したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

一時投下・修正用スレ

1二人で一人の/通りすがりの名無し:2010/11/10(水) 23:40:59
規制に引っかかっていて、本スレに投下できなかったり
SSの仮投下や修正を行いたい場合は
こちらへどうぞ

2 ◆LQDxlRz1mQ:2010/11/23(火) 18:55:09 ID:???
流石にさるさん規制に引っかかりましたorz

それでは状態表を投下します

3 ◆LQDxlRz1mQ:2010/11/23(火) 18:55:48 ID:???
【1日目 昼】
【G−7 沿海施設】

【左翔太郎@仮面ライダーW】
【時間軸】本編終了後
【状態】疲労(小)、ライダージョーカーに2時間変身不能
【装備】ロストドライバー&ジョーカーメモリ@仮面ライダーW
【道具】支給品一式×2(翔太郎、木場)、翔太郎の不明支給品(0〜1)、木場の不明支給品(1〜3)
【思考・状況】
1:仮面ライダーとして、世界の破壊を止める。
2:木場を失った強い悲しみ。
3:木場のような仲間を集める。
【備考】
※ 木場のいた世界の仮面ライダー(ファイズ)は悪だと認識しています。
※ 555の世界について、木場の主観による詳細を知りました。
※ オルフェノクはドーパントに近いものだと思っています(人類が直接変貌したものだと思っていない)。


【相川始@仮面ライダー剣】
【時間軸】本編後半あたり
【状態】疲労(小)、カリスに2時間変身不能、罪悪感
【装備】ラウズカード(ハートのA〜6)@仮面ライダー剣
【道具】支給品一式、不明支給品(0〜2)
【思考・状況】
1:栗原親子のいる世界を破壊させないため、殺し合いに乗る。
2:これでよかったのだろうか……?
3:「ジョーカー」のライダーに興味。
【備考】
※ ラウズカードで変身する場合は、全てのラウズカードに制限がかかります。ただし、戦闘時間中に他のラウズカードで変身することは可能です。
※ 時間内にヒューマンアンデッドに戻らなければならないため、変身制限を知っています。時間を過ぎても変身したままの場合、どうなるかは後の書き手さんにお任せします。
※ 左翔太郎を『ジョーカーの男』として認識しています。また、翔太郎の雄たけびで木場の名前を知りました。

4 ◆MiRaiTlHUI:2010/11/26(金) 21:12:42 ID:???
最後の最後でさるさん喰らってしまったので、続きはこちらに投下します。

5 ◆MiRaiTlHUI:2010/11/26(金) 21:14:36 ID:???
 


「逃げたか」

 市街地のど真ん中で、ぽつりと呟いた。
 突然怪人体の変身が解けてしまった事に、混乱していたのだ。
 それでなくても、変身を解いた今、変身したままの奴を追いかけられるとは思えない。
 仮に追い付いたとしても、あのオレンジに変身した男は弱い。
 最強最悪などと口だけの存在であった。
 クウガはクウガで何処か不自然だったし、追いかけてまで殺す気になれなかったのだ。
 だから今は無理に追いかけないが、次に出会った時は容赦はしない。
 そう、次に出会った時は絶対にこの手で――。

「ボソギデジャス」

 ――殺してやる。


【1日目 昼】
【G-5 市街地】

【ゴ・ガドル・バ@仮面ライダークウガ】
【時間軸】第45話 クウガに勝利後
【状態】健康、怪人体に二時間変身不可
【装備】無し
【道具】支給品一式、不明支給品×3
【思考・状況】
1:ゲゲルを続行する
2:何故変身が解除された……?
【備考】
※デイバッグの中はまだきちんと調べていません。


///////////////////////////////////////////////////
これにて投下終了です。
サブタイトルは、「その力、誰の為に」です。
最初にトリが変わってしまったのはこちらのミスです。
混乱させてしまって申し訳ありません。
それでは何か問題点などがあれば指摘の方宜しくお願いします。

6 ◆VbYNTlLnDE:2010/11/26(金) 21:19:50 ID:???
一時投下します

橋の手すりに寄りかかり眼前に広がる海を眺める者がいた。
黒い革のコートに身を包んだ、がっしりとした体格の男だ。

「うーみーはひろいーなおおきぃーなー……」

思うところがあったのか、男は童謡を歌い始める。静かな歌声が海風にのまれていく――

この場がどういう場所か男は理解をしている、今この瞬間にも危険が迫っているかもしれない。
しかしどのような時、場所であろうと常に平常心とマイペースを保つ。
それが鬼として長年戦い続けてきた男、ヒビキの強さの一つだった。

「つーきーはのぼるーし、ひものーぼーるー……」

穏やかな童謡とは裏腹にヒビキの頭は状況の整理をフル回転で行う。
既にデイバッグの中身は確認し、周りの環境と地図を照らし合わせ自分がG2エリアにいる事も把握済みだ。
そして名簿の内容も――

(イブキもトドロキも参加していない、良い事なのか悪い事なのか……)

ヒビキの知り合いは3人参戦していた、既に鬼の道を退いたあきら、まだまだ不安が残る京介、そしてベテランのザンキ。
仮にそれぞれの世界で対立をしたならばヒビキ達が生き残る可能性は限りなく低いだろう。
だからといって『はいそうですか』と諦めるほどヒビキは落ちぶれてはいない。必ず全員で生きて帰る決意を固めている。
もっとも、それはこの戦いに乗るという事ではない。大ショッカーを倒すという方針だ。

7 ◆VbYNTlLnDE:2010/11/26(金) 21:20:37 ID:???
(それでお終い、ってわけにはいかないんだよなぁ……)

口ずさんでいた童謡をため息が途切れさせる。
大ショッカーの老人が言っていた全てを戯言と流す事もできるだろう、しかしそれらが現実だったら?
少なくとも60人もの人間を僅かな抵抗も許さず集めのけた大ショッカーだ。
それだけの事をやってのける組織の言葉全てを嘘と決め付けられるだろうか。鵜呑みもできないのは勿論だが――

(戦う意思は無さそうだな)
「……厄介な事に巻き込まれたもんだよなぁ、お互い」

ヒビキが橋下に声を掛ける、すると

「いやー……ほんと、そうですよね」

若そうな青年の返答が返って来た。
橋下を覗くと真っ白なコックコートと赤いスカーフを巻いた青年が人のよさそうな笑顔を浮かべていた。


  ◆  ◆  ◆

8 ◆VbYNTlLnDE:2010/11/26(金) 21:21:49 ID:???
ヒビキが橋下に降り、お互いに自己紹介を済ませる。

「俺はヒビキ、本名日高仁志。ヨロシク」
「俺は津上翔一って言います。本名は沢木哲也ですけど。ヨロシク!」

握手を交わし、河川敷にデイバッグを置きその上にお互い座り込む。

「本名じゃない方が名簿に載ってるのか……俺もヒビキって載せてもらったほうがわかりやすかったろうに」
「違いはなんなんでしょうね?まぁ、どうでもいいか。それよりヒビキさんはいつから俺に気づいてたんですか?」
「んー、ここに飛ばされてデイバッグの中身確認してる頃には、な。物音っていうか気配みたいなものは感じたよ」
「すごいですね!俺はヒビキさんの歌声で初めて人がいるって気づきましたよ。ほら、うーみーはひろいーなって。
 そういえばなんで『ひはしずむ』じゃなくて『ひはのぼる』って変えたんですか?」
「日が沈むってなんかネガティブな感じがしてちょっと嫌だったんだよね、それだけ」
「わかる!わかりますよ、お日様っていいですよね!こう、何でも照らすぞ!ってところが!」

笑顔で語り合う二人の男。和やかな雰囲気だが軽く笑いあった後真剣な面持ちになり、和やかな空気は消えた。

「津上はどう思う。世界崩壊とか大ショッカーの事、さ」
「……ただいらないなんてわけのわからない理由で簡単に人一人の命を消す大ショッカーに従うつもり俺はありません。
 仮に複雑な、まともな理由があったとしても俺の大ショッカーへの思いは変わりません。
 世界崩壊とかは正直わけわかりませんし、信じたくもないですけど――大体『仮面ライダー』って何なんでしょう?」
「俺にもわからない。ただ、『特別な力』の持ち主達を総称して『仮面ライダー』と呼んだんじゃないかと俺は思う。
 そういう『特別な力』が俺にはあるからな」
「『特別な力』っていうと、物が透けて見えるとか離れた物を動かせるとか、超能力みたいなもんですか?」
「いや、俺は鬼になれる」
「鬼っていうと――」

津上が両手の人差し指を立て、自分の頭の横につけ鬼の角に見立てる。
その仕草にヒビキは苦笑しながらも頷いた。

9 ◆VbYNTlLnDE:2010/11/26(金) 21:23:05 ID:???
「うーん、なんかよくわからないけど、わかりました。それじゃ俺はアギトになれます」
「アギト?」
「はい。覚えてますか?確か3年前だったと思うんですけど、未確認が暴れてた時に話題になった第四号。あんな姿に変われるですよ」
「ちょ、ちょっと待て未確認とか第四号とかってなんなんだ?」
「え、覚えてないんですか?やだなぁヒビキさん。未確認と言えば――」

津上が事件の顛末を語るがヒビキにはその全てが初耳の話だった。続けてアンノウンの起こした事件の事も話したがそれも同様だった。
ヒビキはお返しとばかりに山間部、特に夏頃毎年事故や行方不明者が出ていないか津上に確認するが目立った事件事故はそう何度もないらしい。
お互いに語り終え、二人は違う世界の人間であると――大ショッカーの言葉が真実である事が理解できてしまった。
どちらからともなく視線を逸らし、しばらく沈黙が続いた。

「……俺、皆の場所を護りたいから強くなりたいと思って、実際強くなってアンノウンとも戦えました。
 その力が原因で世界そのものが滅ぶかもなんて……信じたくない、というより認めたくないです」
「俺もだ。多分、参加してる他の『仮面ライダー』も同じ思いだろうな」

暗い雰囲気にたまらず津上が髪の中に手を入れ唸る。

「うー、大ショッカーの言葉に従わずに世界崩壊を止める方法とかないもんなのかなぁ」
「あるだろうな」

間髪いれずのヒビキの返答に津上は目を丸くし、次の言葉を待った。

10 ◆VbYNTlLnDE:2010/11/26(金) 21:24:16 ID:???
「大ショッカーは底知れない強さを持っている……そう言っていいだろ?
 だったらいるはずだ、大ショッカーに敵対できるほどの強さを持つ『仮面ライダー』がさ」
「おお!」
「大ショッカーは異なる世界にも干渉できる、敵対する『仮面ライダー』もできるはずだ、でないと相手にならないからな!」
「なるほど!その人を探せばもしかしたら!」
「ああ!」

お互い妙なテンションで笑いあい、すぐに冷めたため息をついた。

「ま、いたらだけどな……」
「ですよねー……仮にいたとしてもこの場にいるかどうかすら」

ヒビキが立ち上がり、伸びをしながら話を切り上げる。津上もそれに倣って立ち上がった。

「大ショッカーを倒すにしろ、世界崩壊を止めるにしろ俺達が分かる事は一つだ。知識と情報が足りない」
「俺達以外の世界の人達と接触しない事には始まらない、そういうことですね」
「そう、そしてこの場は常に危険が付き纏っていると言っていい。知識や情報を持つ人物にも例外なくな」
「なら俺とヒビキさんにできることは――」

「「護る事」」

力強く頷きあい、二人の思いが一致する。どのような場所でも彼らは『仮面ライダー』だった。


  ◆  ◆  ◆

11 ◆VbYNTlLnDE:2010/11/26(金) 21:25:19 ID:???
「津上、支給品の確認は済んでるか?」

ヒビキがデイバッグの中身を取り出しながら問いかける。それに応えるように津上はデイバッグの中から支給品をいくつか取り出していく。

「変てこな赤い携帯電話、変てこなキャラクターのキーホルダー。ふうと君って言うみたいですね。それ以外は共通の物みたいです」
「どっちも使い道がわからないが、持ってても支障はないかな。俺は着替えが3着、あきら達にも支給されてるといいんだが。
 津上に一着渡しておくな?それと寝袋。最後に、よくわからないカードが4枚。見覚えあるか?」

4枚のカードを手渡された津上が一枚一枚確認していく。

「イン……ビジブル?そんな映画あったなぁ。これはレッカダイザントウ?読みづらいなぁ。
 えーっとこっちはライオトルーパー?なんだか兵隊みたいですね。で、最後が……これは――」
「何か気になるものがあったか?」
「え、えぇ。名前は今知りましたけど、見覚えはあります。めちゃくちゃな威力なんですよ、これ」
「ギガント、か。ミサイルで直接狙うのか?なんとなく良い気分はしないな」

津上が一瞬顔を曇らせるがカードを返しすぐ笑顔に戻る。

「そんなカードで何ができるって話ですしね、気にしないようにします」
「そう、だな。しかしもう少し身を護れそうな物が支給されれば良かったんだが……」
「それはそれ、これはこれ。支給品の分は俺達自身の力でカバーしましょう!」
「随分自信があるんだな?」
「だって俺アギトですから。ヒビキさんこそ大丈夫ですか?」
「大丈夫大丈夫、鍛えてますから」

ヒビキに手渡された服に津上が着替え、お互いの荷物の整理を終えて準備を完了する。

12 ◆VbYNTlLnDE:2010/11/26(金) 21:25:56 ID:???
「津上、一緒に行く方がお互い安全だとは思う。だが俺達の今の位置は都合が良い」

ヒビキはコートの内側にしまった地図を取り出しながら津上に説明を始める。

「E2エリア近辺の住宅街、G4エリア近辺の住宅街、そのどちらにも俺達は近い。
 住宅街には参加者が集まったり隠れてたりしてるんじゃないかと俺は思うんだ。そこで――」
「お互い別々の住宅街を目指して他の世界の参加者達と接触を図るってことですか?」
「そういうこと。被害が出る前にこの戦いを終わらせたいからな、時間は大切だ」
「わかりました!」
「集合場所と時間も決めておくか。連絡手段があれば良いんだがな……よし、E4エリアの病院屋上にしよう。時間は0時頃でいいかな」
「今から12時間後って所ですか。それだけあれば住宅街もある程度調べられそうですね」

集合場所と時間を決め、二人は河川敷からT字路に向かう。

「今回の俺達のように他の参加者達とも上手く接触できるとは限らない、忘れるなよ」
「はい。ヒビキさんも、あんまり背負わないでくださいね」
「……俺そんな思いつめたような顔してた?」
「ちょっぴりですけどね。あと物理的な意味でも」
「寝袋の事か。置いていってもいいんだけど有っても困るものじゃないしな」

T字路で立ち止まり、お互い視線を交わす。

「必ずまた会おう、津上!」
「えぇ、約束ですよヒビキさん!」

一時の別れの言葉を告げ、二人は別々の住宅街を目指し歩き始めた――


  ◆  ◆  ◆

13 ◆VbYNTlLnDE:2010/11/26(金) 21:26:40 ID:???
(顔に出てたか……)

住宅街を目指しながらヒビキは表情を引き締める。

(シャキッとしなきゃな。俺がしっかりしなきゃ)

世界を一人で背負った重圧を感じつつヒビキは歩く。


  ◆  ◆  ◆


(言えなかったなぁ、木野さんの事……)

死んだはずの命の恩人、木野。その名が名簿には確かに載っていた。
ヒビキにはアンノウンとの戦いの顛末を語りはしたが木野の最期は伏せたままだったのだ。

(えーい、木野さんに会ったらその時はその時だ!)

漠然とした不安を感じつつ津上は歩く。

14 ◆VbYNTlLnDE:2010/11/26(金) 21:27:20 ID:???
【1日目 昼】
【G-2 T字路】

【津上翔一@仮面ライダーアギト】
【時間軸】本編終了後
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、コックコート@仮面ライダーアギト、ケータロス@仮面ライダー電王、ふうと君キーホルダー@仮面ライダーW
【思考・状況】
1:打倒大ショッカー
2:殺し合いはさせない
3:大ショッカー、世界崩壊についての知識、情報を知る人物との接触
4:木野さんと会ったらどうしよう?
【備考】
※響鬼の世界についての基本的な情報を得ました。

【日高仁志@仮面ライダー響鬼】
【時間軸】本編第41話終了後
【状態】健康
【装備】支給品一式、アタックライドカードセット@仮面ライダーディケイド、着替え(残り2着)、寝袋
【思考・状況】
1:打倒大ショッカー
2:殺し合いはさせない
3:大ショッカー、世界崩壊についての知識、情報を知る人物との接触
4:俺がしっかりしないと……
【備考】
※カードセットの中身はカメンライド ライオトルーパー、アタックライド インビジブル、レッカダイザントウ、ギガントです
※アギトの世界についての基本的な情報を得ました。アギト世界での『第四号』関連の情報を得ました。

【共通備考】
※1日目0時、E-4エリアの病院屋上で合流する予定です
※E-2エリア、G-4エリア近辺の住宅街をそれぞれ探索予定です。津上、日高がそれぞれどちらに向かったかは後の書き手さんにお任せします

15 ◆VbYNTlLnDE:2010/11/26(金) 21:33:10 ID:???
これで全部です
誤字、脱字、問題点ご指摘お願いします。問題が無ければ明日の21時頃に投下予定です

個人的に思う問題点
インビジブルを支給品配布にしちゃうとディエンドの行動が制限されちゃいますか?
レッカダイザントウはコンプリートフォームでないと使用不可?
ギガントは激情態でないと使用不可だと個人的に思うのですが備考に載せるべきでしょうか?
もしくはギガント自体削除した方が良いでしょうか?

16 ◆LuuKRM2PEg:2010/11/26(金) 21:51:36 ID:???
投下乙です
自分は、特に問題点はないと思います
翔一君とヒビキさんのキャラが、実に出てますね

そして問題点に関してですが
インビジブルは、他のキャラに支給してもディエンドが取り戻すまで
使えなくなるだけなので、そのままでも問題ありません

レッカダイザントウは、個人的解釈としては
殿様と一緒に戦った結果、使えるカードと思ってますので
そのまま使用しても、烈火大斬刀は出ないと思います。
ただし、ここは他の方の意見も必要かもしれませんが

ギガントは、氏の言うように激情態でなければ使用不可を
備考に載せれば大丈夫だと思います

17二人で一人の/通りすがりの名無し:2010/11/26(金) 22:07:17 ID:/G3HkZxI
アギト本編とTVスペシャル→劇場版ってパラレルじゃなかったっけ
ギガントってテレビ本編にも出てきた?

18二人で一人の/通りすがりの名無し:2010/11/26(金) 22:12:11 ID:KZyQ29c2
仮投下乙です。
基本的な感想は本投下のときにまた…

インビジブルは海東の基本カードに含まれるんじゃないかなーと少し思いますが、同じく取り戻せばよいだけだし問題は少ないかと

レッカダイザントウかー自分はあの世界は本当に特殊であり、本来ライダーがいない世界で起きた特殊なカードだと思います。
別のカードに変えたほうが良いような… 同じく他の方の意見次第ですし、大きな矛盾があるというわけではないですが…

ギガントは同じくそのような制限を備考に書いておけば良いと思います。キャラ視点で認識しているかは別として

19 ◆VbYNTlLnDE:2010/11/26(金) 22:24:13 ID:y./MacTA
ご指摘ありがとうございます。
レッカダイザントウは削除し配布カードは3枚にします
それとパラレル設定完全に忘れてました、申し訳ありません。津上のギガントへの反応部分を変更しておきます

まだまだご指摘お待ちしております。インビジブルどうしようかな…

20 ◆BaIp17LTls:2010/11/27(土) 01:41:44 ID:b9/LfjPc
一時投下します


木々が生い茂り、葉と葉の折り重なった隙間から漏れる降り注ぐ陽光、
その木漏れ日に照らされている男―――五代雄介は先ほどのこのくだらぬゲーム開始時の惨劇を思い出し、大ショッカーへの怒りを募らせる。


自分の世界の未確認生物と同じように、人々の命を簡単に踏みにじり、笑顔を奪っていく。
五代雄介にはそれが許せなかった。
あそこで殺された者の事など、五代には知る由もないが、その者の笑顔は未来永劫失われてしまった。


そんな事になってしまったことを阻止できなかったことを悔やみ、同時にもう二度とそんなことを起こさせぬよう決意するのだった。
クウガとして、この殺し合いに招かれてしまった人々を守ると。そのために大ショッカーを倒すと。


「そういえば、名簿が入ってるって言っていたっけ・・・確認してみよう」


デイバッグを取り出し、しゃがみこんで中身をあさり、名簿らしき物を手に取る。
他にも色々入っていたが、今はとにかく名簿だけを取った。
そして名簿を見て驚愕する。


「そんな!一条さんまでこの場に・・・!」


五代の知り合いの刑事、一条薫。自分の理解者であり、友である男。
その男もこの殺し合いの場に居るというのだ。

21 ◆BaIp17LTls:2010/11/27(土) 01:43:02 ID:b9/LfjPc

「他には・・・知っている人は、一条さんだけみたいだ・・・」


あらかた名簿に載っている名前を見たが、知っている名前は一条薫だけだった。
他に知り合いが呼ばれてなくて幸いというべきなのか・・・。


「なら、とりあえず一条さんと合流しなきゃ。一緒に協力しないと」


行動方針を決め、デイバッグを持ち、立ち上がる。


「そこの君、ちょっと待ちたまえ」


不意に後ろから声をかけられる。
後ろを振り向くと、そこにはいつの間にやら自分より若干年下であろう青年が立っていた。
ちょっと遠目の位置に居るのが気になるが。


「・・・誰ですか?」

「や、突然引き止めてすまないね。僕は海東大樹。歩いて居たら君を見かけたんでね。
 ちょっと情報がほしくて声をかけたのさ」

「あ、どうも。俺は五代雄介って言います。情報、ですか。あの大ショッカーとか言う奴等の?」

「いや、この殺し合いをどう考えてるとかね。ちょっと教えてほしい。よければだけどね」

22 ◆BaIp17LTls:2010/11/27(土) 01:44:02 ID:b9/LfjPc

海東大樹と名乗った青年はそういった。
殺し合いをどう考えているか・・・。


「当然こんなことをやらせるのは間違っていますし、止めなきゃならない。
 人を殺すことなんて絶対に間違ってます」


強い意志を持って、五代はそういった。


「なるほどね。確かにそうだ。でもこの殺し合いに勝たなければ君の世界は消滅してしまうんだよ?
 ここに居るものだけでなく、君の世界に居るであろう友人、家族、親しい者・・・全員が」

「でも・・・そのために他の人達を犠牲にするのは間違ってるから・・・俺は少しでも多くの人々の笑顔を守りたいんです。
 だからこの殺し合いを仕組んだ奴等を倒します!」

「へぇ、大ショッカーを倒すか。面白いことを言うのだね君は。
 奴等がどれだけの力を持っているのかもわからないのに?」

「・・・それは・・・確かにそうです。でも・・・それでも!俺はこの殺し合いを止めて見せます!」


問いかけるような口調で海東は言う。しかし五代はなおも強い意思で言う。
その強くてまっすぐな意志に、海東はクウガに変身する小野寺ユウスケを思い出す。
彼も、人々の笑顔を守りたいとか言っていたっけ・・・。


「そうか。そこまで言うからには君には何か力があるんだよね?たとえば仮面ライダーだったりとか」

「仮面ライダー・・・って言うのは良くわかりませんが・・・うーん・・・」

23 ◆BaIp17LTls:2010/11/27(土) 01:45:17 ID:b9/LfjPc

そういって五代は少し考え込む。自分がクウガだということを言っていいのか。
まぁ別にいいかと楽天的に思い、五代は言う。


「俺はクウガになれます。あの最初のスクリーンに流れてた映像に少し出てました」

「・・・なんだって?クウガ?それは本当かい?」

「ええ、まぁ・・・信じてもらえないと思いますけど」


少しおどけながら五代は言う。大して、海東は表面上隠しては居るが驚いていた。
この男がクウガ・・・もし本当なら違う世界のクウガと言う事か?ということはクウガの世界は二つあったのか・・・?これは面白い。


「海東さんはその仮面ライダーなんですか?」

「どうかな。それで・・・クウガ、君は人々の笑顔を守るといったね。それが君のお宝なのかい?」

「お宝・・・まぁそうですね。守りたい、大切なものですから」

「そうか。僕も僕のお宝は守りたい。そこでだ、僕と協力しないか。互いのお宝を守るために」

「いいですよ」


親指を上げてサムズアップ。五代は海東の提案を快く受け入れる。
その笑顔とサムズアップは、どこか人を安心させるものがあった。


「ありがとう。それで、君はこれからどうするつもりだったんだい?」

「知り合いが一人居るのでその人と合流したいと考えていました。
 何処にいるのかは解らないですけど・・・」

「ならその人を探そうじゃないか。味方は多いほうが良いからね」

「そうですね。そういえば海東さんは何をやっている人なんですか?」

「僕かい?僕はトレジャーハンターをやっているんだ」

「へぇ〜いいですね!俺は冒険家なんですよ。世界を見たり回ったりして」

「なるほどね」

「あ、海東さんのお宝って何なんですか?」

「さてね」

24 ◆BaIp17LTls:2010/11/27(土) 01:48:07 ID:b9/LfjPc

【1日目 昼】
【A−8 森林】



【五代雄介@仮面ライダークウガ】
【時間軸】第46話終了後
【状態】健康
【装備】アマダム@仮面ライダークウガ
【道具】支給品一式、不明支給品×3
【思考・状況】
基本行動方針
0:人々の笑顔を守る。
1:海東さんと共に行動
2:一条さんと合流したい
3:仮面ライダーとは何だろう?

【備考】
※支給品はまだ確認していません


【海東大樹@仮面ライダーディケイド】
【時間軸】最終話終了後
【状態】健康
【装備】ディエンドライバー@仮面ライダーディケイド
【道具】支給品一式、不明支給品×3(確認済み)
【思考・状況】
基本行動方針
0:お宝を守る。
1:五代雄介と共に行動
2:五代雄介の知り合いと合流
3:知らない世界はまだあるようだ

【備考】
※クウガの世界が別にあることを知りました。

【共通備考】
※これから二人が何処に向かうのかは次の書き手さんにお任せします。

25 ◆BaIp17LTls:2010/11/27(土) 01:52:03 ID:b9/LfjPc
一時投下終了です。
何か問題点、誤字、脱字、矛盾点あったらお願いします。
問題がなければ本投下します。

なにぶん初めてなので解らないところがあったりして
迷惑をかけるかもしれませんがお願いします。

あ、タイトルは『笑顔とお宝』です。

26二人で一人の/通りすがりの名無し:2010/11/27(土) 08:40:21 ID:u2NzhEwA
投下乙です
特に矛盾とか、問題点はないと思います
本投下を楽しみに待ってます

27二人で一人の/通りすがりの名無し:2010/11/27(土) 10:41:22 ID:wfwa4sqs
仮投下乙です!
同じく問題点はとくにないかと思います

内容外の件ですが
・・・ではなく、…(三点リーダ)と呼ばれる記号を使用した方がSSとして読みやすいかと思います
状況にもよりますが基本的には確か2個セットで……のように使うと見やすいハズです。
あと、感嘆符(?や!)の後はスペースを入れた方が良いかと思います。理由は上記と同じです。
文末は除いて

例として>>23、4行目
>「・・・なんだって?クウガ?それは本当かい?」

を「……なんだって? クウガ? それは本当かい?」

内容の感想は本投下のときにします! 改めて投下乙です!

28 ◆BaIp17LTls:2010/11/27(土) 11:23:34 ID:b9/LfjPc
ご指摘有難うございます。
ではその点を修正して、本投下します。

29 ◆BaIp17LTls:2010/11/27(土) 12:00:59 ID:b9/LfjPc
投下終了と書き込んだら連投しすぎてまさかの規制。
とりあえず本投下終了しました。
何かあったらご指摘お願いします。

30 ◆VbYNTlLnDE:2010/11/27(土) 20:36:35 ID:RYGSJxIs
日高仁志の状態表【道具】の欄が無くて【装備】欄に書かれちゃってました。
wiki収録済んだら修正しておきます。見落とし申し訳ない

31 ◆Wy4qMnIQy2:2010/11/27(土) 21:32:19 HOST:250.160.233.111.ap.yournet.ne.jp
完成が遅れて申し訳ありません。これより仮投下を開始します。


「許せるかよ、こんなの……!」
外観も豪華な洋風の屋敷。その中にある広大な庭の芝生の上で、加賀美新は怒りを零した。
矛先はつい数分前、影山瞬が抗議をする間もなく殺された悲劇。
彼を殺した死神博士と名乗る男は、この場で互いに殺し合うことを命じた。
それがたった一つだけでも世界を守るための手段だという。
(だからって、あんな人を馬鹿にしてる奴らに従えるか)
「いらないから」なんて勝手な理由で人を殺し、さらに多くの命を互いに奪い合わせようとする大ショッカーという組織。
加賀美には、彼らがただ人の命と弄ぶ非道としか思えなかった。
心は奴らを決して許せないという怒りに熱く燃える。

(でも、奴らに逆らって世界が消えてしまったら……)
しかし、現実に人の命が消えようとしているらしいことを考えると、心は揺らぐ。
少しでも多くの命を救う手段として提示された可能性を蹴って、全てを無に帰してしまうのは果たして許されるのか。
(俺は、どうすればいいんだよ……!?)
先の見えない未来。その苦悩で頭を抱えていると、
ズズッと背後で何かを引きずる音がした。
「ん?」
加賀美が後ろを振り向いた時、視界の中にいたのは、
彼の体めがけて思いきり剣を振り下ろそうとする男の姿だった

「なっ!?」
咄嗟に飛び退き、ギリギリのところで避ける。
直前まで加賀美が立っていた場所で土が飛び散り、銀色の刃が深く突き刺さった。
「おい君やめ、うわっ!」
加賀美が剣を持つ男に制止の言葉をかけるが、遮るように男はもう一度剣を振る。
直前の一撃に比べれば、今度は若干の余裕をもって回避できた。これには一つの理由がある。
(そんな重すぎる剣で、人を仕留められるかよ)
武器があまりにも重いのだ。
剣を持ち上げようとする動きから太刀筋が少しは予想できるのに加え、振る度にいちいち地面に剣先を下ろさなければならない。
ただの人間が扱うには明らかに不向きな得物だ。
しかし、それでも青年は闇雲に剣を振り続けてくる。間違いなく、こちらの命を奪うことが目的だ。

32 ◆Wy4qMnIQy2:2010/11/27(土) 21:33:31 HOST:250.160.233.111.ap.yournet.ne.jp
どうにかこの状況を切り抜けられる手段はないかと考えるが、あいにく支給品は役に立ちそうにないものだけだった。
なら向こうに隙があればと、加賀美は男の姿を見る。ゆらりと目を向けてくる男は、加賀美より少し若く見える青年だった。
どちらかというと気が弱そうな顔つきで、この重い武器を扱うのも、さらに言えば殺意を抱いているというのも不釣合いに見える。
「なんでこんな奴まで……」
結局何も策が思いつかないまま何度目かの攻撃をかわした時、加賀美はある異変に気がついた。

『ふぐぉっ、…の、あ痛っ! …たるっ、こら!』
青年のディバッグからがさごそと音がする。いや、声が聞こえる。
加賀美が不可思議そうに見つめると同じく、青年も鬱陶しそうにディバッグを見る。
すると、

「ぶはっ! やっと出られたぁ〜」
突如、黄色い何かが飛び出してきた。
その小さな黄色い生物には一対の目と羽があり、小さな牙も生やしている。
まるで蝙蝠のような外見であるが、明らかにおかしい点がある。
たった今、こいつは喋った。ただの蝙蝠だとしても、もし仮にゼクターの一種だとしても、喋る蝙蝠など前代未聞である。

「おい渡! いきなりオレ様をこんなもんの中に押し込んだと思ったら、何物騒なことしてんだよ!?」
この黄色い蝙蝠はいったい何なのか。蝙蝠に抗議の言葉を浴びせられている青年は何者なのか。
加賀美が奇異の目を向けるが、それに構わず一人と一匹はお互いに睨みあった。蝙蝠に向かって、青年は一言吐き捨てる。
「…黙っててよ、キバット」
純朴そうな顔には似つかわしくない、冷たく響く言葉。しかし蝙蝠は怯まずに言い返す。
「相棒が道を踏み外そうとしてんのに黙るわけねえだろ!
 オレ様がどれだけお前と一緒に戦ってきたと思ってんだ!」

───相棒。
加賀美はキバットと呼ばれた黄色い蝙蝠の必死な台詞によって、一つだけ理解できた気がした。
例え姿形は全くの別物であっても、互いに信頼しあうことができるかけがえのない相手。
きっと目の前の一人と一匹は、そんな強い絆で結ばれた関係なのだろう。
ふと、加賀美の頭にある男の姿が浮かぶ。
全てを救うために誰よりも強くあろうとした、加賀美の知る中で最も偉大な男。
いつも傲慢な態度で接してきて、けれどいつも自分と肩を並べて戦ってきた男。
(ちぇっ、またあいつに世話になっちまった)
彼との戦いの日々が、加賀美にこの殺し合いの中でするべきこと、成し遂げるために必要な自信をもたらした。
(大ショッカー、俺はお前らなんかに負けねえぞ。絶対に皆を救ってやる!)
仲間と力を合わせて巨悪を倒す。かつ、全ての世界を救う方法を探す。
おそらくあの男はとっくに決めているだろう行動方針を胸に刻む。そのためにもまずは。

33 ◆Wy4qMnIQy2:2010/11/27(土) 21:34:19 HOST:250.160.233.111.ap.yournet.ne.jp

「あのさ。相棒がこうしてほしいって言ってるんだから、聞いてやったらどうだ?」
ここでふさわしいのは青年と戦うよりも、止めさせること。
加賀美の説得に加えてキバットからの懇願を聞いたら、青年も思い直すかもしれない。
なにより、相棒とわかりあえないままこの青年が罪を背負うことになるなんて悲しすぎる。
「おっ、いいこと言うねぇ兄ちゃん。そうだぞ渡、まずはもう一度オレ様の言葉を聴こうぜ、な?」
「もしかしたら俺だって君の力になれるかもしれない。いや、俺よりもすごい奴に心当たりはあるんだ。ほら、まずは落ち着こう」
「……」
青年は動きを止めた。返答はないが、きっともう一押しだ。
「俺の名前は加賀美新。君の名前は…渡君だったっけ?確か名簿だと上の名前は……」

「紅。紅渡。

 残念ね。二人とも違う世界の出身だなんて。もし同じ世界の男だったら扱いも考えてあげたのに」

加賀美とも渡とも、もちろんキバットとも異なる声が響いた。
全員が声の聞こえた方に目を向けると、庭の一角に一人の女性が立っていた。
「…なんですか、あなたは」
「あぁ、私は園崎冴子」
渡とは対称的に両目に強い野心のようなものを感じさせる女性は、どこか高圧的な態度で名乗り、
「でも聞くだけ無駄よ? だって」

───タブー───

金色に輝く一本のメモリを取り出し、腰のバックルに挿入した。
「どうせ今ここで、私に潰されるんだから」
女の身体が妖しく輝き、異質なものへと変わっていく。
眼の無い頭、赤と紫と黒の肌、脚が無い代わりとばかりに単眼がこちらを覗く下半身。
姿を一言で表現するなら、怪人。加賀美の宿敵であるワームという化け物に何か近いものがある。
その顔からは、明確な敵意だけがひしひしと伝わってくる。
こいつは危険な相手だ、加賀美は渡にそう告げようとした。が、その前に怪人は右手から赤く光る弾丸を撃ち出してきた。
「危ないっ!」
すぐに渡に飛び掛って地面に伏せ、なんとか直撃は避けることができた。
しかし怪人は余裕の態度を見せる。このまま光弾を打ち続けられたら、加賀美も渡もいつかは身体に傷を負ってしまうだろう。
そう、このまま怪人対生身の人間という構図が変わらなければ。

34 ◆Wy4qMnIQy2:2010/11/27(土) 21:35:58 HOST:250.160.233.111.ap.yournet.ne.jp

「渡君、話の続きは後だ。今はその蝙蝠と一緒に中に隠れてろ」
「ってオイ待てよ兄ちゃん! なんか策でもあるってのか!?」
「ある。いや……『いる』」
加賀美が右手を天にかざすと、空高くから青い鍬形虫が飛んできて手中に収まった。
「俺の、頼もしい相棒がな」
両足でしっかりと立ち上がり瞳を真っ直ぐ怪人に向け、加賀美新は叫んだ。

「変身!!」

気合とともに、右手に持った青い鍬形──ガタックゼクターを銀のベルトに向けて力強くスライドさせた。

───HEN-SHIN───

電子音声とともに、加賀美の身体は瞬く間に青と銀の装甲に包まれていき、力強さが漲る戦士となる。
変化が終わった時、怪人は少し驚いたように一つの名前を呟いた。

「その姿、まさか? ……そう、あなたが異世界の『仮面ライダー』ってやつね」

それが、戦いの神───仮面ライダーガタックがこのバトルロワイアルの場に君臨した瞬間だった。




壁を挟んだ向こう側から爆音と振動が伝わってくる。どうやら部屋の外では戦闘が始まっているらしい。
「始まったか。渡、お前は行かなくていいのか?」
キバットバットⅢ世は、黙ったまま俯く渡に声をかけた。

35 ◆Wy4qMnIQy2:2010/11/27(土) 21:36:58 HOST:250.160.233.111.ap.yournet.ne.jp

「…ここに来てすぐの時にも言ったけどよ、オレ様は渡が前みたいに戦うっていうなら力を貸すぜ。
 それ以外じゃ断固お断りだし、あの変なメモリも譲らねえ」
かつて渡は、父から受け継いだブラッティローズが奏でる音色に祈りを重ねた。
自らの奥底に眠る本当の自分自身を知りたい、そして他人が内包する美しさを守りたい、と。
一途な願いは、渡が理不尽に命を奪われようとする人々を守るために戦い続ける理由となっていた。
キバットもまた渡の願いに共感し、一心同体のパートナーとして苦楽を共にしてきた。
はずだったのに。

「……」
今の渡の目に光はない。
彼はこれまで困難に突き当たった時、殻に閉じこもって塞ぎこんでしまうことが何度かあったが、今の暗さの比ではない。
渡をここまで絶望の底に沈めるには、あの悲劇は十分すぎたのだ。

「また一緒にキバっていこうぜ渡。奪うためじゃない、人の音楽を守るためにさ」
キバットは、ずっと共に生きてきた仲間として今の渡を放っておくことができなかった。
この箱庭に来てから初めて出会ったあの正義漢のようになってほしい。もう一度光を求めて一緒に戦って欲しい。
そんな想いから、キバットは渡を励ますことを止めない。

「キバット」
ようやく渡は口を開いた。声には陰が差していて、明るさなど欠片もない。
「……僕はもう、あんな思いはしたくない。だから、やっぱり答えを変えられないよ」
加賀美とキバットの説得もむなしく、渡は考え直すことをしなかった。

「…何だよ」
渡の返答を聞き、キバットの声は震えていた。
「オレ様じゃ駄目なのかよ!? 今のお前の絶望を吹っ飛ばすのにオレ様じゃ力不足だってか? 
 一人で辛いの全部抱え込んで、それであのふざけた奴らの言いなりになって何もかも壊ちまうのかよ?
 オレ様とあの加賀美って兄ちゃんが渡に希望を捨てるなって言ってるのは、お前にとってどうでもいいことかよ!?」
ついにキバットは怒りを爆発させた。恐怖から抜け出せない渡と、そんな彼の心を救えない自分自身への怒りを。
しかし、感情を昂らせたキバットを前にしても、渡は奇妙なくらいに落ち着いたまま何も言わない。

36 ◆Wy4qMnIQy2:2010/11/27(土) 21:38:46 HOST:250.160.233.111.ap.yournet.ne.jp

「〜〜っ、もう勝手にしろ!! でもオレ様は、今のお前になんか手を貸したりしねえからな! やりたきゃ一人でやれってんだ!」
どこまでもわかりあえない青年に絶縁を告げて、キバットは背を向けた。
「……うん」
渡は仲違いになってしまった相棒にむかって小さく頷き、再び剣を握り締めた。




園崎冴子───タブー・ドーパントもまた、現状に腹を立てる一人であった。
自分をずっと粗雑に扱ってきた父、園崎琉兵衛をこの手で倒す。
自分の力を見せつけて彼を屈服させ、『ミュージアム』のトップの地位を奪い取る。
それが、冴子が今日まで生きてきた理由である。
目的を果たすためには、本来なら馬鹿の考えたゲームに付き合う暇はない。
主のいない園崎の屋敷の模造品の中で遊んでいる暇だって勿論ない。

しかし帰るべき世界が消えてしまうとなれば話は別だ。
なんとしても他の世界を消し去って、父のいる世界を崩壊から防がなければならない。
(皮肉ね。憎いお父様を倒すために、そのお父様を守るなんて)
行動方針から生まれる矛盾がたまらなく不愉快で、冴子は速やかにこの殺し合いを終わらせることを望んだ。

だというのに、目の前に立ちはだかる青い仮面ライダー、ガタックが立ち塞がって邪魔をする。
「はっ!」「このっ!」
タブーの両手から放たれる光弾とガタックの両肩からの砲撃が再び正面から衝突し、爆発を起こした。もう五度目になるだろうか。
ガタックが追加で攻撃してくるのを見て、タブーは空中で旋回する。
何にも当たらずに空を切る弾丸には目もくれず、こちらからもガタックの横側から素早く光弾を撃ち返す。
ガタックは身体ごと向きを変えて照準を定めなければならないため、今この瞬間では反撃が間に合わない。
咄嗟に地面に転がってかわそうとしたが、一発は上半身に命中した。

37 ◆Wy4qMnIQy2:2010/11/27(土) 21:40:25 HOST:250.160.233.111.ap.yournet.ne.jp

「やっ…てないわね」「そんなのが効くか!」
ほとんどダメージを与えられなかったようで、力強い声が返ってくる。
当てることを重視したために威力を抑えた点もあるが、やはり一番の原因はガタックの重厚な装甲にあるのだろう。
機敏さにかけてはタブーにアドバンテージがあり、一方のガタックは防御力に秀でている。
このまま戦い続けても、ただの時間の浪費になるだけだ。

(このままじゃ埒があかないわね。やっぱり、あの支給品はここで使うべきかしら……)
こちらから手の内を明かすのは癪だが、いつまでも状況が変わらないままというのも気に入らない。
支給品を使うのもやむを得ないか、と決断しようという直前で、その必要がないと気付いた。

「あははっ、チャンスがのこのこ歩いてきたわ!」
冴子が見つけた、喜びを隠さずにいられないチャンス。
それは彼女のとって絶好の鴨───剣を重たそうに引きずりながら歩いてくる紅渡だった。
常識で考えれば、生身の人間がこの場に来たところで何も出来はしない、それどころか自殺行為とさえ言える。
まさか扱いづらいだけの武器で二人を殺そうと本気で考えてるのか、それともただ単に気が狂ったのか。

「えっ……? 馬鹿、なんで戻ってくるんだ!?」
ガタックが叱咤しながら必死に渡のもとへと走り出す。
渡の前に出れば、少なくとも身を挺して庇うことくらいは出来ると考えたのだろう。

「でも、させないわ」
タブーは右手で弾を放った。しかし着弾点は渡の身体ではなく、彼のもとへ走るガタックの足元だ。
標的が自分の方だとは予想もしていなかっただろう。ガタックは足元の爆発にろくに対応できない。
分厚い鎧も意味を成さずに、その場で大きくバランスを崩した。
みっともなく膝をつくガタックに可笑しさを感じながら、また両手にエネルギーを溜める。

これで、紅渡は誰にも守られることなく命を絶たれる。
加賀美新は渡の身体が砕かれるのをただ見ていることしか出来ず、無力感に打ちひしがれることだろう。
戦いの舞台から一人が消え、正義のヒーローの心には消えないダメージを与えられる。
最高の未来が訪れることを確信し冴子は笑みを浮かべる。
ガタックが何やら叫んでいるのを聞きながら、自らの崇高なる目的達成の第一歩を踏み出そうとした時。

38 ◆Wy4qMnIQy2:2010/11/27(土) 21:41:03 HOST:250.160.233.111.ap.yournet.ne.jp


冴子には見えた。

「渡の、馬鹿野郎がああぁぁっっ!!」

黄色い蝙蝠が屋敷の中から真っ直ぐに飛んできて、渡の左手に噛み付くのが。

一瞬で渡の腰に赤いベルトが出現し、蝙蝠が頭を地に向けてベルトに張り付くのが。

冴子が慌てて撃った赤い光弾を渡の目がまっすぐに見据えて、その口が「変身」と呟くのが。


大きな爆発が起こり、辺りに煙が立ち込める。
「……まさか、あなたもだったなんて」
描いた未来が歪んでしまったことを悟り、冴子はまた苛立ちを募らせる。
煙が晴れたとき、そこには一人が立っていた。
姿は───人間のものはない。
月の光のようなイエローの眼。血のように赤い肉体。
立っていたのは、紅渡が「変身」した戦士だった。
未知の存在であるはずなのに、やはり既視感と憎らしさを覚える。

「渡君、きみも……」
「また別の、『仮面ライダー』」




自身を死地に放り込むことはあまりに危険な賭けだった。失敗すれば何も成し遂げられずに死ぬこととなる。
でも、賭けに勝った。こんなところまで相棒は来てくれた。
───エンジン───
彼が一緒に持ってきた銀色のメモリを右手で握る剣───エンジンブレードに差し込む。これでようやく全ての性能を引き出せる。

39 ◆Wy4qMnIQy2:2010/11/27(土) 21:42:00 HOST:250.160.233.111.ap.yournet.ne.jp

「ありがとうキバット。……ごめん」
絶縁を告げたはずなのに結局は自分を見捨てずに駆けつけてくれたキバットへの感謝と、
その優しさを目的のために都合よく利用することへの謝罪を漏らす。
(でも、どんなに汚くても僕は退けないんだ)

最愛の女性を蹴り殺した時のおぞましい感覚は決して忘れることができない。
彼女が最期に残した声の小ささは耳に、身体が砕け散る様は目に焼きついて離れない。
あの時は深い傷と喪失感を抱えたまま生きる気にもなれず、いっそ死んでしまいたいとさえ願った。
しかし、大ショッカーによって連れ去られ、現実はもっと悲惨であることを告げられた。
自分のいた世界が跡形も無く消えようとしていると。
失うことの恐怖が頭に蘇った時、思い浮かんだのは今日まで自分の周りにいてくれた人達の顔だった。
この瞬間、ひとつの新たな願いが生まれた。

もう二度と、大切な人を失いたくない。
名護も、恵も、静香も、健吾も、兄も、母も、そして───今どこかにいる父も。

あるかどうかもわからない希望を追い求めて全て奪われるくらいなら、修羅の道を往く方を選ぶ。
あの絶望を味わわないためなら、他の誰かを犠牲にしてもいい。たとえ、優しい言葉をかけてくれた加賀美でも。
今まで築き上げた暖かい日々を捨て去ることも厭わない。明日から誰にも受け入れられなくて構わない。
覚悟はもう出来てしまった。
この想いこそが、僕自身だ。

(今度こそ失くさない。そのために……僕は戦う!)
固い、けれど哀しい決意を胸に、紅渡───仮面ライダーキバは目の前の敵へ向かって跳躍した。



【1日目 昼】
【D-8 園崎邸の庭】

40 ◆Wy4qMnIQy2:2010/11/27(土) 21:42:43 HOST:250.160.233.111.ap.yournet.ne.jp
【加賀美新@仮面ライダーカブト】
【時間軸】第36話終了後
【状態】健康 仮面ライダーガタック(マスクドフォーム)に変身中
【装備】ライダーベルト(ガタック)@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式、ランダム支給品1〜3(確認済)
【思考・状況】
1:仲間を集めて大ショッカーを倒し、全ての世界を救う方法を探す。
3:冴子を倒す。
4:渡君に止まってほしい。
【備考】
※擬態天道と乃木を知らない時期からの参戦です。
※支給品は戦闘で役に立たないものと判断しました。

【紅渡@仮面ライダーキバ】
【時間軸】第43話終了後
【状態】健康 仮面ライダーキバに変身中
【装備】キバットバットⅢ世@仮面ライダーキバ、エンジンブレード(メモリ挿入済)@仮面ライダーW
【道具】支給品一式
【思考・状況】
1:何を犠牲にしても、大切な人達を守り抜く。
2:まずは加賀美と冴子を倒す。
【備考】
※過去へ行く前からの参戦なので、音也と面識がありません。また、キングを知りません。

【園崎冴子@仮面ライダーW】
【時間軸】第16話終了後
【状態】健康 タブー・ドーパントに変身中
【装備】ガイアメモリ(タブー)+ガイアドライバー@仮面ライダーW
【道具】支給品一式、ランダム支給品1〜3(確認済)
【思考・状況】
1:最後まで生き残り、元の世界に帰還する。
2:同じ世界の参加者に会った場合、価値がある者なら利用する。
3:まずは加賀美と渡を倒す。
【備考】
※照井と井坂を知らない時期からの参戦です。
※ガイアドライバーを使って変身しているため、メモリの副作用がありません。
※支給品は戦闘で有益になるものと判断しました。

41 ◆Wy4qMnIQy2:2010/11/27(土) 21:43:51 HOST:250.160.233.111.ap.yournet.ne.jp
仮投下を終了します。タイトルは『エレジー♪支えてくれるひと』です。
誤字脱字、矛盾点の指摘があったらお願いします。

もし問題がなければ本投下…したいのですが、PCが書き込み規制されましたorz
どなたか代理投下をお願いいたします。

42このレスは荒らしによって破壊されてしまった:このレスは荒らしによって破壊されてしまった
このレスは荒らしによって破壊されてしまった

43 ◆Wy4qMnIQy2:2010/11/27(土) 23:01:34 HOST:250.160.233.111.ap.yournet.ne.jp
ID:dKpl9AYJさん、RFxjgRulさん代理投下ありがとうございました。
ID:ZZxyscH5さん、感想をくださってありがとうございます。

44 ◆7pf62HiyTE:2010/11/30(火) 11:57:00 ID:yk2g/4Jg
本スレ>>758より

>>連中が大ショッカーを打倒するならそれで良し
>世界崩壊を防ぎたいって思考を展開していたのに、最後にこれだと意味不明なのでは?

という指摘を受けましたので本スレ>>753


 とはいえ、それこそ机上の空論以前の妄想でしかない。だからこそ現状は大ショッカーの指示通り自分の世界を守る為に他の世界の連中を打倒するつもりだ。
 勿論、それに平行して前述の通り大ショッカーの情報も集めるつもりだ。しかし彼等との戦いは仮面ライダー達に任せておけばよい。
 連中が大ショッカーを打倒するならそれで良し、逆に返り討ちに遭っても障害が減るわけなのでそれでも構わない。


この部分を


 とはいえ、それこそ机上の空論以前の妄想でしかない。だからこそ現状は大ショッカーの指示通り自分の世界を守る為に他の世界の連中を打倒するつもりだ。
 勿論、それに平行して前述の通り大ショッカーの情報も集めるつもりだ。しかし彼等との戦いは仮面ライダー達に任せておけばよい。
 大ショッカーを打倒した場合、自分の世界が崩壊するという懸念が無いわけではない。だが、前述の通り大ショッカーの言葉を鵜呑みにしているわけではない。崩壊するという言葉が真実という確証はない。
 現段階で結論を急ぐ必要は皆無、本当に崩壊するならば大ショッカー打倒を妨害する事も辞さないが今はまだその時ではない。大ショッカーの情報を集めてからでも遅くはないだろう。
 故に、現状は仮面ライダーの大ショッカー打倒を妨害するつもりはない。もっとも、金居自身が手を出すまでもなく妨害する者がいるのは明白だろうが。
 連中が大ショッカーを打倒するならそれで良し、逆に返り討ちに遭っても障害が減るわけなのでそれでも構わない。今の所はそれで良いだろう。


以上の様に修正します。また何か何か問題点や疑問点等があれば指摘の方お願いします。

45データ破損:データ破損
データ破損

46データ破損:データ破損
データ破損

47データ破損:データ破損
データ破損

48データ破損:データ破損
データ破損

49データ破損:データ破損
データ破損

50データ破損:データ破損
データ破損

51データ破損:データ破損
データ破損

52データ破損:データ破損
データ破損

53データ破損:データ破損
データ破損

54データ破損:データ破損
データ破損

55データ破損:データ破損
データ破損

56データ破損:データ破損
データ破損

57データ破損:データ破損
データ破損

58データ破損:データ破損
データ破損

59データ破損:データ破損
データ破損

60データ破損:データ破損
データ破損

61データ破損:データ破損
データ破損

62データ破損:データ破損
データ破損

63データ破損:データ破損
データ破損

64データ破損:データ破損
データ破損

65データ破損:データ破損
データ破損

66データ破損:データ破損
データ破損

67データ破損:データ破損
データ破損

68データ破損:データ破損
データ破損

69データ破損:データ破損
データ破損

70データ破損:データ破損
データ破損

71データ破損:データ破損
データ破損

72データ破損:データ破損
データ破損

73データ破損:データ破損
データ破損

74データ破損:データ破損
データ破損

75データ破損:データ破損
データ破損

76データ破損:データ破損
データ破損

77データ破損:データ破損
データ破損

78データ破損:データ破損
データ破損

79データ破損:データ破損
データ破損

80データ破損:データ破損
データ破損

81データ破損:データ破損
データ破損

82データ破損:データ破損
データ破損

83データ破損:データ破損
データ破損

84データ破損:データ破損
データ破損

85データ破損:データ破損
データ破損

86データ破損:データ破損
データ破損

87データ破損:データ破損
データ破損

88データ破損:データ破損
データ破損

89データ破損:データ破損
データ破損

90データ破損:データ破損
データ破損

91データ破損:データ破損
データ破損

92データ破損:データ破損
データ破損

93データ破損:データ破損
データ破損

94データ破損:データ破損
データ破損

95データ破損:データ破損
データ破損

96データ破損:データ破損
データ破損

97データ破損:データ破損
データ破損

98データ破損:データ破損
データ破損

99データ破損:データ破損
データ破損

100データ破損:データ破損
データ破損

101データ破損:データ破損
データ破損

102データ破損:データ破損
データ破損

103データ破損:データ破損
データ破損

104データ破損:データ破損
データ破損

105データ破損:データ破損
データ破損

106データ破損:データ破損
データ破損

107データ破損:データ破損
データ破損

108データ破損:データ破損
データ破損

109データ破損:データ破損
データ破損

110データ破損:データ破損
データ破損

111データ破損:データ破損
データ破損

112データ破損:データ破損
データ破損

113データ破損:データ破損
データ破損

114データ破損:データ破損
データ破損

115データ破損:データ破損
データ破損

116データ破損:データ破損
データ破損

117データ破損:データ破損
データ破損

118データ破損:データ破損
データ破損

119データ破損:データ破損
データ破損

120データ破損:データ破損
データ破損

121データ破損:データ破損
データ破損

122データ破損:データ破損
データ破損

123データ破損:データ破損
データ破損

124データ破損:データ破損
データ破損

125データ破損:データ破損
データ破損

126データ破損:データ破損
データ破損

127データ破損:データ破損
データ破損

128データ破損:データ破損
データ破損

129データ破損:データ破損
データ破損

130データ破損:データ破損
データ破損

131データ破損:データ破損
データ破損

132データ破損:データ破損
データ破損

133データ破損:データ破損
データ破損

134データ破損:データ破損
データ破損

135データ破損:データ破損
データ破損

136データ破損:データ破損
データ破損

137データ破損:データ破損
データ破損

138データ破損:データ破損
データ破損

139データ破損:データ破損
データ破損

140データ破損:データ破損
データ破損

141データ破損:データ破損
データ破損

142データ破損:データ破損
データ破損

143データ破損:データ破損
データ破損

144データ破損:データ破損
データ破損

145データ破損:データ破損
データ破損

146データ破損:データ破損
データ破損

147データ破損:データ破損
データ破損

148データ破損:データ破損
データ破損

149データ破損:データ破損
データ破損

150データ破損:データ破損
データ破損

151データ破損:データ破損
データ破損

152データ破損:データ破損
データ破損

153データ破損:データ破損
データ破損

154データ破損:データ破損
データ破損

155データ破損:データ破損
データ破損

156データ破損:データ破損
データ破損

157データ破損:データ破損
データ破損

158データ破損:データ破損
データ破損

159データ破損:データ破損
データ破損

160データ破損:データ破損
データ破損

161データ破損:データ破損
データ破損

162データ破損:データ破損
データ破損

163データ破損:データ破損
データ破損

164データ破損:データ破損
データ破損

165データ破損:データ破損
データ破損

166データ破損:データ破損
データ破損

167データ破損:データ破損
データ破損

168データ破損:データ破損
データ破損

169データ破損:データ破損
データ破損

170データ破損:データ破損
データ破損

171データ破損:データ破損
データ破損

172データ破損:データ破損
データ破損

173データ破損:データ破損
データ破損

174データ破損:データ破損
データ破損

175データ破損:データ破損
データ破損

176データ破損:データ破損
データ破損

177データ破損:データ破損
データ破損

178データ破損:データ破損
データ破損

179データ破損:データ破損
データ破損

180データ破損:データ破損
データ破損

181データ破損:データ破損
データ破損

182データ破損:データ破損
データ破損

183データ破損:データ破損
データ破損

184データ破損:データ破損
データ破損

185データ破損:データ破損
データ破損

186データ破損:データ破損
データ破損

187二人で一人の/通りすがりの名無し:2010/11/30(火) 16:19:46 ID:k.POYDQA
?

188二人で一人の/通りすがりの名無し:2010/11/30(火) 20:23:52 ID:9khyby4s
どうやら一時的なバグとか

189 ◆LQDxlRz1mQ:2010/12/02(木) 20:08:05 ID:3ZtxTEXU
只今より、投下します。

190near miss ◆LQDxlRz1mQ:2010/12/02(木) 20:09:03 ID:3ZtxTEXU
 英雄。東條悟の中で、そんな言葉が彼の興奮を誘っていた。
 13人の仮面ライダーのひとりとして、大切な人間たちを殺してきた彼であっても、この胸の高鳴りを殺すことは出来ない。
 どういう経緯があって彼がこんなことを思うようになったのかは知らないが──


(この殺し合いで世界を救って英雄になれば、皆が僕を好きになってくれる)


 そんな強い思いが、彼を勝手に突き動かしてくれる。
 ただ名も残らぬまま生きていき、やがて死んでいく人間とは違う──そんな特異な存在、英雄。
 帰っては世界を救ったものと人に崇められ、後の歴史に名前を載せる。
 これは彼にとって、そんな夢を実現させるゲームでしかなかった。異世界の人間の死も、全て栄華のための「必要な犠牲」でしかないというのが、彼の考えなのだから。
 そして、英雄はただ一人でいい。
 たとえ同じ世界の人間であっても、協力などはしない。いや、寧ろ「困難な状況で生還する」ことにはより高い『英雄性』があるのではないかと東條は考えていた。ルールの形式上であっても、『大切な仲間』を殺すという点では東條の英雄観に合致している。
 味方であってもお構いなし、というのが彼の性質の悪い箇所だった。


 東條は、少し歩いてから目の前の白く大きい建物を見上げた。
 遠くから見上げれば、「大きな建物」以上の情報は得られないが、その建物が何なのかを理解した彼は呟く。


(病院かぁ……)


 それは、人の生命を左右する建物に違いなかった。
 この「選別」で怪我や病気を発症した人間によれば、地獄に仏という状況だろう。
 怪我も病気も無い東條だが、ここには少しだけ用事があった。いや、今この瞬間、彼にはここへの用事ができたのだ。


(ここでそういう人たちを待とう……それで、"犠牲"になってもらうんだ)

191near miss ◆LQDxlRz1mQ:2010/12/02(木) 20:09:44 ID:3ZtxTEXU
 怪我・病気に何らかの処置が必要な人間──弱った人間を襲い、参加者を減らせるというならそれほど楽なことはない。

 ……これは東條の一つの作戦でしかないが、彼の専売特許である"奇襲"に向いている作戦であることは確かだった。
 当然だが、用もなくここに来る人間は少ないだろう。何らかの病気にかかったり、襲われて怪我をしたりした人間であっても、流石に警戒してこんな場所に来ないかもしれない。
 だが、一度に多くの敵を相手にしないで済むという点では、東條の保身上の問題はない。

 彼の内気で臆病な部分が、無意識のうちにそういう方法を導き出したのだろう。
 ライダーバトルの中でも、彼はそういう人間だった。
 自分の意図を伝えないままに、そして何より不意に敵を殺す。彼の中に潜むハンター・『虎』がそれを実行させるのだ。


 病院は建物の性質上、鏡となるものが多い。
 病院の入り口から、その受付やソファを眺める彼の頬は引きつっている。
 基本的に、どこにいても変身には困らないだろう。病室の手洗い場であっても、金属の柱であっても、タイガのデッキを翳せばVバックルは現れ、仮面ライダータイガの装甲が彼を包んでくれる。
 『犠牲を作る』ことに向いていると、彼は思う。
 医者という職業の人間が人の生命を救い、時には大切な患者の死を見守ってきたように……病院という場所は英雄に限りなく近い場所だ。少なくとも東條の価値観では、そういうことになっていた。


 早速、東條は油断した人間が来そうな場所を探した。
 まずは、一階を探す。
 入ろうとすれば見えてしまう受付付近はまず他人を警戒させてしまう可能性が高い。
 都合の悪い敵に見られれば、真っ先に狙われる可能性さえ存在する。この場所は不適切だ、と思いながら奥に進む。
 他にも様々な部屋を回るが、一階は受診をするような場所でしかなく、「小児科」・「耳鼻科」・「内科」と書かれている部屋に寄る人間はまず少ないだろう、と東條は思った。


 階段を上った先にある病室の群。
 こちらは、ホテルのような感覚で休むことができる──疲れ果てた参加者には休息に成りうる場所である。
 が、東條が目をつけたのはまずその廊下だった。
 長い廊下は、彼のファイナルベントであるクリスタルブレイクに最適だった。
 窓は鏡になるし、病院に入る人間の監視もできる。更には、どの病室に入ろうとしても東條の視界に入った瞬間に殺せる。
 彼の戦法には打ってつけの場所であった。

192near miss ◆LQDxlRz1mQ:2010/12/02(木) 20:10:39 ID:3ZtxTEXU
「……誰かいるのか?」


 そんな声とともに病室の一つが開き、東條は不意を突かれたような表情を隠せなかった。
 デッキを持ちながらも、東條は彼に背を向けて窓にそれを翳すことができない。彼が出てきた病室の方を向いてしまったのが間違いだったのだ。
 体勢を立て直すことができない。
 目の前の人間は当然、「犠牲」になってもらうしかないのだが……。


「良かった……。参加者に会ったのはお前が初めてだよ。誰でもいいから、聞いて欲しい話があるんだ」

「……聞いて欲しい、話?」

「ああ。俺たちの住む世界と別の世界があるなら、互いに情報交換することも必要だろ? だから、大ショッカーを倒すためにも俺の話を聞いて欲しいんだ」


 その男は、剣崎一真といった。
 東條とは別の世界の仮面ライダー──ブレイドの名前を持つ男だった。



△ ▽



「……つまり、君の世界は『仮面ライダー』の存在意義そのものが違うんだね」


 東條は剣崎の話を聞いていた。相手が東條を警戒する様子がないならば情報も聞き出しやすいと考えたのだ。
 他世界の情報を知ることに意味は無いと思ったが、剣崎が『ケータッチ』や『ヒートメモリ』といった他世界の道具が支給されていることを知った今の彼には剣の世界の情報は無意味なものとは思えなかった。


「僕の世界では、仮面ライダーは『潰し合うもの』。君の世界では、仮面ライダーは『助け合うもの』……」

「お前と俺の世界はまるで違う。……そんな世界があったなんて」

「あまり実感が沸かないな……仮面ライダー同士が助け合う世界があるなんて」


 龍騎の世界は異質である。仮面ライダー同士が互いを完全な敵として認識しているのは、東條のいたその世界だけなのだ。全ての世界では、何らかの形で「仮面ライダー対怪人」という公式が備わっていた。
 当然、『仮面ライダー』は敵だった東條に、仮面ライダーが肩を組む姿を想像することは難しい。


「俺の友達が、前に俺に言ったんだ。──俺とお前は戦うことでしか分かり合えない、って。
 だけど、言ったろ? そいつは俺の友達だって。だから、今は敵同士でもきっと分かり合える日が来る」


 剣崎が戦争の世界に生きる仮面ライダーを諭そうと、そう言葉をかける。
 人間が、同じ人間を殺した末に自分勝手な願いを叶える世界──そんな世界を誰が望むものかと、剣崎は堪えられない怒りを握り締めた。
 ……そんな剣崎を、東條は鼻で笑う。
 どこかで、こんな男を見た気がする。東條や香川とは違い、理屈でライダーバトルを止めようとは考えない。
 要するに──馬鹿。

193near miss ◆LQDxlRz1mQ:2010/12/02(木) 20:11:25 ID:3ZtxTEXU
 仮面ライダー龍騎の城戸真司と同じで、ただその偏った表面上の正義感で動こうとして、結局戦いを止めることもできない駄目なライダーだ──


「僕だって、前まではライダーバトルを止めて英雄になろうと思ってた。でも、今の僕は別の方法を思いついたんだ」


 ──そういうライダーは弱い。
 そして、騙されやすい。英雄になる方法を履き違え、その方法が仇となっていつかは命を落とすような頭の悪さ。
 そんな立場の弱い相手に、『英雄』は強気になれた。
 怪訝そうに東條の表情を確認する剣崎を無視して、東條は背を翻して廊下に出る。


「ついてきてよ」

「……? ああ……」


 ドアが閉まらないうちに剣崎は廊下に出て、その東條が教える『方法』を知ろうとしていた。
 ブレイバックルに似た──しかし、スペードのマークが動物のマークに描き変えられたようなそれを、東條がガラスに翳す。
 その行為が一体、何を示しているのかわからなかったが、鏡に映った東條の腹をベルトが覆った瞬間に気づいた。
 それが、仮面ライダーへの変身方法なのだと。


「変身!」


 そこにあったのは内気な少年の姿を忘れさせるかのような獰猛な仮面ライダーの姿だった。
 仮面ライダータイガ。その名前は、剣崎は既に東條の口から聞いていた。


「これが、お前の世界の仮面ライダーなのか……」


 何故廊下に出たのかも忘れて、剣崎はその姿に意識を奪われた。
 ブレイドやギャレンに、確かに似ている。
 ……が、だからこそこれが殺しあうためのライダーだという事実には強い抵抗を感じた。


「そうだ、お前が言ってた『別の方法』っていうのは──」


 そう言いかけた剣崎の首に、銀色の指先が絡みついていた。
 仮面ライダータイガは、剣崎の首に手を掴んでいたのだ。首輪の冷気も温まり、あまり気にかからなくなっていた首に、冷たい感触が伝っていく。


「ライダーの頂点に立って英雄になるんだ。それが僕の見つけた方法だよ」


 狂っている、と剣崎は思い掛けた。
 そんな考えをかき消し、剣崎はブレイバックルを腰に撒いた。


「変身!」


 ──Turn up──


 青い壁が、タイガを弾き飛ばす。タイガの変身方法と決定的に違う点だった。
 それを走りぬけ、追い越したとき、剣崎は既に仮面を身に纏っている。
 仮面ライダーブレイド。別世界のライダーの姿に、東條もまた心を奪われた。
 が、向かって来るブレイドを前にタイガは立ち上がり、斧型の召喚機・デストバイザーを構える。


「……ライダー同士が戦わなきゃならない世界なんて、俺が消してみせる!」


 ブレイドもまた、ブレイラウザーを構えた。
 東條という男を狂わせたもの──それは『ライダーバトル』、或いは『ライダーの力』だったのだろう。
 実際、彼はかつてライダーバトルを止めようとした男だったらしい。それが今、こうして変わっているならば、戦いが彼を狂わせたということだ。

 ギャレンの力に植えつけられる恐怖心。
 レンゲルの力に奪われる理性。
 同じように、それに近い何かがタイガの中で動いていると、剣崎は思っていた。

 ブレイラウザーとデストバイザーが刃を交えあう。火花が散っても、後退はしない。
 仮面を通して肌を刺激する熱も、胸に滾る二つの思いに敵うことはないのだ。


──(今はただ、剣をぶつけ合うしかない。分かり合えたときだって、きっと手遅れにはならない……!)

──(君の犠牲を乗り越えて、僕は英雄になる……!)



△ ▽

194near miss ◆LQDxlRz1mQ:2010/12/02(木) 20:11:58 ID:3ZtxTEXU
 勝つ悪の組織。
 英雄に憧れる青年の限りなく近い場所に、そんな間逆の言葉に興奮を隠せない男がいた。
 大ショッカーという組織に負けぬためにも、ネガタロスはこの場で新たな組織を作ろうと模索していた。


「……そのためにも、良い悪を捜さないとな」


 角を撫でながら、ネガタロスは病院の廊下を歩いている。
 彼はかつて正義の味方・仮面ライダー電王と仮面ライダーキバに敗北し、死亡したはずだった。
 ……が、大ショッカーの力によって再生されたネガタロスは更なる悪の組織を作るために早速動き出していた。
 彼の思考によると、「悪の戦士はいつか蘇るのは当然」らしく、今こうして生きていることをあまり気にしてはいない。
 無論、腹立たしい「弱い悪」の大ショッカーは眼中になく、そんな連中が自分の再生を行ったとは夢にも思っていないのだ。


 そもそも、彼にとって興味深いのは、いくつもある世界と、そのそれぞれに存在する悪である。「悪の組織」な大ショッカーもその一つである。
 時間が幾つもあるように、世界が幾つもあり、その全てがこの場では繋がっているらしい。
 仮面ライダーという存在が厄介だが、それを倒すのがネガタロスの求める「悪の組織」である。寧ろ、ここで結成する「悪の組織」への良い実験台だ。


「ま、結成したら『新生・スーパーネガタロス軍団パート2(仮)』ってとこか……」


 あまり確定性のない名前を考えるとともに、ネガタロスは壁の向こうから薄っすらと声が聞こえることに気がついた。
 イマジンの耳をもっても、はっきりとは聞こえないが、その声が単体ではなく複数の会話であることだけは認識できる。
 会話の内容も、相手の容姿も関係なく、ただネガタロスはその敵が『善』なのか、『悪』なのかに興味があった。


「……まさか、善じゃねえだろうな」


 ネガタロスは壁の向こうから聞こえる声を潰す、或いは招き入れるために壁を破壊しようとした。
 デンオウベルトが、ネガタロスの腰の周りを一回転して──


「変身」



△ ▽

195near miss ◆LQDxlRz1mQ:2010/12/02(木) 20:12:40 ID:3ZtxTEXU
「どうです、矢車さん!? 少しはリラックスしましたか!?」


 ここはある診察室だった。心臓でも止まってしまったかのように、無気力・脱力・自堕落な矢車の触診を行うために、夏海がつれてきたのだ。わざわざ私服の上からナースの白衣を被ってまで、雰囲気を作り出す。
 穢れなき白衣を纏った少女と、戦場にでも行ってきた様な切れ焦げの黒い服の男。第三者が見て、どう思う光景なのだろうか。
 聴診器を使って、矢車の心臓から音が聞こえることを確認して、とりあえず夏海はほっと胸をなでおろした。
 が、矢車は無言を押し通す。彼はそういう男なのだ。


「少しは反応してください!」

「……」

「おーい、矢車さん」


 何度呼びかけても矢車が反応することはなく、夏海は聴診器を矢車の胸にもう一度当ててみる。
 白いTシャツの上からだが、しっかりと音は聞こえる。それは命の鼓音だった。


「もう、ちゃんと生きてるじゃないですか……」


 こうなったら秘策です、と呟いて夏海はおもむろに立ち上がった。
 そして、私服の上から羽織っていた白衣を脱ぎ、ベッドに落とした。
 これには流石の矢車の一糸の期待を抱かざるを得なかったが、その希望はすぐに絶たれた。
 無論、夏海の秘策は「そんなこと」ではなく、光の家系に伝わるある伝説のワザである。


「光家秘伝、笑いのツボ!」


 夏海の親指が矢車の首にある『笑いのツボ』を強く押した。
 この親指の餌食になった人間は、たとえどんな世界の人間であっても笑いが止まらなくなってしまうのだ。
 笑顔を捨てた矢車も、これには笑いが止まらない。


「ふっふっふっふっふっふっふっふっ……」

「笑い方もなんか消極的です……」

「ふっふっふっふっ……悪かったな」


 矢車のムッツリ笑いは、たったひとつの意味なき会話を呼び起こした。
 が、夏海としてもこの気味の悪い笑い方には鳥肌が立つ。


「あの……矢車さん」

「なんだ? ……ふっふっふっ」

「その笑い方、やめてください」

「ふふっ……楽しそうね〜」

「だからやめてください……ってあれ?」


 ふふっ、と笑ったのは矢車の声ではなく、女性の声──それも、聞き覚えのある声であることは間違いない。
 この場には三人以上の姿は見当たらないのだが……


「キバーラ?」

「はろろ〜ん。あんな狭いバッグに入れないでよ、夏海〜。中から開けるのが大変だったわ」


 小さな白が、夏海と矢車の周りを不規則に滑空する。
 まるで虫のように、動きはつかみ所がなかった。


「うん? そっちの薄汚い色男は誰〜? 夏海の新しい彼氏〜?」

196near miss ◆LQDxlRz1mQ:2010/12/02(木) 20:13:14 ID:3ZtxTEXU
 ──その返答に困る質問を、切り裂くかのように一筋の赤い光が診察室の壁に刻まれる。
 それを見ていた二人であっても、それが何故起こったのかわからない。壁に触れてもいないのに、壁に何かが起こった。
 思考をめぐらせているうちに、壁は音を立てて崩れていく。


「何でしょう、矢車さん……」

「知るか……ふっふっふっ」


 と言っているうちに、崩れた壁の向こう側に『仮面ライダー』の姿が見えた。
 その行動を見る限り、あまり正統派な『仮面ライダー』ではないらしい。


「きゃっ!」


 事態を把握していないキバーラは、その出来事に思わず驚愕の音を上げる。
 目の前のライダーが誰か、彼女たちは知っていた。──だからこそキバーラは何が起こっているのかさっぱりだ。
 そう、夏海とキバーラは、それに似たライダーを見たことがある。
 夏海はつい、そのライダーの名を叫んだ。


「──電王!!?」


 それは時の運行を守る時空戦士・仮面ライダー電王であった。彼女の知っている電王は、モモタロスというイマジンが変身する。
 ──が、その電王は悪の組織を目指すネガタロスが変身したものである。

 電王ソードフォームの複眼を始めとする赤のパーツが全て、紫に塗り替えられ、まだらのタトゥーを彫ったように青い模様が書き加えられていた。
 その名を、仮面ライダーネガ電王という。


「電王を知っていたか……。だが、覚えておけ──」


「──強さは別格だ」


 矢車はそんな敵を前にしながらも、キックホッパーになろうとはしない。
 先ほどまでの不気味な笑いは既に止み、──しかしその頬を歪曲させている。


「おい、そこの。何だか悪みたいなツラだな。どうだ、お前らは『善』か『悪』か?」


 ネガ電王は指を指す代わりに、デンガッシャー・ソードモードの刃先を矢車たちに向ける。
 矢車は全く動じず、その問いに答えを示す。


「さあな……だが、『天国』か『地獄』かで言ったら、俺が行くのはきっと『地獄』だ」

「面白い返答だ。俺様の望んでいた通りのヤツだ。……力ずくでも、俺様の軍団の団員になってもらう。
 大ショッカーをも越える、『新生・スーパーネガタロス軍団パート2(仮)』結成のためにもな」

「……貴様に手を貸すつもりはない」

「悪ってのはなぁ……最初は皆そう言うんだよ。力でねじ伏せるまではな……」


 ネガ電王はその圧倒的な自信を、矢車の前で誇っていた。
 この首輪さえなければ、大ショッカーなんて数秒で全員部下にしてみせるものを……とでも言いそうなほどに。
 実際の能力も、電王を軽く凌駕していたほどだ。それだけ戦いに慣れていた。


「変身しろ……お前だって力の一つや二つ持ってるんだろう?」

「……矢車さん、変身しないとやられちゃいます!」


 敵も味方も矢車を変身に誘う。
 ──が、矢車はゼクトバックルを地面に叩き付けるように放った。叩きつけられたそれは、慣性に身を委ねて地面を滑っていった。
 それは、矢車からのはっきりとした拒絶である。


「殺せ。本当の地獄に堕ちてやる」

「何言ってるんですか、矢車さん!?」


 矢車は、それを待っていた。それを望んでいた。
 死の先にある地獄──そこで待っている弟たちに会いに行かなければならないのだ。
 それが今の彼の、使命。
 迎えが来るのを、彼は待ちわびていたのだ。

197near miss ◆LQDxlRz1mQ:2010/12/02(木) 20:14:12 ID:3ZtxTEXU
「なるほど……。今わかった──お前は役立たずだ」


 ネガ電王がけだるそうに右足に体重をかけながら矢車にそう告げる。
 それは「勝つ悪の組織」を目指すネガタロスからの、死の宣告だった。
 使えない「悪」は勝利に不要である。不必要なものは、ネガタロスが屍に変える。
 矢車もその屍になろうとしていた。
 それは、矢車の意思であり、ネガタロスの意思であった。


 ──が、こんな場にもそんなことを認められない『善』はいた。


「……待ってください! それならまず、私を倒してからにしてください!」


 置物となった矢車に近づくネガ電王の歩を、夏海が遮り止めた。
 当然だが、夏海もネガ電王にとっての不要物である。──増やすべき屍の一つ。
 悪の組織の敵こと正義の味方に限りなく近い女だ。


「キバーラ!」

「……なんだかよくわからないけど、そんなヤツに負けないでね、夏海」


 ──かぁぷっ──


 その華奢な指にキバーラの牙が絡みつき、夏海の身体が仮面ライダーキバーラに変身していく。
 噛み付かれても痛みなどはなく、力だけがみなぎっていく。
 その細く、凛々しい白い戦士がキバーラサーベルを構え、ネガ電王の前に敢然と立ちすくむ。


「俺様を燃えさせるなよ……。俺様はお前の男バージョンに怨みがあるんでな」


 ネガ電王はかつて自分を葬った仮面ライダーキバの姿を頭の中でフラッシュバックさせる。
 キバーラの姿は、そのトラウマと怨念を思い起こさせるに充分であった。
 怨念が、彼の力を増幅させる。


「最後に勝つのは、《正義》であることを教えてみせます」

「俺をそこらの、最後に必ず負ける《悪》と一緒にするなよ。俺様が目指すのは、《勝つ悪》だ!」


 正義と悪──二つの力が矢車の眼前でぶつかった。



【1日目 昼】
【E−4 病院/二階廊下】

【剣崎一真@仮面ライダー剣】
【時間軸】第40話終了後
【状態】健康 仮面ライダーブレイドに変身中
【装備】ブレイバックル@仮面ライダー剣、ラウズカード(スペードA〜6.9)@仮面ライダー剣
【道具】支給品一式、ガイアメモリ(ヒート)@仮面ライダーW、ケータッチ@仮面ライダーディケイド
【思考・状況】
基本行動方針:人々を守り、大ショッカーを倒す。
0:まずは東條を止めて、分かり合う。
1:橘朔也、相川始と合流したい。
2:何故、桐生さんが?……
3:Wとディケイドが殺し合いに否定的ならアイテムを渡したい。
4:龍騎の世界で行われているライダーバトルを止めたい。
【備考】
※ 龍騎の世界について情報を得ました。


【東條悟@仮面ライダー龍騎】
【時間軸】インペラー戦後(インペラーは自分が倒したと思ってます)
【状態】健康 仮面ライダータイガに変身中
【装備】タイガのデッキ@仮面ライダー龍騎
【道具】支給品一式、不明支給品0〜2
【思考・状況】
1:全ての参加者を犠牲にして、ただ一人生還。英雄になる。
2:自分の世界の相手も犠牲にする。
3:まずは剣崎を犠牲にして強くなる。
4:基本的には病院で参加者を待ち伏せてから殺す(二階の廊下が気に入ってます)。
【備考】
※ 剣の世界について情報を得ました。

198near miss ◆LQDxlRz1mQ:2010/12/02(木) 20:14:58 ID:3ZtxTEXU
【1日目 昼】
【E−4 病院/一階診察室】
※診察室の壁は破壊されています。


【矢車想@仮面ライダーカブト】
【時間軸】48話終了後
【状態】健康、弟たちを失った事による自己嫌悪、あらゆる物に関心がない
【装備】カードデッキ(リュウガ)@仮面ライダー龍騎
【道具】支給品一式、不明支給品(0〜1)
1:光夏海と行動するが、守る気はない。
2:殺し合いも、戦いの褒美もどうでもいい。
3:天道や加賀美と出会ったら……?
【備考】
※支給品は未だに確認していません。
※ディケイド世界の参加者と大ショッカーについて、大まかに把握しました。
※ゼクトバックルは床に放置しています。


【光夏海@仮面ライダーディケイド】
【時間軸】MOVIE大戦終了後
【状態】健康 仮面ライダーキバーラに変身中
【装備】キバーラ@仮面ライダーディケイド
【道具】支給品一式、不明支給品(0〜2)
【思考・状況】
0:まずは目の前の謎の電王を倒す。
1:矢車と行動する。放っておけない。
2:士、ユウスケ、大樹との合流。
3:おじいちゃんが心配。
4:キバーラに事情を説明する。
【備考】
※支給品は未だに確認していません。
※矢車にかつての士の姿を重ねています。
※矢車の名前しか知らないので、カブト世界の情報を知りません。
※大ショッカーに死神博士がいたことから、栄次郎が囚われの身になっていると考えています。
※キバーラは現状を把握していません。


【ネガタロス@仮面ライダー電王&キバ クライマックス刑事】
【時間軸】死亡後
【状態】健康 強い怨念 仮面ライダーネガ電王に変身中
【装備】デンオウベルト+ライダーパス@仮面ライダー電王
【道具】支給品一式、不明支給品(0〜2)
【思考・状況】
1:最強の悪の組織を作る。
2:まずは目の前の正義を倒し、矢車を殺す。
3:キバに似てる……?
4:様々な世界の悪を捜す。
5:大ショッカーは潰すか、自分の組織に招き入れる。
6:電王、キバのほか善は全て倒す。

199 ◆LQDxlRz1mQ:2010/12/02(木) 20:16:08 ID:3ZtxTEXU
以上、投下終了です。
問題点・修正点などありましたら報告お願いします。

200 ◆LuuKRM2PEg:2010/12/02(木) 23:36:24 ID:HtbcufRI
◆LQDxlRz1mQ氏、投下乙です。
問題点や矛盾点は、特に見られません
感想は、本投下されてからで。

同じく、自分も仮投下をします

201巡り会う世界 ◆LuuKRM2PEg:2010/12/02(木) 23:37:46 ID:HtbcufRI


上から降り注ぐ太陽の光に、森は照らされていた。
青く広がる空では、白い雲が風で流されている。
微風は涼しく、浴びる者に心地よさを感じさせるかもしれない。
辺りを流れるそれは、木の葉を揺らしていく。
だが、青年はその音を聞いても、何とも思わなかった。
漆黒色のロングコートと赤いシャツ、デニム生地のズボンに身を包む彼、門矢士は歩いている。
その手に、力が失われてしまったライダーカードを持ちながら。

「やれやれ、こんな事になるなんてな」

溜息を吐きながら、士はぼやく。
彼はいつものように、仲間達と共に世界を巡る旅を行っている最中だった。
しかし突然、大ショッカーに知らない内に拉致され、こんな世界に放り込まれる。
そしてホールにいた死神博士は、見覚えのある映像を見せてきた。
様々な世界にいた仮面ライダー達が、怪人と戦う姿。
広大な宇宙に浮かぶ幾つもの銀河。
それらが衝突した結果、崩壊する世界。
無論、そこにいた存在全てもまた、消滅する。
歴史が、町が、人が、怪人が、仮面ライダーが。
何一つとて、残らない。
あの光景には、見覚えがあった。
かつて自分に世界を巡る旅を命じた男、紅渡と出会った際に見せられた物と、よく似ている。

「にしても、大ショッカーは潰した筈だ…………どうなってる?」

無意識の内に、疑問を口にした。
そう、数多の世界に魔の手を伸ばした秘密結社、大ショッカー。
奴らは仲間達と力を合わせて、潰したはず。
それなのに何故、再び結成されたのか。
スーパーショッカーのように新たに立て直したのか。
だがどんな理由にせよ、蘇ったのなら叩き潰せば良いだけ。

「カードの力が全て失われてる……まあ、あいつらの仕業か」

異世界に存在する仮面ライダーの力が込められた、ライダーカード。
ディケイドの物以外、全て灰色に染まっている。
ネガの世界でも起こった災難が、再び襲い掛かるとは。
加えて、ケータッチも手元には無い。
だが、無いなら取り戻せば良いだけだ。

202巡り会う世界 ◆LuuKRM2PEg:2010/12/02(木) 23:38:23 ID:HtbcufRI

「しかし、アポロガイストや剣崎一真までいるとはな」

デイバッグの中に入っている、参加者の名簿。
その中には、信じられない名前が混ざっていた。
一人は、Xライダーの世界で脅威となった大ショッカーの幹部、アポロガイスト。
幾度と無く立ち向かってきたが、その度に返り討ちにし、最後には叩き潰した。
恐らく大ショッカーが、この殺し合いの為に蘇らせた可能性が高い。
そしてもう一人。
剣崎一真。
自分がかつて訪れたブレイドの世界。
そこを守っていた剣立カズマとは違う、もう一人の仮面ライダーブレイドだ。
ライダー大戦が始まった際、戦いを繰り広げた記憶がある。
その男までもが、連れてこられたとは。
だが、今はそれよりも気にする事態がある。
それは、自分と同じように連れてこられた三人の仲間達だ。

「死ぬなよ、お前ら…………」

仲間の身を案じながら、士は呟く。
光写真館で自分の帰りを待っていた女性、光夏海。
クウガの世界で始めて出会った仲間、小野寺ユウスケ。
財宝を求めて旅に同行するコソ泥、海東大樹。
何だかんだで、頼もしい仲間達だ。
こんな訳の分からない戦いで、犠牲にさせるわけにはいかない。
一人でも欠けてしまっては、残された爺さんが悲しむだろう。
大ショッカーは戦いに勝ち残れば、願いは何でも叶えると言った。
だが、あんな奴らが約束など守るわけが無い。
まずは仲間達との合流を目指し、大ショッカーへの対抗することが先決だ。
そう思う士は、木々の間を進み続ける。







「参りましたね……殺し合いなんて」

『アギトの世界』から連れてこられた、ビジネススーツに身を包んだ青年、北条透は溜息を吐いた。
警視庁捜査一課の警部補であり、本庁きってのエリートと呼ばれた彼は、雑草と土を踏みしめながら歩く。
北条は違和感を覚えながらも、現状を把握した。
まず、自分が今いる場所は、大ショッカーと名乗った集団が用意した殺し合いの場。
この戦いは、六十人もの人間が集められ、それぞれ世界ごとにグループで分けられている。
そして生き残らなければ、自分の生まれた世界は跡形も無く、消滅。
どこまでが本当なのか、疑問だった。
だがこの状況は、夢ではなく紛れも無い現実。
首から伝わる感触が、その証拠だ。
到底信じがたいが、現実逃避はしてはいけない。

「迷惑な話ですよ……私はこんな事で時間を潰している場合ではないのに」

大ショッカーと現状の不満を感じて、北条は愚痴を漏らす。
そもそも自分は、警察上層部からの命を受けて、アギト殲滅作戦を行っているはずだった。
その為に、G3システムを使い、アンノウンを保護する。

203巡り会う世界 ◆LuuKRM2PEg:2010/12/02(木) 23:39:02 ID:HtbcufRI
しかしその最中に、得体の知れない連中によって、こんな戦いに繰り出されるとは。
しかも名簿を確認してみると、見覚えのある名前がいくつかある。
アギト殲滅作戦のターゲットとなった、津上翔一と葦原涼。
既に亡くなった筈の男、木野薫。
犬猿の仲とも呼べるライバル、小沢澄子。
翔一はともかく、他の三人とは合流したところで、上手く協力できるか。
特に小沢と葦原は、一悶着は避けられない。
だが、背に腹は変えられないだろう。
今だけは、何とか協力関係を持つしかない。

「しかし……『仮面ライダー』とは一体……?」

始まりのホールで、死神博士と名乗った老人の言葉を思い出す。
あそこから推測すると、別々の次元に存在する世界を引き寄せて、融合させてしまう存在らしい。
そして、仮面ライダーと敵対する組織や怪人とやらも、世界が崩壊する因子の一つ。
正直な所、これだけでは上手く概念が断定できない。
それにあの言葉が真実ではない可能性も、充分にある。
自分達を拉致して、殺し合いを強制させるような組織が、生贄に何を教えるのか。
だが何にせよ、情報があまりにも足りない。
大ショッカーについても、世界の崩壊に関しても。
ここは知り合いと一刻も早く合流し、戦場からの脱出を行うべき。
奴らは戦いに勝ち残れば、どんな願いでも叶えると言った。
しかし、そんな餌に釣られる訳が無い。
仮に殺し合いに乗って、生き残ったとしよう。
その後に、大ショッカーが約束を守る保障など、何処にあるのか。
最悪の場合、殺される可能性が高い。
北条が考えを巡らせていた、最中だった。

「おい、お前は『仮面ライダー』って奴か?」

突然、背後から声が聞こえる。
自分にとって、全く覚えの無い声が。
北条は、反射的に振り向く。
その瞬間、彼は金縛りにあったかのように、全身が硬直した。
目の前に立つ壮年の男から、あまりにも凄まじい威圧感が放たれていた為。
見た目は自分より、遥かに年上に見えた。
屈強な体格を、所々から棘が突き出た、鰐の皮みたいな模様の衣装で包んでいる。

「え…………?」
「聞いてるんだよ、お前は『仮面ライダー』なのか? とっとと答えろ」

男の低い声を聞いて、北条は思わず後ずさった。
しかし、こんな場所に連れてこられてから、初めて出会った人間。
だから質問には、答えなければならない。
恐怖を感じながらも、口を開く。

「いえ、私はそのような者ではありませんが——」
「チッ、ハズレかよ」

だが、北条の言葉はあっさりと遮られた。
男は舌打ちをしながら、不満の目線をこちらに向ける。
それを受けて、北条の頬から汗が流れた。
発せられるプレッシャーに、恐怖を感じたため。
本当なら、今すぐにでも逃げ出したかった。
しかし、初対面の人間に対して、それはあまりにも無礼な対応。
そう思った北条は、何とか対話を続けようとした。

204巡り会う世界 ◆LuuKRM2PEg:2010/12/02(木) 23:40:30 ID:HtbcufRI

「まあ、こんな所に呼ばれたからには、少しは腹の足しにはなるか?」

だが、彼の思いは叶わない。
北条が言葉を紡ごうとした瞬間、男は語った。
その瞬間、腰に奇妙なベルトが現れる。
恐竜の顎を模したような、バックルが装着された。
あまりにも唐突過ぎる出来事に、北条は驚愕を覚える。
一方で男は、バックルの脇に付いたボタンを押した。
すると、パイプオルガンの演奏のような盛大な音が、発せられる。
北条には、何がなんだか分からない。
この男が一体、何をしようとしているのか。
混乱が生じていく中、男は懐に右手を入れる。
その中から、黄金のカードケースを取り出した。

「変身」
『GAOH−FORM』

そして、取り出したそれをバックルの前に翳す。
ベルトから電子音声が響くと同時に、カードケースが分解された。
破片は男の全身に纏わり付き、鎧を生み出す。
金色に輝く胸板、そこから上に伸びた二本の白い角、恐竜の頭を象った両肩の装甲、金と黒の二色で構成された強化スーツ。
金属の破片は最後に、顔面に集中する。
そのまま、恐竜の顔によく似た形を作り、仮面となった。
全ての過程を終えると、全身から真紅の波動を放つ。
こうして男は、変身を完了した。
それは『電王の世界』に存在する神の路線を奪い、全てを喰らおうと企んだ仮面ライダー。
時の列車、デンライナーを奪った狂える牙の王。
男の名は牙王。
またの名を、仮面ライダーガオウ。

「なっ…………!」

目の前から突き刺さる威圧感によって、北条は再び数歩だけ後退してしまう。
二メートルにまで達しそうな巨体に、凄まじいほどのプレッシャー。
この二つから北条は、男が危険人物であると判断した。
正体は全く分からないが、どう考えても殺し合いに乗っている。
アンノウンと同じで、話し合いなど通用する相手ではない。
何とか逃げ出そうとするが、身体が動かなかった。
まるで、蛇に睨まれた蛙のように。

「つまらねえな……」

ガオウは舌打ちをしながら、一歩一歩前に出る。
そして腰に備え付けられた二つのパーツを取り出し、装着した。
一瞬の内に、刃から棘が突き出た剣、ガオウガッシャーへと形を変える。
この時、北条は生きる事を諦めた。
渡されたデイバッグの中には、この状況を打破する物は何も無い。
今更逃げたところで、追いつかれるに決まっている。
ああ、自分の最後はこんなに呆気ないとは。
警察官になって人々を守るために、アンノウンと戦い続けた。
だがその結果が、これとは。
もしも神というのがいるのなら、呪ってやりたい。
そう思いながらも、せめてもの抵抗として北条は下がり続けた。
ガオウは無常にも剣を掲げ、振り下ろそうとする。
その時だった。

205巡り会う世界 ◆LuuKRM2PEg:2010/12/02(木) 23:41:06 ID:HtbcufRI

「変身!」
『KAMEN RIDE』

突如、二つの声が聞こえる。
人間の肉声と、機械の電子音声。
その二つは、北条とガオウの鼓膜を刺激した。
反射的に、二人は同時に振り向く。
そこには見知らぬ青年が、悠然と佇んでいるのが見えた。
腰には、バックルに赤い石が埋め込まれた、ベルトが巻かれている。
青年、門矢士は両脇に手をつけて、押し込んだ。

『DECADE』

白銀に輝くベルト、ディケイドライバーから音声が再び響く。
直後、バックルから光が放たれ、紋章が浮かび上がった。
続いて、士の周りに九個のエンブレムが出現。
その場所を中心とするように、人型の残像が次々と作られた。
それらは、士の身体に装着される。
すると一瞬で、黒いアーマーに形を変えた。
それに伴い、ディケイドライバーから七つの板が、真紅の輝きを放ちながら吹き出す。
現れたプレートは、頭部の仮面に突き刺さった。
刹那、全身のアーマーにはマゼンタが彩られ、額と両眼から光を放つ。
いつものように、門矢士は変身を果たした。
仮面ライダーディケイドと呼ばれる、戦士へと。
そのまま彼は、動けなくなった北条の前に立った。

「ほう? 少しは喰いがいがありそうだな」

現れたディケイドを見て、ガオウは仮面の下で笑みを浮かべる。
そのまま、ガオウガッシャーの先端を突きつけた。
それに構わず、対するディケイドは脇腹からライドブッカーを手に取る。
取っ手を曲げると、反対から刃が飛び出した。
剣を構えるディケイドは、北条の方に振り向く。

「貴方は、一体」
「あんたは、ここでじっとしてろ」

疑問を遮ると、敵に顔を向けた。
ライドブッカーを構えて、ディケイドは地面を蹴る。
勢いよくガオウに突進すると、剣を振りかぶった。
直後、甲高い金属音が鳴り響く。
それは、ガオウの持つガオウガッシャーと、激突したことによって発生した音。
ガオウもまた、その手に持つ得物を振るったのだ。
互いの刃が激突したことで、火花が飛び散る。
しかし、一瞬で風に流された。
これを合図として、戦いのゴングが響く。
ディケイドとガオウは、互いに後ろへ飛んで距離を取った。
そして素早く、距離を詰める。

206巡り会う世界 ◆LuuKRM2PEg:2010/12/02(木) 23:42:01 ID:HtbcufRI

「はあああぁぁぁっ!」

凄まじい勢いで、ディケイドはライドブッカーを横薙ぎに振るった。
しかし、ガオウはあっさりと払う。
そのまま、ガオウガッシャーで突きを繰り出した。
標的となったディケイドは、身体を捻って回避する。
その直後に、彼の後ろで佇んでいた木が、空気と共に貫かれた。
ガオウガッシャーを引き抜いた途端、音を立てながら折れていく。
そして地面に倒れて、振動を起こした。
数え切れない程の木の葉が舞い落ちる中、彼らは睨み合う。
視線が交錯する中、今度はガオウから突進を仕掛けた。

「フンッ!」

仮面の下から掛け声と共に、ガオウガッシャーを振るう。
その一撃は、大気を揺らしながら木の葉を次々と両断した。
対するディケイドは、咄嗟の判断でライドブッカーを掲げる。
彼らの得物は、再度激突した。

「ぐっ……!」

しかし、突如ディケイドの両腕に痺れを感じる。
衝撃でライドブッカーを落としそうになるが、何とか堪えた。
刃と刃が擦れ合い、鍔迫り合いが始まる。
だが、ディケイドは押し返すことが出来ない。
ガオウの攻撃が、あまりにも重すぎたのだ。
向こうが少しでも力を込めれば、こちらが一気に崩れる。
本能でディケイドは察すると、バックステップを取って後ろに下がった。
一瞬だけ、ガオウが怯む。
その隙を付いて、ディケイドは突進しながら斬りかかった。
風に揺れる木の葉と共に、ガオウの鎧を切断する。
火花が飛び散ったが、それだけ。
ディケイドは追撃を仕掛けようとする。
だが、それは届かない。

「効かねぇな」

ガオウの持つ剣に、一撃を阻まれる。
その瞬間、お返しとでも言うかのようにディケイドの胸が切り裂かれた。
先程の再現のように、身体が抉られる。
しかし、ガオウはそれだけで終わらない。
畳みかけるかのように、ガオウガッシャーを振るった。
右上から脇腹へ、斬り返すように右肩へ、横薙ぎに胴へ。
まるで血に飢えた猛獣のように、得物を振るっていた。
一見力任せと思われるが、それらは確実にダメージを与えている。
ディケイドは何とか対抗して、ライドブッカーで捌こうとした。
だが、最初の一撃が原因で、思うように動けない。
よって、いくら弾こうとしても意味が無かった。
ガオウが繰り広げる嵐のような連撃によって、次々と傷が刻まれていく。
血漿のように、鎧から火花が噴出し続けた。
数多の衝撃によって、ディケイドは蹌踉めいてしまう。
体勢を崩した隙を、ガオウは見逃さなかった。
彼は右足に、力を込める。
すると、その部分から真紅のオーラが放たれた。

207巡り会う世界 ◆LuuKRM2PEg:2010/12/02(木) 23:42:34 ID:HtbcufRI

「でえいっ!」

渾身の力を込めて、鋭い前蹴りを繰り出す。
ガオウの足は、ディケイドの腹部にあっさりと沈み込んでいった。
凄まじい衝撃を受けてしまい、彼の身体は宙に浮かんでいく。
受け身を取ることも出来ず、そのまま地面に激突した。
数回ほど転がった後、何とか勢いを止める。
身体の節々に痛みを感じながらも、ディケイドは体勢を立て直した。

「お前、真面目にやってるのか? 全然喰い足りないぞ」

舌打ちしながら、ガオウが近づいてくる。
その姿を見て、ディケイドは危機感を覚えた。
目の前の仮面ライダーは、やはりこの戦いに乗っている。
襲われていた男を助けるために変身したが、逆に自分がピンチになるなんて。
認めたくないが、このままではやられる。
この状況を打破する為の方法は、一つしかない。

(一気に決めてやるか……!)

そう、一刻も早い勝負の決着。
ダラダラと長引かせても、消耗が激しくなるだけ。
この考えに至ったディケイドは、一旦ライドブッカーを元の位置に戻す。
そして、蓋を横に開いた。
彼はケースの中から、一枚のライダーカードを取り出す。
表面にディケイドの紋章が、金色で書かれているカードを。
相手との距離は、幸いにも空いている。
確信したディケイドは、カードをディケイドライバーの上部から挿入した。

『FINAL ATTACK RIDE』

バックルに、黄金色の紋章が浮かび上がる。
それはディケイドの仮面を、象っていた。
聞き慣れた音を耳にした彼は、ディケイドライバーのサイドハンドルを両手で押し込む。

『DE、DE、DE、DECADE』

再び、電子音声が空気を振るわせた。
その瞬間、バックルから放つ輝きが更に強くなり、カードに込められていた力が全身に流れ込む。
するとディケイドの前に、金の輝きを放つ十枚のエネルギーが、ゲートのように現れた。
彼は両足に力を込めて、跳躍する。
動きに合わせるかのように、ゲートも空に浮かんでいった。

「なるほどな」

自身の前に出現した光の門を見て、ガオウは呟く。
敵は、決着をつけようとしているのだ。
その為に、必殺の一撃を繰り出そうとしている。
戦士としての勘から、感じ取ることが出来た。
それならば、上等。
こちらも全力の一撃を使うだけだ。
そう思いながら、ガオウはマスターパスを取り出す。
手からそれを落とすと、バックルと交錯した。

208巡り会う世界 ◆LuuKRM2PEg:2010/12/02(木) 23:43:36 ID:HtbcufRI

『FULL CHRAGE』

ディケイドライバーのように、ベルトから声が発せられる。
それによって、大量のエネルギーがそこから噴出された。
腰から右肩、そしてガオウガッシャーに伝わっていく。
すると、刃がドリルのように高速回転を始めた。
両手でガオウガッシャーを握り締め、ガオウは空を見上げる。
視界の先からは、光のゲートを通りながら右足を向ける、ディケイドの姿があった。

「はあああぁぁぁぁぁぁっ!」
「フンッ!」

仮面ライダー達の叫びが、森林に響く。
ガオウに目がけてディケイドが放つ必殺の蹴り、ディメンションキック。
ディケイドに目がけてガオウが放つ刃の一撃、タイラントクラッシュ。
上から下を目指した蹴りと、下から上を目指した刃が、徐々に迫る。
そこから一秒の時間もかからずに、激突した。
その瞬間、二つのエネルギーがぶつかったことによって、大爆発が起こる。
轟音と共に、衝撃波が空気を振るわせた。
次々に木が倒れ、木の葉は吹き飛ばされ、雑草に火が燃え移る。

「ぐあああっ!」

そんな中、ディケイドは吹き飛ばされてしまった。
悲鳴と共に、地面に叩きつけられる。
対するガオウは、まるで何事もなかったかのように佇んでいた。
これが示すのはたった一つ。
ディケイドの必殺技、ディメンションキックが通用しなかった事。
何故、こうなったのか。
その答えをディケイドは知っている。
ガオウの度重なる攻撃によって、身体が思うように動かなかったのだ。
戦闘では、受けたダメージが影響を及ぼすことがある。
故に、力を込めようとしても痛みが邪魔をして、威力が出なかったのだ。

「くっ…………!」

しかし、そんな事は関係ない。
例え効かなかったとしても、もう一度使えばいいだけ。
今は、この仮面ライダーを倒す事からだ。
痛みを堪えながら、ディケイドは何とか立ち上がる。
そしてライドブッカーを、構えた。
だが、彼の思いはすぐに裏切られてしまう。

「があっ!?」

突如、右肩に衝撃が走った。
それにより、仮面の下から絶叫を漏らしてしまう。
次の瞬間、ディケイドの全身から、大量の火花が吹き出してきた。
同時に、激痛を感じる。
何が起こったのか察知する前に、彼の体勢は崩れていった。
そのまま、背中から地面に倒れていく。
衝撃によって、ディケイドの鎧が限界を迎えた。
変身が解けてしまい、元の姿に戻る。

(な、何だ…………!?)

視界がぼやける中、士は思考を巡らせた。

209巡り会う世界 ◆LuuKRM2PEg:2010/12/02(木) 23:45:11 ID:HtbcufRI
そして、周囲を見渡す。
次の瞬間、彼の目は衝撃によって見開かれた。
その理由は、木々の間から新たなる怪人が現れたため。
元は『Xライダーの世界』に存在する組織、GOD機関に所属する怪人だった大ショッカーの大幹部。
銅色の仮面、額に彩られているステンドグラスのような模様、首からかけられた白いマント、黒いスーツ。
幾度となく戦いを繰り広げた宇宙一迷惑な男、スーパーアポロガイストだった。
その手には巨大なマグナム銃が握られている。

「フッフッフ、まさかこんなにも早く貴様と再会できるとはな。ディケイド!」

銃口からは、煙が流れているのが見えた。
どうも、自分はあれで撃たれたらしい。
戦いの隙を付かれるとは、情けないにも程がある。
抵抗しようにも、身体が動かない。
焼かれるような激痛と、倦怠感が身体を支配していた。
それに伴って、眠気が襲いかかる。

(…………こんな所で、終わってたまるか!)

スーパーアポロガイストに、名前も知らない仮面ライダー。
こんな身体で、今の状況を打破できる訳が無い。
破壊者として生きてきた自分は、こんなにも呆気なく破壊されてしまうのか。
いや、あり得ない。
俺達の旅は、こんな事で終わるものではないからだ。
士は何とか足掻こうとするも、身体が言う事を聞かない。
瞼が閉じていき、次第に視界が暗くなる。
彼の意識が闇に沈むのに、時間は必要なかった。







無様に倒れた士を見て、スーパーアポロガイストは充足感を覚える。
今まで自分は、この男に何度も煮え湯を飲まされた。
殺し合いに来て早々、ディケイドが仮面ライダーと戦っている光景を目撃した。
そのシステムから見て、電王の世界から連れて来られたのかもしれない。
必殺技同士の激突後、ディケイドは吹き飛ばされた。
この隙を付いて変身し、アポロショットを使う。
結果、ディケイドは倒れた。

(ククク、無様だなディケイド。 さあ、私がトドメを————)
「おい」

スーパーアポロガイストの歩みは、突然止まる。
その目前に、輝きを放つ刃が現れたため。
振り向いた先では、ガオウがこちらに武器を向けているのが見えた。
邪魔をされた事に怒りを覚え、スーパーアポロガイストは口を開く。

210巡り会う世界 ◆LuuKRM2PEg:2010/12/02(木) 23:45:52 ID:HtbcufRI

「何だ貴様、私の邪魔をする気か?」
「こっちの台詞だ。俺の獲物を横取りしようとするとは、いい度胸じゃねえか」

しかし、ガオウは質問に答えない。
彼もまた、怒りを覚えていたのだ。
勝負に水を差された事と、獲物を横取りしようとする馬鹿が現れた事。
この二つが、ガオウの逆鱗に触れたのだ。
それに気付いたのか、スーパーアポロガイストは新たなる武器を出現させる。
スーパーガイスカッターの名を持つ、鋼鉄のチャクラムを。

「フン、ならば貴様から始末するのみ!」
「面白い、やってみろよ!」

スーパーアポロガイストとガオウは、怒号を掛け合う。
そのまま、互いに武器を振るって、激突させた。
ガオウが剛剣を振り下ろし、スーパーアポロガイストがそれを受け止める。
狂える牙の王と、宇宙一迷惑な男の戦いが始まった一方で、木の陰から一人の男が現れた。
それは、戦いをずっと見守っていた北条。

(どうやら、今しかありませんね)

彼は、気絶した士の元へ向かう。
そのまま、彼の手とデイバッグを肩にかけて動きだした。
幸いにも、相手は戦いに集中しているようなので、気付かれていない。
バッグ二つと、男一人の身体。
総重量は凄まじいが、動けないほどでもない。
アンノウンと戦う為に、G3ユニットやV−1システムを扱った事があるので、それなりに体力はある。
今は、この場からの撤退が優先だった。
アギトとも、警視庁が作り出したシステムとも違う、謎の鎧。
突然現れた、アンノウンのような怪物。
そして、この殺し合い。
次から次へと謎が増えて、北条の頭は混乱しそうになる。
だが、それらの推理は後。

(まずは、この青年の安全を確保しなければ)

警察官としての正義が、彼を動かしている。
名前も知らないが、自分を助けてくれた。
少なくとも、あの男のような危険人物ではないと思われる。
まずは安全な場所まで避難し、青年の応急処置。
そして情報を聞いた後、地図に書かれていた病院までの移動。
幸運にも、自分のバッグには救急箱が存在している。
それでどこまでいけるか分からないが、やるしかない。
このまま放置していては、いつ死んでもおかしくないだろう。
北条は最後の力を振り絞って、木々の間を駆け抜けた。
その甲斐があってか数分後、森林からの脱出に成功する。
彼らのいく先に何が待つのかは、誰にも分からない。

211巡り会う世界 ◆LuuKRM2PEg:2010/12/02(木) 23:47:01 ID:HtbcufRI
【1日目 昼】
【C−7 平原】

【門矢士@仮面ライダーディケイド】

【時間軸】MOVIE大戦終了後

【状態】気絶中、重傷、疲労(大)、 ディケイドに二時間変身不可
【装備】ディケイドライバー@仮面ライダーディケイド、ライダーカード一式@仮面ライダーディケイド
【道具】支給品一式、不明支給品×2
【思考・状況】
1:…………(気絶中)
【備考】
※デイバッグの中身は確認しました
※現在、ライダーカードはディケイドの物以外、力を使う事が出来ません。
※該当するライダーと出会い、互いに信頼を得ればカードは力を取り戻します。

【北条透@仮面ライダーアギト】
【時間軸】本編終盤 アギト殲滅作戦決行中
【状態】疲労(小)、士を背負っている
【装備】無し
【道具】支給品一式、救急箱@現実、不明支給品×2

【思考・状況】
1:まずは安全な場所に移動し、青年(士)を手当てする。
2:牙王、アポロガイストを警戒する。(両名とも、名前は知らない)
3:知人と合流し、情報を集める。

【備考】
※デイバッグの中身は確認しました
※その中には、彼にとって戦力になるような物はありません







士と北条の二人が逃走した事に気付かずに、戦士たちは戦いを繰り広げていた。
ガオウガッシャーとスーパーガイスカッターの激突は続き、金属音が響く。
時折、スーパーアポロガイストは、アポロショットの引き金を引いた。
しかし弾丸は、ガオウによって全て弾かれる。
そこから、ガオウガッシャーの刃が振るわれたが、スーパーアポロガイストはあっさりと回避。
哀れにもその結果、木々が次々に砕け散ってしまった。
まさに、一進一退と呼べる戦い。
そんな中、互いに大きく踏み出し、力強く武器を振るった。
激突の瞬間、彼らは密着する。
刃とチャクラムを使った、鍔迫り合いが始まった。
押し合うも、力はほぼ互角。
そんな中、ガオウは仮面の下で笑みを浮かべながら、呟いた。

「終わりだな」
「何?」

刹那、スーパーアポロガイストは気づく。
ガオウが、片手でしか武器を持っていないことを。
その意味を、一瞬で気づいた。

212巡り会う世界 ◆LuuKRM2PEg:2010/12/02(木) 23:48:34 ID:HtbcufRI

(しまった! 初めからこれが狙いか!)

電王の世界にいる仮面ライダーは、必殺技を使う際にある物を使う。
それは、ライダーパス。
ベルトに翳して、エネルギーをチャージするのに。
そして自分は、至近距離で戦っている。

『FULL CHARGE』

悪い予感は、的中した。
案の定、目の前の仮面ライダーは取り出したパスを、ベルトに近づけている。
それを示す音声が響くと、刃が回転を始めた。
金属が削れるような、鋭い音が聞こえる。
こんなゼロ距離で受けては、いくら自分とて一溜りもない。
そう危惧すると、スーパーアポロガイストは後退した。
しかし、時は既に遅し。
タイラントクラッシュの一撃は、スーパーガイスカッターを砕き、持ち主の身体へ到達した。

「ぐおおぉぉぉっ!?」

悲痛な叫び声が、スーパーアポロガイストから漏れる。
その巨体は、必殺技の衝撃によってあっさりと吹き飛んだ。
そして地面に激突した瞬間、その変身が解かれてしまう。
白いスーツを身に纏った壮年の男性、ガイの姿に戻ってしまった。
彼は自分の姿を見て、驚愕の表情を浮かべる。

(バカな、何故この程度で元の姿に戻る!?)

ここに、ガイの知らない事実があった。
参加者全員を縛り付ける首輪。
その効果は、殺し合いのバランスをとる為、能力を抑える事がある。
スーパーアポロガイストとて、例外ではない。
それに加えて、ガオウの放った必殺の攻撃。
制限されているとはいえ、凄まじい威力を持つことは変わらない。
タイラントクラッシュを至近距離で受けた事で、ガイの変身は解除されたのだ。

「さて、そろそろ喰らわせてもらうか……」

ガオウは、パスを構えながら迫り来る。
それを見て、ガイはスーツのポケットに手を入れた。
その中から『龍騎の世界』に存在していた変身アイテム、シザースのカードデッキを取り出す。
ガイはそれを、すぐ近くの湖に翳した。
この動作によって、彼の腰に銀色のベルト、Vバックルが巻かれる。

「変身ッ!」

数多の仮面ライダーが口にした言葉を、ガイは告げた。
右手で掴んだカードデッキを、横からVバックルに差し込む。
ベルトから光が放たれ、ガイの周りに複数の虚像が現れた。
それは回転しながら、彼の身体に重なっていく。
瞬く間に、ガイは変身を完了した。
蟹を彷彿とさせる仮面、金色の輝きを放つ鎧、左右非対称の大きさを持つ鋏、下半身を守る黒いスーツ。
『龍騎の世界』で戦っていた仮面ライダーの一人、仮面ライダーシザースへと、ガイは姿を変える。
それを見て、ガオウは足を止めた。

「ほう、少しは喰いがいがありそうだな?」

ただの獲物だと思ってた敵が、まだ自分に抗おうとする。
その事実が、ガオウの神経を高ぶらせていた。
ならば、それに応えてやればいい。
ガオウガッシャーを構える一方で、シザースはカードデッキに手を伸ばす。
そこから一枚のカードを引いた。
彼はそのまま、左腕に装着された鋏、シザースバイザーに差し込む。

213巡り会う世界 ◆LuuKRM2PEg:2010/12/02(木) 23:49:07 ID:HtbcufRI

『ADVENT』

電子音声が、発せられた。
刹那、近くの湖から巨大な影が出現する。
それは、龍騎の世界に存在する、魔物だった。
その世界では、ミラーワールドと呼ばれる、全ての物が反転した異世界が存在する。
ここには、ミラーモンスターの名を持つ人を喰らう怪物が、生息していた。
シザースが呼び出したのは、その一匹。
持ち主のように身体を金色に輝かせるミラーモンスター、ボルキャンサーだった。

「GYAAAAAAAAAA!」

蟹の魔獣は、咆哮を発して空気を揺らす。
そのまま、ボルキャンサーはガオウに突進を仕掛けた。
主に危害を加える敵を、潰す為に。
しかし、それをただ食らうほどガオウはお人よしではない。
ボルキャンサーの巨体を、身体を捻って軽々と避ける。
そのまま横腹に、鋭い蹴りを放った。
微かな悲鳴と共に、ボルキャンサーは吹き飛ぶ。
ガオウはそんな様子に目もくれず、シザースの方に振り向いた。
だが、敵の姿はない。

「チッ、逃がしたか…………」

舌打ちと共に、ガオウは呟く。
その瞬間、水が破裂するような音が聞こえた。
そちらに顔を向けたが、ボルキャンサーも既にいない。
湖を覗き込むが、気配はなかった。
直後、異変が起こる。
身に纏っていたガオウの鎧が、唐突に消えた。
恐竜の仮面ライダーから、元の壮年の男に戻ってしまう。
これは牙王の知らない、首輪の効力による現象。
十分間の時間制限が、訪れたのだ。

「次から次へと、どうなってやがる……?」

牙王の中で、苛立ちが募っていく。
大ショッカーに連れて来られてから、今の現状に期待した。
恐らく、こんな場所なら喰いがいのある奴らが、いくらでもいるはず。
だが、実際はどうだ。
出会った獲物は骨がないどころか、自分から逃げ出すような腰抜け揃い。
それに加えて、解除しようと思ってないのに、変身が終わった。
可能性としては、大ショッカーが何か下らない仕掛けでも、施したのだろう。

「つまらん事を…………」

牙王には、戦いの褒美も世界の崩壊もまるで興味がない。
心の中にあるのは、全てを喰らう事だけ。
それだけの、シンプルな欲望。
参加者を皆殺しにして、最後に大ショッカーも潰す。
ただ一つだけだった。
破壊の欲望に駆られた牙王のデイバッグの中に、あるアイテムが眠っている。
それは『Wの世界』に存在する、ガイアメモリの一つ。
ミュージアムに所属する処刑執行人、イナゴの女が使っていたメモリ。
ホッパー・ドーパントの力が封印されたガイアメモリは、牙王に何をもたらすのか。

214巡り会う世界 ◆LuuKRM2PEg:2010/12/02(木) 23:49:38 ID:HtbcufRI

【1日目 昼】
【B−7 森】


【牙王@仮面ライダー電王】
【時間軸】:不明。
【状態】:健康、苛立ち、ガオウに二時間変身不可。
【装備】:ガオウベルト&マスターパス@仮面ライダー電王、ガイアメモリ(ホッパー) @仮面ライダーW
【道具】、支給品一式、不明支給品×2(確認済み)
【思考・状況】
1:全ての参加者を喰らい、最後に大ショッカーも喰う。
2:変身が解除されたことによる、疑問。


【備考】
※牙王がどの時間軸からやってきたかは、後続の書き手さんにお任せします。







シザースは、木々の間を全速力で駆け抜けている。
ボルキャンサーを召還した後、彼は戦場からの撤退を選んだ。
先程戦った仮面ライダーが、あまりにも強すぎたため。
ディケイドを易々と打ち破るからには、それなりの力は予想できた。
だが、まさかスーパーガイスカッターを砕くなんて。
戦いで消耗していると思ったが、そんな様子は見られない。
そして、いつもより発揮できない力。
恐らく大ショッカーが、自分に何らかのハンデを架したのかもしれない。
しかし真相の究明は、後だ。
まずは安全な場所までに撤退し、体勢を立て直すべき。

(もう少しでディケイドを始末できたのだが、あの仮面ライダーめ……!)

ガオウに対する苛立ちを覚え、仮面の下で歯軋りをする。
後ろからは、追ってくる気配はない。
それを察すると、彼は変身を解いて元の姿に戻った。
ふと、彼の中で疑問が芽生える。
ディケイドを狙撃した時、いつもより弾丸が発射されるペースが遅い気がした。
その原因は、恐らくこの首輪。
まさか、他にも何か影響が出ているのではないか。

「アポロ、チェンジ!」

ガイは全身に力を込めて、変身を行う。
しかし、何も起こらない。
その事実に驚愕するも、彼は確信した。
この首輪は普段の力だけでなく、変身を阻害する効果も持っている。
だが、それは一時的で時間が経てば、また変身は可能。
理由は、永続的に阻害しては殺し合いが進まないからだ。
だとすれば、変身道具は一つだけでは心許ない。
他のライダーのアイテムも、奪うことを考えに入れるべきだろう。

215巡り会う世界 ◆LuuKRM2PEg:2010/12/02(木) 23:50:21 ID:HtbcufRI

(そして、これは逆にチャンスでもあるか)

首輪の効果は、何も自分だけではない。
参加者全員にも、届いているはずだ。
この首輪は自分を縛る枷だけではなく、時として武器にもなるだろう。
しかし何にせよ、まずは身体を休めることからだ。
ガイは息を整えながら、そんなことを考える。



【1日目 昼】
【B−6 平原】


【アポロガイスト@仮面ライダーディケイド】
【時間軸】死亡後
【状態】疲労(小)、ダメージ(小)、怪人体及びシザースに二時間変身不可
【装備】シザースのデッキ@仮面ライダー龍騎
【道具】支給品一式、ディスクアニマル(アカネタカ)@仮面ライダー響鬼
【思考・状況】
1:大ショッカーの意思通り、全ての敵を倒し、世界を破壊する。
2:まずは体勢を立て直す。
3:ディケイド、牙王はいずれ始末する。
4:全てのライダーと怪人にとって迷惑な存在となる。
【備考】
※スーパーアポロガイストの状態ですが、能力は抑えられています。
※能力が抑えられていることを、何となく把握しました。

216 ◆LuuKRM2PEg:2010/12/02(木) 23:50:59 ID:HtbcufRI
以上で、仮投下を終了します
修正点・矛盾点がありましたら指摘をお願いします。

217 ◆yZO9tKZZhA:2010/12/03(金) 16:46:04 ID:.qDc4PMQ
お待たせしました、今からゴオマとモモタロス仮投下します。

218代償 ◆yZO9tKZZhA:2010/12/03(金) 16:47:31 ID:.qDc4PMQ
「リントグ ゲゲルゾ ジサブドパ バ(リントが、ゲゲルを開くとはな)」
 
 G−1の廃工場の中、丁寧にも彼らグロンギの言語で記されたルールブックを読みながら、黒いコートに身を包んだ男、ズ・ゴオマ・グは呟いた。
 ダグバのベルトの破片を体内へと埋め込み、究極体へと進化した彼は、クウガを容易くあしらい、ダグバの気配を感じて森へと向かった所、気付けばあの会場にいた。
 戦いの邪魔をされた事に関して激しかけた矢先のスクリーンに映る映像と爆発で機先を制された彼は、事の成り行きをおとなしく見ている事しかできなかった。
 そして、現在にいたる。以前に、ゴオマらグロンギの行なうゲゲルでルールに背き、ゲゲル参加権を剥奪されたばかりか、体のいい使い走りとしてこき使われた苦い想い出。
 ゲゲルの時は自ら率先して破った為自業自得なのだが、リントのゲゲルもどきで、ルールを破ったおかげでまた痛い目を見るのは御免だと考え、ゴオマはルールブックを熟読している。

「ギギバシビ バスボパ ギジャブダガ ン リント スススパ スススバ (リントの言いなりになるのは癪だが、ルールはルールか)」

 怪人体への時間制限、時間経過ごとに増えて行く侵入禁止エリア、自身の行動を制限する首輪、何よりも、大ショッカーを名乗るリント――ゴオマはリントとグロンギの種族以外の知的生命体を知らず、グロンギとして面識のない死神博士が人間体であった事もありリントと見なしたのだが――に自分の命を握られる事には、かなりの屈辱を覚えている。
 だが同時に、時間制限こそないが、一定の実力を持った異世界の戦士を対象とする、特殊条件下での殺し合いは、彼がついぞ参加する事の無かったゲゲル、それも上位に位置するゲリザギバスゲゲルに似た所があり、奇妙な高揚感がゴオマを支配する。
 結論から言えば、自分の世界など関係なく、自分の欲望の赴くまま、参加の叶わなかった本来のゲゲルへの代償行動として、ゴオマはこの殺し合いに乗るつもりであった。
 一通りルールブックに目を通し、名簿へと目を移して、ゴオマは目を見開いた。

「ザド ダグバ……!?(ダグバ、だと……!?)」

 ゼギザリバスゲゲルを成功した先にあるザギバスゲゲルで戦う最強のグロンギであり、少し前に『整理』と称しズとメに属するグロンギを虐殺した究極の闇、そして、この場所へと飛ばされる前に戦おうと探していた存在がこの場にいる。
 ゴオマの体が震える。それが、恐怖から来る物か、歓喜から来る物かは、ゴオマ自身にもわからない。自分でも気付かぬ内に、ゴオマの口角が三日月型に吊り上がって行く。

「は、はは、はははははははははは!」

 一人しか残れぬ、この狭い空間にダグバがいる。生き残るにはダグバを殺す必要がある。だとすればこれはゼギザリバスゲゲルなどではなく、実質ザギバスゲゲルと変わらない代物だ。
 引きつった笑顔でゴオマは笑い声を挙げる。ゲゲルにも参加できなかった彼が、ゲゲルの参加を剥奪され、他のグロンギから見下され続けてきた彼が、ザギバスゲゲルと同等の舞台へと参加する事ができた。その奇跡としか言い様の無い事実に、彼は文字通り狂喜する。
 ダグバを自分の手で倒せるならばそれで良し。万が一にでもダグバが倒されでもしたら、その倒した参加者を自分の手で倒せば、究極的には最後の一人になれれば、それは究極の闇よりも強者であると言っても過言ではない。
 ゴオマのテンションはあまりにも幸運な出来事に舞い上がっていた。所謂、最高にハイ!という状態に近いかもしれない。

219代償 ◆yZO9tKZZhA:2010/12/03(金) 16:48:50 ID:.qDc4PMQ
「バヂボボス! ゴセパ バヂボボデデジャスゾ!(勝ち残る! 俺は勝ち残ってやるぞ!)」
「うるせぇ! 少しは静かにしやがれ!」

 ゴオマのいる部屋のドアが蹴破られ、耳障りな金属音が部屋に響いた。
 怒声を張り上げ、最高の気分に水を指したのは、赤い鬼の姿をした、片手に剣を持つ異形、モモタロスであった。

「おいテメェ、人がこんなふざけたモンに巻き込まれてイライラしてるのに、耳障りな笑い声を挙げるんじゃねぇ! しかもグギグギうるせぇんだよ、人にもわかる言葉で話やがれ!」

 モモタロスは憤慨していた。
 殺し合えなどと、高圧的かつ一方的な命令がモモタロスの気に障った、そして何よりも、自分や良太郎が世界を滅ぼすと聞いては怒らない方がおかしいといえる。
 そのぶつけようもない怒りでイライラしている所にゴオマの笑い声を聞き、八つ当たり気味にその怒りが爆発。直情的な性格が災いし、笑い声のしたこの部屋へと、文字通り殴り込んできたという次第である。

「リントでも、グロンギでも、ない、な」
「ああん? カリントウにブンドキだぁ? 何言ってんだテメェ」

 明らか異形である自身の姿を見ても、身構える事も怯える事もしない目の前の男の態度に、モモタロスは微かな疑問を覚え、そして、それが若干なりとも頭を冷やす機会となる。
 多少冷えた頭で考えると、この男が怪しいという事実に気付く。この殺し合いの場で、あんな高笑いをする時点で怪しくない訳が無いのだ。
 
「テメェ、まさか……」
「本当に、面白いゲゲルだ」

 ルールブックを置いてあった自身のデイパックの方へと放り投げ、心底愉しそうに笑いながら、男が蝙蝠を彷彿とさせる異形へとその姿を変える。
 一瞬、良太郎と初めて出会った時に倒したイマジンを思い出す。別の世界のライダーの敵、そんな言葉が一瞬だけ脳裏に浮かぶ。
 そしてモモタロスは確信する。目の前の男はこの殺し合いに乗っていると。モモタロスもまた、デイパックを放り投げ、自分の愛剣モモタロスォ―ドを構えて、臨戦態勢に入る。

「へっ、そうかよ。そういう事なら、容赦はしねぇぜ!」
「ゼンギジョグゲンザ ン ダグバ ボソグ!(ダグバの前哨戦だ、殺す!)」

 モモタロスとゴオマは同時に相手に向かい飛びかかる。
 機先を制したのはモモタロス。武器の分だけリーチが伸びていたのが幸いした。ゴオマの胸元を斜め下に一閃、金属と金属がぶつかりあうような耳障りな音を響かせながら、ゴオマが一瞬怯む。
 ゴオマが怯んだ拍子に、更に横に一薙ぎ。生身の人間であれば今の時点で死んでいてもおかしくはない。だが、斬撃の際の接触音と、モモタロス自身が感じた手応えが、その結果を否定する。
 そして、それを証明するかの如く、特にダメージらしいダメージを受けた様子もなしに、ゴオマは斬撃を受けた部分を撫でながら薄く笑みを浮かべた。
 この程度では俺にダメージを与える事などできないと言外に語っていた。それが、モモタロスの神経を逆なでする。

「テメェ、余裕こいてるんじゃねぇ!」

 怒りの感情の力に変えて、全力でモモタロスォードを振り下ろす。が、ゴオマの頭部目がけて放たれたその一撃は当たる寸前にゴオマの左手に止められた。
 刀身を握ったせいで、手のひらから出血こそしている物の、モモタロスォードの刃はそこで止まり、ゴオマの手を切断し頭部へと到達する事は叶わない。
 押しても退いても動かない、その剛力に、モモタロスは仲間であるキンタロスクラスの力があると感じる。

「こんのっ、放し、やがれ!」

 業をにやし、空いた片方の手で、顔面目がけてパンチを放つ。狙い過たず拳はゴオマの横っ面に入った。

220代償 ◆yZO9tKZZhA:2010/12/03(金) 16:49:42 ID:.qDc4PMQ
(ッ……! 堅ぇ!)

 まるで分厚い鉄板の様な感触。これではモモタロスォードでも決定打が与えられなかった事に頷けよう物であった。
 拳を受けたまま、ゴオマの顔が歪む。正確には薄く浮かべていた笑みを残忍に歪め、拳を握りしめる。
 マズい。漠然とモモタロスが感じるのと、胸部に衝撃を受けて吹き飛ばされるたのは、ほぼ同時であった。

「マンヂ デデンパ ボグススンザジョ(パンチってのはこうすんだよ)」

 嘲り混じりの声を聞きながら、モモタロスは、もんどり打って転がる。
 咳き込むと同時にモモタロスの口から出た血が床を汚す。口の中にはなんとも言えない錆びた鉄の味が広がって行く。
 小物そうな見た目に反して強い。対峙した相手をモモタロスはそう判断する。
 決してモモタロスが弱い訳では無い。本来、ズやメのグロンギ程度であれば、モモタロスでも十分対処できるレベルであろう。
 だが、ゴオマは違う。究極の闇、ン・ダグバ・ゼバのベルトの破片を体内に取り込み、究極体となったゴオマは、金の力の状態のクウガですら圧倒する力を得ている。能力や精神はともかくとして、その身体能力はゴのグロンギに匹敵するのだ。
 
(クソッ、まさかこんな化け物までいるとはな)

 殴られた際にモモタロスが手放したモモタロスォードを片手に、ゴオマがにじり寄ってくる。一気に襲ってこないのは嬲って遊んでいるつもりなのだろう
 最初の攻防であまりにもはっきりと痛感した実力差。電王に変身できれば、まだ戦いようはあるかもしれないが、生憎と変身ベルトの類はモモタロスには支給されていなかった。
 勝ち目は薄い。だからといって逃げるという選択支は浮かばない。
 元々負けず嫌いな性質であるのだが、それ以上に宿主でもある良太郎の事があった。

(あいつは弱ぇ癖に根性が座ってやがるからな)

 ここで逃げれば、目の前の蝙蝠男は参加者を殺して回るだろう、もしもそんな人物に良太郎が出会ったら?
 軟弱そうに見えて、一度こうと決めたら梃子でも動かない。それも、誰かの命がかかっているとしたら絶対だ。実力差など関係なく、止めに入るだろう。
 だから、良太郎より腕っ節の強い自分がなんとかしなければならない。元々こういった荒事はキンタロスや自分の専門だったのだから。
 だが、戦おうにも唯一の武器は敵の手に渡り、武器らしい武器はない。
 どうしたものか、と考えるモモタロスの脳裏に、自分に支給された物が浮かんだ

(確かT2ガイアメモリとかいってたな)

 この部屋に向かう前、とりあえず使える物はないかと荷物を確認した時にあった、もう一つの支給品。首輪のコネクタを使ってドーパントという怪人に変身するツール。
 正直なところ胡散臭いと感じたモモタロスは、使う必要もないと、デイパックにしまっていた。そして、幸運な事にもそのデイパックは今自分の真後ろ、手の届く距離に転がっている。
 手を伸ばし、中身を探る。それらしい物を引き当てた。

(試して、みるか)

 なににしろ、このままでは待っているのは死。で、あるならば最後まで足掻いて足掻き抜く。
 モモタロスは、立ち上がりながら説明書通りにガイアメモリのスイッチを押す。

221代償 ◆yZO9tKZZhA:2010/12/03(金) 16:51:16 ID:.qDc4PMQ
――メェタルゥ!――
「バビ?(何?)」

 急に鳴り響いた電子音に思わず身構えたゴオマを尻目に、モモタロスはメタルのT2メモリを首輪のコネクタへと接続する。
 まるで溶け込むように首輪とメモリが同化するのと同様にモモタロスの姿が変わって行く。
 燃える様な赤い体から鈍い光を放つ鋼の体。
 二本の角は消え、赤く光る単眼以外に特に装飾の無い頭部。
 そして、その左手には鋭く尖ったかぎ爪。
 メタル・ドーパント、かつて風都タワーを占拠したテロ組織の一員が変身したドーパントであった。

「へっ、さっきは遅れを取ったが、次はこうはいかねぇぞ。 第二ラウンドといこうじゃねえか、蝙蝠野郎!!」
「グガダグ バパダダバサ ゾグザド ギグボザ!(姿が変わったからどうだというのだ!)」

 モモタロスォードとメタル・ドーパントのかぎ爪がぶつかり合い、火花が散った。一合、二合、捌いては捌かれ、捌かれては捌く。
 ゴオマの戦闘スタイルは素手である。武器の類は使い慣れていない。武器を持ったまま攻撃を仕掛けた、ゴオマの失敗である。
 とはいえ、剣とかぎ爪ではリーチの差が存在する。不慣れな攻撃手段と、不利な攻撃手段。その結果、二人の攻防は拮抗している。
 このままではじり貧、どうするか、とモモタロスは思案する。そんな彼に幸運が舞い降りた。

「!?」

 突然、ゴオマの姿が異形の姿から、人の体へと戻っていく。突然の自体に驚くモモタロスであるが、驚いたのはゴオマも同じであった。
 青白く、不健康な肌を引きつらせ、ゴオマは驚愕に目を見開く。何が起こったのか。先程呼んでいた、ルールブックの制限の項を思い出した。

(もう十分も経過したのか!?)

 予想外の事態にゴオマはパニックを起こしかける。
 結論だけを言うならば、ゴオマが変身してから、まだ五分しか経っていない。では何故変身が解けたのか?
 本来、ゴオマにモモタロスを圧倒できるような力はない。ダグバのベルトの破片を体内に取り込み、強化されたからこそ、今の強さがあるのは先にも述べた通りである。
 ダグバのベルトの破片を取り込んだ事による強化。問題はそこだった。
 このバトルロワイアルにおいて、通常の変身は10分、強化形態には5分と、変身可能時間の制限が設けられている。
 今のゴオマはダグバのベルトの破片により怪人体が強化されている。で、あるならば、この究極体への変身可能時間は5分間までとなってもおかしくはない。
 問題は、ゴオマの怪人体の強化が一歩通行。究極体にはなれても昔の怪人体には戻れず、またその形態には変身できない事。
 つまりゴオマは、この殺し合いにおいて、自身の怪人体への変身時間は5分間のみ、というハンデを背負ってしまったのだ。
 だが、そんな事情をしる由もないゴオマは混乱する事しかできない。そして、それは彼にとって致命的なミスとなる。

「オラァ!!」

 モモタロスが左手を振るう。咄嗟に構えたモモタロスォードが弾き飛ばされる。
 続けざま、かぎ爪でもう一撃、間一髪避ける事はできたが、その青白い頬に幾筋か紅い線が描かれる。
 
「さっきはよくもやってくれたじゃねぇか、ええ?」

 勝ち誇った調子のモモタロスを相手にゴオマは後ずさる事しかできない。
 悲しいかな、変身のできなくなった今、ゴオマには殺される以外の選択支が存在しない。

「テメェみたいなのを生かしておく理由はねえ、覚悟しやがれ」

 黒一色の瞳に確かな殺気を宿らせ、モモタロスが左手を握りしめる。
 絶体絶命の状況に、ゴオマは逃げようとする事しかできなかった。既に高揚感などという物は消し飛んでいる。
 不意に後ずさる足の踵に何かが触れる感触があった。
 視線を動かすと、何時の間にか戦闘に巻き込まれたのか、横倒しになっている彼のデイパックと倒れた時の衝撃か散らばっている荷物。
 そして、触れた物は、金色に輝く、Sの字が描かれたガイアメモリ。
 ここに来て、望外の幸運。藁にもすがる思いでそれを掴み取る。変身の方法は先程間近で確認している。

222代償 ◆yZO9tKZZhA:2010/12/03(金) 16:53:02 ID:.qDc4PMQ
「それは……! やらせるかよぉ!」
――スミロドン!――

 ゴオマが手にとった物を確認した、モモタロスは、そうはさせじと、ゴオマ目がけ駆けながら、かぎ爪を突き出す。
 だが、それは少しばかり遅かった。

「……ッ!!」
「これで、五分と五分だ」

 突き出されたカギ爪は、獣を思わせる体毛に覆われた両の腕から伸びる鋭く巨大な爪により止めていた。
 猫科の動物を連想させる頭部に、構内に収まりきらず外へと伸びる二本の犬歯。園崎家の始末人であるスミロドン・ドーパントへと、ゴオマは姿を変えていた。
 ゴオマはそのままモモタロスの左手を撥ね除ける。ゴオマの変身を許してしまった事に、一瞬だけでも動揺してしまったモモタロスは対応が遅れ、撥ね除けられた勢いで体勢を崩す。
 一瞬だった。腹部に衝撃。熱く痺れる様な感覚モモタロスの腹部には鋭い爪が深々と刺さっていた。
 ゴオマが突き刺していた爪を腹部から引き抜くと同時に、崩れるようにして、モモタロスが前のめりに倒れる。
 それを尻目に、ゴオマはペロリと、爪に付着している真紅の液体に舌を這わせる。勝利の美酒は格別の味がした

「まずは、一人目だ」

 血の水たまりの出来始めた、自分が仕留めた相手への興味はとうに失せていた。まずは一人目、沸き上がる歓喜の情が抑えきれず、猛獣の顔は歪な笑みを浮かべる。
 勝利。負け続け、惨めな思いをしていたゴオマにとって、それは狂おしいまでに甘美な感覚。
 そしてそれは、元々散漫気味だったゴオマの注意力を更に散漫にさせていた。
 ゴオマの右足に激痛が走った。

「ガアッ!?」

 何事かと下を見ると、足に深々と突き刺さる、メタル・ドーパントのかぎ爪と左腕。無論、その先にあるのは、ゴオマが始末したと思われていたメタル・ドーパントことモモタロス。
 モモタロスが受けた腹部への攻撃は出血量からして、明らかに致命傷。だからといって、すぐに死亡する訳でもない。
 致命傷を与え、倒れ伏したからといって勝利した気になったゴオマのミスであった。

「ざまぁ、ねえ、な」
「ビ、ガラァ……!!(き、さまぁ……!!)」
「だから……、何言ってるのか、わかんねぇ、よ。まあ、大体、予想は、つくけど、な……」

 怒りに打ち震えるゴオマに対し、得意気にモモタロスは笑ってみせる。
 とはいえ、現在進行形で命の火が消えているモモタロスにとって、今の不意打ちが精一杯のお返しであった。もはや、体は満足に動かす事もできず、意識も薄れ始めている。
 だが、そのイタチの最後っ屁はゴオマに屈辱を与えるには十分だったろう。

(チッ、全然殴り足りねぇってのに、これが精一杯かよ)
「ギベェェェェェ!!(死ねぇぇぇぇ!!)」

 モモタロスの頭部目がけて、スミロドン・ドーパントの爪が振り下ろされる。
 モモタロスには避ける手だてがない。
 脳裏に、良太郎や、デンライナーの仲間達が浮かんだ。

(すまねぇ、良太郎。俺はここまでみたいだ。亀、熊、小僧、良太郎の事、頼……)

 耳障りな音が響く。一拍おいて、モモタロスであった者の首輪から、役目を終えたガイアメモリが床に落ち、割れる音が響いた。

223代償 ◆yZO9tKZZhA:2010/12/03(金) 16:53:35 ID:.qDc4PMQ
「グァァァァァァ!!」

 ゴオマは怒り狂っていた。優勢だった相手に究極体であれば圧勝していた相手に、右足を負傷させられた。それが何よりも腹立たしかった。
 当たり散らす様に暴れ回る事、数分。制限時間が来たのか、ガイアメモリが排出され、変身が解ける。
 突然、ゴオマは酷い疲労感に襲われた。立つ事すらままならず、思わず膝をつく。

「バビグ……!?(何が……!?)」

 そのまま、突っ伏す様にゴオマは倒れ込んでしまった。
 ゴオマも知らない事実。一部の人間にしか渡らない、金のガイアメモリ。絶大な力を持つ代わりに、この殺し合いには一つの制約を設けられていた。
 今、ゴオマが襲われている極度の疲労がその制約。フルタイムで力の限り暴れ続ければ、グロンギですらも倒れ込む程の消耗をしてしまう。
 ダグバの力、金のメモリ、自分の身の丈以上の力を手にしたゴオマのツケは払い終える事ができるのか、それは誰にもわからない。

【モモタロス@仮面ライダー電王 死亡確認】

【一日目 昼】
【G-1 廃工場の一室】

【ズ・ゴオマ・グ@仮面ライダークウガ】
【時間軸】第39話「強魔」、ダグバに殺害される前
【状態】疲労(極大)、右頬に軽度の裂傷。スミロドン・ドーパント、ズ・ゴオマ・グ究極体に二時間変身不可
【装備】なし
【道具】支給品一式、ガイアメモリ(スミロドン)、不明支給品1〜2
【思考・状況】
基本思考:優勝する。できればダグバは自分が倒す。
1:とりあえず休む
【備考】
※怪人体には究極体にしかなれず、強化形態の制限時間に準じます。
※ルールブックは粗方読み終わりました。

【共通備考】
※G-1の廃工場の一室にモモタロスの死体(首輪付き)と、モモタロスォード、モモタロスのデイパック(不明支給品無し)があります。
※T2メモリ(メタル)は破壊されました。

224 ◆yZO9tKZZhA:2010/12/03(金) 16:55:53 ID:.qDc4PMQ
以上で仮投下を終了します。

ゴオマの怪人体変身を5分縛りにしたのですが大丈夫でしょうか?
これ以外にも問題が無いようならば、後で本投下します。

225二人で一人の/通りすがりの名無し:2010/12/03(金) 19:22:39 ID:85ZqlCS.
仮投下乙です
問題はないと思いますが、一つだけ
変身制限がルールブックに書いてあるって、本文に書かれてましたが
大丈夫ですかね?

226 ◆LQDxlRz1mQ:2010/12/03(金) 21:50:33 ID:4qL7YOf6
仮投下乙です。
モモタロス……またしても早く逝ったか……
二人には意外なメモリが支給されましたね
不利に思えたゴオマはメモリのお陰でそれなりにパワーアップかぁ

ところで、気になった点がひとつ
イマジンって血出ましたっけ?
「さらば電王」ではモモタロスが斬られたときに砂が舞ってたんですが

227二人で一人の/通りすがりの名無し:2010/12/03(金) 22:39:33 ID:MZiDqqXk
仮投下乙です。

究極体が上位フォーム扱いで短縮制限の対象ってのも自分はありだと思います。
でも上位の究極体だけにしかなれないってのも少し違和感があるので
「実は強化変身は一方通行でなく、どうにか頑張れば制限時間が通常通り10分の初期形態まで退化することも可能」
このように解釈をしたいところですがどうでしょうか。

228 ◆yZO9tKZZhA:2010/12/03(金) 23:14:43 ID:.qDc4PMQ
>>225
他の作者さんの作品との統合が面倒くさいかもしれませんし、そこは変えた方がいいかもしれませんね。修正します。

>>226
血に関しては完全にこちらのミスです。修正しておきます。

>>227
いいとは思うのですが、原作では一方通行というか、強化すると前の形態には一切なりませんでしたし、どうなんでしょうね?
何分究極体になったのってかなりの反則技+ゴオマの体に負担かかってる気がするんで、ガドルやジャーザのフォームチェンジの要領で退化とかできるんでしょうか
個人的にはクウガグローイングみたいに、まず退化はできないんじゃないか、という解釈なのですが

229二人で一人の/通りすがりの名無し:2010/12/03(金) 23:26:01 ID:85ZqlCS.
>>228
えっと、考えてみたのですが
個人的には変身制限が書かれたルールブックを
特別な支給品扱いでもいいと思いますが
皆様は、どうでしょうか?

230 ◆VbYNTlLnDE:2010/12/04(土) 06:13:13 ID:5dMcUPSA
遅くなって申し訳ありません、葦原涼、霧島美穂、財津原蔵王丸投下します
本投下の期限は過ぎちゃいますね…本当申し訳ない

231Sへの想い/踊る緑の怪人 ◆VbYNTlLnDE:2010/12/04(土) 06:14:26 ID:5dMcUPSA
木漏れ日を照明に、川のせせらぎをBGMに山道を歩く中年の男がいた。
頼れる男の雰囲気を纏い左手にはデイバッグ、背中にはギター。
いくつもの修羅場を潜り抜けてきた男を人はザンキと呼んだ。

(どういうつもりかは知らないが、ありがたく使わせてもらうぜ)

背中のギターの重みを感じながらザンキは歩く。

音撃真弦・烈斬

鬼として復帰したザンキに猛士が送った新たな剣。
彼が目覚めた時デイバッグと共に「使え」とばかりにそれは地面に突き刺さっていた。
他の支給品も確認したが当然のごとく烈斬を武器として選択し、背中に背負う。

(大ショッカーだかなんだか知らないが、俺の命は誰かと戦う為にあるんじゃない。
 護る為にあるんだ。お前達の好きにはさせねぇ……)

大ショッカー打倒を胸に歩き続け、やがて舗装された道が姿を現した。

「まずはヒビキ達と合流しないことには始まらんな……ここは、A-4辺りか?」

道路上で立ち止まり地図と睨めっこをするザンキの頭上が一瞬暗くなる。
予感を感じ空を見上げるが空は今までと変わりなく晴天だった。

(気のせいか?いかんな、思ったよりも限界が近いのか)

自らの肉体が既にボロボロであるのは覚悟の上での鬼への復帰だったが……
ザンキの脳裏にどこまでやれるのか、という不安が広がる。その時――


「助けてぇーーっ!!」


若い女性の悲鳴が静寂を破る。
迷うことなくザンキは声のした方へと走り出した。
手遅れにならない事を願いながら全力で走り続け、やがて視界が開けていく。
川を横切るように作られたコンクリートの通路。丁度中間ほどの位置で女性が腰を抜かすように座り込み、
すぐ近くには今にも襲わんとばかりに白鳥型のモンスターが羽ばたいていた。

走りながらデイバッグを投げ捨て、左腕の変身音源・音枷のカバーを開き弦を弾く。
空から降り注いだ落雷がザンキを包み込み――

「セヤッ!」

右手で雷を振り払い鉛色の仮面の鬼へと姿を変える。
大幅に強化された脚力で飛び上がり、白鳥型モンスターに不意打ちの飛び蹴りを浴びせ反転。
女性を護るように目の前に着地する。

「まさか魔化魍がこんな所にまでいるとはな、だがどんな場所であれ好きには……あ?」

不意打ちを受け吹き飛ばされた白鳥モンスターは反撃しようと斬鬼まで迫るが
唐突に体中から粒子を噴出しながら消滅してしまう。

「妙に手応えの無い奴だったな、まだいるんじゃねぇだろうな……」

周囲を警戒しつつも背後の女性の方に向き直り右手を差し出す。

「奴がまだどこかに潜んでいるかもしれねぇ、お前さんは早くここから逃げな」

恐怖とも驚きとも思える表情を見せた女性は一瞬目を泳がせた後、叫んだ。

「化け物ぉっ!近づかないでっ!!」
「おいおい、こんなナリしてるが俺は――」


「ウォォォオォォォッッ!!」


斬鬼の言葉は強烈な雄たけびにかき消され、
何事かと確認しようとした時には既に空へと吹き飛ばされていた。


  ◆  ◆  ◆

232Sへの想い/踊る緑の怪人 ◆VbYNTlLnDE:2010/12/04(土) 06:15:22 ID:5dMcUPSA
葦原涼が目覚めたのは木々生い茂る森の中だった。
起き上がった彼はまず首に巻かれた物体の感触を確かめ、次に諦めのため息をつく。

(夢、で済むわけもなかったか。大事に巻き込まれるのはもう慣れたが……)

立ち上がり、身体の汚れを軽く叩き落としディバッグの中身を確認しようとしたその時――


「助けてぇーーっ!!」


悲鳴が聞こえ、一瞬身体が硬直するがすぐにデイバッグを抱え駆け出していく。
少し走ると舗装された道路までたどり着き、道路に沿って走り続ける。
視界が開け、コンクリートの通路が姿を現し、その中間ほどの位置に悲鳴の持ち主であろう女性が座り込み、
鉛色と深緑のアギトやアンノウンとも異なる怪人が眼前に立ち尽くしていた。
怪人が女性に手を伸ばした時、再び悲鳴があがる。

「化け物ぉっ!近づかないでっ!!」

涼はデイバッグを投げ捨て両手を交差させ――

「ウォォォオォォォッッ!!」

腰に金色のベルトが浮かび上がり瞬時に緑色の異形の姿、ギルスへと変身する。
怪人の隙を突いて強引に蹴り飛ばし、通路から吹き飛ばす。

「お前は逃げろ!」

女性に一言だけ声をかけ、怪人を追う為ギルスも下に流れる川へと飛び降りた。

『俺の力で人を護ってみるのも悪くない』

この会場に来る少し前に思えた涼の素直な感情だった。
そしてそれは今も変わらない。

(大ショッカーの言葉に従う奴ら、人の命を脅かす奴らは全員俺が片っ端からぶっ潰す!)

確固たる意思を胸にギルスは着地し、フラフラとしながらも立ち上がった怪人と対峙する。


  ◆  ◆  ◆

233Sへの想い/踊る緑の怪人 ◆VbYNTlLnDE:2010/12/04(土) 06:16:09 ID:5dMcUPSA
(何が、起こった?)

不意を突かれた一撃と地上との激突の衝撃に身体を痺れさせながらも斬鬼はフラフラと立ち上がる。
彼の足元を流れる川は膝下程度の深さしかなく激突の衝撃を和らげてくれる事は無かった。
肩を震わせながら咆哮を上げる緑の怪人を見ながら先ほどのコンクリートの通路はダムの堤体上通路であった事を確認する。

(あの高さから落ちたのか、そりゃ効くわな……)

緑の怪人が両手を振りかぶりながら斬鬼に接近する。
それに応えるように斬鬼も構えを取るが思考が戦闘に集中できないでいた。

(あの白鳥の仲間?いや、違う。女はまだ無事のようだ、とするとまったく別の第三者なのか)

「ガァッ!」

雄叫びと共に緑の怪人が右手を振るい、左腕で受け止める。
次いで迫り来る蹴り上げを右手でいなし距離を取る。

(クソッ、左腕が痺れやがる!なんてパワーしてやがんだあの野郎!ってそうじゃねぇ、おい――)
「ガハッ……!?」

声を出そうとした斬鬼の口から出たのは言葉にならない異音、そして口中に広がる鉄の味。

「オォォォ!」

声を上げながら緑の怪人が再び距離を詰め再び右手を振るう。
先ほどと同じように左腕で受け止めよう振り上げ――寸前で身体を大きく屈め怪人の攻撃を避ける。
怪人の右腕にはいつの間にか鎌のような緑色の爪が生えていたのだ、先ほどと同じように受けていたら大きな痛手を受けていただろう。
追撃を狙う怪人を両手で突き飛ばして体勢を崩し、その間に再び僅かに距離を取る。

(冗談じゃねぇ、奴さん本気も本気だな。仕方ねぇ……)

背中に抱えた音撃真弦・烈斬を抜刀したかのようにゆっくりと構える。
緑の怪人はその異様な武器を警戒し、迂闊には攻め込んでこない。
お互いゆっくりと円を描くように動き、相手の出方を伺う。

「ガァァァッッッ!」

やがて痺れを切らした緑の怪人が一気に距離を詰めようと駆け寄った。
初手の右腕の爪を烈斬で捌きつつ懐に飛び込み、鳩尾へと肘うちを喰らわせる。
僅かに怯んだ隙を見逃さず蹴り飛ばし、大きく体勢を崩させる。
緑の怪人は踏みとどまろうとするがそれこそ斬鬼の狙い。
烈斬を使える距離を作り上げ、更に踏ん張る為に硬直した体を狙い横薙ぎに烈斬を振るう。

「グガァ!」

うめき声をあげ緑の怪人が吹き飛ぶ。しかしやられてばかりで終わるわけが無かった。

234Sへの想い/踊る緑の怪人 ◆VbYNTlLnDE:2010/12/04(土) 06:16:47 ID:5dMcUPSA
赤い触手が右腕から伸び、烈斬を振るい隙ができていた斬鬼の首に巻きついていく。
吹き飛ぶ勢いに引きずられ、斬鬼も前のめりに倒れこんでしまった。
元々の体力の差か、緑の怪人が先に立ち上がり立ち上がろうとしていた斬鬼の首を締め上げる。
そのまま強引に振り回し、更に締め付けを強化する。

(まずい、このまま、じゃっ!)

遠のきかけた意識を気合で呼び覚まし、烈斬で触手を斬りつけなんとか拘束を振りほどく。
勢い余った緑の怪人が体勢を崩し、斬鬼は追撃を狙うが――

「ゴホッ、ゴホッ!」

身体が思うように動かず片膝をつき、血反吐を吐く。
首を締め付けられたまま散々振り回され、既に斬鬼の体力は限界を超えたのだった。
それでも立ち上がろうと顔をあげた斬鬼の視界に右足を振り上げた緑の怪人が映りこむ。
踵の先から死神の鎌とも思えるような爪が伸び、それが徐々に迫り――

(こんな所でやられてたまるかよ……っ!」

烈斬を盾にするように緑の怪人の右足を押さえ込む。
それでも尚、踵の爪が斬鬼にジリジリと迫るが両手で烈斬を支えなんとか持ちこたえる。
しかし残った体力の差か、徐々にその均衡が崩れ少しずつ爪が斬鬼に近づいていく。

「オォォォッッッ!」
「ヌゥゥ……ッ!」

お互いうなり声をあげる。だが遂に力負けした斬鬼の背中に爪が食い込んでいく。
グチュリを何かをつぶすような音を出しながら爪が深く深く身体に突き刺さる。

「ウゥゥオォォォッッッ!」

勝利を確信した緑の怪人が咆哮を上げる。

(勝ち名乗りの……つもりか貴様ぁぁっ!!」

しかしそれ以上の声で血反吐を吐きながらも斬鬼が吼える。
ベルトのバックルから音撃震・斬撤を取り出し、烈斬に装着し怪人を支える左足に狙いを定めるが――

斬鬼自身の足元に烈斬を突き刺し斬撤に指を掛ける。

「音撃斬!雷電斬震!!」

掛け声と共に清めの音を次々とかき鳴らす。
清めの音が川に波紋を呼びそれがやがて波となる。
烈斬を突き刺した川底の地面に亀裂が走り亀裂から雷が噴出する。

「グゥ……ガァッ!」

斬鬼を中心にあふれ流れるエネルギーに耐え切れず緑の怪人が川から吹き飛ばされ、
川沿いの木々の中に突っ込んだ。

姿が見えなくなった事を確認した斬鬼は斬撤の弦から指を放し、空を見上げ息を一つ吐いた。


  ◆  ◆  ◆

235Sへの想い/踊る緑の怪人 ◆VbYNTlLnDE:2010/12/04(土) 06:17:35 ID:5dMcUPSA
葦原涼が再び目覚めたのは木々生い茂る地面の上だった。先ほどと違うのはすぐ近くに川が見えている事か。
鉛色と深緑の怪人の姿を探すが意識を失っている間に逃がしてしまったらしい。
涼は痛む体を気にしつつ堤体上まで戻り、デイバッグを回収しながら先ほどの女性の姿を探すがこちらも見つからなかった。

「無事逃げ切れたならいいが……」

女性が逃げるだけの時間稼ぎは十分出来たとは思うが怪人を仕留め損なった事が涼の心に不安を宿す。

「あいつ、次見つけたときにはこんどこそ逃がさない……っ!」

不安をかき消すように決意を口に出し、歩き出す。


【1日目 昼】
【A-5 ダムに繋がる道路】

【葦原涼@仮面ライダーアギト】
【時間軸】本編36話終了後
【状態】中程度の疲労、胸元にダメージ 、仮面ライダーギルスに2時間変身不可
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明支給品×1〜3(未確認)
【思考・状況】
1:殺し合いに乗ってる奴らはぶっつぶす
2:人を護る
3:鉛色と深緑の怪人を警戒
【備考】
※支給品と共に名簿も確認していません。


  ◆  ◆  ◆

236Sへの想い/踊る緑の怪人 ◆VbYNTlLnDE:2010/12/04(土) 06:18:26 ID:5dMcUPSA
葦原涼が去った方向とは丁度逆の方向の堤体上通路の陰にザンキは潜んでいた。
涼が立ち去った事を確認し、疲れきったため息をつく。

「あんた、何であいつの身体にあのギター刺さなかったの?」

茂みの中から逃げたと思っていた女が姿を現し、ザンキは多少驚いた。

「お前、逃げたんじゃなかったのか?」
「答えてよ、あれだけすごい力だったら直接刺せばひょっとして倒せたんじゃないの?」
「かもな……だが、俺が倒すべき敵はあいつじゃない。少なくともあいつは良い奴だ。
 ああするのが一番と思ったからそうしたまでだ」

女の問いに答えつつもザンキは考えていた、何故女が残っているのかを。
そして女の雰囲気から答えを導き出し、薄く笑みを浮かべた。

「何笑ってるのよ」
「お前、このふざけた企画に『乗ってる』。そういうことか」

僅かに残していた弱気な女の仮面を捨て、女は髪をかき上げた。

「ご名答。よくわかったわね?」
「お前がもう隠そうとしなかったから、な。まったくたいしたタマだぜ……相打ちがお望みだったか?」
「別に……」
「はっ、そうかよ。……ガハッ!」

ザンキが血反吐を吐き身体を震わせる。

「トドメさしてあげようかと思ったけど、その様子じゃどっちみち長くはなさそうね」
「……元々長くはない、命だ。動けるうちは、動かすか。お前さんが『乗ってる』って言うなら見逃せないからな」

フラフラと立ち上がり音枷のカバーを開き、弦を弾く。
女が懐から何かを取り出そうと構えるが、そこで動きが止まる。
本来なら変わるはずのザンキの姿が変わらなかったのだ。
ザンキは自嘲の笑みを浮かべドサッと座り込む。

「チッ、変身するだけの体力すら残っちゃいねぇか。命の使いどころを誤ったな……」

女は興味を無くしたのか放り投げられていたザンキのデイバッグを拾い上げ、ザンキの傍らに置かれた烈斬を見つめる。

「悪いが、こいつは譲れねぇな。あとの物は好きにしな」
「そう」

短く返事を返し、自らのデイバッグとザンキの分をデイバッグを抱え女はその場を後にした。

誰もその場にいなくなった事を確認するとザンキは烈斬を杖代わりにフラフラと立ち上がる。
目の前にはダムによってできた水面が先ほどの衝撃の余波でゆらゆらと揺れていた。
ゆっくりと目を閉じ、ザンキはその身を通路から投げ捨てた。

(どちらにせよ、俺は死ぬ。それなら俺の死体は残したくねぇ。ヒビキやあきらが見つけちまった時の事を考えると、な……
 ヒビキ、お前にだけ背負わせちまう事になるが……後の事は頼む)

遠くなる水面を見つめ、やがてザンキの思考も閉ざされていった。
堤体上通路で烈斬だけがザンキの最期を見守った。

【財津原蔵王丸@仮面ライダー響鬼 死亡】
  残り56人


  ◆  ◆  ◆

237Sへの想い/踊る緑の怪人 ◆VbYNTlLnDE:2010/12/04(土) 06:19:10 ID:5dMcUPSA
ザンキのデイバッグを整理しながら女、霧島美穂は改めてこの戦いの事を考えていた。
たった一つの世界だけが勝ち残る世界。そして勝ち残った世界の参加者には望む物が手に入る。
結局の所は彼女の世界で行われたライダーバトルと同じである。
違う所は二つ、参加が強制である事と大ショッカーの言葉、少なくとも技術は確かなものである事。
死者を蘇生する、不可能な夢物語と思っていたが彼女自身の身体でもって証明されてしまった。
そう、霧島美穂は一度死んだ身だった。最期を誰に看取られること無く静かに死んだ、はずだった。
それがこうしてこの場で動いているのだから大ショッカーの技術は信じるほか無い。

(私の望みは変わらない、勝ち残って、大ショッカーにお姉ちゃんを生き返らせる)

彼女はそうして戦いに乗ることを決意した。手始めに自らの契約モンスターであるブランウイングを召喚し辺りを偵察させた。
近くに参加者が近くにいた事を確認すると彼女はブランウイングと共に自作自演のピンチを作り上げる。
悲鳴に誘われた参加者が傍観を決めたならブランウイングを使って逃走、もしも助けにきたなら自らとブランウイングでの挟み撃ち。
都合のいいことにやってきた男は助けに来るタイプであった。途中姿を変えた事には驚いたが。
想定外だったのはブランウイングが早々に消滅してしまった事だった。倒されたのかと彼女は一瞬焦ったが時間切れであったと判断した。
策が使えなくなり、さてどうしたものかと考えあぐねていた彼女の視界の隅に映るもう一人の参加者が映った。

ここで彼女は別の策を思いつく。といってもブランウイングを自分を助けにきた目の前の男に変えただけの策だが。
更なる悲鳴をあげ、新たにやってきた第三者が傍観を決めたら目の前の男と、逆に助けにきた場合は第三者の男と共闘する。
誤解を解く暇を与えずどちらかの参加者を始末するつもりだった。うれしい誤算だったのは第三者の男が妙に積極的だった事か。
自分がわざわざ加わる必要は無くなったと判断した彼女は身を隠し、事の顛末を見守ったのだった……

デイバッグの整理を終え、ここにきてから二度目となる名簿の確認を行う。

(秋山蓮、東條悟……名前は知らないけれど同じ世界の参加者なら、ライダーバトルに参加するほどの欲のある人間なら協力できるかな。
 北岡秀一は悔しいけれどこの場は協力するしかない、許すつもりは毛頭ないけれど……)

「浅倉……っ」

姉の仇である男の名前を見つめるたびに彼女の心に黒い炎が燃え上がる。

(私と同じようにアンタも生き返ったっていうなら殺してやる……何度でも、何度でも!)

