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仮投下用スレ

7【代理投下】It's My Life ーTir na nOg ー(前編) ◆qvpO8h8YTg:2022/08/13(土) 15:53:20 ID:???


「本当に大丈夫なのか?」

遅れてやってきたビルドと義勇は、待ち構えていた三人を見まわし、隼人へと視線を向ける。

「時間もなかったからな。多少のリスクはあろうが、実のある方を取っただけだ」
「実力は確かだと私も思うかな」
「二人がそういうなら心強いよ」
「...お前たちが受け入れているならば俺はなにも言わない」

直接手合わせをした隼人とクオンはもとより、ビルドがこうもあっさり受け入れるならば義勇もそれに従う他ない。
隼人たち四人と夾竹桃ら三人、計七人は名前だけの自己紹介を簡素に交わすと、すぐに準備へと取り掛かる。

まずもって、第一に主催への攻撃手段は麦野の原子崩しとビルドと義勇で造った大砲だけ。
狙撃手は麦野とビルド。では他の五人は適当に時間を潰せばいいかといえばそうではない。
まず、この攻撃の初撃は高確率で失敗するという前提のもとに作戦は動いている。
主催の手の者が直接現れるかもしれないという参加者からしたら絶好のこの機会、相手側もなにかしらの対策は講じているはずだ。
大切なのはその次にどう活かすかだ。
そうでなくても、主催側の用心棒か護衛がこちらを罰しに来る可能性もある。

残る五人はそういった事態への対処だ。ある意味、狙撃手二人よりも重要な役回りであると言えよう。

「時間まであと30秒」

隼人のカウントダウンが始まり、その一秒一秒に、各々の殺気が充満し、一同を包む空気がヒリついたものになる。
二人の砲撃場所はかなり近い。本来ならば距離を置き別々の場所から放つのが定石なのだが、互いのチームの信頼関係が無である以上、傍で撃つべきだと話は纏まった。

「5」

義勇が剣に手をかけ、その姿を見たベルベットの目が細められる。

「4」

夾竹桃はいつでも『毒』を使えるよう懐に忍ばせる。

「3」

クオンは今は一切の同郷の者たちへの感情を抑え、眼前と周囲に集中する。

「2」

隼人は己も拳銃の弾を込めなおし、即座に撃てるよう構える。

「1」

ビルドが渋谷駅周辺に狙いを定め、麦野も同じく照準を定め原子崩しの砲撃準備に入る。

「0」







―――彷徨う心よ 何もかも忘れて この歌が導く世界で理想だけ見て






歌声が響き渡ると共に、渋谷駅より影が降り立つ。
その妖精を思わせるような純白の衣装に身を包む、アイドルのような風貌―――間違いない。
参加者の誰もが忘れられぬ女、μだ。

ビルドと麦野は共に砲撃する。

高速で迫る光弾と砲弾に、μは一瞥もくれない。
ただひたすらに己の歌を唄い続ける。


―――ずっと苦しかったね ずっと悲しかったよね キミの涙を代わりに受け止めてあげるよ


カッ!


閃光と爆音が響き渡り、爆風と砂塵が舞いビルド達の視界を遮る。
その勢いに溜まらず目を隠しながらも、麦野は嗤う。

仮にも自分や垣根提督を巻き込んだ連中がこの程度で終わる筈がない。
これで終わる程度なら最初から優勝の褒美など期待はしない。その程度の力で垣根提督を超えることなどできないのだから。
だから見せてみろ、お前たちの力というものを。

