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Tohazugatali Economic Review

1489とはずがたり:2014/02/08(土) 09:26:56
>アベノミクスのなかでしばしば出てくるのは、GNI(Gross National Income:国民総所得)という概念である。1人当たりGNIを10年で150万円増やす、という目標が政府の成長戦略のなかに盛り込まれている。
輸入型の内需主導型社会を知らん間に作り上げてた日本は円安誘導で実質所得が減ってる気がするんだけど。此迄投資してきた分は円安で投資効率が凄い高まりそうだけどこれからの投資は円安で厳しくなるね。

2013年7月1日
伊藤元重
今なぜ「GDP」ではなく「GNI」が日本経済にとって重要なのか?
http://diamond.jp/articles/-/38153

アベノミクスの成長戦略にも
盛り込まれる「GNI」

 アベノミクスのなかでしばしば出てくるのは、GNI(Gross National Income:国民総所得)という概念である。1人当たりGNIを10年で150万円増やす、という目標が政府の成長戦略のなかに盛り込まれている。

 経済成長を論じるとき、これまではGDP(Gross Domestic Product:国内総生産)という概念が使われていた。これをGNIに置き換えたということは、成長戦略の意味を考えるうえでも重要な意味を持っている。

 GDPとは、国内で生産される付加価値の総額のことである。経済成長率は、通常、このGDPの実質の伸び率のことを意味する。たとえば、2013年第1四半期(1月〜3月)の経済成長率は4.1%であった。これは年率換算して、日本のGDPが実質4.1%で伸びたということを意味する。

 ところが、同じ時期のGNIの伸び率は2.3%にすぎない。GDPの成長率ほどにはGNIが成長していないことがわかる。

「生産」ではなく「支出」が重要なわけ

 GNIは、国内総生産であるGDPに、2つの要素を加えて計算される。ひとつは、海外の投資収益であり、もうひとつは交易条件の変化である。

 海外の投資収益とは、海外から流入した収益から、海外に流出した収益を引いたネットの額である。日本国内の生産活動でなくても、海外への投資から得られる収益は国民の所得となる。日本は海外に膨大な投資を行ってきた。そうした投資からの収益を多く確保することは、日本国民にとっての利益となる。この部分がGDPには含まれていないが、GNIには含まれているのだ。

 GNIのもうひとつの重要な要素は、交易条件の変化である。一般の人には「交易条件」という概念はなじみがないかもしれない。これは、日本が海外と貿易するときの輸出と輸入の交換比率を表したものである。

 単純化して言えば、輸出財の価格と輸入財の価格の比率のようなものである。交易条件がよくなるというのは、日本からの輸出財が高く評価される、あるいは輸入財が安くなることを意味する。

 現実の世界では、輸出される財やサービスにも、輸入される財やサービスにも、いろいろなものが含まれている。そこで交易条件は、輸出財物価指数と輸入財物価指数の変化の差で表される。輸出財物価指数のほうが輸入財物価指数よりも高くなっているときは、それだけ日本の交易条件は改善していることになる。逆に輸入財物価指数のほうが高くなっているときには、交易条件は悪化していることになる。

 GNIとは、日本の国民がどれだけの支出レベルを確保できるかという所得概念である。日本が海外から輸入する原油や食料品が安くなるほど、日本の実質所得は高くなると考えられる。一方で、日本から輸出される製品の価格が海外で高く評価されれば、それだけ日本の所得水準は高くなる。交易条件がGNIの重要な要素となるのだ。

海外投資の収益改善が日本経済の成長にとって重要

 日本経済をグローバルな視点で考えれば、GNIという考え方が重要になることは明らかだろう。日本企業は海外に積極的に投資をしてきた。こうした投資の収益はGDPには貢献しない。しかし、海外で高い収益を確保できれば、GNIに対しては貢献する。

 日本の経済成長を考える上で、国内での生産活動だけに限定することはできない。それどころか、今後の日本が順調に成長するためには、拡大する海外市場での収益機会を最大限に活用することが必要となる。つまり、GNIのなかの投資収益が重要な意味を持つのである。

