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>>2「>>2の3分クッキングの時間だよ!」 PartⅩⅩⅡ
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安価スレのようなそうじゃないよう
なSSスレ
前スレ(PartⅩⅩⅠ)
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/10627/1496660857/
前前スレ(PartⅩⅩ)
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前前前スレ(PartⅩⅨ)
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/10627/1487495156/
前前前前スレ(PartⅩⅧ(再々))
http://karma.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1486897355/
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てんぷれ
過去編〜土曜編までの略年表
http://urx.mobi/BK9a
日曜編チャート
http://urx.mobi/BK9h
終末編チャート1(『200』まで)
http://urx.mobi/BK9i
終末編チャート2(『201』以降)(更新)
http://ur0.link/CNAi
新終末編チャート
http://u0u1.net/F8xS
現在の登場人物の図(更新)
http://u0u1.net/F8xT
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○あらあらすじ
終末の主は自らをフードマンと呼称した
その正体はかつて異教の神モイラの力を奪い、自らの神話に記述されし滅びの運命を捻じ曲げた悪神ロキ
最早北欧神話のソレとは別の存在になった悪神に昔の名は必要ない
世界の自殺システム、仕組まれた人と魔王の戦い、ラグナロク計画
何故フードマンはこうも人の世界を滅ぼそうとするのか
未だ理由は分からないまま、μ'sたちは懸命に戦い続ける
ほのキチ倶楽部陣地で発生した魔王キチ団との戦い
玩具の箱庭での団長と団長モドキとの殲滅戦
封印を解かれた新魔王と、プライドを取り戻した深淵穂乃果の決戦
UTX跡での寿限無を取り戻すためのナンジョルノたちの死闘
天界に現れた堕天使からヴァルハラを守るほのりたちの防衛戦
九州へ偵察しに行った海未たちが見た規格外の戦力と、その帰りに迷い込んだ魔の海域
諸々の戦いを経て、次の舞台は―――
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新終末編『120』
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──琵琶湖沿岸
AM3:00
ゴースト「…………え?私は何をしてるのかって?」
吸血鬼穂乃果「いや別に聞いてないけど」
ゴースト「ふむふむ、では1から説明してあげるわ」
吸血鬼穂乃果「だから聞いてないって……」
ゴースト「目の前に広がる大きな湖、ここは言わずと知れた琵琶湖よ!」
ゴースト「私たち3人はトゲわんから指令を受けてここに来たの」
吸血鬼穂乃果「ねぇミニ穂乃果、ゴーストが変になってしまったわ」
ミニ穂乃果「ゴーストちゃんは各地に分霊体を飛ばしてるからねー、どこかから変な電波でも受診したんじゃない?」
ゴースト「指令の内容は聖水とやらを探すことらしいわ」
ゴースト「聖水についてトゲわんから貰った情報は>>5」
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聖水は2つの種類がある
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ゴースト「聖水には2つの種類があるということよ!」ビシッ!
ミニ穂乃果「うん、そんなこと言ってたね」
吸血鬼穂乃果「2種類ということは判明してるのに、具体的に何と何があるのかは分からない、不完全な情報だわ」
吸血鬼穂乃果「こんな当てのない探索に付き合わされるなんて……高貴な身としては耐え難い苦行よ」フンッ
ミニ穂乃果「でも協力するって決めたんでしょ?」
吸血鬼穂乃果「……まぁ、そうね」
吸血鬼穂乃果「組織という枷から解き放たれた私の夢は高貴な血族に相応しい城を立てて優雅に暮らすこと」
吸血鬼穂乃果「その平穏な世界には新魔王軍とやらが邪魔で、新魔王軍を排除するにはトゲわんたちに助力するのか早い」
吸血鬼穂乃果「至極簡単な理屈よ」
ミニ穂乃果「結局組織に戻っちゃってるじゃん」
吸血鬼穂乃果「いや……あの人々の集まりは何というか、組織よりもっと自由なものでしょう」
ミニ穂乃果「ふむ、そこは同意」
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吸血鬼穂乃果「ミニ穂乃果こそどうなのよ」
ミニ穂乃果「あたち?あたちは戻るべき魔王キチ団が無いし、さっきの通信聞くにあたちを拾ってくれたマッキーも味方になったみたいだし」
ミニ穂乃果「フツーにあの人たちの味方していくつもりだよ」
ザッ
ゴースト「むっ……ちょっとちょっと、私を放っておいて2人で何を話してるのよ」
吸血鬼穂乃果「あなたが先に変な電波受信して独り言を初めたんでしょう」
ミニ穂乃果「まぁまぁ、言い争いはやめて早く聖水をさがそー」
ミニ穂乃果「情報が足りないなら情報を知ってる人に聞いたらどうかな」
ゴースト「……そうね、この近くだと滋賀支部が近いかしら」
吸血鬼穂乃果「ならばそこへ」
ゴースト「うんっ」
ゴースト(そう頷いた私はツインテールをなびかせて琵琶湖沿いに再び歩き出す)
ゴースト(余り物みたいなパーティで少し心配だったけど、わりと良い組み合わせかもしれない)
-
ゴースト(琵琶湖周辺に変わらず降り注いでる異能封じのAASも私たちなら問題ないしね)
ゴースト(幽人の私、吸血鬼ベースの吸血鬼穂乃果、スキルに近い力を使えるミニ穂乃果)
ゴースト(異能殺しの雪の中の行軍だって全然苦ではない)
ザッ ザッ
ミニ穂乃果「ん?ねぇ……あれなんだろ」
ゴースト「アレ?」
ゴースト(少し歩いたところでミニ穂乃果が何かを発見する)
ゴースト(ミニ穂乃果が指差したのは>>9)
-
かまくらの中で和菓子を作ってるほのパパ
-
ゴースト(ミニ穂乃果が指差したのは道の途中にあった大きなかまくら)
ゴースト(かまくらに空いた入り口からは暖かい光が漏れていた)
ゴースト(地面に投射された光には人らしき影が揺れていて、中で誰かが動いてるのが分かる)
ゴースト「……というか、AASでかまくらを作るってどういうセンスなのよ」
ゴースト「構造的には氷の結晶と変わらないけど、核となってる微粒子は魔王が打ち上げた得体のしれない概念」
ゴースト「過去に消されかけた苦い思い出もあるし、私は積極的に触ろうとする気さえ起きないわ」
吸血鬼穂乃果「まぁ……あなたと違って一般下民は詳しい理論は知らないわよ」
吸血鬼穂乃果「単に逃げ遅れたからかまくらに隠れてるんじゃない?」
ミニ穂乃果「違う、これお店だよ」
ゴースト「……は?」
ミニ穂乃果「ほらここ……看板が付いてるよ」ツンツン
-
タタッ
ゴースト「本当だわ、『穂むら滋賀支店』って書いてる」
吸血鬼穂乃果「こんなとこで店だなんて非常識ねぇ」
ミニ穂乃果「何のお店なんだろう?」
ゴースト(店先……もといかまくら先で私たちがやんや言ってると、中から店主らしき男が顔を出した)
??「…………ラッシャイ」
ミニ穂乃果「わっ!」ビクッ
ゴースト「……あれ?」
ゴースト(私はその人を見た瞬間、何か奇妙な違和感を覚えた)
ゴースト(私の記憶……ううん違う、私じゃない私の記憶にこの人の情報があるんだ)
-
ゴースト(たぶん矢澤にこ――私の直感がそう告げる)
ゴースト(思いついた私はタイプニコを通して矢澤にこの知識にアクセスする)
ピピッ
ゴースト(実はにこ穂乃果に聞いていたのだ、元型にアクセスする資格を持つ者は同じタイプの者の知識を閲覧できると)
ゴースト(目の前の人は矢澤にこの記憶にある……)
ゴースト「……ほのパパ?」
ほのパパ「…………」コクンッ
ゴースト(私の問いに頷いたほのパパは手に持っていた和菓子らしき何かを差し出してくる)
ゴースト(その和菓子は>>13)
-
光に包まれていてよく見えない
-
ゴースト(その和菓子は……)
ピカァァァァァァッ
ゴースト(光りに包まれていてよく見えない)
ゴースト「私にくれるってこと?」
ほのパパ「……」コクンッ
ゴースト「そ、そう」
ゴースト(眩しくて見えないけど一応貰っておく、不思議な和菓子ね……)
吸血鬼穂乃果「ほのパパ?知っているのなら私たちにも教えなさいよ」
ゴースト「あっ、そうねごめんなさい」
ゴースト「この人はほのパパさん、高坂穂乃果のお父さんよ」
ミニ穂乃果「オリジナルの!?」
吸血鬼穂乃果「それは驚きね……」
ゴースト「うん、まさか私もこんなところで会うとは思わなかったわ」
-
ゴースト「それに……」
ゴースト(私は引き続きほのパパに関する矢澤にこの知識ログを探る)
ゴースト「元の世界では和菓子屋だった高坂穂乃果の実家は、この世界だと博物館になっている」
ゴースト「ほのパパはそこを火星人という侍に任せて旅に出ていたそうね」
ゴースト「何でも……神龍という幻想種を探しに行ったとか」
ほのパパ「…………」コクンッ
ゴースト「当たってるみたいね、旅はどうなったの?」
ほのパパ「…………」クイクイッ
ゴースト「……?」
ミニ穂乃果「手招きしてる、中に来れば分かるってことじゃないかな」
ゴースト「なるほど」
ゴースト(少し怪しさは感じる、でもオリジナルの父親なんて最重要人物、ここで話を聞かない選択肢はない)
ゴースト「分かったわ、中へ入りましょう」
ミニ穂乃果「わーい!中は暖かそうだし歓迎!」テテテッ
吸血鬼穂乃果「うーん……神龍……シェンロン……?」
ゴースト「どうしたの?」
吸血鬼穂乃果「いや、どこかで聞いた気がするのよね……」
ゴースト「へー」
ゴースト(そんな会話をしながら私たちはかまくらの中へ入っていく)
ゴースト(穂むら滋賀支店、いったいどんなお店なのかしら……)
─────────────────
琵琶湖
AM3:00〜AM3:05 新終末編『120』了
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というわけでここまで
新スレもダラダラと
新終末編『121』に続く
かもしれない
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新終末編『121』
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──琵琶湖沿岸・穂むら滋賀支店
AM3:07
ゴースト「ここで良いのね?」
ほのパパ「…………」コクンッ
ゴースト(店に入った私たちはほのパパに促されるまま、店内で飲食する用のテーブルの椅子に腰掛ける)
ゴースト(横並びに3つ並べた椅子に私たちが座り、テーブルを挟んで反対にほのパパが座った)
ゴースト「じゃあ私たちの自己紹介から始めましょうか」
ゴースト「まず前提として、私たちはあなたの娘さん……高坂穂乃果の仲間よ、それは分かってる?」
ほのパパ「……」コクンッ
吸血鬼穂乃果「無口な人なの?」
ゴースト「か、寡黙なのよ」
ミニ穂乃果「どっちでも同じじゃない……?」
ゴースト「はぁ……」
ゴースト(首を捻る吸血鬼と床に付かない足を暇そうにパタパタしてるミニ穂乃果を無視し、とりあえず自己紹介を続けることにする)
-
ゴースト「私はゴースト、大罪穂乃果の1人であるグリードが生み出した幽体、ゴーストにこから進化した存在」
ゴースト「今は幽体と人体の中間のような体をした幽人って種族になってるわ」
ゴースト「あと意味が通じるか分からないけど『タイプニコ』の資格持ちで穂圏にアクセスできる権利を持ってる」
ゴースト「まぁ……矢澤にこに似てるやつの知識は大体共有できると思って貰って構わない」
ゴースト「能力や魔法の説明は……色々有るから今は後回しね、気軽にゴーストと読んでちょうだい」
ほのパパ「…………」コクンッ
吸血鬼穂乃果「私は高貴なる血族、吸血鬼穂乃果よ」
吸血鬼穂乃果「亜種穂乃果なのか合成穂乃果なのかは自分でも分からないけれど……些細なことだから気にしないでいいわ」
吸血鬼穂乃果「能力は血を操ること全般、攻撃にも防御にも使える高貴な力、まぁ下民には関係ないことでしょうけど……」
ミニ穂乃果「最後にあたちはミニ穂乃果!亜種穂乃果の1人だよー!」
ミニ穂乃果「見ての通り小さな女の子で能力は言葉で引力を操ること、ってかこのお菓子食べていい?」
ほのパパ「…………」コクンッ
ミニ穂乃果「わーい!」
ゴースト「ちょっとは遠慮しなさいよ……」
ミニ穂乃果「おいしー!」
-
吸血鬼穂乃果「ともかく、これで私たちの自己紹介は終わったのよね?」
ゴースト「え?う、うん……これでようやく本題に入れるわ」
ゴースト「しかし……」
チラッ
ゴースト(この店内、入った時に驚いたけど改めて見てもすごいわね)
ゴースト(何が驚くポイントかと言うと>>20)
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穂乃果のグッズだらけ
-
ゴースト(店の中が高坂穂乃果のグッズだらけということだ)
ゴースト(かまくらの中にしては大きめの、けれど普通の店舗と比べると狭めの店内には、所狭しと穂乃果グッズが並べられている)
ゴースト(確か高坂穂乃果は元の世界だとスクールアイドルというものをしていたはず)
ゴースト(このグッズがそれの名残なのか、ほのパパの自作なのかは分からないけど……なんだか奇妙な光景ね)
ゴースト(自分の娘への愛ということは分かっても、ここまで来ると偏執的なものを感じてしまうわ)
吸血鬼穂乃果「……どうしたの?」
ミニ穂乃果「おいしー!」
ゴースト(まぁ気にしてるのは私だけで、吸血鬼穂乃果はそもそも庶民の内装に興味を持たず、ミニ穂乃果に至っては和菓子を楽しんでいる様子)
-
ゴースト「なんでもない、本題に移りましょう」
吸血鬼穂乃果「ええ、早く済ませて」
ゴースト「ほのパパ、まずはあなたのことから聞かせてちょうだい」
ゴースト「あなたは神龍に会うために家を空けて旅に出ていたはず、それがどうして琵琶湖で商売なんかしてるの?」
ゴースト「旅の結果は……どうなったの?」
ほのパパ「…………」
ゴースト(私の真摯な気持ちを感じとってくれたのか、内情を知る私相手に誤魔化せないと諦めたのかは分からない)
ゴースト(けれど寡黙を貫いていたほのパパは、静かにゆっくりと口を開く)
ほのパパ「……それは、>>23」
-
秋田に着いた途端に飽きた
-
ほのパパ「……秋田に着いた途端に飽きた」
ゴースト「…………は?」
ゴースト(ダジャレ?ダジャレなの?親父的なギャグなの?)
ゴースト(いやいや、このタイミングでギャグを言う意味が分からないわよ……きっと言い回し的にそう聞こえただけね)
ゴースト(それにしても……)
ゴースト「飽きたってどういうことの、あなたの旅は娘のためじゃなかったの?」
ほのパパ「……初めはそう思っていた、神龍に頼れば娘は戻ってくると」
ほのパパ「……だから……日本中駆け回ってドラゴンボールを探していた」
ほのパパ「……しかし魔王となった娘の悪行を聞く度、どんどん心が折れていき、気持ちが保たなくなっていった」
ほのパパ「……もう自分の本当の娘はどこにもいないのではないかと、そう思うようになってしまった」
ゴースト「…………」
ゴースト(私は何も言えなかった)
ゴースト(ほのパパの気持ちはある意味で正しい、この世界の高坂穂乃果は穂乃果であって穂乃果でない)
ゴースト(歴史が書き換わり、穂乃果として産まれてきた魔王なのだから)
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ゴースト(ほのパパはそれを詳しくは知らなかったが、親の勘で感じ取っていたのかもしれない)
ゴースト(こうして店の中に"前の穂乃果"らしきグッズを並べているのも、そう言った気持ちが原因なのかも……)
ほのパパ「……そして秋田に入った時、突然気持ちの糸がプツリと切れた」
ほのパパ「……全てがどうでもよくなってしまったんだ」
ゴースト「それで和菓子屋に戻ったのね」
ほのパパ「……ああ、元の家に戻る気は起きないから別の場所でほそぼそとね」
ゴースト「でも……何故琵琶湖に?営業するなら他の場所でも良かったんじゃ」
ほのパパ「……ここに来たのは最近だが、実は……良い水が琵琶湖にあるという噂を聞いてな」
ほのパパ「……なんでも聖なる水と言われるほど良いもので、ぜひ和菓子に使いたいと思い――」
ゴースト「聖なる……水……?」
ミニ穂乃果「聖水だよっ!!」ガタッ!
吸血鬼穂乃果「へ〜、関係ありそうな話ね」
ほのパパ「?」
ゴースト「ほのパパ!その水について詳しく聞かせて!」
ほのパパ「……あ、ああ、その水は>>26」
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究極の癒やしを与えるものと、すごくおいしい料理を作れるもがの隔日で湧く
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ほのパパ「……その水は、究極の癒やしを与えるものと、すごくおいしい料理を作れるもがの隔日で湧くらしい」
ゴースト「らしい?ほのパパも湧き場所は知らないの?」
ほのパパ「……ああ」コクンッ
ほのパパ「……来て分かったんだが、聖なる水は貴重なものらしく、とある機関が管理しているんだ」
ほのパパ「……この店を含め、水が欲しい者はそこに申請して水を運送してもらっている」
ゴースト「その機関ってまさか……」
ほのパパ「……全国魔王対策協会滋賀支部だ」
ゴースト「……!」
吸血鬼穂乃果「へ〜、丁度良いじゃない、そこにも話を聞きに行く予定だったし」
ミニ穂乃果「でもなんで協会が管理してるんだろ?」
ゴースト「聖水の効果を聞くに異能に近いものらしいし……協会が関わっていても不自然じゃ無い」
-
ゴースト「ねぇほのパパ、ほのパパの和菓子はその水を使って作られてるのよね」
ほのパパ「…………うむ、君にあげた和菓子もその1つだ」
ほのパパ「……それには癒やしの効果が秘められている」
ゴースト「ああ、この眩しく光ってる和菓子か」
ゴースト(怪しくてまだ食べて無かったけど……)
ゴースト「お願い、あなたの方から支部に口添えしてもえないかしら」
ゴースト「私たちもその聖水を欲しているの」
ミニ穂乃果「おねがいー!」
ほのパパ「……ふむ、それなら待ってるといい」
ゴースト「え?」
ほのパパ「……定期運送の時間がそろそろなんだ、もうすぐ聖水の配達員が来るはずだ」
吸血鬼穂乃果「配達員?こんな異常気象の時に来るものかしら――」
ゴースト(と、吸血鬼穂乃果が入り口から見える外の景色を見た瞬間、>>29)
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老婆が猛ダッシュで近づいてきた
-
ゴースト(老婆が猛ダッシュでかまくらに近づいてきて――)
ダダダダダダダダッ!
吸血鬼穂乃果「ひぃぃぃっ!?山姥!!」
ゴースト(吸血鬼穂乃果が珍しく悲鳴を上げる)
??「誰が山姥じゃ!失礼な小娘め!」
キキーッ!!
經流「ワシの名はヘル、園田經流じゃ!」
ゴースト(かまくらの入り口で急ブレーキをかけて止まった山姥――もとい經流は私たちに向けて名を名乗る)
ゴースト(園田?園田って確か……)
ゴースト「あなた、もしかして園田海未に関係ある人?」
經流「なんじゃ孫を知っておるのか、ワシは海未の祖母じゃよ」
ミニ穂乃果「そぼ?おばあちゃん?」
吸血鬼穂乃果「ず、随分と元気のある老人ね……驚いたわ」
-
ゴースト「私たちは海未の仲間よ!ここには聖水を探しに来たの!それで――」
經流「仲間か……うむ、大体の事情は理解した」
ゴースト「ええっ!?それだけでいいの!?」
經流「お主の目は嘘をついておらん、海未の仲間なら信用できる、それに……悠長に話してる時間もないしの」
ゴースト「時間……?」
經流「ワシは魔王対策は孫たちに任せて、一般市民を救助避難させるために独自に全国を回っていたのじゃ」
經流「幸いワシのゲートならAASやその他ジャマーの影響を受けにくい」
經流「その過程でさっきまで滋賀支部にいたのじゃけど……聖水を運搬する仕事があると聞いてのう」
經流「この外の状況じゃし危険だろうと思って手伝いを申し出たのじゃ」
ゴースト「ってことは……聖水がここにあるの!?」
經流「うむ、他の2人の運搬員と共に外に置いてあるぞ」
經流「ワシ1人で良いと言ったのにあやつらは『これは私らが先に受けた仕事だ』『危険があっても戦える』と言って聞かなくてのう」
經流「仕方ないから一緒に来たわけで―――」
??「おいバーサン!長話してないで早くそこから店主を避難させやがれっ!!」
??「すぐそこまで"ヤツ"が迫ってるんだよ〜!」
ゴースト(私たちの会話に割り込むように外から大声で呼びかける2つの声)
ゴースト(片方はギザギザな荒い声で片方は柔軟剤でも飲んだかのような柔和な声)
ゴースト(けれど両方の声は共通して、緊迫した鬼気迫る雰囲気を纏っている)
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經流「そうじゃな……」
經流「店主!それからお前たち3人!急いでかまくらから出るのじゃ」
經流「もうすぐここは暴走した幻想種の攻撃範囲に入ってしまう!」
ゴースト「幻想種……ですって……!」
經流「そうじゃ!琵琶湖の中から突如として出現して大暴れしておる」
經流「ワシたちは運送の途中にヤツを発見した、今は外の2人が抑えておるが時間が経てばここにも被害が及ぶじゃろう」
ミニ穂乃果「それは大変!早く逃げないと……ん?ほのパパ?」
ほのパパ「…………」
吸血鬼穂乃果「下民、話が聞こえませんでしたの?早く離れないとあなたも巻き込まれるのよ?」
ミニ穂乃果「そうだよ!早く行こうよ!」
ほのパパ「………………」ググッ
ゴースト(2人が避難を促すけど、ほのパパは何故か動こうとはしない)
ゴースト(押し黙ったまま両の拳を握りしめ、私たちに背を向けたまま、ずっと店内を見つめている)
ほのパパ「……ここが、壊されるんですか?」
經流「ああ、ヤツの攻撃を食らえばひとたまりもない、粉々の木っ端微塵になるじゃろう」
ほのパパ「……そうですか」
ほのパパ「……なら尚更、自分はここを離れるわけにはいきません」
吸血鬼穂乃果「はぁぁっ!?」
ミニ穂乃果「どうして!」
-
ほのパパ「――だって、ここには娘がいますから」
ゴースト「…………」
ほのパパ「……魔王となった娘を諦めてしまった自分が言う資格が無いのは分かっています」
ほのパパ「……けれど、そんな自分にとって、ここにある娘の名残だけが、娘の笑顔で溢れた店だけが、唯一の居場所なんです!」
ほのパパ「……娘をもう一度失うくらいなら、自分が生きてる意味はない」
ゴースト(震える声でほのパパは自分の気持ちを絞り出す)
ゴースト(顔が見えないから分からないけど、きっと泣いてるのだろう)
ゴースト(世界改変によって魔王の父親となり、本当の娘の記憶さえも朧気になってしまった男)
ゴースト(真実を探す旅に出るも途中で精魂尽き果て、抜け殻のように和菓子作りに没頭する日々)
ゴースト(彼のことを人は哀れな男だと思うだろう、こんな緊急時に有りもしない幻想に囚われた惨めな男だと思うだろう)
ゴースト(だけど……私は知っている)
ゴースト(彼が追い求めた本当の高坂穂乃果は決して幻なんかじゃないことを)
ゴースト(そして誰かを想う気持ちは絶対に守らなければいけないことを)
吸血鬼穂乃果「な、なに言ってるのよ……初めに紹介したわよね、私たちは高坂穂乃果の仲間だって!」
吸血鬼穂乃果「高坂穂乃果はちゃんと生き返って――」
ゴースト「…………」サッ
ゴースト(私は吸血鬼穂乃果の口元を遮り、首を横に振る)
吸血鬼穂乃果「……?」
ほのパパ「……ああ、分かってますよ、"魔王の仲間"なんでしょう……?」
吸血鬼穂乃果「……っ!」
ゴースト「この人には穂乃果に関する言葉はもう届かない」
ゴースト「きっと私たちのとの会話も聖水と和菓子関連以外は耳にに入ってすらいなかったんでしょう」
-
ゴースト「1度全てを諦めたこの人には生半可な言葉は通じない、穂乃果に直接会わせるくらいしないと目を覚まさせることはできない」
ミニ穂乃果「だったら尚更早く逃げて――」
ゴースト「でも!ここで店を失ったら……この人の心は完全に壊れてしまう」
ミニ穂乃果「うぅ……どうしようよないよぉ」
ゴースト「だから、私は第三の選択をする」
タンッ!
ゴースト「経流、暴走幻想種を店に近付けさせなければ……逃げる必要もないのよね」
經流「……うむ、そう言うことじゃのう」
ゴースト「なら私が囮になって幻想種を引きつける、経流はその間にゲートとやらを使って店の物事店主を避難させて」
ゴースト「1つも壊さないように、丁寧にゆっくり運んでちょうだい」
經流「じゃが――」
ゴースト「お願い」
ゴースト(何かを言いかけた経流に有無を言わせないように言葉を重ね、じっと見つめる)
ゴースト(私の気持ちが目で分かるんでしょ?なら………)
經流「…………分かった、お前の案に乗ろう」
ゴースト「ありがとう」
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ゴースト「ということだから、2人は經流の手伝いを――」
吸血鬼穂乃果「……何言ってんの、ここまで来たら付き合うわよ」
ゴースト「え?」
吸血鬼穂乃果「あの下民が余りに哀れすぎて見てられないし、何より外にある聖水を壊されでもしたら最悪」
吸血鬼穂乃果「何より、これで貴女が死にでもしたら隊を任せれた高潔な私の名に傷がついてしまうもの」
ゴースト「ははっ、何時あなたに隊を任せたのよ……でもありがと」
吸血鬼穂乃果「ふんっ」
ミニ穂乃果「はいはーい!あたちも行くよ!いちれんたくしょー!」
ピョンピョンッ!!
ゴースト「うん、ミニ穂乃果もありがとね」
ゴースト「じゃあ行こうか、外で暴走してる幻想種とやらの元へ!」
吸血鬼穂乃果「ええっ!」
ミニ穂乃果「おー!」
タタタタッ!
ゴースト(私たち3人、外にいるらしい2人と合わせて5人、これで琵琶湖の幻想種とやらを相手に出来るかは分からない)
ゴースト(正直不安だけど……言い出した以上やってみるしかないか)
ゴースト(見せてあげるわグリード――)
タンッ!
ゴースト(あなたがいなくたって、私はちゃんと戦えるってところを!!)
─────────────────
琵琶湖・穂むら滋賀支店
AM3:07〜AM3:17 新終末編『121 』了
-
というわけでここまで
とっくに零時オーバーしてるしどうせなら切りのいいとこまで……
ってやったら無駄に長くなった
次はバトル
琵琶湖の主はもちろんアレです
新終末編『122』に続く
かもしれない
-
をつ
新スレもをつ
-
新終末編『122』
─────────────────
──琵琶湖沿岸
AM3:17
タタンッ!
ゴースト「来たわよ!暴れてる幻想種とやらはどこに――――」
??「ボケっと止まってんじゃねぇ!」
ガシッ
ゴースト「……え?」
ゴースト(幻想種の姿を確認しようと辺りを見回していた私の服を、箒に跨って飛んできた謎の女が掴む)
ゴースト(そして謎の女は私を掴んだまま、空飛ぶ箒を加速させてその場から離れ――)
ギュンッ!!
ゴースト「わぁぁぁぁぁぁっ!!」
??「うるさい騒ぐな!」
ゴースト(瞬間移動のような超加速に思わず声をあげてしまう)
ゴースト(さっき私がいた場所から一瞬で数十メートル離れると、箒の女はブレーキをかけて止まり、その場に私を降ろした)
ゴースト「な……なんなのよあなた!心臓が止まるかと思ったわよ!」
??「ったく、助けてやったのに随分な言い草だな」
ゴースト「助けて……?」
??「お前がさっきまでいた場所を見てみろ」
-
ゴースト(肩口やスカートの裾をギザギザに破ったようなメイド服を着た、箒を持った金髪の女)
ゴースト(その女に促された方向を見てみた瞬間、上空から巨大な水の塊が降ってきた)
バシャァァンッ!!!!
ゴースト「なっ!」
ゴースト(さっきまで私がいた場所に落ちた水の塊は、破裂して四方八方に水を飛び散らせる)
??「琵琶湖の龍は琵琶湖にある全ての水を操ってやがる、あのままボケーッとしてたら水塊の下敷きだぜ」
??「それにあの水はただの水じゃねえ、琵琶湖の竜の力によって強力な毒水になってんだ」
ゴースト「毒……?」
??「見ろ、水がかかった部分の地面が全部溶けてやがる」
ジュゥゥゥゥゥゥゥッ!!
ゴースト「……っ!」
-
??「これで危険が分かっただろ?だからテメーも早く逃げて……」
ゴースト「――あなた、經流さんと一緒に聖水を運んできた人よね」
??「……?」
??「あ、ああ、私は傭兵会社お掃除サービスの一員のほうき、今は滋賀支部の手伝いをしている」
ゴースト「傭兵か、ちょうどいい……あなたに頼みたい仕事があるのよ」
ほうき「いや待て待て!こんな緊急時にか!?」
ゴースト「そうよ?文句有る?」
ほうき「はぁ……確かに私らは報酬さえ貰えればどんな仕事でもするが、今は一応あのバーサンの仕事の最中だ」
ほうき「自分へ乗り換えろってんならそれなりの報酬を提示してもらう必用があるぜ」
ゴースト「そうねぇ、報酬なら>>41」
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にっこりの魔法
-
ゴースト「報酬なら……にっこりの魔法を見せてあげるわ」
ほうき「にっこりの魔法?」
ゴースト「ええ、どんな人だろうと笑顔にしてしまう夢の技よ」
ほうき「それだけ聞くと怪しい薬みたいだな……」
ゴースト「穂圏(ホムノンド)や元型(アーキタイプ)の噂は聞いたことない?」
ほうき「まぁ……都市伝説程度になら」
ゴースト「私の魔法はそこの住人に認められたから使えるのよ!」
ゴースト「どう?見てみたくない?」
バッ!
ほうき「いやー……」
ゴースト「えぇー!世界最大の神秘よ!見たくないの!?」
ほうき「別に、私はあいつと違ってそういうの興味ないんだわ」
ゴースト「むぅ……」
ゴースト(顔を見るにほうきは本当に興味が無さそうだ)
ゴースト(こうなったら笑顔の魔法を使って洗脳でもして……ってのは無理ね)
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ゴースト(にこにこDXを使うには穂乃果因子の変換が必要、シンイカノホは岩壁の塔に置いてきゃったし……手持ちの因子はない)
ゴースト(せめて吸血鬼穂乃果かミニ穂乃果が近くに来れば――)
??「魔法!?今魔法って言ったの〜?」テテテッ
ゴースト「え?」
ほうき「モップ!なんでお前までこっちに来てんだ!!」
ゴースト「モップ……?」
ゴースト(こちらへ軽やかな足取りで近付いて来たのは、ほうきとは対象的にフワフワとした雰囲気を纏ったメイド)
ゴースト(ウェーブがかった髪にフリル付きのメイド服、手には長いモップを持っている)
モップ「ごめんほうきちゃん、でもこの子が幻想種に近付くって聞かなくて」
ゴースト(そう言って彼女が差し出したモップの太い糸に縛られていたのは……)
ゴースト「ミニ穂乃果!?」
ミニ穂乃果「うぅ……捕まっちゃった……」シュンッ
-
モップ「あら〜?そっちの人と知り合い〜?」
ゴースト「私はゴースト!この子はミニ穂乃果よ、離してあげて!」
モップ「は〜い」クイッ
シュルルルッ
ミニ穂乃果「ぷはっ……びっくりしたー、あのモップの糸に触ってると能力使えないんだよー」
モップ「うふふ〜、このモップで能力を絡め取ってたからね〜」
ゴースト(能力を絡め取る……さらっと言ったけど恐ろしい話ね)
ゴースト(モップのモップといい、ほうきの箒といい、アーティファクトと言われてもおかしくない力を持っている)
モップ「それよりそれより〜!魔法を使えるって本当!?見たい見たい!」
ほうき「はぁ……やっぱお前は食い付いてしまうか」
ゴースト(興味がある人が来た!これはチャンス!)
ゴースト「なら私たちに雇われて!」
モップ「うんっ!」コクンッ
ほうき「おいっ!!」
ミニ穂乃果「このお姉ちゃんちょろいなー」
ほうき「全く……良いかお前ら、こんな悠長に長話してる余裕は――」
ドシュンッ!!!!
ミニ穂乃果「なにっ!?」
モップ「うわ、やば……」
ゴースト(ほうきが忠告を発した時には遅かった、幻想種が放り投げた毒の水塊は私たちに直撃コースで向かってくる)
ゴースト(このままだと毒をマトモに食らってしまう……!)
タンッ!!
吸血鬼穂乃果「ああもう!仕方のない子たちね」
ゴースト「吸血鬼穂乃果!」
ゴースト(私たちと水塊の間に割り込んできた吸血鬼穂乃果は、水塊に向かい>>45)
-
血の短剣〈ブラッディ・ナイフ〉を投げた
-
ゴースト(血の短剣〈ブラッディ・ナイフ〉を投げた)
ヒュンッ!!
ゴースト(おそらくは輸血パックの血液から能力で作成したであろう剣)
ゴースト(けれどあんな小さな剣じゃ、巨大な水塊を止めることはできない……!)
吸血鬼穂乃果「それが……そうでもないのよねぇ」
ゴースト「え?」
ドロロッ
ゴースト(水塊に激突した短剣は水塊を割らずに中へ侵入、毒に溶かされて元の血液に戻る)
ゴースト(その大量の血液が水塊の中に広がると……)
バシャァァァァッ!!
ゴースト「……割れた?」
ミニ穂乃果「水がこっちに届く前に割れて落ちちゃったよ!」
ほうき「まるで毒水のコントロールが効かなくなったような……そこのオメー、いったい何をしたんだ」
吸血鬼穂乃果「ゴーストが金髪に攫われて、追っかけてったミニ穂乃果がモップ頭に捕まって、私は少し様子を見てたのよ」
吸血鬼穂乃果「その間に試してみて分かったんだけど、幻想種が水を毒に変換して操れるのは琵琶湖の水に近い状態の水だけ」
吸血鬼穂乃果「水の中に不純物が多く混ざり込んでしまうと幻想種は水を操れなくなってしまう」
ほうき「ほう……そうだったのか」
-
吸血鬼穂乃果「ま、詳細なしきい値がどの程度かは分からないけどね」
吸血鬼穂乃果「自然の状態で混ざるはずが無いものを割合ベースで大量にぶち込んでやれば良いと思う」
ゴースト「今は血液でそれを行ったのね」
吸血鬼穂乃果「ええ、あの短剣は小さく見えて実は大量の血液を凝縮させたもの」
吸血鬼穂乃果「切っ先で水塊に穴をあけて潜り込みさっと溶けて大量の血液を吐き出す仕組み」
ほうき「対抗策が分かったのは有り難いな」
ゴースト「うんっ」
ほうき「……で?私らはこれからどうすればいい?」
ゴースト「え?」
ほうき「え?じゃねえよ、モップが仕事を受けると約束してしまった以上、私らはテメー……ゴーストの雇われだ」
ほうき「二重雇われってのは主義に抵触するが、お互いの依頼が重複しねーなら問題ねぇだろ」
モップ「みかんちゃんには怒られちゃうかもね〜」
ほうき「だから早く命令をくれ――ご主人様よ」
ゴースト「……うんっ!」コクンッ!
-
ゴースト「私がやりたいことは暴走幻想種をほのパパの店から遠ざけること」
ゴースト「そのためにほうきの機動力を貸して欲しい」
ほうき「おっけー、ぶっ飛べばいいんだな」
モップ「早く飛ぶならあたしも協力するよ〜」
ゴースト「吸血鬼穂乃果は血の短剣を……てか短剣じゃなくても良いから血液爆弾をたくさん作って!投げやすいやつね」
ゴースト「ミニ穂乃果はその手伝いと防衛、お願いできる?」
吸血鬼穂乃果「血液爆弾とはセンスのない名前ねぇ……まぁ良いわ」
ミニ穂乃果「まっかされーたー!」ビシッ
ほうき「じゃあ早速飛ぶぜ、私の雷箒と――」
モップ「――あたしのモップを合体!」
ガシャンッ!!
ゴースト(2人はそれぞれ持ってる掃除用具の柄の先を合わせて長い棒を作る)
ゴースト(棒の前方の先にはモップ、後方の先にほうきが付いてる謎の乗り物になった)
ほうき「早く乗れ!」
ゴースト「う、うん!」
ゴースト(その合体した棒に私とほうき、それからモップが跨る)
ゴースト(私が乗ってるのは丁度真ん中、前のモップの背中が、後にはほうきの顔があって2人に挟まれてる形になる)
-
ほうき「行くぜ!しっかり掴まっておけよ!」
モップ「私の腰に掴まってね〜」
ゴースト「ええっ!」ガシッ!
ほうき「3……2……1……」
キュィィィィィィンッ!
ほうき「ゴー!」
ドゥンッ!!!! バリバリバリィッ!!
ゴースト「……ぐっ!」
ゴースト(モップほうきが発車した瞬間、雷のような轟音が鳴り響く)
ゴースト(耳を塞ぐ暇さえない、その轟音を置き去りにしてモップほうきは超加速)
ゴースト(一気に上空へミサイルの如く駆け上がった)
ゴースト「すごっ……!」
ゴースト(さっきまでいた湖岸は遥か真下、琵琶湖全体が見下ろせる高さまで来ている)
ゴースト(そして……あれが琵琶湖の幻想種か……!)
ゴースト(見下ろす先、琵琶湖の南方に鎮座している幻想種の様子は>>50)
-
額に怪しい光を放つ模様が浮かんで、暴走中
-
ゴースト(幻想種の様子は、額に怪しい光を放つ模様が浮かんで暴走中)
ゴースト(琵琶湖の南――南湖の水を空中へと巻き上げて滅茶苦茶に飛ばしている、狙いも何もあったもんじゃない)
ゴースト「あの光の模様、紋章みたいなやつが怪しいわね、きっとアレが暴走を引き起こしてるんだわ」
ほうき「どうしてそんなことが言えるんだ?」
ゴースト「だって……前の"ビワッシー"にはあんなもの無かったから」
モップ「ビワッシー?」
ほうき「あの幻想種を知ってるのか!?」
ゴースト(そう、私は知っている)
ゴースト(正確に言えば矢澤にこの記憶が知っている)
ゴースト(かつて矢澤にこたちが琵琶湖で戦い、後に味方として別世界の穂乃果の力になった幻想種)
ゴースト(細長く薄っぺらい、ハリボテのような体をした龍、水と毒を操る力を持つ)
ゴースト「琵琶湖の主――ビワッシーよ」
ほうき「……ほう」
-
ゴースト(相手がビワッシーなら水塊を血液の注入で破壊できたのに納得がいく)
ゴースト(かつてのビワッシーもそうだった、敵として戦った時に勝負を決めたのは液体化したビワッシーの中で穂乃果が出した尿だったのだから)
モップ「知り合いならヤツがここで暴れてる理由も分かるの〜?」
ゴースト「知り合いってほどじゃない、記憶にあるだけよ」
ゴースト「記憶によるとビワッシーは滋賀バーミヤン追撃戦の時にミナリンスキーにやられて琵琶湖に沈んだはず」
ゴースト「それがこうして復活して暴れているのが現状」
ゴースト「原因はさっきも言った紋章だと思うけど、何故発生したのか具体的にどうビワッシーに作用してるのかはさっぱり」
モップ「ふ〜む……」
ゴースト「とにかく今は時間稼ぎよ」
ゴースト「吸血鬼穂乃果の血液爆弾作りの時間と、ほのパパが店ごと避難する時間を私たちで稼ぐ!」
ゴースト「ほうき!もっとビワッシーに近付いて注意を引くことは出来る?」
ほうき「任せておけ!この雷神号なら朝飯前だぜ!」
ゴースト(あ、この合体版モップほうきはそんな名前だったんだ……)
-
モップ「ほうきちゃんの使う雷箒は元々雷のような速度を叩き出すアイテムで〜、それだけでも早いんだけど〜」
モップ「こうしてモップを前に合体させることで〜、移動の際に発生する空気抵抗を絡め取りながら飛ぶの〜」
ほうき「ただの加速と思っちゃいけねぇ、私らはこれを安心院さんに破られてから更に調整を重ねたんだ」
モップ「今は〜最高に調子が良い〜、昇天しちゃうかも〜!」
ゴースト「昇天ってまたまた……さっきと同じくらいでしょ?あれならなんとか――」
ほうき「バカ言え、あれはただのウォーミングアップだよ、次から本気」
モップ「さっきがジェットコースターの上りで〜、今度が下り〜!」
ゴースト「…………へ?」
ほうき「引き続きしっかり掴まっとけよ?今度は重力も込み込みだ」
ほうき「モップの力で極限まで障害物を無くしたレーンを進む雷箒は――」
バリィッ!!!!
ほうき「――雷神の域に達する!!」
ゴースト(次の瞬間、意識が飛びかけた私を乗せた雷神号は文字通り一筋の雷となり)
ゴースト(轟音と共に突き刺る勢いで琵琶湖へと落下した)
ドウゥンッ!!!!
─────────────────
琵琶湖
AM3:17〜AM3:21 新終末編『122』了
-
というわけでここまで
ビワッシーに接近
新終末編『123』に続く
かもしれない
-
新終末編『122』
─────────────────
──琵琶湖
AM3:21
ドウゥンッ!!
ゴースト「が……っ!」
ゴースト(亜音速の急降下で意識が飛びかける、いや実際に一瞬だけ意識が飛んだかもしれない)
ゴースト(その一瞬から意識が戻った時、既に琵琶湖の水面は目と鼻の先にあった)
ほうき「うおりゃぁぁぁっ!」
グインッ!!
ゴースト(雷神号は水面に激突する寸前で機首を上げて水面ギリギリを駆け抜ける)
ゴースト(ほうきブースターが水面を叩き、雷神号が通り過ぎた跡をなぞる様に水しぶきが舞い上がる)
ドシャァァァァァァァッ!!
ビワッシー「グアアアアアッ!!」
ドシュルルルルルルッ!!
ゴースト(それに気付いたビワッシーは周囲の水流を竜巻のように巻き上げて、私たち墜落させようと縦横無尽に放ってくる)
ゴースト(琵琶湖上に生まれる無数の立体的な水流のアーチ、でも雷神号はその全てを軽々と避けていく!)
シュンッ!!
ほうき「ご主人様!やつの気を引いて遠ざける具体的な方法は考えてるんだろうな!」
ゴースト「ええ!このままビワッシーの攻撃を掻い潜りながら鼻先スレスレを通過して!」
ゴースト「そのすれ違うタイミングで私が>>56」
-
紋章みたいな模様を J(*‘ヮ‘*)しに塗り替える
-
ゴースト「紋章みたいな模様を 『J(*‘ヮ‘*)し』に塗り替える!」
ほうき「塗り替える!?一瞬でそんなことが出来んのか!?」
ゴースト「そこは……私の分身に任せてちょうだいっ!」
モップ「分身〜?」
ゴースト(ビワッシーとのニアミスまで時間がない、私は急いで城からの支給品バッグからペンを取り出す)
ガササッ! バッ!
ゴースト(おそらくは鞠莉が開発したであろう筆記具、ペンの側面にはどこでも万能ペンという名前が印刷されている)
ゴースト(書く素材が紙でも木でも金属でもガラスでも肌でも関係ない)
ゴースト(書く場所が例え水中でも宇宙でも関係ない)
ゴースト(どんな環境だろうがしっかり書けるのがこのペンの特徴だ)
モップ「それで書くの〜?」
ゴースト「そっ」
ほうき「もうすぐすれ違うぞ!ギリギリを攻めて良いんだな!?」
ゴースト「ええ、かなりギリギリでお願い!」
ギュンッ!!!!
-
ゴースト(巻き上がる水流の隙間を縫って近付く雷神号はビワッシーのテリトリーへ侵入)
ゴースト(ビワッシーとすれ違うまで3……2……1……)
ほうき「今だ!」
ゴースト「おりゃっ!」ブンッ!!
ゴースト(ビワッシーと最も近づいた瞬間、私は手に持っていたペンをビワッシーの頭目掛けて投げた)
モップ「あれ!?投げちゃっていいの〜?」
ゴースト(そうモップが疑問を呈した時には既にビワッシーは遥か後方)
ほうき「どうした?ミスったんならUターンして――」
ゴースト「ううん、これでいいのよ」
ほうき「え?」
ゴースト「言ったでしょ、私の分身に任せてって」
ゴースト「さっき投げたのはペンだけじゃない、あの中に入ってるのは――」
スッ
・
・
-
・
・
ゴースト(雷神号の上で目を閉じた私が次に目を開くと、真下にビワッシーの頭が見えた)
ゴースト(決してワープしたわけじゃない、これは分霊……私の体から飛ばした霊体と感覚を共有したのだ)
ゴースト(私の能力は遠隔に配置した分霊を通して喋ったり体を動かしたりすることができる)
ゴースト「……ふぅ」
ゴースト(今私が操っている分霊体は、本体の私が投げたペンに憑依させていたもの)
ゴースト(ペンの中から飛び出した霊体の私は物理干渉無効を解除、隣に浮いているペンを握りしめ、そのままビワッシーの頭に着地する)
タンッ!
ビワッシー「ッ!?」
ゴースト(急に頭上に乗られたことに驚いたビワッシーは>>60)
-
急速に潜水し始めた
-
ゴースト(頭に乗られたことに驚いたビワッシーは急速に潜水し始めた)
ビワッシー「グアアアアアッ!!」
ビュンッ!
ゴースト(私は分霊体が弾き飛ばされないようにしっかりとビワッシーの頭を掴む)
ゴポンッ!!
ゴースト「……っ!」
ブクブクッ!
ゴースト(琵琶湖の冷たい水中へと沈んだビワッシーと私の分霊体)
ゴースト(更にビワッシーは自分の周囲の水を毒へと変換させていく)
ギュルルッ!!
ゴースト(それはまるで水中のビワッシーを包み込む毒の繭……自分に取り憑いた敵を殺すための檻だ)
-
ゴポポポッ
ゴースト(冷たい水の中で体温は下がり息も続かない、おまけにその場にいるだけで毒が体を蝕む)
ゴースト(普通の人間なら正に絶体絶命な状況……)
ゴースト(……そう、普通の人間なら)
ニヤリ
ビワッシー「ガウッ!?」
ゴースト「……あら?驚いてるみたいね」
ゴースト(私の分霊体の特性はゴーストが生み出した幽鬼生命体と同じ、物理的な干渉を好きにオンオフできる)
ゴースト(霊体になっている私には酸素も温度も毒も関係ない、ペンを持つ最低限の感覚さえ残していればいい)
ゴースト(尚且つどこでも万能ペンは水中や毒中程度で使用不可にはならないのだ)
ゴースト「ま……さすがに長引いて暴れられたら困るし、パパっと書いちゃうわよ!」
ビワッシー「ガッ――」
ゴースト「ていっ!」
サササササッ!!
ゴースト(私は分霊体を操り、ビワッシーの頭の模様を『 J(*‘ヮ‘*)し』に書き変える)
ゴースト(すると……>>63)
-
にっこにっこにー
-
ビワッシー「にっこにっこにー!」
ゴースト(さっきまで鬼気迫る表情だったビワッシーの顔が、溢れんばかりの笑顔に染まる)
ゴースト「やった……の?」
ビワッシー「ああー、すごい!すごいよ!僕は今すごい幸せな気持ちだよ!」
ビワッシー「幸せすぎて天にも昇りそうな気持ちだ!」
ゴースト(我を取り戻したのか喋りだしたビワッシー、確かに記憶にある喋り方と同じだけど……)
ビワッシー「うっひょおおおおおおっ!」ギュンッ!
ゴースト「ちょっ!ちょっと落ち着きなさい!」
ドドドドドドドドドドドドッ!!
ゴースト(私を離れさせようと潜水した時とは逆、ビワッシーは水中を急上昇して湖面から飛び出す)
ゴースト(頭に掴まっている私を振り落とさんとする勢いだ)
バシャンッ!!
-
ゴースト「このっ……少しは落ち着きなさい!」
ビワッシー「ムリムリ!嬉しい気持ちが止まらないんだもん!」
ビワッシー「ひゃっほおおおおおおおおおうっ!」
ゴースト(笑顔のビワッシーが嬉しい悲鳴をあげると、それに呼応するかの如く湖面から巨大な水柱が無数に立ち昇る)
ドンッ!! ドンッ!!
ゴースト「……!」
ゴースト(どうやら暴走自体が解けたわけじゃないみたいね、暴走の起因となる感情が怒りや憎しみの攻撃衝動から変化しただけ)
ゴースト(おそらく頭の模様はその感情の方向性を与えるための魔術的な刻印、私がにこにーマークを書いたことで笑顔方向の暴走になった)
ゴースト(ビワッシーが喜びの舞を続ける限り、琵琶湖の動乱は終わらない)
ゴースト「仕方ないわね、聞きなさいビワッシー!」
ビワッシー「え?なになに?」
ゴースト(事態は解決してないにしろビワッシーと会話できるようになったのは前身)
ゴースト(会話できるならこちらの有利になるよう誘導すればいい)
-
ゴースト「今琵琶湖の上を飛んでるやつらが見えるでしょ?アレを捕まえればビワッシーはもっとニコニコになれるわ!」
ビワッシー「ほんと!?なら頑張る!」
ギュンッ!
ビワッシー「うおおおおおおっ!」
ゴースト「……よし」
ゴースト(これでビワッシーは雷神号を追いかけるようになるはず、時間を稼ぐのも容易になる)
ゴースト(後は……)
スゥーッ
・
・
-
・
・
──雷神号
ゴースト(本体に意識を戻した私は目を開く)
ゴースト「……ほっ!」パチッ
モップ「あ、やっと目覚めた〜」
ほうき「目を瞑ったまま動かないから気絶したかと思ったぜ」
ゴースト「ごめん、でもビワッシーの紋章を書き換えることに成功したわ」
ゴースト「これでビワッシーは雷神号を追いかけて来るはず」
モップ「おお〜!」
ゴースト「後は吸血鬼穂乃果たちの進行具合だけど……」
ピッ
ゴースト(戦闘服に付いた通信機を起動させ、吸血鬼穂乃果を呼び出す)
吸血鬼穂乃果『はーい、なにかしら』
ゴースト「どう?血液爆弾の準備は整った?」
吸血鬼穂乃果『ええ、数はそれなりに用意できたわ』
吸血鬼穂乃果『それと>>68』
-
魔法使いと睨み合ってる
-
吸血鬼穂乃果『それと……魔法使いが現れたわ』
ゴースト「魔法使い?いったい何が起きて――」
吸血鬼穂乃果『血液爆弾はミニ穂乃果に持っていかせるわ!後はあの子に指示を出してあげて!』
ゴースト「だ、だから説明をっ!」
吸血鬼穂乃果『残念だけど……今睨み合ってる最中なのよ、他に意識を割いてる余裕はないわ』
ゴースト「え?」
吸血鬼穂乃果『それじゃっ!』
プツッ!
ゴースト「ちょっと!吸血鬼穂乃果!?」
プツッ ツー ツー
ゴースト「切れちゃった……」
-
ゴースト(いつになく緊迫した吸血鬼穂乃果の声、あいつがあんなに焦るなんて……向こうはどうなってるの?)
ほうき「おいご主人!後はなんだって?」
モップ「どうなの〜?」
ゴースト「吸血鬼穂乃果のとこに魔法使いってやつが現れたらしいわ、言い方からして敵対してると思う」
ほうき「敵だぁ!?」
ゴースト(魔法使い……か、もしかしたらビワッシーに暴走の紋章を付与したのは――)
モップ「これからどうするの〜?」
ゴースト「そうね、取り敢えず私たちはこのままビワッシーを引きつけて、血液爆弾を持っているミニ穂乃果と合流するわ」
ゴースト「魔法使いも気になるけど、まずはビワッシーを無力化することが先決!」
ほうき「おう!了解したぜ!」
─────────────────
琵琶湖
AM3:21〜AM3:25 新終末編『123』了
-
というわけでここまで
新終末編『124』に続く
かもしれない
-
新終末編『124』
─────────────────
──琵琶湖
AM3:26
ほうき「うおおおらぁっ!」
ドドドドドドドドドドドドッ!!
ゴースト(ビワッシーを引きつけながら湖上を疾走する雷神号)
ゴースト(私はその上でミニ穂乃果へ合流ポイントを伝えるための通信をしていた)
ミニ穂乃果『――うん、分かった、そこで待ってればいいんだね!』
ゴースト「そう、私たちがビワッシーを連れたまま行くから血液爆弾の準備をしていてちょうだい」
ゴースト「そして合流した瞬間、ビワッシーに向けてあなたの能力でぶつけなさい!」
ミニ穂乃果『作ったやつ全部?』
ゴースト「全部よ!ありったけの血液を思っきり……全てビワッシーに命中させるの!」
ミニ穂乃果「……おっけー!任しといて!」
ゴースト(これで打ち合わせは出来た、あとは実際に合流しに行くだけ)
ゴースト(そうだ、この間に魔法使いのことも聞いてみようかしら)
ゴースト「ねぇミニ穂乃果、吸血鬼穂乃果のとこに現れた魔法使いってどんなやつだったの?」
ミニ穂乃果『え?あー……あたちは吸血鬼に言われてすぐ逃げたからしっかりとは見てないけど』
ミニ穂乃果『確か……>>73みたいなやつだったかなぁ』
-
白い魔法使い
-
ミニ穂乃果『確か……白い魔法使いみたいなやつだったかなぁ』
ミニ穂乃果『白い体に白いマント、顔は仮面か何か隠れてて分からない、とにかく全身真っ白だった』
ゴースト「なるほど……」
ゴースト(私の記憶にも矢澤にこの記憶にも該当しそうな人物は見当たらない)
ゴースト(となると新手、新魔王軍の可能性が高いか……)
ほうき「ご主人!この迂回が終わればもう合流ポイントだ!あのチビは先に着いてんだろうな!?」
ゴースト「ミニ穂乃果!」
ミニ穂乃果『大丈夫!準備は万全だから』
ほうき「なら遠慮なくラストスパートかけるぜ!うぉらっ!」
ギュンッ!!
ミニ穂乃果『おーおー、もうこっちからもゴーストたちの姿が見えるよ!』
ゴースト「……よし」
ゴースト(合流ポイントまで残り10秒もない、決着はもうすぐそこまで迫ってる)
ゴースト(最後にやることは……)
-
バッ!
ゴースト「おらっ!」ブンッ!!
ゴースト(私は支給品バッグから適当なガラクタを取り出しと後方へ投げ捨てた)
バララララッ!
ゴースト(普通なら湖面へ向けて落ちるだけど、この飛行速度でばら撒かれるガラクタは充分凶器になり得る)
ゴースト(特に……後ろにピッタリと張り付いて追いかけてきたビワッシーには!)
ビワッシー「わっ!?」ニュルルッ!
バシュンッ! バシュンッ!
ゴースト(ビワッシーは撃ち落としたり避けたりする暇が無いと判断したのか、自らの体を液状化してガラクタを取り抜けさせた)
ゴースト(そうよ、それで良い……)
グッ
ゴースト(液状化させておくのが私の狙いなんだからっ!)
ほうき「ご主人!合流ポイントだ!」
ギュンッ!!
ゴースト「今よミニ穂乃果!!」
ミニ穂乃果「うんっ!!」
ゴースト(湖岸で待っていたミニ穂乃果の脇を雷神号が駆け抜ける)
ゴースト(その瞬間、ミニ穂乃果が自ら能力を発動させる)
-
ミニ穂乃果「『すごいすごい!こんな暴れられるビワッシーってすごい!』」
ミニ穂乃果「『本当にすごいことだと思うよ、ねぇ……血液爆弾ちゃんたちっ!!』」
キュィンッ!
ゴースト(ミニ穂乃果の言葉がビワッシーと血液爆弾の間に引力を生み出す)
ゴースト(引きつけられた血液爆弾は真っ直ぐビワッシーに向かって飛び――)
ヒュヒュヒュヒュッ!!
ビワッシー「……え?」
ゴースト(液状化していたビワッシーの体内に入り込む!)
バシャシャシャシャッ!!
ゴースト「やった!」
ほうき「喜ぶのはいいがしっかり掴まっとけ!急ブレーキをかける!」
モップ「おおぉ〜!」
ジワァァァッ
ビワッシー「ぐ……な、なにこれ……」
ゴースト(血液爆弾に凝縮されていた大量の血液が溶け出し、ビワッシーの体内に広がりだした)
ゴースト(ビワッシーは脱力した状態で湖岸に落ちると、そのまま悶え苦しみ縮んでいく)
ビワッシー「あ……がう……」
シュゥゥゥゥッ
ゴースト(これで無力化できたはず、力を失って小さくなったビワッシーは>>77)
-
回収されそうになった
-
ゴースト(力を失い小さくなったビワッシーはその場から動かない)
ゴースト(やっと止まった雷神号から降りた私はミニ穂乃果の場所まで駆け寄る)
ほうき「おい危ねえぞ!無闇に近づくな!」
ゴースト「私なら毒食らっても大丈夫ー!」
タタタッ
ゴースト「ミニ穂乃果、ビワッシーの様子はどう?」
ミニ穂乃果「予想通り無力化できたみたいだよ、小さくなって丸くなってる」
ゴースト「そう……」
ゴースト(私が見てもビワッシーは大人しくなってる、もう暴れる様子はない)
ゴースト(そうこうしてると雷神号を元の掃除用具に解体した2人が追いついてくる)
ほうき「とりあえず幻想種は倒せたか、この後の事は考えてんのか?」
モップ「今のうちに縛ったりしたほうがいいかも〜」
ゴースト「考えてるわよ、矢澤にこの記憶を参考にするに、ビワッシーに1番近しい人が私たちの味方にいる」
ゴースト「まずはその人に連絡を取ってみようと思う」
-
ゴースト(そうして私が服に備え付けの通信機に手をかけた瞬間――)
シュンッ!
『テレポート』ナーウ
ゴースト「……え?」
ゴースト(湖岸に倒れたビワッシーの隣に白い光を放つゲートが出現する)
ゴースト(そこからミニ穂乃果から聞いた容姿と同じ……白い魔法使いが姿を表した)
白い魔法使い「ふむ……1足遅かったようだな」
ゴースト「……っ!」
白い魔法使い「仕方ない、この幻想種は回収して戻ることにしよう」スッ
ゴースト「ま、待ちなさい!!」
白い魔法使い「……ん?」
ゴースト「あなたが白い魔法使い?吸血鬼穂乃果はどうしたの!?」
白い魔法使い「そうだ、私が白い魔法使いだ」
白い魔法使い「吸血鬼とは……ああ、さっきの血流使いの穂乃果のことか」
白い魔法使い「あやつなら>>80」
-
私に勝ってとどめを刺さずに見逃してくれた
-
白い魔法使い「あやつなら……ガフッ!!」
ビシャァァッ!
ゴースト「……え?」
ゴースト(白い魔法使いは急に吐血した、仮面の隙間から漏れる鮮血が白い雪の地面を真っ赤に染める)
白い魔法使い「はぁ……はぁ……」
ボタッ ボタッ
ゴースト(いや、よく見ると口元だけじゃない、体のあちこちから血が地面へ流れ落ちている)
白い魔法使い「あやつなら……私に勝ってしまったよ、その上でとどめを刺さずに見逃してくれた」
ゴースト「吸血鬼穂乃果が勝った……?」
白い魔法使い「ああ……」
ミニ穂乃果「すごーい!」
ほうき「やるなあいつ」
ゴースト(正直……驚いた)
ゴースト(別に吸血鬼穂乃果の実力を信頼してないわけではない、戦闘だけで言えば私たちの中で1番だとさえ思う)
ゴースト(ただ、その吸血鬼穂乃果があれだけ緊迫した声で危機を伝えた相手が白い魔法使いだ)
ゴースト(おそらく新魔王軍の一員、そんな実力者をここまでボロボロに出来るなんて……)
-
白い魔法使い「ふんっ、仲間も困惑しているか……無理はない」
白い魔法使い「実際戦いの序盤は私が有利に進めていた、あやつも弱くはなかったが防戦一方だった」
白い魔法使い「それが逆転したきっかけは、あやつが一瞬の隙を突いて私が持っていたアレを盗んだこと」
白い魔法使い「私から奪ったアレを取り込んだあやつは、もう亜種穂乃果でも合成でもない存在になった」
白い魔法使い「あれは、あれはまるで――――」
グサッ!!
白い魔法使い「がはっ!!」
吸血鬼穂乃果「ねぇ……逃してやるって言ったんだからさっさと逃げなさいよ」
吸血鬼穂乃果「こんなとこで油売ってるのが私にバレないとでも思ったの……?」
ゴースト(見えなかった、いつの間にか現れた吸血鬼穂乃果が白い魔法使いの背後から血剣を突き刺す)
ブシャァァッ!!
白い魔法使い「……わ、分かってる!だからこうして手下を回収して……」
吸血鬼穂乃果「見逃すって言ったのはあなただけ、それは置いていきなさい」
吸血鬼穂乃果「今すぐ視界から消えなければ……次こそ殺すわよ、下賤な魔法使い」ギロッ
-
白い魔法使い「くっ……!」
キュィンッ
『テレポート!』ナーウ
シュンッ!!
ゴースト(再び謎の音声と共に出現したゲート、それに乗った白い魔法使いの姿は消えた)
ゴースト(どうやら今度こそ本当に撤退したみたいね……)
ゴースト「吸血鬼穂乃果……助かったわ、あなたのおかげでビワッシーを回収されずに済んだ」
吸血鬼穂乃果「別に、お礼を言われるほどでもないわよ、高貴な者が下民のために力を振るうのは当然」
ゴースト「ははは……」
ミニ穂乃果「でもすごいよ!白い魔法使いを倒すなんて!どうやったの!?」
ゴースト「そうよ、あいつは吸血鬼が何かを奪ったって言ってたけど……」
吸血鬼穂乃果「奪ったのは魔法使いが大事に隠し持ってた石よ」
ゴースト「石?」
吸血鬼穂乃果「ええ、魔法使いが言うには――『賢者の石』という名前らしいわ」
ゴースト「け、賢者の石!?最高級の遺物じゃない!」
モップ「魔術師や錬金術師が追い求める強大な魔力を秘めた石だよね〜」
ゴースト「ええ……」コクンッ
-
吸血鬼穂乃果「大変だったのよ?ボコボコにされながら気付かれないように血の触手を伸ばして、魔法使いの服から石を抜き取って」
吸血鬼穂乃果「……ま、石を取り込んだ後の私は高貴な血に相応しい無双っぷりだったけど」
吸血鬼穂乃果「そんな私を見て魔法使いは『まるでNeo穂乃果と同等の力だ……』なんて言ってたわ」
吸血鬼穂乃果「何のことかよく分からないけど、亜種や合成よりはよっぽど私を現すのに相応しい名前だと思わない?」
ゴースト「はぁ……なんだか本人は気楽ね、賢者の石を取り込んだってとんでもないことなのよ」
吸血鬼穂乃果「ふふっ」
モップ「はえ〜、すごい人が仲間なんだね〜」
ゴースト「色々な意味でね……」
ゴースト(Neo穂乃果か、確かドスケーブ城の前で暴れてた穂乃果もそんなシリーズだったような)
ゴースト(吸血鬼穂乃果は賢者の石を取り込んだことで敵幹部と同等――Neo穂乃果の域に達したということかしら)
ゴースト「ま、何はともあれ白い魔法使いをスルー出来たのはありがたい」
ゴースト「岩壁の塔に連絡を入れてビワッシーの問題を片付けるわよ!」
─────────────────
琵琶湖
AM3:26〜AM3:30 新終末編『124』了
-
というわけでここまで
次で一区切りいけるかな
新終末編『125』に続く
かもしれない
-
新終末『125』
─────────────────
──琵琶湖湖岸
AM3:31
ゴースト(岩壁の塔、トゲわんに連絡するべく通信機のスイッチを押す)
ピッ
プーッ プーッ
カチャッ
トゲわん『私だ、聖水は手に入ったのか?』
ゴースト「提供してくれる人と接触できた、でも途中で新魔王軍の幹部っぽい白い魔法使いと戦闘になってね」
ゴースト「やつは琵琶湖に沈んでいたビワッシーを魔法で操って暴走させていたわ」
トゲわん『新魔王軍……それにビワッシーだと!?』
ゴースト「まぁ白い魔法使いの方はNeoに進化した吸血鬼穂乃果が倒して、ビワッシーの方は私と傭兵で無力化したから大丈夫」
トゲわん『そうか、よくやってくれた』
ゴースト「そこでお願いなんだけど、以前にビワッシーと融合してた穂乃果に連絡取ってくれない?」
ゴースト「無力化したとは言えビワッシーは放っておけない、その穂乃果なら何とかしてくれると思うの」
トゲわん『……そうだな、丁度今カローン船を増援として塔に呼んだ所だ、話をつけておこう』
トゲわん『あれには穂乃果の他にエリーシーも乗ってるはずだしな』
ゴースト「エリーシー?」
トゲわん『それより聖水だ、提供者からはどれくらい分けてもらえそうだ?』
ゴースト「待ってて、聞いてみる」
-
ゴースト(私は通信機から顔をあげ、ほうきとモップのほうに向き直る)
ゴースト(私たちの自己紹介と琵琶湖に来た理由、聖水が欲しいという事情を話す)
ゴースト(その上で滋賀支部とパイプを持ってるであろう2人に聖水を分けてもらえないかと申し出をしてみた)
ほうき「なるほど……それなら一応連絡してみる」ピッ
プルルルッ ピッ
ほうき「……ああ、うん……そうだ、片付いたぜ、ドスケーブ城の協力者だ」
ほうき「……それでゴーストが話があるらしい、聞いてやってくれ」
スッ
ほうき「ほら、支部長だ」
ゴースト「ええ」コクンッ
ゴースト(話をつけたらしきほうきの携帯を受け取り、自分の耳に当てる)
-
ゴースト「も、もしもし」
レディみかん『どーもー、魔対協会滋賀支部長のレディみかんだよー』
ゴースト「はあ……」
ゴースト(なんだか予想と違って明るい人ねぇ)
レディみかん『事情は傭兵ちゃんから聞いてるよ、聖水が欲しいんだって?』
ゴースト「え、ええ」
レディみかん『魔王と戦ってたあの子たちの仲間なら協力するのもやぶさかじゃあない』
レディみかん『良いよ、分けてあげる』
ゴースト「ほんと!?量はどのくらい?」
レディみかん『そうだね、大体>>89』
-
琵琶湖ぐらい
-
レディみかん『大体……琵琶湖ぐらいの量をポーンとあげちゃう!』
ゴースト「琵琶湖!?」
レディみかん『あれ?何かダメだった?』
ゴースト「ダ、ダメじゃないわ、むしろ有り難いけど……いくらなんでも多すぎない?そんな量があるの?」
レディみかん『あるんだなぁこれが』
ゴースト「あるのかぁ……」ガクッ
ゴースト「てか、例えあったとしてもどうやって運ぶのよ、琵琶湖と同量だなんて分割してもどれだけ時間がかかるか……」
レディみかん『まぁ欲しいだけゆっくり持ってっていいよ、運搬の手伝いが欲しいなら傭兵ちゃんたちを貸すし』
ほうき「私らかっ!?」
モップ「あらら〜巻き込まれだね〜」
ゴースト(うーん……せめて一度に大量の水を操れる能力者でもいれば……)
ゴースト「……あっ!いるじゃない!」
ミニ穂乃果「どしたの?」
ゴースト「ビワッシーよ!ビワッシーの力を使えば運べるんじゃないかしら!」
吸血鬼穂乃果「……なるほど」
-
ほうき「じゃあビワッシーとやらを相手できる人間と連絡が取れるまで待機か」
ほうき「その間に私は經流バーサンの様子を見てくるか、店主が無事に避難できたのかも気になるし」
モップ「あ〜!待って待って〜!あたしは報酬貰ってないよ〜!」
ほうき「報酬?」
モップ「ゴーストちゃんが魔法見せてくれるって言うから協力したんだよ〜!」
ゴースト「……ごめん、すっかり忘れてたわ」
モップ「も〜!」
ほうき「全く……なら私だけで向こうの様子見てくるから戻ってくるまでに済ませておけ」
ビュンッ!!
ゴースト(雷箒に乗って和菓子屋かまくらがあった方向に飛んでいくほうき)
ゴースト(残ったモップはキラキラとした視線を私に注いでいる)
-
ゴースト「そうね、私の笑顔の魔法は精神に作用する魔法、試す相手は……」
吸血鬼穂乃果「どうせならビワッシーに使ってあげれば?」
ゴースト「え?」
吸血鬼穂乃果「白い魔法使いの紋章のせいでメンタルガタガタになってると思うし、あなたの魔法で少しでも回復したら助けになるんじゃない」
ゴースト「……確かに、一理ある」
ゴースト「分かったわ、助言どおりビワッシーに使ってみましょう」
ゴースト「与える効果は魔術で改竄された精神系統の機能回復、あとついでに……>>93」
-
時々、寒いギャグを言う
-
ゴースト「時々寒いギャグを言うようにしましょう」
吸血鬼穂乃果「なにそのオプション」
ゴースト「遊び心よ遊び心、フレーバー程度に入れるだけだから生活に支障は出ないわ」
ミニ穂乃果「本当かなぁ……」
ゴースト「じゃあ早速やるわね、吸血鬼穂乃果は何か適当に技を使ってくれる?」
吸血鬼穂乃果「了解したわ」スッ
シュルルッ!
ゴースト(私の指示で吸血鬼穂乃果は自分の掌の上に小さな血の塊を作成した)
ゴースト(穂乃果による能力の行使、これで周囲には穂乃果因子が溢れるはず――)
ゴースト「……っ!?」
吸血鬼穂乃果「どうしたの?何か間違った?」
ゴースト「いや……間違ってはないけど……」
ゴースト(この場で穂乃果因子を肉眼で視認できるのは元型に触れた私だけ)
ゴースト(だから他の人には何故私が驚いてるのか分からない)
ゴースト(今私の目に映っている――大量の穂乃果因子の粒子も見えないのだ)
ボファァァァァァァッ!
-
ゴースト「……っ!」
ゴースト(吸血鬼穂乃果が軽く能力を使っただけで、埃塗れの布団を叩いたように舞い上がった粒子が辺りを埋め尽くす)
ゴースト(普通の亜種穂乃果や合成穂乃果ではあり得ない、土地穂乃果であるランド穂乃果にも匹敵する因子量)
ゴースト(これも吸血鬼穂乃果がNeo穂乃果に進化したせいなのかしら……)
モップ「早く早く〜!」
ゴースト「う、うん」
ゴースト「笑顔の魔法――にこにこDX!」
キュィィィィィィィンッ!!
ゴースト(私が魔法を発動させると周囲に舞っていた穂乃果因子が桃色の粒子に変換される)
ミニ穂乃果「おぉぉっ!急に桃色空間になったよ!」
ゴースト(……へぇ、前の時は分からなかったけど、変換した状態だと他の人にも見えるのね)
モップ「綺麗〜!これが魔法〜?」
ゴースト「ええ、後はこの粒子を凝縮させて――」
キュィィィィィンッ!
ゴースト「ビームにしてビワッシーに放つ!」
ドンッ!!
ビビビビビビビッ!!
ミニ穂乃果「ピンクのビームがビワッシーを包んでる……!」
吸血鬼穂乃果「ふ〜ん、あの粒子がビワッシーの精神に作用してるのね」
-
ヒュンッ
ゴースト「……ふぅ、こんなのもかな」
ゴースト(周囲に浮いていた桃色の粒子が全て消えたことを確認し、私は笑顔の魔法を解く)
ゴースト(この魔法は結構体力を使うなぁ……あんまり乱用はできないかも)
ゴースト(……と、私が額の汗を拭ってると様子を見に行ったほうきが飛んで戻ってきた)
ほうき「戻ってきたぜー!ビワッシーに魔法ぶつけるのは終わったのか?」
モップ「終わったよ〜!すごい綺麗だった〜!」
スタッ
ほうき「そうか、まぁ私はどっちでも良いけど」
ゴースト「ほうき、ほのパパは無事に避難できてた?」
ほうき「……ああ、あの店主なら店ごと安全な場所に移動できたみたいだ」
ほうき「だが>>97」
-
店の跡地に恥ずかしい日記を忘れていった
-
ほうき「だが店の跡地にとある物だけ忘れてったみたいだぜ」
ゴースト「とある物……?」
ほうき「これだ」スッ
ゴースト(ほうきが差し出したのは一冊の日記だった、ほのパパのものだろうか)
吸血鬼穂乃果「こんなものを忘れていくなんて随分とうっかりな男ね、読んでしまいましょうか」
ミニ穂乃果「ダメだよ!知らない人に日記読まれたら恥ずかしいぃ〜ってなっちゃうよ!」
吸血鬼穂乃果「恥ずかしい内容が書かれてるとは限らないわよ」
ミニ穂乃果「日記なんて何でも恥ずかしいもんだよ!」
ゴースト「まぁまぁ、ほのパパには悪いけど中身を見させてもらうわ」
ミニ穂乃果「ゴーストまでぇ〜」
ゴースト「あの人は娘を魔王の運命から解放するために日本中を回って手掛かりを探していた」
ゴースト「途中で諦めたにしろこの日記に何か役立つ情報が書いてあるかもしれない」
ミニ穂乃果「…………むぅ」
ゴースト「今うみかがカローン船側と連携を取ってるはず」
ゴースト「そっちの方針が固まるまでの時間、日記を読んで待ってようじゃない」
─────────────────
琵琶湖
AM3:31〜AM3:35 新終末編『125』了
-
というわけでここまで
次はアニメ穂乃果側が移動する所からかな
新終末編『126』に続く
かもしれない
-
新終末編『126』
─────────────────
──岩壁の塔・空中船着場
AM3:35
アニメ穂乃果(新魔王軍の幹部、魔人ゲンムが生み出したゾンビバグスターの侵攻)
アニメ穂乃果(それにより絵里ちゃんは倒れ、名古屋市街の一部が砂漠化してしまう事態に陥る)
アニメ穂乃果(けれど魔人エグゼイドに変身した私のリプログラミングと、絵里ちゃんと亜里沙ちゃんの新しい姉妹技によってどうにか侵攻は食い止められた)
アニメ穂乃果(脅威が去った後、うみかちゃんは岩壁の塔のトゲわんちゃんに状況を報告)
アニメ穂乃果(その通信の中でドスケーブ城の異変を知らされた私たちは、塔にあるヨハネゲートを通り城へ向かうため塔に向かうことにした)
アニメ穂乃果(そして塔に到着、頂上に近い場所にせり出た空中船着場に着陸した船から降りた私に……)
アニメ穂乃果「……え?ビワッシー?」
アニメ穂乃果(全く想定していなかった名前が告げられる)
ヒュゥゥゥゥゥゥッ
トゲわん「そうだ、琵琶湖でゴーストが姿を確認したらしい」
アニメ穂乃果(600以上の高度にある船着場、強く吹く冷たいに風に揺れる髪を抑えながら私達を出迎えたトゲわんちゃん)
アニメ穂乃果(トゲわんちゃんが言うにはゴーストたちが暴走したビワッシーに襲われ、それを無力化することに成功したという話だ)
-
アニメ穂乃果「それが本当なら……今すぐ行こう!エリーシー!」
エリーシー「え、ええ」
アニメ穂乃果「トゲわんちゃん、ヨハネゲートはどこ?今すぐそこまで案内して――」
うみか「待て待て、お前たちだけで行く気か?」
アニメ穂乃果「うん、だってドスケーブ城の方にも行く必要があるし、そっちの戦力を減らすことはできないよ」
エリーシー「そうね、これは私たちの問題だし」
うみか「そうは言うがなぁ……分かった、こっち側から後1人連れて行け、1人なら問題ないだろう」
アニメ穂乃果「……分かった」
アニメ穂乃果(今ここにいるのはカローン船に乗ってた人たち、それから白ムンガンドに乗ってた人たちだ)
アニメ穂乃果(この中から1人連れてくなら……>>102)
-
ぺぺぺペーン
-
凛
-
アニメ穂乃果「じゃあ……ペペペペーンちゃんにしようかな」
ペペペペーン「……私?」
アニメ穂乃果(たった今船から1人で降りてきたペペペペーンちゃんは心から嫌そうな顔をする)
アニメ穂乃果(凍った川に落ちて濡れたのを乾かした生乾きの長い黒髪、頭にかけられたままの真新しいタオル)
アニメ穂乃果(長く垂らした前髪の隙間からは濃いクマのある鋭い目が覗いている)
ペペペペーン「なんで私……意味分からないんだけど」
タンッ タンッ
アニメ穂乃果(腕輪のせいで魔力を過剰放出したのが原因か、彼女は病み上がりのような足つきでゆっくりと船から降ろされた階段を降りてきていた)
アニメ穂乃果(川に落ちたことで元々着ていた服は洗濯中、今は私たちが着ている戦闘服の予備を着ている)
アニメ穂乃果(サイズ調整の効かない予備服はうみかちゃんと同じほどの小さな体には少しブカブカ)
アニメ穂乃果(服の隙間からは雪のように白い肌が覗いている、まだ体温が戻ってないのかな……)
ペペペペーン「見ての通り私は氷の川に落とされたせいで風邪気味よ」ジッー
凛「うっ……こっちを見るのはやめるにゃ、直接叩き落としたのはあっちにゃ」
メリー姉「なっ!?」
-
ペペペペーン「はぁ……別に恨んじゃいないわ、こうなったのも全部自業自得だし、新魔王軍なんか信じた私が悪い」
ペペペペーン「でも今聞いてるのは別問題、私を連れて行ってメリットはあるの?」
ペペペペーン「朱雀穂乃果から渡された朱雀の腕輪だって私が負けた時に機能停止してるのよ」
ペペペペーン「今の私には……何もできない……」ググッ
アニメ穂乃果「そんなことないよ」
ペペペペーン「あるって!」
バシンッ!!
ペペペペーン「こんな様じゃ……ピピピピーンを助けることすら……」
アニメ穂乃果(ペペペペーンは持っていたタオルを思いっきり船着場の地面に叩きつける、絞り出すような声からは彼女のやるせなさが感じられた)
アニメ穂乃果「まぁまぁ聞いてよ、私がペペペペーンちゃんを選んだ理由は>>106」
-
そろそろ活躍しないと忘れられるから
-
可愛いから
-
アニメ穂乃果「そろそろ活躍しないと忘れられられるから」
ペペペペーン「なっ……忘れられるって何よ!余計なお世話だわ!」プイッ
エリーシー「ちょっと穂乃果……あの子拗ねちゃったじゃない」
アニメ穂乃果「むぅ……」
アニメ穂乃果「私はとにかくペペペペーンちゃんに来て欲しいんだよ!」
アニメ穂乃果「可愛いしその場にいるだけでいいから!」
ペペペペーン「置物扱いもそれはそれで失礼じゃ――」
アニメ穂乃果「ああもう!」ガシッ
ペペペペーン「へ?」
アニメ穂乃果(埒が明かなそうだから強引にペペペペーンの腕を引っ張って駆け出す)
アニメ穂乃果「こうやって話してる時間が無いんだよ!強引に連れてくからね!」
ペペペペーン「ちょっ、ちょっ……」
タタタタッ!
エリーシー「トゲわんさん、ゲートの場所は!?」
トゲわん「こっちだついて来い!」
アニメ穂乃果「そうだ、武器がないなら私のゲーマドライバー貸すよ?」
ペペペペーン「いやぁ……アレはちょっと……」
アニメ穂乃果「ええっ!カッコイイよ!レベル1は確かにアレだけどレベル2なら――」
タタタタッ
アニメ穂乃果(そんな調子で私たちはヨハネゲートを通りワープすることになった)
アニメ穂乃果(再び――三度目の琵琶湖へと)
-
・
・
・
──琵琶湖湖岸
AM3:40
シュンッ!
アニメ穂乃果「到着……っと!」
スタッ
アニメ穂乃果(ワープした先は目の前に琵琶湖が広がる開けた場所、空からはこんこんとAASが降り注いでいる)
アニメ穂乃果(夜なこと以外は昨日と変わらない琵琶湖の景色)
アニメ穂乃果(振り返ると、そこには変わらず気怠さそうにしてるペペペペーンちゃん)
アニメ穂乃果(そして、湖を黙って見つめてるエリーシーがいる)
アニメ穂乃果「どう?エリーシー、何か感じる?」
エリーシー「……確かに、どこか懐かしい気がするわ、ホッとするというか安心するというか」
エリーシー「記憶はないけど……これが故郷に帰ってくるという気持ちなのかしら」
エリーシー「それに>>110」
-
すごく湖に飛び込みたい
-
エリーシー「すごく湖に飛び込みたい!」ウズウズ
アニメ穂乃果「え?それはちょっと待って……」
エリーシー「ていっ!」
バシャァァァァァンッ!!
アニメ穂乃果(止める隙もなくエリーシーは冷たい湖に身を投げてしまう)
アニメ穂乃果「あちゃー……ま、仕方ないか」
ペペペペーン「仕方ないで済ませていいの!?」
アニメ穂乃果「水の中だしね、スマイルエンカウンターがある限りエリーシーが怪我したり死ぬことは無いよ」
ペペペペーン「はぁ……よく分からないけどすごいのね」
アニメ穂乃果「それより私たちは急いでビワッシーの所に行く必要がある」
アニメ穂乃果「ゴーストたちがこの近くにいるはずだから探そう!」
ペペペペーン「え、えぇ」
タタタタッ
ペペペペーン「ねぇ、聞きたかったんだけど、そのビワッシーってなんなの……?」
アニメ穂乃果「昔から琵琶湖に住んでる竜の姿をした幻想種で、一時期私の体の中にいた相棒」
アニメ穂乃果「そして……エリーシーが無くした半身だよ――」
-
・
・
タタッ
アニメ穂乃果(走り始めてからゴーストを見つけるまでそれほど時間はかからなかった)
アニメ穂乃果(近くの湖岸に数人で集まっているゴーストたちの姿が見える)
アニメ穂乃果「おーい!ゴースト!」
テテッ
ゴースト「穂乃果!?来るの早かったわね」
アニメ穂乃果「ヨハネゲートが近い場所につながってくれたからね、速攻でやってきたよ」
ゴースト「そうなんだ、私たちの時はわりと遠くに出た気がしたけど……誰かが座標送ってくれたのかな」
アニメ穂乃果「ん?」
アニメ穂乃果(そう首をひねるゴーストの手には一冊の本が開かれていた)
アニメ穂乃果「ねぇそれ、何か読んでたの?」
ゴースト「うん、この世界のあなたのお父さんの日記よ」
アニメ穂乃果「お父さんの!?」
ゴースト「あなたが来るまでにパラッと一通り見たけど……気になる箇所は>>113」
-
全200ページにおよぶ、ほのママへのプロポーズまでの葛藤の日々
-
ゴースト「全200ページにおよぶ、ほのママへのプロポーズまでの葛藤の日々かしら」
アニメ穂乃果「うぅ……あんまり聞きたくない話だなぁ……」
ゴースト「ま、大して今の状況に有用な情報は無かったってことよ」
吸血鬼穂乃果「下民の惚れた腫れたを覗き見るのは楽しかったけどね」
ほうき「俗に染まってんな吸血鬼」
ゴースト「それよりビワッシーに会いに来たんでしょ?やつならそこの湖岸に伸びてるわ」
ゴースト「体はまだ動かせないみたいだけど、私の魔法で少し回復して会話くらいなら出来るようになってる」
アニメ穂乃果「う、うんっ!ありがとう!」
アニメ穂乃果(私はゴーストに一礼すると身を翻してすぐにビワッシーのとこへ向かう)
-
タタッ
アニメ穂乃果「はぁ……はぁ……」
タタタタッ
アニメ穂乃果「間違いない……少し萎んでるけど……」
タタタタッ
アニメ穂乃果「ビワッシー!!」
ビワッシー「ほ……のか……?」
ザッ!
