[
板情報
|
R18ランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
1-
101-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
粒子が超える世界の電離
1
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/29(月) 01:39:17 ID:/gOds1Jc
● 記者会見会場
学者「―――という訳でして、現在復旧に向けて全力を尽くしているところです」
記者A「世界中の経済に深刻な影響が出ていますが保証などのお考えは?」
学者「この会見は技術的な部分に絞っておりますので、この場ではちょっと・・・」
記者B「技術的な会見と仰いましたが、何もお話し頂けていないのですが」
学者「・・・・・・」
記者C「教授の方からは何かお話し頂ける事はないんでしょうか」
記者D「巷では“神の怒り”等と揶揄されていますがどう思われますか」
教授「その表現は」
パシャパシャ パシャパシャ
教授「私も賛成だ」
学者「教授?」
教授「これは・・・ 我々が手を出すには早すぎたようだ」
ザワザワ
2
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/29(月) 01:40:25 ID:/gOds1Jc
● 5年後・とある田舎の学校
先生「じゃぁ、自己紹介して」
少女「Z財団粒子物理学研究機構から来ました少女です。 よろしくお願いします」
生徒A「研究所?」ヒソヒソ
生徒B「Z財団って」ヒソヒソ
先生「取りあえず少女さんは窓側の空いてる席に座ってくれるか」
少女「はい」
生徒C「よろしくね」
少女「よろしくお願いいたします」
生徒C「よ、よろしく・・・」
男「・・・・・・」
3
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/29(月) 01:41:51 ID:/gOds1Jc
○ 放課後
ガヤガヤ
友「なぁ、今日来た少女ちゃんってどう思う?」
男「どうって? 全く興味ないから何とも思わないが」
友「可愛い〜とか、好み〜とか何かあるだろ」
男「瞳が深い漆黒で神秘的。 あとは一日中ムスッっとして外ばっか見てたな」
友「お前がそれを言うか・・・ そんな興味あるなら帰るの誘ってみろって」
男「良いか友、人には残念ながら格差ってもんがある。 俺達はあちら側ではない」
友「そうかなぁ〜 意外と行けるかも知れないぜ?」チラッ
4
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/29(月) 01:43:04 ID:/gOds1Jc
生徒A「ねぇ、少女ちゃんってどうしてこの学校に? 歳は同じだよね?」
少女「・・・・・・」
生徒B「この歳で研究所なんて凄いね。 しかもZ財団なんて」
少女「・・・・・・」スッ
生徒A「少女ちゃん?」
少女「用事があるので先に失礼させていただきます」スタスタ
少女AB「・・・・・・」
5
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/29(月) 01:44:39 ID:/gOds1Jc
友「うわ〜・・・ 距離の置き方が半端ないな」
男「あれは一緒に帰っても何とか理論みたいな話しか興味示さないぞ」
友「悲しいね〜 この歳で格差社会を経験することになるとは」
男「さてと、俺先に帰るわ。 ショップ寄っていかないと」
友「ショップ? この村にそんな小洒落た物なんかないだろ」
男「気象センターの近くにあるだろうが、村唯一のショップが」
友「もしかして・・・ ヤマサキストアの事を言っているのか?」
男「今日のおみくじの結果が最悪なんだよ。 運気回復は地元ショップらしい」
友「お前それ好きだな。 今日日そんなもん流行んねーぞ」
男「これは人工知能がはじき出した結果だ。 そこら辺の物と一緒にするな」
6
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/29(月) 01:45:51 ID:/gOds1Jc
● MHKテレビ/局内
スタッフ「天気アナさん、お疲れ様でした」
天気アナ「お疲れさま」
スタッフ「これからみんなで食事でもどうです?」
天気アナ「ごめん! 明日の天気予測だけ編集しておきたいから」
スタッフ「そうですか残念。 編集室ですよね、これ鍵です」
天気アナ「助かる。 ありがと」
スタッフ「あっ、報道の記者が聞きたい事あるそうなんで内線してあげて下さい」
天気アナ「報道? 分かった、後で連絡しておく」
7
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/29(月) 01:46:49 ID:/gOds1Jc
○ 同編集室
天気アナ「さてと、今日の雲の動きの映像は・・・」
天気アナ「昨日出た予測と全然違う・・・ 人工知能が聞いて呆れるわ」
カチャ カチャ
天気アナ「? これ、何かしら・・・ このコマから雲の位置が微妙にズレてる・・・」
天気アナ「・・・・・・」
8
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/29(月) 01:47:53 ID:/gOds1Jc
● 高速/車内
ブーン
天気アナ「間に合うかしら・・・」
prrr
天気アナ「はい、天気アナです」
スタッフ『お疲れ様です、今どちらです?』
天気アナ「車で移動中よ」
スタッフ『あっ、すいません。 かけ直します』
天気アナ「大丈夫、自動運転だから」
スタッフ『どちらへお出かけですか?』
天気アナ「気象予測プログラムセンターに行くところ」
スタッフ『気プセン!?』
天気アナ「どうしたの?」
9
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/29(月) 01:48:53 ID:/gOds1Jc
スタッフ『さっきその気プセンの人が来まして』
天気アナ「私宛?」
スタッフ『はい。 外出中と言ったら帰ったんですが』
天気アナ「・・・そう」
スタッフ『ただ先ほど天気アナさんが編集していたデータが消えてまして』
天気アナ「えっ!?」
スタッフ『心当たりあります?』
天気アナ「バックアップしたわよ? 再生も確認したし」
スタッフ『なんか引っかかりますね・・・』
天気アナ「分かった、連絡ありがとう」
スタッフ『何かあれば連絡下さい』
天気アナ「・・・・・・」
ブーン
10
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/29(月) 01:49:54 ID:/gOds1Jc
● 下校
男「暑いなぁ・・・ 日陰の多い裏道から行くか」テクテク
ガサゴソ
男「ん?」
少女「このフェンス結構高さがあるわね」ンショ
男「こんな所でナマケモノごっこか?」
少女「!?」ピクッ
男「天才は考えることが違うねぇ。 凡人にはそんなごっこ遊びの発想は出ない」
少女「・・・・・・」ブラーン
男「ちなみに言っておくと、気プセンの入り口は反対側だぞ」
少女「そうね」
男「白昼堂々フェンスをよじ登って侵入か?」
少女「そう見える?」
11
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/29(月) 01:50:54 ID:/gOds1Jc
男「どうみても不審者が侵入しようとしている風に見える」
少女「風とか曖昧な表現で決めつけないで欲しい」
男「もしかして、本当にナマケモノごっこだった?」
少女「」ジィー
男「・・・何だよ」
少女「あなた私に協力する気はある?」
男「ない」
少女「この施設に侵入する協力」
男「ないってハッキリ言いましたよね。 てか、やっぱ侵入かよ」
少女「本当に興味ないの?」
男「うん。 じゃ、俺忙しいから」スタスタ
少女「ちなみに今日はヤマサキストア休みだったわよ」
男「・・・・・・」
12
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/29(月) 01:51:53 ID:/gOds1Jc
● 気象予測プログラムセンター
男「財団の敷地のくせに侵入してもバレないもんだな」
少女「・・・・・・」
男「なぁ、聞いてる? やっぱり難しい理論とかの話題じゃないと乗ってこない?」
少女「うるさい。 話しかけないで、気が散る」
男「はい・・・」
少女「!?」ピタッ
男「おっと、急に止まるなって」
少女「あれ」
男「何だあれ!? アンテナみたいなのがいっぱい建ってる」
少女「高エネルギー粒子照射装置」
13
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/29(月) 01:52:56 ID:/gOds1Jc
男「説明する気ゼロだな・・・ で、何に使う機械なんだ?」
少女「凡人が想像も出来ないようなこと」
男「さよですか」
少女「あなたは何をする機械だと思う?」
男「凡人には分かりませんよ。 ただあまり近づきたくない感じはするな」
少女「」 ピピッ ピピッ
男「なあ、聞いておいて盛大に無視して何やってんだよ」
少女「写真撮ってるの。 見て分からない?」ピピッ ピピッ
男「一緒に取ってやろうか? 記念撮影的な」
少女「結構よ。 さてと、あなた足は速い?」
男「?」
14
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/29(月) 01:55:24 ID:/gOds1Jc
こんな感じ
15
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/30(火) 00:13:35 ID:9OOSoWTg
○気象予測プログラムセンター 正面玄関
天気アナ「やっぱり門前払いか・・・」
守衛「コラ! そこの二人止まれ!」
天気アナ「?」クルッ
男「お前ふざけんなよ! 侵入バレてんじゃねーかよ!」タッタッタッ
少女「当たり前でしょ。 財団の警備を甘く見ないで」タッタッタッ
天気アナ「・・・・・・」
少女「すいません、助けて下さい!」
天気アナ「ちょと、何?」
少女「極秘の実験に付き合えって追いかけてくるんです」
男「え? お前・・・」
16
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/30(火) 00:14:11 ID:9OOSoWTg
守衛A「おい、あれMHKの・・・」ヒソヒソ
守衛B「まさかあの子達を使って・・・」ヒソヒソ
天気アナ「・・・・・・。 乗って」
少女「ありがとうございます」
男「すいません」
バタン
天気アナ「飛ばすわよ、掴まっててね」
ブーン
17
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/30(火) 00:14:52 ID:9OOSoWTg
●車内
ブーン
男「おい、お前さっき俺を囮にしようとしたろ」
少女「何の話?」
男「バレバレなんだよ。 何度も俺の足引っかけて転ばそうとしただろ」
少女「言いがかりは止めて頂戴。 私は進路変更を促しただけ」
男「コイツ・・・」
天気アナ「・・・・・・」チラッ
少女「なんでしょうか?」
天気アナ「それはこっちのセリフ。 あんな所で何をしてたの?」
少女「見学です」
男「あんな身勝手な見学どこにあるんだよ」
18
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/30(火) 00:15:48 ID:9OOSoWTg
少女「・・・・・・。 天気アナさんは何をしに?」
男「天気アナ? あー! お天気お姉さんだ!」
天気アナ「え? えぇ、よく知っているわね」
男「毎日見てます! どんなに忙しくても天気アナさんを画面で見るのが日課です」
天気アナ「ありがとう。 でも私の担当は週3回よ」ニコッ
男「・・・・・・」
天気アナ「私はどうすれば良い?」
少女「気象予測プログラムセンターへは何をしに?」
天気アナ「お天気お姉さんが気プセンに来るのは変?」
少女「はい」
男「別に変じゃないだろ」
19
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/30(火) 00:16:23 ID:9OOSoWTg
少女「気象省なら変じゃないと思うけど、気プセンは変」
天気アナ「・・・・・・」
少女「あそこはZ財団の管轄。 部外者への対応は一切行っていません」
天気アナ「詳しいのね」
少女「局へ配信された気象映像に不審な点でもありましたか?」
天気アナ「あなた、何でそれを・・・」チラッ
少女「助けていただいたお礼にお見せしたい物があります」
天気アナ「・・・・・・」
ブーン
20
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/30(火) 00:17:40 ID:9OOSoWTg
●パソコンショップ ガッテム
天気アナ「見せたい物ってここ?」
男「なにこのボロい建物・・・」
少女「失礼ね。 パソコンショップ・・・ らしいわ」
天気アナ「お店なの? 看板もないけど」
男「ただの廃墟じゃん。 ゴメン生理的に無理」
少女「住んでる人間を前にして失礼なこと言わないでくれる? 早く入って」
男「え!? これ少女の家?」
ガラガラ
男「うわ〜 中もボロボロ」
少女「あなた私に喧嘩売ってる?」
天気アナ「何というか・・・ 独特な雰囲気のお店ね」
少女「奥よ。 靴は脱がなくも大丈夫」スタスタ
男「脱げとか言われたら逆に困るわ」
21
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/30(火) 00:18:42 ID:9OOSoWTg
○ショップ/奥の部屋
店主「Zzz・・・」グー グー
少女「店主、起きなさい。 やっぱり在ったわ」
店主「Zzz・・・」グー グー
少女「・・・・・・。 フンッ!」ドカッ
店主「うっ!」
天気アナ・男「・・・・・・」
少女「起きた?」
店主「あぁ・・・ でも、蹴りは勘弁・・・ 徹夜明けの体には応えるよ」ゲホッ
少女「蹴りじゃないわ。 眠気をなくすツボを刺激しただけ」
男「ツボって何だよ・・・」
少女「気プセンで写真を撮ってきた。 今モニターに出す」カチャカチャ
22
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/30(火) 00:19:50 ID:9OOSoWTg
天気アナ「・・・あの」
店主「あれ、お客さん? いらっしゃいませ」
天気アナ「いえ私は・・・」
店主「あ〜、分かった。 CPUのお求めですね、Cylixかな?」
天気アナ「・・・・・・」
男「なぁ、少女。 見せたい物があるって言ってたよな?」
店主「こっちもお客さん? いらっしゃ・・・」
男「客じゃないです」
店主「・・・・・・」
男「?」
店主「ほぉ〜 なるほどね」
男「何がです?」
店主「良いって、分かってる。 グラボだね、ずばりMillenniunだ!」
男「・・・・・・」
23
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/30(火) 00:20:45 ID:9OOSoWTg
少女「店主、この写真見て」
店主「ん? これは、ずいぶんデカいなぁ」
少女「最新型の高エネルギー粒子照射装置で間違いない」
店主「これだけの規模なら出力はかなり高そうだね」
男「なぁ、呼んでおいて無視ってどんなプレイだよ。 説明しろって」
少女「店主、お願い」
店主「えっ、何を?」
少女「昨日の気プセンの事でも話してあげて」
店主「話しちゃっても良いのかい?」
少女「構わないわ」
店主「15年前、原因不明の通信障害が発生したのは知っている思う。その際大気圏に向けてドッピュと発射された元気の良い電子達が電離層の膜に放たれジェット気流が突き破っ―――」
