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一時投下・修正用スレ

1二人で一人の/通りすがりの名無し:2010/11/10(水) 23:40:59
規制に引っかかっていて、本スレに投下できなかったり
SSの仮投下や修正を行いたい場合は
こちらへどうぞ

775 ◆LuuKRM2PEg:2018/06/15(金) 20:20:08 ID:FVdhZqmE
仮投下お疲れ様でした。
自分も三島の参戦については問題ないと判断します。禁止エリアに突入した参加者が現れては、大ショッカーも対策を立ててもおかしくないでしょうし。
感想は本投下の後にさせて頂きますね。

776 ◆cJ9Rh6ekv.:2018/06/15(金) 21:31:30 ID:TPFF9uqY
仮投下お疲れ様です。
自分も特に問題ない内容かと思います。
また変更を予定されているというクリペウスとウカワームの力関係についても、棒立ちでマイティを喰らった方の個体なのでダメージ蓄積も加味すれば戦力差が埋まっていたという扱いになっても違和感がないかと思います。
本投下、楽しみにさせてもらいますね。

777 ◆.ji0E9MT9g:2018/06/16(土) 23:29:58 ID:XvFN2f2E
お二人ともご意見ありがとうございます。
別段問題点などもないようですし、このまま本投下させていただこうと思います。

778 ◆JOKER/0r3g:2018/10/05(金) 23:23:31 ID:44F6HqtU
拙作、『飛び込んでく嵐の中』についてダグバがジョーカー化した最後の理由がアルビノジョーカーによる影響というのは、彼の生前のスタンスからしておかしいのではないか、
という指摘への修正案を書きましたのでこれより投下いたします。

779 ◆JOKER/0r3g:2018/10/05(金) 23:29:17 ID:44F6HqtU
 元々、上条睦月がスパイダーアンデッドに魅入られたときのように、アンデッドの中には封印されてもなお強い意志を持ちカードの外に影響を及ぼすタイプのものが存在する。
 特に上級アンデッドである嶋登や城光などはカードに封印されてもなお睦月に声を届かせることが可能だったのだから、それ以上に強力なアンデッドであるジョーカーが封印されてもなお強い悪意を持ち続けたならば、それが及ぼす影響は計り知れないとしても、何の疑問もないだろう。
 橘に一旦は力を貸したジョーカーは、しかしダグバの首輪が爆発するその直前彼の元へと飛来しその身に燻るアンデッド化に王手をかけたのである。

 無論首輪の爆発はフィリップや橘が予想したとおりセッティングアルティメットといえどダグバを確実に葬るほどの威力を誇るものだった。
 だがしかし、思い出してほしい。彼の首輪はあくまでグロンギ用のもの。アンデッドを強制的に封印する機能は含まれていなかった。
 であれば、不死者となったダグバが未だその身を消滅させていなかったとして、何の問題もない、ということになるわけだ。

 さて、こうしてアルビノジョーカーのカードがダグバのアンデッド化を後押ししたのだという結論のみを語られても、こう疑問に思うのではないだろうか。
 『志村純一が殺し合いに乗っていたとのはあくまで世界保持の為であり敵対者であり自身の世界を破壊しかねないダグバに力を貸す道理はないではないか』と。
 確かにその疑問は最もである。事実この殺し合いの中において志村純一は『剣の世界』の存続を目標に他世界の参加者を間引いていた。
 変身能力を失った橘朔也を前にしてなおその命を奪わなかったことからを踏まえても(無論、その気になればいつでも容易く殺せるという確信もあったが)、彼がただ殺戮の快楽に溺れたわけではないことは明白であり、傍から見ればそんな志村が他世界に生きるダグバに力を貸すのは理解できないことである。

 だが、ここで改めて考えてほしい。
 志村純一という男は、自分が封印された後も自分の世界のために戦おうと考えるような殊勝な性格だろうか?
 否、断じて答えは否である。

 そんな『仮面ライダー』染みた殊勝な考えなど、彼が持ち合わせているはずがあるまい。
 金居やスパイダーアンデッドのような自身の種の繁栄を望むアンデッドであれば露知らず、彼はその性質からバトルファイトの勝者にさえ成りえない完全なイレギュラーだ。
 もとより破壊神フォーティーンの復活とそれによる世界の支配を目論んでいた彼が、その果てに何を望んでいたのかはその実明らかではない。

 だが、こうは考えられないだろうか。
 『創造主さえ超える最強の力を得た実感と共に世界を支配したい』と。
 もしもそれが彼の最終的な目的であったなら、彼が封印される前に世界の保持を望んだのも理解できる。

 そして同時に、自分が封印された後に最早自分が支配することの叶わない世界の滅亡を彼が望んだとして、一体何が不思議だろうか。
 ダグバという規格外の化け物を前に、破壊神フォーティーンにさえ匹敵しうる才覚を見出し、彼をその代替として利用することで全ての世界を滅ぼそうとしたとして、何もおかしくないではないか。
 
 結局はそう、志村純一という死神が封印されてなお齎した最悪の結果こそが、このダグバのアンデッド化という悪夢のような事象なのである。

 長々と話してきたが、言いたいことはつまり二つ。
 エターナルメモリとダグバが惹かれ合ったのは死者になりつつある彼に永遠を感じたこと、そして……未だ、ン・ダグバ・ゼバが翳す究極の闇は終わったわけではないと言うことだ。

 とはいえ、流石の不死者と言えど、アンデッドもまた無敵ではない。
 ダグバの治癒能力を以てして、その身体が封印可能状態を脱し自律的に行動を始められるようになるまで、多大な時間がかかることだろう。
 故に今は、享受しよう。この凄惨極まりない地獄に降り注いだ、闇を照らす太陽の光を。

780 ◆JOKER/0r3g:2018/10/05(金) 23:34:52 ID:44F6HqtU
以上です。
志村がダグバをジョーカー化させたのは破壊神14の代わりに彼を使い全てを支配しようとしたため、的な感じです
彼が世界保持を望んでいたのはあくまで自分が支配したかった為だと思うので、それが果たせないとなったら世界を壊す方向にスタンスを変更してもおかしくないかなと思って書きました。

とはいえこれも一修正案程度の扱いですので、まだ描写不足や、キャラが違うのではないかという指摘があれば是非ともよろしくお願いします。

781 ◆LuuKRM2PEg:2018/10/06(土) 08:58:15 ID:Bbfyur.s
加筆お疲れ様です。
ダグバがジョーカー化した理屈と、またそこに至るまでの志村の動機についてきちんと書かれているので、自分はこの流れに問題はないと判断します。

782 ◆JOKER/0r3g:2018/10/06(土) 23:55:51 ID:J8vbdNu2
ありがとうございます。
そう言っていただけるのであれば、これで通しにしようと思います。
ご意見ありがとうございました。

783 ◆JOKER/0r3g:2018/10/09(火) 00:00:04 ID:UtBIvUvY
これより仮投下を開始いたします。

784 ◆JOKER/0r3g:2018/10/09(火) 00:03:42 ID:UtBIvUvY

 G-1エリア、廃工場内。
 始まってから既に18時間ほどが経過しようというこの殺し合いの中で、最も早く立ち入りを禁止されたはずの場所。
 参加者の誰も存在しないその場所で、今二人の異形がぶつかり合っていた。

 いや、彼らはどちらも、この殺し合いにおける参加者の定義には当てはまらなかったか。
 彼らのうち片方、甲蟹の意匠を身に刻んだ紫の異形は既に参加者としては死亡し、もう片方、蟋蟀を思わせる造形をした緑の異形はもとより主催の手のものなのだから。
 では、世界の存亡をかけたはずの殺し合いに、決して縛られることはないはずの彼らが、なぜ戦っているのか。

 その答えは至極単純。
 それは、そんな大義名分など関係ないほどに彼らは生まれながらの敵対者同士であり、また例えどんな状況であってもその顔を突き合わせたからには戦わずにはいられない、細胞レベルで認識された宿敵同士だったからだ。

 「ガアッ!」

 理性を一切感じさせない獣の様な雄叫びを上げて、甲蟹の怪人、カッシスワームが剣そのものである左腕を敵に向けて振り下ろす。

 「フン」

 だが、紛れもなく達人の業で放たれたその一撃を、緑の異形、グリラスワームはその鋼鉄よりも固い甲殻で受け止めた。
 彼らの戦いが始まってから、もうどれだけの時間が経っただろう。
 互いに首輪による制限さえ存在しない今となっては、ただ二人しか存在しないこの廃工場内に流れる時間の速さなど両者にはもう関係のないものだ。

 そして、彼らの時間感覚を狂わせる理由は、もう一つ存在する。
 それは――。

 「クロックアップッ!」

 カッシスの剣を受け止めそのまま反撃を企てたグリラスの拳が放たれるより早く、カッシスは一瞬で間合いを離し回避する。
 それに舌打ちを鳴らしながらほんの一瞬遅れて、対峙するグリラスもクロックアップを行使して、カッシスを視界に収め、しかしそこでそれ以上の戦闘を行うこともなく両者共に通常の時間軸へと舞い戻った。
 そうこれこそが、彼らが実時間でどれだけの戦闘を経ているのかが分からなくなった最大の理由。

 この長い戦いの中で、どちらかが相手への有効打を放ちそうになると、攻撃を受けそうになった側は一瞬だけクロックアップを利用しそれを回避する。
 無論相手もクロックアップを制限なしに使用できるのだからそのまま反撃に転じることは出来ないが、しかし相手が高速空間に移行するまでのその一瞬だけで彼らには十分。
 相手の反撃を潰し間合いから逃れ、必要以上のクロックアップ使用による体力消耗を防ぐためにそこで能力の行使を終了する。

 それがこの戦いで幾度となく繰り広げられた鬼気迫る一瞬の命のやり取りの明示化であり、またそれだけの時間を費やしてもなお互いに決め手を放てない理由であった。

 (なるほどな。ネイティブ最強の力というのもあながち驕りではない、か)

 そしてそんな現状を認知しながら、しかし焦りを見せることはなくカッシスは思考する。
 対峙するグリラスの実力は、なるほど確かに今までに自分が見てきたネイティブワームの中でも最上位のもの。
 というより、ワームに比べどちらかといえば武力よりも技術力に優れる印象であったネイティブの中で考えれば、なるほどライダーシステムさえ必要とせずこの強さとは頭一つ抜けていると見てまず間違いない。

 少なくとも現状、自分とグリラスとは互角なようで、その実敵の元来よりの強固さに自分が攻めあぐねているという事実を、カッシスは認めざるを得なかった。

 (せめてフリーズがあれば……な)

 故に、求めてしまう。
 戦況をいやおうなしに自分優位に進められる、あの最強の能力を。
 とはいえフリーズもまた考えなしに使って問答無用に勝利を掴めるような都合のいい能力ではないことも、乃木は理解している。

 例えグリラスを相手にそれが使用できたとしても、あの硬い甲殻を時間内に削り切れなければ自分が刈り取られるだろうとも思えた分だけ、彼は重なる敗北に学ぶことが出来ていたのかもしれない。

785 ◆JOKER/0r3g:2018/10/09(火) 00:07:05 ID:UtBIvUvY
 
 (いや、ないものねだりはするだけ無駄、か)

 故に、そこで思考を切り替える。
 どうせ今の自分にはフリーズなど使えないのだ。
 であればこんな思考は、この強敵を前には隙になるだけ。

 無理矢理に脳から無駄な思考を切り離し、カッシスは構える。
 ワーム最高峰の脳で理屈を考える首領のものから、ただ敵を打ち倒すことだけを考える獣のものへ思考を切り替えたのを示すように、彼は低く唸り喉を鳴らして。
 次の瞬間にはもう、彼はグリラスに向け飛び掛かっていた。

