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Key Of The Twilight

1イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/01(火) 19:01:24
移動してきました。

現在、参加者の募集はしておりません。

2イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/01(火) 19:03:06
登場人物

【四神】

アグル(トール)
レックス(フレイヤ)
ナディア(ポセイドン)
サンディ(アマテラス)

【四霊】

イオリ(鳳凰(仮)
シデン(麒麟)
ジル(応竜)
キール(霊亀)

ゼロ(黄龍)
フェミル(黄昏の花嫁)

【四凶】

クロス(饕餮)
オンクー(渾沌)
コニィ(窮奇)
フロン(檮)

【ポセイドン邸の住人】

リト(闇の管理者)
ヨノ(当主代理)
アブセル(使用人)

【シンライジ邸の住人】

メイヤ(イオリの弟)
ボルドー
シュリ(鳳凰)
七つの大罪

【処刑人の剣】

ワヅキ
アリア
ディンゴ
ヴァイト
ゼツ

【記憶の図書館の住人】

バロン
アーウィン
ユニ
メルフィ(セナとノワールの子)

【過去から来た人物】

セナ(闇の王子)
リマ(ポセイドン)
イスラ(アマテラス)
ヤツキ
ジュノス

【吸血鬼、十三人の長老】

ノワール(吸血鬼の姫)
ジーナ
フィア
レオ(故)
シャム
マゼンダ
ヴェント
ルドラ
ラディック

【その他】

ステラ(闇の残滓)
ユーリ

3アリア ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/01(火) 19:31:00
【バルクウェイ】

空を駆ける漆黒の巨狗。
雷光となって此方へと突っ込んでくるそれは、白騎士の張った黒蝶のシールドを易々と粉砕した。

そして、その巨躯をぶつけられた彼女は、大きく後方へ吹き飛ばされることとなった。

鎧の装甲が砕け散り、兜が飛んで長い髪の毛が風に巻き上げられる。
吹き飛ばされながらも天を仰ぐ彼女の瞳に、空を游ぐ鯨の影が映った。

『ド…お…シテ…』

喉奥から溢れる血反吐と共に、掠れた声が洩れる。

『……愛、シテ…いたノに…』

…あの人を愛していたのに。


直後、奇妙なことが起こった。彼女の腹部が盛り上がり、弾け飛んだ。

アリアは大きな悲鳴を上げて、身体を仰け反らせる。
血と臓物が腹から溢れ、そして、その胎内から何かが顔を覗かせた。

それは全身を血で真っ赤に染めた異形の赤子だった。
赤子は耳がおかしくなりそうな程の大音量で、狂った様に産声を上げた。


『ア…あぁ…私ノ…、私の赤ちゃ…』

震える腕を腹部へと伸ばし、アリアは赤子に触れる。

その瞬間、赤子は眼を見開き、自身の頭を撫でるその指に食らい付いた。
どう言う訳か、既に生え揃っていた歯でそのまま指を咬み千切り、咀嚼する。

そして、笑った。

不気味な笑い声を上げるそれは、アリアの腹から腸を引っ張り出すと、それを掴んで思いきり振り回す。

何て力なのだろう。
赤子を軸に、面白いようにアリアの身体が宙を回る。

そして、

ぶちり、という音がして。
アリアは慣性の力に誘われるがままに、赤黒いものを撒き散らしながら、黒狗のいる方に向かって飛んでいった。


【名前間違い、抜けてるキャラいたらごめんなさい;
ゼツのレスはまた後程返します】

4メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/07/01(火) 21:46:51
【バルクウェイ】

確かな手応えと、吹き飛んで行く敵影。

兜が脱げ、靡く髪の間から覗く顔は予想通りのモノ。

しかし、続く異常な光景に黒狗は動きを止める。

宙を舞うアリアの身体から産まれ出た異形の赤子は、空を裂く様な声で叫び、母胎を玩ぶかの如く振り回す。

そして、生々しい音を立てて千切れた腸を風に靡かせ、迫るアリアの身体を。

黒狗は、大顎を開き。

丸呑みにした。

それと同時に、黒狗は再び空を駆け抜ける。

そのスピードは先程よりも速く、その勢いそのままに黒狗は前転。

その巨大な漆黒の尾を笑う赤子へと叩きつけた。

5メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/07/01(火) 22:29:45
【移転スレ立てありがとーっす!

多分俺のキャラは抜けも無い筈。


とと、一発目が中々グロくて焦ったww】

6赤子 ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/03(木) 15:50:21
【バルクウェイ】

尾が身体に叩きつけられる。

しかし、それに対し赤子は、その威力に押されて吹き飛ぶこともなければ、ピクリとも体勢を崩すこともなかった。

ただ笑い顔を泣き顔へと変え、嗚咽を洩らす。
そして泣き叫ぶのと同時に、街の闇を吸い上げ始めた。

赤子の身体は大量の闇を取り込むことで、今や全長30メートル程まで巨大化し。
そして、その大きな手で黒狗を叩き落とそうと、腕を滅茶苦茶に振り回した。


【いえいえ^^
初っぱなから申し訳ないw】

7ワヅキ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/03(木) 15:53:26
【過去】

当時は名をランダと云った。
四神様の側近の一人として、神殿の補佐役に腰を据えていた。
何と言うことはない、極平凡で平和な日常だった。


「全く…この忙しい時にあいつは何処で油を売っているんだ」

机上に積まれた大量の書類の山。
紙面と睨めっこしながら、ランダは短い前髪を掻き上げた。
その時、部屋の扉が音を立てる。

「すまんすまん、すっかり遅くなった」

銀の三つ網を揺らしながら、あいつが軽い足取りで入ってくる。
ランダはその姿を睨み付けた。

「どこに行っていた?」

「気分転換に茶を飲みに…」

「女の所だろ」

バロンの目が泳ぐ。
それみたことか。

「四神様は?」

「トール様は闘技会に向けて稽古を。ポセイドン様は従者と共に人の行う祭祀の場へ。
フレイヤ様とアマテラス様は人が増えてきた為、新たな大地をお造りになるそうで…その下見に」

「新たな大地を…?それは大事じゃな」

「だから人手の手配や事前調整に忙しいんだ。近い内に開かれる闘技会の下準備もあるしな」

書類の束をバロンに無理やり押し付ける。
さっさと自分の仕事に取り掛かれ、との合図のつもりだったが、どうやら彼には伝わらなかった様だ。

8ワヅキ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/03(木) 15:54:58


「闘技会…、そう言えばもうそんな時期か。
今年はどの御方が優勝なさるかのう?やはり武神と名高い武天帝殿か」

「いいや、トール様だ。あの御方よりお強い神はいらっしゃらない」

お前は本当に四神様が大好きだな。…とでも言いたげな、半場呆れた様な視線が返ってくる。
かと思えば、彼はニヤリと笑い、言った。

「…賭けるか?」

「何を?」

ランダは尋ねる。

「そうじゃな…。儂が勝ったらお主の嫁御を一夜貸して…」

「お前…それ以上その冗談を続けてみろ。お前の顎が弾け飛ぶぞ」

冗談とも取れぬ本気の目に多少怖じ気づいたのか、バロンは苦笑いを浮かべ言葉を濁した。

「う…うむ。まぁ闘技会までまだ日はあるし、あとでじっくり考えるかの。
…で、賭けの勝敗じゃが…、お主がトール様、儂がトール様以外の参加者が勝ったら…で良いのじゃろう?」

「ちょっと待て!お前それは公正じゃないだろ!」

平和だった。…本当に平和な日常だった。

9ワヅキ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/03(木) 15:56:31

災いは唐突にやってきた。

"闇"と謂うものが現れ、瞬く間に世界を侵食していった。

天地は穢れ、幾つもの深淵が開き、多くの魔物が出現した。
人々は神に助けを求め、神々は闇に立ち向かった。

「四神様…!お止めください!行けば死んでしまいます!」

崩れかけた廃屋の奥。
戦いに赴こうとする四神をランダは引き止めた。
対し、フレイヤが口を開く。

「闇を完全に消し去ることは出来ません。私達の力と引き替えにあれを封印します。…それしか方法はないのです」

既に多くの犠牲が出ていた。
深淵より現れた巨大な鯨が四神の神殿ごと都市一つを呑み込み、故郷をも失った。

「ランダ…、バロン。
貴殿方は生きて下さい。私達の分まで生きて…世を、人々を、見守り続けて下さい」

底知れぬ覚悟が伝わってくる。その言葉を受け、ランダは涙ぐみながらも力強く頷いた。

10リマ:2014/07/03(木) 18:27:33
【バルクウェイ】

あれからどれくらい時間が経っただろうか。
いくら走っても辺りは暗い闇。右も左も分からず、何も見えない。自分の姿すら見ること叶わず、アブセルと繋いだ手だけが唯一確かなことだった。

「……」

リマは胸苦しさを覚えていた。
ずっと走っていたことによる感じとは違う。全身から力が抜けていくような、そんな感じだ。

恐らくはこの闇のせいだろう。リマは闇に触れても問題ない。しかしそれは闇に対する耐性などではなく、彼女の力が相反するものだからだ。この場にとってリマは異物。闇はリマを排除しようと働いている。

(どうしよう…)

この場に長居はできない。しかし未だリトの気配は感じられず。
時間がないのに。焦りばかりが募る。そんな思いが反応してか、リマは無意識にアブセルと繋ぐ手に力が入った。

11リマ:2014/07/03(木) 18:33:36
【スレ立てありがとうございます!そして自分だけ皆と表記が何か違う…何故?

イスラ>>
ジルの絵ありがとうございます!もう素敵すぎてヨダレが!!たしかに構図は謎ですが(笑)大切にします!

はい、芋が御曹司です(笑)
そして現在リトママの性格が迷走してるでござい。可憐なイメージにしたかったのに、なんかお転婆←】

12メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/07/03(木) 19:58:15
【イスラ》私の赤ちゃん発言や巨大化からDOD1が頭を過ぎったww

リマ》トリップついて無いって事かな?

名前の後に#と半角英数字付けたらいいよー】

13ワヅキ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/03(木) 20:41:14
【バルクウェイ】

「…これは何なのじゃ?」

空飛ぶ鯨の内部。バロンは問うた。
ワヅキは顎に手を当て、軽く考えるような仕草を見せる。

「そうだね…。何から説明したものか…」

そしてバロンの後方。街の住人達を指差した。

「これは現存する異能者達から回収した嘗ての仲間達の力…謂わば魂の一部の様なものだ。
ただ…それ故に今はまだ自我も感情も持たない。この街に残った記憶の残滓を辿り、生前の行動を繰り返すだけの不完全な存在」

処刑人の剣を使い、異能者達の身体から解き放った魂の欠片。
なるほど。道理で触れられない訳だ。
そう納得するバロンの傍ら、不意にワヅキは話題を変えた。

「昔…なぜ闇が目覚めたか、君は知っているかい?」

それは遥か昔の闇と神々の戦争の話。
バロンの応えを待たずして、ワヅキは答えた。

「人間が、決して触れてはならない禁忌を冒してしまったからだ」

闇によって多くの神々が死んだ。
四神も闇を封印し、以後、四方に散って眠りについた。

14ワヅキ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/03(木) 20:42:39

ワヅキは戦いに赴かれる際に四神が残した言葉に従い、ずっと世界を見守り続けたてきた。
幾千紀、人間を見てきた。

…しかし、どうだろう?

「人々は過去の過ちと四神様の信仰を直ぐに忘れた。人間同士で勝手に争い、私達が護った星を平気で汚し…、あまつさえ闇の力を我が物とした彼等は、この世界を破壊しようとさえした」

最後のは百年前の…黒十字のしたことを指しているのだとバロンは察した。
そして、その出来事がワヅキの現在の行動を決定付けるものになったのだと。


四神と仲間を愛した彼は、自分からそれらを奪ったものが許せなかった。
彼の憎悪の矛先は闇ではなく、発端である人類に向けられたのだ。

「私は思うのだ…。本当にあれら人間に、四神様が命を懸けて護るだけの価値があったのか…」

答えは既に出尽くしている。
故に黄龍の意志に賛同し、この世界を人類諸とも綺麗さっぱり消し去ってしまおうという結論に至ったのだ。

そして闇も人間もいなくなったその後、自分は再び四神を復活させ、神々だけの国を造り直すのだ。
…この鯨、箱舟の内部で。

15イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/03(木) 20:45:27
【一人芝居が無駄に長くてスクロールが大変ですね…申し訳ない;

リマ》いえいえ^^
見ていただけましたか、良かった!

