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平成仮面ライダーバトルロワイアルスレ2
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当スレッドはTV放映された
平成仮面ライダーシリーズを題材とした、バトルロワイヤル企画スレです。
注意点として、バトルロワイアルという性質上
登場人物が死亡・敗北する、または残酷な描写が多数演出されます。
また、原作のネタバレも多く出ます。
閲覧の際は、その点をご理解の上でよろしくお願いします。
当ロワの信条は、初心者大歓迎。
執筆の条件は、仮面ライダーへの愛です。
荒らし・煽りは徹底的にスルー。
平成仮面ライダーバトルロワイアル@ウィキ
ttp://www43.atwiki.jp/heisei-rider/pages/1.html
前スレ
ttp://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1288082693
避難所
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/14262/
2chパロロワ事典@wiki
ttp://www11.atwiki.jp/row/
執筆の際は、以下のページを参照にしてください
ttp://www43.atwiki.jp/heisei-rider/pages/30.html
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これにて投下終了です。
反応が遅れたり、色々とご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。
また何か問題があれば報告して下さると幸いです。
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あ、すみません、また言い忘れてました。
タイトルはそのまんま「第一回放送」で結構です。
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投下乙です。
まさかキングが主催陣かよぉぉぉぉぉ!! というかリマジ世界のラウズカードって……
ていうか地味にキバ世界ディスってんじゃねぇ!
で、禁止エリアは1度に2つずつか……あれ、タワーと病院封殺ってあそこって人集まる算段になっていた筈じゃ……(いやそれ故か)
1つだけ質問なんですがタイトルは?
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リロ忘れ……
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あれ、予約過ぎているんじゃ・・・
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すいません、延長されていましたね
見落とし失礼しました
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一条薫、桐矢京介、小沢澄子、小野寺ユウスケ、相川始の投下を開始します
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太陽が沈んだ夜空に飛ぶ、数多もの飛行船。それら全てに巨大なスクリーンが取り付けられており、デスゲームの途中経過を告げられる。
それだけで無く、この世界に存在するパソコンのスクリーンやテレビ画面も、情報を伝える役割を担っていた。それはこの一軒家も例外ではない。
そこに映し出されたのは、キングと名乗った金髪の少年。彼は、こちらを小馬鹿にしたような態度で、死人を読み上げていた。
キングの表情からは、人の死に対する罪悪感や悲しみといった感情が一切感じられない。むしろ、楽しんでいるような気配すら感じられる。
しかし、一条薫の中ではそれに対する憤りよりも、別の感情が強くなっていた。
(この六時間で、既に二十人もの命が奪われているとは……)
彼は憤りを感じている。自信の無力さと、この戦いによる犠牲者を大勢出してしまった事に。
その中には先程、未確認生命体第三号の暴虐から自分達を庇った照井竜も含まれている。かつて金の力を手に入れた五代すらも圧倒した三号と戦っては、こうなることは予測出来た。
極めて当然の結果。しかし一条は、そんな言葉で割り切る事など出来なかった。
警察という職業に就いている以上、人の死というのは数え切れないほど見ている。どれだけ頑張っても、救えない命や届かない思いもあった。故に、数え切れないほどの無念や罪悪感を抱いている。
だが、それに溺れる事は決して許されない。ここで足を止めてしまっては、これから救えるかもしれない命が救えなくなる。
何よりも、それは彼らに対する冒涜となる。
「アクセルドライバー……か」
不意に一条は、照井の遺品であるアクセルドライバーとアクセルメモリを手に取った。彼の生きる世界では街を守るヒーローであった『仮面ライダー』になるための力。
アクセルを象徴する深紅の色は、まるで照井の中に宿る熱い炎のようだった。これが今ここにあることは、自分が彼の意志を継いで戦わなければならない事。
第三号との戦いでは、度重なるダメージによって変身が解除されてしまい、再度変身を行おうとした。だが、何の反応も示さない。
一度しか使えない道具ではないはずだ。それならば、彼は平和を守る事など出来ない。大ショッカーが、何かしらの細工を仕掛けた可能性がある。
何にせよ、使うにはタイミングが必要だった。
思案を巡らせていると、部屋の扉が開く音が聞こえる。振り向くと、支給されていた服を纏っている桐谷京介が立っていた。
「桐谷君か」
「一条さん……大丈夫ですか?」
「ああ、俺なら大丈夫だ」
「そうですか……良かった」
一条は、何処か浮かない表情をしている京介に、出来る限り強く答える。
ここまで逃げ出してから、一条は京介に対して全てを伝えた。照井を見捨ててしまった事を、間宮麗奈が異形の怪物であった事を。
そして、狙ったように訪れた大ショッカーの放送。それらの事実によって、京介は愕然としたような表情を浮かべる。しかし彼は気丈に立ち直った。
ここには師匠であるヒビキ、同じ鬼であるあきらがいる。だから、挫けるわけにはいかないと告げて。
しかし一条は、彼一人に無理をさせるつもりは無かった。彼はその若さ故に強がっている可能性もある。強い意志は感じられるが、ここにはあの第三号だっていた。
だから、自分が頑張らなければならない。ここで倒れてしまっては、照井や五代雄介を侮辱する事になってしまう。彼らは未確認を前にしても、決して挫けたりはしなかった。
「一条さん……ごめんなさい、俺が弱いせいで」
「君が気を病む必要はない。生きていてくれた……それだけで、充分だ」
「でも、俺のせいで照井さんが……!」
「それは、俺にも責任がある」
京介の言葉を一条は強く遮る。
されど、その声には何処か優しさが込められていた。まるで五代雄介が、未確認によって笑顔を奪われた者を諭す為に告げる言葉のように。
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「俺には力が足りなかった……だから、あの人を死なせてしまう事になってしまった。だが、ここで止まっている場合ではない」
「そうですけど……」
「俺達がやるべき事は、これ以上犠牲を出さない事……そして、あの人の仲間に死を伝える事だ」
照井と同じ世界から連れてこられた人々。
私立探偵であり、仮面ライダーとなって多くの人々を守るために戦っている左翔太郎。
多くの知識を持つ彼の相棒、フィリップ。
二人が勤める事務所の所長、鳴海亜樹子。
残されてしまったこの三人に、照井の事を伝えなければならない。彼の残した思いを、彼が抱いていた信念を。
「その為にも、俺達は生きなければならない……だからこそ、この命は残っているんだ」
「……そうですよね、一条さんの言うとおりです」
「ならば、その為にも行動をしなければならない。こうしている間にも、犠牲者は増えていくかもしれないからだ」
「はい!」
それぞれ互いに、力強い言葉を交わし合う。
それぞれの荷物を纏め、一条が先導する形で家を出た。ドアを開けた先では、辺りの暗闇が一層増している。
規則的に並ぶ電灯は光を放つが、夜の中では圧倒的に足りない。B−2号の襲撃を再び受ける可能性は充分にある。
しかも今はたった二人なので、一切の警戒を緩める事は許されなかった。
(照井警視長……私は、貴方が残してくれたこの命を絶対に無駄にはしません。桐谷君も、この命に代えても守ってみせます)
夜空を見上げながら、一条は今は亡き照井竜にそう告げる。
殉職の制度により、彼は『警視』から『警視長』に二階級特進する事になった。だからこそ、より一層の敬意を払わなければならない。
彼の勇気ある行動で、自分達はこうして生きていられるのだから。
(貴方がやり残した事は……私が責任を持ってやり遂げてみせます。貴方が示してくれた『仮面ライダー』の道を歩いて)
大ショッカーが世界崩壊の原因だと告げた存在である仮面ライダー。
しかし照井と京介は、危険を顧みずにそれが人々を守る戦士であると教えてくれた。仮面ライダーとは、五代雄介のように心が清く強い戦士。
そんな思いが芽生え始めた一条の懐では、アクセルドライバーとアクセルメモリが赤い輝きを放っている。
◆
小沢澄子の身体を乗っ取ったスパイダーアンデッドは、体を動かしていた。
先程この女を支配して、同行者である男達を殺そうとする。しかし小沢はまだ意志が残っていたのか、スキッドスモッグのカードを読み込ませた後に戦場から去った。
だが、抵抗もそれまで。既に小沢の四肢は自分の思うがままで、身体の疲れも癒えている。別に構いはしないが、宿主の肉体に不調があれば戦いで予想外の事態が起こりかねない。
そして、辺りは夜の暗闇で覆われていた。参加者を襲うには格好の条件が揃っている。
スパイダーアンデッドは闇の中を進む最中、二つの足音を捉えた。それを聞いて、反射的にレンゲルバックルを構えながら隠れる。
物陰から見ると、先程戦場から逃げ出した二人組の男が歩いていた。赤い仮面ライダーに変身した男と、銀色の仮面ライダーに変身した小僧。
まさか、こんなにも早く再び遭遇出来るとは。しかも一度戦った相手だから、戦闘スタイルの予測も容易。恐らく戦いの疲れも癒えているかもしれないが、闇討ちを仕掛ければ何の問題もない。
スパイダーアンデッドは小沢の腰にレンゲルバックルを添えて、その中に自身が封印されているカードを挿入。待機音が響く中、レバーを引いた。
『OPEN UP』
目前に現れた青いオリハルコンゲートを潜り抜ける。すると、仮面ライダーレンゲルへの変身が一瞬で完了した。
そしてレンゲルは、脇腹から五枚のラウズカードを取り出す。ハートとスペードのキングとクイーンをそれぞれ二枚ずつ取り出し、宙に放り投げた。
最後の一枚であるテイビアリモートをレンゲルラウザーに読み込ませると、杖から四つの光が飛び出す。それはアンデッドが描かれた絵柄と接触すると、カードの封印が解かれた。
一瞬で、四枚のラウズカードに封印されていたカテゴリーキングとカテゴリークイーンがこの世界に姿を現す。
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パラドキサカマキリの始祖たるカテゴリーキング、パラドキサアンデッド。
コーカサスオオカブトの始祖たるカテゴリーキング、コーカサスビートルアンデッド。
蘭の始祖たるカテゴリークイーン、オーキッドアンデッド。
ヤギの祖たるカテゴリークイーン、カプリコーンアンデッド。
この内三体には一度あの二人を襲わせて、圧倒的戦力差を思い知らせた。戦闘スタイルは読み取られているかもしれないが、それはお互い様。
何より奴らも、ダメージがある程度残っているはずだ。それに加えて数と戦闘力における有利。一分経過すれば自動的に消滅するようだが、これで勝てない道理など無い。
ふと、視線を感じる。どうやら、奴らはこちらに気付いたようだ。電子音声が原因かもしれないが、関係ない。
一瞬で片を付ければ良いだけの話。そう思いながら、レンゲルはアンデッド達を率いて物陰から飛び出した。
◆
自分達を守るために、照井竜が死んだ。間宮麗奈が、未確認生命体や魔化魍のような化け物だった。
その事実が、桐谷京介の心を責めている。自分の力が足りなかったせいで照井を始めとした、大勢の人が死んだ。自分が守ろうとした女性は怪物だった。
それらの何もかもが、嘘だと思いたかった。しかし全ては夢ではなく、現実と受け止めなければならない。
もしも師匠であるヒビキやザンキ、同じ鬼であるあきらだったらこんな事にならなかったはず。自分は無力だ。
後悔してはならない事は分かっているが、それでも気持ちは沈んでしまう。でも、いつかは乗り越えなければならない。
あの第三号って奴がまた現れた時、こんな気持ちのままでは一条さんの足を引っ張ってしまう。それはもっと嫌だった。
『OPEN UP』
そう自分に言い聞かせて気持ちを奮い立たせようとした瞬間、京介の耳に電子音が響く。
反射的に彼は、俯いていた顔を上げた。すると、その先には緑と金の装甲を輝かせている『仮面ライダー』が見える。
それは記憶に新しい、照井を殺した相手。未確認生命体が変身したあいつだ。
そう思った瞬間、奴の背後から四つのシルエットが飛び出してくる。それらの姿は一瞬で明らかになった。
奇妙なカードから現れた、魔化魍のように醜悪な怪物。しかも今度は、植物の蘭を思わせるような装飾が全身に付いた怪物まで増えている。
相手は同時に飛びかかってきた。それを見て、京介は反射的に変身音叉を懐から取り出す。
その先端で壁を叩いて、清らかな音を鳴らした。そして、額に翳して全身を青い炎で包ませる。彼はそれを右腕で力強く払った。
払われた火炎から現れた京介は、桐谷京介であり桐谷京介ではないもう一つの姿。仮面ライダー強鬼とも呼ばれる銀色の音撃戦士、京介変身体。
不意に、彼は隣に視線を向けた。そこに立つ一条薫も既に、仮面ライダーアクセルに姿を変えている。
それを確認した彼は、目の前より襲いかかる照井竜の仇を仮面の下で睨み付けた。
◆
小野寺ユウスケは、たった一人で悲しみに沈んでいた。
現在地点、D−2エリア。ン・ダグバ・ゼバとの戦いで目覚めた、究極の力による厄災から橘朔也や日高仁志を巻き込まない為に単独行動を選んだ。
そこからダグバを倒すために、行くアテもなく彷徨う。もうこれ以上、犠牲者を出さないと決意して。
その最中、一旦装甲車から降りて、ユウスケは特に意味もなく空を見上げていた。
そんな彼に突き付けられたのは、大ショッカーによる第一回放送。
「夏海ちゃん……海堂……ッ!」
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彼の声は震えていた。この六時間もの間で、既に二十人もの犠牲者が出ている事に。
その中には、旅の仲間である光夏海や橘の後輩である剣崎一真、ヒビキの先輩である財津原蔵王丸も含まれている。
そしてもう一人、ユウスケに強い衝撃を与える名前があった。この世界で初めて出会った、もう一つの『555の世界』に生きるオルフェノクである海堂直也。
奴は言動に一貫性が無く、どうにも胡散臭い雰囲気を感じさせる。しかし自分の事を助けに戻ったので、少なくとも悪い奴ではないはずだった。
そんなあいつがもういない。海堂だけでなく、同じ世界に生きる木場勇治や園田真理も殺されている。
信じたくない。嘘だと言って欲しい。無理だと分かっていても、そんな思いがユウスケの中で広がっていく。
「畜生……ッ!」
みんなを守るために仮面ライダークウガとなったのに、誰も守る事が出来ない。むしろ、犠牲者を増やしている。
その事実が、ユウスケの中に宿る憎悪を強くさせていた。殺し合いを仕組んだ大ショッカーやダグバを始めとした殺戮者達。そして、無力な自分自身に対して。
不意にユウスケは、夜空を見上げる。そこに広がる闇が、まるで自分自身を象徴しているかのように見えた。
憎しみに身を任せたまま暴力を振るう、忌むべき未確認生命体と全く変わらない自分。こんな身体となっては、誰かを守る事なんて出来るわけがない。
「俺は……何も出来ないのかよ」
みんな頑張っているはずなのに、自分だけこんなザマだ。士も、海東さんも、ヒビキも、橘さんも、名護さんも、みんなの為に戦っているのに。
世界に生きるみんなの笑顔を守ると、姐さんに誓ったのに。でも、大ショッカーの仕掛けた戦いの犠牲者が出てしまっている。
それどころか、今でさえダグバの凶行を許しているのかもしれない。それがたまらなく嫌だった。
「……ん?」
意気消沈している中、ユウスケの耳に音が聞こえる。金属同士の激突や、壁が破壊させる音。そして飛び交う怒号。
それに反応して、ユウスケは振り向く。その先では、三人の仮面ライダーと『剣の世界』の怪人であるアンデッドが、戦いを繰り広げているのは見えた。
『剣の世界』に存在する仮面ライダーレンゲルがアンデッドを率いて、他の二人を襲っているように見える。『響鬼の世界』で戦っている銀色の鬼と、見知らぬ赤いライダー。
ユウスケはそれを見て腰にアークルを出現させ、すぐさま駆けつけようとした。
――なんだ、まだ怖くなってないの? クウガ
しかし、彼の動きは止まってしまう。あの凄惨な戦いの中で告げられた、ダグバの言葉を思い出してしまって。
――アイツがダグバと同じ力を持っている、それはつまりアイツもダグバと同じ事が出来るという事だ。その力が俺達に向けられたらどうする?
