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粒子が超える世界の電離
1
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/29(月) 01:39:17 ID:/gOds1Jc
● 記者会見会場
学者「―――という訳でして、現在復旧に向けて全力を尽くしているところです」
記者A「世界中の経済に深刻な影響が出ていますが保証などのお考えは?」
学者「この会見は技術的な部分に絞っておりますので、この場ではちょっと・・・」
記者B「技術的な会見と仰いましたが、何もお話し頂けていないのですが」
学者「・・・・・・」
記者C「教授の方からは何かお話し頂ける事はないんでしょうか」
記者D「巷では“神の怒り”等と揶揄されていますがどう思われますか」
教授「その表現は」
パシャパシャ パシャパシャ
教授「私も賛成だ」
学者「教授?」
教授「これは・・・ 我々が手を出すには早すぎたようだ」
ザワザワ
30
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/31(水) 00:33:06 ID:K6NynF5I
少女「なに?」キッ
友「・・・・・・。 すいません、何でもないです」
少女「」プイッ
男「今日はじめて発した言葉がお前宛で良かったな」
友「男・・・ 少女さん怖いです」
男「言っただろ。 あの口はコミュニケーション用でなく毒を吐くために付いてんだよ」
友「なるほどな・・・ ま、それは良いとして男は夏休みどうすんだ?」
男「ゲーム、と言いたいところだがパソコン調子悪くてなぁ〜」
友「あの謎解きゲームか?」
男「いつの話してんだよ、ヴォイニッチならサーバーごと消されて出来ねーよ」
友「お前一時期どっぷりハマってたもんなぁ」
男「出来るもんならまたやりてーよ」
友「止めとけ。 赤点地獄の再来だぞ」
少女「・・・・・・」
31
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/31(水) 00:34:26 ID:K6NynF5I
● 夜/男の家・自室
♪prrr
男「ん? この番号誰だ?」ピッ
男「はい、男です」
少女『お願い! 助けて! ガッテムに・・・ ちょ・・・ 店主!!』
男「その声、少女か? ヤバい感じは演技? 誘うならもっと色っぽい方が」
少女『ダメ! そこはダメ! 違うの! 店主!! やめて!!』プッ
プープープー
男「・・・・・・。 嘘だろ〜・・・」
男「どうせ掛けてくるなら2で割れる電話番号からにしろよ!」ダッ
32
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/31(水) 00:37:20 ID:K6NynF5I
● ガッテム
店主「あれ〜 いけると思ったんだけどなぁ〜 出なかったね」
少女「だから言ったでしょ。 やっぱり最低3人じゃないとダメなの」
バンッ!
店主・少女「!?」クルッ
男「マッサージのご用命ありがとうございます!」ハァハァ
店主「あれ? 男君、こんな遅くにどう―――」
男「性感マッサージではないですがキツい刺激を一発どうぞー!」ボコッ
店主「グホッ!」バタン
男「俺のツボ攻撃とやらはどうよ。 とどめは少女に譲ってやるぜ」フッ
少女「え? えーと・・・ 状況がよく分からないけどありがと」ゲシゲシッ
店主「痛たた・・・ 急にどうしたの!? って、何で少女は僕を蹴ってるの?」
少女「」ゲシゲシッ
33
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/31(水) 00:38:06 ID:K6NynF5I
○ 数分後
男「誠に申し訳ございませんでした」ドゲザ
店主「少女が変な電話したのが悪いんだし。 でも少女は何で僕を蹴ったの?」
少女「私は何も悪くない。 ゲームするからあなたを呼んだだけ」
男「お前・・・ どう考えてもあの電話はゲームの誘いじゃないぞ」
少女「そんな事はどうでも良い」
男「良くねーよ」
店主「良くないね、少女が僕を蹴ってるときの表情は本気だった」
少女「あなた今日、学校でゲームの話してたわね」
男「あ?」
少女「後ろのモニターに映ってるヤツ」
男「ん?」クルッ
少女「知ってるかしら?」
男「あの画面って・・・ まさかヴォイニッチ!?」
34
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/31(水) 00:39:00 ID:K6NynF5I
店主「男君は知ってるの?」
男「まさか、二人でこれやってたのか?」
店主「結構良い線までいってたんだけどね」
少女「いってないわ。 あそこは二人じゃ絶対クリアできない」
店主「男君はログインパス持ってる?」
男「はい。 でもヴォイニッチってネット上から消されたんじゃ・・・」
少女「そこの空いてるPCからログインしてみたら?」
男「・・・・・・」ポチッ カチャカチャ
男「お〜 当時の情報でログインできた」
店主「63のマップに行ける?」
男「・・・64じゃダメですか? 2で割れる面じゃないとちょっとやる気が・・・」
少女「我慢は体に良くないと思うけど?」
男「少女さんの仰るとおりです」カチャカチャ
店主「さて、それじゃ始めようか」
35
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/31(水) 00:39:48 ID:K6NynF5I
○ 3時間後
少女「よっし! コードキーゲット」
男「ふ〜」
店主「男君すごいね」
男「俺のライフワークですから。 ネット上から消される直前までやってましたし」
少女「あなた意外と使えるわ。 評価を1段上げても良い」
男「上から目線の評価をどうも」
店主「男君が来てくれて助かったよ」
男「でも、このゲームってもうプレイできないんじゃ・・・ 何でココに?」
店主「店にバックアップがあってね」
男「バックアップ!? そんなの取れたんですか?」
店主「男君はこのゲーム詳しいのかな?」
男「選ばれし者だけがプレイを許されるこの世の至高」
36
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/31(水) 00:40:33 ID:K6NynF5I
少女「何飾ってんのよ。 暗号文書を解読するただの謎解きゲームでしょ」
男「俺の生きがいをそんなちんけな言葉で片付けるな」
店主「他のゲームと違うのは世界中のユーザーが共同でクリアを目指す点だね」
男「全クリすると異世界への扉を開く謎の暗号文が解読されるって噂ですよね」
少女「アホくさ」
男「興奮して一緒にやってた奴に言われたかねーよ。 コードキーゲット! だっけ?」
少女「」イラッ
男「いや〜 でも久しぶりだったけどやっぱ深いゲームだなぁ〜」
少女「このゲーム、誰が作ったか知ってる?」
男「確か作者不明だったろ。 色々と謎が多いゲームだったよな」
店主「これを作ったのは人工知能なんだよ」
男「人工知能?」
店主「そう、世界最高峰の人工知能」
37
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/31(水) 00:41:09 ID:K6NynF5I
少女「正直に教えてあげたら? ゲームとして仕立てたのは自分ですって」
男「は!?」
店主「それ、言っちゃうの? 結構極秘だったんだけど」
男「ちょ、ちょっと待って下さい。 これ店主さんが作者なんですか!?」
店主「僕は暗号を解読させるためにゲームっぽく仕上げただけだよ」
男「すいません、もう一度聞いて良いですか? 店主さんって何者?」
店主「パソコンショップの店長」
男「店主さんが作者って事は・・・ 教えて下さい、ヴォイニッチの中身」
店主「いや〜」
少女「クリアできないからゲームにして皆にやらせて解読させてたのよ」
男「はい?」
店主「とても一人じゃ解読できそうにないしね」ハハハ
少女「それに私達は異世界の扉とやらを解読しているわけじゃないわ」
男「そう言えば、さっきコードキーがどうのって」
38
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/31(水) 00:41:56 ID:K6NynF5I
少女「えぇ、これよ」カチャカチャ
パッ
jUio;&%l;897kk=-i
男「何その文字の羅列」
少女「暗号文章の一部分」
店主「この暗号を特殊なプログラムに通すと〜」カチャカチャ
パッ
33554432
134217728
男「?」
少女「狙い通り、座標軸ね」
男「座標って地図の?」
少女「店主、地図に載せて」
店主「どれどれ〜 この座標は〜」カチャカチャ
少女「ツいてる、近いわ」
店主「でも財団の敷地内だね。 地図写真でも真っ黒だ」
39
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/31(水) 00:42:34 ID:K6NynF5I
男「そこって閉鎖された研究所じゃないか?」
少女「知ってるの!?」
男「結構前に閉鎖された施設だけど、未だに警備が厳重で中には入れ―――」
少女「連れいてきなさい!」グイッ
男「ちょ・・・ どうしたんだよ・・・ っていうか首しまってる! 苦しい!」
少女「店主! 出かける準備!」
男「ちょっと待てって! 理由! 理由を教えろって」
少女「あなたには関係ない」
男「そう言えばそうだな。 面倒事っぽいし、オレ帰るわ」
少女「待ちなさい、帰さないわよ」グイッ
男「関係ないんだろ? だったら解放しろよ」
少女「ヴォイニッチ、やり足りないんじゃない?」
40
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/31(水) 00:43:21 ID:K6NynF5I
男「あの研究所の侵入口を知ってます。 ご案内いたしましょうか?」
少女「!?」
