂きました」

「はっ はい! お見苦しいものをお見せしてしまい申し訳ありませんでした!」

819ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』【インコ】:2020/06/15(月) 20:01:28
>>818

『鳥』を思わせるような『首を回す動き』。
それを『鳥』がやるのなら自然な動作だ。
しかし、今は仮にも『人間に近い姿』をしている。
そして、ここは『深夜の学校』。
そのシチュエーションが不気味さを更に加速させていた。

「『お連れの方』――――」

         ジ ィ ッ

「随分と『逞しい体つき』をなさっておいでのようで」

奇妙な角度に首を傾げたまま、言葉を続ける。
その視線は少女ではなく、
その背後に立つ『エド・サンズ』に向いていた。
この『鳥人のような女』――『スタンド』が見えている。

「――――『グッ!』で『ガッ!』ですか」

「『様子』を『音』で『表現』する。
 いわゆる『擬態語』と呼ばれる表現形式ですね」

         グ リ ィ ン ッ

「『とても個性的なパーソナリティ』をお持ちのようで」

言い終えた直後、首の角度が元に戻った。
未知のものを見かけると、つい『この癖』が出てしまう。
同族の中でも高い知能を有し、
『先進的鳥類』を自称しているが、
やはり『本能』には抗い難いものがある。

820氷山『エド・サンズ』【高一】:2020/06/15(月) 21:10:34
>>819
「ひぃぃぃいい・・・・『さんずさん』・・・・この方、スタンドが見えてますよぉ・・・
魂の形であるスタンドが見えるって事はやっぱり・・・・『本物のお化け』!」

――思い込みによる勘違いはそう簡単には正せない
結果、最初の思い込みである『お化け』という発想がさらに補強されてしまった

>「『様子』を『音』で『表現』する。
> いわゆる『擬態語』と呼ばれる表現形式ですね」


『オ、オウ・・・・改メテ言ワレルト照レルゼ
マア、観客モイル事ダシ、折角ダカラ俺ガ手本ヲ見セテヤルゼ!』

『お化け』を恐れる氷山とは対照的に
『エド・サンズ』はブリタニカをあまり恐れていないようだ


   ズギャッ  ァァン!


『エド・サンズ』の掌中に『弓と鏑矢』が出現する

『コウヤッテ・・・・「グッ」トヤッテ・・・』

       ギチギチギチ・・・・・

『「ガッ!」ダ!』

      シャッ!
                       ――――ズドッ!

ピンッとした姿勢で矢を放つ
放たれた矢は真っ直ぐに突き進み、遠くの『的』へと当たった
先ほどの氷山とは違い、堂に入った見事な『射法』だ

821ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』【インコ】:2020/06/15(月) 22:41:50
>>820

「なるほど――これが『正しい見本』という訳でございますね」

『エド・サンズ』の傍らに立ち、
流れるような一連の動作を見守る。
女の声色には『感嘆』が窺えた。
同時に、この『道具』の『用途の一つ』を思い出す。
『狩猟具』――
古来この『兵器』によって多くの『同族』が狩られてきた。
それを間近で見る事が出来たのは、
なかなかの『収穫』だった。

「『素晴らしいもの』を見せて頂き、『感謝』を申し上げます」

    スゥッ…………

「お返しに、私も少々『芸』をご披露させて頂きましょう」

            パ
              チンッ

静かに片手を持ち上げ、指を鳴らす。
数秒ほど、無音の時間が流れた。
やがて、遠くから『羽音』が聞こえてきた。

  バササササササササササササササササ

     サササササササササササササササササッサ

        ササササササササササササササササササ

          ササササササササササササササササササササ

              ササササササササササササササササササァッ

現れたのは『鳥の群れ』だった。
種類の異なる多数の『野鳥』が、
『群れ』を成して集まってきている。
『鳥が人を襲う映画』のような光景だ。
しかし、そうはならなかった。
『群れ』は女の周りに集まり、全員が大人しく留まっている。

「――私は、このような『芸』をしております」

822氷山『エド・サンズ』【高一】:2020/06/15(月) 23:11:02
>>821
『マッ コンナモンカネェ?
オイ、「あきは」、今ノチャント見タカ? 「弓」ッテノハコンナ風ニ使ウンダゼ?』

「はぁ〜〜、いつ見ても惚れ惚れするような綺麗な姿勢ですねー
『お姉さん』にも気に入ってもらえて何よりですよ」

自分の『スタンド』の行いに感心している
ふと気づくと『弓矢』は瞬き一つの間に消えてしまっていた


>「お返しに、私も少々『芸』をご披露させて頂きましょう」

>  バササササササササササササササササ


「え?  きゃっ 『鳥』が・・・・ッ!」

――突如、集まる鳥の群
『往年のサスペンススリラー映画』を思い出すような光景だ
あまりに古い映画なため、氷山自身はその映画を見たことはないが・・・
それでもその『恐怖』は人類の本能レベルで根付いている

「と、『鳥』がこんなにたくさん集まって・・・・『鳥のお姉さん』」
「・・・・・・ッ!?」

『鳥』・・・・そして、『女性』・・・・ッ!
氷山の脳裏に一つの『怪談話』が思い起こされる・・・ッ!

「『姑獲鳥』・・・っ」

――――『姑獲鳥』という妖怪がいる
なんでもその妖怪は『他人の子供』をさらってどこかに連れていくのだとか


「(子供をさらう妖怪・・・・もしかして・・・だから学校に・・・・!?)
 ひ、ひぃぃぃいい、まさか・・・・・まさか・・・・っ!
 『芸』というのはまさか『鳥で人をさらうこと』なのでは・・・っ!?」

不気味な行動を繰り返すブリタニカの姿を見て、氷山の正気は少しずつ削れていく
そして・・・・とうとう妄想とでも言うべき妄言が自然と口から零れ落ちてしまった

823ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』【インコ】:2020/06/15(月) 23:45:48
>>822

   ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド

深夜の学校で相対する『少女』と『鳥人』。
目の前に立つ女は、確かに『妖怪』じみている。
『姑獲鳥』であったとしても不思議はない――のかもしれない……。

「『コソ練』のお邪魔をして申し訳ございませんでした」

            ザッ

「そろそろ失礼して――私は『巣』に戻らせて頂きます」

  バサササササササササササササササササササササササササササ

   サササササササササササササササササササササササササササ

   サササササササササササササササササササササササササササ

    サササササササササササササササササササササササササササ

   ササササササササササササササササササササササササササササササァッ

女が挨拶すると、待機していた鳥達が一斉に羽ばたいた。
乱舞する群れが『カーテン』のように女の姿を覆い隠す。
鳥達が飛び去った後、女の姿は煙のように掻き消えていた。
『ハロー・ストレンジャー』を解除し、
『鳥の群れ』に自らを紛れ込ませたのだ。
そして、『同族』と共に夜空へ舞い上がった。

         「バイバーイ」

最後に、『小さな声』が聞こえた気がした。
『人のような声』だったが、『微妙に違う』ような……。
もしかすると、本当に『人外』だったのかもしれない……。

824氷山『エド・サンズ』【高一】:2020/06/16(火) 00:00:25
>>823
「はぁ・・・っ はぁ・・・・っ
あれは・・・・・いったい・・・・なんだったのでしょうか・・・・っ?」


――――後日。


生徒A「ねえ聞いた? あの『噂』」
生徒B「聞いた聞いた!『弓道場に出る鳥女』でしょ!」
生徒A「あれって実際にあった話なんだってね! あたしの友達の友達が言ってた!」
生徒A「夜の学校で『コソ練』してるとどこからか『鳥女』が現れてその子をさらっちゃうらしいよ!」
生徒B「でも『鳥女』って何なんだろうね? 私が聞いた話だと『子供を取られた母親の霊』って話だけど」
生徒A「あたしが聞いたのは『インコのお化け』だって話だよ」

生徒B「・・・・・『インコ』? まっさかぁ〜〜〜っ あんなにカワイイのが人をさらうわけないじゃん」
生徒A「だよねぇ〜〜〜!」
   ・
   ・
   ・
   ・
生徒AB「「ぎゃはははははは!」」


氷山あきは『エド・サンズ』⇒しばらく『鳥』がトラウマになるがなんとか復帰
              『再起可能』!


『弓道場の鳥女』     ⇒『学校の七不思議』として新たな噂に加わるが・・・
               人の噂も七十五日・・・・いずれは忘れ去られるかもしれない

825黒羽 灯世『インク』【中3】:2020/07/04(土) 02:19:37

『黒羽』は今日、持ち上げられに持ち上げられた。
『部の取材活動』の最中に押し付けられたため、
『仮に当たったら部の活動費にする』事を約束していた『宝くじ』。
それがなんと、『250万円』もの莫大な資金に化けたのだ。

(さすがにここまでの『大金』になるとは、
 想像もしていなかったけれど……
 私のおかげで『新聞部』は数年は備品に困らないのだわ!)

(…………ほしくなかったと言えば、嘘になるけど。
 でも、『部活動』で貰ったものだし……『10万円』は手元に残せたし)

さらに――いくら『部活動』で得たとはいえ、
黒羽が『手に入れた』資金だったのは間違いない。
最終的に、『10万円』は確保出来た。
(もっと貰う事も出来たが、『功名心』が勝った)


「―――――フフッ!!」


――――『10万円』。
なんだかんだ『中学生』の黒羽には『十分すぎる』。
そういうわけで、上機嫌で校内を歩いていたのだった。

826黒羽 灯世『インク』【中3】:2020/07/05(日) 02:42:30
>>825

――――そして部室に戻っていった。

827シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』:2020/07/12(日) 12:56:00

 〜〜℃¥$¢£%#&*@§♪

      〜〜℃¥$¢£%#&*@§♪

          〜〜℃¥$¢£%#&*@§♪

屋上。
聞くに堪えない『怪音波』が響き渡る。
それが耳に入ってしまった不運な者は、
不快な『頭痛』に見舞われる事だろう。

   「うんっ!今日は何だか調子いいみたい!」
         
       「よ〜し!もっと頑張ろう!」

『歌唱練習』――――『シルク』は、そう呼んでいた。
『ワタシ』は『騒音公害』と呼んでいる。
『思想の食い違い』とは、非常に悲しく哀れなものだ。

828斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/07/12(日) 21:25:43
>>827

 「どういうことだ――ッ!」

すきっ腹を抱え 屋上へ続く扉を華麗かつ乱暴に蹴り開ける 
そんな蛮行に及びながら 僕こと『斑鳩 翔』は勇ましく叫んだ。

――何故こんな蛮行に及んだのか?

昨今の古い店のパンを侮るなかれ
陳列棚からそれを外から見やるガラスまで美しいとは言い難いが

その棚に並んでいるラップに包まれた如何にもな安物のパンは無二の味である
具は貧相だがそれを挟むパンは雲の如く柔らかく、ラップの包みからでさえ甘い香りがしだし
頬張ればこれを表現可能な語彙が浮かばない程に夢中になれる。

そんな折角買ったそれを、今日の様々な単行本数巻分のごたごたで食いそびれ
『こうなれば誰にも邪魔をされぬ屋上でたべるのだ!』等と勇み足で移動すれば……

時代外れの蓄音機に円形の黒板をセットし、ダイアモンドの針を乗せて無理やりに再生したかのような騒音が展開されていた。

 ――どういうことだ。

右手のコッペパン達(こぺお、こぺこ)を危うく握りつぶしかける。

 「どういうことだ――ッ!」

僕は階段を二段飛ばしで疾走した、可哀そうな扉まであと6 4 2 0
そして最初の蛮行に戻る。

 「向こう側の見える正義感で生徒会の権力乱用すら辞さないッ!」

『頭痛』のする薄っぺらさともいう。

首に赤いスカーフを巻き、ジャラジャラとした学生服を着崩しながら屋上に来た。
……コレが斑鳩翔・・・・・・僕である。

829シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』:2020/07/12(日) 23:17:39
>>828

      「ひっ!?ひぃっ!?」

              「な、何ですかっ!?」

  「いッ、い――――」

           「いきなり、何なんですか!?」

『シルク』は『混乱』している。
無理もない。
突如として『意味不明な暴言』を投げ付けられたのだから。

だが、『シルク』――――これは決して『理不尽』ではない。
全ての『原因』と『責任』は君自身にある。
だから、この男を責めるのは筋違いというものだ。

もっとも、それを『シルク』が理解する事は『決して有り得ない』。
その『事実』を『ワタシ』が知っている理由は簡単だ。
何故なら、誰よりも理解させようとしているのが『ワタシ』だからだ。

(『何もしてないのに』怒られちゃったよぉ……。
  もしかして、この人『不良』か何かなのかなぁ……)

      (うぅッ……怖いよぉ……)

          ジリッ

               ジリッ

『燕尾服』風の改造制服に身を包んだ少女が、怯えながら後ずさる。
『白い髪』と『黒い瞳』。

        ツヅラシルク
彼女の名は『黒葛純白』。
中等部では名の知れた『合唱部のお荷物部員』である。

                    ワ  タ  シ
それを『異次元』から傍観する『異次元生物』の名は『トワイライト・ゾーン』。

830斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/07/12(日) 23:35:09
>>829

蹴り飛ばして屋上に出たはいいが、其処に想像していたような『蓄音機』も
『九龍城塞』もかくやの違法建築っぷりのスピーカー群も存在しなかった。

 「……おや?其処にいるのは我らが『合唱部部員』の『ツヅラ』さんでは?」

そしてそれだけが何やら怯えた表情を浮かべて怯えた行動をし、怯えた眼つきをしている
……成程、怯えているらしい まああの騒音を至近距離で聞けば無理もない話である 哀れな。

ここは優しく接するべきなのはWW1前にバルカン半島に拳銃とサンドイッチを持ち込んではいけない事より明らかだ。
制服の埃を払い、襟元をただして口を開く。

 「落ち着き給えよ君、怪しい者ではない 君と同じくここの学生だとも」

多少ひしゃげたコッペパンで人を指しつつ落ち着かせる
なんでこのパンはひしゃげているのだろう。これでは食感が台無しである。

 「『品行方正』 『公明正大』 という言葉は紙上のインクである内は素晴らしい輝きを放っているが」
 「人の舌に乗っていると途端にくすんだ10円玉より見苦しいと思っているただの『生徒会』員……。」

 「あまり頼りにならない高校2年『斑鳩 翔』とは僕の事だ。 ご清聴ありがとう。」

どこからともなく呆れたような拍手が響く。
何故生徒会員になっていたか?それは僕にも解らない
気が付いたら何故かこうなっていたので惰性で続けているが、自分には明らかにあっていない気がする。どうでもいいけど。

 「君、時に聞くが此処に九龍城塞もかくやの違法建築をかました蓄音機を見てないか。」
 「此処に絶対に有る筈なのだが。」

『絶対』なのに『有る筈』とはこれいかに?
どうでもいいけれど。

831シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』【中三】:2020/07/12(日) 23:58:54
>>830

  ビクンッ

   「せ、先輩ですか……?」

       「先輩なんですか……?」

          「こ……こ、こんにちは……」

『斑鳩』に対し、『シルク』は肩を震わせながら挨拶した。
初対面のインパクトが尾を引いている。
その影響で、『怖い』という印象が植え付けられてしまったようだ。
『シルク』が怖がろうが、『ワタシ』には関係のない事だ。
無関係であるにも関わらず、『呼び出し』には応じなければならない。

「み、見てませんけどぉ…………」

「そっ、それに――――」

「そんなの全然聞こえませんでしたしぃ…………」

    ジリッ…………

相変わらず『シルク』は『斑鳩』から距離を取っている。
『斑鳩』の言葉は正しい。
『音程の破綻したオルゴール』は、ここに存在する。
そして、『シルク自身』は決して気付かない。
それこそが、『シルク』が持つ『悪質さ』の根源である。

832斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/07/13(月) 00:20:10
>>831

 「――そうか、騒がせた事失礼。後輩。」

どうやら至近距離で聞いた事に聴覚が麻痺したようだ
その割には僕の言葉が通じているが、まあそういう事も有るだろう。
一礼して騒がせた事を詫びる

 「『アルバトロス号』の出番はまだ先だな。」

屋上にいた彼女が見ていないという限りは、事実そんな物はなかったのだろう。
彼女の歌声に関しては……まあ……噂にはなっているが、それはそれとしてかのような騒音を出せる声帯なるものが存在しているわけもない。
『生徒会ニコニコ調査書類』にもただ単に『ひどい』とのっているだけだ。

 「ついでにもう一つ失礼、お昼がまだなんだ。」

我らがこぺおとこぺこは既に半分ほどひしゃげているが
だからと言ってかの店舗のパンである事には変わりがないし、舌触りの良さとミルクの甘い香りが失われているわけでもない
胃袋で仲良くする分には…多少崩れた見た目だとしてもなんの不都合もない事だ。
 
 ――ガンッ!
               ダンッ! 
                             ストッ!


 『地面を蹴り飛ばし、跳躍 落下防止用のフェンス及び中途半端な梯子を足場代わりに蹴り飛ばし 自身の身長以上の塔屋上部に座り込む』

 「――頂きます。」

こうしてほうばるとやはりあのパン屋のパンは無二の味わいである
今日起こった単行本数巻分における騒動すら許せる気持ちになる気がするので不思議だ。

833シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』【中三】:2020/07/13(月) 00:47:23
>>832

「『アル』…………?」

『シルク』は『斑鳩』の言い回しを理解出来なかったようだ。
それは『ワタシ』もだが。
『シルク』と『ワタシ』の考えが一致する事は非常に稀な事だ。
このような出来事は、あと『千年』は起こり得ないであろう。
『シルク』の生命活動が停止すれば、
『ワタシ』も『呪縛』から解放されるのであろうか。

「――――えッ!?」

(助走なしで、あんな動きが出来るなんて……。
 『私だって、出来るかどうかちょっと自信ないよぉ……)

         ハッ

    (も、もしかして――――!)

(――――この人、『人間じゃない』!?
 人間の姿をしてるけど、本当は『異次元生物』なのかも!)

(ど、どうしよう!

 オ  ト  モ  ダ  チ
 『トワイライト・ゾーン』みたいに『分かり合えたら』いいけど、
 もしかしたら『怖い異次元生物』かも…………!)

(ううん!『オトモダチ』とも『分かり合えた』だもん。
 きっと、今度も分かり合えるはずだよね!)

