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Awake

170Awake 14話(15/18):2013/12/19(木) 03:20:21
「だから俺の想いをお前自身に向けたものじゃないと判断した……? ふざけるな……」
「ネイサン……?」
「十年前のあの日、カルパチアの麓でお前が俺のために泣いてくれた優しさは忘れない!
修行中、そして戦闘になった時、死にそうに怯えている俺に、いつも手を差し伸べてくれ
たお前の安堵した貌は本物だった! そんなに自分を卑下しないでくれ。必要以上に虚勢
を張らないでくれ」
 もっとも殆どの他人には、ヒューが自分自身を卑下しているとは到底思われないだろうが、
己の能力に恃み、誇示し続けるのはまさしく他者の評価を懼れ、自身を否定されたくない
と思っている者の証左であると、ネイサンにとっては解っていた事であった。
 しかしそれはヒューの本来の人格さえも覆い隠してしまうほど、周りの期待が幼い身を徐々
に蝕んでいった結果によるもので、やがて己の行動規範すらも他人の目から見て違和感が
無いかどうかで判断する様になって行く過程を、ネイサンは十年間共に過ごした事で何度も見
てきた。
 だからこそ自分よりも優っていても守りたい、必要とあれば諫めてでも援けたいと思う
ようになったのを、言葉を紡ぐごとに改めて感じていった。
「俺がお前の傍にずっといるから。外に向けて虚勢を張るんだったら……いつでも聞くか
ら」
「お前、それは友情の中で考えても良いんじゃないのか? 何も恋情が介入するものでは
無かろうに、同性だぞ? 死刑が怖くないのか?」
「駄目なんだ、何度もそれは考えた。だけど俺は他人には見せない俺にだけ見せるお前の
姿が愛しい。独り占めしたい。お前と生きていく時間が長ければ長いほど、お前の痛みが
深まれば深まるほど救われた立場なのに護りたいんだ、欲しくなるんだ」
 渇望した。狂おしいほど渇望し手に入れたいと何度も願った。自分でも驚くほど言葉を
詰まらせず言えた事にネイサンは、目の前の相手がどのような表情を見せようと長年の苦衷を
込めて切々と言葉を重ねた。
「それに、独占したいなんて感情のどこに友情が介入するように見えるんだ? 確かに俺
は常にお前との間に対等で理性のある関係を持ちたいと思っているけど、それだけじゃ済
まないんだ俺にとってのお前という存在は」


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