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Key Of The Twilight

1イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/01(火) 19:01:24
移動してきました。

現在、参加者の募集はしておりません。

279ナディア、リト ◆Q4V5yCHNJ.:2014/12/14(日) 22:30:46
【飛行艇】

「よし、じゃあ任せた」

ジュノスの返しに満足し、ナディアはニッと笑ってみせた。

「今回の首謀者がまさかの父親。あまりに近い人なもんだから、若干人間不信的な?まぁそれは半分冗談だけど、取り敢えずそろそろ屋敷の人間を敵か味方か振り分ける必要があるかなって思うんだよね。」

そしてポンっとジュノスの肩を叩く。

「手始めに今から会う爺さんを宜しく。」


------

【過去】

痣を見つけたアブセル。
途端、リトは彼の腹を思い切り蹴り飛ばして急いで身体を隠す。

「……ケホっ」

一瞬の動揺が引き金となったのか。
突如リトの口から咳が漏れる。

「ゲホっゴホっ」

それは次第に酷くなり、リトは苦しそうに踞った。

280リマ:2014/12/14(日) 22:54:45
ヤツキ>>
いいなーっ北海道!!
人生で一番楽しかった高校時代に修学旅行で行った思い出の場所!!また行きたいなー> <

イスラ>>
ようやく書きたかった奴の一つ、ジルとの絡みが書きあがりましたーっ
時間軸めちゃくちゃだけど( p_q)

了解です!もしかしたらお願いしちゃうかもしれません(。。;)

うわー…なんか恐怖を感じます←

前編は結局見れなかったのでDVDで我慢します(≡ω≡;)可愛いシエルは前編の方が多かったんだけどなー…まさか抜け駆けさせるとは(笑)
友達の方は「実習中で大変だと思って誘えなかった」だそうです(笑)お互いの思いやりがすれ違いを呼んだ(笑)
いえ、友達は一番くじの件で私には勝てないと認識してるようですw
てか別の友人に久しぶりに再会した時ラストワン手に入れたこと言ったら「あんたならやり兼ねないと思ってた」って言われた…あれ(**)?

可愛いですよーっシエルにお似合いですp(´∇`)q
嫌いではないけど、あんだけシエル好き好き言ってる割には気付かないんだなぁって思うとなんだかなぁって。

ビックリですよねw自分学校で読んじゃったもんだから「えぇ!?」って声出しちゃいましたよ←
因みに白龍ちゃんは次の週にママに噛みつきました。何この親子ww

最初からww
もっとサバサバしてる子にしたかったのに、意外に思い悩んでる感じになってしまってるんですよねー…

ジルが付いてくると面倒ですよ?(笑)

281メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/12/16(火) 00:30:00
【バルクウェイ闘技場】

異能者を狙う二人組みの話を聞き、メイヤは記憶を辿る。

(そう言えば、弥都でそんな奴と戦ったような……)

しかし、続く言葉とサンディの慌てふためく声が思案するのを妨げる。

「なっ……いや、俺達はそう言うのじゃない。

四神は護衛対象だったし、その。」

……確かにそうだ。

今は手を繋いでいないが、つい先程まではしかと手を繋いで街中を歩いていた。

マルトがそれを見ていた事は無いだろうが、連れ立って歩く自分達二人の姿は“そう”見えてもおかしくない。

見れば隣のサンディは顔を赤らめている。

しかし、マルトの言葉……その単語を否定的するのも何故か気が進まない。

「ハハ、お前達初々しくて面白いな。

団長が見たら酒の肴に一晩どころか3日は弄られるぞ?」

どう返すかを考える内にマルトは笑いだし、“そろそろ控え室が開くから集まっておけよ”と言い残してその場を立ち去って行く。

その背が人混みに消えたのを確認し、メイヤはサンディに声を掛けた。

「……その、悪い気はしないけど何だかもぞもぞするな、うん。」

【リマ》俺も高校の時以来だわww社会人なると、業種にもよるけど中々まとまった休みが取れんからねー。

学生の内に旅行するべきやね!】

282サンディ他 ◆Hbcmdmj4dM:2014/12/17(水) 19:24:27
【闘技場】

言いたいことを言えば、マルトは笑いながらその場を去っていく。
どうやらただ単にからかわれただけの様だ。

(全く…いきなり変なこと言うからビックリしちゃうじゃん…)

サンディはむくれっ面でマルトの背を見送るが、そこで不意にメイヤの声が耳に入ってきた。

「そうそう、悪い気はしないけどー……って、…ぅええ…っ!?」

それって一体どういう意味だ。
驚きのあまり思わず変なポーズで仰け反ってしまうサンディであったが。直後、そんな二人の間を割る形で、突然一人の男が倒れ込んできた。

―――…

熱気と喧騒に包まれる闘技場。そこかしこから感じる剥き出しの闘志。
そんな会場の雰囲気に、シャムの血も徐々にたぎってきた様だ。

「恐喝か…それとも力ずくで行くべきか…、それが問題だ…」

どうやって出場するかを問うフィアの声を背に、シャムはキョロキョロと目ぼしい人物を探しながら屋内から外に出る。

と、丁度その時だ。

「ちょっと…!?どうしたの!?」

娘のものと思しき大きな声が飛び込んできた。
見れば先ほど飛行挺の中ですれ違った赤毛と黒髪。
その二人に挟まれる様に、地にくずおれた男が一人…。

「…アグルに大会のことを聞いたんで此所まで来てみたんだが…、何か途中で寒気がし出して…頭くらくらして…」

地に伏していた男の正体はイスラだった。
どうやら熱があるらしい。それもかなりの。
イスラの額に手を当てていたサンディは呆れた風に言う。

「病み上がりなのに無理な稽古続けるからだよ…。
この分じゃ出場は無理だね。医務室とかで休ませて貰った方が良いよ」

「え…、嫌だ。出る…」

「めっ、です!」

そんな目の前の光景を見据え、シャムはニヤリと口の端を歪めた。

「…どうやら面倒なことをする必要もねーみてぇだな」

283ジュノス他 ◆Hbcmdmj4dM:2014/12/17(水) 19:29:03
【飛行挺】

なるほど、例えるのなら良い豆の中からそうじゃない豆を選別し取り除く。それと同じことをしろと言う訳か…。
結果いかんでは、彼女は屋敷の人間を一新させる気なのかもしれない。

……って。
どうしてそこでそんな重大な役目に自分を起用しようと考えた!?

彼女の家の事情に関しては全くの無知。
言うなれば余所者、部外者、第三者。

しかもさっきの爺さんと言えばアブセルの祖父で…同種の闇の気を感じたことから、恐らく自分との血の繋がりもあるのだろう。
向こうも何かを感じ取ったのか、先ほど顔を合わせた際、怪訝な顔をされた為、あまり会いたくはないのたが…。

…何だか断れる雰囲気ではない。て言うか断っても多分ムダっぽい。

「…………」

ジュノスは何も言わず、ただ彼女への返事の変わりに、顔に引きつった笑みを浮かべるだけだった。


――…

「ご当主様…!」

船から降りてくるナディアとジュノス。
その姿を見つけるや、老翁はハッとし、彼女に駆け寄った。

「今まで一体どちらに行っておられたのですか!?爺めは心配致しましたぞ!」

仕事の場面ではいつも物静かで寡黙な彼ではあるが、今日は珍しく声を荒げている。
しかしそんな自分に気がついたのか、老翁は直ぐに態度を改め、小さく頭を下げた。

「ああ…いえ…、誠に失礼いたしました。
ご当主様にはまず初めに御悔やみのお言葉を申し上げるべきでした」

言って、彼は哀悼の意を表す。

ナディアの父親に何が起きたのか…アブセルからの話しではまるで意味が解らなかった。
もっと詳しい説明を求めたいところではあるが、それは一先ず屋敷に戻ってからにした方が良いだろう。

「旦那様の御遺体は棺と共に既にお車の方へ移しております。戻ったら直ぐにご葬儀の準備に取り掛かって…」

そこまで言って、老翁はふと何かに気がついた。顔を上げ、辺りを見渡した。

「そう言えば…リトお坊ちゃんのお姿が見えませんね…?
此方にご一緒していらっしゃるとお聞きしたのですが…」

284アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/12/17(水) 19:59:53
【過去】

「いった…!何すんだ馬鹿ッ!」

リトに蹴られ地面に尻餅をついたアブセルは、いきなり何をするんだと怒り、声を上げる。
しかし腹を立てるのもそこまで。
苦しそうに踞るリトの様子に気がつくと、不思議そうに目を瞬かせてその姿を見た。

「……どうしたの?」

しかし返事は返って来ず、リトの咳も一向に止まる気配がない。それどころか症状は酷くなる一方で…。

まさか病気だろうか?
そう言えば彼は身体が弱いらしいし、ナディアも出掛ける前に身体を動かす遊びを禁じていた。

「…お…おい…?もしかしてお前……、しっ…死なないよな…?」

アブセルは何だか怖くなる。おろおろと狼狽え、リトに、周囲に目を走らせた。

…どうしよう。
とにかく早く帰って皆に知らせないと。

胸の内に動揺を抱えたまま、アブセルはリトの側にしゃがみ、背中を向けて言った。

「乗れ!直ぐ邸に戻るぞっ!」

285イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/12/17(水) 21:41:36
【ヤツキ》北海道ですか!いいですね!
まぁ冬だし、多少太ってもしょうがないってことにしときましょう(笑)
なるほど、そう言う仕組みですか。了解しました^^


リマ》ひゃ〜(/ω\*)、ジルとヨノのやり取りにドキドキ…!←
以前書いてたミレリアの過去話はあれで終わりですか?

了解です^^
てかアブセルの爺ちゃん、屋敷のあれこれにどこまで関わってることにしよう…
執事のくせにリト父の悪事とか全く知らない、じゃ何かアレだし…
ミレリアにリトのことを拒絶する暗示(闇の力で)とか掛けてた位した方が良いのかな…とか思うけど
そこまでいくとアブセルが爺ちゃんのこと超絶嫌いになっちゃうしなぁ(笑)どうしたらいいと思います?←

しかも私服はゴスパンク
年相応に振る舞うって大切なことなんだと改めて思いました(笑)

見事なすれ違いっぷり(笑)友達にそこまで言わしめるとは流石w

なるほど…、エリザベスって金髪ロリなのに何かときめけないんですよね…

怪しい人だ…(笑)
荒れた家庭ですねwてか白龍ちゃん相変わらずママ嫌いなんだw

何か自分が当初考えてたのとは大分違う感じになっちゃいましたw
まぁたまには良いんじゃないでしょうか?そっちのが好感度あがるし(笑)

確かに…兄妹に部屋占領されて自分隅っこに追いやられそう(笑)そして仕舞いには家から追い出されるんだ…←】

286メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/12/18(木) 22:58:14
【バルクウェイ闘技場】


自分は何か変な事を言ったのだろうか?

謎のポージングで仰け反るサンディの姿に、メイヤは口を開くも続く言葉は出なかった。

「なっ……」

何故なら、サンディとの間を割る様に、赤毛の男……イスラが倒れて来たからだ。

どうやら彼は無理して稽古に励んでいたらしい。

彼が何故、そうまでして剣を振り続けたのかは想像が着くが……

「取り敢えず、サンディの言う通り医務室へ行こう。

大会出場者と言えばすぐ案内してくれるだろうし、闘技場に必ずある筈だ。」

メイヤはイスラに肩を貸し、彼をおぶって立ち上がった。

そして、闘技場へと向かおうとしたその時。

「アンタ……飛行艇で会ったチンピ……客人じゃないか。」

此方を見つめ、ニヤリと笑う眼帯の男を見つけ、思わず声を掛けてしまった。

【イスラ》まぁ太った所で適性体重なんでそんなに気にならないのは、あるんだけどww

また何かあれば聞いてくだせぇー!】

287ナディア、リト ◆Q4V5yCHNJ.:2014/12/20(土) 20:15:32
【飛行艇】

「え、リト?」

過剰に心配していた旨を告げてくる老人を軽くあしらっていたナディアであるが、彼からリトの名が出た途端上擦った声を上げる。
こんなに早く話が出てくるとは思っていなかった。

「あー、リトね!今は部屋で休んでるよ。後で合流する。…てゆーか、爺、あんた知らないの?」

今に至るまでの経緯を全てアブセルから聞いた。
リトは一時屋敷に戻り、父親の手によってこの場所へ連れ出された。
屋敷の重役であるこの老人が把握していないと言うのか。

「うちのバカ親父、リトを殺そうとしたんだ」


----------


【過去】

苦しい。
咳が止まらず息が出来ない。

「…っ」

向けられた背に手を伸ばすも、それ以上力が入らない。
症状も酷くなるばかりで、とうとう地に倒れこんだ。

288リマ:2014/12/21(日) 12:34:10
メイヤ>>

だよねー> <
遠出とかしなくて良いからディズニーランドとかシー行きたい!
大学の友達そうゆうの好きじゃないから全然遊びにいけない(T ^ T)
高校の友達は社会人だからディズニー行く余裕ないし!!


イスラ>>
ドキドキですか?(笑)
自分は書いてて「うわ〜…(蕁麻疹)」ってなりました← 真夜中の不法侵入で明らかに怪しい男に警戒心ゼロな女ってどうなの!←
ナディアとジルは歳離れてるけどヨノだったら2、3歳違うだけなのでまだ許容範囲かなぁ。この先恋愛に発展するか分からないけど!!
しかし手の早いジルがヨノにチューすらしなかったのは凄い!彼はきっと好きな子に対しては傷つけたくないから慎重になる派です(笑)ヨノは初恋の相手だったり?←

ミレリアの過去はまだまだ続く予定です!結末をすでに考えてあるせいか、そこに辿り着くまでどう持っていくか、ネタが思いつかず進んでません(;-ω-)ゞ
てかミレリアって何かどうしようもない子に見えて来ました…トーマが本命だけどヨハンも好き!って何やねん!!

聞かれたw
暗示のアイデア、自分的に凄く惹かれました(´∀`人)
でもアブセルに嫌われちゃうの可哀想だから、お爺ちゃんはお爺ちゃんなりにご主人達の幸せと自分の正義の為に動いてたって感じでしょうか(-ω- ?)どっちにしろその為にリトを犠牲にしたのは変わらないのですが…(笑)


うわぁ…恐ろしすぎる…あ、でも顔が若く見えるとか…!!←
自分も最近可愛い系の服が怖くて着れなくなってきました…。華の20代前半がもうすぐ半ばになってしまうのです。自分、30超える自信がない…オバサンになりたくないよー(泣)

全くもってビックリです(笑)

その友達は私がシエル命なのを知っていますからね〜(笑)

エリザベスってロリっぽくないですよねー
大人になろうと背伸びしてるシエルの為にワザと子供っぽく振舞ってるって知った時は見直しましたけど、でも何だかなぁ…
てか今月のシエルに思わず吹いた→imepic.jp/20141221/436180
こんなに可愛くない男の娘初めてみたかも…てか目的の為ならドレス着るの平気なのか(笑)多分今回、自分の意思で着てるんですよね、たしかその場にセバスいなかったし。駒鳥の時はあんなに恥ずかしがっていたのに…嗚呼ノリノリ……

だって、親子が…(笑)まさかこんなことになるとは予想もしなかったし(笑)…これからは誰もいないところで読もう(笑)
白龍は今後もママを赦すことはないでしょうねー
どんどん壊れていく彼がお姉さんとっても心配です。

あれ、自分は当初感じたサンディとなんら変わりありませんけど?←
どんな子にする予定だったんです??

自分のつくるキャラって何故か色々と思い悩む子になってしまう(笑)

何それ怖いww
ジルがいると家乗っ取られるのかww

289イスラ他 ◆Hbcmdmj4dM:2014/12/23(火) 22:45:33
【闘技場】

「よぉ、ニィちゃん。つらそうだなァ?」

向こうから声を掛けられれば、シャムはその笑みを更に深めて言った。

「ものは相談なんだけどよ、アンタの名前を一つ貸しちゃァくれねーか?」

彼の視線は今、メイヤに支えられる様にして立つイスラの元に向けられていた。
シャムは相手の返事を待たずして更に言葉を続ける。

「実は訳あってこの大会に出場しなきゃなんねんだけどよォ、聞けば既にエントリーは締め切ってるって言うじゃねえか…。
どうしようかと途方に暮れてたところ、床にぶっ倒れてるアンタを見つけたって訳だ」

見知らぬ人物からの突然の要求にイスラは初めポカンとした表情をしていたが、直ぐに彼の言わんとしていることを察した。彼の目を見返し言葉を返す。

「…困っているのか?」

「あぁ、ちょー困ってる。困り過ぎて困ってる」

「そうか…」と、イスラは呟き暫し思案する。

正直、大会に出場したいと言う気持ちはある。しかし、今の状態では満足に闘えないのも確かだ。
そしてなにより、彼は困ってる人を放ってはおけない性分であった。

「…分かった。俺の選手ナンバーは19番だ。
この枠で良ければ貴方に譲ろう」

シャムはトーナメント表と言われた番号を照らし合わせる。

「19…、イスラ・フォードか…。了解、了解。恩に着るぜぇ、ニィちゃん」

290ジュノス他 ◆Hbcmdmj4dM:2014/12/23(火) 22:48:55
【飛行挺】

「…旦那様が坊っちゃんを…?
…いえ…、まさかそんな…」

ナディアの発言に老翁は信じ難いと言った面持ちを見せる。
しかし、そうは言っても何か思うところがあるのは確かな様だ。

彼の表情や目の動き、声の調子の僅かな変化をジュノスは見逃さなかった。
別段惚けている風ではないが、何かを隠している。そんな感じだ。

老翁は言った。

「ともかく…この場ではゆっくりお話をすることも出来ません。
一度お屋敷に帰ってからに致しましょう」

そして――…

「セィちゃんさん…、もうすぐ出番だよ。
リトは可愛くて格好良くてクールでそれでいて優しくて思わずギュッとしちゃくなっちゃう様なツンデレが売りなキャラだから、よろしく頼んだよ」

送迎用のリムジン内部、アブセルはセナに小声で囁いた。

今、ナディアを筆頭にした一同は、棺を載せたものとはまた別の御料車で屋敷へと向かっている途中である。

ナディアからセナをリトの替え玉にすると聞いた時は驚いたが、それに対しアブセルは特に反対を示すことはなかった。

因みに、リトのことは今別で動いているジュノスが後でこっそり部屋に連れてくる手筈だ。

「あ」

不意にアブセルは目を移し声を上げる。
目的地が見えてきた様だ。

291アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/12/26(金) 03:22:25
【過去】

「え……」

伸ばされた手は背に触れることはなかった。
目の前で、ふっと糸が切れた様にリトの身体が地に崩れた。

「…リト…?」

アブセルは彼の名を呼ぶ。
反応はなかった。
途端、頭の中が真っ白になった。

「え…そんな…、嘘だ……。
だって俺…そんなつもりじゃ…」

そうだ、ちょっと意地悪してやろうと思っただけだ。
こんなことは望んでいなかった。

「ねぇ…、さっきのこと怒ってんの?
なら謝るからさ…。起きてよ…。帰ろうよリト…、ねぇってば…」

喉から出た声は震えていた。
いくら身を揺すっても彼は起きなかった。

どうしよう、どうしよう、どうしよう。
自分のせいだ。

いつかの日のことが脳裏に甦る。
傷つき地に伏している少年達の姿を思い出す。消えてしまった友達のことを思い出す。

「…ぅ…くッ、…ひっく…ッ」

アブセルの口から嗚咽が洩れた。
大粒の涙が眼から零れ、地を濡らした。

「……俺…っ、リトを…死なせッ…、ちゃった…」

とんでもないことをしてしまったと思った。
また捨てられてしまう。また住み処を追い出されてしまう。
今度こそ本当に行く場所なんてない。

アブセルは声を上げて泣き出した。

292イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/12/26(金) 03:27:51
【ヤツキ》はい、ありがとうございます^^