 「ジェアァッ!」

 低い姿勢で飛び込んだカッシスは、そのままグリラスに向け腕ごと剣を振るった。
 だが最早自明の理として、その剣は敵の強固な甲殻に弾かれ火花を散らしただけで、さしたダメージには繋がらない。
 とはいえそれは既に把握済み。大した困惑を示すこともなく、彼は再度その腕を振り下ろした。

 「ライダースラッシュ!」

 先ほどの再現かのように思われたその剣は、しかし此度はその刀身を紫に染め上げていた。
 タキオン粒子迸るその一撃は、仮面ライダーサソードの必殺技であるライダースラッシュと同等の威力を誇るもの。
 自身の剣を前にここまでの防御力を示す敵にはこの一撃も決定打にはなりえないだろうが、しかしグリラスの顔に張り付いた仏頂面を引き剥がすには十分なはずだった。

 「グ……ッ!」

 果たしてカッシスのライダースラッシュは、問題なくグリラスの身を切り裂いた。
 両断することは叶わないながらも、その分厚い甲殻に剣先が減り込んで、人間の証拠である赤から緑に変貌した醜い血を伝わせたのだ。
 これには歴戦のカッシスも確かな手応えを覚え……、しかし瞬間その顔から笑みは消え失せた。

 グリラスの甲殻に減り込んだ自身の腕が、抜けない。
 まるでその身体全体でがっちりと剣そのものを押さえつけているようなこの状況に、さしもの彼と言えど困惑を示さずにはいられなかった。

 「……ようやく、捕まえたぞ」

 その場から逃れようと四苦八苦するカッシスを前に、グリラスは珍しく喜色を露わにして気味の悪い笑みを浮かべた。
 まるでこの瞬間を待ち望んでいたとさえ言いたげなそれに、カッシスは本能的な逃走への欲求を感じ……しかし終ぞ彼の左腕がグリラスの元を離れることはなかった。

 「フン!」

 グリラスが気合を込めた声で、一つ叫んだ。
 何が起こるにせよそれにどうにか対応しようとカッシスは身悶えするが、しかしもう遅い。
 彼が何らかの対処行動を起こすより早く、グリラスの肩に生えた二本の鉤状の触手が、その腹に深く突き刺さっていたからだ。

 「グオアアアァァァ!!!!」

 唐突に訪れた最上級のダメージに、カッシスが叫ぶ。
 腕とは異なる、中距離への攻撃に特化したグリラスの持つ触手が自身の腹部内を蹂躙し掻きまわした痛みは、ワームの王を以てしてなお絶叫を禁じ得ないほどの痛みを齎したのである。
 だが、そのまま勝負を決めようとグリラスが振り上げた拳をただ甘受するほど、カッシスは痛みに我を忘れてはいなかった。

 「……喰らえッ!」

 言葉と同時彼が翳した右の掌から吐き出されるは、暴力的なまでの威力を秘めた闇の塊。
 かの昇り行く究極より直接吸収した今のカッシスが持ちうる最強の必殺技は、この至近距離での照射であることも含めてグリラスに初めてダメージらしいダメージを齎した。
 予想だにしなかったその威力に動きを止めたグリラスは、しかしカッシスの腹から触手を引き抜く愚は犯さない。

 そして両者共に、そこで理解する。
 腹に触手が深々と刺さったままのカッシスが折れるのが先か、高密度の闇を全身に浴び続けるグリラスが折れるのが先か。
 これは言わば互いのプライドをかけた一種のチキンレースなのだと。

786 ◆JOKER/0r3g:2018/10/09(火) 00:09:58 ID:UtBIvUvY
 
 「ガアッ!」

 微塵も知性を感じさせない雄叫びと共に、グリラスがその身をよじる。
 カッシスは一瞬敵がついにダメージに耐えられなくなったのかと疑うが、違う。
 身体の角度を操ることでその肩についている触手をより鋭角に、より深く自分に突き刺そうとしているのだ。

 「グオォ……!」

 相当な強度を誇るはずの甲殻でも貫通するほどに鋭いそれを、より柔らかい体内が受け止められるはずもない。
 ズブズブと体の奥深くに沈んでいく触手に強烈な異物感と吐き気を催すほどの熱気を覚えつつ、しかしカッシスはその手から放つ暗黒掌波動をやめはしない。
 ここで自分が折れることは、この場での自分の敗北を意味するだけではなく、ネイティブなどという圧倒的弱者に誇り高きワームが敗北することまで意味するのだ。

 腹部からの失血故か遠のきゆく意識を何とか繋ぎ止めて、全てのワームの意地をも乗せてカッシスは大きく叫んだ。

 「――ライダー……キック!」

 その右手から暗黒掌波動を放ちながら、カッシスは右足にタキオン粒子を集わせる。
 右足に集積したエネルギーが臨界点を迎えると同時、気合いと共に彼は思い切り回し蹴りを放った。
 次の瞬間、ドン、という生体同士がぶつかり合う音とは到底思えないような重低音を響かせて、彼の足はグリラスの身体を揺らす。

 「グアァ……!」

 だが瞬間、その身体を迸った痛みに対し苦悶の声を漏らしたのは、カッシスだった。
 どういうことだと困惑を露わにしたカッシスを前に、必殺技の直撃をものともせずグリラスは未だ健在。
 どころか、ようやく事が終わったかとばかりに得意げに鼻を鳴らして。

 「フン、戦い方を知らない虫けらはこれだから困るな……」

 捨て台詞のように吐き捨てたグリラスに対し皮肉を返すより早く、一刻も早い状況判断のために自身の右足を見やったカッシス。
 らしくない焦燥を含んだ彼の瞳が、次の瞬間映したものは。
 グリラスの左手に、植え付けられたかのように不自然な形状で存在する鋭利な鉤爪が、ライダーキックの勢いをも利用して自身の足を貫通している光景だった。

 「何が起きたのか分からない……という顔をしているな?
 愚か者が。私が予め構えていたこの腕に、最高の角度で蹴り込んできたのはお前の方だろう?最も、お前からは自分の発生させた闇で見えなかっただろうがな」

 グリラスが薄気味の悪い笑みを携えながら皮肉を吐く。
 奴の言うことを噛み砕くと、つまりはこういうことになる。
 『グリラスはこの硬直状態に陥った際に自分がライダーキックを放つことを予期していて、それに対するカウンターとして腕をそこに置いただけ』なのだ。

 そうとも知らず突っ込んでしまったのは、彼の言うとおり自身が発生させた闇に視界を阻害された為か、それとも腹部からの出血故に勝負を急いでしまったか。
 ともかく、カッシスの勿体ぶったような長々とした勝利宣言などは、既にカッシスの耳には入っていなかった。
 相手の口にするしょうもない言葉にいちいち反論をしていられるほど、今の自分に余裕がないことを、分かっていたから。

 だがそうして必死に捻出した思考の時間をも、グリラスは長く与えない。

 「フン、もう耳障りな言葉を発する余裕もないようだな。それなら――私の勝ちだぁぁぁぁ!!!」

 激情を露わに叫んだグリラスは、カッシスの右足から鉤爪を、腹から触手をそれぞれ勢いよく引き抜く。
 それに一層出血を深めながらクロックアップを駆使して敵の射程範囲内から離れようとして、しかしカッシスは動けない。
 未だ自身の剣が、左腕ごとグリラスの甲殻にめり込んで未だ離れないのである。

787 ◆JOKER/0r3g:2018/10/09(火) 00:13:24 ID:UtBIvUvY
 
 「オアァァッ!!!」

 だが互いを不本意ながら繋いでいたその半強制的な拘束は、次の瞬間に終わりを告げた。
 相当な硬度を誇るはずのカッシスの左腕は、グリラスが叫びと共に振り下ろした鉤爪に切り裂かれ遂にその身体から別たれてしまったのだから。

 「グォ、オオオオオォォォォ!!!」

 「ハハハ、ハハハハハハ!いい気味だ、このゴミ虫が!ハハハハハハ――!!!」

 絶叫と共に、肘から先を失った左腕を押さえながら、カッシスは呻く。
 そんな無様な彼の姿を前に、自分がワームを直接に追い詰めている、という状況に愉悦を抑えきれない様子で笑うグリラスは、今一度ネイティブとなった自分の身体をこれ以上ない誇りに思った。
 人間であった頃は下らない武器に頼らなければ抵抗もままならなかったワーム、その中でも最高峰の実力者を前に、自分は圧倒的優位に立っている。

 だが、それも当然と言えば当然か。
 マスクドライダーシステムの鎧に用いられるヒヒイロノカネをさえ容易に打ち砕けるオオヒヒイロノガネ。
 それをふんだんに用いた自身の鉤爪を前に、戦い方も知らないような薄汚い虫けらが単独で敵うわけもない。

 元々誰よりも力への固執が強かった彼にとって、何らの道具さえ用いない、己が身体が敵を追い詰めているという実感は、これ以上なく幸福感を刺激されるものだった。
 だが瞬間、その笑い声は止む。
 これ以上化け物が苦しむだけの光景を見ていても目に毒なだけだとでも言うように溜息一つ吐き出して、グリラスはそのままいつもの、鉄仮面のように代わり映えしない無表情をその顔に張り付けた。

 「ガ、ア……」

 対するカッシスは、徐々にその距離を狭めるグリラスを前に、ただ弱弱しく嗚咽を漏らすのみ。
 得意の頭脳さえ右足と腹、そして失われた左腕の肘から爆竜のように押し寄せる痛みの前にろくに働きはしない。
 今度こそ、本当に万事休すなのか。ワームは、単身ではネイティブに劣る有象無象だということを、認めなければならないというのか。

 それを認めるあまりの悔しさとしかし一人では到底覆しえない結論にカッシスはただ獣のように咆哮したい衝動を覚え――。
 しかし瞬間目の前に迫っていたグリラスが突然に闇に飲み込まれたことで、それをやめた。

 「なッ――?」

 思わず、驚愕が漏れる。
 何が起きたのか理解できないままにただ茫然とその闇の出所を振り返れば、その先にあったのは――あぁ認めたくはないが待ち望んでいた――最高の救援であった。

 「おいおいどうした?随分と良いようにやられたようだな?」

 皮肉を吐いたその紫の影は、その頭部から生える角の有無を除けばまさしく自分自身。
 そう、この第三の命によって与えられた、もう一人の自分その人であった。

 「こんなものが……効くか……!」

 だがそんな援軍を素直に喜ぶよりも早く、彼はもう一人の自分が放った暗黒掌波動の中で少しずつ、しかし着実に自分に向けて突き進んでいるグリラスの声を聴いた。
 こうして見る分にはなるほどこの男もまたライジングアルティメットにも相応しかねない防御力を誇っているのかもしれないが、しかしそれを自慢できるのもこれまでだ。

 「フン!」

 残された力を振り絞って、目前にまで迫ったグリラスに向けて自身も暗黒掌波動を放射する。

 「――グアアァァァッ!」

 さしものグリラスといえどこの会場内有数の威力を誇る必殺技を二発も受けてしまえばただではすまない。
 暗黒掌波動によるインパクトを前にその巨体は火花を散らしながら宙を舞い、見事な放物線を描いて廃工場内に積み上げられた木箱の上に落下した。
 だがそれでそのまま敗北に至るほど三島は軟ではない。