(――――よしっ!)

       スゥゥゥゥゥ…………

 〜〜℃¥$¢£%#&*@§♪

      〜〜℃¥$¢£%#&*@§♪

          〜〜℃¥$¢£%#&*@§♪

出口の見えない迷走とも言うべき思考の紆余曲折を経て、
『シルク』は歌い始めた。
『シルク』は、『歌』によって『ワタシ』を縛り付けている。
彼女は『気持ちが通じた』と考えているが、
実際は『正反対』だ。
そして今、『斑鳩』を『異次元生物』だと考えた『シルク』は、
『分かり合う』ために、『心を込めて』歌っている。
その襟元には『コウモリを模したピンマイク』があった。
『斑鳩』は再び頭痛に襲われる。
それこそが『シルク』の歌声であり、
彼女の能力である『トワイライト・トーン』は『それ』を助長する。

834斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/07/13(月) 01:47:34
>>833

 ――犬も歩けば棒に当たる そういう言葉がある。

しかし考えてみると犬にとって棒とか投げて拾ってくるものであって
むしろ当たっても嬉しがる生き物ではなかろうか?これではこの言葉の本来の意味を喪失しているだろう。

幼子が成長して、かつての衣服が着れなくなった時のように
今こそまったく別の衣服へ変更すべきである 例えば、そう……

 『斑鳩も歩けば騒音に当たる』


         [筆者では表現不可な歌唱]


 「――――は。」

言葉が出なかった

より正確に言うなら言葉を出すべき言語野が麻痺した
というより目の前の現実が認められなかった。

『音痴』という言葉を見て『そうはいってもカラオケの『5点』くらいなんでしょ?ジ〇イアンじゃあるまいし。ワハハ』
等という甘い見積もりは異次元の彼方に吹き飛ばされ ついでにコッペパンを頬張っていた幸福な気持ちもM78星雲辺りにサヨナラした。

帰ってきたのはウルトラマンでは無く異次元を跳躍すべきえげつない歌唱であった
なお彼の跳躍は、単純に彼のスタンド…影の脚によるタイムラグの無い壁蹴りが実行可能にさせた事だがそんな事を目の前の燕尾服の少女が知る筈もなし。

無論、彼の聴覚も世間一般で言う所の『普通』であるので
我々が蟻の会話を理解できぬように、この歌唱を理解できなかった。
『せいい』と『さつい』は二文字しか違わないのだ 二文字も違うともいう。

 次の瞬間、彼は塔屋にひっくり返った。 そして動かなかった。

835シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』【中三】:2020/07/13(月) 20:54:36

「えっ――――――?」

(あれっ?急に倒れちゃった…………?)

(もしかして…………)

(お腹いっぱいになって眠くなっちゃったのかな?)

(でも、こんな所で寝てたら身体に良くないよね。
 他の人にだって迷惑が掛かっちゃうもん)

         ソソッ…………

           「あのっ」

    「『お休み』してるのにすみませんっ」

「でも、こんな所で寝てたら具合が悪くなっちゃいますよ〜っ」

『悪質な誤解』を抱えたまま、『シルク』は恐る恐る『斑鳩』に近付き、下から呼び掛ける。
『シルク』――――『斑鳩』の具合は既に悪くなっている。
他ならぬ君自身が齎した『災厄』の被害を被ったのだ。
そのように糾弾したい所だが、『ワタシの主張』は『シルク』には通じない。
だが、『シルクの主張』は『ワタシ』に届いてしまう。
見紛う事なき『理不尽の見本』とでも呼ぶべき状況が、ここに存在する。
しかし、意思の疎通を諦めた今となっては、嘆く事さえも愚かしく感じているのが本心だ。

836斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/07/13(月) 22:31:14
>>835

おや、むこうで誰かが手を振っている
アレは誰だろう?少なくともそんなに親しい人があの川の向こうにいただろうか
そう思って川を見ていると、なにやらすさまじくえぐい色合いをしていて――……

そう、そういえば思い出した
僕が生徒会役員になったのはあの日、転校から数か月たったある日だった

僕は単に一向に決まらない役職に業を煮やして適当に手をあげたのだが
後から後ろで黒髪の女性が手をあげている事を知ったのだ

まるで親の仇みたいに睨んでいたが
その時の僕にはとんと覚えが無かった

彼女は長々と情熱的かつ論理的な熱弁を振るったので
彼女がなりたいのだと思い僕は譲ることにした――そう、それで適当な事を言おうとして……

 『僕が生徒会役員になったときは、スピーチの時間を10秒以下にします。』

何故か僕が選ばれてしまったの……だ

 「――どう!」 カッ!

 「いう!」 ダンッ! グルン

 「ことだァ――ッ!」 ズタァァン!

怒りの余り 僕は起き上がりざまに糾弾とバク転起立を同時に決めた。
10.0 9.8 9.4 10.0。

 「説明だ!説明を要求する!さもないと僕は君をアルバトロス号パイロットに任命してしまうぞいいのかッ!」

837シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』【中三】:2020/07/13(月) 22:58:46
>>836

「――――――ひぃッ!?」

(や、やっぱり怖い人だった!きっと『怖い異次元生物』なんだ!)

      ザザザァッ

             キ モ チ
(ど、どうしよう……!『 歌 』が伝わらなかったのかなぁ……)

突然の怒声に怯え、『シルク』は激しく後退する。
今後、『恐ろしい異次元生物』というレッテルが剥がれなくなる可能性が浮上した。
だが、『ワタシ』には一向に関係のない事だ。

(ううん、諦めちゃダメ!きっと、『想い』が足りなかったんだ!)

(気持ちを込めて歌えば、必ず『分かり合える』はずだよね!)

(だって――――)

 オ  ト  モ  ダ  チ
(『トワイライト・ゾーン』とも『分かり合えた』んだから!!)



  〜〜℃¥$¢£%#&*@§℃¥$¢£%#&*@§♪

  〜〜℃¥$¢£%#&*@§℃¥$¢£%#&*@§♪

  〜〜℃¥$¢£%#&*@§℃¥$¢£%#&*@§♪

  〜〜℃¥$¢£%#&*@§℃¥$¢£%#&*@§♪

  〜〜℃¥$¢£%#&*@§℃¥$¢£%#&*@§♪

  〜〜℃¥$¢£%#&*@§℃¥$¢£%#&*@§♪


『前向きな思考』の果てに、『シルク』は一つの考えに至った。
より一層の『想い』を込めて、自らの声帯を震わせ始めた。
『トワイライト・トーン』が、その破壊力を増幅している。
『次元の壁』すら超え、『異次元生物』さえも強制的に従わせる程の威力を秘めた、文字通り『次元の違う歌唱力』。
だが、『ワタシ』は『傍観者』に過ぎない。
即ち、『ワタシ』には『シルク』を止める力がないという事だ。
その『結果』は言うまでもないだろう。

838斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/07/14(火) 00:12:47
>>837

また意識が暗転していく、理由は言わずもがなとりあえず歌うのをやめて欲しいのだが
やたら長いストーリー読むときスキップするみたいに声帯を16連打するのはやめて欲しい。割り込みようがない。

ああ、めのまえがまっくらに……

 『――流石にこれ以上は見過ごせねぇかな お嬢さんよ。』

【影のような黒い腕】がもう片方のコッペパンをシルクの口にあてがおうと動いた
【ロスト・アイデンティティ】の自律行動のような物だ、実際には着ぐるみに近いが。


 『つっても…気持ちわりぃ……何の冗談だこりゃあ。』
 『たかが【声】で俺が引きずり出されるってどういう状態だよぉ……取りあえず【それ】やめてくれ。事あるごとにそれとか【ディズニープリンセス】か。』

 『話もできねえ。……なぁお嬢さん まさか道行く相手に全員そうしてんのかぁ?』
 『その場合【カレー】に【コンデンスミルク】かける行為くらいには正気を疑っちまうんで、頼むから違うと言ってくれ。』

839シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』【中三】:2020/07/14(火) 00:48:51
>>838

「――――――もッ!?」

『シルク』の口に『小麦粉を主原料とした食物』が捻じ込まれた。
必然的に『歌声』は止まり、『世界』に『平穏』が訪れる。
『ワタシ』は『傍観者』だ。
『シルク』が何をしようと何をされようと、ただ見ているのみ。
本来であれば、それさえも放棄したい所だ。
しかし、この呪縛が『ワタシ』を縛り付けている。
『世界』に『平穏』が訪れても、『ワタシ』に『平穏』が訪れる事は決してない。

    「むぐっ――――」

               「――――もがっ」

『シルク』は何か言おうとしていた。
そして、『耳にした声』が『ある種のテレパシー』であると本能的に悟ったらしい。
『トワイライト・トーン』を通して、『己の意思』を飛ばす。

         《『良かった』ぁ…………!》

『想いが通じた』とか『歌で分かり合えた』などという『有りもしない幻想』は今すぐに捨て去るべきだ。
『ワタシ』の意思が伝わるのであれば、そう言っていただろう。
それが『不可能』な事は、既に分かっている事だった。

   《――――こんにちは!『異次元生物』さん!》

   《あなたは、どこの『異次元』から来たんですか?》

『シルク』は耳に入っていないようなので、『ワタシ』が代わりに答えておこう。
その答えは『ノー』だ。
まず、『斑鳩』が『通常の人間には困難な動き』を見せてしまった事が、『第一の原因』として挙げられる。
そして、それを見た人間が、『異次元生物』を従える『シルク』であった事が『第二の原因』だ。
最大限に簡潔な言葉で表現するなら、『不幸な事故』だ。
もっとも、当の『シルク』は『不幸』とも『事故』とも思わない。
『シルク』の持つ恐るべき『前向きさ』が、『マイナスをマイナスだと認識させない』のだ。

840斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/07/14(火) 01:04:45
>>839

 『はぁ?そりゃあママンの……ああん?こりゃ【スタンド会話】で……』
 『なんだ お嬢ちゃん同類かよ。』

呆れたような、疲れたような声色で俺が喋る
内面から叩き起こされたのは違いないが、こりゃどういう状況なわけだ?

 『まぁ?広義の意味で言っちまえば人類みんな異次元生物だけどよぉ……【俺】が怒る気にもなんねぇのはメイド野郎以来だなぁオイ。』

――実際の所、『ロスト・アイデンティティ』が自発的に会話する事は無く
目の前の人間がスタンド使いだと露ほども思ってない以上、この会話は本体の口を通して出ている…のだが。

違うといえば、『人格』が違うのだ。
『俺』という 名前すらない心の一つ 斑鳩 翔は多重人格者である。

 『ま、よかったなお嬢ちゃん お陰で俺達の作ったグライダー……【アルバトロス号】で海にダイブする羽目になんなくて よ。』

841シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』【中三】:2020/07/14(火) 21:46:22
>>840

至近距離にいる今、『シルク』の襟を明確に視認出来る。
『コウモリを象ったピンマイク』が、そこに発現していた。
『それ』は『アクセサリー』などではない。
『エコロケーション』の能力を持ち、『異次元』から『ワタシ』を『召喚』してしまった力の源だ。
『斑鳩』には、『それ』が『スタンド』だと分かるだろう。

         《 やっぱり! 》

『シルク』は『異次元生物』という部分に反応した。
同時に、『それ以外の部分』には反応しなかった。
言い方を変えれば、『聞き流した』という事だ。

《やっぱり『異次元生物』だったんですねっ!
 『そうじゃないかなぁ』とは思ったんですけど――――》

《――――また『異次元人』と出会えて嬉しいですっ!》

《でも、ちょっぴり意外でした。だって、私達と同じような姿をされてますし》
 
《『異次元』にも色々あるんですね〜っ》

     オ  ト  モ  ダ  チ
    《『トワイライト・ゾーン』とは全然違いますねっ!》

断じて言うが、『ワタシ』は『シルク』の『友達』ではない。
『家族』のように掛け替えのない仲でもなく、『他人』のように関わりの薄い間柄とも異なる。
『ワタシ』は『被害者』だ。
そして、『シルク』――――君は『加害者』だ。
『ワタシ』と『シルク』の繋がりは、それ以外には存在しない。

842斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/07/14(火) 22:13:34
>>841

 『ノックして…もしもぉーし』

 *chop* *chop*

会話の矛先がもはや異次元にしかいってねぇ 泣けるぜ
まあ、そういう類の女性だとは理解しちまったが、俺の対話力が試されている。

…ニャウリンガルで事足りるのかねぇ?

 『……ん?俺以外にも多々いるのぉ?清月学園って何時エリア81になったんだオイ?』

ところで俺ァここに昼飯を食いに来たが、来て早々にとんでもない声に邪魔され
もはや味の余韻すら吹き飛んだ 俺も被害者名乗っていいんではなかろうか?

 【とはいえこの…通信簿に『人の話を聞きましょう』って書かれそうなのを怒る気にもなれねぇ…】
 【恐らく『スタンド』なんだろうが……】

チラと襟元を見ると、通常の制服には不似合いな『ピンマイク』のような物が見えた
何時の俺ならそのまま視線を下にさげたんだが、さっきの『歌のようなもの』がこれのせいだと願うばかりだ。

 【シャクだしやっぱグライダーに括り付けて飛ばしてやろうかな。自由飛行部門だし。】

とはいえスタンド使いだと解った以上は、俺の事情的には確認の必要が有る。
俺は『イヤイヤ』対話を続けることにした 疑念を持つなただ祈れ 殴れば終わる分チンピラ相手の『対話』の方が簡単な気もする。

 『あー……んー…… それ、どんなヤツ?』

843シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』【中三】:2020/07/14(火) 22:40:31
>>842

《ここに来るのは、やっぱり『次元の壁』を超えてきたんですか?》

この瞬間、多くの人間が『話が通じない』という感覚を味わう事だろう。
『その感覚』には『ワタシ』も同意せざるを得ない。
何故ならば、『ワタシ』は常に『それ』に晒され続けているからだ。

だが、『斑鳩』――――君の置かれている状況は『マシな方』だ。
『対話を放棄する』という選択肢を行使する権利があるのだから。
『ワタシ』には、それすら許されていない。
理不尽な運命という名の引力によって、強制的に『対話』を余儀なくされるのだ。
厳密には、それは『対話』ではない。
『一方的なコミュニケーション』を『対話』とは表現しない。
それは、『忌まわしき呪縛』に他ならない。

     《あっ、じゃあ『紹介』しますねっ!》

     ズ
           ズ   ズ   ズ 
                         ズ   ズ

突如として、『斑鳩』は『違和感』を覚える。
その正体は分からない。
だが、『何かがおかしい』という『圧倒的な違和感』が存在する。
例えるなら、『視覚』と『他の感覚』が食い違っているような『違和感』だ。
何も見えない。
しかし、そこに『何かがいる』。
『そういう感覚』だ。

844斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/07/15(水) 02:59:34
>>843

 『今、まさに超える気分を味わってっかな。』

それもベルリンの壁レベルを
正確に言えば便器の蓋にソースかけて舐めてる気分。うへぇ

 『……あー【紹介】?』

そりゃあ『キューブ』とか『タンホイザーゲート』あたりから出てくるもんだろうか?
頭が前後に長くて体液が酸だったり、指先を突き合わせると発光する系のお友達じゃなけりゃいいんだが。

 『…………ッ!?』

その時感じた物を表現するのは難しい
なにせ名前がついていないからだ

例えば林檎なら 丸くて 赤い だとか、そういう特徴も言えるが
『何かの色がついているが どの色でもないし透明でもなければ不透明でもない』
『〇ではあるが△でもあるし □でもある』

なんて、何でもありな物は……特徴に値しないからだ。
だから精々俺に出来るのは、逃げる準備と、戦う準備くらいのもんだった。

845シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』【中三】:2020/07/15(水) 20:11:24
>>844

    ズ   ズ   ズ

                ズ   ズ   ズ

                             ズ   ズ   ズ

本来であれば、何も存在しない筈の『無の空間』。


        ズ   ッ

                     ズ   ッ


そこから――――太い『両腕』が生えてくる。


        ズ   ズ   ズ   ズ   ゥ   ッ


次に現れたのは、『異形』めいた『頭部』だった。
感情の窺えない両目が、無機質な輝きを放っている。


      ズ   
              
             シ
             
                    ン   
         
                          ッ


最後に、力強い『両足』が地面に降り立ち、全長『2m』の『人型生物』が屋上に出現する。
その肉体は『スタンド物質』で構成されてはいるが、この『生物』の本質は『スタンド』ではない。
『次元の壁』を超えて『召喚』された『異次元生物』だ。

《『トワイライト・ゾーン』っていうんですっ!
 私の『歌』を聞いて、『異次元』から来てくれたんですよっ!》

《きっと、お互いの『気持ち』が通じ合ったんですねっ!》

『シルク』は『ワタシ』を見ながら、いつも通り好き勝手な事を喋っている。
『シルクの歌』が、『異次元』から『ワタシ』を引きずり出した要因である事は確かだ。
だが、決して『通じ合って』はいない。
その事実を理解させたいと思った回数は、もはや思い出すのも馬鹿馬鹿しい。

846斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/07/15(水) 21:33:22
>>845

 『いや、もし【アレ】が通じてるなら俺ァ今すぐ逃げたと思うぜ』

UMA(Unidentified Mysterious Animal 【和製英語】) それが第一印象だった
むしろそれ以外の表現が一切思いつかなかった それほどに異質だった。

 (明確にスタンド……なのか?)

