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>>2「>>2の3分クッキングの時間だよ!」 PartⅩⅩⅦ

1 ◆WsBxU38iK2:2019/04/30(火) 01:37:23 ID:sNQm8kGc
安価スレのようなそうじゃないよう
なSSスレ


前スレ(ⅩⅩⅥ)
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/10627/1531398039/

前前スレ(ⅩⅩⅤ)
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/10627/1520423523/

前前前スレ(ⅩⅩⅣ)
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/10627/1513250979/

前前前前スレ(PartⅩⅩⅢ)
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/10627/1507460469/

前前前前前スレ(PartⅩⅩⅡ)
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/10627/1501931181/

前前前前前前スレ(PartⅩⅩⅠ)
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/10627/1496660857/

前前前前前前前スレ(PartⅩⅩ)
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/10627/1491735745/

前前前前前前前前スレ(PartⅩⅨ)
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/10627/1487495156/

前前前前前前前前前スレ(PartⅩⅧ(再々))
http://karma.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1486897355/

280名無しさん@転載は禁止:2019/08/30(金) 06:14:54 ID:TGtOXt.I
お米の事しか考えられなくなる

281 ◆WsBxU38iK2:2019/08/31(土) 05:04:12 ID:UKQFULN6
花陽「私の妖気の炎に触れた相手はお米のことしか考えられなくなる!」

凛「……っ!」ドクンッ!

花陽「はぁああああああああ!」

凛「んっ!んぐううううううううっ……!」


花陽(興奮を覚まさせるには早く絶長へ持っていくに限る)

花陽(凛ちゃんを腕と足で抱きつくように拘束して妖気の炎を纏わりつかせ、凛ちゃんの下半身を中心に快感を増幅)

ギュゥゥンッ!

花陽(一気にイかせる!!!!)

ドッ!!!!!!!!

凛「んっ……んあっ、ああああああああああああああああああああにゃっ!!!」

ビクンッ! ビクビクビクビクビクンッ!!


凛「にゃぁぁぁ……」


パタンッ









花陽「ふぅ……これでよしと」

凛「……ぅ……ぅぅ」

花陽(凛ちゃんは私の妖気の炎で盛大に絶頂に達した後、気持ち良さそうな顔で気絶した)

花陽(今は私の胸に顔を埋めながら、まるで眠ったかのように倒れている)

凛「お……米…………好き……にゃ……」

花陽(あ、もちろんお米のことしか考えられなくなる効果も付与済みだよ)



花陽「無事に凛ちゃんは落ち着かせたし後は何をしよう」

花陽「起きるのを待って上層に戻るか、それとも真姫ちゃんを追いかけに行くか、通信機で何かやることないか聞いてみるか」

花陽「ふーむ……>>282

282名無しさん@転載は禁止:2019/08/31(土) 05:52:16 ID:kEZpB2E6
追いかける

283 ◆WsBxU38iK2:2019/09/01(日) 02:08:46 ID:g7tDd8hA
花陽「……うん、やっぱり真姫ちゃんを追いかけよう!」

スッ

花陽「凛ちゃん、ここで待っててね」

花陽(さすがに通路の真ん中に寝かせておくのは気が引けるので意識を失ったままの凛ちゃんを引っ張って壁際へ)

花陽(私が着ていた上着をかけて壁に寄りかからせておく)


花陽「真姫ちゃんが走っていったほうは……」

クンクンッ

花陽「あっちだ!お米の匂いがする!」

タタタタッ


ピピピッ

花陽「……む?」

花陽(走ってる途中で通信機がなったので走りながら耳に当てる)

花陽「もしもし」

心ノ穂乃果『花陽ちゃん?穂乃果だけど凛ちゃんを迎えに行ったんだって?』

花陽「あー……うん!色々あったけど凛ちゃんは無事だよ!」

花陽「今は寝てるけど興奮状態も収まったし、起きたら一緒にそっちに戻るから」

心ノ穂乃果『わかった……って花陽ちゃん今急いでるの?走ってる音するけど』


タタタタッ

花陽「うん、ちょーっと真姫ちゃんを追いかけててね……」

心ノ穂乃果『なるほど、だったら新情報が来たから走りながら聞いておいて』

花陽「うん?」

心ノ穂乃果『私が花陽ちゃんに通信する直前に九州組から入った情報なんだけど』

花陽「九州組……というと浮遊塔の方だよね?確かムスペルゲートに向かってるとか」


心ノ穂乃果「そう、今は浮遊塔でそのゲートが見えるとこまで着いて偵察してるらしいんだけど、>>284

284名無しさん@転載は禁止:2019/09/01(日) 07:27:58 ID:W7.0lnJw
暇すぎなう

285 ◆WsBxU38iK2:2019/09/02(月) 05:10:10 ID:oQAtmQd6
心ノ穂乃果『偵察してるらしいんだけど『暇すぎなう』って返信が来た』

花陽「ひま?」

心ノ穂乃果『ゲートの近くまで来て見張ってても全然動きがないんだって』

心ノ穂乃果『肝心の門番はどこかに行って戻ってこないし、他のムスペルの姿も見えない』

心ノ穂乃果『かと言ってさすがに攻撃したら気付かれるだろうし、こっちとタイミング合わせるために待機中らしいよ』

 
花陽「そっか……やっぱりドスケーブ城の京都突入と浮遊塔側のゲート破壊は同時にやるんだね」

心ノ穂乃果『うん、その方がムスペル側分断されるだろうから』

心ノ穂乃果『本隊の集まる京都とムスペルヘイムへの穴が開いてるゲート』

心ノ穂乃果『そこを同時に叩くことで一気に戦いを終わらせようって作戦かな』


心ノ穂乃果『詳しい段取りはまた上に来たら説明するから、また後でね』

花陽「うんっ」

ピッ


花陽(通信を切って私は真姫ちゃんの追跡に戻る)

タタタタッ


花陽「それにしても……いよいよムスペルとも最後の戦いって感じがしてきたな」

花陽(さっきアナウンスで城の周りにいた中ボスムスペルは消滅したと言ってたし、となれば後は京都まで一直線だ)

花陽(城と塔が互いに攻略目標が見えるとこでスタンバイしている、あとはそこから隙を見て動くだけ)

花陽(そして動いたら最後、全面対決が始まるだろう)



花陽「勝てる……のかなぁ」

真姫「――――勝つのよ、だからこうしてお米を撒いたりしてるんじゃない」

花陽「わっ!」ザッ!

花陽(独り言に反応されて私は思わず足を止める)


花陽「真姫ちゃん!?」

真姫「そっちから追いかけて来たくせに何で花陽が驚いてるのよ」

花陽「いや……考え事しながら走ってたからつい―――」


花陽(どうやらいつの間にか真姫ちゃんに追いついていたらしい)

花陽(真姫ちゃんがお米をばら撒いていたところは>>286)

286名無しさん@転載は禁止:2019/09/02(月) 06:02:23 ID:LmUpsmXM
重々しい雰囲気

287 ◆WsBxU38iK2:2019/09/03(火) 03:54:26 ID:MgMyI/ZU
花陽(真姫ちゃんがお米をばら撒いていたところは重々しい雰囲気のところだった)

花陽(医療エリアから少し離れたところにあるそこは薄暗い円形のホールのようで、清潔感のある明るい白を基調とした医療エリアとは対象的だ)

花陽(ホールの壁際には松明を模した照明が等間隔で飾られていて、奥には何かの祭壇みたいなものが安置されていて、荘厳な雰囲気が醸し出されている)


花陽(真姫ちゃんは丁度のその祭壇の前に立っていて、ホールに足を踏み入れた私を振り返って見たところだった)


花陽「ここは?」

真姫「端的に言えば儀式場ね」

真姫「オーダーメイドで新しく作ってもらったエリアで各種魔術的な意匠を含んでるけど……まぁ詳しく説明しても分からないだろうから省くわ」

真姫「祈祷の効果を最大限に発揮できる場所と理解してもらったら助かる」

花陽「……なるほど」


花陽「それで今行ってる祈祷っていうのがお米をばら撒く必勝祈願なんだよね」

真姫「ええ、お米は豊穣の象徴、特に日本だとそっち系の神様にアクセスしやすいキーアイテムだからね」

真姫「お神酒としての日本酒だってお米から醸造されるものだし」

花陽「確かに」


真姫「私の狙いはこの儀式場でお米を一定の法則に従って撒くことで神様の加護を得ること」

真姫「上手く行けばムスペルと戦う上で心強い後押しになる」


花陽「おお!それで上手く行きそうなの?」

真姫「そうねぇ……>>288

288名無しさん@転載は禁止:2019/09/03(火) 05:19:14 ID:MuXGlRWA
成功したと思っているが敵を強化していた

289 ◆WsBxU38iK2:2019/09/04(水) 03:09:04 ID:O456ELiw
真姫「そうねぇ……今の所は問題なさそうだけど――――」

ガクンッ!

ドドドドドドドドドドドドッ!!


花陽「えぇっ!」

真姫「なっ!?」


花陽(突然城を襲った激しい振動に私たちは同時に驚く)

花陽(地震……いやそんなわけがない、ここは空中の城なんだ)

花陽(それが揺れるということは、それだけ空間が――大気が鳴動している)


真姫「本部!何が起こってるの!?」

花陽(真姫ちゃんは間髪入れずにスマホを取り出した)

花陽(たぶん電話をかけた先は上層の作戦指揮室、穂乃果ちゃんのところだろう)


心ノ穂乃果『分かんない!ただ、京都方面からでっかい赤い光が空に向けて伸びてるの!』

真姫「光?」

心ノ穂乃果『うん!放射状?扇状?とにかく空に向かってばーって広がってる!』

にこ『その光の帯に人影っぽい何かが映しだされてるわね』
 
ロトーチカ『ふーむ……熱で生み出した蒸気のスクリーンに光を投影してるのかしら、ムスペル式のプロジェクターってとこ?』

ことり『あ!何か喋るみたいだよ!』


キィーーーーーーーーンッ!

花陽「……っ!」

??『無駄だ』

花陽(耳鳴りのような感覚と共に声が聞こえてくる)

花陽(念話システムを使ったテレパシーとは違う、何枚もの壁を貫通して頭を直接揺さぶってくる超物理的な干渉)



??『これは警告だ』 

??『この地の龍脈は我らムスペルが掌握し調律した、既に貴様たちの知るものではない』

??『故に龍脈やそれに類する地の神を利用した術式は無効、それどころか我らを強化をするものと心得よ』


真姫「なっ……!」

花陽「じゃあ真姫ちゃんのこの儀式も相手の強化に利用されてるってこと!?」 


??『我は>>290、この国の古都にて貴様たちを迎え撃つものなり!』

290名無しさん@転載は禁止:2019/09/04(水) 05:46:46 ID:HMImaMeU
イフリート

291 ◆WsBxU38iK2:2019/09/05(木) 01:02:08 ID:u0nI5.ec
イフリート『我はイフリート!この国の古都にて貴様たちを迎え撃つものなり!』

ドドドドドドドドドドドドドドドッ!


花陽(その声の主が言葉を紡ぐたび、城全体が激しく振動する)


花陽「イフリート……どこかで聞いたことあるけど……なんだっけ?」

真姫「そうね、ざっくり言えばアラブ圏の伝承に出てくる魔神や精霊の一種かしら」

真姫「そいつらはジンって呼ばれていて、分かりやすいとこならアラジンに出てくるランプの精、あれもジンなのよ」

花陽「へーあれが」

真姫「ジンの中にもマリードやシャイターンなんて種類が色々あって、その中の1つがイフリート」

真姫「火から生まれたとか火を操れるとか伝承は元々あったけど、炎の怪物みたいなイメージがハッキリついたのはゲーム等の近年の創作の影響が強いでしょうね」


花陽「ふむ……じゃあ今喋ってるのもジンの一種ってことなのかな……」

真姫「いや、どうだろう、北欧系の神格がわざわざアラブ圏の精霊を召喚して使役するとも思えないのよね」

真姫「個人的にはムスペルの幹部クラスがイフリートの名だけを冠してるだけの可能性が高いと思う」

真姫「万人にイメージされやすい象徴ってのはそれだけで魔術的に強い意味を持つからね」

花陽「……なるほど」


真姫「それより儀式よ儀式!まさか逆に敵に利用されるなんて……!」

真姫「京都の龍脈をいじっていたとは報告が来てたけど、まさかここまでとは――――」



イフリート『我の力を目にしても進むというのなら!それもまた良し!』

イフリート『既に古都の大半は我が火の軍勢の手に陥ちた、取り返したくば挑んでくるがよい』


イフリート『その時こそ!この炎神が貴様らに本物の絶望とやらを味わわせてやろうぞ!!』

ドンッ!!


─────────────────

浮遊ドスケーブ城
・外部
・医療エリア〜儀式場

PM8:00〜8:15 新終末編・焔『229』了

292 ◆WsBxU38iK2:2019/09/05(木) 01:03:20 ID:u0nI5.ec
というわけでここまで

新終末編・焔『230』に続く
かもしれない

293 ◆WsBxU38iK2:2019/09/06(金) 00:52:11 ID:.kHNyZWw
新終末編・焔『230』

─────────────────
──浮遊ドスケーブ城上層・作戦指揮室

PM8:15


海未「はぁ……はぁ……」

海未(京都の空がさらに赤く燃えていた)


海未(全速力で急ぎ作戦指揮室まで戻ってきた私は、ゆっくりと息を整えながら窓の方へ歩いていく)

海未(外を見渡せる大きな窓の前では作戦指揮室にいた皆が息を呑んでその光景を眺めていた)


心ノ穂乃果「…………」

ことり「…………」

ゴォォォォォォォッ!!


