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>>2「>>2の3分クッキングの時間だよ!」 PartⅩⅩⅦ

1 ◆WsBxU38iK2:2019/04/30(火) 01:37:23 ID:sNQm8kGc
安価スレのようなそうじゃないよう
なSSスレ


前スレ(ⅩⅩⅥ)
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/10627/1531398039/

前前スレ(ⅩⅩⅤ)
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/10627/1520423523/

前前前スレ(ⅩⅩⅣ)
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/10627/1513250979/

前前前前スレ(PartⅩⅩⅢ)
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/10627/1507460469/

前前前前前スレ(PartⅩⅩⅡ)
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/10627/1501931181/

前前前前前前スレ(PartⅩⅩⅠ)
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/10627/1496660857/

前前前前前前前スレ(PartⅩⅩ)
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/10627/1491735745/

前前前前前前前前スレ(PartⅩⅨ)
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/10627/1487495156/

前前前前前前前前前スレ(PartⅩⅧ(再々))
http://karma.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1486897355/

381 ◆WsBxU38iK2:2019/10/14(月) 23:46:50 ID:jq1xollA
新終末編・焔『234』

─────────────────
──京都上空

PM8:58


海未(行ける……!)

海未(一太刀目の感触に私は手応えを覚える)


海未(これなら――――)







──出撃前


真姫「海未、はいこれ」

海未「これは……」


海未(京都上空に謎のムスペルの存在を視認してからすぐ、私たちは介入することを決定した)

海未(そして様子見兼露払いとして立候補した私とにこは、突入の準備のために格納庫に隣接されたカタパルトエリアまで来ていたのだ)

海未(そこで真姫が渡して来たのが……)


真姫「対ムスペル機動装備、私とロトたちで作った装備よ」

海未「ふむ……」

ガションッ

海未(背中に背負って複数のバンドで体に固定するタイプ、重さはそれほどなく動作の邪魔にはならなそう)

海未(特徴的なのは装置の右上、左上、右下、左下から伸びてる4つのノズル)

海未(材質は金属に近いですが蛇腹状になっていてホースのように自由な角度に曲げられる仕組み)

海未(先端には何か付け足せるのかジョイントらしきものがついてる)


真姫「その装置の中には神鎮めの水が充填されたタンクが入ってるのよ」

真姫「水を可変式ノズルから噴射することで高速移動や高速飛翔したり、そのまま相手に放水することもできるわ」

海未「なるほど、ノズルの先のジョイント部分は?」

真姫「そこを変更することで高機動タイプだったり消炎特化タイプだったり変えることができるの」

真姫「とりあえず今回は私がお勧めのカスタムをしておくわ」


ロトーチカ「はい両手あげてー」

にこ「んっ」

ロトーチカ「……よし、にこの装備もこれでオーケーっと」パチンッ

にこ「これ上手く使えるかしら……」

ロトーチカ「大丈夫よ、基本的に装着者の念波を読み取って自動で操作されるから」

にこ「あー、ここにも念話技術派生のシステムが組み込まれてるわけね」



真姫「それと海未、先遣隊にもう1人連れて行って欲しい人がいるんだけど……」

海未「もう1人? 誰です?」

真姫「人造ムスペルちゃん」

海未「なっ! 人造!?」

にこ「ムスペル!?」

真姫「ええ」


海未「そんなのどこで!いつの間に!?」

真姫「まぁまぁ落ち着いて、彼女は>>382

382名無しさん@転載は禁止:2019/10/15(火) 05:52:12 ID:jqc98i3Q
有能で貧乳

383 ◆WsBxU38iK2:2019/10/16(水) 00:53:13 ID:nzyME1uY
真姫「彼女は有能で貧乳よ」

海未「……貧乳は関係なくないですか?」

真姫「なんでそこで一旦冷静になるのよ」

海未「むぅ……」



にこ「で、結局人造ムスペルって?」

ロトーチカ「言葉のまま、私たちが人工的に作った疑似炎魄生命体よ」

ロトーチカ「厳密には天然のムスペルとは組成が色々違うけど、形ある炎で身体が形成されてる点は共通してる」

ロトーチカ「まぁ限りなくムスペルに近いムスペルって感じね」

にこ「ハンバーグと豆腐ハンバーグの違いくらい?」

ロトーチカ「んー……もうちょっと近い存在かなー」


真姫「元々研究と開発はこっそり進めてたんだけど、中ボスムスペルとの戦いで新鮮なデータも取れたし、ここらで試験運用してみようって話になって」

真姫「特に今の京都は龍脈からしてムスペル有利に調律されてるでしょ?」

真姫「だったら殊更ここで試してみる価値はあると思うの」

海未「……なるほど」


真姫「というわけで彼女が人造ムスペルちゃん」スッ

人造ムスペル「どうも」ペコリ

海未「……!」

海未(いつの間に……用意が早いですね)



にこ「こうして服越しに見るとムスペルなのか普通の人間なのか分からないわね」ジーッ

人造ムスペル「わわっ……!」

真姫「彼女の全身を覆ってるヘルメットとライダースーツのような黒い服は防水のためのもの」

真姫「特殊な繊維で編み込んであるから神鎮めの水の影響は軽減されるわ」

海未「ふむ」

海未(浮遊ドスケーブ城の超圧縮放水砲と共に射出される作戦の性質上、彼女が水に濡れないようにする装備は必要でしょう)

海未(こちらの武器で味方にダメージを与えては元も子もないですからね)


真姫「基本的に指示には従う良い子だし、何より彼女が特に有能な点が1つある」

真姫「それは>>384

384名無しさん@転載は禁止:2019/10/16(水) 05:44:03 ID:b4EGBnc6
生みの親がまきちゃん

385 ◆WsBxU38iK2:2019/10/17(木) 00:28:39 ID:xou6.oBo
真姫「生みの親がこの私まきちゃんってことよ!」ビシッ!


海未「はぁ……」

海未(真姫はドヤ顔で胸を張るもののいまいち有能さは伝わってこなかった)

海未(事あるごとに有能アピールしてきたのは親バカな部分もあったのでしょうか……?)


にこ「全く、むしろこの親で大丈夫なのって感じね」ヤレヤレ

真姫「な、何よっ! 人格データは私を元に教育してるからそこそこ頭良いのよ、機転も効くし!」

にこ「はいはい」

真姫「はいはいって何よ!」


人造ムスペル「皆さん、今は急ぐ時ですから言い争いは後にしましょう」

人造ムスペル「母さんも、にこさんも、良いですね?」

真姫「うっ……」

海未(当の本人に言われたのでは仕方ない)

海未(真姫もにこも、そして私も所定の位置に戻ってセッティングを続ける)


カチャッ ガチャガチャッ

ロトーチカ「じゃ、作戦を再確認するわよ」

海未「はい」

ロトーチカ「京都上空に現れた巨大蝶型ムスペル」

ロトーチカ「やつの鱗粉――というか粒子状の炎ね、あれに当たると物質が肉眼で捉えられないレベルまで分解されるみたい」

ロトーチカ「その対策として城の前面から神鎮めの水による超圧縮放水放水を行う」

ロトーチカ「あなたたちはその水の道に突っ込んで敵の懐まで入る」


にこ「空中のウォータースライダー……ってほど呑気に楽しめるものじゃなさそうね」

海未「おそらく水から出て一太刀目は先頭の私が浴びせることになるでしょう」

海未「不意打ちに加えて神鎮めを使うことによりほぼ成功すると思いますが……」


海未「その次はどうします?」

ロトーチカ「そうね、私が考えでは>>386

386名無しさん@転載は禁止:2019/10/17(木) 05:23:52 ID:G114jiw.
先手必勝!その勢いのまま決める

387 ◆WsBxU38iK2:2019/10/18(金) 02:11:30 ID:FJAsUGKg
ロトーチカ「先手必勝!その勢いのまま決めるのが最適だと思うわ」

海未「分かりました、勢いのまま攻めましょう!」


真姫「よーし、みんな準備はできたわね」

真姫「間もなく放水砲発射! 同時にカタパルトで貴女たちを水流に放り込むわ!」

真姫「水中の姿勢制御は装置が自動でやってくれるから流れに身を任せてね」

海未「はいっ!」

にこ「準備おっけー!」

人造ムスペル「行けます!」


ウィーンッ

海未(カタパルトに体を固定した私たち3人の前で外へ繋がるハッチがゆっくり開いていく) 

海未(そして京都上空に向かって放水が始まる)



真姫「切り込み部隊――――出撃!」






388 ◆WsBxU38iK2:2019/10/18(金) 02:11:50 ID:FJAsUGKg






──現在


ザシュッ!!


海未(先手必勝……攻めを絶やさない!)


海未(次の一撃、更に勢いを増した一撃で今度は羽根の大部分を刈り取る……!)


海未(そんな私の意志に呼応するかのように可変ノズルの一本が前方へ伸びてくる)

ヒュンッ

海未(私の背負う装置に接続されてるノズルの中で移動に使うのは3本だけ)

海未(残る1本、今正に私の腰の辺りに伸びてきたそれには移動用とは別のジョイントが付いている)

海未(そのノズルのジョイントが――――)

ガシャンッ!

海未(私の握る刀の柄の底部へと接続される!)


ギュゥゥッ! ドドドドドドドドドドッ!!

海未(装置からノズルを通して噴射される神鎮めの水が刀へと充填され、剣先から水が溢れ出す)


発狂ムスペル「……っ!」

海未(私の刀、ファントムエッジは元々刀身が半分しかない霊剣、半分から先は目には見えない霊的存在で構成されてる)

海未(つまりはその空白の切っ先から神鎮めの水を放出し、霊的エネルギーで形を保つことにより、巨大な水の刀身を作り上げることができるのです!)


グッ! 

海未(刃渡り数十メートル、水流逆巻く刀)

海未(狙いを外さぬため、残りのノズルを同時噴射して空中で姿勢を整える)

ドシャァァァァァァァッ! ドシャァァァァァァァッ!

海未(そして一気に――――)



海未「はああああああああっ!!」


ザンッ!!!!!!


海未(――振り下ろす!)


発狂ムスペル「ぐおおおおおおおおおおっ!?」


にこ「すごっ! 片羽根の4分の1くらいは持ってたんじゃない?」

海未「感心してる場合ではありません! にこも続いてください!」


にこ「よっし! じゃあ私は>>389で攻撃を…………」

389名無しさん@転載は禁止:2019/10/18(金) 05:46:52 ID:JROjYWSA
ラブにこビーム

390 ◆WsBxU38iK2:2019/10/19(土) 00:36:28 ID:w1uKtnOo
にこ「ラブにこビームで攻撃を……っと!」

バシュッ!! ヒュンッ!!


海未(装置から水を噴射して浮上、にこは蝶型ムスペルの頭上を取る)


にこ「どう? 巨大になりすぎて頭の上に炎を飛ばすのも一苦労なんじゃない?」

発狂ムスペル「何おおおおっ〜!」

ググググググッ

にこ「ま、飛ばす前にこっちが頭叩くけどっ」

カッ!!!!


人造ムスペル「あれは……」

海未「にこの放つビーム、神鎮め入りの強化版です!」


キュィィィィィィンッ!

海未(空中でにこが両手をハート型に合わせると、その中心にピンクの粒子が収束していく)

海未(ゴーストにも見られた『アーキタイプ:にこ』に共通する元型能力の光)

海未(ただ、今回はそれを単純にビームとして放つだけではない)

ドドドドドドドドドドッ!!

海未(背中からにこの真下を通って正面に回り込んだノズルが、下から上へ噴水のように水を吹き上げている)

海未(にこはその噴水を通過するような軌道でビームを放つ!)


にこ「ラブにこビーム!スプラッシュ!!」

ギュンッ!!

ドシャァッ!!!!


人造ムスペル「ビームが水柱で拡散されて……散弾みたいに広範囲に広がってます!」

ズババババババババッ!!

海未(蝶型ムスペルが炎を振りまくより速く、百以上に分散したビームがムスペルの体の各部を貫いていく)

発狂ムスペル「うぐっ……ぐっ……!」


海未(その攻撃を受けたムスペルは>>391)

391名無しさん@転載は禁止:2019/10/19(土) 06:58:56 ID:zC/APRBs
興奮してきた

392 ◆WsBxU38iK2:2019/10/20(日) 03:07:54 ID:haG1huUM
ドドドドドドドドドドッ!!

にこ「どうだ!」


発狂ムスペル「はぁ……はぁ……いいねぇ〜、興奮してきたよ〜!」

にこ「はぁ……?」

発狂ムスペル「うぉぉぉぉぉおおおおおおっ! たぁあああああああああっ!!」

ババババババババババババッ!!

海未(既に体が穴だらけになってるというのに、ムスペルは身をよじって炎を振りまく)


にこ「……っ! こいつまだっ!」

海未(神鎮め水で全身を濡らしてる私たちには問題ないですが、下の街の被害は計り知れない) 

海未(希をはじめ京都に潜入していた組が避難できているか確証も得られてないですし)

海未(このまま暴れさせてはまずい……ですが……)


にこ「あいつ痛みとか感じてないの!?」

海未「……でしょうね、各部を削ってもあまり効果は得られなそうです」

海未(私たちは水流ジェットで蝶型ムスペルの周囲を飛び回りながら会話を続ける)

バシュッ! バシュッ!

海未「完全に攻撃を止めさせるには丸ごと消滅させるしかないでしょう」

にこ「でもそんな広範囲攻撃ってある?」

人造ムスペル「城からまた高圧縮放水砲を撃ってもらうとか……」  

海未「いや、私たちの攻撃が当たったのは不意打ちで至近距離だったからという所が大きい」

海未「ドスケーブ城ほど離れたところからの砲撃は避けられる……というか実際に一撃目は避けられました」

にこ「そうねぇ」

にこ「あくまで細かい炎の集合体、その気になれば形だって変えられるだろうし……」

バシュッ! バシュッ!


人造ムスペル「なるほど……となると考えられる効果的な手は>>393

393名無しさん@転載は禁止:2019/10/20(日) 06:15:29 ID:OTEaeKR2
合体攻撃

394 ◆WsBxU38iK2:2019/10/21(月) 03:41:14 ID:trDn47ec
人造ムスペル「効果的な手は……」

バシュッ!


人造ムスペル「そうだ! 合体攻撃はどうです?」

海未「合体……?」

人造ムスペル「はい! 要は神鎮めの水をこのムスペルの体に一気にかかるくらい広げればいいんですよね」

人造ムスペル「だったら全員の技を合体させればできますよ!」

海未「いや……待ってください、私はあなたの能力すらまだあまり良くわかってないのですが、いきなり合体攻撃と言われても」

海未(というか真姫は結局教えてくれなかったですし)


人造ムスペル「大丈夫! 母さん譲りの頭脳を持ったこの私が主導しますので!」

にこ「……ってことらしいけど?」

海未「まぁ、他に良いアイディアも咄嗟に思いつきません、ここは乗りましょう」

にこ「オッケー」

人造ムスペル「ありがとうございます!」


人造ムスペル「では、私の能力、今回の作戦について手短にお伝えしますね――――」






バシュッ! バシュッ!