男「ただ、やっぱ気になるから理由を教える事。 それが条件だ」
少女「・・・・・・」
店主「今度は少女が教えてあげたら?」
少女「どこまでよ・・・」
店主「男くんの命が危険にさらされない範囲で」
男「・・・えっ? そんなに重い話?」
店主「恩はもらった以上の対価でお返ししないとね」
少女「ハァ〜」
男「いや、あまり重い話だったら無理に聞かないけど・・・ っていうか聞きたくない」
少女「付いてきなさい」
男「どこへ?」
少女「知りたいんでしょ。 命知らずさん」
41
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/01(木) 19:22:20 ID:nB78UMUA
○ガッテム/奥の廊下
テクテク
男「このボロ屋敷って平屋だよな? 前にあるヤツってエレベーターに見えるんだけど」
少女「この先で見聞きする事は絶対に口外しないこと。 約束できる?」
男「うん分かった」
少女「本当に分かってるの?」ポチッ
ポーン
男「やっぱこんなボロ屋にエレベータって不釣り合いだろ」
少女「・・・・・・。 早く入って」
男「すげー! 地下10階までボタンがある! この建物どうなってんだよ」
少女「全部ダミーよ。 中のボタンを押したら爆発するわ」
男「は?」
42
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/01(木) 19:23:27 ID:nB78UMUA
少女「一つだけ言わせて頂戴」
男「?」
少女「私だって好きでこんな所に住んでるわけじゃないの!」
男「・・・少女さん?」
少女「ココしか売家がなかったんだから仕方ないじゃない!!」
男「・・・・・・」
少女「住んでる人間にボロボロ言わないでくれる? 結構へこむから」
男「すいません」
ポーン
男「ねぇ、反対側のドアが開いたけど・・・ それに下がった感じしなかったぞ」
少女「私はエレベータだなんて言ってない。 思い込みは良くないわよ」スタスタ
男「・・・・・・」
43
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/01(木) 19:24:27 ID:nB78UMUA
○ さらに奥の廊下
テクテク
少女「5年前、Z財団は世界最高の人工知能演算システムを開発した」
男「オルビスの事か? 世界に3台ある人工知能が繋がって動いてるんだろ?」
少女「そうね。 システム1からシステム3を総称してオルビスと呼んでる」
男「確か気プセンにはシステム3があるって噂が」
少女「・・・・・・」
男「そういうのってワクワクするよな」
少女「オルビス自体はちょっとだけ高性能なただのコンピュータよ」
男「人工知能のどこがただのコンピュータなんだよ」
少女「オルビスの核は通信と処理能力を引き上げる特別な仕組み」
男「それはつまり・・・ オルビスを統括している物があるって事?」
少女「そんなところね」
男「そういう隠された仕組みって良いねぇ。 それって何?」
44
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/01(木) 19:25:15 ID:nB78UMUA
少女「・・・deus」
男「デウス・・・ 言い響きだ。 どこにあるんだ?」
少女「誰も知らないわ」
男「まぁ最高機密だろうしな、男のロマン満載だね」
少女「そのロマンとやらと同じ物がこの扉の向こうにある」
男「はい?」
少女「良い? 絶対に誰にも言わないで。 喋ったら消えてもらうから」
男「相変わらず少女さんは毒吐きまくりますねぇ」
少女「嘘じゃないわよ? あなたを素粒子レベルで分解してあげる」
男「よく分からないけどその表現怖い・・・」
45
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/01(木) 19:25:59 ID:nB78UMUA
ギィー
男「これがデウス・・・ デカいな・・・」ゴクリ
少女「そっちのはただの壊れた発電機」
男「・・・・・・」
少女「私が手に持っている、これがdeusと同じもので“dea”」
男「ちっさ! なんか薬のカプセルみたいだけど」
少女「この中にはある粒子の量子結晶が入ってる」
男「量子・・・? へぇ〜」
少女「私の目的は、このdeaを使ってオルビスを破壊すること」
男「壊すって事か!?」
少女「そう」
46
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/01(木) 19:27:00 ID:nB78UMUA
男「世界最高峰の人工知能を?」
少女「やりがいがあるでしょ?」
男「そんな小さい・・・ デアだっけ? そんなんでどうするんだよ」
少女「あなたdeusの事を勘違いしているわね」
男「?」
少女「deusは素粒子、一度動作を開始すると存在は認識できない」
男「え〜と・・・」
少女「3つのシステム間を量子テレポーテーションで結んで次元方向に演算と通信を行う」
男「・・・・・・」
少女「このdeaはdeusの反物質だからオルビス内で解放すると対消滅を―――」
男「すいません、ちょっと物理は苦手で・・・」
47
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/01(木) 19:29:20 ID:nB78UMUA
少女「・・・そう。 じゃぁ、私が話すのはここまで」
男「いやいや、全然目的が分からないって」
少女「これ以上話してもあなたの頭が付いていけないでしょ?」
男「世界平和のための人工知能を壊すって、相手は超法規的組織のZ財団だぞ?」
少女「・・・・・・」
男「オルビスは世界のインフラや予測演算の全てを管理してる」
少女「だから?」
男「5年前に起こったオルビスのシステムダウンの事件位知ってるだろ」
少女「聞いたことはある」
男「世界中大パニック。 電気止まるわ通信止まるわで大混乱、まさに神の怒り」
48
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/01(木) 19:30:11 ID:nB78UMUA
少女「おめでたいわね。 いいわ、これだけは教えてあげる」
男「?」
少女「オルビスをこのまま使い続けると・・・ この世界の均衡が崩れる」
男「おっと、これって新興宗教の壮大な勧誘? 最近は手が込んでるな」
少女「これ以上は話しても無駄ね。 戻りましょ」
男「待った、一つだけ教えて」
少女「なに?」
男「オルビスを壊してどうするつもりだ?」
少女「・・・・・・。 あるべき姿に戻す」
男「あるべき?」
少女「今あなたに話せる事は全部話したわ。 明日の朝一で連れて行きなさい、その研究所に」
男「やっぱおみくじは当たったか・・・ 今日は最悪な一日だ」ガクッ
49
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/03(土) 02:27:50 ID:vpeawcAI
●翌日・ハゲ山
少女「ここは?」
男「ハゲ山」
店主「確かに頂上付近が禿げてるね」
少女「」チラッ
店主「なにかな?」
少女「何でもない」
男「この山の反対側に昨日言ってた廃研究所があるんです」
店主「でも、山の入り口は監視カメラだらけだよ」
少女「そうね、隙はなさそう。 どうやって入るつもり?」
男「その前に、上からで良いからコレ羽織って」
店主「?」
少女「これって・・・」
男「汚さないように注意しろよ」
50
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/03(土) 02:28:52 ID:vpeawcAI
○ 数分後
男「よしっ、と」
店主「少女、意外と似合うね」
少女「・・・・・・」
男「それじゃぁ行くか」
少女「こんな格好させてどこ行くつもり?」
男「え? 決ってんじゃん」ポチッ
少女「!? ちょっと、そのボタンは財団とのインターフォン!」
守衛『Z財団守衛室です』
男「ご無沙汰してます。 男です」
守衛『あ〜 久しぶりです。 山頂ですか?』
男「急にすいません」
守衛『今日は巫女さんもいるんですね。 いま門を開けます』
51
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/03(土) 02:29:51 ID:vpeawcAI
ガラガラ
男「ありがとうございます。 開いたみたいです」
守衛『どのくらい時間かかります?』
男「お昼までには」
守衛『2時間は絶対に超えないで下さいね。 お気を付けて』プツッ
男「第1段階クリアっと」
少女「ちょっと、どういう事?」
男「この小さいハゲ山の頂上に廃神社がある」
店主「ここへ来る前に古い地図を調べたけど載ってなかったよ?」
男「廃神社ですし、なんか禁足地らしくてまともな調査もしていないみたいで」
少女「その神社と研究所へ侵入するのにどんな関係があるの?」
男「時間もないし、歩きながら話してやるよ」
店主「それじゃぁ行きますか」
男「あっ、下に敷いてある石畳から外には出ないで歩いてね」
52
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/03(土) 02:30:50 ID:vpeawcAI
○ハゲ山/参道
テクテク
男「うち、家が神社なんだわ」
店主「へぇ〜 それは珍しいね」
男「まぁ何を祀っているのかもらない寂れた神社なんですけど」
少女「それと何の関係があるわけ?」
男「これから行く廃神社はうちが管理してる」
店主「ここは男君の家の山なの?」
男「今は財団の物みたいですけど神社だけはうちで管理しているんです」
店主「それで受付を簡単にパスできたんだね」
男「神社の管理目的で特別にこの山に入る事が許されているんです」
店主「男君と会ってからスムーズに進んでいるね。 もっと早く来れば良かったかな」
少女「・・・・・・」
53
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/03(土) 02:31:28 ID:vpeawcAI
