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【ぼく勉】成幸 「キスと呼べない何か」

1 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/07(水) 21:10:57 ID:nfKWg1KI
………………昼休み 一ノ瀬学園 3-B教室

大森 「なぁなぁ、一学期に唯我がキスしただの何だのって話あったじゃん?」

成幸 「………………」

成幸 (……こいつほんっっっとロクでもねーことしか言わないな!!)

成幸 「……そういえばそんなこともあったな。どうでも良すぎて忘れてたが」

大森 「結局噂もなくなっちゃって、俺としては不完全燃焼というかなんというか」

成幸 「っていうかお前が廊下で大声上げて走り回ったせいで噂になったんだけどな!?」

大森 「でもキスはしたんだろ?」

成幸 「………………」

プイッ

成幸 「……黙秘権を行使する」

小林 (それもう自白してるようなもんだけどね、成ちゃん)

2 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/07(水) 21:14:16 ID:nfKWg1KI
大森 「いいじゃねぇかよ、唯我。ゲロっちまえって」

大森 「ここだけの秘密にしておいてやるからさ……」

成幸 「そのお前の言葉をどうやったら信じられるのか教えてほしいな」

成幸 「っつーか、何で急にそんな話を始めたんだよ」

大森 「いやー、この際はっきりさせておきたくてさー」

ズイッ

大森 「……キスの相手って古橋さんなんだろ?」 コソッ

成幸 「古橋!? 何で!?」 コソッ

大森 「いや、夏休みに一緒にお泊まりするくらいの仲だったら、あの時期にキスしててもおかしくはないかな、って」 コソッ

成幸 「意外と理性的な判断だな! っていうかお前それ言いふらしたりしてないだろうな!」 コソッ

大森 「するわけねーだろ! あの盗撮騒動のせいで、俺がどんなひどい目に遭ったか……」 ガタガタブルブル

大森 「で!? どうなんだ!? お前のキスの相手は古橋さんなのか!?」

小林 (どうでもいいけど……)

小林 (ふたりともヒートアップしすぎて、途中から俺にダダ漏れだからね、声)

3 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/07(水) 21:39:36 ID:nfKWg1KI
成幸 「なっ……そ、そんなわけ……――」

ハッ

成幸 (待てよ。ここで否定してしまったら、こいつのことだ)

成幸 (俺と仲の良い女子全員の名前を順々に出してくる可能性が高い!)

成幸 (緒方の名前が出た瞬間、俺はきっと……)


―――― 『ただの接触事故…… ですからね』


成幸 (絶対動揺を見せてしまう……!!)

成幸 (そうしたら、俺と緒方がキスをしたことがバレてしまって、あいつに迷惑をかけてしまう……!)

大森 「……? 唯我? どうしたんだよ、違うなら違うと……」

成幸 「……の、ノーコメント、だ」

大森 「……!?」 ガーン

4 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/07(水) 21:40:18 ID:nfKWg1KI
………………廊下

理珠 「昨日も勉強が捗りました。長文読解の精度も上がってきた気がします」

うるか 「あたしもだよリズりん。昨日の宿題八割正解しちゃったー」

理珠 「む……。やりますね、うるかさん。私も負けませんよ」

うるか (えへへ、成幸褒めてくれるかな〜) ニヤニヤ

理珠 (成幸さん、何と言ってくれるでしょうか……) ポワポワ

「うわぁあああああああん!!!」

うるか 「……? あれ、向こうから走ってくるの、大森っちだ」

うるか 「おーい、大森っちー、どうした――」


大森 「――――唯我のヤロー!! やっぱりキスの相手は古橋さんかよぉおおお!!」 ビュン


うるか 「………………」

理珠 「………………」

うるか&理珠 「「……え?」」

5 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/07(水) 21:41:09 ID:nfKWg1KI
………………放課後 3-A教室

ヒソヒソ……ヤッパリ……マジカヨー……

文乃 「……?」

文乃 (どうしたんだろ? 今日はなんか、みんなの様子がおかしいような……)

鹿島 「あの〜、古橋さん?」

文乃 「? 何かな、鹿島さん」

鹿島 「唐突ではありますが〜、いま校内で古橋さんに関して噂が流れているのをご存知ですか〜?」

文乃 「噂?」 ジロリ 「……また変なことしたんじゃないよね?」

鹿島 「誓って、私たちは何もしておりません〜」

文乃 「……で、噂って何?」

鹿島 「……では、耳をお借りして」 コソッ

鹿島 (……唯我成幸さんと、古橋さんが、キスをされたのではないかと、そういう噂です)

文乃 「………………」

文乃 「……はぁあああ!?!?」

6 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/07(水) 21:42:07 ID:nfKWg1KI
文乃 「ど、どこの馬の骨なのかな!? そんな噂を流したのは!?」

鹿島 「どうも、唯我成幸さんのお友達の、大森奏さんのようですね〜」

文乃 (またお前か!!! だよ大森くん!!)

男子1 「うおー! マジかよー!」

男子2 「一学期の噂は本当だったのかー!」

男子3 「俺たちのアイドル “眠り姫” をー! 唯我のヤロー!!」

鹿島 「……とまぁこんな風に、噂はしっかりと広まってしまっていまして〜」

鹿島 「一応古橋さんのお耳に入れておいた方がいいかと思った次第です〜」

文乃 「ご、誤解だよ! わたしは成幸くんときっ……キスなんかしてないよ!!」

鹿島 「………………」 プイッ

文乃 「……ど、どうして顔を赤くして目を逸らすのかな鹿島さん!?」

鹿島 「いえ、だって……」 ポッ 「お泊まりもしているのですから、キスくらい今さら……と」

文乃 「アレも誤解だって話したよね!?」

7 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/07(水) 21:43:11 ID:nfKWg1KI
文乃 「っていうか、誰かに聞かれたら誤解だって伝えてね!?」

文乃 「わたし、本当に成幸くんとき……キスなんかしてないからね!?」

鹿島 「……古橋さんがそう望むのなら吝かではありませんが」

鹿島 (とはいえ、誤解であろうとなかろうと、噂が広まるのは悪いことではない)

鹿島 (……そのまま立ち消えるならそれでよし。しばらく静観しましょうかね)

文乃 「こうしちゃいられないよ。成幸くんとお話しなきゃ……!!」

タタタタ……

猪森 「……どうだい、鹿島さん。唯我くんのキスの相手は、本当に古橋姫かい?」

鹿島 「どうでしょうねぇ〜。うそをついているようには見えなかったですが……」

ゾクゾクッ

鹿島 「……正直、照れて焦る古橋姫が尊みが深すぎてそれどころではなかったといいますか」

猪森&蝶野 「「すごくわかる」」

8 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/07(水) 21:44:10 ID:nfKWg1KI
………………いつもの場所

成幸 「すまん!」

文乃 「……う、うん。開口一番謝られてこっちもどう対応したらいいかわからないんだけど、」

文乃 「一体何があったのか教えてもらってもいいかな?」

成幸 「……ああ。そうだな」

成幸 「昼休みに、大森のバカが一学期のキスの噂を蒸し返してきてさ、」

文乃 「うん」

成幸 「で、あの旅館でのことを知ってる大森が、俺のキスの相手は古橋だろう、って言い出してさ、」

文乃 「……うんうん」

成幸 「で、俺が否定しなかったら大森が涙を流して走り出した」

文乃 「ちょっと待って」

文乃 「……何で否定しないの!?」

成幸 「いや、だって……。お前を否定しちゃったら、いずれ、どんどん追求されて……」

成幸 「……本当のキスの相手がバレると思ったから」

成幸 「ノーコメントって言っただけで、大森があんなに反応すると思わなくてさ……」

9 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/07(水) 21:45:09 ID:nfKWg1KI
成幸 「いや、そもそもキスっていうか、アレはただの事故なんだけど」

文乃 「………………」

ジロリ

文乃 「……なるほど。つまり、きみはきみの本当のキスの相手のために、わたしを売ったわけだね?」

成幸 「うっ……」 ズキッ 「そんなつもりはなかったが、結果的にそうなってしまったかもしれん……」

成幸 「本当にすまん! 古橋!」

文乃 「……はぁ。冗談だよ、成幸くん。きみがそんなに器用な人じゃないって知ってるよ」

文乃 「でも、つまりきみのキスの相手は、大森くんが知ってる相手ってこと、か」

成幸 「っ……」 ギクッ

文乃 「なおかつわたしも知ってる人、かな?」

成幸 「………………」 ギクギクッ

文乃 「……ま、わたしは追求なんて野暮なことはしないから安心してよ」

成幸 「すまん。助かる……」

10 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/07(水) 21:45:51 ID:nfKWg1KI
文乃 「人の噂も七十五日。わたしたちがいつも通りにしてれば、みんなすぐに忘れるよ」

成幸 「古橋がそう言ってくれるとありがたいよ。悪い」

成幸 「……っと、もうこんな時間か。緒方とうるかが図書室で待ってるな。行こうぜ、古橋」

文乃 「うん。そうだね――」

――カツッ

文乃 「あっ……」 グラッ

成幸 「……っと」 ポスッ

ギュッ……

文乃 「………………」

成幸 「………………」

成幸 「……だ、大丈夫か、古橋?」

文乃 「う、うん。ちょととつまずいちゃって……」

11 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/07(水) 21:46:27 ID:nfKWg1KI
ドキドキドキドキ……