 自身の身体の上に撒き散らされた木片を勢いよく弾き飛ばしながら、一瞬で飛び上がる。

788 ◆JOKER/0r3g:2018/10/09(火) 00:15:04 ID:UtBIvUvY

 「ガアァッ!」

 だが、すぐさまに立ち上がり戦いを続けようとした彼を待っていたのは、ただ廃工場内に木霊する自身の咆哮のみだった。
 そして、察する。つまり奴は、自分を前に逃げたのだと。

 「……所詮は、数で押すしか知らない虫けら、か」

 状況を理解し、突然冷めたように落ち着きを取り戻した彼は、そのままネイティブとしての身体から三島正人の姿へと擬態する。
 そうしてゆっくりと自身の胸ポケットに収めた眼鏡をかけなおす頃には、もう彼から先ほどまでの闘争本能に支配されたような獣染みた雰囲気は消え失せていた。
 どころかまるでもう、乃木との戦いになど興味はないとばかりに踵を返して、そこでふと思う。

 まさかとは思うが、あの乃木が、この先に待つこのエリアの秘密を手に入れようと未だ近くにいる可能性があるのではないか、と。

 「……一応、確認しておくか」

 まずそんなことはあり得ないと思うが、万が一ということもあり得る。
 ゆっくりと、しかし警戒は怠らず奇襲にたけるワームであれど逃げきれないほどの注意を払いながらそのまま少しの間歩き続けて、彼は目当てのものの前へと辿り着いた。
 果たして自分がこのエリアを任された最大の理由である“それ”は、全くの無事であった。

 乃木ももうこのエリアにいないのだろうことは確認したし、もう問題はないはずだ。
 そうしてようやく人並みの安堵を抱いた彼の、目の先にあるそれ。
 大ショッカーが直々に幹部を設置してまで隠そうとしたその“鍵のかかった車”は、この18時間未だ誰に触れられることもなくそこに在り続けていた。


【二日目 早朝】
【G-1 廃工場】

【三島正人@仮面ライダーカブト】
【時間軸】死亡後
【状態】ダメージ(中)、疲労(中)
【装備】なし
【道具】なし
【思考・状況】
0:このG-1エリアをなんとしても死守する。
【備考】
※大ショッカーより送り込まれた刺客の一人です。
キング@仮面ライダー剣とは違い明確にこの場所を守る為だけに派遣されました。余程のことがない限りこの場所を動くつもりはありません。

【備考】
※G-1エリアにある三島の守っている秘密とは「車@???」の存在でした。ちなみにこの車には鍵が掛かっており、運転席は勿論荷台にも同様の鍵で開くと見られます。
※なぜこの車を大ショッカーが秘匿したがったのかは秘密です。秘匿したかったのは車そのものなのか、それとも荷台の中の荷物なのか、或いは車そのものや中身には大した理由はなく参加者ではない乃木が第一発見者となることを避けたかったのかもしれませんが現状は不明です。
※荷台に何が入っているのか等は後続の書き手さんにお任せします。



 ◆


 「……どうやら、廃工場の外にまでは追ってこないようだな」

 言外にこれ以上俺の肩を煩わせるなと示したもう一人の自分の声に従って、左腕を失った乃木はその場に力なく座り込んだ。
 怪我人相手に随分なことをしてくれるものだと人間諸君なら思うかもしれないが、ワームである乃木にとってはこのくらいのドライな関係のほうがやりやすい。
 ましてや自分自身が相手なのだから、気遣いや無駄なやり取りも不要なのはこの傷ついた体には随分とありがたいことであった。

789 ◆JOKER/0r3g:2018/10/09(火) 00:18:31 ID:UtBIvUvY

 そして勿論、ここまでの重傷を負い止血処理を残った右腕で懸命に行っているからと言って時間を浪費するほど、“俺”が愚かでないことも、理解している。

 「あの男、報告に聞いた三島正人と見たが、なぜ奴がネイティブになっている?一体何があった」

 ほら来たぞ、と内心で思う。
 幾ら姿形記憶能力全て同じ“自分”が傷ついたからといって、我々ワームに慈悲の心はない。
 貪欲に情報を欲する相方の問いに対し、しかし乃木は冷静に返す。

 「さぁな。だが奴はどうやら大ショッカーの幹部になったらしい。
 我々の考えた大ショッカーが隠したい秘密、とやらはあそこにあるとみてほぼ間違いないようだ」

 「そうか」

 短い返答。
 だがその表情からは、僅かに困惑したようなものが見て取れる。
 とはいえ、自分をこうして容易く拉致してきた相手の秘密が存外簡単に見つかったとなれば警戒しても当然か。

 それにA-4エリアに向かうという当初の目的も意味のないものになったのだから、これから先の身の振り方を考えてしかるべきだった。
 と、そこまで考えて、左腕を口と右腕を器用に使って一際強く縛り付けた後、乃木はようやく笑みを浮かべた。

 「さて、俺は聞かれたことに答えたぞ。次はお前の番だ」

 「……何のことだ」

 「すっとぼけなくていい。“俺”が聞きたいことは分かっているだろう?」

 その言葉を受けて、もう一人の乃木は極めて罰が悪そうに眼を背けた。
 改めて彼をよく見れば、その身に刻まれた傷は――自分に比べれば天地の差だが――それなりに深い。
 バイクさえ自分から奪い取ったというのにおめおめと自分の元へトンボ返りしたというこの状況は、幾ら危機一髪の局面を救った救世主面していたところで無視できないところである。

 そしてそれを一番に理解しているのはもう一人の乃木も同じ。
 少しばかりの逡巡を経た後に、その重い口を開いた。

 「……間宮麗奈と会ってな。信じがたいことにワームとしての記憶を保持したままに人間の心を持ち俺を出し抜こうとしてきた」

 「あの間宮麗奈がな……珍しいこともあったものだ」

 どことなくただの世間話のように流しながら、しかし乃木は催促するように目でもう一人の自分に合図する。
 間宮麗奈如きにいいように自分がやられるとは思っていないのだろう。
 まぁ、まさしくそれは正解なのだから、この状況で隠し事を出来るはずもないのだが。

 「……彼女を処刑すべく戦いを進めていたが、あと一歩というところで門矢士に出くわした」

 その名前を聞いて、乃木はオーバーリアクション気味に右腕で眉間を押さえ首を振る。
 まさに「あーあーやっちまった」とでも言いたげに見えるその動作を前にもう一人の乃木は僅かにイラついた様子を見せ……、しかしすぐに目を逸らして続けた。

 「うまく彼を丸め込もうとしたが失敗してね。残念ながらこうして傷を負い体制を立て直すためにここに来たというわけだ」

 「なるほどな、そういうわけだったのか」

 そうして何事もないように返すが、しかし乃木も、またもう一人の乃木もとある事情に気付いている。
 それを認めるのは彼の著しく強大な尊厳を傷つけるもので……しかし今後生き残り目的を達成するためには必要なことだった。

790 ◆JOKER/0r3g:2018/10/09(火) 00:23:25 ID:UtBIvUvY
 
 「どうやら、俺たちは最早変身制限がないことを踏まえたうえでもこの会場を単身で闊歩できるほどの実力を有していないらしいな」

 「……あぁ、そうだな」

 自身の発言に対する相方の一瞬の間。
 それを恐らくはそのプライドの高さ故、自分の実力がこの会場内でのランキングでは低い方から数えたほうが早いという事実を認めたくないという、そんな葛藤の表れなのだと勝手に納得して、乃木は続ける。

 「……とはいえまぁ俺のこの傷を考慮したうえでも、なお俺達二人がこうして合流できた今、大抵の敵には負けることもあるまい。
 取りあえずは少しの間傷を癒しながら間宮麗奈、門矢士らのような明確に俺たちに敵意を持っているだろう相手を避け、殺し合いに反対的な参加者との合流を目指すべきだな」

 そうして対主催集団の中でそれなりの立場を築けた後であれば、門矢士らもそう易々と自分たちと戦うわけにはいくまいと、言外にそう示して。
 今後の行動方針を纏めた乃木は、まずは打倒三島の決意と情報を持ってどうにか他参加者と合流する道を示し、もう一人の乃木に向けて自身に残された右手を伸ばす。
 肩を貸してくれという合図。自分がいなければ生きられないということさえ再認識させた今、それは当然に受理されるはずの要求だろうと。

 そう、“自分”を軽んじていた。
 思えばそれが、彼の最大の過ちだったのかもしれない。
 彼がそれに気付いたのは、自身の手を言葉もなくはねのけたもう一人の自分のあまりに冷たい表情を見たためだった。

 「――なんのつもりだ?」

 怒気を込めて、乃木は問う。
 まさか腕を失い一人で立つこともままならない自分を嘲るという、そんな下らない目的の為だけにこんな無駄な動作をすることもあるまい。
 こんな時間は無駄なだけではないかと言外に批難する乃木を前にしかし、もう一人の自分は冷ややかに笑った。

 「いや、何、この第三の命で生まれかえった瞬間から一つ、試してみたいことがあってね」

 「なんだと?」

 今の自分と紛れもなく同じ顔をしているはずだというのに、もう一人の自分が浮かべている表情の下には底知らない悪意とそして何よりの好奇心を感じる。
 我ながら不気味だとゾッとした心地を覚えた乃木は、僅かに身動ぎをして自分の腹を庇う様に後退った。

 「疑問に思ったことはなかったか?なぜそもそも自分の能力であるはずのフリーズや特定のエネルギーを用いた必殺技の吸収を、俺たちは新しい命の度に使えなくなるのか」

 もう一人の乃木は、勿体ぶったように語りだす。
 だがその顔に張り付いた邪悪な興味は常に自分を視線から外すことはなく、目だけで逃がす気はないと示すかのようだった。
 そんな彼を僅かに恐れ再び後退った乃木を気にすることもなく、話は続く。

 「勿論、俺たちにもそれぞれの能力の原理はよく分からん。
 そんな能力を使えこなせなくなっても、無理はないのかもしれん」

 だがな、と言いながら、見せつけるように両手を大きく広げ。

 「だが、考察を重ねることは出来る。最初は以前に殺害された時の理由を潰すように進化した結果なのではないかと思った。
 時間停止を見越した時間差の必殺技に敗北したからそれを受け止められるように必殺技の吸収能力を。
 必殺技さえ用いない、しかし並のライダーのそれよりも遥かに強い打撃を放てる存在を……ライジングアルティメットを知った為に、そんな規格外に対処できるように複製を」

 ここで話している彼らが知る所以はないが、この理論には、より強くそれを裏付けられる根拠が存在する。
 それは元の世界で彼らがカッシスワーム・グラディウスとして敗北した際の事象。
 その命における直接の死因はカブトが放ったマキシマムハイパーサイクロンによる粒子分解であるものの、それをただ享受せざるを得ないようなダメージを受けたのは、三人の仮面ライダーによる同時攻撃をその身が吸収しきれなかったためだ。

 この世界でも元の世界でも、「必殺技の単一的な吸収では事足りない」と判断した為にその身体を二つに別ったのではないかという推論は十分に説得力を持つものだろう。

791 ◆JOKER/0r3g:2018/10/09(火) 00:26:35 ID:UtBIvUvY
 
 「……そんなことを話して何になる?
 まさかそんな下らない、答えの出ないご高説を披露するのが目的か?」

 思わず声を怒りに震わせながら、乃木は問う。
 失血死こそないだろうとはいえ、ダメージの大きい自分にとって、こんな下らない話に付き合っている時間はない。
 だがそうして結論を急ぐ乃木の姿さえ愉快だとばかりに鼻を鳴らして、もう一人の自分はなおも話を続ける。

