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変身ロワイアルその6
864
:
80 YEARS AFTER(5)
◆gry038wOvE
:2018/03/09(金) 18:47:24 ID:H/vzgqzw0
【『探偵』/オープニングの広間】
朝倉リク、と呼ばれた男が目の前にいた。
オレンジのシャツに、デニム生地のジャケットを着た、童顔の男性。おちゃらけた印象もなければ、真面目すぎるという事もなく、普通の小学生くらいの子供がそのまま体だけ大人になったような印象さえ受ける。
おれたちは、オープニングの広間に灯りをつけて、そのリクという男を前にしていた。彼はその広間で灯りを探していたらしかった。
当然ながら、そこに人を運んだり、スポットライトがつけられたりしていたのだから、ここには何らかの形で電気が通っているのが自然だ。彼もこの場所を探検していたというわけである。
『彼がそう、私が呼んだ少年』
……正直、もっと頼りがいのある奴を想像していたが、それは桜井花華同様に未熟な印象を覚えさせるタイプだった。
随分と平均年齢が低いパーティだ。HARUNAがもし、おれより年下ならば、おれが一番最年長という事になる。子供は苦手だと何度も言っている通りだが、そんなおれが面倒見良く彼らに引率しなければならなくなるわけだ。適材適所とは程遠い。
彼は、おれたちに向けて、恐縮そうに挨拶をした。
ベリアルの息子などという肩書と共に差し出されたが、普通の人間の形をしている時点でその肩書も疑わしい。そもそもどう見ても日本人じゃないか。
「あの……こんにちは。朝倉リクです」
「ああ……あんたは――ベリアルの息子って本当なのか?」
「えっと、確かに僕は、ウルトラマンベリアルの息子だけど――僕のいた世界はこことは、違う歴史を歩んだみたいで……」
彼は少しどもった。
どういう奴なのかわからないが、薄く笑ったままどもっていて、人見知りのような感じを覚えさせた。おれと同じく、コミュ障などと呼ばれるカテゴリの、おれとは別のコミュ障なのかもしれない。
……いや、考えてみればおれが威圧的だから驚いたという線もあるか。初対面を相手に過大な態度でマウントを取ろうとしてしまうのはおれの悪い癖だ。
自分の身長と痩せた顔が少しばかり初見に優しくないのをつい忘れてしまう。
HARUNAが言った。
『――“彼”は、ベリアルの遺伝子情報を持つ人物として私が見つけ出したわ。彼がいたのは、変身ロワイアルの出来事そのものが認知されていない世界――もっと言えば、ベリアルが別の野望を果たし、別の形で散った世界から私の仲間が呼び寄せたのが、この朝倉リク』
つまるところ、どちらにせよあのカイザーベリアルの息子と云えど、厳密にはおれたちが憎むべき相手とは程遠いというわけだ。
ただ、遺伝子的には全く一致しているらしく、この世界へのゲートを渡る事が出来たという好都合な存在らしい。
どうあれ、このリクという男からすれば、少々居心地が悪いかもしれない。
珍しくHARUNAが心優しいフォローをした。
『まあ、ベリアルの息子といえど、性格はいたって温厚。かつてはその世界を守り抜いたウルトラマンの一人よ』
それから、HARUNAはその世界に生じたクライシス・インパクトの存在や、ウルトラマンキングの存在などの話などを語りだしたが、おれには全くと言っていいほど興味がなかった。
この男を信じるに値する説得力をよこしているつもりなのかもしれないが、それを説明するHARUNAさえ信じられないのだから、こんな話を聞いて何になると云える。
結局のところ、誰が何を話そうが、あくまで参考程度だ。
「――で、そのまったく無関係な彼がここに来てくれた理由はなんだ。父親の尻拭いだとしても、違う世界の話なら、拭いてやる必要がないように思えるが」
おれが気になるのはこの辺りだ。
結局のところ、口で温厚だと言われても、おれにはどんな奴なのかわからない。
花華やHARUNAの事でさえ、具体的にどんな奴と言われると――惑うところもある中だ。だが、花華は悪い奴ではないと思うし、HARUNAが嫌な奴なのはわかっている。それに対して、こいつがどんな奴なのかは全くわからない。
