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粒子が超える世界の電離
1
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/29(月) 01:39:17 ID:/gOds1Jc
● 記者会見会場
学者「―――という訳でして、現在復旧に向けて全力を尽くしているところです」
記者A「世界中の経済に深刻な影響が出ていますが保証などのお考えは?」
学者「この会見は技術的な部分に絞っておりますので、この場ではちょっと・・・」
記者B「技術的な会見と仰いましたが、何もお話し頂けていないのですが」
学者「・・・・・・」
記者C「教授の方からは何かお話し頂ける事はないんでしょうか」
記者D「巷では“神の怒り”等と揶揄されていますがどう思われますか」
教授「その表現は」
パシャパシャ パシャパシャ
教授「私も賛成だ」
学者「教授?」
教授「これは・・・ 我々が手を出すには早すぎたようだ」
ザワザワ
130
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/04/29(水) 05:17:45 ID:4hSEygD6
少女「そんな物で一日の行動を縛るなんて滑稽ね」
男「うるせー。 ってか何これ・・」
少女「?」
男「・・・・・・。 枝に縛って厄払いするか」
少女「ちょっと待ちなさい」
男「何だよ。 見せねーぞ」
少女「お金」
男「はあ?」
少女「おみくじの代金、ちゃんと払って行きなさい」
男「・・・・・・」
131
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/04/29(水) 05:18:32 ID:4hSEygD6
店主「おや、朝早くからご苦労さんだね」スタスタ
男「店主さんもやりません? このおみくじ当たるんですよ。 最近少し調子悪いですけど」
店主「へ〜 少女はどうだった?」
少女「私がこんなものやるわけないでしょ」
店主「物は試し。 折角だしやってみたら?」
男「そうだよ、少女も日頃の行ないを神様に正してもらえ」
少女「ハァ〜・・・」ガチャン
ストン
少女「・・・・・・。 何よコレ」
男「“リードエラー” 斬新な結果だな・・・ 初めて見た」
132
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/04/29(水) 05:19:27 ID:4hSEygD6
店主「僕も引いてみようかな」ガチャン
ストン
男「どうです?」
店主「“善は急げ、気になることは最優先で取り組む事”だって」
少女「気に入らないわね」ガチャン
ストン
少女「・・・・・・」
男「うわ、また“リードエラー”って。 神は少女を見捨てたり」
少女「データベース不良を起こすような機械に頼る神はこちらから願い下げよ」
店主「・・・・・・。 この機械ちょっと見せてもらっても良い?」
男「どうぞ、中には少女嫌いの小さい神様がいるかも知れないですけど」
少女「面白いわね、出てきたら徹底的に調べましょう。 家に麻酔はある?」
男「だから表現!」
133
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/04/29(水) 05:20:03 ID:4hSEygD6
店主「フフッ」ニコッ
少女「何がおかしいの?」イラッ
店主「いいや別に。 それより、このおみくじ機械は昔からこの神社にあるのかい?」
男「そうですね、結構前から。 いつからあるんだろう」
少女「店主、ココ見て。 名盤に書かれた製造元」
店主「どれどれ・・・ 榊総研!?」
男「さかきそうけん?」
少女「溶接で閉められていて中は見られそうにないわね」
店主「下の方にコンソール用のポートがあるね。 ノーパソ持ってくるよ」スタスタ
男「榊総研って何?」
少女「Z財団の前身よ。 正確に言えば吸収されたんだけど」
男「え? 財団っておみくじの機械まで作ってたの?」
少女「・・・・・・」
134
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/29(水) 07:33:19 ID:YQCBIqEc
待ってた
135
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/02(土) 02:02:00 ID:H7JdC4ZM
○ 数分後
店主「お待たせ、ちょっとパソコンと繋げてみようか」カチャカチャ
少女「どう?」
店主「う〜ん・・・ 何というか衝撃だね」
男「何かマズいことでも?」