そんな黒い炎も最後に見つめる名前の人物の事を思うと――

(真司……アンタはきっとこの戦いに乗らないんだろうね、バカだよね、ほんとう……
 でもさ、生き残るには戦わなきゃいけないんだよ?真司。だからさ、だから……
 アンタは変わらなくていい、私が、私達が他の世界を消してあげる。
 そうすれば真司も護れる、お姉ちゃんも生き返る。もうちょっとだけ、待ってて)

黒い炎が更に燃え上がる。様々な感情を燃料に強く、激しく。
その炎に感化された支給品の一つも強く、激しく燃え上がる。

    ―― SURVIVE ――

生き残る為、生き残らせる為、彼女は戦場へ向かう。

【1日目 昼】
【A-4 ダム付近】

【霧島美穂@仮面ライダー龍騎】
【時間軸】映画死亡後
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式×2、ファムのデッキ@仮面ライダー龍騎、サバイブ「烈火」@仮面ライダー龍騎、不明支給品×1〜4(確認済み)
【思考・状況】
1:あらゆる手を使い他の世界の参加者を倒す
2:秋山蓮、北岡秀一、東條悟と接触、協力。
3:浅倉威は許さない、見つけ次第倒す。
4:城戸真司とは会いたいけれど…

238 ◆VbYNTlLnDE:2010/12/04(土) 06:20:36 ID:5dMcUPSA
以上で投下終了です。
問題点や修正点などございましたご指摘よろしくお願いします。
それと先にも書きましたが本投下は期限に間に合いません、本当に申し訳ありませんでした

239二人で一人の/通りすがりの名無し:2010/12/04(土) 12:57:28 ID:IwOhFILA
投下乙です 
矛盾点は見られませんが、今後は期限に気をつけてください
忙しいかもしれませんが

240 ◆LuuKRM2PEg:2010/12/05(日) 20:54:08 ID:B31MKa72
これより、修正版を投下します

241魔王 が 動き出す 日 (修正版) ◆LuuKRM2PEg:2010/12/05(日) 20:55:38 ID:B31MKa72

「とんだ目にあったな…………」

日の光に照らされた道を、一人の男が歩きながら呟いた。
その声からは、明らかな苛立ちが感じられる。
肩まで届く黒い長髪、暗闇のような色のロングコート、その下に纏われているスーツ。
全てが、漆黒で統一されている。
その格好からは、まるでこの世の全てを飲み込むような、禍々しい雰囲気を放っていた。
彼の名は、乃木怜司。
『カブトの世界』で猛威を振るっていた、宇宙より飛来した人間に擬態する生命体、ワームを率いる王。

「俺としたことが、油断したか……?」

自らと大ショッカーに対する苛立ちを感じ、舌打ちをする。
本来ならば、ワームの軍勢を率いて、人類に攻撃を仕掛けている最中だった。
忌々しいZECTが生み出した、マスクドライダーシステムの秘密を奪うために、エリアZに進撃。
そしてあと一歩の所で、勝利を収めるはずだった。
だが気がついたら、大ショッカーと名乗った連中に、拉致されるなんて。
そして訳の分からない殺し合いを強制された。
その目的は、自分が住む世界を崩壊から救うこと。
首から伝わる冷たい感触が、その証。
鋼鉄製の首輪には、どうやら爆弾が仕掛けられているようだ。
先程、その犠牲となった男がいる。
名前は確か、影山瞬と言った筈。
ZECTの一員として、ワームに何度も刃向かった。
そして、自分にも。
仮面ライダーパンチホッパーとして、他のライダーと徒党を組んだ。
だが自分は、掠り傷すらも負わずに勝利を収める。
エリアZの最深部に突入しようとした矢先、こんな戦いに繰り出される羽目になるとは。
しかし過ぎたことをこれ以上考えても、仕方がない。
やるべきことは、一刻も早く元の世界に帰還して、ZECTを潰すこと。

「さて、どうするか」

だが、まずはその方法を探ることからだ。
いくら行動方針を定めたところで、肝心の手段が無ければどうしようもない。
選択肢は、二つ。
一つ目はワームの王としての力を発揮し、参加者を皆殺しにする。
この選択を取ることは楽だ。
自分の力さえ用いれば、負けることは無い。
だが、それはあくまでも自分の世界の話。
大ショッカーはこの会場に、違う世界の住民を連れてきた。
それが、予想以上の力を持っている可能性は充分にある。
地球の人間は、井の中の蛙という諺を作った。
奴らの言葉を借りるのは癪だが、下手に喧嘩を仕掛けてもこうなる可能性がある。
そして何より、この選択を取ることは大ショッカーに屈したも同然。
ワームの王としての誇りが、それを許さなかった。
第一、生き残ったところで奴らが約束を守るとは思えない。
最後の一人になった瞬間、大ショッカーがこちらを始末しに来る事も、充分にあり得る。
返り討ちにしてやればいいが、そうもいかない。
敵は自分を拉致し、このような首輪を巻いた。
この事実からすると、大ショッカーは確実にこちらの手の内を、全て知っている。
そして何らかの対抗策も、既に固めているはずだ。
少なくとも自分が大ショッカーの立場なら、そうしている。
駒に反旗を翻させないために。

(奴らの駒になるだと…………考えただけでも反吐が出る)

怒りによって、腸が煮えくり返りそうになった。
だがそれを押さえて、乃木はもう一つの選択に思考を巡らせる。
二つ目は参加者と結託し、大ショッカーを打ち滅ぼす事。
人間と仲良く手を取り合うつもりなどない。

242魔王 が 動き出す 日 (修正版) ◆LuuKRM2PEg:2010/12/05(日) 20:56:26 ID:B31MKa72
ワームの本領に応じて、利用する。
戦力となるなら引き入れて、駄目なら餌にするだけ。
そして首輪を解除できる環境も作り、この世界から脱出する方法を探る。
最後は、自らをこんな場所に放り込んだ愚か者への制裁だ。

「ここには、奴らがいるか」

自分に持たされたデイバッグを開いて、支給されていた名簿を確認する。
どうやらこの会場には、自分が知る者が少しはいるようだ。
ZECTが作り上げたマスクドライダーを使う人間と、ワームの同胞。
まず、天道総司。
仮面ライダーカブトの資格者として、我々ワームに何度も刃向かった愚かな男。
自分も、奴には煮え湯を飲まされた。
大ショッカーに啖呵を切ったところを見ると、反旗を翻そうとしているに違いない。
最も自分には、どうでもいいことだが。
潰そうとするのなら、勝手にすればいい。自分の邪魔になったときに、始末すればいいだけ。
次に、加賀美新。
仮面ライダーガタックの資格者として、カブト共に我々の邪魔をした、マスクドライダーの一人。
天道ほどではないが、この男も厄介だ。
そして、矢車想。
仮面ライダーキックホッパーの資格者であるこの男は、いまいち訳が分からない。
ワームの邪魔をしている。
かといってZECTの犬となっている訳でもない。
最後に、仮面ライダーダークカブトに選ばれた、あの男。
ZECTの手によってエリアXの最深部に幽閉され、天道総司に擬態したネイティブらしい。
あれの存在は最高機密らしいが、ワームの情報網さえあれば存在を知るなど、朝飯前。

「まさか、あの間宮麗奈までもがここにいるとはな」

名簿を見ながら、乃木は呟く。
そこには、意外な名前が書いてあったため。
間宮麗奈。
ワームの中でも高い地位に就いており、多くの仲間を率いてきた。
だがある時、カブトとの戦いで記憶を失ったと聞く。
その時に仮面ライダードレイクに選ばれた男、風間大介と恋に落ちて、最後には死んだらしい。
あの女が愚かな人間に愛を抱いたことに、多少ながら驚愕した。
しかし、それだけ。
精々、駒が一つ減った程度にしか感じない。
無念を晴らそうとも、敵を取ろうとも思わなかった。
人間などに思いを寄せた愚か者など、仲間とは思わない。

「どうやら、奴らの言葉はあながち嘘ではないようだな…………」

間宮麗奈の名前を見て、乃木は思い出す。
最初の地で、死神博士と名乗った老人は言っていた。
戦いに勝ち残れば、願いを叶えると。
そしてそれには、不可能はないらしい。
無限の命、敵対組織の根絶、過去の改変。
恐らく、間宮麗奈も何らかの方法で蘇生させて、盤上の駒としたか。
もしくはハイパーゼクターのように、時を越えて死ぬ前から連れてきたか。
何にせよ、奴らの技術は本物の可能性が高い。
自分をこんな所に拉致することだ。

243魔王 が 動き出す 日 (修正版) ◆LuuKRM2PEg:2010/12/05(日) 20:57:21 ID:B31MKa72
奪わない手はない。
これを上手く利用すれば、ZECTを潰すことも可能なはず。
乃木の行動方針は、ようやく決まった。
まずは大ショッカーに対抗出来る、人材の確保。
使える者を手駒に引き入れ、駄目な奴は餌にする。
ZECTのライダーも、視野に入れなければならない。
奴らと手を組むなど、本来なら反吐が出る行為だ。
しかし、今は堪えなければならない。
大ショッカーを打ち破るまでの辛抱だ。
その後に、自分の餌にする。

「愚かな大ショッカーの諸君、待っているがいい…………」

乃木怜司は動き出した。
自らの信念に基づいて、大ショッカーを潰すために。
ワームを率いる魔王の行く先には、何が待つか。



【1日目 昼】
【D−3 橋】



【乃木怜司@仮面ライダーカブト】
【時間軸】44話 エリアZ進撃直前
【状態】健康
【装備】無し
【道具】支給品一式、不明支給品×3(確認済み)
【思考・状況】
1:大ショッカーを潰すために戦力を集める。使えない奴は、餌にする。
2:状況次第では、ZECTのマスクドライダー資格者も利用する。
3:最終的には大ショッカーの技術を奪い、自分の世界を支配する。
【備考】
※カッシスワーム グラディウスの状態から参戦しました。
※現在覚えている技は、ライダーキック(ガタック)、ライダースラッシュの二つです。
※支給品には、変身アイテムや強力な武器などは一切支給されていません。

244 ◆LuuKRM2PEg:2010/12/05(日) 20:57:52 ID:B31MKa72
以上で、修正版の投下を完了します
矛盾点などがありましたら、ご指摘をお願いします

245 ◆LQDxlRz1mQ:2010/12/19(日) 23:31:22 ID:hATqFkM.
とりあえず、ダグバの状態表だけ投下してあげ。
あきらの方は後ほど。

【ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ】
【時間軸】不明
【状態】疲労(中)、腹部の強いダメージ、顔面出血、苛立ち、怪人体に1時間程度変身不可、一応ユートピアにも二時間変身不可
【装備】ガイアドライバー@仮面ライダーW
【道具】支給品一式
【思考・状況】
1:恐怖をもっと味わいたい。楽しみたい
2:目の前の二人が恐怖をもたらしてくれる事を期待
【備考】
※ガイアドライバーを使って変身しているため、メモリの副作用がありません。
※ユートピアメモリは破壊されました。

246 ◆LQDxlRz1mQ:2010/12/20(月) 00:17:36 ID:9r/VTxYE
追加文章が完成したので投下します。
挿入部は冒頭でお願いします。
今回も問題点や修正点があれば指摘をお願いします。

247そして、Xする思考(修正版冒頭) ◆LQDxlRz1mQ:2010/12/20(月) 00:18:22 ID:EScs3CyA
 黄色の仮面ライダー電王が、吹き飛ばされたその身を起こす。
 バード・ドーパントにはそのまま逃げてしまったらしい──まあ、さほど遠くにいるというわけでもなさそうだが。
 斧を飛ばして手元に戻るような距離でないのは確かであった。


──今は逃がそう、キンタロス──

「どうしてや、良太郎? あいつ、あのまま放っておいたら……」

──まずは、もっとやることがあるでしょ?──


 そう、目先の戦闘によって忘却の彼方にあったが、そういえば二人の少女の存在がこのホテルにはあったのだ。
 下手に二人を単独行動させるわけにはいかない。──亜樹子はともかく、もう一人の少女に関しては信頼感すら沸いていないのだ。
 それは、亜樹子にとっても、あきらにとっても危険。


「よし、あいつはとりあえず後回しや」


 ──そして、今。
 良太郎は眼前のドアをノックする。亜樹子でない方の少女は、つまるところの全裸シーツ。
 ウラタロスとしては随分そそる姿なのだが──この扉の向こう側では少女が着替えているらしいという事実は、良太郎には気まずい。彼は男でありながら、そういう性格なのだから。


「さっ、良太郎くんももう入っていいよ」


 ドア越しに、亜樹子のそんな声が聞こえた。
 一瞬、女性二人のいるホテルの一室に抵抗があってドアノブの前で手が止まるが、すぐに良太郎は彼女たちのいる部屋に向かった。そんなことを考えている場合ではない。

 そこにあったのは、ようやく落ち着いたといえる少女の姿である。
 ホテルにはあまり派手な服はなく、傍らの亜樹子に比べると地味めな印象を受けるが、その少女の印象には合致している。


──どうせ僕が、すぐにさっきの姿にしてあげるのにね──

──ウラタロス、こんな時に冗談はやめようよ……──

──本気も本気だよ。……と、こんな話は置いといて、この女の子の名前聞いとかなきゃね──


 そうだった、と良太郎はふと我に返る。
 良太郎がそれを聞こうとしたとき──


「ねえ、君の名前は何かな?」

248そして、Xする思考(修正版冒頭) ◆LQDxlRz1mQ:2010/12/20(月) 00:18:53 ID:EScs3CyA
こういう役回りをするのは当然、ウラタロスである。
 何が何でも女の子と話したいというのが彼の理想。というよりは、欲望。
 それに忠実なのがイマジン。ウラタロスは、甘い吐息を漏らしながら少女の体に近づいていく。


「天美あきらです。あの……野上良太郎さんですよね?」


 あきらという少女は一応、その名前を覚えていた。
 「八番目の世界」の人間は、「モモタロス」「リュウタロス」「ネガタロス」「牙王」と特殊な名前ばかりで、その中にあった「唯一まともな名前」だったから不思議と印象に残ったのだ。
 それは、特殊な人間の中にいる唯一の「常識人」を連想させる。


「ええ……もしかして僕の名前を気にしてくれたのかな?
 実は僕も、君の名前が気になってたんだ。まさかこれって運命──」


 パコッ。
 スリッパが良太郎の頭を叩く、鈍くて綺麗な音。
 当然だが、亜樹子の攻撃だ。あきらは困ったような顔をしながらも、少しだけ微笑んだ。


「まあ、とりあえず僕たちはしばらく一緒にいるってことでいいよね?」

「ええ。仲間は多い方が心強いです」


 先ほどのこの少女への不安などを吹き飛ばすかのように、あっさりとあきらは仲間になる。
 ウラタロスの理想であるハーレムが、早速ここに完成してしまったのである。

 そんな時、外の異様な騒がしさ──不思議な羽音が、良太郎たちの耳を打った。
 それはまさに、戦いの声。音の主は、最低でも二人いる。


「良太郎くん!」

「うん、わかってる……。僕は行って来るから、二人はここで待ってて」


 ウラタロスは二人の少女との至福のひと時を惜しみながら、戦いの場所を目指して走る。
 釣り──そんな可能性もあるが、二人がいる限りこの近辺を危険に晒すわけにはいかないのだ。


──こういう時は、頼んだよ、キンちゃん──

──おう、任しとき──


 ドアの先にあるのは、U良太郎ではなくK良太郎。


 ──そして、あきらはいつの間にか、それを追うように扉に向かっていた。
 この先、自分が必要となっている場所がある気がして。
 そこに人がいるというのなら、助けを求めている可能性もあると考えて。
 とにかく、あきらはそれを追いたくて追いたくて仕方がないのだ。


「……あ〜もう! 二人とも行っちゃうなんて、私聞いてない!」


 部屋に残ったのは亜樹子ひとり。だが、こうしてはいられない。
 ひとりでこんなところにいても仕方ないのだ。
 すぐに亜樹子もドアの向こうへ駆けて行った。


「えろう根性の据わった女やな。だが、気をつけろよ」


 追いついてきた二人の少女を追い返す術を、キンタロスの憑いた彼は知らない。
 いや、知ってはいるが──その少女たちの支援を煩わしく思うような男ではなかった。ただそれだけの話である。


 三人の行く末にあったのは────


△ ▽

249 ◆LQDxlRz1mQ:2010/12/20(月) 00:22:10 ID:EScs3CyA
以上、修正投下終了です。
自分が至らないばかりに、こうして修正版を投下して読み手・書き手の皆様に二度手間をかけさせることになったことについて謝罪します。
不自然のないように書いたつもりですが、何か問題があれば指摘をお願いします。

250二人で一人の/通りすがりの名無し:2010/12/20(月) 16:14:59 ID:76953wSY
修正乙です
どちらも、問題ないと思います

251 ◆LuuKRM2PEg:2010/12/20(月) 19:11:28 ID:oat2RvBs
これより、修正部分の投下をします
本スレ>>226から>>228を以下のように修正します


究極の闇の中から、稲妻を身体に纏って現れるクウガが。
興奮と共に、アークルから電流が流れ出す。
それは、全身へと流れていった。
両腕に、両足に、頭部に。

「――――だああぁぁぁぁぁぁっ!」
「――――おおぉぉぉぉぉっ!」

クウガとバットファンガイアは、吐息のかかる距離までに接近。
そこから同時に、拳を放った。
一発、十発、五十発、百発。
一度激突する度に、大気と地面が轟音と共に震える。
達人とも呼べる戦士達が揃ったからこそ、起こる現象だった。
やがて互いの拳は、互いの頬に叩き込まれる。
まるでクロスカウンターのように。
すると、クウガとバットファンガイアは大きく後ろに吹き飛ばされた。
当たったヶ所に、鋭い痛みを感じる。

「おのれっ…………!」

バットファンガイアは嗚咽を漏らしながら、ふらふらと立ち上がった。
一方でクウガは地面に倒れると、変身が解除されてしまう。
首輪の制限によって生じる、タイムリミットを迎えたため。
本来ならば、それは来るまでまだ時間があるはずだった。
しかし、上位の形態に変身すると、半分になるという制限も付けられている。
アメイジングマイティフォームに変身し、クウガの変身時間が短縮された。
結果、クウガの変身は解除されてしまう。
生身を晒した五代雄介は、起きあがる気配が見られない。
いくら強化形態になったとはいえ、相手はファンガイアの王。
その戦いで負った傷が、あまりにも深すぎた。
五代の命を奪おうと、バットファンガイアは歩く。

「ぐっ!?」

その最中、身体に僅かな衝撃が走った。
ディエンドが放った、銃弾が命中したことによって。
バットファンガイアの足が止まった瞬間、その身体が変化していく。
それを好機と見たディエンドは、五代を抱えて走り出す。
そのまま全速力で仲間達の元に向かい、この場から離れることに成功した。
バットファンガイアは追おうとする。
直後、その身体が人間の姿に戻ってしまった。

252 ◆LuuKRM2PEg:2010/12/20(月) 19:12:10 ID:oat2RvBs
以上です
ご意見などがありましたら、指摘をお願いします

253二人で一人の/通りすがりの名無し:2010/12/20(月) 22:22:18 ID:xGJF9fQM
◆LQDxlRz1mQ氏◆LuuKRM2PEg氏、修正投下乙です。
今回の投下で問題点は克服されたと思います。

ところで、キングの支給品からオーディンのデッキが除かれましたが
合わせて不明支給品の数を1〜2から1〜3に修正しますか?

254 ◆LuuKRM2PEg:2010/12/20(月) 23:33:54 ID:oat2RvBs
その方面で修正します
書き漏らして、申し訳ありません

255三様(グロンギ語台詞修正) ◆7pf62HiyTE:2010/12/22(水) 11:07:10 ID:G9WEIIas
グロンギ語による台詞の修正です。区切りに関しては他の話に倣いスペースで対応させてもらいます。
他に何かあれば指摘の方お願いします。


本スレ>>266

「クウガバボバ、ガセパゾンドグビ」→
「ガセパ ゾンドグビ バボバ クウガ」

「ラガギギ、バンベキバギ、クウガザソグガババソグガ」→
「ラガギギ ザソグガ ババソグガ バンベ キバギ クウガ」

「ダグバ、ラデデギソ……」→
「ラデデギソ ダグバ……」


本スレ>>268

「ドブゾビリガボパガサゲ、ギデブセスボバギゲガゴビ?」→
「ドブゾ ボパガサゲ ゲガゴビ ギデブ セスボ ガドル」

「ゾグギダボ? ボパガサゲジョ、ドブゾ」→
「ゾグギダボ? ボパガ サゲジョ ドブゾ」


本スレ>>271

「ドブゾボパガサゲダシ、ゲガゴビギダシ、ゾビバビドゴロダダバサ、ギラボビリジャ……ヅビビガダダドビ、ドブゾボパガサゲデゲガゴビギデジョ、ラドドヅジョブバドド」
「ボパガサ ゲダシ ゲガゴビ ギダシゾ ビバビド ゴロダダバサ ギランジャ ガドル……ヅビビ ガダダドビ ラドドヅ ジョブバドド ドブゾボ パガサゲデ ゲガゴビ ギデジョ」

「バビガガドド?」→
「バビグ ガドド?」

「バパダダリントバギダンザ。ゴギゲデブセダンザリントバ。『ボパギ』デデギグボドゾベ……ボボデスドロヅブダダロボザジョ、リントバ」→
「リントグ ゴギゲデブ セダンザ 『ボパギ』デデ ギグボ ドゾベ……ボボデスドロ リントグ ヅブダダ ロボザジョ」

「ダグバビギパゲスドパバ、ゴボラゼ……」→
「ゴボラゼ ギパゲス ドパバビ ダグバ……」


本スレ>>272

「ダグバ、マデデギソ」→
「マデデギソ ダグバ」

「ゴゴセデギダ……ゴセバ……?」→
「ゴゴセ デギダ……ゴセグ……?」

「ゴオマザ、ボセゼパラスゼ」→
「ボセゼ パラス ゴオマ」

「ゴセパザバギンザシグラゴ・ガドル・バザ、ゴセパダグバンラゲビダヅ、ババサズ」→
「ゴセパ ザバギン ザシグラ ゴ・ガドル・バ ザ。ゴセパ ババサ ズラゲ ビダヅ ダグバ」



本スレ>>275

「クウガ……ダグバ……ゴセガボソグ……」→
「ゴセグ……ボソグ……クウガ……ダグバ……」


本スレ>>276

「バンザ、ボセパ?」
「バンザ ボセパ?」

256 ◆MiRaiTlHUI:2010/12/22(水) 14:31:55 ID:8vZUe3Bc
「悪の組織は永遠に」における各キャラの状態表を以下のように修正します。
タイガのデッキなど表記漏れがあったので、それも併せて追加しておきました。
これで問題無いとは思いますが、もしまた何か不備があれば指摘の方よろしくお願いいたします。

【剣崎一真@仮面ライダー剣】
【時間軸】第40話終了後
【状態】疲労(小)、ダメージ(小)、仮面ライダーブレイドに二時間変身不可
【装備】ブレイバックル@仮面ライダー剣、ラウズカード(スペードA〜6.9)@仮面ライダー剣
【道具】支給品一式、ガイアメモリ(ヒート)@仮面ライダーW、ケータッチ@仮面ライダーディケイド
【思考・状況】
基本行動方針:人々を守り、大ショッカーを倒す。
1:今は夏海、矢車と共に行動する。二人から話を聞きたい。
1:橘朔也、相川始と合流したい。
2:何故、桐生さんが?……
3:Wとディケイドが殺し合いに否定的ならアイテムを渡したい。
4:龍騎の世界で行われているライダーバトルを止めたい。
【備考】
※龍騎の世界について大まかな情報を得ました。


【矢車想@仮面ライダーカブト】
【時間軸】48話終了後
【状態】疲労(小)、弟たちを失った事による自己嫌悪、キックホッパーに二時間変身不可
【装備】ゼクトバックル+ホッパーゼクター@仮面ライダーカブト、カードデッキ(リュウガ)@仮面ライダー龍騎
【道具】支給品一式、不明支給品(0〜1)
基本行動方針:弟を殺した大ショッカーを潰す。
1:剣崎一真、光夏海と行動するが、守る気はない。
2:殺し合いも戦いの褒美もどうでもいいが、大ショッカーは許さない。
3:天道や加賀美と出会ったら……?
【備考】
※支給品は未だに確認していません。
※ディケイド世界の参加者と大ショッカーについて、大まかに把握しました。


【光夏海@仮面ライダーディケイド】
【時間軸】MOVIE大戦終了後
【状態】疲労(中)、ダメージ(中)、仮面ライダーキバーラに二時間変身不可
【装備】キバーラ@仮面ライダーディケイド
【道具】支給品一式×2、不明支給品(0〜4)、カードデッキ(タイガ)@仮面ライダー龍騎
【思考・状況】
基本行動方針:大ショッカーを倒し、皆と共に帰還する。
1:剣崎と共に、矢車と行動する。
2:剣崎からブレイドについての情報を聞きたい。
3:士、ユウスケ、大樹との合流。
4:おじいちゃんが心配。
5:キバーラに事情を説明する。
【備考】
※支給品は未だに確認していません。
※矢車にかつての士の姿を重ねています。
※矢車の名前しか知らないので、カブト世界の情報を知りません。
※大ショッカーに死神博士がいたことから、栄次郎が囚われの身になっていると考えています。
※キバーラは現状を把握していません。
※東條のデイバッグを預かりました。


【東條悟@仮面ライダー龍騎】
【時間軸】インペラー戦後(インペラーは自分が倒したと思ってます)
【状態】気絶中、疲労(大)、ダメージ(大)、仮面ライダータイガに二時間変身不可
【装備】なし
【道具】なし
【思考・状況】
基本行動方針:全ての参加者を犠牲にして、ただ一人生還。英雄になる。
1:……………………(気絶中)。
2:自分の世界の相手も犠牲にする。
3:ネガタロスの悪の組織を利用し、英雄になるのもいいかも。
4:基本的には病院で参加者を待ち伏せてから殺す(二階の廊下が気に入ってます)。
【備考】
※剣の世界について大まかな情報を得ました。

257二人で一人の/通りすがりの名無し:2010/12/22(水) 22:14:34 ID:J.Czb.XI
◆7pf62HiyTE氏、括弧して和訳も載せないとクウガあんまり知らない人はわからないと思います。
態々グロンギが登場するシーンの度にwikipediaでも見ながら必死に和訳してるファンが何人居ると思ってるんです?
見たところ貴方も御世辞でもグロンギ語に堪能とは言えないのでその苦労はご存知の筈です。

258 ◆7pf62HiyTE:2010/12/22(水) 23:33:19 ID:8DaZP.1E
指摘通り、不親切な部分が多かったので改めて修正します。
以下がグロンギ語による台詞の修正及び和訳です。区切りに関しては他の話に倣いスペースで対応させてもらいます。
他に何かあれば指摘の方お願いします。


本スレ>>266

「クウガバボバ、ガセパゾンドグビ」→
「ガセパ ゾンドグビ バボバ クウガ? (あれは本当にクウガなのか?)」

「ラガギギ、バンベキバギ、クウガザソグガババソグガ」→
「ラガギギ ザソグガ ババソグガ バンベ キバギ クウガ (まあいい、クウガだろうがなかろうが関係ない)」

「ダグバ、ラデデギソ……」→
「ラデデギソ ダグバ…… (ダグバ、待っていろ……)」


本スレ>>268

「ドブゾビリガボパガサゲ、ギデブセスボバギゲガゴビ?」→
「ドブゾ ボパガサゲ ゲガゴビ ギデブ セスボ ガドル? (ガドルが僕を怖がらせ笑顔にしてくれるの?)」

「ゾグギダボ? ボパガサゲジョ、ドブゾ」→
「ゾグギダボ? ボパガ サゲジョ ドブゾ (どうしたの? 僕を怖がらせてよ)」


本スレ>>269

「ギギザソグ……」→
「ギギザソグ…… (いいだろう……)」

「バゼザ?」→
「バゼザ? (何故だ?)」

「バゼバパサン! ラガバ……」→
「バゼバパサン! ラガバ…… (何故変わらん! まさか……)」


本スレ>>270

「……バビ?」
「……バビ? (……何?)」


本スレ>>271

「……バゼザ?」→
「……バゼザ? (……何故だ)」


「ドブゾボパガサゲダシ、ゲガゴビギダシ、ゾビバビドゴロダダバサ、ギラボビリジャ……ヅビビガダダドビ、ドブゾボパガサゲデゲガゴビギデジョ、ラドドヅジョブバドド」→
「ボパガサ ゲダシ ゲガゴビ ギダシゾ ビバビド ゴロダダバサ ギランジャ ガドル……ヅビビ ガダダドビ ラドドヅ ジョブバドド ドブゾボ パガサゲデ ゲガゴビ ギデジョ
 (今のガドルじゃ怖がらせたり笑顔にしたり出来ないと思ったから……次に会った時もっと強くなって僕を怖がらせて笑顔にしてよ)」

「バビガガドド?」→
「バビグ ガドド? (何があった?)」

「バパダダリントバギダンザ。ゴギゲデブセダンザリントバ。『ボパギ』デデギグボドゾベ……ボボデスドロヅブダダロボザジョ、リントバ」→
「リントグ ゴギゲデブ セダンザ 『ボパギ』デデ ギグボ ドゾベ……ボボデスドロ リントグ ヅブダダ ロボザジョ
 (リントが教えてくれたんだ、『怖い』っていう事をね……このベルトもリントが作ったものだよ)」

「ダグバビギパゲスドパバ、ゴボラゼ……」→
「ゴボラゼ ギパゲス ドパバビ ダグバ…… (ダグバにそこまで言わせるとはな……)」


本スレ>>272

「ダグバ、マデデギソ」→
「マデデギソ ダグバ (ダグバ、待ってろよ)」

「マデデスジョ」→
「マデデスジョ (待ってるよ)」

「ゴゴセデギダ……ゴセバ……?」→
「ゴゴセ デギダ……ゴセグ……? (恐れていた……俺が……?)」

「ゴオマザ、ボセゼパラスゼ」→
「ボセゼパ ラスゼ ゴオマ ザ(これではまるでゴオマだ)」

「ゴセパザバギンザシグラゴ・ガドル・バザ、ゴセパダグバンラゲビダヅ、ババサズ」→
「ゴセパ ザバギン ザシグラ ゴ・ガドル・バ ザ。ゴセパ ババサ ズンラゲ ビダヅ ダグバ
 (俺は破壊のカリスマゴ・ガドル・バだ。俺は必ずダグバの前に立つ)」


本スレ>>275

「クウガ……ダグバ……ゴセガボソグ……」→
「ゴセグ……ボソグ……クウガ……ダグバ…… (クウガ……ダグバ……俺が殺す……)」


本スレ>>276

「バンザ、ボセパ?」
「バンザ ボセパ? (何だコレは?)」

259 ◆LQDxlRz1mQ:2010/12/23(木) 10:12:59 ID:aGXSfBU2
そして、Xする思考
の修正版を投下します。

260修正版「そして、Xする思考」 ◆LQDxlRz1mQ:2010/12/23(木) 10:14:05 ID:aGXSfBU2
冒頭略

 空を飛ぶのは緑の怪人。──バード・ドーパント。
 その姿を変えたのは、村上峡児である。


 空気を切って、空を飛ぶ高揚感に見舞われ、思わず自分が逃走をしていることさえ忘れている。
 異世界の怪人が使う、その不思議な力。オルフェノクには及ばないが、やはり人類の進歩・進化が生み出した快感に打ちひしがれてしまう。
 人の科学の進歩は人を異形に変え、空を飛ぶ力を生み出した!
 もしかすれば、開発したのは異世界で同じように進化を果たした人類の力なのかもしれない。
 だが、もはやそんなことは関係ない。空を飛ぶことなど、宙を浮くことのできる彼には難しいことではないはずなのに──不思議な快感が頭の中の、縫合されていた何かをほどいていく。



 ガイアメモリの力。
 地球の持つ記憶の素晴らしさ。
 表面上は、そんなものに溺れている感覚。
 ──内面を巡っているのは、そんな圧倒的な力。
 敵を吹き飛ばし、地面を離れたこの感動。



 そんなバードの真横を、白い障害が遮り、一瞬だがバードの飛行を妨害する。
 バードはバランスを崩すが、体勢を立て直してその敵を目で捕捉する。


 空から落ちる、もうひとつの何か。
 それは、薙刀である。誰がどこから落としたのか。
 とにかく、見下ろすとそれを拾う白の戦士がいた。


 仮面ライダーファム。バードは知らないが、その戦士にはそんな名前があった。
 バードの体を、真下から槍のように投げられた剣がぶつかる。
 刃ではなく柄だが、その力を前に、バードの重みは簡単に地面に落とされた。真下は草原。土でなければ、バードがすぐに起き上がることはなかっただろう。
 そうして起き上がったバードを、仮面ライダーファムがもう一つの剣──ブランバイザーが襲う。
 絶体絶命である。
 敵の正体を知らないままここで負けるというのは、村上のプライドが廃ってしまう。──だが、オルフェノクの時と同じ要領で真横に避けようとした彼は、それをうまくかわすことができなかった。
 力が足りない。
 上級オルフェノクという「強すぎる力」では、それに比べて弱い力を制御するのが難しかったのか。


 避けるのが一瞬遅れる。
 ファムはそのサーベルをバードの腹に向けて突き出し、死を与えるために向かっていく。



「ぐっ……!」

261修正版「そして、Xする思考」 ◆LQDxlRz1mQ:2010/12/23(木) 10:15:02 ID:aGXSfBU2
 一瞬だけその腹に刺されたような痛みを感じるが、それは本当に一瞬の出来事であった。
 何が起こったか──上空に放たれたソードベントの薙刀は、ブランバイザーの真上に落ち、それを弾き返していた。
 ファムはどうやら、自らの攻撃によって止めを反らしたらしい。
 だが、すぐにまた止めを刺しに来るに違いない。そう思い、バードは構える。

 しかし、ファムは何かに気づいたようにバードに背を向けた。
 バードはその「何か」が気にかかり、周囲をきょろきょろと見回す。



「そこまでよ、ドーパント!」



 バードが後ろを振り向くと、そこにあるのは三人の男女の姿である。
 戦いの中で、逃避を忘れたバードは多少の焦りを感じながら、三人と対峙する。


 もしや、彼らがあの白鳥を出したのか。
 だとすると、やはり本来の敵である三人には策がある。
 村上はわざわざ白鳥を撤退させてまで、目の前に現れた三人にどんな意図があるのか──それを理解できないまま、その「理解できない」という恐ろしさをかみ締めた。



「もう一回いくで! 変身!」



 デンオウベルトを撒いて、ライダーパスを通過させる良太郎。
 仮面ライダー電王としての姿を望んだキンタロスであったが、──その体は装甲が包んではくれない。
 彼の姿は、野上良太郎の姿を維持しているのである。
 滑稽にも、変身ポーズは取っただけで終ってしまう。



「どういうことや!?」


「なにやら、策が外れたようですね」



 バードは再び、羽根を交えた突風を三人に送る。
 変身していない彼らは、あっという間に風に押されてしまった。
 だが、村上の目的は彼らの殺害ではない。このまま放っておいても村上に害はなく、むしろ弱者に手を下すことの方が遥かに──上の上の者としては小物すぎる。
 彼らがこうして視界を奪われている間に逃げようと、バードは彼らに背を向け、翼を開いた。


 ──だが、そんな彼の眼前から駆けて来る一人の戦士。



「ウガァァァァァァッ!!!」

262修正版「そして、Xする思考」 ◆LQDxlRz1mQ:2010/12/23(木) 10:15:45 ID:aGXSfBU2
 そんな咆哮とともに、葦原涼の変身した銀色の仮面ライダー──ガイが、ギルスの要領で猛獣のようにバードに飛び掛った。
 その武器は己の体。それのみであった彼のパンチが突き刺さるように痛いのは当然であった。



(全く次から次へと……ついていないですね)



 反撃するには、バードの能力は少なすぎた。
 その腹、胸、顔を次々と殴打する緑の怪人に対抗する術を、バードは持っていないのだ。
 その体を突き刺す一撃、一撃を黙って食らうしかない。
 そのもどかしさを痛感する。



 その瞬間──。
 バードのメモリは、彼の首輪から落ちて行く。
 十分間。それだけの時間が、この戦いでは過ぎてしまったのだ。
 ガイが殴ろうとしたのは、バード・ドーパントではなく村上という一人の男性。
 その体を、ガイは一瞬の躊躇とともに殴り飛ばした。



 村上の体は軋むような痛みとともに、後方へ吹き飛んでいく。
 そこにいるのは二人の女性と一人の男性。
 ──絶体絶命だ、と村上は感じた。



「……村上さん」



 そんな村上に、あきらが一言声をかける。
 村上はその姿を見上げるが、そこにいるのは彼女だけである。
 よく見れば、彼女がいるのはガイと村上の間。まるで、ガイが村上を攻撃することに抵抗しているかのように。
 ガイは村上に掴みかかろうとした足を止める。


 そういえば、始めは仲間になるつもりで彼女に近づいたんだったか。
 考えの違いから、激突する形になってしまったが。



「私、言いましたよね? 私は困ってる人を助けるって」


「言ったでしょう? それは、この場では下の下の考えだと」


「人を助けようという気持ちや、何かを護ろうという気持ちに、格なんてありません」



 あきらの言葉に感銘などは受けない。それが、オルフェノクとドーパントの二つの力に溺れた人間の性なのだから。
 だが、彼女の言葉に負の感情を抱くこともなかった。
 一理ある、と言えるからだ。それに、その思考が結果的にあきら自身も、村上も傷つけていない。
 人を守る精神などで、自分の身を犠牲にすれば愚かしい話で、笑ってしまうところだが、結果的にこの状況ではあきらこそが正しかったのだろう。



「礼を言いましょう、天美さん。あなたの考えはもしかしたら、正しいのかもしれません。
 ですが、念を押して忠告しておきましょう。……あなたは、いつかその考えで身を滅ぼすことになる」


「構いません。それに、私は死にません」



 そんなあきらに、銀の仮面ライダーは歩み寄った。
 一瞬、四人の人間がそれを警戒する。彼らはまだ、彼の目的を認識していないのだから。

263修正版「そして、Xする思考」 ◆LQDxlRz1mQ:2010/12/23(木) 10:16:22 ID:aGXSfBU2
「……よく言ったな」



 ガイ──いや、葦原涼はそう告げ、あきらの肩を軽く叩いて村上に向かっていく。
 屈み込み、倒れた村上に目線をあわせ、涼は一言だけ彼に言った。
 彼が今、本当にすべきことはそれなのだ。



「もう、人を襲うなよ」


「さあ、それはわかりません」


「それなら、俺がお前を見張る。それだけの力を持ちながら、なんでお前は人を護ろうとしないんだ」


「私には私の、授かった使命というものがあるんですよ。それに殉じる為には、そんな馬鹿な考えは捨てなければならない」



 彼はオルフェノクとなったその日から、悪へと変わった。
 狡猾で、冷酷。人の死など気にも留めず、他人の命を奪うことは厭わない──むしろ、人の命と引き換えに僅かな確立で行われる使徒再生こそが村上の目的なのだから。



「これ以上、人を襲うというのなら、俺はお前を潰す」


「……とりあえず、もう人は襲わないと言っておきましょうか。真実とは限りませんが」


「それが真実じゃなかったときは……俺が、そんなことさせない」



 涼は村上を睨むが、堪える様子は無かった。村上の表情は真顔のまま、変わらない。
 ただ、彼は『必要とあれば』敵を潰すのみである。



「村上さん、あなたは私たちが支えます。人を襲ったりなんて、もうさせないようにさせてみせますから」


「支える、ですか……。面白い表現ですね」



 村上は自嘲するように笑って、痛んだ体を立ち上がらせる。
 できれば、情報交換や必要時の共闘以上の関係は築きたくは無かったが、彼らはそういう方針で自分を仲間に引き入れようとしているらしい──当然、村上の意思は彼らとは真逆のものとなっているのだが。



「あなた方の正義感には関心しますよ。ただ、これ以上私のように『信用できない人』を仲間に引き入れようとするのなら、私はここを抜けます」


「構いません。ただ、しばらくはあなたをみんなで監視します」


「なんか、うまく話がまとまったみたいやな」


「フッ……。多勢に無勢というところですか。
 大ショッカーは不愉快な人間ばかり、たくさん集める……」



 村上は今の状況を皮肉って、そう呟いた。




△ ▽

264修正版「そして、Xする思考」 ◆LQDxlRz1mQ:2010/12/23(木) 10:19:31 ID:aGXSfBU2
中略

>> 倒れこむ亜樹子を、彼女──霧島美穂は黙って見つめていた。
>> 先ほど、鳥の怪人にブランウイングをけしかけたのは、紛れも無い彼女である。

を以下の文に修正。

>> 倒れこむ亜樹子を、彼女──霧島美穂は黙って見つめていた。
>> 先ほど、ファムに変身して敵を殺そうとしたのは、紛れも無い彼女である。
 その仮面が外れ、正体を知られることを恐れてあの場は撤退したのだが──

265修正版「そして、Xする思考」 ◆LQDxlRz1mQ:2010/12/23(木) 10:21:00 ID:aGXSfBU2
状態表も「日中」に合わせるために修正します。
文を多少挿入。

【1日目 日中】
【C−5 草原】


【霧島美穂@仮面ライダー龍騎】
【時間軸】映画死亡後
【状態】健康。ファムに1時間変身不可
【装備】鉄パイプ@現実
【道具】支給品一式×2、ファムのデッキ@仮面ライダー龍騎、サバイブ「烈火」@仮面ライダー龍騎、不明支給品×0〜3(確認済み)
【思考・状況】
1:あらゆる手を使い他の世界の参加者を倒す
2:秋山蓮、北岡秀一、東條悟と接触、協力。
3:浅倉威は許さない、見つけ次第倒す。
4:城戸真司とは会いたいけれど…
5:今は亜樹子を利用して、一緒にステルスとして参加者を減らす。



【鳴海亜樹子@仮面ライダーW】
【時間軸】番組後半
【状態】わき腹を打撲 精神に深い迷い
【装備】ツッコミ用のスリッパ@仮面ライダーW
【道具】支給品一式、装甲声刃@仮面ライダー響鬼、不明支給品(0〜1)
【思考・状況】
1:風都を護るため、殺し合いに乗る。
2:情を移さないため、あまり人と接触しない。
3:美穂と行動する。人を騙す術を教えてくれるらしいが…
4:良太郎やあきらとはなるべく会いたくない。
5:知り合いと合流し、そのスタンスを知りたい。
【備考】
※ 良太郎について、職業:芸人、憑依は芸と誤認しています。


中略


△ ▽



「……あいつ、どこまで行ったんだ?」


 涼はあれからだいぶ走っていたが、亜樹子の姿を見つけることはできなかった。
 




【1日目 日中】
【C−5 草原】

【葦原涼@仮面ライダーアギト】
【時間軸】本編36話終了後
【状態】中程度の疲労、胸元にダメージ 、仮面ライダーガイに1時間変身不可
【装備】ガイのデッキ@仮面ライダー龍騎
【道具】支給品一式、不明支給品×0〜2(確認済み)
【思考・状況】
0:今は亜樹子を追う
1:殺し合いに乗ってる奴らはぶっつぶす
2:人を護る
3:あきらや良太郎の下に戻ったら、一緒に行動する
4:鉛色と深緑の怪人を警戒
【備考】
※支給品と共に名簿も確認していません。



△ ▽

266修正版「そして、Xする思考」 ◆LQDxlRz1mQ:2010/12/23(木) 10:22:02 ID:aGXSfBU2
「遅いですね、彼も」


 村上は含みのある笑いと共にそう言った。
 ホテルの一室。三人の男女が椅子なりベッドなり、そこにあるものに座っている。


「いつまで待つ気ですか?」

「あの人が帰ってくるまでです」


 やはり、と村上は小さく笑った。



【1日目 日中】
【B−6 ホテル】


【天美 あきら@仮面ライダー響鬼】
【時間軸】 41話終了後
【状態】全身に軽度の怪我 あきら変身体1時間変身不可
【装備】鬼笛@仮面ライダー響鬼
【道具】支給品一式、ニビイロヘビ@仮面ライダー響鬼、サソードヤイバー@仮面ライダーカブト、不明支給品(0〜1 確認済)
【思考・状況】
0:ホテルの付近で涼を待つ。
1:人を助けるため、自分に出来ることをやる。
2:知り合いと合流する。
3:村上が人を襲うことがあれば、止める。



【野上良太郎@仮面ライダー電王】
【時間軸】第38話終了後
【状態】頭痛 電王1時間変身不可
【装備】デンオウベルト&ライダーパス@仮面ライダー電王
【道具】支給品一式、不明支給品
【思考・状況】
1:とりあえず、殺し合いには乗らない。
2:あきら、村上と一緒に行動する。涼が戻ってくるのを待つ。
3:亜樹子が心配。一体どうしたんだろう…
4:モモタロス、リュウタロスを捜す。
5:殺し合いに乗っている人物に警戒
6:電王に変身できなかったのは何故…?
【備考】
※ ハナが劇中で述べていた「イマジンによって破壊された世界」は「ライダーによって破壊された世界」ではないかと考えています。確証はしていません。
※ キンタロス、ウラタロスが憑依しています。



【村上峡児@仮面ライダー555】
【時間軸】不明 少なくとも死亡前
【状態】腹部に痛み 1時間変身不可(バード、ローズ) バードメモリに溺れ気味
【装備】なし
【道具】支給品一式、バードメモリ@仮面ライダーW 不明支給品×2(確認済み)
【思考・状況】
1:殺し合いには乗らないが、不要なものは殺す。
2:あきら、良太郎らと行動するが、彼らに情は移していない。
3:亜樹子の逃走や、それを追った涼にはあまり感心が沸かない。

267修正版「そして、Xする思考」 ◆LQDxlRz1mQ:2010/12/23(木) 10:23:01 ID:aGXSfBU2
以上です。

268二人で一人の/通りすがりの名無し:2010/12/23(木) 15:10:06 ID:GtyH3PyM
投下乙です。変身時間の矛盾は無くなったと思います。
ただ、あと一つだけ。>>261

> もしや、彼らがあの白鳥を出したのか。
> だとすると、やはり本来の敵である三人には策がある。
> 村上はわざわざ白鳥を撤退させてまで、目の前に現れた三人にどんな意図があるのか──それを理解できないまま、その「理解できない」という恐ろしさをかみ締めた。

これだとブランウイングが現れたことになるので、修正をお願いします。

269 ◆LQDxlRz1mQ:2010/12/23(木) 20:16:17 ID:aGXSfBU2
見落としていました。
その辺りの文章は切り捨てます。

270二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/01/08(土) 15:46:49 ID:AvkK/.PM
ウィキの方で間違いを見つけたので修正を依頼したいと思います。
その力、誰の為に の
「ガドルの皮膚は、クウガのタイタンソードでだって傷つける事叶わなかったのだ。」
ですが、モチーフとなったカブトムシは外骨格ですので
「皮膚」という表現は誤りです。「甲殻」あるいは「装甲」に修正願います。

271 ◆MiRaiTlHUI:2011/01/09(日) 01:02:02 ID:gm1rG7GU
ご指摘ありがとうございます。
そうですね、仮にクウガが同じ状況になったとしても「皮膚」という表現はしませんもんね。
まあ何にせよその程度の修正で済んだなら良かったです。
wikiの方、修正しておきました。

272二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/02/16(水) 22:04:41 ID:yS5zcGv6
すいません、「代償」でT2メタルメモリが簡単に壊れてますが
あれはT2ジョーカーのマキシマムでも壊れなかったものです。
確かに映画の最後では全てのT2メモリが破壊されていますが、
あれはエターナルの26本マキシマムによる反動と
CJGXの強力なマキシマムを食らったからだと思うので
修正お願いします。

273二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/02/22(火) 21:54:29 ID:ZEgpR/3U
作者不在で、一度通ったSSに今更…

274 ◆XEdZc54D6s:2011/02/25(金) 03:15:31 ID:Dd8ZGsCo
修正版投下します。

275積み重なるJ/切り札は自分だけ 修正版 ◆XEdZc54D6s:2011/02/25(金) 03:16:41 ID:Dd8ZGsCo
冒頭略

「おい、みんな!新しい仲間が1人増えたぞ!」

「1人?二人の間違いだろう?」

なぁ、と振り返りながら始の方を向くとそこには風が吹いているだけだった。
狐にでもつままれたのか、そんなことを考えていると肩をぽんと叩かれた。
始さんかとも思ったが、それは先程のリーダー風の男であった。

「おい、青年、仲間になったからには自己紹介だ、俺はヒビキ、名簿には日高仁志って
乗ってるけど、そのほうが慣れてるから、そう呼んでくれ」

彼の名乗りを機に各々が自分の名前を名乗りだした。
小野寺ユウスケ、名護啓介、橘朔也、・・・そして次の人物の名前に俺は耳を疑った。
海堂直也、木場さんが頼れる仲間といったあの男である。
木場さんが言うからにはものすごく強そうな人なのかと思ったが
まさかこんなひょろひょろした人とは・・・しかし、こんな人物でも協力できる人物が増え
わいわいしているこの空気を壊すのはつらいが、言うしかない。

「海堂さん、今から俺の言うことは全部本当だ、落ち着いて聞いてくれ。」

そして翔太郎は語り始めた、木場が死んだこと、殺したのは黒い仮面ライダーであったこと、
ここまで語ると、正太郎は口を閉じ、自分の不甲斐なさにもう一度拳を握った。
しかし、拳を握ったのは一人ではない、他でもない海堂である。
自分の親友を2度も失ったのだ、悔しくて仕方ないだろう。
しかし、ここで橘が口を開いた。

「他にその黒いライダーの特徴は?」

何か思い当たりがあるのか、思い出すような顔で聞いた。

「えっと、カードを使ってたな・・・、チョップ、トルネード・・・」

翔太郎がすべてを言いきらないうちに橘が口を開いた。

「やはりそういうことか・・・、犯人が分かった、俺の世界の住人、相川始だ。」

その発言に、翔太郎は苦悩する、あの時、自分があのドーパントから始を助けていなかったら
木場さんの無念は晴れたのだろうか、木場さん殺しの犯人を自分の手ですくってしまった、
その何とも例えがたい悲しみはホッパーゼクターが翔太郎を主人ときめるのに十分だった。

「相川始ぇ、俺が次にお前に会うときはそれはお前が死ぬ時だ!」

翔太郎が無念を大声で表す、次に二人のジョーカーが出会うとき、それは戦いを意味するのだ。

276積み重なるJ/切り札は自分だけ 修正版 ◆XEdZc54D6s:2011/02/25(金) 03:21:47 ID:Dd8ZGsCo
【海堂直也@仮面ライダー555】
【時間軸】最終話 アークオルフェノク撃破後
【状態】健康、ザンバットソードによる精神支配(小)
【装備】スマートバックル@仮面ライダー555、ザンバットソード(ザンバットバット付属)@仮面ライダーキバ
【道具】支給品一式、ガイアメモリ(メタル)@仮面ライダーW
【思考・状況】
1:フィリップを探す。
2:とりあえず、まずは六人で行動する
【備考】
※フィリップが首輪の解除方法を知っているかもしれないと勘違いしています。
※ガイアメモリが全員に支給されていると勘違いしています。
※ザンバットソードに精神を支配されています。
※ザンバットバットの力で、現状は対抗できていますが、時間の経過と共に変化するかもしれません。

【小野寺ユウスケ@仮面ライダーディケイド】
【時間軸】第30話 ライダー大戦の世界
【状態】疲労(小)
【装備】アマダム@仮面ライダーディケイド
【道具】支給品一式、アタックライドカードセット@仮面ライダーディケイド、ガイアメモリ(スカル)@仮面ライダーW、おやっさんの4号スクラップ@仮面ライダークウガ 、不明支給品×2(確認済み)
【思考・状況】
1:フィリップを探す。
2:海堂直也は、現状では信じている。
3:殺し合いには絶対に乗らない
4:まずは六人で行動する。
5:もう一人のクウガか…………
【備考】
※デイバッグの中身は確認しました。
※フィリップが首輪の解除方法を知っているかもしれないと勘違いしています。
※ガイアメモリが全員に支給されていると勘違いしています。
※おやっさんの4号スクラップは、未確認生命体第41号を倒したときの記事が入っていますが、他にも何かあるかもしれません(具体的には、後続の書き手さんにお任せします)
※カードセットの中身はカメンライド ライオトルーパー、アタックライド インビジブル、イリュージョン、ギガントです
※ライオトルーパーとイリュージョンはディエンド用です。
※インビジブルとギガントはディケイド用のカードですが激情態にならなければ使用できません。

【橘朔也@仮面ライダー剣】
【時間軸】第42話終了後
【状態】健康
【装備】ギャレンバックル@仮面ライダー剣、ラウズカード(クローバーA〜?)@仮面ライダー剣、
    ガイアメモリ(ライアー)@仮面ライダーW
【道具】支給品一式、ゼクトルーパースーツ&ヘルメット(マシンガンブレードはついてません)@仮面ライダーカブト
【思考・状況】
1:とにかく首輪を解除するため、フィリップと接触する。
2:とりあえず、まずはこの六人で行動をする。
3:殺し合いで勝たなければ自分たちの世界が滅びる……。
【備考】
※フィリップが首輪の解除方法を知っているかもしれないと勘違いしています。
※ガイアメモリが全員に支給されていると勘違いしています。

【名護啓介@仮面ライダーキバ】
【時間軸】本編終了後
【状態】健康
【装備】イクサナックル(ver.XI)@仮面ライダーキバ、ガイアメモリ(スイーツ)@仮面ライダーW
【道具】支給品一式
【思考・状況】
1:フィリップを探す。
2:悪魔の集団 大ショッカー……その命、神に返しなさい!
3:とにかく首輪を解除するため、『ガイアメモリのある世界』の人間と接触する。
4:まずはこの六人で行動する。
【備考】
※時間軸的にもライジングイクサに変身できますが、変身中は消費時間が倍になります。
※支給品の竜巻@仮面ライダー響鬼は自身の手で破壊しました。
※フィリップが首輪の解除方法を知っているかもしれないと勘違いしています。
※ガイアメモリが全員に支給されていると勘違いしています。



相川始は逃げていた、なるべく、なるべく、あのジョーカーの男から遠くへ
近くにいれば居るほど、人を殺し違う方面で剣崎をサポートする、その行動ができなくなってしまう気がして・・・
逃げれるだけ逃げた、だが、参加者を殺していけば、また必ずジョーカーの男と会うことになる。
そのときは・・・

「俺はあいつをぶっ殺す!!」

そう高らかに宣言したジョーカーの明日はどっちだ。

277積み重なるJ/切り札は自分だけ 修正版 ◆XEdZc54D6s:2011/02/25(金) 03:23:28 ID:Dd8ZGsCo

「さて、あらかた叫び終えたところで、名前聞いてもいいかな?」

なんてことだ、そういえばまだ自己紹介もしていないのに初対面の人の前で叫ぶなんて・・・

「す、すいません、俺は左翔太郎、探偵だ」

「それじゃあ、さっそく本題だ、左、俺たちはガイアメモリのある世界の住人を探してるんだが何か知らないか?」

「ガイアメモリのある世界?それは俺の世界だ」

翔太郎からの意外な答えに一同は目を丸くした。

「嘘をつけ、ガイアメモリのある世界の住人なら知っているはずだ、この首輪の外し方を」

首輪を指しながら、橘が言う。
しかし俺はそれを鼻で笑って、こう返した。

「橘さん、少し考えてみろよ、そんな凄い事、俺の世界の住人が皆知ってたら
この首輪の有無でかなり実力が変わっちまう、大体そんなすげぇこと出来るやつ俺の世界に一人もいな・・・」

それを言いきらないうちに思いだした、自分の相棒のことを・・・

「いや、一人いるな、フィリップって奴だ、俺の相棒で頭に凄い本棚を持ってる、
あいつならきっと、首輪の外し方も検索すりゃ一発だ。」

他の5人には翔太郎の言っていることがよく理解できなかったが
とにかくフィリップという人物を探せば、首輪も外せる可能性があると考えた。

「それなら、早く探しに行かないとな、
あんたの相棒でこの戦場の切り札、フィリップ君をさ」

こうして彼らは歩みだした、さらなる勘違いの歯車を回転させながら

【1日目 夕方】
【G−4 道路】

【チーム:レッツゴー!勘違いブルース】
【全体事項】


※翔太郎を除く五人で情報交換が行われました。(翔太郎を含んだ話し合いは道々)
※その結果、名簿に死人の名前が書かれている理由は、大ショッカーが自分達の技術が本物であると証明する手段であるという、仮説を立てました。
※現在の行動方針は、以下の通りです。


1:まずはこの六人で行動して、仲間を集める。
2:翔太郎の相棒、フィリップを探す。
3:午前0時までに、E−4エリアの病院屋上に行く。





【左翔太郎@仮面ライダーW】
【時間軸】本編終了後
【状態】疲労(小)、悲しみと罪悪感、それ以上の決意、
【装備】ロストドライバー&ジョーカーメモリ@仮面ライダーW
【道具】支給品一式×2(翔太郎、木場)、翔太郎の不明支給品(0〜2)、木場の不明支給品(0〜2) 、ゼクトバックル(パンチホッパー)@仮面ライダーカブト、首輪(木場)
【思考・状況】
1:フィリップなら首輪も外せる?
2:仮面ライダーとして、世界の破壊を止める。
3:相川始(カリス)を絶対に倒す。
4:フィリップ達と合流し、木場のような仲間を集める。
5:『ファイズの世界』の住民に、木場の死を伝える。(ただし、村上は警戒)
6:ミュージアムの幹部達を警戒。
【備考】
※ 木場のいた世界の仮面ライダー(ファイズ)は悪だと認識しています。
※ 555の世界について、木場の主観による詳細を知りました。
※ オルフェノクはドーパントに近いものだと思っています(人類が直接変貌したものだと思っていない)。
※ ミュージアムの幹部達は、ネクロオーバーとなって蘇ったと推測しています。
※ また、大ショッカーと財団Xに何らかの繋がりがあると考えています。
※ ホッパーゼクターに認められました。
※ フィリップなら首輪も外せると勘違いしています 。


【日高仁志@仮面ライダー響鬼】
【時間軸】本編第41話終了後
【状態】健康
【装備】変身音叉・音角@仮面ライダー響鬼
【道具】支給品一式、着替え(残り2着)
【思考・状況】
1:フィリップ君を探す。
2:打倒大ショッカー
3:殺し合いはさせない
4:大ショッカー、世界崩壊についての知識、情報を知る人物との接触
5:俺がしっかりしないと……
6:ガイアメモリ、どこかに落としちゃったのかな
【備考】
※アギトの世界についての基本的な情報を得ました。アギト世界での『第四号』関連の情報を得ました。
※フィリップが首輪の解除方法を知っているかもしれないと勘違いしています。
※ガイアメモリが全員に支給されていると勘違いしています。
※ガイアメモリは自分にも支給されていたが、知らない間にどこかに落としてしまったと勘違いしています。

278積み重なるJ/切り札は自分だけ 修正版 ◆XEdZc54D6s:2011/02/25(金) 03:24:02 ID:Dd8ZGsCo

【1日目 夕方】

【F−5 ビル付近】

【相川始@仮面ライダー剣】
【時間軸】本編後半あたり
【状態】疲労(小)、罪悪感
【装備】ラウズカード(ハートのA〜6)@仮面ライダー剣
【道具】支給品一式、不明支給品(0〜2)
【思考・状況】
1:栗原親子のいる世界を破壊させないため、殺し合いに乗る。
2:次に左翔太郎に会った時は殺す。
【備考】
※ ラウズカードで変身する場合は、全てのラウズカードに制限がかかります。ただし、戦闘時間中に他のラウズカードで変身することは可能です。
※ 時間内にヒューマンアンデッドに戻らなければならないため、変身制限を知っています。時間を過ぎても変身したままの場合、どうなるかは後の書き手さんにお任せします。
※ 左翔太郎を『ジョーカーの男』として認識しています。また、翔太郎の雄たけびで木場の名前を知りました。

279積み重なるJ/切り札は自分だけ 修正版 ◆XEdZc54D6s:2011/02/25(金) 03:27:57 ID:Dd8ZGsCo
うわぁ、すいません、順番ミスです。
正しくは
275、277、276、278の順です。
状態表でネタバレしちゃってますね、本当ごめんなさい。

これで投下は終わりです、修正点や誤字脱字あればご指摘願います。

280二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/02/25(金) 11:40:54 ID:J34uJpz6
確かにこの展開で指摘にあった1〜4の部分はある程度クリア出来たと思う。
だが新たな展開でも疑問点が色々出てきた。

1.翔太郎が始を殺す発言。同時にホッパーに認められる展開。
確かに木場を殺した人物が始だとわかればそこに思う所があるのはわかる。
だが、翔太郎は例え凶悪な犯罪者でも殺すという発言をするとは思えない。
更に言えば、始が凶悪な人間だと知り悲しんでホッパーがあっさり認めるというのはご都合過ぎではなかろうか。木場の死よりも深い悲しみを与える事なのか?

2.始の翔太郎殺す発言。
一応、前の話で殺し合いに乗った奴を殺すと発言しており、更には翔太郎に剣崎を重ねる描写すら見られていて、今回の話でも前半では更に迷う描写が見られている。
にも関わらず大した描写も無く迷いを吹っ切った様に逃走し最後に翔太郎を殺す発言したのが不可解。
マーダーを続ける事に関しては別段構わないが、同じジョーカーの名を持つ翔太郎に興味を持ち剣崎を重ねていたのに何事も無く殺す発言するだろうか?
2ch等で見られる『俺は貴様をぶっ殺す!』的なネタ的発言をさせたかっただけの様にしか見えない。

3.フィリップなら解除出来ると言う発言。
翔太郎が橘の話を聞いてフィリップなら解除出来るという発言が不可解。
『Xの可能性/悲しみを背負い』にて大ショッカーの技術力の強大さをしっかり考察しており、更にはフィリップと再会しエクストリームを取り戻してもその上を行っている可能性を考えている。
更に言えば、此方の手札が読まれていると考えている状況でフィリップと合流出来ただけで解除出来るとは言わないだろう。
橘組の勘違いを増長させる以上の狙いしか感じないのだが。連中はあくまで真剣にやっている。意図的に馬鹿にしてはならないと思うが。

4.始に関する橘組のリアクションの稀薄さ。
翔太郎の話を聞いて橘がその人物が始と断定する所まではまだ良いが、
『メモリと勘違いと呪い』において始について『内面が分からないところがあるが、ひとまず信頼には値する』と友好的だと判断した筈。
それにかかわらず仲間の可能性のあった始の凶行を知っても橘組が大したリアクションをしなかった事が不自然。仲間の可能性のある人物が殺し合いに乗っている可能性を知って何か思う所は無いのか?
その上ユウスケ、響鬼、名護、海堂は橘の仲間が殺し合いに乗っていると知って何故何の反応もしない? 橘も何故それに対してコメントをしない?
更に始を殺す発言する翔太郎に対しても『さて、あらかた叫び終えたところで、名前聞いてもいいかな?』と何事も無かったかの様に流すのはどういう事なのか?
橘の『やはりそういうことか』的なネタ発言を使いたかっただけの様にしか見えないのだが。

5.描写したいネタを優先するがあまり本編が疎かになっている。
氏が前に一部投下した『かぶと虫』も含めてそうだが、どうにも氏の話はネット等でよく言われるネタをそのまま使う程度でそれに付随する本編描写が追いついていない。
更に言えば、先に指摘してきた通り、氏が描きたいと思われるシーンに対しその過程描写やその他の部分の描写が稀薄すぎる。
無論、全ての描写を完璧にしろとまでは求めないが、最低限度の登場人物の動きは描くべきでは無かろうか。
他の書き手もよくネタに走っているが、それはあくまでもアクセント程度であり他の描写で説得力が生み出されている。
ネタにしてもそれには大抵意味がある、本編に組み込むならばそれをちゃんと理解して組み込むべきでは無いだろうか?
原作を把握し切れていないのであればそれでも構わない。だが、それならそれを悟られない様にすべきだろう。

6.多人数集結の展開が不可解。
始が外れたものの、それでも何事もなく6人が集結した展開が疑問。
6人が出会った割に翔太郎が始に怒りを覚えたりフィリップを頼る発言した以外の描写が圧倒的に不足している(先の指摘とも重複するが)。
しかも内容としては出会っただけでしかない。集結展開そのものをNGとするつもりはないが、氏は何を狙って今回の描写を行ったのか? 描きたい展開だけを適当に描写して情報交換等不足描写を次の人に丸投げするのは些か不親切過ぎはしないだろうか?


先のT2ガイアメモリの件等の様にSSが通ってしまえば後々問題が発生してもそれを修正する事は難しく書き手本人が現れなければどうする事も出来なくなる。
フォローする側の負担を少しは考えた事があるのだろうか?
『うわぁ』とか『状態表でネタバレしちゃってますね』とかフレンドリーさを気取っていても巫山戯ている様にしか見えない。もう少し真剣に取り組んでくれないか。

281 ◆Wy4qMnIQy2:2011/03/01(火) 01:38:40 ID:vVirkFqs
過去作を読み直したところ、キバーラはずっと眠っていたため殺し合いを把握していなかったようです。
これに合わせて、『閃光の刻』の

>スーパーショッカーに囚われた光栄次郎がガイアメモリによって悪の大幹部死神博士になってしまい、今また同じ事態が起こっていることをキバーラは思い出す。
の部分を、
>スーパーショッカーに囚われた光栄次郎がガイアメモリによって悪の大幹部死神博士になってしまったことをキバーラは思い出す。
と訂正しておきます。

もう一つ、矢車の状態表に
>※キバーラは現状を把握していません。
と付け加えておきます。

282二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/03/06(日) 14:40:34 ID:p0qARWtI
wikiに収録されている「白の鬼札」に、「俺に君を傷つける気はない〜」が2回続いています。
修正お願いします。

283 ◆MiRaiTlHUI:2011/03/18(金) 19:14:01 ID:fYbIoDJA
反応が遅れてしまい申し訳ありません。
指摘にあった箇所を修正してきました。

284極限(一時投下) ◆NhPq7MGBgg:2011/03/26(土) 15:28:54 ID:e1eTD.8M
執筆活動というもの自体初でいろいろ不安なので只今より一時投下します。

285極限(一時投下) ◆NhPq7MGBgg:2011/03/26(土) 15:29:26 ID:e1eTD.8M

この殺し合いの空も赤く染まり始めた頃、D―2エリアの住宅街に言い争いをする二人の男がいた。

「だから、俺はその夏美って奴以外には手を出さないって言ってるだろ!」

そう主張するのは『キバの世界』を代表する男の一人、紅音也。

「そうか、って、お前!夏みかんに何するつもりだ!」

大切な仲間に何かされると判断し音也に反撃する男こそ、元世界の破壊者、ディケイドこと門矢士。
二人は数時間前に出会い、様々な話し合いをした。
天道から聞かされた変身制限のこと。
小野寺ユウスケ、光夏美、海東大樹、紅渡、名護啓介、天道総司、乾巧という頼れる仲間たちのこと。
アポロガイスト、キング、乃木怜司、間宮麗奈、村上峡児という警戒するべき人物のこと。
音也としては、必要最低限の話は終えたので、士の仲間だという光夏美という女を探しに行きたいのだが、
士としては、ソウジ、タクミと同じ名前を持つ者の情報を知りたかったので、現状、ともに行動している。
最も、夏美はすでに死んでいるため、この会話はほとんど無意味なものなのだが、二人はそれに気づくことができない。

「俺は男のファンはいらんぞ」
「だから、そういう話じゃなく…」

その瞬間、二人の鼓膜を刺激する爆音、聞くところ、相当近くで戦闘が行われているらしい。
俺には関係ないという顔で、その場を去ろうとする音也の耳に恐らく女のものであろう声が聞こえてきた。

「女!?」
「ま、動機はどうあれ、行くべき場所は同じらしいな」

その言葉を最後に二人は走り出した。
激しい、戦いの渦の中へ。

286極限(一時投下) ◆NhPq7MGBgg:2011/03/26(土) 15:30:00 ID:e1eTD.8M



時は遡り、数分前のE―2エリア、ここでは三人の戦士による戦闘が行われていた。
『龍騎の世界』を代表する男の一人、城戸真司が変身した仮面ライダー龍騎。
『アギトの世界』の天才的頭脳の持ち主、小沢澄子が変身した仮面ライダーアビス。
それと対峙するのは『クウガの世界』の怪人グロンギの一人、ズ・ゴオマ・グが変身した仮面ライダーレンゲル。
三者は数分前に戦闘を開始したのだが、戦況は先ほどと殆ど変わっていない。
そして、はっきり言おう、戦況は龍騎たちの圧倒的不利である。
龍騎だけなら、レンゲルもどうにか出来たかもしれないが、実際の話、小沢には戦闘経験というものが全くない。
戦闘が殆ど初である彼女に、戦闘のカリスマ、グロンギは荷が重すぎたのだ。
しかし、彼女たちは倒れるわけにいかない。
何故なら、もうあそこに倒れている赤ジャケットの人のような犠牲を出したくないから。
そのためにも彼女たちは立たなければならなかった。

「まだ、立てる?城戸君」
「はい、いけます」
「ゴグギョグギパボパスギジャズサザ(往生際の悪い奴らだ)」

ゴオマは思考していた。
根性というものは褒めてやってもいいが、俺は人を殺すあの感覚が味わいたいんだ。
そのためにもと言わんばかりにレンゲルは四枚のカードを取り出した。
そしてその中の一枚、スペードのKのカードをスラッシュし、APを回復した
そして次に攻撃のために三枚のカードをスラッシュした。

『RUSH』

一枚目、クラブのカテゴリー4、ラッシュのカード。

『BLIZZARD』

二枚目、クラブのカテゴリー6、ブリザードのカード。

『POISON』

三枚目、クラブのカテゴリー8、ポイズンのカード。

『BLIZZARD VENOM』

レンゲル最強のカードコンボ、ブリザードヴェノムである。
ブリザードヴェノムのAPは3800、重量変換で38トンの威力を誇る一突きの狙いをアビスの体に定める。
理由は、まず弱い物を倒すのが2対1のセオリーであると、ゴオマは知っていたからだ。
しかし、それを龍騎が容易に許すはずもない。

『GUARD VENT』

ドラグシールド、3000GP、トン表示で30トンの重みまで耐えられる代物を装備し、アビスの前に立つ。
さてここで思い出してほしい事がある。
先程も述べたとおり、ブリザードヴェノムは38トンもの威力を誇る一撃だ。
所詮30トンまでしか耐えられないドラグシールドでは耐えきれない。
しかし、龍騎は諦めない、これ以上の犠牲を出さないために。
そう考え、再び身構える龍騎に好機が訪れた。

287極限(一時投下) ◆NhPq7MGBgg:2011/03/26(土) 15:30:34 ID:e1eTD.8M

『ATACK RIDE BLAST!』
『イ・ク・サ・ナ・ッ・ク・ル・ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ』

瞬間、三者の耳を刺激する二つの電子音、そして死角からいきなりレンゲルの体に与えられる衝撃。
龍騎とアビスが声のした方向へ振り向くとそこにはマゼンタ色の戦士、ディケイドと、
白銀の鎧に身を包んだ戦士、イクサがいた。

「どうやら間にあったらしいな」
「ふん、俺は野郎はどうでもいい、さぁ行こう、レディ」
「レ、レディってあたし!?」

騒ぎだすアビスにイクサは平然と答える。
しかし、彼らは忘れていた、まだ敵が倒されていないことを。

「ビガラサァ!(貴様らぁ!)」

憤怒するレンゲルは4枚のカードを取り出す。
スペードのジャック。
ハートのクイーン。
ハートのジャック。
そして、先程も使用したクラブの10、テイピアリモートのカードをスキャンした。

『REMOTE』

姿を変える三枚のカード。
蘭の始祖たる上級アンデッドの一人、オーキッドアンデッド。
鷲の始祖たる上級アンデッドの一人、イーグルアンデッド。
狼の始祖たる上級アンデッドの一人、ウルフアンデッド。
その姿を見て、龍騎は驚愕する。

「あのカード、やっぱりモンスターだったんだ!」
「城戸君のあては当たってたってことね」

そう言いながらも、彼等は再び身構える。
そして1対1の4組の戦いは始まった。

「ゴラゲ、ヅジョギンザソグバ(おまえ、強いんだろうな)」
「ガダシラゲザソ、ゴセパゲバギボザバギギャザバサバ(当たり前だろ、俺は世界の破壊者だからな)」
「!?」

グロンギの言葉を理解するリントがいたことに驚くレンゲルとディケイドの戦い。
龍騎とイーグルアンデッド、イクサとウルフアンデッド、アビスとオーキッドアンデッドの戦い。
しかし、その中で、アビスは思考していた。

288極限(一時投下) ◆NhPq7MGBgg:2011/03/26(土) 15:31:08 ID:e1eTD.8M
(あいつと、まともにやり合っても勝てない、それなら…!)

何か策があるような顔でアビスバイザーにカードをスキャンする。

『STARIKE VENT』

瞬間、アビスの手に装着されるアビスクロ―。
そして次の瞬間、アビスは必殺技「アビススマッシュ」を放つ。
巻き起こった津波はモンスターとレンゲルを巻き込み、流れて行った。

「すごいですね!小沢さん!」
「ま、ざっとこんなもんよ」

初戦闘で手柄をとり、生まれた一瞬の隙、それがこの戦場では命取りになる。
そのことを、小沢はまだ少し理解していなかった。

「ジョブロジャッデブセダバ(よくもやってくれたな)」

――スミロドン――

「!?」

粉塵の中から突如として現れるスミロドンドーパント。
そしてその手はアビスのカードデッキに真っ直ぐ伸びていた。
バチバチと火花を散らしながら無理やりカードデッキを引き抜く。
そして、アビスの体は悲鳴を上げるただの一女性になり下がっていた。
これで三人目、その思いに思わず満面の笑みになるゴオマ。
しかし、伸ばしたかぎ爪は龍騎のドラグセイバーで止められていた。
その行動に、ゴオマは憤怒する。

「バゼザ!バゼゴラゲパジャラゴグス!(なぜだ!何故お前は邪魔をする!)」
「お前はこいつの前で人を殺すことはできない」

ゴオマの質問に答えるのはディケイド。

「こいつは、アホだ」
「へ?」

まさかの回答に龍騎の方が驚いてしまう。
それを気にする様子も見せずディケイドは言葉を続ける。

「だが、アホだからこそ、変えられる世界がある。
 アホだからこそ、変えられるものがある。
 どんなにふざけた世界でも、絶対に変えられる。
 そう信じてるからこの男は戦い続けているんだ!」

「ビガラ、バビロボザ!(貴様、何者だ!)」
「通りすがりの仮面ライダーだ、覚えておけ!」

その瞬間ライドブッカーから現れるは3枚のカード。

289極限(一時投下) ◆NhPq7MGBgg:2011/03/26(土) 15:31:44 ID:e1eTD.8M

「音也、こいつは俺らに任せて、その女連れて逃げろ!」
「分かった、後は任せろ」

その言葉を最後にイクサは走り出す。
しっかり小沢をお姫様抱っこして。

「ちょ、ちょっと待って!なんでお姫様抱っこなの!」
「女性は誰でもお姫様だからな、ま、俺は扱いには慣れてる、任せとけ」
「何を任せるのよ!早く降ろして!誰か、助けてぇ〜〜」

彼らの珍道中は、終わることを知らない。

【D―2 住宅街】

【小沢澄子@仮面ライダーアギト】
【時間軸】本編終盤(第46話終了後以降)
【状態】疲労(中)、ダメージ(大)
【装備】コルト・パイソン+神経断裂弾@仮面ライダークウガ
【道具】支給品一式、トリガーメモリ@仮面ライダーW、ガルルセイバー(胸像モード)@仮面ライダーキバ
【思考・状況】
0:ちょ、ちょっとどこまで行くのよ!
1:音也に不信感
2:殺し合いには乗らない
3:打倒大ショッカー
【備考】
※真司の支給品がトランプだったことを、カードを使って戦う龍騎に対する宛てつけだと認識しました。
※龍騎の世界について大まかに把握しました。

【紅音也@仮面ライダーキバ】
【時間軸】第46話終了後
【状態】疲労(中)、イクサに変身中
【装備】イクサナックル(プロトタイプ)@仮面ライダーキバ、ライアのデッキ@仮面ライダー龍騎
【道具】支給品一式、不明支給品0〜2
【思考・状況】
0:目の前の女性(小沢)を丁重に扱う。
1:最後まで生き残り、元の世界に帰還する
2:女性を見たらとりあえず口説く。冴子辺り探してみる。
3:乃木怜治、村上峡児、キング、アポロガイストを警戒。間宮麗奈については会ってから判断。
【備考】
※変身制限について天道から聞いています。
※天道の世界、巧の世界、霧彦の世界の大まかな情報を得ました。
※参加者達の時間軸に差異が出る可能性に気付きました。

290極限(一時投下) ◆NhPq7MGBgg:2011/03/26(土) 15:32:33 ID:e1eTD.8M

「なんなんだ、あの人」
「それよりまずはあいつだ」

龍騎とディケイドの目前にはスミロドンドーパント。
その素早い動きに二人は混乱する。

「くそ、どうにかして動きを止められれば…」
「それなら、いい方法があるぞ」

そう言いながらライドブッカーから取り出したのは黄色いカード。
それをディケイドライバーに装填する。

『FINALFOMERIDERYU,RYU,RYU,RYUUKI!』

「ちょっとくすぐったいぞ!」

そういいながらディケイドは龍騎の背中に手を伸ばす。
すると、龍騎の背中から光が漏れだし、龍騎の姿は見る見るうちに変わっていった。

「こ、これ、ドラグレッダー!?」

龍騎ドラグレッダーとなった龍騎は己の姿に驚愕しながらも、己の使命に気付き、
スミロドンドーパントの周りを火で囲った。

「よし、でかした!」

『FINALATACKRIDERYU,RYU,RYU,RYUUKI!』

龍騎の手柄を褒めながらディケイドは更なる一枚をディケイドライバーに装填し、
空中高く舞い上がり、炎を纏った蹴り、ディケイドドラグーンの名を持つそれは、
炎で逃げ場を失ったスミロドンドーパントには避けることなどできなかった。
確実に蹴りは当たり、勝利を確信するディケイド、しかし…。

「キハハハ、キヒャヒャヒャ!」
「嘘だろ、まだ立てるのかよ」

既にメモリは破壊され、生身のゴオマ、しかし、彼は先ほどとは明らかに違っていた。
理由は度重なる精神への異常のせいで彼の理性は消えてしまった。
いや、最初から無いも同然だったが。
詰まる所、彼の人を殺したいという感情だけが、今の彼の動力源だった。
そして、ゴオマは先程小沢から毟り取ったカードデッキを近くの鏡に翳す。

「ゼンギン(変身)」

いくつもの虚像がゴオマの体に重なり、彼の姿は仮面ライダーアビスに変わっていた。
いつの間にか、いつもの姿に戻ってしまう龍騎。
驚く龍騎に一瞬で攻撃を加えるアビス。
その瞬間、遂に龍騎の鎧が限界を迎える。
タイムリミットという避けられない制限故、真司は諦めずに何度かデッキを鏡に翳すが反応しない。

291極限(一時投下) ◆NhPq7MGBgg:2011/03/26(土) 15:33:16 ID:e1eTD.8M

「おい!真司!お前、まだ戦えるか!?」

アビスに対応しながら苦しそうに尋ねるディケイド。

「ああ!当たり前だ!あの人のような犠牲はもう出させない!
だから、俺はこいつを止めなきゃならない!」

その返答に心の中で笑みを浮かべるディケイド。

「なら、これで変身しろ!早く!」
「わ、わかった」

そう言いながらディケイドが投げつけるは数時間前、剣崎から託されたブレイバックル。
言われるがまま、スペードのカードを入れ、ブレイバックルを腰に巻く真司。
そして、ターンアップハンドルを引く真司。

『THRN UP!』

そして目の前に現れたオリハルコンエレメントをくぐると、真司の姿は仮面ライダーブレイドに姿を変えていた。

「うおぉ!」

変身できたことに喜びつつアビスに切り掛かるブレイド。
その姿を見て、士も思考していた。

(一真、これは、こいつが持っといた方がいいよな)

目の前のブレイドは一真が変身したものではない。
だが、それに変身している男は一真と非常に似ている。
外見ではない、中身だ、純粋かつ、人を守りたいという思いは彼に通ずるものがあった。
そう考え、もう一度心の中で微笑む士だった。

「さて、無事変身できたことだし、そろそろ止めか」
「え!ちょっとそのカードって…」
「ああ、そのまさかだ!ちょっと、くすぐったいぞ!」

言いながらライドブッカーから取り出すは黄色いカード。
そのカードを先程のようにディケイドライバーに装填する。

『FINALFOMERIDEB,B,B,BLADE!』

先程の再現のようにブレイドの背中から漏れ出す光。
その結果、ブレイドの体は巨大な剣、ブレイドブレードに変わっていた。
そしてディケイドはもう一枚の黄色いカードをそうてんすると、
それに応えるようにアビスもまた最後の手段を発動する。

『FINALVENT』
『FINALATACKRIDEB,B,B,BLADE』

アビスと契約した二体のモンスター、アビスラッシャーとアビスハンマー。
二体は合体し、巨大モンスター、アビソドンとなった。
アビスの必殺技「アビスダイブ」とディケイドとブレイドの協力技「ディケイドエッジ」
ブレイドブレードの一撃はアビソドンを切り裂き、刃から電撃が地面を伝った。
その結果、電撃はアビスを直撃し、彼らは勝利した。

292極限(一時投下) ◆NhPq7MGBgg:2011/03/26(土) 15:33:53 ID:e1eTD.8M

掛け声とともに中に放り投げられるブレイド。
思わず尻もちをつくブレイドに手を差し伸べるディケイド。
改めて粉塵が晴れた先を見るとそこには満面の笑みのゴオマが立っていた。
思わず身構える二人、しかし、ゴオマの体はそのまま倒れてしまった。

「死んでる…」

近付いて脈を確認したブレイドの一言で彼らは変身を解いた。
こうして、グロンギという種族の欲望に操られ、欲望に散った男、ズ・ゴオマ・グは死んだ。

「でも、あのファイナルなんちゃらってゆうのはもう勘弁してくれよ」
「ふん、どうだかな」

そう言いながら彼らはゴオマの支給品をとり、その場を去った。
死人の笑顔に見守られながら。

【門矢士@仮面ライダーディケイド】
【時間軸】MOVIE大戦終了後
【状態】重傷(軽い応急処置済み)、疲労(大)、仮面ライダーディケイド2時間変身不可
【装備】ディケイドライバー@仮面ライダーディケイド、ライダーカード一式@仮面ライダーディケイド
【道具】支給品一式×3、不明支給品×2、ガイアメモリ(ヒート)@仮面ライダーW、ケータッチ@仮面ライダーディケイド、ライダーカード(G3)@仮面ライダーディケイド
    不明支給品0〜1
【思考・状況】
0:真司と一緒に行動する。
1:大ショッカーは、俺が潰す!
2:仲間との合流。
3:友好的な仮面ライダーと協力する。
【備考】
※現在、ライダーカードはディケイド、ブレイド、龍騎の物以外、力を使う事が出来ません。
※該当するライダーと出会い、互いに信頼を得ればカードは力を取り戻します。
※ライダーカード(G3)はディエンド用です。

【城戸真司@仮面ライダー龍騎】
【時間軸】劇場版 霧島とお好み焼を食べた後
【状態】ダメージ(大)、疲労(大)、罪悪感、仮面ライダー龍騎に二時間変身不可、仮面ライダーブレイドに二時間変身不可
【装備】龍騎のデッキ@仮面ライダー龍騎、 ブレイバックル@仮面ライダー剣、レンゲルバックル@仮面ライダー剣、ラウズカード(スペードA〜K、クラブA〜10、ハート7〜K、)@仮面ライダー剣
    三原の不明支給品(0〜1)
【道具】支給品一式、優衣のてるてる坊主@仮面ライダー龍騎
【思考・状況】
1:ファイナルなんちゃら(FFR)はもう勘弁してほしい
2:小沢(とあの変な人)を探し、一緒に津上翔一に会いに行く
3:ヒビキが心配
4:絶対に戦いを止める
5:蓮、霧島、北岡にアビスのことを伝える
6:大ショッカーは許せない
【備考】
※支給品がトランプだったことを、カードを使って戦う龍騎に対する宛てつけだと認識しました。
※アビスこそが「現われていないライダー」だと誤解しています。
※アギトの世界について認識しました。

【ズ・ゴオマ・グ 死亡確認】
 残り45人

293極限(一時投下) ◆NhPq7MGBgg:2011/03/26(土) 15:35:25 ID:e1eTD.8M

これで、投下終了です。
なにか、変なところがあればお気軽に言ってください。

294極限(一時投下) ◆NhPq7MGBgg:2011/03/26(土) 16:00:14 ID:e1eTD.8M
えー、真司と士の現在地を書き忘れました。
【E―2 住宅街】
です。
本当にすいませんでした。

295二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/03/26(土) 16:23:34 ID:e0eWbg2s
投下お……とは言いがたいです。

1.士と音也が脈絡もなくD-2にいるのが不自然。

前回から2時間経過しているのでD-2まで移動した……と言いたいのですが、話の流れ的に士が行くべき方向は北條と別れたE-5方面なので真逆な筈です。
更に言えば前回の話で音也は士に対し警戒し関わり合いになりたくないとすら思っていますし、士から見ても幾ら別人とはわかっていても音也はネガの世界でダークライダーを纏めていた人物。そうそう易々と情報交換、更には行動を共にするとは思えないのですが。
士が牙王戦で受けたダメージを考えるとほんの2時間でD-2まで移動するとは思えないのですが。

2.龍騎のファイナルフォームライドの流れが不自然。

士の説教が展開されていますが、そもそも士は真司の事を何も知らない筈ですし今回の描写だけでは説教に繋げるのは不自然すぎます。

3.戦闘の流れが幾つか不可解。

前回の時点でレンゲルに変身してから7分経過していて、その後も士達が駆けつけるまでに数分……流石にレンゲルの変身が解除されるのが先では?
その一方でアビスのストライクベント一発でレンゲルとモンスター軍団を一掃するのもあっさり過ぎる気も。
それから、ゴオマがスミロドンに変身するのは良いけど、その流れで最初にやったのが小沢を倒すのではなくカードデッキの奪取というのが不可解。後でアビスに変身させる展開の都合があったとしか思えない。

4.ゴオマ死亡時の真司の反応が謎。

真司は悪人の死に対しても憤る人物であり、自身が吾郎を殺したと思った時はそれだけで戦えなくなる程です。
更に今回に関しては自身の攻撃が致命傷になったのは真司でもわかります。
にもかかわらずゴオマを仕留めた事を殆ど意に返さず、ファイナルフォームライドに対する反応だけというのがまずあり得ません。
確かにゴオマは人間とは別のグロンギですが、真司の視点では浅倉と同レベルの悪人程度です。

5.ここであっさりゴオマを殺しあっさりと対主催を集結させた展開。

この展開だと単純にマーダーであるゴオマが退場しただけで、ディケイドが龍騎の力を大した苦労もせず取り戻し、対主催側のダメージは軽微です。
そういう展開が駄目というわけじゃないですが、そういう展開にする為に不自然な描写が多すぎます。
特に士が北條を放置していきなりD-2に現れたのはその為だけとしか思えません。
書きたい展開があるのはわかりますし、ある程度描写が省かれるのも仕方ありません。しかし、省いてはいけない描写まで描写を省くのは良くありません。

以上の点が不可解なので、その辺に関して修正が必要ではないでしょうか。

執筆活動が初なので不安なのはわかりますが、人が死ぬ様な重要な展開をいきなり書くのは姿勢として少々問題だと思います。
勿論、死んでなんぼですからある程度は容認されますが、それは決して雑な展開を書いて良いという免罪符にはなり得ません。
特に対主催を殺すならいざ知らず、マーダーを殺す話ならば尚更です。もう少し、その辺を考えて頂けないでしょうか。

296 ◆NhPq7MGBgg:2011/03/28(月) 08:25:15 ID:BvIhjwqE
予約スレ248さんの提案をもらおうと思います。
以下内容

士は仮面ライダーを知らないときっぱり言い切った音也にまだ不信感。
しかし何事にも情報を交換しないことには始まらないと思い直し、情報交換。
しかし、音也も士に対し不信感を抱いているため、お互い元の世界の仲間のことは言わず、
危険人物と現地であった仲間のことしか言わない。
ところがソウジ、タクミと同じ名をもつものに興味を抱いた士が勝手に音也についていく。
(この時点で話に花が咲きすぎて北条のことを一時的に忘れてしまう)
なんとか振り切ろうと早歩きで移動する音也に頑張って追いつこうとする士。
しかし傷の関係でいつもの体力が出ずD−2辺りでギブアップ。
好機とみて走り出す音也の耳に入ってくる爆音と女性の悲鳴。
ここで場面は変わり、龍騎たちの戦闘に。
ブリザードヴェノムの途中でディケイド達の妨害、壁にぶつかり変身解除。
一瞬のうちにレンゲルを倒したディケイド達に一瞬気を緩めたアビスをスミロドンドーパント強襲。
変身解除した小沢を抱きかかえ逃げる音也。
アドベントで逃げ場をなくしたスミロドンにファイナルベントとファイナルアタックライドを叩きこむ二人。
メモリを破壊され理性をなくすゴオマ、地面に落ちているアビスデッキで変身。
野性的な動きで龍騎を攻撃、変身解除まで追い込む。
真司ブレイドに変身、ファイナルフォームライドでブレイドブレードに。
ファイナルアタックライドVSファイナルベント。
ゴオマが敗北し、恐怖で支給品全て放りだし逃げ出す。
追いかけようとする二人だが数時間の無理がたたり、ディケイド変身解除。
士気絶、真司が治療しようと近辺の家を探しだす。
ゴオマはディケイド達がすっかり怖くなり、それ以外の弱者を殺すという行動方針に。

これでいこうかと思ってるんですが、どうでしょう?

297二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/03/28(月) 10:00:47 ID:D6VJb.YU
自分はそれで問題はないと思います
修正、頑張ってください
あ、でも他の方の意見も出来るだけ、待ったほうがいいと思います。

298二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/03/28(月) 11:03:19 ID:6gozS0ks
自分はその修正案では通せない。

まず、話に花が咲きすぎて北條の事を忘れる事に違和感が。
一応、現地であった仲間の事を話している時点で北條の話題は出している筈、
幾らソウジとタクミに興味があったとはいえ、北條の事を忘れ2人と別行動を取っている音也に固着するのは不可解。
ダークカブトを逃がしている現状を踏まえると無力な北條を放置するとは思えない。
それ以前に互いに不信感を抱いているのに話に花が咲き過ぎるという事自体そもそもおかしくないか? そこまでして北條の事を忘れさせたいのか?

音也にしても、何故D-2に移動するのかが謎。更に音也が2時間という時間に数キロに渡り士と長々と追いかけっこに付き合う筈もないと思うが?

その音也に爆音と女性の悲鳴が聞こえたとあるが、アンノウンと戦い慣れしており既にゴオマと対峙している小沢が戦いの最中に悲鳴を上げるのはキャラ的におかしい。
特にレンゲル戦の途中で唐突に悲鳴を上げる状況があり得ないのでは?

更に、散々D-2で体力切れしてギブアップした士が戦場に駆けつけるのも不可解。

そしてゴオマ敗北し恐怖で全ての支給品を放り出し逃げ出すという描写が不自然、
ゴオマは身の程知らずな程に強気で、ボロボロになっても戦意を一切失わない性格なのは過去の話でもわかる。
散々理性を失ったとあるのに今更ディケイドにボコボコにされた程度で恐怖で強者にへつらい弱者のみを殺すヘタレになるのは不可解、理性を失ったのではなかったのか?

最初の投下の時にも触れられたのだろうが士達が都合良く駆けつける時点でそもそもご都合主義が過ぎる。
というより今回の描写全てがディケイド最強をやりたいが為の話としか思えず、その都合故に話やキャラ崩壊が見られている。
何故そこまでしてゴオマ戦に士達を駆けつけさせる必要があるのだろうか? そこまでゴオマをヘタレにする必要があるのだろうか? そこまで対主催に都合良い展開にする必要があるのだろうか?

299二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/03/28(月) 11:11:56 ID:d4yiLevE
>ソウジ、タクミと同じ名をもつものに興味を抱いた士が勝手に音也についていく。
自分もここには違和感を感じました
それなら音也は二人と別れた場所をもやしに教えて追い払うのでは?

300 ◆NhPq7MGBgg:2011/03/28(月) 12:24:32 ID:BvIhjwqE
298さん
僕の中で理性をなくしたというのは人間らしい感情がすべて消え去り、
野性動物と同じレベルになるという風に考えていたのですが、
その場合、動物全てが持っている生きたいという欲望に従ったということにしたかったのですが、
その場合にはプライド、憎悪などの感情は消え去っているため、逃げたことにも納得できる!
ということにはなりませんかね?

301二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/03/28(月) 12:50:45 ID:6gozS0ks
そこまでいくと完全にゴオマのキャラ崩壊じゃないのか?
それ以前に、ガイアメモリの毒の影響でプライドや憎悪は消えるどころか強化されるだろうし、破壊された所で元に戻っても消える事は無い筈だろうし、そうそう消えるものでもないのでは?
更に言えばスパイダーアンデッドの邪悪な意志の影響すら消えるとも思えないのだが?
念のために言えば、変身が解除されようがちょっと手放した程度じゃスパイダーアンデッドの支配からは逃れられない筈だが?

302 ◆NhPq7MGBgg:2011/03/28(月) 13:22:22 ID:BvIhjwqE
只今より、修正版の投下を始めたいと思います。
(いろいろ思うところはあるでしょうが、一旦ここまで書きましたという形で)

303極限(修正投下) ◆NhPq7MGBgg:2011/03/28(月) 13:22:52 ID:BvIhjwqE
この戦場の空も赤く染まり始めた頃、ここに二人の男がいた。

「おい、お前、どこまで付いてくるつもりだ!」

早歩きで後ろの男性を振り切ろうとする男は『キバの世界』の代表者の一人、紅音也。

「お前があの二人のところに行くまでだ!」

そう言い、傷を負った体を引きずりながら音也に必死でついていく男こそ元世界の破壊者ディケイドこと、門矢士。
さて、士の言っているあの二人とは誰なのか、それは数時間前、E−4エリアの病院前。



「何を言っている、お前?」

音也が思わず口にしたその言葉に士は頭を悩ませる。
こいつが仮面ライダーを知らない?
ネガの世界で強者揃いのダークライダーたちを仕切っていた男が?
確かに別人だとわかってはいるが、仮面ライダーを知らないというような言葉が
この男の口から出たことには士にとって疑問でしかなかった。
士がそんなことを考える一方で、音也も思考していた。
『仮面ライダー』なる未知の存在。
それを堂々と言ってのけたこの男、正直言って深い関わり合いにはなりたくない。
病院から出てきたのもそういうことなのかと思ってしまう。
二人が考えた末出た答えは、警戒心は解かず、危険人物と現地であった仲間のことしか話さないと言うことであった。
しかし、音也が現地であった人物は士にとって都合のいい物でしかなかった。

「乾巧に、天道総司、だと…?」
「あぁ、何だ、お知り合いか?」
「いや、直接会ったことはない、だが、そいつらのことはよく知ってるんだ」
「?」

音也にとっては疑問でしかない今の発言、しかし、士にとっては非常に有意義な話し合いだった。
ソウジ、タクミと同じ名をもつものとこいつが知り合い?
ならば連れて行ってもらおう、そいつらの元へと。
ついでにもしかしたらこの男が只嘘をついていて、俺を振り切ろうとしているんだとしたらこれ以上に危険な人物はいない。
それ故、監視ついでについていくことにしたのだ。
流石に自分が近くにいれば、何とか抑えられるだろう、この怪我でどこまでやれるかは不明だが。
しかし、その瞬間、彼は忘れてしまった。
無力な人を守るライダーとして忘れてはならないもの。
無力な人間、北条透のことを。
そんなことにも彼は気付かぬまま、音也を追いかける。
そして、今に至る。

304極限(修正投下) ◆NhPq7MGBgg:2011/03/28(月) 13:23:46 ID:BvIhjwqE

(あいつどこまで付いてくんだよ、畜生、途中で適当に分かれた場所を教えるんだったな)

さすがに一戦士の音也としてもあそこまでの重傷を負った状態でここまで付いてくると思わなかった。
正直言って途中で適当に嘘でも言って追い払えればよかったのだが、なぜかこの男は俺に固着している。
しかし、底なしかと思われた彼の体力もここまでのようだった。
住宅街に入った途端、士の体力が切れたのだ。
これを好機と見ずに何という、そう思いながら走り出そうとする音也。
しかしその瞬間彼の耳に飛び込んできたのは爆音、聞くところかなり近くで戦闘がおこっているらしい。
俺には関係ないと言わんばかりに走り出す音也。
しかしその次の聞こえたのは女性の声、その声の出し方からするに、
戦闘を行っているのは女性らしい。

「女!?」
「ま、動機はどうあれ、行くべき場所は同じらしいな」
「!?」

すぐ後ろから聞こえた声に音也は驚愕する。
先程まで地面に膝まづいていた男が息を切らしながら音也のすぐ横に立っていたのだ。

「お前、大丈夫なのか?ここで休んでたらどうだ?」

音也らしくもない男性に対する気遣いの言葉。
だがしかし、

「俺はな、誰かに指図されるのが一番嫌いなんだよ、俺は、俺の道を行く」

そう言いながら歩き出す士、どうなっても知らんぞと小声で言いながら
それを追いかける音也だった。

305極限(修正投下) ◆NhPq7MGBgg:2011/03/28(月) 13:24:27 ID:BvIhjwqE



時は遡り、数分前のE―2エリア、ここでは三人の戦士による戦闘が行われていた。
『龍騎の世界』を代表する男の一人、城戸真司が変身した仮面ライダー龍騎。
『アギトの世界』の天才的頭脳の持ち主、小沢澄子が変身した仮面ライダーアビス。
それと対峙するのは『クウガの世界』の怪人グロンギの一人、ズ・ゴオマ・グが変身した仮面ライダーレンゲル。
三者は数分前に戦闘を開始したのだが、戦況は先ほどと殆ど変わっていない。
そして、はっきり言おう、戦況は龍騎たちの圧倒的不利である。
龍騎だけなら、レンゲルもどうにか出来たかもしれないが、実際の話、小沢には戦闘経験というものが全くない。
戦闘が殆ど初である彼女に、戦闘のカリスマ、グロンギは荷が重すぎたのだ。
しかし、彼女たちは倒れるわけにいかない。
何故なら、もうあそこに倒れている赤ジャケットの人のような犠牲を出したくないから。
そのためにも彼女たちは立たなければならなかった。

「まだ、立てる?城戸君」
「はい、いけます」
「ゴグギョグギパボパスギジャズサザ(往生際の悪い奴らだ)」

ゴオマは思考していた。
根性というものは褒めてやってもいいが、俺は人を殺すあの感覚が味わいたいんだ。
そのためにもと言わんばかりにレンゲルは四枚のカードを取り出した。
そしてその中の一枚、スペードのKのカードをスラッシュし、APを回復した
そして次に攻撃のために三枚のカードをスラッシュした。

『RUSH』

一枚目、クラブのカテゴリー4、ラッシュのカード。

『BLIZZARD』

二枚目、クラブのカテゴリー6、ブリザードのカード。

『POISON』

三枚目、クラブのカテゴリー8、ポイズンのカード。

『BLIZZARD VENOM』

レンゲル最強のカードコンボ、ブリザードヴェノムである。
ブリザードヴェノムのAPは3800、重量変換で38トンの威力を誇る一突きの狙いをアビスの体に定める。
理由は、まず弱い物を倒すのが2対1のセオリーであると、ゴオマは知っていたからだ。
しかし、それを龍騎が容易に許すはずもない。

『GUARD VENT』

ドラグシールド、3000GP、トン表示で30トンの重みまで耐えられる代物を装備し、アビスの前に立つ。
さてここで思い出してほしい事がある。
先程も述べたとおり、ブリザードヴェノムは38トンもの威力を誇る一撃だ。
所詮30トンまでしか耐えられないドラグシールドでは耐えきれない。
しかし、龍騎は諦めない、これ以上の犠牲を出さないために。
そう考え、再び身構える龍騎に好機が訪れた。

306極限(修正投下) ◆NhPq7MGBgg:2011/03/28(月) 13:25:10 ID:BvIhjwqE

『ATACK RIDE BLAST!』
『イ・ク・サ・ナ・ッ・ク・ル・ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ』

瞬間、三者の耳を刺激する二つの電子音、そして死角からいきなりレンゲルの体に与えられる衝撃。
龍騎とアビスが声のした方向へ振り向くとそこにはマゼンタ色の戦士、ディケイドと、
白銀の鎧に身を包んだ戦士、イクサがいた。

「どうやら間にあったらしいな」
「ふん、俺は野郎はどうでもいい、さぁ行こう、レディ」
「レ、レディってあたし!?」

騒ぎだすアビスにイクサは平然と答える。
しかし、彼らは忘れていた、まだ敵が倒されていないことを。

――スミロドン――

「!?」

粉塵の中から突如として現れるスミロドンドーパント。
そしてその手はアビスに真っ直ぐ伸びていた。
バチバチと火花を散らし、アビスの鎧は限界を迎えた。
そして、アビスの体は悲鳴を上げるただの一女性になり下がっていた。
これで3人目、そう思いながらかぎ爪のついた手を小沢に伸ばそうとするスミロドン。
だがその手を龍騎が防ぎながら言った。

「おい、そこの白い人!早く小沢さん連れて逃げて!」
「お、おい待て!あいつはもしかしたら…」

ディケイドが言葉を言いきらないうちにもスミロドンドーパントの攻撃が彼らを襲う。

「分かった、後は任せろ」

その言葉を最後にイクサは走り出す。
しっかり小沢をお姫様抱っこして。

「ちょ、ちょっと待って!なんでお姫様抱っこなの!」
「女性は誰でもお姫様だからな、ま、俺は扱いには慣れてる、任せとけ」
「何を任せるのよ!早く降ろして!誰か、助けてぇ〜〜」

彼らの珍道中は、終わることを知らない。

【D―2 住宅街】

【小沢澄子@仮面ライダーアギト】
【時間軸】本編終盤(第46話終了後以降)
【状態】疲労(中)、ダメージ(大)
【装備】コルト・パイソン+神経断裂弾@仮面ライダークウガ
【道具】支給品一式、トリガーメモリ@仮面ライダーW、ガルルセイバー(胸像モード)@仮面ライダーキバ
【思考・状況】
0:ちょ、ちょっとどこまで行くのよ!
1:音也に不信感
2:殺し合いには乗らない
3:打倒大ショッカー
【備考】
※真司の支給品がトランプだったことを、カードを使って戦う龍騎に対する宛てつけだと認識しました。
※龍騎の世界について大まかに把握しました。

【紅音也@仮面ライダーキバ】
【時間軸】第46話終了後
【状態】疲労(中)、イクサに変身中
【装備】イクサナックル(プロトタイプ)@仮面ライダーキバ、ライアのデッキ@仮面ライダー龍騎
【道具】支給品一式、不明支給品0〜2
【思考・状況】
0:目の前の女性(小沢)を丁重に扱う。
1:最後まで生き残り、元の世界に帰還する
2:女性を見たらとりあえず口説く。冴子辺り探してみる。
3:乃木怜治、村上峡児、キング、アポロガイストを警戒。間宮麗奈については会ってから判断。
【備考】
※変身制限について天道から聞いています。
※天道の世界、巧の世界、霧彦の世界の大まかな情報を得ました。
※参加者達の時間軸に差異が出る可能性に気付きました。

307極限(修正投下) ◆NhPq7MGBgg:2011/03/28(月) 13:26:07 ID:BvIhjwqE

「やっぱり、あの人に任せちゃいけなかったかな」
「それより、まずはこいつだ」

龍騎とディケイドの目前にはスミロドンドーパント。
その素早い動きに彼らは混乱する。

「どうにかして動きを止められれば」
「そうか、それだ!」

何かを思いつき、カードをドラグバイザーに入れる龍騎。

『ADVENT』

主の呼びかけに答え、スミロドンドーパントの周りを赤い炎で囲むドラグレッダー。

「よし、それでいい!」

いいながらそれぞれカードを装填する二人。

『FINLVENT』
『FINALATACKRIDEDE,DE,DE,DECADE!』 

二人はそれぞれ必殺技、ディメンションキックとドラゴンライダーキックを繰り出す。
炎で逃げ場をなくしたスミロドンドーパントには最早避けようがなく、キックの直撃を食らった。
勝利を確信する二人、しかし、

「キハハハ、キヒャヒャヒャヒャ」
「嘘だろ…」

既にメモリは破壊され、生身のゴオマ、しかし、彼は先ほどとは明らかに違っていた。
理由は度重なる精神への異常のせいで彼の人間らしい感情は消えてしまった。
いや、最初から無いも同然だったが。
詰まる所、彼の人を殺したいという感情だけが、今の彼の動力源だった。
そして、ゴオマは偶然地面に落ちていたカードデッキを近くの鏡に翳す。

「ゼンギン(変身)」

いくつもの虚像がゴオマの体に重なり、彼の姿は仮面ライダーアビスに変わっていた。
一瞬のことに事の整理がつかない龍騎に襲いかかる攻撃。
その瞬間、遂に龍騎の鎧が限界を迎える。
タイムリミットという避けられない制限故、真司は諦めずに何度かデッキを鏡に翳すが反応しない。

308極限(修正投下) ◆NhPq7MGBgg:2011/03/28(月) 13:26:57 ID:BvIhjwqE


「おい!真司!お前、まだ戦えるか!?」

アビスに対応しながら苦しそうに尋ねるディケイド。

「ああ!当たり前だ!あの人のような犠牲はもう出させない!
だから、俺はこいつを止めなきゃならない!」

その返答に心の中で笑みを浮かべるディケイド。

「なら、これで変身しろ!早く!」
「わ、わかった」

そう言いながらディケイドが投げつけるは数時間前、剣崎から託されたブレイバックル。
言われるがまま、スペードのカードを入れ、ブレイバックルを腰に巻く真司。
そして、ターンアップハンドルを引く真司。

『THRN UP!』

そして目の前に現れたオリハルコンエレメントをくぐると、真司の姿は仮面ライダーブレイドに姿を変えていた。

「うおぉ!」

変身できたことに喜びつつアビスに切り掛かるブレイド。
その姿を見て、士も思考していた。

(一真、これは、こいつが持っといた方がいいよな)

目の前のブレイドは一真が変身したものではない。
だが、それに変身している男は一真と非常に似ている。
外見ではない、中身だ、純粋かつ、人を守りたいという思いは彼に通ずるものがあった。
そう考え、もう一度心の中で微笑む士だった。

「さて、無事変身できたことだし、そろそろ止めか」
「え!ちょっとそのカードって…」
「ああ、そのまさかだ!ちょっと、くすぐったいぞ!」

言いながらライドブッカーから取り出すは黄色いカード。
そのカードを先程のようにディケイドライバーに装填する。

『FINALFOMERIDEB,B,B,BLADE!』

先程の再現のようにブレイドの背中から漏れ出す光。
その結果、ブレイドの体は巨大な剣、ブレイドブレードに変わっていた。
そしてディケイドはもう一枚の黄色いカードをそうてんすると、
それに応えるようにアビスもまた最後の手段を発動する。

『FINALVENT』
『FINALATACKRIDEB,B,B,BLADE』

アビスと契約した二体のモンスター、アビスラッシャーとアビスハンマー。
二体は合体し、巨大モンスター、アビソドンとなった。
アビスの必殺技「アビスダイブ」とディケイドとブレイドの協力技「ディケイドエッジ」
ブレイドブレードの一撃はアビソドンを切り裂き、刃から電撃が地面を伝った。
その結果、電撃はアビスを直撃し、彼らは勝利した。

309極限(修正投下) ◆NhPq7MGBgg:2011/03/28(月) 13:27:37 ID:BvIhjwqE

ゴオマは恐怖していた。
自分の最終手段である攻撃をいとも簡単に退けた男に。
このままでは殺される。
生きたい、生きたい、生きたい、生きたい、生きたい、生きたい。
生きて、そしてまた人を殺したい。
そのために彼が選んだ方法、それは逃走。
本来ならば変身できずとも敵前逃亡など絶対にしないゴオマなのだが、
度重なる精神への異常で彼のプライドなど人間らしい(グロンギらしい?)感情は全て消え去った。
しかしそれ故に存命出来たのは一種の皮肉かもしれない。
生きるため、彼は逃げるのに不必要なものは全て投げ捨てた。
デイパックを、自分の力になる物の多くを。
戦えという言葉も無視して。
しかし、その背中をただ見逃すディケイド達ではない。
すぐさま追いかけようとするが、数時間の無理がたたったのだろう。
ディケイドの体は無力な青年、門矢士に変わり、無様に地面にひれ伏し、気絶した。
そして、その姿を黙って見ておけるブレイドではない。
すぐさま変身を解き、彼を近くの家まで連れて行き、ベッドに寝させた。
次に何か彼を治療できるものはないかと探し出す城戸だった。

310極限(修正投下) ◆NhPq7MGBgg:2011/03/28(月) 13:28:49 ID:BvIhjwqE
【E−4 住宅街一軒家の中】

【門矢士@仮面ライダーディケイド】
【時間軸】MOVIE大戦終了後
【状態】超重傷(軽い応急処置済み)、気絶中、疲労(極大)、仮面ライダーディケイド2時間変身不可
【装備】ディケイドライバー@仮面ライダーディケイド、ライダーカード一式@仮面ライダーディケイド
【道具】支給品一式×3、不明支給品×2、ガイアメモリ(ヒート)@仮面ライダーW、ケータッチ@仮面ライダーディケイド、ライダーカード(G3)@仮面ライダーディケイド 、不明支給品0〜1
【思考・状況】
0:真司と一緒に行動する。
1:大ショッカーは、俺が潰す!
2:仲間との合流。
3:友好的な仮面ライダーと協力する。
【備考】
※現在、ライダーカードはディケイド、ブレイドの物以外、力を使う事が出来ません。
※該当するライダーと出会い、互いに信頼を得ればカードは力を取り戻します。
※ライダーカード(G3)はディエンド用です。

【城戸真司@仮面ライダー龍騎】
【時間軸】劇場版 霧島とお好み焼を食べた後
【状態】ダメージ(大)、疲労(大)、罪悪感、仮面ライダー龍騎に二時間変身不可、仮面ライダーブレイドに二時間変身不可
【装備】龍騎のデッキ@仮面ライダー龍騎、 ブレイバックル@仮面ライダー剣、レンゲルバックル@仮面ライダー剣、ラウズカード(スペードA〜K、クラブA〜10、ハート7〜K、)@仮面ライダー剣、三原の不明支給品(0〜1)
【道具】支給品一式×3、優衣のてるてる坊主@仮面ライダー龍騎
【思考・状況】
1:目の前の人(士)を治療する
2:小沢(とあの変な人)を探し、一緒に津上翔一に会いに行く
3:ヒビキが心配
4:絶対に戦いを止める
5:蓮、霧島、北岡にアビスのことを伝える
6:大ショッカーは許せない
【備考】
※支給品がトランプだったことを、カードを使って戦う龍騎に対する宛てつけだと認識しました。
※アビスこそが「現われていないライダー」だと誤解しています。
※アギトの世界について認識しました。



彼、ズ・ゴオマ・グは逃げた、出来るだけ彼らから遠くに。
何度か後ろを振り返り、完全に追手がいないことに気付くと近くの家の中に入った。
彼は今、ただ怯えていた、自分をあそこまで追い込んだ相手に。
だが瞬間、彼の耳に反響する声によって、彼は自分の使命に気付く。
戦え、戦えというスパイダーアンデッドの邪悪な囁き。
そうだ、例え奴には敵わなくとも、この場には弱者が多々いる筈だ。
自分はそれを襲えばいい、そう考えなおし再び笑みを取り戻す彼の顔。
しかし、数十分に渡る戦いは彼をすぐ動かしてはくれなかった。
今は休む、その思いで彼は、目を瞑った。

【ズ・ゴオマ・グ@仮面ライダークウガ】
【時間軸】第39話「強魔」、ダグバに殺害される前
【状態】疲労(大)、ダメージ(大)、睡眠中、極度の興奮状態、スパイダーアンデッドに精神を支配されている、右足に痛み。2時間変身不能(ズ・ゴオマ・グ究極体、アイスエイジ・ドーパント、スミロドンドーパント、仮面ライダーレンゲル、仮面ライダーアビス)
【装備】無し
【道具】無し
【思考・状況】
基本思考:優勝する。できればダグバは自分が倒す。
1:マゼンタ色の戦士(ディケイド)に恐怖
2:弱者を狙い、殺す
【備考】
※怪人体には究極体にしかなれず、強化形態の制限時間に準じます。
※ルールブックは粗方読み終わりました。
※ガイアメモリ(アイスエイジ、スミロドン)は破壊されました
※レンゲルバックルとガイアメモリの影響により、精神に異常が起こっています

311 ◆NhPq7MGBgg:2011/03/28(月) 13:31:17 ID:BvIhjwqE
以上で修正投下終了です。
後ゴオマの現在地は
【E−4 住宅街の一軒家の中】
です。
何度も何度も申し訳ありません。

312二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/03/28(月) 14:59:00 ID:6gozS0ks
投下した所やはり通せない、

北條を忘れ音也に固執した事がこの描写では不可解だ。
目の前の音也が信用出来ないのはわかるが目下危険なのは実際に戦闘したダークカブトの方ではないのか?
ダークカブトの脅威と無力な北條をの存在を忘れただけで済ませるのはお粗末すぎる。

音也にしても、振り切るならもっと早く振り切れば良い筈だ。2時間も長々と追いかけっこするのが不可解だ。音也の性格上、男に2時間も追いかけ回されるのを良しとするわけも無いだろう。

その2人が都合良くD-2に現れた事も含め、どう考えても真司達の戦闘に介入させる為のご都合以外の何者でもない。

しかもその二者が聞いた爆音にしても、それを起こした真司達の戦闘描写が足りていないせいか何故響いたのかよくわからない。

また、最後のゴオマの感情が消え去り全て捨てて逃走したという描写が不可解。
アイスエイジをブレイクされても、レンゲルで敗れ去っても、スミロドンすらブレイクされても戦意を失わず戦い続けたゴオマが今更アビスでも倒された程度で逃走するとは思えない。
ガイアメモリやスパイダーアンデッドの悪影響ならばむしろ闘志や憎悪は増強され更に戦い続ける方が自然だ。自身の支給品を捨てるとは思えない。士達にゴオマの支給品を渡す為のご都合としか思えない。
そのくせ、クウガもダグバも殺す言うダグバが今更、弱者限定マーダーというのは不自然だろう。

展開やキャラクターをねじ曲げここまで(特に対主催にとって)都合の良い展開を描く必要性があったのかは不可解だ。執筆活動が初なのに何故そこまで我を通そうとするのだろうか?

313二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/03/29(火) 20:37:08 ID:kpcOThPY
>>305
グロンギ語で普通に変換すると「の」は「ボ」になりますが
「〜の〜」といった文章の場合「の」は「ボ」ではなく「ン」と訳するのが正確ですよ

314二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/03/29(火) 21:08:30 ID:9pQG74Mw
剣と竜騎のAPってトン換算すると別物じゃなかったっけ

315二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/04/02(土) 06:11:25 ID:fWSJvBcE
>>295
>5 .ここであっさりゴオマを殺しあっさりと対主催を集結させた展開。

からのくだりと、>>312

>執筆活動が初なのに何故そこまで我を通そうとするのだろうか?

これって必要なの?
前者は感想としてなら(人目につきがたいところでなら)言っても良いかもしれないが、修正要求をしていい内容じゃないだろ
修正要求はあくまで矛盾に対してのみで、展開にまでケチつけるのは行きすぎだ
極論気に入らなければどんな作品でもどうとでも理由をつけて修正要求できることになる

後者に至っては「初心者のくせに出しゃばるな」って言ってるようにしか見えんのだけど
渦中の書き手が「初心者だから大目に見てくれ」とか言ってるならともかくね

316二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/04/04(月) 00:47:43 ID:FzoGcFsY
えっと Round ZERO 〜 WORM INVASIVEの最後の台詞がwikiで表示がおかしくなっています。
修正お願いします、

317 ◆LuuKRM2PEg:2011/04/04(月) 12:34:36 ID:Mmy0utjQ
>>316
修正致しました

318 ◆v8zfG6NkJs:2011/04/11(月) 18:45:05 ID:zOdurlQ.
これより一時投下します。

319 ◆v8zfG6NkJs:2011/04/11(月) 18:45:38 ID:zOdurlQ.
D―8エリア。
この殺し合いの場に設けられた一つの建物であり、園崎若菜らの家、園崎鄭。
ここでは五人の戦士が身を休めていた。
そしてその中の一人であるフィリップは部屋の中央でこの場に連れてこられるまでの事を思い出していた。

△▽

『左翔太郎はもう使い物にならない、これからはあなたたち二人でWになりなさい』


オールドドーパントとの戦いで老人と化してしまった翔太郎を戦力外とし彼女、シュラウドは僕たち二人にそう言い放った。


『あなた、まだそんなことを…』


怒りのような、呆れたような感情で自分は言う。


『フィリップのパートナーは左以外有り得ない』


照井竜がそう続ける。


『それでは究極のWになれない』


その瞬間僕は自分の耳を疑った。


『究極のW?』


思わずそう聞き返す。


『サイクロンアクセルエクストリーム、そのパワーの源は強い憎しみ』


そう告げて彼女は立ち去った。
だが自分たちも憎しみの力が必要となる究極のWになる気は起きず…。


『見ておけシュラウド、俺はWではなく、仮面ライダー…アクセルだ!』


――トライアル!マキシマムドライブ!――

△▽

そうしてメモリは破壊され、翔太郎も元の姿に戻ることができた。
今も翔太郎以外の人間とWになる気は毛頭ないが、こんな戦場だ、もしかしたらということもありうる。

(いや、翔太郎も頑張っているはずだ、僕が諦めてどうする)

そうだ、あの時も自分たちは戻れたじゃないかいつもの平和な鳴海探偵事務所に。
しかしあの時、安心し安堵の言葉をもらした瞬間、ここに連れてこられたということである。
自分は何としてもあの事務所に帰らなければならない。
無論そのために人の命を奪うようなことはしない。
大ショッカーを倒し、皆で無事元の世界に帰るのだ。

そう強い決意を心に抱いた瞬間肩を叩かれた。

320蘇るM/信頼 ◆v8zfG6NkJs:2011/04/11(月) 18:46:35 ID:zOdurlQ.

「フィリップ君、何か考え事?」

五代さんだ、その顔にあふれる笑顔は先程まであんなに激しい戦いをしていた者の物とは思えないほど輝いていた。

「えぇ、まぁ、それより五代さんの怪我の方は大丈夫なんですか?」
「うん、1,2時間寝たからね、もうぴんっぴんだよ」

陽気な動作を交えながら五代さんが言う。
だがフィリップは知っていた、あの戦いの傷が1,2時間休んだ程度で治らないことを。
そしてフィリップは知らなかった、五代雄介という人間の体内にはアマダムという古代のアイテムが埋めこまれていて、常人をはるかに超える回復力を誇ることを。
そんな時、他の部屋に何かないかと探しに行っていた海東さんと草加さんが帰ってきた。

「お疲れ様です、何か使えそうなものありました?」
「いいや、こんな広いお屋敷回って使えそうなものはこれだけさ」

ドンという音とともにテーブルに置かれるのは大きな救急箱。
その大きさからするとかなりいろんなものが入っていそうだ。

「よかった、これであの人治療できますね」

五代の言うあの人とは先程の戦いで倒れていた名も知らぬ青年である。
立ち上がろうとする五代に対し、

「五代さんは休んでいてください、僕が行ってきます」
「ありがとう、フィリップ君」

そう答え自分が立ちあがった。
『彼』は今自分たちがいる部屋とは違う部屋のベッドで寝かせられている。
そしてキィという音を立てながらドアを開き、中に入った。
そのままベッドに近づき毛布を剥ぐと突然頬を殴られた。

「おい、貴様は何者だ、デッキは…北岡はどうした」

起きていたのか、そう思う暇もなく彼は疑問をぶつけてきた。
デッキというものが何なのかはよく分からなかったが北岡というのは一緒にいた人間のことだろう。
それならば知っている、最も最悪の結果としてだが。
同伴者の死を聞いて彼がどんな反応を示すかは分からない、しかし言わなかったところで何か事が前進するわけでもない。

「デッキ…というのが何なのかは分かりませんが、北岡っていうのは人物名ですよね?だったら知ってます」
「…死んだか」
「彼は死…え?」

321蘇るM/信頼 ◆v8zfG6NkJs:2011/04/11(月) 18:47:55 ID:zOdurlQ.

「まぁ、どっちが死んでも可笑しくなかったしな、それよりデッキはどうした」

そう淡々と答えるその男にフィリップは思わず身構える。
同伴者が死んだと知らされたのにここまで冷静にいられるというのは一種危ない人なのかとも思ってしまう。
しかしその時騒ぎを聞きつけてきたであろう草加さんがそこに立っていた。

「デッキっていうのはこれのことかなぁ?」

そう言う彼の手の内に収められているのは恐らく数枚のカードが入ったカードデッキ。

「それだ、早く返せ」
「駄目だ、君が信用に足る人物だと分かるまではこれは返せない、それとも俺たちと戦うかい?」

そう言いながら草加は挑戦的な眼差しで『彼』、秋山蓮を見ていた。
秋山からしても確かに自分がその立場ならそうしただろう。
デッキがない今、秋山はほぼ無力な人間だ。
無理に急いで返り討ちにあうのは目に見えていた。
故に彼がとった行動は。

「無理に戦う気はない」

状況は不利の為、戦う気は起きなかった。
しかし、全く持って戦う気がないわけはない、何としても自分の世界を優勝に導くため、今は演技を続ける。
隙を見出し、デッキを取り返せば、自分にも勝機がある。
そのためにも今は我慢だ。
この考えが今自分のデッキを持っている草加雅人と同じものとは彼はまだ知らない。

「そう、それはよかった、それより君の名前は何なのか聞いてもいいかな?」
「秋山…蓮」
「そうですか、それじゃ秋山さん向こうに僕の仲間がいるのでそちらに移動しましょうか」

言いながらフィリップはドアを開き移動した。
その背中を見ながら草加はデイパックの中の自分の支給品を確認する。
カイザドライバーについているのはブレイガンとカイザショット、中にカイザの武器の一つであるカイザポインターが入っていなかったが恐らく大ショッカーが仕組んだのだろうと考え別段気にしていない。
だが今はそれを特筆するべきではない。
彼が気にしているのはカイザドライバーとは違う白いドライバー。
白、といっても彼の知っているデルタドライバーではない。

(これは何だ?スマートブレイン製のベルトは三つしかなかったんじゃ?)

彼の知らない『555の世界』で彼、草加雅人を葬ったサイガのベルト、それが彼に支給されたものだった。
しかし、そんなことこの草加雅人は知らない。
だが、己の力になるならば細かいことは考えずその力を利用させてもらうだけ、『555の世界』を、真理を救うために。

(待っていてくれ真理、今に君を救うから)

歪んだ考えのまま、草加雅人は行く。
他世界の人間を殺すための演技をするために。

322 ◆v8zfG6NkJs:2011/04/11(月) 18:49:26 ID:zOdurlQ.



「やぁこんにちは秋山君、歓迎するよ」

そう言い、大袈裟な動作で新しい仲間である彼、秋山蓮を迎え入れながら海東は思考していた。
先程の戦いのときに感じた一種の違和感。
この屋敷に来てから自分の持っているカードを確かめていると、なんとカメンライドのカードがディエンドの物しかなかったのだ。
それにアタックライドのカードもイリュージョン、インビジブルの物がなく明らかに不足していた。
さっきの戦いを見ても分かる通りカメンライド、及びインビジブルのカードがなければ彼、仮面ライダーディエンドの能力はほとんど失われたと考えていい。

(まぁでもここに来て少し取り戻せたからよしとするか)

そう、先程秋山をベッドに運ぶ際一瞬彼を触る機会があった。
その瞬間彼は磨き抜かれた盗みのテクニックで誰にも気付かれることなく秋山のデイパックから数枚のカードを抜きとった。
しかし安心してほしい、彼が盗んだのは元々自分の物であるライダーカードである。

(どうやら、龍騎の世界のライダーのカードセットみたいだね)

そう、彼が取り戻したのは他でもない秋山の世界である龍騎の世界のライダー達の力が込められたカードだったのだ。
ライア、ガイ、王蛇、ファム、シザースの五枚。
これだけあれば次の戦闘時には手数には困らないだろう。
そんなことを考えつつ支給品を頂戴したことも知らせずに笑顔で秋山を迎える世界の大泥棒、海東大樹の姿がそこにあった。



「それじゃ、秋山さんも起きたことですし、この屋敷から離れましょうか」

フィリップは少し暗くなり始めた空を見ながらそう言った。
確かにここにいれば雨や寒さを凌げるがそこを敵に襲われれば外よりも対応が鈍くなる。
しかし、そんな時だった。

「ごめんね、どうもこのお屋敷は怪しい気がするんだ、僕はまだここで探検ごっこでもさせてもらおうかな」

そう言いながら部屋を出ていく海東さんの言葉にフィリップは何かを感じた。
言い知れない感覚、もしかしたら海東さんの言う怪しい気というのがもし園崎来人に関することであるならば、そう思った瞬間彼は海東を追いかけていた。
人が自分以外に二人という状況は草加にとってうってつけの状況だったが、五代雄介という人間の力の大きさからして、真正面から当たっても敗北するのが落ちだろう。
それならば先程の戦い以上の激しい戦いで傷ついた時まで待って、その時に殺せばいい、そう考え、草加は思考をやめた。
そして部屋には五代と草加と秋山だけが残り部屋には沈黙が続いた。

【1日目 夕方】
【D―8 園崎鄭】

【五代雄介@仮面ライダークウガ】
【時間軸】第46話終了後
【状態】健康
【装備】アマダム@仮面ライダークウガ
【道具】支給品一式、不明支給品1〜3
【思考・状況】
0:フィリップ君たちを待つ。
1:人々の笑顔を守る。
2:みんなと共に行動する。
3:一条さんと合流したい。
4:仮面ライダーとは何だろう?
【備考】
※支給品はまだ確認していません

323蘇るM/信頼 ◆v8zfG6NkJs:2011/04/11(月) 18:50:18 ID:zOdurlQ.
【草加雅人@仮面ライダー555】
【時間軸】原作中盤以降
【状態】健康、
【装備】カイザドライバー@仮面ライダー555、カイザブレイガン@仮面ライダー555、カイザショット@仮面ライダー555、サイガドライバー@劇場版 仮面ライダー555パラダイスロスト、ナイトのデッキ@仮面ライダー龍騎
【道具】支給品一式、首輪(北岡)、不明支給品1
【思考・状況】
1:真理の居る世界を守る為に、555の世界を優勝させる。
2:勝ち残る為にも今は演技を続けるが、隙があれば異世界の参加者は殺す。
3:真理を殺した奴を見付け出し、この手で殺す。
4:出来る限り、戦いは他の奴に任せる。
5:蓮を警戒。

【秋山蓮@仮面ライダー龍騎】
【時間軸】第34話終了後
【状態】疲労(中)、ダメージ(小)
【装備】無し
【道具】支給品一式
【思考・状況】
1:デッキを返してもらうため今は演技をする。
2:自分の世界のために他世界の人間を倒す。
3:協力できるなら、同じ世界の人間と協力したい。
4:同じ世界の人間を捜す(城戸優先)。浅倉とは会いたくない。
5:協力者と決着をつけるのは元の世界に帰ってから。
【備考】
※ サバイブのカードは没収されています(蓮は気づいていない)。

324蘇るM/信頼 ◆v8zfG6NkJs:2011/04/11(月) 18:51:30 ID:zOdurlQ.


「ここだ、やっぱりこの屋敷、危ない感じがするね」

隠し扉を開け、エレベーターが自分たちの前に姿を現す。
正直言って恐ろしかったが、ここまで来て後戻りはできないと覚悟を決め、エレベーターに乗り込む。
一つしかないボタンを押し、エレベータはそのまま地下に止まった。
そこには、暗い洞窟が広がっていた。
そして、その洞窟の中央にある緑色の井戸のようなものを見た瞬間、フィリップの脳裏に一つのビジョンが蘇ってきた。

――12年前、幼い自分が足を滑らせあの井戸に落ち死んだこと――
――その後自分は地球に選ばれ生き返ったこと――
――そして園崎来人としての全ての記憶――

「僕は、僕は死んでたんだ…」

それらすべてを思い出した時、彼は両膝を地面に落とし、泣き続けた。
海東はそれをずっと見つめていた。
彼が泣きやむまでずっと。
しかし、自分の驚くべき真実を知ってしまったフィリップが立ち直るのは、また別の話。

【海東大樹@仮面ライダーディケイド】
【時間軸】最終話終了後
【状態】疲労(小)、
【装備】ディエンドライバー@仮面ライダーディケイド、カメンライドカードセット(龍騎)@仮面ライダーディケイド
【道具】支給品一式、不明支給品1〜3(確認済み)
【思考・状況】
0:お宝を守る。
1:殺し合いに乗った奴の邪魔をする。
2:五代雄介、草加雅人、フィリップ、秋山蓮と共に行動
3:五代雄介の知り合いと合流
4:知らない世界はまだあるようだ
5:蓮を警戒
【備考】
※クウガの世界が別にあることを知りました。
※カメンライドカードセットの中身はカメンライドシザース、ガイ、ライア、王蛇、ファム(全てディエンド用)です。

【フィリップ@仮面ライダーW】
【時間軸】本編第44話終了後
【状態】健康 、深い悲しみ
【装備】無し
【道具】支給品一式、ファングメモリ@仮面ライダーW、バットショット@仮面ライダーW、ダブルドライバー+ガイアメモリ(サイクロン)@仮面ライダーW
【思考・状況】
1:僕は死んでたんだ…。
2:翔太郎以外とWになることは考えたくない。
3:大ショッカーは信用しない。
4:出来ればここに居る皆と情報を交換したい。
5:草加雅人は完全に信用しない方が良い。
6:真理を殺したのは白い化け物。
【備考】
※支給品の最後の一つはダブルドライバーでした。
※バットショットにアルビノジョーカーの鮮明な画像を保存しています。

325 ◆v8zfG6NkJs:2011/04/11(月) 18:53:18 ID:zOdurlQ.
以上で一時投下終了です。
ところどころタイトルが抜けていますがこちらのミスで全て『蘇るM/信頼』です。
感想、修正点などありましたらお願いします。

326二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/04/11(月) 20:11:12 ID:cIXoJZbU
投下乙です
しかし、若干気になる点が見られました

>「えぇ、まぁ、それより五代さんの怪我の方は大丈夫なんですか?」
>「五代さんは休んでいてください、僕が行ってきます」
>「デッキ…というのが何なのかは分かりませんが、北岡っていうのは人物名ですよね?だったら知ってます」
フィリップは「究極の幕開け」において
五代さんの事を「雄介」と呼んでおりました
そしてフィリップは、本編中であまり敬語を使っていません
例え相手が、知らない人物だとしても
あと「園崎鄭」は「園咲邸」の間違いではないでしょうか?

327二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/04/11(月) 20:32:11 ID:AXLzhXC6
大筋に関しては目に見えて酷い点はない。が、細かい点だが気になった点があった。

●キング戦のダメージが回復し過ぎている。

前作『究極の幕開け』において五代、海東、蓮は何れも状態表では疲労(大)、ダメージ(大)になっていたが、
今作終了時には五代が健康、海東が疲労(小)、蓮は疲労(中)、ダメージ(小)になっていた。
体内にアマダムを埋め込んだ五代はまだ良い(ただ、個人的にはそれでも回復力が強すぎる気もするが)が、普通の人間である海東と蓮がそこまで回復するのは些か奇妙な気がする。
大きな救急箱とはいえ普通の救急箱ではそこまで回復はしないだろう。
更に言えば、色々動く海東と基本気絶し動けない蓮を比較して海東の方が回復する理由がよくわからない。

参考までに彼等と戦ったファンガイアであるキングもダメージ(大)、疲労(大)になっていたが、彼は『加速度円舞曲』では(中)までしか回復していない。

細かい点なのは重々承知しているが何故そこまで急激に回復させたのだろうか? その辺の氏の意見を伺いたいのだが?

前にゴオマを退場させた(あるいは全ての道具を捨てさせた)SSの時同様、氏のSSは前のSSの状態を蔑ろにして対主催に異常に優しく、マーダーに異常に厳しい展開をさせる傾向がある。
(個人的には海東に龍騎系のカードを入手させたのもその狙いが透けてみえるものの、一応有り得ない流れではないので此方に関しては指摘はしない。)
穿った読みだとは思うがこの調子のSSを今後も展開される懸念があるため指摘させて頂く。

ライダーの愛とか偉そうに語った所で、独りよがりの愛情は愛情ではない。撤退詐欺に自演まがいの別トリ予約している様な人物が口で愛とか語られても説得力など皆無だ。

それから、>>326でも指摘されており個人的に疑問だったのだが、場所表記の『園崎鄭』の『鄭』をわざわざ難しい漢字で使った理由がよくわからない。他のSSに倣って『邸』で良かったのではないか? 原作でも『園崎鄭』だったか?
わざわざ難しい漢字を使って知的なSSにしたいとしか思えないのだが。

328二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/04/11(月) 21:36:16 ID:pRegKpDA
投下乙です。
一つ気になった点を挙げると、海東の入手したライダーカードが5枚は多すぎる気がしました。
今の時点で海東には協力者もいるのでカードは1,2枚でもいいのでは。

329 ◆MiRaiTlHUI:2011/05/01(日) 18:25:39 ID:Wlpqlfk6
本スレ>>679の挿げ替えに当たる修正稿をこちらに投下しておきます。
確認の方よろしくお願いいたします。

/////////////////////////////////////////////////////////////////////

 目の前に広がる光景を見るや、背筋が凍りつく様な悪寒を覚えた。
 人の死の瞬間……或いは、人の死体を見たことが無い訳ではない。
 だけど、これはただの死体ではない。余りにも惨過ぎる、惨殺死体だ。
 遺体の頭蓋骨に当たる部分は、最早原形すら残していない。
 周囲にぶち撒けられている赤黒いモノは、この男の頭を形成していた器官。
 脳だったものとか、肉だったものとか、そんなものが滅茶苦茶になって飛散していた。
 例えどんな理由があったとしても、ここまで“壊す”必要性など無い筈だった。
 津上翔一の胸中で、目の前の現実に対しての義憤が渦を巻く。

「一体どうして、こんな事に……!」

 理不尽なまでの暴力の爪痕に、翔一は拳を握り締め、絶叫した。
 先程までキバットが居た病室の、突き破られた硝子から下を覗き込めば、この遺体はすぐに視界に入った。
 当然、こんな滅茶苦茶なまでの惨殺死体を発見した翔一が、それを無視する事など出来よう筈もない。
 キバットを引き連れた翔一は、真っ先に病院を飛び出して、遺体の元まで走って来たのだ。

「普通に考えれば、あのアギトの男がやったと考えるのが妥当だろうな」
「何ですそれ……なんでそうなるんですか!」

 憤りを隠す事すらせずに、翔一はキバットに向かって叫んだ。

「病室の真下だ。どう考えてもこいつがアギトの男を襲い、返り討ちにあったとしか考えられん」
「それは確かに、そうかもしれませんけどっ……」

 頭では理解出来ても、心は納得していなかった。
 当然だ。良かれと思って救った命が、他者の命を奪ったと聞いて、喜べる訳が無い。
 そんな翔一に対するキバットの返事には、少なからず糾弾の色が含まれて居た。

「何故最初に出会った時、あの男が殺し合いに乗って居ると考えなかった」
「……まだあの人が殺し合いに乗ったと決まった訳じゃないじゃないですか!」
「これを見てもまだそう言えるのか?」

 翔一の視界に、徹底的に叩き潰された男の遺体が入る。
 キバットの言いたい事は解る。ただ暴走しているだけなら、こんな殺し方はしない。
 これを見るに、暴走というよりも明確な意思を持っての蹂躙と考える方が自然だ。
 頭だけがこうも執拗に潰されるなど、よっぽどの悪意がなければそうそうあり得ないからだ。
 だが、だとすればそれは自分の責でもある。
 殺された男が殺し合いに乗って居たからいい、なんて言い訳は通用しない。
 事実として、自分が助けた男がこの理不尽な殺戮を行った可能性が高いのだ。

「もしもあの人が人を殺す事を楽しんで居るのなら……その時は、俺があの人を止めてみせます」

 決意を胸に、拳を握り締める。
 それが、せめてもの責任の取り方だと思うから。
 だけど、まだそうと決まった訳ではないのはせめてもの救いか。
 出来る事なら、自分が助けた男は殺し合いに乗った化け物などではないと信じたい。
 ともすれば、全てが手遅れになる前に、何としてもあの男を見付けなければならないのだ。

「そうか。ならば俺はお前の覚悟を見届けさせて貰う」
「ありがとうございます。それじゃあ、急ぎましょうか……早くあの人を見付けないと!」

 遺体を放置するのは少し気が重たい、今は一刻を争う。
 殺し合いに乗って居るにせよ暴走中にせよ、早急に彼を見付けねばならない事に変わりはないのだ。
 病院を出て、市街地の街並みの中へ消えて行く翔一を追いかけるように、キバットもまた羽ばたくのだった。

330 ◆MiRaiTlHUI:2011/05/02(月) 01:25:17 ID:N/LEzkt.
続けて、変身制限に対する小沢の反応と、それに伴う状態表の変化をこちらに投下します。

 
「あ、あれっ!?」

 次に声を発したのは、アギトだった。
 未確認の男と相対するアギトが、その変身を解除したのだ。
 否。解除したと言うよりも、身体を覆う灼熱が、勝手に抜け落ちたと言うべきか。
 それもこの会場に掛けられた変身制限によるものだろうが、今はタイミングが悪すぎる。
 人間としての姿を晒す津上翔一は、最早戦う力などは持たない一般人同然なのだ。
 狼狽した様子の津上翔一に、未確認の男は一足跳びに跳び掛かった。

「クウガッ! クウガァァァッ!」
「な……っ!?」

 飛び込んだ未確認の男が、翔一の首を掴んで、持ち上げる。
 その腕に力を込めて、ギリギリと締め上げ――翔一の命を奪わんとする。
 流石に戦闘直後、しかも完全な不意打ちとあっては、翔一も十全たる力は発揮できない。
 苦痛に悶えながら、何とか未確認の腕から逃れようと、何度も男の身体を蹴る。
 
「城戸君!」
「駄目だ、俺ももう変身出来ない!」

 見れば、城戸真司も既に龍騎の変身を解除されていた。
 こっちも制限による強制変身解除が訪れたのだろうと判断するや、心中で舌を打つ。
 後から変身したアギトと殆ど同じタイミングでの変身解除というのが些か不可解だが。
 何はともあれ、龍騎に変身出来ない真司などは、最早自分と同じ完全な一般人だ。
 恐らく肉弾戦でも一般人よりも圧倒的に強いであろう未確認には太刀打ち出来まい。
 ならばどうする。今まさに散らんとしている翔一を救う手段は――

331 ◆MiRaiTlHUI:2011/05/02(月) 01:27:28 ID:N/LEzkt.
 

【1日目 夕方】
【E−2 住宅街】


【城戸真司@仮面ライダー龍騎】
【時間軸】劇場版 霧島とお好み焼を食べた後
【状態】健康、疲労(中)、罪悪感、仮面ライダー龍騎に二時間変身不可
【装備】龍騎のデッキ@仮面ライダー龍騎
【道具】支給品一式、優衣のてるてる坊主@仮面ライダー龍騎
【思考・状況】
基本行動方針:打倒大ショッカー、絶対に戦いを止める。
0:人の死による不快感
1:今は小沢に着いて行く
2:ヒビキが心配
3:蓮、霧島、北岡にアビスのことを伝える
【備考】
※支給品のトランプを使えるライダーが居る事に気付きました。
※アビスこそが「現われていないライダー」だと誤解しています。
※アギトの世界について認識しました。


【小沢澄子@仮面ライダーアギト】
【時間軸】本編終盤(第46話終了後以降)
【状態】健康、疲労(中)、不快感、仮面ライダーアビスに二時間変身不可
【装備】コルト・パイソン+神経断裂弾(弾数0)@仮面ライダークウガ、アビスのデッキ@仮面ライダーディケイド
【道具】支給品一式×4、トリガーメモリ@仮面ライダーW、ガルルセイバー(胸像モード)@仮面ライダーキバ
    レンゲルバックル@仮面ライダー剣、ラウズカード(クラブA〜10、ハート7〜K、スペードの7,8,10〜K)@仮面ライダー剣
    ゴオマの不明支給品0〜1、三原の不明支給品(0〜1)
【思考・状況】
基本行動方針:打倒大ショッカー、殺し合いを止める。
1:今は休める場所を探し、二人を落ち着かせる
2:真司と翔一の二人と情報の共有を図りたい
3:何故後から変身したアギトが龍騎と同じタイミングで変身解除されたのか……?
【備考】
※真司の支給品のトランプを使うライダーが居る事に気付きました。
※龍騎の世界について大まかに把握しました。


【津上翔一@仮面ライダーアギト】
【時間軸】本編終了後
【状態】健康、疲労(中)、罪悪感、仮面ライダーアギトに二時間変身不可
【装備】なし
【道具】支給品一式、コックコート@仮面ライダーアギト、ケータロス@仮面ライダー電王、
    ふうと君キーホルダー@仮面ライダーW、キバットバットⅡ世@仮面ライダーキバ、医療箱@現実
【思考・状況】
基本行動方針:打倒大ショッカー、殺し合いはさせない。
0:自分の行動がゴオマの殺人に繋がった事による罪悪感
1:今は小沢さんに着いて行く
2:落ち着いたら、小沢さんや城戸さんと情報交換がしたい
3:大ショッカー、世界崩壊についての知識、情報を知る人物との接触
4:木野さんと会ったらどうしよう?
5:何故突然変身を解除されたのだろう?
【備考】
※ふうと君キーホルダーはデイバッグに取り付けられています。
※響鬼の世界についての基本的な情報を得ました。
※医療箱の中には、飲み薬、塗り薬、抗生物質、包帯、消毒薬、ギブスと様々な道具が入っています。

332 ◆MiRaiTlHUI:2011/05/02(月) 01:32:12 ID:N/LEzkt.
これで指摘された該当部分はクリアしたかと思います。
もしもまだ不備があるようなら、続けて指摘して下さると助かります。
また、拙作が通しと認められた場合は、修正稿も含めたwiki収録となると
他の方にとっては色々と面倒かと思いますので、私の方で収録しておこうと思います。
それでは、確認の程を宜しくお願い致します。

333二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/05/02(月) 08:17:18 ID:1ObkwZbY
修正乙です
これなら通しで問題ないと思います

334 ◆LuuKRM2PEg:2011/05/14(土) 07:59:18 ID:hVu5jmCg
先日、本スレに投下した「草加雅人 の 仮面」で書いた
エターナルの制限に関してですが
他書き手氏より意見がありましたので、一部修正させていただきます





仮面ライダーエターナル。
それは、かつて風都全域を震撼させたテロリスト集団NEVERのリーダー、大道克己のもう一つの姿。
凄まじい戦闘能力を誇るが、この戦いではある制限が架せられている。
『永遠の記憶』を宿したガイアメモリ、エターナルメモリの力を解放したときに使える必殺技、エターナルレクイエム。
その範囲が、この世界では一エリア分しか届かない事。
そして、その効力も一時間までしか持たないが、草加はそれを知らない。





【エターナルの制限】
※エターナルレクイエムの効果は、同じエリアに存在するガイアメモリにしか届きません。
※また、その効果が持続するのは一時間だけです。

335いつも心に太陽を(本スレ>>726修正版) ◆7pf62HiyTE:2011/05/20(金) 01:56:11 ID:kuLlePTQ
本スレで指摘のあった部分を修正したものを投下します。以下は本スレ>>726の差し替えとなります。
とりあえずこれで問題点は解消されたと思いますがどうでしょうか?


▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


 その自身が選んだ行動により望まぬ結果を突き付けられる事もあるだろう。
 その先に辛い事や苦しい事は数多く待っているのだろう。
 真司自身も何度と無く迷う事もあるだろう。


 それでも根底にある本質――『願い』は決して揺るがない。


 他者から見れば愚かであろうとも、誤りであろうともそんな事は問題ではない。


 真司自身が長い長い戦いの果てに辿り着いた事なのだから――


「城戸さん……ありがとうございます」

 翔一が少し笑みを浮かべ真司に応えた――

「翔一、名簿を出してくれ」

 ――その流れを断ち切るかの如くキバットが口にする。

「何なんだいきなり……」
「キバット、急に何で……」
「少し気になる事があってな」

 と、翔一の出した名簿を確認する。
 キバットが気になったのは未確認の存在だ。詳しい事は知らないが恐らく自身の世界におけるファンガイアに相当する存在と考えて良い。
 基本的に戦いに関わる気は無い為、知ろうが知るまいがどうでも良いとも言える。
 とはいえこの戦いには一応真夜のいる世界が懸かっている。
 流れがどうなるか不明瞭ではあるし現状自身がやる事など殆ど無いわけだが、このまま未確認を野放しにするわけにもいかない。
 把握出来る所は把握しておくべきだろう。
 何よりこのまま大ショッカーの思惑通りにいくのは気に入らない、それがキバットの本心だ。

「(音也や渡、それにキングの位置関係から同じ世界の連中は固まって書かれているのは明白。そして、未確認は翔一の世界からの参加者……つまり翔一の近くに未確認の名前が書かれている)」

 勿論、普通に考えれば名前を見ただけでは誰が誰かなどわからない。しかし、

「(連中の言動から考え、奴等は人間とは違う文化形態を持っている……名前に関してもな)」

 突然だがここで名前に関しての解説をしよう。
 翔一達がアンノウンと呼ぶ異形の存在だがそれはあくまでも警察側が付けた呼称でしかない。
 彼等にはそれらとは別にちゃんとした名前がある。もっともそれが触れられる事は基本的に無いわけだが。
 また、キバットの世界に存在するファンガイアもそれぞれが固有の呼び名である真名を持っている。
 例えば真夜は『冷厳なる女鍋の血族』、キングは『暁が眠る、素晴らしき物語の果て』という真名を持っている。
 我々人間からすれば明らかに異質ではあるがそれが彼等の文化形態である以上とやかく言う事では無いだろう。
 閑話休題、つまり未確認生命体が人間達と違う文化を形成しているのであれば当然名前に関しても人間社会からは考え付かない様なものになっていても不思議ではないという事だ。

「(ズ・ゴオマ・グにゴ・ガドル・バ、そしてン・ダグバ・ゼバ……この特徴的な名前と翔一との位置関係から見て奴等が未確認と考えて良い。
 ――だが、どういう事だ? 近くと言えば近くだが微妙に離れているのが引っかかるが……)」

 キバットの推測通り、翔一や小沢の比較的近くにゴオマ達の名前は描かれている。
 しかし厳密に言えば翔一達のグループとゴオマ達のグループの間は行が空いている。近くのグループと言えば近くではあるが引っかかりが感じる。

「(だが、翔一の周囲の連中は皆知り合いらしい……それ以外にも未確認がいるとなると、少し離れた所に書かれている連中も翔一の世界の連中と考えるべきか?)」

 しかし、前に『アギト』についての話を聞く際に翔一のグループに書かれている連中が翔一の知り合いである事は把握済み。
 それ以外に翔一の世界の連中がいるとなると近くのグループという事になるだろうが――

「(仮にそうだとして、その内の1人が死んだ時点で……)」
「おい、どうしたんだよ……」
「まだ確証があるわけではない……静かにしろ」
「キバット、俺達に関係がある事だったら俺達も知るべきじゃ……」
「一理あるな……いいだろう。だが、長々と説明する気はない。結論だけ言うぞ――」

336二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/05/20(金) 16:35:59 ID:umoX205M
修正乙です
これなら問題はないと思います

337 ◆LuuKRM2PEg:2011/05/20(金) 22:10:09 ID:.uOvtuRQ
えっと、先日投下した「草加雅人 の 仮面」を読み直してみたのですが
状態表の位置に【C−8 道路】 と書いてしまったのですが
この場所に道路はなかったので
【D−8 道路】と修正しても大丈夫でしょうか?

338二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/05/27(金) 18:06:55 ID:8ZPFJMTI
Mirai氏の魔王新生 ルーツ・オブ・ザ・キングを見ましたがキングの死亡時に首輪はどうなりましたでしょうか。
そこの描写がなかったので気になりましたので。

339 ◆MiRaiTlHUI:2011/05/27(金) 19:14:21 ID:AfxcDIsw
すみません、私自身、キングの首輪については完全に失念しておりました。
描写の追加をしようかとも考えたのですが、仮に首輪が残っていたとして、殺し合いに乗った渡が
それをわざわざ回収するのもどうかと思いましたので、首輪の有無についてはあえて描写しない方向で行こうかと思います。
首輪が残されているにしろ消滅しているにしろ、次以降にリレーして下さる書き手さんに一任するという形で自由度を残しておこうかと。

というのもメタ的な話になってしまいますが、実は拙作をまとめに収録する際、一度容量オーバーで弾かれてしまいまして。
どうしたものかと考えたのですが、本当に微妙な、それこそ余計な地の分や改行を削れば何とか収まるレベルでしたので、
これは4分割にするまでもないと判断し、作品自体を推敲し直した上で、余計な描写を削って文章を纏め直したのが現状の収録分なのです。
既に一行、一文字単位で文章を削り、後は次以降のSSへのリンクを入れたら容量的にもギリギリかな?というレベルですので、
どうしても「絶対に首輪の有無の描写が必要だ」と仰るのであれば此方もまた編集など考えますが、
そうでないなら出来れば現状維持で……というのが裏手の事情(というよりも私の本音)で御座います。

340二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/06/03(金) 17:09:45 ID:LqdkiCvw
1つ気になった事があるので指摘します。
『悪の組織は永遠に』にてネガタロスの支給品を全てネガタロスが回収したとありますが、基本支給品の数が2つになっていません。
『綺想曲♭もう一人のカブトと音也』で『改めて『彼』は自身のデイパックと鬼が持っていたデイパックの中身を確認する。』という記述もありましたし、大筋に影響があるわけではないので、擬態天道の支給品欄の所を、
『基本支給品』→『基本支給品×2』に修正した方が良いと思いますがどうでしょうか?