月刊ムーが小躍りするであろうそれはおよそ全長2m
どうやらスタンド物質…で 出来ているのだろう 或いは別の世界からここに来るのにそれが一番、都合がよかったという可能性もある。
 
 (しかし、アレで喜んでいるならもうちょい喜々してきそうなもんだが)

いやいやと休日の父親達の如くのっそりと現れたように見えるのは気のせいだろうか?
…きっと気のせいなのだろう 姿形が人間に近いからと言って好むものまで人間に近いとは限らない。

 『ま、好みは人それぞれ……いや、バケモノそれぞれか。』

並んだ姿は美女と野獣。
ただし提供元はディズニーではなくアサイラム。そんな感じ。

 (会話が出来たり…は しねぇんだろうな じゃなきゃ此処まで一方的に断定しないだろうし)
 (――話を聞かないという説は兎も角)

 『まあ(どうでも)いいんじゃねぇかな 危険そうでもないし暴れるわけでもないし。』
 『見るもん見れたしこれでいいだろ 、そんじゃぁな』

一応生徒会に所属している身としては、このスタンドに本体が操られている可能性を危惧したが
見た限りはそういう事もなさそうであるであればもはやさっさと去るのが吉であろう ――自分の両親の助けになりそうにもない事だし。

 『・・・・・・ああ。』

踵を返して屋上を去る前に、一つ用事を思い出した

 『こっちも断定しちまったんで 一応確認として聞いておきたいんだが……嬢ちゃん「名前」は?』

847シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』【中三】:2020/07/15(水) 21:58:46
>>846

『異なる次元』から『召喚』された『異形の存在』――――『異次元生物』。
その出自や生態については、『この次元』の誰にも理解する事は出来ない。
決して解ける事のない『永遠の謎』だ。

「あっ、『シルク』って呼んで下さいっ」

『小麦粉を主原料とする食物』を体内に摂取した『シルク』が、自らの声で応じた。
重ねて言うが、『ワタシ』の意思は『シルク』には通じない。
同様に、『ワタシ』の意思は『斑鳩』には通じない。
もし通じるなら、この『呪縛』を解く手段の手掛かりを訪ねる所だ。
この繋がりを断ち切る為であれば、どのような労苦も惜しまないと言い切ろう。

「――――また、お会いしましょうね〜」

『シルク』は小さく手を振り、『斑鳩』と別れた。
『斑鳩の選択』は『正解』だ。
あるいは、『運が良かった』とも言えるだろう。

「ふふっ、何だか『元気』出てきちゃった」

「よーしっ!もっと頑張ろうっ!」

次の瞬間、再び屋上に『怪音波』が響き渡った。
『聴覚器官』に『不快感』を齎されたのが『ワタシ』だけだった事は、ある種『不幸中の幸い』だ。

848氷山『エド・サンズ』:2020/07/19(日) 21:00:29

    ビュオオオオォォォ・・・


            ビュオオオオオォォォ・・・

「さて・・・」
         「どうしましょうかねー・・・」


背の高い木々が生い茂る『城址公園』の一角
夕方近くで人通りも少ないその場所に一際大きな木が生えていた
その木の上の方から少女の呟き声が聞こえる


    ブラァ〜〜〜〜


木には上からロープのようなものが吊り下げられている
何者かが木に登るために使ったのだろうか?

849氷山『エド・サンズ』:2020/07/20(月) 20:45:36
>>848
人知れず、気配は去った

850村田 瑛壱『ディズィー・スティック』【高2】:2020/07/24(金) 02:49:04
『高等部図書室」

  「・・・ないな。」

『トライコーン』なる不良少年集団との戦いが明けて数日・・・村田は図書室にいた。

パラ…
  「『事件の実態』が隠せても、負傷者や損壊物の記録まではごまかせないはず・・・と思ったんだが。」
                      パラ…
  「不自然な記録は『みあたらない』。」
                                  パラリ…

眉間にしわを寄せ、過去に星見町で起きたあらゆる『事件』『事故』の記録を漁りながらつぶやく。

  「そういった記録についてまで『改竄』ができるなら、とんでもなく大きな『組織』が背後に動いているに違いないが・・・」

  「そんなものが動いているなら、『トライコーン』はあんな規模になる前に潰されているか、『組織』に吸収されているはずだ。」

事情を知った今だから分かる街の『奇妙さ』を、村田は感じ取っていた。
それに、『トライコーン』が言っていたことについても、まだわからないことが一つある。

  「『ゲンマと似た能力を使う女』・・・」

本当に奴は『火元』だったのか?あるいは、『大火』が振り撒く『火の粉』の一つだったなら?

851烏丸香奈枝『シュリンガラ』:2020/07/25(土) 23:40:21
>>850
「……少しいいかい?」

熱心に調べ物をする『村田』に、どこからか声が掛かる。
顔を上げれば、長机のはす向かいに座って本を開けた少女と目が合うかもしれない。
伸び過ぎたような長髪を払って、話しかけてきた。

「ええと……君は、何を調べてるのかな。
盗み聞きするつもりはなかったんだけれど……つい耳に入ってしまった。
すごく物騒な単語が、いくつも出てきたような気がしたんだが……」

周囲には、他の生徒はいない。

852村田 瑛壱『ディズィー・スティック』【高2】:2020/07/26(日) 01:32:58
>>851

  「…」 ピク!

誌面にむけた顔を上げず、「しまった」という表情を噛み殺す。

  「…気にするな。遅れてきた『中二病』だ。」

誤魔化すのがヘタクソだった。

853烏丸香奈枝『シュリンガラ』:2020/07/26(日) 20:02:09
>>852
「あはは、顔に出ているよ。
誤魔化すのが下手だなあ。しかも、言うに事欠いて『中二病』……だなんてさ」

くっくっと声を殺して笑い、手元の本を閉じた。

「そうやって難しい顔をして、一人で何かと戦っている人が、私の周りにいた事がある。
その時は、私の臆病さゆえに彼の事情を知る事は出来なかったけれど……後に後悔したものさ。
力になれるかどうかはわからないけれど、せめて話を聞いてあげるくらいはできたんじゃあないかってね。
……それとも、見ず知らずの年下の女なんかには、そんな話は出来ないかい? 先輩」

854村田 瑛壱『ディズィー・スティック』【高2】:2020/07/26(日) 20:36:17
>>852

  「…気後れはする。
   あんたが女だからとかそういうことじゃあねえ。話がややこしい上に、憶測の域を出ないからだ。」

  誌面をめくりながら、言葉を続ける。

  「そのややこしい憶測が当たっていた場合…実に面倒なことになる。
  自分のケツまくるくらいのことはできるつもりだが…他人のことまで気にする余裕は、今の俺にはねえ。」

  「それとも何かい?あんた…
   見ず知らずのガキの与太話に首突っ込んでやろうって余裕があるほど暇なのかい?」

855烏丸香奈枝『シュリンガラ』:2020/07/26(日) 21:14:13
>>854
「名前は烏丸香奈枝という。あんた、じゃあない。
苗字で呼んでくれると嬉しいな。気に入っているんだ」

毛先をくるくると弄びながら、茶化すように言う。
村田の言葉を聞いて、目を細めた。

「そうかい、『面倒事』。
別に、構わないよ。そういうことこそ、誰かに頼らなきゃね。
私だって、君の『負担』になる気はないし……って、何の話かは知らないけれど。
勿体つけずに話せばいいじゃあないか。
お察しの通り、暇だしね」

856村田 瑛壱『ディズィー・スティック』【高2】:2020/07/26(日) 21:50:26
>>855

  「ついこの前の話…チンピラの集団に絡まれてな。
   全員叩きのめしたし、それ自体はいいんだが…」

  「俺に対して誰も何も言ってこねえのと、そいつらを追ってらしかったもう一人の動きが気になってな。」

誌面から顔を上げ、背もたれに身体を預けて上を向く。

  「いくら相手がチンピラだろうと、コトがコトだ。サツなりなんなりがちょっかい出してきてもおかしくないはずなのに、それがない。」

  「考えすぎかもしれないが…『なかったコト』にされてるんじゃないかと思ってな。
   他にもそういう形跡がないかと思って資料をひっくり返していたんだが…」

857烏丸香奈枝『シュリンガラ』:2020/07/26(日) 21:59:03
>>856
「ふうん、物騒な話だ。
何人くらいの相手なんだい?」

『村田』を値踏みするように、じろりと遠慮のない視線を送る。

「それに、不明瞭な話だ。
『誰も』、『もう一人』。
たださ、あれなんじゃあないの?
そういう人たちの論理なんて、別に詳しくはないけれど。
ほら、『メンツ』が立たないから黙ってる、とかそういうのさ」

「君は、『隠ぺい』があったって、そう思っているのかい?」

858村田 瑛壱『ディズィー・スティック』【高2】:2020/07/26(日) 23:05:28
>>857

  「どうだったかな…全員で12人くらいか。
   それなりの規模だ。その12人全てが口を噤んでいるとは考えづらい…」

全部自分がとっちめたわけではないが。

  「少なくとも…『ないことはない』とおれは思ってる。
   何か…ウラで糸をたぐっている奴らがいるはずだ。『自警組織』なのか、『暴力団』のようなものなのかは分からないが…」

  「…『アリーナ』…『エクリプス』…」

少し前、小林から聞いた単語を思い出す。

  「この単語に聞き覚えは?」

859烏丸香奈枝『シュリンガラ』:2020/07/26(日) 23:19:13
>>858
「………ええ、『12人』?君が、ひとりで?
すごいな。何か、『格闘技』とかやってるのかい。
いや、そんなレベルの話でもないのかな」

心底驚いた風に、目をぱちぱちと瞬かせる。
それだけなら『一般人』としては当然の反応だが、
どこか『村田』を見る目つきが、鋭くなったような気がした。

「それならさ、直に聞いてみたら?
君が『のした』、その12人の誰かに」

「そんなに結束が固くないのなら、逆に口を割る人もいるかも……何だって?
いや、『知らない』………それは何? 何かの『組織』の名前、とかそういうのかい」

860村田 瑛壱『ディズィー・スティック』【高2】:2020/07/26(日) 23:59:50
>>859

  「難しいだろうな…余罪のあった野郎はとっくに塀の中だろうし、
   逃げおおせた奴がいたとして、この広い街の中から探し出せるとは思えない。」

顎に手を当て、眉間に皺をよせる。
こんなことなら、『ゲンマ』を叩きのめす前に吐かせておくんだった。

  「…そういう名前の組織がある…そんな話を聞いたコトがあってな。
   それがこの件に噛んでいるのかどうかは知らないが。」

  「仮に噛んでいたとして、その組織の噛みようによっては…」

ただではすまないだろう、という言葉をあえて伏せる。いうまでもないことだからだ。

861烏丸香奈枝『シュリンガラ』:2020/07/27(月) 20:40:30
>>860
「うーん……まあ、それはそう、なのかな。
そもそも、だけれど。君は、『何もない事』について疑問に思っているんだよね。
君が12人を返り討ちにしたのに、『何もない』」

「それって、もし、何かの力で『隠ぺい』があったとして、
君にとって、『良い事』なんじゃあないのかい?
ある意味では、君の起こした『事件』を、もみ消してくれている、とも言えるよね。
それが気に入らないってことかな?」

小首を傾げながら、ひとつひとつ確かめるように村田へと言葉を投げる。

862村田 瑛壱『ディズィー・スティック』【高2】:2020/07/28(火) 18:29:03
>>861

  「今回はな。正直言ってヒヤヒヤしたが…」

『深山兄妹』のことが脳裏をよぎる。

  「おれ以外に巻き込まれた人間がいたとして、そいつが心身にダメージを負ったとして…
   事件がもみ消されたなら、そいつは泣き寝入りになっちまう。」

  「そんなことは許せないし、気に入らねえ。」

実際に、深山兄妹は危ないところだったのだ。
事情を知らない男…あの『斑鳩』というやつと先に出会っていたなら…殺しはすまいが、ある程度の怪我は負っただろう。
俺とて事情を知らなければそうしていた筈だ。
それらを自己責任というには…あまりに理不尽だ。

  「…とまぁ、全部仮定の話なんだが…こんなところだ。」

863烏丸香奈枝『シュリンガラ』:2020/07/28(火) 19:49:55
>>862
「ふーん、正義の味方ってわけだ。
『泣き寝入り』……ま、そうかも知れないね」

小さくため息をついて、目に掛かる髪の毛を払うでもなく、
その向こうからじっと『村田』を見つめる。

「君の言う通り………『仮定の話』だ。
君の事件に、何らかの組織が関わっているかもしれない。
そのうえで、その人たちが『隠蔽工作』をしているかもしれない。
正直、お話にならない………って言ったら、怒るかい?」

くっくっと笑って、一瞬の間、『村田』の反応を伺う。

「信じるよ。というか、信じてみる……かな。
確かに、何の動きもないのはおかしいのかもしれないし……
君が口にした名前、そういう表に出てこないような団体が、この『町』にあるのは『事実』、なんだよね?」

864村田 瑛壱『ディズィー・スティック』【高2】:2020/07/28(火) 20:33:55
>>863

  「いいや、言ったはずだぜ。『遅れてきた中二病』だってな。」

くつくつと笑う烏丸に対し、鼻で笑って返す。
…揺るぎのない態度だ。後ろ暗いところがあるとか、そういった人間の態度ではない。自信に満ちた人間のそれだ。

  「組織の有無についても、ヒトから聞いた話で何処まで信用が置けるのかはわからないが…
   手がかりはその名前くらいなもんだ。」

  「昔なら鼻で笑って気にも止めなかったろうが…」

今となっては話が違う。良くも悪くも、村田は知ってしまったから。
この街のありよう、この街の…裏の騒々しさの一端を。

865烏丸香奈枝『シュリンガラ』:2020/07/28(火) 20:44:29
>>864
「『名前』しか聞いてないのかい?
何か『特徴』とか、そういうのは無いのかな」

自信に満ちた『村田』の表情に、すい、と視線を逸らす。

866村田 瑛壱『ディズィー・スティック』【高2】:2020/07/28(火) 22:22:42
>>865

  「その名前以外には何も。
   さもなきゃ、こんなに行き当たりばったりな調べ方しない。」

机の上にうずたかく積まれた資料の山を目の端に捉え、ため息をつく。

  「事件事故の記載に不審があれば、関わった人間、被害者、容疑者…そういった人間を伝って辿り着けたかもしれないが…どうにもこの調べかたはよろしくないらしい。」

これだけ調べても、何も見当たらなかったのは確かなのだから。

(…逆に考えるなら、あんなことがおこる街でこれだけ何もないってのは、かえって不自然なのかもしれないが…)

867烏丸香奈枝『シュリンガラ』:2020/07/28(火) 22:51:40
>>866
「そうかい。
どういうシチュエーションでそんな情報が転がり込むのかわからないけれど、妙な話だね。
てっきり、私にまだ隠している事があって、
それでそんなに中途半端な話になっているのかと思ったけれど」

例えば……と言いかけて、言葉を飲み込む。
かたん、と音を立てて、椅子から立ち上がった。

「まあいいや。面白い話をありがとう。
こっちからお願いして話してもらった割には、何にも役に立てなくて済まないね。
ただ……この町には、確かにそういう『奇妙な』雰囲気がある。
もしも、私が何かの『事件』に行き会って、君の言う通りに何か大きな力の影を感じたら……その時は君にも報告するよ。
だから、その時には……そうだな、君の名前くらいは教えてくれたら嬉しいかな」

と、冗談めかして言って、軽く手を振って図書室を去っていった。

868村田 瑛壱『ディズィー・スティック』【高2】:2020/07/29(水) 20:03:59
>>867

  「………」

去っていく背中を黙って見送る。

  「…こうして噂レベルでも広げていけば…いつか『かかる』はずだ。人の口に戸は立てられねえ。
  …とはいえ、それじゃあ悠長すぎる。」

呟いた後、用済みになった資料を閉じ、本棚に納めていく。

  「…何も起こらなければそれでいいんだが…念を入れておくに越したことはねえからな…」

片付けを済ませ、その場を去る。

869斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/08/15(土) 13:11:00

 「僕はもう少し可愛げのある物だと思っていたよ」

学食の茶わん蒸しをつつきながら不服気に笑う

 「何故こうなったんだ?」

おわん大のサイズのソレ(茶碗蒸し)を
先輩のAがほうばると、底の方に白いものが見えた。

 「秋の花火と同じさ、寮母が季節外れの『ユリネ』を大量に買い込んでしまったんだ 安いから。」

 「『ユリネ』?」

大学一年の先輩……の滑舌はあまりよろしくない
そのせいで聞き慣れた物がまるで宇宙からきたんじゃないかと錯覚する程度には。

 「底にあるだろう?すくうと固形だが、口に入れるとホロホロと崩れて 根野菜特有の苦みと旨味が口内に広がる。」

 「不味くは……ないけどさ。」

不味くはない、むしろ美味い それ故にサイズの異常さが目立つのだ。
Aが立ち上がる。

 「ママがいないんだろ?味わっとけよ」

 「関係ない。」

食堂から去り行くAの背を見送りながら
一人残された僕は可愛げのない茶碗蒸しをつついてた。

870斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/08/16(日) 23:34:08
>>869
 
短い悲鳴に振り返ると、猫の尾っぽが窓から滑り出すのが見えた

 「――げ」

ハリウッド映画に面白黒人枠が付き物の様に
夏には怪談がつきものだ。

それが『薄っぺらな猫が隙間から食い物を盗んでいく』ような事だとしても
怪談には違いない。

 「…アイツ、『スリーピング』」
 「またラジオで騒がれちまうぞ…!」

僕は早々に食堂を後にする事にした。

871ダイアナ『オンリー・ガール』【幼稚園児】:2020/09/16(水) 01:40:10

    キコキコキコ

「――――ふぅん」

        キコキコキコ

「ここが『私立清月学園』ね」

            キコキコキコ

「なかなか広いじゃないの」

                キコキコキコ

「わたしの遊び場所にしてあげてもいいわ」

                    キコキコキコ

愛車(自転車・補助輪付き)で『城址公園』を通りかかる。
乗っているのは幼い少女。
外見は西洋人だが、呟く言葉は流暢な日本語だ。

872ダイアナ『オンリー・ガール』【幼稚園児】:2020/09/16(水) 19:48:54
>>871

その少女は制服姿であり、どこか『格調高さ』が漂っている。
通っている私立幼稚園の制服だ。
ピアノやバレエなどの、
『習い事』のカリキュラムに力を入れているらしい。

「『練習』しないと上手くならないわ」

    キッ

「もっと『練習』しないとダメね」

適当な場所に自転車を止め、サドルから降りる。
前部のカゴには、大きな『テディベア』が入っていた。
それを両手で持ち上げると、手近な木陰に腰を下ろす。

「『練習』は広い場所でやらないと」

        ――――トスッ

「狭い所にいると『心』まで狭くなるから」

独り言を呟きながら、テディベアを自分の正面に置く。
傍目から見ると、『ままごと』でも始めるかのような光景。
ちなみに、このテディベアは『二代目』だ。
『初代』とは物心つく前からの付き合いだった。
でも、今は『引退』している。

873朝山『ザ・ハイヤー』【中二】:2020/09/16(水) 22:42:49
>>872

「ぬおおおおおぉぉぉっ ス!!」 ダダダダッ!!