御曹司なのに芋w
良いじゃないですか、お転婆(笑)


ヤツキ》若干DOD意識しました(笑)
あの赤さんはアリアの想像妊娠→闇の力で具現化…ってな仕組みなので、ただの怪物です。安心してボコってくれて構いませんよ(笑)】

16ワヅキ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/04(金) 00:00:13
【バルクウェイ】

神々は死す直前、己の力をあらゆる物の中に託した。
或いは武器に、或いは人に…。
前者は火之迦具土の様な所謂"神器"となり、後者は異能者となる。

「黄龍が全てを無に帰してしまう前に、私にはそれらの回収と…、鯨…いや、この街に辿り着く必要があった…」

この街の神殿の内部に、"生命の大樹"と云われる巨大な樹が生えている。
それに祷りを捧げることによって、枝に果実が宿り、その実から神は誕生する。
よって神は生殖行動を必要とせずとも種を増やすことが出来るのだ。

「これら魂の欠片を種とし果実を育めば、きっと仲間達も四神様も、再び同じ形で、同じ意識を持って転生して下さる…!
以前の暮らしが元通りになるんだ!」

ワヅキは嬉々として両腕を広げる。

端から聞けば世迷い言を言っている様にしか聞こえない彼の発言に、バロンは言葉を失うしかなかった。

「神器も、異能者の魂も、満足する程度にはこの手に返してもらった…。
あとは…そう、あとは四神様の魂さえ手に入れれば…!」

バロンがこの場に"彼ら四人"を連れて来なかったのは予想外だったが、その者達がバルクウェイに居ることは知っている。
間違える筈もない。この場にいても、四神の氣が街の何処にあるかはっきりと解る。

放っといても闇と魔物に喰われ息絶えるのは目に見えているが、手ずから彼等の息の根を止めに行くのも良い。

…しかし、その前に。

ワヅキは視線をついと動かし、イスラを見る。
手に持つ刃を向けた。

「まずはアマテラス…君の魂を頂こうか…」

17アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/04(金) 00:05:54
【バルクウェイ】

焦りを感じていたのはリマだけではなかった。
だが、握る手に力を入れるリマとは反し、アブセルは逆に手の力を緩めた。

不意に前を行く足が止まる。

「…行って…」

苦し気な息づかいと共に口から低い声が洩れる。

「先に…行ってくれ…」

思ったよりも早く"それ"は来た。

アブセルの頭から下方に湾曲する二本の角が伸びる。手足も獣を彷彿とさせる鋭い爪が生えたものになり、その姿は人と魔を半分かけ合わせた様なものへと変わる。

「早く…俺から離れて…ッ。
…意識が乗っ取られて…、あんたを傷つけてしまう…」

本来、アブセル達サマナーが得意とする召喚には二つの種類があった。

ジュノスがいつも行っている様な召喚対象を呼び出し使役する請願召喚と、術者と召喚対象が融合し一体化する憑依召喚である。

今、アブセルの身には術者の真意なしに憑依召喚が行われていた。
周囲の濃い闇に影響され、正気を失った阿形と吽形の意識が暴走している。
彼等も所詮は魔物なのだ。

「は…早く…ッ!」

リマから凄くいい匂いがする。
彼女が美味しそうに見える。

アブセルは膨れ上がる欲望を必死に抑え込もうと、地に踞り頭を抱えた。

18メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/07/04(金) 21:27:08
【バルクウェイ】

手応えはあった。

しかし、赤子には傷一つ着いていない。

それどころか、刺激した事によって赤子は巨大化しながら暴れ出した。

その動きは決して鋭くは無いものの、速く、直撃すればただではすまないだろう。

何しろ闇を吸い取り巨大化した赤子に対し、巨大と言っても黒狗の全長は10メートル程しか無いのだ。

風を切り唸る豪腕を避け、黒狗は一時撤退。

周囲にある比較的高い建物の屋上……雛しているサンディの隣へと着地し、身に纏う闇を拡散させた。

そして、黒狗から人の姿に戻ったメイヤは、瀕死のアリアを横たわらせる。

腹を裂かれ、内蔵を引きちぎられた彼女が助かる見込まは殆ど無いだろう。

ピクリとも動かないアリアの胸元に犬の面を置き、メイヤは空に浮かぶ巨大な赤子を睨んだ。

「……サンディ、この人を頼む。

正直、助からないとは思うけど……逝くならせめて人の形を保ったまま逝かせてやりたい。」

アレと戦うなら、周囲に気を配る余裕は無い。

ましてや誰かを庇いながらなど持っての他だ。

どうやらサンディも負傷している様だ、彼女が無理に戦へ出ない理由にもなるだろう。

サンディへ兵糧の包みと鎮痛剤を渡し、メイヤは再び闇を纏う。

「サンディ、弥都では戻れなくてごめん。

この戦いが終わった後、戻って話たい事がある。

だから……」

そして、言葉の最後の部分を唸り声へと変え、黒狗と化したメイヤは再び空を駆け抜ける。

一歩進む毎に周囲の闇を吸い取り、疾風の如く疾る黒狗は瞬く間に空へ浮かぶ赤子との距離を詰め、一閃。

迅雷の如きスピードで、黒狗は赤子の胴を貫いた。

19サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/07(月) 13:19:50
【バルクウェイ】

血塗れのアリアの姿を見て、サンディは息を呑んだ。
取り合えず、今でき得るだけの処置はしなければ。

一度アリアから視線を外し、サンディは顔を上げる。

「…うん、約束だよ…!気を付けて!」

そして、再び戦場に赴くメイヤに向けて言い、彼の後ろ姿を見送った。

―――…

胴を貫かれ、赤子はバランスを崩した。
周囲の建物を押し潰しながら、後方へと派手に倒れ込む。

起き上がろうとするも、頭が重く上手く立ち上がれない。
この姿は手足も短く愚鈍だ。

それならば…と、赤子は更に闇を吸い上げる。
ぐんぐんと手足が伸び、今度は幼い少年ほどの背格好にまで成長した。

同時に、腹に開いた風穴からは肉の触手が無数に飛び出し、黒狗を射たんと鞭の様にしなり、または捉えようと猛追する。

そして異形の少年はと言えば、その場から勢いよく起き上がり、黒狗の真似事をするが如く四つん這いになる。
思いきり地を蹴り上げ、黒狗に向かって突進した。

20リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/07/08(火) 07:21:33
【バルクウェイ】

「アブくん、どうしたの…!?」

突如離された手。と同時にアブセルが苦しみ出す。
状況を把握出来ないリマはアブセルの側を離れようとしない。視界が悪いせいで彼の身に起きている変化にも気付いていないようだ。
単に苦しむ様子が心配で、不安げに彼を見る。

「苦しいの?待ってて…」

自分と同じ、闇に晒され息苦しいのだろうか。リマはあろうことか彼を癒そうと手を伸ばした。

21メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/07/09(水) 18:17:14
【バルクウェイ】

バランスを崩し、盛大に倒れ込む赤子。

その腹からは無数の触手が生まれ、縦横無尽に蠢き、黒狗へと襲いかかった。

その触手の群れを黒狗は喰い千切り、爪で斬り裂き、避け続ける。

しかし、それも長くは続かない。

数の暴力の前に黒狗は段々と疲弊していき、触手の一本が足を貫いたのをきっかけに、僅かに動きを止めた黒狗の身体へと触手が殺到。

殺到する触手の群れは巨躯を貫き通し、更に、身動きが取れなくなった黒狗へと赤子から少年へと姿を変えた巨体が突撃する。

勢いに乗った体当たりの直撃を喰らった黒狗は、あまりの威力の吹き飛ぶ前に爆砕霧散するも、その核であるメイヤは上空へと脱出していた。

そして、その背から生えた漆黒の大翼で大気を叩き、急降下。

「オオォォォォォォッ!!」

眼下に見える少年の延髄に狙いを定め、闇によって巨大化した刃を振り下ろした。

22アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/09(水) 20:15:45
【バルクウェイ】

半魔になり目が利くようになっていたアブセルは、闇の中、リマの姿がはっきりと見えた。

伸ばされた手を掴み、彼女を力任せに押し倒す。
"ごちそう"の芳しい匂いが鼻を擽った。

「イイ…ニオイ……」

アブセルはリマの首筋に鼻を近づける。

この匂いが脳を痺れさす。
人としての思考を阻む。

もはや完全に抑制力を失っていた彼は、リマを押さえ付けると口を開き、鋭い牙を彼女の肩に食い込ませた。

23アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/09(水) 20:18:17
【過去】

友達が欲しかった――。


「消えろ、バケモノ!」

「インバイの子!」

罵倒の言葉と共に石が飛んでくる。

子供の拳程もあるその一つが頭に当り、アブセルはよろけて地に膝をついてしまう。
痛む頭に手をやると、血がついた。

「お前らバケモノ親子と同じ所に住んでるってだけで気味悪いんだよ!
早く此処から出てけ!」

次々と石が飛んでくる。

目に涙が滲むが、アブセルはそれをぐっと呑み込んだ。
泣いてもいじめっ子達を喜ばすことにしかならないと分かっているのだ。


そんな中、リーダー格の最年長らしい少年が音を立てて近づいてきた。
アブセルの髪を掴み、顔を上げさせる。

「なあ、お前の父親の名前教えてくれよ。そしたらもう苛めないからよ」

態とらしい煽り文句だ。
しかし、それに対しアブセルは何も言えない。ただ視線を下げるばかりのその姿を見て、少年は勝ち誇った様に笑った。

「どうした?言えないのか?
そりゃあそうだよな。だって何処のどいつか分からないんだもんなぁ?
お前は母親のインバイのせいで間違えて出来てしまっただけだもんなぁ?」

24アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/09(水) 20:19:55

恐らく少年自身も、己の言葉の意味するものを完全に理解してはいないだろう。ただ彼は大人達が陰で話していることを、自慢気にアブセルに聞かせてやっているのだ。
勿論、アブセルが傷つくのを知っていて、だ。

果たしてその読みは正しかった。
しかしアブセルはそれ以上に、何だか母が馬鹿にされた様な気がして、腹が立った。

地面についた両手を握り締め、少年を睨み付ける。
少年は不意打ちを食らった様に僅かに怯んだ。

「な…何だよ…。やるのか?」

「………」

"力を使ってはいけない"いつも口を酸っぱくさせて言う、母の言葉を思い出す。
アブセルは髪を掴む少年の腕を乱暴に払いのけると、踵を返し、彼等とは別の方へ駆け出した。

「逃げたぞー」、と嘲笑う声が後ろから聞こえたが、構わずに走り続けた。

25アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/09(水) 20:21:41
―――…

忘れ去られた様な廃れた公園の一角、アブセルは走る足を止めた。
肩を上下させ、息を吐く。

…いつものことだ。

同じ集合住宅に住む住人達は、アブセル達のことをよく思っていない。
闇の力を持っていることと、それに母の仕事の内容も相まってか、穢れた血やら厄介者やらと侮蔑され毛嫌いされていた。
根も歯もない噂を立てられ、顔を合わせれば冷ややかな視線を浴びせられた。

