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【場】『 私立清月学園 ―城址学区― 』

1『星見町案内板』:2016/01/24(日) 23:57:56
『H城』の周囲に広がる『城址公園』の敷地を共有する『学び舎』の群れ。
『小中高大一貫』の『清月学園』には4000人を超える生徒が所属し、
『城郭』と共に青春を過ごす彼らにとって、『城址公園』は広大な『校庭』の一つ。

『出世城』とも名高い『H城』は『H湖』と共に『町』の象徴である。

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                 ミ三ミz、
        ┌──┐         ミ三ミz、                   【鵺鳴川】
        │    │          ┌─┐ ミ三ミz、                 ││
        │    │    ┌──┘┌┘    ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
        └┐┌┘┌─┘    ┌┘                《          ││
  ┌───┘└┐│      ┌┘                   》     ☆  ││
  └──┐    └┘  ┌─┘┌┐    十         《           ││
        │        ┌┘┌─┘│                 》       ┌┘│
      ┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘     【H城】  .///《////    │┌┘
      └─┐      │┌┘│         △       【商店街】      |│
━━━━┓└┐    └┘┌┘               ////《///.┏━━┿┿━━┓
        ┗┓└┐┌──┘    ┏━━━━━━━【星見駅】┛    ││    ┗
          ┗━┿┿━━━━━┛           .: : : :.》.: : :.   ┌┘│
             [_  _]                   【歓楽街】    │┌┘
───────┘└─────┐            .: : : :.》.: :.:   ││
                      └───┐◇      .《.      ││
                【遠州灘】            └───┐  .》       ││      ┌
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★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
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595猿渡『ウェスタン・ホワイト・キッド』【高二】:2019/10/03(木) 00:18:48
>>594

「……祈ってくれるといいよ」

礼に対して掌で返す。

「じゃあ、次の機会に」

「備えよ常に、と僕は思ってる」

机に置いた本を手に取った。
まだここにいるつもりなのだろう。
ここでお別れだ。

「頑張ってね」

596鉄 夕立『シヴァルリー』【高2】:2019/10/03(木) 00:39:15
>>595

「備えよ、常に、か」「常在戦場…と言うと流石に時代錯誤かもしれないが、オレもそう思ってるよ」
「とある人が教えてくれたんだ。他人を犠牲にすることを何とも思わないような『悪』は、確かにいるんだと」
「自分が『正義』だとは思ってないが、それでもそういった『悪』に対抗する準備はしておいた方がいいだろうな」

「だから、もしそういった時はオレも微力ながら力になる」
「その時は、遠慮なく頼ってほしい」

猿渡くんの言葉に頷きながら、その瞳をじっと見つめる。
実に大袈裟な台詞だと、妹が通り魔の被害に合う前の自分なら思っていた。
だが、この彼は笑わないだろう。真剣に取り合ってくれるかは分からないが、無碍にする事もない、と感じた。

「ああ、お互いにな」

椅子から立ち上がり、手を振って図書室を後にした。
落ち着いて話せる、気の合ういい友人が出来た。
次に会う時は、彼からもいい報告が聞けることを願いながら、部活へと向かった。

597源光『オズボーンズ』【大学一年】:2019/11/26(火) 22:01:33

       バササササササササァァァァァ――――ッ

(『卑怯な蝙蝠』は、『適応』する事に失敗した)

日が落ち始めた敷地内の空を、十匹の黒い影が飛ぶ。
一見すると鳥のようにも見えるが、それはカラスではない。
翼を広げて羽ばたいているのは、群れを成す『蝙蝠』だ。

(だが、『彼ら』は違う)

(『オズボーンズ』は非常に弱く、とても脆い)

50mほど離れた所には、一人の青年が立っている。
片手に単眼鏡を構えており、『蝙蝠』を観察しているらしい。
『蝙蝠』は高速で飛び回り、やがて樹の枝にぶら下がった。

(――――だからこそ、『彼ら』は『強い』)

598源光『オズボーンズ』:2019/11/28(木) 21:09:37

(この世で最も強いのは『力』でも『賢さ』でもない)

    ザッ ザッ ザッ

踵を返し、学生寮に向かって歩き出す。
日が落ちて、足元の影は長く伸びている。
飛び立った『蝙蝠』が、青年の背後から追従する。

        バサササササササササッ

(――――それは最も『適応』出来る者だ)

599斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/12/03(火) 01:06:18
ジュゥゥゥウウウ……

「――じゃ、センセ 醤油取りに行ってください。」


清月学園の一角、理科室にて、僕は割りばしを割りながらそう答えた
目の前にはガスバーナーで加熱された金網、それに乗せられた『ホタテ』がその身を煮立たせながら
なんともいえないかぐわしい香りを漂わせている


「そんな事を言って、君 私の居ない隙に腹に納めるつもりだろう」


そう言うこの人はこの学園の理科担当だ、分厚い眼鏡に無精ひげ
ひょろひょろの体を白衣で巻いている、歯ブラシに学校のプリントを巻きつければ大体似たような外見だと思っていい
生徒からの評判は、いかんせん人が好過ぎるともっぱらの噂だ。


「しませんよこんな大味そうな物、醤油無いんだから」

「……私は学術的興味からだね」

「『異常成長した標本』を『同級生の伝手で入手した』のカバーストーリーですよね、さっき聞きました」


しばしの無言の後、眼鏡の位置を治したセンセが迷いながら口を開いてくる
ムリに威厳を見せようとして上体を逸らしているのがハトみたいでもある。


「……知識欲が湧かないかね?」

「今湧いてくるのは食欲ですね」


またもや無言。
これが演技なら冷や汗が流れるのが見えそうになる程、真に迫った表情だ。


「模範的な生徒なら先生の為に従うべきだと思わないかい?」

「見つけた僕を鮮やかに共犯にしたセンセの言う事では無いですよね?」


さらに無言の間が続く、実際、彼の此処までの行動にミスは無く
単なる給料の安い教員のささやかな幸運……に、なる筈だった
彼にミスがあったとすれば、僕に見つかった事だ。


「よし」

「こうしましょう先生『表』か『裏』か?」

両手をポケットに入れて
ようはコイントスの提案だ、運と言うのは万人に公平に見える事実である。

「いいだろう、表……」

僕はニヤリと笑って見せた

「い、いや、やはり裏だ、裏にする!」


「三回勝負はナシですよセンセ」

そう言及して右ポケットから出したコインを放り、落下してきたところを素早くキャッチする
――結果は

「――僕の勝ちですね よっセンセの鏡。」


苦悶のうめき声をあげながら、泣きそうな顔で理科室から逃げるように走って行った
今頃はなんと運が無いと考えながら歩いているだろう、この学園の廊下は長いのだ。

「……いったか。」

そう呟くと、懐から『醤油瓶』を取り出した

先程のコインは勿論、『裏と表が同じコイン』である。
センセが裏と言えば右ポケットの『裏だけのコイン』、表と言えばその反対のコインを使うつもりだったのだ

そして醤油はここにある。
無ければ食べないとは言ったが、あるなら話は別だ
さあ、努力の報酬(ホタテ達)を頂く時である。

……今この瞬間、何処かの学生か教師がドアを開けて入ってこない限りは!

600志田忠志『イヴ・オブ・サルヴェイション』【大学三年】:2019/12/03(火) 22:14:00
>>599

ガチャリ――――

その時、理科室の扉が開いた。
醤油を取りに行った教師が戻ってくるには早すぎる。
実際、そこに立っていたのは教師ではなかった。
一人の青年が、理科室の入口付近に立っている。
しかし、『高等部生』ではなさそうだ。

「ん…………?」

まず匂いを感じ、次いでその『出所』に目を向ける。
先程の教師ではないものの、青年の体つきは細い。
どこをどう見ても運動神経は良さそうには見えず、
むしろ不健康そうな雰囲気だった。
最も特徴的なのは、両目の下にドス黒い『隈』が刻まれている事だ。
十数年ほど不眠症が続いていれば、こうなるかもしれない。

「悪かったね。部屋を間違えたよ」

「ここは『理科室』だったと思ったんだけど――」

「『バーベキューハウス』に改装していたとは知らなかったんだ」

ここに来たのは、ちょっとした頼まれ事を片付けるためだ。
機材を幾つか借りてきてくれと、教授に言われてしまった。
それで、こうして高等部まで足を運ぶ羽目になった。

601斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/12/04(水) 00:59:21
>>600

「・・・・・・。」

落ち着け、落ち着くんだ斑鳩翔。

アサイラムファンは狼狽えない、一々サメの頭が増える事に狼狽えていたらあの撮影チームにはついていけない。
今度は尻尾が増えるんでしたっけ?

「志田先輩、申し訳ないんですけどちょっとこっちきてくれます?」

邪悪なる野望()はこのタイミングと隈取りが完璧な先輩によって打ち砕かれたが
まだ手が無いわけでは無いのだ。

「はい、これ持って」

「はい、此処に立って」

まあまあまあまあ等と言いながら無理やり醤油入り皿と割りばしを渡し
帆立達の前に立たせニッコリと笑顔をさせ

「はい、チーズ、サンドイッチ!」

 カシャリ
スマホのカメラ機能が子気味良い音をたてて、『証拠写真』を保存する。
この教室内でこの行為が行われるのは本日二度目である。

「――YHAAA!これでパイセンも共犯だぜ!責任問題回避!」

「じゃ、遠慮なく『ホタテ』食べて行ってください志田パイセン、何か悪いので。」



……なお、途中で彼が怪しんで暴れたりしたら作戦失敗である。

602志田忠志『イヴ・オブ・サルヴェイション』【大学三年】:2019/12/04(水) 01:33:22
>>601

「自分で言うのも何だけど、
 あまり写真写りが良い方じゃなくて申し訳ないね」

強引に皿と割り箸を持たされ、そのまま撮影は完了した。
しかし、その表情は笑顔ではない。
かといって不満そうな顔もしておらず、不思議そうに首を傾げる。

「いや、せっかくだけど遠慮しておくよ。
 実を言うと、さっき食堂でホットドッグを食べてきたばかりなんで、
 ちょうど腹に余裕がないんだ」

    コトッ

手近の机に皿を置き、その上に割り箸を乗せる。
それから、斑鳩の方に向き直った。

「ただ…………一つだけ『分からない事』があってね。
 もし良かったら教えて欲しいんだ」

「このホタテや醤油や諸々は『君の』だろう?
 それに、先生の『許可』だってちゃんと貰っている筈だ」

「そうじゃなきゃ、
 こんなに堂々と教室内で『バーベキュー』なんてする訳がないからね」

「それなのに――――
 何故『悪い事』のように言うのかが、僕には分からないな」

ここに誤算が生じた。
志田は、斑鳩が『許可を取った上でやっている』と思っていた。
だから、『共犯』や『責任回避』という言葉の意味を図りかねていたのだ。

「ええと……確か、斑鳩君だったかな。
 僕は『先生の許可を取ってホタテを炙ってる』と思ったんだけど」

「もし間違ってたら、訂正して貰ってもいいかな?」

603斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/12/04(水) 01:51:24
>>602

「えっ 違いますけど。」

彼は気に留めるでもなくさらりと言った

「醤油は家庭科室、ホタテはここの先生の、ガスバーナーは理科室の備え付け」

「ほら、その金網ビーカーとか乗せて温める用のアレですし。」

実際、金網は金網だがそのサイズはホタテがギリギリ一個乗るかどうかであった
偶に吹きこぼれた水分が蒸発し、音をたてながら白い線を残す。

「これは推測ですけど、あの先生が許可取ってるなら理科室でやらないんじゃないかな。
まあそれが裏目に出て、こうして僕とパイセンに見つかったんですがね!」

因みにこれを言うとさっき出て行ったセンセは新品のコピー用紙の如く真っ白になります等と言いながら
席に戻り、ホタテの一つに醤油をかけてかぶりつく

「うーん、やっぱいい所のだなコレ、標本用とか嘘だよあのセンセ。」

「……ところで僕も二つ解らない事があるんですけど、志田パイセンは何しにここに来たんです?センセ虐め?」

604志田忠志『イヴ・オブ・サルヴェイション』【大学三年】:2019/12/04(水) 14:53:29
>>603

>「……ところで僕も二つ解らない事があるんですけど、志田パイセンは何しにここに来たんです?センセ虐め?」

「それが冗談なら笑うよ」

言いながら、おもむろにポケットから『鍵』を取り出す。
斑鳩に背を向けて、『薬品棚』に歩いていく。
鍵穴に鍵を差し込み、音もなく棚を開いた。

「教授に頼まれちゃってね。
 勿論、この鍵を借りる『許可』は貰ってるけど」

      ガチャ
              ガチャ

「二つ目の答えは又聞きだよ」

背を向けたまま言葉を続ける。
手元では、薬品のラベルを確認していた。

「僕と同じゼミ生の妹が、君のクラスメイトなんだ。
 会話の中で、君の話が何度か出てきた」

          ガチャ

「……いや、これじゃないか。それで、何だっけ」

「ああ、そうそう。それで、君の事を知っていたという事さ」

「君が僕の事を知っていたのは――まぁ、この顔は目立つからね。
 悪い意味で」

605斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2019/12/04(水) 23:23:28
>>604

「ん、ん〜……。」

思案を一つ、これは僕の落ち度かもしれない


「いやあ、パイセンの妹さんに覚えていただけるのは、こういう顔に産んで貰った両親に感謝する所ですが。」

「妹さんだけだと、ちょっと解りませんね。」

「妹さんと言えば、パイセンみたいな人が、女の子達にどう可愛く例えられてるか知ってましたか?僕はそれで知ってたんですよ、まあ、それが悪い意味と言うなら、その通りになりますけど!」

「なので、そういう動物大好きメイクなのかと、今日見るまでは思ってました……が。」

ちらりと彼の背を見る
この位置では見えないが、彼の特徴は一目見れば充分わかる。

「3つ目を聞いても?もっとも、聡明な先輩の事ですから、何を聞きたいかは、言わずとも解りそうですがね!」

606志田忠志『イヴ・オブ・サルヴェイション』【大学三年】:2019/12/05(木) 00:25:07
>>605

「フフ――」

「『僕の妹』じゃあないんだ。僕は一人っ子でね。妹はいない」

「『僕と同じゼミに所属している男の妹』と言った方が分かりやすかったかな。
 とにかく、そこからの又聞きだよ」

     ガチャッ

「これでもないな……」

「こんなメイクをしてる生徒がいるんなら、是非見てみたいね」

「幸い、僕の場合は『鏡』を見ればいい訳だ」

           ガチャッ

「ああ、これかな……」

薬品を手に取り、振り返る。
その両目には濃い隈が見える。
皮膚に染み付いているかのようにドス黒い。

「それは分からないな。
 僕は心を読める訳でもないし、心理学者でもないから」

「まぁ、予想する事くらいなら誰でも出来る」

「『これ』に関係する事とか、そういう事かな?」

空いている方の手で、自分の目元を指差す。
特に気負った雰囲気もない口調だった。

607斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2019/12/05(木) 01:02:42
>>606

(まあパンダ先輩とかは流石に言えないかな!)