最近めっきり暑さが薄れて涼しくなってきたかと思えば
また直ぐに暑くなったりと気候が不安定っスけど!
 この悪の首領は常に猪突猛進絶頂 絶好 絶好調っス!!

 「むむむっ! ス!!
そこの園児よ! 何をしてるっスか?」

 何時も通り全力疾走でランニングをしてたら、どっかの
小奇麗な制服の幼稚園児が一人いるのを見かけたっス!

子供が一人なのは最近物騒だし危ないっス!
 ちょっと話しかけて、迷子だったら交番まで案内してあげるっス!

874ダイアナ『オンリー・ガール』【幼稚園児】:2020/09/16(水) 23:11:43
>>873

     チラ……

ほんの少し顔を上げて、こちらに走ってくる相手を見つめる。
猛然と駆け寄る様子を見ても、全く慌てる様子がない。
外見こそ子供そのものだが、
年齢にそぐわない落ち着きがあった。

「言っとくけど『アソビ』じゃないわよ。
 わたしは『練習』をしてるんだから」

「あなたこそ何よ。急に走ってきたら危ないでしょ」

          スクッ

「――そういうことをしたらいけないのよ。
 わたしより大きいのに、そんなことも分からないの?」

おもむろに立ち上がり、両手を腰に当てて朝山を見上げた。
体は小さいが、態度がデカい。
言ってる事自体は間違っていないが、
どことなく『気位の高さ』が垣間見える。

875朝山『ザ・ハイヤー』【中二】:2020/09/16(水) 23:23:29
>>874
クルクル
   シュッ
      タンッ!
            シャキーンッ!!

我こそは普段は元気一杯、うちゅー統一部の部長
だがその実態は悪の首領モーニングマウンテンっス!!
 なんだか偉そうな雰囲気の幼稚園児っス!
負けずにこっちも腰に手を当ててっ! おーーーきく胸を反らしつつ
鼻を鳴らしながら自己紹介を交えて話してやるっス!!

「ふ〜〜〜んふんっス! いけない事をするのは悪の醍醐味と言うものっス!
自分は悪の首領だから、急に走って来ても問題ナッシングなんっス!
 因みに名前は朝山 佐生っス! いずれ、この場所からも見えるH城どころか
星見町も支配する名前なんて覚えておいて損はないっスよ!」

威張りつつ、何の用かと聞かれたので正直に答えてあげるっス!

「何の用もなにも子供が一人で公園にいたら危ないっス!
親と待ち合わせとかしてないんだったら、私がお家まで送ってあげるっス!
もし迷子だったら、交番まで連れてってあげるっスよ!」

「ところで、何の練習をしてたっスか??」

一人で練習っ! もしかしたらお遊戯会とか、縄跳びとかの練習かも
知れないっス! 今日はけっこー暇だし、良ければ手伝ってあげるのも
吝かではないっス!

876ダイアナ『オンリー・ガール』【幼稚園児】:2020/09/16(水) 23:57:47
>>875

「『悪の首領』?何なのソレ。『ごっこアソビ』でもしてるの?」

「『コドモ』ねぇ。
 わたしより大きいかと思ったけど、
 中身はわたしよりも『オコサマ』だったみたいね」

わざとらしく大きなため息をつきながら、
呆れた表情で首を横に振る。
この手のタイプは、まともに相手をするだけ損だろう。
頭の中で、そんな風に考えていた。

     「 I’m 『 five years old 』 」

「公園くらい一人で来られるわ。
 もし『悪いヤツ』が来てもへっちゃらよ」

      「…………『悪いヤツ』?」

何かに気付いたように、顎に片手を添える。
目の前にいる朝山は、『悪の首領』だと名乗った。
『悪の首領』とは『とても悪いヤツ』という意味だ。

        ニ   ヤ   リ

「いいえ、『今日のカリキュラム』を変更するわ。
 やっぱり『練習』には『実践』が一番だから」

  ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

「それに、『悪いヤツをやっつける』のは『いいこと』だものね。
 わたしは練習ができるし、誰も困らない」

       「――そう思うでしょ?」

       パチンッ
            ――――ドシュゥッ!!

不敵な笑みを浮かべた園児が指を鳴らすと、
『テディベア』から『人型スタンド』が飛び出した!
まるで『空間の歪み』で構成されたような、
全身が『半透明』の奇妙なスタンドだ。
園児が操る『人型スタンド』は、
朝山に掴み掛かろうと腕を伸ばす(パス精CBC)。

877朝山『ザ・ハイヤー』【中二】:2020/09/17(木) 00:13:18
>>876

>パチンッ
            >――――ドシュゥッ!!

朝山 佐生と言う存在は、基本的に頭が悪い。
 恐らく、誰もが彼女と会話すれば幼稚園児も例外なく……その御花畑が
頭に咲いてるような態度と言語で察する事が出来る。
 殆ど反射的に生きていると言うのが、朝山 佐生だ。

故に――。

     ――ズンッ     パァァァ――ッ

 タンッ    ザァァッッ!

スタンドが飛び掛かってくると認識したのと同時に。
 『ザ・ハイヤー』を瞬間的に発現し、その能力による『モーション・キャプチャー』
による光球を自身に発射させ、スタンドの腕振る動作を遅く(精ス:BD)するのと
朝山自身が回避行動で横に跳ぶ(精ス:DB)のも、自然な事である。

「っおっとと。危ないっスよ?」

足がぐらつきつつ、後ろに倒れそうになったのを体勢を低くしつつ
真顔でダイアナを見詰めつつ注意する。

878ダイアナ『オンリー・ガール』【幼稚園児】:2020/09/17(木) 00:29:17
>>877

狙い通り、何ら問題なく回避は成功した。
というより、そもそもダイアナはスタンドに関して『素人』であり、
朝山とは『経験の差』が大きく違う。
最初から相手にならないのだが、ダイアナはそれを知らない。

「フン、『悪者』にしてはやるじゃない」

「だって、あなた言ったでしょ?自分は『悪の首領』だって」

    「『悪いヤツ』をやっつけて――――」

    ザッ…………

          「――――なにが悪いのよ!!」

            バッ!!

『策』などというものは何もなく、
『人型スタンド』は愚直に正面から突っ込んでくる。
朝山ならば、いなすのは容易いだろう。
どうとでも料理できるはずだ。

879朝山『ザ・ハイヤー』【中二】:2020/09/17(木) 00:37:32
>>878

 パッ

真顔で朝山は『ザ・ハイヤー』の右腕を掲げる。

 「ザ・ハイヤー キャプチャー」

               ポォ――ッ

              「チェンジ――!!」

繰り出された光球は『オンリー・ガール』向け放たれる。
命中と同時に、ザ・ハイヤーは片腕をぶんぶん高速で回す(ス精:AE)

その再分配はオンリー・ガールの飛び掛かる動作に齎され……まるで
かたつむりのように動きは、その動作が終えるまで鈍くなる(ス精:EA)

タッ――グゥ ンッ!!

その間にも、朝山は無言で真顔でダイアナに。彼女の動きがほぼ封じられた
スタンドをやり過ごして迫る。
 当たり前だ、こうなればスタンドなど関係なく幼稚園児と中学生の体格なら
朝山がどのようにでも料理出来よう。
 中学生ならではの脚力とスピード、そして伸びた腕で彼女の両脇を掴み。


   ――こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ!!

「うおおおおおおおおぉぉぉぉ〜〜〜〜〜!!!!! っス!!」


 これぞ、必殺モーニング・マウンテン ダークフィンガー!! っス!!


 必殺くすぐり攻撃のお見舞いだーーーー!!!

880ダイアナ『オンリー・ガール』【幼稚園児】:2020/09/17(木) 00:51:54
>>879

「こッ!『これ』はさっきと同じッ!?」

「どうしたのよ『オンリー・ガール』!!
 どうして動かないのよ!!」

「ちゃんと動いてッ!!動きなさいよ!!」

            ザッ…………

     「――――ひッ!!」

半ば無力化された自らのスタンド。
そして、眼前に迫る『悪の首領』。
起こるであろう恐怖の光景に、思わず両目を固く閉じる……。

    「ひッ!ひひひひひひひッ!!
     ひひひひひひひひひひひひひィッ!!」

次の瞬間、ダイアナは大口を開けて笑いながら身悶えした。
『モーニング・マウンテン ダークフィンガー』!!
『悪の首領』の恐るべき技が、
いたいけな幼稚園児に襲い掛かったのだ!!

「ダ、ダメ!!もうダメ!!
 あは!!あはははは!!あはははははははははは!!
 ひひひひひひひひひひひひィィィッ!!」

半透明のスタンド――『オンリー・ガール』は、
いつの間にか解除されていた。
笑い転げている状態で、
まともにスタンドを動かせるはずがない。
今ここに『悪の勝利』が決定した!!

881朝山『ザ・ハイヤー』【中二】:2020/09/17(木) 11:27:23
>>880(レス遅れ失礼しました)

ぴくんぴくんと痙攣して倒れ伏すダイアナを尻目に、いい仕事をしたと
言わんばかりに額の汗を拭うポーズと共に遣り遂げた顔で鼻を鳴らすっス!!

「ふんっス!! いつもエッ子先輩にくすぐり攻撃を受けて、躱しての
特訓がここぞとばかりに活かされたっスよ……ッ!」

「それはそれとして、倒れてると汚れちゃうっス。折角の洋服が
汚れちゃうっスよ!」

手を引っ張って、ぽんぽんっと汚れた背中とか叩いて払っちゃうっス!!

「改めて仲直りっス!!
いきなりスタンドで飛び掛かられたら反撃せざるを得ないっス!
 以前は辻蹴りと言う危ない通り魔だって彷徨ってたっス。
でも、まぁ!! この悪の首領がけちょんけちょんに打ち負かしたんっスから
もう蔓延る悪は居ないんっスけどね!!」

唯一無二の悪は自分だけだと自慢しつつ、お喋りするっス!!

882ダイアナ『オンリー・ガール』【幼稚園児】:2020/09/17(木) 14:50:12
>>881

「ひひひひひ!!あはははははは!!」

「はぁッ……!!はぁッ……!!」

このまま笑い死ぬかと思われた寸前、
手を引っ張られて立たされた。
そして背中も払われるが、その直後に身を翻す。
片手にテディベアを抱えながら、朝山を上目遣いで睨む。

        キッ!

「フン!そうやって手懐けようとしたってダメよ」

「『仲直り』なんてしないわ!!あなたは『悪者』なんだから。
 悪者なんかと仲良くするのは、
 お金もらってソイツらを見逃してる、
 『クサレ政治家』だけで十分よ!!」

      バシッ!
             バシッ!
                    バシッ!

喋りつつ、テディベアのボディに鋭いパンチをブチ込む。
癇癪の八つ当たり。
『初代が引退した理由』は『これ』である。

「でも、『ツジゲリ』っていうのは興味あるわね。
 聞いてあげてもいいわ。詳しく教えなさいよ」

一歩も引かない高飛車な態度で要求する。
この『アサヤマ』とかいうヤツは『スタンド使い』。
なら、その『ツジゲリ』も『スタンド使い』かもしれない。
『スタンドに関係する情報』は多い方がいい。

         オンリー・ガール
このダイアナが『唯一無二』になるために。

883朝山『ザ・ハイヤー』【中二】:2020/09/18(金) 10:49:38
>>882

「えーっ? 仲直りしないんスかっ!
なら、部下になればいいっス!! 今ならこの悪の首領の部下になれば
のり先輩のおいしーい御菓子が毎月無料で振舞われるっスよ!」

我が部下である、おかし幹部の のり先輩は毎月お菓子を作ってくれるっス!
ほっぺが落ちる事請け合いだから、その御菓子の魅力にたちどころに
この幼稚園児も陥落する事間違いないっス!!

「『辻蹴り』は、少し前に夜道を通ってた人をスタンドで強化した蹴りで
昏倒させていた通り魔なんっス! 
そんで、我こそが先程のザ・ハイヤーキャプチャーチェンジで動きを
封じ込めると共にけちょんけちょんにやっつけたんっスよ!!
 いやー、あの時は血で血を洗う壮絶なる死闘だったスねー!!」

調子よく、辻蹴りの蹴りが斬撃のような刃となって襲い掛かって来ただの
誇張表現を繰り広げつつ超絶にダイアナへ自慢する!!

884ダイアナ『オンリー・ガール』【幼稚園児】:2020/09/18(金) 21:27:22
>>883

「はぁァ〜?『部下』なんかなるわけないじゃない!
 ぜ・っ・た・い!!ならないわよ!」

でも、お菓子は興味がある……。
食べたいけど、仲直りはしないし部下にもならない……。
あ!いいこと思いついたわ!

「じゃあ、あなたがわたしの部下になればいいのよ。
 そうしたら、
 その『のり先輩』とやらのお菓子を食べてあげるわ。
 ウフフ!名案でしょ!」

「ふーん、そんなのがいたのね。
 でも、あなたにやられるくらいだから、
 どうせ大したことないんでしょ?
 わたしだったら、もっと簡単にやっつけてあげたわよ」

「『オンリー・ガール・ステルスアタック』でね!!」

自信たっぷりな笑みを浮かべる幼稚園児。
ついさっき負けたばかりなのだが、もう忘れたらしい。
ダイアナは切り替えの早い性格なのだ。

885朝山『ザ・ハイヤー』【中二】:2020/09/18(金) 22:18:38
>>884(良ければ次で〆させて頂きます)

「ぶーっ! 私が悪の首領なのに、なんで部下にならなくちゃいけないっスか!
それに、辻蹴りはチョーちょーーー強かったスよ。
 私でなければ危うく多数の犠牲者が今も、あの道沿いまで出来上がってたっス」


うーむっ! 部下にもならないし、仲直りもしない。
それなら、いいことを思いついたっス!

「それじゃあ、スタンドでバトルもしたし。そっちと私は
ライバル同士の関係っスよ!
 ライバルっ! うんんっ 良い響きっスねー!!
とりあえず、今日はのり先輩が美味しいカップケーキを作ってくれる
約束だったんス! 一緒に良ければ行くっスよ!!」

「それと、名前も教えてくれると嬉しいっス!!」

手を差し出して、握ったらいざ出発っス!!
 美味しいカップケーキが私達を未来で待ってるんス!!!

886ダイアナ『オンリー・ガール』【幼稚園児】:2020/09/18(金) 22:46:49
>>885

「『ライバル』?わたしとあなたじゃ釣り合わないわ。
 わたしが空に輝く月だとしたら、あなたは砂粒ね」

       フンッ

「でも、まぁ――『たまたま』の『まぐれ』で、
 わたしも全然『本気じゃなかった』とはいえ、
 『そこそこいい動き』をしてたことは褒めてあげてもいいわ」

言い方が回りくどいが、
『ライバル』という提案は許可されたようだ。
テディベアを愛車(補助輪付き自転車)のカゴに乗せ、
シートに座る。
そろそろ『補助輪』を取りたいが……
内心ちょっと怖いと思ってることは内緒だ。

「『ダイアナ』よ。
 いずれ『世界に腰を下ろす女』の名前になるわ」

「覚えておきなさい」

          キコキコキコ

「ホントは知らないヒトについていっちゃいけないんだけど、
 わたしはいいのよ」

               キコキコキコ

「だって、わたしは強いから」

愛車(補助輪付き自転車)を漕ぎ始めた。
その最中、心の中で密かに『ブラックリスト』を開き、
そこに『アサヤマ』の名を書き込んだ。
このダイアナ、結構根に持つタイプなのだ。

朝山『ザ・ハイヤー』→『ダイアナのブラックリスト(いつか痛い目に遭わすリスト)』に入れられる。

887円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2020/10/27(火) 22:16:37

『円谷 世良楽』が一人でいるのは稀だった。
円を好み、縁を好む彼女は常に人の『輪』の中にいる。
人の輪の外は、誰も住めるはずのない極寒の世界だ。
住んでいるとしたら、それは耐えているだけに違いない。

「……」

……『リトル・スウィング』に目覚めてから、
一人でいる時間が増えたことを自覚している。

スタンド能力の練習のため、という口実もあったが、
自分の中にだけある『それ』が、なんとなく距離を作る。
繋がりが切れたわけではないし、切るつもりもないが、
しかしこうして、一人で校舎の屋上なんかに来ていた。

888円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2020/10/29(木) 04:58:53
>>887
しばらく後、その場を去った。

889円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2020/11/01(日) 01:57:44

パンダのような色使いのパーカーを羽織った、
こげ茶色の髪の女子生徒が鼻歌交じりに歩いている。

弁当を家に忘れて来た。
昼休みはパンを買って友達と食べたが、
この放課後になって、空腹が目を覚ました。

「〜〜〜♪」

『円谷』は学内ではほぼ常に人と一緒だが、
『帰宅部』であり熱心な委員会などにも属さないため、
放課後の時間は『望めば一人になりやすい』時間だ。

好きなパンを好きなだけ買うには、一人の方が気遣いは無い。
だいたいはそうした心境で、『購買』の近くまで歩いて来ていた。

890シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』【中三】:2020/11/01(日) 02:17:21
>>889

                 「とっ…………」

               ヨロッ

     「とっとっと…………」

          フラッ

前方から、白い髪と黒い目の少女が歩いてきた。
『燕尾服』風に改造された制服を着ている。
両手には『大量のパン』が抱えられていた。

  「あっ――――」

      ポロッ

腕の中から溢れるように、『メロンパン』が転げ落ちる。
両手が塞がっているせいで取る事が出来なかった。
包装されているので食べられなくなる事はないが、
即座にキャッチする事は難しかった。

891円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2020/11/01(日) 02:39:00
>>890

          シュッ

「わっ危なーい」

              ぱし


「これ、あたしにくれるの?
 ハロウィンのお祝いに?
 そういうわけじゃないよねー。ハイ、返すね」

「って、今返してもまた落としちゃうか!」

キャッチしたメロンパンを差し出す。
受ける印象はさておき、人懐こい笑顔だった。

「ねー。そんなにたくさん、一人で食べるの?
 見かけによらず大食いなんだ。あたし3つくらいでお腹一杯」

『大量のパン』の視線を向けながら、なれなれしく言葉を続ける。

892シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』:2020/11/01(日) 03:55:39
>>891

「あっ、ありがとうございますっ」

        ニコッ

無垢な笑顔を返しながら、メロンパンを受け取る。
といっても、パンの山に乗せてもらう形になったが。
どちらにせよ助けられた事には変わりない。

「エヘヘ、そうなんですっ。
 部活やってると、何だかお腹すいちゃって」

「ついつい沢山食べちゃうんですっ」

うず高く積まれた菓子パンや食事パンの後ろで笑う。
買い占められている事はなくとも、
目当ての品は売り切れているかもしれない。
そんな事には全く気付かず、目の前の相手を見ていた。

(うーん、見かけた事ないけど先輩なのかなぁ?)