そして大人達のそんな態度が知らず知らずの内に子供達にも伝わり、今ではアブセルはいじめっ子達の標的とされてしまっていた。


アブセルは敷石の上に腰を落とし、膝を抱える。大きな溜め息が口から洩れた。

と…その時、ふいに直ぐ脇で、小さな、何かの鳴き声の様なものが聞こることに気づく。
首を動かしてみれば、一匹の子犬の姿が目に映った。

「…お前もひとりぼっちなのか?」

そう尋ねると、子犬はよたよたと近寄り、指を舐めてくる。
アブセルはふっと笑った。

「僕もなんだ」

頭を撫でてやると、子犬は嬉しそうに尻尾を振る。
しかし、その姿はどこか元気がない様にも見えた。震えているし、鳴き声も弱々しい。

「お腹…空いてるの?」

何か持ってはいなかっただろうか。ポケットを探ってみるが…おおよそ食べられそうなものは入っていない。
アブセルは肩を落とした。

「ごめん、今は何も持ってない。明日、なにか食べられるもの持ってくるから…明日もここにいろよ?」

もうじき日が沈む。
アブセルは立ち上がると、若干後ろ髪を引かれる思いで子犬を残し、公園を後にした。

26アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/09(水) 20:25:37

「ただいま…」

家に帰ると母が迎えてくれた。
アブセルの姿を見て目を丸くする。

「どうしたの?血が出てるじゃない」

「…転んだ」

「あらあら、可哀想に…」

膝に引き寄せ、母が濡れたタオルを頭に当ててくれる。冷たくて気持ちがいい。
アブセルは母の背中に腕を回し、彼女の着ている薄手のセーターに顔を埋めた。

「…ねえ、母さん。今日ね、公園で…」

しかし、続く言葉は来客を報せるチャイムの音に阻まれた。
母は、「ごめんね、お客様だわ」と言ってアブセルを膝から下ろし、立ち上がった。

「アブセル、いつもの場所に隠れてなさい。いい?絶対音立てちゃ駄目よ」

「…うん」

小さく頷き、アブセルは言われるがまま"いつもの場所"…クローゼットの中に身を潜めた。

母の仕事中はいつもここで"かくれんぼ"をする。
母が見つけてくれるまでは、ここで息を潜め絶対に出てはいけない。…そう言う決まりだ。

玄関まで行った母が、客を部屋に招き入れたのが分かった。
衣擦れの音と、密やかな笑い声が耳に届く。

母は好きだが、母の仕事は嫌いだった。

外で何が起こっているかアブセルには分からなかったが、当時の彼にはそれはただの恐怖でしかなかった。
クローゼットの外から聞こえる甘い声も、物音も、事が済んで客を帰した後、決まって自分を優しく抱き締めてくれる母のその湿った身体も、臭いも、全部嫌いだった。

アブセルは暗闇の中、両手で耳を塞ぎ、きつく目を閉じた。
ただ、ただ、目の前の扉が開くのをひたすら待った。

27アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/09(水) 20:54:06

翌朝、パンとミルクを持って公園に行ってみると、子犬はまだそこにいた。
尻尾を振って出迎えてくれる。

アブセルは嬉しくなって子犬の元に駆け寄った。

「へへ…いっぱい食べて早く元気になれよ?」

凄い勢いでミルクの入った容器に口を押し付ける子犬の背中を撫でながら、ふと思いつく。

「そうだ、名前…」

子犬に名前をつけないと。
何がいいだろう?どうせなら強そうなのがいい。
アブセルは暫し考え、そして閃いた。

「…マオ…ってどうかな?僕の好きなヒーローの名前」

その問いかけに応えるように、子犬は白く濡れた口元を持ち上げ「わん!」と鳴く。
…決定だ。

「じゃあ、マオ。今日から僕とお前は友達だ。仲良くしよう」

子犬の小さな身体を抱き上げ、胸に寄せる。柔らかな毛並みと生き物の温もりが心地よかった。

それから毎日アブセルは子犬の元に通った。一方で子犬の方もすっかり元気になった様で、今ではアブセルが二歩、三歩と歩く度、その足の間を健気について回る。
その様がたまらなくいじらしかった。


…しかし、ある日のことだ。

「…マオ…?」

いつもの場所に子犬の姿はなかった。

「マオ…!マオ!」

どこに行ってしまったのだろう。
自分と共にいる時にだって、公園の外に出たことは一度もなかったのに。

アブセルはつんのめる様にして、公園を飛び出した。
脇目も降らず街中を駆け回り、必死に子犬の姿を探した。

28アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/09(水) 20:55:39


その姿を橋の上で見つけた時には、既に足はくたくたになっていた。
子犬は数人の少年達の手にあった。
例のいじめっ子連中だ。

「やめろ!僕の友達に触るな!」

アブセルは声を上げ、彼等に駆け寄る。
その声に気づき、少年達はアブセルを見た。

「なんだ、この犬お前のなの?」

「犬が友達だってよ」

いじめっ子達は互いの顔を見合せ、一斉に吹き出し、笑う。
不意に少年の一人がアブセルを羽交い締めにした。

「小汚ないもの同士お似合いだな」

何をするのかと暴れるアブセルの目の前で、リーダー格の少年が子犬を蹴りとばす。
子犬は悲痛な鳴き声を上げて地面を転がった。

「マオ!」

いつもは生意気なアブセルの狼狽する様が面白かったのだろう。
少年は味を占めたように舌舐めずりをする。
動けないでいる子犬の首根を掴んだかと思うと、その腕を橋の欄干の向こう側に突き出した。

「ここから落としたらどうなるかな?」

下は河原。
明らかにただで済むような高さではない。

「嫌だっ、やめろっ!」

アブセルは叫んだ。
どの少年の瞳も、好奇心と言う名の残忍な色に染まっていた。

にやりと口元を歪め、ふいに少年が手を離す。
アブセルの目が、子犬の心細そうな瞳に釘付けになる。
その小さな身体が、下へ下へと落下していく様が妙にゆっくりになって見えた。

「うわああぁぁああッ!!」

瞬間、目の前が真っ暗になった。

29アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/09(水) 20:57:46

…その後のことはよく覚えていない。

ただ気がつけば地面にいじめっ子達が倒れていて。
通り掛かった人が慌てた様子で病院に連絡をして。
駆けつけた母が少年達の親に何度も頭を下げていて。

そして、数日後には母と共に部屋を追い出されることになった。
マオを探したが見つからなかった。


「…ごめんなさい」

揺れる列車の中、隣に座る母に向けアブセルは小さな声で謝った。
よく分からないが、少年達が怪我を負ったのも、部屋を追い出されたのもきっと自分のせいなんだ。

母は少し間を置いて、言う。

「…少し離れた所に大きなお屋敷があってね、そこにお祖父ちゃんが住み込みで働いてるの。…話したらアブセルのこと引き取っても良いって…」

「…母さんは…?」

母は何も答えなかった。
だが、何となく察しはついた。

「向こうでは友達、できると良いわね」

「………」

今度はアブセルが黙る番だ。

出来る訳がない。
だって自分はバケモノだから。

窓の向こう側、流れる景色を虚ろな目で眺めながら、アブセルは思った。

この世界に、自分と同じバケモノが他にも居れば良いのに…。
そうしたら、きっと……。


【思うがまま過去話を考えてたら、もの凄く長くなってしまった…;本編にはあまり関係ないですw】

30ゼツ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/11(金) 01:37:19
【バルクウェイ】

何故、女の身体で生まれたのだろう。

殺し屋業を営む一族の社会は、完全に男のものだった。

女の扱いと言えば酷いもので、彼女等は僕も同じ、男達の性欲処理と子供を産む為の道具でしかなかった。

そんな中、ゼツは家長の世継ぎとして生まれた。
女である事実を隠し、男の格好をさせられ、男として育てられた。
別に抵抗はなかった。
しかし幾ら男の様に振る舞おうと、自分が女だという事実は変わらない。

そして、いつしか自分の身体に嫌悪感を抱く様になった頃、第二子に弟が生まれた。
…同時に世継ぎとしての立場を失った。

父は言った。
"女に戻れ"、と。

今更だった。

ずっと母や周りの女達を見てきたから知っている。
あんなのは嫌だ。あんな惨めな生き方をする位なら…

31ゼツ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/11(金) 01:38:43

―――…

『げほっ…ッ』

ごぼり、と生暖かいものが口から溢れた。

胸に違和感を覚え、手を辿らせれば、そこに剣が突き刺さっていることを知る。

『ドウせ…なら、頭ヲ狙ってくれよ…。イタイじゃ…ないカ…』

痛みで僅かながらに正気を取り戻したのか。ゼツはそう切れ切れと口から声を絞り出す。
頭の中にはうっすらと、昔の記憶が浮かび上がっていた。

…そうだ。あんな生き方をするくらいなら、死んだ方がましだと思ったんだ。


しかしそれに反し、闇に捕らわれた身体はしぶとく、中々ゼツを死なせてはくれない。

ゼツは更に刃に体重を乗せる。
ズブズブと身体が沈み、足元に血溜まりが広がった。

『…世話を焼かセテ…すまナかった…』

32ヴァイト ◆.q9WieYUok:2014/07/11(金) 16:37:49
【バルクウェイ】

「へへ……散々痛い思い、させられたからな……仕返し、だ。」

吐き出された血塊を浴び、血に染まる頬を歪めながら、ヴァイトは声を絞り出した。

「宇治金時、奢れよ……それで、チャラに、して……やる。」

既に右手は剣の柄から離れ、力無く地に落ちている。

生暖かい筈の血溜まりの温度すら感じない程に、身体の感覚も薄い。

しかし、まだ死ぬ訳にはいかない。

体重を掛け、刃に身を沈めるゼツの身体と、自身の身体が重なり合った瞬間。

ヴァイトは持てる力を振り絞り、起き上がった。

(貧乏クジ引くのもこれで最後だ、お前は死なせねぇ……)

起き上がり、片膝立ちの状態でヴァイトはまず、自身の胸に突き刺さっている十字手裏剣を抜き捨てる。

傷口から一気に血が溢れ出すが構わない。

続いて、仰向けに横たわらせたゼツに突き刺さる刃も抜き捨て、上着のポケットを漁る。

あった、奇跡的に割れていなかったアンプルが一本。

アンプルの蓋を指で弾き、中身を煽る。

しかし、飲み込む事は無い。

アンプルの中身、細胞活性剤はあまりにも強力だ。

常人が服用したとしても、その効果に身体が、細胞が耐えきれずに逆に崩壊してしまう。

言わばヴァイト専用の劇薬なのだ。

(なら、薄めて使えば良いんだろっ)

薬剤を嚥下する事無いまま、ヴァイトは横たわるゼツに覆い被さった。

そして、そのまま唇を重ね、口移しで薬剤をゼツの咥内へと流し込んだ。

33 ◆Q4V5yCHNJ.:2014/07/12(土) 21:24:57
【過去】

ダサくて、小汚くて、礼儀知らずな芋男。私にとってのあの人はそんな印象。
ただ自分を馬鹿にした態度が許せなくて、何としても謝らせたくて、結果的に私はあの人に付きまとった。

あの人の部屋にはいつも鍵がかかっていなかった。だから私は何の断りもなく部屋に入る。突然押しかけてもあの人は気に留めないし、ご丁寧に例の極薄なお茶も入れてくれた。

「どう?今度こそ完璧でしょう?」

言って私は芋男の前でクルリと回って見せた。
生地が高価だと指摘され、下町の洋服店で質素な服を手に入れた。
香りが気になると言われたから香水もつけていないし、化粧もやめた。
芋男は町娘になりきる事が出来たなら町を案内してくれると約束してくれた。私は目を輝かせて芋男を見た。

「んー…」

しかし、これでもかってくらいに地味に仕立ててきたのに、芋男は渋い顔をする。
そして、自分ではどうしようもないことをいってきたのだ。

「髪が…」

私はハッとして自身の髪に触れる。
私の髪は色素の薄い金色で、とても目立つのだ。何か問題があるのかも。
しかし落胆の色を見せる私に、芋男はケラケラ笑ってきた。

「冗談だよ。君みたいな見事な髪色をした子はそうそう町にはいないし、目立つのは事実だけど、町にはお貴族様のお手付きで生まれた子だっているし、問題ない。」

最後の方は意味が理解が出来なかったが、取り敢えずからかわれた事だけは分かった。
私は顔を真っ赤にする。
しかし芋男はそんな様子に更に笑いを深めていく。

「知らない!」

いつ会ってもからかって、本当に嫌な奴。
完全に気を悪くした私は「帰る!」と叫んで部屋を出ようとする。

「ごめんって」

しかし芋男はそんな私の手を掴んで引き止める。

「綺麗だから触れてみたかったんだ。君の髪、とても素敵だよ。美しい君によく似合う。」

耳に心地よい声で、私を見つめる優しい紫の瞳。
その笑顔に引き込まれそうになり、私は慌てて顔を逸らした。

「貴方、嫌い。いつも私に意地悪をするんですもの。」

「僕は君のこと好きだけど。」

「ほら、そうやって…」

からかわれて、大嫌いなのに、離れられない。
どんなに意地悪をされても結局は許してしまうのだ。彼には、そんな不思議な魅力があった。

34リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/07/12(土) 21:25:53
【バルクウェイ】

(えっ…)

あまりに突然の事態にリマは思考が追いつかなかった。
食い込んだ肩からは痛みがあるはずなのに、それよりもリマはアブセルの行動が理解出来ず頭が真っ白になっていた。

何の抵抗と為されぬまま、リマはアブセルの餌食になろうとしていた。
そこへ、アブセルへと斬撃が襲いかかる。
何が起きたのか定かではないが、アブセルの呻き声と共に身体が軽くなった。と、同時に彼女は何者かの腕の中へ。

(誰…?)