――きっと、ダグバはこれからも小野寺を追いつめる為に他の参加者を殺し続けるだろう……今よりも憎しみと怒りに支配された小野寺と戦う為に……だが、その果ては……
――破滅しかない――ということか
そして究極の力を恐れていた、橘とヒビキ。そうだ、この力を使ってしまえば罪のない者も巻き込んでしまう。
だからここでクウガになっても、獣のように暴れ回るだけ。今の自分は未確認となんら変わらない存在だからだ。
横槍を入れた所で、あそこにいるみんなを殺す事になってしまうだけ。
(でも、ここで俺が行かなかったら……ッ!)
赤と銀のライダー達は、次第に追い込まれていくのが見えた。
このままではまた犠牲者が増えてしまう。今、自分の力が必要とされている。ここで行かなければ、彼らが殺されてしまう。
しかし自分が行った所で何になるのか。確かにアンデッド達は倒せるかもしれないが、仮面ライダー達を巻き込むかもしれない。
それで犠牲者が増えてしまっては、本末転倒だ。
(でも……でもっ!)
本当の気持ちと自分に宿る脅威という現実が、心中で激突する。
この力で、みんなを守りたい。この力で、みんなを犠牲にしたくない。そのどちらもが、ユウスケの中で強くなっていく揺るぎない思い。
人々の事を思うからこそ生まれてくる二つの感情。それらがせめぎ合う中、レンゲルとアンデット達の攻撃が激しさを増す。
自分は一体何をやっているのか。もしもここにいるのが仲間達なら、迷わず戦っているはずなのに。
また、ダグバの時みたいに人々を死なせてしまうのか? 海堂だってあのカブト虫の怪人を相手に一歩も引かずに、戦った。
なのに自分は、こうして言い訳して人々を死なせてしまうのか? そんなのは、絶対に嫌だ。
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「……あああああああああああああああ!」
やがてユウスケは、叫びながら走り出す。罪のない人々の笑顔を守るために。
ここで立ち止まっても、あそこで戦っているみんなが傷つくだけ。あのクウガの力は、何としてでも押さえながら戦わなければならない。
難しいかもしれないが、やってみるしかなかった。
「変身ッ!」
アークルに埋め込まれた霊石が、眩い輝きを放つ。すると、ユウスケの身体が一瞬で変化していった。
古代より蘇った、グロンギと戦い続けた赤い装甲を纏うリントの勇者。仮面ライダークウガ マイティフォームへと。
鎧と同じ色の瞳を輝かせながら、クウガは疾走した。
◆
力も数も、圧倒的に不利。それは前の戦いで明らかになっていたし、今だって変わらない。
加えて今は、未確認のような怪物が一体だけ増えている。だがそれでも、ここで逃げる事は出来ないし逃げる事は許されなかった。
何より照井警視長を殺した目の前の『仮面ライダー』から逃げるという事は、彼の侮辱に他ならない。
だからアクセルの鎧を身に纏って戦うしかなかった。
レンゲルの握るレンゲルラウザー、コーカサスビートルアンデッドが振るうオールオーバー、オーキッドアンデットが放つ蔦。アクセルはそれら全てを回避しながら、反撃の機会を窺っていた。
まともに正面からぶつかっても、勝てる見込みは零。唯一の可能性は、あの司令塔と思われる『仮面ライダー』を叩けば怪物達にも何らかの影響が及ぶかもしれない。
そう思ったアクセルは、勢いよく走り出した。途中、コーカサスビートルアンデッドとオーキッドアンデットの攻撃が迫るも、膝を低くして回避する。
直後、彼の頭上でアンデッド同士の武器が激突する甲高い音が響いた。チャンスが芽生えたと確信したアクセルは、握り拳をそれぞれの鳩尾に叩き込む。
10トンもの威力で、アンデッド達の身体は地面を転がる。そんな仲間達の事など見向きもせず、レンゲルは杖を構えながら走っていた。
その手に一枚のカードを収めて。
『STAB』
ラウズカードがレンゲルラウザーに読み込まれ、蜂の紋章が浮かぶ上がる。輝きを放つそれは一瞬で、杖の先端に吸い込まれた。
レンゲルはそれを掲げて、上から叩き付けてくる。アクセルは横に飛んでそれを回避するも、敵の攻撃は止まらない。
がら空きになったアクセルの脇腹に、二合目が叩き付けられる。鈍い轟音と共に鎧に傷が刻まれ、身体が吹き飛ばされた。
道上を数回転がった後、何とか立ち上がろうとする。しかし、痛みがそれを阻害した。
この一撃の威力は、先程までとは比べ物にならない。恐らくあのカードには、戦闘に役立つ効果があるのだろう。
しかしそれが分かったところでどうにもならない。元々、優劣はあちらに傾いているのだ。その上でまだ装備を出されては、勝利への道が見えてこない。
「一条さん!」
どうしたものかと考えていたアクセルの耳に、声が響く。振り向くと、京介変身体が自分の隣にいた。
銀色の仮面で顔が見えないが、声からして狼狽している事が感じられる。
「大丈夫ですか!?」
「ああ、俺なら大丈夫だ!」
そんな彼を不安にさせないようにアクセルは力強く答えて、敵に振り向いた。
敵は五体。しかもその誰もが、二対一で戦っても絶対に勝てる相手ではない。
このままでは、絶対に殺されてしまう。かといって、打破出来る状況がまるで浮かばない。
ここで京介変身体を逃がそうとしても、彼の性格からして絶対に受け入れないだろう。何より自分一人など、奴らは簡単に突破出来るはずだ。
しかも、レンゲルは怪物を更に召喚する可能性だって高い。それで強制的に数で押し切られたら終わりだ。
一体どうすればいいのか。アクセルの中でそんな思いが強くなる中、敵は一歩ずつ迫り来る。
その時だった。
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「おおおおおりゃあああああぁぁぁぁぁぁ!」
突如として、戦場に響き渡る絶叫。それを耳にして、アクセルは反射的にそちらへ振り向く。
すると、仮面の下で一条の目が見開いた。そこに現れたのは、自分と京介変身体を飛び越えて、炎を纏った跳び蹴りをレンゲルに放つ赤い戦士。
昆虫のクワガタを模したような二本角、火炎のように赤く染まった瞳と全身、腰に輝くベルト。何から何まで、自分のよく知る存在だった。
2000の技を持つ男、五代雄介が未確認生命体と戦うために得た姿、クウガ。警察から『未確認生命体第4号』のコードネームが与えられた勇士、仮面ライダークウガ。
彼の蹴りは、相手を砕かんと一直線に進む。しかし、すんでの所でオーキッドアンデットが動き、レンゲルの盾になるように立つ。
結果、マイティキックはオーキッドアンデットを吹き飛ばすだけに終わってしまった。
蹴りの反動でクウガは僅かに宙を舞って、地面に着地する。そのまま、こちらに振り向いてきた。
「まさか……君は……!」
「逃げてください! あいつは俺がやります!」
こちらの言葉に応えることなくクウガは前を向いて、勢いよく突進する。そんな彼に目がけて、アンデッド達は殺到。
しかしクウガは、反撃に出た。コーカサスビートルアンデッドが振るうオーバーオールを避けて、頭部に握り拳を叩き付ける。
パラドキサアンデッドの体当たりを回避し、がら空きになった脇腹にハイキックを繰り出す。
オーキッドアンデットマイティキックを繰り出した場所を狙うように、ストレートを放つ。
カプリコーンアンデッドの手刀を左手で受け止め、もう片方の手でアッパーを放って吹き飛ばす。
全てが神速の勢いで行われていた。歴戦の戦士としての圧倒的な力、それでいて誰かを守ろうとする優しさ。それら二つを感じさせる戦闘スタイルは、まさに彼のものだった。
「一条さん、あの人は一体……?」
「五代だ」
「えっ?」
「俺と同じ世界に生きる奴だ……未確認生命体と今まで戦い続けてきた、五代雄介だ」
クウガの勇姿を前に、アクセルは呟く。
古代より蘇った、五代がクウガと呼ぶ戦士。自分が生きる世界における、唯一無二の存在。
彼はレンゲルが振るう得物を、両手で押さえた。気がつくと、レンゲルが呼び出したアンデッド達は既に一人残らず消滅している。
だが、それに構う事はせずに彼らは睨み合い、そこから背後に飛んで距離を取った。クウガは腰を低くし、レンゲルは二枚のカードを取り出す。
「はあああぁぁぁぁぁぁぁ……!」
『RUSH』
『BLIZZARD』
『BLIZZARD CRUSH』
クウガの気合いを込める声と、レンゲルラウザーから発せられる電子音声が発せられる。そこから互いに勢いよく疾走し、同時に跳躍した。
クウガの足に帯びた灼熱と、レンゲルの両足から放たれる吹雪が互いに激突しながら、両者の距離が縮んでいく。
刹那、封印エネルギーとアンデッドの生み出すエネルギーが空中で衝突。そこから両者は拮抗し、轟音と共に大量のエネルギーが周囲に拡散する。
しかしそれはほんの一瞬で、次の瞬間には凄まじい大爆発を起こした。圧倒的な爆風によって大気は揺らぎ、その衝撃がアクセルと京介変身体に襲いかかる。
それでも彼らは吹き飛ばされないように、足元を踏ん張った。耳を劈くような轟音はすぐに止んで、辺りに静寂が戻る。
周囲に大量の粉塵が舞い上がる中、アクセルは前に踏み出した。戦いは終わったのかもしれない。だが、五代と第三号は一体どうなったのか。
五代が奴を倒したのかもしれないが、まだ生きている可能性もある。何よりも、ようやく合流出来た五代と話をしなければならない。
そう思いながら進む彼の周りに漂う埃は、風によって流された。それを浴びるアクセルの装甲が分解され、一条は元の姿に戻る。
数歩進んだ後、彼の足は止まってしまった。
「何……?」
そこに倒れていたのは、一人の男。しかし自分がよく知る男ではない。自分や五代よりも、若々しい雰囲気を放つ青年だった。
一条はその周りを見るが、五代の姿はない。だとすると、今の第四号はこの青年が変身していた?