 「まぁまぁ、そう言うな。……とはいえそうだな、俺が考えていたのはずばりそこなんだ。
 この話は、考えても答えが出ない。そうして切り捨ててしまうのはあまりに勿体ない気がしてね」

 「はぁ?」

 今度こそ困惑を込めて、乃木はただ疑問符を浮かべた。
 まるで言っている意味が分からない。
 或いは――そう思い込みたかったのかもしれない。

 その先に待つ答えが、あまりに恐ろしいものだから。

 「間宮麗奈がワームでありながら人間として生きたいと言い切ったのを見て、俺も少しばかり答えの出ない問いに興じてみてもいいかもと思ったのさ。
 そうして考えるうち、もう一つ疑問が浮かんできた」

 「新しい疑問だと?」

 最早もう一人の自分の話す推論に付き合う以外ないらしいと観念したか、乃木はテンポよく問いを投げる。
 それに気をよくしたか、もう一人の乃木はその笑みを深め続けた。

 「あぁ、その疑問というのは……俺たちのこの形態は、この乃木怜治の最後の命を費やしたにしてはあまりに弱すぎるのではないかとね」 

 「それは……」

 もう一人の乃木が提示した疑問に、思わず言葉を詰まらせる。
 正直、思ってしまう。そんなこと言っても仕方ないではないかと。
 勿論、今までの能力そのままに二人に増えたなら、この第三の命はこれ以上なく強力なはずだった。

 しかし現実はそうではない。
 フリーズも必殺技吸収能力も失い、その果てに残されたのは先の命で吸収できた僅かな必殺技のみ。
 身体能力さえ一体一体は著しく低下し、ネイティブ最強のグリラスはともかく、あの間宮麗奈と互角などと第一の命の時では思いもよらなかったほどのパワーダウンを果たしている。

 とはいえ、それは先ほども言ったように話しても仕方のないことである。
 熱血教師染みた根性論を語りたいわけではないが、今は配られたカードで戦うしかないではないか。
 言葉を詰まらせた乃木に対し、もう一人の乃木は極めて流暢にその舌を回す。

 「だから考えてみた。
 考えても答えの出ない問いだとしても、もしもこうして二人に増えたことに意味があるとするなら、それはなんだろう、とね」

 「その様子からすると、答えは出たらしいな」

 「あぁ、勿論。とはいえ未だ確実な答えは出ていないがな」

 言ってもう一人の乃木はニヤリと不敵に笑って――しかし次の瞬間、その顔から表情は一辺に消え失せた。

 「なぁ……もしかしたら、こうして二人に増えたことは、一種の選別だと捉えることは出来ないか?」
 
 「選別だと?」

 思わずオウム返しに乃木は返す。
 だが何故だろう。ゆっくりとその足を自分に向けて進めだしたもう一人の自分の存在が、先ほどまでと違い威圧的に感じるのは。

792 ◆JOKER/0r3g:2018/10/09(火) 00:31:46 ID:UtBIvUvY
 
 「そうさ。つまりはこの命の真価はこんな出来損ないのコピーを増やすことにあるんじゃない。
 よく似た、本当に自分そっくりの存在を生み出した後で、どちらか優れている方を自然に選別することにある、そうは考えられないか?」

 「……そんなことをして、一体何の意味がある?」

 冷静にもう一人の自分と話を合わせながら、ゆっくり、ゆっくりと乃木は立ち上がることさえ出来ないままに徐々に後ろに退いていく。
 しかし、もう一人の乃木は常に自分を視界の隅に置き、自分と同じペースでこちらに向かって歩を進めその距離は一向に広がらない。
 明らかに意図的なはずのこの静かな攻防を、しかし一切気づいてさえいないように振舞いながら、もう一人の乃木は一つ鼻を鳴らした。

 「さぁな。だが人間が研究した生物学によれば、傍目には全く同じように見える一卵性双子を同じように育てたとしても、それぞれ得意不得意が異なるということもあるらしい。
 或いはその中には、双子のうち片方の不憫な奴が不得意とすること全てを得意とする、そんな器用な奴もいるかもしれない。……そうは思わないか?」

 「……だが、その器用な奴が不得意とすることを、お前の言う不憫な奴が得意としている可能性だってあるかもしれないぞ?」

 「あぁ、そうだな。もしそうなれば、そいつらはこう思うに違いない。
 『こいつさえいなければ、もしかしたら自分は全部を持って生まれてきたのかもしれない。自分の才能はこいつに吸われたに違いない』ってな」

 ゴト、と音を立てて、乃木の背中に冷たい鉄の感触が伝わった。
 ――壁だ。先ほど必死こいて逃げてきた廃工場の壁。
 最早、退けるところはない。

 思わず走った戦慄を察したか、もう一人の乃木は自分に向けてもう一歩距離を狭める。

 「――まぁ、だからそう、つまり俺の試してみたいことというのはそれなんだ。
 もしも二人に増えた俺たちが再び一つになれたなら、或いはその時こそ俺たちの最後の命、それに相応しいだけの力を得られるのではないか、とね」

 冷たくそこまで言い放って、彼の身体は一瞬でおぞましい音を立て紫の異形へと変化する。
 その姿を前に自分も同じように変態しようとして、しかし出来ない。
 まるでこの身体が、自分の役目を終えたのを察しているかのように。

 「最後になるが……じゃあな“俺”。文句は言うまい?
 『弱い奴は餌になる』それが俺たちの掟だと、貴様も知っての通りだろうからな」

 「待ッ――!」

 乃木が放った必死の抗議は、しかしもう聞き届けられることもなかった。
 彼がそれを言い終えるより早く、その身体はカッシスワームの腕に抱かれ――かつてガタックに苦戦したワームを、自らの糧にした時のように――粒子化し吸収されてしまったのだから。

 「オオオ……グオォォォォォォッッッ!!!」

 そしてもう一人の自分を吸収し、唯一無二の存在となったたカッシスは、吠える。
 まるで、自分の中に沸き起こる力の奔流に突き動かされるように。
 同時、彼の身体はメキメキと音を立て変貌していく。

 その何も生えていなかった頭部からは、立派な一本角が天を衝かんと高く伸び。
 今まで剣と盾とが生えていた両手もまた、止めどなく変化していく。
 レイピアに、剣に盾に、或いは人間の様な五本指に。

 数舜の後、今自分に起こった変貌を全て理解したカッシスは、理解する。
 今の自分には、これまでの形態の能力全てが備わっている。
 時間停止も、必殺技の吸収も。

 そして同時、この形態そのものが持つ戦闘力も、これまでの比ではない。
 恐らくは今この姿であれば、ライジングアルティメットとて単身で相手どれるに違いない。
 故に彼は、確信する。

 この姿こそが、自身最後の命に相応しい究極の姿だと。

793 ◆JOKER/0r3g:2018/10/09(火) 00:33:25 ID:UtBIvUvY

 そう今こうして誕生したこの新たな姿は当然、ディミディウス(半分)でも、グラディウス(剣)でも、クリペウス(盾)でもない。
 今までのカッシスワーム全ての能力を踏まえ、そして誕生した最強の戦士。
 なればこそこの形態を、敢えて今こう名付けよう。

 ――カッシスワーム ディアボリウス(魔王)、と。

 そしてこの新たなカッシスワームの誕生に、誰よりも強く深く乃木怜治は歓喜する。

 「ククク、この力さえあれば、もう間宮麗奈も門矢士も相手ではない……!」

 そして彼が口にしたのは、先ほど自分に苦汁を飲ませた二人の忌々しい参加者の顔。
 今すぐにでも彼らを引き裂くために行動するべきか考えて、放送まであと10分ほどしかないことに気付く。
 この身体の傷も、もう一人の自分を吸収し治癒力をも上げたとはいえ完全に無視できるものではない。

 であれば放送を聞き、そこでもたらされた情報を整理した後に行動を開始すれば、丁度良い具合に傷も癒えるだろう。
 そう、焦りは禁物だ。今はただこの新たな力がこの身体に馴染むまで、少しばかり休息を取るべきだろう。
 しかし、だからといってその瞳から戦意が陰ることはない。

 どころかそこに写る復讐の炎は、より勢いを増して。

 「待っていろ、間宮麗奈、そして門矢士……貴様らの命が尽きるのも、もう時間の問題だ――!」

 力強く宣戦布告を果たして、乃木怜治は、ワームを統べる魔王は一人廃工場を背に歩き出した。


【二日目 早朝】
【G-1 平原】


【乃木怜治@仮面ライダーカブト】
【時間軸】第44話 エリアZ進撃直前
【状態】ダメージ(大)、疲労(大)
【装備】なし
【道具】ブラックファング@仮面ライダー剣
【思考・状況】
0:取りあえず放送までこの近辺で傷を癒やす
1:大ショッカーを潰すために戦力を集める。使えない奴は、餌にする。
2:状況次第では、ZECTのマスクドライダー資格者も利用する。
3:最終的には大ショッカーの技術を奪い、自分の世界を支配する。
4:志村純一を警戒。まったく信用していないため、証拠を掴めばすぐに始末したい。
5:乾は使い捨ての駒。
【備考】
※もう一人の自分を吸収したため、カッシスワーム・ディアボリウスになりました。
※これにより戦闘能力が向上しただけでなくフリーズ、必殺技の吸収能力を取り戻し、両手を今までの形態のどれか好きなものに自由に変化させられる能力を得ました。
※現在覚えている技は、ライダーキック(ガタック)、ライダースラッシュ、暗黒掌波動の三つです。

794 ◆JOKER/0r3g:2018/10/09(火) 00:40:29 ID:UtBIvUvY
以上で仮投下終了です。
えー今回の話で仮投下を経た理由は明らかだと思いますが、一応ここに明文化しておきます。

・三島正人が守っているG-1エリアの秘密とやらが鍵の掛かった車そのもの、ないしはその荷台内の荷物にあること。
・カッシスワームがもう一人の自分を吸収した結果として今までの全ての形態全ての力を取り戻すことについて。
・その際、クリペウスのまま能力を取り戻したとしても締まらないかと思い描写したオリジナル形態、カッシスワームディアボリウスについて。

大きくこの三点が皆様にお伺いしたい点となります。
正直、ディアボリウスに関してはなくてもいい感じで書いてはいるのですが、今後士や麗奈との再戦という展開があった場合に「見た目は変わらないけど強くなったっぽい」という描写もなんか締まらないかなと思い、それならいっそオリジナル形態で作中内でも一目見て強くなったのが分かる方が描写としてスムーズかなと思い書きました。
また、その大前提となるもう一人の自分を吸収することによる能力の復活も所謂勿体ない精神の発露といいますか、あまり原作と紐付けられる描写ではないのは事実なので、気に入らないということがあればまた何か考えようと思います。

勿論、上記内容以外にも指摘点や修正点などございましたら是非ともお願いいたします。

795二人で一人の/通りすがりの名無し:2018/10/09(火) 02:23:31 ID:Z8fx5b8I
仮投下お疲れさまです!
オリジナル形態の登場など、特に問題はないかと。
ただいくら硬いとはいえ、必殺技を連続で何度も食らって中ダメージだけで済んでいるグラリスはちょっと違和感あるかもしれません。

796 ◆JOKER/0r3g:2018/10/09(火) 03:04:29 ID:UtBIvUvY
ご指摘ありがとうございます。
個人的に、グリラスはマキシマムハイパータイフーンを真っ向から受け止めてなおパーフェクトゼクターごとゼクターを叩き折るなど、フィジカル面ではカブト作中最強の怪人として書かれていた印象が強かったため、このような描写と相成りました。
勿論その後ガタックダブルカリバーの直撃に怯んだりと描写がぶれているという意見もありますが、あれは不意打ちと言うこともあり、意識して受け止めた攻撃、つまりタイマンでの技なら暗黒掌波動まで含めても精々が作中描写程度のダメージでもおかしくはないのかなと。
最もそうした解釈自体に違和感を覚えるということであれば、三島もまたダメージが大きく休息を取ろうとする感じに修正しようと思いますが、如何でしょうか?