341二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/06/03(金) 17:11:54 ID:/OA3527A
個人的には、問題ないと思います
他の皆様が問題なければですが

342二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/06/03(金) 21:07:38 ID:EIAc4i5k
どうせ誰も使わないしな…
食糧とかも一人分あれば充分足りるし

343 ◆7pf62HiyTE:2011/06/04(土) 14:03:53 ID:m/YyV.xE
トリ付きで発言です。自分は修正する方向で問題ないと思います。

344 ◆MiRaiTlHUI:2011/06/07(火) 11:12:19 ID:B/EEJHyQ
遅れてしまって申し訳ありません。
修正する事に関しては賛成です。今ならまだ修正箇所も少なく済みますので。
また、指摘されたメタルメモリの描写部分の修正稿をこちらに投下しておきます。

////////////////////////////////////////////////////////////

 




 アスファルトには、人間一人分の量に相当する灰燼が降り積もって居た。
 最初は蒼い炎がめらめらと燃え残って居たが、それもすぐに燃え尽きてしまった。
 よほど高熱だったのだろう。凄まじい勢いで、身体の全てを燃やし尽くして逝ったのだ。
 命を、魂を、そして身体すらも燃やして戦った男は、確かに強かった。
 この破壊のカリスマに打ち勝ったのだから、それは間違いない。

 しかし、ゴ・ガドル・バは死んではいない。
 この身体も、痛みはするが大きな問題は無い。
 少し休めば、また問題なく戦う事が出来るだろう。
 だけれども、ガドルがその心(プライド)に負った傷は、大きい。
 何せ、ガドルは敗れたのだ。弱者だと侮って居た仮面ライダーに、完全敗北したのだ。
 最後の瞬間だって、既にアームズドーパントの変身は解けて、後は死を待つだけだった。
 強き戦士と真っ向から戦い、散る事が出来るのであれば、それも悪くはない、と。
 例え一瞬であっても、ガドルはそう思ってしまったのだ。

 だけれども、サイガの最後の一撃は、ガドルには届かなかった。
 圧倒的な熱量を迸らせたブレードが、この首を掻き切ろうとした、その瞬間。
 あと、ほんの数ミリでその攻撃は届いていたにも関わらず――サイガは、灰化した。
 まず最初に、脚ががくんと崩れて灰になった。次に腕が、胴が灰になって、燃え尽きた。
 白い仮面と、全身の装甲から夥しい量の灰が零れ落ちて、サイガは散ったのだ。
 下らない死に方であるが、しかし、ガドルはそんな彼を笑おうとは思わなかった。

「見事だったぞ、仮面ライダー」

 ガドルは彼を、真の仮面ライダーであると認めた。
 というよりも、認めざるを得ない、と云った方が正しいか。
 結果はどうあれ、勝利したのは自分ではなく、仮面ライダーだ。
 歴戦の勇士たるガドルに打ち勝ったのは、正義の仮面ライダーなのだ。
 なれば、その実力を認めない訳には行かない。情けない負け惜しみを言うつもりもない。
 名も知らぬ男は、最期まで仮面ライダーとして戦い、仮面ライダーとして気高く散った。
 彼は喜びはしないだろうが、彼こそが、真の戦士と名乗るに相応しいのだと、ガドルは思う。
 そんな事を考えて、ガドルは眼前の灰燼の中から、燃え残ったベルトの破片と、銀のメモリを拾い上げた。
 ガイアメモリは直接装着していた訳ではないからか、燃えずに灰の中に埋もれたままだった。
 それの有用性を知っているガドルは、ガイアメモリをポケットに入れて、次にベルトを見る。

「……もう、使い物にならんか」

 焼け付いたサイガのベルトはもう、原形を留めてはいなかった。
 中央の携帯電話は、表面はどろどろに溶けて、中身も所々が焼け付いて黒や茶色に変色していた。
 しかし、別に構わないだろうと思う。恐らく、彼以上にこのベルトを使いこなす男はいないだろうから。
 名も知らぬ彼だけが、仮面ライダーサイガとして最高のポテンシャルを引き出す事が出来たのだと思う。
 正直、彼がサイガギアを使いこなせるかどうかは、賭けだったが、今にして思えば、そう確信が持てる。
 サイガギアは、彼が当初使っていたベルトや、先程戦った狼の男が使っていたベルトと似ていた。
 その上で、蛇の男も、狼の男も、怪人態が似た様な姿をしていた事が、決定的な判断材料だった。
 そして、弱者だと思っていた蛇の男は、揺るぎなき強さを持った仮面ライダーであったと、今は思う。
 少なくとも、自分に勝利した男が、ただの弱者であるなどとは思いたく無かった。

345 ◆LuuKRM2PEg:2011/06/09(木) 22:25:13 ID:yVfZq1Yk
先程、指摘を受けた点を修正します
また支給品の修正についても、自分は問題ありません。


「お二人がここに来る前に、三人で話をしたんです。これからの事について」
「へぇ、どんな話?」

 U良太郎は、興味ありげに訪ねる。

「このままここで待っていても、何も始まらないと思うんです。葦原涼さんも、もしかしたら危険に陥ってるかもしれませんし」
「……確かに、その可能性もあるかもしれないね」
「ですので、良太郎さん達が戻ってからみんなで向かって、それから鳴海亜樹子さんを説得しようと思うんです」

 柔らかな笑顔を向けながら、志村は語った。
 危険かもしれないが、待っていても何かが変わるわけではない。至極当然の事だった。

「まあ、せっかく五人も集まった所だしね」
「良いアイディアですね、私も賛成します」

 だから、二人も賛同する。
 こればかりは、志村の言い分の方が正しかったため。
 それを聞いた冴子は、内心で笑みを強めた。手駒を一気に、増やす事に成功する。
 油断する事は出来ないが、これならば戦いに陥っても不安は減るはずだ。
 そう思いながら冴子は立ち上がり、心配げな表情を浮かべるあきらに笑顔を向ける。

346 ◆LuuKRM2PEg:2011/06/09(木) 22:25:53 ID:yVfZq1Yk
続きます




 ホテルから出た一同は、固まって歩いている。襲撃者が現れても、すぐに対応出来るように。
 運転をしている志村は考えていた。先程良太郎が連れてきた女性、園崎冴子。
 彼女の言っていたガイアメモリには、見覚えがあった。数時間前に殺した井坂深紅朗。
 奴は怪人になる際に、ガイアメモリと思われる機械を使っていた。だとすると、あれも回収しておくべきだったかもしれない。
 しかし今更言ったところでもう遅かった。戻る事など出来るわけがないし、何者かが回収している可能性もある。

(まあいい……ガイアメモリに関する情報が手に入っただけでも良しとしよう。あれはまだこれから、手に入る可能性もある)

 ガイアメモリは村上も持っている事を考えれば、恐らく大半の参加者に配られているかもしれない。
 ならば、そいつから奪う事も出来る。いざとなれば、園崎冴子を殺してでもメモリを奪えばいい。
 それまでは、他の三人と一緒に利用させて貰おう。

(それよりも問題は、カテゴリーキングだな)

 志村は抱いているもう一つの懸念。
 それは名簿に書かれた、金居という名前。恐らく、かつてBOARDによって封印されたダイヤスートのキング、ギラファアンデッドの事かもしれない。
 同名の人物である可能性もあるが、大ショッカーの科学力ならラウズカードを持ち出す事も容易だろう。あるいは、封印される前から連れてきたか。
 どちらにせよ、警戒しなければならない。もしも遭遇する事になったら、どう対処すればいいか。
 奴が自分の存在を知っているにせよ知らないにせよ、ジョーカーである事は一瞬で知られかねない。取引を持ちかけるのも、一つの手かもしれないが通る相手かどうか。

(この金居という男が別人なら良いが、そう都合良くはいかないだろうな……)


 一方でU良太郎は、隣で歩くあきらを見守りながら、心の中で良太郎やキンタロスに意識を向けていた。

(ねえウラタロス、冴子さんは……牙王やあのゼロノスに襲われてただけじゃないかな?)
(そうや亀の字、志村という兄ちゃんだけでなく、あの姉ちゃんも疑っとるんか?)
(僕だって、出来るならレディーを疑いたくないよ……でも、油断は禁物だからね)

 ウラタロスとて、本心は二人と同じ。
 しかし、あきらと同じように心を許すわけにはいかなかった。
 村上や志村もそうだが、冴子は隙を見せてはいけない相手。
 あきらは恐らく信用してるかもしれないが。

「良太郎さん、大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」

 そのあきらは、自分を心配してくれている。
 だから彼女を心配させずに、他の三人の内面を上手く読まなければならない。

(そういや亀の字、あのあきらっちゅう嬢ちゃんはさっき服をやたら持っとったが、どないしたんや?)
(……キンタロス)
(キンちゃん、そこは触れないのがマナーだよ)

 良太郎とウラタロスは、半場呆れた様子で呟いた。
 初めて会った時は、あきらは全裸だった。恐らくそれが関連していて、ホテルから服を持ち出したのかもしない。
 彼らは知らないが『響鬼の世界』に存在する仮面ライダーは、変身を強制的に解除されると全裸になる。
 あきらはそれで、服をある程度持ち出したのだ。


 闇が増してきた道の中を歩きながら、村上は考えている。
 園崎冴子から聞かされた、ガイアメモリについて。

347 ◆LuuKRM2PEg:2011/06/09(木) 22:27:11 ID:yVfZq1Yk
最後に、締めと状態票の部分です。

 異世界より集められた人物達は、ひたすら進む。
 闇に包まれた、戦場の中を。
 大ショッカーの放送が始まるまで、時間はそう遠くなかった。



【1日目 夕方】
【B−6 平原】


【この五人の行動方針】
※現在、葦原涼と合流してから、亜樹子を探して説得しようと考えています。
※冴子から、ガイアメモリと『Wの世界』の人物に関する情報を得ました。
※ただし、ガイアメモリの毒性に関しては伏せられており、ミュージアムは『人類の繁栄のために動く組織』と嘘を流されています。


【志村純一@仮面ライダー剣MISSING ACE】
【時間軸】不明
【状態】全身の各所に火傷と凍傷
【装備】グレイブバックル@仮面ライダー剣MISSING ACE、オルタナティブ・ゼロのデッキ@仮面ライダー龍騎、パーフェクトゼクター@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式×3(ただし必要なもののみ入れてます)、ZECT-GUN(分離中)@仮面ライダーカブト、トライアクセラー@仮面ライダークウガ
【思考・状況】
基本行動方針:自分が支配する世界を守る為、剣の世界を勝利へ導く。
1:この集団で信頼を得る行動を取りながら、優勝を目指す。
2:人前では仮面ライダーグレイブとしての善良な自分を演じる。
3:誰も見て居なければアルビノジョーカーとなって少しずつ参加者を間引いていく。
4:村上、冴子、金居を警戒。
【備考】
※555の世界の大まかな情報を得ました。
※電王世界の大まかな情報を得ました。
※ただし、野上良太郎の仲間や電王の具体的な戦闘スタイルは、意図的に伏せられています。
※冴子から、ガイアメモリと『Wの世界』の人物に関する情報を得ました。
※ただし、ガイアメモリの毒性に関しては伏せられており、ミュージアムは『人類の繁栄のために動く組織』と嘘を流されています。
※名簿に書かれた金居の事を、ギラファアンデッドであると推測しています。

348 ◆LuuKRM2PEg:2011/06/09(木) 22:28:50 ID:yVfZq1Yk
これにて、修正案の投下終了です
もしもまだ不備がありましたら、ご指摘をお願いします。

349二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/06/23(木) 10:03:37 ID:dQHWNWAY
ここ最近の話で2点程気になったので指摘します。

1.渡の所持支給品一式の数
最新話『愚者の祭典への前奏曲』の状態表では2つとなっていますが、『魔王新生 ルーツ・オブ・ザ・キング』の際にキングを倒してキングの所持支給品(キング、北岡)を確保しているので元々持っていたのを含めて3つになる様な気がするのですが。
(実際、該当話でキングのデイパックからゼロノスベルトを出す描写もあり。状態表だけだが北岡のデイパックもずっと所持し続けている。)

大筋に大きな影響があるわけじゃないので『魔王新生 ルーツ・オブ・ザ・キング』〜『愚者の祭典への前奏曲』の渡の所持支給品の数を3にした方が良いと思うのですが。

2.『第二楽章♪次のステージへ』でのガオウ
この話においてガオウの変身が時間制限で解除されていますが、『加速度円舞曲』以降の流れとして、
牙王がガオウに変身し冴子キバに攻撃→冴子が渡にキバットを渡して渡キバに変身→渡キバ時間制限で変身解除→渡ゼロノスに変身して牙王ガオウに攻撃
という風(牙王パートと渡パートが分離して進行していた為わかりにくいが)に、渡の方が後から変身している筈なのに渡の方が先に時間制限を迎えるという謎な現象が起こっているのですが、
(本来なら渡がキングと戦っている間にガオウの変身は解除される……但し『魔王新生 ルーツ・オブ・ザ・キング』では牙王パートが早い時間で区切りを迎えたとするならば問題にはならない)。

既にリレーされたとはいえこの描写はどうしたら良いのでしょうか? 最終的にはガオウホッパーDの猛攻から渡が全力逃走する流れさえ押さえれば問題無いのでしょうが。
勿論、2点の指摘共に此方の勘違いや見落としであれば良いのですが実際の所どうなっているのでしょうか?

350 ◆LuuKRM2PEg:2011/06/23(木) 11:38:46 ID:SlZVqi4I
ご指摘ありがとうございます。
時間認識に関しては、自分のミスです。申し訳ありません。
それでは『第二楽章♪次のステージへ』のガオウに関してですが
電王との戦いの最中で、ガオウの変身解除→そこからホッパードーパントに変身→渡ゼロノス襲撃
冴子と共に電王撤退→ホッパー・ドーパントとの戦いでゼロノス撤退

と言う流れに修正させていただきますが、よろしいでしょうか?

それと、支給品の数に関しても三つに修正する方面で問題ないと思います

351第二楽章♪次のステージへ(修正版) ◆LuuKRM2PEg:2011/06/25(土) 17:55:04 ID:hgyioVV6
皆様、お待たせ致しました
これより『第二楽章♪次のステージへ』の修正部分の投下をさせて頂きます

352第二楽章♪次のステージへ(修正版) ◆LuuKRM2PEg:2011/06/25(土) 17:55:38 ID:hgyioVV6


 夕焼けも地平線に沈んでいき、辺りの光は徐々に闇へ飲み込まれていった。太陽の輝きが薄くなっていく中、紅渡は歩く。
 先程の戦いを思い出しながら。キングを自称した、とてつもない強さを誇ったファンガイア。
 何故、彼が自分のことを知っていたは分からない。そして、何故自分のことを憎んでいたのかも。
 しかし、それはもうどうだっていい事だ。彼は自分を新たなる王と認めてくれたのだから、それに答えなければならない。
 世界を、そしてファンガイア族が生きる世を滅びから救う。自分の力は、その為にあるのだから。
 第一、もう後戻りなどできない。自分の事を救おうとした青年、加賀美新を殺してしまった今となっては。
 それに協力してくれた園崎冴子も、もうこの世にいない。
 多くの命を奪ってきた自分に、もはや他の道など存在しないのだから。故に戦わなければならない。


「あれは……」


 やがて渡の冷たい瞳は、倒すべき敵の姿を見つけた。
 杖を持った見知らぬ青い戦士と、飛蝗を思わせるような異形の怪物が睨み合っている。
 ちょうど良かった。戦いの最中ならば、不意をつける。戦いで消耗しているだろうから、こちらが有利だ。
 渡はデイバッグの中に手を入れて、取り出す。キングに支給された変身アイテム、ゼロノスベルトを。
 それは目の前にいる者達が生きる『電王の世界』の物だったが、彼は知る由などない。
 自分の力になれば、それだけで良かった。
 ゼロノスベルトを腰に巻きつけ、脇腹に添えられたケースよりカードを取り出す。そして、バックルを開いた。


「変身」
『ALTAIR FORM』


 ベルトから発せられるのは、軽快な音楽と星を意味する電子音声。
 呟く渡の周りに、金属片が浮かび上がる。それらは彼の肉体に集中し、強化スーツへと形を変えた。
 黒一色だった鎧に、新たなる武装が装着される。最後に、後頭部から目の位置へと、牛を模したような二つの電仮面が移動する。
 そして、緑の戦士は姿を現した。本来は『電王の世界』で、悪のイマジンから時の流れを守ることを決意した青年、桜井侑斗が手に入れた力。
 仮面ライダーゼロノス・アルタイルフォームへと、紅渡は変身を果たした。
 ゼロノスはベルトの両腰に備え付けられた武装を外し、取り付ける。ゼロガッシャー・ボウガンモードを構えながら、フルチャージスイッチを押した。


『FULL CHARGE』 


 ゼロノスベルトは光を放ち、内部に込められたフリーエネルギーがカードにチャージされる。
 ゼロノスはバックルからカードを抜き取り、ガッシャースロットに差し込んだ。すると、ゼロガッシャーにエネルギーが流れ込む。
 彼は目の前で戦う戦士たちに、武器を向けた。







 時間は少しだけ遡った。
 視界が暗くなっていく中、槍と大剣が激突し続ける。仮面ライダー電王が握るデンガッシャーと、仮面ライダーガオウが握るガオウガッシャーが。
 夜の暗闇が濃さを増す平原で、戦士達は互いに得物を振り続けている。
 しかし次第に、電王が押されていった。かつて、四人の電王やゼロノスと同時に戦っても、圧倒的有利に立っていた実力者。
 加えて、今はたった一人で戦っている。故に、電王は不利に陥っていた。
 ガオウの戦い方は知っているものの、それだけで差を埋めることは出来ない。

353第二楽章♪次のステージへ(修正版) ◆LuuKRM2PEg:2011/06/25(土) 17:57:10 ID:hgyioVV6
「どうした、威勢がいいのは口だけか?」
「さあねっ!」


 電王は不敵に告げるも、攻撃を捌くのがやっと。
 ガオウの勢いは暴風雨のように凄まじく、オーラアーマーの至る所に傷が生まれていく。
 相手も先程まで戦っていたが、その疲れといった物は一切感じられない。
 デンガッシャーの先端は時折ガオウに突き刺さるも、揺らぐ気配は全く見られなかった。


(ウラタロス、大丈夫!?)
(亀の字、無理をせんでいい! 俺と変われ!)
(良太郎もキンちゃんも、心配しすぎだよ!)


 ウラタロスは良太郎とキンタロスに、力強く告げる。
 だが、彼の言葉はただの強がりで、いつも言っている得意の嘘だった。
 分かりきったことだったが、ガオウは強い。
 加えて今は、先程起こった妙な出来事も気がかりだった。突然暗くなったと思ったら、雷のような轟音が聞こえる。
 その後は、辺りを覆っていた闇が急に消えた。
 近くで戦っている奴が何かしたのかもしれないが、考えている暇などない。
 電王はガオウの攻撃をひたすら受け流し続けて、ガオウは電王にひたすら攻撃を仕掛ける。やがてガオウは、ガオウガッシャーを力強く振るって電王を吹き飛ばした。

「うっ!?」

 悲鳴と共に、電王は地面に叩き付けられる。しかし、彼はすぐに立ち上がった。
 こんな所で倒れては、あきらちゃん達を守る事は出来ない。彼女は今、得体の知れない二人組と一緒にいる。
 簡単な事ではないと分かってるが、だからこそ早期決戦を仕掛けなければならない。
 優劣が圧倒的に決定している戦いが続く、その最中だった。突如、目の前に立つガオウの装甲が崩壊して、中にいる牙王の姿を現す。

「あぁ……?」
「ッ!?」

 突然の自体に、牙王と電王はそれぞれ疑問の声を漏らした。
 それは首輪の時間制限による影響だったが、二人はそれを知らない。ただそこにあるのは、ガオウの変身が十分経過したことによって解除されたという事実。
 生身を晒す壮年の男を見て、電王は無意識の内に構えた。一見すると、これはチャンスかもしれない。
 しかし、相手は何か罠を仕掛けている可能性もある。牙王ほどの相手が、何の考えも無しに変身を解くとは思えなかった故。
 だが、それでも止まるわけにはいかない。電王は地面を蹴って、牙王に突進した。
 対する牙王は懐に手を伸ばしながら、電王の横に跳ぶ。

『HOPPER』

 視界から牙王が消えるのと同時に、野太い声が聞こえた。
 電王はそれに反応して、横へ振り向く。するとそこにいたのは牙王ではなく、イマジンを思わせるような怪物だった。
 左腕からはかぎ爪が伸びており、全身は毒々しい茶色と紫に彩られている。
『Wの世界』に存在する怪人の一種、ホッパー・ドーパントへと牙王は姿を変えていた。

354第二楽章♪次のステージへ(修正版) ◆LuuKRM2PEg:2011/06/25(土) 17:57:44 ID:hgyioVV6

「どうした、これで終わりとでも思ったのか?」
「……いや、全然」
『FULL CHARGE』

 不敵な声をかけ合う両者の耳に、電子音声が響く。彼らにとって、聞き覚えのある声。
 それに反応して、電王とホッパー・ドーパントは振り向いた。視界の先では、緑の仮面ライダーがボウガンを構えているのが見える。
 彼らがよく知っている戦士、仮面ライダーゼロノスが。


「ゼ、ゼロノス!?」
「てめえは……!」


 それぞれ、仮面の下で驚愕の表情を浮かべる。その一瞬の隙が、仇となった。
 現れたゼロノスは、ゼロガッシャーの銃口を二人に向けて、引き金を引く。すると、巨大な光弾が勢いよく放たれた。
 弾丸をも上回る速度を持つ一撃、グランドストライクは密着していた電王とホッパー・ドーパントに、容赦なく激突する。


「うわああぁぁぁぁっ!?」
「グッ……!」


 フリーエネルギーの塊が、二人の身体を容赦なく吹き飛ばした。
 電王とホッパー・ドーパントが地面に叩き付けられていく中、ゼロノスは走りながらゼロガッシャーを分解し、サーベルモードに切り替える。
 そのまま、大剣を頭上まで掲げて、勢いよく振り下ろした。
 しかし、瞬時に起き上がったホッパー・ドーパントの発達した右足に、ゼロガッシャーを受け止められてしまう。


「ハッ、横取りとはいい度胸じゃねえか……」


 仮面の下で不敵な笑みを浮かべながら、ゼロガッシャーを弾いた。衝撃でゼロノスはふらつくも、すぐに体勢を立て直す。
 そのまま、異形の足の剣が激突を始めた。脚部と腕に、痺れが生じる。
 零と牙の打ち合いは、数と共に勢いを増していった。拡散する火花が、辺りを照らす。
 新たに始まったホッパー・ドーパントとゼロノスの戦いを、電王は眺めていた。

355第二楽章♪次のステージへ(修正版) ◆LuuKRM2PEg:2011/06/25(土) 17:58:51 ID:hgyioVV6





『電王の世界』に生まれた仮面ライダーと『電王の世界』より連れてこられた男は、未だに刃を振るい続けている。
 ホッパー・ドーパントが繰り出す回し蹴りを、ゼロノスはゼロガッシャーで受け止めた。
 火花が拡散した瞬間、ゼロノスは勢いよく右足を弾く。衝撃でがら空きとなったホッパー・ドーパントの身体に、サーベルを突き刺した。
 すると、その巨体は火花を散らしながら後ろに吹き飛んでしまう。


「テメェ……やるじゃねえか!」


 ホッパー・ドーパントはすぐに起きあがり、怒りと共にハイキックを放った。だが、ゼロノスはそれを呆気なく受け止める。
 そのまま、反撃の一撃を放って再び吹き飛ばした。僅かな距離が空いた瞬間、ゼロノスは先程扱ったゼロノスカードをベルトに戻す。
 そして再び、フルチャージスイッチを押した。


『FULL CHARGE』


 ベルトからフリーエネルギーが放出され、輝きを放つ。力が充填されたカードを、ゼロノスは再びサーベルに突き刺した。
 ゼロガッシャーに、凄まじいほどの力が流れ込む。眩い光を放つ刃を、ゼロノスは叩き付けようとした。
 しかし、ホッパー・ドーパントは横に飛んでそれを呆気なく避ける。逆に反撃の蹴りを、ゼロノスの脇腹に放った。
 凄まじい衝撃を感じながら、ゼロノスは地面に叩き付けられる。彼はすぐに起きあがろうとしたが、その背中をホッパー・ドーパントが踏み付けた。


「ぐっ……!」
「ハッ、さっきまでの威勢はどうした?」


 ホッパー・ドーパントは嘲笑と共に、ゼロノスの脇腹を蹴った。
 ゼロノスは体制を立て直し、ゼロガッシャーを縦に振るう。しかしホッパー・ドーパントは、鋭い蹴りで刃を弾いた。
 衝撃でゼロノスが蹌踉めいた瞬間、ホッパー・ドーパントの姿が視界から消滅する。
 直後、背中から再び衝撃を感じた。


「ぐあっ!?」


 呻き声を漏らすゼロノスは、目の前に一陣の影が横切るのを見つける。
 それがホッパー・ドーパントと気付く頃には、オーラアーマーに衝撃が走った。
 ゼロノスはゼロガッシャーを振るうが、空を切る。そこから蹴りを受けて、地面に激突した。
 ホッパー・ドーパントの脚力は、加速したアクセルトライアルとも互角の速度を持つ。
 故に、特別な加速を持たないゼロノスが追いつく事など、出来なかった。
 ようやく姿を現したホッパー・ドーパントは、ゼロノスを冷たく見下ろす。


「つまらねえな……」

356第二楽章♪次のステージへ(修正版) ◆LuuKRM2PEg:2011/06/25(土) 18:05:52 ID:hgyioVV6
続いて、渡の状態表です
電王が撤退する途中のガオウVSゼロノスのパートは
「ガオウ」の部分を全て「ホッパー・ドーパント」に修正致しました


【紅渡@仮面ライダーキバ】
【時間軸】第43話終了後
【状態】ダメージ(中)、疲労(中)、返り血、キバ及びサガに一時間五十分、ゼロノスに二時間変身不可
【装備】サガーク+ジャコーダー@仮面ライダーキバ、キバットバットⅢ世@仮面ライダーキバ、
    エンジンブレード+エンジンメモリ@仮面ライダーW、ゼロノスベルト+ゼロノスカード(緑二枚、赤二枚)@仮面ライダー電王
    ゾルダのデッキ@仮面ライダー龍騎、ディスカリバー@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式×2、GX-05 ケルベロス(弾丸未装填)@仮面ライダーアギト、
    バッシャーマグナム@仮面ライダーキバ、ドッガハンマー@仮面ライダーキバ、北岡の不明支給品(0〜3)
【思考・状況】
基本行動方針:王として、自らの世界を救う為に戦う。
1:東京タワーへと向かい、参加者達を殺す……?
2:何を犠牲にしても、大切な人達を守り抜く。
3:加賀美の死への強いトラウマ。
【備考】
※過去へ行く前からの参戦なので、音也と面識がありません。また、キングを知りません。
※東京タワーから発せられた、亜樹子の放送を聞きました。


修正は以上です
まだ問題点などがありましたら、ご指摘をお願いします

357二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/06/25(土) 18:53:04 ID:hJQopNB2
投下乙です……牙王の変身の流れはこれで概ね大丈夫だと思いますが……

指摘されていた支給品は不明支給品の数じゃなくて、基本支給品の数の事じゃ……?

>『魔王新生 ルーツ・オブ・ザ・キング』の際にキングを倒してキングの所持支給品(キング、北岡)を確保しているので元々持っていたのを含めて3つになる様な気がするのですが。

これ不明支給品の数じゃなくてデイパックとかに代表される支給品一式の数のつもりで指摘したんだけど……そもそも登場話『共同戦線』の時点で不明支給品は(0〜2)って最大2つまでと断定されていたし。

流れとしては、
『共同戦線』で北岡の不明支給品は(0〜2)
『究極の幕開け』でキングが北岡の支給品一式確保し2つに、北岡の不明支給品に変化無し
『魔王新生』で渡(これまで増減は無しで1つ所持)がキングの持つ支給品一式2つを手に入れ3つに、ここでも北岡の不明支給品に変化無し
『第二楽章』では変化無し……つまり支給品一式の数は3つ、北岡の不明支給品の数は(0〜2)
『愚者の祭典への前奏曲』にて渡の支給品一式は3つ、北岡の不明支給品の1つが判明し(0〜1)

……こういう解釈なのですが何処か此方に勘違いがありますでしょうか?

358 ◆LuuKRM2PEg:2011/06/25(土) 19:15:38 ID:hgyioVV6
ご指摘ありがとうございます
支給品に関しては、自分の勘違いです。申し訳ありません
それでは、修正させて頂きます

【紅渡@仮面ライダーキバ】
【時間軸】第43話終了後
【状態】ダメージ(中)、疲労(中)、返り血、キバ及びサガに一時間五十分、ゼロノスに二時間変身不可
【装備】サガーク+ジャコーダー@仮面ライダーキバ、キバットバットⅢ世@仮面ライダーキバ、
    エンジンブレード+エンジンメモリ@仮面ライダーW、ゼロノスベルト+ゼロノスカード(緑二枚、赤二枚)@仮面ライダー電王
    ゾルダのデッキ@仮面ライダー龍騎、ディスカリバー@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式×3、GX-05 ケルベロス(弾丸未装填)@仮面ライダーアギト、
    バッシャーマグナム@仮面ライダーキバ、ドッガハンマー@仮面ライダーキバ、北岡の不明支給品(0〜2)
【思考・状況】
基本行動方針:王として、自らの世界を救う為に戦う。
1:東京タワーへと向かい、参加者達を殺す……?
2:何を犠牲にしても、大切な人達を守り抜く。
3:加賀美の死への強いトラウマ。
【備考】
※過去へ行く前からの参戦なので、音也と面識がありません。また、キングを知りません。
※東京タワーから発せられた、亜樹子の放送を聞きました。


以上の修正で、よろしいでしょうか?

359二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/06/25(土) 19:34:29 ID:hJQopNB2
その修正で大丈夫だと思います。

360二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/06/26(日) 00:49:10 ID:Fpf.2oGk
あのーまだいるかどうかわからないんですが『動き出す闇』で木野薫の死体がある場所がA-7エリアになっています。
その直後浅倉がF-7エリアにいるためミスだと思います。修正をお願いします。

361 ◆7pf62HiyTE:2011/06/28(火) 23:51:33 ID:VDongFu.
>>340>>349にて指摘されていた支給品に関する修正についてwiki上で修正致しましたのでご報告致します。

362 ◆7pf62HiyTE:2011/08/05(金) 14:31:52 ID:nbnYKak.
一部名称の間違いがあったので、拙作『愚者の祭典への前奏曲』、『落ちた偶像』の修正をwiki上で行った事を報告致します。なお、内容には変化はありません。

363 ◆LuuKRM2PEg:2011/08/06(土) 12:46:11 ID:mCQEGYAE
これより、第一回放送案を仮投下します

364第一回放送 ライダー大戦 途中経過 ◆LuuKRM2PEg:2011/08/06(土) 12:47:44 ID:mCQEGYAE

 現在時刻18時。
 世界を照らしていた太陽は既に沈んでおり、辺りは闇が支配していた。
 自分が生きる世界の生存権を賭けた、大ショッカーの取り仕切りによるライダー大戦は六時間が経過。
 それが意味する事は、闇に包まれつつあるフィールドへ放送が投げかけられる事。
 ライダー大戦の仕掛け人である大ショッカーの放送役、死神博士によって。

――御機嫌よう……仮面ライダー及び怪人そして、その協力者の諸君。この度は、よくぞ6時間もの長き時間を生き延びてくれた――
――実に素晴らしいではないか! そんな諸君らに、どうやら我々は敬意を示さなければならないようだ――

 時計の針が刻まれた頃、嗄れた声はどこからともなく発せられた。建物の中だろうと、戦場だろうと一切関係なく、声は全てのエリアに等しいボリュームで響く。
 その言葉はあまりにも高圧的で、聞く者が聞けば一種の傲慢さを感じさせるかもしれない。
 死神博士がそれを察しているかは不明だが、それでも言葉は続く。

――しかしそんな諸君らに悲しい知らせがある……それは、諸君らと同じ世界に生きる者達が既に亡き者となっている事だっ!――
――これより、戦いの果てで散った者達の名を呼び上げよう!――

 そして、知れば誰もが影響を与えるであろう真実が伝えられてしまう時間が訪れた。

――『クウガの世界』より一人! ズ・ゴオマ・グ!――

――『アギトの世界』より二人! 木野薫! 北條透!――

――『龍騎の世界』より三人! 北岡秀一! 東條悟! 霧島美穂!――

――『555の世界』より三人! 園田真理! 木場勇治! 海堂直也!――

――『剣の世界』より二人! 剣崎一真! 桐生豪!――

――『響鬼の世界』より一人! 財津原蔵王丸!――

――『カブトの世界』より一人! 加賀美新!――

――『電王の世界』より二人! モモタロス! ネガタロス!――

――『キバの世界』より一人! キング!――

――『ディケイドの世界』より一人! 光夏海!――

――『Wの世界』より三人! 照井竜! 園崎霧彦! 井坂深紅朗!――

 読み上げられるのは誰かにとっては戦友であり、誰かにとってはかけがえのない人であり、誰かにとっては宿敵でもある。
 そんな者達が一人残らず、一切の容赦もなく次々と呼ばれていった。

365第一回放送 ライダー大戦 途中経過 ◆LuuKRM2PEg:2011/08/06(土) 12:49:00 ID:mCQEGYAE
――以上、二十人だ! これは実に素晴らしい結果だ! まさか既に三分の一も減っているとは、我々大ショッカーとしても予想外だ!――
――やはり諸君の思いは本物のようだな! 他者の世界を踏みつけにしてでも、自分の世界を守る……――
――おっと、決して悲観する事はない。何かを守るために何かを犠牲とするのは、仮面ライダーにとっては当たり前なのだからな――

 それは称賛するような言葉だったが、声にはそれとは正反対の明らかな侮蔑が感じられる。
 もっとも、それに気付く者が何人いるのかは分からない。放送を聞く者によっては、呼び上げられた名前にショックを受けてそれに意識を向けていられない者もいるからだ。

――そして諸君らには、教えなければならない! これより、放送の度に『禁止エリア』なる物を会場に設置させて貰う!――
――そこに突入する度に、数秒経過すれば首輪が爆発する仕組みとなっている! 酷かと思う者もいるだろうが、これも世界の崩壊を防ぐために、殺し合いを促進させる手段なのだ――
――了承していただきたい――

 新たに追加された『禁止エリア』なるルール。それが意味するのは、正確無比の死神の鎌が振るわれる事。
 その威力は、始まりの地で生け贄となった『カブトの世界』に生きる男、影山瞬が証明していた。

――では、これより『禁止エリア』を告げよう――
――【B-7】エリア、【C-1】エリア、【G-3】エリアの以上三つだ!――
――これより、このエリアに突入してから十秒で諸君らの首輪が爆発する! そのつもりで、いるように――
――それでは諸君、私からの放送はこれで終わりだ! 次に会えるのは六時間後の午後0時だ!――
――皆が己の世界を救うという信念が本物であると、私は信じたい! では、健闘を祈る!――

 その言葉を最後に、死神博士の声は聞こえなくなり、世界に再び静寂が戻る。
 そうして、始まった。闇に包まれた世界で繰り広げられる、ライダー大戦の第二幕が。
 十一個の世界。それぞれから連れてこられた戦士達が、己の生きる世界を守る為のバトルロワイヤルはまだ始まったばかりだった。





「流石は大ショッカー製のドーパントといった所か……」

 裏地が赤い漆黒のマントを羽織り、純白のスーツを纏った死神博士は笑みを保ったまま、マイクから離れた。
 そんな彼を眺める女が一人。彼女は手中に収めているストップウォッチの動きを止めると、賛美の言葉を淡々と告げる。
 身体を包む白い衣服は皺どころか埃も、全くと言っていいほど見られない。『Wの世界』に存在する闇の結社、財団Xの幹部であるネオン・ウルスランドは死神博士から目を離して、その部屋から去った。
 彼女はストップウォッチを胸ポケットにしまい、変わりに携帯端末を取り出す。そこに映し出されているのは、大ショッカーが開催した『世界を救う殺し合い』という名目で開かれた戦いの途中経過。
 スタートしてから六時間が経過。六十人という参加者の中で、既に三分の一が脱落していた。初回のペースとしては上出来かもしれない。

「我が財団Xが投資したガイアメモリは、既に六本が破壊された……」

 ウルスランドが読み上げる二つ目のデータ。それはライダー大戦が繰り広げられている世界に放り込まれたガイアメモリが、既に六本も破壊されている事。
 その中にはかつて、ミュージアムの幹部及び加頭順が生前使用していたゴールドメモリも含まれている。
 あそこに使用されたガイアメモリは、いわゆる複製品。大ショッカーからの要請により、殺し合いを促進させる為にかつてミュージアムから得たガイアメモリのデータを元に、再び作り上げた代物だ。
 財団Xの科学力ならば、同一の性能を復元する事など容易い事。

「光栄次郎と死神博士のガイアメモリとの適合率、100%にまで上昇……」

 そして三つ。財団Xの再生したガイアメモリと使用者の適合率データ。
 大ショッカーが敵対していたと言われる仮面ライダーディケイドの資格者、門矢士の仲間である光栄次郎と呼ばれる老人。大ショッカーはディケイド達を倒した際、光栄次郎を殺害。
 その後大ショッカーは、財団Xが持つガイアメモリとネクロオーバーの技術を試すために、光栄次郎の死体を回収。検査の最中、彼に組み込んだメモリとの適合率が高いという結果が出た。
 結果、光栄次郎は意志を奪われてしまった哀れな人形までに成り下がる。もっとも、同情など欠片もする気は無いが。
 戦場に放り込まれたディケイド達は、別世界(パラレルワールド)の存在らしいがどうでもいい。
 今の自分に与えられた使命は、大ショッカーの幹部達から与えられた参加者の監視という指令を、果たすまで。
 闇に包まれた通路には、ネオン・ウルスランドの足音が不気味に響いていた。

366第一回放送 ライダー大戦 途中経過 ◆LuuKRM2PEg:2011/08/06(土) 12:50:23 ID:mCQEGYAE





「出だしとしては、順調のようだな……」

 大ショッカー大首領、月影ノブヒコは王座に座りながらライダー大戦の結果に、満足げな笑みを浮かべる。
 数多の世界に生きる仮面ライダー達が、数多の世界に生きる怪人達が、数多の世界に生きる力無き者が。
 元の世界ではそれぞれの信念を抱く者達が、こうも呆気なく死んでいく。一方で、世界の危機を前に殺し合いに乗った者すらもいた。
 どれだけ大層な言葉を吐こうとも、所詮はこの程度。この戦いを打破しよう、などと企む愚か者もいるようだが、それを砕かれた時にどれほどの絶望を見せるか。
 例え首輪を解除し、世界から脱出する手段を得る事が出来たとしても、大ショッカーがそれを見逃すわけがない。それならば、こちらも大ショッカーの秘密兵器を導入して相応の制裁を加えるだけだ。
 ノブヒコは、嘲笑を浮かべていながら画面を眺め続けている。その先には、ある参加者が映し出されていた。
 別世界に存在するスーパーショッカーを打ち破ったと言われる、もう一人の門矢士。一時は絶望に沈むと思われたが、どうやら立ち直ったようだ。
 しかし奴も所詮は無力な仮面ライダーに過ぎない。大ショッカー大首領として祭り上げられた門矢士が死んだのが、その証拠だ。

「それぞれの世界を象徴する仮面ライダー達よ……」

 五代雄介。
 津上翔一。
 城戸真司。
 乾巧。
 剣崎一真。
 日高仁志。
 天道総司。
 野上良太郎。
 紅渡。
 門矢士。
 左翔太郎。
 それぞれ独立した世界の象徴とも呼べる、仮面ライダーに変身する男達。
 ある者は闇の中に沈み、ある者は既に亡き者となっており、ある者は殺し合いに乗った。
 しかし奴らの大半が、未だに大ショッカーへ反旗を翻そうなどと戯けた考えを持っている。だが、精々好きにやらせるつもりだ。
 奴らが抱く、下らない信念が折るのもまた一興。

「貴様らは、どう動く?」





 ここではないどこかに、それはいた。GOD機関の大幹部、アポロガイストの生きる『Xライダーの世界』に存在する鋼鉄の巨人。
 キングダークが厳かに佇んでいた。大ショッカーによって眠りについており、動く気配が未だに見られない。
 しかし大ショッカーが指揮棒を振るえば、たちまちキングダークは全てを破壊する暴君となるだろう。
 キングダークが解き放たれた時、何が起こるか。まだ、誰にも分からない。




          【ライダー大戦 残り人数 40人】




【全体備考】
※死神博士の正体はネクロオーバーとなった光栄次郎@劇場版仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカーです。
※大ショッカーの戦力としてキングダーク@劇場版仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカーが存在します。

367 ◆LuuKRM2PEg:2011/08/06(土) 12:53:07 ID:mCQEGYAE
以上で、放送案投下終了です

368 ◆MiRaiTlHUI:2011/08/07(日) 11:58:55 ID:1sQHsW/.
放送案を投下します。

369 ◆MiRaiTlHUI:2011/08/07(日) 12:00:04 ID:1sQHsW/.
 夕方の会場の空を、一隻の巨大な飛行船がゆっくりと横切ってゆく。
 コンドルのマークが描かれた飛行船には、液晶の巨大モニターが幾つも取り付けられていた。
 屋外に居る限りは、何処に居る参加者にでもモニターの映像が見える様にという配慮であろう。
 一方で、飛行船の姿が見えぬ参加者の為にか、会場中の全ての映像機器にも同じ映像が配信されていた。
 全施設と民家、街中の大画面液晶、店先のテレビ。兎に角、種類を選ばず、ありとあらゆる媒体からである。
 それに伴い、音声も会場中のあらゆるスピーカーから……それのみならず、首輪からも発せられる仕組みだった。
 つまり、何処に居ても、意識を保っている限りは、大ショッカーからの情報を受けられる状態が、ここに完成したのである。

「やあ、仮面ライダーのみんな。……それから、怪人と一般人のみんなも、だね。
 今この放送を見れてるお前らは、とりあえず最初の六時間は生き延びれたって事さ。喜びなよ?
 ……っと、自己紹介がまだだったね。僕の名前はキング……一番強いって意味の、キング。宜しくね」

 映像の中で、ニュース番組を彷彿とさせるテーブルに着席した金髪の少年は、不敵にその名を名乗った。
 赤いジャケットを纏った彼の名はキング。ピアスやらネックレスやらを過多に装着した、軽薄そうな若者である。
 そんなキングの背後では、大ショッカーの戦闘員たる全身タイツに覆面の男が二人、物言わず直立していた。

「さて。世界の命運を賭けた、最っ高にハイレートなデスゲームの方は楽しんで貰えてるかな?
 これから皆お待ちかね、このゲームで死んじゃった参加者名と、今後の禁止エリアを発表するよ。
 当然、二度目はないからしっかり聞きなよ? メモを取っておくのもいいかもね?」

 嘲笑う様にそう告げて、キングはパチンと、乾いた指の音を鳴らした。
 背後にいた二人の戦闘員が、巨大なモニターを覆い隠していた垂れ幕を勢いよく払い除ける。
 キングの背後の巨大な液晶に所狭しと羅列されているのは、二十人にも及ぶ参加者の名前だった。
 やがて一人一人の名前がアップで映し出され、それに伴ってキングが順にその名を読み上げていく。

「井坂深紅郎、海堂直也、加賀美新、北岡秀一、木野薫、木場勇治、霧島美穂、桐生豪、キング、剣崎一真、
 財津原蔵王丸、ズ・ゴオマ・グ、園咲霧彦、園田真理、照井竜、東條悟、ネガタロス、光夏海、北条透、モモタロス。
 以上、二十人。……いや、僕も死神博士もびっくりしたよ。まさか皆がここまで必死に殺し合ってくれるなんてさ?
 これからも僕らの期待に応えられる様に頑張ってね、みんな。死神博士もみんなの事、応援してるってさ?」

 それから、何かに気付いた様に「あっ」と呟いて、

「そういえば、僕と同じ名前の奴が死んじゃったみたいだけど、そいつ僕とは何も関係ないから、勘違いしないでね。
 一応言っておかないと、誤解されたらムカつくからさ。ってか、僕だったら最初の六時間で死んだりしないし!」

 誰の激情を誘うかも考えず、キングはそう言って嘲笑った。
 だけれど、そんな上辺だけの笑いはすぐに止め、それに伴って映像も切り替わる。
 次に表示されたのは、それぞれの世界の名。その隣には、何らかの順位と数字が表示されていた。
 上から順に、クウガの世界、剣の世界、キバの世界、龍騎の世界、カブトの世界、アギトの世界、という並びである。
 それが一体何の順位であるかを説明するのは、やはり軽薄な笑みを浮かべるキングであった。

370 ◆MiRaiTlHUI:2011/08/07(日) 12:01:01 ID:1sQHsW/.
 
「ちなみにこれ、世界別の殺害数ランキングね。見ての通り、クウガの世界が七人殺害で断トツの一位!
 他の世界の皆ももうちょっと頑張ってくれないと……このままじゃクウガの世界が優勝しちゃうよ?
 ま、こっちは別にそれでもいいんだけど、ワンサイドゲームって見ててもあんまり面白くないからさ」

 一番上に書かれたクウガの世界の表記の隣には、「7」と表示されていた。
 その下に並んだ剣、キバ、龍騎の三世界の殺害数は「3」で、同率の二位である。
 これだけ見れば、クウガの世界の殺害数は二位の二倍以上という事になるのだから恐ろしい。

「それじゃ、続いて禁止エリアね……えーっと、何処だっけ。ああ、そうそう、○時から○-○エリアだね。
 これ聞き逃して、うっかり禁止エリアに入っちゃったりしたら、首輪ボン! だから。マジで気を付けてね。
 まあ、流石にそんな馬鹿みたいな死に方する奴は居ないと思うけど、これ結構洒落になんないからさ」

 言いたい事を一通り言い終えたキングは、最後にカメラを不敵に見据えた。

「それじゃ、最後になるけど、もう一つだけお前らにアドバイスしてやるよ。
 僕の知り合いに、戦えない全ての人々を守る、とか何とか言ってた御人好しな仮面ライダーが居るんだ。
 けど、そいつもこの六時間で呆気なく死んじゃった。多分、他にも似た様な事言ってる奴は居たんだろうけど。
 コレ、どういう事か分かる? ……簡単な話さ。所詮、口だけの正義の味方なんて何の役にも立ちはしないって事。
 結局最後まで生き残ってゲームクリア出来るのは、逸早くゲームの性質を理解し、その攻略法を見付けた奴だけなんだよ。
 ほら、ゲームのルールをイマイチ理解してない馬鹿なプレイヤーって、大体いつも最初に潰されちゃうだろ?
 つまり、そういう事さ。本気で自分の世界を救いたいなら、そろそろゲームの性質を見極めた方がいいよ。
 ま、生き残ってゲームクリアしたかったら、精々頑張って他の参加者を蹴落とす事だね。
 ……それじゃ、六時間後にまたね、みんな」





 大ショッカーの巨大なエンブレムが掲げられた広間に、一つの玉座があった。
 だけれども、その玉座に座るべき者――即ち大ショッカー大首領の姿は、ここにはない。
 広間に居るのは、玉座を守る数人の大幹部と、無数に居並ぶ各世界の雑兵怪人だけだった。
 やがて、放送を終えて戻って来たキングが、雑兵怪人の群れを掻き分けて、広間の中央へと歩み出る。
 大幹部の一人たる老紳士――死神博士は、そんなキングを労うべく、マントを翻してキングに歩み寄った。

「先の放送、御苦労であったぞ、コーカサスビートルアンデッド……否、キングよ」
「そりゃどうも……ま、これくらいで良ければ、いくらでもやってやるよ」

 心底面白そうにキングは笑っていた。
 死神博士は満足げに、しかし怪訝そうな表情で問う。

「貴様も変わり者よのう。自分の世界が滅びるやも知れぬというのに……惜しくはないのか?」
「ああ、もういいってそういうの、ウザいからさぁ。むしろ滅びてくれた方が清々するよ」
「敢えて世界の破滅を願うか……ふむ。それでこそ、我が大ショッカーの同士たり得る」

371 ◆MiRaiTlHUI:2011/08/07(日) 12:01:35 ID:1sQHsW/.
 
 死神博士は同士と言うが、元来キングは、大ショッカーの怪人ではない。
 剣の世界に生きる、カテゴリーキングと呼ばれる最上級のアンデッドの一人だ。
 アンデッドとはそもそも、基本的には自分の種族の繁栄を賭けて戦う不死の生物である。
 だけれども、キングは他のアンデッド達とは違い、自分の種族の繁栄には蚊程の興味も持ってはいない。
 ただ、何もかもが気に入らなくて、世界そのものが破滅してしまえばいい。そんな風に思っているだけだった。
 仮面ライダーとの戦いだって遊び感覚だったし、奴らに精一杯の嫌がらせをしてやれればそれで良かった。
 それさえ果たせば、後は再び封印されて、またカードの中で、悠久の時を生き続けなければならない。
 何よりも、面白い事、楽しい事だけを好むキングにとって、それは永遠に続く苦痛でしか無いのだった。
 だけれども、大ショッカーの誘いに乗れば、その永遠を終わらせる事だって出来るかもしれない。
 もしも世界が消滅すれば、本来消滅する事のない自分も、一緒になった消滅する事が出来るのだから。
 仮に剣の世界が生き残ったとしても、その時は大ショッカーに味方して、世界の全てを滅茶苦茶にしてやればいい。
 だからキングは、再び自分を封印から解き放ってくれた大ショッカーに味方すると決めたのだった。

「けど、一つだけ気に入らない事があるんだよね」
「ほう……何だ、言ってみるが良い」
「参加者に支給されてるスペードのキングさ、アレ何?」

 さも不服そうに、苛立たしげに、キングは問う。
 スペードのキングのカードとは即ち、コーカサスビートルアンデッドことキングを指す。
 だけれども、キングは今こうしてここに居るのだ。なれば、あのカードは一体何なのか。
 実質、自分がもう一人いる事になるのだから、それが気にならない筈がない。

「あれはもう一つの『剣の世界』に存在するスペードのキングだ」
「へえ……なら、あのスペードのキングを解放したら、一体どんな奴が出てくるんだろうね」
「それは誰にも分からぬ。貴様の様な人格やも知れぬし、全くの別人格やも知れぬ……気になるか?」
「べっつに……僕は一人で十分だし。ってか、どうせ剣の世界が消えたら僕もそいつも消えるんだろ?」
「そういう事になるが……いや、貴様にとってはそれが最も望むべき結末であったか」

 一拍の間をおいて、キングは「まあね」と答えると、満足げに笑った。
 聞きたい事も聞き終えたキングは、蠢く雑兵怪人達を掻き分けて、広間を後にした。
 果たして、本当に剣の世界が消滅すれば、キングもまた世界と共に消滅するのだろうか。
 大ショッカーの言う世界の選別、世界同士の殺し合いとは、本当に意味を成すのだろうか。
 もしかしたら、怪人同士で徒党を組んでも倒せないライダーを効率よく排除する為の狂言かも知れない。
 本当の所は誰にも分からないが、それでもキングにとってこのゲームは、十分過ぎる程に有意義だった。
 カードの中で過ごす、死んだも同然の無間地獄よりは、ずっと、生きている事を実感出来るから。
 尤も、当のキングにとっては「生きる」事すらもただの遊びでしかないのだが。



【全体備考】
※主催側には、【キング@仮面ライダー剣】が居ます。
※参加者に支給されたラウズカード(スペードのK)はリ・イマジネーションの剣の世界出展です。

372 ◆MiRaiTlHUI:2011/08/07(日) 12:04:57 ID:1sQHsW/.
投下終了です。
禁止エリアについてはまだ未定と言う事で空けておきました。
複数指定可能なら、後々そのように変更する方向で考えています。

373 ◆7pf62HiyTE:2011/08/07(日) 16:28:15 ID:Uzt84bxg
僕も放送案を投下します。

374道化師♭第1回放送 ◆7pf62HiyTE:2011/08/07(日) 16:29:45 ID:Uzt84bxg
【18:00】


 こんばんは諸君――
 最初のあの場以来だね、死神博士だ――
 これから君達に重要な事を伝えよう――


 諸君達も気がかりであろう自らの同志、仲間、あるいは家族の生死についてだ――


 だがその前に禁止区域について伝えておこう――
 愛する者が死んだショックで聞き逃し、うっかり入ってしまい自滅するというのは此方としても面白みに欠けるのでな――

 おおよそ予想が着くと思うが、禁止区域に入れば諸君等の首に巻かれている『それ』が反応し――
 …………………………誰だったかな、まぁいい。最初に死んだあの男の様になる――
 さっきも言ったがそれで死なれるのは面白みに欠ける、だが一カ所に引き込もり続けられても困るのでな――

 が、ここで1つ重要な事を伝えようか――
 当初の予定では奇数時の0分――つまり19時、21時、23時に1つずつ禁止区域を稼働させるつもりだった――
 が、諸君等のお陰でそれでは少々追いつかない事態となった――
 いや、これはむしろ諸君等の頑張りが成した事なのだ。大いに誇って良い事だ――
 前置きが長くなったな――
 結論を述べよう、諸君等のお陰で2つずつ禁止区域を稼働させる事となった――
 そう、5時間後には64個あるエリアの内6つが禁止区域となるという事なのだ――
 下手に禁止区域に入る事の無い様十分注意してくれたまえ――

 ではこれから6時間の間に新たな禁止区域となるエリアは――


 19時に【G-1】、【A-4】
 21時に【D-5】、【E-7】
 23時に【E-4】、【H-3】


 以上、二度は言わんぞ。聞き逃した者は他の人にでも聞けば良い――
 ではここからが本番だ、この6時間で惜しくもこの戦いから脱落した者の名を告げようか――
 此方も二度言うつもりはないからそのつもりでいてくれ――


 井坂深紅郎
 加賀美新
 北岡秀一
 木野薫
 木場勇治
 霧島美穂
 桐生豪
 キング
 剣崎一真
 財津原蔵王丸
 ズ・ゴオマ・グ
 園咲霧彦
 園田真理
 照井竜
 東條悟
 ネガタロス

 光夏海

 北條透
 モモタロス

 以上19に――

 済まない、放送直前に脱落した者がいたのを忘れていた。これは此方の落ち度だ――

 海堂直也

 以上20人がこれまでに脱落した者達だ――
 最初にいた人数は60人、たった6時間で3分の1も減るというのは此方としても想定外であったもの嬉しい事態では――
 残り40人の諸君には今後も大いに戦って貰いたいと思う――


 さて、これで今回の放送を終わりたいと思う――
 が、諸君等の働きに敬意を示し最後に此方からアドバイスを送ろうではないか――

 諸君等の中には徒党を組んで我々を打倒する者が数多くいるだろう――
 そして君達は友人、仲間、あるいは家族が同じ志を持っていると信じている者もいるだろう――
 だが、必ずしもそうでない事を覚えておいてもらいたい――
 そう、殺し合いに乗っている者もいるという事だ――

 同時に組んでいる者達が必ずしも同じ志を持っているとは限らない――
 そう、水面下で出し抜こうと目論んでいる者もいるという事だ――

 せいぜい寝首をかかれない様に気を付けたまえ――

 ではまた6時間後、生きてこの放送が聴ける様に祈っている――

375道化師♭第1回放送 ◆7pf62HiyTE:2011/08/07(日) 16:30:30 ID:Uzt84bxg





【18:05】

 かくして数分に渡る死神博士の放送は終わった――
 この放送は稼働している参加者の首輪を通じて伝えられる――
 故に、首輪をしている者は意識を失っていない限りは嫌でも耳に入り脳裏に刻み込まれるのだ――

 そんな中、一仕事を終えた彼の背後に1人の男性が立っている。

「よろしかったのですか?」
「何かね?」
「連中にアドバイスを送った事ですよ。貴方は本気で殺し合いを成し遂げたいと思っているのですか?」

 男は先の放送でアドバイスを送った事について問いかける。
 確かに殺し合いを促進させる為であるならば必要最低限の事だけを伝えれば良い。
 余計なヒントを与えてしまっては本気で殺し合いをしたいのかと疑われかねないだろう。

「ああ、その事か。理由は大まかに2つある、1つはこのアドバイスは仮面ライダー共が我々を打倒する為に必ずしも役に立つというわけでは無いからだ」
「……仮面ライダー共が仲間や家族を疑う、そういう事ですか?」

 先程の放送ではアドバイスと称し、
 自身の信じる仲間が殺し合いに乗っている可能性、
 大ショッカーを打倒せんと集った同志の中に裏切り者がいる可能性を示唆した。
 無論、大ショッカー視点でみればこれ自体には嘘が無い故にアドバイスと言えなくもない。

 だが、逆にこういう解釈も出来る。

『仲間達が裏切り殺し合いに乗った?』

 そう思い疑心暗鬼にかられればしめたもの、仮面ライダー同士、あるいは仲間同士で醜い争いを繰り広げる事になる。

「果たしてそう上手く行くでしょうか?」
「別に構わん、こんな小手先の手段で倒せるとはそもそも思っていない」
「どういう意味です?」
「仮面ライダーがそう簡単に倒される事など無いということだ――
 そう、もう1つの理由がそれだ。我々は仮面ライダーを宿敵と断じているが同時に評価もしているのだよ。
 評価していなければそもそもこんな戦いなど催すわけもないだろう。
 これは仮面ライダーに対する激励でもあるのだよ」

 静かではあるが熱く語る死神博士、だが男性にはそれが理解出来ないでいる。

「連中共が首輪を解除し此処に辿り着いたらどうするつもりです?」

 考えられる最悪の可能性がそれだ。
 大ショッカーが仮面ライダーを評価し肩入れする分には別段構わない。
 だが一歩間違えれば自分達が返り討ちに遭う、その可能性を理解しているのだろうか?

「心配はいらん。現状の仮面ライダーが倒さねばならぬ敵は数多い、彼等を放置して此方に向かう事などありえん。
 それに仮にここに辿り着いたとしても我々には対抗する戦力がある。君もその1人だ」

 戦力に計上された男性は口を閉ざしたまま。

「それとも……焦っているのか? こんなに早く退場するとは思わなかったと……そう、
 まさかキングがここまで早く敗退すると、それも紅渡に倒されるという形で――
 どうかな、ビショップ」

 ビショップと呼ばれた眼鏡の男性は無言のままだ。

「君が色々肩入れし根回ししていたのは知っている。
 とはいえキバの世界は他よりも人数が少ない。
 それにキングはよく働いてくれるだろうと此方でも考えていたから敢えて黙認はしていた。
 しかし今後は気をつけたまえ。過剰な介入はルール違反なのだからな
 まぁ、キングの遺志は渡君が継ぐ様だから君にとっては別段大きな問題はなかろう」

 その言葉を聞くビショップはどことなく悔しそうであった――

376道化師♭第1回放送 ◆7pf62HiyTE:2011/08/07(日) 16:31:10 ID:Uzt84bxg





【17:00】

 ビショップにとっては全てが想定外だった。
 そもそも自身はイクサに敗れ僅かに残った命をキングの蘇生の為に燃やし尽くした筈だった。
 そして気が付いた時には大ショッカーによって蘇生され今回の殺し合いの協力を依頼されたのだ。
 聞けば、蘇生された筈のキングは渡、そして自分達を裏切った登太牙の兄弟が変身した2人のキバによって倒されたらしい。
 つまり自身の行動は完全な無駄に終わったという事だ。
 それ故に、大ショッカーの依頼は自分にとって願ってもない話だ。
 主催として協力すれば敗退して世界が滅んでもファンガイアの存続は保証されるからだ。

 が、ここで大きな問題が出てきた。
 参加者の中にキングが名を連ねている事だ。
 別の時間軸で自身が蘇らせたキングの知性を大ショッカーの力で取り戻させたという事らしい。
 確かにキングが出れば自分達の勝利の可能性は高まる。
 だが、ビショップとしては自分達ファンガイアの王がこういう形で巻き込まれる事は容認出来ない。別の時間軸とはいえ彼はファンガイアを統べる大事な存在なのだから。
 大体、そういう技術があるならキングの方を主催陣の戦力に入れるべきではなかろうか?

 キングの力ならば問題ないと思うもののが万が一という事もある。
 ビショップは水面下で様々な細工を行った。
 1つはキングに刃向かうであろう闇のキバの鎧を他世界の参加者の使いこなせない人間に支給する事、
 1つはキング自身に闇のキバの鎧に匹敵する運命の鎧を支給する事、
 1つはキングの比較的近くに倒しやすい人間共を集める事、具体的には秋山蓮と北岡秀一の2人を配置する事だ。彼等を早々に倒させその支給品を手に入れさせる事が狙いだ。

 以上の様にある程度キングが有利に戦える様に根回しを行った――筈だった。

 だが、現実として蓮と北岡との遭遇は想定よりも遅れ、それにより思惑強敵と戦わせる結果となりキングに大きなダメージを負わせる結果となってしまった。。
 それだけならばまだ良いがその後、紅渡との遭遇が大きな問題だった。
 渡はファンガイアの裏切り者、故に奴が倒される事については別段構わない。
 が、その結末はなんと渡がキングを打ち破るという大盤狂わせが起こったのだ。
 更にキングが死に際に渡を新たなキングと認めた事もビショップを大いに腹立たせた。
 あの裏切り者は人間とファンガイアの共存という馬鹿げた夢想を掲げているのだ、世界を守る為とはいえそれでは自分にとっては意味が無かろう。

 正直この時だけは本気でキングの正気を疑った。

 過程はどうあれビショップは窮地に立たされた事になる。
 自分達が生き残る為の手段は2つ、1つはキバの世界――いやファンガイアの世界の優勝だ。
 だが、人間である音也と名護啓介は殺し合いに乗っていない故戦力には計上出来ない(とはいえ最初からアテにはしていない)。
 となると渡が優勝する事しかないわけだが――ビショップには渡を信頼する事など出来なかった。

 故にもう1つの手段を選ばざるを得ないという事になる。
 それは主催側の頂点に立ち主導権を握るという事だ。
 何しろ、事が成った時に主催側にいる自分達が生き残れるかどうかは現実的に考え大ショッカーの匙加減だ。
 それを踏まえるならば大ショッカーに従うだけではなく、大ショッカーそのものを支配すべきだろう。
 そうすればどの世界が優勝しようが自身の力によりファンガイアの存続は保証されるのだ。
 場合によっては全ての世界をファンガイアが支配する事だって出来よう。
 故にビショップはこの戦いの結末の鍵を握るであろうある場所へと向かった。

377道化師♭第1回放送 ◆7pf62HiyTE:2011/08/07(日) 16:32:40 ID:Uzt84bxg





【17:30】

 かくしてビショップはある部屋へと入る。
 そこには1人の女性が眠っていた。
 彼女の名は園咲若菜、参加者である園咲冴子の妹にして、フィリップ――本名園咲来人の姉である。

 元々、若菜の世界に存在する組織であるミュージアムは地球を救済すべくガイアインパクトを行おうとしていた。
 そしてクレイドールエクストリームの力を得て地球の巫女たる資格を得た若菜はその中核を成す最重要人物となっていた。

 その彼女が大ショッカーの下で眠り続けている意味――
 大ショッカーはガイアインパクトを応用し、数多の世界に対する切り札とするのだろうか――
 あるいは――

 ビショップは単純に彼女が『王女(クイーン)』であるとしか聞かされておらず、詳しい事は知らない。
 だが、大ショッカーにおいて重要な人物である事は理解している。

 故に――彼女を掌中に収める事で今後の為の重要なカードにしようとしたのだ。

 そして、眠り続けている若菜に手を伸ばすが――

 鋭い視線を感じ、その動きを止めた。

 見ると入口には1人の女性が立っていた。
 無論、ファンガイアの中でも頂点に立つチェックメイトフォーである自分が人間の女に負けるつもりは毛頭無い。
 だがその女が見せる『虎の様に鋭い視線』――それから彼女が只の人間では無いと察した。
 負ける事は無いだろうが下手に騒ぎになれば裏切り者として糾弾され全てが終わる。

「……眠れるお姫様の様子を見に来ただけですよ」

 そう言いながら女性の近くを通り過ぎ静かに部屋を出るしかなかった――


 女性の正体はアンデッドと呼ばれる生物の始祖たる存在。そのクラブのカテゴリーQタイガーアンデッドだ。
 彼女がこの場所で何をしているのかは不明。
 ビショップの様な外敵に対する見張りをしていたのか、ビショップ同様若菜を狙っていたのか、全く別の目的があったのか――

 だが、1つだけ確実な事がある。
 クラブのQのアンデッドがここにいるという事は――
 戦いの舞台上にクラブのQのカードは無いという事――
 故に、クラブのQとKの力で打ち破る事の出来たスパイダーアンデッドの脅威を――
 現状、打ち破る事が出来ないという事を意味していた――

378道化師♭第1回放送 ◆7pf62HiyTE:2011/08/07(日) 16:33:20 ID:Uzt84bxg





【18:15】

 このまま『道化(ビショップ)』で終わるつもりはない――
 自分はファンガイアのあり方を司る『司教(ビショップ)』なのだから――

 舞台にいる紅親子及び名護をアテにする気は全く無い――
 ビショップは1人行く――
 ファンガイアの未来の為に――

 真面目な話、死神博士などアテには出来ない。
 先の放送、脱落者の名前を読み上げる時、夏海の時だけ一瞬間が空いていた。
 その女と何かの関係があるのか――そんな事などどうだって良い。
 だが、大ショッカーを裏切り仮面ライダー共に肩入れする可能性はある。
 それが切欠となり連中が乗り込んでくる可能性も否定出来ない。
 だが、今の所決定的な証拠になり得ない以上糾弾など出来ない。
 ならばどうする? その時までに主催陣を自らを中心にまとめ上げる必要がある。

 戦っているのは舞台にいる者達だけではない。
 この戦い、仮面ライダーへと仇成す数多の世界の者達が大ショッカーに手を貸している。
 だが、彼等の全てが大ショッカーに対して素直に従っているわけではない――
 何れは大ショッカーを出し抜き全てを牛耳ろうと目論む者もいる――

 そう、世界を懸けた戦いは外で起こっているのではない、中で起こっているのだ――
 連中と時に共闘し、時に敵対し、時に出し抜かねばならない――
 下手は打てない、先程の様な迂闊な行動は避けるべきだ――
 ビショップが取るべき選択肢は数多く――



「いえ、私の選ぶ道は1つ――」



 その背後、1人の白いスーツの男がビショップを眺めていた。

「ビショップ――貴方のキングには感謝しますよ。彼のお陰で冴子さんが今も無事なのですから――」

 そう道化師に対し呟いた――
 それはおおよそ感謝など感じられない、感情すら感じられない表情であった――
 皮肉かどうかすら判別出来ぬ程に――

 彼の名は加頭順、財団Xの幹部にして、1人の女性を愛する男だ――
 彼もまた大ショッカー側の戦力の1人なのだろうか――
 だが、元々持っていたガイアメモリ、ユートピアはガイアドライバー共々戦場に送られた故に手元にはない。
 しかし、彼にはそれに変わる力がある――
 そう――



 大ショッカーはある男――神崎士郎にも協力を打診していた。
 しかし、神崎士郎は自身の目的の為、それを頑として聞かず彼等に対抗した――
 だが、数多の世界の力を得た大ショッカーの勢力は強大――
 結局、神崎士郎とその世界の仮面ライダーは敗れ去り惨殺され、彼の構築したミラーワールドの理論とカードデッキは大ショッカーのものとなった――



 加頭の足元にカードデッキが落ちる音が響いた――



【全体備考】
※大ショッカー側にビショップ@仮面ライダーキバ、園咲若菜@仮面ライダーW、城光@仮面ライダー剣、加頭順@仮面ライダーWの存在が確認されました。
※既に神崎士郎@仮面ライダー龍騎は死亡済みで彼の技術は大ショッカーの手中に収められています。
※加頭の手元にカードデッキ(何のデッキかは不明)があります。

379 ◆7pf62HiyTE:2011/08/07(日) 16:34:45 ID:Uzt84bxg
投下完了しました。

とりあえずポイントとしては
・禁止エリア発動を1回に2つずつ。
・海堂の名前だけギリギリになってから伝えられる(『暁に起つ』の描写から放送直前だと解釈して)
・ビショップ、若菜、城光、加頭の存在確認。
・神崎士郎の退場と、加頭が所持するあるカードデッキ。

何か問題点や疑問点等があれば指摘の方お願いします。
可能な限り(禁止エリアの場所や数、海堂を遅らせずに組み込む等)此方でも対応致します。

380二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/08/08(月) 12:10:02 ID:4loGwPQw
お三方、仮投下乙です。

◆MiRaiTlHUI氏と◆7pf62HiyTE氏の作品について、読んでいて個人的に気になった点がありました。
死者発表で名前を読み上げる順番があいうえお順ですが、作中での描写を見ると
名簿はwikiと同じく『クウガ』〜『W』の作品別、言い換えれば世界別に並んでいるようなので、
参加者に死者を把握させるための放送なら◆LuuKRM2PEg氏の作品のように名簿での上から下(ゴオマ、木野……霧彦、井坂)
の順番で発表する方が自然では?と思いました。

381道化師♭第1回放送(>>374修正版) ◆7pf62HiyTE:2011/08/08(月) 13:33:00 ID:KnNZ.zxY
>>380
指摘の方ありがとうございます。
ご指摘の様に名簿順にする方が自然だと此方でも判断致しました。その為、放送パートである>>374の差し替え分を投下致します。
なお、海堂の名前が呼ばれるタイミングは退場が放送直前という事を踏まえ修正前のままとなっています。(但し問題があるなら此方も修正致します。)

以下は>>374の差し替えです。後のパートは現状変更はありません。
また、引き続き問題点や疑問点があれば指摘の方をお願い致します。

♯♯♯♯♯


【18:00】


 こんばんは諸君――
 最初のあの場以来だね、死神博士だ――
 これから君達に重要な事を伝えよう――


 諸君達も気がかりであろう自らの同志、仲間、あるいは家族の生死についてだ――


 だがその前に禁止区域について伝えておこう――
 愛する者が死んだショックで聞き逃し、うっかり入ってしまい自滅するというのは此方としても面白みに欠けるのでな――

 おおよそ予想が着くと思うが、禁止区域に入れば諸君等の首に巻かれている『それ』が反応し――
 …………………………誰だったかな、まぁいい。最初に死んだあの男の様になる――
 さっきも言ったがそれで死なれるのは面白みに欠ける、だが一カ所に引き込もり続けられても困るのでな――

 が、ここで1つ重要な事を伝えようか――
 当初の予定では奇数時の0分――つまり19時、21時、23時に1つずつ禁止区域を稼働させるつもりだった――
 が、諸君等のお陰でそれでは少々追いつかない事態となった――
 いや、これはむしろ諸君等の頑張りが成した事なのだ。大いに誇って良い事だ――
 前置きが長くなったな――
 結論を述べよう、諸君等のお陰で2つずつ禁止区域を稼働させる事となった――
 そう、5時間後には64個あるエリアの内6つが禁止区域となるという事なのだ――
 下手に禁止区域に入る事の無い様十分注意してくれたまえ――

 ではこれから6時間の間に新たな禁止区域となるエリアは――


 19時に【G-1】、【A-4】
 21時に【D-5】、【E-7】
 23時に【E-4】、【H-3】


 以上、二度は言わんぞ。聞き逃した者は他の人にでも聞けば良い――
 ではここからが本番だ、この6時間で惜しくもこの戦いから脱落した者の名を告げようか――
 此方も二度言うつもりはないからそのつもりでいてくれ――


 ズ・ゴオマ・グ
 北條透
 木野薫
 北岡秀一
 東條悟
 霧島美穂
 木場勇治
 園田真理
 剣崎一真
 桐生豪
 財津原蔵王丸
 加賀美新
 モモタロス
 ネガタロス
 キング

 光夏海

 照井竜
 園咲霧彦
 井坂深紅郎

 以上19に――

 済まない、放送直前に脱落した者がいたのを忘れていた。これは此方の落ち度だ――

 海堂直也

 以上20人がこれまでに脱落した者達だ――
 最初にいた人数は60人、それがたった6時間で3分の1も減るというのは此方としては想定外であるものの喜ばしい事だ――
 残り40人の諸君には今後も大いに戦って貰いたいと思う――


 さて、これで今回の放送を終わりたいと思う――
 が、諸君等の働きに敬意を示し最後に此方からアドバイスを送ろうではないか――

 諸君等の中には徒党を組んで我々を打倒する者が数多くいるだろう――
 そして君達は友人、仲間、あるいは家族が同じ志を持っていると信じている者もいるだろう――
 だが、必ずしもそうでない事を覚えておいてもらいたい――
 そう、殺し合いに乗っている者もいるという事だ――

 同時に組んでいる者達が必ずしも同じ志を持っているとは限らない――
 そう、水面下で出し抜こうと目論んでいる者もいるという事だ――

 せいぜい寝首をかかれない様に気を付けたまえ――

 ではまた6時間後、生きてこの放送が聴ける様に祈っている――

382 ◆MiRaiTlHUI:2011/08/08(月) 18:28:58 ID:Fiseq/RE
ご指摘ありがとうございます。
自分も確認しましたので、>>369の差し替えにあたる修正稿をこちらに投下します。





 夕方の会場の空を、一隻の巨大な飛行船がゆっくりと横切ってゆく。
 コンドルのマークが描かれた飛行船には、液晶の巨大モニターが幾つも取り付けられていた。
 屋外に居る限りは、何処に居る参加者にでもモニターの映像が見える様にという配慮であろう。
 一方で、飛行船の姿が見えぬ参加者の為にか、会場中の全ての映像機器にも同じ映像が配信されていた。
 全施設と民家、街中の大画面液晶、店先のテレビ。兎に角、種類を選ばず、ありとあらゆる媒体からである。
 それに伴い、音声も会場中のあらゆるスピーカーから……それのみならず、首輪からも発せられる仕組みだった。
 つまり、何処に居ても、意識を保っている限りは、大ショッカーからの情報を受けられる状態が、ここに完成したのである。

「やあ、仮面ライダーのみんな。……それから、怪人と一般人のみんなも、だね。
 今この放送を見れてるお前らは、とりあえず最初の六時間は生き延びれたって事さ。喜びなよ?
 ……っと、自己紹介がまだだったね。僕の名前はキング……一番強いって意味の、キング。宜しくね」

 映像の中で、ニュース番組を彷彿とさせるテーブルに着席した金髪の少年は、不敵にその名を名乗った。
 赤いジャケットを纏った彼の名はキング。ピアスやらネックレスやらを過多に装着した、軽薄そうな若者である。
 そんなキングの背後では、大ショッカーの戦闘員たる全身タイツに覆面の男が二人、物言わず直立していた。

「さて。世界の命運を賭けた、最っ高にハイレートなデスゲームの方は楽しんで貰えてるかな?
 これから皆お待ちかね、このゲームで死んじゃった参加者名と、今後の禁止エリアを発表するよ。
 当然、二度目はないからしっかり聞きなよ? メモを取っておくのもいいかもね?」

 嘲笑う様にそう告げて、キングはパチンと、乾いた指の音を鳴らした。
 背後にいた二人の戦闘員が、巨大なモニターを覆い隠していた垂れ幕を勢いよく払い除ける。
 キングの背後の巨大な液晶に所狭しと羅列されているのは、二十人にも及ぶ参加者の名前だった。
 やがて一人一人の名前がアップで映し出され、それに伴ってキングが順にその名を読み上げていく。

「ズ・ゴオマ・グ、木野薫、北条透、北岡秀一、東條悟、霧島美穂、木場勇治、園田真理、海堂直也、剣崎一真、
 桐生豪、財津原蔵王丸、加賀美新、モモタロス、ネガタロス、キング、光夏海、照井竜、園咲霧彦、井坂深紅朗
 以上、二十人。……いや、僕も死神博士もびっくりしたよ。まさか皆がここまで必死に殺し合ってくれるなんてさ?
 これからも僕らの期待に応えられる様に頑張ってね、みんな。死神博士もみんなの事、応援してるってさ」

 それから、何かに気付いた様に「あっ」と呟いて、

「そういえば、僕と同じ名前の奴が死んじゃったみたいだけど、そいつ僕とは何も関係ないから、勘違いしないでね。
 一応言っておかないと、誤解されたらムカつくからさ。ってか、僕だったら最初の六時間で死んだりしないし!」

 誰の激情を誘うかも考えず、キングはそう言って嘲笑った。
 だけれど、そんな上辺だけの笑いはすぐに止め、それに伴って映像も切り替わる。
 次に表示されたのは、それぞれの世界の名。その隣には、何らかの順位と数字が表示されていた。
 上から順に、クウガの世界、剣の世界、キバの世界、龍騎の世界、カブトの世界、アギトの世界、という並びである。
 それが一体何の順位であるかを説明するのは、やはり軽薄な笑みを浮かべるキングであった。

383 ◆LuuKRM2PEg:2011/08/22(月) 09:47:44 ID:TWs.cysY
これより先日投下した「交錯」の修正部分を投下します
まずは一条さんパートから


 太陽が沈んだ夜空に飛ぶ、数多もの飛行船。それら全てに巨大なスクリーンが取り付けられており、デスゲームの途中経過を告げられる。
 それだけで無く、この世界に存在するパソコンのスクリーンやテレビ画面も、情報を伝える役割を担っていた。それはこの一軒家も例外ではない。
 そこに映し出されたのは、キングと名乗った金髪の少年。彼は、こちらを小馬鹿にしたような態度で、死人を読み上げていた。
 キングの表情からは、人の死に対する罪悪感や悲しみといった感情が一切感じられない。むしろ、楽しんでいるような気配すら感じられる。
 しかし、一条薫の中ではそれに対する憤りよりも、別の感情が強くなっていた。

(この六時間で、既に二十人もの命が奪われているとは……)

 彼は憤りを感じている。自信の無力さと、この戦いによる犠牲者を大勢出してしまった事に。
 その中には先程、未確認生命体第三号の暴虐から自分達を庇った照井竜も含まれている。かつて金の力を手に入れた五代すらも圧倒した三号と戦っては、こうなることは予測出来た。
 極めて当然の結果。しかし一条は、そんな言葉で割り切る事など出来なかった。
 警察という職業に就いている以上、人の死というのは数え切れないほど見ている。どれだけ頑張っても、救えない命や届かない思いもあった。故に、数え切れないほどの無念や罪悪感を抱いている。
 だが、それに溺れる事は決して許されない。ここで足を止めてしまっては、これから救えるかもしれない命が救えなくなる。
 何よりも、それは彼らに対する冒涜となる。

(クウガの世界の殺害数が七人……まさか、未確認がここでも多くの命を奪っているとは)

 キングが告げたもう一つの情報。それはクウガの世界に生きる者達が、既に七人もの参加者を殺害している事だ。
 恐らくクウガの世界とは、自分の生きる世界の事だろう。第四号は未確認達の間ではクウガと呼ばれていたから、その可能性が高い。
 だがそれよりも、この情報が意味するのは奴らの横暴を許している事だ。未確認生命体達はこの世界でも、照井を始めとした多くの命を奪っている。
 それがあまりにも悔しかった。自分がもっと上手くやっていれば、こんな事にはならなかった筈なのに。
 しかし、ここで後悔に沈んで立ち止まる事は許されない。未確認達の凶行を一刻も早く止めてみせる。

「アクセルドライバー……か」

 決意を胸にした一条は、照井の遺品であるアクセルドライバーとアクセルメモリを手に取った。彼の生きる世界では街を守るヒーローであった『仮面ライダー』になるための力。
 アクセルを象徴する深紅の色は、まるで照井の中に宿る熱い炎のようだった。これが今ここにあることは、自分が彼の意志を継いで戦わなければならない事。
 第三号との戦いでは、度重なるダメージによって変身が解除されてしまい、再度変身を行おうとした。だが、何の反応も示さない。
 一度しか使えない道具ではないはずだ。それならば、彼は平和を守る事など出来ない。大ショッカーが、何かしらの細工を仕掛けた可能性がある。
 何にせよ、使うにはタイミングが必要だった。
 思案を巡らせていると、部屋の扉が開く音が聞こえる。振り向くと、支給されていた服を纏っている桐谷京介が立っていた。

384 ◆LuuKRM2PEg:2011/08/22(月) 09:48:37 ID:TWs.cysY
続いて、締めのレンゲルバックル逃走パートで(始は登場しない方面で)






 レンゲルバックルは、宙を飛んでいる。先程戦った仮面ライダー達から逃れるように。
 かつて上城睦月がスパイダーアンデッドの脅威から逃れようと、レンゲルバックルを捨てた事が何度もあった。
 しかしその度に、レンゲルバックルは彼の手元に戻っている。しかし今回はこれまでとは違い、人間達から逃げるために飛んだ。
 理由は、あの女を操って先程襲った二人を仕留めようとした瞬間、妙な赤いライダーが現れた故。しかもその戦闘力は高く、上級アンデッド達をいとも簡単に蹴散らした。
 これでは、あそこに留まっていても破壊されてしまう可能性があり、小沢の身体を捨てて逃亡を選ぶ。別に替え玉などいくらでもいるからだ。
 そう思いながら、スパイダーアンデッドはレンゲルバックルを動かして逃亡を続ける。
 その行く先は、闇で覆われていた。


【全体事項】
※レンゲルバックルが移動を開始しました(何処に向かうのかは、後続の書き手さんにお任せします)

以上です、ご意見などがありましたらご指摘をお願いします

385二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/08/23(火) 00:48:32 ID:wTiKNltw
投下乙です。自分は問題点は克服されたと思います。
ただ、今言うのは遅いですがもう一つ気になった点が。
作中時間は夜でなく夜中(20:00〜)の方がいいのでは?と感じました。

小沢は17:58にレンゲルの変身を解除したので、次に変身できるのは19:58以降です。もしこの話が終わるのが夜なら、
小沢が19:58ほぼピッタリに変身、UDを召喚して一条達と戦い、そこにクウガが介入してUDを倒してレンゲルと引き分けて戦闘終了
この一連の流れは僅か2分未満で行われたことになります。自分はこれが不自然に感じたので意見します。

386二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/08/23(火) 01:18:04 ID:XzPrcL9k
実の所、自分も読み直して気になった点があるので意見を。
本スレ>>961を読む限りユウスケが放送でショックを受けた落ち込んだ少し後に戦いの音が聞こえた描写になるんですが、
小沢戦が19:58なので必然的に約2時間も只落ち込んでいただけという計算になるんですよね。そうでなければ戦いまで持っていけないので仕方ないといえば仕方ないんですが。
有り得なくはない……といえば確かにそうなんですが、『今でさえダグバの凶行を許しているのかもしれない』と解っている中で2時間も落ち込むだけというのがどうにも。

それから装甲車を追跡していた筈の牙王がスルーされているという点もちょっと気になったのですが。
ユウスケが装甲車から降りたのが放送直前なので、その前に見失ったといえばそれまでなのですが……

で、>>385の指摘で修正を加えるとなると最低でも8時半前後になりそうなんですが(しかも明確な時間が出ていないので最長10時前という風にも取れる)、放送後初にも関わらず時間が進み過ぎになりそうな懸念が……
勿論、これらについては割とどうとでも取れるし気にならない人もいるだろうからそこまで強くは言えないのですが一応意見として出しておきます。

387 ◆LuuKRM2PEg:2011/08/23(火) 19:04:20 ID:.3R.mEyI
再度、ご指摘ありがとうございます

それでは時間の修正(夜→夜中)及び、ユウスケのパートを修正させて頂きますが、よろしいでしょうか?
具体的には、装甲車を運転している最中に、戦いを見つけた→車から降りて変身という方向で

388 ◆LuuKRM2PEg:2011/08/24(水) 13:14:45 ID:vVQbV346
それでは、指摘されたシーンの修正版を投下します



 機密組織ZECTで使われる装甲車に乗る小野寺ユウスケは、ハンドルを動かしていた。
 現在地点、D−2エリア。ン・ダグバ・ゼバとの戦いで目覚めた、究極の力による厄災から橘朔也や日高仁志を巻き込まない為に単独行動を選んだ。
 そこからダグバを倒すために、行くアテもなく彷徨う。もうこれ以上、犠牲者を出さないと決意して。
 そんな彼に突き付けられたのは、大ショッカーによる第一回放送。

「夏海ちゃん……海堂……ッ!」

 彼の声は震えていた。この六時間もの間で、既に二十人もの犠牲者が出ているという事実に対して。
 その中には、旅の仲間である光夏海や橘の後輩である剣崎一真、ヒビキの先輩である財津原蔵王丸も含まれている。
 そしてもう一人、ユウスケに強い衝撃を与える名前があった。この世界で初めて出会った、もう一つの『555の世界』に生きるオルフェノクである海堂直也。
 奴は言動に一貫性が無く、どうにも胡散臭い雰囲気を感じさせる。しかし自分の事を助けに戻ったので、少なくとも悪い奴ではないはずだった。
 そんなあいつがもういない。海堂だけでなく、同じ世界に生きる木場勇治や園田真理も殺されている。
 信じたくない。嘘だと言って欲しい。無理だと分かっていても、そんな思いがユウスケの中で広がっていく。

「畜生……ッ!」

 みんなを守るために仮面ライダークウガとなったのに、誰も守る事が出来ない。むしろ、犠牲者を増やしている。
 その事実が、ユウスケの中に宿る憎悪を強くさせていた。殺し合いを仕組んだ大ショッカーやダグバを始めとした殺戮者達。そして、無力な自分自身に対して。
 不意にユウスケは、夜空を見上げる。そこに広がる闇が、まるで自分自身を象徴しているかのように見えた。
 憎しみに身を任せたまま暴力を振るう、忌むべき未確認生命体と全く変わらない自分。こんな身体となっては、誰かを守る事なんて出来るわけがない。

「俺は……何も出来ないのかよ」

 みんな頑張っているはずなのに、自分だけこんなザマだ。士も、海東さんも、ヒビキも、橘さんも、名護さんも、みんなの為に戦っているのに。
 世界に生きるみんなの笑顔を守ると、姐さんに誓ったのに。でも、大ショッカーの仕掛けた戦いの犠牲者が出てしまっている。
 それどころか、今でさえダグバの凶行を許しているのかもしれない。それがたまらなく嫌だった。

「……ん?」

 運転する彼の目に、ある光景が見える。その先では、三人の仮面ライダーと『剣の世界』の怪人であるアンデッドが、戦いを繰り広げているのが見えた。
 それを目にして、ユウスケはブレーキを踏んで車を止める。
『剣の世界』に存在する仮面ライダーレンゲルがアンデッドを率いて、他の二人を襲っているように見えた。相手は『響鬼の世界』で戦っているライダーを彷彿とさせる銀色の鬼と、見知らぬ赤いライダー。
 戦闘が起こっているのを見たユウスケは、腰にアークルを出現させながら運転席から飛び出し、すぐさま駆けつけようとした。

以上です、ご意見がありましたらご指摘をお願いします。

389 ◆nXoFS1WMr6:2011/09/18(日) 10:06:54 ID:UtHkYNjs
皆様大変長らくお待たせしました。これより指摘部分の修正を投下します。

(前略)

故に急がば回れということわざを信じ彼らは放送前に流れのゆるい川の内側からE−3エリアに流れ着きたかったのだが、現実はそう上手くいかない。
結果として川からあがるまでに放送の前半部分を聞き逃してしまった。
しかし、重要な仲間の死亡情報、及び禁止エリアは知ることができた。故にそこまで不便はしていない。

(中略)

それがあいつの望むことだと思うから−−。
しかし、先ほどの放送で気になったのはそこだけではなかった。

(井坂……)

そう、照井の家族を皆殺しにした憎き敵であり、自分達の前に幾度となく立ちはだかった井坂深紅郎のことだ。
この場においてミュージアムの幹部達は死者を再生する技術ネクロオーバー、通称ネバーとして蘇り、自分たちが倒した時より遥かに強力になっていると思っていたが、紅から聞いた霧彦の例からしてもこの場ではどうやら不死身ということではないらしい。
恐らくかなり大幅に制限されている、あるいはネクロオーバーの技術以外で蘇った可能性も考えられるだろう。しかし、所詮自分の知らない技術なら、今の状況ではどうしようもない、故にいまこの問題は保留とする。
そう、今の放送で彼の頭を悩ましたのはそれだけではない。
この場で初めて会った参加者である木場さん、その仲間に彼の死を伝えるはずだったのに。
その事を告げるべき人物が既に二人も死んでしまった、しかし彼の死を告げるべき人物はまだいる。
それ故彼の死を一人でも多く伝えなくては。
そうだ、亜希子やフィリップが生きていたことに安堵している場合ではない。明日は我が身かもしれないのだ、故に亜希子やフィリップを探そうにも、木場さんの仲間を探そうにもかなり大きな問題がのしかかる、それは−−。

390 ◆nXoFS1WMr6:2011/09/18(日) 10:10:22 ID:UtHkYNjs
以上です。長い間申し訳ありませんでした。また何かあったら意見お待ちしてます。

391二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/09/18(日) 10:11:19 ID:9Hy9owxg
修正乙です。
個人的には大丈夫だと思いますが、次からは修正するにしてもなるべく早めでお願いします。
書き手の皆様も困るでしょうし

392 ◆nXoFS1WMr6:2011/09/18(日) 10:19:04 ID:UtHkYNjs
重ね重ね申し訳ありません、二人の備考欄に

※放送の前半部分をどこまで把握しているか不明です。

という一文を追加します。

393二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/09/18(日) 11:01:34 ID:gDgnIjKU
修正乙です。
内容に関しては問題は無いのですが、既に触れられている通り修正するという氏の発言から10日以上というのは事情などを考慮しても遅すぎます。
真面目な話、元々の期限が延長込みで7日というルールを踏まえて考えてもある意味大幅な期限超過と取られてもおかしくありません。
長さ的に考えても1レス程度で済むならなおの事では無いでしょうか?
確かに修正期限に関するルール自体は無い為、極端な話をすればいくら遅くなっても厳密的には問題はありません。
ですが、修正を前提にSSを投下して、修正期限が存在しない事を良い事に伸ばし伸ばしに出来るという前例を作ってしまうのは良い事とは思いません。
(極端な例を言えば最初から不備のあるSSを投下し、修正するという発言を良い事に伸ばし伸ばしにし続ける。無論、氏にそういう悪意が無い事は承知はしていますが)
普通に考えても宣言の後1日あるいは2日以内に修正、出来なければ進歩状況(あるいは投下出来そうな時期)を伝えるのが筋では無いでしょうか?
無論、氏に悪意自体が無いとは思いますが、これは最早SS初心者云々関係無しに根本的なマナーの問題です。
今回SSを通す事自体は別段問題ありませんが、ここまで遅くなるならば破棄と言われても仕方ない事をご理解頂きたいのですか。

394二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/09/18(日) 15:22:41 ID:PyI3tLuQ
要は、SSにしろ何にしろら遅れるならいつまでに出来るとか一言連絡をってことだね。待ち続ける方は不安になるから。
今回はいいけど、次からは気を付けようぜ。

395 ◆MiRaiTlHUI:2011/10/12(水) 09:30:16 ID:57VXp6Hc
ご指摘いただいた箇所の修正稿が出来あがりましたので、投下させて頂きます。
尚、今回は本スレで自己申告した状態表含め、色々と面倒な点も多かろうと思いますので、
これで通しで問題無いならWiki収録の際は自分がやっておこうと思います。

////////////////////////////////////////////////////////////////////// 

 志村があきらと冴子の二人を連れて離脱したのを確認して、良太郎は安心した。
 少なくとも良太郎は、志村の事を信頼している。自分の代わりに、三人の命は救われたのだ。
 後は、何とかして村上を止め、考え直して欲しい所だが……今の良太郎に変身が可能なのかどうかは些か疑問だ。
 それに良太郎は、心の何処かでまだ村上を信じているのだ。変身して戦って倒してやりたいという事もない。
 第一、自分に出来る事をやると決めたのに、変身すればまたウラタロス達に頼りっぱなしになる。良太郎はそれが嫌だった。
 良太郎の友は、きっと最期まで戦ったのだ。ならば良太郎がここで諦めていい道理などはない。
 決意を胸に、全力を込めて踏ん張る。ローズオルフェノクが掴んだままの刀に、無理矢理にでも力を込める。
 ローズオルフェノクは、呆れたように良太郎の刀から手を離した。

「えっ……?」
「やれやれ……下の下、ですね」

 そう言って、怪人は一歩身を引くと、その姿を変えた。
 目を丸くする良太郎など意にも介さずに、その姿は元のスーツの男へと戻ってゆく。
 一体どういう事だろう。てっきり、先の放送を聞いた村上が、殺し合いに乗ってしまったのかとばかり思っていたのだが。
 しかし変身を解除し、良太郎を見詰める村上の視線には、軽蔑はあっても、殺気というものはまるで感じられなかった。
 良太郎の頭の中に、酷くトーンを落としたウラタロスの声が聞こえて来たのは、それから一瞬後の事だった。

(やられたよ、良太郎……あの志村って奴にね)
「え……どういう……」

 状況がまるで分からない。
 村上は呆れたように嘆息し、言った。

「貴方は騙されたんですよ、志村純一にね」
「え……?」

 この場で理解出来ていないのは、良太郎ただ一人だった。
 周囲を見渡すが、そこに志村の姿はもうない。ただ、崩れ去った鉄骨が積み重なって、燃えているだけだった。
 最早完全に崩れ去った東京タワーの跡地で、瓦礫と鉄骨の山に囲まれながら、良太郎はようやく彼らの真意を理解した。
 それに気付いた瞬間、良太郎の中で積み上げられていた「信頼」は、東京タワーと同じように崩れ去っていった。

396 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/13(木) 00:51:27 ID:Lw30VKP6
◆MiRaiTlHUI氏、修正お疲れ様です。
しかし、今まで大きな問題点を見落としていたことに気付いたので、具申させて頂きます。

今更ですが、タワーの倒壊よりも後の時間軸だと考えられるSSがwikiに既にいくつか収録されています。
そのうち、特に『チューニング♯俺を利用しろ!』ではC-5エリアにいる紅渡の状態表で「ウェザー
ドーパントに30分変身不可」となっており、これはほぼ同時刻にゾルダに変身していたアポロガイスト
の午後7:01時点『橋上の戦い 』で状態表で残り45分変身不可になっているところから考えると、渡達
はタワーの倒壊前後にはその周辺のエリアにいるはずなのに、作中にもあるようにかなり広い範囲で
確認が取れるだろうタワー倒壊へのリアクションが一切ない、という不自然な展開を招いてしまいます。

ただ『愚者の祭典/終曲・笑う死神』は好評のようで、何より私自身大変楽しませて頂いたので、破棄
などはして欲しくありません。とはいえ、東京タワー倒壊は既に収録された作品との矛盾を無視するに
は影響が大き過ぎる事態でもあると思います。可能であればwiki収録前に他作品との矛盾を極力減らせる
よう、タワー倒壊の時間を遅らせるなどの修正を考えて頂けないかと提案させて頂きます。

もし、このような提案を書き込む先を間違えていたら大変申し訳ありませんが、急ぎ報告する必要がある
と考えたので一旦ここに書き込みさせて頂きます。

397二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/10/13(木) 12:09:18 ID:WSDg7fxc
作品内での時間描写を削って、最後の備考での東京タワー倒壊の時間もアバウトにするのはどうかな?
明確な時間描写さえぼかせば次の話でどうとでも解釈出来るし、問題はクリア出来ると思う。
俺も今回の作品は破棄にはして欲しくないな。

398二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/10/13(木) 13:03:02 ID:6UmnItO.
僕の意見としては>>396にある通り遅らせる方向で、ただ>>397の明確な時間描写をぼかすという点には賛同は出来ません。
時間をボカした所で、渡サイドがリアクションしない事は確定なので、遅らせた上で時間を確定した方が後の書き手の負担が小さくなると思います。

ただ、解釈的な問題として『チューニング♯俺を利用しろ!』終了時点の時刻が大体7時15分(『橋上の戦い』終了が7時頃として)となりますが、
それから約30分ぐらい前である6時45分からZECT基地で休息をとっていたとするならば(アポロが去ったのは6時30分過ぎ頃)、
倒壊時間を10分程度遅らせた程度で大体の問題はクリア出来ると思います。
これなら気付かなかったという解釈も出来ますし、気付かなくても少なくても渡達は戦いが起これば倒壊する事は把握している為、そこまで過剰なリアクションを取らせる必要もないのではないでしょうか?

399 ◆MiRaiTlHUI:2011/10/13(木) 14:05:59 ID:Z6BFmiGw
>>396-398
ご指摘&修正意見ありがとうございます。
自分の作品でのミスの為に色んな意見を言って頂けて、
申し訳ないと同時にとても嬉しく思います。

時間を十分程遅らせれば大方の問題は解決出来るという事ですので、
作中での時間描写、冒頭の「放送終了から三十分後」という一文を「数十分後」という形に修正し、
最後の備考を6時50分頃に東京タワーが倒壊しました、という形に修正しようと思います。

単語の修正だけですので、こちらで修正稿を用意し、そのままウィキの方に収録しようと思いますが、よろしいでしょうか。

400二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/10/13(木) 16:27:40 ID:Jb6VSdvQ
それで大丈夫だと思います

401 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/13(木) 17:49:52 ID:Lw30VKP6
収録された作品を一通り見直して来ましたが、自分も10分も遅らせれば大方は大丈夫だと思います。
いささか過剰騒ぎ立てしてしまったかもしれないことをまずはお詫びします。

ただ『世界の真実』内にて、次のように未だ東京タワーが健在であるかのような描写があります。

 『周囲を見渡してみても、東京タワーが後方に見える事以外に、目立ったものは何もない。』

幸いなことに『世界の真実』は同じ◆MiRaiTlHUI 氏の作品ですので、お手数でなければ『世界の真実』
の該当箇所の修正をお願いしたいです。
問題となった渡と始のリアクションについての問題もこれで完全に補完できると考えます。

402 ◆MiRaiTlHUI:2011/10/13(木) 21:05:01 ID:Z6BFmiGw
>>401
確認しました。
ウィキの方で、「世界の真実」における東京タワーに関する一文を削らせて頂きました。
「愚者の祭典/終曲・笑う死神」の方も収録しておきましたので、また何かあれば報告して下さると幸いです。

403 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/16(日) 11:36:13 ID:LqpZb1vY
予約していた作品が大方完成しましたが、不安があるのでこちらで一時投下させて頂きます。

404 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/16(日) 11:38:29 ID:LqpZb1vY
 橘朔也とヒビキの二人は、E-5エリアの道路を南下していた。
 元々は、大ショッカーが仕掛けたこのふざけた殺し合いを止めるために仲間や協力者を探そうと行動していた。変身手段を持つ参加者が五人も集まり、二手に分かれたとはいえこれだけの仲間が居るのだ、その行き先は決して暗いものではなかったはずだった。

 はずだった、のに――

 あまりにも危険な参加者、ン・ダグバ・ゼバとの出会いにより、全ては急変した。彼により自分達は酷く傷つき、他にも危険人物だったとはいえ二人の参加者が命を奪われた。
 その光景を目にした小野寺ユウスケは、ダグバと等しい力を持つクウガとなった。だがそれは、人々を護る自分達にあってはならない、憎悪に支配された存在。
 もしも、その力が自分達に振るわれたら――橘はその恐怖のまま、黒きクウガの危険性をヒビキに説いた。
 光夏海という仲間を失い、ダグバと戦い、心身ともにボロボロなユウスケが、その言葉を耳にしている可能性を考慮せずに――

 結果、ユウスケは自分達の元を去って行ってしまった。きっと、彼を恐怖した自分達を、巻き込んで傷つけてしまわないように。
 そんな事態を招いてしまった原因は自分にあると考える橘の足取りは、重い。
 そして彼、いや彼らの足取りを重くさせる理由は、もう一つあった。

 それは、殺し合いの進行状況を告げる、大ショッカーによる放送。
 そこで読み上げられたのは、全参加者の三分の一にもなる二十人の死者の名だった。
 橘は、覚悟していたとはいえ大切な仲間である剣崎一真の死を突き付けられた。
 だが、それだけで終わりではなかった。ヒビキも彼の頼れる先輩である財津原蔵王丸の死を告げられた。さらにこの会場にて出会った同志、海堂直也までも命を落としていた。
 さらにその海堂の仲間だと言う木場勇治と園田真理の訃報まで読み上げられた。
 特に、戦う力を持たず、早急に保護しなければならなかった園田真理の死は、守るべき人を護れなかったという罪悪感となって二人を締め付ける。
 また、ヒビキ達には黙っていた人物だが、橘のかつての先輩であり、レンゲルの持つ闇により絶命したはずだった桐生豪の名が死者の中に含まれていたことも、橘の精神を責め立てていた。

 さらに二人に絶望を与えたのは、大ショッカーの発表した世界ごとの殺害人数だった。
 それによれば、クウガの世界が他を大きく引き離して一位。そこはあのダグバと、他に二体の未確認が所属する世界。

405 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/16(日) 11:39:38 ID:LqpZb1vY
 予想はしていたが、未確認生命体の脅威はこれで証明されたようなものだった。ダグバだけでなく、他の未確認も相応の力を持っていると考えられる。
 自分達仮面ライダーが束になって、ようやく戦いになるかどうかというほどの力を誇る悪魔。そんな奴らが野放しになって、今もこの会場のどこかで暴虐の限りを尽くしているのかもしれない。
 
 だが、それでも二人は止まるわけには行かなかった。
 恐るべき未確認だが、その内の一体ズ・ゴオマ・グは既に倒されたと放送で告げられた。
 また、多くの者達を取り零してしまったとはいえ、まだ彼らが仮面ライダーである以上、守るべき者達がこの会場には大勢いるのだ。
 ダグバから橘を庇い散った、名も知らぬ参加者より言伝を預かった相手、小沢澄子。
 彼女と共にいるところにヒビキが出会った、人を護る仮面ライダーとして戦う城戸真司。
 他にも、やはりヒビキが別れた津上翔一や、あの時集まった五人がそれぞれ信頼できると名前を挙げた乾巧や紅渡を始めとする多くの者達は未だ名前を呼ばれずに済んでいる。
 海堂は残念だったが、彼と共に別行動を取っていた名護啓介は生き残っている。
 橘は信用していないが、アンデッドである相川始は剣崎の友だった。その始も無事だ。
 そして自分達が知らない、護らねばならない人々がまだいるはずなのだ。

 連続する絶望に、それでも彼らが屈せずに立ち向かうことができたのは、彼らの正義の心によるもの――
 だがそれでも放送直後という短時間で立ち直れたのは、皮肉にも大ショッカーのおかげだと言えるかもしれない。
 放送を行ったキングは、かつて剣崎が封印したはずのアンデッド、カテゴリーキングだ。奴の言う御人好しの仮面ライダーとは、十中八九剣崎のことだろう。
 そんな彼の死を指して、奴は言った。

 口先だけの正義の味方など、何の役にも立ちはしないと。

 ならば自分達が、ここで悲しみに沈んでばかりいて良いわけがない――ヒビキがそう、放送を行う飛行船を睨んでいた橘に告げた。
 剣崎は、病院にいた他の参加者を護るために単身危険人物に立ち向かい、死んだという。
 確かにその場で剣崎が救った者達は――光夏海はその内の一人である、東條悟によって殺められた。その東條もまた、ダグバによって無惨に殺された。
 だがそれでも、剣崎の死は無意味だったわけではないと、そうヒビキは言う。
 何故なら自分達に、その正義の意思を遺してくれたのだから、と。
 最期まで仮面ライダーだった彼は、自分達に勇気を与えてくれたのだと。

406 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/16(日) 11:42:04 ID:LqpZb1vY
 だからこそ――ここで自分達が立ち止まっていてはいけない。彼の遺志を継いで、仮面ライダーとして人々を護らなければならない。
 そして剣崎達、散って行った仮面ライダーを嘲笑った大ショッカーを倒して殺し合いを止め、彼らへの侮辱を撤回させなければならないと。
 その言葉を受け、橘はヒビキと今後のプランを考えた。
 今の自分達がユウスケを追いかけることはできない。今のユウスケの精神状態には不安があるが、乗り越えてくれることを信じるしかない。

 ユウスケこそいないが、当初の予定通りに病院に向かうべきだという結論に至るのに、そう時間は掛からなかった。
 E-4エリアは――おそらく、そこで津上と合流する予定だったことを大ショッカーに察知されたのだろう、23時より禁止エリアに指定されていた。
 だが、だからこそ――立ち寄れる内に、治療に使える道具を手にするために、参加者が集まる可能性も高い。協力を望める相手ならば是非もなく、もし危険人物がいるのなら、他の参加者を護るために戦うべきだと、そういう考えになったのだ。
 夜の闇が足元を隠し、歩行するだけで体力を奪われる草原を歩くだけの余裕も二人にはなかった。市街地以上に人が集まる可能性があり、参加者と出会えなくても今後のために身体を癒すことができる病院は、そういう意味でもやはり目指すべき場所だった。
 またダグバなどと遭遇したら今の自分達では絶望的だが、何も行動しないわけにはいかなかった。

 何故なら、仮面ライダーなのだから。

(カテゴリーキング……)

 放送を行ったアンデッドを思い出す。剣崎の死を愚弄した、あの青年を。

(貴様は剣崎が封印したはずだ。それでもまた俺達の前に立ち塞がり、人々を傷つけるというのなら……もう戦えない剣崎の代わりに、俺がおまえを封印する!)

 その決意を胸に、橘は歩を進めた。
 歩き始めた時、遥か前方だった街灯の煌めきの群れは、目の前まで近づいて来ていた。

407 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/16(日) 11:42:53 ID:LqpZb1vY



 きぃん、という剣戟の音と共に、夜の街に火花が散る。
 光芒が切り取ったのは、それぞれ剣を手にした白銀の甲冑に身を包む騎士と、マゼンタの装甲を持つ異形の戦士。
 仮面ライダーブレイドと仮面ライダーディケイド。二人の仮面ライダーが刃を交わしていた。

「ウォォォオォォォッ!」

 剣の名を冠する戦士でありながら、獣のような雄叫びを上げるブレイドの太刀筋は洗練されているとは言い難い。とはいえ、その甲冑を纏う葦原涼はこれまで武器を用いた戦闘などしたことがなかったのだから無理もない。
 対するディケイドはその力任せな斬撃を受け流す。一合、二合と醒剣ブレイラウザーとソードモードのライドブッカーが互いに噛み合い、今またブレイラウザーが襲い掛かるが、その切っ先からライドブッカーは逃れる。
 いくつかの虚像を背に連れて一閃したライドブッカーの刀身が、攻撃をかわされ隙を晒したブレイドの甲冑に盛大な火花を散らせる。

「どーした! 俺をブッ潰すんじゃなかったのか!?」

 尊大な青年――門矢士の声で、ディケイドは転がりながらも何とか膝を立てたブレイドにそう尋ねる。

「――っ、ヴァァァァアアアッ!」

 舌打ちして飛び出すブレイドだが、大振りな一撃をディケイドは呆気なくかわす。反撃として逆袈裟に切り裂かれ、一回転しながら再び地に叩き伏せられる。先程からこの繰り返しで、傍から見ればディケイドがブレイドを嬲っているようにしか見えないだろう。
 うつ伏せに倒れ、ダメージの蓄積から直ぐに起き上れないブレイドに、ライドブッカーの刀身を撫でながらディケイドが一歩近づく。

「どうした。そんな調子で殺し合いに乗った奴らを一人残らずブッ潰せるのか? 本当におまえがおまえである意義など、そんな調子で見付けられるのか?」

 立ち上がれずにもがいているように見えたブレイドが、静かにブレイラウザーを持ち直したのをディケイドは見逃さなかった。

408 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/16(日) 11:43:47 ID:LqpZb1vY
「黙れ!」

 下からまっすぐに伸びた突きは、ディケイドの胸へと最短距離を疾っていた。しかし、ライドブッカーの剣腹を左手で押さえ、楯としたディケイドに防がれる。
 今の一撃は合格点だ、などと言いながら、ディケイドは両腕を跳ね上げる。それで体勢が崩れたブレイドに、ディケイドからの蹴りが突き刺さる。
 二歩、三歩と後退するものの、ブレイドは今度は倒れ込みなどせず、両の足でしっかりと大地を踏みしめ立っていた。
 ディケイドの仮面の下で、それを見た士は笑みを漏らす。
 侮辱と受け取ったのか、ブレイドは咆哮しながら剣を叩きつけて来た。
 ディケイドがライドブッカーでその一撃を受け止め、二人のライダーによる鍔迫り合いの格好となる。

「――あの女に殺されそうになったから、か? 殺し合いに乗った奴は全員潰す、なんて言っているのは」
「違うっ!」

 ディケイドの言葉によってブレイドは憤慨し、力ずくでライドブッカーを払い除ける。再びディケイドに切っ先を振り下ろすも、事もなげに戻って来たライドブッカーがそれを受け止める。
 違う、とブレイドはもう一度、まるで自分に言い聞かせるように首を振り、やがて赤い瞳でディケイドを睨みつける。

「俺は――俺は、俺の力で誰かを護りたい、それだけだ! 亜樹子のことは関係ない……本当にあいつが殺し合いに乗っていると言うなら……」

 ブレイラウザーに込められた力が再び強くなり、鍔迫り合いをする二人の戦士の身体の震えを強くする。
 その中で、ブレイド――葦原涼は、叫んでいた。

「俺が、あいつを止める!」
「潰す、じゃないのか? あの女は、助けてくれたおまえを殺そうとしたみたいだぞ?」

 ディケイド――士には、ブレイドに変身した男の大体の事情がわかって来ていた。
 名前を知っていることから、自分達が来る前から二人には面識がある。武器もなく戦う力も持ち合わせていないように見えたあの少女を、涼が護って来たのだろう。

409 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/16(日) 11:44:32 ID:LqpZb1vY
 だから涼は裏切られ殺されかけたことからあんな辛そうな顔になり、亜樹子も矢車に見出されるような闇を心に背負ったのだろう。
 助けた相手に、殺されかけた。だがそこで復讐に走るような男には、ブレイドの資格は託せない。
 一真の願いは、ブレイド……仮面ライダーの力で皆を護ること。涼を傷つけようとして心に傷を負うような奴は、人を狂わすこの異常な空間ならまだ護るべき対象なのだと士は考えていた。紅音也が止めてくれていなければ、自分もマーダーキラーとして殺し合いに乗っていたことだろう。夏海がそんなことを望まぬことなど、わかり切っているのに。
 音也が自分にしたように、闇に堕ちかけている者をも救う。それが仮面ライダーの役目だ。
 故に待つ。目の前の男の答えを。
 そして葦原涼は――ブレイドは、答える。

「あいつは……このふざけた殺し合いの恐怖に呑まれた、ただの女だ。殺し合いに乗っていようと、力を持つ俺が護らなきゃならない、力のない人間に変わりはない。
 だから俺が護る。そしてあいつが人を襲うというなら、俺が亜樹子を止める! あいつらとも、そう約束したからな……」
「だが、あいつはおまえを裏切ったんじゃないのか?」
「それでもだっ!」

 ブレイラウザーが押し込まれ、ライドブッカーが押し返すと鍔迫り合いが解除される。棒立ちしながらライドブッカーを持っただけのディケイドに対し、ブレイドは腰を低くし、刀身に左手を添えて構える。

「別に俺は……裏切られるのには、慣れてるからな」

 その言葉を境に、一瞬の静寂が夜の街を覆った。

「――くっ、ふっ、あはははははははははははははははっ!」

 それを破ったのは、ディケイドの腹の底からの哄笑だった。

「貴様ぁっ!」

 剣を振り上げ襲い掛かって来るブレイドの胴にライドブッカーを走らせ、火花を散らせて後退させる。

410 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/16(日) 11:45:10 ID:LqpZb1vY
 慣れない姿での攻防に疲労したのか、肩で息をするブレイドを見るディケイドの仮面に隠れた笑みはしかし、嘲笑などではなかった。
 先程の様子から、こんな言葉を引き出すのはもっと手強いものかと思っていたが――
 このまっすぐな男は、士の想像を超えて愚直過ぎるようだ。
 最期の瞬間まで仮面ライダーであり続けた、あの男のように。

「おい、スラッシュのカードをラウズしてみろ」
「なんだと!?」
「スペードの2をその剣に読み込ませてみろって言っているんだよ」

 敵対する自分の言葉に当惑した様子ながらも、ブレイドはそれに従う。

 ――Slash――

「これは……!」

 電子音の後にカードから召喚されたエネルギーに、ブレイドが驚いたような声を漏らす。
 その力をわかり易く教えてやるために、ディケイドは自分から仕掛けた。

「はぁあっ!」

 疾走するディケイドの振り下ろしたライドブッカーは、迎撃に動いたブレイラウザーと再び拮抗すると思われた。
 だが――

「ヴェェェェェイッ!」

 アンデッドの力を得た横薙ぎの斬撃は、ライドブッカーを弾いてディケイドの胸元に一閃していた。
 ディケイドからの攻撃に対処して、ブレイドがダメージを通したのはこの戦闘において初めてのことだった。
 ダメージを受けて吹き飛ぶディケイド。とはいえこの攻撃を受けることはわかっていたことだから、膝を着くような無様は晒さない。
 思っていた以上に痛みを覚えた胸板のことを意識の隅に追いやって、ディケイドは追撃を仕掛けて来ないブレイドに伝える。

411 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/16(日) 11:46:00 ID:LqpZb1vY
「――BOADのライダーシステムは、そう言う風にしてカードに封印されたアンデッドの力を引き出して自己強化することができる。覚えておけ」

「何故だ? おまえは……殺し合いに乗っていないな?」

 ブレイドの問いかけに、ディケイドは肯定も否定もしない。

「俺にこのベルトを渡し、戦い方を教えて……おまえは俺に何をさせたいんだ!?」
「俺が知るか!」

 ディケイドの返答に、ブレイドは驚いたように頭の位置を少し落とした。

「知るか、って……」
「おまえは愚かな人間だ。殺し合いに乗った奴をそいつが無力だからと助けて、自分が殺されそうになったのに、まだそいつが闇に堕ちるのを止めようとしている。この次は無傷で済まないかもしれないのにな」

 だが、とディケイドは息継ぎする。

「愚かでもおまえは人間だ。自分で自分の道を決める人間だ。愚かだから、転んで怪我をしてみないとわからないこともある。時には道に迷い、間違えたとしても……それでも、自分が選んだ道を歩むことができる、人間だ」

 きっと、葦河ショウイチのように――裏切られるのに慣れたと言う、人ならざるアギトの力で傷ついて来たのだろう彼に、士ははっきりと言ってやる。

「そんなおまえに、道案内なんて必要ない。おまえはもう、自分の道を見つけているはずだ。破壊者である俺ができるのは、その道を邪魔するおまえ自身を破壊することだ」
「おまえ……何者だ?」
「通りすがりの仮面ライダーだ。……別に、覚えなくて良い」

 そう告げたディケイドが、ブレイドの力を託せると信じた相手に、さらにその力のことを教えるべく戦いを再開ようとした、まさにその時だった。

 巨大な威圧感を放つ第三者が、その場に現れたのは。

412 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/16(日) 11:46:40 ID:LqpZb1vY


 今回のゲゲルを進行する大ショッカーは、ご丁寧に途中経過を放送してくれるらしい。
 だがグロンギの同じゲゲルを司るラの者達に比べると、奴らは気に食わないと言うのが、ゴ・ガドル・バの抱いた印象だった。
 いや、気に食わないなどという生温いものではない。ゲゲルが終われば、あのキングと名乗ったリントには制裁を下さねばならないとガドルは心に決めていた。

 理由は簡単だった。

 奴は、『仮面ライダー』の正義を愚弄したのだ。

 放送の直前、ガドルはある参加者と戦った。その参加者はその前にも一度戦った、取るに足らぬ弱者のはずだった。
 だが彼は、その戦いで真の仮面ライダーとなり、遥かに強大だったはずのガドルを打ち破ったのだ。
 そう、ガドルは正義の味方・仮面ライダーに敗れた。彼が正義のために燃やした命が尽きるのがほんの一瞬でも遅れていれば、先の放送の中にガドルの名も含まれていただろう。

 リントである彼らの言う正義が何なのか、グロンギであるガドルには理解できない。

 だがその正義とは、脆弱なはずの彼にこの破壊のカリスマを凌駕するほどの力を与える戦士の心なのだということは、何となくわかった。それを持つ戦士と敵として相対できることに、誇りすら抱かせてくれるものだと。

 その敬意を払うべき戦士の誇りを、奴は愚かだと侮辱したのだ。

 放送に呼ばれたゴオマにように、神聖なゲゲルのルールを破った不届き者でもあるまいに。きっと最期の瞬間まで正義を胸に、勇敢に戦った真の戦士達を嘲笑った。

 ――許せぬ、と。そんな怒りを胸に秘めながら、ガドルは夜闇に包まれたF-6エリアの市街地を歩んでいた。
 仮面ライダーとの戦いで受けたダメージは小さくはなかったが、グロンギの中でも最強に近いガドルの身体は、万全には遠くともある程度それを癒していた。

「ん……?」

413 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/16(日) 11:47:22 ID:LqpZb1vY

 興味深いある物を見つけたその時、ガドルの強化された聴力がある音を捉えた。

 それは剣戟の音。この近くで戦闘が行われていることを示していた。

 おそらくだが、既に本来の姿への変身制限は解除されているはずだ。そう考えたガドルは戦場へと足を向けた。

 そうして見たのは、仮面ライダー同士が互いに争う姿。

 この地に連れて来られてより、クウガを含む仮面ライダーと言った戦士達が手を組んだことはあれ、争う姿など目にしなかったため、ガドルの内には驚きがあった。
 驚愕だけではなく、嫌悪感まで抱いている自分に気づき、ガドルは足を止めていた。

 思い出されるのは、あの蛇の男と共に戦っていた黒い仮面ライダー。だがガドルはあれを仮面ライダーと認めない。正義の心で戦っていたようには到底思えなかったからだ。
 この二人もそう言った手合いなのか――そう落胆しそうなガドルだったが、事の顛末を見続ければ、考えは変わった。

 目の前の二人は、共に正義のために戦う仮面ライダーだ。愚かなリントにより己の正義を見失いかけた白銀のライダーを赤紫のライダーが導く、そのための戦いだったようだ。

「通りすがりの仮面ライダーだ。……別に、覚えなくて良い」

 赤紫の仮面ライダーがそう呟き、戦いが再開されそうになった時、ガドルは静観するのをやめた。
 全身から闘志を解放し、一歩近づく。

 その気配に気づいた二人の仮面ライダーが自分を振り返ったのを見て、ガドルは名乗りを上げた。

「俺は破壊のカリスマ、ゴ・ガドル・バ」

 いつもの口上に、怪人態への変身を終えたガドルはさらに自らを表す言葉を付け足した。

「仮面ライダーよ、リントを護らんとする、貴様らの敵だ」

414 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/16(日) 11:47:59 ID:LqpZb1vY



「……バシグラ ドバ ギグバジョ デ ギズン(自分でカリスマとか言うなよ)」

 突然現れた、破壊のカリスマを自称する軍服の男が姿を変えたカブトムシの怪人の正体を特定するのに、ディケイド――門矢士にはほんの少しだけ時間が必要だった。

 腰にした金のバックルと、固有名詞の前後に並ぶ一文字。リントという単語。
 これらを統合すれば、クウガとアギトの世界に存在する未確認生命体・グロンギしか、士は該当する怪人を知らない。

 だが、士は人の姿を持ったグロンギなど知らなかった。究極の闇、ン・ガミオ・ゼダによって多くの人間がグロンギに変えられたことはあった。だがそうして生まれたグロンギには、グロンギ族であることを示すバックルがなかったのである。

 それ故に迷ったが、だからこそカマを掛ける意味で、士はグロンギの言葉でそう応じた。

「ゾグ……パセサン ボドザゾ ガジャヅセスボバ(ほう……我らの言葉を操れるのか)」

 果たして相手は、グロンギの言葉で応じた。

「こいつ……未確認!?」

 やはりアギトの世界出身なのだろう、ブレイドが驚愕したような声を上げるが、ガドルと名乗ったグロンギは彼を無視し、士の変身したディケイドを見やる。

「ドボデ ゴゾゲダ(どこで覚えた?)」
「パスギ、ザグセダ(悪い、忘れた)」

 そう間髪空けず答えるも、士はライドブッカーを握る手が汗ばむのを感じていた。
 ガドルの放つ威圧感は異常だ。旅の中で出会って来た数々の強敵達の中でも、最上位に位置するほどの力を持っていることが感じ取れる。

「おい、おまえ……どうして奴らの言葉を……?」

415 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/16(日) 11:48:44 ID:LqpZb1vY
「良いから構えろ」

 故にブレイドの疑問に答える余裕はなかった。

「言ったはずだ、奴は俺達の敵だと……」

 それも、とびっきり凶悪な。
 その言葉を待っていたかのように、ガドルは胸元の装飾品を一つ千切った。
 同時に小さい勾玉状のそれが、巨大なボウガンへと形状を変える。

「来るぞっ!」

 そのボウガンから矢が放たれる時には、ディケイドは地を蹴りブレイドと反対方向へと跳んでいた。

 直後、ディケイドの背を叩く衝撃と、轟音。

 当たったわけではない。掠めたわけでもない。それでも後方の家屋を一撃で消し飛ばしたボウガンは、衝撃波だけでディケイドの体勢を崩すほどの威力だった。
 まともに当たれば、一撃で倒されかねないほどの威力。それに対して反射的に生じた恐怖を捩じ伏せ、ディケイドは一枚のカードをディケイドライバーに投げ込む。

 ――ATTACKRIDE BLAST――

 ライドブッカーをガンモードに変形し、トリガーを引く。瞬間、ライドブッカーの周囲に四つの虚像が現れ、それらを含めた五つの銃口から、無数のエネルギー弾が射出される。
 無数の弾丸がガドルの胸元で弾けるが、ダメージの入った様子はない。怯みすらせずに、銃口をディケイドに向け、再び矢が放たれる。

「――っ!!」

 さらに二射、三射。背中のほんの少し後ろを射抜いて行く矢を振り返らず、ディケイドはライドブッカーで応戦しながら走る。
 振り返ったら――足を止めたら、やられる。その直感があった。
 当たっても、まるで巨大な岩に豆鉄砲で挑んでいるかのように、ガドルは小揺るぎもしない。必殺の威力を秘めた反撃の矢が、ディケイドの直ぐ後ろを駆けて行く。

416 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/16(日) 11:49:38 ID:LqpZb1vY
 知っている限りでは、クウガのペガサスボウガンによく似ていた。だが威力はそれ以上で、単発式のあちらと違いガドルのボウガンは連射が効く。
 だがディケイドの攻撃はダメージにならずとも、ガドルの注意を向けさせることには成功していた。
 その間に疾走し、距離を詰めた男が一人。

「ウォオオオオオオオッ!」

 絶叫と共に、反対側からガドルに接近していたブレイドが剣を振り下ろした。

「――何っ!?」

 だが夜の市街地に響いたのはブレイラウザーがガドルの装甲を切り裂く音ではなく、ブレイドの驚愕に染まった声だった。
 既にスラッシュリザードの効果は消えている。それでも優れた切れ味を誇る醒剣ブレイラウザーが、ガドルの装甲に傷一つ付けることなく止められていた。
 ガドルがブレイドへと視線を移す。その過程で、眼の色が緑から紫へと変わる。

「まずい!」

 効かない弾を撃ち続けながら、ディケイドは思わず叫んでいた。
 ガドルの手にしたボウガンが、黒く巨大な剣へと姿を変える。
 まるでクウガと同じだとディケイドが思った時、その大剣はブレイドへと振り下ろされていた。

「ウァアアアアアアアッ!?」

 先程まで、ライドブッカーに何度切り付けられても耐えて来たブレイドの甲冑が、その一撃でぱっくりと割れていた。
 幸いにもその下の紺のスーツにまでは届いておらず、装着者は無事だ。だが、オリハルコンプラチナで形成された鎧でさえ、身の安全を保障してはくれないのだと、この一撃が示していた。
 斬撃により倒れ伏し、痺れてまだ立ち上がれないブレイドに、再びガドルが大剣を掲げる。

「やらせるかぁっ!」

417 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/16(日) 11:50:26 ID:LqpZb1vY

 だがディケイドは、それをただ見ているわけではない。

 ――FINAL ATTACKRIDE DEDEDE DECADE――

 ディケイドの構えたガンモードのライドブッカーとガドルの間にホログラムのような10枚の巨大なカードが展開される。気づいたガドルがこちらを見た時には、もうディケイドは銃爪を引き絞っていた。
 放たれた光弾はカード型エネルギーを潜り抜け、その力を得て光線へと強化される。10のゲートを通過し、極太いビームと化した一撃がガドルを強襲した。
 ガドルの巨体が、闇を切り裂き殺到する光の束へと呑まれて行く。

 苦鳴を漏らしながら、必殺技により爆散する怪人に巻き込まれまいと、ブレイドが立ち上がりディケイドの方へ向かって来た。

「な……っ!?」

 光が収束したというのに、爆発音が聞こえなかったことに背後を振り返ったブレイドと同時に、ディケイドも驚愕と畏怖の声を漏らしていた。

 ビームの着弾時より数歩下がった程度の位置で、ガドルは健在していた。
 鍛えられた巨躯を誇示するように胸を張るその姿は、先刻と一切の変わりなく。
 絶大な威力を秘めた必殺技の一撃でも、奴はダメージすら受けていなかった。

「その程度か……そんな力では、俺には勝てないぞ」

 そうして、淡々とした声色で二人に告げて来た。
 いや――先程と変わったところがある。

「ブレイド! スペードの5と6と9のカードをラウズしろ!」

 それに気づいたディケイドは、そう指示を飛ばした。
 目立ったダメージは入っていないようだが、さすがにディメンションブラストの直撃で奴はその手から大剣を取り零していた。武器がない今というチャンスを逃す手はない。

 ライドブッカーから取り出した次のカードをディケイドライバーに投げると同時に、隣のブレイドも三枚のカードを立て続けにラウズする。

418 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/16(日) 11:51:59 ID:LqpZb1vY
 ――Kick――
 ――Thunder――
 ――Mach――

 三体のアンデッドの力が束ねられ、新たな力が呼び醒まされる――
 ――それは数多の敵を打ち破って来た、仮面ライダーブレイドの必殺技。

 ――Lightning Sonic――

 ――FINAL ATTACKRIDE DEDEDE DECADE――

 コンボ成立の知らせに被せるように、別の電子音が鳴る。
 ブレイドの両足に稲妻が走り、ライドブッカーを腰に戻したディケイドとガドルの間に、再び10枚のカード型エネルギーが展開される。

「はぁああああああああ……はぁっ!」

 二人の仮面ライダーは力を込めるように一度姿勢を低くした後、跳躍する。
 黄金のエネルギーゲートはディケイドを追うように動き、彼とガドルを繋ぐ一本の道となっていた。カードを突き破るようにして宙を進んで行くディケイドに、稲妻を纏ったブレイドが並んでいた。

「うぅりゃぁぁぁぁぁあああああああああああああぁっ!」

 二人の叫びは唱和され、武器を持たないガドルの胸板に、ディメンションキックとライトニングソニック――ダブルライダーキックが炸裂した。

 先の攻撃を耐えた油断からか。ガドルは防御せず、無防備に二人の蹴りを受けた。
 結果、勢い良くその身体は後方に撃ち出され、その勢いのまま家を一軒吹き飛ばした。

 キックの反動で軽く宙を舞い、着地した二人の視界に映るのは、だらんと手足を伸ばして仰向けに倒れているガドル。
 その右手がぴくんと動き、立ち上がろうとする姿だった。

419 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/16(日) 11:52:38 ID:LqpZb1vY

「なん……だと……っ!?」

 信じられない思いで、ディケイドはそう呻く。

 あり得ない。一撃でも、それなりの実力者を倒せる攻撃を三連続で浴びせたのに――それで立ち上がった奴には、ダメージを受けた様子が見受けられなかった。

 立ち上がる過程で手に取っていた装飾品を再びボウガンに変化させたガドルが、竦んだように動けなかったブレイドを狙い撃つ。

「ウォォォオオオオオオオオッ!?」
「――おいっ!」

 直撃し、弾け飛んで行くブレイドを思わずディケイドは振り返る。だがそんな場合ではないとガドルを振り返った時、奴はボウガンを大剣に変えながら接近して来ていた。
 振り下ろされる大剣を、咄嗟に抜き放ったライドブッカーの刀身で受ける。

 完全に防御したのに、その上から叩き潰されるような斬撃だった。

 ガドルの剛力に耐え切れず、鍔競り合いの状況でディケイドは膝を着く。その鍔競り合いを保つだけでも、両腕の痺れたディケイドには必死のことだった。

「――弱いな。悲しいぞ、仮面ライダーよ」

「――悪かったなっ!」

 叫びに怒りを乗せて、何とかガドルの大剣を押し返し、その隙に彼の下から抜け出す。側転して逃れたディケイドは、悠然と構えるガドルに向けてライドブッカーを構える。

「究極の闇とやらより強いグロンギがいるなんて、聞いてないぜ……」

 かつて小野寺ユウスケの世界を存亡の危機に陥れたグロンギの王、ン・ガミオ・ゼダ。
 キバーラによってユウスケが強制的に変身させられ、全てのライダーを破壊するための戦いをしていたディケイドに最後に立ち塞がった仮面ライダー、アルティメットクウガ。
 究極の闇と呼ばれた彼らも強かったが、目の前に立つ破壊のカリスマ、ゴ・ガドル・バはそれを易々と超越していた。

420 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/16(日) 11:53:14 ID:LqpZb1vY
「――バビゾ ギデデギス(何を言っている)?」

 だがそのディケイドの嘆きを本気でいぶかしむような声を、ガドルが発する。

「ギランゴレゼザ ギラザ ゾゾドゴギ ビパ キュグキョブンジャリ(今の俺では、未だ究極の闇には遠い)。ザバサボゾ ボグギデ、ビガラサド ダダバッデギスド ギグボビ 仮面ライダー(だからこそこうして、貴様ら仮面ライダーと戦っているというのに)?」

 仮面ライダーだけをリントの言葉のままにして、ガドルはディケイドに尋ねていた。

「ゴロゴロビガラグ バゲギデデギス ゾ ダグバ(そもそも貴様が、何故ダグバを知っている?)」
「ダグバ……?」

 その名前を聞いた時、ディケイド――士は、妙に強い引っ掛かりを覚えた気がした。
 まるで、行き別れた家族の名を聞いたような、そんな感覚。
 だが、参加者名簿で見たかもしれないが、初めて聞く名前だったのもまた事実。
 そんなディケイドの戸惑いを察知したのか、ガドルは再び剣を構えた。

「――ギブゾ(行くぞ)」

 宣告と共に間合いが詰められる。振り下ろされた大剣を、ディケイドは何とかライドブッカーを使って受け流した。だが受け流しても、その両腕が痺れる重い一撃。
 受けるだけで消耗する斬撃が、一度ではなく何度も迫る。何とか凌いでいたディケイドはしかし、攻防が十にも満たぬ内に限界を迎える。
 ライドブッカーごと斬撃に捕えられ、胸部の装甲を裂かれながらディケイドは宙を舞う。

「――がはっ!」

 受け身も取れず地に叩きつけられ、肺から空気が吐き出された。衝撃で脳が揺れたのか、立ち上がることができない。
 歪む視界の端には、大剣を片手に迫るガドルの姿。

 ――こんなところで……すまない、夏海。どうやら俺も、今からそっちへ行くみたいだ……

421 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/16(日) 11:53:51 ID:LqpZb1vY
 そう士が、ディケイドの仮面の下で瞼を閉じた瞬間。

 金属同士の激突する、甲高い音が彼の鼓膜を叩いた。

「――おい、起きろっ!」

 耳に入ったのは、ブレイドに変身したあの男の声だった。

 意識をはっきりさせたディケイドが顔を上げれば、ブレイドが両手でブレイラウザーを支え、ガドルの大剣を受け止めていた。
 力に押され、潰されそうになりながらも、ブレイドはディケイドに呼び掛けてくる。

「どうしたっ!? おまえが俺の道の邪魔をする、俺を壊すんじゃなかったのか!? そんなところで寝てるから、俺が……人を護ることに迷う自分を、もう壊しちまったぞっ!」
「……そうか」

 ディケイドはゆっくりと、しかし脚に力を込めて立ち上がる。
 同時、ガドルの蹴りが胸部の装甲を大きく損壊したブレイドに突き刺さる。悲鳴と共に撃ち出されて来たブレイドの身体を受け止め、ディケイドはガドルから一旦距離を取る。

「それなら、勝つぞ。ブレイド」

 痛みを訴える身体を強い意志でねじ伏せて、満身創痍の二人の仮面ライダーが並び立った。

「……俺は、葦原涼だ。だが何か策があるのか? 俺の力も、おまえの力も、奴には通用しなかったぞ」

 葦原涼と名乗ったブレイドに、ディケイドは頷く。

「確かに、俺の力もおまえの力も、こいつには通じなかった……だが!」

 ディケイドは、ライドブッカーから一枚のカードを取り出す。
 この圧倒的不利な戦いを覆す最後の希望である、切り札を。

422 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/16(日) 11:54:36 ID:LqpZb1vY

「――俺達には、まだ俺とおまえの力が残されているっ!」

 そしてディケイドは、運命のカードをライドした。

 ――FINAL FORM RIDE B B B  BLADE――

「ちょっとくすぐったいぞ」

「え……、おいっ!?」

 ブレイドの抗議を無視して、ディケイドは相手の背中に手を突っ込む。
 内側から何かを引っ張り出すように動かすと、ブレイドの背にブレイラウザーのそれを巨大にしたようなカードトレイが現れる。
 突如として再生した胸部装甲と共にそれが回転し、上へ向く。
 同時にブレイドが浮かび上がって反転し、両腕が頭部と共に装甲とトレイの間に収納され、両足が巨大な刃へと超絶変形する。
 ディケイドの手に掴まれたのは、彼の身長の倍ほどもある、ブレイラウザーを模した巨大な剣。
 ブレイドブレード。

 ――これは……

 ブレイドが変形したブレイドブレードから、葦原涼の声が響く。

「これが俺とおまえの力だ、涼っ!」

 叫んだディケイドは、ファイナルフォームライドが完了するや否や接近して来ていたガドルへと、この超巨大剣を薙いだ。

 ここまで巨大な得物ならば、懐に潜り込めば満足に戦えまい――ガドルはそう予想していたのだろう。これほど巨大な剣ならば、接近中に振るわれようと遅く、充分対処できると。

 だが実際はどうか。まるで滑るように移動したブレイドブレードは、ガドルの左側へと襲い掛かっていた。

423 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/16(日) 11:55:20 ID:LqpZb1vY

「――ぬぅっ……!?」

 ブレイドブレードを手にした大剣で防ぐガドルだが、先程までのディケイド達のように斬撃の威力に耐え切れず、間合いの外へ投げ出されていた。
 それは破壊のカリスマがこの戦いにおいて見せた初めての、本当の意味での隙。その時を作り得たディケイドは、ついに切り札を切った。

 ――FINAL ATTACKRIDE DEDEDE DECADE――

 巨大なブレイドブレードの刀身に、青白い稲妻が迸る。
 それが放つ絶大な力の波動は、ガドルに本能的に剣を構えさせていた。
 だがそれは、判断ミスだと言わざるを得ないだろう。

「――ウェアッ!」

 ディケイドとブレイドブレードの気合いが唱和され、必殺の一撃が叩き落とされた。
 それは掲げられたガドルの剣をへし折り、彼の身体を切り裂いて、そして射線上に存在した家屋を巻き込んだ強烈な爆発を巻き起こした。

424 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/16(日) 11:56:14 ID:LqpZb1vY



 今の二人にできる最大最強の一撃・ディケイドエッジを繰り出した後、ディケイドは天にブレイドブレードを放り投げた。
 軽く浮いた状態でブレイドブレードが、先の逆再生のように仮面ライダーブレイドの姿へと戻る。ただ胸部装甲だけは修復されたままだった。
 着地したブレイドは、ディケイドに尋ねた。

「終わったんだな」
「――ああ、多分な」

 適当な相槌のようにディケイドが答えると同時、三度目の恐怖が、彼らの全身を駆け巡る。

「――やはり見事だ。仮面ライダー達よ」

 ディケイドエッジの余波により、コンクリートが割れて剥き出しになった大地を歩むのは、鍛え抜かれた肉体を覆う漆黒の外骨格と、黄金に輝くバックルを持った大柄な怪人。

 ゴ・ガドル・バだった。

 そのカブトムシを思わせる角は、Y字に別れた内の左先から断たれている。左胸から下腹部にかけて、一直線に酷い裂傷が走り左腕からも赤い血を零していた。ブレイドブレードを受けとめようとしたガドルの大剣は、半ばからへし折られている。

 だがそれでも、ガドルは未だ倒されていなかった。

「楽しいな、仮面ライダーよ。心躍るぞ」

 ガドルは仮面ライダーに惜しみない称賛を送りつつ、その身を金色に変えた。
 ゴ・ガドル・バ電撃体。
 持ち得る力を使い果たした二人の仮面ライダーは、ガドルの見せたさらなる力を前に、リアクションが遅れた。
 その隙をガドルは見逃さなかった。

 電撃体となっても修復されていない左半身の裂傷から血を零しながら駆け出し、一歩ごとにその両足に電流が走る。
 十分な助走を得て、ガドルは高く跳躍した。

425 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/16(日) 11:56:52 ID:LqpZb1vY
 ようやく驚愕を終え、何らかの対処を試みようとしているディケイドの方へ、ガドルは両足を向ける。

 その巨躯が錐揉み回転を始め、両足から膨大な稲妻を撒き散らしながら、もはや回避の叶わぬ速度、迎撃しようとも防御不能の、恐るべきゼンゲビ・ギブブが世界の破壊者を砕かんと迫る。

 その両足に捕えられる直前、ディケイドの前に立つ白銀の影があった。

「――おまえ……っ!」

「ハァァアアアアアアアアッ!」

 ――Tackle――

 アンデッドの力を解放、強力な突進攻撃を可能としたブレイドは、そのままガドルに飛び出した。

 勝算があったわけではない。だが、正面から飛び込んで少しでも威力を相殺するしか、自分の背にしたディケイドを護る手段がないのだと、ブレイドは考えたのかもしれない。

 ガドルの両足が、白銀の装甲を捉え、そして粉砕した。

 修復された鎧が砕かれた時には、ブレイドは背後のディケイドを巻き込んで吹き飛んでいた。

「ぐぁっ!」

 ブレイド越しに味わった衝撃でも、この威力。路面に叩きつけられながら、ディケイドは自らの盾になったブレイドを探す。

 直ぐ脇に、既にブレイドの鎧はなく、生身を晒した葦原涼の姿を見つけた。
 彼の額から流れる血を見た途端、ディケイドの心胆が凍え、同時に強い怒りが沸騰する。
 がしゃんという音がなくとも、ディケイドはガドルの方を向いていただろう。

 先の音は、その場に残されていたブレイバックルがガドルの足で踏まれた音だった。

426 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/16(日) 11:57:44 ID:LqpZb1vY
 それを自分に託して逝った剣崎一真の姿を思い出し、ディケイドはライドブッカーを手にする。

「う……っ」

 だがそこで暴発しかけた彼を正気に戻したのは、涼の漏らした苦鳴だった。

 いくら本来の資格者ではなく、その力を引き出せなかったとはいえ、ブレイドとの二人掛かりで倒すことができなかった相手だ。それでも本来ならディケイドに撤退などという選択肢はなかったかもしれない。

 だが――

『ブレイドの……仮面ライダーの力で……みんなを護ってくれ……』

 脳裏に蘇ったのは、剣崎一真の、仮面ライダーブレイドの、最期の頼み。

 どう見ても迅速な治療が必要な涼を置いて、勝てる保証のない相手へそれでも突貫するのが、彼の望みだろうか?
 せめてこの場に仲間がもう一人いたならその選択もあるだろうが、今、涼の命を救えるのは、門矢士しかあり得なかった。

「一真……許せよ」

 ディケイドはライドブッカーからカードを取り出し、ディケイドライバーへと投げた。

 ――KAMENRIDE BLADE――

「その姿は……」

 ガドルが驚愕の声を漏らした時には、ディケイドの姿は変わっていた。
 命ある限り、人を護るために戦う運命の戦士、仮面ライダーブレイドへと。
 ディケイドブレイドはライドブッカーから次のカードを取り出し、ライドした。

 ――ATACKRIDE MACH――

427 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/16(日) 11:58:32 ID:LqpZb1vY
 電子音が高々と響いた次の瞬間、マッハの名の通り高速移動に入ったディケイドブレイドは、息も絶え絶えな葦原涼と二人分のデイパックを抱えて全速離脱を開始した。

 一真の願いは、敵を倒すことではなく、皆を護ること――

門矢士は、そのために彼から授かったブレイドの力を行使した。



「逃げる、か」

 一体いくつ隠し玉があるのか。マゼンタの仮面ライダーにそう思って身構えたガドルだったが、予想に反して奴は逃げ出した。
 最初に来たのは失望だったが、直ぐに否とガドルは首を振る。

 仮面ライダーは、リントを護るために戦う戦士だ。
 先程まで白銀の仮面ライダーに変身していた男は、ガドルのゼンゲビ・ビブブの直撃で瀕死の重傷。放送前に戦ったあの仮面ライダーの時とは違い、マゼンタの仮面ライダーが護らねばならないリントは自力では動けず、またそれを助ける仲間もいない。
 ならば防人たる仮面ライダーの本懐に従えば、マゼンタの戦士の選択肢はそれしかなかったのだろう。そう納得した。

 正義とは何なのか、グロンギであるガドルには理解できない。
 だがそれが強き戦士の誇りであることは、彼らが教えてくれた。
 放送前にガドルを破ったあの蛇の男のように、マゼンタの戦士もその誇りに従う真の仮面ライダーだと言うことなのだろう。

 ただ自分の身が可愛くて逃げ出した腰抜けではない。そんなものに、こんな傷は付けられない。ガドルはそう、自らの左半身に走る裂傷に触れる。
 実質的に自分をより追い詰めたのはあの蛇の男だが、ガドルの生涯でも最も深いだろうこの傷を与えたのはあの二人の仮面ライダーだ。
 敬意を払うべき、強き戦士であることに間違いはない。
 ゲゲルのスコアこそ得られなかったが、ガドルはこの闘争に充実感を覚えていた。

 ガドルは一度射撃体になり、強化した五感で周辺に戦いの気配も、敵の存在も感知できなかったことを認めてから、変身を解いた。

428 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/16(日) 11:59:59 ID:LqpZb1vY

 ガドルはそこで膝を着く。

 ダメージ故に、ではない。足で押さえておいた、ブレイバックルを拾うため。

「仮面ライダーの力……か」

 やむにやまれぬ状況になれば、身に纏うこともあるだろう。
 だがガドルは、気高き正義の仮面ライダーの敵であることに、誇りを覚えている。
 出来得るならば自分ではなく、使いこなせるだろう他の参加者に渡し、戦いたかった。

 やがて来た道を戻り、ガドルは戦いの前に発見していた、ある物の前に出る。
 それは流線的な美しいフォルムをした、深いワインレッドの一台のバイク。
 天の道を行き、総てを司る男の愛車、カブトエクステンダーだった。

 その内回復するだろうが、さすがにこの重傷では長距離移動は厳しいだろう。そういう意味では、願ってもない拾い物だった。

 マップ東側の二つの市街地は既に捜索し終えた。故にガドルは、マップ西側の一つしかない代わりに最も巨大な市街地に次の目的地を定めていた。

 自らの誇りを満たす、さらなる強者との闘争を求めて。
 正義に燃える仮面ライダー達と同じように、破壊のカリスマもまた、その歩みを止めはしなかった。



【1日目 夜】
【F-6 市街地】
【ゴ・ガドル・バ@仮面ライダークウガ】
【時間軸】第45話 クウガに勝利後
【状態】疲労(大)、ダメージ(大)、左腕及び左上半身に酷い裂傷、怪人態に1時間50分変身不可、アームズドーパントに50分変身不可、少しだけ満足
【装備】ガイアメモリ(アームズ)@仮面ライダーW 、カブトエクステンダー@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式、ガイアメモリ(メタル)@仮面ライダーW 、ブレイバックル@仮面ライダー剣、ラウズカード(スペードA〜6.9)@仮面ライダー剣
【思考・状況】
基本行動方針:ゲゲルを続行し、最終的にはダグバを倒す。
1:強い「仮面ライダー」及びリントに興味。
2:タツロットの言っていた紅渡、紅音也、名護啓介、キングに興味。
3:蛇の男は、真の仮面ライダー。彼のような男に勝たねばならない。
4:仮面ライダーの「正義」という戦士の心に敬意を払う。
5:仮面ライダーの力(ブレイバックル)は、自分では使わず他の参加者に渡して戦いたい。
6:ゲゲルが完了したらキング(@仮面ライダー剣)を制裁する。
【備考】
※変身制限がだいたい10分であると気付きました。
※『キバの世界』の情報を、大まかに把握しました。
※ガドルとタツロットは互いに情報交換しました。
※タツロットはガドルの事を『自分を鍛えるために戦う男』と勘違いしています。
※また、ガドルが殺し合いに乗っている事に気づいていません。
※海堂直也のような男を真の仮面ライダーなのだと認識しました。

429 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/16(日) 12:00:35 ID:LqpZb1vY
 ディケイドブレイドはマッハの効果が切れた後も、必死に走っていた。
 涼への負担を考えればもっとゆっくり走るべきなのかもしれない。だがあの恐るべき敵から涼を遠ざけるためにも、一刻も早い治療を施すためにも、急ぐ必要があった。

「……本当に何だったんだ、あのグロンギは」

 ほんの一分前まで戦っていた恐るべき怪人について、ディケイドは考える。
 クウガの世界において最も強い力を持つ者は、究極の闇だと思っていた。だがこれまでの旅で戦って来たそれらを、あの怪人は凌駕する力を持っていた。
 この地に来て最初に戦った牙の意匠を持った仮面ライダーと言い、全ての仮面ライダーを破壊したはずの自分が及ばぬ実力を持つ者が、この会場には集められている。
 無論、この会場ではこれまでに集めた仮面ライダー達の力が失われ、自身が弱体化していることも一つの要因なのだろうが……

「ダグバ……か」

 究極の闇を口に出した時、ガドルはダグバを知っているのかと尋ねて来た。
 ダグバ。それがガドルの居たクウガの世界の、究極の闇を齎す者。
 その名前に強く惹かれていることに、ディケイド自身戸惑っていた。

(世界を滅ぼす者同士、シンパシーを感じているってことか?)

 かつてクウガの世界で出会ったガミオもそう言えば、ディケイドに対してそういう感情を抱いているように見えた。

(バカバカしい。俺は世界の滅びを破壊する、仮面ライダーだ――そうだろ、一真、夏海?)

 そう、自分は仮面ライダーとして生きることを彼らに誓ったのだ。
 涼を抱いて走りながら、ディケイドは心中で一真に詫びる。

(すまない、一真。俺のせいでブレイバックルが悪に奪われた)

 あの時マッハで仕掛ければ、あるいはバックルを取り戻すことはできたかもしれない。
 だがその後に、涼を連れて逃げ切れるとは思えなかった。故にディケイドは、一真から託されたブレイバックルを諦めて、涼の命を優先した。
 だからこそ、絶対に涼の命だけは救わなければならない。

430 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/16(日) 12:01:08 ID:LqpZb1vY
 二兎を諦め、一兎だけに絞ったのだ。これで二兎共得ずでは、笑い話にもなりはしない。

(だが、俺は必ずこの男を救う。そしてブレイドの力を取り戻す。だから、信じていてくれ)

 そう新たな誓いを立てながら、ブレイドの姿でディケイドは駆ける。

「――ブレイドッ!?」

 その時だった。T字路の前方から、二人の男が現れたのは。
 まずい。もし殺し合いに乗っている奴らだったら……

「おまえが剣崎を殺した奴かぁっ!」

 ディケイドこそ剣崎を殺し、ブレイバックルを奪ったと犯人と勘違いしたのだろう。男の一人がベルトを腰に巻き、もう一人の制止を振り切り変身しようとする。
 そのベルトがギャレンバックルであることに、ディケイドは気づいていた。
 彼にもディケイドと同じぐらい冷静な観察眼があれば、このブレイドのバックルが違うことによる違和感に気づけただろうに。

「変身!」

 男はレバーを引く。だが、何も起こらなかった。

「変わら……ない」

 ディケイドは知る由もないが、目の前の男――橘朔也がギャレンに変身したのは、午後五時を回ったちょうどその時。
 現在時刻は、未だ七時に届いていない。それ故に制限が掛かっていたのだ。
 同時に、ディケイドも10分の変身限界時間を迎える。
 ディケイドの鎧が分解され、急激に重みを増した涼の身体を抱えながら、士は口を開いていた。

「仮面ライダーギャレン……橘朔也か」

 かつて訪れたブレイドの世界で、ギャレンに変身していた菱形サクヤと同じ名前を持つ男。剣崎一真との位置関係からも、恐らく彼がギャレンだろうと士は頭に入れておいた。

431 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/16(日) 12:01:48 ID:LqpZb1vY

「貴様、その人をどうするつもりだっ!?」
「落ち着け橘! この青年くんが殺し合いに乗ってる証拠なんてないのに、らしくないぞ!?」

 後ろの男が涼を指差して叫ぶ橘を制止する。士はそんな彼らに短く、「退いてくれ」と告げた。

「こいつを病院に連れて行く。急いで治療しないと手遅れになるかもしれない」

 つい先程の誓いを思い出し、強い意志を持って告げる士の様子に、殺し合いに乗っていないことを悟ってくれたのか……橘は落ち着きを取り戻したようだった。

「あ……すまない、失礼なことをした。だが何故君はブレイドに……?」
「一真の死に際に立ち会った。俺も、あいつの仲間だと言うならあんたと話がしたい」
「そりゃ良い話じゃないか、橘。俺達も病院を目指していたんだからな」

 もう一人の男がそう賛成し、橘に言う。士はその二人を置いて、可能な限り急ぎながらも慎重に移動する。

「だがまずはこいつの治療が先だ。構わないな?」

 どこか尊大な士の態度にも、勘違いから攻撃しようとした罪悪感からか橘は特に反発せず頷く。後ろの男も、元からそういう人柄なのだろう、さして気にした様子はなかった。
 一真の仲間であることから半ば予想していたが、彼らも殺し合いには乗っていないらしい。変身手段を使い果たしたこと以上に、涼のために戦いを避けなければならなかった士にとっては僥倖だった。

 こうして、殺し合いを打倒せんとする満身創痍の仮面ライダー達が四人、揃った。

 彼らが病院に向けて、歩み始めたところで――

 ――東京タワー倒壊を知らせる轟音が、彼らの耳に届いた。

【1日目 夜】
【E-5 道路】

432 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/16(日) 12:02:28 ID:LqpZb1vY
【門矢士@仮面ライダーディケイド】
【時間軸】MOVIE大戦終了後
【状態】ダメージ(大)、疲労(大)、決意、仮面ライダーディケイドに2時間変身不可
【装備】ディケイドライバー@仮面ライダーディケイド、ライダーカード一式@仮面ライダーディケイド
【道具】支給品一式×2、不明支給品×2、ガイアメモリ(ヒート)@仮面ライダーW、ケータッチ@仮面ライダーディケイド、ライダーカード(G3)@仮面ライダーディケイド
【思考・状況】
基本行動方針:大ショッカーは、俺が潰す!
1:葦原涼を救う。
2:仲間との合流。
3:友好的な仮面ライダーと協力する。
4:橘ともう一人の男(ヒビキ)と共に病院に向かい、情報交換を行う。
5:東京タワーが……
6:ガドルから必ずブレイバックルを取り戻す。
7:「ダグバ」に強い関心。
【備考】
※現在、ライダーカードはディケイド、ブレイドの物以外、力を使う事が出来ません。
※該当するライダーと出会い、互いに信頼を得ればカードは力を取り戻します。
※ライダーカード(G3)はディエンド用です。
※葦原涼がギルスである事は、大体わかりました。


【橘朔也@仮面ライダー剣】
【時間軸】第42話終了後
【状態】疲労(大)、ダメージ(中)、全身に中程度の火傷、罪悪感、クウガとダグバに対する恐怖、仮面ライダーギャレンに10分変身不可
【装備】ギャレンバックル@仮面ライダー剣、ラウズカード(ダイヤA〜6、9、J)@仮面ライダー剣、ラウズアブゾーバー@仮面ライダー剣、ガイアメモリ(ライアー)@仮面ライダーW
【道具】支給品一式×3、ゼクトルーパースーツ&ヘルメット(マシンガンブレードはついてません)@仮面ライダーカブト、ファイズポインター&カイザポインター@仮面ライダー555、ザビーブレス@仮面ライダーカブト
【思考・状況】
0:仮面ライダーとして、人々を護る。
1:今は病院に行って、怪我を治す。
2:とにかく首輪を解除するため、『ガイアメモリのある世界』の人間と接触する。
3:目の前の青年(門矢士)と情報交換。
4:小野寺が心配。
5:キング(@仮面ライダー剣)は自分が封印する。
6:東京タワーが……。
7:殺し合いで勝たなければ自分たちの世界が滅びる……。
【備考】
※『Wの世界』の人間が首輪の解除方法を知っているかもしれないと勘違いしています。
※ガイアメモリが全員に支給されていると勘違いしています。

433 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/16(日) 12:03:13 ID:LqpZb1vY
【日高仁志@仮面ライダー響鬼】
【時間軸】本編第41話終了後
【状態】疲労(中)、ダメージ(中)、全身に中程度の火傷、罪悪感、仮面ライダー響鬼に10分変身不可、仮面ライダーギャレンに1時間変身不可
【装備】変身音叉・音角@仮面ライダー響鬼
【道具】支給品一式、着替え(残り1着)
【思考・状況】
0:仮面ライダーとして、人々を護る。
1:今は病院に行って、怪我を治す。
2:打倒大ショッカー
3:殺し合いはさせない
4:大ショッカー、ガイアメモリを知る世界、世界崩壊についての知識、情報を知る人物との接触
5:目の前の青年(門矢士)と情報交換。
6:小野寺を心配。
7:東京タワーが…… 。
8:小沢さんに会ったら、北條(名前を知らない)からの遺言を伝える。
【備考】
※アギトの世界についての基本的な情報を得ました。アギト世界での『第四号』関連の情報を得ました。
※『Wの世界』の人間が首輪の解除方法を知っているかもしれないと勘違いしています。
※ガイアメモリが全員に支給されていると勘違いしています。
※ガイアメモリは自分にも支給されていたが、知らない間にどこかに落としてしまったと勘違いしています。


【葦原涼@仮面ライダーアギト】
【時間軸】本編36話終了後
【状態】疲労(大)、ダメージ(極大)、背中に火傷、胸元に大ダメージ、仮面ライダーギルスに1時間10分変身不可、仮面ライダーブレイドに1時間57分変身不可 、気絶中
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明支給品×2(確認済)
【思考・状況】
基本行動方針:殺し合いに乗ってる奴らはブッ潰す!
0:俺が俺である意味を見付けたい。
1:……(気絶中)
2:人を護る。
3:亜樹子を止める。
4:あきらや良太郎の下に戻ったら、一緒に行動する
5:鉛色と深緑の怪人、白い鎧の戦士を警戒
6:制限とは何だ……?



【全体事項】
※F-6エリア 市街地が戦いの余波によって、半壊しました。

434 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/16(日) 12:07:44 ID:LqpZb1vY
以上で仮投下を終了します。タイトルは「防人」となる予定です。

問題点ありましたらどうかご指摘お願いします。

435二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/10/16(日) 15:20:56 ID:YHjeUGqw
投下乙です。
感想は本投下の時に。
問題点はないかと思いますが、ディケイドエッジに関してはファイナルアタックライドディケイドよりも、ファイナルアタックライドブレイドの方がいいかなと思いました。気になったのはそれくらいかな…?

436 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/16(日) 17:13:36 ID:LqpZb1vY
>>435
指摘ありがとうございます。確かにディケイドアサルトはファイナルアタックライドブレイドですね、修正しておきます。

個人的に特に不安だったのは、キャラがおかしくないかということと、カブトエクステンダーを急に登場させたことなのですがこれは大丈夫、ということで問題ないのでしょうか?

437二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/10/16(日) 17:50:12 ID:YHjeUGqw
大丈夫だと思いますよ。
強いて気になった箇所を挙げるなら、ガドルが強過ぎて(アルティメットクウガ以上とか)今後のパワーバランスの調節が難しくなるのでは、
とは思いましたけど、この話はガドルが強くないと話にならないし、ブレイバックルを奪われた際の士の反応も含めて
とても面白かったので、破棄とかにはして欲しくありません。キャラやカブトエクステンダーに感しても問題ないので、このまま通しでも問題ないと思います。

438二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/10/16(日) 17:58:31 ID:.Ayzag/w
投下乙です 
自分も感想は本スレの際で
キャラは個人的に違和感ありませんでしたね。乗り物に関しては余程変な場所(平原とか森の中)でなければ大丈夫だと思います

439 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/16(日) 18:25:11 ID:LqpZb1vY
ご意見ありがとうございます。
>>437 
 ええ、まあそうなんですけど、その……参戦時期的に士はアルティメットクウガを倒しちゃっているので……
 個人的に三メートルぐらいの高さから落ちてダメージ受けるアルティメットってさすがに変じゃないかという痛い信者な考えが入ってしまったんだと思います;
 他に問題点はないみたいなので、何とか士にとってガドルが強過ぎる理由のフォローになる部分を入れて本投下するので、問題がありましたらまたその時にお願いします。

>>438ありがとうございます、安心しました。

440二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/10/16(日) 18:49:16 ID:CSBoTAIQ
とりあえず、キャラに関してはさほど気にするレベルでは無かったと思います。
カブトエクステンダーに関しても今までも施設に隠されていたバイクがあったのでそこまで気にする問題でも。

個人的に気になったのは時間的な問題です。
というのも今回の終了時刻がタワー倒壊のタイミングである関係上、終了時刻が6時50分〜7時ぐらいになるんですが、

涼がギルスに変身したタイミングは渡がウェザーに変身している時と同時なので5時45分頃変身終了している筈なんですが、
それに従い考えれば変身不能時間との兼ね合いの関係上、ブレイド変身のタイミングが6時25分〜6時35分頃になってしまう。
どう考えても、東京タワー倒壊する時間じゃ無いんですよね。

一方で、ガドルが怪人態に変身可能になるのはギリギリ解釈して6時45分頃になるのでこちらをずらすわけにもいかないです。
この辺りが個人的に気になりました。

一応、此方の解釈が間違っているかも知れないので氏の時間的解釈を確認したいのですが。

とりあえずこの場合の修正案としては、前の話も含めて修正して貰うという前提で、士と涼の戦いをそのタイミングにずらせば良いと思いますが。
この場合、涼のギルス変身不能時間は1時間〜50分ぐらいになるという事になると思いますがどうでしょうか?