一瞬だけその可能性を思いつく。だが、戦士クウガがもう一人いたなどという話など、今まで聞いた事がない。
「一条さん! ちょっと見てください!」
京介の声が聞こえてきて、アクセルは振り向く。そこに立つ彼は既に変身を解除しており、元の姿に戻っている。
その背には、見知らぬ一人の女性が背負われていた。しかも、婦警の制服を身に纏っており、自分や照井と同じ警察官である事を証明している。
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「その方は一体……?」
「分かりません。この人、向こうに倒れてたんです。ちょうど、あの『仮面ライダー』が吹っ飛んだ辺りに」
「何……!?」
一条の中で、更なる謎が芽生えた。
五代と思われていたクウガに変身していた男が、五代ではない見知らぬ青年だった事に。第三号と思われていたレンゲルに変身していたのが、見知らぬ婦人警察官だった事に。
この二人が一体何者なのか。クウガに変身していた青年はともかく、レンゲルに変身した彼女の素性はまるで分からない。一体何故、自分達を襲ったのか。
出来るならば、危険人物でない事を信じたい。どうやら、二人には話を聞く必要があるようだ。
「とにかく、この二人から事情を聞かなければならない。桐谷君、いいかな?」
「はい、俺は大丈夫です!」
「すまないな……なら、これからD−1エリアの病院に向かおう。君はその女性を頼む、私はこの青年を背負おう」
「分かりました!」
行動方針を決めた彼らは、現れた二人の荷物を纏める。一条はクウガに変身していた男の支給品を、京介はレンゲルに変身していた女性の支給品を、それぞれデイバッグに収めた。
荷物が増えるが、鍛え上げた彼らにとっては大した事はない。しかしその最中、一条は疑念を抱く。
それは、レンゲルに変身するための道具と思われるあのバックルが、無かった事だ。そして、あのカードも一枚たりとも見つからない。
周りを見渡すが、全く見あたらなかった。
「あの、どうかしたのですか?」
「いや……あれが見あたらないんだ、あの『仮面ライダー』に変身するために使ったと思われる道具が」
「えっ……? あっ、本当だ」
京介も辺りを探すが、見つからない。もしも破壊されているのならばいいが、あれが誰かの手に渡ったりなどしたら危険だ。
だが、ここであまり探してばかりもいられない。この二人がもしも自分達に協力してくれるのであれば、このままにしてはいけなかった。
何よりも、京介の疲れも癒す必要がある。
「……いや、今はこの二人を優先しよう。何とかして、事情を聞かなければならないからな」
「そうですね……」
そして一条は、名前も知らぬ青年を背負って歩き出した。彼の後ろを付いていくように、京介も歩く。
彼はまだ知らなかった。ここで見つけた二人が、ある意味では自分と深い関わりを持つ事を。
一人は小沢澄子。未確認生命体が撲滅されてから、未来の世界より連れて来られた警察官の一人。
もう一人は小野寺ユウスケ。一条がもっとも信頼を寄せる男と、同じ名前を持つ男。
そんな彼らが一条の存在を気付いたら、どうなるのか。まだ誰にも分からなかった。
【1日目 夜】
【D−2 市街地】
【共通事項】
※D−1エリアの病院に向かい、小沢とユウスケから話を聞こうとしています。
※D−2エリア 市街地にZECTの装甲車@仮面ライダーカブトが放置されています。
【一条薫@仮面ライダークウガ】
【時間軸】第46話 未確認生命体第46号(ゴ・ガドル・バ)撃破後
【状態】疲労(中)、ダメージ(中)、罪悪感、仮面ライダーアクセルに2時間変身不可
【装備】AK-47 カラシニコフ(対オルフェノク用スパイラル弾入り、残り15発)@仮面ライダー555、 アクセルドライバー&アクセルメモリ@仮面ライダーW
【道具】支給品一式×3、名護のボタンコレクション@仮面ライダーキバ、車の鍵@???、照井の不明支給品、アタックライドカードセット@仮面ライダーディケイド、ガイアメモリ(スカル)@仮面ライダーW、
おやっさんの4号スクラップ@仮面ライダークウガ 、ユウスケの不明支給品×2(確認済み)
【思考・状況】
1:桐谷と共に、D−1エリアの病院に向かう。
2:鍵に合う車を探す。
3:照井の出来なかった事をやり遂げるため『仮面ライダー』として戦う。
4:一般人は他世界の人間であっても危害は加えない。
5:五代、桐谷や照井の知り合いと合流したい。
6:未確認への対抗が世界を破壊に導いてしまった……?
7:照井と同じ世界に生きる者に、照井の死を伝える。
8:この二人(小沢、ユウスケ)は一体……?
【備考】
※ 『仮面ライダー』はグロンギのような存在のことだと誤認しています。
※ 『オルフェノク』は『ある世界の仮面ライダー≒グロンギのような存在』だと思っています。
※ 対オルフェノク用のスパイラル弾はオルフェノクにほぼ効きませんが、有効なものであると勘違いしいています。
※ 『仮面ライダー』の定義が世界ごとによって異なると、推測しています。
※ 麗奈の事を未確認、あるいは異世界の怪人だと推測しています。
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【桐矢京介@仮面ライダー響鬼】
【時間軸】最終回後
【状態】疲労(中)、ダメージ(中)、京介変身体に2時間変身不可、罪悪感
【装備】変身音叉@仮面ライダー響鬼、コルト・パイソン+神経断裂弾(弾数0)@仮面ライダークウガ、アビスのデッキ@仮面ライダーディケイド、トリガーメモリ@仮面ライダーW、ガルルセイバー(胸像モード)@仮面ライダーキバ
【道具】支給品一式×5、不明支給品×0〜1、着替えの服(3着分)@現実
ゴオマの不明支給品0〜1、三原の不明支給品(0〜1)
【思考・状況】
1:人を守る。
2:化け物(イマジン)が気になる。
3:一条と共にD−1エリアの病院に向かう。
4:響鬼達との合流を目指す。
5:照井を見捨ててしまった事に罪悪感。
6:麗奈が化け物だった事に愕然。
【備考】
※名簿に書かれた『財津原蔵王丸』の事を、同名の他人だと思っています。
※ 『仮面ライダー』の定義が世界ごとによって異なると、推測しています。
※
【小野寺ユウスケ@仮面ライダーディケイド】
【時間軸】第30話 ライダー大戦の世界
【状態】疲労(大)、ダメージ(大)、気絶中、ダグバへの激しい怒りと憎しみ、仮面ライダークウガに2時間変身不可
【装備】アマダム@仮面ライダーディケイド
【道具】無し
【思考・状況】
0:…………(気絶中)
1:ダグバを倒す。誰も巻き込まない様にする為1人で行動する。
2:もしもの時は士に自分を殺して貰う。
3:海堂直也は、現状では信じている。
4:殺し合いには絶対に乗らない
5:もう1人のクウガか…………
【備考】
※デイバッグの中身は確認しました。
※『Wの世界』の人間が首輪の解除方法を知っているかもしれないと勘違いしています。
※ガイアメモリが全員に支給されていると勘違いしています。
※おやっさんの4号スクラップは、未確認生命体第41号を倒したときの記事が入っていますが、他にも何かあるかもしれません(具体的には、後続の書き手さんにお任せします)
※カードセットの中身はカメンライド ライオトルーパー、アタックライド インビジブル、イリュージョン、ギガントです
※ライオトルーパーとイリュージョンはディエンド用です。
※インビジブルとギガントはディケイド用のカードですが激情態にならなければ使用できません。
※アルティメットフォームに変身出来るようになりました
【小沢澄子@仮面ライダーアギト】
【時間軸】本編終盤(第46話終了後以降)
【状態】健康、疲労(中)、不快感、仮面ライダーレンゲルに2時間変身不可
【装備】無し
【道具】無し
【思考・状況】
1:…………(気絶中)
【備考】
※真司の支給品のトランプを使うライダーが居る事に気付きました。
※龍騎の世界について大まかに把握しました。
※スパイダーアンデッドの精神支配から開放されました。
◆
-
レンゲルバックルは、宙を飛んでいる。先程戦った仮面ライダー達から逃れるように。
かつて上城睦月がスパイダーアンデッドの脅威から逃れようと、レンゲルバックルを捨てた事が何度もあった。
しかしその度に、レンゲルバックルは彼の手元に戻っている。しかし今回はこれまでとは違い、人間達から逃げるために飛んだ。
理由は、あの女を操って先程襲った二人を仕留めようとした瞬間、妙な赤いライダーが現れた故。しかもその戦闘力は高く、上級アンデッド達をいとも簡単に蹴散らした。
これでは、あそこに留まっていても破壊されてしまう可能性があり、小沢の身体を捨てて逃亡を選ぶ。別に替え玉などいくらでもいるからだ。
そう思いながら、スパイダーアンデッドはレンゲルバックルを動かして逃亡を続ける。しかし、それは一瞬で阻まれてしまった。
視界の外から突如、何者かが自分の事を掴んだため。
◆
「何かと思ってみたら……まさかお前だったとはな」
辺りの暗闇が増した頃、D−4エリアで相川始は一人で立っていた。
東京タワーで見知らぬ女の死体を見つけてから捜索を続けていたが何も見つからず、最終的には離れる事を選ぶ。
その矢先に、近くの映像機器が突然起動して大ショッカーの放送が告げられた。しかも、そこに映し出されていたのはかつて自分を弄んだ、スペードのカテゴリーキング。
何故、奴が大ショッカー側についているのか。恐らく大ショッカーが奴を解放したのだろうが、何のために。
――僕の知り合いに、戦えない全ての人々を守る、とか何とか言ってた御人好しな仮面ライダーが居るんだ。
――けど、そいつもこの六時間で呆気なく死んじゃった。多分、他にも似た様な事言ってる奴は居たんだろうけど。
――コレ、どういう事か分かる? ……簡単な話さ。所詮、口だけの正義の味方なんて何の役にも立ちはしないって事。
疑問が増えていく中で告げられたのは、キングによる侮蔑。
恐らく奴は、この世界で起きている戦いを見ている。それは自分は剣崎も例外ではない。剣崎は誰かを守るために、命を散らせたのだろう。
それをキングは侮蔑した。奴の言葉は正しいのかもしれないが、到底許せる事ではない。
上等だ。お前が自分達をゲームの駒としたいのなら、精々それに従ってやる。だが、例え自分が生き残ったとしても、その後は再び封印するまで。
キングへの憎悪が芽生えていく中、彼は遠くから何かが飛ぶを見つける。目を凝らしてみれば、それはクローバーのカテゴリーAが封印されている、上城睦月が扱っていたレンゲルバックルだった。
始はそれを掴んで、自分の物としていた。この場では、一つでも多くの戦力を持った方が良い。
「カテゴリーA……力を貸して貰うぞ、消えたくなければな」
スパイダーアンデッドはその力で、多くの人間を操ってきた。しかし始はアンデッド、それも特に力が強いジョーカーであるため通用しない。
それが分かっているのか、レンゲルバックルも特に抵抗はしなかった。不意に、始はレンゲルバックルを開いて中を確認する。
すると、彼は微かに目を見開いた。
「これは……」
レンゲルバックルの中に入っていたラウズカード。そこにはクラブだけでなく、剣崎の物であったスペードのラウズカードが含まれていた。
それだけでなく、自分自身の切り札としていたハートのラウズカードも全て存在していた。それが意味するのは、彼がワイルドカリスへの変身を可能とさせる事。
かつて剣崎一真がジョーカーとして暴走しようとしている始を救う為、集めたその力。それが今、再び一つに集まった。
しかし始は、剣崎の願いを裏切る事になってしまう。だが、後悔はない。
守らなければならないかけがえのない存在を、この手で何としても守るために、修羅の道を歩む。
死神の道は未だに闇で覆われていた。
-
【1日目 夜】
【D-4 道路】
【相川始@仮面ライダー剣】
【時間軸】本編後半あたり
【状態】罪悪感、若干の迷いと悲しみ、キングへの怒り。
【装備】ラウズカード(ハートのA〜6)@仮面ライダー剣、ラルクのバックル@劇場版仮面ライダー剣 MISSING ACE、レンゲルバックル@仮面ライダー剣、ラウズカード(クラブA〜10、ハート7〜K、スペードの7,8,10〜K)@仮面ライダー剣
【道具】支給品一式、不明支給品×1
【思考・状況】
1:栗原親子のいる世界を破壊させないため、殺し合いに乗る。
2:もしも優勝したら、キングを再び封印する。
3:当面は左翔太郎の前では、カリスに変身しない。
【備考】
※ラウズカードで変身する場合は、全てのラウズカードに制限がかかります。ただし、戦闘時間中に他のラウズカードで変身することは可能です。
※時間内にヒューマンアンデッドに戻らなければならないため、変身制限を知っています。時間を過ぎても変身したままの場合、どうなるかは後の書き手さんにお任せします。
※左翔太郎を『ジョーカーの男』として認識しています。また、翔太郎の雄たけびで木場の名前を知りました。
※東京タワーから発せられた、亜樹子の放送を聞きました。
※スパイダーアンデッドの精神支配は通用しません。
以上で、投下終了です
矛盾や疑問点などがありましたら、ご指摘をお願いします。
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投下乙です。
一条とクウガが遭遇か……今のユウスケはかなり精神的にキツイだろうけど吉と出るか凶と出るか。
そういや作品中時間的に8時少し前だと思うが2時間もの間ユウスケは落ち込みながらも牙王の追跡をかわしていたんだなぁ。
で、レンゲルことスパイダーは逃げたは良いけど始に確保されたか……
1つ気になったんですが、今回の戦闘した場所はD-2ですよね。
幾ら何でもカードに封印された状態のバックルがほんの一瞬でD-4まで移動というのは出来るものなんでしょうか?
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投下乙です。
五代がライアルになってしまった一方で、ユウスケは一条さんと合流か。
一条さんとの接触でユウスケが悩みを触れ切れるようになればいいけど……
ってあれ、牙王はユウスケを追跡してたのに今回ノータッチ……?
二点ほど気になる箇所が。
まず、放送に関してですが、「クウガの世界」という単語や、「クウガの世界の殺害数が断トツ」だとか言われて、
実際にクウガの居る世界の住人である一条さんが反応を示さないのは少し不自然かな……?と思いました。
もう一つは、>>968でも言われていますが、流石にレンゲルバックルが飛び過ぎではないかと。
もう少し言えば、ここで何の苦労も無く始がハートのカードを全て揃えて、大幅強化されるのもどうかな、というのが正直な感想です。
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ご指摘ありがとうございます
それでは、指摘された点を修正して、修正スレに投下させて頂きますが、よろしいでしょうか?