797二人で一人の/通りすがりの名無し:2018/10/09(火) 16:56:44 ID:Z8fx5b8I
丁重な返信ありがとうございます。
確かに暗黒拳波動がマキシマム(以下略)より強いとも思えませんし、他に指摘されてる方もいないのでこのままでも大丈夫です

798 ◆JOKER/0r3g:2018/10/09(火) 23:18:33 ID:UtBIvUvY
>>797
返信ありがとうございます。
であれば、他には特に指摘もなかったということで、本投下の方をしてこようと思います。

799二人で一人の/通りすがりの名無し:2018/10/13(土) 12:35:37 ID:Rc919Ivs
>>780
お疲れ様です。本投下されwikiで新着で見たときは橘さんの壮烈な捨て身の戦いと
予想外に次ぐ予想外、そして恐るべき結末に身震いしました。

ところで過去の話も読み返しつつこの話を読み返してふと気づいたのですが、
ダグバ自身は志村個人の悪意や支配欲もあってアンデッド化し、ジョーカーアンデッドとしての力を手に入れたことで
橘さんの決死の道連れ首輪爆破による死滅を免れたかわりに、グロンギ怪人への変身能力は損なわれた(できたとしてもあのアフロな不完全体?)、
ということになるんでしょうか?
描写を見る限りだと、首輪の爆発だけでなく、そこに上乗せしてガドルの最期のように
グロンギベルト(デフォルトで爆薬入り)も誘爆してあそこまでの大爆発になった
=アンデッドになったダグバはともかくベルトは木っ端微塵?とも思ったもので。

800 ◆JOKER/0r3g:2018/10/13(土) 20:02:02 ID:30dhpGaM
>>799
ご意見、ご感想ありがとうございます。そんな感想を言っていただけると嬉しい限りです。
さてご意見についてですが、個人的には、当初はそのつもりで(つまりアンデッド化と引き替えにグロンギ態にはなれなくなる)書いていたのです。
が、書き始めるくらいにはその次話である132話「Diabolus」の構想が見えておりまして、無理矢理とはいえ首輪解除したダグバが全力で楽しめそうな相手が出てきた瞬間にその能力を失うというのも些か可哀相かなというのもあり、
描写的にはあれは首輪の爆発オンリー、彼自身のゲブロンはまだ爆発していない(つまり彼はまだセッティングアルティメット態に変身可能)という形で書かせていただきました。

とは言え元々こういった事情もあった為首輪の爆発描写にガドル戦等に見られるグロンギのゲブロン爆発を参考にしたのは事実で、特に作中脚注を入れなかったのも事実なので、もしそこらへんが分かりにくかった、ということであればまた本文に加筆しておこうと思います。

801 ◆LuuKRM2PEg:2019/11/09(土) 09:31:03 ID:zKM0KWMg
これより先日投下させて頂いた「フォルテ♪覚醒せよ、その魂」の修正版を投下させて頂きます。

802 ◆LuuKRM2PEg:2019/11/09(土) 09:32:05 ID:zKM0KWMg

「門矢士……いいや、士君。君には大きな借りができてしまったな」
「言ったはずだ、総司から啓介のことを頼まれたと。それに、総司だけじゃなくユウスケのことだってある。
 それだけだ」
「……士君、君は本当に世界を破壊する悪魔なのか? やはり、君が誰かを傷付けるような男には到底思えないが……」
「言ったはずだ。俺は世界の破壊者。
 かつて俺は、数え切れないほどの仮面ライダーを破壊した。そして俺の存在こそが、世界を破滅に導いている。
 もしかしたら、今こうしている間にも……俺のせいで破壊されている世界があるかもしれないぞ?
 例えば、啓介や渡が生きるキバの世界とかな」

 名護の希望を踏みにじるように、真っ向から否定した。
 例え何があろうとも、ディケイドが世界の破壊者であることは変わらないし、破壊者としての使命に目覚めてからは数え切れないほどのライダーを破壊した。だから、ディケイドである門矢士がいる限り、どこかの世界が破壊される運命にあると言われようとも否定しない。
 それこそ、ディケイドの影響で『キバの世界』の崩壊が確定することも、充分にあり得た。

「いいや、俺は君が破壊者と決めるつもりはない。例え、君の存在が世界の崩壊に何らかの関係があったとしても……俺は君の命を一方的に奪ったりなどしない。
 もちろん、俺とて愛する者が生きる世界が破壊されることを黙って見ているつもりはないし、また士君の影響で世界が消滅するのであれば……対策を考えるつもりだ」
「どうやって、俺から世界の崩壊を防ぐつもりだ? 俺が存在する限り、お前の世界が消える可能性を考えないのか?」

「一つの可能性に囚われすぎては、また別の可能性を見つけることはできない。
 俺達人間は、他者を慈しみ、そして未知に対する探究心を持ち合わせている。困難に陥ろうとも、その度に誰かと力を合わせて乗り越え続けた。
 だから、本当に君が世界滅亡の原因であろうとも、変える方法を見つけられるはずだ。士君が総司君を救ってくれたように、俺も世界と士君……そして紅渡君が救われる可能性を見つけたい」

 いわゆる、青臭い理想論だった。
 根拠はなく、また今も存亡の危機に陥っている世界の住民が聞けば、反発することに間違いはない。自らの世界を守るため、殺し合いに乗った者からすれば腸が煮えくり返るだろう。
 だけど、否定する気にはなれなかった。名護啓介はどこまでも真っ直ぐで、正義感に溢れていたからこそ、総司も信頼したのだから。

803 ◆LuuKRM2PEg:2019/11/09(土) 09:34:04 ID:zKM0KWMg
「なるほどな。やっぱり、お前は総司の師匠だな」
「総司君が自分の道を歩こうとしていることはわかった。ならば、そんな総司君が胸を張っていられるように、俺は俺として……この胸に宿る正義の炎に従い、最後まで戦うつもりだ」
「なら、俺は何も言わない。総司が自分の道を進んだように、啓介も啓介自身の道を歩けばいいだけだ」

 こうして、名護啓介もまた旅をし続けるのだろう。
 彼の助けを必要としている人間はまだいる。一人でも多くを守り、救うまでに歩みを止めるつもりがないことが、名護啓介という男だ。出会ってから間もないが、言霊と眼力から熱い心が感じられる。

「それと、城戸真司達のことも伝えるぞ。あいつらは、ここよりも南のエリアにいた」
「真司くん達にも会ったのか!?」
「ああ、放送で呼ばれた乃木という男と戦っていた。
 乃木は大ショッカーを潰そうとしていたが、邪魔と思った相手は容赦なく殺しにかかる奴だから気を付けろ。しかも、一度倒しても蘇るほどにしぶとい奴だ……きっと、今もどこかで俺たちのことを狙っているはずだ」

「乃木か……わかった。その男についても注意しよう。
 だけど、真司君たちも強いから簡単に負けることはないと、俺は信じている。修二君やリュウタロス君も、今はまだ未熟かもしれないが……いつか総司君と肩を並べられるほどに、成長してくれるはずだ」

 名護の言う通り、城戸真司と間宮麗奈は強い意志を見せていた。リュウタロスも乃木に抗っていたようだし、三原修二も決して逃げ出さずにみんなと共にいた。
 だから、彼ら4人が弱いだなんてありえないし、リュウタロスと三原の二人も総司のように成長するだろう。

「俺が伝えるべきことはもう伝えた。さっさと病院に戻るぞ」
「そうだな。そして士君、もしもまだ仲間を探すのであれば……一条薫や左翔太郎君とも出会うんだ。彼らは今、サーキット場で特訓をしているが、特訓が終われば病院で出会えるはずだ」
「一条薫と左翔太郎か……」

 その途端、自分でも声のトーンが下がっていくのを感じた。
 北のサーキット場には、かつてスーパーショッカーとの戦いで共闘した左翔太郎がいる。再会は喜ばしいが、自らの存在が彼に危害を及ぼす可能性も生まれてしまう。
 ディケイドの影響で他のライダーが命を落とす……やはり、ただの戯言と切り捨てることはできなかった。

「……なら、あいつらにも会うときが来るかもな」

 しかし、自分一人のワガママを押し通して、総司や名護の仲間を無視することなどできない。キングや乃木はもちろんのこと、フィリップについても翔太郎達に伝える必要があった。

「乗れ、こいつを使った方が早い」

 そう言いながら、トライチェイサーの後部座席に乗ることを促す。頷く名護の姿からは、先程までの焦燥感は見られず、ただ威風堂々とした雰囲気を放っている。

 ――今回は名護啓介と一緒にいるんだね、士。君は世界の破壊者じゃなかったのかい?

 ふと、海東大樹の嫌味が聞こえた気がした。
 しかし、いつもの得意げな笑みを浮かべているようにも感じる。素直じゃなかったが、やはり彼も仮面ライダーとしての心意気を持っていたのだろう。
 もっとも、普段の海東の素行は到底褒められなかったが。

(悪いが、今の俺はディケイドとして戦うことができない。それに、総司やユウスケのために啓介を守る……それだけだ)
 ――なるほどね。なら、僕は高みの見物をさせて頂こう。破壊者である士が、本当に彼を守り切れるのかどうかを。

 精々頑張りたまえ。その言葉を最後に、海東の皮肉は聞こえなくなった。

804 ◆LuuKRM2PEg:2019/11/09(土) 09:37:23 ID:zKM0KWMg


 ◆


(門矢士か……感じのいい青年だ。やはり、ユウスケ君の言う通りだった)

 通りすがりの仮面ライダーこと門矢士の笑みを胸に刻んだ名護啓介は、ただ前を見つめている。
 士からは色々と世話になった。総司や真司、そして紅渡のことを伝えて貰っただけではなく、同行してもらっている。
 ここまでサポートをして貰ったからには、士を裏切らないように戦うべきだった。キングの他にも、乃木怜治という危険人物を知ったからには、余計にこの命を粗末にできない。

(総司君、君の進むべき道は分かった……君が自分一人で旅立とうというなら、俺は信じて待とう。
 男の旅立ちを邪魔するなんて無粋な真似はしない)

 一抹の寂しさを抱くが、それ以上に総司の決断を祝福していた。
 総司は多くの人間の守りがあって仮面ライダーカブトになったように、今度は誰かを守る盾として歩けるようになった。
 事実、総司は自分の助けがなくとも、士と共にキングに勝っている。ならば、士が言うように今は彼を待ち続けて、再び巡り会える時が来たら祝福しよう。
 その時が来たら、より大きく成長した総司の姿が見られるはずだ。

(士君だけじゃない。今の俺は、ヒビキや橘……そして音也など、たくさんの仮面ライダー達から想いを継承された。ならば今の俺がやるべきことは、これまでと同じだ)

 今の自分がやるべきことは、数多くの仮面ライダー達と同じように正義を成し遂げること。弟子の総司が広い世界に向かって羽ばたいたのに、師匠が総司だけにこだわってどうするのか。
 悪魔の集団大ショッカーを正義のためにも倒して、そして士や総司を始めとした仮面ライダーたちを生存させた上で、世界滅亡を止める方法も見つけたかった。例え、ディケイドの存在が世界が破壊される要因であろうとも、最後まで諦めてはいけない。
 何かを破壊するための力は、同時に何かを生み出すことにも繋がる。士は総司の絶望を破壊して、新たなる道を歩むきっかけを作ったように。
 翔太郎や一条、そして士からは無茶をするなと咎められたのだから、やはりこの命を粗末にすることはできなかった。
 総司と胸を張って再会できるよう、一人でも多くを救うために進みたかった。その為にも、まずは体を休めるべき。

――僕は、僕の守りたいものを全て守るだけです

 不意に、闇のキバに変身した青年の声が脳裏に蘇る。

――はい、俺、中途半端はしません、絶対に!