海未(人造ムスペルの作戦を聞いた私とにこはジェットを吹かして指定されたポイントへと向かう)

海未(もちろん蝶型ムスペルには悟られないよう、牽制と撹乱の攻撃は続けつつの移動)


タンッ

海未「ポイント到着」

海未(降り立ったのは京都市内のビルの屋上)

海未(ドスケーブ城からの一発目の放水から降り注いだ水がかかった建物で、蝶型ムスペルの攻撃の中なんとか形を保っている)


海未「私はここからタイミングを合わせて技を放てば良いのですね」

海未(にこの待機ポイントはまた別の建物の屋上、人造ムスペルはまた別の空中座標)

海未(私たちはここで待機し、ドスケーブ城の二砲撃目――超圧縮放水砲が再び放たれるタイミングで一斉に指定された技を放つ)

海未(人造ムスペルが言うにはそれで上手く行くらしい……とのこと)


海未「しかし、人造ムスペルの能力が>>395だったとは……正直驚きました」

395名無しさん@転載は禁止:2019/10/21(月) 06:06:01 ID:z5LLNYwQ
自我を保ったバーサーカー化

396 ◆WsBxU38iK2:2019/10/22(火) 04:26:49 ID:nLL5m8SM
海未「人造ムスペルの能力が自我を保ったバーサーカー化だったとは……正直驚きました」

海未「何か特殊なものかと思いきや脳筋系、真姫の語っていた有能さとはそういうタイプの有能さなのでしょうか……?」


人造ムスペル「はぁぁあああああああああっ!!」

コォォォォォォォォォッ!

海未(空中の人造ムスペルが気合を込めると彼女の周囲で赤いオーラが立ち上る)

人造ムスペル「よし!行けます!」


海未(私はその声が聞こえた瞬間に地面から適当な大きさの石を片手で3つ拾って頭上へ投げる)

ヒュンッ! ヒュンッ! ヒュンッ!

海未(城に残った穂乃果たちと予め決めていた、二発目を撃ってくれという合図)


キランッ!

ドッ!!!!!!!!!!!


人造ムスペル「よし!」


発狂ムスペル「なっ……またぁ〜?」


海未(おそらくいつでも撃てる用意をしていたのだろう、私の投石を確認してすぐに城から超圧縮放水砲が放たれた)

海未(こちらへ真っ直ぐ、蝶型のムスペルへ直撃するコース)

海未(本当に仕事が速くて助かりますね)



発狂ムスペル「だーかーらー! そんななのもう当たらないって!」

海未(そして想定どおり、発狂ムスペルは無数の光の粒子で出来た体を変形させて回避行動を取る)


海未(そこで……こちらの作戦!)


人造ムスペル「よーーっ!たぁっ!!」

海未(まぁ作戦というか……ゴリ押しというか、彼女が提案した作戦はバーサーカーらしい脳筋全開のものだった)

人造ムスペル「ふんっ!!」

海未(赤いオーラを纏った彼女、その振りかぶった拳が………“こちらへ向かってきた放水砲の超高圧水流”と真正面から激突する)

ゴッ!!!!


海未(水流はその主成分である神鎮めの方に意識が行きがちですが、単純に水流自体の破壊力だって規格外)

海未(高層ビル1つ程度なら火災を消すどころかビルごと吹き飛ばして文字通りの除去消火ができる代物だ)


海未(それを真正面から殴りつける人造ムスペルのバーサーカーモードの力も相当なもの)

海未(まぁとにかく、衝撃を加えられた超高圧水流は裂けるチーズのように先端から引き裂かれ)

海未(ランダムにうねる複数の水流となって蝶型ムスペルへと降り注ぐ形となった)

ズバッ! ズドドドドドドドドド!!

発狂ムスペル「んなっ……!?」


海未(けれど、それではまだ足りない)

海未(この時点ではあくまで発狂ムスペルが避けられない程度に水流が広がっただけ)

海未(やつの全体にくまなく降り注がせるためには範囲が足りないのです)

海未(ですから――――) 


海未「にこっ!」

にこ「いけるわっ!」


海未(予め構えていた私とにこが、同時に>>397)

397名無しさん@転載は禁止:2019/10/22(火) 06:15:49 ID:9kZucpbI
口に含んでいたのを撒き散らす

398 ◆WsBxU38iK2:2019/10/23(水) 04:26:23 ID:QwQ3Pr7.
海未(口に含んでいたものを撒き散らす)


海未「ふっ!」

にこ「ふっ!」

ブシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!

海未(眷属化状態の肺活量を限界まで駆使し吹き出された何かは、霧状となって勢いよく周囲に散布されていく)

海未(それは蝶型ムスペルの中心線を対称にして反対側のビルの上に立つにこ側からも同様)

海未(霧は蝶型ムスペルの左右両側から地面に沿ってその面積を急速に広げていく)

ドォォォォォォォォォォォゥッ!


発狂ムスペル「……っ!?」


海未(上からは無数の水流が、下には充満した霧が、やつにとっては未知の現象に上下から挟まれる形となる)

海未(だが、困惑してる時間も、対策を取る余裕も、発狂する隙さえやつには残っていない!)


ズドドドドドドドドド!!!!

発狂ムスペル「がっ……!!」


海未(まず、枝分かれした直高圧水流の槍が上からやつの体を貫いた)

海未(いくら形を自由に変えられても総質量は変わらない、変形で避けられる面積には限度がある)

海未(10本以上の水の槍がやつの体に太い穴を空け、体をバラバラに引き裂き、地面へと向かう)


海未(そして水の槍は勢いを落とさず地面へとその身を叩きつけ――――)

ズドンッ! ズドドドドドドドンッ!!

海未(地面を覆うように溜まっていた霧を一斉に空中へと舞い上がらせた!!)

ボフンッ!!!!

発狂ムスペル「なっ……!」

399 ◆WsBxU38iK2:2019/10/23(水) 04:26:47 ID:QwQ3Pr7.
 


人造ムスペル「やった! できました!」

海未「ぶっつけ本番ですが……どうやら上手く行ったようですね」


海未(京都市街にできあがったもの、それは巨大な“霧のドーム”だった)

海未(直高圧水流の槍で散り散りなった蝶型ムスペルの欠片たちを白い霧が包み込んでいる) 


発狂ムスペル「な……んで……炎たちを繋ぎ合わせられ……ないっ」

発狂ムスペル「消える……消えちゃうっ、どんどん炎が消えていく……!?」
 

海未(もちろんこの霧も神鎮めの効果があり、発生させたのも水由来の発明品)

海未(名前は『神鎮めチューインボム』と言うらしい)

海未(特殊な方法で神鎮め効果のある霧を凝縮加工したもので大きさは少し大きめの飴玉程度)

海未(口の中に入れてガムのように噛むと段々と凝縮さていた霧が溶け出し、勢いよく吹くことで口から大量の霧が散布される仕組み)

海未(まだ試作品だけど何かに使えたら……と渡されていたのが役に立ったみたいですね)


バシュッ! スタッ

にこ「様子はどう? 霧が濃くて目視だと分かりにくいけど……」

海未(役目を終えたにこが水流ジェットでこちらの屋上に合流する)


海未「霧は水そのものより効果が薄まるとは言え、一度水の槍で引き裂かれ粉々に散らばった体には堪えるはず」
 
海未「こうしてる間にも小さな欠片から消失していってると思われますが…………」

パッ 

海未(私は頭を上げ、空中に浮いたままの人造ムスペルへ声をかける)

海未「人造ムスペル! あなたの方で何か感じ取れたりしませんか?」

人造ムスペル「……はい! やはり母さんの読みどおりムスペル同士ならある程度反応が読み取れるみたいです!」

にこ「ほんと!」


人造ムスペル「霧の中で敵のムスペルの体は順調に消滅しています」

人造ムスペル「1つ、また1つ、そして今最後の1欠片が……>>400

400名無しさん@転載は禁止:2019/10/23(水) 06:01:16 ID:eHV0Fb52
喜びながら消滅

401 ◆WsBxU38iK2:2019/10/24(木) 02:31:54 ID:oUKC5VbI
人造ムスペル「喜びながら……消滅していきます」

にこ「喜びながら?」

人造ムスペル「はい、最後の一欠片が小さくなるにつれて声も小さくなってよく聞き取れませんが……何か言ってるような……」


発狂ムスペル「あひゃ、あひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!」






発狂ムスペル「あひゃひゃひゃっひゃひゃ……はぁ〜……ついに消えちゃうのか〜」

発狂ムスペル「もうちょっとこの世を引っ掻き回して遊びたかったけど、消えるってのも悪くないかなぁ〜」

スゥーーーー 

発狂ムスペル「……てかさぁ、スルトは本当にどうする気なんだろう」

発狂ムスペル「これだけ準備した計画も、侵攻の足がかりも、集めた仲間も全部パー!」

発狂ムスペル「うちが消えたところで元凶の狐が消えるわけじゃないし〜」

発狂ムスペル「ここまで来て姿を見せないなんて一体何を考えてるんだろうね〜」


発狂ムスペル「ま、どうでもいいことか…………」

発狂ムスペル「もう……どう……でも……」

シュボッ!






人造ムスペル「――――反応消失、どうやら完全に消滅したようです」

人造ムスペル「周囲に他の大きなムスペルの」

にこ「はぁ……何とかなったみたいね」


海未「いや、まだ安心はできません」

海未「2人はここに残って城との通信を試しつつ合流を図ってください」

海未「イフリートや蝶型ムスペルが消えた今ならジャミングされずに通じる可能性があります」

にこ「それは良いけど……海未は?」

海未「急ぎ金閣寺方面へ向かって希たちの安否を確認してきます」

海未「何かあればまた適宜!」

バシュッ!!



人造ムスペル「行っちゃい……ましたね」

にこ「よく動くのは良いことだけど、何でもかんでも1人でやろうとするのは心配だわ」

にこ「もうちょっと私たちを頼ってくれたって良いのに……」ヤレヤレ

にこ「人造ムスペル、念のために聞くけど本当に大型のムスペル反応は消えたのよね?」

人造ムスペル「はい、大型どころか通常のムスペルの反応ですら感じ取れません」

人造ムスペル「百鬼夜行と聞いていたのとは打って変わって静かなものです」

にこ「ふむ……」


にこ(大型ボスを倒したら小型まで1つ残らず消滅? そんなゲームみたいなことってあるのかしら)

にこ(怪しいところと言えば飛んでる最中にチラッと見えた街の中心部での大きな破壊の跡)

にこ(でも見た感じあそこも既に無人だったしなぁ)



にこ「本当、何も無ければいいけど」



─────────────────

京都上空

PM8:58〜9:05 新終末編・焔『234』了

402 ◆WsBxU38iK2:2019/10/24(木) 02:33:34 ID:oUKC5VbI
というわけでここまで

発狂を倒せたので一区切り 

新終末編・焔『235』に続く
かもしれない

403 ◆WsBxU38iK2:2019/10/25(金) 01:14:27 ID:BgLZv.fY
新終末編・焔『235』

─────────────────
──京都市内

PM9:06



海未(私の背負ってる装置の中には神鎮めの水が充填されているタンクが格納されている)

海未(タンクは神鎮めの水が元々入っていたシャワーヘッドを参考に作られたこともあり、大量の水を圧縮して小さな容器に詰め込む異能技術が使われている)

海未(なので水切れを気にしなくてもそこそこ長く使えるものではあるのですが……限りがあるのに違いはない)

バシュッ! タタンッ! バシュッ!!

海未(私は元来の几帳面な性格ゆえか、壁や屋上への着地走りとジェット噴射を組み合わせて水を節約しながら移動していた)


海未「しかし……」

海未(静かになった京都の街、走りながら見渡してみると何処にも生き物の姿が見えない)

海未(住民が避難してるのは分かりますが……他のムスペルの姿まで一切見かけないのは少し妙ですね)

海未(蝶型ムスペルの炎で分解された……?)

海未(いや、それだったら建物が分解されず残っている所には残っていてもおかしくないはず)


海未(それにそういう建物に限って……)

タンッ

海未「また同じ痕跡……」

海未(何か太いしめ縄のようなもので薙ぎ払われたような破壊の跡が残っている)

海未(分解とも、普通のムスペルのような炎の攻撃とも違う痕跡)

海未(希たちの技なのか、第三者のものなか、どちらにせよ広範囲に広がりすぎている……) 


海未(少し調べていくか、先を急ぐか)

海未(ここは……>>403)

404 ◆WsBxU38iK2:2019/10/25(金) 01:14:40 ID:BgLZv.fY
ミス↓

405名無しさん@転載は禁止:2019/10/25(金) 05:47:47 ID:rXo8uoQY
先を急ぐ

406 ◆WsBxU38iK2:2019/10/26(土) 01:06:48 ID:E7n/Jzjo
海未(気になりますが……今は希たちの安否確認が優先、先を急じましょう)  

バシュッ! タタタンッ!








ザッ


九尾「……あらら、行ってしまったか」

九尾「もうちょっと近くに来たら挨拶でもしよう思ってたけど」


九尾「まぁ私も今は戦いたい気分ではないし、賢い選択というやつだな」


九尾(発狂ムスペルを狩った少女が飛び去る後ろ姿を見つつ、私はビルの影から通りへと出る)

タンッ

九尾(まずは足、それから着物を身に纏った体、それらに続いてヌルリと黒光りする太くて長い一本の触手が月明かりに照らされた)

ズズッ ズズズッ

九尾(この触手は9つある尻尾の1つと融合した新たな尻尾の1つ、触手尾)

九尾(何を隠そう“あの場所にいた触手”を狩るついでにこの身に取り込んで得たものだ)

九尾(鞭ように自由自在に動かすことができるわけで――――)

ヒュンッ!


九尾「ふんっ、これで最後か」

九尾(ビルの影から引き出した触手尾の先には生命エネルギーを吸われ干からびたムスペルの死骸が絡め取られている)

九尾(私はこうして街に溢れていたムスペルの残党を菓子代わりに食らいつつ散策していたというわけ)

九尾(それでも最早街にムスペルは残っておらぬようだ、全部食い尽くしてしまったか)


九尾「やれやれ」

ブンッ!

九尾(抜け殻になったムスペルを放り投げ、触手尾を邪魔にならない長さまで縮小させる)

シュルルルルッ

九尾「腹もそこそこ膨れたし、このまま散策を続けるとしようか」

九尾「その後は……>>407

407名無しさん@転載は禁止:2019/10/26(土) 02:01:54 ID:eyzsQ4gc
私の友を復活させて回る

408 ◆WsBxU38iK2:2019/10/27(日) 02:54:01 ID:2LOoaWjk
九尾「私の友を復活させて回るとしよう」

九尾「懐かしいなぁ、あやつか、あやつか、誰から復活させるか……くくくっ、迷うのもまた一興」


ザッ

九尾「なぁに、千年も待てたのだ、焦らずゆるりと現世を楽しんで行こう」







──金閣寺付近


タタタタッ タンッ! 