少女「昨日のことって言ったでしょ! あと、表現!」ボコッ
店主「うっ!」バタン
24
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/30(火) 00:21:27 ID:9OOSoWTg
男「・・・少女さんって見かけによらず武闘派?」
少女「心外ね。 黙らせるツボを刺激しただけよ」
男「だからツボって何だよ・・・」
天気アナ「・・・ジェット気流?」
少女「さすがお天気お姉さん、食いつきが良いわ」
少女「店主、最新の気象予測図をモニターに出して」
店主「はいよ」ゲホッ ゲホッ
パッ
天気アナ「!? ちょっと待って、この予報図って!」
少女「ね? 面白いでしょ」
男「テレビで流れる予報図じゃん」
天気アナ「いいえ。 気象省からメディア向けに配信された物と違う」
少女「たぶん、ここら辺から書き換わって配信されてたんじゃない?」
天気アナ「・・・・・・」
25
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/30(火) 00:22:12 ID:9OOSoWTg
店主「今日の天気予測はハズレだったよね」
天気アナ「この映像って、まさか…」
少女「気プセンが気象省に渡す前の1次映像」
天気アナ「何でマスター映像がここに!?」
男「よく分からないんだけど・・・ テレビで流れた天気図が偽物だったって事か?」
少女「簡単に言えばそう言うこと」
男「何でそんな事を?」
少女「オマケにもう一つ面白い物見せてあげる。 今日の実際の雲の動きを出して」
店主「はいよ」
パッ
天気アナ「これも気象省発表の物と違う・・・」
男「そうなの? でも、別に変なところなんてないと思うけど・・・ ん?」
少女「素人でも一発で分かるでしょ?」
26
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/30(火) 00:22:56 ID:9OOSoWTg
男「巨大な白いドーナッツが浮いてる」
天気アナ「エンゼルエコー・・・」
男「えんぜる? あ〜 確かに天使の輪みたいだ」
少女「正解だけど不正解」
天気アナ「?」
少女「エンゼルエコーは観測装置の誤認識が原因。 でもこれは本物の雲」
天気アナ「ちょっと待って、そんな事があるわけ―――」
少女「この時間、気プセンから何かのエネルギーが放射されたのを確認している」
店主「それを隠すために天気図を書き換えて配信したんだろうね」
天気アナ「どういう事? 何を言っているのか分からないんだけど・・・」
少女「最高峰の人工知能が予測演算を間違えるとでも思う?」
男「でも、何でそんな事を?」
少女「事実を書き換えないといけない事態が起った、とか?」
天気アナ「・・・・・・」
27
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/30(火) 00:23:34 ID:9OOSoWTg
少女「面白い物はここまで。 送ってくれてありがとうございました、天気アナさん」
天気アナ「その気プセンからのエネルギーの件も教えてくれないかしら」
男「そうだよ、誘ったのは少女だろ? 教えろよ」
少女「私は面白い物を見せると言っただけ。 講義してあげるなんて言っていない」
男「うわ〜・・・ 何そのイラッとする返し」
天気アナ「あなたたち、何者なの?」
少女「田舎の学校に通う女子学生です」
店主「パソコンショップの店長」
男「僕は男と言います。 以後お見知りおきを」
天気アナ「・・・・・・」
少女「まぁ、良いわ。 一つだけヒントあげる」
28
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/30(火) 00:24:22 ID:9OOSoWTg
● 帰り道/車内
ブーン
天気アナ「・・・・・・」
(少女)『過去の気象予報で90%を切っていた時のニュースとか調べてみたら?』
天気アナ「あの子、一体・・・」
ブーン
29
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/31(水) 00:31:46 ID:K6NynF5I
● 1週間後/学校
教師「明日から夏休みに入るわけだけど問題だけは絶対に起こさないように」
少女「・・・・・・」
男「今日の運勢もひでーな。 運気向上アイテムは2で割れる数字か」
友「残念だったな、今日は2で割れる日じゃない」
男「絶対2で割れる数字を見つけてやる」
友「しかし、今日も天才少女様は一言も発することなかったな」
男「まぁ、いろんな意味で口に問題があるからな、あの女は」
友「どういう意味だ?」
男「触らぬ神に祟りなし。 ほっとけ」
友「俺らと同じ歳で研究所にいたような天才が何でこんな田舎の学校なんか」チラッ
30
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/31(水) 00:33:06 ID:K6NynF5I
少女「なに?」キッ
友「・・・・・・。 すいません、何でもないです」
少女「」プイッ
男「今日はじめて発した言葉がお前宛で良かったな」
友「男・・・ 少女さん怖いです」
男「言っただろ。 あの口はコミュニケーション用でなく毒を吐くために付いてんだよ」
友「なるほどな・・・ ま、それは良いとして男は夏休みどうすんだ?」
男「ゲーム、と言いたいところだがパソコン調子悪くてなぁ〜」
友「あの謎解きゲームか?」
男「いつの話してんだよ、ヴォイニッチならサーバーごと消されて出来ねーよ」
友「お前一時期どっぷりハマってたもんなぁ」
男「出来るもんならまたやりてーよ」
友「止めとけ。 赤点地獄の再来だぞ」
少女「・・・・・・」
31
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/31(水) 00:34:26 ID:K6NynF5I
● 夜/男の家・自室
♪prrr
男「ん? この番号誰だ?」ピッ
男「はい、男です」
少女『お願い! 助けて! ガッテムに・・・ ちょ・・・ 店主!!』
男「その声、少女か? ヤバい感じは演技? 誘うならもっと色っぽい方が」
少女『ダメ! そこはダメ! 違うの! 店主!! やめて!!』プッ
プープープー
男「・・・・・・。 嘘だろ〜・・・」
男「どうせ掛けてくるなら2で割れる電話番号からにしろよ!」ダッ
32
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/31(水) 00:37:20 ID:K6NynF5I
● ガッテム
店主「あれ〜 いけると思ったんだけどなぁ〜 出なかったね」
少女「だから言ったでしょ。 やっぱり最低3人じゃないとダメなの」
バンッ!
店主・少女「!?」クルッ
男「マッサージのご用命ありがとうございます!」ハァハァ
店主「あれ? 男君、こんな遅くにどう―――」
男「性感マッサージではないですがキツい刺激を一発どうぞー!」ボコッ
店主「グホッ!」バタン
男「俺のツボ攻撃とやらはどうよ。 とどめは少女に譲ってやるぜ」フッ
少女「え? えーと・・・ 状況がよく分からないけどありがと」ゲシゲシッ
店主「痛たた・・・ 急にどうしたの!? って、何で少女は僕を蹴ってるの?」
少女「」ゲシゲシッ
33
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/31(水) 00:38:06 ID:K6NynF5I
○ 数分後
男「誠に申し訳ございませんでした」ドゲザ
店主「少女が変な電話したのが悪いんだし。 でも少女は何で僕を蹴ったの?」
少女「私は何も悪くない。 ゲームするからあなたを呼んだだけ」
男「お前・・・ どう考えてもあの電話はゲームの誘いじゃないぞ」
少女「そんな事はどうでも良い」
男「良くねーよ」
店主「良くないね、少女が僕を蹴ってるときの表情は本気だった」
少女「あなた今日、学校でゲームの話してたわね」
男「あ?」
少女「後ろのモニターに映ってるヤツ」
男「ん?」クルッ
少女「知ってるかしら?」
男「あの画面って・・・ まさかヴォイニッチ!?」
34
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/31(水) 00:39:00 ID:K6NynF5I
店主「男君は知ってるの?」
男「まさか、二人でこれやってたのか?」
店主「結構良い線までいってたんだけどね」
少女「いってないわ。 あそこは二人じゃ絶対クリアできない」
店主「男君はログインパス持ってる?」
男「はい。 でもヴォイニッチってネット上から消されたんじゃ・・・」
少女「そこの空いてるPCからログインしてみたら?」
男「・・・・・・」ポチッ カチャカチャ
男「お〜 当時の情報でログインできた」
店主「63のマップに行ける?」
男「・・・64じゃダメですか? 2で割れる面じゃないとちょっとやる気が・・・」
少女「我慢は体に良くないと思うけど?」
男「少女さんの仰るとおりです」カチャカチャ
店主「さて、それじゃ始めようか」
35
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/31(水) 00:39:48 ID:K6NynF5I
○ 3時間後
少女「よっし! コードキーゲット」
男「ふ〜」
店主「男君すごいね」
男「俺のライフワークですから。 ネット上から消される直前までやってましたし」
少女「あなた意外と使えるわ。 評価を1段上げても良い」
男「上から目線の評価をどうも」
店主「男君が来てくれて助かったよ」
男「でも、このゲームってもうプレイできないんじゃ・・・ 何でココに?」
店主「店にバックアップがあってね」
男「バックアップ!? そんなの取れたんですか?」
店主「男君はこのゲーム詳しいのかな?」
男「選ばれし者だけがプレイを許されるこの世の至高」
36
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/31(水) 00:40:33 ID:K6NynF5I
少女「何飾ってんのよ。 暗号文書を解読するただの謎解きゲームでしょ」
男「俺の生きがいをそんなちんけな言葉で片付けるな」
店主「他のゲームと違うのは世界中のユーザーが共同でクリアを目指す点だね」
男「全クリすると異世界への扉を開く謎の暗号文が解読されるって噂ですよね」
少女「アホくさ」
男「興奮して一緒にやってた奴に言われたかねーよ。 コードキーゲット! だっけ?」
少女「」イラッ
男「いや〜 でも久しぶりだったけどやっぱ深いゲームだなぁ〜」
少女「このゲーム、誰が作ったか知ってる?」
男「確か作者不明だったろ。 色々と謎が多いゲームだったよな」
店主「これを作ったのは人工知能なんだよ」
男「人工知能?」
店主「そう、世界最高峰の人工知能」
37
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/31(水) 00:41:09 ID:K6NynF5I
少女「正直に教えてあげたら? ゲームとして仕立てたのは自分ですって」
男「は!?」
店主「それ、言っちゃうの? 結構極秘だったんだけど」
男「ちょ、ちょっと待って下さい。 これ店主さんが作者なんですか!?」
店主「僕は暗号を解読させるためにゲームっぽく仕上げただけだよ」
男「すいません、もう一度聞いて良いですか? 店主さんって何者?」
店主「パソコンショップの店長」
男「店主さんが作者って事は・・・ 教えて下さい、ヴォイニッチの中身」
店主「いや〜」
少女「クリアできないからゲームにして皆にやらせて解読させてたのよ」
男「はい?」
店主「とても一人じゃ解読できそうにないしね」ハハハ
少女「それに私達は異世界の扉とやらを解読しているわけじゃないわ」
男「そう言えば、さっきコードキーがどうのって」
38
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/31(水) 00:41:56 ID:K6NynF5I
少女「えぇ、これよ」カチャカチャ
パッ
jUio;&%l;897kk=-i
男「何その文字の羅列」
少女「暗号文章の一部分」
店主「この暗号を特殊なプログラムに通すと〜」カチャカチャ
パッ
33554432
134217728
男「?」
少女「狙い通り、座標軸ね」
男「座標って地図の?」
少女「店主、地図に載せて」
店主「どれどれ〜 この座標は〜」カチャカチャ
少女「ツいてる、近いわ」
店主「でも財団の敷地内だね。 地図写真でも真っ黒だ」
39
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/31(水) 00:42:34 ID:K6NynF5I
男「そこって閉鎖された研究所じゃないか?」
少女「知ってるの!?」
男「結構前に閉鎖された施設だけど、未だに警備が厳重で中には入れ―――」
少女「連れいてきなさい!」グイッ
男「ちょ・・・ どうしたんだよ・・・ っていうか首しまってる! 苦しい!」
少女「店主! 出かける準備!」
男「ちょっと待てって! 理由! 理由を教えろって」
少女「あなたには関係ない」
男「そう言えばそうだな。 面倒事っぽいし、オレ帰るわ」
少女「待ちなさい、帰さないわよ」グイッ
男「関係ないんだろ? だったら解放しろよ」
少女「ヴォイニッチ、やり足りないんじゃない?」
40
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/07/31(水) 00:43:21 ID:K6NynF5I
男「あの研究所の侵入口を知ってます。 ご案内いたしましょうか?」
少女「!?」
男「ただ、やっぱ気になるから理由を教える事。 それが条件だ」
少女「・・・・・・」
店主「今度は少女が教えてあげたら?」
少女「どこまでよ・・・」
店主「男くんの命が危険にさらされない範囲で」
男「・・・えっ? そんなに重い話?」
店主「恩はもらった以上の対価でお返ししないとね」
少女「ハァ〜」
男「いや、あまり重い話だったら無理に聞かないけど・・・ っていうか聞きたくない」
少女「付いてきなさい」
男「どこへ?」
少女「知りたいんでしょ。 命知らずさん」
41
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/01(木) 19:22:20 ID:nB78UMUA
○ガッテム/奥の廊下
テクテク
男「このボロ屋敷って平屋だよな? 前にあるヤツってエレベーターに見えるんだけど」
少女「この先で見聞きする事は絶対に口外しないこと。 約束できる?」
男「うん分かった」
少女「本当に分かってるの?」ポチッ
ポーン
男「やっぱこんなボロ屋にエレベータって不釣り合いだろ」
少女「・・・・・・。 早く入って」
男「すげー! 地下10階までボタンがある! この建物どうなってんだよ」
少女「全部ダミーよ。 中のボタンを押したら爆発するわ」
男「は?」
42
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/01(木) 19:23:27 ID:nB78UMUA
少女「一つだけ言わせて頂戴」
男「?」
少女「私だって好きでこんな所に住んでるわけじゃないの!」
男「・・・少女さん?」
少女「ココしか売家がなかったんだから仕方ないじゃない!!」
男「・・・・・・」
少女「住んでる人間にボロボロ言わないでくれる? 結構へこむから」
男「すいません」
ポーン
男「ねぇ、反対側のドアが開いたけど・・・ それに下がった感じしなかったぞ」
少女「私はエレベータだなんて言ってない。 思い込みは良くないわよ」スタスタ
男「・・・・・・」
43
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/01(木) 19:24:27 ID:nB78UMUA