リクのパーソナリティありきでないと話は進まなかったが、この質問にはリク本人が答えてくれた。
865
:
80 YEARS AFTER(5)
◆gry038wOvE
:2018/03/09(金) 18:47:40 ID:H/vzgqzw0
「……今回の事も僕にとって、関係ない事じゃないと思ったから。誰かが困ってるのも、誰かの存在が消えるのも――それを守れるのが僕たちだけなら、力にはなりたいし、こうして僕たちが動かなきゃ問題は解決しない」
「まあ確かに……こうしてきみが来てくれないとHARUNAもおれも困るだろうが、きみにリターンはないはずだ。バイト料も出ないだろう」
「それは……まあ確かにちょっと困るけど……。あ、でも、それを言ったら、あなただってバイト料は出ないし、無関係でしょう! あなたこそなんで来たんですか!」
確かにそうだ。返す言葉もない。
誰が一番関係ないかというと、事故同然でここに来たおれだ。
「――おれも来たくて来たわけじゃないが、それは確かに……一理あると云えるな。理由はそれぞれだ。……悪かった、まあ、きみの言わんとしている事はわかった」
考えてみれば、いわゆる「頼まれると断れない性格」というのはいくらでもいるし、それが自分にとってリスキーでも引き受けてしまうヤツはそこら中にいる。それを踏まえると、ごく普通の少年にしか見えない彼の方が、頼まれた事情を断らないリスクについて経験が浅く、こうしてここに来るのもわからなくはなかった。
そうでなくても、HARUNAの勧誘は拒否権がない。退路を断って無理やり協力させる事だって珍しくは無かろう。
自分にしかできない状況に使命感を覚えるというのもわからなくはない話だ。探偵が誰にでも務まる仕事だったのなら、おれはとっくに飽きていたかもしれない。
協力できるかはともかく、まあ普通のヤツなのは見ての通りのようだ。
これが演技だとするのなら相当凄いとしか言えない。
「……で、事情はおおよそ一割ほどわかったが、いずれにしろこうして揃ったからには、作戦を立てて良牙の殲滅をしろという話になるわけだが――これからどうするか考えてあるはずだろう」
おれは、仲間が全員揃ったところでHARUNAに訊いてみた。
主催者の息子である朝倉リクに、生還者の子孫である桜井花華、特異点の魔法少女HARUNAに、それから全く関係のないおれ。
こちらには一応の戦力が二名いるとして、響良牙に勝てる見込みの話というのが不明だ。
何しろ仲間の力も敵の力もさっぱりわかっていないし、あまりの事前研究不足の中で行き当たりばったりに世界の命運を託されている形になっている。
このまま「作戦なんてないわよ」「力づくでいくわ」などと、むちゃくちゃな事を言われて外に駆り出されたらどうしようかという不安がおれの胸に湧いた。
『作戦なんてないわよ――こちらの戦力は十分と言っていい。……力づくでいくわ』
……案の定だ。
などとあきれ果てた時だった――。
外から轟音が鳴り響き、強い危険の匂いを感じたのは――。
◆
さて。
……おれにはHARUNAが一体何を考えているのか、いまだにわからない。
可愛げのない機械的な指令をひたすらにおれたちに差し出してきて、その真意や目的、真偽すらもわからないまま引き返せない時間ばかりが過ぎた。
こんな存在がおれの中に入っている事それそのものがかなり不愉快だが、もはやなってしまった以上仕方ないと諦めるしかなかった。
艦内でだべっていたおれたちに、轟音が響いて、おれたちは次に外へ出て、遂に響良牙と出会う事になる。
その前に、キーワードを一度整理しよう。
今回のキーワードは次の通りだ。
・ベリアル
・朝倉リク
・響良牙との戦い
おれたちが向かうのは――響良牙がいる、C-8の花畑だ。
◆
866
:
80 YEARS AFTER(5)
◆gry038wOvE
:2018/03/09(金) 18:48:18 ID:H/vzgqzw0
【HARUNA/――これより少し前――】
……遂に時は来た。
八十年の隔絶によって、変わっていった時の流れ。
あるべき世界オリジナルと、派生した世界セカンド。世界は二つに分かれていた。
二つの世界は決して交わらず、それぞれ同じ人々から始まり、分岐し、どちらも平穏を大きく崩される事もなく動いていた。