海未(イフリート――暗い夜空に映し出されたそれは、先程まで切り結んでいたムスペルより明らかに格上の存在)

海未(あの口ぶりからしておそらく京都にいるムスペルでトップを任されている可能性が高い)


海未(しかし……この局面に来て肝心のスルトがまだ姿を見せていないのが気になりますね)

海未(京都が最終決戦の場になるならイフリートではなくスルトが出てきてもいいはず)

海未(京都ではなく九州のゲートにいるという考えも……いや、それにしてはゲート周りがもぬけの殻すぎます)

海未(何かを狙っているのか……気になりますが今は状況確認が優先)


海未「ロト!潜入してる希たちに連絡を取れますか?」

ロトーチカ「もうしてる、皆に聞こえるように切り替えるわよー!」

ピッ

希『こちら希、なんか大変なことになったなー』

希『一応潜入組は一人も欠けずに無事やで』


海未「希、そちらは今どこに?」

希『そうやな……たぶん京都の>>294

294名無しさん@転載は禁止:2019/09/06(金) 05:50:25 ID:68UttAik
金閣寺らへん

295 ◆WsBxU38iK2:2019/09/07(土) 02:25:17 ID:bB2QZBIY
希『金閣寺らへんやな』

海未「金閣寺ですか……ロト!マップを!」

ロトーチカ「ほいほい」ピッ


海未(巨大モニターに拡大された京都の地図が表示され、金閣寺の場所がマークされる)

海未「あの辺りですね……」


ロトーチカ「というか元々MALINEがインストールされてるスマホの位置情報は取得できるようになってるはずなんだけどねー」カタカタッ

ロトーチカ「ジャミングでもされてるのか自動で位置情報掴めやしない」タンッ

ロトーチカ「イジられた龍脈のせいで念話システムが上手く働いてないのか……異能が撹乱されるならいっそのことGPSを組み合わせたり……うーん……」


希『ん?報告続けて良い感じ?』

海未「はい、お願いします」

希『了解』

希『今は金閣寺の辺りに潜んで様子を伺っている最中や』

希『前に報告した通り、京都市内は百鬼夜行の大騒ぎ、多種多様なムスペルが練り歩いてる』

海未「人間は?」

希『普通の人間の姿は見えへんな』

希『京都にも異能存在に対処する組織はあるはずやからそこが先んじて逃していたか、もしくは全て支配されて屈服させられたか』

希『どっちにしても今の京都はムスペルの天下と言って間違いない、往来を堂々と歩くことさえできやしない』


希『さらにそこにダメ押しするかのように……あの宣言や』

海未「イフリートですね、こちらでも観測しました」

希『ああ、あの瞬間だけ街を練り歩くムスペルたちの動きが止まってジッとイフリートの方を見ていて』

希『やつが京都におけるムスペルの実質的な支配者と見て間違いないやろう』

海未「おそらくそうでしょうね」


希『そんでそのイフリート、やつが映し出されていた天然のスクリーンあったやろ?』

希『あの根本らへんなんやけど、>>296

296名無しさん@転載は禁止:2019/09/07(土) 06:16:12 ID:RokxbobA
ワープポイントが現れてる

297 ◆WsBxU38iK2:2019/09/08(日) 03:14:51 ID:V6KmGWyA
希『あの根本らへんなんやけど……あそこワープポイントがあるんよ』

海未「ワープポイント?確かですか?」 

希『間違いないで』

希『鳥に変幻したSID穂乃果ちゃんとかもめちゃんに実際に見てきてもらったからな』


SID穂乃果『飛んで空から見てきたよー!』

かもめ『あくまで気付かれない程度の高度からだけどね』

海未(電話口の声が希ではく2人のものに変わる)


かもめ『私の目が正しければあのスクリーンの下には円形のワープポイントが存在した』

かもめ『その中からワラワラとムスペルの増援が湧いて出てくるのもしっかり見たよ』

SID穂乃果『結構な数が出てきてたよね〜』



海未「ムスペルのワープポイント……なるほど!そういうことですか!」

ことり「どういうこと?」

海未「ムスペルたちの移動経路が分かったということですよ」

海未「本州の端から中国地方を通り京都まで進軍したにしては道中でのムスペルの影が薄すぎる、全くといっていいほど目立たなかった」

海未「しかも今の京都市内には百鬼夜行と形容されるほどの大軍がいる」

海未「例え隠密重視で進軍したとしてもこれだけの数を隠し通すのはほぼほぼ不可能です」
 
ことり「あー、考えてみるとそうだよねぇ」


海未「それを可能にするのがワープポイント、そして――――」

ロトーチカ「必要なのはワープポイントを作動させるための道、龍脈をいじったのはこのためでもあったってことか……!」

海未「はい」コクンッ
 
海未「以前私たちが利用していたドスケーブ城地下にあった転移システム、あれは日本に張り巡らされた地脈を利用したシステム」

海未「私たちにできるのなら敵だって同じことができる、何も不思議なことはありません」


かもめ『……で、空から京都市内を偵察して分かったことがもう1つ』

かもめ『>>298

298名無しさん@転載は禁止:2019/09/08(日) 07:44:08 ID:Wsaz2DIc
ムスペル達はやる気なさそう

299 ◆WsBxU38iK2:2019/09/09(月) 05:08:34 ID:Y0EJ4QC6
かもめ『どうもムスペルたちはやる気なさそうなんだよね』

かもめ『統率が取れてないというか、数は死ぬほどいるけど目的もなくいたずらに彷徨ってる感じ』

海未「ほう………巡回や哨戒といった様子ではなく?ただ歩いてると?」

かもめ『ええ』コクンッ


海未「なるほど、それこそ魑魅魍魎がただ練り歩く――百鬼夜行という言葉そのままの光景ですか」


かもめ『土地における敵の制圧面積が多いし、行動パターンがランダムで無理ゲーに思えるけど、逆に各エリアごとの警戒度はそこまででもない』

かもめ『上手く道ができたところを狙って進めば見つからずに行ける可能性は高いんじゃないかな』

かもめ『つけ入る隙は十二分にあると思う』

海未「なるほど……」


希『それって人数的にはどうなん?大勢で移動しても大丈夫?』

かもめ『もちろん手早く隠密なら数が少ないほうがいいよ』

かもめ『今の人数で行けないことはないけど、それだけ時間はかかってしむう』

希『そっかー、さすがにチーム分けなきゃアカンよなぁ』


海未「……分かりました、ではそちらで部隊を分ける前にこれだけ決めておきましょう」

希『これとは?』

海未「私たち、浮遊ドスケーブ城が京都に攻撃をしかけるタイミングです」

希『……ふむ』


海未「我々としては今すぐ仕掛けて陽動役を担っても構いませんし、そちらがワープポイントを調べるまで待っても構いません」

海未「どういったタイミングで城側の支援攻撃が必要かの判断は現場に任せます」

ロトーチカ「一応いつでも動けるように準備だけはバッチリしておくわ!」


希『ありがとう、心強いで』

希『しかしタイミングか……せやなぁ、今のところ考えてるのは>>300

300名無しさん@転載は禁止:2019/09/09(月) 05:42:57 ID:tqeeRXtY
直感を信じて

301 ◆WsBxU38iK2:2019/09/10(火) 01:42:09 ID:YCtUjA2g
希『……いや、やっぱり今のところうちらの方で判断できることはないわ、確かな情報が少なすぎる』

希『今すぐに攻撃をしかけてってほど切迫した状況やないけど、いざとなったら直感を信じて突入してくれとしか言えないかな』

海未「そうですね、こちらも京都から一定の距離を保ったまま独自に探ってみます」

海未「ではまた何かあれば」

希『また』

ピッ


心ノ穂乃果「……ん?結局ワープポイントをなんとかすればいいの?」

海未「当面の目的はそうですね」

海未「いくら訓練されていない烏合の衆とは言え神話生物に変わりはありません」

海未「このまま際限なく数を増やされ続けては時間と共に攻めづらさは増していく」

海未「ですからワープポイントをどうにか閉じて、尚かつ……」

にこ「あのイフリートととか言うやつをぶっ倒す!そうよね」

海未「はい」コクンッ


海未「増援と指揮官を失えば京都のムスペルたちはバラバラ、あとは神性特攻持ちの神鎮めの唄スプリンクラーで雲散できる」

海未「逆に一番まずいのは希たちの行動がイフリートに露見して直接攻撃を受けること」

海未「そうなればワープポイント付近の警備は一層強固になるでしょう」


にこ「ワープポイントだけじゃなくて外部への警戒も固くなるんじゃない?」

ロトーチカ「そうね、やつらか京都を中心に根を張る巨大な龍脈を握っているのは事実」

ロトーチカ「今は防衛のために使ってるけど積極的排撃に利用すればどうなるか想像がつかない」


海未「どちらにしろここが対ムスペル戦の終盤の分水嶺……」

グッ


海未「頼みましたよ――――潜入班!」


─────────────────

浮遊ドスケーブ城上層・作戦指揮室

PM8:15〜8:22 新終末編・焔『230』了

302 ◆WsBxU38iK2:2019/09/10(火) 01:42:24 ID:YCtUjA2g
というわけでここまで
短めですが一区切り

次から京都内部の話かな

新終末編・焔『231』に続く
かもしれない

303 ◆WsBxU38iK2:2019/09/11(水) 02:27:02 ID:HJLnI9Ps
新終末編・焔『231』

─────────────────
──金閣寺周辺

PM8:20


ピッ

希「……て感じらしいわ、うちらもそろそろ待機から動かんとな」

かもめ「そうだね」

希(海未ちゃんとの通信を切って皆の方に向き直る)


希(赤く染まる空の下、うちらは金閣寺からそう遠くない木の影に身を潜めていた)

希(近くにいるのはうちの他に神戸にいた面子で、かもめちゃん、梨子ちゃん、コトーリさん)

希(ハグカナーン、マザー、別世界穂乃果ちゃん、SID穂乃果ちゃん、SID海未ちゃん)

希(それと……)


ツバサ「やっと合流できたと思ったのにまた移動か、忙しいわね」

希(神戸で一度別行動を取っていたツバサさん、英玲奈さん、吸血鬼穂乃果たちもついさっき合流したところやった)


希「ごめんね、神戸富士から降りた後も色々あったんやろ?」

ツバサ「うーん……色々と言ってもそこのモブに手伝ってもらったし、そこまで大変なこと少なかったわよ」

モブ「はいっ」


希(モブ……ツバサさんたちが神戸富士で出会った謎の存在)

希(聞くところによればアイデンティティーに関する情報が自動的に隠匿される一種の呪いのようなものにかかってるらしい)

希(正直言って良く分からんけど……協力的なのは態度から見て取れる)

希「ま、少なくともうちが捕虜にしている熱狂ムスペルよりはよっぽど素直や」ヤレヤレ

熱狂ムスペル「うっさい!」ガルルッ



ツバサ「唯一大変だったことと言えば気絶したままだった士郎とギルガメッシュの件かしら」

ツバサ「あの2人は山を降りた後、>>304

304名無しさん@転載は禁止:2019/09/11(水) 06:21:00 ID:YdeL40uc
仲違いした

305 ◆WsBxU38iK2:2019/09/12(木) 01:44:54 ID:1Qy06Pjs
ツバサ「あの2人は山を降りた後、そうねぇ……端的に言えば仲違いしたわ」

希「仲違い?」


英玲奈「元々仲が良かったわけでもないがな」

ツバサ「だから端的にと言ったでしょ」


ツバサ「山を降りた後の道中であの2人は気絶から目覚めたの」

ツバサ「場所はちょうど兵庫を出るか出ないかの辺りだったかしら」

ツバサ「英玲奈の言う通り元は敵対してたくらいだから、捕縛されたまま大人しくしてるなんてことは無かった」

ツバサ「起きてすぐにモブが施した拘束を解こうと暴れだしたわ」

モブ「抵抗がそれはそれは激しくて……私も運ぶのを手伝っていたのですが思わず落としてしまいました」



ツバサ「そこからは流れで解放、そしてサヨナラ、拘束を解いてる間の口論なんかは不要だから略すわよ」

希「逃して良かったん?」

ツバサ「別に私たちに強く引き止める理由はなかったし、無理に同行させて揉め続けたら面倒でしょ」

ツバサ「士郎たちにとっても聖杯戦争が一応の終結を見せた今、私たちに拘る意味はない」

ツバサ「お互いにここで争うのは不毛だと判断して分かれる流れになったの、特に打ち合わせたわけじゃなくね」

希「なるほど……」



吸血鬼穂乃果「くくくっ、間抜けよねぇ、お求めの聖杯は私の"中"にはまだあるってのに気づかないんだから」

ツバサ「そんなの知られたらまた戦い始めるじゃない」

吸血鬼穂乃果「ええ、そして返り討ちするわよ」

ツバサ「はぁ……だから気づかれる前にさっさと分かれたんだって」



英玲奈「そういえば、やつら分かれる時に最後に何か呟いて去っていった気がしたな」

英玲奈「確か……>>306

306名無しさん@転載は禁止:2019/09/12(木) 06:11:20 ID:4Jl3pUU2
闇に飲まれよ!

307 ◆WsBxU38iK2:2019/09/13(金) 01:55:48 ID:dVc8sf1s
英玲奈「確か……『闇に飲まれよ!』とか言ってたな」

ツバサ「そういえば言ってたわね」

かもめ「なに?厨二病……?」

英玲奈「それこそ異能や英霊が実在する世界で今更な話だろう」

希「せやなぁ」


かもめ「じゃあ結局なんなの?」

ツバサ「私にも闇に飲まれよの意味は全然分からない」

ツバサ「けど分かれる際に2人とも決めポーズ取りながら言ってたからそんなに悪い言葉では無いと思う」

ツバサ「こうビシッと、わりとノリノリで」ビシッ

かもめ「ふーん」



梨子「とにかく、今決めなきゃいけないのはワープポイントの場所に行くチームですよね」

希「ああ、せやな」

希(脱線しかけたところで梨子ちゃんが話を戻してくれる)


希「さすがにこの大人数で動くのはよろしくないからな」

希「さらに潜入に長けたチームを編成して先に送り込む必要がある」

梨子「その点で考えると……動物に変幻できるSID穂乃果さん、物体をすり抜けられるSID海未さん、この2人は必要でしょう」

梨子「加えて狙撃兵としての優れた感覚を持ってるかもめさんも……」

かもめ「私はどっちでも構わないよ」

梨子「ではお願いします」

かもめ「はーい」



希「あとは……せや、ムスペルの内情を知っとる人も必要やよね?」

希「というわけで熱狂ムスペル、そして熱狂ムスペルの弱みを握れる(物理)のうちがセットで行くで」

熱狂ムスペル「えー?私もー?」

希「い・い・か・ら」ワシワシ

熱狂ムスペル「うっ……はいはい分かりました、どうせ逆らえないんだから従うわよ」

希「うむ、良い子良い子」



梨子「これでSIDコンビ、かもめさん、熱狂ムスペルと希さんの合計5人ですね」

梨子「先行するチームはこのくらいで良いでしょうか?それとも追加で誰か加えます?」

希「>>308

308名無しさん@転載は禁止:2019/09/13(金) 06:08:03 ID:HpGqmAm.
5人で大丈夫

309 ◆WsBxU38iK2:2019/09/14(土) 03:37:01 ID:uGNOQA1M
希「そうやな……5人で大丈夫やと思う」

希「梨子ちゃんたちはうちらが探って何か分かるまでここで待機しててくれる?」

梨子「分かりました」

梨子「心配で付いていきたいのは山々ですけど……私も皆さんと一緒に待っています」


ツバサ「そんなに心配ならメノノリでも出して同行させておけば?私も分身体なら出せるし」

希「いや、それはやめておいたほうがいい」

希「うちらも危険だけどこの仮拠点だって京都市内、危険なことに変わりはないんや」

希「万が一敵に潜伏場所がバレて襲われるような事態になった時に2人が万全でないのは避けたい」


吸血鬼穂乃果「私もいるのに?」

希「いてもや、念には念をは大事なんやで」

希「敵がどんな攻撃を仕掛けてくるか分からん、場合によっては分断されるかもしれん」

希「そうなった時に個々のポテンシャルが落ちてたらアカンと思うんよ」

吸血鬼穂乃果「まぁ……そう言われたらそうねぇ、私もいちいち下等種族を率先して守る気はないし、自己防衛してくれるにこしたことはないわ」



希「……よし、てなわけで異論無いようならこの5人で行ってくるわ」

マザー「おう!気をつけてなー!」

ハグカナーン「仮拠点の防衛は任せておいて」

コトーリ「いってらー」フリフリ



希「じゃあ早速道程の話や」クルッ


希「かもめちゃん、偵察した感じだとどういうルートになりそうなん?」

かもめ「そうだな、まずこの場所を出たら>>310

310名無しさん@転載は禁止:2019/09/14(土) 07:21:01 ID:NfgsVi1E
敵の動きに規則性があるからなるべく敵を避ける

311 ◆WsBxU38iK2:2019/09/15(日) 04:21:44 ID:dQ.6qjF6
かもめ「敵の動きに規則性があるからそれを読んでなるべく敵を避ける」

