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主人公とヒロインがおねショタかつ相棒関係のSF小説
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これで決まりだ
(これまでのあらすじ:
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支援絵ヤッター!!ウィーピピー!!
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「あの…?ほんとに?ですか」
「そうだよ、私がステラエール・エトワール。正真正銘、その人だ」
薄暗い中でも見えたその美しい顔、綺麗な瞳。しばらく視線を合わせたスターは、何か例えようのない気持ちがこみ上げてくるのを抑えられなかった。
だからそれに必死になっていて、いつの間にか顎を右手で触られていることにも気が付かなかった。
「悪かったねスター、ちょっと待たせたか」
触れた右手に泳がせた目線を正面に戻してみれば、どうやらステラは目線を合わせるためにしゃがんだようで、その顔がとても近かった。
照れくさいやら恥ずかしいやら、もうスターには心の整理がついていない。女性というものが、初めて会うものであるからだ。
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「スター、歳はいくつだい」
「歳…?」
「生まれてからどれくらいかってことだよ」
「12年だって、言ってました」
本当のところ、スターは自分の出生を知らない。彼はインクで名前の書かれた古風な紙媒体の手紙と一緒に、バスケットに入れられていた赤ん坊だった。
廃棄区画に捨てられていた彼を拾ったのが黒髪の少年で、それが12年前のことだというだけなのだ。
「12歳か。少し小さいが、まあこれから伸びるだろ」
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ステラが立ち上がって目線が高くなったことにはっとして、スターは一つの問いを口に出す。
「聞きたかったんです、どうして、ぼくが?追いかけたとき見てたんでしょう、相乗りしてた彼だって」
「…彼は君とは違う、ケイ素人間じゃシルバー・スターは動かせない。君がケイ素人間の思考操縦タイプビークルを動かせないように」
「それってどういう…」
「半金属か、そうじゃないか。身体のできかたが根本的に違うのさ」
有機生物とケイ素生物の違いも、そもそも炭素とケイ素でさえスターにはまだ理解し得ない。半金属の身体だと言われても、外見は何も変わらない。
何か一方的にまくし立てられているようで、スターは腑に落ちなかった。自分がビークルを動かせなかった理由をさらりと教えられたのもそうだ。
それもひとえに、スターが置いてきてしまった黒髪の少年への心配事のためだった。彼は今、一人なのだから。
(あいつも連れてきてほしい、なんてわがままだよ。けど)
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「なんにせよ、ここから私の宇宙船まではもう一息。ここに君を呼びつけたのは、地下の地図情報はないからだ」
ステラの声に応じて、スターはうつむいた視線を再び上げる。『早く乗ってくれ』とでも言いたげなステラだった。
「ここから先は相乗りだ。君が運転で、私が後ろで道案内。私の来た道を辿るんだ、地上は面倒に…」
閉鎖空間の音は反響でよく響いて聞こえてくる。…ステラが急に黙ったのは、シルバー・スター以外の駆動音を聞きとったからであった。
それまでなんとなく緩んでいた顔の様子が、とたんに精悍なものに変わった。目つきも鋭く、隙が無い。
「私の後ろに。離れるなよ、スター」
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その視線が見据える先は、スターが降りてきた方向。耳に通り抜けてくる音は、間違いなくそちらから聞こえてくる。
(無機質な音。それに数が多い…多脚型の無人ロボットが数台ってところだろうか)
おおよその当たりをつけたステラ。すると懐から何かを掴んで取り出す、それはシルバー・スターと同じような意匠を持つ何か。
それと同じように白銀のカラーリングを持ち、楕円形をそのまま立体にしたようなフォルム。だが、それに付いているとは持ち手と引き金…そう、これは銃。
スターの頭ひとつほどはあろうかというそれの中央に刻まれた、銃口のように真っ二つにその銃を分かつ亀裂の先から稲妻が走り始める。
「射程は抑えめで、消失半径は…2メートルってところか。スター、前に来るなよ…消えてしまうぞ」
「え?」
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「この〔クォーク・グルー・プラズマガン〕の前じゃあね。前にいるだけで熱で消し飛ぶ」
ステラが、シルバー・スターの前へと歩みを始める。それと同時に、その正面の曲がり角から聞こえる何かの駆動音はスターからも聞こえるほどに大きくなってきた。
…ちょうど、ステラがシルバー・スターの前へと出きった瞬間。やってきたのは、2m半ばはあろうかという蜘蛛のような多脚型ロボットの群れ。