希「はぁ……はぁ……」

希(さすがに全力で走り続けると少しは息が上がるもんやな)

希(けどおかげで素早く仮拠点近くまで戻ってくることができた)

タタンッ 

希(さっきまで頭上から降り注いでいた発狂ムスペルの炎も今はない)

希(たぶん城から来た援軍が上手いことやってくれたんやろう)

希(さすがに分解の炎が降り注ぐあの場でゆっくり確認する余裕はなかったから誰か分からんけど、会ったらちゃんとお礼言わないとなぁ)

タタタタッ


希(って、今はこっちに集中集中、もう金閣寺は目の前や)

タンッ

希「おーい! 梨子ちゃーん! ツバサさーん! みんなー!」

希(うちは走りながらブンブンと手を振って叫ぶ)

希(見た感じ周囲に敵はいないし気付かれることもないやろう)


かもめ「……希さん? 希さん!」

希「おっ!」

希(そんなうちの声に反応したのは待機メンバーではなく、かもめちゃんをはじめとしたワープポイント調査班の面々やった)

希(4人全員無事なまま、金閣寺の見える場所に揃って立っている)

希(おそらくうちより先に戻ってこれていたんやろう)

希(うちはその4人の前に着地する)


希「……よっと」ザッ


かもめ「無事だったのね!」

希「何とかな、そっちこそ無事で良かった」

かもめ「ええ、結構危ない橋を渡ったけど海未さんと穂乃果さんの能力で上手く逃げてこれたの」

かもめ「障害物のない地中を直線距離で移動できたから一番速く着けたみたい」

SID穂乃果「頑張って泳いだからね!」ドヤッ

SID海未「はいはい、よく頑張りました」


希(胸を張る穂乃果ちゃんと素直に褒める海未ちゃん)

希(その後ろから不安げな顔で熱狂ムスペルが出てくる)

熱狂ムスペル「あの、希、発狂は……」

希「詳しいことは分からん、でも倒されたはずやと思う」

熱狂ムスペル「……! そう……」

希(熱狂はそれだけ言うとまたうちから離れていく)


希「それでかもめちゃん、梨子ちゃんたちは?」

かもめ「彼女たちなら>>409

409名無しさん@転載は禁止:2019/10/27(日) 05:44:46 ID:m7B.SjaE
わからない

410 ◆WsBxU38iK2:2019/10/28(月) 02:52:04 ID:HDa68qD.
かもめ「……分からない」

希「分からないって……どういうことなん?」

かもめ「いないのよ」

希「え?」

かもめ「私たちが戻ってきた時には仮拠点に待機班の姿はなかった」

希「なんやって!」


かもめ「もちろん私たちも不審に思って周囲の捜索はした、けど何処にも見当たらないの」

かもめ「仮拠点を移動するという連絡は来てないし……そもそもさっきまで通信はジャミングされてたし」

かもめ「林の中を探してみても書き置きらしき痕跡さえ見つからない」


かもめ「念の為に穂乃果さんに犬に変幻して匂いを辿ってもらったけど……」

SID穂乃果「ダメなんだよ、どうしても仮拠点周辺から出ると匂いが途切れちゃう」

SID穂乃果「意図的に消したのか、消えてしまったのか、移動手段が徒歩じゃない何かなのか」

SID穂乃果「分かんないけど匂いで追跡するのは難しいかな〜」

かもめ「ということみたい」


希「もう通信系のジャミングは解けてるはずや、そっちは?」

SID海未「アドレスを知ってる人に先程から定期的にかけ続けてますが音信不通のままですね、出る気配はありません」

希「そうか……」


かもめ「ただ、私たちが着いてからまだ時間はそう経っていない、穂乃果さんの鼻以外はくまなく探索したとは言えない」

かもめ「もしかしたら見つけてない痕跡が残ってるかも」

希「と言うと?」

かもめ「仲間に伝えたいけど敵にバレてはいけない、だから残してるなら工夫の必要があったはず」

かもめ「外部の人間には分からないけど、身内に近い人間――――希さんのような人なら気付ける痕跡」

かもめ「私が客観的な視点で定石通りに探しても見つからない、仲間内で通じる暗号的なもの」

かもめ「そう言ったものが実は残ってるかもしれない」


希「なるほど……よし、探してみる!」

タタッ ダンッ!

希(うちは数歩助走をした後に跳躍し、梨子ちゃんたちが待機していた林の中へと入る)

ヒューーッ

スタッ


希(ここにいたのは梨子ちゃん、コトーリさん、マザー、ハグカナーン、別世界穂乃果ちゃん)

希(ツバサさん、英玲奈さん、吸血鬼穂乃果、モブ)

希(この中でうちに分かる手がかりを残しそうなのはA-RISE組、梨子ちゃん……スピリチュアルマザーもそういうことしそうやな)

希(一応穂乃果ちゃんも平行世界のうちを知ってるはずやからやろうと思えばできるはず)


希「よし……」

希(うちは全神経を集中させ、現場に残った僅かな気さえ感じ取る姿勢を取る)

ググググッ

希(何か、何か手がかりは……>>411)

411名無しさん@転載は禁止:2019/10/28(月) 03:26:22 ID:loFZEAN.
乳語翻訳

412 ◆WsBxU38iK2:2019/10/29(火) 04:00:31 ID:N4BtINo2
希「…………あった!」


希(仮拠点の地面の一角、僅かに土が盛りあがってる場所に梨子ちゃんを含め数名の気が付着してるのを発見した)

希(膨らみは円形、大きさは手のひらくらい、高さはそれほどない)

希(傍から見れば土が寄せられて自然にできたただの段差、気の痕跡が残ってるのも待機してた場所なら不自然じゃないし)

希(これが特に目を引くものとは思わないだろう)


希(そう、うち以外には――――)

タタタタッ

ザッ

希「やっぱり……!」

希(急いで駆け寄って確信する、これはうちに向けたメッセージ)

希「乳語で書かれたメッセージや!」


かもめ「乳語……?」

希(後から追いかけてきたかもめちゃんが聞き慣れないであろう単語に首を傾げる) 

希「ほら、よーく見ると分かるけど、ここの地面が乳の形に盛り上がってるやろ?」

かもめ「いや、そうは見えないけど……?」

希「まぁ素人にはそうやろな、でも数々の乳をワシワシしてきたうちには分かるんや」

希「そして乳をワシワシすることでうちは乳の形や張りから意思を読み取ることができる、これを利用したのが乳語ってわけ」

かもめ「うん……うん……?」


SID穂乃果「つまり希ちゃんがここに手を当てれば手がかりが分かるってわけだね!」

希「その通り! さすが穂乃果ちゃん!」

かもめ「理解が追いつかないのは私だけなのかな……」

SID海未「諦めて納得しましょう」


希「じゃあやるよ……乳語翻訳!」

バッ!

希(うちは宣言すると手をなだらかに膨らむ地面へと当てた)

希(形を崩さないように優しく、ありのままを包み込むように手のひらをフィットさせる)

希(そしてゆっくりと――――揉む!)

ワシッ  ワシッ



希「……来た!」

キィーンッ!

希(……分かる、伝わってくる!)

希(この乳に刻まれた乳語が手のひらを通して解読できる……!)


SID海未「どうです?」


希「……そうやな、どうやら梨子ちゃんたちは不測の事態に見舞われたらしい」

希「残されてる言葉は>>413

413名無しさん@転載は禁止:2019/10/29(火) 06:19:14 ID:RGXtVZVI
お花を摘みに行ってきます

414 ◆WsBxU38iK2:2019/10/30(水) 01:07:51 ID:w5f24h7I
希「『お花を摘みに行ってきます』」

SID海未「……それだけ?」

希「うん、これが乳語翻訳で解読できる全文や、他には何も書いてないで」

SID海未「お花……ですか」


SID穂乃果「ねぇー、なんで急に花が欲しくなったんだろー?」

かもめ「バカね、お花を摘みに行くってのは大抵トイレに行く隠語よ、今時真面目に使う人もいないだろうけど」

SID穂乃果「なるほど」ポンッ

SID海未「でもお手洗いにしたって不自然です」

SID海未「あれだけの人数で一気に行く必要はないですし、何より痕跡がない」

SID海未「何処か近くのお手洗いに行ったのなら穂乃果の鼻で辿れるはずです」

希「せやなぁ……」

希「普通のトイレなら帰ってこないのはおかしい、連絡がつかないのもおかしい」

希「手がかりは見つけたけど分からんことだらけやで、はぁー」


希(うちはため息をついて大げさに首を振る)

希(……と、同時に空から何かが振ってきた)


シュンッ!!


ダンッ!!!!

希「おおおおっ!?」

希(うちの目の前に水しぶきをあげながら着地したのは謎の装置を背負った全身びしょ濡れの――――)

希「海未ちゃん!?」

海未「希! 無事でしたか!」


海未「かもめに……SIDの二人もお久しぶりです」

SID穂乃果「おー! なんかカッコいい着地!」

SID海未「その様子だと海未は浮遊ドスケーブ城から駆け付けた感じですね」

SID海未「ということは空のムスペルを倒したのも…………」

海未「私、それからにこと新しい仲間の力です」

SID海未「ほう」


海未「その報告もしたいのですが……希、他の人たちは?」

キョロキョロ

海未「ここが金閣寺付近の仮拠点で会っているのですよね」

希「うん、それについてうちの方からも報告と相談したいことがあるんや」

海未「……何か予定外の事が起こったみたいですね」


希「そうやな、まず最初に――――」







希(うちは手短に発狂ムスペルの話と梨子ちゃんたちの消失の話をした)

希(それに加えかもめちゃんがワープポイント付近の話を、海未ちゃんが空での戦いの話をする)

希(幸いジャミングが消えてMLINEネットワークが復旧していたので詳細はそっちでデータ共有、おかげで口頭で伝えることは最小限で済んだ)


希(全員が全てを話し終えたところでまた海未ちゃんが口を開く)


海未「そうです、これも共有しておかないとダメですね」

海未「今MLINEを確認した際にアップロードされていた情報なのですが、さきほど浮遊塔がゲートへ接近したようです」

希「塔というと……九州組?」

海未「はい、元々浮遊ドスケーブ城の京都突入とタイミングを合わせて侵攻する予定でしたから」


海未「その九州組からの報告ですが、どうやら>>415

415名無しさん@転載は禁止:2019/10/30(水) 06:27:02 ID:3/wBYnb6
ゲートが増えた

416 ◆WsBxU38iK2:2019/10/31(木) 04:28:44 ID:EuyhpdRA
海未「どうやらゲートが増えたと」

希「増えた!?」

海未「添付されてる画像を見てください」

希「ええと……ほんとだ!」


海未「元々本来のムスペルゲートがあったのは九州中央部、熊本県の阿蘇山がある辺りです」

海未「事前の情報によればゲートを守護していたムスペルの姿は消え、ゲーム周辺は静かなものでした」

海未「浮遊塔はゲートを視認できる距離で待機を続け、こちらとタイミングを合わせ突撃した」


かもめ「その結果……ゲートが増殖したと?」

海未「はい、浮遊塔がゲート――――そうですね、区別するためにこれをメインゲート、新たに出現したのをサブゲートとしましょう」

海未「浮遊塔がメインゲートに接近した瞬間、メインゲートを囲うように円形に複数のサブゲートが出現しました」

海未「新たに現れたサブゲートは合計8つ」

希「そんなに……!」

海未「形は全て長方形、材質は見た目石に近く、中央部に縦線の入った巨大な扉を模してるようです」

かもめ「そうね、この画像を見る限り大体そんな感じの……ストーンヘンジをそのまま巨大にしたような配置かな」


SID穂乃果「塔はその円の外?中?」

希「画像を撮影した位置的には囲まれてるっぽいな」スッ スッ

SID穂乃果「えぇ!」


SID海未「つまりメインゲートの周囲の警備を薄くしていたのは浮遊塔を誘い込むための罠だった……?」

海未「まだそうとは言い切れませんが、敵が何かを狙っていたのは間違いないでしょう」

海未「とにかく今は――――」

ピピッ

海未「……!」

希「MLINEの更新が来た!」


希「なんやって……!? サブゲートの1つが開いて>>417

417名無しさん@転載は禁止:2019/10/31(木) 05:55:11 ID:463mT1DU
強そうな敵が出てきた

418 ◆WsBxU38iK2:2019/11/01(金) 02:34:45 ID:qSKKD9AM
希「サブゲートの1つが開いて強そうな敵が出てきた……!」

SID穂乃果「どどどどどどうしよう!?」

かもめ「私たちが焦ったってどうしようもないよ」

SID穂乃果「そうだけどー!」


かもめ「この情報自体リアルタイムじゃない、浮遊塔は浮遊塔でこっちに負けない戦力を整えてるはずでしょ」

かもめ「仮にも敵の本丸近くに飛び込もうって部隊なんだから」

海未「誘い込まれた形なのは心配ですが……どうしようもないのはその通りですね」

希「も〜、梨子ちゃんたちが何処に消えたかだって分かってへんのに」


海未「ともかく一度ドスケーブ城へ戻りましょう」  

海未「この場であるか分からない手がかりを探し続けるより、城の力を借りたほうが効率よく探索できるはず」

希「一度戻る……? どんな目にあってるか分からんのに放っておいて?」

海未「そうです」


希「むぅ…………」


かもめ「納得できない……って顔してるね」

希「だってそれは……」

かもめ「そうね、海未さんは言いにくいだろうから雇われの私が言うけど、通信が取れなくなった以上彼女たちを待つことはできない」

かもめ「一刻を争う状況で足止めされてる場合じゃないの」

希「でもっ」

かもめ「探すにしたって匂いも物理的痕跡も乳語とやらもダメだったでしょ? だったら機材と人手を追加して本格的にやるしかない」

かもめ「それにムスペルと戦って体力だって削られてるはず、探しに行った希さんまで不慮の事態で見失ったらそれこそ二次遭難よ」


希「んんーーーー、むぅーーーー」

海未「希……」


希「…………分かった、いや分かった」

希「うちとしては今すぐ探しに行きたいけどそっちの方が懸命やもんな、うん」

海未「ありがとうございます希、かもめも」

かもめ「別に」


海未「ではこの場にいる、私、希、かもめ、SID穂乃果、SID海未、熱狂ムスペルの6名で城へと帰還します」

希「うんっ」

かもめ「了解」

SID穂乃果「はーいっ」

SID海未「分かりました」

熱狂ムスペル「私まだ連れ回されるんだ……はぁ」


海未「各自離れないように! しっかりついてきてください!」


─────────────────

京都市内〜金閣寺周辺

PM9:06〜9:15 新終末編・焔『235』了

419 ◆WsBxU38iK2:2019/11/01(金) 02:40:47 ID:qSKKD9AM
というわけでここまで

色々動いてる気がしますが京都を乗り越えムスペル編も終盤に近づいてる……はず
そしていつの間にか4周年を過ぎたらしい 
どこまで行くのやら

新終末編・焔『236』に続く
かもしれない

420名無しさん@転載は禁止:2019/11/01(金) 04:34:57 ID:LqtStgqI
四周年おつ
キャラまとめたらだいぶ増えてそう

421 ◆WsBxU38iK2:2019/11/02(土) 02:07:33 ID:NHjFAaCY
新終末編・焔『236』

─────────────────
──炎の穴蔵

PM??