文乃 (あ、あれ、何でだろ……)

文乃 (前もたしか、足をもつれさせたわたしを成幸くんが受け止めてくれて……)

文乃 (そのときは……)


―――― 『わわわっ ご ごめんね唯我君っ!』

―――― 『い いや 気をつけてな』


文乃 (お互いすぐに離れて、それでおしまいだったのに……)

文乃 (なんで、わたし……)

文乃 (離れなくちゃって思ってるのに、身体が動かないんだろ)

成幸 「ふ、古橋? どうしたんだ?」

文乃 (これって……)

文乃 (あのときと一緒なんだ)

文乃 (旅館で、同じ布団で寝たとき……)

文乃 (身体を預けてしまったあのときと、一緒なんだ……)

12 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/07(水) 21:47:12 ID:nfKWg1KI
ガサッ……

成幸&文乃 「「えっ……」」

理珠 「………………」

うるか 「………………」

文乃 「り、りっちゃん!? うるかちゃん!?」

うるか 「あ、あはは……あ、えっと……ふたりが遅いから、探しに来たんだけど……」

うるか 「ひょっとしてお邪魔だったかなー、なんて……」

理珠 「う、噂は、本当だったのですね、文乃……」

理珠 「おふたりは、そういう関係だったのですか……」

文乃 「!? ち、違うよ! 誤解だよ!?」

成幸 「そうだ! 誤解だぞ! 俺たちは何も……!」

うるか 「だ、抱き合ったまま言われても、説得力がないってゆーか……」

成幸 「あっ……!?」  文乃 「ち、違うんだよこれは!?」 バババッ

理珠 「……行きましょう、うるかさん。私たちはお邪魔虫のようですから」

文乃 「ち、ちょっと待ってりっちゃーん!!」

13 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/07(水) 21:47:53 ID:nfKWg1KI
………………

理珠 「……なるほど。話は分かりました」

うるか 「つまり、大森っちの早とちりなんだね。よかった……」 ホッ

成幸 「すまん。お前たちにまで迷惑をかけたみたいだな……」

うるか 「べつに迷惑とかではないけど……」 ニヘラ

文乃 (表情に出しすぎだようるかちゃん……)

理珠 「………………」

理珠 「……あの、成幸さん」 コソッ

成幸 「ん?」 コソッ

理珠 「……その、キス、って」 コソッ 「あのときのアレ、ですよね……」

成幸 「ん……まぁ、そうだけど……」 コソッ

成幸 「……ごめんな。お前にも迷惑かけて」 コソッ

理珠 「いえ、それは、お互い様なので……」 コソッ

14 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/07(水) 21:48:43 ID:nfKWg1KI
うるか 「ふたりとも、コソコソ何話してんのー?」

理珠 「な、なんでもありませんっ」

理珠 「オホン。とにかく、文乃の言うとおり、人の噂なんてすぐになくなります」

理珠 「我々は気にせず、いつも通り勉強に励むだけです」

成幸 「うん。その通りだな。勝手な噂で俺たちの成績が下がったりしたらそれこそコトだ」

成幸 「俺たちは気にせず勉強をがんばろ――」

――ピンポンパンポン

真冬 『3年B組、唯我成幸くん。生徒指導室、桐須のところまで来なさい』

真冬 『……大至急、来なさい』 ギリッ

ブツッ……

成幸 「………………」 (あまり深く考えなくても分かる)

成幸 (最後に歯ぎしりの音も聞こえたし……桐須先生は)

成幸 (俺に激怒している……!!)

15 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/07(水) 21:49:34 ID:nfKWg1KI
………………生徒指導室

真冬 「………………」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 (こっ、怖えぇええええええええええ!!)

成幸 (俺、生きてこの部屋を出ることが出来るのか!?)

真冬 「……なぜ呼び出されたかはわかるわね、唯我くん」

成幸 「え、えっと……ひょっとして、今、流れている噂について、ですか……?」

真冬 「そうね。あなたが古橋さんとキスをしたという噂についてだわ」

成幸 「すっ、ストレートに言わないでください……」

真冬 「照れている場合ではないわ。現状、教師陣はバカな子どもの噂話程度に捉えているけれど、」

真冬 「唯我くん、あなたは以前にもろくでもない噂が流れたわね?」

真冬 「そういうことが重なると、VIP推薦を目指すあなたにとって良くないというのは分かるわね?」

成幸 「それは……はい。その通りだと思います」

成幸 「でも、先生! 信じてください! 俺はキスなんてしてないんです!」

真冬 「……きみがそう言うのならそうなのでしょう。私は信じるわ」

16 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/07(水) 21:50:37 ID:nfKWg1KI
成幸 「先生……」 ジーン

真冬 「とはいえ、私が信じたところでどうなるものでもないのよ」

真冬 「また学園長の耳に入ったりしたらコトだもの」

真冬 「……以前、緒方さんとの “接触事故” のときでそれは思い知っているわね?」

成幸 「……そうですね。あのときの学園長は面倒くさかったです……」

真冬 「今回は根も葉もない噂。それに、古橋さんも否定をしている」

真冬 「噂はすぐに収束するでしょう」

真冬 「ただし、今後も同じようなことが起こると、VIP推薦が遠のく可能性があるわ」

真冬 「それを肝に銘じておきなさい」

成幸 「は、はい! わかりました!」

真冬 「……以上よ。呼び出して悪かったわね」

成幸 「えっ……?」

真冬 「? どうかしたかしら?」

成幸 「いえ、もっと怒られるかと思ったから……」

17 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/07(水) 21:51:22 ID:nfKWg1KI
真冬 「……あなたが悪くないというのは、考えるまでもなく分かることだもの」

真冬 「あなたが悪くない現状、あなたを怒ることに教育的効果があるとは思えないわ」

成幸 「……じゃあ、先生は」

成幸 「俺を心配して、俺に注意を促すために呼び出してくれたんですか……?」

真冬 「……!?」

真冬 「なっ、何を……! 私は、べつに……ただ、教師としての責務を全うしただけであって……」

真冬 「誤解! 私はべつに、きみのことを心配したりなんて……」

成幸 「先生……」 キラキラキラ 「やっぱり先生は良い人です! ありがとうございます!」

真冬 「だ、だから違うと言っているわ!」

真冬 「まったく……」 プンプン

真冬 「……早く戻ってあげなさい。あの子たちがあなたを待っているでしょう」

成幸 「はい! では、失礼します! 桐須先生、また明日!」

バタン

真冬 「……まったく。調子が狂うわ」 クスッ 「あなたこそ、本当に」

真冬 「良い子なんだから」

18 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/07(水) 21:52:08 ID:nfKWg1KI
………………帰路

成幸 「………………」

うるか 「………………」

成幸 (……古橋と緒方と別れ、うるかとふたりきりになったわけだが、)

成幸 (なぜだか知らないがめちゃくちゃ気まずい!!)

成幸 (いつもの活発なうるかからは考えられないくらいアンニュイな表情だし)

成幸 (言葉数も少ないし……)

成幸 (……俺、何かしてしまっただろうか)

うるか 「………………」

うるか 「……ねえ、成幸」

成幸 「っ……」 ビクッ 「な、なんだ?」

うるか 「……今日の話の続きをしても、いい?」

成幸 「今日の話……?」

うるか 「キス……」 ギュッ 「……の、話」

成幸 「!? い、いや……」 アセアセ 「っていうか、何で俺の手を掴んだんだ……?」

19 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/07(水) 21:52:48 ID:nfKWg1KI
うるか 「……逃がしたくないから」

成幸 「に、逃げねーよ……」

うるか 「逃げるよ。いつだってはぐらかされるんだから」

ジッ

うるか 「……ねえ、成幸。答えて。教えて」

うるか 「成幸は、誰とキスをしたの?」

成幸 「っ……」

成幸 「……いや、それは……ごめん」

成幸 「言えないよ」

うるか 「んっ……。そっか……」

成幸 「た、ただ、勘違いしないでくれ! 前も言ったけど、あれはただの事故だ!」

成幸 「偶然、こう、ぶつかってしまっただけで、キスとは到底呼べないような――」


うるか 「――……事故だったなら、相手、言えるんじゃないの?」


成幸 「えっ……」

20 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/07(水) 21:53:58 ID:nfKWg1KI
うるか 「………………」

成幸 「……えっと、それは……。相手の名誉のため、というか、なんというか……」

成幸 「俺は……」

うるか 「………………」

クスッ

うるか 「……なんて、ね。ごめんね、意地悪言って」

うるか 「教えてくれなくていいよ。成幸のキスの相手なんて、ぜんっぜんキョーミないし」

成幸 「なっ……」 ハァ 「……お前なぁ」

うるか 「ごめんごめん。でもちょっとだけ気になったんだ」

うるか 「奥手の成幸にキスをさせるような女の子って、どんな子なんだろう、って」

成幸 「いや、だからあれはただの事故で……」

うるか 「……じゃ、あたしこっちだから! また明日ね、成幸!」

タタタタ……

成幸 「人の話聞けよ! ……あー、もう。行っちまったか」

成幸 「一体なんだったんだ、うるかの奴。少し様子が変だったような……」

21 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/07(水) 21:54:31 ID:nfKWg1KI
………………