此処には自分と、アブセルしかいないはず。
リト…のはずもない。
ならこの場に誰がいるのか、混乱するリマに一つの答えが浮かんだ。

「セィちゃん…?」

闇に紛れ見落としていたが、確かに、セナの氣を感じる。
自身を抱き寄せる感覚もセナのものだ。
途端リマは涙が溢れてきた。

「セィちゃん…セィちゃん…っ」

本当は怖かった。目も見えないし、何も感じない、怖くて仕方ない、でも、リトを助けたくて。
唯一の支えだったアブセルが豹変してしまい、絶望した。
我慢していた感情がせりあがり、リマは嗚咽を漏らしながらセナに抱きついた。

35リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/07/12(土) 21:31:51
ヤツキ>>おぉ、同じになった!トリと言うのか!サンクス!!

イスラ>>
身だしなみより楽を選ぶ方なようです(笑)

お転婆なら精神病みそうにないけどなー、おかしいなー←
てかアブセルの過去話に涙(ホロリ
チビリト出てこないかなぁと期待してるのに出る気配がない(笑)
リトに会って友達になるトコはないんですか??(ワクワク

36サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/14(月) 13:49:14
【バルクウェイ】

異形と戦うメイヤの姿を、サンディは屋上から見つめていた。
その眼下では、レックスやシンライジの者達が魔物と交戦している様が窺える。

…みんな戦っているのに、こんな時に自分は何をやっているのだろうか。
いつも護って貰ってばかり、人に頼りっぱなしの自分が嫌になる。
本当は自分だって…。

「行きたいんだろう?」

不意に後ろから声がかかった。
直後、肩を軽く叩かれる。煙草の臭いが鼻についた。

「行ってきなよ、こいつ(アリア)はおじさんが見とくから」

ディンゴだった。

ディンゴはいつもと同じへらりとした笑みを見せると、サンディの横に屈み込み、横たわるアリアの腹部に手を置いた。
するとどう言う訳か、損傷した臓器ごと、彼女の傷がみるみると回復していく。アリアの顔に生気が戻った。

「あなた…異能者だったの…?」

その一部始終を目の当たりにしたサンディは、驚きを隠せない様子で目を丸くする。
ディンゴは首を横に降った。

「いんや、これはおじさんの嫁さんだった人の力だ。ついでに、嬢ちゃんの傷もさっき治しておいた」

確かに、脇腹の痛みは引いていた。恐らく肩を叩いた際に、傷を治癒してくれていたのだろう。

「礼はいいよ。おじさんはおじさんのやりたいことをやったまでで…嬢ちゃんも嬢ちゃんでしたいことをすればいいんだから」

最早この状況では敵味方の肩書きは意味をなさないだろう。
にかりと笑うディンゴに向け、サンディは力強く頷くと、その場から駆け出し、屋上から宙に飛び出した。

37サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/14(月) 14:01:23

さくり、と巨大な刃が少年の延髄に突き刺さった。
動きを止めた少年が大きな悲鳴を上げた次の瞬間、その頭部は勢いよく弾け飛ぶ。
それと同時に、その首元からは毒素を含んだ大量の闇が吹き出し、上方にいるメイヤを呑み込まんと襲い掛かる。

「メイヤ!」

けれどもそれは、一枚の障壁の存在によって阻まれた。
メイヤの眼前に飛び出したサンディが、二人を覆うようにして炎の膜を張っていたのだ。
そして、その背中には虹色に輝く半透明の薄い羽根が広がっていた。

サンディはメイヤと目が合えば、若干気まずそうにしながらも、照れ臭そうに舌を出した。

「えっとぉ〜……来ちゃった…」

38イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/14(月) 14:05:19
【ヤツキ》と言うわけで、ディンゴの力は傷の肩代わりです。
今回でどのみちディンゴは死ぬ予定ですが、ゼツとアリアは生存させようと思います(と言っても今後、登場することはないでしょうが)
ヴァイトもディンゴの力で救おうと思えば救えますが…どうしましょう?


リマ》芋のくせに何と言うプレイボーイwwてか…あれ?もしかして芋男のお子さんってあの人達じゃ…?
本当お転婆wまぁ感情豊な分、傷つきやすい…のかも?

あれで彼がリトに執着する理由を何となく分かって頂ければ^^
それなんですけどねー、人様のキャラを含めた過去話を勝手に考えるのは、やっぱ厚かましいかなーって思って…】

39メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/07/14(月) 18:50:39
【バルクウェイ】

切り落とした首から噴き出す毒霧に、メイヤは咄嗟に腕で顔を隠すも、毒霧が掛かる事は無かった。


何故なら、眼前に飛び出して来た少女……サンディが障壁を張って防いだからだ。

「サンディ……何故?」

薄く輝く虹の羽を羽ばたかせ、照れた様に笑うサンディへメイヤは疑問の声を掛ける。

しかし、驚いている暇は無い。

チラリと視線を変えれば、煙草を吹かすディンゴの姿が見えた。

(あのオッサン、助けてくれたのか……)

障壁越しにディンゴへ会釈を投げ、メイヤは翼を大きく広げる。

漆黒の大翼と、虹色の羽。

決して交わる事は無いが、並び立つ事はあっても良いだろう。

「……来たなら帰れとは言わない。

その代わり、アレを倒すのを手伝ってもらうぞ?」

照れ笑いのサンディへ苦笑いを返し、メイヤは続ける。

「アレは俺と同じく闇を力の源としてる。

街が闇に染まる今、生半可な攻撃じゃあ倒し切れないだろう。

倒すなら、最大火力で押し切るしかない。

再生する暇を与えない程の連続攻撃、〆は任せた!」

そして、メイヤは再び翼で大気を叩き急降下。

それと同時に闇で鎧を形成し装着。

再度被った犬面の下、漆黒の瞳に燐光を宿し、首を無くした巨人へとすれ違い様に刃を一閃。

更に、闇色の巨刃を切り替えし二閃三閃し迅雷の如きスピードで敵を斬り刻んで行く。

そして更に、絶える事無い連撃を浴びせながら周囲の闇を操作し、生み出された漆黒に輝く螺旋の星々が、刀槍の暴雨を吐き出した。

イスラ》了解した!んだらばヴァイトもお願いして良いすかね?

ゼツに薬を譲って死ぬ寸前のヴァイトの前に……てな感じで。

40リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/07/14(月) 23:55:08
【バルクウェイ】

意味の分からない鯨に、見るからにヤバそうな闇の穴。
この中にリトが落ちたと言うし、助けにいこうとすればセナに邪魔者扱いされるし、セナは消えるし、その場にいた怪しげな黒マントの男には説得されるし、その隣のチビは何か偉そうに物言ってるし。

「あぁーッもう面倒くさい!!」

色々な事が一片に起きて収集がつかなくなったナディアはいきなり発狂したかのごとく叫んだ。彼女の額には青筋が浮かんでいる。

「もう知らん!!」

言ってナディアは手を宙に仰ぐ。
瞬間、ポツ、ポツと空から雫が落ちてきて、見る間に大降りの雨となった。
その範囲はバルクウェイ一帯を包むもの。

「要は闇が原因なんだろ?!まとめて成敗してくれる!!」

ナディアが降らせたものはポセイドンの力。闇を削ぎ落とし、その威力を奪うもの。
同じ神の力を持つ者達にとっては力を増幅する恵みの雨だが、闇は敵味方関係なく貶める。ナディアにはどうでも良かった。

「物騒なものを…」

ノワールは呟き、闇で具現化したパラソルを掲げる。力をパラソル一点に集中させたため、その部分のみナディアを力を相殺する結界となる。ただし、力は消耗されるためいつまで続くかは分からない。

「そなた、力尽きて朽ちるぞ」

彼女の雨は闇の勢力を奪うのにうってつけだろう。しかし、何分広範囲に力を及ぼすため、彼女自身無事では済まないだろう。

しかしナディアは聞く耳持たず、雨を更に強力なものへと変えた。

41リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/07/15(火) 00:02:26
↑ナディアの間違いだった…

イスラ>>
プレイボーイな芋(笑)でも彼は天然です(笑)
ん?何か言いました(・▽・)?
感情豊かな分傷つきやすい…のか?←
そしてリトママの性格が子供達誰一人として似ていない件←

アブセル、友達が欲しかっただけなのに何故リトを友達以上に思っちゃってるんだ←
えー!全然構わないので是非出してください!!今か今かと待っていたのに(笑)

42アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/15(火) 11:20:34
【バルクウェイ】

『やだやだやだやだ、行かないでリト…!僕を一人にしないで!』

真っ暗な意識下の中で、誰かが泣いていた。
どうやらそれは幼い少年の様だ。

『リトがいないと駄目なんだ…、一人ぼっちはもう嫌だ…!』

そうだ…。あれは自分だ。
そしてこの情けないのが自分の本音だと言うことも、アブセルは知っている。

『リトは僕のものだ。僕だけのものだ!誰にも渡さない、どこにも行かせない!ずっとずっと一緒に―…』

――…


誰だ、邪魔をするのは…。

痛みに顔を歪めながらも、動かした視線の先。獣の如き眼光を煌めかせ、アブセルは新たに現れた人影を見た。

それが誰かを認識するよりも早く、身体は動いていた。アブセルは地を蹴り、その人影に飛び掛かる。

…が、

「……!」

直後、彼は目を見開いた。

闇と相反するポセイドンの血を口にし、邪気が薄れたせいかもしれない。
とにかく、振るった鉤爪は相手の鼻先で制止し、アブセルは前傾姿勢のまま、その動きを止めた。

「…リ…ト……」

よく目立つ金の髪に、人形の様に整った顔立ち。長い睫毛の下に見えるのは、冷たい印象が艶を思わせる目許。
アブセルはその顔をよく知っている。

43アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/15(火) 11:22:25

自分の中に、どうしようもなく幼稚で、自分勝手で、愚かな感情があることは知っていた。

リトを誰かに取られるのが嫌だった。
旅をして、リトの周りに人が増える度に不安になった。いつか見捨てられてしまうんじゃないかと怖かった。

そして、そんな下らない独占欲の元、リトを屋敷に戻した結果が今のこの状況だ。

アブセルは視線を動かした。
彼に泣きすがり、その腕に抱かれるリマの姿を見た。

『…どうしてリトはその人に優しくするの?どうしてリトは皆に優しいの?
どうしてリトは大切なこと、僕に何一つ話してくれないの?』

頭の中で声が聞こえる。

『どうして?どうして?どうして?どうして?』

「う…」

不意に、アブセルは震える手で腰に下げる剣の柄を掴んだ。
その刃を一気に引き抜き、勢いよく両手で振り下ろす。

「うるっせえぇッ!黙ってろ、俺!!」

そして、その刃を己の太股に突き刺した。

それはジーナに貰った剣だった。以前は抜けなかった筈の鞘が、なぜ今抜けたのかは分からないが、とにかく今のアブセルにはそれを考える余裕はなかった。

足を傷つけて置けば、例え暴走しても上手く動けないだろうと、抑止の為に剣を突き刺したのだったが、アブセルは気力で自我を取り戻した様だった。

「…ごめん……リト…、ごめん、ポセイドンの姉ちゃん…」

口から荒い息を吐きながら、アブセルは力が抜けた様にその場にへたり込む。
何故だか涙が止まらなかった。

44サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/15(火) 11:24:04
【バルクウェイ】

「任せて!」

メイヤの声に頷き、サンディは額に円を…日輪の印を描き、力を解放する。
光輝く無数の勾玉が彼女の周囲に浮かび上がり、その一つ一つが熱を帯び始める。

その一方で、メイヤの連撃によって、今や異形の少年はボロ布の如くズタズタに引き裂かれていた。
更にそこへ、不意にポツリと空から落ちてきた雫が異形に当たる。

恐らく、ナディアの力なのだろう。
次第に雨足を強くするそれを一身に浴び、異形は苦しそうに身を捩らせた。

今が絶好のチャンスだ。

「二人とも…ありがとう」

サンディは目を瞑り、腕を広げる。
途端、勾玉が一層強く輝きを放った。その中心にいるサンディは、まるで小さな太陽の如く、異形に光を降り注ぐ。

不意に、異形の身体に火が点った。かと思えば、それはあっと言う間に全身に広がり、そして激しく燃え上がる。

炎は闇を浄化し、かつて少年だったその闇は、ものの数秒で塵も残らず焼き祓われた。

45イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/15(火) 11:28:49
【ヤツキ》了解です^^
イスラ&ワヅキの方ももう1レス一人芝居するので、イオリンもうちょっと待ってて下さい;