アニメ穂乃果「はぁ、はぁ……」
アニメ穂乃果「良かった、分離して湖に沈んでからずっと心配だったんだよ」
ビワッシー「それは……ごめん、アイムソーリーひげそーりー」
アニメ穂乃果「え?」
ビワッシー「あ、気にしなくていいから」
アニメ穂乃果「うん?……うん」
アニメ穂乃果(変なこと言ってる、やっぱりまだ本調子じゃないのかな……ってかそれより!)
アニメ穂乃果「聞いてビワッシー!」
ビワッシー「うん……?」
アニメ穂乃果「私、あなたが失くしたものを見つけて来たんだよ!」
─────────────────
岩壁の塔〜琵琶湖
AM3:35〜AM3:37 新終末編『126』了
-
というわけでここまで
想定より長引く
いつものことですね
新終末編『127』に続く
かもしれない
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新終末編『127』
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──琵琶湖湖岸
AM3:37
ビワッシー「失くしたもの……?」
アニメ穂乃果「そう、初めて会った時にビワッシーは言ってたよね」
アニメ穂乃果「自分の本当の姿を魔王に奪われてしまったって」
ビワッシー「……うん」
アニメ穂乃果「実は魔王に奪われたビワッシーの半身は冥界に捨てられていて、そこで記憶を失った女の子として過ごしてたんだ」
アニメ穂乃果「名前はエリーシー、絵里ちゃんに似た外見で水に関係する能力を持ってる」
アニメ穂乃果「私が実際に会ってみた感覚だと……間違いない、あれはビワッシーだよ」
ビワッシー「ほんと……?その人は今どこに……」
アニメ穂乃果「琵琶湖で泳いでる」
ビワッシー「え?」
エリーシー「てぇいっ!」バシャッ!
ビワッシー「わぁぁっ!何か飛び出してきた!?」
アニメ穂乃果「あれあれ、あれがエリーシーだよ」
ビワッシー「えぇぇ……」
アニメ穂乃果(話をしていた私とビワッシーの前に、湖からイルカみたいに飛び出してきたエリーシーが華麗に着地する)
-
スタッ
エリーシー「ふぅ……」
アニメ穂乃果「エリーシー、琵琶湖の水はどうだった?」
エリーシー「肌に馴染むわね、あと気付かなかったけど私は泳ぎが得意みたい」
エリーシー「それでこちらが私の……」
ビワッシー「この人が僕の……」
エリーシー・ビワッシー「「……半身」」
ピカァァァァァァァッ!!
アニメ穂乃果「……っ!」
アニメ穂乃果(2人がお互いを認識した瞬間、2人の体が光に包まれる)
アニメ穂乃果(そして光が晴れると……2人は1人になっていた)
アニメ穂乃果「おおっ!これが本来のビワッシーの姿……!?」
アニメ穂乃果(ベースとなってるのは絵里ちゃんに似た人間の体、そこに龍の角や小さな羽、長い尻尾が付いている)
アニメ穂乃果(同じ竜人の亜里沙ちゃんと違う点を上げるとすれば、亜里沙ちゃんは西洋風のドラゴン人間)
アニメ穂乃果(真ビワッシーは東洋風の竜人間で全体的にスマートな雰囲気を纏っている感じだ)
アニメ穂乃果(他に目立つ特徴と言えば>>119)
-
賢そうでもあるしポンコツそうでもありそう
-
アニメ穂乃果(賢そうでもあるしポンコツそうでもありそうってところかな)
真ビワッシー「おぉー!これぞ真の私の姿だよ!魔王に奪われたかつての私!もう取り戻せることは無いと思ってたのに……」グッ
真ビワッシー「スーパーミラクルパーフェクトな私の復活だよう!!」
ヒャッホー
アニメ穂乃果(ふむ、一人称はエリーシーだけど口調はビワッシーな感じか)
真ビワッシー「ありがとう穂乃果!」
アニメ穂乃果「元に戻れて良かったね……ビワッシー、ん?エリーシー?」
真ビワッシー「呼び方はどっちでも良いよ、どっちも本当の私だから」
真ビワッシー「今の私にはビワッシーの記憶もエリーシーとして過ごした間の記憶もあるんだ」
真ビワッシー「龍の私が沈んだ後に何があって今どうなってるのか、それはエリーシーの記憶で大体把握してる」
アニメ穂乃果「そっか、それは助かるよ」
真ビワッシー「穂乃果と一緒にドスケーブ城に行きたいところだけど私には仕事があるんだ」
アニメ穂乃果「仕事?」
真ビワッシー「うん」
-
タタッ
真ビワッシー「ゴースト!聖水を運べばいいんだったよね!」
ゴースト「え、ええ、本当に絵里に似てるわね、少し驚いちゃうわ」
真ビワッシー「そっちだってにこにそっくりなくせに」
ほうき「滋賀支部までは私らが案内するぜ!雷神号に乗りな!」
モップ「のりな〜!」グッ
真ビワッシー「ありがとう、乗せてもらうよ!」
ゴースト「これで任務は完了ね、私と吸血鬼穂乃果とミニ穂乃果は塔に戻りましょう」
アニメ穂乃果「じゃあ私とペペペペーンちゃんも戻ろっか」
ペペペペーン「あんまり私が着た意味無かったわね……」
ゴースト「ん?そういえば聞き忘れていたけど、ほのパパの店はどこに移動したのかしら」
吸血鬼穂乃果「ドスケーブ城か塔じゃないの?知らないけど」
-
ザッ
經流「ほっほっほ、それならワシが教えよう」
ゴースト「經流!」
アニメ穂乃果(いつの間に……私たちの誰も気付かないうちに後ろにお婆さんが立っていた)
ゴースト「あなた……姿が見えないと思ったけど、穂乃果たち用の出口を作ってたのね」
經流「ヨハネゲートは便利じゃがどこにでも飛べるわけではない、ワシが手伝ってやったまでよ」
ゴースト「キーブレード能力だっけ?本当に便利な能力ね」
經流「ほっほっほ、能力より経験じゃな、海未にはまだ難しいと思うぞ」
經流「それよりほのパパのことじゃ、やつと店はワシのゲートを通って>>123に移動してる」
-
神田明神
-
經流「今頃は神田明神に移動してるはずじゃ」
經流「あそこなら安全じゃろうて――」
アニメ穂乃果「神田明神っ!?」
經流「お、おう?どうかしたか?」
アニメ穂乃果「ダメだよ!あの辺りはアルパカウイルスが蔓延してるはず!」
經流「ウイルス……?」
アニメ穂乃果「そっか、知らないのか……」
アニメ穂乃果(全国を1人で回っていた經流さんは情報の伝達が遅い、こういうミスが起きてしまうのか)
アニメ穂乃果「お願い經流さん!ゲートをもう一度開けて!せめてほのパパさんだけでも別のとこに移さないと!」
經流「……分かった、どうやら移動先がよろしくないようじゃな、ゲートを開くぞ」
キュィィィィィィィンッ
-
ゴースト「ねぇ……アルパカウイルスって例の……」
アニメ穂乃果「うん、感染した人間を新魔王軍の戦闘兵にする効果のあるウイルスだよ」
アニメ穂乃果「ドスケーブ城で抗体を量産してるはずだけど、城と音信不通になってしまったから状況は分からない」
アニメ穂乃果「最悪、ウイルスがどんどん拡大しているままかも……」
ゴースト「……!」
ゴースト「分かった、なら私は穂乃果と行くわ、幽人にならウイルス効かないかもしれないし」
吸血鬼穂乃果「そういうことなら私も行くわ」
ミニ穂乃果「じゃあ私も――」
ゴースト「ミニ穂乃果はダメ」
ミニ穂乃果「えぇぇっ!?」
ゴースト「あなたは普通の人間だし、それに誰かはトゲわんの所に帰って報告しないといけないでしょ」
ミニ穂乃果「……むぅ」
アニメ穂乃果「私も無理はしてほしくないな、出来る人だけついてきて欲しい」
アニメ穂乃果「ペペペペーンはどうする?琵琶湖に無理言って連れてきちゃってなんだけど……」
ペペペペーン「私は……いけるかもしれない」
アニメ穂乃果「ほんと!?」
ペペペペーン「ええ、ウイルスの詳細は分からないけど、病気相手なら私は>>126」
-
バグスターウイルスに感染しているから、他のウイルスには感染しない
-
ペペペペーン「バグスターウイルスに感染してるから他のウイルスには感染しない」
アニメ穂乃果「なっ!バグスターウイルス!?」
ペペペペーン「見えるんでしょ?あなたなら私が嘘をついてないって分かるはず」
アニメ穂乃果「ま、魔眼……!」
キュゥゥゥンッ!
アニメ穂乃果(私は魔眼を使ってペペペペーンの体内のウイルスを探す)
アニメ穂乃果(すると確かにウイルスの影が見えた)
アニメ穂乃果「……本当だ、感染してる、もしかして体調悪そうに見えたのはそのせい!?」
ペペペペーン「そうよ……」ゲホゲホッ
アニメ穂乃果「いつから感染してたの?」
ペペペペーン「タイミング的には川に落ちた後かしら」
ペペペペーン「目覚めた後からすごく体調が悪くて……里で学んだ術で自己診断したら普通の風邪じゃないと分かったの」
-
アニメ穂乃果(里……GODの里か)
アニメ穂乃果(あそこは神が療養するための場所、私たちにかかった堕天使の呪いも解いてもらった)
アニメ穂乃果(そういう異能の病については私たちより詳しいのかもしれない)
ペペペペーン「この状態なら他のウイルスには罹らないから大丈夫」
アニメ穂乃果「う、うん」
ペペペペーン「でも心配なことが1つ、私の中のバグスターの種類までは私は判断できないの」
ペペペペーン「有用なものなら利用したいし、危ないものなら穂乃果に駆除してもらったほうがいい」
アニメ穂乃果「分かった、もっと詳しく見てみるね」
キュゥゥゥンッ!
アニメ穂乃果「……うん、ペペペペーンの中にあるバグスターは>>129みたいなやつかな」
-
ただのパワーアップ効果しかない
-
アニメ穂乃果「ただのパワーアップ効果しかないみたいだから大丈夫だと思う」
アニメ穂乃果「もし仮に危なくなったら私がエグゼイドになってチョチョイと切除するから」
ペペペペーン「……そう、だったら私がも穂乃果についていくわ」
アニメ穂乃果「了解っ」
經流「ゲートを開いた!いつでもいけるぞ!」
ゴースト「じゃあビワッシーとほうきモップは聖水運び、ミニ穂乃果は塔に戻って報告」
アニメ穂乃果「私、ゴースト、吸血鬼穂乃果、ペペペペーンは經流さんのゲートを通って神田明神へだね」
アニメ穂乃果「それぞれ行動開始!」
「「おー!」」
─────────────────
琵琶湖
AM3:37〜AM3:42 新終末編『127』了
-
というわけでここまで
取り敢えず一区切りです
そろそろ時系列的にあそこのシーンを進めますか
新終末編『128』に続く
かもしれない
-
新終末編『128』
─────────────────
──外郭界・神殿
AM??
シュンッ!!
白い魔法使い「がはっ……」ドサッ!!
プラチナ穂乃果「わぁっ!びっくりしたー!」
朱雀穂乃果「あぁ、そういえばあなたは集会に来てなかったわね」
プラチナ穂乃果(フードマン様に呼び出された集会の後、まだ神殿に残っていた私たちの前に突然白いやつが現れた)
プラチナ穂乃果(白いマントに白いスーツで全身真っ白で、顔は仮面をつけてて見えない)
プラチナ穂乃果(そんな白いやつの体のあちこちは血で真っ赤に染まっている)
ゲンム「おいおい、随分なやられようじゃないか、白い魔法使い……いや?魔人ワイズマンよ」
ゲンム「お前ともあろうものが情けないなぁ」
白い魔法使い「ふんっ……」
プラチナ穂乃果(私と朱雀穂乃果から少し離れた所に立っていたゲンム)
プラチナ穂乃果(そのあからさまな挑発に返事はせず、白いの……魔人ワイズマンと呼ばれた人はベルトのバックルに手をかけた)
-
カシャンッ!
ワイズマン「お前の言うとおりだよ、ぐうの音も出ない」
プラチナ穂乃果(たぶん変身してたのだろう、白い魔法使いの姿を解いたワイズマン)
プラチナ穂乃果(その体は白い左右非対称の姿で胸の中心には紫色のコアが埋め込まれている)
プラチナ穂乃果(魔人とは言ってるけど怪人か宇宙人に近い体だな……)
朱雀穂乃果「酷い怪我ね、敵にやられたの?」
ワイズマン「ああ、油断した、ラグナロク計画の補填としてビワッシーを利用する計画も失敗してしまった」
ゲンム「嘆かわしいな、仮面を纏う魔人の仲間として恥ずかしいよワイズマン」
ワイズマン「…………!」
朱雀穂乃果「やめなさい、元はと言えばゲンムがガルムのスカウトに失敗したから補填が必要になったんじゃない」
ゲンム「ぬっ……」
朱雀穂乃果「本来ならフェンリル、ガルム、ヘル、フリュム、ナグルファルまで魔側としてラグナロクに参戦するはずだった」
朱雀穂乃果「けれど先天的な様々な要因と私達のスカウトが失敗したせいで手駒に出来なかったの」
朱雀穂乃果「ワイズマンはその足りない手駒を補充するために働いてくれたんでしょう?」
-
ゲンム「それなら私だって!ナグルファルを襲って挽回を――」
朱雀穂乃果「だまりなさい」ギロッ
ゲンム「…………ぐっ」
プラチナ穂乃果「へー、私はワイズマンの存在すら知らなかったよ、こんな仲間もいたんだね」
朱雀穂乃果「殆どの面子が集会に顔を出さない弊害だわ」
ワイズマン「失敗は申し訳ない……だがこの怪我だ……少し休ませてもらっていいだろうか」
プラチナ穂乃果「いっかい消滅して時間かけて再構成すれば?」
ワイズマン「はっ……バカを言うな、特殊な作りのNeo穂乃果と違い私たちは命は1つしか無い」
プラチナ穂乃果「ありゃー、不便だねぇー」
朱雀穂乃果「しかしワイズマンまで撤退したとなると、本格的に残ってる神話の駒は2つね」
プラチナ穂乃果「2つ?」
朱雀穂乃果「1つは炎の巨人スルト、もう1つは巨蛇ヨルムンガンド」
プラチナ穂乃果「確かスルトのほうはNeo深淵が様子見に言ってるんだっけ?」
朱雀穂乃果「ええ、音沙汰ないけど」
プラチナ穂乃果「じゃあヨルムンガンドの方も誰かが偵察に行ってるの?」
朱雀穂乃果「そうねぇ、あっちは>>135が任されてたような――」
-
調教師穂乃果
-
朱雀穂乃果「あっちは調教師穂乃果が任されてたような……」
アニメ穂乃果「調教師……?」
朱雀穂乃果「ええ、魔物を調教する能力に長けたNeo穂乃果よ」
ゲンム「だがヨルムンガンドを調教仕切れるものかね、相手は神話の怪物の中でも別格の存在だ」
ゲンム「聞いたとこによるとプライドを除いた魔王キチ団の全部隊を壊滅させたそうではないか」
朱雀穂乃果「あれは相性が悪すぎただけでしょ、潜水艦で移動してる最中に海の怪物に出会うなんて……」
朱雀穂乃果「ともかく今のラグナロク要因は前述の2体だけ、失うわけにはいかないわ」
朱雀穂乃果「調教師穂乃果が無事に戻ってくることを願うばかりね」
・
・
-
・
・
──凍結伊勢湾
AM3:00
ドシャァァァァァァァァァンッ!!!!
調教師穂乃果「おぉぉぉ……」
調教師穂乃果(氷山が浮かぶ凍った海と化した伊勢湾、そこで激突し戦うこととなった2つの巨大な物体)
調教師穂乃果(1つは北欧神話に記された巨大な毒蛇ヨルムンガンド)
調教師穂乃果(もう1つは旧魔王軍が建造した移動要塞バーミヤン、今は第四形態の『アームジョー』に変形していて、巨大な二足歩行人形要塞になっている)
調教師穂乃果(2つの巨大物体の戦闘が始まってから10分ほど経つ……)
調教師穂乃果(ヨルムンガンドは周囲の海水を巻き上げたり、自身の体を叩きつけたり攻撃を積極的に加える)
調教師穂乃果(躱されはしたのものの毒牙で噛み付いたり巻き付こうとしたりもしていた)
調教師穂乃果(対してアームジョーは巨体に見合わない軽やかな動き)
調教師穂乃果(ボクシングのようなステップでヨルムンガンドの攻撃を避け続けると、隙を見てパンチを繰り出す)
調教師穂乃果(お互いに未だ決定打は出ていない、一進一退の攻防が続いている)
調教師穂乃果(そんな神話に描かれるようなスケールの大きい戦いの中、かく言う私はヨルムンガンドをコントロールすることが出来てい>>138)
-
るので、必殺技の準備を始めていた
-
調教師穂乃果(なんと!コントロールすることが出来ていたのだ!)
調教師穂乃果「ふっふっふ、どうせ外郭界の皆様は私の能力を不安視してるのでしょうが全ては杞憂で――」
バシャァァッ!!
調教師穂乃果「うわ海水しょっぱ!冷た!!」
調教師穂乃果(最悪……ヨルムンガンドの上に乗ってる都合上仕方ないとは言え、海水を被るとテンションは下がるというものです)
調教師穂乃果(バーミヤンとヨルムンガンドが初めにぶつかったタイミングで乗り込んだんだけど、やっぱり下の氷山部分に残ったまま指示してたほうが良かったかなぁ)
ペッペッ
調教師穂乃果「いや……今更言ってても仕方ありません!」
調教師穂乃果(口の中のしょっぱい汁を吐き出して私は敵であるバーミヤン・アームジョーを見つめる)
調教師穂乃果「1度濡れたら後は何度濡れても同じ!川遊びで1回コケちゃったらヤケクソになる理論です!」
-
調教師穂乃果「たぁっ!」
バシンッ!
調教師穂乃果(ムチで私が立っている地面、つまりはヨルムンガンドの背を叩く)
調教師穂乃果(ヨルムンガンドの巨大さから考えるに蚊に刺された以下の刺激だろうけど問題ない)
調教師穂乃果(私の支配下にあるヨルムンガンドはムチの叩き方1つで命令を聞き分けるように調教済みなのですから)
ヨルムンガンド「グルルッ!」バッ!
調教師穂乃果(私が出した命令は後退、ヨルムンガンドはバーミヤンから少し距離を取り様子を見に入る)
調教師穂乃果(向こうも警戒してるのか迂闊に近付いては来ない、距離を保ちつつこちらの出方を伺っているようですね)
調教師穂乃果「それでいい、それでいいのですよ……」ニヤリ
調教師穂乃果(私はヨルムンガンドに行わせる必殺技の準備に入る必要がある、こういう膠着時間はありがたい)
調教師穂乃果(その必殺技というのは>>141)
-
ヨルムンをメタル化してジャイロ回天で特攻
-
調教師穂乃果(ヨルムンガンドをメタル化してジャイロ回天で特攻する必殺技です)
調教師穂乃果「ふぅ……行きますよヨルムンガンド!」
ヨルムンガンド「グルルァッ!」
調教師穂乃果(私の能力は単に魔物に小手先の芸を仕込むだけではない)
調教師穂乃果(調教の本懐はその生物の身体を理解し、調整し、鍛え上げ、全力以上の力を引き出すことにある!)
調教師穂乃果「ヨルムンガンド:調教モード――」ビシィッ!
調教師穂乃果「身体硬化!メタル!」
ヒュンッ!
調教師穂乃果「速度強化!スピード!」
ヒュンッ!
調教師穂乃果「回転!突撃!突貫――」
ヒュンッ! ヒュンッ! ヒュンッ!
調教師穂乃果(私がムチを振り下ろす度にヨルムンガンドの体が細胞1つのレベルから再構成、複雑な調整を経て最適化されていく)
調教師穂乃果(バーミヤンを貫くに充分な強度と速度と回転力がヨルムンガンドに備わっていく……!)
-
キュィィィィィィィンッ!!
調教師穂乃果「これならいける、行きますよ!」
ヨルムンガンド「グルァァァッ!!」
調教師穂乃果「――メタルヨルムン・ジャイロマキシマム!!」
ドンッ!!!
ギュルルルルルッ!!!
バーミヤン「……っ!?」
調教師穂乃果(長い体を直線にしたヨルムンガンドは、硬化した体を回転させながら突進、周囲の氷河を吹き飛ばしながら銃弾のように突き進む)
調教師穂乃果(今までのヨルムンガンドの動きからは想像できないスピード、バーミヤンも避けることはできない)
ズドォォンッ!!
バーミヤン「がっ……!」
調教師穂乃果(そしてメタルヨルムンがバーミヤンへ直撃すると>>144)
-
本体の右側が吹き飛んだ
-
ズドォォンッ!!
調教師穂乃果(メタルヨルムンの突進がバーミヤン本体の右側を吹き飛ばす!)
バーミヤン「ぐぅぅぅっ!!」
バラララッ!
ドボボボボボッ!!
調教師穂乃果(吹き飛んだ破片が海へと落ちて行き、凍った海面を叩き割って海中へと沈んでいく)
調教師穂乃果(この攻撃でバーミヤンが失ったのは右腕を含めた右上半身全体)
調教師穂乃果(右肩から右腰にかけて弧を描くようにポッカリと穴が空いている、まるで本当にヨルムンガンドに食いちぎられたような破壊の痕)
調教師穂乃果(おそらく予想外だったであろう強力な一撃は、バーミヤン・アームジョーは片膝をつかせる)
ドシーンッ!!
-
バーミヤン「はぁ……っ、この……っ!」
調教師穂乃果(バーミヤンは失った右半身を抑えながら後方に移動したヨルムンガンドを振り返り睨む)
ヨルムンガンド「グルルルルッ」
調教師穂乃果「ふむ……」
調教師穂乃果(中心を狙ったつもりでしたが実際当たったのは右より……咄嗟に身を捻ったのでしょうか、中々やりますね)
タンッ!
調教師穂乃果「ですが与えたダメージは大の大!多くのパーツを失ったあなたが二度目を避けることはできない!」ビシッ!
ヨルムンガンド「グルッ!」
調教師穂乃果「次の一撃で終わらせます――!」
─────────────────
外郭界 AM??
凍結伊勢湾
AM3:00〜AM3:05 新終末編『128』了
-
というわけでここまで
バーミヤンのピンチ
次はそんなピンチのバーミヤン側から
新終末編『129』に続く
かもしれない
-
新終末編『129』
─────────────────
──バーミヤン・ブリッジ
AM3:05
ブー! ブー! ブー!
ミナリンスキー(赤い非常灯に照らされ、散々聞き慣れた警報が鳴り響くブリッジ)
ミナリンスキー(緊急事態にオペ子ちゃんが血相を変えてキーボードを叩く)
オペ子「ああああああ!もううううううううううっ!!」
ガタタタタタッ!!
オペ子「右腕部と肩部を全損失!右胸部右腹部右腰部は半壊!」
オペ子「被害は動力炉の一部にも及んでいます!」
オペ子「全体で出力約30%低下!歩行機能に問題はありませんが……出力低下とバランスが狂ったせいで全体の動作効率はおそらく半分にも達しません!」
ミナリンスキー「ありゃりゃ、油断してたわけじゃないけどやられちゃったね」
ミナリンスキー「敵が一枚上手だったってことかな……」
オペ子「艦内各員被害状況を報告!負傷者の手当と故障個所の修理を優先してください!!」
ピッ!
-
ミナリンスキー「どうオペ子ちゃん?」
オペ子「はぁ……もう収集がつかないですよ、あの蛇よくもやってくれたって感じです」
オペ子「幸いバーミヤン統括AIはシステムダウンしていませんが、戦況は最悪の最悪」
オペ子「同じ攻撃をもう一度されたら避け切ることはできません」
ミナリンスキー「……ふむ、それは不味いね」
オペ子「はい、不味いです」
ミナリンスキー「確か矢澤にこちゃんたちが動力炉から上がってきてた途中だったよね、あの子たちから報告は来てない?」
ミナリンスキー「あの部隊が無事ならまだ手は打てる」
オペ子「ええと……来てます!」カタカタッ
オペ子「現在いる場所はバーミヤン・アームジョーの胸部辺り、ヨルムンガンドによる破壊を受けた場所の近くらしいです」
オペ子「状況は>>150」
-
百人一首をしている
-
1人を除いてみんな瀕死
-
オペ子「状況は……えぇ?」
ミナリンスキー「どうしたの?」
オペ子「どうやら百人一首をしてるとのことです、この緊急事態に何を遊んでいるのでしょうか……」
ミナリンスキー「うーん、単に遊び……とは言えないかもね」
オペ子「え?」
ミナリンスキー「無事なのは分かったから直接通信してみる、向こうにも特殊戦闘服を渡ってるはずだから――」
ピッ
ミナリンスキー(私は戦闘服についてる通信機のスイッチを押す)
プー プー
ピピッ
にこ『はいこちら矢澤にこにこ〜』
にこ『てか銀河が持ってきたこの服は本当に着たまま通信できるのね、さすが鞠莉製品だわ』
ミナリンスキー「にこちゃん!今の戦況は理解してる!?」
にこ『にこちゃ……?ああ、ミナリンスキーか、ことりの声でその呼び方されると混乱するわね』
ミナリンスキー「ご、ごめん」
にこ『いいのよ、戦況はこちらも理解してる』
にこ『さっきの突進のせいで随分と見晴らしのいいデカ穴が私たちの近くに空いてるわ』
-
ヒュゥゥゥゥッ!
ミナリンスキー(通信機越しに風の音が聞こえる)
ミナリンスキー(バーミヤンの右上半身を抉った穴がにこちゃんたちのいる場所まで届いたんだ……!)
にこ『外の景色も丸見え、ヨルムンガンドはまた一撃加えようとタイミングを測ってる感じかしら』
ミナリンスキー「……っ!ダメだよ!次の攻撃を避ける余裕がバーミヤンには無い!」
にこ『だと思った、だからこっちで対処を進めてる』
ミナリンスキー「それが百人一首?」
にこ『そっ、ヤザワが出した宝具よ』
にこ『ヤザワが上の句を読んだ後に他の人が下の句を読むことで発動する、その効果は和歌によって様々』
にこ『今発動させてるのは>>154』
-
時間を3分巻き戻す
-
にこ『今発動させてるのは時間を3分巻き戻す和歌よ!』
ミナリンスキー「時間を……?」
にこ『ええ、ちょっとズルいけど反則技でも使わないとやつには勝てないからね』
ミナリンスキー「……まぁ今更手段はとやかく言わないわ、私に出来ることはある?」
にこ『そうねぇ、時間が戻った時に記憶を保持できるのは上の句と下の句を読む読み手の2人だけ』
にこ『それ以外の人間は記憶さえも失ってしまう、でもそれだとミナリンスキー側と連携が取りづらい……か』
にこ『ヤザワ!下の句をミナリンスキーに読んでもらうってのはどうかしら!』
ミナリンスキー「わ、私!?」
ヤザワ『良いんじゃないかしら、声さえお互いに聞こえていれば宝具は発動するわ』
ヤザワ『記憶を残すのがこっちに1人向こうに1人ってのは私も賛成』
ミナリンスキー「……分かった、やってみよう!」
ミナリンスキー(通信に入ってきたヤザワの提案に私は了承の言葉を返す)
ミナリンスキー(百人一首か……あんまり詳しくないけど最初に全文を聞かせてくれるよね)
-
銀河穂乃果『二人共!ヨルムンガンドが体を真っ直ぐに伸ばした!二撃目が来るよ!!』
にこ『ヤザワっ!』
ヤザワ『おっけー!』
ミナリンスキー(メタル化して狙いを定めるヨルムンガンド、それはブリッジのメインモニターにも大きく映っている)
ヤザワ『良い要塞長!この宝具の和歌は使い切り、効果を発揮した和歌は二度と使えなくなるの』
ヤザワ『だから間違えないでね!』
ミナリンスキー「う、うん!分かったけど……その和歌ってのは……」
ヤザワ『宝具!百人一首ハンドレッド・オブ・オンリーワンを発動!!』
カッ!!
ミナリンスキー「えぇぇぇぇ!?」
ミナリンスキー(ヤザワが発動したと同時にバーミヤン・アームジョーの前面に巨大なカルタが展開される)
シュルルルルッ ドンッ!!
ヤザワ『第17歌:ちはやぶる、神代も――』
ヨルムンガンド「ガルルルッ!!」
ドンッ! ギュルルルルルッ!!
オペ子「ヨルムンガンド飛んできますっ!」
ヤザワ『――聞かず神田川』
ミナリンスキー「……っ!」
ミナリンスキー(メインモニターに映された迫りくるヨルムンガンドの巨体)
ミナリンスキー(それに圧倒されかける私の耳にはヤザワが読み上げる上の句が聞こえてくる……)
ミナリンスキー(ちはやぶる――聞いたことがある、有名なやつだ)
ミナリンスキー(私はその続きを口に出すことが>>157)
-
できた
-
ミナリンスキー(……出来た!)
ミナリンスキー「――からくれなゐに水くくるとは!!」
キィーンッ!
ミナリンスキー(そうして私が下の句を読んだ瞬間、視界が真っ赤に染まる)
ミナリンスキー(単にブリッジを照らす非常灯の光……というわけじゃない)
ミナリンスキー(バーミヤンも、ヨルムンガンドも、凍った海も、モニターの向こうに広がる全てが赤く染まって"静止"していた)
ミナリンスキー「オペ子ちゃん……?」
オペ子「…………」
ミナリンスキー「動かない、時間が止まってるんだ……」
ヤザワ『不思議なことがいっぱい起こっていた神代でさえも、竜田川が紅く染まるほど不思議なことは無かったって意味だそうだけど』
ヤザワ『これから行うのはもっと不思議な術式、神代でさえ中々見られない――時返しの秘儀よ!』
キュゥゥゥッ!
ミナリンスキー「……っ!?」
ミナリンスキー(静止していた真っ赤な世界が動き出す、逆方向……映像を逆再生したように目まぐるしく巻き戻る!)
ギュルルルルルッ!!
ミナリンスキー(目前に迫っていたヨルムンガンドが元の位置に戻り、バーミヤンの破壊が再生し、一進一退の攻防が続いていた時間まで――――)
・
・
-
・
・
AM3:02
──バーミヤン・ブリッジ
ミナリンスキー「――はっ!」
ミナリンスキー(まだ非常灯に照らされていないブリッジ、モニターに映ってるのは様子を見ているヨルムンガンド)
ミナリンスキー(そうか……時間が戻ったんだ)
オペ子「ミナリンスキー?どうかしましたか?」
ミナリンスキー「命令よオペ子!バーミヤンを後退させてヨルムンガンドからなるべく距離を取って!」
オペ子「え?今も距離を取ってますが……」
ミナリンスキー「もっとだよ!」
オペ子「は、はい!バーミヤンAIへ命令!」カタカタッ
ミナリンスキー(取り敢えずオペ子に指示を出し、通信機に手をかける――)
ピピッ!
ミナリンスキー(前にヤザワのほうから通信が来る)
ピッ
ヤザワ『ミナリンスキー!記憶はあるわよね!』
ミナリンスキー「うん、一応バーミヤンにヨルムンガンドから離れるよう命令は出したよ」
ヤザワ『よし、それで時間は稼げそうね……でも結局はあの技を破らない限り勝機はない』
ミナリンスキー「全身をハンマーのように硬化させたヨルムンガンドの回転突進……か」
-
ヤザワ『動きを見た感じヨルムンガンドは単なる猛獣じゃない』
ヤザワ『やつが賢いのか誰かが操ってるのかは分からないけど、いずれ執拗にバーミヤンを追い詰めて必殺技を放つはず』
ヤザワ『文字通り時間を作った私たちが考えなきゃいけないのは、その時にどう対応するかってこと』
ミナリンスキー「そうだね、万全な状態のバーミヤンでさえ正面から躱しきれなかった無かったんだし」
ミナリンスキー(正直な所、私にはこれと言ったアイディアが思いつかない)
ミナリンスキー(要塞長として情けないと思う、でも変なプライドは要らない、思いつかないなら素直に人に頼ればいいのだ)
ミナリンスキー(今の私は穂乃果ちゃんのために1人で全部背負い込んでた昔の私じゃない)
ミナリンスキー(今のバーミヤンには目的を同じとする仲間がいるんだからっ)
ミナリンスキー(特にヤザワは英霊、所詮は凡人の私と違った発想を持ってるはず!)
ミナリンスキー「ねぇ、ヤザワは何か考えはある?」
ヤザワ『そうだなぁ……パッと思いつくのだと>>161』
-
回転突進してきたのをホームランで宇宙まで吹っ飛ばす
-
ヤザワ『回転突進してきたのをホームランで宇宙まで吹っ飛ばす……とか?』
ミナリンスキー「……へ?」
ミナリンスキー(帰ってきた予想外の脳筋な答えに私は思わず素っ頓狂な声を出してしまう)
ミナリンスキー「ホームランって……ヨルムンガンドを打ち返すってこと!?」
ヤザワ『そうそう』
ミナリンスキー「むむ無理だよ!時間を戻す前の結果を見たでしょ!」
ミナリンスキー「バーミヤンの装甲はヨルムンガンドの突進には耐えられない、きっと掠っただけでも破壊されちゃう」
ヤザワ『そうねぇ、でも道具があれば話は別よ?』
ミナリンスキー「道具?」
-
ヤザワ『1流の野球選手だって生身に豪速球を当てられたら怪我をするというもの』
ヤザワ『けれどバットさえあれば彼らは豪速球をミートしてホームランにすることができるのよ』
ミナリンスキー「バットか……でもそんなものがどこに――」
ヤザワ『ここにあるわよ』
ミナリンスキー「え?」
ヤザワ『私と……ここにいる皆が力を合わせてバーミヤンのバットを作ってあげるって言ってんの!』
ミナリンスキー「ヤザワたちが!?」
ヤザワ『ええ、それも特別製――ヨルムンガンドをぶっ飛ばすに相応しいやつをね!』
─────────────────
バーミヤン内部
AM3:05〜3:02〜3:05 新終末編『129』了
-
というわけでここまで
肝心の和歌で間違う
なんか重要なとこでいつも間違うような
新終末編『130』に続く
かもしれない
-
新終末編『130』
─────────────────
──バーミヤン・内部通路
AM3:05
タタタタッ
にこ「ヤザワ!ヨルムンガンドの必殺技を予知したって本当なの!?」
ヤザワ「そうよ!当たれば一発か二発で終わり!だから黙って走る!」
にこ「う、うん!」
ヤザワ(ミナリンスキーとの通信の傍ら、私たちはバーミヤンの中を上層方向へ急いで走っていた)
ヤザワ(説明するのが面倒なので時間を戻したことはにこたちには話してない、代わりに私が魔術で攻撃を予知したことにしている)
ツバサ「私たちでバット?武器を作るみたいな話だけど……」
にこ「そうよその話も詳しく聞かせなさいって!」
りんぱな「そんなこと本当にできるの?」
ここピョン「ぴょーんぴょんっ!」テテッ
ヤザワ「できるわよ!黙って付いてきて!」
ヤザワ(そう、今やらなきゃいけないのは打ち返すための武器の創造、作るための場所へ急ぐこと)
ヤザワ(なるべくバーミヤンの右腕に近い外へ繋がる出口!そこへ行く!)
タタタタッ
ヤザワ「ミナリンスキー!まだ通信は繋がってるわよね!」
ミナリンスキー『うんっ』
ヤザワ「あなたの方からとっりに呼びかけてくれない?てか今あいつは何してるの?」
ミナリンスキー『分かった!』
ミナリンスキー『えーと、今バーミヤンのメインカメラ映像を見た感じ、とっりは今>>166』
-
気を高めている
-
ミナリンスキー『とっりは今……目を閉じてウンウン唸ってるよ、集中して気を高めてるのかな』
ヤザワ「気ねぇ……何のつもりか分からないけどコンディション良くしてるなら好都合だわ」
ヤザワ「ミナリンスキーはとっりに呼びかけてちょうだい、バーミヤンの右手側に来て待機してるようにって!」
ミナリンスキー『うん!』
タタタタッ
にこ「待機って……とっりも武器作成に使う気なの?」
ヤザワ「そうよ、私たちの能力ととっりの能力を組み合わせるの」
ヤザワ「その核となるのは……あなたよここピョン!」
ここピョン「……ピョン?」
ツバサ「ここピョンが核?」
ヤザワ「ええ」コクンッ
ヤザワ「ここピョンはツバサとにこの子供、ツバサの変幻属性とにこの魔術特性を受け継いでいる子よ」
ヤザワ「その変幻は大質量広範囲を操るツバサの変幻とも、再現性緻密性に長けたてんこの変幻とも違う」
ヤザワ「遺物や宝具と言った異能アイテムを再現することに長けた変幻――!」
-
銀河穂乃果「宝具への変幻?」
ヤザワ「そうよ、おそらくここピョンは一切の負荷やフィードバックなく宝具に姿を変えることができる」
にこ「コウノトリを倒した時に偽ドラゴンソードを出したみたいにか……」
りんぱな「本当ならすごいことね」
りんぱな「バーミヤン第二形態を大阪で迎え撃った時にてんこがグングニルになったんだけど、変幻を数秒保たつのだけで精一杯みたいだったわ」
ツバサ「そうだったの……てんこも色々無理してたのね……」
りんぱな「ま、あれはあれで堕天使っぽくて良かったけど」ククッ
銀河穂乃果「りんぱなの闇落ちモードはいつ戻るんだろう……?」
タタタタッ
ヤザワ「計画としてはこうよ」
ヤザワ「私とにこがバット代わりになる宝具を投影、その間にここピョンはとっりに乗り移って変幻能力を登録」
ヤザワ「登録が終わってとっりがここピョンの能力を発動できるようになったら、そこに私たちの宝具のデータをぶち込む!」
ツバサ「とっりを経由する理由は?」
ヤザワ「変幻した宝具を巨大化させるためよ、とっりの真価は搭乗者の能力をあのスケールで発動できるところにある」
ツバサ「それなら私が手伝えば!」
ヤザワ「ダメよ、あなたの体調は万全ってわけじゃないし、何より宝具変幻の反動に耐えられる保証がない」
ツバサ「……っ!」
ツバサ「……そうね、分かったわ」
-
銀河穂乃果「あ、あれ!外に繋がる出口じゃないかな!?」
ヤザワ「よし!」
ヤザワ(ここまで走ってきてようやく見つけた出口の扉を私は思っきり蹴り開く)
タタタタッ
バンッ!!
ヤザワ(扉の向こうは外、丁度右手の甲辺りの扉ね……遥か下に氷海が広がっている)
ピッ
ヤザワ「ミナリンスキー!右手に着いたから右手の部分の動きを抑えるようバーミヤンに言って!」
ミナリンスキー『おっけー!水平で良いかな!』
ヤザワ「ええっ」コクンッ
グーンッ
ここピョン「おおっ!周りが動くピョン!」
ヤザワ(さっそく要望どおりに通路が回転、横にあった出口が天井へ移動して固定される)
ヤザワ(つまりこの上に登れば右手の甲に出れるというわけだ)
-
ヤザワ「行くわよ!」
にこ「うんっ!」
タンッ!
ヤザワ(私とにこ、それからここピョンとりんぱなと銀河がジャンプしてバーミヤンの右手の甲に出る)
ヤザワ(疲弊したてんこを背負ってるツバサは通路の中で待機)
ヒュゥゥゥゥッ
にこ「それでヤザワ、宝具を投影するってどうするの?2人で別々のものを同時ってこと?」
ヤザワ「違うわ、2人で1つの宝具を投影するの、1人でやるより強力なのを出せるのよ」
ヤザワ「やり方は簡単、>>171」
-
シンクロ率90%以上のにこにこにー
-
ヤザワ「シンクロ率90%以上のにこにこにーよ!」
にこ「にこにこにー?」
ヤザワ「心を合わせるってこと、あなたと私なら出来るわよ」
にこ「まぁ……出来ないとは言ってないわ、ただ何を投影するか聞いてないし……」
ヤザワ「大丈夫よ、あなたが大雪山の魔王拠点で1度投影してるものだから」
にこ「……?」
ヤザワ「出来ない?それとも怖気づいた?」
にこ「ふんっ、誰が怖気づいたって……良いわ!やってやろうじゃない!」
ザッ!!
ヤザワ(バーミヤンの右手の甲の上、私とにこが並び立つ)
-
ここピョン「あれ?ここピョンも何かしなきゃいけないような……」
りんぱな「あなたはとっりの所へ行くのよ、私が飛んで連れてってあげるわ」
ここピョン「そっか!お願いピョン!」
りんぱな「行くわよ!」ガシッ
タンッ!
ヒューーーーッ
ヤザワ(私たちの後ろでここピョンの背中から両手を回し抱えたりんぱなが飛び立つ)
ヤザワ(飛ぶと言ってもこの右手の真下に待機してるとっりに落ちていく形だけど)
銀河穂乃果「大丈夫!ここから見てる分にはちゃんと着地できてる!」
ヤザワ「よし、こっちも始めるわよ!」
にこ「うんっ!」
スゥー
ヤザワ「心合わせて!」
にこ「あなたのハートに!」
ヤザワ・にこ「笑顔を届ける!にっこにっこに〜!」
-
キュィィィィィィィンッ!!
ヤザワ(来た……!私とにこの周囲をピンクの光が包み始める)
ヤザワ(これを待っていた、私はにこの手を強く握って叫ぶ)
ヤザワ「双奏投影!出てきなさい――」
カッ!!
ヤザワ「――悉く打ち砕く雷神の鎚、ミョルニル!!」
ドゴォォォォォォォォンッ!!
にこ「こいつは……!」
ヤザワ(私とにこ、2人分の力を使って投影したのは北欧神話の雷神トールが所持していた鎚)
ヤザワ(トールハンマーとも呼称される宝具は雷鳴を轟かせながら私たちの前に出現する)
にこ「前に私が投影したものとは威圧感がまるで違う……限りなく本物に近い宝具……!」
ヤザワ「あとはこれを、ここピョンの能力を発揮したとっりに食わせるだけ」
ヤザワ「向こうの様子は……」
タタッ
ヤザワ(バーミヤンの右手の甲の端まで行って身を乗り出して下を覗く)
ヤザワ(すると、とっりの準備は整って>>175)
-
いた
-
ヤザワ(とっりの準備は整っていた!)
とっり「うおおおおおおおっ!体に変幻の力が漲ってくるちゅん!」
キュゥゥゥゥゥゥンッ!
ヤザワ(とっりの体の表面はスライムのように泡立ち、頭にはここピョンと同じウサミミが生えている)
ヤザワ(ここピョンの能力を使っているのが見てとれるわね)
ヤザワ「にこ!ミョルニルを真下に落としてとっりに吸収させるわよ!」
にこ「うん!」
ガタンッ!
ヤザワ(ミョルニルを担いできたにこはバーミヤンの右手の上から鎚を投げる)
にこ「受け取りなさい!とっり!」
ヒュンッ!
-
ヒュォォォォォォォォォォッ!!
ヤザワ(勢い良く落ちていくミョルニル、そして――)
チャポンッ!
とっり「確かに受け取ったちゅん!」
ヤザワ(スライム化したとっりにしっかりと命中、とっりの体内へと沈んでいった)
ヤザワ(それを見届けた私は首元の通信機に向かって叫ぶ)
ヤザワ「ミナリンスキー!今からとっりが変幻する!それを使ってヨルムンガンドを――」
ヨルムンガンド「グルルルルァ!!」
ドゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!
にこ「この振動……ヨルムンガンドが吠えている……!」
ヤザワ(くそっ!もう必殺技!?バーミヤンが距離を取って時間を稼いだけどここまでかっ!)
とっり「ちゅぅぅぅぅぅぅんっ!」
キュィィィィィィィンッ!!
ヤザワ「早く変幻しなさいとっり!」
ミナリンスキー『バーミヤン!とっりを掴んでっ!!』
ヤザワ「次の一撃で――」
ミナリンスキー『――勝負が決まる!!』
─────────────────
バーミヤン
AM3:05〜AM3:08 新終末編『130』了
-
というわけでここまで
たぶん決着
新終末編『131』に続く
かもしれない
-
新終末編『131』
─────────────────
──凍結伊勢湾
AM3:08
ミナリンスキー『バーミヤン!とっりを掴んで!!』
バーミヤン「とっり……?」
ピピッ
『高速演算思考開始――』
バーミヤン(私はバーミヤンの統括AI、このアームジョーの手足を動かす疑似人格)
バーミヤン(現在は頭部にいる要塞長ミナリンスキーの命令で動いてる)
バーミヤン(敵は目の前のヨルムンガンド、あれを倒すことが私の使命)
バーミヤン(うん……問題ない、私は自己と今の状況を正しく理解できている、思考ルーチンにバグは見られない)
バーミヤン(ではなんだろう、この0と1では表せない違和感は……?)
バーミヤン(このままでは私はヨルムンガンドにやられるという予感……予感なんてAIらしくもないけど)
-
バーミヤン(人間で言えば体が覚えてるという感覚に近いのかもしれない)
バーミヤン(記憶メモリのどこにもない、けれど確かに浮かんでくるヨルムンガンドに破壊された私の光景)
バーミヤン(どれだけ演算をループして繰り返しても原因となってる箇所を見つけられない)
バーミヤン(あの光景が振り払えな――)
ミナリンスキー『お願い!早く!それを掴んで!!』
バーミヤン「……っ!」
ピピッ!
バーミヤン(ミナリンスキーの声で私は高速思考の世界から引き戻される)
ミナリンスキー『大丈夫!その武器を持てばバーミヤンはヨルムンガンドに勝てるから!!』
バーミヤン(何故だか分からない、またAIらしくない思考だけど……そのミナリンスキーの言葉にとても安堵を覚える)
バーミヤン(そうだ、私は彼女と共に戦う移動要塞ロボ!悩む必要などない!)
バーミヤン(ミナリンスキーを信じ、ただ彼女の命令に従えばいいっ!)
-
バーミヤン「たぁっ!」
ガシッ!!
バーミヤン(右手の上で作業をしていた人たちはもう中に避難している)
バーミヤン(私は足元で光り輝いていた幻想種の体を右手で思っきり掴んで引き上げた!)
ズボッ!!
バーミヤン(表面はブヨブヨとスライムのように柔らかったけど、内部に硬い芯を感じる)
とっり「よっしゃあ行くちゅんよ〜!」
とっり「変――幻――!!」
カッ!!
バーミヤン(私の手の中、とっりは>>182が特徴の巨大な鎚へと姿を変えた)
-
相手の勢いを倍返しで跳ね返す(・8・)印
-
バーミヤン(とっりが変幻した巨大な鎚は私の――アームジョーの手に丁度馴染むような大きさ)
バーミヤン(金属部分の前面、打ち付けるために平らになってる場所には(・8・)印が描かれている)
とっり「名付けてミョルニルとっりハンマー!相手の勢いを倍にして跳ね返す効果があるちゅん!」
バーミヤン「ダサい名前ですね」
とっり「むっ」
バーミヤン「ですが……しっかりと使わせて頂きます!」
とっり「ふんっ……勢い余って手を離すんじゃないちゅんよ!」
ヨルムンガンド「グルルルルァ!!」
ググググッ!
バーミヤン(硬化させた体に力を溜めるヨルムンガンド、目はこちらを強く睨んでいる)
バーミヤン(まるで蛇に睨まれたカエル、これだけ距離は取っていてもすごい威圧感を与えてきている)
バーミヤン(いや……威圧感なんて錯覚です、私には関係ない!)
ミナリンスキー『良い!?今から飛んでくるヨルムンガンドをミョルニルで打ち返すの!』
ミナリンスキー『狙ってくるのは右側、ミョルニルを右に構えての右打ちでカウンターを決める!』
バーミヤン「はいっ!」
バーミヤン(私の予測システムでも予測できない情報を教えてくれるミナリンスキー、さすが要塞長ってところですね)
-
ググッ
バーミヤン(左足を少し前に出し、鎚を持った右手に左手を添える)
バーミヤン「さぁ……来なさい!」
ヨルムンガンド「グルァァッ!!」
ドンッ!!!!
ギュルルルルルッ!!!!
バーミヤン(私の挑発に乗ったのか、構えた直後にヨルムンガンドは突進を繰り出した)
バーミヤン(金属のように硬質化させた体をジャイロ回転させ、海を割るような勢いで突っ込んでくる)
ググッ
バーミヤン(だけど問題ない、コースはミナリンスキーの予想通り)
バーミヤン(体を完全に横向きにして足を大きく開き、構えた鎚を後ろに大きく振りかぶる)
バーミヤン(後はタイミングを合わせて――)
ブンッ!!
バーミヤン(ヨルムンガンドの頭にミョルニルをぶち当てる!!)
ガキィィィィィンッ!!!!
ヨルムンガンド「っ!?」
バーミヤン「……捉えた」
-
とっり「ちゅぅぅぅぅぅぅんっ!!」
カッ!! ゴロロロロッ!!
バーミヤン(そのインパクトの瞬間、雷鳴のような轟音と共にとっりの紋が発光)
バーミヤン(ヨルムンガンドの突進の勢いを2倍にして跳ね返す!)
ドンッ!!
ヨルムンガンド「ガァァァァァァァ!?」
バーミヤン(周囲の海ごと吹き飛ばす衝撃、一瞬海水の層がめくり上がり海底が見えるほどの衝撃)
バーミヤン(そんな規格外の勢いでヨルムンガンドは大量の海水と共に吹き飛ばされた)
バーミヤン(空の遥か彼方へ飛び、小さく小さく……お空星になるまで吹き飛んだヨルムンガンドの姿はやがて見えなくなる)
ミナリンスキー『やった!!』
とっり「見たことかちゅん!」
バーミヤン「……?」
バーミヤン(なんだろう、ヨルムンガンドが吹き飛んだ瞬間に何かがヨルムンガンドの背から飛び降りたような……)
バーミヤン(あれは……人?)
バーミヤン(その人らしき物は>>186)
-
大量の鳥の上から睨んできた
-
バーミヤン(その人らしき物はどこからかやって来てた一匹の鳥に飛び乗った)
とっり「ば、バーミヤン!周りを見るちゅん!」
バーミヤン「……!?」
バサッ! バサッ! バサッ! バサッ
バーミヤン(いや……鳥は一匹じゃなかった)
バーミヤン(私たちの周りをいつの間にか大量の鳥の群れが囲んだいたのだ)
バーミヤン「いつの間に……」
調教師穂乃果「もしもの時のために呼んでおいたんですよ」
ミナリンスキー『人っ!?』
バーミヤン(そう言って大量の鳥の上から睨んできた人はどこか高坂穂乃果の面影がある人間の女性)
バーミヤン(私の知識ストレージと照らし合わせるとサーカスの猛獣使いに似た格好をしている)
ミナリンスキー『あなたは誰なの!新魔王軍の人!?』
調教師穂乃果「拡声器越しの声……この機械人形の主でしょうか」
ミナリンスキー『まぁ……そう思ってもらって良いよ』
ミナリンスキー『私は元魔王軍のミナリンスキー、あなたの名前は?』
調教師穂乃果「ふむ、名乗られたら名乗り返すのが礼儀ですね、私は新魔王軍のNeo穂乃果――調教師穂乃果と言います」
ミナリンスキー『Neo穂乃果……?』
-
バーミヤン「あなたがヨルムンガンドを操っていたんですね、何が目的なんですか!」
調教師穂乃果「それは話すわけには行きませんねぇ、情報漏洩になりますから」ニヤリ
とっり「このっ……上から目線で話すのをやめるちゃん!ヨルムンガンドはもうお空の彼方までホームランされたんちゅんよ!」
とっり「今有利なのはこっち、立場をわきまえるちゅん!」
調教師穂乃果「立場ねぇ……」スッ
バーミヤン(調教師穂乃果は手に持っていたムチを高い位置で構える)
とっり「そんな小さなムチがなんだって言うんだちゅん!」
とっり「バーミヤン!とっりミョルニルを振り回してやるちゅん!」
バーミヤン「え、ええ」
バーミヤン(なんだかとっりに上手く使われてるようでAI並に癪ですが、鳥の群れを近づけたくない点には同意です)
ミナリンスキー『バーミヤン、威嚇程度にお願い』
バーミヤン「わかりました」スッ
ブンッ!!!!
バーミヤン(鎚を勢い良く振り回す、あくまで威嚇、直接は当てないように周囲の鳥に向けてグルッと――)
バーミヤン「……え?」
バーミヤン(おかしい、他の鳥は避けていくのに調教師穂乃果だけ避ける気配がない)
バーミヤン(このままだ直撃して……)
-
パシィンッ!!
とっり「……へ?」
調教師穂乃果「平気ですよ、そんなもので私のムチは破れない」
バーミヤン(鎚が直撃はすることは無かった、正確にはムチが当たった瞬間にその場で停止してしまったのだ)
バーミヤン(私がいくら力を込めても固定された座標から1ミリも動かなくなる)
とっり「な……?え……?動かない!体が動かないちゅん!」
調教師穂乃果「ミョルニル――トールの鎚ですか、北欧神話でヨルムンガンドを討ち取ったと言われる武器」
調教師穂乃果「相性を考えるならベストな選択と言えます」
調教師穂乃果「しかし……同様に私とその鎚の相性も良いのですよ」
バシィンッ!
調教師穂乃果「その鎚は幻想種が姿を変えたものでしょう?相手が生き物ならば私が操ることは容易」
調教師穂乃果「こうしてムチを一発叩き込むだけで動きを止めることさえできるのですから」
とっり「むぐぐぐぐぐぐっ!」
ミナリンスキー『武器が無力化された……!?』
バーミヤン「すごいですね……手を離してもとっりミョルニルが宙に浮いたままですよ」
調教師穂乃果「とは言え、私もその機械人形に対しては不利」
調教師穂乃果「ここは>>190」
-
まだ戦うか寝返るかをコインで決める
-
調教師穂乃果「まだ戦うか寝返るかをコイントスで決めるとしますか」
ピィンッ!
バーミヤン(調教師穂乃果はポケットから出したコインを指で高く弾く)
バーミヤン(コインはクルクルと宙を舞い――)
調教師穂乃果「表が出たら続ける、裏が出たら寝返る……で」
パンッ!
バーミヤン(落ちてきたコインを手の甲で受け止め、もう片手でふたをする)
調教師穂乃果「さて、どちらが出ているか……」
ミナリンスキー『……』ゴクッ
バーミヤン(こちらとしては降参してくれたほうが有り難いのですが……果たしてどうなるか)
バーミヤン(確率は1/2、もし戦いが続行したら、今度はヨルムンガンドの代わりにとっりと戦うことになってしまう)
調教師穂乃果「出た面は……>>192」スッ
-
縦に手の甲に刺さって痛い
-
バーミヤン(そう言って調教師穂乃果が確認しようと手のひらを除けると――)
調教師穂乃果「のわぁぁぁあああああっ!!」
ブシューーーーッ!!
バーミヤン(真っ直ぐ縦に落ちてきたコインが手の甲に突き刺さっていた)
調教師穂乃果「のぉぉぉぉぉぉぉうっ!!」
ピクピクッ
バーミヤン(よほど思っきりコインを叩きつけたのか手の甲からは血が吹き出していた)
バーミヤン(痛覚がない機械なりに痛そうだなーと思う、調教師穂乃果涙目になってるし)
調教師穂乃果「くっ……名誉の負傷ですね……」
とっり「いや単にコイントス失敗しただけだと思うちゅん」
調教師穂乃果「この状態では戦うことも寝返ることもままならない、この縦に落ちてきたコインは第3の選択を示しているのでは……」
とっり「だからミスっただけじゃ……」
調教師穂乃果「仕方ありません!第3の選択として撤退を選びましょう!しかしこれで終わりだと思わないでください!」
調教師穂乃果「とぅっ!」シュバッ!
ヒューーーーッ!
バシャァァァンッ!!
-
バーミヤン(調教師穂乃果は乗っていた鳥から跳ぶと海面に向かって落ち、海中に沈んでいった)
バーミヤン(私たちの周りを囲んでいた鳥の群れも私たちから離れて蜘蛛の子散らすように散っていく)
とっり「落ちたぁっ!?」
バーミヤン「ふむ……彼女の能力を考えるに海中に逃走用のペットでも仕込んでいたのでしょう」
ミナリンスキー『とりあえずこれ以上事を構えることにならなくて良かったよ』
バーミヤン「はい……本当に」
バーミヤン(危機が去ったことに安堵し、自分が要塞としての役目を果たせたことに安心する)
バーミヤン(今くらいはAIらしくない感情を持ってもいいだろう)
ミナリンスキー『じゃあ皆!急いで名古屋の拠点まで戻るよ!』
─────────────────
凍結伊勢湾
AM3:08〜AM3:13 新終末編『131』了
-
というわけでここまで
わりと早く終わった
帰る途中に何かあるんですかね
新終末編『132』に続く
かもしれない
-
新終末編『132』
─────────────────
──凍結伊勢湾
AM3:18
──バーミヤン・ブリッジ
バーミヤン『ミナリンスキー、このまま真っ直ぐに名古屋港に向かえばいいんですよね』
ミナリンスキー「うん、取り敢えずはそこまで、名古屋港からの安全が確認出来次第岩壁の塔に行こう」
バーミヤン『了解、歩行を続けます』
ピッ
ミナリンスキー(ヨルムンガンドとの戦闘から数分……私たちは帰路についていた)
ミナリンスキー(また新魔王軍による襲撃がないとは限らない、辺りを警戒しつつバーミヤンは凍った海の上を陸地目指して歩いていた)
ミナリンスキー(ヨルムンガンドと戦った場所はヨルムンガンドの生み出した海流によって氷が破壊され、氷山の浮かぶ海となってたけど)
ミナリンスキー(そこから少し陸地近くに行くとまだまだ海は分厚い氷の大地で覆われている)
ミナリンスキー(バーミヤンには氷を踏み抜かないようになるべく慎重に歩いてとも言っておいた)
オペ子「ミナリンスキー様!各部署からの被害報告は纏め次第そちらに回しますね!」
ミナリンスキー「ありがと」
-
ミナリンスキー(一度は大破したバーミヤンもヤザワの百人一首のおかげでほぼ無傷と言っていい破損度に抑えられている)
ミナリンスキー(もちろんバーミヤンが派手に動いたせいで怪我した乗組員や破損した箇所が全く無かったわけではない)
ミナリンスキー(でもどの負傷も程度は軽いもので済み、破損も航行にはなんら問題ないものだ)
ミナリンスキー(緊急の動力炉もちゃんと動いてくれている)
ミナリンスキー「そうだオペ子ちゃん、塔との通信システムは無事だったかな」
ミナリンスキー「壊れてないなら戦闘の間のログを遡って確かめたいんだけど……」
オペ子「ああ、それなら>>198」
-
10分前までしかデータが残ってない
-
なんかハッキングされて乗っ取られてる
-
オペ子「ああ、それなら10分前までしかデータが残ってないですね」
オペ子「復旧作業は行っていますがログが復元出来るかは五分五分かと……」
ミナリンスキー「そっか、忙しくて放置してたのは不味ったかなぁ」
オペ子「はい、これでは海に出てからの他の部隊の動きが何も分からないですね」
ミナリンスキー「まぁ……壊れてないのならまた連絡すればいいだけなんだど」
ミナリンスキー(右手にいたヤザワたちはブリッジに向かって移動してるらしいし、トウジョーンと合流した動力部組も動力炉が安定し次第ブリッジに来るらしい)
ミナリンスキー(皆揃ったら改めて今後の動きの意思疎通を図ろう)
ミナリンスキー(そうそう、皆と言えばとっりはあれから体が麻痺したみたいに動かないらしく、バーミヤンが担いで運んでいる)
ミナリンスキー(中にいたここピョンとりんぱな無事だけど、とっりは明らかに状態異常)
ミナリンスキー(塔に戻ったら誰か治療が出来る人に見せないとな……)
ピピッ
バーミヤン『ミナリンスキー!報告です!』
ミナリンスキー「……ん?なに?」
バーミヤン『この先の進路上に>>201』
-
妖しげな病院
-
バーミヤン『この先の進路上に妖しげな病院があります』
ミナリンスキー「病院……?」
オペ子「おかしくないですか?ここはまだ海上のはずですよね」
ミナリンスキー「うん、こんな場所に病院なんてあるはずがない」
ミナリンスキー「来る時にも氷上に謎のコンビニがあって英玲奈たちが探索に降りたけど……」
ミナリンスキー「あの病院には同じような怪しさを感じる」
シュウィンッ!
にこ「ミナリンスキー!どうなってる?」タタタッ
ミナリンスキー「にこちゃん!」
ミナリンスキー(バーミヤンのメインカメラに映った謎病院を眺めているとブリッジににこちゃんたちが入ってきた)
ミナリンスキー(りんぱなたちもいるのを見るにとっりに乗ってた組も再合流したみたい)
-
ミナリンスキー「なんか進路上に変な病院があるの、何だと思う?」
にこ「病院ねぇ……」
ツバサ「本当だわ、ちょっと古いけどかなり大きな病院ね」
りんぱな「怪しいなら避けて通れば?余計なトラブルに巻き込まれるのはごめんよ」
ここピョン「とっりの治療ができるならしたいピョン!」
りんぱな「バカねぇ、よく知らない病院にあんなデカイの持ってってどうするのよ」
ここピョン「むぅ……」
バーミヤン『どうするミナリンスキー?』
ミナリンスキー「そうだね、ここは>>204」
-
一応壊しとこう
-
ミナリンスキー「一応壊しとこうか」
オペ子「ええっ!良いんですか!?」
ミナリンスキー「来る時に無かった怪しい病院なんだよ?明らかに異能が関わってるし、私たちが知らないってことは新魔王軍の拠点かもしれない」
ヤザワ「大胆な判断ねぇ」
ミナリンスキー「これでも元魔王軍の人間だからね、あなたたちと協力はしてるけど決して善人ってわけじゃない」
ミナリンスキー「疑わしきは罰せの精神だよ」
ヤザワ「ま、私たちは乗せてもらってるだけだし要塞長様の判断に従うだけよ」
ピッ
ミナリンスキー「バーミヤン!やっちゃって!!」
バーミヤン『はいっ!』
ゴッ!!
-
ミナリンスキー(私の命令を受けたバーミヤンは病院を壊すため動いた)
ミナリンスキー(具体的に言えば片足を病院の上に振り上げて思っいきりストンピング――踏み潰しをしかけたのだ)
ミナリンスキー(病院のバーミヤンの大きさの差を考えればこれが1番てっとり早い!)
ドガァァァァァァンッ!!
ミナリンスキー(予想通り、質量の暴力で病院はいとも簡単に潰され崩れ落ちる)
ミナリンスキー(だけど……)
バーミヤン『……おかしいです、病院の中心を狙ったはずなのに、今足があるのは病院の端』
ミナリンスキー(その通りだった、実際に踏み潰され崩れ落ちたのは病院の端の1割ほど」
ミナリンスキー(足を振り下ろした瞬間、バーミヤンの足は>>207によって逸らされてしまったのだ)
-
霊的な力
-
ミナリンスキー(バーミヤンの足は霊的な力によって逸らされてしまった)
キィーーンッ!
バーミヤン『何か……バリア的なものが病院を覆っています』
にこ「異能のバリアかしら?」
ヤザワ「魔術で作り出されたものというよりは霊力に近い感じね、内部にいる何者かのエネルギーがそのまま防御力に転換されている」
ミナリンスキー「何者か?」
ヤザワ「ほら、出てきたわよ」スッ
ミナリンスキー(そう言ってヤザワはモニターに映る病院の屋上を指差す)
ミナリンスキー(そこには1人の人間らしき者の姿があった)
??『…………』
ミナリンスキー「何か喋ってる、オペ子ちゃん、マイクで声を拾って!」
オペ子「はいっ!」カタカタッ
-
??『――ぶんと、ザザッ……随分と失礼な方ねぇ、いきなり医療施設を踏み潰そうとするなんて』
オペ子「聞こえました!」
ミナリンスキー「これは……」
ミナリンスキー(外見を見るに女の人みたい、服装は上手く言えないけど……なんだろ、和服とナース服を合わせた感じかな)
ミナリンスキー(彼女は巨大なバーミヤンを前に全く臆することなくこちらを無く見上げている)
バーミヤン『あなたは誰?何者?』
??『ほぉー、この絡繰は人語を介すことも出来るのね、こりゃ便利なこと……』
バーミヤン『いいから質問に答えて下さい』
??『そうだねぇ、君たちはこの災厄と戦うものだろ?』
??『私は君たちの味方ではないが敵でもない、言わば中立的な存在かな』
??『簡単に自己紹介をするなら……私は>>210』
-
Dr.M
-
Dr.M『私はDr.M――この病院のドクターよ』
バーミヤン『ドクター……?』
ミナリンスキー「看護師だと思ったけどお医者さんのほうだったんだ」
にこ「うーん……Dr.Mか、確かマッキーがそんな名前を名乗ってたってリンが言ってたような」
ミナリンスキー「マッキーってあの魔王キチ団のマッキー?」
りんぱな「でもあのDr.の顔は真姫さんに似てる感じはしないわね」
ミナリンスキー「霊力を持ったドクターか……中立と言ってるけど何者なんだろう、バックに組織とかいるのかな」
Dr.M『ねぇ!巨大絡繰の中に誰かいるなら出てきなよ!』
ミナリンスキー「……!」
オペ子「こっちに呼びかけて来ました!」
Dr.M『そしたらきっと、良いことがあると思うわ』ニヤリ
─────────────────
凍結伊勢湾〜謎の病気
AM3:18〜AM3:23 新終末編『132』了
-
というわけでここまで
病気じゃなくて病院だった
新終末編『133』に続く
かもしれない
-
新終末編『133』
─────────────────
──凍結伊勢湾・謎の病院前
AM3:23
──バーミヤン・ブリッジ
ミナリンスキー「出てきなよ……って言われても」
ツバサ「明らかに罠でしょ、怪しすぎる」
ヤザワ「けどかなりの能力者でドクターと名乗ってる、とっりを治す方法があるかもしれない」
ツバサ「それはそうだけど……」
にこ「なら私が行くわよ、そんな疲れてないし戦える」
ミナリンスキー「だったら私も行く、オペ子ちゃんはバーミヤンのことらよろしくね」
オペ子「分かりました、そろそろほのキジさんたちが来ると思いますし大丈夫です」
ツバサ「私は……やっぱりてんこがいるからなぁ」
ここピョン「ツバサママはここにいて、私がにこママを守るピョーン!」
銀河穂乃果「だったら僕も、バーミヤンに来てからろくに働いてないからね」
りんぱな「銀河もか、あまり多人数で押しかけても相手が警戒するわよね、私とヤザワさんは残ろうか」
ヤザワ「そうね……気を付けなさいよみんな!」
にこ「うんっ!」
ミナリンスキー「行ってくるね!」
タタッ
ミナリンスキー(こうして私とにこちゃん、ここピョンと銀河穂乃果が病院へ降りることになった)
-
・
・
・
──謎の病院・屋上
ウィーン
バーミヤン「気をつけて」
ミナリンスキー「うん」
スタッ
ミナリンスキー(バーミヤンの手のひらをリフト代わりにし、私たちは何事もなく屋上へ着地した)
ミナリンスキー「あなたがDr.Mだね」
Dr.M「へぇ……どんな屈強な戦士が出てくるかと思ったら可愛い女の子たちじゃない」
ミナリンスキー「私はミナリンスキー、この移動要塞の責任者だよ」
にこ「後ろのこっちは護衛だから、事を構える気がなければ無視していいわ」
Dr.M「……ふむ」
ミナリンスキー「私たち急いでるから話があるなら簡潔にお願い」
ミナリンスキー「あなたと話すことで私たちに何のメリットがあるの?」
Dr.M「生き急いでるわねぇ、まぁ聞きなさいな」
Dr.M「私の所属する機関はどんな組織にも与しない、どんな相手でも平等に治療するのが理念」
Dr.M「あなたたちの仲間に怪我人や病人はいない?いるならどんな症状でも治してみせるわ」
にこ「ご立派な理念だこと」
ミナリンスキー「治療か……お金は要るの?」
Dr.M「報酬なら>>215」
-
貴女の純潔を頂くわ
-
Dr.M「ああ、報酬に金銭は要らないのよ」
Dr.M「私たちは報酬に患者から純潔を頂くことにしてるの」
ミナリンスキー「純潔……?」
Dr.M「そっ、1つ治療につき1つ純潔、別に貴女が払ってくれてもいいのよ?」
にこ「そんなもの貰って何の意味があるのよ、悪趣味にもほどがあるわ」
Dr.M「そういうあなたには無いみたいね」
にこ「ぐっ……」
Dr.M「残りの2人は……人間の匂いがしないから純潔も何もないし」
銀河穂乃果「まぁそうだね」
ここピョン「ピョン?」
Dr.M「良いわ、患者に説明するのは医者の義務だし説明してあげる」
Dr.M「まず知ってて欲しいのは純潔を貰うのは決して悦楽や興味本位じゃない」
Dr.M「人間には分からないだろうけど……『純潔』という概念には収集に値する価値があるのよ」
-
ミナリンスキー「その言い方……あなたはやっぱり人間じゃないの?」
Dr.M「人に近い存在ではある、貴女たちに分かる言い方をすると"幽人"ってとこかな」
ミナリンスキー「幽人……ゴーストと同じ……?」
にこ「なるほど、霊力を使うわけね」
Dr.M「私たちは人では無いし人外でもない、その両者の狭間に立つもの」
Dr.M「世界の狭間の奥深く――幽かの谷から世界の何処にでも現れ、助けを乞うものに施しを与える」
Dr.M「私たちは自らのことを『幽谷の医師団』と呼称するわ」
ミナリンスキー「幽谷の医師団……それがあなたの組織の名前」
Dr.M「私は医師団の13番目の医師、だからDr.M」
ここピョン「……?」
銀河穂乃「ああ、アルファベットか」
-
Dr.M「さて、これで私のことは説明できたかしら、純潔を捧げる覚悟はできた?」
ミナリンスキー「……っ!」
Dr.M「医師団はとある目的のために『純潔』を集めている、理由は言えないけどね」
ミナリンスキー「それは……」
Dr.M「大丈夫、純潔を頂くオペも最適化が成されている、痛みは全くないのだから」
ミナリンスキー「…………」
にこ「ミナリンスキー、無理することはないわよ」
ミナリンスキー(私の純潔、本当ならあの人にあげたかったけど……)
グッ
ミナリンスキー「分かった、純潔は>>219」
-
後ろの純潔なら可
-
ミナリンスキー「後ろの純潔なら可!前はダメ!」
Dr.M「うーん……後ろとか前とかっていう問題じゃないんだけど、とりあえず半分は貰えるって解釈でいい?」
ミナリンスキー「うん!半分なら!」
銀河穂乃果「ねぇ……ミナリンスキーさん放っておいて良いの?」
にこ「あの子が決めたのなら口出しは出来ないわよ」
ザッ
Dr.M「じゃあ始めるわ、立ったままで良いから力を抜いて楽にしてね」
ミナリンスキー「う、うん」
ミナリンスキー(Dr.Mは和服のように広がった袖を揺らしながら私の背後に回る)
ミナリンスキー(そして片膝をついてしゃがむと、右手を思いっきり振りかぶって――)
Dr.M「はっ!!」
ズボッ!!
ミナリンスキー「ぬほぉぉおおおおおおおおおおおおっ!!!!!」
ミナリンスキー(右手を思っきり私のお尻の中に突っ込んできた)
-
ミナリンスキー「は?えっ!なっ!なぁぁぁぁああああっ!?」
Dr.M「動かないの、言った通り痛みはないでしょ?」
ミナリンスキー「た、確かに痛みは無いけど……すごい異物感が……」
Dr.M「その異物感は私の行動を見た貴女の脳が起こしてる錯覚よ、水音聞いたらトイレ行きたくなるのと同じ」
ミナリンスキー「そうなの……?」
Dr.M「あなたのお尻の位置に手を挿入してるだけで、本当に挿れてるわけじゃない」
Dr.M「この手は幽体化してるから物理的な干渉は一切しないのよ」
ミナリンスキー「うぅ……」
ミナリンスキー(そう言われると確かにそうだ)
ミナリンスキー(背後を見てみるとDr.Mの腕は肘辺りまでが私のお尻に埋まっている)
ミナリンスキー(本当に腕を突っ込んでたら痛いどころの騒ぎじゃない、裂けて大変なことになってるはず)
ミナリンスキー「でも……実際に見ちゃうと……どうしてもお尻から下腹部がムズムズしちゃって……」
Dr.M「静かにして、もう少しだから」
ググッ
Dr.M「ここをこうして……ここに……あった!抜くわよ!」
ミナリンスキー「ぬぬぬ抜く!?何を――」
Dr.M「よっ!!」
スポンッ!
ミナリンスキー「はぅぅんっ!」
-
ミナリンスキー(妙な快感と共にお尻から引き抜かれるDr.Mの右手……)
ミナリンスキー(その手には光る玉が握られていた)
ここピョン「玉だピョン!」
銀河穂乃果「ミナリンスキーのお尻から玉が出てきた!?」
にこ「まるで尻子玉ね……」
Dr.M「河童と一緒にしないでくれる?まぁ尻子玉とは似た物かもしれないけど」
ミナリンスキー「はぁ……はぁ……」
Dr.M「見て、綺麗な光を放ってるでしょ?」
ポワワァァァァァッ
Dr.M「これが『純潔玉』、ミナリンスキーちゃんのは>>223みたいな形をしてるわね」
-
モザイクをかけないと、地上波では流せない
-
Dr.M「モザイクをかけないと、地上波では流せないような形をしてるわね」
ミナリンスキー「どんな形っ!?」
Dr.M「ふふっ……私は好きよ」
にこ「そもそも純潔ってなによ、そうやって取り出せるものだとは思わなかったわ」
Dr.M「『純潔』は人の魂の中で最も純粋で高潔な部分、穢れなき白いエネルギーの塊」
Dr.M「私たち幽谷の医師団が最も価値があると考えているものよ」
Dr.M「人の医学では解明されてないけど、この純潔は身体的精神的に誰かに捧げると消えてしまうの」
Dr.M「ツインテールの貴女は純潔を誰かにあげてしまったのね、だから魂内から消えてるのよ」
にこ「…………!」
Dr.M「別に悪いことでは無いわ、純潔は誰かに譲渡されてこそ完成するという説を唱えてる幽谷学者もいるし」
Dr.M「単に私たちがレアアイテムとしてそれを欲してるだけ」
Dr.M「人間的に例えるなら……そうねぇ、1頭の牛から1つしか取れないレアな部位が欲しいって感じかしら」
Dr.M「牛肉マニアなら欲しがるけど、それ以外の人間には価値が見出だせないでしょ?」
にこ「分かるような分からないような微妙な例えね……」
-
Dr.M「まぁマニアにとっては実用的な価値のあるもので、人間の処女信仰的な話とは別と認識してもらえばいいの」
Dr.M「私たちはこの『純潔』が好きで好きでたまらない……」チュッ
ミナリンスキー(Dr.Mはウットリとした目で地上波では流せないような形の純潔玉にキスをする)
ミナリンスキー(自分のお尻から出たものに口をつけられるのは、なんというか……微妙な気持ちになってしまう)
ミナリンスキー(それにしても魂の中の一部分、エネルギー体か……)
ミナリンスキー(エネルギーということはアレで何かを生み出せるのかな)
にこ「というか半分ってことは、ミナリンスキーの中には純潔がまだ半分残ってるわけ?」
Dr.M「そうよ、私としては残りも欲しいけど今はこれで充分かな」
Dr.M「報酬も貰ったことだし治療してもらいたい人を連れてきたら治療してあげる」
-
ミナリンスキー「じゃ、じゃあ……」
ザッ
ミナリンスキー(まだ異物感の残るお尻を抑えながら私は立ち上がる)
ミナリンスキー「後ろの人形要塞が抱えてる幻想種の治療をしてほしいんだけど……できる?」
Dr.M「ああ、あれね、出来るわよ」
Dr.M「何かの能力で脳からの命令が体に届かない……いや、ご命令を送られてるのかしら」
Dr.M「いずれにせよ今は体が麻痺して動いてないみたい」
ミナリンスキー「見ただけで分かるの?」
Dr.M「ドクターだからね」フフッ
Dr.M「あのくらいの治療なら……かかる時間は>>227」
-
わずか0.02秒
-
Dr.M「わずか0.02秒!」
シュンッ!!
ミナリンスキー「え……?」
ミナリンスキー(何も見えなかった)
ミナリンスキー(唯一感じられたのは僅かな風と、その風に揺れるDr.Mの和服の袖だけ)
ミナリンスキー(今の一瞬で……治療が終わったというの……?)
とっり「おおっ!急に動けるようになったちゅん!」
バーミヤン「コラとっり!落ちるから暴れないでください!」
Dr.M「ふぅ……これで報酬分の治療はおしまいね」
Dr.M「あの幻想種の脳に植え付けられた誤命令はリセットできたわ」
ミナリンスキー「……にこちゃんは見えた?」
にこ「いや、Dr.Mの手から何か粒子みたいのが飛んだ気はしたけど……治療の方法は全く分からなかった」
ミナリンスキー「にこちゃんでも分からないとなると相当格上か……」
ミナリンスキー(世界の狭間から来た的なこと言ってたけど、それはこの世界でも異世界でも無いってことかな)
ミナリンスキー(どの世界にも属さない場所……そんな所があるのか分からない)
ミナリンスキー(でもDr.Mが纏う雰囲気はそんな未知の存在を感じさせるものだった)
-
Dr.M「治療は終わったし貰えるものは貰った、もう行って良いわよ、急いでるんでしょ?」
ミナリンスキー「う、うん……助けてくれてありがとう」
Dr.M「いえいえ」
にこ「Dr.M、あなたはずっとここにいるの?」
Dr.M「いえ、幽谷の医師団が所持する幽界病院は次元移動ができる代物、ここに固定されてるわけじゃないわ」
Dr.M「言ったでしょ、私たちは助けを乞う人の場所なら何処にでも現れる」
Dr.M「どんな場所、どんな世界にだってね――」
ミナリンスキー「…………」
・
・
ミナリンスキー(その後、私たちは何事もなくバーミヤンに戻ることができた)
ミナリンスキー(ブリッジに来ていたほのキジたちとも合流し、再び陸地を目指し歩き出す)
ミナリンスキー(しばらくしてから振り返ると……そこに病院の姿は無かった)
ミナリンスキー(Dr.M、いったい彼女は何者だったのか、また会うことになるのだろうか)
ミナリンスキー(後ろ髪を引かれる思いを残しながら、私たちは名古屋港へと向かった)
─────────────────
凍結伊勢湾・幽界病院
AM3:23〜AM3:28 新終末編『133』了
-
というわけでここまで
幽谷の医師団はセブンと同じで直接は関わらない謎組織ですね
どこかで使えればいいなーというだけ
次はまた別場面
新終末編『134』に続く
かもしれない
-
新終末編『134』
─────────────────
──ドスケーブ城・手術室前
AM3:02
寿限無(ナンジョルノと黒川さんの手術が無事に終わった後、私たちは今後の方針について話し合った)
寿限無(やるべきとは2つ、1つはアルパカウイルスに対する抗体を作るための薬――いわゆるワクチンの量産)
寿限無(もう1つはその間の城の警備……結界が弱まってる今の状況で敵に攻められたら守りが心許ない)
寿限無(さっきのプラチナ穂乃果は運良く帰ってくれたけど、他の敵が同じという保証がないし)
寿限無(……ということを話したあと、ナンジョルノと黒川さんは『じゃあ城の外見回ってくるわね』とさっさと手術室を出ていってしまった)
寿限無(城の中から何人か使えそうなの連れて行くということも言ってたわね)
寿限無(ま、そういうことなら私はワクチン作りの様子を見に行きましょうか)
寿限無(確かラボのほうで宇宙人とダストボックスが試行錯誤してるはずよね)
シュンッ
寿限無(そんなことを考えながら手術室の自動ドアから出ると――)
真姫「わっ!寿限無!?」
寿限無「真姫さん!?」
-
寿限無(丁度手術室に入ろうとしていた真姫さんと危うくぶつかりそうになる)
寿限無「ごめんなさい、真姫さんたちも戻ってきてたのね」
真姫「ええ、穂乃果がまた大変なことになって手術が必要になったのよ」
寿限無「また!?」
真姫「でも大丈夫、回復させる方法はちゃんと見つけてきたから」
寿限無「方法……か」
寿限無(自信ありげに頷く真姫さん、その背後からもう一人……真姫さんに似た人?が顔を覗かせる)
マッキー「ねぇ真姫、だれこの子?」
真姫「にこちゃんと希の子供の寿限無ちゃんよ、本名は寿限無の全文だから省略」
真姫「人間だけど神似子で神力を扱えるの」
マッキー「へぇ〜、それは興味深いわねぇ」ジロジロ
-
寿限無「ま、真姫さん……この白衣の変な人は……?」
真姫「ただの変人よ、気にしなくていいわ」
マッキー「おいコラ」
真姫「それより穂乃果はまだかしら?」
真姫「先に連絡を入れておいたから、>>234が手術室に連れてくる手筈になってるんだけど……」
マッキー「そうね、ここで合流って話だったわよね」
-
奴隷穂乃果
-
奴隷穂乃果「あひぃ〜!持ってきましたぜ〜ご主人様たち〜!」
真姫「持ってきたとか言わない、物じゃないのよ」
奴隷穂乃果「あぁ!これはすみません〜!何なりとお仕置きを〜!」
寿限無(廊下を走ってきたのはボロ布を着た……亜種穂乃果?)