○ さらに奥の廊下
テクテク
少女「5年前、Z財団は世界最高の人工知能演算システムを開発した」
男「オルビスの事か? 世界に3台ある人工知能が繋がって動いてるんだろ?」
少女「そうね。 システム1からシステム3を総称してオルビスと呼んでる」
男「確か気プセンにはシステム3があるって噂が」
少女「・・・・・・」
男「そういうのってワクワクするよな」
少女「オルビス自体はちょっとだけ高性能なただのコンピュータよ」
男「人工知能のどこがただのコンピュータなんだよ」
少女「オルビスの核は通信と処理能力を引き上げる特別な仕組み」
男「それはつまり・・・ オルビスを統括している物があるって事?」
少女「そんなところね」
男「そういう隠された仕組みって良いねぇ。 それって何?」
44
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/01(木) 19:25:15 ID:nB78UMUA
少女「・・・deus」
男「デウス・・・ 言い響きだ。 どこにあるんだ?」
少女「誰も知らないわ」
男「まぁ最高機密だろうしな、男のロマン満載だね」
少女「そのロマンとやらと同じ物がこの扉の向こうにある」
男「はい?」
少女「良い? 絶対に誰にも言わないで。 喋ったら消えてもらうから」
男「相変わらず少女さんは毒吐きまくりますねぇ」
少女「嘘じゃないわよ? あなたを素粒子レベルで分解してあげる」
男「よく分からないけどその表現怖い・・・」
45
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/01(木) 19:25:59 ID:nB78UMUA
ギィー
男「これがデウス・・・ デカいな・・・」ゴクリ
少女「そっちのはただの壊れた発電機」
男「・・・・・・」
少女「私が手に持っている、これがdeusと同じもので“dea”」
男「ちっさ! なんか薬のカプセルみたいだけど」
少女「この中にはある粒子の量子結晶が入ってる」
男「量子・・・? へぇ〜」
少女「私の目的は、このdeaを使ってオルビスを破壊すること」
男「壊すって事か!?」
少女「そう」
46
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/01(木) 19:27:00 ID:nB78UMUA
男「世界最高峰の人工知能を?」
少女「やりがいがあるでしょ?」
男「そんな小さい・・・ デアだっけ? そんなんでどうするんだよ」
少女「あなたdeusの事を勘違いしているわね」
男「?」
少女「deusは素粒子、一度動作を開始すると存在は認識できない」
男「え〜と・・・」
少女「3つのシステム間を量子テレポーテーションで結んで次元方向に演算と通信を行う」
男「・・・・・・」
少女「このdeaはdeusの反物質だからオルビス内で解放すると対消滅を―――」
男「すいません、ちょっと物理は苦手で・・・」
47
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/01(木) 19:29:20 ID:nB78UMUA
少女「・・・そう。 じゃぁ、私が話すのはここまで」
男「いやいや、全然目的が分からないって」
少女「これ以上話してもあなたの頭が付いていけないでしょ?」
男「世界平和のための人工知能を壊すって、相手は超法規的組織のZ財団だぞ?」
少女「・・・・・・」
男「オルビスは世界のインフラや予測演算の全てを管理してる」
少女「だから?」
男「5年前に起こったオルビスのシステムダウンの事件位知ってるだろ」
少女「聞いたことはある」
男「世界中大パニック。 電気止まるわ通信止まるわで大混乱、まさに神の怒り」
48
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/01(木) 19:30:11 ID:nB78UMUA
少女「おめでたいわね。 いいわ、これだけは教えてあげる」
男「?」
少女「オルビスをこのまま使い続けると・・・ この世界の均衡が崩れる」
男「おっと、これって新興宗教の壮大な勧誘? 最近は手が込んでるな」
少女「これ以上は話しても無駄ね。 戻りましょ」
男「待った、一つだけ教えて」
少女「なに?」
男「オルビスを壊してどうするつもりだ?」
少女「・・・・・・。 あるべき姿に戻す」
男「あるべき?」
少女「今あなたに話せる事は全部話したわ。 明日の朝一で連れて行きなさい、その研究所に」
男「やっぱおみくじは当たったか・・・ 今日は最悪な一日だ」ガクッ
49
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/03(土) 02:27:50 ID:vpeawcAI
●翌日・ハゲ山
少女「ここは?」
男「ハゲ山」
店主「確かに頂上付近が禿げてるね」
少女「」チラッ
店主「なにかな?」
少女「何でもない」
男「この山の反対側に昨日言ってた廃研究所があるんです」
店主「でも、山の入り口は監視カメラだらけだよ」
少女「そうね、隙はなさそう。 どうやって入るつもり?」
男「その前に、上からで良いからコレ羽織って」
店主「?」
少女「これって・・・」
男「汚さないように注意しろよ」
50
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/03(土) 02:28:52 ID:vpeawcAI
○ 数分後
男「よしっ、と」
店主「少女、意外と似合うね」
少女「・・・・・・」
男「それじゃぁ行くか」
少女「こんな格好させてどこ行くつもり?」
男「え? 決ってんじゃん」ポチッ
少女「!? ちょっと、そのボタンは財団とのインターフォン!」
守衛『Z財団守衛室です』
男「ご無沙汰してます。 男です」
守衛『あ〜 久しぶりです。 山頂ですか?』
男「急にすいません」
守衛『今日は巫女さんもいるんですね。 いま門を開けます』
51
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/03(土) 02:29:51 ID:vpeawcAI
ガラガラ
男「ありがとうございます。 開いたみたいです」
守衛『どのくらい時間かかります?』
男「お昼までには」
守衛『2時間は絶対に超えないで下さいね。 お気を付けて』プツッ
男「第1段階クリアっと」
少女「ちょっと、どういう事?」
男「この小さいハゲ山の頂上に廃神社がある」
店主「ここへ来る前に古い地図を調べたけど載ってなかったよ?」
男「廃神社ですし、なんか禁足地らしくてまともな調査もしていないみたいで」
少女「その神社と研究所へ侵入するのにどんな関係があるの?」
男「時間もないし、歩きながら話してやるよ」
店主「それじゃぁ行きますか」
男「あっ、下に敷いてある石畳から外には出ないで歩いてね」
52
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/03(土) 02:30:50 ID:vpeawcAI
○ハゲ山/参道
テクテク
男「うち、家が神社なんだわ」
店主「へぇ〜 それは珍しいね」
男「まぁ何を祀っているのかもらない寂れた神社なんですけど」
少女「それと何の関係があるわけ?」
男「これから行く廃神社はうちが管理してる」
店主「ここは男君の家の山なの?」
男「今は財団の物みたいですけど神社だけはうちで管理しているんです」
店主「それで受付を簡単にパスできたんだね」
男「神社の管理目的で特別にこの山に入る事が許されているんです」
店主「男君と会ってからスムーズに進んでいるね。 もっと早く来れば良かったかな」
少女「・・・・・・」
53
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/03(土) 02:31:28 ID:vpeawcAI
男「そろそろ頂上です」
店主「確かに禿げてきたね」
少女「・・・・・・」チラッ
店主「さっきから少女はある単語に反応しているようだけど、僕は違うよ?」
少女「そう?」
店主「・・・・・・」
男「ほら、あそこ」
店主「あ〜 たしかに廃神社だね」
少女「ここまで来たのは良いけど、研究所にはどうやって忍び込むつもり?」
店主「下に見える研究所の塀にも監視カメラがびっしりだね」
男「それが大丈夫なんだな〜」
少女「?」
54
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/03(土) 02:32:40 ID:vpeawcAI
男「聞いて驚け、この山は何かの鉱山跡だったらしくて下に隠れ坑道がある」
少女「鉱山跡・・・」
男「本殿の中に坑道に入る穴があるんだよね〜」
店主「それが研究所と繋がっているのかい?」
男「そうなんですよ、凄くないですか?」
少女「守衛が2時間以内に戻れって言っていたわね」
男「なんかそういう決まりがあるみたい」
少女「鉱山跡で時間制限の禁足地か・・・」キョロキョロ
男「巫女服が気になる? 大丈夫、口さえ開かなきゃちゃんとした巫女に見えるから」
少女「黙りなさい、頭だけ異次元に送るわよ」
男「・・・・・・」
少女「店主、線量計持ってる?」
店主「携帯用の簡易なヤツなら」
少女「付近の放射線量を測定して」
店主「あぁ、地面から測ってみようか」ゴソゴソ
55
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/03(土) 02:33:19 ID:vpeawcAI
ピッ
店主「えっ!?」
少女「やっぱり思った通りみたいね。 線量は?」
店主「反応無し」
少女「・・・・・・」
男「プッ」ニヤッ
少女「店主、お腹に力入れなさい。 良い感じのツボを刺激してあげる」
店主「ちょ、待てって! 反応がないんだよ!」
少女「放射線は出ていないって事でしょ」
店主「違う。 いや、違わないけど異常だね」
少女「何を言ってるの?」
56
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/03(土) 02:33:54 ID:vpeawcAI
店主「検出器を空に向けるよ」
ピピッ ピピッ
男「針が触れてる」
店主「宇宙から来る放射線だよ。 今度は下に向けるね」
ピッ
男「針が振れてない」
店主「放射線は地球の中からも放出されているんだ」
男「じゃぁ、針は振れるはずですよね」
店主「石畳の外を計測してみようか」
ピピッ ピピッ
男「振れた。 結構大きいですね」
57
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/03(土) 02:34:29 ID:vpeawcAI
店主「遮られてるね。 この石畳って昔からこの状態?」
男「100年以上前の物だって聞いたことはありますけど・・・」
店主「ちょっと失礼するね」ガコンッ
男「うわっ、あんまり傷付けないで下さいね。 直すお金ないんで」
ガンッ ガンッ
少女「何か出てきた?」
男「中が黒い。 これって鉄?」
店主「鉄にしては少し柔らかいかな」
少女「なるほどね」
店主「念のためサンプル採取しようか」ゴソゴソ
58
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/03(土) 02:35:06 ID:vpeawcAI
● 廃研究所内
テクテク
店主「いや〜 今までで一番楽に潜入できたね」
男「えっ、こんな危険なことしょっちゅうやってるんですか?」
店主「そうだね。 そりゃもう数え切れない位」
少女「32回目よ。 全然数えきれるわ」
男「32・・・ そういう2で割れる数字は昨日言っておいてくれよ」
店主「数字がどうかしたのかい?」
少女「非科学的で下らない迷信」
男「あのおみくじは当たるんです〜 って、おみくじの事知ってんのかよ」
店主「へ〜 ちなみに今日の運勢は?」
男「苦労の一日。 “麗しき美女と星空の下で語らう”と道が開ける」
少女「絶望的ね、あなたには一生縁がなさそうだけど」
男「うるせーよ」
59
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/03(土) 02:35:39 ID:vpeawcAI
店主「それは困ったね。 男君といると嫌なことが起こりそうだ」
男「・・・なぁ、警察行こう? まだ若いんだし、やり直しはきくって」
少女「財団の敷地内は警察もノータッチの治外法権よ」
男「もっとタチ悪りーよ。 俺まだ捕まりたくない・・・」
店主「そうだね。 予想通りもぬけの殻だし早々に退散しようか」
男「賛成です」
店主「ちなみに男君、この研究所って何年前に閉鎖されたか分かるかい?」
男「確か5年位前だったかな」
店主「5年前か・・・」チラッ
少女「・・・・・・」
男「この建物って外から見えないし、閉鎖していることすら知らない人もいるかも」
60
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/03(土) 02:36:14 ID:vpeawcAI
店主「男君は何で閉鎖してるって分かったの?」
男「あ〜 面白いものいっぱいあったから結構忍び込んでたん―――」
少女「!?」ガシッ
男「ちょ、何だよ! 急に掴みかかりやがって!」
少女「もしかして、この研究所が閉鎖される前も忍び込んだの!?」
男「あぁ」
少女「紫色に光る球のついた機械は無かった!?」
男「ちょ、まずは落ち着こう?」
少女「話したら離してあげる」
男「紫色の玉?」
店主「高さ2メート位で中央に丸い電球みたいに光った物が埋め込んであるんだ」
男「あ〜 そう言えばあったかも」
61
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/03(土) 02:36:48 ID:vpeawcAI
少女「どこ! 置いてあった場所に案内しなさい!!」ガシッ
男「その前に離せって!!」
店主「少女、無理はダメだよ」
少女「・・・・・・」パッ
店主「覚えてる範囲で構わないから教えてくれるかい?」
男「結構昔ですからね・・・ そうだ、写真撮ったはずだか───」
少女「どこ! その写真を見せなさい!」ガシッ
男「ちょ、また! 家にあるから後で見せてやるよ」
店主「そろそろ時間だし、一旦ここから出ようか」
少女「・・・・・・」
62
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/04(日) 15:37:48 ID:42xeVDN6
かけあいが軽妙で好き
続き支援
63
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/04(日) 21:50:02 ID:ebek2Pi6
● MHKテレビ
天気アナ「ここ1年の気象予測で的中率が90%を切っていたのが4件、か・・・」
(少女)『過去の気象予測で90%を切っていた時のニュースとか調べてみたら?』
天気アナ「ニュースって言われても、どのニュースよ・・・」ハァ
スタッフ「あれ? 天気アナさん、こんな朝早くにどうしたんです?」
天気アナ「あぁ、ちょっと気になる事があってね」
スタッフ「もしかして例の行方不明事件ですか?」コソッ
天気アナ「何それ?」
スタッフ「あれ? 報道のヤツにまだ会ってません?」
天気アナ「そういえば、昨日そんな事言ってたわね。 ごめん忘れてた」
スタッフ「なんか気象関係で聞きたい事があるみたいでしたけど」
天気アナ「ありがと、すぐ会ってくるわ」
64
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/04(日) 21:51:28 ID:ebek2Pi6
○ 会議室
記者「お忙しいところすみません」
天気アナ「気象関係で聞きたいことがあるって聞いたけど」
記者「実は見てもらいたい映像があって、意見を伺えないかと」