 そして、ほんの僅かな再会を果たした小野寺ユウスケの力強い声も、頭の中でリプートされた。
 彼らのことを全て知る訳ではない。しかし、二人は純粋な想いを胸に抱いたのは確かだ。どんな理由があろうとも、彼らに殺し合いを強制させた大ショッカーに正当性など認めてはいけなかった。
 二人のように、すべてのものを守るためにも、中途半端なことをしない。もちろん、津上翔一が最期に言い残したように、中途半端でも生き続けることを忘れるつもりはない。
 そうでなければ、元の世界で帰りを待っている最愛の妻にも顔向けができなかった。


 ◆


 名護啓介と共に、門矢士はD-1エリアの病院に辿り着いていた。
 ここでは、キングの罠によって命を奪われた津上翔一が眠っている。名護から彼が眠る場所まで案内してもらったが、苦い記憶をほじくり返したはずだ。
 その償いとして、せめて総司のことを翔一に伝えたい。

805 ◆LuuKRM2PEg:2019/11/09(土) 09:40:26 ID:zKM0KWMg

「津上翔一。啓介から聞いたぞ……最期まで総司の無事を願っていたと。だけど、総司のことなら心配するな。あいつはもう、一人で飛べる」

 津上翔一がどんな男であるか、士には全くわからない。
 かつて、『アギトの世界』にて芦河ショウイチは葦原涼のように荒んでいたが、他者を思いやり続ける熱い心を持ち続けていた。大切な人間を守るために戦っていたショウイチや涼の姿を忘れられる訳がない。
 だから、ショウイチのパラレルにして涼の仲間である翔一も、強さと優しい心を持ち合わせた男のはずだった。

「お前が最期に何を想ったのか、俺は知らない。だけど、お前のことだから総司たちの無事を願っていたはずだ。
 翔一も知ってるように、あいつらはみんな強いぞ? 真司、麗奈、修二、リュウタロス、そして総司と啓介……転んで怪我をしても、最後には立ち上がっている。だから、翔一は何も心配しなくていいんだ」

 総司は翔一の命を奪ったことで絶望していたが、それでも士の命を守ろうとしてくれた。彼の心の強さは、翔一の影響もあったはずだ。
 真司と麗奈だって充分な強さを持っているし、二人のように三原修二とリュウタロスが成長する可能性もある。だから、翔一が心配する必要はないことを伝えたかった。

「翔一はゆっくり休んでいろ。そして、みんなのことを見守っていればいい……翔一の分まで、俺達が戦ってやるから。俺は門矢士、通りすがりの仮面ライダーだからな……覚えておかなくてもいいが」

 そう言い残して、翔一が眠る地から背を向ける。

「士君、もういいのか?」
「ああ、総司たちのことはもう伝えた」

 伝えるべきことは山ほどあるが、今は翔一のことばかりを考えていられない。残るは翔太郎と一条、それに紅渡など探すべき相手はいる。彼らが乃木やキングの襲撃に遭う可能性を考えたら、いつまでも病院に留まれなかった。
 そのまま、士は名護と共に病院に戻ろうとしたが。

 ――ありがとう。

 どこからともなく、声が聞こえたような気がした。

「啓介、呼んだか?」
「いいや、俺は何も言っていないぞ?」

 名護からは否定されてしまう。
 反射的に振り向くが、誰かの気配は感じられない。もしかしたら、キバーラかと思ったが……男の声だった。ただの幻聴と、すぐに疑問を振り払う。

 ――総司君を助けてくれて。

 しかし、またしても男の声が聞こえてきた。
 穏やかなその声は聞き覚えがある。大ショッカーとの戦いで共闘した仮面ライダーアギトに変身した男の声とよく似ていた。

「今の声は……?」

 まるで誰かから呼ばれているように思えて、背後を振り向く。
 すると、翔一が眠る地面の中から、眩い光の玉が飛び出してくるのが見えた。あれは何か……そんな疑問と同時に、光の玉は士に向かって飛び込んでくるのが見えて、反射的に目を閉じてしまった。



「お前は……誰だ?」

 優しくて、暖かい光の中で誰かが微笑んでいるのが見えた。
 士が驚愕する一方、その男は優しい笑みを向けてくれている。まるで、破壊者である士のことを微塵も疑っていないようだ。

「まさか、お前は仮面ライダーアギト……津上翔一なのか!?」

 根拠はなく、ほとんど直感に任せた問いかけだったが、男は微笑みながら頷く。
 次の瞬間、男の姿は瞬時に変わっていき、仮面ライダーへと変身した。深紅の瞳と、黄金色の角と装甲を誇るその姿は知っている。『アギトの世界』を象徴する戦士・仮面ライダーアギトだ。
 しかし、アギトである翔一は既に命を落としているはずなのに、どうして目の前に立っているのか。

806 ◆LuuKRM2PEg:2019/11/09(土) 09:45:01 ID:zKM0KWMg

「翔一……!」

 士は呼びかけるが、翔一が変身するアギトは何も答えない。
 ただ、その赤い目からはひたすら優しい雰囲気を帯びていて、五代雄介や小野寺ユウスケを彷彿とさせる笑顔を浮かべていることが感じられた。
 翔一にも言いたいことが山ほどあった。ディケイドのせいで翔一は命を奪われてしまい、総司を悲しませてしまったことを。
 しかし、この想いを口にしようとしたが、目の前に立つアギトの姿がぼやけていく。

「翔一……? 翔一……ッ!?」

 翔一の名前を叫ぶも、アギトが消えていくのを止められない。
 アギトの姿と翔一の笑顔が、足下から光の粒となるように消えていった。

 ――士、君の本当の旅はこれからも続く。

 そんな中、翔一の声が聞こえたような気がした。
 翔一が口にしている保証はなく、ただの幻聴かもしれない。しかし、その声は確かに心の中に響いていた。

 ――その魂を、目覚めさせるよ!

 そんなメッセージと共に、士の意識は光に飲み込まれてしまった。

「翔一…………っ!」




 アギトの力は幾度となく奇跡を起こしている。
 人間の未来を守り抜いた仮面ライダーアギトが幾度も進化したように。津上翔一は数多の困難にぶつかり、そして挫けそうになろうとも、最後まで人間の未来を守るために戦い続けた。
 そんな津上翔一の中には未だにアギトの力が宿っており、最期まで総司達を救いたいという願いを抱いていた。翔一の願いに士の声が届き、新たなる奇跡が起きようとしている。
 それは…………


「……君! 士君!」

 名護の声が耳に響いて、沈んでいた意識が覚醒した。

「……啓介?」
「士君、大丈夫か? 奇妙な光が君の前に飛び込んでいたから、何事かと思ったが……怪我はなさそうだ。
 それと、そのカードはいったい何だ? いつの間にか、君が握りしめていたが……」
「カード……?」

 すぐ隣で支えてくれていた名護の言葉により、反射的に手元を見つめる。すると、驚愕で目を見開いた。

807 ◆LuuKRM2PEg:2019/11/09(土) 09:46:32 ID:zKM0KWMg

「……これは、アギトのカード?」

 気が付いたら、士の手には三枚のライダーカードが握られていた。仮面ライダーアギトが描かれたカードであり、アギトの力を取り戻したことを意味する。
 だが、何故アギトの力を取り戻したのか? 仮面ライダーアギトである津上翔一は、もうこの世にいないはずなのに。

「まさか……翔一、お前なのか? お前が俺を呼んで、そしてアギトを託してくれたのか!?」

 士は叫ぶが、答えは返ってこない。
 謎の光は既に収まっており、翔一の声も聞こえなかった。


 これこそが、津上翔一の中に宿るアギトの力が成し遂げた奇跡だ。
 翔一が変身するアギトの力が、士の持つライダーカードに受け継がれて……ディケイドはアギトの力を取り戻した。
 人類の進化の象徴であるアギトが、肉体が滅んだ程度で消滅することはあり得ない。その魂は津上翔一の意志と共に、誰かの未来をより良くすることを待ち続けていた。最期の願いを叶えてくれた士だからこそ、アギトの力を託すにふさわしいと翔一から認められた。
 ディケイドライバーには秘石・トリックスターと神秘の印・シックスエレメントが内蔵されており、ディケイドが他世界のライダーに変身するために必要な力の代替となっている。当然、ディケイドの中にはアギトの力も含まれていた。
 既にアギトの力による奇跡には前例があった。この殺し合いでも、木野薫の中に遺されたアナザーアギトの力が、葦原涼をエクシードギルスに進化させている。
 より遡るなら、かつて門矢士が芦河ショウイチのアギトを進化させたように、津上翔一がディケイドの中で眠っていたアギトの覚醒を果たした。



 しかし、士がその事実に気付くことはなく、ただアギトのカードを見つめているだけ。
 確かなことは、翔一のおかげでアギトの力を取り戻したことだ。そんなアギトはカードになっても、輝いているように見えた。まるで、士との絆を証明するように。

「翔一君……君は、死してなお俺たちのことを見守ってくれているのか!?」

 驚いているのは名護も同じだ。
 彼は翔一の最期を見届けている。翔一は総司だけでなく、名護たちの無事も祈っていたはずだ。だから、翔一の遺志を受け継ぐためにも、名護の命も絶対に守らなければいけない。

「啓介、これではっきりしたな。総司だけじゃなく、翔一も啓介が生きることを願っていた……尚更、お前の無茶を止めなければいけないな」
「痛いところを突かれたな……だが、士君の言うことはもっともだ。俺は総司君だけじゃなく、翔一君の願いも尊重してあげたい」

 名護も頷いてくれる。
 しかし、彼の表情からは張り詰めたような雰囲気は消えていた。総司の命を救うことで視野狭窄に陥っていたが、今の名護ならもう心配はいらない。
 名護啓介もまた、多くの遺志を受け継いでいるのだから、自分の命を蔑ろにする無茶はしないはずだ。

808 ◆LuuKRM2PEg:2019/11/09(土) 09:52:00 ID:zKM0KWMg

「それが翔一の答えなら……俺は旅を続けよう! 翔一が見守るなら、俺達は前に進み続けるだけだ」

 だからこそ、翔一に対する感謝を込めながら宣言する。津上翔一の名前と朗らかな笑顔を胸に刻みながら。
 彼は信じてくれたのだから、その気持ちには応えたい。翔一のためにも、今は一人でも多くの仮面ライダーに会うべきだろう。
 死ぬなよ、お前ら。これまでに出会い、そしてこの先で待ち構えているであろう仮面ライダー達の無事を祈りながら、門矢士は名護啓介と共に進んでいた。


