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番外編投下用スレ

2崇月院なゆた ◆POYO/UwNZg:2019/03/20(水) 18:57:36
『異邦の魔物使い(ブレイブ)』一行がリバティウムを離れ、王都キングヒルへ向かってからのこと。

「ミハエル・シュヴァルツァー。まだ臍を曲げているのか? いい加減に機嫌を直したらどうだ」

魔族が根城にしている廃墟の一室で、いまだにむくれている金獅子へ兇魔将軍イブリースが声をかける。
金獅子ミハエルはイブリースを一瞥すると、フンと鼻を鳴らした。

「別にいいだろう、仕事はしているんだ。……まだなんの進展もないが。
 雲を掴むような話さ、バカバカしい。こんなことより、さっさと連中を――」

「………………」

「……わかってるよ、わかってる」

ミハエルはここぞとばかりに不満をぶちまけようとしたが、イブリースの額の第三の眼に睨まれて沈黙した。

「世界チャンピオンというのは強情でなければ務まらんのか? まあいい。
 ならばだ、ミハエル・シュヴァルツァー……これをやろう。これでも食べて怒りを鎮めろ」

そう言うと、イブリースはどこからか小さな布包みを取り出した。
鋭い爪の生えた指先で布を取ると、中には桃色の四角い食べ物らしきものが二切れ入っている。
ミハエルはしげしげとイブリースの手の中のそれを眺めた。

「これは?」

「我々魔族の好物だ。嗜好品の域を出んが、物事に集中したりする場合に摂ると効率がよくなる。
 オレもよく喰う。貴様もきっと気に入るだろう」

「ふぅん……」

ミハエルは桃色のそれを右手の人差し指と親指でつまんだ。プニプニしていて柔らかい。
さらにミハエルはにおいを嗅いだり、ためつすがめつ見回してみる。

「毒など入っていない。せっかく喚んだ貴様を殺す理由などオレにはないしな。
 ま……モンスターとブレイブで同じものを喰って、紐帯を深められればということだ」

「……いただきます」

正真、イブリースはミハエルを気遣ってそう言っているようだった。
そこまで言われるとさすがに断りづらい。ミハエルはピンク色のそれを口に入れた。
咀嚼して味わってみると、モチモチした食感が何とも言えず心地いい。仄かな甘みがあり、まずくはない。どころか――

「……おいしい」

「だろう」

イブリースは小さく笑った。
それにしても、この食べ物はいったい何だろう? 少なくともドイツ版のブレモンには実装されていなかった気がする。
それとも、ミハエルがこの世界に来てから新たに追加されたのであろうか。
ミハエルの頭の中で、この謎の食べ物についての考察がなされていく。
人ならぬ存在、魔族が好む甘味。世界中の神話や伝承でそれが当てはまるもの――

「もしかして、これは……神々の食べ物アンブロシア? あの、神々の飲料ネクタールと共に語られるという……。
 そうだ、間違いない! ははッ……まさか、こんなところで神の食べ物を味わうことになるなんてね!」

ギリシャ神話に語られるアンブロシアとネクタール。
インド神話ではアムリタとも言われる、神々の飲食物である。その味は天上の甘露であり、不死の力を授けるという。
そんな食べ物を思いがけず口にした幸運に、ミハエルは愉快げに笑った。

が、イブリースの反応は鈍い。ミハエルを見て怪訝な表情を浮かべている。

「……アンブロシア? なんだ?」

「アンブロシアじゃないのか? じゃあ、この食べ物はいったい?」

ミハエルが訊き返す。イブリースは自分の手の中に残った一切れを大事そうに布に包んでしまい込むと、

「すあまだが……」

と言った。




※註 ブレイブ&モンスターズ!本編とはまったく関係ありません


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