「ええ?パイセンの事だから、『超能力者』くらいはあると思ってたんですけど。」

「ええ、気分を害されたなら、流石に僕も悪いなあとは思うんですが。」

「その時には僕が悪いので、頭を下げて、ごめんなさいすれば良いし、だったら聞いてしまった方が、気にもならなくなるかなと。」

「明日、交通事故で死んだら、後悔しますからね、ああ、聞いときゃよかったなって。」

「知ってましたか先輩、宝くじで一等当てるよか、交通事故で死ぬ方が確率高いんですよ。」

「……つまり僕がこうして先輩にずけずけ聞くのは『交通事故』のせいと言う事で、どうかひとつ。」

「終わったこのは後悔してもしきれませんからね。」

608志田忠志『イヴ・オブ・サルヴェイション』【大学三年】:2019/12/05(木) 01:21:51
>>607

「ハハハ――――」

『超能力』という言葉を聞いて、軽く笑う。
どことなく乾いたような笑いだった。
悪意とか敵意といったものはないが、乾いた印象だった。

「『超能力』なんてものが、世の中にゴロゴロあったら怖いね」

「まぁ、もしあったとしても、
 そうそうお目に掛かれるものじゃないんじゃないかな」

「多分だけど」

以前、それが絡んだ事件に出くわした事があった。
あれは『温泉旅行』に出掛けた時だったか。
ちょっとしたスリルとサスペンスって所だ。

「その気持ちは分かるよ。
 後悔してからじゃ遅いからね。
 勇気を持って踏み切る事が大事な事だってある」

「それじゃ、僕も勇気を持って秘密を打ち明けよう」

「『これ』はね、『不眠症』だよ」

「はい――――おしまい」

薬品の容器を手の中で弄ぶ。
その口元は穏やかに笑っていた。
目の隈は相変わらずだったが。

609斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2019/12/05(木) 03:06:35
>>608

「そうですか?」

ガッカリしたような
そうでもないような、アメコミみたいな事は早々ない物だ、だってそれは漫画なのだから。

「僕は結構お目にかかってる気がするなあ、この前も、鳥とお話しするパフォーマーとか見れたし。」

「……まあ、見分けつかないんで、マジックとか言われればそれまでかな!」

2つ目のホタテを醤油をかけて一息にいただくと
バーナーを消して伸びをひとつ。

「それじゃ、さよならです志田先輩。」

「そろそろ僕が家庭科室の醤油を全部隠した事に気づいて、センセが戻ってくる頃合いだけど……」

メモを取り出して番号を書き、先輩に押し付け、出口へ向かう

「変な事聞いた詫びに、今度飯でも奢らせて下さい、好みの店、見つけときますよ。」

「それでは!」

簡単には見つからない物だ、と
だから奇跡と言うのだろう。

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611志田忠志『イヴ・オブ・サルヴェイション』【大学三年】:2019/12/06(金) 23:40:13
>>609

「――――そう?随分と気が利くね」

「『ありがとう』」

至って何気ない様子で、立ち去る斑鳩を見送る。
まもなくして、当の教師が戻ってきた。
息を切らしている彼を見て、僕は『こう言った』。

「すみません、先生。
 斑鳩君が平らげてしまったみたいですよ。
 僕に片棒を担がせる気だったようですね」

「あぁ…………でも――――」

「その『お詫び』として、今度僕達に食事を奢ってくれるそうです。
 彼が場所を伝えてきたら、また連絡しますよ」

まぁ――――この程度は許されるだろう。
何しろ、無断で写真を撮られた挙句、『脅迫』されたのだから。
あまり悪い事をするもんじゃあないね。

612宍戸 獅堂『グロテスキュアリー』:2019/12/06(金) 23:53:31


「『体育用具室』って気が狂ってるよな」

 ぶつぶつと、誰にともなく呟く。
 独り言でも吐き出さなければやっていけないからだ。

「マジふざけんなよ……マジ……」

 この陰気な眼鏡の男子生徒には、誰にも明かせぬ秘密がある。

 彼の『眼』は、人の目には見えない『怪物』が映る、というものだ。
 なぜ人の目には見えないのか。
 奴らはあらゆる無生物に『擬態』して、人の目を欺いているからだ。

 頭がおかしくなっているわけではない。

「マジ……マジで……」

 怪しい陰気な眼鏡は、体育用具室の『扉』を睨んでいる。
 年季の入った木造の倉庫だ。
 少し開いている。鍵が掛かっているわけではないらしい。

「……誰か通りかかんねえかしら」

613蝶名林ルロイ紗英『ボブモ』【非常勤講師】:2019/12/07(土) 01:47:37
>>612

「おや、悩みごとかな?」

声の方向には人。
羽織にジップアップのパーカーという着こなし。
その顔に表情なし。
硬くはないが笑ってもいない。

「何か困っているのなら、話は聞こうかな」

「先生として、ね」

陰気な眼鏡の学生を見ている。
そして、その肩越しに扉を見ている。

「何か忘れものでも」

614宍戸 獅堂『グロテスキュアリー』【高三】:2019/12/07(土) 06:14:26
>>613

(教員か……)

 蝶名林が声をかけたのは、陰気な眼鏡。
 不健康そうな顔色の、痩せぎすの男子生徒だ。

(年下を巻き込むよりか、大人の方がまだ安心か……?)

 眠そうに開かれた目が、じとり、と蝶名林を見る。
 親切にも声をかけてくれた相手を、まるで値踏みするような視線だ。

「……転校してきたばっかで、体操着持ってないんですよね」

 が、物柔らかな蝶名林の口振りを信用してか、事情を説明し始める。

「前の学校のヤツも、ちょっと色々あって捨てちまって。
 担任に相談したら、『仲の良い生徒』に借りるか、
 『用具室』にある予備のものを着るように、って言われたんだけど」

「『転校生』に、『仲の良い生徒』なんているか、フツー……?
 実質一択みたいなもんじゃねえか。分かって言ってたなら嫌味だよな……」


「……」


「『だから』 悩んでたんですよね」

 男子生徒の説明には、何か不自然な空白がある。
 しかし要約すると、『用具室』から体操着の予備を借りたい、ということだろう。

615蝶名林ルロイ紗英『ボブモ』【非常勤講師】:2019/12/07(土) 10:35:30
>>614

値踏みするような視線も全く気にしない。
何処吹く風というやつだ。
だから出る言葉の温度も変わらない。
蝶の家紋の羽織が揺れて、男が言葉を返す。

「だから、の意味が分からないな」

初めの言葉はそれだった。

「実質一択なんでしょ? だったら借りればいい」

「体育をフケたいってんじゃなかったらね」

「何か問題でも?」

そう言って用具室の方に近付いていく。
なんてことの無い顔をして。

616宍戸 獅堂『グロテスキュアリー』【高三】:2019/12/08(日) 21:02:06
>>615

「理由が上手く説明できないが、苦手なモンってないですか?」

 男子生徒は、忌々しそうに扉を睨んだままだ。

「トマトの皮とか、ガソリンスタンドの匂いとか、
 魚のエラとか、指の骨を鳴らす音とか。
 俺にとっちゃ、『用具室』がそういうモンなんですよ」

「つーより、『用具室』の中身、ってのが正しいんだけど、……」

「……」

 用具室に近づく蝶名林に、期待と心配の入り混じった視線を送る。

617蝶名林ルロイ紗英『ボブモ』【非常勤講師】:2019/12/09(月) 19:19:04
>>616

「俺は『孕』って字がそうだね」

「嫌な字だ」

用具室の扉に指をかける。
なんてことはなくそれを開け放つ。
扉の向こうに広がっているのは何の変哲もない用具室の光景だ。
土と埃の香りのするむせ返るような空間。

「で、用具室が苦手なの?」

「なんてことないだろ」

618宍戸 獅堂『グロテスキュアリー』:2019/12/09(月) 23:06:39
>>617

 蝶名林が開け放った、扉の中。
 薄暗い空間だ。

 屋外の授業のために必要な用具が、所狭しと散在している。
 金属バットにサッカーボール、メッシュ生地のビブス、ハードル、ライン引きのアレ……


 ギクリ、と、


「……」

 目に見えて、男子生徒の体が強張った。

「『苦手』っつーか……そうですね」

「先生、『例えば』なんですけど。『例えば』。
 もし『サッカーボール』が生きてたら、何考えてると思います?」

「大勢の人間に追い掛け回されて。
 土の上を転がされ、何度も蹴り飛ばされて。
 何も悪いことしてねーのに。
 人間のコト、どんな風に思ってんのか、とか」

 宍戸の視線は、苦手だと言った用具室の中を睨み続けている。
 汚物を見るように冷たく、親の仇を見るように鋭い。
 何が起きても見逃すまい、としているかのような、集中力を感じさせる目つきだ。

「そういうくだらねーコト考えちゃうんですよね、俺……」
「……先生は、用具室って平気な人?」

619蝶名林ルロイ紗英『ボブモ』【非常勤講師】:2019/12/09(月) 23:56:55
>>618

「サッカーボールが何か考えてるとしたら?」

「……俺達と似たようなことでしょ」

しばらく黙ってからそう答えた。
奥に入ってそこにある体操服を引っ張り出してくる。
ついでに籠からこぼれてサッカーボールを蹴り上げた。
軽い雰囲気で何度かリフティングをして籠に蹴って戻す。

「ステーキを見て、牛の人生に想い馳せちゃうのに似てるね」

「でも牛は人間の思惑なんて知らないよ。食われるために生まれてきて、そして死ぬだけだろ」

「ボールだって蹴られるために生まれてきた、その役目を果たせずに箱の中で死ぬのとどっちのがいいかな」

男の表情に色はない。
蝶の家紋が抜かれた羽織が揺れている。
パーカーと羽織、洋装と和装。
全てを平等に区別せずに混ぜてしまう。

「俺はね、用具室駄目なの。ガキの頃思い出すから」

「……君はさ、このボールが本当に生きてると思う?」

620宍戸 獅堂『グロテスキュアリー』:2019/12/10(火) 01:17:57
>>619

「あ、ちょっと、」

 用具室に踏み入る蝶名林に、声はかけども足は動かない。
 易々と体操服を取って出てくる様を、ただ見守るだけだ。

「う、うぉぉ……勇者か……」
「先生、肝試しとか絶対効かないタイプでしょ」

 陰気な面構えは変わらない。
 しかし、先ほどまでの緊張はない。

 そのまま蝶名林の言葉に耳を傾けていたが、


「……はは」「確かに」

 少し、解れたように笑った。

「家畜の牛が何考えてようが、人間には人間の都合がありますしね」
「そりゃあ、そうか。無視している命の方が多いんじゃねーか」


 『グロテスキュアリー』。

          ・・・・・・
「『いいえ』、先生。そのボールは、生きちゃあいない」


 宍戸の眼球が、不気味な緑色に光る。
 その視線は、先ほどまで蝶名林が足蹴にしていた籠の中のサッカーボールには注がれてはいない。


       フ ・・・


 緑の眼光は、一瞬きで消える。と、陰気な面も戻ってきた。


「……だがやっぱり、どうも用具室は好きになれそうにはねえな……」
「それはそれとして、すみません先生。その体操服、俺にください」

621蝶名林ルロイ紗英『ボブモ』【非常勤講師】:2019/12/10(火) 01:50:07
>>620

「俺は勇者じゃなくて破壊者なんだよ。あるいは戒を破る人なんだ」

返す言葉、向ける視線。
どこまでもフラット。
しかし、揺れない水面の奥底に潜むものがあることを人間は知っている。

「俺は野菜もお肉も美味しくいただくよ」

そして、変化。
笑った。
歯を見せて男が笑った。

「そのボールじゃないならどれなんだ?」

「これは俺のじゃないし、そのために取ってきたんだから当然渡すさ」

ずり……と音がした。
用具室の隅から這い出るもの。
プラスチックのような、粘土のようなものが人の形を取っていた。
そいつは光の届かない用具室の隅から現れ、籠の方へとゆらりと這って行く。