かもめ「そうして一歩ずつ着実に進んでいくのが良いかな」

希「規則性って?どんなやつ?」

かもめ「それは道すがら説明する」

希「オーケー、しばらくはかもめちゃんの指示で歩いたほうが良さそうやな」


SID穂乃果「じゃあ行こー!」

SID海未「はいっ」


タタタタッ


かもめ「まずはこっちに――――」







希(私たちは金閣寺周辺の茂みから出て、かもめちゃんの指示で適切なルートを通って進んでいく)

希(ムスペルの動きを見て、隙を見て路地を進み、角を曲がり、また隙を伺って進む)

希(どういう理屈は分からんけど上手くムスペルたちと出会わず京都市内の中心の方へ近づいていってる)


徘徊ムスペル1「オオオォォォォ」

徘徊ムスペル2「オオオォォォォォォォ」

ズルズル ズルズル


SID穂乃果「おー、すごいすごい!ムスペルたちに気づかれるかもってギリギリのとこで向こうが角を進路を変えるねー!」 

SID海未「しっ……あまり騒がないでください、見つかったらどうするんですか」グイッ

SID穂乃果「むぐっ」


希「しかしまぁ、見つかったところであのムスペルならどうにかなりそうやな」

希(うちは路地の角から少し頭を出して通り過ぎていくムスペルを観察する)

ジーッ

希(このへんを徘徊してるのはそれこそ炎が蠢く縦長の何かになっただけのような生物)

希(目や口のような器官は見当たらず、どこからかうめき声を上げながら体を引きずって歩いてる)


希「熱狂ムスペルは服着てるし人間っぽい雰囲気もあるけど、他はそんなこと無いんやね」

熱狂ムスペル「当たり前でしょ、私みたいな名前持ちとあんな雑魚たちを一緒にしないで」

希「名前か……確か名前があるのが上級ムスペルなんだっけ?」

熱狂ムスペル「そう、私たちムスペルは生まれた時は名もない炎、形なき不定の存在」

熱狂ムスペル「そこから名と役割を与えられることで自分の形と能力を獲得していくの」


熱狂ムスペル「特にスルト様から直々に名前を与えられた者は炎の巨人の傘下に相応しい力を手に入れる」

熱狂ムスペル「私もそうだし、おそらくあのイフリートってやつもそう」


希「イフリートねぇ……」ジロッ

熱狂ムスペル「何よ、そんな目で私を見たって知らないやつは知らないわよ」

熱狂ムスペル「敵の幹部が全員顔合わせしてると思ったら大間違いなんだから」

希「ほんまかなぁ……」


希(少し疑いは残るけど今は確かめるために尋問してる時間はない)


希「じゃあ逆に聞くけど、熱狂ムスペルが知ってる中で一番厄介な敵は誰なん?」

熱狂ムスペル「そうねぇ、この場にいたら最悪なやつで言うと……>>312

312名無しさん@転載は禁止:2019/09/15(日) 06:28:44 ID:aNnYfxOc
発狂ムスペル

313 ◆WsBxU38iK2:2019/09/16(月) 04:08:26 ID:bv93e5MA
熱狂ムスペル「発狂のムスペルかしら」

熱狂ムスペル「正直味方として一緒にいるのさえ嫌だったし、敵として相まみえるなんて考えたくもない……」

希「そんなに?」

熱狂ムスペル「そんなによ!」


希「そんなにかー、熱狂と発狂って似てるからどっちかと言うと気が合うのかと思ったわ」

熱狂ムスペル「そうよそこ、微妙に似てる部分も含めて嫌いなの」

熱狂ムスペル「良い?私の熱狂はちゃんと私がコントロール下に置いてる能力」

熱狂ムスペル「どんなに領域内のボルテージが上がって収拾不可能な暴動寸前まで行ってたとしても、私の意思1つで解除できる」


熱狂ムスペル「けど……あいつの“発狂”は違う」

熱狂ムスペル「周りを無差別に狂わせる発狂の炎は、炎を発生させている張本人でさえコントロールできていない」

熱狂ムスペル「いや……そもそもコントロールする気さえないんだ」

熱狂ムスペル「あいつは自分の発狂を容認して認識して、その上で目につく全てを狂わせていく……最悪なのよ……」

希「…………」ゴクッ


希(そう話す熱狂の表情にはどこか怯えの色が見え隠れしていた)

希(うちのワシワシにさえ強気に反抗していた熱狂がここまで弱気に嫌悪するなんて……)

希(発狂のムスペル、よっぽどな存在なんやろうな)



かもめ「希さんたち!来て!今ならこの通りを渡れる!」

希「はーい!」

希(どうやらかもめちゃんがまた移動のタイミングを見つけたらしい)

希(うちは熱狂と隠れてコソコソ話していた路地から出て、通りを渡るかもめちゃんたちの後ろをついていく)

タタタタッ


希「そうだ、知らんうちに近づいちゃって発狂ムスペルにご対面!ってのは困るし、今のうちに発狂ムスペルの外見の情報教えてくれる?」

希「情報共有しといたほうが皆も助かるやろ」

熱狂ムスペル「外見か……あいつは>>314

314名無しさん@転載は禁止:2019/09/16(月) 21:04:26 ID:4tJpBu0.
変幻自在で本当の姿は誰も知らない

315 ◆WsBxU38iK2:2019/09/17(火) 03:21:07 ID:vpP0iDPs
熱狂ムスペル「外見か……あいつの本当の姿は誰も知らないのよねぇ」

希「知らない?会ってるのに?」

熱狂ムスペル「言ってしまえば変幻自在、会うたびに全然違う姿になってるのよ」

希「ほう」


希「それは……あれか?能力で正体を隠してるとかなんかな」

熱狂ムスペル「いや、あいつの能力というよりあいつが纏ってる炎に付随する副次的な効果だから、意識的に使ってるわけではないと思う」

希「発狂の炎……ってやつ?」

熱狂ムスペル「そう、大概の生物は物体を見る時に反射した光を目の中でピントを合わせて像を結ぶでしょ?」

熱狂ムスペル「けれどあいつの纏った発狂の炎を直視するとそこに狂った像が結ばれるの」


熱狂ムスペル「私の蜃気楼みたいに光を屈折させて像をずらずなんて生易しいものじゃない」

熱狂ムスペル「アレは触れた光の性質さえ狂わして全く違うものへと変化させてしまう」

熱狂ムスペル「光、空間、物体、あらゆる概念に狂気を発症させる、それが発狂の炎なのよ」


希「なるほどねぇ、その炎越しでは発狂ムスペルの姿は見れないわけか」

熱狂ムスペル「そうよ、だから誰もあいつの姿を知らない」

熱狂ムスペル「もしかしたら自分自身でさえ……かもね」


希「しかし厄介やな……」

熱狂ムスペル「まぁ気配なら私が感知できる、あんな禍々しい気配間違えるはずがない」

熱狂ムスペル「近づいてきたらすぐに教えるようにするから」

希「助かる」


かもめ「……!待って!」バッ!

希「?」ピタッ

希(大通りを渡り終わったところで先頭のかもめちゃんが手を伸ばして後続を静止させた)


SID海未「どうしたのですか?」

かもめ「さっき偵察した範囲の中でここから先が一番の難所、一番通り抜けるのが難しいところだね」

SID海未「というと……」

かもめ「>>316

316名無しさん@転載は禁止:2019/09/17(火) 06:04:59 ID:4b/3zZ0Y
伝説の傭兵になりきるのよ

317 ◆WsBxU38iK2:2019/09/18(水) 01:57:38 ID:xZO92xBs
かもめ「単純に一番監視の目が多い」

かもめ「どのルートをどのタイミングで進んだとしてもムスペルの目に触れることになってしまう」

希「そんなに!?」

SID海未「なるほど、ではどう切り抜けましょうか」


かもめ「ふっふっふ、その策なら既にバッチリ考えてある!」

SID海未「……? やけに自信満々ですね、嫌な予感しかしないのですが……」

かもめ「今こそ伝説の傭兵になりきるとき!これでスニーキングミッション開始よ!」バッ!


希「これって……」

SID穂乃果「ダンボール?」


希(かもめちゃんが自信満々に渡して来たのはどこでも見るようなただのダンボールだった)

希(うちらが呆気に取られる間にかもめちゃんは自分の分のダンボールを組み立てて箱にしていく)

スッ スッ


SID海未「ええと……これは?」

かもめ「見て分からないの?ダンボール箱だよ」

SID海未「それは分かりますけど……」

かもめ「ダンボールを被ってれば敵兵に見つかることはない、これ傭兵界では常識だから」

SID海未「ハチャメチャですね傭兵界」


かもめ「信じられないならまずはそこで見てなさい」

かもめ「こうして箱を被って――――」

スポッ

かもめ「出撃!」

スタタタタタッ


希(ダンボールの中に入ったかもめちゃんは、しゃがんだ姿勢のまま道へと飛び出していく)

希(そこはムスペルたちが目を光らせている場所、普通ならあっと言う間に見つかって警戒されるはずやけど……)


かもめ「…………」タタタタッ

希(動く謎のダンボール箱に対しムスペルたちは>>318)

318名無しさん@転載は禁止:2019/09/18(水) 06:17:56 ID:zQPaA/Lg
特に気にするそぶりもない

319 ◆WsBxU38iK2:2019/09/19(木) 01:42:37 ID:21.Sb4rk
希(動く謎のダンボール箱に対しムスペルたちは特に気にするそぶりもない)

希「この何の変哲もないダンボールで本当に行けるんか……?」

SID海未「信じがたいですが効果は実証されてるようです、次は私が行きましょう」スッ


SID穂乃果「あ!海未ちゃんが行くなら私も一緒に行くよ」

SID穂乃果「こうやって小さな動物になれば――――」シュルルッ

ポンッ!

SID穂乃果「2人同時に箱に入れるでしょ?」スタッ

海未「確かに、いくら気づかれないといっても箱が少ないほうがリスクは減りますしね」


希(リスみたいな小動物になった穂乃果ちゃんが海未ちゃんの肩に乗り、そのまま1つのダンボールに入る)

海未「では!」

スタタタタタッ


熱狂ムスペル「残りは私たち2人か、どっちから行く?」

希「監視の都合上うちが最後やろ」

希「ダンボール被ってる間は視界が悪くなるし、敵が見張ってるエリアを進むからそう何度も後ろを振り返れない」

希「うちが先に行った先を狙ってひょいと逃げられたらかなわんからな」

熱狂ムスペル「はぁ……そう言うわよねぇ、分かったわ」スッ

スタスタ


希「じゃあうちも」スッ

希(熱狂ムスペルが先に行ったのを確認し、うちもダンボール被って通りへと踏み出した)

希(これで全員が監視集中エリアへと侵入したことになる)

希(先頭がかもめちゃん、続いて海未ちゃん穂乃果ちゃんペア、そして熱狂ムスペル、最後にうちの合計4箱)

希(本当はもう少し箱同士の間隔を空けて行きたかったけど、目の前の熱狂ムスペルを見失わない距離を考えると仕方がない)

スタ スタ 


希(箱の隙間からは小さく視界が確保されていて、僅かながら周囲の景色も見える)

希(整備された京都市内の大通りの1つ、けれどそこを歩いているのは人間とはかけ離れた炎の塊の群れ、群れ、群れ)

希(何かの祭りと見間違えるほどの人口密度……いや、ムスペル密度か)

希(ムスペルたちが京都でパーティをやる気だとか熱狂ムスペルが証言してたけど、単なるパーティって規模やないでこれは……)

320 ◆WsBxU38iK2:2019/09/19(木) 01:42:58 ID:21.Sb4rk
スタ スタ

スタ スタ


希「はぁ……はぁ……」

希(しかし、なんだろう、箱を被って歩き始めてから妙に息が詰まるな)

希(箱の中が狭いせいなのか、屈んだ状態でゆっくり歩いてるせいなのか、僅かばかりの息苦しさを感じる)

希(それに……暑い)

ツー


希(一筋の汗が垂れる)

希(ワープポイントに近づくにつれ少しずつ気温が高くなっていくのは感じていた)

希(けれどこれは通常ムスペルたちの出すカラッとした直接的な暑さとは違う)

希(身体にベタベタと纏わりつくような……どこか不快感のある暑さ)


希(ムスペルの百鬼夜行を縫って歩いてるから暑い? 箱の中で酸素が少なくってるから息苦しい?)

希(いや、それにしては違和感がある……これはまるで――――)

グニャァァ

希「っ!」

希(視界が……歪んだ!?)


希(違和感の原因を探りながら歩いていたうちの視界が、ダンボールの隙間から見える視界が、加工されたかのようにグニャリと歪む)

希(見えない……!目の前を歩いていたはずの熱狂ムスペルの姿が見えない……!)

希「ど、どうする……?」

希(思わず戸惑いの声を漏らす)


希(今すぐ声を出して呼びかけるべきか)

希(けどそんなことをしたらさすがにムスペルたちに気づかれる、他の箱まで巻き込んでしまう)

希(どうする、どうすれば……)


??「あらーら、ずいぶんお困りのようだ」

希「……っ!?」

希(二度目の衝撃、心臓が跳ねる)

希(突如聞こえた声は後ろからの声)

希(うちが1人で入ってるはずのダンボール箱、他の人間が入れるスペースがあるはずがない)

希(それなのに、声は後ろからうちの耳元に囁きかけていた)


希「ふぅーー」ググッ

希(吹き出す汗、激しく脈打つ鼓動、震える手)

希(大きく長く息を吐き、それらを強引に押さえつける)


希(パニックになるな、落ち着け、冷静に、クールになるんや)

希(通常のムスペルとは別種の熱、歪んだ景色、今も続く不快感)

希(そして明らかに1人用のダンボール箱に2人入っている空間の狂い……)


希(今これで思い当たる存在は1つしかない!)