天気アナ「私なんかが見て何か役に立つかしら?」
記者「正直お手上げでして」
天気アナ「行方不明事件って聞いたけど」
記者「表向きは。 実際は“神隠し”事件と言った方が良いかと思います」
天気アナ「神隠しって・・・」
記者「まずは見て下さい。 再生します」
パッ
天気アナ「公園?」
記者「財団の管理敷地です。 少し離れた店の防犯カメラが偶然撮った物です」
65
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/04(日) 21:52:22 ID:ebek2Pi6
天気アナ「女の子が一人でアイス食べながら歩いているわね」
記者「被害者です。 あっ、ここからです、よく見ていて下さい」
天気アナ「雨・・・ にしては光が強いかな」
記者「はい。 道路は濡れていないので雨とは違うと思います」
シュー
天気アナ「!?」
記者「消えました」
天気アナ「ちょ、どういう事!?」
記者「一瞬で消えてしまったんです」
天気アナ「消えたって・・・ そんな・・・」
66
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/04(日) 21:53:44 ID:ebek2Pi6
記者「実は同じような現象が私の知る限り過去12件発生しています」
天気アナ「そんなに!?」
記者「事の発端は5年前、これと似たような映像が匿名で局に届きまして」
天気アナ「当時の対応は?」
記者「報道では流石に取り合わず・・・ 怪奇ミステリー特番で放送することに」
天気アナ「5年前の怪奇ミステリー特番って、もしかして・・・」
記者「はい、スタッフと出演者が乗った飛行機が消息を絶った例のアレです」
天気アナ「・・・・・・」
記者「実は送られてきたテープがその事故の後に無くなっているのが分かったんです」
天気アナ「じゃあ、その映像も」
記者「それが編集のやりくりテープに一部ですが残っていて・・・ お見せします」
パッ
天気アナ「この場所は?」
記者「詳細は分かりません。 右側に映っている動物に注目して下さい」
67
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/04(日) 21:54:22 ID:ebek2Pi6
天気アナ「さっきと同じね。 光る雨のような物が降り注いでる」
記者「この後です」
シュッ
天気アナ「消えた・・・」
記者「最初にお見せした映像と同じ現象です。 あっ、この後上空が写ります」
天気アナ「典型的な冬型の雲ね」
記者「この後もう少しPANして・・・ ここです!」
天気アナ「これ・・・」
記者「ドーナツのような形の雲で真ん中がぽっかり空いています」
天気アナ「エンゼルエコー」
記者「エンゼル?」
天気アナ「大気の屈折や障害物の影響で観測機器が虚像を出す現象なんだけど」
記者「虚像? しかし、これは実際に写ってますよ?」
天気アナ「・・・・・・」
68
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/04(日) 21:55:08 ID:ebek2Pi6
記者「あっ、このシーンも見て下さい」
天気アナ「また光る雨が・・・」
記者「先ほどよりも強く光って」
プツッ
記者「ここで映像が切れています」
天気アナ「大きく画面がぶれた時、一瞬左端に誰か写っていた気がするんだけど」
記者「最後の2コマに少し遠いですが男性の後ろ姿が写っています」
天気アナ「止メで見られるかしら」
記者「もちろんです」
パッ
天気アナ「これ・・・ 着ている物が実験着に見えるわね」
記者「はい。 何かの極秘実験だったんじゃないかと睨んでいます」
天気アナ「この人・・・」
記者「どうでしょうか」
69
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/04(日) 21:56:17 ID:ebek2Pi6
天気アナ「さっき過去に12回確認したって言ったわよね。 この1年では?」
記者「確か4回ですね。 このリストに事件の日時も書いてあります」ペラッ
天気アナ「・・・・・・。 これか・・・」
記者「何か糸口でも?」
天気アナ「この件、私も調べてみて良いかしら」
記者「気をつけて下さい。 経験上かなりマズい案件だと思いますので」
天気アナ「分かった。 一つ急ぎで調べたい事があるんだけど」
記者「?」
天気アナ「このメモリに記録されている映像に出てくる人物の素性」スッ
記者「何の映像です?」
天気アナ「先週携帯で隠し撮りしたもの。 3人映ってる」
記者「この事件と関係が?」
天気アナ「間違いない。 会話も入ってるから見れば納得できると思うわ」
記者「分かりました。 最優先で調べます」
70
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/06(火) 22:26:26 ID:K.L6tQ7I
● 2時間後/ガッテム
店主「よしっと」
男「何してるんです? なんか格好いい機械ですね」
店主「さっき採取した石畳の破片を成分分析にかけようかなって」
少女「そんなのどうでも良いわ。 どうせPbでしょ?」
男「ぴーびー?」
店主「気にしなくて良いよ。 少女はたまに不思議な単語を使うから」
男「確かに。 頭が良いならアホにでも分かる用語で話せよな」
少女「うるさい。 早く行くわよ」
男「どこへ? そうだ、今日は暑いし遊びに行くなら近くに良い川があるけど」
少女「アンタの家に行くの! 写真を見せてくれるって言ったでしょ」
男「あ〜 そういえばそんな約束したな」
店主「それじゃ、行きますか」
71
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/06(火) 22:27:21 ID:K.L6tQ7I
コンコン
一同「?」クルッ
天気アナ「こんにちは」
男「天気アナさん! 遊びに来てくれたんですか!?」
天気アナ「少し時間あるかしら」
少女「忙しいの。 残念だけど時間はないわ」
店主「折角ですしメモリでも買っていきませんか? 2kBの良い出物があるんです」
天気アナ「いらない。 それより、面白い映像を持ってきたんだけど」
少女「天気図なら後で見てあげる。 言ったでしょ? 時間がないの」
天気アナ「人が消える瞬間を収めた映像、って言えば興味出るかしら」
少女「!?」
72
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/06(火) 22:28:12 ID:K.L6tQ7I
天気アナ「さすが少女博士、食いつきが良いわね」
男「博士?」
少女「」キッ
天気アナ「ごめんなさいね、調べさせてもらったわ」
男「少女って博士なの?」
少女「研究所にいたんだから何もおかしいことはないと思うけど」
男「いや、でも博士って」
少女「私がいた研究所には石を投げれば博士に当たるくらいには沢山いた」
男「そこじゃなくて、その歳で博士って・・・ あ〜人をイラッとさせる研究とか?」
少女「」イラッ
天気アナ「どうする? コレ、見る?」
少女「・・・・・・」
73
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/06(火) 22:29:13 ID:K.L6tQ7I
○ 居間
店主「それじゃ、再生するよ」チラッ
少女「・・・・・・。 構わないわ」
パッ
男「どっかの広場?」
店主「この造りは財団の敷地っぽいね」
天気アナ「この辺りからよ、この女の子をよく見てて」
男「雨が降ってるのに傘差してない」
店主「雨にしては、少し眩しいかな。 道路も濡れてな――― !?」
男「あれ?」
天気アナ「消えた」
店主「・・・・・・」チラッ
少女「」ブルブル
74
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/06(火) 22:29:55 ID:K.L6tQ7I
店主「大丈夫かい?」ボソッ
少女「・・・えぇ」
男「どうしたんだ少女」
天気アナ「顔色が悪いみたいだけど」
少女「武者震いよ。 それより、とても興味深い映像ね」
店主「こんなものがあったなんて驚きだよね」
少女「この映像はいつ撮られたの?」
天気アナ「7日前、画面の右下に小さく時間も出てるわ」
店主「14:53って書いてあるね」
少女「なるほど。 で、そちらの見解は?」
天気アナ「お手上げ。 二人は何か思い当たる節がありそうね」
少女「面白い映像を見せてくれたし・・・ 良いわ、仮説だけど聞きます?」
男「え? こんなの説明できるのか?」
天気アナ「ぜひ聞かせて頂戴」
75
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/06(火) 22:38:34 ID:K.L6tQ7I
少女「電離と同じよ」
男「電離・・・?」
店主「男くんは原子の構造って知ってる?」
男「・・・・・・。 まぁ僕くらいになると知ってますよね」
天気アナ「原子核があって、その周りを電子が回っているって事かしら?」
店主「そう。 電子が回る軌道はいくつかあるんだ」
天気アナ「確か殻でしたっけ」
店主「電子が何らかの要因で空になった場合、どうなるか分かる?」
男「うん」
天気アナ「外側の殻にある電子が落ちてくる」
男「まぁ物理の初歩ですよね」
少女「アンタ・・・ そんないい加減な生き方してるから運勢が最悪なのよ」
男「うるせーよ。 でも、それが何か関係あるんですか?」
店主「ないね」
男「・・・・・・」
76
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/06(火) 22:39:28 ID:K.L6tQ7I
天気アナ「ちょっと待って。 まさか消えた原因って・・・」
男「え? 天気アナさん今のやり取りで分かったんですか?」
天気アナ「そんな事、あまりにも非現実的すぎる」
少女「だったら説明できるように仮説を立て考察すれば良い」
天気アナ「人が消える現象なんてどう考えても・・・」
店主「消えた結果があるんだし、逆算していけば良いと思いますよ?」
少女「人が消える前に起こったことは?」
男「光る雨のような物が降り注いだ」
少女「そうね。 店主、光の入射角度を計算して軌道をモニターに出して」
店主「はいはい。 軌道を事件のあった7日前の気象図に載せるね」カチャカチャ
パッ
少女「進路上の交点に何かある?」
店主「あるね〜 大きいのが」
天気アナ「それは・・・」
77
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/06(火) 22:40:17 ID:K.L6tQ7I
男「エンゼル・・・ エン・・・ 天使の輪」
店主「エンゼルエコー。 正確にはエンゼルエコーの形をした雲」
男「雲から光る雨が降ったってこと? 何それ不思議」
店主「空から光る雨か。その説は興味深いね」
少女「進路をたどると雲がぽっかりと空いた場所を通過しているようね」
男「って事はもっと上?」
少女「その先には何かある?」
店主「広大な宇宙空間だね」
少女「いいわ。 スケールを1万光年に変更して」
店主「はいよ」
男「1万光年!?」
店主「ん〜 7500光年先にη星を発見」
78
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/06(火) 22:41:15 ID:K.L6tQ7I
天気アナ「まさか、そんな遠いところから降り注いだとでも?」
男「さすがにそれはないだろ。 俺でも否定できる」
少女「否定の根拠は背景放射? それとも重力や散乱を加味してないって事?」
男「え? いや・・・ あの・・・」
少女「仮説に対して思いつきや何となくで頭から否定するのは失礼よ」
男「すいません・・・」
店主「そういえば丁度この日時に気プセンで何かあったね」
天気アナ「この前言ってたエネルギーの照射ね。 やっぱり関係が・・・」
少女「気プセンから照射されたエネルギーの進路をマップに乗せて」
店主「はいよ」カチャカチャ
パッ
男「あっ、光の雨と途中で交わってる」
店主「ドーナツ雲のちょい上あたりが交点だね」
79
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/06(火) 22:42:17 ID:K.L6tQ7I
少女「ここから先はデータ不足で確証はなけど聞く?」
天気アナ「当然」
男「聞こうじゃないか、少女博士君」
少女「」キッ
男「冗談だよ」
少女「EECRって知ってる?」
男「知るわけないだろ、お前と一緒にすんな」
店主「大丈夫、僕も詳しく知らないから。 簡単に言うと高いエネルギーを持った宇宙線のことだね」
男「高いって?」
少女「エネルギーで換算すると発電所が不要になる位の量」
男「よろしければ捕まえ方を教えて頂けないでしょうか。 あと買取先も」
店主「小さな粒子だからね。 検出器で捕らえるのがやっとってレベルなんだよ」
80
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/06(火) 22:43:21 ID:K.L6tQ7I
少女「そのEECRがこの日、大量に地球に到達しているわ」
天気アナ「7500万光年先の天体から?」
男「そんな遠くから地球になんか届くのか?」
店主「各地に設置してある測定施設のデータを確認したから間違いないよ」
天気アナ「・・・もしかしてη星のジェット放射?」
少女「さすがお天気お姉さん、良いところに気付いたわね」
男「?」
店主「η星は特殊な天体でね。 定期的に爆発的な放射線をジェット放出しているんだ」
天気アナ「でも宇宙空間で散乱して地球までは届かないって聞いたわ」
店主「そう。 通常の荷電粒子ならね」
少女「重要なのはそれを掻い潜って大量に到達したってところ」
天気アナ「?」
81
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/06(火) 22:44:46 ID:K.L6tQ7I
少女「結論から先に言うわ。 高エネルギーニュートリノよ」
天気アナ「ニュートリノ?」
少女「電子とかと同じ粒子の一つ」
男「そのニュートリノってヤツは遠くからも届くのか?」
店主「小さすぎて他とほとんど衝突することがないから地球まで届くんだ」
少女「ニュートリノを米粒だとすると、他の粒子は地球サイズになる」
男「そんなに!?」
天気アナ「まさか、そのニュートリノが女の子を消したと?」
少女「今言ったでしょ? ニュートリノは小さすぎて他の物質と相互作用しないって」
男「じゃあ関係ないじゃん」
天気アナ「気プセンから放射されたエネルギー体が関係してるって事ね」
店主「今までの仮説を加味すると高エネルギーニュートリノと作用を起こす事の出来る何か」
天気アナ「あなたたちは知っているのね? その正体を」
少女「知ってるわ。 でもお話しできるのはここまで」
82
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/06(火) 22:45:50 ID:K.L6tQ7I
男「少女はいつも良いところで勿体ぶるよな」
少女「そうじゃない。 これ以上はバックボーンがないと聞いても混乱するだけ」
天気アナ「・・・・・・」
男「でも、なんで気プセンがそんな事を? ただの気象予測施設だろ」
天気アナ「・・・・・・。 Z財団」
少女「一応忠告します。 これ以上は命に関わりますよ?」
店主「そうだね。 流石にお天気お姉さんの身を危険に晒す訳にはいかないね」
男「命・・・」ゴクリ
天気アナ「あなた達、何を調べているの? 一体何者?」
少女「調べたんじゃないんですか?」
天気アナ「・・・調べたわ。 だから聞いてるの」
少女「随分と面白い返しですね」
天気アナ「・・・・・・」
83
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/06(火) 22:46:57 ID:K.L6tQ7I