寿限無(その肩にはグッタリとして動かない穂乃果さんが担がれている)
マッキー「遅いわよ!」
奴隷穂乃果「すみませぬ〜!医務室での英玲奈さんたちからの受け渡しは上手く行ったんですが、そこから少し道に迷ってしまってぇ〜!」
寿限無「……この穂乃果も、仲間の人?」
真姫「この子は奴隷穂乃果、マッキーが持っていた亜種穂乃果の1人よ」
寿限無「持っていた?」
真姫「マッキーは以前にプライドから亜種穂乃果を何体か借り受けてて、自分の腰のホルダーにカプセル化して持ってるの」
真姫「カプセルは全部で3つ、本人はカプセル穂乃果って呼んでるわ」
寿限無「それで奴隷か……名前も役割もわりと酷いわね」
真姫「どのカプセル穂乃果も戦闘力はそこまで無いらしいわ、主に小間使いが仕事でしょう」
寿限無「あ、そうだ真姫さん、手術に入る前に話しておくことがあるのよ」
真姫「話?」
寿限無「うん」
-
・
・
寿限無(私は真姫さんに今の城を取り巻く状況を話した)
寿限無(アルパカウイルスのこと、真偽は分からないけどプラチナが言ってたホノーマン因子のことも一応言っておく)
真姫「……ふむ、ホノーマンはことは留意しておくとして、ワクチンの量産は急務ね」
真姫「私は穂乃果の手術で手が離せないし……よし、ここはマッキーをラボに連れていきなさい」
マッキー「私!?」
寿限無「えぇ!この人!?」
マッキー「真姫、なんで私がそんな雑用みたいなことさせられるのよ、私も本命の手術に関わらせなさい!」
真姫「今は分担しなきゃいけない状況なの、どっちが本命で雑用って話じゃないわ」
マッキー「だったら私が手術しても――」
真姫「魔法の旋律を持ってるのは私」
マッキー「うぐっ……」
真姫「スペックがほぼ同じで私しか専用アイテムを使えないならこういう分担になる、"私なら"分かるでしょ?」
マッキー「……はぁ、分かった分かったわよ、言われたことやりますって」
マッキー「私だって謎のウイルスに侵されて新魔王軍の操り人形になるのは勘弁だからね」
真姫「もう……これでも信用してるから任せるのよ?」
-
真姫「寿限無も良い?」
寿限無「う、うん」
寿限無(時間は迫ってるしここでワガママは言ってられない、それに真姫さんが信用してる人なら大丈夫だろう)
真姫「じゃあ奴隷穂乃果は私に続いて手術室に、マッキーは寿限無と一緒にラボに行くってことで」
マッキー「ええ」
寿限無「はいっ」
ウィーン
寿限無(真姫さんはそう言うと手早く手術に穂乃果さんを運んでいった)
寿限無(よし、私の方も早く……)
マッキー「早く案内なさい」
寿限無(はぁ……この人ととか……)
マッキー「どうしたの?」
寿限無「いえ……こっちよ、案内するから付いてきて」
カツ カツ
寿限無(真姫さんの手前了承はしたけど、この人はなんか怪しい)
寿限無(ラボに行く道すがら何か探りを入れてみようかしら……)
-
寿限無「えーっと……マッキーさんで良いのよね」
マッキー「そうよ、区別するためにそう呼んでちょうだい」
寿限無「区別?」
マッキー「気付いてないの?私はあなたが真姫って呼んでるあいつと同一個体、平行世界の西木野真姫よ」
寿限無「……っ!」
マッキー「そうは言っても別に双子みたいに何から何まで同じじゃない、育った環境が違うもの」
マッキー「私のことは真姫とよく似た他人だと思ってもらって構わない」
寿限無「う……うん……」
・
・
カツ カツ
寿限無(私とマッキーはぎこちない会話を交わしながら通路を歩き、やがてエレベーターの前まで来る)
寿限無「このエレベーターで下ればラボはすぐそこよ」
マッキー「へー」
寿限無「……むぅ」
寿限無(私の言葉には興味なさげに周囲をキョロキョロと見回すマッキー)
寿限無(反応の薄さに微妙にイラっとしながら私はエレベーターのボタンを押す)
寿限無(すると……>>239)
-
停電した
-
バツンッ!!!!
寿限無「……え?」
寿限無(ボタンを押した瞬間、周囲が真っ暗になった)
寿限無「停電!?」
マッキー「停電って……この城って電気を引いてるわけ?」
寿限無「え?」
マッキー「通常停電ってのは発電所の発電設備の故障か送電線の障害によって起こるもの」
マッキー「それが原因なのだとしたらこの辺り一帯が停電してることになるわ」
寿限無「まぁ……外はAASの大雪で殆どの建物が埋まってる状況だし、電線が切れてもおかしくはないと思う」
マッキー「ただタイミングが妙ね、雪のせいならとっくに停電が起きてるはずだし、実のところ私はもうしてると思っていた」
寿限無「ん?ならどうしてここの電気はついてたの?」
マッキー「この城は神と鞠莉が改造したんでしょ、自家発電設備くらいあるんじゃない?」
寿限無「あー」
マッキー「だから聞いたのよ、この城は電気を引いてるのかって」
寿限無「そっか、そう言われると内部で発電してる気がするわね……あの人たちの性格上」
-
マッキー「……もし内部で発電してたのならば事態はもっと深刻よ」
寿限無「深刻?」
マッキー「ここまで待っても明かりがつかないのは不自然でしょ、外部にしろ内部にしろ、神たちが予備電源を設置してないわけがないし……」
寿限無「まとめて壊れたってこと!?」
マッキー「ええ、その可能性は高いわね」
マッキー「どっちにしろ電気が戻らない限りはワクチン量産にも真姫の手術にも障害が出てしまう」
寿限無「そうね、早く直しにいかないと!」
寿限無(……と、意気込んで見たは良いものの、私には発電機の場所なんて分からない)
寿限無(悲しいかな、さっきまで疑っていた相手に頼るしかない)
寿限無「……どうしましょ?」
マッキー「ふふんっ、安心なさい、こういう場合に使えるアイテムを私は持ってるんだから」
マッキー「この>>242を使えば発電機の場所は丸わかりよ!」バッ!
-
ビリビリパンサー2号機
-
マッキー「このビリビリパンサー2号機を使えば発電機の場所は丸わかりよ!」
寿限無「ビリビリ……?」
寿限無(マッキーが取り出したのは少し前に流行ったペットロボットみたいなものだった)
寿限無(暗くて分かりにくいけど犬ではなく猫……名前からするに豹の形をしてるのかな)
マッキー「ビリビリパンサーは配線内に残った微量な電子、例えるなら電気の残り香みたいなものをキャッチして追跡できるのよ」
マッキー「こいつで電気が流れてきた方向を追っていけば発電機の場所につけるはず」
寿限無「じゃあ早速……」
マッキー「行きなさい!ビリビリパンサー!」
ビリビリパンサー「ミャウーン!」
タタタタッ!
寿限無(小さな豹型ロボは暗い廊下を迷わず走っていく)
寿限無(マッキーと私はそれを見失わないように走ってついていく)
寿限無(暗くなった城の中は元来の迷路のような複雑さと相まって、階段を昇り降りしてるうちにどこにいるのか分からなくなってくる)
寿限無(たぶん普通に歩いていれば絶対に迷い込まない場所、パンサーがいなくなったら……元の場所に帰れるかも分からないわね)
タタタタッ
ビリビリパンサー「みゃうっ!」
寿限無「着いたの!?」
寿限無(どれくらい走ったのか、やがて前を行っていたビリビリパンサーが足を止める)
寿限無(その場所は>>244)
-
屋上
-
寿限無(その場所は……屋上だった)
ヒュォォォォォウッ
寿限無(扉を開いた先には地面に薄く雪の積もった屋上、大きさは学校?の屋上くらいで周囲には落下防止用の柵が張られている)
寿限無(見上げると空は相変わらず白く分厚い雲で覆われている、間違いなく屋外だ)
寿限無「屋上?ここにゲートがあるの?」
マッキー「ビリビリパンサーが言うなら間違いないわよ」
ビリビリパンサー「みゃうっ!」
マッキー「しっかし……階段を降りたりしたのに屋上に着くなんて、空間と空間の繋がりが滅茶苦茶ね、ウィンチェスターハウスじみがてるわ」
寿限無「うん……」
マッキー「どうしたの?」
寿限無「いや、この城の構造が複雑怪奇なのは承知のことなんだけど……確か城の最上階って屋根があったはずなのよ」
マッキー「ああ、確かに外から見ると天守閣があったわね、私も壊れた場所から侵入した覚えがあるわ」
寿限無「こんな学校や会社の屋上然とした屋上じゃなかったはず……」
-
寿限無(様子を見るために屋上の半ばまで進み、周りを見渡してみる)
寿限無(すると――)
寿限無「……え?」
ザッ ザッ
ガシャッ
寿限無(私は駆け足で入り口から見て左側の柵のそばまで駆け寄る)
寿限無(その向こうには……私が知っている天守の屋根があった)
寿限無「屋上――最上階が2つ!?」
マッキー「へぇ〜、ツインタワーみたいね」
寿限無(柵の向こう、何もない空中を挟んで見える天守型の屋根は全体の半分が崩壊している)
寿限無(内部が露出した場所からは話し聞くヨハネゲートらしき巨大なゲートが見えていた)
マッキー「外から見ると建物は1つなのに実際登ってみると最上階は2つ、これも空間連結システムの応用かしら」
寿限無「凄いというか……ここまで来るとまるで意味不明、頭痛くなってくるわ」
マッキー「まるでコインの裏表、向こうが表の外観を担当してるならこっちは裏の屋上ってところね」
-
マッキー「通ってきた道のりを振り返ってもナビゲーター無しでは辿り着くのさえ難しい裏面」
マッキー「最初は屋上に置くなんて……と思ったけど、確かに発電機を隠しておく場所としては最適だわ」
ザッ
寿限無「まぁ、ここに発電機があるのは間違いないなら良いわ」
寿限無「探してとっとと直してやりましょう!」
ビリビリパンサー「みゃー!」
マッキー「直すのはたぶん私だけどね……」
─────────────────
ドスケーブ城・手術室〜裏屋上
AM3:02〜AM3:15 新終末編『134』了
-
というわけでここまで
摩訶不思議城
新終末編『135』に続く
かもしれない
-
新終末編『135』
─────────────────
──ドスケーブ城・裏屋上
AM3:15
寿限無(薄く雪の積もった屋上で私たちは手分けして発電機を探す)
タタタタッ
寿限無(まぁ……手分けするとは言っても屋上はそこまで広くない、ぱっと見渡しただけで怪しい機械は何個か見つかる)
寿限無(私たちがやるのはその怪しい機械の中からどれが発電機かを見分ける作業だ)
寿限無(機械なんて詳しいはずもない私はビリビリパンサーを抱えて走り、怪しい機械に片っ端から近づけていく作業)
寿限無(詳しいマッキーは1人で機械を見て回り探す作戦)
寿限無「これ?」
ビリビリパンサー「みゃーう?」
寿限無「違うのか、じゃあこっちは……」
タタタタッ!
マッキー「ふむふむ、この機械はアレをするためなのね、でも発電機とは違う……」
ザッ ザッ
寿限無(外れが続くけど屋上に設置できる数なんてたかがしれてる)
寿限無(尚且つこっちにはビリビリパンサーがいるんだから――)
ビリビリパンサー「みゃうっ!」
寿限無「見つけたのね!」
寿限無(ビリビリパンサーが大きく反応した機械、その形は>>250)
-
カウントダウンの始まってるしゅごーチカ
-
寿限無(その形は……)
寿限無「……しゅごーチカ?」
ビリビリパンサー「みゃう?」
寿限無(立ち止まった私たちの様子を見てマッキーがこっちにやってくる)
タタッ
マッキー「どうやら見つけたみたいね……って何よこの風船人形」
寿限無「しゅごーチカだと思う」
マッキー「しゅごーチカ?」
寿限無「ロトさんが作った……作った……なんだろこれ」
マッキー「なんなのよ……」
寿限無「うーん……格好つけた言い方すると防衛用ドローンかな」
寿限無「自律的に巡回して敵を見つけたら近付いていって爆発する機能を持ってるらしいわ」
マッキー「防衛というかテロ用にしか思えないわね……恐ろしい」
マッキー「見た目は金髪の女の子の絵をプリントした風船を膨らませてるだけなのに、このマヌケな見た目も敵を油断させるためかしら?」
-
寿限無「でもどうしてしゅごーチカが発電機になってるんだろう、重要な機械を守っておくには向いてないわよね」
マッキー「とにかくこれが発電機なのは間違いない、開いて中を見てしまいましょう」
寿限無「う、うん……そこは任せるわ」
寿限無(私にはどこが壊れてるのかを見ることも修理をすることも出来ない)
寿限無(悔しいけどこればかりはマッキー頼りね……)
マッキー「さてと……」カチャッ
寿限無(マッキーは白衣の内側から器具を取り出してしゅごーチカの外部皮膜を開いていく)
寿限無(丁度プリントされたロトーチカさんのお腹辺りを開いてるから、見ようによっては割腹手術みたいに見えるわね)
-
マッキー「……ふむふむ、風船なのは外側だけで中はちゃんと機械なのね、まぁ当たり前だけど」
カチャッ カチャッ
寿限無(マッキーが順調にしゅごーチカの内部を調べていく、その様子を見ていた私は……あることに気付いた)
寿限無「……ん?」
マッキー「どうしたの?」カチャカチャ
寿限無「しゅごーチカの額のとこ、何か数字が出てない?しかも段々減っていってるような……」
マッキー「ああ、今更気付いたの、たぶんカウントダウンね」
寿限無「カウントダウン!?」
マッキー「しゅごーチカが爆弾ってことは、段々と時間が減っていって零になったら爆発でもするのかしら」
寿限無「なっ……!!」
マッキー「予想よ予想、慌てないの」
寿限無「そんなこと言われても……!」
マッキー「それより故障の原因が分かったわ、問題になってるのは……>>254」
-
古代のパーツが壊れている
-
マッキー「この部分のパーツが壊れたことね」トントン
寿限無「この部分……と言われても私にはなんのことやらサッパリよ」
マッキー「見た感じかなり古いパーツ、古代のパーツと言っても差し支えないほど古いものね」
マッキー「これが欠けてるのはかなり痛い……今の時代にスペアがあるかしら……」
寿限無「そんなに大変なものなの?」
マッキー「ええ、大変なのは原因のパーツ1つだけじゃない」
マッキー「しゅごーチカ全体の構成がロストテクノロジーと言っても過言では無いほどの古代技術の塊よ」
マッキー「魔王軍で研究していた最新技術とは一線を画している、培って来たもので応用はできるけど……ハッキリ言って理解しきれない部分が多い」
寿限無「そっか……カウントダウンのほうは分かる?」
マッキー「そっちも微妙ね、故障が原因でカウントダウンが始まったのなら直せば収まるはずだけど」
マッキー「仮にそうならカウントダウンが終わる際には悪いことが起きる可能性が高いでしょうね」
寿限無「例えば?」
マッキー「機密保持のための自爆とか」
寿限無「……笑えない冗談ね」
マッキー「笑ってる暇は無いわよ」
寿限無「……うん、その通りだわ」
-
寿限無(マッキーには修理の技術はあるけど古代技術に関する知識がない)
寿限無(考えろ……考えるのよ寿限無、この状況で私ができることは何か……)
寿限無「……はっ!」
寿限無(そうだ!マッキーに知識が足りないのなら知識を持ってる人を連れてくればいい!)
寿限無(しゅごーチカを作ったのは……)
寿限無「マッキー!今からロトーチカさんを連れてくるわ!」
マッキー「今から?間に合うの?ここまで来る道は大分入り組んでいたわよ」
マッキー「カウントダウンの時間を見るに急いで走って往復できる距離じゃない!」
寿限無「私ならできる……と思う」
マッキー「……はぁ、だったらこれを持っていきなさい」
マッキー「>>257すれば自分の探し人の場所が光って分かるアイテムよ、少しは時間の短縮になるでしょ」
寿限無「ありがとう!助かる!」
-
Hな踊り
-
マッキー「Hな踊りをすれば探してる人の場所がピキーンと一瞬で分かるアイテムよ」
寿限無「ありがとう!助かる!」
パシッ
寿限無(マッキーから受け取ったのはゴーグルの形をしたアイテム)
寿限無(私はそれを装着すると手早く服を脱いで下着姿になる)
バッ!!
マッキー「い、潔いわね……渡したのは私だけどちょっと心配になるわ」
寿限無「別に誰が見てるわけじゃないし、やるべきことならやるだけよ」
寿限無「よーっ!」
ポンッ!
寿限無(私は覚悟を決めて自分が考え得る限りエッチな踊りをする)
寿限無(とにかく体をくねらせて胸とお尻を強調して――)
グニュッ ニュッ ニュッ
-
マッキー「……なに?盆踊り?」
寿限無「エッチな踊りよ!」
マッキー「あらそうだったの、畜生の求愛ダンスより不様だったから」ププッ
寿限無「嫌な言い方ね……」フンッ
マッキー「まぁ小娘にしては良いスタイルしてるから、見る人によっては興奮するかも」
マッキー「ゴーグル横のゲージを見てみなさい、踊りが承認されたならゲージが伸びていくはずよ」
寿限無「承認って誰によ……おっ」
寿限無(見てみるとゲージはほぼ満タンに近かった、意外といけるじゃない私!)
マッキー「溜まったのね、なら探し人を思い浮かべながらゴーグルの右上のボタンを押して、居場所がゴーグルに表示されるわ」
寿限無「うんっ!」ポチッ
ピピッ!!
寿限無「……見えた!」
寿限無(ゴーグルを通した私の視界に光の輪が表示された、光の輪は城の一点を指し示している)
寿限無(光の輪の横に何か文字が出ているわね……場所かしら)
寿限無(ロトーチカさんが今いる場所は>>260)
-
トレーニングルーム
-
寿限無(ロトーチカさんがいるのは……トレーニングルーム!)
寿限無「マッキー、それじゃ私行ってくるから!」
マッキー「え?う、うん……行ってらしゃ――」
ダンッ!!!!
マッキー「――いっ!?」
寿限無(マッキーへの挨拶も早々に、私は足先に溜めていた神力を開放する)
寿限無(音を置き去りにする速度……マッキーのいってらっしゃいが聞けなかったのが少し残念だな)
ビュンッ!!
寿限無(私はまるで水溜りを飛び越すような気軽さで、"2つの屋上の間"をひとっ飛びで超えた)
寿限無(裏の屋上から表の屋上へ……)
寿限無(外から見れば表裏一体なこの場所も、お互いが視認できる『ここ』なら脚力で飛び越えられる!)
-
寿限無(……と思う)
タンッ!
寿限無(まぁ飛び越えられる確証は無かったんだけど、実際こうして表の屋上に着地できたんだから良しとしよう)
寿限無(屋上に着地した私は両足を付けるより早く、体を捻ってエレベーターの方向に跳ぶ)
ググッ
ダンッ!!
寿限無(更に跳んだ勢いそのままエレベーターの壁をぶち破り中へ)
ガシャァァンッ!!
寿限無「……よっと」
グッ
ピタッ……
寿限無(扉を吹き飛ばした勢いを抑えて、エレベーターシャフトの奥側の壁に張り付く)
寿限無(エレベーターはここに止まってはいない、下を見ると暗く長い空間がどこまでも広がっていた)
寿限無(覚えてる、表のメインエレベーターは地下から最上階までメインの部屋の近くを通っているはず)
寿限無(トレーニングルームもこのエレベーターシャフトのとある階から出たとこのすぐ近く!)
パッ!
ヒュンッ!!
寿限無(手を離して重力に身を任せ……下へ……下へ……)
ヒュォォォォォウッ!
寿限無(裏屋上を飛び出してからここまで5秒もかかってない)
寿限無(私ならやれる……早くロトーチカさんを連れていくのよ!)
─────────────────
ドスケーブ城・裏屋上〜表エレベーターシャフト
AM3:15〜AM3:20 新終末編『135』了
-
というわけでここまで
修理と移動
新終末編『136』に続く
かもしれない
-
新終末編『136』
─────────────────
──ドスケーブ城・エレベーターシャフト
AM3:20
ヒュォォォォォウッ!
寿限無(自由落下を始めてから数秒、ゴーグル越しに見えていた光の座標と高度が一致する)
寿限無「ここっ!」
ガンッ!
ギキィィッ!!
寿限無(片足をエレベーターシャフトの壁に思いっきり叩きつけブレーキ、上手く狙いの階で止まることができた)
寿限無(そのまま、ブレーキをかけた足をバネのように伸ばし垂直方向へ跳躍)
ドンッ!
寿限無(シャフトと廊下を区切る扉を破壊して廊下を駆け抜ける!)
バゴォォォンッ!!
ドドドドドドドドドッ!!!!
寿限無(トレーニングルーム……精神と時の部屋は……あった!)
寿限無「ここっ!」
キキィィィィッ!
ガラッ!
寿限無(急停止、扉を開けるとそこは真っ白い空間)
寿限無(そこにはタオルで汗を吹きながらトレーニングをしてる人がいた)
寿限無(その人こそが私が探していた……)
寿限無「ロトーチカさん!!」
ロトーチカ「じゅ、寿限無!?」
-
寿限無「ふぅ……タイムは10秒くらいかな、ゴーグルのおかげで早く着けたわ」
ロトーチカ「何やってるのよ、そんな下着姿で変なゴーグルかけて……」
寿限無「これには理由があるの」
ロトーチカ「理由?」
寿限無「後で説明するから今は私と一緒に来て!ロトーチカさんの力が必要なの!」
ロトーチカ「……取り敢えず落ち着きなさい、"ここ"なら大して時間は過ぎないわよ」
寿限無「ああ……そっか」
寿限無(精神と時の部屋は外より遥かに時間の流れが遅くなる、ここなら数分程度は話しても大丈夫か)
寿限無「そうね、実はこんなことがあって――」
-
・
・
ロトーチカ「――ふむ、ジェネレーチカちゃんの故障か」
ロトーチカ「ずっとここでトレーニングしてたから停電したことにも気づかなかったわ、不覚ね」
寿限無「ジェネレーチカ?しゅごーチカじゃなくて?」
ロトーチカ「姿形は似てるけどあの子は別なのよ、防衛じゃなくて発電を担ってるドローン」
寿限無「そっか……なら爆発機能は無いのね、良かったわ」
ロトーチカ「でも謎ね、本来ならジェネレーチカはマグナムドローンやしゅごーチカと同じく複数行動してるはずなのよ」
ロトーチカ「なのに寿限無が見つけた時は一体だったんでしょ?」
寿限無「う、うん」
ロトーチカ「他のジェネレーチカの消失と残ったジェネレーチカの故障、無関係では無さそうね」
ロトーチカ「分かったわ、その修理してる人の所に急いで行きましょう!」
タタッ
寿限無「……そうだ!聞き忘れてたことが1つ会ったわ!」
ロトーチカ「なに?」ピタッ
寿限無「故障したジェネレーチカに表示されてたカウントダウン、あれ何か分かる?」
ロトーチカ「ああ、あれなら>>267」
-
忘れた…けどチョコレートを食べれば思い出すかも?
-
ロトーチカ「あれなら……忘れちゃった、なんだっけ」テヘッ
寿限無「ええっ!?」
ロトーチカ「ごめんなさい、すごいハードなトレーニングしてたから頭がぼーっとしてて」
ロトーチカ「ど忘れしちゃった……んだと思う」
寿限無「所々ポンコツね」
ロトーチカ「だ、誰がポンコツよ!」
ロトーチカ「脳が疲れてるだけだから……糖分補給すれば思い出せるかもしれないわ」
寿限無「糖分補給?」
ロトーチカ「そう、例えばチョコレートを食べるとか……」
寿限無「チョコねぇ」
寿限無(……正直言えば面倒くさい、でもロトーチカさんが疲労してるのはもっと不味い)
寿限無(これからマッキーと一緒に修理をすることになるんだし、頭フル回転にしてもらわないと!)
-
寿限無「分かった、私が一瞬で取ってくるわ!たぶん厨房辺りににあるでしょ!」
ロトーチカ「え?でも……」
寿限無「いいの任せて」
カチッ
寿限無(まだゴーグルのゲージは残ってる、私はチョコをイメージしながらゴーグル右上のスイッチを押す)
ピピッ
寿限無(新しい座標に光の輪が表示された、あれがチョコが置いてある場所……たぶん厨房だ)
寿限無「よしっ!」
ガチャッ!
寿限無(トレーニングルームの扉を開けて外へ)
スタスタ
ピタッ
寿限無「……ふぅ」
寿限無(廊下の真ん中で足を止めて、体勢を低くし、拳を床に静かに付ける)
寿限無(そして――)
ドゥンッ!!!!
寿限無(拳に込めた神力を槍のように解放し、トレーニングルーム前の廊下から厨房のある場所までを、斜め一直線に貫いた)
-
ジュュゥゥゥッ
寿限無(見下ろすとまるで棒を使ってくり抜いたかのように、人間1人が通れる大きさの穴が連続している)
寿限無(穴の側面は溶解させたかのように滑らかで引っかかりが存在しない)
タンッ
寿限無(やっぱり……城全体の防御力が弱まってる今なら私の力で余裕でぶっ壊せる)
寿限無(あんまり壊しすぎると怒られそうだけど、今は緊急時だから仕方ない)
寿限無(そう自分を正当化させながら私は穴へ飛び込み、厨房までのショートカットを果たした)
・
・
──厨房
スタッ
寿限無「……よっと」
寿限無(無事に厨房に着いた、ゴーグルの光が差してるのは……この戸棚ね!)
ガラッ!!
寿限無「おっ、あったあった」
寿限無(そこで見つけたチョコレートは>>271)
-
封印の札がついたチョコレート
-
寿限無(封印と書かれた札が貼られた板チョコだった)
寿限無「封印……?変な包み紙ね」
寿限無(思わずその場で考え込んでしまうが、カウントダウンのことを思い出し首を振る)
ブンブンッ
寿限無「いけないいけない、今は時間がないしこれを持っていきましょう」
ダンッ!!
寿限無(私は再び足に神力を込めると、自分が開けた穴を通ってトレーニングルームへと戻った)
カツ カツ
ガチャッ
金パカ「ん?大きな音がしたと思ったら厨房の天井に穴が空いているな」
閻魔「ほんとじゃー!」
金パカ「全く、トレーニングをしているロトに差し入れをしようと厨房まで来てみたが、来る途中に停電に会うとは災難だ」
閻魔「この穴も停電と関係あるんじゃろうかな
金パカ「分からん、暗いから転ばないように気を付けろよ閻魔」
閻魔「要らん心配じゃ」プンッ
テクテク
ズルッ!
閻魔「あいたっ!」バシーンッ!
金パカ「はぁ……言わんこっちゃ無い」
-
金パカ「そうだ、差し入れ探しをする前に1つ言っておくが封印の札が貼ってあるものは触るなよ」
閻魔「封印の札?」
金パカ「知っての通りここには旧魔王軍の倉庫から運び込まれていた曰く付きの食材も多くてな」
閻魔「ああ、魔王が流通ルートから城を攻めようとした作戦のあれじゃな」
金パカ「大体は処分したが迂闊に処分できないものには封印をしているんだ」
金パカ「私はその作業のために厨房に残っていた」
閻魔「何でも出来すぎるアルパカじゃな、うちがちょっと引くくらいマルチなのじゃ」
金パカ「ふんっ、アルパカは万能生物と言っておろう」
閻魔「それで?封印が必要な食材って例えばなんなのじゃ」
金パカ「例えば、そうだな……そこの棚に入っているチョコレートだ」
金パカ「それには>>274が封印されている」
-
究極の絶望
-
金パカ「それには究極の絶望が封印されている」
閻魔「なんか曖昧なじゃのう」
テクテク
閻魔「どれ、究極の絶望とやらをうちが拝見〜」ガラッ
金パカ「コラッ!だからその棚を開けるなと言っているんだ!!」
閻魔「……ん?ないぞ」
金パカ「は?」
閻魔「だから、この棚に封印の札のついたチョコレートなんて無いぞ?」
金パカ「なぁっっっ!?」
・
・
-
・
・
──トレーニングルーム
ロトーチカ「はむっ」
パキッ モグモグ
寿限無「どう?」
ロトーチカ「いい感じ、糖分が脳に染みていくわ〜」
ロトーチカ(トレーニングルームで待っていたら寿限無が体感時間2秒くらいで戻ってきた)
ロトーチカ(板チョコを持ってきてくれたみたいで有難く食べさせてもらっている)
ロトーチカ(差し入れは閻魔と金パカに頼んでたって言い忘れたけど、チョコが美味しいから良いかな……)
寿限無「それにしても、ど忘れするほどのトレーニングって何をしてたのよ」
ロトーチカ「ん?それはアレよ、>>277」
-
チカスラッシュを覚えるためのレベル上げ
-
ロトーチカ「賢者の里に伝わる奥義――チカスラッシュを習得するためのレベル上げよ!」
寿限無「レベル上げ?」
ロトーチカ「そう、具体的にはこのトレーニングルームにある雑魚モンスター発生マシンから出る敵を狩っての修行」
ロトーチカ「賢者は敵との戦闘経験を積むことで強くなることができるから」
寿限無「へぇー、それは興味深いわね」
ロトーチカ「チカスラッシュ習得までのレベルはあと少しで足りそうだったんだけど、緊急事態なら仕方ないわ」
ロトーチカ「このチョコ食べ終わったら急いで裏屋上に行こう……ん?」
寿限無「…………」
ロトーチカ(私と話していた寿限無の口の動きが止まり、視線は何故か私の後ろに向けられる)
寿限無「ねぇロトーチカさん、後ろのあいつも……雑魚モンスターなの?」
ロトーチカ「え?」
-
ロトーチカ(寿限無に言われて振り向いた先には、私がチョコから外して置いておいた包み紙があった)
ロトーチカ(そしてその中から、この世全ての黒を凝縮したような……黒より暗い暗闇が吹き出ていた――――)
ドドドドドドドドドドドドッ!!
ロトーチカ(暗闇には形と呼べる形はない、だが目と口に当たる部分が暗闇の中に浮かび上がっていて……)
ニヤリ
ロトーチカ(口の端がゆっくりと不気味な笑みを作り上げた)
ロトーチカ「……っ!」ビクッ!!
ロトーチカ「知らない……アレは私が発生させていたモンスターじゃないっ!!」
─────────────────
ドスケーブ城・トレーニングルーム
・厨房
AM3:20〜AM?? 新終末編『136』了
-
というわけでここまで
突然の究極
新終末編『137』に続く
かもしれない
-
新終末編『137』
─────────────────
──トレーニングルーム
AM??
ドドドドドドドドドッ!!
ロトーチカ(見ただけで分かる……アレはヤバイやつだ!)
ロトーチカ(後ろの寿限無も暗闇の異様さを感じ取ったのだろう、立ち上がって私の横に並び立つ)
ロトーチカ(その顔は真剣そのもの……寿限無が本気モードになってるのが分かる)
究極の絶望「我は……絶望……」
ロトーチカ「……喋った?」
寿限無「気を付けて!」
究極の絶望「我は絶望、究極の絶望……絶望を撒き散らす闇なり……」
ロトーチカ(暗闇に浮かびあった口が不気味に動いて言葉を紡ぐ)
ロトーチカ「……絶望?」
寿限無「計り知れない力を感じる、腕力や能力って問題じゃない、あいつの存在自体が規格外すぎる……」
寿限無「こんなやつ、いったいどこから侵入して――」
究極の絶望「チョコレートだ」
寿限無「……え?」
-
究極の絶望「あの忌々しい魔王が我をチョコレートの包装の内側に包み発送した」
究極の絶望「自らの境遇に絶望していたところ、更に忌々しい金のアルパカがその上から封印の札を貼ったのだ」
究極の絶望「それは我を襲ったさらなる絶望、永遠に封じられた存在と成り果てることを覚悟していたが……我も悪運が強いようだ」
究極の絶望「こうして再び解放される時が来たのだからな!!」
寿限無「チョコレート……?はっ!」
ロトーチカ「あなたが持ってきたチョコが原因じゃないっ!!」
寿限無「なっ!封印の札を気にせず食べ始めたのはロトーチカさんでしょうっ!」
究極の絶望「くくっ……そう争うな、究極の絶望が目の前に居るのだぞ」
ロトーチカ「……そうね、責任を追求しても仕方ないわ」モグモグ
寿限無「この状況でまたチョコを食べ始めるのは開き直りすぎじゃ無いかしら……」
ロトーチカ「究極の絶望さんとやら、あなたはこれから何か悪さするの?」
ロトーチカ「ハッキリ言って相手してる暇は無いんだけど」
究極の絶望「ほう、言うではないか人の子よ」
究極の絶望「我は>>283」
-
傍観者
-
究極の絶望「我は傍観者」
ロトーチカ「傍観者……?」
究極の絶望「我が直接貴様らに接触することはない、我が味方になることも敵になることもない」
究極の絶望「我は絶望、其処に存在するだけで絶望の領域を展開し、領域内で発生した絶望を色濃くするもの」
ロトーチカ「領域内の絶望……?とやらが濃くなるとどうなるの?」
究極の絶望「我の影響を受けた領域で絶望した際の絶望の度合いが大きくなる」
究極の絶望「加えて絶望した際に絶望の大きさに比例して力の加護が得られる」
究極の絶望「その効果は絶望の領域に或る者全てに適応される、例外は1つとしてない」
-
寿限無「同じワード使いすぎで意味が分からないんだけど……こいつ説明下手?」
ロトーチカ「要は……フィールド全体に効果を発生させるアーティファクトみたいなものでしょう」
ロトーチカ「そして効果は私たちの絶望の感情をキーに発動する」
ロトーチカ「傍観者ということはおそらく触らなければ無害かな……」
究極の絶望「そうだ、その理解で正しい」
ロトーチカ(ふむ……見かけによらず割と話の通じる化物ね)
ロトーチカ(機嫌さえ損ねなければこの調子でもう少し質問できるかもしれない)
ロトーチカ「ねぇ、あなたが干渉する領域ってどの程度の広さなの?」
ロトーチカ「この部屋全体とか、このフロア全体とか……具体的に教えてくれない?」
究極の絶望「そうだな、貴様らに理解できるように言えば>>286」
-
半径13km
-
究極の絶望「半径13kmだ」
ロトーチカ「なっ……!」
寿限無「半径13kmって城やアキバどころか東京23区がほぼ入る広さじゃないっ!」
究極の絶望「全盛期の我と比べたらまだまだ小さい範囲よ、くっくっく」
ロトーチカ「まぁ……絶望さえしなければ害は無いんだし、今は他に優先すべきことがある」
ロトーチカ「寿限無、こいつは後回しよ」
寿限無「……そうね、停電が治らないことには手術もワクチンの開発もままならない」
寿限無「そこの絶望!ここから動くんじゃないわよ!」
究極の絶望「ああ、我は自らの絶望を発動させてるだけで満足だ」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
-
ロトーチカ「どこか変態っぽいわね……」
寿限無「じゃあ私たちは行きましょうか」
ロトーチカ「ええ」
寿限無「悪いけど早く行くためにロトーチカさん抱っこするから」
ロトーチカ「ええ……ええっ!?」
寿限無「それと舌噛まないように気を付けてね」
ガシッ
ロトーチカ「ちょっ!寿限無待っ抱っ――」
ドンッ!!!!
ロトーチカ(次の瞬間、私を抱え上げた寿限無が走り始めた)
ロトーチカ(いや……走るというより弾き跳んだと言ったほうが正しい、逆バンジーのような加速度が私を襲う)
ドッ!!!!
ロトーチカ(最早どこを走ってるのかさえ分からない)
ロトーチカ(あぁ……どうか意識が飛ばないように――)
ロトーチカ(寿限無の腕の中で私はそれだけを祈っていた)
-
・
・
・
──裏屋上
ヒュンッ!
ダンッ!!
寿限無「はい到着」
ロトーチカ「……え?……着いた……着いたの?」
寿限無「うん」
ロトーチカ(はぁ……どうにか意識は保てたみたいね)
パチッ
ロトーチカ(瞼を開けるとそこは雪降る屋上の景色が広がっていた、まるでワープした気分だわ)
寿限無「そうだロトーチカさん、結局カウントダウンのこと聞きそびれてたけど……思い出せたの?」
ロトーチカ「え?ああうん……チョコ食べたからもうバッチリよ!」
ロトーチカ「たぶんジェネレーチカに表示されてたカウントダウンの正体は>>290」
-
隕石が落下するまでのカウントダウン
-
ロトーチカ「隕石が落下するまでのカウントダウンよ」
寿限無「……は?」
ロトーチカ「だから隕石」
ロトーチカ「ジェネレーチカは身に本当の危険が迫ったときに隕石を呼ぶ機能がついてるのよ」
寿限無「なぁぁぁっ!?なんでそんなアホな機能付けてんの!?」
ロトーチカ「付けたのは私じゃないわよ、ジェネレーチカ作る時に提案したのは鞠莉だから」
寿限無「止めなかった時点で同罪よ!」
ロトーチカ「いや……アレは本当の本当に緊急時に発動するはずのものだから」
ロトーチカ「複数体でネットワークを構成してるはずのジェネレーチカが1つを除いて全て機能停止させられ、尚且つその1つも機能停止寸前に追い込まれた時が発動の条件」
ロトーチカ「事故でそんなこと起こるはずが無いし、もし部外者が裏屋上に隠してあるジェネレーチカに何かしたとしたら……それは中枢の中枢に入りこまれたと同じ」
ロトーチカ「城を放棄し、隕石を落としてでも殲滅しなければいけない案件よ」
寿限無「……っ!」
-
ロトーチカ(そんな最悪の事態を説明しながら私はジェネレーチカへ駆け寄る)
ロトーチカ(するとジェネレーチカの前にかがんでいた白衣の人が立ち上がりこちらを振り向いた)
マッキー「あなたたち、やっと来たのね」
寿限無「現実の時間だと30秒も経ってないと思うけど」
マッキー「それでも遅い」
ロトーチカ「あなたがマッキーね、カウントダウンはどのくらいまで進んでる?」
マッキー「そうねぇ、今は>>293」
-
1進んで5戻りで逆にカウントアップしてる
-
マッキー「1進んで5戻りで逆にカウントアップしてるわ」
寿限無「どういうこと?」
マッキー「バッカねぇ、気付きなさいよ」
マッキー「この発電機が機能停止に向かうほどカウントダウンが進むというのなら、逆にリカバリーしてやれば自爆までの時間は長くなる」
寿限無「まさか……修理できてるの!?」
マッキー「ふふんっ、私を誰だと思ってるのよ」
カチャカチャッ!
マッキー「元魔王軍秘匿研究院所属のマッキー様が、パーツが足りない弄った経験がない程度で手を止めるはずがないでっしょー!」
カチャンッ!
-
ロトーチカ(すごい……この子は何者なの……?)
ロトーチカ(寿限無の話だと古代技術混じりの機械を見たのはついさっきが初めてのはず)
ロトーチカ(その始めて見たはずの機械の構成を、この子は短時間で完璧に把握している)
ロトーチカ(どのパーツがどの役割を持って互いにどう作用してるのか……周囲の構成から足りない古代パーツの役割を予想)
ロトーチカ(自作で仮の古代パーツまで組み上げてしまっている……!)
マッキー「……ちょっと、関心してるのは良いけど早く古代パーツの知識を教えてちょうだい」
マッキー「自慢しては見たものの、こんなの傷口を縫合する方法が解らないからガーゼ詰め込んでるようなもんよ、応急処置に過ぎないの」
ロトーチカ「え、ええっ、そうね!」
ロトーチカ(圧倒されてちゃいけない、ジェネレーチカを治すのには私の力も必要なんだ)
ロトーチカ「よし!2人でこの緊急事態を切り抜けるわよ!」
─────────────────
ドスケーブ城・トレーニングルーム〜裏屋上
AM??〜AM3:21 新終末編『137』
-
というわけでここまで
修理再開
新終末編『138』に続く
かもしれない
-
新終末編『138』
─────────────────
──ドスケーブ城・裏屋上
AM3:25
カチャカチャッ! ガシャンッ!!
マッキー「ロト!ここはどうなの!?」
ロトーチカ「そこは右の回路と同じ接続!さっき教えた通りにすれば良いわ!」
マッキー「おっけー、なら大丈夫!」
ピッ ピピッ
マッキー「これでラインが繋がるって動くようになるっと、感覚が掴めて来たわ」
ロトーチカ「後は替えの効かない問題のパーツだけど……」
マッキー「それは私に考えがある、ロトが持ってた他の古代パーツが幾つかあるでしょ?」
ロトーチカ「うん、もしものために持ち歩いてたやつね、でもこれは壊れたパーツとは別のものよ?」
マッキー「1つ1つは……ね、でもざっと見た感じ、組み合わせれば破損部分を補える組み合わせがあるの」
ロトーチカ「ほんと!?」
-
マッキー「それとそれ、前者の中から線引っ張ってきて後者の中のあるパーツと接続すれば……いけるんじゃない?」
ロトーチカ「……そっか、今まで考えもしなかっけど言われたら確かに代用できる!」
マッキー「そういうこと、じゃあ本命の部分にかかるわよ!」
ロトーチカ「うんっ!」
ガチャガチャッ!
寿限無「おぉ……」
寿限無(2人のコンビネーションは即席にしては素晴らしいものだった)
寿限無(ロトーチカさんが適切なポイントで話す古代機械の知識を、マッキーが常人では出し得ない特異な発想で即座に応用していく)
寿限無(修理を始めてから間もなく5分ほど、ジェネレーチカの修理は>>299くらい進んでいた)
-
4割
-
完了したが、お互いに改良案があり喧嘩し始めた
-
寿限無(修理は4割くらい進んでいた)
寿限無(こうして外野から眺めてるだけの私に詳しい行程は分からない、でも会話から大体の進行は分かる)
寿限無(ジェネレーチカの修理は全体の半分程度が終わって、そろそろ故障の最大の原因となった箇所に取り掛かるところだ)
寿限無(人間で言う致命傷は避けられたおかげか、ジェネレーチカに表示されているカウントダウンの数字も消えている)
寿限無(このまま2人に任せていれば修理は完了するだろう)
寿限無「でも……」
寿限無(それで全てが解決するわけじゃない)
寿限無(裏屋上に侵入し、ここにいたはずのジェネレーチカたちをほぼ全滅に追い込んだ原因は分かっていない)
寿限無(それをどうにかして判明させられたら良いんだけど……)
-
ガチャンッ!!
マッキー「よし!代用パーツがハマったわ!」
ロトーチカ「これで大きく壊れてた部分は殆ど治ったはず……」
ジェネレーチカ「……ガ……ガピ」ググッ
ロトーチカ「ジェネレーチカ!会話機能が戻ったの!?」
ジェネレーチカ「……う、うんチカ」
マッキー「大分機能が戻ってきたみたいね、私は修理を続けてるからロトは情報を聞き出して」カチャカチャ
ロトーチカ「ええっ」コクンッ
ロトーチカ「ジェネレーチカ、あなたたちに何があったか思い出せる?」
ジェネレーチカ「ええと……城の結界が弱まって、エネルギーを切らさないように頑張って皆で発電してて……」
ジェネレーチカ「それから……>>303」
-
みんなで休憩したら結界が破れた
-
ジェネレーチカ「それから……皆で休憩したら結界が壊れたチカ、うっかりチカ」
寿限無「えぇ?どういうことよ」
寿限無(うっかりでは済まない話に遠くで見ていた私もつい近付いて口を挟む)
ジェネレーチカ「ごめんなさいチカ、張り切りすぎて疲れてしまったんチカ」
寿限無「はぁ……?」
ロトーチカ「つまりこういうことよ」
ロトーチカ「結界の弱体化を感知したジェネレーチカたちは、不足分を補おうと張り切って通常の稼働より激しく発電を始めた」
ロトーチカ「けどそんな無茶が何時までも続くわけがない、無茶の反動で今度は皆一斉に機能が低下してしまった」
ロトーチカ「充分なエネルギーが送られなくなって結界は消えてしまったということね」
寿限無「うーん……改めて聞いてもとんだポンコツ機械だわ」
ジェネレーチカ「面目ないチカ」
-
ロトーチカ「元はと言えば結界が弱体化したのが原因なんだし、ジェネレーチカだけを責めるのはいけないわ」
ロトーチカ「まぁ、ポンコツAIは後で改善する必要はあるだろうけど……」
ジェネレーチカ「チカァ……」シュンッ
ロトーチカ「私の疑問はまだ全て解決してないわ」
マッキー「そうね、結界が消えたこととジェネレーチカがこの個体を残して消えたこと、この個体が激しく破損してることに直接の関係はない」
マッキー「結界が消えた後……現状に至る何かが起きたはずよ」カチャカチャ
ジェネレーチカ「うん、チカたちのミスで結界を消しちゃったあと、『困ったなどうしようか』って皆で話し合ってたチカ」
ジェネレーチカ「そこで屋上に……何者かが現れたんだチカ……」
ロトーチカ「何者か?」
ジェネレーチカ「暗くて姿はハッキリと見えなかったけど、>>306」
-
黒いドレスを着た美少女が何かして、意識がなくなった
-
ジェネレーチカ「黒いドレスを着た美少女が何かして、意識がなくなったチカ」
ジェネレーチカ「チカの記憶はそこで途切れたチカ……」
ロトーチカ「黒いドレスの少女?」
寿限無「そいつがジェネレーチカを壊した犯人ってことかしら」
ロトーチカ「決めつけは出来ないけど……可能性は高いと思う」
ロトーチカ「結界が消えた隙を狙ってその黒ドレスがドスケーブ城内に侵入、ジェネレーチカに何かをして完全停電に追い込んだ」
寿限無「……ったく!今ここでは重要なことが2つも行なわれてるってのに、敵かもしれない不審者に入られたってわけ!?」
マッキー「憤っても仕方ないわよ、対策を考えることのほうが先」
寿限無「え、ええ……そうね」
マッキー「ロト、結界とやらを張り直すことは出来ないの?」
ロトーチカ「応急処置なら出来なくもないけど、前と同じのは海未ママさんが戻ってないと難しいかな」
ロトーチカ「どっちみち既に内部に入り込まれてる状況じゃ意味がない」
マッキー「ふむ……」
ロトーチカ「せめてこの屋上に何か黒ドレスに関する手掛かりが残ってれば――」
寿限無「手掛かりか……」
寿限無(そのロトーチカの言葉を聞いて、私は周囲の屋上を見渡してみる)
寿限無(何か手掛かり……手掛かりは……>>308)
-
ない
-
・
・
寿限無「……無い……みたいね」
寿限無(目を皿にして辺りを汲まなく調べたけど不審な点は見つからなかった)
寿限無(雪の上に私たち以外の足跡や誰かがいた形跡は残ってないし、神力を働かせて感覚を鋭敏にしても不審な力の痕跡は感じられない)
寿限無(悔しいけど……侵入者が慎重だったってことか)
寿限無「ロトーチカさんの方はどう?」
ロトーチカ「ダメね、私が見ても何も見つからないわ」
寿限無「そっか、何か侵入者の素性が分かるものがあればゴーグルの機能で探すことが出来たんだけど……」
パタンッ
マッキー「よし、これでジェネレーチカの修理は完了」
ジェネレーチカ「ありがとうチカ!」
ブルンッ! ブルルンッ!
-
寿限無(マッキーがジェネレーチカの外装を閉じて一息つく)
寿限無(ジェネレーチカの中からは軽快な駆動音が聞こえてきて、調子が戻ったのがすぐに分かった)
寿限無「これで停電が復旧できるの?」
ロトーチカ「最低限の電力は確保できるでしょうね、でも……城の機能を回復させるには全然足りない」
マッキー「元々複数台のジェネレーチカを並列させて作っていたエネルギーだものね」
寿限無「むぅ……」
ロトーチカ「けれどこれで城の設備は使えるようになったわ、放送で侵入者への注意を呼びかけることができる」
マッキー「ワクチン作りも再開できるでしょうね」
寿限無「……うん、優先するのはその2つか」
寿限無(何をするにしても急がないと、今のドスケーブ城は普通じゃないんだから)
寿限無(手遅れになる前に動かないと……!)
─────────────────
ドスケーブ城・裏屋上
AM3:25〜AM3:30 新終末編『138』了
-
というわけでここまで
次は停電時の城の別場面から
新終末編『139』に続く
かもしれない
-
新終末編『139』
─────────────────
──ドスケーブ城・手術室
AM3:05
真姫「奴隷穂乃果!穂乃果を手術台に寝かせて!優しくね!」
奴隷穂乃果「了解でぇーす!」
真姫(寿限無たちにワクチンのことを頼んで別れた後、私は手術室で早速穂乃果の治療に取り掛かった)
真姫(助手は穂乃果を運んできてくれた奴隷穂乃果、それから手術室の中にいた女医ロボ1号)
女医ロボ「真姫、どんな治療をするかは分からないけど一応の器具は揃えたわ、あと手術着」
真姫「ありがとう」スッ
女医ロボ「そこの汚いのも施術に携わるというのなら手くらい洗いなさい」
奴隷穂乃果「汚いのとは失礼なロボですなぁ」ジャーッ
真姫「穂乃果の服を外してっと……」
真姫(手術用の清潔な服に着替えた私は穂乃果の服を脱がして、バイタルを測定するための器具をペタペタと貼り付けていく)
真姫(女医ロボが用意してくれたのは基本的な心拍や血圧を測る物の他に、体に流れる魔力のような異能エネルギーを測る物もある)
-
ピッ ピッピッ
真姫「ふむ……」
奴隷穂乃果「どうなんです?」
真姫「分かってはいたことだけど……全ての数値が最低なラインね、普通の病院に運ばれたら死亡宣告間違い無しのレベル」
女医ロボ「でも死んでないのでしょう?」
真姫「そうよ、今の穂乃果は生と死の狭間に冷凍保存されてるような状態」
真姫「生きることも死ぬことも許されない、ピーマンマン因子のオーバードーズが穂乃果の存在そのものを極限まで収縮させてしまっている」
奴隷穂乃果「難しいですなぁ、生きてる死んでるかハッキリしてれば良いのに」
真姫「本当にね……私もそう思うわ」
真姫「存在としての基底を侵された今の穂乃果には、生きて死ぬという普通の生物の摂理すら適用されない」
女医ロボ「救う方法は……」
真姫「もちろんあるわ、それを見つけたからここに戻ってきた」
スッ
真姫「ふぅ……」
真姫(目を閉じて精神を統一する)
真姫(大丈夫、私なら問題なく出来る、だって今の私には……)
-
カッ!
真姫(その資格があるからっ!)
真姫「タイプ・マキの資格者、西木野真姫の名において告げる!」
真姫「穂圏の門をここに開き、扉の奥に隠された魔なる秘法を現の世に権限させることを!」
キュィィィィィィィィンッ!!
女医ロボ「周囲の空間が……朱く染まっていく……!」
奴隷穂乃果「おおおっ!」
真姫「発動せよ!旋律の魔法――ときめきエクスペリエンス!!」
キィーーンッ!
真姫(魔法は無事に発動した)
真姫(私の目の前には赤い粒子が集まった線で形作られた楽譜、その下には同じ粒子で形作られた鍵盤が浮かび上がっている)
真姫「これが旋律を響かせるための操作デバイスってわけね……」
真姫「よし……奴隷穂乃果!あなたの能力はなに?」
奴隷穂乃果「え?ここでわたくしですか?」
真姫「魔法には元となる穂乃果因子が必要なの、だからあなたに力を使ってもらう必要がある」
奴隷穂乃果「ああ……なるほど、わたくしの能力は名前にちなんでるから分かりやすいですよ」
奴隷穂乃果「ずばり>>315」
-
無機物を隷属化する
-
時間が経つにつれて奴隷から支配者にクラスチェンジ
-
奴隷穂乃果「ずばり無機物を隷属化する能力です」
真姫「へぇ〜、分かりやすくて使いやすい能力じゃない」
奴隷穂乃果「まぁ一度に隷属化出来るのは基本的に1つ、頑張れば小物を2つか3つゆっーくり動かせる程度の力ですよ」
奴隷穂乃果「ご主人様の言う通りとても戦闘向きの能力では無いですぜぇ」
真姫「なに言ってるの、特に条件が要らないってのは利点よ」
真姫「この部屋にある道具を何でもいいから動かしてみて、それであなたから穂乃果因子が出る」
奴隷穂乃果「へいっ!」
スッ
奴隷穂乃果「ではそこのペンライトを……ぬぬぬっ!」
真姫(奴隷穂乃果は近くに置いてあった医療用ペンライトに手を向けて、念らしきものを送る素振りをする)
真姫(すると……)
カタカタッ!
女医ロボ「動いた……!」
真姫(誰も触れてないペンライトが1人でに立ち上がり、机の上を立つ倒れるを繰り返しながらこちらに向けて歩いてくる)
-
奴隷穂乃果「ライトなら明かりだって付けられる……んでぃっ!」
パチッ!
真姫「ほう……」
女医ロボ「付けたり消したり器用なものね」
奴隷穂乃果「まぁその物体が本来出来ることなら大体命令できますかねぇ」
真姫(奴隷穂乃果が見せてくれた能力は中々応用が効きそうなものだった)
真姫(でも感心してる暇はない、私は奴隷穂乃果がペンライトに向けている手のひらの辺りを注視する)
ジーッ!
真姫「……あった!」
真姫(手のひらからペンライトへ、操り人形の糸のように粒子の線が出ている)
真姫(あれが穂乃果因子の光……資格持ちの私だから見えるもの)
真姫「おっけー、これで条件は揃った」
真姫「やっと穂乃果の治療が始められる――」
スッ
ポロロンッ
真姫(空中に浮かび上がった鍵盤の1つに指を置くと綺麗な音が鳴り響く)
-
真姫(どの音階にも当てはまらない、おそらく人工的には作り出せず、現代の譜面では書き表せないであろう不思議な音色)
真姫(一瞬で心が洗われるような神々しさと……同時に未知なる深淵を除いたような恐怖さえ覚える人外の音)
真姫(けれど大丈夫、この魔法は私のものだ)
真姫(頭で理解しなくとも指が自然と旋律を奏でて行く、私がやりたいと思っていることを鍵盤を通して1つの曲に変換させていく)
タララランッ
パァァァァァァァァァァッ!!
真姫(私が鍵盤を弾く度、穂乃果因子の粒子と私の生み出した赤い粒子が混ざって音符に形を変える)
真姫(音符の群れは手術台に寝かされた穂乃果の周囲を踊り、穂乃果の体の中に音楽を染み込ませていく)
奴隷穂乃果「ど、どんな感じですかぃ!?」
真姫「今のところは順調かしらね……」
真姫「旋律の魔法の効果は少なくなった穂乃果因子の増幅と、傷ついた体のヒーリング能力」
女医ロボ「どっちも今の穂乃果に足りないものね」
真姫「この曲を奏で続けていれば穂乃果を回復させることは出来ると思うけど……」
キュィィィィィィィィン
真姫(旋律による治療が進んでいく穂乃果の体)
真姫(何かが変化した様子は……>>320)
-
筋肉モリモリのマッチョウーマンに変化
-
真姫(何か変化した様子は……)
モリッ!
真姫「……え?」
モリモリッ!
真姫「��ぇぇっ!?」ビクッ!!
真姫(順調に回復していたと思ってた穂乃果の体、その体が突然筋肉モリモリになっていく)
女医ロボ「真姫!これって……!」
真姫「ちょっ!ちょっとストップ!」
パッ!
真姫(思わず演奏していた手を止めて、手術台に寝かされてる穂乃果に駆け寄る)
真姫「女医ロボ!バイタル見て!」
女医ロボ「相変わらずバイタルは死人同然、心臓すらマトモに動いてないわ」
真姫「そう……だとすればこの筋肉の肥大は穂乃果因子の活性化が原因なのかしら」
-
スッ
真姫(体の大きさや骨格自体は変わってない、けれど明らかに筋肉質な体になっている)
真姫(触ってみても分かる……発達した腕や足の筋肉にバリバリに割れた腹筋……)
真姫(普通の女の子然としていた穂乃果の体は、数年マッスルトレーニングをしたように引き締まっていた)
ドクンッ ドクンッ
真姫「……あれ?」
真姫(心臓が動いてないはずの穂乃果の体、なのにどこからか鼓動のような音が聞こえてくる)
真姫(その場所は……>>323)
-
右のお尻
-
真姫(その場所は……右のお尻?)
真姫「女医ロボ!手伝って!」
女医ロボ「ええっ」コクンッ
グルンッ
真姫(女医ロボと一緒に仰向けに寝かせていた穂乃果の体をうつ伏せにする)
真姫(そして右のお尻に耳を当てると……)
ドクンッ ドクンッ
真姫「聞こえる!穂乃果の右のお尻から心音が聞こえるわ!」
女医ロボ「そんなバカな……」
ピッ
女医ロボ「た、確かに……器具を臀部に付けると心臓が動いてる時と同じ表示がされるわ」
奴隷穂乃果「ど、どういうことですぜぃ!?」
真姫「単純に解釈するのなら、止まった心臓の代わりに新しい心臓が作られた……ってことだと思うけど」
真姫(突然の細マッチョ化といい、新たな心臓の創造といい、急激な穂乃果因子の増幅が穂乃果の体に予期せぬ変化をもたらしているのは確か)
真姫(どうする?このまま魔法の使用を続けるか、因子量は充分に戻ったと判断して通常の蘇生方法に切り変えるか)
真姫(選ぶのは……>>325)
-
魔法の途中だから変なことが起きてるに違いない!
-
真姫(ここは……続行ね)
真姫「二人共、魔法を続けましょう」
女医ロボ「体が変化してるのは放置してていいの?」
真姫「うーん、確かに気になるけど……魔法の途中だから変なことが起きてるに違いないわ!」
真姫「最後までやったら良い感じになるかもしれない、取り敢えずやれるとこまでやって――」
バツンッ!!!!
真姫「……あれ?」
真姫(魔法の続行を決断した瞬間、手術室の照明が落ちてしまった)
奴隷穂乃果「て、停電!?」
女医ロボ「用意していた検査器具も全部電源が入らない……完全に落ちたみたいね」
奴隷穂乃果「どどどどどどうするんですかい!?」
真姫「落ち着いて、すぐに非常電源が入るはずだから……」
-
……
……
シーン
真姫「……入らないわね」
女医ロボ「そのようね」
奴隷穂乃果「えぇぇっ!?」
真姫(暗い手術室の中、魔法が生み出す真っ赤な粒子だけが部屋をボーッと照らしている)
真姫(おかしい……非常電源すら入らないなんて明らかに異常事態だわ)
女医ロボ「……どうするの?」
真姫「外には寿限無やマッキーがいる、電源が止まったことを知れば自ずと動くはず」
真姫「どっちみち穂乃果を治療途中で放置することはできない、この治療を終わらせることが先決よ」
女医ロボ「……分かった、真姫先生の判断に従うわ」
奴隷穂乃果「まぁ、わたしらは手伝うしかできませんからねー」
真姫「ありがとう」
真姫(謎の停電、結果的にこれで普通の治療は出来なくなった……魔法を信じて治療を続けるしか無い)
真姫(私は鍵盤の前に戻ると演奏を再開する)
ポロロンッ!
真姫(穂乃果……どうか無事に戻ってきて!)
─────────────────
ドスケーブ城・手術室
AM3:05〜AM3:10 新終末編『139』了
-
というわけでここまで
次は治療後半戦
新終末編『140』に続く
かもしれない
-
新終末編『140』
─────────────────
──ドスケーブ城・手術室
AM3:14
真姫「奴隷穂乃果!次はそっちを照らして!」
奴隷穂乃果「あいあいっ!」
真姫「女医ロボ、穂乃果の様子をあなたのセンサーを使った触診で教えて!」
女医ロボ「少しずつ体温が戻ってきているわ、新たな心臓が働いているのかしら……」
真姫「よし!」
タンッ タタタタンッ!
ジャンッ ジャンジャーンッ!
真姫(奴隷穂乃果が隷属で複数のペンライトを操って仮の照明を作り、止まった計器の代わりに女医ロボが自分の感覚で穂乃果の容態を測る)
真姫(そんな手術室の中で私が奏でる旋律の魔法は、正にクライマックスと言った箇所に差し掛かっていた)
真姫(最後の盛り上がりに向かってどんどんと壮大になっていくメロディライン、額から落ちる汗を拭く暇もなく必死に手を動かす)
真姫(止めてはいけない……一気に曲を完成させる!!)
ジャラララララーンッ!
-
深淵穂乃果「……っ」ピクッ
女医ロボ「……動いた、私が体を触った刺激に反応したわ!」
奴隷穂乃果「瞼もピクピクしてるような感じがしますぜぃ!」
真姫「意識レベルが戻ってきている……いけるわ!」
深淵穂乃果「……すぅー」
女医ロボ「呼吸を確認、脈もハッキリと感じ取れる!」
真姫(曲が最後の盛り上がりを見せていく中、停止していた穂乃果の機能が次々と回復していく)
真姫(凍りついていた細胞の全てが、穂乃果因子の活性化によって熱を帯びて溶け出していく!)
真姫(楽譜が示す旋律は残り後少し、これで……)
真姫「フィナーレよっ!!」
ジャーーーーーーンッ!
真姫「はぁ……はぁ……」
奴隷穂乃果「終わった……んですか……?」
女医ロボ「そうみたいね……」
真姫(魔法による治療が全て完了した穂乃果の体)
真姫(その体は……>>331)
-
筋肉の鎧を身に纏った鋼鉄の肉体
-
真姫(その体は筋肉の鎧を身に纏った鋼鉄の肉体となっていた)
真姫「穂乃果っ!」タタッ
真姫(旋律の魔法が召喚していた楽譜と鍵盤を消して、再び穂乃果の元へ駆け寄る)
真姫(暗い手術室の中、奴隷穂乃果が操る複数のペンライトの光だけが映しだす穂乃果の体)
真姫(それは……普通の女の子のものでは無かった)
深淵穂乃果「……ぅうんっ」
真姫「穂乃果……」スッ
真姫(治療途中で肥大化を始めた筋肉、それはある程度まで膨張を続けた後に凝縮を始めた)
真姫(縒り集まった筋繊維たちは束ねられて鋼のワイヤーのようになり、更にその鋼の筋繊維たちが折り重なり強靭になる)
真姫(まるで穂乃果の体のサイズに見合う最強の体を模索するように、活性化した肉体は自己進化を続けた)
真姫(重く大きくより……小さく硬く……強靭性と柔軟性を兼ね備えた鋼鉄繊維の筋肉)
真姫(何より見た目で1番の特徴は、体の部位の一部が銀色に変色して金属光沢に似た光を放っていること)
真姫(メタル化――と言えば分かりやすいかしら)
真姫(メタル化してる部位は下半身は太腿全体と股関節からお尻にかけての一部、上半身は肩から背中にかけての一部、それから胸部にも一部見られる)
真姫(どれも体の中で大きい筋肉のある場所……おそらく活性化が最大限まで進むと見た目にも変化が現れるんでしょう)
-
スッ
真姫(手を伸ばし、ゆっくりとその部位に触ってみることにする)
グッ
真姫「硬いわね……」
女医ロボ「ええ、これが人工物が一切ない生身の体とは思えないわ」
奴隷穂乃果「でも強く押すとへこんだりはするのが不思議ですねぇ……」
真姫「単に鉄板を表面に張り付けてるわけじゃないもの、鋼鉄の繊維が複雑に編みこまれた結果、体表面で鎧の役目を果たしているんだと思う」
女医ロボ「まぁ常時カチンコチンじゃマトモに動くこともできないしね……」
真姫「ともかく治療は完了した、触って確認する限り脈拍も呼吸も正常に戻ってる」
真姫「あとは安静にさせといて穂乃果が目覚めるのを――」
深淵穂乃果「…………真姫ちゃん?」
真姫「え?」
深淵穂乃果「真姫ちゃん……だよね、眩しくてよく見えないけど……」
真姫「そ、そうよ!」
真姫(驚いた、こんなに早く覚醒するなんて……魔法で治療したからなのかしら)
-
真姫「穂乃果、自分の名前と意識を失う前に起こったこと言える?」
深淵穂乃果「私は高坂穂乃果の心……深淵穂乃果、新魔王を倒したけどフードマンにやられた……であってる?」
真姫「よし、それが言えるのなら大丈夫ね」
深淵穂乃果「うん……」
真姫「その後穂乃果は仮死状態になっちゃって、今私の魔法で治療したばっかりの所」
真姫「治療は無事に成功したはずだけど、穂乃果は何か違和感はある?」
真姫「ここが痛いとか、気持ち悪い感じがあるとか、何かをして欲しいってのでもいいわ」
深淵穂乃果「うーんと……まだ起きたばかりで頭ぼーっとしてるんだけど……」
深淵穂乃果「そうだなぁ、>>335」
-
筋肉がプロテインを欲している
-
深淵穂乃果「そうだなぁ、とりあえずプロテインが欲しいかな」
真姫「プロテイン……?」
深淵穂乃果「そう!筋肉がプロテインを欲している!」
真姫「うーん……」
真姫(急激に肉体が活性化したからエネルギー不足に陥ってるってことなのかかしら)
真姫(確かに筋肉の修復にはプロテインを飲んだほうが効率が良いとは聞くけど……)
真姫「女医ロボ、今の穂乃果に普通のプロテインって効くのかしら?」
女医ロボ「さぁ……停電してるせいで検査するための装置が何も使えないから確かなことは言えないわ」
女医ロボ「でもタンパク質は筋肉いがいのエネルギー補給にも必要だし、飲んでおいて損は無いと思う」
真姫「ふむ」
-
真姫「穂乃果、具合悪くはない?お腹空いてるならもっと軽い食事からでも――」
深淵穂乃果「プロテインが良い!プロテインじゃなきゃやだ!」
真姫「……そう」
奴隷穂乃果「言われた通りプロテインをあげれば良いんじゃないですか?」
真姫「そうね、でもプロテインなんて補給リュックには入ってないし……城にならあるかしら」
女医ロボ「ええ、確か鞠莉様が作成していた特別なプロテインがあったはずよ」
真姫「何でも作ってるわねあの人……」
女医ロボ「確か保管していた場所は>>338」
-
奴隷人体実験室
-
女医ロボ「確か保管していた場所は……奴隷人体実験室だったはず」
真姫「物騒な名前の場所ねぇ」
奴隷穂乃果「奴隷の身としてはぞっとしない名前でさぁ……」ブルッ
真姫「まぁ場所が分かるのなら女医ロボに案内してもらいましょう、穂乃果は……」
深淵穂乃果「いけるよっ!」バッ!
真姫(さっきまで生気なく倒れていた穂乃果は元気よく手術台から飛び降りる)
真姫「分かったわ、でも廊下に出る前には服着てね」
深淵穂乃果「うわっ!そういえば裸だ……しかも何か太ももが鉄みたいになってるし!」
真姫「それについても私が説明するから」
深淵穂乃果「う、うん」
真姫「奴隷穂乃果は私が説明してる間に廊下の様子見てきてくれる?」
真姫「この停電も異常だし……何か危険なことが無いか軽くで良いから」
奴隷穂乃果「了解しましたぁ!」
タタタッ
真姫「よし、さてと……」
-
・
・
真姫(私は穂乃果の着替えを手伝いながら、治療の際に穂乃果の体に起こった変化を説明した)
深淵穂乃果「……なるほど、通りで服が少しキツく感じるわけか」
真姫「気にするとこそこ?」
深淵穂乃果「まぁ筋肉の繊維が鋼鉄化?して体の一部がメタリックになってるのは驚いたけど」
深淵穂乃果「自分で動かす分には違和感無いし、防御力上がったのならそれはそれで戦いに役立つし」
真姫「穂乃果らしいポジティブさね……」
深淵穂乃果「えっへん」
深淵穂乃果「このフォーム、鋼の深淵穂乃果とか呼んだらカッコイイかな」
真姫「それは知らないわよ」
キュッ!
深淵穂乃果「おおっ」
真姫「これで着替えはよしと、少し腕周りと足回りが大きくなった分、そこは緩めにしておいたわ」
深淵穂乃果「ありがとう」
真姫(と、穂乃果の着替えが終わったところで廊下の様子を見に行っていた奴隷穂乃果が戻ってきた)
奴隷穂乃果「見てきましたご主人ー!」タタタッ
真姫「どうだった?」
奴隷穂乃果「>>341」
-
廊下が凍りついている
-
奴隷穂乃果「たたたた大変です!」
バダバダバダッ!
ガラシャーンッ!!
奴隷穂乃果「あいたぁっ!」
真姫(青い顔で手術室に入ってきた奴隷穂乃果は何かに躓いたのか派手にすっ転んでしまう)
女医ロボ「停電中で暗いんだから気をつけなさいよ」
真姫「かなり慌ててるわね……落ち着いて説明してちょうだい」
奴隷穂乃果「すすみません!余りに驚いてしまって……廊下が全凍りついちゃってるんですよ!!」
真姫「廊下が?」
奴隷穂乃果「はいっ!もうカチンコチンのバキンバキン!冷蔵庫みたいに冷えっひえで!!」
深淵穂乃果「氷か……堕天使のせいで凍った名古屋を思い出すね」
真姫「堕天使はもう消滅したはず、それにさっきまで私たちはその廊下を歩いてきたのよ」
真姫「穂乃果を治療してる間に何かがあった……それも怪しい停電に紛れてか……」
女医ロボ「凍った以外には何か変なところあった?」
奴隷穂乃果「いえ……凍った廊下には不審な人とかはいませんでした」
奴隷穂乃果「まぁ、暗闇をライトで照らして見回った程度ですから見逃してるかもしれませねぇ……」
真姫「なるほど、では充分に注意しながら城内を見て回りつつ、プロテイン部屋に行くことにしましょう」
奴隷穂乃果「はいっ!」
深淵穂乃果「レッツゴー!プロテイン!」
─────────────────
ドスケーブ城・手術室
AM3:14〜AM3:22 新終末編『140』了
-
というわけでここまで
凍った城の中をプロテイン探し
新終末編『141』に続く
かもしれない
-
新終末編『141』
─────────────────
──ドスケーブ城・廊下
AM3:22
ヒュゥゥゥゥッ
真姫「おぉ……本当に寒いわね」
女医ロボ「そうね、私はロボだから感じないけど温度センサーが異常な値を示してるわ」
深淵穂乃果「そう?少し肌寒いくらいじゃない?」
奴隷穂乃果「いーやいやいや!マグロの冷凍庫並みの寒さですよぉ!!」
深淵穂乃果「えー?」
真姫「鋼化してるから寒さに鈍感になってるのかもね、寒さ以外にも暑さにも強いかも」
深淵穂乃果「ほうほう」
真姫「まぁ今は進みましょう、廊下の両脇や天井から出来てる氷にはなるべく触れないように――」
ドゴォォォンッ!!
真姫「なにっ!?」
奴隷穂乃果「ひゃぁっ!すごい音!!」
深淵穂乃果「空気が連続して破裂する音……誰かがすごい勢いで移動してるんだ……!」
女医ロボ「戦闘かしら?」
真姫「さぁ……そこまでは分からないわ、穂乃果は何か分かる?」
深淵穂乃果「かなり遠くだね、階層がここより何個か上、こっちに来る様子は無いよ」
真姫「そっか、気になるけど今は先に進みましょう」
真姫「女医ロボ、奴隷人体実験室までの道の案内をお願い、どのくらいで着けそう?」
女医ロボ「そうねぇ……ここからなら>>345」
-
楽な方で1時間困難な方で10分
-
女医ロボ「楽な方で1時間困難な方で10分かしら」
真姫「建物の中を移動するだけなのに登山みたいなルート選択をさせられるのね……」
女医ロボ「まぁドスケーブ城だし」
真姫「それで納得してしまう自分がすごーく嫌だわ……」
奴隷穂乃果「で?結局どっちの道で行くんですかい?」
真姫「今の私たちに一番足りないものは時間、困難な方を通って最速で行きましょう」
深淵穂乃果「うんっ!プロテインを飲むのは早いほうがいいっ!」
女医ロボ「分かった……じゃあこっちよ、付いてきて」
カツ カツ
真姫(冷凍庫のように凍てついた廊下、真っ暗な闇が支配するそこを手持ちのライトで照らしながら進む)
真姫(凍りついた足元はお世辞にも歩きやすいとは言えず、気を抜いたら転びそうになってしまうくらいツルツル)
真姫(何故こんなことが起こったのだろう……手術室付近の廊下だけなのか、それとも城全体なのか)
真姫(城全体だとすれば特設医務室に寝ている負傷者組が危ない、余裕があればそっちも見て回りたいわね……)
-
・
・
カツ カツ
真姫(そうして女医ロボに付き従い歩き数分、廊下を何度か曲がって進んだ先で女医ロボは足を止める)
真姫「どうしたの?」
女医ロボ「ここよ、私が困難だと言った場所は」
深淵穂乃果「ほー」
女医ロボ「ここを通り抜ければ最短で目的地に着けるけど、そう簡単にはいかない」
真姫「…………!」
真姫(女医ロボが腕を組んで見据える場所、そこは>>348)
-
どんな方法を使っても見えない床(落ちたら死)
-
真姫(そこには……何もなかった)
真姫(私たちの目の前で廊下の床はプツリと途切れ、真っ暗な空間がぽっかりと口を空けている)
真姫(幅は何十メートルあるのだろう、向こうの廊下の端まで続いているように見える、とてもジャンプで超えられる距離じゃない)
真姫(底は……ライトで照らしても底が見えないほど深いわね)
奴隷穂乃果「なななんですかこれは!?先に進めないじゃないですかぁっ!!」
女医ロボ「進めないことは無いわよ、ここには見えない床があるから」
奴隷穂乃果「見えない床?」
女医ロボ「そう、ただしその幅は平均台くらい細くて真っ直ぐ続いてるとは限らない」
女医ロボ「目隠しをした状態で曲がりくねった綱を渡るようなもの」
奴隷穂乃果「……ひぃっ!」
-
女医ロボ「足を踏み外して落ちれば……待ってるのは確実な死」
女医ロボ「どう?中々に困難な道でしょう?」
奴隷穂乃果「……う、うん」ゴクッ
真姫「確かに、ここを進むのは中々のギャンブルね」
真姫「ただ……」
タンッ
真姫「今の私たちには、そんなに難しいことでも無いわよ?」
深淵穂乃果「うん、見えないだけならどうとでもなると思う」
女医ロボ「ほう……言ってくれるじゃない」
深淵穂乃果「どうする?私がやる?真姫ちゃんがやる?」
真姫「そうねぇ……ここは>>351主導で行きましょう」
-
天才真姫ちゃん
-
真姫「ここは天才真姫ちゃんの主導で行きましょうか」
深淵穂乃果「おー」
タンッ
真姫(廊下と見えない床の境に立った私は服の内側から2つのカプセルを取り出す)
真姫(1つは種子の詰まったカプセル、もう1つは魔王因子を元にした増強剤、前者を手のひらの上に開けて後者をふりかける)
真姫(そして……)
シュルルッ
深淵穂乃果「わっ!真姫ちゃんの髪の毛が動いた!」
真姫(長く伸びた髪を動かして髪先で、手のひらの上に並べた種を1つずつ摘んでいく)
真姫「これは私が開発したエクステンション草、略してエクステ草の種」
女医ロボ「エクステって……髪を付け足すあのエクステ?」
真姫「そう、エクステ草は髪先に付着すると長く伸びて髪の代わりになるの」
真姫「髪色も髪質も全てがその人本人の物と同じにね――」
ドシュルルルルルルルッ!!
奴隷穂乃果「おおおおっ!」
真姫(増強薬を与えられたエクステ草が一斉に伸び、私の髪の量が一気に何倍にも膨れ上がる)
-
真姫「普通の人にとっては只のエクステ、でも私の髪は普通の髪じゃない」
真姫「幻想種と融合したこの髪は毛の1本1本まで私の意思で動かせて、触った感触も伝わってくる」
真姫「そしてエクステ草によって増えた髪も同じ特性を持つから――」
シュルルルルルルルッ!!
真姫(見えない空間に向かって一気に髪を放つ)
真姫(伸ばされた髪の毛が見えない床のある部分に巻き付き、本当に何もない空間との区別をつけていく)
シュルルッ! シュルルッ!
真姫「どう!これなら正しい道が分かるでしょ!」
奴隷穂乃果「おおっ!」
真姫(私はドンドンと髪の毛を見えない道に巻き付かせ奥へ奥へと伸ばしていく)
真姫(そして最後まで巻き付かせることが>>354)
-
出来たに決まってるでっしょー
-
真姫(巻き付かせることが――出来たに決まってるでっしょー!)
シュルルッ! ガシッ!!
深淵穂乃果「すごい!さっきまで見えてなかった道に、真姫ちゃんの髪が巻き付いてはっきり分かるようになってる!」
真姫「毛量的に全部足りるか不安だったけど、やってみたら意外と余裕だったわ」
真姫「後はこの髪の道を滑って落ちないように渡っていきなさい」
奴隷穂乃果「うーん……なんだかんだそれが一番難易度高い気がします、位置が分かるようになったとはいえ幅は変わりませんしぃ」
真姫「大丈夫、もし落ちても髪を伸ばしてキャッチするから」
深淵穂乃果「心配ならアスモデウスかサタンを出産して待機させといても良いよねー、あの2人飛べるし」
奴隷穂乃果「はぇぇ、お二人といると心強い限りです」
深淵穂乃果「というわけでさっさと渡っちゃおう!プロテインが私たちを待ってる!」
奴隷穂乃果「は、はいっ!」
タタタッ
-
真姫(恐れずに駆けていく穂乃果と恐る恐る歩いていく奴隷穂乃果、それぞれ髪の道を渡っていく)
真姫「…………」
女医ロボ「真姫?止まってどうしたの?」
真姫「……いや、きっと気のせいね、私たちも進みましょう」
タタタッ
真姫(さっき見えない道の奥まで髪を伸ばした時、通路の一番奥で髪の先を誰かに触られた気がした)
真姫(とても冷たい……氷のような手が一瞬だけそこにあった)
真姫(でも、次の瞬間には空間のどこを髪で触っても手は無くなっていたのよね……)
真姫(錯覚だったのか、何かが一瞬だけそこに存在したのか)
真姫「あれはいったい――――」
─────────────────
ドスケーブ城・凍結廊下
AM3:22〜AM3:26 新終末編『141』了
-
というわけでここまで
次こそプロテイン
新終末編『142』に続く
かもしれない
-
新終末編『142』
─────────────────
──ドスケーブ城・凍結廊下
AM3:28
真姫「……よっと、これで全員渡り終えられたわね」
奴隷穂乃果「ひぇー……落ちないかドキドキしましたよ……」
真姫(私たち4人は無事に見えない通路を乗り越えて反対側へ来ることができた)
真姫(女医ロボが言うにはこの奈落を乗り越えたら目的地まですぐそことのことだけど……)
深淵穂乃果「こっち側の廊下も凍ってるね、向こうと変わらないくらいキンキンに冷えてる」
真姫「ええ、廊下を凍結させた原因はあの「見えない通路」には阻まれなかったということよ」
真姫「どこからか強力な冷気を通路を通して噴射したのか、もしくはそういう異能者が直接通路を渡ったのか」
深淵穂乃果「うーん……どっちにしろそんなやつに入り込まれたんじゃピンチだねぇ」
女医ロボ「みんなご苦労様、ここまで来れば奴隷人体実験室はもう目の前よ」
女医ロボ「そこの階段を下った先が目的地」
真姫(そう言って女医ロボが指差した廊下の先、突き当りから右へ下に降りる階段が見える)
深淵穂乃果「行こう行こうプロテイーン!」タタタッ
真姫「ちょっ!待ちなさい穂乃果!」
-
真姫(こらえ切れないと言った様子で一目散に階段の方へ走っていく穂乃果、その穂乃果を追いかけて私も走る)
深淵穂乃果「とっ!よっ!ほっ!」
タンタンッ!
真姫(穂乃果はそのまま凍った階段を起用に駆け下りる、私は……用心してゆっくり降りることにした)
ツルルッ
真姫「くっ……こんな階段で滑って頭打って昏倒とかごめんよ……うおおっ」
真姫(せめて柵状の手すりがあれば髪をロープにして降りられるというのに、ここにはカチカチに凍った階段と壁以外の何もない)
真姫(私にとっては見えない通路よりよっぽど難易度が高いわ……)
ツルルッ
真姫「……よいしょっ!」タンッ!
真姫「なんとか降りられたわね、穂乃果は……」
キョロキョロ
真姫「………いた!」
真姫(階段に手間取って穂乃果から少し遅れてしまったけど、無事に穂乃果を見つけることが出来た)
真姫(ライトに照らし出された奴隷人体実験室と書かれたプレート、穂乃果はそのプレートが付けられた部屋の前にいる)
真姫(そして穂乃果は部屋の扉を開けて……止まっている?)
真姫「どうしたの穂乃果?部屋の中に何かあった?」
深淵穂乃果「いや……その……>>360」
-
奴隷の死体?で一杯
-
深淵穂乃果「いや……その……中に死体?が一杯あって……」
真姫「なんですって……?」
タタタッ
真姫「……なっ!」
真姫(停電しているせいで真っ暗な部屋、向けたライトの光が照らし出したのは拷問室紛いの悪趣味な内装だった)
真姫(中央には人を寝かせるための長方形の台、周囲には鉄製の怪しい器具が大小ズラッと鎮座し、部屋の壁際には棚が敷き詰められている)
真姫(棚には用途の分からない謎の液体が入ったガラス瓶がところ狭しと並べられていた)
真姫(なにより異様なのは……部屋から溢れ出んほどに倒れている人、人、人人人人人人人!!)
真姫(10人や20人じゃない、奴隷穂乃果と似た服の人が、鎮座された器具の隙間……冷たい鉄の床に倒れている)
真姫(まるで人体のカーペット……ピクリとも動かず敷き詰められた"ソレ"のせいで部屋は足の踏み場もない)
真姫(真っ暗な部屋に踏み入れてライトで照らしたらこの光景……本格的にホラーね)
真姫(事前に穂乃果に教えられてなかったら悲鳴を上げていたでしょうね……)
-
深淵穂乃果「真姫ちゃん、これって……」
真姫「おそらく……倒れてるのは鞠莉が実験に使っていた奴隷体でしょう」
深淵穂乃果「で、でも、これは明らかに変じゃない?」
真姫「ええ……」コクンッ
真姫「今更あのマッドサイエンティストに倫理観を唱えるつもりは毛頭ないけど……この状況はあまりにも雑すぎる」
真姫「鞠莉は自分の実験道具をこんなに乱雑に放置しておくタイプじゃない」
深淵穂乃果「うん、よく見ると拷問器具や周りの棚も乱雑に倒されてるのがあったり、瓶が床にぶち撒けられたりしてるね」
真姫「まるで……空き巣に入った泥棒が片っ端から部屋の中の物をひっくり返したような――」
バツンッ!!