うるか 「………………」

タタタタ……

うるか 「……っ」

グスッ

うるか 「……いいもん」

うるか 「あたしが成幸のファーストキスの相手じゃなくたって」

うるか 「いいもん!」

うるか 「最後にあたしが、成幸の隣にいられれば、それで!」

うるか 「あたしはそれでいいんだもん!」

うるか 「いい……えぐっ……いいんだもん……ぐすっ……」

うるか 「……負けないから」

うるか 「あたし、絶対負けないから……!」

22 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/07(水) 21:55:43 ID:nfKWg1KI
………………

理珠 「………………」

理珠 「……私とのことを、正直に説明したらいいのに、なぜそうしないのでしょうか」

理珠 「キス……」


―――― 『いいか緒方!』

―――― 『キスというのは女子にとって…… いや男子にとっても神聖なものでなくてはならんのだ!!』

―――― 『今日みたいに軽々しくしようとするなど言語道断!! 必ずいつか後悔することになるんだぞ! 必ずだ!』


理珠 (……キスは、神聖なもの。男子にとっても、女子にとっても)

理珠 「……だから、なのでしょうか」

理珠 「成幸さんは、たとえ事故であったとしても、キスをしてしまった私を気遣って……?」

理珠 「私のために、キスの相手を誤魔化してくれているのでしょうか」

カァアアアア……

理珠 (ふ、不可解です……。なぜ、頬がこんなに熱くなるのでしょうか)

理珠 (なぜ、こんなにも、鼓動が激しくなるのでしょう……)

23 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/07(水) 21:56:20 ID:nfKWg1KI
………………

文乃 「………………」

文乃 「……成幸くんのキスの相手、かぁ」


―――― 『かっこいいよなぁ 古橋は』

―――― 『苦手なものを克服してまで追いかけたい夢があるのって やぱかっこいいよ』

―――― 『いつか君が本当にやりたいことを見つけた時は お姉ちゃんが全力で応援するからね  「成幸くん」』


文乃 「でも、わたしなんて、同じ布団で寝て、同じ布団の中で、抱きしめられて……」

ハッ

文乃 (わ、わたしは何を言ってるの!? っていうか、何考えてるの!?)

文乃 (わたし、誰かも分からない成幸くんのキスの相手に……)

ドキドキドキドキ……

文乃 (……対抗意識を燃やしてる……?)

文乃 (い、意味わからないよ。わたしは、べつに……何も……)

文乃 (成幸くんと、何もないんだから……)

24 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/07(水) 21:56:51 ID:nfKWg1KI
………………

成幸 「……はぁ」

成幸 (結局あいつらにも、桐須先生にも迷惑かけて、いいとこないなぁ、俺)

成幸 「………………」

成幸 (……キス、かぁ)

成幸 「ま、俺には関係ない話だな」

成幸 「いつかあいつらも、そういう相手ができて、そういうこと、するんだろうな」

成幸 「結婚式とか、『教育係』 なんて肩書きで呼ばれたりしてな」 クスッ

ズキッ

成幸 「っ……」 (……なんで)

成幸 (なんで、そんなことを想像しただけで……胸が痛むんだ?)

成幸 「……関係ない」

成幸 「俺は、あいつらのことなんて、なんとも……」

成幸 「……なんとも、思ってない、から」

おわり

25 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/07(水) 21:57:24 ID:nfKWg1KI
………………幕間 「キス」

あすみ 「……ああ? キスぅ?」

うるか 「うん! 小美浪先輩なら経験ほーふそうだから!」

うるか 「キスのこと教えてくれるかな、って!」

あすみ 「……ん、まぁ、そりゃ、アタシはお前の言うとおり、経験ありすぎて困っちまうくらいだが」

あすみ 「………………」

あすみ 「……なぁ、武元。アタシは経験者だからこそ言うが、」

あすみ 「キスは、実際に経験して知った方がいいと思うんだ」

うるか 「!?」

あすみ 「……だから、お前のためにアタシは何も言わない。お前はがんばって、自分で経験して、知れ」

うるか 「さすが先輩! タメになるー!」

うるか 「よーし! あたしがんばるかんねー!」

あすみ 「………………」 (……ふぅ。武元が単純で助かった)

おわり

26 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/07(水) 22:02:27 ID:nfKWg1KI
>>1です。

スレ最初のSSなので、全員登場させたニュートラルな話にしようとしましたが、
目論見が外れてただの平坦でオチも何もない話になりました。
その上、あすみさんを幕間でしか出すことができませんでした。申し訳ないことです。


パートスレのつもりはないので以前わたしが立てたスレのURLは貼りませんが、
以前わたしが立てたスレの>>1です。
ご存知の方がいたらまたよろしくお願いします。



本当であれば以前わたしが立てたスレに書き込むべきことですが、
私がこの話を書き上げる前に1000にいってしまったので、この場を借りて言わせてください。
以前わたしが立てたスレの最後にたくさんの感想や乙をいただけました。
参考や励みにして今後もSSを書きたいと思います。
本当にありがとうございました。

これからも読んでくれると嬉しいです。

何か書いてほしい内容等ありましたらいつでもレスください。
また感想等もとても嬉しいです。

ではまた、折を見てこのスレに投下します。

27 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/07(水) 23:23:41 ID:re2NMTaI
新スレ乙です
これからまた楽しみにしてます

28 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/07(水) 23:34:10 ID:cSoQMiss
更新ほんと楽しみにしてるわ

29 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/07(水) 23:40:51 ID:HwxEdzvE
スレ立て投下おつんこ

30 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/08(木) 00:14:55 ID:tJG6QUA.
シエンタ

31 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/09(金) 22:46:05 ID:lDafsAmQ
おつおつ

32 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 02:13:05 ID:yfJ2n.4k
>>1です。
投下します。


【ぼく勉】理珠 「愛してます」

33 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 02:13:39 ID:yfJ2n.4k
………………緒方家

理珠 「………………」

イライライライラ……

理珠 (……単純明快なゲームだったはずです)

理珠 (ただ成幸さんに、“愛してる” と言うだけのゲーム……)

理珠 (それなのに、私は……)


―――― 『あ……あいしししししししししししししししし』

―――― 『緒方さんがバグった!!』

―――― 『今度はまた別のイミで壊れたレコーダーに!!』


理珠 「なぜ、そんな簡単なこともできなかったのでしょうか……」

ブツブツブツ……

親父さん (理珠たま、機嫌が悪いなぁ。何かあったのかなぁ……)

親父さん (でも、イラついてる理珠たまもキュートだなぁ……) キュンキュン

34 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 02:14:12 ID:yfJ2n.4k
理珠 (なんにせよ、このまま済ますのは私のゲーマーとしてのプライドが許しません)

理珠 (大前提となるゲームの開始すらできず敗北するとは、なんと情けない……)

理珠 「……負けません」

理珠 「なんとかして、成幸さんに “愛してる” と言ってやります!!」

親父さん 「!?」 ゴフッ 「理珠たま!? いま、パパ聞き間違いしちゃったかな!?」

親父さん 「理珠たま今、センセイに “愛してる” とかなんとか……」

理珠 「はい? ええ、言いましたけど、それが何か?」

親父さん 「り、理珠たまとセンセイは、もうそういう関係なのかい……?」

理珠 (そういう関係? 気軽にゲームをする関係ということでしょうか?)

理珠 「ええ、そうですね。そういう関係ですが、それが何か?」

親父さん 「!!」 ガーン!!!!

親父さん 「お、おのれ……センセイ……!!」 ギリッ

理珠 「まぁそれはそれとして、また私の部屋を勝手に覗いてましたね」

理珠 「お父さん、今後一週間半径3m接近禁止です」

親父さん 「!? そ、それだけは勘弁してくれー! 理珠たまー!」

35 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 02:14:59 ID:yfJ2n.4k
………………翌日 一ノ瀬学園

成幸 「……つまりこの五段活用は、現代文法での五段活用とは少し違うわけだな」

理珠 「ふむふむ……」

成幸 「ただここで注意しなきゃならんのが、文章の流れによって活用法が変わる点だ」

成幸 「俺のオススメは、特殊な文法を用いる作品は丸暗記してしまうことだな」

成幸 「そうすれば、わざわざ特殊な活用について考えるリソースを必要としない」

成幸 「基本の活用だけしっかりと覚えて、数種の作品については別個に活用を覚えよう」

理珠 「わかりました。ありがとうございます、成幸さん」 ペコリ

成幸 「? なんだよ、改まって。変な奴だな」 クスクス

理珠 (……ふふふ。成幸さん、油断していますね)

理珠 (普段から親愛の情をしっかりと表しておけば、“愛してる” と言うことなど造作もないはず!)

理珠 (これはそのための布石です……!)