天気アナ「もう一つ見てもらいたい映像があるの」
パッ
店主「これは・・・」
天気アナ「5年前、匿名で局に届いた映像なんだけど」
店主「まさか、ヴォイニッチ実験!?」
天気アナ「え? ヴォイニッ―――」
少女「」バタリ
男「少女?」
天気アナ「ちょ、どうしたの!?」
男「おい、大丈夫か? 少女」
天気アナ「救急車呼んだ方が良いかしら」
店主「いや、隣の部屋に布団が敷いてあるから僕が―――」
男「俺、運びます」ヨイショ
店主「あぁ、すまないね。 廊下を出て右隣が少女の部屋だよ」
男「分かりました」スタスタ
84
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/06(火) 22:47:56 ID:K.L6tQ7I
天気アナ「どうしたのかしら」
店主「・・・・・・」
天気アナ「でも丁度良いかな」
店主「?」
天気アナ「店主さんに聞きたいことがあるんです」
店主「僕に?」
天気アナ「2人の情報がある時期より前が全く分からない件について」
店主「・・・ねるほどね」
天気アナ「私はこれでも報道上がりのジャーナリスト。 狙ったスクープは逃さない」
店主「それは良い精神だね」
天気アナ「5年前の件、教えてくれますか?」
店主「悠長にしている時間もなくなってきたようだね」
85
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/11(日) 03:35:13 ID:8NCY1q8I
○ 30分後/少女の部屋
男(こいつの部屋、見事なまでに何も無いな)キョロキョロ
少女「・・・ん」ボー
男「おっ、お目覚めですか姫」
少女「ここは・・・」キョロキョロ
男「ビックリするから倒れるなら事前に打ち合わせしといてくれよ」
少女「倒れ・・・」
男「呪いのビデオを見てる途中で」
少女「ビデオ・・・・・・!!」ブルブル
男「おい大丈夫か? 悪い・・・ 変なこと言った」
少女「ご、ごめんなさい。 大丈夫よ」
男「もう少し寝てろ。 絵本でも読んでやろうか?」
86
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/11(日) 03:35:54 ID:8NCY1q8I
少女「店主は?」
男「隣の部屋。 天気アナさんと何か話してるっぽいけど」
少女「・・・・・・」
男「なぁ、さっきの映像って何なんだ? 人が消えるとか意味分かんないんだけど」
少女「次元電離よ」
男「相変わらず説明する気ゼロですか・・・」
少女「ここを出るわよ」スッ
男「はあ? 出るってどこへ?」
87
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/11(日) 03:36:35 ID:8NCY1q8I
○ 居間
バンッ
天気アナ・店主「!?」ビクッ
少女「出かけるわ」
店主「まだ休んでいた方が良いんじゃないかい?」
天気アナ「そ、そうよ・・・ 顔色も良くないし」
少女「じゃ私と男だけでここを出る」
店主「どこへ行くんだい?」
少女「・・・・・・」
店主「分かったよ。 出かける準備をしよう」
88
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/11(日) 03:37:23 ID:8NCY1q8I
少女「それと店主、エレベータの仕掛けを遠隔にして」
店主「・・・・・・」
少女「一旦存在を攪乱させたい」
店主「それを僕に言っちゃうの?」
少女「お願い、協力してほしい」
店主「・・・分かった、脱出セットを持っていこう」ハァ
少女「お天気アナさん、迷惑でなければ車で送ってくれませんか?」
天気アナ「え!? か、構わないけど」
店主「ここ居心地良かったんだけどなぁ」
89
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/11(日) 03:38:08 ID:8NCY1q8I
● 車内
ブーン
天気アナ「どこに行けば良いの?」
少女「男の家」
男「うち!?」
少女「写真の件もあるし、それに帰る家もないし」
男「家? あのボロショップにはもう帰らないのか?」
少女「店主、お願い」
店主「はいよ、さよなら僕のコレクション達」ポチッ
90
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/11(日) 03:38:43 ID:8NCY1q8I
ボーン
男「え? 何、今の音」
店主「何かが爆発した音だね」
少女「そうね、家が爆発した音に似てるわ」
天気アナ「ちょっと、後ろの方で煙りが上がってるのってあなた達の家じゃない?」
男「おいおい洒落になんねーよ」
少女「本当にエレベータの仕掛けが役に立つとは思わなかったわ」
男「ちょっと待てよ。あれ木っ端微塵だろ」
店主「結構な爆薬仕込んだからね」
少女「これで帰る場所がなくなったわ」
男「自分で破壊しておいて何言ってんだよ・・・」
天気アナ「・・・・・・」
ブーン
91
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/11(日) 03:39:25 ID:8NCY1q8I
● 男の家
キキッ
天気アナ「ここで良いのかしら?」
男「はい、ありがとうございます」
天気アナ「」チラッ
店主「・・・・・・」
天気アナ「私はこの後、本番があるから。 近いうちまた」
男「テレビ絶対見ますから!」
ブーン
92
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/11(日) 03:40:07 ID:8NCY1q8I
男「さて、それじゃ家に行きますか」
店主「随分と変わった神社だね」
少女「池の上にある変な建物が自宅?」
男「アホか、本殿だよ。 地下に水源があるらしくて下が池になってんだ」
店主「独特な造りだね」
男「本殿だけ後から作り直したんで。 それ以外は結構古いらしいです」
少女「このアンバランス加減、良い趣味ね」
男「周りの評判は結構悪いんですが・・・」
店主「少女は少しセンスが変わってるからね。 私服を見たら絶対笑―――」
少女「セイ!」ボコッ
店主「うっ゛」ゴロッ
男「・・・・・・。 い、今のもツボというヤツでしょうか?」
少女「イラッとしたから全力で殴っただけよ」
男「・・・家はこの裏ですのでご案内します、姫」
少女「ありがと」
93
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/11(日) 03:40:46 ID:8NCY1q8I
○ 男の家/居間
男「で、少女達はどうするの?」
少女「どうって?」
男「いや、家爆発しただろ」
少女「店主、次の家は?」
店主「ないね」
少女「だって。 しばらくお世話になるわ」
男「ちょっと何を言ってるのか分かんないですね」
少女「じゃこの家を私達に売って」
男「アホか。 俺はどうすんだよ」
少女「1日2万で泊めてあげる」
男「高けーよ! だったら俺が金もらって泊めるわ」
94
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/08/11(日) 03:41:29 ID:8NCY1q8I
少女「交渉成立。 店主、1泊2万でいいって」
店主「分かった」
男「お前・・・ そういうテクニックどこで覚えてくるの?」
少女「あんたの好きな占い通りにもなっていいじゃない」
男「はあ?」
少女「夜になったら一緒に星を見てあげるから」
男「ねぇ、話聞いてた? “麗しき美女と星空の下で語らう”だぞ?」
少女「感謝しなさい。 超弦理論の欠点をたっぷり語ってあげる」
男「・・・・・・。 1泊5万な」
少女「構わないわよ、こう見えてお金は結構あるの」
店主「安心して良いよ。 お金を出すのは僕だけどね」
男「嘘です、お金はいいですよ。 その代わり〜」
少女「?」
95
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/03(火) 02:59:12 ID:xSoKrPaw
○ 神礼所
少女「何で私がこんな事しなくちゃいけないわけ?」
男「神社に巫女さんが居るのが俺の夢だったんだよ」
少女「私は科学者、客が来ても非科学的な説明なんかしないわよ」
男「こんな寂れた田舎の神社に人が来ると思うなよ」
少女「・・・・・・。 それ、私が居る必要ないんじゃない?」
男「だから言っただろ。 少女は俺の夢を叶えるためにココにいるんだ」
少女「あのね、私はそんな暇じゃないの」
男「少女の仕事はただ一つ。 俺の前で巫女姿を見せる、それだけだ」
少女「何よそれ。 ただ巫女が見たいだけじゃない」
男「さっきからそう言ってるだろ。 人の話聞いてた?」
少女「はいはい、分かったわよ・・・ 居候の身分ですからその位は我慢してあげる」
男「じゃ、よろしく〜」
少女「ハァ〜・・・」
96
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/03(火) 03:00:16 ID:xSoKrPaw
○ 居間
店主「男君、ちょっとテレビ借りても良いかな」
男「どうぞ、ほとんど見ませんし」
店主「助かるよ」ガチャガチャ
男「パソコン繋げるんですか? パソコンモニターなら余ってるのありますよ」
店主「男君は時間ある? 一緒に遊ばないかい」
男「構いませんけど。 ゲームですか?」
店主「コレなんかどうかな」ポチッ
男「ヴォ、ヴォイニッチ!!」
店主「念のためバックアップを持ってきておいたんだ」
男「店主さんマジ天使ゅ! 地獄の果てまでお供します」
店主「嬉しいね。 少女はあまり乗り気じゃなかったし」
男「俺はひと味違いますよ?」
店主「それじゃ、やりますか」ポチッ
97
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/03(火) 03:01:04 ID:xSoKrPaw
○ 1時間後/神礼所
少女「ハァ〜・・・ 本当に誰も来ないなんて、この神社の経営はどうなってんの?」
チュンチュン
少女「良い天気・・・」ボー
???「学業祈願のお守りもらえるかしら」
少女「えっ? あっ、はい」ゴソゴソ
???「お金は後で男が払うわ」
少女「え?」
???「あら、あなた・・・ その瞳の色」
少女「・・・・・・」
男「お〜 姉貴帰ってきたんだ」テクテク
???「え? あっ、ただいま」
少女「姉貴?」
98
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/03(火) 03:01:57 ID:xSoKrPaw
○ 居間
姉「ビックリしたわよ。 家に着いたら神礼所に知らない巫女が居るんだもん」
男「少女はしばらくうちに泊まることになってるから」
姉「奥手のアンタが女の子を連れ込みですか〜」
少女「男さんには異性として1ミリも興味ありませんのでご安心下さい」
男「もう少しオブラートに包めよ」
店主「おまけで僕も付いていますけどね」
姉「イケメンさんですね。 少女ちゃんとはどういうご関係で?」
店主「一応は保護者役といいますか」
少女「腐れ縁の赤の他人です。 敵として扱ってもらって構いません」
姉「あら、それは女の敵って言う意味?」
少女「良いですね、その意味も追加で結構です」
店主「・・・・・・」
男「店主さん可哀想・・・」
99
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/03(火) 03:02:36 ID:xSoKrPaw
姉「そうだ、お土産買ってきたから皆で食べようよ」ゴソゴソ
パラ パラッ
男「姉貴、なんか紙落ちたぞ」
店主「拾いますよ。 少女、そっちの頼む」
姉「あ〜 ゴメンね」
少女「これ・・・ お姉さんはどこかの教育機関か研究所にお勤めで?」
姉「あら、なんで分かったの? 私ってもしかしなくても有名人?」
少女「私は存じ上げませんが、これ論文ですよね。 宇宙物理でしょうか?」
男「姉貴は研究都市にある何とかっていう所に勤めてるんだよ」
姉「高エネルギー粒子研究所。 最先端の研究所よ! 凄いでしょ」ドヤッ
100
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/03(火) 03:03:15 ID:xSoKrPaw
店主「そういえば、前に一度行ったことあるよね」
姉「あら、見学に来たことがあるの?」
男「少女は、こう見えて博士なんだってよ。 海外にあるなんとかって所の」
少女「Z財団粒子物理学研究機構」
姉「・・・・・・。 に、お務めの博士の娘さん?」
少女「私が博士です」
姉「面白い子ね。 ユーモアセンスがある人ってお姉さんは好きよ」
少女「嘘じゃないです。 一応専門は粒子物理です」
姉「・・・・・・」
101
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/03(火) 03:04:02 ID:xSoKrPaw
少女「それよりこの論文、着眼点が面白いですね」ペラッ
姉「あ、ありがとうございます・・・」
少女「CvBとCMBの関連性に関するシナリオ、とても興味深いテーマです」
姉「もしかして、私も財団の粒子物理学研究機構で通用しますでしょうか」
少女「私はこの分野の専門ではないので何とも。 でもよく出来ていると思います」
姉「気になる点などあればご教授を!」
少女「そうですね・・・ 強いていうなら変換式が煩雑で精度が落ちている点でしょうか」
姉「でも一般的にはその式を使うしか・・・」
少女「第2項から先が気になります。 こうしてみたらどうでしょう」カキカキ
姉「・・・・・・」
少女「だいぶ短縮できましたがイマイチですね、すいません偉そうな事言っておいて」
姉「いえ、あの・・・ この式って見たことないんですが・・・」
少女「あっ、神礼所開けっ放しだ。 戻らないと」タッタッタッ
姉「・・・・・・」ポケー
102
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/03(火) 03:04:35 ID:xSoKrPaw
男「姉貴?」
姉「ねぇ、彼女何者?」
男「さっき言ったろ」
姉「そうじゃなくて。 こんなの発表したら学会がザワつくくらい凄いんですけど」
店主「少女が手を入れた論文は大抵業界内がザワつくからね」
姉「う〜ん・・・ でも、わたし彼女の名前の論文を見たことないと思う」
店主「何というか・・・ 別の形では出てはいるんだけど、表舞台が嫌いみたいで」
姉「それって、もしかして上司の名前で発表してるとか?」
店主「でも成果が話題になると、ドヤ顔で研究所内を歩き回っていたけどね」
姉「なんて健気な」キュン
男「健気か? かなりウザくて嫌な性格だろ」
103
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/03(火) 03:05:10 ID:xSoKrPaw
姉「私、少女ちゃんともっとお話ししたい!」
男「止めとけって。 ああ見えて少女は人をイラッとさせる天才でもあるから」
姉「男! 私の巫女服を用意して!」
男「は? 姉貴が巫女してるところなんか見たことないんだけど」
姉「私は少女ちゃん・・・ いえ、少女博士の助手としてもっとお近づきになりたいの!」
男「巫女関係ないだろ」
姉「これだからあんたはバカなのよ。 部下は上司の後ろ姿を追いかけていくの」
男「頭大丈夫か?」
姉「少女博士〜 私もお守り売りお手伝いいたします〜」タッタッタッ
男「すいません店主さん。 少女に有害なゴミが付いちゃいました」
店主「まぁ良いんじゃない? 話が合う相手がいた方が退屈しないだろうし」
男「合うのかなぁ・・・」
104
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/09/28(土) 20:03:34 ID:ykGVyMo.