(でも、すごく気さくで話しやすい人みたい)

「私、中等部の三年生なんですけど、もしかして先輩ですか?」

893円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2020/11/01(日) 22:52:34
>>892

「いいよいいよー、お礼なんて。
 あたしの手があるとこに落ちて来ただけだもんね」

            ボスッ

素直にパンの山の上にメロンパンを積む。

「部活やってるんだー。
 お腹減るのは運動部?
 んーでも体育会系には見えないかな。
 練習キツーイらしい『吹奏楽部』とか?
 」

『部活情報』は友達から聞いている。
文化部でキツイのは『音楽系』――そういう噂だ。

「ちなみにあたしは帰宅部だー。学年は『高1』」

              「だから1つ先輩だねー」

もっとも、中等部と高等部の差はあるだろうが。

「部活じゃなくって、『人生の先輩』だー。
 別に年上だからえらいわけじゃないけどー。でも、先輩だね!」

894シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』:2020/11/01(日) 23:25:10
>>893

「私は『合唱部』ですっ。
 歌うのって意外と体力も使うんですよ〜。
 だから練習が終わった後は、
 いつもお腹すいちゃってますねっ」

「あ、でも運動部もたまに……。
 掛け持ちじゃないですけど、
 『手伝い』みたいな感じで参加する事があって……」

「その後もお腹すきますねっ。あはははは〜」

            ニッコリ

シルクは先天的に『音痴』であり、
その歌唱力と音感のなさは『壊滅的』だ。
しかし、何故か運動となると人並み以上に出来る。
度々『助っ人』を頼まれたり、
あちこちの部から勧誘される事も少なくない。
ただ、運動部に入ろうという気は起きなかった。
どれだけ下手だったとしても、
歌う事が何よりも大好きだからだ。

「――先輩は、これから帰る所ですか?」

「えっと……『お疲れ様です』っ」

       ペコッ

そう言って頭を下げた。
さっき乗せてもらったメロンパンが、また落ちかける。

895円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2020/11/01(日) 23:56:28
>>894

「へー、すごい。とってもすごいじゃーん!
 それって『文武両道』ってことだよ。
 あたし、どっちもそんなにだから、
 どっちも出来るってすごいと思うんだなあー」

実情を知らない円谷は気楽なものだ。
気難しい時の方が少ない性分だが。

「んー、あたしー?
 あたしはねー、パン買って帰ろうかなって!
 今日、じつは、お昼あんまり食べてなくって」

             シュッ

「見ての通り、ダイエットとかじゃないわけだけど」

と、自分の腹を縦に撫でる。

小柄で、どちらかと言えば細身な体格。
食事を抜く意味は無い。『忘れただけ』なのだから。

「だから、そーだねー。疲れてる。エネルギー切れー」

   スッ           「パンを支えるエネルギーで精一杯!」

落ちかけたパンに手を添える。その手首に、『5輪のブレスレット』が光る。

896シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』【中三】:2020/11/02(月) 00:15:16
>>895

「わっ――と……!」

「あっ、ありが――――」

うっかりパンの山が崩れる所だった。
添えられた手が堤防のように、それを支えてくれた。
慌てて体勢を立て直し、『手首』に視線が向く。
正確には、そこにある『五つの輪』に。
驚きの表情が浮かび、お礼の言葉が思わず止まってしまう。

「そ、『それ』…………」

「オシャレなブレスレット――――」

「――――です、ねっ!」

       ニコッ

落ち着きを取り戻し、表情を笑顔に変える。
自分以外にもいる事は知っていた。
だけど、実際に会った経験は少ない。
その一人は、今『目の前』にいる。

897円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2020/11/02(月) 01:19:10
>>896

「『これ』――――気になるー?
 気になるんだ〜、わかるよ。
 わかる。名前は『リトル・スウィング』」

              クルン

「褒めてくれてありがとーねー!
 あたしのことを褒められてるみたいで、嬉しい」

もう片手で、ブレスレットを弄る。
『腕についている』今は、それはただの『飾り』。

「って、先にあたしの名前を、
 知ってもらった方がよかったよね。
 あたし、『円谷世良楽(つぶらや せらら)』
 呼び方とかは、呼びやすいようにしてね」

         ニコ

「それで、後輩ちゃんは?
 なんて呼べばよかったんでしょーかー?」

『スタンド』を指摘されても、動じる事はない。
それは『特別』だ。とても……だが『恥じる』『怖れる』物ではない。

898シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』【中三】:2020/11/02(月) 01:58:38
>>897

(堂々としてるなぁ。さすが先輩って感じ。
 私だって最上級生なのに全然『先輩』出来てないし……)

(高等部に上がったら、私もこんな風になれるかなぁ?)
 
(――うん、頑張ろう!)

「じゃあ、『セララ先輩』って呼ばせてもらいますっ!
 可愛いお名前ですねっ!」

「その――『リトル・スウィング』の方も、
 何だか可愛い感じで」

「あっ、私『シルク』っていいます。
 『純白』って書いてシルクですっ」

「それから、『こっち』が――――」

       フッ

一呼吸の後、襟元に現れる小さな『コウモリ』。
それはコウモリの形をした『ピンマイク』だ。
自分の『片割れ』であり、スタンドの『片方』でもある。

「――――『トワイライト・トーン』っていうんですっ!」

『もう一つのスタンド』は出てこない。
彼は友達だ。
お互いに気持ちが通じ合っていると感じる。
シルクは、そう思っていた。
そして、そう思っているのは『彼女だけ』だ。

899円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2020/11/02(月) 02:29:57
>>896

「褒めすぎだよ! うれしーからいいけどね。
 あたし自身可愛いから、
 名は体を表すってやつかなー?
 なんてねー! 可愛いとは、思ってるけど」

        ケラケラ

「でもシルクちゃんも可愛いよ。
 名前も、お顔も。きっと性格も。
 それから『スタンド』も、ちっちゃくてさー。
 たぶん、お歌もとっても可愛いんだろうね」

軽口はもちろん、『知らないから』だ。
もし仮に『歌』がかわいいなら、
『友達』でいられるかもしれないだろうに。

「今度、聴かせてよー。歌。カラオケか何かでさ。
 あたしもさ、カラオケの点数みんなより高いんだー」

それが遠回しな『自殺行為』なのも、勿論気づけない!

900シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』【中三】:2020/11/02(月) 02:51:08
>>899

「いいですねっ!いつか一緒に行きたいです!
 そんなに自信がある訳じゃないんですけど、
 セララ先輩に聞いてもらえるなら、
 『張り切って』歌いますからっ!」

「楽しみにしてますっ!」

        パ ァ ッ

喜びの色を満面に浮かべて誘いに応じる。
最近は『一人カラオケ』ばかりで、
誰かと一緒に行く事は全くなくなっていた。
だからこそ、先輩の言葉が本当に嬉しかったのだ。

        《――――…………》

 ワ    タ    シ
『トワイライト・ゾーン』は、
その光景を『異次元』から観察していた。
シルクとカラオケに行った人間は、
二度と彼女と一緒には行かない。
例外は一人も無かった。
そうした経験から、『何が起こるか』は容易に予想出来た。
それを止める事が出来ないのは、心から残念でならない。

「あっ、つい話し込んじゃって……。
 セララ先輩、購買に行くんでしたよねっ」

「私も、そろそろ行ってきますっ。
 あの――色々ありがとうございましたっ」

「それじゃっ!」

          ペコッ

お辞儀をして、歩き始める。
今度はパンを落とさないように、ゆっくりと。

901円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2020/11/02(月) 20:35:27
>>900

「うんうん、あたしも楽しみだよー。
 それじゃあまたね、シルクちゃーん」

購買の方へと歩き去る。
未来に待ち受ける『地獄』を、知らないまま――

902村田 瑛壱『ディズィー・スティック』【高2】:2020/12/23(水) 22:12:45
カチンッ  チチチチチチ・・・
  
  ボ
   ウ ッ!

チリチリ…  シュワワワ…

学園内にある『調理室』から、何やら香ばしい香りがする。

『オリーブオイル』と、それで炒められている『ニンニク』の匂いだ。

903斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/12/24(木) 01:05:29
>>902

 調理室のドアを叩きつけるようなノックの音と共に
 男性の声が外からかかる。

 「――開けろ!デトロイト生徒会だ!」

904村田 瑛壱『ディズィー・スティック』【高2】:2020/12/24(木) 01:29:39
>>903

唐突な生徒会のエントリーだ。
開けろと言われれば開けてやりたいが・・・

「(・・・今は手が離せない・・・仕方ないな)」

調理室の重厚な観音開きの扉へは、村田の手は片手間に届かない。なので・・・

ズギュ ン !!

 『ディズィー・スティック』を発現!

 「おいでませェェェェェェェ―――――――ッ!!」

 ド
     カ ァ ッ !!

『蹴り開ける』! 『扉』をッ!

905斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/12/24(木) 02:26:48
>>904

激突音と共に観音式の扉が開く

――誰もいない
廊下には影も形も無……

 「あっぶねえな……」

い事も無い、正確には開け放たれた扉の横から
ひょっこりと顔を出した。

 「ノックしてる人の事考えてますかー、特に相手が馬鹿正直にドアを叩いてた場合、鼻面への不意打ちになる事とか。」
 「君、チャイム鳴らした宅急便相手にもそういう事するわけ?謝罪が絶えないだろ。」

乱暴に開いたドアを一瞥し、そうぼやきながら料理中の君の前を横切るのは
首元に赤いスカーフを巻いた同学年の男性だ。

 「成程?手が離せなかったわけだ ……ドアの損傷位置が低いな、どうやって蹴った?」

906村田 瑛壱『ディズィー・スティック』【高2】:2020/12/24(木) 02:50:01
>>905

 「来るとわかってる客と、そうでない客への『もてなし』が違うのは道理じゃねぇかい?
  手荒なのは認めるが・・・と。」

顔を火元の鍋から動かさず、視線だけを扉のほうにやる。
手元はせわしなく、ニンニクを炒める鍋のほうに向けられている。

 「どこかで見た顔だな。あんた。」

いつかの『トライコーン』との戦いを思い出す。あの時は顔に何かを塗っていたが、こんな顔立ちだったはずだ。

 「ま、別にいいか。で、生徒会の方が何の御用なんで?」

村田が顔を向けているコンロの上には、開いた貝殻のような形をした、おかしな形の『銅鍋』が火にかけられている。

907斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/12/24(木) 03:20:36
>>906

「別に?」

事もなげにそう言い切ると、適当な場所に腰掛ける。

「君が何もしない真面目で優良な生徒なら。こっちも用事なんてないさ、それに……聞きたいことが有るのは君の方だろ?」

村田瑛壱。
そう呟いて脚を組む、あれはアリーナの仕事だった。

「図書室で何やらこそこそしていたらしいじゃないか。……あの時の君は興味がないと思ってたがな。」

908村田 瑛壱『ディズィー・スティック』:2020/12/24(木) 15:22:38
>>907

 「『アリーナ』、『エクリプス』…
 俺がその二つについて調べていたのは、組織自体に興味があったからじゃない。」

口を開けた銅鍋で玉葱を炒め、油を馴染ませる。

 「俺が気にしているのは、『深山兄妹』がこれから先、面倒ごとに巻き込まれないかってことだけだ。
 一般人とはいえ、スタンドの絡む事件に関わった以上、目をつけられてもおかしくない。」

 「奴らに手を出してくるようなら『どちら』であれ、俺の全てを賭けて『潰してやる』…そう考えただけのことだ。」

鍋に蛤、魚の切り身、剥いた海老を放り込み、鍋の口を閉じる。

 「…で、お前は『どっち』だ?」

909斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/12/24(木) 22:42:13
>>908

 「自分を問えって?結構な無理難題を言うじゃないか」

両手の指を互い違いに、虫の歩みの如く滑らかに動かす
意味は無いが単に落ち着くだけの動きという物は有る。
鬱病患者というものは特に。

 「ところで……『深山』って誰?」

首を傾げるとどうにも心当たりがないような所作で肩をすくめる。

 「覚えてないんだけど、あれかな?『トライコーン』で君の傍にいた女の子の事。」

910村田 瑛壱『ディズィー・スティック』:2020/12/25(金) 00:52:11
>>908

 「ああ、そうだ。兄貴の方は『二本角』にされていた。」

トクトク…
         グイィーーッ

調理に使った『白ワイン』を取り出し、グラスに注ぎ一息に飲み干す。

 「あの事件が誰の差金なのかは知らん。興味もねえ。
 だが『音仙』に曰く、この街はどうにもそういう連中がら多いらしい。
 その中にゃこの間の『ゲンマ』のようなやつもいるんだろう。」

 「過ぎたことはどうにもならんが…これからのことはどうとでもなる。
 彼らが被害者である事実は消えずとも、これ以上被害が及ばない為に動くことは出来る。」

911斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/12/25(金) 21:03:27
>>910

 「立派だねぇ……物言いは。」

言う事ならば誰にでもできる
まあそれを言うだけでも勇気が有ると捉える事はできるだろう。

 「しかしそう言う事なら『潰す』なんてますます言葉は使わないほうがいいな」

 「周囲に無節操に力を振り回し、悪戯に『深山』のような一般人に被害を拡大させて……」

 「態々敵を作りまくって、袋叩きに有ったのがあの『トライコーン』なんだ。」

ただし、『勇気』とは『蛮勇』という言葉の類義語である事を忘れてはならない。

 「――君、彼の跡を継ぐ気かい?」

ニヤリと口を歪ませるとすぐに作り笑いに戻る。

 「ま、どの道アレは長くなかったけどね、僕達全員にとっても危険だった。」

912村田 瑛壱『ディズィー・スティック』:2020/12/25(金) 22:26:34
>>911

「そうだな…それも『悪くない』な。
 正しいと思って『流れ』た先がそういう結果なら…『諦め』もつく。」

火にかけられた鍋を眺めながら、同じように一瞬だけ笑みを浮かべる。

 「俺はね、『俺の生きる明日』を今日より良くすることだけに興味がある。
 善だとか悪だとか、正当だとか邪道だとか…そんなことは『どうだっていい』。
くだらない世間の話や、世界の話も聞き飽きた。」

 「目下の命題は彼らの安全の保証と、この鍋の味つけだけだ。」

つまみを回し、コンロの火を止める。あとは余熱調理で良いだろう。

 「たったそれだけを邪魔する奴がいるなら…
 『俺の明日の平和』を脅かす何者かがいるなら…
  そいつらにとっての、望まれざる『来訪者』になることに躊躇いはない。」

913斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/12/26(土) 01:35:56
>>912

 (成程 ……鏡を見るとはかくも滑稽な物か)

 「――面白い奴だな、君。」

 「明日の自分が、今日より良くなると期待しているのか、そこは僕との違いだな。」

肩を竦める。

 「まぁ、心配の方は杞憂だろうけれど」

 「君の、お嫌いな世間の話だが、『トライコーン』が『アリーナ』に排斥されたのは弱者を守る為。」
 「この『弱者』というのは君の言う2人じゃないぜ、僕ら…『スタンド使い』の事だ」

 「この力は数が少なく、露見し難い けれど見境なしに使えば幾らなんでもおかしいとは思われるだろう。」

 「その時僕らは、君が守ろうとしている2人…世間に排斥されるだろうな
 なにしろ 取り上げる事も、禁止する事も出来ない透明な拳銃を僕達は持っていて」

 「ホモ・サピエンスは肌の色だの思想の違いだの、信じる物が違うだけでも殺し合いが出来る種族なんだから。」

爪にヤスリをかけながら続ける、うん、今日も奇麗だな。

 「まあ何が言いたいかと言うと……『2人に関して心配する必要は何もない』って事さ、僕はその為に『アリーナ』の依頼を受けてあそこにいたんだ。」

 「むしろ危険なのは君の方なんだぜ、或いは……『僕達』か。」

彼の明日を脅かすのが、『スタンド使い』とは限らない
もし、どうしようもない理不尽が彼の身に降りかかり、それを彼が『あり得ない力』に頼って退けてしまったばあい
それを恐れて依頼を出すのは、『エクリプス』と『アリーナ』だ、そしてその依頼を受けるのは……。

 「うっかり君の言う、くだらない世間に殺されてくれるなよ?出来れば1人でひっそり死んでくれればなお良い。」

爪に息を吹きかける、完璧だ。

914村田 瑛壱『ディズィー・スティック』【高2】:2020/12/26(土) 02:59:08
>>913

「いろいろと『諦め』てきたからな。
 ・・・せめて、必ず来る『明日』ぐらいは、よりよいものを望んでもバチはあたるまい?」

『銅鍋』の貝殻のように閉じた蓋を開ける。
オリーブオイルとニンニク、それから魚介の出汁の豊かな香りがあたりに立ち込める。

 「だが、俺の欲した明日がよりよくなるために、俺が『いらない』というなら・・・
 その時は、『そうする』だけだ。」

どこからか貝杓子を取り出し、『銅鍋』の中身を皿に盛りつける。

 「ま、おれのことはどうだっていい。『深山兄妹』に危害が加わらないことが分かれば、それで十分だ。
 今日は少し枕を高くして眠ってもよさそうだ。」

ふふんと心底嬉しそうに鼻を鳴らし、口角を吊り上げる。
その顔のまま振り向き、皿に盛った料理を、『斑鳩』の前にある机へ差し出す。

 「『魚介たっぷりのカタプラーナ』だ。『ポルトガル料理』・・・食ったことあるかい?」

915斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/12/26(土) 15:51:59
>>914

掌を突き出して指を折り曲げて数える。

 「――調理器具と場所の無断使用だろ?
 飲酒に自暴自棄、暴力行為に贈賄。」

おっと、既に折り曲げる指が足りなくなった
突き出した掌を戻す。
 
 「諦めている割には、自分の事を自由にできると憚らない。
 あまつさえそれを食えって?『生徒会』の僕に!」
 
『村田』を両の瞳で見据える
『自分の事はどうでもいい』『正しければ死んでもいい』『善悪や世間の評価に興味がない』
どうやら不適合者真っ逆さまだ。
  
 「まったく、『くだらない世間』一般の『良い子』とは程遠いな君は!」

……そしてなんとも、一点を除いてよく似ている
皿を受け取り、苦笑しながらやや投げやり気味に台詞を返す。
 
 「……フォーク有る?」

916村田 瑛壱『ディズィー・スティック』【高2】:2020/12/26(土) 19:11:58
>>915

「『調理器具』は全部俺のだぜ。数える指が足りるな。」

にやりと笑って、フォークとスプーンを差し出し・・・

 「『飲酒その他』については、これで目をつぶってもらうとするかね。
 ・・・『魚介料理』には『白ワイン』がぴったりだ。」

グラスにワインを注ぎ、同様に差し出す。

 「美味いメシは、よりよい明日のために欠かせないものだ。
 明日への『活力』、『期待』、そしてもっと美味いものを作るって『野心』のため・・・
 あんたとおれのよりよい明日のために、『乾杯』しようじゃねえか。」

酒はともかく、料理は美味かったはずだ。
手をかけずとも、下ごしらえが十分ならうまく仕上がる・・・
それが『カタプラーナ』という料理であり、よりよい明日もそうして迎えるものなのだから。

917夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2021/01/26(火) 19:35:46

放課後の図書室。
片手にペンを握り、机に向かっている。
『真剣』な表情だ。

           カリカリカリ…………

机に載っているのは、一冊の書籍だった。
『よむ・かく:くりかえし漢字ドリル(小学三年生一学期)』。
勉強中らしい。

918ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/01/26(火) 22:17:00
>>917

「り……ゆう。じそく。はこぶ。はこぶ」


何やら後ろからブツブツ聞こえる。
しかもその内容は、今まさにやっているドリルの漢字だ。


「みじかい。くらい」


ちなみに書いてあるフリガナを読み上げているだけなので
答えを言っているわけではない。

919夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』【高一】:2021/01/27(水) 10:33:50
>>918

   チラ…………

            クルッ

                ――――バッ!