【二日目 朝】
【D-1 病院前】


【門矢士@仮面ライダーディケイド】
【時間軸】MOVIE大戦終了後
【状態】ダメージ(中)、疲労(大)、決意、仮面ライダーディケイドに1時間40分変身不能
【装備】ディケイドライバー@仮面ライダーディケイド、ライダーカード一式@仮面ライダーディケイド、ディエンドライバー+ライダーカード(G3、王蛇、サイガ、歌舞鬼、コーカサス)+ディエンド用ケータッチ@仮面ライダーディケイド、トライチェイサー2000@仮面ライダークウガ
【道具】支給品一式×2、ケータッチ@仮面ライダーディケイド、キバーラ@仮面ライダーディケイド、 桜井の懐中時計@仮面ライダー電王 首輪探知機@オリジナル
【思考・状況】
基本行動方針:大ショッカーは、俺が潰す!
0:どんな状況だろうと、自分の信じる仮面ライダーとして戦う。
1:今は啓介と共に病院で休む。
2:巧に託された夢を果たす。
3:友好的な仮面ライダーと協力する。
4:ユウスケを見つけたらとっちめる。
5:ダグバへの強い関心。
6:音也への借りがあるので、紅渡を元に戻す。
7:仲間との合流。
8:涼、ヒビキへの感謝。
【備考】
※現在、ライダーカードはディケイド、クウガ〜電王の力を使う事が出来ます。
※該当するライダーと出会い、互いに信頼を得ればカードは力を取り戻します。
※ダグバが死んだことに対しては半信半疑です。
※津上翔一に宿るアギトの力はライダーカードに受け継がれたため、アギトのカードは力を取り戻しました。


【名護啓介@仮面ライダーキバ】
【時間軸】本編終了後
【状態】疲労(中)、ダメージ(中)、精神疲労(中)、左目に痣、決意、仮面ライダーイクサに50分変身不能、仮面ライダーブレイドに55分変身不能
【装備】イクサナックル(ver.XI)@仮面ライダーキバ、ガイアメモリ(スイーツ)@仮面ライダーW 、ファンガイアバスター@仮面ライダーキバ
【道具】支給品一式×2(名護、ガドル)
【思考・状況】
基本行動方針:悪魔の集団 大ショッカー……その命、神に返しなさい!
0:自分の正義を成し遂げるため、前を進む。
1:直也君の正義は絶対に忘れてはならない。
2:総司君のコーチになる。
3:紅渡……か。
4:例え記憶を失っても、俺は俺だ。
5:どんな罪を犯したとしても、総司君は俺の弟子だ。
6:一条が遊び心を身に着けるのが楽しみ。
7:最悪の場合スイーツメモリを使うことも考慮しなくては。
8:キングや乃木怜治のような輩がいる以上、無謀な行動はできない。
【備考】
※ゼロノスのカードの効果で、『紅渡』に関する記憶を忘却しました。これはあくまで渡の存在を忘却したのみで、彼の父である紅音也との交流や、渡と関わった事によって間接的に発生した出来事や成長などは残っています(ただし過程を思い出せなかったり、別の過程を記憶していたりします)。
※「ディケイドを倒す事が仮面ライダーの使命」だと聞かされましたが、渡との会話を忘却した為にその意味がわかっていません。ただ、気には留めています。
※自身の渡に対する記憶の忘却について把握しました。
※士に対する信頼感が芽生えたため、ディケイドが世界破壊の要因である可能性を疑いつつあります。

809 ◆LuuKRM2PEg:2019/11/09(土) 09:52:49 ID:zKM0KWMg
以上で修正投下を終了します。
気になる点があれば、再度のご意見をお願いします。

810 ◆LuuKRM2PEg:2019/11/10(日) 18:27:38 ID:lBpj8eXI
>>802より前に以下のやりとりが抜けていたので、報告をさせて頂きます。


「啓介。お前は渡をどうするつもりだ?」
「……紅渡と出会った時、何をするべきかはまだ決まっていない。居場所や、顔もわからない男を探すことは困難だろう。だが、彼が涙を流しているのであれば……俺は彼の手を取るつもりだ。
 総司君は言っていた。俺は紅渡を最高の弟子と認めていたと……だから俺は弟子である彼を救いたい」
「ならば、やはり啓介には無理をさせられないな。お前みたいな奴は、例え自分が不利な状況になろうとも誰かのために戦おうとする。周りの制止を振り払ってでもな。
 啓介のことだ。総司のことを守るためなら、自分を盾にするつもりだったはずだ……あいつを守りたいのは結構だが、お前が死ぬことを総司が望むわけないだろう」

 すると、名護は黙り混んでしまう。
 図星だろう。一真や巧だって、自らの傷を省みずに戦い抜いたのだから、名護も自己犠牲で悪に立ち向かおうとしてもおかしくない。

「そもそも、お前や総司は病院でキングたちと戦ったばかりだろ? なら、時間制限も解除されていない。総司からお前のことを頼まれた以上、くだらない罠で死なせる訳にはいかないからな」

 正確な残り時間はわからないが、今の名護は制限で仮面ライダーとして戦えないはずだ。加えて、大ショッカーが追加戦力を会場に投入することを知らせた以上、名護が不意討ちを受ける危険すらある。

「それに、俺も総司と共に戦ったばかりで、どうせ制限を受けている。制限が解除されることをただ待つよりも、お前の独断行動を止めた方が有意義だ。
言っておくが、お前が無茶をするなら、腕尽くでも止めるつもりだからな?」
「……何から何まで、見抜かれていたか。そういうことなら、君の好意に甘えさせてもらおう」

 やはり、図星だったのだろう。名護のような純粋な男は非常にわかりやすく、また嘘が苦手だ。
 名護のことを止めようとしていたことは本当し、腕尽くというのも決して建前ではない。総司には悪いと思うが、名護がどんな無茶を働くのか分からない以上、強引にでも止めさせるべきだった。

811 ◆LuuKRM2PEg:2019/11/12(火) 21:24:18 ID:Q4dHYAas
重ね重ね、失礼します。
自作を一部修正させて頂くことを報告します。

彼らが乃木やキングの襲撃に遭う可能性を考えたら、いつまでも病院に留まれなかった。

彼らが乃木やキングの襲撃に遭う可能性もあったが、今は体力の回復と変身制限解除のために休むしかなかった。

812 ◆JOKER/0r3g:2019/12/09(月) 22:27:47 ID:aD40loOI
ご指摘の部分を修正いたしましたので、早速こちらに投下しようと思います。
まずはナイト相手にアクセルを使おうとするシーンからです。

813 ◆JOKER/0r3g:2019/12/09(月) 22:28:22 ID:aD40loOI
「……中々しぶといですね。しかし、そろそろ終わりにしましょう」

自分が加わってなおここまで手こずるとは思っていなかったのか、呆れと共に賞賛の情さえ込めた声を投げたファイズは、自身の腰に取り付けられた懐中電灯型アタッチメントへと手を伸ばす。
実力に劣るファイズすら碌に打倒できない有体のナイトを終わらせるには、やはり現状の最高威力を誇るクリムゾンスマッシュの一撃が有効だろう。
だがその腕がミッションメモリーをファイズポインターに装填するその寸前、彼の身体は唐突に現れた茶色の腕によって大きく吹き飛ばされていた。

814 ◆JOKER/0r3g:2019/12/09(月) 22:29:13 ID:aD40loOI
続いては件のパンチホッパー相手にアクセルを使用するシーンです。

815 ◆JOKER/0r3g:2019/12/09(月) 22:29:44 ID:aD40loOI
「……王!?」

そしてその予想だにしていなかったオーガの敗北は、ファイズの元にも届いていた。
王の目金にすら敵うオーガの圧倒的な力が、今は逆に身体を蝕む毒として王を苦しめている。
今すぐにでもそれを止めなければと、彼は脇目も振らぬまま、王の身体からオーガドライバーを引き剥がす為に走り出そうとする。

「俺を忘れるな」

だが瞬間、突如として目前に現れたパンチホッパーがその行く手を阻む。
言葉を返すより早くファイズは拳を振るうが、パンチホッパーには届かない。
躱し、或いは受け止め、その全てを時間の浪費という形で徒労に終わらせてくる。

「クッ、この死に損ないが――!」

「死に損ないはどっちだ」

らしくなく激情に身を任せ乱打を続けるファイズの面へ、パンチホッパーのストレートパンチが突き刺さる。
呻き後退したファイズを見やりながら、この因縁を終わらせるためにパンチホッパーは自身のベルトへと手を伸ばした。

――RIDER JUMP

電子音声と共に跳び上がった敵を睨みつけ、憤りを込めてファイズはファイズショットを握りしめる。
この一撃で示すのだ。オルフェノクの築く未来は揺るがないのだと、オルフェノクこそがこの世を支配するに相応しいと信じた自分は、間違っていなかったのだと。
ただならぬ思いを込め、グランインパクトを放つファイズ。

――RIDER PUNCH

それを迎え撃つは、宙より降り立つパンチホッパーの、ただ正義の勝利を信じる鋭い拳。
ぶつかり合った二つの意思と拳は、高速の世界でなお変わらぬ速度を誇る光に包まれて、大きな衝撃と共に両者を吹き飛ばした。

816 ◆JOKER/0r3g:2019/12/09(月) 22:30:27 ID:aD40loOI
以上です。
ご指摘の箇所は修正できたと思いますが、まだ何か問題があればよろしくお願いします。

817 ◆LuuKRM2PEg:2019/12/21(土) 21:38:54 ID:RP1d2.yA
以前投下した拙作の「フォルテ♪覚醒せよ、その魂」にて、アギトの力継承パートについて他書き手氏より意見がありましたので
修正版を投下させていただきます。

818 ◆LuuKRM2PEg:2019/12/21(土) 21:39:56 ID:RP1d2.yA
 名護啓介と共に、門矢士はD-1エリアの病院に辿り着いていた。
 ここでは、キングの罠によって命を奪われた津上翔一が眠っている。名護から彼が眠る場所まで案内してもらったが、苦い記憶をほじくり返したはずだ。
 その償いとして、せめて総司のことを翔一に伝えたい。

「津上翔一。啓介から聞いたぞ……最期まで総司の無事を願っていたと。だけど、総司のことなら心配するな。あいつはもう、一人で飛べる」

 津上翔一がどんな男であるか、士には全くわからない。
 かつて、『アギトの世界』にて芦河ショウイチは葦原涼のように荒んでいたが、他者を思いやり続ける熱い心を持ち続けていた。大切な人間を守るために戦っていたショウイチや涼の姿を忘れられる訳がない。
 だから、ショウイチのパラレルにして涼の仲間である翔一も、強さと優しい心を持ち合わせた男のはずだった。

「お前が最期に何を想ったのか、俺は知らない。だけど、お前のことだから総司たちの無事を願っていたはずだ。
 翔一も知ってるように、あいつらはみんな強いぞ? 真司、麗奈、修二、リュウタロス、そして総司と啓介……転んで怪我をしても、最後には立ち上がっている。だから、翔一は何も心配しなくていいんだ」

 総司は翔一の命を奪ったことで絶望していたが、それでも士の命を守ろうとしてくれた。彼の心の強さは、翔一の影響もあったはずだ。
 真司と麗奈だって充分な強さを持っているし、二人のように三原修二とリュウタロスが成長する可能性もある。だから、翔一が心配する必要はないことを伝えたかった。

「翔一はゆっくり休んでいろ。そして、みんなのことを見守っていればいい……翔一の分まで、俺達が戦ってやるから。俺は門矢士、通りすがりの仮面ライダーだからな……覚えておかなくてもいいが」