真姫「……っ!」
深淵穂乃果「電……気?」
-
真姫(私が部屋の中に足を踏み入れようとした瞬間、消えていた部屋の明かりが灯された)
真姫(まだ完全に復旧してはいないのか、照明は壊れた蛍光灯のような薄明かりで部屋を照らしてる)
ジジジッ
真姫(けれど……その薄明かりが照らし出した部屋の光景に私たちは再度驚いた)
真姫「……なっ!」
真姫(中央に置かれた台の向こう、部屋の一番奥に私たちの知らない人物が立っていた)
真姫(黒いドレスを纏った異様な雰囲気の女の子……壁側を見ていて顔は見えない)
真姫(そんな謎の黒ドレスの少女は、部屋の中で>>364をしていたようで……)
-
氷柱で奴隷体を壊して嗤っていた
-
真姫(黒ドレスは自らの掌から生み出した氷柱で奴隷体を壊して嗤っていたようで……)
ヒッヒッヒ ヒッヒッヒ
真姫(不気味な嗤い声が鉄錆と血の匂いに塗れた部屋に響いていた)
深淵穂乃果「誰っ!そこで何してるのっ!?」
黒ドレス「ひっひっひっひっ……」
黒ドレス「……あ?」クルッ
深淵穂乃果「……っ!」ビクッ
真姫(穂乃果の声に反応した黒ドレスはグルリと頭だけを回してこちらを見た)
真姫(黒く長い前髪の隙間から覗く生気のない目――まるで闇を塗りたくったような光を持たない黒い瞳)
黒ドレス「ああ……ここの人か」パッ
ドサッ!
真姫(黒ドレスは掴んでいた奴隷体の残骸を床に落とす)
黒ドレス「……見てよこれ、面白いよね、人形みたいだけど中身は人体と変わらないの、血と肉がリアルでさぁ」
黒ドレス「しかもそこの台の脇に付いてるスイッチ押すと無限に出て来るし、シュールで嗤っちゃう」
黒ドレス「ひっひっひ、ひっひっひ、ひっひっひ……」
-
黒ドレス「……ま、もう飽きたんだけど」
真姫(落とした奴隷体には見向きもしない、玩具に飽きた子供のように完全に興味を無くしている……)
黒ドレス「……ああ、何をしてたって質問だったっけ」
深淵穂乃果「う、うん……」
黒ドレス「何をって言われてもなぁ……この人形で遊んでたのと、そうだ、美味しい飲み物は見つけたよ」
カチャッ
黒ドレス「ほら、このフラスコに入ってるやつ、他に棚に並べてあるやつは拙かったけどこれだけは美味しい、ひっひっひ……」
真姫(黒ドレスは自分の横に置いていたフラスコを持ち上げて不気味に笑う)
真姫「あなた……新魔王軍の人?」
黒ドレス「……うん?そうだよ、新魔王軍の人……って名前を聞きたいのか」
黒ドレス「名前は……>>367」
-
黒雪姫
-
黒雪姫「姫のことは……気軽に黒雪姫って呼んでくれていいよ」ニヤリ
真姫(黒雪姫――とても気軽に名前を呼べる雰囲気を出してるとは言えない彼女は口の端を不気味に歪める)
黒雪姫「…………」ボーッ
真姫(私たちに敵意があるのか、どんな狙いで奴隷実験室にいたのか、その振る舞いから行動が全く読めない)
真姫(フードマンにはさえ僅かにあった感情が黒雪姫には見当たらないのだ)
真姫(まるで昆虫の様な……思考の読めない恐怖が彼女から感じられる)
真姫「新魔王軍が……どうして城の内部まで攻めてきたの……?」
黒雪姫「…………ああ、次はそのこと、面倒だなぁ」
パチッ
黒雪姫「でもいいよ、お話するのは楽しいから教えてあげる」
真姫「……ありがとう」
真姫(気怠そうな態度を取ったと思った次の瞬間には急に態度を変える)
真姫(こういう飄々としたのは得てしてどこかに地雷があるもの、親切なやつだと思って近付いたらいきなり刺されるとかお約束)
真姫(地雷を踏み抜かないように会話も自然と慎重になってしまうわね……)
-
黒雪姫「姫たちがやってきたのはさぁ……そっちが先に手を出したからなんだよね」
真姫「私たちが?」
黒雪姫「そう、姫たちのホームに縛り付けてた元魔王にちょっかい出してきたでしょ」
黒雪姫「だからフードマンが怒って姫たちを差し向けたんだよ、ひっひっひ……」
真姫(なるほど……ことりたちの外郭界侵入が新魔王軍側にバレたってことね)
真姫(でもそれは同時に、ことりたちの作戦が順調に進んでるということでもある)
真姫(少なくとも旧魔王に接触する程度には――)
真姫「じゃあ次の質問……」
真姫「『姫たち』って言ったけど、他にも仲間はいるの?」
黒雪姫「……いるよ、さすがに単騎で攻めには来ないからね、姫たちはフードマンお抱えの駒」
黒雪姫「最初に結界にダメージを与えたのと、停電の隙に侵入した姫と、あとワクチン作りを止めに行ってるの」
黒雪姫「他にも予備が何人かいたかなぁ、あんまり覚えてないんだよねぇ……興味無いから」
深淵穂乃果「じゃ、じゃあ私からも質問!」
真姫「穂乃果、慎重にね――」
深淵穂乃果「そのプロテイン!どんな味するの!?あと分けてもらっていい!?」
真姫「ってええっ!?今その質問!?」
黒雪姫「プロテイン……ああ、この飲み物のことか」
黒雪姫「これなら>>370」
-
何もかもコワシタイほど、マズイ
-
黒雪姫「これなら……あげるよ」
ポイッ
深淵穂乃果「わわっ!こぼれちゃう!」パシッ
真姫(黒雪姫が雑に放り投げたフラスコを穂乃果が慎重にキャッチする)
黒雪姫「不味いからもう要らない、あとはあなたが飲んでいいよ」
深淵穂乃果「えぇ?さっきは美味しいって言ってなかった?」
黒雪姫「初めに口に含んた時は……まぁまぁ美味しい、他のフラスコの薬みたいな味よりは良かった」
黒雪姫「ただ飲んでいくうちに単調な味に飽きが来るというか、所詮は甘さで誤魔化してるだけというか、あと粉っぽいし」
深淵穂乃果「まぁ……大体プロテインはそういうものだよ……?」
黒雪姫「だから要らない」
黒雪姫「その薬っぽい不味さを感じてると……昔を思い出す……」
深淵穂乃果「昔……?」
黒雪姫「あぁ不味い、不味いなぁ、何もかもコワシタイほどマズイ……」
黒雪姫「ワタシは……姫は決めたんだ、マズイモノは要らない、オイシイモノだけ考える……」
黒雪姫「そうすれば……姫は楽しくいられる……ひひっ!ひひひひっ!!」
真姫「気を付けて穂乃果!黒雪姫の様子がより一層おかしくなってる!」
黒雪姫「ワタシはマズイ、ムカシはマズイ、クスリはマズイ、ドレイはマズイ、コノヘヤはマズイ!!」
黒雪姫「だからっ!!姫が全部壊すんだよっ!!!!」
ドドドドドドドドドドッ!!
-
真姫(悲鳴のような叫びと共に、黒雪姫の体から可視化された冷気が周囲に放たれた)
真姫(明らかに地雷を踏んだ……さっきまでフワフワしていた黒雪姫の意識が一気に私たちへの殺意に変わる!)
真姫「穂乃果、ここは逃げ……」
深淵穂乃果「んっ」ゴクゴク
真姫「なに呑気にプロテイン飲んでるのよっ!?」
深淵穂乃果「……ぷはっ!くぅー!筋肉に染み渡るぅ〜!」
真姫「そんなことしてる場合じゃ――」
深淵穂乃果「ねぇ黒雪姫ちゃん……要は美味しいものが欲しいんでしょ?」
黒雪姫「そうっ!だから戦うの!今は戦うことが一番タノシイ!オイシイ!ひゃひゃひゃひゃっ!!」
深淵穂乃果「そうかなぁ、今のわたしはプロテインが一番美味しいけど」
黒雪姫「……あ?」
深淵穂乃果「黒雪姫ちゃんは、嫌なことを忘れるためだけに目新しいものを美味しく感じようとしてるだけだと思う」
深淵穂乃果「そんなんじゃ本当の美味しさなんて分からないんじゃない?」
真姫「穂乃果……?」
真姫(穂乃果の目はフザケてるわけじゃない、空になったプロテインの容器を持ちながら穂乃果は部屋の中へと進み出る)
真姫(それは私を守るようにも、黒雪姫と対峙するようにも見えた)
-
深淵穂乃果「ま、私が教えてあげるよ、戦いなんてこと以外にも美味しい物はたくさんあるって」
黒雪姫「……っ!余計なお世話だよ!そんなものっ!」
バッ!
ドゥンッ!!
真姫(黒雪姫が突き出した掌から巨大な氷柱が穂乃果めがけて放たれる!)
深淵穂乃果「しょうがないなぁ……大罪出産――」
黒雪姫「穿いて!黒爪氷柱!!」
深淵穂乃果「――嫉妬:レヴィアタン」
ガキィィンッ!!
真姫(迫ってきた氷柱が、召喚されたメタリックなルンバに当たって砕け散る)
真姫(穂乃果の大罪出産の1つ、全ての物理攻撃と異能攻撃を防ぐ最強の悪魔の盾レヴィアタン)
-
黒雪姫「だからなに?そんな小さな盾1枚だけじゃ守りきれない!」
ヒュンッ!!
深淵穂乃果「1枚だけじゃないよ」
黒雪姫「……え?」
ガキィィンッ!!
真姫(別角度から迫っていた別の氷柱もルンバが防ぐ、ただしそのルンバは最初のものとは別の――)
深淵穂乃果「――羨望:レヴィアタン」
真姫「穂乃果が最初に手に入れてたほうのルンバだわっ!」
深淵穂乃果「私は夢幻鳥の揺り籠を発動していた!その効果は2つの出産を同時に行えるようにするもの、そして効果は大罪出産を2つという使い方もできる」
黒雪姫「していたぁ?なんて後出しの効果説明……マズイマズイマズイっ!!」
ザッ!
深淵穂乃果「右手のレヴィアタンと左手のレヴィアタン、そして私の筋肉が!教えてあげるよ黒雪姫!」
深淵穂乃果「本当に美味しいってことが、どういうものだってのかを――!」
ドンッ!!
─────────────────
ドスケーブ城・凍結廊下〜奴隷人体実験室
AM3:28〜AM3:35 新終末編『142』了
-
というわけでここまで
ついに本拠地の内部でも戦闘に
女医と奴隷は少し離れて様子見てると思います
新終末編『143』に続く
かもしれない
-
新終末編『143』
─────────────────
──ドスケーブ城・モニター室
AM3:35
??「……ふむ、黒雪姫は深淵穂乃果との交戦に入ったみたいだね、あの子のことだから意図的ではないだろうけど」
??「君はこの戦いをどう見る?白狼王」
白狼王「どうねぇ……」
白狼王(ドスケーブ城に侵入した『我ら』のうち、我と我を白狼王と気軽に呼ぶ無礼者のこいつの2人はモニター室に潜伏していた)
白狼王(先程まで停電中でここの機材は動いてなかったが、この無礼者は通り『道』さえあれば己の力を行使できる)
白狼王(城中に張り巡らされた"監視カメラという道"に己の力を流し込み、科学とは別の方法で城内を視ることがでにるのだ)
白狼王(そんな方法でモニターに映し出された映像の1つで、我らが同胞の一員……黒雪姫が深淵穂乃果と戦いを始めている)
白狼王(1人で勝手に先行し連絡がつかないと思っていたら……勝手なことだ)
白狼王「どう見るかと言われても、勝負の行方は最後までわからん」
??「そこを予想するのが楽しいんじゃないかなぁ」
白狼王「ふむ……相手はあの新魔王を倒した深淵穂乃果だ、単純に考えれば魔王と同等以上――Neo穂乃果並みの力を持ってると思って間違いない」
白狼王「だが力だけなら我らの同胞である黒雪姫も負けてはいない」
白狼王「我らはフードマンの手により神の力を植え付けられた神造人間」
白狼王「そう簡単にやられはしないだろうさ――」
-
・
・
──奴隷人体実験室
同時刻 AM3:35
ダンッ!!
黒雪姫「言うじゃない深淵穂乃果っ!なら見せてみなよ……新魔王を倒した実力ってやつをさぁっ!!」
バッ!
真姫(黒雪姫が両手を床に付くと、さっきの氷柱より何倍も巨大な氷柱がガトリング砲のように発射される)
ズドドドドドドドッ!!
深淵穂乃果「良いよー!こっちも思いっきり行っちゃう!!」
真姫(対する穂乃果は両腕を頭の前で交差し、両手の甲にくっついた2つのレヴィアタンを正面に移動……そのままタックルを繰り出す!)
深淵穂乃果「おらおらおらおらぁっ!!」
黒雪姫「なぁっ!?」
バリバリバリバリッ!!
真姫(これほど猪突猛進という言葉が似合う姿も無いだろう、僅かな面積の盾と前傾姿勢で頭部と胸部を守り、迫り来る氷柱ガトリングを砕き突進していく)
黒雪姫「嘘でしょ……この乱打の中で逆に立ち向かってくるなんて!」
深淵穂乃果「それを成し遂げるのが筋肉ぅ!!」
ドガガガガガガガガッ!!
-
真姫(筋肉……冗談のようだけど穂乃果がこんな行動に出れるのは間違いなく強化された筋肉のおかげ)
真姫(どんなに最強な盾があっても盾は所詮盾、その盾を攻撃に使えるのは鋼鉄の筋肉あってこそ)
真姫(2つのレヴィアタンを強引に振り回す、盾×筋肉×盾、穂乃果が使える出産の組み合わせの中でも最高に脳筋なフォームだわ……!)
黒雪姫「くっ……この攻撃じゃ勢いを止められな――」
深淵穂乃果「遅いっ!」
ゴッ!!!!
黒雪姫「がっ……!」
真姫(あっという間に距離を詰めた穂乃果は黒雪姫に向かって右手のレヴィアタンで盾アタック)
真姫(ルンバ型の鉄盾がメリメリと音を立てて黒雪姫の腹部に食い込み……彼女の体を弾き飛ばす!!)
ドンッ!!!!
ドガァァァァァァァァンッ!!
真姫(弾け飛んだ黒雪姫の体は奴隷人体実験室の奥の壁を破壊、さらに奥へと飛んでいく)
真姫(壁の向こうは>>379)
-
ブラックホール
-
真姫(破壊された壁の向こうにあったのは壁と床と天井が全て白い巨大な空間、縦横に体育館何個分かはあるかなり広いスペースだ)
真姫(私や希が堕天使の手下を迎え撃った場所や、精神と時の部屋を模したトレーニングルームにどこか似ている)
真姫(実験室側の壁が壊れて出来た穴は、その空間で言うと真ん中より少し上くらい高さの場所に繋がっていた)
真姫(向こう側の真っ白な空間にバラバラと落ちていく壁の残骸と黒雪姫)
真姫(私は壁際で止まっている穂乃果の所まで行って、その様子を注意深く見る)
タタッ
真姫「穂乃果っ!」
穂乃果「真姫ちゃん、まだ危ないからこっちに来ないほうがいいよ」
真姫「大丈夫、それよりこの向こうって……」
バッ!
真姫(崩れた穴の場所からは部屋の全景がよく見えた、その光景の中には……)
真姫「……え?」
真姫(本来、そこにあり得ないはずのものがあった)
-
ゴォォォォォォウッ!!
深淵穂乃果「……ん?ねぇ真姫ちゃん、あれってなんだろ……?」
真姫「穂乃果にも見えるのね」
深淵穂乃果「うん、なんか黒くて丸いのが部屋の中心に浮いてるよね、あれって……」
真姫「ブラックホール」
深淵穂乃果「そうそう、まるでブラックホール……ってええっ!?ブラックホール!?」
真姫「ええ、私の目がおかしくなったので無ければね……」
真姫(白く広大な部屋の中心には、ぽっかりと漆黒が口を開いていた)
真姫(漆黒の形は大雑把に言えば円形、輪郭が歪んでるせいで真円なのかは分からない)
真姫(漆黒の円は周囲の空間さえ歪ませている、そして……)
ゴォォォォォォウッ!!
真姫(向こうの白い部屋に落ちていった瓦礫が漆黒の円に向かって吸い込まれていく)
-
深淵穂乃果「ブラックホールってあのブラックホール!?吸い込まれちゃうやつ!?」
真姫「そうよ、さすがに実物は見たことないけど……特徴的にはブラックホールに近い」
真姫「向こうに落ちた瓦礫が吸い込まれて私たちが吸い込まれないのを見るに、空間の境界に壁とは別の結界でも張ってるのかしら」
真姫(……というか、城の中に小型ブラックホールを安置しておくなんて鞠莉は何を考えてるんだか、頭痛くなるわ)
深淵穂乃果「そうだ!黒雪姫ちゃんは――」バッ!
真姫(思わず穂乃果が身を乗り出す、ブラックホール部屋に落ちていった黒雪姫は>>383)
-
根性で耐えている
-
飛び上がって来て、穂乃果の脳の伝達機能を凍らせた
-
黒雪姫「おおぉぉぉぉっ!これくらいっ!吸い込まれたりはしないんだからぁぁぁぁっ!!」
キィィィィィィィンッ!
パキパキパキッ!!
真姫「自分の手足と周囲の床を凍らせて繋いで……根性で耐えてる……!?」
深淵穂乃果「すごーい!じゃあ私もっ!」
タンッ!
真姫「こらっ!穂乃果まで落ちてどうするのよ!!」
深淵穂乃果「だーいじょうぶー!」
ヒュゥゥゥゥゥッ!!
真姫(穂乃果は壁の穴を飛び出して、白い空間の床めがけて落ちていく)
真姫「大丈夫って……言われてもねぇ……」
・
・
-
──ブラックホール部屋
ヒュゥゥゥゥゥッ
深淵穂乃果「……っと」
ドシーンッ!!
ゴォォォォォォウッ!!
深淵穂乃果「うあっ!すごい吸引力……足を床に突き刺してなきゃあっという間に吸い込まれちゃうな」
羨望『穂乃果、あなたそんなにマッスルキャラだった?』
嫉妬『私がプライドに取り込まれてた間に頭おかしくなったのかと思ったわ』
深淵穂乃果「はは……頭はおかしくなってないよ……」
深淵穂乃果(私の頭の中に、大罪出産中の2人の声が流れ込んでくる)
深淵穂乃果(共に嫉妬の気持ちを司る大罪穂乃果、嫉妬ちゃんのほうは羨望ちゃんを私に託してプライドの餌食となった)
深淵穂乃果(プライドも私の中に来た今になってようやく2人が揃ったというわけだ)
深淵穂乃果「よいしょっ」ズボッ
ガンッ!
ズボッ
ガンッ!
深淵穂乃果(遠くにあるブラックホールに吸い込まれないよう、足を床に突き刺しながら歩いていく)
深淵穂乃果(下半身の筋肉は特にメタル化が進行している、本気を出せばこの
くらいの芸当は屁でもない)
深淵穂乃果(そのまま黒雪姫ちゃんが凍らせている範囲のギリギリまで歩いていって、そして叫ぶ)
深淵穂乃果「黒雪姫ちゃん!」
-
黒雪姫「なっ……あなたバカじゃないの、上からでもトドメは刺せるでしょ!」
深淵穂乃果「うん、まぁね」
黒雪姫「まさか直接トドメを刺しに来たとでも……?」
深淵穂乃果「あー、それもあるかもね、だって黒雪姫ちゃん戦いを楽しみにしてたのに私がワンパン喰らわしただけでしょ」
深淵穂乃果「これで終わりじゃ全然楽しめてないかなーと思って……」
黒雪姫「……ひっ……ひっひっ!ひゃひゃひゃひゃひゃっ!!」
黒雪姫「イカれてる!最高にイカれてる!そのためにわざわざブラックホールの部屋に降りてくるとかバカじゃないの!?」
深淵穂乃果「よく言われる」
黒雪姫「良いよ……なら全力を出してあげる!ここなら広いしねぇ!」
バッ!
ドドドドドドドドドドッ!!
深淵穂乃果「……っ!」
深淵穂乃果(黒雪姫が吸引に耐えるために広げた氷のフィールド)
深淵穂乃果(そこから氷で作られた兵士が無数に現れてる、その数は百や二百をゆうに越える数だ)
黒雪姫「氷屍の軍団――ヘルヘイムソルジャー」
黒雪姫「痛みを感じない屍の兵士、いくら倒れようが氷から無限に出てきて、触れた瞬間に相手を凍らせ死に至らしめるんだよ!」
深淵穂乃果「ひやー、それはこわいな……」
-
嫉妬『ちょっと穂乃果!呑気に感想言ってる場合!?』
羨望『あの氷の兵士、一体一体がクローンの雑魚じゃない、ただならぬ魔力を秘めた戦士よ!』
深淵穂乃果「うんうん、だからこっちも……ベリベリスーパー頑張るんだよっ!!」
ヒュンッ!
ゴッ! ドガァァァァァァァァンッ!!
深淵穂乃果(レヴィアタンを直接掴んで床に叩きつけ、その衝撃波で迫りくる兵士を吹き飛ばす)
深淵穂乃果(これで30体くらい……?まだまだか)
黒雪姫「いけいけいけっ!いけえええええっ!!」
深淵穂乃果「ほっ!よっ!はっ!」
ドゴォォォォンッ! ガギィンッ!
バリィンッ! ドガァァァァァァァァンッ!
深淵穂乃果(ブラックホールの吸引が働きマトモに立ってることすら難しい空間の中)
深淵穂乃果(黒雪姫ちゃんが生み出す氷の兵士たちとレヴィアタンをグローブのように扱う私の殴り合いが続く)
深淵穂乃果(触れたら即死の凍結魔術もレヴィアタン越しなら問題ない)
深淵穂乃果(私の鋼鉄の筋肉が繰り出す一撃一撃が、無双ゲームのように兵士たちを吹き飛ばしていく)
ドガァァァァァァァァンッ!!
嫉妬『深淵!後ろ!』
深淵穂乃果「おっと!」
キィンッ!
深淵穂乃果(まぁ……無双ゲームと言っても難易度はベリーハード、少しでも気を抜いて一発でも攻撃を食らえば終わりだ)
深淵穂乃果(羨望ちゃんの言った通り、この兵士たちは1人1人が英雄と呼ばれてもおかしくない手練)
深淵穂乃果(そんな人たちを氷ゾンビとして呼び出せる黒雪姫ちゃんの魔術……いや、魔法の域に達してる技は正直すごい)
深淵穂乃果(でも……それだけだ!)
-
深淵穂乃果「うおらぁっ!」
バキィィィンッ!!
黒雪姫「くっ……」
深淵穂乃果(確かに技の1つ1つは魔術の域を超えた神様クラスの技、堕天使にも匹敵するかもしれない)
深淵穂乃果(でも力を使う黒雪姫ちゃん自体が未熟、暴走する力に振り回されてる感じ)
深淵穂乃果(だから……こうしてパワーでゴリ押しができるっ!!)
黒雪姫「くそっ!凍り付け!凍り付け!姫は……ワタシは……冥界のカミなんだっ!!」
ドドドドドドドドドドッ!!
嫉妬『やつから発せられる冷気が一層強まった!何か巨大なものが来る!!』
羨望『深淵!このままのスタイルで戦っているのは明らかに危険よ!私達じゃ防ぎきれない!!』
深淵穂乃果「そうだね、じゃあ前菜はここまで……」
深淵穂乃果「>>390を出産してメインディッシュといこうか!」
-
低反発まくら
-
深淵穂乃果「低反発まくらを出産してメインディッシュといこうか!」
嫉妬『低反発まくら?そんなのいたっけ?』
羨望『今まで出産した大罪にそんなのはいないし……深淵出産でも出したこと無いわよね?』
深淵穂乃果「ちっちっち、私がプライドから取り返したのは嫉妬ちゃんだけじゃないでしょ」
嫉妬『……あっ!』
プライド『取り返したとは人聞きの悪い』
グリード『奪ったのは事実だろう?』
大食い『そうだそうだー!』
プライド『ぬぅ……』
深淵穂乃果「頭の中うるさい!この間も氷の兵士さばいてるんだから早くして!」
プライド『……だそうだ、さっさと行け――"怠惰穂乃果"』
怠惰『ふぁ〜い、眠いけど頑張るよ〜』
-
深淵穂乃果(頭の中がまた静かになったとこで、私は一旦後退して氷の兵士から距離を取る)
スタッ
深淵穂乃果「夢幻鳥の揺り籠の効果発動!羨望のレヴィアタンを解除して――」
カッ!!
深淵穂乃果「――大罪出産!怠惰:ベルフェゴール!!」
ポンッ!!
ベルフェゴール『いぇ〜い』
深淵穂乃果(ルンバを1つ消した代わりに現れたのは少し大きめの低反発まくら)
深淵穂乃果(これが魔王から雪穂に与えられていた怠惰の力、それを私が大罪出産した姿)
黒雪姫「はぁぁぁぁぁぁっ!!」
ドドドドドドドドドドッ!!
深淵穂乃果(対する黒雪姫ちゃんは、さっきの強大な冷気を一箇所に集め>>393を作り出す!)
-
壁
-
深淵穂乃果(対する黒雪姫ちゃんは強大な冷気を一箇所に集めて壁を作り出す)
ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!
深淵穂乃果「壁なんて……今更防御に回るのかなぁ?」
黒雪姫「違う!この壁で押しつぶす!」
グゥゥゥゥッ!
深淵穂乃果(高く高く盛り上がる壁は私を飲み込むように反り返っていく)
深淵穂乃果「なるほど、ならその壁を飛び越えてプレゼントを届けよう」
深淵穂乃果「嫉妬のレヴィアタンを解除、深淵出産――Abyss004:大弓の銀騎士」
シュンッ!!
深淵穂乃果(私の体は銀騎士の装備を纏い、手には産み出された大弓と矢が現れる)
深淵穂乃果(その矢の先にまくらを括り付けて――)
ググッ!
深淵穂乃果(――斜め上に撃ち出す!!)
深淵穂乃果「あなたに怠惰をプレゼント!ベルフェゴールショット!!」
ドゥンッ!!
深淵穂乃果(盛り上がる壁より早く天井スレスレに達した矢、それは空中で曲線を描き下を向いて再加速する)
ドゥンッ!!!!
黒雪姫「……っ!?」
深淵穂乃果「さぁ黒雪姫ちゃん……私のメインディッシュをとくと味わう時だよ!」
─────────────────
ドスケーブ城・奴隷人体実験室〜ブラックホールルーム
AM3:35〜AM3:40 新終末編『143』了
-
というわけでここまで
次で決着
新終末編『144』に続く
かもしれない
-
新終末編『144』
─────────────────
──ブラックホールルーム
AM3:40
ポンッ!
ポワポワポワポワポワンッ!!!!
深淵穂乃果(曲射で氷の壁を乗り越えた銀色の矢は、2回目の加速を始めると共に分裂を始める)
深淵穂乃果(映画でよく見るような等間隔に並んだ矢の雨、矢尻に当たる部分には小さな枕が付いていた)
黒雪姫「面制圧攻撃……?なら迎撃をするまでだよ――」
バッ!
黒雪姫「――乱打黒爪氷柱!!」
ガガガガガガガガガガガッ!!
深淵穂乃果(床に広げた氷のフィールドから天井に向かって発射される氷柱のガトリング砲)
深淵穂乃果(でもでもっ!)
怠惰『そんなに張り切っても無駄なのよ〜?』
ドリュリュッ!!
深淵穂乃果(矢尻代わりに付いてる先端の枕から放出されるのは怠惰の魔力)
深淵穂乃果(矢全体を覆った怠惰の魔力は触れた対象のやる気――動く力を奪い去る!)
-
ピタッ! ピタッ! ピタッ!
黒雪姫「え……?迎撃放った氷柱が矢に当たって空中で止まった……?」
深淵穂乃果「いっけぇええええっ!」
黒雪姫「嘘……これじゃ――」
ドドドドドドドドドドッ!!!!
黒雪姫「……っ!」
深淵穂乃果(氷のフィールドに数え切れないほどの枕の矢が降り注いだ)
深淵穂乃果(逃げ場のない絨毯爆撃のような矢の雨は、フィールドの中心にいた黒雪姫ちゃんの体もしっかりと捉える)
深淵穂乃果(低反発枕が優しく直撃した黒雪姫ちゃんの体には怠惰の魔力が回り――)
ジュゥゥッ
黒雪姫「あれ……体に力が……入らな……」フラッ
バタンッ!
深淵穂乃果「ふぅ……」
深淵穂乃果(黒雪姫ちゃんが床に倒れこむと同時に、目の前を塞いでいた氷の壁も崩れ去り、奥のブラックホールへと吸い込まれていく)
バララララララッ!
ゴォォォォォォウッ!!
怠惰『あれ〜?このままだと黒雪姫も吸い込まれちゃわない?』
深淵穂乃果「そこは想定済み!」
-
深淵穂乃果「怠惰と銀騎士を解除!そしてグリードと地獄ちゃん行くよ!」
グリード『ああっ!』
地獄『任せろっ!』
深淵穂乃果「大罪出産――強欲:マモン!――憤怒:サタン!」
シャキィンッ! ドゥルルルゥンッ!!
深淵穂乃果(地獄ちゃんを大罪出産した炎のバイクに跨り、グリードを大罪出産した鎖鎌の鎖を黒雪姫ちゃんめがけて伸ばす!)
ジャラララララララッ!
ガシッ!
深淵穂乃果「よしっ……捕まえた」
深淵穂乃果「地獄ちゃんお願い!」
サタン『ああっ!』
深淵穂乃果(鎖を黒雪姫にぐるぐる巻にしたのを確認して地獄ちゃんに指示を出す)
深淵穂乃果(空飛ぶバイクのサタンならこのブラックホール部屋から脱出できるはず)
ドゥルルルゥンッ!
サタン『いいぜ……この出力なら脱出は>>399』
-
できそうかなん?
-
サタン『……できそうかなん?』
深淵穂乃果「え?嘘っ!いけるでしょ!」
サタン『いや……なんか予想以上にブラックホールの勢いが強まってて、進むのが難しい気が……』
ドゥルルルゥッ!
深淵穂乃果「ええっ!?」
深淵穂乃果(黒雪姫ちゃんに巻きつけた鎖を巻き取りながら私は困惑した表情を浮かべる)
深淵穂乃果「私はこうやって鎖巻き取れるのにサタンの出力で動けないなんておかしくない……?」
マモン『ふむ……おい深淵、もう片方の鎖を出口の方へ投げてみろ』
深淵穂乃果「え?うん」
ビュンッ!!
ジャラララララララッ
ヒュンッ
深淵穂乃果「あれ……?鎖がすごい勢いで戻ってくるよ」
グリード『やっぱりな、理屈は分からんがブラックホールから離れれば離れるほど吸引力が強まるらしい』
グリード『今私たちがいる場所がギリギリ自由に動ける吸引力の境目なんだろう』
-
深淵穂乃果「えぇ……なんだかややこしいなぁ」
カチャンッ
深淵穂乃果(鎖を巻き取り終えた私は黒雪姫ちゃんを抱えながら頭を抱える)
サタン『ここから後ろに吸い込まれる気はしないけど、同時に前に進める気もしないな』
サタン『小型ブラックホールの吸引力とオレの推進力が丁度釣り合ってる感じだ』
サタン『オレの能力じゃお手上げだな、できそうかなん?というかどうにも出来る気がしない』
サタン『何か一瞬だけでも吸引力が収まれば――』
タンッ
??「――お助けが必要かなん?」
深淵穂乃果「……え?」
深淵穂乃果(突如、バイクに跨った私の目の前に入院着姿の人が現れる)
深淵穂乃果(青い髪をポニーテールでまとめ、背中に時計のついた長い棒を背負ったその人は、その時計棒を振りかざし呪文らしきものを唱えた)
バッ!!
??「時の潮を散布!対象後方のブラックホールの吸引範囲に合わせて時の海を形成!」
??「時間よ〜止〜まれっ!」
キィーーーーンッ!
サタン『……っ!吸引力が弱まった!?』
??「長い時間は止めてらんないよっ!早く発車しちゃって!」スタッ
サタン『あ、ああ!』
ドゥルルルゥンッ! ドンッ!!
-
深淵穂乃果(私と黒雪姫ちゃん、それからポニーテールの人を乗せた炎のバイクは勢い良く飛び出す)
深淵穂乃果(急加速した空中を駆けるバイクはあっという間に壁の穴へ到着)
キキィッ!
深淵穂乃果(私たちは無事にブラックホール部屋から脱出することができた)
深淵穂乃果(……というか)
深淵穂乃果「あなたは誰?どこかで見た覚えはあるんだけど……」
??「ん?私はハグカナーンだよ、見ての通りここで治療受けてる患者の1人」
深淵穂乃果「ああー」
深淵穂乃果(そういえば白ムンガンドが飲み込んじゃった人の中に意識を失ったこの人がいた気がする)
深淵穂乃果「そっか……ハグカナーンはどうしてここに?治療を受けてたってことは医務室にいたんだよね?」
ハグカナーン「それは>>403」
-
誰でもいいからハグしたくて
-
ハグカナーン「誰でも良いからハグしたくて」
深淵穂乃果「ハグ?」
ハグカナーン「私はハグすることで元気になるの、ってわけでハグー!」
ギュゥゥッ!
深淵穂乃果「ひゃぁぁっ!」
ハグカナーン「いや〜、穂乃果ちゃんの体も柔らかくていいな〜、穂乃果因子の恵みを感じる〜」
深淵穂乃果「な、なななんなの?」
ハグカナーン「特設医務室で元気な人には大体ハグしたし、やっぱり新しい人とハグできるのはたまらない」
ザッ
真姫「コラコラ、そのくらいにしておきなさい」
ハグカナーン「んー?真姫ちゃんももう1度ハグして欲しい?」
真姫「し、してほしくないわよっ!」
ハグカナーン「へぇ〜」ニヤニヤ
-
真姫「全く……ほのキチ倶楽部の残党が調子に乗って……」
真姫「あなたが来たのには別の意味もあるんでしょう?」
ハグカナーン「まぁねぇ」
深淵穂乃果「あの……そろそろ離して欲しいんだけどぉ」
ハグカナーン「そこのバイクの上で鎖簀巻にされてる黒ドレスの子、その子と戦ってた穂乃果ちゃんたちは分かってると思うけど」
ハグカナーン「今このお城は敵の襲撃にあってる真っ最中なの」
真姫「黒雪姫の口ぶりからするとそのようね」
ハグカナーン「で、今の特設医務室の状況なんだけど、>>406」
-
籠城作戦を実行中
-
ハグカナーン「特設医務室はあそこにいるメンバーで籠城作戦を実行中よ」
ハグカナーン「連絡用に私と何人かが出たけど、それ以外は守りを固めてる」
真姫「……なるほど、それは懸命な判断ね」
真姫「あそこには負傷者が多く寝ているはず、一番守らなければいけない場所よ」
ハグカナーン「そうそう、英玲奈ちゃんも同じこと言ってたよ」
深淵穂乃果「ハグカナーン以外には……どこに連絡役が行ってるの……?」
深淵穂乃果(抱きつかれたままで多少苦しさを覚える中、私も2人の会話に割って入る)
ハグカナーン「外で警備してる黒川って人たちのとこに1人、鞠莉って人のラボに1人……くらいかな」
ハグカナーン「停電中で城内通信もできなかったからそれなりに腕の立つ人を送ることにしたんだよ」
ハグカナーン「それで私は手術室担当」
ハグカナーン「まぁ手術室には誰もいなくて、なんとなく怪しい道を進んで来たらこの部屋に着いたってわけ」
ハグカナーン「外にいた亜種穂乃果に事情を聞いて助けに参ったのだ」
-
真姫「なんとなくでここまで来るなんて、さすがほのキチ倶楽部の幹部なだけらあるわ」
ハグカナーン「はは〜、もっと褒めて良いんだよ〜」ニヤニヤ
真姫「それで私たちはこれからどうすれば?」
ハグカナーン「私はお助けキャラだから、真姫ちゃんたちの行動に付き従うよ」
真姫「……そう、だったら黒雪姫から情報を聞き出すのが先かしら」
真姫「敵が何人いてどこを重点的に攻めてきてるのか、情報が分からないと動きようがないもの」
黒雪姫「ぐ……ぬ……」
深淵穂乃果(怠惰の魔力で弱ってる黒雪姫ちゃんは小さい呻きをあげるだけでグッタリしてる)
深淵穂乃果「あ!そうだ真姫ちゃん!私から提案!」
真姫「なに?」
深淵穂乃果「私、黒雪姫ちゃんに美味しいもの味合わせてあげるって言ったから、何か本当に美味しいもの食べさせてあげたい!」
真姫「そうねぇ……美味しいもの食べれば口も割りやすくなるかも……」
ハグカナーン「そんな単純かなぁ」
真姫「穂乃果はどんな料理を考えてるの?」
穂乃果「え?えーと……>>409」
-
ラ○チパック
-
深淵穂乃果「ラ○チパック……的な?」
真姫「料理なのそれ?」
深淵穂乃果「りょ、料理だよ!立派な料理!!」
真姫「……まぁ、今の状況で凝った料理は作れないだろうし、手軽に美味しいものが1番か」
真姫「パンなら救援物資に入ってるだろうからこの場で作れるしね」
深淵穂乃果「うんっ!」
真姫「中身は穂乃果が好きなの入れていいわよ」
深淵穂乃果「おぉー!」
深淵穂乃果「……と喜んだみたものの、実際考えるとなると選択肢が多くて迷うなぁ」ウーン
深淵穂乃果(戦って体を動かした後だからエネルギー補給できるものがいいのか、単純に美味しさを重視したものがいいのか)
深淵穂乃果(黒雪姫ちゃんの好みもあるだろうし、何より材料が用意可能なものって条件がある)
深淵穂乃果「ま、何はともかくクッキング開始しよう!始めたら何か思いつくかもしれない!」
─────────────────
ドスケーブ城・ブラックホール室〜奴隷人体実験室
AM3:40〜AM3:45 新終末編『144』了
-
というわけでここまで
今回は少し短め
そしてクッキング回
新終末編『145』に続く
かもしれない
-
新終末編『145』
─────────────────
──ドスケーブ城・奴隷人体実験室
AM3:46
ガサゴソ
真姫「追加食料として入っていた食パンと……ラ○チパックっぽくするための型はこれが使えるわね」
真姫「よし、準備はこのくらいで良いかしら」
深淵穂乃果(真姫ちゃんが補給バッグに入っていた物の中から必要なものをテーブル……もといテーブル代わりの実験台の上に広げていく)
深淵穂乃果(包むための食パンと中にいれるための具材、それから諸々の道具)
深淵穂乃果(今部屋の中にいるのは私と真姫ちゃんと鎖にグルグル巻きにされた黒雪姫ちゃんだけ)
深淵穂乃果(ハグカナーンは「見張りをしておくねー」と言って外に出ていってしまった、たぶん女医ロボたちのとこに行ったんだろう)
黒雪姫「何を……する気……」
深淵穂乃果「クッキングだよ!」
黒雪姫「……クッキング?」
深淵穂乃果(今の黒雪姫ちゃんはグリードの鎖で縛りつつ、横に再出産したベルフェ枕を添えて寝かせている格好だ)
深淵穂乃果(怠惰ちゃんには"喋ることは出来るけど反抗する気力が沸かない"程度に怠惰の魔力量を調整してもらってる)
深淵穂乃果「さてと……」
深淵穂乃果(私は台の上に並べられた具材の候補に目を通す、現状で用意できるのもは大体用意してもらったつもり)
深淵穂乃果(この中から選ぶとすれば……>>413)
-
金目鯛
-
深淵穂乃果「この金目鯛だねっ!豪華だし!」
真姫「まさか補給物資に金目鯛の缶詰が入ってるなんて驚いたわ」
真姫「鞠莉の趣味でしょうけど……こういう糧食にはもっと万人受けするものを選んでくれないかしら」
深淵穂乃果「まぁまぁ、今回はメインの具材になりそうだし鞠莉さんに感謝しないと」
ググッ パキッ
深淵穂乃果(缶詰の蓋を開けると中には大きな鯛の身が詰まっていた)
深淵穂乃果(それを箸でつまんで、予め耳を切っておいた食パンの上に乗せる)
真姫「シーフードサンドか、確かにこれはこれで美味しそうね」
真姫「缶詰の汁が染みてこないかちょっと気になるけど……」
深淵穂乃果「まだまだ、これで終わりじゃないよ」
深淵穂乃果「金目鯛の身をゴロゴロゴロと贅沢に並べたら、そこで味の決め手のソースをかけるの」
真姫「ソース?」
深淵穂乃果「お魚との相性諸々を考えて選ぶのは……ズバリこれ!>>415」
-
チーズケーキ味
-
深淵穂乃果「チーズケーキ味のソース!」
ドロロロロロッ!!
真姫「うっ……本当にそれでいいの?」
深淵穂乃果「いいの、チーズケーキは美味しいってことりちゃんも言ってたし」
真姫「というか何でそんなソースが入ってるのよ……」
ドロロロロロッ ドロロロロロッ!
深淵穂乃果(黄色いボトルに入ったチーズの匂いがするソースをこれでもかと金目鯛の身の上にかけていく)
深淵穂乃果(鯛が完全にチーズケーキソースに隠れたところで上から蓋となる食パンを……)
パッ!
深淵穂乃果「どーんっ!」
真姫「こら潰さないの!優しく乗せるだけ!」
深淵穂乃果「はーいっ、分かってるって」
真姫「今から型を使って周囲をくり抜いてパンの端をくっつかせるから」スッ
ギューーッ グリグリ
-
ポンッ
真姫「はい出来た、どうぞ」
深淵穂乃果「ありがとうっ」
深淵穂乃果(真姫ちゃんが二重にした食パンをくり抜いてラ○チパックの形にしてくれた)
深淵穂乃果(売ってるラ○チパックと比べると不格好だけど、これでも充分美味しそう)
深淵穂乃果「見て黒雪姫ちゃん!これが私たちが作った料理だよ」
黒雪姫「料……理……?」
深淵穂乃果「えへへ、料理と言うには簡単すぎて雑に感じるかもしれないけど、確かに私たちの気持ちが入った料理だよ」
深淵穂乃果「まず1回食べてみて?」
黒雪姫「う……うん……」ゴクッ
深淵穂乃果(黒雪姫ちゃんは目新しいものに興味を持ったのか、ラ○チパックに向かってゆっくりと手を伸ばす)
深淵穂乃果「怠惰ちゃんは魔力を少しだけ抑えて、グリードは鎖の締付けを少し緩くお願い」
怠惰『ふぁ〜い』
グリード『おう』
シュルルッ
-
黒雪姫「これが……料理」スッ
深淵穂乃果「うん、ゆっくりと食べてね」
黒雪姫「……はむっ」
モグモグ
深淵穂乃果(小さな口でパンに噛み付いた黒雪姫ちゃんはゆっくりと咀嚼する)
深淵穂乃果(自分の口に入った未知のものの正体を確かめるように、ゆっくりと、ゆっくりと……)
深淵穂乃果「味は……どう?」
黒雪姫「……>>419」
-
ハノケチェン
-
黒雪姫「…………美味しい、ハノケチェン」
深淵穂乃果「え?」
黒雪姫「……分からない、食べた瞬間に、なんだか急にその言葉が思い浮かんで来たの」
黒雪姫「この黄色い液体が……なんだかとても美味しく感じる……」
深淵穂乃果「ふむ、チーズが好きなのかな、鯛はどう?」
黒雪姫「鯛……?」
深淵穂乃果(鯛がなんなのか分からないのか、分かっていても入ってることに気付いてないのか)
深淵穂乃果(黒雪姫ちゃんは不思議そうに首を傾げる)
深淵穂乃果「はは、そりゃチーズの味しかしないよね……」
黒雪姫「料理……というものはよく分からないけど、姫が外郭界にいた時にはこんな複雑な味は無かった」
黒雪姫「食事なんて言えば薬っぽい味の美味しくないものばっかりだったのに……」
深淵穂乃果(黒雪姫ちゃんの口が回ってくる、怠惰の魔力の影響を好奇心が上回ってきたのだろう)
深淵穂乃果(上機嫌なうちは暴れないと思うけど、念のために脳内で怠惰ちゃんにいつでも魔力を強められるようお願いしておく)
-
深淵穂乃果「そっか、料理を食べるのも殆ど初めてなんだ」
黒雪姫「……うん、こんな美味しいのはじめてだよハノケチェン」モグモグ
黒雪姫「姫の仲間も料理ってのを食べたら」
深淵穂乃果「うーん……」
深淵穂乃果(なんだろう、この呼び方にはやっぱり違和感があるな)
深淵穂乃果(まるでことりちゃんに呼ばれてるような感じ……)
深淵穂乃果「ねぇ黒雪姫ちゃん、色々お話を聞きたいんだけど……その前に1つ良い?」
黒雪姫「……なに?」モグモグ
深淵穂乃果「黒雪姫ちゃんは南ことりって人に心当たりはある?」
黒雪姫「……>>422」
-
知らないし、食べるの邪魔するなら、コロスよ
-
黒雪姫「知らないし、食べるの邪魔するなら、コロスよ」ギロッ
深淵穂乃果「あははは、ごめんごめん……」
黒雪姫「はむっ!はむっ!」
ガツガツッ
深淵穂乃果(うーん……なんだか扱いにくい子だなぁ……)
深淵穂乃果(料理を不思議がって慎重に食べてたと思えば、急に飢えた野良犬みたいにガツガツ食べてるし)
深淵穂乃果(元々情緒不安定っぽい感じだけど興奮してるせいで強まってるのかな)
グリード『どうする?拘束を強めるか?』
深淵穂乃果『ううん、今は空腹と食欲で気が立ってるだけだと思うからいい、変に刺激してこれ以上敵視されても困るしね』
大食い『そうそう!食事ってのは誰にも邪魔されず穏やかにするものじゃないと!』
グリード『……分かった、従おう』
-
プハッ!
黒雪姫「食べ終わった!次!」
深淵穂乃果「え?次?」
黒雪姫「これ一個じゃ足りないっての!」
深淵穂乃果「あー、えーと……」
深淵穂乃果(しまったな、もう1つなんて用意してな――)
真姫「はいどうぞ、トマトチーズサンドよ」スッ
黒雪姫「もぐっ!」バクッ!
深淵穂乃果「真姫ちゃん?」
真姫「そんなことだろうと思って作っておいたのよ、とりあえず満足するまで食べさせてあげましょう」
真姫「食に対する反応を見るにこの方法で何か聞き出せるかもしれない」
深淵穂乃果「そうだね」
深淵穂乃果(ことりちゃんっぽい発言も気になるし……)
深淵穂乃果「よっし!どんどんラ○チパックを作るよ!!」
─────────────────
ドスケーブ城・奴隷人体実験室
AM3:46〜AM3:50 新終末編『145』了
-
というわけでここまで
黒雪姫ちゃんモグモグ
新終末編『146』に続く
かもしれない
-
新終末編『146』
─────────────────
──ドスケーブ城・奴隷人体実験室
・
・
AM3:58
ガツガツ! ガツガツ!
モグモグ! モグモグ!
黒雪姫「……ぷはっ!満足したー!」
深淵穂乃果「満足したのなら良かった、作った私も嬉しいよ」
真姫「結局糧食としてリュックに入ってた殆どのパンを食べたわね……こんなにサンド作ったのは初めてよ?」
深淵穂乃果「なんだかラ○チパックの工場みたいだったね、私が具を入れて真姫ちゃんが挟むの繰り返し」
真姫「大変だったし具の組み合わせも大分適当だった気がしないでもないけど……」
黒雪姫「はぁー!美味しかったぁー!」
真姫「お腹が膨れてくれたようなら何よりよ」
黒雪姫「……で?なんだっけ?姫に聞きたいこと?」
真姫「そうよ、この城に攻め入ってきた敵の人数とそいつらの詳細、しっかりと思い出してもらってね」
黒雪姫「えー、なんで姫がそれを教えなきゃ――」
真姫「教えてくれたら後でまたパンあげるから」
黒雪姫「……まじ?」
真姫「まじまじ」
-
黒雪姫「……ひっひっひ、ひゃひゃひゃひゃっ!」
黒雪姫「いいねぇ、こんな美味しいものが食べられるなら教えてあげる価値はあるかも」ペロリ
深淵穂乃果(上手く行った……のかな、お腹が満たされた黒雪姫ちゃんはまた穏やかになっている)
黒雪姫「まず……姫と一緒に来たのは4人だった覚えがある」
黒雪姫「唯一名前覚えてるのはリーダーっぽく威張ってる白狼王ってやつ」
真姫「白狼王……」
黒雪姫「後はいつもそいつに付き従ってる腰巾着が1人、屋上から侵入した時に私と一緒に発電機をぶっ飛ばした荒っぽいやつが1人、よく分かんないやつが1人」
黒雪姫「白狼王と腰巾着は城の全容が把握できる場所に行くって言ってた、それからゲート狙い?とかなんとか」
黒雪姫「荒っぽいやつは外を見回るとか言ってて、よく分かんないやつはラボを見に行くって言ってたかなー」
黒雪姫「あ……そうそう、中心の面子の他に雑魚兵みたいのが>>428体くらい来てるかも」
-
10,000,000,000
-
黒雪姫「10,000,000,000体くらいいるかも」
深淵穂乃果「ひゃ、百億ぅ!?」
真姫「それも驚いたけど……仲間のことなのに随分曖昧なのね」
黒雪姫「仲間……って感じじゃないからね」
黒雪姫「姫たちは単にフードマンに作られた……ぐっ!!」ビクッ!
深淵穂乃果(記憶を辿りながら話していた黒雪姫ちゃんは急に頭を抱えた)
深淵穂乃果(さっき暴れだした時と同じような兆候……過去の話がダメなのかな)
深淵穂乃果「真姫ちゃん!」
真姫「……分かってる!穂乃果は怠惰の量を増やして!」
深淵穂乃果「うんっ」
怠惰『ほっ!』ボォォォウッ
黒雪姫「くっ…………」
真姫「このお茶を飲んで、落ち着くわよ」スッ
黒雪姫「……んっ」
ゴクンッ
-
深淵穂乃果(怠惰ちゃんに怠惰の魔力を増やしてもらって黒雪姫ちゃんの動きを緩慢にしたところで、真姫ちゃんが特製のお茶を飲ませる)
深淵穂乃果(これも予め話し合って決めていたこと、また暴れられたら困るし……)
黒雪姫「ふぅ……」
真姫「大丈夫よ、無理しなくていいから」
深淵穂乃果(怠惰の魔力の後に鎮静剤を打つという案もあったけど、体質的に効くか分からないし、何より黒雪姫ちゃんが薬を嫌ってる感じがある)
深淵穂乃果(いくら気力を削いでるとは言っても逆効果になりそうなことはやらないほうがいい)
真姫「それにしても100億の兵隊か、想像できないほどの数ね」
深淵穂乃果「というかそんな数城に入りきるの……?」
黒雪姫「さすがに突入してきたのはそんなにいないよ、外郭界から姫たちと一緒に来たのが100億」
黒雪姫「大体はこの城の周辺の地域を取り囲んでいる感じかな……城を攻め落とすための兵隊だね、ひっひっひ」
真姫「ねぇ、その中にアルパカウイルスの感染者たちは含まれていたりしない?」
黒雪姫「少しはいると思うけど……でも数的には微量じゃない?」
真姫「そうね、都民全てを合わせても1割にも満たない、でも間違って攻撃したら大変だわ」
真姫「あなたたちの兵隊に見た目の特徴はある?」
黒雪姫「特徴……ああ、それなら見るだけで分かるよ、あいつらは全員>>431」
-
ストライキ決行中のタスキをかけてる
-
黒雪姫「あいつらはストライキ決行中のタスキをかけてるから」
真姫「なにかの労働者なの?」
黒雪姫「間違いではないね、あいつらは通称ロキワーカーと呼ばれてる」
真姫「ロキワーカー……か」
黒雪姫「全身黒タイツみたいな格好でタスキかけてるから見たら一発で分かると思う」
真姫「ありがとう、この情報は何とかして共有したいわね」
深淵穂乃果「城内に放送するならモニター室かな」
真姫「そうね……でも気を付けましょう、黒雪姫の話だと白狼王ってやつが城の全容が把握できる場所を目指してるはず」
真姫「モニター室を目指すとかち合う可能性が高いわ」
深淵穂乃果「うん」
黒雪姫「白狼王は『狼』の神力を植え付けられた神造人間、単純な戦闘力なら姫より強いと思うよ」
黒雪姫「せいぜい会わないように注意することだねぇ、ひっひっひ」
-
真姫「神造人間……それがあなたたちを現す言葉なのね」
黒雪姫「詳しいことは教えないよ、思い出したくもないから……」
黒雪姫「姫がワタシだったころなんて……ほんとマズくてサイアク……」
ブルルッ
黒雪姫「特にあの落書きのような顔……アレを思い出すだけで……ワタシは……」
真姫(落書きのような顔……?)
深淵穂乃果「大丈夫!」ポンッ!
黒雪姫「……え?」
深淵穂乃果「事情はよく分かんないけど、私たちに協力してくれるならもう辛いことはさせないから!」
黒雪姫「そう……」
真姫「とは言ってもどうするの穂乃果、これから他の侵入者と戦うかもしれないのに連れて行くの?」
真姫「敵と戦うのと黒雪姫を縛っておくのと両立は難しいと思うわ」
深淵穂乃果「そうだねぇ……」
真姫「穂乃果が助けた相手なんだから今後の扱いは穂乃果が決めるべきよ」
深淵穂乃果「……分かった、>>434」
-
コロシちゃおう、コロシちゃおう、コロシちゃおう・・・・・・・・
-
深淵穂乃果「分かったよ真姫ちゃん、こんなヤツは……もうイらない」
真姫「え?」
深淵穂乃果「イらないやつはコロシちゃおう、コロシちゃおう、コロシちゃおう…………」
真姫「え!?穂乃果っ!?」
ダンッ!!
深淵穂乃果「コロシちゃおうっ!」
-
・
・
ピチャンッ
深淵穂乃果(……あれ?)
深淵穂乃果(……おかしいな、真姫ちゃんの声がやけに遠くに聞こえる)
深淵穂乃果(まるで布団に入って眠る直前みたいに、自分の意識がすーっと遠くなっていく)
深淵穂乃果(その代わりに自分の中に全く知らない……黒くて冷たいものが広がっていく――)
ドロロッ
深淵穂乃果(これは……なに?)
卑猥『穂乃果!しっかりしなさい穂乃果っ!!』
プライド『何をやってるんだ深淵!気をしっかり持てっ!』
グリード『くそっ……なんなんだこの黒いのはっ!!』
ドロロッ
卑猥『穂乃果!ほの――――』
シーーーーーーン
深淵穂乃果(自分の中に広がる黒くて冷たいものが『私』と『お姉ちゃんたち』の間にまで浸透し、心にいる皆の声さえ聞こえなくなっていく)
深淵穂乃果(あ……れ?)
-
深淵穂乃果(私の視界は内側から外側へ)
深淵穂乃果「…………?」
スッ
深淵穂乃果(これは……ガラス?)
深淵穂乃果(……そうだ、ガラスだ、今私は実験室の床に散乱していたフラスコの欠片かけらを見ている)
深淵穂乃果(そこに写り込んでるのは私の顔……私の両目……)
深淵穂乃果(まるで……"闇を塗りたくったような真っ黒な目"がそこにあった)
深淵穂乃果「そうだ、コロスんだった」
カチャッ
深淵穂乃果(私はやるべきことを思い出し、腰に差してあった刀の柄に手をかける)
深淵穂乃果「地獄刀――焔」
カチンッ! ボォォォウッ!!
深淵穂乃果(地獄穂乃果の力が宿った日本刀を軽く引き抜いた、真っ赤に熱された刀身から火の粉が飛び散る)
真姫「穂乃果っ!止めなさいっ!!」
ギュルルルルッ!!
深淵穂乃果「……え?」
-
ガシッ!
深淵穂乃果(真姫ちゃんが髪を伸ばして私の体を拘束する)
深淵穂乃果(ま、大して問題は無いけど……)
ヒュンッ!
ボォォォウッ! バラララッ!!
真姫「……っ!」
深淵穂乃果(焔の刀身を添えて引くだけで真姫ちゃんの長い髪は焼ききれた、他愛もない)
黒雪姫「ひひっ、ひひひひひっ」
深淵穂乃果(そしてそのまま、俯いて小さく嗤い続ける黒雪姫の胸元へ刀の先を突き立てる)
深淵穂乃果「よっ」
ザシュッ!!
深淵穂乃果(すると黒雪姫の体は>>439)
-
分裂した
-
深淵穂乃果(すると黒雪姫の体は……分裂した)
シュゥンッ
深淵穂乃果「……?」
深淵穂乃果(丁度刀を突き立てた胸の当たりから左右に半分ずつ、切り開いたかのようにパカッと割れて分裂)
深淵穂乃果(分裂した左右の半身はそれぞれ成長して元の黒雪姫の姿に戻る)
深淵穂乃果「ナニ……ソレ?」
黒雪姫「ああ、利用してごめんね、それとそっちの赤髪の人は踊ろかせてごめん」
真姫「……え?」
黒雪姫「まず言っておくと姫を普通の方法で殺すことはできない、『冥界の女神』を植え付けられた姫は死を司るものだから」
深淵穂乃果(分裂して2人になった黒雪姫が同時に口を動かして喋る)
真姫「ま、待って!どういうことなの!?」
黒雪姫「だから聞いてって、あなたたちが困ってるみたいだから協力してあげたんだよ」
黒雪姫「あなたたちはいつ裏切るか分からない姫を連れて行くわけにはいかない、けれど姫を放置しておくのも危険、そういうことだよね?」
真姫「え、ええ……」
深淵穂乃果(ああ、怠惰をしまっちゃったからなのか、怠惰の魔力が切れて黒雪姫は本調子に戻ってる)
-
黒雪姫「それは姫も同じなんだよ、美味しいもの食べさせてくれたから協力はしたいけど、一緒にいるところを白狼王たちに見られるのは嫌だ」
黒雪姫「そこで提案……というわけだよ、ひっひっひっ」
真姫「提案……?」
黒雪姫「姫を2つに分裂させた、1つは力を持たない生を司る右半身姫、もう1つは死を司る力を持つ左半身姫」
黒雪姫「このうち左半身姫を深淵穂乃果の中に潜ませる」
黒雪姫「そのために深淵穂乃果を少し操って姫を殺させたんだ」
真姫「待って待って、操った……?ってことはこの状態の穂乃果は元に戻るの?」
黒雪姫「うん、>>442をすれば簡単に戻るよ」
-
誰かを殺せば
-
黒雪姫「誰かを殺せば簡単に戻るよ」
真姫「……ん?じゃあもう戻るじゃない」
黒雪姫「ごめん、姫はノーカンなの、他に誰か殺させて」
真姫「えぇー、そんな……」
黒雪姫「大丈夫だって、姫の力には死者を蘇らせる力があるから、それを穂乃果ちゃんが使えば生き返らせる事ができるよ」
真姫「簡単に言ってくれるわね……まぁいざとなったら閻魔を探して連れてくる手段もあるか」
真姫「分かったわ、殺すのを試してみる」
黒雪姫「……姫が提案してなんだけど、なんか気軽に言うよね」
真姫「私たちわりと生死観ガバガバなのよ」
-
黒雪姫「まぁいいや、じゃあ起きたことを説明するね」
真姫「ええ、お願い」
黒雪姫「姫が使った呪いは全部で2つ」
黒雪姫「1つは一定時間目を合わせた相手を操り誰かを殺させる『傀殺呪詛』」
黒雪姫「もう1つは自分を殺した相手に自分の力を送り込む『死際呪詛』」
黒雪姫「前者で深淵穂乃果を操って姫自身を殺させ、後者の発動条件を満たしたってわけ」
真姫「自分の力を穂乃果に送り込むために……?」
黒雪姫「そう、本当ならこの2つは最初の戦闘で使おうと思ったんだけど、穂乃果ちゃんがあまりにアクティブで目を合わせる暇なくてねぇ」
黒雪姫「オマケにトドメも殺しじゃなくて枕で眠らせてくるとか罠も発動できないよ、ひっひっひっひ」
黒雪姫「まぁ……姫の半身を深淵穂乃果に送り込むメリットはこうだよ」
黒雪姫「穂乃果たちからすれば、姫と一緒に行動せずに姫から力を取り上げておける」
黒雪姫「残るのは力の無い方の姫だから放っておいても問題はない」
真姫「なるほど……逆にあなたからすれば、私たちに捕縛されて行動を共にしてるところを仲間に見られない」
真姫「裏切り者扱いされて余計な諍いが起きるのを避けられる」
黒雪姫「そういうこと、理解が早くて助かるねぇ」
-
黒雪姫「お互いにWin-Winな取引だとは思わない?」
真姫「リスクはあるわよ、あなたの力を取り込んだ穂乃果が暴走することはないの?」
真姫「さっきみたいな暴走モードに入らない保証はないでしょう」
黒雪姫「そこはほら……きっと穂乃果ちゃんが御してくれるよ、ひっひっひ」
真姫「そんな人任せな……」
黒雪姫「とにかく呪いはもう発動したし、左半身姫は穂乃果ちゃんの中に入るよ〜」
黒雪姫「あとはよろしくー」シュルルルルルッ!
真姫「はぁ……先が思いやられるわねぇ」
─────────────────
ドスケーブ城・奴隷人体実験室
AM3:58〜AM4:03 新終末編『146』了
-
というわけでここまで
時間的にそろそろシーン切り替えたいけど
ゴタゴタしてるので解決してから移ります
新終末編『147』に続く
かもしれない
-
新終末編『147』
─────────────────
──ドスケーブ城・奴隷人体実験室
AM4:03
深淵穂乃果「うぅ…………」フラフラ
空黒雪姫「…………」ニヤニヤ
真姫「はぁ……」
真姫(現状を整理しましょう)
真姫(今この部屋には私と、呪いをかけられて呆然としてる穂乃果と、穂乃果に殆どの力を譲り渡した黒雪姫の半身がいる)
真姫(戦う力を持たない空(から)の黒雪姫……仮に"空黒雪姫"と呼称することにするけど、彼女が言う穂乃果の呪いを解く方法はこうだ)
真姫(『穂乃果の手で誰かを殺させること』)
真姫「殺す……ねぇ」
真姫(元々1女学生の身だしそのワードに抵抗はあるけれど、時には仕方のないこととして割り切れるくらいの経験は積んできた)
真姫(某主人公が『大丈夫だドラ○ンボールで生き返る』と言うように、うちには蘇生要因がそれなりにいるし)
真姫(つまり私が悩んでいるのは手段ではなく人選……誰を殺すかという話だ)
真姫(私が死ねば穂乃果や外の皆に事情を説明できないし、空黒雪姫は身体的に死ぬことが出来ないらしい)
真姫(となると外の誰か……説明する手間が省けてすぐに私の言うことを聞いてくれる人は……)
真姫「……そうね」
-
真姫「奴隷穂乃果ー?ちょっと来てくれるー?」
奴隷穂乃果「はいはーい!」シュバババッ!!
真姫「この台の上に寝て」
奴隷穂乃果「はいはーい!」バッ!
真姫「穂乃果ぶっ刺していいわよ」
深淵穂乃果「はーい!」
グサッ!!!!
奴隷穂乃果「ぎゃああああああっ!」
空黒雪姫「おぉ……テンポが良い殺害だ……」
真姫「奴隷人体実験室って名前だしね」
深淵穂乃果「……はっ!何が起こったの……ってうわっ!みんな一斉に話しかけないで何何何!?」
真姫「穂乃果、呪いは解けたかしら?」
深淵穂乃果「うん……?うん」
真姫「じゃあ手短に説明するわね――」
・
・
真姫(おそらく心配していた心の中の穂乃果たちから話しかけれて混乱してる穂乃果に、私は起こったことのあらましを説明した)
真姫(黒雪姫の呪いのこと、力の譲渡によるお互いのメリット、そして悲しく死んでしまった奴隷穂乃果のこと)
-
深淵穂乃果「そっか……私の中に黒雪姫ちゃんの力が……」
深淵穂乃果「っていやいや!奴隷穂乃果を殺しちゃってどうするの!?」
真姫「それは――」
空黒雪姫「穂乃果ちゃんが姫の力を使えばいいんだよ」
深淵穂乃果「……私が?黒雪姫ちゃんの力を?」
空黒雪姫「そう、材料は揃ってる、穂乃果ちゃんなら出来るはず」
空黒雪姫「練習だと思って使ってみるといいよ、ひっひっひっひっ」
深淵穂乃果「……分かった、やってみる」
・
・
深淵穂乃果「すぅー……はぁー……」
深淵穂乃果(大きく深呼吸、自分の中にあるという黒雪姫ちゃんの力をイメージする)
トプンッ
深淵穂乃果(……来た、さっき呪いを受けたときと同じ感覚)
深淵穂乃果(暗くて冷たい……深海を1人で沈んでいくような感覚)
深淵穂乃果(どこまでも深い『死』と『氷』の世界が私の心を覆っていく)
スゥー
深淵穂乃果(けど、さっきと違って自分の思考が塗りつぶされることはない)
深淵穂乃果(暗い世界でひとりぼっち……孤独だけど、私は確かにここにいる)
深淵穂乃果(緞帳のように分厚い深海のカーテンの向こうに、確かに皆の存在を感じられる!)
-
黒雪姫『そうだよ穂乃果ちゃん、これがワタシに植え付けられたカミサマの力だ』
深淵穂乃果(耳元で囁く黒雪姫ちゃんの声が私に出口の方向を示す)
黒雪姫『これをあなたの力で外の世界へ産み出すんだよ』
深淵穂乃果『うんっ!』
・
・
カッ!!
真姫(見開いた穂乃果の両の瞳が漆黒に染まる)
真姫(けどさっきとは違う、穂乃果は確かな自分の意志を持って……異能を発動させる言葉を唱えた)
深淵穂乃果「神造出産――黒雪姫:ヘル!!」
ボォォォウッ!!!!
真姫「……っ!」
真姫(黒いオーラに包まれる穂乃果の体、同時に周囲に向けて冷たい暴風が吹き荒れる)
真姫(そして黒いオーラの中から姿を表した穂乃果の体は>>451)
-
見る者をムラムラさせる無自覚ドスケベボディー
-
真姫(黒いオーラの中から現れた穂乃果の体は見る者をムラムラさせる無自覚ドスケベボディーになっていた)
真姫(服は私が改良した動きやすい戦闘服ではなく、黒雪姫と似たデザインの黒いドレスを身に纏っている)
真姫(髪は後ろの高い位置結われて、氷をモチーフにした髪飾りで止められている)
深淵穂乃果「おぉ……なんか別人になった気分だよ……」
空黒雪姫「さすがだねぇ、穂乃果ちゃんなら出来ると思ってたよ〜」
真姫「ヘル……と言ったわね」
真姫「つまりは神造人間に植え付けられた神の力を、穂乃果が英雄出産の応用で自分の体に降ろしてるわけ?」
空黒雪姫「ひっひっひ、正解、神とは言っても所詮は神もどきだけどね」
空黒雪姫「フードマンは本来『自分の側』でありながらラグナロクに参加できないことが決まっている神の力を模造」
空黒雪姫「その力を植え付けて姫たちを……ううっ!」
フラッ
空黒雪姫「いけないいけない、これ以上は気持ち悪くて話せないねぇ」
真姫(そうか、今のヘルは海未のお祖母様が襲名してるんだものね)
真姫(北欧神話でロキに関係していて、尚且ラグナロク騒動で名前の出ていない登場人物)
真姫(ん?もしかして白狼王っていうのも……)
-
深淵穂乃果「よっし!何はともかく試してみるよ!奴隷穂乃果を生き返らせないと」
真姫「やり方は分かるの?」
深淵穂乃果「分かる……というより体が勝手に動く」
スッ
深淵穂乃果「私の中の黒雪姫ちゃんが感覚的にやり方を教えてくれているんだ」
真姫(穂乃果は自分の手を奴隷穂乃果の上にそっとかざす、すると……)
シュゥゥゥゥッ
真姫(奴隷穂乃果の致命傷となった傷がみるみるうちに塞がれて行き、血色が元に戻っていく)
奴隷穂乃果「……あ、あれ?」
深淵穂乃果「できたっ!」
真姫(死者を生者に戻す、北欧神話の中では冥府の女神ヘルにしかできない御技)
空黒雪姫「初めてにしては上々だね、上手く使いこなせてるよ」
深淵穂乃果「うんっ、ありがとう!」
空黒雪姫「そうだ、練習が成功したついでに教えておくよ」
空黒雪姫「穂乃果ちゃんが神造出産で使える姫の力は3つ、死者蘇生と氷を操る能力、それから>>454」
-
情緒不安定になることによる身体強化
-
空黒雪姫「それから情緒不安定になることによる身体強化」
深淵穂乃果「ふむふむ」
空黒雪姫「まぁ……最後のはあんまりお勧めしないけどね、穂乃果ちゃんは使わなくても強いだろうし」
真姫「本当に色々ありがとう、黒雪姫」
空黒雪姫「別に……姫は美味しいもの食べたいだけだし」
真姫「この後1人で行動するなら卍階に行ってみるといいわ、まだお店やってるかは分からないけど何か食べられるはず」
真姫「そこまでの案内図と私の名前で紹介状も渡しておくわ」スッ
空黒雪姫「おぉ、これはありがたい」
真姫「じゃあ私たちはモニター室へ向かいましょうか、外にいるハグカナーンたちをいつまでも待たせておけないし」
深淵穂乃果「そうだね!行こう!」
タタタタッ
-
・
・
・
──モニター室
AM4:00
カタカタッ
??「あれ……やっぱりダメだなぁ」
白狼王「黒雪姫がいる場所の映像はまだ映らないのか」
??「そうだね、たぶん部屋に付いてる監視カメラ自体が壊れてるんだと思う」
??「そのせいで『道』が成立しなくなって僕の能力が働いてないんだ、きっと黒雪姫が暴れたせいだね」
白狼王「なるほど……黒雪姫の場所がモニターできないなら他だ、他に大きな戦いが起きてる場所を映せ」
??「他ねぇ、じゃあここかな、>>457」
-
城の入口
-
??「ここかな、城の入り口」
白狼王「ほう……」
??「ここでも先刻から激しい戦いが起きているんだよ」
カタカタッ
??「ほら」
ヴォンッ
白狼王(モニターに映るのは破壊され雪の吹き込む城の入り口、エントランス)
白狼王(そこにはボロボロになっている何人かの人影が映っていた)
白狼王「確か外回りはあやつが担当していたよな?」
??「うん、外に出ている警備を潰しに向かったね、あいつも黒雪姫と別ベクトルで単独行動が好きだから困る」
白狼王「ふんっ、我らの間に元よりチームワークなど無いわ、あるのはチームのための個人プレーのみ」
??「はいはい」
白狼王「しかしあやつか、確か名前は……>>459と言ったか?」
-
銀帝
-
白狼王「あやつは確か……銀帝と言ったか?」
??「そうそう」
カタカタッ
??「銀帝は植え付けられた力から言ってかなりのパワープレイヤーだからね、戦う方も大変だ」
白狼王「はっ、ただの脳筋バカだろう、黒雪姫のほうがよっぽど厄介だ」
??「さすが白狼王は言うことが違うねぇ、それとも兄妹のよしみ?」
白狼王「バカを言え……フードマンがどういう想定かは知らんが我らの間に元の神の関係など無いわ」
白狼王「それにそれを言ったら銀帝のやつがデカイ顔するだろう、気に要らん」
??「くくくっ」
??「まぁそれじゃあ見てみようよ」
??「その銀帝様とここのやつらの戦いの結果ってやつをさ――――」
─────────────────
ドスケーブ城・奴隷人体実験室
AM4:03〜AM4:08 新終末編『147』了
-
というわけでここまで
次は城の別シーンから
新終末編『148』に続く
かもしれない
-
新終末編『148』
─────────────────
──ドスケーブ城・エントランス
AM3:30
ジッ ジジジッ
黒川(真っ暗だったエントランスを弱々しい照明が照らし出す)
黒川(やっと予備電源が動いたのか、誰かが停電を復旧させたのかは分からない……)
黒川(けれど、"既に手遅れな私たち"には、その光が何の手助けにもならないことだけは分かっていた)
黒川「はぁ……はぁ……」
ナンジョルノ「ぐっ……はぁ……」
黒川(照明が照らし出すのは完全に入り口が破壊されたエントランスの姿)
黒川(ガラスとコンクリートの瓦礫が散らばり、床は地震が起こったようにひび割れ、通常の何倍にも大きく開かれた入り口からは寒々しい音と共に雪が吹き込んでいる)
黒川(そんなエントランスに無様に転がっているのが……私とナンジョルノというわけだ)
-
黒川「ナンジョルノ……生きてますか」
ナンジョルノ「勝手に死んだことにしないでくれます?」
グググッ
ナンジョルノ「全く……病み上がりで警らに出たらとんでもないものに出くわしましたわね」
黒川「ええ、本当に……」
黒川(全身傷だらけでズタボロの私たちは呼吸を整えながらゆっくりと立ち上がり、破壊されたエントランスの入り口を見つめる)
黒川(先程……私たちはあの外から敵の一撃を食らって此処まで吹き飛ばされたのだ)
黒川(派手なノックにもほどがあるというものです)
ギシッ
黒川(頭がクラクラするし全身の骨が軋んでいる、正直意識を失ってないのが驚きなほど)
黒川(女医ロボの手術を受けて少しはタフになったということでしょうか……)
ザッ
ナンジョルノ「ほら、お客様が来ましたわよ」
黒川「……っ」
黒川(洞窟みたいに大きく口を開いた入り口から姿を表したのは――巨人だった)
ドシーーンッ!
黒川(身長は目測で約5mほど、銀色の服を身に纏い、他の特徴としては>>464)
-
まさに、ゴリラ・ゴリラ・ゴリラ
-
黒川(まさに、ゴリラ・ゴリラ・ゴリラと言った筋骨隆々な出で立ち)
黒川(身に纏う銀色の服と相まって全身の筋肉が鎧のように見える)
黒川「銀帝――――!」
銀帝「……ホウ、今の打撃を受けてまだ立ち上がるか……小娘共」
黒川(銀帝の低く重い声がエントランスに響く)
銀帝「ならば今度こそ沈めてやる、二度と立ち上がれんようにな」
スッ
ドシーーンッ! ミシミシミシッ!!
黒川(銀帝が足を踏み出す度に床の地割れが大きく広がる)
黒川(本当に……この敵は規格外だ)
黒川(外を見回っていた私たちと接触してから、この敵がした行動は2つだけ)
黒川(1つは自分の名を名乗ること、もう1つは周囲の物全てを自らの豪腕で破壊することだ)
黒川(傍から見るだけではその巨体以外に能力らしき能力を使った形跡も見えない、あるのは残酷なまでの暴力)
黒川(銀帝は銀に輝く両の拳を打ち付けエントランス周囲の城の外壁を破壊し、私たちを戦闘不能一歩手前まで追い詰めている)
-
黒川(それに――)
ナンジョルノ「舐めて貰っては困りますわ!サイコガン!!」
キュゥゥンッ!!
銀帝「ふんっ!!」
キィンッ!
ナンジョルノ「くっ……やっぱり効きませんか……」
黒川(銀帝はナンジョルノの放つサイコガンの光さえ豪腕で弾く)
黒川(敵わない――私の直感が告げる)
黒川(これは人と人との戦いではない、まるで自然の脅威を相手にしてるような感覚……)
黒川「けれど!諦めるわけにはいきません!」
バッ!
黒川(私は手に握ったテニスラケットに再び力を込める)
黒川「レベル100テニスプレイヤー技の1つ!>>467」
-
百腕巨人の門番
-
黒川ファントム
-
黒川「――百腕巨人(ヘカトンケイル)の門番!」
ギュルルルルルッ!!
黒川(銀帝が弾いたサイコガンの光弾は図らずも私のいる方向に跳ね返って来ていた)
黒川(私はそれをテニスラケットで捉えると回転をかけて打ち返す!)
ドンッ!!!!
銀帝「面白い……光線に回転を加えたか、だがその程度また弾き返すまでだぁっ!!」
ドゥンッ!!
黒川(私が跳ね返した光の弾を再び銀帝の大砲の如き打撃が捉える)
黒川(ですが……さっきとは違いますよ!)
-
ギュルルルルルッ!
グググッ!
銀帝「……なに?」
黒川「ナンジョルノが素で打ち出したサイコガンとは違う、百腕巨人の門番はガットの両面を使って二乗の回転をかける返し技です」
黒川「その光弾にかけられた回転は尋常なものではない、例え返したとしてもネットを超えないでしょう!」
ナンジョルノ「黒川、ここはテニスコートではありませんよ……?」
銀帝「ふははっ!面白い!無理を通してこその力よっ!!」
ゴッ!!
黒川(回転を続ける光弾と拳で押し合いを続ける銀帝は、その豪腕に更なる力を込めて振り抜こうとする)
黒川(その結果>>471)
-
光弾が銀帝を貫く
-
黒川(光弾が銀帝の拳を砕き貫く!!)
ズドンッ!! ブシュァァッ!
銀帝「ほう……」
黒川「よしっ!」
ナンジョルノ「やりましたわっ!!」
黒川(光弾は銀帝の指1本を吹き飛ばし手のひらにテニスボール大の穴を開けた)
黒川(巨人並みの体を持つ銀帝からすれば微々たるダメージでしょう、ですが確実にダメージは与えられている!)
黒川「いけます!私とナンジョルノのコンビネーションショットを繰り返せば戦えます!」
ナンジョルノ「そうですわ!これなら――」
ドゴォォォォンッ!
銀帝「ああ、これなら本気を出せそうだ!!」
ナンジョルノ「……っ!」
黒川「分かってはいましたが……底の見えない相手ですね……」ゴクッ
黒川(血の滴る拳を握り直す銀帝は更に血湧き肉躍るといった表情で笑う)
黒川「……いいでしょう、こうなれば何セットでもお付き合いします!」
??「お?じゃあ私も参戦しようかな」ザッ
黒川「……え?」
黒川(その時、私とナンジョルノの背後から聞き覚えのある声が聞こえた)
黒川(これは確か特設医務室にいたはずの……>>473)
-
破廉恥デスワwithオッパイandブンドルビィ
-
黒川(確か特設医務室にいたはずの……破廉恥デスワwithオッパイandブンドルビィ!)
デスワ「私たちも参戦しますわ!」
オッパイ「するよ!」
ブンドルビィ「すルビィ!」
ザザザッ!!
黒川「あなたたち……」
デスワ「敵の正体はよく分かりませんが、襲撃を受けてるのならば助太刀いたします」
デスワ「この破廉恥三姉妹が!!」
ナンジョルノ「名前だけ聞くともマヌケで頼りない援軍ですわねぇ……」
オッパイ「ふんっ、私はまだあなたのことはお姉ちゃんに相応しくないと思ってるけど」
ブンドルビィ「同感、でも今は目の前の相手に集中だよ」
オッパイ「……うん」
銀帝「ひとつ、ふたつ、みっつ……全部で5人か、いいぞ、何人だろうが相手ではない!」
銀帝「存分にかかってくるがいい!人の子らよ!!」
─────────────────
ドスケーブ城・エントランス
AM3:30〜AM3:35 新終末編『148』了
-
というわけでここまで
団体さんの登場
新終末編『149』に続く
かもしれない
-
新終末編『149』
─────────────────
──ドスケーブ城・エントランス
AM3:35
ブンドルビィ(籠城した特設医務室から連絡員として派遣された私たち3人)
ブンドルビィ(担当に決まったエントランスに足を踏み入れると、そこでは黒川さんたちと巨人が戦いを繰り広げていた)
ナンジョルノ「……で、応援に来てくれた事には礼を言いますけど、あなたたち戦えるんですの?」
デスワ「え?えー、えーとー……ほら!わたくしは魔王軍では分析班に徹してましたので……」
ナンジョルノ「戦えないってことか」ハァー
デスワ「そうは言ってませんわ!」プンプクプー
オッパイ「わぁー、頬を膨らませたお姉ちゃんもかわいいなー」
オホンッ
デスワ「私が分析班だったのはあくまで魔王軍に潜入してた際の身分、ほのキチ倶楽部としての私は違います」
デスワ「それに……」チラッ
オッパイ「……うんっ」コクッ
デスワ「今の私は破廉恥家の長女の私でもありますわ」
ブンドルビィ(まるで自分に言いきかせるように、お姉ちゃん高らかと言い切り拳を強く握る)
ブンドルビィ(家の責務から逃げてきたお姉ちゃんが……ここに来て自ら家の名前を名乗る)
ブンドルビィ(お姉ちゃんが割り切ってるんだ、ここは私も……)
グッ
-
デスワ「皆さん!実は破廉恥家の術で試したい物があるんですの!少しの間時間を稼いでください!」
ナンジョルノ「分かりましたわ、黒川!やつに接近戦は危険、さっきの光弾テニスで行きやがりますわよ!」
黒川「了解、直接私に向けて打ってください!」
ナンジョルノ「サイコガン!」
ビュンッ!
黒川「――を、リターン!」
ギュルルルルルッ!!
銀帝「はははは!いいぞ!打ち合おうではないか!!」
ドンッ!
ガキィーーンッ! ガキィーーンッ!!
ブンドルビィ(ナンジョルノさんのサイコガンが打ち出した光弾をボールにして、黒川さんと巨人がテニスもどきの打ち合いを始める)
-
デスワ「オッパイ!私たちも術の準備を始めますわよ!」
オッパイ「うん!……えっと、ブンドルビィは……」
ブンドルビィ「……はぁ、仕方ない、私も時間稼ぎに加わってくるよ」
ザッ
ブンドルビィ「お姉ちゃんとあなたは直接戦闘が出来ない、私は破廉恥家の術が使えない、適材適所で動くしか無いんだから」
オッパイ「ブンドルビィ……」
ブンドルビィ「お姉ちゃんのこと、頼んだルビィ!」
オッパイ「うんっ!」
ブンドルビィ(不本意ながらお姉ちゃんとオッパイを後方に残し、私は黒川さんたちの戦闘領域へ走り出す)
タタタタッ
ブンドルビィ「さてと……」ジーッ
ブンドルビィ(相手はラリー中のゴリラみたいな巨人、体の何を奪ったら1番困るんだろうか)
ブンドルビィ「よし、まずは>>479からかな!」
-
足の踏ん張り
-
ブンドルビィ「まずは足の踏ん張りからかな!」
タタタタッ!
ナンジョルノ「ちょっとあなた!銀帝に近付くのは危険ですわよ!」
ブンドルビィ「銀帝?ああ、あの巨人のことか」
ナンジョルノ「やつをただの巨人と侮りやがらないことですわ、正体は分かりませんが神の如き腕力の持ち主」
ブンドルビィ「神ねぇ……それなら尚更都合が良いってものです」
ナンジョルノ「え?」
ガチャンッ!