店主「このおみくじ機械はオルビスに繋がってる」
少女「!?」
男「オルビスって、人工知能のオルビス?」
少女「まさか・・・ 財団にバレて」
店主「大丈夫。 通信がシステム3のパターンで暗号化されてるから財団は追えないよ」
少女「ちょっと待って。 システム3が駆動しているの!?」
店主「ん〜 動いている気配はないね・・・」
少女「・・・言ってる意味が分からないんだけど」
店主「そうだね、僕も自分で何を言っているのか分からないよ」
136
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/02(土) 02:03:21 ID:H7JdC4ZM
少女「仮説は?」
店主「そうだねぇ・・・ 間違いなく言えることはシステム3の電源は落ちている」
少女「なのにシステム3のパターンが検出されるという事は・・・」
店主「システム3用の量子ユニットが微弱ながら生きてるって事だね」
少女「おみくじ機械がシステム3の代わりになっている」
店主「そう考えるのがしっくりくるね」
少女「ユニットの場所を追える?」
店主「さすがに無理かな。 信号が微弱すぎて経路情報が分からない」
少女「分かっていたら財団が先に手を出すはずか」
男「もしかしてオルビス絡みの何かがうちの神社にあるって言ってる?」
少女「言ってるわ」
137
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/02(土) 02:04:16 ID:H7JdC4ZM
男「気プセンにあるヤツじゃないのか? ここからも近いし」
少女「システム3の本体は行方不明よ」
男「は?」
店主「実は無くなっちゃったんだ」
男「そんな落とし物みたいに言われても・・・」
店主「以前は“ハゲ山”近くの廃研究所に設置してあったようだけどね」
少女「アンタが昔に忍び込んで撮った写真に写っていたのがシステム3よ」
男「あの紫色の玉が?」
店主「球自体は量子ユニットって言ってdeusの転送装置なんだけどね」
少女「3台の人工知能が量子ユニットで繋がって特殊な演算と通信をしているのよ」
男「でも、もぬけの空だったよな。 どこかに移したんじゃないの?」
少女「だからその動かした先が不明って言ってるでしょ」
138
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/02(土) 02:05:19 ID:H7JdC4ZM
男「つまり・・・ 3台が繋がってオルビスなのに、実は2台しかないって事?」
店主「簡単に言うとそうなるね。 まぁ残りの1台らしきものが今見つかったけど」
少女「何でアンタの家の神社にオルビスの痕跡があるの? お願いだから教えて」
男「知らねーよ」
少女「そう言えば、前におみくじは人工知能の結果とか言ってたわね」
男「あ〜 この機械の中にデータが入っていると思ってた・・・」
少女「通りで結果が当たる訳ね。 行動予測をオルビスがやっているんだもの」
店主「少女の結果が出なかったのも納得だね」
少女「・・・・・・」
139
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/02(土) 02:05:59 ID:H7JdC4ZM
男「どういう意味?」
少女「何でもないわ」
店主「あ〜・・・ でも、何でこんなものがここにあるんだろうね」
男「姉貴に聞いてみますか、何か知ってるかも」
店主「そう言えばお姉さんは?」
少女「町に買い物へ行くって朝早くに出て行ったわ」
店主「買い物ならすぐ戻ってくるかもね」
男「繁華街はバスで2時間かかりますから夜まで戻りませんよ」
店主「田舎あるあるだね」ハハハ
140
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/02(土) 02:06:47 ID:H7JdC4ZM
● 翌日・朝/MHKテレビ
天気アナ「随分早かったわね」
記者「情報の鮮度はいくらお金を渡すかで変わりますから」
天気アナ「賄賂?」
記者「このネタにならいくら使おうが痛くありませんよ」
天気アナ「上から報道規制がかかるかも知れない案件よ?」
記者「その時は別の手を考えましょう」
天気アナ「たくましいわね・・・ それで、調査の方は?」
記者「良い収穫がありました。 見て下さい」ペラッ
141
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/02(土) 02:07:23 ID:H7JdC4ZM
天気アナ「この紙は?」
記者「役所の倉庫に保管されていた戸籍謄本の原本です」
天気アナ「戸籍?」