いい
超期待
待ってる
105
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/30(月) 04:31:46 ID:zQrP0nyk
○ 神礼所
姉「♪〜」
少女「・・・・・・。 あの」
姉「何ですか博士」
少女「博士は止めて下さい。 お姉さんの方が年上なんですから少女で良いです」
姉「お姉さん!? 何て良い響き」モジモジ
少女「・・・・・・」
姉「でも私達は上司と部下の関係。 一線を越えてはいけないわ」
少女「私、お姉さんの部下になったつもりはないんですが」
姉「何言ってるの? 私が部下よ」
少女「・・・・・・」
106
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/30(月) 04:32:52 ID:zQrP0nyk
姉「そうだ! 博士には特別に神社のご神体見せてあげる」
少女「ご神体?」
姉「きっと興味持つと思うわよ? 私の代からの門外不出なんだから」
少女「随分最近なんですね・・・ でも、私あまりそういうのは」
姉「え〜 この私がド直球で興味持った位なのになぁ〜」
少女「すみません。 今の言葉で余計興味がなくなりました」
姉「残念。 じゃあ話を変えて、少女ちゃんはどうしてうちに?」
少女「私は・・・・・・。 あっ!!」
姉「?」
107
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/30(月) 04:34:27 ID:zQrP0nyk
少女「忘れてた!!」ジタバタ
姉「ちょ、少女ちゃんどうしたの!?」
少女「すいません、ちょっと戻ります」タッタッタッ
姉「私も行くー!」
少女「お釣り用のお金があるんですから! そこでお守り売ってて下さい!」タッタッタッ
姉「ここ数年参拝者の来ない神礼所に1人残すなんて何という拷問!」
姉「・・・・・・」ハァ
姉「頑張ってきたんだけどなぁ・・・ 私、どうすれば良いのかな・・・」ボソッ
108
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/30(月) 04:35:15 ID:zQrP0nyk
○ 居間
少女「店主!」ズカズカ
店主「どうしたんだい? 少女もヴォイニッチ手伝ってくれるのかい?」
少女「男は?」キョロキョロ
店主「部屋で休憩だね。 それより、今かなり良い線まで進んでるんだけど」
少女「そんなの後よ!」
店主「でも、ここをクリアすれば次のコードキーが」
少女「どうでも良い! アンタもついてきなさい!」
店主「?」
109
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/30(月) 04:36:01 ID:zQrP0nyk
○ 男の部屋
バンッ
男「うおっ! ビックリした。 急にドア開けるなって」
少女「ビックリしたのは私の方よ!」
男「何だよ急に。 あっ!」
少女「思い出したようね」
男「いや、激おこな巫女さんの仁王立ちっていう構図がなんか良いなって」
店主「その気持ち分かるかも。 僕もそっち側から見ても良いかな?」
少女「あんた達の片足をマイクロブラックホールに突っ込むわよ」
男「だから何なんだよ、その意味不明な恐ろしい表現は・・・」
110
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/30(月) 04:36:39 ID:zQrP0nyk
少女「写真!」
男「あ〜 撮っていいの? じゃぁそのままで」カシャ
少女「違う! 私はお守りを売るためにここに来たんじゃないの!」
男「家を爆発させたからだろ?」
少女「それは一理あるけど・・・ 写真を見るために来たの!」
男「あ〜 廃研究所の写真か」
店主「忘れてたね」
男「もうこの平和なスタイルで物語を紡いでいった方が良くない?」
少女「紡がないし平和じゃない!」
111
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/30(月) 04:37:34 ID:zQrP0nyk
○ 30分後
男「あれ? ここら辺に仕舞った気がするんだけどなぁ」ゴソゴソ
少女「ねぇ、まだ見つからないの?」
男「結構前だし、こっちの箱の中かなぁ?」
少女「それにしても、アンタの部屋マンガと雑誌しかないじゃない」ゴソゴソ
男「おい、本棚漁るなよ」
少女「下の方に薄い本が沢山あるわね」
男「取説とかマニュアルだよ。 言い方気をつけろよ」
店主「男君だって年頃だし、ね」
少女「何を言ってるのか意味が分からないわ。 私は論文かと思っただけよ」
男「そんなもんあるわけないだろ。 って、お〜 見つけた」
少女「本当!? 早く見せて頂戴」タッタッ
112
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/30(月) 04:38:24 ID:zQrP0nyk
男「待てって。 え〜と・・・ あった! これだ」
少女「どれ!」グイッ
男「ちょ、そんなにくっ付いてくるなよ・・・」
少女「これは・・・」
男(少女の頭が目の前に!?)ゴクリ
店主「どうだい?」
少女「間違いない」
店主「この形状はシステム3だね。 やっぱりあの施設にあったんだ」
少女「でかしたわ男。 あなたの評価を10段階上げて―――・・・」
男(少女の髪、良い匂い・・・)クンクン
113
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/30(月) 04:39:08 ID:zQrP0nyk
店主「男君? 楽しんでるところ悪いんだけど、目を開けて」
男「え?」パチッ
少女「」ジー
男「・・・・・・。 少女さんの瞳、とても綺麗です・・・」
少女「ありがと。 あなたもね」ニコッ
ボフッ!
男「」ゴロッ
店主「うわ〜 今のは痛そうだね・・・ ちなみに、今のもツボってやつ?」
少女「ただの全力の腹パンよ」
114
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/30(月) 04:40:12 ID:zQrP0nyk
● MHKテレビ
記者「そんな・・・ 冗談ですよね?」
天気アナ「私も同じ意見だった、これを見るまでは」スッ
記者「ビデオ?」
天気アナ「再生するわね」
パッ
記者「これは!」
天気アナ「5年前に局に送られてきた映像のマスターよ」
記者「マスター!? どこからこんな物を・・・」
天気アナ「これに関わった人物。 映像に加工がされていない事は確認した」
記者「・・・・・・」
天気アナ「少し飛ばすわね」カチャカチャ
115
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/30(月) 04:41:07 ID:zQrP0nyk
パッ
記者「僕の持ってる映像はこの辺で終わっていましたが」
天気アナ「そうね。 この後、カメラがぶれて・・・」
記者「えっ・・・? ちょ、待って下さい。 何ですかこれ!?」
天気アナ「見た通りよ」
記者「そんな・・・」ゴクリ
天気アナ「この映像は5年前行われたZ財団の極秘実験のものらしいわ」
記者「Z財団・・・ やっぱり・・・」
天気アナ「前に調べてもらって過去が追えない人物がいたの覚えてる?」
記者「はい、確か2人」
天気アナ「なんとかして調べられないかしら、特にこの子」ペラッ
記者「この子は・・・」
116
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/30(月) 04:41:53 ID:zQrP0nyk
天気アナ「できるだけ古い情報、どんな事でも構わない」
記者「分かりました。 一つツテがあります」
天気アナ「たぶん、全てはこの子から始まっている」
記者「この子に何か秘密が?」
天気アナ「世界がひっくり返るスクープかも」
記者「明日まで時間下さい。 絶対に情報を持ってきます」タッタッタッ
天気アナ(あの子・・・ どうする気なのかしら・・・)
117
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/30(月) 04:42:38 ID:zQrP0nyk
● 夜/境内
少女「・・・・・・」ボー
男「夜の境内で月明かりを浴び黄昏れる巫女。 絵になるね〜」
少女「」チラッ
男「1日中着るほど巫女服が気に入ったか。 分かるよその気持ち」
少女「他に着る物がないだけよ」
男「あ〜・・・ 姉貴のお下がりで良ければ後でもらっておくけど」
少女「ここは夜空が綺麗ね」
男「それしか取り柄がない村だしな。 その代わり他には何も無い」
少女「こんなに星を見たのは初めてかも」
118
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/30(月) 04:43:28 ID:zQrP0nyk
男「・・・もしかして、このシチュは今日のおみくじの回収?」
少女「だったら、超弦理論の欠点についてでも語る?」
男「遠慮しとく」
少女「そう、残念」
男「・・・・・・。 なぁ、少女は世界最高レベルの研究所にいたんだろ?」
少女「そうね」
男「せめて謙遜位はしろよ・・・」
少女「失礼、そこそこのレベルの研究所いた最高レベルの科学者。 これで良い?」
男「そっちかよ・・・ しかも財団の研究所をそこそこって」
少女「本当のことなんだし、自分を否定する言い方は好きじゃないの」
119
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/30(月) 04:44:11 ID:zQrP0nyk
男「その最高レベルの科学者さまがここに来たのは出張とか?」
少女「・・・・・・。 抜け出してきた」
男「え?」
少女「研究所はZ財団の持ち物。 私がやっていることを正当化するはずない」
男「なるほどな。 目的はよく分からんが、財団に楯突いてるのだけは分かる」
少女「あそこしか私のいる場所がなかった」
男「それは頭脳的な意味でか?」
少女「そのままの意味よ」
男「?」
120
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/30(月) 04:45:11 ID:zQrP0nyk
少女「あなたは、今の生活が好き?」
男「何の脈略もない質問だな」
少女「急に新しい環境で生活しろって言われたら、あなたどうする?」
男「違う環境って海外とかそういう事か? まぁ少女からしたらここは外国だしな」
少女「・・・・・・」
姉「私なら天才的知識をひけらかして、どこへ行っても無双できるわ」
少女・男「?」クルッ
姉「でも、実際には難しい問題よね」フム
121
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/30(月) 04:45:54 ID:zQrP0nyk
少女「お姉さん!?」
男「姉貴、なんで夜に神礼所なんかいるんだよ。 怖えーよ」
姉「私は博士の言いつけ通りこの場所を守っているだけよ?」
少女「まさか、ずっとここに!?」
姉「この放置プレイが終わったら博士と一緒にお風呂に入る約束をしているから」
少女「してません。 あと博士は止めて下さい」
姉「この場合“違う環境”の定義が重要よね。 外国なのかそれとも・・・」
男「何の話だよ」
姉「アンタその手の小説好きでしょ? 主人公が異世界に飛ばされる話」
男「あ〜 話が続いてたのね。 っていうか異世界ってどっから出てきたんだよ」
122
:
◆8YCWQhLlF2
:2019/09/30(月) 04:46:48 ID:zQrP0nyk
少女「興味あるわね、その小説の内容」
男「まぁ大抵は元の世界の知識を使って無双するな」
姉「あら、私と同じ思考ね。 その作者よく分かってる」
少女「元の世界には帰ろうとしないの?」
男「そっちのほうが盛り上がるだろ。 異世界の方が刺激が強いしな」
少女「刺激、か」
姉「少女ちゃんならどうする?」
少女「・・・・・・。 私は・・・」
姉「難しいわよね。 と、いうことで夜を徹して学者同士二人で議論しましょう」
男「その話題は学問じゃないだろ・・・」
少女「・・・・・・」
123
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/04/29(水) 05:11:52 ID:4hSEygD6
○ 居間
男「うわ〜 あと少しだったんだけどなぁ〜」
店主「残念。 次は僕が挑戦してみるよ」
男「やっぱりここまで来ると難易度高いですよね」
店主「ヴォイニッチ暗号の深層まで来ているからね」
男「店主さんぶっ続けでやって疲れないんですか?」
店主「休みたいとか言ってられる状況でもなくてね」
男「ふ〜ん。 何か理由が?」
店主「・・・・・・。 まぁ何というか、作った本人が解けないのも癪じゃない?」
男「“代理人”がいればだいぶ楽なんですけどね」
店主「代理人?」
男「“時の女神の代理人”ってゲーマー、知りません?」
124
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/04/29(水) 05:12:44 ID:4hSEygD6
店主「そんなIDの人いたっけ? 上位の人なら僕も聞き覚えあると思うんだけど」
男「コード解析専門なんで、プレイは他人任せだったみたいですし」
店主「それはハッカーと言う事かな?」
男「簡単に言うとそうですね」
店主「でも、ゲーム部分と暗号部は異なるからハッキングしてもクリアできないと思うんだけど」
男「難攻不落のマップ28って覚えてます?」
店主「あったね〜。 まさかあんな方法でクリアできるとは思わなかったよ」
男「あのマップの攻略法を編み出したのが、代理人なんです」
店主「・・・・・・。 男君は、その人と知り合いなの?」
男「何度か闇チャットでやり取りしたくらいですけど。 当時は学生だって言ってましたね」
125
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/04/29(水) 05:13:18 ID:4hSEygD6
店主「ちょっとそのログ覗かせてもらおうかな」カチャカチャ
男「そんな事出来るんですか?」
店主「あそこのサーバーはセキュリティーに欠陥があるからね」
パッ
店主「侵入完了」
男「店主さん・・・ それ犯罪」
店主「あった、これだね」
男「お願いですから変なログは見ないで下さいね・・・」
126
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/04/29(水) 05:13:59 ID:4hSEygD6
店主「ん〜 確かに・・・ 少し荒いけどこのコードは凄いね」
男「代理人がいなかったら進めなかったマップは数知れずですよ」
店主「これ・・・ 深層プログラムを直接いじってる・・・」ボソッ
男「んじゃ、切りが良いんで俺そろそろ寝ます」
店主「ん? あぁ、遅くまで付き合わせてすまなかったね」
男「気にしないで下さい、好きで付き合ってるんですから」
店主「じゃ、お休み」
男「また明日手伝いま〜す」スタスタ
店主「・・・・・・」
127
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/04/29(水) 05:14:49 ID:4hSEygD6
店主「時の女神の代理人、か・・・」スッ
ピポパ
prrr prrr
店主「遅くにすまないね。 人探しのお願いがあるんだけど良いかな?」
店主「あぁ、情報提供の見返りって事で。 なんなら、これから起こるスクープも提供するよ」
――― 廊下
少女「・・・・・・」コソッ
128
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/04/29(水) 05:15:29 ID:4hSEygD6
○ 翌日・朝/神礼所
少女「フワァ〜〜」ムニャムニャ
男「よっ、大きなあくびですなぁ〜」ニヤニヤ
少女「!?」ビクッ
男「少女も大口開いてあくびとかするんだな」
少女「他の人に言ったらマイクロ波を連続照射するから」
男「だから・・・ もう良いや」ハァ
少女「・・・・・・」ジー
男「何だよ・・・」
少女「それはこっちの台詞。 何か用?」
男「今日のおみくじを引きに」
少女「おみくじ?」
129
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/04/29(水) 05:15:59 ID:4hSEygD6
男「俺の日課、知ってるだろ?」
少女「あれって自分の神社のヤツなの!?」
男「そうだよ。 ほら、巫女さんらしく対応して」
少女「ハァ・・・ この機械のレバーを引けば良いの?」
男「お前が引いたら意味ないだろ。 おみくじするヤツが引くんだよ」
少女「そうですか。じゃ、サッサと引いて私の視界から消えて下さい」
男「イラッとする巫女だなぁ」ガチャン
ストン
男「さてと、今日の運勢は〜」
130
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/04/29(水) 05:17:45 ID:4hSEygD6
少女「そんな物で一日の行動を縛るなんて滑稽ね」
男「うるせー。 ってか何これ・・」
少女「?」
男「・・・・・・。 枝に縛って厄払いするか」
少女「ちょっと待ちなさい」
男「何だよ。 見せねーぞ」
少女「お金」
男「はあ?」
少女「おみくじの代金、ちゃんと払って行きなさい」
男「・・・・・・」
131
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/04/29(水) 05:18:32 ID:4hSEygD6