一条さんのクウガの世界に関する反応、レンゲルバックルは逃走で話は終わり。始パートはカットの方向性で書く予定で
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アポロガイスト、浅倉威及びメタルゲラス分投下します。
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【C-5 ZECT秘密基地 06:21 p.m.】
D-5での激闘を終えたアポロガイストことガイは自らの躰を休めようと考えていた。
だが、憎き仮面ライダー共や殺し合いに乗った連中と遭遇すれば戦いになるのは必至、それは避けねばならない事だ。
最低でも全ての変身手段が再び使える様になる8時頃まで。
休息の場所として選んだのは少し前に見つけたC-5のビルの地下にあるZECT秘密基地。
地図に載っていない場所という時点で他の参加者が訪れる可能性はさほど高くはない。
また参加者が集結するであろうD-5の東京タワーの存在のお陰で盲点となりうる。
なお、東京タワーにはエリア1つ吹き飛ばす可能性すらある爆弾が仕掛けられている。
その威力が凄まじいものでC-5にすら届くとしてもビル地下に存在する秘密基地はシェルターの役目も果たしその被害を回避するには絶好の場所だ。
故にガイは休息の場所として此処を選んだのだ。
さて、秘密基地に到達したタイミングでモニターから我等が大ショッカーの有難い放送が流れてきた。
それを踏まえた上で今後の方針を改めて纏めておく必要がある。
「消えたのは20人、概ね順調という所か……」
ガイにしてみれば死者の名前自体はさほど重要ではない。
仮面ライダーディケイド一行の仲間である光夏海の退場が確認されてはいるが彼女は所詮力を持たない弱者、ディケイド達に影響を与える程度の存在でしかないだろう。
一方で世界別の殺害数のランキングも大きな情報であった。
クウガの世界が7人、剣、龍騎、キバの世界が各3人、カブト、アギトの世界が各2人という事だ。
偶然等を考慮してもクウガの世界が突出している事はわかる。
名簿の並びと空欄を見る限り参加している世界は11、1世界に4〜7人参加していると考えて良い。
クウガの世界からの参加者が最大人数である7人であればこの数字も納得――という事にはなり得ない。
同じ様に7人参加している世界が存在する以上、その世界にすら大きく差を付ける理由が存在する事になるからだ。
更にいえばクウガの世界からの参加者が7人という事すら確定情報ではないのだ。
自身が知る仮面ライダークウガ小野寺ユウスケ、名簿の並びから考え(自分もそれに括られるのは忌々しいが)自身同様ディケイド一行と同じ扱いだろう。
それを踏まえ、クウガの世界が別に存在する事になり、その可能性があるのはユウスケと同じ名前を持つ五代雄介の世界と考えて良いだろう。
そしてその世界の参加者は5人。決して多いという数字ではないにも関わらず7人という成果を上げているという事は――
その世界の怪人であろうズ・ゴオマ・グ、ゴ・ガドル・バ、ン・ダグバ・ゼバが1人平均2〜3人仕留めたという推測が成される。
既にゴオマは退場したものの残る2人は健在。恐らく今後も働いてくれるだろう。
とはいえ、五代の世界がクウガの世界という事自体確定情報ではない。
それでも、クウガの世界の働きに関しては今後も念頭に置いておくべきだろう。
「しかし……何故小野寺ユウスケがクウガの世界ではなくディケイド達の仲間という扱いになっているのだ……」
ふとそんな疑問を感じるもののひとまずそれは置いておく。
一方で禁止エリアの確認も進める。
ガイから見て特筆すべきは東京タワーのあるD-5が禁止エリアとなった事だ。
参加者が集う上に爆弾まで仕掛けられているこの場所が禁止エリアとなる事が偶然によるものとは思えない。
大ショッカーは参加者共の動きを逐一把握した上でこの場所を選んだのだろう。
-
「となると……G-1の工場とE-4の病院にも大きな動きがあったと考えるべきだろう。仮面ライダー共の集結場所になっていたと考えるべきだ」
それを踏まえ、G-1とE-4が禁止エリアになったのも参加者の動きによるものだとガイは考えた。
「だが、そうなるとあまり派手な真似は避けるべきかも知れんな」
仮に今後長期的な計画で参加者を集める為の行動を起こしても放送の度に禁止エリアにされる可能性が高い。
これは殺し合いの打倒する側だとしても、参加者を一網打尽する側だとしても同じ事だ。
D-5が禁止エリアになった事で自身の策がほぼ潰された事を踏まえ、策を講じる時は先の事を考えた上でそうするべきだろう。
「仮に私が優勝……つまり忌々しいがディケイド達が優勝したらどうなるのだ?」
ふとそんな疑問が浮かんでくる。
他の世界が優勝した場合はその世界のみが存続し他の世界が消える――そこまでは良い。
だが、自分を含めたディケイド達はそうはいかない。
自分を含めたディケイド達5人は全員別の世界からの出身だ。それら5つの世界全てが存続する――という事にはなり得ない。
「私としてはディケイド達の世界を存続させる必要などないと思うのだが――」
自分が勝ち残り優勝する分には一向に構わない。だがディケイド達の世界を存続させてやる必要もない。
ガイとしてはそこの部分がどうにも引っかかったのだ。しかし、
「いや、恐らくは私如きでは考えも付かない深いお考えがあるのだろう。私は大ショッカーの意に従い事を成せば良い……」
とはいえすべき事が変わるわけではない以上、考えても仕方がない事だ。今は成すべき事を成すべきだろう。
「それにしても……あのキングという奴は何者なのだ……?」
放送を行ったキングについて考える。
仮面ライダーを侮辱する姿自体は別段構わないがあの態度はどうにも自分すら侮辱されている様な気すらする。
実際、この6時間成果を上げていない以上侮辱されても仕方がないがどうにも気に入らない。
何故偉大なる大ショッカーはあの様な輩を同志に加えたのだろうか? 何処の世界の奴かはどうでも良いが少なくとも相容れる存在だとは思えない。
大体、『一番強い』というフレーズ自体が問題だ。
頂点に立つのは大ショッカーの大首領であるべきなのだ、奴の世界ではそうだったとしても大ショッカーの中で偉そうな事を口にするなと言いたい所だ。
「まさかとは思うが、大ショッカーの乗っ取りを目論んでないだろうか? 杞憂であれば良いが……」
大ショッカーのする事に疑問を感じるわけではない。それでもキングという存在は獅子身中の虫としか思えない。
少なくても大ショッカーに益をもたらす存在では無いだろう。
現状どうこう出来るわけではないのは理解しているが気にせずにはいられない。
「そういえば……もう1人退場したキングがいたな」
その一方、名簿上にある既に退場したキングについて考える。先に遭遇した仮面ライダーキバこと紅渡の存在を踏まえキバの世界からの参加者という事は把握している。
だが、疑問を感じる。何故渡は自身の事をキングと名乗っていたのだろうか?
名簿を見れば渡とキングが別の人物である事は一目瞭然。放送前の時点で健在である可能性が高い以上、少なくても渡に名乗る理由が――
「もしや……キバはキングが死ぬ所に遭遇したのか? その上でキングを受け継いだというのか?」
ガイは、渡が死に際のキングに遭遇しキングの地位を受け継いだ可能性を考えた。
この仮説ならばあの時点で渡がキングと名乗った事に説明が付く。
また、サガークの存在も証拠の1つとなる。サガークはキバの世界に存在するものだと知っている。
そうそう都合良い展開になるとは限らないがサガークがキバの世界の参加者であるキングに支給される可能性は決して低くはない。
そのサガークをキングが渡に託したと考えればそれなりに筋は通るだろう。
「……が、そんな事などどうでも良い事か」
そう、キングと渡の事情など実の所どうでも良い話だ。
渡は仮面ライダーである事を捨て優勝を目指す為に戦っているのは理解した。
少なくても大ショッカーの望む事を行っている以上、ガイが妨害する必要は全く無い。
何れは倒す存在である事に違いはないものの、現状は奴に他の仮面ライダー共を倒させた方が色々都合が良いだろう。
-
「ともかく現状はもう少し身を休め……」
その時、何者かの殺気を感じた。
「なんだ? この気配……」
周囲を見回すものの誰かが侵入してきた様子はない。
「いや、まさか……」
と、あるものを取り出しつつ鏡を見る――
鏡の中で犀の怪物が何かを探していたのが見えた――
「まさか……アレは龍騎の世界の……」
考えられる可能性は1つ、龍騎の世界に存在するカードデッキの契約モンスターだ。
そして周囲に参加者がいない事を踏まえればデッキが破壊された事により契約から解放された野良モンスターだろう。
「だが、どういう事だ。この近くで戦いが起こった形跡は無かった。何故、奴がここにいるのだ?」
ZECT基地周辺で戦いが起こっていない事は確認済み。ならばここで契約が切れたのではなく、別の場所で契約が切れたモンスターがここまで移動したのだろう。
だがそれなら別の疑問が浮かぶ。何故犀の怪物――メタルゲラスはわざわざ自分のいる場所に来たのだろうか?
「もしやあの時……」
ガイは先の戦いの事を思い出す。
あの時の戦いで自身の持っていたシザースのデッキが破壊されその契約モンスターであるボルキャンサーが解放された。
だが、その時破壊されたデッキがもう1つあったのであれば?
ガイはその戦いの際、運良く手に入れたゾルダのデッキで仮面ライダーゾルダに変身し渡を含む3人の参加者に砲撃を仕掛けた。
その砲撃で未知のデッキを破壊したならばどうだろうか?
そのデッキの契約モンスターがデッキを破壊した自分を敵視してずっと追跡していた可能性は否定出来ない。
つまり、そのモンスターメタルゲラスは自分を襲撃せんとしているのではなかろうか?
「拙い……此方の変身手段があのメモリしか無い以上……」
かくして状況が一変する。消耗した今というタイミングで貴重な拠点での戦闘を避けた方が良いのは言うまでもない。
それ以上に可能であればモンスターは他の参加者にぶつけたい所だ。
故にガイは早々に上に戻りビルを出ようとする。外に置いてあるハードボイルダーでこの場所から離れるのだ。
そして、無事にビルに出てハードボイルダーのエンジンを回した時――
後方からバイクの近付く音が聞こえてきた。
視認こそ出来ていないが微かな威圧感を感じる。静かに後方へと視線を向けると――
「あの男……!」
ハードボイルダーで東京タワーへとやってきた蛇革のジャケットの男浅倉威だ。
「あのバイクは555の世界のバイクか……」
そう思うガイの思惑を余所に浅倉はガイへと迫っていく。
「奴め、ここで仕掛けるつもりか!」
消耗している状況に加えモンスターに追われている状況、ここでの戦いはリスクが大きい。
ガイは戦闘態勢に入らず、そのままハードボイルダーで離脱しようと走り出した――
浅倉は先の戦いでサイドバッシャーを手に入れた後、休息に適した適当な場所を探していた。
その途中で飛行艇が飛び回り放送が流れ出し、そのやかましさに苛立ちつつも耳を傾けていた。
浅倉にしてみれば誰が死のうがどの世界が成果を挙げていようがそんな事は基本的にどうでも良い。
ただ、禁止エリアだけは無視出来ない故にその場所を押さえておいた。
そして再び休める場所を探すべくC-5に入った所で――偶然ビルから出てハードボイルダーに乗ろうとするガイを見つけたのだ。
あのバイクは元々浅倉に支給されたもの、それに拘るつもりはないものの持ち逃げされている事を面白く思うわけもない。
故に浅倉はガイに仕掛ける事にしたのだ。
そんな浅倉の心中をガイが察する事もなく逃げ出そうとする、それが苛立ちの炎に油を注いだ。
これまでの戦いで消耗は激しいものの黙っていられるわけもない。故にガイを追跡すべくサイドバッシャーを加速させた――
-
【C-5 道路 06:38 p.m.】
「何とか振り切ったか……」
ビルの間を走り抜けながら浅倉の死角に入る事に成功しガイはそのまま草原を走り道路に到達した。
「しかし何だ……あの嫌な感じ……む!?」
そんな中、左斜め前方からサイドバッシャーが走ってくるのが見えた。
「くっ、まだ追ってくるか」
再び離脱しようとアクセルを回そうとするが、サイドミラーの奥にメタルゲラスが小さく映っているのが見えた。
「ちっ、龍騎世界のモンスタァ……」
バイクの速度は確かに早い。だが浅倉を振り切るべくビル街を右往左往したこともあり、メタルゲラスを大きく引き離す事は出来ないでいる。
自身を狙っているのであれば振り切る事は容易では無いだろう。
「流石に逃げ続けるわけにもいかんか……あのモンスターが1度でも此方に出てくれれば良いが……」
ミラーワールドにいるモンスターは一度現実世界に現れた場合、ある程度時間をおかなければ再び現れる事は出来ない。
故に1度でも現れれば幾らでも撒くことは可能だ。
だが、メタルゲラスの様子を見る限り此方を確実に襲えるタイミングを見計らっているのは明白。
つまり、此方が足を止めない限り出てくる事は無いという事だ。
「だがモンスターを出す為とはいえわざわざ襲われたくはないが……くっ、そうこうしている間に奴が来るか……待てよ」
この時、ガイの脳裏にある作戦が浮かび上がる。
「……モンスターを襲わせる相手なら目の前にいるではないか……後はそのタイミングを作る方法だが」
頭の中に周囲の地形や手持ちの道具を浮かべ、その方法を纏める――
その最中、サイドバッシャーに乗った浅倉が前方に現れる。
「貴様……何処の誰かは知らんが、我等大ショッカーに刃向かうつもりか?」
「お前等が誰かなんてどうだっていい……イライラするんだよぉ……」
別に交渉や話し合いなどするつもりなど全く無い。ガイは再びアクセルを回し走り出し早々に浅倉を抜き去って行く。
「逃がすかよ」
浅倉もまたガイを追いつめるべく再び走り出した。
只ひたすらにハードボイルダーは道路をひた走る。
一方のサイドバッシャーはその速さに追随――むしろ度々横に並び体当たりを仕掛けようとするが直撃する前に後方に下がるあるいは前方に進む為回避される。
そして態勢を整える間に再びハードボイルダーは抜き去っていく。
それを幾度か繰り返す内にカーブを曲がり更に2台は道路をひたすらに突き進む。
「そうだ、しっかりと付いてこい……貴様の墓場までな」
ガイは密かにサイドミラーを確かめつつスピードを適度に調整しつつ足を進める。
もう1匹の追跡者が見失わぬ様に自分達を追跡させるかの様に――
そしてガイの前方に大きな川が見える。
「見えたか……」
更にエリア1つを横断する程の長い橋も見える。
スピードを緩める必要は無い、加速してその勢いのまま橋へと――
だがその時、右横にサイドバッシャーが張り付いていた。此方が加速したのと同時に仕掛けてきたのだろう。
「!!」
ガイはすぐさま回避しようとする。だが、行動が一瞬遅れ――
サイドバッシャーの体当たりは見事に命中しハードボイルダーのバランスが崩れ道路から飛び出し――
加速していたスピードはすぐには抑える事が出来ず――
そのまま川へと飛び出していった――
――Cyclone!!――
そんな声が一瞬響いて――
-
【B-5 橋 06:43 p.m.】
そのまま浅倉は橋上を走る。
奴は川に落ちたのだろう。呆気なかったがそれでも少しは気が晴れ――
が、何か違和感を覚える――
何かがおかしい――
何故、川に落ちる音が聞こえないのだろうか――
そんな時だった――
前方から風が吹き込んで来たのは――
「何っ!?」
何かが飛び込んできた。直撃こそ避ける事が出来たが――
吹き荒ぶ強風により車体のバランスが崩れスピンする――
それでも何とかバランスを立て直す――
「今のは……あれは!?」
そして、前方に先程川に落とした筈のハードボイルダーが――
大空を舞っているのが見えた――
「何だ……アイツは……」
だが乗っているのは白服の男性ではなく緑色――
右上半身等一部に仮面ライダーを彷彿とさせ、同時に左上半身等一部に竜巻を彷彿とさせる怪人がいた――
「成る程、これがガイアメモリの力か!」
ガイは川へと飛び出す直前、懐からガイアメモリを取り出しそのまま首輪のコネクタに挿入した。
そのガイアメモリはT2ガイアメモリの1つサイクロン、
ガイアメモリに込められた『疾風』の記憶はすぐさまガイの全身を巡り――
ガイはサイクロン・ドーパントへと姿を変えたのだ。
当初の予定では変身して強化された力で強引に態勢を立て直し岸に戻るつもりだったが、サイクロン・ドーパントの力を実感し方針を変えた。
サイクロン・ドーパントの力で全身に強風を巻き起こし――ハードボイルダーごと空中を飛行したのだ。
無論、長時間飛行出来るものではない。だが、川に着水する前に態勢を立て直し地上――橋の上に戻る事は十分に可能。
かくして強風を全身に纏い浅倉へと突撃を仕掛けたのだ。本体の直撃を回避しようとも突風までは回避不能。その強風で浅倉の躰は大きく煽られるという事だ。
「ちぃっ……」
浅倉は何とか変身しようとする。だが、現状で唯一使える変身手段であるランスバックルはデイパックの中、バイクに騎乗している状態では一手間掛かる。
また、変身する隙など与えるわけもなくサイクロン・ドーパントは再度浅倉に突撃を仕掛けてくる。
その突撃を紙一重でかわすがやはり強風によってバランスが大きく崩れる――
いや、それだけではなくサイクロン・ドーパントが巻き起こす突風により川の水も巻き上げられ橋の上へと雨の様に降り注ぐ――
それにより路面は濡れバイクで走るには余りにも悪条件となっていった。
今はまだ良いが後数回仕掛けられれば限界が訪れる。
前述の通り回避で手一杯である以上変身は不可能、生身で直撃を受ければ命など無い。
更に言えば現在位置は橋の中間、岸までは大分距離がある事を踏まえると岸まで移動してから体制を整えるという事も難しい。
『切り札』が無い事も無いが、奴の波状攻撃を避けながら使うには難しく、逆に回避されれば窮地に陥るのは此方だ。
-
「手は無い……いや……」
浅倉は躰の奥底から『力』が湧き上がるのを感じた――
それは取り込んだ『恐怖』の『記憶』が生み出す強大な力――
通常の人間を遙かに凌駕し、仮面ライダーにも匹敵あるいは圧倒する絶大なる力――
「あるじゃねぇか……力なら……」
『記憶』は既に全身を巡っている。そのお陰で『それ』が持つ『力』は概ね理解した。後は――
「来い……」
それは誰に対しての言葉なのだろう?