リマ》天然とかますます質が悪い(笑)
いや芋男がジルに似てるな〜→もしかして親父!?(;゜Д゜)…と思っただけです←
傷つきやすいんです!←
それは…気にしたら負けです(笑)

本当、なんでだろう?(笑)
マジで!?それは申し訳ない…。でもやっぱり難しいんですよ〜;例えばアブセルがリトに「友達になってくれ!」と言ったとして…で、それに対しリトがどんな反応を返すか…とか、自分じゃ全然分からない訳でして…】

46ゼツ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/15(火) 22:08:45
【バルクウェイ】

「もう今はそんな格好をする必要もないんでしょう?
たまの休日くらい女の子らしい服でも着たらいいのに」

いつだったか、アリアは言った。
それは確かアリアの家のテラスで、二人
で紅茶を飲んでいた時だったと思う。

彼女は上品な白のワンピースを着て、ゆったりと席に腰を落としていた。
多分自分はいつもの、真っ黒な忍装束を着ていたのだろう。

「これが落ち着くんだ。それに…」

ゼツは言う。
そして彼女から視線を逸らした。

「似合わないし…」

僅かに頬を染めるゼツの姿を見て、アリアはおかしそうに静かに笑った。

――…

なぜ今、その時のことを思い出したのかは分からない。

だが、自分も死にかけているくせに、必死になって他人を助けようとしているヴァイトを見ていたら、何となく思い出した。
そして何となくおかしくなった。

音を立てて薬剤が喉を通り過ぎる。
意識が朦朧とするのを頭のどこかで感じながら、ゼツは唇を動かした。

「君は…」

面白いな。

最後の方は音にならなかった。
ゼツは微かに口許を持ち上げ、そして静かに目を閉じた。
その心臓は確かに鼓動を続けていた。

47ディンゴ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/15(火) 22:10:43

「…口付けで女の子を助けるだなんて、メルヘンか少女漫画の世界だけかと思ってたよ」

そこへ、不意に男の声が届いた。

煙草を口に、大理石の床を踏み締めながら歩くディンゴの姿がそこにあった。
その腕には、どうやら気を失っているであろうアリアの姿もある。

「悪い、悪い。もうちょっと早く来られれば良かったんだがー…思いの外アリアが重くてな」

そう冗談めかして笑うディンゴの足元には、血が滴っていた。黒い上着の下に見える白いシャツには血も滲んでいる。

しかしディンゴはそんなこと全く気にしていない様子で、アリアを床の上に下ろし、ヴァイトの横に屈み込む。そして彼の腹に手を翳した。

「死ぬなよ、いいな?これは隊長命令だからな」

淡い光を灯しながら、ヴァイトの傷がみるみると回復していった。

48リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/07/16(水) 23:48:17
【バルクウェイ】

それが誰か、などどうでも良かった。
リマの氣を辿り行き着いた先には彼女に牙を剥く男の姿。
彼女を傷つける者は誰であろうと赦さない。排除する、それだけだ。

セナの翳した手から稲妻が迸る。
その光によって照らされた彼の表情に、リマは顔色を変えた。

「駄目!!」

リマは咄嗟に彼の腕を掴む。
彼女が目にしたもの、それはかつて黒十字であった彼が見せていた冷めきった、無慈悲な瞳。
彼はアブセルを殺める気だった。有無を言わさず、その息の根を止めようとしていたのだ。

リマはアブセルのもとに駆け寄る。

「アブくん!大丈夫!?」

彼は刀を自分へと刺した。酷い怪我だ。
リマは血の臭いと感覚を頼りに患部を探り当て、治癒を施す。
その姿から、彼女の頭には既に先ほどアブセルに襲われた事実など残っていない事が伺える。
彼女にとって目の前にあるものが重要なのだ。

「自分を傷付けるなんて…何てことするのよ……」

49リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/07/17(木) 00:03:15
イスラ>>
質が悪いとか(笑)でも確かに自覚がないと危険ですね←
おぉ!!はい、ジルは父親似です(´∀`人)

なるのかぁ(笑)
気にしたら負け、分かっているけど気になるところ←

やはり生まれ持った変態の血が…←
あぁ成る程…残念です(泣)
リトは多分、友達申請されても無言でしたでしょうね(笑)
完全無視で黙々とナディアから貰った積み木あたりを弄ってて、アブセルが撃沈した所で不意に積み木の一角を渡したと思います。一緒にやれば?的な意味で←
んで次会いに行った時はナディアから貰ったジグソーパズルあたりを組み立ててて、これまた無言でアブセルにピースを渡すのでしょう。手伝え的な意味で←←
口はきかないけど一応無下にはしない、と言った感じかと←
リトは暫くナディアに対してもそんな感じだったので其処はご愛嬌(笑)

50メイヤ ◆.q9WieYUok:2014/07/17(木) 21:15:01
【バルクウェイ】

その姿、正に天を照らす大神。

日輪を額に宿し、勾玉を纏い闇を焼き祓うサンディを、メイヤは犬面越しに見つめていた。

しかし、それも僅かの事。

雨から身を守る様に建物の影へと移動し、メイヤは面を外す。

降り出した雨は闇と戦う者には援護となったが、闇を使役し力とするメイヤにとっては毒であった。

貪欲に蠢く、自身に宿る闇を抑え、静かに息を吐く。

この雨は恐らく、ナディアが降らせているのだろう。

(街全域に雨を降らすなんて……長くは保たないぞ……)

強気な彼女の事だ、力ずくでも止めさせないと限界が来るまで力を使い続けるだろう。

どこに居るかはわからないが、制止の声を掛けるべきだ。

闇を宿す者にとっては毒となるポセイドンの聖なる雨も、闇を顕現させなければそれ程のダメージにはならない。

雨粒が身を刺す僅かな痛みを感じながら、メイヤはサンディへ声を掛けた。

「この雨で魔物と闇の動きは大分制限されている筈だ。

後は兄の雇った傭兵と俺が何とかする、だからサンディはナディア達と合流してくれ。」


【イスラ》了解した!】

51アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/18(金) 01:12:15
【バルクウェイ】

アブセルは未だセナとリトを同一視していた。
よって彼が向ける殺意の理由もどこか勘違いしたまま、迸る稲妻に照らされたその表情を見た。

(も…ものすごく怒ってらっしゃる…)

無理もない。
自分はリトにそれだけのことをした。
寧ろリトになら殺されても良いかなぁ…等と地味に死を覚悟した時、不意にリマの声が耳に届いた。

「え…?あ…」

彼女は自分を庇ってくれたばかりか、傷の治癒までしてくれた様で。
そこでアブセルはハッとする。

「て言うか、姉ちゃんこそ怪我が…、俺、思いっきり噛んじゃって…」

リマの肩には血が滲んでいた。衣服も牙によって穴が空いてしまったし。
アブセルは申し訳なさそうにしながら言った。

「ごめん…、痛かった…よな…?」

52ジュノス ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/18(金) 01:13:52
【バルクウェイ】

ポセイドンの力を持つこの女性、言動やスタイルはリマとは似ても似つかないが、我が身を顧みず無茶をするところは彼女にそっくりだ。

しかし、その清めの力は流石と云わざるを得ない。

降り頻る雨が身を濡らし、それに伴い刺すような痛みと力が抜けていくのを感じるが、ジュノスは構わず、不意にナディアの腕を掴んだ。

「お止め下さい」

そして言う。

「街の闇を除去するだけなら、もう充分な筈です。これ以上は貴女の身が持ちません」

街に滞留する闇はその殆どが雨で洗い流され、深淵から放出される闇も今は弱まりつつあった。
あとは魔物の残党を退治すればいい。

「貴女は一先ず休まれた方がいい。
あとは私達に任せて下さい」

こちらが話しをしている間、アグルやフィアは、ずっと周辺の魔物の相手をしてくれているらしかった。
セナ達のことも心配だが、自分は自分で今でき得ることしなければ。

53イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/18(金) 01:17:31
【リマ》無意識で何人もの女性を落としてそう(笑)
やっぱり親子だったのか!リト家とジル家にはそう言う繋がりがあった訳ですね

それぞれ個性豊かで良いことじゃないですかw

血のせいか!納得←
むしろリマさん直々に過去話に付き合ってくれないかなぁ…←
なるほど、飴と鞭の使い方をよく心得ていらっしゃるwwそれに対しアブセルは…
鞭)しょぼーん(´;ω;`)リトぉ…

飴)パアァ…(*;∀;)リト…!
…な感じだったことでしょう(笑)】

54イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/18(金) 20:58:49
【バルクウェイ】

戦況は思わしくなかった。

数々の神器の猛襲。
バロンの肉体ということで下手に攻撃を与えることも出来ず、何より異能を無効化するあの剣の存在が一番厄介だった。

「……ッ!」

打開策を見出だせぬまま体力だけが疲弊し、イスラはワヅキが放った衝撃波に圧され、建物の壁に叩き付けられてしまう。

そこへ、間髪入れずに飛んできた小刀が右前腕、左掌を貫き。更にもう一本、腹部を貫通し、壁に突き刺さった。

「がは…ッ」

イスラは思わず握っていた刀を落としてしまう。
何故だか力も使えない。
どうやら腹に突き刺さる剣は、あの異能を無効化するものらしい。

「虫の標本の様で素敵になったじゃないか」

壁に磔られた様な彼を見て、ワヅキは愉快そうに笑う。
そして、身動きがとれないであろう相手に向け、掌を翳した。

「なかなか頑張った様が…これで終わりだ」

幾数もの漆黒の槍がワヅキの周囲に浮かび上がる。

「止めろ、ランダっ!」

それはバロンの叫声を引き金に、イスラに向けて一斉に殺到して行った。

【ヤツキ》やっと一人芝居終わった…;お待たせしてすみませんでした。イオリん後戦闘にお付き合い下さいm(__)m】

55ヴァイト ◆.q9WieYUok:2014/07/19(土) 13:52:38
【バルクウェイ】

口移しした薬剤が確かに嚥下された事を感じ、ヴァイトは安堵した。

それと同時に体力の限界が訪れ、ヴァイトは力無くゼツの隣へと倒れ込む。

隣の彼女が何かを呟いたが、それすらも聞き取れ無い。

確かにわかるのは、ゼツの命は救われたと言う事だけであり、ヴァイトにとってはそれだけで良かった。

(あぁ……疲れた、な……)

そして、薄れゆく意識を手放し、多分きっと起きる事の無い眠りに身を委ねようとしたその時。

不意に聞こえた声に意識が反応し、痛みが薄れるのに反比例し意識が明確になって行く。

「なん、だ……?」

しかし、それが何故だか分からないが、ディンゴが側に居るのは不思議と分かった。

「オッサン、なんで……?」

だが、そこまでだ。

明確となった意識もすぐに沈んで行き、ヴァイトは意識を手放した。

56リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/07/20(日) 20:41:53
【バルクウェイ】

「へ?…うん、大丈夫だよ」

謝罪の言葉を述べるアブセルにリマは何のことかと瞬きするも、すぐに笑顔を浮かべる。
アブセルに噛まれたことによる傷口は意外に深かったものの、リマはまったく気にしていなかったらしい。

「私はポセイドンだから傷の治りが早いの」

彼女の言葉通り、傷口は既に塞がりかけていた。
それより、リマはムスッとした顔をアブセルに向ける。
本当に、表情がコロコロと変わる。

「もう、こんな事はしないで。アブくんが傷ついても、誰も喜ばないよ。リッちゃんだって悲しむ。」

そこまで言ったところでリマは後からやってきたセナによって腕を掴まれる。
そのまま無言で連れて行こうとする彼にリマは必死に抵抗する。

「待って!セィちゃん嫌だ!!」

「お前は…!!」

突然の強い声。普段声を荒げることのないセナの思いもよらぬ態度に、リマは反射的に身を竦める。
そして、彼の言動に戸惑いを見せたのはリマだけでなかった。
セナ自身もまた、リマに強くあたってしまった事に驚き、自分の感情が理解出来ず困惑の色を見せる。彼女から手を離し、一瞬の間が空いた。

「ごめんなさい…」

分かっている。自分が無鉄砲な行動をとったからセナは怒っているのだ。リマはポツリと謝った。
しかし彼は誤解している。それだけは分かって欲しい。

「セィちゃん、この子、アブくんって言うの。ジュノスさんの子孫だよ。私達の敵じゃない。」

アブセルはリマを襲った。しかし、それは闇に犯されたせいで、決して彼の意思ではないのだ。

「…知っている」

彼はジュノスと同じ氣を感じる。アブセルがジュノスの関係者であることは始めから分かっていた。
そうではないのだ。彼女を失うかもしれない。そう捉えた途端、意思よりも先に体が動いてしまっていた。
誰であろうと関係なかった。彼女は分かっていない。

セナは言葉を噤んだ。
彼の何か含んだ言葉が気になったが、リマはそれ以上何も言わずアブセルに向き直る。

「アブくん、立てる?」

そして彼に手を貸して起き上がらせた。

「アブくん、セィちゃんだよ。リッちゃんのご先祖さん。」

57リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/07/20(日) 20:58:09
イスラ>>
話かなり逸れますが、今やってる黒執事アニメのEDのシエルがセクシー過ぎて何とも形容しがたい感情に襲われているのですがどうしたらいいですか←
何の覚悟もないまま見たせいでいきなり視界に飛び込んできた無造作に脱ぎ捨てられている服がインパクトありすぎて心臓バックバクですよ←←

無意識に女落としてくとか何ちゅう危険人物(笑)落とされた女の子可哀想←
ふふふ、実はそうだったんですよ〜
リトママとジル父にするか、リト父とジル母にするか凄く悩んだんですが、前者になりました。両家がそんな関係性ってのはもともと考えていたのですが。運命とか縁とか大好きなんで←
ジルと父の性格は意識的に似せたのですが、気付いていただけて嬉しいです(´∀`)
そして父はジルと違って特に女好きとかではないです(笑)

個性豊か過ぎて(笑)
あ、でもヨノはママの性格辛うじてかすってるかも?←

やはりあの血か…もはや何かのウイルスなんじゃ……←
はいっ!!過去話付き合いますっっ(^0^ゞ つか付き合わせてください!