ザッ

希「あんた……発狂のムスペルやな」

??「おぉ〜、せいか〜い、よく分かったな〜」

希(うちが後ろを見ないまま名前を呟くと、声の主は当事者感のない声色のまま答えを返してきた)


希「当たってしまったか……」

希(どちらかといえば外れて欲しかった、熱狂が話していた最悪のムスペル)

希(そいつがうちに接触してくるなんて考えたくはなかった)


希(どうしようか……)

希(うちが半分怖さ半分様子見で動かず前を向いて黙っていると、後ろの発狂ムスペルは>>321)

321名無しさん@転載は禁止:2019/09/19(木) 02:06:19 ID:3JF42weU
使徒を呼び寄せるために京都とバビロンを繋げた

322 ◆WsBxU38iK2:2019/09/20(金) 02:20:40 ID:soXNNtAY
希(後ろの発狂ムスペルは……)


発狂ムスペル「無反応か〜、そうやって無視されるとつまらないな〜」

希「…………」

発狂ムスペル「そうだ!じゃあ面白くしよう!きっとそれが一番だ!」

グッ

発狂ムスペル「はいけって〜い」

ボワンッ!!

希「……!?」

希(発狂ムスペルがそう言った瞬間、足元が大きく盛り上がる感触を覚えた)

グインッグインッグインッ

希(まるで地面が波打ってるかのような……いや違う、動いてるのは地面じゃない!)

希(地面の上にうちの足首くらいまで沈むような目に見えない何かが溜まっている)

希(無色透明とかではなく単に見えないだけ、見えないだけでそこには確かに何かがある)

希(流動性があって、サラサラというよりは粘性があって、足に軽く抵抗がある)

希(その謎の流体がうちの背後から前方に向けて波打って進んでるんだ!)


グインッグインッグインッ

希(この流れ……さっきまでうちの全身を覆っていた不快感と同じものな気がする)

希「まさか……あんたの炎なん?」

発狂ムスペル「ぱふぱふ〜!またまたせいか〜い!」

発狂ムスペル「うちの炎を感じ取れるなんてさすがだな〜」


希「うち……?妙な真似するのはやめてほしいんやけど……」

発狂ムスペル「え〜? 真似じゃないよ〜? うちは最初からうちのことうちって呼んでるし〜?」

発狂ムスペル「んー……? 最初って何時だっけ? わたし分かんないや〜」

希「はぁ……話にならんな」


希(分かってたけどこいつは狂ってる、自分のパーソナルな情報さえ曖昧になってる)

希(そんなやつが使う炎――熱くも無ければ冷たくもない、目に見えない上に粘性を持って、触れる者の心をざわつかせる気持ち悪い炎)

希(そんな炎を発狂ムスペルは地面を伝ってどこかへ送ろうとしている……)


希(向きはうちらの進行方向と同じ方向……ってことはまさか!)

希「狙いはワープポイントやな!」

発狂ムスペル「そ〜う、ワープポイントを狂わせて楽しいことをしようと思うの〜」

発狂ムスペル「具体的にはワープポイントの入り口を別世界と繋げる!」

発狂ムスペル「分かる〜? 繋げる先はムスペルヘイムでもなく、もちろんユグドラシルでもない、そこは先史文明が栄えた古代の世界!バビロン!」

希「バビロン……やと? 京都とバビロンを繋げるつもりなんか!?」


発狂ムスペル「そうだよ〜、そしてバビロンから使徒を呼び寄せるんだ」

発狂ムスペル「そいつは>>323

323名無しさん@転載は禁止:2019/09/20(金) 06:43:09 ID:2uHG2SUE
制御不能の殺戮マシーン

324 ◆WsBxU38iK2:2019/09/21(土) 06:04:44 ID:ETC2H44o
発狂ムスペル「そいつは制御不能の殺戮マシーン!」

発狂ムスペル「動き出したら止まらない、誰にも止められない、荒れ狂う暴虐の嵐!轟き狂う悪逆の雷!」

発狂ムスペル「このつまらない世界を狂うほど楽しくしてくれるはず〜!」


希(発狂ムスペルがそこまで言い切る使徒)

希(そんなもの……)

バッ!

希「召喚させるわけにはいかへん!」

発狂ムスペル「……へ〜」


希(被っていたダンボールを跳ね飛ばし、うちは臨戦態勢を取る)


発狂ムスペル「させるわけにはいかないって言われてもなぁ〜、どうする気〜?」

希「現在進行形で地面を這う炎が蠢いてるってことは、まだワープポイントの改変は完了してないってことやろ?」

希「だったらあんたをぶっ飛ばせば良いだけの話や!」


発狂ムスペル「勇ましいねぇ、だけどさ〜、せっかく潜入してたのに良いの?こんな派手なことしたら台無しだよ」

希「どのみちあんたに介入された時点で計画はご破産やろ」

希「だったらワープポイントは先に行った4人に任せてうちは足止めに専念するのが一番良い」


発狂ムスペル「はぇ〜、そこまで一瞬で判断したんだ」

発狂ムスペル「まぁどうでもいいけどさ〜」


発狂ムスペル「バレるってのは同時にここにいるムスペル全員の的になるってこと――――理解してる?」

ゴッ!!

ドドドドドドドドドドドドドドドッ!!

希(発狂ムスペルがそう言った瞬間、うちを取り囲む数百のムスペルから一斉に炎弾が放たれた!)

325 ◆WsBxU38iK2:2019/09/21(土) 06:05:10 ID:ETC2H44o


希(ま、敵地のど真ん中でいきなり姿を表したらこうもなるよなぁ……)

希(予想はできていたことやけど、実際炎の雨の集中砲火を食らうと落ち着いてなんていられない)

希「……っ!」

グッ

希(けど大丈夫、うちならいける)

希(気持ちを落ち着かせるなんてもってのほか、むしろフル回転させろ)

希(鼓動は速く、血は熱く、全身を燃えたぎるようにヒートアップさせていく)

希(その全てをこの左手に――――――)


ドドドドドドドドドドドドドドドッ!!

発狂ムスペル「ほぉぅらっ!あと3秒で丸焼けだぁ〜っ!」


カッ!

希「――奇跡掌握」グッ

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゥンッ!

発狂ムスペル「……お?」

希「ワシ!ワシ!」

ボォォォォウッ!!!!


発狂ムスペル「おおおぉぉっ?」

希(四方八方から飛来する数百の炎弾がうちに直撃する直前、うちは手のひらに紋章の浮き出た左手を頭上に真っ直ぐ掲げた)

希(奇跡掌握ワシワシ――――認識した対象を距離を無視して掴み取り、手の中で再構築するうちの焔ノ力)

希(今回はそれを使って飛んできていた火の弾を遠隔複数同時ワシワシで掴み取った)

希(そしてその数百を超える火の弾全てを握った左拳の中で圧縮!凝縮!再構築!)

ボォォォォウッ!!

希(握った手の隙間から炎が漏れ出るほど左手に集められたエネルギーが昂ぶるのを感じる!)


発狂ムスペル「一斉に数百の空間を削り取った〜?しかも手のひらサイズのピンポイントで〜?」

希「せやで……そしてうちの力は防御のためだけじゃない、防御は同時に攻撃にもなる」

希「あんたの仲間の攻撃が全部重なったこの一撃を――――あんたへプレゼントや!」

ダンッ!!

希(うちは右足を大きく前に出して力を踏みしめる)

希(そして左手を後ろをに引いて槍投げに似た姿勢を取り……)グググッ

希(思っきり左腕を振り抜く!)

ブンッ!!


希「たぁぁぁぁっ!!」

ドッ!!!!

希(発射されたのはうちの能力でムスペルたちの打ち出した炎を奪取凝縮し再構築された『穿ち爆ぜる炎の槍』)

希(それは狙い通りに発狂ムスペルの方に着弾)

希(凝縮されていたエネルギーを一気に解放させる!!)


希(その攻撃に対し発狂ムスペルは>>326)

326名無しさん@転載は禁止:2019/09/21(土) 10:48:00 ID:BxGDBfVM
身体を細胞レベルに分解してノーダメージ

327 ◆WsBxU38iK2:2019/09/22(日) 05:19:06 ID:tesePIBg
希(その攻撃に対し発狂ムスペルは……)

ドォォォォォォォォォンッ!!!!


発狂ムスペル「ひゅ〜、やるなぁ」

希「やっぱこのくらいじゃダメか……」


希(“穿ち爆ぜる炎の槍”の着弾地点は辺り一面に炎が広がる炎の海と化していた)

希(火はうちの身長以上に立ち昇っていて、通りの向こうを見渡すことすらできないほど)

希(通常ムスペルのものとは言え、数百の炎を束ねて紡いだ武器の威力はとんでもない)

ゴォォォォォォォォウッ

希(そんな地獄の中から……さっきまでと変わらない発狂ムスペルの声が聞こえてくる)


発狂ムスペル「通常のムスペルに当たったら間違いなく消し飛ぶ威力、人間が放っていい一撃じゃないなぁ」

発狂ムスペル「うちだって直撃してたらどうなってかは分からないな〜」

希「……その言い草だと直撃は避けられてしまったようやな」


発狂ムスペル「その通り〜!」

発狂ムスペル「槍が放たれた時に咄嗟に新しい炎を生み出して自分を包み込んだんだ〜」

発狂ムスペル「そしたらうちの身体が細胞レベルに分解されちゃった〜きゃははははは!おもしろ〜い!」


希「……なるほど、バラバラになったから避けれてノーダメージってわけか」

発狂ムスペル「偶然こんな狂い方引いてラッキーだったよ〜」

発狂ムスペル「うちのこと聞いてるなら知ってると思うけど、うちの炎はうちにも制御できないの」 

発狂ムスペル「どんな炎が生まれるのかワクワクでドキドキ〜って感じ」
 

希「確か……共通するのは炎に触れた存在は世界の法則を狂わせ歪められること」

発狂ムスペル「そう、今生まれた炎は物体の燃焼の仕組みを狂わせちゃう炎」

発狂ムスペル「どうやら物体が熱によるダメージを負わない代わりに、燃焼の過程で物体の中の“くっつく力”を失っちゃうみたい〜」

希「くっつく力……? なんやそれ、その状態でも生きてるん……?」

328 ◆WsBxU38iK2:2019/09/22(日) 05:19:39 ID:tesePIBg
発狂ムスペル「さぁ〜どうだろ? うちはバラバラのまま生きてるけど他の生物は分かんないな〜」

発狂ムスペル「そうだ! 試してみたら分かるんじゃないかな!」

希「え?」

発狂ムスペル「そーーーーれぃっ!」


希「ちょっ――――」

ゴウッ!!

希(目の前の炎の海の一部が突如吹き飛んだ)

希(その場所から何かが……オーロラのように不気味に発光し、旋風のように渦巻く緑の何かが立ち昇る)

希(おそらくアレが発狂ムスペルの生み出した新たなる炎なんだ……と、うちが理解に至った瞬間)

希(渦巻く緑の炎の左右から、同じ色の炎がまるでレーザービームのように発射された!)

ブォォォォォォォォンッ!!

希「っ!」


希(左に発射された炎は左側の建物を、右に発射された炎は右側の建物を、それぞれ後ろから前に一直線に薙ぎ払っていく)

ブォォォォォォォォンッ! ブォォォォォォォォンッ!

希(それは発射口と薙ぎ払いの直線上に立っていた通常ムスペルたちも例外ではない)

希(緑の炎のレーザービームに触れた全ての物体が、分解され瞬間的に粒子化されていく)

希(ビルは薙ぎ払われた部分が砂となって上部が崩れ落ち、炎に包まれたムスペルは跡形もなく消失する)


希(そうして右と左をそれぞれ薙ぎ払ってきたレーザービームは止まることなく、ちょうどうちのいる場所でクロスするように――――)

希「……って!うちまで消されてたまるか!」ビュンッ!

ギュィンッ!!

発狂ムスペル「あら外れ」


希「あっぶな……」

希(ちょうどうちが舞空術で飛び上がった足元をレーザービームが通り過ぎていった)

希(あと少し遅かったら足の膝から下が、いや……体ごと分解されていたかもしれない)


発狂ムスペル「いや〜残念だな〜、でも効果は分かってもらえたでしょ?」

希(レーザービームを引っ込めた緑の炎は旋風のように渦巻く運動を停止し、自らの体を左右へと大きく広げた)

バッ! ボォォォォウッ!!

希(オーロラのように不気味に光る緑の炎の広がりは、大きく翼を広げた蝶に似ていて、傍から見れば神秘的な雰囲気さえ感じる)


希「触れた物を片っ端から分解していく狂気の蝶……緑炎蝶とでも言えば良いんかな」

発狂ムスペル「あはははははっ!」

バサッ! バサッ!

希(目測で羽の先から先まで横幅4,5メートル)

希(砂と化した無数の建物と仲間のムスペルを背景に、火の海の上で緑炎蝶は優雅に羽ばたく)


希「はぁ……」

希(よし、ここは一旦現状を整理しよう)

希(敵は発狂ムスペル、やつはワープポイントの改造を目論んでいてうちはそれを阻止するため立ちはだかった)

希(やつの纏う発狂の炎は基本的に人の目を惑わす、そして接触時の効果は一度使ってみないとやつ自身にも分からない)

希(今やつが使ってるのはワープポイントを狂わす無色の炎が1つ、触れたものを分解する緑の炎が1つ)

希(更にやつは後者の能力で自分自身を分解しバラバラになっている)


グッ

希「厄介やな……」

希(こっちが瓦礫を投げつけようとかめはめ波を打とうと、緑の炎に当たったら瞬時に分解される)

希(奇跡掌握で本体を引き寄せようにも、やつ自身が細胞レベルで散らばっていて何処にいるか見当がつかない)

希(そもそも何で発狂ムスペルはバラバラになったまま炎を操れたり会話できたりするねん……って話なんよなぁ)



希(さて、ここはどう動くべきか……>>329)

329名無しさん@転載は禁止:2019/09/22(日) 06:56:42 ID:4JlY2ix.
騒ぎを大きくするように逃げまくる

330 ◆WsBxU38iK2:2019/09/23(月) 03:38:01 ID:AjFSD1lQ
希(正面から戦うのは現時点ではリスクが高い)

希(なるべく時間稼ぎをしてワープポイントの改変を遅らせたほうが得策か……)


スッ ピッ

希「もしもし梨子ちゃん、かなり大変なことになって――――」

??『ザーーーーーーーッ!』

希「なっ?」


発狂ムスペル「あはははははっ!こんな狂った空間で電話が通じると思ってるの〜?」

発狂ムスペル「分解の炎だけが能じゃない、うちの炎を認識してしまった時点で狂った空間に囚われたも同然」

発狂ムスペル「この空間内にあるものは電波もテレパシーも関係なく狂っていくんだから〜」

発狂ムスペル「もちろん、あなたも例外じゃないんだよ〜ひひひっ」

希「……ちっ」


希(連絡が取れないなら仕方ない)

希(なるべく一定の距離を取って、騒ぎが大きくなるように逃げる)

希(建物が倒壊したり周りのムスペルたちがざわつけば梨子ちゃんたちにも緊急事態なのが伝わるはず)


希(よし、決まったのなら善は急げや!)