「終わりだ、大ショッカーに刃向かった事を後悔するが良い!」
ハードボイルダーが浅倉へと向かっていく――
浅倉は今度は回避しようともせず――
――Terror!!――
躰の奥から声が響いた気がした――
「なんだ……今のは……?」
一体何が起こったのだろうか?
いや、冷静に思い出せ。今、自分は目の前の男に仕掛けようとしたが――
無意識の内に風を弱めスピードを緩めた――が、それだけでは命中は必至だった筈だ。
そう――気が付けば当たる筈だった標的が消え失せていたのだ。
「何処に消えたのだ……奴は?」
と、振り向くとそこにはサイドバッシャーを駆る者がいた――
但し乗っていたのは人間ではなく――
黒と金のマントを纏い、青き龍を模した王冠を乗せた――
帝王とも呼べる怪人がいた――
その名はテラー・ドーパント、『恐怖』の記憶が封じ込められたガイアメモリ、それによって変身した怪物である――
浅倉は本来の使い方ではなく、メモリを喰らう事で封じ込められた『記憶』と『力』を取り込み、その力を得たのである。
サイクロン・ドーパントの突撃の直前、浅倉は体内の記憶の力を引き出しテラー・ドーパントへと変身、
その瞬間に放たれる波動で一瞬サイクロン・ドーパントが怯み、同時にテラーフィールドを足元に展開しそれを通じほんの数メートル程移動する事で突撃を回避したのである。
「くっ……だがその力があっても……」
確かに目の前のテラー・ドーパントに気圧されている所はある。それでもサイクロン・ドーパントの力により空中を高速で舞えるこちら側がまだ優勢だ。
それに此方には『切り札』もあり、仕込みも済んでいる。
故に再び全身に風を纏い突撃を仕掛けようとするが――
「……頭のコイツが只の飾りだと思うか?」
テラー・ドーパントは念じる。それに応えるかの如く頭部の青い王冠が震え――
青き龍テラードラゴンとなってテラー・ドーパントから放たれた。
テラードラゴンは高速で飛翔、その勢いのままサイクロン・ドーパントへと向かっていく。
「なにぃっ!?」
先程も述べた通り今のハードボイルダーは周囲全体に強力な風を纏わせる事で強引に飛ばしている状態だ。
当然空中を自由自在というわけにはいかない。
故に自在に空中を飛び回るテラードラゴンに対しては圧倒的に不利と言えよう。
「くっ来させるか!」
それでも強風を展開する事で何とかテラードラゴンと距離を取ろうとする。
その一方でテラー・ドーパントは態勢を整えようとする。
「少々予定と違うがやるしか無い様だな」
-
一方でテラー・ドーパントはサイクロン・ドーパントから視線を逸らす事無くテラードラゴンが捕まえるのを待つ。
テラードラゴンが奴を捕まえ地上に降りた所で畳み掛ける。そう考えていたが――
突如としてサイドバッシャーが持ち上がっていくのを感じ――
そのまま倒されると共に放り出された――
何が起こったのか、テラー・ドーパントが前方を見るとそこには――
「北岡のモンスター……」
仮面ライダーゾルダの契約モンスターマグナギガが現れていた。
「だが……」
脳裏に疑問が浮かぶ。ミラーワールドに生息するモンスターが現実世界に現れる為にはガラスなどの写るものが必要だ――
しかし今マグナギガは何処から現れた?
川やサイドミラー? いや、その場所から現れる事はある程度予想出来る故に対処は出来る。
奴は不意打ちの様にサイドバッシャーの真下、あるいはすぐ傍から現れた。そんな所に写るものなど――
「そういうことか!」
「気付いた様だな愚か者め!」
先に説明した通り、サイクロン・ドーパントが川の水を巻き上げ橋上へと降り注がせた。
それにより路面が悪化した所までは説明した通り。が、意味はそれだけではない。
橋に降り注いだ川の水は水溜まりとなり、そこは鏡の様に空を映す――
そう、サイドバッシャーのすぐ前の水溜まりからマグナギガが現れそのままサイドバッシャーを持ち上げ倒させたのだ。
「おい、北岡をやったのはお前か!?」
テラー・ドーパントの怒号が響く、マグナギガを扱えるのはゾルダのデッキを持つ北岡秀一だけの筈。にも関わらず別の男がそれを使っている。
北岡が既に退場している事を踏まえると奴が北岡を倒しデッキを奪ったという推測は容易に出来る。
故に問いつめたのだ。北岡を仕留めたのが奴なのかを――
「だったらどうする? 仲間の仇討ちでもするつもりか?」
だがサイクロン・ドーパントは質問には答えず逆に質問を返す。
「奴は俺の獲物だった……それだけだ」
浅倉にとって北岡は自身の弁護士であり仮面ライダーの戦い以前から続く因縁の相手であった。
それ故に可能であれば自分が倒すつもりであった。
無論、倒される可能性は多分にある故そこまで拘っていたわけではない。しかし、倒したであろう敵が現れたとあって思う所が無いわけもなかろう。
「ふん、貴様の都合など知った事か」
そのやり取りの間もマグナギガはテラー・ドーパントに殴りかかる。
テラー・ドーパントはその攻撃を的確に受け止めていくが、
「それに相手が奴だけだと思ったのか?」
突如背後から別のモンスターがテラー・ドーパントに襲いかかってきた。
テラー・ドーパントの背後にある水溜まりからメタルゲラスが飛び出してきたのだ。
前方のマグナギガ、後方のメタルゲラスによって挟み撃ちにあいテラー・ドーパントは思う様に身動きが取れない。
その間にハードボイルダーはテラードラゴンから距離を取る事に成功し地面を滑走する。
そして加速を付け再び風を纏い空へと舞い上がり――
「これで終わりだ!」
2体のモンスターに阻まれ動けないでいるテラー・ドーパントへと突撃をかける――
直撃すればいかにテラー・ドーパントといえども只では済まない――
そして――
-
だがまたしてもハードボイルダーの突撃は空振りに終わった。
今度は怯むことなく仕掛けた筈、何が起こったのだろうか?
「むっ?」
見るとマグナギガの姿は確認出来るがメタルゲラスとサイドバッシャーも消えている。
いやそれどころか先程まで自分を追撃していたテラードラゴンの姿も見えない。
「何を惚けている?」
と、聞き慣れた男の声がした。声の方を向くとそこにはテラー・ドーパントが――
テラードラゴンが戻ったのか青い龍の冠も掲げている姿でそこにいた。
その間に1分という限界時間を迎えたかマグナギガの姿も消える。
「そうか、そのドラゴンもモンスター同様……」
テラードラゴンもミラーモンスター同様の制限が掛けられている事を察した。
それ故に限界時間を迎えたテラードラゴンはテラー・ドーパントの元へと戻ったのだろう。
そしてそのタイミングでテラーフィールドを展開しサイドバッシャー共々数メートル先に移動したのだろう。
「いや、だがそれならあのモンスターは何処に消えた?」
しかしそれではメタルゲラスが消失した理由が説明付かない。
出現した順番はテラードラゴン、マグナギガ、そしてメタルゲラスの順。
つまりマグナギガが消える段階ではまだ存在していなければおかしい筈だ。
「捜し物はコイツか?」
その問いに答えるかの様にテラー・ドーパントが1枚のカードを掲げる。
それはメタルゲラスの絵柄が描かれたカードだ。
「まさか……」
「ああ契約させてもらった」
その瞬間、テラー・ドーパントはサイドバッシャーと共にメタルゲラスもテラーフィールドに引きずり込み移動を行った。
その移動先で怯んでいるメタルゲラスに自身の持つ王蛇のデッキから1枚のカードを取り出し向けた。そのカードは――
――CONTRACT――
そのカードによってメタルゲラスは王蛇のデッキと契約を結ばされたという事だ。
「バカな……」
「コイツが俺を襲う事には気付いていたぜ。流石になかなか現れないからイライラさせられたがな」
実の所、浅倉はメタルゲラスが自分達を追いかけている事に関しては気付いていた。
元々メタルゲラスは浅倉が倒した仮面ライダーガイの契約モンスター、自分に復讐する為に襲う事ぐらい容易に推測が付く。
それ故に襲撃して来たならばすぐさま契約するつもりだったというわけだ。
「だが何故都合良く契約のカードがあるのだ!?」
「俺の都合なんて知った事じゃなかったのか? 元々コイツは俺のモンスターだ、それを取り戻しただけだ」
その言葉に、サイクロン・ドーパントは自身の失策を呪った。
自分にとって都合良く進めていたと思いきや、むしろそれは逆の話だったのだ。
結果的にそうなっただけかも知れないが、敵を強化してしまうなど迷惑な存在となる自分にとっては大きな過ちとしか言えない。
-
「どうしてこうなったのだ……」
目の前のテラー・ドーパントが余りにも恐ろしい存在に見える。
だが、まだ戦いは終わっていない。
相手は殺し合いに乗った人物、大ショッカーの目的を考えるならば捨て置いて良いだろう。
相手は自分の事など逃がすつもりはないだろうが逃げるだけなら十分可能だ。
だがそれで良いのか? 偉大なる大ショッカーの幹部たるアポロガイストがこんな体たらくで良いのか?
宇宙一迷惑な存在になるのではなかったのか?
「我が名はアポロガイスト、貴様達を消し去る為にやって来た……参加者達にとっては迷惑な相手なのだ!」
「迷惑だと……」
テラー・ドーパントの反応を待つ前にハードボイルダーが体当たりを駆けるべく奔る――
この一撃が通じるかどうか――
違う、通すのだ――
それが迷惑な存在となる自分自身の存在証明であり――
大ショッカーに対する忠義の証なのだから――
だが、
「十分イライラさせられたぜ」
溢れる程に毒々しい青い光をその手に込めて――
迫り来るサイクロン・ドーパントへと向けた――
その光でハードボイルダーごとサイクロン・ドーパントが吹き飛び橋上に叩き付けられる。
「ぐっ……」
全身から冷や汗が吹き出しそうだ、それでもまだ戦える。しかし、
「コイツはお返しだ」
と、青い龍の冠から青く禍々しいモノが溢れ出しサイクロン・ドーパントに注ぎ込まれる。
「がぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ありとあらゆる生命体が大なり小なり抱える『恐怖』という感情、
それが非現実的な程強いレベルで躰に刻み込まれていくのを感じる――
「まだだ……ここで終わるわけには……」
全身が震え立ち上がる事すら出来ないでいる。それでも何とかハードボイルダーに手を掛ける。
そんな中、テラー・ドーパントがサイドバッシャーのコンソールを操作する。
――Battle Mode――
電子音声と共にサイドカー形態から大型二足ロボ形態へと変形する。
「そうだ……アレは555の世界のバイク……そんな機能があったのは解っていた筈なのだ……」
その言葉などお構いなしに――
サイドバッシャーの左腕から無数のミサイルが――
サイドバッシャーの右腕から無数のバルカンが――
雨の様に降り注ぐ――
-
【B-3 道路 06:59 p.m.】
「はぁ……はぁ……」
おかしいとは思わなかったか?