男「そろそろ頂上です」
店主「確かに禿げてきたね」
少女「・・・・・・」チラッ
店主「さっきから少女はある単語に反応しているようだけど、僕は違うよ?」
少女「そう?」
店主「・・・・・・」
男「ほら、あそこ」
店主「あ〜 たしかに廃神社だね」
少女「ここまで来たのは良いけど、研究所にはどうやって忍び込むつもり?」
店主「下に見える研究所の塀にも監視カメラがびっしりだね」
男「それが大丈夫なんだな〜」
少女「?」
54
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/03(土) 02:32:40 ID:vpeawcAI
男「聞いて驚け、この山は何かの鉱山跡だったらしくて下に隠れ坑道がある」
少女「鉱山跡・・・」
男「本殿の中に坑道に入る穴があるんだよね〜」
店主「それが研究所と繋がっているのかい?」
男「そうなんですよ、凄くないですか?」
少女「守衛が2時間以内に戻れって言っていたわね」
男「なんかそういう決まりがあるみたい」
少女「鉱山跡で時間制限の禁足地か・・・」キョロキョロ
男「巫女服が気になる? 大丈夫、口さえ開かなきゃちゃんとした巫女に見えるから」
少女「黙りなさい、頭だけ異次元に送るわよ」
男「・・・・・・」
少女「店主、線量計持ってる?」
店主「携帯用の簡易なヤツなら」
少女「付近の放射線量を測定して」
店主「あぁ、地面から測ってみようか」ゴソゴソ
55
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/03(土) 02:33:19 ID:vpeawcAI
ピッ
店主「えっ!?」
少女「やっぱり思った通りみたいね。 線量は?」
店主「反応無し」
少女「・・・・・・」
男「プッ」ニヤッ
少女「店主、お腹に力入れなさい。 良い感じのツボを刺激してあげる」
店主「ちょ、待てって! 反応がないんだよ!」
少女「放射線は出ていないって事でしょ」
店主「違う。 いや、違わないけど異常だね」
少女「何を言ってるの?」
56
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/03(土) 02:33:54 ID:vpeawcAI
店主「検出器を空に向けるよ」
ピピッ ピピッ
男「針が触れてる」
店主「宇宙から来る放射線だよ。 今度は下に向けるね」
ピッ
男「針が振れてない」
店主「放射線は地球の中からも放出されているんだ」
男「じゃぁ、針は振れるはずですよね」
店主「石畳の外を計測してみようか」
ピピッ ピピッ
男「振れた。 結構大きいですね」
57
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/03(土) 02:34:29 ID:vpeawcAI
店主「遮られてるね。 この石畳って昔からこの状態?」
男「100年以上前の物だって聞いたことはありますけど・・・」
店主「ちょっと失礼するね」ガコンッ
男「うわっ、あんまり傷付けないで下さいね。 直すお金ないんで」
ガンッ ガンッ
少女「何か出てきた?」
男「中が黒い。 これって鉄?」
店主「鉄にしては少し柔らかいかな」
少女「なるほどね」
店主「念のためサンプル採取しようか」ゴソゴソ
58
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/03(土) 02:35:06 ID:vpeawcAI
● 廃研究所内
テクテク
店主「いや〜 今までで一番楽に潜入できたね」
男「えっ、こんな危険なことしょっちゅうやってるんですか?」
店主「そうだね。 そりゃもう数え切れない位」
少女「32回目よ。 全然数えきれるわ」
男「32・・・ そういう2で割れる数字は昨日言っておいてくれよ」
店主「数字がどうかしたのかい?」
少女「非科学的で下らない迷信」
男「あのおみくじは当たるんです〜 って、おみくじの事知ってんのかよ」
店主「へ〜 ちなみに今日の運勢は?」
男「苦労の一日。 “麗しき美女と星空の下で語らう”と道が開ける」
少女「絶望的ね、あなたには一生縁がなさそうだけど」
男「うるせーよ」
59
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/03(土) 02:35:39 ID:vpeawcAI
店主「それは困ったね。 男君といると嫌なことが起こりそうだ」
男「・・・なぁ、警察行こう? まだ若いんだし、やり直しはきくって」
少女「財団の敷地内は警察もノータッチの治外法権よ」
男「もっとタチ悪りーよ。 俺まだ捕まりたくない・・・」
店主「そうだね。 予想通りもぬけの殻だし早々に退散しようか」
男「賛成です」
店主「ちなみに男君、この研究所って何年前に閉鎖されたか分かるかい?」
男「確か5年位前だったかな」
店主「5年前か・・・」チラッ
少女「・・・・・・」
男「この建物って外から見えないし、閉鎖していることすら知らない人もいるかも」
60
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/03(土) 02:36:14 ID:vpeawcAI
店主「男君は何で閉鎖してるって分かったの?」
男「あ〜 面白いものいっぱいあったから結構忍び込んでたん―――」
少女「!?」ガシッ
男「ちょ、何だよ! 急に掴みかかりやがって!」
少女「もしかして、この研究所が閉鎖される前も忍び込んだの!?」
男「あぁ」
少女「紫色に光る球のついた機械は無かった!?」
男「ちょ、まずは落ち着こう?」
少女「話したら離してあげる」
男「紫色の玉?」
店主「高さ2メート位で中央に丸い電球みたいに光った物が埋め込んであるんだ」
男「あ〜 そう言えばあったかも」
61
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/03(土) 02:36:48 ID:vpeawcAI
少女「どこ! 置いてあった場所に案内しなさい!!」ガシッ
男「その前に離せって!!」
店主「少女、無理はダメだよ」
少女「・・・・・・」パッ
店主「覚えてる範囲で構わないから教えてくれるかい?」
男「結構昔ですからね・・・ そうだ、写真撮ったはずだか───」
少女「どこ! その写真を見せなさい!」ガシッ
男「ちょ、また! 家にあるから後で見せてやるよ」
店主「そろそろ時間だし、一旦ここから出ようか」
少女「・・・・・・」
62
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/04(日) 15:37:48 ID:42xeVDN6
かけあいが軽妙で好き
続き支援
63
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/04(日) 21:50:02 ID:ebek2Pi6
● MHKテレビ
天気アナ「ここ1年の気象予測で的中率が90%を切っていたのが4件、か・・・」
(少女)『過去の気象予測で90%を切っていた時のニュースとか調べてみたら?』
天気アナ「ニュースって言われても、どのニュースよ・・・」ハァ
スタッフ「あれ? 天気アナさん、こんな朝早くにどうしたんです?」
天気アナ「あぁ、ちょっと気になる事があってね」
スタッフ「もしかして例の行方不明事件ですか?」コソッ
天気アナ「何それ?」
スタッフ「あれ? 報道のヤツにまだ会ってません?」
天気アナ「そういえば、昨日そんな事言ってたわね。 ごめん忘れてた」
スタッフ「なんか気象関係で聞きたい事があるみたいでしたけど」
天気アナ「ありがと、すぐ会ってくるわ」
64
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/04(日) 21:51:28 ID:ebek2Pi6
○ 会議室
記者「お忙しいところすみません」
天気アナ「気象関係で聞きたいことがあるって聞いたけど」
記者「実は見てもらいたい映像があって、意見を伺えないかと」
天気アナ「私なんかが見て何か役に立つかしら?」
記者「正直お手上げでして」
天気アナ「行方不明事件って聞いたけど」
記者「表向きは。 実際は“神隠し”事件と言った方が良いかと思います」
天気アナ「神隠しって・・・」
記者「まずは見て下さい。 再生します」
パッ
天気アナ「公園?」
記者「財団の管理敷地です。 少し離れた店の防犯カメラが偶然撮った物です」
65
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/04(日) 21:52:22 ID:ebek2Pi6
天気アナ「女の子が一人でアイス食べながら歩いているわね」
記者「被害者です。 あっ、ここからです、よく見ていて下さい」
天気アナ「雨・・・ にしては光が強いかな」
記者「はい。 道路は濡れていないので雨とは違うと思います」
シュー
天気アナ「!?」
記者「消えました」
天気アナ「ちょ、どういう事!?」
記者「一瞬で消えてしまったんです」
天気アナ「消えたって・・・ そんな・・・」
66
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/04(日) 21:53:44 ID:ebek2Pi6
記者「実は同じような現象が私の知る限り過去12件発生しています」
天気アナ「そんなに!?」
記者「事の発端は5年前、これと似たような映像が匿名で局に届きまして」
天気アナ「当時の対応は?」
記者「報道では流石に取り合わず・・・ 怪奇ミステリー特番で放送することに」
天気アナ「5年前の怪奇ミステリー特番って、もしかして・・・」
記者「はい、スタッフと出演者が乗った飛行機が消息を絶った例のアレです」
天気アナ「・・・・・・」
記者「実は送られてきたテープがその事故の後に無くなっているのが分かったんです」
天気アナ「じゃあ、その映像も」