リマ》何か強引ですがナディア達の方、場面移しました;

それ分かります(笑)自分も日々「寒い!痒い!ハズい!((((;゜Д゜)))」…と戦いながら文章作ってますw
でも人の読むのは好きです!もっとやって下さい!
あれがジルじゃなかったらヨノ危なかったね(笑)
初恋かぁ…ジルったら案外ピュアピュアではないですか←

そうなんですか?ネタかぁ…何か力になれれば良いんですけどねー…
確かに…ミレリアが確りどちらか一人を選んでいたら今の悲劇は起きてなかったかも…←なんて言っては駄目ですよねw

あ、惹かれました?じゃあ暗示の方向でいきましょうか(笑)
そうですねー…、事実を歪曲して聞かされてて主人達のことを思ってやったか、
もしくは過去に何かやらかしてて(ミレリアの父を誤って殺っちまったとか←ミレリアの母と不倫してたとか←)をヨハンにバレて逆らえない状況になってたか…かなー、…爺ちゃんとんでもない奴だな←

顔が可愛くて若く見えるんなら自分はこの話題してなかったと思います(笑)
自分も最近誕生日を迎えるのが怖くなってきました…;でも気づいたら30越えてるんだろうなぁ…

でもエリザベスは大人になったら良い嫁になりそう
てかシエルww何があったしww

それがいいですw
どんどん壊れていっても白龍好きは変わらないんですか?(笑)

当初から上手いことキャラ動かせてませんでしたから(笑)
やりたかったのは京騒戯画ってアニメのコトみたいな感じです、簡単に言えば銀魂の神楽から毒を抜いた感じかな?(笑)

いいじゃないですか〜、自分なんて思い悩まそうとしても思い悩ませれないですからねw

「ちょっと邪魔だから出てってくれないかな」とか言われそう←
ジルに歯向かえる勇気ないですし(笑)】

293リト他 ◆Q4V5yCHNJ.:2014/12/26(金) 22:32:17
【過去】

泣き叫ぶアブセルの声は気を失っているリトの耳には届かない。

そこへ、そんな二人の元へ小さな女の子が近づいて来た。

「…」

女の子は泣いているアブセルと倒れたまま動かないリトの姿を交互に見るかと思えば、また何処かへ駆けていく。

そして今度はアブセルと同じ年頃かと思われる男の子の手を引いて戻ってきた。

「フェミル、いくら子猫を見つけてもウチでは飼えないから探しちゃ駄目だよって何度も…」

その少年は少女の行動を何か勘違いしているようで、何やら呆れ気味に少女へ言い聞かせていたが、アブセルとリトの姿を見るや言葉を止める。

「フェミル、お父様を連れて来て。」


------


「もう大丈夫だよ」

そう言って男性は対面のソファに腰掛けたアブセルへ笑いかけた。
彼はまだ動揺しているようで震えている。
気を落ち着かせようと、男性はホットミルクを用意させ飲むように勧める。

「念のためウチの医者にも診せているから、安心して」

現在、アブセルがいるのはとある屋敷の応接間。
先程通りかかった少年と少女の家。

あの時、少年は少女に父親を呼びに行かせ、自分は近くの医院へと走った。
その咄嗟の判断が功を奏したか、リトは大事に至らず済んだ。

リトを医者に診せていたところ、少女に連れられ二人の父親と思しきこや男性が遅れてやってきた。そしてリトの保護者として必要や手続きをして彼を引き取り、「すこし休ませた方が良いだろう」と言って屋敷へ招いてくれたのだ。
これは勿論リトの身も案じての事だが、アブセルの方にも休息が必要だと思われたからでもある。

294リト他 ◆Q4V5yCHNJ.:2014/12/26(金) 22:32:41

「喘息の発作が出たみたい。突然の事だったから驚いちゃったみたいだね」

医者の話によると、リトは喘息を患っているようだった。
これまでも発作は起きていた筈だが、アブセルは知らないのだろうか?
発作の際はすぐに薬を吸入させ抑えるため、その場面に遭遇したことがなかったのかもしれない。
本来なら携帯するべき薬も、子供には理解出来ていないだろう。

男性はアブセルを責めることはしなかった。アブセルも怖かったはずだ。事情を知らない人間が下手に口を出すべき事でもない。

「今日みたいな事があった時に使うお薬があるんだけど、お父さんやお母さんが持ってる筈だから聞いてごらん?今度から二人で出掛ける時は持たせてもらってね。」

代わりにアドバイスだけ伝える。
どうやら男性はアブセルとリトを兄弟だと思っているようだ。リトは同年代の子よりはるかに体の成長が遅れているため歳下にみえても致し方ないが。

「弟くん、目を覚ましたみたいだから行こっか?」

ホットミルクを飲んでいたアブセルが大分落ち着いたのを確認し、男性は立ち上がる。
そしてアブセルをリトのいる部屋へ案内した。

「あーんしてごらん?あーん」

部屋に入ると其処にはリトの他に先程の少年と少女がいた。
少年の方は食事の入った器を持っていて、それを掬ったスプーンをリトの口元に持っていっている。

「兄さま、フェミルもやりたい」

「駄目、オママゴトじゃないんだから」

横で真似をしたがる妹を制しながら、少年は慣れた手付きでリトに食事を摂らせていた。
不思議な事に、普段は食べるのを拒否するリトも少年の誘導を聞き入れている。

「そう、いい子だね。ほら、もう一口。」

その光景に男性は笑みを浮かべた。

「医者が胃の中が空っぽだって言っていたものだからね。何か食べさせた方がいいと思って勝手だけど食事を作らせてもらったよ。君も食べる?あの子の為に作ったものだから、食べ応えのあるものではないけど」

295メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/12/28(日) 19:59:58
【バルクウェイ闘技場】

突然の申し出に、僅かながら考える様子を見せるイスラ。

しかし、彼は特に拒む事も無く首を縦に振った。

正直な所、イスラと手合わせしたい所だったが……

「話は纏まった様だし、取り敢えず動こう。」

しょうがないと言えばしょうがない、如何せん動けないものは動けないのだ。

イスラを背負うメイヤはシャムに“じゃあ……”と会釈を投げ、足早に闘技場内へ、医務室を探し歩いて行く。

ーーーーー

どうやらシャムは無事に出場出来た様だ。

闘技場の真ん中、整列する選手達の中に見慣れたその姿を見つけたのは一時間程前。

「どんな手を使ったかは知らないけど、零回戦敗退にならなくて良かったわ。」

予想外に派手な開会式から続く一回戦も既に折り返し、そろそろシャムの出番だろうか。

観客席の最上段で、フィアは選手入場口から出て来る人影へと目を凝らす。

(まぁ、負ける事は無いと思うけど心配ね……)

ーーーーー

止むことの無い怒号の様な歓声を耳に、メイヤは登場口から闘技場へと歩み出す。

一回戦も残る所後二試合、観客達もヒートアップしている様だ。

「……飛行艇で俺を見捨てた怨み、晴らさせてもらうぞ。」

闘技場の丁度真ん中に立つ審判、マルトのルール説明を耳にしながら、メイヤは対戦相手……アグルへと恨めしそうな声を投げる。

そして、試合開始を告げる旗が振られると同時に、メイヤは飛び出す。

(ルールは簡単、相手を戦闘不能にするか降参と言わせるかの二つ。

得物は自由、それだけか!)

前方へと倒れ込む様な独特の踏み込みから続く急加速は、5メートルに設定されている相手との距離を一瞬で詰め。

地を這う蛇の如き動きから放たれるのは、下方からの逆袈裟斬り。

抜き放たれた真白の刃は、閃光の如き速度でアグルへと襲い掛かった。

「喰らえ!」

296アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/12/29(月) 00:15:58
【過去】

リトが倒れどうしようもなくなっていた時に出逢ったのが、二人の兄妹とその父親だった。

彼等がリトを助け様としてくれているのは分かったが、その間アブセルはずっとぐずぐずと啜り泣き続けていた。

親子の家に招かれた時には流石にもう涙は枯れていたが、彼は知らない家に連れて来られた猫の様に終始萎縮し、
男性の顔も見れずに、ただ彼の言葉にコクコクと首を動かすだけだった。

そして、やがてリトとの面会が許される。
通された部屋には先程の少年と少女、二人に囲まれ食事を摂るリトの姿があった。

「リト……」

収まった筈の涙がジワリと目元に浮かび上がった。
そして、それはとめどもなく流れ落ち、再び彼の頬を濡らした。

けれどもその涙は先程の不安と恐怖を募らせたものは違う、極度の緊張状態から解放された時に流す安堵の涙だった。

アブセルは男性の声も聞かず駆け出す。
腕を伸ばしリトに抱きついた。

「りどぉ…!ごべンなさ…ッ、ごべンなざぃ…!」

鼻の詰まった声で何度も何度も謝った。

そして―…
一頻り泣いた後、アブセルはやっと落ち着いた。

手の甲で目元を拭いながら改めて親子を見つめ、小さく頭を下げた。

「あの…、ありがとう…ございました」

297ナディア他 ◆Q4V5yCHNJ.:2014/12/29(月) 00:24:59
【→ポセイドン邸】

「…」

小声だろうとアブセルが何を言っているのか予想はつく。
リトはどんな人物か。セナに難題を押し付けているのだろう。
セナは一応話を聞いてはいるようだが、その表情を見るに、何一つ理解していないだろう。

ナディアはその様子を眺め、溜息一つ。
セナはいいとして、地味にアブセルが面倒臭い。
リトをやるからには完全に成り切って貰おうと考えているのか。いや、アブセルの主観は最早リトではない。

「セィちゃん」

あと気になる点がもう一つ。リマだ。
リマは手を伸ばしてセナの髪に触れると残念そうな表情を浮かべる。

「髪、短くなっちゃったね。」

セナとリトは髪の長さが違う。
少しでも違和感を無くす為、セナの髪をリトの長さに揃えてもらったのだが…

「これだともう編めないな…」

セナは片方の髪のサイドを編み込んでいたが、どうやらリマがやっていたようだ。そんなに悲しそうな顔をされると申し訳なくなるじゃないか。

と言うか二人の距離が近すぎる。
屋敷に着いたらセナはリトとして暮らして貰うわけだが、その”リト”にベッタリなリマをどう理由付けようか。
ついでにリトとアブセルが連れていたらしい子供(ノワール)は先程からリマとセナを睨みながら不機嫌そうにしているし、何だか先が思いやられる。

そして、ナディアの考えは結局纏まらぬまま、屋敷に到着した。

車の到着と共に出迎えの者達がゾロゾロと出てくる。
時間の無駄に思える行動。何度経験しても慣れない。

「お姉様!」

屋敷の者達の挨拶を適当にあしらっているとヨノが現れた。

「おかえりなさいませ」

そして深々とナディアに頭を下げると、続いて車から出てくるセナの姿を見つけニコリと微笑む。

「リト。」

「私の妹でリトの姉。つまり今はあんたの姉」

横からナディアはセナへ耳打ちする。

「おかえりなさい。」

優しく出迎えるヨノの言葉を受け、リマはセナに何やら伝えた。
するとセナはヨノへ視線を向け、そして

「…ただいま、姉さま」

笑いかけた。
見たことのない弟の笑顔。
不意打ちをくらい、ヨノは顔を赤らめる。
そして満足気なリマの顔。

(終わった…)

そしてナディアは頭を抱えた。

298ナディア他 ◆Q4V5yCHNJ.:2014/12/29(月) 00:25:17


「ビックリしちゃったぁ…」

所変わって大広間。
事の真相を全て聞き、ヨノは苦笑いを浮かべる。

「思わずドキっとしちゃったものだから…自分の弟に対してドキっだなんておかしいでしょ?」

身内に対して妙な感情を抱いたのかと焦った。
別人だった、良かった。

「まぁ…アレだ。あまり難しく考えないで協力してよ。リトと同じように接すればいいから。」

本当はヨノにも秘密にしておきたかったが、どう考えてもセナの態度は不自然だ。
いや、普通の姉弟の関係であればアレでいいのかもしれない。リマの考えは間違いじゃない。けど、リトはあんな態度はとらない。そもそも笑わない。
黙っていたとしてもすぐにバレていただろう。

「リトは…大丈夫なのよね?」

「うん」

ヨノはこの屋敷の内情を知らない。
父親がリトに何をしたのかも、説明したところで理解出来ないだろう。
また、知らずにいられるのならそれでいいとも思う。だから教えることもしない。
だから今回の件は父とリトが務めを果たしている際に事故にあったことにした。
リトの件以外は他の者達にも同じように伝えるつもりだ。母親にも。

「ヨノは母様をお願い。私はやることこなさないとな。まずは親父の葬儀。ちょっと爺と話してくる。」

言ってナディアは席を立つ。
向かうは自室。

アブセルの祖父に、屋敷に戻ったら部屋へ来るよう伝えておいたのだ。

「…」

彼は部屋の前に立ち待っていた。
ナディアは部屋の中へ入るよう促す。

そして椅子に腰掛け、話を切り出した。

「さっきの続きだ。親父がやろうとしてたこと、知らないとは言わせないよ?包み隠さず教えな。」

299リト他 ◆Q4V5yCHNJ.:2014/12/31(水) 01:41:29
【過去】

頭を下げてくるアブセルに、男性は変わらず優しげな笑みを浮かべる。

「旦那様…」

が、其処へ、リトを診させていた医師が深刻そうな面持ちで男性に声をかけた。
何やら耳打ちすると、男性からも笑みが消える。

そして医師を連れて部屋を出て行った。

「後でお家に送ってあげる。暫くうちの子達とゆっくりしておいで。」

出て行き様に笑顔でそう言い残して行ったが、何かあった事は予想できる。

ジルは気づいたが、しかし敢えて触れる事はしなかった。

「ねぇ、君の名前は?」

そして再びリトヘ意識を向けた。
しかし対するリトは相変わらず問いかけに応じない。
言葉が話せないのかとアブセルを見るが、アブセルからはそんなことはないと首を振る素振りをされた。

「僕の名前はジル。君の名前を知りたいな」

「…」

「フェミル、このお兄ちゃんに挨拶して」

「私はフェミルってお名前。お兄ちゃんは?」

「……」

無反応。
今までと同じ種類の人物であったなら、此処で腹を立てるか呆れるか、反応は様々でもこの時点でリトの言葉を諦めただろう。
しかしジルは違った。

「話すのが怖い…?」

リトが話さない理由を考えた。
何だか上手く説明は出来ないけれど、何と無く、リトは言葉を封印することで、何かから自分を護ろうとしているように見えた。
先程もそう。出した食事も中々摂ってくれなかった。警戒し、誰も信用していない。ただ、怯えている。

「大丈夫だよ」

ジルは手を延ばし、リトの頭を撫でる。
不思議そうに此方へ目を向けるリトヘ、明るい笑顔を作ってみせた。

「僕は君を何と呼べばいい?仲良くなりたいだけなんだ。君より小さなフェミルだって自分の名前を言えるんだよ?君も勿論言えるよね。」

本当は名前なんてもう知ってる。さっきアブセルが泣きながら叫んでいたから。
しかしジルは、リトの声でちゃんと聞きたいのだ。

「君の声、聞きたいな」

リトの目を真っ直ぐに見る瞳はとても優しげで。
今まで関わってきた人は…実の姉でさえ、ここまでリトと向き合っては来なかった。

「…り…」

やがてリトは、躊躇いがちながらも口を開く。

「…リト…」

それは消え入りそうな声だったが、確かに聞こえた。”リト”と。

「そう、リトって言うんだね。宜しくね。」

ジルは満足気に笑顔を浮かべれば、よく出来ましたとばかりにリトの頭をワシワシと撫でる。

「…で。」

リトのことは良し。
今度は…とジルは半ば蚊帳の外となっていたアブセルへ振り向く。

「君は何て名前なの?泣き虫さん」

おかしい。
彼の笑顔は変わらないはずなのに、何か、何と無くリトに向けられていた優しいものとは違う、意地悪なものと化している。

「君はこの子のお兄さん?お友達かな?”ごめ〜ん”って泣いてたけど、この子にちょっと意地悪しようとして大事になっちゃいましたって感じ?」

何かバレてるし。

300リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/12/31(水) 13:10:23
イスラ>>

場面変更有難うございました>ω<

お仲間でしたか(笑)
自分も人様のつくったものを読むのは好きです!イスラさんもジャンジャンやってください←
世間一般の女子にとっては普通の不審者よりもジルの方がある意味危ない気もしますが、ヨノはジルにとって例外なようです(笑)
ジルはもともとは純粋で凄く優しい子なのです、環境が彼の性格を捻じ曲げた(笑)ってか勝手ながらアブセル達の過去話にジル達ねじ込んじゃいました(つω`*)テヘ
リトの父ちゃん嫉妬だけでジルパパ殺してるとかいくらなんでも「小せぇ男だな!!」って感じなので、今回の一件で父ちゃんの計画を知っちゃったことにします。つまりは口封じ、フフフ…

設定は出来てるんですけどねぇ。
ヨハンとトーマ→もともとは友人。(トーマが一方的に絡んでくるけどヨハンも満更でもない)
ミレリア→ずっとヨハンに憧れてきたけど、だんだんトーマに惹かれていく
ヨハン→ミレリアに想いを寄せているが上手く行動に移せない。いつの間にかトーマに先を越されてて激おこ!
ってな具合に。
ミレリアめ、なんとまぁ罪な女よ←

爺ちゃんとんでもねぇ奴だなww
不倫関係で言うとヨハンは実は爺ちゃんの秘蔵っ子だった!ってのが面白そーってふと思ったんですが、それだとアブセルとリトが従兄弟になっちゃいますね(笑)

ですよねー…(笑)
気づいたら30…怖すぎる(泣)
ついこの前、研究室の後輩に「どんどんババァになっていく。そろそろ可愛い服着るの怖くなってきた。でも私からミニスカートをとったら何が残るのか」って愚痴っちゃいました(笑)

夫をたてる良い妻になるとは思います。しかし何か好きになれない。何故だろー
最近シエルがよく分からない方向に突っ走っている(笑)初期の方で「笑い方などとうに忘れた」とか厨二発言してたくせに普通に笑ってるし。

はい、どっちかって言うと苦しむ白龍は大好物なので←
にしても白龍がどうも金色のガッシュのキャンチョメと被って見えてしまってですね…

成る程!毒を抜いた神楽!!(笑)
たしかに何かサンディとは違いますね(笑)
銀魂と言えば、銀魂のアニメ新シリーズの話がこの前出て、皆から「総悟好きそう」って言われたんです。まぁ好きですけどね?
そしたらその理由が「顔が良いの好きだろうから」ですって!だから言ってやったんです、神威も好きだと!そしたら「やっぱ顔じゃん」って返されてしまった!あれ??

何それw
でも、ほら、イスラ辺りなら悩めるかも?←

言いそうww
いや、自分の家なんですから頑張って歯向かってください(笑)

301ヤツキ ◆.q9WieYUok:2014/12/31(水) 20:09:41
【もう年の瀬とか信じられねーww

今年もお世話になりやした、来年もよろしくお頼み申し上げます!