カツンッ  カツンッ


??(洞窟、洞穴、石室、岩屋……どういう呼び方をするかは自由だが、要は岩に囲まれたシンプルにバカでかい円柱状の空間だ)

??(どのくらいバカでかいかと言うと……そうだな、高さはこの空間の天上に穴を空けて外からの光のみで覗いたら底が暗闇で何も見えないほど)

??(直径は反対の壁際のやつと肉声で会話するのに大声で叫んで聞こえるかどうかほどの……って分かりにくいか、まぁとにかくでかいんだよ)

カツンッ  カツンッ

??(ならどうして密室となり外の光の入らない場所で、私が気楽に階段を降りられているのか、それは照明となる火の玉があらゆるところに浮いてるからに他ならない)

??(いや……今はこんなものが無くても、足元から放たれる光だけで十分明るい)

??(なぜなら空間の底に我が主たるお方が微動だにせず鎮座しているから)

カツンッ


??「やぁ、スルト様、ご気分はどうだい?」

スルト「…………」


??(私の声だけが穴蔵の中を反響する)

??(他の者ならともかく、スルトがこの距離で聞き逃す……ということはないだろう)

??(単に面倒で無視しているのか、何か考えがあって沈黙してるのか……)


??「やれやれ、せっかく落ち着ける薄暗い穴蔵に引きこもってると言うのに、自身の炎でこれだけ照らされてしまうのでは意味がないですねぇ」

??「まぁ……本当に貴方様が落ち着ける場所なんてどこの世界にも有りはしないなかもしれませんが」

カツンッ カツンッ

??(返事のないまま、私は1人で喋りながら壁に沿って作られた横幅の狭い階段を降りていく)

??(円柱の外周に沿ってぐるりぐるりと円を描き、やがては穴蔵の底へと降りる階段だ)


??「あれ? スルト様、聞こえてないのですかー?」

スルト「…………」

??(ふふっ、もし他の者がこの場にいたら私語を慎めと叱咤を受けたかもしれないな)

??(どうも同胞たちはこの場所を神聖視したがる傾向にあった)

??(私に言わせれば岩をくり抜いて作られた単なる穴蔵だ、幻想的に浮かぶ炎も、壁に描かれた紋様も、何もかもつまらない装飾に過ぎない)

??(全く……全くもってくだらない……)


??(主だの、領土拡大だの、アースガルズへの復讐だの、ムスペルの悲願だの)

??(そんなことを言って戦いに出た同胞は皆消えてしまった……)

??(こうして私が主に無礼を働いていたところで咎める者さえいない)


??「……反応なしですか」

??「とりあえず報告しておしますが、予定通り最終防衛機構の発動を確認いたしました」

??「ゲートの守護はしなくてよろしいとのことですが、今後の方針を――――」


スルト「……よい」

??「……?」ピタッ


スルト「今更取り繕わなくて良いと言っている、貴様の腹黒さなど当の昔に知っている」

??「…………」


??(スルトが顔を上げ、私をじっと見つめた)

??(その巨大な瞳に私の体――>>422のような体が映り込む)

422名無しさん@転載は禁止:2019/11/02(土) 06:20:18 ID:SodkQK.I
スライム

423 ◆WsBxU38iK2:2019/11/04(月) 03:44:43 ID:VAQBONFA
??(スライムのような体が映り込む)

??(巨人のような屈強な肉体を持たない粘性の不確かな体)

??(これを見るたび自分はどこまで行ってもやつらの被造物なのだと言うことを思い出し嫌になる)

??(どんなに人型に姿を変え、申し訳程度の服を羽織ったところで、その奥にあるものまで隠し通すことはできない)

??(腹の奥でグツグツと煮立つ黒い感情さえ――――)


カツンッ

腹黒ムスペル「……良いですね、腹黒、名は体を表すってやつ、私にはぴったりの言葉だ」


腹黒ムスペル「じゃあ腹を割って話すけど、結局ゲートの守護は放棄したままでいいのか?」

スルト「構わん、破られたらそれまでのことだ」

腹黒ムスペル「構わんって……あれ破られたら地上世界へ行く道無くなるんだが」

スルト「…………」

腹黒ムスペル「援軍をこれ以上呼べなくなるって意味だ! 分かるか!?」

スルト「私には関係のない話だな」

腹黒ムスペル「……っ!」


腹黒ムスペル(確かに此処――炎の穴蔵はムスペルヘイム上には存在しない独立次元空間だ)

腹黒ムスペル(空間展開だってスルトが地上側に来た後に行ったもの)

腹黒ムスペル(つまり穴蔵を消して此処を出ればすぐ地上、ゲートが閉じようが此処にいるスルトには関係ない)


腹黒ムスペル(だがそれはスルトが孤立無援で敵に囲まれることに他ならない)

腹黒ムスペル(まぁ……こいつはそれを承知でのたまっているんだろうが……)



スルト「それに貴様の言う最終防衛機構も働いているのだろう?」

腹黒ムスペル「そう……だが」


腹黒ムスペル(最終防衛機構――ゲートが破壊されそうになった際に自動でサブゲートを展開、中からガーディアンを出撃させて敵を撃退する機構)

腹黒ムスペル(今出撃している第一ガーディアンは>>424)

424名無しさん@転載は禁止:2019/11/04(月) 07:51:05 ID:4WSCIUaM
大量のにこにこムスペル

425 ◆WsBxU38iK2:2019/11/05(火) 02:42:36 ID:VZSM6wSo
腹黒ムスペル(今出撃してる第一ガーディアンは大量のにこにこムスペル、区分で言えば準中型迎撃特化ムスペルだ)

腹黒ムスペル(大きさは京都戦線に多数配備された完全球体の“まるまるムスペル”より僅かに劣るものの、迎撃特化の兵器として調整された戦闘能力は伊達じゃない)

腹黒ムスペル(本体である炎球から両サイドに伸びる計2本の長い尻尾が、飛行、捕縛、打撃、全てをこなす万能さを発揮する)

腹黒ムスペル(基本的に1体ではなく群れで行動するためそういう点でも厄介だろう)


腹黒ムスペル(まぁ……まるまるムスペル、にこにこムスペル、他のサブゲートに配備されてるガーディアンに共通して言えるのは知能が低いということ)

腹黒ムスペル(その分戦闘能力にスペックが割かれている兵器よりの個体だから問題はないのだが……)


腹黒ムスペル(最強格の使徒を退けたあいつら相手にどこまで足止めできるのやら―――)

腹黒ムスペル(第二から第八までのサブゲートガーディアンが待ち構えてるとは言え不安は残る)


カツンッ

腹黒ムスペル「なぁスルト、お前は本当にどうする気なんだ?」

スルト「…………」


カツンッ カツンッ


腹黒ムスペル(話してる間に、私は階段をかなりか下層のほうまで降りていた)

腹黒ムスペル(私に対し沈黙を続けるスルトと顔の近く、直接目の合いそうな高さまで)


腹黒ムスペル(そこまで来て、スルトは再び瞼を開いてこちらを見据える)


スルト「私から言えることは多くない、私がどうしようと貴様の知ることではない」

スルト「もちろん貴様が何かをするのも貴様の勝手だ」

腹黒ムスペル「…………」



スルト「……ただ、1つだけ言うとするならば>>426

426名無しさん@転載は禁止:2019/11/06(水) 06:52:36 ID:pG8F.0gs
「母」はすでにこの世界にいる

427 ◆WsBxU38iK2:2019/11/07(木) 03:27:31 ID:wmQ5x3hM
スルト「『母』はすでにこの世界にいる」

腹黒ムスペル「……なんだと?」


腹黒ムスペル(スルトが発したのは聞き逃せない言葉だった)

腹黒ムスペル(母……? 我らがムスペルの偉大なる母のことか……?)


腹黒ムスペル(いや、そんなはずはない)

腹黒ムスペル(確かに京都侵攻作戦は母復活のためのものだった)

腹黒ムスペル(神戸からの京都龍脈の調律、ワープポイントを開いての餌の供給、コアとなる殺生石の奪取、全てはその作戦のため)

腹黒ムスペル(だがそれは失敗した、失敗したのだ)


腹黒ムスペル(母が既に存在するなどそんなことは――――)


カツンッ

腹黒ムスペル「……あるのか?」

スルト「…………」

腹黒ムスペル「もう口を聞く気も無しか」

腹黒ムスペル(スルトは俯いたままこちらを見ようとはしない)


腹黒ムスペル「では言われた通り勝手に――――」

キィーンッ!

腹黒ムスペル「……っ!」バッ!

腹黒ムスペル(私が思わず振り向き頭上を見上げたのは虫の知らせ……などではない、向こうの戦況に変化があったことを自動的に感じ取ったからだ)

腹黒ムスペル(まずいな、やはり第一ガーディアンが劣勢に立たせられている)

腹黒ムスペル(にこにこムスペルの大半が敵に落とされている、第二ガーディアンの出番も近いか……)


グッ

腹黒ムスペル「はぁ……分かったよ、ここでお前と口論していたところで無駄だということがな」

腹黒ムスペル「私は私で勝手に>>428させてもらう」

428名無しさん@転載は禁止:2019/11/07(木) 05:55:15 ID:eBLXT4Ew
攻撃

429 ◆WsBxU38iK2:2019/11/08(金) 02:21:02 ID:v5SaEh6E
腹黒ムスペル「私は私で勝手に攻撃させてもらう」

腹黒ムスペル「これ以上静観してるのはうんざりだ」


腹黒ムスペル「残るガーディアンと共に……最後のムスペル幹部として敵を打ち倒す!」

シュンッ!









スルト「……消えたか」


スルト(まぁ良い、やつがどうなろうと、ゲートがどうなろうと知ったことではない)

スルト(何故なら母は既に顕現しているのだから)


スルト(分かる……私には分かる……)

スルト(こうして穴蔵の底でうずくまっていたとしても体中でヒシヒシと感じられる)

スルト(これが母の胎動、母の目覚めの波動)


スルト(全てはその前座に過ぎない)

スルト(ラグナロク、地上への侵攻、選ばれし人の戦士との交戦、そしてムスペルの滅び、全ては戦いを通して母を成長させ、覚醒へと誘うための行為だったのだ)

スルト(戦士たちが残りしムスペルを打ち倒し、私の元まで辿り着いた時――すなわちラグナロクの終焉で、母は完全に目覚めることとなる)

スルト(ああ、私の眼前にその姿が現れる…………その光景を想像するだけで夢なようだ)


スルト「震える、震えるぞ!」

ズズズズズズズズズズズズ……!

スルト(武者震いで穴蔵の岩壁が激しく振動し、宙に浮かぶ炎が揺らめく)


スルト「ああ……ああ……! 歓喜の瞬間は近づいている!」

スルト「長らく待った! 永劫の時間を待った! その時がすぐそこに……!」


スルト(そして私は、歓喜に打ち震えながら求めて止まない母の名を呟いた)


スルト「我がムスペルの偉大なる母として目覚めしもの、>>430よ!!」

430名無しさん@転載は禁止:2019/11/08(金) 06:33:52 ID:fELT9mUI
穂乃火

431 ◆WsBxU38iK2:2019/11/09(土) 00:23:18 ID:5A65FsS2
スルト「――――穂乃火よ!!」

ドンッ!!







──
────
────────


??「穂乃火よ……」

??「ほ……のかよ……」

??「…………のか…………」


────────
────
──


──浮遊ドスケーブ城・作戦指揮室

PM9:20


ことり「穂乃果ちゃんっ!」

心ノ穂乃果「……はっ!」バッ!


心ノ穂乃果(顔を上げると心配そうな表情のことりちゃんが私の顔をのぞき込んでいた)

心ノ穂乃果(あれ……おかしいな、いつの間にか寝ていたのかな……)


心ノ穂乃果「ごめん、ちょっとウトウトしてて……疲れかな?」

ことり「それなら良いけど……目を離してたら急に気を失ったみたいに椅子に座ったまま寝てるんだからぁ、心配しちゃったよ」  

心ノ穂乃果「あはははは、ほんとごめん」
 

心ノ穂乃果(寝ていた? ということはアレは夢だった……?)

心ノ穂乃果(どこか遠くから、誰かに名前を呼ばれていたような……ハッキリと思い出せないな)

心ノ穂乃果(いや、そんな夢のことより今は――――)


心ノ穂乃果「ことりちゃん、京都潜入組の捜索はもう始めてる?」

ことり「あ、そこまでは聞いてたんだ」

心ノ穂乃果「海未ちゃんから連絡もらってロトーチカさんが説明してた……やつだよね?」

ことり「うん、伝えられてから城の機材やメンバーそれぞれで探し始めたけどまだ見つかってないみたい」

ことり「まだ5分とかそんなものだから引っかからないのかもしれないけど……でも一刻を争う時だから……」

心ノ穂乃果「そっか……」


心ノ穂乃果(見ると作戦指揮室の中も慌ただしく皆が動いている)

ザワザワ ザワザワ

ダタタタタタッ ダダダダダッ

心ノ穂乃果(真っ先に反応が出そうな機材モニターの前で頭を抱えてる人を見るに、潜入組が持ってたスマホなんかの電波を発見する作戦は失敗したんだろう)

心ノ穂乃果(それで分かったのならことりちゃんがすぐに報告してきたはずだ)

432 ◆WsBxU38iK2:2019/11/09(土) 00:23:41 ID:5A65FsS2



心ノ穂乃果「……ってことは異能頼りかな」

ことり「そうだね、何か人探しに使えそうな能力、それも距離や条件なんかに縛られない強力なもの」

ことり「……んん〜、そんな都合の良いものあったか――――」

魔王「あるだろ」

ことり「――ぬぁっ!?」
 
心ノ穂乃果「わっ! コンパクトが喋った!」


ことり「ちょちょちょっと! 勝手に出てこないでよ! それにこんな距離で喋ったら認識阻害術式の効果も弱いって!」

魔王「ことりちゃんが忘れてるのが悪い、それに私の正体が分かってるのはあなたと海未ちゃんと人神だけ」

魔王「この穂乃果の目には“喋るコンパクトと会話してる変人”程度にしか映らんだろうさ」

ことり「それはそれで困るんだけど……」


心ノ穂乃果「…………?」

心ノ穂乃果(急にことりちゃんが自分のポケットから出てきたコンパクトと会話しだしたぞ?)

心ノ穂乃果(でもまぁ……そういうことももあるか!)


心ノ穂乃果「で、喋るコンパクトさん、心当たりがあるの?」


魔王「ほら、術式のおかげで突っ込まれないだろ?」

ことり「いやほんと危ないから、特に穂乃果ちゃんとあなたが近づくのだけは避けたいから、今後は私に断ってから出てきてね」

魔王「はいはい」

魔王「海未もうみかもいない今、隠れみのはお前だけなんだ、追い出されるようなことはしないさ」

ことり「ならよろしい」



魔王「それで心当たりだが……私からすればむしろあなたが何で忘れてるのかって話だよ」
 
ことり「私?」

魔王「そっ、ことりちゃんにはあるじゃないか、砂漠に囚われた私を見つけ出した能力が――――」

ことり「あ…………あぁぁぁぁっ! あった!」


心ノ穂乃果「どうしたの?」

ことり「あった! あったんだよ穂乃果ちゃん! 皆を探す能力!」

心ノ穂乃果「ほんと!?」

ことり「行くよ、ぴゅあぴゅあマカロン!」ポンッ!

心ノ穂乃果「おおっ!」


心ノ穂乃果(久々に見た気がすることりちゃんのマカロン技)

心ノ穂乃果(ことりちゃんは手のひらの上にマカロンを生み出すと、例のガトリング砲には詰めず直接近くの床へ放り投げた)

ことり「よっ」ポイッ

ボワンッ!

心ノ穂乃果(床に落ちたマカロンは割れてカラフルな煙を噴出、そして煙の中から現れたのは……鏡?)

 
ことり「じゃーん! Search Miller Macaron!」

ことり「これで探したい対象を鏡に写し出すことができるのです! 距離も時間も関係ない、次元の間だってなんのその!」

心ノ穂乃果「すごい! こんなものが……!」


ことり「では早速」スッ

ことり「SearchMillerMacaron、お願い、消えた人たちの場所を教えて……!」

バッ!

心ノ穂乃果(そう言うとことりちゃんは全身を写せるほど大きい鏡の前に立って手をかざす) 

心ノ穂乃果(すると鏡の表面が段々と歪み、ここではないどこかを写し始める……)

グニュゥゥゥゥゥッ 

ことり「……出た! この場所は>>433

433名無しさん@転載は禁止:2019/11/09(土) 04:38:41 ID:c2bxnRIs
…別の時空間?