記者「今はオルビスが管理してますが、その前まで役場で管理されていた物です」
天気アナ「でもデータはそのままオルビスに移行されているんでしょ?」
記者「見比べてみて下さい。 こっちがオルビス経由で取得したものです」スッ
天気アナ「特に不審な点はないわね」
記者「そして、こっちが役場に保管されていた原本」
天気アナ「え!? これってどういう事?」
142
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/02(土) 02:08:00 ID:H7JdC4ZM
記者「書き換えられているんです」
天気アナ「・・・・・・」
記者「原本には載っていないのに現在の戸籍には子供が登場しています」
天気アナ「あの人が言ったことに間違いはなかったか・・・」
記者「こんな事が出来るのは財団の人間かオルビスの設計者だけです」
天気アナ「この子の両親は?」
記者「2人とも財団の前身である榊総研の上級研究員だったようです」
天気アナ「榊総研・・・」
記者「しかも、オルビスの開発者である教授と同じ研究チームでした」
143
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/02(土) 02:09:01 ID:H7JdC4ZM
天気アナ「・・・子供として偽装したと言う事ね」
記者「おそらく。 オルビスの戸籍情報を改竄して」
天気アナ「・・・・・・」
記者「もう一つ、昨日夜にお願いされてた尋ね人ですが」
天気アナ「つかめそう?」
記者「それが・・・ 偶然なのかそれとも」
天気アナ「?」
記者「この戸籍謄本の・・・ ここに記載されている人物が“時の女神の代理人”です」
天気アナ「嘘でしょ・・・」
144
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/05(火) 06:51:52 ID:dRZoMmQw
○ 男の家
姉「ただいま〜」
男「お、姉貴帰ってきた」
姉「いやー疲れた。 またバスの本数減ったんじゃない?」
男「町まで何買いに行ってたんだ?」
姉「これよ、はい少女ちゃんにプレゼント」
少女「私に?」
姉「その巫女服だけじゃ流石に、ね」
少女「そのためにわざわざ・・・」
姉「サイズは大丈夫だと思うけど試着してみて」
少女「ありがとうございます。 隣の部屋借りても良いですか?」
姉「どうぞ」
少女「じゃあ着替えてきます」スタスタ
145
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/05(火) 06:52:37 ID:dRZoMmQw
店主「なんかすみません、僕がすべきことなんですが」
姉「気にしないで。 私が好きで買ってきたんだし」
男「姉貴って意外と気が利くのな」
姉「うるさいわよ」
ガチャッ
少女「あの、お姉さん・・・?」ヒョコッ
姉「サイズはどう?」
男「顔だけ出してどうしたんだ? 恥ずかしがってないで出てこいって」
少女「・・・・・・」
店主「どうしたんだい少女」
少女「・・・・・・」テクテク
146
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/05(火) 06:53:17 ID:dRZoMmQw
男「なんだよ巫女服のままじゃん。 着替えてこいよ」
少女「着替えたわ」
男「は?」
姉「サイズは丁度みたいね。 良かった」
男「え? もしかして姉貴・・・」
姉「巫女服の代えがあった方が良いでしょ? 売ってるところ探すの苦労したわ」
一同「・・・・・・」
prrr
店主「あっ、僕だ。 ちょっと失礼するね」スタスタ
少女「・・・・・・」チラッ
147
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/05(火) 06:54:03 ID:dRZoMmQw
男「店主さんに電話なんて珍しいな」
少女「あれも色々と縛りがあるから。 まぁ気にする必要ないわ」
男「ふ〜ん。 あっ、それより姉貴に聞きたい事があるんだけど」
姉「あら、何?」
男「神礼所に置いてあるおみくじの機械の事って何か知ってる?」
姉「・・・あぁ、あれね」
少女「単刀直入に聞きます。 オルビスに繋がっているようですが」
姉「・・・・・・」
少女「その反応、何かご存じなんですね」
姉「今日の夜って少し時間あるかしら、見せたい物があるの」
少女「?」
姉「暗くなったら皆で本殿に行きましょう」
148
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/05(火) 06:54:49 ID:dRZoMmQw