何故浅倉は『恐怖』を全身に浴びほぼ無力化したであろうサイクロン・ドーパントに対し直接殴りかからず、サイドバッシャーによる遠距離砲撃を仕掛けたのか――
サイドバッシャーのバトルモードの試用? 野獣の様に獰猛な浅倉がそんな知的な理由だけで事に及ぶだろうか?
そう、本当の理由は別にあった――
浅倉の肉体は度重なる激闘で戦えない程に消耗していたのだ――
無論、無理を通せば仕掛ける事自体は一応可能だ。
それでも相手の能力を踏まえれば返り討ちに遭う可能性は無くはない。
また、何時か黒い龍騎にしてやられた時も勝てると思った状況からの奇襲だった。
それを踏まえて考えればわざわざ悲鳴を挙げている躰に鞭を打って仕掛けるよりバイクのミサイルを仕掛けた方が確実なのは当然の理だろう。
橋を渡りきった浅倉はふと後ろを振り返る。橋の中間は戦いによって破壊されている。
車やバイクの通行はまず不可能となったと考えて良いだろう。
とはいえ、浅倉にとっては正直どうだって良い話ではある。
そしてそのまま道路脇にサイドバッシャーを止め――
そのまま草原に出て仰向けに大の字となって倒れた――
前述の通り度重なる激闘で最早躰は限界だ。
暫く休めば動けるだろうが、逆を言えば休息が必要という事だ。
それでも浅倉は笑っていた――
ふと、自身の持つ王蛇のデッキを取り出し中から4枚のカードを出す。
その内の3枚はベノスネーカー、エビルダイバー、メタルゲラスのカード――
紆余曲折を経てようやくこの手に自身の持つ3体のモンスターを取り戻した事になる。
ヘラクスやテラー・ドーパント等が強大な力を持つのは使った自分自身がよく理解している。
それでも自分には王蛇が一番合っている――
それは自身が仮面ライダーになってから一番付き合いが長いからなのだろう――
柄にもなくそんな事を思う――
その最中――
サイドバッシャーのミラーの奥ではメタルゲラスとエビルダイバーが何処か震えていた――
それもそうだろう、彼等は浅倉を仕留めるべく逆襲を仕掛けた。
が、それにも関わらず奴の持つ契約のカードによって契約させられた。
だがその際に浅倉が取り込んだテラーの持つ恐怖の力に当てられたのだ――
知性のないモンスターといえど生命体には違いない――
最早浅倉に刃向かう気力など沸かなかった――
そして――
3体のモンスターを手に入れた事でようやく真の力を発揮するカードがある。
それは3体のモンスターを融合させる力を持つカード。
融合する事で出現するモンスター獣帝ジェノサイダーの力は絶大――
無論、制限の掛けられているこの場ではそこまで使えるものではないが、それでも強力な切り札である事に違いはない――
それを生み出すカードの名は――
-
――UNITE VENT――
それらのカードを眺めデッキに戻し、更なる激闘に胸を高鳴らせながら――
何時しか浅倉の意識は途切れていた――
満天に輝く夜空の星が眠る浅倉を照らし続けていた――
【1日目 夜】
【B-3 草原】
【浅倉威@仮面ライダー龍騎】
【時間軸】劇場版 死亡後
【状態】気絶、疲労(極大)、ダメージ(大)、興奮状態、仮面ライダー王蛇に5分変身不可、仮面ライダーインペラー、ヘラクスに15分変身不可、仮面ライダーファムに55分変身不可、テラー・ドーパントに1時間55分変身不可
【装備】カードデッキ(王蛇)@仮面ライダー龍騎、ライダーブレス(ヘラクス)@劇場版仮面ライダーカブト GOD SPEED LOVE、カードデッキ(ファム)@仮面ライダー龍騎、鉄パイプ@現実、ランスバックル@劇場版仮面ライダー剣 MISSING ACE、サイドバッシャー@仮面ライダー555
【道具】支給品一式×3、サバイブ「烈火」@仮面ライダー龍騎、大ショッカー製の拡声器@現実
【思考・状況】
0:(気絶中)
1:イライラを晴らすべく仮面ライダーと戦う。
2:特に黒い龍騎(リュウガ)は自分で倒す。
3:殴るか殴られるかしてないと落ち着かない、故に誰でも良いから戦いたい。
【備考】
※テラーメモリを美味しく食べた事により、テラー・ドーパントに変身出来るようになりました。またそれによる疲労はありません。
※ヘラクスゼクターに認められました。
※ベノスネイカー、ブランウイングを再召喚するのに後5分、エビルダイバーを再召喚するのにあと55分、メタルゲラスを再召喚するのに1時間55分必要です。
※エビルダイバー、メタルゲラスが王蛇と契約しました。これによりユナイトベントが使用可能になりました。
【B-5 ビル 07:01 p.m.】
サイドバッシャーの集中砲撃を受ければサイクロン・ドーパントであっても命はない。
だが、サイクロン・ドーパントは着弾する直前ハードボイルダーを含めて全身に出しうるだけの強力な風を纏い――
そのまま戦場を離脱、いや逃走したと言って良いだろう――
砲撃は風によって軌道が逸らされサイクロン・ドーパントには命中せず橋へと着弾、
さらに巻き起こる竜巻とミサイルによって橋の破壊は連鎖的に進み――相当長い距離を破壊させる結果となった。
その後、川を横断しB-5にあるビルまで飛び続けそこで変身は解除された。
そして、ビルの中に入りガイは腰を抜かした。
「はぁ……はぁ……何なのだアレは……」
そう零すガイの全身は未だに震えていた。吹き出してくる冷や汗は決して止まる事はない――
一言で言えばそれは『恐怖』――
そう、先に対峙したテラー・ドーパントに変身した浅倉が何よりも恐ろしい存在に感じたのだ――
「くっ……何故私が……あんな奴を恐れ……逃げ出してしまったのだ……」
ガイにとって何よりも許せないのは大ショッカーの幹部足る自分が『恐怖』の感情のままに逃げ出してしまった事だ――
確かにガイ自身敗北して逃げる事は度々あった。
だがそれは体制を立て直す為の退避、言うなれば戦略的撤退というものだ。
しかし今回はそれとは違う。戦略的撤退等という綺麗事など存在しない――
只、怖くて逃げ出したのだ――
勝ち目が無いから敢えて逃げ出した、捨て置いても良いと判断したから見逃したという言い訳が出来ない事もない。
だが、今も震え続ける躰は正直だ。先に挙げた理由が真実を隠す為の言い訳に過ぎない事を証明したのだ。
浅倉を見て東京タワーから離れる事を選んだ事すら実は恐怖によるものだったのかも知れない。
それに気付いた瞬間、ガイの心の奥底から悔しさが溢れ出す。
『恐怖』により――いや、『恐怖』というのは所詮は防衛本能、つまりは――
自分の命惜しさの為に逃げ出した事が何よりも許せなかったのだ――
「違う! 私の命は大いなる大ショッカーのものの筈なのだ! それなのに己可愛さに逃げ出すなど……言語道断だ!!」
荒げる怒号は止まらない。自分自身が許せない事もあるが何よりそれ以上に――
そうでもしないと今にも『恐怖』で押し潰されてしまうと思ったのだ――
-
それでも――
「あぁぁぁぁぁぁぁ!!」
結局は自身を無理矢理奮い立たせる為の都合の良い言葉でしかない。
心の奥底に刻み込まれた『恐怖』からそう簡単に解放されるわけがない。
「この屈辱……決して忘れんぞ……大ショッカーの為……そして何より私自身が迷惑な存在となる為に……このままで済むと思うな!!」
だがガイの心は折れてはいない。
制限による部分は多分にあるだろう。
しかし一番の決め手は自身がGOD機関、そして大ショッカーの幹部であるという矜持なのだろう。
それが無ければとっくに心砕けていても不思議は全く無い。
それでも――再び動ける用になるまでには今暫く時間が掛かるだろう――
今の彼は全ての存在にとって迷惑な存在ではなく――
小さく震えるか弱き仔羊でしかなかった――
窓の向こうで輝く夜空の星がガイを照らし続けていた――
【B-5 ビル】
【アポロガイスト@仮面ライダーディケイド】
【時間軸】死亡後
【状態】ダメージ(中)、疲労(極大)、恐怖(極大)、ゾルダ、怪人態に45分変身不可、シザースに30分変身不可、マグナギガ1時間55分召喚不可、サイクロン・ドーパントに1時間55分
【装備】ゾルダのデッキ@仮面ライダー龍騎、ディスカリバー@仮面ライダーカブト、T2ガイアメモリ(サイクロン)仮面ライダーW FOREVER AtoZ/運命のガイアメモリ
【道具】支給品一式、ディスクアニマル(アカネタカ)@仮面ライダー響鬼、インドネシアの魔除けのお面@仮面ライダークウガ、真理の携帯美容師セット@仮面ライダー555、装甲声刃@仮面ライダー響鬼、ハードボイルダー@仮面ライダーW
【思考・状況】
0:今は躰を休める。
1:大ショッカーの意思通り、全ての敵を倒し、世界を破壊する。
2:参加者の変身アイテムを奪う(たとえ自分の力にならなくても)。
3:ディケイド、牙王、浅倉(名前は知らない)はいずれ始末する。
4:全てのライダーと怪人にとって迷惑な存在となる。
【備考】
※スーパーアポロガイストの状態ですが、能力は抑えられています。
※制限の詳細な時間設定と能力が抑えられていることを、何となく把握しました。
【全体備考】
※B-4に架けられている橋が破壊されました。
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投下完了しました。何か問題点や疑問点等があれば指摘の方お願いします。
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投下乙です!
いや〜浅倉が暴れてますね
アポロを振るわせるとは……
橋は壊れたけど、あの場所なら問題ないかな
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投下乙です!
浅倉怖いなぁ……まさかアポロをビビらせるだけじゃなくて橋までも壊すとは
今後も暴れてくれそうですね
そしてアポロ……まあ、まだ何とか立ち直れるかな?