高町ヴィヴィオが先んじて永眠し、花咲つぼみの命も僅かとなったいま、残る参加者は二人だけ――世界はそんな、誰も知らない危機に瀕しているのだ。
優勝者の願いによっては、今までバランスの取れていた世界は、いかようにも形を変えてしまう。
……勿論、八十年の中で多くの別の出会いを経て子孫を育んできた花咲つぼみが願いを叶えたのなら、彼女は世界の消失など望まない。
だが、もしその八十年を孤独に過ごした響良牙ならば、かつてそれを口にしたように、世界を消し去る願いを込めるだろう。
ほんのわずかな時間よりも、その前の長い日常や、その後の長い虚無の方が、彼への影響は大きかったに違いないのだから……。
そんな危機を知っていた私のソウルジェムは既に、数多の戦いによって、あと僅かで救済というところまで来ていた。
それまでに彼女には、私の力で――多元世界移動と多元世界誘導を能力とする私の魔法で、響良牙の願いを食い止めてもらわないとならない。
……たとえどれだけ憎まれたとしても、最悪の事態の前に、私は桜井花華を救ってみせる。
もし、このままセカンドがリセットし、元のあるべき世界が――それぞれ孤立した世界が求められていたのなら、セカンドにあったその先の歴史すべては根絶されてしまう事になる。
私は、すべてが手遅れになる前にその脅威からセカンドを救わなければならない。
桜井花華が消えた時間の中で、私のような迷子になってしまう前に……。
◆
867
:
◆gry038wOvE
:2018/03/09(金) 18:50:53 ID:H/vzgqzw0
投下終了です。
まったく予定になかったのですが、明日から「劇場版 ウルトラマンジード つなぐぜ! 願い!!」が公開するとの事で、宣伝のために登場させてみました。
元々いないはずの登場人物なので、他と比べるとあんまり話に絡まないかもしれませんがまあ、見られる方はぜひジードの映画もよろしくどうぞ。
868
:
名無しさん
:2018/03/09(金) 21:41:16 ID:Bm4fu2iM0
投下乙です!
まさかここで彼が登場するとは……でも確かにべリアルにとってはなくてはならない人物ですからね!
そして良牙との決着が迫るこの物語はどんなエンドマークを迎えるのか……?
869
:
名無しさん
:2018/03/22(木) 17:38:20 ID:FE2/s2to0
したらばの死者スレが4年ぶりに動いてたんだな
誰だか分からんが、こちらも投下乙!
870
:
◆gry038wOvE
:2019/08/06(火) 17:06:19 ID:l9/MeknI0
変身ロワ本スレの皆様、お久しぶりです。
長らくお待たせして大変申し訳ありませんが、今後諸事情によりエピローグの続きを掲載していく事が困難となってしまいました。
いつかは完成させたいと思ってはおりましたが、それが叶うかもわかりません。
仮に完成できるとしても、代筆・共作になったり、かなり後の話になってしまったり、あるいは台本形式などこちらの起こしやすい形になったりするかもしれないと思います。
その為、先んじてプロットのみを別サイトにて公開し、物語の結末をすべて明かす事にいたしました。
おそらく、この結末自体は2014年ごろから想定しており、その後の展開によって細部が決定したプロットであったと思います。
長い間お待たせして、このような形での発表になってしまう事をお詫び申し上げます。
プロットのみの先行公開という形での発表でも構わないという方のみ、お読みください。
よろしくお願いいたします。
当該サイトリンク。
ttps://privatter.net/p/4838230
※パスワードは「henshin」です。
871
:
名無しさん
:2019/09/04(水) 02:35:22 ID:mORytF0w0
プロット公開ありがとうございました。
こういう形の公開もパロ小説の落とし方としてはアリなんではないかと思います。
気になってた点も殆ど(ジード以外w)クリアになって、とてもすっきりしました。
(探偵の名前が〇〇〇〇〇、ってのはちょっとやり過ぎな気はしますがw)
おつかれさまでした。ありがとう。
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