434 ◆WsBxU38iK2:2019/11/10(日) 03:08:28 ID:4bNPv3nw
ことり「……別の時空間?」

心ノ穂乃果「別の?」

ことり「うん、この鏡面の揺れを見るに距離は遠い……いや、遠いというより物理的には断絶されてる感じ」

魔王「私の時と同じだな」

ことり「こことは違う別の世界なのは確か、鏡越しに見るだけだと詳しいことは分かりそうにないな……」

魔王「ならば聞いたらどうだ?」

ことり「聞く?」

魔王「あの時も私に鏡を通じて話しかけたのではないか? 磔の状態でお前の声が聞こえてきてたぞ」

ことり「……あー、そっか! そういうこともできたっけ!」

ことり「本当に使うの久しぶりで言われて思い出すことばかりだよ」


ことり「じゃあ改めて――」スッ

キィーーーーンッ

魔王(思い出す……か)

魔王(そう言われて、あの時はことりちゃん以外に女神の力が介在していたことを思い出す)

魔王(それなのに今は1人で簡単に別の時空間まで探知しているな)

魔王(前の効果が残ってるのか成長してるのか……何にしても焔ノ力に目覚めた器というのは間違いない)



ことり「たぁーーっ! はっ!」

バシュンッ!!

魔王(ことりちゃんが更に気合を入れると鏡面も同様に激しく揺れる)


ことり「ツバサさん! 梨子ちゃん! コトーリさん! 誰でもいい、私の声が聞こえない!?」 

魔王(するとすぐに一番手前にいた綺羅ツバサが反応して体を起こした)


ツバサ『……う、うう……』

ことり「ツバサさん!」

ツバサ『……その声……南……ことりさん……?』

ことり「そうだよ! ツバサさんたちが金閣寺のとこから消えちゃったみたいで探してたの!」

ことり「今どこにいるか見て分かる?」


ツバサ『消えた……?』

ツバサ『そ、そうね……目につくのは……>>435

435名無しさん@転載は禁止:2019/11/10(日) 07:44:27 ID:spnhkJpc
アースラ内部

436 ◆WsBxU38iK2:2019/11/11(月) 01:10:27 ID:CY9MM7Aw
ツバサ『目につくのは……薄暗いからよく……ちょっと待ってちょうだい』ガサゴソ

ことり『うん』

魔王(綺羅ツバサは薄暗闇の中手探りで周囲を漁り始める)

魔王(鏡越しに見て分かるのは床が平な人工物で密室に近い部屋の中にいる……ということくらいか)


ツバサ『ええと……そうだ、モブ! モブ起きてる!?』

モブ『はいただいま!』ヒョイッ

魔王(綺羅ツバサの声に反応し、私の聞き覚えのない影が1つ飛び出してくる)


モブ『ツバサさんが誰かとお話している声で目覚めました、何か御用でしょうか』

ツバサ『話が早くて助かるわ、モブ、あなた何か明かりになるようなもの持ってない?』

モブ『それならこのライトを!』シュバッ!

ツバサ『おぉ……言ってなんだけど用意が良くてびっくりするわ、でもありがと』


パチッ

魔王(形態型ライトをつけると薄暗かった部屋が照らされる)

魔王(それほど広い部屋ではなく、起き上がっている2人の他に何人かが床に倒れてるのが見えた)


ツバサ『うーん……この部屋で手がかりになりそうなものだと……む?』

ことり「どうしました?」

ツバサ『床に落ちてるプレートを見つけた』

ツバサ『横長の……部屋の扉の上部に付けるようなタイプのやつね、劣化で落ちたのか意図的に置かれたのかは分からないけど、プレート自体に破損は見られない』

ツバサ『その代わりに表面が擦れていて大部分の文字が読めなくなってる』


ツバサ『読めるとこだけ読むと……アースラ……内部……なんとか……いや、これだけね』

心ノ穂乃果「アースラ、内部?」

ことり「アースラってとこの中なのかな……」


ことり「ツバサさん、他に分かることはある?」

ツバサ『ええ、探してみる』スッ

ツバサ『モブはその間に他の人を起こして、人数が揃ってるかの確認もちゃんとね』

モブ『はいっ!』


ツバサ『……で、私のほうで分かることか』

タッ タッ

魔王(部屋自体はそう広くない、綺羅ツバサは立ち上がり手に持ったライトをあちこちに向ける)


ツバサ『ここは……>>437

437名無しさん@転載は禁止:2019/11/11(月) 05:47:53 ID:TPglKa7c
記憶の世界

438 ◆WsBxU38iK2:2019/11/12(火) 00:27:25 ID:oj2ntha2
ツバサ『ここは…………』

カツンッ カツンッ


心ノ穂乃果「そうだ、今のうちに皆に見つかったよって言ってくるね!」

ことり「そうだね、別時空間に当たりをつけるなら近場の捜索は要らなそうだし」

心ノ穂乃果「じゃ!」タタタタッ


魔王「元気だなやつだ」

魔王「さて、綺羅ツバサの方は……」


ツバサ『……っ! ことりさん! 聞こえてる!?』

ことり「聞こえてます! けど鏡から見える範囲が最初に繋いだとこだけだから……今ツバサさんがいる場所は見えないかな」

ツバサ『ならまた口頭で伝えるけど……部屋の隅に人がいたわ』

ことり「人?」

ツバサ『人……まぁ……人と言える範疇でしょうね』


魔王「なんだか歯切れが悪いな」

ことり「……うん」


モブ『ツバサさんどうかしたんで……うわっ! 幽霊!?』ビクッ

ツバサ『違うわ、よく見なさい、下にある装置が起動して映し出された立体ホログラムよ』

モブ『ホログラム……?』

ツバサ『プレートと同様に古くなってるのか所々映像に劣化……線のようなノイズが走ったり映像そのものが消えてる部分がある』

ことり「なるほど」


ツバサ『そのせいでホログラムで映し出されてる人の顔は分からない、何か制服のようなものは着てるけど……』

??『――――あ』ザザッ

ツバサ『……!』

モブ『喋りました!』



??『……こちら……ザザッ……アースラ……ここは……ザザザッ……記憶の……世界……』

ツバサ『記憶の世界?』

??『……はい……ザザッ』


ことり「反応した、会話できる……?」

ツバサ『そうみたいね、試してみるわ』


ツバサ『あなた、記憶の世界ってどういうこと? この空間そのものが誰かの記憶から作られてるとでも言うの?』

??『その通り……』

ツバサ『……!』


??『ここは……>>439の記憶……』

439名無しさん@転載は禁止:2019/11/12(火) 01:11:00 ID:o/DuxCYE
とある時空管理局員

440 ◆WsBxU38iK2:2019/11/13(水) 00:09:35 ID:51csZZnQ
??『ここは……とある時空管理局員の記憶……』


ツバサ『時空管理局……?』フム

モブ『どうしました?』

ツバサ『いや、どこかで聞き覚えのあるワードだなって……』



ツバサ『…………あっ、そうだ! てんこが言ってたんだわ』

ことり「てんこって……あのてんこちゃん?」

ツバサ『そう、てんこと聖杯戦争の話をしてた時に時空管理局ってワードが出てきてたのよ』

ツバサ『異能に類似した技術を行使した時空間犯罪を取り締まるのが仕事らしいわ』

ことり「へー、つまりツバサさんたちがいるとこは時空管理局の局員さんが働いてる場所」

魔王「……の、記憶の世界だな」



??『……ザザッ……その通り……』

??『……ここはアースラ……次元空間を渡る艦船……その記憶の世界……』



ツバサ『艦船……船の中ねぇ……』

ツバサ『どうしてそんな場所に迷い込んだのかとか、アレを抱えてるうちの吸血鬼が関係してるのかとか、あんたの正体とか』

ツバサ『聞きたいことは山ほどあるけど、まず最初に聞かなきゃいけないことが1つある』

??『……ああ……答えられることなら答えよう……ザザッ』


ツバサ『じゃあ率直に』


ツバサ『私たちはどうすれば元の世界に戻れる?』

??『>>441

441名無しさん@転載は禁止:2019/11/13(水) 05:54:23 ID:gFrIUabI
自分で考えろデコパチ

442 ◆WsBxU38iK2:2019/11/14(木) 02:20:56 ID:n1dsZIYE
??『自分で考えろデコパチ』

ツバサ『……は?』


ツバサ『はぁぁぁぁっ!? あんたが答えようって言ったから質問したんでしょうが!』

ツバサ『誰がデコパチだぁっ!?』

ガンッ!!

モブ『ちょっ! 落ち着いてツバサさん!』ガシッ

モブ『蹴っちゃダメですって! 装置が壊れる!』


ツバサ『はぁ……はぁ……!』

モブ『も〜』


ツバサ『……っ、分かったわよ、自分で探せば良いんでしょ!』

モブ『大丈夫ですか?』

ツバサ『ごめん、やっぱまだちょっと焦ってる……こんなとこに閉じ込められてる場合じゃないってのに……』

モブ『ツバサさん……』

ツバサ『私は引き続きこいつと話したり部屋に何か無いか再度調べておく、モブは皆の方をお願い』

モブ『はいっ』



魔王「ツバサのやつ、なんだか機嫌が悪そうだな」

ことり「そう……みたいだね」

魔王(と、再び探索に戻る鏡の中の綺羅ツバサたちを見ていると、報告に行っていた穂乃果が戻ってきた)


心ノ穂乃果「ことりちゃーん!」

ことり「穂乃果ちゃん、どうだった?」

心ノ穂乃果「皆にツバサさんたちを発見したって伝えてきたよ」

心ノ穂乃果「それから九州組の様子だけど……」

ことり「うん」

心ノ穂乃果「ゲートを守るムスペルと本格的に戦いが始まったみたい」

心ノ穂乃果「第一のサブゲートから出た小型ムスペルの群れは1割くらいまで減らせたけど、第二、第三のサブゲートが開いて囲まれてるって」

ことり「大丈夫なの?」

心ノ穂乃果「今のところは……でもこの先敵の守護が強くなって言ったら分からない」

ことり「そう……」


魔王「ムスペルの最後の抵抗と言ったところか」

魔王「それにしては親玉がここに来てまで姿を見せないのが気になるが……」


魔王「……お? 鏡の向こうでまた動きがあるようだな」

ことり「む?」



モブ『ツバサさん! 倒れてる人の確認終わりました!』

ツバサ『ありがと、それでちゃんと全員いた?』

ツバサ『こっちは部屋をくまなく探してるけど隠し扉1つ見つからなくて……記憶の世界って力尽くで壊せるものなのかしら』

モブ『はい、意識を失う前の9人、私とツバサさんを抜けば7人ですね』

モブ『その7人は>>443

443名無しさん@転載は禁止:2019/11/14(木) 06:12:13 ID:WX2g91To
気持ちよさそうに寝てる

444 ◆WsBxU38iK2:2019/11/15(金) 01:18:03 ID:g9Cuwrd6
モブ『7人は気持ちよさそうに寝ていますね』

ツバサ『人数が欠けてたり様子がおかしい人はいたりしない?』

モブ『はい、寝ていること以外は普通かと、軽く調べましたが外傷がある人もいません』

ツバサ『なるほど……』


ツバサ『マザーやハグカナーン、吸血鬼穂乃果までまとめて寝てるってことは無理矢理攫われたとかじゃなさそうね』

ツバサ『抵抗できたのならこの人たちがスヤスヤ呑気に寝てるはずはないもの』

ツバサ『モブ、あなた金閣寺仮拠点での最後の記憶は?』

モブ『うーん…………曖昧で思い出せません、希さんたちの帰還を待ちながら辺りを警戒していたのは覚えてるんですが』

ツバサ『私も同じ、あそこから記憶の世界に来る間の記憶がすっぽ抜けてる』

ツバサ『確か誰がお花摘みに行くから見張りを交代してくれって話が出て……それから……ああもうっ、ダメね思い出せない』ブンブンッ


ツバサ『とにかく片っ端から起こして行きましょう』

ツバサ『私とあなたが目覚めたってことは強い睡眠薬が盛られてるとかではないし、強く覚醒を促せば起きると思う』 

モブ『はいっ』



ツバサ『……で、私は調査に戻るわけだけど、このポンコツホログラムが役に立たないからねぇ』

??『誰がポンコツですかデコっパチ』

ツバサ『だって帰る方法知らないんでしょ? あなたの正体が単にログデータなのか補助AIなのか分からないけど、使えないならポンコツと同じ』
 
??『分からないのは……そもそも知らないのだ……ザザッ……この場所がアースラということしか……私の保有するデータにはない……』

ツバサ『え?』

??『問われて再確認して……分かった』

??『私のメモリーには……あまりに欠損が……ザザッ……抜け落ちか……多い』


ツバサ『それはつまり、自分のことも分からないと?』

??『……ああ』


ツバサ『…………』

魔王(綺羅ツバサはそれを聞いて少し考え込む様子を見せる)

魔王(そして数秒の後、“こちら”に向けて話しかけてきた)


ツバサ『……ことりさん、どう思う?』

ことり「え?」

ツバサ『とある時空管理局員の記憶の世界、艦船の一室にしてはあまりに何もない部屋、そこにあった記録が欠落して自分が何者かも分からないホログラム』

ツバサ『もしこれらが連動してると考えるなら――――』


タンッ

ツバサ『ホログラム、この部屋に扉はあったわよね』

??『……え?』

ツバサ『思い出して、確かにあったはずよ』

??『……あ……そう言われると……あった……ような……』


キィィィィィンッ バシュンッ!


心ノ穂乃果「扉が出てきた!」

ことり「もしかして、ホログラムの記憶と世界が連動してる……?」


ツバサ『良いわ、次は扉の先、よーく思い出して』

??『扉の……先……』

ツバサ『そう、その調子』

タンッ

ガララッ!


魔王(綺羅ツバサは出現した扉を勢いよく開ける)

魔王(するとその先には>>445)

445名無しさん@転載は禁止:2019/11/15(金) 05:41:09 ID:LXp7fUD2
黒い球体が浮かんでいる

446 ◆WsBxU38iK2:2019/11/16(土) 03:47:35 ID:4LMVbGYs
魔王(黒い球体が浮かんでいた)

魔王(ちょうど鏡から見える位置に扉が出現したため、こちらからも僅かに向こうの様子を見ることができる)


魔王(最初に目覚めた倉庫のような何もない手狭な部屋を抜けると、そこは先の部屋より何倍も大きい広間)

魔王(廊下などはなく直接小部屋と大部屋が扉で繋がっている形だ)

魔王(本来なら不思議な構造だがやつらがいるのは記憶の世界)

魔王(記憶に鮮明なものが出現し、印象の薄いものは省略される……というのも理にかなっているのかもしれない)

魔王(だとすればアレはよっぽど印象に残っているものなのだろう)


魔王(部屋の中央、異様な存在感を放つあの黒い球体は――――)


カツンッ

ツバサ『ふむ……』

モブ『ツバサさん、そんな不用心に踏み込んで大丈夫なんですか?』

ツバサ『とりあえず入った瞬間に発動する即死トラップなんかは無さそうね』

キョロキョロ

ツバサ『部屋の中はライトで照らさすとも充分に明るい光度、ただ、照明のようなものは見当たらない』

ツバサ『壁や床は白くて無機質な感じ、他に繋がる扉や窓はない……って説明で分かる?』

ことり「まぁ、大体は」


ツバサ『あとは……あの黒い球体だけど、あからさまに怪しいからこの子に行かせるわ』

シュルルッ キィンッ!

ツバサ『お願いね、メタルツバサ』

メタルツバサ『……』コクッ

タタタタッ


ことり「あれは……?」

ツバサ『私が能力で作り出した分身、メタルスライムの体を持ったもう1人の私よ』


タタタタッ

ツバサ『さて、メタルツバサが近付いたら黒い球体は……>>447

447名無しさん@転載は禁止:2019/11/16(土) 06:52:33 ID:MRVscjdM
引き込んで元の世界に強制送還

448 ◆WsBxU38iK2:2019/11/17(日) 00:02:34 ID:NAj2MeN.
ツバサ『黒い球体は……』

シュウォンッ!