んだらばお二方も良いお年をー!】

302アグル ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/02(金) 10:07:07
【闘技場】

「さあ?何のことだか」

恨めしそうなメイヤの声に対し、アグルはそう嘯く。
そして見た。

(当然…、初手は"それ"だよな)

蛇の如く低い姿勢から放たれる迅速の白刃。
アグルはそれを無理に受け止める様なことはせず、槍の柄を斜めに刃を受け流す。
そして、その流れの勢いのままメイヤの左方へと身を滑らせた。

「シンライジ邸の稽古では嫌ってほど打ち負かされたからな…」

流石に目も慣れたものだ。

メイヤに対し最も注意したい点はその動きの敏捷性だろうか。
まずは機動力を削ぎたいところ。
よって…、

(足を狙う…!)

アグルは槍の柄を長く持ち、腕を回す。
振り回された槍は風切り音を放ちながらメイヤの足元目掛けて駆け抜けていった。

303老翁 ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/02(金) 10:24:25
【ポセイドン邸】

問い詰める様なナディアの視線に老翁は短く応える。
等々この日が来たとばかりに。
観念とも覚悟とも取れる面持ちでナディアを見つめ、
「こちらを…」と、数冊の冊子を彼女の前に差し出した。

「旦那様の手記で御座います。
勝手とは思いましたが、書斎からお借りして参りました。
お目を通して下さいませ。あの方の大体においてのお考えが分かる筈です」

それから、と老翁は言う。一つ言っておくことがあると前置き、言葉を続けた。

「私は…、私と旦那様は、同じ血を分けた……そうですね…、有り体に言えば実の親子にあたる間柄と言うことになるのです」

【過去】

泣き虫…と、そして図星を言い当てられたアブセルはかぁっと顔を赤くさせる。

小馬鹿にされた様な気がして恥ずかしかった。
そんな表情を見られるのが嫌で顔を下に向けるが、その気持ちさえジルには見透かされていたかもしれない。

「……アブセル」

程無くして、アブセルは視線を足元に向けたまま小さな声で名を口にする。
それと、

「別に兄でも友達でもない…。
リトはお屋敷の子供で…。俺は、俺の爺ちゃんがそこで働いてるから、それで…」

せめてもの悪あがきに、それをぶっきらぼうな口調にして返すのが精一杯だった。

304イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/02(金) 10:26:31
【二人ともあけおめです!
今年も宜しくお願いします(^^)

リマ》
やりたいのは山々なんですがー…なかなか思いつかず…(笑)
ジルの境遇を考えると、そりゃあ性格も変わっちゃいますよね;
もしかしたら出てくるかなと期待していました(笑)
なるほど…口封じとはいえ友人を始末しちゃうなんて…ヨハンの心境は一体…

おぉ!いい三角関係ですね!
でもこれ三人の心がすれ違い始め…トーマが没するまでやるとなるとかなりの長編になりそうですね(笑)

なんて素敵なアイディア!爺ちゃんがヨハンの肩を持ってるいい根拠にもなるし…ってことでいただきました!←ありがとうございます(笑)
ヨハンは忘れられない人との間に出来た子で〜(不倫ですが)とか色々着想が浮かびます^^
しかしその場合ナディア達も孫になる訳で…実の息子にも遣えてて…爺ちゃんどんな気持ちなんだろう(笑)

リマさんのアイデンティティーはミニスカなのか(笑)でもほら、森ガール的な長いスカートだって可愛いですよ←

理由もなく好きになれないとか一番可哀想な気がするw
そこは突っ込まないであげてw

やだ、このコ恐い←
ガッシュ懐かしい(笑)軽くアニメとか見てた気がするけど殆ど覚えてない…
キャンチョメってアヒルみたいなやつでしたっけ?どのへんが被ってるんですか?

自分もリマさんは顔がいいキャラが好きなんだと思ってました(笑)

イスラかー…彼の悩みって、どうやったら人を救えるかとか、どうやったら世界が平和になるか…みたいな答えのない漠然としたものばっかなんでやりづらい←

頑張って歯向かっても勝てる気がしません(笑)】

305メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/01/02(金) 21:37:42
【闘技場】

全身全霊の打ち込み、とまではいかないものの、速度、威力共に十二分の初撃だった。

しかしそれは難無く去なされ、反撃の一手、下段の薙払いが放たれる。

その一連の動きは、此方の初動を読んでいた……否、読んだものであり、その事に気付いたメイヤは僅かに苦い表情を浮かべる。

(そうか、弥都で再会するまでイオリに鍛えられていたんだったな……)

そう、闇の巣で行方不明になった二人を救出し、更には修行に付き合っていたのはシンライジ当主であるイオリなのだ。

ならば、此方の手の内は殆ど知られているだろう。

アグルの放つ足下を狙った斬撃は速く、得物は槍の為にリーチも長い。

更に、逆袈裟を放った状態で動きを止めた今、回避の為の踏み込む間も無い。

(退く暇も無い、なら!)

ならば、今この場で攻撃を防ぐしかない。

風切り音を耳に、メイヤは斬撃を放った勢いを使い、その場で180度水平回転。

同時に、逆袈裟に振り切った刃を回転の勢いそのまま振り降ろす。

捻りの動作を加えられた白刃は、初撃と変わらぬ速度で大きな円弧を描いて槍の穂先へと叩き付けられ、無理矢理だが槍の一撃を防いだ。

それと同時に、右手に握る白刃の柄を放してメイヤは跳躍。

未だ残る水平回転の動きと勢いを利用し、左の逆手で抜き放った短刀で、上方よりの斬撃を放った。

306ナディア ◆Q4V5yCHNJ.:2015/01/03(土) 03:28:57
【ポセイドン邸】

亡き父の手記。
これを読めば、彼がこの十数年やってきた事、その真相が分かるかもしれない。

ナディアは早速目を通そうと冊子へと手を伸ばす。
しかし、続いて耳に届いた言葉に、反射的にその手を止めた。

「…は?」

今何て言った?

「あの人と親子?あんたが?」

とうとうボケが始まったのか。
冗談にしては笑えなさすぎる。
父方の祖父母はちゃんと…

「ちょっと待って、頭整理する」

老翁の突拍子もない言葉に、混乱しながらもナディアは額に手を当て必死に記憶を辿る。
ヨハンの父が老翁と言うのなら、彼はナディアの祖父ということになる。なら記憶にある祖父は誰なのか。父方にも確かに祖父はいた筈だ。
しかし考えてみればその祖父は祖母より一回り以上年齢が離れていた。当時はどの家庭も自分の意思で伴侶を選ぶのが難しい時代であったとは言え、年頃の男子がいなかったわけではないし、たしかに不自然ではある。ポセイドンの家系とは言っても本家とは遠い筋の家で、血筋に拘る必要も無かったはずだ。
考えたくはないが、可能性としてはあり得ない話ではない。

「ごめん、ちょっと私の頭では収拾つかなかった。説明してもらえる?」


【お二人とも、昨年は大変お世話になりました!
今年も宜しくお願いします!!】

307リト ◆Q4V5yCHNJ.:2015/01/04(日) 02:46:33
【過去】

ぶっきら棒に答えるアブセルを見て、ジルは面白そうにクスリと笑った。
どうやら自分は彼の図星をついてしまったようだ。

「リトってお屋敷の子だったんだね。アブセル、君のお祖父さんがこの子のお屋敷で仕えてるなら、君もお仕えの身分なんじゃない?お屋敷の子を勝手に連れ出して、助かったとは言え危険な目にも合わせちゃって、バレたら大変だと思うなぁ。」

上手く抜け出して来たのかもしれないが、今頃はリトがいなくなっていることも知られ騒ぎになっているのではないだろうか。

恐らくは父が話を通してくれるだろうが、アブセルの反応が面白そうなので敢えて言わない。

「今のうちに言い訳でも考えておきなよ。」


----

先程退室した屋敷の主人、トーマは難しい表情を浮かべて書斎にいた。
思い返すは助けた少年リトの顔。

(あの子は…)

リトと良く似た顔を彼は知っていた。
しかし「あの家」に男児が生まれたなどは聞いていない。

先程医師に伝え聞いた事がどうも気になる。
リトを診察した際に、身体に複数の痣や傷を見つけたそうだ。栄養状態も思わしくないと。あれは明かに……

「…」

トーマは呼び鈴を鳴らした。
音を聞きつけて執事が入室してくる。

「先程連れてきた子供について調べろ。」

嫌な予感がする。
出来れば自分の推測が間違いであってほしい。

308リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2015/01/04(日) 13:04:18
イスラ>>
アブ祖父のラブストーリー←
ちょっと意地悪なのは変わりないですけど(笑)
にしても仲良くしてた子と敵対するってどんな気分なんだろー。ナディアは忘れてるからいいけどジルは最初から知ってましたし(笑)

ヨハンは完全気が狂っちゃってるので特に何も感じてなかったかと←
彼はポセイドンの家系とは言え分家中の分家で立ち位置的には苦しく、出世街道からズレてるトコの生まれなのです。その為現在の位置まで登りつめる為にガムシャラに生きて来ました〜
ですね(笑)飛ばし飛ばしやらねば…(笑)

採用されてビックリです(笑)此方こそありがとうございます!(笑)
ヨハンのお母さんは先天的に言葉の話せないお嬢様で、なんか知らんがアブ祖父と恋愛し、ヨハンを身籠ったが、お嬢様は父親が誰か言わない為、「このままでは未婚の母に!世間の目が!!」と慌てた両親によって独身なおじさん(両親何方かの血縁でもいい)のもとに無理矢理嫁がされた〜って設定にしちゃいました←
そんでヨハンは母親の為にガムシャラに生きてた事にします←←

そして息子を護る為に孫(リト)を一人犠牲にするお祖父ちゃんの心境はいかに←

長いスカートってほら、躓いて転んじゃうじゃない←経験済


きっと第一印象が悪かった。物凄く(笑)
これは突っ込まずにはいられないw

エー、コワクナイヨー
ですです。
自分もよく知らないのですが、キャンチョメって物凄く臆病で、最初の頃は戦いに逃げてばかりいたんですけど、実は潜在能力が凄くて最終的にメッチャ強くなったとの噂が。
泣き叫ぶ白龍を見てた時に「こいつ、いつかメチャクチャ強くなりそう」って思って、実際最近強くなって来たので、あーやっぱこいつキャンチョメだなって。←

そんな!誤解です!!
顔が良くて性格に難ある未成年が好きなんです!!←

うわぁー凄い主人公タイプ(笑)
そして悩みがなんか面倒くさい(笑)

もしかしたら運良く勝てるかも…!

309ヤツキ ◆.q9WieYUok:2015/01/05(月) 10:53:46
【リマさんリマさん、時間があればでいいんでリマセナから続く家系図お願いします!】

310アグル ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/05(月) 21:47:05
【闘技場】

流石シンライジの血族。機転、瞬発力ともに動きが人間のそれじゃない。

水平回転より降り下ろされた刃により槍は弾かれ、僅かにしなる。続く上方からの刃を防ぐには槍を使ったんじゃ間に合わない。
アグルは踏み込んだ足の爪先に体重を乗せ、斜めに飛び退く。左耳のスレスレのところを刃が通過していった。

(そう易々とはいかないか…)

取り合えず一旦相手との距離を取り、一呼吸つく。
先程から観客席の方から聞こえる、例のオネエらしき一際目立つ声援が耳障りだ。

「…熱狂的なファンがいるみたいだな、全くもって羨ましい限りだ」

そうメイヤに皮肉を投げかけつつ、アグルは再び槍を構える。
そして地を蹴り、相手との距離を一詰めれば連続の刺突を放った。

311アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/05(月) 21:49:54
【過去】

…そうだった。そう言えばすっかり忘れていたが、屋敷を抜け出して来たんだった。
もしかしたら出かけて行ったナディア達だって、もう既に戻っている頃かもしれない。

「だ…だって…、本当にビョーキだなんて知らなかったし…」

赤く染まったアブセルの顔が今度はみるみるうちに蒼ざめていく。

初めはリトや屋敷の皆を困らせてやろうと考えてのただの悪戯の筈だった。しかし今はもうそれどころの話ではなくなってしまった。

怒られるどころか、最悪やっぱり屋敷を追い出されてしまうかも。もしくは悪い人達が入れられると言う牢獄に連れていかれるか…。

…と、そこでアブセルはハッと気づいた。
ジルが笑っている。楽しそうに。

先程から妙に不安を煽ってくると思ったら、こちらの反応を見て楽しんでいたのだ。
そんな彼にアブセルは何だかムカムカとしてくる。ジルを睨み付けて言ってやった。

「…って言うかお前には関係ないだろ!何なんだよさっきからっ」

312アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/05(月) 21:53:35
【リマ》自分にラブストーリーが書けるわけないじゃないですかーww…って鼻で笑おうと思ったけど…、ヨハン母の設定を見てちょっと書いてみたくなりました。彼女の名前はなんていうんですか?
ね、意地悪ですね(笑)
まともな神経の持ち主ならやっぱり辛いもんなんじゃないですかねぇ…

ヨハン…(´;ω;`)彼も可哀想な人ですよね…
てか素晴らしい設定の数々にもう感動してしまいました!
色々アイディアを戴いてるに、こっちは何もお返しできないで申し訳ないです;

爺も心苦しかったと思いますよ。両親から拒絶されているリトを見るのは彼にとっても断腸の想いだったことでしょう。
幽閉されてた頃ならまだしも、リトが人並みの感情を持ってからは心痛も増したんじゃないでしょうか

え、転ぶもんなんですか!?何で!?(笑)

何があったww
まぁそこはシエルの成長どころだと思って素直に喜びましょうよ(笑)

でもキャンチョメは確かいい方向に強くなったけど、白龍は悪い方向に強くなってるから、一緒にしたらキャンチョメが可哀想ですよ!←

あぁ、なるほど。ただの美形好きではないと(笑)てかリマさんの趣味も大概変わってますよねw

主人公タイプですが自分がその系統のキャラを上手こと動かせないので日陰に追いやられています(笑)

え、ないない←】

313メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/01/07(水) 21:23:33
【闘技場】

槍を相手にするに当たって一番注意すべきなのは、間合いの長さである。

刀剣に比べて圧倒的なリーチを誇る槍を前にして、距離を取るのは悪手。

かと言って、考え無しの前進は無謀なだけだ。

だが、一度その間合いの中、刃圏の内側へ入り込む事が出来れば槍は意外な程に脆い。

だからこその初手だったのだが……

「……地獄からの呼び声だ。

悪夢の頬擦りの刑に叩き込んでやるから、大人しく棒立ちしてくれれば助かるんだけど。」

一連の攻防で、メイヤは改めてアグルの実力の高さを認識した。

(高い身長故のリーチの長さと相まって、槍の間合いは驚異的。

間合いを詰めても案外冷静に対処して来る上に、反撃も速い。

何より、手の内を知られているのが一番痛いな……)

正直な所、予想以上だ。

繰り出される刺突の連撃も速く、鋭い。

イオリならば刀で捌ききるだろうが、自分にそこまでの技量は無い。

ならば。

(強引に突破するのみ!)

繰り出される刺突に対し、メイヤは剣を逆手に握る。

そして、剣の腹を盾にし前進。

致命傷だけを受けぬ様に刀身で刺突を防ぎ、強引に距離を詰めて行く。

魔狼の牙から削り出されたとされる真白の刃は、幅広の二等辺三角形に近い形をしており、半身になれば身体の半分程は隠せるのだ。

たが、如何に幅広の刀身と言えど全て防ぎ切る事は出来ず、隠しきれない部分に次々と裂傷が生まれていく。

しかし、多少の傷は覚悟の上だ。

刺突の嵐を突き進んだ先、刃圏の内側。

アグルの正面よりやや左へと進んだメイヤは真白の剣を投げ捨て、上半身を捻りながら踏み込む。

そして、渾身の右ストレートを放った。

314ベルッチオ(老翁) ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/10(土) 19:25:04
【ポセイドン邸】

「お嬢様のお耳に入れるのも浅ましい話では御座いますが…」

言って老翁は僅かに目を伏せる。
そして五十年ほど経った今でもありありと思い出せる、昔の、あの人との記憶を語りだした。

…歳は18の時だった。
当事、ポセイドン本家に仕えていた母の勧めで、とある傍系の家に勤めることになった。

そこで、出逢ったのだ。
可憐で、そしてどこか儚げで、声をなくした美しい女性に。

――…
老翁は話した。己の過去を。ヨハンの出生に至るまでの経緯を。

「結局、私達が結ばれることはありませんでした。
ですが、お互い違う家庭を築いた後になっても、私はあの方のことを忘れることが出来なかったのです」

先代の旦那様…ミレリアの父が、仕事のパートナーにヨハンを選び、屋敷に招いた時は本当に驚いた。

今までヨハンについては、社交の場でまだ少年だった彼の姿を、一、二度と目にしたり。家督を継いだとか、事業の業績を伸ばしたとかを風の噂で耳にする程度だった。
だがその彼が、今や立派な青年となって目の前にいる。
どんな形であれ、老翁はあの人との間にできた我が子に見えたことを歓喜し、そして申し訳ない気持ちになったのだった。

315アグル ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/10(土) 19:27:01
【闘技場】

メイヤの拳がアグルの頬を捉える。
その渾身の一撃を食らい、彼の身はグラリと傾いた。

予想外だ。
まさか武器を捨てて突っ込んで来るとは。

(いや…馬鹿だろ…!)

そう、先のメイヤの行動はアグルにとっては考えられぬものだった。

まず第一に、武器を捨てたことだ。
例え今この時一泡ふかせることに成功したとしても、今後の試合の展開を考えれば、それは大きなハンデとなるだろう。
そして二つ目、先程の一撃で勝負を決めれなかったこと。

メイヤはもっと堅実な戦法を取る人間だと思っていたが…。

(なに考えてんだ…よっ!)

アグルは足をふんばり、ぐんっと上体を持ち上げる。
もちろん、わざわざ武器を拾う間を与えることもない。
槍を手の中で回し、周囲一体を凪ぎ払うかの如く振り回した。

316メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/01/13(火) 23:33:16
【闘技場】

頬を打ち貫く渾身の右ストレートは、確実にアグルへとダメージを届けた筈だ。

拳に伝わる確かな感触とアグルの表情に、メイヤは心の中で頷く。

弥都での修行の成果だろう、今のアグルの実力は自分とそう変わらない程だ。

得物にしても、槍と剣では間合いを考えるに剣の方が不利。

強引に間合いを詰めた所でアグルは冷静に対処してくる。

ならば、取るべき手は一つ。

相手の虚を突く事。

それはシンライジ一族の対人技術に置いても基本的な事でもある。

(武器を捨てた捨て身の一撃に後は無い、そして、今の一撃で倒せなかった俺の負けだろう。

当然、アグルはそう思うし槍の一撃を手ぶらの俺が防げる訳も無い。)

そして、虚を突くからには確実に仕留めなければならない。

だが。

今の一撃でアグルは倒れなかった。

反れた上体を戻し、手で槍を回すアグルの瞳には、怒りが見て取れる。

きっと彼は、自分が馬鹿な手を取ったと憤っているのだろう。

その憤りの反面で、こちらが武器を持たない事を確認し、すかさず一撃を加えて来るだろう。

その一撃は次の手を考え無いトドメの一撃の筈だ。

何しろ相手は武器を投げ捨て、防ぐ事も攻める事も出来ないのだから。

しかし。

それこそがメイヤの狙い目。

右ストレートへの反撃、薙払いの一撃を放つアグルへ黒瞳を向け、メイヤは一歩踏み出す。

更に、既に振り切った右腕は左腰へ添えられていた。

(剣も短刀も投げ捨てた、拾う間も無い。

だけど。

刃が無ければ創れば良い!)