「ほら、どうぞ」

体操服を渡す。
もうその顔に笑みはない。

「……なんか、見えてるでしょ」

622宍戸 獅堂『グロテスキュアリー』:2019/12/10(火) 20:49:01
>>621

「勇敢だから幽霊が怖くない、ってんじゃなくて、
 そもそも幽霊とかハナから気にしてねー、みたいな話ですか?」

「ともあれ、ありがとうございます」

 恭しく一礼。

 面を上げて、用具室の暗闇を這う影に、緑色の視線を投げた。

「……どうですかね。まあ、『目はイイ』方ですよ」

 煙に巻いて、眼鏡を押し上げる。
 体操服を受け取って、袖を通す。
 間に合わせなので、サイズが合わなくてもご愛嬌だ。

「そういえば」

 そろそろ、予鈴も鳴る頃だろうか。
 体育の授業……敢えて出たくもないが。
 しかし、転校して間もないうちにサボタージュも拙い。

「先生、受け持ちの教科は?
 つーか、三年の教室に来ることあります?
 俺、転校してきたばっかで、まだよく知らないんですよね……」

623蝶名林ルロイ紗英『ボブモ』【非常勤講師】:2019/12/10(火) 21:09:15
>>622

「なんで俺が幽霊怖がらないといけないのって感じ」

「俺には神様がついてるからね」

口ぶりからして、そういうのを信じていない、というわけではないのだろうか。
その目は据わっていた。

「はっ、よく言うよ」

その言葉の真意を掴んでいるような気があった。

「受け持ちは美術。非常勤だけどね、三年も相手にするし、準備室は暇だから適当にうろついてるよ」

「蝶名林ルロイ紗英、それが名前」

624宍戸 獅堂『グロテスキュアリー』:2019/12/10(火) 21:27:40
>>623

「『美術』。」

 刻むように呟く。

「……いや、『美術』かァ。
 人の作ったモンを見てる分にはいいんだが、
 肝心の成績がよくねーんだよな……
 まあ、分かった。『美術』の授業は、サボんないようにします」

 遠く、予鈴が響く。
 屋外の用具室から、本舎の体育館はやや距離があるが……
 急いで戻れば、本鈴には間に合うだろう。

「B組の宍戸 獅堂。授業ン時は、よろしくお願いします」

 背を向けて、走る。

625蝶名林ルロイ紗英『ボブモ』【非常勤講師】:2019/12/10(火) 22:37:39
>>624

「実技の課題とか出来てなかったら来なよ。話とかは聞くからさ」

「暇だしね」

そう言って手をあげる。

「宍戸くんね、はいはい。その顔覚えたから」

見送る蝶名林。
男の背後でまだ人型は蠢いていた。
その後、しばらくしてサッカーボールがいくつか破裂していたのは別の話。

626日沼 流月『サグ・パッション』【高2】:2019/12/15(日) 03:39:20

          ゴ  オ オ オ オ

「ウワッ……!」

屋上には冷たい風が吹いていた。
ドアを開けた日沼は、それに目を細める。

           バサッ

      ボサッ

金とも銀とも取れない切り揃えた前髪が、
あるいは後ろ髪の流れに逆らった数房が、
風に巻かれて余計に『不自然』になる。

鍵は『開いていた』……

      キョロ

だから、手櫛で髪を直しつつ、視線を走らせた。
先客がいるかどうか……別にどちらでもいいのだけど。

627三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2019/12/15(日) 07:32:21
>>626

    ビュオオオオオ
              オオオオオオオ…………

風が吹き荒ぶ屋上に、一人の『先客』がいました。
ジャージ姿の小柄な生徒です。
もしかすると、どこかで見たような気がするかもしれません。
校庭が見下ろせるフェンスの近くで、うつ伏せに倒れているようです。
今のところ動く気配はありません。

628日沼 流月『サグ・パッション』【高2】:2019/12/15(日) 19:30:04
>>627

「え!?」

思わぬ光景に、目を丸くした。

「……え!! なに!? 千草ひっくり返ってるし! マジ!?
 なにしてんの!? ちょいちょいっ、起きて起きてって!!」

         バシッバシッ

声を出しながら、駆け寄って肩を叩く。
仰向けならなんか寝てるのかな?って感じだが、
コンクリ張りで床も汚い屋上にうつ伏せはヤバイ。
多少エキセントリックだから……でやる事でもない。
非常事態だと思うと自然に体は動くものだ。

「え……ヤバいじゃんこれ……千草こーいう冗談しないでしょ」

「いや『逆に』するのかな……ヤバい……
 千草、冗談なら今言わないとウケないからね!」

    バシッバシッ

居眠りをしてるとか……
何か目的があるとか……
それこそ冗談とか……

そういうのなら良いが……声を掛けながら肩を叩く。
不測に備えてスタンドを傍らに浮かべ、それを続ける。

629三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2019/12/15(日) 20:18:46
>>628

肩を叩かれますが、反応がありません。
その時の千草の状態は、何か狙いがあるわけでもなく、
居眠りしているわけでもなく、冗談でもありませんでした。
一言で表現するなら『気絶』していたのです。

「う…………」

    スゥッ――――

少しして、ゆっくりと両目を開けました。
ここは何処でしょうか?
どうやら屋上のようです。

「あ…………日沼先輩?」

先輩の顔を見て、少しずつ頭が働き始めました。
両手を使って体を起こし、その場に座り込みます。
そして、自分が何をしていたかを思い出しました。

「えっと……」

  「『練習』をしようと思って……」

     「『下』を見たら急に意識が遠くなって……」

        「それで……」

           「少し気を失っていたみたいで――――」

話している途中で、ふと『先輩の隣』に目が行きました。
そこにいるのは、大きな体格の『人型』のようでした。
まだ意識が朦朧としているのかもしれません。
そのせいで、おかしな幻覚を見ているのでしょうか?
目を閉じてから、もう一度よく見てみましょう。

         「――――す」

まだ見えました。
やはり、意識が正常に戻っていないせいでしょうか?
もしかすると、倒れた時の打ち所が悪かったのかもしれません。

630日沼 流月『サグ・パッション』【高2】:2019/12/15(日) 21:40:06
>>629

「あ、起きたし! ウン、流月だけど。
 急に倒れてるからビックリした! 貧血かなんか持病あるの?
 知らないビョーキなら怖いしさ〜、このあと保健室行った方が良いよ」

起き上がったのを見て、少し離れる。
髪の乱れを改めて直しつつそのまま立ち上がり、
傍らに浮かんでいた『人型』は、ようやく消した。

そして、そのまま隣に座り込む。

「別に熱中症とかなる季節じゃないしさ。
 あ〜でもなんだっけ、みんな気を付けてる夏より、
 冬のが『逆に』罹りやすいとか聞いたことあるカモ」

     フゥーー

「てか、こんなとこで練習?
 千草ってさ〜、運動部とかじゃないでしょ?
 たしか生徒会だよね? なんの練習してたの?」

「なんかあったっけ、行事とか……にへ、流月が知らないだけ?」

閉じた目、途切れた言葉の意味はまだ、気付いていない。
倒れていた人間のすることだ、混乱しているから……それでもおかしくない。

631三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2019/12/15(日) 22:25:06
>>630

「いえ、『病気』というか…………」

「その――――『体』は大丈夫ですから」

    ニコリ

千草は『死ぬ』のが怖いです。
多分、それは当たり前の事です。
でも、病気と言えば病気かもしれません。

「ここで『恐怖を克服する練習』をしていました」

「でも、そっと下を覗いてみたら気が遠くなって……」

『ここから落ちたら死ぬだろう』と思った瞬間、強い眩暈がしました。
体感ですが、大体『二秒くらい』で気絶したような気がします。
やはり、いきなりハードルが高すぎたみたいです。

「『恐怖を乗り越えて成長することを祈っておく』」

「『ある人』に、そう言われたので――――」

「それで……勇気を出して『挑戦』してみようと思ったんですが……」

「でも――――『このレベル』にチャレンジするのは、
 まだ千草には早かったみたいです」

静かに呟きながら、
『先輩の隣』に向けていた視線を『日沼先輩』に移します。
『妖甘』さん――千草に『目覚め』を与えてくれた人です。
その言葉に応えられるのは、もう少し先になりそうです。

632日沼 流月『サグ・パッション』【高2】:2019/12/15(日) 23:42:17
>>631

「なるほどね〜、流月それ分かんなくはないかも!
 苦手なことを『あえて』やるってのは、
 まー……誰かに言われたことっていってもさァ。
 ある意味『反骨的』ってゆーかさァ……共感できるよ」

    ガシャッ

「でも、気絶するまではやったことはないけどね。
 そーいうとこ、やっぱ千草ってマジメだよねェ〜ッ」

     イヒヒ…

振り向いて、なにげなく屋上から外を見る。
そして身を乗り出してフェンス越しに下を見る。
なるほど、落ちない保証があっても結構怖い。

「ちなみにアレ? 高所恐怖症ってワケ?」

……気絶する、という感覚は分からない。

「いきなりここってのは確かにハードル高そ〜。
 自宅の二階とか、ジャングルジムの一番上とか……
 ガラス張りの壁があるスカイモールの展望台とか?」

     キョロキョロ

「練習は良いけど無理して倒れるとかアブなすぎるし。
 あの……貯水タンク? あそことか絶対ダメでしょ!」

視線の先には、屋上の中でも一際高い貯水槽だ。
ハシゴで登れるあそこが、常識的な最高高度だろう。
もっとも、日沼はその常識に『反逆』出来るけど。

「落ちても怪我しないくらいの高さからが良いのかもね」

       「んー……朝礼台とか? ぷぷっ。
        流石にアレは低すぎるか!
        てか、生徒会任命の時に乗るもんね」

633三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2019/12/16(月) 00:18:52
>>632

「『あえてやる』――ですか……」

「何となく共感できます。いわゆる『荒療治』というのでしょうか?」

「でも、今回は失敗してしまいました」

    ニコ

「『高い所』は確かに怖いと思います。
 でも、『低い所』も場合によっては怖いです」

「千草は、まだまだ未熟です。
 だから、『怖いもの』が沢山あるのです」

「倒れるのは良くない事ですね。
 他の人に迷惑を掛けてしまいますから」

「日沼先輩、わざわざ起こして頂いてありがとうございました」

              ペコリ

    「…………『貯水タンク』」

                   「――――ですか」
    スッ
        スタスタスタ

日沼先輩の言葉を繰り返し、屋上の一角を見つめました。
静かに立ち上がり、おもむろに貯水タンクの方へ歩いて行きます。
そして、ハシゴに手を掛けて上り始めました。

                  カン カン カン

まもなく貯水タンクの上で立ち上がります。
一歩ずつ、ゆっくりとですが。
ここが『屋上で一番高い場所』です。
つまり、『フェンスの前より高い場所』なのです。
そこに立つ事で、
ほんの少しだけ『恐怖』を克服できるのではないかと思いました。
だから、その思い付きを実行してみたのです。
『善は急げ』――です

「このくらいのハードル、なら――――」

「――――何とか、越えられそうです…………」

634日沼 流月『サグ・パッション』【高2】:2019/12/16(月) 00:50:42
>>633

「『やれない』って決めつけられるとさァ〜。
 自分の中でもほんとにそれが出来なくなるじゃん?
 そうならないように、やれないって言われたことでも、
 あえてやってみるってワケ。何でもかんでもじゃないケドね。
 本気でやりたくない事とか、やる意味ないと思うし」

「それが『反骨精神』ってやつよ。
 にひ、お話含めてありがたく思っといて!」

などと言っていると――――
おもむろに歩き出した千草を目で追う。

「えッ! 千草何してんの!?
 そこ登んの、マジで危ないし!
 絶対ダメなやつって今いったやつだし!
 ――――あ、だから『あえてやった』のか。ぷぷ、ウケる!」

「千草、ほんとマジメすぎ!」

             タタタッ

「流月はさァ、なんていうの、『流れ』に逆らったら……
 ハードルを飛び越えたら、そこがゴールじゃなくってさ!
 その後、行きたい道行って、なりたいようになるのが大事だと思うんだよね」

そして、貯水タンクの傍まで近寄る。
お世辞にもバランスのいい場所じゃあない。
生徒が昇ることを想定している場所でもない。

「千草はさ、『怖いもの』無くなったら、どんな風になりたいの?」

千草を見上げながら、しかし引きずりおろしたり、やめろと叫びはしない。
行き当たりばったりではなく、千草の望む生き様なら、その『反骨』には価値がある。

635三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2019/12/16(月) 01:21:43
>>634

「飛び越えても――『ゴール』じゃない……」

「何となく分かるような気がします……。
 でも――分からないような気もします……」

「『怖いもの』がなくなったらなんて、今まで考えた事もなかったです」

千草の『怖いもの』――それは『死ぬ事』です。
本当は死にたくないけれど、それは無理な話です。
だから、せめて『良い死に方』を迎えたいのです。
『死の恐怖』を少しでも和らげるために。
そのために、多くの人から尊敬されるような、
『立派な人間』になれるように頑張ってるつもりです。

「克服しようとしてるのに――何だか、おかしいですね」

    クス

「でも、もし『怖いもの』がなくなったら……」

もしも、『死』が怖くなくなったら。
そうしたら、『良い死に方』に拘る事もなくなるのでしょうか?
『死の恐怖』がなくなったら、
いい加減な生き方をするようになってしまうかもしれません。
それは、果たして良い事なのでしょうか?
考えていると、何だかよく分からなくなってきます。

「…………よく分かりません」

「でも、今は――――」

           カン カン カン
                   ――――トンッ

「皆に尊敬されるような『立派な人』になりたいと思っています」

            ニコリ

ハシゴを降りて、屋上の地面に降り立ちます。
今は分かりませんが、いつか分かるかもしれません。
その時のために、
これからも『自分に出来る努力』を続けていこうと思いました。