そんな、まるで試しているのはこちらだと言わんばかりの思惑を抱きつつ砂塵の先に目を向ける。

やがて爆風の勢いが収まり砂塵もパラパラと舞い落ち、その先に立つ影が浮かび上がる。


現れたのはμ―――ではない。

黒のコートととズボンに身を包み、二丁拳銃を構えた男...いや、女?
その正体はわからない。なぜならその頭部は透明化した骸骨そのものであるからだ。



―――求めるものは何?なりたいものは何? 叶えてあげるから私に教えて。


透明骸骨が挑発するように指先を左右にゆっくりと振る。


「ハッ、面白いじゃない」

それを見た麦野は不機嫌になることもなく凶悪な笑みを浮かべる。
ソイツがあの拳銃で原子崩しを相殺したというのか。
ならばもう一発撃って確かめる。撃って、その力のほどを確かめる。

麦野に続き、一同が透明骸骨に対応しようとしたその時だ。

カチリ。なにかを踏んだような音が鳴る。

瞬間。

ゴウッ!!

足元から、突如、小規模な台風が発生し、ベルベット、義勇、隼人、クオン、ビルドの五人の身体が巻き上げられる。

「こっ、これは...!?」
「ビルド!」

巻き上げられながらも咄嗟にビルドへと手を伸ばす義勇だが―――届かない。
消えていくビルド達の姿に無力感を抱きつつも、自身も放り出されるように遠心力で吹き飛ばされてしまう。
旋風が収まった時には、もう巻き込まれた五人の姿は何処へと消えていた。

「麦野、一旦態勢を立て直しましょう」
「チッ、なにがどうなってやがる」

残された夾竹桃と麦野は状況の異常さを察する。
おかしい。
状況から見て、なにか罠を踏んだのだろうと判断はできる。しかし、つい先ほどまで何の変哲もなかった場所から突如発生したのだ。
わかるのはただ一つ。
状況は、自分たちが想像しているよりも危険で大きく動いているということだ。

退こうとする夾竹桃だが、しかしその彼女へ向けて光線が放たれる。
骸骨の手に持つ二丁拳銃によるものだ。
夾竹桃の眼前にまで迫るソレは、しかし彼女に着弾することなく弾け飛ぶ。

麦野のほんの小規模な原子崩しの光線が、骸骨のモノに当たり弾いたのだ。

「面白くなってきたじゃない」

不測の事態においても麦野は嗤う。
そうでなくてはつまらない。

学園都市第四位、麦野沈利の踏み台になるならこれくらいはやってもらわないと困る。

「相手してやるわよォ、三下骸骨!!」

麦野の啖呵に、骸骨はその奥でニヤリと笑みを深めた―――気がした。


―――Cry...叫べずに 歌えずに 枯れ落ちるキミの言葉を救い出して


「くっ...」

ビルドは着地の際に痛めた腕を抑えながら、先ほどの狙撃場所へと向かう。
急がなければμが帰ってしまう。
恐らく吹き飛ばされたみんなも再び集まるはずだし、たとえ倒せなくてもなにかできることはあるはずだ。
急がなければ。早く、早く。

カチリ。

なにかを踏んだかのような音が再び鳴ると共に、今度は地面から激しく炎が吹きあがってきた。

「うわっ!!」

あまりの勢いに思わず倒れ込むも、一方で冷静にこの現象の心当たりを探る。

(僕は知っている。これは―――)

「ギラタイルの罠とバギバキューム。きみが教えてくれたものを少し改良したものだよ」

ビルドの心に答えるように、被せられる声。
ビルドは振り返り、信じられないものを見たような表情を浮かべる。

「本来は叩き落とすバギバキュームも発生する風の向きをこうして変えれば吹き飛ばすように使える。こうやって既存のものに手を加えることもきみの『ものづくり』の一環なんだろうね」
「きみは...!」
「その顔...ハハッ、僕なんかを覚えていてくれたのかい。思っていたよりも律儀だったのかな?」

炎が広がり木々が燃え盛る中、歩み寄るその存在の名前をビルドは口にする。

きみはいなくなったはずなのに―――死んでしまったはずなのに。

「リック...!」


―――Cry...叫ぶように 歌うように いつまでも繰り返す 終わらない理想郷(シャングリラ)


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