ブンドルビィ(私は特殊な意匠が施された銀のガントレットを左腕に嵌める)
ブンドルビィ「神討具――異次元の強奪手」
スッ
ブンドルビィ「かつて魔王軍強奪部隊隊長であった私が魔王から頂いた神を討つためのS級アーティファクト」
ナンジョルノ「強奪手……?」
-
ブンドルビィ「そっ、私は所詮ぶんどることしか能がないの」
ブンドルビィ「食べ物も、立場も、家族さえも……欲しいものは何でも奪い取ってきた」
ブンドルビィ「でも結局のところ、真っ当な手段で得なかったものはいつか離れていく……そんなことは分かってる」
ブンドルビィ(本物だと思えたお姉ちゃんとの絆だって、本物の前では所詮紛い物だ)
グッ
ブンドルビィ「けどやめないよ、この生き方をやめたら私は私で無くなってしまうから!」
バッ!!
ブンドルビィ(ガントレットを嵌めた左腕を横に真っ直ぐ伸ばし、銀帝の体……足の内部を頭の中にイメージする)
ブンドルビィ(そして空手であるはずの左手を強く握る!)
バシュィンッ!!
銀帝「……がっ?」
ブンドルビィ「ほら――ぶんどったビィ」ニヤリ
-
ブンドルビィ(私と銀帝の距離は黒川さんを挟んで大きく離れていた、銀帝は私のことを視界にすら入れてなかったかもしれない)
ブンドルビィ(だけど今の私の左手には……血の滴る筋肉が掴まれている)
ポタッ ポタッ
ブンドルビィ(私がこの場から一歩も動かずに、銀帝の足の内部から抉り取った踏ん張るために必要な筋肉)
ブンドルビィ(異次元の強奪手の能力は自分が欲しいと狙ったものを距離や障害物関係なく手に入れるアポーツ能力)
ブンドルビィ(特に魔王がうみか対策に配った神討具である強奪手は、神属性に対して特効のような力を持っている)
ブンドルビィ(銀帝が神の力を振るっているのだとすれば……効果は抜群!)
銀帝「なんだ……足に力が入らなく……」
ガクッ
黒川「チャンスっ!」パコーンッ!
ブンドルビィ(踏ん張りが効かなく派手に両膝を付いてしまった銀帝は>>483)
-
拳を地面に叩きつけて大きく揺らす
-
ブンドルビィ(踏ん張りが効かずに派手に両膝を付いてしまった銀帝、このままなら黒川さんのショットが動けない銀帝に直撃するはず……)
ブンドルビィ(……だった)
銀帝「ぬぅんっ!!」
ドシィィィィンッ!!
グラグラッ!
黒川「ぉぉおおおっ!?」
ブンドルビィ(銀帝が拳を地面に叩きつけて建物自体を大きく揺らす)
ブンドルビィ(その揺れと衝撃で銀帝周辺の床が数メートル陥没した)
ガガガガガッ!
黒川「なっ!?」
ブンドルビィ(床と共に1段下がる形になった銀帝の頭上を光弾が掠めて飛んでいく)
ヒュンッ!
ナンジョルノ「外れてしまいましたわ!!」
銀帝「くくっ……やるなぁ人の子よ、だがこの程度では負けんぞォ!!!!」
グググッ
-
シュルルルルルッ!!
ブンドルビィ「足の筋肉が膨らんでいってる……まさか、中で抉り取られた場所が再生してるのっ!?」
銀帝「そのとおぉぉり!先程光弾に弾かれた指も再生が終わったァ!」
黒川「そんな、さっきまで再生なんて無かったのに……」
銀帝「ははははっ!本気を出すといっただろう!!」
ブンドルビィ「……なら、再生する速度を上回る速度でぶんどるまでっ!」
銀帝「来い来い来い!全力で来てこその戦いだぁっ!!」
黒川「ナンジョルノ、弾を追加してください、10個同時打ちで行きます」
ナンジョルノ「え?でもそれじゃラリーをする黒川に負担が……」
黒川「良いのです!私ならやれますから!」
ナンジョルノ「……っ、分かりました、やりましょう!」
ナンジョルノ「弾を出し終わった後は私もダッシュピンポンボウで援護しますわ」
黒川「はいっ!」
ナンジョルノ「行きますわよ――サイコガン!」
ブンドルビィ「――異次元の強奪手!」
銀帝「ふははははっ!打撃!打撃!打撃ぃっ!!」
ドガガガガガガガッ!!!!
-
・
・
ドガガガガガガガッ!!
ザンッ! ドシュゥッ!! ズドドドドッ!!
ブンドルビィ(それは……正に乱戦というに相応しい戦場だった)
ブンドルビィ(初めは同時に10個だった光弾のラリーは段々20個30個と増えて、視界いっぱいに2人が打ち返し合う光弾が飛び交う)
ブンドルビィ(黒川さんも銀帝も互いに手を止めない、崩壊したエントランス中に飛び交うボールを見切って全て拾っていく)
黒川「たぁっ!」ブンッ!!
ブンドルビィ(私はその光弾に当たらないように動き続けながら、隙を見て銀帝の体からパーツを奪っていく)
ブンドルビィ(激しい乱打戦の中、発動の際にしっかりとした狙うイメージと一瞬だけ止まる必要がある強奪手を使うタイミングは限られる)
ブンドルビィ(それに一度に奪えるのは手で掴める大きさだけ……)
ブンドルビィ「ほっ!」
バシュンッ!!
ブンドルビィ(けど手は緩めない、銀帝の再生速度に負けるわけにはいかないから!)
ナンジョルノ「ダッシュピンポン――ボウッ!」
ブゥンッ!
ブンドルビィ(ナンジョルノさんも弾出しの間に周囲の瓦礫を飛ばして銀帝にぶつけていく)
-
ザンッ! ドシュゥッ!! ズドドドドッ!!
ブンドルビィ(黒川さんが上手くぶち当て貫く光弾、強奪手が抉り取る筋肉と骨、ナンジョルノさんの遠距離攻撃が削る外皮)
ブンドルビィ(続けざまに繰り出され続ける私たちの攻撃は確実に銀帝の肉を削いでいく)
ブンドルビィ(だけど……)
銀帝「ふははははははっ!!」
ドドドドドドドドドッ!!!!
ブンドルビィ(銀帝の単純な暴力と再生力が――その全てを上回る!)
黒川「くっ……この化物がっ!!」
ナンジョルノ「切りがありませんわよっ!!」
ブンドルビィ「私たちだけじゃ保たない……お姉ちゃんたちの仕掛けはまだなのっ?」
バッ!
ブンドルビィ(私は後方で術の準備をしているお姉ちゃんたちの方を振り返る)
ブンドルビィ(お姉ちゃんたちは>>488)
-
決めポーズの相談をしていた
-
ブンドルビィ(お姉ちゃんたちは……)
デスワ「うーむ……決めポーズはこんな感じでいいのでしょうか」
オッパイ「私はもっと可愛いのが良いと思うなぁ」
ブンドルビィ「……ふんっ!」
シュンッ!!
ブンドルビィ(ムカついたのでお姉ちゃんのパンツをアポーツする)
デスワ「ひゃっ!ぱ、パンツが無くなった!?」
デスワ「……はっ!あなたですわねブンドルビィ!くだらないことに強奪手を使うのはやめなさい!」
オッパイ「そうだよぉ!あとパンツは私も欲しい……」
ブンドルビィ「くだらないことやってるのはそっちでしょ!」
ブンドルビィ「決めポーズとかどうでもいいから早く術を――」
銀帝「おいおい、余所見をしてる余裕があるのかっ!」ブンッ!
ブンドルビィ「――え?」
ドゴオゥッ!!
-
ブンドルビィ(エントランスの壁や床をランダムに跳ねて飛び交う光弾、銀帝が弾いたその1つが油断した私に直撃する)
ブンドルビィ「がっ!!」
ブンドルビィ(しまった……見ていれば避けられたのに……)
銀帝「ふははっ!コート状でボールから目を離すなど愚かァ!」
ブンドルビィ(光弾をモロに食らった私の体は後方へ激しく吹き飛び、お姉ちゃんたちのいる場所の近くに転がる)
ドンッ! ゴロロロッ!
デスワ「ブンドルビィ!」
ブンドルビィ「わ、私のことはいいから……早く2人の準備していた術を発動して!」
デスワ「……ええ、分かりましたわ!」
デスワ「私とオッパイ、2人で放つこの術は>>491」
-
よく分からないけど、敵を宝石に変えることができる
-
デスワ「よく分からないけど、敵を宝石に変えることができる術!」
ブンドルビィ「宝石……?」
デスワ「行きますわよオッパイ!決めポーズは最初に考えたアレで良いですわね!」
オッパイ「うんっ!」
バッ!!
銀帝「ほう……何をする気だァ……?」
黒川「デスワたちの準備が整ったようですね、発動ギリギリまで銀帝を近付けさせないで!」
ナンジョルノ「分かってやがりますわ!」
デスワ「食らいなさい!ほのキチ倶楽部で習得した技術と破廉恥家に代々伝わる秘術を合わせた姉妹の必殺技!」
デスワ「その名も――――!」
カッ!!
─────────────────
ドスケーブ城・エントランス
AM3:35〜AM3:40 新終末編『149』了
-
というわけでここまで
次は必殺技から
新終末編『150』に続く
かもしれない
-
新終末編『150』
─────────────────
──ドスケーブ城・エントランス
AM3:40
デスワ「その名も――――!」
ダンッ!!
デスワ(私とオッパイは複雑な印を書き込んだ札を構えながら銀帝に向かって並んで走り出す)
デスワ(この術は効果が強力な代わりに射程距離が短い、確実に当てるためには近付く必要があるのですわ)
デスワ「はぁぁああああっ!」
オッパイ「うぉぉぉおおおっ!」
ダタタタッ!!
デスワ(発動のタイミングは既に話し合い済み、走りながらオッパイとアイコンタクトで呼吸を合わせる)
デスワ(発動まで5カウント!)
バッ!
キラリーンッ!
ナンジョルノ「……ん?今脇を駆け抜けていったデスワの指に宝石のついた指輪があったような……」
デスワ(私とオッパイは右手に持った札と左手の指に嵌めた守護指輪を合わせるように腕を交差させた)
シュッ
デスワ(守護指輪――破廉恥家に生まれた子に与えられる特別な力を秘めた宝石があしらわれた指輪)
デスワ(私のがダイヤモンドでオッパイのがルビーをモチーフにした守護宝石)
タンッ!
デスワ(その指輪に秘められた力を>>495の決めポーズと共に解放する!!)
-
おジャマデルタハリケーン
-
デスワ(その指輪に秘められた力をおジャマデルタハリケーンの決めポーズと共に開放する!)
デスワ「その名も――」
タンッ!!
デスワ「ハレンチ!」
オッパイ「デルタ!」
デスワ・オッパイ「ジュエルハリケーーン!!」
ギュォォォォォオオオオオッ!!!!
デスワ(私から見て右、オッパイからみて左、お互いの斜め上に手を伸ばして重ねた札と、札と逆の手に嵌めた2つの守護宝石)
デスワ(合わせて3つのポイントを基点にして三角形の結界が張られ、結界から嵐のようなビームが銀帝目掛けて発射される)
黒川「綺麗な色……宝石のような七色のハリケーン……」
ナンジョルノ「巻き込まれないうちに離れますわよ黒川!」
デスワ「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ギュォォォォォオオオオオッ!!
銀帝「なんだァこいつは……?ヌルい風だなァ……!」
-
デスワ(ビームが直撃しても銀帝は動じる様子を見せない、この巨人にはこの程度のビームは物理的に意味がないのだろう)
デスワ(ですが想定内!このジュエルハリケーンは銀帝の体を破壊するものではないのですから!)
キィィィィィィィンッ!
デスワ「守護宝石の輝きよ、内に秘めたる力を解放し、我らが敵を打ち倒したまえ!」
オッパイ「たまえぇ!」
デスワ「封印の陣――宝石への転換!!」
カッ!!
銀帝「ん……?なんだァ、手の先が固くなって――」
ピキッ パキッ
ピキピキピキピキピキピキピキピキッ!!!!
銀帝「なぁぁぁっ!?」
デスワ(これが本命、ハリケーンが当たった銀帝の体が>>498の宝石に変換されていく)
-
サファイア
-
ナンジョルノ「見て!銀帝の体が石に変わって行きやがりますわ!!」
黒川「青い宝石……あれは……」
デスワ「――サファイア、ですわ」
銀帝「サファイア……だとぉ!?バカなことを抜かすな!神の力を振るう者が体を石にされるなどォォオ……!!」
ググググッ!
デスワ「抗っても無駄ですわ、宝石術は古来より魔討ちを家業としていた破廉恥家が編み出した秘術」
デスワ「その中でも封印の陣は物理的に倒せない敵の体を宝石に転換することで無力化する技です」
銀帝「だが……神の力はそんなものに……っ!!」
デスワ「負けますわよ」
銀帝「……っ!?」
-
デスワ「古来の日本には妖怪や悪霊や悪鬼を初めとした魔の物、異形の物が跋扈していました」
デスワ「ですが宝石術は"そんなもの"を倒すために作られたのではありません」
デスワ「我が家の……魔討師の敵は人に害を及ぼす異形全て、荒ぶり祀ろわぬ神でさえ例外ではない」
デスワ「この宝石術は……そんな神を倒すための秘術なのです」
バギィィィンッ!!!!
銀帝「ぬァアアっ!このおおおおおおっ!!」
デスワ(腕や足の先から始まった宝石化が銀帝の全身に回っていく、こうなればもうお終い)
デスワ「ま、そんな家の重責から逃げた私が偉そうに言えることではありませんけどね」
銀帝「ぐァァァア!!まだ負けるわけにはァァアアアア――――」
バキバキバキバキバキバキ
バギィィィンッ!!!!
デスワ(そして……やがて銀帝の断末魔が途絶え、そこには5m大の巨大なサファイアだけが残った)
-
・
・
・
ピカーーン
黒川「おおぉ……なんとも大きな宝石です」
ナンジョルノ「ぷはぁっ!疲れましたわぁ……」ドサッ!!
黒川(危機が去ったエントランス、巨大な宝石を眺める私の横でナンジョルノは大げさに腰を降ろす)
黒川(しかし体組織を鉱石に変えるなんて……味方だから良いものの敵に回したら怖いことこの上ない)
デスワ「ぶっつけ本番だけど何とかなりましたわ」
黒川「あの秘術、札を使ってましたけど、あれは?」
デスワ「あれはほのキチ倶楽部で開発されたエネルギーを転写して増幅する道具の1つです、本来は穂乃果因子に使うものですけどね」
デスワ「守護宝石との兼ね合いで札の印を書き換えるのに少しだけ時間がかかってしまいましたわ」
黒川「ほー」
黒川(デスワの話を聞きながら私は再び宝石に目を移す、すると……)
黒川「……ん?」
デスワ「どうしました?」
黒川(微かな光に照らされて輝く巨大なサファイアの内部に、>>502のようなものが見えることに気付いた)
-
炎
-
黒川(巨大なサファイアの内部に炎のようなものが見えることに気付いた)
黒川(大きなものではない、よく見ないと気づけない数センチほどの小さな炎の塊が宝石の中心にある)
黒川「あの……あの炎はなんでしょうか?」
デスワ「ああ、あれは力の凝縮体ですわね」
黒川「凝縮体?」
デスワ「宝石術で変換されたのはあくまで物質としての体組織だけ、その物質に宿っていた魔力や霊力といったエネルギーは変換されません」
デスワ「そして変換されなかったエネルギーは宝石に追いやられ凝縮、ああして宝石に包まれるような形になるのです」
デスワ「銀帝の場合は……神だ神だとうるさかったから神力系のエネルギーでしょうか」
ナンジョルノ「なんか危ない匂いがしやがりますわねぇ……」
デスワ「はい、そのまま放置しておくのは危険です、魔の物が寄り付くパワースポット化する可能性もありますし」
デスワ「ですから……ブンドルビィ!」
ブンドルビィ「なにお姉ちゃん?」タタッ
デスワ「あなたの篭手で炎を取り出しなさい、直接ではなく周りの宝石ごと直径10センチくらいの球体にしてね」
ブンドルビィ「うん?……分かった」コクンッ
-
ブンドルビィ「強奪手!」ヒュンッ!
バキィンッ!
黒川(ブンドルビィがガントレットを振るうと分厚い宝石の壁の中にあった炎が消える)
黒川(そして同時に、片手で持てる程度の大きさに削り取られた宝石がブンドルビィの手の中に出現)
黒川(その宝石の中には炎が消えずに煌めいていた)
デスワ「よし、上手く出来ましたわね」
ナンジョルノ「これをどうするんですの?破壊?」
デスワ「破壊なんてとんでもない、これが守護宝石の元になるのですよ?」
ナンジョルノ「えぇ……?」
オッパイ「私のルビーもお姉ちゃんのダイヤも、中に魔物の力が込められてるの」
オッパイ「強力な魔物の力を封印した宝石から作った守護宝石ほど性能がよくなるんだよ」
黒川「なるほど……通りであれほどの効力を発揮できたのですか」
ナンジョルノ「宝石に変えた敵を身に着けておくなんてぞっとしない話ですわ」
-
デスワ「力の善悪は振るう者によって決まるのです、主を失くした力に善悪はない、放置して周囲に正しく使ってあげるべき」
ナンジョルノ「それはそうだけど……」
デスワ「まぁ……効率のためと言うのは否定しません、それも宝石術の利点の1つですから」
黒川「ともかくブンドルビィが握ってるそれが次の守護宝石になるわけですか」
デスワ「本来なら宝石に変えた敵を外側から削って加工していくのですが……これだけ分厚くて大きいと面倒ですから」
ブンドルビィ「ああ、だから私の神討具を使ったんだね」
デスワ「はい」コクンッ
デスワ「ですがまだ完成ではありません、ここから更に術をかけて指輪の形に加工していきます」
デスワ「そのために必要なのは>>506」
-
やる気
-
反射炉
-
デスワ「そのために必要なのは……やる気です!」
ブンドルビィ「……え?」
デスワ「行きますわよオッパイ!宝石をしっかり固定していなさい!」
オッパイ「うんっ!ブンドルビィちょっと借りるね!」
ブンドルビィ「う、うん……」
黒川(デスワたちはブンドルビィから宝石の塊を受け取ると、床にどこからか取り出した謎の道具を広げる)
黒川(そして鉢巻を巻いて気合を入れると、トンカチっぽい道具を取り出して宝石を叩き出す)
デスワ「ていやぁああああああっ!」
オッパイ「そいやぁあああああっ!」
トンテンカン! トンテンカン! トンテンカン!
ナンジョルノ「急に職人の世界が始まってしまいましたわね……」
黒川「こうなると私たちは見守ることしかできませんよ」
ブンドルビィ「すみません、お姉ちゃんよく分からないけど張り切っちゃって……」
ブンドルビィ「守護宝石?作りなんて私も後でいいと思うんだけど」
黒川「いえ、実は私たちも銀帝と戦ってヘトヘトなんで……休む時間が欲しかったところですよ」
スタッ
黒川(宝石を叩くデスワたちを眺めながら私はナンジョルノの隣に腰を降ろす)
ブンドルビィ「そう言ってくれるとありがたいです、じゃあお姉ちゃんたちの作業が終わるまでに黒川さんたちに話をしておきますか」
ブンドルビィ「私たちがここに来ることになった経緯と、情報のすり合わせ諸々を」
─────────────────
ドスケーブ城・エントランス
AM3:40〜AM3:45 新終末編『150』了
-
というわけでここまで
とんてんかん
新終末編『151』に続く
かもしれない
-
新終末編『151』
─────────────────
──ドスケーブ城・エントランス
AM3:50
黒川「なるほど……停電からの籠城ですか、特設医務室ではそんなことが起こっていたのですね」
ブンドルビィ「はい」
ナンジョルノ「停電は十中八九銀帝たちが原因ですわね、やつらは新魔王軍関係の一味でしょうが……」チラッ
ナンジョルノ「はぁ、こう宝石に変わってしまっては情報を聞き出すこともできない」
黒川「仕方ありませんよ、元々話が通じるような相手でもありませんでしたから」
黒川「それより考えなければいけないのは今後の対応です、銀帝以外にも敵が侵入してると考えるのが自然」
黒川「となればまずは医務室に戻って作戦を――」
カコーンッ!
デスワ「守護宝石ができましたわ!」
オッパイ「やったー!」
黒川「……どうやら作業が終わったようですね」
デスワ「皆さんみてください!」タタッ
黒川(そう言ってこちらに駆けてくるデスワの手には加工されて指輪に嵌められた青い宝石がある)
黒川(さっきまで直径10cmだった荒い原石がすっかりアクセサリーになっていた)
-
ブンドルビィ「良かったねお姉ちゃん、じゃあ上に戻ろう――」
デスワ「待ちなさいブンドルビィ、どこへ行くんですの?」
ブンドルビィ「……え?」
デスワ「何を呆けているのです、この守護宝石の指輪はあなたのために作ったものなのですよ」
ブンドルビィ「……わ、私!?」
黒川(予想だにしていなかったのだろう、デスワに指輪を差し出されたブンドルビィは動きが固まる)
黒川(デスワはそんなブンドルビィの手を優しく取り、ブンドルビィの指に指輪をそっと嵌める)
スッ
デスワ「この宝石は元を辿ればルビーと同じコランダムという鉱物です」
デスワ「あなたもオッパイも色は違えど私の大切な妹に変わりはありません」
デスワ「ですから……このサファイアをあなたに送りますわ」
ブンドルビィ「お姉ちゃん……!」
黒川(感極まって涙目になったブンドルビィはそっと指輪の嵌った手を胸の前で握る)
オッパイ「ふんっ、あくまで私が1番であなたが2番だから」プイッ
ブンドルビィ「えー?それはどうかなぁ」
デスワ「ふふふっ、ケンカは程々にするのですよ」
オッパイ「ふふふふっ」
ブンドルビィ「ははははっ」
-
ナンジョルノ「なんだか……私たちの預かり知らぬとこらでわだかまりが解れたみたいですわねぇ」
黒川「はい、事情は全く分かりませんが良い雰囲気なのでよしとしましょう」
黒川(……と、一息ついたところでブンドルビィが怪訝な顔をした)
ピクンッ
ブンドルビィ「……あれ?お姉ちゃん、指輪が急に光って――」
キィーンッ
ブンドルビィ「私の頭の中に……何かイメージが流れ込んでくる……」
デスワ「それは守護宝石に封じられた力のイメージでしょう、宝石が装着者を主と認めた証でもあります」
デスワ「そのイメージから何が読み取れます?」
ブンドルビィ「ええと……これは前の力の持ち主、銀帝の記憶かな……」
ブンドルビィ「まず浮かび上がってくるのは>>513」
-
弱肉強食
-
ブンドルビィ「まず浮かび上がってくるのは――弱肉強食」
黒川「弱いものの犠牲の上に強いものが栄える、一種の摂理を表した言葉ですね」
ナンジョルノ「そのくらい説明されなくても分かってやがりますわよ」
ブンドルビィ「これは銀帝の生み出された環境、与えられた力、故に本人が培った思想、全てに共通するイメージ」
ブンドルビィ「弱肉強食は銀帝の根底にある概念と言っても過言ではない」
黒川(ブンドルビィは目を閉じ、宝石から脳内に浮かび上がってくるイメージを言葉にして私たちに伝える)
黒川(それはきっと今後を戦い抜くためのヒントになる)
ブンドルビィ「力……力こそが全て……生まれた時から見せつけられ続けた残酷な摂理」
ブンドルビィ「そんな環境で育った銀帝……になる前の誰かは、己が力だけを信じて生きてきた」
ブンドルビィ「そして彼は、初めて己より強いもの――謎のフードの人物と出会うことになる」
デスワ「フード……フードマンのことですわね!」
-
ブンドルビィ「うん、そしてフードマンに負けた彼はフードマンの仲間の博士から強化手術を受けることとなった」
ブンドルビィ「これは……たぶんクッキング博士だね、教えてもらった似顔絵と似ている」
黒川「手術?」
ブンドルビィ「詳しい過程は私じゃ読み取れないけど、イメージを見るにクッキングから定期的な投薬や人体改造を受けている」
ブンドルビィ「……あ、何か聞こえた、力……神を……模した?」
ブンドルビィ「神の力を……植え付ける実験……?」
デスワ「ブンドルビィ!頑張って読み取ってください!」
ブンドルビィ「むむっ……」
-
黒川(曖昧な記憶のイメージから過去に起こったことを理解する、よっぽど精神をすり減らすのだろう)
黒川(目を閉じたままのブンドルビィの額には汗が滲んでいる)
ブンドルビィ「……そうだ、銀帝は神に似た力を植え付けられたんだ……!」
ブンドルビィ「たぶんその神の名前かな、"ファールバウティ"っていう単語が銀帝の中をグルグルしてる」
ナンジョルノ「聞いたことあります?」
黒川「いえ、神話に詳しい人なら分かるのでしょうか……」
黒川「ブンドルビィ、他に銀帝の記憶から読み取れることは?」
ブンドルビィ「他……?他は……>>517」
-
攻めてきた敵の中に、フードマンレベルの奴がいる
-
ブンドルビィ「他は……仲間の情報かな」
黒川「ほう」
ブンドルビィ「ドスケーブ城に攻め入ってきたメインメンバーは5〜10人未満くらい、多くても一桁かな」
ブンドルビィ「各自分かれて別の場所から城に潜入してる……銀帝は外の見回りを倒してから正面入口へ入るルートだったみたい」
黒川「そこで私たちとかち合ったわけですね」
ブンドルビィ「敵の狙いはゲートと城で開発されてる技術全般……他にも諸々あるみたいだけど、銀帝があまり気にしてないせいで記憶からは読み取れない」
ブンドルビィ「彼が気にしていたのは計画ではなく自分より強いか弱いか、弱いものには興味無くて名前すら覚えてない感じ」
ナンジョルノ「やつらしいと言えばらしいですわね」
ブンドルビィ「そんな銀帝の中で……唯一記憶に残ってる仲間がいる」
ブンドルビィ「自分より力で上回る強者、銀帝の主観によればフードマンレベルの力だそう」
黒川「なっ……!?」
ナンジョルノ「そんなやつが城に攻めて来てるんですの!?」
黒川「どんな名前のどんなやつなんですか!」
ブンドルビィ「その敵は……>>519」
-
赤の聖女
-
ブンドルビィ「その敵の名は……赤の聖女」
黒川「聖女……帝に続いて仰々しい名前ですね」
ブンドルビィ「見かけは赤いドレスを模した甲冑を纏っていて、金髪を後ろに纏めて短く垂らした髪型が特徴」
ブンドルビィ「少女のように若い女性のようにも見える不思議な外見、でも銀帝が認めるほどの本物の力を持っている」
黒川「フードマンに匹敵するほどの力を……ですね」
ブンドルビィ「うんっ」
シュゥゥゥンッ
黒川(そこまで話したところでブンドルビィの宝石の輝きが小さくなっていく)
ブンドルビィ「……ふぅ、宝石から読み取れたのはこれくらいかな」
黒川「ありがとうございます、ではそろそろ特設医務室に向かって移動を――」
ザザザザザザザッ!!
黒川「っ!?」
-
ナンジョルノ「黒川!おそらく敵の足音ですわ!前と後ろ……私たちを囲むようにやってきます!」
オッパイ「ててて敵ぃっ!?」
黒川(ナンジョルノの予想は正しかった、移動を始めようと動いた私たちを謎の軍団が取り囲む)
黒川(全員が同じ格好、全身黒タイツにストライキと書かれたタスキをかけたいかにもザコ敵みたいな姿)
ブンドルビィ「うわぁぁ、これは……」
デスワ「こいつら……どこから滲み出てきたんですの!?」
黒川(だがその数が尋常じゃない、見渡して分かるだけで>>522)
-
数えきれないが見るだけで次々消滅していった
-
黒川(その数はとても数え切れないほど……!)
ナンジョルノ「マジでやがりますか、こちとら銀帝と戦ってヘトヘトなんですわよ」
ナンジョルノ「これが新魔王軍の送り込んだ尖兵だとすれば、数も質も音ノ木坂跡で戦ったお掃除サービスの大軍以上では……」
黒川(急な展開にナンジョルノでさて思わず弱音を吐く)
黒川(その気持ちはすごく分かります、私とナンジョルノは疲労困憊、破廉恥シスターズの技もどちらかと言えばボス向けの必殺技、雑魚を薙ぎ払うものではない)
黒川(この場を切り抜ける方法が……見つからない)
黒川「くっ……このままでは――」
シュンッ!!
黒川「……え?」
-
黒川(だが、事態は好転した)
黒川(私たちが何かしたわけではない、先ほどと変わらずただ立って見ているだけ)
黒川(それなのに……見てるだけで片っ端から黒タイツ兵の大軍が次々消滅していく)
シュンッ! シュンッ! シュンッ! シュンッ!
黒川(そして消えた大軍の向こうから見慣れぬ格好の二人組が歩いてくる)
カツンッ
黒川「……っ!誰ですか!?」
黒川(二人共高校生の制服を着ているが明らかに普通の女子高生ではない)
黒川(片方は人間離れしたスタイルが良すぎる長身の褐色、明らかに年上の女性でコスプレ感がやばい)
黒川(もう片方は背が低くて外見年齢は相応だけど、死人のように肌が青白い)
ダークドレアム「安心して、私たちは敵では無いわ」
ガングレト「そーですよ!ダークドレアム様が助けてあげたのですから感謝するのです!」
ナンジョルノ「……んん?」
ダークドレアム「この城は今私が死の概念をぶち込んだロキワーカー共の軍団に囲まれてるわ、今消したやつらの数千数万倍の量」
ダークドレアム「今うみかたちが結界を復旧させてるはずだから……それまで内部の掃除と籠城戦ね」
デスワ「待ってください、ええと、あなたたちは……?」
ダークドレアム「私は冥府の神でダークドレアム、こっちはメイドのガングレト」
ダークドレアム「一言で言うのなら――あなたたちの援軍よ」
─────────────────
ドスケーブ城・エントランス
AM3:50〜AM3:55 新終末編『151』
-
というわけでここまで
時間的にカローン船からの人も来てるわけで
新終末編『152』に続く
かもしれない
-
本スレで見なくなったと思ったらこっちに移行してまだ続いていたのか...
-
新終末編『152』
─────────────────
──ドスケーブ城・エントランス
AM3:55
黒川「援軍……?」
ナンジョルノ「うみか……あの人神の知り合いってことですか」
黒川「ダークドレアムとガングレトと言いましたね、知ってることを教えて頂けませんか?」
ダークドレアム「もちろんそのつもりよ、歩きながら話しましょう」
黒川「はいっ」
タタッ
ガングレト「ではまず私が説明をば」
ガングレト「名古屋の塔からヨハネゲートを通って城に来た時には既に敵襲を受けていました」
ガングレト「ゲートから出た私たちの前には――」
────────
────
──
・
・
-
・
・
──最上階・ヨハネゲート前
AM3:35
うみか「おい……なんだお前らは、人の城で何してやがる」ギロッ
ガングレト(私たちがゲートから出てきた時、既にゲートの前には侵入者と思わしき二人組がいた)
ガングレト(ゲートを通って城に来たメンバーはうみかさん、私とダークドレアム様、凛さんとメリー姉さん)
ガングレト(他の人たちは塔側に戦力として残った)
ガングレト(そんな増援メンバーがうみかさんを先頭に、謎の二人組と対峙するように並ぶ)
??「お〜?見ろよ姉貴、あの神様すっげー怒ってるぜー?」
姉?「え……あ……うん、自分の家の中に入られたものだろうし……それは怒るよね……怖いなぁ」
姉?「というか……妹ちゃん……これ……任務失敗じゃ……」
妹?「ああ、本来なら増援が来る前にゲートぶっ壊せって話だったけど、遅れちまったんもんは仕方ねぇよ」
妹?「まずはこいつらを、ぶっ壊すだけさ――」
ガングレト(姉貴と呼ばれたほうはおどおどとし、反対に妹ちゃんと呼ばれた方は荒々しい口調と共にこちらを睨む)
ガングレト(会話から姉妹に類するものだとは思いますが、正反対すぎる2人)
ガングレト(共通してるのは服装が>>529色をモチーフにした民族衣装のようなものであること)
-
黄
-
ガングレト(共通してるのは服装が黄色をモチーフにした民族衣装のようなものであること)
うみか「ぶっ壊す、言ってくれるじゃないか……」ギリッ
うみか「その余裕な態度、どんな能力者か知らんが私を相手にして帰れると――」
黄の妹「何言ってんだ、お前がたぶん1番楽に勝てるぞ」
うみか「……え?」
黄ノ妹「姉貴、あれを取り出せ」
黄ノ姉「……う、うん」サササッ
ガサゴソ
ガングレト(指示をされた姉がモゾモゾと民族衣装の中を探る)
うみか「わ、私が1番楽に勝てるだと?AASのことを言っているならお門違いだ、雪に当たらず戦う方法ならいくらでもある」
黄ノ妹「あのな〜人神様よ、ちょっと考えてみたら分かるだろ」
黄ノ妹「敵の本拠地を攻めるっていうのに、そこのボスの対策をしていかないやつがどこにいるんだよ」
黄ノ妹「特にアタシらのボスは……あんたにハンディを与える策を練った張本人なんだから」ニヤリ
うみか「……っ!」
-
黄ノ姉「ほっ、あったあった」ポンッ!
ガングレト(服の中を探っていた姉が人形のようなものを取り出す)
うみか「それは……」
黄ノ妹「――魔王人形」
うみか「っ!?」
黄ノ妹「あんたには肌で分かるだろ、この人形は魔王から余計な機能を削いで『魔王という概念』だけを残した人形」
黄ノ妹「アップデートした新魔王や一部の戦闘能力を伸ばしたNeo穂乃果とは逆、コンパクトにすることを念頭にした魔王ってわけ」
黄ノ妹「考える脳も外と繋がる目も口も生きるための心臓もねーし、もちろん戦闘能力なんて皆無だ」
黄ノ妹「けれど……この魔王人形には1つだけ、余計な機能を全て削いだ分、他の魔王より強力に調整した能力がある」
うみか「ぐっ……」ブルッ
凛「うみかちゃん?」
うみか「やばいな……あの人形に近付くと私の能力が抑えられてしまう」
凛「ええっ!?」
-
うみか「貴様……その人形に宿ってるのは世界の補正機構と同じものだな!」
黄ノ妹「ピンポーン!魔王に有利に働いてあなたに不利に働く世界の補正機構、それと同じ力が魔王人形にはある」
ガングレト「そ、そんなの反則ですよっ!」
黄ノ妹「まぁこれも貴重なもんだからね〜、将来魔王やNeo穂乃果になる素材を1つ潰して作るわけだし」
ダークドレアム「うみか、あなたは別ルートで城の内部へ向かいなさい」
うみか「でもっ!」
ダークドレアム「でもじゃない、戦えないのなら他のことをするべきよ」
ダークドレアム「うみか以外なら魔王人形も問題にならない、ここは私たちに任せて先に行きなさい!」
うみか「あ、ああ……」
黄ノ姉「あれ……戦いになる……のかな……?」
黄ノ妹「そういう流れだったろ、姉貴、次は武器を出せ」
黄ノ姉「……うん」
ガサゴソ
ガングレト(そう言って黄ノ姉妹は武器を服の中から取り出す、その武器は>>533)
-
藁人形
-
ガングレト(その武器は……藁で編まれた人形……?)
うみか「分かった、私は下へ向かって城の機能を取り戻す」
うみか「ここは任せたぞ!」
タンッ!
凛「うんっ!」
メリー姉「任されましたわ!」
黄ノ姉「あ……神様……逃げる……」
黄ノ妹「別に後回しで良いよ、あいつはここに来てる誰と当たっても詰みだろーし」
黄ノ姉「……うん、はいこれ」スッ
黄ノ妹「サンキュー」パシッ
ガングレト(姉が取り出した藁人形は2つ、それぞれを姉妹が1つずつ握る)
ガングレト(例の魔王人形は代わりに姉の懐にしまわれてしまった)
-
凛「藁人形?何をする気なんだろう……」
メリー姉「とても直接的な武器には見えないですわね、藁人形というフォルムを見るに呪術の道具でしょうか」
凛「んーむ」
メリー姉「ま、だとすれば呪いをかけられる前に殴るが勝ちです」
ダンッ!
ビュンッ!!
凛「ちょ!メリー姉さん!?」
ガングレト(メリー姉は黄ノ姉妹に向かって目にも止まらぬ速さで駆け出す)
ガングレト(相手を呪術師――体術には長けてないと見て先手を取りに行ったのでしょう)
ガングレト(それに対して黄ノ姉妹は……)
黄ノ妹「お、威勢がいいなー」
黄ノ妹「なら見せてやるよ、この藁人形の能力は>>536」
-
認識した相手の大切な人を読み取り、術者への全てのダメージをその大切な人に5倍にして肩代わりさせる能力
-
黄ノ妹「この藁人形の能力は――」
ヒュンッ
メリー姉「な……」
ガングレト(素人目からはほぼ瞬間移動の域に達しているメリー姉さんの歩法からの正拳突き)
ガングレト(それを黄ノ妹は見切ったかのようにひらりと躱す)
黄ノ妹「ひっぃ……危なっ!」
メリー姉「ならばこれで!」
ドンッ!!
ガングレト(しかしメリー姉さんも負けてはいない、初撃を避けた黄ノ妹に向かってすかさず逆の手で二撃目を放つ)
ガングレト(その攻撃は今度こそ確かに直撃した!)
メリー姉「……?」
黄ノ妹「おや、不思議な顔をしてるねぇ」
メリー姉「……ええ、当たりはしましたし私の拳にもインパクトの感触があった」
メリー姉「なのに……ダメージを与えた気がしません」
黄ノ妹「そりゃそうだよ、アタシはこの藁人形でダメージを肩代わりさせたからな」
メリー姉「……なに?」
黄ノ妹「いやー危ない危ない、本当に危ない」
黄ノ妹「条件は相手を認識することなんだけど、あんたのパンチがあたしの認識より早く当たりそうでマジビビったわ」
メリー姉「なるほど……既に術中に嵌ったわけ、術師ごときに最初の一発を避けられるなんてまだまだね」
黄ノ妹「へっへっへ、あたしもそこそこ身軽なのよ」
黄ノ妹「……で、今あなたがあたしの>>538に撃ち込んだダメージなんだけど……」
-
胃のあたり
-
黄ノ妹「……で、今あなたがあたしの胃に撃ち込んだダメージなんだけど……」
クルッ
ガングレト(黄ノ妹は手に持った藁人形を軽やかな手つきで半回転させる)
黄ノ妹「お、どうやらあんたの妹さんに肩代わりされたみたいだわ」
メリー姉「なん……ですって……?」
ガングレト(黄ノ妹が藁人形の裏側をメリー姉さんに見せつけてくる)
ガングレト(私のいる場所からでは読めないけど、何かの文字が書かれてることは分かった)
ガングレト「ダークドレアム様、あれって……」
ダークドレアム「おそらくあそこにダメージを肩代わりさせた相手の詳細が出るのでしょうね」
ダークドレアム「今出てるのはメリー姉の妹……ってところかしら」
凛「この城で治療を受けているはずだよね、なのにダメージを食らうなんて……!」
-
メリー姉「随分と……卑怯な手を使うんですわね」
黄ノ妹「マトモに殴り合っても勝てないだろうからなぁ」
黄ノ妹「しかもただの肩代わりじゃない、あたしが受けたダメージの5倍がそっちに流れ込んでる」
ガングレト「5倍……!」
凛「そんなの殴れるわけが無いにゃ!」
ザッ
黄ノ姉「身内の不始末は……身内が支払う……目には目を……内臓には内臓を……」
黄ノ妹「そうそう、それがあたしら姉妹に刻まれた『神』の力ってわけ」
黄ノ妹「足止めするんだっけ?良いぜ……さぁ来なよ、何発でも打って来やがれ!!」
メリー姉「…………!」
─────────────────
ドスケーブ城
・エントランス
AM3:55〜AM3:56
・ヨハネゲート前
AM3:35〜AM3:40 新終末編『152』了
-
というわけでここまで
メリー姉さんの口調が変わってるような……
気にせず行きましょう
新終末編『153』に続く
かもしれない
-
新終末編『153』
─────────────────
──ドスケーブ城・ヨハネゲート前
AM3:40
ガングレト「神の力……あの人たちも神族なのでしょうか」
ダークドレアム「いや、そうとは思えないわね……同族特有の物は感じない」
ダークドレアム「刻まれたという発言から考えるに神の力を何かしらの経緯で手にした人間って線が濃厚かしら」
ガングレト「なるほど……」
ダークドレアム「だが同等の力を扱っているのは事実、生半可な解呪の術は通用しない」
ダークドレアム「藁人形本体をどうにかして破壊しない限り呪いは解けないでしょうね」
ダークドレアム「狙うなら身軽な妹より気の弱そうでオドオドしてる姉の方か……」
ガングレト「そうですね、彼女らの体に当てないように藁人形だけを狙えば破壊できるかもしれません」
凛「…………」
ダークドレアム「どうする星空凛?あなたがやれる?それとも私が手助けしようか」
凛「そうだね、>>543」
-
星空にゃ!
-
おめぇの出番だぞ ヤムチャ
-
凛「そうだね、星空にゃ!」ピョーンッ
テテテッ
ガングレト(凛さんはそう答えると黄ノ姉妹とメリー姉さんが対峙してる場所まで走っていく)
ダークドレアム「どういう意味なの?」
ガングレト「大丈夫……ということだと思います」
ダークドレアム「そう、なら彼女たちに任せていいわね」
ガングレト「はい」
ダークドレアム「では……」
ガングレト(方針を決めたダークドレアム様は走ってる途中の凛さんに向かって叫ぶ)
ダークドレアム「星空凛!聞こえるー!?」
星空凛「聞こえるにゃー!」
-
ダークドレアム「ここはあなたたちに任せることにする!」
ダークドレアム「とりあえずアドバイスとしては妹より姉狙い、それから隠し武器に注意して!」
凛「隠し武器ー?」
ダークドレアム「その姉妹は最初にゲートをぶっ壊しに来たと言ってたわ」
ダークドレアム「他人にダメージを肩代わりさせる藁人形では無理がある、何か隠し手があるだから気をつけなさい!」
凛「にゃるほどー」
ダークドレアム「あと一応ここに"お土産"置いておくから!何かあったら使うのよ!」
凛「はーーい!」
ダークドレアム「よし、じゃあ私たちは別の場所に向かいましょう」
ガングレト「はいっ」
-
・
・
・
タタタタッ!
凛(その言葉を最後にダークドレアムさんたちの気配が最上階から消える、たぶん下へ向かったんだろう)
凛(凛はアドバイスを自分の中で自分なりに咀嚼する)
モグモグ
凛(んー、隠し武器と言っても範囲が多すぎるよね、考えても仕方ないし念頭に置いといて出された後に対処でいいか)
凛(それより考えなきゃいけないのは肉体にダメージを与えず藁人形を奪うか壊すかする方法だ)
凛(それに最適な生物のメダルは>>548)
-
タヌキ
-
凛(それに最適なメダルは……タヌキ!)
凛「子猫ちゃん、タヌキのメダルお願い!」
子猫「はい、その他のメダルは?」
凛「んーと、取り敢えずライオンとチーター!」
子猫「分かりました!」ポンッ!
パチンッ パチンッ パチンッ
凛(走りながらベルトに3枚のメダルをセット、そして百獣の女神の力を発動する)
凛「ライオン・タヌキ・チーター!――ラタヌーター!」
キュインッ!!
黄ノ姉「……変身……した?」
黄ノ妹「へぇ〜、面白れぇっ!」
凛(いびつな亜種コンボ、動きは素早いけどタヌキレッグは武器としては使えない)
凛(でもそれでいい、このタヌキレッグは……こう使う!)
ボワンッ!!
黄ノ姉「……煙幕?」
凛(黄ノ姉妹に近づきながら両手を握って印を結ぶと周囲が煙で覆われる)
凛(そして凛はタヌキの能力で>>550に変幻!)
-
姉妹の母親
-
凛(姉妹の母親に変幻!)
ボワンッ!!!!
黄ノ姉「わっ……また煙の量が増えて……っ!」
黄ノ妹「落ち着け姉貴!絶対に藁人形だけは手放すなよ!!」
黄ノ姉「う、うん……分かってる」
モワモワモワモワッ モワモワモワモワッ
・
・
凛(『姉妹の母親』それはふと思いついた単語だった)
凛(初めから狙ってたわけではない、この姉妹の有利になる人物は誰かと考えた結果、ごく自然と思いついたワード)
凛(人間には当然親がいて、親の顔を見れば子供は何かしらの油断をするだろうという、ごく普通の家庭に育った凛並みの発想)
凛(まぁ……世界は広い、もしかしたら姉妹は異能によって生み出された存在で親などはいないのかもしれないにゃ)
凛(だとしても……関係ない)
シュルルッ!
凛(血縁的な親がいなくても、例えば育ての親、能力で彼女たちを生み出した誰か、修行の師だって親代わりと言える)
凛(凛が知ってるかどうかは関係ない、姉妹から見て最も親と認識できるもの、それを凛の能力は自動的に判別してくれるのだ)
凛(それほどまでに"女神"という能力は強力)
凛(凛はなるべく頭を空っぽに……女神の力に身を任せて……)
シュルルッ!
凛(……変幻を完了させるだけ!)
-
・
・
ボワンッ!!
黄ノ姉「煙が晴れた……え?」
黄ノ妹「おいおい、こりゃどういうことだ……」
黄ノ妹「何故あんたがここにいる……!"紫毒妃"!!」
変幻凛「……へ?」
変幻凛(煙が晴れて姿を現すした瞬間、凛は姉妹にすごい怪訝とした顔で睨まれてしまう)
変幻凛(紫毒妃……?聞いたことない名前だけど、それが凛が変幻した人の名前なのかな)
変幻凛(自分の体を見てみると紫のローブを纏った古代の偉い人みたいな服装)
変幻凛(子供よりは大人の女性みたいな印象を受ける、腰には何かの容れ物らしき瓶が何個かついてた)
変幻凛(というか……変幻はしてみたものの、これからどうしようか)
変幻凛(ツバサさんやてんこちゃんと違って見た目だけの変化なんだよなーこれ)
黄ノ妹「おい!なんとか言ってみやがれ!」
変幻凛(まぁ取り敢えず>>553)
-
女王様とお呼びっ!!
-
変幻凛(取り敢えず……)
変幻凛「女王様とお呼びっ!!」ビシッ!
変幻凛(なんとなく妃という名前にちなんだことを言ってみる)
黄ノ妹「女王様だぁ……?おまえ何様のつもりだよ」
変幻凛「え、ええと……女王様?」
黄ノ妹「あぁ……?」ジロッ
変幻凛(あれ?なんか間違えちゃった、妙な空気が流れてるような……)
黄ノ姉「……紫さん、ラボの方向に向かったんじゃ……」
黄ノ妹「そうだよ、なんで仲間内で決めたこと破って最上階に来てんだよ」
変幻凛「……仲間?お母さんじゃなくて?」
黄ノ妹「ぶっ!!お母さぁん?くくくっ、ははははっ!!」
変幻凛「……えぇ?」
変幻凛(ふと気になったことを口にしてみたら大爆笑されてしまった、こっちも自体が掴めなくて混乱する)
黄ノ妹「確かに母親と言っちゃ母親だが……あたしらには直接関係なくねぇ」
変幻凛「そ、そうかなぁ」
黄ノ妹「確かにあたしと姉貴は力の出処が兄弟だから家族って繋がりを大事にしてるけどよ」
黄ノ妹「あんたと家族ごっこする謂れはねぇだろう」
変幻凛「はは、はははは……」
変幻凛(よく分からないけど直接の母親ではないってことか、面倒なのに化けてしまったなぁ)
変幻凛(あ、そういえばメリー姉さんの様子は……)
チラッ
変幻凛(そう思ってメリー姉さんのほうを見てみると――――)
─────────────────
ドスケーブ城・ヨハネゲート前
AM3:40〜AM3:43 新終末編『153』了
-
というわけでここまで
新終末編『154』に続く
かもしれない
-
新終末編『154』
─────────────────
──ドスケーブ城・ヨハネゲート前
AM3:43
変幻凛(メリー姉さんは、何か覚悟を決めたように静かに佇んでいた)
スゥーーーーッ
変幻凛(もし凛にオーラを見る能力があったのなら、今のメリー姉さんのオーラは正に凪の水面……)
変幻凛(さっきまでの動揺はどこへ行ったのか、1つの揺らぎさえ感じさせない立ち姿)
メリー姉「分かったわ」
黄ノ妹「……何がだよ」
メリー姉「私も覚悟を決めたということよ、その藁人形を奪い取るためには手段を選ばないし躊躇わない」
黄ノ妹「あぁ……?」
黄ノ姉「妹ちゃん……気を付けて、この人……さっきまでと違う……」
メリー姉「ふぅ……」
タンッ!
変幻凛(そうだ、黄ノ姉の言うとおり、メリー姉さんの呼吸が一変している……というか口調が微妙に変わってる)
-
黄ノ妹「直接戦う気?よく考えてみなよ、あたしは藁人形がある限りはノーダメージ、体の全てを盾として使える」
黄ノ妹「対するあんたはあたしの体に当たったらドボン、大切な妹へダメージが肩代わりされちまう」
メリー姉「……だから?」
タンッ!
黄ノ妹「ぐっ……」
メリー姉「覚悟を決めたと言ったでしょう、覚悟とは1人の武人として戦う覚悟」
メリー姉「人質が肉親だろうが関係ない、戦うことで藁人形を破壊できる可能性があるのなら私は躊躇わない」
メリー姉「あの子に何発食らわせることになろうと、最後の一発があなたに届けばそれでいい」
タンッ!
黄ノ妹「妹が……どうなってもいいってのかよ……!」ジリッ
メリー姉「私の妹も武人よ、そのくらいの覚悟は出来て当然」
メリー姉「それが……私たちの姉妹の絆だから――」
黄ノ妹「ちぃっ!」
-
変幻凛(覚悟を決めたメリー姉さんが一歩一歩近付く度に、黄ノ妹が気圧されるように後ずさる)
黄ノ姉「……あれ?そういえば、こっちに来てたもう1人はどこ……?」
黄ノ姉「まだ煙が少し残ってるから……隠れてるのかな……」
変幻凛「うっ!」
変幻凛(やばいな、妹のほうはメリー姉さんに任せるとしても黄ノ姉は凛が何とかしないと)
変幻凛(前の凛が消えたことを誤魔化しつつ、藁人形を奪うのに有利な状況にできる方法……何かあるかな……)
変幻凛(うーん……>>559)
-
猫騙しで気絶させる
-
変幻凛(……そうだ!猫騙しで気絶させよう!)
変幻凛(姉の方は妹に比べて動きも反応もトロいし、何より凛のことを仲間だと思っている)
変幻凛(疑われて姉の藁人形のターゲットになる前に妹から少し引き離して、すかさず猫騙しで気絶させてしまおう)
変幻凛「そ、それならこっちで見たよ、お母さんに付いてきなさい!」
黄ノ姉「分かった……でもやっぱり紫さん変じゃない……?」
変幻凛「そ、そうかしらぁ?ほーほっほっほ!」
ザッザッ
黄ノ妹「コラ姉貴っ!あたしから離れるな――」
メリー姉「ダンスなう――貫通拳!」
ドシィィンッ!!
黄ノ妹「……ぐっ!」
-
黄ノ妹(アブねぇ……こいつ本当に本気で打ってきやがった)
黄ノ妹(咄嗟に藁人形を懐に隠して左腕でガードが間に合ったから良かったものの……)
メリー姉「……と、油断してない?」
ギュンッ! パンッ!!
黄ノ妹「……は?」
黄ノ妹(腕でガードしたはずの突き、なのにその後ろ……左胸辺りを覆っていた服の布がはじけ飛びやがった!)
メリー姉「貫通拳――殴った場所から衝撃を伝導させてガードの奥にある弱点を付く技よ」
メリー姉「どうやら藁人形を隠したのは左胸では無かったみたいね……残念」ニヤリ
黄ノ妹「ちっ!」
バッ!!
メリー姉「ほう……予想してないことが起こったから距離を取る、良い判断だわ」
黄ノ妹「ガードを貫通しての攻撃、それはそれで凄ぇが……」
黄ノ妹「正気かよ、左腕から胸に伝わったダメージが全部5倍になって妹に行くんだぞ……!」
メリー姉「至って正気よ、至ってね……」
メリー姉「さぁ、お喋りしてないで打ち合いを続けましょう」
メリー姉「しっかり隠してないとすぐに奪い取っちゃうわよ……?」
黄ノ妹「……くっ」
-
・
・
タタタッ
変幻凛(メリー姉さん、上手く黄ノ妹を引きつけてくれてるみたいだな)
黄ノ姉「ねぇ……敵はどこにいるの……?」
変幻凛「そうね……たぶんこの辺よ」
変幻凛(充分に2人を引き離せた、残った煙が上手くゲート周りのスペースを二分してくれている)
変幻凛(猫騙しを食らわすチャンスだ)
カツンッ
変幻凛「黄ノ姉、こっちを見てくれる?」
黄ノ姉「うん……なに紫さ――」
変幻凛(今だっ!)
シュルルッ!
変幻凛(変幻を解き、頭のライオンヘッドから光を放ちつつ猫騙しを食らわす!)
カッ!! パァァァァァンッ!!!!
凛「ライオネルフラッシャー猫騙し!」
黄ノ姉「がっ……!」
凛(……決まった!光が視覚から、音が聴覚から侵入し、黄ノ妹の脳を痺れさせる攻撃)
凛(凛の渾身の猫騙しを食らった黄ノ姉は>>563)
-
表人格の代わりに裏人格の登場
-
凛(猫騙しを食らった黄ノ姉は……ゆっくりと仰向けに倒れる)
黄ノ姉「うっ……」フラッ
パタンッ
凛「ふぅ……なんとかなったにゃ」
子猫「はい、上手く無力化できましたね」
凛「後は妹の方に気付かれないうちに藁人形を探して――」
ガサゴソ
ガサゴソ
凛「……あった!」
凛(黄ノ姉の服の中から藁人形を見つけることは難なくできた)
凛(藁人形の裏を見てみても名前は表示されていない)
凛「良かった……かよちんの名前が書いてあったら凛は攻撃できないもん」
子猫「凛さん、これ壊したほういいですよね、トラメダルをどうぞ」
凛「うんっ」
-
パチンッ
凛(タヌキの代わりにトラを嵌めて、これでライオントラチーターの猫系コンボを発動)
キィィィンッ!
凛(あの姉妹の言うことが正しければこの藁人形は神の力に由来するもの、そう簡単に破壊できるものじゃないだろう)
凛(でもラトラーターコンボの力なら――)
凛「はぁぁぁっ!」
ザンッ!!
バリィィィィンッ!!
子猫「砕けたっ!」
凛「でも……トラクローにもヒビが入った」
パキッ……!
子猫「女神の力の持ってしてもギリギリ壊れるかどうかの強度ですか、恐ろしい呪いの道具です」
-
凛「まぁとにかく壊せたことは壊せた、早くメリー姉さんのとこに戻らないと――」
ガゥゥッ!
凛「……え?」
凛(そうして身を返した瞬間、気絶したはずの背後の黄ノ姉から唸り声が聞こえた)
凛(しかもそれは人の物とは程遠い……"獣の唸り声")
グルルルルルルッ!!
凛「っ!?」バッ!
凛(弾かれたように振り返って注視した黄ノ姉の体……)
凛(その体の>>567から獣の顎のようなものが生えていた……!)
-
顔の左半分
-
凛(その体……顔の左半分から獣の顎のようなものが生えていた……!)
??「グルルルルルァッ!!」
凛(顔の左半分を覆い尽くすほどに大きく開いた口と、そこから覗く凶暴な牙)
凛(まるで別の生き物が黄ノ姉の顔を食い破って這い出て来るような……常識を超えた奇怪な現象)
凛(目の前で起こってるそれから凛は目を離せなくなっていた)
黄ノ姉「……ご……めん……」
凛「……!」
凛("まだ人間"である黄ノ姉の顔右半分が悲痛に歪んだ表情を浮かべ、生気の無い声が口から漏れ出す)
黄ノ姉「わ……たし……また……わたしじゃ……なくなる……」
黄ノ姉「……ごめん……ね、……ごめんね……"ナリ"」
-
ツーッ
ピチャンッ
凛(黄ノ姉の右目から流れ出た涙が頬を伝って、薄く雪の積もった床へと落ちる)
凛(その瞬間、黄ノ姉の右目から光が失われると同時に……)
黄ノ姉「わ、わたしは――」
ギュルルッ
黄ノ狼「グルルルルルァッ!!!!」
凛(彼女の頭部は完全に凶暴な狼の頭に取り込まれてしまった……!)
子猫「り、凛さんっ!」
凛「子猫ちゃんは私の後ろにっ!こいつ……一瞬でも目を離したら危険だっ!」
子猫「はいっ!」タンッ!
ビリッ ビリビリッ
凛(目の前の歪な狼人間が放つ危険な匂いを肌が痺れるほどに感じる、これがダークドレアムさんが考えてた隠し玉なのか……)
凛(凛の力で対応できるかは分からない、ことによってはお土産に頼るかもしれないにゃ)
凛「子猫ちゃん!目を離せない凛の代わりにダークドレアムさんの『お土産』を取ってきて!」
凛「それからメリー姉さんの様子を見てくれる!?」
子猫「は、はい!向こうの2人の戦いの様子は……>>570」
-
黄妹の服が破れすぎて全裸になってるしメリー姉が藁人形に黄姉の名前を付けて持ってる
-
子猫「向こうの様子は……黄ノ妹の服が破れ過ぎて全裸になってます!」
子猫「それからメリー姉さんが藁人形に黄ノ姉の名前を書いて持ってます!」
凛「……え?」
子猫「では私はお土産を持ってきますね!」テテテッ!
凛(ふむ……凛は敵から目を話せないから直接は見れないけど、子猫ちゃんの言葉を信じるならメリー姉さんが勝ったんだ)
凛(敵の服を破壊して隠してた藁人形を奪うことに成功、しかも敵のアイテムを利用して逆手に取っている)
凛(よし、これならまだ戦える……)
黄ノ狼「グルルルルルルルァァァァッ!!!!」
ビリリリリリリリッ!!
凛「戦える……かなぁ?」
─────────────────
ドスケーブ城・ヨハネゲート前
AM3:43〜3:45 新終末編『154』了
-
というわけでここまで
姉妹との後半戦へ
新終末編『155』に続く
かもしれない
-
新終末編『155』
─────────────────
──ドスケーブ城・ヨハネゲート前
AM3:45
グルゥゥゥゥゥゥァァァァァッ!!!!
メリー姉(立ち込める煙の向こう、黄の衣を纏う狼怪人が雄叫びをあげる)
メリー姉(元の黄ノ姉の面影が全くない……いったい凛との戦いで何があったのかしら)
黄ノ妹「ちっ!姉貴のやろう"アレ"を出しちまいやがったか!ゲート破壊すらまだだって言うのに……!」
メリー姉「あらあら?随分焦ってるみたいね」
メリー姉「でも……あなただって余所見する暇のないほどピンチなのよ」
黄ノ妹「くっ……!」
メリー姉(今の黄ノ妹は私の攻撃を受け続けた結果、全裸のすっぽんぽんとなっていた)
メリー姉(彼女が私の妹を人質にとっていた藁人形もこうして私の手にある)
メリー姉(どうやらこの藁人形は他人が名前を書き換えても同じ効果を発揮するらしい)
メリー姉(『本来の所有者なら手にして認識するだけで呪い発動』『仮所有者なら手書きで書き換える手間を消費して呪い発動』……という感じかしらね)
-
黄ノ妹「……そうだな、今や立場は逆転している」
黄ノ妹「あたしがあんたを殴ればそのダメージは姉貴に行ってしまうわけだ」
メリー姉「そうそう」
黄ノ妹「けど驚いたなぁ、あたしの服や隠した藁人形だけを狙って攻撃をしてくるとは……」
メリー姉「貫通拳や脱衣拳、そして達人級の盗賊に通じる足さばき、我がダンスなうは古今東西のあらゆる体術を内包しているの」
メリー姉「やろうと思えば音もなく心臓を抜き取ることさえ可能……服を脱がして藁人形だけを奪い取るなんて朝飯前よ」
黄ノ妹「……はっ!言ってくれるねぇ!」
メリー姉(……とは言ったものの、さすがに黄ノ妹の肉体にノーダメージというわけには行かなかった)
メリー姉(藁人形を奪う過程で仕方なく当てに行かざるを得ない状況はあったし)
メリー姉(大体>>575発くらいはうちの妹のほうに流れちゃったかもねぇ)
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100
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メリー姉(100発くらいはうちの妹のほうに流れちゃったかもねぇ)
メリー姉(単純に考えて5倍だから500発……もちろん全力で打っては無いけど妹は一方的にこれだけ殴られたことになる)
メリー姉(かなり多い量ね、修行の時でもあの子にそれだけ当てたことは無いし、ガードしてるのが前提の修行とは違う)
メリー姉(あの子の体調にもよるけど、生きてるかどうかは半々ってところか……)
メリー姉「……ま、いいわ」
メリー姉(私に無抵抗な妹を殴らせた罪は重い、その罪は相手の体で贖わせる!)
メリー姉「よく聞きなさい!あなたの姉の体は私が手に入れたも当然!」
メリー姉「私が指を折れば姉の指が折れ、首を掻っ切れば姉の首が切れるでしょう」
メリー姉「抵抗は無駄、大人しく一発殴られるなら許してあげるわ!」
黄ノ妹「ふんっ……よく言う……」
ジリッ
-
黄ノ妹(……不味いな)
黄ノ妹(実際のところ、脅しで自傷される程度のダメージなら問題ない、"今の姉貴"は痛みというものに鈍いから)
黄ノ妹(だが、やつが本気を出して致命的なダメージを姉貴に与えてきたらお終いだ)
黄ノ妹(痛みに鈍い姉貴はダメージの肩代わりに気付かず簡単に無力化されてしまう)
メリー姉「さぁ、どうする?」
黄ノ妹(……仕方ねぇ、こうなったらあたしも奥の手を出すだけだ)
タンッ!!
黄ノ妹「姉貴っ!あたしの所に来いっ!アレをやるぞっ!!」
タタタッ!!
メリー姉「……っ!」
黄ノ狼「ガルルルッ!」
ビュンッ!
-
メリー姉(黄ノ妹が狼化した姉の元へ駆け出す、それと同時に狼化した姉も妹の元へ物凄い速度で走り出す)
メリー姉(まるで猛獣、チーターかそれ以上の加速――)
メリー姉「凛っ!そいつを止めてっ!」
凛「うんっ!」
ビュンッ!!
メリー姉(妹を止めても姉がやってくる、私が全力で走っても両者の間に割って入る余裕はない)
メリー姉(チーターレッグを装着してる凛に呼びかけるのと同時に、自分の足を手刀で思っきり斬りつけ姉の足にダメージを与える)
ザシュッ!!
凛「にゃぁぁぁぁぁっ!!」
メリー姉(急加速で狼姉を追いかける凛、姉妹が合流する前に追いつくことが>>579)
-
できなかった
-
メリー姉(追いつくことが……)
凛(……出来ないにゃっ!)
黄ノ狼「ガウゥゥゥッ!」
ビュンッ!!
凛(速い、速すぎる……ラトラーター状態の凛が全力を出しても追いつけない)
凛(黄色狼は凛をぶっちぎって駆け抜けると妹と合流してしまった!)
タンッ!
黄ノ狼「ガルッ!」
黄ノ妹「よく来た姉貴!さぁ……」
凛(合流した狼は勢いそのままに――)
黄ノ妹「――あたしの腹を食い破れっ!!」
黄ノ狼「グルルルルルァッ!!」
ザシュッ!!!!
凛「え……?」
-
黄ノ妹「ぐ……あ……ぐ……」
ブシャァァァァァァァッ!!
ポタッ ポタッ
凛(黄ノ妹の腹に思っきり喰いついた狼の牙、噴水のような血の飛沫と共に掻っ捌かれる)
メリー姉「何を……してるの……?」
凛「姉が……妹を喰った……?」
黄ノ妹「あ……が……あああああっ!」
凛(そして、食い破られた黄ノ妹のお腹の中から――)
ドンッ!
ジャラララララララララッ!!!!
凛(溢れんばかりの大量の鎖が飛び出してきた)
凛「え!?」
ギュルルルッ ガシッ!!
凛(近くに来ていた凛はその鎖に捕まってしまう、すると鎖に捕まった凛は>>582)
-
変身能力を奪われた
-
いつから捕まったと錯覚していた?
-
凛(鎖に捕まった凛は百獣の女神の変身が解除されてしまう)
パシュンッ!!
凛「嘘っ!」
黄ノ妹「かかか……!全部纏めて絡め取りやがれ――呪縛の腸鎖・アイアンカーズっ!!」
ジャラララララララララッ!!
ガシンッ! ガシンッ! ガシンッ!
凛(四方八方に伸びる大量の鎖、それは凛やメリー姉さん、半壊した天井を支える柱、ヨハネゲートの枠組みにまで絡みつく)
凛(特に凛とメリー姉さんは体中を鉄の鎖でグルグル締め上げられて全く身動きが取れない)
凛(位置的に姉妹を挟んで対象的な位置で固定されてしまう)
メリー姉「ぐっ……」
凛「再変身……できない?」
黄ノ妹「かははは……がはっ!」
ビチャァッ!
黄ノ妹「はぁ……はぁ……こいつを出すのは後に取っておきたかったんだけどな……」
黄ノ妹「だって、こいつを出すと……腹から下が吹っ飛んじまうからさぁ!」
凛「……っ!」
-
凛(360度に伸びた鎖の中心にいる黄ノ姉妹の姿は……最早この世の存在じゃ無かった)
凛(細身な体に合わない歪な狼の頭を生やした姉、その姉の手に頭を掴まれた下半身の無い妹)
凛(姉の牙と妹の下腹部からは新鮮な血が滴り、真っ白な地面を赤く染めていく……)
凛「このっ……!このっ……!」
ガチャガチャッ!!
黄ノ妹「……ムリムリ、あたしの腸鎖は悪神さえ縛り抑える鉄の鎖、力で逃れるなんて出来ねーんだよ!!」
メリー姉「凛ー!無事!?」
凛「う、うん!怪我はないよ!だけど女神の変身が解除されちゃった!」
凛「再変身できないことから考えるに……能力自体を封じられてるか取られちゃってるんだと思う」
黄ノ妹「くくくっ!正解だよ、こいつは対象を縛っておくために対象の能力さえ取り上げる!」
黄ノ妹「神さえただの人にしちまう神の鎖がこいつ!お前ら異能者だってもちろん無能力者になるんだ!」
-
メリー姉「それは不味いわね……」
メリー姉「そんなものでゲートまで縛られたらゲートが能力使えないんじゃない?」
凛「うん、凛たちが動けないことよりそっちのほうが大変だよね」
凛(こうなると頼みの綱は"お土産"を取りに行った子猫ちゃんか……)
凛(あの子はまだ黄ノ姉妹に認識されてないはず、こっそり戻って来てくれれば――)
テテテッ
子猫「凛さん!取ってきましたよー!お土産は>>587でしたー!」
凛「ええぇぇっー!?」
-
ビーズメイカー
-
子猫「お土産はビーズメイカーでしたー!」
凛「ええぇぇっー!?」
凛(ダークドレアムさんの置き土産が割りと女の子っぽかったのと、子猫ちゃんが隠れる気全く無く帰ってきたことに二重に驚いてしまう)
凛「子猫ちゃん隠れて――」
黄ノ妹「はぁっ!」
シュンッ! ガシンッ!
子猫「きゃぁっ!?」
凛「あぁ……」
凛(忠告する間もなかった、当然の如く子猫ちゃんは黄ノ妹のお腹から出る鎖に捕まってしまう)
凛(捕まった衝撃で子猫ちゃんが口に加えていたビーズメイカーの箱が地面に落ちてビーズが辺りに散らばる)
バラララララッ!
黄ノ妹「なんだもう一匹いたのか、でも意味ないよ、誰だろうがあたしの領域に入ったものは逃さない!」
-
黄ノ妹「まずはそこの猫女を始末、次にそっちの格闘女から藁人形を奪って始末」
黄ノ妹「鎖で動けないから回避も呪い自傷もできない、どっちも姉貴に喰ってもらうからなぁ!!」
黄ノ狼「グルルルルルァッ!!」
メリー姉「……凛、一瞬だけ隙を作ってちょうだい」
凛「え?」
メリー姉「そしたら……私がなんとかする」
黄ノ妹「なんとかぁ?出来るわけねーだろ!手足が塞がっててよう!!」
凛(メリー姉さん……何か考えがあるのかな)
凛(でも、隙を作ってって言われても凛には能力が……)
メリー姉「出来るはずよ!あなたの近くにヒントはある!」
凛「近く……?」
凛(もしかして……この辺りに散らばってるビーズかな?ダークドレアムさんが置いてったからただのビーズのはずがない)
凛(よし、これを使って何とか――)
─────────────────
ドスケーブ城・ヨハネゲート前
AM3:45〜AM3:48 新終末編『155』了
-
というわけでここまで
次あたりで決まるかな
新終末編『156』に続く
かもしれない
-
新終末編『156』
─────────────────
──ドスケーブ城・ヨハネゲート前
AM3:48
凛(これでなんとか……)
チラッ
凛(……なんとか?)
凛(うん、今の状況をもう1度確認してみよう)
凛(ここはドスケーブ城の最上階、天井や柱がフロアの半分くらい崩壊していて床には雪が降り積もってる)
凛(凛たちはそのフロアの中心にあるヨハネゲートの近くにいて、更に凛たちの中心には黄ノ姉妹が立っている)
凛(黄ノ妹の千切れた腹部から放たれた鎖は、離れた周囲の壁や柱やゲート、間にいる凛やメリー姉さんや子猫ちゃんにまでキツく絡みついてピンと張られたまま……)
グッ
凛(そんな渦中にいる凛の手と足は固定されて動かず、能力さえ解除されて使えない)
凛(それが今の凛が置かれてる状況にゃ……)
黄ノ狼「グルルルルッ」
ザッ ザッ
凛(狼人間化した姉が妹を掴んだままゆっくりと凛の場所に近付いてくる)
凛(一気に走ってこないのはさっきのメリー姉さんの言葉を警戒してだろうか……)
黄ノ妹「大丈夫だ姉貴、2人とも変な動きをする気配はねぇぜ」
黄ノ狼「グルッ」
-
凛(このまま凛のところに辿り着かれれば凛はあの狼の頭でパクリと食べられてしまう)
凛(頼みの綱はメリー姉さんの策、そして近くの地面にばら撒かれたビーズだ)
凛(ダークドレアムさんがもしものためにと置いていったアイテム、特別な力が無いはずがない)
凛(何か……何かできることは……)
キョロキョロ
凛「……あ」
凛(あった、凛の目の前にビーズと一緒に紙のようなものが落ちてる)
凛(たぶんビーズメイカーの箱に入っていた説明書がビーズと一緒に外に出たんだ)
凛(冊子じゃなくて紙1枚だけのペラペラなタイプ、基本的な使い方が分かりやすく書かれてるだけのものだろう)
凛(このくらいの距離なら凛の視力でもかろうじて説明書の文章が見える!)
凛(なになに、このビーズメイカーは>>593)
-
魔法のビーズメイカーです。
-
凛(『魔法のビーズメイカーです』)
凛(……ってそれだけ!?)
凛(いや、よく見るとその下に小さい文字で詳しい説明が書いてあるな)
凛(『このビーズメイカーは魔法のビーズメイカーです、1つ1つ別の魔法が込められたビーズを組んで自分だけの魔法のアクセサリーを作ることができます』)
凛(『各ビーズの効果と組み合わせ表は以下に……』)
凛(……ダメだ、表の部分は細かくて見えない、飛ばして次を読もう)
凛(『作る際に注意するのはビーズを破損させないこと、このビーズは強力な魔法が封じ込められたビーズです』)
凛(『誤って破損させると中の魔法が溢れ出して予期せぬ事故に繋がる恐れがあります』)
凛(『どうかアクセサリーを作る際にはお気をつけください』)
凛(……ふむ、魔法の封じ込められたビーズか)
凛(凛の周りの地面にばら撒かれているビーズはそんなに危ないものだったんだね……)
凛(いや?これは逆に使えるかもしれないにゃ!)
-
黄ノ狼「グルルル……」
ザッ ザッ
凛(こっちへ近付いてくる姉はビーズの存在を意識してない、対するビーズは凛を守る地雷のようにばら撒かれている)
凛(中には雪の中に埋まって上手く隠れているものもあるし)
凛(あのどれかを姉が踏んで壊してくれれば――)
グッ
凛「おいっ!何をそんなにグズグズしてるにゃ!」
凛「凛を殺したいならさっさと噛み殺しに来るがいいにゃ腰抜け狼っ!!」
黄ノ狼「ガッ!?グゥゥゥゥ……グルルルルルァッ!!」
ダタタッ!!
黄ノ妹「おい待て姉貴!挑発に乗らねーで慎重に……」
凛(かかった!雄叫びをあげながらさっきより乱雑に走ってくる姉はビーズ地帯に足を踏み入れ――)
ボンッ!!!!!!
黄ノ狼「グガッ!?」
凛(ビーズ魔法が暴発する!!)
凛(1つ問題があるとすればビーズの種類によって封じ込められた魔法が別だということ)
凛(種類と効果の対応を確認していなく、どのビーズを踏んだかも分からない凛にとってはランダム発動と変わらない)
黄ノ妹「姉貴!おいどうなったんだ!煙で見えねぇぞ!!」
凛(ビーズの魔法の暴発を食らった黄ノ姉は>>596)
-
最初に見た凛をマスターとして認識した
-
シュゥゥゥゥッ
黄ノ狼「ガウ……ググ……」
黄ノ狼「マス……ター?」
凛「……え?」
凛(ビーズ魔法の暴発を受けた黄ノ姉、暴発の煙の中から再び姿を見せた時……その瞳は凛ことをじっと見つめていた)
凛(さっきまでの殺意に満ちた目とは違う、子が親の顔を伺うような不安で寂しげな瞳)
黄ノ狼「ガル……マスター、めいれい……を……」
凛「マスター……はっ!」
凛(そうか、今暴発した魔法はそういうものか!)
凛(相手を自分に服従させる魔法、いや……これはどちからというと刷り込みに近い現象かもしれない)
凛(まぁどちらにせよ、今の黄ノ姉が凛の命令を聞くことは事実)
凛(なら――)
凛「命令だよ!あなたはそこから1歩も動かないで!!」
黄ノ狼「りょう……かい……グルルル……」
黄ノ妹「姉貴!?何言ってやがんだ……?」
-
黄ノ妹「……はっ、まさか周りにばら撒かれているビーズのせいか!」
黄ノ妹「テメェよくも姉貴をっ!!」
ジャララララッ ギュゥゥゥッ!!
凛「がっ……!」
凛(……しまった、首にかけられていた鎖をキツく締められてしまった!)
黄ノ妹「せめて口がきけるようにと緩めていたのがダメだったな、もう容赦はしねーぞ!」
凛「が……ぐ……」
凛(くそ……声を出せないんじゃ黄ノ姉に命令が出せない)
凛(それに……このままじゃ息ができなくて窒息しちゃう……)
パキンッ
メリー姉「ありがとう凛、充分すぎるアシストだわ」
黄ノ妹「……なに?」
凛(……え?)
ピキッ ピキッ
凛(首を締められてるせいで意識が遠のき霞む視界、その視界の片隅で――)
バキンッ!!
凛(メリー姉さんを拘束していた鎖が弾け飛んだ)
-
・
・
バキィィンッ!
メリー姉(結論から言えば、拘束を解くことだけなら簡単だった)
メリー姉(問題だったのは狼化した黄ノ姉の存在)
メリー姉(例え鎖の拘束から抜け出したとしても、あの姉に襲われてしまえば分が悪い)
メリー姉(無論私が勝つのは揺るがないけど、腕や足の1本失うくらいは覚悟しなければならなかったでしょう)
メリー姉(その問題点を凛は解決してくれた)
メリー姉(一瞬だけ隙を作れたら好機だった所を、あの子は黄ノ姉をコントロールして動きを止めてしまった)
メリー姉(手柄中の手柄、大手柄にもほどがある)
メリー姉(あとは――私がやるべきことをやるだけ)
バキィィンッ!!
黄ノ妹「バカな……あたしの腸鎖は神の鎖だぞっ!砕ける訳がないっ!」
メリー姉「へぇ?だから……?」
メリー姉(私が右手に力を入れると腕を拘束していた鎖が菓子のようにボロボロと崩れる)
メリー姉(私が予め右手に嵌めていた拳鍔、俗に言うメリケンサックは神殺しの力を持った武器、その名も)
メリー姉「神討具――神殺しナックル」
バキバキッ バキィィンッ!!
メリー姉(神の力を持った鎖なら砕けない道理はない!)
黄ノ妹「ぐ……っ」
メリー姉(完全に予想外の行動だったのだろう、動揺した黄ノ姉は>>600)
-
妹を丸呑みした
-
メリー姉(完全に動揺した黄ノ妹は鎖を1本姉に刺すと――)
グサッ!!
黄ノ妹「悪いな姉貴、最後の手だ!操るぞ!!」
黄ノ狼「……ガル?」
メリー姉(姉を操った黄ノ妹は姉の口を開けて自らを丸呑みにさせる!)
黄ノ妹「アタシがやられたら鎖が全部解除されちまう、だからせめて姉貴の中に……」
黄ノ狼「ガ……」
バクンッ!!
メリー姉「…………!」
メリー姉(自らが発動した武器を守るためにそこまでやるなんて、敵ながら大したやつだわ)
黄ノ狼「グラララッ!グルルルッ!ガルル……」フシュー
メリー姉(狼の口に飲み込まれた黄ノ妹、そして黄ノ狼の全身からは鎖が肌を貫いて伸びてくる)
ドンッ! ジャラララララララララッ!!!!
メリー姉(妹を飲み込んだ大きな口から伸びてる大量の鎖はもちろん、姉の体のあらゆる所に穴が開いて鎖が姿を現す)
-
黄ノ狼「グルルルッ……はぁ……これであたしと姉貴は2人で1つ、あたしを殺すには姉貴をやらねぇといけねぇ……」
メリー姉(大きく開かれた狼の口、その喉奥から妹の声が響く)
黄ノ狼「正真正銘の一心同体、中から姉貴を操ることもできるわけだ……」
黄ノ狼「ま、"これ"をやっちまうとあたしは完全に腸鎖と脳だけになって姉貴の肉体と同化、もう自分の体は取り戻せねぇ」
黄ノ狼「出来ることなら奥の手以上にやりたくは無かったがな……」
メリー姉「どうして……そこまで」
黄ノ狼「っ!それ以外にねぇからだよ!!」
黄ノ狼「あたしたちは『ただの道具』だ!フードマンたちに利用されるだけのただの道具!」
黄ノ狼「植え付けられた力も他のやつらとは違う、自我を失い獣に姿を変える力と肉体を失い武器となる力、使い捨てが前提だ!」
黄ノ狼「作戦が成功しなけりゃ姉妹共々殺されて捨てられるのがオチなんだよ!」
メリー姉「…………」
黄ノ狼「だから、あたしはどんな形になろうが、人間であることを捨てようが、姉貴と一緒に最後まで生きてやるって決めたんだ!」
-
メリー姉(響く……醜く涎を垂らす異形の姉の口の中から悲痛な妹の声が)
メリー姉(半壊した最上階に積もる雪の景色と相まって、それは雪原で吠える哀しい獣のように見えた)
黄ノ狼「変な同情は要らねぇ、そんなものを抱えてたら一瞬で殺されちまうぜ」
メリー姉「……そうね、今のあなたは手強い」
黄ノ狼「この猫娘を殺すのは後にしてやる、あんたから全力でかかってこい」
ジャララッ ドサッ!!
メリー姉(鎖に締められていた凛が解放され雪の上に転がる、動かないから軽い窒息かな……まぁ助けるのは後回し)
メリー姉(今の黄ノ妹、いや……姉妹が合体した黄ノ狼は強敵中の強敵だ)
メリー姉(姉の俊敏性と妹の鎖が融合している、神殺しナックルワンパンでお終いにできる相手ではない)
メリー姉「あなたの覚悟は受け取ったわ、では……」
スゥーッ
メリー姉「私も、全力の全力を出させてもらう!!」
カッ!!
─────────────────
ドスケーブ城・ヨハネゲート前
AM3:48〜AM3:50 新終末編『156』了
-
というわけでここまで
姉と妹を普通に間違ってしまう
延長戦、次こそラスト
新終末『157』に続く
かもしれない
-
新終末編『157』
─────────────────
──ドスケーブ城・ヨハネゲート前
AM3:50
メリー姉「はぁぁぁぁぁぁぁ……」
メリー姉(精神を集中させ全身に力を漲らせる)
メリー姉(今から行うのはダンスなうにおける奥義中の奥義、ダンスなうの免許皆伝者でも危険とされる禁断の技)
メリー姉(下手をすれば敵を倒すより早く自分が命を失うかもしれない)
メリー姉(きっと、この場にあの子がいたら止められるでしょうね)
メリー姉(『姉様がそこまで無理をする必要はないです、やめてください』……と)
メリー姉(しかしやらねばならない、ヨハネゲートは新魔王軍に対抗するものの連携の要)
メリー姉(これを破壊されることは生命線を絶たれることと同じ)
-
メリー姉(私の可愛い妹よ、ごめんなさい……先に謝っておくわ)
メリー姉(あなたを沢山殴ってしまったことと、これから私が無茶をすることを)
メリー姉(でも……これだけは覚えておいて欲しいの、全ては私たちが元の世界に戻るために必要なこと)
メリー姉(だから私は――――)
ドンッ!!!!
黄ノ狼「ガルゥゥゥゥゥゥッ!!」
メリー姉(空間が破裂するような爆音と共に真っ直ぐ駆け出す黄ノ狼)
メリー姉(体中に無数に空いた穴という穴から伸びた鎖を振り回し、狼に取り込まれた姉妹が私を殺しにやってくる)
メリー姉「ふぅ……」
メリー姉(私はただそれを見据えて――)
トンッ
メリー姉(奥義の1つ、>>607を発動した)
-
仁義巣漢(ジンギスカン)
-
メリー姉(奥義の1つ、仁義巣漢(ジンギスカン)を発動した)
ドクンッ ドクンッ
メリー姉「はっ!」
ゴォォォォォォウッ!!
メリー姉(その瞬間、基本の構えを取っていた私の肉体が鉄鍋で熱されたように赤くなる)
メリー姉(赤くなった肌からは焦げる匂いと共に湯気が一気に立ち上る)
ジュゥゥゥゥッ!!
黄ノ狼「ガルルッ!なんだぁ!?美味そうな匂いだなぁオイっ!!」
ブンッ! ジャララララララッ!!
メリー姉(黄ノ狼が素早く振った腕から出てる鎖が数本、私に向けて真っ直ぐ高速で伸びる)
メリー姉(その速度は生半可な銃弾より速い、生身の人間相手なら体に拳大の穴を空けて貫ける威力、拘束ではなく攻撃のための鎖)
メリー姉(けれど、その鎖が私を貫こうとしたした瞬間――)
シュンッ!