理珠 「いえ、成幸さんにはいつも勉強を教えていただいて、本当に感謝していますから」

理珠 「……いつも、本当にありがとうございます」

成幸 「そ、そうか? なんか、改めてそう言われると照れるな……」

36 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 02:15:35 ID:yfJ2n.4k
うるか 「むっ……」

うるか 「あ、あたしも! いつも成幸には、ホント感謝してもしきれないよ!」

うるか 「いつもありがとね、成幸っ」

成幸 「お、おう。どういたしまして……」 テレテレ

文乃 「………………」

文乃 (……突然どうしたというのかな。うるかちゃんはともかくりっちゃんは)

理珠 「………………」 フンスフンス

文乃 (言葉とは裏腹に、成幸くんのことを好戦的な目で見ているし、気合いも入ってるように見える……)

文乃 (嫌な予感がするなぁ……)

文乃 「……ん、まぁ、わたしももちろん、成幸くんには感謝してるんだよ」

文乃 「いつもありがとうね、成幸くん」

成幸 「あ、ああ……/// 今日は一体どうしたんだ」

文乃 (人の気も知らないで照れてるなぁ、成幸くん……)

37 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 02:16:09 ID:yfJ2n.4k
理珠 (むぅ……文乃もうるかさんも、私に言葉をかぶせてきましたね)

理珠 (私の意図を察しているのでしょうか。一人勝ちは許さない、と……)

理珠 (しかし、負けません!)

理珠 「……わ、私が一番感謝していますよ。なにせ私は、成幸さんのことを……あっ……」

成幸 「?」

理珠 「あ、あい……あい………………」

プシュー

理珠 「はぅ……///」

成幸 「なぜ急にオーバーヒートした!? 大丈夫か緒方!?」

理珠 (や、やはり、“愛してる” の言葉はなぜか言えません……)

理珠 (ですが、きっとですが、私がこれを自然に言えたとき、私は成幸さんに初めて勝利できる気がします)

うるか 「リズりんだいじょーぶ?」

理珠 「え、ええ……。すみません。少し休んでいることにします」

文乃 「………………」

文乃 (……うーん。また嵐の予感だよ……)

38 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 02:16:55 ID:yfJ2n.4k
………………立ち食いそば屋

成幸 「……悪い、古橋。付き合ってもらっちゃって」

文乃 「べつにいいけど、ふたりだけで話がしたいって、一体どうしたの?」

成幸 「いや、今日の緒方の様子についてなんだけどさ……」

成幸 「……あいつ、今日一日ずっと変だっただろ?」

成幸 「そのせいで、今日終わらせたかった範囲が全然終わってないんだよ」

ズーン……

成幸 「前に小テストの点数が落ちたときに比べればマシだけど、これがずっと続くようだと……」

文乃 「おおう……」 (成幸くん凹んでるなぁ……)

文乃 (まぁ、たしかに今日のりっちゃんは、成幸くんに何かを言いかけてはオーバーヒートする、っていうのを繰り返してたし、)

文乃 (あのままじゃ、受験勉強に支障を来しちゃうよね)

成幸 「なぁ、古橋。緒方の様子がおかしかった理由、心当たりはあるか?」

文乃 「うーん……」 (そんなの、決まりきってるじゃない)

文乃 (絶対、きみのことに決まってるよ)

文乃 (……なんて、言うわけにはいかないもんね)

39 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 02:17:29 ID:yfJ2n.4k
文乃 「……心当たりとかはないけど、このままじゃ困っちゃうもんね」

文乃 「いいよ。わたしがりっちゃんに聞いてあげる。今日は一体どうしたのか」

文乃 「りっちゃんが元に戻らないと、『教育係』 の成幸くんは不安だよね」

成幸 「本当か!? 助かるよ、古橋……」

成幸 「正直、俺は女子の気持ちなんて分からないし、今日も急に感謝されたりして……」

成幸 「悪い気はしなかったけど、ちょっと怖かったんだ……」

文乃 (うん。こっちとしてはあまりにも鈍すぎるきみの方が怖いと言いたいところなんだけどね)

文乃 「まぁ、本当なら女心の練習問題にするところだけど」

文乃 「お姉ちゃんが聞いてあげる。感謝してよね、成幸くん」

成幸 「ああ。本当に助かるよ。ありがとう、文乃姉ちゃん」

40 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 02:18:25 ID:yfJ2n.4k
………………緒方うどん

ガラガラガラ……

理珠 「いらっしゃいませ……って、文乃?」

文乃 「や、りっちゃん。さっきぶり。久々にここのうどんが食べたくってさ。来ちゃった」

理珠 「わざわざお店に来なくても、うどんくらい学校に持って行きますよ」

文乃 「いや、さすがにそれに毎度甘えるわけにはいかないからね」

文乃 「……いま、お客さん少ないね。もしよかったら、一緒のテーブルで食べない?」

理珠 「たぶん大丈夫だと思います。ちょっと父に聞いてきます!」

パタパタパタ……

文乃 (変な様子はないなぁ。やっぱり成幸くんの前だけで様子がおかしくなってるみたい)

文乃 (ってことは、考えるまでもなく、恋愛がらみのことだよね)

文乃 (はぁ……。楽しいは楽しいけど、気が重いなぁ)

文乃 (うるかちゃんといいりっちゃんといい、愛が重たいからなぁ……)

41 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 02:19:02 ID:yfJ2n.4k
………………

文乃 「……うん。やっぱりお店で食べるうどんはひと味違うね」 ズルズルズル……

理珠 「そう言っていただけると嬉しいです。やはり作りたては違いますね」 ズルズルズル……

文乃 「ごめんね。バイト中なのに、晩ご飯に付き合わせて」

文乃 (……とはいえ、ダイエット中なのに、わたしはさっきそばを食べてきたばかりだけど)

文乃 (もしこれで太ったりしたら成幸くん、絶対つねるからね)

理珠 「いえ、私もそろそろ晩ご飯休憩のつもりでしたから。ちょうどよかったです」

文乃 「……実はね、少し話があって来たんだ」

理珠 「話?」

文乃 「うん。今日、りっちゃん、様子がおかしかったからさ」

文乃 「急に成幸くんに改まった態度を取ったかと思ったら、突然顔を真っ赤にしたり……」

文乃 「今日は一体どうしたの?」

理珠 「そ、それは……」

文乃 「………………」 ジーッ

42 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 02:19:35 ID:yfJ2n.4k
理珠 「……わ、笑いませんか?」

文乃 「笑ったりしないよ」

理珠 「絶対?」

文乃 「絶対」

理珠 「……うぅ」

文乃 (ふふふ、りっちゃん、かわいいなぁ)

文乃 (大方、勘違いか何かで、成幸くんのことを変に意識してるんだろうなぁ)

文乃 (いっそのこと、紗和子ちゃんみたいに少し誘導してあげようかなぁ……)

理珠 「実は、その……」

文乃 「うん」

理珠 「成幸さんにですね……」

文乃 「うんうん」

理珠 「…… “愛してる” と言いたくてですね……」

文乃 「………………」

文乃 「……うん?」

43 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 02:20:25 ID:yfJ2n.4k
文乃 (ち、ちょっと待って!?)

文乃 (さっきまで微笑ましい気持ちでいたのに、とんでもないことを聞いてしまったよ!?)

理珠 「……よ、よかったです。(ゲームに負けたくらいでムキになって)文乃に笑われるかと思っていたから……」

文乃 (笑えるかぁあああああああああああ!! だよ!!)

文乃 「わ、笑えるわけないじゃん! いつから!? いつからなのりっちゃん!?」

理珠 「? いつから、とは?」

文乃 「いつからそうなの!? いつからその言葉を成幸くんに言いたくなったの!?」

理珠 「……そんなの、決まってます。先日、昼休みにゲームをしたときからですよ」


―――― 『あ……あいしししししししししししししししし』

―――― 『緒方さんがバグった!!』

―――― 『今度はまた別のイミで壊れたレコーダーに!!』

―――― ((フフ…… かわいいなぁりっちゃん……))


文乃 (あのときかぁあああああああああ!!)

文乃 「あのときのゲームで、とうとう成幸くんへの気持ちに気づいちゃったの、りっちゃん!?」

44 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 02:20:59 ID:yfJ2n.4k
理珠 (成幸さんへの気持ちに気づいた……?)

理珠 「え、ええ。まぁ、そうですね。(成幸さんに)負けたくないという確固たる気持ちが生まれました」

文乃 「そ、そっか。そうなんだね……。(うるかちゃんに)負けたくないと思っちゃったんだね……」

文乃 「あ、もちろん分かってると思うけど、わたしは大丈夫だからね? りっちゃんの敵じゃないからね?」

理珠 「? いえ、文乃にもいつか絶対に勝ちますけど。このまま負けっぱなしでいるつもりはありません」

文乃 「!?」 (わ、わたしも敵認定されてたの!?)

文乃 「……オホン。まぁ、それは置いておくとして」

ドキドキドキ……

文乃 「りっちゃん、分かってるの? それを言ったら、今までの関係ではいられなくなるんだよ?」

理珠 「ええ。もちろん、関係性は変わるでしょう」

理珠 「負け続けだった私が、ようやく成幸さんに並び立つことになるわけです」

文乃 (負け続け……? ひょっとしてりっちゃんって、今までも意外と恋愛してきたのかな……?)