店主「おや、朝早くからご苦労さんだね」スタスタ
男「店主さんもやりません? このおみくじ当たるんですよ。 最近少し調子悪いですけど」
店主「へ〜 少女はどうだった?」
少女「私がこんなものやるわけないでしょ」
店主「物は試し。 折角だしやってみたら?」
男「そうだよ、少女も日頃の行ないを神様に正してもらえ」
少女「ハァ〜・・・」ガチャン
ストン
少女「・・・・・・。 何よコレ」
男「“リードエラー” 斬新な結果だな・・・ 初めて見た」
132
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/04/29(水) 05:19:27 ID:4hSEygD6
店主「僕も引いてみようかな」ガチャン
ストン
男「どうです?」
店主「“善は急げ、気になることは最優先で取り組む事”だって」
少女「気に入らないわね」ガチャン
ストン
少女「・・・・・・」
男「うわ、また“リードエラー”って。 神は少女を見捨てたり」
少女「データベース不良を起こすような機械に頼る神はこちらから願い下げよ」
店主「・・・・・・。 この機械ちょっと見せてもらっても良い?」
男「どうぞ、中には少女嫌いの小さい神様がいるかも知れないですけど」
少女「面白いわね、出てきたら徹底的に調べましょう。 家に麻酔はある?」
男「だから表現!」
133
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/04/29(水) 05:20:03 ID:4hSEygD6
店主「フフッ」ニコッ
少女「何がおかしいの?」イラッ
店主「いいや別に。 それより、このおみくじ機械は昔からこの神社にあるのかい?」
男「そうですね、結構前から。 いつからあるんだろう」
少女「店主、ココ見て。 名盤に書かれた製造元」
店主「どれどれ・・・ 榊総研!?」
男「さかきそうけん?」
少女「溶接で閉められていて中は見られそうにないわね」
店主「下の方にコンソール用のポートがあるね。 ノーパソ持ってくるよ」スタスタ
男「榊総研って何?」
少女「Z財団の前身よ。 正確に言えば吸収されたんだけど」
男「え? 財団っておみくじの機械まで作ってたの?」
少女「・・・・・・」
134
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/29(水) 07:33:19 ID:YQCBIqEc
待ってた
135
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/02(土) 02:02:00 ID:H7JdC4ZM
○ 数分後
店主「お待たせ、ちょっとパソコンと繋げてみようか」カチャカチャ
少女「どう?」
店主「う〜ん・・・ 何というか衝撃だね」
男「何かマズいことでも?」
店主「このおみくじ機械はオルビスに繋がってる」
少女「!?」
男「オルビスって、人工知能のオルビス?」
少女「まさか・・・ 財団にバレて」
店主「大丈夫。 通信がシステム3のパターンで暗号化されてるから財団は追えないよ」
少女「ちょっと待って。 システム3が駆動しているの!?」
店主「ん〜 動いている気配はないね・・・」
少女「・・・言ってる意味が分からないんだけど」
店主「そうだね、僕も自分で何を言っているのか分からないよ」
136
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/02(土) 02:03:21 ID:H7JdC4ZM
少女「仮説は?」
店主「そうだねぇ・・・ 間違いなく言えることはシステム3の電源は落ちている」
少女「なのにシステム3のパターンが検出されるという事は・・・」
店主「システム3用の量子ユニットが微弱ながら生きてるって事だね」
少女「おみくじ機械がシステム3の代わりになっている」
店主「そう考えるのがしっくりくるね」
少女「ユニットの場所を追える?」
店主「さすがに無理かな。 信号が微弱すぎて経路情報が分からない」
少女「分かっていたら財団が先に手を出すはずか」
男「もしかしてオルビス絡みの何かがうちの神社にあるって言ってる?」
少女「言ってるわ」
137
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/02(土) 02:04:16 ID:H7JdC4ZM
男「気プセンにあるヤツじゃないのか? ここからも近いし」
少女「システム3の本体は行方不明よ」
男「は?」
店主「実は無くなっちゃったんだ」
男「そんな落とし物みたいに言われても・・・」
店主「以前は“ハゲ山”近くの廃研究所に設置してあったようだけどね」
少女「アンタが昔に忍び込んで撮った写真に写っていたのがシステム3よ」
男「あの紫色の玉が?」
店主「球自体は量子ユニットって言ってdeusの転送装置なんだけどね」
少女「3台の人工知能が量子ユニットで繋がって特殊な演算と通信をしているのよ」
男「でも、もぬけの空だったよな。 どこかに移したんじゃないの?」
少女「だからその動かした先が不明って言ってるでしょ」
138
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/02(土) 02:05:19 ID:H7JdC4ZM
男「つまり・・・ 3台が繋がってオルビスなのに、実は2台しかないって事?」
店主「簡単に言うとそうなるね。 まぁ残りの1台らしきものが今見つかったけど」
少女「何でアンタの家の神社にオルビスの痕跡があるの? お願いだから教えて」
男「知らねーよ」
少女「そう言えば、前におみくじは人工知能の結果とか言ってたわね」
男「あ〜 この機械の中にデータが入っていると思ってた・・・」
少女「通りで結果が当たる訳ね。 行動予測をオルビスがやっているんだもの」
店主「少女の結果が出なかったのも納得だね」
少女「・・・・・・」
139
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/02(土) 02:05:59 ID:H7JdC4ZM
男「どういう意味?」
少女「何でもないわ」
店主「あ〜・・・ でも、何でこんなものがここにあるんだろうね」
男「姉貴に聞いてみますか、何か知ってるかも」
店主「そう言えばお姉さんは?」
少女「町に買い物へ行くって朝早くに出て行ったわ」
店主「買い物ならすぐ戻ってくるかもね」
男「繁華街はバスで2時間かかりますから夜まで戻りませんよ」
店主「田舎あるあるだね」ハハハ
140
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/02(土) 02:06:47 ID:H7JdC4ZM
● 翌日・朝/MHKテレビ
天気アナ「随分早かったわね」
記者「情報の鮮度はいくらお金を渡すかで変わりますから」
天気アナ「賄賂?」
記者「このネタにならいくら使おうが痛くありませんよ」
天気アナ「上から報道規制がかかるかも知れない案件よ?」
記者「その時は別の手を考えましょう」
天気アナ「たくましいわね・・・ それで、調査の方は?」
記者「良い収穫がありました。 見て下さい」ペラッ
141
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/02(土) 02:07:23 ID:H7JdC4ZM
天気アナ「この紙は?」
記者「役所の倉庫に保管されていた戸籍謄本の原本です」
天気アナ「戸籍?」
記者「今はオルビスが管理してますが、その前まで役場で管理されていた物です」
天気アナ「でもデータはそのままオルビスに移行されているんでしょ?」
記者「見比べてみて下さい。 こっちがオルビス経由で取得したものです」スッ
天気アナ「特に不審な点はないわね」
記者「そして、こっちが役場に保管されていた原本」
天気アナ「え!? これってどういう事?」
142
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/02(土) 02:08:00 ID:H7JdC4ZM
記者「書き換えられているんです」
天気アナ「・・・・・・」
記者「原本には載っていないのに現在の戸籍には子供が登場しています」
天気アナ「あの人が言ったことに間違いはなかったか・・・」
記者「こんな事が出来るのは財団の人間かオルビスの設計者だけです」
天気アナ「この子の両親は?」
記者「2人とも財団の前身である榊総研の上級研究員だったようです」
天気アナ「榊総研・・・」
記者「しかも、オルビスの開発者である教授と同じ研究チームでした」
143
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/02(土) 02:09:01 ID:H7JdC4ZM
天気アナ「・・・子供として偽装したと言う事ね」
記者「おそらく。 オルビスの戸籍情報を改竄して」
天気アナ「・・・・・・」
記者「もう一つ、昨日夜にお願いされてた尋ね人ですが」
天気アナ「つかめそう?」
記者「それが・・・ 偶然なのかそれとも」
天気アナ「?」
記者「この戸籍謄本の・・・ ここに記載されている人物が“時の女神の代理人”です」
天気アナ「嘘でしょ・・・」
144
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/05(火) 06:51:52 ID:dRZoMmQw
○ 男の家
姉「ただいま〜」
男「お、姉貴帰ってきた」
姉「いやー疲れた。 またバスの本数減ったんじゃない?」
男「町まで何買いに行ってたんだ?」
姉「これよ、はい少女ちゃんにプレゼント」
少女「私に?」
姉「その巫女服だけじゃ流石に、ね」
少女「そのためにわざわざ・・・」
姉「サイズは大丈夫だと思うけど試着してみて」
少女「ありがとうございます。 隣の部屋借りても良いですか?」
姉「どうぞ」
少女「じゃあ着替えてきます」スタスタ
145
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/05(火) 06:52:37 ID:dRZoMmQw
店主「なんかすみません、僕がすべきことなんですが」
姉「気にしないで。 私が好きで買ってきたんだし」
男「姉貴って意外と気が利くのな」
姉「うるさいわよ」
ガチャッ
少女「あの、お姉さん・・・?」ヒョコッ
姉「サイズはどう?」
男「顔だけ出してどうしたんだ? 恥ずかしがってないで出てこいって」
少女「・・・・・・」
店主「どうしたんだい少女」
少女「・・・・・・」テクテク
146
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/05(火) 06:53:17 ID:dRZoMmQw
男「なんだよ巫女服のままじゃん。 着替えてこいよ」
少女「着替えたわ」
男「は?」
姉「サイズは丁度みたいね。 良かった」
男「え? もしかして姉貴・・・」
姉「巫女服の代えがあった方が良いでしょ? 売ってるところ探すの苦労したわ」
一同「・・・・・・」
prrr
店主「あっ、僕だ。 ちょっと失礼するね」スタスタ
少女「・・・・・・」チラッ
147
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/05(火) 06:54:03 ID:dRZoMmQw
男「店主さんに電話なんて珍しいな」
少女「あれも色々と縛りがあるから。 まぁ気にする必要ないわ」
男「ふ〜ん。 あっ、それより姉貴に聞きたい事があるんだけど」
姉「あら、何?」
男「神礼所に置いてあるおみくじの機械の事って何か知ってる?」
姉「・・・あぁ、あれね」
少女「単刀直入に聞きます。 オルビスに繋がっているようですが」
姉「・・・・・・」
少女「その反応、何かご存じなんですね」
姉「今日の夜って少し時間あるかしら、見せたい物があるの」
少女「?」
姉「暗くなったら皆で本殿に行きましょう」
148
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/05(火) 06:54:49 ID:dRZoMmQw
ガチャッ
店主「ごめんね、話の途中で外しちゃって」スタスタ
男「あっ、店主さん。 丁度良かった」
店主「?」
男「今日の夜って時間あります? 皆で本殿に行くんですけど」
店主「本殿?」
姉「とっておきの物を見せてあげる」
店主「・・・・・・」
姉「?」
少女「どうしたの店主」
店主「えっ、あぁ分かった。 夜だね?」
姉「じゃぁ後で。 私は部屋で少しお仕事してくるわね」スタスタ
149
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/05(火) 06:55:44 ID:dRZoMmQw
○姉の部屋
コンコン
姉「は〜い」
ガチャ
店主「お邪魔します。 少し良いかな?」
姉「あら、どうぞ入って」
店主「凄い量の本だね」キョロキョロ
姉「物理学者ですからこの位は当然! 気になる物があればお貸ししますよ?」
店主「さすが物理書ばかりだね。 僕の専門とは少し・・・ おや、この本は珍しいね」
姉「どれどれ?」
150
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/05(火) 06:56:20 ID:dRZoMmQw
店主「『第四深層からのゲーミングプログラム』」
姉「・・・・・・」
店主「難しいみたいで全然売れなかったみたいだけど、理解できた?」
姉「結構手こずったけどね」
店主「これ、名前は変えてあるけど僕の著書なんだ」
姉「・・・・・・」
店主「机の横にあるパソコンも凄いね。 通信ケーブルが研究施設用だ」
姉「話って何かしら?」
店主「相談・・・ というか、お願いがあるんだ」
151
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/05(火) 06:57:05 ID:dRZoMmQw
○夜・本殿前
姉「ごめ〜ん、遅くなっちゃった」テクテク
男「自分から呼びだしておいて遅れるなよ」
姉「ちょっと研究所の方に電話してたから」
男「あれ? 店主さんは?」
少女「お姉さんと一緒じゃなかったんですか?」
姉「あ〜 なんかゲーム大会があるとかで出かけたわよ」
男「ゲーム大会? こんな時間に?」
少女「・・・・・・」
姉「私も詳しく聞いていないからよく分からないけど」
少女「そうですか」
152
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/05(火) 06:57:52 ID:dRZoMmQw
男「店主さんてイマイチ何を考えているか分からないな」
姉「確かに飄々としてるわね」
男「少女は一緒に行かなくても良かったのか?」
少女「何か勘違いしているようだから言っておくけど、店主は私の監視役よ?」
男「はい?」
少女「財団から私を監視するように言われて一緒にいるだけ」
男「ちょっと待って、それって敵っていう事?」
少女「店主を見張りに立てる事が、私が財団の研究所を出る条件だった」
男「え? ちょ・・・ え!?」
少女「さ、早く本殿に行きましょ」スタスタ
男「どういう事!?」
姉「・・・・・・」
153
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/05(火) 22:13:59 ID:dRZoMmQw
○ 神社/参道
テクテク
男「いや〜 店主さんが財団の回し者なんて信じられないんだよなぁ〜」
少女「根は学者だし、色々と便利だったわ」
姉「店主さんの専門って?」
少女「量子情報工学です。 その道ではトップクラスの学者です」
男「そんなに凄いの?」
少女「店主の右に出る専門家はいないと私は思ってる」
姉「通りで・・・」
少女「?」
姉「いえ、何でもない。 私もいつかそんな風に言われたいものだわ」ハァ
154
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/05(火) 22:15:21 ID:dRZoMmQw
少女「失礼ですがお姉さんはどうして学者の道を?」
姉「・・・・・・。 私はどうしても量子物理学者になりたいの。 それもとびきり優秀な」
男「超勉強してたもんな。 でも情報工学にいくと思ってたのに何で物理に変えたんだ?」
姉「そう・・・ あれは5年前、私が学者を志すきっかけが訪れ―――」
男「姉貴、急に自分語りするクセ直した方が良いぞ?」
姉「あら、これは初めて話す私のとっておきなんだけど」
少女「その話、よろしければ聞かせてもらえないでしょうか」
男「え〜 聞くの〜?」
姉「昔ね、この神社で火災があったの」
少女「火災?」
男「あ〜 落雷があって本殿が燃えたんだよ」
姉「その時、本殿の修復費用を全額出してくれた方がいた」
男「へ〜 それは初めて聞いたな」
155
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/05(火) 22:15:57 ID:dRZoMmQw
姉「その人が物理学者だった。 格好いいわよね」フッ
少女・男「・・・・・・」
男「終わりか?」
少女「その学者は同じ研究所の方ですか?」
姉「・・・・・・。 残念だけどお亡くなりになったわ」
少女「そうですか・・・」
姉「5年前の飛行機事故で」
少女「!?」
男「あの事故か・・・」
少女「あ、あの・・・」
姉「?」
156
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/05(火) 22:16:37 ID:dRZoMmQw