636日沼 流月『サグ・パッション』【高2】:2019/12/16(月) 03:04:26
>>635

ハシゴから降りてくる千草の姿を、観ていた。

「流月もさ、ゴールがどこかはよく分かんないワケよ。
 立派なヒトになりたいとかも思わないし……
 かといって悪いヤツになりたいわけでもないしさァ!」

流れに逆らうことは『行く末』を増やす事だ。
決まった一本の流れから逸脱することは、
無数の行き止まりと、無数の支流を見出す事だ。

「千草と違ってまだ、なんにも決まってないワケ」

「まだ、決めたいとも思ってないし!」

「決まるとも限らないじゃん」

「だから」

決められた道は…………日沼流月の前に敷かれていた。

「『逆に』……流月には、分かんないことも大事な気がする。
 ぷぷっ、なんかそれこそおかしな話だけど! ウケるね」

あるいは今も。それを望まない限りは『反骨』は続く。
目覚めた叛逆の熱情は、きっと日沼の魂そのものなのだ。

        ビュ オオオオ ・・・

「……………てか千草さ〜、さっきから風寒くない!?
 流月、ちょいお菓子食べようと思ってたんだけどさ。
 寒すぎて食べてられないし! 校舎戻ろうと思うワケよ」

いずれにせよ……倒れていた後輩が無事だった事で、
来たワケと、ドアを開けた時に感じた冷気を思い出す。

「千草どーする? まだ、ここで練習してく?」

千草がどうするにしても日沼は立ち上がり、ドアに向かう。

637三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2019/12/16(月) 18:43:23
>>636

「『分からないことも大事』――――」

「分からないからこそ色々やれて……。
 それで、色々な事が分かるのかもしれませんね」

「何だかスッとしました」

    ニコ

難しい話だと思います。
でも、日沼先輩の言う事には共感が持てました。
今は、それで十分です。

「そうですね。
 だから『練習』には打ってつけだと思いました。
 今なら、もうちょっとくらいハードルを越えられそうな気がします」

「でも、『あえて』止めておきます。
 欲を出すのは失敗の元ですから」
 
「――――戻りましょう、日沼先輩」

日沼先輩の後ろから、同じように歩き出します。
最初は失敗しましたが、まずまずの結果が得られました。
だから、今日は満足しています。

         カツンッ

風の音に交じって、不意に『音』が聞こえました。
コンクリートの地面を、『金属』が軽く打ったような音でした。
千草の後ろ辺りから聞こえてきたようですが、
そこには何も見当たりません。

「『It’s now or never』」

「『今しかない』――千草の好きな言葉です」

638日沼 流月『サグ・パッション』【高二】:2019/12/16(月) 23:36:29
>>637

「『今やらなきゃずっとやらない』……『今しかない』」

「その言葉、めちゃ千草が好きそ〜〜〜。流月も分かんなくはないよ。
 今逆らわなきゃ最後まで逆らえないだろうなってコト、あるからさァ」

日沼もまた、共感を持つ事ができた。
意図が100パーセント同じでは、無いとしても。

     ビュオ
        オオォ

             カツンッ

「んじゃ戻ろ戻ろ。……ン?」

去り際、冬風に紛れる音を耳が拾って振り向いた。
そこには何もなかった。
何かを察せるほどは、まだ詳しくはない。

「? 何今の音! ……まあいいや。寒〜〜〜ッ」

…………だから立ち止まる事もなく、そのまま校舎に戻った。

639三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2020/01/05(日) 17:24:59

最近、『こんな話』があるそうです。
各教室に設置されているゴミ箱の中身が、
いつの間にか消えているというのです。
でも、みんなが出すゴミの量が減った訳ではありません。
どこか別の場所に、こっそり捨てられているということもありません。
それなのに、確かにゴミはなくなっているのです。

    ガラッ

ここは放課後の『ある教室』です。
そこには誰もいませんでした。
『千草以外』は。

          キョロ キョロ

誰もいないことを確認して、ゴミ箱を開けてみます。
中身は空ではありませんでした。
嬉しいことです。

「『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』」

         ザック ザック ザック

『墓堀人』のスタンドを発現し、『シャベル』で床を掘ります。
足場の強度を無視できますので、
そこに『穴』を開けるのは簡単です。
少し時間を掛ければ、
ちょうどいいサイズの『墓穴』の出来上がりです。

         ザザ――――ッ
                     ドササッ

ゴミ箱を傾けて、『墓穴』にゴミを流し込み、埋めてしまいます。
ゴミは『仮死状態』になっていますが、今は余り関係ありません。
あとの処置は簡単です。

    パッ

『墓穴』を解除します。
同時に、『埋められたもの』も『消滅』します。
環境にも優しい『埋立』です。
『人の役に立つ使い方』を自分なりに考えてみました。
これが、『最近の話』の真相という訳です。

640斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/01/07(火) 20:04:16
>>639

僕は気配を感じて扉を開けた

 「――おっと、失礼」

陽当たりのいい放課後の風景、嗅ぎ慣れた古い備品の香り
そして女子生徒がその風景の中に一人

 (『お目当て』は……いないようだ。)

周囲を見やり、肩を竦める、どうやら気配は目の前の生徒の物だったらしい
僕はそこまで勘が良いほうではないのだろう。

 「君、ここの生徒かい?」

何故そんな事を聞いたか?
最近のちょっとした『噂』のせいだ。

だって、『実は幽霊です』とか言いだしたら 
少し楽しいじゃあないか。

641三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2020/01/07(火) 21:00:06
>>640

その教室には、そこにいる生徒以外誰もいません。
至って静かなものです。
もちろん『人間以外の者』も、そこにはいないはずです。

「もし『生徒』じゃなかったら『不法侵入』になってしまいますね」

「立派な『犯罪』です」

目の前の生徒は、制服ではなく学校指定のジャージを着ていました。
身体は小さくて細く、平均より発育がかなり遅れているようです。
実年齢以上に幼く見えるのは、そのせいでしょう。

「中等部一年生の三枝千草と申します。
 『三つの枝』に『千の草』と書きます」

「――――はじめまして」

    ペコリ

お見かけした事はないですが、おそらく先輩でしょう。
ですので、丁寧に挨拶します。
第一印象は大事です。

642斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/01/07(火) 22:17:47
>>641

 「これはこれは、ご丁寧にどうも」

一礼を返し、『学生手帳』を開いて見せる
当然、手帳には僕の『名前』が乗っている。

 「僕は斑鳩、斑鳩翔。」

 「『ショウちゃん』でも『先輩』でもお気軽にどうぞ、『三枝』さん」

短く整えた頭髪
鎖の意匠を持ったカフス
学ランの胸元には赤いスカーフ

冬だろうと変わり映えがない僕の服装だ。

 「変な質問してすまない、と言いたいが」

 「最近妙な噂を聞くもんでね」

第一印象?彼女は『礼儀正しい後輩』って感じだ
自分が言うのもなんだけど、放課後に教室で1人と言う以外は、特に怪しい所も無い。

 「君、知ってるかい?」

――それ故に気になる個所は有る、『ゴミ箱』とか。

643三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2020/01/07(火) 22:45:41
>>642

「高等部の先輩ですね。
 『鉄先輩』や『日沼先輩』をご存知ですか?」

「同じ学年なら、お知り合いかと」

学年は斑鳩先輩と同じはずです。
クラスが別なら知らないかもしれませんが。
人数の多い学校ですから。

「――――『妙な噂』?」

「その内容をお聞きしない事には、何とも言えませんが……」

ゴミ箱は特におかしな点はありません。
外見は極めて普通です。
中身は空っぽですが、それはおかしな事でもないでしょう。

「どんな『噂』ですか?」

644斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/01/07(火) 23:13:34
>>643

首を振る

 「いや、そんなに難しい話ではないんだ、穏やかでもないのだけれど。」

適当な椅子を引いて腰かける
歩き回って足が棒のようだ、それもこれも『探し物』のせいだが

 「――『学校内に不審者が出る』っていう話」

『まだそこまで広がってはいないよ』、と
同時に『どうしてそんな事を?』を我ながら絶妙に表せる口調だったと思う

正直、僕もこれが事実かどうか解らないし。

 「それも、『下着泥棒』 ……ああいや、僕では無く」

人懐っこい苦笑を浮かべながら、まるで冗談事のように話し続ける
当人には笑い事では無いのかもしれないが、僕にもそれがどうにも信じられないのだ。

 「僕のクラスメイトが被害にあったって言う話さ。」

 「手口の方も正直、眉唾物で……その、馬鹿らしいとは思うけど」

だって、被害に会った彼女の言い分もそうだが
そんな事する理由あるかい?って話だから。

 「『ゴミ箱ごと持っていった』って言うのさ。」

 「――妙だろ?」

645三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2020/01/07(火) 23:39:17
>>644

「確かに妙なお話ですね」

「『学校のゴミ箱に下着を捨てた人』がいるんですか?
 家のゴミ箱に捨てた方がいいように思うのですが……」

思わず首を傾げます。
泥棒は悪い事です。
でも、学校内に下着を捨てるのはどうでしょう。
それこそ不思議な話のような気がします。
そう思うのは、千草だけでしょうか。

        ガタ

「――――続きをお願いします」

近くにある適当な椅子に座ります。
先輩の話は、これで終わりではないでしょう。
なので、続きを聞こうと思います。

646斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/01/08(水) 00:26:07
>>645

 「あー…… やっぱり気づいちゃうか。」

彼女の指摘を鋭いと褒めるべきか
それとも少し困ると考えるべきか、三枝という後輩が聞く姿勢なのは確かだ。

 「『泥棒』の方もそうだが、僕も彼女にこう言ったのさ『なあ、君はどうして学校に下着を捨てたんだ? 不用心にも程が有るんじゃないのか。』」
 「……最初に言ったけど、これはあまり穏やかじゃない話なんだ。」

頬を掻く、見ず知らずの相手にする話でもないが
同時に、目の前の女性に関係のない話……でもないだろう。

 「ところで、このせ……『清月学園』は知っての通りマンモス校だ」
 「お手手つないで友達100人…なんて簡単にはいかない事を、今じゃ僕達はよく知ってる、だろ?」

 「その中の最小単位、40人と顔見知りになれば『親友』が1人出来る間に」
 「『どうしても気にくわない奴』とかが、2〜3人くらい出てくるものさ」

視線をそらして廊下の方を見やる
人の眼を見ながら話したくはない話題なんだ、それが僕に関係なくとも。

 「――あんまり褒められた事じゃないよな」
 「『い』で始まって『め』で終わるような事は、さ。」

……溜息が漏れ出そうになるのを抑え込む

 「彼女の言葉は躊躇い混じりで正確じゃあなかった、『彼女』では無く、『彼女が庇っていた友人』が被害者で……」
 「『捨てた』のではなく『捨てられた』んだ。」

647三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2020/01/08(水) 00:43:48
>>646

「そうですか…………」

「それは言葉に出しにくい話題だと思います」

「でも――――」

    ズイッ

「『目を背けてはいけない事』です」

「そのお話は、『生徒会』に持って帰ろうと思います。
 何が出来るか分かりませんが、何かしなければいけません」

「その『責任』があると考えていますので」

千草はちっぽけな存在です。
ですが、聞いたからには行動しなければいけません。
それは、千草の『夢』に繋がる道でもあります。
誰からも尊敬される人間になる。
それが、千草の『人生の目標』です。

「あの…………すみません。話の腰を折ってしまいました。
 『噂』の話が途中だったかと思います」

「続きをお願いしてもよろしいでしょうか?」

648斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/01/08(水) 21:29:08
>>647

 「…………。」

少しは驚いた、大抵の場合は目を逸らし
見て見ぬふりをする、そういう物だと思っていたからだ。

 「今、全ての生徒に 君みたいな『責任感』が有ればなあ、と思ってるよ。」

 (……同時に、無くて良かったとも思うが。)

今、彼女……『三枝千草』に対しての印象は少し変わった
礼儀正しさ以外に、悲劇に対して目をそらさない『意志』が有るらしい

 「けど、『生徒会』に持っていくのはやめた方がいいな」

 「僕が何故こうして動いてると思う? ……頼まれたからなんだ。」

背もたれに思い切りもたれかかると、椅子の脚二本でバランスを取る
特に意味はない、あえて言うなら姿勢に飽きた。

 「この『いじめ』は単独ではなく、多くの場合……『インターネット』とかの……」
 「『赤信号、皆で渡れば怖くない』、みたいな集団心理の元に行われてる、『複数犯』なんだ。」

 「勿論、警告して、相手が反省し、二度としないと誓わせて仲直り それが理想だ。」
 「ただし、理想は理想、絵に描いた餅でしかない、もし『相手が1人でも逆恨みしたら』?報復は簡単だ」

 「『学園に必ず来る』怯えている被害者の肩を掴んで、無理やり引き摺って行けばいいんだから。」

ジェスチャーを交えながら話す途中で
廊下の方をちらと見やる、無関係とはいえ僕は探りを入れ始めた
恐らく、そろそろだとは思うが。

 「被害者に、さらに被害に会えとはちょっと言えないし」
 「だからと言って付きっきりで守る、と言うわけにもいかないんだ、『そう言う事』だとバレてしまう。」

視線を戻す。

 「この事について君が知らなかったように、『知ってる人は知っているが、大半の人間はこの事を知らない』」
 「こういう事実を下手に拡散するのも、被害者を傷つける、『いじめ問題』の根の深い所だよ。」
 
 「でも方法はある、ジャブを打っても返されるなら、ストレートで『再起不能』にすればいい、その為には『証拠』が必要なんだ。」
 「少なくとも、『謹慎処分』、或いは『退学』まで持っていくのが。」


椅子を戻し席を立つ、彼女に近づくと乾いた靴音が教室に響く
その必要が有るし、『この話は目を逸らしてはいけない事だ』。


 「……話を戻そう、僕は『証拠が必要になった』、『物証』、『証言』、『証人』。」

 「それが、『何故ぼくが此処に来たのか』という話にも繋がるんだ……『三枝千草』さん。」

 「僕は君が見ての通り、上の学年だ 本来なら此処で証拠を探すのは筋違い、収集個所の方が早いかもしれない」
 「だが、グループの1人がこう発言したんだ…『下級生の1人に証拠を捨てさせた』…ってね、その人は『証人』になる」