記者「それが編集のやりくりテープに一部ですが残っていて・・・ お見せします」
パッ
天気アナ「この場所は?」
記者「詳細は分かりません。 右側に映っている動物に注目して下さい」
67
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/04(日) 21:54:22 ID:ebek2Pi6
天気アナ「さっきと同じね。 光る雨のような物が降り注いでる」
記者「この後です」
シュッ
天気アナ「消えた・・・」
記者「最初にお見せした映像と同じ現象です。 あっ、この後上空が写ります」
天気アナ「典型的な冬型の雲ね」
記者「この後もう少しPANして・・・ ここです!」
天気アナ「これ・・・」
記者「ドーナツのような形の雲で真ん中がぽっかり空いています」
天気アナ「エンゼルエコー」
記者「エンゼル?」
天気アナ「大気の屈折や障害物の影響で観測機器が虚像を出す現象なんだけど」
記者「虚像? しかし、これは実際に写ってますよ?」
天気アナ「・・・・・・」
68
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/04(日) 21:55:08 ID:ebek2Pi6
記者「あっ、このシーンも見て下さい」
天気アナ「また光る雨が・・・」
記者「先ほどよりも強く光って」
プツッ
記者「ここで映像が切れています」
天気アナ「大きく画面がぶれた時、一瞬左端に誰か写っていた気がするんだけど」
記者「最後の2コマに少し遠いですが男性の後ろ姿が写っています」
天気アナ「止メで見られるかしら」
記者「もちろんです」
パッ
天気アナ「これ・・・ 着ている物が実験着に見えるわね」
記者「はい。 何かの極秘実験だったんじゃないかと睨んでいます」
天気アナ「この人・・・」
記者「どうでしょうか」
69
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/04(日) 21:56:17 ID:ebek2Pi6
天気アナ「さっき過去に12回確認したって言ったわよね。 この1年では?」
記者「確か4回ですね。 このリストに事件の日時も書いてあります」ペラッ
天気アナ「・・・・・・。 これか・・・」
記者「何か糸口でも?」
天気アナ「この件、私も調べてみて良いかしら」
記者「気をつけて下さい。 経験上かなりマズい案件だと思いますので」
天気アナ「分かった。 一つ急ぎで調べたい事があるんだけど」
記者「?」
天気アナ「このメモリに記録されている映像に出てくる人物の素性」スッ
記者「何の映像です?」
天気アナ「先週携帯で隠し撮りしたもの。 3人映ってる」
記者「この事件と関係が?」
天気アナ「間違いない。 会話も入ってるから見れば納得できると思うわ」
記者「分かりました。 最優先で調べます」
70
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/06(火) 22:26:26 ID:K.L6tQ7I
● 2時間後/ガッテム
店主「よしっと」
男「何してるんです? なんか格好いい機械ですね」
店主「さっき採取した石畳の破片を成分分析にかけようかなって」
少女「そんなのどうでも良いわ。 どうせPbでしょ?」
男「ぴーびー?」
店主「気にしなくて良いよ。 少女はたまに不思議な単語を使うから」
男「確かに。 頭が良いならアホにでも分かる用語で話せよな」
少女「うるさい。 早く行くわよ」
男「どこへ? そうだ、今日は暑いし遊びに行くなら近くに良い川があるけど」
少女「アンタの家に行くの! 写真を見せてくれるって言ったでしょ」
男「あ〜 そういえばそんな約束したな」
店主「それじゃ、行きますか」
71
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/06(火) 22:27:21 ID:K.L6tQ7I
コンコン
一同「?」クルッ
天気アナ「こんにちは」
男「天気アナさん! 遊びに来てくれたんですか!?」
天気アナ「少し時間あるかしら」
少女「忙しいの。 残念だけど時間はないわ」
店主「折角ですしメモリでも買っていきませんか? 2kBの良い出物があるんです」
天気アナ「いらない。 それより、面白い映像を持ってきたんだけど」
少女「天気図なら後で見てあげる。 言ったでしょ? 時間がないの」
天気アナ「人が消える瞬間を収めた映像、って言えば興味出るかしら」
少女「!?」
72
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/06(火) 22:28:12 ID:K.L6tQ7I
天気アナ「さすが少女博士、食いつきが良いわね」
男「博士?」
少女「」キッ
天気アナ「ごめんなさいね、調べさせてもらったわ」
男「少女って博士なの?」
少女「研究所にいたんだから何もおかしいことはないと思うけど」
男「いや、でも博士って」
少女「私がいた研究所には石を投げれば博士に当たるくらいには沢山いた」
男「そこじゃなくて、その歳で博士って・・・ あ〜人をイラッとさせる研究とか?」
少女「」イラッ
天気アナ「どうする? コレ、見る?」
少女「・・・・・・」
73
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/06(火) 22:29:13 ID:K.L6tQ7I
○ 居間
店主「それじゃ、再生するよ」チラッ
少女「・・・・・・。 構わないわ」
パッ
男「どっかの広場?」
店主「この造りは財団の敷地っぽいね」
天気アナ「この辺りからよ、この女の子をよく見てて」
男「雨が降ってるのに傘差してない」
店主「雨にしては、少し眩しいかな。 道路も濡れてな――― !?」
男「あれ?」
天気アナ「消えた」
店主「・・・・・・」チラッ
少女「」ブルブル
74
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/06(火) 22:29:55 ID:K.L6tQ7I
店主「大丈夫かい?」ボソッ
少女「・・・えぇ」
男「どうしたんだ少女」
天気アナ「顔色が悪いみたいだけど」
少女「武者震いよ。 それより、とても興味深い映像ね」
店主「こんなものがあったなんて驚きだよね」
少女「この映像はいつ撮られたの?」
天気アナ「7日前、画面の右下に小さく時間も出てるわ」
店主「14:53って書いてあるね」
少女「なるほど。 で、そちらの見解は?」
天気アナ「お手上げ。 二人は何か思い当たる節がありそうね」
少女「面白い映像を見せてくれたし・・・ 良いわ、仮説だけど聞きます?」
男「え? こんなの説明できるのか?」
天気アナ「ぜひ聞かせて頂戴」
75
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/06(火) 22:38:34 ID:K.L6tQ7I
少女「電離と同じよ」
男「電離・・・?」
店主「男くんは原子の構造って知ってる?」
男「・・・・・・。 まぁ僕くらいになると知ってますよね」
天気アナ「原子核があって、その周りを電子が回っているって事かしら?」
店主「そう。 電子が回る軌道はいくつかあるんだ」
天気アナ「確か殻でしたっけ」
店主「電子が何らかの要因で空になった場合、どうなるか分かる?」
男「うん」
天気アナ「外側の殻にある電子が落ちてくる」
男「まぁ物理の初歩ですよね」
少女「アンタ・・・ そんないい加減な生き方してるから運勢が最悪なのよ」
男「うるせーよ。 でも、それが何か関係あるんですか?」
店主「ないね」
男「・・・・・・」
76
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/06(火) 22:39:28 ID:K.L6tQ7I
天気アナ「ちょっと待って。 まさか消えた原因って・・・」
男「え? 天気アナさん今のやり取りで分かったんですか?」
天気アナ「そんな事、あまりにも非現実的すぎる」
少女「だったら説明できるように仮説を立て考察すれば良い」
天気アナ「人が消える現象なんてどう考えても・・・」
店主「消えた結果があるんだし、逆算していけば良いと思いますよ?」
少女「人が消える前に起こったことは?」
男「光る雨のような物が降り注いだ」
少女「そうね。 店主、光の入射角度を計算して軌道をモニターに出して」
店主「はいはい。 軌道を事件のあった7日前の気象図に載せるね」カチャカチャ
パッ
少女「進路上の交点に何かある?」
店主「あるね〜 大きいのが」
天気アナ「それは・・・」
77
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/06(火) 22:40:17 ID:K.L6tQ7I
男「エンゼル・・・ エン・・・ 天使の輪」
店主「エンゼルエコー。 正確にはエンゼルエコーの形をした雲」
男「雲から光る雨が降ったってこと? 何それ不思議」
店主「空から光る雨か。その説は興味深いね」
少女「進路をたどると雲がぽっかりと空いた場所を通過しているようね」
男「って事はもっと上?」
少女「その先には何かある?」
店主「広大な宇宙空間だね」
少女「いいわ。 スケールを1万光年に変更して」
店主「はいよ」
男「1万光年!?」
店主「ん〜 7500光年先にη星を発見」
78
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/06(火) 22:41:15 ID:K.L6tQ7I
天気アナ「まさか、そんな遠いところから降り注いだとでも?」
男「さすがにそれはないだろ。 俺でも否定できる」
少女「否定の根拠は背景放射? それとも重力や散乱を加味してないって事?」
男「え? いや・・・ あの・・・」
少女「仮説に対して思いつきや何となくで頭から否定するのは失礼よ」
男「すいません・・・」
店主「そういえば丁度この日時に気プセンで何かあったね」
天気アナ「この前言ってたエネルギーの照射ね。 やっぱり関係が・・・」