ガチャッ
店主「ごめんね、話の途中で外しちゃって」スタスタ
男「あっ、店主さん。 丁度良かった」
店主「?」
男「今日の夜って時間あります? 皆で本殿に行くんですけど」
店主「本殿?」
姉「とっておきの物を見せてあげる」
店主「・・・・・・」
姉「?」
少女「どうしたの店主」
店主「えっ、あぁ分かった。 夜だね?」
姉「じゃぁ後で。 私は部屋で少しお仕事してくるわね」スタスタ
149
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/05(火) 06:55:44 ID:dRZoMmQw
○姉の部屋
コンコン
姉「は〜い」
ガチャ
店主「お邪魔します。 少し良いかな?」
姉「あら、どうぞ入って」
店主「凄い量の本だね」キョロキョロ
姉「物理学者ですからこの位は当然! 気になる物があればお貸ししますよ?」
店主「さすが物理書ばかりだね。 僕の専門とは少し・・・ おや、この本は珍しいね」
姉「どれどれ?」
150
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/05(火) 06:56:20 ID:dRZoMmQw
店主「『第四深層からのゲーミングプログラム』」
姉「・・・・・・」
店主「難しいみたいで全然売れなかったみたいだけど、理解できた?」
姉「結構手こずったけどね」
店主「これ、名前は変えてあるけど僕の著書なんだ」
姉「・・・・・・」
店主「机の横にあるパソコンも凄いね。 通信ケーブルが研究施設用だ」
姉「話って何かしら?」
店主「相談・・・ というか、お願いがあるんだ」
151
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/05(火) 06:57:05 ID:dRZoMmQw
○夜・本殿前
姉「ごめ〜ん、遅くなっちゃった」テクテク
男「自分から呼びだしておいて遅れるなよ」
姉「ちょっと研究所の方に電話してたから」
男「あれ? 店主さんは?」
少女「お姉さんと一緒じゃなかったんですか?」
姉「あ〜 なんかゲーム大会があるとかで出かけたわよ」
男「ゲーム大会? こんな時間に?」
少女「・・・・・・」
姉「私も詳しく聞いていないからよく分からないけど」
少女「そうですか」
152
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/05(火) 06:57:52 ID:dRZoMmQw
男「店主さんてイマイチ何を考えているか分からないな」
姉「確かに飄々としてるわね」
男「少女は一緒に行かなくても良かったのか?」
少女「何か勘違いしているようだから言っておくけど、店主は私の監視役よ?」
男「はい?」
少女「財団から私を監視するように言われて一緒にいるだけ」
男「ちょっと待って、それって敵っていう事?」
少女「店主を見張りに立てる事が、私が財団の研究所を出る条件だった」
男「え? ちょ・・・ え!?」
少女「さ、早く本殿に行きましょ」スタスタ
男「どういう事!?」
姉「・・・・・・」
153
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/05(火) 22:13:59 ID:dRZoMmQw
○ 神社/参道
テクテク
男「いや〜 店主さんが財団の回し者なんて信じられないんだよなぁ〜」
少女「根は学者だし、色々と便利だったわ」
姉「店主さんの専門って?」
少女「量子情報工学です。 その道ではトップクラスの学者です」
男「そんなに凄いの?」
少女「店主の右に出る専門家はいないと私は思ってる」
姉「通りで・・・」
少女「?」
姉「いえ、何でもない。 私もいつかそんな風に言われたいものだわ」ハァ
154
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/05(火) 22:15:21 ID:dRZoMmQw
少女「失礼ですがお姉さんはどうして学者の道を?」
姉「・・・・・・。 私はどうしても量子物理学者になりたいの。 それもとびきり優秀な」
男「超勉強してたもんな。 でも情報工学にいくと思ってたのに何で物理に変えたんだ?」
姉「そう・・・ あれは5年前、私が学者を志すきっかけが訪れ―――」
男「姉貴、急に自分語りするクセ直した方が良いぞ?」
姉「あら、これは初めて話す私のとっておきなんだけど」
少女「その話、よろしければ聞かせてもらえないでしょうか」
男「え〜 聞くの〜?」
姉「昔ね、この神社で火災があったの」
少女「火災?」
男「あ〜 落雷があって本殿が燃えたんだよ」
