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利水・治水スレ

919とはずがたり:2014/06/16(月) 15:28:13
>>800
>イームルは伝説的企業
こう書くと今は無いかのようだけど今でも立派に活動↓してます(;´Д`)
http://www.eaml.co.jp/

プレゼン資料も引っ掛かる。

「中国地方の小水力発電」
その歴史と課題
イームル工業株式会社
沖 武宏
http://kisnet.dip.jp/~aika/hatuden/eaml.pdf

偉そうに伝説的企業とぶち上げたものの,俺が知ったのはこの論文↓で割と最近に,だw
貼り付けた心算が見当たらないので再投下♪

中山間地域研セ研報8:31〜38,2012
中国地方の小水力エネルギー利用に観る
自然エネルギーに基づく地域づくりの思想
藤本 穣彦*・皆田 潔・島谷 幸宏**
http://www.pref.shimane.lg.jp/chusankan/report_of_research/research/No8_kenkyuhoukoku.data/kenkyuhoukokudai8gou03.pdf
*島根県中山間地域研究センター客員研究員(現九州大学大学院工学研究院環境社会部門学術研究員)
**九州大学大学院工学研究院環境社会部門教授

Ⅰ はじめに

 今日,持続的な地域づくりのために,自然エネルギーに基づいた産業の創生が期待されている。…

とりわけ,本論で取り上げる水力エネルギーは,水利権や漁業権などの地域が有している権利との調整が必要であり,地域住民の積極的な参加に基づいた導入計画を策定する必要がある。
 我が国では,地域の農業協同組合(以下,農協)が経営する,小規模な水力発電所の多くが,中国地方に存在している。秋山(1980)によれば,1955年3月末までに,全国に181施設建設された農協などが経営する小水力発電所のうち,約90施設が中国地方に建設されたという1)。
 今日に至るまでに,災害や老朽化,経営不振,あるいはダム立地による水没などを理由に休止・廃止されている施設もあり,1980年には74施設となり1),現在では54施設が,なお発電を続けている2)。現在稼働中の54施設は全て1,000kW未満で,最大で660kW,最小は24kWであり,平均は189.1kWである2)。54施設の設備容量の合計は10,209kWである2)。

 一般的に,小水力発電は,「ダムなどの大規模開発を伴わない,環境に配慮した水力エネルギー」(IEA:国際エネルギー機関),「大規模ダム(貯水池式)、中規模ダム(調整池式)ではなく,河川の水を貯めること無く,そのまま利用する発電方式」(全国小水力利用促進協議会)と定義される。中国地方の小水力発電所は,山峡を流れる河川の水を堰上げして導水路に導き,自然の地形を利用した落差で,水力エネルギーを得ており,上述の定義に当てはまる。

 …水力エネルギーは,自然の恵みそのものと言える。したがって,小水力エネルギーの基本的権利は,地域に帰属する性格をもつと考えられる。中国地方の小水力発電所の経営主体は,電力会社ではなく,地域の農協であり,この性格を満たしていると言える。

 以下,本論では,上述のように中国地方でのみ大規模に導入が進んだ地域小水力発電について,導入促進の要因を分析し,小水力エネルギー利用を地域の力で進めるための方法と現状の課題を明らかにしたい。

920とはずがたり:2014/06/16(月) 15:28:32
Ⅱ 小水力発電の基本的な考え方
1.水力エネルギーの考え方
 水力エネルギーは,「流量」と「落差」によってその出力が規定され,次式のように求められる(1)3)。ここで,P:出力,Q:流量,H:有効落差(=総落差−損失),g:重力加速度,η:総合効率(0.6〜0.8)である。
 P(kW)=Q(m3/s)×H(m)×9.8(㎡/s)×η (1)

2.地域小水力発電の導入プロセス
 次に,地域小水力発電の導入プロセスについて述べる。…
 小水力発電は地域に根ざしたものであり,水利権など地域の権利に従属するものであるため,地域住民の合意形成が出発点となる。…

 ヒアリングの結果,小水力発電を地域で導入するにあたっては,次の4点の課題が明らかとなった。①ポテンシャルの評価や適正な発電計画策定を行える人材が極端に不足していること,②発電事業では,開発者が権利を得るため,地域の利益となる発電所設置のためには,資金集めの方法に工夫がいること(市民出資など),③水力発電システムは,受注生産であり,コストが高く,納期も長い(8〜10カ月),④すべてのプロセスがつながっておらず,合意形成から施工,運用までをトータルにマネジメント出来る人材(あるいは組織)がない,という課題である。

 さらに,水力発電所が完成した後には,水路の管理,取水口の清掃,さらには,広報・取材対応や見学対応,トラブル対応やリスク管理など,総合的な維持管理システムの構築が必要となる。

3.地域小水力発電所の設置の考え方

…設備の維持管理や老朽化の観点から考えると,取水地点と発電地点は近い方が好ましい。また,取水地点については,日常的な管理が必要となるため,地域住民が日頃から活用している地点や,生活のなかで立ち寄れるような地点に出来るとなお良い。…