アブセル面白い(笑)
その様子が容易に思い浮かぶw

58イオリ ◆.q9WieYUok:2014/07/20(日) 21:00:52
【バルクウェイ】

「終わるのはテメェだよ、この老害野郎。」

黒槍の群れがイスラを貫くべく殺到したその時。

不意に響く声と共に紅炎が舞い上がり、迫り来る全ての槍を焼き払った。

「最強と謳われた先々代を倒したって割には弱いんじゃねェのか?アンタ。」

そして、その声の主……イオリは熱風に黒髪を靡かせながら、背後のイスラへ声を掛ける。

「ま、一族を捨てて逃げ出した情弱なんざ弱いに決まってる。」

その声色には明らかな侮蔑が混ざっているものの、それ以上続ける事は無かった。

だが、壁に磔となっているイスラを助ける事も無い。

「世界政府の総提督であり、四神を導く筈の者。

初見だろうが俺が誰だかわかるよな?」

磔のイスラを放置したまま、イオリは前方のワヅキへ中指を立てた。

「シンライジ家当主であり四霊の一角である俺が、今からテメェを成敗してやるよ。

そんでもって、集めに集めた神器とその身体、全部貰い受ける。

拒否権はねェし覚悟も必要ねェ。」

そして、居合いの型を構え、

「遠慮せずさっさと逝けや!!」

前方へと倒れ込むモーションからの踏み込みで急加速。

たったの一歩で距離的を詰め、イオリは神速の斬り上げから続く袈裟懸け斬りの二連撃を繰り出す。

更に、燃ゆる刀身が描く超高熱の軌跡は炎を生み出し、焼き尽くさんとばかりにワヅキへと襲いかかった。

59サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/22(火) 18:36:35
【バルクウェイ】

どうやら異形の闇は倒すことが出来た様だ。

そのことに胸を撫で下ろすサンディであったが、メイヤに、ナディア達と合流しろ。と言われれば、途端なにか言いたそうな視線を彼に向けた。

"あたしも…"と言いたかったが、その言葉は喉奧で止まり。
サンディは若干立ち去り難い思いを残しながらも、こくりと首だけ動かし、羽根をはためかせて宙に飛び立った。

そして―…

「姉御ー!!」

大きな穴ぼこの側、彼女の姿を見つけたサンディは、急いで空から地に降り立った。

「姉御!大丈夫だった!?」

何やら知らない人達の姿もある様だが、彼女はいの一番にナディアに駆け寄り、そして声をかけた。

60アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/22(火) 18:38:33
【バルクウェイ】

リマは此方を心配してくれているらしい。
普段、その様な言葉をかけて貰い慣れていないアブセルは、呆気にとられて何も言えなかった。

そしてその後、まさかそれ以上の思ってもみない衝撃の事実を、リマの口から耳にすることになろうとは。

「え……」

アブセルは彼女の言葉を頭の中で反芻する。

セィちゃん…?
リトのご先祖?

…と、言うことは…?

(…リトじゃない!?)

それを理解した途端、アブセルは表情を一変させた。

紛らわしい…、て言うか似すぎだろ!
なんか勝手に勘違いして、一人で騒いでた自分が物凄く恥ずかしい…!
むしろ何で言われるまで気づかなかった自分!馬鹿なのか!?

混乱と面映ゆい感情に苛まれるアブセルであったが、そこでふと我に返る。

そうだ、そんなことよりも…

「じゃあ…じゃあリトは!?
まだ此所に居るってことだよな!?どうしよう!俺のせいで無駄な時間使っちまった…!」

61ワヅキ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/22(火) 18:39:49
【バルクウェイ】

迫る刃と超高熱の炎の軌跡。
しかし、それらが身に降りかかる前に、ワヅキの姿はそこから忽然と消えていた。

「君は…」

そして彼が次に姿を移したのは、イオリの後方、ガス灯の上。
ワヅキはそこからイオリを見下ろし、その顔に笑みを携えた。

「嬉しいね、来てくれたのか」

直接相見えたことはないが、イオリは元ビジネス相手であり、今は黄龍から離反しているであろう四霊の一角。

丁度いい。四神と共に彼の異能も回収して置きたかったところだ。

ワヅキはイスラの腹部に突き刺さる剣を自身の手元に転移させ、その切っ先を天に突き付ける。
すると、名のある数々の神器が顕現し、宙に浮かび上がった。

「わざわざ出向く手間が省けたよ」

槍であったり剣であったり、様々な種類の武具が、ワヅキの号令の元、イオリへと一斉に襲い掛かって行った。


――…

その一方、バロンはイスラの腕から小刀を引っこ抜こうと、奮闘していた。

「イスラ、大丈夫か?」

やっとこさイスラの解放に成功する。イスラはそのまま壁に背を預けたまま、ずるずると地に腰を落とした。

「ああ…だけど、流石に戦えそうにない」

炎で傷口を焼いて出血は抑えたが、動き回るのは難がある。

それはバロンも分かっている様で、苦々しい表情を浮かべれば、つと視線を動かしイオリを見た。
決して味方と言う訳ではないが、まさか彼にこの戦いの命運を託すことになろうとは。

62イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/22(火) 18:44:27
【リマ》取り合えず落ち着こう←
自分も見てますよアニメ黒執事^^確かにEDなんかエロいww
サーカス編は漫画で斜め読みしたんですが、あの眼鏡メイドの見せ場が今から楽しみで楽しみでw

女の敵ですね(笑)
瞳の色とか性格とか、あとジル兄妹の生い立ちと芋男の家の事故の関連性でなんとな〜く気づきました。
運命いいですね^^自分も気づいた時、ハッ(゜Д゜!)と電流が走りました(笑)上手いこと考えるなあ…と。
でも以前、芋男の子供は三人いるって言ってましたっけ?
てかジルって女好きだったんだ?(笑)

確かにあの中では一番雰囲気が似てる…かも?

どうもジュノスがウイルスを撒き散らしてる様で(笑)
良いんですか!?ありがとうございます!
一応ぼんやりと過去話の流れ考えてるっちゃ考えてるんですが…てかむしろリマさんがシナリオ?進行させても良いんですよ!自分ついて行きますので!(`・∀・)

単純だけが取り柄ですからw】

63 ◆Q4V5yCHNJ.:2014/07/22(火) 19:35:37
【過去】

「お嬢様!」

屋敷の親しい使用人達に協力してもらい、こっそり部屋を抜け出して、こっそり部屋に戻ってくる。
そんな日々を繰り返していたある日、一番親しい侍女が入室の許可を取るのも忘れて部屋にやってくる。

「どうかしたの?」

「いらっしゃいましたよ、あの方が!」

侍女はとても嬉しそうに声を弾ませる。
何故なら、彼女の持ってきた情報が間違いなく、私を喜ばせることを知っているから。
私はすかさず鏡の前に立つ。

「ねぇ、おかしくない?何処も乱れてないかしら?」

「えぇ、お嬢様。いつもと変わらず、とてもお綺麗ですよ」

彼女の言葉を受け、私は早速部屋を飛び出した。
目指すは応接間へ。

「あ、いけない…」

そして、目的地が近付いたところで私は立ち止まる。
駆け足を止め、淑女らしい振る舞いで歩く。
そして応接間のドアをノックする。

「お父様?いらっしゃる??」

「ミレリアか、入りなさい」

入室の許可を得て私は内心嬉しくて飛び跳ねていた。
しかし高鳴る胸を隠すようにコホンと咳払いし、一呼吸置いてドアを開ける。

彼は、いた。
私の入室の気配に顔をあげ、対する私は彼を見ていたせいで目が会ってしまった。心臓が跳ね上がり、私は咄嗟に顔を逸らす。顔が赤くなっていないか心配だ。
しかしそれは私の取り越し苦労。彼はすぐに私から目を放し意識を父の元へ返してしまった。

「……」

私は少し残念な気持ちになりながら父親の隣に腰掛ける。
二人は仕事の話をしているようで、内容はさっぱり分からない。
しかし何もしないで座っているのも気まずいので、分からないながらも資料を取り上げてさも理解しているように振る舞ってみる。その間、こっそりと彼を盗み見るのも忘れない。

彼---その客人は私の家とは昔からの付き合いで…というよりは、遠い親戚にあたる家柄の子息。身分はそれ程高くはないけれど、父が絶大な信頼を寄せて仕事のパートナーにしている。
無口で無愛想、冷たく、近づき難い印象。これが周りの評価。
しかし私は違った。確かに印象は皆と変わらないかもしれないけど、他がそれを批判的に見ているのとは逆で、私の方は何と無く魅力を感じていた。癖のない黒髪に、切れ長の瞳は翡翠色。凛々しくて、素敵な人。
彼を見ると胸が高鳴って、とても幸せな気分になるのだ。

「ヨハン様!」

父親との会合が終わり屋敷を出ようとする彼へ私は声をかけた。……心の中で。

「次はいついらっしゃるの?」
「お時間がよかったら、私とお話いただけるかしら?」

言いたいことは沢山あるのに、喉のあたりまできているのに、言葉が詰まって言い出せない。

「またのお越しを」

結局私は見送りに出た母親と共に極一般的な挨拶を述べることしか出来なかった。
対する彼は軽く頭を下げるだけで屋敷を後にしてしまう。

いつもそう。
彼の前に出ると緊張してしまい、親しくなることすら出来ぬまま、日々が虚しく過ぎて行くだけだった。

64ナディア ◆Q4V5yCHNJ.:2014/07/22(火) 22:34:54
【バルクウェイ】

「うっさいオッサン!」

ジュノスからの制止の声、腕を掴む彼の手を振りほどきながらナディアは叫ぶ。

「勢いが収まったなら好都合だ。このまま魔物共々洗い流してやるっ」

そして未だ術を解こうとはせず。半ば自棄になっていた。

しかしそれも長くは続かない。
姿を見せたサンディに驚いた様子で声をかけた。

「サンディ、下はもう大丈夫なの?」

65リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/07/22(火) 23:06:28
イスラ>>
【これが落ち着いていられましょうかッ(*`□)。°。
軌道を描くように脱ぎ捨てられた服!コートまでは良かった!!だがしかし!!シャツだと!?ズボンとな!?これはもしや…もしや!!シエルは素っ○じゃないかーっ(///>□<)
やばいよシエル!ヤバイヤバイヤバイヤバ(ry
なんと言うことだ!シエルったらまったくけしからんもっとやれ!!
セバスが羨ましすぎる!セバスよそこ変われ私がやる!いえ、やらせてくださいお願いします!!シエルをタオルで拭き拭きしたい!私もギュッとしたい!!シエルまじヤバイ!!
ってな感じで鼻息荒くTVに張り付いて見てしまいましたよ← なんと言うことでしょう。まったく眼福にございます!!
思わずテスト前で黒執事のアニメ見れてない友達に「EDがヤバイ、シエルがマジでヤバイ」と発言してしまいました←←