ツバサ『っ!?』


ことり「どうしました?」

ツバサ『黒い球体に近づいた瞬間、メタルツバサの腕が黒い球体に吸い込まれた……』

ことり「えぇ?」

ツバサ『今は腕の先が歪んで球体の中へ伸びている、引っ張ろうとしても固定されて戻せない』

ツバサ『腕自体に破損は無いから歪みは見かけ状そう見えてるんだと思う』


ピピッ ピピピピッ

黒い球体『……起動、確認』


モブ『喋った!?』  


黒い球体『生体タグ、確認、識別……未登録』

黒い球体『上位管理者からの指示を確認……未設定、応答確認……応答無し』

黒い球体『基礎行動プログラムに則り対象の次元変動ログを読み込み、侵入前の次元へ送還を開始』

キュィィィィィィンッ 

ツバサ『……!』


黒い球体『送還先の次元座標を発見、転送フェーズに突入、安全のためその場から動かないでください』

黒い球体『30秒後に転送が始まります』


モブ『転送? どうします?』

ツバサ『侵入前の次元への送還、もしかしたら元の世界に帰れる可能性があるかもしれない』

ツバサ『試してみる価値は……あるっ!』ブンッ!

ヒュンッ! 

グルグルグルグルグルグル

ザシュッ!


ことり「今メタルツバサに向かって投げたのは?」

ツバサ『私のスマホ、念の為遠くから投げてメタルツバサの体内に埋め込んでおいた』

黒い球体『残り……15秒』

ツバサ『これでもしメタルツバサと一緒に元の世界に転送されたらGPSかMLINEかで位置情報が分かるはず』

ツバサ『こっちで消失したら報告するからそっちで探してみてもらえる?』

ことり「分かりました! すぐ準備を!」

心ノ穂乃果「皆に知らせてくる!」

タタタッ!


黒い球体『5秒……3、2、1……』


黒い球体『転送』

シュンッ!!


モブ『おおっ』

ツバサ『メタルツバサが消えたわ!』


ことり「どう!?」

魔王(ことりちゃんが声をかけるとモニターの前にいた賢者がすぐに返事をする)


ロトーチカ「反応あった! 場所は>>449

449名無しさん@転載は禁止:2019/11/17(日) 03:13:32 ID:qqR5FKd.
ラミエルの前

450 ◆WsBxU38iK2:2019/11/18(月) 06:12:10 ID:ZkuXzwZ.
ロトーチカ「場所は……関西、大阪!」

ことり「大阪?」

ロトーチカ「そう、ツバサの携帯の位置情報はそこを示している」      


ことり「大阪、大阪か……」

心ノ穂乃果「ことりちゃんは一回行ったことあるよね」

ことり「うん、バーミヤンが大阪湾から琵琶湖に侵攻した時にね」

ことり「大阪はその時の復興の最中のままラグナロクに巻き込まれたから、まだ街は半壊したままだと思うけど……」


心ノ穂乃果「ツバサさん! メタルツバサを通して確認はできる?」

ツバサ『……無理ね、ある程度は遠隔で操作できるけど今は反応が全くない』

ツバサ『本当に次元を隔たれた場所に飛んだんだと思うわ』

心ノ穂乃果「そっか……」

ツバサ『ただ、アルミツバサの改良版であるメタルツバサは自律稼働できるの、そっちからメタルツバサに埋め込まれた私のスマホに連絡してみて』

ツバサ『分かるように話せばメタルツバサは私ならこう動くだろうってのを再現して動いてくれるはず』


心ノ穂乃果「なるほど、ロトーチカさん!」

ロトーチカ「私と、それから真姫で既に試してる!」

カタカカタッ

真姫「はいっ……と、これでどう?」

ピッ

ロトーチカ「……よし繋がった、メタルツバサ、聞こえる?」

メタルツバサ『ええ』

ロトーチカ「よし、だったら自分に埋め込まれたスマホを取り出してMLINEを起動して」

ロトーチカ「その中のカメラのとこをタップ、映像共有で周囲の映像を撮影できる?」

メタルツバサ『分かった』

ジーーーッ 

パッ!

心ノ穂乃果「映った!」


魔王(真姫と賢者が操作するパネルの上の巨大モニタにスマホ越しの映像が映し出される)

ことり「うん、周りには半壊した大阪の街、避難してるのか人の姿はない」

ことり「それから……えっ!?」

心ノ穂乃果「な、なにあれ!? 大阪の空にでっかい何かが浮いてるよ!」


ロトーチカ「……っ! 真姫! 送られた映像から解析できる!?」 

真姫「ええ、MLINEはインストールされたスマホのセンサーを強化できるから……」カタカタッ

タンッ!

真姫「来た……検出された波動を解析完了、パターン青! 使徒よ!」


ことり「使徒!?」

魔王「天界と契約したハルマゲドンの執行者――――使徒、まだこの地上に残っていたのか」


真姫「MLINEデータベースと照合完了、関西上空にて目撃情報のあった使徒ラミエルと断定!」

真姫「ラミエルはメタルツバサの目の前、上空に浮遊しつつ>>451

451名無しさん@転載は禁止:2019/11/18(月) 07:01:35 ID:hqlW9766
攻撃してきて消された

452 ◆WsBxU38iK2:2019/11/18(月) 23:40:37 ID:ZkuXzwZ.
真姫「浮遊しつつ……っ! こっちを狙って攻撃してくるわ! 避けて!!」

メタルツバサ『え、なん――――』

ドシャッ!!!!


ツー ツー 

ザザーー


ロトーチカ「通信途絶、映像も消えたわ、間違いなくスマホは潰されたわね」

ロトーチカ「メタルツバサに向けて迫ってきていたあの光に当たったのかしら」

真姫「あの色、速さ、威力、荷電粒子砲に似たビーム攻撃……」

真姫「たぶんスマホだけじゃなくてメタルツバサごと消し飛ばされてると思う」


ことり「ツバサさん!」

ツバサ『全部聞いてたわ、どうやら出口は大変なことになってるらしいわね』

ことり「うん」

真姫「大変なんてもんじゃないわよ」

真姫「転移してラミエルに補足された時点であのビームが飛んでくる、エネルギー量的に間違いなく消滅ね」

ツバサ『……でも、元の世界に戻る頼みの綱はここしかない』
 
モブ『ツバサさん……』


ツバサ『要はそのラミエルって使徒を何とかすれば良いんでしょ』

ツバサ『だったらやってやるしかない』


ツバサ『私と、ここの皆でラミエルに打ち勝って……無事に元の世界に帰って見せる!』



─────────────────

炎の洞穴 PM??〜??  
浮遊ドスケーブ城 PM9:20〜9:30
次元航行艦アースラ記憶世界 PM??〜??

新終末編・焔『236』了

453 ◆WsBxU38iK2:2019/11/18(月) 23:43:53 ID:ZkuXzwZ.
というわけでここまで

区切りが分からず長くなりましたが区切りです
人物も用語も多くなりすぎて名前を見て思い出すことが多いこの頃


新終末編・焔『237』に続く
かもしれない

454 ◆WsBxU38iK2:2019/11/20(水) 03:12:07 ID:rcXA9iGA
新終末編・焔『237』

─────────────────
──アースラ記憶世界

PM??







ツバサ(方針を決めた私たちは皆を叩き起こし今起こってることを説明した)

ツバサ(強制催眠の影響か寝ぼけまなこの人も多かったけど、一応方針は伝わったみたい)


マザー「ふわぁ〜……む」

マザー「まだ半分頭が寝てるけど、まぁ状況は何となく把握したわ」

マザー「使徒に狙われるリスクを考慮した上でそこから帰る作戦には賛成やで」

コトーリ「わたしもさんせー、でもねむい……」ムニャ

アニメ穂乃果「ほんと……なんで眠ってたんだろうね」


吸血鬼穂乃果「要はラミエルってやつをぶっ倒せば良いだけでしょう? 楽賞よ楽勝」

梨子「はは……すごい自信だな……」

英玲奈「ラミエルを倒すかどうかは置いておいて、元の世界に帰る手段が他に無いからな」

英玲奈「いざとなったら自信満々なそこのバカを盾にすればいい、丈夫だろうし」

吸血鬼穂乃果「はぁ?」

英玲奈「ん? 弱いのか?」

吸血鬼穂乃果「強いわよっ!」

英玲奈「じゃあ良いじゃないか、存分に力を発揮してくれ」ニッコリ

吸血鬼穂乃果「この下民を先に消しておいた方が良いんじゃないかしら……」プルプル


ハグカナーン「二人共、冗談はそれくらいにしときなって」

英玲奈「そうだな」フッ

吸血鬼穂乃果「ふんっ」


ハグカナーン「眠い組がぼーっと話を聞いてた間、私と梨子ちゃんでざっと調べたけど他に出口はなし」

ハグカナーン「ホログラムさんの記憶もこれ以上復活しそうにない……だよね梨子ちゃん?」

梨子「うん、ツバサさんが気付いたホログラムの記憶と世界の同期を試すため色々質問したけど、これと言って収穫はない」

梨子「逆に考えたらあの黒い球体の印象がよっぽど強いんだと思う……かな」

マザー「なるほどなぁ」


??『……ザザ、申し訳……ありません……ザザ……』

梨子「ああいやっ、良いんです良いんです、無理せずに」


ハグカナーン「さらに言うと此処ってMLINEの反応も途絶するほど遠い次元なんでしょ」
 
ツバサ「ええ、ことりさんの鏡を使ってやっとというレベル、外郭界かそれ以上の場所でしょうね」

アニメ穂乃果「そんなに……!」

ハグカナーン「私たち……というか味方勢力は異世界渡航能力を持った船をいくつか保有してるけど、船が集結してる浮遊塔は戦闘中」

ハグカナーン「その状況で何処かも分からない場所に迎えに行くのは難しい」

ツバサ「ええ」コクンッ



マザー「じゃあ作戦会議やな」

マザー「向こうの報告を聞くにメタルツバサが転移して消失するまでの時間には少し猶予があったらしい」

ハグカナーン「ラミエルがこっちを補足してビームを撃つまで僅かな時間があるってことだね」

マザー「そう、だからそこに付け入る隙があるはず」


マザー「つまり大事になるのは最初に転移するのを誰かにするってことや」

ツバサ「そうね……最初は>>455

455名無しさん@転載は禁止:2019/11/20(水) 06:41:54 ID:kYp67iYM
グージャンケンポン!

456 ◆WsBxU38iK2:2019/11/21(木) 00:26:55 ID:Zfh5Pkhs
ツバサ「最初はグージャンケンポン!」

マザー「え? ポ、ポン」

梨子「ぽん?」

ハグカナーン「ぽん?」


ツバサ(突然の私のジャンケンに皆は戸惑いながら一瞬遅れて手を出した)

ツバサ(その手は全てグー、対して私はパー)


ツバサ「ふっ……どうやら私の勝ち、一番槍は私が貰ったわ」

梨子「い……いやいや!」

ツバサ「なに? 結果に納得しないから再戦しろって抗議なら受け付けないわよ」

梨子「そうじゃなくて……こんな大事なことジャンケンで決めていいの?」

ツバサ「良いの良いの、結果が全てだから」

梨子「えぇ……」


ツバサ「じゃあ次行くわよ、作戦としてはまず私が飛び込むから――――」

マザー「ツバサ……」

ツバサ「ん? なに?」

マザー「あんた、最初から自分が一番に飛び込むって決めてたな」

梨子「え?」


マザー「いきなりジャンケンしたらグー出す確率が多いからパーとか……まぁ手段は何でもいいんや」

マザー「適当な理由つけて一番に転移することが目的やろうからな」

マザー「理由は自分が勝手に提案した作戦だから危険な部分は自分がこなさなきゃいけない……ってところやろ」


ツバサ「……そうね、隠してても仕方ないから言っちゃうけど、私は最初に飛び込む気まんまんよ」

英玲奈「ツバサ、分かってるのか? この作戦で一番槍の役割というのは……」

ツバサ「ラミエルの光線を引きつけるか防ぐかして、後続が転移するまで耐えなきゃいけない、でしょ?」

ツバサ「一番リスクがあるのは重々承知だし、だからこそ私が行くべきと思ってる」

英玲奈「ツバサ……」



ハグカナーン「ま、本人が行く気なら止める必要は無いんじゃない?」

ツバサ「ハグカナーン……!」

ハグカナーン「ツバサちゃんの言うとおり問題はその後だよ」

ザッ

ハグカナーン「もしツバサちゃんがラミエルの注意を引きつけててくれるなら、私がラミエルの攻撃を封じてあげる」

ツバサ「本当!?」

ハグカナーン「うん、ただそれには皆の協力と向こうに転移してから少し準備をする時間が必要なんだよね」

ハグカナーン「ツバサちゃん、どのくらいの時間なら稼げる?」

ツバサ「時間……か」


ツバサ「相手は高出力のビームを正確に放ってくる使徒、私の能力をフルに使えば>>457

457名無しさん@転載は禁止:2019/11/21(木) 06:04:22 ID:zdomyCtg
10分

458 ◆WsBxU38iK2:2019/11/22(金) 00:17:12 ID:FEuqouWA
ツバサ「10分は稼げるわ」

ハグカナーン「上々、それだけあれば充分陣を広げることはできる」


ハグカナーン「もちろん何人かに協力してもらう必要はあるけど……吸血鬼ちゃん、コトーリちゃん、2人に頼もうかな」

吸血鬼穂乃果「私?」

コトーリ「?」

ハグカナーン「私の術を発動させるためには予め陣を描く必要があるんだよ」
 
ハグカナーン「今回はラミエルを囲むようにグルッと円を描かなきゃいけないから足の速い2人が適任ってわけ」

ハグカナーン「ね? やってくれないかな」

コトーリ「うん、いいよ」

ハグカナーン「ありがとっ」


吸血鬼穂乃果「私は嫌よ、なんで貴女の指図を受けなきゃいけないわけ?」

吸血鬼穂乃果「そんなまどろっこしい手を使わなくなって使徒を倒せばいいんでしょう?」

ハグカナーン「うーん……まずは安全の確保だと思うけど、吸血鬼ちゃんがそういうスタンスなら無理にとは言わないよ」

吸血鬼穂乃果「ふんっ」


ハグカナーン「じゃあ代わりにマザーさんお願いできるかな」

マザー「うちはええで」

マザー「ただ人外組ほどの働きを期待するのは簡便してな、あくまで人の範疇やし」

梨子「マザーさんも充分化物レベルだと思うけど……」



ツバサ「決まったところで整理しておきましょう」

ツバサ「まず私が転移してラミエルを引きつける」

ツバサ「そしたら次にハグカナーン、コトーリさん、マザーが転移して術を発動させる準備をする」

ツバサ「10分の間にそれが発動できたら、順次英玲奈、吸血鬼穂乃果、梨子さん、穂乃果さん、モブが転移」

ツバサ「そこから先は臨機応変に……ってことで」


英玲奈「ああ」コクンッ

ハグカナーン「うんっ」

マザー「頼んだで」

梨子「お気をつけて……!」


ツバサ「じゃ、早速転移するわよ!」








──大阪

PM9:40


シュンッ!