 そう言い残して、翔一が眠る地から背を向ける。

「士君、もういいのか?」
「ああ、総司たちのことはもう伝えた」

 伝えるべきことは山ほどあるが、今は翔一のことばかりを考えていられない。残るは翔太郎と一条、それに紅渡など探すべき相手はいる。

「啓介、翔一は確か言っていたそうだな。中途半端でもいいから、生きろと」
「その通りだ。彼は、死にいく最期の時まで、自分の傷に目を向けずに……一条に生きろと言っていた。いいや、一条だけじゃない。翔太郎君や俺も含まれていた。
 そして、彼は最期まで総司君の身も案じていた。だから、総司君を救ってくれた士君のことを感謝しているはずだ」
「だったら、俺達はここで待たないといけないようだな。総司は旅に出て、一条薫と翔太郎の二人もサーキット場で特訓している最中だ。
 それに、真司達もいつかここに戻ってくるかもしれない……その時、帰る場所が滅茶苦茶になっていたら安心していられないだろ?」

 大ショッカーによって用意された病院だが、名護や総司たちは確かに同じ時間を過ごしていた。真司や麗奈、三原やリュウタロスもいたはずだ。
 一度はキングによって滅茶苦茶にされたが、名護たちがここで絆を培ってきたことは変わらない。憩いの空間が壊されても、立て直すことができる。

819 ◆LuuKRM2PEg:2019/12/21(土) 21:40:39 ID:RP1d2.yA
「確かに、みんながここで過ごしてきた時間はかけがえのないものだ。キング達によって壊されたが……荒れた場所なら整えればいいし、そこでみんなを迎えることだってできる」
「ああ、俺達が色々準備して“前みたい”……とまではいかなくても、安心できる病院に作り直せるはずだ」

 キングに対する嫌みを含めながら、名護を励ますように呟く。
 総司は何度倒れそうになっても立ち上がったように、彼が帰るべき場所を何度壊されようとも立て直せばいい。真司達だって、今はどこかで戦っているはず。
 いつか、みんなとまた巡り会うときが来るまで、帰ってくる場所を守るべきだろう。光栄次郎が、自分たちの帰りをいつだって待ってくれたように。

「なら、俺と士君の二人で少しずつ立て直していこう。そしてもう一つ、俺は君のことをもっと知りたい。士君のことを知っていけば、士君と全ての世界を救える方法が見つけられるからな」
「別に構わないが、そんなことをしても無駄だと思うぞ? 俺の意思とは関係なく、世界が破壊されたらどうするつもりだ」
「いいや、どんな経験だろうと決して無駄にはならない。学んだこと、経験したこと……全てが可能性を広げるきっかけになる。今を生きる子ども達だって、たくさん勉強を重ねれば将来の進路だって安定するのと、同じ理由だ」
「……確かに、勉強して知識を増やせば、視野も広がるな」

 まるで子どもに言い聞かせるような理屈だが、特に否定するつもりはない。
 士自身、これまでの旅では巡り会ってきた仮面ライダー達のことを知ったからこそ、絆と共に力を手にすることができたからだ。

「俺も、将来父親になる時が訪れたら、我が子にはたくさんの教育と経験を積ませるつもりだ。ゆとりを持ち、それでいて頼れる人間になれる願いを込めて」
「だったら、お前を守らなければいけない理由も増えたな。総司だけじゃなく、翔一も啓介が生きることを願っていたなら……お前の子どもだって、父親には生きていてほしいと願うはずだ」
「痛いところを突かれたな……だが、士君の言うことはもっともだ。俺は総司君だけじゃなく、翔一君の願いも尊重してあげたい」

 名護も頷いてくれる。
 しかし、彼の表情からは張り詰めたような雰囲気は消えていた。総司の命を救うことで視野狭窄に陥っていたが、今の名護ならもう心配はいらない。
 名護啓介もまた、多くの遺志を受け継いでいるのだから、自分の命を蔑ろにする無茶はしないはずだ。

「親がいなくなったら、子どもにとって大きなトラウマになる。お前は、自分の家族にそんな傷を負わせたいのか?」
「そんなはずはないだろう! 俺は、愛する妻と子には最大の愛情を持って向き合うつもりだ!
 もちろん、時には互いにぶつかることがあるだろう。だけど、自分の立場や感情を押しつけず、そして相手の言い分も認めていきたい。
 相手の怒りも受け止めて、お互いに大きくなっていくつもりだ」
「なるほど……総司も、そうやって成長できたんだな。この際だ、総司が戻ってくるまでに、総司のことをお前から聞いておくことにする」
「ああ、いくらでも構わないとも。それに俺も、士君だけじゃなく……ユウスケ君のことだって知りたかった。ユウスケ君をよく知る士君にしか、聞けそうにないからな」
 
 病院に向かう足取りと、声のトーンが軽やかになっていく。
 この男……名護啓介に出会えて正解だったと、そんな思考が芽生えてしまう。総司はもちろんのこと、この地でユウスケが何をしていたのかをほんの少しでも知ることができるのだから。
 きっかけこそは最悪だし、野上良太郎の死を冒涜するような思考はできるわけがない。だけど、フィリップ達から離れたことで、真司や総司を守り、名護の無茶を止めることができたことは確かだ。
 起こしてしまったことは変えられないが、一番重要なことは今だ。良太郎や翔一の分まで戦い、みんなの居場所を守り続けることが自分の義務だろう。

(良太郎、翔一……お前らはみんなを見守っていてくれればいい。良太郎や翔一が見守るなら、俺達は前に進み続けるだけだ)

 だからこそ、良太郎と翔一に対する感謝を込めながら心の中で宣言する。
 彼らは願っていたのだから、その気持ちには応えたい。二人のためにも、今は一人でも多くの仮面ライダーに会うべきだろう。
 死ぬなよ、お前ら。これまでに出会い、そしてこの先で待ち構えているであろう仮面ライダー達の無事を祈りながら、門矢士は名護啓介と共に進んでいた。

820 ◆LuuKRM2PEg:2019/12/21(土) 21:42:07 ID:RP1d2.yA
【二日目 朝】
【D-1 病院前】


【門矢士@仮面ライダーディケイド】
【時間軸】MOVIE大戦終了後
【状態】ダメージ(中)、疲労(大)、決意、仮面ライダーディケイドに1時間40分変身不能
【装備】ディケイドライバー@仮面ライダーディケイド、ライダーカード一式@仮面ライダーディケイド、ディエンドライバー+ライダーカード(G3、王蛇、サイガ、歌舞鬼、コーカサス)+ディエンド用ケータッチ@仮面ライダーディケイド、トライチェイサー2000@仮面ライダークウガ
【道具】支給品一式×2、ケータッチ@仮面ライダーディケイド、キバーラ@仮面ライダーディケイド、 桜井の懐中時計@仮面ライダー電王 首輪探知機@オリジナル
【思考・状況】
基本行動方針:大ショッカーは、俺が潰す!
0:どんな状況だろうと、自分の信じる仮面ライダーとして戦う。
1:今は啓介と共に病院で休む。
2:巧に託された夢を果たす。
3:友好的な仮面ライダーと協力する。
4:ユウスケを見つけたらとっちめる。
5:ダグバへの強い関心。
6:音也への借りがあるので、紅渡を元に戻す。
7:仲間との合流。
8:涼、ヒビキへの感謝。
【備考】
※現在、ライダーカードはディケイド、クウガ、龍騎〜電王の力を使う事が出来ます。
※該当するライダーと出会い、互いに信頼を得ればカードは力を取り戻します。
※ダグバが死んだことに対しては半信半疑です。


【名護啓介@仮面ライダーキバ】
【時間軸】本編終了後
【状態】疲労(中)、ダメージ(中)、精神疲労(中)、左目に痣、決意、仮面ライダーイクサに50分変身不能、仮面ライダーブレイドに55分変身不能
【装備】イクサナックル(ver.XI)@仮面ライダーキバ、ガイアメモリ(スイーツ)@仮面ライダーW 、ファンガイアバスター@仮面ライダーキバ
【道具】支給品一式×2(名護、ガドル)
【思考・状況】
基本行動方針:悪魔の集団 大ショッカー……その命、神に返しなさい!
0:自分の正義を成し遂げるため、前を進む。
1:直也君の正義は絶対に忘れてはならない。
2:総司君のコーチになる。
3:紅渡……か。
4:例え記憶を失っても、俺は俺だ。
5:どんな罪を犯したとしても、総司君は俺の弟子だ。
6:一条が遊び心を身に着けるのが楽しみ。
7:最悪の場合スイーツメモリを使うことも考慮しなくては。
8:キングや乃木怜治のような輩がいる以上、無謀な行動はできない。
【備考】
※ゼロノスのカードの効果で、『紅渡』に関する記憶を忘却しました。これはあくまで渡の存在を忘却したのみで、彼の父である紅音也との交流や、渡と関わった事によって間接的に発生した出来事や成長などは残っています(ただし過程を思い出せなかったり、別の過程を記憶していたりします)。
※「ディケイドを倒す事が仮面ライダーの使命」だと聞かされましたが、渡との会話を忘却した為にその意味がわかっていません。ただ、気には留めています。
※自身の渡に対する記憶の忘却について把握しました。
※士に対する信頼感が芽生えたため、ディケイドが世界破壊の要因である可能性を疑いつつあります。

821 ◆LuuKRM2PEg:2019/12/21(土) 21:57:35 ID:RP1d2.yA
以上で修正版の投下を終了します。
具体的には、アギトの力の継承に関する流れに無理があるという内容の指摘を受けて、修正をさせて頂きました。
投下して一月近く経過した状況で、展開そのものを大きく変えるような修正をする形で申し訳ありません。
重ね重ね失礼いたしますが、もしもご意見等があればよろしくお願い致します。

822 ◆JOKER/0r3g:2019/12/22(日) 00:07:17 ID:Pf/.137o
迅速な修正、及び加筆、お疲れ様です。
わざわざ言うことでないかとも思いましたが逆にぼかして責任逃れのようになるのも嫌だったので先に断っておきますと、今回の修正をお願いした書き手とは私のことです。
一ヶ月ほど前の作品に関する修正をお願いする形になってしまい心苦しい部分もあったのですが、氏も今回の展開に引っかかる部分があったとのことで、互いに合意の上で今回のような修正に至りました。
とはいえ、そういった事情があるとはいえ数作前の作品を修正するというのは中々気の進まない行為であるでしょうし、それを快諾してくださった氏に対して、改めてこの場で感謝の意を示させていただきます。

さて、肝心の内容に関する意見についてですが、キャラクターの掛合いなどに関する感想はこの場では差し控えさせていただきます。
そのうえでですが、今回の修正依頼の目的であるアギトの力関連のオミットに関しては、全く問題ないと思います。
本投下の際から数度に渡り指摘を行い、氏にとっては余計な修正を行わせてしまったことに対しては本当に申し訳ない限りですが、自分の書く展開でこの修正が無駄ではなかったとそう感じていただけるよう、頑張りたいと思います。

少し話が筋から逸れてしまいましたが、自分の意見は以上です。ただの修正の是非を述べるだけの文章であるはずなのに長々と失礼いたしました。

823 ◆LuuKRM2PEg:2019/12/22(日) 06:34:53 ID:5bKsUN3w
こちらこそ、この度はこちらの不手際で流れを混乱させてしまい、大変失礼致しました。
そして、自分も◆JOKER/0r3g 氏を初めとした他書き手氏の今後の展開を楽しみにしておりますので、よろしくお願いします。

824 ◆Mx1Kf1LUvw:2020/01/14(火) 00:53:12 ID:aOl8Dbvw
投稿初挑戦のものです。よろしくお願いしますm(_ _)m
一応渡について「こうなったらどうなるだろう?」という気持ちがむくむく湧いてきて書きたくなったのですが、何分初めてのため、一度こちらに投稿して意見を伺った方がいいな、と思い書き込みました。
何か初書き込みの注意点などあれば教えていただけると嬉しいです。よろしくお願いしますm(_ _)m


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