生徒手帳を取り出し、ページをめくる
大抵のものぐさな生徒には忘れられがちだが、こういう物はメモ代わりにもなる

 「噂の中身の実際はこうだ、『いじめでゴミ箱に下着を捨てられた女子生徒がいる』」
 「そして同時にもう一つの噂が最近流れてる、『ゴミ箱の中身がいつの間にか消えている』。」

例えば、『他の生徒から聞いた話を書き込む時』とか。
 
 「ここのクラスメイトの証言だけど、君は最近『放課後にこうして一人でいる』んじゃないかな?」

 「――誤解無く、単刀直入に言おう」

 「何故かそんな事をしている君を、今、『疑っている』。」

今度は目を背けない、笑顔で、しかし笑顔の無い瞳で真っすぐと。

649三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2020/01/08(水) 22:10:43
>>648

「ご存知ですか?
 そもそも周りは、
 『いじめが起きている』とさえ思っていないケースが多いのです。
 加害者にしてもそうです。
 単に『じゃれているだけだ』とか、
 『いじってみただけだ』とか思っているのです。
 生徒も先生も、皆そうです」

「その時、当人はどうすればいいと思いますか。
 我慢するだけです。ただ我慢して日々を過ごすだけです。
 ずっとずっとです。
 そして、誰もそれに気付かないのです」

「先輩の意見は、とても冷静です。
 落ち着いた第三者の意見です」

「でも……こんなことを言うのは心苦しいのですが」

「その――――」

「『それだけ』のような気がします」

    フゥ……

少し、少しだけ熱くなってしまいました。
こういう時は、深呼吸です。
静かに長く。

「『疑い』ですか……。
 そんな噂があるなら、疑われるのも仕方がないと思います。
 もし千草が同じ立場でも、そうするでしょう」

    スッ

「知らなかった事とはいえ、悪事の片棒を担いでしまった事を、
 心からお詫び申し上げます」

「千草の処分は斑鳩先輩にお任せします。
 どのようにも為さって頂いて結構です」

        ペコリ

椅子から立って、先輩に頭を下げます。
千草は嘘が苦手ですし、何より悪い事です。
でも、これで千草は地獄に落ちるかもしれません。
無残な死に方だけはしたくないと思っているのですが。
ここから挽回できるでしょうか?

650斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/01/08(水) 22:48:04
>>649

 「…………(違うな、ああ、違う)。」

『俺』の勘だが少なくとも、この三枝という女が自分から関わっているとは思えない
関わるような人間が、こうも熱くなるとも思えない、俺は怒りならよく知っている。

 謝罪と共に深く頭を下げる

 「――すまない、言い過ぎたな、顔をあげてくれ」

……一瞬ぼうっとしていたような気もする
廊下の方を見る、やはり近づいて来ている。

 「……君の言う事は、正しい、僕も頼まれただけの第三者だからな」
 「『それだけ』しかできないし、しない、冷たいようだけど『熱く』はなれない……自分が情けなくなるな。」

情けなさを振り払うように首を振る
言葉にするのは簡単だが、行動が伴わないならばなんの意味が有るだろう?

 「……君はやって無いんだろ?少なくとも自発的に加担してはいない」

 「そうなると謝るのは僕の方だし、元から探してたのは『証人』の方なんだ、証拠は別の方を集めればいいからね。」
 「いじめグループに加担してた下級生が別にいる、次を探さないとな。」

少し考えてから、ひとつ引っかかった事が有る
彼女の態度についてだ。

 「ところで、君は謝っていたけど あー……その、『何かをした』のか?」
 「『ゴミ箱の中身全てを跡形もなく消し去る』なんて、君が1人で出来る事だとは思わないんだが。」

651三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2020/01/08(水) 23:08:32
>>650

「いえ、生意気な事を言って申し訳ありませんでした」

    ペコリ

「――ええ、しました。千草が『一人』で」

「いつも考えているのです。
 自分が何か人の役に立てないかどうか。
 色々と考えてみて、『掃除』をする事にしたのです」

「千草が片付けたゴミはなくなりました。『永遠』に」

千草が『昇天』させたものは、どこへ行くのでしょうか。
それは千草にも分かりません。
ただ、『この世』に存在していない事だけは確かです。

「ですので……もう、それを取ってくる事は出来ません」

            ペコ

        「『ごめんなさい』」

652斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/01/09(木) 00:25:54
>>651

顎を撫で、少し考える
証拠を消したという確証はないが、彼女にはどうやら罪悪感が有るらしい
……此方としても、口の堅い人手が欲しい所ではあった。

 「間が悪かったんだ、誰も悪くは無いし、もし悪いとしたら、それは何も知らない君を利用した彼女たちの方だ。」
 「けれど、そこまで言うのなら、君が適任かもしれないな」

 「巻き込んでおいてなんだけれど…そこまで悪く思っているなら協力して欲しい」
 「証拠はなくなったかも知れないが、証人は必要なんだ、つまり……君の周囲で、その事態に加担している人間を」
 「一緒に探してほしいんだ、『高等部』の学生が『中等部』にいても、大体の場合は警戒されてしまうからね。」

 「そのお礼としては……そうだな、僕に出来る範囲で出す物を出すよ。」
 「金銭は少し五月蠅いのがいるから…現品だとか駅前のクレープとか。」

思いつくのはこの辺りだ
流石に目の前の後輩が『荒事』に首を突っ込むとも思わないが

(……いや、この責任感と意志の強さなら、何時か首を突っ込むかもしれないな。)

 「ところでその表現……つまり君は、新手の『スタンド使い』か?」

 「僕と同じ様に?」

653三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2020/01/09(木) 00:46:53
>>652

「お手伝い出来る事なら何でもします。どうぞ、ご遠慮なく」

「千草は――――
 『誰からも尊敬されるような立派な人間』になりたいと思っています。
 それが『夢』であり、『人生の目標』です。
 『人の役に立つ事をする』のは、その『一歩』になります」

「ですから、『お手伝い出来る事』が十分なお礼です」

千草が何よりも欲しいのは、自分の価値を高める機会です。
それを積み重ねて、立派な人になりたいのです。
『安らかな最期』を迎えるためには、それが必要です。

「『新手』…………?」

「それはどうか分かりませんが」

「でも――――『はい』」

      カツンッ
            ズズッ…………

『金属が床を打つ音』が響きました。
そして、『幽鬼のような姿のスタンド』が現れます。
目深に『フード』を被り、杖のように『シャベル』を携えていました。

654斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/01/09(木) 21:12:24
>>653

 「『尊敬』か」

こうして改めて口に出し、思い返すと
人生の中で尊敬する相手というものは結構少ない物だ。

他人の人格や行為を高いものと認め、頭を下げるような、また、ついて行きたいような気持になること。
うやまうこと。

例文:「親を―する」

 「僕は両親の事は尊敬しているよ、誰よりも何よりも」

 「君もなれるといいな ……そして。」

第一印象?『ぎょっとした』、もしかしたら、流石に僕の顔にも驚愕が出たかもしれない、彼女の台詞と妙に噛み合わないなとは思ったかな
なにせそのスタンドは、『尊敬されるような立派な人物になりたい』と言っている割にはあまりにも……暗かった。

目の前にあるそれは重たいシャベルを引きずる墓守のようではあった、誰の言葉だったか、『スタンドは性格』だ
少なくともそのビジョンは、尊敬を集めるような立派さは無く、むしろ『死への執着』を僕に強くイメージさせた。 

彼女は少なくとも嘘をついてはいないのだろう
ただ、恐らく立派な人物に、というのは……それが通過点か、或いは彼女自身も気づいていないか、だ。

 「それが君のスタンドか?」

見せてくれたのだから此方も見せなければならないだろう
少なくとも、あの律儀な男ならそうした筈だ。

そう呟く僕の腕に、影から引きずり出されたように『鎖』が伸び
右腕を雁字搦めにする『枷』のように巻き付く、幻覚でもなければ、幻でもない。

 ――『ロスト・アイデンティティ』

 「そう名前を付けられた、これが僕にとっての『スタンド』」
 「まあ、人探しにはあんまり役に立たないのだけど。」

廊下の方を見やる。

 「それじゃ、お互い自己紹介も終わって用件も済んだし……聞きたい事はもっとあるけど、そろそろ『逃げる時』かな。」

足音は大きくなっている、約4人程だろう。

 「ところで三枝さん 君、『彼氏』とかいる?」

655三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2020/01/09(木) 22:03:07
>>654

「『鎖』ですね」

「『鎖』と『シャベル』――――どちらも『金属』です。
 少しだけ似てるかもしれませんね」

    ニコ

「『It’s now or never』」

「そういう名前です」

千草は、『他の人のスタンド』を見た事は、ほとんどありません。
斑鳩先輩の事も、今さっき知ったばかりです。
だから、単純な比較は出来ません。
でも、きっと『斑鳩先輩だからこそ目覚めたもの』なのでしょう。
千草の『墓堀人』がそうであるように。

「?」

その質問に、首を傾げました。
そして、口を開きます。
ゆっくりと。

          「そ――――」

 ドタバタドタバタドタバタドタバタドタバタドタバタドタバタドタバタッ

千草の声は、逆方向から走り抜けていった『誰かの足音』に、
かき消されました。
きっと『偶然』でしょう。
その間にも、『四人分の足音』は近付いてきているようですね。

656斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/01/09(木) 23:40:53
>>655

 (……?)

廊下を走る足音に後輩の台詞はかき消された
放課後だってのに暇な奴が多いもんだな

まあ俺も人の事は言えねぇがな、退屈は俺の敵だ。

 「――話はいじめグループの方に戻るんだが」
 「リーダー格の女性が、これまた美人でね、その人に『彼氏』がいるんだよ」

ソイツの事はよく知ってる、『銀鶏』の奴だ
女の方が粉をかけたか、女を見る眼が無いんだろう
今度ガラス玉と交換をおススメしてやるか、運がよけりゃあ視力が良くなるぜ。

 「いかつい『お友達』を連れた、『業務用冷蔵庫』の上に『たわし』を張り付けた様な奴が」
 「僕の事は、まあ面白くないだろうな 見つかったら何される事か。」

俺か?俺は喧嘩は嫌いじゃない。
1:4だろうとタダでやられてやるつもりはねぇ
ただし他人を巻き込むのは趣味じゃない、それが女だと猶更だ。

窓の方に脚を向ける、窓を開くと流れ込む季節の空気
まあ今は傍の排水用パイプの方が重要だな、ひっかけて降りるにはこれで充分。

 「実のところ……さっきからその人達が近づいて来てるんだ、君は『今のところ』関係ないし。」
 「『ターゲット』にも入ってないだろうな ……どうする?此処にいるかい?」

俺は楽しい追いかけっこの時間だ、ニヤリと後輩に笑ってやる。

657三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2020/01/10(金) 00:35:33
>>656

「…………『暴力』は嫌いです。
 見たくはないですし、聞きたくもありません」

千草にとって、暴力は『死』を連想させます。
だから嫌いなのです。
だから怖いのです。

「千草には単純な力はありません。
 今ここで、『誰かを殴れ』と言われても無理です。
 殴りたくないですし、殴れる力もありません」

「でも、『殴られる』くらいなら出来ます」

「『年下の生徒会の一人に暴力を振るった』――――
 そういう『既成事実』を作ってしまえば、
 周りからの風当たりが強くなって、
 これまでのように幅を利かせにくくなるかと思ったのですが」

      ザック ザック ザック

言いながら、『墓堀人』が、扉の手前に『墓穴』を拵えます。
ごく普通に考えて、
教室の床に『穴』が開いているとは思わないでしょう。
だから、無警戒に足を踏み出す事でしょう。

「これで『足』を取られます。
 窓から出るのでしたら、時間稼ぎになるかと思います」

「斑鳩先輩、
 さっき千草が言った言葉を覚えていらっしゃいますか?」

「千草の扱いは先輩にお任せしました。
 どうぞ、『お好きなように』。千草は、それに従います」

「ただ…………一つだけお話しておく事が」

「あの、千草は『運動』が得意ではないです」

斑鳩先輩に向き直ります。
どうするかは先輩に一任します。
ただ、窓から降りる途中に『転落死』しないかどうかだけが心配です。

658斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/01/10(金) 23:34:02
>>657

 「……訂正しよう、君の事を少し驚いたと思ったが、今、君の『行動』にかなり驚いている」
 「君の行いは彼らにそこまで考える知性が無い、という前提なら有効だろう」

俺にいわせりゃ実際無いだろうなあいつら
階段を登らせると登りと下りで数が違うとか言い出す連中だ。

 「しかし、まあ」

鎖が伸びる、一度に伸ばせるのは約5m
もっとも分離した鎖はそれに含まないので
少しズルすれば地面と全身でキスする事無く、余裕で降りられる距離だ。

 「悪党と正義の人の違いは『手段を選ぶかどうか』だと言う人もいる。」

後輩をひっ掴んで窓際に寄せる
運動が不得意で自分から殴られようだって?
ようは受け身も取れないって事だろ?馬鹿な後輩。

 「一人の不幸の為に一人を犠牲に…では計算が合わないし」
 「何より、そんな事をしたと知れたら、僕に依頼した子は、僕を殺しかねない勢いで迫るだろうしね。」

苦笑しながら考える、まあそういう馬鹿は嫌いじゃない
何より女が怖いって事はうちのババアがよく証明している。
見捨てる選択肢は無い。

 「でも『好きにしろ』って軽々しく男性に言うのは良くないな、悲鳴を上げることになるぜ。」
 「――動くなよ?」

――俺は後輩を窓から突き落とした。

『鎖』…『ロスト・アイデンティティ』でぐるぐる巻きにした後でな、分離、結合

解けた後に出来るのは即席の『空中ブランコ』だ
ちゃんと手すりとシートベルト付き、問題は全部スタンド製なので、スタンドアレルギーだと辛い所だな。
ドのつく運動下手でも、暴れない限りは落ちないだろう。

物音に振り返ると、手下が何人か落っこちた向こうに『銀鶏』の野郎が額に青筋を立てているのが見えた、ざまあねぇな
ウインクの一つでも返して、俺も窓から飛び降りる。

頭上の怒号を聞き流して逃げるのは中々愉快なもんだが
この後輩をお姫様抱っこしてさっさと逃げたほうが良さそうだ。

659三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2020/01/11(土) 00:18:18
>>658

「…………そうですね」

「『殴られる』なら、
 もっと『人目につく場所』を選ばないと『殴られ損』です。
 大勢の前で試す方が、きっと大きな効果が得られ――――」

ここは『場所』が悪いです。
やるなら『目立つ場所』にしないといけません。
だから、とりあえず今は――。

        ドンッ!