文乃 (成幸くんは、りっちゃんにとって、初めて隣に立ちたいと思えた男の子なのかな)

文乃 「……そっか。それが分かってるなら、わたしはもう何も言わないよ」

文乃 「がんばってね、りっちゃん!」

45 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 02:22:17 ID:yfJ2n.4k
理珠 「………………」 ジーッ

文乃 「りっちゃん? どうかしたの?」

理珠 「……いえ。文乃はそれでいいのかな、と思いまして」

文乃 「へ……?」

理珠 「文乃はそれでいいのですか? わたしを応援するだけで、本当に」

文乃 「っ……」

ドキドキドキ……

文乃 「わっ、わたしはべつに、だって……成幸くんのことなんて……」

理珠 「悔しくはないのですか? 私はすごく悔しいです。だから、挑戦するんです……」

理珠 「文乃だって同じはずです。(成幸さんに)勝ちたいとは思わないのですか?」

文乃 「だってわたしは、りっちゃんとは違うもん。べつに、成幸くんにどうとか、そういうのは……」

文乃 (なんでそんな意地悪なことを言うのさ、りっちゃん。わたしが、友達の好きな子のことを、好きになるはずないじゃない)

ズキッ

文乃 (わたしはいいんだよ……。りっちゃんやうるかちゃんががんばってくれれば、それで……)

文乃 「……わたしには、そういうの、ないから」

46 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 02:23:08 ID:yfJ2n.4k
理珠 「そうですか。わかりました。それなら、結構です」

理珠 「ですが、私は行きますよ。明日は無理でも、明後日……いえ、一週間以内には、必ず……」

理珠 「成幸さんに “愛してる” と言って見せます!」

文乃 「……うん」

文乃 (ああ、りっちゃんはすごいな。もう決めてるんだ)

文乃 (まっすぐな目をして、成幸くんに言うんだろうな……)

文乃 (自分の気持ちを、まっすぐ……)

ズキズキ……

文乃 (……何で、こんなに胸が痛いんだろう)

文乃 (どうして……)

理珠 「……文乃? どうかしましたか? 表情が暗いですが」

文乃 「へ……? う、ううん。なんでもないよ」

文乃 「えへへ、うどん、美味しかったよ。ごちそうさま」

文乃 「じゃあ、いつまでもお店にいたら迷惑だろうから、わたしもう帰るね」

文乃 「りっちゃん、また明日。お父さんとお母さんにもよろしくね」

47 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 02:23:41 ID:yfJ2n.4k
………………翌朝 いつもの場所

文乃 「特に心配はいりません」

成幸 「へ……? 開口一番なんだそれは、古橋」

文乃 「だから、りっちゃんに関しては心配いらないよ、って。むしろこれから心配なのはうるかちゃんかな……」

文乃 (いや、万が一きみがりっちゃんの気持ちを拒絶したら、両方崩れるかもだけど……)

成幸 「うるかが心配? どういうことだ?」

文乃 「……わたしから詳しいことは言えないよ。今日か明日か、少なくとも今週中には分かることだよ」

成幸 「ど、どういうことだ? 俺に分かるように言ってくれ。俺の教え方が悪いのか?」

文乃 「だからそうじゃないんだって……」

文乃 「……あまりにも鈍すぎるのは罪だよ、成幸くん」

成幸 「……うーん、わからん」

成幸 「なんにせよ、俺にできることは、あいつらが頑張れるようにしっかり教材研究をすることだな」

成幸 「そうと決まれば、善は急げだ。早速教室で教材作りだな」

文乃 (だからそうじゃないんだけどな……)

成幸 「古橋、ありがとな。なんのことか分からんが、お前のおかげで危機感が持てたよ」

48 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 02:24:28 ID:yfJ2n.4k
成幸 「じゃあ、俺は教室に向かうから……」

文乃 「あっ……ま、待って!」

コケッ

文乃 「へ……?」 (あ、段差……)

成幸 「あ、危なっ……」

ポスッ

成幸 「……大丈夫か、古橋?」

文乃 「えっ……あ、うん。ありがと、成幸くん……」

文乃 (相変わらず意外とたくましい身体……)

文乃 (わたしまた、成幸くんに抱き留めてもらってるんだ……///)

ギュッ

成幸 「へ……? ふ、古橋? なんで、俺の腕を……?」

文乃 「……ごめん。話を聞いてほしくて。このまま、話を聞いてもらってもいい?」

成幸 「あ、ああ……」 (ち、近い! 良い匂いが! いやそうじゃなくて……!)

成幸 (なんで古橋は俺に抱きついたまま話を続けようとしてるんだ!?)

49 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 02:25:00 ID:yfJ2n.4k
文乃 「あの……あのねっ」

文乃 「これから、きみはひょっとしたらすごく難しい選択を迫られるかもしれない」

文乃 「そのとき、きみがどんな選択をするのか、わたしには分からないし、いまのきみにもわからないと思う」

文乃 「でもね、きみがどんな選択をしても、きっと誰かが傷つく。そしてきっと、きみも傷つくと思うんだよ」

成幸 「古橋……?」

文乃 「でも……でもね。たとえ、きみがどんな選択をしてどんな人に恨まれたり、嫌われたりしても……」

文乃 「わたしだけはきみの味方だからね。それだけ、覚えておいてほしくて……」

ドキドキドキドキ……

文乃 (ああ、ずるい女だ、わたし……)

文乃 (成幸くんがりっちゃんと結ばれても、結ばれなくても、成幸くんの味方でいようとしてる……)

文乃 (こんなの、わたし……)

文乃 (成幸くんのこと、そういう風に思ってるように思われたって、仕方ない……――)


「――何をしているのですか? 文乃? 成幸さん?」


文乃 「えっ……?」

50 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 02:27:36 ID:yfJ2n.4k
文乃 「り、りっちゃん!?」

ハッ

文乃 「ち、違うんだよ! これは、その……わたしがこけそうになって、成幸くんに支えてもらっただけで……」

理珠 「そうですか」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

理珠 「まぁ、そんなことどうでもいいですが」

文乃 (めちゃくちゃ怒ってるよーーーーー!!)

文乃 (ひ、ひょっとしてさっきのわたしの言葉も、聞いてたのかな……)

理珠 「そんなことより、成幸さん」

グイッ

成幸 「うおっ……き、急に引っ張るなよ」

文乃 (わたしから成幸くんを奪い取るように露骨な正妻アピール!?)

理珠 「いまなら、勝てる気がするのです。聞いてくれますか?」

文乃 (この場で!? この場で言っちゃうのりっちゃん!?)

文乃 (やっぱりわたしのことを敵だと思ってるから、宣戦布告的な意味でもあるのかな!?)

51 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 02:28:21 ID:yfJ2n.4k
理珠 「………………」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

理珠 (ふふふふふふ……。今なら言えます。絶対に言えます)

理珠 (ケガの功名と言うべきでしょうか。昨日、学校での勉強が捗らなかったため、ほぼ徹夜で勉強をしましたから)

理珠 (現在の私はほぼ前後不覚! 自分がいま何を言っているのかすらあまりわかりません!)

理珠 (いまの私ならば、ノリと勢いで “愛してる” のひとつやふたつ簡単に言えます!)

理珠 (成幸さん、覚悟!!)

成幸 「? 聞いてくれるかって、俺に何か話もあるのか、緒方?」

理珠 「そうです。成幸さんに一言言っておかなくてはならないことがあるのです」

成幸 「な、なんだ? 俺の教育方針への改善要求か? それなら善処するが……」

理珠 「違います。成幸さんは 『教育係』 としてこれ以上ないくらいがんばってくださっています」

成幸 「そ、そうか。それなら嬉しいが……。なら、他に一体何の話があるんだ?」

理珠 「ふふ。よく聞いてくださいね。いきますよ」

文乃 「………………」 ドキドキドキドキ……

52 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 02:29:05 ID:yfJ2n.4k
理珠 「あ……あ……」

成幸 「……?」

理珠 (うぅ……頬が熱い。恥ずかしい。言ってはいけない気もする……)

理珠 (でも、今度こそ逃げたくないです。負けたくないです……!)

理珠 「あ……愛して……あい……」

理珠 (大丈夫、言えます。だって、わたしは成幸さんのこと、嫌いではありませんから)

理珠 (『教育係』 としてがんばってくれてます。尊敬してます。感謝もしてます)

理珠 (……愛していると言って、決して過言ではない気がします)

成幸 「あの、緒方……?」

文乃 「……だめだよ、成幸くん。今は、りっちゃんの言葉を聞いてあげて」

成幸 「あ、ああ……」

理珠 (……大丈夫です。絶対、言えます)

理珠 「………………」

ギュッ

理珠 「……成幸さん。“愛してます”」

53 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 02:29:39 ID:yfJ2n.4k
成幸 「………………」

成幸 「へっ……?」

ボッ

成幸 「なっ、ななななな、何を……////」

成幸 「い、いきなり何を言うんだ、緒方……///」

文乃 (言ったぁあああああああああああ!)

ドキドキドキドキ……

文乃 (言っちゃったよ!? どうなるの!? 怖いけどドキドキする……!)

文乃 (成幸くんは一体どんな返答を……――)


理珠 「――ふふ、照れましたね。私の勝ちです!!」


成幸 「へ……?」

文乃 「え……?」

理珠 「“愛してる” のコールに対して、照れましたね。私の勝ちです、成幸さん!」 バーン!!!