希「はっ!」

ダンッ! ビュンッ!!

希(うちは舞空術で浮いたまま空中を蹴って発狂ムスペルと反対方向に動き出す)


発狂ムスペル「お? 逃げる気〜? 逃げられると思ってるの〜?」

ゴォゥッ!!

希「悔しかったら追ってきな! 追いつけるかは知らんけどな〜!」


希(そうや、もっと挑発に乗るんや、追いかけてこい!)

希(うちにできることはこの最凶最悪のムスペルを長く引きつけておくことだけ)


希(その間にワープポイント班、待機班、それぞれの仕事を頼むで……!)

ビュンッ!



─────────────────

金閣寺周辺〜ワープポイント付近

PM8:20〜8:40 新終末編・焔『231』了

331 ◆WsBxU38iK2:2019/09/23(月) 03:38:34 ID:AjFSD1lQ
というわけでここまで

一区切り

新終末編・焔『232』に続く
かもしれない

332 ◆WsBxU38iK2:2019/09/24(火) 00:01:06 ID:1WZ9/PQ.
新終末編・焔『232』

───────────────────ワープポイント付近

PM8:35


ザッ

かもめ「あれ?希さんは?」

かもめ(監視密集ゾーンを抜け、ダンボールのカモフラを解いたとこで、私たちは後続の希さんがいないことに気付いた)


SID穂乃果「ほんとだー!」

熱狂ムスペル「え?あいついないの?」

かもめ(穂乃果さんや熱狂が後ろを振り返って遠くを見ているが、こちらにダンボールが歩いてくる様子はない)

かもめ(迷った……? いや、いくら視界が限られてるとは言ってもほぼ一本道)

かもめ(等間隔で歩いてきたはずだから前のダンボール箱を見失うこともないはず)


かもめ「ということは、何か予想外のアクシデントが起きた……?」

SID穂乃果「ええっ!?」

熱狂ムスペル「ほー……アクシデントねぇ」チラッ


かもめ「…………」

かもめ(熱狂がやけに周りの目を気にしてキョロキョロしてる)

かもめ(かなり怪しいけど……まぁ文字通り弱みを握られているこいつがスニーキング中に希さんに何かしたとは考えにくい)

かもめ(単に予想してないタイミングで監視の目が外れたことに驚いて戸惑ってるんだろう)


かもめ(はぁ……面倒だな)

かもめ(実は希さんだけ別行動になる作戦だったとか誤魔化しようはいくらでもあったけど、私が驚いてしまった後では遅い)

かもめ(そうだな、いっそのこと諦めるのも手かなぁ……)


かもめ「あのさ、別に逃げたいなら逃げてもいいわよ」

熱狂ムスペル「ええっ!? なななななっ、私はそんなこと考えては………」

かもめ「隠さなくていいって、引き止める気もないし」

熱狂ムスペル「……どうして?」


かもめ(私の提案に熱狂は訝しげな顔でこちらの様子を伺う)

かもめ(ま、なにかの罠だと疑うのが当然だよね)


かもめ「理由は2つ、1つは単純にあなたに勝てないから」

熱狂ムスペル「……?」

かもめ「実力を客観視した結果、希さん抜きの3人じゃあなたに勝利するビジョンが見えないんだよ」

かもめ「能力と武装の相性、決定力の不足、それでも策を練れば4:6くらいの拮抗には持っていけるけど、完全に制圧できるかと聞かれたら無理」


SID穂乃果「でも……頑張ればいけるってことなんじゃない?」

かもめ「情報を大方絞った後の熱狂に頑張る時間を割くのが嫌なのよ」

かもめ「今は目標地点の目の前、時間を割く対象の優先順位はしっかりつけていきたい」

SID穂乃果「なるほど……」

333 ◆WsBxU38iK2:2019/09/24(火) 00:01:42 ID:1WZ9/PQ.


かもめ「それにね、逃げたところで希さんが熱狂のカイカンドールを保持してることに変わりはない」

かもめ「どうせ地の果てまで逃げて隠れても遠隔快感地獄は続くから無駄なのよ、ってのが2つ目の理由」

熱狂ムスペル「……っ!」


かもめ「だから好きにしていいよ、私たちは構わない」スタスタ

熱狂ムスペル「……ああもうっ! 逃げないって! 結局あいつに人形消してもらう必要あるんなら一緒にいるわよ!」

熱狂ムスペル「あんたたちについてた方が希と会う確率は高いでしょ!」

タタッ



かもめ(熱狂は先に歩き出した私たちを追いかけ走ってきた)

かもめ(正直この先で突然裏切られたりするようなら別行動して欲しかったけど……ついてくるならそれはそれで良いかな)


スタスタ

かもめ(私は熱狂ムスペルから視線を外し、先に様子を見に行っていた海未さんに声をかける)

かもめ「海未さん、ワープポイントの様子はどうです?」

SID海未「……イフリート、やつがワープポイントの目の前に陣取っています」

かもめ「……!」


SID海未「それから>>334

334名無しさん@転載は禁止:2019/09/24(火) 05:57:18 ID:64HyLWck
イフリートと同格の敵が現れた

335 ◆WsBxU38iK2:2019/09/25(水) 03:13:33 ID:wYr6HNQ2
SID海未「それから……未知の人型実態がイフリートの側に立っています」

かもめ「敵?」

SID海未「十中八九そうでしょうね」

かもめ「そう」


かもめ(海未さんがすぐさま敵と断言したということは、それなりに外見から判断できる根拠があるということ)

かもめ(今の京都で確実にそんなことが言えるのはつまり……)チラッ


かもめ「やっぱり、ムスペル型か……」

海未「はい」コクンッ

かもめ(物陰に隠れた海未さんに倣って、私もその後ろに隠れてワープポイントの方を見る)


かもめ(赤い光の立ち上る円形のワープポイントは京都市街の中心を侵食するように形成されていた)

かもめ(その中から次々とムスペルがポコポコと浮かんで現れては街へと移動している)

かもめ(例えとして適切かは分からないけど、巨大な浅瀬のプールから一斉に陸地へ上がってくる人たち……みたいな感じ)


かもめ(そんなプールの門番とでも言うかのようにワープポイントの前に仁王立ちしてるのがおそらくイフリート)

かもめ(巨大スクリーンに映し出されたのと変わらない、筋骨隆々の炎の魔人だ)


かもめ「見たことのない敵……イフリートと何か話してるね」

海未「ええ、それも対等な立場の会話に見えます」

海未「変に臆したり諂ったりしていない、かと言ってイフリート側が下手な様子もない」

かもめ「同等……同格ってことかな」


タタタッ

熱狂ムスペル「ちょっと何止まってるの……ってうわっ!」ビクッ!

かもめ(後ろからついてきた熱狂はワープポイントのほうを覗いた瞬間固まって姿勢を低くする)


熱狂ムスペル「あれは……」

かもめ「知ってるの?」

熱狂ムスペル「>>336

336名無しさん@転載は禁止:2019/09/25(水) 03:52:55 ID:l9IEQQLM
スルトジュニア

337 ◆WsBxU38iK2:2019/09/26(木) 04:20:43 ID:g3eSB9a6
熱狂ムスペル「スルトジュニア……」

かもめ「ジュニア?」

SID海未「ということは……息子?」

熱狂ムスペル「ええ……」コクンッ


熱狂ムスペル「ただ、息子とは言ってもスルトの肉体から分裂して生まれたやつの一部のようなものに近い」

熱狂ムスペル「あと完全な炎の巨人であるスルトと比べると何故か人族に近い部分が多いわ、ほら、体を覆ってる炎の面積も少ないし」

かもめ「身の丈3メートルは余裕で越してて体の各所から火を吹き出してる人間を人間と呼称すべきなのかは分からないけど」

かもめ「確かに対面にいる魔獣と炎の精霊の融合体みたいなイフリートと比べると人に近い部分は見受けられるね」


SID海未「しかしスルトジュニアと来ましたか」

SID海未「この後に及んでまだ親玉は姿を見せない……」

かもめ「そうだね、せめてあの2人の会話が詳細に聞きたいな」

かもめ「でもここからだと、さすがに私の聴覚とは言え完全には聞き取れな――――」

SID穂乃果「じゃあ私が聞くよ!」

かもめ「え?」


SID穂乃果「何も移動に便利な動物だけに変幻する技じゃないんだよ〜っと!」

シュルルルルッ ポワンッ!

かもめ「おお」

かもめ(穂乃果さんが能力を使うと、穂乃果さん自身の耳が巨大な動物の耳へと変化した)


かもめ「一部変幻もいけるんだ、なんの動物の耳だろ……」

SID海未「私達も日々進化しているということです」ウンウン


SID穂乃果「これなら聞ける! なになに? えーと……」

 






──ワープポイント前



イフリート「まさか貴様が来るとはな……王の息子よ」

ジュニア「暇だったからね、魔神くん、進捗はどうだい?」

イフリート「ふんっ、我なら心配は要らぬ」

イフリート「王を古都へと迎え入れる祭りの準備は着実に進んでいる、あとはゆるりと座して結実の時を待つだけだ」

ジュニア「へ〜、随分と自信満々なことで」


ジュニア「俺が小耳に挟んだ話だと接近してる浮遊要塞に向けて放った中型ムスペルたちが全滅したそうじゃない」

ジュニア「かなりこちらの性質を理解してるみたいだが……ほっといて良いのか?」

イフリート「構わんさ、例え正面から攻めきたとて我がいる限り防衛網が落ちることはない」

イフリート「邪魔者を我自らがこの手で砕いて見せようぞ」

ジュニア「はぁ〜、頼もしいなぁ」



イフリート「時に息子、王は今どうしている?」

ジュニア「親父? そうだなぁ……親父なら>>338

338名無しさん@転載は禁止:2019/09/26(木) 05:55:26 ID:tIPkWYrY
引きこもっている

339 ◆WsBxU38iK2:2019/09/27(金) 04:01:16 ID:YehEbt5I
ジュニア「親父なら穴蔵に引きこもったままだ」

ジュニア「祭りの会場がこんなにホットになってるってのに何やってんだか」

イフリート「王には王の考えがあるのだろう」

ジュニア「考えねぇ……」



イフリート「……何か言いたげな顔だな」

ジュニア「いや、だってなぁ」

ジュニア「ムスペルの悲願であった地上世界への侵略を成し遂げ、景気づけに一発二発レーヴァテインを振るったのは良いけどさ」

ジュニア「その後のことは全部配下に任せて自分は引きこもりは流石にどうかと思うのよ」

イフリート「それは――――」

ジュニア「分かってる」

イフリート「……む」


ジュニア「イフリートが、イフリートたちが親父に全幅の信頼を置いてることは分かってる」

ジュニア「けど親父はムスペルたちら全て自分の道具だとしか思ってないんだ」

ジュニア「息子の俺だって勝手に見張りをして状況を伝えてくれる便利な存在以上の何者でもない」

ジュニア「お前たちも俺も、全員含めてそういう扱いなんだよ」

イフリート「…………」



ジュニア「ま、そんな暗くなることないって! 悪いな!」

ジュニア「俺が何言ったとこで親父の方針は変わらない、今に始まったことじゃないさ」

ジュニア「俺たちは俺たちにできること精一杯やろうぜ!」

イフリート「うむ」コクンッ



ジュニア「……ところでイフリート、話は変わるんだが」

イフリート「なんだ」

ジュニア「ちょっと前から俺たちの足元で蠢き始めたこの不気味な炎って………」

イフリート「……ああ、十中八九発狂の仕業だろうな」


バッ!

ジュニア「ったく! あの野郎はいつもいつも!」ドンッ!

ジュニア「大事な祭りの会場を狂わせておかしくしたら計画が狂うだろうが! それくらい分かるだろ!」

イフリート「分からんから発狂しておるのだろう、あいつの制御は王も早くに諦めている」

ジュニア「どうするよ、探し出してしめるか?」

イフリート「>>340

340名無しさん@転載は禁止:2019/09/27(金) 06:29:14 ID:GQOs1KVs
仕方ない、替えの陣を使おう。それよりも回収した「殺生石」のほうが重要だ

341 ◆WsBxU38iK2:2019/09/28(土) 03:03:57 ID:O5zvkW2Q
イフリート「仕方ない、替えの陣を使おう」

イフリート「それよりも回収した『殺生石』のほうが重要だ」


ジュニア「そうだな、親父の命令でこの石を取りに行ってたせいで俺はここに来るのが遅れたんだ」スッ

ジュニア「せいぜい丁重に扱ってくれよ」

ポイッ

イフリート「気軽に懐から出して投げ渡すことを丁重とは言わん」パシッ


イフリート「ふむ……これが大陸から渡ってきた妖狐の成れの果てか」

イフリート「内部からただならぬ気配が漏れ出てるのを感じるが……王は何のためにこれを?」

ジュニア「さぁ? それこそ王のみぞ知るってやつだろ」


イフリート「それもそうか、この石は我が責任を持って保管しておく」スッ

イフリート「それで……ああ、ワープポイントの張替えだな」


バッ!

イフリート「近くにいる者! 誰でもいい! 数を集めてワープポイントを固定してる次元アンカーを取り外せ!」

イフリート「兵の補充は後からでもいい! 一旦狂わせられたポイントを切り離すのだ!」


タタタッ

配下ムスペル「あの……イフリート様……」

イフリート「む? こちらに来てどうした? 命令は下したぞ、さっさと動け」

配下ムスペル「実はそれが……既にワープポイントから未知の生命体の一部が出現していて……」

イフリート「なんだと!?」ガシッ!

グイッ!

配下ムスペル「うぐっ……」


配下ムスペル「ほ、本当です! 見てください!」

配下ムスペル「あそこから>>342

342名無しさん@転載は禁止:2019/09/28(土) 05:55:33 ID:ALT7U2Z.
触手がどんどん兵を引き込んでいる

343 ◆WsBxU38iK2:2019/09/29(日) 02:52:42 ID:vX0APmUU
配下ムスペル「あそこから……う、うわぁぁぁっ! 触手がどんどん兵を引き込んでいる!!」

イフリート「……っ!」

ジュニア「はぁ? 何が起きてるってんだ!?」


ドッ!!

ドシュルルルルルルルルルルッ!!!!









SID穂乃果「……ってことらしいよ」

SID海未「最後のは言われなくても見たら分かります!」


かもめ(私たちは穂乃果さんがその聴力で捉えたことを口頭で話してもらいムスペルの情報を得ていた)

かもめ(だけどイフリートとムスペルジュニアの会話の途中でワープの陣から触手が出現)

かもめ(ワープポイント付近は一気に混乱の渦中へと突き落とされた)


かもめ「熱狂!」バッ!

熱狂ムスペル「知らない! あんなの知らないって!」ブンブンッ!