メイリンは銃持ってる時が一番生き生きしてますしね(´∀`人)カッコいいし。

まったく、何人の女性を泣かせてきたのか←
勘がいいですね!狙い通りで嬉しいです(笑)わぁい♪自分はちょっとクドいかなと思ってました(笑)
あれ?3人って言いましたっけ?芋男の子供はもともと2人ですよ??一人増やします??←死者増やすだけですが←
口が滑った(笑)でも女好きってのは性的な意味でなく、可愛いし柔らかいから物理的に好きって感じなんですけどね(笑)暇潰しにもなるらしいです←

良かった、似てるのがいて(笑)

ジュノスウイルス怖ぇ…←
わぁい、宜しくお願いします!
でも自分はシナリオとか無理なんでイスラさんがお願いします(笑)

アブセルくんナイス(笑)

66イオリ ◆.q9WieYUok:2014/07/22(火) 23:49:08
【バルクウェイ】

虚しくも空を斬る刃と、獲物を見失いただ燃えるだけの炎。

(空間転移か?面倒くせェ……)

背後から聞こえる声に振り向くと同時に、イオリは刃を横薙に。

「わざわざ出向いてやったんだ、サービスくらいしてもらわねェとなァ?」

刃の軌跡に沿って巻き起こる猛火と爆炎が、襲い来る武具の群れを吹き飛ばした。

更に、返す刃で一閃二閃。

刀身に宿る炎から生まれた二羽の火炎鳥が、ワヅキへ挟撃を仕掛ける。

それに紛れ、イオリは疾走し、跳躍。

自らも背から炎の翼を生やし、上空からの斬撃を繰り出した。

67リマ、セナ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/07/23(水) 20:29:27
【バルクウェイ】

驚きを見せるアブセルとは対称的に、セナは全くと言って良いほど反応を見せない。

”リトはどこだ”

そんな彼の疑問もセナにとっては意味を成さず、何の言葉も発さぬままリマを連れてその場を去ろうとする。

「待ってセィちゃん!」

しかし、それをまたしてもリマが止めた。

「リッちゃんを探さなきゃ!まだ…」

しかし、彼女は言葉を言い終えぬまま、突然糸が切れたかのようにその場に崩れ落ちた。
言い知れぬ目眩と吐き気。全身が重く、力が入らない。

ここは闇の深淵。闇と対極に生きるリマにとって、この中は毒でしかない。
先程から不調は感じていたものの、まだ平気だと思っていた。アブセルへと治癒を施した事により辛うじて保たれていた均衡が崩れ、一気に疲労が押し寄せたようだ。

そんな彼女をセナは黙って抱き上げる。
リマは察した。

「セィちゃん!嫌だってば!!」

「お前はこの場にいるべきじゃない」

「リマがやらなきゃ!!」

リマには分かっていた。
セナにリトを助ける気などない。
彼にとっての目的は、ただ自分を連れ帰ること。

「セィちゃん、お願いだから…」

悔しい。こんな重要な時に力尽きてしまった、こんな自分が恨めしい。
リマは涙を浮かべながらセナの胸を叩く。

「……」

こんなに小さくて、臆病で、弱いくせに。
彼女は一度言い出したら決して譲らない。こう言う面ではとても頑固だ。
このまま無理にでも連れて帰ることは容易い。しかし、そうすればきっと彼女は自身を責めるだろう。
セナは観念し、口を開いた。
出来れば彼女に知られずに済ませたかったけど…
ずっと言えずにいた事実を彼女に告げる。

「探しても無駄だ。もういない。」

68サンディ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/23(水) 23:59:45
【バルクウェイ】

「オッ…」

かけた言葉は彼女に一蹴されてしまった。
ジュノスは振り払われた腕を、所在なさ気に凍りつかせている。

その一方で、サンディはナディアの問いに笑顔を浮かべて答えた。

「うん、もう心配はいらないよ。姉御のお蔭」

だから、と不意にサンディは両手を伸ばす。
無茶はしないで欲しい、とでも言うかの様に、ナディアの頬を両の掌でそっと包みこんだ。

「ありがとう」

69ワヅキ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/24(木) 00:36:29
【バルクウェイ】

二羽の火炎鳥を水の力を宿した二つの戦斧で掻き消し、頭上からの斬撃には退魔の楯で防ぎきる。
転送術と神器の数々を巧みに繰り、ワヅキはイオリのに撃に応酬していた。

そして。

「ご所望ならば手厚く歓迎しよう」

そう微笑と共に口を開いた直後、イオリの横合いから巨大な龍が押しかかった。

そこへ更にワヅキは技を畳み掛ける。
胡瓶で水を、金剛杵で雷を、錫杖で風を、宝鐸で炎を。
それぞれが渦を巻いて絡まり合い、一つの半物質となったそれは、迷うことなく標的に向かって放たれた。

70アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/24(木) 00:37:55
【バルクウェイ】

初めこそリマを気遣わしそうに見ていたアブセルだったが、不意に発せられたセナの声が耳朶を突いた。

「……どう言うことだ」

ゆっくりと顔を上げ、セナを見る。
一瞬にして頭の中が真っ白になった様に思えた。
耳鳴りが脳内をガンガンと掻き鳴らす。多分、呼吸をすることさえ忘れていた。

「…リトは…、死んだのか…?」

何故そんなことが解るのか、適当なことを言うなと、怒鳴り、セナに詰め寄りたい衝動を必死に抑え、アブセルは彼に問うた。

71イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/24(木) 00:43:00
【リマ》ちょと待ってww吹いたww
既に素っ〇なのに、これ以上なにをどうもっとやれと言うんだwwいえ…まぁリマさんが楽しそうで何よりです(笑)
てか友達ww可哀想に(笑)
格好良かったです!もうメイリンが主役で良いんじゃないかな←

死後は明らかに地獄行きですね←
いやいや、くどくなんかないですよ〜^^今後の展開を楽しみにしてます!
死者増やさなくて良いですwそっか、自分の勘違か(笑)
あ、そう言うことなら納得。ペット感覚的な?てか暇潰しってなんぞ(笑)

ジュノスウイルスは後に空気感染して世界中に広まる予定です←
あら、そうですか?じゃあ皆に内緒でこっそりリトを屋敷の外に連れ出すのって有りですか?(「リト怒られろ、ふひひww」って感じのアブセルの嫌がらせ的な)←】

72ディンゴ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/24(木) 14:19:41
【バルクウェイ】

愚かだったと思う。
本来ならば病で死んでいたのは、彼女ではなく自分の方だったのに。

病を肩代わりしてくれた彼女は、
「貴方はお巡りさんで、街の人を護るのが仕事でしょう?だからそんな貴方を護るのが私の仕事なの」と言って、よく笑っていた。

言いたいことは解ったが、理解は出来なかった。だけど、もの凄く申し訳ない気持ちになったのは確かだった。

政府から通達があったのは、その直ぐ後のことだった。
そこには異能者である彼女を容認し、充実した医療環境を提供する代わりに、暗部に異動して欲しいと記されてあった。
直ぐに脅しだと解った。だが、ディンゴは二つ返事で承諾した。

だけど、そうじゃなかった筈だ。
彼女はそんなつもりで病を肩代わりしてくれた訳ではなかったろうに。

転属したことも、その条件も、彼女には言えなかった。見舞いに行く時間も次第に減っていった。
彼女が命を投げうってまで与えてくれた時間を、自分はふいにしてしまったのだ。

―――…

この力は謂わば、彼女が自分に与えてくれた、彼女の生命力そのもので。故にその恩恵に与り、ディンゴは異様に傷の治りが早かったり、身体が丈夫だったりしたのである。
そして、アリアやヴァイトにそれを注ぎ込むことで、彼等の傷を癒すことが出来たのだ。

ディンゴはヴァイトの無事を見届ければ、うっすらと笑い、壁に寄りかかってその場に腰を落とした。

最後の煙草に火を点け、自嘲気味に笑う。

「あいつは…怒っているだろうな…」

まあいい、あの世で彼女に怒られるのも、それはそれで悪くない。
……いや、違うか。多くの人の命を奪った自分が向かう先は、きっと彼女とは別の場所だ。

己の命の灯火が消えかけていくのを、どこか他人事の様に感じながら、ディンゴは流れていく煙草の煙をくすんだ瞳で見つめていた。

そこで、不意にディンゴはハッと目を見張り、息を飲む。
かと思えば直ぐにふっと力を抜き、ゆっくりと宙に左手を伸ばした。
薬指のリングがキラリと輝いた。

「なんだ…迎えに来てくれたのか…」

そこには誰もいなかった。けれども彼の目には何かが見えていたのだろう。
その瞳と口許に小さな笑みを携えたまま、ディンゴは脱力した様に伸ばした腕を静かに地に落とした。

73イオリ ◆.q9WieYUok:2014/07/24(木) 15:30:16
【バルクウェイ】

神器の扱いは流石と言うべきか。

此方の攻撃を全て防ぎ切るワヅキに、イオリは舌を打つ。

それと同時に、横合いから飛び出して来た龍がイオリを吹き飛ばした。

「チッ!中々やるじゃねェか!」

しかし、吹き飛ばされながらも笑みを浮かべるイオリは空中で体勢を整え、着地。

そこへ、半ば物質と化した莫大なエネルギーの渦流が着弾し、大爆発が起きる。

その威力は凄まじく、地面は大きく抉れ、クレーターが出来上がる程。

轟音が爆風を揺らし、土煙が周囲を包み込む。

そして。

ゆっくりと土煙が晴れ、イオリは姿を現した。

「わざわざ出向いた甲斐があったってモンだな。」

黒髪は煤で汚れ、一張羅の上着はレザーパンツと共にボロ布と化している。

しかし、その身体には傷一つ見えない。

「ヴァジュラを筆頭にした数々の神器、凄まじい。

だが。

この魔装……分子レベルで最高位の防御術式が刻まれている逸品の前には少々見劣りすんなァ?」


何故なら、イオリはとある鎧を衣服の下に着込んでいたからだ。

ソレは十字界を創世したオリジンと呼ばれる存在が纏っていた物であり、100年程前に十三人の長老であるレオからヤツキへ、そしてユーリへと継がれて行った物と同種の装備。

「アイツのは蜘蛛をモチーフにした攻撃特化型、俺の蛇がモチーフの防御特化型。

劣化コピーだらけのこの世界でも数少ない正規品だ、テメェにはやらねーぞ?」

鱗鎧とも呼べるその鎧はまるで生きて居るかの如く蠢き、黒緑の鈍い輝きを放っている。

「さて、と。

テメェの異能は俺に届かなかった。

俺の異能もテメェにゃ届かねェ。」

鎧が持つ予想以上の防御力に自分自身で驚きながら、イオリは刀の切っ先をワヅキへ向け、唐突にその姿が消失。

「だが、俺の刃はテメェに届く!」

音も無く、気配も無く。現れたのはガス灯に立つワヅキの背後、二階建の屋上。

縮地方によって距離を詰める所か背後に回ったイオリは、再び疾走し、跳躍の勢いそのままに、ワヅキの背中へ刺突を繰り出した。

「逃がしゃあしねェっ!!」

74リマ、セナ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/07/26(土) 23:13:49
【バルクウェイ】

感情を抑えるように発せられるアブセルの声。
しかしその声音からは明らかに動揺の色が伺えた。
勿論、セナの発言に驚いたのはアブセルだけではない。

「どういうこと…?話して」

そう口に出したリマの声は震えていた。
真実を知るのが怖い。しかし、聞かなければ。
感情を紛らわすようにセナの服を掴み、彼の返事を待つ。

セナは言った。

「一体に氣が分散している。
力を全て吸い取られたようだ。」

能力者にとって、その力は魂に等しい。
普通に使う分は問題ないが、一度に失えばそれは致命的になる。
状況から判断し、リトはまず生きていない、そう考えるのが妥当だろう。

「ただ…」

気になる点がある。
深淵に降りる前に感じ取った氣は3つ。
うち2つはリマとアブセルのもの。1つはリトのものと思われたが、それは既に彼を起源としたものではなかった。
しかし、彼の氣が否定されたと同時に、微かではあるが、別の”何か”を感じた。そして、それは今も消えずに残っている。