黄ノ狼「なっ!?」
メリー姉(――私の姿はその場から消失する)
-
シュンッ
シュシュシュッ!!
メリー姉(困惑した黄ノ狼は先程私がいた場所の手前で立ち止まる)
黄ノ狼「目にも止まらぬ速さで……動いてやがんのか?グルルルル……!」
メリー姉(ふふっ、正解よ)
メリー姉(仁義巣漢は自らの体に流れる生命エネルギーを凝縮して一気に解放する奥義)
メリー姉(溢れんばかりの生命エネルギーは肉体をジンギスカン鍋の上の羊肉の如く焼き尽くす)
メリー姉(常軌を逸した血流速度の増加と筋肉の活性化、これにより運動能力は人の域を超える)
メリー姉(単純な速度だけで言えば………>>610倍の速さ!)
-
29
-
メリー姉(単純な速度だけで言えば……通常の29倍の速さ!)
ヒュヒュヒュヒュッ!!
メリー姉(けれど、もちろんデメリットはある)
メリー姉(文字通り血肉を焦がすほどの莫大な生命エネルギーの奔流は、肉体に甚大な負荷を与え続ける)
メリー姉(私の実力で……保って9.2秒が限界のタイム)
メリー姉(それを超えて使用を続けると熱暴走と肉体へのダメージで私が死ぬ恐れがある!)
黄ノ狼「そこかァッ!」
ブンッ! ジャラララララララララッ!!
メリー姉「おっと」
ヒュンッ!!
メリー姉(さすがは神の力によって生まれた怪物、この速度域にいる私を確実に鎖で狙ってくる)
メリー姉(今は躱し切れるものの、回数を重ねれば向こうの精度も上がってくるだろう)
メリー姉(正直怖い……この制限時間じゃ少し心配かも……)
キュッ!
メリー姉(ううん、そんな甘ったるい考えは捨てるのよ、私はこの時間で勝負を決める)
メリー姉(これが最後の攻撃……覚悟を決めて宣言する!)
-
メリー姉「この一撃で……あなたを倒す!」
ギュンッ!
黄ノ狼「来るぞ姉貴!全力で迎え撃つ!」グルァァアアアアア!
メリー姉(重なる姉妹の咆哮、全ての鎖が正面突撃する私目掛けて放たれる)
メリー姉(私の進行方向全てを覆うような鎖の乱打、右手の神殺しナックル1つでは壊しきれない)
メリー姉(ならば……)
メリー姉(避ける!)
ヒュンッ!
メリー姉(避ける!)
ヒュンッ!
メリー姉(避ける避ける避ける避ける!!)
ヒュヒュヒュヒュッ!!
メリー姉(29倍の速さを活かし、僅かな鎖同士の隙間を縫って前へ進む!)
黄ノ狼「ぐ……このっ……」
ジュゥゥゥゥッ!
メリー姉(熱い……体が焼ける、息が苦しい、でも止まるわけにはいかない!)
黄ノ狼「このおおおおおおおおおおっ!」グルルルルルァァァァッ!!!!
メリー姉(全ての鎖を躱し切り、黄ノ狼の目の前へ……)
メリー姉(この距離なら拳が届く!)
ダンッ!
メリー姉(右手に全ての力を込めて……>>613を放つだけ!)
-
最後の一撃は、せつない
-
メリー姉(黄ノ狼の急所に最後の一撃を放つだけ!)
メリー姉「最後の一撃は……切ない」
ドゥンッ!!
黄ノ狼「ガッ……!」
メリー姉(92倍の速度で叩きこんだ熱された神殺しの手刀、それは黄ノ狼の鎧ような肉体を消し飛ばし、急所を確実に貫く)
メリー姉(肉体を担当していた黄ノ姉の心臓と、思考を担当していた黄ノ妹の脳)
メリー姉(2つを纏めて貫いた私の腕からは赤黒い液体が滴っていた……)
ポタッ ポタッ
メリー姉「仁義巣漢……解除」
シュゥゥゥゥゥゥッ
メリー姉(仁義巣漢を解いた私の体は急激に冷却される、タイムは9.1秒くらいか……ギリギリだったわね)
-
黄ノ狼「ガ……グ……」フラッ
バタンッ
メリー姉(呻き声を上げながら地面へ倒れる黄ノ狼の体、赤黒い液体が積もった雪に広がっていく)
メリー姉(畏怖されるべき異形の獣もこうなってしまえばただの死骸だ)
メリー姉「はぁ……」
メリー姉(手に残る死の感触……いつまで経っても慣れるものではないわね)
メリー姉(それに……)
ピキッ!
メリー姉「ぐっ」
メリー姉(仁義巣漢を使ったせいで私の体だってズタボロ、立っているのさえ辛い……)
メリー姉(けれど……まだ倒れるわけにはいかない……)
グッ
メリー姉(倒れる前にせめて……>>616)
-
一曲歌おう
-
メリー姉(倒れる前にせめて……一曲歌おう)
メリー姉「すぅー……」
メリー姉「最高だと、言われたいよ――」
・
・
・
子猫(それは……雪だった)
子猫(天から降る真っ白な雪の結晶が頬に触れて、その冷たさに私は意識を取り戻す)
子猫(傍らには気絶したままの凛さんの体、遠くにはメリー姉さんと黄ノ狼の姿が見える)
子猫(倒れて動かない黄ノ狼の様子から、私は戦いが終わったことを悟った)
子猫(それは……歌だった)
子猫(黄ノ狼の亡骸の前でメリー姉さんは歌を口ずさむ)
-
メリー姉「夢は夢でも簡単に届かない――♪」
子猫(それは勝利を噛みしめる歌なのか、勝利に酔わないよう自分を戒める歌なのか)
子猫(はたまた、死した敵のために送る鎮魂歌なのか)
子猫(私には……計り知ることは出来ない)
メリー姉「わかるでしょう、弱い心じゃダメなんだと――♪」
子猫(歌は響く、どこまでも清らかに……どこまでも虚しく……)
子猫(傷だらけの勝利者はただただ雪原に声を響かせた)
メリー姉「――SELFCONTROL」
─────────────────
ドスケーブ城・ヨハネゲート前
AM3:50〜AM3:53 新終末編『157』了
-
というわけでここまで
少し短め
次からは別シーンです
新終末編『158』に続く
かもしれない
-
新終末編『157』
─────────────────
──ドスケーブ城・エントランス付近
AM3:58
ガングレト「――と、黄ノ姉妹をお2人に任せて私たちは此処に来たのです」
ダークドレアム「道中溢れかえっていたロキワーカーを駆除しながらね」
黒川「……なるほど」
スタスタ
黒川(ゲートを通り城に転移してからエントランスに来るまでの経緯をガングレトたちに聞きつつ、私たちは移動を開始していた)
黒川(やはり城の至るところで銀帝と同じような者たちの襲撃が始まってるのですね)
ブンドルビィ「私からも質問、ファールバウティって神様知ってますか?」
ダークドレアム「ファールバウティー?またマイナーな名前ね、確か……なんだったかしら」
ブンドルビィ「ええっ?」
ダークドレアム「いや聞いたことはあるのよ、ただパッと思い浮かばなくて……」ムムッ
ダークドレアム「たぶん"うち"の管轄じゃないわよね、ガングレトは分かる?」
ガングレト「はい、北欧神話においてロキの父親として記述がある霜の巨人の名前です」
ブンドルビィ「霜の巨人?神様じゃなくて?」
ガングレト「うーん……同じもののようで微妙に違うというか、巨人は北欧神話における神々の敵対者なんですよ」
ガングレト「自然の脅威などを具現化した存在とイメージすると分かりやすいと思います」
ガングレト「ただ常に敵対してるわけではなく偶に仲良くしてるのがややこしい所で……ロキなんかは巨人の子なのに主神と義兄弟になってますからね」
ガングレト「まぁ私や人間みたいな下層の者からしたらほぼ神様と変わらない力の持ち主です」
ブンドルビィ「ふむふむ」
-
ナンジョルノ「つまり銀帝の力の元ネタはロキの父親ってわけでやがりますわね」
黒川「元ネタって……間違ってはないどすけど言い方が……」
デスワ「ですがこうなると銀帝の仲間が宿してる力も神話におけるロキの関係者の可能性がありますわ」
デスワ「ダークドレアムさんたちが最上階で会ったという黄色の姉妹たちも……」
ダークドレアム「そうね……おそらくは」
スタスタ
ダークドレアム「ところで行き先だけど、この城でどこが特に狙われそうだと思う?」
黒川「そうですね、特に重要な場所となると……医務室かモニター室かラボ、あとは結界発生装置でしょうか」
黒川「医務室は籠城してるみたいですし、結界のほうはうみかさんが向かってる、となると他2つ」
黒川「近場だと……」
ナンジョルノ「ラボね、あそこではワクチンを開発してるはずだわ」
黒川「はいっ」
デスワ「ラボですか……確かあそこなら医務室から>>622が向かっていたはずですわよ」
オッパイ「うん、私たちと一緒に医務室を出て途中で別れたんだ」
-
女帝
-
黒川「女帝……?」
ナンジョルノ「そんな名前の人仲間内にいましたっけ?」
デスワ「ああ、女帝というのは――」
────────
────
──
・
・
・
──ドスケーブ城・ラボ付近の通路
AM3:40
タタタッ
寿限無「早く!こっちこっち!」
マッキー「早くって言われても……私は研究職だから速く走れないないんだって……ぜぇはぁ」
寿限無「これでも速度合わせてるのよ、マッキー1人だと城で迷っちゃうし」
マッキー「ぐぬぬ……」
-
ロトーチカ「まぁまぁ、無理はしない程度に急ぎましょう、ラボに着いた時にヘトヘトになられたら困るもの」
マッキー「ロトーチカ……あなたはあなたで余裕そうね、同類だと思ってたのに」
ロトーチカ「これでも魔王を探すために砂漠を超えて旅をしたのよ、少しくらい体力はついてるの」
ロトーチカ「賢者の里でもかなり鍛えられたし……」
マッキー「そう……」
タタタッ
寿限無「それにしても、この辺りまで来ると雑魚は見かけなくなったわね」
ロトーチカ「ええ、さっきまでウザったいくらいに襲ってきてたのに……寿限無との力の差を感じて諦めたのかしら」
寿限無「あの変なタスキをかけた黒タイツ、弱いくせに妙にしつこいんだから困っちゃう」
マッキー「……で?ラボはまだなの?」
寿限無「そろそろですよー、この先にいけば――」
タタッ
寿限無(走るの疲れて不機嫌になって来たマッキーを連れて走るラボへの道)
寿限無(けど、ラボに近付くにつれて私は何か違和感を覚えつつあった)
寿限無「……ん?」
寿限無(それは>>625)
-
レッドカーペットの上を走っている
-
寿限無(その違和感は……足元にあった)
タタタッ
寿限無(ラボに付近まで来た時に床の感触が硬いものから何か1枚布を挟んだようなものに変わった)
寿限無(初めは普通の廊下用カーペットか何かが敷かれてると思ったけど……これは違う)
寿限無(ラボに近付くにつれて足元に敷かれたカーペットの色が段々赤く色付いて行って……)
タタタッ
寿限無(今走ってる場所では、完全に真っ赤な絨毯と化していた)
寿限無「何よこれ、レッドカーペットのつもり?」
マッキー「だとしたら盛大な歓迎じゃない」
ロトーチカ「鞠莉にそういう趣味は無かったと思うけどねえ」
寿限無「うん、だから気になるのよ、このレッドカーペットは普通じゃない気がする」
マッキー「根拠は?」
寿限無「直感」
マッキー「……ふむ、それは重要ね」
寿限無「バカにしないの?」
マッキー「神似子の直感はバカにならないわ、一考の余地がある」
寿限無「へぇ」
-
マッキー「そして考察には材料が必要、材料を得るには――」スッ
寿限無(走りながらマッキーは白衣の中からカプセルを取り出し、それを前方に向かって投げる)
マッキー「出てきなさい、カプセル穂乃果ナンバー2!」ポイッ
マッキー「分析穂乃果!」
ボワンッ!
分析穂乃果「分析分析ぃ〜!」
寿限無(カプセルから煙と共に現れたのは眼鏡をかけた穂乃果)
寿限無(手術室前で会った奴隷穂乃果と同じ、マッキーが手持ちにしている亜種穂乃果の1人だろう)
マッキー「分析穂乃果!カーペットの性質を調べなさい!」
分析穂乃果「了解でありま〜す!」
ブチッ
分析穂乃果「はむっ!」
モグモグ モグモグ
-
寿限無「なっ!」
ロトーチカ「前を走ってる穂乃果、走りながらカーペットの繊維をちぎって食べたわよ!?」
マッキー「分析穂乃果はああやって材料の構成を分析するのよ、結果が出たら――」
分析穂乃果「出ましたであります!」ピコーンッ!
マッキー「ああして頭の上に電球が現れるの」
寿限無「お、おう……なかなかエキセントリックな穂乃果なのね」
分析穂乃果「分析してみたところでありますね、このカーペットは>>629」
-
走った分だけ寿命が減る
-
分析穂乃果「このカーペットは走った分だけ寿命が減るであります!」
マッキー「なっ!」
ロトーチカ「えっ?」
寿限無「はぁっ!?」
キキィーーーーッ!!
寿限無(分析穂乃果の言葉を聞いた私たち3人は一斉に走っていた足を止める)
寿限無「寿命って……呪いのアイテムじゃないっ!」
分析穂乃果「はい、寿命を吸い取る系統の呪いが含まれてる味でありますね」ペロリ
分析穂乃果「誰かが能力でカーペットに付与したのか、カーペット自体が呪いの道具なのかは分かりかねますが」
寿限無「そんな……!」
ロトーチカ「私たちかなり走っちゃったわよ!?」
マッキー「過ぎたことは仕方ないでしょ、2人とも落ち着きなさい」
ロトーチカ「え、ええ……」
マッキー「とにかくこれ以上先に進まないことね」
寿限無「うん、とりあえず横に避けよう……ってカーペットが通路幅いっぱいに広がってるから無理か」
-
マッキー「分析穂乃果!自分の後ろと前で呪いの強さに違いがあるか確認して!」
分析穂乃果「ふむ……」モグモグ
分析穂乃果「そうでありますね、前の繊維のほうが呪いが強めに出ていますであります」
マッキー「……やっぱりか」
寿限無「なにが?」
マッキー「このレッドカーペット、進むにつれて色が濃くなってったでしょ?あれは呪いの強さと比例してるんだと思うわ」
マッキー「初めの色が付いてない辺りは弱く、ハッキリ赤が分かるようになると強くなる」
マッキー「明らかに接近を防ぐ防衛用の罠、あなたたちに知らされてないってことは仕掛けたのは味方ではなく敵」
マッキー「そして敵がいるのは……」
寿限無「……この道の先ってことか!」
ロトーチカ「寿限無、この双眼鏡を使って通路の先を見てみて」スッ
寿限無「え?なにそれ」
ロトーチカ「城で開発した新・賢者の7つ道具の1つ――万能双眼鏡よ」
-
ロトーチカ「使用者の力をエネルギーにして遠くの空間を壁越しでも見通すことができるわ」
ロトーチカ「寿限無の神力を注ぎ込めばこの先にいる敵の姿が見えるかもしれない」
寿限無「……分かったわ」パシッ
寿限無(ロトーチカさんから双眼鏡を受け取って通路の先を覗き込む)
ロトーチカ「倍率を変えるのはイメージよ、遠くを見通すイメージをして」
寿限無(言われた通り、遠く……遠くを見て……)
キィーーーーンッ!
寿限無(……見えた!)
寿限無(赤いカーペットの先に立っているのは知らない顔の赤い甲冑を身に纏った女)
寿限無(それから足元に女王様風の服を来た人が倒れてる)
寿限無(倒れてるほうは見たことがある顔ね……あの人は>>633)
-
理事長
-
寿限無(あの人は……理事長さん?)
寿限無(派手な服を着てる理由は分からないけど、ただならぬ状況なのはハッキリと分かる)
寿限無(理事長さんが倒れてるのは横にいる赤い甲冑のやつのせいで、そいつは間違いなく敵!)
寿限無(たぶんこのレッドカーペットを敷いたのも――)
??「…………」
寿限無「……っ!?」ゾクッ!!
寿限無(――悪寒)
寿限無(双眼鏡のレンズ越しに甲冑の女と目があった瞬間、全身に感じたことのない悪寒が走る)
寿限無(戦ってはいけない……私の神似子としての本能がそう訴えかける)
ロトーチカ「寿限無……?見えなかった?」
寿限無「いや……いた、敵がいた……けど……」
マッキー「青い顔、それに動悸が激しいわね、何か良くないものまで見ちゃった?」
寿限無「…………」
-
寿限無(怯えてる、震えてる、目の当たりにした"モノ"が恐ろしくて堪らない)
寿限無(腕っ節なら負ける気なんて更々起きなかった私が……この場から逃げ出したくなっている)
寿限無(あそこにいる女は本当に生き物なのか……まるで、落ちたら二度と引き返せない地獄の穴がポッカリと空いてるような……)
寿限無(とても殴ってどうにかなる相手とは思えない……!)
ブルッ
寿限無(……けど)
グググッ
寿限無(……怖いけど!だけど!)
寿限無(それだけで引返すなんて真っ平ごめん!!)
寿限無「敵の近くに理事長さんが倒れてる」
ロトーチカ「え?」
寿限無「助けたい、でも私1人じゃ無理……だから……」
ダンッ!
寿限無「2人の力を貸して!!」
─────────────────
ドスケーブ城
・エントランス付近
AM3:58〜
・ラボ付近
AM3:40〜AM3:44 新終末編『157』了
-
というわけでここまで
赤との接触
新終末編『158』に続く
かもしれない
-
新終末編『158』
─────────────────
──ドスケーブ城・ラボ付近通路
AM3:44
マッキー「力を貸して……ねぇ」
マッキー(寿限無は震えながら私とロトーチカのほうを子犬のような目で見てくる)
マッキー(こんな顔もする子なのね……出会ったばかりだけどなんだか意外だわ)
マッキー(ただ……ほのぼの笑ってる場合ではない)
マッキー(さっきまで強気一直線だった寿限無がすっかり萎縮してしまっているのよ)
マッキー(それは神の子に近い存在である神似子の本能が危険信号を出してるということ)
マッキー(ハッキリ言ってこの先に進むのは自殺行為に違いない)
マッキー(以前の私なら救助者なんて見捨てて引き返す、リスクの高い行為なんて出来ない)
マッキー(それが利口……でも……)
マッキー「……分かったわ、手を貸しましょう」
寿限無「ありがとう」
マッキー「ロトーチカもそれでいいわね?」
ロトーチカ「もちろんっ」
-
マッキー(私らしくない選択、そんなのは自分が1番分かってる)
マッキー(でもね……プライド、私は決めたんだ、変わるって決めた)
マッキー(今まで魔王に依存して、あなたに依存して生きてきた、危険な研究に没頭してたのも、研究や会社で自分を顧みなかった両親に反発してただけ)
マッキー(そこに私の意思なんて無いに等しかった)
グッ
マッキー(自分のやりたいことなんて早々見つかることじゃないのは分かってる)
マッキー(だからこそ!今は自分の気持ちに正直に生きる!)
マッキー「まずはレッドカーペットの問題ね、これがあると行動が制限されてしまう」
寿限無「うんっ、理事長さんのとこまで近付いたら寿命無くなっちゃうかもしれないわ」
マッキー「この問題を解決するには>>639」
-
人間大砲
-
マッキー「人間大砲よ!」
寿限無「人間……大砲……?」
マッキー「走ると寿命が減るなら走らなければいい、飛んで移動すればいいのよ」
ロトーチカ「名案だけどそれには2つ問題があるわ」
ロトーチカ「まず人を飛ばせる大きさの大砲が此処には無いってこと、次に飛ばした人はどうするの?」
ロトーチカ「向こうには救助者だけじゃなく敵だっているの、敵の懐に飛ぶようなものじゃない」
寿限無「うーん……後者は私が飛んで急いでバック走してくるとかしか無いと思う」
ロトーチカ「いやいや、逆に走っても呪いはかかるのかもしれないのよ」
寿限無「ああ、そうか……」
マッキー「ふっふっふ、諸々の課題は既に想定済みで解決済みよ、私は成立できない作戦は提案しないわ」
マッキー「まず大砲の件は……これ、対異能拳銃」スッ
ロトーチカ「それ拳銃サイズでしょ、小さくない?」
マッキー「これに手を加えていくのよ」
カシャンッ!
マッキー(私は対異能拳銃の背面にある溝にカードタイプの追加カートリッジを差し込んでいく)
-
マッキー「元々、対異能拳銃は差し込むカートリッジによって機能や発射する弾の種類を変化させる武器」
マッキー「これ1つであらゆる異能存在を相手取ることを想定して開発したものよ」
寿限無「へー、それで今差し込んでるのは何?」
マッキー「銃自体を巨大化させるビッグカートリッジ、強力な風を発生させるサイクロンカートリッジ」
マッキー「それと発射された弾が戻ってくるリターンカートリッジ」
マッキー「これで――」
シャキィンッ!
対異能拳銃『ビッグ!サイクロン!リターン!』
キュィィィィィンッ!
マッキー(合成音声が流れると共に対異能拳銃は形を変えていく)
グググッ
-
寿限無「おお!大砲みたいに大きくなった!」
ロトーチカ「これなら人1人くらいは飛ばせそうね」
マッキー「リターン能力を付与させているから着弾した瞬間にここまで戻ってくるわ」
マッキー「それで誰が飛ぶかだけど……」
寿限無「私が行くわよ、何かあった際に1番対応できるだろうし」
マッキー「ええ、言うと思ったわ、ならこれを持っていきなさい」スッ
寿限無「なにこれ?」
マッキー「これは>>643」
-
ドーピングトマト
-
マッキー「これはドーピングトマトと言って食べた人の身体能力を向上させるトマト」
マッキー「効果は短いしハッキリ言って健康な体には毒だけど、いざという時には役立つはずよ」
寿限無「うん、ありがとう」
マッキー「さて……着弾からリターンまでの時間はどれくらいに設定する?」
マッキー「あまり長いと敵の近くにいる時間が長くなるし、短いと理事長さん?とやらを助けられずに戻って来ちゃうかもしれない」
寿限無「そうねぇ……着地して理事長さんを掴まえて〜だから、普通に考えれば2秒あれば充分だけど」
寿限無「相手がどんな妨害してくるか分からないし、5秒くらいでお願い」
ロトーチカ「少し長くない?」
寿限無「いざとなったら少しバック走しても時間を稼ぐわ」
マッキー「了解」
ピッ ピッ
-
マッキー(大砲の横についたパネルを操作してリターンの時間を設定する)
マッキー「準備できたわ、入って」
寿限無「うんっ!」
スポンッ
マッキー「寿限無、距離はどのくらい?」
寿限無「万能双眼鏡で見たのだと――」
ピッ ピッ
マッキー(寿限無の目測、それから分析穂乃果の分析を元に距離や威力を設定していく)
マッキー(これで設定完了、あとは飛ばすだけ)
マッキー「よし!行くわよ寿限無!!」
-
・
・
寿限無(生まれてから色々経験したけど……大砲で飛ばされるなんて初めてだなぁ)
寿限無(緊張するけど、絶対に成功させる!)
マッキー「3……2……1……」
ポチッ
マッキー「GO!」
ボンッ!!!!
寿限無「……っ!」
ビュンッ!!
寿限無(空気の塊に包まれた体が発射され通路を駆け抜けていく)
ビュォォオオオオオオオッ!!
寿限無(双眼鏡で見ていた敵のいるポイントまであっと言う間に近づいていく)
ドドドドドドドドッ!
寿限無「…………っ」
寿限無(……来た……近付くにつれて赤い甲冑の女から感じる力の圧、オーラみたいなものが強くなってくる)
寿限無(息が苦しい、心臓を鷲掴みにされているような苦しさ、きっと自分で近付いてたら足が止まってるだろう)
寿限無(人間大砲ってのはそういう意味でも良いアイディアだったわね)
寿限無(否が応でも……敵の懐に飛び込まざるを得ないっ!)
-
ビュォォオオオオオオオッ
寿限無(さぁ……着地だ!)
ダンッ!!
赤い女「…………」
寿限無「……っ!」ゾクッ
寿限無(赤い女の前に着地した私は女と目が合う)
寿限無(なんて冷たい目……体の芯が凍りつく、自分が息をしてるかどうかなんてもう分からない……)
ドクンッ ドクンッ
寿限無「……あっ、ああああああああああっ!!」
寿限無(硬直した体を叫ぶことで無理やり動かし、無我夢中で足元に転がる理事長さんを掴みに行く)
寿限無(その時、赤い女は>>648)
-
まるで道端の石を見るように、こちらに興味を示さなかった
-
寿限無(まるで道端の石を見るように、こちらに興味を示さなかった)
赤い女「………………」
寿限無「…………」ゴクッ
寿限無(……どういうことだろう、理事長さんがこの場に倒れてるのは赤い女が原因のはず)
寿限無(それを助けに来た私を……この女は何とも思っていない、敵意を向けるどころか……警戒すらしていない)
寿限無(近くにいる私はこんなに重圧に潰されそうになってるというのに……)
ドドドドドドドドッ!!
寿限無(まるで人と蟻、この女と私の間にはそれほどの実力差があるということなの……?)
ジリッ
寿限無(……気に入らないっ!)
寿限無(私はその視線が無性に気に入らなかった、文句の1つでも言ってやらないと気が済まなくなった!)
寿限無「このっ!あなた……理事長さんに何をしたのっ!?」
赤い女「…………何を?」
寿限無「ひっ……」
ゾククククッ! ガクガクガクッ!!
寿限無(やばい!やっぱダメだ!なんで話しかけちゃったのよ!!)
寿限無(1秒前の私のバカ!!)
赤い女「……ああ、ソレなら>>650」
-
何もしていない
-
赤い女「……何もしていない」
寿限無「……え?」
赤い女「"ソレ"が呑気に歩いてきたから『赤の舞台』の説明をしたら勝手に気絶した」
寿限無「赤の……」
赤い女「はぁ……もう時間でしょう、さっさと帰って」
寿限無「え?」
赤い女「――5秒」
『リターン』
ビュンッ!!
寿限無「あっ……」
寿限無(対異能銃のリターン効果が発動して、理事長さんを掴んでる私の体がマッキーのいる場所まで引き戻される)
グインッ!
寿限無(その間、赤い女は興味なさげに引き戻される私たちを見ていた)
寿限無(……いや、僅かに口が動く)
赤い女「詳しいことはあなたが掴んでる"ソレ"に聞いて」
赤い女「あと、面倒だから付いてこないでね」
赤い女「私とあなたの実力者は分かったでしょう――――?」
寿限無「…………っ!」
─────────────────
ドスケーブ城・ラボ付近通路
AM3:44〜AM3:47 新終末編『158』了
-
というわけでここまで
次は理事長さんの話聞きます
新終末編『159』に続く
かもしれない
-
新終末編『159』
─────────────────
──ドスケーブ城・ラボ付近通路
AM3:47
シュゥゥンッ
寿限無「はぁ……はぁ……」
ロトーチカ「大丈夫だった!?」
寿限無「え、ええ……」
寿限無(リターンの効果が予定通り発動して、理事長さんを助けた私は無事に大砲の場所へ戻ってくることができた)
寿限無(ただ……赤い女のオーラを間近で感じた影響がまだ尾を引いている)
ググッ
寿限無「くっ……」
寿限無(完全に腰が抜けて足に力が入らない、大砲の中から何とか腕力だけで理事長さんを降ろし、自分も這い出ることができたけど)
寿限無(こうして床に四つん這いで息を整える無様な格好を晒している最中、情けないったらありゃしない)
寿限無「はぁ……はぁ……」
-
寿限無「すぅー……はぁ……ふぅ」
マッキー「少しは落ち着いた?」
寿限無「ま……なんとかね」
スッ
寿限無(互いに視認できない距離まで離れたからか、体の震えは段々と収まってくる)
寿限無(私は額の汗を拭いながら身を起こして冷たい床に腰を降ろした)
寿限無「向こうにいた赤い甲冑の女は理事長さんに説明をしたと言っていたわ」
寿限無「気絶してる理事長さんには悪いけど速攻で起きて話してもらう必要がある」
ロトーチカ「そうね……」
寿限無「マッキー、良い手段はあるかな」
マッキー「うーん……まぁ叩き起こすだけだったら>>655」
-
くさやと大蒜と納豆のにおいを混ぜた特製香水を嗅がせる
-
マッキー「このくさやと大蒜と納豆のにおいを混ぜた特製香水を嗅がせるといいわ」スッ
寿限無「おお……また強烈なのを」
寿限無(マッキーが差し出したのは茶色い液体の入った香水の瓶)
寿限無(それを恐る恐る受け取る、こぼしたりしたら最悪だ)
ロトーチカ「本当にそれ使うの?」
寿限無「うん、理事長さんには悪いけど今は即効性が何より大事!」
ソーッ
寿限無(私は香水をしっかり持って床に倒れてる理事長さんの鼻先に……吹きかける!)
プシュッ!
寿限無(すると途端に言い表し難い臭いが辺りに広がって……)
モワーーッ
寿限無「うわくさっ――」
理事長「くさああああああああああああああああああああああい!!!!」
バタバタバタバタバタバタッ!!
理事長「ひーっ!げほげほげほっ!おええぇぇぇぇっ!!」
バタバタバタバタバタバタッ!!
寿限無(さっきまで気絶していたはずの理事長さんが鼻を抑えて激しく転がりだした)
寿限無(すごい威力ね……この香水)
-
理事長「はぁ……ぐっ……なに!?新しい赤の聖女の攻撃!?」
ロトーチカ「赤の聖女?」
寿限無「たぶんあの赤い女の名前ね……甲冑を着込んでたから聖女って名前は似合わない気がするけど」
マッキー「…………ふむ」
寿限無「落ち着いて理事長さん、赤の聖女はここにはいないわ、私が救助して避難してきたから」
理事長「寿限無……ちゃん?」
寿限無「だからここは無事、安心して」
寿限無「私たちは赤の聖女のことを知らない、直接話したっていうあなたの話を聞かせて欲しいのよ」
理事長「え、ええ……」
寿限無(急な私の言葉に理事長さんは戸惑いながらも頷いてくれた)
-
・
・
理事長「ふぅ……」
理事長(寿限無ちゃんたちに貰った水を飲んで一息つく)
理事長「じゃあ話すわね……って、どうして皆少し距離を取ってるの?」
寿限無「あー、これはその……」
ロトーチカ「き、気にしないでいいわよ……」
マッキー「だって臭いし」
理事長「臭っ!?」
寿限無「こらマッキー!なんで本当のこと言うのよ!!」
マッキー「仕方ないじゃない、本当に臭いんだもの」
理事長「うぐっ!」
理事長「元はと言えばあなたたちが強引な起こし方するからでしょう、全く……」プンプンッ
理事長(臭いが完全に自分に移ってるのは分かってる、でもハッキリ言われると傷ついちゃうわ)
寿限無「良いから良いから、話をしてよ」
理事長「……腑に落ちないけど、分かったわ」
理事長「まず私は籠城中の特設医務室から連絡係としてラボに移動してた最中だったのよ」
理事長「一緒に出たメンバーは他にハグカナーンさんやデスワさんたちがいたわね、ラボ方面に来たのは私だけだけど」
寿限無「ふむ……というか聞きたかったんだけど、その格好はなに?コスプレ?」
理事長「ん?あー、この女帝の服のことね」
理事長「これなら>>659」
-
理事長から女帝にジョブチェンジ
-
理事長「理事長から女帝にジョブチェンジしたのよ!」フフーンッ
理事長(王族のような荘厳できらびやかなドレスとアクセサリー、妖艶さを増した化粧)
理事長(正に女帝といった出で立ちを3人に向けて見せびらかす)
クルンッ
理事長「どう?正に女帝様って感じでしょう」
寿限無「はぁ……」
ロトーチカ「まぁ……」
マッキー「年増だしね」
理事長(……ん?なんだか微妙な反応、あと最後のやつは何を言ってるのかな?)
ロトーチカ「というか……クラスチェンジとは言うけど何がどう変わったの?」
ロトーチカ「私からは見た目が変わったようにしか見えないのよね」
理事長「そうね……やってくれた子の話だと概念上の職種を書き換えたらしいわ」
ロトーチカ「概念上の職種?」
理事長「ええ、肩書と言い換えてもいいけど、人という存在はそれぞれ社会上の肩書と紐付けされてるらしいの」
-
理事長「例えば社長なら社長、お医者さんなら医者、先生なら先生みたいに」
理事長「その肩書は私たちの目には見えないけど、確かに私たちの傍にある」
理事長「背後霊みたいに私たちに常に引っ付いていて、無意識に人間関係に影響を与える概念」
理事長「ある意味で一種の異能?みたいな説明をされたわね……」
ロトーチカ「つまり先生の前に立つと緊張するのは『先生という肩書』が周囲に影響を与えているから……ということかしら」
理事長「そう、逆に身分や立場を自覚することによって普段の自分なら有り得ないパフォーマンスが発揮できることもある」
寿限無「え?待って待って!そういう例なら理解できるけど、理事長さんが言ってるのはそれが異能レベルの力さえ持つって話よね」
理事長「ええ、そうよ?」
寿限無「有り得ないわよ!それって履歴書にスーパーマンって文字を書いたらヒーローの力が宿るとかそういう話よ?」
寿限無「そんなこと普通の人は――」
マッキー「……できない、でも出来る能力者はいるわ」
寿限無「……え?」
マッキー「文字に意味と力を持たせて、その文字を自在に操る能力――祭能力を持った人間がね」
理事長「知ってるの?」
マッキー「うちにいたミニ穂乃果が似たような系統の力を持っていたわ」
マッキー「理事長、あなたの肩書を書き換えたのは祭能力ね?」
-
理事長「ええ……私が連絡係を買って出たら呼子ちゃんという子がやってくれたわ」
理事長「彼女が言うには裏技的な処置、条件的にはそれなりの社会的立場にいて、異能者では無い人のほうが上手くできるとのこと」
マッキー「へぇ〜、それは興味深い話だわ」
マッキー「1つ目の条件は無職とかだと肩書として弱くてジョブチェンジが成功し辛い……」
マッキー「2つ目の条件は異能力と祭能力が競合して定着し辛い……ってのが理由かしら」
理事長「さぁ……?そこまでは聞かなかったわね」
理事長「何にしても私はジョブチェンジをするのに丁度いい条件を満たしていたってことだと思うわ」
寿限無「……で、女帝になると何かできるようになるの?」
理事長「ええ、呼子ちゃんが私の身を心配してチェンジしてくれた肩書だもの、女帝には特別なジョブ効果があるよ」
理事長「それは>>663」
-
更に濃密なセクシーフェロモンが出る
-
理事長「更に濃密なセクシーフェロモンが出る効果よ!」
寿限無「……そう、あんまり役に立たなそうね」
理事長「さらっと流さないでっ!」
マッキー「くさやみたいなフェロモンなら出てるけどねぇ」
理事長「それは香水のせいでしょ……」
理事長(誘惑が通じる相手なら結構良い能だと思うんだけどなぁ……そういう相手がいないだけで)
理事長「はぁ……いいわ、私のことは以上で終わり、本題に入るわよ」
理事長「これから話すのは私が赤の聖女と出会った時に聞いた話」
寿限無「……うん」
理事長「何度か言ったけど、まずあの敵のコードネームは赤の聖女と言うわ」
理事長「ドレスを模した赤い甲冑、白い肌に蒼井目、短い金髪のポニーテールが特徴」
-
理事長「私が曲がり角で偶然彼女と出会った時、彼女はこう呟いたわ」
理事長「『そうか、あなたは気付けない側の人間なのか……』と」
寿限無「気付けない側?」
理事長「ええ、私が疑問を呈すと彼女は私と一切目を合わせず話してくれたわ」
理事長「なんだか放置プレイされてるみたいでゾクゾクしちゃった……」
マッキー「コラコラ」
オホンッ
理事長「そして1つ分かったのは、私たちが今踏みしめてるレッドカーペット、この名前は『赤の舞台』」
理事長「赤の聖女が広範囲に展開できる索敵警戒用の道具よ」
理事長「舞台……つまりはカーペット上に足を踏み入れた者の位置を知るのはもちろん、ある程度近くに来れば会話を拾うこともできる」
寿限無「そうか、だからリターンの秒数を知ってたのか」
理事長「そして自分の方に近付いてくる者の寿命を……」
マッキー「吸い取るわけね」
理事長「あら、知ってたの?」
マッキー「ええ」コクンッ
-
理事長「この寿命を吸い取る機能は敵を殺すためじゃない、というか死ぬほどの寿命は取らないみたい」
理事長「あくまで寿命を吸い取られる感覚を植え付け、恐怖で敵を威圧するための機能らしいわ」
ロトーチカ「でも理事長さんは何も気付かずに赤の聖女の近くまで行ったのよね」
理事長「ええ、それが赤の聖女の言う"気付けない側"ってことらしいの」
マッキー「なるほど、感覚で呪いの違和感に気づける寿限無みたいな強者と、気付けずボケーッと近付く理事長さんみたいな弱者」
マッキー「赤の聖女はそれを区別していたってことなのね」
理事長「人に言われるとなんだか癪だけど……そういうことよ」
寿限無「ん?じゃあ理事長さんは何で気絶してたの?」
理事長「ああ、それなら……>>667」
-
赤の聖女に近づこうとしたら、急に意識が遠くなった
-
理事長「更に赤の聖女に近づこうとしたら、急に意識が遠くなって気絶したのよね」
マッキー「ふむ……」
寿限無「どういうこと?」
マッキー「おそらく赤の舞台の他にもう一段階、結界のようなものが赤の聖女の周りに張り巡らせれているんでしょうね」
マッキー「寿限無は感じなかった?」
寿限無「……あっ!」
寿限無「……確かに、赤の聖女に接近した時に感じた体の芯が凍るような恐怖感」
寿限無「あれは寿命が減る恐怖とはまた別だった、一歩進むだけで精一杯だったわ」
マッキー「やっぱりね、仮に名付けるなら『赤の結界』とでも名付けましょうか」
マッキー「警戒用の『舞台』と威圧用の『結界』、二段構えの防衛術式を赤の聖女は持っているはず」
寿限無「それは厄介ね……とにかく赤の聖女に接近するわけにはいかない」
寿限無「どうにか迂回してラボへ行く道を探しましょう!」
─────────────────
ドスケーブ城・ラボ付近通路
AM3:47〜AM3:52 新終末編『159』了
-
というわけでここまで
少し雑気味ですが次で補完
新終末編『160』に続く
かもしれない
-
新終末編『160』
─────────────────
──ドスケーブ城・ラボ付近通路
AM3:52
マッキー「迂回してって……別の道ってこと?」
寿限無「そう、ドスケーブ城には無駄に入り組んでて沢山の道があるから、ラボに行く道だって他にあるはず」
寿限無「問題はどう移動すれば赤の舞台に引っかからないかだけど……」
寿限無「この赤の舞台ってどんな形状に広がってるのかしら」
マッキー「というと?」
寿限無「例えばカーペットという特性上、平面にしか広がらないのなら引き返して別の階を進めばいい」
寿限無「そうじゃなく上下にも広がるのなら最大の範囲を見極めなきゃいけないし」
寿限無「もしカーペットが通路にしか広がらない条件持ちなら死角は多くできるじゃない?」
マッキー「ふむふむ」
寿限無「他にも赤の舞台が聖女を中心に広がるわけではない可能性も考えられる」
寿限無「例えば聖女が歩いた後に追随してカーペットが出現するとかね」
-
マッキー「……なるほど、ところで1つ良い?」
寿限無「なに?」
マッキー「このカーペットの上で相談してたら赤の聖女にも筒抜けなんじゃない?」
寿限無「……ああっ!!」
理事長「考えてるのか抜けてるのか分からないけど子ねぇ……」
寿限無(しまった、とりあえず赤の聖女相手に誤魔化さないと――)
寿限無「いいいい今のは無し!聞いてても無しだから!!」
赤の聖女『聞いてるわよ』
寿限無「ひぃっ!!」
マッキー「お、舞台上にいれば向こうからも話しかけられるのね」
ロトーチカ「脳に直接……念話に近い感じか」
寿限無「はぁ……はぁ……びっくりした……」
-
寿限無(頭に響く赤の聖女の冷たい声)
寿限無(結界に入ってはないから身が縮むような悪寒はない、でもトラウマのせいで思わず飛び上がってしまう)
寿限無「い、意外とフランクに話しかけてくるのね……聖女さん」
赤の聖女『寿限無と言ったかしら、私の畏れを感じ取れるあなたはムシの中でもマシな存在よ』
赤の聖女『ただ、萎縮して完全に敵意を無くしてたのは興ざめだったけど』
寿限無「…………っ」
赤の聖女『そんな見込みのあるあなたに免じて1つ教えてあげる』
寿限無「へ、へぇ〜、なにを?赤の舞台の抜け道でも教えてくれるのかしら」
赤の聖女『>>673』
-
私はトマトの味方
-
あと10分でこの城は崩壊する
-
赤の聖女『私はトマトの味方』
寿限無「……え?」
赤の聖女『トマトが好きってことよ』
寿限無「ああ、うん……」
寿限無(いきなり何を言い出したのかと思った)
赤の聖女『さっき……あなたの懐から芳しいトマトの匂いがした、この世界のトマトはどれもあんなに新鮮なの?』
寿限無「……へ?」
マッキー「………」トントン
寿限無「……?」
寿限無(肩を叩かれて振り返ると、マッキーがメモに文字を書いて見せてくる)
寿限無(そうか、声に出さなきゃ分からないんだものね)
マッキー「……」スッ
メモ『赤の聖女が言ってるのは私が持たせたドーピングトマトのことでしょう、そのまま話を合わせて』
寿限無(うん、分かった)コクンッ
-
寿限無「そうよ、大体トマトはあのくらい新鮮なものだと思うわ」
寿限無「特にこの城のトマトは拘りのある人が仕入れてるから……特に好きじゃない私も美味しいと思う」
赤の聖女『そう……トマトはどこにあるの?』
寿限無「どこ?え、えーと……」
ロトーチカ「……」スッ
メモ『聖女を誘導できるチャンスかもしれないわ、なるべく遠くに……厨房の食料庫辺りに誘導するのがベストね』
寿限無「……そうね、厨房の食料庫に行けばトマトが沢山あるかも」
赤の聖女『厨房か……分かった』
赤の聖女『私は厨房に向かう、その間は好きにしなさい』
寿限無「ど、どうも……?てか厨房の場所分かる?」
赤の聖女『敵相手に要らぬ心配ね、それとも確実に行ってもらわないと困るとか……』
寿限無「な、ないない!ないけど!」
赤の聖女『別に平気よ、名前さえ分かれば私は辿り着けるから』
寿限無「へ、へぇ……」
赤の聖女『そうだ、トマトのお礼にもう1つ』
赤の聖女『この城――このままシステムダウンしてると近いうちに崩壊するわ』
寿限無「……え?」
赤の聖女『じゃ』
-
ブツンッ!
寿限無(それを最後に赤の聖女からの会話は終わった)
寿限無「ふぅ……冷や冷やした……」
マッキー「かなりフレンドリーな人じゃない」
寿限無「えぇっ!?マッキーは赤の結界に入ってないから分からないのよ!!」
マッキー「入ったとしても気付かないかもよ、赤の聖女の言い方だとギリギリ同類扱いされるのは寿限無だけらしいし」
寿限無「あれと同類は嫌だなー……」
ロトーチカ「そんなこと言っていいの?これだって耳に入ってるかもよ」
寿限無「大丈夫じゃない?ほら下見て」
ロトーチカ「ん?」
寿限無(私たちの足元、赤みがかっていたカーペットが赤の聖女に遠い方からどんどん消えていく)
寿限無(聖女が移動したのに連れてカーペットも移動してるのか、カーペットの範囲自体を縮小したのか)
寿限無(どちらにしろ私たちは舞台から降ろされた形になる)
寿限無「これでラボへは行ける、急ぎましょう!」
マッキー「ええっ」コクンッ
理事長「あ、そういえばラボの入り口から入る時って何かやる必要あったわよね」
マッキー「そんなのあるの?」
ロトーチカ「それがあるのよ、鞠莉が設定した鍵代わりの独特な作業が」
ロトーチカ「予め説明しておくけど>>678」
-
ジャージを着て、チャックボーン
-
ロトーチカ「入り口の横にあるジャージを着てチャックボーンさせると扉が開くの」
マッキー「チャックボーン?」
ロトーチカ「乳の圧でジャージのチャックを破壊して飛ばすことよ」
マッキー「……は?」
ロトーチカ「ジャージは小さめのが用意されていてチャックの取り付け方も弱め」
ロトーチカ「胸が鞠莉くらいの大きさがあってコツを掴めばわりと簡単に出来る設定になってるけど……」
マッキー「けど?」
ロトーチカ「……小さいと難しいわね」チラッ
マッキー「だ、誰のどこを見て言ってるの!?あなただって小さいじゃない!!」
ロトーチカ「なっ!私は縮む前は元々大きかったのよ!!」
寿限無「まぁまぁ2人とも落ち着いて」
理事長「持たざる物はガミガミ争って醜いわねぇ……」
ロトーチカ・マッキー「うるさいっ!!」
・
・
-
────────
────
──
・
・
──鞠莉のラボ
AM3:45
カタカタッ カタカタッ
宇宙人「フム……コレがコウで……」
ビピッ エラー!
宇宙人「ヌワー!ナンですかこのクソみたいなコンソールは!まったくサギョウがススみません!!」
バンッ!!
ダストボックス(巨大なモニターと既存ものとはかけ離れたデザインのキーワード、その前で宇宙人は頭を抱えていた)
ダストボックス(ワクチンの量産は一向に上手く行ってないらしい)
ダストボックス(私はやることも無いのでなるべく遠くの壁に背を預けて作業を眺めていた)
ダストボックス(ちなみに半身が飲み込まれていたゴミ箱からはとっくに脱出している)
-
ダストボックス「クソか……それにしてもクソみたいな仕掛けだったな」
宇宙人「ナンのハナシですかワがヨメ」
ダストボックス「嫁ではない、減らず口を叩いてると殺すぞ地球外生命体」
宇宙人「ハハハハ……」
ダストボックス「私が思い返してるのはラボに入る時のくだらない作業だよ」
ダストボックス「ジャージを着てチャックボーンの――」
宇宙人「アー、ワがヨメはキョウイがスコしタりませんでしたからねー!」
ダストボックス「ふんっ!!」ブンッ!
ボコッ!!
宇宙人「あイタぁ!モノをナげないで!キザイにアたったらどうするのです!?」
ダストボックス「ちっ」
ダストボックス(そうだ、あの忌々しいチャックボーン、あれをクリアするために私たちは>>682)
-
タオルをいっぱい詰めた
-
ダストボックス(クリアするためにタオルを胸の部分にいっぱい詰め込んだのだ)
ダストボックス(その屈辱ったらありゃしない……)ギリッ
ダストボックス「はぁ……」
ダストボックス(というか私がこの宇宙人と一緒にいる義務はないし、今すぐ婚姻届を破って出ていってもいいのだが)
ダストボックス(今この城の周囲にはアルパカウイルスという未知のウイルスがばら撒かれている)
ダストボックス(そのウイルスに対抗するワクチンを作れるのが宇宙人だけどなると……一緒に行動したほうが利点は大きい)
ダストボックス(傍にいれば完成した際に第一に奪い取って逃げることも出来るしな)
宇宙人「ふーむ、これはもうイチドミナオしてみるヒツヨウがありそうですねー」
カタカタッ
ダストボックス(しかし、このラボに置いてある機械類が特殊なのか……量産への行程は遅々として進まない)
ダストボックス(さすがの私も苛立ってくるな……)
ポタッ
ダストボックス「……ん?」
ポタッ ポタッ
-
ダストボックス(なんだ?天井から雫が滴って落ちている)
ダストボックス(雨漏り……いやいや、ここは地下に近い場所だし、何より機密性が保たれているし有り得ない)
ダストボックス(ではあれは……?)
スッ
ダストボックス「おい宇宙人、あれは……」
ダストボックス(そう宇宙人に話しかけながら滴る液体の方向に近付いた瞬間――)
ポタッ
ゴポッ ゴポゴポッ
ニュルルルッ!
ダストボックス「なっ……?」
ダストボックス(――滴り床に溜まった液体がスライムのように空中に浮き上がり……"紫色の人の形"を取った)
ダストボックス(液体人間は段々と輪郭をハッキリさせ、服と人肌の違いが見て取れるようになっていく)
シュルルルッ!
紫毒妃「……どうも、わたくしは紫毒妃」
ダストボックス「……っ!?」
紫毒妃「あなたがたの中枢を、侵しに参りました―――」
─────────────────
ドスケーブ城
・ラボ付近通路 AM3:52〜
・ラボ AM3:45〜AM3:47 新終末編『160』了
-
というわけでここまで
シーンがあっちゃこっちゃ行ってますね
そのうちまとめます
新終末編『161』に続く
かもしれない
-
新終末編『161』
─────────────────
──ドスケーブ城・鞠莉ラボ
AM3:47
ダストボックス「何を……言っているんだ……」
宇宙人「イレギュラー!どこからシンニュウしてきたのですか!?」
紫毒妃「はて……わたくしがどのような者か掴みかねているようですわね」
紫毒妃「停電後にお仲間から連絡は無かったのですか……?」
ダストボックス(紫毒妃と名乗った侵入者は不満そうな顔で疑問を呈する)
ダストボックス(まるで客を迎えるのに何の準備もしていなかった使用人を窘めるような目)
ダストボックス(敵意があるのかさえ分からない奇妙な侵入者、宇宙人なんかは呆気に取られている)
宇宙人「はぁ……?」
紫毒妃「まぁ良いでしょう、わたくしがすべき事は1つだけ……」
ダストボックス(だが、私は気付けた、最強の傭兵と自負する勘が気付かせた)
ダストボックス(こいつはマトモに相手をしてはいけないタイプの敵、そして……)
ダストボックス「そいつが狙ってるのは量産中のワクチンだ!宇宙人!!」
宇宙人「なっ!?」
紫毒妃「……ふっ」
シュルルルッ!
ダストボックス(紫毒妃がワクチンのセットされてる機械の方へ手を伸ばす)
ダストボックス(私はそれを防ぐために>>687)
-
近くにあるよくわからない液体を投げつけた
-
溜め込んだゴミを解き放った
-
ダストボックス(私はそれを防ぐために、近場にあるよく分からない液体を投げつけた)
ヒュンッ!!
バシャッ!!
紫毒妃「……ほぉぅ?」
ダストボックス(投げた薬液瓶は紫毒妃が伸ばした手に真っ直ぐ命中、手からは煙が立ち上る)
ジュゥゥゥゥッ!
ダストボックス(中の液体の成分が何かは知らない、だがラボに置いてあることからおそらく取扱注意の薬品)
ダストボックス(要は……紫毒妃を怯ませて一瞬だけ隙を作ることさえできれば良い!)
タンッ! ヒュヒュッ!
紫毒妃「……!」
ダストボックス(特殊な歩法で瞬間的に紫毒妃の懐へ、滑るように潜り込み――)
ドシュッ!!
ダストボックス(――無防備は腹部を蹴り上げる!)
-
紫毒妃「ほう……これは速い、わたくしの目では見切れませんでしたわ」
グニュゥゥッ
ダストボックス「なっ……!」
ダストボックス(確かに直撃した私の蹴りは紫毒妃の腹部に"膝の辺りまで"めり込んでいた)
ダストボックス(いや、"飲み込まれていた"という表現のほうが適切かもしれない)
ダストボックス(強い粘性を持った液体に変化した紫毒妃にキックが無効化されていたのだ)
ダストボックス「ちっ!」バッ!!
ダストボックス(すぐさま足を引き抜き背後へ跳んで距離を取る)
スタッ
ダストボックス(紫毒妃に突っ込んだの方の足にはヒリヒリとした軽い痛み……見てみると肌は赤く、靴や服の裾が少し溶けてやがる)
ダストボックス(あいつ……何か溶解性を持った液体に体を変えてるのか?紫毒妃と自分で名乗ってるくらいだからなぁ)
宇宙人「ヨメッ!!」
ダストボックス「うるさい、大丈夫だ慌てんな」
-
ダストボックス「物理攻撃が効かない相手なんて、この世界で傭兵家業やってりゃ珍しいことじゃない」
ダストボックス「対策なんて……幾らでもあるさっ!」
パチンッ!
ダストボックス(私は屈んで体勢を低くし、両足の靴の踵にあるスイッチをオンにする)
ダストボックス(ダストシューズ――便利な遺物だがオンオフの切り替えをしなければいけないのが唯一面倒な点)
ダストボックス(常時発動にしてると自分が立っている床を踏み続けて消しかねない)
ダストボックス(だからこうして……"その手の敵"にだけ発動させる!)
キィィィィィィンッ!!
紫毒妃「……その靴、ただの靴ではありませんね?アーティファクトでしょうか?」
ダストボックス「正解だ、お前に効くかどうかは分からないがな」
ダンッ!!
ダストボックス(再び飛びかかりながら私は考えていた)
ダストボックス(正直……この女との間には能力的な格の差を感じている)
ダストボックス(今までも何度か経験したが、世の中には得てして相性を覆す圧倒的な力の差というものがあるのだ)
ダストボックス(ジャンケンで勝負していたはずが、ルール無視の暴力でボコボコにされるような理不尽さ)
ダストボックス(もしそれが紫毒妃の能力と私の靴の間にあるのなら……また別の手を考えねばならない)
ダストボックス「うおらっ!」
ブォンッ!!
ダストボックス(そんなことを考えながら力の限り放った蹴りは>>692)
-
紫毒妃を貫通したが、蹴った足は骨が見えるまで溶けた
-
ダストボックス(力の限り放った蹴りは――)
ドシュッ!!
ダストボックス「ぐっ……!」
紫毒妃「あらあら……面白い結果になりましたわね」
ダストボックス(結果から言えば、私の予想はどちらも外れた)
ポタッ ポタッ
ダストボックス(まず私が放った蹴りは紫毒妃の右腹部を貫通し切り裂いた)
ダストボックス(踏み付けてる間だけ能力を消し去るダストシューズの効果は正常に働いたのだ)
ダストボックス(紫毒妃の腹にはポッカリと風穴が口を開いている)
ダストボックス(だが同時に、蹴りを放った私の足も溶ける……それも膝から先は肌も肉もないほどに)
ジュゥゥゥゥッ!
ダストボックス(溶けて骨だけになった足が紫毒妃の腹部に突きささっている……!)
宇宙人「そんな……ヨメのアシがっ!!」
-
ダストボックス「どういうことだ……能力は封じたはずだ!」
紫毒妃「ふむ……やはり靴が触れる条件付きの能力無効型アーティファクトでしたか」
ダストボックス「やはりだと?」
紫毒妃「はい、ですから"敢えて"攻撃を受けたのです」
ダストボックス「……っ!?」
紫毒妃「所詮蹴りは蹴り、出来る攻撃はたかが知れている」
紫毒妃「実はわたくしの体……植え付けられた力のせいか生身が少々脆いのです」
紫毒妃「なのであなたの蹴りを食らい、その部分を吹き飛ばさせる、すると足は貫通して空洞が空き、靴はどこにも触れてない状態になる」
紫毒妃「……ね?これならまた能力が使えるでしょう?」ニヤリ
ダストボックス「……っ!」
バッ!!
ダストボックス(やはり直感通りだった!こいつはヤバいやつだ!!)
ダストボックス(淡々と説明してたが、こいつ自分が何を言っているか分かっているのか!?)
ダストボックス(わざと私の攻撃を食らって腹に穴を空け、その後に能力使って毒液で私の足を溶かす)
ダストボックス(肉を切って骨を断つと言えば聞こえは良いが……そういうのは必死の覚悟でやるもんだろ!)
-
紫毒妃「ほら、丁度足が貫通した周りにはわたくしの内蔵類があるでしょう」
紫毒妃「そこを毒液に変えて垂らせば穴の中にある足は簡単に溶けてしまいますの」
紫毒妃「骨だけになってしまえば靴は履けないし足は動かせませんね」
ダストボックス(まるで奥様向けの料理番組みたいな口調、こいつは自分の肉体に執着がない、命を喪失することを恐れてない)
ダストボックス(師匠が言っていた……1番怖いのは手練の兵隊ではなく、その手の頭のイカれた連中だと!)
紫毒妃「さて、足は残り1本……どうします?」
ダストボックス「これまで失ってたまるかよ!」
ダンッ!!
ダストボックス(私は残った足で大きく後ろへ跳び、壁際に立てかけてあるゴミ箱の元へ向かう)
ダストボックス(おそらく……紫毒妃にダストシューズは効かない)
ダストボックス(シューズには踏み続ければ能力どころか存在さえ消すという力もあるが、こいつの体は脆すぎて踏み続けたら消える前に踏み抜いてしまうだろう)
ダストボックス(私が力を加減しても同じこと、たぶんこいつはトカゲの尻尾切りよろしく体を切り離す)
-
ダンッ!
ダストボックス(ならばいっそゴミ箱で丸ごと吸い込んでしまうのが吉)
ダストボックス(リサイクルボックスの1つが破壊された今、正しくゴミ箱が機能してくれるかは分からない……)
ダストボックス(けど、今はこれに賭けるしかないっ!)
紫毒妃「次の手ですか?そうですわねぇ……」
ダストボックス(思い悩む動作を見せる紫毒妃)
ダストボックス(壁際まで後退をする私を追い掛けるか、この間にワクチンを狙ってしまうか……その判断をしてるんだろう)
ダストボックス(出来れば私を追ってこい!そして吸い込まれてしまえっ!)
ポンッ
紫毒妃「よし決めましたわ、>>697」
-
毒の分身に追うのは任せましょう
-
紫毒妃「追いかけるのは毒の分身に任せましょう」パチンッ
シュルルルッ
ダストボックス(紫毒妃が指を鳴らすと液体化した体が分裂、分裂した体がそれぞれ一回り小さい紫毒妃となる!)
紫毒妃「分身、そちらは任せましたわよ」
分身「任されましたわ!」
ヒュヒュッ!!
ダストボックス(本体は宇宙人の方へゆっくりと優雅に歩いて行き、分身は私の方へ高速で迫ってくる)
ダストボックス(足の部分を液体化してるのかラボの床を滑るようなスムーズな移動)
ダストボックス(足一本で跳ねながら移動する私より確実に速い!)
分身「ほほほっ!」
シュシュシュッ!!
ダストボックス(ラボの壁際まで……私のスプリントを持ってすれば片足でも数秒に満たない時間)
ダストボックス(だが今はその僅かな時間さえ長く感じる!)
-
ダストボックス「くそっ!」
ダストボックス(私は最強の傭兵にならないといけないんだ……こんなところで……)
分身「はい追いつきました」ピタッ
ダストボックス「くそぉぉおおおっ!!」
ピキーンッ
分身「……え?」
バィィーーーーンッ!!
分身「ひゃぁああああっ!」
ダストボックス「……は?」
ダストボックス(何が起こったか……私も理解できなかった)
ダストボックス(紫毒妃の分身の手が私の肩に触れた瞬間、私の周囲に光のバリアが展開されて分身が弾き飛ばされる)
ダストボックス(こんな能力、私は知らないぞ……)
ウィーンッ
ダストボックス(そんな呆然とする私の後ろで扉が開く音、続いて室内にタオルが投げ込まれる)
ポーンッ
ダストボックス「タオル……?」
-
鞠莉「セコンドからのタオルよ、それとジャージボーンをズルした証拠」
カツ カツ
鞠莉「2つの意味で1回休み、あなたはしばらく休んでなさい」
ダストボックス「……誰?」
ダストボックス(後ろから歩いてきたのはフワフワした雰囲気を纏った金髪で白衣の女)
鞠莉「ミー?私の名前は鞠莉よ、何を隠そうこのラボの設計者でマスター」
鞠莉「あなたが噂の傭兵さんでー、あっちが宇宙人さんでー」
鞠莉「それでー……」
ジーッ
鞠莉「あなたが侵入してきた神造人間の1人ね」ニヤリ
分身「……?」
鞠莉「やっと自分のラボに帰ってきたと思ったら……随分ハチャメチャしてるみたいじゃない」
カツンッ
鞠莉「良いわ、クッキングが作った実験台がどんな出来なのか――私がテストしてあげる!」ビシッ!
─────────────────
ドスケーブ城
AM3:47〜AM3:50 新終末編『161』了
-
というわけでここまで
鞠莉の帰還
新終末編『162』に続く
かもしれない
-
新終末編『162』
─────────────────
──ドスケーブ城・ラボ
AM3:50
鞠莉「……決まった」フフッ
ダストボックス「な、なんなんだお前は……」
鞠莉「だから言ったでしょ?私は鞠莉、ここの研究室の主でマッドサイエンティスト」
鞠莉「今は一応うみかたちの味方だから貴女の味方でもあるわ、だから安心して任せなさい」
ダストボックス「…………?」
鞠莉「そうだ、足の怪我は後で良い義手付けてあげるから下手に触らないでね」
ダストボックス「あ、ああ……」
鞠莉(ふーむ……まだ傭兵ちゃんは状況を飲み込めてない感じねー)
鞠莉(まぁ元々人に信用されるタイプではないし、すぐに味方だと信じてくれるとは思わないけど……協力してくれないと色々都合が悪い)
鞠莉(ここは行動で信用を勝ち取って行きますか)
-
分身「先程の言い草、わたくしたちのことを知っているのですか……?」
鞠莉「知ってるよ、鞠莉さんは大体のことを知っている」
鞠莉「クッキングのアホがフードマンと組んで、拾ってきた適当な孤児に神の力を組み込んだ人間兵器――それが神造人間でしょ」
分身「ほう……それまた随分詳しく」
鞠莉「作った本人が自慢して来たからねぇ、詳しい仕組みを聞こうとしたら自分で調べろと突っぱねられちゃったけど」
鞠莉「だーかーらー、あなたで調べることにしたの」ニヤリ
分身「……っ!」バッ!
シュルルルッ!!
鞠莉(私の発言に危機を感じたのか、毒液人間は液状の触手を伸ばしてくる)
鞠莉(それは無駄なのよね〜)
ピッ
鞠莉(私はポケットに手を入れて、さっきも発動させた>>704バリアを発動する)
-
異次元
-
性欲が増す代わりに、絶対に防御できる
-
鞠莉(さっきも発動させた異次元バリアを発動する)
キィーーンッ
バィィーーーーンッ!
分身「くっ……また弾かれた!?」
鞠莉「次元を数ミリばかりズラして異次元層を作る簡単な仕組みの防御壁よ、光るのは断層で光が屈折するからね」
鞠莉「空間自体が盾だから毒液で溶かすことも出来ない、あなたの力では通り抜けられないでしょう?」
分身「異能力……ではないみたいですわね……」
分身「服の中に入れた手と言い何か道具を使って発動させた現象、あなたもアーティファクト使いですか」
分身「くくっ……良いでしょう良いでしょう」
鞠莉「む?」
分身「そんなにバリアを張っていたいなら常に張っていなさいな!!」
シュルルルッ! ババッ!!
鞠莉(毒液人間は自分の体を大きく広げて私に飛びかかってくる、そして……バリアの周囲を覆ってしまった)
-
鞠莉「ほう……」
鞠莉(バリア越しに見る景色は一面紫色の液体、なるほど……そういう手で来たのね)
ダストボックス「鞠莉!紫毒妃の分身がドーム状に変化してお前のバリアの上に覆い被さったぞ!」
鞠莉「わかってるー!」
鞠莉(くぐもった傭兵ちゃんの声が聞こえる、一応外と会話はできるみたいね)
鞠莉(この毒液人間……紫毒妃とか言ったかしら)
鞠莉(異次元バリアに弾かれることを学習したんでしょう、バリアと自分のドームの間に僅かな隙間を空けている)
分身「バリアに弾かれないようにあなたを密封してあげましたわ」
分身「どうです?バリアを張ってる間は動けない、バリアを解除した瞬間に滴る毒液に飲まれる」
分身「一方わたくしは分身を増やして動けるわけ、あなたはそこで一生閉じこもってなさいな!」
鞠莉「へぇ〜、改造で頭なんてイカれてるやつらばっかりだと思ってたけど……人並みに物を考えれるんじゃない」
ダストボックス「どうする?私の残りのダストシューズで蹴破って――」
鞠莉「やめなさい!今のあなたが近付いても毒液に飲まれて終わりよ!」
ダストボックス「……っ!」
-
鞠莉「ふむ……」
鞠莉(人間に植え付けるように能力を『劣化・限定的』にしてるとは言え、紫毒妃が奮っているのは神の力の一端なのは確かな事実)
鞠莉(おそらく本気を出せば物理的に溶かせないものは地球上に存在しない)
鞠莉(対抗出来るとすればこの手の毒に強い特殊な能力か、神話レベルの防具、一部の神性特攻遺物くらいだけど……)
鞠莉(残念ながら、今の私はどれも持ってないのよねぇ)
鞠莉「ま……持ってないのなら作り出すのがこの鞠莉さんなのよ」
ガサゴソ
鞠莉(私は白衣の中から一本の注射器を取り出す、ラベルも貼られていない新品)
鞠莉(中には作ったばかり新鮮ホカホカな"ウイルス"が入っている)
鞠莉(これを何に注射するかというと……そんなものは決まってるわ)
鞠莉(毒液とバリアの閉鎖空間の中にあるのは私の身1つ、私以外の誰にぶっ刺すっていうの?)
鞠莉(時として自分の体さえ実験に差し出すのがマッドサイエンティストというもの)
ジュルリ
-
鞠莉「ふむ……」
鞠莉(人間に植え付けるように能力を『劣化・限定的』にしてるとは言え、紫毒妃が奮っているのは神の力の一端なのは確かな事実)
鞠莉(おそらく本気を出せば物理的に溶かせないものは地球上に存在しない)
鞠莉(対抗出来るとすればこの手の毒に強い特殊な能力か、神話レベルの防具、一部の神性特攻遺物くらいだけど……)
鞠莉(残念ながら、今の私はどれも持ってないのよねぇ)
鞠莉「ま……持ってないのなら作り出すのがこの鞠莉さんなのよ」
ガサゴソ
鞠莉(私は白衣の中から一本の注射器を取り出す、ラベルも貼られていない新品)
鞠莉(中には作ったばかり新鮮ホカホカな"ウイルス"が入っている)
鞠莉(これを何に注射するかというと……そんなものは決まってるわ)
鞠莉(毒液とバリアの閉鎖空間の中にあるのは私の身1つ、私以外の誰にぶっ刺すっていうの?)
鞠莉(時として自分の体さえ実験に差し出すのがマッドサイエンティストというもの)
ジュルリ
-
鞠莉(私は注射器の中の溶液に向かって語りかける)
鞠莉「神の力に対抗し得るのは神の力だけ」
鞠莉「私が帰ってくるのが遅れたのは"あの戦場跡"に"あなた"を拾いに行ってたからよ?」
鞠莉「だから、貴女の力を存分に発揮しなさい」
鞠莉「分かってるわね……新作ウイルスちゃん!」
ブシュッ!!
鞠莉(刺した注射器からウイルスが私の中に流れ込んで来て――)
鞠莉(その瞬間、私の体は>>711のように変化する!)
-
金色の無敵状態
-
鞠莉(その瞬間、私の体は金色の光に包まれる)
鞠莉(どこからか吹いてくる風で髪や白衣がバタバタとはためいて最高にクールな姿を演出する)
キュィィィィィィィィンッ!!
鞠莉「イエーッス!ミラクルスーパー大成功!やっぱり私って大天才!!」パチンッ
鞠莉「じゃ、さっさとバリアを解除して――」
ピピッ シュンッ!
分身「なっ……」
鞠莉「毒のドームを拳で突き破る!!」
ブンッ! ギュルルルルッ!!
分身「ひゃぁぁぁぁぁっ!!」
ビチャチャチャチャッ!!
鞠莉(黄金の竜巻旋風アッパーを食らった紫毒妃の分身は辺り一面に体を飛び散らせた)
ダストボックス「鞠莉……その姿は……」
紫毒妃「……なんなんです?」ピクッ
鞠莉(毒のドームの中から神々しく現れた私の姿に、機械に手をかけていた紫毒妃も反応する)
-
紫毒妃「わたくしの毒で溶かされないとは……どういうトリックを使ったのです?」
鞠莉「トリックも何も自分の体を改造しただけよ?」
鞠莉「私は元々動植物の遺伝子を元に人を強化させるウイルスを研究していた研究者」
鞠莉「若い子は知らないと思うけど、数千年前にあらゆる遺伝子を組み込んだ最強生物を作ったりしてたの」
ダストボックス「数千年前……若い女かと思ったら随分なご老体なんだな……」
鞠莉「なっ!肉体的にはピチピチヤングなのよ、失礼なこと言わないでくれる?」
オホンッ
鞠莉「ともかく、ちょーどウイルスの新作が出来ていてね、それを試してみただけ」
紫毒妃「バカな……たかが強化人間如きが神造人間の毒に耐えるわけが……」
鞠莉「そうね、ただの強化人間なら耐えられない」
鞠莉「でもね?私がこのウイルス――Mウイルスを開発した目的は『神に匹敵する』究極生物を作りだすこと」
鞠莉「現に獣人の街で全ての生物の頂点に立つギガゴッドデビルが、世界の理でヨハネ・ギガゴッドデビルが……」
鞠莉「Mウイルスを起点にした私の研究によって生まれた」
-
鞠莉「それは私の手を離れても進化し続ける化物……」
鞠莉「クッキングのアホが私の研究を掠め取り、ヨハネギガゴッドデビルからJGGD細胞を生み出し、究極生物『堕天使ヨハネ』を作り出した」
カツンッ!
鞠莉「そこまで進化した究極生物は、私の目から見ても神と遜色ない存在だったわ」
紫毒妃「だから……なんなの……?」
紫毒妃「あなたの研究成果の話と、わたくしの毒が効かないことにどんな関係があると言うのです!」
鞠莉「ん?だからさっき私の体に打ったウイルスは……その堕天使ヨハネのから作ったものってこと」
紫毒妃「……え?」
鞠莉「MウイルスTypeヨハネ――ドアラランド跡にあのアホが捨てた半身から作ったウイルス」
鞠莉「これをぶち込んだ私の体は黄金に輝き出し、正に無敵!あなたの毒は無効!」
鞠莉「そしてこんなの能力も使えたりするのよ、それは>>715」
-
相手のスキルを封印して上位互換のスキルを使える
-
鞠莉「それは――」
スッ!
ピタッ
紫毒妃「っ!?」
鞠莉(私は"普通に歩いて"紫毒妃の元まで行き彼女の腕に触れる)
鞠莉(まぁ、神の力全開の移動は彼女の目から見たら私がワープしたように見えたと思うけど)
ダストボックス「速い……私の歩法より無駄も鋤きも少なく接近した……!」
鞠莉「お?傭兵ちゃんは見えたみたいね、さすがねぇ」
紫毒妃「あなた、何をして――っ!?」
鞠莉(私の手を振り払おうとした紫毒妃が怪訝な顔をする、こっちも気付いたか)
紫毒妃「わたくしの……能力が使えない……?」
鞠莉「正解、Typeヨハネを打ち込んだ私はあなたのスキルを封じて上位互換のスキルを使えるようになるの」
鞠莉「能力を吸収して進化する堕天使の力が働いているのね」
紫毒妃「バカなっ!そんなはずがありませんわ!」
紫毒妃「わたくしは神造人間、神の力を埋め込まれた者がそんな偽物の神の力に負けるなんて……ありえませんわ!!」
-
鞠莉「……なんだ、体を失うことは怖くないのに、負けて任務が失敗することは怖いのね」
紫毒妃「っ!」ビクッ
鞠莉「傭兵ちゃんを相手取ってるうちは冷静に強気でいたのに、私に能力を破られたらもう弱気」
鞠莉「焦れば焦るほど元の人間の部分が表面に現れてパニクる……そして追い詰められて敗北する」
鞠莉「どの神造人間にも共通する特徴だとしたら、これは改善の余地があるんじゃないかしら」ジロッ
紫毒妃「……ひっ!」
鞠莉(私は観察を続けながら紫毒妃の腕を掴む力をどんどん強めていく)
ギリリッ
鞠莉(強まる力と舐めるような視線に余裕だった紫毒妃がみるみる萎縮していくのが分かる)
紫毒妃「や……め……っ」ブルブルッ
鞠莉「大体さぁ、神の力とは言っても人の"身の丈"に合わせて出力を落とした劣化版でしょ」
鞠莉「どれだけ調教と薬で素体を整えようが、1体に積める力の数も質もたかが知れている」
鞠莉「要は量産のしやすさを主眼に置いた生体兵器なんでしょうけど……」
-
鞠莉「なーんか気に入らないのよねぇ」
ギリリッ
紫毒妃「ぐっ!」
鞠莉「人間である私たち研究者がチートしてズルしてインチキして必死こいて神の力を真似してるってのにさ」
鞠莉「神の力を扱えるフードマンは力を抑えた安価で安定したつまんない劣化品を量産するってどういうことよ」
鞠莉「良い、よく聞きなさい?」ギリリッ
紫毒妃「あ……が……」
鞠莉「そんな気の抜けた本物に、私たちが目指した本気の偽物が負けるわけがない」
鞠莉「あなたたちみたいな舐めた連中は――私がこの手で叩き潰すっ!」
─────────────────
ドスケーブ城・ラボ
AM3:50〜AM3:54 新終末編『162』了
-
というわけでここまで
途中で二重投稿してしまいました
すみません
新終末編『163』に続く
かもしれない
-
新終末編『163』
─────────────────
──ドスケーブ城・ラボ
AM3:54
シュルルルッ!! ギュゥゥゥッ!!
紫毒妃「ぐぅ……っ!」
鞠莉(紫毒妃の腕を強く掴んでいた私の手、その手を覆う金色オーラが触手を模した形に変化し伸びた)
鞠莉(伸びたオーラの触手は彼女の体を這い回りきつく締め上げている)
ギリッ ギリリッ
鞠莉「あなたのスキルである液体化の応用よ、勿論ここから毒を出してあなたを溶かすこともできる」
紫毒妃「だ……だから?わたくしは死ぬことなど怖くは……」
鞠莉「別に死ぬことが全てじゃない」
ジュゥゥゥゥッ!!!!
紫毒妃「はぐぅぅぅぅっ!!」
鞠莉(オーラ触手から滲ませたのは激しい痛みを与える毒、気が狂いそうなほど痛いけど死にはしない)
鞠莉「どう?Typeヨハネが進化させたあなたの能力は好きな毒を作り出すことができるのよ」
鞠莉「神の力が麻痺させていた人間としての意識と痛覚、そこに久しぶりにくらう毒の味は……」
紫毒妃「が……ぐふっ……げはっ……」ブクブクッ
鞠莉「言葉にならないくらい気に入ったみたいね」フフッ
-
鞠莉「良い?私はあなたを死なす気はない、同時に拷問並みの苦痛を与え続けることもできる」
鞠莉「クッキングがあなたに力を植え付けるために行った苦痛の何倍もの苦痛よ」
鞠莉「生かさず殺さず……永遠にね」
紫毒妃「…………っ!」
鞠莉「では今から幾つか質問をするわ、素直に答えてね」
紫毒妃「答えたら……解放してくれますの……?」
鞠莉「うーん、態度次第かな」
紫毒妃「……くっ」
鞠莉「まずあなたち襲撃組のメンバー構成から、1人残らず答えて」
鞠莉「ゲートを壊しに行った黄色の2人組と、外で暴れてたデカイの、ラボに来る途中に見かけた3人は確認したけど……」
紫毒妃「黄ノ姉妹と銀帝ですね、他にはわたくしたちの部隊のリーダーである白狼王、遊撃担当の黒雪姫、補助役の赤の聖女」
紫毒妃「それから……そうだわ、白狼王と行動を共にしてる>>722という者がいます」
-
蒼天龍
-
金孔雀
-
紫毒妃「白狼王と行動を共にしてる蒼天龍という者がいます」
鞠莉「蒼天龍かぁ……どの神の力を持っているかは分かる?」
紫毒妃「……い、いえ、わたくしは余り力の元になった神のことは知らないので……」
紫毒妃「能力の使い方も……あくまで埋め込まれた神の力が勝手に体を動かす感覚……なのです……」
ダストボックス「元の神?あぁ……確ネタが分かれば能力が予測できるってわけだな」
鞠莉「そうそう、だから名前を聞いてみたんだけどピンと来ないのが多いのよね〜」
ダストボックス「多いも何も私は1つも分からんがな、紫毒妃がどんな神の能力かは分かるのか?」
鞠莉「それは分かるわ、フードマン……もといロキが力を与えたやつで毒や液体とくればシギュンでしょう」
ダストボックス「シギュン?」
鞠莉「ロキの奥さんの1人よ」
鞠莉「ロキが神々相手にやらかして捕まった時に、頭上の毒蛇から滴る毒を器で受け止めてたって話が有名ね」
鞠莉「別にこの人自体が毒使いだったわけじゃないけど、関連するワードを能力にしてるんでしょう」
ダストボックス「ほー」
-
鞠莉「まぁこの世界のロキはブリーシンガメンの一件から分岐してフードマンになっている」
鞠莉「その後起きるはずだったロキの口論やロキの拘束が起きてない世界だから、シギュンの介抱話も実際は起こってないんだけど……」
ダストボックス「はぁ……歴史の話は知らんから置いといて、要はロキ関係の神々が容疑者ということか」
鞠莉「ええ、黄ノ姉妹はおそらくナリとナルヴィ、チラっと見てきた時に身内の不始末や内臓ってワード言ってたし」
鞠莉「前述のロキが捕まった際に片方が狼に変えられて片方の腹を食い破らされ、その腸が鉄となってロキの拘束に使われた兄弟で間違いないわ」
鞠莉「ちなみに紫毒妃の元のシギュンとロキの子供ね」
ダストボックス「へぇ……ぞっとしない話だ」
鞠莉「白狼王はあからさまにフェンリルだし、城内が凍りついてたから誰かがヘルを担当してる、外の銀帝は霜の巨人のどれかかな」
鞠莉「後は……コードネームからは推測出来ないのよねぇ」
ダストボックス「実際に能力を見てみる必要があるな」
鞠莉「ええ」コクンッ
紫毒妃「あの……わたくしは……もう……」
鞠莉「ああ、放置していてごめんねー、ソーリー」
鞠莉「質問したいことはもう1つ、それは>>726」
-
寝返りそうな奴はいるか
-
鞠莉「メンバーの中で寝返りそうなやつはいる?」
紫毒妃「寝返り……ですか……?」
鞠莉「そうそう、今のあなたみたいにさ」
鞠莉「説得でも取引でも脅迫でも良いけど、そうやってこっちの味方してくれそうな人はいるのかって質問」
紫毒妃「わ、わたくしは寝返ったわけでは……」
鞠莉「はい激痛毒〜」
ビリリッ!!
紫毒妃「あぐぅぅぅぅぅぅっっ!!がっ!!あがぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
鞠莉(再び毒を少し垂らすと紫毒妃は半狂乱になり、拘束された体を激しく捻り暴れ、顔から涙と涎が溺れかけるほど噴出される)
紫毒妃「はぁ……ぜぇ…………ぐふっ……」
鞠莉(それをピタリと止めると紫毒妃はまた落ち着いていく、まるでロキが受けていた罰を受けてるみたいねぇ)
鞠莉(私は拘束する力を強め、顔を近付けて言う)
鞠莉「良い?私に内情を喋った時点であなたは立派な裏切り者」
鞠莉「フードマンの元に戻ったとしてもあなたみたいな失敗作は処分されるだけ……」
紫毒妃「ひぃっ……!」ブルルッ
-
鞠莉(完全に怯えた目をする紫毒妃、そこにはもうシギュンの力を操る生体兵器の姿は無かった)
鞠莉(そこにいたのはシギュンになる前の"何処かの誰か")
鞠莉(愛を知らず虐げられて育ち、拠り所を求めていた可哀想な誰か)
鞠莉(フードマンはこういう子たちを選別して兵器に改造していたんでしょう……)
紫毒妃「そう……ですね……」
紫毒妃「実際……寝返らせるというのは難しいと思いますわ」
紫毒妃「わたくしもこうして捕まる直前までは、自分を殉じてまでも任務を果たす気でした」
紫毒妃「他の者も同じ、説得したところで話を聞く耳すら持たないのが基本かと……」
鞠莉(フードマンとクッキングが行った改造)
鞠莉(その改造には肉体的な改造の他に、おそらく洗脳行為も含まれている)
鞠莉(神の力を振るうのに適した個別の性格を刷り込むのと同時に、兵器としての使命感と失敗したら後がないという強迫観念を植え付ける)
鞠莉(自分たちは神造人間の自分であるから価値がある、昔の自分には戻れるはずがないと――)
紫毒妃「わたくしは自分の体が無くなろうとも……死のうとも怖いとは思わなかった……」
紫毒妃「ですが……今は何故がそれが物凄く恐ろしい……!」
ガタガタッ!
鞠莉(青ざめて震えだす紫毒妃……痛みとショックで一時的に洗脳が溶けかているのかしら)
-
ダストボックス「しかし、掴まえて尋問しないと素に戻らないなんて厄介な話だ」
ダストボックス「今回は鞠莉がチートで抑えつけたから良いものの、皆が皆そう出来るとは限らん」
ダストボックス「あんな調子で特攻されたら……刺し違える覚悟で殺しに行かないとどうにもならんぞ」
ダストボックス「交渉してる余地なんて無いに等しい」
鞠莉「そうねぇ……」
紫毒妃「可能性……」
鞠莉「ん?」
紫毒妃「可能性があるとしたら……蒼天龍か赤の聖女……でしょうか」
鞠莉「ほうほう、どうして?」
紫毒妃「蒼天龍はわたくしたちの中では比較的目先の利益のために動く性格です」
紫毒妃「いざとなれば殉じる覚悟は無論持ってると思いますが、それを上回るメリットを提示できれば……少しは聞く耳を保つかもしれません」
紫毒妃「白狼王の傍にいるのも、彼の太鼓持ちをしていれば得になると考えているからです」
ダストボックス「どの集団にもいる小賢しいやつってわけか」
紫毒妃「赤の聖女はそれとは逆、彼女にはある種の余裕……のようなものが感じられます」
紫毒妃「必死感が無いというか、出自自体がわたくしたちのような不運な境遇とは違う気がするというか」
紫毒妃「アンノウンだからこそ……接触してみる価値はあるかと……」
鞠莉「……なるほど」
紫毒妃「ただ気を付けてください、赤の聖女は力だけならおそらく最強」
紫毒妃「直接力を見たことはありませんが……近くに入れば分かります、恐らくわたくしたち全員でかかっても勝ち目は無い……」
-
ダストボックス「リーダーの白狼王ってのはダメなのか?」
紫毒妃「彼はわたくしたちの中では人格は安定してる方ですが、リーダーだからこその責任を自覚しています」
紫毒妃「話は通じるにしても……そうそう意思は揺らぎはしないでしょう」
ダストボックス「そりゃそうか」
鞠莉「……うん、大体分かったわ、ありがとう」
紫毒妃「あぁ……これで話は終わりですか」
紫毒妃「では……わたくしも処分を?」
鞠莉(紫毒妃はしゃべり疲れたという目でこちらを見てくる、その目には早く楽にして欲しいという思いも感じられた)
鞠莉「そうね、あなたへの処分は>>731」
-
とりあえず瓶詰めしておく
-
鞠莉「とりあえず瓶詰めしておくことにするわ」
紫毒妃「……殺さないのですか?」
鞠莉「貴重なサンプルを私が消すはず無いでしょう、あなたが嫌と言っても調べることは沢山あるの」
鞠莉「だーかーらー」
鞠莉「宇宙人ちゃん!そこの棚の二段目の中にある瓶を取って!」
宇宙人「ビン?これですか?」ガララッ
タタタッ
宇宙人「どうぞ」
鞠莉「ありがとう」
鞠莉(宇宙人に取ってきてもらった瓶を受け取り、片手で栓を抜いて紫毒妃の体に当てる)
ダストボックス「それは?」
鞠莉「コレクションボトル、サンプルを封印するために私が開発した道具よ」
鞠莉「これを紫毒妃に当てて、Typeヨハネの能力封印を解除……そして吸い込みっ!」
シュルルルッ!!