後ろを振り返って、また前を向く。
前を向いたかと思うと、今度は勢いよく振り向いた。
いわゆる『二度見』というヤツだ。

「ナンだ??『よそのスパイ』か??
 ケイカイゲンジュウな『ホウカゴのトショシツ』に、
 この『アリス』いがいに『シンニュウシャ』がいようとは……」

「わたしは、
 この『アンゴウ』をカイドクしているさいちゅうなのだ。
 このナゾのアンゴウブンのなかに、
 『しんへいきのセッケイズのありか』が、
 こうみょうにかくされているという……」

「『セッケイズ』はわたさんぞ!!『よそのスパイ』!!」

即興で捏造した背景を語った。
『しんへいき』のしょうさいは、
『アリス』がしょぞくするホンブでもまだつかめていないが、
てにいれるとセカイをせいするともいわれているモノだ。
それがアクのてにわたらないために、
なんとしても『アンゴウ』をカイドクせねば……!!

920ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/01/27(水) 13:00:42
>>919

「いけん。びょうき……うん?」


背後にいたのは、金髪の子供だった。
やたらと大きめの服を重ね着している。
年齢は小学生低学年くらいだろうか。


「何を言っておるんじゃ?
 よくわからんが、わしは悪くないぞ。
 わ、わしをどうするつもりじゃ?」


突然、怒涛の設定を浴びせられてよく理解できなかったのだろうか。
とはいえ何か友好的でない雰囲気は察したらしい。
キョロキョロとあたりを見回す。厳重な警備とやらを警戒しているのかもしれない。

921夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』【高一】:2021/01/27(水) 17:00:44
>>920

「さては、まだ『ゴクヒジョウホウ』をつかんでいないな??
 ワレワレのほうがさきをいっているというコトか……。
 しかし、こんご『ニンムたっせいのショウガイ』になるカノウセイも、
 ひていはできない……」

         ガタッ

「いまのうちにてをうつべきか……」

漢字ドリルを手にして立ち上がり、
じりじりと少しずつ距離を詰めていく。
特に警備とかはなく、今ここにいるのは、
たまたま二人だけだった。
ほんらいであれば、
『AAAクラスのセキュリティー』がほどこされているのだが、
ついさっき『エージェント・アリス』によって、
すべてカイジョされてしまったからな。
『トクシュカクヘキ』とか『レーザートラップ』とか
『サイミンガス』とかイロイロだ。
そこらへんのシーンは、
『コレクターズエディション』のエイゾウトクテンでみられるぞ。

「だが、イマは『セカイのソンボウ』がかかっている。
 きょうりょくしなければ、
 『ジンルイのキキ』はのりこえられない!!」

「そうはおもわないか??『エージェント・フェアチャイルド』」

         ズィィィィィッ

コードネームを与えつつ、漢字ドリルをグイッと突き出す。
『カンジ』のニガテなアリスに、
『3ねんせいよう』はまだちょっとハードルがたかかった。
『2ねんせいよう』にしときゃよかったな!!

922ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/01/27(水) 17:48:17
>>921

「む?
 よその……? アリス以外に……?」


子供は遅ればせながら気づいた。
この目の前のアリスとやらが自身がシンニュウシャであることに。
つまり、セッケイズを守る側ではなく、奪取に来た側。


(この娘、ワルモノか……?
 いや、人類の危機を乗り越えるということは正義……?
 何か勘違いしているようじゃが、
 わしが無関係であることがバレるとまずい……のか?)


全然状況は掴めないながらも、完全に雰囲気に気圧されてしまっている。
なんか知らないがジリジリ近づいてくるものだから、
同じだけ後ろに下がるが、本棚に背が当たってしまう。
これ以上後ろに行けないというのに、漢字ドリルを突き出される。


「わ、わかった。わかったから落ち着くんじゃあ……」


フェアチャイルドと言われても当然、心当たりは皆無だ。
誰と勘違いしているのだと思いつつも、『きょうりょく』を受諾する。

923夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』【高一】:2021/01/27(水) 18:53:53
>>922

「よしよし、ハナシがわかるな。
 『フェアチャイルド』なら、そういうとおもったぞ!!」

      スタスタスタ

              ――――トスッ

漢字ドリルを引っ込めて、また椅子に座る。
机の上には『ロリポップキャンディー詰め合わせ』が置いてあった。
この前の『パーティー』でもらったヤツだ。

「タチバナシもナンだから、
 とりあえずソコにすわるとイイぞ『フェアチャイルド』」

「ついでに、このアメもくってイイぞ『フェアチャイルド』」

         ヒョイッ

棒付きのキャンディーを口に咥えつつ、
自分の向かいの席を指し示す。
お菓子で懐柔しようという策だ。
たとえ『よそのスパイ』であっても、
かつコトよりあらそわないコトがだいじだ。
ジブンがさきにたべるコトによって、
『アンゼン』であるコトをアピールする。
イチリュウのスパイには、ぬけめなさがダイジなのだ。

「『フェアチャイルド』は、
 さいきんナニかオモシロいコトとかあった??」

そして、さりげなく世間話にシフトしていく。
実の所、漢字の勉強に疲れたので、
ちょっと息抜きしたかったのだ。
ちょうどタイミングよく『フェアチャイルド』が現れたので、
引っ張り込もうという魂胆だった。

924ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/01/27(水) 22:26:22
>>923

 「?」
          「?」


急にすごくフレンドリーになったので混乱しつつ逆にビビる子供。
ペースは握られっぱなしだ。
言われるがままに席に座る。


「書をしまうのか? 解読するのではなかったのか?
 わしの話が何か関係あるのか?
 お、面白い事?
 ……ええと、その、こ、この間、ラッコを撫でたこと、とかじゃろうか」


とりあえず手に取ったキャンディーを手で弄びつつ、
チラチラと顔色をうかがう。

925夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』【高一】:2021/01/27(水) 23:25:21
>>924

「ほうほう――――」

「『ラッコ』か。きいたコトはあるな〜〜〜」

       ズイッ

「――――みたコトはないけど!!」

興味を引く話題が出てきて、思わず身を乗り出す。
アリスはアリスだから、
『見た事がないもの』には目がないのだ。
コイツはみのがせんな!!

「『ラッコ』ってどういうヤツだっけ??
 『ハネ』はえてた??『きのぼり』がトクイとか??」

「あ、せなかに『カイガラ』しょってるヤツだっけ??」

知識にある情報を総動員して、
まだ見ぬ『ラッコ』の姿を頭の中でイメージする。
『視力』を得たのが最近のため、
たとえ情報を知っていたとしても、
それが実際の外見と一致しにくいのだ。
『じめんのした』でくらしてたようなきもするな……。

926ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/01/27(水) 23:40:14
>>925

「ラッコを知らんのか」


と言いつつ、子供だってラッコが世間一般でどの程度の知名度なのか知らない。
知らない方が普通なのかもしれない。
だが今まで気圧されていた分、精神的優位に立てそうと思ったのか口は軽くなる。


「ラッコは……海に住んでおるやつじゃ……確か、多分……
 わしが見たのはパーティ会場じゃったが。
 だから羽が生えてたり木登りとかはせん、と思う。水タイプじゃから。
 灰色っぽくて、見た目は……直立した鼠? と言っても耳は小さくて……
 体の大きさはこう、このくらい」


椅子から飛び降りると、棒付きキャンディーを杖のように振って、ラッコの大きさを表現する。
1mちょっと……この子供より少し小さいくらいか。


「毛が触り心地がよくての。
 あ、貝殻? 背負ってはおらんかったが、
 ラッコが貝殻を持っておるというのは聞いたことがある気がするのう。
 いや、持っておるのは石……?」

927夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』【高一】:2021/01/28(木) 00:43:23
>>926

「しらんのじゃよ、『フェアチャイルド』」

「ほうほう、そんなヤツだったのか。
 おもったよりちいさいんだな。
 で、『イシ』をもってるのか……。
 『フシギなニオイ』がプンプンするな!!」

大きく頷きながら、興味深げに話を聞く。
『ラッコ』……ソレはミチのチョウセイメイタイ……。
パプアニューギニアのおくちで、ゲンチジュウミンによって、
ソンザイがささやかれていたという……。
はたしてジツザイしているのであろうか??
そのシンギをとうべく、カメラはげんちにとんだ!!

「ん??『パーティー』??」

「アリスも、さいきん『パーティー』いったけど。
 もしかして、ソレ??
 『キグルミ』みたいなの、いなかった??」

会場に行った時、ラッコらしきモノは見えなかった。
トイレにでもいってたのか??
それとも、ジツはラッコは『イチリュウのスパイ』で、
たくみにケハイをけしていたのかもしれないな……!!

「アリスは『ウラのほう』にいってたからな〜〜〜。
 ウマいことハメられたか!!」

928ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/01/28(木) 01:09:10
>>927

「着ぐるみ?
 いたかもしれん」


そこらへんは注目していなかったのか、あまり記憶が定かではなさそうだ。
そして話しているうちに、世界の危機やスパイの事はもう忘れたらしい。
この子供の記憶はあまり当てにならないかもしれない。


「パーティは、何の集いなのか知らんが、
 なにか食べ物が並んでおって、勝手に取って食ってよい感じじゃったな。
 ラッコも刺身を食っておった。
 あ、あとプレゼント交換もあったの」


椅子に座り直し、服の毛玉を毟る。


「クッキー食うか? 飴のお返しじゃ。
 ……この飴……何味があるんじゃ?」


と思ったら、毛玉を毟っていたはずの手に、
いつのまにかチョコクッキーを持っていて、渡してきた。
包装を破っていないとはいえ行儀が悪いが、飴は味を選び直そうとしている。

929夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2021/01/28(木) 15:36:03
>>928

「じゃ、ヤッパリおんなじパーティーじゃねーか!!
 ナンだよナンだよ、もっとはやくいくんだったな〜〜〜。
 おもったより『ヘンソウ』にジカンがかかったからな……」

あのパーティーには、『夢見ヶ崎』ではなく、
『アリーナ』のリングネームである、
『アルカラ』として参加したのだ。
出掛ける前の事を思い出す。
白衣を着て、ウィッグを着けて、黒いサングラスを掛けて……。
たいしたコトしてないって??
えらぶジカンがながかったんだよな。

「おっ、いいね〜〜〜。
 よのなか『ギブアンドテイク』だ。
 ギブしたらテイクするのがジョーシキだからな。
 『フェアチャイルド』は、よくわかってる!!
 しょうらい『オオモノ』になれるぞ」

         スッ

遠慮なくクッキーを受け取った。
キャンディーは『詰め合わせ』なだけあって、
多種多様な種類があるようだ。
欲しいヤツは大体見つかるだろう。
ところで、どれくらいオオモノになるとおもう??
タブン『3メートル』くらい??
じゃ、わたしは『4メートル』をめざすぞ。
コンビのなまえは『7メートル』だな。

「おおきくなるには、たべるコトがだいじだ。
 だから『フェアチャイルド』も、よくたべてよくアソブんだぞ」

「ところで――『コレ』、どっからだしたの??」

         ズギュンッ

手に持ったチョコクッキーを指差しながら、
背後に『ドクター・ブラインド』を発現させる。
『両目を閉じている人型スタンド』だ。
両手の『爪』は鋭く尖っており、
手術に使われる『メス』のようだった。

930ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/01/30(土) 10:35:48
>>929

「うむ。大物というか……
 わらしべ長者にわしはなる」


世はまさに大交換時代。
しかし、この子供に地の文を読む能力は無い。
2000万パワーズ的論法のチーム名の話題は
返事されることはなく虚空に飲まれていった。


「イチゴ味か、メロン味か。
 迷うところじゃな……」
「…………」
「……うーむ」
「…………」
「のう、クッキーを2枚やるから飴を2個貰っても……のわ! オバケ!
 のわわ……」


飴を選ぶのに夢中であまり聞いていなかったようだが、
振り向いた瞬間、ビビッて椅子から落ちそうになる。
その時、手から机の上にこぼれ落ちたのは、
一瞬前までは持っていなかったはずの『クッキー』(とセーターの毛玉がいくつか)だった。

931夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2021/01/30(土) 14:37:37
>>930

「『オバケ』だとォ〜〜〜??
 『Sクラスエクソシスト・じょしゅだいり(ふつかめ)』のわしが、
 アレとかコレとかでカイケツしてしんぜよう!!」

         ババッ

                  「『オバケ』は!!」

              ババッ

  「どこだ!?」

『爪のあるスタンド』が素早い動きで周囲を見渡す。
『閉じた両目』で見回している様子は、
奇妙に思えるかもしれない。
いや、まて。
あいてがオバケでも、『ケンカごし』はよくないな。
まずはコミュニケーションをとるコトをためすべきだ。

「オバケさん、ちょっとウチらとハナシでもしませんかね??
 ほらほら、キャンディーとクッキーもあるコトだし。
 ハロウィンには『9ヶげつ』くらいはやいけど。
 あ、オバケってモノたべるんだっけ??」

ついでにハネがはえてて、きのぼりがトクイで、
あとじめんのしたにすんでて……。
あ、そりゃ『ラッコ』か??
ラッコは、さわりごこちがよくて、
イシをもってるちいさいイキモノだろ!!

「おん??クッキーくれるのか。
 ギブアンドテイクのセイシンでオーケーだ。
 スキなのをもっていくとイイぞ、『フェアチャイルド』」

「ところで、このクッキーさぁ。
 たべても『ケダマ』にもどったりしない??」

そう言いつつ、もらったチョコクッキーをかじる。
キャンディーはどれでも取っていいらしい。
『交換成立』だ。

932ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/01/30(土) 22:26:51
>>931

「……なにやっとるんじゃ?
 妙なやつじゃのう」


ヨタヨタと椅子の上で姿勢を安定させる。
芝居がかったコミカルな動きに逆に安心したようだ。
オバケと呼ばれたのが自分の事だとわかっているのかいないのか。
スパイだのエクソシストだの、身分がコロコロ変わるし、
まとめて、変なヤツ、という印象で括られそうである。


「……大丈夫じゃ!」


特に言い訳したり、ごまかしたりもせずに言い切った。
『クッキー』は大丈夫らしい。
返事を聞く前に食べてるあたり豪胆だが、齧っても、
特におかしな所は無く、普通に市販の安売りクッキーとしか思えない。
気になるとするならば、2つのクッキーは同じに見えることだろうか。
量産品なのだから同じで当然と言えばそうだが、包装に貼られた値引きシールの位置まで同じだ。

933夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』【高一】:2021/01/30(土) 23:17:36
>>932

「ん…………??」

クッキーを食べつつ、二つの包装を見比べて首を捻る。
確かに変なものではないようだ。
毛玉の味もしない。
ケダマくったコトあるのかって??
きくな!!

                 ドシュッ

         ドシュッ

『爪のあるスタンド』が、本体を『爪』で軽くつついた。
これによって、『超人的嗅覚』と『超人的味覚』を、
本体に移植する。
その状態で再びクッキーを食する。

 「サクッとしたショッカン……チョコのあまさ……」

        「こ……これは……」

    「『いたってフツーのクッキー』!!」

    バァァァァァ――――――――ンッ!!