かもめ(私が熱狂の方を見ると熱狂は聞かれる前に首を振って全力で否定する)

かもめ「ってことはイフリートたちの言ってたとおり発狂の仕業か……」

かもめ「ワープポイントの陣を狂わせてムスペルとは別のものを呼び出そうとしている」

熱狂ムスペル「えぇ……やっぱりあいついるのぉ……最悪だぁ……」

かもめ(熱狂は分かりやすく頭を抱えてしゃがみ込んだ)


かもめ(ただ、しゃがみ込んでいたってどうにもならない)

かもめ(私は背中の狙撃銃を取り出しながらワープポイントへ目を向ける)

カチャッ

 

イフリート「はぁっ!!」

ゴッ!! ジュゥバァァァァッ!!!!


かもめ(覗くスコープの向こう、即座に動いたイフリートの攻撃で触手が焼き払われていた)

かもめ(特別な技などではない、イフリートの一挙手一投足がそのまま強力な熱波を引き起こしている)


かもめ(あれが炎の魔人の力……)

かもめ(同時に出てくる触手の数も膨大だけど、陣から顔を出した先から焼かれていくから、一定の長さ以上は出て来れない)

かもめ(このまま見守ってるだけでイフリートが片付けてしまうのでは……とさえ思える勢いだ)


ゴォォォォォォッ!!


ジュニア「どうだい触手の様子は? 俺も手を貸そうか?」

イフリート「今の所は相手にならん、我一人で事足りる」

イフリート「だがこうなっては陣を取り外す作業を命じるのは難しい」

ジュニア「そうだねぇ、今の状況で陣に近づけば触手に捕まって引きずり込まれるか、触手に捕まったあとにイフリートに焼かれるかの二択だし」

イフリート「ああ、だから王の息子よ、我が露払いをしてる間に陣の破壊を頼めるか?」

ジュニア「オーケー、緊急事態だし仕方ない」ザッ


かもめ(イフリートスルトジュニアが何を話してるかは聞き取れない)

かもめ(だけど陣に近づいていく様子から、あの2人で何かしらの対処をするんだろうという推測は立てられた)


かもめ(そんな2人に対し触手の群れは>>344)

344名無しさん@転載は禁止:2019/09/29(日) 07:15:28 ID:G7Vkp8uw
炎耐性をつけて猛勢をかけてきた

345 ◆WsBxU38iK2:2019/09/30(月) 02:09:57 ID:s0weSqYw
かもめ(それに対し触手の群れの勢いは…………衰えない?)


ドシュルルルルルルルルルルッ!!


イフリート「……!」

ジュニア「おいどういうことだ、触手が焼失しなくなってるぞ」

ジュニア「それどころか火を吸収してどんどん勢いを増している!」

イフリート「まさか攻撃に適応した? この短時間でか?」

イフリート「ならば攻撃方法を変えて試してみるか、燃焼が効かないのならば殴打や切断で――――」


ジュニア「悠長に考察してる場合かよ」

ジュニア「このままだとワープポイント周りのムスペルは殆ど食われちまうぞ、てか殆ど食われてるって」
 
バシュッ!! バシュッ!! バシュッ!!

ドシュルルルルルルルルルルッ!!


かもめ(2人が何か口論してる間にも触手は恐ろしい速度で増殖する)

かもめ(それは近くにいたムスペル全てを飲み込み、陣を丸ごと覆い隠すほどになっていた)


イフリート「……なるほど、どうやら猶予は考えてるほど無さそうだ」

イフリート「触手はできるかぎり我が引きつける、お前は変わらず陣の破壊を急げ」

イフリート「ただし引きつける量にも限界がある、触手の壁の妨害を超える一撃が必要だ」

ジュニア「了解、ってことはレーヴァテインでも打ち込むかね」

イフリート「……?」

イフリート「待て、レーヴァテインは王の剣では無かったか?」


ジュニア「そうだな……その認識は半分正解で半分不正解だ」

スッ

ジュニア「スルトの剣ってのはあくまで伝承の中で同一視する説があるというだけの話」

ジュニア「異説によれば実はフレイの勝利の剣だともガンバンテインともミストルテインだとも言われている」

ジュニア「要は記述自体が少なすぎて認識によってどうとでも解釈できる剣だってことだ」

イフリート「ほう」


ジュニア「そもそも剣かどうかすら怪しいレベルだからな」

ジュニア「解釈で概念を加工することでどんな形にだって鋳造できるってわけよ」

イフリート「つまり……複数本作れると?」

ジュニア「ああ、俺らムスペルヘイムが保有してるレーヴァテインは親父が地上に持ち込んだ灼熱砲剣レーヴァテインが一振り」

ジュニア「そんでもう一振りが俺の――――」

バッ!!


ジュニア「>>346型のレーヴァテインだ!」

346名無しさん@転載は禁止:2019/09/30(月) 06:12:39 ID:/ODL8wU2
ラブライブレード

347 ◆WsBxU38iK2:2019/10/01(火) 03:48:43 ID:D3AnYXF2
ジュニア「ブレード型のレーヴァテインだ!」

シャキーンッ! シャキーンッ!


ムスペル「ブレードにしては剣先が円筒状ではないか、そんなもので切れるのか」

ジュニア「ラブライブレードってタイプのブレード、珍しい型だろ?」

ジュニア「どのくらい威力があるかは……今から見せてやるよ!」

ダンッ!!


かもめ(ムスペルジュニアはどこからか短剣サイズの円筒状の武器を2本取り出すと、両手に構えて触手の中へ飛び込んでいった)

ジュニア「はっ!」

カッ!!!!

かもめ(ジュニアが武器を片方振りあげると円筒の先端から赤い光の帯が射出される)

かもめ(その帯は固く凝縮して陣に蓋をしている触手の群れをいともたやすく切り裂いていく)

シュィンッ!!!!


ジュニア「おらっ! 次は青!緑!白!まだまだ行くぞ!」カチッ

シュィンッ!! シュィンッ!!

かもめ(両手と上半身だけで円筒状の武器を大きく振り回す剣舞はどこかで見たような動きな気もするけど……とにかく触手に効果があるのは間違いない)


イフリート「レーヴァテインから放たれる光の帯の色が次々に変わっていくのか……?」

ジュニア「その通り! 親父のレーヴァテインほどの威力は無いが、こいつは放つ光線の特性を変えていける武器だ」

ジュニア「その種類は片手ごとの色の数とブレードの振り方によって無限に近く存在する!」

カッ!!

シュィンッ! シュバッ!!!!

ジュニア「どうだ? 攻撃に対して耐性を得るみたいだが俺の特性変化のスピードについてこれてないぞ!」


ムスペル「なるほど……」

ムスペル「スルトの振るう炎の剣としての側面ではない、どんな神話武器とも同一視できる“正体不明の剣”としての側面を形にした剣」

ムスペル「それがお前のレーヴァテインというわけか」


ジュニア「たぁっ! おりゃっ!!」

シュィンッ! シュババババババッ!!

348 ◆WsBxU38iK2:2019/10/01(火) 03:48:58 ID:D3AnYXF2



かもめ(光の帯が一度に刈り取れる面積は触手全体に対してそれほど大きくはない)

かもめ(だがムスペルがヘイトを稼ぎ侵食の拡大を止めてる間、ジュニアは確実に積み重なった触手の深層へと切り込んでいっている)

かもめ(このまま見ていれば遠からずワープポイントは破壊されるだろう)



SID海未「かもめさん……このまま見守ってて良いのでしょうか」

かもめ「そうね、私も同じことを考えてた」

かもめ「私たちの最初の目的はワープポイント周りの観察、情報収集」

かもめ「そして可能ならワープポイントを壊してムスペルの増援を止められたら万々歳……って感じだよね」

SID海未「はい、その破壊自体は放っておけばイフリートとムスペルジュニアが行うでしょう」

熱狂ムスペル「でもあいつら、触手を駆除したら陣はすぐに張り直すはずよ」

SID海未「そう、そこなんですよ」


SID海未「私たちはあの2人が無傷ストレートに勝っても困るし、かと言って負けて触手が放置されても困る」

SID海未「今後私たちに有利な立場になるにはどう介入するべきか……はたまたせざるべきか」

SID海未「どう……思います?」

かもめ「うーん……」


ピッ ピッ

かもめ(さっきから何度も希さんや仮拠点に通信しようと試みているけど一向に繋がる様子はない)

かもめ(ということは今現場にいるメンバーで判断するしかないってわけだ)


かもめ「そうね……難しい判断だけど……ここは>>349

349名無しさん@転載は禁止:2019/10/01(火) 05:40:46 ID:99iV.Xh2
共倒れを狙う

350 ◆WsBxU38iK2:2019/10/02(水) 04:56:01 ID:p.twkSjc
かもめ「ここは共倒れを狙いたい」

SID海未「……そうですね、それが理想かと」


熱狂ムスペル「だからそれをどうやってやるかって話でしょ?」

熱狂ムスペル「考えただけで実行できるなら誰も苦労はしないって――――」

かもめ「じゃあ狙撃っと」カチャッ

ダンッ!!

熱狂ムスペル「……ってええぇ!?」


カーンッ!

かもめ「お、命中」

熱狂ムスペル「なななななにやってるの!? いきなりムスペルジュニアに向かって発砲するとか何考えてるのよ!?」

かもめ「でも弾かれたな、皮膚が予想より硬い? 弾の種類と弾道の角度を変えてみるか――――」

熱狂ムスペル「ねぇって! 聞いてるの!?」ガシッ

かもめ「……はぁ、聞いてるよ、でも妨害する手段なんてこれくらいしか思いつかないし」

かもめ「今は時間も手段も限られている、だったらアレコレ考えるより手を動かすべき」

かもめ「そうじゃない?」

熱狂ムスペル「…………っ」



SID穂乃果「私も獣の目と耳でかもめちゃんをサポートするよ!」

かもめ「観測手ってわけか、私は狙撃に専念するから頼もしいよ」

パンッ! パンッ! 

SID穂乃果「またまた命中! でもダメージは与えられてないみたい……」

かもめ「やっぱりか、でも注意は引けてるよね?」

SID穂乃果「うん、ムスペルジュニアは触手の相手をしながら新しい敵を探してるみたい」


かもめ「……よし、だったら効果はある! 続けるよ!」

パンッ! パンッ!

351 ◆WsBxU38iK2:2019/10/02(水) 04:56:19 ID:p.twkSjc




カキィンッ! カキィンッ!

ジュニア「ちぃっ! なんだよこれ!」

イフリート「遠距離から狙われているな、触手とは別の敵だろう」

ジュニア「だったら手近な配下を向かわせて……って全部触手に食べられちまったか」

イフリート「うむ……」

イフリート「正直なところ触手の攻撃を一身に受け止めてる我は動けぬし、その間に触手の切り刻むお主も動けん」

ジュニア「だからって放っておけるかって言うと…………」

カンッ カンッ バシュッ!!

ジュニア「……っ!」

タラー


イフリート「8発目で皮膚を貫通させてきたな」

ジュニア「まだかすり傷、だがやっぱり放ってはおけねぇぜ!」

ジュニア「イフリート! 俺無しで何秒触手を止められる?」

イフリート「そう簡単には侵食されんよ、存分に狙撃手を潰してこい」

ジュニア「おうっ!」

ダンッ!


シュシュシュッ!

ジュニア「観察力、適応力、試行力、どれをとっても優秀、放置してたらすぐに急所を撃ち抜かれかねない怖さがある」

ジュニア「だがなぁ……同じ場所から撃ち続けるってのは狙撃手として如何なものよ!」






SID穂乃果「気付かれた! 一直線にこっちへ走ってくるよ!」

かもめ「まぁ……そりゃ気付かれるのは仕方ないよ」

SID海未「どうします?」

かもめ「そうだね……海未さんの能力で上手く隙を作ったりできないかな?」

SID海未「一度きりだけ騙せるもので良いのなら」

かもめ「それでオーケー」カチャッ


かもめ「一発撃ち込めるチャンスができるなら、私が近距離から>>352を撃ち込む!」

352名無しさん@転載は禁止:2019/10/02(水) 05:51:08 ID:uJmTbE1w
致命の一撃

353 ◆WsBxU38iK2:2019/10/03(木) 01:18:05 ID:fhI6DHLA
かもめ「致命の一撃を撃ち込む!」

SID海未「分かりました、では皆さん私の近くに!」

SID穂乃果「うんっ!」

熱狂ムスペル「もぅ……こうなりゃヤケよ!」タタタッ


SID海未「力を抜いてください、行きますよ――――」

かもめ「……!」

かもめ(私の両脇に穂乃果さんと熱狂が並び、3人を海未さんが後ろから包み込むように抱く)

かもめ(その瞬間、私の足元で地面が消失した)

フッ

かもめ(いや……消えたんじゃない、私が地面の中へと沈んで行っているんだ)

かもめ(息を吐いて力を抜いた体が水面から水底へ向かってゆっくり落ちていくように)

かもめ(私たち4人は天を仰ぐように背中から地面の底へ沈んでいく)

スゥーーッ


かもめ(そんな私に海未さんが背後から耳打ちする)

海未「大丈夫、透過は成功しました」

海未「今私たちの体は完全に地中に潜伏しています、初見で看破されることはないでしょう」

かもめ「これ……銃弾は通るの?」

海未「私の接触範囲から離れても数秒は透過効果は保つと思いますが……」

かもめ「なら問題ない」

カチャッ


かもめ(私は地の底で地上に向けて銃を構える)

スッ

かもめ(ぼんやりと見える視覚、聴覚、その他の全身の感覚、使えるものは全て使え)

かもめ(チャンスは一度きり、これを逃したら二度目はない)


ジュニア「そこだぁぁぁぁぁっ!」

シュィンッ! ドガラシャァァァンッ!!

ジュニア「……ん? いない?」


かもめ(ムスペルジュニアが私たちが身を潜めていた建物を光線で両断する)

かもめ(だけど、既にそこに私たちはいない)


ジュニア「どこだ!」

かもめ(獲物を見失って戸惑う一瞬の隙)

かもめ(その隙を逃さず――――)


かもめ「狙い撃つ!」

ダンッ!!


かもめ(放たれた銃弾は真っ直ぐ地上のムスペルジュニアの元へ)

かもめ(さっきまでの様子見の狙撃とは違う、数少ないデータを元に調合した対ムスペルジュニア用の一発)

かもめ(致命の一撃!)


ドンッ!!!!

ジュニア「……っ!?」


かもめ(完全なる死角)

かもめ(地面の下から撃ち込まれた弾丸によってムスペルジュニアは>>354)

354名無しさん@転載は禁止:2019/10/03(木) 05:46:40 ID:1Tf8bHUU
徐々に身体が崩壊

355 ◆WsBxU38iK2:2019/10/04(金) 04:28:08 ID:vTtsN/LM
かもめ(徐々に体が崩壊していく!)

ドロロロロッ

ジュニア「……っ!?」




熱狂ムスペル「やったの!?」

かもめ「攻撃は成功、考え得る限り最高のものを撃ち込んだと思う」

かもめ「けど……何にしてもここから逃げるのが先っ!!」


ジュニア「よくも――――」

バッ!