それと、次スレを立てておきました
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/14759/1314058831/
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投下乙です
浅倉の暴れっぷりは止まることを知らないな
>>968
スレ立て乙です
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投下乙です
浅倉はついにジェノサイダーまで到達したか……
何気にかなりの強マーダーになってる気がするなぁ。
アポロは次の出会いくらいで方向性が決まりそうですね。
>>986
スレ建て乙です
それでは予約分の投下を開始します。
こっちで足りると判断したのでこっちに投下しますね。
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もしかしたら、自分の仲間達はもう死んでしまっているのかもしれない。
そんな予測は元来能天気な城戸真司にだって容易に出来ていた筈だった。
だけども、起こり得るかもしれない予測と、実際に起こった事実とでは、全くの別物だ。
非情な現実を素直に受け入れる事が出来るのかどうかは、また別の心構えが必要なのだ。
実際、飛行船からの放送を聞いてから暫くの間、真司は何も考える事が出来なかった。
というよりも、考える事があり過ぎて思考が停止していた、と言った方が正しいか。
北岡の事。美穂の事。東條の事。それぞれ色んな出来事が思い浮かんで、辛くなる。
例え彼らが、元々は敵とされた仲であったとしても、だ。
人が死ぬのが嫌だから仮面ライダーになったのに、自分に出来た事は、余りにも少なすぎる。
悪い奴だろうと、良い奴だろうと、人が死ぬ姿なんて見たくない。だから戦っていた筈なのに。
無力に打ちひしがれて、後悔の念に押し潰されそうになるが、そんな真司を連れ出してくれたのは、津上翔一だった。
津上は、決して多くは語ろうとせずに、ただ一言「行きましょう」と言った。強い目をしていたように思う。
これからどうしようかとか、確かな考えがあった訳ではないけれど、真司は翔一と一緒に歩き出した。
その時はとにかく、その場でじっとしているのが、余計に無力感を思い知らされるような気がして嫌だったのだ。
それからやや歩いて、二人が訪れた場所は、少しばかり築年数の古そうな二階建てのアパートだった。
曰く、このアパートの一室が津上の仲間の自宅だから、遠慮はいらないとの事らしい。
二階の角部屋にある玄関ドアの表札には「葦原」と書かれていた。どういう訳か、ドアに鍵は掛かっていない。
津上はまるで自分の家であるかのようにその部屋へ上がり込み、そして、今に至る。
「で、お前はさっきから何してんだよ」
「見ての通り、冷蔵庫の中身のチェックです」
津上は、まるでそれが自分の物であるかのように、冷蔵庫の中身を漁っていた。
居心地悪そうにそれを眺めていると、津上はさも不満そうに、それでいて心配するようにごちた。
「ああもう、葦原さんってば、やっぱりロクなもの食べてないんだから……」
「他所の家の冷蔵庫漁って何失礼な事言ってんだよ……っていうかいいのかよ、勝手に冷蔵庫漁ったりして」
「うーん、まあいいんじゃないですかね。俺と葦原さんの仲ですから、たぶん大丈夫です」
「本当かよ……」
能天気な津上の様子を見ていると、その言葉も怪しいものである。
どうにも真司には、津上が勝手な言い分で勝手に冷蔵庫を漁っているようにしか見えなかった。
これを見ている限り、真司も馬鹿だとよく言われるが、津上はその上を行く馬鹿なのだろうと思う。
自分には、死者が二十人も出たと知らされた直後に、こうも能天気に冷蔵庫を物色するのは不可能だからだ。
「ってか、それより城戸さん、晩御飯に何か食べたいものとかあります? ロクな食材ないですけど」
「晩御飯って……! お前なぁ、今がどんな時だかホントにわかってんのかよ!?」
「そりゃあ、分かってますけど……でもホラ、よく言うじゃないですか、腹が減っては戦は出来ぬって」
「そういう事じゃなくて! 二十人も人が死んだっていうのに、晩御飯なんか食べる気になれるかよ!」
そう言われた津上が、悲しそうな、今にも泣き出しそうな子供のような目をした。
ほんの一瞬だけ垣間見えたその表情に、真司は何か拙い事を言ったかと思うが、だとしたら一体何が。
津上はすぐに何食わぬ表情に戻るが、続きを話す声のトーンは、先程よりもやや低かった。
「……だって嫌じゃないですか。お腹がすいて、いざという時に力が出なくて、それで悪い奴にやられたりしたら。
俺、城戸さんがそんな風にやられちゃう姿なんて見たくないです。だからやっぱり、ここはしっかり食べておかないと」
「まあ、それは確かにそうだけど……ってお前、ふざけてるように見えて、そこまでちゃんと考えてたのかよ」
「いやあ、何となく」
そう言って、津上は子供みたいにへへへと笑った。
怒るのも馬鹿馬鹿しく思えて来て、真司は小さく嘆息する。
-
「だから、何か食べたいものがあるなら言って下さい。俺、何でも作っちゃいますよ」
「何でもって……ホントに何でも作れるのかよ。この偏った食材だけで」
「うーん、そうですね。じゃああんまり無茶なものは注文しないで下さい。いくら俺でも、ない食材はどうにも出来ません」
「お前なぁ……それは何でもとは言わないんだよ! ったく、期待して損したっつーの……」
「へへへ、それもそうですね、すみません。あっ、でも何だかんだ言いながら期待してくれてたんですね、嬉しいなあ」
「いや、それは、津上が何でも作るなんて言うから、ちょっと期待しただけで」
「まあまあ、そんな照れなくてもいいじゃないですか。俺も期待に応えられるように頑張りますから」
「照れてないっつーの……」
何だかんだ言いながらも、気付いたら津上のペースに徐々に慣れつつある自分がいる事に気付く。
人間の環境適応能力は大したものだなと肌で感じながらも、真司もまたうーんと唸る。
確かに津上の言った通り、この家にはロクな食材がない。
あるとしたら、いくつかのインスタント食品と惣菜、それから基本的な調味料くらいだ。
生活をする分には問題はないのだろうが、栄養管理は優れているとは言い難い品揃えだった。
何かないものかと、真司も冷蔵庫の中を見て――すぐに見付けた。真司の唯一の得意料理を。
「あっ、餃子あるじゃん、餃子!」
「……ニンニクは嫌いだ」
嬉々として取り出した餃子のパックを見るや、今まで黙っていたキバットがぽつりと呟いた。
何か思う事があったのだろうか。放送を聞いてからというもの、キバットもずっと黙っていたように思う。
もしかすると、キバットの仲間も先の放送で呼ばれたのかも知れないが、その辺の事は真司には良く解らない。
「キバット、お前からも話を聞きたいからさ、とりあえず今は飯にしようぜ」
「俺はいい。キバット族はお前達人間のように、必ずしも食事を必要とはしないんだ」
「えっ、それってなんか寂しくないですか? ご飯って、美味しくてとても楽しいのに」
津上が驚いた様子で、きょとんとして言った。
「楽しい? 食事を摂るという行為そのものが楽しいのか、人間は?」
「はい、美味しいものを食べていると、とても楽しい気持ちになります」
言われたキバットはちらと真司を見た。
津上翔一とは、こういう人間なのだ。何を言ったところで、もう仕方のないことなのだろう。
最早諦めたような真司の表情に気付くや、キバットは「そうか」と言って、それ以上は何も言わなくなった。
津上翔一から言わせれば、きっと何だって楽しいのだろう。こいつはこういう、子供みたいな人間なのだ。
でも、そんな津上の事を、嫌いではない自分がいるのも確かで、真司は無意識のうちに津上に心を開いていた。
「じゃあ、とりあえず餃子でも作るか。インスタントだけどスタミナもつくだろ」
「おっ、いいですね餃子。料理らしい料理じゃないのが残念ですけど、無いよりはマシです」
「いや、俺も本当は中身の具から餃子作りたかったんだけどさ、この家何もないし」
「ってことは何です、もしかして城戸さん、餃子作るの得意なんですか?」
「おう、他に作れるものはあんまりないんだけど、餃子だけは負けたくないっていうか」
これだけは、人に誇れる特徴の一つだった。
あまり披露する事はないが、餃子の腕前だけはプロ“以上”であると自負している。
「おおー、凄いじゃないですか! いやぁ、こんな所で出会わなければ、俺も一緒に餃子作りたかったなぁ」
「そりゃ……大ショッカーを倒してからなら、またいつでも出来るだろ」
「でも俺達、別の世界の住人なんですよね……」
数瞬、沈黙が流れる。
仮に大ショッカーを打倒出来たとしても、そもそも二人は異世界の住人だ。
世界が元通りになれば、もう会う事もないだろうし、もしかしたら、世界が消える可能性だってあるのだ。
せっかくこうやって出会えて、一緒に戦って、一緒に話をしたのに、またすぐに離れ離れと考えると、少し寂しい。
美穂や北岡との辛い別れもあったが、同時にここでの出会いも、真司にとってはどうでもいい事ではなかった。
-
「まあ、その時はその時だろ。今はそれよりも世界を守る事を考えないとさ」
「そうですね。やっぱり、こんな戦い間違ってると思います。それに、ここはみんなの居るべき場所じゃないし」
「居るべき場所……?」
「ええ、そうです。みんな“そこに居たら安心出来る”っていう、自分自身の居場所を持ってるんです。
でも、ここには俺の居場所はありません。城戸さんの居場所も、小沢さんの居場所も、他のみんなの居場所もです。
ここに連れて来られた誰も、自分の居るべき場所にいないから……だから俺、戦わなきゃって、さっき、もっと強く思いました」
「……さっき、って」
キッチンを整理していた津上の手が止まった。
さっきというのはやはり、放送の時、だろうか。
「ここで、俺の仲間が、二人も死にました」
それから津上は、酷く不器用に、言葉を紡ぎ出した。
「木野さんっていうんですけど、俺と同じアギト仲間で、俺の事、何度も助けてくれて、とても、良い人でした。
北条さんは、ちょっとつっけんどんですけど、警察官として、いつも真面目に働いていた、正義感の強い人でした。
誰も、こんなところで死ぬ事なんてなかったんです。みんないい人で、殺される理由なんか、何にもなかったんです」
表情は硬く、その目はやはり、今にも泣き出してしまいそうで。
だけども、涙は流さない。ただ苦しそうに、言葉を続けるだけだった。
「今まで木野さんや北条さんが居た場所には、もう、誰も居なくて、誰も居ない席がぽっかり空いてるみたいで、
でも、誰もその席には座れないんです。誰にも、二人の代わりになる事なんか、出来やしないんです、だから、俺……」
「お前……」
絞り出す様に続ける津上は何処か痛々しくて、どんな言葉を掛ければいいのかも分からない。
今まで津上の事を能天気で馬鹿な男だと思っていたけれど、それはどうやら違ったらしい。
津上は津上で、この殺し合いに、仲間の死に、こんなにも憤懣を抱えていたのだ。
「……そう、だよな。お前も、辛いに決まってるよな。なのに俺、お前の事、ちょっと誤解してたよ」
「えっ、何です、誤解って、どういう事です?」
「いや、こんな時に晩御飯作ろうなんて言うから、何考えてんのかと思ってさ」
「何も特別な事なんて考えてませんよ。ただ、生きているとお腹が空くじゃないですか。俺達は、こうやって生きてるんです。
まだ生きていて、美味しいものを、美味しいって思えるんです。だから、食べないと、俺達が、これからも頑張っていかないと」
津上は消え入りそうな声でそう言った。その気持ちも、痛いくらいに良く分かった。
馬鹿で、空気が読めない御人好しな真司だけれど、こんな津上を見ていると、胸が苦しくなる。
きっと津上も辛くて、だけど落ち込むだけでは何も出来ないから、今の自分に出来る事をしようとしているのだろう。
二人の仲間が死んだ事で哀しみながらも、それを自分自身の責任として背負って、これからも生きていこうとしているのだろう。
今だって、美味しいご飯を作って、それを食べて体力をつけると同時に、落ち込んでいた真司にも元気を与えようとしていたに違いない。
おめでたい考えではあるが、そうであると疑いなく信じてしまう御人好しなところは、ある意味真司にとっての長所の一つだった。
「そっか……うん、そうだよな。よし、ここは飯でも食べて、スタミナつけないとな!
ここでしっかり食べて、体力付けて、俺達で悪い奴らからみんなを守ってやろうぜ!」
元気よく津上の背中を叩くと、津上は嬉しそうに、やんわりと微笑んだ。
それからややあって、食事の準備を終えた二人は食卓に着いていた。
メニューは餃子に白いご飯、それから、簡単なサラダに冷たいお茶。
あるもので作るしかなかったが故、組み合わせはそんなに宜しくはない。
だけれども、白いご飯は炊きたてで、とても美味しそうだった。
傷つき疲れた身体には、上等過ぎる晩御飯だと真司も思う。
それぞれの情報交換は、食事と同時進行で行われていた。
「いやあ、それにしても困りましたね。俺、ヒビキさんって人とE-4の病院で夜の12時に会うって約束してたんですけど」
「ああ、その人なら俺もさっき会ったよ。けど、それがどうして困ったって事になるんだよ?」
「そのエリアは23時から禁止エリアだ」
説明してくれたのは、キバットだった。
キバット曰く、放送直後は真司も津上も、冷静に物事を考えるどころではなかったらしい。
そんな二人に代わって、禁止エリアを暗記していてくれたというのだから有り難い。
-
「恐らく奴らは、こちらの動きを読んでその場所を禁止エリアに指定したんだろうな」
「そっか、大ショッカーの奴らにしてみりゃ、殺し合いに乗らない俺達が組むのは都合悪いもんな」
「そういう訳です。だから約束の場所でヒビキさんと合流するのは無理そうなんですよね」
「どうすりゃいいってんだよ……じゃあアレは、代わりの待ち合わせ場所とかは?」
「うーん、そういうのはないです、すみません」
「なら、ヒビキさんが他に行きそうな場所とかは?」
「そういうのも分かんないです……だからもういいです」
「もういいって、お前なあ……!」
キッパリと言いきった津上には、流石に呆れるしかなかった。
「だって禁止エリアなんだから仕方ないじゃないですか。ヒビキさんだって自分で何とかするでしょ」
「そりゃそうだけどさ、もうちょっとこう……悩むとか、考えるとか、そういうのはないのかよ?」
「悩んだって一緒じゃないですか。会えないものは会えないんです。だから、俺達は俺達に出来る事をしましょう」
「ま、まぁ、それは確かに、その通りだけどさ……」
津上の言い分は、一応は的を射ていた。
出来ない物は出来ないのだ。無い物ねだりをしたところでどうしようもない。
なれば、今の自分達に出来る事をした方がいいという考え方は、前向きでわかりやすい。
考えてみれば、真司としてもそっちの方が考える事が少なくて楽で良いなと後から思った。
「じゃあ、これからどうする?」
「そうですね、とりあえず、小沢さんを助けましょう」
「そうだな。今の小沢さんは蜘蛛のモンスターに操られてる。何としても俺達で助け出さないと」
「……でも、あの蜘蛛のモンスターって一体何なんです? 俺の世界にはあんな奴居ませんでしたけど」
「俺の世界にだって居なかった。多分、別の世界のモンスター……お前の世界じゃアンノウン、だっけ? なんだろうな」
「なるほど、要するに悪い奴って事ですね。それなら俺も遠慮なくやっつける事が出来ます」
津上の言い分には、迷いが感じられなかった。
きっと津上は、人間同士、本気で殺し合った事がないのだろう。
龍騎の世界の仮面ライダーの在り方は、先程津上にも語ったが、実感は沸かないのだろうと思う。
悪い化け物がいるなら、そいつだけを倒せばいいと、そう思っているに違いない。
「お前ってそういうとこ前向きで分かり易くていいよな……俺達の世界は人間同士の殺し合いだからさ」
「俺の世界でも、色んな誤解や擦れ違いがあって、同じアギト同士で戦う事とかはありました。それでも、今ではみんな仲間です」