少女「気プセンから照射されたエネルギーの進路をマップに乗せて」
店主「はいよ」カチャカチャ
パッ
男「あっ、光の雨と途中で交わってる」
店主「ドーナツ雲のちょい上あたりが交点だね」
79
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/06(火) 22:42:17 ID:K.L6tQ7I
少女「ここから先はデータ不足で確証はなけど聞く?」
天気アナ「当然」
男「聞こうじゃないか、少女博士君」
少女「」キッ
男「冗談だよ」
少女「EECRって知ってる?」
男「知るわけないだろ、お前と一緒にすんな」
店主「大丈夫、僕も詳しく知らないから。 簡単に言うと高いエネルギーを持った宇宙線のことだね」
男「高いって?」
少女「エネルギーで換算すると発電所が不要になる位の量」
男「よろしければ捕まえ方を教えて頂けないでしょうか。 あと買取先も」
店主「小さな粒子だからね。 検出器で捕らえるのがやっとってレベルなんだよ」
80
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/06(火) 22:43:21 ID:K.L6tQ7I
少女「そのEECRがこの日、大量に地球に到達しているわ」
天気アナ「7500万光年先の天体から?」
男「そんな遠くから地球になんか届くのか?」
店主「各地に設置してある測定施設のデータを確認したから間違いないよ」
天気アナ「・・・もしかしてη星のジェット放射?」
少女「さすがお天気お姉さん、良いところに気付いたわね」
男「?」
店主「η星は特殊な天体でね。 定期的に爆発的な放射線をジェット放出しているんだ」
天気アナ「でも宇宙空間で散乱して地球までは届かないって聞いたわ」
店主「そう。 通常の荷電粒子ならね」
少女「重要なのはそれを掻い潜って大量に到達したってところ」
天気アナ「?」
81
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/06(火) 22:44:46 ID:K.L6tQ7I
少女「結論から先に言うわ。 高エネルギーニュートリノよ」
天気アナ「ニュートリノ?」
少女「電子とかと同じ粒子の一つ」
男「そのニュートリノってヤツは遠くからも届くのか?」
店主「小さすぎて他とほとんど衝突することがないから地球まで届くんだ」
少女「ニュートリノを米粒だとすると、他の粒子は地球サイズになる」
男「そんなに!?」
天気アナ「まさか、そのニュートリノが女の子を消したと?」
少女「今言ったでしょ? ニュートリノは小さすぎて他の物質と相互作用しないって」
男「じゃあ関係ないじゃん」
天気アナ「気プセンから放射されたエネルギー体が関係してるって事ね」
店主「今までの仮説を加味すると高エネルギーニュートリノと作用を起こす事の出来る何か」
天気アナ「あなたたちは知っているのね? その正体を」
少女「知ってるわ。 でもお話しできるのはここまで」
82
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/06(火) 22:45:50 ID:K.L6tQ7I
男「少女はいつも良いところで勿体ぶるよな」
少女「そうじゃない。 これ以上はバックボーンがないと聞いても混乱するだけ」
天気アナ「・・・・・・」
男「でも、なんで気プセンがそんな事を? ただの気象予測施設だろ」
天気アナ「・・・・・・。 Z財団」
少女「一応忠告します。 これ以上は命に関わりますよ?」
店主「そうだね。 流石にお天気お姉さんの身を危険に晒す訳にはいかないね」
男「命・・・」ゴクリ
天気アナ「あなた達、何を調べているの? 一体何者?」
少女「調べたんじゃないんですか?」
天気アナ「・・・調べたわ。 だから聞いてるの」
少女「随分と面白い返しですね」
天気アナ「・・・・・・」
83
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/06(火) 22:46:57 ID:K.L6tQ7I
天気アナ「もう一つ見てもらいたい映像があるの」
パッ
店主「これは・・・」
天気アナ「5年前、匿名で局に届いた映像なんだけど」
店主「まさか、ヴォイニッチ実験!?」
天気アナ「え? ヴォイニッ―――」
少女「」バタリ
男「少女?」
天気アナ「ちょ、どうしたの!?」
男「おい、大丈夫か? 少女」
天気アナ「救急車呼んだ方が良いかしら」
店主「いや、隣の部屋に布団が敷いてあるから僕が―――」
男「俺、運びます」ヨイショ
店主「あぁ、すまないね。 廊下を出て右隣が少女の部屋だよ」
男「分かりました」スタスタ
84
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/06(火) 22:47:56 ID:K.L6tQ7I
天気アナ「どうしたのかしら」
店主「・・・・・・」
天気アナ「でも丁度良いかな」
店主「?」
天気アナ「店主さんに聞きたいことがあるんです」
店主「僕に?」
天気アナ「2人の情報がある時期より前が全く分からない件について」
店主「・・・ねるほどね」
天気アナ「私はこれでも報道上がりのジャーナリスト。 狙ったスクープは逃さない」
店主「それは良い精神だね」
天気アナ「5年前の件、教えてくれますか?」
店主「悠長にしている時間もなくなってきたようだね」
85
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/11(日) 03:35:13 ID:8NCY1q8I
○ 30分後/少女の部屋
男(こいつの部屋、見事なまでに何も無いな)キョロキョロ
少女「・・・ん」ボー
男「おっ、お目覚めですか姫」
少女「ここは・・・」キョロキョロ
男「ビックリするから倒れるなら事前に打ち合わせしといてくれよ」
少女「倒れ・・・」
男「呪いのビデオを見てる途中で」
少女「ビデオ・・・・・・!!」ブルブル
男「おい大丈夫か? 悪い・・・ 変なこと言った」
少女「ご、ごめんなさい。 大丈夫よ」
男「もう少し寝てろ。 絵本でも読んでやろうか?」
86
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/11(日) 03:35:54 ID:8NCY1q8I
少女「店主は?」
男「隣の部屋。 天気アナさんと何か話してるっぽいけど」
少女「・・・・・・」
男「なぁ、さっきの映像って何なんだ? 人が消えるとか意味分かんないんだけど」
少女「次元電離よ」
男「相変わらず説明する気ゼロですか・・・」
少女「ここを出るわよ」スッ
男「はあ? 出るってどこへ?」
87
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/11(日) 03:36:35 ID:8NCY1q8I
○ 居間
バンッ
天気アナ・店主「!?」ビクッ
少女「出かけるわ」
店主「まだ休んでいた方が良いんじゃないかい?」
天気アナ「そ、そうよ・・・ 顔色も良くないし」
少女「じゃ私と男だけでここを出る」
店主「どこへ行くんだい?」
少女「・・・・・・」
店主「分かったよ。 出かける準備をしよう」
88
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/11(日) 03:37:23 ID:8NCY1q8I
少女「それと店主、エレベータの仕掛けを遠隔にして」
店主「・・・・・・」
少女「一旦存在を攪乱させたい」
店主「それを僕に言っちゃうの?」
少女「お願い、協力してほしい」
店主「・・・分かった、脱出セットを持っていこう」ハァ
少女「お天気アナさん、迷惑でなければ車で送ってくれませんか?」
天気アナ「え!? か、構わないけど」
店主「ここ居心地良かったんだけどなぁ」
89
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/11(日) 03:38:08 ID:8NCY1q8I
● 車内
ブーン
天気アナ「どこに行けば良いの?」
少女「男の家」
男「うち!?」
少女「写真の件もあるし、それに帰る家もないし」
男「家? あのボロショップにはもう帰らないのか?」
少女「店主、お願い」
店主「はいよ、さよなら僕のコレクション達」ポチッ
90
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/11(日) 03:38:43 ID:8NCY1q8I
ボーン
男「え? 何、今の音」
店主「何かが爆発した音だね」
少女「そうね、家が爆発した音に似てるわ」
天気アナ「ちょっと、後ろの方で煙りが上がってるのってあなた達の家じゃない?」
男「おいおい洒落になんねーよ」
少女「本当にエレベータの仕掛けが役に立つとは思わなかったわ」
男「ちょっと待てよ。あれ木っ端微塵だろ」
店主「結構な爆薬仕込んだからね」
少女「これで帰る場所がなくなったわ」
男「自分で破壊しておいて何言ってんだよ・・・」
天気アナ「・・・・・・」
ブーン
91
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/11(日) 03:39:25 ID:8NCY1q8I
● 男の家
キキッ
天気アナ「ここで良いのかしら?」
男「はい、ありがとうございます」
天気アナ「」チラッ
店主「・・・・・・」
天気アナ「私はこの後、本番があるから。 近いうちまた」
男「テレビ絶対見ますから!」
ブーン
92
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/11(日) 03:40:07 ID:8NCY1q8I
男「さて、それじゃ家に行きますか」
店主「随分と変わった神社だね」
少女「池の上にある変な建物が自宅?」
男「アホか、本殿だよ。 地下に水源があるらしくて下が池になってんだ」
店主「独特な造りだね」