ジュニア「やってくれたなぁああああああ!」

かもめ(ジュニアは崩れかけの体で地面に向かってブレードを突き立てた)


SID穂乃果「私に掴まって!」ボワンッ!

ジュニア「切り裂け!」

カッ!!

かもめ(そのブレードの先から光線が放たれると同時に、巨大な魚に変幻した穂乃果さんが私達を乗せて泳ぎだす)

SID穂乃果「たぁっ!」

ゾンッ!!

かもめ(正に間一髪……!)

かもめ(数秒前まで私たちが潜伏していた場所に天上から光の帯が突き刺さる)


SID穂乃果「うおおぉぉぉ!」

かもめ(だけどまだ安心はできない)

かもめ(海未さんの透過能力を維持したまま、穂乃果さんは地中を全力で泳いで狙撃地点から離れていく)

バシャシャシャ!


かもめ(――――その背後から、光の帯が一直線に追いかけてきた!)


ジュニア「逃ぃぃぃがすかよぉぉおおおおおおっ!」

キィィィィィィィンッ!

SID穂乃果「ひぃぃぃぃっ!」

かもめ(ムスペルジュニアが地面に刺さったままのブレードを引き抜くように前方へ切り上げたんだ)

かもめ(当然、放たれたままの光の帯は地の底を切り裂きながらこちらへ向かってくる)

356 ◆WsBxU38iK2:2019/10/04(金) 04:28:25 ID:vTtsN/LM


かもめ「てかやば……これ直撃コースじゃ……!」

SID穂乃果「逃げ切れなさ……そおおおおおう! 海未ちゃんなんとかできない!?」

SID海未「そう言われましても、さすがにアレを透過できるかは保証できませんよ!」

SID海未「光線ですから光自体を透過することなりますし、何よりどんな異能を帯びてるかも分からない」

SID穂乃果「で、でもやってみるしか――――」


熱狂ムスペル「あぁ……もう!」バッ!

熱狂ムスペル「湧き立て群衆! 渦巻け大気! その熱狂で全てを捻じ曲げなさいっ!!」

カッ! ギュインッ!!

SID穂乃果「のぉぉぉっ!?」

かもめ(直撃コースだった光の帯は私たちに当たる直前に僅かに折れ曲がり、私たちの真横ギリギリを掠めて外れた)




熱狂ムスペル「それが何であれ光なら関係ない、私の能力で大気の密度を変えて屈折させられる」

かもめ「熱狂……?」

熱狂ムスペル「……っ、そんな目で見ないでよ、別にあなたたちを助けたわけじゃないわ」

熱狂ムスペル「こうでもしないと私もムスペルジュニアに纏めて殺されてたってだけ」


かもめ「ありがとう、素直に感謝するよ」

SID穂乃果「ないすー!」

熱狂ムスペル「…………」フンッ



SID海未「今のところ追撃は無し、これ以上は狙ってこないようですね」


熱狂ムスペル「……というか私よりあなたよ」ビシッ

かもめ「私……?」

熱狂ムスペル「不意打ちとは言え、撃ち込まれたムスペルジュニアの体が崩れだす弾丸」

熱狂ムスペル「あんなのどうやって作ったの?」

かもめ「……ああ、あれは致命の一撃、神殺しの弾丸だよ」

熱狂ムスペル「神殺し……!?」


かもめ「細かい調合は実戦データを取ったその場でのアドリブだけど」

かもめ「あの弾の基礎となっているのは>>357

357名無しさん@転載は禁止:2019/10/04(金) 05:33:24 ID:GgSpP.u6
ロンギヌスの槍

358 ◆WsBxU38iK2:2019/10/04(金) 23:25:26 ID:vTtsN/LM
かもめ「基礎となってるのはロンギヌスの槍の欠片、あれが弾の中に組み込まれている」

熱狂ムスペル「……!」

SID海未「なるほど、かの神殺しの槍なら納得です」


かもめ「ただ知っての通り貴重な聖遺物の欠片、そう何個も手に入るものじゃない」

かもめ「私が持ってるのは全部で2発分、つまりさっき使ったからあと1発だけ」

SID海未「……しかし、よくそんなもの持ってましたね」

かもめ「まぁこれでも対異能戦闘を生業にしていた傭兵、加えて元魔王軍に所属していたんだよ」

かもめ「あの時の魔王は幹部たちに神討具を配るくらいには神を敵視していた」

かもめ「そんな職場で働いてたんだから、神殺しの聖遺物の素材を得るルートなんてそう難しくなかった」


熱狂ムスペル「元魔王軍……あなたがねぇ」

SID穂乃果「そう言えばそうだった」


かもめ「とは言え、魔王穂乃果が敵視していた現人神と今回の敵は全く違う存在」

SID海未「ええ、スルトはあくまで巨人ですからね」

かもめ「神話世界の住人だから神性は帯びてると思うけど……どこまで通用したかは分からない」


SID海未「ですがあの崩壊速度、生き残ってもそう速くに戦線復帰は難しいでしょう」

かもめ「……うん」


かもめ「とりあえず手を出せるところは出し切った、ワープポイント付近の詳細の確認もできた」

かもめ「後は上手く共倒れしてくれることを願って私たちは一旦仮拠点に戻ろう」

SID海未「はいっ」

熱狂ムスペル「あのバカ、希も戻ってるかもしれないしね」



SID穂乃果「よーし! 飛ばすからしっかり掴まっててよー!」

バシャシャシャ!!


─────────────────

ワープポイント付近

PM8:35〜8:48 新終末編・焔『232』了

359 ◆WsBxU38iK2:2019/10/04(金) 23:26:00 ID:vTtsN/LM
というわけでここまで

一区切り

新終末編・焔『233』に続く
かもしれない

360 ◆WsBxU38iK2:2019/10/06(日) 01:30:20 ID:hNEs5vtk
新終末編・焔『233』

─────────────────
──ワープポイント付近

PM8:48


イフリート「おい! どうなっている! おい!」


ジュニア(全身触手に絡まれたイフリートがこっちを振り返って叫んでくる)

ジュニア(だが悪いな……俺も他のやつのことを気にかけてる余裕はねぇんだ……)


ジュニア「ぐっ……」ドロロロロッ

ジュニア(いったい何を打ち込まれたのか……体が端から崩れていきやがってる)

ジュニア(左手、左腕、左足、左半身はほぼ使い物にならないか……)


ジュニア(だったら――――)

グッ 

ジュニア(使えない部分はぶった斬る!)

ギュインッ! 

ジュニア「がっ!んぐぐっ!」   



ジュニア「……っはぁ……はぁ」

ジュニア(体の体積が半分くらいになったが全部が崩壊するより100倍マシだ)

ジュニア(俺の体はこのくらいでは死なないし時間をかければ回復できるだろう)

ジュニア(ただ……)

ズサァァッ

ジュニア「さすがに……きついな」

ジュニア(俺は後ろに倒れるようにその場に座り込み瓦礫の山に背を預けた)

ジュニア(しばらく立ち上がる気力も湧いてこなさそうだ)


イフリート「おい! 無事かっ! 無事なら返事をよこせ!」


ジュニア「……あ〜はいはい、一応無事ですよー」

ジュニア「ただなんつーか……少しやからしちまって動けそうにない、触手を狩りに行くのは無理そうだ」

イフリート「ならばどうする!」

ジュニア「俺たちがさっきまでやってた方法――お前が触手の拡大を体張って止めてるうちに俺が触手の層の奥まで切り込んで下の陣を剥がす作戦」

ジュニア「アレはもうできないな、レーヴァテインだって片手でしか持てないし、片足じゃ機動力も落ちる」


ジュニア「だからもう良いや……丸ごと破壊しよう」

イフリート「……なに?」

ジュニア「ここでの一番の損失は俺とお前が死ぬこと、そして殺生石を失くすことだ」

ジュニア「別にこれを満たすだけなら逃げるって選択肢もあるんだが……俺らが敵を前に逃亡を図るなんてプライドが許さねよなぁ!」

イフリート「……ふっ、当然だ!」


ジュニア「だったら方法は1つ、イフリート、お前の全力で触手の集合体をその下のワープポイントごと、さらに下の地盤ごと、全部まとめて思っきりぶちぬけ!」

ジュニア「そうすりゃ全部に方がつく!」

ジュニア「せっかく調律した龍脈に傷がつく可能性があるから、できるなら避けたい手段だが、背に腹は変えられねぇだろう」

イフリート「……了解した」

グググググッ!

イフリート「ふんっ!」

ブチブチブチブチッ!!



イフリート「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」


ジュニア(イフリートは纏わりついていた触手を引きちぎると両手を広げて叫んだ)

ジュニア(そして>>361)

361名無しさん@転載は禁止:2019/10/06(日) 05:40:27 ID:HOi6382w
事切れた

362 ◆WsBxU38iK2:2019/10/07(月) 03:10:48 ID:tLsDtOcQ
ジュニア(そして……)

フラッ


ドシィィィィィンッ!!

ジュニア「……え?」


ジュニア(イフリートは拳を振り上げたままその場に倒れ伏した)

ジュニア(まるで張り詰めていた糸がプツンと切れたように……倒れたイフリートは指一本動かない)


ジュニア「感じ……られない」

ジュニア「イフリートの生命反応を」……感じ取れない……!?」

グググッ

ジュニア(俺は右腕を地面に付け、半身残った体を引きずるようにイフリートに近づいていく)

ジュニア(やつが倒れた場所には衝撃で粉塵が待っているが、やつの影が動く様子はさっぱりない)

ズズズズッ ズズズズッ


ジュニア「おい、嘘だろ、この一瞬で事切れちまったって言うのかよ……!」

ジュニア「あの触手なんかに負けるはずねぇだろ! なんとか答えろよ! イフリート!」



??「――――その通り、こやつはあんな矮小な触手などには負けておらん」

ジュニア「……!」

??「では何故死んだか、口の聞けなくなったこやつに代わりに答えてやろう」

ジュニア(舞い上がった粉塵の中、イフリートではない影がそこにはあった)


??「ヒントはこやつが懐に抱えていた殺生石」

ジュニア「まさか……!」

??「気付いたか? 殺生石は文字通り命を奪う石、そして殺生石に身をやつしていたものこそ――――」

バッ!!


ジュニア(風が吹いて粉塵が晴れる)

ジュニア(そこに立っていたのは1人の女、白い狐の面を付け、背後に大きな9本の尻尾を背負った女だった)


ジュニア「白面金毛九尾の狐……ってやつか……」

363 ◆WsBxU38iK2:2019/10/07(月) 03:11:11 ID:tLsDtOcQ
九尾「おっと、その名はちょっと相応しくないなぁ」

九尾「白面金毛は過去に各地を渡り歩き妖気を集め完成した全盛の姿、人ごときに倒され殺生石となる寸前の私にそんな妖気は残ってなかった」

九尾「もちろん石と化してからも石に寄ってくる命は度々吸っていたが千年程度ではたかが知れてるしな」

ジュニア「だったら……なんなんだよ……!」


九尾「ふふっ、急くでない」

九尾「石になってから意識はあった、当然そなたたちの会話も聞いておった」

九尾「だから私はこやつらを利用して復活する好機を伺った」

九尾「そしてその時はすぐに来た、炎の魔人が全力で一撃を放つために己のが力を解放する瞬間――――」

バッ!

九尾「私は溢れ出したやつの生命エネルギーを一気に吸い取ったのだ!」


キィィィィィィンッ! ボォォォォォォォォォォウッ!

ジュニア(両手を広げる九尾の狐の面が紅く染まり、尻尾の表面が逆立つ炎のように変化していく)

九尾「今の私は炎の魔人のエネルギーを食い復活した新たな狐」

九尾「そうだなぁ……」


九尾「“灼面炎毛九尾の狐”とでも名乗っておこうか」

ゴォォォォォォウッ!

ジュニア「……っ!」


ジュニア(ふざけやがって、イフリートの力を取り込んだ九尾の狐だと……?)

ジュニア(正直こっちが万全なら臆することは何もないが、半身欠けてほぼ片腕しか使えない状態だからなぁ)


ジュニア(どうする? ここは>>364)

364名無しさん@転載は禁止:2019/10/07(月) 06:55:56 ID:OMdroVIE
逃げる

365 ◆WsBxU38iK2:2019/10/08(火) 03:11:35 ID:N4dye4ME
ジュニア(ここは……そうだな、逃げたほうが賢明か)

グッ! バシュッ!!


九尾「へぇ、手に持ったブレードの噴射の反作用で移動できるのか」

九尾「帯状に収束させて切断、逆に円錐状に拡散させて噴射、自在に切り替えられて便利な武器だこと」


バシュッ! バシュッ!


九尾「だが安心しろ、半死半生のそなたを追いかけて食ったりはしない」

九尾「せっかくの千年ぶりの都、目障りな触手を片付け空気を満喫するつもりだ」

タンッ


九尾「あぁ……あぁ……」ブルッ

九尾「これじゃこれじゃ、久々に楽しくなってきたのう!」









バシュッ! バシュッ!


ジュニア「くそっ! いったいなんでこんなことに!!」

バシュッ!

ジュニア(計画は順調だったはずだ)

ジュニア(京都の龍脈の掌握、ワープポイントによる兵隊の転送、殺生石の入手)

ジュニア(そしてそれらを守護するイフリートという存在)

ジュニア(全てが順調に進んでいた……それがどうだ)


ジュニア(イフリートは死に、ワープポイントは狂わされ、龍脈は破壊の危機に陥っている)

ジュニア(こんなはずじゃあなかった……!)


ジュニア(俺たちムスペルがここまで準備を重ねて成し遂げようとしてたもの、作戦の本命)

ジュニア(それは>>366)

366名無しさん@転載は禁止:2019/10/08(火) 05:38:49 ID:CmurKKN.
母の復活

367 ◆WsBxU38iK2:2019/10/09(水) 01:59:50 ID:65dl1TFQ
ジュニア(それは“母”の復活)

ジュニア(この地上で母を復活させること、それだけが俺たちの悲願、ひいては親父の悲願だった)

バシュンッ!


ジュニア(ラグナロクで蜂起した勢力の中でムスペル以外の勢力は既に打倒された)

ジュニア(それでも地上の人間共に遅れを取ることはない、だが天上の神々に挑むとなれば話は別)

ジュニア(どうしても母の力が必要になってくる)


ジュニア(どうする、どうすれば作戦を立て直せる……?)

ジュニア(分からねぇ……俺には何も……)


ジュニア「クソおおおおおおおおおおおおっ!」

バシュンッ!!!!








──京都市街



希「母の復活……やと?」

ダンッ!

発狂ムスペル「そうだよ〜!」ヒュンッ!

ドシャァァァァァァァァァッ!!!!