54 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 02:30:19 ID:yfJ2n.4k
成幸 「………………」

文乃 「………………」

成幸 「……緒方。悪い、ちょっとタイム」

理珠 「へ……?」

成幸 「……おい、古橋。ひょっとしてこれは、この前昼休みにやったあのゲームの続きか?」 コソッ

文乃 「わたしにも分からないけど、たぶんそうなんだと思う……」 コソッ

成幸 「昨日様子がおかしかったのもそのせいか?」

文乃 「たぶん……」

文乃 (……昨日のわたしとの話もおかしなところがあったし……)

文乃 (……つまり、りっちゃんは、成幸くんにゲームで勝とうとしていただけだったのかな)

成幸 「……うん。わかった」

成幸 「……なぁ、緒方」

理珠 「はい、なんですか?」

成幸 「ちょっとお説教するから、そこ座りなさい」 ニコッ

理珠 「へ……?」

55 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 02:31:00 ID:yfJ2n.4k
………………

成幸 「いいか、緒方。俺もゲームをするなとは言わないよ?」 クドクド

理珠 「はい」

成幸 「勉強の後に付き合ってやってるだろ? 言ってくれればちゃんとやるよ、俺も。ゲーム」

理珠 「はい……」

成幸 「俺に対抗意識を燃やしてもらってもいいよ? ただ、急にゲームを始めるのはやめなさい」

成幸 「開始したかも分からないゲームに振り回される俺の気持ち、分かるか?」

理珠 「……今考えると、とんでもないことをしていたな、と思います」

成幸 「うんうん。わかってくれて嬉しいよ」

文乃 (結構ガチ説教だね、成幸くん……。まぁ、本当にりっちゃんのこと心配してたもんなぁ……)

成幸 「それから、一番大事なことだけどさ、」

理珠 「……?」

成幸 「誰彼構わず、“愛してる” なんて言うのはやめとけよ。変な奴に勘違いされるぞ」

成幸 「俺だから良かったものの、大森相手だったりしたら、今ごろ……――」

理珠 「――い、言いません!」 ガバッ

56 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 02:31:33 ID:yfJ2n.4k
成幸 「わっ……な、なんだ、急に……」

理珠 「言いません! 成幸さん以外の人に、そんなこと、言うわけないです……」

理珠 「成幸さんだから……言うんです……」

成幸 「お、おう。そうか。それならいいけど……。いや、よくはないけど……」

文乃 (おおう……。ここまでやられて気づかない成幸くんの鈍さも相当だよね……)

文乃 「……まぁ、そのへんにしておこうよ、成幸くん。りっちゃんも反省してるみたいだし」

成幸 「ああ、そうだな」

理珠 「すみません。成幸さん、文乃。私はまた、人の気持ちが分からず迷惑をかけてしまったようです……」

シュン

理珠 「……先日のゲームで、成幸さんに勝てそうだったのが嬉しくて、つい調子に乗ってしまいました」

成幸 「………………」 ハァ 「……ま、いいじゃないか。どうであれ、結果として今日はお前が勝ったんだから」

成幸 「でも、あんなの勝てるわけないじゃないか。お前、顔真っ赤だったし、涙目だったし、俺の手まで握って……」


―――― 『……成幸さん。“愛してます”』


成幸 「っ……///」 (お、思い出しただけで恥ずかしくなってきたぞ……)

57 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 02:32:23 ID:yfJ2n.4k
理珠 「そ、そうですね。初めて成幸さんにゲームで勝ったのですから、結果オーライでいいですね!」

文乃 「………………」

フルフル

文乃 「……ダメだよ、りっちゃん。今日も勝ててないよ」

理珠 「ふ、文乃……!?」 ガーン

文乃 「だってそうでしょ? そもそも成幸くんはゲームの開始すら知らなかったわけだし」

文乃 「そもそもりっちゃん、言う前から照れてたし」

文乃 「それに、“愛してる” じゃなくて、“愛してます” って言ってるし」

理珠 「うっ……」

文乃 「……ってことで、またりっちゃんの負けかな」

成幸 (容赦ないな、古橋……)

理珠 「……ひょっとして文乃、怒ってますか?」

文乃 「……べつに」

プイッ

理珠 (お、怒ってますね……。悪いことをしました……)

58 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 02:34:00 ID:yfJ2n.4k
文乃 「………………」

文乃 (まったくもう。わたしがどれだけきみのことを心配したと思ってるのかな、りっちゃん)

文乃 (昨日なんかりっちゃんとうるかちゃんのことが心配すぎて、結局一睡もできなかったよ!)

文乃 (その結果がゲームだっていうんだから、まったくもう。りっちゃんは……)

ハァ

文乃 「……本当に、仕方ないなぁ、りっちゃんは」 ニコッ

理珠 「あっ……す、すみませんでした、文乃」

文乃 「いいよ。でも、そうだな。少しだけ意地悪しちゃおっかな」

グイッ

理珠 「へ……? ふ、文乃? 近いです……」

文乃 「内緒話だよ、りっちゃん。成幸くんに聞こえないように言うだけ感謝してほしいな」 コソッ

理珠 「内緒話……?」 コソッ

文乃 「りっちゃんは、どうして “愛してます” って言っちゃったのかな?」

理珠 「へ……?」

59 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 02:34:32 ID:yfJ2n.4k
文乃 「まるで、本当に告白するときみたいだよね……なんて」

理珠 「………………」

ボフッ

理珠 「……っ、そ、そんな、ことは……///」

理珠 「ふ、普段から丁寧語だから、つい出ちゃっただけです……」

文乃 (ふーん。まぁ、大森くんのときは “アイシテル” って言ってたけどね)

文乃 「……ま、そういうことにしておきますかね」

理珠 「へ、変なことを言わないでください、文乃」

成幸 「おい、古橋、緒方。何の話をしてるんだか分からないけど、もう行くぞ」

成幸 「そろそろHRが始まるからな。教室に入らないと」

文乃 「……そうだね。ほら、行くよ、りっちゃん」

理珠 「……はい!」

文乃 (まったくもう。ヒヤヒヤさせてくれるよ)

60 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 02:35:04 ID:yfJ2n.4k
―――― 『……ダメだよ、りっちゃん。今日も勝ててないよ』


文乃 (ちょっと厳しかったかな)

文乃 (でも、ダメだよ、りっちゃん)

文乃 (だって、こんなだまし討ちみたいなカタチで成幸くんに勝っても、りっちゃんだって嬉しくないでしょ?)

文乃 (りっちゃんは、いつかきっと、成幸くんに対しての気持ちに気づくだろう)

文乃 (その後、りっちゃんがどうするのかは分からないけれど)

文乃 (……でもきっと、りっちゃんが成幸くんに “勝つ” のはその後のことだから)

文乃 (だからりっちゃん。それまでは)

文乃 (……成幸くんに勝つのはきっと、お預けだよ)

文乃 (いつかりっちゃんが、ゲームでもなんでもなく、心の底から、)

文乃 (“愛してます” と言える、そのときまで)

ズキッ

文乃 「っ……」 (……大丈夫。痛くない。痛くない。痛いはず、ない)

文乃 (わたしはこれっぽっちも、そんなこと、思ってない)

おわり

61 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 02:36:09 ID:yfJ2n.4k
………………幕間 「前日の緒方うどん」

親父さん (……文乃ちゃんが店に来た。挨拶に行きてえが、接近禁止命令が出ている以上近づけねえ)

親父さん (せめて物陰からふたりの会話だけでも……)

「成幸さんにですね……」  「うんうん」  「…… “愛してる” と言いたくてですね……」

親父さん 「……!?」 (な、なんだと!? やはり理珠たまはセンセイに……!?)

「わっ、わたしはべつに、だって……成幸くんのことなんて……」

親父さん (この恥じらう声は、文乃ちゃんの声だな!? あのヤロウ! うちの娘だけじゃなく、文乃ちゃんまで……!!)

「ですが、私は行きますよ。明日は無理でも、明後日……いえ、一週間以内には、必ず……」

「成幸さんに “愛してる” と言って見せます!」

親父さん 「ゴフッ……」 (ち、ちくしょう……なんてこった……)

親父さん 「あ、あのヤロウ……!! もう許さねぇ! 息の根を止めてや――」

理珠 「――お父さん。また盗み聞きしてましたね?」 ニコッ 「半径五キロメートル接近禁止です」

親父さん 「パパもう市内にもいられなくなっちゃう!?」

おわり

62 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 02:36:52 ID:yfJ2n.4k
>>1です。読んでくださった方、ありがとうございました。


また投下します。

63 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 11:16:15 ID:mSFua3bQ
おつおつー

64 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 16:01:07 ID:yfJ2n.4k
>>1です。
投下します。


【ぼく勉】理珠 「ポッキーゲームというのをやりたいです」

65 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 16:01:58 ID:yfJ2n.4k
………………一ノ瀬学園 3-B教室

文乃 「………………」

文乃 (……またとんでもないことを言い出したなぁ)

成幸 「ポッキーゲームってなんだ?」

文乃 (こっちはこっちで知識が偏りすぎじゃないかな?)