その構えは迅速の抜刀を可能にするもの。

風切り音を耳に、迫る槍を視界に映し。

メイヤは自身に宿る“闇”で形成した柄を握る。

「ーー……居合い、神斬り!」

そして、漆黒の闇刃が抜き放たれ、一拍遅れて怒号の様な歓声が二人へと降り注いだ。

【決着はどっちでもイケる様に振ったんで、後はイスラさんよろしくお頼み申し上げます!】

317アグル ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/18(日) 23:18:07
【闘技場】

試合の決着を証明するかの様に、割れんばかりの歓声が場内に沸き上がる。
中央フィールドを見やれば、刃を構えたまま静止する二人の姿があった。

その中で先に体勢を崩したのはアグルの方だった。
あーあ、と気の抜けた声を吐き、軽く肩をすくめてみせる。

「あまり手の内を曝したくはなかったんだけどなー…。
てかこれもしかして反則になんの?なんないよな?異能を使うな、なんて一言も言われなかったし」

彼の言葉が示す通り、そこには異様な光景が広がっていた。

メイヤを取り巻く様に、彼の足元から地面を突き破って無数の刃が伸びていたのだ。その様は剣山を連想させる。
足の爪の先から耳の裏側にいたるまで、いたる所をすれすれで刃が突き抜け、メイヤの動作を抑止している。

所々刃がかすり血が滲んではいるものの、致命傷に及ぶような傷は一つもなく、むしろよく居合いの動きを途中で止められたものだと感心する。
あのまま振り切っていたら腕が飛んでいたことだろう。

「降参…してくれると嬉しいんだけど」

アグルは手に持つ槍の刃をメイヤの喉元に押し当てたまま、眉一つ動かさず淡々とした口調で言った。


【ありがとうございます^^ではこの勝負、アグルの勝利にさせて頂きます】

318メイヤ/レックス ◆.q9WieYUok:2015/01/20(火) 21:58:55
【闘技場】

必殺の居合いは抜き放たれるも、勝ちを得るには届かず。

闇刃を振り切る手前で動きを停めたまま、メイヤはゆっくりと息を吐いた。

「いや、異能が禁止なら先に俺の方が失格になっている筈。」

そして、自分の周囲を囲む刃の群れに目をやりながら、素直に参ったの言葉を口にする。

しかし、それに続いて苦笑いを浮かべつつ、嫌がらせの声を掛ける事は忘れない。

「俺の負けだよ、流石だな。

これであのオネェ系もアグルを追い掛けるだろう、強いオトコが好みらしいしさ。」

どうやら今回はアグルの方が一枚上手だった様だ。

突如現れた刃が何か解らないが、アレはほぼ回避不可能の必殺だろう。

(雷を操るに、砂鉄の刃か……?)

審判の試合終了を告げる声と共に消える刃群を横目に、メイヤもまた、投げ捨てた白刃を拾う。

取り敢えず、自分の出番は終わった。

イスラも回復した頃だろうし、後は歓声を上げる客側になって試合を見よう。

闘技場に溢れんばかりの歓声を背に、メイヤはその場を後にする。

ーーーーー

メイヤとアグルの試合が終わった後。

闘技場の簡単な整備が終わり、再び辺りに歓声が沸き上がる。

しかしその中心、闘技場に立つ眼鏡を掛けた青年、レックスは歓声など聞こえないとばかりに目を閉じていた。

「……で、貴方はどこのどちら様でしょうか。

開幕セレモニーの時にも居ましたが、僕の対戦相手であるイスラではないですよね。」

試合開始の旗は既に振られているものの、レックスは未だ動かない。

よくよく聞けば、歓声はヤジに変わりつつある。

「しかし、ですね。

試合は既に始まっている、と言う事は。

全力でやらせて頂きますよ、僕は今大分苛立っていますので……」

怒号の様なヤジを背に、レックスは三叉鑓を握る。

眼前には眼帯の男。

知った顔では無い、ならば。

「すみませんが、手加減はしません。

八つ当たり、させて頂きます!」

手にする鑓は、風の刃。

一薙で烈風を、二薙で竜巻を。

レックスは烈迫の気合いを込めて三叉鑓を左右に薙払い、生み出した竜巻を眼帯の男……シャムへと容赦無く放つ。

319シャム ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/22(木) 01:49:26
【闘技場】

何やら知らないが、闘う前から相手の青年は立腹しているようだ。
彼の態度からするに本物の方のイスラ・フォードとも面識があるのだろう。
しかし、そのどちらもシャムとっては関係のないこと。

「ごちゃごちゃ言ってねえでさっさと来いよ。
こっちは暴れたくて暴れたくてウズウズしてんだからよぉ」

最初は面倒臭がっていた彼も今ではすっかりスイッチが入ってしまったようだ。
クロッソとの取り引きの話も覚えているのか、いないのか。

持ち前の強面を更に凶悪なものにし、シャムはおもむろに前に左手を翳す。
左腕に寄生した大顎が口を開け、迫る竜巻を全て吸い込んだ。

「お返しだオラァッ!」

かと思えば、次にそれは重火器の砲身の如く細長い円筒に形を変え、砲口から次々と榴弾を吐き出した。

320レックス ◆.q9WieYUok:2015/01/23(金) 16:28:45
【闘技場】

竜巻を喰らい、榴弾を吐き出す。

それは左手と言えばあまりに奇怪、だが、客受けはかなり良いらしい。

前の試合とはうって変わって、派手な攻防に観客はヤジを歓声に変える。

その事が更にレックスを苛立たせるも、冷静さは欠かさない。

吐き出される榴弾を後方へと下がって回避し、榴弾が爆裂し巻き起こる土煙を隠れ蓑に再び竜巻を放つ。

(攻防一体の左手、面倒ですが……)

それと同時に左手、シャムの右側へと回り込む様に疾走。

竜巻が土煙を吹き飛ばし、シャムの視界が開けたであろう瞬間を見計らい、更なる加速。

大気を操り、背面へと集めていた圧縮空気を解放。

加速に継ぐ急加速で一気に距離を詰め、三叉鑓による勢いに乗った刺突……刃先に乱気流を纏わせた一撃を放った。

「狙うならば、右側がセオリーでしょう!」

321ジル他 ◆Q4V5yCHNJ.:2015/01/25(日) 16:12:08
【過去】

「酷いなぁ、心配してあげてるのに。…あ、リト、食べてすぐ寝っ転がっちゃダメだよ。もう少し起きてようか。」

アブセルをからかいながらもリトの動きには敏感で、横になろうとしていたのを止める。そして代わりに腰の辺りにクッションを敷くなどしてなるべく楽な態勢を取らせてやった。
アブセルに放った「心配」は嘘っぽいが、実際面倒見はいいようだ。

「……」

何処かのお屋敷の子供。
人を雇う程なら裕福であるはずで、生活面においても問題はないはず。
しかし、そのわりにリトは痩せ細っているし、いくら病気だからと言って顔色が不自然に悪過ぎる。先程医者に様子を聞いたら貧血もあると言っていたけど…
それに、

「リト、寒くない?」

ジルの問いかけにリトは小さく頷く。

「ちゃんと口で教えて」

「…寒くない…」

この口数の少なさが気になる。
…他人のこと、加えて今日初めて会った人物の心配をしたところでどうにもならないが。

ジルは不意にリトの頭を撫でる。
一瞬彼の身体がビクリと動いた。とても緊張している。

「…アブセル。」

リトが怯えているのが分かるが、それでもジルは手を止めない。悪意のない接触に慣れた方が良いと思ったからだ。
そしてリトを撫でたまま意識はアブセルへ。

「リトに興味があるんでしょ?ならさ、虐めるんじゃなくて気遣ってあげなよ。そっちの方がリトにとっても、君にとっても良いと思うな。」

322ナディア ◆Q4V5yCHNJ.:2015/01/25(日) 16:12:50
【ポセイドン邸】

父が嫌いだった。
本当はリトが生まれる前から、ずっと。
ポセイドンの血を引き、その力まで継いだ自分を、父は特別目にかけていた。
ポセイドンの当主としての英才教育、謂わば帝王学なるものを強要したが、自分は格式ばったものが大嫌い。自由奔放に振る舞い、父の言うことなど微塵も聞こうとしなかった。
父からは何処か野望めいたものを感じていたから、子供ながらに警戒していたのだろう。

「…そうか。」

老人の話を聞いて、今まで引っかかっていた謎が解けた気がした。
本家に婿入りし、ヨハンはポセイドンの家系を継ぐ者の父となった。だが彼はそれでは満足出来なかった。優位な肩書き、立場だけではなく、自身が一族の頂点に立ち、実権を握りたかったのだ。
自身の出生について彼が知っていたかは不明だが、それを抜きにしても自身の育った環境が決して恵まれたものではなかったから。最下層の身分を払拭しようともがくあまり、どこかで道を間違えてしまった。

彼は娘を利用して自分の力を確かなものにしようとしたものの、どれだけ試みてもナディアは彼の思い通りにはならなかった。
そしていつしかナディアへの干渉はなくなっていったが…それをただ”諦めた”と思っていたのが甘かった。
自分は救いようのない馬鹿だと思う。父の野望が、もっと恐ろしいものに変化していたことに気づかなかったなんて。
彼はただ方法を変えただけ。”その対象”を、自分からリトに変えただけだった。

(リトがあんな目にあったのは私も一因ってことか…)

嫌なことに気づいてしまった。
ナディアは自嘲気味な笑みを浮かべた。

それにしても、

「今までずっと黙ってた事を、何で今更話すの?」

50年以上も親子である事を隠し、20年以上実の息子、そして孫に仕えてきた。
これほど沈黙を貫いていたにも関わらず、何故今になって事実を打ち明けるのか。

「父さんは不遇な人生を歩んで来たから、同情して許してやれと?降って湧いた祖父に免じろとでも?悪いけど、打ち明けられたところであんたを祖父として接する気はないよ。」

あぁ、言われてみればヨハンと老人は似ているところがある。
血の繋がりをもろともしない冷酷な面がそっくりだ。

「要するにあんたにとって大事なのは”旦那様”だけだもんね?孫であるはずのリトが苦しめられても見て見ぬ振り…違うな、あんたは寧ろ助長してた。私やヨノのことは過保護にするくせに、リトには冷たかったもんね。」

323リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2015/01/25(日) 16:40:30
長らく更新出来ずスミマセン> < 学会の準備でずっとバタバタしてました(;-ω-)ゞ

ヤツキ>>
【お待たせしました、家系図ですっ
imepic.jp/20150125/584890
だいたいこんな感じ?
見えづらいけど> <】

イスラ>>
【わーい←
ヨハン母の名前はレイシーって事にします(^0^
ジル、根本は変わらないのか…
ジルは多分、のび太に優しく、ジャイアンやスネ夫に意地悪するタイプだと思います←←
んー、まともな神経じゃないですからねぇ…(???)

可哀想ですかね?←
設定だけ思いついて膨らますことが出来ないんですよね(笑)
いえいえ、寧ろイスラさんが自分の思いつきを素晴らしく改良してくださるのでとっても嬉しいです(笑)

爺も可哀想に…( p_q)和解できると良いですね(;-ω-)

スカートの裾を踏んでしまったり、スカートに足が絡まったり、ロングスカートはとっても危険です←

シエルにもとうとう女装癖が…(違
シエルも大人になったのねー(棒読み)

キャンチョメが可哀想なんですかww
いやいや、白龍だってジュダルにとっては良い方向に成長してますよ!
「お前の為に俺頑張る!」って具合に白龍の尻に敷かれてる感じが可愛い可愛い← 白龍のお願い(と言う名の無茶振り)にとっても弱いし!

はい、奥が深いのですよ←
えーそんなことないですよー(棒読み)

いやいや、十分使いこなしてますって!!

ジルの弱みを握れば…←】

324シャム ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/27(火) 10:51:17
【闘技場】

土煙で何も見えない。…が、正確性よりも「数撃ちゃ当たる」戦法を好むシャムが、砲撃の手を休めることはない。

相手の戦意喪失を確認するのは、手当たり次第に乱射した後でいい。彼がその間に死亡してしまう可能性もあるが、そこはまあ仕方のない話だ。

そう考えていた矢先、不意に強い風が吹き荒び周囲の土煙をなぎ払った。
視界が開け、右目の端を何かが掠める。

「…あぁ?」

そして次の瞬間、シャムの身体は宙に吹き飛ばされた。
壁に激突し、地面に落下する。

右半身に違和感を覚え見てみれば、回転するスクリューに巻き込まれたかの如く右手はぐちゃぐちゃ。右胸の肉は抉れ肋が剥き出している有り様だ。

瞬く間に会場は騒然となった。この状況でもなお歓声を上げる血の気の多い者もいるが、みな血溜まりの中に沈み動かないシャムを凝視していた。

「…くッ…、くははははははッ!」

しかしそんな中、突如として大きな高笑いが場に響いた。
声の発信源は他でもないシャム自身だ。
恐らく彼のことを知らない観客の殆んどが、気が触れてしまったのでは…と思ったに違いない。

呆然とする会場の空気を置き去りに、彼は一頻り笑い続ける。そして一つ大きく息を吸い込み…

「いッてえなゴラァッ!!」

…急にキレた。
普通の人間なら痛いで済む話ではないが、しかし血痕こそ残れ彼の傷はもうそこに存在してはいなかった。

だがそれに反しシャムの怒りは収まらない。
憤然と立ち上がる彼の左腕が大きく蠢いた。
寄生生物の融合範囲が左腕から背中、右肩まで広がり、あるものに形を為していく。

そしてまるで翼を拡げるかの如く、シャムの背後から四挺の口径30mm機関砲、二機の多連装ロケット砲が展開。

それぞれの兵器が一斉に火を吹き、闘技フィールドまでならず、観客席にまで嵐の様な弾幕が蹂躙した。

325アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/27(火) 10:53:45
【過去】

ジルの言葉に対し、アブセルは返事に窮した。

「別に興味なんて…」

ない、と含んだ言いかたをするものの…やはりそれは本心からのものではないらしい。

その証拠にアブセルはちらりとリトを見やる。
ふいに彼と目が合うと、目の下をほのかに赤らめ、ぷいっと直ぐに顔を背けてしまった。

「…気遣ってあげるって…どうやったらいいか分からない…」

いじわる…は、もうしないと思う。…多分。
今回のことで懲りたから。
だが人に優しくするという行為は、今のアブセルにとっては少々ハードルの高いものでもあった。

そもそも彼は、今まで子供同士の交流の場において、気遣いなるものの配慮をされた経験がない。
いや、そもそもそれを交流と呼んでいいのかどうかもいささか疑問ではあるが。

いずれにせよ彼の場合、他の子との接触といえば、謗られるか、石やボールを投げつけられるか、倉庫に閉じ込められるか…など。おおよそ笑い者にされ、嫌な思いをするものでしかなかった。

そんな中にいれば、当然アブセルの対人意識も捻くれてしまう訳で。

唯一の味方だった母に見捨てられたことも相成ってか、彼は自分の周囲に壁を作るようになってしまった。
他人に心を許すことを極端に恐れ、それどころか人を寄せ付けないため、自ら嫌われる様なことをする節さえあった。

拒絶されて傷つくのが怖かったのだ。
ずいぶん後ろ向きな考え方ではあるが、それが彼なりの身を護る術だったのだろう。

「本当は仲良くしたい」しかし「人と深く関わるのが怖い」そんな異なる感情が共存しているせいで、アブセルは他人とのコミュニケーションが上手く取れずにいたのだった。

326レックス+etc ◆.q9WieYUok:2015/01/28(水) 15:15:34
【闘技場】

確かな手応えは、あった。
乱気流を纏った鑓の矛先はさながらスクリューの様なモノ。
直撃すれば唯では済まない。

しかし。

あまりの威力に外壁まで吹き飛び、血溜まりに沈む対戦相手は哄笑を上げる。
そして更に、一通り笑い終えると同時に怒号。

それを合図に対戦相手、シャムの左手から肩、背中に掛けてが蠢き、様々な重火器が姿を現した。

「……人外の方、ですか。」

そして、その砲口は一斉に火を噴いた。
その威力は凄まじく、闘技場のみならず観客席にまで弾幕が降り注いでいく。
流石の観客達も歓声を悲鳴に変えて逃げ回り、周囲は大惨事だ。

しかし、それでも尚審判のマルトは試合中止の声を掛けず、涼しい顔……何らかの異能を使い、弾幕を防ぎながら試合を見ていた。

それを視界の端に映しながら、レックスは疾走。
超高密度まで圧縮した大気分子の小盾を構え、弾幕の嵐を進んで行く。

(銃弾の軌道は基本的に直線のみ、ロケット砲にだけ気をつければ何とかなります!)

しかし、嵐の様な弾幕全てをかいくぐるのは不可能であり、進む事に銃創が増えて行く。
だが、近付かなければ勝気は無い。

(異能による遠距離攻撃は左手によって無効化されますが、近接攻撃なら通じます。

それに、あの“奥の手”を確実に当てるには近付くしか……!)

