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変身ロワイアルその6

86480 YEARS AFTER(5) ◆gry038wOvE:2018/03/09(金) 18:47:24 ID:H/vzgqzw0



【『探偵』/オープニングの広間】



 朝倉リク、と呼ばれた男が目の前にいた。
 オレンジのシャツに、デニム生地のジャケットを着た、童顔の男性。おちゃらけた印象もなければ、真面目すぎるという事もなく、普通の小学生くらいの子供がそのまま体だけ大人になったような印象さえ受ける。
 おれたちは、オープニングの広間に灯りをつけて、そのリクという男を前にしていた。彼はその広間で灯りを探していたらしかった。
 当然ながら、そこに人を運んだり、スポットライトがつけられたりしていたのだから、ここには何らかの形で電気が通っているのが自然だ。彼もこの場所を探検していたというわけである。

『彼がそう、私が呼んだ少年』

 ……正直、もっと頼りがいのある奴を想像していたが、それは桜井花華同様に未熟な印象を覚えさせるタイプだった。
 随分と平均年齢が低いパーティだ。HARUNAがもし、おれより年下ならば、おれが一番最年長という事になる。子供は苦手だと何度も言っている通りだが、そんなおれが面倒見良く彼らに引率しなければならなくなるわけだ。適材適所とは程遠い。
 彼は、おれたちに向けて、恐縮そうに挨拶をした。
 ベリアルの息子などという肩書と共に差し出されたが、普通の人間の形をしている時点でその肩書も疑わしい。そもそもどう見ても日本人じゃないか。

「あの……こんにちは。朝倉リクです」
「ああ……あんたは――ベリアルの息子って本当なのか?」
「えっと、確かに僕は、ウルトラマンベリアルの息子だけど――僕のいた世界はこことは、違う歴史を歩んだみたいで……」

 彼は少しどもった。
 どういう奴なのかわからないが、薄く笑ったままどもっていて、人見知りのような感じを覚えさせた。おれと同じく、コミュ障などと呼ばれるカテゴリの、おれとは別のコミュ障なのかもしれない。
 ……いや、考えてみればおれが威圧的だから驚いたという線もあるか。初対面を相手に過大な態度でマウントを取ろうとしてしまうのはおれの悪い癖だ。
 自分の身長と痩せた顔が少しばかり初見に優しくないのをつい忘れてしまう。
 HARUNAが言った。

『――“彼”は、ベリアルの遺伝子情報を持つ人物として私が見つけ出したわ。彼がいたのは、変身ロワイアルの出来事そのものが認知されていない世界――もっと言えば、ベリアルが別の野望を果たし、別の形で散った世界から私の仲間が呼び寄せたのが、この朝倉リク』

 つまるところ、どちらにせよあのカイザーベリアルの息子と云えど、厳密にはおれたちが憎むべき相手とは程遠いというわけだ。
 ただ、遺伝子的には全く一致しているらしく、この世界へのゲートを渡る事が出来たという好都合な存在らしい。
 どうあれ、このリクという男からすれば、少々居心地が悪いかもしれない。
 珍しくHARUNAが心優しいフォローをした。

『まあ、ベリアルの息子といえど、性格はいたって温厚。かつてはその世界を守り抜いたウルトラマンの一人よ』

 それから、HARUNAはその世界に生じたクライシス・インパクトの存在や、ウルトラマンキングの存在などの話などを語りだしたが、おれには全くと言っていいほど興味がなかった。
 この男を信じるに値する説得力をよこしているつもりなのかもしれないが、それを説明するHARUNAさえ信じられないのだから、こんな話を聞いて何になると云える。
 結局のところ、誰が何を話そうが、あくまで参考程度だ。

「――で、そのまったく無関係な彼がここに来てくれた理由はなんだ。父親の尻拭いだとしても、違う世界の話なら、拭いてやる必要がないように思えるが」

 おれが気になるのはこの辺りだ。
 結局のところ、口で温厚だと言われても、おれにはどんな奴なのかわからない。
 花華やHARUNAの事でさえ、具体的にどんな奴と言われると――惑うところもある中だ。だが、花華は悪い奴ではないと思うし、HARUNAが嫌な奴なのはわかっている。それに対して、こいつがどんな奴なのかは全くわからない。
 リクのパーソナリティありきでないと話は進まなかったが、この質問にはリク本人が答えてくれた。


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