不意に突き飛ばされて、いとも容易く吹っ飛ばされました。
『為すがまま』というのでしょうか。
つまるところ、そういう状態と言っていいでしょう。
ところで、斑鳩先輩はお気付きでしょうか。
千草の言葉が、途中で途切れた事を。

    「…………」

           「…………」

                  「…………」

『悲鳴』はありませんでした。
何故なら、千草は完全に『気絶』していたからです。
突き落とされた瞬間には、もう意識はありませんでした。

千草は『スタンドアレルギー』ではありませんが、
『死に対するアレルギー』を持っています。
いわゆる『ネクロフォビア』というものかもしれません。
少し前は、屋上から校庭を覗き込んで意識を失いました。

同じように、『死の恐怖に対する無意識の防衛本能』が働いて、
自動的に意識がシャットダウンしたようです。
つまり、後は全て先輩に『お任せする』という形になります。
お手数ですが――――どうぞ、よろしくお願いします。

660斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/01/11(土) 03:25:21
>>659

『死』、それは誰もに平等に送られる最後である。

 「悪い事したなあ、こりゃ」

僕も割と急いでいたとはいえ
まさかあんな台詞吐く子が落下で気絶するとは思わなかった
……いや、普通は気絶するものなんだろうか?

 「ふーむ……変わったお嬢さんだが、そんなに高い所が怖かったのかね?」

周囲の女性が微妙に個性的なために
普通の基準がいまいちピンとこない……ような
もう1人の後輩に今度聞いてみるべきだろう。

 「ま、『好きにしろ』って言われた事だし、目が覚めるまでは預かっておくか。」

でもサイドカーにバレないように後輩を突っ込んで
『ボーイズギャング』の知り合いに、バイクで走って預けに行くのはどうかと思う。

 「まあ俺達の家に連れてくとさ、ほら、ババアが怖いし」
 「追ってくる連中と起きる前にファイトクラブもいいけど、俺としては穏便な選択肢だと思うぜ?」

……彼女がなるたけ早めに起きる事を祈ろう
下手するとこの奇妙な『放課後F・C編』は、予想以上に長くなりかねない。

661夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2020/01/18(土) 21:42:07

そうか……そうだったのか……!!
ワタシは『いまだかつてダレもしるコトのなかったヒミツ』に、
きづいてしまった……。
いますぐカンケイシャをゼンインあつめてくれ!!
『のろわれたヤカタ』をつつむおおいなるナゾのベールを、
このワタシがときあかす!!
スベテのジケンのハンニン――――
『ハートのじょおう』のショウタイはオマエだ!!

「――――『モナカ』と『サイチュウ』って『おなじカンジ』だ!!」

これは、きっとまだダレもきづいていないにちがいない!!
ヒミツをしったワタシがソシキにけされるまえに、
このジジツをダレかにつたえなければ!!
そうおもって、ワタシはトナリ(>>662)にコエをかけたのだ。

662夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2020/01/27(月) 21:29:10
>>661

「どうよどうよ??どうよどうよどうよどうよ????」

「モナカと最中ですか……。言われてみれば、そうですね。
 気付きませんでした」

「こうしてまたヒトツ、おおいなるミステリーがあきらかになった……。
 しかし、セカイのナゾはかぎりない。
 アリスのボウケンは、はてしなくつづいていくのだ!!」

「アリス先輩とおっしゃるのですか。珍しいお名前ですね。
 高等部の方でしょうか?」

「まあな!!で、キミだれ??」

「中等部一年の三枝千草です。三つの枝に千の草と書きます」

「あぁぁぁ〜〜〜『カンジ』かぁ〜〜〜。
 きくところによると、アリスはカンジがニガテらしいんだよなぁ〜〜〜。
 なに??どうかくって??」

「はい、ええっと……」

そんなこんなでシュウリョウだ!!

663斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/02/14(金) 22:29:58
……今日は何の日か知ってるか?僕はマイクを切ってから声高に叫んだ。

 「――バレンタインだ!!!」

実際にはキリスト教司祭の聖ウァレンティヌスが、禁止された結婚式を毅然と行い、王に反抗して処刑された日だが
今日では日本の商社マン達の不断の努力によってカカオとミルクと砂糖と乙女心を消費する日に云々かんぬん。

だがそんな事が世の中のDK(男子高校生)に何の関係が有ろうか?
年がら年中頭の5割でピンク色の妄想している野郎共も、今日だけは乙女心エンジンフル回転(オーヴァードライヴ)
肩をソワソワさせ鼻息荒く、下駄箱という非衛生的な場所に素敵なラップを施されたチョコレートを夢見る日である。

なお、貰えなかった野郎はその日から1年を非リア充として過ごす事になる
ジュリエットのいないロミオのようなものだ、悲しいね、チャンチャン。

 「だっていうのに、ねー」

窓から外の校庭を見やると、校門の前に人だかりが出来ている
腕章を付けた学生はどう見ても『生徒会』である、右手には袋、左手にはメガホン
……そして袋の中には無数のチョコレート。

 「……生徒会による『チョコ狩り』とはいったい。」

事は数か月前に遡る
切り裂き魔という者ありけり、この事件自体はとっくの昔に沈静化したが
生憎世の過保護なPTAの父母達はこれに過剰反応したのだ、無理も無いとは思う、実際に被害は出ていたのだし。

 (ああ、校門前で麗しのチョコたちが回収されていく……)
 (弁当だという言い訳をしている子もいるぞ、なんと涙ぐましい努力、でも無理が有るとおもうな、その気合いの入ったラッピング。)

放課後には戻されるのだろうが、要はこの事態を狙って不審者だとかが校内に侵入しないようにとの事らしい
ついでにどこぞの風紀にうるさい方々が、学生が学問以外に浮かれるとは何事かと熱弁を振るったりでもしたのだろう、余計なお世話だ
梅の花が奇麗に咲いたこの時世に、このような蛮行を認めて良い物だろうか?いやない。

 「ロマンとチョコの欠片も無い……とはいえ、もう起った事には精々読唇術?くらいしか出来ないしなあ」

    ゴソゴソ

 「『Fly Me To The Moon』……フランク・シナトラ いや、宇多田 光versionあるじゃん こっちだな!」

カセットの一つを手に取ると、僕はそれを差し込んでからスタンドで仕掛けを施した
再生はきっかり30分後、そのタイミングで時間切れと共に僕の『スタンド』は解除される
射程20mというのは忘れがちだが、前後左右だけではなく、上下にも作用される物だ。

つまり、その瞬間に教室にいると、僕にここのカセットを再生できなかったという事になるのだ
実際には遠隔で差し込まれて、遠隔で再生スイッチを押されるのだが。

 「相応しい日には、相応しい曲くらい必要だよなぁ〜〜〜〜誰がカセット持ち込んだか知らないけど。」

そう言いながら放送室を後にすると、階段の踊り場でステップを刻みながら降りていく
先生無し、同級生無し、ミッションコンプリート、完璧だ 練り消しで型を取って接着剤で作った放送室の鍵を靴下の中に滑り込ませると
チャイムが鳴る前に教室に滑り込んで席に着いた、これで放課後までもが楽しみだ。

 (あ、エクリプス参上とか、張り紙でもすりゃあ良かったかな? ……まあいいや)
 (何者か解らない、未知っていうのは一番の恐怖だ。)

清月学園OBの皆様へ…と書かれたPTAのプリントを懐に仕舞い込む
後で飛行機にして飛ばしてやろう。

 (しかし、色々準備しても僕にはこの程度が関の山だ)
 (自動操縦型のチョコレートが歩き回ったりしない物かなぁ……その方が楽しいのだけど。)

664夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』【高一】:2020/02/15(土) 08:44:01
>>663

「――――やあ」

席に着いた時、『それ』は既に目の前にいた。
正確には、『斑鳩翔の机』に頬杖をついて待機していたのだ。
ソイツは『アリス』とか『ユメミン』とか『アルカラ』とか言われてる。
あ、アリスはジブンでなのってるんだったな。
みんな、アリスとよんでくれ!!

「この季節になると、『二種類の人間』がいるよね。
 『歓喜する者』と『嘆く者』さ。
 僕はどちらかって?もちろん『嘆く側』の方さ」

「僕に惹かれる『学校中の女の子達』が、
 一斉にチョコレートを持ってくるんだぜ?
 その度に、僕は『食べ切れないチョコの山』の始末に悩み、
 大いに嘆く事になるんだからね。
 一つ貰っただけで大喜びしてる連中が羨ましいよ」

「――『イカルガショウ』ってコのモノマネなんだけど、にてた??
 なんかさ、こんなコトおもってそうじゃない?? 
 アイツ、マジでキザなヤツだからな〜〜〜」

「あ!!そんでそんで〜〜〜『コレ』みて『コレ』」

      サッ

「ババン!!ナンだとおもう??フフフフフ」

片手を持ち上げると、そこには『小さな化粧箱』があった。
おもむろに、フタを開きにかかる。
ゆっくりと、焦らすように。

       パカッ

「なんと!!『チョコレート』だよ!!
 しかも『アリスモチーフ』!!たべるのがモッタイないな!!」

その言葉通り、箱の中身は『チョコの詰め合わせ』だった。
『チェシャ猫』や『白兎』や『トランプ』など、
アリスの世界を模したチョコレートが入っている。
割かし高そうな雰囲気だ。

665斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/02/16(日) 03:09:31
>>664

 「……夢見ヶ崎?え、今ここまで来たの?」

まず驚いた
正直毎年の事なので今回は放課後に持ち越しだろうなあ、くらいだと考えていた
授業前にくるとは思わなかった。

次に想像力が豊かだなあ、と思う
アリスが言ったようなイベントは確か前にもあったなあとは思う
イケメンに生んでくれた両親に感謝せねば、その時のチョコの数?ノーコメント。

最後に、よく此処まで隠して持ってこれたな、とも思う
あの生徒会が時代錯誤の刀狩りごっこに勤しんでいるというのに
一体どうやって隠し持ってきたのだろう?

だがそんな事を尋ねるより、まずは言うべき事がある。

 「――ありがとう、夢見ヶ崎。」

にっこりと微笑む、スマイル120%、ここで使わず何時使うのか?
周囲の女子達と野郎共が何事かはやし立てている気がするが
今の僕には念仏か真珠の如くであった、華麗にスルー。

 「凄いな、手が込んでる、コレなんか苦労しただろうに……食べて背が縮んだり伸びたりしそうだね」
 「感謝の言葉だけじゃお礼としては足りないだろうけれど、代わりにホワイトデーには期待しといてくれよ。」

そう言いいながらウインクを一つ
しかし見てみるとこの箱は成程、『化粧箱』である
いつも奇麗なネイルをしている彼女なので、持ち歩いていても不思議には思われないであろう

 (禁酒法しかり人間って逞しいのね……)

 「……でも、如何してここまで?」

666夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』【高一】:2020/02/16(日) 08:49:23
>>665

夢見ヶ崎はスタンド使いだし、運が良かったのかもしれない。
具体的な方法は『不明』だ。
いずれにせよ、当たり前のように教室内にいたことは間違いない。

「おい。おいおいおい。おいおいおいおいおい。
 まぁ、そうあわてなさんなって。
 まだ『ハナシのつづき』があるんだから」

「『コレをあげる』だなんて、いつダレがいった??
 コレは『ジブンよう』だ!!
 バレンタインセールって、
 イロイロかわったのがならんでてタノシーよね!!
 ついついショウドウガイしちゃったよ〜〜〜」

「だから、『コレ』はみせにきただけ」

    サッ

そう言って化粧箱を引っ込める。
代わりに取り出したのは別の箱だ。
デコレーションしてあるが、何となく『手作り感』がある。

「――――で、キミにあげるのは『コッチ』。
 ナカミみたい??しかたねぇなぁ〜〜〜」

          パカッ

「さっきみせたのをサンコウにしてワタシがつくったヤツ!!
 ハジメテにしては、なかなかイイできばえだとおもわんかね??
 このウサギのシルエットなんて、
 もうほぼオリジナルとイッショだもんな〜〜〜。
 となりにおいたらクベツつかんよね〜〜〜ゼッタイ」

箱に入っていたのは、先程のものと似たチョコの詰め合わせだ。
アリスモチーフなのは同じだが、やや形が崩れている。
本人の言うように、最初に見せたものを真似て作ったらしい。

「で、なんでココまでって??
 バレンタインっていうイベントにサンカしたかったから。
 『どうせならイチバンノリだろ!!』ってカンジだから、イマきた。
 でも、『かってきたヤツをわたす』ってのも、
 イマイチのりきれてないカンがあるなとおもって。
 どうせサンカするんなら、マジでやったほうがイイじゃん??
 だから『てづくり』。
 てづくりっつっても『カカオ』からつくったワケじゃねーけどな!!」

                 スッ

「だから、ハイ。『300かい』カンシャするように!!」

チョコの入った箱を差し出す。
受け取ろうとした瞬間に引っ込めるということはないだろう。
まぁ、タブン。
いっしゅん、やったらオモシロイかなとはおもったけど。
やるかどうかはベツとして、かんがえるのはジユウだ。

667斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/02/17(月) 01:29:59
>>666

「Oh、じゃあ化粧箱入りっていうのもそういう包装かぁ……恥ずかしいねえ、僕。」

がっかりしましたと肩を竦める
思い返せば確かにあげるとは一言もいってはいないのだ
これが若さ故の早とちりか、認めたくない物である
下げられていく化粧箱、サヨナラチョコレート。

 (でも『9股』かけてチョコ持った彼女達に追い詰められてるパイセンとか見た後だと、この程度の失敗カワイイものでは?)

