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児童文庫ロワイヤル
382
:
◆BrXLNuUpHQ
:2025/06/04(水) 07:42:04 ID:???0
コトコトコトコト。
給湯室、と入り口のドアにプレートを付けられた部屋は、8畳ほどの広さの真ん中にテーブルが置かれている。そこに鍋敷きをひくと、エリンはコンロから鍋を持ち上げて慎重に置いた。
「陽人君。」
「うおっ!?」
窓辺の和泉陽人は、声をかけられると飛び起きて、慌てて周囲を見渡すと。
「悪い、寝てたか……」
「だいじょうぶだよ、何もなかったから。」
「なにも、か。」
バツの悪そうに言うも、エリンにそう言われて、心配そうな顔をした。
エリンたちがこの美術館に来てから数時間が経った。ハンターから逃げようと動いていた時、周りが駐車場や庭園になっていて近づく者に気づきやすい建物を見つけて入ったのだ。屋内に入った途端に大量の銃器があることに驚いたり、監視カメラを見つけてホッとしたり、電話が繋がらなくてガッカリしたりと、他の参加者がここ数時間でやったことを一通り経験して。他のグループと違うところというと、その間陽人が気を張り続けていたことだ。
(長いな……)
逃走中ではなかなか無い長丁場に、陽人はすっかり疲れ果てていた。彼のこれまでの経験が裏目に出ていた。これほどまでに何も無い時間が続いたことなど、逃走中では無かったのだ。
立ち上がると、心配を顔に出しながらモニターを眺める。高価なものもあるからか、防犯はしっかりしているらしい。まさか殺し合いの場に怪盗などいないだろうに、どうやらちゃんと監視カメラ機能しているようで、その無意味さが不気味に感じる。視線を外しかけたその時、モニターに動く影を見つけて、陽人が二度見したと同時にけたたましいアラームが鳴った。
敵か! ハンターか! そう思ってモニターに近づくと、制服姿の少女の慌てた様子が映っている。そしてカメラの方に向かって何やらジェスチャーをして、慌ただしく駆け出した。数分もせずにガチャリと部屋のドアが開く。だが陽人は動くことはなかった。それが誰かわかりきっていたからだ。
「ごめんなさい……」
そう言いながら入ってきたのは、このチームでは最後の一人、小川凛である。陽人はため息をつくと笑って防犯センサーを切った。
つくづく、自分の知るゲームとは違うと思う。こんな頼りになる設備を自分が使えれば、ハンターから逃げるのももっと楽になるだろう。時間といい自分の常識の通じなさを感じる。
そう思うとようやく、少し肩の荷が下りた。これまでの何時間かは、いつハンターが四方から殺到してこないか、実は美術品に紛れていてタイマーで放出されるんじゃないかと気を張り続けていた。なにより、あまりに何も起きない時間が長過ぎたのだ。いつ襲われるかと思いながら過ごすのは、とてつもなく時間の流れを遅く感じさせる。
(こんなことなら、小清水を拾ってきてやったら。)
そうなると自然、目の前で死んだ小清水凛のことが思い出される。あの硬直していく姿は、目を閉じれば今も瞼の裏にこびりついて離れない。あの死に顔を忘れることは、きっと無いのだろうと思う。
それでも陽人は、冷静になろうと考えた。自分が一番ハンターの脅威をわかっている。彼女ですらハンターに見つかれば振り切るのは容易ではなく、あんなにもアッサリと命を落としたのだ。そしてアイテムのように置かれた銃や刀。仮にハンターがいなくても、危険な人間はおそらくいるだろう。そうなれば自分一人で死体を運ぶなど無謀でしかない。もちろんエリン達を巻き込むわけには行かないので、己一人で死体を──
(死体……アイツを死体として……)
「陽人君?」
「……ああ、ありがとう、いただきます。」
見知った仲間を、人間ではなく物として運ぶような発想に行き着いて、陽人は不機嫌に立ちすくんだ。遺体1つ弔ってやれないことに、どんな顔をすればいいのかわからない。
それでもエリン達が無理矢理でも明るく振る舞っているのを見て、陽人はなんとか強張った顔を緩めようとしつつテーブルについた。
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