姉「その時、本殿の修復費用を全額出してくれた方がいた」
男「へ〜 それは初めて聞いたな」
155
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/05(火) 22:15:57 ID:dRZoMmQw
姉「その人が物理学者だった。 格好いいわよね」フッ
少女・男「・・・・・・」
男「終わりか?」
少女「その学者は同じ研究所の方ですか?」
姉「・・・・・・。 残念だけどお亡くなりになったわ」
少女「そうですか・・・」
姉「5年前の飛行機事故で」
少女「!?」
男「あの事故か・・・」
少女「あ、あの・・・」
姉「?」
156
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/05(火) 22:16:37 ID:dRZoMmQw
少女「そ、それって・・・ もしかしてこの人じゃ・・・」スッ
姉「少女ちゃんて結構古い携帯使ってるのね」
少女「こ、この・・・ 右側にいる・・・」
姉「そう、この人。 この写真少女ちゃんも一緒に写ってるわね」
男「少女は相変わらず無愛想な顔してるな」
姉「おみくじ機械も教授さんが設置していった物よ」
少女「なんで・・・」
男「このおじさん少女の知り合い?」
少女「なんで教授が・・・ ここに・・・」
157
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/05(火) 22:17:13 ID:dRZoMmQw
○ 神社/本殿
ギーッ
男「うはっ、ほこり臭いな」ケホケホ
姉「アンタが普段から掃除しないのが悪いんでしょ」
少女「聞かせて下さい。 教授のこと」
男「先におみくじの件だろ」
姉「まぁ待って。 私が話をするより見てもらった方が早いと思うし」
男「見るって、本殿には何もないだろ」
姉「この辺一帯は昔の鉱山跡だって知ってる?」
少女「はい。 先日男から聞きました」
姉「至る所に坑道があってね、この本殿の下にもあるの」
男「マジで?」
158
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/05(火) 22:17:52 ID:dRZoMmQw
姉「案内するわ。 男、電気付けて」
男「あぁ」パチ
姉「そしたら、そのスイッチの蓋を開いて」
男「蓋? このカバーのことか?」
姉「そう、下の部分を持って上げれば開くわ」
男「こうか?」パカッ
グイーン
男・少女「・・・・・・」
姉「坑道の入り口」
男「こんな仕組みあったのかよ」
姉「教授さんの設計よ」
少女「・・・・・・」
姉「下に行きましょ」スタスタ
159
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/05(火) 22:18:36 ID:dRZoMmQw
○ 坑道内
テクテク
男「すげー・・・ こんなトンネルがうちの地下にあったのかよ・・・」
姉「本殿を建て直す時に、教授さんからある物を預かって欲しいって頼まれたの」
少女「教授から!?」
男「まさか宝!」
姉「私はご神体って呼んでるけど」
少女「見せてもらう事は出来ますでしょうか」
姉「え〜 この前興味ないって言ったのに〜」
少女「うっ・・・ あれは・・・ ごめんなさい」
姉「冗談よ、見てもらうために来たんだから。 でも、条件があるの」
男「勇者にしか抜けない剣的な?」
姉「決められた時間以外はその部屋の扉を開けられない」
少女「どういう事ですか?」
160
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/05(火) 22:19:15 ID:dRZoMmQw
姉「昔、この一体の鉱山は何を採掘してたか知ってる?」
男「鉱山って言ったら石炭だろ」
少女「・・・・・・。 ウラン・・・」
男「ウラン?」
少女「放射性鉱石ですね?」
姉「その根拠を教えてもらえるかしら」
少女「ハゲ山に行きました」
姉「あ〜 なるほど。 あそこ行ったんだ」
少女「参道の石畳は遮蔽のためですよね? 線量計の挙動が変でした」
姉「正解。 今は問題ないけど、あそこは特に質の良い放射性鉱脈だったらしいわ」
男「それが何か関係あるのか?」
姉「この扉の向こうは地下水の影響で数時間おきに放射線の線量が上がるの」
161
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/05(火) 22:19:56 ID:dRZoMmQw
男「ちょ・・・ それってココに住んでるのヤバくない?」
姉「安心なさいな、昔からちゃんと対策は取ってあるから。 本殿下の池も遮蔽の一つよ」