セナはこのことを伝えるべきか悩み言い淀んだが、暫しの沈黙の後、口を開いた。

「…何かある。お前達の求めているものではないが。」

75リマ ◆Q4V5yCHNJ.:2014/07/27(日) 00:01:52
イスラ>>
【Σ(゚д゚;)イワレテミレバ
素っ○で歩き回るとか?←大問題
そうだ!けしからん行動をもっと増やせばいいんだ!!←
友人には申し訳ないが辺りに吐き出さなければ自分の頭がどうにかなってしまいそうだったので←あれは体内に溜めておいたら大変なことになる代物です←身が持ちません、呼吸困難になります←←
ダメです!あのメイリンが主役だったらサバイバルアニメになってしまう(笑)

えー!女の子が勝手に惚れちゃうだけなのに地獄行きなんて可哀想←
良かったです(><) あ、増やさなくていいんだ(笑)

そうそうペット(笑)暇を持て余してる時や人肌恋しい時はテキトーに女の子を誘って遊びます。(色んな意味で)

ジュノスウイルス怖ぇ!世界が変態だらけになる…!!(ガクブル
あ、たのしそう!是非お願いします(pq´v`*)

76ワヅキ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/28(月) 11:03:37
【バルクウェイ】

舞い上がる土煙の間から見えるは、異質な鎧を身に纏ったイオリの姿。
しかし次の瞬間、それはワヅキの視界から忽然と消えた。
危険を察知した彼は咄嗟に空間を移動するも…。

「………ッ」

遅かった様だ。
その刃からは逃れられず、白地の衣には真っ赤な血が滲んだ。

「ただの人間の分際で…」

彼の顔からはいつもの笑みは消えていた。ワヅキは憎々し気にイオリを睨み付け、そして口を開く。

「私の異能が君に届かない…か。
ならば、やり方を替えよう」

言うが早いか、不意にワヅキの姿はそこから消えた。

それと同時に周囲に広がっていた街並みも消え失せ、そこにはブヨブヨと蠢くピンク色の壁が広がるばかり。
忘れていたが此処は鯨の内部。差し詰めこの部屋は胃と言ったところか。

そう理解した直後、肉の壁が四方八方から迫ってきていることに気づく。どうやら体内に入った異物を排除しようとしているらしい。
イスラは炎で壁を焼いてみるが、それは直ぐに傷んだ箇所を修復し、再生を為した。

「不味いな、このままじゃ皆まとめてぺちゃんこだ」

77アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/28(月) 11:05:46
【バルクウェイ】

嘘だ、信じない。
真実をこの目で確かめるまでは。

セナの発言に対し、アブセルは苛立ちを露に歯噛みするが。しかし、こんな時こそ落ち着かなければと、直ぐに平静を努め彼に向けて口を開いた。

「…連れて行ってくれないか?
そこに行けばリトのこと、何か分かるかも…」

そこで不意にアブセルは言いさした。

「あっ…でも、ポセイドンの姉ちゃんは……」

一目瞭然だが、彼女は明らかに体調が悪そうだった。
強引に連れてきた身で言うのもなんだが、彼女だけは地上に戻した方が良いのではないだろうか。と、そんな意味の言葉を匂わしながら、アブセルはおずおずとリマに視線を向けた。

78アブセル ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/28(月) 11:16:04
【過去】

あの日を境に周囲の人間も、身を取り巻く環境も、全てが一変してしまった。

大き過ぎるお屋敷も、そこで生活する見知らぬ人達も、夜一人で寝るのも、孤独を感じるには充分過ぎるものだった。

不器用ながらも祖父は此方を気遣ってくれていた様だし、親切に接してくれる人も居たが、けれどもアブセルは言い様のない心細さをいつも感じていた。
それは今までに積み重なった苦い経験が、彼をなかなか他人に心を許すことが出来ない性格にしていたせいもあったと思う。

未だ屋敷での暮らしに馴染めぬまま、まだ幼いアブセルは、身の回りの極簡単な手伝いをして日々を過ごしていた。

そして、そんなある日。坊っちゃんの部屋に食事を持って行って欲しいと祖父に頼まれた。

気は乗らないが仕方がない。
食事を乗せたワゴンを押して、アブセルは目的の部屋へと足を運ぶ。
ドアノブに手をかけようとしたところで、ふと思い出したかの様に形ばかりのノックをして扉を開いた。

「…食事、持ってきた」

愛想もなければまたそれを隠そうともせず、そう素気なく言って、彼は部屋の中に足を踏み入れた。

79イスラ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/28(月) 11:17:29
【リマ》
画面がモザイクだらけになっちゃうww
てかこれ以上けしからん行動を増やした場合のリマさんの精神が心配(笑)
呼吸困難wwそれはやばい(笑)
サバイバルアニメでもそれはそれで面白そう(笑)

彼女たちの気持ちに気づかないのも罪かな〜っと思って←
ジル…w本当に地獄に落ちるべきはジルなんじゃなかろうか←

世界中が変態だらけになったら…きっと楽しいよ←
ありがとうございます!過去話のレス置いときますね^^因みにアブセルはリトが闇の力を持ってるって事、まだ知らない設定でいきます】

80イオリ ◆.q9WieYUok:2014/07/28(月) 23:37:13
【バルクウェイ】

刃の切っ先に確かに感じた刺突の感触と、白地に映える紅。

そして、笑みが消え失せたワヅキの顔。

「ハッ!人間様を舐めてるからそんな風になるんだよ。」

それを見たイオリは邪悪な笑みを浮かべて毒を吐いた。

それと同時に、握る刀を一閃。

迫る肉壁へ炎刃による斬撃を繰り出す。

その威力は絶大……だったが、肉壁、巨鯨の胃はすぐさま再生して行く。

「チッ、面倒くせぇな……」

先程までの街中から、見渡す一面桃色の肉壁となった辺りを見渡し、イオリは邪悪な笑みのまま刀を鞘へ。

「だが、所詮はただの肉壁だろ。

ブチ破れば良いだけだ。」

代わりに抜きしは二本の神刀。

「世界創造すら成す力を秘めた刀に斬れぬモノはない。

太陽と月、重なり産まれるソレ即ち世界なり。」

重なり産まれるは一振りの神刀。

刃が纏うは世界創造すら成す程のエネルギー。

光輝く刀を手にし、イオリはソレを腰溜めに構え、踏み込むと同時に一閃。

次元すら斬り裂く刃はいとも容易く肉壁を、そして巨鯨の胴を半ばまで斬り裂いた。

「天叢雲剣、天羽々斬 ノ型。

この剣に、斬れぬモノ無し!ってな。」

81ヤツキ ◆.q9WieYUok:2014/07/28(月) 23:52:31
【歳食ったせいか最近涙腺が緩くて困る、ディンゴの最期切ねぇなー!

とと、ワヅキとの戦闘はどんな感じで〆る予定すか?     

バロンの身体はあんまり傷つけない方が良いよね?


添付は大分前に描いたイオリ。

imepic.jp/20140728/853220

82ナディア ◆Q4V5yCHNJ.:2014/07/29(火) 20:27:45
【バルクウェイ】

「そっか…」

”お陰”と言われても自分は特に何もしていない。
何かしていなければ気持ちが駄目になってしまいそうで、ただ闇雲に雨を降らしただけ。しかしその雨は少なからず役に立ったらしい。

ナディアの気持ちの変化から大降りの雨は次第に威力を弱め、消えていく。
術を解いたナディアの視線は深淵へ。

「サンディ」

そしてポツリと口を開いた。

「私の弟がこん中に落ちたらしい。
いることは分かってるのに私は中に入れない。」

リトを屋敷に置いて出て行ってしまったのがいけなかったのだろうか。私がそばにいたらこんな事にはならなかったのかも。

ナディアは乾いた笑みを浮かべる。

「何かしなきゃって思ってるんだけど、思いつかないんだ。」

それはサンディ達と行動を共にして初めて漏れた弱音だった。
本当はもっとやるべきことはあるだろうに、弟がいると言う穴の前から離れる事が出来ない。

「あんたも大変だったでしょ?なんか…助太刀とかしなくてごめん」


【そうだ!自分もディンゴの最期で胸が熱くなったんだった!!言うの忘れてた!!
もう素敵すぎてもう…!自分も感動的な文章書きたい!!

そしてなんか久しぶりにヤツキの絵見た気がする!
相変わらずメリハリ効いた力強いタッチで惚れる(。>艸<。)】

83ナディア ◆Q4V5yCHNJ.:2014/07/29(火) 23:57:02
【バルクウェイ】

「私も行く…!!」

リマは食い気味にそう、答えた。
気遣わし気なアブセルの視線と目が合い彼の意図を察したのだ。

「ねぇセィちゃん、リマは大丈夫だから!リマも連れて行って!!」

セナが見つけた”何か”はきっと、意味のないものなんかじゃない。
何故なら此処は”無”の世界だから。
異物は否応無く排除しようとする。自分でさえ、中に入って間もないに関わらず此処まで体力が削がれている。”それ”は普通であれば”存在し得ない”ものなのだ。

「……」

対するセナは黙り、考える。
リマを地上に戻したい。それが正直な気持ちだ。
しかし無理に帰したところで彼女が大人しく結果を待つという保障もなく、再び深淵へ飛び込もうものなら今度こそ無事では済まされなくなる。

「…時間は取らない」

ならば、自分の手元に置いている方が賢明だ。
ただし、現在のリマの状態では長いは出来ない。

セナは一言そう口に出せば、そのまま前方へと歩き出した。


------

右も左も、上も下も全て深い闇。
その中をセナは黙って進む。
これは先程自分たちがいた地点より奥へ進んでいるのか、はたまた前に戻っているのか、それすらも判断出来ない。そもそもセナは目的の道を把握して進んでいるのか、それすらも不安になる。

リマはふとセナの顔を見上げるも、暗いせいで表情が伺えない。
彼の腕に抱かれ、彼は間違いなく其処にいる筈なのに姿が見えず、何だか不安だ。
そっと彼の胸に顔を埋め、彼の存在を確かめた。

あれからどれくらい経ったか分からない。やがてセナは足を止めた。

「此処だ」

見るも、今までと全く風景は変わらず。黒一色。

「この場所…?」

リマは誰に問いかける訳でもなく呟いた。
此処に何があるというのか。

セナはそれ以上何も答えない。
希望の場所には連れてきた。あとは勝手にしろとでも言うかのごとく。

「アブくんら何か見える…?」

リマの視力は闇の中で自由が効かない。
対して闇の中でもある程度の視力の維持ができているアブセルへ、不安げに尋ねた。

84ワヅキ ◆Hbcmdmj4dM:2014/07/30(水) 01:19:22
【バルクウェイ】

その凄まじい一撃は鯨の肉をいとも簡単に引き裂いた。

上方に裂けた割れ目から、バルクウェイの空…曇天が見える。
イスラ達は肉壁が再生を果たす前に、その割れ目から外に抜け出した。

…しかし急いで脱出する必要もなかったらしい。
見れば、鯨はその大きな口からけたたましい咆哮を上げながら尾びれを振り回し、苦しそうにのたうち回っている。

ナディアが降らした雨の効果で、深淵から供給される動力源である闇が断たれ、傷の再生に回すだけの力が残っていない為であった。
また、天叢雲剣の莫大なエネルギーは、鯨の胴を切り裂くだけに留まらず。その身体を内側から消し炭に変えていく。

鯨の巨躯は瞬く間にボロボロと崩れ、灰になって街に降り落ちた。

…そして、その一方。

「なん…だと…」

空間転移で外に逃れていたワヅキは、眼前で起こるその出来事を、愕然とした面持ちで見つめていた。

有り得ない。やっとここまで辿り着いたのに。あともう少しのところで長年の悲願を叶える事が出来たのに。

鯨はその野望の要とも言える存在だった。それを失ってしまえば、もう…。

茫然自失と言った風に脱け殻の様に放心するワヅキであったが、しかしそこへ、突如。猛烈な吐き気と目眩が襲った。
頭の中がざわざわと騒がしい。脳内を揺さぶられる様な感覚に、ワヅキは堪らず身体を折り、頭を抱えた。

「なっ…んだ…、これは…ッ」

"鯨"と云う居場所を失った異能者の魂が、身体を求め、ワヅキの中に押し寄せていた。
元々が神のものだったそれら魂は、彼の…神の身体に一番に引き寄せられる様だ。

そして一つの肉体、一つの人格に、それら多くの意識の集合体を堪え得るだけの容量はない。

「くッ…ァ…、は…入って…来るな…ッ。あっちへ行け…ッ!」

漠然とした、意識の渦に呑み込まれる。
自分と言う存在が消えてしまう。


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