レックスは破壊の権化と言っても過言では無いシャムへ、鑓と盾を構え確実に、距離を詰めて行く。

ーーーーー

「凄い騒ぎだな……でもアレじゃあしょうがないか。」

逃げ惑う観客達が入り乱れる観客席で、メイヤは呆れた様な、苦笑いの様な声を漏らす。
アグルとの試合を終え、簡単な怪我の治療をした後に、待ち合わせていたサンディと観客席で試合を観戦していたのだが……

何でもアリとは言え、暴れ回るシャムは如何なモノか。
観客にも既に負傷者が出て居り、それがより一層観客達の恐怖症を煽っている様だ。

何より、そろそろ自分達も避難した方が良さそうだ。
比較的人の出が少ない出入り口を探し、メイヤは立ち上がる。

「サンディ、俺達も避難しよう。

流石に観戦してるだけで怪我するのはいただけない。」

そして、サンディの手を引き、歩き始めた瞬間。
不意に現れた人影……二人組の男、黒髪に面の男と白髪の少年がその進路を塞ぐ。

「行かせないよ、折角周りの目を気にしなくて良さそうなんだから。

喰わせて貰うよ、僕達“四凶”が。

ねぇオンクー、一番弱そうな天照大神から喰らって行けば、順当に“神格”を上げれるよねぇ?」

327ヤツキ ◆.q9WieYUok:2015/01/28(水) 22:07:55
【おぉー!リマさんありがとうございやす!】

328ベルッチオ ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/29(木) 22:26:43
【ポセイドン邸】

なぜ今さら真実を打ち明ける気になったのか…。
正直な所それは老翁にも分からなかった。
ただそれがヨハンの死に起因することは確かだったが…しかし、それだけだった。

ナディアの言う通り、厚かましくも情けを請い、許してやって欲しいと考えてのことだったのか。
それとも、ヨハンの娘である彼女に、彼のことを知って貰いたかっただけなのか。

または、その事実を自分一人の胸に抱え続けることに疲れ、懺悔をしているつもりにでもなっていたのか。

いずれにしても自分本位なものに違いはないが。しかし、ともすれば、まだ懺悔は終わっていない。
重ねた罪は全て、最後まで告白しなければならないのだ…。

「…リト坊っちゃんに対しても、大変申し訳ないことをしてしまったと思っています…」

苦々しい口調で老翁は口を開いた。
そして少し間を置いて、次にこうも続けた。

「奥様の心のご病気…、お嬢様はどう思っていらっしゃいますか?」

繋がりを考えれば、何の脈絡もない様に思えるその言葉。いきなり話が飛び、ナディアからすれば訳が分からなかったことだろう。
しかし彼は気にしていなかった。

「不自然とはお思いになりませんでしたか?
奥様が坊っちゃんの誕生を特に心待ちにしていたのは周知の事実ですが…。
あの方はもともと気の強い方でいらっしゃいます。どんな理由があろうと、あそこまで豹変なさるのは少し考えにくいものではないでしょうか」

そして彼はナディアを見つめ、はっきりとこう告げた。

「あれは私の暗示によるものです」

329ベルッチオ ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/29(木) 22:28:33

ナディアは言った。あんたはリトに冷たかった、と。

確かにそうだったと思う。
リトに対しては、一線どころか二線も三線も引いて接していたから。

それは"情が移らないように"とか、"彼の行く末を知る者としてのけじめ"とか、そう自分自身に言い聞かせていたが。
正直な気持ちを言うと、自分は心のどこかで彼のことを恨んでいたのかもしれない。

もともとヨハン達家族の関係にはどこか危ういものがあった。
ヨハンとミレリアの間には少なからず蟠りがあったし、娘…主にナディアも父親に対して不満を抱いている様だった。

それがリトが産まれたことで、より顕著な形となって表面化しようとは誰が予想しただろう。
リトを巡って家族間の溝は深まり、修復不可能なまでに軋轢が生じた。

勿論それはリトのせいではないが。しかし結果として家庭内に新たな確執を生み、ヨハンを更に狂わせる原因となった彼を、たぶん自分は許せなかったのだと思う。

「坊っちゃんや奥様のことだけではありません。
私はトーマ様ご家族の事件を含め様々な汚行に関わり、旦那様に手をお貸ししてきました」

更に老翁は吐露し続けた。

ヨハンの権力志向は老翁も危惧しているところがあったが、その異常性は次第に目に余るようになった。
我欲の為には時に強引とも思える行為…賄賂や暴力に訴えることも屡々であった。

止める機会はいくらでもあった筈だった。
いや、実際に口を出すこともあったが、最終的に自分は彼の指示に従い続けた。
こんなことを続ければ、いずれ破滅するのは目に見えているのに…だ。

彼の望みを叶えることが、自分が彼にしてあげられる唯一の罪滅ぼしだとでも思ったのだろうか。どんな形であれ、彼に頼られることが嬉しかったのだろうか。

…本当に、自分という人間はどこまで愚かなのだろう。

「ご当主様…」

ふいに老翁は床に膝まずいた。
深く身を屈め、ナディアの足元に叩頭した。

「誠に申し訳ございませんでした。
弁解の余地もございません。ご当主様の判断の元、然るべき処分を所望いたします」

330イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/01/29(木) 22:41:17
リマ》ありがとうございます^^いつ完成するか分かりませんが、頑張ってラブストーリーなるものを書いてみます

ああ、っぽい(笑)ちょっとしたドラえもんですね←
普通じゃないのか…(笑)

可哀想ですよ!ミレリア達の三角関係が今も続いていたなら、自分はトーマよりヨハンを応援してたでしょうね←
そうですかね?何か勝手に色々改良しちゃってすみません;

もう別に和解しなくてもいいかも(笑)爺だってもう引退の年齢だし、屋敷から追い出しても構いませんよ←

マジか、そんなリスクを抱えながらも皆さん頑張って履いてるんですねw

ジュダルが尻に引かれてるんだ…!
まさか彼がそんな萌えキャラになろうとは…(笑)

ジルの弱みは…妹ですかね?
じゃあ妹を人質にとって…ってそんな卑怯なこと出来ませんよ←

331シャム他 ◆Hbcmdmj4dM:2015/02/02(月) 19:45:26
【闘技場】

「死ッね、おるァアアァァアッ!!」

無数の砲弾にも臆さず、こちらへと疾走してくるレックスに対し、負けじとシャムも砲火で迎え撃つ。

しかし、その時である。何の前降れもなく、脳天に何かが直撃してきた。

不意の一撃にたまらず横転しそうになる。
その傍ら、彼の頭に蹴りを浴びせた張本人…DDは、宙返りをして華麗に地に着地してみせると、素早くシャムの頬を両手で挟み、その口に唇をあてがった。

「ぶッ…!?」

彼の口づけにはエナジードレイン的な効果でもあるのだろうか。
初めの内は大暴れしていたシャムも、終いには力が抜けたようになり、へなへなとその場に崩れ落ちてしまった。

「テッメ…ッ何しやがる、このクソカマ…!」

不快感を露に服の袖で口を拭い抗議の音を上げる彼に対し、DDは意にも介さない様子で言葉を返した。

「いくらなんでもやり過ぎよぉ。その熱くなると直ぐ周りが見えなくなるの、悪いクセよ。
あ、ごめんなさいね坊や。迷惑かけちゃって」

そうしてレックスに軽く声をかけた後、DDは審判に棄権の旨を告げる。
そして起き上がれないでいるシャムの襟首を無造作に掴んだ。

「あ〜あ…これで取引の話はパアね。
ま、貴方を人選したこっちのミスでもあるから、あまり強くは言えないけどー」

傍目からすればシャムを止めに来た様に見えるその行為だが…、捉え方を変えれば、レックスの"何か"から彼を庇った様にも見える。
まあ、そこは本人のみぞ知ると言ったところだろうが、当のDDはシャムを引き摺りながら、溜め息まじりにフィールド内を後にした。

そして――…

シャムが棄権し、危難が去ったかの様に思われた中、今度は耳をつんざくような咆哮が会場中にこだました。

六つの脚に六つの翼。
大犬に姿を変えたオンクーが、そこにいた。
大きく裂けた口からだらしなく舌と涎を垂らし、唸り声の様な不快な音を発する。

「…じゃあクロス、天照はお前にあげるよ。
ワタシは…」

言って、彼はちらりとメイヤを見た。
いや、正確には言えばこの場合、見るという表現は正しくなかったかもしれない。何しろそれには眼が存在しなかったのだから。

それでも彼はしっかりとメイヤを射竦め、殺意を孕んだ牙を剥き出しに、相手に飛びかかった。

「こっちの"狗"に借りがあるね!」


【クロスとオンクーは今回で(物語上から)リタイヤする流れですか?】

332レックス+etc ◆.q9WieYUok:2015/02/04(水) 17:57:48
【闘技場】

突然の乱入者によって無力化される対戦相手。

二人は顔見知りの様で、審判へ棄権の旨を告げ、闘技場を後にした。

その姿を見送り、レックスもまた、歩きだそうとするが……

(なん、ですか?アレは……!?)

突如として響き渡る、雷鳴の様な咆哮に足を止めた。

音のする方を見れば、三対の翼と脚持つ異形の影が観客席で暴れているではないか。

更に、よくよく見れば暴れまわっているのは異形だけではない様だ。

仮面を付けた青髪の男達が観客へと襲い掛かっているのが見える。

それも、数十人と数も多い。

「これは、不味いですね……!!」

試合も中途半端に終わり、苛立ちは募る一方だ。

しかし、今は観客達を助けるべきだろう。

審判のマルトへと視線を投げ、共に頷くと同時にレックスは駆け出す。

しかし。

レックスが観客席へと辿り着く事は叶わず。

どこからともなく現れた人影が放った、絶対零度の吹雪が無慈悲なまでに吹き荒れ、闘技場を蹂躙していく。

ーーーーー

「全く、DDが止めに入らなければどうなっていた事やら……」

シャムを引きずり闘技場の出入り口へと歩いて来るDDへ、フィアは労いの声を掛けた。

シャムが負ける事はないが、あのまま戦えば周りだけでなく、本人も決して浅くは無い傷を追っていただろう。

そう思える程に、あの眼鏡の青年の実力は高い。

「まぁ、怪我しなかっただけ良しとしましょう。

クロッソとの取引はおじゃんだけどね……」

闘技場から続く選手用の通路を歩きながら、フィアはため息を吐いた。

それと同時に。

闘技場を揺るがす咆哮と、それに続いて凍える様な冷気が通路内を吹き抜けていく。

「……何、この強大な“氣”は。」

更に、膨れ上がる強大な二つの“氣”を感じ、フィアは思わず呻いた。

「この感じ、十字界で戦った者に似てるけれど……まさか!!」

ーーーーー

咆哮に続き吹き荒れる猛吹雪。

一瞬にして視界を埋め尽くす真白のそれは、レックスの身体を軽々と吹き飛ばし、闘技場の壁へと叩きつけた。

「か、は……」

突然の衝撃と、壁へ叩き付けられたダメージは重く、レックスは直ぐには動けない。

十数秒の間を置き、鑓を支えにゆっくりと立ち上る。

吹雪により視界はすこぶる悪いが、何者かがマルトと戦っている様だ。

「いったい何が起こっているのでしょうか……!?」

333メイヤ+etc ◆.q9WieYUok:2015/02/04(水) 18:05:22
【闘技場】

そう言えば、闘技会の開幕セレモニーにてその姿を見た気はする。

更に思い出して見れば、弥都で刃を交えた事もあった。

「巷で噂されてるらしい異能者狙いの二人組は、お前達だったんだな。」

行く手を阻む二人組へ、メイヤは固い声を返す。

どうやら彼等の狙いは自分達だった様だ。

逃がすつもりは無いと言った様子の二人を視界に収めながら、メイヤは闘技場へと目を向ける。

(あっちは終わりか……)

何やら乱入者が現れたらしく、試合は終わった様だ。


これで避難する理由は無くなったが、今は戦うしかないらしい。

雷鳴の如き咆哮を上げながら、異形の大犬へと姿を変えたオンクーへ、メイヤは刃を抜き放つ。

そして、飛び掛かりの一撃を刃で斬り払い、後方へ跳躍。

着地と同時に闇の鎧を身に纏い、左手を前へ。

「犬に狗呼ばわりされるなんてな、大人しく犬小屋へ帰ってくれたら助かるんだが。

来いよ、躾てやる。」

指をクイクイっと動かし、メイヤはオンクーを煽った。

ーーーーー

あの姿になったオンクーはそう簡単には止まらない。

周囲を見渡せば、観客席では暴動が、闘技場では猛吹雪が。

どうやら色々と事が重なったらしい。

たが、今はそれもまた好機。

大犬へと姿を変えたオンクーから視線を変え、クロスは眼前の少女へと目を向ける。

「弥都とこの街でたらふく異能者を喰ったからね、“咎落ち”の心配も無い。

さぁ、喰わせてもらうよ……天照大神!」

変装用の面を投げ捨て、クロスは薙刀を振り上げる。

そして、小柄な身体からは想像もつかない程の速度と重量の乗った一撃を繰り出した。

更に、それと同時に大気中の水分子を操作し、作り出した二本の水の槍でサンディへと挟撃を放つ。

【そうですねー、四凶決着といきませう!】

334アグル他か:2015/02/09(月) 21:44:54
【闘技場】

突如として襲撃を謀る謎の男達と、会場中に吹き荒れる猛吹雪。
所所方方で大混乱が巻き起こる中、飛び掛かってきた男の一人を蹴り飛ばし、アグルは観客席からレックスの傍らに降り立った。

「大丈夫か、委員長」

この緊迫した雰囲気にも関わらず、彼の態度はいつもと差異がない。どこか気怠気なものだ。

「逃げるんなら肩貸すけど」

そして眼前で繰り広げられる戦いに目を向けたまま、レックスに言った。

――…

闇の鎧を纏った相手を見据え、オンクーは口の端を吊り上げる。堪える気もない笑いが息として洩れた。

「勘違いして貰っちゃ困るよ。
ワタシが用があるのは、お前じゃなくてその"中身"ね」

弥都で対峙した折、窮地に追いこまれた筈の彼の態度が、突如として豹変したのをオンクーは見ている。
それはまるで人格そのものが変わってしまったかの様な。
どんな仕掛けかは知らないが、あれは喰いがいがありそうだった。

「その化けの皮、さっさっと剥がしてみせるがよろしいよ」

オンクーは首をもたげ、大顎を開く。
呪を宿した黒々とした業火を吐き出し、周囲一体を火の海に化す。そしてその場から跳び上がり、己の巨躯をメイヤに叩きつけるべく襲いかかった。

――…

少年の放つ挟撃がサンディに襲い掛かる。

しかし、その瞬間。彼女を中心に目映いばかりの光が膨れ上がった。
二振りの水槍は一瞬のうちに蒸発し、薙刀の刃先はどこからか現れた勾玉によって止められる。

彼女の身代りとなり粉々に砕け散った硝子片が周囲の光を拾い、ちらちらと輝きを見せる中。
額に日輪の印を宿し、薄紅色の羽根を背に広げたサンディはその手を鞘へ。

「まったくもう…。私達に用があるんなら、なにも他の関係ない人達を巻き込むことないじゃない!」

立て続けに事が起こりすぎて何がなにやら分からないが、取り合えず今が危機的状況だということは分かる。
力の出し惜しみをする必要はない。最初から全力だ。

腰を落とした姿勢から刃を一気に引き抜く。炎を纏った抜き身が大気を焦がし、一直線にクロスへと迫っていった。


【了解です!】

335レックス+キール ◆.q9WieYUok:2015/02/09(月) 23:51:23
【闘技場】

「大丈夫です、一人で立てますから。」

三叉鑓を支えになんとか立ち上がるレックスの隣。

観客席から飛び出して来たアグルは何時もと変わらない。

肩を貸そうかとの声も聞き慣れた気怠げなモノだ。

その声と、この場から抜けようとする問い掛けにレックスは憤りを感じるも、深く息を吐き心身を落ち着かせる。

「助けに来てくれたのは嬉しいですが、逃げる訳には行きません。

誰が、何の為に襲撃を掛けたのかはわかりませんが……ここで止めないと街に被害が出ますから。」

そう、今はまだ闘技場内だけだが、このままでは必ず街へ戦火は広がるだろう。

見れば観客席でも戦闘が繰り広げられている。

如何に闘技場が巨大だとしても、激闘が続けば崩壊は免れない筈だ。

刺す様な冷気を吸い込み、吐き出し。

レックスは鑓を構え、眼前を見据える。

そして、飛び出そうとしたその時。

吹雪を突き破るかの勢いでマルトが吹き飛ばされ、数刻前のレックスと同じ様に闘技場の壁へと叩き付けられる。

レックスと違うのは、辛うじて受け身を取り、支えもなしにしかと立ち上がった所か。

だが、よく見ればその姿はボロボロで、額からは鮮血が溢れている。

「……お前達、避難してなかったのか。」

しかし、ダメージを感じさせない動作で剣を構え、マルトはレックスとアグルの二人へ声を掛けた。

「本当なら、逃げろと言いたい所だが、手伝ってくれ。

団長が来るまで奴を止める。

正直俺一人じゃあ無理だが、四神が二人居れば何とかなる筈だ。」

その問い掛けにレックスは無言で頷き、チラリとアグルへ黒瞳を向ける。

しかしすぐさま視線を前に戻し、来た。

圧倒的なプレッシャーを放ち、吹き荒れる猛吹雪の中を進む一人の女性。

視界を埋める真白の中、黒のスーツを着こなす四霊が一人。

「合い見えるのは初めてね、四神のフレイヤとトール。

私は四霊、霊亀のキール。

初対面で悪いけれど、アナタ達。」

吹雪に髪を靡かせ、キールは氷点下の声で囁く。

「ここで皆殺しよ。」

そして、その姿が互いに視認出来る距離まで近付いたと同時に。

キールは絶対零度の波濤をマルトを含む三人へと放った。

336メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/02/10(火) 15:15:36
【闘技場】

異形の大犬が洩らす笑い声に、メイヤは眉を細める。

しかし、続く言葉で彼が何を言っているかを理解し、応えた。

「……俺は俺だ。

それに、化けの皮を剥がされるのはそっちの方だろう!」

そして、吐き出される黒火に臆する事無くメイヤは駆け出し、疾走。

黒火の海を駆け抜けながら、巨大な闇刃を生成。

襲い来る巨躯へ狙いを定め、刃を横薙に一閃……するも、オンクーの一撃は予想以上に重く、振り切る事は叶わず刃は砕け散って行く。

更に、刃が砕けバランスを崩した所にオンクーの巨躯が飛来。

避ける事は叶わず、辛うじて左腕でそれを防ぐもメイヤは吹き飛ばされ、観客席へと叩き付けられた。

ーーー……

弥都で対峙した時は、此方の完敗だった。

首筋へと突き刺さる牙と、溢れ出す血の感触を最後に、自分は意識を失った。

そして、次に目覚めた時には屋敷の中で、傷も消えていた。

あの時は、誰かに助けて貰ったのだろうかと思っていたが……

ーーー……

燃え盛る黒火に囲まれながら、メイヤはゆっくり立ち上がる。

防御の為に構えた左腕は、肩口まで鎧が砕けているものの、折れてはいない。

(封じられし“悪神”……奴の狙いはソレか。

そして、以前戦った時に俺を助けた、いや、“器”としての俺を守る為に顕現したんだろう。)

弥都でオンクーを退けたのは自身に宿る力であり、自身を蝕む力。

それは強大な意思を持ち、常に自分へ囁き掛けている。

“闇を喰らい、身体を渡せと”

だが。

バルクウェイでの戦いの後始末として、深淵から溢れ出す闇を喰らい尽くした以降。

“悪神”は以前よりも成りを潜め、反比例して扱える闇の総量は増えた。

「闇を喰らい尽くす“悪神”。

俺がアンタを喰らってやるよ……!」

弥都では敗北を喫したが、今は負ける気がしない。

立ち上がり、メイヤは再び刃を生成。

右手に長刀、左逆手に短刀を。

破損した鎧も修復し、再度駆け出す。

その速度は先程よりも数段速く、漆黒の影は瞬く間に大犬との距離を詰め、刃を二閃、三閃、四閃、五閃。

勢いの乗った回転斬りは、増殖し続ける闇の小刃を纏い、竜巻の如く膨れ上がる。

そして、全てを切り刻む嵐と成り、オンクーの巨躯へと襲い掛かった。

337クロス ◆.q9WieYUok:2015/02/12(木) 15:54:43
【闘技場】

水槍は蒸発し、薙刀の刃は勾玉により防がれ。


光舞う中現れしは、天照大神。

額に日輪、背には薄紅の羽を背負うその姿を見、クロスは驚きの表情を浮かべる。

「まさかその姿になる程、力を使いこなせているとはね……

正直見くびっていたよ、君の事を。」

しかし、その表情は直ぐ様歓喜の笑みへと変わる。

それと同時に、サンディが放つ炎の斬撃を水盾で防ぎ、爆発。

水蒸気爆発により巻き起こる烈風が吹き荒れ、それに乗って濃霧が周囲に広がっていく。

「でも。

今の君は四神の中で一番脂がのって美味そうだね。」

そして、濃霧を突き破ってクロスは飛び出す。

しかしその姿は、先程までの少年の形を成さず。

「この世は弱肉強食だよ、そして僕達四凶は全てを喰らう者。」

白髪頭からは二本の巻角が、小柄だった上半身は筋骨隆々に。

下半身は四つ脚、真白の綿毛に包まれた馬脚へ変化。

右手の薙刀は消え失せ、氷の突撃槍を。

逆の左には氷の大盾を持ち、蝙蝠の翼をはためかせ、現れしは異形のケンタウルスか。

異形の巨躯へ変化しつつも、表情だけは幼い少年のまま、クロスは力を解放させたサンディへ突撃。


「見せてあげよう、 饕餮の力を!」

勢いの乗った、鋭くも強烈な刺突を繰り出した。

338アグル、サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2015/02/15(日) 20:57:58
【闘技場】