ポンッ!
鞠莉(再び液体化できるようになった紫毒妃をボトルの中にしまうことに成功)
-
鞠莉(とりあえず様子を確かめるため、紫色の液体で満たされたボトルをノックして話しかける)
コンコンッ
鞠莉「紫毒妃ー?聞こえる?居心地はどう?」
紫毒妃『……は、はい、居心地は悪くありません』
鞠莉「よっし」
ダストボックス「その瓶と言い、チートウイルスと言い、お前の開発した道具は便利なものばかりだな」
鞠莉「あ、そうだそうだ、Typeヨハネについて1つ言っておくことがあったわ」
ダストボックス「なんだ?」
鞠莉「このウイルスは人の体に擬似的な神の力を簡易に宿せる優れ物、けど便利な反面欠点も多いの」
鞠莉「1つは効果を発動していられる時間が短いということ、もう少しで金色のオーラは無くなっちゃう」
鞠莉「もう1つは>>734」
-
3時間、全てのステータスが4割になる
-
鞠莉「もう1つは効果が切れた後の3時間、使用者のステータスが4割に減少するってこと」
ダストボックス「それは……かなりのデメリットだな」
宇宙人「サンジカンのアイダにまたウイルスをウつことは?」
鞠莉「出来ないことは無いけど、Typeヨハネの効果が続く時間――ヨハネ化していられる時間は4割りに落ちるし」
鞠莉「ヨハネ化時に奪った能力の進化具合も4割ほどに現象してしまう」
鞠莉「そして効果が終われば更にそこから3時間、全てのステータスが4割減少」
ダストボックス「もう何割現象してるか分からんな……」
鞠莉「でしょ、だから緊急時以外の連続使用はなるべくしないほうがいいわ」
鞠莉「ただでさえ結構疲れるし、ふわぁ〜」
ポワンッ!!
ダストボックス「おおっ!?」
鞠莉(あくびをした瞬間、私のヨハネ化が解けて私の体が半分以下に縮んでしまった)
-
鞠莉「あふっ……これ身長や体重といった身体ステータスも減少の対象になるのね」
鞠莉「そこは予想外、服がブカブカで動きにくいわ……」
ダストボックス「くくっ、まるで子供だな」
鞠莉「まるでじゃないわよ、たぶん知能も4割程度になってるから中身も正真正銘子供」
鞠莉「ま……私の場合見た目と年齢が釣り合ってないし、これでも頭の中は貴女たちより全然上なのが幸いかしら」フフンッ
宇宙人「これまたエラそうなコドモだ」
鞠莉「だけど筋力が子供並みに落ちてるのは事実、これじゃ扉の前に置いてきたアレを運んでこれないわね」
鞠莉「ダストボックス……は片足が無いから、宇宙人ちゃん!私とアレを運ぶの手伝って!」
宇宙人「リョウカイした、してアレとは?」
-
テクテク
鞠莉「話したでしょ?私はTypeヨハネを作るためにドアラランド跡に足を運んで、ウイルスの元になる堕天使の欠片を探していたって」
宇宙人「……フム」
鞠莉「そこで見つけたのよ、クッキングが堕天使ヨハネから自分で切り離して捨てた、紛れもない究極生物の一部を」
鞠莉「堕天使ヨハネの司令塔としてドッキングされていた、量産型ヨハネシリーズの1人……」ポチッ
ウィーン
鞠莉「その上半身だけがね――」
ヨハネ「……あら?お話終わった?」
─────────────────
ドスケーブ城・ラボ
AM3:54〜AM4:00 新終末編『163』了
-
というわけでここまで
拾われたヨハネ
新終末編『164』に続く
かもしれない
-
新終末編『164』
─────────────────
──??
・
・
ヨハネ(私たちヨハネシリーズが覚えてる最も古い記憶は、培養機越しに見えた研究者たちの姿だろう)
ヨハネ(ヨハネギガゴッドデビルから採取したJGGD細胞、それを人の胚に注入し培養して生まれた私たちに普通の赤ん坊としての記憶はない)
ヨハネ(普通の子供が親と過ごす時間を研究対象として扱われ、普通の人間の何倍もの速度で成体へと成長する)
ヨハネ(培養機から出た後も研究者たちによる教育は続いた)
ヨハネ(基礎的な知的教育から運動能力の向上を目的にしたトレーニング、究極生物としての力の使い方の勉強)
ヨハネ(ヨハネシリーズとして生まれた個体は全てを徹底的に叩き込まれる)
ヨハネ(ただ、全てが厳しかったわけではない、カリキュラムの中には娯楽の時間も用意されていた)
ヨハネ(これは私たちが"人として"育つことを目的とされていたから)
ヨハネ(本体である堕天使のコントロールデバイスとして機能するには人格形成が不可欠だった)
ヨハネ(娯楽の時間……様々な娯楽に触れたけど、その中で私が特に気に入ったのは神話や悪魔といった物をモチーフにした創作物)
ヨハネ(原典の解説書からゲームや漫画、媒体関係なくあらゆるものにハマってしまった)
ヨハネ(度々研究者たちに心配されるほどのハマりよう、この出会いが私の人格を決定づけたのだろう)
-
・
・
ヨハネ(……時は過ぎ、カリキュラムを終えた私たちは成績と適正に応じて"外"での役割を与えられることになった)
ヨハネ(殆どが魔王軍かその下部組織への配属、そこで決行の時が来るまで身を置くことになる)
ヨハネ(私は運が良かったのか、魔王軍名古屋支部の幹部なんて大役に任命された)
ヨハネ(仕事としては部隊を率いる部隊長……責任は重大だ)
ヨハネ(ちなみにヨハネシリーズは外での任務に付く際、機密保護のためにヨハネシリーズに関する記憶を封印される)
ヨハネ(その時が来るまで、ただの一人間として魔王軍のために働いていくことになるのだ)
ヨハネ(では……何故私が昔の記憶を回想できているのか)
ヨハネ(それは他でもない、"その時"が来たからだ)
ヨハネ(愛知県名古屋市、ドアラランド)
ヨハネ(本格的に侵攻を始めた魔王本隊が占領した日本3大テーマパークの1つ)
ヨハネ(ここをほのキチ倶楽部が包囲し、調査しに来た人神の勢力も突入)
ヨハネ(複数勢力が衝突したタイミングで……地下に封印されていた堕天使本体が目覚めた)
ヨハネ(本体と融合した私は懸命に役目を果たしたものの――)
-
・
・
クッキング『あなたは邪魔なので……休暇を与えます』
ザシュッ!!
ヨハネ「……え?」
ヨハネ(堕天使の頭部から切断され、上半身だけになった私は地上へと落ちていった)
ヨハネ(失敗した……そう思った)
ヨハネ(同時に悔しさと情けなさがこみ上げてきた)
ヨハネ(私はこのためだけに生み出されたのに、役目を全うすることができなかった)
ヨハネ(研究を主導していたクッキング博士に不要と言われることは失敗作の烙印を押されることと同じ)
ヨハネ(例え地面に激突した後に死んでなかったとしても、私にはもう生きている意味がない)
ヨハネ(私は……もう抜け殻と同じだ)
ヒューーーーッ
-
・
・
ヨハネ(それから……長い時間が経った)
ヨハネ(凍える、冷たい、何時までも変わらない土の感触)
ヨハネ(そのうち私も分解されて土になるのかなーと思い始めてた時……)
鞠莉「お!レア素材発見〜!」
ヨハネ(……誰かの、声が聞こえた)
ツンツンッ
鞠莉「うーん……生きてるけど反応が薄い、かなり弱ってるみたいね」
鞠莉「死なれたら困るし……そうだ!」
ガサゴソ
鞠莉「あなた、力をつけるために>>743なさい」
-
この特製栄養ドリンクが入った水槽にダイビングしなさい
-
寒風摩擦
-
鞠莉「この特製栄養ドリンクが入った水槽にダイビングしなさい」
ドンッ!
ヨハネ(白衣で金髪の女が鞄から取り出したのは一般的な湯船より一回り大きいくらいの透明の水槽)
ヨハネ(こんなものがどうやって鞄に収納されていたんだろう……)
ヨハネ(……というか)
ヨハネ「この中に……入る……?」
鞠莉「そう!レッツダーイビーング!」
グイッ!
ヨハネ「ちょっ……」
ヨハネ(躊躇っていたら無理やり腕を掴まれて水槽に投げ込まれてしまう)
鞠莉「へーいっ!」ポイッ!
バシャーンッ!!
ヨハネ「うぐっ……」ブクブクッ
ヨハネ(私は慌てて腕を伸ばして水槽の縁を掴み顔を水面から出す)
ヨハネ「ぶはっ!!何するのよ!」
鞠莉「1人で入れないだろうから手伝ってあげたの、湯加減はどう?」
ヨハネ「湯加減なんて……ん?」
ヨハネ「あれ?なんだか心地良い、それに力が湧いてくる感じ……」
鞠莉「でしょ、何せ私が調合した特性栄養ドリンクだからね」
鞠莉「傷の修復や疲労回復なんてお手の物、ついでに>>746の効果もあるのよ」
-
大天使化
-
鞠莉「ついでに大天使化の効果もあるのよ」
ヨハネ「大天使……?」
鞠莉「そう、大天使の力を宿してくれるの」
鞠莉「選べるわけじゃないけど運が良ければミカエルやガブリエル辺りの力が手に入ったりして」
ヨハネ「それは興味深い話ね……じゃなくてっ!」バシャッ!
鞠莉「お?元気でてきた?」
ヨハネ「あなたは誰なの?どうして私を助けるのよ」
鞠莉「逆にどうしてだと思う?」
ヨハネ「えっ、えーと……白衣を着てるから魔王軍科学班の人で、捨てられた私を回収しに来た……とか」
鞠莉「惜しいわね」
鞠莉「前に魔王軍には所属してたけど今はしてない、むしろ敵対してる組織にいるわ」
鞠莉「回収しに来たって所は……当たりかな」
ヨハネ「…………」
ヨハネ(別組織の人間が私を回収……嫌な予感しかしないわね……)
-
鞠莉「この私、天才科学者の鞠莉さんがアホ科学者クッキングに捨てられた貴女を拾いに来たわけよ」
ヨハネ「私を……どうするの?」
鞠莉「そうね、単刀直入に言うと貴女の体組織が欲しい」
鞠莉「その代わりに私は、あなたに適切な治療と大天使の力を施してあげる」
鞠莉「何なら失った下半身丸ごと義体を作って上げることもできるわ」
ヨハネ「……随分と美味しい話ね、体組織ってどの程度?」
鞠莉「ほんのちょっとよ、感覚としては注射器でする普通の採血と変わりない、あれが我慢できるなら平気」
ヨハネ「ふむ……」
鞠莉「どう?乗ってみる気はある?」
ヨハネ(金髪で白衣の女はわざとらしい笑顔で問いかけてくる)
ヨハネ(ぶっちゃけ物凄く怪しいけど……どうせこのまま死んで土に還ってる身)
ヨハネ(私を必要としてくれる人がいるのなら――)
グッ
-
ヨハネ「分かったわ、その話に乗る」
鞠莉「よし来た!」
ヨハネ「……で、大天使の力っていつ手に入るのかしら?」
鞠莉「なーんだ、やっぱり興味あるんじゃない、貴女が喜びそうな話だと思ったのよね」
ヨハネ「なっ!?ち、違うわよ!」
ヨハネ「堕天使の私にとって大天使は憎き敵だけど!敵の力を知るのも……ほら、大事じゃない!?」
鞠莉「うんうん」
ヨハネ「私は分かってるからーみたいな顔で頷くのやめて」
鞠莉「どの大天使の力が宿ったかどうかは水槽の液体の色の変化で分かるわ」
鞠莉「この色だと……大天使>>750の力みたいね」
-
ラグエル
-
鞠莉「この色だと……大天使ラグエルの力みたいね」
ヨハネ「へぇ〜ラグエルか」
ヨハネ「ミカエルやガブリエルと並ぶ神の友と呼ばれた大天使ね、主に天使たちの監視役をしていたと言われてるの」
ヨハネ「けど歴史的には堕天使と認定されてこともあってなんだか親近感」
ヨハネ「何より親近感があるのはこのラグエルは黙示録の際に終末のラッパを吹く1人らしいのよ」
ヨハネ「黙示録って分かる!?あのヨハネの黙示録、ヨハネよヨハ――」
鞠莉「あぁはいはい、落ち着いてねー」ググッ
ヨハネ「ふふふっ……中々私好みの大天使の力が宿ったようね、くくくっ」
鞠莉「じゃあ納得してくれた所で移動しましょうか」
ヨハネ「移動?」
鞠莉「私たちの本拠地であるドスケーブ城よ」
鞠莉「ゲートを通るから塔に寄っていくけど……何か欲しいものはある?」
ヨハネ「そんなコンビニ行ってくるから欲しいものあるみたいな……」
鞠莉「この状況じゃやってる店もないし、あそこは中継拠点だから物資は集まってるのよ」
ヨハネ「そうねぇ、下半身から何から無いものは多いけど……敢えて今欲しいものと言うなら>>752」
-
黒色の防寒具
-
ヨハネ「黒色の防寒具かしら、この辺り寒くて……はっくしゅん!」
鞠莉「おっけー!オシャレなのを見つけてあげるわよ!」
・
・
・
──ドスケーブ城・ラボ
AM3:59
ヨハネ(……というわけで、鞠莉に運ばれ私は塔に向かうことになった)
ヨハネ(そこで忙しそうにしてるトゲわんという人に鞠莉が無理を言って物資の中から私に似合うコートを探し出して奪……譲ってもらった)
ヨハネ(コートを纏った私は再び鞠莉に担がれてゲートを通ってこの城に移動)
ヨハネ(ロキワーカーに見つからないように各場所を見回りつつラボに至った)
ヨハネ(どうやら中で戦闘が起きてるらしく、鞠莉は私を扉の前、廊下に立て掛けて中へ入っていった)
ヨハネ(鞠莉いわく「話をつけてくるわ」とのこと)
ヨハネ(あれから10分ほど、そろそろ戻ってきても良い頃だけど――)
ウィーン
ヨハネ(そう思ったのと同時、ラボの扉が再び開く)
ヨハネ「……あら?お話終わった?」
鞠莉「うん!バッチリよ!」ビシッ!
ヨハネ「でも……なんで子供の姿に……?」
─────────────────
??〜ドアラランド
??〜AM3:??
ドスケーブ城・ラボ
AM3:59〜AM4:00 新終末編『164』了
-
というわけでここまで
次はまた現在のお話に
新終末編『165』に続く
かもしれない
-
新終末編『165』
─────────────────
──ドスケーブ城・ラボ
AM4:00
鞠莉(子供……そうねぇ、ラボに入っていった大人の私が子供になって出てきたらヨハネはびっくりよね)
鞠莉「ま、子供なのは気にしないで、戦いの後遺症みたいなもんよ」
鞠莉「今から私とこの宇宙人で両腕抱えて貴女をラボの中に運ぶから掴まってね」
ヨハネ「宇宙人……?」
宇宙人「どうも」
ヨハネ「うわっ!変なのいる!」
宇宙人「ヘンなのとはシツレイな、ハンシンでイきてるセイブツのほうがよっぽどキミョウです」
ヨハネ「それを言われちゃぁ……お互い様だけど」
グイッ グイッ
鞠莉「よいしょっと」
宇宙人「ほっ」
鞠莉(私と宇宙人でヨハネの体を抱えて再びラボの中へ)
鞠莉(やっぱり子供の体だとちょーっと重いかな)
-
ウィーン
ダストボックス「それが例の究極生物の欠片か」
鞠莉「そうよ、今からこのヨハネちゃんとダストボックス、両方の治療を始めるわ」
宇宙人「ヨメのアシをナオせるのか!?」
鞠莉「ええ、ただ治すと言っても私は医者じゃないからね、工学の視点からの治療になるかな」
ヨハネ「交渉の時に言ってた義体ってやつね」
鞠莉「そうそう」
スタスタ
鞠莉「あ、宇宙人、ヨハネはここで降ろすわ」
宇宙人「リョウカイ」
ドサッ
ヨハネ「うぐっ……もっと丁重に扱いなさいよ」
鞠莉(ヨハネを降ろした私はラボの中から繋がる別の扉へ行き、倉庫Bと書かれたその扉を開く)
ガラッ
ダストボックス「ほう……そんなところが」
宇宙人「ナカにはたくさんのキカイ、ジンタイをモしたパーツがありますね」
-
鞠莉「この倉庫に閉まってあるのは私が仕入れた高性能なアンドロイドパーツよ、メーカーは主にセブン製のが多いかな」
鞠莉「セブンのは神経接続が出来るのは勿論のこと、生体感を重視してるから義手や義足として使用した場合も違和感が少ないの」
鞠莉「この中からヨハネちゃん用の下半身と、ダストボックス用の片足を探すんだけど……」
キョロキョロ
鞠莉「ダストボックス!あなたからは何か要望ある?」
ダストボックス「要望?」
鞠莉「厚底で背が高く見えるとか、ジャンプ力高くなるとか、逆にデザインがメカメカしいとか、足からミサイルが飛び出るとか」
鞠莉「よっぽど無理なものでなければ色々揃ってるわよ」
ダストボックス「そうだな……どうせなら>>758」
-
レーザービームが出したい
-
バネがついたジャンプ強化の足
-
ダストボックス「そうだな……どうせならレーザービームが出したい」
鞠莉「レーザービームねー、おっけー」
ガラガラ
鞠莉(注文どおりの物をパーツの山から探してると、背後からやけにワクワクした声がかけられる)
ヨハネ「鞠莉鞠莉!私も好きなの貰えるの!?」
鞠莉「うーん……ヨハネちゃんは選択の幅が狭まるかな」
ヨハネ「えぇー!どうしてー!?」
鞠莉「代替する部位の違いよ」
鞠莉「ダストボックスは片足、しかも膝下だから該当するパーツが多いしカスタムも出来るけど」
鞠莉「ヨハネちゃんの場合は下半身全部が対象、内蔵機能の連結や究極生物細胞との兼ね合いもあるし、なるべくオーソドックスなのを選びたいの」
ヨハネ「ぶー」
鞠莉「まぁ普通の義体で慣らしていって不調が出ないようなら、その時にまた付け替えましょう」
ヨハネ「……分かったわ」プイッ
鞠莉「よしっ、2人の分のパーツの選別終了!取り付けにかかるわよ!」
宇宙人「テツダいます!」
-
・
・
ガチャガチャ
クイッ
ガチャガチャ カシャンッ!
鞠莉「……出来た!」
ダストボックス「ほう」
鞠莉(ダストボックスへの義足の取り付けが完了、このくらいなら何てことないわね)
鞠莉(後は本人の感覚だけど……)
鞠莉「どう?違和感ある?」
ダストボックス「ふむ……多少生身との差異は感じるが、この程度ならすぐに慣れるだろう」クイクイッ
ダストボックス「問題はない、感謝する」
鞠莉「良かった、次はヨハネちゃんね」
鞠莉(ヨハネはダストボックスと違い、靴屋で靴を合わせるように簡単にはできない)
鞠莉(ヨハネには手術台のような台に寝てもらい、私は踏み台に乗って上から眺める形になる)
鞠莉「宇宙人、メス」
宇宙人「はい」
ヨハネ「あれぇっ!?医学的な手術はやらないんじゃ……」
鞠莉「そうよ、無免許だしね」
鞠莉「これはJGGD細胞から生まれたクローン体とアンドロイドの下半身をくっつける改造」
ヨハネ「物は言い様ねぇ」
鞠莉「はいちょっと切るわよー」
プシュッ!
ヨハネ「あ痛ぁーっ!」
-
スタスタ
ダストボックス「鞠莉、そう言えばラボの警備は大丈夫なのか?」
ダストボックス「さっきの紫毒妃みたいなのが襲撃してくるかもしれないだろ」
鞠莉「まぁ攻めてくるなら撃退するだけよ」
鞠莉「それに……」
ザクッ
ヨハネ「はうっ!もっと優しくやってって……」
鞠莉「今うみかが城の防衛装置を復旧させに行ってるはずだから、もうすぐ結界を始めとしたセキュリティが戻るはず」
ダストボックス「防衛装置?それはどこにあるんだ?」
鞠莉「管理してる場所は城の>>763」
-
6階にある隠し部屋
-
鞠莉「管理してる場所は城の6階にある隠し部屋」
ダストボックス「隠し部屋とは……」
鞠莉「普通に道を歩いても辿り着けないようになってる部屋のこと」
鞠莉「侵入されちゃったけどジェネレーチカが置いてある裏屋上とかも一応その一種ね」
ダストボックス「なら安心……なのか?」
鞠莉「どうかしら、半々ってところじゃない」
宇宙人「フィフティーフィフティーですか」
鞠莉「そっ、神造人間なら能力で隠し部屋を見つけかねないってのが半分」
鞠莉「うみかならそれでも何とか乗り切れちゃいそうってのが半分ね」
ダストボックス「……ふむ」
カチャカチャ カチャカチャ
鞠莉「あっちとそっちのコードを繋いでー」
カチャカチャ カチャカチャ
宇宙人「これはこっちですネー」
ヨハネ「まな板の上の鯉の気分だわ……」
-
鞠莉(でも……相手は新魔王軍、何かしらうみか対策を取ってるかもしれない)
鞠莉(気を付けなさいよ……うみか)
・
・
・
──モニター室
AM4:05
白狼王(銀帝の戦いの記録を見た後、蒼天龍は再びモニターに向かって没頭し始めた)
白狼王(しかしあの銀帝が敗れるとは……この城の人間共も中々侮れない)
カタカタッ
蒼天龍「お、見つけた見つけた〜」
白狼王「……何がだ?」
蒼天龍「ずっと探してた隠し部屋だよ、いやー僕の能力って本当に便利」
蒼天龍「本来システムでは映すのを禁止されてる場所までウォッチングできるんだから」
白狼王「隠し部屋か……こいつは防衛システムか?」
蒼天龍「そうそう、防衛システムが復旧したら君の提案した城を丸ごと崩壊させる作戦が防がれちゃうねぇ」
白狼王「そいつは困るな、我の作戦が発動するのは最早時間の問題だと言うのに」
白狼王「あれが発動さえすれば……>>766が起こりドスケーブ城は崩壊する」
-
建物が建てられる以前まで時間が巻き戻り
-
白狼王「建物が建てられる以前まで時間が巻き戻り、ドスケーブ城は崩壊する!」
蒼天龍「そうだね、復旧を妨害するには誰かが行かないといけない」
蒼天龍「それも……今すぐにだ」
白狼王「何故だ?」
蒼天龍「この映像を見なよ、今リアルタイムで人神が復旧作業をしている」
白狼王「くっ!もう嗅ぎつけたか!」
蒼天龍「さてどうするか、リーダーである君が動くわけにはいかない、銀は負けて黒と黄は紫は音信不通」
蒼天龍「監視役の赤に頼るのはもう僕たちはお手上げですとフードマン様に報告するようなもの」
蒼天龍「だったら……僕が行くしかないよね」
-
白狼王「お前みたいな軟弱者が戦場に出るのか?」
蒼天龍「ははっ、確かに君に比べたら細いけど……僕だって立派な神造人間だよ」
蒼天龍「人神対策に配られた魔王人形だって持ってるし、やることはやる」
蒼天龍「チームリーダーの君や、新魔王軍の代表として迷惑はかけられないからねっ」
白狼王(そう言って蒼天龍は爽やかに笑う)
白狼王(我としては……こいつのこの笑顔がチームの中で1番信用ならないのだがな)
白狼王「はぁ……仕方ない、ゆけ」
蒼天龍「了解っ!」
白狼王「くれぐれも我の作戦、成功に導くのだぞ――!」
─────────────────
ドスケーブ城・ラボ
・モニター室
AM4:00〜AM4:05 新終末編『165』了
-
というわけでここまで
次はうみかちゃんのシーンかな
いけるかな
新終末編『166』に続く
かもしれない
-
新終末編『166』
─────────────────
──ドスケーブ城・6階隠し部屋
AM4:05
うみか「……来たか」
うみか(その気配に私が気付かないはずが無かった)
うみか(防衛システムの復旧作業を始める前に、隠し部屋中に展開しておいた探知スキル)
うみか(まずそのスキルが侵入者の存在を作業中の私に知らせる)
うみか(続いて体中を締め上げられるような窮屈な感覚、世界から自分が弾き出されるような感覚に襲われる)
うみか(世界の反動補正だ、侵入者が魔王人形を所持してるのだろう)
うみか(間違いない……侵入者は新魔王軍の神造人間)
クルッ
うみか「そうだろう?そこの青二才」
蒼天龍「……おや、足を踏み入れた瞬間に気付くとはさすがだねぇ」
うみか(振り返ると後ろに人影が立っている)
うみか(全く物音がしなかった事実を考えるに、バカ正直に扉を開けて入って来たわけではないのだろう)
うみか(隠し部屋を見つけたことと良い……何かこいつの能力が関係している)
蒼天龍「……どうしたの?僕のことジロジロ見て、もしかして気になっちゃった?」
うみか「ふんっ、その>>771のような見た目になど興味無いわ」
-
ロリなボクっ娘
-
うみか「ふんっ、そのロリなボクっ娘見た目に興味無いわ!」
蒼天龍「酷い言われようだなぁ……せめて蒼天龍ってコードネームで呼んでくれないかな」
うみか(蒼天龍……か)
うみか(龍のように流れる蒼く長い髪、性別問わず好まれる中性的な顔、細見の体は自然と見るものの庇護欲を掻き立てる)
うみか(一見して無害、だが多くの人間を見てきた私の嗅覚が告げる)
うみか(臭いな……こいつは臭い、腹の中に黒いモノを抱えてる臭さだ)
蒼天龍「うーん?」
うみか(可愛く首を傾げても油断は出来ない、見た目が信用に値しないのは自分が1番知っている)
蒼天龍「何をしに来た……とは聞かないんだね」
うみか「愚問だろう、貴様が何をしようが防衛システムは修理させてもらう」
蒼天龍「あちゃー、そういう態度を取られると困るんだよ」
-
タンッ
蒼天龍「大人しく退いてくれないかな……人神様」スッ
うみか(そう言って蒼天龍が取り出したのは魔王人形……やはり持っていたか)
蒼天龍「君が僕たちに叶う術は無いんだから」
うみか「……そんなことは分かっている、分かってないのは貴様らのほうだ」
蒼天龍「?」
うみか「魔王人形の存在は最上階で確認済み、一度見たものの対策を私が考えてないとでも思ったか?」
蒼天龍「なっ……まさか黄ノ姉妹と会ってたのか?あそこは監視カメラが壊れてたからなぁ、くそっ」
うみか「魔王人形は私を縛る道具、ならば私でない者が戦えばいい」
うみか「城のどこで貴様らに出会っても良いように、私は常に仲間と行動を共にしていたのだ!」
蒼天龍「っ!?」
うみか(その言葉が合図、外に待機させていた>>774が蒼天龍の意表を突いて突入してくる)
-
蜘蛛穂乃果
-
うみか(部屋の外で待機させていた蜘蛛穂乃果が蒼天龍の意表を突いて突入してくる)
ドンッ!
蜘蛛穂乃果「名誉挽回するよーっ!」
蒼天龍「カメラに映らない所に仲間を置いてたのかっ!?」
うみか「そいつを捕まえろ!!」
蜘蛛穂乃果「かしこまっ!」
ブッ!!
シュルルルルルルルルッ!!
うみか(全獣形態――完全に蜘蛛の姿になった蜘蛛穂乃果がお尻から大量の白い糸をぶちまけた)
うみか(入り口から部屋の半分までを埋め尽くすほどに広がった蜘蛛の糸は、1本1本が蜘蛛穂乃果の意思で動かせる糸)
うみか(一度円形に大きく膨らんだ糸の華、その中の一部が誘導ミサイルの如く蒼天龍に向かって収縮する)
蒼天龍「くっ……避けられな――」
ギュルルルルッ!!
蒼天龍「ぐっ!!」
うみか(そして蒼天龍を絡め取ることに成功した)
-
蜘蛛穂乃果「よっしゃ!捕まえちゃいましたよ!!」
うみか「あ、ああ」
うみか(上手く行った……のだろうか)
うみか(蒼天龍は蜘蛛穂乃果が作り出した蜘蛛の巣の中で動けなくなっている、それは事実だ)
うみか(ただ……)
うみか「気を付けろ!こう見えてもやつは神造人間だ、何か力を隠してるはず!」
蜘蛛穂乃果「は、はい!」
蒼天龍「けほっ……そう期待されてもなぁ」
蒼天龍「こんな白くベタつくものでギュウギュウにされちゃあ出来ることは限られちゃう」
蒼天龍「例えば――」
シュンッ!
蜘蛛穂乃果「なぬっ!?」
うみか(蒼天龍が不敵に笑った瞬間、糸巻きにされていた蒼天龍の体が消失する)
うみか(そして次の瞬間、蒼天龍は遠く蜘蛛穂乃果の背後に現れた)
-
蜘蛛穂乃果「……へ?」
うみか(後ろだ!……と蜘蛛穂乃果へ叫ぶのは間に合わない)
うみか(もどかしい、自分ならばこう考えてる間にやつの元へ転移して撃退することが出来るのに……!)
うみか(それどころか今の消失トリックの種さえ何となく看破しているのに)
うみか(だが……今私が介入すれば魔王人形の効果で私たちは確実に負けてしまう!)
蒼天龍「悪いね、君には恨みがないけど……」スッ
うみか(蒼天龍が袖から出したのは細い金属、おそらく暗器の類だ)
うみか(その暗器で蒼天龍は蜘蛛穂乃果の背中を刺して――>>778)
-
穂乃果因子を消して、普通の蜘蛛に変えた
-
サクッ
蜘蛛穂乃果「あぐっ……」
蒼天龍「ごめんねっ」
蜘蛛穂乃果「な……にを……」
ググッ
蜘蛛穂乃果「うわぁぁぁぁっ!!」
シュルルルルッ
うみか(暗器を刺された蜘蛛穂乃果の体が徐々に縮んで行き……普通の蜘蛛のサイズにまで小さくなってしまう)
うみか「……っ!」
うみか(おそらくは穂乃果因子の消失による合成穂乃果化の解除だろう)
うみか(合成穂乃果を元の生物に戻すなんて不可逆の芸当……普通の因子技術ではありえない)
うみか(あるとしたらピーマンマン因子との対消滅!)
うみか「クッキング博士が作った武器か」
蒼天龍「ご名答〜」
スタッ
蒼天龍「僕の能力は戦い向きじゃないからさ、色々武器を用意してるんだ」
蒼天龍「君対策の魔王人形に、穂乃果対策のピーマンマンナイフ」
蒼天龍「他にも色々持ってるよ〜」
ジャラジャラ
うみか「…………」
カツンッ
蒼天龍「さて、頼りにしてた仲間もやられちゃって、人神さんはどうするのかな〜?」
─────────────────
ドスケーブ城・6階隠し部屋
AM4:05〜AM4:07 新終末編『166』了
-
というわけでここまで
新終末編『167』続く
かもしれない
-
新終末編『167』
─────────────────
──ドスケーブ城・6階隠し部屋
AM4:07
蒼天龍「ふんふふーん」
うみか「どうする……ねぇ」
うみか(実際の所、蒼天龍の能力は大方把握した)
うみか(ヒントとなったのは監視カメラで此処を見ていたという発言と、蜘蛛穂乃果の背後に回った時に"視えた"力の流れ)
うみか(おそらくやつは回線や蜘蛛の糸といった『細く長い路』を通じてその先の様子を探り、その中を通って路の向こう側に移動することができる)
うみか(蒼天龍はその力を使い、普通には辿り着けない隠し部屋へ移動、蜘蛛穂乃果の糸から脱出してみせたのだろう)
うみか(種は単純、万全な私のスペックならば一方的に叩き潰せる……叩き潰せるのに……)
うみか(あの魔王人形さえ無ければ……っ!)
ググッ
蒼天龍「僕としてはこのまま時間稼ぎをしてても良いんだけど」
カツンッ
蒼天龍「選びなよ、無様に負けるか今のうちに逃げるか、僕は去るものは追わないよ?」
うみか「ちっ……」
うみか(参ったな……こうなったら>>782)
-
逃げると見せかけて人形を破壊
-
うみか(こうなったら、逃げると見せかけて何とか人形を破壊する!)
うみか(それが1番良い手だ、分かってる……だがどうする?)
うみか(あの人形がある限り、私が蒼天龍に対して行うことは全て失敗する)
うみか(全力で人形に手を伸ばしに行っても何かしらのトラブルが起きて必ず裏目に出る……)
うみか「……ん?」
うみか(待てよ、私が行う行動が必ず裏目るのなら、必ず負けるのなら……それを利用することが出来るんじゃないか?)
うみか(何も勝つ必要はない、私の目的はあくまで魔王人形)
うみか(考えろ……考えるんだ……)
うみか(私が『負けること・失敗する』ことで魔王人形が破壊される行動を!)
-
蒼天龍「どうだい?気持ちは決まったかな?」
うみか「…………ああ」
うみか「貴様が時間をくれたおかけで妙案を思い付いたかもしれんっ!」
ダタッ!!
蒼天龍「んんっ?」
うみか(そう言い放った私は"蒼天龍"と逆の方向に向けて走り出す)
蒼天龍「……ありゃ?向かってくると思ったら逃げるのか、一瞬こっちを睨んだからびっくりしたよー」
うみか(そして蒼天龍が油断した瞬間、>>785)
-
全力でパワーを無理やり解放
-
うみか(足を止めて踵を返し、全力でパワーを無理やり解放する!)
うみか「ふんっ!!」
ゴッ!!!!
蒼天龍「ななっ!?行動が読めないよ!?」ビクッ!
うみか「魔王人形なんて関係ない、無理やり解放したパワーを"1点に集中し"、"貴様だけを確実に貫く"!」
うみか「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
キュィィィィィンッ!
蒼天龍「ちょちょちょっ、それは強引過ぎないかなぁ!?」
うみか(逃げ出した私が一転無茶な攻勢に出る、予期せぬ行動に蒼天龍は動揺した)
うみか(蒼天龍は魔王人形をお守りのように自分の前にかざしている)
-
うみか(私は構えた両手の間に解放したエネルギーを集中し、青い光球に形に形成)
うみか(それを蒼天龍に向けて――)
うみか「うーみーうーみぃぃぃぃ!」
うみか(――放つ!)
ギュンッ
うみか「はぁっ!!」
ドォォォォゥンッ!!
蒼天龍「っ!?」
うみか(放たれた青いエネルギー弾は空間を貫く勢いで直進、動けないでいる蒼天龍の目の前で……)
蒼天龍「守って魔王人形!!」
バァァンッ!!!!!!
うみか(見えない壁にぶつかったかの如く弾け飛ぶ!!)
蒼天龍「……や、やった!やっぱり人神の攻撃は当たらないんだ!僕が負けることは――」
うみか「ああ……これでいい」
蒼天龍「え?」
うみか(蒼天龍を確実に貫くために放ったエネルギーは失敗して目前で弾けた)
うみか(失敗……しかしこれは想定した失敗)
-
うみか(うみうみ波は私の体内に流れる気のエネルギーを凝縮し、特殊な皮膜で包み打ち出す強力無比な技)
うみか(だが凝縮するエネルギー量が多いせいで、途中で意図せぬアクシデントが起こり弾の皮膜が破れてしまうと……)
バリリッ
うみか(中に凝縮されてきたエネルギーが漏れ出し周囲にばら撒かれる!)
うみか(つまりは……大爆発が起こるわけだ)
ドゴォォォォォォォォォォンッ!!!!
蒼天龍「ぬぁぁっ!?」
うみか(隠し部屋中に広がる青い爆風、そこらの科学爆弾より威力は遥かに上)
うみか(だがこのくらいで神造人間は死なないだろうし、魔王人形の補正がある『蒼天龍』にダメージは与えられないだろう)
うみか(けれども……"それ以外"は違う)
うみか(蒼天龍を狙ったエネルギー弾は防がれ、蒼天龍以外の全てを吹き飛ばす!)
蒼天龍「あ、あああっ!!魔王人形が!!」
ボロロロッ
蒼天龍「そんな……今の爆風でボロボロにっ!?」
うみか「狙い通り!!」
タンッ!
うみか(またとないチャンスが来た、この期を逃さず私は蒼天龍へ>>789)
-
拘束して能力を奪った
-
うみか「動きを停止させる能力!能力を奪う能力!五感を弱らせる能力!」
うみか「武装を解除する能力!罠を使えない能力!敵対心を減らす能力!」
うみか「音が外に守れない能力!痛覚が鈍くなる能力!私に謝りたくなる能力ぅぅ!!」
ポポポポポポポポポポンッ!!
蒼天龍「むぅぅぅっ!」
うみか「すぅー、続いて――!」
うみか(私はさっきまでの鬱憤を晴らすように異能力を連発する)
うみか(主に使うのは拘束系と能力を奪う系の異能)
うみか(あまりチートなのは本物の反発を食らうから、低レベルなものを連発して組み合わせて強固なものにしていく!)
ポポポポポポポポポポンッ!!
-
・
・
うみか「はぁ……はぁ……このくらいでいいか」
蒼天龍「うっ……うっ……」ピクピクッ
うみか(軽く五十個ほど異能を重ねた結果、蒼天龍は自由を奪われ人形と変わらない状態となった)
うみか(見かけ上、ただ床の上に立っているだけだが、見えない鎖が何重にも絡んでいる)
うみか(もう反抗することは出来ないだろう)
蒼天龍「むぐっ!むぐぐっ!」
うみか「なんだ話したいのか?」パチンッ
うみか(私が指を鳴らすと蒼天龍の口を封じていた異能だけが一時的にオフになる)
蒼天龍「ぷはっ……あのっ!ごめんなさい!ごめんなさいごめんなさい!」
うみか「謝るのはもういい、要件を話せ」
蒼天龍「そ、そうだね、実は交渉したいというか……良い話があるんだけど……」
うみか「ほう、聞くだけ聞こうか」
蒼天龍「ありがとうございます!話というのは>>792」
-
くっ殺…
-
蒼天龍「くっ殺……!」
うみか「は?」
蒼天龍「辱めを受けるくらいなら殺せ!」
うみか「いや殺さないし」パチンッ
ギュゥゥゥゥゥゥゥゥ
蒼天龍「ひゃぅぅぅぅっ!!」ビクンッ!
うみか(再び指を鳴らすと蒼天龍を縛っている見えない鎖が縛り方を変えて蒼天龍を性的に締め上げる)
うみか「私は昨今のオークほど優しくないぞ、どんどん辱めるから全部吐け」
ギュゥゥゥゥゥゥ グイッ!
蒼天龍「はぅぅぅっ!んんっ!はぁ……くっ……!」ビクンビクンッ!
蒼天龍「……分かった、分かったからぁ!」
蒼天龍「僕は白狼王の計画の邪魔をする君を止めに来たのぉ!!」
うみか「ほう……」
うみか(エロ堕ち系の異能をいくつか使ったとはいえ、わりと早く口を割ったな)
うみか「それで計画とは?」
蒼天龍「発動したら全てが終わる……この城を無に帰す計画、それがもうすぐ発動するんだ!」
うみか「……なん……だと?」
─────────────────
ドスケーブ城・6階隠し部屋
AM4:07〜AM4:10 新終末編『167』了
-
というわけでここまで
くっ殺からのチョロ展開
新終末編『168』に続く
かもしれない
-
新終末編『168』
─────────────────
──ドスケーブ城・6階隠し部屋
AM4:10
うみか「この城を無に帰す計画……そう言ったのか?」
蒼天龍「はいっ!そうなのですうみか様!」
蒼天龍「僕らがリーダー白狼王は秘境にも建物の時間を巻き戻し、大切なドスケーブ城を無くそうとしてるのですよ!」
うみか(目を潤ませて猫なで声になった蒼天龍は、跪き頭を垂れながら計画のあらましを話し始めた)
うみか(しかし……私に従い易くなる異能を使ってるとは言え……)
蒼天龍「も〜とんでもないやつですよねぇ!」クネクネ
うみか「あ、ああ」
うみか(こいつはちょっと媚びすぎではないだろうか)
うみか(おそらく媚を売る性格は生来の物で、それが私のかけた異能と相乗効果を発揮してるのだろうが)
うみか(こうあざとく迫って来られると寒気がして堪らない)
うみか「時を巻き戻すと言ったな、具体的にどうするんだ?」
うみか「白狼王の能力なのか、他の物を使うのか、方法を教えて欲しい」
蒼天龍「はいっ、建物の時を巻き戻すのは>>796」
-
トマトが鍵を握ってる
-
蒼天龍「トマトが鍵を握っているんです!」
うみか「トマト……ってあのトマト?」
蒼天龍「はい、白狼王はモニター室に来るまでの間、トマトを取り出しては城中の壁に張り付けていたんです」
蒼天龍「数はそんなに多くなくて一定距離を開けて張り付けてた感じ、それと壁に付けられたトマトは透明になって見えなくなってたかと」
蒼天龍「白狼王に聞いたら時を巻き戻す力を持ったトマトだって言ってました!」
うみか「時空に干渉するトマトか、異界植物の一種だろうか……」
蒼天龍「トマトが爆発すると接してる物質の時間が巻き戻るらしいですね」
蒼天龍「僕を警戒してたのかそれ以上詳しくは教えてもらえませんでした、すみません」
うみか「仕方ない、お前は誰だって警戒する」
蒼天龍「えぇーっ!」プンプンッ
-
うみか「話の通りだと既にそのトマトは城内の至る所に時限爆弾の如く仕掛けられている」
うみか「しかも透明で簡単に発見することができない……」
蒼天龍「僕は何個かなら位置覚えてますけど、全部はさすがに覚えてませんねー」
うみか「……ん?時限爆弾?」
うみか「待て、そのトマト……仮に巻き戻しトマトと呼ぶが、巻き戻しトマトの発動は任意なのか?」
うみか「それとも――」
蒼天龍「時限式ですよ」
うみか「……やはりか」
蒼天龍「白狼王は僕に巻き戻しトマトが爆発するまでの時間、防衛システムが復旧を止めるように言ってきたんです」
うみか「その時間は!?」
蒼天龍「ええと……>>799」
-
あと40秒
-
蒼天龍「ええと……今何時かな、時計見せてください」
うみか「うむ」スッ
ピピッ
うみか(時間を知る異能デジタルバージョンを発動させて空中にホログラムの数字を投影する)
うみか「どうだ?今は4時12分頃だか……」
蒼天龍「あ、不味いですね」
うみか「なに?」
蒼天龍「あと40秒で……巻き戻りトマトが爆発します……」
うみか「っ!?」
ピッ
ピッ
ダンッ!!
うみか(私は弾かれたように飛び出し、急いで部屋の奥に鎮座する防衛システムの前まで戻る)
うみか「復旧プログラムを再開!ブースト!特に城内外の対能力防御を最優先!!」
タタタタタタンッ!
うみか(ダメだ、とても40秒じゃ全てのエリアの復旧が間に合わない!)
-
うみか(せめてトマトの位置が絞り込めれば、そこの階層だけをまず守れば良いのにっ)
うみか「……っ!仕方ない!」
ギュウンッ!
うみか(復旧作業を続けながら奪った蒼天龍の能力を発動する)
うみか(発動した私の脳内に流れ込んでくるイメージは……細く長い線)
スゥー
うみか(防衛システムの内側からドスケーブ城全体に広がる回線――)
うみか(回線は束になり網になり、網の集合はさらに巨大な回線網へ繋がっていく)
うみか(それはまるで広大な"電子の樹"、今の私にはその樹から繋がる全ての場所が見渡せる)
-
うみか(そうか……これが蒼天龍が見ていた世界)
うみか(自分の意識が針のように細く細く尖って行き、電子の樹の葉脈――回線の中を自由に高速で移動することができる)
うみか(監視カメラ、電子機器のプラグ、照明、電話、etc.……)
うみか(なんでもいい!線さえ繋がっていれば私はその場所を覗くことができる!)
バババババババッ!!
うみか(探せ!探せ!目を皿のようにして探せ!時間はもうない!)
うみか(いざとなれば見た場所にワープだってできる、何か……何か……利用できそうな状況!事件は起きてないのか!)
うみか「……ん?」
うみか(なんだこの場所、どうして>>803)
-
認識出来ない
-
うみか(なんだこの場所、どうして認識出来ない……?)
うみか(城内をくまなく探した結果、城の中で一部だけ蒼天龍の能力を使っても覗けない場所があった)
うみか(神造人間の能力――神の力が届かないエリア、おそらく何かの結界が発動している)
うみか(防衛システムはまだ立ち上がっていない……つまり既存の物とは別に誰かが作り出したものだ)
ピッ ピッ
蒼天龍「もう時間が無いよぉ!」
うみか「分かってる!」
うみか(こうなれば一か八か、結界の手前に転移して力を奪い取る……)
うみか(神の力を防げる結界を上手く使えば、巻き戻しトマトの能力を防げるかもしれない!)
うみか「私は行ってくる!お前はそこらへんに転がってる蜘蛛穂乃果を保護しておけ!」
蒼天龍「はい!気を付けて!」
ピッ
うみか「はぁっ!」
うみか(ワープする先をしっかり見据え、転移能力を発動させる)
シュンッ!!
うみか(そして、私の体は隠し部屋から消失した)
─────────────────
ドスケーブ城・6階隠し部屋
AM4:10〜AM4:13 新終末編『168』了
-
というわけでここまで
城は守れるのかどうか
次は謎結界の発動する前辺りのシーンからかな
新終末編『169』に続く
かもしれない
-
新終末編『169』
─────────────────
──ドスケーブ城
結界が発動する前
AM4:00
──厨房・食料庫
ガサゴソ ガサゴソ
空黒雪姫(どうも、姫の名前は黒雪姫、神の力は少ししか残ってない抜け殻みたいな黒雪姫です)
空黒雪姫(今は穂乃果ちゃんと真姫ちゃんに教えてもらった厨房という場所に来ていて、そこで約束通り美味しいのを食べているわけで)
空黒雪姫「いや〜、この世界の食べ物はどれも美味しくて天国みたいだな〜」
モグモグ
空黒雪姫(そんな感じで一通り食べたい物を食べ、次は何を食べようかなと考えていた時……)
空黒雪姫(予期せぬ来客が厨房に現れた)
ガチャッ
赤の聖女「おや……?」
空黒雪姫「……むぐっ」
赤の聖女「誰かと思ったら黒雪姫じゃない、こんな場所で何してるの?」
空黒雪姫「それは……」
ゴクンッ
空黒雪姫(取り敢えず口の中いっぱいに詰め込んでいた食パンを飲み込む)
-
空黒雪姫(まさか赤の聖女がここに現れるなんて仰天驚愕極まりない、何してるのはこっちの台詞だって)
空黒雪姫(はぁもう……嫌だなぁ……)
空黒雪姫「見て分かるでしょ、腹ごしらえ」
赤の聖女「そう……奇遇ね、私もなのよ」
スタスタ
空黒雪姫「うげっ」
空黒雪姫(赤の聖女は自分の家かのように躊躇いなく入ってくる)
空黒雪姫(ふと足元を見ると既に赤絨毯が敷かれている)
空黒雪姫(赤の舞台か……全然気付かなかった)
空黒雪姫(力の抜けた今の姫では感じ取ることもできない、赤の聖女との力量差が感じられちゃうな〜)
空黒雪姫(ははは……笑えない)
-
赤の聖女「そうだわ、コレは消しておかないと」パチンッ
空黒雪姫(赤の聖女が指を鳴らすと傍らに立っていた赤い執事服の顔のない老人が消失する)
空黒雪姫(こいつは『赤の執事』、確か赤の聖女をサポートするのが仕事でナビゲート機能もあったはず)
赤の聖女「黒雪姫、私はトマトを所望するわ、何処にあるか知ってる?」
空黒雪姫「トマト……?」
空黒雪姫(というか姫は別にあなたの召使いじゃないんだけど……)
赤の聖女「赤くて丸い果実よ」
空黒雪姫「……ああ、それなら>>809」
-
全部食べたよこのノロマ!
-
空黒雪姫「それなら全部食べたよこのノロマ!」
赤の聖女「……なんですって」
空黒雪姫「食べたよ食べた!すごくみずみずしくて美味しかったよ!」
赤の聖女「なんですって!」グイッ!
空黒雪姫「うわっ……!」
ゾクッ!!
グニュゥゥゥッ
空黒雪姫(赤の聖女がこちらに身を乗り出した瞬間に視界がぐにゃりと歪む)
空黒雪姫(気持ち悪い……!耐えきれない悪寒が全身を襲う)
空黒雪姫(赤の聖女のオーラが全身の毛穴から内側に侵入してくる……そんな錯覚を伴う耐えきれない恐怖)
グッ
空黒雪姫「というか近付かないで!赤の結界の影響がモロに来るんだよ!」シッシッ
赤の聖女「何を……別に神造人間なら多少ふらつくだけでしょう」
空黒雪姫「気持ち悪いのは気持ち悪いの!」
ガタッ
-
空黒雪姫(これ以上は耐えきれない、食べ物を並べていたテーブルから立ち上がって離れる)
空黒雪姫(力を持たない体にとって赤のこんなにキツイものなんだ……危うく気絶しかけるところだった)
空黒雪姫(そんなことになったら姫の力が殆ど無いことが赤の聖女にバレる)
空黒雪姫(力を渡した穂乃果ちゃんに迷惑がかかってしまう……)
赤の聖女「しかし……トマトが無いと言うのは困るわねぇ」
空黒雪姫(赤の聖女はさっきまで姫が座っていた椅子に我が物顔で座っている)
空黒雪姫(偉そうに足まで組んで相変わらず不遜なやつだな、どこが聖女なんだか)
赤の聖女「……そうね、決めたわ」
空黒雪姫「な、何が?」
赤の聖女「トマトが無いのだったら>>812」
-
貴女の頭を割ってトマト代わりにすればいい
-
赤の聖女「トマトが無いのだったら、貴女の頭を割ってトマト代わりにすればいい」
空黒雪姫「……え?」
空黒雪姫(座ったまま平然と言ってのける赤の聖女、今までの会話と繋がらない突飛な言葉に思考が止まってしまう)
空黒雪姫「ま、待って、どういうこと……?」
赤の聖女「どうもこうもないわ、貴女の頭をかち割ってあげると言ってるの」
空黒雪姫「だから待ってって!それっ
て姫を殺すってことだよね!?」
赤の聖女「そうよ」
空黒雪姫「……っ!」
空黒雪姫(全く動じない、顔色も変えない)
空黒雪姫「いや……いやいや、よく考えみてよ」
空黒雪姫「姫だってイライラして他人に当たりたい時はあるけどさ、これはダメだって!」
空黒雪姫「監視役が正当な理由もなく神造人間を殺すなんて…………」
-
赤の聖女「はて、私がいつ苛ついてる理由だけで貴女を殺すと言ったのかしら」
空黒雪姫「え?」
赤の聖女「私が貴女をトマトに変えるのは、貴女がロキの子供としての約束を守れなかったから」
空黒雪姫「…………」ゴクッ
空黒雪姫(冷たい赤の聖女の目が姫をじっと見つめる)
赤の聖女「貴女……自分の力を敵に売り渡したわね?」
空黒雪姫「っ!?」
空黒雪姫「なななっ、何を根拠にそんなこと……」
赤の聖女「簡単なことよ、それは>>815」
-
霊気
-
赤の聖女「それは霊気が見えるから」
ジーッ
空黒雪姫「霊気……なにそれ……」
空黒雪姫(魔力や気力、神力なら分かるけど、霊気なんてものが私から漏れ出てるっていうの……?)
赤の聖女「やっぱり貴女には感じ取れないみたいね」
赤の聖女「実は私たちに植え付けられた神の力、あれは霊力を使って人間の体と融合させているのよ」
赤の聖女「言わば霊力が神の力と人の体を繋ぐ鎖の役割をしているわけね」
赤の聖女「その霊力が――」
スッ
赤の聖女「――今の貴女からは感じられない」
空黒雪姫「……っ!?」ゾクッ!!
空黒雪姫(赤の聖女はゆっくりとテーブルから立ち上がった)
空黒雪姫(なんなの……なんなのこれ!ただ赤の聖女に見つめられてるだけなのに指の1本すら動かせない!)
空黒雪姫(まるで蛇に睨まれた蛙みたいに体が硬直して言うことを聞いてくれない!)
赤の聖女「さぁ……覚悟しなさい黒雪姫――」
赤の聖女「今から、貴女の裏切りに対する聖罰を下すわ」
─────────────────
ドスケーブ城・厨房
AM4:00〜AM4:03 新終末編『169』了
-
というわけでここまで
最近またのんびりな気が……
頑張ってせこせこ進めます
新終末編『170』に続く
かもしれない
-
新終末編『170』
─────────────────
──ドスケーブ城・厨房
AM4:03
空黒雪姫(逃げ、逃げないと――)
ヒュンッ!!
グシャァッ!!
空黒雪姫「がっ!!」
空黒雪姫(赤の聖女が指を振ったことにより産まれた"なにか"が姫の顔面を破壊した)
空黒雪姫(眼球が破裂し頭蓋骨が粉砕され脳漿が飛び散る――1回目の死の感触)
空黒雪姫(何よりも冷たい魂を抉るようなその感触が……麻痺していた姫の神経を瞬間的に覚醒させた!)
空黒雪姫「に……げるっ!!」キリッ!
赤の聖女「目に光が戻ったようね、一度死すこにより正気を取り戻すとは何とも理から外れた力」
空黒雪姫(動く!体が動く!)
タンッ!
空黒雪姫(姫は砕かれた頭をヘルの力で再生しながら走り出した)
空黒雪姫(時間が巻き戻るように飛び散った頭の各部位が走る姫の頭へ戻ってくる)
シュルルルッ
空黒雪姫(逃げ切れるとは思わない、でもなるべく赤の聖女から離れないと!)
-
ペロッ
赤の聖女「やはり血はトマトほど美味しくはないわね」
空黒雪姫「姫の返り血を舐めるとか変態すぎっ!気持ち悪い!」タタタッ
赤の聖女「ふふっ、いくらでも逃げ回りなさい、罪は血で贖わなければならない」
赤の聖女「例え貴女か死なずの存在だとしても……やりようはいくらでもあるのよ」ニヤリ
空黒雪姫「ひひひっ、これは嗤えない脅しだねぇ……」
タンッ タタタッ!
空黒雪姫(幸いなことに厨房と食料庫が繋がったこの部屋には障害物が多い)
空黒雪姫(どうにかして赤の聖女を撒いて迂回して、部屋の入り口から脱出することができれば……)
赤の聖女「無駄よ、貴女が赤の舞台の上にいる間は居場所が透けて見える」
赤の聖女「それに……『赤の足枷』」
シュルルルッ
ガシャンッ!!
空黒雪姫「ぐっ!?」
空黒雪姫(今や厨房を覆うほどに広がっていた赤絨毯、そこから伸びた毛糸が姫の足に絡みついて動きを止める)
空黒雪姫(振りほどこうと足を動かすけど……ダメだ!鉄鎖みたいに硬くで解けないっ!)
空黒雪姫(こうなれば……>>820)
-
絨毯を黒で覆い尽くす
-
空黒雪姫(こうなれば……)
バッ!
空黒雪姫(ここは厨房、幸運なことに辺りを見回すと包丁を見つけることがでした)
空黒雪姫(置いてあったそれを手に取り……思っきり太腿を斬りつける!)
ザクッ!!
ブシュッ! ドロロロロロッ!!
赤の聖女「ほう……」
空黒雪姫「はぁ……はぁ……」
ドクッ ドクッ
空黒雪姫(勢い良く流れる黒い血が足元の絨毯を黒く染めていく)
空黒雪姫(以前聞いていた赤の聖女の対処法……聖女が産み出す赤のアイテムは色が変色すると効力を失う)
空黒雪姫(けど流石に自分で刺すのは痛いな、脂汗がにじみ出てくる……ひひっ)
赤の聖女「随分と無理をするのね、今の貴女はただ不死なだけの人間と変わらない」
赤の聖女「痛覚だって人並みだと言うのに」
-
空黒雪姫「はぁ……ぐっ……」
空黒雪姫(その通りだ、今の姫は便利な力は使えない、氷を操ることも死に関する呪詛をかけることもできない)
空黒雪姫(絨毯を染めるための塗料も見つからない、だから自分の血を使うのだ)
空黒雪姫(赤の舞台の鮮烈な赤とは違い、姫の体に流れる血は黒に近いくすんだ赤)
空黒雪姫(こうして垂らして染めれば絨毯は染み込み乾く血で黒く染まっていく)
シュルルルッ パッ
空黒雪姫(よし!赤の足枷が解けた!)
タタタッ
赤の聖女「いい作戦ね、でも貴女1人の血では赤の舞台を覆い尽くすほどの量は得られない」
赤の聖女「失血して動けなくなるのがオチだと思うけど」
空黒雪姫「わかってる!1回分じゃ足りないのなんて!」
ダンッ!
空黒雪姫(包丁片手に全身を切りつけながら走り周り、ドクドクと流れる血を撒き散らしていく)
空黒雪姫(そして視界が霞みはじめ、意識がなくなりかける直前に……)
グサッ!!
空黒雪姫(自分の首にトドメの一撃!!)
ブシャァァァァッ!!!!
-
空黒雪姫(最後に首から血を噴射して死んだ姫は……次の瞬間には復活!)
シュルルルッ
空黒雪姫「……ほっ!」
スタッ
空黒雪姫(予定通り……)
空黒雪姫(姫が蘇生する時、形を残してる肉片レベルなら体に戻ってくるけど、布に染み込んだりして簡単に戻ってこれない物はまた内部生成される)
タタタッ
空黒雪姫(血を流しながら走り回り動けなくなる直前に自死して復活、これを繰り返せばそのうち部屋は姫の血で埋まる)
空黒雪姫(なんとか……なんとかこの作戦を貫き通すしかない!!)
赤の聖女「困ったわ、こう汚され続けると黒雪姫の居場所が掴みにくい」
赤の聖女「ずっと追い詰め続けてればそのうち白狼王の作戦が発動するけど……」
赤の聖女「このままジワジワ追い詰めるか、もしくは切り札を切って一気に罰の執行をするか……か」
赤の聖女「私の選択は……>>824」
-
一撃で存在を消すことにした
-
赤の聖女「……そうね、長引かせても仕方ないし一撃で存在を消すことにするわ」
空黒雪姫「……っ!?」
スーーッ
空黒雪姫「……なに……これ」
空黒雪姫(さっきまでビンビンに感じていた赤の聖女のオーラが感じ取れなくなっていく)
空黒雪姫(自分で力の放出を抑えている……?)
ザッ
空黒雪姫(足を止めても絨毯から赤の拘束は飛んでこない、姫の頭を飛ばした攻撃もこない)
空黒雪姫(まるで津波の前に波が引くような……不気味な静けさが漂っている……)
赤の聖女「神力解放」
キィィィィィィンッ!
空黒雪姫(言葉と共に赤の聖女の体が眩い赤い光に包まれる)
空黒雪姫(その光は段々と甲冑の内部、聖女の下腹部へと凝縮されて行き――)
赤の聖女「我が内なる臓より産み落とされし赤き魔の子らよ、暴虐の限りを尽くし神々に終焉を齎せ」
赤の聖女「黄昏出産――――」
空黒雪姫(凝縮された一気に爆発する!)
カッ!!!!
-
ズルリ
ズルリ
空黒雪姫(赤い光が収まり、再び薄暗い闇が支配する厨房)
空黒雪姫(そこでは巨大な蛇が這いずる音が響いていた)
空黒雪姫「な……なんなの……?」
赤の聖女「怯えることは無いわ、この子は私が能力で産み出した可愛い子供よ」
赤の聖女「そして……貴女に終わりをもたらすものでもある」
空黒雪姫「……っ!」
空黒雪姫(クネクネと赤の聖女を包み込むようにとぐろを巻く巨大な蛇)
空黒雪姫(その蛇は>>827)
-
こちらを睨み付けると、私の下半身を再生不能に灰化した
-
空黒雪姫(その蛇がこちらを睨みつけると姫の下半身は一瞬で石化)
ピキッ
空黒雪姫「……え?」
空黒雪姫(そして驚く暇もなく石化した足にヒビが入り……粉々に砕け散る)
ピキピキッ! バキィィィンッ!!!!
空黒雪姫「うわぁぁっ!」
バタァァンッ!
空黒雪姫(上半身だけになった姫はそのまま床へ落ちる、いったい……何が起こったの……?)
空黒雪姫(下半身が石になって、一瞬で風化、自重を支えきれないほど脆くなった下半身は砕け散った)
空黒雪姫(そして今……下半身は灰と言っても違和感がないほど粉々の粉末になっている……)
ググッ
空黒雪姫「その蛇の……力……!?」
赤の聖女「正解、この子はゴルゴーンの蛇」
空黒雪姫「ゴル……?」
赤の聖女「聞いたことが無いって顔ね、閉鎖空間で育って知識に乏しい貴女では仕方ないか」
赤の聖女「少し詳しい人が見れば私がこの子を産む特異性に気付くのにね」
空黒雪姫「…………」
赤の聖女「まぁ良いわ、この子は自分と目があった相手の体を生きたまま石化させることができる」
赤の聖女「更に任意で風化を進めて灰にすら変えられる」
空黒雪姫「生きたまま……つまり死ねないから再生もできないってわけか」
赤の聖女「そういうこと」
空黒雪姫「……で?どうするの、姫の体をこのまま全部灰に変えるの?」
赤の聖女「>>829」
-
灰化は止まらない
-
赤の聖女「愚問ね、一度石化の呪いが発動したらそれに伴う灰化は止まらない、やがて全身が灰となるわ」
赤の聖女「ゴルゴーンの蛇が倒されるか、私が任意で解かない限り呪いが解けることはない」
赤の聖女「石化された部位を無理に動かすほど灰化は早まるから、どれくらいの時間で灰になるかはあなたの足掻き方次第だけど……」
赤の聖女「まぁ、もう長くは保たないわね」
空黒雪姫「くっ……」グッ
赤の聖女「全身が灰になったら瓶詰めにでもして保存、そのまましばらく保管ね」
赤の聖女「体が無いのに意識だけはある状態での監禁、罰としては充分じゃない?」
赤の聖女「そして充分に反省して罰が完了したら出してあげるわ、何十何百年先になるかは分からないけど……ふふっ」
空黒雪姫「こ……のぉおおおっ!!」
バララララッ!
空黒雪姫(叫べば叫ぶほど自分の体が崩れていくのが分かる、でもやめることはできない)
空黒雪姫(せめて……最後まで抗ってやる……!)
空黒雪姫「うぁああああああああああああっ!!」
赤の聖女「……さて、そろそろ白狼王が城を消す時間ね」
赤の聖女「この食料庫を消すのは惜しいし、ここだけ残す作業でも始めましょうか」
スタッ
赤の聖女「もしかしたら、探せばトマトが見つかるかも……」
─────────────────
ドスケーブ城・厨房食料庫
AM4:03〜AM4:08 新終末編『170』了
-
というわけでここまで
結界を展開する前にもう1つ別のシーンを挟みたい
てなわけで次は別のとこから
新終末編『171』に続く
かもしれない
-
新終末編『171』
─────────────────
──ドスケーブ城・モニター室
AM4:08
真姫(赤の聖女の手により灰に変えられていく黒雪姫)
真姫(私たちはその様子をモニター室のモニター越しに眺めていた……)
深淵穂乃果「黒雪姫ちゃんっ!!」
ガタッ!
ハグカナーン「こらこら、機械に飛びついて壊したらダメだよ」
深淵穂乃果「分かってるけど……!」
真姫(奴隷実験室を後にしてモニター室に向かった私たち)
真姫(今こうして中に入れてるのは決した無人だったからではない、先客が招き入れてくれたから)
真姫(白狼王という……招かれざる先客が)
白狼王「どうだ?情けをかけた敵が容赦なく葬られる姿は」
真姫「…………っ」
真姫(モニター室へ入ったのは私と穂乃果とハグカナーンの3人)
真姫(他は白狼王を警戒して外に待機してもらっている)
真姫「私たちを招き入れるなんて、白狼王、あなたは何を考えているの……?」
真姫「まさかこの光景を見せるだけっていうつまらない理由じゃないでしょうね」
白狼王「ふんっ、>>833」
-
お前ら3人を仲間にしてやろう
-
白狼王「ふんっ、そう訝しむでない」
白狼王「我は貴様ら3人を仲間にしてやろうと考えているのだよ」
真姫「仲間……?」
深淵穂乃果「ふざけないで!」
白狼王「ふざけてなどいない、我は常に真剣だ」
白狼王「主に欲しいのは貴様……新魔王を倒し黒雪姫を退けた穂乃果だけだが、貴様1人を手中に収めようとすれば他2人が反発するだろう」
白狼王「だから貴様らまとめて3人を仲間に加えてやろうというわけだ、光栄に思うがいい」
ハグカナーン「はっ……変な毛皮ファッションの不審者に勧誘されて私らが喜ぶと思ってるわけ?」
ハグカナーン「あんまり良い気はしないなぁ……」
深淵穂乃果「そうだよ!それより黒雪姫ちゃんは何であんな事になってるの!?」
深淵穂乃果「あの黒雪姫ちゃんを石化したゴルなんとか、ゴル……」
真姫「ゴルゴーンの蛇」
深淵穂乃果「そうそれ」
白狼王「我が説明せんでもその女が知っておろう」
深淵穂乃果「真姫ちゃん……?」
ハグカナーン「知ってるの?」
真姫「皆してそんな期待に満ちた目で見るんじゃないわよ……」
-
真姫(はぁ……結局私が説明することになるのか)
真姫(まぁ良いわ、丁度聞きたいこともあったし)
真姫「……ゴルゴーンはギリシャ神話に登場する怪物の名前」
真姫「見た目は諸説あるけど、髪が多数の毒蛇の女……メドゥーサとしての姿が有名かしら」
ハグカナーン「それなら聞いたことあるね、目を見ると石になっちゃうやつだっけ」
真姫「ええ、おそらくゴルゴーンの蛇はゴルゴーン伝説における蛇という属性を抽出して産み出されたもの」
真姫「……ってとこで疑問なんだけど」
真姫(私は言葉を切って白狼王に問いかける)
真姫「赤の聖女の力の元になってる神格って……アングルボザよね」
白狼王「ほう……分かるのか」
-
真姫「ロキの親類で魔物を産むって言ったら候補が彼女しかいないもの」
真姫「ロキと交わりフェンリル、ヨルムンガンド、ヘルを産み落とした女巨人、それがアングルボザよ」
深淵穂乃果「へぇー」
真姫「ただ気になるのはアングルボザは北欧神話のキャラクターで、ゴルゴーンはギリシャ神話のキャラクター」
真姫「何故アングルボザの力を植え付けられた赤の聖女がゴルゴーンの蛇を産めるの?」
白狼王「くくくっ……それはだな、やつが特別な神造人間だからだ」
真姫「特別……?」
白狼王「気になるか?だがこれ以上知りければ我の仲間になることを約束しろ」
深淵穂乃果「またそれ!」
白狼王「さぁどうする?女よ」
真姫「な、仲間には……>>857」
-
究極のトマトをくれれば、仲間になる
-
真姫「な、仲間には……」
グッ
真姫「……条件次第でなってあげてもいいわ」
深淵穂乃果「真姫ちゃん!?」
ハグカナーン「正気ぃ?」
白狼王「聞こうではないか、条件とはなんだ?」
真姫「究極のトマトを提供すること、妥協は許さないわ」
白狼王「……ほう……トマトか」
真姫(私の提案に白狼王は少し難しい顔をする)
真姫(それもそのはず、黒雪姫は料理という行為自体を新鮮に感じていた)
真姫(外郭界で神造人間が育成された施設では料理というものがない、もしくは敢えて与えられていないか)
真姫(どちらにしても同じ神造人間である白狼王は食材の知識に乏しいと考えていい)
真姫(今すぐ用意することは難しいはず……!)
-
白狼王「トマトか、あるにはあるが……」
真姫(えっ!あるの!?)ドキッ
白狼王「あれは時を巻き戻すようで食用では無いしな」
真姫「……?」
白狼王「まぁ良い、究極のトマトなら後で幾らでもやると約束しよう」
真姫「約束って……それを信じて仲間になれと?」
白狼王「仮契約ということにすれば良い、約束を果たすまでは仮の仲間扱い、我が約束を違えた時は解消だ」
白狼王「先に情報を聞き出したい貴様に不都合は無いだろう?」
真姫「…………」
深淵穂乃果「真姫ちゃん……」
ハグカナーン「ここは信じて見守るしかないねー」
深淵穂乃果「えぇ?」
ハグカナーン「大丈夫、いざとなったら私が前に出るから」
真姫「……分かった、その線で一旦手を組みましょう」
白狼王「うむ」
真姫「ただしあなたがトマトを用意できない、もしくは用意する気が全く無いと判断した場合は即座に見限るから」
白狼王「それで良い」
-
真姫(……余裕な態度、こんなに私たち側に有利すぎる条件なのに白狼王は動じない)
真姫(自分に対する自信故なのか、私たちを完全に舐めきってるのか)
白狼王「さて、赤の聖女の力に関する話だったな」
真姫「ええ……聞かせて頂戴」
白狼王「簡潔に言えば赤の聖女の胎内には……穂乃果、貴様の能力の元と同じものが埋め込まれている」
深淵穂乃果「私と……?」
白狼王「ああ、更に正確に言えば"魔王に体を乗っ取られる前の貴様"と同じな」
真姫「……っ!」
真姫「まさかそれって……」
深淵穂乃果「……英雄出産!?」
白狼王「その通り、我ら神造人間の製造にはクッキング博士も関わっているのでな」
真姫「そうか!英雄出産の元となったTypeD炉はギガゴッドデビルのもの」
真姫「クッキングはギガゴッドデビルの進化系である堕天使ヨハネの研究をしていた……つまり遡ればGGD細胞からTypeD炉の近似品も作れる……!」
白狼王「赤の聖女の『黄昏出産』はアングルボザの魔物産みの力と、埋め込まれた疑似TypeD炉を組み合わせた能力」
白狼王「つまりは暗黒面の英雄出産――反英雄出産とも言えるわけだ」
真姫「反英雄……英雄と対になる存在なら定義を広げて何でも召喚できるってわけ……?」
白狼王「赤の聖女が言うにはな」
真姫「……っ!」
-
白狼王「分かったろう穂乃果?赤の聖女は強い、総合的な戦闘力はフードマンと並ぶほどだ」
白狼王「英雄出産さえ使えない今の貴様が敵う相手ではない」
深淵穂乃果「…………」
白狼王「先刻、黒雪姫をかなり心配していたが変な気は起こさぬことだ」
白狼王「今は我らの仲間だろう?ここで大人しくしておけ」
空黒雪姫『うぁああああああああああああっ!!』
深淵穂乃果「…………」
真姫(モニターから響き続ける黒雪姫の最後の叫び)
真姫(穂乃果はそれに背を向けながら硬く拳を握りしめていた)
真姫「穂乃果……」
深淵穂乃果「私が……私が力を貰ったから黒雪姫ちゃんはあんなことになったんだよね……」
真姫「ち、違うわ!あの提案は向こうからの提案じゃない!」
真姫「穂乃果は気にすることは何も……」
深淵穂乃果「……わかってる、私がこれからするべきことは>>842」
-
我慢比べ
-
深淵穂乃果「私がこれからするべきことは、我慢比べだ」ギュッ
真姫「穂乃果……」
深淵穂乃果「私が今飛び出していってもどうにもならない」
深淵穂乃果「それより私がしなきゃいけないのは……白狼王、あなたをここに引き止めておくこと」
白狼王「ほう?」
深淵穂乃果「赤の聖女は別格としても、たぶんあなたが今回攻めてきた敵の中で1番強い」
深淵穂乃果「だから……あなたの好きには動かせない、ここで私と一緒に全部終わるまで待っててもらう」
白狼王「貴様の命令を聞く義務ないが――」
深淵穂乃果「嫌でも聞いてもらう!」
ドンッ!!
深淵穂乃果「命令が嫌なら仲間としてのお願いでもいい、それが嫌なら力づくでも聞かせる!」
白狼王「…………」
真姫(穂乃果は強い感情のこもった瞳で白狼王を睨みつける)
-
深淵穂乃果「私だって本当は黒雪姫ちゃんを含めたみんなを助けに行きたいよ!」
深淵穂乃果「でも……みんなを信じて今は我慢する!あなたさえ止めていれば、きっとみんなが他を何とかしてくれるから」
深淵穂乃果「これは……私とあなたの我慢比べなんだ!」
白狼王「……ははっ、はははははっ!!」
白狼王「良いぞ、良いぞ良いぞ、実に好みの性格だ穂乃果!がはははははっ!!」
バンバンバンッ!
深淵穂乃果「……へ?」
真姫(急に笑いながら床をバンバン叩き出した白狼王に凄んていた穂乃果が呆気にとられた)
白狼王「仲間を信じて待つ、正にリーダーとしての資質だ」
白狼王「良かろう、貴様と共に待つとしようではないか」
深淵穂乃果「……う、うん!」
白狼王「貴様の仲間と我の仲間、城を守るための策と城を壊すための策、決着まで残された時はもう僅か」
白狼王「その時をここから見届けようぞ!深淵穂乃果!!」
─────────────────
ドスケーブ城・モニター室
AM4:08〜AM4:12 新終末編『171』了
-
というわけでここまで
そろそろタイムリミットが迫る
あと訂正というかミスですが
黒雪姫は卍階に行ってたはずですよね
きっと間違って厨房に来ちゃったんでしょう
では次の場面へ
新終末編『172』に続く
かもしれない
-
新終末編『172』
─────────────────
──ドスケーブ城・モニター室
AM4:12
白狼王「くくっ……さてどうなるか」
深淵穂乃果「…………」
真姫(じっと動かず牽制し合う2人、その傍らでモニターを確認していた私は気付いた)
真姫(厨房を含めた一定範囲の映像が……見えなくなっている……?)
カタッ カタッ
真姫(いくつか映像を切り替えてみても厨房の中は見ることができない、ノイズの走った一面の赤がモニターに映るだけ)
真姫(もしかして、赤の聖女が外部と内部を断絶させる結界でも展開したんじゃ……)
真姫「……!?」
真姫(ってうみか!?)
真姫(ギリギリ監視カメラが視認できる結界の境目と思わしき場所に、うみかが転移して現れる)
真姫(そのままうみかは躊躇いなく結界に触れて――)
・
・
同時刻
──厨房前通路
シュンッ!
スタッ
うみか(来れた!目の前には発光する赤い壁!)
タタタッ!!
うみか(壁に向かって走りながら能力を
コピーする能力を発動)
うみか「その能力!使わせてもらうぞ!」
カッ!!
うみか(壁に手が触れる、そして能力を奪うことが>>847)
-
出来た
-
うみか(奪うことが出来た!)
キィンッ!
うみか(能力名は『赤の障壁』、分類は神能力、効果は障壁で囲んだ空間に対する外部から干渉途絶)
うみか(物理的な接触は勿論のこと、視覚やセンサー機器を用いた観測、能力の干渉までも弾く防護壁)
うみか(よし……これなら巻き戻しトマトの効果を防げるな)
うみか(しかしどうする?巻き戻しトマトが設置されてあるのは城の内部、赤の障壁で城を囲んでも意味がない)
うみか(今障壁で囲まれている厨房のように、大事なエリアだけを選択して囲うのが正解か……?)
うみか(蒼天龍の話だと白狼王は城の中を歩き回りながらトマトを仕掛けて行った)
うみか(つまり通路にある可能性が高くて部屋内部にある可能性は低い)
うみか(うん……いけるかもしれない!)
うみか「ただ自分の足で各エリアわ回ってる時間はない、となると蒼天龍の能力と併用……」
うみか「かなり無茶だがやるしかないなっ」
シュンッ!!
-
・
・
──モニター室
真姫(うみか……?)
真姫(うみかが厨房前通路から姿を消すと同時に、モニター室に並ぶ監視カメラ映像の幾つかが真っ赤に変わっていく)
パッ! パッ! パッ!
真姫(結界の範囲が広がってる?いや……通路や殆どの部屋には変化がない)
真姫(ということは意図的に部屋を選択して結界が作られている……?)
ハグカナーン「どしたの真姫ちゃん」
真姫「いや……それが……」
白狼王「なんだ!何をコソコソやっている!」
真姫「わっ!」
真姫(不味いっ、このうみかの行動を見られたら――)
深淵穂乃果「ダメだよ」グッ
白狼王「ん?」
深淵穂乃果「お互い信じて待つんでしょ、ここから動いちゃダメ」ググッ
白狼王「ほう……」
真姫(穂乃果が白狼王の腕を掴んで引き止める)
真姫(穂乃果が鋼筋肉を持つことを知らない白狼王は、その細腕に宿る力を不思議に思ったのか怪訝な顔をする)
真姫(だが次の瞬間、表情は再び満足そうな笑みに戻っていた)
白狼王「ああ、そういう約束だったな」
真姫「…………」ホッ
真姫(穂乃果のおかけで時間を稼げてるわね)
真姫(うみか、何をしてるか分かんないけど早くやりなさいよ!)
-
・
・
──ドスケーブ城・回線内
シュンッ! シュンッ!
うみか(防衛システム、ヨハネゲート、ジェネレーチカ、対策室、医務室や手術室等の重要なエリア)
うみか(その他にも卍解や4階などの飲食店エリア、人が残ってあるであろう場所をワープしながら障壁で囲っていく)
ズキッ!!
うみか「ぐっ……」
うみか(さすがに無理をしすぎか、体のあちこちが悲鳴を上げている)
うみか(2つの神能力の同時使用なんて芸当は流石に色々と反発を食らうなぁ)
うみか(でも……今はこれしかない!)
シュンッ!
うみか「よし、最後はラボだな」
うみか(ラボ内の様子を蒼天龍の能力で視認)
うみか(ラボには鞠莉を含めて結構な人数が集まってるみたいだな……あの様子だとワクチンの量産はできて>>851)
-
いる
-
うみか(できてているみたいだな!ワープ!)
シュンッ!!
・
・
──ラボ
シュンッ!
うみか「おい鞠莉!!」
鞠莉「……んお?うみかじゃん」
寿限無「うわっ!びっくりしたー!」
うみか(監視カメラで見た光景と同じ、ラボにいたのは鞠莉、寿限無、ロトーチカ、マッキー、理事長)
うみか(それから知らない顔の義足の女、下半身義体の女、宇宙人)
鞠莉「丁度良いところに来たわね、今ワクチンの量産が終わって、ラボにやって来た寿限無たちと合流した所よ」
寿限無「ええ、そして私たちが赤の聖女から聞いた城が崩壊するって話をしてて……」
うみか「なら話は早い、これで全員なら崩壊からラボを守るために障壁を張るぞ」
寿限無「えぇっ!?」
うみか「一度張ったら外からは入ってこれないからな」
理事長「待って!もしかしたらハレンチさんたちが来てるかもしれないわ!」
鞠莉「彼女たちならダークドレアム?あの冥府神と合流してるんじゃないかしら」
うみか「なっ……あと10秒も無いんだぞ!!」
うみか(ゆっくり事情を説明してる時間はない、私は蒼天龍の力を使って付近の通路の様子を覗き見る)
うみか(ダークドレアムたちは>>853)
-
独自の結界で存在を消している
-
うみか(ダークドレアムたちは……見当たらないな、独自の結界でも張ってるんだろうか)
うみか「付近に姿は見えない!おそらく奴らは奴らで対策を取ってるはず!」
うみか「赤の障壁を展開をするぞ!」
鞠莉「何のことだか分かんないけど勝手になさいな」
うみか「展開!!」
キュィィィンッ!
うみか(私の掌から放たれた赤い光がラボを外壁ごと包み込む)
うみか(これで巻き戻しトマトの影響を受けることは無くなった)
うみか「ふぅ……」
うみか(時間を確認、巻き戻しトマトの爆発まで5……4……)
・
・
──モニター室
白狼王「3……2……」
深淵穂乃果「?」
白狼王「さぁ、爆発だ」
真姫(……え?)
チュゥンッ!
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!
真姫「なっ!?」
真姫(その瞬間モニターに映されていた城の各通路が爆発に巻き込まれ次々消失していく)
真姫(通路だけじゃない、赤いノイズに覆われていない部屋まで映像を逆再生したように物が消えていく)
真姫(そして……>>855)
-
更地の上に残った部屋が落下した
-
真姫(そして……)
ガクンッ
深淵穂乃果「わぁっ!」
真姫「っ!?」
ヒューーーーーーッ!!
ズドドドドドドドドドッ!!
真姫(数秒の浮遊感の後、大量の何かが激しく衝突する音、そして僅かな振動が部屋を揺らす)
深淵穂乃果「なに!?今この部屋がエレベーターみたいにガクンってなったよ!」
ハグカナーン「下で支えてたものが抜けて落下したのかな……」
白狼王「ああその通り、我の計画が上手く言ったのだろう」
白狼王「だが妙だな、不自然だ……」
真姫「……?」
白狼王「"音が多すぎる"」
白狼王「我自身がいるこの部屋が消えないように仕掛けはしておいた」
白狼王「だから我らがいる部屋が消えずに落下するのはおかしくない、だが他に落下音が多すぎるのだ」
白狼王「何人か他の神造人間が我と同じことをしていても多くて複数個、だが先程の音はそれを超えている」
深淵穂乃果「待って、消える消えないってどういうこと?」
-
白狼王「確認してみるか、ふんっ!」
ドンッ!!!!
真姫(そう言って白狼王が強くモニター室の床を蹴りつけると――)
キィーーッ
バターンッ!!
真姫(天井と壁がそれぞれ四方に倒れ、立方体の展開図よろしく平面に広がった)
深淵穂乃果「な、ななななに!?」
ハグカナーン「いつの間にコントセットになってたのかなこの部屋は……?」
真姫(開かれた部屋から見えたのは今まで通りのドスケーブ城では無かった)
真姫(雪降る空の下、土が露出した広大な更地、そこに幾つもの赤い立方体が立ち並ぶ)
真姫(そんな異様な光景が目の前に広がっていた……!)