うるか (ぽ、ポッキーゲーム!? 成幸と!?)

うるか (そ、それって……はうっ……///)

文乃 (そしてこっちは乙女がダダ漏れだよ……)

文乃 「えっと、りっちゃん? どうしていきなりそんなことを言い出したのかな?」

理珠 「昨日ニュースで見ました。11月11日はポッキーの日だから、ポッキーゲームというゲームをやるのだと」

文乃 「その肝心のポッキーゲームのルールは知ってるの?」

理珠 「………………」

ハッ

理珠 「……そ、そういえば、ルールについては全く触れられていませんでした」

文乃 (まぁ、そんな放送倫理に引っかかりそうなことをニュースで解説はしないよね……)

66 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 16:02:41 ID:yfJ2n.4k
うるか 「リズりん、ポッキーゲームっていうのはね、ふたりで両側からポッキーをむぐうっ」

文乃 (ふふふ……言わせないよ、うるかちゃん)

文乃 「ポッキーゲームはりっちゃんにはまだ早いかなー。ってことで話を変えようか」

うるか 「もがもがもがっ! (えー! 文乃っちひどいよー!)」

成幸 「ん、でも俺もルールくらいは気になるな。一体どんなゲームなんだ?」

文乃 (きみがそこで背中からわたしを撃つの!?)

文乃 「いや、でも……――」

「――ふたりがポッキーを両側から咥えるんです〜。そしてお互いに食べ進めて、先に折った方が負け、というゲームですよ〜」

文乃 「!?」 (こ、この声は……!)

文乃 「鹿島さん!? 蝶野さんと猪森さんも……」

鹿島 「いや〜、突然話に入って失礼致しました〜」

ニコリ

鹿島 「でも、いつも通り姫をウォッチしていたら楽しそうな話をしていたので、つい〜」

文乃 (もうツッコむ気すら起きないよ……)

成幸 「ポッキーを両側から咥えて……お互い食べ進めて、先に折った方が負け……?」

67 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 16:04:00 ID:yfJ2n.4k
成幸 「……////」 プシュー

文乃 (あー、もう。そういう感じになるってわかってたから、言わないでいたのにー!)

理珠 「単純なゲームですね。ポッキーにせん断応力を加えることなくいかに食べ進めるかがキモになりそうですね」

文乃 「……うん。りっちゃんはそういう反応だと思ってたよ」

うるか 「あ、愛してるゲームみたいにやってみない? なんて……。えへへ……」

文乃 (こっちの気も知らないで、お気楽娘めぇ〜〜〜〜)

文乃 「やれると思う? なんだったら今からわたしとやってみる、うるかちゃん?」

うるか 「えっ……」 カァアア…… 「ふ、文乃っちがいいなら、いいよ……?」

文乃 「えっ……」 ドキッ

文乃&うるか 「「………………」」 ドキドキドキドキ

文乃 「……あっ、で、でも、ポッキーがないし」

蝶野 「ご心配なく。ここにあるっス」 スッ

文乃 「用意周到だね!」

鹿島 (ふふふ。最初は女の子同士でやってもらって、いずれは古橋姫と唯我成幸さんにやってもらいます)

鹿島 (昨日のニュースを見ていて思いついた、名付けて 『ポッキーゲームで姫と王子もドキドキ!』 大作戦です!!)

68 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 16:05:03 ID:yfJ2n.4k
………………

文乃 「………………」

うるか 「………………」

文乃 「じ、じゃあ、行くよ、うるかちゃん」

うるか 「う、うん。負けないかんね、文乃っち」

ハムハムッ

文乃 「っ……」 (こ、これは……)

うるか 「はう……」 (よ、予想以上に……)

文乃&うるか ((近い……!!))

文乃 (これはとんでもないことだよ!? 同性でもこれなんだから……!)

うるか (成幸とポッキーゲームなんて、想像するだけで……うぅ……)

文乃 (っていうか、改めて間近で見ると、うるかちゃんって……)

うるか (文乃っちって、やっぱり……)

文乃&うるか ((めちゃくちゃかわいいなぁ……///))

緒方 (……? あのふたりは、見つめ合って顔を赤くして、何をしているのでしょうか)

69 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 16:05:46 ID:yfJ2n.4k
………………

鹿島 「あらあら〜。結局見つめ合ったまま大して食べ進められませんでしたね。引き分けです」

文乃 「………………」 ドキドキドキ (う、うるかちゃんかわいかった……)

うるか 「………………」 ドキドキドキドキ (文乃っちって、やっぱり美少女だなぁ……)

理珠 「わ、私もやりたいです、ポッキーゲーム!」

文乃 「!? 何で!? 正気なのりっちゃん!?」

理珠 「はい。最初はとんでもないゲームだと思いましたが、お二人がやっているのを見て面白そうだと思いました」

理珠 「現に、おふたりは今、何かとても満たされたような顔をしています!」

文乃&うるか 「「そんな顔してないよ!!」」

うるか 「それに、あたしたちは今やったばっかりで精も根も尽き果てるし、誰とやるの?」

70 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 16:06:37 ID:yfJ2n.4k
理珠 「えっ……そ、それは……」 チラッ

成幸 「……?」

ハッ

成幸 「お、俺!? いやいやいや!! さすがに女子とはできないだろ!!」

理珠 「むっ……」 プクゥ (そんなに拒絶しなくたって、いいじゃないですか……)

成幸 (もしそんなことを緒方とやっていて、また桐須先生が教室に入ってきたら今度こそ殺される!!)

鹿島 「………………」 (……唯我成幸さんには、この後古橋姫とポッキーゲームをしてもらう必要があります)

鹿島 (ここは、緒方理珠さんと私がポッキーゲームをすれば……――)

「――受けて立つわ! 緒方理珠!」 バーン

理珠 「せ、関城さん……? どうしてここに?」

紗和子 「そんなの決まってるじゃない! あなたのことを観察していたら、ポッキーゲームなんて単語が飛び出して……」

紗和子 「うらやましいから混ざりにきた――違う! 仕方ないから来てあげたのよ!!」 ババーン

紗和子 (これは、緒方理珠と私の親友度を上げるための絶好のチャンス!!)

紗和子 (本当なら緒方理珠と唯我成幸にやらせてあげたいけれど、さすがに公衆の面前でやらせるわけにはいかないわ!)

紗和子 「本当に仕方ないけれど、勝負を受けてやるわ!!」

71 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 16:09:51 ID:yfJ2n.4k
………………

ハムハムッ

理珠 「………………」

紗和子 「……ハァ……ハァ……」 (し、至近距離に緒方理珠が……///)

紗和子 (これは……想像以上だわ……)

理珠 (……正直な話、想像よりはるかに簡単なゲームです)

理珠 (目の前で顔を真っ赤にして鼻息を荒くしている関城さんは正直キモいですが、)

理珠 (別段どうという話もありませんし……)

ハムハムハムハムッ

紗和子 「!?」 (お、緒方理珠の顔がどんどん近づいて……――ッ)

紗和子 「だ、ダメよ、緒方理珠! あなたには唯我成幸という人が……!」

パッ

文乃 「あっ……」

72 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 16:10:49 ID:yfJ2n.4k
鹿島 「おお〜」 パチパチパチ 「関城さんがポッキーを放してしまいましたね〜。緒方さんの完勝です」

理珠 「えっ……?」 ムシャムシャムシャ 「わ、私の勝ちですか……!?」

紗和子 「ぐふふ……ふへへ……お、緒方理珠……///」

文乃 (うわぁ……紗和子ちゃん、これは昼休み中には回復しそうにないなぁ……)

紗和子 「でへへっ……緒方理珠の、小さな唇が、私に近づいて……」

紗和子 「ぐふふっ……」

文乃 (気持ち悪いなぁ……)

理珠 「わ、私が勝った……」 グッ 「私が勝ったんですね!!」

成幸 「おう、緒方の完全勝利だ。すごいぞ」

理珠 「ありがとうございます、成幸さん!」

73 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 16:11:20 ID:yfJ2n.4k
理珠 「ひょっとしたら私は、ポッキーゲームを極めるために生まれてきたのかもしれません!」

成幸 「うん。それは違うと思うぞ、緒方」

理珠 (ポッキーゲームなら、ひょっとして私は誰にでも勝てるのでは……?) ニヤリ

鹿島 「で、では、そろそろ仕切り直しで、古橋さんと唯我さ――」

理珠 「――次は文乃と私がやりましょう!」

鹿島 「なっ……!?」

文乃 「!? なんでわたしなの!?」

理珠 「ダメですか、文乃?」 キラキラキラ

文乃 「ぐっ……」 (純粋な目で見つめおってからに……) キリキリキリ

文乃 (まぁ、鹿島さんはどうせわたしと成幸くんをやらせたがっているだろうから、むしろ好都合かな……)

文乃 「いいよ、りっちゃん! 負けないよ!」

理珠 「私だって負けません!」

74 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 16:12:26 ID:yfJ2n.4k
………………数分後

文乃 「り、りっちゃん、そんな……急すぎるよ……」

うるか 「リズりん、大胆だよぅ……」

蝶野 「め、目の前に美少女の顔が来ると、予想以上っス……。うぅ、理珠さん……///」

猪森 「うぅ……さ、さすがだ、緒方さん……いや、理珠ちゃん……///」

成幸 「うぉぉ……」 (なんだこの、死屍累々の光景は……)

鹿島 (な、なぜこんなことに!? 私はただ、古橋姫と唯我成幸さんにポッキーゲームをさせたかっただけなのに……)

鹿島 (緒方理珠さんの超高速戦法に、誰ひとり太刀打ちできずに敗北していく……)

ポン

鹿島 「……!? ヒッ……!! 緒方さん……!?」

理珠 「次は鹿島さんですよ。ふふ。ほら、こっちを咥えてください」 ハムッ

鹿島 「あっ……ああああ……」 ガタガタブルブル

75 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 16:13:24 ID:yfJ2n.4k
………………

鹿島 「あっ……/// ふ、古橋姫以外でこんなにときめいたのは、初めてかもしれません〜……」

成幸 (また死体が増えた……)

理珠 「………………」 (ふふふ……ふふふふふ!! ゲームで勝つのがこんなに楽しいとは!!)