少女「そ、それって・・・ もしかしてこの人じゃ・・・」スッ
姉「少女ちゃんて結構古い携帯使ってるのね」
少女「こ、この・・・ 右側にいる・・・」
姉「そう、この人。 この写真少女ちゃんも一緒に写ってるわね」
男「少女は相変わらず無愛想な顔してるな」
姉「おみくじ機械も教授さんが設置していった物よ」
少女「なんで・・・」
男「このおじさん少女の知り合い?」
少女「なんで教授が・・・ ここに・・・」
157
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/05(火) 22:17:13 ID:dRZoMmQw
○ 神社/本殿
ギーッ
男「うはっ、ほこり臭いな」ケホケホ
姉「アンタが普段から掃除しないのが悪いんでしょ」
少女「聞かせて下さい。 教授のこと」
男「先におみくじの件だろ」
姉「まぁ待って。 私が話をするより見てもらった方が早いと思うし」
男「見るって、本殿には何もないだろ」
姉「この辺一帯は昔の鉱山跡だって知ってる?」
少女「はい。 先日男から聞きました」
姉「至る所に坑道があってね、この本殿の下にもあるの」
男「マジで?」
158
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/05(火) 22:17:52 ID:dRZoMmQw
姉「案内するわ。 男、電気付けて」
男「あぁ」パチ
姉「そしたら、そのスイッチの蓋を開いて」
男「蓋? このカバーのことか?」
姉「そう、下の部分を持って上げれば開くわ」
男「こうか?」パカッ
グイーン
男・少女「・・・・・・」
姉「坑道の入り口」
男「こんな仕組みあったのかよ」
姉「教授さんの設計よ」
少女「・・・・・・」
姉「下に行きましょ」スタスタ
159
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/05(火) 22:18:36 ID:dRZoMmQw
○ 坑道内
テクテク
男「すげー・・・ こんなトンネルがうちの地下にあったのかよ・・・」
姉「本殿を建て直す時に、教授さんからある物を預かって欲しいって頼まれたの」
少女「教授から!?」
男「まさか宝!」
姉「私はご神体って呼んでるけど」
少女「見せてもらう事は出来ますでしょうか」
姉「え〜 この前興味ないって言ったのに〜」
少女「うっ・・・ あれは・・・ ごめんなさい」
姉「冗談よ、見てもらうために来たんだから。 でも、条件があるの」
男「勇者にしか抜けない剣的な?」
姉「決められた時間以外はその部屋の扉を開けられない」
少女「どういう事ですか?」
160
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/05(火) 22:19:15 ID:dRZoMmQw
姉「昔、この一体の鉱山は何を採掘してたか知ってる?」
男「鉱山って言ったら石炭だろ」
少女「・・・・・・。 ウラン・・・」
男「ウラン?」
少女「放射性鉱石ですね?」
姉「その根拠を教えてもらえるかしら」
少女「ハゲ山に行きました」
姉「あ〜 なるほど。 あそこ行ったんだ」
少女「参道の石畳は遮蔽のためですよね? 線量計の挙動が変でした」
姉「正解。 今は問題ないけど、あそこは特に質の良い放射性鉱脈だったらしいわ」
男「それが何か関係あるのか?」
姉「この扉の向こうは地下水の影響で数時間おきに放射線の線量が上がるの」
161
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/05(火) 22:19:56 ID:dRZoMmQw
男「ちょ・・・ それってココに住んでるのヤバくない?」
姉「安心なさいな、昔からちゃんと対策は取ってあるから。 本殿下の池も遮蔽の一つよ」
男「でも扉の向こうは危険なんだろ?」
姉「隠し場所にはもってこいだと思わない?」
少女「その扉は、次いつ開けられますか」
姉「ん〜 あと1時間位かな」
少女「ここで待たせてもらっても良いでしょうか」
姉「もちろん」
男「俺も付き合う」
162
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/08(金) 21:50:09 ID:.WD6eC8k
○ 30分後
姉「暇ね」
男「なんか持ってくれば良かったな」
姉「男、面白い話をして」
男「無茶言うなよ」
姉「少女ちゃんは話すことない?」
少女「・・・・・・」
姉「じゃぁ、私がとっておきのネタを。 あれは私が高校生―――」
少女「15年前、教授率いる研究グループが未知の粒子を発見しました」
男「少女?」
少女「・・・・・・」
163
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/08(金) 21:51:12 ID:.WD6eC8k
姉「聞かせて?」
少女「Z粒子と名付けたそれは、ある特殊な性質を持っていました」
姉「Z粒子・・・ 初耳ね。 どんな性質?」
少女「光速を超える瞬間的な情報伝達と次元演算です」
姉「次元?」
少女「その後、教授はZ粒子で3つの“もつれ”状態を作り出すことに成功しそれらをdeusと命名しました」
姉「3粒子間での量子テレポーテーションか・・・」
男「ゴメン、何言ってるか分からない・・・」
少女「気にしないで、アンタに理解させようと思って話してないから」
男「・・・・・・」
164
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/08(金) 21:52:30 ID:.WD6eC8k
少女「当時財団は“オルビット”という次世代演算装置の開発を急ピッチで進めていました」
男「オルビット? オルビスとは違うのか?」
少女「前身って言えば良いかしら。 店主が中心で開発していた財団のプロジェクトよ」
男「店主さんが!?」
少女「財団はdeusとオルビットを統合する実験を教授と店主に命じた」
姉「瞬間的な情報伝達と処理が可能なら、飛躍的に性能は上がるわね」
少女「完成したのが、3台のオルビットにdeusを格納した次元演算コンピュータネットワーク」
姉「それがオルビス・・・」
少女「はい。 オルビスの核は3つのもつれ状態にあるdeusを制御する次元転送ユニットです」
男「よく分からんが、まさに最先端科学の結晶って感じだな」
少女「そうね、最先端だわ。 でも、最先端過ぎた」
男「どういう意味だ?」
165
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/08(金) 21:54:39 ID:.WD6eC8k
少女「オルビス完成後、運用中にdeusを構成するZ粒子の減少と正体不明のエネルギーが発生したの」
男「?」
少女「調査の結果、その異変はη星の爆発放射のタイミングと一致していることが確認されたわ」
姉「η星・・・ 高エネルギー放射線が原因って事?」
少女「はい。 Z粒子はη星から来るある高エネルギー粒子と相互作用を起こすと倍のエネルギーが発生する性質を持っていました」
姉「倍って・・・ 不足分のエネルギーはどこから?」
少女「別次元から落ち込んでくると推察されます。博士は“次元電離”と呼んでいました」
姉「次元っていうのがよく分からないけど・・・ 聞く限りでは夢のような現象ね」
男「そうなのか? 簡単に言って」
姉「お金を入れたら倍のお金が出てくる両替機」
男「何それ素敵」
少女「でも出てくるのは見た事もない別の国の通貨だけど」
男「は?」
少女「変よね? だから財団は教授に命じて実証実験を行うように指示したわ」
166
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/08(金) 21:55:33 ID:.WD6eC8k
少女「実験のプロジェクト名は・・・ “ヴォイニッチ”」
男「え?」
少女「ヴォイニッチ実験の結果は想像を超えるものだった」
少女「教授は財団にオルビスをシャットダウンする事を提言した」
姉「そこまで危険な物だったの?」
少女「次元電離が発生するとエネルギー均衡を維持するためにある現象が起こります」
姉「別の次元から得たエネルギー分がこの次元から消える・・・」
男「それって、もしかして神隠し?」
少女「」コクリ
167
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/08(金) 21:57:27 ID:.WD6eC8k
姉「神隠し?」
少女「私が知る限り、この次元から12人が犠牲になっています」
姉「私達のいる世界から人が消えたって事!?」
少女「私の仮説だと一つ下の次元世界に」
姉「そんな・・・ とても信じられない・・・」
少女「それを実証したのが、ヴォイニッチ実験でした」
男「なるほど、それは危険だな」
少女「そうね。 ヴォイニッチ実験の研究成果を全て暗号化して封印する位には」
男「暗号化? まさか、そのデータって」
168
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/08(金) 21:58:00 ID:.WD6eC8k
少女「そうよ、あのゲームの中身はヴォイニッチ実験の研究データ」
男「!?」
姉「・・・・・・」
少女「結局教授は独断でオルビスの一つであるシステム3をシャットダウンした」
姉「オルビスの機能停止事件」
少女「神の怒り・・・ そう呼ばれているようですね」
男「裏にそんな理由があったなんて・・・」
少女「博士は、その後会見を開いてオルビスの危険性を訴えた。 でも帰りの飛行機で・・・」
姉「教授だけでなく会見を開いた関係者と、記者の全員が巻き込まれたのよね」
男「・・・・・・」
169
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/08(金) 21:58:36 ID:.WD6eC8k
少女「真相は勿論、会見の内容も公表されないまま」
姉「η星の爆発放射が飛行計器に誤作動を起こしたのが原因って言われてるけど・・・」
少女「その日、財団は何かしらのエネルギー体を飛行機に向け大量放出しています」
姉「えっ?」
少女「今となっては何かは分かりませんが、多分それに関係しているかと」
姉「まさか・・・」
少女「上空で次元電離が発生した。 私はそう思っています」
姉「・・・・・・」
少女「Z粒子は今の科学技術で扱うにはリスクが高すぎます」
男「それで少女はオルビスを壊そうとしてたのか?」
少女「・・・・・・」
170
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/08(金) 21:59:12 ID:.WD6eC8k
姉「あれ? オルビスは教授さんがシャットダウンしたのよね?」
少女「はい」
姉「だとしたら、何でオルビスは今でも動いているの?」
男「そう言えば、神の怒りの数日後に復旧しているよな」
少女「財団はシステム3の代わりを疑似システムで運用して急場をしのいでいます」
姉「疑似・・・ 何となくだけど、効率が悪そうね」
少女「Z粒子の量子もつれが上手くいかず、膨大なエネルギーロスが発生しているようです」
姉「そういえば、ここ数年財団は結構な数の発電所を造っているわね」
少女「付け焼刃のようですが」
姉「でも今の技術じゃ限界よね。 そんな効率の良いエネルギーを造り出すなんて・・・」
少女「一つだけ方法があります」
姉「?」
171
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/08(金) 22:00:21 ID:.WD6eC8k
少女「次元電離発生時に得られる膨大なエネルギー」
姉「Z粒子をη星からの高エネルギー粒子と反応させる」
少女「はい。 粗悪ですがZ粒子を大量放出させる最新型の照射装置が気プセンで実験中です」
姉「でもそれをしたら・・・」
少女「・・・完成して駆動すれば次元電離による犠牲が出ます」
姉「財団はシステム3が存在していることは知らないの?」
少女「教授が運び出して処分したと思っています」
男「そのシステム3ってヤツを財団は新しく作れないのか?」
少女「コンピュータは作れても完全なもつれ状態のZ粒子は作れない」
男「そんなに難しいものなのか?」
少女「そうね。 ヴォイニッチ実験のデータが解読できれば作れるかもだけど」
172
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/08(金) 22:01:00 ID:.WD6eC8k
姉「少女ちゃんはどう思ってるの?」
少女「私は、システム3はまだあると信じています」
姉「根拠は?」
少女「店主がそう言ったんです」
姉「店主さんを信じているのね」
少女「・・・・・・。 でも、教授がすでに破壊したんじゃないかって思い始めていたんですが・・・
少女「今はあると断言できる。 さっきそれを確信した」
男「おみくじの機械か・・・」
少女「量子ユニットとシステムは分離できない。 絶対この近辺にシステム3がある」
姉「少女ちゃん? これからはお姉さんの言う事はきちんと聞くこと」
少女「? どうしたんですか急に」
姉「線量計の数値下がったわね。 扉開けましょうか」
173
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/08(金) 22:01:45 ID:.WD6eC8k
ギー
少女「あっ・・・」
男「これって・・・」
姉「うちのご神体改め、オルビスの第3システムとその量子ユニット」
男「なんでそれがココに!?」
姉「言ったでしょ? 教授さんから預かって欲しいって頼まれたって」
少女「やっと・・・」ガクッ
男「少女?」
少女「やっと・・・ 見つけた・・・」
174
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/09(土) 23:55:52 ID:0bg4i7eI
○ 本殿前
男「いや〜 まさか、あんな物がうちに隠されていたなんて」
姉「私も初めて見たときはびっくりしたわ」
男「少女はアレお持ち帰りするの?」
少女「あんな大きな物どうやって持って出るのよ」
男「でもあれを動かして使うんだろ?」
少女「まずは起動させる条件を揃えないとね」
男「そう簡単には動きそうにないしな」
姉「私もアレの使い方は全く知らないわ」
175
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/09(土) 23:56:31 ID:0bg4i7eI
男「っていうか、姉貴はあんな物を預かってどうする気だったんだよ」
姉「私が預かったんじゃなくて両親なんだけど」
男「この神社、俺の知らないことだらけで怖い」
少女「あの・・・」
姉「?」
少女「・・・いえ、何でもないです」
姉「両親の話だったら構わないわよ」
男「あぁ、もう5年も前のことだし」
少女「事故と伺っていますが」
姉「5年前の飛行機事故。 あれに両親も乗っていたの」
少女「え!?」
176
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/09(土) 23:57:02 ID:0bg4i7eI
姉「二人とも研究者でね。 教授さんとはとても仲良かったらしいわ」
少女「そうだったんですか。 それで・・・」
姉「榊総研って知ってる?」
少女「はい。 教授が作った私設研究所ですよね」
男「さっきZ財団の前身って言ってたよな」
少女「今は解散してZ財団に技術移転されている」
男「ふ〜ん」
姉「うちの両親は榊総研の研究員だったの」
男「は? 財団の人間だったの?」
姉「財団に吸収される前に辞めたわ」
男「あれ? そう言えば、少女に両親の事なんか話したっけ?」
少女「・・・・・・」
177
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/09(土) 23:57:34 ID:0bg4i7eI
姉「少女ちゃん、ここに来た理由は他にもあるんでしょ?」
男「?」
姉「もしかして、15年前の事かしら」
少女「・・・・・・」
姉「やっぱり」
男「15年前にも何かあったの?」
姉「私より少女ちゃんから聞いた方が良いと思うわ」
男「少女ってそんな前から研究に関わってんのか?」
少女「勘違いしているようだから言うけど、私はオルビスの研究や開発には一切タッチしてないわ」
男「そうなのか? にしては詳しいな」
178
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/09(土) 23:58:15 ID:0bg4i7eI
少女「・・・・・・。 私はヴォイニッチ実験の被害者だから」
男「は?」
姉「・・・・・・」
少女「私は次元電離が原因でこの世界に来た」
男「えーと・・・ ちょっと、何を言っているのか分からないんだけど・・・」
少女「“私の名前は少女。 この次元とは違う世界の日本という国から来た”」
男・姉「?」
男「あの・・・ 何て言ったの? 今の何語?」
少女「私が元いた世界で使っていた言葉で日本語という言語よ」
男「・・・・・・」
179
:
◆8YCWQhLlF2
:2020/05/09(土) 23:58:58 ID:0bg4i7eI
少女「私は5年前のヴォイニッチ実験で別の次元から落とされた」
男「ちょ、何言って・・・ 嘘だろ?」
少女「本当よ。 私はこの次元の人間じゃない」
少女「そして男、あなたもよ。 あなたは15年前に次元電離で私と同じ日本から来た」
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板