「そうやってみんなで仲間って言って、一つになって、悪い奴と戦うって世界ならどれだけ良かった事か」
真司だって一度は夢見た事がある。
蓮や北岡、浅倉が一丸となって、悪のモンスターに立ち向かっていく夢物語を。
もしもそんな風にみんなで協力して助け合えたら、きっともっと素晴らしい世界だった筈だ。
何処か遠い目で、ふっと窓の外を見遣った真司の様子に気付いたのか、津上は申し訳なさそうに言った。
「なんか、すみません。俺、また何か気に障ること言っちゃいました?」
「いや、いいんだよ……俺の世界とお前の世界は違うんだから、仕方ないしさ」
「そうですか……何はともあれ、今はまず、蜘蛛のモンスターをどうにかしなくちゃですね。
罪のない人の心を操って殺し合いをさせようなんて、そういうの、やっぱり許せませんもん……まったくもう」
……それから、やや間を置いて、津上がぷぷぷと笑った。
まるで笑いを堪えるように片手で口元を塞ぐが、笑った目は誤魔化せない。
こんな状況下で、一体何処に笑う要素があったのか。真司は津上に問うた。
「お、おい、何だよこんな時に……何笑ってんだよ」
「あれっ、わかりませんでした? ほら、まったくもう……まったクモう、って。蜘蛛だけに」
「………………」
-
笑っているのは、津上ただ一人だった。
津上には悪いが、真司は全く笑う気にはなれない。
周囲の冷ややかな視線もまるで気に留める様子もなく、津上は一人で笑っていた。
これは本気で自分の洒落が面白いと思っているパターンだ。しかもまるで空気が読めていない。
この真剣な場面でダジャレを言う津上の精神の図太さを疑うが、津上は一通り笑えばすぐに元通りになった。
「……すみません。なんか、しんみりしちゃったんで思わず。
俺、どうにもこういうしんみりした空気って苦手なんですよね」
「いや、いいよ。いいよもう、わかったから、今は話を先に進めよう」
「そうですね……あっ、そうだ。そういえば一つ気になってたんですけど」
「何だよ。言っとくけど、次下らないダジャレとか言ったら無視するからな」
「ははははは、やだなぁ城戸さん、流石の俺でもそんなぽんぽん面白いネタは思い付きませんよ」
「ちっとも面白くねえよ! ってか自信あったのかよさっきの親父ギャグ!」
「ええっ!? 親父ギャグって……っ、ちょっと酷いんじゃないですか、それ。
もう、城戸さんったら、落ち込んでるかと思ったらいきなり怒鳴ったり、喜怒哀楽が激しいんだから」
「お前っ……!」
喜怒哀楽……城戸哀楽。
これは最早挑発と捉えて良いのだろうか。
もしかしたら真司の考え過ぎと言う可能性もあるが――
「えっ、どうかしました? 俺、何も言ってないじゃないですか……ぷぷっ」
「お前今笑っただろ!? 今のは絶対俺の勘違いとかじゃないよな!?」
「やだなあ城戸さん、訳のわからない事言わないで下さいよ。そういうの、“言いがかり”っていうんですよ」
津上の笑顔は、まるで悪戯をした子供のようだった。
本気で腹が立つという訳ではないが、やはりイラッと来るものはある。
小学生にからかわれた大人は、きっとこういう気持ちになるのだろう。
子供染みた言い争いを繰り広げる二人の間に、キバットがふわりと割って入った。
「いい加減にしないか。このままでは埒が明かん、そろそろ話を進めてくれ」
よほど呆れ果てたのか、キバットの声はいつにも増して低く感じた。
こんな小さな蝙蝠にまで注意される時点で、二人揃って十分に子供っぽかったのかもしれない。
急に馬鹿馬鹿しくなってきて、真司は嘆息一つ落として、大人しく食べかけの餃子に箸を伸ばした。
「……で、気になってた事って、何だよ?」
「いや、あの未確認と戦ってる時、どうしていきなり変身が解けちゃったのかなって。
さっきの蜘蛛みたいな奴と戦ってる時も変身出来なかったし……今までそんな事なかったのに、おかしいなあ」
「ああ、それは……詳しい事は俺にもわかんないけど、何か変身にも制限が掛けられてるらしい。
この世界に居る限り、多分、十分くらいで変身は解けるんだと思う。で、それから暫くの間は変身が出来なくなるんだよ」
「何ですかそれ、何だってそんな訳のわからない制限を掛けたんです、奴ら。それじゃいざという時に困るじゃないですか」
「ゲームバランスを取る為だろうな。この制限があれば、力を持たない参加者でも、強者を仕留め得る可能性がある」
果たして、キバットの言う通りなのだろう。
大ショッカーの思惑など知らないし知りたくもないが、その理由なら納得出来る。
変身制限で変身不可になった未確認を、小沢が仕留めた実績があるのだから、説得力もあるというものだ。
「でも、だったらおかしいですよ。俺、アギトに変身してから十分も戦ってませんよ」
「それに関して一つ訊くが……さっきの戦いで翔一が変身した、あの炎を纏った姿は何だ?」
「えっ、アレですか? さあ、何なんでしょう、俺にもわかりません」
「分からずに力を使っているのか……?」
「はい。なんか、何となく」
「何となく?」
キバットは訝しげに問うた。
「ええ、何となくです。気付いたらなれるようになってたんで、なりました」
「……翔一自身もアギトの力の全容は把握出来ていないと言う事か」
「えへへ、そういう事になっちゃいますね、なんかすみません」
申し訳なさそうに苦笑しながら、津上は軽く頭を下げた。
神崎が作った龍騎と違って、津上のアギトは人が直接進化した姿なのだという。
人が進化して行く無限の可能性、とか言ったか。津上自身も誰かの受け売りでそう言っているらしいが。
アギトには、設計図も説明書もない。全く未知の力なのだから、分からないのも無理はないのだろう。
-
「……これは仮説だが、翔一がアギトの“より強い力”を使った事で、変身制限が通常より早く消費されたのではないか?」
「なんか分かんないですけど、そういうのってありそうですね。自慢じゃないですけど、あのアギト滅茶苦茶強いですもん」
「そういう事、自分で言うかよ……」
「いやあ、だって。あの時言ったじゃないですか、まだ見せてない“とっておき”があるって」
「そういやそんな事言ってたっけ……あれ、あの赤い姿の事だったんだな」
虎の化け物になった未確認との戦いの時、そういえばそんな事を言っていた気がする。
あの時はそれが一体どんな能力であるのかなど皆目見当が付かなかったが、どうやらあの炎の姿の事を言うらしい。
言われてみれば、確かにあの炎のアギトが纏った気迫は相当なものだったと思う。
最後に放った拳の一撃も、かなりの威力を秘めていた事は想像に難くない。
だとすれば、津上は何気にとんでもない強者と言う事になる、が。
「ちなみにあれよりまだ上にもう一つ強いのがあります」
「って、お前あれ以上まだ変われるってのかよ……!」
「はい。銀ピカの、とてもかっこいい姿になります」
「マジかよ!」
「マジです」
そう言って、津上は自慢げに胸を張った。
自分でかっこいいとか言うのはどうかと思ったが、もう慣れた。
元から真司は楽天的な性格なのだ。だんだん津上の感覚が普通に思えてくる自分が居て怖い。
「でも、それってつまり、俺もサバイブになったら変身出来る時間が短くなるって事だよな」
「サバイブ? 何です、それ。なんか、何となくかっこよさそうな雰囲気の名前じゃないですか」
「ああそうだよ。俺だってな、サバイブになったらあのアギトに負けないくらいかっこいいんだよ」
「おっと、これは大きく出ましたね城戸さん。じゃあどうです、どっちの方がかっこいいか、一つ勝負でも」
「望むところだっつーの! サバイブの方が絶対かっこい――」
「いい加減にしろ」
キバットの冷ややかな声だった。
流石に二度目ともなると申し訳なくて、面目次第もなく感じる。
それは津上も同じようで、ここへ来て漸く、真司と津上が二人揃って静かになった。
何はともあれ、強化変身は制限が強化されるという仮説を立てる事は出来たのだから、この話し合いだって無駄ではない。
今後戦う事があれば、サバイブにしろ、アギトの炎の姿にしろ、使いどころは考え無ければならないのだ。
では、次に問題になるのは、これから何処へ向かうかである。
「で、どうする。小沢さんがどっちに向かったかなんてわかんないけど」
「うーん、それも適当でいいんじゃないですかね。なるようになりますよ」
「お前は相変わらずだな……そういうのも嫌いじゃないけどさ。キバットはどう思う?」
「どうせ何処へ行っても殺し合いだ。行くべき場所もないのなら、何処へ行っても同じだろうな」
確かにキバットの言う通りだと思って、真司はうんうんと頷いた。
誰がどっちの方向に向かって行ったかなんて、考えたってどうせ分かりはしない。
それならば、何処へでもいいからとにかく進んで、手当たり次第に戦いを止めさせる。
作戦も何もない行き当たりばったりな考えであるが、単純な性格をした二人には調度いいと思われた。
米粒一つ残さず完食した真司と津上は、食器をキッチンのシンクに纏めて置いて、簡単な片付けを済ませた。
その間も、津上との間には常に子供みたいな他愛もないやり取りが続いていて、退屈はしなかった。
こういうタイプの男と話す事はあまりないが、存外相性はいいのかもしれないな、と思う。
-
「じゃ、そろそろ行きますか。城戸さん、キバット」
津上が壁に掛けられた時計をちらと見た。
時刻は七時を回る少し前だった。結構な時間休んでいたなと、ここで初めて認識する。
そう考えて、身体をぐっと伸ばしてみると、先程よりは随分と体調も良くなったように思う。
受けた傷の痛みは癒えぬものの、溜まった疲労はほぼない。これならば、戦闘行為も問題はない筈だ。
自分よりも津上の方が元気そうに動き回っているのは、恐らくアギト故に回復も早いのだろう。
仲間の死による心の痛みも相当なものだけれど、それでも津上のお陰で幾分か楽にはなった。
それに、津上だって表には出さないが、木野や北条の死に心を痛めているのだろう。
なれば、自分だけが弱音を吐く事などは許されない。
津上のように強く。仮面ライダーとして、誰かを守る為に戦い抜いてやろうと、先程よりも強く思う。
新たな決意を胸に、先にアパートを出ようとしていた津上を呼び止めた。
「なあ……やっぱ俺、絶対こんな殺し合い止めさせたいって、改めて思ったよ。
世界がどうなるのか何て分からないけど、それでも、目の前で人が死んで行くのは、止めたい。
俺、こんなだからさ、もしかしたら無茶な事もするかも知れないけど……それでも、一緒に戦って欲しい」
同じ志を持つ仲間として。守る為に戦う仮面ライダーとして。
関わった時間は短いけれど、ここで繋いだ絆は、きっと深いものだと思うから。
真司は、少しだけ気恥ずかしい気もしたけれど、強い目で以てそう告げた。
津上はやや考えるような素振りを見せたが、すぐにニッと笑った。
「やだなあ城戸さん。今更何言ってるんです。俺達、もう仲間じゃないですか。
俺も城戸さんも、同じアギト……じゃなくって、何ていうんでしたっけ」
「仮面ライダーの事か?」
「そうそう、それです。じゃあ、俺が仮面ライダーアギトで、城戸さんが仮面ライダー龍騎ですね。
かっこいいじゃないですか、人を守る為に戦う仮面ライダーって。なんかヒーローみたいでいいなあ、こういうの」
「……ああ、そうだな、お前の言う通りだよ。誰かを守る為に戦う、かっこいい仮面ライダーなんだよな、俺達」
津上の笑顔を見ていると、思わず微笑ましくなってしまう。
子供が憧れるような本物のヒーローを、津上は自分達で体現しようというのだ。
ずっと人間の汚い面だけを見て来た気がするが故、真司は久々に心が温かくなる気がした。
こいつが一緒なら、こいつと力を合わせれば、こんな殺し合いだって今度こそ止められる。
そう信じさせるだけの何かが、津上にはあった。
「ありがとな、翔一。お前のお陰で、俺はまた迷わずに済んだよ」
「何言ってるんです、俺は何もしてません。迷わずに済んだなら、それは城戸さんが強いからです」
そう言ってくれるだけで、何処か激励されているような気がして、気が楽になる。
自分よりも翔一の方がずっと強いと思うが、これ以上照れ臭い話をするのも気恥ずかしかった。
それに、自分達はもう仲間だ。本当に伝えたい事は、もうお互い十分に伝わっているのだから問題ない。
同時に、いつの間にか呼び方が「津上」から「翔一」へと変わっていた事に、自分自身、果たして気付いているのか。
何はともあれ、仮面ライダーとしての使命を改めて認識した二人の心は、これまでよりもずっと強い。
月の淡い光は、そんな二人を激励するように優しく降り注いでいた。
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【1日目 夜】
【E-2 住宅街 葦原涼のアパート前】
【城戸真司@仮面ライダー龍騎】
【時間軸】劇場版 霧島とお好み焼を食べた後
【状態】ダメージ(小)、満腹、強い決意、仮面ライダー龍騎に50分変身不可
【装備】龍騎のデッキ@仮面ライダー龍騎
【道具】支給品一式、優衣のてるてる坊主@仮面ライダー龍騎
【思考・状況】
基本行動方針:仮面ライダーとして、みんなの命を守る為に戦う。
1:翔一と共に誰かを守る為に戦う。
2:モンスターから小沢を助け出す。
3:ヒビキが心配。
4:蓮にアビスのことを伝える。
【備考】
※支給品のトランプを使えるライダーが居る事に気付きました。
※アビスこそが「現われていないライダー」だと誤解しています。
※アギトの世界についての基本的な情報を知りました。
※強化形態は変身時間が短縮される事に気付きました。
【津上翔一@仮面ライダーアギト】
【時間軸】本編終了後
【状態】満腹、強い決意、仮面ライダーアギトに50分変身不可
【装備】なし
【道具】支給品一式、コックコート@仮面ライダーアギト、ケータロス@仮面ライダー電王、
ふうと君キーホルダー@仮面ライダーW、キバットバットⅡ世@仮面ライダーキバ、医療箱@現実
【思考・状況】
基本行動方針:仮面ライダーとして、みんなの居場所を守る為に戦う。
1:城戸さんと一緒に誰かを守る為に戦う。
2:モンスターから小沢さんを助け出す。
3:大ショッカー、世界崩壊についての知識、情報を知る人物との接触。
4:木野さんと北条さんの分まで生きて、自分達でみんなの居場所を守ってみせる。
【備考】
※ふうと君キーホルダーはデイバッグに取り付けられています。
※響鬼の世界についての基本的な情報を得ました。
※龍騎の世界についての基本的な情報を得ました。
※医療箱の中には、飲み薬、塗り薬、抗生物質、包帯、消毒薬、ギブスと様々な道具が入っています。
※強化形態は変身時間が短縮される事に気付きました。
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投下終了です。
やっぱりアギトが大好きです。
それでは、何か不備や指摘などがあればよろしくお願いします。
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またしても言い忘れました。
タイトルは「想いと願いと」でお願いします。
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投下乙です!
いやぁ……こんな状況でも普段のペースを忘れない翔一君は流石ですね!
真司やキバットとの絡みがほのぼのとしてて、清涼剤みたいでホッとしましたよ
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投下乙です。
相変わらずの翔一のスタンスに真司は癒されているのぅ……一緒に料理もして食事して。
真司の所の連中は恐ろしい程に殺伐としていたからなぁ、真司はむしろ翔一側のキャラの筈なのに……。
とはいえ変身時間の制限もある程度把握出来たのはある意味幸いだなぁと。
キバットⅡ世……そりゃ吸血鬼的に考えてニンニクは苦手だよなぁ。
ただ、この周囲にはダグバやら牙王やら浅倉やら危険人物が結構来そうな罠……本当に大丈夫何だろうか……
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