人の振り見て我が振り直せ、しかしこうしてアリスの話を聞くに
何ともこのイベントに関して真剣に楽しもうとする姿勢は見てとれる
どうやったのかは兎も角、僕達のような『スタンド使い』には色々と抜け道がある物だ
例えば後30分ぐらい後に、校内に鳴り響く音楽とか。

 「……でも僕は夢見ヶ崎がカカオ丸ごと持ってこなくて良かったと思ってるよ」
 「持ってきてたら僕は腹抱えて笑うか、一周回ってソンケーするかの二択だったからね。」

例え超能力を持ってようが、人とは少し違っていようが
結局僕達は学生だし、そういうイベントが有れば楽しみたいのかもしれない

前に海岸で話された事を思い出す
彼女の眼の事を ……今の景色も、彼女には何色に見えているのだろう
夢見ヶ崎のネイルの如く、カラフルに見えているのだろうか?

 「ま、クベツつくかどうかは置いといて、有難く受け取るよ。」
 「勿論、可愛い後輩に頼まれれば、心の中で300と言わず1000でも万でも感謝して……今度は上にあげたりしない?ダイジョブ?」

苦笑しながら顔をほころばせる
ああ、そう考えれば彼女が今を楽しんでいるのは……とても良い事だ。

668夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2020/02/17(月) 17:23:23
>>667

「よかろう。これからも、そのキモチをわすれるでないぞ」

   ポンッ

チョコの入った箱は無事に手渡された。
引っ込めたりはしていない。
そして、そろそろ授業の時間も迫ってきているようだ。

「よし!!やるコトやったし、チャチャッともどるか!!
 いや〜〜〜なんかミョーな『タッセイカン』があるな〜〜〜。
 まんぞくまんぞく!!」

かつては何も映さなかった瞳は、今はキラキラと輝いている。
きっと、これからも眩い光を湛えていくのだろう。
生きている限り、ずっと。

「あ!!もしヒマだったら、またデートしてやってもイイぜ!!
 ただし、ツマランかったらかえるから、そのつもりで!!」

「――――じゃ!!」

            ババッ

そう言い残すと、嵐のように走り去っていく。
口には出さなかったが、チョコを渡したのは『別の理由』もあった。
斑鳩翔からは『不思議の気配』を感じる。
だから、チョコを渡した時の反応を見てみたかったのだ。
しかし、『イベントに参加したかった』というのが、
今回の行動の大きな動機なのも、また間違いない。

669斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/02/17(月) 21:29:07
>>668

去って行く後ろ姿に手を振り返す
隣の席から口を挟まれ、笑顔で軽口をたたいていれば

教室の扉が開き、授業が始まる
2月の窓から差し込む陽光は、薄い雲に遮られて弱弱しくも見える

――欠伸を一つ

放課後はどうしようか?

幽霊部員として、偶には顔を出しに何処かの部活に歩いてみてもいいし
『もう一つの音楽室』に行ってヴィヴァルディの夏の嵐を弾くのもいい
ドビュッシーの月の光も嫌いじゃない、それとも寮でチョコを齧りながら映画鑑賞?
いやいや、『嵐が丘』の続きを読んでしまおうか。

 (デートもいいかもな…次は水族館とか これで、起きると良いのだけど。)

でもまずは、次のイベントの確認を。
授業が終わり、席を立ち、廊下を王様のように歩く

―― 3 2 1 

 「……良い曲だろ?」

670斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/03/25(水) 23:05:20
桜のつぼみが大きく膨らみ、一部の枝は先走ってその花を開く3月
日の傾いた放課後に、僕は校舎の裏側にたっていた
その焼却炉は十数年前の『環境問題ブーム』により今はまったくといっていいほど使われておらず
『ああ、そんなのもありましたね』と取り壊すにも金がかかるのでススだらけで放置されている有様だ。

そしてこの学園にも無視し難い学生たちの話の種という物がある
――『七不思議』である。

(まあこのマンモス校の生徒数とその入れ替わりの数のせいで、内部事情がコロコロ変わるんで)
(七不思議と言っても8個あったり6個だけだったり上と下のクラスで内容が全然違ったりするんですけどね。)

アットホームな笑顔の絶えない噂です、ブラック会社の人材募集ばりに見境ねぇなーー等と考えつつ
抱えてきた『ラジオ』と『トランシーバー』を少し離れた場所に置く
普段なら不良グループがいじめられっ子をカツアゲかましてるような場所だが、偶々人がいなかったのは有難い
此処に来たのは一つの噂話の調査の為だった。

  『今は使われていない焼却炉の中から焼かれた者の声が聞こえる』

 「すごくうさんくさい。」

その話の第一印象はそれだけだ
そもそも話に出てくる『焼かれた者』が噂の常とはいえはっきりしないのだ
『犬』や『猫』だったり『いじめられた生徒』だったり…その場合は事件になっているだろうが…だが
この話が他の七不思議と違う点はただ一つ 『声を聴いたと断言する生徒が奇妙な事に多い』 という一点だけだ。

 (一応、そうなんじゃないかなーと確かめる手段は持ってきたんだけど。)

『スタンド』案件ならいくら呑気な自分でも無視はできない
そうして確認用の手段と共に此処に来たのだ……が。

 「……やっべ、僕一人だと確認無理では?」

足元で尻尾を揺らしている、餌の事しか考えてない猫は『スタンド使い』ではあるが
こういう点ではまったく協力しない女王様気質なので意味とか無いです。

 「じゃあ自分のスタンドをつか……纏うタイプだったわこの射程0」

詰み申した 出来ない事はどうあがいても出来ないのはこの世の摂理である 漫画やアニメなら兎も角
気合と根性と凄みで覚醒したりとかはしないのだ、ドのつく擬音を撒き散らしながらポーズ決めても駄目です。

 (――ここで待ってたら同じ噂知ってる誰かが来ないかな できれば話通じてチンピラじゃない奴とか。)

遠い目でそんな事を考えながら、誰もいないのをイイことに次のダンスで使うポーズ決めつつラジオのチャンネル用ツマミを弄っている僕でした
今ならスマホアプリで聞けるってのにカセットオンリー対応のラジオとかもう骨董品だよコレ。

671三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2020/03/26(木) 22:05:21
>>670

『手押し車』が置かれていました。
その上には、『雑草』が山積みになっています。
そして、手押し車の陰に千草がいました。
『草取り』をしていたからです。
先生に頼まれたのではなく、『自主的』です。

  ザッ

「斑鳩先輩、こんにちは」

        ペコリ

人の気配を感じて立ち上がりました。
『ジャージ』を着て『軍手』をはめた千草が見えると思います。
片手には『スコップ』を持っています。
『野外活動用』の格好です。
そういえば、前にお会いした時、
『窓から突き落とされた』ような気がします。
『記憶が飛んでいる』ので定かではありませんが。
思い出そうとすると、また意識が消えそうなので、止めておきます。

672斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/03/26(木) 23:57:49
>>671

 「……良い所に来てくれたぞ我らが愛すべき後輩!」
                                                                                  ベネ  
 「ハイ、コレ持ってー、君、声は良く通る方?ああいいんだ例えガラガラでも声が出せればALLオッケーカナリアのように美しければなお良し。」

そう言うと美作の手に『トランシーバー』を渡し、本人は急いで『焼却炉』の方へ翔け、耳を当てる
今までの行為が充分奇行の内に入るが今更である。

 「はーい、そのトランシーバーの『スイッチ』押して何か台詞言って見て―、何でもいいよー僕への告白なら常時受け付け中です。」
 「偶然知ってしまったけれど黙っておくには辛い事でもオッケーです、カモン後輩!」  ビッ

673三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2020/03/27(金) 00:20:45
>>672

「『告白』――ですか?」

その言葉を聞いて、首を傾げました。
よく分かりません。
でも、それは置いておきましょう。

      ピッ

「斑鳩先輩――その……」

「……いえ、『何でもない』です」

この前、千草を窓から突き落としましたか?
そう聞こうかと思いましたが、止めました。
何だか『眩暈』がしたからです。
ここで気絶すると、先輩に迷惑が掛かります。
先日も、絆創膏をくれた親切な方に助けて頂きましたから。

「先輩、千草の勘違いかもしれませんけど――」

ボタンから手を離して、トランシーバーを下ろします。
その時、風が吹きました。
何本かの雑草が、先輩と千草の間を流れていきます。

「――この距離なら、普通にお話出来そうな気がします」

674斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/03/27(金) 00:33:31
>>673

 「ああ、うん 勘違いでは無いんだけど 説明を吹っ飛ばすのは僕の悪い癖だな ごめんなさいね。」

例え超能力者だろうと話さなきゃ伝わらないんですよとどこぞの天パも言っている
しかし何処から説明した物か、数秒うなってから決めた。

 「いや実はさ、ここに焼却炉があるでしょ?」
 「この中から七不思議による『声がする』って噂が今広まっている(かもしれない)ので、その噂の検証だね。」

証明されたら?特に決めてはいないが新聞部にでも売りつけてみようか
こういうのは検証するのが楽しいのだ。

 「予想が正しければ……『聞こえる』筈なんだよな、というわけで」
 「必要性の話ではなく、検証のはなしなんだ、そういうわけで赤裸々に青春の叫びを……あ、大きいと聞こえないから意味無いな?」

トランシーバーを指差しながら告げる

 「できればひそひそ『それ』に話しかけて?」

675三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2020/03/27(金) 00:50:35
>>674

「『その中』から聞こえるんですか?」

焼却炉の方を見ました。
そんな話があるなんて知りませんでした。
斑鳩先輩が事情通なのでしょうか。
それとも千草が情報に疎いのでしょうか。
もしかすると、その両方かもしれません。

「はい、先輩が『そうして欲しい』と言われるなら」

トランシーバーを持ち上げます。
でも、まだボタンは押しません。
分からない所があるからです。

「でも、どうして『これ』を使うのでしょう?
 声が聞こえるなら、待っていれば聞こえてくるのでは……」

「静かにして、耳を澄ませておけば……」

今日の千草は、
何だかいつもより細かい事が気になるみたいです。
『記憶が飛んでいる事』と関係があるのかもしれません。
ともかく、先輩に頼まれていますので、ボタンを押しましょう。

「――もしもし」

676斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/03/27(金) 01:35:37
>>675

 「ああ、君は賢い 確かにそのまま静かにすれば、僕の耳に声が聞こえてくる」

焼却炉に耳をあてながら、聞こえてくるか細い無数の声の中から目当ての声が聞こえるのをじっと待つ

 「でもそれだと『噂』通りだというだけで、『どういう原理でどう起こっているかの確認』にはならないのさ……よし、三枝ちゃんの声が聞こえた!」

立ち上がり、膝を払うと学生服の襟を正しながら、満足げに頷いた。

 「――やっぱりこの焼却炉、『電波を受信』して何処かが振動してるみたいだな、それが話声として聞こえると。」
 「前に知り合いの歯医者がこんな事を言っていたよ、『患者の1人が毎晩幻聴に悩まされている』と」

 「でも、実際は幻聴じゃない 歯の詰め物が『FMラジオの電波を受信していた』んだ」
 「お陰でその詰め物から骨伝導かしらないけど、ラジオが幻聴のように聞こえてたんだろう……えーと」

傍にある骨董品のようなラジオを弄り始める、今時このサイズ持つのは金の無いラッパーくらいの物だ。

 「確か焼却炉から聞こえたラジオ番組が…ビンゴ!」
 「幽霊の正体見たり枯れ尾花 だっけ? 種が解るとこんな物だねぇ……『スタンド』じゃあなかったか。」

検証が成功したので嬉しいような、少しがっかりしたような、何にせよ斑鳩は満足げだ。

677三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2020/03/27(金) 01:59:13
>>676

「千草にも、先輩の言われる事が分かりました。
 だから『これ』が必要だったのですね」

最初は分かりませんでしたが、これで納得出来ました。
斑鳩先輩は、とても賢い方のようです。
同時に、前に聞いた事のある話を思い出しました。

「千草の親戚が、
 『独りでにスイッチが入るストーブ』を持っていました。
 誰もいないお休み中の事務所から火が出て、
 その火元が『ストーブ』だったとか――」

「『心霊現象』かと思われましたが、
 実際は不法に増幅された『違法電波』が原因だったそうです。
 それをストーブの回路が受信して、
 誰もいないのにスイッチが『オン』になって出火したと」

「この学校でも、そんな話が見つかるなんて思いませんでした。
 先輩のお陰で、変わった体験をする事が出来ました」

    ペコリ

「――ありがとうございます」

先輩は満足していらっしゃるようです。
それに貢献出来たのなら、千草にとっても嬉しい事です。
『誰かの役に立てた』という事なのですから。

678斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/03/28(土) 00:54:09
>>677

 「? ……まあお礼を言いたいのはこっちではあるんだが、どういたしまして?」

襟元のスカーフを弄りながら首をかしげる
そういえば時に気にしていなかったが。彼女はどうして此処にいるのだろうか?
空を飛んで来たとかだろうか?違うか。

 「うん、そういえば君の言っていた……あー 何だったかな クロガネ?君辺りには会ったよ」
 「多分、いい友人になれると思う 彼は少し驚いていたみたいだったが。」

確かスタンド使いだという事を彼は知らなかったらしい
忘れていた可能性も有るが、ここをほじくり返すのは拙い気もするのでスルーしとこう、僕に関係ないし。

 「よければ、彼と何時知り合ったか聞かせてくれないか?」

679三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2020/03/28(土) 01:17:02
>>678

「それは何よりでした。斑鳩先輩と鉄先輩は同じ学年でしたね」

    ニコリ

斑鳩先輩の言う通り、
きっとお二人は良い友達になれると思います。
千草は、その『橋渡し』になれたのでしょうか。
もしそうなら嬉しいです。

「『いつ』――ですか?」

最初に出会ったのは『神社』でした。
歩いている内に、道に迷ってしまったのです。
あれは確か……。

「ハッキリとは覚えていないのですが、
 大体『一年くらい前』でしょうか?」

「鉄先輩とは『町外れの神社』でお会いしました。
 道に迷っていた時に、助けて頂いたのです」

「斑鳩先輩、それが何か?」

680斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/03/28(土) 01:44:01
>>679

――1年?