男「本殿だけ後から作り直したんで。 それ以外は結構古いらしいです」
少女「このアンバランス加減、良い趣味ね」
男「周りの評判は結構悪いんですが・・・」
店主「少女は少しセンスが変わってるからね。 私服を見たら絶対笑―――」
少女「セイ!」ボコッ
店主「うっ゛」ゴロッ
男「・・・・・・。 い、今のもツボというヤツでしょうか?」
少女「イラッとしたから全力で殴っただけよ」
男「・・・家はこの裏ですのでご案内します、姫」
少女「ありがと」
93
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/11(日) 03:40:46 ID:8NCY1q8I
○ 男の家/居間
男「で、少女達はどうするの?」
少女「どうって?」
男「いや、家爆発しただろ」
少女「店主、次の家は?」
店主「ないね」
少女「だって。 しばらくお世話になるわ」
男「ちょっと何を言ってるのか分かんないですね」
少女「じゃこの家を私達に売って」
男「アホか。 俺はどうすんだよ」
少女「1日2万で泊めてあげる」
男「高けーよ! だったら俺が金もらって泊めるわ」
94
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/11(日) 03:41:29 ID:8NCY1q8I
少女「交渉成立。 店主、1泊2万でいいって」
店主「分かった」
男「お前・・・ そういうテクニックどこで覚えてくるの?」
少女「あんたの好きな占い通りにもなっていいじゃない」
男「はあ?」
少女「夜になったら一緒に星を見てあげるから」
男「ねぇ、話聞いてた? “麗しき美女と星空の下で語らう”だぞ?」
少女「感謝しなさい。 超弦理論の欠点をたっぷり語ってあげる」
男「・・・・・・。 1泊5万な」
少女「構わないわよ、こう見えてお金は結構あるの」
店主「安心して良いよ。 お金を出すのは僕だけどね」
男「嘘です、お金はいいですよ。 その代わり〜」
少女「?」
95
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/03(火) 02:59:12 ID:xSoKrPaw
○ 神礼所
少女「何で私がこんな事しなくちゃいけないわけ?」
男「神社に巫女さんが居るのが俺の夢だったんだよ」
少女「私は科学者、客が来ても非科学的な説明なんかしないわよ」
男「こんな寂れた田舎の神社に人が来ると思うなよ」
少女「・・・・・・。 それ、私が居る必要ないんじゃない?」
男「だから言っただろ。 少女は俺の夢を叶えるためにココにいるんだ」
少女「あのね、私はそんな暇じゃないの」
男「少女の仕事はただ一つ。 俺の前で巫女姿を見せる、それだけだ」
少女「何よそれ。 ただ巫女が見たいだけじゃない」
男「さっきからそう言ってるだろ。 人の話聞いてた?」
少女「はいはい、分かったわよ・・・ 居候の身分ですからその位は我慢してあげる」
男「じゃ、よろしく〜」
少女「ハァ〜・・・」
96
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/03(火) 03:00:16 ID:xSoKrPaw
○ 居間
店主「男君、ちょっとテレビ借りても良いかな」
男「どうぞ、ほとんど見ませんし」
店主「助かるよ」ガチャガチャ
男「パソコン繋げるんですか? パソコンモニターなら余ってるのありますよ」
店主「男君は時間ある? 一緒に遊ばないかい」
男「構いませんけど。 ゲームですか?」
店主「コレなんかどうかな」ポチッ
男「ヴォ、ヴォイニッチ!!」
店主「念のためバックアップを持ってきておいたんだ」
男「店主さんマジ天使ゅ! 地獄の果てまでお供します」
店主「嬉しいね。 少女はあまり乗り気じゃなかったし」
男「俺はひと味違いますよ?」
店主「それじゃ、やりますか」ポチッ
97
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/03(火) 03:01:04 ID:xSoKrPaw
○ 1時間後/神礼所
少女「ハァ〜・・・ 本当に誰も来ないなんて、この神社の経営はどうなってんの?」
チュンチュン
少女「良い天気・・・」ボー
???「学業祈願のお守りもらえるかしら」
少女「えっ? あっ、はい」ゴソゴソ
???「お金は後で男が払うわ」
少女「え?」
???「あら、あなた・・・ その瞳の色」
少女「・・・・・・」
男「お〜 姉貴帰ってきたんだ」テクテク
???「え? あっ、ただいま」
少女「姉貴?」
98
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/03(火) 03:01:57 ID:xSoKrPaw
○ 居間
姉「ビックリしたわよ。 家に着いたら神礼所に知らない巫女が居るんだもん」
男「少女はしばらくうちに泊まることになってるから」
姉「奥手のアンタが女の子を連れ込みですか〜」
少女「男さんには異性として1ミリも興味ありませんのでご安心下さい」
男「もう少しオブラートに包めよ」
店主「おまけで僕も付いていますけどね」
姉「イケメンさんですね。 少女ちゃんとはどういうご関係で?」
店主「一応は保護者役といいますか」
少女「腐れ縁の赤の他人です。 敵として扱ってもらって構いません」
姉「あら、それは女の敵って言う意味?」
少女「良いですね、その意味も追加で結構です」
店主「・・・・・・」
男「店主さん可哀想・・・」
99
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/03(火) 03:02:36 ID:xSoKrPaw
姉「そうだ、お土産買ってきたから皆で食べようよ」ゴソゴソ
パラ パラッ
男「姉貴、なんか紙落ちたぞ」
店主「拾いますよ。 少女、そっちの頼む」
姉「あ〜 ゴメンね」
少女「これ・・・ お姉さんはどこかの教育機関か研究所にお勤めで?」
姉「あら、なんで分かったの? 私ってもしかしなくても有名人?」
少女「私は存じ上げませんが、これ論文ですよね。 宇宙物理でしょうか?」
男「姉貴は研究都市にある何とかっていう所に勤めてるんだよ」
姉「高エネルギー粒子研究所。 最先端の研究所よ! 凄いでしょ」ドヤッ
100
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/03(火) 03:03:15 ID:xSoKrPaw
店主「そういえば、前に一度行ったことあるよね」
姉「あら、見学に来たことがあるの?」
男「少女は、こう見えて博士なんだってよ。 海外にあるなんとかって所の」
少女「Z財団粒子物理学研究機構」
姉「・・・・・・。 に、お務めの博士の娘さん?」
少女「私が博士です」
姉「面白い子ね。 ユーモアセンスがある人ってお姉さんは好きよ」
少女「嘘じゃないです。 一応専門は粒子物理です」
姉「・・・・・・」
101
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/03(火) 03:04:02 ID:xSoKrPaw
少女「それよりこの論文、着眼点が面白いですね」ペラッ
姉「あ、ありがとうございます・・・」
少女「CvBとCMBの関連性に関するシナリオ、とても興味深いテーマです」
姉「もしかして、私も財団の粒子物理学研究機構で通用しますでしょうか」
少女「私はこの分野の専門ではないので何とも。 でもよく出来ていると思います」
姉「気になる点などあればご教授を!」
少女「そうですね・・・ 強いていうなら変換式が煩雑で精度が落ちている点でしょうか」
姉「でも一般的にはその式を使うしか・・・」
少女「第2項から先が気になります。 こうしてみたらどうでしょう」カキカキ
姉「・・・・・・」
少女「だいぶ短縮できましたがイマイチですね、すいません偉そうな事言っておいて」
姉「いえ、あの・・・ この式って見たことないんですが・・・」
少女「あっ、神礼所開けっ放しだ。 戻らないと」タッタッタッ
姉「・・・・・・」ポケー
102
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/03(火) 03:04:35 ID:xSoKrPaw
男「姉貴?」
姉「ねぇ、彼女何者?」
男「さっき言ったろ」
姉「そうじゃなくて。 こんなの発表したら学会がザワつくくらい凄いんですけど」
店主「少女が手を入れた論文は大抵業界内がザワつくからね」
姉「う〜ん・・・ でも、わたし彼女の名前の論文を見たことないと思う」
店主「何というか・・・ 別の形では出てはいるんだけど、表舞台が嫌いみたいで」
姉「それって、もしかして上司の名前で発表してるとか?」
店主「でも成果が話題になると、ドヤ顔で研究所内を歩き回っていたけどね」
姉「なんて健気な」キュン
男「健気か? かなりウザくて嫌な性格だろ」
103
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/03(火) 03:05:10 ID:xSoKrPaw
姉「私、少女ちゃんともっとお話ししたい!」
男「止めとけって。 ああ見えて少女は人をイラッとさせる天才でもあるから」
姉「男! 私の巫女服を用意して!」
男「は? 姉貴が巫女してるところなんか見たことないんだけど」
姉「私は少女ちゃん・・・ いえ、少女博士の助手としてもっとお近づきになりたいの!」
男「巫女関係ないだろ」
姉「これだからあんたはバカなのよ。 部下は上司の後ろ姿を追いかけていくの」
男「頭大丈夫か?」
姉「少女博士〜 私もお守り売りお手伝いいたします〜」タッタッタッ
男「すいません店主さん。 少女に有害なゴミが付いちゃいました」
店主「まぁ良いんじゃない? 話が合う相手がいた方が退屈しないだろうし」
男「合うのかなぁ・・・」
104
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/09/28(土) 20:03:34 ID:ykGVyMo.