男「でも扉の向こうは危険なんだろ?」
姉「隠し場所にはもってこいだと思わない?」
少女「その扉は、次いつ開けられますか」
姉「ん〜 あと1時間位かな」
少女「ここで待たせてもらっても良いでしょうか」
姉「もちろん」
男「俺も付き合う」
162
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/08(金) 21:50:09 ID:.WD6eC8k
○ 30分後
姉「暇ね」
男「なんか持ってくれば良かったな」
姉「男、面白い話をして」
男「無茶言うなよ」
姉「少女ちゃんは話すことない?」
少女「・・・・・・」
姉「じゃぁ、私がとっておきのネタを。 あれは私が高校生―――」
少女「15年前、教授率いる研究グループが未知の粒子を発見しました」
男「少女?」
少女「・・・・・・」
163
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/08(金) 21:51:12 ID:.WD6eC8k
姉「聞かせて?」
少女「Z粒子と名付けたそれは、ある特殊な性質を持っていました」
姉「Z粒子・・・ 初耳ね。 どんな性質?」
少女「光速を超える瞬間的な情報伝達と次元演算です」
姉「次元?」
少女「その後、教授はZ粒子で3つの“もつれ”状態を作り出すことに成功しそれらをdeusと命名しました」
姉「3粒子間での量子テレポーテーションか・・・」
男「ゴメン、何言ってるか分からない・・・」
少女「気にしないで、アンタに理解させようと思って話してないから」
男「・・・・・・」
164
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/08(金) 21:52:30 ID:.WD6eC8k
少女「当時財団は“オルビット”という次世代演算装置の開発を急ピッチで進めていました」
男「オルビット? オルビスとは違うのか?」
少女「前身って言えば良いかしら。 店主が中心で開発していた財団のプロジェクトよ」
男「店主さんが!?」
少女「財団はdeusとオルビットを統合する実験を教授と店主に命じた」
姉「瞬間的な情報伝達と処理が可能なら、飛躍的に性能は上がるわね」
少女「完成したのが、3台のオルビットにdeusを格納した次元演算コンピュータネットワーク」
姉「それがオルビス・・・」
少女「はい。 オルビスの核は3つのもつれ状態にあるdeusを制御する次元転送ユニットです」
男「よく分からんが、まさに最先端科学の結晶って感じだな」
少女「そうね、最先端だわ。 でも、最先端過ぎた」
男「どういう意味だ?」
165
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/08(金) 21:54:39 ID:.WD6eC8k
少女「オルビス完成後、運用中にdeusを構成するZ粒子の減少と正体不明のエネルギーが発生したの」
男「?」
少女「調査の結果、その異変はη星の爆発放射のタイミングと一致していることが確認されたわ」
姉「η星・・・ 高エネルギー放射線が原因って事?」
少女「はい。 Z粒子はη星から来るある高エネルギー粒子と相互作用を起こすと倍のエネルギーが発生する性質を持っていました」
姉「倍って・・・ 不足分のエネルギーはどこから?」
少女「別次元から落ち込んでくると推察されます。博士は“次元電離”と呼んでいました」
姉「次元っていうのがよく分からないけど・・・ 聞く限りでは夢のような現象ね」
男「そうなのか? 簡単に言って」
姉「お金を入れたら倍のお金が出てくる両替機」
男「何それ素敵」
少女「でも出てくるのは見た事もない別の国の通貨だけど」
男「は?」
少女「変よね? だから財団は教授に命じて実証実験を行うように指示したわ」
166
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/08(金) 21:55:33 ID:.WD6eC8k
少女「実験のプロジェクト名は・・・ “ヴォイニッチ”」
男「え?」
少女「ヴォイニッチ実験の結果は想像を超えるものだった」
少女「教授は財団にオルビスをシャットダウンする事を提言した」
姉「そこまで危険な物だったの?」
少女「次元電離が発生するとエネルギー均衡を維持するためにある現象が起こります」
姉「別の次元から得たエネルギー分がこの次元から消える・・・」
男「それって、もしかして神隠し?」
少女「」コクリ
167
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/08(金) 21:57:27 ID:.WD6eC8k