441二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/10/16(日) 18:52:56 ID:YHjeUGqw
気持ちはよくわかります。
ただ、そのユウスケアルティメットがここで既にダグバと互角に殴り合ってるので、それ考えたらバランスがなぁ……という感じです。
ディケイドとブレイドは前半の戦闘で既に五分くらい消費しているように思うので、ガドルの方を始めから金の力発揮状態にするのはどうでしょうか?
その上で強過ぎる理由にも何らかのフォローを入れれば、能力的にも全体とバランスが取れて、尚且つ大きな変更も加えずに済むかと愚考したのですが…
最終的な判断は氏に任せます。何にせよとても面白い話だったので、本投下も楽しみにしています。

442 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/16(日) 19:52:30 ID:LqpZb1vY
>>440
御指摘ありがとうございます。
そちらの時間解釈が正しいと考えられます。涼の変身時間については、こちらの認識に誤りがありました。
またガドルについては『暁に立つ(後篇)』終了時刻を午後5時50分程度だと勝手に解釈しておりました。
涼についてもそのぐらいの時間に変身が解けたという誤った解釈で今回のような根本的な矛盾を招いてしまいました。

完全に当方の落ち度です。

頂いた修正案は非常に良いと思いますが、既に問題なくwikiの方に収録されている他の方の作品を、
完全な自分の落ち度のために修正して頂くのは気が引けるので、少しだけ考えさせてください。

>>441
一応、MOVIE大戦のアルティはキバーラによって変身させられたものなので、ライジングのように
その力の一部だけが漏れ出した不完全体に過ぎず、正規の手順で変身を果たした本ロワのユウスケ
アルティメットには遠く及ばない、という解釈を考えてみましたが……

443二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/10/16(日) 20:11:09 ID:CSBoTAIQ
判断はそちらに任せますが、ガドルの変身時間に関しての補足を。
『三様』の時点で3時45分終了で変身不能が1時間になっています。つまり変身可能時間としては4時40〜50分の辺り、
その後『強敵金カブ』で変身、大体4時40分以降になり、変身解除の時間も大体7分ぐらい後になります。
そして、『暁に立つ』で変身不能が50分になっていたということから1時間10分経過、
その為、『強敵金カブ』での変身解除時間が遅くても4時50分になってしまうんですよね。
この関係もあり、ガドルの変身不能解除が6時45分という解釈になりました。(ギリギリで40分、これ以上は前の話の兼ね合いから難しい)
とはいえ、長く書いたものの氏の『暁に立つ』の終了時間の解釈自体はそこまで間違ってはいないとは個人的には思っています(10分程度の振れ幅ぐらいはよくあるので)。

444二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/10/16(日) 22:16:33 ID:CSBoTAIQ
一応、該当回をもう一度見直して洗い直した所、涼が駆けつけたタイミングは渡よりも数分遅れ(渡ウェザー変身後に変身したアポロを倒した後に駆けつけたので)。
ただ、渡のウェザー変身時間自体がどんなに遅くても5時33分(その後、キバットの説得シーン、その後5時35分頃にキバットシーン)になりそうだから、
どちらにしてもその後で涼が駆けつけ変身し、渡ウェザーと戦っている最中アポロゾルダの砲撃で吹っ飛び移動してという一連の流れを考えると
涼の変身解除が5時45分前後にならざるを得ない様な。

445 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/16(日) 23:00:56 ID:LqpZb1vY
>>444
こちらも洗い直して来たところですが、確かにアポロがもう少し粘ったとしても、
涼の変身を自分の解釈していた時間に持っていくのは厳しいものがありそうです。

本来なら時間の進行が明らかにおかしいため破棄するべきですし、既にウィキに
収録されている他の方の作品を後の作品のために修正するなどおかしな話ですが、
それを望まないと言ってくれる、面白いと感想を下さった読み手の方もいらして
くれたので、自分もできれば破棄はしたくありません。

もしよろしければガドルの方は自分の解釈通りとして、『光と影』の葦原涼の状態表
におけるギルスに変身不可の部分を1時間に変更して頂けないでしょうか。

無論とても非常識的な要請であることは理解しているつもりなので、不可能な場合に
はここで通達して頂ければ今回の作品は破棄とさせて頂きます。

446 ◆MiRaiTlHUI:2011/10/17(月) 16:00:11 ID:svG/sPys
遅ればせながら、状況把握致しました。
読ませて頂いたのですが、この作品は自分としても没にはして欲しくありません。
拙作を少し修正するだけで問題が解決出来ると言うのなら、是非とも修正させて頂こうと思います。
この度は自分の不手際のお陰でご迷惑をおかけしてしまったようで、申し訳ありませんでした。
それではすぐに収録分の拙作に修正を加えて来ようと思います。

447 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/17(月) 19:47:07 ID:.ifzju8s
>>446
ありがとうございました。
いえ、◆MiRaiTlHUI 氏には今回の件について何の落ち度もなく、時間的解釈に問題があった自分の後発作品に都合が悪いと言う、無恥で無理な要請に応じて頂き、
氏に感謝を要求されることはあっても、こちらが謝罪を頂くなどあってはならないことです。

この度は◆MiRaiTlHUI 氏を始め、皆様に本当に御迷惑をおかけしました。本当に申し訳ないことですが、一方で拙著について面白い、破棄にしないで欲しいと
言った感想を頂けて、駆け出しながら書き手として大変喜ばしく思います。

もしこれで収録しても問題がないのであれば、『光と影』の修正に応じて『防人』の涼の状態表も「仮面ライダーギルスに50分変身不可」に修正した上でwiki
への収録を希望したいのですが、よろしいでしょうか。

最後になりますが、皆様本当にありがとうございました。このような事態はもう二度とないよう気を付けて、今後も本ロワに参加させて頂ければと思います。
失礼致しました。

448 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/23(日) 09:54:18 ID:smyba1ZY
『太陽は闇に葬られん』にて指摘されていた乾巧の状態表の修正版を投下します。


【乾巧@仮面ライダー555】
【時間軸】原作終了後
【状態】疲労(大)、ダメージ(大)、深い悲しみと罪悪感、決意、ナスカ・ドーパントに1時間45変身不可、ウルフオルフェノクに1時間45分変身不可、仮面ライダーファイズに1時間55分変身不可、右手に軽い怪我と出血
【装備】ファイズギア+ファイズショット+ファイズアクセル@仮面ライダー555
【道具】支給品一式×3、ルナメモリ@仮面ライダーW、首輪探知機、霧彦のスカーフ@仮面ライダーW 、ディエンド用ケータッチ@仮面ライダー電王トリロジー、サバイブ(疾風)@仮面ライダー龍騎
【思考・状況】
基本行動方針:打倒大ショッカー。世界を守る。
0:天道の遺志を継ぐ。
1:仲間を探して協力を呼びかける。
2:間宮麗奈、乃木怜治、村上峡児、キングを警戒。
3:霧彦のスカーフを洗濯する。
4:後でまた霧彦のいた場所に戻り、綺麗になった世界を見せたい。
5:橘朔也、日高仁志、小野寺ユウスケに伝言を伝える。
6:仲間達を失った事による悲しみ、罪悪感。それに負けない決意。
7:首輪を解除するため、『ガイアメモリのある世界』の人間と接触する。
8:石を持った眼鏡の男(金居)とそれに操られている仮面ライダー(五代)の危険性を他の参加者に伝える。
【備考】
※変身制限について天道から聞いています。
※天道の世界、音也の世界、霧彦の世界の大まかな情報を得ました。
※参加者達の時間軸に差異が出る可能性に気付きました。


 それと、こちらも指摘されて気付いたことですが、本スレ>>191

>>だが憤怒のままに詰め寄るファイズに対し、吹き飛ばされる寸前に掴んでおいた二人分のデイパックを投げて渡したカイザはもはや彼に取り合わず、迫り来る敵を睨んでいた。

 の『二人分』の部分を『霧彦のものを含め三人分』に収録の際に修正して頂くようお願いします。

449 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/25(火) 00:01:33 ID:GqZ3nFFo
お待たせしました。これより、『太陽は闇に葬られん』の修正版を投下します。
>>448の修正分は無視して貰うようお願いします。

450 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/25(火) 00:02:43 ID:GqZ3nFFo
「……銃声?」

 もうすぐ午後八時を回ろうかという頃。E-7エリアの道路を進んでいた天道総司は、そう同行者が呟くのを聞いた。

 周囲は市街地からも離れ、人口の灯りもないまさに闇の中。視覚が不十分なこともあり自然と過敏になっていた天道の聴覚には何も届かなかったが、横に立つ男の顔は真剣そのものであり、そもそもそんな理由がないとはいえ、狂言の類とは思えない。

 天道と行動を共にする男・乾巧は『555の世界』に存在する怪人・ウルフオルフェノクが正体だ。天の道を行き、総てを司る男であるといえど、結局は人間である天道より、感覚器官はずっと優れている。天道の耳に届かない音でも、彼なら拾えてもおかしくない。

 しかし、銃声とは……

「穏やかじゃないな。どっちだ?」

 天道の問いに、こっちだと進行方向を巧が指差す。

 二人は現在、名護啓介の仲間である橘達捜索して行動中だ。こちらにいるという確信があるわけではなかったが、もしや……彼らの身に何か起こっているのだろうか?

 そうでないとしても、銃声がするということはそこに人が居て、ただごとではない事態が起こっていることは間違いないだろう。
 ならば自分達、人を護る仮面ライダーが向かうべきだろう。

「急ぐぞ」
「ああ」

 天道の言葉に、乾も間を置かずに答える。
 そして二人は、歩みを疾走へと変えた。

 その先に待つ、闇に恐れることなく――







 灰となった死体から全ての支給品を回収し、下僕と化させたクウガの男――確か、同行者からの呼び名は五代だったか――を伴ってE-5エリア病院への移動を再開したその直後、金居は正面から向かって来る二つの微かな足音に気付いた。

 灰になった男を始末した時点では、周囲に気配は感じられなかった。故に自身が手を下す場面を目撃されたとは考え難いが……金居は、五代を振り返る。

451 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/25(火) 00:03:33 ID:GqZ3nFFo
 地の石により支配したこの男からは、意識や言葉、感情といったモノが失われている。そんな男とどういった経緯で同行しているのか、怪しまれない可能性の方が低いだろう。

 無論、地の石の支配下に置かれたクウガ――ライジングアルティメットの圧倒的な力は把握している。さらに金居自身も、アンデッドの中でも最強クラスの実力を持つ、カテゴリーキング。よほどの相手でもまず後れを取らないということはわかっている。
 だが地の石による支配がどこまで信用できるものかわからず、また首輪による能力制限を考えると、殺し合いに乗っているにも関わらず金居は積極的に戦うつもりはなかった。

 故に、怪しまれる今の五代をそのままにはしておかず、接近する足音に気付いた時点で地の石を使って瞼を閉じさせ、全身から力を奪いまるで意識がないかのようにさせる。重力に抗えなくなった五代を背負った上で身近な、しかし道路からは十分な距離の空いた物陰に身を隠す。
 アンデッドである金居の五感は人間よりも上だ。夜の帳も手伝って、足音の主達と接触するまでにはずっと気絶していた五代を連れて動く無害な参加者を装える。成人男性と複数のデイパックの総重量は決して軽くはないが、やはり人外である金居にはそこまで問題ではない。

 二人で行動していることから、無差別なマーダーである可能性は低い。仮にそうでも、本来の姿への変身に予備動作など不要なため、相手の動きを伺っていれば良いだろう。
 今はとにかく情報を集めることが優先だ。様子を見て接触できるようであれば、それに越したことはない。

 果たして、二人組の男が姿を現した。

「この辺りか?」

 鋭い眼差しをした癖毛の男が、もう一人の男に問う。

「あぁ」

 茶髪の男が頷き、二人は油断なく周囲を見渡す。

 奴らはこちらの存在に気づいている――その事実に心中で舌打ちし、金居は考える。

 二人組の彼らがマーダーだろうとなかろうと、こちらの存在に気づかれているのならば身を隠すメリットは低いだろうと金居は考えた。問答無用のマーダーなら、発見されれば先制攻撃される。それ以外の交渉の通じる相手に対しても、姿を隠し続けるのは良い印象を与えるとは言い難い。

 だが、そもそも彼らがどこでこちらの存在に気付いたのか――その時点を読み誤れば、即座に戦闘に入り込むことは想像に難くない。単にこちらの存在に気付いただけならいざ知らず、もしも先程の銃声を聞かれて居れば……

452 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/25(火) 00:04:18 ID:GqZ3nFFo
 暗闇に潜む金居の視線の先で、茶髪の男の方がデイパックを漁り出す。そこから何かを取り出す様子を見せた直後に、突然男がこちらを向き、金居と目が合った――気がした。

「――おい。そこにいる奴、出て来い」

 やや高圧的な声で、茶髪の男が告げて来た。黒髪の男の視線もこちらを向く。
 仕方ないか、と金居は静かに五代を横たえて立ち上がり、茂みから姿を見せた。

「失礼した。だが殺し合いを強要されている状況なんでね、そちらが危険人物かと疑ってしまったんだよ」

 無差別マーダーではない。自分のようなスタンスだろうと、葦原涼のように本気で主催者を打倒し殺し合いを止めようとしている者だろうと、一先ず情報交換は期待できる。
 そう思った金居だったが、黒髪の男から厳しい追及が飛んで来た。

「まだ俺達を信用できていないのだろうが、こちらもおまえ達を信用することはできそうにないな。……もう一人はどうして出て来ない?」

 五代のことを見抜かれている。金居は思わず舌打ちしそうになり、首を振った。

「奴が出て来ないのは仕方ない。彼は放送前に見つけてからずっと意識がないからな」
「ほぉ、そいつぁ妙だな」

 茶髪の男が、そう一歩前に出たのを感じた。

「足音は二人分聞こえたぜ。意識がないまま歩いているって言うのかよ」

 まさかその通りだが、と答えるわけにはいかなかった。
 金居も気づいていた。彼らが明らかに自分を警戒していることに。
 だが、情報を聞き出すことを諦めるのはまだ早い。何とか自らの望む方向に誘導しようと思考を巡らせる金居だったが、それを無為にする一言が発せられる。

「しかも、銃を撃った後に……な」

 銃を撃った時点では、気配はなかったはずだったが、それでもこいつが察知しているのはクウガである五代と同じ、身体能力が向上した何者かだからか。
 労せずクウガを手に入れ、今また力を温存して参加者を一人仕留めるなど活躍はしたが、所詮は人間の作った玩具か、と金居は内心吐き捨て、二人の男の強い視線を受ける。

453 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/25(火) 00:05:25 ID:GqZ3nFFo
「おばあちゃんが言っていた……」

 脈絡なく、黒髪の男は人差し指を天に向け、そう漏らした。

「手の込んだ料理ほどまずい。どんなに真実を隠そうとしても、隠し切れるものじゃない……嘘など吐かずに、正直に話したらどうだ」

 男の言葉に、金居は決心を固めた。
 ――今回は情報収集を諦める、と。

 そうして密かにデイパックに手を入れた瞬間、そのデイパックが何かに弾かれた。

「――っ!?」

 弾かれた際に――何がぶつかったと言うのか、金居のデイパックは引き裂かれ、中身が零れ出していた。肝心の地の石だけは既に掴み、取り零すことも傷つけることもなかったのは唯一の幸いか。

「ファイズアクセル……それに、カイザギアだとっ!?」

 金居のデイパックから飛び出したベルトを見て、茶髪の男の方がそう驚愕の滲んだ叫びを発する。おそらくはそれと同じ世界の出身か。

「――乾、今は目の前の奴だ。……どうやら、やる気らしいぞ」

 先程金居のバックを貫いた、赤い機械のカブトムシを掌に受け止めながら、黒髪の男がそう乾という男を諭す。

 それらに対して金居は苛立ちを込め、地の石に念を送りつつ、叫んだ。

「ライジングアルティメット! こいつらを始末しろ!」

 背後で五代がすっと立ち上がる気配を感じながら、金居は口角を歪めた。

 言葉で相手の情報を得られないなら、その身を以って教えて貰うことにしよう。

「……全力で、な」

 未だ全容計り知れぬ、究極をも超越したこの闇の力を。

454 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/25(火) 00:06:37 ID:GqZ3nFFo




 眼鏡の男が命ずると、背後から一人の男が立ち上がった。
 その人形のように表情のない顔を巧達に向け、構えを取ると何もない腰に突如としてベルトが現れる。
 そのバックルから漏れ出す禍々しい紫の波動を見て、巧は本能で悟った。
 目の前に立つ男がこれから姿を変えるのは、自分が出会って来た全ての中で最強の存在。
 変身後の防御力を頼りに殴り合いに持ち込むなど、自殺行為でしかない……と。

「乾っ!」
「わかってるよっ!」

 微かに緊張を孕んだ声で呼びかけて来た天道はカブトゼクターと対となるライダーベルトを、巧は霧彦より託されたガイアドライバーを腰に装着する。できるなら相手の足元に転がったファイズアクセルを回収したくもあったが、さすがに数メートルの距離を埋めてそれを拾い、さらにそこから変身させて貰える隙がある相手だとは思えない。

「変身」

 ――HEN-SHIN――

 ――NASCA!――

 天道の声に続いて、ベルトに装着されたゼクターの電子音と、ガイアウィスパーの叫びが唱和される。

「キャストオフ」

 ――CAST OFF――

 ――NASCA!――

 天道がカブトゼクターの角を倒し、マスクドフォームの装甲を解除すると同時、巧の方もナスカメモリをガイアドライバーに挿入、その身を異世界の怪人へと変化させる。

 ――Change Beatle――

 そして二人は、変わっていた。

 天道は彼の世界を象徴する、深いワインレッドの装甲を纏い、夜に煌めく青い瞳を持つ仮面ライダーカブトに。

 巧は風となった戦友、園崎霧彦のもう一つの姿――マントを思わせる翼を生やした青い騎士のような怪人、ナスカ・ドーパントへ。

 彼らと同じくして、ライジングアルティメットと呼ばれた男もその姿を変え、眼鏡の男を守護するように前に出て来ていた。

 それは夜の闇よりなお暗い漆黒の身を黄金の装甲で覆い、全身に鋭い突起を生やした――どこかあの白い青年が最初に変身した姿を連想させる、四本角の仮面ライダーだった。

455 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/25(火) 00:07:28 ID:GqZ3nFFo
 先のカブトムシの怪人よりもがっしりとした体躯。やはり腕力勝負に持ち込むのは利口とは言えそうにない。

 故に、二人の武器は速さ。カブトにはクロックアップが、ナスカには超加速がある。
 その圧倒的な速度を活かして、ライジングアルティメットに指示を下す眼鏡の男を叩く。計り知れない力を感じさせるこの仮面ライダーと戦うより、それが有効的なはずだ。
 二人がそのために超高速移動を開始しようとした、その時。

 二人の目の前の闇が、一層濃くなった。

「うぁああああああああああああっ!?」

 全身を砕かんと襲い掛かる衝撃にナスカ・ドーパントは思わず叫び声をあげ、一瞬だけブラックアウトした視界が回復した時には、自分が天高くを舞っていることに気づく。

 何が起こったのか――それを理解する前に、何かが自分を飛び越えて行った。

 夜空に浮かぶ月の灯りを遮るのは、地上100メートルまで一瞬で跳躍した金の黒の仮面ライダー――ライジングアルティメット。
 ナスカウイングで体勢を整えようとしたナスカだったが、右手から殺到した光条をものともしないライジングアルティメットの固めた拳がその腹に叩き込まれる方が圧倒的に早かった。

「――っ!!」

 その一撃により生じた悲鳴は、声さえも粉砕されていた。隕石のように地上へと落下するナスカはたった二発の、しかし規格外の攻撃により、乾巧の姿へと戻っていた。

 ドォンッ! と地を揺らし、草木が黒い炎に吹き散らされた大地に半径数メートル規模のクレーターが生じる。

「――がっ、はっ……おぶ……っ」

 乾巧――ウルフオルフェノクは生きていた。激突の直前に、紙一重でオルフェノクの姿へと変身を果たしたおかげで、死ぬことはなかった。
 だが自由落下さえ遥かに超えた速度で地面に叩きつけられ、オルフェノクといえども無事で済むはずがなかった。そもそもその前にナスカの時点で受けた攻撃だけでも甚大なダメージが巧の身体に刻まれていたのだ。

 夜空を彩る星々が瞬いた気がした後、ウルフオルフェノクとなっても痛みにより満足に動けない巧の真横に、天より絶対的な暴力の化身が降臨した。

456 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/25(火) 00:08:42 ID:GqZ3nFFo
 ライジングアルティメットの着地により、大地がまるで怯えているかのように震える。

 全身を貫く激痛と恐怖で動けないウルフオルフェノクを無視して、ライジングアルティメットは正面を向いたままで手を夜空へ掲げ、そこから先程星空を呑み込んだ闇の波動が放たれた。

 先程自分達を吹き飛ばしたのもこれか――そう巧が思った瞬間に、その闇の津波から何かが投げ出される。

 それは、全身の赤い装甲に亀裂を走らせたカブトの姿だった。
 さすがに天道だけあって、およそ三発波動の直撃を受けつつも未だ倒れ込むような無様を晒しはしない。だがやはり限界なのか、先程巧を援護しただろうカブトクナイガンを手にしたまま持ち上げることもできず、片膝を着いていた。

 ざっ、と大地を踏み締めながら、ライジングアルティメットがカブトの方へ走る。

 必殺の拳を携え、数十メートルの距離を一瞬で詰めつつあるライジングアルティメットの前から、電子音を残してカブトが消える。

 クロックアップを発動させたのだと、ウルフオルフェノクは勝利を確信した。

 先程からの様子を見るに、絶大な暴力で巧達の命を削りに来るこの仮面ライダーからは意志が感じられない。やはりあの眼鏡の男――おそらくは大事そうに抱えているあの石に操られているのだろう。

 ならばあの男を倒す、もしくはその石を奪う――それで自分達の勝ちのはずだ。そしてクロックアップの力は先のカブトムシの怪人との戦闘でも通じた、自分達の切り札だ。

 それが背後を振り返りもせず後ろ向きに放たれた、ウルフオルフェノクのすぐ横の空間を貫いて行った暗黒の波動に易々と捕えられて、その超加速状態を強制的に解除される光景を目の当たりにするまでは――巧は、クロックアップを無敵の力だとさえ思っていた。

「天道ォォオオオオオオオオオオッ!」

 闇の波動に全身を削られ、眼鏡の男の眼前に罪人のように叩き伏せられたカブトを見て、絶叫しながらウルフオルフェノクが駆け出す。

 クロックアップさえも見切ったライジングアルティメットがそれを見逃すはずはなく、凄まじい瞬発力によって一瞬でウルフオルフェノクの背後に立ち、拳が繰り出された。
 神速の拳がギリギリで横に跳躍したウルフオルフェノクを掠める。だが防御した上からわずかに掠めただけで、ウルフオルフェノクをさらに数十メートルも飛ばすほどの威力。路面に激突した際、既にダメージの蓄積されていた巧の身体はオルフェノク態を保つことができずに、再び乾巧の生身を晒す。

 激痛に苛まれ、呻き声を上げる巧の横にいくつかの何かの塊とともに転がって来たのは、限界を超えたダメージによってカブトの鎧が融けるように消えて行く天道総司。

457 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/25(火) 00:09:33 ID:GqZ3nFFo
 振り返った先に立っていたのは石を持つのは眼鏡の男ではなく、左手にまるで鋏のような形状の剣を握った黄金の怪人だった。ライジングアルティメットと同じように、クワガタムシを連想させるような異形をしている。

 これがあの男の正体か。ライジングアルティメットという暴風と比べてしまえば弱いものだが、身体を押されるような圧迫感。この怪人もラッキークローバーや先のカブトムシの怪人に匹敵する実力を秘めた者であることは想像に難くない。
 そんな強敵が、さらにあの絶対の暴力を使役している。今自分達はこの会場において最も危険な相手と戦ってしまったのだと巧が悟った時は既に遅い。

 まだ戦闘――と言っても良いかわからないほどに一方的だが、互いに最初の変身をしてから30秒前後しか経過していないというのに、既に勝敗は決しているも同然だった。

「大人しく騙されておいてくれれば、こんなことにはならなかったんだがな」

 嘲るように、金色の怪人――ギラファアンデッドが告げる。

「哀れだと思うよ。俺も一度見たが、それでもライジングアルティメットの力がこれほどとは思っていなかったからな」

 背後からはそのライジングアルティメットが近づいて来る足音。それを受けて巧は立ち上がる。

 敵の強さはあまりに絶望的。ナスカメモリも遠くに落とした以上、天道は変身できない。
 それなら自分が戦うしかない。命に換えても、天道が逃げるための血路を切り開く。
 海堂直也がそうしたように、仮面ライダーとして最期まで戦う。

 ファイズギアを装着した巧に対して、敵は手出しをしなかった。

「――どうした? 早く変身しろよ」

 その様子をいぶかしんだ巧が手を止めていると、ギラファアンデッドがそう変身を促す。

「何、勘ぐることじゃない。おまえ達から情報が得られるとはもう期待していない。それならあいつの性能を確かめる実験台になって貰おうというだけだ」

「そういうことかよ……その傲慢さが命取りになるぜ!」

 ――Stading by――

 巧はそこで『555』をコードしたファイズフォンを天高く掲げて、叫んでいた。

「変身っ!」

 ――Complete――

 ベルトから全身に流れ込むフォトンブラッドが夜の闇を切り裂く光となり、胸部と四肢を銀の装甲が包み、最後にΦを象ったマスクが一際強く輝いた。

458 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/25(火) 00:11:23 ID:GqZ3nFFo
 仮面ライダーファイズに変身を果たした巧だが、既にその肉体は限界が近かった。
 それでも天道を逃がし切る時間を――そう思った巧の耳に、予想だにしなかった音声が潜り込んで来る。

 ――Stading by――

 音のした方を見れば、カブトに変身するのとは別のベルトを巻いた天道が、黄色と紫の携帯電話を右手に持っていた。

「変――」
「――バッカ野郎ッ!」

 先程ギラファアンデッドに挑み、あしらわれた際に、ただではやられず散らばっていた奴の支給品を回収していたのだろう。カイザフォンを躊躇いなくギアに装着しようとした天道を、ファイズは思考を挟む余地もなく反射的に止める。

「おまえ、これカイザギアなんだぞっ!? 人間が変身したら死ぬって言っただろうが!」
「乾――離せ」

 仮面ライダーに掴まれては、さすがの天道も抗えないのか――それでも彼は強い意志を感じさせる面差しのまま、巧にそう告げる。

「何もしなくとも、このままでは死ぬだけだ。俺が何とかする」

 そう言った天道が左手で投げた物にファイズが一瞬気を取られた隙に、天道はカイザフォンを空いた左手に投げ、意識を戻したファイズが止める前にベルトに装着していた。

「変身」

 ――Complete――

 再び闇を押す強い閃光が、今度は天道より生じる。χをモチーフとした仮面に、全身を走る黄色いフォトンストリーム、紫の瞳を持つ仮面ライダーカイザが、そこには誕生していた。

「本当に変身するとはな」

 その光景を前にして、愉快そうにギラファアンデッドが嗤う。

「乾」

 カイザへの変身を果たした天道が再び呼び掛けて来る。
 呼び掛けられたファイズの方は、ショックのあまりに最初動けなかった。
 真理、木場、海堂、霧彦。護れなかった、亡くしてしまった大切な仲間達の顔が脳裏に浮かび、そこに新たに天道の顔が並ぶ。
 だが天道の呼び声に正気を取り戻し、唇を噛み切る思いで彼の横に並ぼうとする。

「――これを使って、俺にあいつから石を奪え、って言うんだろ?」

 天道が投げて来たのはファイズアクセル。それを装着しながら、ファイズはカイザへとそう返した。
 だがカイザの返答は、ファイズの予想を大きく外れた物。

459 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/25(火) 00:12:04 ID:GqZ3nFFo
「それを使って逃げろ」

 その言葉に、ファイズは天道を振り向く。問い詰める前に、二人を飛び越えてギラファアンデッドの前にライジングアルティメットが降り立った。
 両掌が翳され、再びの暗黒の波動が二人の仮面ライダーを呑み込み、大きく吹き飛ばす。

 草木が焼き払われ荒い肌を露出した大地に叩きつけられた二人は、元々限界に近いダメージを蓄積させていたために、その一撃だけで変身を保つのが一杯一杯となっていた。

「奴らには……二人だけでは、勝てない」

 息も絶え絶えに、立ち上がったカイザがファイズにそう言う。

「この脅威を他の者達に伝えなければならないが……クロックアップさえ捕えるような奴だ。二人とも逃げると言うのは……無理だろう」

 再び主人が狙われることを警戒しているのか、ライジングアルティメットはゆっくりと歩く。仮にアクセルフォームとなっても、警戒している奴を超え背後のギラファアンデッドを仕留めるのは困難だとファイズにも把握できた。

「それなら、オルフェノクに変身できるおまえが生き残るべきだ」
「ふざ……けんなよおまえっ!?」

 痛みを怒りで捩じ伏せ、ファイズはカイザに詰め寄る。
 自分を逃がすために。そのための理由作りをするために、天道は一度変身すればベルトが外れた瞬間に命を落とすカイザの力を纏ったのだと悟ったファイズの心は雑多な理由が統合された怒りで一杯だった。
 もはや自分は助からないのだから逃げろと言った時に、万が一にも巧が彼を見捨てずに残らないように、自ら命を断つようなことを……

 だが憤怒のままに詰め寄るファイズに対し、吹き飛ばされる寸前に掴んでおいた、二人分のデイパックを投げて渡したカイザはもはや彼に取り合わず、迫り来る敵を睨んでいた。

「――俺の夢は、人間からアメンボまで、世界中の総ての命を守り抜くことだ」

 迫り来るライジングアルティメットに対して徒手空拳ながら隙なく対峙したカイザは、天道総司はそう強く言い切った。

「それをこんなところで終わらせないでくれ、乾」

 その言葉を最後に、カイザはライジングアルティメットに突撃して行く。
 呪われたベルトの力で、崩れ行く灰となる背中をファイズに幻視させながら。

 ファイズは――巧は、その後ろ姿を見送ったままに数瞬立ち止まっていたが、猛襲したライジングアルティメットの拳にカイザが捕えられたのを見て――決心を固める。

「――早くしろ、乾っ!」

 口腔に血が溜まったのか、普段より不明瞭な天道の叫びに対し、ファイズは絶叫と共にアクセルフォームを発動させた。

「うわああああああああああああああああああああっ!」

 そして、全力で駆けた。

460 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/25(火) 00:13:07 ID:GqZ3nFFo






(……行ってくれたか)

 そう天道は、走り去って行くファイズの背を心中で見送る。
 当然逃がすまいとライジングアルティメットが掌を翳すが、天道はその前に立って我が身を楯に波動の速度を少しだけ遅らせ、ファイズが逃げ切る時間を稼ぐ。
 カブトだった時は波動の中でも勢いの弱いところに何とか逃れていたが、今度は最も勢いの強い箇所に自ら飛び込んだのだ。全身から一気に力が消えて行く中、またも弾け飛びそうになるベルトを押さえながら、カイザは膝を着く。

(本来乾は、人の命の選択などできる奴ではないだろうな)

 きっとそれは、自分達が人類を守る仮面ライダーである上で正しいことだ。その道を選び、傷つき倒れたとしても、自分達は歩み続けなければならない。

 武器一つなく、スーツも装着者もとっくに限界のカイザはそれでも立ち上がり、天道が普段決して取ることのないガードの構えを取って、究極の暴力に対峙する。

 乾には酷なことをした、と天道は少しだけ申し訳なく思う。自分が彼の立場だったらどう思うか、想像するのは簡単だった。

 だが、変身時間の限られたこの場においては、生き残るべきは天の道を行き総てを司るこの自分ではなく、オルフェノクという固有の力を持つ乾巧だということは間違えようのない事実だろう。

 それでも乾は、そんな理屈よりも先により多くの変身手段を持つ自分がその分戦わねばと考える男だろう。多くの仲間を失ったことで、無茶をしでかす可能性も十分にあった。

 だから彼を退かせるために、時間を稼ぐためにも――例え彼の心を傷つけようと、決心をさせるためにも、天道は呪われたベルトに手を出した。
 乾はきっと傷つくだろう。何しろこの天道総司が死ぬのだから。だが天道は、それでも彼ならその痛みさえ乗り越えられる男だと信じていた。太陽の導きがなくとも、決して自分の道を見失いはしない奴だと。
 だからこそ、彼に世界を託せる。総ての世界の総ての命を守り、許し難い大ショッカーを打倒する仮面ライダーとして、戦ってくれると信じている。

 今自分がするべきなのは、乾巧が進むべき道に邪魔が入らぬよう、この敵を喰い止めること――気合いを発しながらライジングアルティメットに向かい駆けるカイザは、その拳にその強き想いを乗せた。

 その拳は究極を超えた闇に届くことはなく、逆に敵の拳を真正面から受けてしまう。

 縦に一回転して吹き飛び、天の道を行くこの身をまたも地に着けてしまいながらも、解けてしまえば終わりの変身を必死に保ちつつカイザはまた立ち上がる。

 そして、彼は見た。

461 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/25(火) 00:13:59 ID:GqZ3nFFo
 ライジングアルティメットの禍々しい姿が、元の男性の物へと戻っているのを。

「何……っ!?」

 戸惑っている内に、正面に立つ男の背後から飛来する斬撃。それは男の脇を通り過ぎ、カイザの装甲を切り刻む。意識の外からの攻撃に息を詰まらせてカイザは倒れ込む。

「ライジングアルティメットよ、奴を始末しろ!」

 飛ぶ斬撃を放った怪人からの、やや焦った声色の指示により男は歩みを再開し、動けないカイザを無視して脇に逸れた後、そこにしゃがみ込む。

 何をしているのか、という天道の疑問は次の瞬間晴れた。

 ――NASCA!――

 男は乾がこの場に残して行ったナスカメモリを手にしていた。
 だが、ガイアドライバーはその手にないはず……そう疑問に思うカイザの眼前で、男はそれを首輪に突き刺した。

 ――NASCA!――

 首輪にメモリが呑み込まれ、男の全身がナスカ・ドーパントへと変わる。
 だがそれは乾巧の変身していたそれとは違う、全身を真紅に染めたドーパントだった。

「赤いナスカ……R(レッド)ナスカといったところか」

 立ち上がりながら天道はそう一人呟き、考える。

(先程の声からすると、奴も焦ったようだった……やはりあの石であの男を操っていて、突然変身が解けたものだからその支配から逃れたとでも考えたわけか……)

 だが、と天道は腰の剣を抜くRナスカに身構えた。

(どうやら奴の支配から、この仮面ライダーは脱していないらしい。それなら何故変身が解けた?)

 敵の力はあまりにも圧倒的過ぎて、天道は瀕死ながら戦闘自体は未だ二分と数十秒を回った程度しか時を経ていないはずだ。変身に制限があることは把握しているが、こんな短い時間ではない。

 ならば何故か。天道は一つの可能性に行き着く。

 夕方、あのカブトムシの怪人と戦った際。奴はその姿を金色に変えてから、さらにその力を増し、自分達は逃げるしかなかった。

 その際、ウルフオルフェノクに連れられて逃げる中、天道は追い掛けようとしていた奴が人間の姿に戻るのを目撃していた。
 直前まで追いうちを仕掛けようとしていた奴が、何故変身を解いたのか。あの時はわからなかったが……あれは解いたのではなく、解けたのではないだろうか?

462 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/25(火) 00:14:32 ID:GqZ3nFFo
 おそらくあれは、カブトで言うハイパーフォームに値する、上位形態。ハイパーカブトの力は他のマスクドライダーとは一線を画しており、ライジングアルティメットが相手でも使用できていれば違う結果を招いたかもしれないものだ。
 それほどの力、殺し合いのバランスを保つために制限を課せられても何もおかしくはない。そもそも戦闘力の無い一般人まで巻き込んでおいてバランス調整も何もないのだろうが、他に可能性がないのならそれは真実足り得る。

 ライジングアルティメット。昇り行く究極。それはこのライダーの強化フォームだったのではないかと天道は考えた。それも、本来の極限(アルティメット)をも超越した。
 それ故に厳しい制限が課せられたため、こんなに早く相手の変身が解けたのではないか。

(なるほど……どうやら俺達は、敵の迫力に呑まれて選択を誤っていたらしい)

 ライジングアルティメットの力を感じ取り、圧倒的な速度で敵の頭を叩くことで一気に決着させようとしたが――実際には持久戦に持ち込めばこの悪魔的な戦闘力は直ぐに消え去っていたのだ。まったく以って判断を誤ってしまったとしか言えない。

 とはいえ、実際には乾が今この場に残っていてくれたところで、あの金色の怪人も相当な実力だ。ライジングアルティメットとの戦闘で大きく消耗した自分達では結局は返り討ちが関の山だろう。ライジングアルティメットの変身時間という重大な情報を他の参加者に伝えられないことは惜しむべきことだが、二人とも残っていればさらに苛烈な攻撃に晒され、共倒れになっていた可能性もある。乾が完全に逃げ切れた分、やはり今の状況の方がまだマシだろう。

 それでもライジングアルティメットに変身する男を仕留めることはできたかもしれないが、悪に操られただけの哀れな男の命を奪うなど、仮面ライダーである自分達には言語道断だ。

 必ず、俺の分も乾達がこの男も救ってくれる――そう思った天道の視界から、赤い影がまるでクロックアップのように消え去り、腰に強い衝撃を受けた。

「――っ!?」

 突然カイザの横に立っていた赤いナスカは、カイザギアから乱暴にカイザフォンを引き抜いていた。途端天道を包んでいたカイザの鎧が消失し、生身を晒す。

 それを確認したと同時に、天道の両掌から灰が零れ始める。カイザギアの呪い、オルフェノクやその強い記号を持つ者以外が変身すれば灰化し絶命すると言う話を乾から聞いていたが、自分にもそれが来たということだろう。

 だが、もう十分だろう。既に、時は稼いだ。アクセルフォームとなったファイズには、超加速のできる赤いナスカと言え、追い付くには距離が開き過ぎている。

463 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/25(火) 00:16:07 ID:GqZ3nFFo
「……何故笑っている?」

 近くにまで歩んで来ていた金色の怪人が、そう尋ねてくる。
 言われ天道は、自分が笑っていたことに気づいた。

 彼はいつものように人差し指を立て、天に向ける。そして、敬愛する祖母の言葉を紡ぐ。

「おばあちゃんが言っていた。散り際に微笑まぬ者は、生まれ変われないってな」

 身体が灰となって崩れて行くのがわかる。それでも天道はさらに、祖母からの借り物ではない、自分自身の、確信に満ちた言葉を紡いだ。

「――そしてこの地には、この俺に並ぶような奴らが、仮面ライダー達がいる。だから、何も心配せずに逝けるということだ」

 ――かつて、人間からアメンボまで、世界中の総ての命を救うと決めた自分が、取り零してしまった者が居た。
 それは、生前よりこの会場に連れて来られた、もう一人の自分。
 ネイティブの悪魔の如き所業により、世界の総てを憎んでしまったあの男。世界の総てに拒絶されたと思い込んでしまった彼を、救ってくれた者達がいる。
 それは、この天道総司にさえできなかったことだ。
 人類の味方、仮面ライダー。それは天道も目指した、正義の守護者達。
 乾のように、名護のように、どんな絶望や困難にも負けない者達が、この会場にはいる。

 そして、おばあちゃんが言っていた。この世に不味い飯と悪の栄えた試しはない、と。

 ならばこの怪人や大ショッカーのような奴らは必ず敗れる。それが世の理だ。

 ただ、元の世界に残して来た妹達のことと、もう一人の自分がどう生きるのか、その道を決めたところまで見届けることができなかったことだけは心残りだが……

 二人の妹は、強い娘達だ。彼女達を想い、助けてくれる人々も何人もいるだろう。自分が帰らないことで悲しませてしまうだろうが、きっとそれも乗り越えて、また眩しい笑顔を見せてくれる。

 そしてもう一人の自分もきっと、もうかつてのように世界を拒み、自分自身さえ傷つけるようなことはしないと、そう確信できた。

 何故なら、今の彼には支えてくれる仲間が、大勢いるのだから――

 それを最後に、天の道を行き、総てを司る男――天道総司の思考は、永遠の闇に葬られた。

464 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/25(火) 00:17:15 ID:GqZ3nFFo






「……死んだか」

 最期まで微笑んだまま、灰となって崩れ去った男を見て、金居はそう呟いた。

 既にギラファアンデッドへの変身は解き、灰の山からカイザギアを拾っている。五代もナスカへの変身を解除し、金居の指示でガイアドライバーを回収して来ていた。

 ――思っていた以上に、二人の仮面ライダーとの戦いから得た収穫は多い。

 それが金居の率直な感想だった。

 二人の口から情報を得ることはできなかったが、彼らとの戦いでライジングアルティメットの真の戦闘力の一端が垣間見えた。また、ライジングアルティメットへと五代が変身していられる時間がおよそ二分と数十秒であるということも把握した。
 おそらくはそのあまりにも強過ぎる力を大ショッカーによって制限されているのだろう。放送直前の戦闘で突然変身が解けたのも地の石の支配の問題もあったかもしれないが、単純に時間制限を迎えただけだったと考えられそうだ。

 先程の戦闘で見たように、複数の――それもかなりの実力の仮面ライダーを一切寄せ付けなかったライジングアルティメットの力はまさに無敵と呼ぶに相応しいが、二分程度しか変身を保てないのならやはりこの力でゴリ押すことを前提とした立ち回りは好ましくない。今回のように戦闘が避けられない時だけに使用は留めるべきだろう。

 次にこれまたライジングアルティメット……というより五代についてだが、表出て来る意識はなくとも記憶は残っているようだ。金居はガイアメモリのことを知らないが、五代はその使用方法を知っており、指示されずともそれがどのような代物か把握して金居の命を実行した。
 となると、下手を打って彼にとって親しい者などと接触させれば支配に影響が出るかもしれない。そのことは警戒するべきだろう。

 そもそも個人としての感情や意志を剥奪されている今の五代自体、積極的に他の参加者と潰し合うつもりのない金居にとっては扱いに悩むものだ。ある程度参加者が減ればその絶大な戦闘力で一気に勝利まで近づけてくれるだろうが、それまではどうしておくべきなのか。
 いや、そもそも地の石による支配を信じ過ぎることは危険かと、金居は首を振る。

465 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/25(火) 00:19:24 ID:GqZ3nFFo
 第三に、カイザギアを適正がない人間が使えば本当に死んでしまうと言うこと。現状では五代の変身手段が他にないためともかく、できるなら敵対者にはこれを渡して始末するのも悪くはない。仮面ライダーカイザはライジングアルティメットには無論、自分から見てもそこまで脅威ではなく、既に戦力を把握している以上、敵に未知の力を使用されるよりよほどやり易い。さらに言えば、どのようにして敵にプレゼントし、変身させるかという問題はあるものの、殺害した相手の死体が残らないことは金居の現在のスタンスにとって理想的だ。

 四つ目は、情報ではなく道具。ファイズアクセルを失ったが、充分にお釣りの来るナスカメモリとガイアドライバーを手に入れた。五代は首輪にあるコネクタで使用したが、敵だった男はわざわざベルトを使って変身していた。その差が体色の差なのかはともかく、よりこの変身ツールに詳しいと考えられる敵――乾と呼ばれていた男がそんな手間をわざわざ踏むのなら、何か理由があるのかもしれない。五代に使わせる場合はともかく、自分が変身する時はガイアドライバーを使うべきだなと金居は結論した。

 最後に、この灰となった男。変身先のあまりのスペック差にライジングアルティメットとは戦いにならなかったが、それでも暗黒掌波動の弱所を見切ってダメージを軽減し、仲間よりも早く体勢を立て直して本人も落下中に正確な援護射撃を行い、金居の反応を超えた超高速移動能力さえ見せた。それさえ易々と対処したライジングアルティメットも恐ろしいが、それから何発も貰った上でなお自分に変身を余儀なくさせ、あまつさえただではやられず支給品を回収して行く天道も相当だ。
 最終的には怪人であるが故に変身手段が自分よりも豊富である仲間を逃がすため、躊躇わず自らの命を捨てた。その戦闘技術・判断力ともに非常に高いレベルで、どのようなスタンスだろうと強敵として金居の前に立ち塞がるはずだっただろう男がここで消えてくれたのは幸運だった。
 天道の死は、おそらく奴を知る他の参加者にも大きな影響を与えるだろう。それも、多くの者にとって耐え難い喪失となって。

 そこで金居は薄く笑みを浮かべ、現状確認から今後の方針へと思考を切り替えた。

 さて、自分達が殺し合いに乗っているということを知った参加者が一人逃げてしまったが……先の戦闘で負ったダメージは尋常ではないもののはず。弱った今が間引き時だろうが、五代の扱いはともかく病院に行く都合もある。口封じのために追いかけて仕留めるべきか、否か……



 今後の方針について思考を巡らせる金居のすぐ傍で、地の石によって支配された五代雄介は物言わず仁王立ちしていた。
 彼は自らの手で、天道総司を殺め……その笑顔を、奪ってしまった。
 地の石によって封じ込められた彼の心に生じただろう深い悲しみと後悔と強い怒りに、今まさにガイアドライバーにより除去されなかったナスカメモリの毒素が流れ込み、結合しようとしているのかもしれない。

466 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/25(火) 00:20:31 ID:GqZ3nFFo
 未確認との激闘の中でも、人間らしい優しい心を決して最後まで失うことのなかった五代雄介。異世界の霊石によって封印された彼の心がもしも再び解き放たれた時、メモリの毒に侵された彼がなおもその心を保てたままなのか……
 もしかすれば、太陽を葬り去ったことによって――より深く、より恐ろしい闇が生まれ出でることになったのかもしれない。
 その答えを知る者は、今はまだ、どこにもいなかった。



【1日目 夜中】
【E-7 荒野】

【金居@仮面ライダー剣】
【時間軸】第42話終了後
【状態】健康 、ギラファアンデッドに1時間55分変身不可
【装備】デザートイーグル(2発消費)@現実、カイザドライバー@仮面ライダー555、カイザブレイガン@仮面ライダー555、カイザショット@仮面ライダー555、ロストドライバー@仮面ライダーW
【道具】支給品一式×2、地の石@劇場版仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー、変身一発(残り二本)@劇場版 仮面ライダー555 パラダイス・ロスト、
五代の不明支給品×1(確認済み)、草加の不明支給品×1(確認済み)
【思考・状況】
0:逃げた参加者(乾)を追うべきか否か……
1:自分の世界の勝利を目指す為、他の世界の参加者同士で潰し合わせる。能動的に戦うつもりはない。
2:他の世界、及び大ショッカーの情報を集める。
3:自分の世界の仮面ライダーは利用出来るなら利用する。アンデッドには遭遇したくない。
4:利用できる参加者と接触したら、乃木を潰す様に焚きつける。
5:地の石の力を使いクウガを支配・利用する(過度な信頼はしない)。
6:22時までにE-5の病院に向かう。
【備考】
※アンデッドが致命傷を受ければ封印(=カード化)されると考えています
※首輪が自身の力に制限をかけていることに気づきました
※東京タワーから発せられた、亜樹子の放送を聞きました。
※地の石の効果を知りました。
※五代の不明支給品の一つは変身一発@劇場版 仮面ライダー555 パラダイス・ロストです
※金居のデイパックはカブトゼクターに破壊されたため、草加から奪ったデイパックを使用しています。
※五代のライジングアルティメットへのおおよその変身時間を把握しました。

467 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/25(火) 00:21:29 ID:GqZ3nFFo
【五代雄介@仮面ライダークウガ】
【時間軸】第46話終了後
【状態】健康、地の石による支配 、仮面ライダークウガに1時間53分変身不可、ナスカ・ドーパントに1時間55分変身不可
【装備】アマダム@仮面ライダークウガ 、ガイアメモリ(ナスカ)+ガイアドライバー@仮面ライダーW
【道具】無し
【思考・状況】
1:地の石を持つ者(金居)に従う。
【備考】
※首輪の考案について纏めたファイルを見ました。
※地の石による支配力がどれぐらいかは次の書き手以降に任せます。
※地の石の支配によって、言葉を発する事が出来ません。
※ガイアドライバーを介さずにガイアメモリを使用したことで精神が汚染された可能性があります。現在は地の石による支配によって表に出ませんが、どのような影響するのかは後続の書き手さんにお任せします。







 乾巧は、哭いていた。
 また仲間を失ったこと。自分を助けるために、天道総司が犠牲となったこと。
 自分がオルフェノクでなく、あの銃声に気づかなければ、天道は今も生きていたこと。
 自分が彼にカイザについて教えていなければ、こんなことにはならなかったかもしれなかったこと。
 それらの事実が、巧の心を深く、大きく、傷つけていた。

「天道……っ!」

 偉そうで、無愛想で、人間からアメンボまで世界に生きる総ての命を守るという、臭い台詞を自信満々に吐くような、大きい器をした、強い仮面ライダーだった男。
 元の世界では彼を待つ、彼が護らなければならない妹達が居ると言う。
 なら自分だろうと……死ぬべきだったのは、既に命を失くしたオルフェノクである自分だろうと、巧は拳を地面に叩きつける。
 何度も、何度も。血が滲んでも構わずに。

 何も護れない。海堂が命を懸けて、もう一人の天道を救ったと言うのに、自分は死人の分際で天道を犠牲にして生き残ってしまった。霧彦の死に目に約束したような良い風など、自分なんかでは吹かせられなかったのだ。

468 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/25(火) 00:22:25 ID:GqZ3nFFo
 何度も、何度も。巧はひたすらに自分の拳を痛めつけた。

「天道ォ……っ!」

 再び拳を振り降ろそうとして、巧の脳裏に彼の最期の頼みが蘇る。

『――俺の夢は、人間からアメンボまで、世界中の総ての命を守り抜くことだ』

『それをこんなところで終わらせないでくれ、乾』

 天道のその声を思い出し、血が滲むほどに握り締めた拳を――巧は、振り降ろせなかった。
 彼が自分に望んだことは何だ? 彼を犠牲に生き延びた罪悪感から逃れるために、こうやって自らを痛めつけることか? そんな下らないことを望むような、小さな男だったか?

 答えは否。断じて違う。

 彼は太陽のように大きな男だった。彼が今の自分の立場だったら、こんな風に悲しみに屈したりはしない。無様な醜態を晒すことなど決してしない。
 なら自分はどうするべきなのか。彼に貰ったこの命を、どう使うべきなのか。

「……決まってるよな、天道」

 そう巧は、ぽつりと呟いた。

 自分達は――正義のために戦う人類の味方・仮面ライダーだ。
 こんなところで膝を着いている場合じゃない。仲間を失ったのなら、その仲間の分も、誰かを護るために戦いを続けなければならない。
 太陽を見失っても、暗闇に屈して立ち止まってはならない。

「――俺が、護るぜ。おまえの世界も、霧彦の世界も、俺の世界も、全部の世界を、だ。総ての世界の、人間からアメンボまで、総ての命を護り抜く。俺がおまえの代わりになる。
おまえの理想は、俺が継ぐ」

 霧彦の妹さんも、天道の妹さんも、自分が必ず護り抜く。

 総ての世界の総ての命を護り、そこに暮らす皆を洗濯物が真っ白になるように幸せにして、綺麗な風を吹かせる。そのために最期まで戦い抜いてみせる。

 何故なら自分は、乾巧は、仮面ライダーなのだから。

469 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/25(火) 00:23:31 ID:GqZ3nFFo
 そうだろ? 真理、木場、海堂、霧彦、天道……!

 決意を胸に、彼は再び歩き始めた。

 散って行った仲間達のために。仮面ライダーとして。
 闇に葬られた太陽の代わりに、闇を切り裂き、光をもたらすために。



 そうして再起した巧の様子を、上空から見守る影が一つ。
 主人の考えた通り、彼は仲間を失った痛みを乗り越えた。ならばきっともう大丈夫だろう。彼はあの天道総司が認めた、仮面ライダーなのだから。

 その再起を見届けた自分の次の使命は、天道総司の代わりとなって天の道を行く者を探すこと――それが使命だと、カブトゼクターは考えていた。

 最後まで自分を貫き通した総てを司る男の、わずかな未練を果たしてくれる者を探すために。

 天道がカイザになった際に手放したベルトを抱えて、カブトゼクターは夜の中を飛ぶ。

 この闇を照らす、新たな太陽を求めて。



【1日目 夜中】
【D-6 草原】



【乾巧@仮面ライダー555】
【時間軸】原作終了後
【状態】疲労(大)、ダメージ(大)、深い悲しみと罪悪感、決意、ナスカ・ドーパントに1時間45変身不可、ウルフオルフェノクに1時間45分変身不可、仮面ライダーファイズに1時間55分変身不可、右手に軽い怪我と出血
【装備】ファイズギア+ファイズショット+ファイズアクセル@仮面ライダー555
【道具】支給品一式×3、ルナメモリ@仮面ライダーW、首輪探知機、霧彦のスカーフ@仮面ライダーW 、ディエンド用ケータッチ@仮面ライダー電王トリロジー、サバイブ(疾風)@仮面ライダー龍騎
【思考・状況】
基本行動方針:打倒大ショッカー。世界を守る。
0:天道の遺志を継ぐ。
1:仲間を探して協力を呼びかける。
2:間宮麗奈、乃木怜治、村上峡児、キングを警戒。
3:霧彦のスカーフを洗濯する。
4:後でまた霧彦のいた場所に戻り、綺麗になった世界を見せたい。
5:橘朔也、日高仁志、小野寺ユウスケに伝言を伝える。
6:仲間達を失った事による悲しみ、罪悪感。それに負けない決意。
7:首輪を解除するため、『ガイアメモリのある世界』の人間と接触する。
8:石を持った眼鏡の男(金居)とそれに操られている仮面ライダー(五代)の危険性を他の参加者に伝える。
【備考】
※変身制限について天道から聞いています。
※天道の世界、音也の世界、霧彦の世界の大まかな情報を得ました。
※参加者達の時間軸に差異が出る可能性に気付きました。



【天道総司@仮面ライダーカブト 死亡確認】
  残り34人
※天道の遺体は灰化しました。首輪は【E-7 荒野】に放置されています。

【全体備考】
※E-7エリア 草原が戦いの余波で荒野となりました。
※カブトゼクターが次の資格者を探して移動を始めました。行き先は後続の書き手さんにお任せします。

470 ◆/kFsAq0Yi2:2011/10/25(火) 00:27:09 ID:GqZ3nFFo
以上で修正版の投下を終了します。

>>450->>459を前篇、>>460->>469を後篇としてお願いします。
内容には変わりないよう心がけましたが、もしまだ問題点などございましたら御指摘の方よろしくお願いします。

471二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/10/25(火) 17:08:16 ID:JfMuxqos
修正乙です
問題はないと思います

472二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/10/31(月) 19:23:29 ID:iz.m4otE
wikiに収録されている『決意の名探偵』にて修正部分が収録されていません。
作者さんは自粛中ですのでどなたか修正をお願いします。

473信じる心 修正版 ◆LuuKRM2PEg:2011/10/31(月) 21:23:04 ID:58ArQHho
えっと、本スレで指摘された部分を少し修正させて頂きました

 新たに出会った乃木怜司を加えて、フィリップ達は『E−6』エリアの警察署に備え付けられたソファーに腰を下ろして情報交換をしている。
 22時までに病院で向かう事になっている乃木の予定、落ち合う予定となっている金居というイレギュラー、突然変貌して襲いかかった五代雄介、鏡の中に潜んでいた蟹のミラーモンスター、フィリップが纏めた首輪に関する考案。
 そして――

「亜樹ちゃんが……殺し合いに乗っているだと!?」
「そこまでは言っていない。あくまでも可能性だ」

 フィリップにとってかけがえのない存在である鳴海亜樹子が殺し合いに乗っている可能性があると、乃木は語った。聞くと彼女は東京タワーから拡声器を使って参加者を集めようとしたらしい。
 この状況でそんな事をするなど自殺行為以外の何者でもない。しかしそれこそが彼女の目的で、本当は東京タワーに集まった参加者達を一網打尽にする可能性があった。
 現に乃木が東京タワーに大ショッカーを打ち破る同志を集めるまで、待っているはずだった。しかし彼女とその同行者である霧島美穂はそれを無視している。
 そして霧島美穂は死んだ。恐らく、殺し合いに乗った参加者の手にかかって。

「でも、それは君の憶測に過ぎないんじゃないかな?」
「そうだ……だが、どんな僅かな可能性でも憂慮しなければならないからな」

 海東は小馬鹿にしたような態度を取るが、乃木は軽く流す。海東の態度はこの状況では不謹慎極まりなかったが、フィリップはそれに気を止めていない。
 仮面ライダーとしての力を持たないが、風都を守るために戦っていた彼女が殺し合いに乗る。その可能性がフィリップにとってあまりにも受け入れがたい事実だった。
 彼女が大ショッカーの言葉を信じるとは考えたくないが、有り得ない話ではない。もしも世界の消滅が本当だったとしたら、風都に生きるみんなもまたいなくなってしまう。彼女にとってそれは何よりも辛い筈だ。
 加えて、照井竜の死を知ってしまったらどんな無茶な行動を取るか分からない。乃木の言うとおり、本当に殺し合いに乗る可能性だってあった。

(亜樹ちゃん……君は――)

 しかし、その先からフィリップの思考は続かない。突如、耳を劈くような轟音が外から響いて、警察署が大きく揺れた。
 フィリップは反射的に立ち上がって窓から外を眺める。すると、この警察署から少し離れた位置でそびえ立つ東京タワーから大量の炎が吹き出し、崩れ落ちていくのが見えた。
 
「やはり、あそこには罠が仕掛けられていたとはな……」

 乃木の冷たい言葉が耳に突き刺さり、思わずフィリップは拳を握り締める。乃木の言葉に怒りを感じてなのか、亜樹子の裏切りに対する絶望なのかは彼自身にも分からない。

「フィリップ、これで可能性は高くなった。何者かが東京タワーに罠を仕掛け、参加者を一網打尽にしようと企んでいたと……それが君の友人である可能性も0ではない」
「例えそうだとしても……僕は信じる! 東京タワーに爆弾を仕掛けたとしても、そうせざるを得ない理由がある筈なんだ!」

 続けられる言葉を遮りながらフィリップは乃木に振り向く。

「彼女は今まで僕の生きる街を守るために何度も戦った! そんな彼女が、誰かを犠牲にしようとする筈がない!」
「成る程な……だが、もしも俺の言葉が真実だったとしたらどうする?」
「もしも君の言葉が真実だとしても、その時は絶対に亜樹ちゃんを止めてみせる!」

 フィリップはそう大声で宣言した。
 亜樹子が人殺しなんかする筈がないと信じている為。もしも乃木の言うように殺し合いに乗ったとしても、理由がある筈だった。だから彼女を捜して絶対に止めなければならない。
 そして彼女を助けに行った葦原涼という男も救ってみせる。フィリップの思いに一切の揺らぎはなかった。
 そんなフィリップの肩を叩きながら海東は前に出る。

「……だそうだよ、君はどうするんだい?」
「信じようとするなら好きにするが良い……君の行動に口出ししたところで仕方がない」

 呆れたような溜息と共に呟く乃木の前に、今度は蓮が出てきた。

以上です。問題点がまだありましたら、ご指摘をお願いします。

>>472
収録させて頂きました。

474二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/10/31(月) 21:52:55 ID:5gOtq6.o
>>473
修正乙です。
この方が乃木のスタンスには合っている、とは思いますが……自分で指摘みたいなことしておいて修正して貰ったのに何ですが、ぱっと見ると乃木のキャラに違和感が出るかもしれないので、
乃木がフィリップを懐柔、ダメなら(制限で擬態できないことをまだ知らないため)擬態したいと考えているなどのフォローもあると良いかなとも思いました。なくても大丈夫とは思いますが。

475 ◆LuuKRM2PEg:2011/11/01(火) 22:42:05 ID:1NlbP8Hg
重ね重ね、ありがとうございます。
それでは乃木の心理描写を以下のように追加させて頂きますが、よろしいでしょうか?


 
「とにかく、病院に向かおう……そこに行けば誰かと出会えるかもしれない」







(やれやれ、優れた頭脳を持つ割に甘いな……尤も、その方がこちらとしても助かるが)

 フィリップの宣言を聞いた乃木は心の中でそう呟く。
 金居と別れてから参加者を探すためにホテルに向かったが、収穫はゼロ。気を取り直して警察署に向かうことを選ぶと、大ショッカーの放送が始まった。
 そこで呼ばれたのは仮面ライダーガタックに選ばれた加賀美新を含めた二十人もの死者。すなわち、自分の生きる世界の生存率が減ったということになる。
 だが、別段悲観することはない。仮に利用するにしても最終的には戦いに発展する以上、その手間が省けただけだ。
 今の問題は首輪に関する考案を立てる程の頭脳を持つフィリップという存在。奴を何としてでも懐柔することだった。首輪を解体する事以外にも、大ショッカーの隙を付くのに役立つかもしれない。
 尤も、反旗を翻すようなら擬態して知識を奪えばいいだけの話だが。

(今は精々頑張りたまえ……もしも有益になるならば、諸君らの命も延びるだろうからな)

 フィリップの仲間である鳴海亜樹子がまだ生きていた事を考えると、恐らく葦原涼に救われたのだろう。だがあの二人がこれからどうなろうともどうでもいい。
 仮に再び自分の前に現れたとしても、フィリップを利用するためには目を瞑らざるを得ないだろう。自分を殺しにかかるのならば、容赦はしないが。
 今は金居に加えて、急に変貌したという五代雄介の対策も立てる必要があった。ルールブックによるとこの男は仮面ライダークウガの変身能力を持つらしい。
 その戦力は未知数だが、仮面ライダーカイザに変身する草加雅人を一方的に蹂躙する程と聞いた。負けるつもりはないが油断は出来ない。
 彼の戦いの行く末は、未だに見えなかった。

476二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/11/01(火) 23:06:00 ID:a5B.rf7c
>>475
修正乙です。
自分はこれで大丈夫だと思います。
自分で「乃木ならこうじゃないかな?」と言っておいてなんですが、乃木が誰かを気遣うような口調なのが理由がわかってないとちょっと気味悪かったですからねw
wikiに収録されるのを楽しみにしています。

477 ◆/kFsAq0Yi2:2011/11/07(月) 23:56:44 ID:2uZiL84k
予約分が一通り完成しましたが、キャラ崩壊になっていないかなどの不安があるため仮投下させて頂きます。

478献上 ◆/kFsAq0Yi2:2011/11/07(月) 23:57:46 ID:2uZiL84k
 夜の闇の中でも目立つ白い影の名は、ン・ダグバ・ゼバ。究極の闇を齎す者、グロンギの王たる少年である。
 歪な頭部を持つ獣のようなバイク、バギブソンを背に座り込んだ彼の眼前には、自らの巻き起こした惨状が広がっていた。
 市街地を崩壊させるほどの戦いも、彼にとっては児戯も等しい。そもそもこのバトルロワイヤル自体が、彼にとっては面白そうなゲゲルであるという以上の価値がないのだが。

 そのゲゲルのルールとして、参加者には制限が加えられている。仮面ライダーや怪人態といった超常の力を発揮する異形を保てる時間はわずかに10分のみ。それを一度過ぎれば、およそ二時間無力なただの獲物と化してしまう。
 その制限は究極の力を持つダグバにも例外なく適用されていた。絶対者である自分を縛り付ける首輪を軽く叩いて、ダグバは笑みを深める。

 彼の属する世界において、ダグバに太刀打ちできる者など同じ凄まじき戦士である究極の形態となったクウガだけだったが、異世界のリントは本当に面白い。与えるばかりであった自らに恐怖を与え、このような戒めまで施している。
 純粋な力であればやはりクウガ――自らと同じ世界の円熟した戦士と、異世界より現れた未熟な、しかし究極の闇を齎す者へと到達したもう一人のクウガの二人以外にダグバを害することの叶う者は存在しないだろうが、その埋めがたき差をこのような道具で無きモノとして来る。ほんの30分前に持ち得る戦闘手段を浪費した今のダグバは、究極の闇を齎す絶対の暴君ではなく、首輪の効力によって脆弱なリントと等しき存在にまで堕ちていた。

 故に今、他の参加者が現れようものならダグバは恐怖のままに蹂躙されるだろう。
 自身と同等の存在との命の削り合いで覚える恐怖こそ、ダグバにとっては至高の感情だが、虫のようなちっぽけな存在に逆に虐殺されるというのも面白いかなと、彼が思った時だった。

 連続する鉄馬の嘶き――バイクのエンジン音がダグバの耳に届いたのは。

 立ち上がり、それのする方を向いた究極の闇を齎す者の周囲に広がっていた脆弱な闇が、強い光に切り裂かれた。

 ダグバの方に向かって来たのは深いワインレッドの、流麗なフォルムをしたバイク。それを駆る巨躯の軍人の顔は、ダグバに覚えのあるものだった。

「目的地が焼き払われたと思えば……やはりおまえか」

 現れた軍服の男――カブトエクステンダーを駆るゴ・ガドル・バの言葉を、特にダグバは聞いていなかった。
 リントの如き今の自分では、ゴ集団最強であるガドルに抗う術などない。ダグバは恐怖がむくりと起き上がるのを感じて……

「……今、使える力はあるのか?」

 そのガドルの問いに、少しだけがっかりした気分になりながら答えた。

「ないよ」
「そうか」

 ガドルの返事は短かった。そうだろうな、とダグバは失望したように溜息を吐く。

479献上 ◆/kFsAq0Yi2:2011/11/07(月) 23:58:28 ID:2uZiL84k
 ガドルはグロンギの中では、自分とはある意味最も近い存在だ。それは有する力のことではなく、その精神。二人はただの殺戮を喜ぶ他のグロンギと異なり、自身を脅かす強者との戦いを望む。ガドルは己を研磨し、最強へと近づくため、またダグバにとってはそれだけが手に入らないものであった故に。

 そんなガドルが、本来の姿になれない自分を殺すとは考え難い。究極の闇を齎す者である本来のダグバを超越した、真の最強になることが彼の目的だからだ。
 使える力があるかという問いを発する時点で、彼は自分が究極の力を先程使用したことと、制限の存在を把握しているというのは間違いないだろう。他の力があるとブラフを使ってもこちらから仕掛けなければガドルは今のダグバに手を出さないだろうし、リントの姿のままで襲い掛かっても相手にしないだろうことから、事実を伝えるしかなかった。

 せっかく、恐怖を味わえると思ったのに……

 そう嘆くダグバの前で、ガドルも考え込むようにどこかを見ていた。

 バイクのアイドリング音だけが木霊する静寂の中、二人のグロンギがただそこに立っていた。

「……仕方がない、か」

 やがて思案していたガドルはそう決断した溜息を漏らすと、ダグバの目の前で自身のデイパックを手にした。
 そうして一瞬だけ躊躇するような表情をした後、ダグバに箱のようなものを投げて来た。

「――これで戦って欲しいの?」

 スペードのマークの刻まれたその箱を笑顔と共に翳すダグバだが、ガドルは否と首を振る。

「持っておけ。究極の闇を以ってして及ばなかった相手ならともかく、下らぬ制限で弱き者に貴様が倒されることは許せん」

 そして、とガドルはさらに付け加える。

「それは仮面ライダーの力だ。そのブレイドという戦士は特にその誇りを貫いた強き戦士だった。本来リントを護る戦士である彼らの力を、貴様に与える時点で矛盾しているが――せめてその力に恥じぬよう、無様だけは晒すな」

「へえ……」

 少しだけ、ダグバの内に苛立ちがあった。
 誰に向かって、何様のつもりでこんな言葉を吐くのだろうと――愚か者を見る目でガドルを見たが、そこで認識を改めた。

「ガドルが僕の前で、そこまで言うなんてね……」

 王が見た破壊のカリスマを自称するグロンギの瞳は、驕りなき誇りを持つ強き戦士のもの。
 ガドルはその、『仮面ライダー』の敵であるということに、心からの名誉を抱いているのだ。
 これまでずっと、ダグバしか見て来なかったあのガドルが、そのダグバと同じくらいに、敵対者として『仮面ライダー』を認めている。

480献上 ◆/kFsAq0Yi2:2011/11/07(月) 23:59:28 ID:2uZiL84k
「……凄いんだね、仮面ライダーって」
「――ああ」

 僅かな間は、返答への躊躇いなどではなく、胸中に蘇った強敵への想いを噛み締めるためのものだろうということは、ダグバにも見て取れた。
 どうやら、ガドルは相当お熱のようだ。だがそれは彼の隙になっているわけではなく、むしろ逆らしい。
 テラーメモリの力でダグバがこのゲゲルの認識を改めたように、ガドルも『仮面ライダー』との戦いを通じ、視野が広くなったのだろう。ダグバに挑むためのゲゲルの標的としか見ていなかった敵対者を、己の全霊を懸けて挑むべき強者だと認めたのだ。

 ただノルマのようにこなす一方的な戦いではなく、互いの全てを懸けた真なる闘争。今のガドルはそれをいくつか乗り越えて来たのだろう。

 午後に顔を合わせた時、単純にガドルはグロンギの中で自分の次に強いから――といった程度の理由でしか期待していなかったが、今のガドルは違う。一度戦うごとに、心身ともにグンとその力を増すだろう。
 いつか、本当に究極の闇を齎す者に相対できるほどに。

「……その傷も、仮面ライダーにやられたの?」

 それまでのガドルの動きから、左半身に酷い裂傷を負っていることはダグバには察知できていた。
 ダグバの問いに、ガドルはにんまりと頷く。

「ああ。――別の仮面ライダーには、敗北さえした」

 なら何故ガドルが生きているのか――それは問わない。
 先程自分が殺した白い仮面ライダーをダグバも思い出す。力は弱かったが、それを補う技量や――ダグバにはよくわからない面白さがあった。そして、既に絶命しているはずの身でダグバに一撃を入れて来た。
 おそらくは似たような状況で、その仮面ライダーは勝利まで後一歩、命が保たなかったのだろう。

(羨ましいなぁ……)

 負けたことを嬉しそうに報告するガドルを本当に変わったと思いつつ、自分と違って何人も命のやり取りができる好敵手が存在する彼に、そう素直に羨望を抱く。

 そこでダグバは少し試すことにした。ポケットに入れておいた自身のベルトの欠片を手に取り、ガドルへと投げ渡す。

「……何だ、これは?」
「ゴオマから返して貰った、僕のベルトの欠片だよ。……大丈夫、僕のバックルはちゃんと修復されているから」
「……どういうことだ?」
「大ショッカーは、別々の時間から僕やガドル、ゴオマを連れて来たみたいだよ」

 その言葉に軽く衝撃を受けたかのように双眸を見開くガドル。まじまじと大きな掌に収まった金の欠片を注視し、再びダグバを向く。

「それでこれは、どういう真似だ?」
「これのお返しだよ」

 ダグバはそう再びスペードの意匠をされたバックルを掲げる。

481献上 ◆/kFsAq0Yi2:2011/11/08(火) 00:00:35 ID:8fvL0xA6
「それを使えば、僕の――究極の力の一部が手に入るよ」

 ダグバの言葉に、ガドルは再び驚き、欠片へと視線を向けた。
 だが特に迷うようなこともなく、ガドルはダグバにそれを投げ返して来た。

「――不要だ。俺は仮面ライダー達と戦い続けるが、ダグバ、貴様が俺のゲリバスゲゲルの相手であることには代わりはない。その相手から施される力など要らん。力が欲しければ自分で奪い取る」

 そのガドルの返答に、ダグバは笑顔を返す。
 本人も知らない内に、少しだけ深くなった笑顔を。

「うん。僕も、今のガドルならゲリバスゲゲルに来る頃には、僕を笑顔にできると思うよ」

 ゴオマのような、盗んだ力で図に乗る愚か者とは違う。
 あくまで自分の力を鍛え上げ、究極を目指すガドルに、ダグバはそう本心からの期待を伝えた。

「ダグバ、待っていろ」

 再びバイクを走り始めさせたガドルがそう、いつもの挨拶を残して行く。
 ダグバが崩壊させた市街地の方へと鉄馬を従え向かうガドルは、直ぐに小さな点になってダグバの視界から消えつつあった。
 その背に向けて、ダグバは呟く。

「――待ってるよ」

 ――それはグロンギ同士が邂逅したにしては、あまりに穏やかな交流だった。
 ただガドルにはダグバ以外にも強き戦士が現れ、ダグバにとってクウガ以外に、本当に自分を笑顔にしてくれるかもしれない者を見つけることができたこのバトルロワイヤルの会場で、それぞれの現状が互いにとって望ましいものであったからだろう。

 ダグバはガドルから渡された仮面ライダー――ブレイドの力を見て、思う。
 なるほどリントを護る宿敵の力を、リントを滅ぼすダグバに渡すことは抵抗があったのだろう。ただ敵に感化され過ぎることのなかったガドルにはやはり甘さはない。例え明らかに重過ぎる傷を負っていようと、おそらくは他のゴでも今のガドルには敵わないだろう。あるいはあの時の黒の金のクウガと戦っても、怪我にも関わらず結果は変わるのではないかとさえ思える。
 そのガドルが自分の前に現れるか、あるいはそのガドルすら打倒し得るほどの強者が立ち塞がるか――
 どちらにせよ笑顔になれそうだと思ったダグバは、バックルをデイパックにしまおうとして――

「ブレイド……?」

 ある事実に気づき、別のデイパックに手を出す。
 夕方、別世界のクウガを怖くするために整理した男から奪った支給品。その内の仮面ライダーの力は先程の仮面ライダー達に壊されてしまったが、他にも手に入れた物があった。
 武器ではなかったために意識の隅に追いやってしまっていたのだが、その説明書には面白いことが書かれていた。

482献上 ◆/kFsAq0Yi2:2011/11/08(火) 00:01:10 ID:8fvL0xA6
「あった……」

 取り出したのは、一つの箱。
 そのアイテムの名は、ラウズアブゾーバー。
 仮面ライダーブレイドもしくはギャレンを強化フォームへと変身させるための装備。
 そのままでも、今のガドルに称賛されるほどの力を持つ仮面ライダーの力を、さらに強化できるというアイテムはダグバの興味を引くのに十分だった。

「ゲリバスゲゲルやクウガを見つけるまで、これで遊んでみるのも面白そうかな」

 ラウズアブゾーバーを使用するのに必要なカードは、今は手元に足りていないらしい。
 それならガドルが言ったように、それを持つ参加者を見つけ出して奪い取るのも一興だろう。

 ガドルの言う仮面ライダーの誇りというのは、ダグバには正直わからない。
 だがその力への興味だけが、究極の力を持つグロンギの王の中にあった。



【1日目 夜中】
【E-2 市街地跡地】
【ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ】
【時間軸】第46話終了後以降
【状態】疲労(小)、ダメージ(小)、恐怖(小)、怪人態及びリュウガに1時間30分変身不可
【装備】ガイアドライバー@仮面ライダーW、モモタロスォード@仮面ライダー電王 、ブレイバックル@仮面ライダー剣、ラウズカード(スペードA〜6.9)@仮面ライダー剣
【道具】支給品一式×3、不明支給品×1(東條から見て武器ではない)、音也の不明支給品×2、バギブソン@仮面ライダークウガ、ダグバのベルトの欠片@仮面ライダークウガ、ラウズアブゾーバー@仮面ライダー剣
【思考・状況】
1:もう1人のクウガとの戦いを、また楽しみたい。
2:恐怖をもっと味わいたい。楽しみたい。
3:ガドルやリントの戦士達が恐怖をもたらしてくれる事を期待。
4:新たなる力が楽しめるようになるまで待つ。
5:余裕があれば残りのスペードのカードを集めてみる。
【備考】
※ガイアドライバーを使って変身しているため、メモリの副作用がありません。
※制限によって、超自然発火能力の範囲が狭くなっています。
※変身時間の制限をある程度把握しました。
※音也の支給品を回収しました。
※東條の不明支給品の一つはラウズアブゾーバー@仮面ライダー剣でした。


【ゴ・ガドル・バ@仮面ライダークウガ】
【時間軸】第45話 クウガに勝利後
【状態】疲労(中)、ダメージ(大)、左腕及び左上半身に酷い裂傷、怪人態に10分変身不可 、カブトエクステンダーを運転中
【装備】ガイアメモリ(アームズ)@仮面ライダーW 、カブトエクステンダー@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式、ガイアメモリ(メタル)@仮面ライダーW
【思考・状況】
基本行動方針:ゲゲルを続行し、最終的にはダグバを倒す。
1:強い「仮面ライダー」及びリントに興味。
2:タツロットの言っていた紅渡、紅音也、名護啓介、キングに興味。
3:蛇の男は、真の仮面ライダー。彼のような男に勝たねばならない。
4:仮面ライダーの「正義」という戦士の心に敬意を払う。
5:ゲゲルが完了したらキング(@仮面ライダー剣)を制裁する。
【備考】
※変身制限がだいたい10分であると気付きました。
※『キバの世界』の情報を、大まかに把握しました。
※ガドルとタツロットは互いに情報交換しました。
※タツロットはガドルの事を『自分を鍛えるために戦う男』と勘違いしています。
※また、ガドルが殺し合いに乗っている事に気づいていません。
※海堂直也のような男を真の仮面ライダーなのだと認識しました。
※参加者が別の時間軸から連れて来られている可能性に気づきました。

483 ◆/kFsAq0Yi2:2011/11/08(火) 00:04:31 ID:8fvL0xA6
以上で仮投下は終了です。

問題点(特にキャラ崩壊が起こっていないか)・修正点・誤字脱字などございましたらご指摘お願いします。

484二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/11/08(火) 00:05:49 ID:b4BVPcdk
仮投下乙です
矛盾点は特にないと思います。感想は本投下の後で

485 ◆/kFsAq0Yi2:2011/11/11(金) 11:51:44 ID:BKC3RZFM
すいません、「Sを受け入れて/地獄の兄妹」の指定する文を次のように修正して貰ってからwiki収録、ということはできませんか?

>わざわざ殺し合いに乗ると宣言した亜樹子を、助けに来るような御人好しだ。あそこで殺そうとするよりも、身を護る盾として使う方が絶対に良かった。

 これを

>>葦原涼は、殺し合いに乗ると宣言した亜樹子を、わざわざ助けに来るような御人好しだ。あそこで殺そうとするよりも、身を護る盾として使う方が絶対に良かった。

 のように修正して頂ければと思います。お手数ですがよろしくお願いします。

486 ◆/kFsAq0Yi2:2011/11/11(金) 12:08:19 ID:BKC3RZFM
すいません、もう一点。
矢車の状態表に不備が見つかりました。

3:妹(亜樹子)と話をする。
3:天道と出会ったら……?
4:音也の言葉が、少しだけ気がかり。
5:自分にだけ掴める光を探してみるか……?

 のように3が二つ続いてしまったので、二つ目の3以降は一つずつ値を大きく修正して頂くようお願いします。
 何度も申し訳ありません。

487二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/11/20(日) 23:22:57 ID:omL528yk
あのすいません、修正点……なのかどうかまだわからないですけど、一応指摘しときます。
『落ちた偶像 〜fool's festival〜』及び『落ちた偶像 〜kuuga vs χ〜』とその後の『信じる心』において矛盾?が発生しているのですが。
その場所は落ちた偶像(以下略の最後のフィリップ組の会話内にて蓮が海東にライアルの情報を求めています。(少なくても口調から考えてフィリップではない)
そしてそれに海東も同意し、情報交換しようとしますが放送直前のため断念、そこで彼らの出番は終わりです。
しかし、『信じる心』においてライアルの情報を求められているのは蓮です、海東はフィリップ慰めてるだけでライアルに関しては何もいってません。
この時点で矛盾が発生していること、そしてもう一つ。
……最終回後の海東って夏映画体験済みなんですか?
一応『草加雅人 の 仮面』でも海東が大ショッカーの基地を要塞のようだったと話している描写があります。
これから考えれば海東がライアルのことを知っていても不思議はありませんが……。

すいません、長々書きすぎて自分でもよく分からなくなってきました。
書きたいことを纏めると

1、フィリップ達のライアルに対しての情報は海東に求めた物。
2、今回の海東は夏映画のこと知ってるのか。

どちらもLuuk氏の作品についてですが何かしら回答がいただけるとありがたいです。

488二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/11/20(日) 23:25:24 ID:omL528yk
すいません。

× その場所は落ちた偶像(以下略の最後のフィリップ組の会話内にて蓮が海東にライアルの情報を求めています。(少なくても口調から考えてフィリップではない)
○ その場所は落ちた偶像(以下略の最後のフィリップ組の会話内にて蓮が海東にライアルの情報を求めてるところです。(少なくても口調から考えてフィリップではない)

でした、日本語可笑しくてすいません。

489 ◆LuuKRM2PEg:2011/11/21(月) 08:17:58 ID:k6Iy/fc2
ご指摘ありがとうございます

一つ目に関しては、自分の勘違いでした……お恥ずかしい。
後日、修正版を投下させて頂きます。

二つ目に関しては、TV版の最終回で士達が夏海を助けに向かった際に大ショッカーの要塞が一瞬だけ登場したので
最終回終了後から参戦の海東は大ショッカー要塞の存在を知っているかと思い、あの描写にさせて頂きました。
(また、オールライダー対大ショッカーに関して知っているかどうかは、明確に決めていません)

もしも描写的に不自然でしたら、こちらも修正させて頂きますがよろしいでしょうか?

490 ◆7pf62HiyTE:2011/11/21(月) 10:55:42 ID:Pu8LGvSw
海東がライアルに関して知っている様な記述をした事についてですが、
時系列の解釈としては、

TV本編→夏映画(具体的な時期は不明)→TV本編及びTV最終回→MOVIE大戦

という風に解釈しています。つまり夏映画がTV本編中の何処かで挿入されるという具合です。
で、夏映画はパラレルなのかどうかのかというのは判断が迷う所ですが、MOVIE大戦の作中に夏映画の内容を踏まえた描写(夏映画しか出ていないライアル登場、ディケイドを知っているW)がある事から繋がっているという解釈をしました。
それを考えればTV最終回後の海東が夏劇場版に登場したライアルについて知っていてもおかしくはないかなと判断しました。

勿論、全部パラレルと断じてしまえば上記の事は成り立ちませんが、仮にそうでも海東だったらライアルに心当たりがある可能性は十分考えられるとは思いますがどうでしょうか?
無論、それでも駄目、記述を削除すべきというのであれば対応致します。

491 ◆LuuKRM2PEg:2011/11/21(月) 13:28:38 ID:k6Iy/fc2
ご意見ありがとうございます。
確かに氏の言うように、海東がライアルについて知っていてもあり得ますね。
先程も言いましたように、『信じる心』の修正版を後日投下します。

492信じる心 修正版 ◆LuuKRM2PEg:2011/11/23(水) 07:24:33 ID:06LA/vHU
皆様、お待たせ致しました。
該当パートの修正版を投下します。ご意見などがありましたら、ご指摘をお願いします。


「そうだ……辛いのはみんなだって同じだ。だから僕だけが甘ったれるなんて、許される訳がない」
「ちゃんと、分かってるじゃないか」

 海東はフッ、としたり顔で笑った。フィリップはそれに心強さを感じながら、もう一人の同行者に振り向く。
 視線の先にいる秋山蓮の顔は、先程とは何も変わらない無愛想な雰囲気を醸し出したままだった。しかし、同じ世界の人間である北岡修一の名前が呼ばれて、何処か表情を曇らせている。
 仲間を失った事による純粋な悲しみか。真意は分からないが、彼の為にも自分は必死に戦わねばならない。

「……海東大樹、さっき秋山蓮が話していたクウガについて詳しく聞かせてくれないか?」
「ああ、恐らく蓮が言っていたのはライジングアルティメットの事だろう。かつて大ショッカーが持っていた地の石という物から発せられる波動によって、僕の知っているユウスケはそれになってしまった」
「ライジングアルティメット……?」
「その戦闘力は仮面ライダーが数人でかかっても、まるで歯が立たなかったね。だから草加が負けたって、何ら不思議じゃないさ」

 海東から告げられた事実に、フィリップは思わず戦慄する。
 草加の戦いは、最初に襲われた時しか見ていない。しかしその動きには一切の無駄がなく、一流の戦士である事が感じられた。
 考えたくはないが、もしもその力が自分達に向けられたら一巻の終わりかもしれない。もしも、ここに翔太郎がいてWに変身できて、ディエンドやナイトと力を合わせても五代を止められるかどうか。
 いや、出来る出来ないの問題ではない。五代が暴走したのなら、何が何でも止めてみせる。翔太郎や亜樹ちゃんも、絶対にそうする筈だ。

「分かった……教えてくれてありがとう、海東大樹」
「別に構わないよ。とりあえず元に戻すには、誰かが持っている地の石を壊すしかないだろうね。まともに戦ったって返り討ちにあうだけだからさ」
「成る程……それも見つけなければならないか」

 地の石という物がどんな代物かは判断できないが、とてつもなく悪質な代物であることは容易に判断できる。
 心優しい五代雄介の人格を奪って殺し合いを強制させるなど、考えただけでも吐き気を促した。しかし怒りに身を任せて冷静さを失うなどあってはならない。
 何としてでも、五代を元に戻す方法も考えなければならなかった。

「それと秋山蓮も、生きていてくれてありがとう」
「何?」
「君には感謝している。君が生きてくれていたおかげで、この異常事態を知ることが出来たのだから」
「そうか」

 フィリップは純粋な気持ちで感謝を告げるが、蓮は素っ気無く答える。しかしそれでも、フィリップは蓮を信頼できる人物だと思い、心が少し軽くなった感じがした。
 安易に他者を信頼しても、良くない事なのは分かっている。だが、こんな状況だからこそ誰かを信じなければ、命が無意味に奪われてしまう。
 かつての自分ならば、下らない理想論だと切り捨てていた筈の思い。しかし、人は理想を追い求めていくからこそ生きていける。それを全て無くしてしまっては、本当の悪魔に堕ちてしまうだけだ。
 この殺し合いに巻き込まれた者達を出来る限り救う為に、園田真理を殺した奴を始めとした危険人物を倒す。そして、大ショッカーに対抗する為の手段を探す事だ。

493 ◆/kFsAq0Yi2:2011/11/23(水) 10:38:05 ID:EZvk9XOw
修正乙です。

個人的には、地の石でクウガが変化したとしか言われていないのにフィリップが洗脳効果を
知った(フィリップならこのぐらいすぐに気付くとは思いますが)ので、操られてしまって
いる、という旨の台詞を海東の言葉に入れた方が良いかな? とは思いました。

それとこれは完全にどっちでも良いことなんですが、地の石があればライアルを操れると
知っても蓮はそれを手にしようとは思わない、ということでよろしいのでしょうか? 
実際に蓮は甘さのある人物なので、他人の心を捻じ曲げるような代物を使おうとは思わない
と十分考えられますが、まあ口に出すわけにもいかないので難しい話ですが……。

494二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/11/23(水) 21:06:32 ID:06LA/vHU
再度のご指摘ありがとうございます。
それでは
「ああ、恐らく蓮が言っていたのはライジングアルティメットの事だろう。かつて大ショッカーが持っていた地の石という物から発せられる波動によって、僕の知っているユウスケはそれになってしまった」

「ああ、恐らく蓮が言っていたのはライジングアルティメットの事だろう。かつて大ショッカーが持っていた地の石という物から発せられる波動によって、僕の知っているユウスケはそれに変えられた上に操り人形となってしまった」
に変えさせて頂きます。

続いて、フィリップ達が乃木と合流した後に以下のパートを追加させて頂きます。


(五代を操った地の石……だとすると、五代が向かった先にいた何者かがクウガを知っていたのか?)

 道を歩く途中、秋山蓮は思案する。
 草加雅人と行動していた際、突然鳴り響いた銃声の元に五代が向かった末にライジングアルティメットとやらになった。恐らく何者かが話を盗み聞きして、五代を誘き寄せたのだろう。
 だが今更考えた所で仕方がない。今は奴をどうするかが問題だ。もしもその力が再び自分に向けられたら、例えサバイブの力を取り戻したとしても勝てる見込みは薄い。
 それほどまで、ライジングアルティメットは凄まじかった。

(仮に地の石とやらを奪えるとしても、そう易々と行くかどうか……)

 ここにいる全員でかかっても、まず操り主に辿り着く事すら不可能に近い。乃木の戦闘力がどれ程かは知らないが、一人が加わった所で太刀打ち出来る相手とは思えなかった。

(そして、もしも地の石を奪えたらあの力は俺の物になるのか……?)

 だが万が一の確立で、それが奪えたとしたら。奇跡でも起きない限り無理だろうが、絶対はない。
 しかしもしも地の石がこの手に渡ったら、その後はどうするか? 地の石を破壊したら五代は元通りになってしまう。だがそのまま自分が持ち続けていれば、あの圧倒的な力を自分の思うがままにできる。
 自分が生きる世界の優勝も夢ではない。

(……馬鹿馬鹿しい、奇跡に縋るなんて何を考えているんだ俺は)

 だが蓮は瞬時に奇跡を否定した。
 あれだけの力を操る参加者がただの弱者ならいいが、もしも北岡のような頭の回る男だったらそう易々と奪わせない筈。加えてそいつが浅倉のような圧倒的戦闘力を持っていたら、返り討ちにあう危険性もあった。
 何よりも、こんな手段を取っては自分達を出し抜こうとした姑息な草加雅人と同類に成り下がってしまう。他者の命を奪うことに躊躇いはないが、そうなるのは御免だ。
 今はこの中に紛れ込んで今後の対策を立てる。それだけだった。

495 ◆LuuKRM2PEg:2011/11/23(水) 21:08:49 ID:06LA/vHU
あ、トリ忘れてました……

続いて連の状態表です。


【秋山蓮@仮面ライダー龍騎】
【時間軸】第34話終了後
【状態】疲労(小)、ダメージ(小)
【装備】ナイトのデッキ@仮面ライダー龍騎
【道具】支給品一式、エターナルメモリ@仮面ライダーW FOREVER AtoZ/運命のガイアメモリ
【思考・状況】
0:これから病院に向かう。
1:自分の世界のために他世界の人間を倒す。
2:まずはこの集団に潜む。
3:協力できるなら、同じ世界の人間と協力したい。
4:同じ世界の人間を捜す(城戸優先)。浅倉とは会いたくない。
5:協力者と決着をつけるのは元の世界に帰ってから。
6:草加、クウガ、金居を警戒。
7:もしも地の石を手に入れたら……?
【備考】
※首輪の考案について纏めたファイルを見ました。

以上です
矛盾点などがありましたら、ご指摘をお願いします。

496 ◆/kFsAq0Yi2:2011/11/23(水) 21:17:04 ID:EZvk9XOw
修正乙です。自分はこれで大丈夫だと思います。

497 ◆/kFsAq0Yi2:2011/11/27(日) 18:48:57 ID:nWDJDygw
予約分の作品が大方書き上がりましたが、不安な点があるためこれより仮投下させて頂きます。

498 ◆/kFsAq0Yi2:2011/11/27(日) 18:49:30 ID:nWDJDygw
 乾巧と天道総司――正義のために戦う二人の仮面ライダーと別れてから、名護啓介は擬態天道やタツロット達と共に、大河に区切られた西側のエリアを目指していた。
 彼と同じ顔を持つ――正しく言えばそのモデルとなった天道から聞かされた、擬態天道の歩んで来たその壮絶な人生。そのことを何も知らずに師匠になるなどと言った名護だったが、自身の言葉を撤回するつもりなどなかった。

 何故なら名護啓介は、正義の味方――海堂直也がその身で示した、仮面ライダーだ。
 理不尽に苦しむ者を救うために、全力を尽くすことを信条とする名護にとって、擬態天道は救済すべき相手に他ならなかった。海堂も、最期までそれを望んでいたはずだ。

 実験体として誘拐され、人間から異形の者へと造り変えられてしまった青年――天道の話では、その時はまだ、年端もいかない少年だったという。どれほどの絶望と孤独を抱いて、地獄のような世界を生きて来たのだろうか。ネイティブという悪魔の集団に、名護の赫怒が烈火と燃える。
 そうして奴らに尊厳を踏み躙られ、神も世界も呪っただろう彼の心を何とか救いたい。名護の心で強くなるのはその想いだった。長い間監禁され、モルモットとしてしか扱われなかったその孤独をせめて埋められないかと、名護は何度もタツロットと共に話しかけたが反応は芳しくなかった。名護の視線に怯えるように目を逸らし、そのたび歩みも止まってしまうこともあった。

 だがそれでも、彼は名護に付いて来てくれた。

「――総司くん、暗くて分かり難いかもしれないが、もう橋を渡り終えるぞ。頑張って翔一くん達を見つけよう」

 名簿にある名で呼び掛けた際、彼は酷い拒絶を見せた。ネイティブワームへと改造される悪夢を思い出してしまうのかもしれないと名護は見当を付け、事実その通りだったらしい。故に今は天道から、その名も借りておくことになった。
 無論、津上翔一を始めとした参加者達と出会った際には名簿にある名を伝えるしかないことは、彼の心をまた抉るようであり、名護としても本位ではないのだが……
 だが、できることなら。彼の両親が、愛しい我が子への想いを込めたその名前を彼が取り戻せる日が来ることを、名護は心の中で祈っていた。

「……名護さん、は」

 不意に後ろから名前を呼ばれて、名護は振り返った。

「どうした、総司くん?」

 俯いたままの彼は、弱々しく言葉を続けた。

「名護さんは、僕が……総ての世界を壊そうとしても、償えば良いって、言ってくれたよね」
「ああ。もちろんだ」

 人間は誰でも、苦しい時、悪意を持ってしまうことがある。
 そうならない強さを持つことが理想でも、誰でも強くなれるわけではない。擬態天道など、その機会すら天から与えられたことはなかっただろう。
 ずっとずっと、目に見える周囲の総て――彼にとっては世界そのものから迫害され続けて来たのだ。そんな悪意を抱くなと言う方が、よほど酷だと言うものだろう。
 だから、世界はもっと広いと――世界にあるのは彼を傷つける悪意ばかりではないと、この自分が教えて行かなければならない。世界に傷つけることしか教えて来られなかったなら、それ以外のことを知って貰えれば、きっと彼は変われる――名護はそう信じていた。

 名護の前に立つ擬態天道は、そんな名護の肯定を受けても酷く怯えた様子だった。
 だがこちらから呼び掛けても応えてくれなかった彼が、自分から声を出してくれたのだ――その勇気を尊重したい、そう思って名護は彼の言葉を待っていた。

「……それはまだ、僕がどの世界も壊してない、から?」
「そうだな。それもある。まだ何も壊していないなら、謝れば良いことだ」
「そーですよー!」

 二人の後ろを飛んでいたタツロットが、びゅびゅーんと名護の肩辺りまで飛んで来る。

「誰だって、気分が優れなくて悪いことしちゃいたい時や、しちゃう時だってあります! でも、そこでちゃんとごめんなさいするのが大事なんですよ! 謝ったら、ちゃんと許して貰えます!」

 タツロットの言葉を受け、名護は頷く。そんな二人に、彼は弱々しい笑顔を浮かべた。

「それじゃあ、やっぱり僕は……名護さんとは、いられない……」

 突然の宣告に、名護は思わず声を荒げた。

「どうしてだ!? 理由を言いなさい、総司くん!」
「……僕は、もう壊したんだ。……剣崎一真っていう、仮面ライダーを」
「剣崎……一真だって!?」

 その名には覚えがある。この会場で最初に合流した仮面ライダーギャレン、橘朔也の仲間だ。
 そして、先程の放送で名前を呼ばれていた、この狂気の世界の犠牲者でもある。

499 ◆/kFsAq0Yi2:2011/11/27(日) 18:50:22 ID:nWDJDygw
 彼を殺した悪は、絶対に許さない――そう密かに思ってもいたが。

「総司くんが……彼を、殺めてしまっていたのか……」
「そうだよ、僕が壊したんだ……剣崎一真を。もうあいつには、ごめんなさいなんて言えないんだ」

 今にもまた泣き出しそうな顔で、擬態天道はそう言葉を紡いだ。

「謝ったって……許してなんか、貰えない」
「……確かに、誰かの命を奪うと言うことは、決して許されることではない」

 名護はそう静かに頷いた。それを見て、擬態天道の顔の均整がなおさらに崩れる。

「――だが俺は言ったはずだ、総司くん。過去がどうあろうとも、償えば良いのだと」

 崩れそうな擬態天道に、名護はそう力強く告げた。

「一真くんが今の君を見て、自分の仇を討てと――君のことを、倒すべき悪だと言うだろうか。俺は直接には彼のことを知らない。だが彼が……直也くんのような立派な仮面ライダーだったということは、その仲間から聞いている」

 海堂直也の名を聞いて、驚いたように名護の言葉に聞き入っていた擬態天道は再びびくりと身を震わせるが、怯えたような瞳で、それでも必死にこちらを見ている。
 名護は彼を安心させるために、顔も知らぬ死者の心を信じて、救うべき魂のために言葉を継ぐ。

「一真くんはきっと、今の総司くんを倒すべき悪などとは言わないはずだ。何故なら君は、その罪を悔やみ、苦しんでいるからだ」

 名護は擬態天道に歩み寄り、その肩を力強く掴む。

「そして俺は、直也くんの正義を継いで、君を救うと約束した。彼の残した想いが、その優しさが、その強さが! ……無駄ではないと証明してみせる。そう言ったはずだ」

 名護の顔を見るのも辛そうな擬態天道を、それでも正面から見据えて、名護は言葉を送り続ける。

「君が一真くんを殺めたことは、決して許されることではない。――だが。仮に君がこれまでに、どんな許されざることをして来たのだとしても。俺が君を導き、一緒にその罪を贖おう」
「どうして……どうして君達は、そこまでして僕のことを……?」

 理解できないと言った様子で、目尻に涙さえ溜めて、擬態天道は首を振る。
 名護は柔らかい笑顔を作り、彼に答えた。

「直也くんが言っていただろう。俺達仮面ライダーは、皆を護って、世界だって救ってしまう……そんな存在だと。
 君は心悪しき者にずっと苦しめられてきた、俺達仮面ライダーが助けなければならない人なんだ。俺は、俺達は、君のことを絶対に絶対に見捨てない。絶対に……だ!」
「そーですよ! 何があっても、私達が付いてますからね、総司さん! だから、そんなにご自分を責めないでください!」
「――この俺様の目は、途中で見捨てねばならん奴を選ぶほど濁ってはいない」

 名護の言葉に続いて、後ろからタツロットが、擬態天道の後ろからレイキバットが、それぞれの言葉を彼に送る。
 彼は、そんな言葉を掛けられたことが初めてだったのか、どう受け取ったら良いのかわからない様子で、重みに耐えられないように名護の手から離れ、一歩後退した。

 その頬に伝わる一筋の涙を夜闇の中垣間見て、名護はその横に並び、肩を叩く。

「さあ、行こう。総司くん」

 今は、受け取り方がわからなくても良い。
 それでも、この世界には彼を想いやる温かい心を持った者がいるということを、いつかわかってくれる。名護はそう信じていた。

 そうして擬態天道の背を押しながら、橋を渡り切ろうと言うところで――遠くから届いた轟音に振り返ると、南の空を朱に焦がす煉獄がこの地に顕現する様を、名護は目にした。







 橋を渡り切った辺りで、突如として南方の市街地で発生した火災を見て、名護啓介は彼を伴って急行した。
 擬態天道は、つい先程までその業火に負けないほど熱く、だが誰かを傷つけることのない優しさ持ち合わせた言葉を吐いた名護に逆らう気になれず、彼の後を必死に追い駆けた。

500 ◆/kFsAq0Yi2:2011/11/27(日) 18:51:32 ID:nWDJDygw
 ――俺は、俺達は、君のことを絶対に絶対に見捨てない。絶対に……だ!

 そんなことを言われたのは、擬態天道にとって初めてのことだった。

 ずっとずっと、自分はひとりだと思っていた。
 世界はこんなに広いのに。世界はこんなにたくさんあるのに。
 誰も彼を顧みない。誰も彼を見はしない。天道総司の名と姿を借りなければ、誰の目にも留まることなく、誰からも何も想われず、正体を知られれば否定されるだけの存在なのだと――
 ――ずっと、そう思っていたのに。

 名護啓介は、自分が本物の『天道総司』ではないと知っても、それ以前と変わることなく接してくれている。レイキバットやタツロットも同じだ。彼らの言葉を信じるのなら、今はもう亡き海堂直也もまた、『天道総司』ではなく、『彼』自身を想って散ったのだという。

(――どうして、僕なんかのために……)

 わからない。本当にわからない。そんなことなんて、今まで一度もなかったのに。
 疑念が渦巻く中で、それでも彼は何故か、理由もわからないまま、ただ名護達から離れたくないと思っていた。
 このままでいるのか、それとも彼らと共に歩むのか。自分の道は自分で決めろと、『天道総司』は言っていた。
 まだその道を決めたわけではないが――それでも、名護達と離れることに強い抵抗があった。

 そうして、青空の会の戦士として鍛え続けた名護と、ワームと戦うために鍛錬を積んだ天道総司の肉体を持つ彼が、まったく止まらずに30分ほど走っただろうか。

 訪れたE-2エリアの市街地は、彼のいた世界の渋谷という街を思い出させた。

 絶大な暴力に晒され、ビルは崩れ、路面のコンクリは砕け、家屋は焼け落ちている。へし折れた街路樹を超えると、様々な物質が焼け焦げた臭いがそこら中から漂って来ており、彼は思わず鼻を塞ぎたくなった。
 隕石の直撃を受けた渋谷跡地のような惨状に、擬態天道さえも恐れを抱く。

 病院で出会った、通りすがりの仮面ライダー。そして放送の前に戦った、異世界のあの全身兵器の怪人。
 異世界から参加者を集ったこの会場には、ダークカブトの力さえ凌ぐバケモノが跳梁している。この惨状も、その内の一匹により引き起こされたものか。
 もしも、その犯人がまだ近くに居たら……そう背筋を凍らせるものを感じながら、自分と違って物怖じせず周囲を探索する名護に、彼は黙って付いて行く。

 怖くないと言えば嘘になるが……名護やタツロット達と別れてしまう方が、ずっと怖く感じて。彼は何故か引き返そうとも言えず、ただ名護に続いていた。

「――啓介すぁーんっ!」

 そう呼び掛けて来たのは、先行していたタツロットだった。未だ瓦礫の山が燻り、一層その視界が奪われるこの状況下では、月光を返す彼の黄金の身体を捉えるのも一苦労する。

「あっちに、生存者の方が……」
「――わかった。行くぞ、総司くん!」

 名護にそう促され、彼はその背に続いた。

 歩くと直ぐに、嘆きと共に地を叩く音が聞こえて来た。

 煙の先に真っ先に覚えたのは、焦げた臭いに混じる鉄の臭い。足元へと視線を配れば、既に凝固が始まっているもののおびただしい量の血液が楕円状に広がっていた。

「……何てことだ」

 名護が思わず、と言った様子でそう呟くのが聞こえ、声の方向に擬態天道も顔を上げる。

 そこには真紅のジャケットを、深紅の血で染め上げた一つの死体が横たわっていた。
 血の海に沈んだ遺体には身体を前から背中まで貫通したような傷がいくつもあり、精悍な顔にも鋭利な切り傷が刻まれて、削られている。明らかに狂気に塗れた悪意を持って、死後も執拗なまでにその躯を破壊され続けたことがわかる、あまりに惨い死に様だった。

 ただ血の固まり具合から見て、この男はこの市街地を崩壊させた戦いとは無関係に命を落としたようだ。無論高熱で早く固まった可能性もあるが、それにしては多く血液が残り過ぎており、自然に血が凝固したように見えることがその推測の根拠となる。

 次に生理的な嫌悪を呼び起こす悪臭を乗せた生温かい風が吹き、擬態天道はそちらの方を向く。

 先程声が聞こえて来た方だと思った時には、そちらに両手を着き力なく震える男の姿を見つけることができた。

501 ◆/kFsAq0Yi2:2011/11/27(日) 18:52:12 ID:nWDJDygw
 この帽子の男が生存者か。その向こうには、瓦礫に埋もれた真っ黒な焼死体がある。全身が完全に炭化し、その原型を留めぬほどに崩れたその遺体に比べれば、赤い男の遺体も幾分マシに思えた。何しろその炭の塊が人間の亡骸だとわかったのは、単純に大きさで判断できたに過ぎないからだ。

「――君、しっかりしなさい」

 高温に晒され、肌を焼く熱を持ったコンクリの上で両拳を握っていた男は駆け寄った名護の呼び掛けを境にして数回、一際大きく震えた後、長い溜息と共に蠕動を止め立ち上がった。

「……すまねぇ。情けない姿、見せちまったな」

 あちこちで上がる黒煙に汚されたのもあるのだろうが、それ以上に泣き腫らしたことで真っ赤になった両目を帽子で隠そうとする男が鼻声で名護と擬態天道にそう告げて来た。

「――情けないなどということはない。君も、大変だったのだろう?」
「……慰めて貰ってくれたところ悪いが、俺には辛いなんて思う資格はねぇんだ」

 そう言いながらも、心に負った傷を隠し切れていない青年は声を震わせながら名護に答えた。

「……あんた達は、殺し合いには乗ってないんだな」

 男の確認に、名護はああ、と力強く頷く。

「そうか。……俺は左翔太郎。風都の……その名も背負えねえ、半人前の探偵だ」

 翔太郎と名乗った男は帽子を取り、ぐしゃりと握り締めた。

「……あんた達は早く逃げてくれ。この近くには、トンデモない危険人物がいやがるんだ」
「何だって? なら君はどうするつもりだ」
「俺は……あいつを倒す」

 自らの帽子を眺めながら、翔太郎と名乗った青年はそう怒りを込めて言い放った。

「危険人物……だと言ったな。なら、君を一人にしておくわけにはいかない。君こそ逃げなさい」
「……そうはいかねえ。俺は半人前だが探偵で……半人前だが、仮面ライダーだ。あんた達を危険な目には遭わせられねえ」
「そうか。なら俺はやはり君を見捨てられないな。何故なら俺は、一人前の仮面ライダーだからな」

 そう臆面もなく言い切る名護に翔太郎は一瞬、面喰らったようになり、それから名護の方へ向き直る。

「そんなことを言ってる場合じゃねぇんだよ! 頼むから逃げてくれよ、俺は本当に半端者なんだ……誰も護れてない、皆死なせちまってる能無しなんだよ!」
「なら俺達が一緒に居よう。君の分も、俺が他の人々を護ると約束しよう」
「……何なんだよあんた。どうしてこんなところを見て、どうしてそんなこと言えるんだよ!」
「――俺は名護だ!」

 瓦礫の山や真っ黒の焼死体を指差して翔太郎が自棄になったように抗議するも、名護はそう叫び返して、翔太郎を唖然とさせる。

「俺は名護啓介だ。そして言ったはずだ、俺は仮面ライダーだと。どんな力を誇る敵が相手だろうと、俺は誰かの命を護るために戦う。……その使命を、仲間からも託された。なら、俺は君のことも見捨てるわけにはいかない」

 海堂があそこまで必死だったのは、自らの過去への贖罪だと、名護は言っていた。
 それなら、名護にここまで言わせるのも、海堂を見捨てたことに対する罪悪感なのだろうか――ふと、擬態天道はそう考える。
 そして、多分違うと、内心で彼は否定する。
 何故なら名護啓介は、初めて彼と出会った時、海堂が犠牲になる前から、こんな男だった。
 海堂も、誰かを救えなかったことが重荷になっているのなら、それはきっと彼が最初から、あの正義とか言う心を持っていたからだと、彼は思う。
 最初から彼らには、彼らが尊ぶ正義の心があった。
 なら、そんなものを持っていない自分は――

「――あんたが、名護さんか」

 擬態天道を思考の渦から呼び戻したのは、名護を呼ぶ翔太郎の声だった。

「さすがは紅が認めてた人だな、あんた……自棄になって、また情けねえ真似するところだったが、あんたのおかげで落ち着けたぜ……ありがとな」
「そうか。感謝はありがたく受け取っておこう。……紅?」

 そこで名護の顔色が変わる。

「君は渡くんか、紅音也を知っているのか?」
「――あぁ」

502 ◆/kFsAq0Yi2:2011/11/27(日) 18:52:56 ID:nWDJDygw
 平静さが戻りつつあった翔太郎の声が、その問い掛けによってまた震えた物となる。

「俺のせいで、紅……音也は……っ!」

 再び拳を握り締めた翔太郎が身を翻し、焼死体の姿を晒す。
 その傍らで散らばっている、黒く汚れた白の欠片には――擬態天道にも見覚えがあった。

「イクサナックル……まさか、彼が……っ!」
「……こいつが、紅だ」

 声を出すことも辛い戦いだと感じさせるほどに全身を震わせながら、翔太郎が首肯した。

「そんな……音也さんが……」
「あの伝説の男が、こんな姿になるとはな……」
「紅音也……まさか、そんな……」
「すまねえ名護さん。俺が不甲斐ねえばっかりに、紅は……!」
「……いや。自分を責めるな、翔太郎くん。彼はきっと、最期まで人の音楽を護ることができて、本望だったはずだ。君が自分を責めてその音楽を止めてしまっては、彼はきっと悲しむ」

 タツロット達と共に愕然とした表情だった名護が、翔太郎の零した涙に正気を戻し、そう彼の肩に手を乗せる。そうして視線を、紅音也だった物へと向けた。

「紅音也。俺はかつて、過去に跳んだ時……あなたと出会った」

 時を跳ぶ。異世界にもハイパークロックアップのような代物があるのかと、そのための実験体でもあった擬態天道は複雑な心中で名護の言葉を聞く。

「軽薄で、破廉恥で、何と自分勝手な男だ。こんな奴に違う時代とはいえ、イクサを任すことなどできない……あなたの上っ面だけを見て、俺はそう思いもした。だが本当のあなたは、その内なる心の法に従って、護るべき愛するもののために命を懸けて戦う、立派な真の戦士だった。
 今の俺があるのは、あの時あなたから遊び心を教わったからだ。その恩を忘れるつもりはない。あなたに代わって、俺があなたの愛した人の心が奏でる音楽を護ろう。そして、あなたの御子息である渡くんも――彼からすれば余計なお世話かもしれないが、必ず俺が支え、護り抜いてみせる。
 だからどうか、せめて安らかに眠りなさい……」

 そう紅音也へと告げる名護の頬に光輝が生じたのを見て、擬態天道は思わず問うていた。

「名護さん……泣いてるの?」

 指摘されてから、翔太郎にああ言った手前、罰が悪いかのように彼は目元を拭う。

「俺は泣いてなど居ない! これは……心の汗です」
「名護さん、その言い訳はちょっと古いぜ……」

 微かに呆れたように、そう翔太郎が名護に突っ込んだ。

(――その、紅音也って言うのは……名護さんにとって、大事な人だったんだ……)

 大事な人が死ねば、人間は悲しい……それくらいは、擬態天道も知っていた。

 ――もうこれ以上、俺様の目の前で誰一人傷付けさせねぇ! 誰一人だって、殺させやしねぇ!
 ――嗚呼そうさ……俺ぁ守るんだ! 今度は俺が……みんな、この俺様が、守り抜いてやるんだよ!

 そう言って、死んでいった男の姿が、擬態天道の脳裏に蘇る。

(――どうして。どうして、僕を……)

 どうして――誰からも何も想われないような自分なんかのために、海堂は命を捨てたりしたのか。
 それは擬態天道に生きて欲しかったからだと、名護は言っていた。だけど、他人の――それも、見ず知らずの自分のためにその命を捨てるなんて、馬鹿げてる。
 誰だって死ぬのは怖いはずだ。痛いのは嫌なはずだ。苦しいことなんてしたくないはずだ。それなのに、どうして海堂は、名護は、そこで死んでしまっている紅音也は、どうしてこんな簡単に、他人のために命を懸けるんだろうか。
 自分は死にたくない。生きていたい。他人のための犠牲になるなんて、もう真っ平だ。
 ……なのに。自分は生きているのに、紅音也が死んで名護が嘆き、海堂が死んでしまった今この生を、彼は手放しで喜ぶことができなかった。

「……総司くん。君こそ、彼のために泣いてくれているのか?」

 名護にそう聞かれてから。擬態天道はいつの間にか、自分が嗚咽を上げて泣いていたことに気づいた。
 何で、どうして泣いているのかはわからないけれど――擬態天道は首を振る。

「違……う……っ!」

503 ◆/kFsAq0Yi2:2011/11/27(日) 18:53:48 ID:nWDJDygw
 しゃくり上げながら、そう首を振る。頭の中に浮かんで来たあの胡散臭い顔を思い出すままに、擬態天道は、わからないままでも理由を声に出す。

「その人には、悪いけど……その人のためじゃ、ない……ただ、海堂くんを、思い出したら……」
「……海堂は、おまえにとって大事な仲間だったんだな」

 そう、わかったような口をきいて来たのは翔太郎だった。

「仲間……だって?」
「あぁ。木場さんから聞いていた通りの奴だったみたいだな、その海堂直也って男も……」

 何も知らないくせに、そう一人頷く男が気に食わなくて、擬態天道は声を荒げる。

「仲間なんかじゃない! 僕は、おまえらとは違う! 僕には、そんなものいなかったっ!」
「それは違うぞ、総司くん!」

 何言ってるんだよこいつ、と翔太郎が呟くのを掻き消して、名護の叫びが響く。

「確かに、これまで君には仲間は居てくれなかったかもしれない。だが、それは過去の話だ。今や俺も、海堂くんも、タツロットやレイキバットも、君のことをかけがえのない仲間だと思っている。例え君が孤独だと思い込んでいても、君は決して一人じゃない、俺達が一緒に居るんだ!」

 己を指差してそう強く言った名護は、そこで一度息を吐いて自身を落ち着かせる。

「――それを君が嫌だと言うなら、それでも構わない。だが誰かを頼りたくなったら、そのことを思い出してくれ。君が助けを求めれば、俺達はいつでも、必ず駆け付ける」

 そう暑苦しいほどの気持ちを込めて、それを伝えて来る名護に、擬態天道は何も言えなかった。



 名護が翔太郎と情報交換し始めたのをぼんやりと眺め、その内容を何となくだが頭に入れながら、擬態天道は尻を地べたに着いて座っていた。

「……できるなら、照井や紅の奴をこのままになんてして置きたくねぇが……」
「――手厚く葬りたいところだが、埋葬する時間はないだろうな」

 場所によってはまだ熱を保っているコンクリを避けて、座れる場所を見つけ出したばかりの頃は、そんな会話も聞こえたが。実際時間がないのは事実である以上、早めに移動を開始し、その過程で情報交換を進めるという方向で二人の方針は決まったようだ。

 名護の言葉が、自分にとって事実なのかは知らないが――今は彼らに付いて行く、そのことしか考えていなかった擬態天道も、移動を始めようとした彼らの後に続こうとして……

(――ダークカブトゼクター? いや、違う……)

 聞き覚えのあるゼクターの飛行音が、彼の耳に届いた。
 それは自身の半身とも言える、ダークカブトゼクターと瓜二つの移動方法で、その空気の裂き方も同じだった。それによって発生した音を、一瞬彼が聞き間違えてしまうほどに。

 それが近づいて来ることに気づいて、擬態天道は立ち止まり、視線を巡らせ――見つけた。

「……あれはっ!」

 彼の声を聞いてか、名護も振り返る。そして次の瞬間に、大きく驚愕した声を上げた。

「……カブトゼクター!?」

 それは二時間前、この殺し合いを止め大ショッカーを打倒するために、それぞれの成すべきことを果たそうと、彼らとは別行動を選んだ男の、その相棒――

 本物の天道総司の連れていたはずのカブトゼクターが、擬態天道の頭の上まで飛んで来ていた。

「あのベルトは……」

 カブトゼクターが抱えるライダーベルトを目にして、思い当たるものがあるかのように翔太郎が声を漏らし、その言葉にはっとしたように名護が息を呑む。

「カブトゼクターがベルトとともにここにいるということは……まさか、天道くんが……っ!?」

 その愕然とした声に、擬態天道もあぁと、自分でも意外なほどにあっさりと、事実を受け入れる。

 その主と共に天の道を往くカブトゼクターが、彼が肌身離さず持っているはずのベルトを抱え、今ここにいるということ。
 それは、天の道を行き総てを司る男――天道総司の死を、意味していた。

504 ◆/kFsAq0Yi2:2011/11/27(日) 18:55:00 ID:nWDJDygw
 誰も彼もから愛され、何もかもを手に入れ、総ての頂点に立つ、まるで太陽のようなあの男――
 天道総司が、死んだ。それも、こんなに呆気なく。

 悲願が叶ったというのに、擬態天道の中には、不思議とそれを喜ぶ気持ちが湧いて来なかった。

 あまりにも突然のことで、まだそのことを実感できていないから? 自分の手で、あの男に復讐することができなかったから?

 どちらも違う気がすると、擬態天道は結論していた。

 ――このままのお前でいるか、それともお前がお前自身の力で生きようとするか……決めるのはお前だ。

 そう告げて来た天道は……自分を邪魔者のようには、扱わなかった。
 ずっと、出来損ないの擬態である自分を、見下していると思っていたのに。ずっと、彼と同じ顔で惨めに生きる自分を、疎ましく感じていると思っていたのに。
『天道総司』は名護や海堂と同じような光を燈した瞳で、彼のことを見つめていた。

 その瞳がもう二度と開かれることはないのだと思うと、喜びではなく、その反対の感情が、擬態天道の中に溢れて来た。

 どうしてなのかわからない。わからない。わからないことだらけだ。

 他者から辛い扱いしかされずに生きて来た彼にとっては、未知のことが多過ぎて。これまで体験したことのない感情の奔流に、擬態天道が戸惑っていると――

 その彼に話しかけるかのように、カブトゼクターが鼻先まで降りて来る。
 何かを伝えるようにカブトゼクターはその角を上下させると――抱えていた銀のベルトを、擬態天道の手の上に落として来た。
 ――瞬間。彼の感情が沸騰する。

「……ふっざ、けるなぁあっ!」

 受け取ったライダーベルトを、擬態天道は思い切り振り被ってカブトゼクターに投げ返す。渾身の力で叩きつけてやったと言うのに、その機体より大きなベルトを器用に掴み取るゼクターは何でもそつなくこなすあの男を思い出させた。心を占めるその他の感情総てを圧し払った怒りを込めて、滞空するカブトゼクターを彼は睨んだ。

「僕は……僕は、天道の予備なんかじゃないっ!」

 その死に感じた痛みも忘れ、ずっと抱えて来た憎しみのまま、擬態天道は叫ぶ。

「天道が死んだから? 僕にカブトになれってことか! ふざけるな、誰に頼まれたって、あいつの代わりになんかなるもんかっ!」

 あの時天道が自分を気遣ったようだったのは、つまりそういうことか――

「あいつがあの時僕を心配したのだって、僕を自分のスペアだって考えてたからだなっ!?」
「――総司くん!」

 擬態天道の激昂に、呆気に取られている翔太郎を追い越して、名護が歩み寄って来るのがわかる。
 その声がまた、制止の意味合いを含んでいたことはわかった。だけど、今度の声にはこれまでとは違う、自分への強い否定が込められていたことにも彼は気づいてしまった。また涙が込み上げて来るのを堪えられないまま、擬態天道は天空にあるカブトゼクターに罵倒を浴びせる。

「消えろ! どっか行っちゃえ! 天道の亡霊め、二度と僕の前に現れるなっ!」

 彼の叫びを受けてか、飛来したダークカブトゼクターがカブトゼクターに体当たりを仕掛けた。ライダーベルトを抱えたままでは満足に黒いゼクターに対処することができず、カブトゼクターは後退を余儀なくされる。深紅のゼクターを執拗に追い駆けて、ダークカブトゼクターはさらに突撃を仕掛ける。それを幾度と繰り返し、やがて黒金と深紅の双つのカブトムシ型のゼクターは、擬態天道達の視界から消えて行った。

 はぁはぁと、全力で叫んだことによって酸欠になった肺に空気を送りながら、擬態天道はカブトゼクターが消えた夜天をずっと見据えていた。

「……総司くん」
「何だよ、名護さ――」

 パン、と響いたのは、振り返り際自分の頬が叩かれた音だと気づいたのは一拍置いてからのこと。
 擬態天道は痛みから生じた敵意を乗せて、名護へと視線を戻す。
 そこにあった名護の顔は、強い憤怒に歪んでいた。

「天道くんに、謝りなさい」
「嫌だ。僕は、あいつの代わりになんか、絶対にならない」

505 ◆/kFsAq0Yi2:2011/11/27(日) 18:55:53 ID:nWDJDygw
「――そんなふざけたことを言うのはやめなさい!」

 名護から浴びせられた否定の言葉に、擬態天道は二の句を繋げなくなってしまう。

(何だよ……結局、名護さんもそうなの……?)

 結局彼も、自分を天道総司の代わりだと見ていたということか。
 だから天道が死んで、彼の予備としてカブトゼクターの資格者となることを拒んだ自分に、強い怒りを見せているのか。

 頬を張られた痛みではなく、自分の頭に浮かんだ事実にもう何度目かわからない涙を流しながら、キッと擬態天道は視線を強める。

「……君が自分の予備などと。天道くんが、本気でそう思っていると考えているのか?」

 だが名護の放った言葉に、擬態天道は意表を突かれ、そして愕然とする。

「……僕なんかじゃ、偉大な天道総司の劣化コピーにもなれないってこと?」
「総司さん、違いま……っ!」
「死者を愚弄するのはやめなさいっ!」

 タツロットが口を挟んで来たのを無視して、名護が声を張り上げた。その剣幕に、タツロットや視界の端の翔太郎、擬態天道自身も縮こまる。
 その畏縮した肩を、名護はまた力強く掴んで来る。

「彼は君のことを、自分の偽物だとか、予備だとか! そんな風に思ったりしない! 天道総司は、もっと大きく立派な仮面ライダーだ! 彼が君を気遣ったのは、一重に彼が君を、君自身を! 心から助けたい、救うための力になりたいと願ったからだ!」

 そう訴えて来る名護は、それを伝えること以外、何も頭にないかのように。まったく遠慮せずに、ひたすらに大声を発し続ける。

「きっと天道くんは、死の瞬間まで君のことを気に掛けていた! 心配していた! だからカブトゼクターは、彼のその遺志を継いで、君を護る力になろうと、ここまでやって来たんだ!」
「天道が……僕を……!?」
「そうだ!」

 確信に満ちた声で、名護は力強く頷く。

「天道くんは、君のことを想い、できることなら君の力になりたいと思っていた。絶対にそうだ! あの天道くんが、死に際にカブトゼクターに託したのは、君のことだったんだ!」

 自分とはまるで違う考え方を、完全に信じ切って名護は擬態天道に示して来る。

「そんな……そんなことが……」
「――なのに、君は。その天道くんの想いを愚弄した。その行為を見逃すことは、俺にはできない。天道くんに謝りなさい、総司くん」

 名護の物言いは、擬態天道を責める物から、諭す物へと変化していた。

「俺は君の師匠として、君に道を示すと言ったはずだ。君が道から外れそうになったら、元通りに導く義務がある。だから、もう一度だけ言う。天道くんに謝るんだ、総司くん!」

 そう掴まれた肩を揺すられ、擬態天道は成されるがままにぐらぐらとふらつく。
 何を信じていいのか、擬態天道には何も分からなくなっていた。何の基盤もないから、こんなに簡単に揺らいでしまう。
 今までずっと、擬態天道が見て来た世界と――名護達仮面ライダーが、彼に示そうとする世界は、同じ世界のはずなのに、まるで別の物に見えて。

 これまでの自分の見て来たそれか、仮面ライダーの示す世界か。

 擬態天道が判断を付けられず、ただただ戸惑っていた時だった。
 ――彼らの元に迫って来るバイクの音に、三人が気づいたのは。

「どなたかこちらに来てますね……?」

 タツロットがそう呟き、その直ぐ後に、深いワインレッドのバイクがその姿を現した。
 それを駆る軍服の男の顔は、その場に居た全員に覚えがあるものだった。

「おまえは……!」

 翔太郎が驚愕を、名護と、そして擬態天道が怒りを込めて、新たに現れた男へ視線を向ける。

「ガドル……さん……っ!」

 タツロットがそう、辛そうに呟いた。

506 ◆/kFsAq0Yi2:2011/11/27(日) 18:56:50 ID:nWDJDygw







 ダグバと別れた後、彼がその力を振るった戦いの跡地へと、ガドルは向かっていた。
 理由は、あれだけの惨禍を見せつけられれば、強者との戦いを望む参加者が集まって来るだろうと考えられたため。
 そして何より、リントを護る仮面ライダーが、あの災厄を放置しておくとは考え難かったからだ。
 その読みは正しく、聞き覚えのある大声のした方へ向ったガドルは、三人の参加者を見つけた。
 彼らは全員、一度ガドルが出会ったことがあり――その内の二人は、弱いが、仮面ライダーだとガドルが認めた男達だった。

「――こんなところで会うとはな」

 黒いタートルネックの男――確か、あの蛇の男、ガドルに勝利した仮面ライダーこと海堂直也が、名護と呼んでいたリント――が、そう仮面ライダーに変身するための道具を片手に一歩、前へ出る。
 後ろに居るのは、生身のまま拳を構えた帽子の男。日中に出会った、技は未熟で力もまるで弱い――だがその気骨だけは認めざるを得ない、仮面ライダーの一人。
 それと一時行動を共にしたタツロットや、仮面ライダーの力を装着者に与える顔だけの白い蝙蝠――そして仮面ライダーの力を持ちながら、その名に相応しくない心を持った、怯えた表情の癖毛のリントが一匹ずつ、さらにその背後に並ぶ。

「海堂くんの仇、討たせて貰うぞ……その命、神に返しなさい」

 そう有無を言わせぬ気迫を持って、名護が籠手のような変身アイテムを構える。
 この三人の中でも、あの海堂直也と語り合ったことからも特に仮面ライダーとして正義の誇りを持った戦士であることは明白。前の戦いでは不発させたが、さらに力を隠し持っていると思われる、仮面ライダーに変身する男。この三人の中では、名護が最大の獲物だろうとガドルは結論付ける。

「――待て」

 名護が宣戦布告し、そのまま変身しようとしたところで――ガドルは制止を口にした。

「――待て、だと? 殺し合いに乗った悪が、どの口でそんなことを!」
「――無論、貴様らと戦い、殺すことが俺の本望だ」

 そう殺気を解放するだけで、後ろの帽子の男の身が強張り、仮面ライダーモドキが恐怖のままに一歩下がる。名護さえも、わずかにその表情を厳しい物にする。

「だが、ここでそこの二人を巻き込む恐れを抱きながら、戦うことは貴様らも本意ではあるまい。場所を変えろ――断ってくれても、俺は別に構わんがな」

 そうガドルが示すのは、二つの死体。
 一人は全身に創傷を刻み、苦悶や後悔に塗れながらも、どこか満足した顔で事切れた男。その命が尽きる寸前に何かを成し遂げたような――恐らくは完全に脅威を駆逐するには至らなかったが、無力なリントを護り抜くことに成功した仮面ライダーの顔だと、ガドルは結論付けた。
 もう一人は、全身が完全に炭化した真っ黒な焼死体。ダグバの持つ、超自然発火の力によって命を奪われたことは明白だが――彼が抵抗もせずただ狩られるのを待つだけの存在だったわけではなく、最期の瞬間までダグバに挑んでいた勇敢な戦士であるということは、その周辺に散らばった機械の残骸で判断できた。

 そうして散った戦士達に敬意を払い、ガドルはできれば、彼らの眠りを妨げたくはなかった。
 それは仮面ライダー達も同じであり、彼らは殺戮を好むグロンギであるガドル以上にそのことを気にして、下手をすれば全力を出せない可能性があった――それはガドルの本意ではない。

 それ故のガドルの提案だったが、果たして仮面ライダー達はそれを受け入れるかは、また別問題だ。拒まれれば、絶息した戦士達には無礼を働くことになろうと、この場で戦い三人を殺すのみ。
 そう考えるガドルに対し、険しい視線は緩めぬまま、名護はゆっくりと構えを解いた。

「まさか、貴様に死者を悼む気持ちがあったとはな……」
「――貴様らの言う感情と同じかなどわからんが、俺は相手に応じた振る舞いをするだけだ」
「……良いだろう。場所を、変えよう」

 名護はそう頷き、ガドルは付いて来いと、さらに西側、まだ無事な市街地の方を三人に示す。

「――なぁ、マッチョメンよ」

 カブトエクステンダーを走り出させようとしたガドルに、帽子の男がそう声を掛けて来る。

「あんたも、こいつらに気を使ってくれたってんなら……そんな悪い奴じゃないはずだ。どうしてこんな、殺し合いなんかに乗っちまったんだよ。そんな方法で、本当に世界を護れるなんて思っているのか?」
「――世界など、俺には興味はない」

507 ◆/kFsAq0Yi2:2011/11/27(日) 18:57:25 ID:nWDJDygw
 何を勘違いしているのか、そう訴えかけて来た翔太郎の声を一蹴して、ガドルは彼の方へと視線を動かす。

「俺の目的は、この地に集められた全ての強者と戦い、殺すことだ。――ただ強き者には、相応の振舞いをする、それだけだと言ったはずだ」
「何言ってんだよ、あんた……」
「やめなさい、翔太郎くん。その男は人間ではなく、未確認生命体――無辜の人々を傷つけ、その笑顔と命を奪う悪魔だ。外見に騙されるな」

 名護の言葉は正しい。ガドルはグロンギであり、リントなどはただのゲゲルの標的に過ぎない。リントを殺すことを文化として、そして本能として掲げるグロンギにとって、他者の命などゲゲルのスコア以上の価値など持ち得ることはない。リントを狩り、ゲゲルを達成すること以外、ガドルには何の関心もない。負ければ世界が滅びると言われても、何も感じなかった。
 それでもグロンギ最強の戦士として、ガドルの欲にあったのは強き戦士との闘争だった。そして、ガドルにとって敬意を持つべきは同胞ですらなく、殺す価値があると感じられる強き戦士だった。

 故に、戦士達の亡骸は安置したに過ぎず。ガドルはカブトエクステンダーのアクセルを回す。

「――15分待つ。それまでに来なければ逃げたとみなし、他のリントともども殺す」
「リント……って、あの白い野郎が言っていた……」
「待っているぞ、仮面ライダー達よ」

 それだけを言い残し、ガドルはカブトエクステンダーで移動を再開した。
 目指すはE-3エリア市街地。それだけ距離を取れば、仮面ライダーも本気を出せるだろう。

 必ず追って来るという確信が、ガドルにはあった。またリントを今襲っているわけでもない以上、背後から仕掛けるような輩でもない――もしその程度の相手なら、死角からの奇襲だろうと十分に対応して見せるとガドルは自負していた。

 故に悠々と敵に背を向け、ガドルはその場から目的地へと移動を始めた。瓦礫が散逸した路上ではバイクの操縦は困難なものだが、既に二時間駆り続けた鉄馬はガドルの一部に等しかった。

(――見極めさせて貰うぞ、仮面ライダー)

 あの時、まったくガドルの敵にはなり得なかった、二人の仮面ライダー。
 だが、最初に戦った時は、あの海堂直也もガドルの敵足り得なかった。そんな彼を変えたのは、正義に殉じるという彼の覚悟とその信念。
 それを胸にすれば、どの仮面ライダーもガドルを脅かすほどの強者足り得るのか。それをガドルは確かめたかった。

(貴様らの掲げる、正義とやらの力を)

 宿敵への期待を胸に、破壊のカリスマは生温い夜風を切って走って行った。







「――急ごうか。あの方向、恐らくE-3エリアの市街地の方を目指している。15分ではギリギリと言ったところだ」

 そう名護が去って行くバイクを見据えて言うと、総司という男が彼を掴んだ。

「何言ってるの!? ついさっき、三人掛かりでもまったく歯が立たなかったじゃないか! 今度こそ殺されちゃうよ!」

 そう、必死に名護を呼び止めようとする総司を見て、翔太郎はようやく彼に共感できるところを見つけられた。

「……それでもだ。奴を放置していては、他の者達が危険だ。俺は仮面ライダーとして、奴を倒す義務がある」
「――俺も行かせて貰うぜ」

 そこで翔太郎は名乗りを上げた。

「――俺は半人前かもしれねえが、何もせずに見ているだけなんてできねえ。半人前でも、たった一人よりは一人半の方がまだマシなはずだ」
「そうか……翔太郎くん、その心構えさえできれば、君はもう立派に一人前だ、胸を張りなさい」

 そう名護は言ってくれるが、翔太郎は首を振るしかできない。

「ありがとな、名護さん。……だけどそう言って貰ったところで、俺はまだ口先だけだ。まだ何も成し遂げちゃいねえ以上、半人前でしかねえよ」

508 ◆/kFsAq0Yi2:2011/11/27(日) 18:58:22 ID:nWDJDygw
 確かに翔太郎は、風都を護り続けて来た。
 だがそれは翔太郎個人の力ではなく――鳴海亜希子や照井竜、刃野刑事達警察やウォッチャマン達情報屋、何より相棒のフィリップといった風都の皆と力を合わせて来たことが大きい。

 故におやっさんこと鳴海壮吉とは違い、翔太郎は一人ではまだ何もできないひよっこだ。名護がその心意気を認めてくれたところで、事実この殺し合いで犠牲者ばかり出している以上、翔太郎は自分の不甲斐なさを許すことはできない。

「……それでもあのマッチョメンは、木場さんやあんた達の仲間だった海堂の仇なんだろ。俺の前で堂々と殺人予告までして行きやがったんだ、何もせず見ているだけなんて俺にはできねえ」
「ああ。心強いよ、翔太郎くん。……総司くん!」

 翔太郎に頷いた名護はさらにそこで、ずっと情緒不安定気味な総司の方を振り返る。

「……事実として、奴は強敵だ。俺が出会って来た全ての悪の中でも、おそらくは最も手強い敵の一人だろう。必ず勝てるという確証はない……だから君は、無理に付いて来なくても良い」
「え……?」
「おい、名護さん。まさかあんた、死ぬ気じゃないんだろうな?」

 黙って見ていられず、翔太郎はそう口を挟んだが、それは要らぬ心配だったようで。

「馬鹿なことを言うのはやめなさい、翔太郎くん……俺は世界の希望。輝く太陽のように、決して消えることはない!」

 いちいち大仰な人だなと、翔太郎は少し呆れたりもしたが。

「勝てる保証がなくとも、世界のために、必ず悪に勝つ! ――それが俺達、仮面ライダーだろう?」

 続いた言葉には、翔太郎も力強く、心から頷いた。

「……太陽は。天道は、消えちゃったじゃないか……っ!」

 そんな二人に届いたのは、総司の悲痛な声。彼は必死の形相で、名護に詰め寄っていた。

「あいつはバケモノなんだ、僕達じゃ……海堂みたいに殺されちゃう! どうして逃げられるのに、どうして自分から戦いに行くなんて言うのっ!?」
「おい――総司だったか、おまえ。ずっと名護さんは、おまえに言ってるじゃねえか」

 名護が死地に飛び込むのが耐えられない様子の青年に、翔太郎は帽子を深く被り直しながら言う。

「俺達は、仮面ライダーだ……ってな」
「――だから!? どうして君達仮面ライダーは――!」
「――それは俺達が風都を……いや、人間を、愛しているからだ」

 普段なら、ハードボイルドを心掛ける翔太郎が決して口にしないような、愛と言う単語――
 それでも目の前のこの青年には、敢えてこの、自身の根源たる想いを言い聞かせる必要があると、翔太郎は思っていた。

「人間を、愛……!?」

 意味がわからないという様子で、総司は首を振る。

「言っておくが、人間じゃなくても――木場さんや、海堂みたいな。人間らしい心を持った者を、俺は愛している。だからその大切な人や街を泣かすような奴らを、俺は絶対に許せねえ。
 きっと名護さんも、紅も、照井も、木場さんも、海堂も――さっき言ってた天道も、皆同じだ」

 どこか引っ掛かりを覚えた翔太郎の言葉に、それでも名護が力強く頷いてくれたのがわかった。

「だって、そんな……ここに連れて来られた人達なんて、ほとんど住む世界も違う、見ず知らずの他人じゃないか! そんなのを、愛してるから戦うだなんて!」
「なあ、総司……さっき名護さんは、自分のことを太陽のように、って言ったよな」

 それと同じだと、翔太郎は彼に伝える。伝えなければならない。

「温かい太陽も、心地良い風も――邪魔する奴がいなけりゃ、誰にだって平等に降り注いで、どこにだって分け隔てなく吹くもんだ。俺達の――仮面ライダーの、誰かを想う気持ちだって同じだ。どこの誰だって、俺はその命を愛しいと思う」
「そうだ――顔も知らぬ人の奏でる音楽も、俺は尊いと思う。自分の命を懸けてでも、護る意義があるものだと、俺はそう信じる」

 名護が翔太郎の言葉を継ぎ、そうして総司に告げる。

「だから、総司くん……ここにいる沢山の人の、そして海堂くんが、その命で君に遺した物を……その命の奏でる音楽を、どうか俺に護らせてくれ」

509 ◆/kFsAq0Yi2:2011/11/27(日) 18:59:33 ID:nWDJDygw
 わからないよと、総司は俯き、首を振る。
 だがその否定は、仮面ライダーの理念を否定するものではなく。そのために、仮面ライダーの命が喪われることを認めたくないためのものだと、翔太郎は感じていた。
 壮吉を亡くした、自分達のように……

(――名護さんにとっては、紅の奴がおやっさんだったんだな)

 つい先程、紅音也の遺体へ向けた名護の宣誓を、翔太郎は思い出す。
 見たところ、自分と壮吉の関係に比べれば――本来異なる時間に生きる者同士が、偶然邂逅しただけだったために、非常に短く、そしてまた対等に近い関係だったようだが。
 それでも名護啓介は、確かに紅音也の魂を受け継いだ。

(そして名護さんは、今――こいつのおやっさんになろうとしてるんだ)

 自分で自分の感情の整理もできていないような、一人の青年。だがその心は未だに幼く、理解の及ばぬあらゆる事象に混乱しているようであった。
 そんな彼の、道標になるために。
 名護啓介は、仮面ライダーとして戦っている。翔太郎には、彼らの関係はそう見受けられていた。

(だったら――総司には、俺と同じ想いは絶対にさせねえ……!)

 自分のせいで壮吉を死なせてしまったということを、翔太郎は決して忘れることはできない。
 今また、もし総司を残して名護が死んでしまうようなことになるなど――翔太郎は絶対に認めるわけにはいかない。
 必ず二人を護る。そして自分自身も、もちろん風都やこの会場にいるフィリップや亜樹子を護るために――絶対に生き残る。
 そう、三人揃って生き残ってみせると、翔太郎は強い決意を固めていた。

「――行こうか、翔太郎くん」

 名護の呼び掛けに、翔太郎は力強く頷く。

「あぁ。行こうぜ、名護さん。仮面ライダーとして!」
「――待って!」

 タツロット達に総司を任せ、ガドルとかいうマッチョメンのところに向かおうとしていた二人を呼び止めたのは、総司だった。

「置いて、行かないで……」
「総司くん……しかし、危険なんだ。戦う意思のない君を、連れてはいけない」
「だったら……だったら、僕も戦うから……!」

 縋るように、総司は名護に駆け寄って来る。

「お願いだから、名護さんまで……僕を置いて、遠くに行かないで……!」
「――良いぜ。付いて来いよ、総司」
「――翔太郎くん!」

 咎めるような名護の声に、翔太郎は首を振る。

「名護さん、こいつはきっと……あんたに死んで欲しくないんだ。あんたを護りたいんだよ。
 誰かを護るために戦う……それならこいつも、立派な仮面ライダーなんじゃねえのか?」
「しかし……」
「心配なのはわかるけどよ。それはあんただけじゃなくて、こいつも同じ気持ちなんだ。違うか?」

 翔太郎の言葉に、名護は暫し逡巡するように険しい表情で瞼を閉じたが、やがてそれが開かれる。

「――わかった。だが危なくなったら、直ぐに逃げなさい。それが条件だ」

 そうして総司の同行が許可され、三人並んで、ガドルの待つ場所へと向かう。

(――そういえば、さっき来たあのカブトムシ型のガジェット……)

 総司が追い返した赤いカブトムシメカを、翔太郎は不意に思い出す。
 カブトになれってことか、などと錯乱した総司が叫んでいたことも。

(――あれはつまり、ファングと同じで自律行動できる変身ツールってことか)

 そのカブトゼクターが抱えていたベルトと良く似たベルトを、翔太郎は持っている。

(あのベルトにも……対応した仮面ライダーになれるガジェットがいるかもしれないってことか)

 もしそうなら、叶うことなら力を貸して欲しい。

 この地では、同じ変身は10分程度しか続かないと言うことは知っている。それなら、変身手段は多いに越したことはない。

510 ◆/kFsAq0Yi2:2011/11/27(日) 19:00:26 ID:nWDJDygw
(聞こえてるわけねえが、いるなら頼む……仮面ライダーとして戦うための力を、俺にくれ……!)

 そう祈りながら、翔太郎は歩く。



 彼は知らない。彼がようやくその存在に気付いた、彼を密かにずっと観察していたゼクターが、彼が河で流されてしまった際に、一度彼のことを見失っていることを。
 そしてそのホッパーゼクターが、ようやく翔太郎を見つけ、遥か後方から付いて来ているということを……

 そしてもう一つ、彼の切り札であるジョーカーのメモリ……それが彼にまた力を与えられるようになるまで、一時間以上の待機時間が必要なことを――左翔太郎はまだ、知らなかった。



 ……約束の時間は過ぎてしまったが、10数分歩いた彼らは、E-3エリアへと届いていた。
 あのマッチョメンが強敵だと言うことは理解している。だが、名護や総司と力を合わせて、三人で戦えばきっと勝てるはずだ。翔太郎は、目前に迫る戦いに向けてそう自分を鼓舞する。

(……待てよ)

 つい先程まで、デイパックに入ったベルトとまだ見ぬそれに対応したゼクターに思考を巡らせていた翔太郎は、そのきっかけとなったカブトゼクターとの一件の際に聞いた、そして総司を諭す際に呼んだ名前に覚えた違和感に気づいた。

(天道……確か紅の奴が口にしていた……いやそこじゃねえ。総司の奴が口にした、そして名簿にあった、天道のフルネーム……)

 探偵である以上、翔太郎の人物名を覚える能力は当然ながら常人よりも鍛えられている。
 たった一度流し読みした程度の名前でも、意識して聞いたわけでもない名前でも、彼の記憶の中には確かに刻まれていた。

(――天道、総司!?)

 一体どういうことなのだろうか。
 天道以外、名簿に総司という名前を持つ者などいなかったはずだ。
 それなら今、名護のすぐ横を気弱そうな表情で歩く、この癖毛の青年はいったい何者なのか……

「――なぁ、一つ良い……」
「――待っていたぞ」

 一際広い道路に出た際に放った翔太郎の言葉を阻んだのは、進行方向から投げられた声。
 それは鍛えられた筋肉で軍服の生地を押し返す、屈強な大男――腰の後ろで両手を組んで現れたガドルが、発したものだった。

「――あぁ、待たせてしまったようだな。その命を、神の下に返す時を」

 すっと表情を厳しくし、名護がガドルを睨み返す。

「貴様らには、まだ名乗っていなかったな――」

 そうガドルが取り出した物に覚えがあった翔太郎は、思わずそれに意識を奪われてしまう。

「アームズだと!? 馬鹿な、もうメモリブレイクしたはず――」

 ――ARMS!

 戸惑う翔太郎の疑問に答えずに、ガドルはそのスイッチを押す。

「俺は破壊のカリスマ、ゴ・ガドル・バ――」

 名乗りの途中で、ガドルはガイアメモリを首輪へと挿し込んだ。
 メモリは首輪へと取り込まれ、メキメキと音を立てて、ガドルの身体が変化して行く。

「――リントの守護者、仮面ライダーよ。貴様らの敵だ」

 そうして顕現したのは、赤黒い肌を銀の装甲で覆った怪人――アームズ・ドーパント。
 かつて翔太郎が戦った、ツインローズの片割れ・倉田剣児が変貌したものとは違う――左半身に醜い傷を晒しながらも、メモリに呑まれることなく己が力の一部として取り込んだ、一切隙のない完全な兵(つわもの)がそこにいた。

「――変身」

 ――HEN-SHIN――

511 ◆/kFsAq0Yi2:2011/11/27(日) 19:03:33 ID:nWDJDygw
 かつて倒したはずの敵の予期せぬ復活に動揺し、リアクションの遅れた翔太郎の横で、飛来したダークカブトゼクターをベルトに合体させた総司の身体がずんぐりとした銀の装甲で覆われ、金の単眼を持つ戦士の姿へと変わる。

「――魑魅魍魎跋扈するこの地獄変……名護啓介がここにいる!」

 背中からシールドソードを抜き放ったアームズ・ドーパントの方へ名護が一歩踏み出し、イクサナックルを左手と打ち合わせ、右手を地に平行に鋭く伸ばす。

 ――READY――

「――イクサ、爆現!」

 ――FIST ON――

 顔の前で一度腕を曲げ、そうして腰に落としたイクサナックルをベルトに装着させ、名護の身体が――彼の師、紅音也が変身していた物と同じ、純白の仮面ライダーイクサへと変わる。

 その十字架のような黄金の仮面が割れ、紅い瞳が顕となると――その口から、携帯電話型ツールが吐き出される。手に取ったイクサが1,9,3のボタンを押し込むと、また電子音が流れる。

 ――ラ・イ・ジ・ン・グ――

 アームズ・ドーパントが左腕を変化させた機銃を向けようとするのを、イクサと総司の変身した仮面ライダーのそれぞれが手にした銃で射撃し、妨害することに成功する。

 その隙に、けたたましい警報音を鳴らす、青と白の携帯電話――その最期のボタンを、イクサが押す。

 途端、イクサの装甲の一部が吹き飛んで、その下の青い内部構造が剥き出しになった。
 仮面もその形状を変え、まるで鎧武者の兜のような姿へと変化する。

 それはかつて紅音也が変身していた物とは違う、未来でこそ到達し得た、IXAの究極形――

「キャストオフ」

 ――CAST OFF――

 青き戦士の雄姿が顕現すると同時、総司の変身した仮面ライダーも、その鈍重そうな装甲を排除する。

 ――CHANGE BEETLE――

 現れたのは、黒く煌めく装甲に赤い紋様を刻んだ、カブトムシを思わせる仮面のスマートな戦士。角によって双眼となった金の視線で赤い怪人を睨む彼に習い、翔太郎は――何も知らずに――その切り札であるガイアメモリのスイッチを押し込み、叫んだ。

「――変身!!」

 その叫びが、開幕となった。

512 ◆/kFsAq0Yi2:2011/11/27(日) 19:05:05 ID:nWDJDygw
【1日目 夜中】
【E-3 市街地】


【左翔太郎@仮面ライダーW】
【時間軸】本編終了後
【状態】ダメージ(大)、疲労(大)、とても強い決意、強い悲しみと罪悪感、仮面ライダージョーカーに1時間15分変身不可
【装備】ロストドライバー&ジョーカーメモリ@仮面ライダーW
【道具】支給品一式×2(翔太郎、木場)、トライアルメモリ@仮面ライダーW、木場の不明支給品(0〜2) 、ゼクトバックル(パンチホッパー)@仮面ライダーカブト、首輪(木場)
【思考・状況】
1:名護や総司(擬態天道)と協力して、ガドルを何とかする。今度こそ二人を絶対護る。
2:仮面ライダーとして、世界の破壊を止める。
3:出来れば相川始と協力したい。
4:カリス(名前を知らない)、浅倉(名前を知らない)、ダグバ(名前を知らない)を絶対に倒す。
5:フィリップ達と合流し、木場のような仲間を集める。
6:『ファイズの世界』の住民に、木場の死を伝える。(ただし、村上は警戒)
7:ミュージアムの幹部達を警戒。
8:もしも始が殺し合いに乗っているのなら、全力で止める。
9:もし、照井からアクセルを受け継いだ者がいるなら、特訓してトライアルのマキシマムを使えるようにさせる。
10:総司(擬態天道)と天道の関係が少しだけ気がかり。
【備考】
※木場のいた世界の仮面ライダー(ファイズ)は悪だと認識しています。
※555の世界について、木場の主観による詳細を知りました。
※オルフェノクはドーパントに近いものだと思っています(人類が直接変貌したものだと思っていない)。
※ミュージアムの幹部達は、ネクロオーバーとなって蘇ったと推測しています。
※また、大ショッカーと財団Xに何らかの繋がりがあると考えています。
※ホッパーゼクターにはまだ認められていません(なおホッパーゼクターはダグバ戦を見ていません)。
※東京タワーから発せられた、亜樹子の放送を聞きました。


【名護啓介@仮面ライダーキバ】
【時間軸】本編終了後
【状態】疲労(小)、ザンバットソードによる精神支配(小)、仮面ライダーライジングイクサに変身中
【装備】イクサナックル(ver.XI)@仮面ライダーキバ、ガイアメモリ(スイーツ)@仮面ライダーW、 ザンバットソード(ザンバットバット付属)@仮面ライダーキバ、魔皇龍タツロット@仮面ライダーキバ
【道具】支給品一式
【思考・状況】
基本行動方針:悪魔の集団 大ショッカー……その命、神に返しなさい!
0:総司君(擬態天道)を導く。
1:総司君や翔太郎君と共にガドルを絶対に倒す。海堂の仇を討つ。
2:直也君の正義は絶対に忘れてはならない。
3:総司君と共に、津上翔一、城戸真司、小沢澄子を見つけ出し、伝言を伝える。
4:総司君のコーチになる。
5:首輪を解除するため、『ガイアメモリのある世界』の人間と接触する。
6:後で総司君を天道君に謝らせる。
【備考】
※時間軸的にもライジングイクサに変身できますが、変身中は消費時間が倍になります。
※『Wの世界』の人間が首輪の解除方法を知っているかもしれないと勘違いしています。
※海堂直也の犠牲に、深い罪悪感を覚えると同時に、海堂の強い正義感に複雑な感情を抱いています。
※タツロットはザンバットソードを収納しています。
※剣崎一真を殺したのは擬態天道だと知りました。
※天道総司の死に気づきました。
※左翔太郎の態度から、彼が制限のことを知っていると勘違いしています。

513 ◆/kFsAq0Yi2:2011/11/27(日) 19:05:40 ID:nWDJDygw
【擬態天道総司(ダークカブト)@仮面ライダーカブト】
【時間軸】第47話 カブトとの戦闘前(三島に自分の真実を聞いてはいません)
【状態】疲労(小)、ダメージ(小)、全身打撲(ある程度回復)、極度の情緒不安定気味 、仮面ライダーダークカブトに変身中
【装備】ライダーベルト(ダークカブト)+ダークカブトゼクター@仮面ライダーカブト、レイキバット@劇場版 仮面ライダーキバ 魔界城の王
【道具】支給品一式×2、ネガタロスの不明支給品×1(変身道具ではない)、デンオウベルト+ライダーパス@仮面ライダー電王、753Tシャツセット@仮面ライダーキバ
【思考・状況】
基本行動方針:今は名護達に付いて行く。
0:ガドルを何とかする。名護達に置いて行かれたくない。
1:「仮面ライダー」という存在に対して極度の混乱。
2:ガドルへの恐怖。
3:名護に対する自身の執着への疑問。
4:海堂の死への戸惑い。
5:天道の死に対する複雑な感情。
【備考】
※名簿には本名が載っていますが、彼自身は天道総司を名乗るつもりです。
※参戦時期ではまだ自分がワームだと認識していませんが、名簿の名前を見て『自分がワームにされた人間』だったことを思い出しました。詳しい過去は覚えていません。
※海堂直也の犠牲と、自分を救った名護の不可解な行動に対して複雑な感情を抱いています。
※仮面ライダーという存在に対して、複雑な感情を抱いています。
※天道総司の死に気づきました。またそのことに複雑な感情を抱いています。
※左翔太郎の態度から、彼が制限のことを知っていると勘違いしています。


【ゴ・ガドル・バ@仮面ライダークウガ】
【時間軸】第45話 クウガに勝利後
【状態】疲労(中)、ダメージ(大)、左腕及び左上半身に酷い裂傷、アームズ・ドーパントに変身中
【装備】ガイアメモリ(アームズ)@仮面ライダーW 、カブトエクステンダー@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式、ガイアメモリ(メタル)@仮面ライダーW
【思考・状況】
基本行動方針:ゲゲルを続行し、最終的にはダグバを倒す。
0:イクサ、ダークカブト、翔太郎を殺す。
1:強い「仮面ライダー」及びリントに興味。
2:タツロットの言っていた紅渡、紅音也、名護啓介に興味。
3:蛇の男は、真の仮面ライダー。彼のような男に勝たねばならない。
4:仮面ライダーの「正義」という戦士の心に敬意を払う。
5:ゲゲルが完了したらキング(@仮面ライダー剣)を制裁する。
【備考】
※変身制限がだいたい10分であると気付きました。
※『キバの世界』の情報を、大まかに把握しました。
※ガドルとタツロットは互いに情報交換しました。
※海堂直也のような男を真の仮面ライダーなのだと認識しました。
※参加者が別の時間軸から連れて来られている可能性に気づきました。
※擬態天道(ダークカブト)を仮面ライダーと認めていません。

514 ◆/kFsAq0Yi2:2011/11/27(日) 19:14:08 ID:nWDJDygw
以上で仮投下を終了します。

自分で特に気にかかっているのは、翔太郎についての問題です。

一つは愛云々についてのキャラクターとしての問題、もう一つは、音也から聞かされていないだろうとはいえ、
二時間の変身制限を知らずにいることです。

自分はこの態度なら名護さんや擬態天道が勘違いすると思い、状態表に入れたとはいえ、それも不自然ではないか、
翔太郎が名護さんに聞くのが自然ではないかとと指摘された場合に強く出られるほど自信はないので、御意見を
伺わせて頂きたくこのようにまずは仮投下させて頂きました。

他にも死体に対するガドルの態度など、いくつか不安な点もあるので、気付いたことがあればお手数をお掛けしますが
ご指摘の方よろしくお願いします。

タイトルはまだ考え中なので、本投下できればその際に付けさせて頂きます。

515二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/11/27(日) 19:32:21 ID:hMgpoAw6
仮投下乙です
感想は本投下の際に。

変身制限については、二時間の部分は特に問題ないと思います
これまでのリレーでそれに気付いたような描写はないですし。
それに愛の部分も自分は気になりませんでしたね。

あと名護さんと擬態天道が翔太郎に変身制限についても自分は気になりませんでしたが
名護さんの状態表で『※左翔太郎の態度から、彼が制限のことを知っていると勘違いしています。』とありましたが
彼は制限について気付いていましたっけ?
擬態天道は『綺想曲♭もう一人のカブトと音也』で気付いたみたいですが。

516 ◆/kFsAq0Yi2:2011/11/27(日) 19:47:08 ID:nWDJDygw
>>515
早速のご意見ありがとうございます。

あー、これは自分の勘違いかもしれません。『生きるとは』で天道達と出会っているので、彼らから制限のことは聞かされていると思っていました。
しかし、確かに状態表や描写にはそれらについて言及している部分はないので、名護さんも変身制限について知らない可能性もまた十分ありますね。

問題があればその部分は修正してから本投下させて頂きます。

517 ◆/kFsAq0Yi2:2011/11/28(月) 18:56:08 ID:uLXD7dhw
約24時間経過したので、今回のSSを本投下させて頂きます。
ただその前に、仮投下時にE-3エリアと書いた部分は全てE-1エリアの誤りでした。本投下の際には
修正版を投下させて頂きます。

518 ◆/kFsAq0Yi2:2011/11/29(火) 13:43:32 ID:4OoOPgTQ
すいません、今気付いたのですがwikiに収録されている拙作『Dを狩るモノたち/共闘』の紅渡の状態表ですが、
長時間何もしていないのである程度ダメージなどが回復しているのが自然かと思いましたので、

>【状態】ダメージ(大)、疲労(小)、返り血

の部分を次のように修正して頂きたいと思うのですが、よろしいでしょうか?

>【状態】ダメージ(中)、返り血

問題なければお手数ですが修正の方よろしくお願いしたいです。

519 ◆LuuKRM2PEg:2011/12/04(日) 23:21:31 ID:5E3e18JA
先程投下した「新たなる思い」の状態表の修正版を投下します
もしも修正点がありましたら、ご指摘の方をお願いします。

【村上峡児@仮面ライダー555】
【時間軸】不明 少なくとも死亡前
【状態】ダメージ(小)、疲労(小)、バードメモリに溺れ気味、オーガ及びローズオルフェノクに1時間50分変身不可
【装備】オーガギア@劇場版 仮面ライダー555 パラダイス・ロスト
【道具】支給品一式、バードメモリ@仮面ライダーW 不明支給品×1(確認済み)
【思考・状況】
基本行動方針:殺し合いには乗らないが、不要なものは殺す。
1:良太郎の同行は許すが、もしもまだ失態を重ねるようであれば容赦しない。
2:志村は敵。次に会った時には確実に仕留めるべき。
3:亜樹子の逃走や、それを追った涼にはあまり感心が沸かない。
4:冴子とガイアメモリに若干の警戒。
【備考】
※冴子から、ガイアメモリと『Wの世界』の人物に関する情報を得ました。
※ただし、ガイアメモリの毒性に関しては伏せられており、ミュージアムは『人類の繁栄のために動く組織』と嘘を流されています。
※オーガギアは、村上にとっても満足の行く性能でした。

【門矢士@仮面ライダーディケイド】
【時間軸】MOVIE大戦終了後
【状態】ダメージ(大)、疲労(大)、決意、仮面ライダーディケイドに1時間変身不可
【装備】ディケイドライバー@仮面ライダーディケイド、ライダーカード一式@仮面ライダーディケイド
【道具】支給品一式×2、不明支給品×2、ガイアメモリ(ヒート)@仮面ライダーW、ケータッチ@仮面ライダーディケイド、ライダーカード(G3)@仮面ライダーディケイド
【思考・状況】
基本行動方針:大ショッカーは、俺が潰す!
1:今後の行動方針を考える。
2:仲間との合流。
3:友好的な仮面ライダーと協力する。
4:ユウスケを見つけたらとっちめる。
5:ガドルから必ずブレイバックルを取り戻す。
6:「ダグバ」に強い関心。
【備考】
※現在、ライダーカードはディケイド、ブレイドの物以外、力を使う事が出来ません。
※該当するライダーと出会い、互いに信頼を得ればカードは力を取り戻します。
※ライダーカード(G3)はディエンド用です。
※葦原涼がギルスである事は、大体わかりました。

【橘朔也@仮面ライダー剣】
【時間軸】第42話終了後
【状態】疲労(大)、ダメージ(中)、全身に中程度の火傷、罪悪感、クウガとダグバに対する恐怖
【装備】ギャレンバックル@仮面ライダー剣、ラウズカード(ダイヤA〜6、9、J)@仮面ライダー剣、ラウズアブゾーバー@仮面ライダー剣、ガイアメモリ(ライアー)@仮面ライダーW
【道具】支給品一式×3、ゼクトルーパースーツ&ヘルメット(マシンガンブレードはついてません)@仮面ライダーカブト、ファイズポインター&カイザポインター@仮面ライダー555、ザビーブレス@仮面ライダーカブト
【思考・状況】
0:仮面ライダーとして、人々を護る。
1:今後の行動方針を考える。
2:とにかく首輪を解除するため、『ガイアメモリのある世界』の人間と接触する。
3:小野寺が心配。
4:キング(@仮面ライダー剣)は自分が封印する。
5:出来るなら、亜樹子を信じたい。
6:殺し合いで勝たなければ自分たちの世界が滅びる……。
【備考】
※『Wの世界』の人間が首輪の解除方法を知っているかもしれないと勘違いしています。
※ガイアメモリが全員に支給されていると勘違いしています。
※現状では、亜樹子の事を信じています。

520二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/12/05(月) 00:16:23 ID:UMoYuEO2
修正乙です。
社長や士の状態から見るに、つまり時間軸が夜中から夜に変更されたということでよろしいでしょうか?
もしそうなら自分は特には問題はないと思います。

521二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/12/05(月) 00:36:22 ID:eLOAFpV2
タワー倒壊が6時50分頃だから、社長パート終了が7時頃、ディケイドパート終了が7時50分頃になる筈だから、夜という事になるという解釈になると(涼の変身不能時間はwiki上でやれば良いとして)。

そういえばwikiで気になったのですが、『Tを継いで/再戦』なんですが、これ確か『Tを継いで#再戦』がタイトルだったと思うのですが、
◆/kFsAq0Yi2氏、タイトル変更したんですか? それとも収録した人が間違えたんでしょうか?