Ⅲ 1952年「農山漁村電気導入促進法」成立

 第二次世界大戦後,急速な工業化・産業化に伴う電力需要に対応するために,GHQの指導のもと,対日援助見返り資金による融資によって,大規模な水源開発が行われた4)。
 並行して,農山漁村や離島における未点灯集落の解消を目的として,小規模の水力発電の開発も進む1)。1951年には,「農林漁業資金特別融通法」により長期融資の措置が講ぜられた。さらに1952年の,「農山漁村電気導入促進法」(1952年12月29日,法律第358号,最終改正:2011年5月2日,法律第37号)が大きな意味を持っている。

 この法律は,松田鐵藏議員ほか62名による議員立法である。…

 次に「農山漁村電気導入促進法」の内容について検討していこう。…同法では,日本政策金融公庫による資金の貸し付け(第4条)や,国の補助(第5条)が明確に位置づけられたうえ,電気事業者との売電交渉について明記されていることに大きな意味がある(第9条)。また,発電事業主体については,「当該農山漁村にある農業,林業又は漁業を営む者が組織する営利を目的としない法人で政令で定めるもの」(第2条)とされており,農協や漁協,土地改良区や森林組合などの農林漁業団体が,地域エネルギー事業の主体として明確に位置づけられている。

 中国地方の小水力発電は,「農山漁村電気導入促進法」に基づいて推進されたものである。では,なぜ中国地方でのみ爆発的に普及したのか。

921とはずがたり:2014/06/16(月) 15:28:52

Ⅳ イームル工業株式会社・織田史郎の存在
…小水力発電を地域の力で導入するためには,地域の合意形成に始まるトータルのプロセスをマネジメントする必要がある。

 中国地方での導入が進んだ背景には,それを行えた人物と企業の存在がある。中国地方の小水力発電を調べていくと,必ず行き当たる人物がいる。イームル工業株式会社の創業者,織田史郎(1895-1986)である。
 織田は,1895年広島県安芸郡海田町生まれ。19歳で広島呉電力に入社して以降,一貫して水力発電事業に携わる。織田は1946年に電力会社を辞し(取締役まで務める),「水力発電で農山村を活性化させる」という哲学で,1947年イームル商会(後,イームル工業)を創業する2),6),7)。

 当時のイームル工業は,織田が先頭に立ち,土木コンサル業務から低価格の発電機の製造までを手がけ,川見分けや発電計画の策定から水力発電システムの開発・施工までを一手に担ったという。織田を中心に,イームル工業では,土木,水力システム,電力システムのそれぞれを担う技術者が育成され、また,開発に係る全ての過程をマネジメント出来る人材が輩出されていった(現在は,土木の設計・施工は行っていないそうだ)。

 織田は,1953年,「中国小水力発電協会」(現在の事務局は,広島県農協中央会にある)を設立し,顧問となる。中国小水力発電協会は,各農協のネットワーク組織となると共に,中国電力との売電価格の交渉窓口ともなった。中国電力の小水力発電に対する柔軟さは,織田の貢献によるところが大きいと言われている2),7)。
Ⅴ 地域小水力発電所の現状と課題
1.発電所の収益の考え方と売電価格の推移

水力発電所の売上の考え方は単純で,発電所の年間発電量に,売電単価を掛け合わせると年間の売り上げにな
る。小水力発電の年間稼働時間は,一般的に,6500〜7000時間と言われており、設備稼働率は,太陽光発電の6〜7倍となる。そのため,設備は小規模でも,大きな発電量が得られることが特徴である3)。
 図3は,中国電力への売電単価の推移を示したものである。オイルショックや経済成長により70年代中頃以降,売電価格は上昇したが,90年代以降は9円台に落ち着いている。2009〜2010年度の平均は,9.01円/ kWhとなっている8)。

ttp://tohazugatali.web.fc2.com/epower/kenkyuhoukokudai8gou03.jpg
図3 中国小水力発電協会の売電単価の推移

…現在,2011年に制定された「再生可能エネルギー全量買取法案」の具体的な検討が進んでおり,買取価格の決定と,同法の施行が待たれる。2012年5月11日現在,200kW以下の小水力の買取価格は,34円(税抜)で議論されている。既設の取り扱いについての具体的な議論はまだわからないが…この価格で買取されると仮定すると…大幅な収益増が見込まれる。

2.老朽化と設備更新

 小水力発電所の収益を支えるためには,効率が落ちることなく、出来るだけ長時間発電所を運転することが求められる。そのためには,定期的な設備更新やメンテナンスを行う必要がある。中国地方の小水力発電所は,稼働から40〜50年経過しているものも多く,設備更新の時期を迎えている。
 中国新聞の調査によれば,水路の補修や管路の再整備,水車や発電機などのメンテナンスにはそれぞれ,1〜4千万円程度かかる。水車が摩耗し,設備が老朽化すれば発電効率が下がり,発電量が減る。そうすると,売上が減る。設備更新や補修のための補助金は無く,各事業主体が自主財源で行っている。修繕費が膨らんでいるため,赤字に陥っている発電所も多く,現在稼働中の54カ所のうち,2006年には26カ所,2010年は20カ所が赤字だったいう。