姉「神隠し?」
少女「私が知る限り、この次元から12人が犠牲になっています」
姉「私達のいる世界から人が消えたって事!?」
少女「私の仮説だと一つ下の次元世界に」
姉「そんな・・・ とても信じられない・・・」
少女「それを実証したのが、ヴォイニッチ実験でした」
男「なるほど、それは危険だな」
少女「そうね。 ヴォイニッチ実験の研究成果を全て暗号化して封印する位には」
男「暗号化? まさか、そのデータって」
168
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/08(金) 21:58:00 ID:.WD6eC8k
少女「そうよ、あのゲームの中身はヴォイニッチ実験の研究データ」
男「!?」
姉「・・・・・・」
少女「結局教授は独断でオルビスの一つであるシステム3をシャットダウンした」
姉「オルビスの機能停止事件」
少女「神の怒り・・・ そう呼ばれているようですね」
男「裏にそんな理由があったなんて・・・」
少女「博士は、その後会見を開いてオルビスの危険性を訴えた。 でも帰りの飛行機で・・・」
姉「教授だけでなく会見を開いた関係者と、記者の全員が巻き込まれたのよね」
男「・・・・・・」
169
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/08(金) 21:58:36 ID:.WD6eC8k
少女「真相は勿論、会見の内容も公表されないまま」
姉「η星の爆発放射が飛行計器に誤作動を起こしたのが原因って言われてるけど・・・」
少女「その日、財団は何かしらのエネルギー体を飛行機に向け大量放出しています」
姉「えっ?」
少女「今となっては何かは分かりませんが、多分それに関係しているかと」
姉「まさか・・・」
少女「上空で次元電離が発生した。 私はそう思っています」
姉「・・・・・・」
少女「Z粒子は今の科学技術で扱うにはリスクが高すぎます」
男「それで少女はオルビスを壊そうとしてたのか?」
少女「・・・・・・」
170
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/08(金) 21:59:12 ID:.WD6eC8k
姉「あれ? オルビスは教授さんがシャットダウンしたのよね?」
少女「はい」
姉「だとしたら、何でオルビスは今でも動いているの?」
男「そう言えば、神の怒りの数日後に復旧しているよな」
少女「財団はシステム3の代わりを疑似システムで運用して急場をしのいでいます」
姉「疑似・・・ 何となくだけど、効率が悪そうね」
少女「Z粒子の量子もつれが上手くいかず、膨大なエネルギーロスが発生しているようです」
姉「そういえば、ここ数年財団は結構な数の発電所を造っているわね」
少女「付け焼刃のようですが」
姉「でも今の技術じゃ限界よね。 そんな効率の良いエネルギーを造り出すなんて・・・」
少女「一つだけ方法があります」
姉「?」
171
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/08(金) 22:00:21 ID:.WD6eC8k
少女「次元電離発生時に得られる膨大なエネルギー」
姉「Z粒子をη星からの高エネルギー粒子と反応させる」
少女「はい。 粗悪ですがZ粒子を大量放出させる最新型の照射装置が気プセンで実験中です」
姉「でもそれをしたら・・・」
少女「・・・完成して駆動すれば次元電離による犠牲が出ます」
姉「財団はシステム3が存在していることは知らないの?」
少女「教授が運び出して処分したと思っています」
男「そのシステム3ってヤツを財団は新しく作れないのか?」
少女「コンピュータは作れても完全なもつれ状態のZ粒子は作れない」
男「そんなに難しいものなのか?」
少女「そうね。 ヴォイニッチ実験のデータが解読できれば作れるかもだけど」
172
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/08(金) 22:01:00 ID:.WD6eC8k
姉「少女ちゃんはどう思ってるの?」
少女「私は、システム3はまだあると信じています」
姉「根拠は?」
少女「店主がそう言ったんです」
姉「店主さんを信じているのね」
少女「・・・・・・。 でも、教授がすでに破壊したんじゃないかって思い始めていたんですが・・・
少女「今はあると断言できる。 さっきそれを確信した」
男「おみくじの機械か・・・」
少女「量子ユニットとシステムは分離できない。 絶対この近辺にシステム3がある」
姉「少女ちゃん? これからはお姉さんの言う事はきちんと聞くこと」