飛行艇で初めてマルト達を見たとき、直感的に自分との力の優劣差を感じ取った。当然、劣っているのはこっち…という形でだ。

しかしその彼が今、自分とレックスに加勢を求めている。
彼の表情から察しても、どうらやら相手はよほどの化物らしい。

アグルは何も答えず、無言で視線を動かす。
見えるは圧倒的なプレッシャーを放つ黒スーツの女に、迫る絶対零度の波濤。

全てが凍りつく前に、地に槍を突き、アグルは強力な電磁波を周囲に発生させる。
あらゆる原子の運動を停止させる絶対零度の攻撃に対し、こちらは反対にそれらの振動を増幅させる。

彼方と此方で二分に分たれた空間。
しかしその境界線は徐々にだが、じりじりと押されている。

「……ッ」

このままでは長くは持たない。
アグルの瞳に僅かながら焦燥の色が滲んだ。

――…

濃霧を破って、異形の怪物が飛び出してくる。その姿を見るやサンディは大きく目を見開いた。

しかし驚いている暇などなかった。
突撃槍はもう目の前だ。

とっさに刀を構え障壁をはるも、それは薄氷の如く易々と破られ、サンディの身体は三階の特別席まで吹き飛ばされる。

「いたた…」

強く身体をぶつけた様だが、背中の羽の加護か怪我は大したことはない。
どうやら槍の先も上手く外れた様だ。

それらを一瞬で確認するとサンディは直ぐさま起き上がり、攻めに転じる。
手すり壁に立って手を翳すと、周囲に浮かぶ無数の勾玉が数珠のように一括りになった。

それを一振りすれば勾玉はひとりでにしなり、変則的な線を描いてクロスの身を縛り捕らえた。

「"紅蓮華"!」

それを好機と見て、サンディは更に巨大な火柱を掲げる。それは大きな渦となりクロスを呑み込まんと襲いかかった。

339ジル他 ◆Q4V5yCHNJ.:2015/02/17(火) 22:20:00
【過去】

「分からないって…」

まさかそんな言葉が返ってくるとは思わなかった。
しかしたしかに、”気遣うとはどうすることか”を具体的に言葉で表現するのは難しい。

「……」

アブセルに一本取られた?なんか悔しい。
こうなったら何としても言葉を見つけなければ。

などと考え出したジルより先に、フェミルが動いた。
フェミルは不意に立ち上がったかと思えばアブセルのもとへ。そしてその手を引きリトの側まで連れてきた。

「おともだち」

言ってフェミルはアブセルの手をリトの手に重ねる。

その様子にジルは笑みを浮かべる。

「うん、そうだね」

フェミルの頭を撫でながらジルは続けた。

「難しく考えなくていい。友達として、ただ側にいてあげればいいんじゃないかな?そうすれば、今は見えないことも自ずと見えてくると思うよ。」

そして、

「何と無く心配だけど…今日会ったばかりの僕には分からないし。勝手に抜け出して来たならあまり長居させられないよね。リトが動けるようになったら帰った方がいいかも。」

340オンクー ◆Hbcmdmj4dM:2015/02/18(水) 00:57:56
【闘技場】

「…面白くない奴ね」

あくまでも自分は自分だと主張する相手に対し、オンクーは心底つまらなそうな顔をする。
そして竜巻の如く迫る刃の嵐を一瞥するや、地を蹴り、その中に自ら飛び込んでいった。

「チュンツァイ!引っ込んでろよっ!」

六つの脚を使い、文字通り嵐を爪で引き裂く。
そしてその勢いのままメイヤへと突っ込み、相手の胴に牙を突きたてた。

オンクーは彼を捉えたまま、そのまま前方の壁に激突する。
下顎を壁に押し付け、にやにやと喉から音を鳴らした。

「ほらほら、どうしたね?このまま引き千切っちゃうよ?」

今はまだじゃれついている程度だと言わんばかりだ。
オンクーは相手の苦しがる様を面白がるように、メイヤをくわえた顎にゆっくりと力を落としていく。

341メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/02/22(日) 21:56:56
【闘技場】

全てを切り裂く闇の刃嵐を前に、臆する事無いオンクー。

三対の強靭な脚と尖爪を使い、刃の嵐の中を文字通り引き裂き、進んで行く。

そして、嵐の中心であるメイヤを間合いに捉えた大犬は大口を開き突進。

鋭い牙でメイヤを串刺しにし、そのまま前方へ。

メイヤの身体を壁へ縫い付ける様に叩き付け、ニヤリと笑った。

「……グイズ、タマーダビー。」

しかし、腹部を貫かれたメイヤもまた、苦痛に顔を歪めながらも笑みを浮かべる。

「向こうののスラングなら、返してやるよ。」

それは口腔から溢れる朱に染まる、凄絶なる笑み。

大陸の悪態を返し、メイヤは空いた両手で大犬の顎を掴み、ゆっくりと引き剥がして行く。

更に、いつの間にか朱から黒へと色を変えた血が泡立ち、異常なまでの剛力により開かれた大犬の口腔内へと殺到。

「オマケ付きでな!」

黒血とも呼べるそれは、瞬く間にオンクーの体内へと侵入し、侵蝕、増殖。

秒刻みで増えるそれは、オンクーの生命力とも呼べるエネルギーを喰らい尽くさんとばかりに激しく蠕動。

そして、闇に蝕まれていくオンクーを引き剥がし、メイヤは大犬の巨躯を蹴り飛ばす。

更に、蹴り飛ばした相手へ闇の小刃の群れを放ち、自身に宿る闇の力を全解放。

溢れ出す闇を纏い、漆黒の獣……黒狗へと姿を変え、雄叫びを上げた。

「オォォォォォォッ!」


【スマホ修理出すのに全データ消去とか憤死ですわ……

遅レス申し訳ない。

そしてイスラさん根回し的な対応ありがとうございます!】

342イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/02/23(月) 05:04:41
事後報告になってしまいすみません;

今回のこととか他にも何かもう色々、お二人にはたくさんご迷惑をおかけてしまって本当に申し訳ないですorz

取り合えずはこのままこちらの掲示板で続けさせて頂こうと思いますが…レスをサゲるかどうかは個人のおまかせで。

ヤツキ》うわぁ…それはショックw

343クロス ◆.q9WieYUok:2015/02/24(火) 15:25:38
【闘技場】

突撃槍の一撃は、いとも容易く少女を吹き飛ばす。

しかし、吹き飛んだ先で立ち上がるサンディの動きはダメージを感じさせないモノだ。

彼女が翳す手から放たれる火渦は、勾玉の縛鎖により動きを封じられたクロスへ迫り、直撃。

動けないクロスを焼き尽くさんとばかり燃え盛るも、次第にその勢いは衰えていく。

「ふふ、この程度じゃあ生焼けにもならないよ?」

そして、見るからに下火となった火炎を文字通り喰らいながら、クロスは身を縛る勾玉の鎖を引きちぎった。

バラバラと観客席へ散る勾玉を踏み砕き、強靭な脚力で三階上の特等席まで軽々と跳躍、背から伸びる黒翼で更に飛翔。

盾を槍へと成型しなおし、二本の突撃槍をサンディへと投げつける。

更に、投槍にも追い付く程の速度で空を駆け、その重量を生かした突進を繰り出した。

「ミンチにして啜ってあげるよ!?」

344ヤツキ ◆.q9WieYUok:2015/02/24(火) 18:34:59
【いやいや、直接文句言われた訳でもないし、イスラが謝る事無いよー!

むしろこっちが謝って感謝する側ですわ、移転から移転先でのアレとかアレとか……】

345アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2015/02/24(火) 23:45:45
【過去】

フェミルの手によって、リトの手の上にアブセルの手が重ねられる。

「……側に…?」

アブセルは戸惑いながらジルを見た。続いてフェミル、リト。そして最後にまた自分の手の上に視線を戻した。

…今は見えないことってなんだろう。
ジルの言うことはやっぱり難しくてよく分からないけど、彼らの顔を見ていると、何故だか胸の辺りがぎゅうってなる。

「あの…、あのさ…」

もう別れの時間が来たことを察すると、アブセルは躊躇いつつも口を開いた。

「また…ここに来てもいい?…リトと、一緒に…。
そ…そのっ、ホットミルク、おいしかったし…」

ついさっきまでつんけんしていた分、こんなことを言うのは恥ずかしいのか、あくまでホットミルクが目当てだとばかりに慌てて付け足す。

何となく、この家にはほっとするような温かいものを感じる。
またこの人達に会いたい。そう思った。


【そんな滅相もない…
元を辿れば自分のうっかりが原因ですので…(笑)】

346オンクー ◆Hbcmdmj4dM:2015/02/27(金) 20:35:12
【闘技場】

異質な液体が体内に流れ込んでくる。
途端、オンクーの身に言い様のない激痛が襲いかかった。

「ゲッ…ァ…ッ、アガァアァァッ…!!」

余裕の笑みは苦悶の表情へと変わり、オンクーは痛みに呻吟する。
もがくように小刃の群を避けたところで、喉奥から込み上げてきた黒い血反吐を大量に床に吐き出した。

熱い。まるで全身の血が煮えたぎっているかのようだ。
身体の内側を、黒い、おぞましい何かが
ぞわぞわと這いずり回っている。
夥しい数のそれが内部を圧迫し、ねぶり、侵していく。

オンクーは翼を羽ばたかせ、闘技場の天井を突き破り上空に飛翔した。
へどろの様にまとわりつく不快感から逃れようと闇雲に飛び回る。

「恶心、恶心、恶心、恶心、恶心、恶心、恶心、恶心、恶心、恶心、恶心、恶心、恶心、恶心…!」

狂ったように、喉元から腹部にかけてを爪で無茶苦茶に掻きむしった。己の腹を裂いて、そこから全てを引き摺り出したい衝動に駆られる。

「ギ…ッざまァ…、何を、した…」

不意に漆黒の獣…メイヤが追ってきているのが見えた。

その顔に怒りの炎をたぎらせ、オンクーは一度咆哮を上げる。
直後、凄まじい烈風が吹き荒れ、周囲一帯に不可視の飛刃が飛び交った。
同時に、背中の六翼がめりめりと音を立て、それぞれ上顎と下顎かの如く、整然と鋭い牙が立ち並ぶ凶悪な獣のそれに変形する。

それに加えた中央の顎、合わせて七つのあぎとがメイヤに向かって猛進した。

347サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2015/02/27(金) 22:16:41
【闘技場】

これでもクロスを怯ませることすら出来ないのか。
その一瞬の動揺が命取りに。気がつけば距離を詰められ、迫る異形の影にサンディはハッと息を呑んだ。

その時。

「…そが目は赤かがちの如くにして、身一つに八つの頭、八つの尾あり。その身に蘿と檜椙生ひ」

不意に塵煙の影から、ぬっと八つの鎌首が飛び出し、うなりを上げた。
飛来する突撃槍を破壊し、その首をしならせ、クロスを横に弾き飛ばした。

「その長かるは、谿八谷、峡八尾を渡りて、腹を見れば、悉く常に血垂り爛れたり」

詩歌を吟ずるような声と共に、八首の炎の大蛇を引き連れたイスラが塵煙の向こう側から姿を見せる。

そして彼が手を払うような動作をすると、蛇の首がみるみる内に矛の様に鋭くなり。
それぞれが弓弦を離れた矢の如く、疾く空を駆け抜けクロスの身体を穿いた。

348レックス+etc ◆.q9WieYUok:2015/02/28(土) 23:03:54
【闘技場】

迫り来る絶対零度の波濤と、それを防ぐべく放たれた電磁力の波。

二種類の対極する波は拮抗するも、それも僅かな事。

アグルが放つ電磁波がジリジリと、確実に押されていくのが見て取れる。

しかし、それをただ見ているだけのレックスでは無い。

焦りの色が見えるアグルの表情を横目に、レックスは風を、空気を、大気を圧縮する。

圧縮された大気は高熱を帯び、プラズマとなる一歩手前まで加圧、熱せられたそれを絶対零度の波濤へとぶつけ、直撃すれば即死するであろう死の波濤を相殺。

それと同時にマルトが飛び出し、レックスも後を追う。

そして、左右からの挟撃、剣と三叉鑓による連撃を放つも……キールは決して押される事無く、全ての攻撃を防ぎ切った。

「まだまだね、その程度では私に傷一つ付けれないわよ。」

その表情は絶対零度の如く冷たく、全く感情が見えない。

まるで氷の仮面を被ったかの様な印象を与えるキールは、その背に三対の氷翼を生やし、羽ばたく。

氷翼が巻き起こす裂風は吹雪を更に加速させ、舞い上がる雪は氷の刃とその姿を変えた。

そして、氷刃の竜巻をレックスとマルトへ叩き付け、二人を吹き飛ばす。

更に、氷翼で羽ばたくキールは吹雪を斬り裂きながらアグルへと肉迫し、先と同じ様にその翼を彼へと叩き付けた。

ーーーーー

突如現れた強大な気配の持ち主と、勃発する戦い。

戦いは大きく分けて三つだが、自分達が関わる理由は無かった。

DDの介入があったとは言え、シャムの敗北によりクロッソとの取引きが流れてしまった今、フィア達が闘技場に留まる理由も無い。

だが。

勃発する戦闘をスルーし、観客を助ける事もせず、闘技場を後にする事は叶わず。

何故ならば、強大な気配の持ち主……キールが現れた時点で、闘技場には堅固な結界ぎ張られ、外界から切り離されて居たのだ。

ーーーーー

ならば、どうするか。

答えは簡単だ。

「……結界を張った本人を倒せば良いだけの事。

それに、キャラ、被ってるのよ……私と!」

キールの放つ氷翼の一撃。

その一撃が、アグルへ届くより僅かに速く。

絶対零度を纏いし吸血鬼、フィアがキールの前へと立ちふさがった。

そして、言葉通りキールと同じ氷翼を広げ、放たれた氷翼の一撃を防ぎながら、背後のアグルへ声を掛けた。

「正直気が進まない所はあるけれど、加勢するわ。

そこのクールビューティー気取りを倒さないと、ここから出れないみたいだからね!」

349メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/03/05(木) 00:24:26
【闘技場】

ありとあらゆるモノを喰らい、増殖する闇。

それは物質だけでは無く、魂すら蝕むのだ。

胎内に侵入した黒血を吐き出し、それでも尚苦しむオンクーへとメイヤは駆け出す。

苦鳴の声を漏らしたながら羽ばたき、空へ昇る大犬が咆哮と共に放つ不可視の刃に切り裂かれながらも、疾走。

「グゥゥゥゥ……ォォオオオオオ!!」

そして、闇の波動を咆哮と共に放ち、猛進する大犬を迎え撃つ。

七つの顎に対するは、鋭き爪牙と強靭なる尾。

観客席どころか逃げ遅れた観客をも引き潰しながら、二頭の獣……大犬と黒狗は激しくぶつかり合う。

黒狗の爪牙が顎を斬り裂き、大犬の顎が爪牙を咬み砕く。

戦いは激しさを増すばかりだが、次第に黒狗が手数の分だけ押されていく。

そして遂に。

大犬の七つの顎の内一つ、本体であろう中央の顎が、黒狗の喉元に喰らい着いた。

ーーーーー

突撃槍の一撃は、直撃すれば人間など簡単に粉砕させる威力を秘めていた。

勿論、その強度も十分以上だ。

しかし、二本の槍は破壊力され、続く突進も目標を破壊する前に阻まれた。

自らの巨体が横殴りの衝撃により吹き飛ばされ、更には灼熱の弩弓に貫かれたのを感じ、クロスは思わず呻く。

しかし、特等席へと這い上がって来たその顔には笑みが。

「ふふ、フフフ……良いねぇ、この痛み。

極上の獲物、それも天照大神が二人なんて……君達を喰えるなら、この痛みすら、調味料に成り得るよォォオオオオオ!!」

血染めの笑みを狂気に変え、クロスは咆哮を上げる。

貫かれた傷口からは鮮血が溢れ、鮮血が巨躯を染め、結晶と成り。

緋色の堅鎧を身に纏い、両手に血晶の大剣を握り締め、クロスは再びサンディへ、そしてイスラへ突進。

嵐の様な斬撃を繰り出しながら、二人へ襲い掛かった。

350イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/03/09(月) 23:12:37
すみません、暫くレス返すの遅くなります;

351ヤツキ ◆.q9WieYUok:2015/03/11(水) 18:32:46
了解すー!

352ナディア他 ◆Q4V5yCHNJ.:2015/03/17(火) 09:27:51
【ポセイドン邸】


(何を言ってるんだ、コイツ…)

老人から告げられる言葉は、全て予想の範疇を超えていた。到底信じられるようなものではない。

でも…

(そうだ…母様は…)

一つだけ、合点のいくことがある。
母親はリトの誕生を誰よりも待ち望んでいた。
闇の子が生まれたから拒絶したのではない。彼女は始めから、生まれてくる子が闇の能力者であるのを知っていた。そして、”希望”とまで、言っていた。

「信じらんない…」

ナディアは拳を握りしめる。
殴りたい気持ちを必死で堪えた。

「私がアンタを処罰したら、アンタはそれで楽になる。そんなの絶対赦さない。今アンタがやるべきことは何か、自分で考えな。」

そして感情を押し殺し、その言葉だけを振り絞った。
そのまま頭を垂れる老翁には見向きもせず、部屋を出て行く。

「……」

自分なりに、よく耐えたと思う。
部屋を出た途端切り詰めた力がふっと抜けて、体が崩れる。
しかし、そのまま地に倒れることはなかった。
咄嗟に体を支えてくれたのだ。
リマが。

「ナディアさん、大丈夫ですか?」

「…うん、なんとか」

情けない。
ナディアは苦笑いを浮かべた。
体の小さなリマが自分を支えるのは大変だろうと、すぐに態勢を整える。

「無茶苦茶だろ、ここ…」

そしてナディアは何処か疲れた様子でリマに話しかけた。

「…うん」

リマはナディアに頼まれ、セナと一緒に部屋での会話を水鏡に映し見ていた。
ナディアの言葉に反論出来ない自分がいる。

同じ血筋なのに、この数百年間で随分と変わってしまった。
様々な人と出会い、結婚し…人の感覚は此処まで変わってしまうのだろうか。
こんな恐ろしい考えをもつ者が身内にいる現実は、とても受け入れ難い。
しかし、目を背けるわけにはいかないのだ。

「…セィちゃん」

リマは縋るような目でセナを見た。
闇の力で暗示がかかっているのなら、彼の力で解けるのではないか。
このままだと…

「リトが不憫じゃと?」

今の状況ではリトがあまりにも可哀想だ。どうにか解決してやりたい。
そんな彼女の心境を見透かした声が、不意に一同のもとへ降りかかってきた。

いつ来たのか、ノワールが其処にいた。
彼女は嫌悪感を隠しもせずリマを睨み、言葉を続ける。

「そなたはいつもそうじゃの。」

相手が不憫だこれは残酷だ、助けたいと言う。
しかし、それはただの優しさと履き違えた同情心だ。
そして同情とは、自分が相手よりも優位に立っていると無自覚な感情の現れ。
…今更追及する気にもならないが。

ノワールはリマを睨みつけるも、すぐにその視線を他へ移す。

「リトが部屋へ移った。」

そしてその視線は更にセナの方へ。

「そなたがどこまでやれるか、見ものじゃの。」

353リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2015/03/17(火) 21:15:51
お久しぶりです。
スレ滅亡の危機に陥ってる時に何も知らず留守にしてました> <
何のお役にも立てず申し訳ございません(´;ω;`)
マジ根回し有難うございました(>人<)

てか時々やらかすんですが、今後sage失敗したらどうしよう…(;-ω-)ゞ

354アグル、オンクー ◆Hbcmdmj4dM:2015/03/21(土) 07:42:39
【闘技場】

誰だ。
…なんてことを問題にしている時でもないのだろう。

突如として加勢に加わった女性、フィアに向け「そりゃどーも」と適当に礼を返しつつ、アグルは氷翼の影から飛び出す。

死角からの不意をついての攻撃の筈だったが、急所を狙った雷槍の刺突はキールに易々と避けられてしまった。

「…つっても、三人がかりでもこの様なもんで。
一人増えたところで、あり合わせメンバーのにわか連携じゃ正直勝てる気がしないな」

本心を隠そうともせず、アグルはため息混じりに呟いた。

―――…

オンクーの交戦は激しいものだが、それはどこか消え行く直前の炎の揺らめきにも似た何かを思わせた。

牙を相手の喉元に、そして爪を肉に食い込ませ、オンクーは組み合った状態のまま強引に黒狗を抱え空高く舞い上がる。

かと思えば、今度は空中で方向転換。それはもう落下するかの如く勢いで真っ逆さまに地上に急降下する。

(このまま息の根を止めてやる…!)