「このわたしがいうんだからマチガイない。
 『しるヒトぞしるグルメ・クイーン』とよばれてるからな!!」

「あ、そうだ。
 せっかくだから『フェアチャイルド』にも、
 『グルメのセカイ』をタイケンさせてやろう。
 イマちょうど『キャンペーンちゅう』で、
 ムリョウでおためしできるらしいぞ。
 ツイてるな、『フェアチャイルド』」

        ――――チョンッ

『盲目のスタンド』が、人差し指で子供を軽くつつく。
触れられる感触はあるだろうが、
精密さゆえに痛みは皆無だ。
攻撃ではなく、『超人的味覚』を移植して、
『舌』を肥えさせてやろうという考えだ。

「さぁ、そこの『キャンディー』をたべてみなさい。
 『クッキー』でもイイけど」

『移植』されたなら、超人的に『ブースト』された味覚によって、
『グルメの舌』になっているだろう。
具体的には、『ミネラルウォーターの銘柄』を当てられる程に、
味覚が鋭くなるという事だ。
普段よりも『味』が鮮明に感じられ、
『材料一つ一つの味』さえも識別出来るであろう。

934ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/01/30(土) 23:29:00
>>933

「普通のクッキーじゃが……」

「?」

「なんじゃ?」


普通のクッキーをオーバーリアクションで食うさまを不思議そうに眺める。
とはいえテンションがおかしいのは最初からなので、
特に不信感は増さなかったのか、おとなしくツンツンされた。


「うむ。
 イチゴ味を」    ペロ……

                    「これは!?」

     バキッ
                 ガリガリ バキ


思わず飴を嚙み砕いてバリバリ食べてしまった。


「メロン味の方もじゃ……
 この飴……何かお高い飴だったりするのかの!?」


自分の味覚ではなく飴が特別美味しいものだと思ったらしい。
2個目の飴は大切にペロペロする。

935夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』【高一】:2021/01/31(日) 00:14:41
>>934

「うむうむ。
 『もらいもの』だから、くわしくはしらんが、
 ジツは、たべるタイミングによってアジがかわる、
 『ユメのキャンディー』なのかもしれないな……。
 せけんではムメイであったが、
 じっさいはセカイイチともしょうされる、
 『ここうのオカシショクニン』のウワサを、
 ちまたできいたコトがあるようなないような……!!」

プレゼント交換でもらった品なので、
どんな物かは実際知らない。
もしかすると、実は値打ち物だったのかもしれない。
外見的には、
特にそんな雰囲気は漂っていなかった気がするが、
そっちの方が面白いし、
その可能性もゼロではないだろうと思っておく。

「そういえば『フェアチャイルド』は、
 『わらしべチョウジャ』になるんだっけ??
 『ユメ』をもつのはイイことだ。
 ユメがかなうように、アリスもおうえんするぞ!!
 『フェアチャイルド』もアリスをおうえんしてくれよな!!」

          サクサクサク

「『アリスのユメ』いったっけ??
 『セカイのゼンブをみる』のが『アリスのユメ』だ!!」

普通のクッキーを食べながら、さっき聞いた話を思い出す。
『わらしべ長者になる』という話。
それが自分のでも誰かのでも『夢』は好きだ。

936ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/01/31(日) 00:28:49
>>935

「味はイチゴとメロンじゃが!?」


とても美味しく感じたが、味が変わっていたわけではない。
なんとも適当な会話である。


「それは壮大な夢じゃな。
 何かスパイ?やらエクソシスト?だいり?ジョシュ?グルメクイン?
 やら色々やっておるのもその一環というわけか」

「何をしても夢の実現に近づくという意味では
 良いかもしれんの……」


適当な本を開くだけでも知らないことを知れるので、
夢に近づいていることには変わりない。
向かおうとする意志があるとしても、道のりが長すぎていつかは辿り着く。とは言えないが。


「とりあえず向かうのは大切じゃな。
 わしも少しづつ交換品を増やしておる。うむうむ」


わらしべ長者のようにステップアップしているかどうかは不明だが、
とりあえず品目が増えれば前進していると言える。

937夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』【高一】:2021/01/31(日) 00:55:24
>>936

次に食べた時には『超人的味覚』は消えている。
その頃には、『普通のキャンディー』に変わっているだろう。
そういう意味では、
『これから味が変わる』と言えるかもしれない。

「そうそう。
 『セカイをみる』ためには、
 イロイロけいけんするコトがチカミチだ。
 『フェアチャイルド』はよくわかってるな!!
 さすが、『ユメをもつモノどうし』だ!!」

長い道のりだが、死ぬまでには実現しようと思っている。
普通に考えれば、それでも時間が足りないだろうが、
やる前から諦める気はなかった。
何よりも、視力を得てからというもの、
『そうしたい』という気持ちが尽きないからだ。

「よし!!ガンバろうぜ『フェアチャイルド』!!」

         バッ

「おたがいの『ユメ』にむかって!!」

高まったテンションのまま、
クッキーを持つ手を大きく突き上げる。
そんな感じの流れで、この後も続いたらしい。
ここで、ひとつダイジなコトがある。
『3ねんせいよう』はムズかしすぎた。
つぎの『かんじドリル』は『2ねんせいよう』にしよう。

938ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/01/31(日) 01:23:18
>>937

「おや……?」

「?」


急に普通の飴になってしまったので首をかしげ


「お、おおー」


合わせておずおずと手を上にあげた。


……そして結局、アンゴウ(漢字ドリル)は解かれることなく、
セカイのソンボウがかかったしんへいきのセッケイズは忘れさられ
世界は闇に包まれ(日が落ちて暗くなっ)たのだった。
だが彼女たちは歩み続ける。明日を夢見る限り……!
エージェントアリスとフェアチャイルド出会い編 完!

939斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2021/02/06(土) 00:05:43
――ブゥゥゥン

薄暗い体育館でライトセーバーを持ち対峙する二つの影あり

 「君、赤のセーバー大好きだな?」
 「紫が良かったんだけど作ってくれなかったんだ……」

青のセーバーを持つ少年の型は『ソレス』
弓を引くような独特な構えを取る防御の構えである。

 「お前のそれ今レジェンズ(非正史)にならなかったっけ?」
 「うるせぇ!俺の中では今も正史なんだよ!!!」

赤のセーバーを持つ少年の型は『シエン』
逆手片手の構えで用いる高い攻撃性と制圧の構えである。
 
 「うわ、めんどくさいオタクだ。」
 「スターウォーズのオタクでめんどくさくないヤツとかいるの??」
 「やかましい……さっさと始めろジェダイとシス。」
 「アイツ嫌々きた割にはノリノリじゃん。」

静寂でも何でもない空間で、踏み込まれた床が摩擦音をたて
双方の光剣が今、優雅な、或いは力強い線を描きながら交差し――

 「はい、失格ゥー。」

部員のブーイングと審判のルール違反を告げる声で
練習試合が終わった。7回目だった。

 「また剣先を後ろまで回すの忘れただろ!……中々慣れないもんだなあ。」

これなるはフェンシング『ライトセーバー』部門の一幕であった。
ライトセーバーを手元でクルクルと回しながら苦笑する

 (……影の頭部でギリギリ見えたが、攻撃を止めて良かったな
  うっかり自分が反則になる所だった。)

面白半分で突っ込んでは見たが中々うまくはいかない物だ
これではグリーヴァスごっこもできそうにない
斑鳩はそう独りごちる。

940斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2021/02/07(日) 01:01:33
>>939

 (しかし、銀河の平和を守る『超能力者』の宇宙の騎士ねぇ……)

事実そういうスタンド使いもいそうでは有るが
思いつく限りで該当しそうなのはいなかった

 (アリーナも営利団体、自分の利益が確保されている間は
 金の卵を産むガチョウを自分の手で絞殺すわけも無し)

無論、それが尊敬の対象ならばいい
だが現実は他者に知られるべきではない力だ。

 (激発しそうなやつは諫めなければ、この町が疑心暗鬼から戦場になって
 祖父母が巻き込まれる事故が起こる可能性は高くなる)

 (だから、この町の治安も守る 守るが……。)

手にした手製の『ライトセーバー』を回す
これは所詮おもちゃだ、そして力をおもちゃとはき違えた連中が目立つように振り回し
袋叩きにされて死ぬ

いわゆる生殺与奪の権を握る『スタンド使い』という『個』の強者でさえも
弱者の『集団』には敵わない……その例は最近何度も目にしていた。

これが自分に当てはまらない
そう考えるほど、斑鳩は愚かでは無かった
或いは、愚かであった方が余程救いが有ったのかもしれない。

 「ぬるま湯の風呂だ、浸かっていても温まらないが…出るには寒すぎる。」

どこを見る事も無く、ひとり呟く。

 「こんな事を考えて ――遠のいていく気がするんだよな。」

身体を動かしている間はなにも考えずに済む

自分の将来への閉塞感を首を振って振り払い
仮初の友人との遊戯に戻った。

941甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』【高一】:2021/02/13(土) 11:01:32
校舎裏

「これ、受け取って」

>>942に差し出したそれは、ハート型にラッピングされている
これは、バレンタインのチョコ…!?

942甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』【高一】:2021/02/14(日) 19:13:42
>>941
生徒1「……嫌な事件だったね」
生徒2「死人が出なかったのは幸いだった」

こうして血ョコレート事件は幕を閉じた

943円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/02/14(日) 23:16:49

キャップを被りパーカーを羽織り、
モカブラウンの髪をセミロングにした猫顔の少女――
制服から見ると『高等部』だろう。
彼女は手に『紙袋』を持って歩いている。

     ビリ

       ポトッ

その底が破れ、『赤い包装』の何かが落ちた。

         ……彼女は気付いていないようだ。

944ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/02/15(月) 22:44:22
>>943

「……ん?」


通りかかった小学生くらいの子供が『赤い包装』の物を拾う。
ここが高校の廊下だというなら不似合いな人物だが……
小学生でも入り込める場所だとしても、
金髪と青い目、日本人ではなさそうな顔立ち、
大人ものの服を重ね着したような恰好は不審ではある。


「うーむ?」


少女を小走りで追いかける子供。
そして後をつけながら袋を観察する。
穴が開いているならば、さらに何か落っこちてくるのだろうか。

945円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2021/02/15(月) 23:32:10
>>944

赤い包装は『そういう商品』というよりは、
誰かがあとから紙で包んだ物に見える。
中身は不明だが……なんなんだろう?

ここは高等部の校舎から、校門に向かう途中の廊下。
中等部や小学部の生徒も紛れ込んでおかしくないが、
しかし、それはそれとしてもナイは『怪しい』。

……が。円谷世良楽は『気付かない』。

          「〜〜〜♪」

上機嫌で注意が逸れているらしい。
チョコレートのCMソングを鼻歌で歌いながら歩く。
その機嫌の『もと』が失われていく事に気づかず……!

    ズズズ…

          ポトッ

  ――そうこうしているうちに『二つ目』が落ちてきた!
    『ラメ入り』で、さっきよりレアアイテムっぽい青い包装だ!

946ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/02/15(月) 23:40:00
>>945

「やはりか」


落とし物が少女のものであるという確信が無かったのかもしれない。
しかし、目の前で新たに落とし物をしたということは、先の『赤い包装』物も、そうなのだろう。


「うむ」


ひょい、と拾い上げて……平然と少女の後についていく。
自分の怪しさは気にしていないらしく、足音をひそめるでもなく、
やましい事をしているという雰囲気も無い。

947円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2021/02/15(月) 23:49:53
>>946

          パサッ

さらに『黄色い袋』も来た!
これは包装紙ではなく、
リボンのついた袋のようだ。
なんとなく甘い匂いもするぞ。

       スタスタスタ

こいつについていくと良いことがあるの……か?

「〜〜〜〜〜♪ んーフンフンフン」

           「フン……ん! んんー?」

    「あれあれっ」

     ピタッ

「えー、なんだろ……なーんか変な気がするなー!」

だが、それもここまでかもしれない……
何かの違和感に気づいたらしく、立ち止まってしまった。

948ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/02/15(月) 23:58:20
>>947

「お」


拾う。袖の余った両手に、3色の落とし物を抱え、
当然のようについていく。


「急に立ち止まってどうしたんじゃ?」


下から覗き込むようにして声をかけた。

949円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2021/02/16(火) 00:46:09
>>948

「わっ!! おばあちゃん!?」

         ピョン!

跳ねるほどに驚いた。
が、すぐに振り返って『ナイ』に気づいた。

「……じゃなかった。
 えーっなになに、きみって誰ー!?
 わー、なんかいっぱい持ってるしー!かわいいー」

突如出現した(わけではない)謎の子供……!
両腕で何かを抱えているその姿に目を奪われるが、
次の瞬間には『それら』が何かに気づく。

「…………って、あれあれー!  
 どこかで見たような気がすると思ったらー、
 それ、あたしが貰った『チョコ』じゃないですかー!」

   「なんかさー、袋が軽くなった気がして。
    てことは……落としたの拾ってくれたんだー!」

円谷は短絡的なので、深読みなどはしない。
落としたチョコを拾ってくれた謎の子供に、大いに喜ぶ。

950ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/02/16(火) 00:58:14
>>949

「うむ。拾った」


悪いようにとられなかった事に安堵する……様子は無く、平然としている。
そんな想定は元よりしていないのかもしれない。


「お菓子の家のあの……子供たちみたいにわざとかと思ったぞ」


森を歩くときにパンを撒いて道しるべにしたヘンゼルとグレーテルの事である。
だったら目印を拾うなという話だが、実際は本当に落としていただけだったのだしいいだろう。


「なんじゃ、貰いものか?
 お前さん人気者なのか?
 アイドル……アイドルか?」

951円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2021/02/16(火) 01:09:40
>>950

「えらーい! きみってすっごい良い子だねー。
 あたしが子供の頃なら、
 拾ったらそのままどっか行っちゃうかもー」

「あはーっ! それってなんだっけ、メン……?
 あー、メンデルとグレーデル? だっけ!
 きみは、あの子たちと同じくらいえらいと思いまーす!」

かなりの無知を見せつけつつ、
手を差し出してチョコを受け取ろうとするが……

「あ! えらいからさー! チョコ、分けてあげよっか?
 あたし、チョコ好きだけどこれ全部食べると太っちゃう」

思いついたように、そのような提案をした。

「あたしって可愛いけど!
 アイドルじゃないんだけどねー。
 『フィギュア』って分かる?
 別にプロとかじゃないけどー、あれやってるから!」

つまり、『フィギュアスケート』だ。
特別に何か結果を出してはいないし、
それについて特に自負とかもないが……
皆がなんとなくやってる部活とかと、同じようなこと。

「だから太っちゃったりしたら、あんまり良くないんだよねー」

      「これはそれで貰ったんじゃなくて、
       友達同士で交換しただけのやつだけどー」

952ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/02/16(火) 01:33:14
>>951

「そう、それじゃ」


それではない。
メンデルは遺伝学の祖である。
メンデルは偉いが、ヘンゼルとグレーテルが偉いかというと……どうなのだろう。


「知っておる。人形のことじゃろう。テレビで見たぞ。
 服を着てカメラで撮るんじゃろ。
 確かに太るのは困るじゃろうな」


言葉だけを捉えるならば間違ってはいない。
人形→マネキン→モデルのような脳内変換が起こったのだろう。
つまりフィギュアとは服を着て写真を撮る職業である!


「ふーむ。そういう事ならば有難くいただきたいが、わしも交換したいぞ。
 しかし食物以外か」

953円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2021/02/16(火) 01:50:02
>>952

「よかったー、間違ってるかもって思った!」

間違ってるのだ。

「えー! 人形じゃないよーっ。
 あ、でも観てもらうって意味ではそうかも。
 あたし、すっごい動くけど。
 氷の上で滑るスポーツだからさー」

    「あ! あっちのベンチで交換しよーよ!」

言いながら、すたすたとベンチに歩いていく。
立ち話もなんだし、食べるなら尚更だ。

「えー! きみもあたしに何かくれるってことー!?
 どーしよー、別に食べ物でもいーけど!
 ほんとなら全部自分で食べようと思ってたしー」

理想はあっても、燃やす熱意はあまりない。
適当な生き方をしているのだ。

「じゃあじゃあ、何か面白いものとか持ってますかー?」

954ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/02/16(火) 02:05:30
>>953

「氷で滑る?
 痛そうじゃな」


滑る=ころぶ。という想像らしい。
イメージがギャグのようになってきた。
というかこの会話自体が漫才のようだ。すれ違い系の。


「面白いもの?
 そう言われると面白いものはあまり無いかもしれん……
 変な模様の石ならあるが……」


ベンチに座り、背中のリュックを降ろして、取り出したのは石だ。
確かに変な模様ではある。顔にも見える気がしないでもない。


「うーむ、面白いものか。曲がった釘とかは面白くはないか?
 車の先っぽについておるマークとか……」

「面白いものではないが、食い物でも良いのならば飴なんかがあるぞ。
 チョコが太るというのは一気に食うからじゃろ。
 飴ならば寿命が長いから後で食えばよい。多分」

955円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2021/02/17(水) 01:17:57
>>954

「ちがうちがーう!
 コケるんじゃなくて、滑って踊るんでーす!
 まぁ、コケちゃうこともあるけどー」  

      「テレビで見たことないー?
       大きい氷の上でさー、
       音楽が流れてて、踊ってるの」

見た事がないとして、
円谷の言葉だけで判断するなら、
それは相当に奇妙なスポーツだろう。

「えー! 変な石はいらなーい。
 確かに変だけど、きれいじゃないし。
 宝石とかなら欲しいんだけどー」

石を見たが、価値は見出せなかった。
首を傾げて、指で小さくバツを作る。

「クギとかマークも、あたしそんなに興味ないかなーっ」

         「アメってゆーの見せてくれる?」

956ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/02/17(水) 01:28:37
>>955

「ふうむ……?
 なぜわざわざ氷の上で……」


子供の脳内では、海に浮いた氷山的なものの上で、
ペンギンやアザラシが踊り狂うイメージが浮かんでいた。


「よいぞ」


そう言って小さな手で石と釘を握りこみ、開くと、そこには棒付きキャンディーがあった。
透き通った赤と緑が宝石のようだ。


「イチゴ味とメロン味があるぞ。
 そちらのチョコは赤青黄色があるが……何か違いがあるのかの?」

957円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2021/02/17(水) 01:41:24
>>956

「えー? ……あれ、なんでだろ!?
 言われてみたらよく分かんないなー。
 うーん、氷の上ってよく滑るから、
 クルクル回ったり出来て楽しーし、
 見てる方もそれで楽しーからじゃないでしょーか!」

「きっとそう! あはーっ。あたし答え出しちゃったなー」

円谷はあまりそういうのを掘り下げて考えない。
仮に考えても、持論になるほど深くまで掘れない。
この答えも、心の根底にあるものとかではない。

      スッ

「わ! すっごくキレイな…………んんー?
 なんだろなんだろ。あたしこれ見た事ある気がする。
 なんだっけ、前に買ったんだったかなー?」

この飴を見たことあるのは当然で、
そもそも円谷が『プレゼント交換』に出した物だからだ。

「わっかんないけど……
 キレイだし、美味しそうだしー、
 これならあたしのチョコ、どれとでも交換オッケー!」

     「何のチョコかは知らないけどー。
      あーでも、赤いのは一個食べたけど、
      なんかサクサクしたの入ってたっけかなー」

特に確信もないので、そこにそれ以上触れはしないが……

958ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/02/17(水) 01:50:11
>>957

「そういうのものかの。
 わしは氷の上で踊った事がないからわからんが……
 次に湖が凍っておったらやってみるか」


この町の湖が凍るのは知らないが、そもそも来年まで覚えていないだろう。
万が一実現したら水死体が上がってくる可能性もあるが。


「赤、青、黄色。わしは色で言えば青が好きじゃが……
 ……こういうのは一番小さなものが良いとされておる。舌切り雀で見た。
 おぬしはイチゴとメロンどっちが良い?」


奇縁に気づくことも無く、色に惑わされず一番小さな包装のものを手にする。

959円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2021/02/17(水) 02:19:44
>>958

「あたしも大きい池とかでやったことあったなー。
 でもでも、普通のくつだと滑りづらいしー、
 スケートリンク行けば靴も貸してもらえるから、
 そっちのほうがあたし、もーっと楽しいと思うよ!」

実際、池や湖を利用したスケートリンクはあるし、
円谷がやったことがあるのは『そっち』の話だ。
が、それは『適している池』を使っている話で、
H湖でやるのは『マジでヤバい』かもしれない。

「あたしメロンの方が好きかなー。
 イチゴも好きだけどね。
 メロンって甘くて美味しいからさー」

「じゃあじゃあ、これとこれで交換。はいどーぞ」

             スッ

黄色の『袋』が、一番小さかった。
手に取ってみても軽く……中身もあまり多くは無さそうだ。

「……てゆーか、あれあれ!?
 きみって、この飴さっきどこから出したんだっけ?」

「なんかさ、いつの間にか持ってたよねー?」

ふと、子供の『手』をみた時違和感に気づいた。
先ほどは流れでスルーしていたが、何か、妙な気がする。

  ……さっき持っていたのは、釘とか石じゃなかったか?

960ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/02/17(水) 02:29:49
>>959

「ふうむ。どれどれ」


黄色い袋……赤と青は包装紙らしいが、
これは違うということは、ビニール製かなにかだろうか?
リボンを解いて、中を見てみる。


「うむ。わしはそういうのが出来るんじゃ。すごかろう」


意識が袋に行っているせいか、適当そうな答えが返ってきた。
適当とはいえ嘘では無いとするなら、
『いつのまにか持っていた』事を肯定するような返事だ。

961円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2021/02/17(水) 03:03:59
>>960

「すごーい! それって『手品』ってこと?
 どこにも持ってなかったもんね、さっき。
 それとも…………ねえ、『スタンド』って事?
 もしかして、きみも『スタンド使い』なの?」

スタンド使いであることを言い触らしたりはしないが、
相手がスタンド使いなら、その場合隠す理由もない。

ともかく……ビニールの黄色い袋には、
英語らしき崩れた字が書かれていた。

「それねー、黄色は……あれあれ、なんだっけ。
 そうだ! マカロンだったと思う!  
 ナントカって難しい名前のお店のー、
 ほら、スカイモールの地下で売ってるやつ!」

おそらく買った店のラッピングだろう。
開封すると、中身は円谷の言う通りだった。

「貰った時に一個食べたけど、結構美味しかったなーっ」

      「マカロンって美味しいんだよねー。
       それに見た目もカワイイしさ、
       プレゼントにもピッタリって感じー」

サイズは一つ一つ小さく、4つほどが入っているようだ。

中身が無くなっているような様子はないので、
一個食べた、というのはこの袋の中身とは別なのだろう。

962ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/02/17(水) 03:13:24
>>961

「……スタンド。おお、それ、そんな名を他の者も言っておった。
 わしは霊がついておらんので、どうも忘れやすいんじゃが、
 多分それじゃろう」


ヴィジョンは無いらしい。
そのせいか自分がスタンド使いという自覚も薄いようだ。


「マカロン。
 柔らかそうに見えるが、触ってみるとそうでもないの」


袖から指を出してつんつん突いてみる。
4つ……ということはそれぞれ色(味)が違うのだろうか?

963円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2021/02/17(水) 03:23:08
>>962

「えー、レイ? レイってお化けの事!?
 やだー。あたしもそんなのついてないよー!
 それに、あたしの友達のスタンド使いの人も、
 本人はちょっと霊っぽいけど、ついてはないしー」

「たぶん変わったことできるならスタンド使いのはず!」

ここで言う『友達の人』とは、
『御影』のことを指している。
よって、一方的な認定である。
円谷はこういうことをする。

「まーあんま知らないけどねー、他の人の『能力』って」
    
    「なんかさー、広める物でもないしー。
     自分から探し回ったりするのも、
     がっついてるみたいだと思われそうだしー」

円谷は楽天家で、短絡的でもあるが、
極端に目立ちたがりというわけではない。
スタンドのような『変わったこと』は、
そんなにひけらかすべきではない……という社会性がある。

「あはーっ、マカロンの感じって他にないよね。
 堅くも柔らかくもないっていうのかなー?
 食べても、なんか、言葉にできない感じだしー」

語彙が足りない、というのもあるが。

「えーっとねー、なんだっけなんだっけ。
 えとえと、赤はイチゴだったはず!
 緑は……抹茶! 茶色はコーヒーだったと思うなー」

      「この黄色いのはバナナ? あ! レモンかも」

ともかく、そんな不思議な食べ物マカロンが四種だ。
色の違いがそのまま味のイメージのようだが……変なのは無いらしい。

964ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/02/17(水) 03:38:25
>>963

「わしが出会ったスタンド使いはオバケが多かったがのう。
 透明なのやら、サムライのようなのやら……」

そうではない者もいたのだろうが、やはりヴィジョンがあると
印象深く覚えているというせいもあるのかもしれない。
視覚的なインパクトは記憶に残りやすい。


「お前さんも霊はついておらんのか。仲間じゃな」


ヴィジョンそのものが無い子供と、人型ヴィジョンが無いというだけの少女では、
実情は異なるが、そんなことは知る由も無い。


「ほう。食べて確かめるか」
                   サモ…


黄色いマカロンを齧ってみる。

965円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2021/02/17(水) 04:10:35
>>964

「あーでも、そうだ! あたしも見たことはある!
 いたいた、オバケみたいなの動かしてる子!
 『あっち』がよくあるスタンド……なのかなー?」
 
「うーん、わっかんないねー。
 見たことあるのはそうじゃない方が多いしさー」

        「スタンドって奥深そーっ」

垣間見た奥の深さに浅い感想が口に出る。
先日経験した『遊園地』での戦いも、
何の偶然か居合わせた大半が『人型では無かった』。

「あははーっ! 仲間仲間ー。
 仲間同士よろしくねー。
 あたしセララ。あ、名前ね!」

マカロンはなんというか、ほどほどの味だ。
義理のプレゼントならこんなものだろうし、
美味しいといえば美味しく……ほのかにレモン味がする。

「ねえねえ、きみの名前はなんてゆーの? 教えてよー」

966ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/02/17(水) 04:23:00
>>965

「ペロ……これは、レモン」
                  サモサモ


一度口をつけた以上、全部食べ切ってしまう。


「かっこい名じゃの。
 わしの名前は無いんじゃ。
 ユキシラという家に住んでおるし、ユキシラと呼んでくれてもよいぞ。
 む?」


向こうから大人が歩いてくるのが見えた。先生だろうか?
ユキシラは素早く荷物をリュックにしまい、ベンチから立ち上がる。


「残りは帰って食うんじゃ。
 ではセララちゃん。『交換』ありがとうの」


先生を避けているのか、そう言うと、道なき芝を去っていった。

967円谷 世良楽『リトル・スウィング』【高1】:2021/02/17(水) 06:54:29
>>966

マカロンは小さく、腹にはたまらないが、
逆に言えば食べやすく、美味しすぎないのも良い。

「あはーっ! でしょでしょー!?
 あたしのママとパパって、センスいーんだー」

名前を褒められるのは、嫌いじゃあない。

「……っえー! 無い!? なにそれなにそれ!
 名前無いとかそんなのアリなのー!?
 まあでも、ユキシラちゃんがいるんだし、
 無いってこともアリなのかなー。
 あ、ユキシラちゃんって呼ぶね」

「あ! それ賞味期限近いから気をつけて!
 それじゃユキシラちゃん、じゃあねー。またねー」

円谷は基本的に、深く考えない。
都合の良いように考えるし、
都合の悪いものごとをあまり考えない。

          ペリペリ

「あたしもかーえろっと」

巡り戻ってきた飴を開封して舐めつつ、その場を去った。

968小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/02/20(土) 18:36:39

『城址公園』の一角。
木陰に『黒い女』が佇んでいる。
『喪服』を着て、同色のキャペリンハットを被っていた。

  「――……」

足元には一匹の子猫。
事情は分からないが、足の一本に細い針金が絡まっていた。
それを見て、音もなく『右手』を持ち上げる。

             スゥッ

次の瞬間、女の手に『ナイフ』が握られていた。
実体を持たない『精神の刃』。
『スタンド』だ。

969御厨道:2021/02/20(土) 20:54:37
>>968

ニヤニヤとした顔でそれを見ている女がいる。
傍の木に登り、幹に体を預けていた。

「����������」

じぃっ、と貴方の動きを観察している。
何をするでもなく、そこにいる。

「����������ケケケ」

970小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/02/20(土) 21:06:06
>>969

      ――――ドシュッ

頭上の存在には全く気付いていなかった。
そのまま右手を振り下ろし、子猫の足を『断つ』。
豆腐を切るかのような容易さで、『左後ろ足』が切断された。

                「ニャー」

         フワ……

『足』が浮かんでいる。
出血もなく、子猫は至って平然とした様子だ。
足が切り落とされた事で、
絡んでいた針金が『切断面』から抜け落ちた。

971御厨道:2021/02/20(土) 21:21:18
>>970

「……」

一挙手一投足を観察する。
切断された足と元あった場所とナイフを見た。
ひとつひとつを理解するために。

(……この後はくっつくかな?)

何となく予想をつけつつ観察を続ける。

(後から斬撃が定着するタイプってのもあるか……?)

972小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/02/20(土) 21:38:49
>>971

     ススス……

             ――ピタ

浮遊する『足』が空中を漂い、子猫の胴体に寄り添う。
『切断面同士』が重なり、次の瞬間『切れ目』が消失した。
概ね『予想通り』だったと思っていいだろう。

         「ニャー」

針金が解けた子猫が後ろ足を動かす。
その動作は自然で、『切れる前』と何ら変わりないようだ。
『ナイフ』で切ったものは切り離され、
『切断面』を合わせると元に戻るらしい。

             ……フッ

『右手』から『ナイフ』が消えた。
それから、『黒い女』が地面に手を伸ばす。
また『事故』が起こらないように、落ちていた針金を拾い上げた。

973御厨道:2021/02/20(土) 23:20:46
>>972

974御厨道:2021/02/20(土) 23:25:19
>>972

(やっぱりか……)

ウンウンと頷き、そのまま木から落ちてきた。
べちゃりと地面に叩きつけられたものの受身はとっている。

「よう、お姉さん」

「なかなかいいスタンドじゃねぇか」

「針金、捨てといてやろうか?」

975小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/02/21(日) 00:56:06
>>974

  「え……?」

『落下』に驚き、思わず身を引いた。
手の中に針金を握ったまま、その姿を見つめる。
帽子の下で、両の目を軽く見開いていた。

  「『針金』……ですか?」

  「あの――」

       スッ

  「はい、お願いします……」

目の前の出来事に、思考が追い付いていない。
ただ、待たせてしまうのも申し訳ない。
そのような思いから、相手の勢いに押され、
言われるままに『針金』を差し出していた。

976御厨道:2021/02/21(日) 01:10:21
>>975

針金を手に取る。

「ところでさ」

「あんた、スタンド使いだろ?」

さも当然、というふうな言い分だった。

「それ、なんて名前だ?」

ぐにぐにと針金を変形させて遊んでいる。

977小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/02/21(日) 01:37:37
>>975

  「ええ……」

          コク……

  「確かに私は――『スタンド使い』です」

どこか不思議な女性だった。
『スタンド』を知っているという事は、
彼女も『スタンド使い』なのだろうか。
外見からは窺い知る事が出来なかった。

  「――『ビー・ハート』」

  「そういう『名前』です……」

決して間違いではない。
ただ、厳密には多少の『違い』があった。
『ビー・ハート』は『第二のスタンド』の名前。
『本来のスタンド』は別にある。
しかし、たった今使ったのは、確かに『第二の刃』だ。

978御厨道:2021/02/21(日) 07:35:12
>>977

ぐり、と体を地面にゆっくりと擦るように寝転んでいる。
着ているジャージはほつれが所々にあった。
しかし本人はそれを気にしている様子もない。

「な・る・ほ・ど」

「そういう名前なんだな」

「切って、またくっつける……って?」

体が起きる。
それでも尻は地面にくっついたまま。

「な・る・ほ・ど」

「……ん、あぁ。申し遅れた。アタシは御厨道(みくりや・たお)って言うんだ」

979小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/02/21(日) 19:31:48
>>978

  「御厨さんとおっしゃるのですね……」

  「……『小石川文子』という者です」

           ニャー

名乗り返しながら、丁寧に頭を下げる。
足元の子猫が、その姿を不思議そうに見上げていた。
それから、猫の興味は御厨の方に移ったようだ。

  「ええ――そうです」

  「『傷付けない刃』……そう言われました」

『自傷の刃』と対になる『不殺の刃』。
それを得た時、
これまでの自分には出来なかった事が出来るようになった。
『自分の身体』ではなく、『他者の肉体』を切り離す『第二の刃』。
これを使う度に、『あの事』を思い出す。
『幻の町』と、そこで出会った『人々』の事を。

980御厨道:2021/02/21(日) 20:02:30
>>979

「あんたそんな名前なんだな」

「……おー、よしよし。ちちち」

猫をあやすように手を伸ばす。
こちらに来るように猫を誘っているのだ。

「傷付けない刃ねぇ」

確かにそうだという風に頷いている。

「まぁ、こんな話してる時点でお察しのことだとは思うけどよ」

「アタシもそういうのを使うわけなんだがね」

ニヤニヤとした笑いが消えて視線が貴方に向かう。
御厨の中には小石川文子という人物に対する興味があった。

「ツレにいわく、スタンドは精神の発露……ってことは」

「あんたは誰も傷つけられない優しい人なのかね?」

981小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/02/21(日) 20:57:40
>>980

  「ええ……」

           トッ トッ

子猫が御厨の方に歩いていく。
そちらに向けた視線を、改めて目の前の女性に注ぐ。
『スタンド』を知る者は、多くの場合『スタンド』を持つ。
自分がそうであるように。
これまで出会ってきた人々が、そうであったように。

  「私は……」

  「誰も傷付かずに済むなら……それが最良だと思っています」

  「もし誰かが傷付けば、『その人を愛する人』が傷付くと……」

  「ですから――」

  「いえ……『分かりません』」

言葉を切り、軽く目を伏せる。
自分が『優しい人間』なのかどうか。
『スーサイド・ライフ』と名付けられた『精神の刃』で、
人を傷付けた事がある。
もしかすると、
誰も傷付けずに済む方法があったのかもしれない。
自分には、それが出来なかった。

982御厨道:2021/02/21(日) 21:39:31
>>981

寄ってきた猫を抱き上げたり撫でたりしている。
この女もかなり動物的なので似通ったところがあるのかもしれない。

「傷つかず、ねぇ」

ニヤニヤと笑う。
何か、思うところがあったようだ。

「ナイフの形しててそりゃあないんじゃねぇかな」

「まぁ、人生いろいろだ。あんたが何を感じていて『ビー・ハート』を手にしてるのか、知らねぇけどさ」

983小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/02/21(日) 22:06:25
>>982

  「それは……」

思わず、言葉に詰まる。
核心を突かれたような気がした。
『ナイフ』は人を傷付けるが、『ナイフ』が独りでに動く事はない。
人を傷付けるのは、それを使う『人間』。
そして、『刃』を扱うのは他でもない『自分』なのだ。

  「『矛盾』しているのかも……しれません」

『スーサイド・ライフ』は『自傷の刃』。
『生きなければならない理由』と、
『死を望む衝動』の間で生まれた能力。
だから、『本体』を傷付ける事は出来ない。
その代わり、『他者』を傷付ける事は出来る。
『傷付ける意思』を持って扱えば。

  「自分の事なのに――よく分からなくて……」

  「……おかしいですね」

相手の笑いにつられたように、無意識に微笑んでいた。
陽気な笑みではなく、どこか陰を帯びた笑い方だった。
『ビー・ハート』は『不殺の刃』。
『他者』を傷付ける事は決してない代わりに、
『本体』を傷付ける事が出来る。
『スーサイド・ライフ』には不可能だったが、
しようと思えば、自ら命を断つ事も出来る。

  「――あなたは……?」

984御厨道:2021/02/21(日) 22:50:42
>>983

「そんなこと知らねぇが」

「自分のことがわかってるやつなんて世に何人いるか」

こともなげに言ってのけてまた猫を撫で始める。

「あたし?」

「ないしょ」

985小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/02/21(日) 23:07:44
>>984

  「……そうですね」

自分の事というのは、分かっているようで分かっていない。
近いようで遠い存在。
そういうものなのかもしれない。

  「自分の事は分からない――」

  「それも『答え』なのかもしれません……」

子猫と戯れる御厨を見つめる。
彼女は自分の事が分かっているのだろうか。
その答えは、彼女自身の心の中にあるのだろう。

  「御厨さん、お話して下さってありがとうございました」

         スッ

  「――失礼します……」

居住まいを正して深々と頭を下げ、再び猫を一瞥した。
その姿を目に留めた後、御厨に目礼する。
静かに歩き始め、徐々に公園から遠ざかっていった。

986御厨道:2021/02/22(月) 19:47:53
>>985

「そうなんじゃなぁい?」

歩いていく小石川を見送っていく。
腕の中で猫がにゃあと鳴いていた。
御厨道は笑っている。

「己のことが分かったやつなんてイカれてやがるか知ったふうになってるだけと相場が決まってるんだよ」

「けけけ……」

987名無しは星を見ていたい:2021/02/26(金) 23:23:17


キーン  コーン カーン コーン ……


【場】『 私立清月学園 ―城址学区― 』 その2
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1614349342/


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板