522 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/05(月) 00:50:52 ID:UMoYuEO2
>>521
御指摘ありがとうございます。そうですね、wikiでは/となってますが自分は♯のつもりでした。
W風のタイトルにキバ風のタイトルを混ぜたかったのでこのようなタイトルにしましたので、
紛らわしいかとは思いますが/ではありません。
ただ、勝手ながら今考えると♯より♭の方が合う気がするのでタイトルの方は申し訳ないながら
『Tを継いで♭再戦』に修正して頂けるとありがたいです。

523 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/06(火) 20:01:23 ID:bS5l879.
>>519
すいません、wikiに収録されている方だと、今度は涼の状態表にブレイドへの変身制限が書かれていません(まあ、これはその時刻に
ブレイバックルがガドルに握られていることが明らかな以上、省いても良いかもしれませんが)。

それとこれは今更なんですが、涼が極大ダメージから中程度まで、いくらベッドで安眠したとはいえ回復しているのに、回復力が超人的
に優れていると『光と影』で描写されていた士がまったく回復していないのも変だと思うので、よろしければ説明お願いしたいです。

524 ◆nXoFS1WMr6:2011/12/06(火) 21:57:44 ID:Ym.8Rl3U
一応、作品は完成したのですが、ところどころ不安なので仮投下させていただきます。

525狼と死神 ◆nXoFS1WMr6:2011/12/06(火) 21:59:54 ID:Ym.8Rl3U
志村純一はGトレーラーの中で休息をとっていた。
別に激しい戦いをしたわけではない、それに長時間走り続けたわけでもない。
ではなぜ彼は息を切らしているのか?それは今彼がいるここGトレーラーに入っていたものが原因だった。
彼が数十分前にこのトラックの鍵をデイパックの中から見つけ出し、コンテナ内に入った際、いちばん先に目に入ったものは多数の重火器だった。
見れば銃が二丁にナイフが一本、正確な名はそれぞれGM-01スコーピオン、GG-02サラマンダー、GK-06ユニコーンという。
どれもデイパックに入れてもあまりかさばらない物でありこの時点でも元から別にこの車を探し求めていたわけでもない純一にとっては棚から牡丹餅だった。
しかし、彼の笑顔をさらに歪ませるものがこの中にはあった。
黒いボディに青の複眼、頭には二本の角、それは開発者の小沢澄子でさえ恐怖し封印せざるを得なかった悪魔の装甲。
G4システムがそこにはあった、本来人間が使用を続けるならば死が待っているという恐怖の装甲、しかし不死の生命体たるアンデッド、しかもその最上位に値するジョーカーである彼にとってそんな副作用は無に等しいと思われる、なれば後に残るのはその圧倒的な戦力のみ。
それに彼がG4を手に入れて歓喜した理由はそれだけではない、何とそのG4はバッテリーが続く限り使用できるというメリットがあった。
更に説明書にはバッテリーが続く時間はおよそ15分と記してあった、説明書の記述をどこまで信用していいものか決めかねるものの純一が把握している変身制限は10分である。
そう、つまりわかりやすく言えばG4は他の変身道具よりも約5分も長く仮面ライダーの力を纏えるのだ。
たかが約5分と侮ってはいけない、この戦いをずっと見てきたものなら分かる通り、この地ではものの1分、いや1秒だろうと相手より長く変身できていたほうが勝利をつかむのだ。
それが同じ瞬間で変身しても約5分も続く、これは純一でなくても歓喜に値する代物だろう、しかしG−4はグレイブやオルタナティブ・ゼロのように手軽に持ち運び、及び手軽に変身できるものではない。
無論、一度使用すればその後長く使えないと表記されていた、これも自分がこの戦いの中で見つけた制限、つまり一度変身能力を使えばそれがたとえ己の真の力でも最低2時間は使用不可になるというもののことだ。
もしかすればG4に限れば再変身までの時間は他のものより長いのかもしれない、とにかくそれは今わかるものではないし、今後考えていけばいいだろう。
持ち運ぶのも容易ではないし、Gトレーラーの中で装着するにも誰か協力者がいたほうがスムーズだ。
さぁどうするかと彼がうれしい悩みを抱えた瞬間、ある大事なことに気づく。

「不味い……バイクが外のままだ」

もう自分はGトレーラーという便利な移動手段があるとはいえ、バイクのほうが小回りが利くし、他にもいろいろ便利だ。
一応自分がこの中にいる間、外でエンジン音はしなかったため持ち去られてはいないとは思うが……。
少しの心配を抱きつつ彼が外に出た時、一人の青年と目があった。

526狼と死神 ◆nXoFS1WMr6:2011/12/06(火) 22:02:44 ID:Ym.8Rl3U



乾巧は暗い夜道を歩いていた。
先ほど同行者である天道総司を失ってから早くも数十分も経っていた。
そして今彼が目指していたのは数時間前までずっと留まっていた警視庁である。
本当は今の怪我を考えれば病院を目指したかったのだがそこにはまで距離もあるうえに、それに名護たちとの合流時間までまだ結構あった。
故に今は近くの施設の警視庁に行き自分たちがいないうちに訪れた参加者に先ほどの眼鏡の男とそれに操られる男の危険性を伝える、それが自分の使命だ。
そう考え彼が警視庁についたのがおよそ十数分前、内部をざっと探したが参加者の姿は見当たらず、警視庁は諦めそうそうに移動しようかと彼が警視庁をでた時だった。

「ん?」

外部にあったバイクとその横のトラック、数時間前ここに来た時も見つけてはいたがどこか違和感がある。
しかし何が違うのかまではわからない、自分の思い違いだったのか。
どこか煮え切らない思いを抱きつつ彼がバイクから目を離そうとしたその瞬間だった。

「これは……?」

そう一人呟いてまたバイクを見つめる。
正確にいえば右グリップを、だが。
数時間前彼と天道がこのバイクに気づきつつもバイクを使用できなかった理由、それが右グリップが無かったためなのだ。
天道は使えないならそれまでとすぐ思考から切り捨てていたようだが巧は違かった。
もしかすると、彼のもとの世界での愛車、オートバジンも似たような性能を持っていたために頭の片隅に引っ掛かっていたのかもしれない。
しかし、バイクがひとりでに動き、右グリップを取り付けることなどできるはずもない。
故に近くに参加者がいるのではないか、ふとそう思うもしかし警視庁内に人の気配は感じられなかった。
つまり自分の支給品として配られていたバイクのグリップを取り付け、この場から去った?
いや、さすがにそれはないだろう、この近辺で戦いが起こった様子は見当たらないため急いで去るを得なかった訳でもなさそうだ。
ならばまだこの近くにいるのか?そう思い、巧は少し身構える。
だがいるとしたら果たして何処に?思考した瞬間に巧の眼に目の前のトラックが映る。
これも数時間前は鍵がかかっていて入ることの叶わなかったものである。
そんな都合のいいことはないとは思うがもしやこの中にいるのか、そう思い彼が恐る恐るトラックによっていったそんなとき、ゆっくり、ゆっくりとだがトラックのドアが開き、そして一人の青年と目があった。

527狼と死神 ◆nXoFS1WMr6:2011/12/06(火) 22:04:12 ID:Ym.8Rl3U



二人の間を沈黙が支配した。
お互いまさか参加者がいるとは思っておらず、油断した状態であった。
しかし、先に冷静に場を処理したのは純一だった。
彼は明らかに敵意を向けている遭遇者にむけて自分は無抵抗だということを示すため両手をあげ、デイパックを投げた。
無論、襲いかかってきた時やデイパックを持って逃げようとした時用にいつでも真の力を解放できるように身構えつつもそれを悟られないようにし――。

「俺は志村純一って言います、この殺し合いには乗っていません、もしよければ俺と情報交換しませんか?」

可能な限りの善人の行動を使って自分に敵意が無いことを示す。
最初に遭遇した時の第一印象から彼が積極的に殺し合いに乗っていないことは分かった。
故にこの行動をした際相手がどう動くか大体の見当は付いている。
あまりにも手際のよい志村の動きに遭遇者は驚きつつも言葉を紡ぐ。

「お、俺も殺し合いには乗ってない、俺の名前は乾巧、よろしくな」

ゆっくりとだがしっかりそう答えた男の名前に志村は少しうろたえざるを得なかった。



それから数分が経ち彼等は協力して外に放置されていたバイク、トライチェイサー2000をGトレーラーの中に運び込み、それから情報交換を行っていた。
まず話し出したのは巧だった、それは数十分前に起きた惨劇についての情報のこと。

「……つまり、あなたは約一時間前にその驚異的な戦闘能力を持つ二人の参加者と戦い、同行者である天道総司さんを失ってしまったんですね」

巧は黙って、しかし強く頷く。
そしてどんなに嘆いても一度消えた命はもう戻らないと知りつつも強く答えた。

「俺はあの時逃げることしか出来なかった、もうあんなことは繰り返させない、あの時そう強くあいつに誓ったんだ」

強く、確かな気持ちで以ってそう告げる。
しかし、それを聞く志村の表情はどこか悲しげで、何かとても後悔してるようにも見えた。

「俺もあなたと同じです、俺はあの時逃げることしかできなかった」

そう言いながら彼が懐から取り出したのは黄金に輝く彼が数十分前まで持っていたものと良く似ている物だった。
そしてその物に描かれていたアルファベットはT、つまりそれは自分の探していた人物の持っているはずの物だった。

528狼と死神 ◆nXoFS1WMr6:2011/12/06(火) 22:05:55 ID:Ym.8Rl3U
「なっ!?タブーだと!?なんでお前が持ってんだよ!」

それは自分達がこの場に来て初めて看取った心優しき男、園崎霧彦の妻である園崎冴子が持っているはずの物だった。
驚愕の表情で志村に言いよるが彼は悲しそうな顔をしたまま言葉を続けた。

「そうですか、彼女はあなたの知り合いだったんですか、本当にすみませんでした」

泣きそうな顔でそう言う志村を見て思わず巧の勢いは失われてしまう。

「いきなり怒鳴って悪かった、でも本当になんでお前がそれを持ってんだ?」
「はい、あれは放送後すぐの東京タワーでのことでした」

それから彼は話を続けた。
放送前からホテルで遭遇した天美あきら、園崎冴子、野上良太郎、村上峡児達の集団と行動をともにし、放送直前に東京タワーまで移動。
そこで放送を聞き、自分の先輩である剣崎一真らの死に嘆いていた時、突然野上と村上が東京タワー内を見てくると言い出し、自分達が下で待っているとあまりにも帰りが遅いので迎えに行こうとした瞬間――。
――東京タワーが爆発したのだという。
突然のことに驚きつつも女性二人を何とか爆風と瓦礫から守りぬいたとき舌打ちとともに二人が現れたというのだ。

「村上が……」
「はい、恐らく彼らは東京タワー内部で打ち合わせをし、事前に仕掛けてあったか、自分たちで仕掛けるかした爆弾で僕たちを一掃するつもりだったんでしょう」

そしてその後村上の変身した携帯を使う黒い仮面ライダーとの戦闘となり、その圧倒的な戦闘能力に三人がかりでも軽く倒されたらしい。
その後呆気なく守るべき二人の女性は惨殺され、自分はただ彼女らのデイパックを持って逃走することしかできなかったと。
涙ながらにそう語る純一のことを巧が責められるはずもない。
巧はいまだ泣く純一を慰め、そして情報交換を再開した。
この場に設けられた変身制限について。
自分が放送前に戦った軍服の男ゴ・ガドル・バ他危険人物について。
大ショッカーを倒すためより多くの参加者との協力を目指し仲間である名護啓介達とE−5の病院地区に夜の12時に集合する予定。
そして――。

「ガイアメモリのある世界の人物が首輪を解除できる可能性があると?」
「あぁ、俺たちと同じように大ショッカーを倒そうと考えてる奴が考えたらしいんだが……、俺の遭遇した園崎霧彦って奴は全然そんなこと言ってなかったんだよな」
「えぇ、俺と行動していた園崎冴子さんもそんなこと全く口にしていませんでした」

529狼と死神 ◆nXoFS1WMr6:2011/12/06(火) 22:07:06 ID:Ym.8Rl3U

その純一の言葉に巧は首を傾げる。
本来この話題は数時間前の名護たちとの情報交換の場で言えたならすべて解決したはずなのだが、あの時巧は放送で知らされた仲間たちの死を整理するので精一杯でとてもじゃないが情報交換にちゃんと参加していたとはいえなかった。
ならば天道が指摘してくれればよかったのにとその後どんなことを話したのか彼に巧が聞きそれを愚痴ったときあの男はまたしても不敵に笑って言ったのだった。

「おばあちゃんが言っていた、どんな些細なことでも疑うより信じるほうが楽だ、とな」

そんなことを言ったって一応名護たちに霧彦のことを伝えておいたほうが良かったのではないか、そう言おうとも一瞬思ったがやめた。
この会話をこの二人の間で続けていても無意味だと思ったため。
このことを今うじうじ言っても名護たちはここにいない、故にこのことを話すのは12時に病院で集まったときでも遅くないはず。
そう考え自分の少し前を歩く天道に追いつこうとしたときだった、今となっては忌々しいあの銃声が聞こえてきたのは。

「一応、俺とおまえの間で『ガイアメモリのある世界』の人物ならだれでも首輪を解除できるわけじゃないのはわかってるんだが……」
「はい、問題はだれなら首輪の解除が可能なのか、というよりそもそもそんな人物いるのかどうか、ですよね」
「あぁ、もう頭痛くなってきたぜ、そんな奴のことあいつは一言も話してな……」

そういった時に巧の言葉は止まる。
待てよ、本当にそんなこと一言も言っていなかったか?よく思い出せ、この頭の引っ掛かりはなんだ?
その時、ふと彼は思い出した、一人だけ首輪の解除のできる可能性がある人物について霧彦が触れていたことに。

「そうだ……、フィリップって奴は確か仮面ライダーWってのの頭脳的存在で理由はわからねえが分かりやすく言えばありえねえほど頭がいいらしい」

霧彦は幾度となく戦った敵でもある仮面ライダーWのことを冷静に観察していた。
その際、仮面ライダーWの右側、つまりフィリップがいつも自分達が世に送り出したドーパントの弱点を調べ実行に移しているのだ、という結論に至った。
霧彦によれば地球の記憶をそのまま具現化したドーパントの能力を正確に分析するのはエリートである霧彦自身も出来ないと断言していた、そのためそれを初見で冷静に分析するフィリップの力があれば首輪の解除も夢ではないといっていいだろう。
それを志村に説明し、次に今後の目標を立てる。
まず夜12時に集合となっている病院に今から向かい、禁止エリアになる前に病院内の医療道具を出来る限りGトレーラーに詰め込む。
そうすれば病院が禁止エリアになり傷の治療に西側の病院まで行かなくてはいけないという事態を防ぐ。
二人の行動方針はこれで決まり、巧は病院に向かって運転を始めた。

(霧彦、すまねぇな、お前の嫁さん守るって約束したのによ)

530狼と死神 ◆nXoFS1WMr6:2011/12/06(火) 22:08:15 ID:Ym.8Rl3U
今、巧の心は霧彦への罪悪感でいっぱいだった。
彼から託されたナスカメモリは敵に奪われ、挙句彼に必ず守ると約束した彼の妻が死ぬのを自分は防げなかった。
しかし、だからこそそれを伝えてくれた志村には感謝の気持ちを抱くと同時に彼の心には新たな思いも芽生えていた。
霧彦を殺したあの薄笑みの優男とその妻の命を奪った村上峡児と野上良太郎への激しい怒りが彼の中で渦巻いていた。

(天道、霧彦、俺今度こそやってやる、絶対に志村をお前たちのところへは行かせない、俺がこいつを今度こそ守り抜く)

それゆえにまた新しく出来た仲間である志村純一は、いやそれだけじゃないもうこの場にいるすべての罪なき人を絶対に天道たちのところへは行かせない。
今度こそは絶対に自分の命に代えてでも守り抜く、その強い正義の炎が巧を動かす原動力となって、巧は、Gトレーラーは闇を進む。
横にいる男が霧彦の妻を殺した男だと気づかぬまま。



(園田真理から聞いてはいたが……ここまでお人よしとはな)

志村純一は思考していた。
先ほどから行動を共にしているこの男、乾巧の名を彼は知っていた。
それはこの殺し合いの開始後早々に殺害した女性、園田真理が情報を教えてくれていたため。
彼女は一応自分の世界の仮面ライダーの中では一番信用できると語っていたがまさかここまでとは。
正直、園崎冴子について知っていてくれたのは自分にとって最高の出来事だった。
あとはそのまま園崎冴子、天美あきら殺害の罪を自分にとって現在最大の問題である自分が殺し合いに乗っていると知っている野上良太郎と村上峡児になすりつければ全てがうまくいった。
野上はともかく、村上に関して言えばこの殺し合いで今のところ誰も殺してないだろうとはいえ、元の世界でやっていたことがやっていたことなので罪をなすりつけてもすんなりと納得された。
まぁ奴らの汚評を広められたのが今回一人だけだったとはいえ、噂はたちまち広がっていくだろう。
一人に話せば伝染病のようにたとえそれが誤解であっても先に回ってきた噂を信じてしまう、それが愚かな人間というものなのだ。
故に今彼が先ほど自分で馬鹿馬鹿しいとまで表現した激戦地区になっているかもしれない病院に行くことを自ら提案したのか、それは先ほどまでとは事情がかなり変わったためであった。

(首輪を解除できるかもしれない魔少年、フィリップか、面白い……)

それは先ほど巧から聞いた首輪が解除できる可能性が最も高いとされる少年のことであった。
この忌々しい首輪さえ外れればいずれ世界を支配する自分をこんな戦場に投げ込み、ゲームのコマとして扱った大ショッカーの連中を皆殺しにするのも悪くない。

(いや、奴らは俺でさえ気づかない内にこんな戦場に送り込むことのできる奴らだ、下手なことは考えないほうが身のためか)

しかし、今現在彼らの技術力は自分の世界にあったすべての物を超越している事を考え、その考えをやめる。
まぁとりあえず首輪さえ解除できればどうとでもなる、故に今はそのフィリップが行きそうなところを優先していこうとしているのだ。

(この俺にここまで気を遣わせるとは……、これで首輪の解除は僕にはできません、なんていったらどうしてやろうか)

別にフィリップであれば必ず首輪の解除ができるという保証はない。
しかし、首輪に彼らの世界の技術がつかわれているのは事実、そのため今はその可能性を信じるしかないだろう。
フィリップについての思考はここでやめ、彼はまた違うあることについて考え始める。

531狼と死神 ◆nXoFS1WMr6:2011/12/06(火) 22:11:01 ID:Ym.8Rl3U
(石を持った眼鏡の男に、それに操られる男……確かライジングアルティメットと言ったか)

そう、次に彼が考えているのは先ほど乾からもたらされた超危険人物である二人組のことについてだ。
乾の話からするにその眼鏡の男自体に洗脳能力はなく、彼が持っていたというその石に力があると考えていいだろう。
更にその石で乾やその同行者であったという天道総司という人物を洗脳しなかったことを考えるとその石の能力はライジングアルティメットとやらに変身する男にのみ作用するものなのだと考えられる。
ここから導き出される答えはただ一つ――。

(もし俺がその石を奪えばその圧倒的な力は俺の物となるのか?)

園田真理から聞いた乾巧の力は恐らく彼女の世界の仮面ライダーでは最も強いと言っていいとまでいっていた。
そんな男を更にもう一人加えてもまったくもって歯が立たないとまで言わしめるその実力に志村はある種心躍っていた。
無論敵に回ればそれ以上怖いものはないだろうが味方にすればこれ以上心強いものはない。
故に志村は気付けなかった、いいこと続きで少し注意力散漫となった彼を鏡の中から見つめる複数の影がいたことに。



東京タワーが爆発した後、数体の仲間を失ったガゼールたちはその原因ともいうべき男を追っていた。
男の名は志村純一、東京タワー爆破後、二人の女性を襲い殺害した彼に全くもって襲える隙が無かったわけではない。
というよりむしろ彼が警視庁についてからはいくらでも彼を襲える瞬間はあった。
傷を負っているとはいえ、未だ残る仲間たちとともに鏡の中から奇襲すれば恐らく純一になすすべはなかっただろう。
なのに何故彼らは乾巧という新しい餌が増えた今も純一を襲おうとしないのか。
それは純一の持つある一枚のカードの持つ効果のせいであった。

――SEAL――

それは鏡の世界に存在するミラーモンスターの攻撃を防ぐための封印のカード。
たとえその効果に気づいていないものが持っていようと、ただ持っていればその効果を発揮する。
しかし、何故それを志村が持っているのか?
元々それはこの場において紅渡が殺害してしまった男、加賀美新の持っていたはずの物であった。
このカードは説明書を読んだ園崎冴子が護身用に自身のポケットにしまっていたものであり、それゆえ紅渡もその存在に気づかぬまま彼女のそばを去ってしまった。
そして、その些細な見落としが今、志村純一の命を支えているのだ。
もし、今後戦闘において志村が自身を狙っているモンスター、及び自身の持つ封印のカードがそれの出現を邪魔しているのだと分かり、彼がこのカードを何かしらの方法で消去、或いは気付かずとも誰かの手で破壊されてしまった場合、その時にはガゼールたちは情け容赦なくその場にいるものを食らいつくすだろう。
その時をひそかに待ちつつ、ガゼールたちは傷を癒していた。

――それぞれ違う思惑を抱いた二人の男に複数のモンスター――
――それらすべてを乗せたGトレーラーは走る――
――これから先に待つであろう、究極の闇とそれに相反するこの場での希望に向かって――

532狼と死神 ◆nXoFS1WMr6:2011/12/06(火) 22:11:32 ID:Ym.8Rl3U

【1日目 夜中】
【E−6 道路(Gトレーラー内部)】

【乾巧@仮面ライダー555】
【時間軸】原作終了後
【状態】疲労(中)、ダメージ(大)、深い悲しみと罪悪感、決意、ナスカ・ドーパントに50分変身不可、ウルフオルフェノクに50分分変身不可、仮面ライダーファイズに1時間変身不可、右手に軽い怪我と出血(ほぼ完治) 、Gトレーラーを運転中
【装備】ファイズギア+ファイズショット+ファイズアクセル@仮面ライダー555
【道具】支給品一式×3、ルナメモリ@仮面ライダーW、首輪探知機、霧彦のスカーフ@仮面ライダーW 、ディエンド用ケータッチ@仮面ライダー電王トリロジー、サバイブ(疾風)@仮面ライダー龍騎
【思考・状況】
基本行動方針:打倒大ショッカー。世界を守る。
0:天道の遺志を継ぐ。
1:今度こそだれも死なせない。
2:園崎夫妻の仇を討つ。
3:仲間を探して協力を呼びかける。
4:間宮麗奈、乃木怜治、相川始、それと特に村上峡児、野上良太郎を警戒。
5:霧彦のスカーフを洗濯する。
6:後でまた霧彦のいた場所に戻り、綺麗になった世界を見せたい。
7:橘朔也、日高仁志、小野寺ユウスケに伝言を伝える。
8:仲間達を失った事による悲しみ、罪悪感。それに負けない決意。
9:首輪を解除するため、『ガイアメモリのある世界』の人間(フィリップ優先)と接触する。
10:石を持った眼鏡の男(金居)とそれに操られている仮面ライダー(五代)の危険性を他の参加者に伝える。
【備考】
※変身制限について天道から聞いています。
※天道の世界、音也の世界、霧彦の世界、志村の世界の大まかな情報を得ました。
※参加者達の時間軸に差異が出る可能性に気付きました。

【志村純一@仮面ライダー剣MISSING ACE】
【時間軸】不明
【状態】軽い全身打撲、Gトレーラーの助手席に乗車中
【装備】グレイブバックル@仮面ライダー剣MISSING ACE、オルタナティブ・ゼロのデッキ@仮面ライダー龍騎、パーフェクトゼクター@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式×3(ただし必要な物のみ入れてます)、ZECT-GUN(分離中)@仮面ライダーカブト、ファンガイアスレイヤー@仮面ライダーキバ 、アドベントカード(SEAL)@仮面ライダー龍騎、ガイアメモリ(タブー)+ガイアドライバー@仮面ライダーW、トライチェイサー2000A@仮面ライダークウガ 、G3の武器セット(GM-01スコーピオン、GG-02サラマンダー、GK-06ユニコーン)@仮面ライダーアギト、G4システム@仮面ライダーアギト
【思考・状況】
基本行動方針:自分が支配する世界を守る為、剣の世界を勝利へ導く。
0:G4に興味、使う機会があれば使う。
1:病院に行き、フィリップを探す。
2:人前では仮面ライダーグレイブとしての善良な自分を演じる。
3:誰も見て居なければアルビノジョーカーとなって少しずつ参加者を間引いていく。
4:野上と村上の悪評を広め、いずれは二人を確実に潰したい。
5:もし眼鏡の男の持つ石を手に入れれば、ライジングアルティメットの力は俺の物になるのか。
【備考】
※555の世界、カブトの世界、キバの世界の大まかな情報を得ました。
※電王世界の大まかな情報を得ました。
 ただし、野上良太郎の仲間や電王の具体的な戦闘スタイルは、意図的に伏せられています。
※冴子から、ガイアメモリと『Wの世界』の人物に関する情報を得ました。
 ただし、ガイアメモリの毒性に関しては伏せられており、ミュージアムは『人類の繁栄のために動く組織』と嘘を流されています。
※名簿に書かれた金居の事を、ギラファアンデッドであると推測しています。
※放送を行ったキングがアンデッドである事に気付いているのかどうかは不明です。
※封印のカードの効果に気づいていません。

【全体備考】
※ガゼール軍団は志村を狙っていますが、封印のカードにより今は攻撃できません。
※ガゼール軍団が何が何匹死んだのかは後続の書き手さんにお任せします。
※G4は説明書には連続でおよそ15分使えるとありますが、実際どのくらいの間使えるのかは後続の書き手さんにお任せします。
※G4を再度使用するのにどれくらい時間がかかるかは後続の書き手さんにお任せします。
※トライチェイサー2000A、及びG4システムはデイパック内ではなくGトレーラー内に置かれています。

533 ◆nXoFS1WMr6:2011/12/06(火) 22:17:24 ID:Ym.8Rl3U
以上で仮投下を終了します。
一応自分が気になっていることを言うと
1、G3−XではなくG4にしてよかったか。
2、巧のキャラや『生きるとは』内での情報交換をあまり巧が聞けていなかったということについて。
3、そもそも作品内で矛盾はないか。

以上です。
その他でも問題点等あれば対応いたしますのでよろしくお願いします。

534 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/06(火) 23:07:58 ID:bS5l879.
仮投下乙です。G4でもまったく問題はないと思いますよ。
ただ、スコーピオン他重火器類はさすがにデイパックに入れたらかさばる気がしますね;

巧のキャラについては、

「俺はあの時逃げることしか出来なかった、もうあんなことは繰り返させない、あの時そう強くあいつに誓ったんだ」

の「あの時そう強くあいつに誓ったんだ」の部分は、ニーサンが似た境遇であると告白する前に巧から言うのは少し違う
かな、ぐらいですね。強いて言うなら、ニーサンは巧のことを冴子を知っている人物である以上に、元の世界で村上と
敵対していた人物であることの方が重要視するに足るのではないか、という疑問の方が自分の中では大きいです。

次に、指摘と言うほどではないのですが少し気になったのはG4やライアルについてのニーサンのリアクションです。
ニーサンはずっと、正面から戦うのではなく正体を隠して隙を見つけて参加者を間引く方向で動いています。
実際SS内でもG4の装着には協力者が必要だと考えていますが、彼のスタンス的にそれは難しいので喜んでばかりなのかな、
と疑問が出ました。
ライアルについても同様で、支配権を得てもニーサンの従来のステルスをする上ではむしろ邪魔な存在になりかねません。

とはいえスタンスをもっと積極的なマーダーに変更する予定などと言えば問題ないことだとは思うので、あくまで個人的
に気になっただけですが(もしも地の石を入手できたなら、その後はバリバリのマーダーでも五代さんにG4装着の手伝い
をさせれば良いわけですし)。

それと、ガゼール軍団ではなくゼール軍団の方でこのロワでは統一されていたと思うということだけ指摘しておきます。

535 ◆nXoFS1WMr6:2011/12/06(火) 23:27:39 ID:Ym.8Rl3U
早速のご指摘ありがたいです。
それでは指摘された巧のセリフを

「俺はあの時逃げることしか出来なかった、もうあんなことは繰り返させない、あの時そう強くあいつに誓ったんだ」
から
「俺はあの時逃げることしか出来なかった、もうあんなことは繰り返させないって強くそう思う」
に変更させていただきます。
あと、ニーサンの巧について、及びライアル、G4へのリアクションは後日修正版を投下させていただきます。
最後になりますが作品執筆中にもかかわらず、ありがたいご意見本当にありがとうございました。
また、他にも修正点があれば遠慮なくお申し付けください。

536二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/12/06(火) 23:30:23 ID:wVqVIkgc
ちょっと気になった点が1つあったので、

>>528
>そしてその後村上の変身した携帯を使う黒い仮面ライダーとの戦闘となり、その圧倒的な戦闘能力に三人がかりでも軽く倒されたらしい。

とあるのですが、
巧なら恐らく三原に支給されているであろうデルタを連想すると思うのですがその事に疑問を持たない事がちょっと気になった。
デルタフォンは他の555系と違いそもそも携帯っぽくないからデルタを連想するとは限りませんが、
巧から……というよりTV版555キャラの視点ではオーガとサイガの存在を知り得ないので、
ファイズ、カイザ、デルタ、ライオ以外の555系に変身したのならどちらにしても疑問持つ様な気が。

流しても問題ない様な気もするけど、冴子が持っているであろうタブーのメモリの話題が出たなら555系に変身したであろう村上社長の話題は出ても良いかなと思いまして。


……あれ、そういえばそもそも何で社長、オーガの存在を知っていたんだ? TV版じゃ全く存在情報無かった筈じゃ……

537二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/12/06(火) 23:33:05 ID:wVqVIkgc
後、もう1点。纏まった後修正版投下するのは良いのですが、具体的にいつ頃投下するか宣言して頂ければ有り難いかと。
流石に前の様に全く連絡もなく1週間以上も待たせるという事にはないだろうと思いますが一応念のため。

538 ◆LuuKRM2PEg:2011/12/07(水) 00:14:03 ID:mqcEdK42
仮投下乙です。気になる点は、他の方々が指摘している部分以外は見つかりませんでした。
修正、頑張ってください。


村上社長がオーガを知っていた理由は、TVで描写されていないだけで
もしかしたら、サイガやオーガを知っているかもしれないという個人的な妄想で書いてしまいました……
もしも問題があるようでしたら『Round ZERO 〜KING AND JOKER』で
社長がオーガについて語る部分を、修正させて頂きますがよろしいでしょうか?


>>523
これは単純に自分のミスです……重ね重ね、申し訳ありません。
士の状態表を以下のように、修正します。
【状態】ダメージ(中)、疲労(中)、決意、仮面ライダーディケイドに1時間変身不可

539二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/12/07(水) 01:03:54 ID:glPlHsRk
あ、すいません。
年齢や経歴から考えると、巧がGトレーラーを運転する資格があるとは思えません。
いや資格とか言っている場合じゃないんですけど、つまり運転技術などに心配があります。
なら(外見上)年長者でライダーとして訓練を積んだニーサンの方が運転するのが自然
なんじゃないかな、と思ったのでそこだけ指摘させて頂きます。

540二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/12/07(水) 01:34:20 ID:EGXg7Y1o
仮投下乙です。
個人的にはG4のシステムに疑問を感じました。
他の超常的なシステムのライダーと違って、G4は純粋な電力駆動です。
それが充電も無しに時間経過で回復するというのは、例え制限としてもちょっと違うかなぁと……

ですので、「バッテリーは15分間で、再起動までは時間経過が必要」というのを
「バッテリーの初期値は100%、使用に応じてバッテリーは減少してゆき、0%になった時点でただの重たいだけの鎧になる」
という風にした方がシステム的には「らしい」かなと思います。
他のライダーの制限とは大きく離れた形にはなりますが……

541二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/12/07(水) 01:59:28 ID:glPlHsRk
>>540
それなら、バッテリーは戦闘だとおおよそ15分(場合によってはもっと長持ちもするし、逆にすぐ消耗することもある)で、
再起動までの時間経過というのはGトレーラーに充電機能が備えられていてその充電時間、といった形にするというのは
どうでしょうか? 完全に第三者の横レスですが、よろしければ参考にして頂けると幸いです。

542二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/12/07(水) 03:23:41 ID:KxF14Rlc
お疲れさまです。
個人的に巧のキャラに少し違和感が
原作の巧は草加が同窓会のことで何か隠していると勘づいたり
木場がベルトを奪ったと草加に聞かされても何かの間違いではないか問い詰める等
個人的に策略に引っ掛かりにくいイメージがあるので
志村の言い分を鵜呑みにするより話半分に聞いておく位の方がらしいかなと。

543二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/12/07(水) 09:24:52 ID:IEnVKZt.
>>540
G4のバッテリーに関しては僕も気になっていました。
選択肢としては
1.充電を行う事で再起動可能((>>541とおおむね同じ)
2.予備のバッテリーが数個ある。

僕個人は2を推したい所、この場合だと回数がある代わりに同一変身者での時間制限が無くなるという問題はあるけど、
G4システムの関係上、普通の人間が使えば死にかける(志村等怪人クラスならそこまで問題じゃないが)、
破損したら使用不能になる、戦闘力的にも極端にチートではない(アギト系での最強クラスなので同等クラスなら対抗可能)、
等考えても悪い考えでは無いとは思います。もちろん反論もあるでしょうから参考程度に留めて下さい。

>>542
言われてみれば、巧って登場当初の草加(当時は本当に謎はあっても善良そのものに見えていた)を最初から気に入らないって理由で不審がっていた様な。
それを考えれば志村の言い分に何処か違和感があれば鵜呑みにはしない様な。
まぁ参戦時期が最終回後の巧(当初よりも周囲に壁を作っていない)である事、天道退場で精神的にも割といっぱいいっぱいという事を考えればありえなくはないかなという話だが……どうなのだろう?

544二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/12/07(水) 10:04:16 ID:glPlHsRk
>>542>>543 再び横レスすいません。
巧の草加警戒は、元はと言えば彼が草加の万能ぶりに嫉妬していて仲良くしなかったら、草加から嫌われて本人の口から露骨に敵対宣言された
せいだと自分は思っています。実際、澤田(スパイダーオルフェノク)の言い分は信じて、みすみす彼に真理を殺させる結果になりましたから、
策略に引っ掛かり難いというのはあまり感じませんね。それよりは志村に、まあ信頼の有無に関わらず友好的すぎる方が変かなと。

例えばウルフオルフェノクだから嗅覚が鋭く、ニーサンの血の匂いに気付いて警戒する可能性もありますが、村上との戦いで同行者を殺された
と説明されたら納得すると思います。村上とは敵対関係ですから、あっさり信じてもおかしくはないと思いますし(まあ嗅覚が鋭いなら真理の
血に気付くんじゃねってのはありますが、それもニーサンならある程度は誤魔化すでしょうし。ここで不信感は持たれるかもしれませんが)。

後は言われているように天道はじめ仲間を失って精神的ショックを受けているため、同じように仲間を失ったと泣くニーサンをあまり疑いたく
ないんじゃないかな、と言う風に解釈しました。あくまで(たっくんが策略に引っ掛かり難いのか疑問視以外は)個人的な意見ですが。

545二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/12/07(水) 11:49:30 ID:17Oef1SQ
たっくんに関しては>>544さんと同意見です。
志村は草加ほど上から目線でもないし、自分と同じ境遇で涙を流す相手を理由もなく疑うとなれば、それは逆に不自然かなと。
それでも修正点を挙げるとすれば、>>544さんの言うように友好的すぎるというか、愛想が良すぎる事くらいかと思いますが、それも目くじらを立てる程ではないと個人的には思います。

546 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/07(水) 20:18:42 ID:glPlHsRk
まだ◆nXoFS1WMr6氏の作品について利用されている場なので、混乱を招くかもしれませんが、
自分も予約分が完成しましたが氏の『狼と死神』よりも明らかに様子を見るべき作品なので
仮投下させて頂きます。

547それぞれの決意 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/07(水) 20:19:27 ID:glPlHsRk
「――君が、ガイアメモリのある世界の住人だったのか!」

 E-4エリア病院のロビーにて、情報交換を行っていた六人の内の一人――橘朔也は、そう鳴海亜樹子を向いて立ち上がった。

「それじゃあ、この首輪のことを知っているのか? 解除はできないのか!?」
「え? えっ?」

 だが橘の興奮が理解できないといった様子で、亜樹子はそう疑問の声を漏らすだけだ。

「――どーいうことだ?」

 そこで尊大な態度で口を開いたのは、腕を組んでソファに腰かけていた門矢士だった。

「あぁ、これは橘の仮設なんだが……」

 そこで口を開くのは橘と行動を共にしていた日高仁志――鬼としての名をヒビキという、音撃戦士だった。

「首輪にはガイアメモリを使うためのコネクタがあるだろ? それなら、首輪もその世界に関わりのあるものじゃないかって思ったんだが……」
「私、知らない!」

 ヒビキが言葉を濁した矢先、亜樹子は首を振って否定した。

「本当か? ――まさか、殺し合いに乗っているから隠しているなんてことは……」
「橘!」

 そこで声を張り上げたのは芦原涼――胸部に多大なダメージを受けたために、発声にも痛みを伴って顔を歪めながら、しかし咎めるような視線を橘に向ける。

「――あ、すまない……」
「……W(ダブル)の世界からの参加者が簡単に解除法を知っているような首輪だったら、そこの人間をそのまま引っ張っては来ないだろ。コネクタの技術を使っているだけだって考えるのが普通だろう」

 そうして事態呆れたように士は呟いた。
 初対面の際、ブレイドへとカメンライドしていた士のことを、剣崎一真を殺害しブレイバックルを奪った下手人だと勘違いしたことといい、どうもこの橘という人物は勘違いし易い性質の人間らしい。そのくせ勘違いした時には妙に決断力に富むようだから、扇動系マーダーに騙されたりしないものか非常に心配だ。
 それでも正義感に溢れる仮面ライダーの一人であることは間違いないのだが、と亜樹子に謝罪を重ねる橘の姿を見て士は思う。

「……となると、カモフラージュのために全員にガイアメモリが支給されているという説も間違っていた可能性が高いな。ヒビキが落としたわけじゃなかったみたいだ」
「――そうだろうな。俺も北条も支給されてなかったしな」

 俺もだ、と涼が士に続き、ここにバトルロワイヤル開始直後より長い間信じられてきたWの世界万能説は崩れることになった。

「……でも、フィリップくんなら何とかなるかもしれない」

 だがそこで示されたのは、新しい希望。

「フィリップ……仮面ライダーダブルの片割れか」
「うん。私の事務所の仲間なんだけど……星の本棚って言われるぐらいのすっごい知識があって、すっごく頭が良いの。フィリップくんなら、首輪のことも解析できるかも」
「そうか……なら、急いでそのフィリップくんと合流しないとな」
「――確かに重要なことだが、もう少しここで待つという方針に変わりはないぞ、朔也。フィリップがどこにいるかわからない以上、計画は立てられても状況が変わったわけじゃないからな」

 先程の話し合いの時点で、隅の影で両膝を抱えた矢車想以外の全員が戦いに支障が出るほどのダメージを蓄え、しかも全快の状態でも数人掛かりで太刀打ちできなかったダグバやガドルを初めとして、アポロガイストを圧倒したウェザー・ドーパントに変身する紅渡など、強過ぎる危険人物が決して少なくないことから、まずは身体を癒し、また極力数を分散させないようにするという方針を取ることになった。
 病院は性質上、他にも参加者が集まってくるはずだ。別行動を取るにしても、もう少し協力者を増やして頭数を揃えてからの方が良いだろうし、危険人物襲来の可能性も考えると、この地の安全性を確保するためにも病院に残るべきだ。そういった方針が六人の間で決定されていた。

548それぞれの決意 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/07(水) 20:20:11 ID:glPlHsRk
(……紅渡、か)

 亜樹子から伝えられた情報に、士は自身を旅に送り出した男の姿を思い描く。
 剣崎一真と同じように、士が知る彼とは同じ名前で同じ姿だろうと別人だと推測できる。あの底知れない男が、簡単に大ショッカーの思惑に乗るとは考え難いからだ。

(……おそらく、音也の肉親だろう。それが殺し合いに乗っているなんてな)

 音也は亜樹子を救うため、東京タワーに向かった。
 その東京タワーで亜樹子がマーダーと化した渡に襲われたとは、何という皮肉だろうか。
 また紅渡は橘達と別行動中の仲間である名護啓介の知人でもあった。名護自身は見紛うことなき仮面ライダーであるため、橘とヒビキが受けた衝撃や、名護がそのことを知っているのか、知ればどうなるのかを心配しているようだった。

(……この紅渡がどんな奴だか知らないが、音也には借りがあるからな。もしも俺の前に現れて、まだ殺し合いに乗ってやがったら、俺が音也の代わりに根性注入でもしてやるか)

 この情報を届けてくれた亜樹子のことも、士は橘同様、はっきり言えばそこまで信用はできていない。
 仮面ライダーとともに戦う彼女の正義は信頼できる。だが、自分の愛する世界の命運が懸かっていては、他の世界を犠牲にしようという思いが生まれないかどうかはわからない。

 愛するもののためなら、普段絶対に考えないようなことだって人間は考えてしまう――士自身が、この地でそれを体験したのだから、なおさらそう疑ってしまう。
 もっとも、士をそこから、紅音也が助け出してくれたわけだが。

(音也の奴が助けに行くって言っておいて、結局は会えなかったみたいだが……それならこいつも俺が救う。もしも道を違えていたら、その外れた道を俺が破壊して、元の居場所に戻してやる)

 そう静かに士は、どこか元気がない亜樹子の顔を見て決意を固める。

(……おまえなら、こいつを見たらそうしろって言うだろ、夏海)

 士はもういない最愛の女性が、静かに微笑み、頷く姿を幻視した。

 ――こんな戦いを仕組んだ奴らに負けないで! みんなの世界を救うために戦って! 人類の味方、仮面ライダアァァァァァァーーーッ!

 士の中で、未だに木霊する声の一つ。
 亜樹子の行った放送――それが霧島美穂と共に行った、他者を傷つけるための嘘の言葉だったとしても。

 その言葉で、士が立ち直ることができたのは事実なのだ。
 その言葉が、正義の心という不屈の魂をこの胸に宿したことは、紛れもない事実なのだ。

 士はそこで、部屋の隅に一人で座り、話し合いに参加しようとしない男を振り返る。

「――おい、おまえも何か意見とかないのか」
「……俺はおまえらと仲間になるつもりはない、と言ったはずだぞ……士」
「――でも、妹さんは仲良くしているみたいだけど、良いの?」

 そこで士の横に現れ発言したのは、顔に手足を付けただけとデフォルメされたような姿の白い蝙蝠――親指ほどの大きさしかないモンスター、キバーラだった。

「大ショッカーを潰すっていう目的は、俺も同じだ……だから妹が代わりに、おまえらと情報交換してくれるんだとよ。……健気な妹ができて、俺は嬉しいぜ……」
「うわっ……」

 いつものように消極的ながらもにんまりと笑った矢車に、引いたようにキバーラがそう声を漏らした。

「――うん、お兄ちゃん……私、頑張るからね」

 一方で、矢車に合わせたかのように急に声のトーンを暗くしながら、亜樹子が答えた。

「亜樹子ぉ……!」
「お兄ちゃんっ!」
「――キバーラ、何か見つかったのか?」

 独自の空間が展開され始めたのを阻止すべく、世界の破壊者は旅の仲間に問いかけた。

549それぞれの決意 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/07(水) 20:20:46 ID:glPlHsRk
 先程の話し合いにキバーラが参加していなかったのは、小回りが利いて空を飛ぶこともでき、夜目も明るい彼女が病院に周囲を見回って来てくれていたからだ。

「あー、そうそう、凄ぉい大発見があるんだから! 士――それと朔也さん、来て貰える?」
「――俺か?」

 思わぬ指名だったのか、橘は自身を指差しながらキバーラを振り返る。

「あなた、確か剣(ブレイド)の世界のライダーシステムに詳しいのよね?」
「あぁ、一応、研究を見ていた程度はあるからな……」
「技術屋ではあるんだ。それじゃ、やっぱり来て貰った方が良いわ。――士はまだ、変身できないでしょうしね」

 もしも危険人物と鉢合わせしてしまった場合、いくら優れた身体能力を持つ士と言えど変身が叶わなければその結果は明白――悲しいことに、剣崎一真がそれを証明している。
 それなら短距離だろうと、別行動を取る際には最低限その時変身できる者が一人は同行する――それも先程の取り決めで決まっていた。

「行くぞ、朔也。――涼、ヒビキ。誰か来たら頼んだぞ」

 そうして橘を伴って、士は扇動するように前を飛ぶ小さな白い影を追った。

 外に出て、寒気を感じながらしばらく歩いたところで――士達は、黒い塊を見つけた。

「こいつは――イマジン、か?」
「多分、ネガタロスって奴よ、士」

 矢車や光夏海を襲い、剣崎一真と共に撃退した紫色の電王――眼前に転がる首なし死体は、それに変身していた者だと、キバーラは告げる。

「イマジンのくせに電王じゃなくてキバに恨みがあるって言ってた奴だけど、悪党だったし、多分野上良太郎の仲間じゃないんでしょうね」
「……悪の怪人とはいえ、これは惨いな」

 足元の死体を見下ろし、そう呟いたのは橘だった。

 血の代わりに砂が溢れているが……腹部は大きく爆ぜており、この時点で致命傷だっただろう。それなのに、さらに首を途中まで掻き切り、残り半分は踏み付けられたのか折れ、頭が千切られていたのだ。

「……一真を殺した、あの黒いカブトの仕業かもな」

 残虐な手口から連想したわけではなく、単に状況的に他の犯人が見つからないからだが――士はそう、ぽつりと呟く。

「――それで、キバーラ。大発見ってのはこいつのことか?」
「いくら何でも――さすがにこいつを手厚く葬る気にはなれないぞ」

 士に続き、橘もそうキバーラに不満の声を漏らす。実際は東條悟もいたとはいえ、もしこいつが居なければ、剣崎達はひょっとしたらその後の襲撃にも対応できたかもしれない――そのことを考えると、薄情になっても仕方がないというものだ。

「違う違う。ほら、よく考えてみてよ。首が取れてる、ってことは……」

 キバーラの言葉に閃き、周囲を見渡した士は――闇の中に転がった、銀の輪を見つけた。

「――そういうことか」
「士、写真を撮ること以外は苦手なことはないのよね? ――何か、わかるんじゃない?」

 キバーラがそう呟く中、士はネガタロスのものと思われる首輪を、その手で拾い上げていた。







「――キバーラの発見って何なんだろうな」
「さあな。帰って来たらすぐわかるだろ」

 ヒビキの問いに、涼はそう素っ気なく答えた。

550それぞれの決意 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/07(水) 20:21:28 ID:glPlHsRk
 別に、ヒビキを不快にさせたいわけではなく、士のように不器用な喋り方しかできない年頃なんだろうと、ヒビキは見当付ける。

「それより、そのダグバって奴のことをもっと教えてくれ。門矢が言うには、あのガドルが自分より強いと言った未確認で……北条を殺した奴、なんだろ?」
「ああ、そうだな――」

 危険人物についての情報を共有しておくことも、大切なことだろうとヒビキは頷く。
 特にダグバの危険度は、身を以て理解している。少しでも詳細な情報を知ることが危機回避に繋がることは決して珍しいことではないと、ヒビキは長年の魔化魍退治の経験から理解していた。

「――第零号、だと」

 ダグバの脅威に付いて説明していた中で、涼はその単語に大きく反応した。

「知っているのか、葦原?」
「――ああ。二年前、猛威を振るった未確認生命体の中でも……最悪の奴だ」

 あいつ一体に、三万人が殺された。

「――え?」

 涼の紡いだ言葉を最初、ヒビキは理解できなかった。
 いやそんな馬鹿な、ただの聞き間違いだろ――そう現実的な思考という逃避が働いたが、涼の沈痛な面持ちを見て事実だと思考に染み込んで来る。

「三万、って……最近じゃ大きな災害があっても、死者なんて二万も行かないよ!?」

 そう、思わずといった様子で叫んだのは亜樹子だった。ヒビキも同じことを思っていた。

「そんな、野放しになっていたんじゃなくて、仮面ライダーがいたんでしょ!? 組織的に動いたわけでもないのに、それで……」
「……仮面ライダーだかは知らないが、その頃は未確認生命体の中に人間に友好な第四号という奴がいた。そいつはそれまでに四十体以上の未確認を倒していたが……その四号も簡単に蹴散らして、奴は暴れたと言われている」

 涼が淡々と語る言葉に、ヒビキは背筋が凍るような錯覚をする。

(……こいつは、割と本気で鍛える時間があってもヤバいな)

 あの時、装甲声刃もなかったのによくも生き残れたものだとヒビキは思ってしまう。奴は遊んでいるような態度と口ぶりだったが、それは嘘でも何でもなかったようだ。

(鍛えに鍛えて、道具に頼って……それでやっとか。今の俺じゃ多分、装甲響鬼になっても退治できないだろうな)

 歴戦の鬼であるヒビキをして、そう悟らざるを得なかった。相手は天災の域すら超えた、正真正銘のバケモノだ。嫌でもあの時看取った男の遺言が蘇る。

 ――逃げて……くださ……い
 ――奴は…………第0号………我々では……到底、太刀打ち出来る………相手では………ありま、せん

 人を護って全身を焼かれ、それでも必死に警告を残そうとした男――放送を聞き逃した涼に説明する過程で、北条透という名前が明らかになった彼は、涼と同じようにダグバを知っていて、なおも奴を倒そうと立ち向かった。
 あるいは彼も、誰かを護るために死地に赴いたのかもしれない。
 自分達が奴とまた戦うようになっては、彼の願いを裏切ることになるのかもしれないが――

「――それでも、人を護るためには俺達が倒すしかないでしょ」

 しかし、その不安を振り払うように、ヒビキは決意を吐いた。

「俺達はそのために鍛えてる――仮面ライダーなんだからさ」

 ヒビキの言葉に、涼は瞳に意志の光を取り戻すと、力強く頷いた。

「そうだな。……俺も剣崎に、そう誓ったばかりだ」

 涼が頷くのを見て、ヒビキは心強い物を覚えた。

551それぞれの決意 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/07(水) 20:22:09 ID:glPlHsRk
 確かにヒビキ一人では、奴を倒せるほど鍛えられるかはわからない。少なくとも、このバトルロワイヤルの会場で他の人を護るためには、そこまで鍛えている時間はない。
 それでもヒビキ達は一人ではないのだ。元の世界の鬼や猛士の仲間達ではないが、彼らと志を同じくする仲間――仮面ライダーがいる。
 五人で歯が立たなかった上、生半可な戦力では犠牲者が増えるだけでも……あの門矢士は、小野寺ユウスケが究極の闇を齎す者になったと聞いても自分が止めると言っていた。
 究極の闇を齎す者がどんなに強くても、それに立ち向かえるほどの力を、正義のために使える者がいるのもまた事実なのだ。なら一人では無理でも、五人でも無理でも、もっと多くの頼れる仲間達と力を合わせれば、きっとあの怪物だって退治できるはずだ。

(……そのためには、俺ももっと鍛えなきゃな)

 一人でダグバに届かなくても、少しでも皆の力となるために。ヒビキは内心でそう決意を固める。

(だからそれまで、早まるなよ……小野寺)

 ヒビキは別の場所にいる仲間を想いやった後、目の前にいる亜樹子に笑顔を向けた。

「だから鳴海、そんな怯えなくて大丈夫だよ。俺達が必ず、何とかするからさ」

 ヒビキの言葉に、亜樹子は「ありがとう」と小さく呟いた。
 彼女が本当に殺し合いに乗っていないかどうかはわからない。だが、彼女にこれ以上罪を重ねさせず、導くのも自分達の仕事だろうとヒビキは思っていた。

 その後も、ヒビキと涼は警戒するべき危険人物についての情報交換を続けることにして――

 ――その時が、来てしまった。

「――俺が最初に戦ったのは、ギターみたいな剣を使う鉛色と深緑の怪人だった」
「――え?」

 ――共に戦う仲間と決めたばかりの男の犯した、過ちを知る時が。

「葦原――その時のこと、詳しく教えてくれないか?」

 微かに震えたヒビキの問いかけに、涼は怪訝そうな顔をしながら頷く。

「あぁ、茶髪の女が襲われていたところを見つけたんだが……」
「――茶髪?」

 そこで新たに反応したのは、亜樹子だった。

「――ねえ涼くん。その女の人、すっごい綺麗で、髪が長くて、背も高くなかった?」
「ん? ――あ、あぁ。確かに、座っていても女にしては随分でかかった気はしたが……」

 その返答に亜樹子はさらに、その女性の服装について尋ね、涼がそれに答える。
 そうして亜樹子が息を呑むまでの光景を、ヒビキは何か膜を通して見ているような心地だった。

「その人、霧島美穂だよ、涼くん!」
「――何?」

 東京タワーに罠を仕掛けた主犯の名を出されて、涼の顔色が変わる。

「俺は――騙されていたのか?」
「いや、でも……襲っていた方も、本当にただの怪人だったのかもしれないし……」
「――葦原」

 自分で出した声が随分冷めていることに、ヒビキ自身驚いていた。
 故にこちらを二人が――部屋の隅で矢車さえ驚いて振り向いたのも、当然かもしれないとヒビキは感じていた。

「その怪人は……音撃斬、とか言ってなかったか?」

 勘違いであって欲しかった。
 首を振って欲しかった。

 だが、葦原涼は――躊躇いながらも、頷いてしまった。
 肯定してしまったのだ。

552それぞれの決意 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/07(水) 20:22:42 ID:glPlHsRk
「ザンキさんだ……」

 思わずそう零してしまって、すぐにヒビキは後悔した。

「……知り合い、だったのか?」

 遠慮がちに、涼が尋ねて来た。
 一瞬、はぐらかすべきかとも思ったが――ヒビキは自分の考えを否定する。
 いつかわかることなら、ここで伝えるべきなのだ。

「――その人の本名は、財津原蔵王丸って言うんだ」

 ヒビキの言葉に、亜樹子が両手で口元を覆い、涼が衝撃を受けた顔になった。
 先の放送で告げられた死者を伝える際、その名前をどう読むんだと彼が反応したから。ヒビキは彼が、自分の尊敬できる先輩格であるとだと伝えていた。

「いや、でもほら。――葦原が勘違いして戦ったんだとしても、それが原因とは限らないからさ、そんな気にするなよ」

 気休めでしかないことを、口にしたヒビキ自身理解していた。
 この会場で一度変身するということは、それが解ければただの蹂躙されるだけになるというリスクを背負うこと――その場にマーダーの霧島美穂が居合わせていて、その後彼女が五体満足で亜樹子の前に現れているのなら、答えは一つだ。
 それ以前に、涼との戦いで致命傷を負っていた可能性も捨て切れない。

「いや……俺は仕留めちゃいないが、浅くない傷を負わせちまった……」

 あぁ、やっぱり――と、ヒビキは一瞬だけ、何かが込み上げて来るのを感じた。

「俺が……俺のせいで!」
「――おまえのせいで、どうしたんだ?」

 投げられたのは、どこか尊大な青年の声。士達が帰って来たのだ。

「俺が……ザンキって人を、死なせちまってた……!」
「何!?」

 大きく反応したのは橘の方だが、士も決して小さくはない動揺を見せていた。

 目の前で自分自身を激しく責める青年に対し、ヒビキの心に憎い気持ちがないと言えば嘘になる。
 長い間、同じ想いを抱いて戦って来た仲間の死ぬ原因を作った男が、目の前にいるのだ。これで憎む気持ちが出ないのは、心を鍛えるとかそういう問題ではなかった。

 それでも、だ――

(あのザンキさんが、葦原相手だからってただでやられるわけがない……それならきっと、ザンキさんにはわかっていたんだ。葦原が悪い奴じゃないって)

 それなら――いやそうじゃなくても、彼は自分に仇討ちなんて望まないはずだ。

(怒りや憎しみに心を囚われちゃいけない……こう言っちゃ悪いけど、あの時の小野寺や、もう一人のヒビキさんみたいになっちゃいけないんだ)

 憎しみを抱かないなんて、自分を含め人間には無理だとヒビキは思う。
 だが誰かを護りたいと言う想いで鍛えたその力で、どうしても生まれる怒りや憎しみに呑まれて自分の願いを壊さないように、心を鍛えることはできるとヒビキは信じていた。

(鬼の力に振り回されないように、俺ももっと鍛えないとな)

 そうして、自分を傷つけてしまっている葦原を――自分が鍛えてやらないと。



「殺し合いをぶっ潰すとか言って……実際には、俺が殺し合いを助けちまっている!」

 情けなさと。惨めさと。己自身への御せない怒りに叫んだ涼の肩を、正面に座っていたヒビキが叩いて来た。

「でも葦原はさ……誰かを護りたかったんだろ?」

553それぞれの決意 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/07(水) 20:23:16 ID:glPlHsRk
 そのヒビキの気遣いが痛くて、涼は叫び返してしまう。

「それで、誰かを傷つける奴ばっかり助けて! 霧島美穂も、アポロガイストも! 挙句に、最期まで誰かのために戦った剣崎の、ブレイバックルまで未確認に奪われて!」
「でもさ、葦原……ザンキさんも、剣崎も。そんな風に、おまえに自分を責めて欲しいとは思ってないって、俺はそんな気がするんだ」
「どうしてだ!? 俺は――あいつらを――ザンキを死なせて、剣崎の願いを踏み躙って――!」
「――涼くんは、さ」

 そこで涼の叫びを止めたのは――何か言おうとしたヒビキではなく、亜樹子の小さな声だった。

「私を、護ってくれたじゃない。それとも……私を護ったことも、やっぱり後悔してる?」

 亜樹子のそんな……不安そうな問い掛けに、涼は冷水を掛けられたような気分になる。

「――そうだ、葦原。おまえはちゃんと、鳴海を護ってみせたじゃないか」

 声を掛けたのは橘。それに後押しされたかのように、頷いたヒビキが改めて言葉を紡ぐ。

「確かに葦原は、失敗して誰かを傷つけることになったかもしれない。でもザンキさんや剣崎は、きっと葦原のことだって護りたいって考えるって思うんだよ、俺は。確かに二人が理想とした結果じゃないだろうけど、そのことで葦原が自分のことを傷つけるのだって、二人は望まないんじゃないかな」

 だから、自分が二人を裏切って辛いなら、せめてそのぐらいは聞いてあげて欲しいな、と――ヒビキは、憎いはずの涼に温かく微笑んで。

「――俺が、憎くないのか? あんたの仲間を死なせた俺が……」
「はっきり言って、嫌な気持ちがないわけじゃないよ。でも、それに負けて、自分の本当の想いを曲げたくないんだ」
「どうしてあんたは、そんな強く……」
「そりゃ、鍛えてますから!」

 しゅっ、と指二本の敬礼のような真似をして、ヒビキは爽やかに笑った。
 それを眩しいと思って、涼は力なく首を振った。

「それでも、俺は……いつも、間違ってばかりだ。あんたみたいに、俺は強くない……」
「それなら、葦原を俺達で……」

 ヒビキの言葉の途中で、涼は頬に衝撃を覚えていた。

「――っ、何をする、門矢!?」
「根性注入」

 痛みを覚えて振り返った先には、涼を殴った手をぷらぷらさせている士の姿があった。

「――裏切られるのには慣れているんじゃなかったのか、涼」

 ガドルとの戦いの直前、士に伝えた自身の言葉を、今度は彼に提示される。

「言ったはずだ。おまえは愚かな人間だ。道に迷うこともある。転んで怪我をすることもある。だが、その痛みを乗り越えて、誰かを護りたいという自分の信じた道を行くことができる人間だ、とな。そしておまえが道に迷うなら、おまえの道を邪魔するおまえ自身を、俺が破壊する――ってな」

 不敵に笑う門矢の顔を、涼は黙って見ることしかできない。

「何度も何度も信じようとして、何度も何度も裏切られて来た――やっと決意したのに、自分自身の行いがその決意を裏切っていた。それが許せなかった、ってところか」

 やっぱり子供みたいな奴だな、とどこか馬鹿にするように笑う士に、自分の感じている辛さをこいつは本当にわかっているのかと、涼は反射的に苛立ちを覚えてしまう。

「だが、子供だったらこれから学んで行けば良い話だ。おまえはたくさん間違えた。何度も裏切られて来た。数え切れないくらい、傷ついて来た。だが、間違えたのならもう同じ間違いをしないように学べば良い。裏切られた辛さを知ったなら、自分はもうそれを他人に与えないようにすれば良い。力が足りず傷ついたなら、前よりもっと強く鍛えれば良い。そうして、おまえはおまえの信じた道を歩いて行けば良いんだ。その邪魔をする奴は、俺が壊してやる」

554それぞれの決意 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/07(水) 20:25:13 ID:glPlHsRk
 そう語る士の目には、嘲るような色は一切なく。

 橘やヒビキも、彼の言葉に深く頷いていた。
 だが涼は、罪悪感のままに、自らに強く巣食った諦念を彼らに放つ。

「それでも、俺は……俺だって、何度もそうしようとして来たさ! それでも……」
「……一人じゃ上手く行かなかったってんなら、これからは俺達が支えるよ。――だから、そんな自棄にならないでさ。皆で一緒に鍛えよう」

 そう涼に手を伸ばしたのは、ヒビキ。
 その大きさに、士や橘の浮かべる笑顔の温かさに、両目に込み上げて来るものがあって、涼はそれを隠すために顔を掌で覆い、俯く。

「――っ、すまない……ありが、とう……っ!」

 そうして、そう謝罪と、感謝の言葉を、涼は吐き出した。

 ――大学のプールで、身動きも取れずに水底へと沈んで行く、いつものヴィジョン。
 自分一人だけが水の底へ――暗い闇の底へ沈んで行くのに、周囲の人間は誰も助けてはくれなかった――

 ――今までは。
 
 今は、沈んで行く自分に手を差し伸べてくれる者達がいる。
 心が発した助けを求める声を、その心で受け止めてくれる者がいるということに――

 葦原涼は、涙が零れるのを堪え切れなかった。
 そんな彼の背を、ヒビキは力強く、しかし優しく叩いて、傍に居てくれた。

 ――その時、自分の力で、人を護ってみるのも悪くない、と言った想いから。
 例え力がなくとも、人々を護りたい――そう強い感情へと、葦原涼が抱えるものは確かに変化した。

 ほんの少しだけの変化――しかしそれは、彼にとって、大きな一歩だった。



(――ちょっと、甘かったかな)

 涙ぐんでいる涼を見て、亜樹子はそう静かに、そして冷たく振り返る。
 涼が口にした茶髪の女が霧島美穂であった確証はなかったが、もしもそうならヒビキの様子から二人の間に不和を生むことができるのではないか――そう思って突いてみれば、結果は大当たりだった。
 もちろんこんなところで殺し合いをされても困るし、仮面ライダーである彼らがそんな簡単に殺し合ったりはしないだろうと亜樹子は踏んでいた。事実その通りだったが、想像していたよりもずっと、涼に与えたショックが大きかったようで。

 気が付いたら、つい、彼を慰めるような言葉を亜樹子は口にしていた。
 もちろん、『お兄ちゃん』と並んで扱い易いと想像できる、亜樹子の盾になって貰う涼にこんなところで潰れられるわけにも行かないし、彼を気遣ったことで、他の仮面ライダーからの警戒も弱められただろう、ということを考えれば、結果オーライではあるが。

 そんな言葉を掛けた時、亜樹子にそこまで打算は働いていただろうか。

(――こんな調子でどうするの、私)

 首輪を解除する上の重要人物としてフィリップの名を上げたのは、実際にフィリップにならそれができるかもしれないという信用があったのも事実だが、彼らに協力することで信頼を勝ち得て行くための行為でもあった。またフィリップの生存確率を向上させることは風都の保全に繋がり、さらに彼と元の世界で深い関わりを持つ自分の価値を彼らに認識させ、保護欲を強くする狙いもあった――

 あの時はそこまで、ちゃんと考えた上で行動できたじゃないか。咄嗟にそこまで考えが回ったのは、単に橘がヒントをくれたからなだけという気もしないでもなかったが。
 それがあっさり、憐憫の情に流されているようでは話にならない。

(――失敗から学べって言ったよね、仮面ライダー……私、その言葉覚えておくね)

 幸い周りは御人好しばかりだ。今は徹底して害意のない一般人を装えば、いくつか失敗しても問題はないだろう。

 彼らのことは嫌いになれない。むしろ、好ましいとさえ思う。

555それぞれの決意 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/07(水) 20:25:57 ID:glPlHsRk
 だけど亜樹子は、天秤の片方に風都を――それも、過去をやり直し、悲劇もない理想郷としての風都を護り抜き、勝ち取るためという錘が乗った時点で、もう片方に釣り合う物を持ち合わせていなかった。

 狂熱に至れぬ好ましいという感情では、狂気になり得る愛には到底、及ばないのだ。

 本音を言えば、その前提となる大ショッカーの機嫌を損ねないために、首輪の解除などされてはたまった物じゃないが――露骨に邪魔するわけにもいかないと、キバーラが発見した首輪を解析すべく、士と橘の去った方を亜樹子は見やる。

 今の亜樹子は一切の戦力を持たない。幸い仮面ライダーの庇護下にあるが、未確認生命体第零号などのような怪物にも、優勝を狙うなら対処していかなければならない。
 故にまず亜樹子に必要なのは情報だった。警戒すべき相手を把握し、自分に使えそうな戦力について知り、可能ならば手中に収めて行く。
 ――最も、意思がなく亜樹子の命に忠実で、全ての参加者を圧倒するような戦力を誇る、都合の良い駒などあるわけがないのだが、と亜樹子は少しだけ、心を重くする。
 まさにその条件を満たす物――いや者が、この地を目指して歩み始めたことも知らずに。

 全ては愛する人々の生きる、愛する故郷のために――彼女の心はより暗く凍えて行った。



(――良い感じだな、亜樹子)

 そうして暗い闇に染まって行く、自らの妹となった女性を見て、矢車はほくそ笑む。
 表面上は地の性格なのか、やや煩いくらいの様子を見せる彼女が、矢車にも見通せないような暗い闇を抱え、またその奥に何か、彼とは異なる思惑を隠していることは既に見当が付いている。あるいは彼女は本当に殺し合いに乗っているのかもしれない。

 弟を笑った大ショッカーは潰す。それに変わりはないが、もう少しこの妹の闇を眺めていたい。例え今は目的が一致していなくても、彼女も矢車や相棒と同じく、絶望の底の闇に堕ちた大切な仲間であり、大事な妹であることに変わりはないと、矢車は思っていた。

 もう闇の中に一人ではない――奇しくも彼が光の住人と呼ぶ葦原涼が得たのと似た想いが、彼に笑顔を象らせていた。

556それぞれの決意 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/07(水) 20:26:48 ID:glPlHsRk




「よし、こいつを使えば禁止エリアになる前には、余裕を持って解析できそうだな」

 病院の三階で橘が見つけたのは、コンピュータ断層撮影機、俗に言うCTスキャンだった。
 本来は医療目的で使用されるもののため、人体以外への精度や応用性には不安があるが――それでも調整次第で十分利用できるだろうと、橘は考える。

「門矢、行けるか?」
「任せろ」

 キバーラ曰く、写真を撮ること以外苦手なことはないそうだが――今回の撮影は、特に問題なく行けるようだ。
 そうして首輪の解析が装置によって始められたのを見届け、橘は溜息を漏らした。

「――門矢の言う通りだったな」
「何がだ?」
「Wの世界の参加者なら簡単に外せるだろうなんて勘違いの馬鹿馬鹿しさが、さ。――俺は自分に理解できない事態に対して、誰かに頼りたかっただけだったのかもしれない」

 そう自嘲しながら、橘は続ける。

「――俺も、葦原のように何度も勘違いし、悪意ある者に騙されて、色々な物を失くして来た。組織も恋人も、先輩も……友も」

 脳裏に蘇る大切な者達の姿。それらを瞼の裏に焼き付けながら、橘は言葉を紡ぐ。

「だが、そこで立ち止まってはいけないんだ。俺にはまだ……残されたものがあるからな。誰かに縋るんじゃなくて、自分の道は自分で歩かないと行けない……少なくとも、剣崎はそういう奴だった」
「――そうか」

 橘の決意に、士は静かに頷いてくれた。

 自分の世界。そこに残して来た仲間達。そして門矢達、この会場で出会った新しい仲間――

 橘にはまだ、仮面ライダーギャレンとして、護るべきものがあるのだ。
 そのために戦うという宣言を、数多の世界を渡って来た旅人は、聞き届けてくれた。

「――そういえば、もう一つのバトルロワイヤル会場の方にも、ブレイドやギャレンがいるんだったな」

 彼らも今の自分と同じような思いで戦っているのだろうか――橘はふとそう漏らす。

「――もう一つの、バトルロワイヤル会場?」

 だがそれを知るはずの士は、怪訝そうな表情で聞き返して来た。

「おまえはライダー大戦の世界という、バトルロワイヤルの会場から来たんじゃなかったのか?」

 だがその反応に、橘は困惑せざるを得なかった。
 何しろ門矢士は、本気で橘の言葉が理解できないと言った風で居るのだから。

「――そんな世界、とっくに通り過ぎたぞ」
「――何?」

 小野寺ユウスケから聞いていた話と違う。橘は思わず士を問い質していた。
 返って来たのは、その世界を訪れたのは既に過去の話だと言うもの。アポロガイストを倒し、一度は大ショッカーを潰し、再編成されたスーパーショッカーも叩き潰したという。
 だが現にこうして大ショッカーは健在。ユウスケがあの状況で嘘を吐く理由もない、と橘が異を唱えたところで――

「そうか……俺とユウスケは、違う時間から連れて来られたんだな」

 士がそんな解釈を示した。

「違う……時間?」

557それぞれの決意 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/07(水) 20:27:22 ID:glPlHsRk
 突拍子もない意見に、橘も疑問符を付けざるを得ない。

「別に、時間移動や時間操作――要は別の時間から誰かを連れて来る技術なんてそこまで珍しい物じゃない。タイムベント、ハイパークロックアップ、そして時の列車……確か、キャッスルドランの内部にも時間を行き来する扉があるんだったな」

 士が珍しい物じゃないと語るそれらはしかし、橘にとっては十分、未知の驚嘆すべき術であった。

「大ショッカーについてはまた結成したのか、別の時間軸か、同名の別世界組織なのかはわからないが……どうして俺とユウスケを違う時間から連れて来たんだ?」
「……推測だが、例えば時間軸が違えば誤解も起き易い。本来仲間である相手と敵対していたり、するようになる場合もある。それが狙いじゃないか?」
「――なら別に、ライダー大戦の世界の頃から連れて来なくても良いと思うが……」

 事情に詳しい士が見当もつかない以上、橘が無理矢理考えてもまた余計な勘違いを招くだけだろう。士とユウスケのどちらも互いを長い間世界を旅した仲間と思っていて、共に大ショッカーや殺し合いを打倒しようとする正義の仮面ライダーであることは、既に己の目で確認しているのだから。彼らがわからないなら、わからないのだと信じることにした。

「――しかし、それなら知人と合流してもある程度気を付けた方が良いのだろうな……大ショッカーめ、厄介なことを」

 橘がそう毒づいたところで、ひゅわんという独特の飛行音が聞こえた。

「ねえ朔也さん。首輪の解析はもうちょっと時間掛かるでしょ?」
「ん? ああ、そうだな」
「それじゃ、そろそろ士の変身制限も解けると思うし、ちょっと二人きりで話して来ても良い?」
「キバーラ?」

 キバーラの言葉に疑問を感じたように、士が振り返った。

「――お願い」
「……わかった」

 キバーラの声に少し不安の色が混じっていることに気づいて、橘は頷いた。

「良いのか?」
「ああ。どうせしばらくは俺も見守るしかすることがないからな、門矢も暇だろう」

 そう士を送り出し、橘は再び解析画面へと目を配りながら、別のことを考えていた。

「参加者が違う時間軸から来た可能性があるというなら……相川、おまえはいつからだ?」

 もしかすると、今のように――少なくとも剣崎や栗原親子には友好的な相川始ではなく、ただの危険な怪人であるジョーカーアンデッドとして参戦している可能性もある。
 そうなれば――死した剣崎の想いを裏切ってでも、本当に奴を封印するしかなくなる。
 そして――

「志村純一。こいつも、俺達の世界の住人なのか?」

 士との情報交換でわかったことだが、どうやらどの世界からの参加者か区別するために、名簿には世界ごとに区切るための行が開いているらしい。――この理屈だと、葦原涼達とダグバ達未確認は別世界の出身ということになるが、士が言うにはクウガとアギトの二つの世界には共通点が多く、両方に未確認が存在するということなので、未確認については偶然個体まで酷似していただけと考えれば納得できなくはない。

 問題はそれに従うと、志村純一という橘も知らない人物が、剣の世界の名簿に存在していること。

 最初は気に留めなかったが、その理屈がわかれば同じ剣の世界出身の金居と言う参加者についても推測は可能。恐らく苗字しかないことから偽名で、伊坂同様上級アンデッドである可能性が高いだろう。とはいえこれまで封印して来た上級アンデッド達の偽名を全て把握しているわけではないから、上級アンデッド最後の一体、ダイヤのカテゴリーキングであるのか、過去に封印したアンデッドなのかまではまだわからないが。
 だが、志村純一の場合はそうはいかない。嶋昇のようにフルネームを揃えた偽名を持つアンデッドもいるし、園田真理のような一般人が参戦させられているなら、ただの一般人である可能性もある。前者ならともかく、後者なら急いで保護しなければならないだろう。

 とはいえ士に繰り返し伝えられたように、今の戦力で迂闊に動くことはできない。勇気と無謀を履き違えてはいけないとはよく言われるが、ここはまさにそんな場面だった。

558それぞれの決意 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/07(水) 20:28:09 ID:glPlHsRk
 だが――

(志村純一――おまえが何者だろうと、俺は一人の仮面ライダーとして、おまえに接する)

 人々に害成す者なら制裁を。罪なき一般人であるなら保護を。
 その決意を胸に、橘は首輪の解析を見守っていた。







「――それで、話とは何だ、キバーラ」

 士は病院の屋上で、星空をバックに浮遊する小さなキバット族にそう問い掛ける。

「あそこで迂闊に話せないこととか、あんたにはイロイロあるでしょ、士。――例えば、大ショッカーとの因縁とか、ね」

 後半は士の耳元に飛来して、周囲に誰かいても聞き取れないようにキバーラは囁いた。

「――それに私も、イロイロと気になることがあるの」

 ひゅわーっ、と士の耳元から離れたキバーラは、天に近い屋上と言う特別な空間を切り取る手摺にふわりと着地した。

「……ユウスケは、私や士……それに夏海とは、違う時間からここに来たのよね」
「――あぁ」

 夏海、の名を出す時、指の半分もない純白の身体が震えるのを、士は見逃さなかった。

「――気を付けた方が良いわよ、士。あなたにとってここは多分、今までの旅の中で一番厳しい地獄になるわ」
「――矢車じゃないが、とっくに地獄さ」

 もうその笑顔を見ることができない――士の居場所になると言ってくれた最愛の女性を想い浮かべそう返した士に、そうじゃない、とキバーラは首を振る。

「そういうことじゃないの、士。――あなたは、力が失われているとはいえ、ブレイドとの二人掛かりでゴ・ガドル・バっていうグロンギに、一方的にやられてしまったのよね?」
「――悪かったな」
「だから違うのよ、聞いて。――ここがあなたにとって地獄だって思った理由を」

 諭すような口調で、キバーラは続ける。

「あなたは忘れているんでしょうけど――そのガドルの、名前の前にあるゴというのは、グロンギの階級。ゴというのはその中でも最上位集団であることを示しているわ」
「――なるほどな。やっぱり……」
「でも、本来あなたがかつて倒した究極の闇――ン・ガミオ・ゼダに比べれば、劣る階級でもある……グロンギは戦闘狩猟民族。階級はそのまま強さを現していると言って良いわ」
「……それだけこの首輪の制限が強い、ってことか? だが正直な話、制限を無視しても明らかにガドルの方が強かったぞ」
「それはガミオの復活が不完全だったせいでもあるけれど、多分もう一つ理由があるわ」
「……同じグロンギ族と言っても、住んでいる世界が違うから強さも違う……ってか?」
「えぇ、二重の意味でね」

 勿体つけたようなキバーラの話し方に、士は苛立ちを覚える。

「どっかの鳴滝みたいに、焦らしてないでさっさと要点を言え」
「――その鳴滝さん……いえ、あなたを旅に送り出した紅渡の方だったかしら。正直言うと小難しくて興味なかったから、誰から聞いたかさえはっきり覚えてなかったことなんだけど、ここに来て思い返してみたの」

 キバーラは飄々とした彼女にしては珍しく、本当に自信がなさそうにそう語る。

「私達が旅して来た世界は――ここで出会った仮面ライダー達を見ればわかるでしょうけど、結局はクウガやキバと言ったその仮面ライダーが存在し得る一つの可能性の姿に過ぎない、IFで分岐したパラレルワールドの一種なのよね」
「――あぁ。アギトや剣、響鬼の世界。同じ名前と同じ姿をした、しかしまったく別人の仮面ライダーが生きる世界が無数に存在するってことは、大体わかった」

559それぞれの決意 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/07(水) 20:28:42 ID:glPlHsRk
 思えばかつて訪れたネガの世界も、そんな世界の一つだったのだろう。

「そう。さっき首輪を回収したネガタロスも、彼がイマジンなのにキバを知っていたのは電王とキバが同時に存在する、私達の知らない世界の住人だったって考えるのが自然ね」
「――だが、なら奴は何故電王の世界の参加者扱いなんだ?」
「――きっと、そこがオリジナルに近い世界の住人だったから、じゃないかしら」
「オリジナル?」

 どういうことだ、と士はキバーラへと一歩近づく。

「オリジナルってのはどういうことだ」
「先に断って置くと、私達が巡って来た世界が紛い物だとか言いたいわけじゃないわよ」

 士の怒気に気づいてか、対照的にクールにキバーラが告げる。

「パラレルワールドって言うのはIFの世界だって言ったでしょ? IFの数だけ分離した世界がある。例えばジョーカーアンデッドが、世界を滅ぼす破壊者である世界があるかもしれないし、どっかの強欲社長が自作自演のために造り出しただけの安っぽい仮面なんていう世界だってある」

 例えば、オルフェノクの使徒再生によってアギトに覚醒を果たす者がいる世界。例えば、人類が新人類にその数を逆転され、支配権を奪われてしまった世界。例えば、友と世界のために運命と戦った男が、運命に敗れて世界のために友を犠牲にした世界。例えば、渋谷ではなく海に巨大隕石が落ち、地球上の水が枯渇してしまった地球を救うために、一人の仮面ライダーが過去を改編しようとした世界――ひょっとすると、そんな世界も存在するのかもしれない。

「だけど、IFで枝分かれしたって言うのなら――その選択の元になった世界があるはずよ。そしてそれを繰り返して行けば、それぞれの仮面ライダーの世界には樹の根っこから直接伸びた、幹に相当するそれぞれの仮面ライダーの源流たる世界――オリジナルが存在するはずじゃないか、っていう仮説を聞いたことがあるの」

 キバーラの説明する世界のあり様、そこで便宜上使われるオリジナルと言う呼び名に、士はなるほど納得はしたが。

「……それが俺にとっての地獄と言うのと、何の関係があるんだ?」
「――あなたを旅に出した紅渡が言ってたでしょう? あなたの使命は、破壊による再生だったって……」

 でもね、とキバーラは言葉を区切る。

「ディエンドは例外にしても――キバである紅渡は生きていた。何故なら彼とは別のキバをあなたは倒していた――必要だったのは、その仮面ライダーと同じ種類のカードだったから。もう少し言うと、ダブルはあの時見逃された。どうしてだと思う?」
「……俺が知るか」
「樹を育てる時はね、その樹にとって邪魔な枝を切ってやることも大事なの――あなたの役目は、その枝切りだったということよ」

 きっとダブルの世界は若い、枝分かれの少ない世界なのね、とキバーラは言う。

「つまりあなたは世界の破壊者なんて言われているけど、実際には九つのオリジナル世界とそこから派生した無数の世界を存続させるために、存在したら困る世界を破壊して――それから、本来存在しなかったディケイドの物語に再構成して、新たな別の世界とした。それがあなたの旅だったんじゃないかしらって、私は思ったのよ」

 キバーラの語る旅の意義に――士は、一応頷いておいた。

「俺も大体そんなもんだと思うな。それで、キバーラ――」
「何が俺にとっての地獄と繋がるんだー、でしょ? わかってるわよ」

 手摺に肘を着いて体重を預ける士の横を、とことことキバーラは歩く。

「ここからは、鳴滝さんでも紅渡でもない、私が何となく考えただけのただの思いつきよ」

 キバーラはそうやってまた士を焦らし、一度息さえ区切った後、士に向き直った。

「――ここに連れて来られたのは、そのオリジナル世界の住人達なんじゃないかしら」

 そうして、士が待っていた言葉をようやく寄越した。
 だが――

560それぞれの決意 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/07(水) 20:29:23 ID:glPlHsRk
「……まだわからないな」
「根拠は、紅渡や剣崎一真……ワタルやカズマと言った名前は、かつて私達が旅した世界のライダーとも同じだけれど、フルネームが同じと言うのは……それがよりオリジナルに近い存在だからじゃないかと私は思うの。だから剣立カズマより、剣崎一真の方が多くの世界に存在しているんじゃないかって」
「そういうことじゃなくてだな……」
「えぇ、あなたにとって地獄な理由でしょ?」

 キバーラは再び、ふわりと浮き上がる。

「――あなたは世界の破壊者と言っても、その破壊の目的はオリジナル世界の存続だった。それならあなたは、他の世界に対するようには、オリジナル世界とその住人達には、世界の破壊者として振舞えないんじゃないかしら、っていうことよ」

 背後に回ったキバーラを追って、士も身を翻す。

「――つまり、今までディケイドが多くの世界で発揮して来たその異常性――スペック上ありえないのに、必殺技でもないただの一撃で上位の怪人を討ち払い、必殺技が当たれば仮面ライダーを文字通り、必ず破壊するような――破壊者としての理不尽な力の多くは、ここに集められた参加者には無効になっている可能性があるわ」
「――例えば、不死のアンデッドは殺すことができない……とかか?」
「ありえるでしょうね」

 キバーラは首肯する。
 確かにディケイドの力は強いと言うよりも、どこかおかしいということは、士も感じたことはある。明らかに、エネルギーや衝撃が足りてないだろう一撃でも、次々と敵が爆発四散していった覚えがある。なるほど破壊者の権能と言われれば納得できる事柄だ。

「ま、アンデッドについてはどうせ首輪の制限でどうにかできなくはないんでしょうけど――今までみたいにはいかない、もう世界から特別扱いして貰えないということを、肝に銘じた方が良いでしょうね」
「――そんなことは、大体わかってる」

 あの牙の意匠を身に纏った仮面ライダーや、破壊のカリスマを名乗るグロンギ。激戦を潜り抜けて来たはずの士でも、決して油断ならない参加者がゴロゴロいることなど既に嫌と言うほど理解させられている。

「――本当にわかっているの?」

 そこで、怒ったようにキバーラが士の眼前までずいっと寄って来た。

「確かに、ユウスケはオリジナル世界の住人じゃないから、あなたは破壊者として優位に戦うことができる――でもユウスケが変身したクウガ本来の力は、決してディケイド相手に劣るわけじゃないの。そのユウスケが何とか互角だからって、カードも足りないような状況でダグバと、究極の闇を齎す者と戦えるなんて思ってるんじゃないの?」
「どうした? 珍しく随分心配してくれるじゃないか」
「……言わせないでよ」

 ぷいっ、とそっぽを向いたキバーラに、士は理由を悟って「すまない」と、彼にしては珍しく真っ当に謝罪を口に出す。

「……それに、あなたがかつて激情態として戦ったあの姿……アルティメットクウガっていうのね、不完全なのよ」
「――何?」

 全てのライダーを破壊するための破壊者としての旅、その最後にして最大の敵として士の前に立ち塞がった、士の知る究極の闇を齎す者を――キバーラは、不完全と呼んだ。

「だって、本当はクウガの世界に魔皇力なんてないじゃない――魔皇力で無理矢理姿と力の一部を引き出しただけで、本来のアマダムの覚醒プロセスを経ていない、残念仕様よ。
 本当は夏海が夢に見ていたような、聖なる泉が枯れ果てた――負の感情に心を喰われた生物兵器として、本当に破壊者としてのディケイドと同じように、世界を闇に葬り去ってしまいかねない存在――それが仮面ライダークウガアルティメットフォーム」

 キバーラはアルティメットクウガではなく、クウガアルティメットフォームと呼んだ。正式名だからそう呼んだだけなのか、あるいは意図的に区別したものなのか――
 いや、ここは気にするべきではない細かいところか。それより重要なのは、キバーラの語る真の究極の闇という存在。あの破壊のカリスマをして、遥かに遠いと言わしめるほどの力を誇った存在。
 ――ガドルとの戦いで受けた傷が、疼きを増す。
 ダグバという名に惹かれるような感覚がまた強くなり、士はそれを振り払う。

561それぞれの決意 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/07(水) 20:30:19 ID:glPlHsRk
 つまるところ、今のユウスケは魔皇力での覚醒と言うIFではなく、オリジナルと同様のアルティメットフォームへの変身を遂げた存在。その力は恐らく、士がかつて戦ったものを凌ぐ――当然、それと同等以上だというダグバも。キバーラはそう言いたいのだろう。

「別にクウガだけじゃないわ。仮面ライダーの中には、世界の破壊者にも負けないような戦士が他にもたくさんいるわよ。私の父が管理する闇のキバの鎧だって、その気になれば世界を終焉に導くことができる代物なんだし。――ライダー大戦の世界の途中からここに連れて来られたユウスケは多分、そんなのと同じ次元で戦うようになってしまったんだわ。私の魔皇力に汚染された出来損ないじゃなくて、本当の凄まじき戦士として――」

 どこか自嘲していたキバーラは、再び士の方を向いた。

「――破壊者としての特権がないままで、せっかく集めた力を取り戻していない状態で。そんなところに入って行ってユウスケを助けられるって、本気で思う、士?」
「――当たり前だろ」

 キバーラの問いをきちんと受け止めながら、まるで気負いすることなく士は答えた。

「要は、破壊者だの悪魔だのって特別扱いされることがないだけで――俺もただの、いつ命を落とすかもしれない仮面ライダーとして戦わなきゃならない……ってことだろ?」
「――そうよ。自分自身の力を入れても、あなたは10の内、たった二つの力しか取り戻していない。コンプリートフォームも激情態も使えない。そんな状況で立ち向かうつもり?」
「――そんなこと。皆も今までの俺も、当たり前にやって来たことだろ」

 ――例え世界に良くも悪くも特別扱いされて来たのだとしても、士はいつも本気だった。
 本気で己が貫きたい信念、護りたいという想いに従って、いつだって命ある限り戦う、仮面ライダーであり続けた。
 それは士の仲間達も――話題のユウスケも、どこかにいるはずの海東も、旅で出会って来た仲間達も――そしてその命を散らせてしまった剣崎一真と、光夏海も。
 皆、特別だから戦ったのではない。その身体を突き動かす、確かな衝動があったから。

「世界に愛された特別な英雄だからじゃない。皆、仮面ライダーとして、何かを護りたいという想いがあるから戦って来たんだ。それなら、俺に破壊者という特権がなくなったとしても……何も、変わることはない。仲間と同じ土俵に立っただけだ。
 そして俺は仲間を信じている。あいつらなら、何かの加護がなかろうと、自分の信じるモノのために立ち向かうはずだ。それならあいつらの仲間の俺も、恐れて立ち止まるわけにはいかないだろ。――例えカードが一枚も使えなくても、俺が仮面ライダーなら、相手が究極の闇だろうと何だろうと、悪を破壊し誰かを護れるはずだ」

 士は手摺に体重を預けるのをやめて、キバーラに向けて歩み始める。確かな想いを、胸に秘めて。

「俺は護るべきモノを護り抜くために、理不尽を破壊し、これからも仲間達と旅を続ける――通りすがりの、仮面ライダーとしてな」
「そう――どうやら愚問だったみたいね、門矢士……いいえ、仮面ライダーディケイド」

 ふぅ、とキバーラが小さく吐息を漏らす。
 その様子を見て、士は口の端を歪めた。

「大体、所詮はおまえのちっぽけな脳みそが出した下手な仮説だろ。アテになるのか?」
「あー、ひっどぉい! もー心配してやらないんだからね!」

 そう言ってびゅーんと飛び去って行ったキバーラは、しかし直ぐにUターンして来る。

「呼び止めなさいよ!」
「知るか」
「――あなたにとって地獄だって思った理由が、もう一つあるのに?」

 ハイテンションから一転、気遣うような声色の思わぬ言葉に、士はしかし顔を顰めた。

「また長話に付き合せるつもりかよ」
「今度はさっきよりは短いわよ……多分」

 自省しているのか、キバーラの声には元気がなかった。

「さっきの、オリジナル世界から参加者が集められているんじゃないのって言ったわよね。そう考えた理由はもう一つあるのよ」
「……幹を殺せば、樹は死ぬな」
「――えぇ」

 つまり、無数の世界が融合を始めており、それを防ぐためだという建前なのに参加した世界はたったの九つ。士達が長い旅で巡った世界からの参加者など、一人もいない。

562それぞれの決意 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/07(水) 20:31:38 ID:glPlHsRk
 所詮は大ショッカーの虚言だと思っていたが……キバーラの仮説がもしも事実ならば。

「参加していない世界……海東の奴の世界はライダーや怪人から見て、実質剣の世界のIFなんだろう。ユウスケ達の九つは語るに及ばず、だ」
「シンケンジャーの世界は仮面ライダーがいないから、除外するとしても……BLACKとRXとか、アマゾンの世界がどうなっているのかはちょっと気になるけれど……」
「大ショッカーの言葉は真実である可能性が存在する、ってことか」
「そう……あなたが一度死んでまで完遂した世界の再生が、台無しにされるかもしれないってこと」

 それでね士、とキバーラは続けた。

「ひょっとするとだけど……この殺し合いで行われる世界の破壊には、ディケイドの力が悪用されているかもしれない」
「……は?」

 キバーラの思わぬ言葉に、士は首を傾げる。

「何を言っているんだ。おまえがディケイドはオリジナル世界に対しては破壊者としての働きが弱いって……」
「あなたはね。でも、考えて。あなたや海東――ディケイドとディエンドは、世界を渡る力を持っているわ。でも当然それは制限されているわね」
「元々任意で使えるわけじゃないがな……ってかおまえはどうなんだ」
「私はその能力がある人の血を吸って、一時的に借りてるだけだから……言っとくけど、私が吸った程度じゃ解決できないような制限になってると思うわよ――ってそういう話は後回しにして」

 士の周りをくるりと飛んだキバーラは、再び夜空に浮かぶ双子の赤星となって、天へと昇る。

「……ディケイドライバーを作ったのは、大ショッカーでしょ」

 士も忘れかけていた事実を、キバーラは告げる。

「材料の問題で、それをもう量産できないとしても、ディケイドライバーに組み込まれた技術は実例として沢山のデータを与え、またその技術を進歩させたはずだわ。
 そしてその技術は、オリジナル世界をも破壊する能力を産み出し――それの機能が首輪に埋め込まれているんじゃないかしら」
「――何?」

 キバーラの大胆な仮説に、士の思考はまた付いて行けない。

「だから、その世界の参加者が全滅するのがどうして世界の滅びに直結しているのか、という疑問に対する、私なりの答えよ――首輪には、参加者を疑似的な世界の破壊者にする機能があるんじゃないのかしら。そんな状態でその世界を代表する仮面ライダーや怪人を破壊し尽くしたら――破壊された側の世界は滅びを迎えてしまうはずよ」

 どんな参加者――それこそ最強のグロンギであるン・ダグバ・ゼバさえちっぽけな首輪の爆発で死ぬというのも、その破壊者という特性を付与する力が、制裁たる爆破の際には装着者自身に向けられるからなのかもしれない。

 あなたが苦戦する理由の一つもこれかもしれないわね、とキバーラは語る。

「仮にディケイドが世界の破壊者としての力が、オリジナルにも適用されるとしても――敵対する参加者も皆破壊者だっていうなら、あなただけ突出することはできないじゃない。
 その上で、元から破壊者としての能力を持つあなたと海東の首輪は、その部分の余裕を世界移動能力の制限に使っているかもしれない――つまり、ネガタロスの首輪を解析しても、あなた達の首輪は外せない可能性があるわ」
「――それが事実なら、俺は随分と大ショッカーに嫌われていることになるな」
「嫌われるだけのことをして来たじゃない?」

 からかうようなキバーラの言葉に、士は苦笑するしかなかった。
 門矢士は――元は大ショッカーの大首領だったのだ。もっとも、若い士は傀儡のお飾り首領だったのだろうが。
 それが仮面ライダーディケイドとして大ショッカーへと牙を剥き、二度に渡って組織を壊滅させたのだ――恨まれるのは当然、もしそうでなくても、他より入念に対策されてもおかしくはないだろう。

「なるほどな。もし首輪が外せなかったら、さすがに俺も打つ手はない」

 士はキバーラの言わんとすることを理解した。
 その上で、長く連れ添った旅の仲間に告げる。

563それぞれの決意 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/07(水) 20:32:47 ID:glPlHsRk
「だが、言ったはずだ。俺には仲間がいる――もしも俺が戦えなくても、あいつらなら大ショッカーに負けたりすることはない。だから、長話して貰ったところ悪いが、今の俺がするべきことに変わりはないぞ、キバーラ」
「――そう」

 落ち込んだような声でキバーラが答えた。
 彼女が気を遣ってくれているのは、やはり夏海のことを想ってなのだろうと思い、士は込み上げて来る感情を抑えながら、キバーラにいつもの調子で笑いかけた。

「大体、それもおまえの小さな頭で考えただけのことだろ? 実際に解析してみなくちゃ何もわからないだろ」
「――あー、またそんなこと言う! ひっどぉい!」

 キバーラの声に明るさが戻ったのを感じて、士は小さく、本当に小さく、笑った。

「話はもう終わりか? なら、朔也のところに戻るぞ」
「――えぇ、そうね」

 キバーラが頷き、士は身を翻して、来た道を戻って行く。
 横にキバーラが並んだのを見て、士は呟いた。

「そう言えば前に、海東の奴が俺の台詞をパクりやがったことがあったな」
「ヒビキの世界のこと? あんた、いつまで根に持つのよ」
「俺は悪魔だからな、しつこいんだ――あの時の意趣返しでもしてやるか」

 不敵に笑って、士は屋上の出入口に向かって歩いた。

「俺の旅の行先は、俺だけが決める――誰にも、どんなものにも、邪魔をされてたまるか」

 そう、宣戦布告して。

 門矢士は、己の選んだ道へ続く扉を、確かな決意と共に開いた。

564それぞれの決意 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/07(水) 20:33:26 ID:glPlHsRk
【1日目 夜中】
【E-4 病院】

【病院施設について】
※一階廊下の壁と、診察室の天井と壁が破壊されています。
※二階の廊下が破壊され、一階診察室と繋がっています。
※二階の病室の壁が破壊されています。
※三階で首輪の解析中です。どの程度時間が掛かるか、また解析の精度がどのようなものかは後続の書き手さんにお任せします。

【共通事項】
※病院でもう少し協力者を集まるのを待ってから、改めて行動方針を決める。
※ゴ・ガドル・バ、黒いカブト(擬態天道)、紅渡、アポロガイストを警戒。ン・ダグバ・ゼバに特に強い警戒。また村上峡児にも若干の警戒。
※できれば津上翔一、小沢澄子、城戸真司、天美あきら、桐谷京介、野上良太郎、紅音也、名護啓介、小野寺ユウスケ、海東大樹、左翔太郎、そして特にフィリップと合流したい。


【門矢士@仮面ライダーディケイド】
【時間軸】MOVIE大戦終了後
【状態】ダメージ(小)、疲労(小)、決意
【装備】ディケイドライバー@仮面ライダーディケイド、ライダーカード一式@仮面ライダーディケイド
【道具】支給品一式×2、不明支給品×2、ガイアメモリ(ヒート)@仮面ライダーW、ケータッチ@仮面ライダーディケイド、ライダーカード(G3)@仮面ライダーディケイド 、キバーラ@仮面ライダーディケイド
【思考・状況】
基本行動方針:大ショッカーは、俺が潰す!
0:どんな状況だろうと、自分の信じる仮面ライダーとして戦う。
1:朔也と共に首輪を解析してみる。
2:仲間との合流。
3:友好的な仮面ライダーと協力する。
4:ユウスケを見つけたらとっちめる。
5:ガドルから必ずブレイバックルを取り戻す。
6:ダグバへの強い関心。
7:音也への借りがあるので、紅渡や(殺し合いに乗っていたら)鳴海亜樹子を元に戻す。
【備考】
※現在、ライダーカードはディケイド、ブレイドの物以外、力を使う事が出来ません。
※該当するライダーと出会い、互いに信頼を得ればカードは力を取り戻します。
※ライダーカード(G3)はディエンド用です。
※葦原涼がギルスである事は、大体わかりました。
※参戦時期のズレに気づきました。
※仮面ライダーキバーラへの変身は夏海以外は出来ないようです。
※亜樹子のスタンスについては半信半疑です。


【橘朔也@仮面ライダー剣】
【時間軸】第42話終了後
【状態】疲労(中)、ダメージ(小)、全身に中程度の火傷(手当済み)、罪悪感、クウガとダグバに対する恐怖 、決意
【装備】ギャレンバックル@仮面ライダー剣、ラウズカード(ダイヤA〜6、9、J)@仮面ライダー剣、ラウズアブゾーバー@仮面ライダー剣、ガイアメモリ(ライアー)@仮面ライダーW
【道具】支給品一式×3、ゼクトルーパースーツ&ヘルメット(マシンガンブレードは付いてません)@仮面ライダーカブト、ファイズポインター&カイザポインター@仮面ライダー555、ザビーブレス@仮面ライダーカブト
【思考・状況】
0:仮面ライダーとして、人々を護る。
1:門矢と共に首輪を解析する。
2:とにかく首輪を解除するため、フィリップと接触したい。
3:志村純一……何者だ?
4:小野寺が心配。
5:キング(@仮面ライダー剣)は自分が封印する。
6:出来るなら、亜樹子を信じたい。
7:殺し合いで勝たなければ自分たちの世界が滅びる……。
【備考】
※『Wの世界万能説』を誤解だと気づきました。
※現状では、亜樹子の事を信じています。
※参戦時期のズレに気づきました。

565それぞれの決意 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/07(水) 20:34:25 ID:glPlHsRk
【以下四人共通】
※士達が去ってからも情報交換を続けたのか、その場合どんな情報をどのくらい交換したのかは後続の書き手さんにお任せします。


【日高仁志@仮面ライダー響鬼】
【時間軸】本編第41話終了後
【状態】疲労(小)、ダメージ(小)、全身に中程度の火傷(手当済み)、罪悪感
【装備】変身音叉・音角@仮面ライダー響鬼
【道具】支給品一式、着替え(残り1着)
【思考・状況】
0:仮面ライダーとして、人々を護る。
1:涼を鍛えてやりたい(支えてやりたい)
2:打倒大ショッカー
3:殺し合いはさせない
4:フィリップと接触したい。
5:小野寺を心配。
6:小沢さんに会ったら、北條の遺言を伝える。
7:自分ももっと鍛えないと。
【備考】
※アギトの世界についての基本的な情報を得ました。アギト世界での『第四号』関連の情報を得ました。
※『Wの世界万能説』が誤解であることに気づきました。


【葦原涼@仮面ライダーアギト】
【時間軸】本編36話終了後
【状態】疲労(小)、ダメージ(中)、胸元に中ダメージ 、仲間を得た喜び、ザンキの死に対する罪悪感
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明支給品×2(確認済)
【思考・状況】
基本行動方針:殺し合いに乗ってる奴らはブッ潰す!
1:剣崎の意志を継いでみんなの為に戦う。
2:人を護る。
3:亜樹子を信じる。
4:あきらや良太郎の下に戻ったら、一緒に行動する
5:ガドルから絶対にブレイバックルを取り返す
【備考】
※変身制限について、大まかに知りました。
※現状では、亜樹子の事を信じています。
※聞き逃していた放送の内容について知りました。
※自分がザンキの死を招いたことに気づきました。
※ダグバの戦力について、ヒビキが体験した限りのことを知りました。

566それぞれの決意 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/07(水) 20:36:17 ID:glPlHsRk
【矢車想@仮面ライダーカブト】
【時間軸】48話終了後
【状態】全身に傷(手当て済)、闇の中に一人ではなくなったことへの喜び
【装備】ゼクトバックル+ホッパーゼクター@仮面ライダーカブト、ゼクトマイザー@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式
基本行動方針:弟を殺した大ショッカーを潰す。
1:士の中の闇を見極めたい。
2:殺し合いも戦いの褒美もどうでもいいが、大ショッカーは許さない。
3:亜樹子の思惑がどうであれ、妹として接する。またその闇を見極める。
4:天道と出会ったら……?
5:音也の言葉が、少しだけ気がかり。
6:自分にだけ掴める光を探してみるか……?
【備考】
※ディケイド世界の参加者と大ショッカーについて、大まかに把握しました。
※10分間の変身制限を把握しました。
※黒いカブト(ダークカブト)の正体は、天道に擬態したワームだと思っています。
※鳴海亜樹子を妹にしました。
※亜樹子のスタンスについては半信半疑ですが、殺し合いに乗っていたとしても彼女が実行するまでは放置するつもりです。

【鳴海亜樹子@仮面ライダーW】
【時間軸】番組後半(劇場版『仮面ライダーW FOREVER AtoZ/運命のガイアメモリ』直後)
【状態】ダメージ(中)、疲労(小)、極めて強い覚悟
【装備】無し
【道具】無し
【思考・状況】
基本行動方針:風都を護るため、殺し合いに乗る。
0:例え仲間を犠牲にしてでも優勝し、照井や父を生き返らせて悲しみの無い風都を勝ち取る。
1:まずはこの連中を利用する。
2:他の参加者を利用して潰し合わせ、その間に自分の戦力を整える。
3:良太郎は利用できる?
4:当面は殺し合いにはもう乗ってないと嘘を吐く。
5:東京タワーのことは全て霧島美穂に脅され、アポロガイストに利用されていたことにする。
【備考】
※良太郎について、職業:芸人、憑依は芸と誤認しています。
※放送で照井竜の死を知ってしまいました。

567それぞれの決意 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/07(水) 20:38:14 ID:glPlHsRk
 以上で仮投下完了です。

 今回自分でも心配なのは、特に後半でキバーラが士に話した仮説です。
 というのも、公式の設定にはない自分の妄想部分があまりにも多過ぎるからです。

 特に重要な部分を挙げると、

①本来ユウスケアルティが別物だという公式設定はない(ただ、クウガの原作だと本来の
黒眼アルティならユウスケの自我はなくなっているはずなので、原典の設定と違う理由が
キバーラの魔皇力によって変身した別物だったからと解釈しました)。
この点については、キバーラに事実として語らせたので特に問題度が大きいかと思います。

②オリジナル世界に対しディケイドが世界の破壊者として振舞えないと言う仮説について

 後者は仮説止まりとはいえ、この二つについてはディケイド本編において一切言及されていない、言わば私の妄想となっています。

 それをキバーラに語らせても良いものか、ということが大きな不安なので、御指摘の方をお願いしたいです。

 一応、このような仮説を考えた背景としては、本編の無双具合がディケイドから消えているということへの疑問視の声が大きかったことからその理由付け、またディケイド本編
の展開だけを優先すると

 その他<ディケイド<W及びその世界の強敵怪人、

 というような強さの序列になってしまいますが、既にロワ内でそうではない展開が数多く
繰り広げられており、実際ここの序列通りにするとロワとして成立させるのが困難になる
ので、分際を弁えずにそれに対する説明をしようとしてこのような自己解釈、つまり己の
妄想を綴ったような酷い仮説を展開させました。

 また首輪についても仮説止まりではありますが勝手なアイデアを提示させて頂きました。
 これについても問題ありましたらよろしくお願いしたいです。

 それとヒビキや涼のキャラについて不安があるのと、TV版橘がそこまで技術屋だったか
うろ覚えであるということ、それと……無知を晒すわけですが、ぶっちゃけ病院の医療用
のCTスキャンで機械である首輪を解析できるのか、という割と根本的な疑問もあります。

 このように不安だらけ、問題だらけ(特に公式にない設定の捏造)の上無意味に冗長で、
以前もう問題は起こさないよう心掛けると宣誓させて頂いたのにその約束を破るかもしれ
ないSSですが、よろしければご指摘の方よろしくお願いします。
 もちろん、もしもこの仮説を受け入れても構わないと言う場合でも、仮説に穴がないか
の指摘を頂ければ幸いです。

 もし仮説として並べた私の妄想を御不快に思われた方がいらしたら、まずは謝罪を述べさせて頂きます。
 その上で、やはり原作にない設定を原作キャラに語らせるという展開を含むこのSSを
破棄すべきだと言われる場合は、一応他の読み手の方にも判断を委ねたいと思いますが
要請に応じる心積もりです。

 繰り返しになりますが、どうかご指摘の方お願いします。

568 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/07(水) 20:46:17 ID:glPlHsRk
あ、念のため

>>546の発言は◆nXoFS1WMr6氏の作品を軽んじているわけではなく、ただ明らかに
問題点があるとしたら自分の作品の方だな、という意図で書き込みました。

◆nXoFS1WMr6氏始めもしも御不快になられた方がいたら勘違いさせるような発言に
なってしまい申し訳ありませんでした。

569 ◆7pf62HiyTE:2011/12/07(水) 22:36:19 ID:MznggfDA
仮投下乙です。さしあたり、キバーラの話を纏めると

1.ディケイド組以外の参加者はオリジナル中のオリジナル。(仮説)
2.士の旅はオリジナル世界を纏める為の旅(仮説)
3.ディケイドが本編で使ったチート(アンデッド爆殺等)はオリジナル、つまり参加者には使えない。ある意味互角レベルまで弱体化。(仮説)
4.但し、本来はディケイド側だったユウスケは、激闘の果てに自力アルティに到達しオリジナルの域に到達。それ故、夏映画のライアルやMOVIE大戦のアルティの様にそうそう簡単に倒せる、止められる存在ではない。(仮説)
5.なお、ディケイド本編でのアルティはキバーラが擬似的にその域にさせた紛い物(キバーラが明言。)
6.世界の破壊には首輪にディケイド及びディエンドの世界を破壊するチート力を組み込んでいる。故に、参加者全員がディケイド状態(仮説)

おおむね以上の通りでしょうか、漏れとかあったらフォローお願いします。また、判断する方は参考にしてください。
確かに超考察といえば超考察だけど……1〜4及び6に関してはキバーラの仮説レベルの話なので、後から『違います』、あるいは別の答えを用意する事も出来るので、仮説の提示レベルならばそこまで問題にはなりえないかなと。

問題は唯一、はっきりとキバーラ自身が紛い物と明言した5について……
アルティの強さの問題の理由付けについては問題ないけど、これを地の文ではなくキバーラの言葉で事実として明言した事が懸念材料だと。
キバーラのこの部分の説明を纏めると

『自力でアルティに到達した今のユウスケは、以前無理矢理到達させられたライアルやアルティよりも強い』

というわけだから、この説明ならばそこまで問題でも無い様な気もするがどうだろうか……

570 ◆LuuKRM2PEg:2011/12/07(水) 22:57:21 ID:mqcEdK42
仮投下乙です。
感想は本投下の後で。

キバーラの仮説は◆7pf62HiyTE氏が纏めた通りで大丈夫です。
個人的に、1〜4及び6の段階は仮説レベルの話なので◆7pf62HiyTE氏と同じくそこまで問題とは思いません。

そして5の部分も、自分もそこまで問題とは思いません。
原作のクウガは自力で会得したのに対して、ディケイドのアルティメットはキバーラの力が混じった事で
今回のSSでキバーラが言ったように、原作とは何らかの違いが出てもあり得そうですし。

571 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/07(水) 23:03:45 ID:glPlHsRk
>>569
早速のご指摘ありがとうございます。正直自分が纏めるよりも理路整然として読み手の方にもわかり易いかと思います。
ただ、4.については

>>「確かに、ユウスケはオリジナル世界の住人じゃないから、あなたは破壊者として優位に戦うことができる――でも
>>ユウスケが変身したクウガ本来の力は、決してディケイド相手に劣るわけじゃないの。そのユウスケが何とか互角
>>だからって、カードも足りないような状況でダグバと、究極の闇を齎す者と戦えるなんて思ってるんじゃないの?」

とキバーラに言わせました。つまり、

1.ユウスケはオリジナルに近い変身と相応の戦闘力を持ったからダグバと互角(?)に戦える
2.ユウスケはオリジナル世界のキャラではないのでディケイドのチートが発動し、ディケイドが有利
3.ダグバはオリジナル世界のキャラなのでディケイドのチートが発動せず、今戦うと間違いなくディケイドが殺される

という理論のつもりでした。もしわかり難かったのならもう少しわかり易くなるように修正しておきます。

それとこの理屈で勘違いされたくないのは、自分がディケイドを弱いライダーであると言いたいわけではないということです。
むしろ全距離対応かつ使える戦法の豊富さ、FFRなどの切り札の存在から、極めて強力なライダーであると考えています。

ただ本編通りの理不尽チートみたいなのを許すとロワを破壊してしまうので、過剰なチート成分を落とし普通の主人公ライダー
の通常フォーム程度のスペック(それでも主人公組では上位ですが)に制限されている、という理論を展開したかったわけです。

それでキバーラに言わせたようにまだブレイドの力しか取り戻しておらず、そのために上位フォームも使えない状態だと他の
主人公ライダーの最強フォームやダグバのようなラスボス級怪人には到底歯が立たない、というのがこのロワでの現状である、
ということにする意図がありました。……この部分は結局キバーラの仮説止まりの部分ではありますが。

改めて ◆7pf62HiyTE氏、ご意見をくださっただけでなく冗長な拙文をわかり易く纏めてまで頂き、ありがとうございました。

572 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/07(水) 23:14:19 ID:glPlHsRk
>>570
ありがとうございます。
それと、◆7pf62HiyTE氏のまとめに(重要かどうかはともかく)次の一文もできれば追加しておいて欲しいです。

7.オリジナルの世界が破壊されると、枝分かれした他のそのライダーの世界(ディケイドに出てきたリマジ世界など)
も滅びる(例えば、五代クウガの世界が破壊されると小野寺クウガの世界も破壊される)(仮説)。

573 ◆nXoFS1WMr6:2011/12/07(水) 23:34:47 ID:otS5W126
皆さんたくさんのご意見ありがとうございました。
ではG4は15分間使用可でGトレーラ内に充電装置があり、それで2時間以上充電すれば再使用可能。
巧の黒い携帯を使い変身した村上への反応、巧のニーサンの血のにおいに気付くもそれを村上のせいだと思う描写を追加します。
それでもまだ気になる点がある場合は修正しますのでよろしくお願いします。
ただ、一つだけ気になる点が。
本スレに投下後に修正した場合、ある程度は修正期間が設けられるのは分かっているんですが、
仮投下時はいったいどうなるんでしょうか、予約期間中に本スレに投下しなくてはいけないんでしょうか。
何かしらのご返答いただけるとありがたいです。
それと仮投下乙です、いままで「ディケイド設定無視しすぎwww」とか「世界の破壊者だからだろwww」
とか馬鹿にされ続けたディケイドにちゃんとしたあの強さの理由を考えているあなたにはつくづく脱帽です。
改めて素晴らしい作品でした!

574二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/12/08(木) 00:08:14 ID:kC.gXubo
>>573
仮投下後の本投下の期限については実の所解釈が分かれるのが実情。
1.本投下が期限。
2.期限内に仮投下してOK、但し可能な限り本投下を行う。
個人的には1なのだが、期限ぎりぎりで気になる所があるので仮投下するという意見もあるので2で捉えている人も多いと思う。

で、本題に戻ると。仮に明確な期限が無くても出来るだけ早く仕上げておくべきかなと。
具体的な期間としては1〜2日、プライベートが忙しいならその旨を連絡し具体的な期限を明記。
何にせよ、何の連絡も無しに1週間以上もかけるという事は無いので。

575 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/08(木) 19:14:16 ID:whOBwPMo
今のところ拙作であまり不快に思われた方を出さずに済んでいるようなので、胸を撫で下ろしています。
やはりSS内での説明はわかり難いかもしれないので、◆7pf62HiyTE氏が>>569で纏めてくださったものを基準に、
本投下の際には次のような【キバーラの仮説についてまとめ】の部分を状態表の後に記述しておこうかと思います。

またこれが仮説について自分の現在の考えであるということと、及びここの記述に合わせて本文も一部修正しておこう
かと思っていることを表明させて頂きます(ディケイド最終回の剣崎一真についての記述など)。


【キバーラの仮説についてまとめ】
1.ディケイド組以外の参加者は各ライダー世界の分岐前、オリジナル世界の住人(仮説)。

2.士の破壊者としての旅はオリジナル世界を救済するためのものだった(仮説)。

3.そのためディケイドの破壊者としての力(アンデッド爆殺、非必殺技で敵を一撃撃破などの理不尽な現象を起こす力)はオリジナル世界の住人、つまり参加者には使えず、互角レベルにまである意味弱体化。原作最終回でオリジナルに近い人物だと考えられている『剣崎一真』戦で苦戦したのもおそらく同じ理由(仮説)。

4. オリジナル通りの方法でアルティメットフォームに変身できるようになったユウスケは、MOVIE大戦でキバーラの力で変身したクウガよりも強い(断定)が、彼はオリジナルではないのでディケイドは破壊者としてある程度スペックを無視して優位に立てる(仮説)。

5. 4.について、あくまで純粋な戦力で勝っているわけではないので、例えば小野寺クウガがダグバに対抗できるとしても、ブレイド以外の力を失い上位形態への変身もできない現在のディケイドがそのままオリジナル世界の住人であるダグバに対抗できるというわけではない(仮説)。

6.大ショッカーは首輪にディケイド同様の世界を破壊する力を与える機能を組み込み、参加者全員を疑似的な世界の破壊者にして殺し合わせることで世界の破壊を企んでいる(仮説)。

7.オリジナルには効き難いとはいえ、その能力を元から備えている門矢士及びに海東大樹の首輪は特別製で、他の参加者の首輪とは構造が異なるかもしれない(仮説)。

8.オリジナル世界が破壊されれば、そこから分岐した同じ種類の仮面ライダーの他の世界も滅び、殺し合いに参加していない世界の命運も左右される恐れがある(仮説)。



今のところ仮説なら問題ない、との意見を頂いているので最大の問題点はやはり4のアルティについての断言部分になると思います。
現状では期限内に本投下しようかと考えていますが、御指摘の方もまだお待ちしておりますのでよろしくお願いします。

576 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/08(木) 19:18:25 ID:whOBwPMo
連レス失礼します。次にwikiに収録済みのSSについて、修正申請を行わせて頂きます。

これは少し見返ししていて気付いたことなんですが、まず拙作『君はあの人に似ている』の状態表に自分のミスがありました。
ユウスケの状態表に仮面ライダークウガに1時間20分変身不能とありますが、同じタイミングで変身を解いた一条達の変身制限が1時間25分となっています。
これは単純に自分のミスなので、後で以前申請を見落とされていたおやっさんスクラップに関する備考欄と合わせて修正しておきたいのですが、まずは報告させて頂きます。

で、その際に気になって確認してから気づいたのですが、牙王がE-2エリアの火災を見たという記述をしていたのですが、『This Love Never Ends♪音也の決意』の後編を見ると翔太郎が意識を取り戻した時点で火は収まっているようでした。
エリアが廃墟になるほどドラグブラッカーがジョーカーを加えたまま一分未満の間に移動するよりは、吐き出した炎が広がった結果と考える方が自然だと思うので火災があった、ということにしましたが、ここで時間的な解釈を挟むと少々矛盾が生じることに気づきました。

ユウスケがクウガの変身を解除したのはどんなに早くても20時で、そこから導くと、牙王コーカサスの変身解除は20時15分ということになります。

それで、その後に牙王がE-2エリアの火災に気づく描写を入れたわけですが、これも拙作なのですが『献上』のガドルの状態表から逆算すると、『防人』にて18時50分にガドルが変身を解除したので、再変身可能は20時50分になります(以前雑談スレにて自分とは違う解釈がなされているところがありましたが、自分がこのように解釈しているのは『防人』終了時にガドルが残り1時間50分変身不可となっていたのは、変身解除してからカブトエクステンダーのところに移動して彼の出番が終了したためです)。

このことから、『献上』終了時刻は20時40分ということになりますが、すると20時10分にダグバが変身解除したということになります。翔太郎はドラグブラッカーに攻撃されながら気絶したので、変身したまま気絶していたと考えられますので、およそ20時15分に目を覚ましたことになります。

すると、20時15分の時点でほぼ鎮火しているのに、その後に牙王が街が燃えていることに気づいた、と矛盾を招いてしまいます。

全て自分のミスで申し訳ないのですが、この矛盾点を解決するために『献上』のガドルの状態表から変身不可を消し、『This Love Never Ends♪音也の決意』の解釈可能時間に10分以上余裕を持たせたいと思いますが、よろしいでしょうか。

またもや冗長な文章での申請ですが、『それぞれの決意』の問題点ともども御意見お待ちしております。

577 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/09(金) 20:33:12 ID:VDZgbzr.
えー、>>576のことはともかく、『それぞれの決意』につきましては仮投下からそろそろ48時間ですが
特に反対意見らしきものは指摘されていないので、修正版を本日中辺りに投下しても大丈夫でしょうか?

なお、さすがにCTスキャンで金属製の首輪解析は無理があったので、園崎邸にあったものと同じような
首輪解析設備を利用しているように修正しました。

578 ◆nXoFS1WMr6:2011/12/09(金) 21:41:59 ID:ihFU3Pc.
えっと、一応修正版ができましたので投下します。

579 ◆nXoFS1WMr6:2011/12/09(金) 21:42:55 ID:ihFU3Pc.
志村純一はGトレーラーの中で休息をとっていた。
別に激しい戦いをしたわけではない、それに長時間走り続けたわけでもない。
ではなぜ彼は息を切らしているのか?それは今彼がいるここGトレーラーに入っていたものが原因だった。
彼が数十分前にこのトラックの鍵をデイパックの中から見つけ出し、コンテナ内に入った際、いちばん先に目に入ったものは多数の重火器だった。
見れば銃が二丁にナイフが一本、正確な名はそれぞれGM-01スコーピオン、GG-02サラマンダー、GK-06ユニコーンという。
どれもデイパックに入れてもパーフェクトゼクターよりはあまりかさばらない物でありこの時点でも元から別にこの車を探し求めていたわけでもない純一にとっては棚から牡丹餅なのだ。
しかし、彼の笑顔をさらに歪ませるものがこの中にはあった。
黒いボディに青の複眼、頭には二本の角、それは開発者の小沢澄子でさえ恐怖し封印せざるを得なかった悪魔の装甲。
G4システムがそこにはあった、本来人間が使用を続けるならば死が待っているという恐怖の装甲、しかし不死の生命体たるアンデッド、しかもその最上位に値するジョーカーである彼にとってそんな副作用は無に等しいと思われる、なれば後に残るのはその圧倒的な戦力のみ。
それに彼がG4を手に入れて歓喜した理由はそれだけではない、何とそのG4はバッテリーが続く限り使用できるというメリットがあった。
更に説明書にはバッテリーが続く時間はおよそ15分と記してあった、説明書の記述をどこまで信用していいものか決めかねるものの純一が把握している変身制限は10分である。
そう、つまりわかりやすく言えばG4は他の変身道具よりも5分も長く仮面ライダーの力を纏えるのだ。
たかが5分と侮ってはいけない、この戦いをずっと見てきたものなら分かる通り、この地ではものの1分、いや1秒だろうと相手より長く変身できていたほうが勝利をつかむのだ。
それが同じ瞬間で変身しても5分も続く、これは純一でなくても歓喜に値する代物だろう、しかしG−4はグレイブやオルタナティブ・ゼロのように手軽に持ち運び、及び手軽に変身できるものではない。
無論、一度使用すればその後はGトレーラー内にある充電装置でバッテリーを充電する間長く使えないと表記されていた、これも自分がこの戦いの中で見つけた制限、つまり一度変身能力を使えばそれがたとえ己の真の力でも最低2時間は使用不可になるというもののことだ。
もしかすればG4に限れば再変身までの時間は他のものより長いのかもしれない、とにかくそれは今わかるものではないし、今後考えていけばいいだろう。
持ち運ぶのも容易ではないし、Gトレーラーの中で装着するにも誰か協力者がいたほうがスムーズだ。
しかし、今の彼のスタンスは通称ステルスマーダー、善人のふりをしてお人よしに近づき、隙をついてその命を奪うというものだ。
それゆえ、G4装着のサポートをする者をずっと生かしておかなければならない、それは他世界の人物であれば自分の世界の保守のためとはいえ非常に手間だ。
なれば同じ世界の者ならどうか。
橘朔也は恐らく殺し合いにはのっていないだろう、自分の話術をもってすれば洗脳するのは簡単かもしれないが、自分が他世界の者を殺していると分かれば面倒だし、それを隠すのも面倒だ。
ならばそれより自分の言うことを忠実に聞き、なおかつそれ自身もある程度の戦闘力があった者のほうが安心できる。
しかし、そんな人物がそもそもいるのかと彼が悩みを抱えた瞬間、ある大事なことに気づく。

「不味い……バイクが外のままだ」

もう自分はGトレーラーという便利な移動手段があるとはいえ、バイクのほうが小回りが利くし、他にもいろいろ便利だ。
一応自分がこの中にいる間、外でエンジン音はしなかったため持ち去られてはいないとは思うが……。
少しの心配を抱きつつ彼が外に出た時、一人の青年と目があった。

580 ◆nXoFS1WMr6:2011/12/09(金) 21:44:07 ID:ihFU3Pc.



乾巧は暗い夜道を歩いていた。
先ほど同行者である天道総司を失ってから早くも数十分も経っていた。
そして今彼が目指していたのは数時間前までずっと留まっていた警視庁である。
本当は今の怪我を考えれば病院を目指したかったのだがそこにはまで距離もあるうえに、それに名護たちとの合流時間までまだ結構あった。
故に今は近くの施設の警視庁に行き自分たちがいないうちに訪れた参加者に先ほどの眼鏡の男とそれに操られる男の危険性を伝える、それが自分の使命だ。
そう考え彼が警視庁についたのがおよそ十数分前、内部をざっと探したが参加者の姿は見当たらず、警視庁は諦めそうそうに移動しようかと彼が警視庁をでた時だった。

「ん?」

外部にあったバイクとその横のトラック、数時間前ここに来た時も見つけてはいたがどこか違和感がある。
しかし何が違うのかまではわからない、自分の思い違いだったのか。
どこか煮え切らない思いを抱きつつ彼がバイクから目を離そうとしたその瞬間だった。

「これは……?」

そう一人呟いてまたバイクを見つめる。
正確にいえば右グリップを、だが。
数時間前彼と天道がこのバイクに気づきつつもバイクを使用できなかった理由、それが右グリップが無かったためなのだ。
天道は使えないならそれまでとすぐ思考から切り捨てていたようだが巧は違かった。
もしかすると、彼のもとの世界での愛車、オートバジンも似たような性能を持っていたために頭の片隅に引っ掛かっていたのかもしれない。
しかし、バイクがひとりでに動き、右グリップを取り付けることなどできるはずもない。
故に近くに参加者がいるのではないか、ふとそう思うもしかし警視庁内に人の気配は感じられなかった。
つまり自分の支給品として配られていたバイクのグリップを取り付け、この場から去った?
いや、さすがにそれはないだろう、この近辺で戦いが起こった様子は見当たらないため急いで去るを得なかった訳でもなさそうだ。
ならばまだこの近くにいるのか?そう思い、巧は少し身構える。
だがいるとしたら果たして何処に?思考した瞬間に巧の眼に目の前のトラックが映る。
これも数時間前は鍵がかかっていて入ることの叶わなかったものである。
そんな都合のいいことはないとは思うがもしやこの中にいるのか、そう思い彼が恐る恐るトラックによっていったそんなとき、ゆっくり、ゆっくりとだがトラックのドアが開き、そして一人の青年と目があった。

581 ◆nXoFS1WMr6:2011/12/09(金) 21:45:20 ID:ihFU3Pc.



二人の間を沈黙が支配した。
お互いまさか参加者がいるとは思っておらず、油断した状態であった。
しかし、先に冷静に場を処理したのは純一だった。
彼は明らかに敵意を向けている遭遇者にむけて自分は無抵抗だということを示すため両手をあげ、デイパックを投げた。
無論、襲いかかってきた時やデイパックを持って逃げようとした時用にいつでも真の力を解放できるように身構えつつもそれを悟られないようにし――。

「俺は志村純一って言います、この殺し合いには乗っていません、もしよければ俺と情報交換しませんか?」

可能な限りの善人の行動を使って自分に敵意が無いことを示す。
最初に遭遇した時の第一印象から彼が積極的に殺し合いに乗っていないことは分かった。
故にこの行動をした際相手がどう動くか大体の見当は付いている。
あまりにも手際のよい志村の動きに遭遇者は驚きつつも言葉を紡ぐ。

「お、俺も殺し合いには乗ってない、俺の名前は乾巧、よろしくな」

ゆっくりとだがしっかりそう答えた男の名前に志村は少しうろたえざるを得なかった。



それから数分が経ち彼等は協力して外に放置されていたバイク、トライチェイサー2000をGトレーラーの中に運び込み、それから情報交換を行っていた。
まず話し出したのは巧だった、それは数十分前に起きた惨劇についての情報のこと。

「……つまり、あなたは約一時間前にその驚異的な戦闘能力を持つ二人の参加者と戦い、同行者である天道総司さんを失ってしまったんですね」

巧は黙って、しかし強く頷く。
そしてどんなに嘆いても一度消えた命はもう戻らないと知りつつも強く答えた。

「俺はあの時逃げることしか出来なかった、もうあんなことは繰り返させないって強くそう思う」

強く、確かな気持ちで以ってそう告げる。
しかし、それを聞く志村の表情はどこか悲しげで、何かとても後悔してるようにも見えた。

「俺もあなたと同じです、俺はあの時逃げることしかできなかった」

582 ◆nXoFS1WMr6:2011/12/09(金) 21:46:16 ID:ihFU3Pc.

そう言いながら彼が懐から取り出したのは黄金に輝く、彼が数十分前まで持っていたものと良く似ている物だった。
そしてその物に描かれていたアルファベットはT、つまりそれは自分の探していた人物の持っているはずの物だった。

「なっ!?タブーだと!?なんでお前が持ってんだよ!」

それは自分達がこの場に来て初めて看取った心優しき男、園崎霧彦の妻である園崎冴子が持っているはずの物だった。
驚愕の表情で志村に言いよるが彼は悲しそうな顔をしたまま言葉を続けた。

「そうですか、彼女はあなたの知り合いだったんですか、本当にすみませんでした」

泣きそうな顔でそう言う志村を見て思わず巧の勢いは失われてしまう。

「いきなり怒鳴って悪かった、でも本当になんでお前がそれを持ってんだ?」
「はい、あれは放送後すぐの東京タワーでのことでした」

それから彼は話を続けた。
放送前からホテルで遭遇した天美あきら、園崎冴子、野上良太郎、村上峡児達の集団と行動をともにし、放送直前に東京タワーまで移動。
そこで放送を聞き、自分の先輩である剣崎一真らの死に嘆いていた時、突然野上と村上が東京タワー内を見てくると言い出し、自分達が下で待っているとあまりにも帰りが遅いので迎えに行こうとした瞬間――。
――東京タワーが爆発したのだという。
突然のことに驚きつつも女性二人を何とか爆風と瓦礫から守りぬいたとき舌打ちとともに二人が現れたというのだ。

「村上が……」
「はい、恐らく彼らは東京タワー内部で打ち合わせをし、事前に仕掛けてあったか、自分たちで仕掛けるかした爆弾で僕たちを一掃するつもりだったんでしょう」

そしてその後村上の変身した携帯を使う黒い仮面ライダーとの戦闘となり、その圧倒的な戦闘能力に三人がかりでも軽く倒されたらしい。
その志村の言葉に巧は驚愕する。
今、確かに携帯を使った黒いライダーに村上が変身したといったか?

583 ◆nXoFS1WMr6:2011/12/09(金) 21:47:07 ID:ihFU3Pc.

「おい、志村、一つ聞いていいか、その仮面ライダーってもしかして黒のスーツに白のラインの入った奴じゃなかったか?」

多少その後に来る答えに巧が怯えつつも聞いておかなければいかない質問をする。
彼の脳裏にいるのはあのどこか気弱な、しかし優しい笑顔を持った自分の戦友、三原修二である。
もし村上が変身した黒いライダーが三原の持っているはずのデルタであるなら、いろいろ納得がいく。
東京タワー内部に長くいたことももしかしたら三原からデルタを奪い、殺害するのに必要な時間だったのかもしれない。
もしその場ではデルタを奪われただけだとしても結局タワーの爆発に巻き込まれてもしかしたら今は瓦礫の中に埋まっているかもしれない。
だとしたら自分はまた大事な者を一人失ったことになる、悲しさと自分へのふがいなさで心がぐちゃぐちゃになる寸前の彼を救ったのは他でもない志村だった。

「?……いいえ、村上が変身したのは黒の鎧に金のラインの入った仮面ライダーでした。本人はオーガとか言ってましたが」

その言葉に巧はもう一度驚愕する。
黒の鎧に金のラインの仮面ライダー、オーガ?
そんなもの見たことも聞いたこともない、だが志村の言うオーガの能力は明らかに他のライダーズギアと同じようなものであった。
どういうことだとまたも頭を悩ませた巧はしかし一応三原が村上には殺されていないことに安堵する。

「あの……続けてもいいですか?」
「あぁ、すまねぇまだ話の途中だったな」

そうして志村は話を戻した。
呆気なく守るべき二人の女性は惨殺され、自分はただ彼女らのデイパックを持って逃走することしかできなかった。
涙ながらにそう語る純一のことを巧が責められるはずもない。
巧はいまだ泣く純一を慰め、そして情報交換を再開した。
この場に設けられた変身制限について。
自分が放送前に戦った軍服の男ゴ・ガドル・バ他危険人物について。
大ショッカーを倒すためより多くの参加者との協力を目指し仲間である名護啓介達とE−5の病院地区に夜の12時に集合する予定。
そして――。

584 ◆nXoFS1WMr6:2011/12/09(金) 21:48:33 ID:ihFU3Pc.

「ガイアメモリのある世界の人物が首輪を解除できる可能性があると?」
「あぁ、俺たちと同じように大ショッカーを倒そうと考えてる奴が考えたらしいんだが……、俺の遭遇した園崎霧彦って奴は全然そんなこと言ってなかったんだよな」
「えぇ、俺と行動していた園崎冴子さんもそんなこと全く口にしていませんでした」

その純一の言葉に巧は首を傾げる。
本来この話題は数時間前の名護たちとの情報交換の場で言えたならすべて解決したはずなのだが、あの時巧は放送で知らされた仲間たちの死を整理するので精一杯でとてもじゃないが情報交換にちゃんと参加していたとはいえなかった。
ならば天道が指摘してくれればよかったのにとその後どんなことを話したのか彼に巧が聞きそれを愚痴ったときあの男はまたしても不敵に笑って言ったのだった。

「おばあちゃんが言っていた、どんな些細なことでも疑うより信じるほうが楽だ、とな」

そんなことを言ったって一応名護たちに霧彦のことを伝えておいたほうが良かったのではないか、そう言おうとも一瞬思ったがやめた。
この会話をこの二人の間で続けていても無意味だと思ったため。
このことを今うじうじ言っても名護たちはここにいない、故にこのことを話すのは12時に病院で集まったときでも遅くないはず。
そう考え自分の少し前を歩く天道に追いつこうとしたときだった、今となっては忌々しいあの銃声が聞こえてきたのは。

「一応、俺とおまえの間で『ガイアメモリのある世界』の人物ならだれでも首輪を解除できるわけじゃないのはわかってるんだが……」
「はい、問題はだれなら首輪の解除が可能なのか、というよりそもそもそんな人物いるのかどうか、ですよね」
「あぁ、もう頭痛くなってきたぜ、そんな奴のことあいつは一言も話してな……」

そういった時に巧の言葉は止まる。
待てよ、本当にそんなこと一言も言っていなかったか?よく思い出せ、この頭の引っ掛かりはなんだ?
その時、ふと彼は思い出した、一人だけ首輪の解除のできる可能性がある人物について霧彦が触れていたことに。

「そうだ……、フィリップって奴は確か仮面ライダーWってのの頭脳的存在で理由はわからねえが分かりやすく言えばありえねえほど頭がいいらしい」

霧彦は幾度となく戦った敵でもある仮面ライダーWのことを冷静に観察していた。
その際、仮面ライダーWの右側、つまりフィリップがいつも自分達が世に送り出したドーパントの弱点を調べ実行に移しているのだ、という結論に至った。
霧彦によれば地球の記憶をそのまま具現化したドーパントの能力を正確に分析するのはエリートである霧彦自身も出来ないと断言していた、そのためそれを初見で冷静に分析するフィリップの力があれば首輪の解除も夢ではないといっていいだろう。
それを志村に説明し、次に今後の目標を立てる。
まず夜12時に集合となっている病院に今から向かい、禁止エリアになる前に病院内の医療道具を出来る限りGトレーラーに詰め込む。
そうすれば病院が禁止エリアになり傷の治療に西側の病院まで行かなくてはいけないという事態を防げる。
二人の行動方針はこれで決まり、巧は病院に向かって運転を始めた志村の横に座った。

(村上……)

585 ◆nXoFS1WMr6:2011/12/09(金) 21:49:24 ID:ihFU3Pc.
彼が思考しているのは元の世界でも結局自分達が倒すことの叶わなかった強敵村上峡児について。
オーガとかいう仮面ライダーに変身したことについても気になるがそれより村上が霧彦の妻を殺したということのほうが彼にとっては大事だった。

(村上、それに野上良太郎、お前らが今どんなに強いのかは俺はわからねぇ、でもお前らは絶対に俺が倒す!)

最初、志村の体から血の匂いがしたのはやはり自分の勘違いではなかった。
しかし一瞬彼を疑ってしまったことを逆に巧は悔やんでいた。
彼は他の参加者を殺すばかりか、自分には出来なかった園崎冴子を守るという使命を果たそうとしていた。
たとえそれが失敗に終わったとしても、同じように天道を見殺しにしてしまった自分にどうこう言う資格はない。
そして次の瞬間、彼の心に芽生えたのは謝罪の気持ち。

(霧彦、すまねぇな、お前の嫁さん守るって約束したのによ)

今、巧の心は霧彦への罪悪感でいっぱいだった。
彼から託されたナスカメモリは敵に奪われ、挙句彼に必ず守ると約束した彼の妻が死ぬのを自分は防げなかった。
しかし、だからこそそれを伝えてくれた志村には感謝の気持ちを抱くと同時に彼の心には新たな思いも芽生えていた。
霧彦を殺したあの薄笑みの優男とその妻の命を奪った村上峡児と野上良太郎への激しい怒りが彼の中で渦巻いていた。

(天道、霧彦、俺今度こそやってやる、絶対に志村をお前たちのところへは行かせない、俺がこいつを今度こそ守り抜く)

それゆえにまた新しく出来た仲間である志村純一は、いやそれだけじゃないもうこの場にいるすべての罪なき人を絶対に天道たちのところへは行かせない。
今度こそは絶対に自分の命に代えてでも守り抜く、その強い正義の炎が巧を動かす原動力となって、巧は、Gトレーラーは闇を進む。
横にいる男が霧彦の妻を殺した男だと気づかぬまま。

586 ◆nXoFS1WMr6:2011/12/09(金) 21:50:20 ID:ihFU3Pc.



(園田真理から聞いてはいたが……ここまでお人よしとはな)

志村純一はGトレーラーのハンドルを握りながら思考していた。
先ほどから行動を共にしているこの男、乾巧の名を彼は知っていた。
それはこの殺し合いの開始後早々に殺害した女性、園田真理が情報を教えてくれていたため。
彼女は一応自分の世界の仮面ライダーの中では一番信用できると語っていたがまさかここまでとは。
正直、園崎冴子について知っていてくれた上、村上峡児の敵対関係にあったのは自分にとって最高の出来事だった。
あとはそのまま園崎冴子、天美あきら殺害の罪を自分にとって現在最大の問題である自分が殺し合いに乗っていると知っている野上良太郎と巧の敵でもある村上峡児になすりつければ全てがうまくいった。
野上はともかく、村上に関して言えばこの殺し合いで今のところ誰も殺してないだろうとはいえ、元の世界でやっていたことがやっていたことなので罪をなすりつけてもすんなりと納得された。
まぁ奴らの汚評を広められたのが今回一人だけだったとはいえ、噂はたちまち広がっていくだろう。
一人に話せば伝染病のようにたとえそれが誤解であっても先に回ってきた噂を信じてしまう、それが愚かな人間という生き物なのだ。
そして何故彼が先ほど自分で馬鹿馬鹿しいとまで表現した激戦地区になっているかもしれない病院に行くことを自ら提案したのか、それは先ほどまでとは事情がかなり変わったためであった。

(首輪を解除できるかもしれない魔少年、フィリップか、面白い……)

それは先ほど巧から聞いた首輪が解除できる可能性が最も高いとされる少年のことであった。
この忌々しい首輪さえ外れればいずれ世界を支配する自分をこんな戦場に投げ込み、ゲームのコマとして扱った大ショッカーの連中を皆殺しにするのも悪くない。

(いや、奴らは俺でさえ気づかない内にこんな戦場に送り込むことのできる奴らだ、下手なことは考えないほうが身のためか)

しかし、今現在彼らの技術力は自分の世界にあったすべての物を超越している事を考え、その考えをやめる。
まぁとりあえず首輪さえ解除できればどうとでもなる、故に今はそのフィリップが行きそうなところを優先していこうとしているのだ。

(この俺にここまで気を遣わせるとは……、これで首輪の解除は僕にはできません、なんていったらどうしてやろうか)

別にフィリップであれば必ず首輪の解除ができるという保証はない。
しかし、首輪に彼らの世界の技術がつかわれているのは事実、そのため今はその可能性を信じるしかないだろう。
フィリップについての思考はここでやめ、彼はまた違うあることについて考え始める。

587 ◆nXoFS1WMr6:2011/12/09(金) 21:50:51 ID:ihFU3Pc.

(石を持った眼鏡の男に、それに操られる男……確かライジングアルティメットと言ったか)

そう、次に彼が考えているのは先ほど乾からもたらされた超危険人物である二人組のことについてだ。
乾の話からするにその眼鏡の男自体に洗脳能力はなく、彼が持っていたというその石に力があると考えていいだろう。
更にその石で乾やその同行者であったという天道総司という人物を洗脳しなかったことを考えるとその石の能力はライジングアルティメットとやらに変身する男にのみ作用するものなのだと考えられる。
ここから導き出される答えはただ一つ――。

(もし俺がその石を奪えばその圧倒的な力は俺の物となるのか?)

園田真理から聞いた乾巧の力は恐らく彼女の世界の仮面ライダーでは最も強いと言っていいとまでいっていた。
そんな男を更にもう一人加えてもまったくもって歯が立たないとまで言わしめるその実力に志村はある種心躍っていた。
無論敵に回ればそれ以上怖いものはないだろうが味方にすればこれ以上心強いものはない。
それにそんな忠実で強力な僕がいればG4の装着もスムーズになり、今までの彼の問題点はほとんど改善される。
一応、ライジングアルティメットは戦いの最中一度も声を発さなかったと巧が言っていたため、彼から情報を得ることは難しい、或いは支配下に置いている限りは不可能だろう。
しかしそこまで強い僕が手に入り、しかも首輪を解除することができたなら今までの自分の他者の隙を狙い殺すではなく、純粋に他の参加者に会ったらそれを殺すという風に少しこの殺し合いに積極的になるのもいいかもしれない。
志村は気付けなかった、いいこと続きで少し注意力散漫となった彼を鏡の中から見つめる複数の影がいたことに。



東京タワーが爆発した後、数体の仲間を失ったゼールたちはその原因ともいうべき男を追っていた。
男の名は志村純一、東京タワー爆破後、二人の女性を襲い殺害した彼に全くもって襲える隙が無かったわけではない。
というよりむしろ彼が警視庁についてからはいくらでも彼を襲える瞬間はあった。
傷を負っているとはいえ、未だ残る仲間たちとともに鏡の中から奇襲すれば恐らく純一になすすべはなかっただろう。
なのに何故彼らは乾巧という新しい餌が増えた今も純一を襲おうとしないのか。
それは純一の持つある一枚のカードの持つ効果のせいであった。

――SEAL――

それは鏡の世界に存在するミラーモンスターの攻撃を防ぐための封印のカード。
たとえその効果に気づいていないものが持っていようと、ただ持っていればその効果を発揮する。
しかし、何故それを志村が持っているのか?
元々それはこの場において紅渡が殺害してしまった男、加賀美新の持っていた物であった。
このカードは説明書を読んだ園崎冴子が護身用に自身のポケットにしまっていたものであり、それゆえ紅渡もその存在に気づかぬまま彼女のそばを去ってしまった。
そして、その些細な見落としが今、志村純一の命を支えているのだ。
もし、今後戦闘において志村が自身を狙っているモンスター、及び自身の持つ封印のカードがそれの出現を邪魔しているのだと分かり、彼がこのカードを何かしらの方法で消去、或いは気付かずとも誰かの手で破壊されてしまった場合、その時にはガゼールたちは情け容赦なくその場にいるものを食らいつくすだろう。
その時をひそかに待ちつつ、ゼールたちは傷を癒していた。

――それぞれ違う思惑を抱いた二人の男に複数のモンスター――
――それらすべてを乗せたGトレーラーは走る――
――これから先に待つであろう、究極の闇とそれに相反するこの場での希望に向かって――

588 ◆nXoFS1WMr6:2011/12/09(金) 21:51:24 ID:ihFU3Pc.

【1日目 夜中】
【E−6 道路(Gトレーラー内部)】

【乾巧@仮面ライダー555】
【時間軸】原作終了後
【状態】疲労(中)、ダメージ(大)、深い悲しみと罪悪感、決意、ナスカ・ドーパントに50分変身不可、ウルフオルフェノクに50分分変身不可、仮面ライダーファイズに1時間変身不可、右手に軽い怪我と出血(ほぼ完治) 、Gトレーラーの助手席に乗車中。
【装備】ファイズギア+ファイズショット+ファイズアクセル@仮面ライダー555
【道具】支給品一式×3、ルナメモリ@仮面ライダーW、首輪探知機、霧彦のスカーフ@仮面ライダーW 、ディエンド用ケータッチ@仮面ライダー電王トリロジー、サバイブ(疾風)@仮面ライダー龍騎
【思考・状況】
基本行動方針:打倒大ショッカー。世界を守る。
0:天道の遺志を継ぐ。
1:今度こそだれも死なせない。
2:園崎夫妻の仇を討つ。
3:仲間を探して協力を呼びかける。
4:間宮麗奈、乃木怜治、相川始、それと特に村上峡児、野上良太郎を警戒。
5:霧彦のスカーフを洗濯する。
6:後でまた霧彦のいた場所に戻り、綺麗になった世界を見せたい。
7:橘朔也、日高仁志、小野寺ユウスケに伝言を伝える。
8:仲間達を失った事による悲しみ、罪悪感。それに負けない決意。
9:首輪を解除するため、『ガイアメモリのある世界』の人間(フィリップ優先)と接触する。
10:石を持った眼鏡の男(金居)とそれに操られている仮面ライダー(五代)の危険性を他の参加者に伝える。
【備考】
※変身制限について天道から聞いています。
※天道の世界、音也の世界、霧彦の世界、志村の世界の大まかな情報を得ました。
※参加者達の時間軸に差異が出る可能性に気付きました。
※志村の血の匂いに気づいていますが、それはすべて村上たちのせいだと信じています。

【志村純一@仮面ライダー剣MISSING ACE】
【時間軸】不明
【状態】軽い全身打撲、Gトレーラーを運転中
【装備】グレイブバックル@仮面ライダー剣MISSING ACE、オルタナティブ・ゼロのデッキ@仮面ライダー龍騎、パーフェクトゼクター@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式×3(ただし必要な物のみ入れてます)、ZECT-GUN(分離中)@仮面ライダーカブト、ファンガイアスレイヤー@仮面ライダーキバ 、アドベントカード(SEAL)@仮面ライダー龍騎、ガイアメモリ(タブー)+ガイアドライバー@仮面ライダーW、トライチェイサー2000A@仮面ライダークウガ 、G3の武器セット(GM-01スコーピオン、GG-02サラマンダー、GK-06ユニコーン)@仮面ライダーアギト、G4システム@仮面ライダーアギト
【思考・状況】
基本行動方針:自分が支配する世界を守る為、剣の世界を勝利へ導く。
0:G4に興味、使う機会があれば使う。
1:病院に行き、フィリップを探す。
2:人前では仮面ライダーグレイブとしての善良な自分を演じる。
3:誰も見て居なければアルビノジョーカーとなって少しずつ参加者を間引いていく。
4:野上と村上の悪評を広め、いずれは二人を確実に潰したい。
5:ライジングアルティメットとやらを手中に置いてみるのも悪くない。
6:ライジングアルティメットを支配し、首輪を解除したら殺し合いに積極的になるのもいいかもしれない。
【備考】
※555の世界、カブトの世界、キバの世界の大まかな情報を得ました。
※電王世界の大まかな情報を得ました。
 ただし、野上良太郎の仲間や電王の具体的な戦闘スタイルは、意図的に伏せられています。
※冴子から、ガイアメモリと『Wの世界』の人物に関する情報を得ました。
 ただし、ガイアメモリの毒性に関しては伏せられており、ミュージアムは『人類の繁栄のために動く組織』と嘘を流されています。
※名簿に書かれた金居の事を、ギラファアンデッドであると推測しています。
※放送を行ったキングがアンデッドである事に気付いているのかどうかは不明です。
※封印のカードの効果に気づいていません。

【全体備考】
※ゼール軍団は志村を狙っていますが、封印のカードにより今は攻撃できません。
※ゼール軍団が何が何匹死んだのかは後続の書き手さんにお任せします。
※Gトレーラー内にはG4の充電装置があります。
※G4は説明書には連続でおよそ15分使えるとありますが、実際どのくらいの間使えるのかは後続の書き手さんにお任せします。
※G4を再度使用するのにどれくらい充電すればいいのかは後続の書き手さんにお任せします。
※トライチェイサー2000A、及びG4システムはデイパック内ではなくGトレーラー内に置かれています。

589 ◆nXoFS1WMr6:2011/12/09(金) 21:53:14 ID:ihFU3Pc.
これで修正投下は終わりです。
まだ問題点等ありましたらお申し付けください。
あ、あとサブタイは前回と同じく『狼と死神』でお願いします。

590 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/09(金) 22:48:11 ID:VDZgbzr.
投下乙です。
ただ、どうしても個人的に引っ掛かる部分だけ。

>>「俺はあの時逃げることしか出来なかった、もうあんなことは繰り返させないって強くそう思う」

これはたっくんの性格だと、強くそう思うなんてややくどい言い方な気がするんですよね

>>「俺はあの時逃げることしか出来なかった……だが、もうあんなことは繰り返させねえ」

とかの方が彼らしいかなぁ、とだけ。指摘というほどではなく、あくまで個人的な意見ですが。

591 ◆nXoFS1WMr6:2011/12/09(金) 22:52:41 ID:ihFU3Pc.
わかりました。
では巧のセリフをそのように修正します。
他に何かあればまたよろしくお願いします。

592二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/12/10(土) 13:33:09 ID:weeoF2Q6
細かいことだけど「園崎」じゃなくて「園咲」が正しいです

593 ◆nXoFS1WMr6:2011/12/11(日) 07:46:17 ID:ZlWMBtzg
修正版投下後、特に反対意見が見られなかったため期限を過ぎていますが本スレに投下……したいところなのですが今日1日家にいられないため、期限を過ぎてはいますがその他に作品に問題がなければ、誰か代理投下して欲しいです。

594二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/12/11(日) 08:37:34 ID:TyBtiCno
>>593
それ自体は別段構わないと思いますが、今回も実質的な期限を超過してからの本投下となるのは問題ではないのでしょうか?
氏にも都合があるとはいえそれなら金曜日の修正版投下した時点で『本投下に関してですが、投下の時間が取れない為1.2日時間遅れるかもしれません』という旨を連絡すべきでは無いでしょうか?
>>574にもある通りプライベートが忙しいならその旨を連絡と書かれていたと思うのですが。
1月反省したと氏はおっしゃっていますが、それが行動に表れているとは思えません。

595二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/12/11(日) 19:30:15 ID:2jTfq3qE
俺は別にかまわないと思うけどなぁ。
ていうか問題ある作品でも本スレに投下した場合、
本スレ投下→問題点指摘→期限通過しても修正スレに投下は大丈夫なのに、
不安があって仮投下した場合、
仮投下→問題点指摘→修正案を修正スレに投下→様子見24時間以上→本投下
までが期限内って明らかに難易度違うだろ、仮投下の時点で少し期限を延ばすくらい必要じゃないか?
今回だってそりゃ金曜日に先に言ってりゃいい話だけど急用とかだったらどうも仕様がないし。
574の2でとらえてたらこういうことも起こりうるよ。
まぁ急用なら俺は目を瞑るし、そうじゃなく前から予定されてたことなら議論の必要がある、って感じでいいんじゃないか?