少女「? どうしたんですか急に」
姉「線量計の数値下がったわね。 扉開けましょうか」
173
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/08(金) 22:01:45 ID:.WD6eC8k
ギー
少女「あっ・・・」
男「これって・・・」
姉「うちのご神体改め、オルビスの第3システムとその量子ユニット」
男「なんでそれがココに!?」
姉「言ったでしょ? 教授さんから預かって欲しいって頼まれたって」
少女「やっと・・・」ガクッ
男「少女?」
少女「やっと・・・ 見つけた・・・」
174
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/09(土) 23:55:52 ID:0bg4i7eI
○ 本殿前
男「いや〜 まさか、あんな物がうちに隠されていたなんて」
姉「私も初めて見たときはびっくりしたわ」
男「少女はアレお持ち帰りするの?」
少女「あんな大きな物どうやって持って出るのよ」
男「でもあれを動かして使うんだろ?」
少女「まずは起動させる条件を揃えないとね」
男「そう簡単には動きそうにないしな」
姉「私もアレの使い方は全く知らないわ」
175
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/09(土) 23:56:31 ID:0bg4i7eI
男「っていうか、姉貴はあんな物を預かってどうする気だったんだよ」
姉「私が預かったんじゃなくて両親なんだけど」
男「この神社、俺の知らないことだらけで怖い」
少女「あの・・・」
姉「?」
少女「・・・いえ、何でもないです」
姉「両親の話だったら構わないわよ」
男「あぁ、もう5年も前のことだし」
少女「事故と伺っていますが」
姉「5年前の飛行機事故。 あれに両親も乗っていたの」
少女「え!?」
176
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/09(土) 23:57:02 ID:0bg4i7eI
姉「二人とも研究者でね。 教授さんとはとても仲良かったらしいわ」
少女「そうだったんですか。 それで・・・」
姉「榊総研って知ってる?」
少女「はい。 教授が作った私設研究所ですよね」
男「さっきZ財団の前身って言ってたよな」
少女「今は解散してZ財団に技術移転されている」
男「ふ〜ん」
姉「うちの両親は榊総研の研究員だったの」
男「は? 財団の人間だったの?」
姉「財団に吸収される前に辞めたわ」
男「あれ? そう言えば、少女に両親の事なんか話したっけ?」
少女「・・・・・・」
177
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/09(土) 23:57:34 ID:0bg4i7eI
姉「少女ちゃん、ここに来た理由は他にもあるんでしょ?」
男「?」
姉「もしかして、15年前の事かしら」
少女「・・・・・・」
姉「やっぱり」
男「15年前にも何かあったの?」
姉「私より少女ちゃんから聞いた方が良いと思うわ」
男「少女ってそんな前から研究に関わってんのか?」
少女「勘違いしているようだから言うけど、私はオルビスの研究や開発には一切タッチしてないわ」
男「そうなのか? にしては詳しいな」
178
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/09(土) 23:58:15 ID:0bg4i7eI
少女「・・・・・・。 私はヴォイニッチ実験の被害者だから」
男「は?」
姉「・・・・・・」
少女「私は次元電離が原因でこの世界に来た」
男「えーと・・・ ちょっと、何を言っているのか分からないんだけど・・・」
少女「“私の名前は少女。 この次元とは違う世界の日本という国から来た”」
男・姉「?」
男「あの・・・ 何て言ったの? 今の何語?」
少女「私が元いた世界で使っていた言葉で日本語という言語よ」
男「・・・・・・」
179
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/09(土) 23:58:58 ID:0bg4i7eI
少女「私は5年前のヴォイニッチ実験で別の次元から落とされた」
男「ちょ、何言って・・・ 嘘だろ?」
少女「本当よ。 私はこの次元の人間じゃない」
少女「そして男、あなたもよ。 あなたは15年前に次元電離で私と同じ日本から来た」
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