1490とはずがたり:2014/02/08(土) 09:28:23
>>1489-1490
 日本は長期にわたって経常収支の黒字を続けてきた。経常収支が黒字であるということは、それだけ海外に投資していることを意味する。経済指標でも、経常収支の黒字は「海外に対する債権の純増」とも呼ばれる。

 残念ながら、海外に投資してきたわりには、日本の海外からの投資収益は小さい。海外のリスク資産に積極的に投資して高い収益をあげている米国とは異なり、日本の海外資産の多くは低金利の債券である。より高い投資収益をあげられるよう、積極的に企業による直接投資を拡大するとともに、国民の潤沢な貯蓄資金も高収益が見込める投資に向かうことが期待される。

 交易条件についても、日本経済のパフォーマンスはけっしてよいものではない。近年、日本の交易条件は悪化傾向にあるようだ。この背景には2つの要因が考えられる。

 ひとつは、日本から輸出される家電製品のような工業製品が、韓国などの企業との価格競争に巻き込まれ、高い付加価値を確保できないという点だ。そしてもうひとつは、石油や天然ガスなどの輸入価格が高くなっていることだ。輸出される商品の価格が低迷し、輸入する資源の価格が高くなることで、日本の交易条件は悪化している。それは日本のGNIを低迷させ、国民生活を圧迫することにつながる。

 成長戦略との関連で交易条件を考えれば、その政策的な含意は明らかである。ひとつは、海外からの資源やエネルギーの輸入コストをいかに低くするかということだ。資源の調達コストを下げ、国内の電力改革などを進めてより効率的なエネルギー利用を進めることが政策課題としてあげられる。

 より高い価格での輸出を可能にするためには、企業の対応が重要となる。韓国勢などとの安易な価格競争に陥ることなく、より付加価値の高い製品を供給する仕組みを構築していくことが、産業構造のあり方も含めて重要な課題となる。この点については、いずれ詳しく論ずる予定である。

ぺんぺん草事件

 交易条件の持っている意味を確認するために、過去の事例をひとつ取り上げておきたい。いわゆる「ぺんぺん草事件」の話だ。

 戦後初期、当時の川崎製鉄(現・JFEスチール)が、千葉に高炉を建設する計画を持っていた。川崎製鉄にとってそれは悲願であったが、膨大な投資コストをかけることに意味があるかどうかについては、さまざまな論議があった。

 当時、日本の政策に絶大な影響力を持っていた一萬田尚登日銀総裁はこの計画に強く反対したhttp://www.h6.dion.ne.jp/~tanaka42/keieisha.html。八幡製鐵や富士製鐵(ともに現・新日鐵住金)のような業界最大手であればまだしも、川崎製鉄のような会社が高炉を持つのは無謀であるというのだ。そんな投資をしても「ぺんぺん草が生えるのがおちだ」といった発言があったらしく、ぺんぺん草事件という名前がついたようだ。

 一萬田総裁の論理は明快である。当時の日本では鉄鋼には比較優位はない。そんな分野に膨大な資金を投じて生産を増やしても意味はない。それよりは日本が比較優位をもっている繊維製品の生産を拡大したほうがよい、というものであった。

 鉄鋼に限らず、一萬田総裁は、新規産業を育てることには否定的であったようだ。当時はまだ幼稚産業であった自動車産業を育成しようとする通商産業省(現・経済産業省)の政策にも批判的であった。

 結論から言えば、一萬田総裁の見方は間違っていた。たしかに、当時、日本は繊維産業に比較優位があった。しかし、そうした製品の生産をいくら拡大しても、製品を世界中に安売りするような結果にしかならなかっただろう。つまり、それによって日本の交易条件が改善することはありえない。

 しかし、鉄鋼、家電、自動車などが、戦後の経済発展のなかで有力な輸出産業として成長したことは、日本の交易条件を大幅に改善することに役立ったのだ。日本の労働力を利用して生産するのに、繊維製品だけではたいした付加価値はあげられないが、鉄鋼や自動車が日本の主力産業に入ることで、より高い付加価値を確保することができたのだ。

 戦後の日本の産業発展は、こうした産業構造の変化にともなう交易条件の変化を抜きにして語ることはできない。次回以降で日本のグローバル化と成長戦略の関係について議論するが、そこでは高付加価値化や交易条件が重要な意味を持つことになる。


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