─────────────────
ドスケーブ城・各所
AM4:12〜AM4:14 新終末編『172』了
-
というわけでここまで
消失する城
新終末編『173』に続く
かもしれない
-
新終末編『173』
─────────────────
──ドスケーブ城?
AM4:14
真姫(ドスケーブ城が消えてしまった更地に立ち並ぶ赤い立方体……)
真姫(その光景に戸惑っていたのは私たちだけじゃなく、白狼王もまた事態を把握できてないみたいだった)
白狼王「おい……どういうことだ、貴様らの仲間がやったのか?」
真姫「さぁ?分からないけど……あなたにとって想定外の事態が起きてるのなら……そうなんじゃない」
白狼王「何か隠してないだろうな」ジッ
真姫「そっちこそ、仮の仲間に黙ってたことがあるわよねぇ?」
白狼王「……ふんっ」
真姫(おそらく白狼王は城が消えることは知っていたけど赤い立方体のことは知らなかった)
真姫(逆に私は前者は知らなかったけど赤い立方体のことは何となく察しが付く)
真姫(白狼王たちの計画とうみかの対抗策、それが混ざってしまった結果が現状なのでしょう……)
-
白狼王「我の計画を止められるとすれば人神、ということは蒼天龍は足止めに失敗したということか」
白狼王「この立方体群を形成してるのは赤の聖女の能力だろうが……何故こんなに数多くあるんだ?」
深淵穂乃果「真姫ちゃん、みんなあの赤い部屋の中にいるのかな」
真姫「そうじゃないかしら……というか居ないと困るわ」
深淵穂乃果「そっか」
真姫(それで最低限の事情を把握したのか、穂乃果は白狼王の前に立ち――)
ザッ!
深淵穂乃果「白狼王、これからどうするの?」
深淵穂乃果「あなたが動くなら私も動く、あなたが皆を倒しに行くなら私が止めるよ」
白狼王「そうだな、我慢比べの途中だったか」
白狼王「我はこれから>>861」
-
人神を葬る
-
白狼王「我はこれから人神を葬る」
深淵穂乃果「……っ!」
白狼王「それが我に与えられた任務だ、チームを率いるものとして責務は果たす」
白狼王「例え残りが我だけになったとしてもだ……!」
深淵穂乃果「分かった、そういう方針で行くんだね」
深淵穂乃果「だったら私も……全力で止めるよ!!」
真姫(モニター室の残骸から少し離れた地面の上で、穂乃果と白狼王は静かに対峙した)
真姫(能力を持たない一般人から見ればただ立って向かい合ってるだけにも見える光景)
真姫(けど……今この瞬間も2人の体内で静かに力が膨れ上がっているのを感じる!)
ドドドッ!
ドドドドドドドドドドドドッ!!
ハグカナーン「おおう、こりゃ私たちは少し離れていたほうがいいかな」
真姫「ええ……」コクンッ
真姫「というか奴隷穂乃果たちはどこ行ったのかしら、その辺に落ちてるんじゃないでしょうね」
白狼王「行くぞっ!」
深淵穂乃果「うんっ!深淵出産――」
ドンッ!!!!
真姫(その瞬間、力を一気に解放させた2人は激突し>>863)
-
た瞬間、全身ピンクの幼女に動きを封じられた
-
真姫(2人が激突した瞬間、その間へ全身ピンクの幼女が飛び込んできた)
??「やめるのです!!」
バッ!!
白狼王「……っ!?」
深淵穂乃果「えっ?」
真姫(割り込んだ幼女が2人に向かって手をかざすと、2人の動きが空中で停止して動かなくなる)
真姫(ピンクの幼女の手からは特に拘束するための武器や、異能が発動した様子は視認できない)
真姫(いったい何をしたのか……)
白狼王「動きを……封じられた……?」
深淵穂乃果「手足が動かせない!出産の切り替えもできない!」
??「ふぅ……危ない危ない、危機一髪でしたね」
真姫(正直分からないことだらけでどうして良いのか判断がつかない)
真姫(……けど、こういう時は勇気を持って聞いてみるに限る!)
真姫「あ、あなた!何者よ!」
??「……ん?あたしは>>865ですよー」
-
赤の聖女の腹心の神造人間、桃天使
-
??「ん?あたしは赤の聖女の腹心の神造人間、桃天使ちゃんですよー」
真姫「桃天使……?」
桃天使「はいは〜い、お気軽にお呼びくださいです」
白狼王「桃天使……だと?そんなやつ我は知らんぞ……!」グググッ
桃天使「そりゃそーですよ、あたしは隠れ監視役なんですから」
白狼王「なに?」
桃天使「赤の聖女様が表立って監視役というポジションについて皆様を威圧するのとは別に、あたしは影に隠れて皆様の動向を見る役だったのです」
桃天使「こうしてお姿を現さないつもりは毛頭無かったのですが……」
真姫「何か姿を表してまで伝えなければいけない案件、それも2人を止める必要があること」
真姫「想定外の緊急事態が起きたって感じかしら……」
桃天使「はいっ、そちらの赤髪の方は察しがよくて助かりますですね〜」
桃天使「あたしが姿を見せてまでお2人を止めた理由とは>>867」
-
作戦は終了。即時帰還せよ。というフードマンからの命令を伝えるため
-
桃天使「『作戦は終了、即時帰還せよ』というフードマン様からの命令を伝えるためなのです」
真姫「……!」
白狼王「なんだとっ!!」
真姫(その言葉に1番大きく反応したのは白狼王だった)
真姫(空中に謎の力で固定されたままの白狼王は、千切れんばかりの勢いで首を捻り桃天使を睨みつける)
白狼王「作戦終了……そう言ったのか!」
桃天使「はい言いましたですよ」
白狼王「バカを言え!我はまだ作戦を続けられる!!人神をも滅ぼしてみせる!!」
真姫(声を荒げて意気込む白狼王、それとは反対に桃天使は至って自然体)
真姫(ヤレヤレといった態度で言葉を続ける)
桃天使「はぁ〜、分かってないですねぇ」
桃天使「良いですか?よく理解してください、そういった現場判断を超えたレベルだからあたしが出てきたのですよ」
桃天使「これはフードマン様からの命令、所詮一現場指揮官であるあなたに拒否権はないのです」
白狼王「ぐっ……」
-
桃天使「それにあたしが確認できた限りでも……」
桃天使「銀帝と黄ノ姉妹は死亡」
桃天使「蒼天龍は洗脳で紫毒姫は捕獲、黒雪姫に至っては赤の聖女の粛清を受けています」
桃天使「実働部隊で残ってるのはあなた1人だけ、よくこのザマでまだ続けられるとほざくものですよ」
白狼王「…………」
桃天使「何か反論は?」
白狼王「…………分かった、命令に従おう」
桃天使「ありがとうございますです」ニッコリ
真姫(白狼王を説き伏せた桃天使は私たちの方へ軽やかに向き直る)
クルッ
桃天使「では皆様、あたしは白狼王を連れてここから失礼いたしますです」
真姫「え、ええ……」
深淵穂乃果「あのっ、赤の聖女も一緒に帰るんだよね?」
桃天使「さぁ?あたしの任務は実働部隊の帰還ですので、上司である赤の聖女のほうは与り知りませんのです」
桃天使「気になるのならば本人を探して聞いてみると良いのですよ」
深淵穂乃果「えぇー?」
-
桃天使「では今度こそ!」
桃天使「もももももーー!じゃーんぷっ!」
ボワンッ!!!!
真姫(桃天使の周囲が煙玉でも投げたかのようなピンク色の煙に包まれる)
深淵穂乃果「わっ!げほげほっ!」
真姫(そして煙が晴れた時には……そこに桃天使と白狼王の姿は無かった)
ハグカナーン「……逃げられた?」
真姫「撤退してくれた……と考えましょう」
真姫「それより今は赤い立方体に入ってるはずの皆の安全確認が優先」
真姫「手分けして調べるわよ!」
─────────────────
ドスケーブ城?・赤の立方体群
AM4:14〜AM4:17 新終末編『173』
-
というわけでここまで
新終末編『174』に続く
かもしれない
-
新終末編『174』
─────────────────
──赤の立方体・ラボエリア
AM4:14
鞠莉「すごい振動だったわね……何が起こったの?」
うみか「攻め入ってきた神造人間のリーダーである白狼王が仕掛けた巻き戻しトマトが爆発した」
うみか「ドスケーブ城全体が建設前の時間まで時間を戻されたんだ」
鞠莉「ふむ、ここってうみかが改装する前はラブホって話だったわよね」
うみか「ああ、おそらくはそれより前、最初の工事前の更地に戻っているはずだ」
寿限無「ええっ!?それじゃあ他の皆は……」
うみか「安心しろ、残したい最低限の部屋は、このラボと同じように私が赤の障壁で囲んできた」
うみか「だから城の外枠が消えただけで各部屋は残ってるはずだ」
寿限無「……そっか、それなら良かった」
鞠莉「ねぇうみか、この赤の障壁って中から外に出ることはできるの?」
うみか「どうだろう、やってはないが性質的にすり抜けができてもおかしくはない」
うみか「ただ外から中へ帰ってくることはできないがな、この結界は外からのあらゆる干渉を弾く」
鞠莉「オートロックのドアみたいで不便ねぇ」
-
うみか「外の様子を手軽に確認するなら……私が一度障壁を解いて作り直せばいいのだが……」
うみか「それはちょっと……厳しい……はぁ……はぁ……」
ガクッ
寿限無「姉さんっ!?」
マッキー「顔が青いし酷く汗をかいているわ、明らかに体調がおかしい」
うみか「じ、実は赤の障壁は赤の聖女の神能力なんだ……加えて私は蒼天龍というやつの神能力も使っていた……」
うみか「それらを無理に使いすぎたせいか……体に負荷がかかりすぎたみたいだ……」
グググッ
鞠莉「はぁ……それは無茶しすぎよ」
鞠莉「第一に異能を奪う異能は他種類の能力を奪うようにできていない、そこで1つエラー」
鞠莉「第二にあなたは異能の神ではあるけどその他の力に関しては素人と同じ」
鞠莉「人体に非人道的改造を施して馴染ませる神造人間の力、それ生身で使うなんてフィードバックに耐えられない」
鞠莉「第三に、上の2つはチート認定くらうレベルの反則技、それぞれの負荷に加えて世界から人神であるあなたに直接制裁が降りる」
鞠莉「分かる?今のあなたは何重にも負荷をかけてる状態なの、これ以上使ったら倒れるかもしれない」
鞠莉「そんな無様さらして私たちが監禁状態になる前に早く障壁を解除なさい、そして奪った神力をアンインストールするの」
うみか「……ああ、分かった」
-
うみか「確かにお前の言う通りだ、障壁を解除して――」
赤の聖女『それには及ばないわ』
うみか「……っ!?」
寿限無「赤の聖女の声だわ!障壁から直接聞こえる!」
赤の聖女『赤の障壁には赤の舞台と同じ効果があるのよ、人神さんは知らなかったかしら』
うみか「こいつ……私がコピーした力を通して干渉してきたのか……」
赤の聖女『出来るに決まってるでしょう、元は私の能力で生み出した防壁、構成も全く同じだし干渉できないわけがない』
深淵穂乃果『赤の聖女!何であなたはまだ残ってるの!?』
ロトーチカ「穂乃果の声!外に穂乃果がいて話しかけてるんだわ」
鞠莉「それを全体の放送に回してるみたいね、私たちの声はどうなのかしら」
赤の聖女『残ってる理由?そんなの決まってるわ』
赤の聖女『美味しいトマトを食べること、それから>>875』
-
邪魔な防壁と裏切った失敗作の処分
-
赤の聖女『邪魔な防壁と裏切った失敗作の処分よ』
深淵穂乃果『失敗作の処分……?』
うみか「狙いは蒼天龍……」
鞠莉「処分ってことは紫毒姫も入っちゃうかなぁ」
赤の聖女『ええ、だからまずは防壁の解除をしたいのよ』
赤の聖女『人神さん……貴女がコピーして作った赤の障壁の操作権を譲渡してくれないかしら』
うみか「……っ!」
赤の聖女『難しいことではないわ、貴女が赤の力を放棄してくれたら自然と私のものになる』
赤の聖女『抱えてるだけで苦しいのでしょう?早く放棄したほうが楽になるわ』
真姫『人神ってうみか?これうみかにも聞こえてるの?』
寿限無「次は真姫さんの声!」
赤の聖女『そうよ、貴女の声も届けてるし……向こうの声も聞かせてあげるわ』
-
寿限無「真姫さん!」
真姫『寿限無?そっちにうみかがいるのね!』
寿限無「ええ、中にラボがある赤い立方体の中にいるわ!」
寿限無「うみか姉さんや鞠莉、それからマッキーやロトーチカも一緒よ」
ロトーチカ「真姫たちはどこにいるの?」
真姫『私たちは……たぶん厨房を取り囲んでる赤い立方体の傍ね』
真姫『その壁に触って赤の聖女やあなたたちと会話してるわ』
深淵穂乃果『外からだとどの箱にどの部屋が入ってるか分かりにくいよねぇ』
-
赤の聖女『さぁ人神さん、選択はできたからしら』
うみか「…………」
赤の聖女『何も悩むことはないわ、あなたは知らないでしょうけど既に城を攻める作戦は中止してる』
寿限無「ほんと?」
真姫『それは本当らしいわ、白狼王も撤退したし』
赤の聖女『作戦が中止した今、私は貴女たちに危害を加えることはない』
赤の聖女『私は任務に従って裏切り者を処分するだけ』
うみか「…………!」
鞠莉「うみか、無理することはないわ」
鞠莉「どのみち断っても持久戦を強いられるだけ、そしたらあなたは倒れて私たちは交渉のカードすら無くなる」
鞠莉「捕獲した捕虜をどうするかは後にして壁だけ解除しましょう」
うみか「……ああ」
うみか「穂乃果!真姫!聞こえるか!」
深淵穂乃果『うんっ!』
うみか「今から壁を解除する、そうしたらラボにいる面子と合わせて最重要地点の防衛に当たれ!」
うみか「それから>>879」
-
待機
-
うみか「それから待機だ、余計なことはするなよ」
深淵穂乃果『う、うん』
うみか「寿限無、お前は私を連れて防衛システムの所へ向かえ、残りの作業をする」
寿限無「了解っ」
うみか「後のメンバーの指揮は鞠莉に任せる、好きに使え」
鞠莉「おっけー」
うみか「では――赤の障壁を解除!」
ヒュンッ!!
-
・
・
──厨房エリア前
ヒュンッ!!
真姫(そのうみかの声と共に周囲に立ち並んでいた赤い立方体が消失した)
真姫(中から障壁に守られていた城の各部屋が姿を現す)
真姫(私の穂乃果の前には食料庫と連結された厨房エリア――)
真姫(そこに……赤の聖女は立っていた)
深淵穂乃果「っ!?」ゾクッ!!
真姫(纏うのは赤いドレス型の甲冑、肌は透き通るように白く、後ろで短く結ばれた金髪が風にたなびいている)
真姫(手には灰の入った小瓶を持っていた)
真姫(一見すれば美しい女騎士、けれど見てるだけで嫌な汗が出てくる……)
真姫(なに……?この嫌な感覚は……)
真姫「ねぇ穂乃――」
深淵穂乃果「はぁ……はぁ……」
真姫「穂乃果!?」
真姫(横見ると穂乃果は見たことのない顔で震えていた)
真姫(まるで怯えて逃げ出しそうになる体を必死に押さえつけてるような素振り)
真姫(青ざめた顔からは私の何倍もの汗が吹き出ている)
-
赤の聖女「ああ」
カツンッ
赤の聖女「やっぱり深淵穂乃果は気付ける側の人間ね」
真姫「……?」
赤の聖女「そっちのあなたは……女帝よりはマシだけど2割程度といった所かしら」
深淵穂乃果「真姫ちゃん……早くこここから離れたほうがいい」
真姫「え?」
深淵穂乃果「こいつにこれ以上近付いたらダメだ!医務室がある方に行って皆の傍にいてあげて!早く!」
真姫「う、うん」
真姫(鬼気迫った顔の穂乃果か詰め寄る、そこまで赤の聖女は恐ろしい存在ってことか……)
真姫「分かった、医務室側にはハグカナーンが先に行ってるはずだから合流する」
真姫「穂乃果は?」
深淵穂乃果「私は……>>883」
-
更に濃密な深淵を纏う
-
深淵穂乃果「私は……もう少しここにいる」
真姫「……え?」
深淵穂乃果「この人と、話がしたいから」
赤の聖女「話をする……ねぇ、してもいいけど、今にもあなた倒れそうよ」
・
・
深淵穂乃果(分かってる、今の私ではこの人のオーラに圧倒されて話しどころじゃない)
深淵穂乃果(傍にいるだけでギリギリと心臓を鷲掴みにされるような苦しさがこみ上げる)
深淵穂乃果(全身の血管が圧迫されて酸素が回らない……ただの威圧でここまでとは驚くなぁ、くっ……)
卑猥『穂乃果……いけるの?』
深淵穂乃果(……うん、辛いのは本当、でもやれなくはないよお姉ちゃん)
深淵穂乃果(そのために――)
カッ!!
深淵穂乃果「深淵出産――Abyss020:焔罪饅頭ホムマン!」
ポワンッ!
卑猥『ホムマン?でもそれは相手の口の中に違和感を生じさせる能力だったはず……』
深淵穂乃果(そう、普通ならね)
深淵穂乃果(でも今回はこれを……)
バクッ!!
深淵穂乃果「食べるっ!!」
卑猥『えええっ!?』
-
モグモグ
ゴクンッ!!
深淵穂乃果「ぷはっ」
卑猥『いったい何をして……』
グリード『見ろ!穂乃果の周りの深淵エネルギーが濃くなっていっている!』
卑猥『なっ!』
地獄『より濃密に深淵が折り重なって穂乃果に纏わり付いているな』
プライド『なるほど……』
卑猥『何がなるほどなのよ』
プライド『ホムマンは深淵兵器、だがその役目は相手の動きを封じることじゃない』
プライド『むしろ真価は……ホムマンを食らうことにより己が纏う深淵の密度を爆発的に練り上げることにある』
深淵穂乃果「……ふぅ」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!
深淵穂乃果(深淵は異能を始めとした動のエネルギーを停止させて遮断させる力を持つ)
深淵穂乃果(つまり濃密に練り上げた深淵を纏えば、一時的にだけでも赤の聖女のオーラを防げる!)
深淵穂乃果「ふんっ!」
ダンッ!
赤の聖女「へぇ、『赤の結界』に踏み込んでくるのね」
赤の聖女「良いわ……久しぶりに面白い相手」
赤の聖女「私とあなたで――話をしましょう」
─────────────────
ドスケーブ城跡・赤い立方体群
AM4:14〜AM4:17 新終末編『174』了
-
というわけでここまで
お話とは
新終末編『175』に続く
かもしれない
-
をつ
-
新終末編『175』
─────────────────
──ドスケーブ城跡・厨房エリア
AM4:17
深淵穂乃果「……ふぅ、よっし!」
タンッ!
深淵穂乃果(私は気合を入れて赤の聖女の領域内を歩み始める)
深淵穂乃果(周りの状況は……ちょっと確認する様子がないな)
卑猥『私が目になって伝えるわ、穂乃果は目の前に集中してて』
深淵穂乃果(うん、ありがとうお姉ちゃん)
卑猥『真姫はあなたに言われたとおりに医務室に向かってる』
卑猥『それと寿限無がうみかを抱えて別の方向に飛んでるのが見えるわ』
卑猥『城の中にいたロキワーカーたちの姿もちらほら見えるけど、命令どおり私たちには接触してこない』
卑猥『むしろ散り散りになって城から離れてるように見えるわ』
卑猥『その他で此処から見て分かる周囲の状況だと……>>889』
-
クッキングしてる場所がある
-
完全に豪雪地帯になってる
-
卑猥『クッキングしてる場所があるわ』
深淵穂乃果(クッキング……?)
卑猥『ええ、ここからわりと近い所に料理の煙が立ち上ってる』
深淵穂乃果(そっか、それは交渉の材料に使えるかもね)
卑猥『交渉?』
ザッ
深淵穂乃果「赤の聖女……」
赤の聖女「なにかしら、深淵穂乃果」
深淵穂乃果「私は難しい駆け引きとか出来ないから最初に言うね」
赤の聖女「ええ」
深淵穂乃果「その瓶に入ってる灰化した黒雪姫ちゃん、解放してあげてくれないかな」
赤の聖女「無理ね」
深淵穂乃果「……やっぱり?」
-
赤の聖女「裏切り者を始末するのも私の仕事なの、職務を放棄することは出来ないわ」
赤の聖女「黒雪姫は捕獲したまま連れ帰る、もちろん他の監視対象たちも同じ」
深淵穂乃果「むぅ……」
深淵穂乃果「じゃあさ、何かの交換ってのはどう?」
赤の聖女「へぇ、監視役てまある私に取引を持ちかけると……?」
深淵穂乃果「うん」
深淵穂乃果「確か美味しいトマトを食べたいって言ってたよね、私たちなら美味しいトマトを料理を作れるかもしれない」
深淵穂乃果「それを食べたら何かオマケしてくれるってのはダメかな?」
赤の聖女「トマトの料理ねぇ……」
赤の聖女「ふむ……>>893」
-
本当に満足できるものなら、生まれてきた頃からの記憶も能力も全て消した状態で解放する
-
赤の聖女「ふむ……そうね」
赤の聖女「本当に満足できるものなら、生まれてきた頃からの記憶も能力も全て消した状態で解放するわ」
深淵穂乃果「ほんと!?」
赤の聖女「二言は無いわ、さっさと私を満足させられる料理とやらを持ってきなさい」
深淵穂乃果「う、うんっ」
赤の聖女「ただ……情けをかけるのは黒雪姫1人だけ、他はしっかり回収させてもらう」
深淵穂乃果「え?」
スッ
赤の聖女「『赤の双撃』」
ドゥンッ!!
深淵穂乃果(赤の聖女が手を指鉄砲の形にして頭上高くに掲げると、そこから赤い閃光が発射された)
深淵穂乃果(空高く真っ直ぐ舞い上がった閃光は途中で左右二股に分かれて飛んでいく)
ヒュンッ!!
深淵穂乃果「な……に……?」
赤の聖女「あなたには関係ないものだから気にしなくていいわ」
赤の聖女「ほら、あなたはさっさとトマト料理を持ってくるのよ――」
-
・
・
──ドスケーブ城跡・ラボエリア
ヒューーッ!!
ダストボックス「おい!あの赤い光こっちに向かってるぞ!」
鞠莉「分かってる!」
鞠莉(おそらくは紫毒姫を粛清するために放たれた赤の聖女による攻撃)
鞠莉(このまま放っておけば保管してある紫毒姫入りの瓶を貫くことになるでしょうね)
鞠莉(あれは貴重なサンプルだけど……)
ロトーチカ「どうするの?」
鞠莉「>>896」
-
データは少し取れたから、ここは諦める
-
鞠莉「仕方ない……データは少し取れたからここは諦めることにしましょう」
鞠莉「みんな離れて!あの閃光に巻き込まれないように!」
ロトーチカ「分かったわっ!」コクンッ
ダストボックス「了解」
宇宙人「イきますよ!」
マッキー「せっかくのサンプルが勿体無いわねぇ……」
ヨハネ「良いから逃げるのよ!私から見てもアレはやばい!」グイッ
マッキー「おおっ」
理事長「逃ぃぃぃげろおおおっ!」
タタタタタタッ!
鞠莉(ラボに置いてある紫毒妃入りの瓶から私たちが急いで離れた次の瞬間――)
ドシュンッ!!!!
鞠莉(赤い閃光が瓶を貫き破壊する!!)
ドゴォォォォンッ!!!!
-
ダストボックス「ほー、ラボが吹っ飛びかねない威力だな」
鞠莉「私の研究機材まで巻き込んでんじゃないでしょうねぇ……」
マッキー「まぁ量産サンプル体は運び出したし大丈夫でしょう」
ヨハネ「私も持ってきたわよー」
ロトーチカ「なんだか紫毒妃には悪いことしたわね、研究体にする代わりに保護したようなものなのに」
鞠莉「仕方ないわよ、そこは自分たちの命とは変えられないから……ん?」
鞠莉(赤い閃光が瓶を貫いた後、中には言っていた紫色の液体は蒸発するかのように霧散して消えた)
鞠莉(けどその煙の下……割れた地面に裸の女が倒れているのが見える)
ダストボックス「おい!あの女って……」
鞠莉「たぶん紫毒妃――の元になった人間ね、胸に大きな穴が貫通してるからたぶんもう生きてないと思うけど」
鞠莉「粛清で神の力を失ってただの人間に戻ったんでしょう」
マッキー「ほう……」
ヨハネ「ねぇねぇ、あの赤い閃光の片方は別の方向に行ったわよね」
鞠莉「ええ、おそらくはもう1人の神造人間を粛清しに行ったんだと思う」
鞠莉「うみかが言っていた、蒼天龍ってやつを――」
─────────────────
ドスケーブ城跡・厨房エリア
・ラボエリア
AM4:17〜AM4:19 新終末『175』了
-
というわけでここまで
次は蒼天龍の粛清から
新終末編『176』に続く
かもしれない
-
新終末編『176』
─────────────────
──ドスケーブ城跡・防衛システムエリア
AM4:19
うみか「はぁ……はぁ……」
カタカタカタカタッ
寿限無「姉さん大丈夫?」
うみか「多少ふらつくだけだ、防衛システム復旧の手を止めるわけにはいかない」
寿限無「うん、無理はしないでね」
うみか(最早立つことさえままならない、ここに来るまでにも寿限無に抱えられて運ばれる始末だ)
うみか(だがコレだけは私が終わらせなければ――)
寿限無「っ!姉さん!赤の聖女の砲撃術式がこっちに来る!」
うみか「なんだと!」
寿限無「たぶん蒼天龍を狙った砲撃だ、迎撃する?」
うみか「いや……諦めよう、今以上に無理をするわけにはいかない」
蒼天龍「えええええっ!?」
うみか(実質上の死刑宣告に、私たちから離れた場所で大人しくお座りしていた蒼天龍は慌てふためく)
うみか「せめてもの情けにお前の体を縛ってる能力を解除して力を返してやる、1人で勝手に逃げていろ!」
蒼天龍「言われなくたって逃げるよぉっ!!」
バッ!!
うみか(体と思考の自由を取り戻した蒼天龍はすぐさま走り出す)
うみか(それを高速で追う赤い閃光は今にも貫く勢いで背中に迫る、そして>>901)
-
真の実力を見せた蒼天龍が倍にして弾き返す
-
うみか(そして赤い閃光が蒼天龍に突き刺さると思われた瞬間――)
蒼天龍「でも……1つ言っておくよ」
蒼天龍「あまり僕をぉぉぉ!舐めるなぁっ!!」ブンッ!!
バキィンッ!!!!
うみか(――蒼天龍は赤い閃光を弾き返した)
寿限無「なっ!」
うみか(逃げていた足を止めて振り向いた蒼天龍、その龍のように靡いた蒼く長い髪が閃光を弾き返す)
うみか(球技におけるレシーブのような……それでいてただのレシーブではない)
うみか(赤い閃光の威力を倍増して返す一撃!)
ドンッ!!
蒼天龍「ふんっ!」ムフー
-
寿限無「嘘……あいつあんな力を隠してたの!?」
うみか「私も驚いた、あいつの神能力はああいったパワープレイには向かないと思っていたんだが……」カタカタッ
うみか「能力の応用か、私の知らない真の力を隠し持っていたのか」
寿限無「どっちしにしてもあの赤い閃光を跳ね返せる時点で規格外だわ」
寿限無「あれと正面からぶち当たったら全力の私でも止められないだろうし……」
ドドドドドドドッ!!!!
うみか(そんな話をしてる間にも弾き返された赤い閃光は、2倍の速度で厨房エリア――赤の聖女に向けて直進していく)
うみか(そして赤の聖女のフィールドに突入すると>>904)
-
赤の聖女が作った異次元のゲートを通って、蒼天龍の真下から返ってきた
-
・
・
──厨房エリア
赤の聖女「『赤の隧道』」
シュンッ!
バシュッ!!
深淵穂乃果「わっ!なに!?」
深淵穂乃果「今こっちに向かってきた光が謎のゲートに吸い込まれていったけど……」
赤の聖女「気にすることはないわ、些細な反撃よ」
赤の聖女「あなたは早くトマト料理を持ってきなさい」
深淵穂乃果「う、うん」
赤の聖女(しかし……私の『赤の双撃』を弾き返せる神造人間がいたとは正直意外だわ)
赤の聖女(私のアングルボザは私が想像し得るものは大抵産み出せる、双撃はそこらの神造人間程度なら一撃で葬れる威力に設定していたはず)
赤の聖女(なのにそれを超えてくるってことは……)
赤の聖女「ふーん、何かズルをしてるわね」ニヤリ
-
・
・
──防衛システムエリア
ゴッ!!
蒼天龍「げふっ!!」
寿限無「あー……」
うみか「戻ってきたな」
うみか(赤の閃光を弾き返してから数秒後、蒼天龍の足元に赤く丸いゲートが出現)
うみか(そこから赤い閃光が飛び出てきて、アッパーカットよろしく蒼天龍の顎を撃ち抜いた)
蒼天龍「は、はれぇ……」フラッ
バターンッ!!
寿限無「倒れちゃった、脳震盪でも起こしたのかしら」
うみか「揺らされる程度で済むなら平気だろ、本来は顎から頭の天辺まで砕けてもおかしくない」
寿限無「まぁねぇ、なんであんなに急に丈夫になったのか」
うみか「うむ」
寿限無「それで防衛システムの復旧は?残りどれくらいで終わりそう?」
うみか「そうだな、もう大方終わってる」カタタタタタタッ
うみか「残りは……>>907」
-
20%
-
うみか「残りは……20%ほどだ、数分で終わる」
うみか「寿限無は私の作業が終わるまで私に邪魔されないように見ててくれたらいい」
寿限無「え、ええ」
ピピッ カタカタカタカタッ
うみか(この防衛システムさえ復旧できれば城の大外の防衛結界は復活する)
うみか(ドスケーブ城自体の枠組みは無くなっても結界が復活すれば外敵の侵入は防げる)
うみか(急がなければ――)
カタタタタタタッ
寿限無「……ん?」
クンクン
寿限無(なんだろこの匂い、遠くの方からすごく良い匂いがしてくる)
寿限無(それに遠くに煙が立ち上って……誰かが料理でもしてるのかしら)
寿限無「こんな時に呑気よねぇ……」
寿限無(私はその煙を見つつ、復旧を続けるうみか姉さんの傍に立つ)
寿限無(残る直近の問題は赤の聖女か、早く解決すれば良いんだけど――)
─────────────────
ドスケーブ城跡・防衛システムエリア
AM4:19〜AM4:21 新終末編『176』了
-
というわけでここまで
次はクッキングかな
新終末編『177』に続く
かもしれない
-
新終末編『177』
─────────────────
──ドスケーブ城跡
AM4:21
深淵穂乃果(防衛システムの方、ラボの方で皆それぞれ動いてる感じかな……)
深淵穂乃果(それに対する赤の聖女の動向も気になる……気になるけど、今は料理を持ってくることが優先)
深淵穂乃果(気が変わらないうちにさっさとやらないと!)
タタタッ
深淵穂乃果(そう考えながら私は煙が登ってる方へ走っていく)
卑猥『穂乃果!あそこよ!』
深淵穂乃果「うん!見えてる!」
タタタッ
深淵穂乃果(ドスケーブ城が建っていた敷地内、赤の立方体も消えて今は更地になってる場所の一画)
深淵穂乃果(そこで料理をしていたのは……>>911たちだった)
-
奴隷穂乃果とロキワーカー
-
深淵穂乃果(そこで料理をしていたのは……奴隷穂乃果とロキワーカーたちだった)
タタッ
深淵穂乃果「奴隷穂乃果ちゃん?何をしてるの……?」
奴隷穂乃果「ああ穂乃果さん、クッキングでございますよ」
深淵穂乃果「それは見れば分かるよ、私が言いたいのは……」チラッ
深淵穂乃果(鍋をかき混ぜる奴隷穂乃果の横で料理を手伝うロキワーカーたちと、その前に列を作って並んでいるロキワーカーたちがいる)
深淵穂乃果(手伝う側のロキワーカーは具材を切ったり出来た料理を配膳してたり忙しくしていて)
深淵穂乃果(並ぶ側のロキワーカーたちも大人しく順番に料理を受け取っていた)
奴隷穂乃果「ふむふむ、穂乃果さんが不思議に思ったのはロキワーカーたちのことですね」
深淵穂乃果「う、うん」
奴隷穂乃果「信じてもらえるかは分かりませぬが、ここにいる彼らは敵ではありません」
深淵穂乃果「敵じゃない?」
奴隷穂乃果「はい、少なくとも今は」
-
ロキワーカー「奴隷さん!食材の舌準備終わりました!」
奴隷穂乃果「ありがとうごぜぇます、次はこちらをお願いしますよ」
ロキワーカー「はいっ!」
深淵穂乃果(やけにキビキビしてるな……)
奴隷穂乃果「彼ら、胸のとこにストライキ決行中のタスキをかけていますでしょう」
奴隷穂乃果「どうやら話を聞くに飯を食う暇もないほど過酷な労働を強いられてみたいなんですよ」
奴隷穂乃果「そこはほら……わたくしも奴隷ですから通じるところがあって」
奴隷穂乃果「取り敢えず余ってた食材で炊き出しを始めてみたら意外と好評で、食べ終わった人から進んで手伝ってくれてるってわけですよ」
深淵穂乃果「な、なるほど……」
奴隷穂乃果「まぁわたくしが懐柔できたのは100億体のうちの数十体なもので、他で見かけたら注意する必要ありますからね」
深淵穂乃果「うん、なんとなく状況は理解したよ」
深淵穂乃果「実は私からも1つ作って欲しい料理があるんだ」
奴隷穂乃果「リクエストでございますか?」
深淵穂乃果「トマトを使った料理ならなんでも良いんだけど……何か作れないかな」
奴隷穂乃果「トマトですか、それなら真姫さんから預かってたリュックに余りがあります」
奴隷穂乃果「それで今作れる料理となると、>>914」
-
トマトの冷製スープ
-
奴隷穂乃果「トマトの冷製スープなんかがお手軽だと思います」
奴隷穂乃果「材料も殆どトマトしか使いませんし簡単でございますよ」
深淵穂乃果「スープか……いいかもね」
奴隷穂乃果「では早速」スッ
深淵穂乃果(奴隷穂乃果は取りだしたトマトを軽く洗うと包丁でトマトをザク切りにしていく)
ザクッ ザクッ
奴隷穂乃果「この雪空ですからわざわざ冷やさなくてもトマトは充分に冷えています」
奴隷穂乃果「そのトマトをこのように適当に細かく切ったらミキサーに塩・コショウと一緒にぶち込んで……」
ピッ ギュィィィィィンッ!!
奴隷穂乃果「液体になるまでミキサーにゴリゴリ」
-
ピッ
奴隷穂乃果「……と、終わったらこれをスープ用の更に移して、適当にオリーブオイルでもかければ完成です」
深淵穂乃果「へー、こんなに簡単でいいんだ」
奴隷穂乃果「まぁ超楽に作るとこんな感じですかね、トマトの摩り下ろし汁みたいなもんですから」
奴隷穂乃果「味の調整はまた少し難しいんですけどねぇ」
深淵穂乃果「ふーむ……」
深淵穂乃果(奴隷穂乃果は慣れた手つきでトマトの冷製スープを作った)
深淵穂乃果(これはこれで見た目綺麗で美味しそうだけど、これだけで赤の聖女に満足してもらえるかな)
深淵穂乃果「……そうだ!ここに>>917を加えれば――」
-
メロン
-
深淵穂乃果「そうだ!ここにメロンを加えれば――」
奴隷穂乃果「め、メロンですかぁ?」
深淵穂乃果「うん、いれてみて!豪華になると思う!」
奴隷穂乃果「はぁ……」スッ
ザクッ トントンッ
ポチャポチャッ
深淵穂乃果(奴隷穂乃果ちゃんがメロンを一口大にカットしてトマトのスープに落としていく)
奴隷穂乃果「こんな感じ……でしょうか」
深淵穂乃果「良いね!私がイメージしてた通り!」
深淵穂乃果(赤いトマトの海に浮く緑色のメロンがトマトの赤を際立たせている)
深淵穂乃果(色合いも抜群だし匂いも芳醇になった気がする)
深淵穂乃果(何よりメロンってだけでゴージャス!)
卑猥『……そ、そうかしら?』
プライド『我らは何も言うまい』
-
深淵穂乃果「ありがとう奴隷穂乃果ちゃん、コレ貰っていくね!」タタタッ
奴隷穂乃果「はい、わたくしは仕事をしただけでございますので……お気をつけてー!」
深淵穂乃果(簡単にお礼を言って私は元来た道を引き返す)
深淵穂乃果(おっと……作ってもらったスープは溢さないように注意しないとね)
タタタッ
深淵穂乃果「よし!トマト料理はできた!」
深淵穂乃果「後はこれで赤の聖女が満足してくれれば――――」
─────────────────
ドスケーブ城跡
AM4:21〜AM4:24 新終末編『177』了
-
というわけでここまで
短めですが3分クッキング
新終末編『178』に続く
かもしれない
-
新終末編『178』
─────────────────
──ドスケーブ城跡・厨房エリア
AM4:25
深淵穂乃果「……ど、どうかな」
赤の聖女「ふむ」
スッ
深淵穂乃果(赤の聖女は私が差し出したトマトの冷製スープの器を受け取り、スプーンを使って中身を口に運ぶ)
赤の聖女「…………」パクッ
ゴクンッ
深淵穂乃果(まずはトマトスープだけを、次に浮いているメロンと一緒に)
深淵穂乃果(一口ずつゆっくりと……まるで品評員ように優雅に口に運ぶ)
深淵穂乃果(私の作った料理ではないけど妙に緊張するな……)
赤の聖女「……そうね、大体分かったわ」
深淵穂乃果「……」ゴクッ
赤の聖女「率直に言うと>>922」
-
師匠と呼ばせてもらうわ
-
赤の聖女「師匠と呼ばせてもらうに相応しい出来だわ」
深淵穂乃果「……へ?」
赤の聖女「ここまでトマトの芳醇な味を生かした料理を作れるなんて素晴らしいと言ってるの」
赤の聖女「トマトの扱いという点では師匠と呼んでも申し分ない」
赤の聖女「これはあなたが?」
深淵穂乃果「アレンジを考えたのは私だけど、実際にスープを作ったのは別の人だよ」
赤の聖女「そう、シェフがいるのね」
深淵穂乃果「シェフ……?まぁシェフみたいなものかなぁ」
深淵穂乃果(赤の聖女はその後も味を褒めながら食べ続け、スープをペロッと完食)
深淵穂乃果(絶賛ぶりには少し驚いたけど、気に入ってくれたようで何よりだ)
-
赤の聖女「ふぅ……」
カランッ
赤の聖女「私は大変に満足した、では約束通り――」スッ
深淵穂乃果「黒雪姫ちゃんの瓶!」
赤の聖女「『赤の誓約』」
カッ!!
深淵穂乃果(赤の聖女が灰の入った瓶を持って指で軽くなぞると、瓶の表面に赤い文字が浮かび上がる)
赤の聖女「これは私と結んだ契約の結果を物体に反映させる術式」
深淵穂乃果「契約……」
赤の聖女「約束と言い換えてもいいわ」
赤の聖女「貴女がトマト料理を持ってくる代わりに、私は黒雪姫を記憶と能力のない状態で解放する」
赤の聖女「その約束をこうして――」
キュィィィィィンッ
パリィンッ!
赤の聖女「果たすわ」
-
深淵穂乃果「わっ!」
深淵穂乃果(放り投げられた瓶が赤い発光と共に割れ、中の灰が人間の姿になって飛び出てくる!)
深淵穂乃果(それは紛れもなく裸の黒雪姫ちゃんで――)
ドサッ!!
深淵穂乃果「ふげっ!」
深淵穂乃果(突然出てきた黒雪姫ちゃんの体をキャッチしはしたものの、勢いを支えきれずに抱えたまま仰向けに倒れてしまう)
深淵穂乃果「あいたたた……」
赤の聖女「これで約束は果たせた、私はシェフに挨拶して帰るとするわ」
深淵穂乃果「あ、待って!もう1つだけ聞きたいことあったの!」
赤の聖女「え?」
深淵穂乃果「それは……>>926」
-
どうして仲間を簡単に消せるの?
-
深淵穂乃果「……どうして簡単に仲間を消せるの?」
深淵穂乃果「黒雪姫ちゃんも、消した他の神造人間たちも、あなたの仲間なんじゃないの?」
赤の聖女「仲間……ねぇ」
ザッ
深淵穂乃果(歩き始めていた赤の聖女は寝転がったままの私の頭側の方向、その数メートル先で止まった)
深淵穂乃果(黒雪姫ちゃんを抱えて仰向けになってる私は、顔を斜め上向きに傾けて後ろの赤の聖女を見やる)
深淵穂乃果(その顔は見えないまま、赤の聖女は淡々と語りだす)
赤の聖女「悪いけど、黒雪姫たちを仲間だと思ったことはないわ」
深淵穂乃果「…………」
赤の聖女「アレらは私の監視対象、同じ勢力に所属してるだけ人間ってだけで任務はまるで違うの」
赤の聖女「規律を乱した人間を粛清することに情けはいらないのよ」
深淵穂乃果「で、でもっ!同じ神造人間なんでしょ!」
赤の聖女「……同じ?それも違うわ」
赤の聖女「私はただ神の力を埋め込まれた他の神造人間とは違う」
赤の聖女「この胎内に宿る赤い命の源が私を私たらしめる、私が唯一無二の存在だと知らしめる」
赤の聖女「貴女なら分かるでしょう……穂乃果?」
深淵穂乃果「……っ!」ゾクッ!!
-
深淵穂乃果(纏った深淵でオーラは防いでいる、そのはずなのに……振り向いた赤の聖女の目に体の芯がひりつく)
深淵穂乃果(そして、冷たい目と同時に赤の聖女は魔を産み出す言葉を紡いだ)
赤の聖女「黄昏出産――ベルゼブブ」
カッ!!
ブゥゥゥゥゥゥゥゥッン!!!!!!
深淵穂乃果「っ!?」
深淵穂乃果(目が眩むほどの赤光、その中からおびただしい羽音を奏でる大量の黒い影が現れた)
深淵穂乃果(おそらくは蝿を模した怪物、赤の聖女の産み出した反英雄存在)
深淵穂乃果(それを見た瞬間に私の口も待た反射的に動く!)
深淵穂乃果「大罪出産――ベルゼブブ!!」
カッ!!
深淵穂乃果(奇しくも同じ名前、けれど私が産み出すのは赤ん坊の姿をした悪魔、大食いちゃんのベルゼブブ)
大食い「よっ!」
スゥーーッ!
-
バクンッ!!
深淵穂乃果(赤の聖女が産み出した蝿の悪魔が私たちに襲いかかる直前、大食いちゃんが立ち塞がり蝿を全て吸い込み食べる)
ゴクンッ!
大食い「ふぅー、美味しい美味しい」モグモグ
赤の聖女「ほう……」
深淵穂乃果「あ、危なかった……」
深淵穂乃果(変わらず黒雪姫ちゃんを抱えたままの私はほっと一息つく)
赤の聖女「私が産み出した純粋に悪魔としてのベルゼブブと、貴女が自分の感情から産み出した大罪と関連付けたベルゼブブか」
赤の聖女「同じ悪魔でも産道によって姿を変える、興味深い話だわ」
深淵穂乃果「いきなり襲ってきて感心しないでよもう!びっくりする!」
赤の聖女「やはり私と同類と呼べるのは貴女くらいなものね穂乃果」
赤の聖女「こうして反撃を食らうのも……ん?」
深淵穂乃果(上機嫌で悪魔同士を観察していた赤の聖女は急に口を紡ぐ)
深淵穂乃果「今度はなに?」
赤の聖女「トマトの感動ですっかり忘れていたけれど、そういえば先程も私に反撃してきた神造人間がいたわね」
赤の聖女「取り敢えずのして放置しておいたけど……」
赤の聖女「そうね……穂乃果、蒼天龍が目覚めたら私からの伝言を伝えておいて」
深淵穂乃果「伝言?」
赤の聖女「そう、内容は>>930」
-
赤の隧道を通った攻撃を受けたら、目を覚まして10秒後に消滅する
-
赤の聖女「赤の隧道を通った攻撃を受けたら、目を覚まして10秒後に消滅する」
深淵穂乃果「えぇ……それって死刑宣告と変わらないんじゃ……」
赤の聖女「そうかしら」
赤の聖女「まぁでも……アレが私の知らないズルをしてるのなら、生き残る可能性がないことも無いわ」
赤の聖女「それを確認する上での経過観察でもあるし、私からはしばらく関与しないから好きにすればいい」
深淵穂乃果「むぅ……」
深淵穂乃果(いまいち納得し切れてない私を尻目に、赤の聖女は悪魔を消して歩きだす)
シュンッ
赤の聖女「それじゃあ穂乃果、また会いましょう」
赤の聖女「今度はこんな崩れた城跡ではなく……私たちに相応しい舞台でね」
赤の聖女「決着は――その時に」
ザッ
深淵穂乃果「…………!」
深淵穂乃果(私と根源を同じくする力を持ちながら、分かり合えない考えを持った存在)
深淵穂乃果(――赤の聖女という人間)
深淵穂乃果(去っていくその姿を、私は腕の中の黒雪姫ちゃんの体温を感じながら、ただただ見送ることしか出来なかった)
─────────────────
ドスケーブ城跡・厨房エリア
AM4:25〜AM4:23 新終末編『178』了
-
というわけでここまで
赤の聖女とのアレコレもいったん終わり
次からは別の流れに繋げて……いけたらいいな
新終末編『179』に続く
かもしれない
-
新終末編『179』
─────────────────
──ドスケーブ城跡・ラボエリア
AM4:20
鞠莉「……さて」パンッ!
鞠莉(私は両手を打って皆の意識をこちらに向けさせる)
鞠莉「赤の聖女は深淵穂乃果が、防衛システムはうみかが対応してくれている」
鞠莉「この隙に私たちは私たちがやるべきことをやるわ」
ダストボックス「やるべきこと?」
マッキー「アルパカウイルスとやらの対策ね」
鞠莉「イエス!マッキー正解!ピンポーン!」
マッキー「…………はぁ」
鞠莉「……もう何よ、ノリが悪いわねぇ〜」
マッキー「いいから話を進めなさい」
-
鞠莉「そうね、マッキーの言うとおり私たちが次に対処しなきゃいけない問題はアルパカウイルス」
鞠莉「新魔王軍の手により散布されたこのウイルスは、今や秋葉原……ううん、東京全土を覆い尽くさんとしている」
ロトーチカ「確かそのウイルスに感染すると新魔王軍に操られるのよね、危険だわ」
鞠莉「ワクチンの量産が完了した今、私たちに恐れるものはない」
鞠莉「今こそ現況である音ノ木坂跡のアルパカを倒す時!……ってわけで選抜隊を編成するわ」
ヨハネ「攻め時ってことね!」
ダストボックス「あそこなら私や宇宙人が訪れたことがあるな」
宇宙人「ええ」
ダストボックス寿限無や黒川らも同じだが……やつらにも集合をかけるか?」
鞠莉「それは>>935」
-
希の愛用品のタロットカードで決める
-
鞠莉「この希の愛用のタロットカードで決めるわ」スチャッ
ダストボックス「希……タロット……?」
ロトーチカ「東條希、私たちの仲間の1人よ」
ダストボックス「ほう」
ロトーチカ「でも希は海未たちと一緒に九州ムスペルの偵察に行ったままでしょ」
ロトーチカ「どうして希のタロットを鞠莉が持ってるわけ?」
鞠莉「ふふふ……それは内緒」
鞠莉「タロットカードは進むべき道を占めてしてくれる物」
鞠莉「例えばこうして――――」
バララララッ!!
鞠莉(私はシャッフルしたカードを頭上にばら撒き、その中の1つを見ないままに掴み取る)
バシッ!
鞠莉「こうするだけで、カードが私に語りかけるのよ!」
ロトーチカ「そ、そのカードは……>>937」
-
The Sunの正位置
-
ロトーチカ「そ、そのカードは……」
鞠莉「The Sun――太陽の正位置」
鞠莉「暗示するのは問題や障害が取り払われ、状況が落ち着き、将来への可能性が見えるということ」
鞠莉「中々に明るいカードが引けたわね」スッ
鞠莉「ダストボックス、あなたの提案により物事は良い方向に運ぶみたいよ」
ダストボックス「そうか、では他の者にも声をかけて音ノ木坂跡へ行くとしよう」
鞠莉「ええ、でも油断はしないで」
鞠莉「太陽はあくまで良い可能性の暗示、良い結果を約束するものではない」
鞠莉「達成できるかどうかはあなたたちの努力次第よ、頑張ってね」
ダストボックス「ああ」コクンッ
ロトーチカ「頑張ってねって……随分と他人事じゃない、鞠莉は行かないの?」
鞠莉「私は城を立て直すお手伝いしなきゃいけないし、それに……」
チラッ
鞠莉「ほら、紫毒妃の死体があるでしょ、あれちょっと弄ってみたいのよねぇ」
ロトーチカ「あー……」
-
鞠莉「てことでダストボックス、1つ頼まれてくれないかしら」
ダストボックス「問題ない、義足の借りを返す必要がある、その代金で私を雇うと言うのなら仕事はしよう」
鞠莉「うんっ、ボーナス弾むわよ」
ダストボックス「ならばこのラボから選抜するのは……私、それから薬関係でマッキー、後は適当にヨハネか?」
マッキー「まぁ鞠莉が行かないのなら私よね」
ヨハネ「適当って何よ!!」
ダストボックス「どんな状況でも使える万能さがあるってことだ」
ヨハネ「……む、それなら格好いいかも」
鞠莉(ヨハネも単純ねぇ)
-
宇宙人「ヨメ!ワタシは!?」
ダストボックス「却下」
宇宙人「えぇ!」
ダストボックス「目的の場所は私が知ってるし、お前の唯一の取り柄であるUFOも全壊した」
ダストボックス「お前を連れて行くメリットはない」
宇宙人「うぅ〜……」
ダストボックス「よし、二人共行くぞ」
ヨハネ「あの宇宙人置いていっていいの……?」
ダストボックス「良いんだ良いんだ、気にするな」
スタスタ
宇宙人「マてヨメ!ワタシにもまだやれることがある!ワタシは>>941」
-
宇宙に漂う衛星からアルパカを狙撃出来る
-
宇宙人「ウチュウにタダヨうエイセイからアルパカをソゲキデキる!」
ダストボックス「ほ〜、それは凄いな」
宇宙人「だろう!ならば――」
ダストボックス「だったら尚更付いてこなくていいな」
宇宙人「ええぇっ!?」
ダストボックス「私たちが現地に向かうからお前は此処から衛星兵器でサポートしろ」
宇宙人「さ、サポートか……」
ダストボックス「お前を信頼してるから頼めるんだ、私のことも信じてくれ」
ジーッ
宇宙人「シンライ……うむ、リョウカイした!フウフのシンライだな!」
鞠莉(こいつもチョロいわねぇ……)
ダストボックス「では改めて出発だ」
ダストボックス「まずは寿限無のいる防衛システムエリアへ行くぞ!」
─────────────────
ドスケーブ城跡・ラボエリア
AM4:20〜AM4:24 新終末編『179』了
-
というわけでここまで
次は色んなとこに寄ります、寄りたい
新終末編『180』に続く
かもしれない
-
新終末編『180』
─────────────────
──ドスケーブ城跡・防衛システムエリア
AM4:25
うみか「よしっ!」グッ
キュィィィィィンッ!
ウゥゥゥゥゥゥゥンッ!!
寿限無(見張りを続けていた私の後ろ、うみか姉さんが拳を握ると共に防衛システムを司る機械に光が灯って稼働しだす)
寿限無(その中心に鎮座してる機械の上から一筋の光が天に向けて打ち上げ花火のように走り、天辺から周囲へ半球状のベールが展開される)
寿限無「結界……防衛システムが復旧したのね!」
うみか「ああ、これで外部からの侵入は防げるだろ……う……」
バタンッ!
寿限無「姉さん!」タタタッ
寿限無(安心したのか、うみか姉さんは機械にもたれかかるように膝をついてしまう)
うみか「はぁ……はぁ……悪いな、しばらく休めば負荷も収まると思うんだが……」
寿限無「分かった、とりあえず医務室エリアには連れて行くわよ」
寿限無(姉さんがやった無茶に対する多重反動、その負荷が姉さんの体を毒のように蝕んでいる)
寿限無(こればっかりは力を使わないで安静にしてるしかないわね)
タタタッ
ダストボックス「寿限無!」
-
寿限無「ん?」
寿限無(医務室に連れていくため姉さんを担いだところで、こちらに走ってくる人影が声をかけてきた)
寿限無「……ダストボックス?それにマッキーともう1人まで、どうしたの?」
ダストボックス「お前に話があって来たんだ」
ヨハネ「もう1人って何よ!堕天使ヨハネ様よ!」
マッキー「あぁもう……走るの疲れるんだってば……はぁはぁ……」
ダストボックス「私たちはこれからウイルスの元凶であるアルパカを討伐しに向かう」
ダストボックス「実力を見込んでお前にも来て欲しい」
寿限無「アルパカウイルスの話か、やぶさかでは無いけど……姉さんを医務室エリアに運んでからでいい?」
ダストボックス「構わない」
-
うみか「外へ……行くのか?」
ダストボックス「ああ」
うみか「ならば寿限無、この鍵を持っていけ……これなら結界の外から門を開けられる……」
寿限無「うんっ」
寿限無(背中の姉さんから青色の鍵を受け取る)
マッキー「……あれ?そこの地面にもう1人転がってるけど、あれはお仲間?」
寿限無「仲間じゃなくて敵、なんか仲間割れで気絶したみたい」
マッキー「ふ〜ん」
寿限無「とりあえずそれも医務室エリア運んどいて」
マッキー「えぇー、私は無理よ、重い物持ちたくないもの」
ヨハネ「ならこのヨハネに任せない!」ムフー!
ダストボックス「お前が?」
寿限無(そうヨハネが気合を入れると>>947)
-
手の平サイズのリトルデーモンに変化した
-
ヨハネ「やぁっ!」
ポワンッ!!
寿限無(ヨハネは手の平サイズの悪魔、リトルデーモンとでも呼ぶ姿に変化した)
マッキー「ちょっと、人を運ぶって言うのにそんな小さな姿になってどうするのよ」
ダストボックス「というか下半身の義体はどこに……?」
ヨハネ「義体なら肉体に取り込んで体の中に仕舞ってあるわよ、人間体に戻ったら戻るから大丈夫」
ダストボックス「なっ!そんなことができるのか!」
ヨハネ「できるのかってか……これはそのための形態よ」
ピョンッ ピョンッ
寿限無(リトルデーモン姿のヨハネは軽やかに跳ねながら倒れたままの蒼天龍の元へ)
寿限無(そして――)
ヨハネ「格納!」
シュルルルッ パクンッ!
寿限無(蒼天龍の体を自分の体の中に吸収してしまう!)
寿限無「なっ……!」
ダストボックス「明らかにサイズが違う、物理的に入るわけがないが……異能なのか?」
-
マッキー「似てるようで少し違うわね」
ダストボックス「?」
マッキー「ヨハネシリーズは究極生物の細胞から作られてるの、外部の物を取り込んだり自分の望むように進化するのは究極生物のお家芸」
マッキー「あの程度の芸当は生物として備わってる当然の能力、究極生物と比べたら可愛いものよ」
ダストボックス「生物兵器か、恐ろしいな……」
寿限無「アレには良い思い出が無いわねぇ」
ヨハネ「くくくくっ、ヨハネの凄さに気付いてきたようね」ピョコピョコ
ヨハネ「故堕天使ヨハネほどの力は出せないにしても、記憶を取り戻した私にとっては吸収など朝飯前」
ヨハネ「まぁ究極生物としての特性を使おうとすると、肉体のスペックを最低に落とさないといけないのが痛いところかしら」
寿限無「あぁ……それでリトルデーモンになってるのね」
-
マッキー「ヨハネ、今吸収したやつはちゃんと吐き出せるの?」
ヨハネ「もちろんできるわ!というか……マッキーはやけに私に詳しいわね」
マッキー「ん?元魔王軍でクッキングの知り合いだったし」
ヨハネ「……なるほど、どんな種類の人間なのかなんとなく理解したわ」
マッキー「それはどうも」
ヨハネ「それより聞いてほしいことがあるのよ」
寿限無「なに?」
ヨハネ「私は吸収したものの成分をある程度知ることができるんだけど、今取り込んだのは神造人間よね」
寿限無「そうよ、蒼天龍とか名乗ってたわね」
ヨハネ「この蒼天龍……神能力の他に>>951が混ざってるのよ」
-
火事場のクソ力
-
ヨハネ「この蒼天龍……神能力の他に火事場のクソ力が混ざってるのよ」
寿限無「火事場のクソ力?」
寿限無(私は聞いたことのないワード……それに背中の姉さんが反応する)
うみか「噂程度なら、聞いたことがあるな……」
寿限無「ほんと?」
うみか「時間が勿体無い、医務室エリアへ移動しながら話そう」
寿限無「うんっ」
・
・
・
寿限無(火事場のクソ力――姉さんが言うにはどうやら能力の類では無いらしい)
寿限無(生命が窮地に追い込まれた際に発揮される潜在能力、自分の力を何倍にも高めて一発逆転を起こす力)
寿限無(特定の一族だけに使えるとか、特定の条件が必要だとか、噂は様々で確かな実態は知られていない)
寿限無(でも姉さんが過去に戦った相手の中には何人かクソ力を使うやつがいたらしい)
-
タタタタッ
寿限無「そんな力を……蒼天龍が持っていたってこと……?」
マッキー「変な話よねぇ、神造人間なんて根性やバカ力とは1番縁遠い存在なはずなのに」
寿限無「うんうん」
マッキー「それにこんなギャンブル性の高い能力、絶対にクッキングは好まない」
マッキー「となると予め備わっているものじゃなく……」
寿限無「蒼天龍が独自に会得していたもの……?」
マッキー「その可能性は高いわね」
寿限無「ふむ……」
寿限無(ヨハネが取り込んだ謎の神造人間――蒼天龍)
寿限無(こいつも詳しく調べてみる必要がありそうね)
タタタタッ
寿限無(そんなことを話しながら医務室エリアまで走ってきた私たち)
寿限無(巻き戻しトマトによって壁が消失した医務室エリアは、野ざらしの青空病棟のようになっていた)
寿限無(そこでは真姫さんを始めとして無事なメンバーが慌ただしく作業をしていた)
寿限無(その一方で>>954)
-
メリー妹はここでは治療できない瀕死状態だった
-
寿限無(メリー妹の怪我はひどく、見ただけでも瀕死状態と分かる)
寿限無(青空病棟の中でも特に重症な区画が作られていて、そこで集中手当を受けている状態だ)
寿限無「……っ!」
ダストボックス「こいつは酷いな……体全体を余すとこなくハンマーで殴られたような状態だ」
ザッ
真姫「そうね、メリー妹の容態はかなり悪い、ここの器具では完全に治療ができないわ」
真姫「別の場所、もっと大型の医療設備がある場所で治療しないと……」
寿限無「これも神造人間と戦ったせい?」
真姫「まぁ……聞いた話だとそんな感じ、黄ノ姉妹の呪いらしいわ」
真姫「神造人間との戦いで負傷したのはメリー妹だけじゃない、回収されてきたメリー姉もまた全身の筋肉が断裂して酷い発熱だし」
真姫「一緒に戦ってた凛も外傷は無いにしろ長い窒息状態だったみたいで意識を失ってるわ」
寿限無「凛さんまで……!」
-
寿限無(病棟の奥の方を見ると、ベッドに寝かされた凛さんと、それに付き添ってる花陽さんの姿が見える)
寿限無(花陽さんはまだ入院着姿ではあったけど自身の回復はしたようで、懸命に凛さんに声をかけていた)
花陽「凛ちゃん……!凛ちゃん……!」ギュッ
ナンジョルノ「神造人間にやられたのはこっちも同じでやがりましてよ」
寿限無「ナンジョルノ!あなたたちも医務室エリアに来てたのね!」
ナンジョルノ「さんを付けなさい神似子野郎」
寿限無(相変わらずお嬢様言葉で悪態をつくナンジョルノ)
寿限無(強がってはいるものの、ナンジョルノとその隣にいる黒川さんの体は全身包帯でグルグル巻き)
寿限無(激しい戦闘での負傷が見て取れる)
黒川「そうです、ダークドレアムさんが張った結界で城の消失をやり過ごした後、治療のためにこちらに来ていました」
デスワ「2人共私たちが行くまで粘っていたようで体はボロボロ、とても戦いを継続できる状態ではありません」
ナンジョルノ「パワー馬鹿の銀帝にしてやられましたから、骨折の10本や20本くらいは余裕でやってま……あいたたっ!動いたら痛いっ!」
黒川「はぁ……今くらい大人しく寝てなさい」
-
ダークドレアム「そちらのうみかも珍しくグッタリしているわね」
真姫「反動覚悟で無茶しすぎなのよ」
うみか「はは……面目ない……」
うみか「だが約束通り防衛システムは復旧させたぞ……ダークドレアム……」
ダークドレアム「ふふっ、さすがだ人神」
ダストボックス「しかし……この様子だとナンジョルノたちを連れて行くわけにはいかないな」
ナンジョルノ「どういうことです?」
ダストボックス「ああ、人も多いしまとめて話そう、実は――――」
─────────────────
ドスケーブ城跡・防衛システムエリア〜医務室エリア
AM4:25〜AM4:30 新終末編『180』了
-
というわけでここまで
メンバー選抜と治療の話
深淵穂乃果も来るかな
新終末編『181』に続く
かもしれない
-
をつ
能力の種類とか相性とかあるし、うみかなんかは反動のこともあって難しいと思うけどザックリとした強さ格付けみたいなの知りたい
-
ざっくりとした強さ格付けの作成も進めていきます
次スレの頭くらいに出来たらいいかな
では本編へ
-
新終末編『181』
─────────────────
──ドスケーブ城跡・医務室エリア
AM4:35
ダストボックス(私はこれから行う作戦の概要を話し、共に現地に向かってくれる仲間を募った)
ダストボックス(その結果、真姫の仲介で無事な人のうち何人かが名乗りをあげてくれた)
SID穂乃果「まずは私!ドリームランドから来た穂乃果だよ!生き物に変身できます!」ビシッ
SID海未「同じくSID勢の海未です、寿限無たちと共にダストボックスと戦ったから自己紹介は要りませんよね」
ブンドルビィ「元魔王軍強奪部隊長でダイヤお姉ちゃんの妹ブンドルビィ、神討具と守護宝石が使えるよ」
英玲奈「統堂英玲奈だ、私自身に戦闘能力は無いが漫画やゲームの存在を具現化する異能を持っている」
ダークドレアム「私はダークドレアム、神様よ、制服は……気にしないで」
真姫「一応今挙げられる候補はこのくらいかしら」
ダストボックス「……ふむ」
真姫「他にも人はいるけど呼子やパンドラは戦闘に向かないし、ハグカナーンは陣地防衛以外はやりにくいって言ってたわね」
真姫「別に今挙げた他に気になる人がいれば連れて行ってもらって構わないけど……」
ダストボックス「そうだな、宇宙人の援護もあるし余り大人数でなくてもいい」
ダストボックス「私とマッキーとヨハネと寿限無、追加してあと1人くらいか?」
マッキー「そのくらいが適切かもね」
ダストボックス「うむ、なら>>962にしよう」
-
英玲奈
-
ダストボックス「なら英玲奈に頼もう」
英玲奈「分かった、よろしくな」
SID穂乃果「ありゃー……私たちはお留守番かー」
真姫「でも休んでる暇は無いわよ」
SID穂乃果「へ?」
真姫「言ったでしょ、メリー妹たちの傷はここじゃ治しきれないって」
真姫「ワクチンのおかげでウイルスは問題ないにしても、道中どんなトラブルがあるか分からない」
真姫「音ノ木坂へ行かない組には私と一緒に患者を搬送する仕事をしてもらうわ」
SID穂乃果「うん!了解だよ!」
ダストボックス「あっちはあっちで話が進んでるようだな……では私たちの方も進めよう」
ダストボックス「英玲奈、能力で何か乗り物は作れないか?なるべく全員で乗れるものがいい」
英玲奈「ああ、それはやぶさかではないが……私の能力は異能だ、結界の中ならともかくAASの中を移動するのには向いてない気がするぞ」
ダストボックス「大丈夫だ、それはうちのドクターがなんとかする」
マッキー「ええっ」コクンッ
英玲奈「そうか、ならば移動には>>964を召喚することにしよう」
-
デンライナー
-
英玲奈「そうか、なら移動にはデンライナーを召喚することにしよう」
ダストボックス「デンライナー?」
英玲奈「簡単に言えば列車だな、本来は時を移動する列車だが普通の移動にも使えなくはない」
英玲奈「早速私は召喚に入るから……そうだな、あっちの広いスペースでやってる、準備ができたら来てくれ」
ダストボックス「了解した」
マッキー「私は召喚と同時に加工するから行くわよ」
タタッ
ダストボックス(移動手段を準備するため、2人は結界の出口に近い広いスペースへ駆けていく)
ダストボックス(……と同時に反対側から見慣れぬ人が走ってきた)
深淵穂乃果「お、おーーい!!」タタタタッ
寿限無「穂乃果さんっ!」
ダストボックス「あいつが穂乃果か」
-
深淵穂乃果「はぁ……はぁ……防衛システムエリアに行ってらうみかちゃんも蒼天龍もいなくて」
深淵穂乃果「しょうがないからこっちに来たんだけど……当たりだったみたいだね」
真姫「穂乃果!心配してたのよ、赤の聖女と何してたの!?」
深淵穂乃果「えへへ、心配かけてごめん、黒雪姫ちゃんを返してもらってきた」
ダストボックス(そう言って穂乃果は背負ってる裸の少女の顔を見せる)
ダストボックス(赤の聖女から返してもらった……だと)
ダストボックス「そいつ、神造人間か……?」
深淵穂乃果「そっ、私に力を貸してくれた子だから何だか放っておけなくて」
深淵穂乃果「ちょっと怖かったけど頑張って頼んだらオマケしてくれたんだ」
寿限無「うへぇ〜、赤の聖女と話なんて私だったら3秒で吐いてるわよ、さすが穂乃果さんね……」
ダストボックス「ふんっ……敵のためにお人好しなやつだ」
深淵穂乃果「よく言われる」
深淵穂乃果「それより寿限無ちゃん、蒼天龍はどこ?その人にも伝えなきゃいけないことがあるんだ」
寿限無「蒼天龍ならヨハネが吐き出して……ああ、そこのベッドに寝てるわね」
ダストボックス(寿限無が少し遠くのベッドを指差すと、名前を呼ばれたからか、その脇に立っていたヨハネがこちらへ歩いてくる)
スタスタ
ヨハネ「話って何よ?叩き起こしたほうがいい――」
深淵穂乃果「ん?ヨハネ……ってうわぁぁっ!ヨハネだっ!!」ビクッ
-
ヨハネ「え?あそっか!あなた究極生物とドッキングしてる時の私を見てるのか……」
ヨハネ「私はもうクッキングの手下じゃないというか――」
深淵穂乃果「まさかまた堕天使になるの!?」
ヨハネ「ああもう面倒くさいわねっ!」
ダストボックス(何やら2人は顔見知りで因縁?があるらしくギャーギャー騒いでいる)
ダストボックス(そしてその騒ぎのせいなのか、気絶していた蒼天龍が目を覚ました)
蒼天龍「……ん?うるさいなぁ」ムクッ
深淵穂乃果「わぁっ!こうしてる場合じゃない!」
タタタタッ!
深淵穂乃果「良い?よく聞いて蒼天龍、赤の隧道を通った攻撃を食らったら目が覚めて10秒後に消滅しちゃうの!」
蒼天龍「…………え?」
ダストボックス(直ぐには噛み砕けない深淵穂乃果の言葉)
ダストボックス(それを聞いた蒼天龍は>>968)
-
10秒後に消えて同じ場所にまた現れた
-
ダストボックス(それを聞いた蒼天龍は……)
蒼天龍「……そうか、そんな能力だったんだ」
深淵穂乃果「どうする?起こしちゃったせいでもう時間が――――」
蒼天龍「平気、分かっていればなんとかなる」
深淵穂乃果「え?」
パシュンッ!!
ダストボックス(強く言い切った蒼天龍の体は青く発光して消滅)
ダストボックス(――そして、同じ場所に再出現した)
パシュッ!!
蒼天龍「ほっ、できたできた」
深淵穂乃果「おぉっ!」
寿限無「蒼天龍、それも火事場のクソ力ってやつなの?」
蒼天龍「僕の隠し技のこと知ってるんだ、驚いた驚いた」
-
蒼天龍「でもこれはKKDではないよ、ラウフェイの神能力の方を使ったの」
蒼天龍「ラウフェイを意味する『葉の島』は単にナールを意味する『針』で自分を極小化して移動する通り道じゃない」
蒼天龍「『葉の島』のケニングは木、僕は自分を巨木に生い茂る大量の葉っぱみたいに細分化してストックしてるんだ」
寿限無「…………?」
蒼天龍「ま、簡単に言うと残機があるってことだね、人神が使わなかった僕の能力の別側面さ」
寿限無「ああ、それなら分かりやすいわね」
寿限無「でも謎なことがあるわ、どうして赤の聖女に最初に攻撃された時に使わなかったの?」
蒼天龍「そんなことしたら赤の聖女に残機なくなるまで、リスキルで根こそぎ狩られて終わっちゃう」
蒼天龍「彼女の予想外の力を使って反撃してたほうが処分を延期してくれると思ったんだ」
蒼天龍「彼女はほら……珍しいものが好きみたいだし」
寿限無「なるほど……」
深淵穂乃果「赤の聖女はもう去ったけど、あなたはこれからどうするの?」
蒼天龍「そうだね〜、>>971」
-
仲間に入れてもらう
-
蒼天龍「そうだね〜、ここは1つ仲間に入れてもらう方向でどうかな」
寿限無「あなたが……仲間?」
蒼天龍「そうそう、今は見逃されてるとは言えいつかは処分される身、だったら君たちに匿ってもらったほうがいい」
寿限無「でもねぇ……」
蒼天龍「良いじゃん、黒雪姫も仲間になってるんだしさ」
蒼天龍「その子はよくて……僕はダメなの?」
深淵穂乃果「ダメじゃない」
寿限無「穂乃果さん!」
深淵穂乃果「ダメじゃないけど、あなたが私たちに危害を加えないって保証はある?」
蒼天龍「それは黒雪姫も――」
深淵穂乃果「今の黒雪姫ちゃんは力と記憶を失っているよ」
蒼天龍「……!」
深淵穂乃果「だから害は無いって言い切れる、あなたはどうなの?」
蒼天龍「…………へぇ」
ダストボックス(蒼天龍が意味深な顔で微小を浮かべる、ここは私も口添えをしていたほうがいいか)
-
ダストボックス「紫毒妃が言っていた、蒼天龍は狡猾な人間だから気をつけろと」
蒼天龍「ははは、そっちの君も反対派ってわけ?」
ダストボックス「反対ではない、まだお前を抱えるにはリスキーだと言っている」
ダストボックス「単に自分が逃げ込みたいから……それでは動機が弱いだろう」
ダストボックス「身を起きたいなら自分の利益と他人の利益が重なるメリットを示せ、さもなくば取引にはならない」
蒼天龍「…………」
寿限無「ま、裏切ったばっかりのダストボックスが何言ってんだって気もするけど」
ダストボックス「私はあくまで外部協力者としての立場から意見を言ったまでだ」
ダストボックス「私はこいつよりはしっかり働くぞ?もう1本の足を賭けてもいい」
寿限無「はいはい」
蒼天龍「……分かった分かった」
蒼天龍「確かに僕の方もカードを切らないとフェアじゃないよね」
蒼天龍「良いよ、僕の身を守ると約束してくれるなら教えて上げる」
蒼天龍「フードマンへ繋がる道筋、その足掛かりとなるヒントをね――」
─────────────────
ドスケーブ城跡・医務室エリア
AM4:35〜AM4:40 新終末編『181』了
-
というわけでここまで
もう1パートいけるかな?
新終末編『182』に続く
かもしれない
-
をつ
キャラめっちゃ多くて大変だろうけど楽しみにしてる
-
新終末編『182』
─────────────────
──ドスケーブ城跡・医務室エリア
AM4:40
寿限無(蒼天龍が身の安全の代わりに提示したのは予想外のものだった)
深淵穂乃果「フードマンへ繋がる道筋……?」
蒼天龍「そう」
蒼天龍「まず前提として聞いておくけど、君たちはフードマンと決着を付ける気があるんだよね」
深淵穂乃果「もちろん、それで皆が助かるんだったら私は決着を付けなくちゃならない」
蒼天龍「だったら必要でしょ、フードマンの本拠地へ乗り込むための手段が」
マッキー「ふんっ、それだったらとっくに――」
蒼天龍「違うね」
マッキー「え?」
蒼天龍「おそらく君たちが手にした手段はあくまで外郭界へ行くもの、フードマンの御殿へ直通で乗り込める切符じゃないはず」
マッキー「…………っ」
蒼天龍「おや?この反応は当たりかな?」
真姫「……そうね、私たちのものはあくまで世界と世界の狭間の世界、外郭界へ行くための手段に過ぎない」
真姫「その広大な外郭界でどうやって居城を見つけるかの算段はついてないわ」
マッキー「真姫!」
真姫「いいのよ、別に話したところで変わらないわ」
真姫「直接乗り込むことくらいとっくにフードマンも想定してるだろうし」
-
真姫「私たちがどうやって向こうの転移座標を手に入れたか……そのルートさえ知られなきゃ不都合はない」
マッキー「そうだけど……」
寿限無「蒼天龍、つまりあなたはその直通切符をくれるってわけ?」
蒼天龍「似たようなものかな」
寿限無「信じがたいわね、あなたのような1兵士にそんな重要なもの渡すかしら」
蒼天龍「いやいや、考えてもみなよ、僕たちは外郭界のフードマン関連の施設から送られてきたんだ」
蒼天龍「そこへ帰還する手段が無いはず無いじゃないか」
寿限無「確かに……」
寿限無(そこまで話したところで、蒼天龍は懐から小さな石を取り出した)
蒼天龍「その帰還手段がこれ、帰還の石だ」スッ
深淵穂乃果「帰還の石……」
蒼天龍「この石を軽く振ると――」
ビーーッ!
深淵穂乃果「わっ!すごい音!」
蒼天龍「ありゃ、やっぱり向こうから僕のワープ認証が弾かれてるな、死んだ扱いにされてるのかも」
マッキー「まぁ不正利用を禁止する措置はとってるわよねぇ」
寿限無「そんなんで役に立つの?」
蒼天龍「直接使えなくても解析すればフードマンのお膝元の座標が分かったりするんじゃないかな」
蒼天龍「君たちの技術者に渡しなよ、きっと役立つと思うよ」スッ
真姫「分かった、預かっておくわ」
蒼天龍「それから次は情報、この石でワープできる場所はフードマン本拠地の近く――同じ領内だけど、そこから本拠地へ行くのは簡単じゃない」
蒼天龍「本拠地へ侵入するためには>>978」
-
4個の試練を突破し、カギを手に入れる
-
蒼天龍「4個の試練を突破し、カギを手に入れる必要がある」
深淵穂乃果「4個の試練……?」
蒼天龍「うん、詳しく話すと……まず外郭界のとある場所にフードマンの陣地がある」
ザッ ザッ
寿限無(説明しながら蒼天龍は地面に指で図を書いていく)
蒼天龍「陣地は大まかに円の形をしていて、円の中心にフードマンが居を構える本拠地がある」
蒼天龍「本拠地の近くにはフードマンが部下へ命令を下す神殿のような集会所、幹部連中の居住区なんかがあって」
ザッ ザッ
蒼天龍「中心部から少し離れた場所に僕たち神造人間専用の施設がある」
深淵穂乃果「例の石にインプットされてる座標はここのもの?」
蒼天龍「そう、神造人間を製造したり育成したり生活してたりする施設だね」
蒼天龍「殆どの神造人間はここから出たことすらないと思う」
蒼天龍「そしてここからが大事、フードマンの本拠地へ向かう道の途中には大きな門が鎮座していて、開くには鍵が4つ必要」
蒼天龍「鍵は中心部の四方……東西南北にある試練を突破することで手に入るらしい」
深淵穂乃果「試練か……内容は分かる?」
蒼天龍「さぁ?そこまでは分かんないな、そこまでしてフードマンの本拠地に行きたがった人もいないし」
深淵穂乃果「そっか……」
-
深淵穂乃果「でも情報ありがとう!助かったよ!」
蒼天龍「取り引きだからね、これで仲間に入れてもらえるなら僕は良いよ」
真姫「よし、じゃあ話を聞いたところで各自動き始めましょう」
真姫「私たちは重症者の運搬の準備を始めて」
寿限無「私たちは音ノ木坂跡へアルパカを倒しに行く!」
深淵穂乃果「私は黒雪姫ちゃんを医務室に預けて……それからどうしよっか」
真姫「やることないなら帰還の石を鞠莉に届けてくれないかしら?ラボなら解析できるだろうし、あとついでに>>981」
-
金パカとか、今のところここにいない連中の無事の確認をして
-
真姫「金パカとか、今のところここにいない連中の無事の確認をしてきてくれる?」
深淵穂乃果「おっけー!」
タタタタッ
寿限無(また元気よく走っていく穂乃果さん)
寿限無「さて、私たちの準備の方は……ん?」キョロキョロ
ヨハネ「どしたの?」
寿限無「さっきまでいたマッキーが消えてる、というかマッキーは英玲奈の手伝いするとか言って一緒に行ってなかったっけ……」
ダストボックス「そうだな、さっき急に出てきたときは暗になんだこいつと思ったぞ」
寿限無「消えたり現れたり謎な人ねぇ……」ガクッ
マッキー「なんか失礼なこと言ってるわね」
ヨハネ「わっ、また出てきた!」
マッキー「こっちの話が興味深かったから英玲奈を手伝いつつ話に参加してただけよ」
マッキー「人を幽霊みたいに言わないでちょうだい」
寿限無「ご、ごめん」
-
マッキー「それより来なさい、デンライナーの準備が整ったわ」
寿限無「うんっ」
寿限無(私たち4人はマッキー先導のもと、英玲奈がデンライナーを召喚した広いスペースへと向かう)
ザッ ザッ
マッキー「先に説明しておくとデンライナーは英玲奈が異能で作り出した創作物」
マッキー「AASが降り注ぐ中を運行するには異能製はあまり向いていない、英玲奈が指摘した問題はこれ」
寿限無「それをマッキーが解決したわけ」
マッキー「そう、私が開発したこの特殊コーティングスプレーでね」カシャカシャ
ヨハネ「スプレー?」
マッキー「雨水を弾くように車にするのアレと根本は同じよ、このスプレーはそれのAAS版」
マッキー「コーティングすればAASの付着を防いで異能で召喚した物の弱体化を防げるってわけ」
寿限無「すごいじゃない!」
寿限無「それを異能者にかければAASの中でも能力が使えるの?」
マッキー「いや、あくまで身体への干渉を防ぐだけで大気中のAASの阻害は変わらないから使えはしないわよ」
寿限無「あらっ」ズコッ
マッキー「阻害関係なく異能をぶっぱするにはミナ仮面が作ってたマグロブースターとかが向いてるけど」
マッキー「今あいつは緑氷の巨人に取り込まれてるしね……」
-
ザッ ザッ
マッキー「ほら、これがデンライナーよ!」
寿限無「おおっ!」
寿限無(そして目的地に着いた私たちの前に現れたのは、先頭車両の赤いつり目みたいなデザインが特徴の列車)
寿限無(某ライダーに出てきたものと全く同じデンライナーだった)
ダストボックス「立派な列車だな、だが線路はあるのか?」
寿限無「線路は出るのよ!」
ダストボックス「……出る?」
英玲奈「まぁ知らないやつはピンと来ないだろう、寿限無は知ってるのか?」
寿限無「ええ、生まれてすぐに漫画とか特撮とかにふけったから作品は知ってる、本編は見たこと無いけどデンライナーくらいなら知ってるわ」
寿限無「ってか本当にまんまなやつが出てきたわね……誰が運転するの?オート?」
英玲奈「ああ、運転なら>>985」
-
オートだとスピードが落ちる
-
英玲奈「運転ならオートだとスピードが落ちるし出来るなら手動の方がいいかな」
英玲奈「で、手動で運転する場合なのだが……」スッ
寿限無(そう言って英玲奈が取り出したのは電車の定期入れ、パスケースみたいなものだった)
寿限無「それは?」
英玲奈「ライダーパス、デンライナーを操縦するために必要なものだ、これは知らなかったか」
英玲奈「デンライナーの操縦室にはバイクが置いてあってパスとそれを使って操縦するんだ」
寿限無「なぜにバイク……?」
英玲奈「ライダーだからな」
寿限無「ライダーだからか」
英玲奈「問題は誰が操縦するかなのだが……」
寿限無「そうねぇ、列車だか電車だかバイクだからよく分からないものの操縦でしょう?」
寿限無「黒川さんがいれば黒川さんで良かったんだけど」
英玲奈「よし、ここは>>987」
-
運転できる人を召喚しよう
-
英玲奈「運転できる人を召喚しよう」
寿限無「召喚……?」
英玲奈「そう、そして寿限無に憑依させてライダーパスを使って運転させる」
寿限無「待って、何か嫌な予感がするんだけど……」
英玲奈「大丈夫!神似子ならきっと特異点の条件もクリアしてるさ!」
ポンポンッ
英玲奈「はっはっはっ!」
スタスタ
寿限無(英玲奈は私の肩を軽く叩いた後、高らかに笑いながらデンライナーのほうへ歩いていく)
マッキー「持ち主に指名されたんなら仕方ないわよ、頑張りなさい寿限無」
ヨハネ「近未来的な列車ねー、ちょっとワクワクしちゃう」
ダストボックス「無事に目的地に着けるならなんでもいい」
寿限無「ちょ、ちょちょっ!」
英玲奈「よし!デンライナーで音ノ木坂に行くぞ!」
ヨハネ「おー!」
─────────────────
ドスケーブ城跡・医務室エリア〜デンライナー前
AM4:40〜AM4:46 新終末編『182』了
-
というわけでここまで
次は新スレかな
新終末編『183』に続く
かもしれない
-
次はこちらでやります
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/10627/1507460469/
このスレもお付き合い頂きありがとうございました
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をつ
-
乙
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