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Tohazugatali Economic Review
1563
:
とはずがたり
:2015/05/13(水) 15:18:40
>>1562-1563
──米国には建国来、特に人種を中心とした格差がありました。それがなぜ今になって格差があると叫ばれるようになったのでしょう。
米国では、景気後退とは近所の人が仕事をなくすこと、不況は自分が仕事をなくすことだといわれる。自分に同じ災難が降りかからないかぎり他人の状況は理解できない、という意味だ。今や米国には、建国来初めて子ども世代が親世代より裕福な生活を送れないかもしれないという認識が広がっている。
これは米国民にはとてつもなく恐ろしい事態だ。人種格差は多くの人にとって近所の人の問題だった。が、自分が仕事を失ったり、子どもが大学を出ても職を得られず家に戻ってきたりして初めて、格差問題がマイノリティではなく自分の問題として突き付けられるようになったわけだ。いい地域に育ち、いい学校を出て普通に暮らした人たちにとって経験したことのない恐怖感だ。
スキルレベルの差が雇用格差につながっている
──足元では米景気は回復し、失業率も下がり続けています。それでも格差への関心は膨らんでいる。
確かに数字上ではそうなっている。が、スキルレベルに焦点を合わせ雇用状況を見てみると、違う絵が浮かび上がるはずだ。
格差には二つの見方がある。一つは同じスキルレベルを持つ人同士の格差。もう一つは、スキルレベルが異なる人同士の格差だ。現在の米国における失業や雇用上の不平等は、スキルレベルが低い人に起こりやすい状況にある。
これが、育った地域と将来格差について私が研究している理由だ。今の米国ではどの学校に行ったかでその後の将来が決定づけられやすい。格差は子どもの頃から始まっている。雇用政策だけで雇用の質を改善するのは不可能で、雇用格差をなくすにはスキルレベルの差をなくすことを始めないといけない。雇用主だってスキルのない従業員は雇いたくないだろう。
トマ・ピケティは富裕層に対する課税強化を提案しているが、これには根本的に反対だ。最も重要なのはトップへのアプローチではなく、ボトムを教育し、チャンスを与えることだ。
──具体的に必要なことは。
公立学校のシステムをドラスチックにテコ入れすることが必要だ。教師の質を向上させ、生徒が学校にいる時間を延長する。そして、どの地域にいる生徒に対しても期待値を高く設定することだ。最初から期待値が低ければそのレベルにも達さなくなってしまう。だが、残念なことに政治家の多くが教育改革は必要だと知りながら実際は動かない。
格差が広がれば米国は競争力を失う
──政治家に教育改革を働きかけることはないのですか。
もちろんやっているが一筋縄ではいかない。まず政治家にとって教育改革は手間がかかる割に得票につながりにくい。教員組合や各種業界団体など反対勢力も多い。たとえば、テキサス州の学校で登校期間を延長する取り組みを行ったとき、州の観光協会から猛烈な反発を受けた。子どもが学校にいる時間が長くなると、バケーションに行く時間が減るからという理由だ。
──格差が広がり続けた場合、米経済にどう影響しますか。
ローマ帝国のように米国もいつかは競争上の優位性を失うだろう。問題は、米国は自ら改革し、こうした課題を解決し続けられるかだが、現時点ではその兆候は見えない。
──アメリカンドリームは消えうせたのでしょうか。
そうとは考えたくないが、夢を実現するには努力するだけでなく、就職しやすい大学に入るなどスマートさが必要になったのは確かだろう。つまり、アメリカンドリームも変わり始めているということだ。
ただ、私のような例は米国でしか起こらない。6月にオバマ大統領に会った際、「私のような男が大統領に会えるのはこの国だけだと思います」と伝えたら、「私のような男が大統領になれるのもこの国だけだ」と答えてくれた。これが米国でも例外中の例外ということになれば、私たちは本当に岐路に立たされていることになる。
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