それらは曲がり角を出て、真っ直ぐな通路をステラに向かって、一直線に駆けてきた。
すべてのロボットが曲がり角を出たと確信したステラ、その瞬間にためらいなく引き金を引いてみせる。瞬間、『ギュヂッ』といった不快な音と凄まじい閃光が走った。
――気付けば、ステラの目の前は半径2メートルの円柱状にぽっかりと消失していた。向こう側の壁までも、綺麗に。
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「な…は!?」
スターが眩しさに目をしかめた一瞬、その一瞬で景色が変わったという事実に彼は驚きを隠せなかった。
見れば、先ほどあれだけいたすべての多脚ロボットはもはや欠片ほどしか残っていない。そのボディのほとんどが消し飛んだのだ。
「デモンストレーションだ、少しは私のことがわかってもらえるだろうか?始末は済んだ。さ、行こう」
「ええ…?ああ」
…ますます、底の知れない人だと。スターはまた認識を改めざるを得なかった。
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「それで、どう思う?」
「ステラさん?どうって」
「私が背中で掴まってる気分は」
「…あったかいです、こんなことあんまりなかった。それよりそろそろ」
「…ああ、そこの配電盤で止まってくれ」
茶化すつもりでそんなことを聞いたステラの方が、もっとなんとも言えない気分に襲われたのだった。
二人乗りで通路内を駆けまわるシルバー・スター。ステラが止まってほしいと指示したのは、使い物にならないような自動ドアと配電盤の前だった。
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「こういうの、知ってます。ちょっと生きてれば少しは動いてくれたりして」
「そう、そういうの」
ステラにとっては一度済ませた作業、慣れた手つきで配電盤を開けて次々につなげてゆく。頭上のライトが付くと同時に、自動ドアも両者を感知し受け入れた。
開いた部屋に鎮座していたのは、スターにとっては見慣れない機器。パッと見では電磁ネットのようなものであったが、それはこうして固定されて使うものではない。
「ワープドライブだよ。ふつう携行は許されてないが…まあ気にしないでくれ」
「ワープ…?」
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「光の幕、こいつを通り抜ければ一気に宇宙船のありかまで行ける。……」
「へえ…!それもすごい…」
無邪気に目を輝かすスター。…それを、ステラは今まで見せたことのないような表情で見つめる。
今まで見せていた強気な表情とは違って、どこか物憂いげで、心配事を隠し切れていない。しばらくして、スターの後ろで口を開く。
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「スター。君は、まだ決めてなかったね」
「え?」
「成り行きで振り回した私が言うのもなんだと思う。だけど、君はあそこで満足していたのかな?」
「…それって?」
「…私と来たくないんじゃないかってこと。ずっとあそこにいたいなら、私は…それでも」
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「いまさらですよ」
スターの言葉を聞いたステラ。はっとして、落としていた視線をゆっくりスターに向け直す。
見つめ合ったその眼には、小さくありながらも確かに決意が据わっていた。少し間を置いて、スターが続ける。
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「あれだけいろんなものを見せられて、行きたくないわけないんです。たしかに心配だってありますけど」
「弱気にならないでください。ぼくはあなたについていく」
「…そうかい」
自分は何を心配していたのだろうか。もともと、人のコトなどあまり顧みないような人間だったはずだ…と、ステラは思い直す。
(何か…中てられてたかな、この子に)
「じゃあ、行こうか?」
「…はいっ」
流れ星のような一日であった。しかし二人の運命はそんな短い時の中でも重なり交わり、そして今歩み出したのだ。
――シルバー・スターと、共に。
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◆第1話完な◆
6つもスレを跨いでオリジナルSSを書かせてもらった
こんな経験は一度もしたことがない…
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オツカレサマドスエ!
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お疲れ〜
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オツシャス
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オツシャス
NaNじぇい連続小説イイゾー
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