ツバサ「……っと」タンッ


ツバサ(私が向こうで黒い球体に近付くと、メタルツバサの時と同じ工程を踏んで転送が始まった)

ツバサ(痛みや体の不調は特になし、周囲の様子を見るに無事に元の世界に戻ってこれたようだ)

ツバサ(半壊してるとは言え見慣れた街の景色)


ツバサ(頭上を覆う青色の巨大な多面体――使徒ラミエルを除けば)

 
キィィィィィィィィィィンッ


ツバサ(幸いまだラミエルはこちらを補足していない)

ツバサ(まずは>>459)

459名無しさん@転載は禁止:2019/11/22(金) 06:00:10 ID:kHWwXqe.
弱点を観察

460 ◆WsBxU38iK2:2019/11/22(金) 23:35:41 ID:FEuqouWA
ツバサ(まずは弱点を観察する)

ツバサ(そのために必要なのは……3次元的に高速で移動できる足!)

シュルルルッ 

ツバサ(変幻能力で膝から下を限界まで超圧縮されたバネ、スプリングに変化させ――)

ググググッ

ツバサ(それを解放した反動で跳ぶ!)

ダンッ!


ツバサ(空中を移動し半壊したビルの屋上へ)

ヒュゥゥゥゥッ!

タンッ! ザザザッ

ツバサ(スプリングになったままの両足で着地)

ツバサ(着地と同時に螺旋構造のスプリングはまた限界まで推し縮められる)

ツバサ「よし……このスピードなら行けそうね」


ツバサ(予めことりさんから口頭で伝えられていた光線の範囲と速度)

ツバサ(それと今の感覚を重ねた場合問題なく避けられるはず)

ツバサ(もし想定外が起きた場合は……ぶっつけ本番しかない)


ツバサ「はぁー……ふぅー……」

ツバサ(やるしかない、やるわよ……私!)


ツバサ「ラミエル! 私はここよ! 倒せるものなら倒してみなさい!」

ツバサ(深呼吸し覚悟を決め、私はラミエルに対し叫ぶ)

ツバサ(その瞬間――――)

カッ!!

ツバサ(来た!)


ダンッ!!

ツバサ(足の超圧縮スプリングを起動させて一瞬で最高速度まで加速、私は別のビルへと移動する)

ツバサ(それとほぼ同時にラミエルの光線が私がコンマ数秒前まで立っていた足場を焼き尽くした)

ジュゥゥゥゥッ!


ツバサ「……!」

ツバサ(やっぱりスプリング式の加速装置にして正解だった)

ツバサ(ロケットのように飛んでる間の速度調整や方向転換ができないものの、初速から最高速に達するまでが群を抜いている)


ツバサ「それで……弱点か」

ツバサ(ラミエルが光線を撃つ瞬間、やつの体が変形して中心に赤いコアらしきものが見えた)

ツバサ(定石で行けばあそこがラミエルの弱点だろう)

タンッ ザザザッ

ツバサ(他に今の攻撃で分かったことは>>461)

461名無しさん@転載は禁止:2019/11/23(土) 05:56:53 ID:WbSOJSAc
コアが露出される時間は一瞬

462 ◆WsBxU38iK2:2019/11/24(日) 01:10:06 ID:yCaQKZGY
ツバサ(コアが露出される時間は一瞬)

ツバサ(つまり弱点を狙うとしたらその瞬間――――光線が放たれた直後を狙うしかない)


ラミエル『コォー……』

キュインッ!

ツバサ「……って息つく暇もないわね!」

ダンッ!!


ヒュゥゥゥゥッ

ツバサ(私は当分光線を誘って吐かせて避ける作業の繰り返しか)

ツバサ(あとは次に転送されてくるハグカナーンに任せるしかない)


ツバサ「頼んだわよ!」







シュンッ!


スタッ

ハグカナーン「無事に転送完了したみたいだね」

ハグカナーン「2人共大丈夫?」

コトーリ「おー」

マザー「問題ない、あの空に浮いてるデッカイのがラミエルか」

ハグカナーン「そうみたいだね」


マザー「で? うちらは何をしたらいいん?」

ハグカナーン「うん、今から渡す物を撒いてきて欲しいんだ」

ハグカナーン「マザーさんの分と、コトーリちゃんの分、はいこれ」スッ

マザー「白い粉の入った……袋?」

コトーリ「……?」


ハグカナーン「それは時の潮、私が魔術陣を描く時に使う顔料と思ってもらえばいいかな」

ハグカナーン「組成はちょっと特殊だけど地球上の物質だと塩に近い、舐めたらしょっぱいよ」

コトーリ「へー」


ハグカナーン「この時の潮を今いる地点から左右に分かれて弧を描き、ラミエルを円で囲うように撒いてほしい」

マザー「それはええけど……量足りる? 片手で持てるくらいの大きさの袋やで」

ハグカナーン「その袋は内部空間を拡張してある特別製だから大丈夫、見た目より何百倍も粉が入ってるよ」

マザー「おぉ、それはすごいな」


ハグカナーン「それで――――」

ピピッ

ハグカナーン「おや、ツバサちゃんから連絡みたいだ」

ピッ

 
ハグカナーン(ツバサちゃんのスマホはメタルツバサと共に消滅したから、転送前に英玲奈ちゃんがスマホを渡してある)

ハグカナーン(こういう時情報を共有できないと困るからね)
   

ハグカナーン「もしもし、こちら3人も無事に戻ってこれたよ」

ツバサ『それは良かった、私は計画通りラミエルをひきつけてる』

ツバサ『それでやつの弱点なんだけど、どうやら光線を撃った直後しか弱点のコアが露出しないみたいなの』

ハグカナーン「なるほど」

ハグカナーン「このまま計画が進んだとして、ビームを撃たせるツバサちゃん、動きを封じる私、そしてもう1人コアを攻撃しに行く役が必要になるってわけだね」

ツバサ『そうよ――っておおっと』バシュッ!!


ハグカナーン「じゃあコアへの攻撃は>>463

463名無しさん@転載は禁止:2019/11/24(日) 01:50:36 ID:tmAXEsOI
本気コトーリ

464 ◆WsBxU38iK2:2019/11/25(月) 00:23:09 ID:/WgiJE0U
ハグカナーン「じゃあコアへの攻撃はコトーリちゃんに頼もうかな」

コトーリ「いいよ」

ハグカナーン「おぉ即答、無理はしなくていいんだよ?」


コトーリ「だいじょーぶ、あのびーむにあたるきはそうそうないし、からだもげんき」ブンブンッ
 
コトーリ「ただ、ほんきをだすならそーまがほしい」

ハグカナーン「そーま?」


マザー「うちが出せる……その白い飲み物的なものや……」

ハグカナーン「何か……歯切れ悪い?」

マザー「い、いやいや」

コトーリ「このからだ、ねんぴわるいし、つかれるとどくにやられやすくなる」

コトーリ「ほんきをだすにはそーまがひつようふかけつ」

マザー「まぁソーマならいつでもあげられる、丁度うちとコトーリちゃんで半周ずつする形だし、向こうで合流した時で良いかな?」

コトーリ「おっけー」グッb



ハグカナーン「……ってことに決まったけど、ツバサちゃん聞こえてた?」

ツバサ『ええ、少しずつ光線の精度が上がって行ってるから早めにしてくれると助か――』

バシュンッ!

ツバサ『っと!』


ツバサ『とにかく急ぎで!』

ハグカナーン「了解っ、じゃあ頼んだよ、2人共!」


コトーリ「まかせられた」

マザー「行ってくる!」

タンッ! シュッ!


ハグカナーン(2人は袋を逆さまに持ち、校庭に石灰の白線を引く要領でラインを引きながら走っていく)

ハグカナーン(後は陣が完成するまでツバサちゃんがラミエルの注意を引きつけていられるかどうか)


ガチャンッ 

ハグカナーン(私は背中に背負っていた魔術発動用の道具を取り外し手に持つ)

ハグカナーン(それと浮遊ドスケーブ城を通して記憶世界と連絡を取る準備もしておかないと)

ピッ ピッ


ハグカナーン「もしもーし」

真姫『繋がったわ、手筈通りに動ける?』

ハグカナーン「大丈夫だよ、ちょっと待ってね……っと」

ハグカナーン(事前の打ち合わせ通りスマホを映像共有モードに切り替えて大阪の街を映し出す)


ハグカナーン「見ての通り、今はツバサちゃんが光線を引きつけてくれてる」

ハグカナーン「そっちから見てラミエルの様子はどう? まだ時間を稼げそうだと思う?」

真姫『そうね、あのラミエルは……>>465』カタカタッ

465名無しさん@転載は禁止:2019/11/25(月) 05:56:46 ID:wzG0.cKo
動きを先読みし始めてる

466 ◆WsBxU38iK2:2019/11/26(火) 00:55:55 ID:7Euh3jAE
真姫『そうね、あのラミエルは……動きを先読みし始めてる』

真姫『段々とツバサへ撃つ光線の精度が上昇していってるのが分かるわ』


ハグカナーン「ツバサちゃんも同じようなこと言ってたね」

真姫『今のところは問題ないけど時間をかけるのはまずい、どのくらいで作戦第二段階に行けそう?』

ハグカナーン「うーん……そればっかりはコトーリちゃんとマザーさんの走り次第かなぁ」

ハグカナーン「陣さえ完成すればいつでも私の魔術は発動できるから」

バシュンッ!!

ハグカナーン「っておおっ!?」

真姫『今のは危なかったわね……』

ハグカナーン「ツバサちゃんなんとか避けたか……良かった」


真姫『今のは明らかにツバサが飛んだ先の着地地点を狙っていた』

真姫『ツバサが咄嗟に腕を粘着性の糸に変幻してビルの壁に向けて射出、スパイ○ーマンみたいにスイングすることで軌道を変えたけど』

真姫『これからもこんな読みをされていったらいつか限界が来る』

真姫『いや、それどころか――――』


バシュンッ!!

ハグカナーン「また来た!」

ハグカナーン(ラミエルが再び光線を放つ、けれどツバサちゃんに当たってはいない)

ハグカナーン(ふぅ……見てるだけでヒヤヒヤするなぁ)
 
ドドドッ

ハグカナーン「……ん?」

ズドドドドドド

ハグカナーン「……あれ? 放たれた光線が……消えてない?」

真姫『違う……』


真姫『光線の性質自体を変えてきたのよ、消えてないんじゃない、あのまま薙ぎ払ってくるわ!』

ハグカナーン『え?』

ズドドドドドドドドドッ!!

ハグカナーン『……なっ!』

真姫『真っ直ぐこっちに来る! 逃げなさい!』


ハグカナーン「そんなこと言われたって――――」

ハグカナーン(私をめがけて地面を砕きながら直進してくる光の柱)

ハグカナーン(けれど私は身体能力はそれほど高くない、逃げたところでラミエルが軌道を変えたら避けきれる自信はない)

ハグカナーン(それになにより……足元には魔術発動陣のための線が引いてある)

ハグカナーン(これを壊されたら、今必死に線を引いてる2人の行動が無駄になる) 
 

ドドドドドドドドドドドドッ!!


ハグカナーン(どうする、どうすれば……!)

467 ◆WsBxU38iK2:2019/11/26(火) 00:56:12 ID:7Euh3jAE




タンッ

吸血鬼穂乃果「――全く、偉そうに指示してたわりに死にかけてるじゃない」

ハグカナーン「え?」

シュルルルッ! バッ!!!!

ハグカナーン(咄嗟に迷って足を止めてしまった私の眼前に、大きく紅い薔薇が咲いた)

ハグカナーン(薔薇は花弁の1つ1つを大きく広げ、盾のようにこちらへ迫る光の柱を受け止める)

キィィィィィィィンッ!


ハグカナーン「光線を……止めた……!?」

吸血鬼穂乃果「ブラッディシールド、高貴な私に相応しい優雅な盾でしょう?」

ハグカナーン(いつの間にか来ていた吸血鬼穂乃果は済ました顔で手をかざし、莫大なエネルギーを放つ光線を止め続けている)


ハグカナーン「吸血鬼ちゃん……作戦の第二段階の作戦が終わり次第来る予定だったはずじゃ……」

吸血鬼穂乃果「私がそんなものに縛られるわけがないでしょう」

吸血鬼穂乃果「ま、結果的には早めに来て正解だったようだけど……」


ラミエル『ホー……』カッ!

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!


吸血鬼穂乃果「……っ!」グッ

吸血鬼穂乃果「まだまだ出力を上げるっていうの? ほんと単純なパワーだけは埒外の次元にいる使徒ねぇ」

吸血鬼穂乃果「私の盾とは言え受け止め続けるのがやっと、跳ね返すなんて芸当はできないか」


吸血鬼穂乃果「願望器の力を使ってしまえば……いや、不確定要素が大きいし使うにしてもここじゃあない」

吸血鬼穂乃果「下民共だけでやれると言うのだから任せてみるのも一興ね」


ハグカナーン「あの……吸血鬼ちゃん、ありがとう、そのまま盾で防いでくれてると助かる」

吸血鬼穂乃果「ふんっ、感謝は当然、それにタダじゃないわよ」

吸血鬼穂乃果「私がサポートしてあげるのだから……対価として>>468

468名無しさん@転載は禁止:2019/11/26(火) 05:59:30 ID:6SQahncc
嫁として貰う

469 ◆WsBxU38iK2:2019/11/27(水) 01:17:00 ID:8.skBgy2
吸血鬼穂乃果「嫁として貰うことにするわ」

ハグカナーン「よ、嫁……?」

吸血鬼穂乃果「私が作る予定の眷属ハーレム、それに加わるってこと、光栄に思いなさい」

ハグカナーン「はあ……」


ハグカナーン(良くわからないけど、それでこの場の命が助かるならいいか)

ハグカナーン(どうせ魔王軍にも倶楽部にも戻れない行くあてのない身だし、生活を保障してくれるのは助かる)

ハグカナーン(まぁ……なんにしてもここを切り抜けた後の話だ!) 


ピピッ!

ハグカナーン「……来た!」ピッ

マザー『もしもし、コトーリちゃんと合流できたで、ラミエルを挟んで反対側くらいの場所や』

マザー『さすがに走る速さの関係上少しうちの方にズレてはいるけどな』


ハグカナーン「白線を繋げられてるなら問題ないよ」

マザー『ならオッケーや』

ハグカナーン「よし、マザーさんとコトーリちゃん、それと……ツバサさん聞いてる?」

ツバサ『なんとか!』

ハグカナーン「今から術式を発動するから線の内側に入らないで、中にいまら急いで外側に出てね」

ツバサ『了解!』

マザー『分かった!』


ピッ

ハグカナーン「ふぅ……」

カツンッ

ハグカナーン(私は一歩前に踏み出し、手に持っていた杖の柄を白線の上へ打ち付ける)

ハグカナーン(街頭時計を模した、長い棒の先端に大きな時計の付いた儀式杖)

ハグカナーン(時計は一刻、また一刻と正しい時間を刻み続けている)


ハグカナーン「時流術式発動、時海展開」

パァァァァァァァァァッ!