希(サイヤ人化の機動力でうちが逃げ、緑炎蝶化した発狂ムスペルが追いかける)

希(発狂が羽根をひと振りするたびに撒き散らされる鱗粉にも似たビームは容赦なく周囲の建物や道路を分解していく)

希(あれが掠りでもしたら即終了、そんは綱渡りのような逃亡劇は何とかまだ続いていた)


希(そんなおり、中々捕まらない追いかけっ子に飽きを感じたのか、発狂が会話を始めた)

希(もちろん分解攻撃は続いたままやから気は抜けへんけど、発狂の注意を引いておけるならうちにとってもありがたい)

希(じゃあ聞けること聞こうとうちが投げかけた質問に帰ってきた答えが――――)

368 ◆WsBxU38iK2:2019/10/09(水) 02:00:02 ID:65dl1TFQ


希「母……か」

タンッ!


発狂ムスペル「我らがムスペルの偉大なる母、とかあいつらは呼んでたねぇ〜」

希「あいつら?」

発狂ムスペル「一部の幹部連中、そもそもこの計画は下っ端のムスペルたちには伝えられてない」

発狂ムスペル「知ってるのはスルト、スルトジュニア、イフリート、それと同等くらいの一部の高位ムスペルくらいかなぁ〜」


発狂ムスペル「まぁ知ってたら協力しないよね〜、まさか自分たちが母復活の贄になるなんてさぁ〜」

希「贄……復活……ああ、なるほどなぁ」


希「ワープポイントで送られていた大量の一般ムスペルは兵隊として使うためやない、母を復活させる生体エネルギーとして利用するためだった」

希「そんで京都自体が巨大な儀式場、龍脈をイジってたんもそのためやな」

発狂ムスペル「正解〜!」ブンッッ!

ドシャァァァァァァァァァッ!

希「おっと!」ヒュンッ!


発狂ムスペル「あと必要だったのは核」

発狂ムスペル「あなたは知る由もないだろうけだど、ジュニアが取ってきた石が核になる予定だったんだ」

発狂ムスペル「石を中核としてムスペルのエネルギーを纏わせ、巨大儀式場の龍脈で纏め上げる、それが復活の手順なのだ〜! ぱちぱち!」


希「ほう……で? そんなもんをわざわざうちに話した理由は?」

発狂ムスペル「ま、頓挫したからだよね、ついさっき」

希「なっ……!」


発狂ムスペル「あ〜、うちのイタズラのせいじゃないからそこは勘違いしないでほしい、アレだって失敗したんだよ」

発狂ムスペル「このままだと殺戮マシーンが完全に出てくる前にワープポイントごと破壊されちゃうだろうねぇ〜」

希「いったい向こうで何が……」

発狂ムスペル「詳しくは分かんないよ、ただイフリートが事切れてジュニアの生命反応が弱ってるのは感じ取れた」

発狂ムスペル「何かしら“想定外”の驚異が現れたんじゃないかな〜……と思う」


タンッ

希(イフリートが死ぬほどの想定外やと)

希(そんな近くに行ったかもめちゃんたちは無事なんか……?)


バサッ バサッ

発狂ムスペル「実はもうどうしよっかな〜って困ってるんだよ、引っ掻き回すにも作戦自体潰れたし、あなたを追いかけるのも飽きてきたし」

発狂ムスペル「うーん……そうだねぇ〜、>>369

369名無しさん@転載は禁止:2019/10/09(水) 05:56:28 ID:cqC1dgoA
消しちゃおう

370 ◆WsBxU38iK2:2019/10/10(木) 02:42:49 ID:ZkPfj3h2
発狂ムスペル「消しちゃおうか」

ビュンッ!!

希「なっ……!」


希(そう言うと発狂ムスペルは羽根を地縮めて真っ直ぐ上空へと飛び上がった)

希(最早うちには目もくれない、打ち上げ花火みたいに光の尾を描きながら遥か空へ舞い上がる)


希(そして――)

発狂ムスペル「緑炎蝶、最大出力、展開」

バッ!!!!

希(京都の空に、巨大な緑の華が咲いた)




希「ちょっとちょっと、流石にまずいやろ……」


希(半壊したビルの屋上に立っているうちはその光景を見上げて思わず身震いした)

希(あまりに巨大、片方の羽根の先からもう片方の羽根までの長さは京都市内を端から端まで全て覆えるほど)

希(それは夜空に輝くオーロラのように綺麗で……同時に底しれぬ恐ろしさを与えてくる)

希(狂うほどに美しい――殺戮の光)




発狂ムスペル「いや〜絶景だなぁ〜! ここからなら全部見渡せるよぉ〜!」


希(発狂ムスペルはまるで籠から放たれた蝶のように活き活きしとる)

希(というか京都のムスペルが半壊した今、実際にこいつを閉じ込める籠はなくなったも同然)

希(後は思うがままに、狂うがままに、在りと在らゆるものを蹂躙していくだろう)



希(けど発狂ムスペルについての情報を共有しようにも――――)

ピッ ツー ツー ツー

希「……ま、スマホはまともに機能しないよねぇ」

希(結果はさっきと変わらず……いや、きっとそれ以上に悪くなってる)

希(発狂の炎が京都市上空に広がってるかぎり、その下でまともな通信は不可能だろう)


希「しゃーないな、こうなってしまった以上、騒ぎを大きくして気づかせるだの足止めをするだの言ってる場合やない」

希「さっさと足で移動して梨子ちゃんたちのとこまで戻る」

希「そんで京都から脱出するしかない!」

ダッ! ビュンッ!!

371 ◆WsBxU38iK2:2019/10/10(木) 02:43:05 ID:ZkPfj3h2




──京都上空


発狂ムスペル(……ああ、はじめての感覚だ)

発狂ムスペル(今まで感じたどんな狂気より遥かに心が踊っている)

発狂ムスペル(今やうちの体は細胞より細かく分割された群体、意識は群体同士がやり取りする網目のように張り巡らされた繋がりの中に形成されてるだけのもの)

発狂ムスペル(顔や感覚器官はとうに無い、それなのに……私には見えるし聞こえる)

発狂ムスペル(自分の目や耳があった時よりハッキリとクッキリと、周囲の光景がアタシを構成する無数の粒子を通じて伝わってくる)


発狂ムスペル「……ふむふむ、今の京都で動きがあるところが数か所あるねぇ〜」

発狂ムスペル「まずは移動を始めた足元の希ちゃん」

発狂ムスペル「次に地中を高速で移動する何人かのグループ」

発狂ムスペル「少し遠くにもグループがあって……こっちは地中の倍くらいの人数かな〜」

発狂ムスペル「あとはカッコ悪く逃げてるスルトジュニアと――――」


発狂ムスペル「ワープポイント地点の埒外存在」


九尾「…………ふっ」


発狂ムスペル(はぁ〜〜! 今こっちに気づいたねぇ! 僕が感じ取ったことに気づいたねぇ!)

発狂ムスペル(でも一瞥して気にも止めないって素振りだよ〜はぁ〜〜! そういう態度なんだねぇ〜!)

発狂ムスペル(僕の!アタシの!自分の!私の!うちのことなんて眼中にないってか〜〜!?) 


発狂ムスペル「……………ま、どうでもいいけど」


発狂ムスペル(誰が何をしてようと変わらない、どうせ全部消すって決めたんだ)

発狂ムスペル(まず手始めに>>372)

372名無しさん@転載は禁止:2019/10/10(木) 05:30:58 ID:WJhKAPkk
無様なスルトジュニアから

373 ◆WsBxU38iK2:2019/10/11(金) 01:50:58 ID:lKigts2o
発狂ムスペル(まず手始めに無様なスルトジュニアから消すか)

グググググググッ

バッ!!


ドドドドドドドドドドッ!!!!







ジュニア(いきなり街の上空に現れた巨大な光の蝶が羽根をひと振りすると鱗粉のような光の粒子が放たれた)

ジュニア(方角はワープポイントの方でも他の何処かでもない、真っ直ぐ俺の方へ向かってくる)

ジュニア「あいつっ……!」




ドドドドドドドドドドドドドドドッ!!

ジュニア(光の粒子の洪水は巻き込んだ建物を一瞬にして塵に変えていく)

ジュニア(アレの仕組みが何なのか分かりはしねぇが本能が叫んでる)

ジュニア(巻き込まれたら終わりだと……!)


ジュニア「クソぉおおおおッ!」

バシュンッ! バシュンッ!!

ジュニア(ラブライブレード型レーヴァテインの出力を上げるが間に合わねぇ)

ジュニア(迫りくる光の洪水の範囲から逃れられねぇ!)


ジュニア「……ちっ!」

ジュニア(こればっかりはやりたくなかったが……最後の手段だ)


ジュニア「おいスルト! 見てるんだろ! 俺を通してこの状況を分かってんだろ!」

ジュニア(俺はスルトの体の一部から生まれた存在)

ジュニア(例え場にどんなジャミングがかかってたとしても、自分同士の繋がりはそう簡単に断ち切れない)

ジュニア(やつは今この瞬間も俺を通して世界を観ているはず、だからっ!)


ジュニア「いいのか、このままだとお前の体の一部が消えちまうぞ! お前が動かなくていいのか! 穴蔵の奥に引きこもったままでいいのかよ!」

ジュニア「……何とか答えろよ! スルトォォォォ!!!!」



スルト『――ああ、確かに見ている』

ジュニア「……!」

ジュニア(繋がった!)


ジュニア「おいスルト! 見てるなら早くなんとか――」

スルト『聞け、小さき半身よ』

ジュニア「……っ?」


スルト『私は>>374

374名無しさん@転載は禁止:2019/10/11(金) 06:18:05 ID:ZculFG4o
動けない

375 ◆WsBxU38iK2:2019/10/12(土) 02:11:03 ID:fF5t36a2
スルト『私は動けない』

ジュニア「なっ……!?」


スルト『私から言えるのはそれだけだ』

ジュニア「待て待て待て! 俺を見捨てる気か――――――」

バシュッ!!!!!!


シュゥゥゥゥゥ


発狂ムスペル「はい消去」


発狂ムスペル「なんだか呆気なかったなぁ〜」

発狂ムスペル「スルトジュニアも手負いじゃなければもう少し足掻けたんだろうけど……まぁ消えたからどうでもいいよね」


発狂ムスペル「それにしても……この場面でさえスルトのやつは動かずか〜」

発狂ムスペル「自分の一部から生み出した分身体を見捨てるなんて」

発狂ムスペル「そうまでして動きたくない理由があるのか〜単に意固地になってるだけなのか〜」

発狂ムスペル「もう京都での作戦自体どうでも良いのかな〜?」


発狂ムスペル「ま、作戦がどうでもいい所だけは同意」

グググググググッ

発狂ムスペル「じゃあ残りの人たちも一斉に消しちゃ――――」



キィンッ!

発狂ムスペル「……ん?」


発狂ムスペル(羽根を動かして炎を撒こうとしたとこで、感覚器官の代替になってる粒子が遠方に何かを捉えた)

発狂ムスペル(方角は南、そこから京都に向かって移動する巨大な空飛ぶ何か……城?)

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

発狂ムスペル(その城はこっちに向かって>>376)

376名無しさん@転載は禁止:2019/10/12(土) 06:08:01 ID:FZa3NXgU
何かを飛ばしてきた

377 ◆WsBxU38iK2:2019/10/13(日) 02:05:34 ID:lqsaoWvo
発狂ムスペル(何か飛ばしてきた……?)


ドッ!!!!!!


発狂ムスペル(それは水流だった)

発狂ムスペル(水流は高速でうねりながらもビームのように夜空を一直線に切り裂いて迫る)

発狂ムスペル(なんの攻撃のつもりか知らないけど……そんなの分解するだけだって!)

バッ!!


発狂ムスペル(両の羽根をひと振り、前方の空間に炎の鱗粉をばら撒く)

発狂ムスペル(これだけで鱗粉に触れたものは瞬く間に分解されちゃうんだか――――)


発狂ムスペル「……ら?」

ドシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!

発狂ムスペル「ってうぁああああああああああっ!?」


発狂ムスペル(予想外!予想外!予想外!)

発狂ムスペル(水流のビームが鱗粉の膜を貫通して飛んできちゃったよ!!)


発狂ムスペル(幸い体全体を捻って直撃は回避したけど、うちの分解が効かないってこの水はいったい……)

バシュッ!

??「はっ!」

発狂ムスペル「おぉっ!?」

発狂ムスペル(回避したのもつかの間、今度は水流の中から人間が飛び出してきた)

発狂ムスペル(……あぁ、なるほど、これは攻撃じゃなくて、人を送り込むための空中の水路ってわけか!)


??「やはり高水圧の放水を選んだのは正解でしたね」

??「……ぷはっ! でもさ海未、頭の先から足の先までビショビショになるのはなんとかならなかったの?」

??「ですがにこ、だからこそこうして懐へ潜り込めたというもの!」

発狂ムスペル(出てきたのは髪の長い女の子と髪を二つに結んだ女の子、どっちも希ちゃんくらいの歳に見える)

発狂ムスペル(会話から察するに最初に出てきたのがうみ、次がにこ?)


にこ「ま、そう言われたらそうなんだけど」


発狂ムスペル(いや……この2人だけじゃない、もう1つ水流から飛び出してくる影がある!)


海未「>>378! ちゃんと付いてこれていますね!」

378名無しさん@転載は禁止:2019/10/13(日) 07:39:12 ID:SurobxZA
人造ムスペル

379 ◆WsBxU38iK2:2019/10/14(月) 00:52:03 ID:jq1xollA
海未「人造ムスペル! ちゃんと付いてこれていますね!」

人造ムスペル「はいっ!」

バシュッ!


発狂ムスペル(3人目は……まさかのムスペル!?)

発狂ムスペル(全身を黒い密着型のスーツで覆ってヘルメットを被ってるから外見じゃ分からないけど……確かにムスペルの生体反応を感じる!)


発狂ムスペル(人間2人にムスペル1人、ただ全員に共通してるのは変な機械を背負ってること)

発狂ムスペル(機械からは4本ノズルが伸びていて、そこから水が噴射されている)

ドドドドドッ!!

発狂ムスペル(あれで空を飛んで……?)

バシュッ!!

発狂ムスペル(やっぱり!)

 
海未「ふっ……!」カチャッ

発狂ムスペル(水流噴射で一番近くにまで飛んできたやつが腰に差した剥き身の刀に手をかける)

発狂ムスペル(でも問題ないよ〜! 既にバラバラになってるうちを斬ることなんてできるわけが――――)

海未「はっ!」


ザシュッ!!!!


発狂ムスペル「…………え?」


発狂ムスペル(なん……で?)

発狂ムスペル(斬撃の走った断面だけ、発狂の炎の効果が切れてダメージが通ってる!?)


キンッ!

海未「わざわざ避けなくても自分は無敵……などと思ってるなら目を覚ましたほうがいいですよ」

発狂ムスペル「……っ!」


海未「私たちはそののぼせた頭に冷水を浴びせに来たんですから……!」


─────────────────

京都市内〜上空

PM8:48〜8:58 新終末編・焔『233』了


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