二匹が降下する先、そこには先の戦闘でも崩れることなく残っていた街の教会と、そしてその屋根に掲げられた巨大な十字架が。
そこに黒狗を串刺しにしようとでもいうのか、オンクーはぐんぐんとスピードを上げ落ちていった。

355サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2015/03/21(土) 08:07:03
【闘技場】

緋色の鎧を身に突進してくる相手の姿を見据え、イスラは神刀、火之迦具土を抜く。

「行くぞ、サンディ」

イスラの声に一つ頷き、サンディもまた腕を伸ばす。
二人が一本の刀に触れ合った刹那、そこから目映い輝きが溢れ出で爆発的な熱風が迸った。

見るや、熱を帯びた刀身は白く発光し、刀の形状はより神々しさを増したものへと変わる。
時代を越えた二つのアマテラスの力が、悪しきものを浄化する剣、天之尾羽張を生み出したのだ。

白く美しい刀身が大気を撫で、皓皓と二人を照らし出す。
湧き出る剣気が幾重もの凄まじい衝撃波を生じさせ、大剣による嵐の如く斬撃に迎え討った。


【リマ》お久しぶりです。そして気にしないでください^^
下げは別に義務でやってる訳でもないので、上げても問題はないと思います】

356アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2015/03/28(土) 19:20:52
【ポセイドン邸】

「おい、あまりセィちゃんさん達を困らせるなよ」

遅れて、場にそんな声が割り込む。
それと同時に、ノワールの背後から回されたアブセルの手が、余計なことが言えぬようにと、彼女の口をむぎゅりと塞いだ。

「取り合えずリトはベッドに横にさせといたよ。今はユニと変態のおっさん(ジュノス)が側についてる」

そう一同に言うや、彼は今度はナディアに視線を向ける。「お嬢」と切り出した。

「旦那様の葬儀のことなんだけどさ…。リト…って言うか、リトのふりをさせたセィちゃんさんはどうすんの?
親族の中には子息であるリトも出席させるべきだ、って意見もあるらしいんだ」

でも…、と続く声音に若干の深刻味が滲む。

「それって当然奥様も出席する訳だろ…?
式中に騒ぎになるようなことは、流石に不味いと思うんだけど…」

つまりアブセルは、ミレリアとリトが同じ場に居合わせることで、何かしらの問題が起こってしまうのではないか…と懸念しているようだ。

357クロス ◆.q9WieYUok:2015/03/30(月) 14:48:52
【闘技場】

灼熱を纏い、白光に輝く。

時を越え生まれ出るその剣は、より神々しい姿を現し。

白く美しい刀身から溢れ出す剣気は衝撃波となり、紅の嵐の如き連撃を迎え撃つ。

そして、 天之尾羽張から発せられた衝撃波が止んだ先。

半壊した闘技場特等席の際で、異形の魔物は立っていた。

……否、辛うじて立っていた。

二振りあった筈の大剣は跡形も無く消失し、緋色の堅鎧は元の形を残さず。

背から伸びる黒翼も、筋骨隆々な身体も大小様々な裂傷が刻み込まれ。

ひしゃげた曲角から続く幼顔を歪め、クロスは呻く様に言葉を発した。

「ふふ、ふふ……水と炎、相性で言えば僕に分がある筈なのにねぇ……

赤羊神躯、本気の僕を此処まで傷付けるなんて。」

その口調は先程と変わらないものの、その声からは疲弊の色が見て取れる。

しかし、疲弊が滲む声であっても、未だ闘志は消えず。

それを示すかの様に、クロスは左腕を横に薙いだ。

「流石だね、羨ましいよ……

安定して力を出せる君達は、僕等の様に暴走する危険性を考えなくても良い。

ましてや不安に怯える事なんてない。

だからこそ、僕等は……四凶は四神を狙うのさ。」

その様はまるで不安を、怯えを振り払うかの様に。

自らを鼓舞する様に。

そして、伸びきった左腕の先。

血に汚れた指先から零れる朱色が蠢き、陣を描く。

直径5m程の円となったそれは、拡大を止めると同時に、指先を中心としてクロスの全身を包み込み、脈動。

それは鮮やかな赤から黒へと色を変え、その身体を更に異質な……筋骨隆々とは真逆、漆黒の痩躯へと変質させる。

「赤い仔羊(REDRUM)から漆黒の殺戮者(MURDER)へ。

この姿になった以上、僕はもう負けれない……咎落ちしたその先は渇死しかないからね……」

双翼を三対の痩腕へ、半身半獣を悪鬼の痩身へ、そして操りし水を混濁した闇へと変え、そして。

紅瞳を揺らめかせ、クロスは笑った。

同時に、痩躯から闇の波動が溢れ出し、波濤となって二人の天照大神へと襲い掛かった。

「全てを喰らい尽くす無明の闇は、太陽の輝きすら歯牙に掛けるのさ!」

358フィア+etc. ◆.q9WieYUok:2015/04/01(水) 23:55:24
【闘技場】

橙髪の青年、アグルの言う事はごもっともだ。
確かに、如何に個々の実力が高くても即席の連携などたかが知れている。
ましてや相手は自分と同格以上、分が悪い所の話では無い。

(でも、そうも言ってられないのよね!)

アグルが放つ死角からの強襲をいとも簡単に避けるキールの背後へと、フィアは空間跳躍。
姿を現すと同時に手刀の一撃を繰り出すも、気配を察知したのかキールは180度水平回転しつつ手刀を受け流し、カウンターを放つ。
分子結合を解かれた氷翼が弾幕となってフィアへ襲い掛かるが、フィアは再び空間を跳躍……するよりも速く、キールの右手がフィアの襟首を掴んだ。

「空間跳躍、便利だろうけれど発動前のほんの僅かな硬直が命取りよ。」

そして、襟首を掴まれた為に逃げれないフィアへと弾幕が殺到。
鋭い氷弾の群れがフィアの身体を貫き、削り、一瞬にして血飛沫が闘技場に舞い上がった。
しかし、フィアは血塗れになりながらもその顔に笑みを浮かべる。

「この程度、何とも無いわ……!」

そう、吸血鬼として最上位の存在である十三人の長老の再生力は伊達ではないのだ。
血染めの笑みを歪め、フィアもまた、キールの襟首を掴む。
高い再生能力と空間跳躍能力、そして固有の特殊能力。
澪の派閥の長であるフィアの固有能力は、その派閥名の通りだ。
その為、同系統の能力者であるキールの力は相殺とまではいかないが、ある程度ならば阻害出来る。

しかし。

能力を阻害されたからと言えども、そう簡単にキールを止める事は出来ない。
襟首を掴む右とは逆、空いた左手に凍気を纏い、キールはフィアの右腕を手刀により切断。
そして再び水平回転してフィアの身体を投げ飛ばし、飛び出して来たレックスへ叩き付けて二人を吹き飛ばす。
更にレックスの陰に隠れて繰り出されたマルトの斬撃をいなし、その腹部へと掌打を打ち込んだ。
大気が弾ける音と共に崩れ落ち膝を着くマルトへ、どこからともなく取り出した拳銃を容赦無く撃ち込む。
連続する銃声が鳴り止んだ後、弾が切れた拳銃を投げ捨てたキールはアグルへ次はお前だと言わんばかりの視線を向けた。
それを遮る様に、右肘から先を無くしたフィアが飛び出し、氷剣による刺突を放つも、キールは手刀で受け流し、彼女を蹴り飛ばす。
蹴り飛ばされたフィアとすれ違いながら駆け出すレックスが放つ三叉鑓の矛先は空を切るも、レックスは諦めない。
空振った三叉鑓を投げ捨て、果敢にもキールへ挑んで行く。
武闘家の父を持ち、幼少期から武術を学んできたレックスの体捌きは一級品だ。
そこに異能の力が加われば、並大抵の実力者では相手に成らない程。
だが、キールはその上を行く徒手空拳の使い手だった。
掌打から続く廻し蹴りも、風を操った高速移動もキールには届かない。
レックスと同系統の能力者、暴風神の力を持つマルトとレックスの連携も、見た目に反するタフさを持つフィアの捨て身に近い吶喊も、何もかもがキールには届かない。
四神のレックスと同格であろうマルトの実力は決して低くは無い。
寧ろ経験差がある分レックスよりも数段強いのだ。
そこに吸血鬼最上位のフィアが加わり、波状攻撃を仕掛けるも……一撃が、入らない。
しかしレックス達は諦めない。
何故なら、レックス達は知っているのだ。
自分達の中に必殺の一手が、それを放てる者が居る事を。
風を操り行う高速移動よりも、瞬間移動に近い空間跳躍よりも速い、最速かつ防御不可の必殺技。
メイヤとの戦いで見せた、あの技を。

「アグル、君しか居ないんです!」

359ヤツキ ◆.q9WieYUok:2015/04/01(水) 23:57:31
【長過ぎて弾かれるとか草不可避

読みにくくて申し訳ない!

そして遅くなって申し訳ない……】

360メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/04/03(金) 21:51:11
【闘技場〜】

一瞬の浮遊感と、それに続く風切り音。

それが何を意味するか理解するのに時間は掛からなかった。

しかし、考えている暇も無い。

反転して見える景色の中に教会が見え、急降下するその先に十字架を確認した同時に黒狗は激しく身を捩った。

如何に巨躯が頑強かつ強靭と言えど、アレに突き刺されたならば一巻の終わりだ。

(後五秒も無い、けれど!コイツっ!)

身を捩り、四肢を打ち付け、必死に首筋の拘束を解こうとするもーーー

ーーーどうやら串刺しは免れた様だ。

瓦礫を押しのけ、メイヤはゆっくりと立ち上がる。


直撃する寸前に、纏っていた闇を霧散させたのが幸を奏した様だ。

だが、高々度からの落下の衝撃は凄まじく、立ち上がるのがやっとの状態か。

半壊した教会の壇上で、メイヤは剣を支えに目を凝らす。

運良く敵だけが死んでしまう様な事は無いだろう、常に最悪の状況を想定しなければならない。

「……居るんだろ、出て来いよ……」

361ナディア、ジル他 ◆Q4V5yCHNJ.:2015/04/05(日) 21:17:35
【過去】

素直でないながらもしっかりと自分の意思を伝えてきたアブセルへ、ジルは優しく目を細める。

「いいよ、いつでもおいで。ただし、今度はちゃんと許可を貰って来るんだよ。」

小指をアブセルへ向け、微笑んだ。

「約束。」

指切りと共に交わした約束。
もう叶うことはないと、この時は誰も想像などしなかった。

「ジル」

ノック音の後に彼の父が顔を出す。

「その子達が帰るようだね。僕が送って行こう。」

「え、お父様が…?」

「大事なご子息を足止めしてしまったからね、…あちらのお父上に挨拶も兼ねて。」

リトが何処の子なのか、調べがついたのだろう。
一瞬だけ、父の表情が固くなったのをジルは見逃さなかった。
ただ子供が詮索すべきことでないことも分かっていたから、ジルは頷き二人を父に託す。

「またね」

リトとアブセルの頭を撫でる。
ジルの笑顔はとても優しかった。

362ジル、ナディア他:2015/04/05(日) 21:19:02

------


「リト!!」

屋敷は予想通り、いや、予想以上に混乱していた。
召使の者達が彼方此方リトを探しているのが見えた。リトを見失ったお咎めを恐れているのだろう。皆顔面蒼白で、今にも倒れてしまいそうだ。
そんな中、窓からリトの姿を認めたらしいナディアとヨノが外へ飛び出して来た。
リトを連れてきたジルの父親には目もくれず、リトの手を取るや、すぐに彼を引っ張っていこうとする。

「ナディア」

余程慌てていたのか、ナディアは彼の存在に気付いていなかったようだ。
声を聞いて初めて其方に顔を向ける。

「おじさま…」

リトを連れ帰って来た人が知ってる人だから、ナディアは驚いた顔を見せる。
しかし今は構っている暇はない。

「ごめんおじさま、話はまた後で。コイツを…」

リトを早く部屋に戻さなきゃ、父親が気づく前に。

しかし手遅れだった。

「何をしている」

普段ヨハンやミレリアの近辺を担当する召使は残り、自由のきく召使がリトの捜索に当たっていた。
リトが行方不明と知られてしまったら大変なことになる。見失ってしまった召使は勿論、リトも。
屋敷に残った召使は気付かれぬよう普段通りの行動を装っていたものの、気付かれてしまった。

「父さま…」

ナディアはリトを自分の背に隠す。
しかし隠せる筈もなく、ヨハンはリトの腕を掴み引き摺り出した。

「こいつは何だ?何故外にいる?」

「それは…」

「勝手に抜け出したのか?」

「違…っ」

ヨハンの目の色が変わる。
リトが危ない。

「やめて…!」

ヨハンがリトを地面に叩きつけようとする。
その手を、傍にいたジルの父、トーマが止めた。

「…トーマ?」

「来客に気付かないで、随分と物騒なことをするじゃないか。…少し話そう、ヨハン。」

ヨハンは渋い顔をするも、トーマの言葉は聞き入れる。
そして二人は屋敷の中へ入って行った。

「リト…良かった」

ナディアはリトの無事を確かめ、ほっと胸を撫で下ろす。
いなくなったと聞いた時はどうしようかと思った。無事に帰って来て本当に良かった。

そしてナディアは漸く其処にアブセルが居ることに気付いた。

「アブセル…お前がリトを連れ出したのか?」

363アグル、オンクー ◆Hbcmdmj4dM:2015/04/18(土) 23:36:29
【闘技場】

「んなアテにされても困るんだけど…」

レックス達が怒涛の攻防を繰り広げる一方で、アグルはそう独り言つ。
しかしやる他ないだろう。

「しくっても文句言うなよっ!」

直後、彼の身体から電流が迸る。

言うが早いか地面が電閃し、そこから夥しい数の黒鉄の槍が突き出した。
自分やレックス達が佇立する場を除くフィールド上を余す事なく槍が埋め尽くし、相手の姿さえ見えなくなる。

「オマケだ、失明すんのが嫌なら目ぇ閉じてろ」

そしてダメ押しに、槍の一本一本が避雷針となって闘技場に滝の如く霹靂が降りしきった。


【バルクウェイ】

半壊し、静寂に包まれる教会内にメイヤの声が反響する。
それに応えるように、瓦礫の一角が崩れ落ち、そこからふらりと人影が立ち上がった。

「…本当に…忌々しい奴らね、お前ら一族は…」

獣化は解かれ、人の身に戻った彼が苦しげな呼吸音と共に発した第一声がそれだった。
メイヤのどこか特徴的な漆黒の髪と瞳…。そうオンクーは、過去に同じような佇まいをした剣士と相対している。

過去、自分を敗北へ追いこんだ奴ら…件の剣士と、そしてそいつが所属する黒十字を皆殺しにしてやろうと思った。
しかし、百年以上の封印のすえ眠りから覚めた時には、その剣士はおろか黒十字という組織さえもう存在してはいなかった。
ならばどうすればいい。いっそのこと、そいつらの子孫に報復でもしてやろうか。そんなことを考えていたのに…。

「……ッ」

不意にオンクーは口から血を吐き出し、膝から地に崩れ落ちる。
…身体が動かない。体内を蝕む闇がもうそこまで侵食してきているのだ。

また、同じ血の者に敗れるのか。彼は自嘲気味に苦笑する。
しかし、ただで死ぬつもりはない。

刹那オンクーはキッと前方を睨みつける。最後の力を振り絞って飛び出した。
メイヤの心臓部めがけて最短距離を爪の尖鋭がうなる。

「その首、地獄への手土産に置いてってもらうね!」

364アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2015/04/18(土) 23:40:52
【過去】

気に入らないから、リトが怒られればいいと思った。
退屈だったから、屋敷の皆を困らせてやろうと思った。

ほんの軽い気持ちでおかしたイタズラが、まさかこんなにも深刻な事態を招いてしまうなんて初めは想像もしなかった。

ヨハン達が立ち去った後も呆然とその場に立ち尽くしていたアブセルは、不意に自分の名を呼ばれるとびくりと肩を震わせた。

恐る恐るナディアを見る。
やがて彼は、俯き気味に小さな声で頷いた。

「…リトは嫌がってたんだ。それを俺が無理やり…」

先ほど垣間見たヨハンの表情はいつも以上に怖かった。
それは自分に向けられたものではなかったが、傍にいたアブセルも身が竦む思いだった。

「ごめんなさい、リトのことは怒らないで…」

365メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/04/20(月) 22:20:02
【バルクウェイ】

忌々しい一族か、それは言い当て妙だ。
静寂に包まれる教会内で、オンクーが吐き捨てた言葉にメイヤは静かに頷いた。

確かにそうだ、暗殺者の一族など忌々しいに決まっている。
その中でも自分は特に忌々しく、異端な存在だろう。

「俺の首じゃあ冥土の土産にもならないぞ……こんな忌々しい首なんて土産にすれは地獄に叩き落とされるだろうさ。」

弥都での戦い振りと、その言動からするに彼は一族の誰かと戦い、敗北した経験がある様だ。
それが誰かはわからないが、因縁はあったのだ。

だからこそとは言わないが、今、自分がその因縁を断つべきだろう。
例え、その結果が相討ちだったとしても。

「だけど、アンタを地獄に叩き落とせるなら安いモンだな!」

血を吐き、膝を着きながらも此方を睨み付けるオンクー。
その視線を真っ向から受け止め、メイヤは支えにしていた剣を構える。

口腔から溢れる血は黒から赤へ、闇は既にその活動を停止していた。
闘技場から続く激闘で、体力も限界に近い。

放てて一刀、いや、一刀で決めるのみ。
対するオンクーが放つは、死力振り絞った尖爪による一撃。

その一撃をメイヤが避ける事は叶わず、否、避ける事を選ばず。
鋭き一撃は寸分違わずメイヤの心の臓を貫き、傷口から、口腔から、鼻腔から夥しい程の血流が溢れ出す。

しかし、心臓を貫かれると同時にメイヤもまた、真白の刃を振り切っていた。

その一刀は、神速の一刀。

神をも斬り裂く必殺の刃。

居合い、神斬りーー

366メイヤ ◆.q9WieYUok:2015/04/20(月) 22:21:26
先々代は長として一族には何も残さず散った。
そして、宿敵に魂の炎を遺し散った。

俺も同じだろう。
一族には何も残さず、散る。

だがそれも一興、忌み嫌われる殺し屋の血筋など絶えれば良い。
長を、そしてその補佐や分家の頭が消えれば一族は自然と瓦解する。

同業者に消されるか、取り込まれるか。
先細りするしかない一族の未来に興味は無い。

だからこそ、俺は魂の炎を、生命の炎を遺す。
血塗れ両手と、屍の玉座で得た唯一の光。

知ってるか?