ハグカナーン(その言葉と共に、時の潮によって描かれた巨大な白い円の内側に光が満ちた)

ハグカナーン(その白い光の面は時計が時を刻む音に合わせて、まるで海のように波打っている)

カチッ カチッ カチッ カチッ

ザザァッ ザザァッ ザザァッ ザザァッ 


ハグカナーン(これこそが時の流れ)

ハグカナーン(特殊な触媒を使い時の流れを視認可能とし、海の符号と共鳴させ操る、それが私の時流術式だ)


ハグカナーン(そして)


カチッ  カチッ  カチッ  カチッ

ハグカナーン「零の海――――『凪』」






ピタッ

470 ◆WsBxU38iK2:2019/11/27(水) 01:17:36 ID:8.skBgy2




吸血鬼穂乃果「……ほう」


ハグカナーン(そこには、静寂しかなかった)

ハグカナーン(時計の音、波の音、ラミエルの光線の音、全てが聞こえない)

ハグカナーン(全てが静止した――時の凪の海)


吸血鬼穂乃果「やるわねぇ、この円のの中の時間を停止させたの?」

ハグカナーン「正確には限りなく遅くした……って表現が正しいかな、それでもこちらに攻撃が届く時間を考えたらほぼほぼ静止と変わらない」

吸血鬼穂乃果「へぇ」シュルルルッ

ハグカナーン(吸血鬼穂乃果は満足そうな顔をして血の盾を引っ込める)


真姫『よくやったわハグカナーン、これでラミエルは封じ込められたわね』  

ハグカナーン「いやいや、私1人じゃ即席でこんな巨大な魔術陣は用意できなかったし、マザーさんとコトーリちゃんのおかげだよ」

ハグカナーン「更に言うとこの後も……」

ピッ


ハグカナーン「マザーさん、コトーリちゃんの準備は?」
 
マザー『そっちのタイミングでいつでも、本人はやる気満々みたいやよ』

コトーリ『おー!』

ハグカナーン(マザーさんのスマホに顔を近づけて喋ってるのか、1つのとこから2人の声が聞こえてくる)


ハグカナーン「よし、じゃあ今のうちに記憶世界に残ってるメンバーを全員こっちに転送」
 
ハグカナーン「皆を安全なとこまで移動させたらコアを破壊するために時間を動かす」

吸血鬼穂乃果「動かしちゃうの? せっかく止めたのに」

ハグカナーン「完全静止に近い状態のままだと味方の攻撃だって当たらないでしょ」

吸血鬼穂乃果「確かに」


ハグカナーン「コトーリちゃん、具体的な攻撃方法はもう考えてる?」

コトーリ『んー……>>471

471名無しさん@転載は禁止:2019/11/27(水) 06:56:12 ID:tWLITu5c
光を超える速度でコアめがけて突っ込む

472 ◆WsBxU38iK2:2019/11/28(木) 03:31:08 ID:c4MBdcgo
コトーリ『ひかりをこえるそくどでこあめがけてつっこむ』

ハグカナーン「光を超える速度……それはすごいね」

コトーリ『まかせといてー』

 
真姫『今のうちに記憶世界の方に移動を呼びかけるわね』

ハグカナーン「うん、お願い」

ハグカナーン「この術がそう簡単に解けるとは思わないけど、早く動くにこしたことはない」

ハグカナーン「後は頼んだよ……コトーリちゃん!」









マザー「……さて、こっちも準備しようか」

コトーリ「うい」

マザー(うちはスマホを口元から離し一度しまうと、胸元をぐいっと広げて胸を露出させた)

マザー(コトーリちゃんはそれを見るや否や勢いよく抱きついてきて乳頭に口を当てる)

コトーリ「んっ」

マザー「……っ!」ビクンッ  


マザー「あの……コトーリちゃん? 出したやつを飲んでもいいんやで?」

コトーリ「やだ、これがいい」ブンブンッ

マザー「そうかー」


マザー(うちがいくら行ってもコトーリちゃんは直飲みを頑として譲らない)

マザー(はぁ……こればっかりは未だに慣れんなぁ) 


コトーリ「いただきまー……はむっ!」

マザー「ひゃうっ!」

ドクンッ!!!!

マザー(コトーリちゃんが吸い付いたのを合図にスイッチが入り、体全体が熱くなる)

マザー(乳房は膨らみ、乳頭は固く大きくなり、その先端から聖なる乳――ソーマを勢いよく吹き出す)

ドビュルルルルルッ!!

コトーリ「むぅ!」キラーン

マザー(コトーリちゃんの小さな口の中へ滝のように流れ込む白い液体)

マザー(常人が摂取したら発狂するほどの濃度のソーマをコトーリちゃんはなんてことなく美味しそうに飲みのしていく)

ジュルルルッ! ゴクッ ゴクゴクゴクッ!

マザー「んっ……ひやぁっ……んんんんんんんっ!!」

473 ◆WsBxU38iK2:2019/11/28(木) 03:32:09 ID:c4MBdcgo






マザー(そうしてしばらくソーマを飲み続け、うちの乳からソーマが出なくなったことを確認すると、コトーリちゃんは抱きつきを解除して地面に立った)

マザー(とても満足そうな顔で口元を服の袖で拭っている)

コトーリ「……ぷはっ、おいしかったー」

マザー「それはどうも」


コトーリ「そしてげんきひゃくばい!」

パァァァァァァァァァッ!

マザー「おおっ、輝いてんなー」

コトーリ「うん、ぜんせいきにだいぶちかづいてきたとおもう」


マザー「全盛期ねぇ……」


マザー(うちは詳しく知らんけど、コトーリちゃんは元々天使で人ならざる力を持っていたらしい)

マザー(それが現代で目覚めた後、さらに色々あって深淵という毒に侵されてしまった)

マザー(毒自体はうちのソーマで中和できることは分かったんやけど、一度治った後も無理に天使の力を使い続けると再び発症してしまうリスクがある)

マザー(せやから力を使う前後はこうしてソーマを飲んでるわけやけど……)

パァァァァァァァァァッ

マザー(今のコトーリちゃんは一段と神々しい)

マザー(深淵の影響など見えないくらい全身が白く眩しく発光している)



コトーリ「まざー、れんらく」

マザー「お、おおっ」
 
ピッ

マザー「ハグカナーンちゃん、こっちの準備は整ったで」

ハグカナーン『こっちもオッケーだよ』

ハグカナーン『全員転送完了、今は梨子ちゃんにメノノリ出してもらって私と吸血鬼ちゃん以外は遠くに運んでもらってる』

ハグカナーン『吸血鬼ちゃんにも盾を再展開してもらって万が一でも直撃しないようにしてる』

ハグカナーン『後は私とコトーリちゃんがタイミングを合わせるだけだよ』

474 ◆WsBxU38iK2:2019/11/28(木) 03:32:23 ID:c4MBdcgo


マザー「ならうちが5秒カウントするで」

マザー「5秒後に術式の解除とコアへの攻撃を同士にでええな?」

ハグカナーン『うんっ』

コトーリ「どんとこい」


マザー「いくで! 5!」


コトーリ「すぅぅぅぅ、はぁぁぁぁ」

マザー(仁王立ちしたコトーリさんはカウントが始まると共に深呼吸して体の力を抜いた)

マザー「4!」 

マザー(そしてゆっくりと空中に浮かぶラミエルのコアを見つめる)

マザー「3!」

マザー(攻撃の予兆は皆無、まるで凪の海を写したかのように穏やかな姿)

マザー「2!」

マザー(それが――)


マザー「1!」

コトーリ「てんし――とつげき」

ゴッ!!!!!!!

マザー(堰を切って一気に弾けた)


ハグカナーン『解除!』

ドンッ!!!!


マザー(最早目で追うことはできなかった)

マザー(音より先にコトーリちゃんは一本の光の矢となってコアを貫いていたのだから)


キィーーーーーーンッ!


マザー(そしてラミエルは>>475)

475名無しさん@転載は禁止:2019/11/28(木) 05:51:01 ID:poXm7NP6
木っ端微塵

476 ◆WsBxU38iK2:2019/11/28(木) 23:25:11 ID:c4MBdcgo
マザー(そしてラミエルは木っ端微塵)

バァァァァァァァァァァンッ!!!!

マザー(コアが砕けると同時にコアを覆っていた青色の水晶体まで粒子となって霧散した)


マザー(ハグカナーンちゃんの時海が解除され、白い時の潮の残滓と青いラミエルの残滓が混じり合いながら天へと消えていく)

マザー(それはどこか幻想的な光景であり、どこか――――)

ヒュンッ

コトーリ「しゅたっ」

マザー「おおっ」

コトーリ「ただいま」

マザー「お……おかえり」


マザー(うちらしくもない感慨に浸っていると背後にコトーリちゃんが降り立っていた)

マザー(コアに直線的に突っ込んでいったはずなのにどうやって……?)

マザー(光の速度を超えた人に既存の物理法則でツッコむのは野暮かもしれんが謎すぎる)


コトーリ「ふんっ、よゆうだったぜ……って……あれ……?」フラッ

マザー「コトーリちゃん!」

マザー(無表情なりにドヤ顔を決めていたコトーリちゃんがふらつき倒れたかけたところを抱きとめる)

コトーリ「……っ!」ジュゥゥッ!

マザー(コトーリちゃんの指の先が墨に突っ込んだように真っ黒に染まっていた)

マザー(その染みは指先から肘、肩、首へと駆け上がり、頬の横まで真っ黒に染め上げる) 
  

マザー「深淵の侵食……! 今までで見た中で一番デカい反動やん……!」

コトーリ「のめばだいじょーぶ、しんぱいしないで……」

マザー「お、おうっ!」スッ

コトーリ「んっ……」ゴクッ ゴクッ


スゥゥゥゥゥッ

マザー(言った通りソーマ飲むとコトーリちゃんの染みは段々と消えていく)

マザー(もぉー、助かるのは分かっててもハラハラするで……)


コトーリ「ふぅー」

マザー(飲み干したコトーリさんは満足そうな顔でうちの膝枕の上で寝っ転がる)


マザー「でもよくがんばった、えらいえらい」ナデナデ

コトーリ「ふふふっ」

マザー「ラミエルを倒せたことだし、ゆっくり休んで侵食が抜けたら皆のとこに戻ろうな」

コトーリ「うんっ」


マザー(これで残りの使徒はもういない……なんて考えることは早計だろうけど、当面の驚異は去ったはず)

マザー(後は九州、あっちの戦況はどうなってるのか――――)



─────────────────

アースラ記憶世界〜大阪

PM??〜9:55 新終末編・焔『237』了

477 ◆WsBxU38iK2:2019/11/28(木) 23:25:25 ID:c4MBdcgo
というわけでここまで

ラミエルを倒し一区切り

新終末編・焔『238』に続く
かもしれない

478 ◆WsBxU38iK2:2019/11/30(土) 00:02:35 ID:jr9PriYo
新終末編・焔『238』

─────────────────
──大阪

PM9:55


スタッ

ツバサ「おつかれさま」

ハグカナーン「ツバサちゃんもお疲れ」

吸血鬼穂乃果「生きてたみたいね、しぶといやつだこと」

ツバサ(ラミエルの消滅を確認し、私が転移場所に戻るとハグカナーンと吸血鬼穂乃果が揃っていた)

ツバサ(街に残っているのは役目を終えた白線とラミエルのビームが抉った破壊の跡だけ)


ハグカナーン「ツバサちゃんが一番危ない役引き受けてくれて助かったよ」

ツバサ「いやいや、土壇場でヘイトをそっちに向けちゃったは私のミスだわ」

ツバサ「もっと確実に引きつける方法を考えてれば良かったかも」 

ハグカナーン「まぁまぁ、みんな無事だったし結果的にはオッケーだよ」


真姫『もしもーし、聞こえてる?』
 
ハグカナーン「わっ! 聞こえてるよ聞こえてる、そういえば繋ぎっぱなしにしたままだった」

真姫『こっちでもラミエルの消滅は確認できたわ、センサーを見る限り周囲に他の使徒の反応もなし』

ハグカナーン「ほっ」

ツバサ「この後はどうすればいい?」

真姫『安全なとこで待機しててもらえばこっちから迎えに行くわ』

真姫『京都から大阪ならそれほど時間もかからないでしょう』

ツバサ「助かる」

吸血鬼穂乃果「やっと高貴な私に似つかわしくない徒歩での移動から解放されるってわけね」


ハグカナーン「その後は……九州?」

真姫『一応ね、敵がどんな形で攻めてくるか分からないから完全に合流するかは協議中だけど、もしもの時に駆けつけられる距離には詰めていたい』

真姫『向こうは今のところ優勢、第2第3のサブゲートガーディアンも撃破したみたいだから今すぐピンチってことはないだろうけど』

吸血鬼穂乃果「へぇ〜、中々やるじゃない」


真姫『なんでも>>479が活躍してるみたい、敵と相性が上手く噛み合ってるとか』

479名無しさん@転載は禁止:2019/11/30(土) 06:36:58 ID:.6p0umfs
ほのキジ

480 ◆WsBxU38iK2:2019/12/01(日) 03:23:57 ID:QZRGDRBA
真姫『ほのキジが活躍してるみたい、敵と相性が上手く噛み合ってるとか』

ハグカナーン「ほのキジ……?」

ツバサ「あの合成穂乃果ね」


ハグカナーン「合成穂乃果……確か動物と穂乃果因子を掛け合わせて生まれた穂乃果だよね」

ハグカナーン「亜種穂乃果である吸血鬼ちゃんの動物バージョン的な?」

吸血鬼穂乃果「……あのねぇ嫁」

ハグカナーン「嫁とは」

吸血鬼穂乃果「私の眷属ハーレムの一員になるならハッキリと教えておくけど、私とそこらの穂乃果を同一視するのはやめておきなさい」

吸血鬼穂乃果「ああいう因子が人の方向性を得ただけの存在から私は逸脱したの」

ハグカナーン「はあ……」

吸血鬼穂乃果「白い魔法使いから奪った賢者の石、それに平行世界のせいは――――」

ツバサ「ストップ」サッ

吸血鬼穂乃果「なによ」


ハグカナーン「どうしたの?」

ツバサ「ちょっとこれと話したいことあるからあっちで話してくる、真姫さんと打ち合わせ続けといて」

ハグカナーン「う、うん」


ザッ 

ザッ

ツバサ「吸血鬼穂乃果、そのことはまだ秘密にしておきなさい」

ツバサ(私はハグカナーンから少し離れ、吸血鬼穂乃果の耳元で囁くように忠告する)

吸血鬼穂乃果「……何故?」

ツバサ「確かにあなたは進化した、亜種穂乃果の域を超えて、Neo穂乃果と同等と言えるほどの力を手にした」

ツバサ「けれど聖杯は更にそれを超える力……どんな火種を生むか分からない」

吸血鬼穂乃果「だから隠しておけと」

ツバサ「そう、その力を使わざるを得なくなる時までね」



吸血鬼穂乃果「まぁ……良いけど」

ツバサ「分かってくれたようで何よりだわ」

吸血鬼穂乃果「でもあの黒い玉にはバレてたみたいよ」

ツバサ「え……ええっ!?」ガバッ!

吸血鬼穂乃果「うるさいうるさい、大声を出すな肩を掴むな」バッ!

ツバサ「どういうことよ?」


吸血鬼穂乃果「記憶世界から黒い玉に入ってこっちに転送されたでしょう、あの時に私だけに聞こえる声があったのよ」

吸血鬼穂乃果「なんでも指定危険物……要は次元管理局が次元を揺るがす危険な諸々と定めてるリストに聖杯が引っかかったみたい」

ツバサ「それで?」

吸血鬼穂乃果「本来なら拘束案件だけど、今回は担当の人員がいなかったらしく緊急措置が施されたわ」

ツバサ(そう言って吸血鬼穂乃果は腕を上げて手首のところを見せる)

ツバサ(そこにはホログラム式のタグのようなものが浮かび上がっていた)


吸血鬼穂乃果「ま、担当の人員がいないって記憶世界だから当たり前なんだけど、あの黒い玉には分からないみたいねえ」

ツバサ「そのタグは危険物を保持してる人を認識したり追跡したりする機能があるのかしら」

吸血鬼穂乃果「ええ、それに加えて>>481


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