596 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/11(日) 19:55:54 ID:eZoYhnyM
事後報告ですが、拙作『防人』の誤字脱字をwikiで修正させて頂きました。問題ありましたらまた指摘お願いします。

>>594
確かに◆nXoFS1WMr6 氏が期限を守れなかったことはこれが初めてというわけではありませんし、反省が実際の行動に
現れているとは言い辛いと思います。
しかし氏にも悪気があるわけではないと思いますし、別に期限内に仮投下された修正版の『狼と死神』の内容自体に
大きな問題があるわけではありませんので、今回のSSは本投下・wikiへの収録を自分も希望したいです。

ただ、仏の顔も三度までという諺もありますし、こんなことを言うのは心苦しいですし自分が口にする資格があるのか
はわかりませんが、氏が次にまた同じことを繰り返した場合は例えSSに問題がなくても然るべき処置を取る形にする、
ということでどうか今回だけは許して上げて頂きたいです。今回は修正版投下から24時間後だと残り一時間しかなく、
それまで意見を待っていていざ投下という時に急用が入ったり体調を崩したりすればどうしようもないと思いますし、
当初のスケジュールが狂ってしまったという可能性もありますので。

しかし不満に思われている方もいらっしゃるので、氏に関しては失礼かもしれませんが今後しばらくは予約や仮投下
のたびに次にいつ顔を出せるのかを予め明記し、その指定日に現状を報告する形を取っては頂けないでしょうか。
無論その時までに本投下できていれば何も問題はないですし、急用が入れば仕方がないことですが、もし予定日に
何も連絡がなく期限までにも顔を見せることが出来なかった場合は、今後は一切議論なく一旦予約破棄という形に
なる、という形を取ることを僭越ながら提案させて頂きます。

597二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/12/12(月) 20:31:17 ID:6sHlTfWo
今回に関しては仮投下スレへの投下が間に合っているから採用する事に異論はありません。

ただ、やはり氏の期限のスタンスのいい加減さが反省されていないのは確かだと思うので今後同じ事が繰り返された場合は>>596の提案通り破棄にすべきだと思います。
最低限、迅速な連絡さえ心がけてくれれば何の問題もないわけなので難しい要求ではないとは思います。

氏が反省していないと判断する一番の理由についてですが、
散々期限については何度も指摘したにも拘わらず、殆どスルーしている所です。
一ヶ月以上反省したといっても、それは予約や投下を控えただけでしかなく、それさえ過ぎれば許されるというものではありません。
実際の行動に表れてくれなければ、反省の意味がありません。氏はこの辺りの所をもう一度真剣に考えていただきたいのですが。

598 ◆LuuKRM2PEg:2011/12/12(月) 21:28:27 ID:o1R2kqlc
それでは、◆nXoFS1WMr6氏は今後、予約や仮投下の際は◆/kFsAq0Yi2氏が提案したように
次はいつ顔を出せるのかを連絡して、その日に現状を報告して頂くという形でよろしいでしょうか。
(それまでに投下が出来るのなら、そのまま投下しても問題はありませんが)

そしてもしも急用や体調不良で投下に影響が及ぶ場合、その度に連絡をしてそれが出来なかったら自動的に破棄して頂くという事で。
(ただし、その後の投下が本来の予約期限を大きく過ぎるのならば、破棄となりますが)

599 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/12(月) 22:04:16 ID:ryPut6Ug
◆nXoFS1WMr6氏に念のため、断って置きたい事があるので参りました。

>>596で自分が言いたかったのは、あくまで仮投下したらじゃなくて今回の場合は〆切り25時間前に仮投下したので
24時間指摘を待たなければならないことを考えると期限内投下が厳しい、という話をしただけで、仮投下したから
無連絡で期限超過しても構わないという意味ではありません。自分自身、何度か仮投下していますが今のところは
期限以内に本投下も行っています。そこを勘違いされたくはありません。

今回のようなケースの時は、予め自分で本投下できなかった時は代理投下をお願いしますと残しておくなどで対処
ができることでもありました。自分の勝手な解釈かもしれませんが、期限について再三に渡って読み手の方が心配
してくれたのに結果的に期限超過してしまったことが問題なのに、氏がその本質に気付いていないという風に
振舞っているように見受けられます。ご自身の予定がこれまでのように投下前後でも覚束ないなら、せめてこちらが
代理投下すれば良いのか破棄すれば良いのかなどの希望だけでも来れた際に残して行ってくださればよかったのです。

氏にもプライベートがあることはこちらも重々承知しているつもりなので、常にこの企画を優先せよなどとは自分は
言えませんが、反省しているというなら読み手の方が仰っているようにそれを行動で示す必要があると思います。
先程自分が愚考したように、プライベートが難しいのなら一度ここに姿を見せればそのたびに氏が来られなかった
場合の指示をこちらに残すなど、具体的な氏自身が批判されている点を把握した上でそれに対する回答を見せて、
反省しているということを誰の目にも明らかな形で示して欲しいと思います。

最後に、長文失礼しました。それとこれ以上話し合いを行う場合は本来の用途通り議論スレで行うことを提案します。

600 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/24(土) 22:39:21 ID:rbzWGYmY
予約分が一通り完成しましたが、様子見するべき要素もあるので仮投下させて頂きます。

601(タイトル未定) ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/24(土) 22:40:20 ID:rbzWGYmY
「……結局、得たものは何もなし、か」

 呟いたのは乃木怜治。言葉ほどは落胆の籠っていない声だが、フィリップは歯噛みする。
 病院に向かおうと提案したのはフィリップだったが、それを止めたのが乃木だった。彼が言うにはまだ金居との待ち合わせにまで時間がある、それに首輪解除のために異世界の技術を集めるなら、この警察署を一度調べてからでも遅くはあるまい……とのことだった。
 それ自体は事実であり、病院に亜樹子がいるかもしれないというのもフィリップの願望に過ぎない以上、強く反論することはできなかった。

 そうして一つ一つ、警察署内を見て回ることになったが……海東大樹と乃木怜治の両方が、戦う術を持たないフィリップを一人にはできないと、彼との同行を望んで来たことが厄介になった。
 どちらがフィリップと一緒に行動するかで乃木も海東も、表面上はあくまで穏やかにしながら決して引かず、不和が広がりそうであったために秋山蓮の進言もあって四人で内部を捜索することになった。
 そうして四人で隈なく調査し、最後に調べに入ったのがこの地下の実験室のような部屋である。警察組織で独自開発された兵器についての性能実験を主な目的とした部屋だったようだが、残念ながら目的に即したものは何も置かれていなかった。

「――海東大樹。君は何故、ここに入った時に驚いたような表情をしていた?」

 乃木が尋ねたのは、この場にいる男達の中では最もフィリップと付き合いが長く、またその態度に反して最も信用が置けると考えている人物――海東に対してだった。

「いや、僕の知っている世界の警察署と似ていたのに、大事な物があった場所に何もないんだなって思っただけさ」
「僕の知っている世界、か……」

 飄々とした海東の言葉にそう一人で、興味深そうに呟いた後、乃木はフィリップの方に向き直った。

「残念な結果になってしまったな」

 そこで乃木は言葉を区切り、フィリップの表情を見た後、再び申し訳なさそうな表情で口を開いた。

「……いや。提案者として、無駄な時間を掛けさせたことを詫びるべきか。すまなかったな、フィリップ」
「乃木怜治……僕は、そこまで……」
「いや、君が友人である鳴海亜樹子を心配しているのを知っているのに、道草を食わせてしまったからな。ここは謝罪させてくれ」

 尊大な態度と裏腹に、乃木はそう素直にフィリップに謝る。フィリップは思わず彼へと一歩近寄った。

「気にしないでくれ乃木怜治。仲間のことが心配なのは僕だけじゃない。だから、僕だけが甘えたことを言うわけにはいかない。君の提案は確かに徒労に終わってしまったが、理に適っていて、皆のために必要なことだった。同意しておいて結果が悪かったからと君を責めるわけにはいかない」

 フィリップの許容を聞いて、乃木怜治は「すまない」ともう一度だけ謝って来た。
 初対面が高圧的であり、亜樹子が殺し合いに乗った可能性をフィリップに提示したことから、フィリップは彼にあまり良い印象を抱いていなかったが……一方で乃木はそのことでフィリップのことを思い遣ってか、こんな風に気遣いを見せてくれていた。

「――それにしても。わざわざ上の電気を消す必要なんてあったのか?」

 乃木への印象をフィリップが改めていた頃、蓮がそう疑問を零した。

「秋山蓮。全員で固まって行動している以上、この上は無防備だ。わざわざ周囲にここに人がいますよと宣伝することもあるまい――参加者は俺達のような真っ当な人種だけではないのだからな」

 蓮に対し、フィリップとの会話で見せた心配りなどを感じさせない口調で、乃木がそう答える。

「だが、協力的な参加者が通りかかっても俺達に気づかず、合流できない可能性があるんじゃないか?」
「一理あるな。それは確かに惜しいことだが……背に腹は代えられん」
「まあ、ここを通り過ぎたなら、時間を考えると行先は病院だろうね」

 そこで、E-4エリアの方を狙い撃つかのように指を象り、口を挟んだのは海東。

「まだ余裕がないわけじゃないけど、乃木が言うには待ち合わせしている金居くんとやらはどうも怪しい……だから先に病院に向かって準備しておきたいということも考えると、そろそろ僕らも出発した方が良いんじゃないかな?」

 秋山くんが心配している行き違いになった他の参加者とも合流できるかもしれないしね、と海東は付け足す。
 彼の言葉に異論を挟む者はなく、四人は地下から一階へと戻った。

602(タイトル未定) ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/24(土) 22:41:14 ID:rbzWGYmY
 先陣に立つのは乃木怜治。単純に彼がそういうポジションを好むから――だけではなく、本人が危険人物からの不意の襲撃にもフィリップ達を護りながら対応し得る自信を持っているからだそうだ。
 その直ぐ後ろにフィリップ、海東、蓮と続く。皆が戦闘力のない自分を優先してくれていることに、フィリップは申し訳ないという想いを禁じえない。

(――翔太郎。君はどこにいるんだ)

 フィリップが求めるのは頼れる相棒の姿。状況に即さぬシュラウドへの反発心に大きく影響を受けているが――彼としかダブルにならないと決めた以上、フィリップがこれ以上同行者の足手纏いにならないためには左翔太郎との合流は至上命題だった。

 そうして裏口に隠してあったオートバジンを回収し、警察署から離れる時、彼らは結局気付かなかった。
 警察署の前に放置された、二台の車両――Gトレーラーとトライチェイサー、それらに変化が生じていることに。

 時刻は20時半過ぎ――死神が巨大な箱の中に潜んでから、未だ10分と経過していない時であった。







 それからおよそ40分後――ちょうどF-5エリアに足を踏み入れようかと言う時に、聞き慣れた耳鳴りがしたと思い、秋山蓮は振り返った。

「――どうしたんだい?」

 直ぐ前を歩く海東がそう疑問の声を投げて来たが、蓮はいや、と首を振った。

「――気のせいだったようだ」

 そうナイトのデッキと、警察署から持ち出して来た鏡の欠片をそれぞれ握り締めながら、蓮は正面を向き直る。

 一瞬、元の世界で嫌と言うほど耳にしたあの音――ミラーモンスターの気配を感じたと思ったが、改めて意識しても探り出すことができない。海東に告げた通り、気のせい――少なくとも今の自分達には関係ないことだと蓮は結論付ける。そうして先を行く乃木達に続くように、蓮も病院に続く道への歩みを再開しようとして、今度こそ確信を持って振り返った。

 後方を仰ぎ見たのは、またミラーワールドの存在を感知した、からではなく。
 自身の黒い姿を白く染めた、眩い光に気づいてだ。

「……あれは?」
「警察署の前に停めてあった車か……」
「Gトレーラーだね」

 オートバジンを手放した乃木が、疑問の声を上げるフィリップを追い越し減速する大型車両へと身構える海東の横に並ぶ。彼らよりも数歩前の位置に居る蓮は下がり際、Gトレーラーの運転席と助手席、その両方に人が乗っていることを確認した。

 三人の男が背後の少年を庇う形を取ったと同時、蓮が元居た位置よりさらに数メートル向こうでGトレーラーのタイヤが路面を噛み、その巨体を停車させた。
 照明が弱められ、獣の唸り声のようなエンジンの重低音が数秒続く。蓮が緊張しながら対峙していると、やがてその音は消えた。

 代わりに、その両端からそれぞれ一人の男をGトレーラーはその巨体から吐き出した。

「――何者かね?」

 そうどことなく高圧的な乃木の問いに、背の低い方の男が両手を上げて歩み寄る。

「突然申し訳ありません。でも、こちらに害意はありません」

 そう訴えながら一歩近づき、逆光が晴れて明らかになった男の顔を見て、海東大樹が息を呑んだのだが――生憎彼との間に乃木がいたため、また現れた二人の男への警戒に気を配っていたために、蓮がそれに気づくことはなかった。

「俺は、志村純一って言います。この人は、乾巧さん……殺し合いには乗っていません」

 そうして如何にも誠実そうな笑顔を浮かべる男と――どことなく感じの悪い顔つきの、茶髪の青年。二人は蓮達から、数歩の距離を置いて立ち止まった。

603(タイトル未定) ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/24(土) 22:41:53 ID:rbzWGYmY
 一方蓮達は、聞き覚えのある名前に思わず反応してしまった。

「乾……巧?」

 それは第一回放送の直前まで、蓮達が共に行動していた草加雅人が口にしていた男の名。
 彼が信用に足ると言っていた、仮面ライダーファイズだった。

「――何だよ」

 蓮やフィリップの視線に、どこか居心地が悪いかのように乾はそう返す。

 本来なら、信用できると聞いている人物との合流は――優勝狙いとはいえ、操られた五代に対抗すべくこの集団に潜んだ蓮にとっても本来は望ましいことだが、自分達を裏切り、騙していた草加雅人の言葉をどこまで信用して良いのか――その不安が、乾を値踏みするような目になってしまったのだろう。

「――いや失敬。殺し合いを否定し、愚かな大ショッカーの諸君を叩き潰そうと言うのは我々も同じだ」

 そこでまるで代表のように歩み出たのは、傲慢な態度を崩さぬ乃木怜治。どこか皮肉な笑みを浮かべて、二人の参加者を睥睨する。

「こちらも名乗らねばならんな。俺は乃木怜治――」
「――乃木怜治だと!?」

 乾巧は、乃木が名乗った瞬間にそう強い敵意を剥き出しにした。

「どうかしたかな?」

 そうあくまで軽く、穏やかに応対する乃木に、乾は夜目にもわかる険しい表情と、立ち昇るほどの怒りで以って一歩詰める。

「――殺し合いに乗っていないだと? 天道の世界を征服しようとしたワームの言うことなんて、信用できるかよ!」

 乾の弾劾を受けて、乃木が少し視線を鋭くし、フィリップや志村と名乗ったもう一人の男が驚いたように乃木を見た。
 蓮自身は、あの剣幕で告げられた乃木の秘密に対し海東がまったく反応を見せていない方に注意が行ったが。

「……なるほど。君は天道総司と会っていたのか」

 乃木はそう静かに呟き、それから可笑しそうに鼻を鳴らす。

「だが……我々も、君のことを完全に信用できるわけではないのだよ」

 何、と眉間に皺を刻む乾に対し、乃木は背後に立つ蓮達を指し示す。

「俺自身に面識はないが、彼らは放送の前まで草加雅人と行動を共にしていた――その彼から、君のことを信用できる相手だと聞かされていてね」
「草加と!?」
「だが、彼は裏切った――隙を見て彼らを出し抜こうと、密かに凶器を集めていたのさ。目的は、優勝による園田真理の蘇生だろう」

 大ショッカーの言葉を信じるとは愚かな男だ、と芝居気たっぷりに乃木が笑う。

「嘘を吐くんじゃねえ!」

 対して、乾は吠えた。乃木にさらに一歩詰め寄り、胸倉を掴む。

「あいつは前に真理が死んだ時も……人々を護るっていう使命を優先した。今更あいつが、真理が死んだからってそんな真似に走るわけがあるか!」
「――だが、同行者を欺いてまで彼らの武器を自分の手元だけに集めていたのは事実だ。協力し合い、殺し合いを打倒しようという人間が、何故そんな真似をする必要がある?」

 冷めた視線のまま乃木が乾の腕を掴み、力んで震える彼の手を自分の首元から無理矢理引き剥がさせる。

「そんな草加雅人の仲間だと言う時点で、君が嘘吐きじゃないと言う保証はない――それと俺がワームだというのも、理由があって元の世界で人類と争っているのは事実だが、今は大ショッカーを潰すため、君達異世界の人間とも協力したいと言っているのも本当だ」

 乾の手を掴んだまま乃木が振り返ったのは、後ろに立つ蓮達三人。彼は悲しそうな表情を作り、続ける。

604(タイトル未定) ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/24(土) 22:42:46 ID:rbzWGYmY
「――それでもやはり、人間以外の者を信じることはできないかね?」
「いや――信じるよ、乃木怜治」

 答えたのはフィリップだった。彼は一歩前に出て、乃木と乾の間に立つ。

「君の世界の事情については、後でもう一度じっくり聞かせて貰う――その時にまた、別の答えを出すかもしれないが、今は君を信じる」
「……ありがたいよ、フィリップ」
「その代わり、乾巧の話も聞いてあげて欲しい」

 フィリップに言われて、乃木は掴んでいた乾の手を解放した。彼は丁寧に手放したが、乾が乱暴に乃木の手を振り払ったため、粗雑な対応に見えたかもしれないが。

「――確かに草加雅人は嘘つきだったけど、乾巧が信用できる人物だと言うのは本当だと思うよ」

 そこで口を挟んだのは海東だった。

「おっと、別に乃木怜治が信用できない、と言いたいわけじゃないよ」

 視線の鋭くなった乃木に諸手を上げて見せ、海東は飄々とした様子で告げる。
 そこで蓮も口を開くことにした。

「……他人を騙すには、ある程度真実を混ぜる方が良いからな。乾巧が信用できる人間だと言う話は、事実だという可能性が高い」
「――ごもっとも、だな。失礼した、乾巧」

 乃木は慇懃無礼に乾に謝罪し、乾はそんな彼に対し顔を歪ませるが、横から彼の同行者が制止に入る。

「乾さん、落ち着いてくれ。確かにいきなりこんな目で見られて、嫌な気持ちになるのはわかるが――今はそんなことをしている場合じゃないだろ!?」

 真摯に訴える志村の姿に、舌打ちを交えながらも乾は頷く。彼は足元に視線を巡らせた後、何かに気づいたように顔を上げた。

「――待ってくれ。それじゃ草加は……?」

 彼が気にするのは当然、同郷の仲間の身。
 ステルスマーダーであるということが同行者に暴かれた以上、草加のその後は真っ当な道ではないだろう。蓮達からすれば勝手に見えても、乾の反応は当然と言えた。

「草加雅人は……」

 フィリップは、放送の直前に起きた悪夢を語る。彼らの頼れる仲間であった五代雄介が何者かの罠に嵌り、地の石によって操られてしまったということ。そうして変貌した五代を抹殺しようと、躊躇わず草加雅人が向かって行き――恐らく、カイザを遥かに凌駕したライジングアルティメットを前に敗北しただろうということ。

「ライジングアルティメットだと……」

 そこで乾が口を開いた。そうして呆然とした様子で、右手で額に当てる。

「じゃあ、あのカイザギアは……やっぱり草加の……」
「――っ、乾巧! ……君は、五代雄介と会ったのか?」

 平静を欠いた乾の反応からその事実に気付いたフィリップの問いによって、蓮達に緊張が走る。

「――五代さんなのかはわかりませんが、乾さんはライジングアルティメットと呼ばれた仮面ライダーと戦ったそうです」

 沈痛な面持ちの乾に代わり、彼の同行者である志村純一がそうフィリップに答えた。

「その際に、カイザギアという普通の人間が変身すれば死んでしまうベルトを使い、天道総司さんが自分を犠牲に乾さんを助けたそうで……」
「――待て。今君は、天道総司が死んだと言ったか?」

 聞き捨てならない、という風に反応したのは乃木怜治だった。

「ええ、悲しいことですが――」
「あの天道総司が……、か」

 あの乃木怜治が、そう噛み締めるように呟いた。
 悲しみの情などこれっぽっちも含まれてはいなかったが、その声に含まれた緊張は蓮が知る限り彼が見せた最高の物だった。

「――乾巧、その時の詳細を教えて貰えるか? 君らの装備はどういう状態だった?」

605(タイトル未定) ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/24(土) 22:43:17 ID:rbzWGYmY
「乃木怜治、どうしたんだ?」
「何より、ライジングアルティメットを操っていたのはどんな人物だった?」

 フィリップの問いさえ無視して、乃木はそう乾に問い詰めた。

「ライジングアルティメットという呼称がわかるのなら、それを呼んだ人物――つまりは、五代雄介を操った張本人も君は見たはずだ」
「乃木怜治、それは僕も興味深いことだけど……今の乾巧は辛そうだ。何よりまずは互いの情報交換も満足に済んでいないんだ。最低限、君以外の僕達も名乗るべきだろう」
「……そうか。そうだな、フィリップ」

 意外なほどにあっさりと、乃木はフィリップの制止に応じる。
 彼がフィリップにだけは態度が違う――それは蓮の勘違いかもしれないし、仮にそうでも単純に胸中を秘めたままの蓮自身や海東よりは、明確な正義を示すフィリップ少年の方が乃木も感情移入し易いだけかもしれないが、蓮がそんな印象を抱くのも無理はなかった。
 ましてや彼はワーム……つまるところ人間ではないらしいということがわかった以上、彼が首輪の解除に最も近いフィリップを必死に懐柔しようとしているのではないのかと、疑いの目を向けてしまう。

「聞き間違えじゃなかったのか!」

 その蓮の思考を遮ったのは、歓喜の表情を浮かべた志村だった。

「――フィリップくん、俺達は君を探していたんだよ!」







「――それじゃあ、クウガを操っているのは……」
「怪しいとは思っていたが……やはり殺し合いに乗っていたか」

 情報交換の後、海東大樹に続いて呟いた乃木が表情を歪めた。

「金居ィ……ッ!」

 乾巧から改めて語られた情報により、彼らはライジングアルティメット――五代雄介を地の石によって操った張本人が誰なのかを解き明かすことができていた。

 ――その情報は、純一にとっても望むものだった。

(まさか敵は同じ世界の参加者だとは……な)

 冴子の死を知り悲痛な表情を浮かべたまま黙り込んでしまったフィリップに、彼の姉を護れなかったことを謝り何とか励まそうとする善人の顔を被ったまま、純一は考える。

(恐らく奴はギラファアンデッド……同じ世界の住人とはいえ、協力は難しいだろうな)

 アンデッド同士である以上、このような場でも純一と金居は敵であることに変わりない。無論世界保存のために協力することはできるかもしれないが、そのためには最低限、志村純一という善人の仮面を脱ぎ捨てねばならない。しかもそれで確実に地の石を有する金居との同盟が成立するとは限らないのだ。純一自身、機会があれば本来の敵である金居のことを始末したいとすら思っているのだから。

(……もっとも、『志村純一』として振舞えるのも後どれぐらいか)

 先程の情報交換の場において――あるいは首輪解除の希望である以上に、フィリップ達と合流できたことは純一にとって大きな意味を持つ、ある一つの要素があった。

(まさか、既に姿を見られていたとはな……!)

 フィリップが乾に見せる物があると言って提示したのは、園田真理を殺したと目される白い怪人の姿。赤いフェイスカバーに、鮮血滴る巨大な鎌を片手で握るそれは――志村純一の真の姿、アルビノジョーカーの物だった。
 その写真を見せられた瞬間、衝動的にこの場に居る全員を殺してしまいそうだったが、身体が動き出すのを純一は必死に抑えた。実際問題、油断し切っていた乾とフィリップを仕留めることは簡単だったかも知れなかったが、それでも純一の行動を制したのは二つの視線だった。

 乃木怜治と、海東大樹――奴らからは、一切の隙が感じ取れない。
 隙がない、というのはある意味では間違いかもしれないが……少なくとも乃木怜治は、その傲慢な振舞いは隙だらけに見えても、この男にとってはそうではないと、純一は本能的に悟っていた。何より、自分がヘマを踏んだ覚えなどないが――こいつは先程から、常に純一の動きを視界に収めるように立ち回っている。村上峡児の時のように、純一が警戒されているのは明白だった。こいつもワームという怪人らしく、どうも純一は人間以外の相手との化かし合いは上手く行かないようだ。

606(タイトル未定) ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/24(土) 22:45:57 ID:rbzWGYmY
 海東大樹の方は、もっと露骨に純一を見張っていた。乾が乃木をワームだと告発した際も、その後の情報交換も、常に純一を視界に収めるどころではなく、純一に視線を向けていたのだ。乾から情報を聞き出していた今も、常にこちらを見ていた。
 二人の男から疑いの目を向けられているという状況は、この前に潜んでいた集団の状況を苦い思い出と共に思い起こさせるものであり、純一は内心舌打ちする。

「……村上峡児。野上……良太郎!」

 まさに今頭に浮かべた名を、傍らのフィリップが怒気と共に吐き出した。

「僕は必ず……君達を捕まえてみせる!」

 彼は風都の探偵だという。こんな状況下でも、肉親を奪われたのだとしても、憎しみに呑まれて仇の死を望むような人種ではないというのは、なるほど彼は立派な善人だろう。

「――フィリップくん。君のお姉さんを助けられなかった俺が、こんなことを言う資格はないのかもしれない。それでも、その手伝い、俺にもさせてくれ!」

 ――だが真犯人にあっさり騙されるのは、ただの道化でしかない。

 こちらの思惑も知らず、純一の熱弁に彼は少しだけ柔らかくなった表情で、「ありがとう」と返して来た。
 そんな少年に笑顔で応じながら、純一は今後のプランを練っていた。

 乾が期待していたフィリップでも、首輪を解除できる確証はないらしい。だが彼は既に首輪の内部構造について詳細を得ており、さらにいくつかの考察も纏めていた。純一の嘘に簡単に騙された甘い面もあるが、こと技術に関しては間違いなく傑物ということだろう。
 つまり、首輪を今すぐ外せるというわけではないようだが、フィリップが首輪の解除に最も近い鍵であることは確かなようだ。妙にフィリップに対して態度が甘かった乃木怜治も、おそらくは彼が首輪を解除し得る人材であることを見越し、この少年を懐柔しようとしているのだろう。となれば、奴はライバルと言うことになる。
 理想を言うならば、フィリップに取り入り、彼の信頼を得て誰よりも先に純一の首輪を外させられれば最高だ。そのまま即座にフィリップを殺害し、純一の参加者の首輪を解除できなくしてやれば、彼らと違って変身に制限がない――さらに言えばアンデッドとしての不死性を取り戻した純一が、この殺し合いにおいて圧倒的に優位に立てる。
 また、逆に純一の正体が暴露される時も、やはり真っ先にこの少年の命を狩り取らねばなるまい。正体がバレればフィリップに純一の首輪を外させることができなくなる以上、彼の存在は他の参加者を有利にする危険因子でしかないからだ。
 いずれにせよ、アルビノジョーカーの姿を知っている彼らを野放しにするつもりはない。
 これまで、ジョーカーの姿を見た者は全て死んでいる。死神の姿を見るのは、その者の命が潰えるその瞬間だけでなければならないのだ。それが生者に知られているなど論外だ。今はまだ純一と結びつけられていないが、いつ嗅ぎ付かれるかわかったものではない。
 邪魔な村上達の悪評を流すために今は生かすが、彼らが生きていることで純一が被る不利益がメリットを上回った時は……彼は殺意を刃の形に練り上げ、その上で鞘に隠す。
 下手に吹聴させないためにも、言い触らされた場合でも誰にジョーカーの姿を知られたのか――それを確認するために、しばらく彼らと同行することはもはや確定事項だった。
 一先ず、彼らと共に純一が目指すべき場所は、やはり……

607(タイトル未定) ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/24(土) 22:47:42 ID:rbzWGYmY
「……村上達だけじゃない。今は、金居だ」

 純一が考えていた通りのことを、フィリップが口にした。

「彼から雄介を助け出さないと」
「――となると、病院に行くということに変更はないだろうな」

 仲間を想うフィリップの真摯な主張に、乃木がそう具体的な方針を付け足す。
 ――純一の、期待通りの物を。

「金居を放置して奴に手札を与えるよりは、病院に来る可能性があるのなら罠を張る方が利口だろう。殺し合いに乗った愚か者だとわかった以上、遠慮することはない」

 待ち合わせしていたという割には、乃木の言葉は金居への遠慮と言ったものが一切ない。元々、少しでも自分に都合が悪くなれば潰すつもりだったのだろうと純一は推測した。
 殺し合いに乗っているかどうかはともかく、こいつはフィリップ達のように甘くはない――危険な相手だと、改めて認識しながら純一は一歩前に出て、力強く主張する。

「ええ。まずはその五代さんを助け出しましょう!」

 病院に向かい、おそらくそこに後から来るだろう金居をこのメンバーと共に迎え撃つ。それは純一にとっても好都合なことだ。金居から地の石を奪える可能性が生じると言うのは無論、そこでの乱戦を利用して乃木や海東と言った厄介な奴らを始末する機会も得られる。金居が来なくても病院は既に激戦区である可能性は高いが、それはそれで他の参加者を減らしつつ乃木や海東の隙を誘うなど、最終的な勝利のために利用は可能。
 目撃者の抹殺・フィリップの扱い・村上と野上の悪評を広げることなど、常に頭の中で整理なければならない問題は多いが、少なくとも何もせずどこにも行かずでは事態は好転しないだろう。病院に行くことで地の石の入手可能性など優勝に繋がるのなら、危険でもそれは虎穴に入らずんば、という奴だろう。何故虎なのかは知らないが。
 純一の真摯な訴えに、乾は強く頷いた。

「ああ。このまま放っておいたら、今病院に居る奴らが危ねえ……天道なら、迷わず行くはずだ」
「――もしも既に病院が戦いの舞台になっていたらどうするつもりだ? 後でライジングアルティメットとの戦いを控えているのに、わざわざ消耗するのか?」

 口を挟んだのは秋山だった。乃木怜治が乾に天道総司について詳しく聞いたため、その過程で何故カイザに変身する必要があったのか、という疑問の声が上がり、そこで彼らが変身制限を知らなかったという間抜けな事実が浮き彫りになった。

 既にそれを知っている乾が居なければ黙っていられたのだが――そうすれば、この高慢な乃木も軽薄な海東ももっと楽に殺せるというのに。

「――君達人間諸君には辛いことだろうが、状況によるとしか言えないだろうな」

 乃木は――実際は反応を伺うためだろうが、フィリップを気遣うようを一瞥して呟く。

「敵はあの天道が、本気を出せない状況だったとはいえ歯が立たなかったような相手だ。殺し合いに乗るような愚か者ならば、放置して金居にぶつけてやる方が良いだろう。――場合によっては、友好的な参加者を見殺しにしなければならないこともあり得るな」

 その主張にフィリップが申し訳なさそうに乃木を見るのを、純一は視界の端に収める。
 実際には残酷だなど夢にも思っていないだろうが、直前に少年を気遣う姿を見せたことや己が人外であることの強調で、乃木は人間ではないことを理由にして敢えて嫌われ役を引き受ける優れた人格の持ち主であると周囲に思わせようとしているのだろう。
 無論、純一の他にも勘の良い者にはこれが白々しい芝居だと勘づかれているだろうが、直前の視線で乃木が最も利用したい相手だろうフィリップにそれとなく主張したことで、本丸には十分に自身の偽りの姿を印象付け、好感を得る結果に繋げてみせた。
 単に蓮の言葉に対する彼の反応を見るための一瞥に、偽りの気遣いを混ぜただけで、だ。

 既にヒトに非ずと言う、対人での交渉に不利な事実をイレギュラーの乾に暴かれたにも関わらず、自身の人間蔑視も、本来の冷血さも表に出したままここまでこなすとは――

 ジョーカーの姿を厄介な奴に知られてしまっていたものだと、純一は内心舌打ちした。

「ふざけんじゃねえ!」

 そこで乃木に反発を見せるのは乾だ。元々乃木を敵視している上、純一とは違い本物の正義の仮面ライダーであり――天道総司の犠牲で生き残った彼には、これ以上善良な者を見殺しにする可能性など受け入れられないのだろう。
 ――こいつは本当に利用し易いなと、内心今度は嗤う。

608(タイトル未定) ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/24(土) 22:48:42 ID:rbzWGYmY
「てめぇ、何のために殺し合いを止めようって考えてるんだ、乃木……!」
「――無論、意味のない犠牲を出すなど愚かしい……そして殺し合いなどを強要して来る愚かな大ショッカーの諸君を許せないと思ったから、だが?」
「だったらてめぇは! どうして誰かを犠牲にするようなことを平気で……!」
「――俺は乃木に賛成だな」

 再び、乾の言葉に反発するように秋山が口を開く。
 彼の声色は微かに怒りを含んでいるような気がしたが――興奮している乾にはそのことが判別できた様子はないと純一は見る。

「聞くが乾、天道とやらの犠牲に意味はあったのか?」
「秋山蓮!」

 フィリップが強く窘める声を出したのに、純一も続く。

「秋山さん、何てことを言うんだ! 俺は天道さんを知らない、だけど彼はその命を犠牲にして、乾さんを助けた立派な仮面ライダーじゃないか!」
「そうだな……だったら乃木が言うのも、天道と同じ、意味のある犠牲じゃないのか? 何も犠牲を出さずに終わるような戦いじゃないだろ、これは」
「――っ、てめぇ!」

 純一の予想通りの秋山の返答に、激昂した乾が殴りかかった。

「待つんだ乾さん!」

 拳が振り下ろされる寸前、必死に乾にしがみ付きながら、そう純一は叫びを上げる。

「秋山さんが言っていることは――悔しいけど、事実だ!」
「志村――っ!」
「俺は……俺は、護れなかったんだ! あきらちゃんも……冴子さんも、一人も……!」

 涙混じりに、消え入るように訴える純一の様子に、興奮していた乾が平静を取り戻す。

「俺は、人を護るために仮面ライダーになったのに……誰も、女の子一人、護れなかった! 俺の助けが必要だったはずの人達を、俺は救えなかったんだ!」
「志村純一……」

 フィリップの同情を含んだ憐憫の声に、内心で純一は頬を歪めつつ、あくまで外見では涙を浮かべ、顔を皺くちゃにしながら、必死に乾に、その周囲の人間に言い聞かせる。

「ここで俺達がこうして言い争っている間にも、この会場のどこかで誰かが苦しめられているかもしれない……だけど俺は、その人達を救うことができない……できなかったんだ……!」
「志村、おまえ……」
「悔しいけど現実問題として、犠牲を出さないなんて無理だって、俺は認めるしかない……だけど、それでも!」

 そこで純一は双眸に涙を湛えたまま、秋山や乃木の方へ、強い意志を浮かべて告げた。

「……それでも、一人でも多くの人を護りたいんだ、俺は。きっと沢山の人を取り零す。その現実から目を逸らすなんてこと、俺にはできない。それでもこんなところで言い争いなんかして、届くはずの命が失われるなんて耐えられないっ!」

 掠れたような絶叫を上げ、それでも純一は声を出すことを止めない。

「今俺達がやるべきなのは、仲間割れなんかじゃないはずだ! 確かに犠牲は避けることができない。最終的に殺し合いを止めるためには、乃木さんの言うような、最悪の事態を考えなくちゃいけないことだってある……それでも、俺は! その犠牲を一つでも減らすために戦いたいんだ!」

 本当なら、そのためになら命だって惜しくない――ぐらい言っておけば、甘い奴らにはさらに効果的だったかもしれないが、かつてそれで野上良太郎に言い負かされた屈辱を、純一は忘れてはいない。
 やり過ぎなくらいの善人振りでは、逆に足を引っ張る結果にもなり兼ねないということだ。既に純一のことを警戒している輩がいる以上、その辺りの立ち回りは慎重にならざるを得ないだろう。

「だから、頼む乾さん……俺の前で、意味もなく争うのはやめてくれ……まして、いくら酷いことを言われたからって、暴力なんか振るっちゃいけない……俺達仮面ライダーの力は、誰かを傷つけるためじゃない――人を護るためにあるんだから」
「志村……」

 純一の涙ながらの訴えに、数秒視線を絡ませた乾は罰が悪そうにそっぽを向いた。

「……悪ぃ」
「良いんだ、わかってさえくれれば……」

 そう恥ずかしそうに目元を拭いながら、純一はほくそ笑む。

609(タイトル未定) ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/24(土) 22:50:03 ID:rbzWGYmY
 今の暑苦しい振舞いで十分、乾やフィリップの純一への印象を良い物にできただろう。さすがに乃木がこれでお目零しをくれるとは思えないが、乃木のような予防線も張らずに犠牲があって然るべしといった態度を見せた秋山に全幅の信頼を置くわけにも行くまい。彼を少しでも気にして、その分純一への警戒を弱めてくれれば幸いだ。
 その秋山も、乾の謝りこそしないが居心地が悪そうだった。彼もまた純一のことを十分、『善人』だと錯覚したことだろう。

「――ま、乃木が言っているのはあくまで最悪の場合だけどね」

 おおよそ、先の乾の暴走を自分の利益へと化した純一だったが――その彼にも読めない男の一人が、そう口を開いた。

「乾くんや志村さんのおかげで変身に制限が掛かっていること――その制限は同一人物が同じ姿に変身することに掛けられたものだということはわかったんだ。それならせっかくこれだけ頭数が揃ったんだし、それぞれの支給品を合わせればもしクウガを取り戻す前に戦いに巻き込まれても、消耗できる戦力ぐらいは捻出できるんじゃないかな?」

 海東が口にしたのは自身にとって厄介な主張だと、純一は舌打ちした。

「賛成だな。忌々しい変身制限とやらには俺も頭を悩ませていたところだ。リスクがあるとはいえカイザギアのようなものがあるなら、支給品にもう少しデメリットが抑えられ、資格者を選ばない変身アイテムがあっても良いはず……是非ともその恩恵にあやかりたいものだ」

 ほとんど間をおかずに、我が意を得たとばかりに海東の案に頷く乃木を目にして、純一は一瞬苦々しいものを表に出しそうになった。

 失態だった。乃木がフィリップへ着実に取り入るのを見て、善人としての『志村純一』を強調した。だがそれが結果として、海東の案を自然な形で呼び出す形になってしまった。

(まさか、嵌められた――?)

 笑みを浮かべる二人の男を見て、純一がそう感じてしまうのも無理はなかった。
 純一が取るべきだったのは――この二人が相手では難しいだろうが、手の内を隠すために会話を誘導することだった。最初に話題に出た草加雅人のこともある以上、装備の独占は純一のスタンスを彼らに知られることに繋がる。だが、彼らと装備の共有を行うということは……ただ必要な時が来れば相互に貸し与えるという関係ならともかく。仮に今変身手段を持たない者が居れば敵であるそいつを強化し、自身は変身アイテムを失って弱体化するという結果に繋がってしまうのだ。

「特に、フィリップは今戦う手段を有していないという……この場においてそれはあまりに危険だ。誰か変身アイテムが余っているという者はいないのかね?」

 ――噂をすれば、か。

 乃木の宣告に申し訳なさそうな顔をしたフィリップに、反射的に殺意が漏れそうになる。

 これは純一が避けなければならない展開だった。なのに純一はフィリップ攻略を乃木にばかり許すまいと、自ら墓穴を掘ってしまった……
 無論、乃木や海東が本当にそこまで把握しているという保証はない。だが海東の提案が、口にしただけの理由によるものと楽観視するより、草加雅人の暗躍を許した例から反省し、純一へと牽制球を投げたものではないかと疑ってしまう。

「――志村。タブーのメモリ、こいつに預けてやれないか?」

 ――そして、余計なことを言う馬鹿が一人……っ!

「タブーだって……!?」
「ああ。……志村が冴子から受け取ったんだってよ」

 姉の遺品に大きな反応を見せたフィリップに、乾がそうぶっきらぼうに――だが乃木へ向けた敵意とは程遠い、純一と出会った時のようなぎこちない優しさを込めて告げた。

 勝手に盛り上がるこいつらを本気で始末してやろうかとも思ったが、先の明るさに笑顔を浮かべた乃木の目が笑っておらず、純一を睨めつけているのを察し、再び思い止まる。

「――うん、わかったよ」

 純一は力強く頷いて、デイパックを肩から降ろし、中身を物色する。

「――本当は、俺の無力さを忘れないために持っておきたいと思っていたんだけど……」

 慎重に、穴のないように考えた言葉を紡ぎながら、純一は黄金のメモリを取り出す。

「確かにこれは、君が持っていた方が良い――冴子さんも、君の無事を祈っているだろうから」

 ガイアドライバーと共に、フィリップに冴子の遺品を手渡す。
 ――自分があれだけ苦労を重ねてようやく勝ち得た戦利品に、名残惜しさを覚えながら。

610(タイトル未定) ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/24(土) 22:52:05 ID:rbzWGYmY
「志村……純一」
「困った時は、俺のグレイブバックルも使ってくれ。きっと役に立つから」

 そう懐から取り出した自身の仮面ライダーの力を示し、純一はフィリップへ微笑んだ。
 懐に隠したままのもう一つの装備――オルタナティブのデッキだけは、秘匿しながら。
 表に出せば、誰に何と言われて奪われるかわかったものではないし、手の内を一つでも多く隠すことに損はないだろう。ここまで協力的な態度を見せれば、わざわざ純一の身体調査をしてデッキを見つけ出す真似もできまい。

「……随分武器が多いようだが、本当に園崎冴子と天美あきらの二人分と合わせただけなのか?」

 デイパックを覗きこみ、『武器』という単語を、警戒しなければ恣意とはわからぬ程度に強調しながら、乃木が尋ねて来た。
 こう振舞えば迂闊に疑えまい、と思った傍から遠慮のない奴だ。そう思いながら純一は、言外に疑われて傷ついた、という様子を偽装する。

「いえ、その車の中からもいくつか回収したものですが……草加さんのこともあったから、やっぱり気になるんですか?」
「いや、大ショッカーは随分不公平な支給をするのだなと思っただけだよ。俺の場合は、そのバイク以外にまともな支給品などなかったからな」
「――あれは俺のだぞ」

 極めて無難な返答を示す乃木に、そう乾が呟く。

「君のだって? おいおい、笑えない冗談だな。あれはこの俺の支給品だ」
「支給品とかじゃなくてだな、ありゃ俺のバイクなんだよ」
「――そうだろうね。そうだと思っていたよ」

 そこで乾に味方したのは、意外にも海東だった。

「君はファイズなんだろ? オートバジンは本来ファイズギアの一部である可変型バリアブルビークルだからね、本来の所有者は乾くんということだよ、乃木」
「何でおまえが――」
「何故君がそんなことを知っているのかな? 海東大樹……」

 胡乱げな乾を遮り、海東を威圧する乃木の問いに、庇うようにフィリップが前に出る。

「彼は、ファイズやカイザの存在する別の世界を知っている。だから、ファイズについて詳しく知っているらしいんだ」
「――それは、海東大樹に乾巧がファイズであるとわかった証拠にはならないんじゃないのか?」

 フィリップの言にも、乃木の追及は続く。純一も同じ思いだった。

「――僕の知っているファイズの世界でも、タクミという人物がファイズだった……二人のクウガと同じように、同じ名前の人物は同じライダーなんじゃないかと思っただけさ」

 だが乃木の態度もどこ吹く風と言った様子で、海東は飄然と答えた。

「ま、名前だけで断定できたわけじゃなかったんだけど、乃木の支給品だって紹介されたオートバジンを自分の物だって言い出したから、確信しただけなんだけどね」
「なるほどな……君はどうやら、以前から複数の世界について知っていたということか、海東大樹」
「質問は……まあ、車の中で受け付けるよ乃木怜治。今は単純に装備の確認が先だろう? Gトレーラーに乗れば、少なくとも運転手は装備のトレードに参加できなくなるわけだしね」

 海東の言に従って、それぞれが装備を衆目に晒し始めた。

 まず真っ先に動いたのはフィリップだった。二セット分の基本支給品の類に、スリッパなどはまったく興味をそそられなかったが、変身できずとも装備は豊富なようだ。特に、ジョーカーの姿を捉えた蝙蝠の機械を始めとした三種類のガジェットは十分有用性がある道具だろう。
 続いたのは乃木怜治だが……なるほど、先の問いは純一の潤沢な装備に本気で嫉妬しただけだった可能性も捨て切れない。最後に名簿だけ残ったデイパックの中身を見せたが、他は基本支給品と二枚の木の板だけだ。さすがの純一も同情を禁じ得ないし、改めてこの厄介な男を敵に回す場合、割に合わないと痛感させられる。明らかな強敵だというのに、勝利して得られる物がその勝利という事実以外何もないとは……。

611(タイトル未定) ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/24(土) 22:52:49 ID:rbzWGYmY
 海東大樹の示した支給品は純一にとって大いに価値のあるものだった。彼自身のライダーの力の他に、ランダム支給品として彼に渡されていた物――クラブのJ、Q、Kのラウズカードである。グレイブの戦力強化に繋がるため、純一は即座にそれを要求し、問題なく手に入れることができた。特にカテゴリーキングのカードは純一の本来の目的に必須な物。回収できた幸運を噛み締めると共に、残るカテゴリーキングのカードの回収も新たな目標として純一の中に刻まれる。
 海東の残る支給品はブラッディローズとか言うバイオリンだったが……価値がないように見えるそれを、彼はお宝と呼び、ラウズカードを差し出しておいてこれは渡さないなど、純一からすればあり得ないことを告げて来たが……まあ、良いだろう。
 秋山蓮はエターナルメモリという、ロストドライバーとやらがなければ使えないメモリを手にしていたが、それだけだった。

 純一自身はオルタナティブのデッキを隠し、残りはGトレーラー内のG4のことも彼らに示したが、乃木に自分の世界の物であるとパーフェクトゼクターを奪われた以外は特に変わりはなかった。無論、よりにもよって乃木の手に強力な武器であったパーフェクトゼクターが奪われたのは手痛いことだが。

 最後に残った乾巧が見せたのは、彼自身の――そして特定の人間にしか使えないという仮面ライダーの力、ファイズギア。さらに本来フィリップの所有物らしきルナメモリに、首輪探知機という破格の独自支給品。この時点でも今回の交換における彼の貢献は大きいものだったが、加えてさらにナイトでディエンド――秋山と海東の変身する仮面ライダーを強化するためのアイテムまで彼は手にしていた。
 海東には、周りに促されるまますんなりケータッチを渡した乾だったが――

「こいつは……渡せねえ……」
「――何?」

 サバイブのカードを握った乾は乃木の時と同様、敵意の籠った眼差しを秋山へと向ける。

「天道が言っていた……このカードは、持ち主が信用できるなら渡す、ってな。――俺にはおまえが信用できねえ」
「……そういうことか」

 目を伏せた秋山は小さく溜息を吐いた後、何を言うでもなく踵を返した。

「そう思うなら好きにしろ。今はおまえから無理やり奪う気はない」

 そう乾の拒絶を許容した秋山は、一人先にGトレーラーへと向かおうとしていた。

「待ってくれ秋山蓮!」

 その背中を呼び止めたのはフィリップだった。彼は男が歩みを中断し、少しだけこちらを振り向いたのを見て、乾へと向き直る。

「乾巧。確かに、さっきの秋山蓮の発言を君は許せないと思う。僕もはっきり言ってそう思った……だけど彼は、僕達が押し付けてしまった厳しい判断を代わりにしてくれただけじゃないかな?」
「……何?」

 疑問の声は、乾と秋山、その双方から漏れた物だった。
 ただの反応以外の意味を持たないそれらを無視したフィリップは、乾に続ける。

「確かに秋山蓮の言葉を、僕達仮面ライダーは認めたくない。だけどそれは、辛い現実から目を逸らすこととは違う。志村純一が言ったように、理不尽の存在を受け入れて、その上で誰かが傷つくのが当然だなんて認めたくないから戦う――そうじゃないのか?」

 自らの言葉が引用されたことにある程度の信頼を築けた手応えを感じつつ、純一は事の成り行きを見守っていた。
 純一が本当に善人なら、フィリップに加勢するべきだろう。だが競争相手の強化を自分から手伝う必要性を見出せなかったので、ここはフィリップに任せ、不幸にも成功すれば表だけの祝福を、失敗すれば慰めながらほくそ笑めば良い。故に今は見物に甘んじることにした。

「お願いだ、乾巧。彼を信じるのが無理なら、頼む。僕を信じて、彼にサバイブのカードを返してあげてくれ」
「――っ、ああ、もうっ!」

 先の乃木との争いで生じた、仲間達との不和から庇ってくれた少年にそこまで言われては、乾も無下にはできなかったのだろう。
 彼はサバイブのカードを秋山――ではなく、フィリップに差し出した。

「――俺は、霧彦が信じてたおまえを信じる」

 彼の手を取り、カードを握らせながら、乾は再び続ける。

「だから――天道が言っていたように、信用できる相手になら俺はこいつを渡す……その後おまえどうするのかまでは、俺の知ったこっちゃねえ」

612(タイトル未定) ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/24(土) 22:54:01 ID:rbzWGYmY
 そう言ってフィリップから目を逸らした乾に、海東が純一を視界に収めながら微笑んでいるのが見えた。フィリップが見ていないところで、乃木が下らなさそうに鼻を鳴らしたのも。純一も乃木と同じ感想だったが、表面上は笑顔を保っておく。

「乾巧……ありがとう」

 背を向けた乾にそう告げて、カードを受け取ったフィリップは秋山を振り返る。

「秋山蓮……乾巧から……じゃない、か。僕からのプレゼントだ、受け取ってくれ」

 そう差し出された少年の手から、秋山蓮はカードを受け取る。

「そうか……だが俺は貸し借りには煩いんだ」

 不意にそんなことを口走った秋山は、懐から白い箱を取り出した。

「これは、元を正せばおまえの世界の物だ……どうせ今は使えないが、返しておく」

 そうして秋山は、エターナルメモリを、フィリップへと手渡す。

「……ありがとう、秋山蓮」
「礼を言われるようなことはしていない」

 そうフィリップに断った秋山は、改めてGトレーラーへと向かった。
 薄く笑みを浮かべたフィリップが続き、純一も彼の後を追い掛けようとして、その背中と自身の間に立つ、軽薄な笑みを浮かべた海東の姿に苛立ちを覚えた。
 後ろでは、乃木と乾がオートバジンとかいうバイクを二人で回収していた。

 ――こうしてそれぞれの思惑を秘めたまま、彼らは戦地へと向かう。



 ――そうして走り始めた巨大な箱を追う、いくつかの影がその数分後、その場所を通り過ぎて行った。

 全員が消耗し、獲物は封印のカードで身を護っている状態。それに加えて、向かう先に強力な同族の気配を感じたために様子を見ようとトレーラーの荷台から飛び降りた彼らは、じっと静かにトレーラーが動き出すのを待っていた。

 再び動き始めたトレーラーが目指す先にあるのは、巨大な病院……混戦にはもってこいの場所だと、ゼール達は舌舐めずりしながら車影を追った。

613(タイトル未定) ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/24(土) 22:55:45 ID:rbzWGYmY




 海東大樹から、彼が巡った複数の世界――そして大ショッカーとの因縁について大まかに乃木怜治が聞き出した直後、乃木達を乗せた車体に強い制動が掛かるのを感じた。
 目的地に辿り着いた――その確信を持って、乃木は再びちらりと、視界の端の志村純一という男に視線を向けた。
 ……とはいえ、今はまだ監視しかできない。決定的な証拠がない限り、まだフィリップの前で悪辣に振舞うわけにはいかないからだ。

(――それにしても首輪解除要員に、大ショッカーとの因縁持ちか……敵意を向けて来る愚かな乾も、どうにも信用できない秋山も……どう見ても要注意の志村もいるが、手札の揃い具合は順調と言ったところか)

 現状を認識しながら、運転席の秋山の目的地への到着を伝える声に従って、皆と同じく下車する準備に入る。
 激戦区と予想していた病院は思いのほか静かな様子だった。最も後三十分もすれば金居達が来るかも知れないこと、乃木自身が爆弾を連れていることを考えれば嵐の前の……という奴かもしれないが。

 オートバジンは敢えてコンテナに残したまま車外に出た乃木は、先を行くフィリップの周囲に秋山と志村が居るのを見て、最後尾の海東に追い付き、他に悟られぬよう囁きかけた。

「――情報提供して貰ったところ悪いが、俺はまだ君のことを信用していない」
「――だろうね」

 疑いの声を然もありなんと受け流す海東に、乃木は続ける。

「だが、志村に隙を見せない人材として信頼はしている……それを裏切らないことだな」

 乃木怜治は、ワームの首魁だ。
 人間に擬態し、彼らの目を欺いて社会に潜伏し目的のために行動するのがワーム。その頂点に立つ乃木も当然、他者を騙す能力――言うなれば嘘を吐く能力に優れている。
 嘘を吐くのが得意なら当然、ある程度嘘を吐いている者を見極める能力も優れて来る。特に、最初に接触した霧島美穂がまさに乃木を騙し体よく利用しようとしていた人物だけあって、今の乃木は普段以上に嘘の気配と言う奴に敏感だった。

 フィリップは――強いて言うなら仮面ライダーダブルへの変身に左翔太郎が必要不可欠と言った時だけ、その気配を感じたが……先程隠し通した参加者の解説と照らし合わせても二人の能力欄に「仮面ライダーダブルに変身できる」ということが共通して記載されていたため、嘘だとも思い難い。あるいは左翔太郎以外でも条件が叶えば可能、と言う程度のことかもしれない。乃木が今、最も籠絡したい優れた頭脳を持つ相手ではあるが、対人関係では甘さが残るためそれ自体は順調に進んでおり、その彼が不必要に情報を隠し立てするとは思い難かった。自分が人間と敵対する理由が、数十年前に人類の中枢に潜み地球侵略を目論んでいる敵対種族ネイティブの根絶であるという乃木の説明も、半信半疑とはいえ受け入れたほどだ。

 乾巧は天道総司の影響を受けて愚かにも乃木を敵視しているが、人付き合いが不器用であり物事を隠すことは苦手なようだ。今はまだ、専用の変身能力を持つらしいので兵隊に使えるということと、フィリップを懐柔している途中なので手を下すつもりはないが、敵視が敵対になるというなら餌にしてやっても良いだろう。
 秋山蓮は先の二人に比べて何かを秘めているのが伺えるが、こいつも甘さを捨て切れていない。ライジングアルティメットを直接目にした分強く警戒しているためか、徒党を組むことにも積極的な様子だ。パワーアップもしたようだし、せいぜい利用してやろう。

 海東大樹は、先程彼と大ショッカーの因縁について尋ねれば正直に答えたし、今回参加している多くの世界について、そのものではなくともある程度の知識を有している。その上で兵隊としても使えるなど有力な駒だが、まだ腹に秘めている物があるのは明白。底の知れない態度も相まって、手放しで信用するなど無理な相談だが――彼だけが乃木以外に志村純一を警戒している唯一の人物なのだから、貴重な駒を自ら潰すというわけにも行かない。

 そして目下、金居との対決を前に最も大きな不安要因であるのは、志村純一だ。
 奴は匂う。鈍感な人間諸君は気づかないかもしれないが、血の匂いがぷんぷんと。
 もちろん純一の言うように、村上や野上と言った参加者が危険人物で、彼らとの戦いで被った同行者達の血なのかもしれないが……そんな、同行者を護れなかったことをあんな涙ながらに語るにしては、元気過ぎやしないだろうか?
 本当に正義の仮面ライダーなら、歯が立たない強敵に護るべき対象を殺されたような戦いの後は、その結果に終わる前にもっと重傷を負っていても良いはずだ。実際、加賀美新や神代剣は乃木との戦いで圧倒され重傷を負いながら、護ろうとした相手を護り抜いたというのに、志村はそれ以上の苦戦を強いられたと口にしたにも関わらず、彼らほど深い傷を負った様子もない。

614(タイトル未定) ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/24(土) 22:57:38 ID:rbzWGYmY
 デイパックの中身も、彼女らを殺され何とか装備だけは持ち逃げしたと言うには整理がされ過ぎていた。もちろん、乾と会うまでに荷物を整理しただけかもしれないのでさすがに疑い過ぎかもしれないが、彼が本当に二人の死に強いショックを受けていたならそんな余裕はあるのだろうか? ――ましてや護れなかった女性の遺品を、タブーメモリは己の無力さを戒めるために持っておこうとしていたなどと言うのに、戦力になる物以外は捨てて来たというのだろうか? あれだけ綺麗事を吐きながら、感傷は無駄だと? 乃木はその矛盾が鼻につく。

 何より、単純にその気配を感じるのだ。こいつはワームと同様、人目を欺く者であると。
 はっきり言って――葦原涼の話から判断すると村上峡児は怪しいかもしれないが、実は天美あきらと園咲冴子を手に掛けたのは志村純一で、野上達は彼に貶められている被害者ではないのか――乃木はそう疑ってすらいる。
 推測が真実にせよ否にせよ、この男を信じるなとワームの本能が警鐘を鳴らしている。だというのに愚かな人間諸君は、海東以外――あの秋山でさえ志村を善良な御人好しだと認識しているらしい。そんな状況で志村を無理矢理始末しようとすれば、他の人間の不興を買い、利用し難くなってしまう――それは避けねばならない。

 だがいくら乃木でも、首輪で制限された中一人だけで志村を逐次監視するわけにも行かない。とはいえ放置すればどんな風に牙を剥かれるかわからない……となれば、協力者の存在は必要不可欠だ。
 それが可能なのは海東大樹だけ――底知れないが、こちらが馬脚を露にしない限り乃木に積極的に敵対するような愚か者ではないと信頼できる、この仮面ライダーディエンドが、今の乃木の唯一の協力者だと言えた。

「……善処はするよ」

 海東の無難な返答に、乃木は瞼を閉じることで許容を表し、彼を置いて病院へと向かう。

 実際問題、志村などにそこまで気を掛けているわけにもいかない。今何よりも重大なのは、難敵だと思っていた金居と彼が従えたライジングアルティメットに対処することだ。
 乃木は最強のワームである自分が遅れを取るなどと思っていない。だが敵は、万全ではなかったとはいえあの天道総司を死に追いやった相手――油断は許されない。
 天道総司は、この自分に唯一土を着けた男――確かにハイパーカブトにもなれなかった天道なら乃木にとっても敵ではないだろうが、そんなスペック差だけで事足りる相手ならあの時に一度敗北することもなかった。乾が言うには、ライジングアルティメットとやらはクロックアップにさえも易々と対応したという――クロックアップなしで、だ。掛け値なしの強敵であることはまず間違いない。乾が天道から聞いた話だとクロックアップにも時間制限が掛かっていたらしいことを考えると、乃木の能力にもどんな制限が課せられているのかわからない。せめてそれを把握するためにどこかで一度変身していれば良かったかもしれないが、変身制限を知った今では迂闊なこともできない。
 つまり己のこともまだまともに把握できていない以上、これまでの戦いのように一方的な試合運びにすることは困難だろう。その上で、全力の天道総司に匹敵か、場合によってはそれ以上かもしれない超強敵との戦いが目前に迫っているわけだ。志村のことだけに頭を巡らせていて良いわけがない。

 とはいえ、病院にもしも利用価値のある参加者がいるのなら、それを見極めてから戦略を立てるのでも遅くはない――そう考えながら、乃木怜治はまるで病院の灯りに惹かれる虫のように歩を進めた。







「隙を見せない人材、ね……」

 乃木怜治に告げられた言葉を、海東大樹は口の中で転がしていた。
 あるいはあの抜け目ない男は、海東もまた彼と同じように志村純一を警戒している人物だと思ったのかもしれない。実際、状況証拠から論理的に彼を疑うべきだったのだろう。
 だが海東が純一を疑ったのはおそらく、乃木ほど論理的な理由ではない。

 志村純一を疑ったのは、彼が海東純一――自身の兄とまったく同じ顔をしていたからに過ぎないのだ。

 かつて、海東自身の世界で……正義の仮面ライダーとして振舞っておきながら、その実、世界征服を目論んでいた兄・海東純一。志村純一は、彼と同じ名前を持つだけでなく、顔も声もまったく同一の人物だった。

 異なる世界に同一の人物が存在する――ネガの世界の光夏海や、BLACKとRXの世界の二人の南光太郎の存在を知っているため、いざもう一人の仮面ライダーグレイブの姿を目にしても、そこまで混乱することはなかった。

615(タイトル未定) ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/24(土) 22:58:14 ID:rbzWGYmY
 ――とはいえ、やはり一度は戦いにもなった因縁ある兄と同じ顔の人物が目の前に現れて、平静でいられるはずもなかった。

 そうしてつい彼の顔を見ている内に、一度名簿で彼の名を見た時考えたことを思い出す――

 二人のクウガ、五代雄介と小野寺ユウスケの目的は同じ、『皆の笑顔を護ること』だった。二人は元の世界で警察と協力していたり、どちらも真の意味での御人好しだったり、他にも共通点は多かった。

 それなら、二人のグレイブ――海東純一と志村純一も、似通っているのではないか?

 正義の仮面ライダーと自らを偽り、その実欲望のために世界を支配しようとする悪人で……そのために殺し合いに乗っていても、何らおかしくはないのではないかと、疑った。

 もっと言えば、園田真理を殺害したあの白い怪物――『剣の世界』の怪人だと思われるあの死神とも、ひょっとすれば何か関連があるのではないか――海東はそう思いもしたが、結局は証拠がないと首を振った。
 今は、乃木達と共に病院に向かい、金居から地の石盗む準備を進める方が重要だ。お宝は護られなければならない。五代雄介に『笑顔』というお宝を取り戻させるため、そして『仲間』と言う自分自身の最高のお宝のために、海東大樹は己の誇りに懸け、ライジングアルティメットにも立ち向かう決意を固めていた。
 そのための戦力として乾巧から齎されたケータッチだが、果たしてディケイドと違いディエンドの場合はカードが足りなくとも使用可能なのか、海東は考える。

(――コーカサスはあるとして……足りないのはG4、リュウガ、オーガ、歌舞鬼、アーク……何故か電王の世界のライダーじゃなくて、Wの世界のスカルと言う仮面ライダー……そして……)

 海東はちらりと、先を行く志村純一の姿を目に収めた。

「……グレイブ、か」



 自分は最終的に兄を信じたのに、それと別世界の同一人物と思われる純一を疑うことを忌避したという自身の深層心理に、海東大樹は気づいていない。
 彼が志村純一にずっと視線を送っていたのも、疑いだけではなく、彼を信じたいという願いがその証拠を求めた結果だと言うことも、結局は悟らず。



 乃木怜治が残して行ったオートバジンを、乾巧は一人でコンテナから降ろしていた。
 海東大樹の言った通り、オートバジンもファイズギアの一部だ。ファイズが真価を発揮するには、戦闘の際近くにあった方が良い。少なくともGトレーラー内に残すよりは扱い易いだろうと、一人で重たい車体と格闘していた。

「……やっと合流できた仲間が、おまえだったなんてな」

 そう巧は、どこか愛おしそうにオートバジンの車体を撫でた。

 オルフェノクの王との最終決戦で、オートバジンはファイズブラスターを届けて勝利に貢献し、その代償として王の攻撃で粉砕され、物言わぬ鉄の骸と化した。
 その最後の戦いの時までファイズを支え続けてくれたオートバジンのことを、巧もただの道具とは思えず、気づけば仲間と呼んでいた。

 木場や草加と同じように、死んだはずだった仲間が生き返らされてこんな殺し合いの場に放りこまれている……改めて大ショッカーへの怒りを、巧は燃やす。

 そうして、胸に燈った熱い感情を再認識する。

 天道や霧彦との誓いを。海堂や木場の願いを。
 そして歪んでしまった草加が、本当に胸に抱いていただろう物を継いで。

 乾巧は、最後の瞬間まで、仮面ライダーとして戦い抜く決意を、改めて固めていた。
 志村やフィリップのような、志を同じくする仲間と共に……

(フィリップが、冴子の弟だったなんてな。……なら霧彦、おまえの義弟さんだな)

 霧彦の妻を護ると言う約束を、巧は結局果たせなかった。

 それならせめて、生き残った彼らの弟だけでも護り抜く。右拳を握り込んだ巧は、そこで違和感に気づいた。

(――何だ?)

 指と掌の間に、無数の小さい粉が混ざったような異物感。掌を返して五指を開いた巧は、息を呑んで瞠目した。

616(タイトル未定) ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/24(土) 22:59:06 ID:rbzWGYmY
 彼の掌からは――灰が零れ落ちていたのだ。

 まるでカイザギアを使った適正のない人間のように。
 まるで仮面ライダーによって倒されたオルフェノクのように。
 オルフェノクの命の終焉を告げる灰化の現象が、乾巧の身にも起こっていた。

 ――そんな馬鹿な。
 冗談だろ。

 死人の自分を生かすために、あの時天道を犠牲にしておいて。
 生きてあいつの夢を継ぐって決めたら――今度は、寿命で死ねって言うのか。

「ふざけんなよ……っ!」

 糞っ垂れた運命に拳を握り、衝動のまま振り被った巧はGトレーラーのコンテナに叩きつける。
 鈍い金属質の音が響き、巧はぶつけた自分の身体が灰となって崩れ落ちていないのかを恐る恐る視線を巡らせ、綺麗なまま残っている己の右手を見た。

 ――だがそれを、ただの幻覚なのだと巧は片づけることができなかった。

 オルフェノクという種は短命だ。その宿命を覆すはずだった王を他ならぬ巧達が葬ったことで、死人から蘇った超人類達は滅びを迎えることが確定した。

 さらに巧は、最終決戦の寸前にスマートブレインに捕まり、オルフェノクの死について研究するための実験台として、セルブレイカーという薬品を投与され、残り少ない寿命を一層削られていた。
 元々、いつこの身がただの灰となってもおかしくはなかったのだ。

 それでも――

「――何も、こんな時じゃなくても良いだろ……っ!?」

 せめて大ショッカーを倒し、天道達との約束を果たせた後だったなら、何の未練もなく逝けただろうに――

 どうしてそのためにこれから戦おうと言う時に、この命は燃え尽きようとしているのか。

 今すぐ死ぬと言うわけではないだろう。まだ何度かファイズにもウルフオルフェノクにも変身できるだろう。だがそれは、絶対に大ショッカーを倒すのに足りる回数ではないと直感できる。

 天道達との約束を果たすために、総ての世界の総ての命を護ることも――霧彦の義弟を護り抜くことも、木場達の人とオルフェノクが共存するという理想を果たすことも――巧に残された命では、とても届かない。

「……何でだよ」

 運命のあまりにも非情な仕打ちに、巧はその両膝を折った。

「何でだあああああああああああああああああっ!」

 何もかもを忘れて、乾巧は絶叫した。
 それは狼の嘆きにも似た、慟哭だった。



【1日目 夜中】
【F-4 病院前】

【共通事項】
※病院に行って、友好的な参加者を探す。
※金居と彼に操られた五代雄介を強く警戒。また乃木との待ち合わせ時間にやって来ると仮定して、金居から地の石を奪い五代を奪還するために戦う。そのための準備をする。
※キング(名前は知らない)、ゴ・ガドル・バ、ン・ダグバ・ゼバ(名前は知らない)、相川始、アポロガイストを警戒。
※できれば一条薫、津上翔一、城戸真司、三原修二、橘朔也、日高仁志、擬態天道、名護啓介、紅音也、門矢士、小野寺ユウスケ、左翔太郎と合流したい。
※首輪解除のためにガイアメモリのある世界以外の技術を調べる。
※草加雅人は死んだと思っています。
※変身制限について、強化フォーム以外の制限を知りました。
※クロックアップも制限が課されていることを知りました。
※首輪の考案について纏めたファイルを見ました。
※園田真理を殺したのはアルビノジョーカーだと知りました。またバットショットが撮影した写真でアルビノジョーカーの姿を知りました。

617(タイトル未定) ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/24(土) 22:59:38 ID:rbzWGYmY
【乾巧@仮面ライダー555】
【時間軸】原作終了後
【状態】疲労(中)、ダメージ(中)、深い悲しみと罪悪感、決意、ナスカ・ドーパントに30分変身不可、ウルフオルフェノクに30分分変身不可、仮面ライダーファイズに40分変身不可、自身の灰化開始に伴う激しいショック。
【装備】ファイズギア+ファイズショット+ファイズアクセル+オートバジン+ファイズエッジ@仮面ライダー555
【道具】支給品一式×3、首輪探知機、霧彦のスカーフ@仮面ライダーW
【思考・状況】
基本行動方針:打倒大ショッカー。世界を守る。
0:天道の遺志を継ぎ、今度こそ誰も死なせない。
1:天道達との約束を果たせないだろう自分への絶望。
2:園咲夫妻の仇を討つ。
3:仲間を探して協力を呼びかける。
4:霧彦のスカーフを洗濯する。
5:後でまた霧彦のいた場所に戻り、綺麗になった世界を見せたい。
6:橘朔也、日高仁志、小野寺ユウスケに伝言を伝える。
7:仲間達を失った事による悲しみ、罪悪感。それに負けない決意。
8:乃木怜治、秋山蓮に若干の警戒(敵視?)。
【備考】
※天道の世界、音也の世界、霧彦の世界、志村の世界の大まかな情報を得ました。
※参加者達の時間軸に差異が出る可能性に気付きました。
※志村の血の匂いに気づいていますが、それはすべて村上たちのせいだと信じています。
※オルフェノクの寿命による灰化が始まりました。


【フィリップ@仮面ライダーW】
【時間軸】原作第44話及び劇場版(A to Z)以降
【状態】健康、照井の死による悲しみ
【装備】ガイアメモリ(タブー)+ガイアドライバー@仮面ライダーW
【道具】支給品一式×2、ファングメモリ@仮面ライダーW、ルナメモリ@仮面ライダーW、バットショット@仮面ライダーW、スパイダーショック+スパイダーメモリ@仮面ライダーW、ツッコミ用のスリッパ@仮面ライダーW、
エクストリームメモリ@仮面ライダーW、ダブルドライバー+ガイアメモリ(サイクロン)@仮面ライダーW、首輪(北岡)、首輪の考案について纏めたファイル、工具箱@現実 、エターナルメモリ@仮面ライダーW FOREVER AtoZ/運命のガイアメモリ
【思考・状況】
0:亜樹子が殺し合いに乗っているのなら何としてでも止める。
1:大ショッカーは信用しない。
2:友好的な人物と出会い、情報を集めたい。
3:真理を殺したのは白い化け物。
4:首輪の解除は、もっと情報と人数が揃ってから。
5:出来るなら亜樹子や蓮を信じたいが……
6:乃木怜治への罪悪感と少しだけの信用。志村純一は信用できる。
【備考】
※バットショットにアルビノジョーカーの鮮明な画像を保存しています。
※今のところは亜樹子を信じています。
※園咲冴子と天美あきらを殺したのは村上峡児と野上良太郎だと考えています。


【海東大樹@仮面ライダーディケイド】
【時間軸】最終話終了後
【状態】健康
【装備】ディエンドライバー@仮面ライダーディケイド、ライダーカード(サイガ、コーカサス) 、ディエンド用ケータッチ@仮面ライダー電王トリロジー
【道具】支給品一式、ブラッディローズ@仮面ライダーキバ
【思考・状況】
0:お宝を守る。
1:これから病院に向かう。
2:殺し合いに乗った奴の邪魔をする。
3:知らない世界はまだあるようだ。
4:蓮、乃木、純一を警戒。
【備考】
※クウガの世界が別にあることを知りました。
※首輪の考案について纏めたファイルを見ました。
※志村純一について、自覚していませんが彼を信じたいと思っています。
※五代の言う『笑顔』、ブラッディローズ、自身の『仲間』をお宝だと思っています。
※ディエンド用ケータッチについては、今の所有カードだけで使えるのかは後続の書き手さんにお任せします。

618(タイトル未定) ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/24(土) 23:00:51 ID:rbzWGYmY
【秋山蓮@仮面ライダー龍騎】
【時間軸】第34話終了後
【状態】健康、乾への苛立ち(無自覚)、クウガへの強い警戒
【装備】ナイトのデッキ+サバイブ(疾風)@仮面ライダー龍騎
【道具】支給品一式
【思考・状況】
0:これから病院に向かう。
1:自分の世界のために他世界の人間を倒す。
2:まずはこの集団に潜む。
3:協力できるなら、同じ世界の人間(城戸)と協力したい。浅倉とは会いたくない。
4:協力者と決着をつけるのは元の世界に帰ってから。
5:もしも地の石を手に入れたら……?
6:志村純一は御人好し。
【備考】
※首輪の考案について纏めたファイルを見ました。
※園咲冴子と天美あきらを殺したのは村上峡児と野上良太郎だと考えています。

【乃木怜司@仮面ライダーカブト】
【時間軸】第44話 エリアZ進撃直前
【状態】健康
【装備】パーフェクトゼクター@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式、木製ガイアメモリ(疾風、切札)@仮面ライダーW、参加者の解説付きルールブック@現実
【思考・状況】
0:他の参加者を利用し、金居を潰す。
1:大ショッカーを潰すために戦力を集める。使えない奴は、餌にする。
2:状況次第では、ZECTのマスクドライダー資格者も利用する。
3:最終的には大ショッカーの技術を奪い、自分の世界を支配する。
4:首輪を解除するため、フィリップを懐柔したい。
5:志村純一を警戒。まったく信用していないため、証拠を掴めばすぐに始末したい。
6:葦原涼と鳴海亜樹子の生死に関してはどうでもいい。
7:乾と秋山は使い捨ての駒。海東は今後も使えるか?
8:どこかで一度変身後の能力を見ておくべきだったか?
【備考】
※カッシスワーム グラディウスの状態から参戦しました。
※現在覚えている技は、ライダーキック(ガタック)、ライダースラッシュの二つです。
※現時点では、解説付きルールブックを他人と共有する気はありません。
※東京タワーから発せられた、亜樹子の放送を聞きました。
※村上と野上ではなく、志村があきらと冴子を殺したのではと疑っています。
※もし乃木が地の石を手に入れた場合破壊するかどうかは後続の書き手さんにお任せします。


【志村純一@仮面ライダー剣MISSING ACE】
【時間軸】不明
【状態】軽い全身打撲、乃木と海東への苛立ち
【装備】グレイブバックル@仮面ライダー剣MISSING ACE、オルタナティブ・ゼロのデッキ@仮面ライダー龍騎、ラウズカード(クラブのJ〜K)@仮面ライダー剣
【道具】支給品一式×3(ただし必要な物のみ入れてます)、ZECT-GUN(分離中)@仮面ライダーカブト、ファンガイアスレイヤー@仮面ライダーキバ 、アドベントカード(SEAL)@仮面ライダー龍騎、G3の武器セット(GM-01スコーピオン、GG-02サラマンダー、GK-06ユニコーン)@仮面ライダーアギト
【思考・状況】
基本行動方針:自分が支配する世界を守る為、剣の世界を勝利へ導く。
0:この連中を利用し、金居から地の石を奪う。
1:バットショットに映ったアルビノジョーカーを見た参加者は皆殺しにする。
2:人前では仮面ライダーグレイブとしての善良な自分を演じる。
3:誰も見て居なければアルビノジョーカーとなって少しずつ参加者を間引いていく。
4:野上と村上の悪評を広め、いずれは二人を確実に潰したい。
5:フィリップを懐柔し、自身の首輪を外させたい。
6:首輪を外させたらすぐにフィリップを殺す。正体発覚などで自分の首輪を解除させるのが困難になっても最優先で殺害。
7:乃木と海東を警戒。こいつらも何とか潰したい。
8:ライジングアルティメットを支配し、首輪を解除したら殺し合いに積極的になるのもいいかもしれない。
【備考】
※555の世界、カブトの世界、キバの世界の大まかな情報を得ました。
※電王世界の大まかな情報を得ました。
 ただし、野上良太郎の仲間や電王の具体的な戦闘スタイルは、意図的に伏せられています。
※冴子から、ガイアメモリと『Wの世界』の人物に関する情報を得ました。
 ただし、ガイアメモリの毒性に関しては伏せられており、ミュージアムは『人類の繁栄のために動く組織』と嘘を流されています。
※放送を行ったキングがアンデッドである事に気付いているのかどうかは不明です。
※封印のカードの効果に気づいていません。
※オルタナティブ・ゼロのデッキは極力秘匿するつもりです。

619(タイトル未定) ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/24(土) 23:01:21 ID:rbzWGYmY


【首輪の考案について纏めたファイルの内容】
※首輪の内部構造、それに関する考案が書かれています。
※首輪とこの殺し合いについて、以下の考案を立てました。
1:首輪には、Wの世界には無い未知の技術が使われている可能性がある。
2:無闇に解体しようとすれば、最悪その参加者の世界の住民が全滅させられるかもしれない。
3:解体自体は可能だが、それには異世界の知識も必要。
4:大ショッカーは参加者の生きる世界を、一瞬で滅ぼせるほどの兵器を持っている。


【全体備考】
※ゼール軍団は志村を狙っていますが、封印のカードにより今は攻撃できません。
※ゼール軍団が何が何匹死んだのかは後続の書き手さんにお任せします。
※Gトレーラー内にはG4の充電装置があります。
※G4は説明書には連続でおよそ15分使えるとありますが、実際どのくらいの間使えるのかは後続の書き手さんにお任せします。
※G4を再度使用するのにどれくらい充電すればいいのかは後続の書き手さんにお任せします。
※トライチェイサー2000A、及びG4システムはデイパック内ではなくGトレーラー内に置かれています。
※F-4エリア病院前にGトレーラーとオートバジンが停車されています。

620 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/24(土) 23:07:55 ID:rbzWGYmY
以上で、仮投下完了です。

今回も冗長気味なのですが、様子を見たいと思ったのは海東純一と志村純一が同じ顔をしている、という点です。
本ロワでは役者が同じなら同じ顔、というネタは禁止になっていますが、二人の純一(それと本編とDCD版あきら&ザンキ)については
例外にしても良いのではないか、というのが自分の考えです。

つまり役者が同じだけでなく、同じ名前を持ち、同じライダーへ変身するならそれは別世界の同一人物扱いで良いのでは、という提案です。
問題があると思われた方はお申し付けください。

もちろん他にも問題点などございましたらご指摘の方よろしくお願いします。

621二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/12/24(土) 23:21:32 ID:QpGp4y4.
仮投下乙です。
感想は本スレに投下された後で。

海東純一と志村純一については例外でもいいんじゃないかと、自分も思いますね。
ぶっちゃけ、ディケイド本編でもクウガとアギト世界にいた八代刑事は名前も顔も同じという扱いでしたし。
それに平成ライダーロワでも、原作剣崎とディケイド版の剣崎は同じ顔みたいな扱いだったので。

622二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/12/25(日) 09:29:39 ID:.sHSBs1M
乙です。
一つ疑問なんですが、海東が「野上良太郎」と言う名前に名にも反応しないのが気になります
参戦時期的に考えて電王の存在を知らないとも思えないし・・・

623 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/25(日) 15:19:54 ID:Z9WmKIKM
ご指摘ありがとうございます。

確かに海東が野上良太郎という名前に反応しないのは奇妙ですね。
一応海東パートに良太郎について思考する文章、皆の前で良太郎について何も言わなかった理由を足そうとは思いますが、
それでも展開に大きく問題があると思われた際には破棄申請されても受け入れますので、またご指摘の方よろしくお願いします。
申し訳ないですが、海東の良太郎に対する具体的な思考内容については少し考える時間をください。どんなに遅くても明日には一度連絡します。

改めてご指摘ありがとうございました。

624二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/12/25(日) 19:06:13 ID:.sHSBs1M
これからもがんばってください

625 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/25(日) 21:32:45 ID:Z9WmKIKM
>>624
ありがとうございます。

考えたのですが、海東が知っている野上良太郎ってつまり『小太郎』なんですよね。
なので、志村が話す野上良太郎像と一致しないことから同名の別人だと判断している、ということではダメでしょうか?

無論その分全体的に書き直しはしますし、海東から見れば『野上良太郎』は別世界の同一ライダーだからと言って同じような人物ばかりではない、
だから志村純一が信用できないとは限らないと考える根拠にしている、という風に修正しようかと思うのですが、これでよろしいでしょうか?

626二人で一人の/通りすがりの名無し:2011/12/25(日) 22:01:21 ID:BVrF/99s
確かに、ディケイドに出てきた良太郎は時空の歪みがどうのこうので原作とはまるで違う姿なんですよね……
自分は氏の案を支持しますので、修正を頑張ってください。

627 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/26(月) 12:30:49 ID:zys419dk
まだ一日経ったわけではありませんが、今のところ特に反対意見があるわけでもないようなので、
問題なければ>>625で示したような解決案を採用し修正した上でそのまま本投下する、という形で
大丈夫でしょうか?

628 ◆LuuKRM2PEg:2011/12/26(月) 17:43:28 ID:9hJHoBlw
大丈夫だと思います

629 ◆/kFsAq0Yi2:2011/12/26(月) 19:03:51 ID:zys419dk
>>628
ありがとうございます。
これより本投下を開始しますので、また何か問題点がございましたら御指摘の方よろしくお願いします。

630 ◆/kFsAq0Yi2:2012/01/20(金) 16:33:28 ID:tdVM9ztI
議論スレで指摘された箇所の修正版を投下します。
該当箇所は『Tを継いで♭再戦(後編)』の、四人が変身しようとするパートです。念のため修正していないガドルの台詞から開始しています。

なお私情で申し訳ないですが、明日の夜頃までは何かご意見を頂けても満足には返答できない可能性があるということを予め断らせて頂きます。
それでも問題点などございましたらご指摘の方よろしくお願いします。何もなければ後日wikiの方も修正させて頂きます。

×          ×          ×          ×          ×          ×
「貴様らには、まだ名乗っていなかったな――」

 そうガドルが取り出した物に覚えがあった翔太郎は、思わずそれに意識を奪われてしまう。

「あのメモリは――っ!」

 ――ARMS!――

 かつて自身を――否、ダブルを追い詰めたガイアメモリを前にした翔太郎の叫びを無視し、ガドルはそのスイッチを押す。

「俺は破壊のカリスマ、ゴ・ガドル・バ――」

 名乗りの途中で、ガドルはガイアメモリを首輪へと挿し込んだ。
 メモリは首輪へと取り込まれ、メキメキと音を立てて、ガドルの身体が変化して行く。

「――リントの守護者、仮面ライダーよ。貴様らの敵だ」

 そうして顕現したのは、赤黒い肌を銀の装甲で覆った怪人――アームズ・ドーパント。
 かつて翔太郎が戦った、ツインローズの片割れ・倉田剣児が狂気と共に変貌したものとは違う――左半身に醜い傷を晒しながらも、メモリに呑まれることなく兵器の記憶を己が力の一部として取り込んだ、一切の隙のない完璧な兵(つわもの)がそこにいた。

 過去にブレイクしたテラーメモリすら、この殺し合いのために支給されていたのだ。今更量産されているだろう一般メモリのドーパントを見た程度なら、翔太郎の驚きも大したものではない。むしろ風都の仮面ライダーとして、ドーパント事件解決に臨む意欲が湧くというものだ。
 だが目の前に現れたこのドーパントから感じる圧力は、自身の記憶にある物とはまるで違う――放射されている純粋な闘気に、一瞬だけ翔太郎は呑まれてしまっていた。

「――変身」

 ――HEN-SHIN――

 ガドルの変身したアームズ・ドーパントの気迫にリアクションの遅れた翔太郎の横で、飛来したダークカブトゼクターをベルトに合体させた総司の身体がずんぐりとした銀の装甲で覆われて行く。一瞬の内に、痩身の青年は金の単眼を持つ重厚感溢れる戦士へとその姿を変えた。

「――魑魅魍魎跋扈するこの地獄変……名護啓介がここにいる!」

 そしてアームズ・ドーパントの気迫にも揺るがない――正義の魂を燃やす男が一歩、前へ出る。

 背中からシールドソードを抜き放ったアームズ・ドーパントに対峙する名護がイクサナックルを左手と打ち合わせ、右手を地に平行に鋭く伸ばす。

 ――READY――

「――イクサ、爆現!」

 ――FIST ON――

 顔の前で一度腕を曲げ、そうして腰に落としたイクサナックルをベルトに装着させ、名護の身体が――彼の師、紅音也が変身していた物と同じ、純白の仮面ライダーイクサへと変わる。

 その十字架のような黄金の仮面が割れ、紅い瞳が顕となると――その口から、携帯電話型ツールが吐き出される。手に取ったイクサが1,9,3のボタンを押し込むと、また電子音が流れる。

 ――ラ・イ・ジ・ン・グ――

 アームズ・ドーパントが左腕を変化させた機銃を向けようとするのを、イクサと総司の変身した仮面ライダーのそれぞれが手にした銃で射撃し、妨害することに成功する。

 その隙に、けたたましい警報音を鳴らす、青と白の携帯電話――その最後のボタンを、イクサが押し込んだ。

 途端、イクサの装甲の一部が吹き飛んで、その下の青い内部構造が剥き出しになる。
 仮面もその形状を変え、まるで鎧武者の兜のような姿へと変化した。

 それはかつて紅音也が変身していた物とは違う、未来でこそ到達し得た、IXAの究極形――

「キャストオフ」

 ――CAST OFF――

 青き戦士の雄姿が顕現すると同時、総司の変身した仮面ライダーも、その鈍重そうな装甲を排除する。

 ――CHANGE BEETLE――

 現れたのは、黒く煌めく装甲に赤い紋様を刻んだ、カブトムシを思わせる仮面のスマートな戦士。角によって双眼となった金の視線で赤い怪人を睨む彼に習い、悪を前に恐縮したことを恥じながら――何も知らずに翔太郎は、自身の切り札であるガイアメモリのスイッチを押した。

 ――JOKER!――

「――変身!!」

 ガイアウィスパーに重ねたその叫びが、開戦の合図となった。

631 ◆o.ZQsrFREM:2012/02/08(水) 09:50:09 ID:2ltsOyAg
議論スレで指摘された部分の修正版を投下します。

>>何故なら名護啓介は、正義の味方――海堂直也がその身で示した、仮面ライダーだ。
>>理不尽に苦しむ者を救うために、全力を尽くすことを信条とする名護にとって、擬態天道は救済すべき相手に他ならなかった。海堂も、最期までそれを望んでいたはずだ。

 この文を、以下のように加筆修正させて頂きました。

  ×    ×    ×     ×     ×

 何故なら名護啓介は、正義の味方――海堂直也がその身で示した、仮面ライダーだからだ。
 理不尽に苦しむ者を救うために、全力を尽くすことを信条とする名護にとって、擬態天道は救済すべき相手に他ならなかった。
 あの軍服の男――天道総司達と交換した情報や、奴と対面した時の海堂の反応からして、奴こそ小野寺ユウスケと海堂が遭遇したというカブトムシの怪人に変身する未確認生命体だろう。罪もなき人々を傷つけ、皆の優しい笑顔とその命をも奪っていくという許すべからず悪。奴らと戦って来たユウスケが言うには、その中でも最上級の強さを誇るという強敵を相手に、名護達を護るため、そして何より擬態天道を救うために単身挑み、散ってしまった海堂も、最期までそれを望んでいたはずだ。

  ×    ×    ×     ×

 もしご指摘された点は解決できたかと思いますが、まだ何か問題点がございましたらご指摘の方よろしくお願いします。

632 ◆MiRaiTlHUI:2012/02/08(水) 10:10:21 ID:BL6tiu1k
修正お疲れ様です。
これなら名護さんがガドルの事を知っている理由にも納得がいくので、問題ないと思います。

633 ◆LuuKRM2PEg:2012/02/08(水) 10:13:11 ID:bcYDutKc
修正お疲れ様でした。
自分もこれで問題はないと思います。

634 ◆3ZewuHHQig:2012/02/08(水) 21:56:42 ID:YqWo66nM
本スレで指摘いただきました、三原の知り合いに関しての部分修正版を投下いたします。
問題点があればご教示くださいませ。

【修正前】
 三原の知り合いで残っているのは乾巧と村上峡児の二人。
 乾は、オルフェノクと呼ばれる人を超えた怪物にファイズのベルトを使って対抗している人物で、口は悪いが信頼できるらしい。一方の村上は、オルフェノクの首魁と目される人物だから警戒が必要らしい。三原自身もこの二人とはあまり関わりがないのでほぼ伝聞の情報しか知らず、よくは分からないとの事だった。

【修正後】
 三原の知り合いで残っているのは乾巧と草加雅人、村上峡児の三人。
 乾は、オルフェノクと呼ばれる人を超えた怪物にファイズのベルトを使って対抗している人物で、口は悪いが信頼できるらしい。一方の村上は、オルフェノクの首魁と目される人物だから警戒が必要らしい。三原自身もこの二人とはあまり関わりがないのでほぼ伝聞の情報しか知らず、よくは分からないとの事だった。
 草加雅人については、流星塾という養護施設で幼少時代を共に過ごした仲間で、カイザのベルトを使いオルフェノクと戦っていた為、戦力的にもかなり期待できるという。しかし、想いを寄せていた園田真理が死んでしまった事もあり、(もしかしたら、とあくまで一つの可能性である事を三原は強調した上で)自分の世界を優勝させ真理を生き返らせる為に、なりふり構わずに他の世界の参加者を狙うかもしれない、と付け加えられた。

「話したらさ、分かってもらえないかな……? 大ショッカーがほんとに死人を蘇らせてくれるかなんて分からないんだしさ」
「会ってみないと分からないけど、どうだろう。結構、何考えてるのか分かんない所がある奴だったから……」

 躊躇いがちな三原の口調は、幼馴染の草加を信じたい気持ちを滲ませていたが、迂闊には信用し切れない相手のようだった。

635 ◆LuuKRM2PEg:2012/02/08(水) 22:31:36 ID:rXYJwcmc
修正乙です。
自分はこの形の修正なら、草加に関する三原の感情がきちんと描写されてるので問題ないと思います。

636二人で一人の/通りすがりの名無し:2012/02/08(水) 22:45:31 ID:2ltsOyAg
修正乙です。
私が見た限りでは問題点はないと思います。

637 ◆LuuKRM2PEg:2012/02/26(日) 00:15:07 ID:MYRwHxqs
これより、本スレで指摘を頂いた部分の修正版を投下します。



「フィリップ……まさかお前とこんな形でまた会うとはな」
「僕も……本当ならもっと違う形で再会したかった。ディケイドと敵同士になるなんて、考えるのも嫌だ……」
「だったら、奴らを倒すことだけを考えろ。翔太郎もそれを望んでいるはずだ」
「わかってる、僕は最初からそのつもりだ。みんなの力になって、大ショッカーを打ち破るつもりだ」
「なるほどな」

 その言葉には一切の嘘も揺らぎも感じられなかった。それどころか、かつて共に戦ったときより力強さすらも感じられる。フィリップと共にいた時間は本当に少しだけで、フィリップ自身の事はよく知らないがそれだけは確信出来た。
 恐らく、翔太郎と共に数多くの困難を乗り越えたのだろう。大樹曰くフィリップ自身もこの戦いで仲間を失ったらしいが、悲しみに耐えているのがその証拠だ。

「それと、これはお前のだろ?」
「これは……ヒートのガイアメモリ! 君が持っていたのか」
「正確には、一真が持っていた奴だ」

 士は懐からヒートメモリ、そしてG3のライダーカードを取り出す。今は亡き仲間達が残してくれた別の仮面ライダー達の為にあるアイテムだった。
 こうして本来の持ち主に再会出来たのだから、返さなければならない。

「これはお前らのだろ? 俺が持ってても仕方が無いから、持っとけ」
「ありがとう……ディケイド」
「受け取っておくよ、士」

 フィリップにはヒートメモリを、大樹にはライダーカードをそれぞれ渡した。

「どうやら、諸君の言葉は本当のようだな……鳴海亜樹子は霧島美穂に脅されていたと言うことが」

 しかしそんな穏和な空気を壊すように、吹雪のように冷たい声が病院内に響く。
 一同はそちらに振り向くと、黒いコートを纏った男が高圧的な視線を向けていた。Gトレーラーから現れたその男は『カブトの世界』の怪人、ワームの首領である乃木怜治だと海東達は言った。
 そんな奴が何故わざわざ人間に協力しているのかは分からないが、大ショッカーを相手に戦おうと考えているのなら歓迎しなければならない。もしもその態度が演技ならば、叩き潰すが。

638 ◆LuuKRM2PEg:2012/02/26(日) 00:16:11 ID:MYRwHxqs
続いて、橘さんとフィリップの首輪考案の後に次のシーンを追加します。






「あんたが持っててくれたんだな、これ」

 病院に戻った乾巧は、橘朔也からファイズポインターとカイザポインターを受け取る。ようやく戦力を取り戻すことができたが、巧はそれを素直に喜べなかった。
 もしもファイズポインターさえあれば、霧彦達も死ななかったかもしれない。もしも雅人の手にカイザポインターがあれば、金居に殺されることは無かったかもしれない。IFの話をいくら考えたって意味は無いが、そう思うとやりきれなくなってしまう。
 でも今は、それに沈んでいる暇など無い。士達がここにいるのだから、力を取り戻した以上はやるべき事をしっかりやらなければならなかった。

「乾、すまない……俺の世界にいるアンデッドのせいで、お前の仲間が死ぬきっかけになるなんて……」
「別にあんたが謝る事じゃねえよ。あの金居って野朗をぶっつぶせばいいだけだ」
「……そうだな」

 五代雄介を操っていた金居という男の正体は、朔也や純一が生きる世界にいるアンデッドという怪人の中でも、特に上位の強さを持つカテゴリーキングという奴らしい。恐らくスマートブレイン社に所属していた特に強いオルフェノク、ラッキークローバーのような存在だろう。
 総司を失ってしまった戦いの頃からわかっていたが、やはり一筋縄ではいかない相手のはずだ。しかしこの病院に夢を諦めない者達が集まった今、巧は決して諦めたりはしない。
 例えいつ滅びてもおかしくない身体だとしても、最後まで戦い抜く。これ以上、巡り合って出会えた仲間達が戦いで散ってしまうなんて、あってはならないからだ。

(みんな……頼むから俺より先に死なないでくれ。滅びる運命を背負うのは、俺だけでいいんだ)

 ファイズポインターとカイザポインターを腕に抱えながら、巧はそう強く願った。

639 ◆LuuKRM2PEg:2012/02/26(日) 00:19:09 ID:MYRwHxqs
最後に状態票です。もしも疑問点などがありましたら、指摘をお願いします。


【乾巧@仮面ライダー555】
【時間軸】原作終了後
【状態】疲労(小)、ダメージ(小)、深い悲しみと罪悪感、決意、仮面ライダーファイズに10分変身不可、自身の灰化開始に伴う激しい精神的ショック(少しは和らいでいる)。
【装備】ファイズギア+ファイズポインター+ファイズショット+ファイズアクセル+オートバジン+ファイズエッジ@仮面ライダー555、カイザポインター@仮面ライダー555、
【道具】支給品一式×3、首輪探知機、霧彦のスカーフ@仮面ライダーW
【思考・状況】
基本行動方針:打倒大ショッカー。世界を守る。
0:天道の遺志を継ぎ、今度こそ誰も死なせない。
1:天道達との約束を果たせないだろう自分への絶望。
2:園咲夫妻の仇を討つ。
3:仲間を探して協力を呼びかける。
4:霧彦のスカーフを洗濯する。
5:後でまた霧彦のいた場所に戻り、綺麗になった世界を見せたい。
6:橘朔也、日高仁志、小野寺ユウスケに伝言を伝える。
7:仲間達を失った事による悲しみ、罪悪感。それに負けない決意。
8:乃木怜治を敵視、秋山蓮に若干の警戒。
【備考】
※天道の世界、音也の世界、霧彦の世界、志村の世界の大まかな情報を得ました。
※参加者達の時間軸に差異が出る可能性に気付きました。
※志村の血の匂いに気づいていますが、それはすべて村上たちのせいだと信じています。
※オルフェノクの寿命による灰化現象が始まりました。巧の寿命がどの程度続くのかは後続の書き手さんにお任せします。
※士に胡散臭さを感じていますが、嫌ってはいません。


【海東大樹@仮面ライダーディケイド】
【時間軸】最終話終了後
【状態】健康
【装備】ディエンドライバー@仮面ライダーディケイド、ライダーカード(G3、サイガ、コーカサス) @仮面ライダーディケイド、ディエンド用ケータッチ@仮面ライダー電王トリロジー
【道具】支給品一式、ブラッディローズ@仮面ライダーキバ
【思考・状況】
0:お宝を守る。
1:金居達の襲撃に備える。
2:殺し合いに乗った奴の邪魔をする。
3:知らない世界はまだあるようだ。
4:蓮、乃木、純一を警戒。
【備考】
※クウガの世界が別にあることを知りました。
※首輪の考案について纏めたファイルを見ました。
※志村純一について、自覚していませんが彼を信じたいと思っています。
※五代の言う『笑顔』、ブラッディローズ、自身の『仲間』をお宝だと思っています。
※ディエンド用ケータッチについては、今のディエンドの所有カードだけで使用可能なのかは後続の書き手さんにお任せします。


【フィリップ@仮面ライダーW】
【時間軸】原作第44話及び劇場版(A to Z)以降
【状態】健康、照井の死による悲しみ
【装備】なし
【道具】支給品一式×2、ガイアメモリ(ヒート)@仮面ライダーW、ファングメモリ@仮面ライダーW、ルナメモリ@仮面ライダーW、バットショット@仮面ライダーW、スパイダーショック+スパイダーメモリ@仮面ライダーW、ツッコミ用のスリッパ@仮面ライダーW、エクストリームメモリ@仮面ライダーW、ダブルドライバー+ガイアメモリ(サイクロン)@仮面ライダーW、首輪(北岡)、首輪の考案について纏めたファイル、工具箱@現実 、ガイアメモリ(タブー)+ガイアドライバー@仮面ライダーW、エターナルメモリ@仮面ライダーW FOREVER AtoZ/運命のガイアメモリ
【思考・状況】
0:亜樹子が殺し合いに乗っているのなら何としてでも止める。
1:大ショッカーは信用しない。
2:友好的な人物と出会い、情報を集めたい。
3:真理を殺したのは白い化け物。
4:首輪の解除は、状況が落ち着いてもっと情報と人数が揃ってから取りかかる。
5:出来るなら亜樹子や蓮を信じたいが……
6:乃木怜治への罪悪感と少しだけの信用。志村純一は信用できる。
【備考】
※バットショットにアルビノジョーカーの鮮明な画像を保存しています。
※今のところは亜樹子を信じています。
※園咲冴子と天美あきらを殺したのは村上峡児と野上良太郎だと考えています。
※ガイアメモリ(タブー)を使ってドーパントとして戦うつもりがあるのかどうかは後続の書き手さんにお任せします。

640 ◆LuuKRM2PEg:2012/02/27(月) 16:49:17 ID:LfcWSz9E
本スレで指摘された部分の修正版を投下します。
何かありましたら、指摘をお願いします。


(地の石……そんなに凄いのがあるんだ)

 そしてまた、矢車想と同じように鳴海亜樹子は五代雄介という男に期待を寄せている。もっとも彼女の場合は、雄介ではなく彼を縛る地の石についてだが。
 フィリップ達の話を聞いてから、亜樹子はずっとそれに興味を持っていた。何でもその石によって生まれたライジングアルティメットという仮面ライダーはとても強く、数人で立ち向かっても返り討ちにしてしまう程らしい。
 しかも地の石の効果はそれだけでなく、ライジングアルティメットとなった雄介を思いのままに操れるようだ。もしもそんなのが自分の手に渡ったなら、ここにいる馬鹿な男達を皆殺しにできるかもしれない。
 金居という男が持っているらしいが、自分一人では到底奪うことなどできない。自分一人ならば。

(みんな、頑張って金居って奴らをやっつけてよね……あたし、応援してるから)

 しかしここには、自分を信頼している男達が何人もいる。彼らに戦いを任せて消耗した所を狙って変身アイテムを奪えば、勝機はあるかもしれない。
 思えばフィリップ達が現れてから、良いことが次々に起こる。志村純一という男が東京タワー爆発の原因は、殺し合いに乗っていた野上良太郎と村上峡児にあると言っていた。あの良太郎が本当は殺し合いに乗っていたことは少し驚いたが、むしろ都合が良い。
 東京タワーで犯した罪を少しだけ誤魔化せた上に、天美あきらや園咲冴子の二人を一気に始末できたのだから一石二鳥だ。同じ世界の住民の冴子が死んだのは痛いが、地の石さえあれば減った戦力はすぐに取り戻せる。
 そしてフィリップの持っている、T−2ガイアメモリの一種であるエターナルもできるなら手に入れたい。かつて風都を絶望のどん底にまで叩き落としたエターナルメモリとロストドライバーが揃えば、もう向かうところ敵なしだ。
 ここにいる誰もロストドライバーを持ってないのは痛いが、聞いた話によるともうこの世にいない草加雅人という男が持っていたらしい。ならば今は、彼を殺した金居がロストドライバーを所持しているのだから、地の石のついでに奪えばいいだけだ。
 チャンスを待つ亜樹子は笑っていた。

641 ◆nXoFS1WMr6:2012/05/10(木) 21:23:08 ID:VxHkRPB.
作品を見直し、個人的に問題はないと判断しましたが、何分戦闘描写というものが初めてで不安なので、こちらに投下させていただきます。

642進化(仮投下) ◆nXoFS1WMr6:2012/05/10(木) 21:24:38 ID:VxHkRPB.
「おい、起きろよ、俺と戦おうぜぇ」

どこからか自分を呼ぶ声がしてン・ダグバ・ゼバは意識を取り戻した。
その声はとても狂気に満ちていて、それでいて絶対に抗えないと感じさせる何かがあった。
なぜかダグバにはその声の主との遭遇をうれしいと感じられた。
それが何故か判らぬままゆっくりと目を開けたダグバは、瞬時に全てを理解する。
なぜなら今自分の目の前にいる男が放つプレッシャーこそが自分がこの場においてのゲゲルへの認識を改めさせた力そのものであったため。
しかし、この力――テラードーパントの力――はこの男ではなくグラサンの男が持っていたメモリの力ではなかったのか?そんな疑問が浮かんだもののすぐに否定する。
この男がグラサンの男を叩き潰し、メモリを奪った、ただそれだけのことだろう。
しかしそれでも目の前の男の放つプレッシャーはあの男が怪人体に変身した時とほぼ同等のレベルだった。
それを考えるだけでダグバの体は小刻みに震えていた。

「起きたのか?お前、最初に戦った時にすぐ逃げたガキだろ?あの時は楽しめなかったが今は違うよなぁ?」

言われて初めてダグバは最初の戦いのときの蛇の鎧のリントだと気付いたがそれに構う暇もなく男は未だ倒れ伏しているダグバの腹に強烈なキックを放った。
その一撃で最早それまでの時点で息が乱れていたダグバの肺から空気が逃げていく。
数メートル吹っ飛び、何とか呼吸を整えようと必死なダグバが状況を確認しようと男のほうを向いた時、男はすでに行動に出ていた。
自前のバイクのバックミラーに紫のカードデッキと自身を反射させて――。

「変身」

――呟きと同時にいつの間にか巻かれていたⅤバックルに紫のデッキを入れ込む。
それと同時に男の周りにいくつもの虚像がオーバーラップし、それが男に収束していく。
それが完全に収まる頃には、男――浅倉威――は仮面ライダー王蛇へと変身していた。
その光景を目の当たりにし、今にも襲いかかってきそうな男に向けてダグバは真の力を解放した。
無論、浅倉の体から放出されるテラーの力はダグバにも通用する、この場において初めての彼の戦いを見ればそれは痛いほどわかるだろう。
では何故、ダグバは恐怖からまた逃げ出そうといないのか、答えは簡単だ。
――恐怖をたくさん味わいたいという、狂った欲望のため。
それを考えれば、ダグバが今この状況でまた恐怖故に逃げ出すということは考えられないだろう。
恐怖を味わい尽し、身も心もピクリとも動かないレベルまで恐怖してもまだ足りないというほどの強欲な王が今、欲望のままに走り出した。
そして一気に間合いを詰め、お互いの体にそれぞれ強烈な右ストレートを放つ。
ダグバにはあまりダメージがいっていないのに対し、王蛇の体からはあり得ない量の火花が飛び散る。
それはまるで王蛇のダメージをそのまま表したかのように。
数歩下がった王蛇は素手で戦うのは分が悪いと判断し、デッキより一枚のカードを抜き取った。
それをそのまま右手に持つ牙召杖ベノバイザーに読み込ませると、それまで静けさが支配していた空間に一つの電子音声が鳴り響く。

643進化(仮投下) ◆nXoFS1WMr6:2012/05/10(木) 21:26:22 ID:VxHkRPB.

――STRIKEVENT――

その音声に呼応するかのごとく、空中から契約モンスターであるメタルゲラスの頭部を模した武器、メタルホーンが王蛇の右腕に装着される。
メタルホーンの最大の特徴はそのまま、そのリーチの長さ、及び貫通能力である。
詰まる所、現在素手であるダグバに、反撃の手はない。
これならば勝てると信じて先ほどよりもリーチが格段に伸びた王蛇は再び突進する。
渾身のひと突きは回避されたが、それでは怯まず今度は薙ぎ払うようにしてメタルホーンを振り回す。
ダグバはそれも難なく回避するが、流石に恐怖を楽しんでいるとはいえダグバはテラーの力を受けているが故に王蛇の攻撃に対するリアクションがどうしても遅れる。
そのためダグバは王蛇の終わりの見えない連続攻撃をかわしきる自信が無かったが故、作戦を変えた。
ただでさえもう一人のクウガとの戦いで傷ついた体なのだ、いつまでもよけ続けてもいずれは体力切れで追い込まれるだろう。
故に一度王蛇と距離をとり、ガードの体制を整える。
どうせかわしきることができないのなら、今すぐに攻撃を喰らってカウンターを打ち込んだほうが効果的だと考えたのだ。
それを知ってか知らずか王蛇は一気に間合いを詰め、メタルホーンをダグバの身に突き刺さんばかりの勢いで必殺の突きを繰り出した。
ダグバの身にメタルホーンが突き出され、その身から火花が散る。
王蛇は思わず勝利を確信するが、それは甘かったのだと、自覚する。

「フフッ」

ダグバは王蛇の渾身の一撃を喰らったのにも関わらず、笑ったのだ。
恐怖が、そしてこのダメージがなんとも愛おしくて、笑わずにはいられなかった。
その状況に王蛇は柄にもなく戦慄するが、すぐに我を取り戻す。
ダグバの左フックが自身の身に迫っていたため。
それはほとんど零距離で放たれた一撃だったのにも関わらず王蛇は反射的に右手のメタルホーンを構えることができた。
それが何故なのか王蛇にも正確なことは分からない、だがしかし、王蛇は信じていた。
――この盾ならば、ただの一撃のパンチ如き、防ぎきれると――。
――しかし結果は無残なものだった、メタルホーンはダグバの攻撃に耐えうることなく粉々に砕け散ったのだ。
そしてメタルホーンを砕いた程度でダグバの力が収まるわけもなく、そのまま王蛇の体に拳がクリーンヒットする。
再び爆発するように火花が王蛇の体から飛び散り、そのまま王蛇は地面を何度も転がる。
甘かったのだと、改めて自覚させられた。
この敵は恐らく、今まで戦ってきた奴の中でも最上級の実力を持っている。
自分の世界での13人目の仮面ライダーであるあの黒い龍騎や妙な技を使う金の仮面ライダー、オーディンと比べても色あせないような力。
恐らくは城戸や秋山といった他のライダー連中と力を合わせても勝てるかどうか怪しいほどに。
しかし、王蛇は全くと言っていいほどこの状況を恐怖してはいなかった。
この敵は多分どんなに戦っても飽きはしない、こいつなら自分をずっと満足させてくれる。
だからこそ彼はふらふらと起き上がって自身の必殺の手札を一枚、バイザーに読み込ませた。

644進化(仮投下) ◆nXoFS1WMr6:2012/05/10(木) 21:28:03 ID:VxHkRPB.

――FINALVENT――

その声に応えて、サイドバッシャーのバックミラーより現れ出でたのは一匹の大蛇。
仮面ライダー王蛇の契約モンスター、ベノスネーカーである。
王蛇はこの最上級の敵に対して、あの黒い龍騎よりも期待を寄せている。
だから彼は自分の持てる切り札で以って敵に全力で勝負を挑むのだ。
背後から迫りくる大蛇に合わせて王蛇は走りだし、そのまま空高く跳躍する。
そしてそのまま空中で宙返りすると、ベノスネーカーは目前に現れた主に向かって強酸を射出して――。
――それを受けた王蛇は、ダグバに向かって足を連続で上下し、交差させる。
それこそが仮面ライダー王蛇が最も信頼を寄せる必殺の一撃――ベノクラッシュだった。
この一撃を、自分の切り札を喰らって、ダグバはどの程度のダメージを負うのか。
もしかしたら無傷かもしれない、もしかしたら死ぬかもしれない。
こいつは自分の全力を受けて、どんなリアクションをしてくれるのだろう。
そんな思いと共に王蛇の蹴りがダグバの体に届いた。
一撃目はダグバの腕に防がれるが、しかしそれで王蛇の怒涛の攻撃が収まるわけもない。
二撃目がダグバのガードを揺るがし、三撃目でダグバの両手が高く蹴りあげられた。
そして四撃目でついにダグバのボディに蹴りが届いた。
最初は肩に、次に頭に、そして最後にダグバの鳩尾に鋭い蹴りが突き刺さって――。
そこから少しダグバは宙に浮かぶが、すぐにそれは終わりを告げる。
瞬間的にダグバが宙で小爆発を発生させたため。
最早何も壊れるものが残っていない焦土でダグバは遥か遠くへと、吹き飛んで行ったのだった。
終わりか、呆気ない気もするが、思えば奴は手負いだった。
今まで何人もの仮面ライダーを葬ってきたあの技は間違いなくあの魔王にも通じたのだ。
しかしそれでも王蛇はまだ油断しきっていなかった。
ここで油断し、この場を立ち去ろうとした瞬間に背中から攻撃を喰らった、では遅いということを最早王蛇は理解している。
あの時の黒い龍騎の時のようにならないように、彼は何もない焼野原を一人周りを警戒しながら歩いていく。
そして数メートル歩いたところで、見つけた。
血だまりの中でうつ伏せに横たわる白の悪魔を。
そしてその血だまりが常人においての致死量を有に超えているということを王蛇は理解した。
あそこまでのパワーを誇っていたから自身の必殺技でもと内心期待していたことに気づくが、しかしどうでもいい。
内心つまらないと思いながら、先ほどのあの黒い仮面ライダーならば自分を楽しませてくれるんじゃないかと奴を追おうと、王蛇がその場を立ち去ろうとしたその瞬間だった。

「ウゥ、ウオォォォォォォォ!!」

まるで獣のような、狂った雄たけびを聞いたのは。

645進化(仮投下) ◆nXoFS1WMr6:2012/05/10(木) 21:29:01 ID:VxHkRPB.



気がつけば自分は、ドロッとした生温かい液体の上でうつ伏せになって倒れ伏していた。
何があったのか、強い衝撃を喰らってあまりよく働かない頭を使って考える。
そうだ、自分はあの恐怖の力を持つ男と戦っていたんだった、それであの仮面ライダーの放った必殺技を受けて今ここに倒れているのだ。
現状を理解したダグバはまた恐怖を味わいたい気持ちに押されてすぐさま立ち上がろうとするが、体が動かない。
そこで気づく、先ほどのクウガとの戦いで受けたダメージが大きすぎたのだと。
あのとき受けたダメージは現在も治癒され続けているが、それでもあの激闘の後にすぐ浅倉威、つまり仮面ライダー王蛇という凶悪な参加者との戦いをするというのは自殺行為に近かったのだ。

(あぁ、僕、ここで死んじゃうのかな……、死んだらあのクウガやガドルを倒したリントとももう戦えないし、もう怖くなることもできないんだよね)

そう考えて思わず暴虐の魔王は身震いする。
自分がここでこのまま倒れていたら、間違いなくあの仮面ライダーは自分のことを殺しに来る。
例え殺しに来なかったとしても、この出血量だ。
動けない現状を考えるなら、このままここに倒れ伏していたら自分は次の放送の死亡者に名を連ねることとなる。
そうなれば全て終わりだ、もう誰とも闘うことなんてできないし、誰も怖がらせることもできないし誰にも怖がらせてもらうこともできない。
だがそれを考えた瞬間にダグバの中にたった一つの大きな感情が広がっていく。

(怖い!死んだら全部終わるなんていやだ!僕はもっともっと楽しみたいのに――!?)

そこで気付く。
これが、これこそが最大級の恐怖なのだと。
それはつまり死への恐怖、ダグバがリントを殺す際に何度もその口から聞いた言葉と、先ほどの思考はよく似ていた。
そうか、これが本当の恐怖、迫りくる死、という不可避の現実にダグバは今、心の底から恐怖した。
しかしだからこそ、ここで終わりたくはない。
こんな極上の恐怖、一度きりで終わらせたくはない、ならばどうするか?手段ならある、ゴオマから取り返したアレを使うのだ。

(ありがとう、蛇の仮面ライダーのリント、君は僕をたくさん怖がらせてくれたから……、ほんのお返しだよ?)

そんなことを考えると先ほどまで動かなかった足が動いた。
ふらふらしながら立ち上がったダグバは、そのベルトにかつて自身の真の力を取り戻す際に使った破片を押し込む。
瞬間、湧き上がる力と共に恐怖がダグバの中を駆け巡る。
この力は本当に自分の物なのかと、そう思ってしまうほどの計り知れないパワーが自身から溢れ出る。
それを感じると同時に恐怖の魔王は大きく雄たけびを上げた。

「ウゥ、ウオォォォォォォォ!!」

その声は、まるで世界すべてを闇で覆い尽くすような、なんとも形容しがたい声だった。
強いて言うならばダグバの異名でもある、究極の闇、といったところだろうか。

646進化(仮投下) ◆nXoFS1WMr6:2012/05/10(木) 21:30:39 ID:VxHkRPB.

「ハァ、ハァ、ハハハハハハハァッ!!」

そして悪魔は、笑い声を上げる。
彼の中に流れているエネルギーは最早先ほどの比ではない。
それを全身で感じながら確信する。
もう一人のクウガも、自身が先ほど変じたブレイドという仮面ライダーの最終形態、キングフォームを以ってしても、今の自分の前では赤子に等しいということを。
そして、ダグバは理解する。
つまるところ、今の自分に勝てる者はいないのだと、自分こそが究極の闇をも超えた存在、沈みゆく究極(セッティングアルティメット)になったのだと。
不気味な笑みを浮かべたダグバは、ゆっくりと、自身が向かうべき敵へと、再度向かう。
死の恐怖を教えてくれた、あの蛇の仮面ライダーへと、ゆっくりと歩んでいった。
それを見た浅倉も、瞬時に理解した。
この悪魔の発する覇気や迫力が、最早先ほどとはまるで違うことに。
故に狂喜する、自分の新たな好敵手となりえる存在に出会えたことに。
だが、この敵を倒すにはもうあまり時間が無いことを、王蛇は理解していた。
この悪魔を倒すには、自身の究極の必殺技を叩き込まなければ勝機はない。
しかしそれに必要となるピースの一つが、自身の横で消滅しかかっているのを見てしまったのだから。
胸中、とても名残惜しく思いつつも彼は一枚のカードを、バイザーへと差し込んだ。

――UNITVENT――

「悪いな、本当はもっとお前と遊ぶのも悪くないんだが……、消えろ、そろそろ」

その言葉に反応するが如く、鏡より現れた嬰と犀のモンスターが、ベノスネーカーの元へと集っていく。
一瞬、強力な光が辺りを覆ったかと思えば、瞬間そこに存在していたのはその三体のうちどれでもなく、それぞれのパーツを組み合わせたようなモンスターだった。
その名を、獣帝ジェノサイダー。
仮面ライダー王蛇が持つ三体の契約モンスターを融合させたキメラモンスターである。
そしてジェノサイダーはダグバに向かって強力な酸を放つ。
ダグバは瞬時にそれを回避するも、しかし酸が着弾した地点から爆発が巻き起こり、結果ダグバは体勢を崩す。
そして、その隙を王蛇が逃がすわけもない。
一枚のカードをデッキから引くと同時、王蛇としての一撃必殺の切り札をバイザーへと読み込ませた。

――FINALVENT――

647進化(仮投下) ◆nXoFS1WMr6:2012/05/10(木) 21:31:29 ID:VxHkRPB.
それこそが、仮面ライダー王蛇の真の切り札。
その電子音声に合わせて、ジェノサイダーの腹部に小さなブラックホールが出現する。
ダグバはいきなり背後に現れたそれに吸い込まれないように足に力を込める。
幸いそこまで風力は強くないし、自分の力をもってすればあのブラックホールの射程距離内から離れることも可能だろう。
しかしそこまで考えて、気付く。
目の前にいたはずの王蛇が、自身の視界から消え去っていることに。
どこにいるのかと辺りを見回せば、王蛇は自分よりも上空できりもみ回転をして、足をこちらに向けていた。
そう、これこそが王蛇の必殺技、ドゥームズデイである。
ジェノサイダーが発生させたブラックホールに敵が気を引きつけられている間に王蛇が蹴り込む。
たったそれだけの簡単な必殺技であるこれはしかし、ブラックホールの中に入ってしまったら最早戻ってこられないという最凶の必殺技なのだ。
そして、遂に王蛇のキックがダグバのボディにヒットする。
ガリガリとダグバの身を削るような音がした瞬間にダグバの体は衝撃に耐えられずジェノサイダーのブラックホールに吸い込まれていく。
妨害者さえいなければ、この技を抜ける手段はない。
そして、周りの開けた焦土には人の気配も感じられないため前回のように不意打ちを食らう可能性はない。
更に鏡すらないため、ミラーモンスターを警戒する必要もない。
今度こそ、自分の勝利だ。そうやって思いかけるが、しかし王蛇は油断できなかった。
ここまでの揺るぎない勝利の条件がそろっていても尚、この敵には王蛇を絶対に油断させない力があった。
――そして、その思いは的中する。
王蛇が見守る中、いきなり自身の契約モンスターであるジェノサイダーが炎上したのだ。
瞬間的に起こった事実に王蛇は驚くが、しかし炎で身を焼かれた程度では頑丈なボディを持つジェノサイダーは死なない。
故にこのままドゥームズデイを続けていれば王蛇の勝利はまだありえただろう。
だがしかし、彼に予想外の不幸が降りかかった。
ジェノサイダーが体内まで燃やされるのを警戒し、本能的に腹部のブラックホールを王蛇の指示を待たずして閉じてしまったのだ。
――しかしそれこそが一番の間違い。
ドゥームズデイによって引き寄せられたダグバの勢いは止まらず、ジェノサイダーに向かって猛スピードで突っ込んでいき、そしてその右拳を勢いよく伸ばした。
元々足が遅く、更に今炎上して視界も遮られているジェノサイダーにこの攻撃をかわす術はなく――。
――そのまま胸に拳を受けてジェノサイダーは大爆発を起こし、その場で消滅した。



「ふふふ、アハハハハハハハ!!」

648進化(仮投下) ◆nXoFS1WMr6:2012/05/10(木) 21:32:41 ID:VxHkRPB.
粉塵が収まり、辺りが再び静けさを取り戻したころ、ン・ダグバ・ゼバは狂喜の笑い声を上げた。
それは、自身の強化された力に向けての物。
読者諸君の中には何故ダグバが勢いをつけただけのパンチでジェノサイダーを粉砕することができたのか、疑問に思う者もいるだろう。
更に本来のジェノサイダーは龍騎の世界でも実力は上位に連ねられるライダー、仮面ライダーリュウガのファイナルベント並みの威力を使わなければ、倒すことなどあり得ない。
例え制限がかかっていたとしてもダグバは特別の力など何一つ使わないパンチで簡単にこれを倒した。これは何故なのか。
答えは簡単だ、リュウガのファイナルベントとダグバの渾身の右ストレートの威力が同等であるということ――。
そのただ一つの事実がダグバを満たしていた。キングフォームの力を手に入れた時点でこれ以上はないとばかり思っていたが、まさに上には上がいた。
今の自分に勝てるものは何もいないと、嬉しさが込み上げてくるがそれと同時に彼の中には虚しさが広がっていく。
少し前までの自分でさえ、究極の力を解放したクウガがやっと追いつけるレベルの実力をもっていたのだ。
だからこそ今先ほどまでを大きく上回るパワーアップをしてしまった自分を楽しませてくれるリントはまだいるのかと、ダグバは思考する。
もしかしたら、いないのではないか。そんな思考がダグバを占めてしまって。
そういう意味で言えば本当にガドルは羨ましかったのだなと溜息をついた時だった。

「ああああああぁぁぁぁぁぁ!!」

赤い剣を持った野獣が自らに向かって突進してきているのを見たのは――。


――時は少し溯り――。


ダグバが笑い声を上げている時、仮面ライダー王蛇はピクリと痛む体を動かした。
ジェノサイダーが爆発した時、その近くにいた王蛇は暴風で体を吹き飛ばされていたのだ。
全身がきしむ感覚と、耐えがたい痛み、臓器が痛んだのか体の内部が熱くなり吐血したのだという実感。
それらを全身に受けながら、しかしそれでも王蛇はふらりと立ち上がる。

(はは、最高だ……、これだから戦いは止められねぇ)

彼は遠くで笑う怪人を見つめながら考える。
こいつはこの場に来てからの最高の獲物だと。
この怪人なら自身の必殺技も何かしらの手段で覆すのではないかとは思っていたが、まさかただのパンチで自身の最強の僕を倒してしまうとは。
――面白すぎる。あの黒い龍騎なんて霞んでしまうほどの実力と、迫力を兼ね備えるこの怪人との戦いを王蛇はまだ終わらせたくはなかった。
目の前の敵との戦いをもっと楽しみたい。この終わらない興奮を、もっと楽しみたい。
そんな不気味な欲望を抱きながら王蛇は近くに落ちていた赤い大剣を拾い上げ、思い切り地を蹴った。

649進化(仮投下) ◆nXoFS1WMr6:2012/05/10(木) 21:33:26 ID:VxHkRPB.

「ああああああぁぁぁぁぁぁ!!」

目前に迫る白い悪魔を前に、気付けば王蛇のイライラはすっかり消えていた。
故に今彼の体を支配するのは終わらぬ興奮と戦いへの強い願望のみ。

――もっと、もっと欲しい。戦いが、終わらない戦いを、体が求めている。

こいつとならば、それは実現するかもしれない。
戦いなれた王蛇の力が及ばないのだ、最早客観的に見れば勝ち目はないのかもしれないが――。
――浅倉に、そんなことは関係ない。
戦いを求め続ける乾いた野獣が今、絶叫と共に剣を振り下ろす。
渾身の力を込めたそれは、しかしいとも簡単にダグバの手に収められていた。

「なっ!?」
「まだ戦えるんだ、嬉しいよ、君と戦ってるととっても怖いし、楽しいし。でもさ、どうせなら〝あのメモリ″の力を使ってほしいな」

ダグバの言葉を理解するより先に、王蛇の中で何故自分の力がここまで落ちてしまったのかという疑問が渦巻く。
どういうことだと視点を落とし、気付いた。自身の体に纏っている鎧の色がどこか色あせていることに。
そこで彼は思い出した。この会場に連れてこられる前の自身がなぜ実力では格下のファムに敗北したのか。
それは黒い龍騎に自身の契約モンスターであるジェノサイダーを破壊されてしまったため。
『龍騎の世界』の仮面ライダーにとって、契約モンスターとは言わば、なくてはならない存在なのである。
契約モンスターが主に自身の力を与え、そしてそれを操る主が契約モンスターに餌を与える。
どちらにとってもお互いが必要な存在なわけだ。つまり仮面ライダーが戦いの途中で契約モンスターを失うこと、それはつまり――。
――仮面ライダーとしての大幅な戦闘力の低下、ひいては敗北を意味するのである。
元々契約モンスターが三体いる状態でも戦闘能力に劣るダグバとの戦いなのだ。この戦闘で契約モンスターを失うことは、死を意味する。
それを理解し、王蛇が身を引こうとした時には既に遅く、ダグバの強烈なパンチが腹めがけて放たれていた。
剣をつかまれ、身動きのできなかった王蛇に攻撃をかわす手段はなく、そのまま王蛇の体が勢い余って宙に浮いた。
体中が熱くなって、血を仮面の中で吐きながら王蛇は見てしまった。

自身に向かってその手を翳す白い悪魔を。

「ぐうううぅぅぅぅ!!」

650進化(仮投下) ◆nXoFS1WMr6:2012/05/10(木) 21:34:02 ID:VxHkRPB.
その身に炎を宿した王蛇は火を消そうと必死で地面を転がる。
敵に無様な姿を晒す王蛇を更に嘲笑うかのように、火は逆に勢いを増していく。
ただでさえブランク体となり装甲が薄くなった王蛇は身を襲うどうしようもない熱さを感じながら、急に体に風を感じた。
幸運なことに先ほどのダグバの腹をめがけたパンチは、きれいにカードデッキを叩き割っていたのだ。
それがわざとかどうかは別にして、デッキ以外の部位を攻撃されていたら、間違いなく今頃浅倉は王蛇の鎧の中で息絶えていただろう。
改めて地面に倒れ伏した王蛇――いや最早浅倉威としての姿をさらしている――はいつも身に纏っていた蛇革のジャケットが酷い匂いを出して焦げていた。
自身の体にも火傷を負っていたが、幸いにもまだ動けるようだ。ありがたい。
体の傷を確認した浅倉はふらりと立ち上がってまだダグバに向かう。本来普通の人間ならば、ここで立つことなど考えられない。
では浅倉は何故立つことができたのか、それはまたあとで話すことにしよう。
そう、いま大事なのは、浅倉はまだ戦えるという事実のみ。
だからこそダグバは歓喜する。彼の力を一つ潰した上にあそこまでの実力差も見せつけたのだ。
最早浅倉には、〝あのメモリ″の力を使うしか生き残る手段はない。
その一つの可能性しか考えなかったからこそ、ダグバは浅倉の行動を良く見ていなかったのだろう。
デイパックのメモリを取り出すと思われたその右手は天高く掲げられていた。
そしてその右手についているものを見た時、ダグバは予想外の行動に驚愕したのだ。
無論、何をするのかはわからないが嫌な予感が頭をよぎり、何かしらの行動に出る前に終わらせようとダグバがその手を翳そうとした時。
天から舞い降りた一匹のカブトムシを模したような機械がダグバに体当たりを仕掛けた。
流石に傷付いた体でこれを無視することはできず、ダグバは手を翳すのをやめ、数歩後ろに下がる。
それを見届けたカブトムシ型の機械は未だ天高く掲げられている浅倉の右手のブレスにきれいに収まる。
浅倉はそれを少しふらふらしながら左手で回すと、その体に電子音声と共に新たな鎧が装着された。

――HENSHIN――
――CHANGE BEETLE――

ヘラクレスオオカブトを模したような銀の鎧をまとう戦士の名は、仮面ライダーヘラクス。
もしかしたらこの姿でまた戦うのか、もしかしたら〝あのメモリ″は変身制限にかかっているのかもしれない。
ならばこれでも構わない。思う存分恐怖を味わうだけだとダグバが再度身構えた時、見てしまった。ヘラクスの手が、その腰に向かっているのを。

――CLOCK UP――

その場に電子音声が鳴り響くと同時に、ヘラクスの姿がそこから掻き消える。
逃げたのだと、瞬時に理解するが、ダグバの中には悔しさと共に満足感も溢れていた。

651進化(仮投下) ◆nXoFS1WMr6:2012/05/10(木) 21:34:35 ID:VxHkRPB.

「アハハ、ハハハハハハ!!」

自分は、あの恐怖から今度は逃げなかったのだと。
結局戦いに決着こそ付かなかったが、今はこれでも満足だ。
自分は新しい力を手に入れて、あの恐怖を乗り切った。
その満足感がダグバを占める中、急速にダグバは睡魔に襲われた。
クウガとの戦いの疲労も抜けない状態で浅倉との常に恐怖を味わい続ける戦いはさすがに辛かったのだろう。
それから解放された安心感からか、ダグバは再び深い眠りの中へと落ちていった。

一見するとただの疲労回復のようにも見えるダグバの眠り。
だが、それはもしかしたら数時間前に浅倉がしたのと同じように、新たに手に入れた力を体に馴染ませるための物かもしれない。

――恐怖の権化は、もう一度自身を眠りから覚ます存在が現れるのを待つかのように、焦土の中心でもう一度眠りについた。
――その眠りが覚めるのは、彼自身の体が十分に休まった時なのか、もしくは今回のように他社に妨げられる形でなのか。
――まだそれは誰にも分らなかった。

【1日目 真夜中】
【E-2 焦土】

【ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ】
【時間軸】第46話終了後以降
【状態】疲労(極大)、ダメージ(極大)、恐怖(極大)、もう一人のクウガ、浅倉との戦いに満足、ガドルを殺した強者への期待、額に出血を伴う怪我(治癒中)、気絶中、仮面ライダーブレイドに1時間30分変身不可、怪人体に二時間変身不可
【装備】ブレイバックル@仮面ライダー剣+ラウズカード(スペードA〜13)+ラウズアブゾーバー@仮面ライダー剣
【道具】なし
【思考・状況】
0:ゲゲル(殺し合い)を続ける。
1:恐怖をもっと味わいたい。楽しみたい。
2:もう1人のクウガとの戦いを、また楽しみたい。
3:ガドルを倒したリントの戦士達が恐怖を齎してくれる事を期待。
4:またロイヤルストレートフラッシュの輝きが見たい。
【備考】
※浅倉はテラーを取り込んだのではなく、テラーメモリを持っているのだと思っています。
※ダグバのベルトの破片を取り込んだことで強化しました。外見の変化はあるかやどの程度の強化なのか、また更に進化する可能性はあるのかどうかは後続の書き手さんにお任せします。
※怪人体は強化されましたが、それが生身に影響するのか、また変身時間はどうなっているのかということなども後続の書き手さんに任せます。
※制限によって、超自然発火能力の範囲が狭くなっています。
※変身時間の制限をある程度把握しました。
※超自然発火を受けた時に身に着けていたデイパックを焼かれたので、基本支給品一式は失われました。
※キングフォーム、及び強化された自身の力に大いに満足しました。
※仮面ライダーブレイドキングフォームに変身したことで、十三体のアンデッドとの融合が始まっています。完全なジョーカー化はしていませんが、融合はかなり進んでいます。今後どうなるのか具体的には後続の書き手さんにお任せします。
※一条とキバットのことは死んだと思っています。

652進化(仮投下) ◆nXoFS1WMr6:2012/05/10(木) 21:35:27 ID:VxHkRPB.




E−3エリアに存在する川の中で、浅倉威は水を浴びていた。
先ほど受けた火傷のダメージを癒すのは、やはり水が一番効果的だと判断したため。
ある程度痛みが引いてきたのを感じながらあのとき、何故自分があの行動に出たのかを考える。
無論今でもあの状況であの力を使っても勝ち目が無いから逃げたという考えはできる。
しかし、どうにも腑に落ちないのだ。自分自身、らしくないとも思ってしまう。
そう、あれはそこまで考えられていたものではなく、浅倉らしい野生の感とでも言うのだろうか、ならばあのときあいつから感じたものは……。

(馬鹿馬鹿しい、過ぎたことをどうこう言ってても仕方ねえしな、また会ったら殺す。それだけだ)

自身にとって最も使いやすかった王蛇のデッキを破壊されたのは痛いが、それでもまだ戦えない訳じゃない。
あの時とは違い、王蛇以外の力があってよかったと心から思う。
そうだ、生きていさえすれば、またいくらでも戦える。前回とは違い、今回はもっとずっと長く戦いを楽しまなければ。
バイクという移動手段が亡くなったのは痛いが、まぁなんとかなる。
そんなことを思いつつ、浅倉は体中の痛みが和らいでいるのに気付く。
川に体を付けているからだからなのだろうか、しかしそれでもいつもより早い気がする。
そんな考えを持ちながら、ふと自分の手に目をやった時だった。
先ほどの戦いで負った傷がみるみる内に回復しているではないか。
これはどういうことなのか、ある程度察しが付く者も多いだろうが、これは浅倉が取り込んだテラーの力に準拠する。
何もメモリを取り込んで得られるのは、その恐怖の能力だけではない。
先ほどの戦いで普通は対応できない距離の攻撃に対応できたのも、強化された超自然発火能力を受けても立ち上がることができたのはこのためである。
更には人間を超えたその回復力、及び身体能力も浅倉の体にしみ込んでいるのだ。
しかもドーパントの王の異名を持つテラーを取り込んだのだ、もしかしたら究極の闇と呼ばれるものたちに並ぶほどの能力を浅倉は手に入れたのかもしれない。
最早浅倉は本当の意味で人ではない。
だがそれを悔やみもせず、むしろ戦いが長く続くという事実だけで浅倉の顔には笑みが浮かんでいた。
放送まであと少し。
さらなる力を手に入れ進化した蛇と王の運命は、今はまだ神のみが知っていた。

653進化(仮投下) ◆nXoFS1WMr6:2012/05/10(木) 21:36:48 ID:VxHkRPB.

【1日目 真夜中】
【E-3 川付近】


【浅倉威@仮面ライダー龍騎】
【時間軸】劇場版 死亡後
【状態】疲労(極大)、ダメージ(極大)、満足感、体の各所に火傷(治癒中)、仮面ライダー王蛇に1時間50分変身不可、仮面ライダーヘラクスに2時間変身不可
【装備】ライダーブレス(ヘラクス)@劇場版仮面ライダーカブト GOD SPEED LOVE、カードデッキ(ファム)@仮面ライダー龍騎、鉄パイプ@現実、ランスバックル@劇場版仮面ライダー剣 MISSING ACE、
【道具】支給品一式×3、サバイブ「烈火」@仮面ライダー龍騎、大ショッカー製の拡声器@現実
【思考・状況】
0:これからどうする?
1:あのガキ(ダグバ)は次会ったら殺す。
2:イライラを晴らすべく仮面ライダーと戦う。
3:特に黒い龍騎(リュウガ)は自分で倒す。
4:殴るか殴られるかしてないと落ち着かない、故に誰でも良いから戦いたい。
【備考】
※超自然発火能力を受けたことにより、デイパックが焼けた可能性があり、そのまま走ったので何かおとした可能性があります。 また、おとした場合には何をどこに落したのかは後続の書き手さんにお任せします。
※カードデッキ(王蛇)@仮面ライダー龍騎が破壊されました。また契約モンスターの3体も破壊されました。
※テラーメモリを美味しく食べた事により、テラー・ドーパントに変身出来るようになりました。またそれによる疲労はありません。
※ヘラクスゼクターに認められました。
※変身制限、及びモンスター召喚制限についてほぼ詳細に気づきました。
※ドーパント化した直後に睡眠したことによってさらにテラーの力を定着させ、強化しました(強化されたのはドーパント状態の能力ではなく、非ドーパント状態で働く周囲へのテラーの影響具合、治癒能力、身体能力です)。今後も強化が続くかどうか、また首輪による制限の具合は後続の書き手さんにお任せします。

【全体備考】

※E-1エリアにガイアドライバー@仮面ライダーWが放置されています。
※E-2エリア廃墟が焦土になりました。また、同エリア中央に巨大なクレーターが生じています(規模は後続の書き手さんにお任せします)。またD-2エリアやD-1エリアの一部にも施設の窓ガラスが割れるなどの形で戦いの影響が及んでいる可能性があります。
※E-2エリア内にあったズ・ゴオマ・グ、紅音也、照井竜の遺体及びに彼らの首輪がどうなったかは後続の書き手さんにお任せします。
※E-2エリアのどこかにライダーブレス(コーカサス)@仮面ライダーカブト劇場版GOD SPEED LOVE、サイドバッシャー(サイドカー無し)@仮面ライダー555が放置されています。
※E-1エリアに基本支給品一式+音也の不明支給品×2と、基本支給品一式+東條の不明支給品(東條から見て武器ではない)の入った二つのデイパック、及びにバギブソン@仮面ライダークウガが放置されています。

654進化(仮投下) ◆nXoFS1WMr6:2012/05/10(木) 21:40:13 ID:VxHkRPB.
以上で仮投下終了です。
今回不安なのは全体的な戦闘描写です。
とても未熟なのは熟知していますが、皆様意見を下されば幸いです。
今回は意見には早めに対応したいと思いますが、明日は用事で夕方まで返信は不可能になりそうです。
それでは何か問題点があればよろしくお願いします。

655二人で一人の/通りすがりの名無し:2012/05/10(木) 22:19:04 ID:hJJ7Auxg
仮投下乙です。
感想は本投下の際に。私の見たところでは、破棄となるような大きな問題点などはないと思います。

ただ、ダグバの変身制限がブレイドに一時間三十分変身不可なのに対して、怪人態へは二時間となっていることが少しだけ気になりました。
単純に浅倉が待っていただけだと考えればそこまでですが、状況的にダグバを発見してからそこまで時間が経っているようにも見えなかったため
ブレイドと怪人態の制限時間がもう少し短くても良いかな、とは感じました。

しかしこれは問題点というほどでもないので、修正の必要はないかもしれません。

後は、王蛇ブランクがダグバに斬りかかるのに使ったのはモモタロスォードだと思うのですが、
それがダグバに受け止められた後、どうなったのかが不明瞭ですのでそのことを状態表や
備考欄に記入した方が良いかと思います。

自分からは以上です。改めて、仮投下乙でした。

656二人で一人の/通りすがりの名無し:2012/05/11(金) 09:25:40 ID:o7n3TQLA
乙です。自分が見た限りでは問題点はありませんが、誤字がいくつかあるので報告させてもらいます

>もしくは今回のように他社に妨げられる形でなのか
×他社○他者

>浅倉らしい野生の感とでも
×感 ○勘

>バイクという移動手段が亡くなったのは痛いが
×亡くなった ○無くなった

657 ◆nXoFS1WMr6:2012/05/11(金) 19:17:51 ID:iI60hBJg
皆様、ご意見ありがとうございます。
では、誤字を訂正し、ダグバのブレイドへの変身制限は1時間50分へ変更します。
またモモタロスォードはE−1エリアに放置されているという表記を加えます。

658二人で一人の/通りすがりの名無し:2012/05/11(金) 22:53:02 ID:h/.Xu7VA
>>657
すいません、大したことではないのですが、戦いの舞台はE-2だったのですよね?
それなのにモモタロスォードが放置されているエリアはE-1なのでしょうか? 単純にE-2の表記ミスでしょうか?
この点だけ気になったので再度指摘させて頂きました。

訂正作業、頑張ってください。本投下の楽しみにさせて頂きますね。

659 ◆nXoFS1WMr6:2012/05/12(土) 16:45:25 ID:ruK0HiXo
申し訳ございません。
それは単なる私のミスです。
該当部分を訂正し、個人的に見つけた脱字を訂正し、
仮投下から1日以上経っても反対意見が見られないようなので本投下させていただきます。

660二人で一人の/通りすがりの名無し:2012/05/23(水) 21:17:50 ID:4QXXRG3I
先日投下された『慚愧』について指摘があるのですが、よろしいでしょうか?
この話において一条さん達は1時間以上同じ場所にいたのにも関わらず全く持って傷が回復していません。
常人であり、怪我の治療もしていない一条さんはまだ(これも厳しい気がするけど)分かる気がしますが
ユウスケはアルティメットフォームになってより強力になったアマダムの治癒能力を持っているはずなので、1時間寝て全く意味無しというのはないんじゃないかなと。
出来るのなら状態表の変身不能時間をもう少し早めるか、二人の傷を少し回復させるという修正を行ってもらえるとありがたいです。
一度投下が通った作品に指摘するのはあまり好ましくないということは分かっていますが、返答を頂けると幸いです。

661二人で一人の/通りすがりの名無し:2012/05/23(水) 21:24:33 ID:X2ml.fls
ただの目安だからそこまでこだわらなくてもいいと思う

662 ◆3ZewuHHQig:2012/05/23(水) 21:36:13 ID:y3puL2cs
>>660
一条さんについては、体調はかえって悪化しているという描写になっているかと思います。
ユウスケは、ご指摘の通り多少回復していてもいいかもしれないのですが、アマダム自体も
ダメージを受けていますし、一時間で前話のダメージが軽くなるほど強力なものではないかな、
と判断してあのような状態表になりました。
(前話でも、変身解除した状態では変身中ほどは回復能力が働かない、という描写があります)
勿論この判断が妥当でないという事であれば修正いたしますが、ご意見を伺えればと思います。

663二人で一人の/通りすがりの名無し:2012/05/24(木) 06:13:57 ID:lVYDpGPQ
回復に関しては、基本的に書き手の裁量なのでそれでよろしいと思いますよ。
氏の言うように、直前の話でロイストのようなとんでもない技を受けまくった上にアマダムもダメージがあるので。

664 ◆cJ9Rh6ekv.:2012/10/24(水) 21:08:24 ID:u0rWnAaY
『ライダー大戦 Round Zero〜WARBREAK'S BELL 』について、タブー関連について描写を修正しました。

>>修正箇所その①


 おそらく剣崎一真や小野寺ユウスケと言った、他の仲間達の存在に因るところも大きいが、それでもヒビキが自分を信じてくれたということは、士の心にカード以上の新たな力を生んだ。

「……これはっ!?」

 正義の名を背負いし救世主達が並び立った時、その勇壮な揃い踏みを乱すかのように、緑色の何かが過ぎ去り、少年の焦燥を孕んだ疑問の声が生じた。
 既に攻撃を受けてしまったのかと焦ったディケイドが振り仰ぐと、それは杞憂であったようで皆無事な姿だった。ただ、フィリップがメモリを手に戸惑った声を上げていた。
 彼の手に収まっていたのは、彼が今唯一所持する、志村純一から譲り受けた姉の遺品であるタブーメモリではなく、ダブルへの変身に必要なサイクロンのメモリ……だがそれは左翔太郎がいなければ、二人で一人の仮面ライダーである彼らは変身できないはずではなかったのか?
 どうしたことかとディケイドが思考を巡らせるよりも早く、病院全体を揺らす強烈な衝撃が頭上から駆け抜ける。
 一階の天井、つまり二階部分の床が抉り取られたことで作られた歪な窓には、本来の星空とは異なる獰猛な光の群れの姿が映し出されていた。


>>修正箇所その②


 エンドオブワールドから放たれた無数の火線に貫かれ、さらに数多の弾丸やミサイルに蹂躙されて――エリア一つ分にも及んだ大病院が、その質量の大部分を消失させていた。
 ビームによって蜂の巣にされ崩れたところに、残骸すら残さぬと言う勢いでの弾薬の殺到だ。大部分が粉末状にまで破壊され、白の塵芥と黒煙を昇らせているのも自然なことだろう。
 ほんの数秒前、自身のデイパックから突然飛翔したT2サイクロンメモリがその火中へ飛び込んで行ったが、あのメモリが使用者に人外の力を付与する代物であることを理解していても、まだ少なくない量が残った瓦礫と、すり抜けて来た超火力の驟雨を受けて、生きている者などそこにはいないかと思われた。
 だが、ほんの少しとは言えそんな幻想を抱いた視線の先で、濛々と立ち込める煙の奥から、九つの影が揺らめいたのを始は見逃さなかった。

「そうだ――それで良い」


>>修正箇所その③


 つい先程まで思考を巡らせていた、世界の破壊者の存在も、乃木への警戒も、今ここが生死の境目たる戦場であることも忘れて、亜樹子はタブーメモリを凝視していた。
 そんな亜樹子の前で、タブーの力と一体化しようとフィリップはそれをガイアドライバーへと運ぼうとした時――緑色の線が、メモリを弾き出すようにフィリップの手の中に納まった。

「……これはっ!?」

 変身を阻害されたフィリップの手の中にあるのは、彼や亜樹子の見慣れた緑色のサイクロンメモリ。

(――あれ?)

 認識した直後、それが常のサイクロンではないと違和感と、しかし一度はどこかで目にしたという既視感を覚えた亜樹子の目の前に、弧を描いて落ちて来る物があった。
 亜樹子の視線を引き寄せて離さない、禁忌のメモリ――思わず優しく受け止めた時、自分とメモリの間に電流が走ったような錯覚に彼女は襲われた。

(……タブー)

 心中でその名を呟いた直後、突如として世界が揺れる。意識外の衝撃によって亜樹子が半ばパニックに陥りかけながらメモリを庇うように懐に隠すと、見覚えのある緑色の異形がこちらに飛び掛かって来ていた。

「――亜樹子っ!」
「フィリップ、俺の後ろへっ!」

 手の中のサイクロンメモリをどうするということもなく、ギルスに庇われる形になった亜樹子の方を振り返ったフィリップの手を引いて自分の背後に運んだ橘が、やや斜め上を向いてバックルのレバーを反転させる。

665 ◆cJ9Rh6ekv.:2012/10/24(水) 21:12:40 ID:u0rWnAaY
>>修正箇所その④


 その背を見送ろうとする亜樹子の傍にキックホッパーが腰かけると、今度はフィリップが駆け寄って来た。

「大丈夫、亜樹ちゃん!?」
「うん、大丈夫……涼くんやお兄ちゃんが、護ってくれたから」
「お兄ちゃん……?」

 フィリップが疑問符を浮かべたが、それを説明している場合ではないと亜樹子は問いを放つ。

「それよりフィリップくん、さっきのって……」

 亜樹子の問いに頷いて、「あれはT2だった」とフィリップが答えたのが埃の緞帳を通してでも見えた。
 しかしそのメモリを今のフィリップが所持している様子はない――先のどさくさで落としてしまったらしく、灯りの失せた暗闇の中ということも相まって見失ってしまったようだ。

「亜樹ちゃん、タブーは……?」

 そんなフィリップの何気ない問いかけに、ぎくりと身を強張らせながら、亜樹子は気づいた時には小さく首を振っていた。
 フィリップはあの時、亜樹子の方を見ている余裕はなかったはずで……ギルスの影に隠れていた間に、メモリを取り零したという風に受け取られても自然だろうと、どこか冷静な部分が呟いていたが……そんなことにまで考えが及ぶ前に、フィリップの追求を拒否していた自分に、亜樹子は小さく目を見開く。
 手放したくないと、離れたくないと感じているのだ。父の仇であるこの禁忌のメモリと。

(……私――っ!)

自分自身の中の理解できない部分が肥大化している事実に、亜樹子が小さく息を呑んだ時。その不安ごと吹き飛ばすかのように、辺りに濃霧の如く立ち込めていた塵芥が、逆向きの渦を巻いて外へと吐き出されて行く。

《――SURVIVE――》


---------------

以上のように変更しました。問題なければ、ミッションメモリーの件やキックホッパーの変身音などとともに状態表も修正してwikiに収録したいと思います。
またご指摘などございましたらよろしくお願い致します。

666二人で一人の/通りすがりの名無し:2012/10/25(木) 07:08:46 ID:cvfK1Omk
修正乙です。
これなら問題ないと思います。

667 ◆LuuKRM2PEg:2013/01/06(日) 11:23:20 ID:VK/1fT8I
拙作「Round ZERO 〜KING AND JOKER」で村上社長がオーガギアの存在を知っている部分ですが
一部修正させて頂きます。

まあ、精々利用させてもらおう。


(そして、まさかアレがこんな所にあるとは……)


村上の意識は、デイバッグの中に向いていた。
先程から、騒動が続いたせいで確認できなかった、支給品。
その一つに、スマートブレイン社の地下でまだ開発中だった、ベルトが存在していたのだ。
本来は『555の世界』の遠くない未来、どこかの国で使われているはずの、帝王のベルト。
スマートブレイン社が率いるオルフェノクによって、支配された世界で木場勇治が使用していた地のベルトだった。
仮面ライダーオーガへの変身を可能とさせる、比類無き力が封印されたオーガギア。


(開発中のこれを盗んだ挙げ句、勝手に完成させて戦場に放り込むとは……!)