 しかし,赤字だからといって発電所を廃止するのも容易ではない。発電所は借地に建設されていることが多く,廃止するためには土地を原状回復させる必要があり,廃止のコストも数億円かかる場合があるという(以上の記述は,2010年4月9日中国新聞,2011年8月26日中国新聞に基づいている)。

922とはずがたり:2014/06/16(月) 15:29:55
>>919-922
3.地域住民の主体的な参加
 …小水力発電を導入するためには,地域住民の積極的な参加に基づいた導入を促進しなければ,権利関係の処理が難しいし,合意は形成されない。
そのためには、地域が主体となり小水力発電を進めることが、もっともスムーズで地域のためになる。設置後も,取水口や水路の管理を日常的に行う必要がある。とりわけ,草刈り時期や落葉時期には,一日に数度ごみ取りを行っているほか,イノシシやイタチなどの動物が水路に落ちていることもあるという…地域住民の積極的な参加に基づいて進められる方が,持続的なものになる。
 この点について,イームル工業顧問の沖武宏は,これまでの開発を振り返り,次のような考えを述べている7)。

 中国地方では小水力発電により,今でも農協の収入になっている。結果として地域に還元されていますが,一人ひとりには実感はない。発電所をつくるときには村中が沸いてね。竣立式は学校でやるんですが,織田は当然,現場担当の私も呼ばれてもうへとへとになるまで飲まされるほど喜んでもらった。ところが数年して行ってみると,みんな関心がなくなってるの。つくるときは村人が雇用されたりして恩恵があるんだけれど,済んだら農協にしかお金が入ってこないから。だから,これからはそういうやり方ではなく,「地域のエネルギーなんだ」という意識を長期にわたって持ってもらえるような仕組みが必要。本当に実感してもらおうと思ったら,自分たちで出資して配当を受け取るとか,雇用の場にしなくては,というのが私の思いです。

 今後の地域小水力発電の開発・設置にあたっては,地域の合意形成だけでなく,地域住民の主体性が生成され,かつ,それが持続するような仕掛けが合わせて必要である。そのためには,沖が言うように,地域の雇用を創出するなど,小水力発電の導入が,地域の課題を包括的に解決する起点になるような枠組みを構築することが重要な課題となる9)。
 
Ⅵ 結 論

…中国地方の地域小水力発電所の調査を行っていると,現在も稼働している発電所は,自然の地形に基づき,地域の空間のなかに適正に配置されたものであることに気付かされる。他方で,休止あるいは,廃止された発電所は,取水口から発電所までの導水路が長い,大きな落差を取るため圧力管部分が長い,水路の点検・保守が困難など,少し無理をしていると感じられる空間利用が多いように映った。自然の地形に根ざした利用からかい離すればするほど,日々のメンテナンスが困難になり,設備更新のための費用も増大するため,施設の維持が困難になる。第一次産業が,「直接に自然からなにものかをとりだす産業」10)であるとすると,自然環境や地域の地形,空間からエネルギーをとりだす地域小水力発電は,真に第一次産業である。

 …なお,本論は,(独)JST社会技術研究開発センター「地域に根ざした脱温暖化・環境共生社会」研究開発領域の研究開発プロジェクト:「I/Uターンの促進と産業創生のための地域の全員参加による仕組みの開発」(研究代表 島谷幸宏)の成果の一部である。

 最後に,本論が成るにあたっては,広島県内での文献や資料の収集・分析以外にも,イームル工業株式会社,JA広島北部,志和堀電化農業協同組合,北広島町役場,NPO法人INE OASAなどにヒアリングさせて頂き,現場を
案内して頂いた。…

Ⅶ 引用文献
1)秋山武(1980)農協小水力発電の歴史と問題点.協同組合経営研究月報 第323号:55-68.
2)沖武宏(2011)60年前から農協発電を支える水力発電メーカー・イームル工業.季刊地域 第7号:60-65.
3)(独)JST社会技術研究開発センター編(2010)小水力発電を地域の力で.公人の友社
4)中瀬哲史(2005)日本電気事業経営史――9電力体制の時代.日本経済評論社
5)衆議院農林委員会(1952)第15回 国会農林委員会 第8号.
6)中国地方電気事業史編集委員会編(1974)中国地方電気事業史.中国電力株式会社
7)沖武宏(2011)小水力発電の巨人織田史郎.水の文化第39号:28-33.
8)渡部喜智(2011)農協等の取り組む小水力発電事業への期待と課題.農中総研 調査と情報:第26号:8-11.
9)山下輝和・藤本穣彦・石井勇・島谷幸宏(2012)小水力エネルギーを起点とした地域住民の主体生成過程に関する一考察.河川技術論文集:掲載決定済(2012年6月刊行).
10)鶴見和子(1974)社会変動のパラダイム――柳田国男の社会変動論.(思想の冒険――社会と変化の新
しいパラダイム.鶴見和子・市井三郎編,筑摩書房):145-186.


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