いい
超期待
待ってる
105
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/30(月) 04:31:46 ID:zQrP0nyk
○ 神礼所
姉「♪〜」
少女「・・・・・・。 あの」
姉「何ですか博士」
少女「博士は止めて下さい。 お姉さんの方が年上なんですから少女で良いです」
姉「お姉さん!? 何て良い響き」モジモジ
少女「・・・・・・」
姉「でも私達は上司と部下の関係。 一線を越えてはいけないわ」
少女「私、お姉さんの部下になったつもりはないんですが」
姉「何言ってるの? 私が部下よ」
少女「・・・・・・」
106
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/30(月) 04:32:52 ID:zQrP0nyk
姉「そうだ! 博士には特別に神社のご神体見せてあげる」
少女「ご神体?」
姉「きっと興味持つと思うわよ? 私の代からの門外不出なんだから」
少女「随分最近なんですね・・・ でも、私あまりそういうのは」
姉「え〜 この私がド直球で興味持った位なのになぁ〜」
少女「すみません。 今の言葉で余計興味がなくなりました」
姉「残念。 じゃあ話を変えて、少女ちゃんはどうしてうちに?」
少女「私は・・・・・・。 あっ!!」
姉「?」
107
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/30(月) 04:34:27 ID:zQrP0nyk
少女「忘れてた!!」ジタバタ
姉「ちょ、少女ちゃんどうしたの!?」
少女「すいません、ちょっと戻ります」タッタッタッ
姉「私も行くー!」
少女「お釣り用のお金があるんですから! そこでお守り売ってて下さい!」タッタッタッ
姉「ここ数年参拝者の来ない神礼所に1人残すなんて何という拷問!」
姉「・・・・・・」ハァ
姉「頑張ってきたんだけどなぁ・・・ 私、どうすれば良いのかな・・・」ボソッ
108
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/30(月) 04:35:15 ID:zQrP0nyk
○ 居間
少女「店主!」ズカズカ
店主「どうしたんだい? 少女もヴォイニッチ手伝ってくれるのかい?」
少女「男は?」キョロキョロ
店主「部屋で休憩だね。 それより、今かなり良い線まで進んでるんだけど」
少女「そんなの後よ!」
店主「でも、ここをクリアすれば次のコードキーが」
少女「どうでも良い! アンタもついてきなさい!」
店主「?」
109
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/30(月) 04:36:01 ID:zQrP0nyk
○ 男の部屋
バンッ
男「うおっ! ビックリした。 急にドア開けるなって」
少女「ビックリしたのは私の方よ!」
男「何だよ急に。 あっ!」
少女「思い出したようね」
男「いや、激おこな巫女さんの仁王立ちっていう構図がなんか良いなって」
店主「その気持ち分かるかも。 僕もそっち側から見ても良いかな?」
少女「あんた達の片足をマイクロブラックホールに突っ込むわよ」
男「だから何なんだよ、その意味不明な恐ろしい表現は・・・」
110
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/30(月) 04:36:39 ID:zQrP0nyk
少女「写真!」
男「あ〜 撮っていいの? じゃぁそのままで」カシャ
少女「違う! 私はお守りを売るためにここに来たんじゃないの!」
男「家を爆発させたからだろ?」
少女「それは一理あるけど・・・ 写真を見るために来たの!」
男「あ〜 廃研究所の写真か」
店主「忘れてたね」
男「もうこの平和なスタイルで物語を紡いでいった方が良くない?」
少女「紡がないし平和じゃない!」
111
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/30(月) 04:37:34 ID:zQrP0nyk
○ 30分後
男「あれ? ここら辺に仕舞った気がするんだけどなぁ」ゴソゴソ
少女「ねぇ、まだ見つからないの?」
男「結構前だし、こっちの箱の中かなぁ?」
少女「それにしても、アンタの部屋マンガと雑誌しかないじゃない」ゴソゴソ
男「おい、本棚漁るなよ」
少女「下の方に薄い本が沢山あるわね」
男「取説とかマニュアルだよ。 言い方気をつけろよ」
店主「男君だって年頃だし、ね」
少女「何を言ってるのか意味が分からないわ。 私は論文かと思っただけよ」
男「そんなもんあるわけないだろ。 って、お〜 見つけた」
少女「本当!? 早く見せて頂戴」タッタッ
112
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/30(月) 04:38:24 ID:zQrP0nyk
男「待てって。 え〜と・・・ あった! これだ」
少女「どれ!」グイッ
男「ちょ、そんなにくっ付いてくるなよ・・・」
少女「これは・・・」
男(少女の頭が目の前に!?)ゴクリ
店主「どうだい?」
少女「間違いない」
店主「この形状はシステム3だね。 やっぱりあの施設にあったんだ」
少女「でかしたわ男。 あなたの評価を10段階上げて―――・・・」
男(少女の髪、良い匂い・・・)クンクン
113
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/30(月) 04:39:08 ID:zQrP0nyk
店主「男君? 楽しんでるところ悪いんだけど、目を開けて」
男「え?」パチッ
少女「」ジー
男「・・・・・・。 少女さんの瞳、とても綺麗です・・・」
少女「ありがと。 あなたもね」ニコッ
ボフッ!