大ショッカーに対する怒りが、村上の中で沸き上がってくる。
しかしその一方で、評価している部分もあった。
厳重な警備を固めているスマートブレイン社にこのような事が出来ることは、大ショッカーの技術は本物と言っても良い。
それこそ、スマートブレインを凌駕するほどだろう。
だが、関心ばかりもしていられない。
このままでは、大ショッカーの言いなりとなって本当に殺し合いに乗らざるを得ない状況が、来ることもあり得る。
別に下の下の存在を葬ることに抵抗はない。
しかし、それはプライドが許さなかった。
今はこの三人と、行動を共にするしかないだろう。
現状を打破するには、駒があまりにも足りない。


の部分を、以下のように修正させて頂きますが、よろしいでしょうか。


まあ、精々利用させてもらおう。


(それにしても、オーガ……ですか)


村上の意識は、デイバッグの中に向いていた。
先程から、騒動が続いたせいで確認できなかった、支給品。
その一つに、スマートブレイン社の地下でまだ開発中だった、ベルトが存在していたのだ。
本来は『555の世界』の遠くない未来、どこかの国で使われているはずの、帝王のベルト。
スマートブレイン社が率いるオルフェノクによって、支配された世界で木場勇治が使用していた地のベルトだった。
仮面ライダーオーガへの変身を可能とさせる、比類無き力が封印されたオーガギア。
ここにいる村上は本来その存在を知らないが、だからこそ興味を抱かせていた。
だが、オーガギアばかりに目を向けている場合ではない。
このままでは、大ショッカーの言いなりとなって本当に殺し合いに乗らざるを得ない状況が、来ることもあり得る。
別に下の下の存在を葬ることに抵抗はない。
しかし、それはプライドが許さなかった。
今はこの三人と、行動を共にするしかないだろう。
現状を打破するには、駒があまりにも足りない。

668二人で一人の/通りすがりの名無し:2013/01/06(日) 17:50:22 ID:9w2qJDuA
本編中にはオーガギアは登場しませんからね。
自分は修正おkだと思います。

669 ◆.ji0E9MT9g:2018/02/06(火) 14:07:23 ID:qXLvmxJw
放送書きましたので一応仮投下しておきます。

670 ◆.ji0E9MT9g:2018/02/06(火) 14:08:03 ID:qXLvmxJw
24:00。
この殺し合いが始まってから12時間しか経っていないというのに、会場はあまりにも静まりを増していた。
いや、それも当たり前か。

前回の放送から新たに18人、この殺し合いが始まってからはもう38人もの参加者がこの世を去っているのだから。
定時放送を連絡する飛行船が6時間前と同じくどこからともなく現れ一瞬のうちに空を埋め尽くすと同時、その飛行船に備え付けられた画面に映像が流れ出す。
大ショッカーのエンブレムを映す画面が数秒流れた後、画面の端よりスーツを着た、長身の男が現れた。

そして、つまらなさそうに眼鏡を持ち上げ、手に持っていた資料をテーブルにおく。
前回の放送を担当したキングとは真逆とも言える雰囲気を作り上げた後、男はすぅ、と前に向き直ってカメラを――否、その先の会場にいる参加者を見据えた。

「参加者諸君、この12時間を生き延びたこと、まずは賞賛の意を述べたい。君たちの活躍は、我々からしても想定外なほど順調だ。……遅れたが、俺の名前は三島正人、今回の放送を担当するものだ」

賞賛の意を述べたい。
そう言いつつ男の言葉に一切の抑揚は存在しなかった。
その目は死んだ魚のようで、言葉とは裏腹にこの殺し合いを生き残っている参加者への興味など一切感じられなどしない。

前放送のキングがこの状況に似つかわない無邪気さで参加者の注目を集めたというなら、第二回放送を担当する三島は一転して参加者を人とも思わずモルモットのように扱い注目を集めた。
様々な性格の協力者が大ショッカーにいることで組織の偉大さを知らしめようとしているのか、それは定かなところではないが。

「ではまず、前回の放送を聞き逃した者もいるため、もう一度説明する。この放送はこの6時間での死亡者、そして禁止エリアを放送する。内容は一度きりだ。二度目はない」

そこまでを一息に言い放って、彼はすぅ、と息を吸う。
そして、手元にある資料にゆっくりと目を落とした。

「それでは、まず死亡者の発表を行う。
――ゴ・ガドル・バ、五代雄介、小沢澄子、秋山蓮、草加雅人、金居、天美あきら、桐矢京介、日高仁志、乃木怜治、天道聡司、矢車想牙王、紅音也、アポロガイスト、海東大樹、園咲冴子、鳴海亜樹子……、以上、18名だ。
これでこの会場に残る君たちの人数は22名。このペースで進めば、次の放送はないかもしれないな」

死亡者の名前をまるでなんとも思わないように告げた彼はつまらなさそうに息を吐く。
そのまま一泊の呼吸を置いて、手元の資料をめくった。

「そして、第一回放送の時と同じく世界別の殺害数ランキングだ。今回は都合上、第三位までの発表となる」

そうして画面に映ったのは、第一回放送よりその数を大幅に増やした各世界の殺害数ランキングであった。
クウガの世界、12人。剣の世界、8人、キバの世界とWの世界は、それぞれ4人。
第一回放送でも圧倒的であったクウガの世界がよりその数を増やしたのと同じように剣の世界はその数を倍以上に増やしていた。

第二位が三位の倍、一位は三倍という驚異の数字を何と感じる様子もなく、三島はそのまま画面を切り替えた。

「さて、続いて禁止エリアの発表だ。第一回放送と同じく2時間ごとに2つのエリアを立ち入り禁止とする。首輪が爆発しての死亡、などという惨状になりたくなければ心して聞くんだな。

 1時から【F-7】エリアと、【D-8】エリア。
 3時から【H-5】エリアと、【C-2】エリア。
 5時から【E-1】エリアと、【B-6】エリア。

以上が、次回放送までの禁止エリアだ。
気付いたと思うが、次回放送までに主要な施設はほぼ禁止エリアとなる。
今更そんな参加者もいないとは思うが、いつまでも籠城などしようと思わないことだな」

そうして、一通りの業務連絡を終え、放送を終えようとする三島だが、画面外から何らかの指示が送られたらしく、動き掛けたその足を再度止めた。

671 ◆.ji0E9MT9g:2018/02/06(火) 14:08:39 ID:qXLvmxJw

「……言い忘れていたが、今回の放送でとある世界の滅亡が確定した。名簿で言えば上から6つめの世界、通称、響鬼の世界だ。前回の放送ではまだ三人も残っていたというのに、今回の放送で全滅した。お前たちも世界を守りたいのであれば精々気をつけることだ。……我々からの放送は以上だ、6時間後にまたこの放送を聞けるよう生き残れるよう祈っている」

そう言って眼鏡を再度持ち上げ、今度こそといった様子でそのまま画面外へと去って行った。
そのまま、キングのものと真反対のテンションで行われた放送は、終了したのだった。





カツ、カツと革靴と廊下がぶつかる音を響かせながら、三島は歩く。
正直、放送などを担当するつもりは毛頭なかった上、てっきりキングがその役を続けるのだとばかり思っていたが、実際には放送はローテーション制であったらしい。
エンターテインメント性に優れていたと判断できるキングの放送の後に自分を持ってくる采配は理解しがたいが、しかし大ショッカーに所属する身となった以上、その命には逆らえなかった。

と、そうして歩くうち、彼は大ショッカー首領の玉座の置かれた広場へと戻ってくる。
そのまま自分の先ほどまでいた場所に向かおうとして。

「ねぇ、さっきの放送、アレ何?クソつまんないんだけど」

後方に広がる闇の中から不機嫌そうな声が聞こえてきたことで振り返る。
三島のその表情は予想通り、といった風でありながら、しかし先ほどまでの放送のとき以上に面倒を嫌がる顔であった。
こうなるとわかっていただろうに、と思いつつ、彼はその影に口を開く。

「……悪かったな、俺としてもお前が放送を続けていた方がまだましだったと思うが」
「本当だよ、センスなさすぎ!俺だって色々考えてたのにさ、結局使えずじまいじゃん」
「……悪かったな」

別に自分は仕事を頼まれたから引き受けただけだというのに、キングは唇を尖らせて抗議してくる。
厄介なことになったものだと舌打ちをしたい気分に駆られたが、キングもまた人外であったことを思いだし、これ以上の騒ぎはごめんだと謝罪のみを申し述べる。
しかし、どうやら先ほどの放送がよほど気に入らなかったようで、彼はぶつくさ言い続けていた。
――全く、ガキがゴタゴタと。

いっそのこと、ここでこいつを潰すか?
自分より単純な実力では劣る乃木に言いようにやられたダイヤのカテゴリーキングと互角であるこいつ相手なら引けを取ることもあるまい。
そう考えて、三島はその耳に掛けた眼鏡のフレームを手に掛けて――。

「――やめぬか」

闇の中から現れた白髪の老人に止められる。
彼は死神博士、この殺し合いを始めた大ショッカーに属する男であり、また三島にとっては現在の直属の上司でもあった。
その存在の出現に眼鏡を掛け直し深々と頭を下げた三島に対し、死神博士は一言、「よい」と呟いた。

「三島、先の放送、ご苦労であったな」
「……いえ、自分は仕事を全うしただけです」
「そうか、してキング。お前には放送を任せられずすまなかったな」
「まぁ、それ自体は別に良いんだけど。……流石に俺に比べてつまんなさすぎだよねって」

死神博士の手前そこまであからさまではないものの、キングはやはり不満顔であった。
それに対し苛立ちがつもるも、しかし隠れて握り拳を作る程度で我慢する。

「そう言うでない。……大ショッカーは超巨大な組織であることはそなたらも察しておるだろう?参加者には未だに他世界の仮面ライダーと協力して我らを倒そうなどと言う思想を語り続ける輩も多いのでな、放送ごとに担当者を変え我らの力を示すのは以前より決まっておった。
……最も、その放送も多くてあと二回程度と考えると、我々の読み違いであったかもしれんがな」

672 ◆.ji0E9MT9g:2018/02/06(火) 14:09:14 ID:qXLvmxJw

何故か寂しげな表情を浮かべた死神博士を尻目に、キングは「まぁ、そういうことなら我慢するけどさ」と全く納得のいっていない顔で呟いた。
その様子を見て安堵した様子の死神博士に対し、「あ、それと」と彼は続ける。

「さっきの放送さ、俺が考えた殺害数ランキング、なんであんな感じにしたの?全部発表すれば良いじゃん」
「貴様とてわかっているだろうキングよ。貴様の世界より来た志村純一のためよ」
「うーわ薄々そうかとは思ってたけどマジ?どんだけ好待遇だよ」
「そういうなキングよ、奴には奴の殺し方があり、それがダグバと同じだけの成果を上げているのに、わざわざ潰す必要もあるまい?」

そう、先ほどの放送で第一回放送と殺害数ランキングの形式が変わっていたのは、ただ一人の参加者の嘘のため。
そのまま殺害数ランキングを公表すれば、『555の世界』と『電王の世界』にスコアがない以上、一瞬で彼の嘘が見破られてしまう恐れがあった。
もちろん、放送を一度聞いているのだから彼が嘘の付き方を考えるべきであって、こちらが考慮する必要もない、というのも一理あるのだが。

そこまで聞いて、キングは一言、「ま、良いけど」と返して、そのまま怪人の群れに消えていった。
それを見届けた後、死神博士は今度は三島へと向き返った。
それに対し、三島はもう一度深々と頭を下げる。

「……ご足労、感謝いたします。死神博士」
「何、別に構わぬ。大ショッカーほどの組織の規模になると、この程度のもめ事は日常茶飯事なのでな。……それに三島、私は貴様には感謝しておるのだぞ、カブトの世界への侵攻を手助けした件についてな」
「勿体ないお言葉です」

言われて、三島は思い出す。
初めて大ショッカーが世界に現れたときのことを。
突如どこからともなく世界中に現れた飛行艇、そして黒タイツの男たち。

その戦力に対しZECTは総力戦で戦おうと準備をしていた。
ゼクトルーパーはもちろん、アーマードライダーシステムに認められた者たちや、友好的なネイティブワームまで活用しての世界の命運を委ねた戦いであった。
しかし、流石の大ショッカーも苦戦を強いられるかと思われたそれは、戦いを行わずしてZECTの敗北に終わる。

他でもない、三島の裏切りによって。
彼は、ZECTのトップである加々美陸を殺害、事実上のトップに躍り出ると同時、大ショッカーに降伏を申し出たのだ。
もちろん、作戦の全容と、彼らが世界の命運を選定する参加者の譲り渡し、あるいはその情報と共に。

673 ◆.ji0E9MT9g:2018/02/06(火) 14:09:53 ID:qXLvmxJw

そうした行動の引き替え条件は、三島自身を大ショッカーの幹部とし、それに相応しい能力を手に入れさせること、そして世界の滅亡とは別に存在できる、『カブトの世界』とは切り離した存在となることであった。
元々、大ショッカーは広義的にディケイドの敵であり、ディケイドの世界が滅亡すれば消える可能性もあった。
しかし、今や彼らは『ディケイドの世界』、またその物語から切り離された存在となっている、――そうでなければディケイドの世界滅亡の危険を孕んだままにこんな殺し合いを主催できないだろう。

そう三島が確信したために、大ショッカーに所属することは自身だけは滅亡から逃れることに繋がるとそう考えたのであった。

「しかし、本当に賢い選択をしたな三島。世界をあれほど早く受け渡した権力者は他の世界にはいなかった。全く以て薄情な奴よの」
「……それでこそ大ショッカーの幹部ですので」
「ふはははは!全く以てその通りよ。貴様のことは私より上の存在にも知れ渡っておる。今後ともよき活躍を期待しておるぞ!」
「えぇ、お任せください」

高笑いをしながら死神博士の白髪が闇に消えていくのを見て、三島は小さく舌打ちをする。
彼自身のことは別に構わない、精々自分の、全てを支配する野望のために利用させてもらおう。
だが、三島をいらだたせるのは、思った以上に自分のポジションの他の世界から来た怪物が多いことである。

大ショッカーによる要求を聞いてすぐにZECTを売り、彼らに降伏した。
しかし、得られたものは未来自分が手にしたらしいネイティブ最強の力と、精々が死神博士に名前を覚えられた、ということだけだ。
死神博士の更に上にまだ見ぬ大ショッカーの首領がいる以上、思っていた以上に自分の知れる範囲の大ショッカー内部の者は少ないらしい。

別に三島には生来の世界に対する愛着もないが、力を求め恥を飲んだ行動の引き替えがこの程度では少々思うところがあるのも事実だった。
だが、結局のところ、無能な加々美陸に頭を下げ続ける日々よりかは、今の方がよほど自分らしいと三島は思う。

死神博士は仮面ライダーによる殺し合いの攻略、大ショッカーへの反逆が直接自分たちに襲いかかることを異様に危惧しているようだが、むしろ招き入れてやればいいとすら感じる。
周囲にいる雑兵はともかく、自分やキングといった存在すらごまんといるこの広場を見せてやれば、奴らは泣いて殺し合いをしたがるだろうに。
非効率極まりないことを進んでやろうとする大ショッカーの方針に疑問は拭いきれないものの、三島の根底にあるのはいつだって変わらない思いだった。

――全てを支配し、力を手にしたい、と。
権力、暴力……、なんでもいい、自分に力を、と。
既に人間であったことすら忘れた男は、ここに来て初めて不気味に笑った。

674 ◆.ji0E9MT9g:2018/02/06(火) 14:10:49 ID:qXLvmxJw





「失礼いたします。……殺し合いは順調に進んでおります。この分ではあと10時間ほどであなたさまの悲願は達成されるかと」

死神博士は、闇に向かって膝を折り、頭を下げたまま経過を報告する。
それを聞いて闇の中で僅かに喜色が膨れたのを感じて、彼はようやく生きた心地を味わった。
実際、この殺し合いのスピードは尋常ではない。

このままであれば次回の放送がないかもしれない、というのも、あながち間違いではなかった。

「――ダグバの件ですが、問題はありません。あの状態のダグバであっても首輪を解除することは相当難しいでしょう」

そして次に報告するのは、この会場で現れた全パラレルにおいて観測されなかった存在、セッティングアルティメットダグバについて。
今のところは制限のため大した活躍も見せていないし、危惧されていた首輪を自力で解除できるのではないか、という事態についても“今はそんなことなど出来はしない”という結論であった。

「……えぇ、病院の解析機にも仮面ライダーどもは気付いたようです。しかし問題はないでしょう、むしろこの位の足掻きを見せてもらわねば困るというもの」

にやりと笑いながら続けるのは、首輪解析機に対する話題。
しかしむしろ後半戦となってきた現状、仮面ライダーどもには首輪を解除してもらって、存分に戦ってもらうべきではないか。
その為にわざわざあんなものを設置したのだから、見つけてもらわねばむしろ困るというもの。

最も、解析が出来たところで放送でショックを受けるだろうフィリップや橘が、――何より村上や野上が迫りつつある志村がいる中で悠長に解除などしていられないだろうが。
首輪の解除が出来ようが出来まいが彼らに残っているのは絶望的な戦力差なのだ、と死神博士は三度笑って。

報告すべきことを終えた彼はそのまま歩き出す。
再度、殺し合いの経過を、そして結末を見届けるため。
その心に、未だ孫娘の死を悲しむ祖父の思いがあるのかどうかは、まだ誰にも分からなかった。


【全体備考】
※主催陣には三島正人@仮面ライダーカブトがいます。人間時代からの参戦ですが、既に大ショッカーによってグリラスワームに改造されているようです。
※大ショッカーには死神博士の上司にあたる存在がいるようです。個人なのか、あるいは
集団なのか、など一切のことは後続の書き手さんにお任せします。

675 ◆.ji0E9MT9g:2018/02/06(火) 14:12:40 ID:qXLvmxJw
以上で投下終了です。
色々やっつけ感凄いのは自覚してますので何か拾って欲しいネタとかあったら気軽にお願いします。
ご指摘が一日何もなければ本投下させていただきますのでよろしくお願いいたします。

676 ◆cJ9Rh6ekv.:2018/02/06(火) 19:56:13 ID:o5c4aYHA
仮投下お疲れ様です。
反応が遅れて後出しのようになってしまいましたが、本スレでも述べたように、折角なので自分も放送案を仮投下させて頂きたいと思います。

677 ◆cJ9Rh6ekv.:2018/02/06(火) 19:57:27 ID:o5c4aYHA



 日付が変わる、その寸前。天に生じた灰色のオーロラ――のような光の壁から、数隻の巨大な飛行船が吐き出された。

 空を駆けるその飛行船に刻まれたコンドルのマーク……それは六時間前、第一回放送が行われた時と同じく、宙を浮くそれらが大ショッカーの所有物であることを示していた。
 やはりそれらの飛行船には、液晶の巨大モニターが幾つも取り付けられていた。六時間前の再現と言わんばかりに、全施設と民家、街中の大画面液晶、店先のテレビ――種類を問わず、ありとあらゆる情報媒体が勝手に起動を始める。

 それに伴い、音声も会場中のあらゆるスピーカー……参加者の首輪に供えられたそれも例外ではなく、放送の態勢に入る。

 参加者が何処に居ようと、意識を保っている限り。大ショッカーからの情報を、本人の意思を無視して届けられる状態が、再び完成したのである。







 そうした影響を一切受けない場所――すなわち、放送を行う大ショッカーの本部にて、長身痩躯の男が、先を行く複数の影を追い駆けていた。

「――首領代行、資料はこちらに整えてあります」

 そう頭を垂れ恭しく書を差し出したのは、僧服に純白のストールを掛けた神父風の眼鏡の男――名をビショップという、大ショッカーの幹部の一人である。
 現在の大ショッカーにおいて大幹部と呼ぶに相応しい地位にある彼が――仮に表面だけだとしてもここまでの敬意を見せる相手は、最古参の大幹部である死神博士ですらない。

 無言で彼の手にした書類を受け取ったのは、三つの異形を侍らせた女だった。
 エキゾチックな黒いドレスの上に、あるいはバラの群れにも見える真紅のファーを纏う長身の美女。その冷徹な美貌の額には、白いバラのタトゥが存在していた。

 先行したビショップの整えた席に、彼女は優雅に腰掛ける。
 異形達の隙間から離れて行ったビショップを一瞥することもなく、バラのタトゥの女は、己の座ったテーブルの前にあるマイクを手に取った。

「――これより、第二回放送を行う」

 怜悧な印象に反して、その唇から紡がれた日本語は――ほんの少しだけぎこちなかった。
 カメラを向けられて、そこで彼女は初めて表情を動かした。
 そんな違和感を忘れさせるほど蟲惑的な、謎めいた微笑を浮かべるために。

「――キングに倣うとするか。
 私の名はラ・バルバ・デ――大ショッカー最高幹部、首領代行だ」

 艶然と微笑む美女の背後には、それぞれ鯨、獅子、鷹を想わせる――どこか姿が歪んで見える異物感を漂わせる三体の怪人が、まるで彫像のように直立していた。

 あるいはその声に覚えのある者もいるかもしれない。
 あるいはその玲瓏な姿を知る者もいるかもしれない。
 あるいはその従える異形の姿を忘れられない者もいるかもしれない。

 だがそう言った因縁あるだろう相手へ何ら興味を示さず、大ショッカーの最高幹部を名乗った女は言葉を続けた。

「本来ならば今回は別の幹部が担当しているはずだったが――我々の想定以上に今回のゲゲル、バトルロワイアルが進行している。故に生じたおまえたちへの言伝を、首領より預かって来た」

678 ◆cJ9Rh6ekv.:2018/02/06(火) 19:58:08 ID:o5c4aYHA





「――首領?」

 そう驚いたような声を上げたのは、空白の玉座の前の広間で、大幹部の威厳もなく尻餅を着いていたコーカサスビートルアンデッドが化身した少年――キングだった。

「へぇ、首領なんて本当に居たんだ」
「――あなたは新参ですから、御存じなくとも仕方ないでしょうね」

 そう放送を行うバルバの下から広間へ戻って来た大幹部――ビショップの声はしかし、いくらか嘲りの色が隠し切れていなかった。

「我らが首領は、偉大なる存在。今は我らの前に現界するための御身を喪っておられますが、いつでも我らを見ています――カテゴリーキング、あなたのその軽薄な態度もね」

 眼鏡の奥、眼球がぎょろりと自分を睨んだのを見て、しかしキングは挑発を失笑する。

「身体がないのに……へー、凄いね。じゃあ良かったね、君のとこの王様も、さ。そんな偉大な首領様と比べられたんなら、大事な臣下に捨てられても仕方ないよね」

 自分に投げ返された挑発に対し、ビショップの頬に音を立ててステンドグラス状の模様が走った。

「あれ、やる気? 良いよ、遊んであげても……」
「――やめろ!」

 そう笑いながらキングが立ち上がろうとした時、一喝する声が広間に響いた。
 現れたのは白いスーツにマントを付けた白髪の老人――死神博士だった。

「仮にも首領代行が任務に就いている時に、幹部同士でくだらぬ争いなどをしている場合か。――ビショップ、財団Xより使者が見えている。対応は君に任せる」
「――承知致しました」

 醜態を見られたことを恥じ入るように、ビショップはそう殊更丁寧に頭を下げ、僧服の裾を翻して広間を去って行った。

 これといった職責も与えられず面白おかしくしているだけで、このバトルロワイヤルが開始される寸前に大ショッカーに招かれたキング。対して、このようにスポンサーの歓迎、バトルロワイアルを管轄する首領代行の補佐などの激務に追われるビショップは、それだけでもキングに対して恨み言の一つも持っていたのかもしれない。
 だが、彼とキングの決裂が決定的になったのは六時間前の第一回放送が原因だろう。
 自身と同じ名を持ちながら早々に脱落したファンガイアのキングに対する言及が、同じファンガイアのチェックメイト・フォーの一員であったビショップの不興を買う結果になった――もっともキングは、ビショップを怒らせることも遊びの一環として楽しんでいるわけだが。

 無論、同じキングの名を持ちながら情けない結果となったファンガイアの王を嘲笑ったのは、単純にそんな輩と同一視されたくないという気持ち――主催側であるビショップに肩入れされ、最初から適正のある強力な支給品を与えられ、餌となる参加者の近くに配置され、さらにキバの世界において彼と敵対していた闇のキバの鎧をキングから最も遠くのエリアへ送るなどの根回しをされ、なおもあっさり敗退した魔族の王を純粋に見下す心情からだが。

 しかし去って行ったビショップに既に興味はなく、キングは死神博士に尋ねていた。

「ねぇ、死神博士なら首領のこと知ってるんでしょ? どんな奴なのか教えてよ」

 それは本来大幹部であるキングが、組織の長である首領について尋ねるにはあまりにも思慮の足りない口の利き方であったが――そんなキングの態度を今更気にするでもなく、死神博士は鷹揚に頷いて見せた。

「良かろう。思えば貴様はまだ何も知らなかったな」

 死神博士の言うように、キングは殺し合いの真意や参加者に語られた事実の正誤すらも把握していない。混血である紅渡がファンガイアのキングから次代のファンガイアの王として認められたことも業腹な種族主義のビショップに、代理人に過ぎないバルバのような異種族の女を敬わせるほどの存在――キングにも少し興味があった。

 偉大なる主を讃える信徒のように、陶然とした様子で死神博士は口を開いた。

「偉大なる我らが首領の名は――」

679 ◆cJ9Rh6ekv.:2018/02/06(火) 19:59:01 ID:o5c4aYHA





 そうして幹部達がやり取りをする少し前――大ショッカーの最高幹部が名乗りを終え、何故このような些事に彼女自らが出向いたのかを説明したその直後。彼女はまず、本来の役割を果たすべく部下の渡して来た書類に目を通していた。

「首領の伝言の前に、おまえ達が気になっているだろう第一回放送からここまでの脱落者と、禁止エリアについて伝える」

 バルバはそう冷たく告げ、紙に羅列された死者の名を呼び始めた。

「ゴ・ガドル・バ、五代雄介、小沢澄子、秋山蓮、草加雅人、金居、天美あきら、桐矢京介、日高仁志、乃木怜治、天道総司、矢車想、牙王、紅音也、アポロガイスト、海東大樹、園咲冴子、鳴海亜樹子。以上、十六名。
 これにより、便宜上『響鬼の世界』と呼称する世界の滅びが確定した」



 世界が一つ――そこに生きる七十億の人口を抱えて、滅亡する。

 そんな、想像すら困難な凄まじい破滅の未来を伝えながらも。前回の放送役とは打って変わり、余計な口を挟まない美貌の最高幹部は余韻を挟むことすらなく、極めて淡々と説明を続ける。



「先程も言ったように、これは我々の想定を超えた進度だ。故に今回も、禁止エリアは二時間毎に二ヶ所ずつ指定させて貰う。

 1時から【F-7】と、【D-8】。
 3時から【H-5】と、【C-2】。
 5時から【E-1】と、【B-6】。

 禁止エリアは以上だ。かつてキングが言った通り、踏み込めば首輪が爆発し、おまえ達は死ぬことになる」

 思い出したかのように、バルバはそこで顔を上げた。

「そういえば、こんなものもあったな」

 彼女が優雅に手を上げれば、その背後に巨大なモニターが出現する。

「世界別の殺害数の序列だ。上から順に、現在はクウガの世界が十二人で一位、次いで八人の剣の世界、その下が四人のキバの世界とWの世界となっている」

 大した感慨も見せずに呟いた彼女は、何気ない動作で、しかし思い出したかのように、名を連ねた世界の末席に記された『無所属』という文字へと白魚のような指を這わせた。

「ここにある『無所属』の参加者だが……説明をまだ行っていなかったな。
 彼らは世界の代表者ではなく、彼ら自身の生死はこのゲゲルにおける世界の存亡に影響はしない。言うなれば、勝敗の条件から切り離された存在だ。故に、我ら大ショッカーの一員であるアポロガイストも名簿上はそこに属していた」

 自らの仲間だという、先程読み上げられた死者の名の一つを口にしながらも、バラタトゥの女の表情はまるで感情が籠らず、人形の様であった。
 だがそれが不意に、可笑しそうに口角を歪める。

「――もっとも、勝敗に関わらずとも……世界の存亡に無関係というわけではないがな」

 それは彼らが、他世界の参加者を殺すのだと、言外に告げているのか。
 あるいは協力して、他の世界をも救おうとする存在だと示唆しているのか。
 もしくは――その中に名を連ねた、世界の破壊者のことを言っているのか。

 誰もが答えを見出せずにいる中で、バルバは再びカメラに向かって艶然と微笑んだ。

「放送の本来の役目は終えた。それでは、おまえ達に首領の言葉を伝えるとしよう」

 そうして彼女の口から伝えられる言葉を、カメラの向こうにいる者達はどう受け取るのだろうか。
 参加者も、大ショッカーも、その全員が、その言葉には度肝を抜かれることだろう。

「……人が、人を殺してはならない」

680 ◆cJ9Rh6ekv.:2018/02/06(火) 20:00:11 ID:o5c4aYHA






「――オーヴァーロード・テオス。闇の力。闇のエル。無数の名を持つ……とある世界の創造主、神そのものだ」

 死神博士から厳かに告げられた名とその正体に、キングはへえ、と相槌を打った。

「神様なんだ」
「そうだ……当然彼の世界に比べれば微々たる物だが、それでも異世界に対しても大きな影響力を持ち得る偉大なる神……バルバとも、首領が世界を渡った先で出会ったらしい」

 死神博士曰く、数多の世界を旅する通りすがりの仮面ライダーやその仲間達によって、一度ならず二度までも大ショッカーは壊滅させられたという。
 仮面ライダー達の目を逃れ、時空の狭間を彷徨っていた残党の前に、ラ・バルバ・デは現れた――オーヴァーロード・テオスの代弁者として。

 オーヴァーロード・テオスもまた、ある仮面ライダーの手によって肉体を砕かれていた。だが彼は精神だけの存在となっても滅びず、そしてその神としての奇蹟の力もまた健在。
 そんな彼と、彼と行動を共にするバルバの傘下に収まるよう求められ、逆らうこともできず大ショッカーの残党は従ったと言う。

 そうして彼らに導かれるまま、このバトルロワイヤルを行うための準備を推し進めた。テオスはその力で、従来の大ショッカーでは到底連れ去ることなどできなかったダグバを始めとした参加者を用意し、時空を完全に超越して様々な時代の様々な世界から参加者を集め、アポロガイストのような死者を蘇生し、さらには儀式によって失われたはずのファンガイアのキングの心を呼び戻しさえした。挙句、その能力でバトルファイトの統制者の役割を代行したのか、不死であるアンデッドを殺し合いに参加させると言う、キングすら驚嘆させる冗談のような事態を現実の物としている。

 参加者の力を縛る首輪の効力も、それがあれほどの戦いでまるで傷つかないというのも、大ショッカーの世界を股にかけた技術力だけでなく、会場そのものを創世したテオスの力の影響を受けているからだという。

 実際には大ショッカーの組織力と技術力を重用し、さらに財団Xというスポンサーまで必要としているということから、テオスにとってもここまでの道筋は決して楽な道程ではなかったのかもしれない。だがなるほど、全知全能ではないにしても、キングの知る限り最もそれに近い所業を果たしている存在であることは間違いない。

 ここまで手の込んだ真似をしたとなれば、本当にテオスにその気があるなら、敗退した世界を本当に消し去ることも、優勝者の願いを叶えることも――それこそキングを、この退屈な生から解放することも容易く行える準備は終えているのだろう。
 これでビショップの態度も得心が行った。元のキバの世界で敗れ、蘇生されたという彼は――自らに新たな命を与えたテオスという神の加護を、誇り滅び行く己が種に得ようと必死なのだろう。
 同じ理由で組織へ忠誠を誓っている者も、決して少なくはないはずだ。

「ふーん……でも、そんな偉大な神様でも世界の崩壊は防げないんだ?」
「さあ、どうだろうな」

 死神博士が露骨にはぐらかすのを見て、一瞬むっとしたキングだったが、直ぐに頭上のモニターに映る、その神である首領の言伝を口にするバルバの姿を見て、キングは口の端を歪めた。

(わかるよ、神様……こんな面白いゲームを考えた理由がさ)

 自分のその考えが間違っている可能性など夢にも思わず、キングは内心呟いた。

(やっぱり退屈だよね、長生きしているとさ)

 自らの同類を得たと思い込み、キングは今より少しだけ、大ショッカーの主催するこのゲームへの興味が湧いて来た。

「――ねえ、死神博士。僕も今から、このゲームに飛び入り参加しちゃ駄目かな?」

681 ◆cJ9Rh6ekv.:2018/02/06(火) 20:01:10 ID:o5c4aYHA





「……これは、あくまで首領の言葉に過ぎん」

 人が人を殺してはならない――殺し合いを強要した組織の長が口にするには、あまりにもふざけているとしか思えない言葉を伝えたバラタトゥの女は、部下の纏めていた書類をテーブルの上に投げ捨てると、再び口を開く。

「だが、おまえたちが気にすることはない。首領は最終勝利者が出ればその者の世界を存続させ、その者どもの望みを叶えるという契約を私と交わしている。首領の思惑などとは無関係に、死神博士が約束した報償は必ずや勝者に与えられる」

 優勝の褒美――それを信じることで心を繋ぎ止めている、それを信じることで殺し合いに乗ろうとする参加者が存在することを見越して、バルバはそう続けた。

「戦いを続けるが良い。そして見せてみろ。おまえたちの可能性が選ぶ、その行く末を――それがどんな答えだろうと、我々はその選択を受け入れよう」

 それをたとえ自身の望まぬ形だろうと、受け入れると首領は認めたのだから。
 それは代弁者である彼女もまた、同じ。

「――以上で、第二回放送を終了する」

 そうしてバルバは踵を返し、放送室を後にする。その背には、三体の怪人――水、地、風。三種のエルロードが、静かに続いて行った。

 そうして事後処理を――キングの参戦希望すら、ビショップと死神博士に一任し、彼女は広間へと歩いて行った。
 人払いは済ませてある、静かな空間で――無人のはずの大首領の玉座に向けて、三体のエルロードが恭しく礼を取る。

「ゲゲルは、おまえの望まぬ方向に進んでいるな」

 バルバもまた、誰もいないはずの玉座に向けてそう告げた。

「だが、放送でも口にした通り――約束は、果たして貰うぞ」

 ――無論です。

 誰もいないはずの玉座から、そう静かな――しかし明瞭な声がバルバの中に響いた。

 ――私は、かつての使徒の言葉を見極めるのみ……

「おまえはリント――いや。人間を創りながら、それを何も知らない……か」

 対話の相手が語った、自らを使徒として選んだ理由を、バルバはもう一度口にする。

 ――ええ。私は、自らの使徒にそう断罪されるほど……視野が狭い。だから、あなたが必要なのです。ラ・バルバ・デ。

 超越者からの告白に、だがバルバは泰然とした様子を崩さなかった。

 ――人間がどのような結論を選ぼうとも……私は、それを受け入れて……彼らの選んだ世界を、信じましょう。

 たとえ、互いに滅ぼさねばならぬ運命のままに、最後まで傷つけ合うとしても。
 その運命すら打ち破って――他者を受け入れ、共に生きて行くとしても。

 創造主は、己が子ら自身の選択を尊重し、人間という存在を見極めると、そう宣告した。

 そのための舞台。極限の状況下に在ってこそ現れる、人間の真の姿。そして真の可能性。

 数多の世界の滅亡を前にして、大いなる力を持つ神は――敢えて全てを、人間に委ねた。

 人は彼が愛するに足る存在であり得るのか。彼がその力で救うべき者なのか。
 そしてそもそも――本当に彼の力を、人が必要とするのか。

 ――それを見届けるために……もう少し、私に協力してください。

「言われるまでもない」

 それこそ、彼女もまた望むことなのだから。

682 ◆cJ9Rh6ekv.:2018/02/06(火) 20:01:43 ID:o5c4aYHA

 オーヴァーロード・テオスは、人が人を殺してはならないと説いた。
 しかしラ・バルバ・デは、リントが争いを覚えたことを肯定する。

 進化とは、生存競争だ。より進化した者が、劣る者を狩る――グロンギがリントを狩る権利を持ったように。
 進化したリントの戦士達によって、多くのグロンギが討ち果たされたように。

 たった一つだけ世界が残るのなら、闘争の果てに残された世界こそが、無数の世界の中で最も進化した在り方なのだろうと、そう考えていた。

 だが、彼女もまた一つの奇蹟を目にしていた。

 ダグバと等しくなったあのクウガの、慈愛を湛えた赤い双眸を――
 リントが恐れた伝説を塗り替える、その姿を。

 聖なる泉を枯れ果てさせることなく、クウガはダグバを上回った。
 彼より劣るはずのリントを滅ぼす闇となるのではなく、彼らを護るために――助け合い、支え合ったことで。

 そして奇しくも同じ疑問を持ち、世界の融合に気付いたばかりのテオスに見初められ、教えられた……滅びつつある、無数の世界の存在を。そしてそこに存在する、他者を狩るのではなく、護るために無限に進化して行く者達を。

 ――仮面ライダー。

 それが数多の世界に共通する、救世主の御名。

 果たしてその存在が、結局彼女の信じる進化に劣るのか――それとも、真に勝る可能性であるのか。

 その可能性を見届けたい――その一点で、二人の目的は一致した。
 だが争いを是とし、それこそが本来あるものだと考えるバルバと――それを人に望まぬテオスの価値観は、同じ願いを抱きながらも異なる物だ。

 だからこそ手を取り合う価値があると、テオスはバルバに言う。彼の言う通り、互いの視野を拡げるために。

 また、グロンギにおいてゲゲルの管理者であったバルバは、此度のバトルロワイヤルの管理者としても適任――テオスにとっては、これ以上とないパートナーだったのだろう。

 それはまた、バルバにとってのテオスも同じこと――

 そうは言っても結局、テオスには未だに自分の思う通りになって欲しいと動く面はある。だが想定を遥かに越え、わずか半日足らずで世界の一つが滅びた現状に、先の言伝のように彼がぼやき一つで済ましたことは許容範囲だと考えたからこそ、バルバもその依頼に応じた。言うなれば今のバルバの役割は、受肉していないテオスに代わっての実務担当と共に、テオスが行き過ぎないよう見咎めることなのだから。

「――それでは、共に見届けるとするか」

 そう同志に告げて、バルバはまた踵を返し、広場を後にする。
 極限状態の中で戦い続ける、人の見せる可能性を見極めるために。
 三体のエルロードは無言のまま、主より与えられた任を果たすべく、美しき代行者の後に続いた。



【全体備考】
※主催者=大ショッカー首領は、【オーヴァーロード・テオス@仮面ライダーアギト】でした。彼は肉体を失っているため、【ラ・バルバ・デ@仮面ライダークウガ】が最高幹部として首領代行を行っています。
※主催側には、さらに【水のエル@仮面ライダーアギト】、【地のエル@仮面ライダーアギト】、【風のエル@仮面ライダーアギト】、【ビショップ@仮面ライダーキバ】がいます。
※参加者に支給されたラウズカード(スペードのK)はリ・イマジネーションの剣の世界出展です。
※キング@仮面ライダー剣がバトルロワイアル会場への飛び入り参加を希望していますが、どのような展開を迎えるかは後続の書き手さんにお任せします。

683 ◆cJ9Rh6ekv.:2018/02/06(火) 20:06:50 ID:o5c4aYHA
以上で仮投下を終了します。
禁止エリアについては ◆.ji0E9MT9g氏の案を拝借しております。
失礼でしたら大変申し訳ございませんが、ご容赦くださいますようお願い申し上げます。

684 ◆cJ9Rh6ekv.:2018/02/09(金) 00:36:27 ID:mnN9gFuo
投票スレの>>38->>41で提案させて頂きました、放送案の修正版を仮投下いたします。
投票に参加してくださった皆様に対しては、とても失礼な振る舞いとなってしまうかもしれませんが、ご意見を仰げれば幸いです。

685第二回放送(修正案) ◆cJ9Rh6ekv.:2018/02/09(金) 00:37:27 ID:mnN9gFuo



 日付が変わる、その寸前。天に生じた灰色のオーロラ――のような光の壁から、何隻もの巨大な飛行船が吐き出された。

 空を駆けるその飛行船に刻まれたコンドルのマーク……それは六時間前、第一回放送が行われた時と同じく、宙を浮くそれらが大ショッカーの所有物であることを示していた。
 やはりそれらの飛行船には、液晶の巨大モニターが幾つも取り付けられていた。六時間前の再現と言わんばかりに、全施設と民家、街中の大画面液晶、店先のテレビ――種類を問わず、ありとあらゆる情報媒体が勝手に起動を始める。

 それに伴い、音声も会場中のあらゆるスピーカー……参加者の首輪に供えられたそれも例外ではなく、放送の態勢に入る。

 参加者が何処に居ようと、意識を保っている限り。大ショッカーからの情報を、本人の意思を無視して届けられる状態が、再び完成したのである。







 そうした影響を一切受けない場所――すなわち、放送を行う大ショッカーの本部にて、背広姿の男が大ショッカーのエンブレムを背に立っていた。

「時間だ。これより第二回放送を開始する」

 手前のテーブルに資料を広げた彼は、眼鏡越しにカメラを――否、その先の会場にいる参加者を見据えると、厳しい表情のまま口を開いた。

「俺は今回の放送を担当する幹部、三島正人だ――まずはこの十二時間を生き延びた参加者諸君には、賞賛の意を述べさせて貰おう。君たちの活躍は、我々にとっても想定外といえるほど目覚ましいものだ」

 告げる男の声は、まるで古い機械音声のように酷く抑揚を欠いていた。
 死んだ魚のように濁った目からは、言葉とは裏腹に生き残っている参加者への興味が一切感じられない。

 何の面白みもない三島の様は、殺し合いという状況を愉しんでいたキングとはまるで正反対――あるいは、対照的な人物が揃って従属する大ショッカーという組織の強大さを示す意図があるのか。
 そんな人事の真相にも興味がなさそうに、三島は仏頂面のまま言葉を続けた。

「早速だが、第一回放送からここまでの脱落者と、禁止エリアについて伝える。

 死亡者は、ゴ・ガドル・バ。五代雄介。小沢澄子。秋山蓮。草加雅人。金居。天美あきら。桐矢京介。日高仁志。乃木怜治。天道総司。矢車想。牙王。紅音也。アポロガイスト。海東大樹。園咲冴子。鳴海亜樹子。

 以上十八名だ。これでこの会場に残る人数は二十二名となった」

 死亡者の名前に何の感慨も込めず、淡々と告げた彼はつまらなさそうに資料をめくる。

「続いて禁止エリアの発表だ。第一回放送と同じく、二時間ごとに二つのエリアを立ち入り禁止とする。

 一時からエリア【G-7】と、エリア【D-8】。
 三時からエリア【H-5】と、エリア【C-2】。
 五時からエリア【E-1】と、エリア【B-6】。

 以上が、次回放送までの禁止エリアだ。
 気付いたと思うが、次回放送までに主要な施設はほぼ禁止エリアとなる。籠城などというくだらない考えはいい加減捨てることだな」

 そうして、一通りの伝達事項を読み終えた三島が、追加された業務を消化しようと次の資料に手を伸ばした、その時だった。

「失礼。まことに急ですが、今回のあなたの出番はここまでです」

686第二回放送(修正案) ◆cJ9Rh6ekv.:2018/02/09(金) 00:38:03 ID:mnN9gFuo

 三島の隣へと急に降って湧いた金色の粉――それが結実した、僧服に純白のストールを掛けた神父風の男が三島の手を制止したのは。

「……どういうことだ、ビショップ」
「我らが主の意向です。この場はこれより、首領代行が引き継ぎます」

 ビショップという男に告げられたその時。初めて、無感動だった三島の顔に驚愕が浮かんだ。

「まだ納得頂けませんか?」
「いや……了解した」

 そうして頷くや否や、三島はテーブルの上に残してあった持参の資料を掴み取る。

「悪いな、参加者の諸君。担当者が交代することとなった。一旦放送を中断する」

 それだけをマイクに吐き捨てると、机の上を綺麗に空けた三島はそのまま、踵を返してカメラの前から姿を消した。

 ――彼が立ち去ると同時、複数の影が画面の奥から姿を顕した。

「首領代行。資料はこちらに整えてあります」

 接近する影に頭を垂れ、恭しく新たな書類を差し出したビショップもまた、三島と同じく大ショッカーの幹部の一人だ。
 現在の組織において大幹部と呼ぶに相応しい地位にある彼が――仮に表面だけでもここまでの敬意を見せる相手は、最古参の大幹部である死神博士ですらない。

 影より歩み出で、無言で彼の手にした書類を受け取ったのは、三つの異形を侍らせた女だった。
 エキゾチックな黒いドレスの上に、あるいはバラの群れにも見える真紅のファーを纏う長身の美女。その冷徹な美貌の額には、白いバラのタトゥが存在していた。

 先行したビショップの整えた席に、彼女は優雅に腰掛ける。
 異形達の隙間から離れて行ったビショップを一瞥することもなく、バラのタトゥの女は、己の座ったテーブルの前にあるマイクを手に取った。

「――これより、第二回放送を再開する」

 怜悧な印象に反して、その唇から紡がれた日本語は――ほんの少しだけぎこちなかった。
 カメラを向けられて、そこで彼女は初めて表情を動かした。
 先の違和感を忘れさせるほど蟲惑的な、謎めいた微笑を浮かべるために。

「前任どもに倣うとするか。
 私の名はラ・バルバ・デ――大ショッカーの最高幹部、首領代行だ」

 艶然と微笑む美女の背後には、それぞれ鯨、獅子、鷹を想わせる――どこか姿が歪んで見える異物感を漂わせた三体の怪人が、まるで彫像のように直立していた。

 あるいはその声に覚えのある者もいるかもしれない。
 あるいはその玲瓏な姿を知る者もいるかもしれない。
 あるいはその従える異形の姿を忘れられない者もいるかもしれない。

 だがそう言った因縁あるだろう相手へ何ら興味を示さず、大ショッカーの最高幹部を名乗った女は言葉を続けた。

「今回は三島が放送を担当して終わるはずだったが……先に告げた通り、我々の想定以上に今回のゲゲル、バトルロワイアルが進行している。故に生じたおまえたちへの言伝を、首領より預かって来た」

687第二回放送(修正案) ◆cJ9Rh6ekv.:2018/02/09(金) 00:38:33 ID:mnN9gFuo





「――首領?」

 そう驚いたような声を上げたのは、空白の玉座の前の広間で、大幹部の威厳もなく尻餅を着いていたコーカサスビートルアンデッドが化身した少年――キングだった。

「へぇ、首領なんて本当に居たんだ」
「――あなたは新参ですから、御存じなくとも仕方ないでしょうね」

 そう放送を行うバルバの下から広間へ戻って来た大幹部――ビショップの声はしかし、いくらか嘲りの色が隠し切れていなかった。

「我らが首領は、偉大なる存在。今は我らの前に現界するための御身を喪っておられますが、いつでも我らを見ています――カテゴリーキング、あなたのその軽薄な態度もね」

 眼鏡の奥から、鬼気迫る瞳がぎょろりと自分を睨んだのを見て、しかしキングは挑発を失笑する。

「身体がないのに……へー、凄いね。じゃあ良かったね、君のとこの王様も、さ。そんな偉大な首領様と比べられたんなら、大事な臣下に捨てられても仕方ないよね」

 自分に投げ返された挑発に対し、ビショップの頬に音を立ててステンドグラス状の模様が走った。

「あれ、やる気? 良いよ、遊んであげても……」
「――やめろ!」

 そう笑いながらキングが立ち上がろうとした時、一喝する声が広間に響いた。
 現れたのは白いスーツにマントを付けた白髪の老人――死神博士だった。

「仮にも首領代行が任務に就いている時に、幹部同士でくだらぬ争いなどをしている場合か。――ビショップ、財団Xより使者が見えている。対応は君に任せる」
「――承知致しました」

 醜態を見られたことを恥じ入るように、ビショップはそう殊更丁寧に頭を下げ、僧服の裾を翻して広間を去って行った。

 これといった職責も与えられず面白おかしくしているだけで、このバトルロワイヤルが開始される寸前に大ショッカーに招かれたキング。対して、このようにスポンサーの歓迎、バトルロワイアルを管轄する首領代行の補佐などの激務に追われるビショップは、それだけでもキングに対して恨み言の一つも持っていたのかもしれない。
 だが、彼とキングの決裂が決定的になったのは六時間前の第一回放送が原因だろう。
 自身と同じ名を持ちながら早々に脱落したファンガイアのキングに対する言及が、同じファンガイアのチェックメイト・フォーの一員であったビショップの不興を買う結果になった――もっともキングは、ビショップを怒らせることも遊びの一環として楽しんでいるわけだが。

 無論、同じキングの名を持ちながら情けない結果となったファンガイアの王を嘲笑ったのは、単純にそんな輩と同一視されたくないという気持ち――主催側であるビショップに肩入れされ、最初から適正のある強力な支給品を与えられ、餌となる参加者の近くに配置され、さらにキバの世界において彼と敵対していた闇のキバの鎧をキングから最も遠くのエリアへ送るなどの根回しをされ、なおもあっさり敗退した魔族の王を純粋に見下す心情からだが。

 しかし去って行ったビショップへの興味は既になく、キングは死神博士に尋ねていた。

「ねぇ、死神博士なら首領のこと知ってるんでしょ? どんな奴なのか教えてよ」

 それは本来大幹部であるキングが、組織の長である首領について尋ねるにはあまりにも思慮の足りない口の利き方であったが――そんなキングの態度を今更気にするでもなく、死神博士は鷹揚に頷いて見せた。

「良かろう。思えば貴様はまだ何も知らなかったな」

 死神博士の言うように、キングは殺し合いの真意や参加者に語られた事実の正誤すらも把握していない。混血である紅渡がファンガイアのキングから次代のファンガイアの王として認められたことも業腹な種族主義のビショップに、代理人に過ぎないバルバのような異種族の女を敬わせるほどの存在――キングにも少し興味があった。

 尊き主を讃える信徒のように、陶然とした様子で死神博士は口を開いた。

「偉大なる我らが首領の名は――」

688第二回放送(修正案) ◆cJ9Rh6ekv.:2018/02/09(金) 00:39:13 ID:mnN9gFuo





 そうして幹部達がやり取りをする少し前――大ショッカーの最高幹部が名乗りを終え、何故このような些事に彼女自らが出向いたのかを説明したその直後。彼女はまず、部下の渡して来た書類に目を通していた。

「首領の伝言の前に、おまえたちに伝えるべき事柄がまだ残っていたな」

 バルバが優雅に手を上げれば、その背後に巨大なモニターが出現する。
 並んでいたのは、『クウガの世界』、『剣の世界』、『キバの世界』……前回の放送で提示されたそれと同じものだ。

「まずは世界別の殺害数の序列だ。上から順に、現在はクウガの世界が十二人で一位、次いで八人の剣の世界、その下が四人のキバの世界とWの世界となっている」

 三島同様、大した感慨も見せずに女は原稿を読み上げる。
 背後のモニターは、女の呼び声に呼応するかのように各々の世界の名を強調していたが……『Wの世界』から下の列の名は、黒く塗り潰されていた。

「……一つ、死神博士から提案があってな。今回開示するランキングはここまでとなる。理由は各々、好きに考えを巡らせると良い」

 資料に目を落とし、淡々と読み上げていたバルバはしかし思い出したかのように、ふと背部モニターの方を振り返った。

「だが……そうだな。一つ、ついでに話しておいてやろう」

 黒塗りにされながらも名を連ねた、合わせて四つの世界の内。その末席に記された文字列へと、女は白魚のような指を這わせた。
 途端、文字列の一つを覆っていた黒がまるで拭い取られ――その下に隠されていた正体を明らかにした。

「ここにある『無所属』の参加者についてだが……説明をまだ行っていなかったな」

 現れたのは、クウガや剣と言った名前を冠さない――世界ですらないグループの名前だった。
 第一回放送時点ではランキングに上っていなかったその名の横には、彼らによる犠牲者数を示す『二人』という文字が輝いていた。

「彼らは世界の代表者ではなく、彼ら自身の生死はこのゲゲルにおける世界の存亡に影響はしない。言うなれば、勝敗の条件から切り離された存在だ。故に、我ら大ショッカーの一員であるアポロガイストも名簿上はそこに属していた」

 自らの仲間だという、先程三島によって読み上げられた死者の名の一つを口にしながらも、バラタトゥの女の表情はまるで感情が籠らず、人形の様であった。
 だがそれが不意に、可笑しそうに口角を歪める。

「――もっとも、勝敗に関わらずとも……世界の存亡に無関係というわけではないがな」

 多分に含みを持たせて言葉を区切った後、バルバは再びカメラに向かって艶然と微笑んだ。

「現に、つい先程参加者の全滅が確認された『響鬼の世界』の参加者の一人は、無所属の者の手で殺された」

 そうして告白されたのは、経緯の明かされぬ罪の在処と――一つの世界の滅亡だった。

『響鬼の世界』が――そこに生きる七十億の人口を抱えて、崩壊する。

 そんな、想像すら困難な規模の破滅の未来とその引き金を伝えながらも。美貌の最高幹部は余韻を挟むことすらなく、次の話を――首領代行としての本題を切り出した。

「放送の本来の役目は終えた。それでは、おまえたちに首領の言葉を伝えるとしよう」

 そうして彼女の口から伝えられる言葉を、カメラの向こうにいる者達はどう受け取るのだろうか。
 ただ、参加者も、大ショッカーの構成員も、その全員が、その言葉には度肝を抜かれることだろう。

「……人が、人を殺してはならない」

689第二回放送(修正案) ◆cJ9Rh6ekv.:2018/02/09(金) 00:39:54 ID:mnN9gFuo





「――オーヴァーロード・テオス。闇の力。闇のエル。無数の名を持つ……とある世界の創造主、神そのものだ」

 死神博士から厳かに告げられた名とその正体に、キングはへえ、と相槌を打った。

「神様なんだ」
「そうだ……当然彼の世界に比べれば微々たる物だが、それでも異世界に対しても大きな影響力を持ち得る偉大なる神……バルバとも、首領が世界を渡った先で出会ったらしい」

 死神博士曰く、数多の世界を旅する通りすがりの仮面ライダーやその仲間達によって、一度ならず二度までも大ショッカーは壊滅させられたという。
 仮面ライダー達の目を逃れ、時空の狭間を彷徨っていた残党の前に、ラ・バルバ・デは現れた――オーヴァーロード・テオスの代弁者として。

 オーヴァーロード・テオスもまた、ある仮面ライダーの手によって肉体を砕かれていた。だが彼は精神だけの存在となっても滅びず、そしてその神としての奇蹟の力もまた健在。
 そんな彼と、彼と行動を共にするバルバの傘下に収まるよう求められ、逆らうこともできず大ショッカーの残党は従ったと言う。

 そうして彼らに導かれるまま、このバトルロワイヤルを行うための準備を推し進めた。テオスはその力で、従来の大ショッカーでは到底連れ去ることなどできなかったダグバを始めとした参加者を用意し、時空を完全に超越して様々な時代の様々な世界から参加者を集め、アポロガイストのような死者を蘇生し、さらには儀式によって失われたはずのファンガイアのキングの心を呼び戻しさえした。挙句、その能力でバトルファイトの統制者の役割を代行したのか、不死であるアンデッドを殺し合いに参加させると言う、キングすら驚嘆させる冗談のような事態を現実の物としている。

 参加者の力を縛る首輪の効力も、それがあれほどの戦いでまるで傷つかないというのも、大ショッカーの世界を股にかけた技術力だけでなく、会場そのものを創世したテオスの力の影響を受けているからだという。

 実際には大ショッカーの組織力と技術力を重用し、さらに財団Xというスポンサーまで必要としているということから、テオスにとってもここまでの道筋は決して楽なものではなかったのかもしれない。
 だがなるほど、全知全能ではないにしても、キングの知る限り最もそれに近い所業を果たしている存在であることは間違いない。

 ここまで手の込んだ真似をしたとなれば、本当にテオスにその気があるなら、敗退した世界を本当に消し去ることも、優勝者の願いを叶えることも――それこそキングを、この退屈な生から解放することも容易く行える準備は終えているのだろう。
 これでビショップの態度も得心が行った。元のキバの世界で敗れ、蘇生されたという彼は――自らに新たな命を与えたテオスという神の加護を、誇り滅び行く己が種に得ようと必死なのだろう。
 同じような理由で組織へ忠誠を誓っている者も、決して少なくはないはずだ。
 例えば種族に、ではなく、自己に限るとしても――ちょうど、姿を現した同僚のように。

「そして既に死んでいた俺やビショップ、ついでに封印されていたおまえを復活させたように、組織の人員補充を兼ねた聖別も首領御自ら行われたわけだ――何が起きたのかも、我々外様ではわからないほどの御力でな」

 如何にもその力に御執心と言った様子で割って入って来たのは、本来第二回放送を担当していた三島だった。

「あっ、お疲れグリラス。放送役のやる気なさ過ぎたの、お目玉なくてよかったね」
「……くだらないケチは止して貰おうか。俺は自分の仕事を全うしていた」
「わかってないなぁ。遊び心がないとつまらないだろ? 仮にも大幹部様が、さ」
「遊び、か……キング。貴様こそ、幹部としての自覚があるのか?」
「あるよ? 偉大なる首領様に選ばれたおかげで僕はこうして自由なわけだし、ほらバルバだって情報の公開は工夫してるじゃん。それとも首領の人選が信じられないわけ?」

 苛立ったような三島の返しに、キングはへらへら笑いながら挑発を重ねた。
 そうして最高幹部の振る舞いと、何より首領の御名を出されては何も言い返せないのか、苦虫を噛み潰したような顔で沈黙する三島を見たキングはわざとらしく驚いたような表情を作った。

「わ、グリラスが黙った。首領ってやっぱり凄いカリスマだなぁ」

 口先ばかりで自分達の主を讃えながら、けらけらと笑ったキングはついでに、ふと思い至った疑問を零してみた。

690第二回放送(修正案) ◆cJ9Rh6ekv.:2018/02/09(金) 00:40:51 ID:mnN9gFuo

「……でも、そんな偉大な神様でも世界の崩壊は防げないんだ?」
「貴様……っ!」

 神を試すが如き不敬な発言に、押し黙っていた三島が眼鏡のフレームに手をかけた。
 そのまま怪人としての姿に変身しようとする彼を制するように、白い衣服に包まれた腕が翳される。

「さあ、どうだろうな」

 三島を止めた死神博士が、そのまま余裕ぶってはぐらかすのを見て、キングは一瞬むっとする。だが直ぐに頭上のモニターに映る、その神である首領の言伝を口にするバルバの姿を見て、また口の端を歪めた。

(わかるよ、神様……こんな面白いゲームを考えた理由がさ)

 自分のその考えが間違っている可能性など夢にも思わず、キングは内心呟いた。

(やっぱり退屈だよね、長生きしているとさ)

 自らの同類を得たと思い込み、キングは今までより少しだけ、大ショッカーの主催するこのゲームへの興味が湧いて来た。

「――ねえ、死神博士。僕も今から、このゲームに飛び入り参加しちゃ駄目かな?」







「……これは、あくまで首領の言葉に過ぎん」

 人が人を殺してはならない――殺し合いを強要した組織の長が口にするには、あまりにもふざけているとしか思えない言葉を伝えたバラタトゥの女は、部下の纏めていた書類をテーブルの上に投げ捨てると、再び口を開く。

「だが、おまえたちが気にすることはない。首領は最終勝利者が出ればその者の世界を存続させ、その者どもの望みを叶えるという契約を私と交わしている。首領の思惑などとは無関係に、死神博士が約束した報償は必ずや勝者に与えられる」

 優勝の褒美――それを信じることで心を繋ぎ止めている、それを信じることで殺し合いに乗ろうとする参加者が存在すると見越して、バルバはそう続けた。

「戦いを続けるが良い。そして見せてみろ。おまえたちの可能性が選ぶ、その行く末を――それがどんな答えだろうと、我々はその選択を受け入れよう」

 それをたとえ自身の望まぬ形だろうと、受け入れると首領は認めたのだから。
 それは代弁者である彼女もまた、同じ。

「以上で、第二回放送を終了する」

 そうしてバルバは踵を返し、放送室を後にする。その背には、三体の怪人――水、地、風。三種のエルロードが、静かに続いて行った。

 そうして事後処理を――キングの参戦希望すら、三島と死神博士に一任し、彼女は広間へと歩いて行った。
 人払いは済ませてある、静かな空間で――無人のはずの大首領の玉座に向けて、三体のエルロードが恭しく礼を取る。

「ゲゲルは、おまえの望まぬ方向に進んでいるな」

 バルバもまた、誰もいないはずの玉座に向けてそう告げた。

「だが、放送でも口にした通り――約束は、果たして貰うぞ」

 ――無論です。

 誰もいないはずの玉座から、そう静かな――しかし明瞭な声がバルバの中に響いた。

 ――私は、かつての使徒の言葉を見極めるのみ……

「おまえはリント――いや。人間を創りながら、それを何も知らない……か」

 対話の相手が語った、自らを使徒として選んだ理由を、バルバはもう一度口にする。

691第二回放送(修正案) ◆cJ9Rh6ekv.:2018/02/09(金) 00:42:02 ID:mnN9gFuo

 ――ええ。私は、自らの使徒にそう断罪されるほど……視野が狭い。だから、あなたが必要なのです。ラ・バルバ・デ。

 超越者からの告白に、だがバルバは泰然とした様子を崩さなかった。

 ――人間がどのような結論を選ぼうとも……私は、それを受け入れて……彼らの選んだ世界を、信じましょう。

 たとえ、互いに滅ぼさねばならぬ運命のままに、最後まで傷つけ合うとしても。
 その運命すら打ち破って――他者を受け入れ、共に生きて行くとしても。

 創造主は、己が子ら自身の選択を尊重し、人間という存在を見極めると、そう宣告した。

 そのための舞台。極限の状況下に在ってこそ現れる、人間の真の姿。そして真の可能性。

 数多の世界の滅亡を前にして、大いなる力を持つ神は――敢えて全てを、人間に委ねた。

 人は彼が愛するに足る存在であり得るのか。彼がその力で救うべき者なのか。
 そしてそもそも――本当に彼の力を、人が必要とするのか。

 ――それを見届けるために……もう少し、私に協力してください。

「言われるまでもない」

 それこそ、彼女もまた望むことなのだから。

 オーヴァーロード・テオスは、人が人を殺してはならないと説いた。
 しかしラ・バルバ・デは、リントが争いを覚えたことを肯定する。

 進化とは、生存競争だ。より進化した者が、劣る者を狩る――グロンギがリントを狩る権利を持ったように。
 進化したリントの戦士達によって、多くのグロンギが討ち果たされたように。

 たった一つだけ世界が残るのなら、闘争の果てに残された世界こそが、無数の世界の中で最も進化した在り方なのだろうと、そう考えていた。

 だが、彼女もまた一つの奇蹟を目にしていた。

 ダグバと等しくなったあのクウガの、慈愛を湛えた赤い双眸を――
 リントが恐れた伝説を塗り替える、その姿を。

 聖なる泉を枯れ果てさせることなく、クウガはダグバを上回った。
 彼より劣るはずのリントを滅ぼす闇となるのではなく、彼らを護るために――助け合い、支え合ったことで。

 そして奇しくも同じ疑問を持ち、世界の融合に気付いたばかりのテオスに見初められ、教えられた……滅びつつある、無数の世界の存在を。そしてそこに存在する、他者を狩るのではなく、護るために無限に進化して行く者達を。

 ――仮面ライダー。

 それが数多の世界に共通する、救世主の御名。

692第二回放送(修正案) ◆cJ9Rh6ekv.:2018/02/09(金) 00:42:59 ID:mnN9gFuo

 果たしてその存在が、結局彼女の信じる進化に劣るのか――それとも、真に勝る可能性であるのか。

 その可能性を見届けたい――その一点で、二人の目的は一致した。
 だが争いを是とし、それこそが本来あるものだと考えるバルバと――それを人に望まぬテオスの価値観は、同じ願いを抱きながらも異なる物だ。

 だからこそ手を取り合う価値があると、テオスはバルバに言う。彼の言う通り、互いの視野を拡げるために。

 また、グロンギにおいてゲゲルの管理者であったバルバは、此度のバトルロワイヤルの管理者としても適任――テオスにとっては、これ以上とないパートナーだったのだろう。

 それはまた、バルバにとってのテオスも同じこと。

 ……そうは言っても結局、テオスには未だ己の思うが通りになって欲しいと自制を欠く面はある。だが想定を遥かに越え、わずか半日足らずで世界の一つが滅びた現状に対し、先の言伝のように彼がぼやき一つで済ましたことは許容範囲だと考えたからこそ、バルバもその依頼に応じた。言うなれば今のバルバの役割は、受肉していないテオスに代わっての実務担当と共に、テオスが行き過ぎないよう見咎めることなのだから。

「――それでは、共に見届けるとするか」

 そう同志に告げて、バルバはまた踵を返し、広場を後にする。
 極限状態の中で戦い続ける、人の見せる可能性を見極めるために。
 三体のエルロードは無言のまま、主より与えられた任を果たすべく、美しき代行者の後に続いた。






【全体備考】
※主催者=大ショッカー首領は、【オーヴァーロード・テオス@仮面ライダーアギト】でした。彼は肉体を失っているため、【ラ・バルバ・デ@仮面ライダークウガ】が最高幹部として首領代行を行っています。
※主催側には、さらに【水のエル@仮面ライダーアギト】、【地のエル@仮面ライダーアギト】、【風のエル@仮面ライダーアギト】、【三島正人(グリラスワーム)@仮面ライダーカブト】、【ビショップ@仮面ライダーキバ】がいます。
 また、【財団X@仮面ライダーW】からの使者が来訪しているそうですが、その正体、および以後も主催陣営に留まるのかは後続の書き手さんにお任せします。
※参加者に支給されたラウズカード(スペードのK)はリ・イマジネーションの剣の世界出展です。
※キング@仮面ライダー剣がバトルロワイアル会場への飛び入り参加を希望していますが、どのような展開を迎えるかは後続の書き手さんにお任せします。
※世界別殺害数ランキングは、上位三位まで、および『無所属』(=仮面ライダーディケイド出典の参加者)のキルスコアのみが明示され、他の三つの世界の名称および内訳は伏せられています。

693 ◆cJ9Rh6ekv.:2018/02/09(金) 00:52:45 ID:mnN9gFuo
以上で、拙作放送案の修正版の仮投下を終了します。
投票スレでも触れたとおり、前半を担当する放送役としての三島正人@仮面ライダーカブトの登場、殺害数ランキングの一部情報の秘匿が主な追加変更点となっております。
ご投票頂いた以前の放送案と比べて、◆.ji0E9MT9g氏の要素を拝借したこちらの修正版を投下しても構わないものか、ご意見を伺えればと思います。

皆様にはお手数をおかけしてしまうこと、それと遅れてしまいましたがご無礼を働いてしまったこと、誠に申し訳ございませんが、ご協力をお願い致します。

なお、次回反応できるのは明日の夜になるかと思いますので、もしも早々に結論が明白となった場合は、これ以上いたずらに企画の進行速度を落とすのも好ましくはないかと思われますので、適切と判断された案に合わせ、先立って放送後の予約を解禁して頂いても私は異議を挟まないことを表明しておきます。
最後にまた、やや偉そうな口を叩いてしまって大変申し訳ございませんが、今後とも皆さまよろしくお願い致します。

694 ◆.ji0E9MT9g:2018/02/09(金) 01:33:37 ID:XwaUx2p.
夜分遅くであるというのに仮投下お疲れ様でした。
あくまで読み手としての感想としては、放送担当者が急遽変更になる、という点は『主催側も完璧ではなく12時間で38人減った現状に対応し切れていない』、
というようなある種の隙を見せる描写にも繋がり、個人的には大好物なので賛成したいところです。

しかし一書き手の意見といたしましてはやはり自分の作品との微妙な差異が気になってしまうのは事実で、個人的には反発する意識を否定しきれないのも事実です。
とはいえ、これはリレー企画であり、繰り返しになるようですが投票に勝った◆cJ9Rh6ekv.氏の作品、また読み手様の意見を最も尊重するべきだと存じます。
なので自分の意見としてはほぼノーコメント、ということで、読み手の皆さんのご意見でどちらを本放送にするべきか決めていただくのがやはり理にかなっているかと。

読み手の皆様には我々の我が儘に付き合わせてしまい申し訳ないのですが、どうかどちらが本放送に相応しいかご判断のほどお願いいたします。

695二人で一人の/通りすがりの名無し:2018/02/09(金) 11:23:01 ID:Vw0yFfEY
その修正案でええんでね?

696 ◆LuuKRM2PEg:2018/02/09(金) 20:14:39 ID:rfNoycvA
私も修正案の投下に踏み切っても大丈夫だと判断します。

697二人で一人の/通りすがりの名無し:2018/02/09(金) 21:31:41 ID:6Qc2ilFk
>>694
失礼します。
確かに平成ライダーロワはリレー企画ですが、その企画を担う書き手の一人は氏であり、氏もリレーに含まれています。
氏も含まれてこそのリレー企画です。
だからこそ個人的に反発する意識があるのならこのロワの書き手として氏の意見も尊重されるべきです。
投票で通ったのはあくまでもその時点での◆cJ9Rh6ekv.氏の作品であり、修正後の作品ではありません。
修正前の放送案が本投下されればその時点で投票した人への責任や信頼は果たしたと言えます。
氏の作品の要素は氏という書き手のものです。他の書き手の手による微妙な差異が気になるのは当然です。
今回の作品も氏にも伺いを立てているあくまでの“案”ですし、一書き手としてのわがままを通してもよいかと。
私は◆cJ9Rh6ekv.氏ではありませんが、ここまで氏のいうわがままに付き合った住民たちも、その辺りは十分承知しているのではないでしょうか。
判断は氏に任せますが、氏がこの修正案の取り下げを願い、修正前の◆cJ9Rh6ekv.氏の作品を通してもらうことは悪いことでもなんでもありません。
一読み手にすぎない上での長文意見、失礼しました。

698 ◆.ji0E9MT9g:2018/02/10(土) 00:53:08 ID:4qA11uU6
>>697
長文でのご意見ありがとうございます。
さて、ご意見につきましてですが>>694で述べている通り読み手としては賛成、書き手としてはもどかしい、という意見ですので、
私の意見としては身も蓋もない言い方をすればどちらでもいい、というところではあります。

しかし、読み手様が二人、修正案でいいのでは、と仰っており反対意見もございませんので
改めて放送の修正案を本放送として決定すべきである、と意見をしておきます。

699 ◆cJ9Rh6ekv.:2018/02/10(土) 08:08:45 ID:BWjto9HI
おはようございます。
またも反応が遅れて申し訳ございません。皆さま様々なご意見ありがとうございます。
特に◆.ji0E9MT9g氏、書き手として当然抱くようなもどかしさ、反発の意識に思い至らないまま勝手な真似をしてしまった私の案を、それでも受け入れてくださってありがとうございます。
ご意見を踏まえて、これより修正案を本放送として投下して参ります。

700対峙(修正) ◆.ji0E9MT9g:2018/03/03(土) 00:43:57 ID:CFQXrap2
本スレでも言いましたが、修正案を投下したいと思います。

701対峙(修正) ◆.ji0E9MT9g:2018/03/03(土) 00:45:10 ID:CFQXrap2
>>240から下が修正箇所です。
以下、本文



総司も翔一も真司もその思いは同じようで、暗黙の了解としてダグバをここで倒すべきだと彼らは考えていた。

「……どうする、名護さんを待つか?」

高まる緊張の中で、一番に口を開いたのは翔太郎だ。
ダグバの危険性を交戦し、一番味わっている彼が、この事案については仕切るべきだと判断したのだろう。
しかし、その提案に首を振ったのは総司である。

「……いや、名護さんは渡君のことで忙しいはずだし、僕たちだけで対処しなくちゃ」
「嘘だろ!?ダグバってそんなやばい奴と、俺に戦えって言うのか!?」
「ダグバって奴そんなに強いのー?戦ってみたいー」

不安を口に出す三原と、好奇心を見せるリュウタ。
先ほどから口を開かない麗奈も明らかな嫌悪を見せていることなども含めて、絶対にダグバと会わせるわけにはいかないだろう。
であれば、残された手段はあと一つだけ。

「二手に分かれて片方はダグバへの対処、もう片方は三原さんと間宮さんを逃がすことになるだろうな……」

言いつつ、翔太郎の脳内にてざっとしたチーム分けが行われる。
三原と麗奈、双方が安心感を抱いている、という面で彼らにリュウタは不可欠。
しかしそれだけでは麗奈が暴走した時の戦力が不十分、総司がついていっては逆効果なことを考えると真司か翔一かをそこに当てるべきだと思われるが……。

「城戸さん、間宮さんのこと、よろしくお願いします。」

その思考の中で、候補にあがった翔一が、確たる口調で以て真司に指示を出したことで、それを遮られた。
言われた真司も同じ事を言おうとしていたようで、呆気に取られた表情を浮かべた。
それを見て、翔一はいつものように朗らかな笑みを浮かべて、しかし瞬時に表情を戦士のそれへと切り替える。

「俺、やっぱり未確認は見過ごせません。それに、ダグバが強いっていうなら、城戸さんより強い俺が行った方が、やっぱり良いと思います」
「翔一……」

そう言って、真司はまだ何かを言いたげだったが、少し考えてそれを飲み込んだようだった。

「――わかった、絶対に無事で戻ってこいよ。……死んだりしたら、承知しないからな」
「わかってます。でも大丈夫ですよ、心配いりません。だって俺たちは人類の自由と平和を守る仮面ライダーアギトと――」
「――仮面ライダー龍騎、だからな」

言って、二人はへへ、と笑い合う。
きっと、この二人にとって今の会話は字面以上の意味を持つのだろう。
それは決して翔太郎には理解が及ばないが、彼らの間に深い絆があるのだけははっきりと理解できた。

「――それじゃあ皆さん、どうかご無事で」
「あぁ、お前もな、翔一」

そうして、数分の後、荷物を纏めた真司らは、去って行った。
渡たちとも、ダグバとも違う方向に。
その先にまた何か危険が待っているかもしれないが、きっと真司ならうまくやり過ごしてくれるだろう。

少なくとも、そう信じなければ今から向かう強敵に対しあまりにも命取りな隙が生じてしまう。
だから今は、多少の心配こそあれど真司を信じる他なかった。

「さて、俺たちも行くか」
「うん、行こう翔太郎、翔一」
「はい」

そして、ここに残った三人もまた、先ほどまでの表情とは打って変わって真剣な眼差しをしていた。
紅音也を殺害し、人の命をゲームの材料程度に考えている最悪の生物、未確認。
ダグバがどれほど強大な力を持っていようと、そんな悪に仮面ライダーが屈してはいけない。

702対峙(修正) ◆.ji0E9MT9g:2018/03/03(土) 00:45:42 ID:CFQXrap2

三者ともに強い思いを抱いて、彼らはタツロットたちに先導されるままに闇の中を歩いて行った。





「バルバ……、君もこのゲゲルに関わってたんだね」

一方で、放送直前にこの焦土の真ん中で目覚めたダグバは、放送を聞いてそう呟いた。
このゲゲルで散った参加者の数などどうでもいい。
ダグバの感覚からすれば、ここまでは自分にとってのゲリザギバスゲゲルだ。

弱い参加者が淘汰され、あのクウガやガドルを倒した仮面ライダーを始めとした強くて自分に恐怖を与えてくれる存在だけが、ここに残っているはずである。
それなら、これからのゲゲルは一層面白くなるに違いない、と彼は不気味に笑って。

ふと、視界の先にこちらに向かってくる三人の男がいることを確認する。
目をこらせば、その内二人は見たことがあり、また一人は自分をそれなりに楽しませてくれたものであった。
前よりも強くなっていればいいが、と思いつつ、彼もまた彼らに向かい歩を進める。

そして数秒後。
お互いの顔が夜の闇の中でもしっかりと視認できる中で、四人は足を止めた。

「――探したぜ、ダグバ。紅の仇、取らせてもらう」

第一回放送の後、戦った帽子の男がそう言って苦々しげにこちらを見据える。
紅というのは彼と同行していた、死んでもなお自分に一撃を浴びせた男であろうか?
彼は面白かった、と思わず笑みを浮かべるが、しかしそれを気にした様子もなく次に口を開いたのはその横の男。

「未確認……お前たちにはたくさんの人の未来が奪われた……。これ以上はもう奪わせない、4号の代わりに、俺がここでお前を倒す!」

未確認。4号。
聞き覚えのある言葉から判断すると自分の世界の人間らしい男の気迫を受けて、ダグバは楽しめそうだとより一層その笑みを深める。
と、最後にダグバが目を移したのは、この中で一番興味がある、以前戦えなかった男。

「ガドルは僕が倒した。お前も倒す。……今、ここで!」
「――へぇ、君がガドルを倒したんだ。じゃあ楽しめそうだね。……君こそ今度は、逃げないでね?」
「……?何の話を――」
「変身」

――TURN UP

思わず疑問を吐き出した総司を尻目に、ダグバはその身に鎧を纏う。
青いスーツに銀の鎧を身につけた、カブトムシを象った仮面ライダー、ブレイド。
正義の名の下に戦えない誰かのため戦い続けた男の鎧が、痛みを知らぬ悪魔に再び纏われた姿だった。

「それは……!」

――そのバックルに、総司は見覚えがあった。
以前、剣崎を殺した時、彼が変身に使用しようとしていたものだ。
であれば、これが仮面ライダーブレイドか。

まさかこんなところで自分に牙を剥くとは、やはり自分は許されないのか、と一瞬考えて。

(ううん、違う。ブレイドは、こんな奴の為にあるんじゃない。きっと、剣崎は僕たちにこれを取り返してくれ、って言いたいんだ……!)

剣崎はその力が、こんな悪魔に使われてまで自分に復讐を望むような男ではないとその思考をやめる。
むしろきっと、ここでダグバがこの鎧を纏うのは、ブレイドを仮面ライダーの元に返して欲しいという、剣崎の想いが繋がったものなのだろう。
であれば、自分に悩んでいる時間など、あるはずもないではないか。

703対峙(修正) ◆.ji0E9MT9g:2018/03/03(土) 00:46:12 ID:CFQXrap2

――JOKER

翔太郎の持つジョーカーメモリから、ガイアウィスパーの声が響く。
それと同時に自分も上空より飛来したカブトゼクターを手に取り、翔一は居合のように構えを取った。
それと同時彼の腰にオルタリングが現れたのを受けて、翔太郎もまた、メモリをドライバーに装填した。

「変身!!!」

――JOKER
――HENSHIN

同時に叫んだ男たちの声に応えるように、その身に鎧が纏われていく。
アギト、カブトの世界をそれぞれ代表する二人の仮面ライダー、人類の進化の可能性を象徴する仮面ライダー、アギトと、世界に輝く太陽のような仮面ライダー、カブト。
そして、Wの世界を代表する片割れである、仮面ライダージョーカー。
相対するブレイドもまた世界を代表する仮面ライダーであることを考えれば、この場の光景は壮観であった。

「――ハッ!」

気合いを入れるように息を吐き出したアギトに対し、ブレイドとカブトはその手に得物を構えて。

「――さぁ、お前の罪を数えろ!」

ジョーカーのその言葉が、開戦の合図となった。


【二日目 深夜】
【D-1 市街地】


【左翔太郎@仮面ライダーW】
【時間軸】本編終了後
【状態】ダメージ(大)、疲労(中)、仮面ライダージョーカーに変身中
【装備】ロストドライバー&ジョーカーメモリ@仮面ライダーW
【道具】支給品一式×2(翔太郎、木場)、トライアルメモリ@仮面ライダーW、首輪(木場)、ガイアメモリ(メタル)@仮面ライダーW、『長いお別れ』ほかフィリップ・マーロウの小説@仮面ライダーW
【思考・状況】
基本行動方針:仮面ライダーとして、世界の破壊を止める。
0:ダグバを倒す。
1:名護と総司、仲間たちと共に戦う。 今度こそこの仲間達を護り抜く。
2:出来れば相川始と協力したい。
3:浅倉、ダグバを絶対に倒す。
4:フィリップ達と合流し、木場のような仲間を集める。
5:乾巧に木場の死を知らせる。ただし村上は警戒。
7:もしも始が殺し合いに乗っているのなら、全力で止める。
8:もし、照井からアクセルを受け継いだ者がいるなら、特訓してトライアルのマキシマムを使えるようにさせる。
9:ジョーカーアンデッド、か……。
【備考】
※555の世界について、木場の主観による詳細を知りました。
※オルフェノクはドーパントに近いものだと思っていました (人類が直接変貌したものだと思っていなかった)が、名護達との情報交換で認識の誤りに気づきました。
※ミュージアムの幹部達は、ネクロオーバーとなって蘇ったと推測しています。
※また、大ショッカーと財団Xに何らかの繋がりがあると考えています。
※東京タワーから発せられた、亜樹子の放送を聞きました。
※総司(擬態天道)の過去を知りました。


【擬態天道総司(ダークカブト)@仮面ライダーカブト】
【時間軸】第47話 カブトとの戦闘前(三島に自分の真実を聞いてはいません)
【状態】疲労(中)、ダメージ(大)、仮面ライダーカブトに変身中
【装備】ライダーベルト(ダークカブト)+カブトゼクター@仮面ライダーカブト、ハイパーゼクター@仮面ライダーカブト、レイキバット@劇場版 仮面ライダーキバ 魔界城の王
【道具】支給品一式×2、753Tシャツセット@仮面ライダーキバ、ザンバットソード(ザンバットバット付属)@仮面ライダーキバ、魔皇龍タツロット@仮面ライダーキバ
【思考・状況】
基本行動方針:天の道を継ぎ、正義の仮面ライダーとして生きる。
0:ダグバを倒す。
1:剣崎と海堂、天道の分まで生きる。
2:名護や翔太郎達、仲間と共に生き残る。
3:間宮麗奈が心配。
4;放送のあの人(三島)はネイティブ……?
【備考】
※天の道を継ぎ、総てを司る男として生きる為、天道総司の名を借りて戦って行くつもりです。
※参戦時期ではまだ自分がワームだと認識していませんが、名簿の名前を見て『自分がワームにされた人間』だったことを思い出しました。詳しい過去は覚えていません。
※カブトゼクターとハイパーゼクターに天道総司を継ぐ所有者として認められました。
※タツロットはザンバットソードを収納しています。

704対峙(修正) ◆.ji0E9MT9g:2018/03/03(土) 00:47:17 ID:CFQXrap2


【津上翔一@仮面ライダーアギト】
【時間軸】本編終了後
【状態】強い決意、真司への信頼、麗奈への心配、未来への希望 、、仮面ライダーアギトに変身中
【装備】なし
【道具】支給品一式、コックコート@仮面ライダーアギト、ふうと君キーホルダー@仮面ライダーW、医療箱@現実
【思考・状況】
基本行動方針:仮面ライダーとして、みんなの居場所を守る為に戦う。
0:ダグバを倒す。
1:逃げた皆や、名護さんが心配。
2:大ショッカー、世界崩壊についての知識、情報を知る人物との接触。
3:木野さんと北条さん、小沢さんの分まで生きて、自分達でみんなの居場所を守ってみせる。
4:もう一人の間宮さん(ウカワームの人格)に人を襲わせないようにする。
5:南のエリアで起こったらしき戦闘、ダグバへの警戒。
6:名護と他二人の体調が心配 。
【備考】
※ふうと君キーホルダーはデイバッグに取り付けられています。
※医療箱の中には、飲み薬、塗り薬、抗生物質、包帯、消毒薬、ギブスと様々な道具が入っています。
※強化形態は変身時間が短縮される事に気付きました。
※天道総司の提案したE-5エリアでの再合流案を名護から伝えられました
※今持っている医療箱は病院で纏めていた物ではなく、第一回放送前から持っていた物です。


【ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ】
【時間軸】第46話終了後以降
【状態】疲労(大)、ダメージ(大)、もう一人のクウガ、浅倉との戦いに満足、ガドルを殺した強者への期待、仮面ライダーブレイドに変身中
【装備】ブレイバックル@仮面ライダー剣+ラウズカード(スペードA〜13)+ラウズアブゾーバー@仮面ライダー剣
【道具】なし
【思考・状況】
0:ゲゲル(殺し合い)を続ける。
1:恐怖をもっと味わいたい。楽しみたい。
2:もう1人のクウガとの戦いを、また楽しみたい。
3:ガドルを倒したリントの戦士達が恐怖を齎してくれる事を期待。
4:またロイヤルストレートフラッシュの輝きが見たい。
5:バルバもこのゲゲルに関わってるんだ……。
【備考】
※浅倉はテラーを取り込んだのではなく、テラーメモリを持っているのだと思っています。
※ダグバのベルトの破片を取り込んだことで強化しました。外見の変化はあるかやどの程度の強化なのか、また更に進化する可能性はあるのかどうかは後続の書き手さんにお任せします。
※怪人体は強化されましたが、それが生身に影響するのか、また変身時間はどうなっているのかということなども後続の書き手さんに任せます。
※制限によって、超自然発火能力の範囲が狭くなっています。
※変身時間の制限をある程度把握しました。
※超自然発火を受けた時に身に着けていたデイパックを焼かれたので、基本支給品一式は失われました。
※キングフォーム、及び強化された自身の力に大いに満足しました。
※仮面ライダーブレイドキングフォームに変身したことで、十三体のアンデッドとの融合が始まっています。完全なジョーカー化はしていませんが、融合はかなり進んでいます。今後どうなるのか具体的には後続の書き手さんにお任せします。
※一条とキバットのことは死んだと思っています。
※擬態天道を天道総司と誤認しています。

705対峙(修正) ◆.ji0E9MT9g:2018/03/03(土) 00:47:56 ID:CFQXrap2





市街地でダグバと仮面ライダーたちの戦いが始まったのと同じ頃。
安全な場所を求めて移動している真司の顔は、決して晴れやかではなかった。
自分がここにいなければいけない理由はわかっているつもりだ。

しかし、それと翔一たちを超危険人物の下にみすみす向かわせてしまったことに対し思うことがないかといえば、それは全くの別問題なのである。
ふと横を見やれば、リュウタが上機嫌で麗奈の横を陣取っていた。
最初はダグバへの執着を隠しきれないようだったが、麗奈を守れるのはリュウタだけだ、と翔一の見様見真似で説得したところ、すぐにダグバのことを忘れたようだった。

扱いやすいな、とも思う反面、この無邪気な怪人の好意を受けている麗奈の中のワームをどうにかしなくてはいけないという懸念も捨てきれるものでもない。
真司自身は翔一といた時にも言ったように自分のしたいように彼女を守るだけだとも思うのだが、三原やリュウタを預かる手前、ずっと自分らしく何も考えず、ではいられないのも、また事実であった。
キバットがいてくれたらなぁとぼんやり考える中、ふと寒気が身を撫でる。

夜だし冷え込むのか?などと思うが、以前白い怪人と戦ったそれより身体の芯に響くそれに、それだけでは説明の聞かない何か嫌な予感が、徐々に近づいてくるのを、確かに自覚せずにはいられなかった。
何か似たようなことを、先ほど聞いたような……と考えて。

「真司!あれ見て!」

リュウタの声を受けて、そうして顔を見上げれば、そこにいたのは上裸の男。
暗がり故にその顔をはっきり視認できないながら、しかし男が口角を吊り上げ不気味に笑っていることは分かる。
思わずその場に立ち止まった彼らに対し、ゆっくりと影は歩みを進め。

「城戸か……久しぶりだな」

その言葉に、彼と、そして発せられる嫌な雰囲気の正体を察した。

「浅倉……!」
「ははっ、お前と会えるとは運が良い。イライラが晴れそうだ」

言いながら、彼は懐から白いカードデッキを取り出す。
それは、翔太郎も戦ったというファムのもの。
しかし、真司にとってそれは彼が持っていることなど許されないはずのものだった。

「……お前、霧島からそれを取ったのか」
「あぁ、あの女は俺が倒したぜ、それがどうかしたか?」
「なんで……なんだよ。なんで、お前はそうして誰かを傷つけることに躊躇がないんだよ……!」

それは、悲痛な叫びだった。
確かに一年間戦い続けたライダーたちの中で、自分の話を聞いてくれた存在など数えるほどしかいないし、それは浅倉だけに限った話ではない。
しかしそれでも、真司にとって事情を把握している蓮や、根は悪い奴ではないのであろう美穂と、目の前の男を同じく考えることなど出来なかった。

だが、そんな絞り出したような言葉を前にして、浅倉はなおもその顔から笑顔を消しはしない。

「なんでって、それがルールだろ?俺たちの。それともお前、あの女に惚れてたのか?」
「おっ前ぇぇぇぇッ!!!」

何てことのないように命を奪うゲームを肯定し、あまつさえ嘲るように続けた浅倉に対し、真司は、同行者の三人が想像もしなかったような怒りを見せた。
――それが自分と美穂の関係を浅倉が嘲笑ったからか、それとも殺し合いに対する躊躇のなさを再確認したからか。

そのどちらかは定かではないが、しかし真司はそのまま懐から龍のエンブレムの刻まれた黒いデッキを取り出す。
病院から持ち出してきた花瓶にそれを翳すと、相対する浅倉もまた同様にデッキを翳した。
同時に装着されたVバックルを確認もせず、二人は叫ぶ。

706対峙(修正) ◆.ji0E9MT9g:2018/03/03(土) 00:48:31 ID:CFQXrap2

「――変身ッ!!」

瞬間真司の身に纏われるのは、赤いスーツに銀と黒の鎧を身につけた龍の炎を帯びる仮面ライダー、龍騎。
相対する浅倉の身は、彼の体格には大凡似合わぬ純白のライダー、仮面ライダーファムに変じて。

「しゃあッ!」

気合いを入れた龍騎の声を皮切りに、二人は駆け出した。

【二日目 深夜】
【E-2 焦土】

【城戸真司@仮面ライダー龍騎】
【時間軸】劇場版 霧島とお好み焼を食べた後
【状態】強い決意、翔一への信頼、麗奈への心配、恐怖(小)、仮面ライダー龍騎に変身中
【装備】龍騎のデッキ@仮面ライダー龍騎
【道具】支給品一式、優衣のてるてる坊主@仮面ライダー龍騎
【思考・状況】
基本行動方針:仮面ライダーとして、みんなの命を守る為に戦う。
0:浅倉を倒す。
1:翔一たちが心配。
2:この近くで起こったらしい戦闘について詳しく知りたい。
3:黒い龍騎、それってもしかして……。
【備考】
※支給品のトランプを使えるライダーが居る事に気付きました。
※アビスこそが「現われていないライダー」だと誤解していますが、翔太郎からリュウガの話を聞き混乱しています。
※アギトの世界についての基本的な情報を知りました。
※強化形態は変身時間が短縮される事に気付きました。
※再変身までの時間制限を大まかに二時間程度と把握しました(正確な時間は分かっていません)
※天道総司の提案したE-5エリアでの再合流案を名護から伝えられました 。


【間宮麗奈@仮面ライダーカブト】
【時間軸】第40話終了後
【状態】 他人に拒絶されること及びもう一人の自分が人を傷つける可能性への恐怖、翔一達の言葉に希望、恐怖(中)
【装備】なし
【道具】支給品一式、ゼクトバックル(パンチホッパー)@仮面ライダーカブト、ドレイクグリップ@仮面ライダーカブト
【思考・状況】
0:何か……怖い……。
1:自分に出来るだけのことをやってみたい。
2:もう一人の自分が誰かを傷つけないように何とかする。
3:……それがうまく行かない時、誰かに自分を止めて貰えるようにする。
4:照井が死んだのは悲しい。一条は無事? どこへ行ったのか知りたい。
【備考】
※『仮面ライダー』の定義が世界ごとによって異なると、推測しています。
※生前の記憶を取り戻しました。ワームの方の人格はまだ強く表には出て来ませんが、それがいつまで続くのか、またワームの人格が何をどう考えているのか、具体的には後続の書き手さんにお任せします。

707対峙(修正) ◆.ji0E9MT9g:2018/03/03(土) 00:49:08 ID:CFQXrap2


【三原修二@仮面ライダー555】
【時間軸】初めてデルタに変身する以前
【状態】強い恐怖心
【装備】デルタドライバー、デルタフォン、デルタムーバー@仮面ライダー555
【道具】草加雅人の描いた絵@仮面ライダー555
0:目の前の浅倉への恐怖。
1:巨大な火柱、閃光と轟音を目撃し強く恐怖を抱く。逃げ出したい。
2:巧、良太郎と合流したい。村上、浅倉を警戒。
3:オルフェノク等の中にも信用出来る者はいるのか?
4:戦いたくないが、とにかくやれるだけのことはやりたい。けど……
5:リュウタロスの信頼を裏切ったままは嫌だ、けど……
6:間宮麗奈を信じてみたい。
【備考】
※リュウタロスに憑依されていても変身カウントは三原自身のものです。
※同一世界の仲間達であっても異なる時間軸から連れて来られている可能性に気付きました。同時に後の時間軸において自分がデルタギアを使っている可能性に気付きました。
※巧がオルフェノクであると知ったもののある程度信用しています。


【リュウタロス@仮面ライダー電王】
【時間軸】本編終了後
【状態】疲労(小)、ダメージ(中)、恐怖(小)
【装備】デンオウベルト+ライダーパス@仮面ライダー電王、リュウボルバー@仮面ライダー電王
【道具】支給品一式、ファイズブラスター@仮面ライダー555、デンカメンソード@仮面ライダー電王、 ケータロス@仮面ライダー電王
0;何かこいつ(浅倉)やだ。
1:良太郎に会いたい
2:麗奈はぼくが守る!
3:大ショッカーは倒す。
4:モモタロスの分まで頑張る。
5:修二が変われるようにぼくが支えないと
【備考】
※人間への憑依は可能ですが対象に拒否されると強制的に追い出されます。
※自身のイマジンとしての全力発揮も同様に制限されていることに何となく気づきました。


【浅倉威@仮面ライダー龍騎】
【時間軸】劇場版 死亡後
【状態】疲労(極大)、ダメージ(極大)、満足感、体の各所に火傷(治癒中)、仮面ライダーファムに変身中。
【装備】ライダーブレス(ヘラクス)@劇場版仮面ライダーカブト GOD SPEED LOVE、カードデッキ(ファム)@仮面ライダー龍騎、鉄パイプ@現実、ランスバックル@劇場版仮面ライダー剣 MISSING ACE、
【道具】支給品一式×3、サバイブ「烈火」@仮面ライダー龍騎、大ショッカー製の拡声器@現実
【思考・状況】
0:取りあえず城戸でイライラを晴らす。
1:あのガキ(ダグバ)は次会ったら殺す。
2:イライラを晴らすべく仮面ライダーと戦う。
3:特に黒い龍騎(リュウガ)は自分で倒す。
4:殴るか殴られるかしてないと落ち着かない、故に誰でも良いから戦いたい。
【備考】
※超自然発火能力を受けたことにより、デイパックが焼けた可能性があり、そのまま走ったので何かおとした可能性があります。 また、おとした場合には何をどこに落したのかは後続の書き手さんにお任せします。
※カードデッキ(王蛇)@仮面ライダー龍騎が破壊されました。また契約モンスターの3体も破壊されました。
※テラーメモリを美味しく食べた事により、テラー・ドーパントに変身出来るようになりました。またそれによる疲労はありません。
※ヘラクスゼクターに認められました。
※変身制限、及びモンスター召喚制限についてほぼ詳細に気づきました。
※ドーパント化した直後に睡眠したことによってさらにテラーの力を定着させ、強化しました(強化されたのはドーパント状態の能力ではなく、非ドーパント状態で働く周囲へのテラーの影響具合、治癒能力、身体能力です)。今後も強化が続くかどうか、また首輪による制限の具合は後続の書き手さんにお任せします。


【D-1病院組全体備考】
変身制限に関して、完全に把握しました。
第二回放送時点での生存者の詳細について、志村純一のもの以外把握しました。
参加している全ての世界についての大まかな情報を把握しました。

708 ◆.ji0E9MT9g:2018/03/03(土) 00:50:54 ID:CFQXrap2
以上で修正案終わりです。
具体的な変更としては真司と翔一の位置関係の交換、ということになるのでしょうか。
正直これでは変更前後で判断など出来ない、という意見も全うかと思うので、明日いっぱいまで意見がないようであればそのままwikiで修正しようと思います。

709二人で一人の/通りすがりの名無し:2018/03/03(土) 01:03:00 ID:0NEtwcBc
一日は早いよ

710 ◆.ji0E9MT9g:2018/03/03(土) 01:28:13 ID:CFQXrap2
>>709
本スレでも意見しましたが、9日までご意見を求める期間を設けたいと思います。
自分の我が儘でありながら期間を狭めることで皆様をいたずらに混乱させる行為と勘違いさせかねなかったことを改めて謝罪させていただきます。

711 ◆.ji0E9MT9g:2018/03/05(月) 00:05:05 ID:FQekfRmw
本スレで宣言した土日の期間中一切修正への反対案がありませんでしたので拙作『対峙』を修正いたします。
とはいえ今回のものは特例であるということは重々自覚しているつもりですので、今後はこのようなことのないよう一層注意をしようと思います。

712 ◆.ji0E9MT9g:2018/03/15(木) 11:39:58 ID:28ECsh0k
wiki上にて、拙作『time』四部作の誤字脱字の修正、また加筆を行いましたので報告いたします。
一応状態表には変更の生じないものではありますが、なにかご指摘などございましたらお願いいたします。

713 ◆cJ9Rh6ekv.:2018/03/21(水) 20:52:40 ID:uHoSC7fI
これより、予約分の仮投下を開始します

714仮投下 ◆cJ9Rh6ekv.:2018/03/21(水) 20:53:28 ID:uHoSC7fI



 ……放送の役目を終えた飛行船が、夜空に生じたセピア色の極光の中へと帰って行く。

 F-6エリアのとある民家――廃工場から程近いその一軒家で放送を聞いていた葦原涼は、その帰路を為す術なく見送るしかなかった。
 悲しみの果てに、悪夢から解き放たれて最期を迎えた鳴海亜樹子。彼女の遺体を、最後に交わした約束の半分だけでも果たそうと、この家の寝台に安置し終えたところで、第二回放送が始まったのだ。

 最初の放送は、涼自身は意識を喪っていて直接受け取ったわけではない。内容を伝えてくれたのは門矢たちで――そして瞳を閉じていた己の傍に居てくれたのは、亜樹子だった。
 例えその心に秘めたものが、殺意だったとしても――それが彼女の本当の望みでなかったことは、もう涼は知っていた。

「――悪いな。おまえが起きるまで、一緒には居てやれなさそうだ」

 いつまでだって俺がいる。だから安心して、眠って良いんだ――

 そうは言ったが、いつまでだって亜樹子の隣に居てやることは、今はできない。

 殺し合いはまだ終わっていない。その苛烈さが陰りを見せる様子すらないことを、先の放送は告げていた。

 ――――ヒビキが、死んだ。

 あのライダー大戦と呼ぶべき病院での大乱戦の最中、皆を逃がすための殿を務めてくれた涼の仲間が。
 彼らの生きた、その世界ごと。

 恩師にも、恋人にも、次々と見放され、孤独を深めて行った涼の手を取る新たな仲間となってくれたヒビキを。
 誤解からとはいえ、彼の仲間を殺めた涼を赦し、あまつさえ迷った時には鍛えてくれるとまで言ってくれた恩人を喪った――きっと、彼一人に押し付けたせいで。

 さらに言えば、彼らの世界を滅亡に導いた罪の四分の一は、涼自身の犯した物だ。
 世界の破滅、その引き金を引いた一人となってしまった途方もない罪悪感は、本来一人の身で背負いきれるような重さではなかった。

 ――だが、今は違う。

 乃木や矢車を喪っても、亜樹子を護り切れなかったのだとしても。今の涼にはまだ、仲間がいる。
 元の世界で、同じような力を持つ津上翔一。そして門矢士や橘朔也、フィリップや志村純一と言った、この戦いの中で新たに出会った仲間たちが。

 彼らが、同じ方向を見据えて戦ってくれる。そんな確信が、涼の心に折れることのない強さを与えていた。

 過ちなど、既に数え切れぬほど繰り返してきたこの身だ。
 それでも、そこから逃げさえしなければ――そんな過ちすらも含めて、ヒビキたちは涼を受け入れてくれた。

 ならば、今は膝を着いている場合ではない。
 罪に怯える弱い自分自身さえも破壊し、彼らの分もこの、仮面ライダーの力で人を護ることが己の為すべきことだと、涼は既に理解していたからだ。

 立ち止まることは許されない。特に――首領代行を名乗った女の背後に控えた異形のことを知る、この自分は。

「行ってくる――必ず迎えに来るからな、亜樹子」

 一時の別れを告げて、涼は部屋を後にした。
 ……この会場において最も長い時間を共に過ごした女は、涼の出立を無言のまま受け入れた。

715仮投下 ◆cJ9Rh6ekv.:2018/03/21(水) 20:54:02 ID:uHoSC7fI




「……もう向かっても良い頃だろう」

 亜樹子を残して家を出てすぐ、涼は北西を見据えて呟いた。
 もう、迷っている時間はない――とは思っていても、現実として与えられた情報や湧き出た感情をすぐに整理できる、というわけでもない。
 放送の情報を纏め、再び心に確かな火を灯すまで、暫しの時間が必要だった。

 おかげで、亜樹子に別れを告げて家を出た今は既に、日付が変わってから十分以上が経過していた。
 ギルスの力を取り戻すまで、残り五分程度。移動時間を考えれば、病院の方角へ歩みを進めても良いはずだ。

 この二時間で、大勢が死んだ。だが生き残った者もいる。
 戦える者が多くなれば、助けられる命も増えるはずだ――そんな考えで足を踏み出そうとした、その時に。

「おっ、ちょうど良いタイミングだったみたいだね」

 涼の前に、見知らぬ少年が現れた。

「――何者だ?」

 思わず、涼は問うていた。
 赤いシャツを金髪の少年の出で立ちそのものは、大きく奇特なわけではない。
 またガドルが放っていたような威圧感、金居の齎していた緊張感のようなものも、軽佻浮薄が服を着て歩いているような彼からは特に伺えない。

 だが――彼の姿には、明らかな違和感があった。

「それは最初の放送を聞いてくれてなかった君が悪いけど、特別大サービスで答えてあげるよ。ギルス」

 涼の、変身した後の名を一方的に知っているその少年には、なかったのだ。
 全ての参加者を等しく律する大ショッカーの権威の象徴――すなわち、首輪が。

「僕は第一回放送を担当した大ショッカー幹部のキング。名簿に載ってた奴とは別人だから、そこは誤解しないでよ?」
「――ッ、おまえが……っ!」

 誰何に答えた少年に向かって、思わず涼は吼えた。
 涼の聞き逃した、第一回放送の主。多くの脱落者を愚弄したと聞く邪悪。剣崎が封印したはずの、アンデッド――!

 全く想定していなかった、望外の遭遇。
 その事実に気づいた時、涼は無意識のうちに彼に駆け寄り、衝動のままキングへと殴りかかっていた。

「おっと」
「――ッ!?」

 だが、軽薄な表情に向けて打ち込んだはずの右の拳が覚えたのは、皮越しに肉と骨を叩くそれではなく、硬い金属の手応え。
 ――キングを護るように、頑健な金属製の楯が、何もないはずの宙に出現していたのだ。
 その姿を視認できたのは一瞬。予想外の抵抗に、拳を痛めた勢いすらも即座に跳ね返されて、涼は無様に地を転がった。

716仮投下 ◆cJ9Rh6ekv.:2018/03/21(水) 20:54:44 ID:uHoSC7fI

「あはは。バッカだなー、僕はキング。一番強いって意味のキング。君じゃ勝てるわけないでしょ?」

 痛みに呻きながら立ち上がろうとする涼を見て、キングはそんな嘲笑を降らして来た。
 ……悔しいが、一方で認めざるを得ない部分もあった。眼の前に大ショッカーの大幹部が現れたからと言って、感情的になり過ぎた。
 ギルスに変身できるようになるまでまだ数分かかる。カテゴリーキングに属するアンデッドだと聞くキングに生身で挑むのは無謀そのものであり、馬鹿と罵られても否定できない。

 そんな当たり前の前提すら忘れさせるほど、涼の中には大ショッカーへの激しい怒りが渦巻いていたのだろう。

「ふふ、いい顔してるね。君を選んでここに来た甲斐があったよ。死神博士たちを警戒させてくれたカッシスのおかげだね」
「……何?」
「細かいことは良いよ。要するに、僕もこの最ッ高に面白いデスゲームに飛び入り参加したってわけ。その最初の遊び相手が君なんだよ、ギルス」

 完全に見下した風に、キングは涼に告げる。

「君、折角僕の盛り上げた放送を聞いてなかっただけじゃなくてさ。ブレイドにも変身したでしょ? このゲームにも真面目に付き合わないまんま――気に食わないんだよね。だから面白くしに来たわけ」
「……やっぱりおまえら、一つだけでも世界を救うなんて殊勝な考えで動いているわけじゃなかったのか……っ!」

 立ち上がった涼に、キングは笑いながら答える。

「さあ? 何せ首領はすごーい神様だからね。バルバ以外、真意はだーれも知らないみたい」
「神様……だと?」
「そう。だけど、わざわざ僕を幹部に選んでるんだから……同じように、全部の世界をメチャクチャにしたいって思ってるのかもね!」

 そこまで吐くと同時、キングは姿を変えた。
 あのゴ・ガドル・バとギラファアンデッドを合わせたような、金色に鋭角的な意匠を凝らした大柄なカブトムシの怪人――コーカサスアンデッドに。
 そして涼の瞳に焼き付いた少年の姿の残滓が消えるより早く、コーカサスアンデッドは手にした大剣を一薙ぎした。

 咄嗟に屈んで死の一閃を回避した涼は、しかし遅れて理解した。
 先の刃が狙っていた的が、己の命ではなかったことを。

「――ッ、亜樹子っ!」

 破壊剣の一撃は、ただ刃先の長さに囚われず。伴って放たれた衝撃波が、描かれた弧の延長線上に疾っていった。
 それはつい先程まで、涼が身を置いていた家屋を両断し――支えを喪わせることで、自重によって倒壊させた。
 逃げ場のないその重さによる蹂躙に――きっと亜樹子の亡骸は、耐えきれない。

「あーあ。安心して眠らせてあげるって約束、守れなかったね?」

 まだペキパキと、柱や板や、あるいは――――ともかく、何かの割れるような音が響く中、明確に涼を玩弄するような声で、愉悦を隠しきれないと言った様子のコーカサスアンデッドが告げてきた。

「――ッ!!」

 外道の所業に堪え切れず、涼はもう一度飛びかかっていた。
 それは先程自戒したばかりの、激情に任せた行動。未だ制限に縛られた身では、その失敗から何かを変革する術など持ち合わせるはずもなく。
 構えられた楯を突き出された勢いのまま、涼は顔面を強打して弾き返された。

717仮投下 ◆cJ9Rh6ekv.:2018/03/21(水) 20:55:47 ID:uHoSC7fI

「ぐ……っ!」

 もんどり打って倒れながらも、鼻から流した血の分だけ冷静になった涼は瓦礫の山と化した一軒家に視線を向ける。

「亜樹子……、くっ!」
「おぉっと!」

 涼が起き上がろうとするのを見逃がさず、コーカサスアンデッドが手元で剣を旋回させれば、撹拌された大気が増大したような力の波が発生する。
 サイコキネシス――涼自身も何度か体験したような超能力の一種が、圧倒的な推進力と化して肉体を後方に運んだ。
 受け身も取れずに硬い路面に叩きつけられ、体の奥に蓄積された鈍い痛みを呼び覚ますような衝撃に目眩を覚える。それでも意識の手綱を離すわけにはいかないと、涼は何とか立ち上がる。

「ほーら、逃げろ逃げろ!」

 抵抗する術を持たず、後退するしかない涼を東へと進ませるように、コーカサスアンデッドは向かって来る。
 目的は当然、万が一にも門矢たちが救援に駆けつける可能性を潰すためだろう。
 隙を見て、斜めに突破しようとしても、射程の長い念動力が涼を仲間たちとは反対方向へと追い立て続ける。

「あっはっは。ダッサ!」

 何度も飛ばされ、痛みに動きが鈍ったところをコーカサスアンデッドの剣が襲う。あのガドルのそれにも匹敵する迫力の刃はしかし、先のような飛ぶ剣撃を放ちはしない故に、紙一重の回避に成功する。
 嬲られている――それを理解するのに、さしたる時間は要しなかった。

「本当に逃げるしかできないんだ?」
「――黙れ!」

 まだ、数十秒。ギルスへの変身が解禁されるまでは時間を要する。
 コーカサスアンデッドの挑発に、身を翻して走る途中で叫び返した涼だが、音の速さで迫る言葉からは逃れきれない。

「君は僕と違って弱いよね。だからメチャクチャにされちゃうし、メチャクチャにしちゃうんだよ」

 闇の中。表情の動かない異形の貌。それでもなお、ニヤニヤと意地汚く笑っているのが筒抜けな声音で、コーカサスアンデッドは続ける。
 安い挑発から逃れようと走るが、しかしそれが事実として、仲間との合流という目的から遠ざけられていることに思わず涼は歯軋りする。

「ファム、アポロガイスト、タブー……ゲームに反対するって言いながら、乗ってるプレイヤーばっかり助けてさ。なのに自分の世界だってロクに守れてない。単に下手くそなんだよね、君は。見てて気分悪いぐらい」

 大きな反応を見せない涼をさらに突くように、主催者側ならではの情報アドバンテージを以って、コーカサスアンデッドは言葉を並べる。

「ブレイバックルだってグロンギなんかに奪われて、それでダグバ――第零号って言った方がわかり易いかな? あいつにブレイドの力を使わせちゃってやんの」
「……なんだと!?」

 予想だにしなかった展開を告げられて、涼は思わず問い返した。
 最悪の未確認、第零号。人々を守る仮面ライダーの理念と対局に位置するような怪物の手に、剣崎が遺してくれたブレイバックルが……?

 思わず、足を運ぶ速度が緩まった。
 心に加わった衝撃のほどを目敏く見定め、コーカサスアンデッドはさらに残酷な真実を明かして来た。

「――それで一気に、三人も死んだよ。ヒビキの世界からも一人。君のアシストで半分も落ちちゃってるから、君はあの世界から恨まれるだろうなぁ」
「――ッ!」

718仮投下 ◆cJ9Rh6ekv.:2018/03/21(水) 20:56:40 ID:uHoSC7fI

 思わず、膝が折れそうになった。
 痛みきったこの心身を支えてくれる、仮面ライダーという絆。
 その信念に殉じた男の最期に対して、最悪の背信を働いてしまったのではないかという恐怖が、心に通したはずの芯を萎えさせた。
 加えて倍加した、響鬼の世界の滅亡に加担したという罪の重さが、涼の足を止めさせていた。

 その様子に満足したように、悠然と歩んできたコーカサスアンデッドが、さらなる嘲笑を投げかけてくる。

「なのに、自分の世界の小沢澄子だって死なせちゃって、何がしたいんだかわかんないよね。下手くそ」

 ――何がしたいのか?

 ほんのつい最近まで、涼はずっと迷っていた。人の身で抗うにはあまりにも強大過ぎる、運命の奔流に押されるがまま。
 そんな荒海の中で漂流するような人生に与えられた、目指すべき灯。それは……

「俺は……人を守るために……」
「ブレイドの――剣崎一真の真似かな? それが口先だけの、役立たずの正義の味方ってことだよ」

 涼が絞り出した仮面ライダーの正義を一笑に付して、コーカサスアンデッドは手にした大盾で涼を痛烈に殴打した。
 路地裏に叩き込まれた身体が、空の瓶を満載したコンテナケースに受け止められる。
 当然、固定されてもいない、ただ積み上げられただけの空箱は上級アンデッドの膂力で生じた慣性を支えきれず、涼はその山を押し退けて反対の街路にまで転がってしまう。

 内側を切ってしまった口の中に溜まった血を吐き出している間に、その狭い道を器用に渡ったコーカサスアンデッドが、散乱したガラス片を苦もなく踏み潰しながら迫ってきた。

「そろそろ鬼ごっこも終わりかな?」

 周囲の様子を見渡し、勝利を確信しきった様子で、コーカサスアンデッドが問いかけてきた。
 その凶悪な貌を険しく睨み返しながら、涼は初めてその言葉に頷いた。

「……ああ。おまえが調子に乗るのも終わりだっ!」

 気力を振り絞り立ち上がった涼は、胸の前で両腕を交差させた。

「――変身!!」

 ……苦渋の逃走劇を繰り広げていた間に、涼に課された残り数分の制限時間は消化されていた。
 故に、仮面ライダーの一員たる力――緑の異形たるギルスへと、自らの存在を入れ替えるようにして変身を遂げることが可能となっていたのだ。

「ハァァァ……っ!」

 変身してすぐ。気合を入れる声とともに、生々しい音を立ててギルスの両腕から金色の爪が出現する。

「わぁ、痛そう」
「ウォアァッ!」

 おちょくるように呟くコーカサスアンデッドに取り合わず、ギルスはその爪を携えて駆け出した。

 急迫するギルスに対し、コーカサスアンデッドは楯を前面に構える。
 生身の時に何度も跳ね返された強固な楯。今の状態でも、ただ殴って壊すことは容易ではないだろうことはわかっている。
 だが、ギルスとなったことで格段に向上した腕力で、その防御を崩し、こじ開けることは可能なはず――!

719仮投下 ◆cJ9Rh6ekv.:2018/03/21(水) 20:59:22 ID:uHoSC7fI

 くだらない悪意のままに亜樹子の遺体を辱め、剣崎を愚弄し、彼らの護ろうとした世界をメチャクチャにしたいとほざく怪人をまず一発、ぶん殴る。

 その想いを原動力に、ギルスはさらに力強く加速して――そして、見誤った。

 コーカサスアンデッドが楯を構えたのは防御のためではなく、攻撃のためであったことを。

「何――っ!?」

 ギルスが右の裏拳で払い除けようとした寸前、コーカサスアンデッドはソリッドシールドを自ら後ろに引き下げて――その影に予兆を隠していたオールオーバーの一撃、その全容を明らかとした。

 間合いを見誤ったギルスクロウは、振り下ろされる刃を迎撃する軌道への修正が間に合わず。
 不意を衝く形で叩き落とされた破壊剣は、その剣先をギルスの右上腕に食い込ませ、甲殻ごと鮮やかに両断してみせた。

 接触により、互いに屈折しながらの交錯。その疾走を停滞させる、息の詰まる灼熱。
 ぼたぼたと、己の命の一部が零れ、人造の大地に吸われる湿った音が響く。

 ――そして遂に、ギルス=葦原涼の膝が地に着いた。

「ぐ……っ、ガ、アァアア……ァッ!!」

 右腕を喪った激痛に耐えきれず、その場に倒れ込んだギルスは咆哮した。

「――だから言っただろ、ギルス? 君じゃ僕には勝てないってさ」

 その背中越しに、コーカサスアンデッドの軽薄な声が聞こえてきた。

 幾度となく激しい怒りを想起させて来たその声――だが最初の攻防で、片腕を奪われたとあっては否定できない言葉でもあった。

 こいつは強い。パワーも技術も、涼の変身したギルスを凌いで余りある。単純に見繕って、その実力は金居の変じたギラファアンデッドと同等クラスだ。
 本来は、もっと慎重に戦うべき相手だった。あるいは唯一対抗できるだろうスピードを活かして撹乱すれば、勝機も探ることができたかもしれない。

 だがここまでの言動で、変身できない涼の冷静さを奪わせ、反撃のチャンスを前に隙を生じさせてそれを潰した――あるいは全て、そのための立ち回りだったのか。

 ともかく結果として、ただの一撃で戦力を激減させられてしまった。大量出血として体力まで喪われては、アドバンテージの機動力すら低下を余儀なくされる。
 奴の言う通り――今のギルスでは、コーカサスアンデッドには勝てない。その事実を悟らざるを得なかった。

(……っ、まだだ!)

 だが、諦めるわけにはいかない。
 ここで諦めて死ねば、葦原涼はただ大ショッカーに都合の良いピエロでしかない。

 命ある限り戦う――仮面ライダーとして。
 この邪悪な怪人を討ち、大ショッカーの打倒に貢献してみせる。
 剣崎は、ヒビキは、散っていた仲間たちは、きっとそうしたはずだから。

 気力を振り絞り、ギルスは状況を再認する。
 しかし激痛に負けないよう、いくら心を強く持とうと、彼我の戦力差が覆るわけではない。再度感情に任せて飛びかかれば、今度こそ致命の一撃を受けるだろう。

720仮投下 ◆cJ9Rh6ekv.:2018/03/21(水) 21:00:04 ID:uHoSC7fI

 一縷の望みは――ヤツの方が先に変身しているということ。
 キングがコーカサスアンデッドの姿に変わってから、既に数分が経っている。残り時間を持ち堪えさえすれば――

 見出した希望に賭けて立ち上がるギルスに対し、コーカサスアンデッドは肩を竦めてみせた。

「逃げたって無駄だよ。僕は君らと違って首輪をしてないだろ? だから力を使うことに制限はないんだ」

 そしてギルスの思考を事前に予測していたかのように、唯一の活路を詰んできた。

「一応、この会場で負けたらギラファみたいに封印されちゃうみたいだけど――僕は一番強いからね。関係ないってこと」

 絶望に浸されていく心地で、呆然と振り返るギルスに対し。指先で破壊剣を弄びながら、コーカサスアンデッドは問うてくる。

「これが僕のゲームメイクさ。君と違って良いプレイングだろ?」

 無力な生身を甚振り、変身すれば冷静さを欠いた隙を見逃さず圧倒的な実力差で叩き伏せ、ダメ押しに変身制限が存在しないことを最後の最後に告げてくる。
 敵対者の心を折るための、見事な展開と言うべき事態の運び方だった。

 仮に純粋な戦闘力で及ばぬ相手がいるとしても、確かにこいつなら、それさえ覆すような戦運びをしてのけるだろう。
 そのために必要な情報も、既に主催陣営として収集し終えているのだから。
 紛れもない強者――だが、あまりにも心が醜悪な。

(こんな……ヤツに……)

 こんなところで負けて、独りで終わってしまうのか。
 受け入れがたい諦観が、それでもするりと心の隙間から忍び込んでくるのをギルスは感じた。
 その揺らぎを狙ったように、未だ止まらない出血がギルスの意識を引っ張って、深い水の底まで沈んでいくような感覚を齎し。
 葦原涼の意識は変身したまま、一瞬、闇の中に飲み込まれ――

「寝るなよ」

 消えかけた意識は、腹腔に響いた重い衝撃に覚醒させられた。
 コーカサスアンデッドから痛烈に蹴り上げられて、軽くなったギルスの身体は持ち堪えることもできず、一軒の住宅の壁に打ちつけられ、砕きながらも落下する。

 ――何という無様。

「クソ……っ、クソォッ!」

 堪らず、ギルスは絶叫した。だが片腕を喪ったことに未だ慣れない身では、ただ立ち上がることにすら手間がかかる。
 上手く動けなかったその時、不意にギルスの視覚は、闇の中に一つの物言わぬ影を見つけ出した。

721仮投下 ◆cJ9Rh6ekv.:2018/03/21(水) 21:00:56 ID:uHoSC7fI

「……木野?」

 そこに転がっていたのは、あかつき号の一員にして新たなアギトに覚醒した人物――木野薫の撲殺死体だった。
 顔は手酷く殴られて変形し、髪型も乱れているが、あの体格と服装、残された輪郭や顔のパーツから言ってまず間違いない。

 この殺し合いに巻き込まれる以前から、一度はその手で救った涼自身や真島浩二を攻撃してくるという変貌を遂げた知人との想定外の再会に、ギルスは一瞬、時を忘れて硬直した。

「あー、そういえばこの辺がアナザーアギトの死んだところだったっけ」

 相変わらず、ゆったりとした足取りで追跡してくるコーカサスアンデッドが、ギルスの視線の先に気づいたように呟いた。
 涼をギルスと呼んでいたのを見るに、アナザーアギトとは木野のことを言っているようだ。単なるアギトという呼称でないのは、先にアギトに目覚めていた津上との区別を付ける意味があるのだろうか。
 とりとめのない思考の中でそんなことを考えていると、ギルスの聴覚は汚泥の煮立つような笑声を拾った。

「そいつも傑作だったよ。色々勘違いした挙げ句、支給品のメモリにあっさり呑まれちゃってさ。反動で動けないところを親父狩りされて死んでんの」
「――笑うな!」

 思わず、ギルスは声を張り上げ、怪人の言葉を遮っていた。
 残り少ない体力を、必要以上に消費してしまった呼吸を落ち着かせながら、それでもギルスは言葉を続ける。

「……こいつを笑うな。こいつは、木野は……本心はどうあれ、俺の心に最初に火を点けた、恩人だ」

 ――俺の力で、人を守ってみるのも悪くない。

 呪いとしか思えなかったこの異形の力を、涼が明確に前を向いて捉えることができたきっかけは、確かに木野薫との出会いに在った。
 そんな恩人を、幾ら強大な力を誇ろうと、見下げ果てた幼稚な心根の怪物に嗤われるというのは、ギルス――涼にとって耐え難いことであったのだ。

「いや、無理だって。君らの世界、丸ごと空回ってるピエロだし。僕じゃなくても笑っちゃうよ」

 そんなギルスの怒りもどこ吹く風と嘲笑い、コーカサスアンデッドが手の中で得物を弄ぶ。

「その、君の心の火? って奴も、まさに風前の灯火だもんね」
「そうでもない……おまえを倒せば、まだ俺は戦える。木野に貰ったこの火は消えない、消させないっ!」

 折れかけた意志が、見出した使命によって再び熱を持ち、打ち直される。
 声を発することに、もう苦痛を覚えなかった。あれだけ震えていた足がしゃんと路面を噛んで、ギルスの身体を立ち上がらせる。

 そうして隻腕のまま闘志を見せるギルスを、コーカサスアンデッドは鼻で笑った。

「バッカだなぁ、こんなにやられてまだ僕の強さがわからないの?」
「確かに俺はおまえより弱いかもしれない……だが、そんなことで諦める弱い俺を、破壊してくれた奴がいる」

 脳裏に浮かぶのは、不敵に笑う青年の顔。
 この地で新たに得た、仲間の一人。

 そうだ――涼はもう、独りではない。
 なのにあっさりと絶望に屈していては、ホッパーゼクターにも、あの世の矢車にも愛想を尽かされてしまうだろう。
 勝手に諦めて、仲間に迷惑を掛けられない――世界を滅ぼしたという罪を知らされた時にも支えてくれた、その気づきの再認が、死に瀕したはずの肉体にもう一度、力を漲らせようとしていた。

「だから木野や、ヒビキや、剣崎……もう戦えないあいつらの代わりに、俺が戦わなくちゃいけないんだっ!」

722仮投下 ◆cJ9Rh6ekv.:2018/03/21(水) 21:01:37 ID:uHoSC7fI

「そういうのはもういーから……あーあ、なんか萎えちゃったなぁ。もう終わりにしよっか」
「終わらせるものかッ!」

 不屈の意志を声にして、ギルスは再び駆け出した。
 限りなく勝ち目の薄い戦いに、それでも、生存の可能性を否定する怪物を葬るために。
 これ以上の犠牲者を出さぬよう――仲間たちや、彼らの大切に想う人々の未来を護るために。

 強く、強く拳を握った、その瞬間――




 ――背にしていたはずの木野薫の亡骸から、闇を切り裂く光が齎された。







 ――とある男の話をしよう。

 かつて、その男は、一つの事故で弟を喪うこととなった。
 弟を助けることができなかったという後悔は、他者を救うという行為を代償として求め――やがては、救いを求める人間は全て自らの手で救わねばならないという妄執に取り憑かれるようになった。

 転じて、己以外に他者を救う存在は不要であるという危険思想にまで達してしまった男は、人々を襲う怪物だけでなく、人間を守護する同族にまで牙を剥いた。

 人を救う力を持つ存在――アギトであることに、男は呑み込まれた。

 だが、同じく事故で喪われた男の右腕――それが紡ぐはずだった可能性を再起させた、移植された弟の腕が、いつもその邪魔をした。

 他の善良なアギトへの攻撃を諌め続ける弟の右腕に、彼が戸惑いを覚えていた時――謎めいた人物が、見透かしたように現れて、こう言った。

「おまえは、何故アギトが存在するかを知らない。
 アギトの種は、人間と言う種の中に遥か古代に置いて、すでに蒔かれていたのだ。
 たった一つの目的のために……人間の可能性を否定する者と戦うためにだ!

 ――アギトの力を正当に使った時、初めておまえは、自分を救うことができる。おまえはまだ、アギトの力の使い方を知らない!」

 知った風な口を効くその人物の言葉を、男はすぐには受け入れなかった。

 だが、それは確かに彼の中に引っかかり続け――この世界存亡を懸けた生存戦においても、自らが力に呑まれるのではないか、という不安として、死の寸前まで胸にあり続けた。

 アギトの力を行使する暇すら与えられなかった死の際の、男の心中、その全容は決して知れない。

 ただ、それでも彼は、自身を救うことを――アギトの力を正当に使うことをきっと、求めていたはずであり。

 その意志はきっと、この殺し合いを仕向けた存在と対局に位置した、アギトの力の根源が目指した景色と、合致したものであった。



 だから、遠き神話の時代から、現代にまで続いたように――男の意志を継ぐ者のための奇跡が今、光となって輝いていた。

723仮投下 ◆cJ9Rh6ekv.:2018/03/21(水) 21:02:28 ID:uHoSC7fI





 キング――コーカサスアンデッドが会場に降りてから、想定を裏切られたのはそれが二度目だった。

 そのうちの一度目は、死亡と同時に首輪が消失したことで、正しく制限が働くか不明である乃木怜治の復活。そのイレギュラーを警戒し、対処も兼ねてキングの参戦を認めた死神博士の読みが外れたこと――強敵であるカッシスワームとの対決も睨んで準備をしてきたというのに、ギルスの制限解除に至ってもその影も形も見えなかったこと。言うなれば杞憂でしかなかったことだ。

 だが、この――時間もわからなくなるほどの眩い白光は、本当の意味で、予想だにしていなかった事態の発生を意味していた。

「これは――っ!?」

 次の瞬間、強すぎる輝きから視界を庇うように構えていた左腕に、強い衝撃が走った。
 正確に言えば、その手に携えていたソリッドシールドに。

 何かが二発、ほぼ同時に着弾した。非常に強い衝撃を与えたそれは、楯に食い込んだまま離れず――あろうことか、コーカサスアンデッドの豪腕さえも捩じ伏せる勢いで、引っ張って来る。

「――ウァオォオオオオッ!!」

 野獣の如き雄叫びが、コーカサスアンデッドの聴覚を震わせた直後。三度目となる強い衝撃、そして何かの砕ける致命的な手応えが、左腕を通して伝わってきた。

「……何が!?」

 砕け散ったもの――それは鉄壁を誇った、コーカサスアンデッドの持つ盾、ソリッドシールドだった。
 それを為した触手、のようなものを伸ばした濃緑の影は、喪われていた右腕――さらにはその肩や肘から禍々しい刃を今まさに生やしながら、紅い双眸でコーカサスアンデッドを睨めつけて来る。

「その姿……まさか、進化したってこと?」

 まさに今、目の前で“変身”した敵手に対して初めて、コーカサスアンデッドは動揺の声を漏らした。

「……らしいな。おまえの笑った、木野が俺に継がせてくれた力だ!」

 答えた異形はギルス――葦原涼の声で、コーカサスアンデッドに力強く言い返した。







 彼の到達したその変身は、アギトの力を受け継いだことでギルスの限界を超えた姿――エクシードギルス。

 かつてあかつき号事件で、死亡した白き青年から沢木哲也にその力が受け継がれたようにして、木野薫の遺体からアギトの力が涼に譲渡された結果起こった奇跡。
 少し未来の時間軸において涼が受け取った真島浩二のそれとは違い、完全覚醒を遂げていたアギトの力は、今まさに必要とされるこの時に、彼の限界を越えさせた。

 それはまさに、彼らの意志を継ぐと誓った涼の背中を、死者たちが押してくれているようでもあり。
 そして新たに得た、まだこの手に残っている絆を護る力を得た事実、そのものが彼の心の火を強く、強く燃やしてくれていた。

 溢れる想いを込め、再生した右の拳を強く握りながら――幾度となく、自身の行手を阻んだ楯を遂に破壊したエクシードギルスは、その勢いのままコーカサスアンデッドへと宣言する。

「行くぞ、アンデッド……俺がおまえを封印する!」

 それが新生した仮面ライダー――儚き人の可能性を護らんとする獣と、永遠に囚われし眷属の争いの、新たな始まりを告げる狼煙となった。

724仮投下 ◆cJ9Rh6ekv.:2018/03/21(水) 21:03:35 ID:uHoSC7fI

【二日目 深夜】
【F-7 市街地】


【葦原涼@仮面ライダーアギト】
【時間軸】本編36話終了後
【状態】疲労(大)、亜樹子の死への悲しみ、仲間を得た喜び、響鬼の世界への罪悪感、仮面ライダーエクシードギルスに変身中、仮面ライダーキックホッパーに1時間10分変身不可
【装備】ゼクトバックル+ホッパーゼクター@仮面ライダーカブト、パーフェクトゼクター@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式
【思考・状況】
基本行動方針:殺し合いに乗ってる奴らはブッ潰す!
0:剣崎の意志を継いでみんなの為に戦う。
1:キングを倒す。
2:人を護る。
3:門矢を信じる。
4:第零号から絶対にブレイバックルを取り返す。
5:良太郎達と再会したら、本当に殺し合いに乗っているのか問う。
6:大ショッカーはやはり信用できない。だが首領は神で、アンノウンとも繋がっている……?
【備考】
※変身制限について、大まかに知りました。
※聞き逃していた放送の内容について知りました。
※自分がザンキの死を招いたことに気づきました。
※ダグバの戦力について、ヒビキが体験した限りのことを知りました。
※支給品のラジカセ@現実とジミー中田のCD@仮面ライダーWはタブーの攻撃の余波で破壊されました。
※ホッパーゼクター(キックホッパー)に認められました。
※奪われたブレイバックルがダグバの手にあること、そのせいで何人もの参加者が傷つき、殺められたことを知りました。
※木野薫の遺体からアギトの力を受け継ぎ、エクシードギルスに覚醒しました。



【キング@仮面ライダー剣】
【時間軸】本編34話終了より後
【状態】健康、コーカサスアンデッドに変身中
【装備】破壊剣オールオーバー@仮面ライダー剣
【道具】???
【思考・状況】
基本行動方針:面白おかしくバトルロワイアルを楽しみ、世界を壊す。
0:進化したギルスに対処する。
1:このデスゲームを楽しんだ末、全ての世界をメチャクチャにする。
2:カッシスワームの復活を警戒。
【備考】
※参加者ではないため、首輪はしていません。ただし会場内で死亡に等しいダメージを受ければ、復活できずそのまま封印されるようです。
※参加者ではないため、変身制限が架されていません。
※また、支給品やそれに当たる戦力を持ち込んでいるかも現時点では不明です。詳細は後続の書き手さんにお任せします。
※カッシスワームが復活した場合に備え、彼との対決も想定していたようですが、詳細は後続の書き手さんにお任せします。
※ソリッドシールドが破壊されました。再生できるかは後続の書き手さんにお任せします。

725 ◆cJ9Rh6ekv.:2018/03/21(水) 21:10:44 ID:uHoSC7fI
以上で仮投下を終了します。

本SSにおいて仮投下による議論が必要と思った点は、

・放送でフラグは建ったものの、主催陣営のキングが実際に会場入りする是非

・死亡後の木野薫の体からアギトの力が譲渡され、エクシードギルスに変身可能になる展開の是非

・アットウィキに収録された木野薫の死亡話である『動き出す闇』本文中では、彼の遺体がある場所は【A-7 市街地】となっているが、同じ場所にいる浅倉の現在位置から判断するに誤記であって実際の所在としてはF-7が適切と考え、その前提でリレーしたこと

以上の三点となります。
皆さまのご意見を頂ければ幸いです。よろしくお願いいたします。

726 ◆LuuKRM2PEg:2018/03/21(水) 22:20:50 ID:iUpgov8A
仮投下お疲れ様です!
感想は本投下の後にさせて頂きますが、氏が仰られたいずれの点は特に問題はなく、またエクシードギルスに変身する理屈もきちんと立てられていると判断します。
そのため、是非とも本投下をして通して欲しいというのが私の意見ですね。

727 ◆.ji0E9MT9g:2018/03/21(水) 22:35:08 ID:jkPPQzQg
私も、キングの参戦、エクシードギルスへの変身などの展開に無理はないと思いますので本投下しても構わないと思います。

728二人で一人の/通りすがりの名無し:2018/03/21(水) 22:56:11 ID:TEHQwzPI
仮投下乙。
よく考えればこのロワ、キングみたいな憎まれ役っていなかったですね。
敵が煽ってくるクソガキな分だけライダーの涼が引き立ち、涼らしいカッコ良い回だと思います。
亜樹子の埋葬や罪の意識にも哀愁漂うところがやっぱり涼っぽいですよね。
変身制限が解けるまでの時間を逃げ回る展開も、そこから満を持してギルスになるも力不足感が否めない中で自然なエクシード化の流れも、非常に緊迫感がありました。
主催陣営も多くマーダーも比率上少ない中なので、これで構わないと思いますし、普通に本投下でよろしいかと。
(木野の遺体はワープしすぎなので、明らかにミスでしょう。)

729 ◆.ji0E9MT9g:2018/03/22(木) 01:42:21 ID:Fc8axzrw
大事なことを言い忘れておりました、仮投下乙です。
そして、先ほどは気付かなかったのですが、一つだけ指摘点を見つけましたので、遅ればせながらご確認お願いいたします。
キングはこの場では一定ダメージによって封印される、という一文ですが、拙作『time――trick』におきましてアンデッドは首輪に封印の機能が備わっているという描写がありますので、出来ればキングもそれにならい封印はカードがなければ出来ない、という形に修正いただいてもよろしいでしょうか。

個人的にはブレイド勢ライダーは新世代まで含め7人もおり、必要以上に封印が出来ないパートが続くことはないと考えられますし、原作に準拠すれば、ロイストやあるいは暗黒掌波動などのエネルギー技で消滅させるなどの展開も考えられます。
なので、後続の書き手さんや展開の為の制限であった、ということであれば、その描写に関するパートを削っていただけるとありがたいです。
もしそうでなく何らかの意図があった描写であった、ないしは自身の描写不足であったということであれば、無礼を働いたことをお先に謝罪させていただきます。

730 ◆cJ9Rh6ekv.:2018/03/22(木) 20:29:16 ID:0OzQn/Xc
皆さま、ご意見くださりまことにありがとうございます。

>>729でご指摘ありました、キングの制限についてはすいません、完全に私の落ち度です……
首輪にアンデッド封印機能があることは確かに目にしていたのに、失念して勝手な制限を考えてしまっておりました。まことに申し訳ございません。

氏のおっしゃるように、「ラウズカード等の手段がなければコーカサスアンデッドを封印できない」という形で修正したいと思います。

ただ、まだ実際に形になっていないお話なのであまり生産的ではないかもしれませんが、原作では封印可能な正規のアンデッド(ケルベロス含む)はトライアルシリーズと異なり、ロイストの直撃でも不死性を突破されることはありませんでしたので、単に強烈なエネルギー攻撃ならアンデッドも滅ぼせる、という扱いは原作との乖離を感じる、という考えをこの場を借りて述べさせて頂きます。
もちろん14やバニティと融合した両ジョーカーや、同じくアンデッドが不死として認識されているリマジ世界でアンデッドを爆殺した世界の破壊者などの例はあるので、もし封印ではなく消滅させる、という展開の場合はそれらに類する何らかの理由付けがある方が望ましいと思います。ご一考頂ければ幸いです。

731 ◆.ji0E9MT9g:2018/03/22(木) 23:20:42 ID:Fc8axzrw
ご意見、そして自分の要求を受け入れて下さったこと、感謝いたします。
こちらこそ、ケルベロスやティターンといった存在を忘れて安易に消滅させれば〜などと言ってしまい申し訳ありませんでした。
上でも既に述べていますがそれ以外の点に気になる箇所はないと思います。改めて仮投下お疲れ様でした。

732 ◆cJ9Rh6ekv.:2018/03/23(金) 22:05:48 ID:s0Sn9KxY
>>731
ご返答ありがとうございます。
それでは該当箇所を修正したものを、これより本スレに投下いたします。

733 ◆.ji0E9MT9g:2018/03/25(日) 16:38:59 ID:c8Zo5mic
こんにちは、この度は拙作『悲しみの果てに待つものは何か』におきまして涼の状態表にゼクトマイザーを表記し忘れておりましたのでそれをwiki上で修正したことをご報告いたします。
次のSSまで投下された後だと言うのにこのようなミスを犯してしまい本当に申し訳ありませんでした。
今後はこのようなことのないように一層の注意を払っていきたいと思います。

734 ◆cJ9Rh6ekv.:2018/03/25(日) 23:03:25 ID:boAq6azs
>>733
修正お疲れ様です。
ご報告ありがとうございます。拙作もそれに合わせて収録内容の修正を行ったことをお知らせします。
(流れ的に結局即破壊される形になってしまいましたが、ご了承くださいますと幸いです)

735 ◆.ji0E9MT9g:2018/05/25(金) 11:57:25 ID:dkkggano
えー、一応今回のSSが書き終わったのですが、色々と相談したい点がありますので仮投下を挟みたいと思います。

736(仮投下) ◆.ji0E9MT9g:2018/05/25(金) 11:58:21 ID:dkkggano

F-7エリアに存在する数多の民家。
そのうちの一つ、先のキングとの戦いでの被害のないうちの一つに、二人の男がいた。
家の内装などに別段興味も持たず一直線に、しかし警戒を怠らずリビングのテーブルまで足を進めるその様は、この家にとっては侵入者に過ぎないというのに、あまりに堂々としていた。

それもそうだろう、男の内の片割れ、葦原涼は自宅の内装にすら関心を持たない様々な意味で“飾らない”男だったし、もう一人の相川始にとっても、この殺し合いの場に設けられた生活を経ない民家など、気に留める必要もなかったのだから。
やがて難なくリビングに辿り着いた彼らは、そのまま4人掛けのテーブルに重く腰掛けた。
座ってみて初めて、両者ともに病院での戦いを終えてから殆ど休息を取れていなかったことに気付く。

故に始はここが再現されただけの仮初めの住居とはいえ、民家である以上最低限の応急処置は可能だろうと目線を走らせる。

「――門矢の話……だったか」

しかし瞬間、今までこうして家に着くまで一切の声を発していなかった涼が、唐突に始を呼び止めていた。
その声に思わず視線を戻した彼は、改めて椅子に腰掛ける。

「傷の治療はいいのか、それなりに怪我をしてるようだが」
「俺のことはいい。門矢のことを話さないと剣崎のことについても話す気はないんだろう?なら話すのは早いほうがいいかと思ってな」
「そうか……」

何気ない会話ではあったが、たったそれだけのやりとりで、始は口数の少ないこの目の前の男が、剣崎という自身の友に抱いている仮面ライダーとしての信頼を感じた。
自信の仲間であるディケイドを売るということが出来るだけの器用な男にも見えないし、彼なりに自分にディケイドの情報を渡すということはそこまで問題ではないのだろう。
そしてその情報を渡す一方で得られると信じている剣崎と自分の関係に対し、この男が並々ならぬ期待を持っていることも、今の始には理解出来た。

(お前はやはり、凄い男だな、剣崎……)

心中で、何度目になるか分からない亡き友への言葉をかける。
死してなお他の仮面ライダーに多大な影響を残し、今こうして目の前に現れたこの男に至っては、剣崎とは直接の面識はないらしいというのにここまで彼に信用を寄せているというのが、始には何となくくすぐったかった。
そうして今はもう相容れない存在となったとはいえ、かつて自身が友と認めた男が集めた人望を再び理解した始は、一つ息を吐いた。

「――あぁ、そうだな。この場では時間も惜しい。
話してもらおうか、ディケイドについて」
「あぁ、門矢と俺が出会ったのはーー」

それから、涼は話し始めた。
第一回放送の後、助けたはずの女に殺されかけ、何もかもを投げ捨て逃げ出した自分を追いかけてきた男、それがディケイド……門矢士だったということ。
そしてそこで本来の変身能力に制限がかかっていた自分に渡された力、それがブレイドだったということ。

士は変身し戦いを仕掛けてきたが、それは言葉とは裏腹に自分を立ち直らせる荒治療にすぎなかったことを理解したこと。
そしてーー。

「『愚かでもおまえは人間だ。自分で自分の道を決める人間だ。愚かだから、転んで怪我をしてみないとわからないこともある。時には道に迷い、間違えたとしても……それでも、自分が選んだ道を歩むことができる、人間だ』。
……門矢は、俺にそう言った」

その戦いの中で士が自身に投げかけた言葉を、一語一句違わず口にした。
決して短くはない言葉をそっくりそのままこうして口に出せたのは、彼の中で今の言葉は何度も反芻されたものだからなのだろう。
一言一言噛みしめるように口にした彼はそのまま自身の掌を見て薄く笑った。

「――この力を手にしてから俺は化け物としか呼ばれなかった。
あの姿を見て俺を人間だなんて呼ぶ奴は……いなかった。俺だって、あんな風に自分の身体が変わってからの自分が前までの自分と同じなんて、これっぽっちも信じてなかった。
……でもあいつは、そんなことで悩む俺のことを簡単に破壊していったんだ。
自分に出来るのは、見つけているはずの道を歩めないと悩む、そんなちっぽけな俺を破壊することだけだってな」

737(仮投下) ◆.ji0E9MT9g:2018/05/25(金) 11:59:04 ID:dkkggano

そこまで言い切って再度真っ直ぐに始の目を見据えた涼の瞳は、澄んでいた。
嘘を一度もついたことがないと言われても納得してしまいそうなほど愚直ですらあるその目を見て、始は理解する。
やはりこの男は、ディケイドの情報を売ろうなどとは少しも思っていない。

或いは病院を襲った自分たちにもディケイドの本当の姿を知らせることで考えを改めさせようとしているかのようですらあった。
始としても、アポロガイストの話自体半信半疑であった上、バトルファイトにおけるジョーカー……自分の役割にも似たそれを任せられているというディケイドを完全な敵として切り捨てるのに些か抵抗感があったのは事実。
その為どこかでディケイドに人間性や彼を信じる仲間の存在を認められることを望んでいたのかもしれなかった。

(とは言え、これだけでディケイドを完全に信用するわけにはいかないがな……)

しかし、今涼から得られた情報だけでは、ディケイドが存在するだけで世界を滅亡に導く悪魔であるという情報に対する反証にはなり得ない。
故にまだディケイドに対する警戒を解くべきではーー。

『――始!』

不意に、友の声が聞こえた。
それは、世界を滅亡させるかもしれない自分を信じ友として受け入れてくれた剣崎に対して自分が抱いている後ろめたさの感情なのだろうか。
詳細こそ違うとは言え自分と似た存在であるディケイドを、お前が破壊するのは間違っているのではないかという、自分自身への拭いきれない疑問なのか。

(例えそうだとしても……俺はもう、お前と同じ道を歩むことは出来ない)

剣崎が今も生きていたとしたら迷うことなくディケイドを信じ友として守ろうとするだろうことは、涼から聞いた彼の最期から容易に想像出来る。
そして彼が死んだ今、もし自分に望むことがあるとするなら、それは彼の遺志を継いでディケイドを信じ戦うことなのだろうということも、もう分かっているつもりだ。
だが、それは出来ない。

今の自分にとって最も重要なことは、栗原親子の住むあの世界を守ること。
それが、大ショッカー打倒もディケイドと共に戦うことも……、剣崎が望むだろう全てを犠牲にしてでも、最優先でなさなければならない自分の使命だった。

「――大丈夫か?」

そんな時、ふと涼が心配したような表情でこちらの顔を覗き込んでいた。
他人を気遣うのがそう上手くないだろうはずのこの男にさえ心配されてしまうほど、今の自分は上の空だったというのか。
殺し合いという殺伐とした状況で見せてしまった思わぬ隙を自覚して、始は思わず歯がみした。

「あぁ、問題ない」
「そうか、俺が知っている門矢についての話はこれ位だ」
「……一つ、聞きたいことがある。
――お前は何故、ディケイドが自分の世界を滅亡に導くかもしれないと分かった上で、奴を信じることが出来る?
自分の生まれた世界に執着がないのか?」

それは始にとって、この場で聞かなくてはならない質問だった。
勿論、ディケイドに少なからず恩を感じているというのも理由の一つではあるだろう。
だがそれだけで、果たして生来の世界に対する執着よりも彼を信じるに足る理由としては不十分だと、始は感じたのだ。

「勿論俺だって、自分が生まれた世界が滅んでいいなんて思ってるわけじゃない。
元の世界に戻って、やらなきゃいけないこともあるしな」

言って涼はその右手を見つめる。
だがすぐにそれをやめ、もう一度始を見やった。

「だがそれ以上に……俺は門矢を信じたい。もしもあいつが本当に悪魔だとしても……俺は、それがどうしようもない事実だと分かるまで、あいつと共に戦いたい。
仲間を信じるか信じないか、考えるまでもないそんな小さいことで悩む俺を破壊してくれたのは、他でもないあいつだからな」

738(仮投下) ◆.ji0E9MT9g:2018/05/25(金) 11:59:42 ID:dkkggano

涼の言葉は、どこまでも真っ直ぐだった。
つまりは、ディケイドが世界の破壊者かどうかなど、この男にとってはどうでもいいのだ。
どこか覚悟を決めたように見えるその言葉に反して、彼の表情からはディケイド……門矢士が破壊者であったとして彼を見捨てようとする思いは微塵も見て取れなかったのだから。

(この男がブレイドに変身した……か。なるほどディケイド、どうやら適当な相手にブレイドを渡したわけじゃないらしいな)

そして同時、始はこの男にブレイドを託そうとしたディケイドに一種の信頼を抱く。
少なくとも剣崎は自身の死後涼がブレイドを使うことに、何の異議も申し立てることはなかっただろう。

「そうか」

そこまで考えて、始は会話に不自然な間が生まれないようにと短く返答を述べた。
ディケイド……いや、門矢士に対する情報はある程度把握出来た。
そして同時、この男に対し、どこか親近感にも似た感情を抱いている自分がいることも、始は理解していた。

「……なら次は、俺の番か。剣崎と俺の関係……だったな」
「あぁ、頼む」

だから、だろうか。
自分にとって有益な情報を得られた時点で反故にしてもよかったはずの約束を、律儀に守ろうとしている自分がいた。
何故かは自分にも分からない。ただの気の迷いかもしれないが、それももう自分にとってはどうでもよいことに思えた。

「俺と剣崎の出会いは……正直、あまりいいものではなかった。あいつはーー」

それから、始は語り始めた。
自身と剣崎の交流を。
だが、その実内容としてはそこまで掘り下げたものは大して語ってはいない。

元々始は口数多くベラベラと自分の経験について語るような男ではなかったし、或いは同時に安い言葉だけで語り尽くせるほど、自分と剣崎の関係は単純なものではないと思っていたのかもしれない。

だから語った内容は、とても表面的なものだった。
しかしそれを聞く涼の顔は、極めて満足げなもので、それが始にはとても不思議に思えた。

「……何故そんな表情をしている、俺はそこまで大した話をしたつもりはないが」
「分かったからだ、お前が剣崎を本当に友として信頼していたってことがな」

それについて思わず問えば、返ってきた答えはまたしても真っ直ぐなものだった。
言われて初めて始は涼に対し剣崎についてあまりに正直に話しすぎていた自分を自覚する。
――このままここにいては、俺の中で何かが変わってしまう。

ぼんやりとした感覚ではあるものの、どこか確信じみてそう感じた始は涼に一瞥もくれずに立ち上がった。

「聞きたいことは聞いただろう。……話はこれで終わりだ」

それだけを言い残してそそくさと民家を後にしようとする始の肩をしかし、涼は思い切り掴んでいた。

「終わりじゃない。分かってるんだろう?お前だって。
剣崎がこんな殺し合いに乗ることをよしとしないのも、今のお前が本当に望まれていることが何なのかも!」

――あぁ、やはり長々と話をするんじゃなかった。
始は俯き、自分の不手際を呪った。
殺し合いの場で今は亡き友とどこか似た存在を見つけ、それに不用意にこうして自分のことを話したツケが、これだ。

知ったような口ぶりで自分と剣崎のことに言及し、あまつさえ彼の思いを代弁しているかのような口調でこうして自分を説得しようとするとは。
どこか失望したような思いを抱いたまま、始は足を翻し彼から離れようとする。
当然、涼はそれを逃すまいと手を伸ばすが。

739(仮投下) ◆.ji0E9MT9g:2018/05/25(金) 12:00:27 ID:dkkggano

「――俺に触れるな」

それに対し、始は極めて冷たく返す。
振り払われた腕を一瞥し、涼はしかし声を荒げることをやめなかった。

「お前だって、気付いているはずだ!
大ショッカーが本当に世界の選別をするためなんて理由で俺たちに殺し合いを強要しているわけじゃないことを!」

涼の言葉の意味するところは、既に始とて理解している。
そもそもにしてあのキングが飛び入り参加などしている時点でこの殺し合いに特別な意味を見いだすことなど出来はしない。
崩壊の確定した響鬼の世界から参加者を輩出するならまだ百歩譲って分からなくはないが、未だ橘や志村という参加者が残っている自分の世界に更に有利な状況を作る必要がない。

或いは彼は剣の世界の参加者ではない第三者としての介入なのかもしれないが、どちらにせよ世界対抗戦という名目で開かれているこの殺し合いに極めて不自然な存在であることは否定しきれないだろう。
実際ジョーカーである自分を前に敵わないと逃げたのはともかくとして、変身が出来ない状態の涼を延々追いかけていたことや彼の生来の性格から考えても殺し合いに反対する参加者を減らすという務めすら素直に果たす想像すら出来ないのだから、どちらにせよ大ショッカーに信頼などおけるはずがなかった。
そこまでを分かりきった上で、しかし始は重い口を開いた。

「……あぁ、分かっている。それは大ショッカー幹部を名乗る男から直接聞いた。
この殺し合いに乗じて全ての世界を侵略するつもりだ、とな」
「ならどうしてお前はーー」
「――お前に教える義理はない」

始は努めて、会話を切り上げようと冷静に振る舞う。
そして、同時に思ってしまう。
この男のこういう部分は本当に剣崎に似ていると。

「……怖いんだろう」

ふと生まれた思考の淵に入り込むように、涼が呟く。
その言葉に思わず振り返れば、しかし涼は確信を持ったように始に歩み寄っていた。

「キングは、お前がとある参加者を殺し、その同行者と行動を共にしていたと言った。
だから、引き下がれないんだろう?自分が大ショッカーと戦う“仮面ライダー”になったら、仲間を殺されたその男に、いや世界の為に殺してしまったその男が恨むべき相手を失ってしまうと!
だからお前は大ショッカーに従った自分をどうにか正当化しようとしているんだ。
そいつらが、ずっとお前をただの殺し合いに乗った悪人だと、迷いなくお前を倒せるように」

言われて、始は思わず目を伏せた。
勿論、意図してそんなことをしていたつもりはない。
だが、木場と呼ばれていたあの男を殺し後戻りが出来なくなった後、ジョーカーの男、左翔太郎と共に行動していた時、何故自分は正体を明かさなかったのだろうか。

無論、いつでも倒せる男を野放しにしていても何ら問題がないからという理由は挙げられるだろう。
しかしそれ以上に、始は翔太郎に何かを期待していた。
それが彼の宣った『運命を変える』という言葉を信じたかったということなのか、それとも或いは涼の言うようにーー。

「――愚かでもおまえは人間だ」

思考に沈んだ始に、涼は言い聞かせるように言葉を紡ぐ。
その言葉は、先ほども聞いた、彼が迷いを捨てる決意を固めた時、ディケイドが投げかけたというもの。
思わず涼の目を見た始は息を一つ吐いた。

「……俺が人間だと?笑わせるな。俺はーー」
「いや、人間だ。元はどんな存在でも……剣崎と出会い、栗原という親子と出会い、お前はもう人の心を知ったはずだ。
そうじゃなきゃ、別の世界の住人で情報も吐き終えた俺はもう死んでるはずだからな」
「――ッ」

740(仮投下) ◆.ji0E9MT9g:2018/05/25(金) 12:01:24 ID:dkkggano

思わず、始は押し黙る。
橘から情報を聞いた上で自分と話したいというのに何か違和感を覚えていたが、なるほどどうやら自分が殺し合いに乗っているのは予想した上で説得できるのか倒すべきなのか判断する材料が欲しかったらしい。
厄介な相手がいたものだと思う一方で、どこか懐かしい感情が沸きあがっているのを、始は否定しきれずにいた。

そして同時に、先ほど涼が引用した言葉の、その先に続く言葉を始は反射的に思い出す。

(自分が歩みたいと、見つけている道を邪魔する俺自身を、自分が破壊する。
こいつが言いたいのは、そういうことだろうな)

ディケイドが述べたという言葉。
それに力を貰った涼自身が、今度は始が歩みたい道を歩める為の手伝いをすると、そういいたいのだろう。

(こいつらは、あのライジングアルティメットすら倒し、ジョーカーさえも凌いで見せた。
俺も、大ショッカーを倒せるだけの力があると認めるべきなのか……?)

故に、考える。
彼らが本当に、大ショッカーを倒せるのか否か。
自分の知る中で最強の実力を誇りジョーカーをも超えるライジングアルティメットは、死んだ。

キング……紅渡はまだ死んではいないようだが、金居もまた倒れた。
ジョーカーとなった自分に逃走を選択させるだけの実力を彼らが持つというのなら、大ショッカーに従い殺し合いを促進させても意味のない現状、これ以上参加者を殺すことに意味はーー。

「――ぐッ!?」

瞬間、始はその場に蹲った。
理由は、胸の奥から何物かが込み上げてくるのを、抑えきれなかったため。

(また、なのか?)

それは、病院でも生じたジョーカーへの衝動。
何故今になって何度もそれが起こるのか、始には一切見当もつかなかった。

「相川ッ!大丈夫か!?」
「逃げろ……、このままでは、お前もーー」

それ以上はもう、彼に言葉を紡ぐことは出来なかった。
雄々しい雄叫びと共に緑の閃光が辺りを包み込んだかと思えば、瞬間そこにいたのは緑と黒の異形。
最強のアンデッド、ジョーカーがそこにいた。

「相川、お前――」
「ウゥ、ウオオオォォォォッ!!!」

雄叫びと共に襲いかかるジョーカーに、物陰から飛び出した緑と茶のバッタが突撃した。
思わずと言った様子で数歩下がったその隙に、涼はそれを手に取り腰のバックルに収める。

「変身ッ!」

――CHANGE KICK HOPPER

彼の声に呼応するかのように纏われたタキオン粒子が緑のバッタ型のスーツを形成する。
変身の完了と共に光り輝いたその双眼が闇夜を照らし涼は構えを取った。
――どうやら今の始は正気ではないらしい、というのは涼にもすぐに分かった。

一瞬自身の挑発に応じ始本人の意思で襲いかかってきたのかと思ったが、正気を失ったようなその咆哮を聞けば、今の彼がただ本能のまま突き動かされているのが理解出来たのである。
であれば今自分が成すべきは、変身制限を迎えるまで今の始を相手に耐えることだけ。
彼から放たれる威圧が如何に凄まじく過去体験したことのないもので“耐える”、それだけのことがどれだけ難しくても。

最早自分に迷っている時間はないのだとそう自分を鼓舞して、キックホッパーはジョーカーの懐へと駆け込んでいった。

741(仮投下) ◆.ji0E9MT9g:2018/05/25(金) 12:02:41 ID:dkkggano





グググ、と音を立てて最早跡形もなくなった廃工場の中、起き上がる影が二つ。
何もなかったはずの空間から生じたそれらの影は、ありとあらゆる法則を無視してその場に顕現する。
起き上がり、顔を見合わせたそれらは、何が起こっているのか、こうしていることが当然かのように、その場を後にした。





「ウオォアァァァ!!!!」
「ウオオォォォォォ!!!!」

獣のような二つの咆哮が、誰もいない市街地に響く。
全てを破壊するケダモノ、ジョーカーと、それを止めんとするキックホッパーのものだ。
しかし戦況は……否、そんな言葉さえ必要ないほどにキックホッパーの防戦一方であった。

そもそもにして病院での戦いからの連戦であることは否定しきれないし、戦っていなかった時間も放送を聞き亜樹子を弔いまともに休めてなどいない。
そんな身体を押しているだけでも驚異だというのに、加えてジョーカーは進化したギルスでさえなお足りないような実力を誇る強者である。
必殺のはずのクロックアップさえジョーカーからもたらされる終わりない連撃からの離脱にのみ使ってようやくここまでの戦線を保っているという惨状だ。

思い切り肩で呼吸すること数度、一際大きい咆哮と共に衝撃波を周囲に発生させたジョーカーを相手に、キックホッパーは何度目になるか分からない回避の為のクロックアップを使用する。
周囲を飛び散る瓦礫、ジョーカー本体の動きさえ緩慢に見える空間の中で、しかし凄まじいスピードで迫り来る衝撃波を何とか上体を反らし躱しきる。
後方へ吹き飛んでいった衝撃波に見向きもせずジョーカーに向け突進したキックホッパーは、僅かなダメージなど蓄積すらされないことを知りつつも攻撃を仕掛けようとする。

しかし瞬間、流れすら違う時の中、ジョーカーは突き立てた爪で足下のアスファルトを破壊した。

「何ッーー!」

それによってアスファルトの破片がキックホッパーに向け勢いよく発射され、彼は真っ直ぐにジョーカーに向かうことを阻まれる。

「――いや、まだ手はある……!」

――RIDER JUMP

だが、言葉と共にゼクターに手をかけキックホッパーはそのまま高く跳んだ。
あくまで直線上での接近が阻まれたのは地上での話。
こうして空から攻撃すれば、奴に反撃の手はないはず。

――RIDER KICK

左足に高まったタキオンが集まると同時、彼はそれを思い切りジョーカーに伸ばした。
これで終わらせる。
疲労しきった今の自分でも、ジョーカーの動きを止めるくらいは可能なはずだ。

――CLOCK OVER

思考の終了とほぼ同時、加速した時間は終わりを告げる。
瞬間周囲の民家であったものが轟音を立てただの瓦礫へと成り下がっていく中、それすら気に留めぬままキックホッパーはただジョーカーだけを見据えてーー。
――瞬間、後方から襲いかかった“何か”にその体勢を大きく崩した。

「なーーッ!?」

一体何事かと振り向けば、それは自身の後方に立っていたはずの民家を構成していた瓦礫の一部であった。
つまり、先の衝撃波は自分を狙ったものでなく、この民家を倒壊させるのが目的だったということか。
その上で地上での接近を拒めば自分が跳ぶに違いないとそう判断した上での、ジョーカーの作戦だったというのか。

742(仮投下) ◆.ji0E9MT9g:2018/05/25(金) 12:03:22 ID:dkkggano

理性など持たないはずのケダモノがしかしそのセンスのみでクロックアップを攻略した様を目に焼き付けながら、涼はその生身を晒し地面に叩きつけられた。

「ぐあぁ……!」

全身の激しい痛みに悶え身体を捩る涼を前に、死神はただゆっくりとその足を進めてくる。
それをしかと見やりながら、涼はただ『申し訳ない』と思った。
自分を信じてくれるといった仲間にも、逃げろと警告してくれた始にも、そしてこうして力を託してくれた、死んでしまった仲間にも。

その死に様を自分しか知らない彼らのことを誰にも告げぬまま自分が死んでしまったら。
彼ら彼女らの生き様は、一体誰が語り継いでくれるのか。
後悔は尽きないが……しかし、終わりだった。

もう死神は、その鎌を自分に向け構えているのだから。

「矢車……亜樹子……乃木……皆、すまない……」

そうして、覚悟を決めたように彼はその瞳を閉じーー。

「――おいおい、相変わらずボロボロじゃあないか?葦原涼」

響いた剣戟音と、聞き覚えのあるその声に、思わず目を見開いた。
そう、最早これ以上言葉も必要あるまい、そこにいたのはーー。

「乃木ッ!?」

既に死んだはずの乃木怜治、その人であったのだから。

――何故乃木がこうして生きているのか、という疑問の答えは至ってシンプルだ。
乃木怜治……カッシスワームの能力として未だ残された命があったから。
それだけの理由に他ならない。

彼の読み通り、そして同時死神博士の読み通り、カッシスワームは今こうして蘇ったのである。
首輪を焼き払われたためにこうして変身制限からも解き放たれた、文字通り完全な復活を、彼はこうして遂げたのであった。

「乃木、何故お前が……お前は放送で呼ばれたはずじゃーー」
「その話は後……、いや、“もう一人”に聞いてもらえるかな?俺はこいつの相手をしなくちゃあならないんでね」

そこまで言って、カッシスは思い切りジョーカーに対しその腕の剣を振り下ろした。
元々攻撃に重点を置いているジョーカーの戦闘スタイルでは無理な体勢からの防御は難しかったのか、難なく地面を転がっていく。
その光景を見守りながら、しかし涼は湧き出てくる疑問を抑えることは出来なかった。

「……どういうことだ?何故乃木が……まさか、死んだ他の参加者も蘇ってーー?」
「――想像力豊かで結構なことだが、残念ながらそうじゃない。
蘇ったのは俺だけだ。……いや、俺たち、と言い直すべきかな?」

意識外からの声に思わず振り返れば、そこには先ほどまで話していた男と同じ声を顔をした乃木怜治その人が立っていた。
これには流石の涼も理解が追いつかなかったか、目は丸くし開いた口はふさがらなかった。
しかしそんな涼を見て、何のこともないように乃木は続ける。

「驚くようなことじゃない、俺は不死身……ただそれだけのことだからな」
「不死身って……それに何故二人に増えてるんだ……?」
「さぁな、俺にもよくわからん。その命での能力は蘇ってからでないと分からなくてね。
だがまぁ二人に増えるとは、俺にも予想外だったがな」

のらりくらりと言いのける乃木を見て、涼は思う。
これは幻覚でもなりすましでもなく、乃木怜治本人なのだ、と。
目の前で取りこぼしたと思っていた命にどういった理由であれこうして再び相見えたことに、涼は自然と頬を綻ばせていた。

743(仮投下) ◆.ji0E9MT9g:2018/05/25(金) 12:04:02 ID:dkkggano

「乃木……本当に、お前なんだな」
「フッ、何を当然のことを。
俺が死んでから何があったかは知らないが、こうして蘇り忌々しい首輪からも解き放たれた今、大ショッカー諸君の命運は尽きたも同然ということだ」

吐いた言葉の大きさに恥ずかしさを微塵も感じさせず、乃木は言う。
それに対し嫌みでなく心強さを抱いた涼は、そのまま乃木と更に情報を交換しようとする。

「乃木、実はーー」
「――おっと、待ってくれ。どうやら“俺”一人ではあの化け物くんの相手は厳しいらしい」

ふと涼が戦場に目を移すと、そこにはジョーカーに言いように弄ばれ足蹴にされるカッシスの姿があった。
それに思わずライジングアルティメットにやられていた病院でのことを思い出すが、しかし此度はそれとは状況が違う。
もう一人、カッシスがここにいるのだから。

「――奴を片付けてから、君の話を聞くとしよう」

言って乃木は紫の異形へと姿を変える。
カッシスワーム・クリペウス。
それが今の乃木の力であった。

涼に一瞥もくれぬまま駆けだしたカッシスは、そのままジョーカーに斬りかかる。
現れた二体目のカッシスに対し思わず退いたジョーカーの足下で、先ほどまで戦っていたカッシスが立ち上がる。

「随分とお話が長かったじゃないか?」
「“俺”一人で十分だと思っていたものでね、まさかこんな理性のないケダモノに言いようにやられるとは」

自分自身にさえ皮肉を吐いて、しかし二人は息の合った動きでジョーカーの攻撃を同時に受け止め反撃を食らわせていた。

「俺もそう思っていたが、どうやらこの身体は以前より微妙に能力が落ちているらしい。
制限ではないと思いたいがな」
「……まぁどちらにせよ、二人であれば前の形態のいずれよりも強いのは保証されている。
この程度の敵、どうということもあるまい」
「あぁ、そういうことだ」

そこまでを話し終えたカッシスたちの間に割り込むようにジョーカーが攻撃を仕掛ける。
分断すれば或いは連携を崩せるかもしれないとでも思ったのかもしれないが、しかし今の彼らにそんな単純な動きは通用しない。
一斉にジョーカーを躱したかと思えば、逆に挟み撃ちの形で一斉に斬りかかった。

それを何とかジョーカーが受け止めるも、それすら読んでいたとばかりにカッシスはその腕に紫のタキオンを纏わせる。

「「ライダースラッシュ!!」」

同時に発した言葉と技にジョーカーが反応するより早く、二つの斬撃のエネルギーはカッシスの手を離れジョーカーを焼き尽くそうとする勢いで肉薄する。

「オオオアァァァァァ!!!!」

大きく咆哮しそれらを弾き飛ばしたジョーカーに対し、しかしカッシスは同時に加速した時間軸へと突入する。
ライダースラッシュをやりすごすことに全神経を巡らせた隙だらけのその身体を、彼らは蹂躙できるだけの時間を得たのである。
そして、後から参入したカッシス……角のある方の個体が、無防備なその肉体に手を伸ばすが、それをもう一体の個体が止める。

「――待て、こいつは俺の獲物だ。俺がやる権利があるだろう」
「ふん……、好きにすると良い」

さっき痛めつけられていたのを気にしているなど“我”ながら随分とみっともないものだと思いながら、角のあるカッシスは背を向ける。
それを受けもう一体の個体は愉悦にその表情を染め上げた。

「さっきは散々痛めつけてくれたからな……これはほんのお礼だ」

744(仮投下) ◆.ji0E9MT9g:2018/05/25(金) 12:04:57 ID:dkkggano

先ほど痛めつけられていた恨み、怒り、そして何よりそんな相手を蹂躙できる喜び。
全てを乗せゲス染みた笑いをあげながら振るわれたカッシスの剣が、何度ジョーカーを切りつけたのか。
彼の銀の剣先が緑色に染まるより早く、そんなもの既に数える気もなくなっていた。

「――失せろッ!」

やがて満足したのか、飽きたのか、カッシスは最後にその腕に闇を集わせる。
それにより生じた最強の必殺、暗黒掌波動がジョーカーの身体を襲いその身を生身に戻すころには、彼らのクロックアップも終わりを迎えていた。

「楽しむのは勝手だが、早いところ殺すんだな、そいつは大ショッカー打倒において不穏分子だ」
「――分かっている。上から目線で命令するな」

些か無様な姿を見せた為に上下関係を築こうとしている片割れに気付いたのか角のないカッシスは不機嫌そうに呟いた。
とはいえもうろくに動くことも出来ないだろう生身の男を殺す程度、一瞬で終わること、故にカッシスはそのまま剣を振り下ろそうとする。

「待ってくれッ!」

が、己の傷さえ押して間に割り込んだ涼に、それを妨げられた。
極めて納得のいかない様子で彼の顔を一瞥した二人のカッシスは、その身を乃木のものへと変える。
どうせ変身制限もないのだから、表情で威圧できる分こちらの方が効果的だろうとそう考えて。

「――どうしたんだ?葦原涼。
俺はただ大ショッカーに従い殺し合いに乗った不穏分子を排除しようとしているだけなのだがね」
「違うんだ、こいつはさっきは自分の意思でなく暴れていただけで、殺し合いに乗りたくて乗ったわけじゃない。
ただこいつにも守りたいものがある……それだけの話なんだ」
「……彼の事情など聞いていないよ、葦原涼。
殺し合いに乗ったかどうかはこの際別としても、こうして自我を失い暴れることそれ自体が我々の大ショッカー打倒への障害になると言っているんだよ」
「ならッ、今度こいつが暴れた時は俺が止める!だからーー」
「話にならないね。俺たちが助けなければ死んでいたのは君だと言うのに。
君だけの問題ならともかく、参加者も大きく減った今、大ショッカー打倒に有望な参加者を殺されてからでは遅いのだよ」
「いや、今度こそ俺が止めてみせる!信じてくれッ、俺を仲間だと思ってくれているのなら!」

ああ言えばこういう、こう言えばああいう。
まるで一歩も妥協するという様子を見せない涼を相手に、乃木は頭を悩ませる。
そうして数秒悩んだあげく、二人の乃木は同時に目を見合わせ、同時に頷いた。

「そこまで言うなら、仕方ないな。本当はこんなことをしたくはないんだが」
「すまない乃木、感謝すーー」
「――ここで、君も殺すしかないようだ」

言葉と共に、乃木の身体は一瞬でワームのものへと変化する。
予想だにしなかったその返答に思わず反応が遅れた涼は、しかし容赦なく振り下ろされたカッシスの剣を躱し……同時に、彼の言葉が本気だということを理解した。
そしてその裏切りに、涼は大きく吠える。

「どういうつもりだッ!乃木ッ!」
「どういうつもりも何もないだろう。君が彼を殺させないというなら、君を殺してでも彼を殺すまでのこと。
大ショッカーに挑む貴重な戦力が一つ減るのは惜しいが……まぁお前如き恐らくは少し頑丈な壁にしかなるまい。
ならどのみちここで殺しても問題はないということだよ」

二人称が、君からお前へと変わるのと同時、乃木の口調からは僅かに滲ませていた仲間としての感情が失せていた。
無論、乃木が把握している涼の実力と今の彼のギルスとしての実力は大きく異なる。
単身でジョーカーを倒せるかは別としても、恐らく金居戦でエクシードギルスに変じることが出来ていれば、単純な戦力差での勝利は容易かったはずだ。

もちろん、そこまで実力に自信がある参加者との戦いであったなら金居もライジングアルティメットを迷いなく呼び戻しただろうし、最終的な被害状況は大差なかったかもしれないが。
少なくとも今の涼は彼の思うような肉壁にしか成り得ない戦力外では決してなかったのだが、ともかく。
そんな事実を知るよしもない乃木は、始を野放しにする危険と涼の生存を天秤にかけ始をこの場で確実に仕留めることを選んだのであった。

745(仮投下) ◆.ji0E9MT9g:2018/05/25(金) 12:05:32 ID:dkkggano

――まだ、ギルスへの変身には制限がかかっている。
どうしようもない、このままでは死ぬという絶望が、涼を飲み込もうと口を開けていた。

「――おや?どうした?死ぬのが怖くなったか?
……今そこをどけば、生かしておいてやるよ。大ショッカーを共に倒そうじゃないか?」
「黙れ、俺は絶対にここをどかない、こいつは殺させない!」
「……何がお前をそこまでさせる?橘朔也と志村純一の話じゃあ、そいつが生き残れば世界は滅びるんだそうじゃないか。
その上暴走するとまで来てる、そいつの味方をしても敵を増やすだけだと思うがね」

乃木の言葉は、的を射ている。
善良な参加者を殺したことさえ割れており、直接手にかけてはいないとしても病院戦にも責任がある。
そんな存在と共に行動していたところで、涼の行く先が茨の道になるだけである。

乃木としては涼を案じる思いなどなく自身の手を煩わせず済むならその方がいいというだけの声かけだったのだが、しかしやはりというべきか涼はさして考える様子もなく答える。

「……俺が、信じたいからだ!世界の崩壊や人類の滅亡、そういったことが門矢やこいつによって引き起こされるとしても、本人が望む限りそんな運命は覆せると!」
「――聞いた俺が馬鹿だったよ。まぁそれならそれでさよならだな、葦原涼」

つまらなさそうに吐き捨てたカッシスがその腕を翳すと同時、しかしそれが涼の身体を引き裂くより早く、彼の後方より生じた光の矢がその紫の甲殻に火花を生じさせた。

「相川ッ!?」

思わず驚きと共に振り返れば、そこにいたのはどこかブレイドにも似た黒と赤の仮面ライダー。
その手に持ったボウガンで油断なくカッシスを狙い撃つが、意識外の攻撃でないそれらは容易く弾き飛ばされた。

「全く、手間取らせてくれるな」

苛立ちを隠せない様子で傍観していたもう一人の乃木がその身を異形のものへと変貌されれば負けだと判断したか、ラルクは素早くカードをラウザーに走らせる。

――MIGHTY

瞬間満ちたエネルギーの矢で既に変化しているカッシスを狙い放てば、何故かろくな防御態勢もとらなかった彼は驚きの声と共に彼方へと吹き飛ばされていく。
その攻撃と同時生じた煙幕が晴れる頃には二人の姿はなく、残されたのは二人の乃木だけであった。

「チッ……」

舌打ちを漏らしたのは、勿論変身すらしていなかった乃木怜治である。
全く同じ能力、性格をしているはずだというのに、あたかも自分であればこんな惨状は生み出さなかったとでも言いたげなその様子に、もう片方の乃木は顔をしかめた。
同じ顔同士がお互いに嫌悪感にも似た表情を浮かべているのは傍から見れば相当シュールな構図であったが、当人たちにそれを気にする様子はない。

「……必殺技を吸収出来なかった。先の形態でフリーズを使えなかったことといい、どうやら前の形態時の能力は消えてしまうらしいな」
「ふん、まぁ問題ないだろう。どうやら吸収済みの技は問題なく使えるようだ。
あの戦いでライジングアルティメットと戦っておいたのがこうして役に立つとは思わなかったがね」

どこかふてくされた様子で、しかし冷静に今の自分について語る乃木。
その思考には既に今逃げた二人など存在していない。

「……葦原涼は遅かれ早かれ誰かに殺されるだろう。
相川始も次会ったときに確実に殺せばいい。それより、今の問題は……」
「俺たちの復活が大ショッカーにとって想定の範囲内か範囲外か、だな」

746(仮投下) ◆.ji0E9MT9g:2018/05/25(金) 12:06:15 ID:dkkggano

先ほどまでの空気はどこへやら、乃木たちは息のあった会話で考察を始めていた。
カッシスワームに復活能力があること自体は流石に把握されているだろう。
だがそれすら首輪で制限するつもりだった場合、今それをすり抜け復活した自分たちの存在は大ショッカーに対し優位に立てている唯一の存在と言って差し支えないものになる。

「変身制限はなくなり、戦力は大凡二倍になった。
話に聞く限りでは俺たち以外に復活することが能力として認められている参加者もいないようだが……」
「問題はこれが“想定の範囲外ではあったが野放しにしても問題ない”と捉えられている場合だ。
俺たちの復活というイレギュラーを含めてもなおこの殺し合いの進行、及び対主催勢力と大ショッカーとの力関係に変わりはないと考えられているなら……」
「まぁそれに関しては、直接大ショッカー幹部にでも聞かないことには分からないことだらけだな。
せめて俺たちの復活を警戒して会場に送り込まれたイレギュラーでもいてくれれば、些か気が楽になるのだが」

――本来は、この近辺に彼らを警戒し送り込まれた一人の大ショッカー幹部がいるはずだった。
無論それすらキングを乗せるための言い訳で、彼もまた都合良く送り込まれた殺し合いの促進剤である可能性は否定しきれなかったが。

「――今それを話していても埒があかないな。それより俺たち自身の行動方針だ。
大ショッカーを倒すのは当たり前として、そろそろ反撃に移らせて貰いたいものだがね」
「病院に向かう……悪くはないが首輪解除の為に媚を売らなくてよくなったんだ。
あの生意気な魔少年からは距離を置きたいのが正直なところだね」
「まぁ、俺たちは首輪も外れている。禁止エリアを気にしなくていいという点で言えば、どこへ行っても損はないということになるか」
「――それだ」

何気なく口にした言葉に食いついたもう片割れを見て、すぐさまその言の意を捉えたか、二人は同時ににやりと笑った。

「もしこの会場内に大ショッカーの本丸へ繋がる場所があるというならーー」
「――奴らが率先して禁止エリアにした場所……そこに何かを隠している可能性は決して低くはないな」

それは、いわば彼らしくはない地道な方針であった。
とは言えフィリップによる他参加者の首輪解除を待つまでもなく大ショッカーに打撃を与えられるかもしれないのだから、その可能性を追求するのは決して無駄ではないはずだ。
或いはそれが全くの間違いであったとしても、雲を掴むような大ショッカー打倒に必要な行動を一つずつ試してみるのは、決して無駄ではなかった。

「そうと決まれば……足が欲しいところだな」
「おい、見てみろ」

言って指さした先にあったのは、その身を包む黒故に夜に溶け込んでいるバイク。
思わず近寄り見てみれば、キーも刺さっており、結局のところオートバジンに続く現地調達の支給品であった。
その名を、ブラックファング。

剣の世界に存在するライダーマシンのいずれよりも高い性能を誇る最強のマシンであった。

「あのジョーカーが派手に暴れてくれたおかげでこいつがすっかり分かりやすいところに出てきたらしいぞ」
「彼に感謝すべき、だな」

軽口を叩きながら共に乗車した彼らは、その服までを含め夜へとその姿を隠しながら、思いきりエンジンを振り絞った。
それを受けファングは轟音を上げ西へと向かっていく。
彼らが去った後、そこに残されていたのは、最早ただの廃墟のみであった。

747(仮投下) ◆.ji0E9MT9g:2018/05/25(金) 12:06:53 ID:dkkggano


【二日目 黎明】
【F-6エリア 廃墟】

【乃木怜司@仮面ライダーカブト】
【時間軸】第44話 エリアZ進撃直前
【状態】健康
【装備】ブラックファング@仮面ライダー剣
【道具】なし
【思考・状況】
0:取りあえず最初に指定された禁止エリア(G-1、A-4)を目指す。
1:大ショッカーを潰すために戦力を集める。使えない奴は、餌にする。
2:状況次第では、ZECTのマスクドライダー資格者も利用する。
3:最終的には大ショッカーの技術を奪い、自分の世界を支配する。
4:志村純一を警戒。まったく信用していないため、証拠を掴めばすぐに始末したい。
5:鳴海亜樹子がまた裏切るのなら、容赦はしない。
6:乾と秋山は使い捨ての駒。海東は面倒だが、今後も使えるか?
【備考】
※カッシスワーム・クリペウス(角あり)になりました。
※現在覚えている技は、ライダーキック(ガタック)、ライダースラッシュ、暗黒掌波動の三つです。 なおもう覚えられないようです。
※東京タワーから発せられた、亜樹子の放送を聞きました。
※村上と野上ではなく、志村があきらと冴子を殺したのではと疑っています。
※クロックアップに制限が架せられていること、現時点ではフリーズ、必殺技吸収能力が使用できないことを把握しました。
※ブラックファング@仮面ライダー剣を運転中です。
※第二回放送を聞いていませんが、問題ないと考えています。




【乃木怜司@仮面ライダーカブト】
【時間軸】第44話 エリアZ進撃直前
【状態】健康
【装備】なし
【道具】なし
【思考・状況】
0:取りあえず最初に指定された禁止エリア(G-1、A-4)を目指す。
1:大ショッカーを潰すために戦力を集める。使えない奴は、餌にする。
2:状況次第では、ZECTのマスクドライダー資格者も利用する。
3:最終的には大ショッカーの技術を奪い、自分の世界を支配する。
4:志村純一を警戒。まったく信用していないため、証拠を掴めばすぐに始末したい。
5:鳴海亜樹子がまた裏切るのなら、容赦はしない。
6:乾と秋山は使い捨ての駒。海東は面倒だが、今後も使えるか?
【備考】
※カッシスワーム・クリペウス(角なし)になりました。
※現在覚えている技は、ライダーキック(ガタック)、ライダースラッシュ、暗黒掌波動の三つです。 なおもう覚えられないようです。
※東京タワーから発せられた、亜樹子の放送を聞きました。
※村上と野上ではなく、志村があきらと冴子を殺したのではと疑っています。
※クロックアップに制限が架せられていること、現時点ではフリーズ、必殺技吸収能力が使用できないことを把握しました。
※ブラックファング@仮面ライダー剣に搭乗中です。
※第二回放送を聞いていませんが、問題ないと考えています。

748(仮投下) ◆.ji0E9MT9g:2018/05/25(金) 12:07:26 ID:dkkggano





「ここまで来れば……大丈夫だろう」

ラルクの変身が解けるその時まで走り続けた彼らの足は、F-7エリア最南東にまで及んでいた。
本来病院へ向かおうとしていた涼にとってこの移動はあまり好ましいものではなかったが、贅沢は言っていられない。
乃木たちに変身制限はないのだから、逃げる時は全力を尽くさなくては安全を確保したなどと言えないのだ。

疲労故思わず座り込んだ始の横で、同じく座り込んでいる涼の表情は極めて険しいものだった。

(まさか乃木が、襲いかかってくるなんてな……)

それは、自分たちに牙を剥いた仲間と信じた裏切りについて。
結局は彼も、金居の言うような存在でしかなかったということなのだろうか。

『――ゲームに反対するって言いながら、乗ってるプレイヤーばっかり助けてさ』

キングの言葉が、思い起こされる。
もしかすればあの病院での金居の言葉が正しく、乃木もまた他の仮面ライダーに敵対する悪でしかなかったというのだろうか。
であれば、今自分の横に座っている相川始を守ろうとしていることも、いつか後悔する時が来るのだろうか。

「――」

ふと、こちらを観察するような始の視線に気付く。
不安、などではない。興味もさほど持ってはいないだろう。
ただ純粋に、自分を見定めるような目であった。

ありとあらゆる存在に裏切られ続けてなお、また新しい厄介を抱え込むつもりがあるのか、と。
しかし涼の答えは、考えるまでもないことだった。

「……俺は、俺が信じたいものを信じる。例え何度裏切られても俺はーー」
「――やはり、甘いな」

しかし涼の変わらぬその決意を聞いて、始は吐き捨てるように言う。
そのまま立ち上がった彼が、どこかへ行ってしまうのかと涼は思わず見上げるが。

「……だがそれを言わせる覚悟は、甘くないらしい」

始は、そこで立ち止まった。

「いいだろう。お前が本当に世界が滅ぶ運命を変えられるかどうか……見定めてやる」
「なっ……じゃあお前も大ショッカーをーー」
「勘違いするな、当面の方針だ。
もしも大ショッカーの言葉が本当で世界が一つしか存続出来ないというなら、俺はお前たちを容赦なく裏切る」
「……あぁ、それでもいい。一緒に大ショッカーを倒そう、相川」

言外に“あまり俺を信頼するな”と匂わせたつもりだったが、涼はそんなことを気にする様子もなかった。
始としては、別に栗原親子を見捨てたつもりではない。
彼女たちの住む世界を守る為の行動としてただ妄信的に大ショッカーに従うというのが効果的ではないと判断したのである。

749(仮投下) ◆.ji0E9MT9g:2018/05/25(金) 12:07:59 ID:dkkggano

渡、金居、ライジングアルティメット、自分という敵が徒党を組んでなお及ばなかった対主催に、一抹の希望を見いだしたのだ。
だから、取りあえずは大ショッカーを打倒する為に動く。
無論結果としてこの殺し合いに意味があると分かったときは、容赦なく正義の仮面ライダーたちを裏切ることも躊躇はしない。

ただそれだけの打算的な答えを出したつもりだというのに、始の心はどこか晴れやかですらあった。

(勿論、お前とは戦わねばならないがな……ジョーカーの男)

しかし一方で、木場を殺した自分がのうのうと改心して全てが丸く収まる、などという単純な話ではないことも、始は理解していた。
いやむしろ、ただで許されてはならない。
剣崎を殺した天道総司に擬態しているというワームを始が許すつもりなどないように。

翔太郎もまた、木場の為に自分と戦って貰わねば始の気が済まないのだ。
と、そんな思考を繰り広げる中で。
彼は唯一つ先ほどの戦いで気になっていたことがあったのを思い出した。

(乃木という男は俺がジョーカーだと知っていた……。
葦原は奴が現れてから俺の名を呼んでいなかったというのに……何故だ?)