 「ああ、いやね?彼も随分、君と親しい間柄のように見えたから 結構長い付き合いなんだね。」

1年友人でいて解らなかったのはどういう事なのだろうか
某海のナントカの如くというのは考え難いが。

 「……そうだな、彼は随分とお人よしそうだからな」

その優しさのせいで主、に彼女と『スタンド』を関連付けなかったというのもあるのだろう

 (呑気だと呆れるべきなのか、平和だと喜ぶべきなのか。)

何時か彼は年上の肉食系女性に(色々な意味で)美味しく頂かれそうな予感がする、戯言だけどね
僕は彼の幸福を祈って何処か遠い目で空を見つめた 色々は色々です。

 「ま、邪魔して悪かったけど、代わりに何か手伝えたりする? ……そういえばここで何をしていたんだろう。」

681三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2020/03/28(土) 02:05:05
>>680

「『草取り』です。雑草を引き抜いて『そこ』に入れているのです」

傍らの『手押し車』を指差しました。
そこには『雑草』が積もっています。
おそらく、これくらいで『十分』でしょうか。

「では、この手押し車を傾けて頂けますか?
 千草は、あまり力がないもので」

「根っこに付いた土で、だいぶ重たくなっていると思います」

  ズッ…………

     「『イッツ・ナウ』――――」

               ズズッ…………

             「――――『オア・ネヴァー』」

千草の背後から『幽鬼』が姿を現します。
それはシャベルを肩に担いだ千草の『墓堀人』です。
『墓堀人』を出したのには『理由』があります。

        ザクッ
              ザクッ
                    ザクッ

もちろん、『墓穴』を掘るためです。
『雑草用』なので、そんなに大きな穴は必要ありません。
ですから、すぐに『埋葬』の準備が整いました。

「斑鳩先輩――
 お手数ですが、『この中』に入るように傾けて頂けますか?」

682斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/03/28(土) 02:12:54
>>681

 「僕も力押しは得意じゃないんだけど、男の子として任されました」
 「……結構多いな、何時からやってたんだ?」

実際パワーがないのは悲しい事である、それが原因で負けた事は……特に無い、大体の場合は判断ミスだった、閑話休題
これも学校の一備品なのであろうと、手押車を押し『墓穴』にかたむけて草を流し込む。

          ドサドサドサ

見た目はあの健康食品を流し込んだ胃袋といった所か。

 「はい、流し込みましたよ 後輩」

……しかし、此処から如何する気なのだろう?

683三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2020/03/28(土) 02:33:04
>>682

「ありがとうございます、先輩。
 『後始末』は千草がやっておきますので」

       フッ――――

ただ『墓穴』を『解除』します。
後に残るのは、『元通りになった地面』だけです。
もし掘り返したとしても、そこからは何も出てきません。

「『墓穴』が消えた時、『埋葬された物』も一緒に『昇天』します」

「――――これで『完了』です」

        ズズッ…………

『墓堀人』が、千草の身体と重なるように消えていきます。
あの雑草が『何処へ行ったのか』は分かりません。
少なくとも、『この世界ではない何処か』でしょう。

「あっ、まだ仕事が残っていました」

「『スコップ』と『手押し車』を、
 倉庫に返しに行かなければいけませんでした」

大切な事を忘れる所でした。
それを済ませたら、『本当の完了』です。
『軍手』は私物なので、返さなくてもよいのです。

684斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2020/03/28(土) 04:33:25
>>683

 「……こうして見るのは初めてかな、その『能力』。」

埋葬された物が昇天する…というのは抽象的だが、恐らくは消滅したと捉えて問題ないだろう
改めて考えると中々面白い力ではある。

(それ故に、どうも『他人の役に立ちたい』…という軸線上に、このスタンドが出てくる理由が思いつかない)
(鉄の願いとそう変わらないように見えて、根底にあるものが違うのか……ま、願いが変わらないなら僕の『敵』ではないだろう。)

      パチ パチ パチ

 「ん、お疲れさま きっと頑張ったのだろうし、今後も君のことを応援させてもらうよ。」
 「――それじゃあ、また。」

何せ、自分の助力とかが彼女に必要になる日が来るとも思えないのだから
平穏というのは退屈の異音同義語である、それ故に手に届く価値が有るのだろう。

685三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】:2020/03/28(土) 19:05:38
>>684

「はい、それではまたいつかお会いしましょう」

「どうもありがとうございました、斑鳩先輩」

  ペコ

手押し車にスコップを置いて、両手で押していきます。
こうして一つずつ積み重ねていきましょう。
いつの日か『安らかな最期』を迎えるために。

(そういえば――)

(『鉄先輩が驚いていた』というのは何だったのでしょうか?)

(また今度、聞いてみましょう)

                  ザッ ザッ ザッ

686<削除>:<削除>
<削除>

687黒羽 灯世『インク』【中3】:2020/03/31(火) 01:47:56

『新聞部』の部室を抜け、屋上に繋がる階段に座る。
特に意味は無い。うろついていたら、座れる所があっただけだ。

            …パラ

                …パラ

「……」

膝に置いたメモ帳をめくり、思考に耽る。
追っている事件の調査録に、『確定事項』はほとんどない。

――――事件。

『触れてもいないのに人が吹き飛んだ喧嘩』だ。
それは黒羽目下最大の興味である『スタンド』とも、
恐らく無関係ではない……はずなのだが。

(……手がかりはある、なのに踏み込めないのだわ!
 目撃者は被害者を含めて……少なくても、いるにはいる。
 でも、目撃証言はあいまいだったり、どこか『一致しない』!
 『そういうスタンドだから』なんて、考え出したらキリがないのだわ!)

     (……事件発生から、もう時間が経ちすぎているのもまずい。
      ……これを追う間に『旬を逃した』ネタもある。
      ……分かってる部分も、公に出す『新聞』にするのは難しい。
      私は『探偵』じゃなく、『記者』よ……考えなきゃならないのだわ)

その姿は階下からでも目立つし、屋上から出てくる者がいれば、もっと目立つだろう。

688志田忠志『イヴ・オブ・サルヴェイション』【大三】:2020/04/01(水) 23:17:19
>>687

「――……?」

たまたま通りかかっただけだった。
ちょっとした用事を済ませてきたからだ。
その内容は、特に言うような事でもない。

(随分と『真剣』だ。熱心だなぁ)

(ああいうのを見ると、僕も頑張らなきゃいけないと思わされるね)

(何をあんなに真剣に取り組んでいるのかは知らないけど)

ごく一般的な普通の感覚として、そう感じる。
そのせいか、無意識に足を止めて、そちらを見た。
ドス黒い程に濃い隈のある二つの目が、少女を眺める。

689黒羽 灯世『インク』【中3】:2020/04/02(木) 01:04:02
>>688

ふと、顔を上げると―――――

「――――…………!?!?!?」

                 ドタッ

恐ろしい顔があったので、姿勢を崩した。

「な、何……!?」
(前に取材した『ヴィジュアル系音楽サークル』の人!?)

               (……じゃないのだわ、誰!?)

なぜ視られているのか。
知り合いではないのは確実で、
取材をしたくらいの間柄も無かった。

黒羽の夕焼け色の双眸に困惑の波が揺れる。

「何……何か用かしら! 見ているだけじゃわからないのだわ」

が、露骨に驚いたままでは負けた気がするので、
マウントを取り気味に話しかける事で『優位性』を取りに行く。

690志田忠志『イヴ・オブ・サルヴェイション』【大三】:2020/04/02(木) 01:28:29
>>689

「ああ、そうだね。悪かったよ。
 別に用事がある訳じゃあないんだけど」

そのように答えたのは、痩せ型の青年だ。
全体的にやつれた雰囲気で、あまり元気そうには見えない。
しかし、話し方は至って普通だった。

「ちょっと目についたんだ。随分と熱心な様子だったから」

「ただ、それだけだよ」

メモ帳に視線を向け、申し訳なさそうに肩を竦める。
どうやら『マウント』は取れたようだ。
そして、再び視線が少女に向かう。

「ついでに、何をしてるのか聞かせてもらってもいいかな?
 もし邪魔でなければね」

  スッ

声を掛けて、階下から一歩近付く。
まだ十分に距離がある。
断られた時は、このまま大人しく帰るつもりだった。

691黒羽 灯世『インク』【中3】:2020/04/02(木) 02:21:37
>>690

「目についただけ――――」

        キョロ  

            キョロ

「確かにここでメモをしてたら『目立つ』のだわ。
 私だって、そこは分かってないわけじゃないの」

(改めて見ると、案外普通の人ね。
 それにあれは、メイクじゃなくて『クマ』?
 ……それはそれで気になるのだわ。
 この人は『何』? ……高等部ではなさそう。
 大学部? それとも、新任の教師か何か?)

(事件に関係は……もしなくても、
 話したことのない人と話すのは、
 何か刺激になるかもしれないわね!)

「フフッ、気になる? 何だと思う? 『部活動』の一環よ。
 良いわ良いわ、邪魔じゃないからこっちにいらっしゃい。
 ……見上げて話すのは、首が疲れるのだわ。だから」

      チョイチョイ

       「私より一段か二段くらい下に座ってくれる?」
 
指先を階段の、少し下の段に向けてから、手招きをした。

黒羽も流石に物理的な高低差まではたいして気にしてはおらず、
話した通りの理由だ。黒羽は長身だが、男子大学生の域ではない。

692志田忠志『イヴ・オブ・サルヴェイション』【大三】:2020/04/02(木) 02:41:51
>>691

「ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えて座らせてもらうよ」

了承を得た所で、そのまま距離を詰めていく。
近付くと、『不健康らしさ』がより鮮明に分かる。
何週間も、あるいは何ヶ月もまともに眠っていないと、
こんな顔になるのかもしれない。
もしくは『何年』も。
とはいえ、足取りは確かで、急に倒れるような事はなさそうだ。

「――それで、『部活動』だって言ったね。
 調べ物でもしてるのかい?調べ物をする部活というと……」

「少なくとも『運動部』じゃなさそうだ。
 それだけだと、まだまだ絞り切れないなぁ」

階段に腰を下ろし、考えながら言葉を続ける。
学校が大きいと、部活動の種類も多くなる。
『文化部』だけでも、結構な数があった筈だ。

「ええと――『文学』とか、そういうのかな?当てずっぽうだけどね」

693黒羽 灯世『インク』【中3】:2020/04/02(木) 04:03:53
>>692

(……やっぱりクマだわ! でもでも、それはいったいどういうこと?
 徹夜でテスト勉強をしても、こうはならなさそうだけど……
 大学部の『研究室』は忙しいというし、そういう人なのかしら?)

黒羽は志田の姿を一通り視線でなぞる。
不健康。どころか、見てるこちらも『不安』になる程だ。
ともかく、座った互いの視線はほとんど同じ高さになる。

「文学は、近いのだわ。
 物を書いてるし、調べ物をが必要なのもそう。
 でも……決定的に違うところがある。
 おわかりかしら…………『新聞部』よ。私は『記者』」

「フィクションは無いってことよ、フフッ」

フィクションをやらかす記者も、いるだろうが。
そのような皮肉を投げられないことを祈りつつ……

「それで、まあ……単刀直入に言ってしまうけど、
 追ってる事件があるの。私だけが仕入れた『特ダネ』!
 公表出来るかはともかく、私も知りたいビッグニュース」

「でも、調べれば調べるほど泥沼というやつね。……その事を考えてたところよ」

そんなちょっとした懸念以上に、現実の厳しさこそ黒羽にのしかかる物だ。

694志田忠志『イヴ・オブ・サルヴェイション』【大三】:2020/04/02(木) 10:07:05
>>693

「はは、確かに君の言う通りだ。
 新聞記事がフィクションじゃあ困る。それは大事な事だね」

だが、記者も人間だ。
時にはミスを犯す事もある。
たとえば、自分では意図せずに、
フィクションになってしまう場合もあるだろう。
そんな事を考えたが、口には出さなかった。
何となく、言わない方が良さそうだと感じたからだ。

「それにしても『特ダネ』か……。気になるなぁ」

そうはいっても、学校の新聞部員が取り上げるものだ。
まさか世間を騒がす程にセンセーショナルな内容とは思えない。
ただ、気になるのは事実だった。

「それが秘密じゃなければ、是非とも教えて欲しいな。
 行き詰った時は、『新しい風』を入れるのも悪くないと思うよ。
 関わりのない人間に話してみる事で、
 何かしらの取っ掛かりが見つかるかもしれないしね」

「もっとも僕は素人だから、大した助けにはなれないと思うけど。
 でも、ちょっとした『気分転換』にはなるんじゃあないかな」

「それはそれで、
 今まで見えてこなかった何かが見えてくるかもしれないよ」

こちらは『特ダネ』の内容を知る事が出来る。
そして、彼女も『新鮮な意見』を聞く事が出来る。
お互いに『得』があるんじゃないか――要するに、そういう話だ。


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