男「」ゴロッ
店主「うわ〜 今のは痛そうだね・・・ ちなみに、今のもツボってやつ?」
少女「ただの全力の腹パンよ」
114
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/30(月) 04:40:12 ID:zQrP0nyk
● MHKテレビ
記者「そんな・・・ 冗談ですよね?」
天気アナ「私も同じ意見だった、これを見るまでは」スッ
記者「ビデオ?」
天気アナ「再生するわね」
パッ
記者「これは!」
天気アナ「5年前に局に送られてきた映像のマスターよ」
記者「マスター!? どこからこんな物を・・・」
天気アナ「これに関わった人物。 映像に加工がされていない事は確認した」
記者「・・・・・・」
天気アナ「少し飛ばすわね」カチャカチャ
115
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/30(月) 04:41:07 ID:zQrP0nyk
パッ
記者「僕の持ってる映像はこの辺で終わっていましたが」
天気アナ「そうね。 この後、カメラがぶれて・・・」
記者「えっ・・・? ちょ、待って下さい。 何ですかこれ!?」
天気アナ「見た通りよ」
記者「そんな・・・」ゴクリ
天気アナ「この映像は5年前行われたZ財団の極秘実験のものらしいわ」
記者「Z財団・・・ やっぱり・・・」
天気アナ「前に調べてもらって過去が追えない人物がいたの覚えてる?」
記者「はい、確か2人」
天気アナ「なんとかして調べられないかしら、特にこの子」ペラッ
記者「この子は・・・」
116
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/30(月) 04:41:53 ID:zQrP0nyk
天気アナ「できるだけ古い情報、どんな事でも構わない」
記者「分かりました。 一つツテがあります」
天気アナ「たぶん、全てはこの子から始まっている」
記者「この子に何か秘密が?」
天気アナ「世界がひっくり返るスクープかも」
記者「明日まで時間下さい。 絶対に情報を持ってきます」タッタッタッ
天気アナ(あの子・・・ どうする気なのかしら・・・)
117
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/30(月) 04:42:38 ID:zQrP0nyk
● 夜/境内
少女「・・・・・・」ボー
男「夜の境内で月明かりを浴び黄昏れる巫女。 絵になるね〜」
少女「」チラッ
男「1日中着るほど巫女服が気に入ったか。 分かるよその気持ち」
少女「他に着る物がないだけよ」
男「あ〜・・・ 姉貴のお下がりで良ければ後でもらっておくけど」
少女「ここは夜空が綺麗ね」
男「それしか取り柄がない村だしな。 その代わり他には何も無い」
少女「こんなに星を見たのは初めてかも」
118
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/30(月) 04:43:28 ID:zQrP0nyk
男「・・・もしかして、このシチュは今日のおみくじの回収?」
少女「だったら、超弦理論の欠点についてでも語る?」
男「遠慮しとく」
少女「そう、残念」
男「・・・・・・。 なぁ、少女は世界最高レベルの研究所にいたんだろ?」
少女「そうね」
男「せめて謙遜位はしろよ・・・」
少女「失礼、そこそこのレベルの研究所いた最高レベルの科学者。 これで良い?」
男「そっちかよ・・・ しかも財団の研究所をそこそこって」
少女「本当のことなんだし、自分を否定する言い方は好きじゃないの」
119
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/30(月) 04:44:11 ID:zQrP0nyk
男「その最高レベルの科学者さまがここに来たのは出張とか?」
少女「・・・・・・。 抜け出してきた」
男「え?」
少女「研究所はZ財団の持ち物。 私がやっていることを正当化するはずない」
男「なるほどな。 目的はよく分からんが、財団に楯突いてるのだけは分かる」
少女「あそこしか私のいる場所がなかった」
男「それは頭脳的な意味でか?」
少女「そのままの意味よ」
男「?」
120
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/30(月) 04:45:11 ID:zQrP0nyk
少女「あなたは、今の生活が好き?」
男「何の脈略もない質問だな」
少女「急に新しい環境で生活しろって言われたら、あなたどうする?」
男「違う環境って海外とかそういう事か? まぁ少女からしたらここは外国だしな」
少女「・・・・・・」
姉「私なら天才的知識をひけらかして、どこへ行っても無双できるわ」
少女・男「?」クルッ
姉「でも、実際には難しい問題よね」フム
121
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/30(月) 04:45:54 ID:zQrP0nyk
少女「お姉さん!?」
男「姉貴、なんで夜に神礼所なんかいるんだよ。 怖えーよ」
姉「私は博士の言いつけ通りこの場所を守っているだけよ?」
少女「まさか、ずっとここに!?」
姉「この放置プレイが終わったら博士と一緒にお風呂に入る約束をしているから」
少女「してません。 あと博士は止めて下さい」
姉「この場合“違う環境”の定義が重要よね。 外国なのかそれとも・・・」
男「何の話だよ」
姉「アンタその手の小説好きでしょ? 主人公が異世界に飛ばされる話」
男「あ〜 話が続いてたのね。 っていうか異世界ってどっから出てきたんだよ」
122
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/30(月) 04:46:48 ID:zQrP0nyk
少女「興味あるわね、その小説の内容」
男「まぁ大抵は元の世界の知識を使って無双するな」
姉「あら、私と同じ思考ね。 その作者よく分かってる」
少女「元の世界には帰ろうとしないの?」
男「そっちのほうが盛り上がるだろ。 異世界の方が刺激が強いしな」
少女「刺激、か」
姉「少女ちゃんならどうする?」
少女「・・・・・・。 私は・・・」
姉「難しいわよね。 と、いうことで夜を徹して学者同士二人で議論しましょう」
男「その話題は学問じゃないだろ・・・」
少女「・・・・・・」
123
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/04/29(水) 05:11:52 ID:4hSEygD6
○ 居間
男「うわ〜 あと少しだったんだけどなぁ〜」
店主「残念。 次は僕が挑戦してみるよ」
男「やっぱりここまで来ると難易度高いですよね」
店主「ヴォイニッチ暗号の深層まで来ているからね」
男「店主さんぶっ続けでやって疲れないんですか?」
店主「休みたいとか言ってられる状況でもなくてね」
男「ふ〜ん。 何か理由が?」
店主「・・・・・・。 まぁ何というか、作った本人が解けないのも癪じゃない?」
男「“代理人”がいればだいぶ楽なんですけどね」
店主「代理人?」
男「“時の女神の代理人”ってゲーマー、知りません?」
124
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/04/29(水) 05:12:44 ID:4hSEygD6
店主「そんなIDの人いたっけ? 上位の人なら僕も聞き覚えあると思うんだけど」
男「コード解析専門なんで、プレイは他人任せだったみたいですし」
店主「それはハッカーと言う事かな?」
男「簡単に言うとそうですね」
店主「でも、ゲーム部分と暗号部は異なるからハッキングしてもクリアできないと思うんだけど」
男「難攻不落のマップ28って覚えてます?」
店主「あったね〜。 まさかあんな方法でクリアできるとは思わなかったよ」
男「あのマップの攻略法を編み出したのが、代理人なんです」
店主「・・・・・・。 男君は、その人と知り合いなの?」
男「何度か闇チャットでやり取りしたくらいですけど。 当時は学生だって言ってましたね」
125
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/04/29(水) 05:13:18 ID:4hSEygD6
店主「ちょっとそのログ覗かせてもらおうかな」カチャカチャ
男「そんな事出来るんですか?」
店主「あそこのサーバーはセキュリティーに欠陥があるからね」
パッ
店主「侵入完了」
男「店主さん・・・ それ犯罪」
店主「あった、これだね」
男「お願いですから変なログは見ないで下さいね・・・」
126
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/04/29(水) 05:13:59 ID:4hSEygD6
店主「ん〜 確かに・・・ 少し荒いけどこのコードは凄いね」
男「代理人がいなかったら進めなかったマップは数知れずですよ」
店主「これ・・・ 深層プログラムを直接いじってる・・・」ボソッ
男「んじゃ、切りが良いんで俺そろそろ寝ます」
店主「ん? あぁ、遅くまで付き合わせてすまなかったね」
男「気にしないで下さい、好きで付き合ってるんですから」
店主「じゃ、お休み」
男「また明日手伝いま〜す」スタスタ
店主「・・・・・・」
127
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/04/29(水) 05:14:49 ID:4hSEygD6
店主「時の女神の代理人、か・・・」スッ
ピポパ
prrr prrr
店主「遅くにすまないね。 人探しのお願いがあるんだけど良いかな?」
店主「あぁ、情報提供の見返りって事で。 なんなら、これから起こるスクープも提供するよ」
――― 廊下
少女「・・・・・・」コソッ
128
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/04/29(水) 05:15:29 ID:4hSEygD6
○ 翌日・朝/神礼所
少女「フワァ〜〜」ムニャムニャ
男「よっ、大きなあくびですなぁ〜」ニヤニヤ
少女「!?」ビクッ
男「少女も大口開いてあくびとかするんだな」
少女「他の人に言ったらマイクロ波を連続照射するから」
男「だから・・・ もう良いや」ハァ
少女「・・・・・・」ジー
男「何だよ・・・」
少女「それはこっちの台詞。 何か用?」
男「今日のおみくじを引きに」
少女「おみくじ?」
129
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/04/29(水) 05:15:59 ID:4hSEygD6
男「俺の日課、知ってるだろ?」
少女「あれって自分の神社のヤツなの!?」
男「そうだよ。 ほら、巫女さんらしく対応して」
少女「ハァ・・・ この機械のレバーを引けば良いの?」
男「お前が引いたら意味ないだろ。 おみくじするヤツが引くんだよ」
少女「そうですか。じゃ、サッサと引いて私の視界から消えて下さい」
男「イラッとする巫女だなぁ」ガチャン
ストン
男「さてと、今日の運勢は〜」
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