それは、乃木の情報について。
勿論ジョーカーアンデッドの外見を含めての橘からの情報である可能性は否めない。
だが奴の言葉からはどこかそんな状況判断ではない、確信めいたものが感じられたのだ。

(どちらにせよ、警戒はしておくべきだな。乃木という男が信用ならないというのはほぼ確実だ)

そうして一旦の思考を終えた始は、今後の方針を改めて定める為、再度涼へと向き直った。


【二日目 黎明】
【F-7 市街地(最南東)】


【相川始@仮面ライダー剣】
【時間軸】本編後半あたり(第38話以降第41話までの間からの参戦)
【状態】ダメージ(大)、疲労(大)罪悪感、若干の迷いと悲しみ、仮面ライダーカリスに25分変身不可、ジョーカーアンデッドに1時間55分変身不可、仮面ライダーラルクに2時間変身不可
【装備】ラウズカード(ハートのA〜6)@仮面ライダー剣、ラルクバックル@劇場版仮面ライダー剣 MISSING ACE
【道具】支給品一式、不明支給品×1、
【思考・状況】
基本行動方針:栗原親子のいる世界を破壊させないため行動する。必要であれば他者を殺すのに戸惑いはない。
0:大ショッカーを打倒する。が必要なら殺し合いに再度乗るのは躊躇しない。
1:取りあえずは葦原と行動を共にしてみる。
2:再度のジョーカー化を抑える為他のラウズカードを集める。
3:ディケイドを破壊し、大ショッカーを倒せば世界は救われる……?
4:キング@仮面ライダー剣は次会えば必ず封印する。
5:ディケイドもまた正義の仮面ライダーの一人だというのか……?
6:乃木は警戒するべき。
【備考】
※ラウズカードで変身する場合は、全てのラウズカードに制限がかかります。ただし、戦闘時間中に他のラウズカードで変身することは可能です。
※時間内にヒューマンアンデッドに戻らなければならないため、変身制限を知っています。時間を過ぎても変身したままの場合、どうなるかは後の書き手さんにお任せします。
※ヒューマンアンデッドのカードを失った状態で変身時間が過ぎた場合、始ではなくジョーカーに戻る可能性を考えています。
※左翔太郎を『ジョーカーの男』として認識しています。また、翔太郎の雄叫びで木場の名前を知りました。
※ディケイドを世界の破壊者、滅びの原因として認識しました。しかし同時に、剣崎の死の瞬間に居合わせたという話を聞いて、破壊の対象以上の興味を抱いています。
※キバの世界の参加者について詳細な情報を得ました。
※ジョーカーの男、左翔太郎が自分の正体、そして自分が木場勇治を殺したことを知った、という情報を得ました。それについての動揺はさほどありません。
※取りあえずは仮面ライダーが大ショッカーを打倒できる可能性に賭けてみるつもりです。が自分の世界の保守が最優先事項なのは変わりません。

750(仮投下) ◆.ji0E9MT9g:2018/05/25(金) 12:08:34 ID:dkkggano
※乃木が自分を迷いなくジョーカーであると見抜いたことに対し疑問を持っています。




【葦原涼@仮面ライダーアギト】
【時間軸】本編36話終了後
【状態】ダメージ(大)、疲労(大)、亜樹子の死への悲しみ、仲間を得た喜び、響鬼の世界への罪悪感、仮面ライダーギルスに15分変身不能、仮面ライダーキックホッパーに1時間55分変身不可
【装備】ゼクトバックル+ホッパーゼクター@仮面ライダーカブト、パーフェクトゼクター@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式
【思考・状況】
基本行動方針:殺し合いに乗ってる奴らはブッ潰す!
0:剣崎の意志を継いでみんなの為に戦う。
1:今は相川と行動を共にする。
2:人を護る。
3:門矢、相川を信じる。
4:第零号から絶対にブレイバックルを取り返す。
5:良太郎達と再会したら、本当に殺し合いに乗っているのか問う。
6:大ショッカーはやはり信用できない。だが首領は神で、アンノウンとも繋がっている……?
7:少し傷を癒やしたら病院に向かいたい。
【備考】
※変身制限について、大まかに知りました。
※聞き逃していた放送の内容について知りました。
※自分がザンキの死を招いたことに気づきました。
※ダグバの戦力について、ヒビキが体験した限りのことを知りました。
※支給品のラジカセ@現実とジミー中田のCD@仮面ライダーWはタブーの攻撃の余波で破壊されました。
※ホッパーゼクター(キックホッパー)に認められました。
※奪われたブレイバックルがダグバの手にあったこと、そのせいで何人もの参加者が傷つき、殺められたことを知りました。
※木野薫の遺体からアギトの力を受け継ぎ、エクシードギルスに覚醒しました。
※始がヒビキを殺したのでは、と疑ってもいますが、ジョーカーアンデッドによる殺害だと信じています。

751(仮投下) ◆.ji0E9MT9g:2018/05/25(金) 12:11:26 ID:dkkggano
以上で取りあえず投下内容は終わりです。
今回皆さんにお伺いしたいのは
・乃木のカッシスワームクリペウスとしての完全復活の是非
・始の対主催への転向展開に違和感、また補足すべき点などはないか

個人的には乃木よりも始の方が問題として大きいかなと思っておりますので、
「こういう理由なら対主催転向も違和感ないのでは?」「そもそも始はマーダーのまま書いた方がいいのでは」など、自由にご意見お願いしたいと思います。

752二人で一人の/通りすがりの名無し:2018/05/25(金) 13:25:53 ID:evfnI2G6
仮投下乙です。このままでも問題ないと思います。ただ始の状態表について、思考・状況の欄に擬態天道についての記載はあった方がいいかもしれません

753 ◆LuuKRM2PEg:2018/05/25(金) 19:41:41 ID:gQK76bxU
仮投下お疲れ様です!
私も、このままで通しで問題ないと意見します。乃木のクリペウス完全復活は問題ありませんし、また始の心理描写も原作とこれまでの話を踏まえた上で描かれているので大丈夫だと判断します。
感想は本投下の後にさせて頂きますね。

754 ◆cJ9Rh6ekv.:2018/05/25(金) 20:23:26 ID:s96HyiM2
仮投下お疲れ様です。
感想は本投下まで待つとして、氏の気にされている点については特に問題ないかと思います。
乃木さん復活は、既に主催側の対応含めて伏線も貼られていましたし、始さんも見極めると言っていた戦いで実力を見せられ、涼から熱く説得を受けたのだから、一旦様子見でも大ショッカー打倒に動くのは納得が行く展開かと思います。

ただ少し気になったのは、角がない方おカッシスワームが無防備にラルクの必殺技を受けているのに状態表では無傷となっていますが、それが意図的なのか同じ人物の状態表を続けた際の見落としなのかが気になりました。
「必ずダメージを受ける展開にすべきだ!」というわけではなくあくまで確認ですので、意図的な物であるならそのまま通しで全く問題ないと思います。

755二人で一人の/通りすがりの名無し:2018/05/26(土) 09:33:11 ID:ZCxvnWTM
乃木さんの名前が微妙に間違ってる以外は問題ないかと(正確には乃木怜"治")

756 ◆.ji0E9MT9g:2018/05/26(土) 16:36:15 ID:uwoTGzcs
皆さんご指摘ありがとうございます。
別段本筋を訂正すべきだという声もありませんでしたので、
擬態天道についての始の状態表への記載、角なしカッシスのダメージ、疲労をそれぞれ(中)に変更、状態表の乃木の名前を訂正、また説明不足と思われる箇所の加筆、訂正
を済ませた後本スレに投下したいと思います。

757 ◆.ji0E9MT9g:2018/06/15(金) 10:34:55 ID:uA.sBx9s
こんにちは、予約スレでも言っていましたが仮投下を経るべき理由がありますのでこれより仮投下いたします。

758 ◆.ji0E9MT9g:2018/06/15(金) 10:35:37 ID:uA.sBx9s

 「――ねぇ、どうして黙ったままなの?やっぱりお前、麗奈じゃないの?」

 E-2エリアの、辺り一面何一つない焦土の中で、紫色をした龍の怪人が一人の女性に対して明らかな敵意を向けている。
 しかし、それも無理はあるまい。
 先ほどまで彼女を一番慕っていたのも彼、リュウタロスであり、そしてそれに対し答えていた女性、間宮麗奈と、今彼らの前にいる“間宮麗奈”は別人にしか思えなかったのだから。

そして、リュウタロスほどでないにしろ困惑を向けてくる男二人、城戸真司と三原修二を合わせた計三人を前にして、間宮麗奈――正確にはそれに擬態したウカワーム――はゆっくりと言葉を選びながら口を開いた。

「確かに、私はお前たちの知る間宮麗奈ではない。
そして恐らく、お前たちのよく知る間宮麗奈が再び現れることは……もう二度とない」

 「な……ッ?」

 思いがけないその言葉に、思わず三原は言葉を失う。
 こうして襲いかかってこないことなどを踏まえ考えれば或いは彼女に敵意はなくなったのかもしれない。
だが、彼女と対峙している怪人に、そんなことを考える理由と意味は、存在しない。

「は?じゃあお前を倒せば麗奈は戻ってくるの?ならお前倒すけどいいよね?答えは――」

「リュウタ、待てって!」

先ほどまで人間の“間宮麗奈”が向けられていたそれとは明白に違う、その殺意を込めた言葉と共に彼は懐から銃を取り出そうとする。
それを見て、真司が慌てて彼の前に割って入るのを見て、思わず麗奈は眉を潜めた。
覚悟はしていたつもりだが、やはり反発は大きい。

 一応、記憶は全て存在するのだ、人間の間宮麗奈を装いこの場をやり過ごすことなどは難しくない。
どころかワームとしては朝飯前に可能なことだが……今はそうして彼らを欺く気にはなれなかったし、それをするのは嫌だと心が訴えかけていた。

 「人間の間宮麗奈、いや、“私”そのものはもう返ってこないが……彼女は、“この私”に全てを託したのだ。
私は、その想いも抱いて、私のしたいように生きたい。
守りたいとそう心が命ずるものを、私は守りたい。
私の、彼女に貰ったこの心の中の音楽に……従って」

「てことはアンタ……敵じゃないって考えて、いいんだよな?
もう総司のことも襲わないってことなんだよな?」

「あぁ、ネイティブとは言え、話を聞く限り奴は私たちが嫌悪するネイティブという群には属していない。
それなら、私が手を出す理由もない」

 全て正直に、麗奈は答えていく。
 もちろん総司に関することも、あの時は総司に関する事情の一切を知らなかったのだから、その感情に嘘偽りはなかった。
 どころか、世界から拒まれたと思い孤立していた彼は、今となってはワームという群に属しながらもそれに背こうとしている自分と似たもの同士なようにも思えた。

「何だ、間宮さん、別にワームに乗っ取られたわけじゃないんだな」

「何……?」

そんな彼女の様子を見て、心底安心したという様子で頭を掻くのは真司だ。
 彼の言葉に対し、他の二人だけではなく麗奈本人でさえ怪訝な目を向ける。
 こうして長々と話をしていても、自分でさえ『ウカワームが人間である間宮麗奈を乗っ取った』という図式に反論することは難しいと感じていたからだ。

 その視線に気付いても、真司はなお尻込みせずに続ける。

 「だって、間宮さんは自分の中のワームが人を襲わないように戦おうとしてたんだろ?
で、こうしてワームの間宮さんが人を襲おうとしてないなら、それは人間の間宮さんが頑張ったからじゃないか」

759 ◆.ji0E9MT9g:2018/06/15(金) 10:36:24 ID:uA.sBx9s
 三原とリュウタ、そして麗奈を見回しながら述べたその言葉は、あまりにも楽観的にも感じられる。
 それこそ、もしも麗奈が制限を気にして戦うのを避け、自分たちを騙そうとしていたらどうするというのか。
 しかし、そうした一瞬の心配も、今の麗奈にとっては真司という人物を蔑むのではなく守りたいと感じる、所謂“愛すべき点”として捉えられてしまうのだから、彼の言うことも間違いではないのだろうと麗奈は思った。

「……でも、僕はあの麗奈がいい〜」

「リュウタ、そうは言ってもこの間宮さんを殺しちゃったらさっきまでの間宮さんの思いを踏みにじることになるんだぞ?
ちゃんと間宮さんがワームの間宮さんに勝った結果なんだから、仲良くしなきゃ怒られちゃうぞ?」

「う〜……」

 先ほど浅倉との戦いでリュウタに褒められ気が大きくなっているのか、彼を窘める三原の言葉に、リュウタは小さくなる。
 その姿に、人間の麗奈が抱いていたようなリュウタへの親愛にも似た感情を今またその身を以て再実感して、麗奈は小さく笑った。

 「……わかった、僕、今の麗奈とも仲良くする。そうしたらきっとお姉ちゃんも良太郎も褒めてくれるもん」
 
「ありがとう、リュウタロス。それに、城戸真司と三原修二も」

 「そんなお礼言われるようなことは何もしてないって」

 言いながら明らかに照れた様子で後ろ頭を掻く真司を見て、麗奈は自分が自然に笑顔を浮かべているのを感じる。
それはきっとワームとしての自分が人間の自分と真の意味で一つになったからこそ可能になったことなのだろうと思って、今の麗奈にはそれが嬉しくてたまらなかった。

「……で、これからどうするんだ?
間宮さんの事を報告したりする必要もあるだろうし一旦戻るべきかな?」

「いや、このまま東側の病院に向かうべきだろう」

浅倉との戦いを終えた今疲労が溜まっているのも事実だし、仲間の元へ戻るべきではと主張する三原に対し、麗奈は冷静に反対する。
しかし、それだけを聞いて「はいそうですか」と納得できるほど、三原はまだ出来た人間ではなかった。

「なんでだよ!?別にD-1の病院に戻ったっていいじゃないか!
わざわざ危ない長距離移動なんてする必要ないだろ!?」

「あぁ、かもな……。だが、向こう側の参加者も同じことを考えていたらどうする?」

「え……?」

自分の身の可愛さ故――とは言えそれを完全に否定する訳にもいかないが――安全だろう自分たちのテリトリーへ戻ることを提言する三原。
しかし麗奈はあくまで言い宥めるように言葉を続ける。

「『この病院を出たら敵がいるかもしれない』、『もしかしたら近辺の友好的な参加者が傷を治す為にここに来るかもしれない』。
そんな受け身な姿勢を続けていては、大ショッカーに従い殺し合いに乗った参加者達に良いようにやられるだけだ。
このまままたD-1の病院に戻れば当面の安全は確保されるかもしれないが、刻一刻と進んでいる殺し合いに反逆する為には、我々が東と西の病院を繋ぐ架け橋になることが必要だろう」

「ま、待ってくれよ!
浅倉みたいな奴がまだいるかもしれないんだし、津上さんだって今の間宮さんの事聞いたら安心するに決まってる!
それに今は制限かかってるんだし、さっきみたいに襲われたら元も子も――」

「――かもしれん。だが、少なくとも浅倉威……最も警戒すべき危険人物として認識されていた男はもういない。
それに今私たちは幸運なことに、使い回せる戦力も十分持っている。
城戸真司の持つ龍騎のデッキ、浅倉威から奪取したランスバックル、そしてリュウタロスが誰かに憑依すれば変身できる電王。
先ほどまでの“私”であれば確かに無謀な試みだったかもしれないが、他に危険だと考えられているダグバ、紅渡を仲間達が引きつけてくれている今、これだけの戦力を持っている我々が安心のためだけに手ぶらで帰るのは長期的に見ればあまりにも無駄だろう」

760 ◆.ji0E9MT9g:2018/06/15(金) 10:36:54 ID:uA.sBx9s

麗奈の言葉は、極めて論理的だった。
確かに東側のE-4病院はヒビキと翔一の集合場所として設定されていたものだ。
E-4自体は既に禁止エリアになったとは言え、隣接するE-5にも同じ病院は存在する。

それを踏まえればヒビキの遺志を継いだ仲間達が未だにE-5エリアで翔一や真司を待っている可能性は低くはなかったし、同時そこから動けない理由も納得できる。
そして最も懸念すべき危険人物の話だが、ダグバ、渡、そして一切の詳細が不明な志村純一を除けば、後は相川始と村上峡児程度。
始は又聞きではあるものの殺し合いに乗るかどうかすら五分のようだし、村上も下手を打たない限り無益な戦いを好むタイプではないらしい。

つまりは結局のところ――動くなら、今を置いて他にはないということだ。

「えぇっと……、つまり東側の病院にいる殺し合いに反対してる人たちを探しに行くってことでいいんだよな?」

「じゃあ俺は、皆にこれを伝える為に病院に戻ろうかな……」

「修二、格好悪い〜〜……」

浅倉を倒した時の頼もしさはどこへやら、明らかに落ち着かない様子で目を泳がせ続ける三原を見て、リュウタは落胆したように肩を落とす。
正直麗奈も同じように溜息をつきたかったが、それを堪えて代わりに小さく息を吸い込んだ。

「残念だが、駄目だ。お前がいなくては制限が解けるまでリュウタロスが変身できない。
それに一人で病院に戻るという方が、今の状況ではよっぽど危険だと思うぞ?」

「そ、それは……」

「あーもう!ほら修二、言い訳しないで早く行くよ!」

麗奈の言葉を聞いて、三原は一層慌ただしく目を泳がせた。
大方何か危険から逃げられる理由でも考えているのだろうが、上手い言葉も浮かばないようで、沈黙が流れるだけだった。
その後、痺れを切らしたらしいリュウタが無理矢理に彼の背中を押していき、三原は碌な抵抗も出来ないままD-1とは逆の方向へその足を進めていった。





――こうしてバイクを駆って、一体どれだけの時間が過ぎただろう。
そんなことを考えてしまうのは、疲労故ではない。
こうして人の皮を被ってこそいるが、生身であれど怪人の範疇である彼、乃木怜治にとって、この程度の距離を連続で走行するのは一切苦でも何でもなかった。

そんなことを思ってしまうのは、ただ……そう、こうしてバイクという移動手段を持っているというのに長い時間誰とも出会わないという状況を彼はこの場で既に経験していたからだろう。
オートバジンを駆り東京タワーで目星をつけた参加者、霧島美穂と鳴海亜樹子――状況証拠からして先の自分の命を奪ったのは鳴海亜樹子だろうが、別にどうでもいい――と出会うまでの孤独と、今が重なる気がした。
ただその時と異なる差異は一つ。

もちろん、乗っているバイクも違うがそれ以上に……。

「どうした」

「いや、何取り留めもない考えでも巡らせていれば時間潰しにはなると思っていただけさ」

そう、今は“俺”が二人いる。
思考経路も何も一緒なので雑談のようでも独り言と変わらないし、実に下らないお飯事染みた会話だが、まぁないよりはマシだ。
そんなことを考えた瞬間に、彼らのバイクであるブラックファングはG-2、G-3に掛かる橋を通過する。

「おい、止めろ」

その橋を渡りきり、このまま直進すれば目的のG-1エリアに難なく着くというその瞬間、しかしアクセルを握る乃木に対し、後部座席の片割れは突然に低く声をかけた。

「……どうした、禁止エリアはこの先だろう」

「そうなのだが……別に、我々が二人で一つのエリアを同時に探索する必要もない。
そうは思わないかね?」

761 ◆.ji0E9MT9g:2018/06/15(金) 10:37:32 ID:uA.sBx9s

二人乗りの姿勢で後部座席に乗っていた乃木の述べる疑問に対し、グリップを握っていた乃木は目を細める。
つまりは、ここで二手に別れたいということだ。
そしてその主張の先にある本当の主張も、彼には瞬時に理解出来ていた。

「……バイクが欲しいのか」

「自分自身に隠し事は出来ない、か。
そうだ、長時間の運転に疲れただろう?
俺がA-4に向かうからお前はG-1を探索してきてくれたまえ」

自分自身に対しても傲慢な態度を崩さないもう一人の自分に対し、これまでバイクを駆っていた乃木は溜息を漏らす。
あぁ本当に、全く以てこいつは自分だ。
どんな状況であっても、少しでも自分の利になる可能性を探している。

勿論反論も思いつかないわけではないが、ここで反論して無駄に水掛け論を繰り返すような無駄を“乃木怜治”が好まないことは、分かりきっているはずだ。
或いはこうして自分が呆れ半分に会話を中断することすら把握した上で彼はこの提案をしたのだろうと、乃木は思った。

「……分かった。取りあえず君にバイクは渡そう。
これでA-4エリアを見てきてくれたまえ」

「集合は……そうだな、第四回放送の時にD-1でどうだ?
金居の時と同じく君と戦うことにならなければいいが」

「それはこっちの台詞だ。
それに、出し抜こうなどとしても意味がないことはお互い理解しているだろう」

互いに皮肉を吐きながら、その会話を最後に彼らは別れる。
後部座席に座っていた乃木がブラックファングを受け取りA-4へと向かい、遠ざかっていくエンジン音を耳にしながら、もう一人の乃木はいよいよ目前にまで迫ったG-1エリア……つまり禁止エリアへと、足を踏み入れようとしていた。





「……何やかんや、結局二時間誰とも会わなかったなー」

時計を見ながらぼやく真司。
これで浅倉との戦いで制限のかかっていた龍騎も使用出来るようになっているし、三原に憑依する予定だったリュウタも自力で変身出来るようになっている。
これなら三原、リュウタの二人が後方支援を務め、自分と麗奈が相手に処理すれば、危険人物に出会った場合でも、少なくとも犠牲を出さずに撤退をすることは十分可能だろう。

とは言えそれに喜んでばかりもいられない。
これだけの距離を移動しても誰にも出会わなかったというのは、運という以上に既にこの会場の面積に対して生存している参加者の数がそれだけ減ってしまったということになる。
せめてダグバとの戦いに向かった三人と、彼の弟子とは言え殺し合いに乗った可能性もある渡と一対一で話し合いをしに行った名護は無事でいてほしいものである。

「とは言え油断は禁物だ。常に最悪の状況を考えておくべき――ん?」

「間宮さん、どうかしたのか?」

「しっ、静かに。こちらに向けてバイクが向かってくる。
スピードからして別段急いでいる訳でもないようだが……」

会話を中断し耳を澄ませた麗奈が口にしたのは、接近してくる新たな存在のことだった。
それに対し今までの緩い空気はどこへやら、彼らの緊張感は一気に高まる。
同時、彼らがそれぞれ自身の変身道具を取り出しているのを見て、麗奈もまたどこからの奇襲でも対応出来るように自身の真の姿をいつでも解放できるように構えた。

村上峡児か、相川始か、或いは別の第三者か。
そのどれであっても対応は変わらないだろうと、そう麗奈は考えていた。
だから、だろうか。

数瞬の緊張の後その場に現れた黒いバイクを駆る黒衣を纏った男の姿に、らしくなく狼狽してしまったのは。

「お前、乃木怜治……なのか?」

「……久しぶりだな。間宮麗奈」

互いに偽りの名を呼び合って、放送でその名を呼ばれ既に死んだはずの、麗奈が最も会いたくなかった男は余裕を崩さずニヤリと笑った。

762 ◆.ji0E9MT9g:2018/06/15(金) 10:38:11 ID:uA.sBx9s





もう一人の自分からバイクを奪いA-4エリアを目指して走り出してから早30分ほど。
先ほどまでの退屈な時間はどこへやら、乃木は既に目新しい参加者たちと合流していた。
目新しいと言っても、彼にとってのそれは動いている実物を見るのは初めてだという程度の意味でしかないのだが。

(城戸真司、三原修二、リュウタロスか。
秋山蓮や乾巧、そして海東大樹の話から判断すれば殺し合いに乗っている可能性は限りなく低いだろうな)

出会い頭、彼は品定めするように相手チームの面子を自身の持っていた詳細名簿の情報、そして病院で得た実地的な情報と照らし合わせる。
最終的に自分が話して判断することに変わりはないが、取りあえず今のところは戦いもなく話し合いで場を収められるだろう。
――最もそれは、このメンバーに彼女がいなければ、の話だったが。

「お前、乃木怜治……なのか?」

冷静を装っているとは言え、どこか驚きを隠せない様子で麗奈が問う。
それに含まれた感情は掴めない。
死んだはずの存在が現れたことに対する困惑なのか、或いは考えている通りに自分に特別出会いたくない理由でもあったのか……。

まぁそれは、話ながら判断していけば良いことだ。
今必要なのは何より信頼の為の会話だろうと、乃木は思考を中断し声をあげた。

「……久しぶりだな。間宮麗奈」

乃木怜治、間宮麗奈、共に偽りの名だ。
だが今更それ以外の名前で呼ぶ必要もない。
生まれてからずっとその名前で呼ばれてきた人間の記憶を持っているのだから、その名前を自分の名前として認識することに、何の疑問も抱かなかった。

「お前は、死んだとばかり思っていたがな。
大ショッカーが放送で誤りを放送するとは、あまりに杜撰な主催だと呆れたくなる」

「いいや、そうでもないさ。事実俺は既にこの場で死んでいる。
お前も知っているだろう?俺の命は複数存在すると言うことを。
そしてその証拠に……」

どことなく苛立ちと共に吐き捨てた麗奈に対し、乃木は笑みを絶やすことなく答える。
同時彼が見えやすいように傾げ指さしたその首元には、あるはずの首輪が存在していなかった。

「……なるほどな。自分の命さえ一勘定に入れて消費することも厭わんとは、流石、我ら全体を取り仕切るだけのことはある」

「な、なぁ、間宮さん、悪いんだけどあの人一体誰なんだよ?」

冷たげな口調を隠さず話した麗奈に対し、ずっと話に置いてかれている自覚があったのか、後ろに立っていた真司が問う。
それに対しどう答えるべきか数瞬迷いが生じたか彼女の目が泳いだのを、乃木は見逃さなかったが。

「……あの男は、乃木怜治。
私の元の世界で、私と同じワームの幹部だった男だ」

「え、じゃあこの人がワームの首領で警戒すべきだって天道さんが言ってたっていう……」

改めて成された乃木の紹介に、真司やリュウタロスよりも一歩退いた位置で隠れるように立っている三原が狼狽えた。
……別に必要ないというのが正直なところだが、詳細名簿について変に探られても困る。
ここいらで彼らの名前を聞いておいた方が、話の流れとしては自然だろうか。

「すまない、勝手に知っている者同士で話を始めて君たちを置き去りにしてしまった俺が言うのは何だが、まだ名前を聞いてなかったな。
よければそれぞれ名前を教えてくれないか?」

763 ◆.ji0E9MT9g:2018/06/15(金) 10:39:09 ID:uA.sBx9s

「あぁ、そうだよな。俺の名前は――」

「彼らの名前はこちら側からリュウタロス、三原修二、そして……津上翔一だ」

「え、ちょっ!?」

率先して自己紹介を始めようとした真司に対し、麗奈はそれを遮り名前を紹介する。
――真司本人の様子から見れば誰でも分かるような、偽名を用いて。
詳細名簿について気付いたわけではあるまい。

だが何かこちらの情報アドバンテージに勘づいた可能性がある。
試すような真似をされるのは少々癪だが、まぁいいだろう。
そういう態度を取るというなら、ここは敢えて彼女の策に乗り話してやろうではないか、こちらの豊かな情報網を。

「三原修二くん、君の話は乾巧から聞いているよ。
デルタギアを用いて戦う流星塾の一員だそうだね。幼馴染みの園田真理に関しては残念だった。言葉だけでは薄っぺらいかもしれないが、同情するよ」

「え……乾さんと会ったのか!?」

そして乃木は語り出す。
書面上だけの情報だけでなく、乾巧から聞いた血の通った情報を。
これらの情報に関しては本人に話して不利になるようなことは一切ない。

詳細名簿を持っていようがいまいが名前を聞いた時点でこの程度の話を矛盾なく出来るだけの情報は、仲間から得ているということだ。

「そして津上翔一くん。君の話は日高仁志からよく聞いているよ。
記憶がなく、本当の名前は沢木哲也というそうじゃないか。
E-4エリアの合流が大ショッカーに潰されてしまったのは苦しいところだが、こうして会えたのだから協力し合おうじゃないか――?」

「――もういい」

海東大樹、門矢士からの一方的なリュウタロスへの面識についてはただ事態が紛らわしくなるだけと省きつつ、これでもかと言うほど長々と話していた乃木に対し、麗奈は小さく呟くように制止を呼びかけた。
それに対し知らず笑みを深めながら、乃木はわざとらしく首を傾げた。

「もういい、とはどういうことだい間宮麗奈。
俺は新しく出会えた仲間たちに対して、俺の知りうる情報を述べているだけなのだが」

「……貴様を相手にこの程度の浅はかな手を使ってしまったことを恥じるべき、だろうな。
とはいえ謝罪をするつもりはない。
別世界の参加者による集団で行動している我々と違い、単独で行動しているお前が殺し合いに乗っている可能性について、警戒をするのは当然だ」

「ふっ、まぁ警戒は尤もだ。
こちらとしてもそうして警戒してくれた方が、素性も知れない相手のことまで信じてしまうような輩より余程付き合いやすい」

麗奈の変わらぬ冷たい口調に同じように返す乃木。
どうやら自分の知っている彼女のようだと一旦麗奈から目を離し、そのまま彼は彼らの舌戦に翻弄されているのか、ずっと困惑している真司に目をやった。

「さて、それはそれとして……君の本当の名前はなんだい?“津上翔一くん”。
彼女の咄嗟の判断に振り回されて災難だったろうが、偽名を使ったのがバレバレの良い反応だったぞ」

「……城戸真司だ」

「城戸真司か、秋山蓮から話を聞いている。
なんでも13人のライダーの戦いに巻き込まれたというのにそれを止めようと奮闘しているそうじゃないか。
ご立派なことだ、この場でも殺し合いを止め、共に大ショッカーを倒そう」

764 ◆.ji0E9MT9g:2018/06/15(金) 10:40:12 ID:uA.sBx9s

止めとばかりに真司の情報を吐きながら、乃木はしかし今度は真司ではなく麗奈を睨み付ける。
よくも俺を試すような真似をしてくれたな、と言わんばかりのその瞳は声音とは逆にとても冷たいものだったが、麗奈は特別それに動じることもなかった。
まぁとは言えそれはそれ。

先ほども言ったように少し位誰しもに疑心を持っている位でなくては使い物にならない。
間宮麗奈という存在の有能さとそれを幹部の座においた自分の手腕を改めて実感しながら、乃木は再び口を開いた。

「さて、誤解は解けたようだし大ショッカー打倒を掲げるもの同士が出会ったんだ。
彼らを倒す為情報の交換と行こうじゃないか?」

「……いつ私がお前を信用すると言ったんだ、乃木怜治?」

しかし努めて友好的に紡がれたはずの自身の言葉を、麗奈は相も変わらず冷たい口調で返す。
流石に比較的ビジネスライクなドライなものとはいえ、元の世界で交友があった存在に対する接し方にしては警戒しすぎではないかと乃木は眉を潜める。
だがそれに対し反論を申し立てたのは、乃木ではなく彼女の仲間である真司だった。

「ちょっと間宮さん!あの乃木って人と会ってからちょっと様子おかしいぞ!
ヒビキさんや蓮と話したって言ってたし、別にそこまで警戒してなくても……」

「いや、これは必要なプロセスだ。
もしかするとこの男は、大ショッカーからの刺客である可能性がある」

「……へ?」

その麗奈の言葉に対し、今度こそ乃木は疑問を抱く。
この俺が大ショッカーの刺客だと?一体どういうつもりなのだこの女は。

「考えても見ろ。この男が今直面している状況は、明らかに出来すぎている。
まず第一に首輪がないことだ。
命がもう一つあった?

そんなバランスブレイカー染みた能力を、変身にあそこまで精巧に制限をかける大ショッカーが見逃すと?
それに参加者の情報を実際に他の参加者から聞いたという保証がない。
この首輪にでも設置された盗聴器で得た情報を、あたかも自分が経験したかのように話している可能性も否みきれないだろう。

放送の件もそうだ。
もしかすればこの場には存在しない参加者であったのに、我々に取り入る為に放送で名前を呼んだ可能性だってある。
……純粋に浮かぶだけでこれだけの疑問があるというのにただ信じて我々の情報を与え仲間として迎え入れることは、私には出来ない」

それを聞いて、乃木は思う。
どうやら彼女には、最初から自分を仲間として迎え入れるつもりなどなかったのだろうと。
思い返せば、城戸真司を津上翔一として紹介した時に気付くべきだったかもしれない。

あの時は殺し合いに乗っておらず友好的な参加者から得られた血の通った情報を語ることで彼女の疑心を解けるだろうとだけ思っていたが、見当違いだった。
こうして自分の知りうる情報を全駆動して殺し合いに乗っていることを否定した場合は主催との関与の可能性を指摘する。
逆に、もし城戸真司を津上翔一という見知らぬ参加者として扱い話をしていれば、偽名に気付かなかったことから繋げ情報の少なさから自分が殺し合いに乗っている可能性を指摘するつもりだったのだろう。

そうつまりは……彼女は元々自分を欠片も信用してはいなかったということだ。
だが同時に引っかかる。
ここまで警戒心の強い彼女が共に行動している男共は、麗奈の気迫に押され自分が大ショッカーに関係しているのではないかと容易く考えを変えるような輩だということが。

故に彼は疑うべき一つの事象について考えを巡らせ……しかし今それを口にしても埒が明かないだろうと密かに胸に秘めた。

「そう、か……残念だ。確かに言われてみれば君の言うことにも理があるな。
そこまで言うのなら仕方ない、同行は諦めよう。
だが、俺は生憎少し前まで死んでいたために放送を聞いていなくてね。
行動は共に出来ずとも、せめてその内容だけは聞いておきたいのだが」

765 ◆.ji0E9MT9g:2018/06/15(金) 10:41:04 ID:uA.sBx9s

「……いいだろう」

それすらも渋々といった様子で、しかしそれで済むなら安いものだと考えたのか、麗奈は第二回放送の内容を彼に伝える。
自分たちが先ほど倒した浅倉を含めた死者の情報に、彼には必要ないかもしれないが禁止エリアの情報、そして主催陣営に存在する三島正人とラ・バルバ・デ、そして三体のアンノウンのことも。
それらを伝える極めて事務的な会話の後、乃木はそれらの情報を紙に纏めながら頷いた。

「……なるほど。思っていたよりも死者が多いな。
まさか五代雄介や日高仁志まで死んでしまったとは」

「御託はいい。情報は与えた。ここで貴様とはお別れだ」

想定外の死者数に思わずぼやいた乃木に対し、極めて冷酷に麗奈は返す。
まぁ確かにこれで最低限の情報は得たと言えるしこのまま別れても損はないのだが……。
しかしその実、乃木は彼女をこのまま無条件で逃がすつもりはなかった。

「それにしても全く、安心したよ。君がワームの心を失っていなかったようで」

互いに踵を返しあと数秒でもう声さえ届かなくなるというその状況で、乃木は極めて別れ際の捨台詞に過ぎないという風を装って4人に声をかける。
そして同時、それに麗奈の足がびくりと反応し止まったのを、勿論乃木が見逃すはずもなかった。

「……何の話だ、乃木怜治」

「いや、何、ただ安心したというだけだよ。
部下から聞いていたのでね。君が人間の記憶を思い出し、ワームとしての自分を忘れ我々の掟に背く存在になったと。
もしそうであればと懸念していたが、君とこうして会話だけで事を済ませられてよかったという話さ」

彼方へと去りゆこうとした麗奈はしかし、乃木の言葉を無視することは出来ない。
同時事なきを得たと思われていた状況が再び緊張感を帯びてきたことを、彼らは察していた。

「ワームの掟を忘れたわけじゃないだろう?間宮麗奈。
我々の本来の目的を忘れ人間の記憶に溺れた愚かな同胞。
そんな恥知らずは処刑あるのみだという鉄の掟をな」

「……当然だ。私は私の心で動いている。
人間の心など……既に持ち合わせてはいない」

どことなく震えた麗奈の声を聞いて、真司はようやく彼女の様子がおかしかった理由を理解する。
つまり、人の心を得て“間宮麗奈”として生きる決意をした彼女は、ワームにとって排除すべき存在なのだ。
それを察せられないために、こうして徹底的なまでの拒絶を彼に見せ同行を拒否したということか。

頭の悪さを自覚している真司でさえ気付いたのだ。
当然三原にもそれは理解出来ている。
だが……ある意味で言えば真司以上に考えを巡らせることの出来ない“彼”にとっては、その麗奈の発言は許容出来るものではなかった。

「――嘘、ついたの?
人間じゃないってことは、やっぱりお前、麗奈じゃないってこと?」

今の今までずっと話が難しくついてこられなかったリュウタロスだ。
誰よりも人間の麗奈に懐いていた彼は、同時にこういった建前と本音の使い分けを理解するには、あまりにも幼かった。
そして何より厄介なのは……彼はその精神的な幼さと反比例するかのような、高い実力を持っているということだ。

瞬間、彼は懐から取り出したリュウリボルバーを片手で気怠げに構え、しかしその銃口だけはしっかりと麗奈に向けたまま続けた。

766 ◆.ji0E9MT9g:2018/06/15(金) 10:41:34 ID:uA.sBx9s

「なら悪いワームは倒すけどいいよね?答えは――」

「ちょ、ちょっと待てリュウタ!
言っただろ、今の間宮さんは倒さなきゃいけないような奴じゃないんだ!
一旦落ち着いてくれ!」

「えー、でもこいつ自分で人間じゃないって感じのこと言ってたよ?
それともそっちが嘘でさっき言ってたことがホントなの?
よくわかんない〜」

「えぇっとだから、それはそういうことじゃなくて……あぁもうっ!」

いまいち察しの悪いリュウタに頭を掻いて悶絶する三原。
だが状況は、そんな彼らを待ってはくれない。

「君……確かリュウタロス、だったか。
その話、詳しく聞かせてくれるかな?
今の彼女が間宮麗奈ではないとは、一体どういうことだ?」

「えー、何か麗奈の中には二人の麗奈がいるとかどうとからしいけど、僕にもよくわかんない。
でも今の麗奈より前の麗奈の方がいい〜」

「ほう……」

何の悪気もなくリュウタは致命的な情報を吐く。
彼にとっては、麗奈がワームとしての記憶を取り戻しながら人間の心を得たことを言ってはいけない、などと一度も言われた覚えもない。
総司の名前のように約束したことなら彼は守ることも出来るが、状況で判断して自分の知っていることを言わないなどという複雑なことは、彼には出来なかった。

俯き続ける麗奈の額から、大粒の汗が落ちる。
もちろん彼女とて元の世界でこうした展開になることは予想していたが……しかし、まさかこの場で死亡したはずの乃木が現れることは予想していなかった。
故に真司たちにワームの掟について話すことがなく、結果としてこうして面倒に巻き込んでしまったということだ。

そして一方で、乃木もまた先ほどよりも一層冷酷な瞳を麗奈に向ける。
大方予想していた通りだったが……なんとここまで人間の心に飲みこれているとは。
ワームの人格を忘れただけならともかく、人間の心に統合され小賢しい嘘までつくなど極めて優秀で、そして腹立たしい進化を遂げたものである。

「全くこの俺をここまで騙すとは、君はやはり優秀だな、間宮麗奈?」

だからこれは、最後の賞賛だ。
我が種族の繁栄を支えた素晴らしい幹部に対する自分からの労いとそして――。

「だが……、仲間選びを間違ったな」

――死刑宣告だ。

瞬間、両者の姿は一瞬にして変貌する。
乃木の身体は紫の異形、カブトガニのような怪人、カッシスワームクリペウスに。
そして麗奈の身体は、白の異形であるシオマネキのような怪人、ウカワームへと。

瞬間、同時にクロックアップを発動した彼らは、瞬きの間に距離を詰める。
カッシスの振るう大剣と化した左腕を、ウカはその右腕の鋏で防ぐ。
だがそんなものはとうに予想済み、カッシスが間合いから無理矢理凪いだ右腕の盾に吹き飛ばされ、ウカはそのまま間合いから引き剥がされた。

だがそんなもので怯む彼女ではない。
すぐさまもう一度距離を詰めその右腕を勢いに任せ思い切り振り下ろせば、盾で凌いだというのに空気を振るわせカッシスの動きを一瞬硬直させた。
次いで反撃の時間さえ与えずウカはカッシスを打ち据えようとする。

「――ライダースラッシュ!」

だがしかし、一撃必殺のつもりで放とうとしたその攻撃は、勢いよく叫んだ乃木のその声と同時生じた紫の斬撃からその身を庇うのに全神経を集中させた為に、徒労に終わることになった。

「……かはっ」

「間宮さんッ!?」

地を転がったウカの喉から、掠れた呻き声が漏れる。
それと同時、何が起こったのかをさっぱり理解していない様子で彼女の仲間が叫んだ声を聞いて、カッシスはクロックアップの終了を悟った。
だがまぁ、心配することもあるまい。

767 ◆.ji0E9MT9g:2018/06/15(金) 10:42:18 ID:uA.sBx9s

ウカワーム自体の実力は、どうやら金居と同等程度らしい。
自分一人であってもどうやら問題なく倒せそうだ。
だが今このまま止めを刺すことは出来ない、何故なら彼女にはまだ仲間がいるからだ。

「変し……あぁッ!」

その瞬間、間宮麗奈を敵として認識した自分に対し戦いの必要があると感じたかデッキやベルト、各々の変身アイテムを構えた面々の間を、紫の風が通り過ぎる。
そう、再びクロックアップを使用したのだ。
首輪もなくなり制限も存在しなくなった今、体力が許す限り彼は好きなタイミングでクロックアップを行使できる。

勿論そこまで多様が出来る能力でもないが……まぁこの程度の短時間なら問題ない。
何故なら、このクロックアップでの狙いは彼らの殺害、つまりその命ではない。
目的はただ変身アイテムとデイパックを没収すること、それだけなのだから。

「……悪いが君たちが間に入って話がややこしくなるのはごめんなのでね。
そこで黙って見ていてくれると助かるのだが」

言いながら、カッシスは手にぶら下げた三つのデイパックをこれ見よがしに左右に揺らす。
もし気になったものでもあれば別だが、基本的には麗奈を殺した後に彼らにそのまま返すつもりだし、特に問題もないだろう。
流石の勇ましい仮面ライダー諸君と言えど、変身が出来なければ抵抗も出来ないのか、ただその拳を握るだけだった。

「さて……それでは、間宮麗奈。
始めようか、掟に背いた愚か者の処刑を、ね」

再び告げられた処刑宣告に対して、ウカワームはもう一度、全てを振り絞るように立ち上がって見せた。


【二日目 早朝】
【F-2 平原】


【間宮麗奈@仮面ライダーカブト】
【時間軸】第40話終了後
【状態】意識統合、疲労(大)、ダメージ(中)、ウカワームに変身中
【装備】ドレイクグリップ@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式、ゼクトバックル(パンチホッパー)@仮面ライダーカブト、
【思考・状況】
基本行動方針:自分の中に流れる心の音楽に耳を傾ける。
1:まずは乃木に対処する。
2:皆は、私が守る。
3:この戦いが終わったら東側の病院へ向かいたい。
【備考】
※『仮面ライダー』の定義が世界ごとによって異なると、推測しています。
※人間としての人格とワームとしての人格が統合されました。表面的な性格はワーム時が濃厚ですが、内面には人間時の麗奈の一面もちゃんと存在しています。
※意識の統合によって、ワームとしての記憶と人間としての記憶、その両方をすべて保有しています。
※現状、人間時の私服+ワーム時のストレートヘアです。

768 ◆.ji0E9MT9g:2018/06/15(金) 10:43:36 ID:uA.sBx9s




【城戸真司@仮面ライダー龍騎】
【時間軸】劇場版、美穂とお好み焼を食べた後
【状態】強い決意、翔一への信頼、疲労(中)
【装備】なし
【道具】なし
【思考・状況】
基本行動方針:仮面ライダーとして、みんなの命を守る為に戦う。
1:間宮さん、大丈夫かよ……。
2:翔一たちが心配。
3:東側の病院へ向かい友好的な参加者と合流したい。
4:間宮さんはちゃんとワームの自分と和解出来たんだな……。
5:この近くで起こったらしい戦闘について詳しく知りたい。
6:黒い龍騎、それってもしかして……。
【備考】
※支給品のトランプを使えるライダーが居る事に気付きました。
※アビスこそが「現われていないライダー」だと誤解していますが、翔太郎からリュウガの話を聞き混乱しています。
※アギトの世界についての基本的な情報を知りました。
※強化形態は変身時間が短縮される事に気付きました。
※再変身までの時間制限を二時間と把握しました。
※天道総司の提案したE-5エリアでの再合流案を名護から伝えられました。
※美穂の形見として、ファムのブランクデッキを手に入れました。中に烈火のサバイブが入っていますが、真司はまだ気付いていません。




【三原修二@仮面ライダー555】
【時間軸】初めてデルタに変身する以前
【状態】強い恐怖心、疲労(中)
【装備】なし
【道具】なし
0:俺でも、戦っていけるのかもしれない……。
1:できることをやる。草加の分まで生きたい。
2:間宮さん……、大丈夫か?
3:巨大な火柱、閃光と轟音を目撃し強い恐怖。逃げ出したい。
4:巧、良太郎と合流したい。村上を警戒。
5:東側の病院へ向かい友好的な参加者と合流したい。
6:オルフェノク等の中にも信用出来る者はいるのか?
7:戦いたくないが、とにかくやれるだけのことはやりたい。
8:リュウタロスの信頼を裏切ったままは嫌だ。
【備考】
※リュウタロスに憑依されていても変身カウントは三原自身のものです。
※同一世界の仲間達であっても異なる時間軸から連れて来られている可能性に気付きました。同時に後の時間軸において自分がデルタギアを使っている可能性に気付きました。
※巧がオルフェノクであると知ったもののある程度信用しています。
※三原修二は体質的に、デルタギアやテラーフィールドといった精神干渉に対する耐性を持っています。今抱いている恐怖心はテラーなど関係なく、ただの「普通の恐怖心」です。




【リュウタロス@仮面ライダー電王】
【時間軸】本編終了後
【状態】疲労(大)、ダメージ(中)
【装備】なし
【道具】なし
0:修二、強くなった……のかな?よくわかんない。
1:今の麗奈は人間なの?ワームなの?どっちでもないの?
2:良太郎に会いたい
3:大ショッカーは倒す。
4:モモタロスの分まで頑張る。
5:東側の病院へ向かい友好的な参加者と合流したい。
【備考】
※人間への憑依は可能ですが対象に拒否されると強制的に追い出されます。
※自身のイマジンとしての全力発揮も同様に制限されていることに何となく気づきました。
※麗奈が乃木との会話の中でついた嘘について理解出来ていません。
そのため、今の麗奈がどういった存在なのか一層混乱しています。

769 ◆.ji0E9MT9g:2018/06/15(金) 10:44:12 ID:uA.sBx9s




【乃木怜治@仮面ライダーカブト】
【時間軸】第44話 エリアZ進撃直前
【状態】ダメージ(中)、疲労(中)、カッシスワームクリペウス(角なし)に変身中
【装備】カードデッキ(龍騎)@仮面ライダー龍騎、デルタギア(ドライバー+フォン+ムーバー)@仮面ライダー555、ランスバックル@劇場版仮面ライダー剣 MISSING ACE、デンオウベルト+ライダーパス@仮面ライダー電王、リュウボルバー@仮面ライダー電王
【道具】ブラックファング@仮面ライダー剣、支給品一式×2(真司、リュウタロス)、優衣のてるてる坊主@仮面ライダー龍騎、カードデッキ(ファム・ブランク)@仮面ライダー龍騎、サバイブ「烈火」@仮面ライダー龍騎、草加雅人の描いた絵@仮面ライダー555、ファイズブラスター@仮面ライダー555、デンカメンソード@仮面ライダー電王、 ケータロス@仮面ライダー電王
【思考・状況】
0:取りあえず最初に指定された禁止エリア(A-4)を目指す。
1:人間の心に溺れた愚かなワーム(間宮麗奈)を処刑する。
2:大ショッカーを潰すために戦力を集める。使えない奴は、餌にする。
3:状況次第では、ZECTのマスクドライダー資格者も利用する。
4:最終的には大ショッカーの技術を奪い、自分の世界を支配する。
5:志村純一を警戒。まったく信用していないため、証拠を掴めばすぐに始末したい。
6:乾は使い捨ての駒。
7:もう一人の乃木にこれ以上無様な真似を見せないようにしなくては。
【備考】
※カッシスワーム・クリペウス(角なし)になりました。
※現在覚えている技は、ライダーキック(ガタック)、ライダースラッシュ、暗黒掌波動の三つです。 なお新しくはもう覚えられないようです。
※東京タワーから発せられた、亜樹子の放送を聞きました。
※村上と野上ではなく、志村があきらと冴子を殺したのではと疑っています。
※クロックアップに制限が架せられていること、フリーズ、必殺技吸収能力が使用できないことを把握しました。 なお、現在クロックアップに関しては連続使用に制限はないようです。
※ブラックファング@仮面ライダー剣は近くに放置されています。
※第二回放送を聞いていませんでしたが、間宮麗奈より情報を得たので内容について知りました。
今のところは内容について別に気にしていません。
※現在、城戸真司、三原修二、リュウタロスそれぞれのデイパックを全て持っています。





がさり、と音を立てて乃木怜治――もちろん間宮麗奈たちと戦っていた彼ではなくもう一人の方――はG-1エリアに存在する廃工場へと足を踏み入れていた。
どことなく自分が先ほど一つの命を落としたあの工場を連想してしまうが、あちらよりも余程大きく、住宅地の中にあったあちらに比べこちらは周囲に建物も存在しない為、余程大規模な生産ラインが敷かれていたのだろうと乃木は思考していた。
とはいえまぁ、所詮は大ショッカーが作り出した形だけの存在。

ここで何を生産していたとして、それに対して特別感慨を抱くこともないのだが。

「……ん?」

そんな取り留めのない思考をやめ、何か大ショッカーにまつわるものでも存在しないかと改めて周囲を見渡した乃木は、見た。
その視線の先、夜の闇の中でも十分にその存在感を誇示する、廃工場の中心に立つ背広の男を。

「やはりお前が最初にここに来ることになったか。
……思った通り、あのガキは仕事をしなかったようだな」

忌々しげに吐き捨てながら、男は眼鏡越しに乃木を睨み付けた。
しかし一切その場を動こうとしない彼に対し、乃木もまた少しずつ歩を進めながら口を開く。

「悪いが、名前を聞いてもいいかな?
俺の持っていた名簿には、お前の顔はなかったはずだが」

詳細名簿のことさえ口に出しながら、乃木は問う。
とは言え、それも問題あるまい。
禁止エリアであるこの場所に何の問題もなく存在し、詳細名簿にも載っていない者の正体など、大体見当がつくというものだ。

770 ◆.ji0E9MT9g:2018/06/15(金) 10:45:05 ID:uA.sBx9s

「言い忘れていたな。私は三島正人。
お前は知らないだろうが、大ショッカーの幹部だ」

「……ほう」

案の定、というべきか、目の前の男は大ショッカーの手の者であった。
そして同時乃木の頬は自然と吊り上がる。
大ショッカーの幹部が直々に守っている場所だ、ここに何か重要な秘密があるとみて、ほぼ間違いない。

「それで、その大ショッカー幹部殿が一体何故ここにいる?」

「お前の思っている通りのことだ。
今、このエリアにはそう易々と立ち入られたくない理由がある。
私はその為だけにこの会場に派遣されこのエリアの安全を任されたということだ。
……お前のようなゴキブリに隅から隅まで這いずり回られては堪ったものじゃない」

「貴様も似たようなものだろう、このダニが。
元々は人間でありながらネイティブに魂を明け渡し、挙げ句の果てに大ショッカーにすら忠誠を誓うその浅ましい根性、全く以て救いがたい」

その乃木の言葉に、今度こそ三島の顔は醜く歪んだ。
彼がネイティブであることなど、臭いで分かる。
ワームである自分を嫌悪しているところから見ても恐らくは元の世界も同じ、或いは憎きZECTの一員だったのかもしれない。

とはいえZECTにせよネイティブにせよ、乃木にとって忌むべき相手であることは変わらない。
それに、自分の種族にさえ一貫性を持てないような男とまともな交渉をするつもりもなかった。

「……最終通告だ。
このまま踵を翻しこのエリアから出て二度と近づかないと誓え。
そうすれば再び首輪をつけ、偉大なる大ショッカーの管理下においてやろう」

「減らず口はそれくらいか?
貴様もこの俺の答えくらい分かっているだろうに」

ニヒルに笑った乃木に対し、三島はかけていた眼鏡をゆっくりと外し着用しているスーツの胸ポケットへと収めた。

「……ならば仕方ない。
ワーム最強のお前と、ネイティブ最強の私。
どちらが上か、今ここで思い知らせてやる」

「ネイティブの歴史には疎いようだな?
我々に敗北し星を追われた哀れな種が、思い上がりも甚だしいぞ」

お互いに挑発を交わし、その距離は次第に縮まっていく。
そして既に、両者の距離は20mを切った。

「お前こそ思い上がるなよ。
数で押すことしか知らん虫けらに、私が戦い方を教えてやる」

「それは光栄だね。
……やれるものなら、やってみるがいい!」

彼らの距離はは既に両者の間合い。
これ以上は掛け合いなど不要と言わんばかりに向き合った両者の間に、一瞬の沈黙が流れ……。
次の瞬間、廃工場の中を緑と紫の光が照らし……、そして交差した。

771 ◆.ji0E9MT9g:2018/06/15(金) 10:45:43 ID:uA.sBx9s


【二日目 早朝】
【G-1 廃工場】


【乃木怜治@仮面ライダーカブト】
【時間軸】第44話 エリアZ進撃直前
【状態】健康、カッシスワームクリペウス(角あり)に変身中
【装備】なし
【道具】なし
【思考・状況】
0:取りあえず目の前の男(三島)を倒しこのエリアを探索する。
1:大ショッカーを潰すために戦力を集める。使えない奴は、餌にする。
2:状況次第では、ZECTのマスクドライダー資格者も利用する。
3:最終的には大ショッカーの技術を奪い、自分の世界を支配する。
4:志村純一を警戒。まったく信用していないため、証拠を掴めばすぐに始末したい。
5:鳴海亜樹子がまた裏切るのなら、容赦はしない。
6:乾と秋山は使い捨ての駒。海東は面倒だが、今後も使えるか?
【備考】
※カッシスワーム・クリペウス(角あり)になりました。
※現在覚えている技は、ライダーキック(ガタック)、ライダースラッシュ、暗黒掌波動の三つです。 なお新しくはもう覚えられないようです。
※東京タワーから発せられた、亜樹子の放送を聞きました。
※村上と野上ではなく、志村があきらと冴子を殺したのではと疑っています。
※クロックアップに制限が架せられていること、フリーズ、必殺技吸収能力が使用できないことを把握しました。
※第二回放送を聞いていませんが、問題ないと考えています。




【三島正人@仮面ライダーカブト】
【時間軸】死亡後
【状態】健康、グリラスワームに変身中
【装備】なし
【道具】なし
【思考・状況】
0:このG-1エリアをなんとしても死守する。
1:目の前の男(乃木)に対処する。
【備考】
※大ショッカーより送り込まれた刺客の一人です。
キング@仮面ライダー剣とは違い明確にこの場所を守る為だけに派遣されました。余程のことがない限りこの場所を動くつもりはありません。

【全体備考】
※G-1エリアで三島が守っているという秘密が何なのかは不明です。
もしかすると、G-1に秘密があるというそれ自体が三島の嘘である可能性もあります。

772 ◆.ji0E9MT9g:2018/06/15(金) 10:47:38 ID:uA.sBx9s
以上で仮投下終了です。
今回仮投下を経由した点としては追加キャラクターとしての三島の是非を問うためです。
もちろんそれ以外に気になった点や指摘などございましたらお気軽にお願いします。

773二人で一人の/通りすがりの名無し:2018/06/15(金) 12:48:50 ID:PF012CxA
仮投下お疲れ様です。
状態表、三島の参戦等特に問題ないと思います。
ただガタック単独に敗北したクリペウスがウカ相手にここまで圧倒できるのか?という疑問が少しあります

774 ◆.ji0E9MT9g:2018/06/15(金) 15:06:19 ID:uA.sBx9s
>>773
お早いご指摘、大変助かります。
さて、肝心のご指摘部分ですが、作中クリペウスがガタックに敗北したシーンでは、スコルピオワームの毒の関係があり、その毒の注入前はサソードに単身で完勝しています。
その為現在のクリペウスと加々美ガタックが戦ってもあそこまでの完敗はないのではと考えております。

と長々話して参りましたが、実際のところ自分も、ウカワームは当ロワで4回も変身しているのにレンゲルを初見殺しのクロックアップで蹂躙した以外大した活躍がないので、ここいらで少し活躍させてもいいかなーとは思いました。
なので投下時にはここまで圧倒的な実力差には描写せず、クリペウスの実力ダウンと相まってほぼ互角、というように変更したいと思います。

775 ◆LuuKRM2PEg:2018/06/15(金) 20:20:08 ID:FVdhZqmE
仮投下お疲れ様でした。
自分も三島の参戦については問題ないと判断します。禁止エリアに突入した参加者が現れては、大ショッカーも対策を立ててもおかしくないでしょうし。
感想は本投下の後にさせて頂きますね。

776 ◆cJ9Rh6ekv.:2018/06/15(金) 21:31:30 ID:TPFF9uqY
仮投下お疲れ様です。
自分も特に問題ない内容かと思います。
また変更を予定されているというクリペウスとウカワームの力関係についても、棒立ちでマイティを喰らった方の個体なのでダメージ蓄積も加味すれば戦力差が埋まっていたという扱いになっても違和感がないかと思います。
本投下、楽しみにさせてもらいますね。

777 ◆.ji0E9MT9g:2018/06/16(土) 23:29:58 ID:XvFN2f2E
お二人ともご意見ありがとうございます。
別段問題点などもないようですし、このまま本投下させていただこうと思います。

778 ◆JOKER/0r3g:2018/10/05(金) 23:23:31 ID:44F6HqtU
拙作、『飛び込んでく嵐の中』についてダグバがジョーカー化した最後の理由がアルビノジョーカーによる影響というのは、彼の生前のスタンスからしておかしいのではないか、
という指摘への修正案を書きましたのでこれより投下いたします。

779 ◆JOKER/0r3g:2018/10/05(金) 23:29:17 ID:44F6HqtU
 元々、上条睦月がスパイダーアンデッドに魅入られたときのように、アンデッドの中には封印されてもなお強い意志を持ちカードの外に影響を及ぼすタイプのものが存在する。
 特に上級アンデッドである嶋登や城光などはカードに封印されてもなお睦月に声を届かせることが可能だったのだから、それ以上に強力なアンデッドであるジョーカーが封印されてもなお強い悪意を持ち続けたならば、それが及ぼす影響は計り知れないとしても、何の疑問もないだろう。
 橘に一旦は力を貸したジョーカーは、しかしダグバの首輪が爆発するその直前彼の元へと飛来しその身に燻るアンデッド化に王手をかけたのである。

 無論首輪の爆発はフィリップや橘が予想したとおりセッティングアルティメットといえどダグバを確実に葬るほどの威力を誇るものだった。
 だがしかし、思い出してほしい。彼の首輪はあくまでグロンギ用のもの。アンデッドを強制的に封印する機能は含まれていなかった。
 であれば、不死者となったダグバが未だその身を消滅させていなかったとして、何の問題もない、ということになるわけだ。

 さて、こうしてアルビノジョーカーのカードがダグバのアンデッド化を後押ししたのだという結論のみを語られても、こう疑問に思うのではないだろうか。
 『志村純一が殺し合いに乗っていたとのはあくまで世界保持の為であり敵対者であり自身の世界を破壊しかねないダグバに力を貸す道理はないではないか』と。
 確かにその疑問は最もである。事実この殺し合いの中において志村純一は『剣の世界』の存続を目標に他世界の参加者を間引いていた。
 変身能力を失った橘朔也を前にしてなおその命を奪わなかったことからを踏まえても(無論、その気になればいつでも容易く殺せるという確信もあったが)、彼がただ殺戮の快楽に溺れたわけではないことは明白であり、傍から見ればそんな志村が他世界に生きるダグバに力を貸すのは理解できないことである。

 だが、ここで改めて考えてほしい。
 志村純一という男は、自分が封印された後も自分の世界のために戦おうと考えるような殊勝な性格だろうか?
 否、断じて答えは否である。

 そんな『仮面ライダー』染みた殊勝な考えなど、彼が持ち合わせているはずがあるまい。
 金居やスパイダーアンデッドのような自身の種の繁栄を望むアンデッドであれば露知らず、彼はその性質からバトルファイトの勝者にさえ成りえない完全なイレギュラーだ。
 もとより破壊神フォーティーンの復活とそれによる世界の支配を目論んでいた彼が、その果てに何を望んでいたのかはその実明らかではない。

 だが、こうは考えられないだろうか。
 『創造主さえ超える最強の力を得た実感と共に世界を支配したい』と。
 もしもそれが彼の最終的な目的であったなら、彼が封印される前に世界の保持を望んだのも理解できる。

 そして同時に、自分が封印された後に最早自分が支配することの叶わない世界の滅亡を彼が望んだとして、一体何が不思議だろうか。
 ダグバという規格外の化け物を前に、破壊神フォーティーンにさえ匹敵しうる才覚を見出し、彼をその代替として利用することで全ての世界を滅ぼそうとしたとして、何もおかしくないではないか。
 
 結局はそう、志村純一という死神が封印されてなお齎した最悪の結果こそが、このダグバのアンデッド化という悪夢のような事象なのである。

 長々と話してきたが、言いたいことはつまり二つ。
 エターナルメモリとダグバが惹かれ合ったのは死者になりつつある彼に永遠を感じたこと、そして……未だ、ン・ダグバ・ゼバが翳す究極の闇は終わったわけではないと言うことだ。

 とはいえ、流石の不死者と言えど、アンデッドもまた無敵ではない。
 ダグバの治癒能力を以てして、その身体が封印可能状態を脱し自律的に行動を始められるようになるまで、多大な時間がかかることだろう。
 故に今は、享受しよう。この凄惨極まりない地獄に降り注いだ、闇を照らす太陽の光を。

780 ◆JOKER/0r3g:2018/10/05(金) 23:34:52 ID:44F6HqtU
以上です。
志村がダグバをジョーカー化させたのは破壊神14の代わりに彼を使い全てを支配しようとしたため、的な感じです
彼が世界保持を望んでいたのはあくまで自分が支配したかった為だと思うので、それが果たせないとなったら世界を壊す方向にスタンスを変更してもおかしくないかなと思って書きました。

とはいえこれも一修正案程度の扱いですので、まだ描写不足や、キャラが違うのではないかという指摘があれば是非ともよろしくお願いします。

781 ◆LuuKRM2PEg:2018/10/06(土) 08:58:15 ID:Bbfyur.s
加筆お疲れ様です。
ダグバがジョーカー化した理屈と、またそこに至るまでの志村の動機についてきちんと書かれているので、自分はこの流れに問題はないと判断します。

782 ◆JOKER/0r3g:2018/10/06(土) 23:55:51 ID:J8vbdNu2
ありがとうございます。
そう言っていただけるのであれば、これで通しにしようと思います。
ご意見ありがとうございました。

783 ◆JOKER/0r3g:2018/10/09(火) 00:00:04 ID:UtBIvUvY
これより仮投下を開始いたします。

784 ◆JOKER/0r3g:2018/10/09(火) 00:03:42 ID:UtBIvUvY

 G-1エリア、廃工場内。
 始まってから既に18時間ほどが経過しようというこの殺し合いの中で、最も早く立ち入りを禁止されたはずの場所。
 参加者の誰も存在しないその場所で、今二人の異形がぶつかり合っていた。

 いや、彼らはどちらも、この殺し合いにおける参加者の定義には当てはまらなかったか。
 彼らのうち片方、甲蟹の意匠を身に刻んだ紫の異形は既に参加者としては死亡し、もう片方、蟋蟀を思わせる造形をした緑の異形はもとより主催の手のものなのだから。
 では、世界の存亡をかけたはずの殺し合いに、決して縛られることはないはずの彼らが、なぜ戦っているのか。

 その答えは至極単純。
 それは、そんな大義名分など関係ないほどに彼らは生まれながらの敵対者同士であり、また例えどんな状況であってもその顔を突き合わせたからには戦わずにはいられない、細胞レベルで認識された宿敵同士だったからだ。

 「ガアッ!」

 理性を一切感じさせない獣の様な雄叫びを上げて、甲蟹の怪人、カッシスワームが剣そのものである左腕を敵に向けて振り下ろす。

 「フン」

 だが、紛れもなく達人の業で放たれたその一撃を、緑の異形、グリラスワームはその鋼鉄よりも固い甲殻で受け止めた。
 彼らの戦いが始まってから、もうどれだけの時間が経っただろう。
 互いに首輪による制限さえ存在しない今となっては、ただ二人しか存在しないこの廃工場内に流れる時間の速さなど両者にはもう関係のないものだ。

 そして、彼らの時間感覚を狂わせる理由は、もう一つ存在する。
 それは――。

 「クロックアップッ!」

 カッシスの剣を受け止めそのまま反撃を企てたグリラスの拳が放たれるより早く、カッシスは一瞬で間合いを離し回避する。
 それに舌打ちを鳴らしながらほんの一瞬遅れて、対峙するグリラスもクロックアップを行使して、カッシスを視界に収め、しかしそこでそれ以上の戦闘を行うこともなく両者共に通常の時間軸へと舞い戻った。
 そうこれこそが、彼らが実時間でどれだけの戦闘を経ているのかが分からなくなった最大の理由。

 この長い戦いの中で、どちらかが相手への有効打を放ちそうになると、攻撃を受けそうになった側は一瞬だけクロックアップを利用しそれを回避する。
 無論相手もクロックアップを制限なしに使用できるのだからそのまま反撃に転じることは出来ないが、しかし相手が高速空間に移行するまでのその一瞬だけで彼らには十分。
 相手の反撃を潰し間合いから逃れ、必要以上のクロックアップ使用による体力消耗を防ぐためにそこで能力の行使を終了する。

 それがこの戦いで幾度となく繰り広げられた鬼気迫る一瞬の命のやり取りの明示化であり、またそれだけの時間を費やしてもなお互いに決め手を放てない理由であった。

 (なるほどな。ネイティブ最強の力というのもあながち驕りではない、か)

 そしてそんな現状を認知しながら、しかし焦りを見せることはなくカッシスは思考する。
 対峙するグリラスの実力は、なるほど確かに今までに自分が見てきたネイティブワームの中でも最上位のもの。
 というより、ワームに比べどちらかといえば武力よりも技術力に優れる印象であったネイティブの中で考えれば、なるほどライダーシステムさえ必要とせずこの強さとは頭一つ抜けていると見てまず間違いない。

 少なくとも現状、自分とグリラスとは互角なようで、その実敵の元来よりの強固さに自分が攻めあぐねているという事実を、カッシスは認めざるを得なかった。

 (せめてフリーズがあれば……な)

 故に、求めてしまう。
 戦況をいやおうなしに自分優位に進められる、あの最強の能力を。
 とはいえフリーズもまた考えなしに使って問答無用に勝利を掴めるような都合のいい能力ではないことも、乃木は理解している。

 例えグリラスを相手にそれが使用できたとしても、あの硬い甲殻を時間内に削り切れなければ自分が刈り取られるだろうとも思えた分だけ、彼は重なる敗北に学ぶことが出来ていたのかもしれない。

785 ◆JOKER/0r3g:2018/10/09(火) 00:07:05 ID:UtBIvUvY
 
 (いや、ないものねだりはするだけ無駄、か)

 故に、そこで思考を切り替える。
 どうせ今の自分にはフリーズなど使えないのだ。
 であればこんな思考は、この強敵を前には隙になるだけ。

 無理矢理に脳から無駄な思考を切り離し、カッシスは構える。
 ワーム最高峰の脳で理屈を考える首領のものから、ただ敵を打ち倒すことだけを考える獣のものへ思考を切り替えたのを示すように、彼は低く唸り喉を鳴らして。
 次の瞬間にはもう、彼はグリラスに向け飛び掛かっていた。

 「ジェアァッ!」

 低い姿勢で飛び込んだカッシスは、そのままグリラスに向け腕ごと剣を振るった。
 だが最早自明の理として、その剣は敵の強固な甲殻に弾かれ火花を散らしただけで、さしたダメージには繋がらない。
 とはいえそれは既に把握済み。大した困惑を示すこともなく、彼は再度その腕を振り下ろした。

 「ライダースラッシュ!」

 先ほどの再現かのように思われたその剣は、しかし此度はその刀身を紫に染め上げていた。
 タキオン粒子迸るその一撃は、仮面ライダーサソードの必殺技であるライダースラッシュと同等の威力を誇るもの。
 自身の剣を前にここまでの防御力を示す敵にはこの一撃も決定打にはなりえないだろうが、しかしグリラスの顔に張り付いた仏頂面を引き剥がすには十分なはずだった。

 「グ……ッ!」

 果たしてカッシスのライダースラッシュは、問題なくグリラスの身を切り裂いた。
 両断することは叶わないながらも、その分厚い甲殻に剣先が減り込んで、人間の証拠である赤から緑に変貌した醜い血を伝わせたのだ。
 これには歴戦のカッシスも確かな手応えを覚え……、しかし瞬間その顔から笑みは消え失せた。

 グリラスの甲殻に減り込んだ自身の腕が、抜けない。
 まるでその身体全体でがっちりと剣そのものを押さえつけているようなこの状況に、さしもの彼と言えど困惑を示さずにはいられなかった。

 「……ようやく、捕まえたぞ」

 その場から逃れようと四苦八苦するカッシスを前に、グリラスは珍しく喜色を露わにして気味の悪い笑みを浮かべた。
 まるでこの瞬間を待ち望んでいたとさえ言いたげなそれに、カッシスは本能的な逃走への欲求を感じ……しかし終ぞ彼の左腕がグリラスの元を離れることはなかった。

 「フン!」

 グリラスが気合を込めた声で、一つ叫んだ。
 何が起こるにせよそれにどうにか対応しようとカッシスは身悶えするが、しかしもう遅い。
 彼が何らかの対処行動を起こすより早く、グリラスの肩に生えた二本の鉤状の触手が、その腹に深く突き刺さっていたからだ。

 「グオアアアァァァ!!!!」

 唐突に訪れた最上級のダメージに、カッシスが叫ぶ。
 腕とは異なる、中距離への攻撃に特化したグリラスの持つ触手が自身の腹部内を蹂躙し掻きまわした痛みは、ワームの王を以てしてなお絶叫を禁じ得ないほどの痛みを齎したのである。
 だが、そのまま勝負を決めようとグリラスが振り上げた拳をただ甘受するほど、カッシスは痛みに我を忘れてはいなかった。

 「……喰らえッ!」

 言葉と同時彼が翳した右の掌から吐き出されるは、暴力的なまでの威力を秘めた闇の塊。
 かの昇り行く究極より直接吸収した今のカッシスが持ちうる最強の必殺技は、この至近距離での照射であることも含めてグリラスに初めてダメージらしいダメージを齎した。
 予想だにしなかったその威力に動きを止めたグリラスは、しかしカッシスの腹から触手を引き抜く愚は犯さない。

 そして両者共に、そこで理解する。
 腹に触手が深々と刺さったままのカッシスが折れるのが先か、高密度の闇を全身に浴び続けるグリラスが折れるのが先か。
 これは言わば互いのプライドをかけた一種のチキンレースなのだと。

786 ◆JOKER/0r3g:2018/10/09(火) 00:09:58 ID:UtBIvUvY
 
 「ガアッ!」

 微塵も知性を感じさせない雄叫びと共に、グリラスがその身をよじる。
 カッシスは一瞬敵がついにダメージに耐えられなくなったのかと疑うが、違う。
 身体の角度を操ることでその肩についている触手をより鋭角に、より深く自分に突き刺そうとしているのだ。

 「グオォ……!」

 相当な強度を誇るはずの甲殻でも貫通するほどに鋭いそれを、より柔らかい体内が受け止められるはずもない。
 ズブズブと体の奥深くに沈んでいく触手に強烈な異物感と吐き気を催すほどの熱気を覚えつつ、しかしカッシスはその手から放つ暗黒掌波動をやめはしない。
 ここで自分が折れることは、この場での自分の敗北を意味するだけではなく、ネイティブなどという圧倒的弱者に誇り高きワームが敗北することまで意味するのだ。

 腹部からの失血故か遠のきゆく意識を何とか繋ぎ止めて、全てのワームの意地をも乗せてカッシスは大きく叫んだ。

 「――ライダー……キック!」

 その右手から暗黒掌波動を放ちながら、カッシスは右足にタキオン粒子を集わせる。
 右足に集積したエネルギーが臨界点を迎えると同時、気合いと共に彼は思い切り回し蹴りを放った。
 次の瞬間、ドン、という生体同士がぶつかり合う音とは到底思えないような重低音を響かせて、彼の足はグリラスの身体を揺らす。

 「グアァ……!」

 だが瞬間、その身体を迸った痛みに対し苦悶の声を漏らしたのは、カッシスだった。
 どういうことだと困惑を露わにしたカッシスを前に、必殺技の直撃をものともせずグリラスは未だ健在。
 どころか、ようやく事が終わったかとばかりに得意げに鼻を鳴らして。

 「フン、戦い方を知らない虫けらはこれだから困るな……」

 捨て台詞のように吐き捨てたグリラスに対し皮肉を返すより早く、一刻も早い状況判断のために自身の右足を見やったカッシス。
 らしくない焦燥を含んだ彼の瞳が、次の瞬間映したものは。
 グリラスの左手に、植え付けられたかのように不自然な形状で存在する鋭利な鉤爪が、ライダーキックの勢いをも利用して自身の足を貫通している光景だった。

 「何が起きたのか分からない……という顔をしているな?
 愚か者が。私が予め構えていたこの腕に、最高の角度で蹴り込んできたのはお前の方だろう?最も、お前からは自分の発生させた闇で見えなかっただろうがな」

 グリラスが薄気味の悪い笑みを携えながら皮肉を吐く。
 奴の言うことを噛み砕くと、つまりはこういうことになる。
 『グリラスはこの硬直状態に陥った際に自分がライダーキックを放つことを予期していて、それに対するカウンターとして腕をそこに置いただけ』なのだ。

 そうとも知らず突っ込んでしまったのは、彼の言うとおり自身が発生させた闇に視界を阻害された為か、それとも腹部からの出血故に勝負を急いでしまったか。
 ともかく、カッシスの勿体ぶったような長々とした勝利宣言などは、既にカッシスの耳には入っていなかった。
 相手の口にするしょうもない言葉にいちいち反論をしていられるほど、今の自分に余裕がないことを、分かっていたから。

 だがそうして必死に捻出した思考の時間をも、グリラスは長く与えない。

 「フン、もう耳障りな言葉を発する余裕もないようだな。それなら――私の勝ちだぁぁぁぁ!!!」

 激情を露わに叫んだグリラスは、カッシスの右足から鉤爪を、腹から触手をそれぞれ勢いよく引き抜く。
 それに一層出血を深めながらクロックアップを駆使して敵の射程範囲内から離れようとして、しかしカッシスは動けない。
 未だ自身の剣が、左腕ごとグリラスの甲殻にめり込んで未だ離れないのである。

787 ◆JOKER/0r3g:2018/10/09(火) 00:13:24 ID:UtBIvUvY
 
 「オアァァッ!!!」

 だが互いを不本意ながら繋いでいたその半強制的な拘束は、次の瞬間に終わりを告げた。
 相当な硬度を誇るはずのカッシスの左腕は、グリラスが叫びと共に振り下ろした鉤爪に切り裂かれ遂にその身体から別たれてしまったのだから。

 「グォ、オオオオオォォォォ!!!」

 「ハハハ、ハハハハハハ!いい気味だ、このゴミ虫が!ハハハハハハ――!!!」

 絶叫と共に、肘から先を失った左腕を押さえながら、カッシスは呻く。
 そんな無様な彼の姿を前に、自分がワームを直接に追い詰めている、という状況に愉悦を抑えきれない様子で笑うグリラスは、今一度ネイティブとなった自分の身体をこれ以上ない誇りに思った。
 人間であった頃は下らない武器に頼らなければ抵抗もままならなかったワーム、その中でも最高峰の実力者を前に、自分は圧倒的優位に立っている。

 だが、それも当然と言えば当然か。
 マスクドライダーシステムの鎧に用いられるヒヒイロノカネをさえ容易に打ち砕けるオオヒヒイロノガネ。
 それをふんだんに用いた自身の鉤爪を前に、戦い方も知らないような薄汚い虫けらが単独で敵うわけもない。

 元々誰よりも力への固執が強かった彼にとって、何らの道具さえ用いない、己が身体が敵を追い詰めているという実感は、これ以上なく幸福感を刺激されるものだった。
 だが瞬間、その笑い声は止む。
 これ以上化け物が苦しむだけの光景を見ていても目に毒なだけだとでも言うように溜息一つ吐き出して、グリラスはそのままいつもの、鉄仮面のように代わり映えしない無表情をその顔に張り付けた。

 「ガ、ア……」

 対するカッシスは、徐々にその距離を狭めるグリラスを前に、ただ弱弱しく嗚咽を漏らすのみ。
 得意の頭脳さえ右足と腹、そして失われた左腕の肘から爆竜のように押し寄せる痛みの前にろくに働きはしない。
 今度こそ、本当に万事休すなのか。ワームは、単身ではネイティブに劣る有象無象だということを、認めなければならないというのか。

 それを認めるあまりの悔しさとしかし一人では到底覆しえない結論にカッシスはただ獣のように咆哮したい衝動を覚え――。
 しかし瞬間目の前に迫っていたグリラスが突然に闇に飲み込まれたことで、それをやめた。

 「なッ――?」

 思わず、驚愕が漏れる。
 何が起きたのか理解できないままにただ茫然とその闇の出所を振り返れば、その先にあったのは――あぁ認めたくはないが待ち望んでいた――最高の救援であった。

 「おいおいどうした?随分と良いようにやられたようだな?」

 皮肉を吐いたその紫の影は、その頭部から生える角の有無を除けばまさしく自分自身。
 そう、この第三の命によって与えられた、もう一人の自分その人であった。

 「こんなものが……効くか……!」

 だがそんな援軍を素直に喜ぶよりも早く、彼はもう一人の自分が放った暗黒掌波動の中で少しずつ、しかし着実に自分に向けて突き進んでいるグリラスの声を聴いた。
 こうして見る分にはなるほどこの男もまたライジングアルティメットにも相応しかねない防御力を誇っているのかもしれないが、しかしそれを自慢できるのもこれまでだ。

 「フン!」

 残された力を振り絞って、目前にまで迫ったグリラスに向けて自身も暗黒掌波動を放射する。

 「――グアアァァァッ!」

 さしものグリラスといえどこの会場内有数の威力を誇る必殺技を二発も受けてしまえばただではすまない。
 暗黒掌波動によるインパクトを前にその巨体は火花を散らしながら宙を舞い、見事な放物線を描いて廃工場内に積み上げられた木箱の上に落下した。
 だがそれでそのまま敗北に至るほど三島は軟ではない。

 自身の身体の上に撒き散らされた木片を勢いよく弾き飛ばしながら、一瞬で飛び上がる。

788 ◆JOKER/0r3g:2018/10/09(火) 00:15:04 ID:UtBIvUvY

 「ガアァッ!」

 だが、すぐさまに立ち上がり戦いを続けようとした彼を待っていたのは、ただ廃工場内に木霊する自身の咆哮のみだった。
 そして、察する。つまり奴は、自分を前に逃げたのだと。

 「……所詮は、数で押すしか知らない虫けら、か」

 状況を理解し、突然冷めたように落ち着きを取り戻した彼は、そのままネイティブとしての身体から三島正人の姿へと擬態する。
 そうしてゆっくりと自身の胸ポケットに収めた眼鏡をかけなおす頃には、もう彼から先ほどまでの闘争本能に支配されたような獣染みた雰囲気は消え失せていた。
 どころかまるでもう、乃木との戦いになど興味はないとばかりに踵を返して、そこでふと思う。

 まさかとは思うが、あの乃木が、この先に待つこのエリアの秘密を手に入れようと未だ近くにいる可能性があるのではないか、と。

 「……一応、確認しておくか」

 まずそんなことはあり得ないと思うが、万が一ということもあり得る。
 ゆっくりと、しかし警戒は怠らず奇襲にたけるワームであれど逃げきれないほどの注意を払いながらそのまま少しの間歩き続けて、彼は目当てのものの前へと辿り着いた。
 果たして自分がこのエリアを任された最大の理由である“それ”は、全くの無事であった。

 乃木ももうこのエリアにいないのだろうことは確認したし、もう問題はないはずだ。
 そうしてようやく人並みの安堵を抱いた彼の、目の先にあるそれ。
 大ショッカーが直々に幹部を設置してまで隠そうとしたその“鍵のかかった車”は、この18時間未だ誰に触れられることもなくそこに在り続けていた。


【二日目 早朝】
【G-1 廃工場】

【三島正人@仮面ライダーカブト】
【時間軸】死亡後
【状態】ダメージ(中)、疲労(中)
【装備】なし
【道具】なし
【思考・状況】
0:このG-1エリアをなんとしても死守する。
【備考】
※大ショッカーより送り込まれた刺客の一人です。
キング@仮面ライダー剣とは違い明確にこの場所を守る為だけに派遣されました。余程のことがない限りこの場所を動くつもりはありません。

【備考】
※G-1エリアにある三島の守っている秘密とは「車@???」の存在でした。ちなみにこの車には鍵が掛かっており、運転席は勿論荷台にも同様の鍵で開くと見られます。
※なぜこの車を大ショッカーが秘匿したがったのかは秘密です。秘匿したかったのは車そのものなのか、それとも荷台の中の荷物なのか、或いは車そのものや中身には大した理由はなく参加者ではない乃木が第一発見者となることを避けたかったのかもしれませんが現状は不明です。
※荷台に何が入っているのか等は後続の書き手さんにお任せします。



 ◆


 「……どうやら、廃工場の外にまでは追ってこないようだな」

 言外にこれ以上俺の肩を煩わせるなと示したもう一人の自分の声に従って、左腕を失った乃木はその場に力なく座り込んだ。
 怪我人相手に随分なことをしてくれるものだと人間諸君なら思うかもしれないが、ワームである乃木にとってはこのくらいのドライな関係のほうがやりやすい。
 ましてや自分自身が相手なのだから、気遣いや無駄なやり取りも不要なのはこの傷ついた体には随分とありがたいことであった。

789 ◆JOKER/0r3g:2018/10/09(火) 00:18:31 ID:UtBIvUvY

 そして勿論、ここまでの重傷を負い止血処理を残った右腕で懸命に行っているからと言って時間を浪費するほど、“俺”が愚かでないことも、理解している。

 「あの男、報告に聞いた三島正人と見たが、なぜ奴がネイティブになっている?一体何があった」

 ほら来たぞ、と内心で思う。
 幾ら姿形記憶能力全て同じ“自分”が傷ついたからといって、我々ワームに慈悲の心はない。
 貪欲に情報を欲する相方の問いに対し、しかし乃木は冷静に返す。

 「さぁな。だが奴はどうやら大ショッカーの幹部になったらしい。
 我々の考えた大ショッカーが隠したい秘密、とやらはあそこにあるとみてほぼ間違いないようだ」

 「そうか」

 短い返答。
 だがその表情からは、僅かに困惑したようなものが見て取れる。
 とはいえ、自分をこうして容易く拉致してきた相手の秘密が存外簡単に見つかったとなれば警戒しても当然か。

 それにA-4エリアに向かうという当初の目的も意味のないものになったのだから、これから先の身の振り方を考えてしかるべきだった。
 と、そこまで考えて、左腕を口と右腕を器用に使って一際強く縛り付けた後、乃木はようやく笑みを浮かべた。

 「さて、俺は聞かれたことに答えたぞ。次はお前の番だ」

 「……何のことだ」

 「すっとぼけなくていい。“俺”が聞きたいことは分かっているだろう?」

 その言葉を受けて、もう一人の乃木は極めて罰が悪そうに眼を背けた。
 改めて彼をよく見れば、その身に刻まれた傷は――自分に比べれば天地の差だが――それなりに深い。
 バイクさえ自分から奪い取ったというのにおめおめと自分の元へトンボ返りしたというこの状況は、幾ら危機一髪の局面を救った救世主面していたところで無視できないところである。

 そしてそれを一番に理解しているのはもう一人の乃木も同じ。
 少しばかりの逡巡を経た後に、その重い口を開いた。

 「……間宮麗奈と会ってな。信じがたいことにワームとしての記憶を保持したままに人間の心を持ち俺を出し抜こうとしてきた」

 「あの間宮麗奈がな……珍しいこともあったものだ」

 どことなくただの世間話のように流しながら、しかし乃木は催促するように目でもう一人の自分に合図する。
 間宮麗奈如きにいいように自分がやられるとは思っていないのだろう。
 まぁ、まさしくそれは正解なのだから、この状況で隠し事を出来るはずもないのだが。

 「……彼女を処刑すべく戦いを進めていたが、あと一歩というところで門矢士に出くわした」

 その名前を聞いて、乃木はオーバーリアクション気味に右腕で眉間を押さえ首を振る。
 まさに「あーあーやっちまった」とでも言いたげに見えるその動作を前にもう一人の乃木は僅かにイラついた様子を見せ……、しかしすぐに目を逸らして続けた。

 「うまく彼を丸め込もうとしたが失敗してね。残念ながらこうして傷を負い体制を立て直すためにここに来たというわけだ」

 「なるほどな、そういうわけだったのか」

 そうして何事もないように返すが、しかし乃木も、またもう一人の乃木もとある事情に気付いている。
 それを認めるのは彼の著しく強大な尊厳を傷つけるもので……しかし今後生き残り目的を達成するためには必要なことだった。

790 ◆JOKER/0r3g:2018/10/09(火) 00:23:25 ID:UtBIvUvY
 
 「どうやら、俺たちは最早変身制限がないことを踏まえたうえでもこの会場を単身で闊歩できるほどの実力を有していないらしいな」

 「……あぁ、そうだな」

 自身の発言に対する相方の一瞬の間。
 それを恐らくはそのプライドの高さ故、自分の実力がこの会場内でのランキングでは低い方から数えたほうが早いという事実を認めたくないという、そんな葛藤の表れなのだと勝手に納得して、乃木は続ける。

 「……とはいえまぁ俺のこの傷を考慮したうえでも、なお俺達二人がこうして合流できた今、大抵の敵には負けることもあるまい。
 取りあえずは少しの間傷を癒しながら間宮麗奈、門矢士らのような明確に俺たちに敵意を持っているだろう相手を避け、殺し合いに反対的な参加者との合流を目指すべきだな」

 そうして対主催集団の中でそれなりの立場を築けた後であれば、門矢士らもそう易々と自分たちと戦うわけにはいくまいと、言外にそう示して。
 今後の行動方針を纏めた乃木は、まずは打倒三島の決意と情報を持ってどうにか他参加者と合流する道を示し、もう一人の乃木に向けて自身に残された右手を伸ばす。
 肩を貸してくれという合図。自分がいなければ生きられないということさえ再認識させた今、それは当然に受理されるはずの要求だろうと。

 そう、“自分”を軽んじていた。
 思えばそれが、彼の最大の過ちだったのかもしれない。
 彼がそれに気付いたのは、自身の手を言葉もなくはねのけたもう一人の自分のあまりに冷たい表情を見たためだった。

 「――なんのつもりだ?」

 怒気を込めて、乃木は問う。
 まさか腕を失い一人で立つこともままならない自分を嘲るという、そんな下らない目的の為だけにこんな無駄な動作をすることもあるまい。
 こんな時間は無駄なだけではないかと言外に批難する乃木を前にしかし、もう一人の自分は冷ややかに笑った。

 「いや、何、この第三の命で生まれかえった瞬間から一つ、試してみたいことがあってね」

 「なんだと?」

 今の自分と紛れもなく同じ顔をしているはずだというのに、もう一人の自分が浮かべている表情の下には底知らない悪意とそして何よりの好奇心を感じる。
 我ながら不気味だとゾッとした心地を覚えた乃木は、僅かに身動ぎをして自分の腹を庇う様に後退った。

 「疑問に思ったことはなかったか?なぜそもそも自分の能力であるはずのフリーズや特定のエネルギーを用いた必殺技の吸収を、俺たちは新しい命の度に使えなくなるのか」

 もう一人の乃木は、勿体ぶったように語りだす。
 だがその顔に張り付いた邪悪な興味は常に自分を視線から外すことはなく、目だけで逃がす気はないと示すかのようだった。
 そんな彼を僅かに恐れ再び後退った乃木を気にすることもなく、話は続く。

 「勿論、俺たちにもそれぞれの能力の原理はよく分からん。
 そんな能力を使えこなせなくなっても、無理はないのかもしれん」

 だがな、と言いながら、見せつけるように両手を大きく広げ。

 「だが、考察を重ねることは出来る。最初は以前に殺害された時の理由を潰すように進化した結果なのではないかと思った。
 時間停止を見越した時間差の必殺技に敗北したからそれを受け止められるように必殺技の吸収能力を。
 必殺技さえ用いない、しかし並のライダーのそれよりも遥かに強い打撃を放てる存在を……ライジングアルティメットを知った為に、そんな規格外に対処できるように複製を」

 ここで話している彼らが知る所以はないが、この理論には、より強くそれを裏付けられる根拠が存在する。
 それは元の世界で彼らがカッシスワーム・グラディウスとして敗北した際の事象。
 その命における直接の死因はカブトが放ったマキシマムハイパーサイクロンによる粒子分解であるものの、それをただ享受せざるを得ないようなダメージを受けたのは、三人の仮面ライダーによる同時攻撃をその身が吸収しきれなかったためだ。

 この世界でも元の世界でも、「必殺技の単一的な吸収では事足りない」と判断した為にその身体を二つに別ったのではないかという推論は十分に説得力を持つものだろう。

791 ◆JOKER/0r3g:2018/10/09(火) 00:26:35 ID:UtBIvUvY
 
 「……そんなことを話して何になる?
 まさかそんな下らない、答えの出ないご高説を披露するのが目的か?」

 思わず声を怒りに震わせながら、乃木は問う。
 失血死こそないだろうとはいえ、ダメージの大きい自分にとって、こんな下らない話に付き合っている時間はない。
 だがそうして結論を急ぐ乃木の姿さえ愉快だとばかりに鼻を鳴らして、もう一人の自分はなおも話を続ける。

 「まぁまぁ、そう言うな。……とはいえそうだな、俺が考えていたのはずばりそこなんだ。
 この話は、考えても答えが出ない。そうして切り捨ててしまうのはあまりに勿体ない気がしてね」

 「はぁ?」

 今度こそ困惑を込めて、乃木はただ疑問符を浮かべた。
 まるで言っている意味が分からない。
 或いは――そう思い込みたかったのかもしれない。

 その先に待つ答えが、あまりに恐ろしいものだから。

 「間宮麗奈がワームでありながら人間として生きたいと言い切ったのを見て、俺も少しばかり答えの出ない問いに興じてみてもいいかもと思ったのさ。
 そうして考えるうち、もう一つ疑問が浮かんできた」

 「新しい疑問だと?」

 最早もう一人の自分の話す推論に付き合う以外ないらしいと観念したか、乃木はテンポよく問いを投げる。
 それに気をよくしたか、もう一人の乃木はその笑みを深め続けた。

 「あぁ、その疑問というのは……俺たちのこの形態は、この乃木怜治の最後の命を費やしたにしてはあまりに弱すぎるのではないかとね」 

 「それは……」

 もう一人の乃木が提示した疑問に、思わず言葉を詰まらせる。
 正直、思ってしまう。そんなこと言っても仕方ないではないかと。
 勿論、今までの能力そのままに二人に増えたなら、この第三の命はこれ以上なく強力なはずだった。

 しかし現実はそうではない。
 フリーズも必殺技吸収能力も失い、その果てに残されたのは先の命で吸収できた僅かな必殺技のみ。
 身体能力さえ一体一体は著しく低下し、ネイティブ最強のグリラスはともかく、あの間宮麗奈と互角などと第一の命の時では思いもよらなかったほどのパワーダウンを果たしている。

 とはいえ、それは先ほども言ったように話しても仕方のないことである。
 熱血教師染みた根性論を語りたいわけではないが、今は配られたカードで戦うしかないではないか。
 言葉を詰まらせた乃木に対し、もう一人の乃木は極めて流暢にその舌を回す。

 「だから考えてみた。
 考えても答えの出ない問いだとしても、もしもこうして二人に増えたことに意味があるとするなら、それはなんだろう、とね」

 「その様子からすると、答えは出たらしいな」

 「あぁ、勿論。とはいえ未だ確実な答えは出ていないがな」

 言ってもう一人の乃木はニヤリと不敵に笑って――しかし次の瞬間、その顔から表情は一辺に消え失せた。

 「なぁ……もしかしたら、こうして二人に増えたことは、一種の選別だと捉えることは出来ないか?」
 
 「選別だと?」

 思わずオウム返しに乃木は返す。
 だが何故だろう。ゆっくりとその足を自分に向けて進めだしたもう一人の自分の存在が、先ほどまでと違い威圧的に感じるのは。

792 ◆JOKER/0r3g:2018/10/09(火) 00:31:46 ID:UtBIvUvY
 
 「そうさ。つまりはこの命の真価はこんな出来損ないのコピーを増やすことにあるんじゃない。
 よく似た、本当に自分そっくりの存在を生み出した後で、どちらか優れている方を自然に選別することにある、そうは考えられないか?」

 「……そんなことをして、一体何の意味がある?」

 冷静にもう一人の自分と話を合わせながら、ゆっくり、ゆっくりと乃木は立ち上がることさえ出来ないままに徐々に後ろに退いていく。
 しかし、もう一人の乃木は常に自分を視界の隅に置き、自分と同じペースでこちらに向かって歩を進めその距離は一向に広がらない。
 明らかに意図的なはずのこの静かな攻防を、しかし一切気づいてさえいないように振舞いながら、もう一人の乃木は一つ鼻を鳴らした。

 「さぁな。だが人間が研究した生物学によれば、傍目には全く同じように見える一卵性双子を同じように育てたとしても、それぞれ得意不得意が異なるということもあるらしい。
 或いはその中には、双子のうち片方の不憫な奴が不得意とすること全てを得意とする、そんな器用な奴もいるかもしれない。……そうは思わないか?」

 「……だが、その器用な奴が不得意とすることを、お前の言う不憫な奴が得意としている可能性だってあるかもしれないぞ?」

 「あぁ、そうだな。もしそうなれば、そいつらはこう思うに違いない。
 『こいつさえいなければ、もしかしたら自分は全部を持って生まれてきたのかもしれない。自分の才能はこいつに吸われたに違いない』ってな」

 ゴト、と音を立てて、乃木の背中に冷たい鉄の感触が伝わった。
 ――壁だ。先ほど必死こいて逃げてきた廃工場の壁。
 最早、退けるところはない。

 思わず走った戦慄を察したか、もう一人の乃木は自分に向けてもう一歩距離を狭める。

 「――まぁ、だからそう、つまり俺の試してみたいことというのはそれなんだ。
 もしも二人に増えた俺たちが再び一つになれたなら、或いはその時こそ俺たちの最後の命、それに相応しいだけの力を得られるのではないか、とね」

 冷たくそこまで言い放って、彼の身体は一瞬でおぞましい音を立て紫の異形へと変化する。
 その姿を前に自分も同じように変態しようとして、しかし出来ない。
 まるでこの身体が、自分の役目を終えたのを察しているかのように。

 「最後になるが……じゃあな“俺”。文句は言うまい?
 『弱い奴は餌になる』それが俺たちの掟だと、貴様も知っての通りだろうからな」

 「待ッ――!」

 乃木が放った必死の抗議は、しかしもう聞き届けられることもなかった。
 彼がそれを言い終えるより早く、その身体はカッシスワームの腕に抱かれ――かつてガタックに苦戦したワームを、自らの糧にした時のように――粒子化し吸収されてしまったのだから。

 「オオオ……グオォォォォォォッッッ!!!」

 そしてもう一人の自分を吸収し、唯一無二の存在となったたカッシスは、吠える。
 まるで、自分の中に沸き起こる力の奔流に突き動かされるように。
 同時、彼の身体はメキメキと音を立て変貌していく。

 その何も生えていなかった頭部からは、立派な一本角が天を衝かんと高く伸び。
 今まで剣と盾とが生えていた両手もまた、止めどなく変化していく。
 レイピアに、剣に盾に、或いは人間の様な五本指に。

 数舜の後、今自分に起こった変貌を全て理解したカッシスは、理解する。
 今の自分には、これまでの形態の能力全てが備わっている。
 時間停止も、必殺技の吸収も。

 そして同時、この形態そのものが持つ戦闘力も、これまでの比ではない。
 恐らくは今この姿であれば、ライジングアルティメットとて単身で相手どれるに違いない。
 故に彼は、確信する。

 この姿こそが、自身最後の命に相応しい究極の姿だと。

793 ◆JOKER/0r3g:2018/10/09(火) 00:33:25 ID:UtBIvUvY

 そう今こうして誕生したこの新たな姿は当然、ディミディウス(半分)でも、グラディウス(剣)でも、クリペウス(盾)でもない。
 今までのカッシスワーム全ての能力を踏まえ、そして誕生した最強の戦士。
 なればこそこの形態を、敢えて今こう名付けよう。

 ――カッシスワーム ディアボリウス(魔王)、と。

 そしてこの新たなカッシスワームの誕生に、誰よりも強く深く乃木怜治は歓喜する。

 「ククク、この力さえあれば、もう間宮麗奈も門矢士も相手ではない……!」

 そして彼が口にしたのは、先ほど自分に苦汁を飲ませた二人の忌々しい参加者の顔。
 今すぐにでも彼らを引き裂くために行動するべきか考えて、放送まであと10分ほどしかないことに気付く。
 この身体の傷も、もう一人の自分を吸収し治癒力をも上げたとはいえ完全に無視できるものではない。

 であれば放送を聞き、そこでもたらされた情報を整理した後に行動を開始すれば、丁度良い具合に傷も癒えるだろう。
 そう、焦りは禁物だ。今はただこの新たな力がこの身体に馴染むまで、少しばかり休息を取るべきだろう。
 しかし、だからといってその瞳から戦意が陰ることはない。

 どころかそこに写る復讐の炎は、より勢いを増して。

 「待っていろ、間宮麗奈、そして門矢士……貴様らの命が尽きるのも、もう時間の問題だ――!」

 力強く宣戦布告を果たして、乃木怜治は、ワームを統べる魔王は一人廃工場を背に歩き出した。


【二日目 早朝】
【G-1 平原】


【乃木怜治@仮面ライダーカブト】
【時間軸】第44話 エリアZ進撃直前
【状態】ダメージ(大)、疲労(大)
【装備】なし
【道具】ブラックファング@仮面ライダー剣
【思考・状況】
0:取りあえず放送までこの近辺で傷を癒やす
1:大ショッカーを潰すために戦力を集める。使えない奴は、餌にする。
2:状況次第では、ZECTのマスクドライダー資格者も利用する。
3:最終的には大ショッカーの技術を奪い、自分の世界を支配する。
4:志村純一を警戒。まったく信用していないため、証拠を掴めばすぐに始末したい。
5:乾は使い捨ての駒。
【備考】
※もう一人の自分を吸収したため、カッシスワーム・ディアボリウスになりました。
※これにより戦闘能力が向上しただけでなくフリーズ、必殺技の吸収能力を取り戻し、両手を今までの形態のどれか好きなものに自由に変化させられる能力を得ました。
※現在覚えている技は、ライダーキック(ガタック)、ライダースラッシュ、暗黒掌波動の三つです。

794 ◆JOKER/0r3g:2018/10/09(火) 00:40:29 ID:UtBIvUvY
以上で仮投下終了です。
えー今回の話で仮投下を経た理由は明らかだと思いますが、一応ここに明文化しておきます。

・三島正人が守っているG-1エリアの秘密とやらが鍵の掛かった車そのもの、ないしはその荷台内の荷物にあること。
・カッシスワームがもう一人の自分を吸収した結果として今までの全ての形態全ての力を取り戻すことについて。
・その際、クリペウスのまま能力を取り戻したとしても締まらないかと思い描写したオリジナル形態、カッシスワームディアボリウスについて。

大きくこの三点が皆様にお伺いしたい点となります。
正直、ディアボリウスに関してはなくてもいい感じで書いてはいるのですが、今後士や麗奈との再戦という展開があった場合に「見た目は変わらないけど強くなったっぽい」という描写もなんか締まらないかなと思い、それならいっそオリジナル形態で作中内でも一目見て強くなったのが分かる方が描写としてスムーズかなと思い書きました。
また、その大前提となるもう一人の自分を吸収することによる能力の復活も所謂勿体ない精神の発露といいますか、あまり原作と紐付けられる描写ではないのは事実なので、気に入らないということがあればまた何か考えようと思います。

勿論、上記内容以外にも指摘点や修正点などございましたら是非ともお願いいたします。

795二人で一人の/通りすがりの名無し:2018/10/09(火) 02:23:31 ID:Z8fx5b8I
仮投下お疲れさまです!
オリジナル形態の登場など、特に問題はないかと。
ただいくら硬いとはいえ、必殺技を連続で何度も食らって中ダメージだけで済んでいるグラリスはちょっと違和感あるかもしれません。

796 ◆JOKER/0r3g:2018/10/09(火) 03:04:29 ID:UtBIvUvY
ご指摘ありがとうございます。
個人的に、グリラスはマキシマムハイパータイフーンを真っ向から受け止めてなおパーフェクトゼクターごとゼクターを叩き折るなど、フィジカル面ではカブト作中最強の怪人として書かれていた印象が強かったため、このような描写と相成りました。
勿論その後ガタックダブルカリバーの直撃に怯んだりと描写がぶれているという意見もありますが、あれは不意打ちと言うこともあり、意識して受け止めた攻撃、つまりタイマンでの技なら暗黒掌波動まで含めても精々が作中描写程度のダメージでもおかしくはないのかなと。
最もそうした解釈自体に違和感を覚えるということであれば、三島もまたダメージが大きく休息を取ろうとする感じに修正しようと思いますが、如何でしょうか?

797二人で一人の/通りすがりの名無し:2018/10/09(火) 16:56:44 ID:Z8fx5b8I
丁重な返信ありがとうございます。
確かに暗黒拳波動がマキシマム(以下略)より強いとも思えませんし、他に指摘されてる方もいないのでこのままでも大丈夫です

798 ◆JOKER/0r3g:2018/10/09(火) 23:18:33 ID:UtBIvUvY
>>797
返信ありがとうございます。
であれば、他には特に指摘もなかったということで、本投下の方をしてこようと思います。

799二人で一人の/通りすがりの名無し:2018/10/13(土) 12:35:37 ID:Rc919Ivs
>>780
お疲れ様です。本投下されwikiで新着で見たときは橘さんの壮烈な捨て身の戦いと
予想外に次ぐ予想外、そして恐るべき結末に身震いしました。

ところで過去の話も読み返しつつこの話を読み返してふと気づいたのですが、
ダグバ自身は志村個人の悪意や支配欲もあってアンデッド化し、ジョーカーアンデッドとしての力を手に入れたことで
橘さんの決死の道連れ首輪爆破による死滅を免れたかわりに、グロンギ怪人への変身能力は損なわれた(できたとしてもあのアフロな不完全体?)、
ということになるんでしょうか?
描写を見る限りだと、首輪の爆発だけでなく、そこに上乗せしてガドルの最期のように
グロンギベルト(デフォルトで爆薬入り)も誘爆してあそこまでの大爆発になった
=アンデッドになったダグバはともかくベルトは木っ端微塵?とも思ったもので。

800 ◆JOKER/0r3g:2018/10/13(土) 20:02:02 ID:30dhpGaM
>>799
ご意見、ご感想ありがとうございます。そんな感想を言っていただけると嬉しい限りです。
さてご意見についてですが、個人的には、当初はそのつもりで(つまりアンデッド化と引き替えにグロンギ態にはなれなくなる)書いていたのです。
が、書き始めるくらいにはその次話である132話「Diabolus」の構想が見えておりまして、無理矢理とはいえ首輪解除したダグバが全力で楽しめそうな相手が出てきた瞬間にその能力を失うというのも些か可哀相かなというのもあり、
描写的にはあれは首輪の爆発オンリー、彼自身のゲブロンはまだ爆発していない(つまり彼はまだセッティングアルティメット態に変身可能)という形で書かせていただきました。

とは言え元々こういった事情もあった為首輪の爆発描写にガドル戦等に見られるグロンギのゲブロン爆発を参考にしたのは事実で、特に作中脚注を入れなかったのも事実なので、もしそこらへんが分かりにくかった、ということであればまた本文に加筆しておこうと思います。

801 ◆LuuKRM2PEg:2019/11/09(土) 09:31:03 ID:zKM0KWMg
これより先日投下させて頂いた「フォルテ♪覚醒せよ、その魂」の修正版を投下させて頂きます。

802 ◆LuuKRM2PEg:2019/11/09(土) 09:32:05 ID:zKM0KWMg

「門矢士……いいや、士君。君には大きな借りができてしまったな」
「言ったはずだ、総司から啓介のことを頼まれたと。それに、総司だけじゃなくユウスケのことだってある。
 それだけだ」
「……士君、君は本当に世界を破壊する悪魔なのか? やはり、君が誰かを傷付けるような男には到底思えないが……」
「言ったはずだ。俺は世界の破壊者。
 かつて俺は、数え切れないほどの仮面ライダーを破壊した。そして俺の存在こそが、世界を破滅に導いている。
 もしかしたら、今こうしている間にも……俺のせいで破壊されている世界があるかもしれないぞ?
 例えば、啓介や渡が生きるキバの世界とかな」

 名護の希望を踏みにじるように、真っ向から否定した。
 例え何があろうとも、ディケイドが世界の破壊者であることは変わらないし、破壊者としての使命に目覚めてからは数え切れないほどのライダーを破壊した。だから、ディケイドである門矢士がいる限り、どこかの世界が破壊される運命にあると言われようとも否定しない。
 それこそ、ディケイドの影響で『キバの世界』の崩壊が確定することも、充分にあり得た。

「いいや、俺は君が破壊者と決めるつもりはない。例え、君の存在が世界の崩壊に何らかの関係があったとしても……俺は君の命を一方的に奪ったりなどしない。
 もちろん、俺とて愛する者が生きる世界が破壊されることを黙って見ているつもりはないし、また士君の影響で世界が消滅するのであれば……対策を考えるつもりだ」
「どうやって、俺から世界の崩壊を防ぐつもりだ? 俺が存在する限り、お前の世界が消える可能性を考えないのか?」

「一つの可能性に囚われすぎては、また別の可能性を見つけることはできない。
 俺達人間は、他者を慈しみ、そして未知に対する探究心を持ち合わせている。困難に陥ろうとも、その度に誰かと力を合わせて乗り越え続けた。
 だから、本当に君が世界滅亡の原因であろうとも、変える方法を見つけられるはずだ。士君が総司君を救ってくれたように、俺も世界と士君……そして紅渡君が救われる可能性を見つけたい」

 いわゆる、青臭い理想論だった。
 根拠はなく、また今も存亡の危機に陥っている世界の住民が聞けば、反発することに間違いはない。自らの世界を守るため、殺し合いに乗った者からすれば腸が煮えくり返るだろう。
 だけど、否定する気にはなれなかった。名護啓介はどこまでも真っ直ぐで、正義感に溢れていたからこそ、総司も信頼したのだから。

803 ◆LuuKRM2PEg:2019/11/09(土) 09:34:04 ID:zKM0KWMg
「なるほどな。やっぱり、お前は総司の師匠だな」
「総司君が自分の道を歩こうとしていることはわかった。ならば、そんな総司君が胸を張っていられるように、俺は俺として……この胸に宿る正義の炎に従い、最後まで戦うつもりだ」
「なら、俺は何も言わない。総司が自分の道を進んだように、啓介も啓介自身の道を歩けばいいだけだ」

 こうして、名護啓介もまた旅をし続けるのだろう。
 彼の助けを必要としている人間はまだいる。一人でも多くを守り、救うまでに歩みを止めるつもりがないことが、名護啓介という男だ。出会ってから間もないが、言霊と眼力から熱い心が感じられる。

「それと、城戸真司達のことも伝えるぞ。あいつらは、ここよりも南のエリアにいた」
「真司くん達にも会ったのか!?」
「ああ、放送で呼ばれた乃木という男と戦っていた。
 乃木は大ショッカーを潰そうとしていたが、邪魔と思った相手は容赦なく殺しにかかる奴だから気を付けろ。しかも、一度倒しても蘇るほどにしぶとい奴だ……きっと、今もどこかで俺たちのことを狙っているはずだ」

「乃木か……わかった。その男についても注意しよう。
 だけど、真司君たちも強いから簡単に負けることはないと、俺は信じている。修二君やリュウタロス君も、今はまだ未熟かもしれないが……いつか総司君と肩を並べられるほどに、成長してくれるはずだ」

 名護の言う通り、城戸真司と間宮麗奈は強い意志を見せていた。リュウタロスも乃木に抗っていたようだし、三原修二も決して逃げ出さずにみんなと共にいた。
 だから、彼ら4人が弱いだなんてありえないし、リュウタロスと三原の二人も総司のように成長するだろう。

「俺が伝えるべきことはもう伝えた。さっさと病院に戻るぞ」
「そうだな。そして士君、もしもまだ仲間を探すのであれば……一条薫や左翔太郎君とも出会うんだ。彼らは今、サーキット場で特訓をしているが、特訓が終われば病院で出会えるはずだ」
「一条薫と左翔太郎か……」

 その途端、自分でも声のトーンが下がっていくのを感じた。
 北のサーキット場には、かつてスーパーショッカーとの戦いで共闘した左翔太郎がいる。再会は喜ばしいが、自らの存在が彼に危害を及ぼす可能性も生まれてしまう。
 ディケイドの影響で他のライダーが命を落とす……やはり、ただの戯言と切り捨てることはできなかった。

「……なら、あいつらにも会うときが来るかもな」

 しかし、自分一人のワガママを押し通して、総司や名護の仲間を無視することなどできない。キングや乃木はもちろんのこと、フィリップについても翔太郎達に伝える必要があった。

「乗れ、こいつを使った方が早い」

 そう言いながら、トライチェイサーの後部座席に乗ることを促す。頷く名護の姿からは、先程までの焦燥感は見られず、ただ威風堂々とした雰囲気を放っている。

 ――今回は名護啓介と一緒にいるんだね、士。君は世界の破壊者じゃなかったのかい?

 ふと、海東大樹の嫌味が聞こえた気がした。
 しかし、いつもの得意げな笑みを浮かべているようにも感じる。素直じゃなかったが、やはり彼も仮面ライダーとしての心意気を持っていたのだろう。
 もっとも、普段の海東の素行は到底褒められなかったが。

(悪いが、今の俺はディケイドとして戦うことができない。それに、総司やユウスケのために啓介を守る……それだけだ)
 ――なるほどね。なら、僕は高みの見物をさせて頂こう。破壊者である士が、本当に彼を守り切れるのかどうかを。

 精々頑張りたまえ。その言葉を最後に、海東の皮肉は聞こえなくなった。

804 ◆LuuKRM2PEg:2019/11/09(土) 09:37:23 ID:zKM0KWMg


 ◆


(門矢士か……感じのいい青年だ。やはり、ユウスケ君の言う通りだった)

 通りすがりの仮面ライダーこと門矢士の笑みを胸に刻んだ名護啓介は、ただ前を見つめている。
 士からは色々と世話になった。総司や真司、そして紅渡のことを伝えて貰っただけではなく、同行してもらっている。
 ここまでサポートをして貰ったからには、士を裏切らないように戦うべきだった。キングの他にも、乃木怜治という危険人物を知ったからには、余計にこの命を粗末にできない。

(総司君、君の進むべき道は分かった……君が自分一人で旅立とうというなら、俺は信じて待とう。
 男の旅立ちを邪魔するなんて無粋な真似はしない)

 一抹の寂しさを抱くが、それ以上に総司の決断を祝福していた。
 総司は多くの人間の守りがあって仮面ライダーカブトになったように、今度は誰かを守る盾として歩けるようになった。
 事実、総司は自分の助けがなくとも、士と共にキングに勝っている。ならば、士が言うように今は彼を待ち続けて、再び巡り会える時が来たら祝福しよう。
 その時が来たら、より大きく成長した総司の姿が見られるはずだ。

(士君だけじゃない。今の俺は、ヒビキや橘……そして音也など、たくさんの仮面ライダー達から想いを継承された。ならば今の俺がやるべきことは、これまでと同じだ)

 今の自分がやるべきことは、数多くの仮面ライダー達と同じように正義を成し遂げること。弟子の総司が広い世界に向かって羽ばたいたのに、師匠が総司だけにこだわってどうするのか。
 悪魔の集団大ショッカーを正義のためにも倒して、そして士や総司を始めとした仮面ライダーたちを生存させた上で、世界滅亡を止める方法も見つけたかった。例え、ディケイドの存在が世界が破壊される要因であろうとも、最後まで諦めてはいけない。
 何かを破壊するための力は、同時に何かを生み出すことにも繋がる。士は総司の絶望を破壊して、新たなる道を歩むきっかけを作ったように。
 翔太郎や一条、そして士からは無茶をするなと咎められたのだから、やはりこの命を粗末にすることはできなかった。
 総司と胸を張って再会できるよう、一人でも多くを救うために進みたかった。その為にも、まずは体を休めるべき。

――僕は、僕の守りたいものを全て守るだけです

 不意に、闇のキバに変身した青年の声が脳裏に蘇る。

――はい、俺、中途半端はしません、絶対に!

 そして、ほんの僅かな再会を果たした小野寺ユウスケの力強い声も、頭の中でリプートされた。
 彼らのことを全て知る訳ではない。しかし、二人は純粋な想いを胸に抱いたのは確かだ。どんな理由があろうとも、彼らに殺し合いを強制させた大ショッカーに正当性など認めてはいけなかった。
 二人のように、すべてのものを守るためにも、中途半端なことをしない。もちろん、津上翔一が最期に言い残したように、中途半端でも生き続けることを忘れるつもりはない。
 そうでなければ、元の世界で帰りを待っている最愛の妻にも顔向けができなかった。


 ◆


 名護啓介と共に、門矢士はD-1エリアの病院に辿り着いていた。
 ここでは、キングの罠によって命を奪われた津上翔一が眠っている。名護から彼が眠る場所まで案内してもらったが、苦い記憶をほじくり返したはずだ。
 その償いとして、せめて総司のことを翔一に伝えたい。

805 ◆LuuKRM2PEg:2019/11/09(土) 09:40:26 ID:zKM0KWMg

「津上翔一。啓介から聞いたぞ……最期まで総司の無事を願っていたと。だけど、総司のことなら心配するな。あいつはもう、一人で飛べる」

 津上翔一がどんな男であるか、士には全くわからない。
 かつて、『アギトの世界』にて芦河ショウイチは葦原涼のように荒んでいたが、他者を思いやり続ける熱い心を持ち続けていた。大切な人間を守るために戦っていたショウイチや涼の姿を忘れられる訳がない。
 だから、ショウイチのパラレルにして涼の仲間である翔一も、強さと優しい心を持ち合わせた男のはずだった。

「お前が最期に何を想ったのか、俺は知らない。だけど、お前のことだから総司たちの無事を願っていたはずだ。
 翔一も知ってるように、あいつらはみんな強いぞ? 真司、麗奈、修二、リュウタロス、そして総司と啓介……転んで怪我をしても、最後には立ち上がっている。だから、翔一は何も心配しなくていいんだ」

 総司は翔一の命を奪ったことで絶望していたが、それでも士の命を守ろうとしてくれた。彼の心の強さは、翔一の影響もあったはずだ。
 真司と麗奈だって充分な強さを持っているし、二人のように三原修二とリュウタロスが成長する可能性もある。だから、翔一が心配する必要はないことを伝えたかった。

「翔一はゆっくり休んでいろ。そして、みんなのことを見守っていればいい……翔一の分まで、俺達が戦ってやるから。俺は門矢士、通りすがりの仮面ライダーだからな……覚えておかなくてもいいが」

 そう言い残して、翔一が眠る地から背を向ける。

「士君、もういいのか?」
「ああ、総司たちのことはもう伝えた」

 伝えるべきことは山ほどあるが、今は翔一のことばかりを考えていられない。残るは翔太郎と一条、それに紅渡など探すべき相手はいる。彼らが乃木やキングの襲撃に遭う可能性を考えたら、いつまでも病院に留まれなかった。
 そのまま、士は名護と共に病院に戻ろうとしたが。

 ――ありがとう。

 どこからともなく、声が聞こえたような気がした。

「啓介、呼んだか?」
「いいや、俺は何も言っていないぞ?」

 名護からは否定されてしまう。
 反射的に振り向くが、誰かの気配は感じられない。もしかしたら、キバーラかと思ったが……男の声だった。ただの幻聴と、すぐに疑問を振り払う。

 ――総司君を助けてくれて。

 しかし、またしても男の声が聞こえてきた。
 穏やかなその声は聞き覚えがある。大ショッカーとの戦いで共闘した仮面ライダーアギトに変身した男の声とよく似ていた。

「今の声は……?」

 まるで誰かから呼ばれているように思えて、背後を振り向く。
 すると、翔一が眠る地面の中から、眩い光の玉が飛び出してくるのが見えた。あれは何か……そんな疑問と同時に、光の玉は士に向かって飛び込んでくるのが見えて、反射的に目を閉じてしまった。



「お前は……誰だ?」

 優しくて、暖かい光の中で誰かが微笑んでいるのが見えた。
 士が驚愕する一方、その男は優しい笑みを向けてくれている。まるで、破壊者である士のことを微塵も疑っていないようだ。

「まさか、お前は仮面ライダーアギト……津上翔一なのか!?」

 根拠はなく、ほとんど直感に任せた問いかけだったが、男は微笑みながら頷く。
 次の瞬間、男の姿は瞬時に変わっていき、仮面ライダーへと変身した。深紅の瞳と、黄金色の角と装甲を誇るその姿は知っている。『アギトの世界』を象徴する戦士・仮面ライダーアギトだ。
 しかし、アギトである翔一は既に命を落としているはずなのに、どうして目の前に立っているのか。

806 ◆LuuKRM2PEg:2019/11/09(土) 09:45:01 ID:zKM0KWMg

「翔一……!」

 士は呼びかけるが、翔一が変身するアギトは何も答えない。
 ただ、その赤い目からはひたすら優しい雰囲気を帯びていて、五代雄介や小野寺ユウスケを彷彿とさせる笑顔を浮かべていることが感じられた。
 翔一にも言いたいことが山ほどあった。ディケイドのせいで翔一は命を奪われてしまい、総司を悲しませてしまったことを。
 しかし、この想いを口にしようとしたが、目の前に立つアギトの姿がぼやけていく。

「翔一……? 翔一……ッ!?」

 翔一の名前を叫ぶも、アギトが消えていくのを止められない。
 アギトの姿と翔一の笑顔が、足下から光の粒となるように消えていった。

 ――士、君の本当の旅はこれからも続く。

 そんな中、翔一の声が聞こえたような気がした。
 翔一が口にしている保証はなく、ただの幻聴かもしれない。しかし、その声は確かに心の中に響いていた。

 ――その魂を、目覚めさせるよ!

 そんなメッセージと共に、士の意識は光に飲み込まれてしまった。

「翔一…………っ!」




 アギトの力は幾度となく奇跡を起こしている。
 人間の未来を守り抜いた仮面ライダーアギトが幾度も進化したように。津上翔一は数多の困難にぶつかり、そして挫けそうになろうとも、最後まで人間の未来を守るために戦い続けた。
 そんな津上翔一の中には未だにアギトの力が宿っており、最期まで総司達を救いたいという願いを抱いていた。翔一の願いに士の声が届き、新たなる奇跡が起きようとしている。
 それは…………


「……君! 士君!」

 名護の声が耳に響いて、沈んでいた意識が覚醒した。

「……啓介?」
「士君、大丈夫か? 奇妙な光が君の前に飛び込んでいたから、何事かと思ったが……怪我はなさそうだ。
 それと、そのカードはいったい何だ? いつの間にか、君が握りしめていたが……」
「カード……?」

 すぐ隣で支えてくれていた名護の言葉により、反射的に手元を見つめる。すると、驚愕で目を見開いた。

807 ◆LuuKRM2PEg:2019/11/09(土) 09:46:32 ID:zKM0KWMg

「……これは、アギトのカード?」

 気が付いたら、士の手には三枚のライダーカードが握られていた。仮面ライダーアギトが描かれたカードであり、アギトの力を取り戻したことを意味する。
 だが、何故アギトの力を取り戻したのか? 仮面ライダーアギトである津上翔一は、もうこの世にいないはずなのに。

「まさか……翔一、お前なのか? お前が俺を呼んで、そしてアギトを託してくれたのか!?」

 士は叫ぶが、答えは返ってこない。
 謎の光は既に収まっており、翔一の声も聞こえなかった。


 これこそが、津上翔一の中に宿るアギトの力が成し遂げた奇跡だ。
 翔一が変身するアギトの力が、士の持つライダーカードに受け継がれて……ディケイドはアギトの力を取り戻した。
 人類の進化の象徴であるアギトが、肉体が滅んだ程度で消滅することはあり得ない。その魂は津上翔一の意志と共に、誰かの未来をより良くすることを待ち続けていた。最期の願いを叶えてくれた士だからこそ、アギトの力を託すにふさわしいと翔一から認められた。
 ディケイドライバーには秘石・トリックスターと神秘の印・シックスエレメントが内蔵されており、ディケイドが他世界のライダーに変身するために必要な力の代替となっている。当然、ディケイドの中にはアギトの力も含まれていた。
 既にアギトの力による奇跡には前例があった。この殺し合いでも、木野薫の中に遺されたアナザーアギトの力が、葦原涼をエクシードギルスに進化させている。
 より遡るなら、かつて門矢士が芦河ショウイチのアギトを進化させたように、津上翔一がディケイドの中で眠っていたアギトの覚醒を果たした。



 しかし、士がその事実に気付くことはなく、ただアギトのカードを見つめているだけ。
 確かなことは、翔一のおかげでアギトの力を取り戻したことだ。そんなアギトはカードになっても、輝いているように見えた。まるで、士との絆を証明するように。

「翔一君……君は、死してなお俺たちのことを見守ってくれているのか!?」

 驚いているのは名護も同じだ。
 彼は翔一の最期を見届けている。翔一は総司だけでなく、名護たちの無事も祈っていたはずだ。だから、翔一の遺志を受け継ぐためにも、名護の命も絶対に守らなければいけない。

「啓介、これではっきりしたな。総司だけじゃなく、翔一も啓介が生きることを願っていた……尚更、お前の無茶を止めなければいけないな」
「痛いところを突かれたな……だが、士君の言うことはもっともだ。俺は総司君だけじゃなく、翔一君の願いも尊重してあげたい」

 名護も頷いてくれる。
 しかし、彼の表情からは張り詰めたような雰囲気は消えていた。総司の命を救うことで視野狭窄に陥っていたが、今の名護ならもう心配はいらない。
 名護啓介もまた、多くの遺志を受け継いでいるのだから、自分の命を蔑ろにする無茶はしないはずだ。

808 ◆LuuKRM2PEg:2019/11/09(土) 09:52:00 ID:zKM0KWMg

「それが翔一の答えなら……俺は旅を続けよう! 翔一が見守るなら、俺達は前に進み続けるだけだ」

 だからこそ、翔一に対する感謝を込めながら宣言する。津上翔一の名前と朗らかな笑顔を胸に刻みながら。
 彼は信じてくれたのだから、その気持ちには応えたい。翔一のためにも、今は一人でも多くの仮面ライダーに会うべきだろう。
 死ぬなよ、お前ら。これまでに出会い、そしてこの先で待ち構えているであろう仮面ライダー達の無事を祈りながら、門矢士は名護啓介と共に進んでいた。


【二日目 朝】
【D-1 病院前】


【門矢士@仮面ライダーディケイド】
【時間軸】MOVIE大戦終了後
【状態】ダメージ(中)、疲労(大)、決意、仮面ライダーディケイドに1時間40分変身不能
【装備】ディケイドライバー@仮面ライダーディケイド、ライダーカード一式@仮面ライダーディケイド、ディエンドライバー+ライダーカード(G3、王蛇、サイガ、歌舞鬼、コーカサス)+ディエンド用ケータッチ@仮面ライダーディケイド、トライチェイサー2000@仮面ライダークウガ
【道具】支給品一式×2、ケータッチ@仮面ライダーディケイド、キバーラ@仮面ライダーディケイド、 桜井の懐中時計@仮面ライダー電王 首輪探知機@オリジナル
【思考・状況】
基本行動方針:大ショッカーは、俺が潰す!
0:どんな状況だろうと、自分の信じる仮面ライダーとして戦う。
1:今は啓介と共に病院で休む。
2:巧に託された夢を果たす。
3:友好的な仮面ライダーと協力する。
4:ユウスケを見つけたらとっちめる。
5:ダグバへの強い関心。
6:音也への借りがあるので、紅渡を元に戻す。
7:仲間との合流。
8:涼、ヒビキへの感謝。
【備考】
※現在、ライダーカードはディケイド、クウガ〜電王の力を使う事が出来ます。
※該当するライダーと出会い、互いに信頼を得ればカードは力を取り戻します。
※ダグバが死んだことに対しては半信半疑です。
※津上翔一に宿るアギトの力はライダーカードに受け継がれたため、アギトのカードは力を取り戻しました。


【名護啓介@仮面ライダーキバ】
【時間軸】本編終了後
【状態】疲労(中)、ダメージ(中)、精神疲労(中)、左目に痣、決意、仮面ライダーイクサに50分変身不能、仮面ライダーブレイドに55分変身不能
【装備】イクサナックル(ver.XI)@仮面ライダーキバ、ガイアメモリ(スイーツ)@仮面ライダーW 、ファンガイアバスター@仮面ライダーキバ
【道具】支給品一式×2(名護、ガドル)
【思考・状況】
基本行動方針:悪魔の集団 大ショッカー……その命、神に返しなさい!
0:自分の正義を成し遂げるため、前を進む。
1:直也君の正義は絶対に忘れてはならない。
2:総司君のコーチになる。
3:紅渡……か。
4:例え記憶を失っても、俺は俺だ。
5:どんな罪を犯したとしても、総司君は俺の弟子だ。
6:一条が遊び心を身に着けるのが楽しみ。
7:最悪の場合スイーツメモリを使うことも考慮しなくては。
8:キングや乃木怜治のような輩がいる以上、無謀な行動はできない。
【備考】
※ゼロノスのカードの効果で、『紅渡』に関する記憶を忘却しました。これはあくまで渡の存在を忘却したのみで、彼の父である紅音也との交流や、渡と関わった事によって間接的に発生した出来事や成長などは残っています(ただし過程を思い出せなかったり、別の過程を記憶していたりします)。
※「ディケイドを倒す事が仮面ライダーの使命」だと聞かされましたが、渡との会話を忘却した為にその意味がわかっていません。ただ、気には留めています。
※自身の渡に対する記憶の忘却について把握しました。
※士に対する信頼感が芽生えたため、ディケイドが世界破壊の要因である可能性を疑いつつあります。

809 ◆LuuKRM2PEg:2019/11/09(土) 09:52:49 ID:zKM0KWMg
以上で修正投下を終了します。
気になる点があれば、再度のご意見をお願いします。

810 ◆LuuKRM2PEg:2019/11/10(日) 18:27:38 ID:lBpj8eXI
>>802より前に以下のやりとりが抜けていたので、報告をさせて頂きます。


「啓介。お前は渡をどうするつもりだ?」
「……紅渡と出会った時、何をするべきかはまだ決まっていない。居場所や、顔もわからない男を探すことは困難だろう。だが、彼が涙を流しているのであれば……俺は彼の手を取るつもりだ。
 総司君は言っていた。俺は紅渡を最高の弟子と認めていたと……だから俺は弟子である彼を救いたい」
「ならば、やはり啓介には無理をさせられないな。お前みたいな奴は、例え自分が不利な状況になろうとも誰かのために戦おうとする。周りの制止を振り払ってでもな。
 啓介のことだ。総司のことを守るためなら、自分を盾にするつもりだったはずだ……あいつを守りたいのは結構だが、お前が死ぬことを総司が望むわけないだろう」

 すると、名護は黙り混んでしまう。
 図星だろう。一真や巧だって、自らの傷を省みずに戦い抜いたのだから、名護も自己犠牲で悪に立ち向かおうとしてもおかしくない。

「そもそも、お前や総司は病院でキングたちと戦ったばかりだろ? なら、時間制限も解除されていない。総司からお前のことを頼まれた以上、くだらない罠で死なせる訳にはいかないからな」

 正確な残り時間はわからないが、今の名護は制限で仮面ライダーとして戦えないはずだ。加えて、大ショッカーが追加戦力を会場に投入することを知らせた以上、名護が不意討ちを受ける危険すらある。

「それに、俺も総司と共に戦ったばかりで、どうせ制限を受けている。制限が解除されることをただ待つよりも、お前の独断行動を止めた方が有意義だ。
言っておくが、お前が無茶をするなら、腕尽くでも止めるつもりだからな?」
「……何から何まで、見抜かれていたか。そういうことなら、君の好意に甘えさせてもらおう」

 やはり、図星だったのだろう。名護のような純粋な男は非常にわかりやすく、また嘘が苦手だ。
 名護のことを止めようとしていたことは本当し、腕尽くというのも決して建前ではない。総司には悪いと思うが、名護がどんな無茶を働くのか分からない以上、強引にでも止めさせるべきだった。

811 ◆LuuKRM2PEg:2019/11/12(火) 21:24:18 ID:Q4dHYAas
重ね重ね、失礼します。
自作を一部修正させて頂くことを報告します。

彼らが乃木やキングの襲撃に遭う可能性を考えたら、いつまでも病院に留まれなかった。

彼らが乃木やキングの襲撃に遭う可能性もあったが、今は体力の回復と変身制限解除のために休むしかなかった。

812 ◆JOKER/0r3g:2019/12/09(月) 22:27:47 ID:aD40loOI
ご指摘の部分を修正いたしましたので、早速こちらに投下しようと思います。
まずはナイト相手にアクセルを使おうとするシーンからです。

813 ◆JOKER/0r3g:2019/12/09(月) 22:28:22 ID:aD40loOI
「……中々しぶといですね。しかし、そろそろ終わりにしましょう」

自分が加わってなおここまで手こずるとは思っていなかったのか、呆れと共に賞賛の情さえ込めた声を投げたファイズは、自身の腰に取り付けられた懐中電灯型アタッチメントへと手を伸ばす。
実力に劣るファイズすら碌に打倒できない有体のナイトを終わらせるには、やはり現状の最高威力を誇るクリムゾンスマッシュの一撃が有効だろう。
だがその腕がミッションメモリーをファイズポインターに装填するその寸前、彼の身体は唐突に現れた茶色の腕によって大きく吹き飛ばされていた。

814 ◆JOKER/0r3g:2019/12/09(月) 22:29:13 ID:aD40loOI
続いては件のパンチホッパー相手にアクセルを使用するシーンです。

815 ◆JOKER/0r3g:2019/12/09(月) 22:29:44 ID:aD40loOI
「……王!?」

そしてその予想だにしていなかったオーガの敗北は、ファイズの元にも届いていた。
王の目金にすら敵うオーガの圧倒的な力が、今は逆に身体を蝕む毒として王を苦しめている。
今すぐにでもそれを止めなければと、彼は脇目も振らぬまま、王の身体からオーガドライバーを引き剥がす為に走り出そうとする。

「俺を忘れるな」

だが瞬間、突如として目前に現れたパンチホッパーがその行く手を阻む。
言葉を返すより早くファイズは拳を振るうが、パンチホッパーには届かない。
躱し、或いは受け止め、その全てを時間の浪費という形で徒労に終わらせてくる。

「クッ、この死に損ないが――!」

「死に損ないはどっちだ」

らしくなく激情に身を任せ乱打を続けるファイズの面へ、パンチホッパーのストレートパンチが突き刺さる。
呻き後退したファイズを見やりながら、この因縁を終わらせるためにパンチホッパーは自身のベルトへと手を伸ばした。

――RIDER JUMP

電子音声と共に跳び上がった敵を睨みつけ、憤りを込めてファイズはファイズショットを握りしめる。
この一撃で示すのだ。オルフェノクの築く未来は揺るがないのだと、オルフェノクこそがこの世を支配するに相応しいと信じた自分は、間違っていなかったのだと。
ただならぬ思いを込め、グランインパクトを放つファイズ。

――RIDER PUNCH

それを迎え撃つは、宙より降り立つパンチホッパーの、ただ正義の勝利を信じる鋭い拳。
ぶつかり合った二つの意思と拳は、高速の世界でなお変わらぬ速度を誇る光に包まれて、大きな衝撃と共に両者を吹き飛ばした。

816 ◆JOKER/0r3g:2019/12/09(月) 22:30:27 ID:aD40loOI
以上です。
ご指摘の箇所は修正できたと思いますが、まだ何か問題があればよろしくお願いします。

817 ◆LuuKRM2PEg:2019/12/21(土) 21:38:54 ID:RP1d2.yA
以前投下した拙作の「フォルテ♪覚醒せよ、その魂」にて、アギトの力継承パートについて他書き手氏より意見がありましたので
修正版を投下させていただきます。

818 ◆LuuKRM2PEg:2019/12/21(土) 21:39:56 ID:RP1d2.yA
 名護啓介と共に、門矢士はD-1エリアの病院に辿り着いていた。
 ここでは、キングの罠によって命を奪われた津上翔一が眠っている。名護から彼が眠る場所まで案内してもらったが、苦い記憶をほじくり返したはずだ。
 その償いとして、せめて総司のことを翔一に伝えたい。

「津上翔一。啓介から聞いたぞ……最期まで総司の無事を願っていたと。だけど、総司のことなら心配するな。あいつはもう、一人で飛べる」

 津上翔一がどんな男であるか、士には全くわからない。
 かつて、『アギトの世界』にて芦河ショウイチは葦原涼のように荒んでいたが、他者を思いやり続ける熱い心を持ち続けていた。大切な人間を守るために戦っていたショウイチや涼の姿を忘れられる訳がない。
 だから、ショウイチのパラレルにして涼の仲間である翔一も、強さと優しい心を持ち合わせた男のはずだった。

「お前が最期に何を想ったのか、俺は知らない。だけど、お前のことだから総司たちの無事を願っていたはずだ。
 翔一も知ってるように、あいつらはみんな強いぞ? 真司、麗奈、修二、リュウタロス、そして総司と啓介……転んで怪我をしても、最後には立ち上がっている。だから、翔一は何も心配しなくていいんだ」

 総司は翔一の命を奪ったことで絶望していたが、それでも士の命を守ろうとしてくれた。彼の心の強さは、翔一の影響もあったはずだ。
 真司と麗奈だって充分な強さを持っているし、二人のように三原修二とリュウタロスが成長する可能性もある。だから、翔一が心配する必要はないことを伝えたかった。

「翔一はゆっくり休んでいろ。そして、みんなのことを見守っていればいい……翔一の分まで、俺達が戦ってやるから。俺は門矢士、通りすがりの仮面ライダーだからな……覚えておかなくてもいいが」

 そう言い残して、翔一が眠る地から背を向ける。

「士君、もういいのか?」
「ああ、総司たちのことはもう伝えた」

 伝えるべきことは山ほどあるが、今は翔一のことばかりを考えていられない。残るは翔太郎と一条、それに紅渡など探すべき相手はいる。

「啓介、翔一は確か言っていたそうだな。中途半端でもいいから、生きろと」
「その通りだ。彼は、死にいく最期の時まで、自分の傷に目を向けずに……一条に生きろと言っていた。いいや、一条だけじゃない。翔太郎君や俺も含まれていた。
 そして、彼は最期まで総司君の身も案じていた。だから、総司君を救ってくれた士君のことを感謝しているはずだ」
「だったら、俺達はここで待たないといけないようだな。総司は旅に出て、一条薫と翔太郎の二人もサーキット場で特訓している最中だ。
 それに、真司達もいつかここに戻ってくるかもしれない……その時、帰る場所が滅茶苦茶になっていたら安心していられないだろ?」

 大ショッカーによって用意された病院だが、名護や総司たちは確かに同じ時間を過ごしていた。真司や麗奈、三原やリュウタロスもいたはずだ。
 一度はキングによって滅茶苦茶にされたが、名護たちがここで絆を培ってきたことは変わらない。憩いの空間が壊されても、立て直すことができる。

819 ◆LuuKRM2PEg:2019/12/21(土) 21:40:39 ID:RP1d2.yA
「確かに、みんながここで過ごしてきた時間はかけがえのないものだ。キング達によって壊されたが……荒れた場所なら整えればいいし、そこでみんなを迎えることだってできる」
「ああ、俺達が色々準備して“前みたい”……とまではいかなくても、安心できる病院に作り直せるはずだ」

 キングに対する嫌みを含めながら、名護を励ますように呟く。
 総司は何度倒れそうになっても立ち上がったように、彼が帰るべき場所を何度壊されようとも立て直せばいい。真司達だって、今はどこかで戦っているはず。
 いつか、みんなとまた巡り会うときが来るまで、帰ってくる場所を守るべきだろう。光栄次郎が、自分たちの帰りをいつだって待ってくれたように。

「なら、俺と士君の二人で少しずつ立て直していこう。そしてもう一つ、俺は君のことをもっと知りたい。士君のことを知っていけば、士君と全ての世界を救える方法が見つけられるからな」
「別に構わないが、そんなことをしても無駄だと思うぞ? 俺の意思とは関係なく、世界が破壊されたらどうするつもりだ」
「いいや、どんな経験だろうと決して無駄にはならない。学んだこと、経験したこと……全てが可能性を広げるきっかけになる。今を生きる子ども達だって、たくさん勉強を重ねれば将来の進路だって安定するのと、同じ理由だ」
「……確かに、勉強して知識を増やせば、視野も広がるな」

 まるで子どもに言い聞かせるような理屈だが、特に否定するつもりはない。
 士自身、これまでの旅では巡り会ってきた仮面ライダー達のことを知ったからこそ、絆と共に力を手にすることができたからだ。

「俺も、将来父親になる時が訪れたら、我が子にはたくさんの教育と経験を積ませるつもりだ。ゆとりを持ち、それでいて頼れる人間になれる願いを込めて」
「だったら、お前を守らなければいけない理由も増えたな。総司だけじゃなく、翔一も啓介が生きることを願っていたなら……お前の子どもだって、父親には生きていてほしいと願うはずだ」
「痛いところを突かれたな……だが、士君の言うことはもっともだ。俺は総司君だけじゃなく、翔一君の願いも尊重してあげたい」

 名護も頷いてくれる。
 しかし、彼の表情からは張り詰めたような雰囲気は消えていた。総司の命を救うことで視野狭窄に陥っていたが、今の名護ならもう心配はいらない。
 名護啓介もまた、多くの遺志を受け継いでいるのだから、自分の命を蔑ろにする無茶はしないはずだ。

「親がいなくなったら、子どもにとって大きなトラウマになる。お前は、自分の家族にそんな傷を負わせたいのか?」
「そんなはずはないだろう! 俺は、愛する妻と子には最大の愛情を持って向き合うつもりだ!
 もちろん、時には互いにぶつかることがあるだろう。だけど、自分の立場や感情を押しつけず、そして相手の言い分も認めていきたい。
 相手の怒りも受け止めて、お互いに大きくなっていくつもりだ」
「なるほど……総司も、そうやって成長できたんだな。この際だ、総司が戻ってくるまでに、総司のことをお前から聞いておくことにする」
「ああ、いくらでも構わないとも。それに俺も、士君だけじゃなく……ユウスケ君のことだって知りたかった。ユウスケ君をよく知る士君にしか、聞けそうにないからな」
 
 病院に向かう足取りと、声のトーンが軽やかになっていく。
 この男……名護啓介に出会えて正解だったと、そんな思考が芽生えてしまう。総司はもちろんのこと、この地でユウスケが何をしていたのかをほんの少しでも知ることができるのだから。
 きっかけこそは最悪だし、野上良太郎の死を冒涜するような思考はできるわけがない。だけど、フィリップ達から離れたことで、真司や総司を守り、名護の無茶を止めることができたことは確かだ。
 起こしてしまったことは変えられないが、一番重要なことは今だ。良太郎や翔一の分まで戦い、みんなの居場所を守り続けることが自分の義務だろう。

(良太郎、翔一……お前らはみんなを見守っていてくれればいい。良太郎や翔一が見守るなら、俺達は前に進み続けるだけだ)

 だからこそ、良太郎と翔一に対する感謝を込めながら心の中で宣言する。
 彼らは願っていたのだから、その気持ちには応えたい。二人のためにも、今は一人でも多くの仮面ライダーに会うべきだろう。
 死ぬなよ、お前ら。これまでに出会い、そしてこの先で待ち構えているであろう仮面ライダー達の無事を祈りながら、門矢士は名護啓介と共に進んでいた。

820 ◆LuuKRM2PEg:2019/12/21(土) 21:42:07 ID:RP1d2.yA
【二日目 朝】
【D-1 病院前】


【門矢士@仮面ライダーディケイド】
【時間軸】MOVIE大戦終了後
【状態】ダメージ(中)、疲労(大)、決意、仮面ライダーディケイドに1時間40分変身不能
【装備】ディケイドライバー@仮面ライダーディケイド、ライダーカード一式@仮面ライダーディケイド、ディエンドライバー+ライダーカード(G3、王蛇、サイガ、歌舞鬼、コーカサス)+ディエンド用ケータッチ@仮面ライダーディケイド、トライチェイサー2000@仮面ライダークウガ
【道具】支給品一式×2、ケータッチ@仮面ライダーディケイド、キバーラ@仮面ライダーディケイド、 桜井の懐中時計@仮面ライダー電王 首輪探知機@オリジナル
【思考・状況】
基本行動方針:大ショッカーは、俺が潰す!
0:どんな状況だろうと、自分の信じる仮面ライダーとして戦う。
1:今は啓介と共に病院で休む。
2:巧に託された夢を果たす。
3:友好的な仮面ライダーと協力する。
4:ユウスケを見つけたらとっちめる。
5:ダグバへの強い関心。
6:音也への借りがあるので、紅渡を元に戻す。
7:仲間との合流。
8:涼、ヒビキへの感謝。
【備考】
※現在、ライダーカードはディケイド、クウガ、龍騎〜電王の力を使う事が出来ます。
※該当するライダーと出会い、互いに信頼を得ればカードは力を取り戻します。
※ダグバが死んだことに対しては半信半疑です。


【名護啓介@仮面ライダーキバ】
【時間軸】本編終了後
【状態】疲労(中)、ダメージ(中)、精神疲労(中)、左目に痣、決意、仮面ライダーイクサに50分変身不能、仮面ライダーブレイドに55分変身不能
【装備】イクサナックル(ver.XI)@仮面ライダーキバ、ガイアメモリ(スイーツ)@仮面ライダーW 、ファンガイアバスター@仮面ライダーキバ
【道具】支給品一式×2(名護、ガドル)
【思考・状況】
基本行動方針:悪魔の集団 大ショッカー……その命、神に返しなさい!
0:自分の正義を成し遂げるため、前を進む。
1:直也君の正義は絶対に忘れてはならない。
2:総司君のコーチになる。
3:紅渡……か。
4:例え記憶を失っても、俺は俺だ。
5:どんな罪を犯したとしても、総司君は俺の弟子だ。
6:一条が遊び心を身に着けるのが楽しみ。
7:最悪の場合スイーツメモリを使うことも考慮しなくては。
8:キングや乃木怜治のような輩がいる以上、無謀な行動はできない。
【備考】
※ゼロノスのカードの効果で、『紅渡』に関する記憶を忘却しました。これはあくまで渡の存在を忘却したのみで、彼の父である紅音也との交流や、渡と関わった事によって間接的に発生した出来事や成長などは残っています(ただし過程を思い出せなかったり、別の過程を記憶していたりします)。
※「ディケイドを倒す事が仮面ライダーの使命」だと聞かされましたが、渡との会話を忘却した為にその意味がわかっていません。ただ、気には留めています。
※自身の渡に対する記憶の忘却について把握しました。
※士に対する信頼感が芽生えたため、ディケイドが世界破壊の要因である可能性を疑いつつあります。

821 ◆LuuKRM2PEg:2019/12/21(土) 21:57:35 ID:RP1d2.yA
以上で修正版の投下を終了します。
具体的には、アギトの力の継承に関する流れに無理があるという内容の指摘を受けて、修正をさせて頂きました。
投下して一月近く経過した状況で、展開そのものを大きく変えるような修正をする形で申し訳ありません。
重ね重ね失礼いたしますが、もしもご意見等があればよろしくお願い致します。

822 ◆JOKER/0r3g:2019/12/22(日) 00:07:17 ID:Pf/.137o
迅速な修正、及び加筆、お疲れ様です。
わざわざ言うことでないかとも思いましたが逆にぼかして責任逃れのようになるのも嫌だったので先に断っておきますと、今回の修正をお願いした書き手とは私のことです。
一ヶ月ほど前の作品に関する修正をお願いする形になってしまい心苦しい部分もあったのですが、氏も今回の展開に引っかかる部分があったとのことで、互いに合意の上で今回のような修正に至りました。
とはいえ、そういった事情があるとはいえ数作前の作品を修正するというのは中々気の進まない行為であるでしょうし、それを快諾してくださった氏に対して、改めてこの場で感謝の意を示させていただきます。

さて、肝心の内容に関する意見についてですが、キャラクターの掛合いなどに関する感想はこの場では差し控えさせていただきます。
そのうえでですが、今回の修正依頼の目的であるアギトの力関連のオミットに関しては、全く問題ないと思います。
本投下の際から数度に渡り指摘を行い、氏にとっては余計な修正を行わせてしまったことに対しては本当に申し訳ない限りですが、自分の書く展開でこの修正が無駄ではなかったとそう感じていただけるよう、頑張りたいと思います。

少し話が筋から逸れてしまいましたが、自分の意見は以上です。ただの修正の是非を述べるだけの文章であるはずなのに長々と失礼いたしました。

823 ◆LuuKRM2PEg:2019/12/22(日) 06:34:53 ID:5bKsUN3w
こちらこそ、この度はこちらの不手際で流れを混乱させてしまい、大変失礼致しました。
そして、自分も◆JOKER/0r3g 氏を初めとした他書き手氏の今後の展開を楽しみにしておりますので、よろしくお願いします。

824 ◆Mx1Kf1LUvw:2020/01/14(火) 00:53:12 ID:aOl8Dbvw
投稿初挑戦のものです。よろしくお願いしますm(_ _)m
一応渡について「こうなったらどうなるだろう?」という気持ちがむくむく湧いてきて書きたくなったのですが、何分初めてのため、一度こちらに投稿して意見を伺った方がいいな、と思い書き込みました。
何か初書き込みの注意点などあれば教えていただけると嬉しいです。よろしくお願いしますm(_ _)m


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板