不死鳥は死して尚燃え上がり、羽ばたくんだぜ。
焔凰円環、産声を挙げるには丁度良いだろ、なァ?ーー

身体が、熱い。
血と共に溢れ出すその熱は、きっと生命そのものだろう。

胸を貫かれながらも振り切った刃を力無く手放し、メイヤは血塊と共に息を吐き出す。
真白の刃は赤に染まり、血溜まりに落ちて音を立てた。

その音も耳には届かず、メイヤはオンクーへと持たれ掛かった。
グズリ、と傷口が広がるがもう関係ない。

メイヤの命は数分も保たないだろう。
薄まっていく五感と意識の上、痛みは意味を成さず。

「これが、死、か……」

オンクーの肩口に顎を乗せ、メイヤは声を紡ぐ。
今まで幾度となく与えて来た死の瞬間が、遂に自分へと訪れるのか。

そう考えると、不意に怖くなった。
薄れゆく意識の中、それだけが浮かび上がっていく。

だが、それも僅かな事。
あれ程までに感じた血の熱さも消え、熱を失った身体は急激に冷えていく。

そして、生命の過多を失った身体から、その背中から、闇が溢れ出す。

「マダ、死ナヌ……悪神ハ、マダ滅ビヌ!」

爆発的に溢れ出すそれは触手の群れと成ってオンクーの身体へと殺到。
何の躊躇いも無く、寧ろ荒々しいまでの勢いで彼の身体に突き刺さり、生命を、彼の存在そのものを喰らい生き長らえようと蠢いた。

しかし、それも一瞬の事。
触手が生命エネルギーを吸い上げ様と蠕動した瞬間、不意にその動きが停まった。

そして一拍の間を置き、闇の触手が内側から爆発し、紅蓮の焔がその姿を顕した。
焔は闇を灼き尽くし、背から伸びる翼となってメイヤを、オンクーを包み込む。

「コノ、焔ハ!?

闇ガ、消エ……!?」

その焔は、真なる焔。
平安と平等を司る、鳳の焔。

焔は顕現しようとする悪神を灼き、同時に朽ちゆくメイヤの身体を再生させていく。

そして。

悪しきを灼き祓い、生命を生み出す焔はオンクーへと燃え移り、より一層その勢いを増して燃え上がった。

367レックス+etc. ◆.q9WieYUok:2015/05/02(土) 16:37:22
【闘技場】

アグルの放ったその技はレックスの予想を遥かに上回るモノだった。
地面から屹立する黒鉄槍はフィールドを余す所無く埋め尽くし、更にそれを避雷針として降り注ぐのは轟雷の瀑布。

(メイヤ相手に見せたのは、本気所か手を抜いていたのですか……ッ!!)

正に必殺、想像を遥か絶する技の威力に、レックスは言葉を失っていた。
圧倒的な破壊の前に、言葉を失ったレックスは無意識の内に唇を咬み、アグルへ黒瞳を向ける。

しかし、不意に上がる物音に驚き、音のした方向へ視線をやり、目を見開いた。

「……予想以上ね、威力だけなら四霊に匹敵するわ。

だけど……」

見開かれた黒瞳が映すのは、しかと闘技場に立つ黒髪の女性、キール。
その身体は無傷とは言わないものの、戦闘不能に至る様な傷は確認出来ない。

「私は吉兆を司る者。

そして、四霊の守を担う者。」

まるで不調は無いとばかりの口調でキールは声を発し、ゆっくりとした動作で右手を横に薙ぐ。

「絶対零度の前には光すらその動きを停める。

それはつまり、時間すら停止すると言う事。

そして、一切の不純物の無い氷の強度は本来鋼の三倍以上。

練度によるけれど、物理的に破壊出来ない硬度の氷壁を精製する事も可能。」
そう、如何に速く、破壊力がある攻撃でもキールには届かないのだ。

絶対零度により僅かながらも周囲の時を、敵の攻撃を停め、その間に圧倒的な強度を持つ氷壁を張る。
それは即ち二段構えの絶対防御。

同系統の能力者故に理解出来る圧倒的な実力差。
それを目の当たりにし、流石のフィアも諦めの表情を浮かべた。

(せめてこの場にシャムとDDが居れば……)

まだ何とかなったかもしれないが、二人には観客達の保護を任せた為に離れている。
最早万事休すか。

フィアの表情を察し、マルトもまた目を伏せた。

そして。

身動きを取らない一行へとキールは手を翳し、死の凍気が放たれたその瞬間。
一筋の雷光が閃き、圧倒的な熱量を持って凍気の波濤を対消滅させた。

「すまん、少し面倒な奴と出会って遅くなった。」

更に、響く声と共に放たれた剣閃がキールの胸元を袈裟懸けに切り裂く。
不意に上がる己の鮮血に、流石のキールも驚きの表情を浮かべた。

しかし、続く剣戟を氷刀で切り払うと同時に後方へ跳躍。
距離を取り、雷光と剣閃の主……レオールを見据えた。

「さてと、だな。

俺の部下をここまで痛めつけたお返しと、観客達に危害を加えた罪を清算してもらおう……消えたか。」

そして、剣を構え口上を上げるレオールに視線を向けたまま、キールは霧となってフェードアウトしていった。

368サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2015/05/02(土) 22:08:16
【闘技場】

また更に変貌をとげたクロスの姿は悪鬼そのもの。
その痩躯から溢れ出す闇の波動を炎波で打ち消し、イスラは勢いよく前方へ飛び出した。

「待って、いー兄!」

その時、不意にサンディが声を上げる。
しかしそれも彼の耳には届かなかったようだ。
果敢にもクロスへと飛びかかって行くイスラの背中をどことなく複雑そうな表情で見つめながら、サンディはポツリと呟いた。

「…あの子なんだか…」

悲しそうだったよ…。

―――そしてそんな間にも、既にクロスとの距離を詰めたイスラは天之尾羽張を手に、赫灼たる刃を振るう。
一閃、二閃と燃ゆる炎の光を瞬かせながら怒涛の連撃を繰り出した。

369オンクー、アグル ◆Hbcmdmj4dM:2015/05/02(土) 23:18:29
【バルクウェイ】

確かに殺したという感覚はあった。…のに、
紅蓮の焔がメイヤを包み込んだかと思えば、驚くべきことに今度は彼の身体がみるみる再生していくではないか。

「…はッ、気味の悪いやつね…」

殺したのに、死なない。

燃え盛る灼熱に身を灼かれながら、オンクーはメイヤを見据え毒づいた。

「…聴こえるよ、お前を取り巻く怨嗟の声が。
せいぜい死ぬまでその呪われた運命に苦しみ続けるがいいよ」

まさにそう最期の言葉を残し、オンクーは焔に灼かれ跡形もなく消滅した。



【闘技場】

駆けつけたレオールと、そして分が悪いと踏んだのか、その場から退散したキール。
一時はどうなることかと思ったが、取り合えず事態は収束したと見ていいのだろう。

アグルはやれやれと行った様子で、息をついた。

「…で、さっきのは何だった訳?」

来るのが遅いんだよ…とぼやきたいのを抑えつつ、先程の女、四霊の一人と名乗る者がなぜこの闘技会に乱入してきたのか。
もちろん知ってるんだよな?といわんばかりにアグルはレオールに目を向け問うた。

370クロス ◆.q9WieYUok:2015/05/08(金) 22:17:14
【闘技場】

火炎を纏う神剣により放たれる連撃は苛烈の一言に尽きる。

一撃一撃が必殺の威力を秘め、それが絶え間なく繰り出されるのだ。

烈火の如き剣撃は確実にクロスの纏う闇を灼き祓っていった。

しかし、先の言葉通り無明の闇は消え去る事無く、確実にその濃度を、総量を増加させていく。

「僕にくれよ、その光を、炎を!暗黒の闇を消し去る程のエネルギーをくれよぉぉぉぉ!」

闇を纏う悪鬼と成ったクロスは叫び、その咆哮は波動となって闘技場を破壊していく。

咎堕ちの先、それは全てを呑み込み無に帰す虚空の闇……ブラックホールだ。

闇を纏う痩躯は既に崩壊しかけており、人の形と闇の境目も曖昧だ。

そして。

幼顔の面影すら残らない悪鬼の牙口が絶叫を上げたと同時に。

クロスの理性と痩躯が遂に崩壊し、莫大な闇が爆発的に溢れ出した。

更に、溢れ出す闇は渦を巻き、大気を、光を、時間すら呑み込まんと奈落の大口を開けた。

今でこそ規模は小さいが、生まれ出でたそれ……ブラックホールは秒刻みで拡大して行くだろう。

そこにクロスの意識は無い。

身体も、意識も、魂すら失い闇黒の渦と化した四凶の成れの果ては、イスラを、サンディを、闘技場を、バルクウェイの街を呑み込まんと広がっていく。

【イスラさんイスラさん、次でトドメ刺しちゃって下さい】

371イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/06/07(日) 19:46:41
【闘技場】

まるで断末魔の叫びの如く、クロスの咆哮が耳をつんざく。それと同時に、何らかの爆発に見舞われた様な感覚に襲われた。
足が地面から浮き、後方の壁に叩きつけられる。
握る刀が手から溢れ、一瞬の衝撃に息が止まった。

一体なにが起こったのか。
それを理解するよりも先に,痛みに堪えながらも顔を上げたイスラの目に漆黒の塊が飛び込んできた。

周囲の瓦礫や観客用の椅子を呑み込みながらも、驚異的なスピードで肥大していくそれが、先程の彼の成れの果てだと言うことを理解するのにそう時間はかからなかった。
そして、直に自分やサンディ、いや、もっと大勢の人間があれの餌食になるだろうことも容易に想像がついた。
イスラは咄嗟にサンディの姿を目で探す。

「サンディ!逃げ…っ」

しかしその時、直ぐ脇を何かが駆け抜けて行った。

紺色の短いスカートをたなびかせながら身を翻したそれは、イスラが落とした刀を地面から拾い上げ、かつての少年だったものに向かって一直線に駆けていく。

「なっ…!?」

捜していた当の本人の無謀な行動。
しかし制止の声を発する間もなく、直後、強烈な光と音が迸った。

イスラは反射的に腕で顔を隠し、目を閉じた。

…やがて光も音も消え、彼はゆっくりと目を開ける。そして呆気に取られた。
そこには先程の狂騒も、奈落の口も、そしてサンディも、呆れるほど綺麗さっぱりと 消え去っていた。


【遅くなってすいません!早くレスできる時はしますが、暫くはこんな感じのペースになるかもしれません(^_^;)
そして曖昧な幕引きですが一応決着つけました。
サンディは身を呈してクロスを封印だか消滅させたけど、それと引き換えに暗黒に呑まれたか、どっか別の場所に転移したか〜
みたいな感じです。やっといてあまり深く考えてません(笑)】

372レオール ◆.q9WieYUok:2015/06/10(水) 23:51:54
【闘技場】

「……そうだな、見た所戦いは終わった様だな。

負傷者の救護手配が終われば一度集まって話そうか。」

やれやれ、と言った様子で口を開くアグルの様子に、レオールは苦笑いを浮かべながら応える。

ざっと見渡す限り、闘技場での戦闘は全て終息した様だ。

闘技場の結界も解け、続々と乗り込んでくる空挺師団兵が負傷者の搬出、救護に就き出すのを確認し、レオールは密かに胸をなで下ろした。

ーーーーー

そして、一夜が明けた頃。

空挺師団旗艦の会議室に集まった四神組一行は、ホワイトボードに書き出された様々な情報と、それに関するレオールの説明を受けていた。

「要点だけを掻い摘まむとだな、四霊の襲撃目的はこの旗艦の動力源……希少な結晶鉱石の奪取だった訳だ。

四霊が囮となり、闘技場へ戦力を集中させ、別働隊が動力源の奪取に当たる。

まさかその別働隊がこの師団の構成員、幹部だったのは予想外だったがな……

結果として、四霊の目的は果たされ、この旗艦は当分の間は動けない。」

そう、闘技場で圧倒的な力を振るったキールはあくまでも囮だったのだ。

別働隊、裏切り者である幹部は相当な実力者であり、団長のレオールをもってしても討ち洩らす程。

マルトと対なす幹部……側近との戦闘があった為に、レオールの到着は遅れたのだった。

「痛手ではあるが、暫くはこの街に留まる予定だったからそう問題は無い。」

旗艦内部にある幾つかの会議室の中でも、今居る部屋が一番面積は小さい。

集まった面々に目をやり、レオールは続けた。

「師団幹部のマルトは重傷、死亡者は出なかったものの団員の負傷者多数。

四神の一人、天照大神が行方不明。

四霊の一人、霊亀を撃退。

四凶の二人を撃破。

箇条書きにすれば結果としては上々とも言えるが……」

集まった面々、アグル、レックス、イスラ、メイヤ達にとってはサンディの安否が一番気にかかるだろう。

特に、サンディが行方不明だと知った時のメイヤの表情は悲壮感に溢れていた。

イスラの話によればサンディは何の痕跡も残さず、消えたらしい。

ブラックホールを消滅させる為に自らの命を犠牲にしたのか、それとも……

楕円形のテーブルに沿って席に座る一同の顔を今一度見渡し、レオールは問い掛けた。

「皆は、これからどうする?

この空挺師団は対黄龍を目的として動いている。

目的が同じならば、入団して欲しい所ではあるが、無理強いはしない。

無論、入団しないからと言って援助の打ち切りはしない。

飛行船、食糧物資等の援助とサンディの捜索も続ける。」

幹部の中でも右腕であるマルトと、その片割れとも言える側近の離脱は大きい。

その二人の抜けた穴を埋めるに存在として、アグル達は丁度良い所か十二分以上なのだ。

「暗躍を続けてきた四霊、黄龍が表立って動き出した今、此方としても戦力を固めたい。

どうか、力を貸してくれないか?」

373ヤツキ ◆.q9WieYUok:2015/06/10(水) 23:55:01
【久し振りすなー、月一連載みたいな感じでww

幕引きあざした!んだらばサンディは暫く行方不明と言う事すね了解!】

374イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/06/21(日) 23:10:23
【旗艦】

「俺は構わない、むしろありがたい話だ」

会議室。
集まった面々を見渡し、こちらの返答を窺うレオール対し、真っ先に口を開いたのはイスラだった。

「俺達だけでは四霊の動向やサンディの行方を調べるにも限界がある。
よりそっち側の事情に精通した者と組めるのなら、こちらとしても都合がいいし。何より、戦力不足はこちらも同じ。
共通の目的を持つ者同士、互いの手を取り合うのに何ら不満なんてないさ」

そう好意的な意思を見せるイスラであったが、それに反し、やや間を置いてから今度はアグルが話し出す。

「…前にも言ったけど、俺は入団しない。
あんたらと違って俺の目的は四霊退治でも世界の救済でも何でもないし」

サンディが消えたと聞かされた時も意にも返さなかったアグル。
頬杖をつき、レオールではなく机の端に視線を外すその態度が、この件に対する彼の無関心さを語っている。
もしくは、ただそう見せようとしているのか。

「でも、別に協力しないとはいってない。ここにいる間なら出来る限り力を貸す。
いつまで居るかは分かんねーけど」

375イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/06/21(日) 23:18:27
【と思ったけど、ちょっと落ち着いてきたかも(笑)

久しぶりに絵でも描こうかな…、何かリクエストとかあります?】

376ヤツキ ◆.q9WieYUok:2015/06/22(月) 00:53:39
【壁I・ω・)ノ

梅雨時なんで、水も滴る良い男達とかどうすか!】

377イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2015/06/23(火) 06:01:27
【おおう…また難しそうな…(笑)
でも頑張ってみます!梅雨時すぎるくらい遅くなるかもしれませんがw】

378レオール ◆.q9WieYUok:2015/07/03(金) 14:14:56
【旗艦】

此方の申し出に対し、真逆とは言わないがそれぞれ違った反応を見せる二人。
しかし、断られはしたものの、アグルの返事は決して悪いモノでは無い。

寧ろ彼なりに気を遣ってくれたのだろうか。
残るはレックスとメイヤだが……

「僕もイスラと同意見です。

四霊と対峙してわかりましたが、実力差は明白でした。
諸事情を踏まえた上で、僕入団しますよ。

どこかの誰かと違って、世界の危機を黙って見てる様な真似は出来ないので。」

レックスの方は、本人の言葉通りか。
真面目な性格の彼の返事は予想していたモノとそう変わらない。

「後はメイヤだな。

君にはイオリから言付けを預かっている。」

レックスの一言は気になるが、今は流すべきだろう。

イスラとレックス、そしてアグルがどうするかを決めた今、残るはメイヤだ。
本来ならば、彼は身内であるイオリと行動を共にしていてもおかしくは無い。

しかし、イオリの一団は今朝方に発って行ったのだ。
メイヤと、彼への言付けを残して。

「今まで通り、四神を護衛しろ。ただし、これは命令でもなんでも無い。

……だそうだ。

要は好きにしろと言う事らしいな。」

師団の協力者であるイオリの身内、その立ち位置は何とも微妙である。
だが、イオリのその言葉によってメイヤの立ち位置は大きく変わるのだ。

そして、続くメイヤの言葉に、レオールは満足そうに頷いた。

「今まで選択肢なんてモノは無かった。

イオリの言葉が、当主の言葉が全てだったから。

……好きにしろと言うなら、俺はサンディを捜しに行く。

けど、その前にイスラ達と共に動くさ。」

ーーーーー

各々が立ち位置を決め、全員が師団に協力すると言った今。
早速とばかりにレオールは話題を切り替え、話を始める。

空挺師団はバルクウェイを拠点化し、大々的に動き出す事。
旗艦の動力源が奪われた為に、その代用品の探索に動く事。

世界そのものである黄龍と対峙するに、充分な戦力を確保する事。
それと並行し、今までの主な活動内容である異貌の者の討伐をイスラ達に任せる事。

「と言う訳で、君達には遊撃隊になってもらいたい。

師団最大戦力と言っても過言ではない四神を、ただ単に手元に置くだけなのは勿体ない。

あくまでも協力者であるアグルやメイヤの存在を考えれば、ある程度自由に動ける立ち位置の方が良いと思ってな。

後は、サンディを捜すにも丁度良いだろう?」

そして、予め用意していた書類を渡したレオールは、小型飛行艇へ戻るように一行へ促す。

ーーーーー

「で、ですね。

遊撃隊として動く事になったのですが、僕は師団長の下に戻ります。

バロンや、ナディア達の帰りを待つ人が誰か居なければならないと思うので。」

飛行艇に戻るや否や、開口一番にレックスはそう告げた。

「私は構いませんよ、道理に叶っていますし。

問題はありません。」

そんな彼の言葉に、頷き何ら問題は無いと続けるのは補助員として派遣された巨漢の男、バッハだ。

「まぁ、僕が居なくても何とかなるでしょう、アグルが本気を出せさえすれば。」

そして、レックスは先刻と同じように……寧ろより攻撃的にアグルを煽りだす。
しかしそれ以上続ける事は無く、後は頼みます、と静かに言い残し、食堂兼広間を、飛行艇を後にした。

「……相当苛立ってるが、何かあったのか?」

その姿を見送り、メイヤはアグルへと声を掛けた。


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