理珠 (皆さんは今まで、こんな楽しい気分を味わっていたのですね!)

理珠 (今こそ、敗北者の気持ちを全員に刻みつけてやるのです……!!)

ジロリ

成幸 「ひっ……。お、緒方……?」

理珠 「さぁ、残るは成幸さんだけですよ。さぁ、私とポッキーゲームをしましょう」

理珠 (そして、私に勝利をもたらすのです……!!)

キーンコーンカーンコーン……

理珠 「……えっ」

成幸 「あっ、五時間目の予鈴だな! ほら、もう遊びは終わりだ。緒方も教室戻れよ」

成幸 「ほら、お前らもいつまでも放心してないで起きろ。授業が始まるぞ」

理珠 「むぅ……」

76 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 16:14:55 ID:yfJ2n.4k
理珠 「………………」

プクゥ

理珠 (やっと成幸さんにゲームで勝てると思ったのに、残念です……)

理珠 (そうです。まったく、今回こそ成幸さんに勝って、鼻を明かしてやろうと思っていたのに……)

理珠 (成幸さんに勝てる明確なビジョンだってあります。脳内でシミュレーションしてみたって……)

理珠 (私がどんどん食べ進めて……成幸さんはその私の動きに対応できず、咥えたまま……)

理珠 (呆けた成幸さんの顔にどんどん近づいていき、そのまま、成幸さんの唇に……――)

――ハッ

理珠 (……く、唇に、触れる……?)


―――― 『それって緒方が 誰かとキスしてるってこと?』

―――― 『もう一度してみたら…… 何かわかるでしょうか』


理珠 「ふぁっ……」

理珠 (わ、私はひょっとして、とんでもないことを……?)

理珠 (また “キス” に近しい何かを成幸さんにしようとしてしまったのでは!?)

77 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 16:16:23 ID:yfJ2n.4k
理珠 (私はまた、成幸さんの唇に……)

理珠 (キスに類する何かを、しようと……)

理珠 「………………」

理珠 (……やはり、わかりません)

理珠 (なぜ私は、成幸さんにだけ、こんなにも気持ちを高ぶらせてしまうのでしょう……)

成幸 「……おい、緒方」

理珠 「!? な、なんですか……?」

成幸 「まぁ、べつにどうってことはないけどさ……」

ズイッ

理珠 (ち、近っ……。な、何を、成幸さん……)

成幸 「……前も言っただろ。冗談でも、口と口を近づけるようなことは、しちゃいけないんだ」 コソッ

理珠 「へ……?」

78 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 16:17:11 ID:yfJ2n.4k
成幸 「特に、男相手だったらな。遊び半分でも絶対にダメだ」

成幸 「ゲームに勝って楽しかっただろうけど、絶対に男とはやるなよ。いいな?」

理珠 「わ、わかりました。約束します……」

成幸 「ならいい。ほら、教室戻れ」

理珠 「はい……」

理珠 「………………」 (……いつか、遊び半分でないのなら)

成幸 「おーい、関城。起きろー」 ペシペシペシ 「なんで一番最初の被害者のお前がまだ倒れてんだよ」

理珠 (成幸さんは、怒らないのでしょうか?)

理珠 (遊び半分でなく、本気なら……)

理珠 (いつか私も、いつだか成幸さんと観たあの映画のように……)

理珠 (ゲームでも、事故でもない、キスが……)

ドキドキドキドキ……

理珠 (できるのでしょうか……)


おわり

79 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 16:18:52 ID:yfJ2n.4k
………………幕間1 「その日の職員室」

真冬 「ふぅ……」 (今日の授業はなかなかだったわね)

真冬 (ALの試みも上手くいったし、ICT機器の使い方も我ながら上手だったわ)

真冬 (この調子で教材研究を続けて、いずれは論文にまとめて教材を学会で発表したいわね……)

理珠 「失礼します」 ガラッ 「3年F組の緒方です。桐須先生はいらっしゃいますか?」

真冬 (……? 緒方さんが私を訪ねるなんて珍しいわね) 「ここにいます。用があるならどうぞ、いらっしゃい」

理珠 「はい、失礼します」

真冬 「……何の用かしら? あなたが私のところに来るなんて珍しいわね」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!

理珠 「ええ。私もそう思います」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!! 「この前のリベンジに来ました」

真冬 「リベンジ……?」

理珠 「ごき○りポーカーでの30連敗の屈辱、私は決して忘れません。今日こそその雪辱を晴らします!」

真冬 「……この前やったカードゲームの話? その前に、雪辱は晴らすものではなく果たすものよ。誤用に注意しなさい」

理珠 「ぐっ……しかしそんな余裕でいられるのも今のうちです! さぁ、桐須先生! ポッキーゲームで勝負です!」 バーン

真冬 「………………」 ガシッ 「……緒方さん。とりあえず生徒指導室でお説教ね。来なさい」

理珠 「えっ……」 ズルズルズルズル 「な、なぜですかぁああああ………………」 ズルズルズル………………

80 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 16:19:56 ID:yfJ2n.4k
………………幕間2 「その日の唯我家」

成幸 (はぁ……今日は緒方と鹿島のせいで疲れたな……)

成幸 「ただいまー……」 ガラッ

水希 「おかえりなさいっ、お兄ちゃん!」

水希 「おフロにする? ごはんにする? それとも、ポ・ッ・キ・ー?」

成幸 「………………」

成幸 「……うん。ポッキー咥えてキメ顔してるところ悪いんだけどさ、」

成幸 「お兄ちゃんはそろそろ真剣にお前の将来が心配だよ」


おわり

81 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 16:20:43 ID:yfJ2n.4k
>>1です。
読んでくれた方、ありがとうございます。


また投下します。

82 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 23:16:40 ID:0jOzdRyc
乙そういや先週の扉絵妹可愛かったな!

83 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 23:34:09 ID:yfJ2n.4k
>>1です。
投下します。


【ぼく勉】文乃 「ポニーテールは振り向かない」

84 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 23:34:49 ID:yfJ2n.4k
………………朝 唯我家

成幸 「………………」

ガツガツガツ……ムシャムシャムシャ……

和樹 「おー。兄ちゃん朝から早食いだなー」

成幸 「ん……」 ゴックン 「早めに学校に行って、ノートをまとめておきたくてな」

葉月 「さっすが兄ちゃん! 勉強熱心ね!」

成幸 (まぁ、俺のノートじゃなくてあいつらのノートだけどな……)

成幸 「ってことで、ごちそうさま。もう学校行くな!」

水希 「あっ……お兄ちゃん、ちょっと待ってー」

ドタドタドタ

成幸 「どうかしたか、水希?」

水希 「髪がうまくまとまらないのー! お兄ちゃんやってー!」

成幸 「……おいおい、お前中学生だろ。ポニーテールくらいいい加減できるようになれよ……」

水希 「今日は髪が言うこと聞いてくれないの!」

85 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 23:35:47 ID:yfJ2n.4k
成幸 「仕方ないな……。ほら、後ろ向けよ」

水希 「……ぃよしっ」 グッ

成幸 「……? お前今野太い声でガッツポーズ決めなかったか?」

水希 「えーっ、なんのことー?」 キャルン

成幸 「……もういいや。じゃ、櫛入れてくぞー」

スッ……サッ……サッ……

水希 「はうぅ……」 ポワポワ (久々にお兄ちゃんに櫛入れてもらってる……)

水希 (気持ちよくてどうにかなっちゃいそう……///)

成幸 「……っし。じゃ、まとめるぞ、っと」

キュッ

成幸 「……こんなもんでいいだろ。ほら、できたぞ、水希?」

水希 「うふふ……お兄ちゃんの逞しい手が、私の髪を……えへへ……」 ポワポワポワ

成幸 「水希……? おーい、水希ー」

和樹 「あー、これはダメだな。完全にトリップしてるよ」

86 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 23:37:02 ID:yfJ2n.4k
葉月 「こうなっちゃったら水希姉ちゃんはすぐには動けないわね」

和樹 「兄ちゃん学校で勉強するんだろ? 姉ちゃんは俺たちが見てるから、先行きなよ」

成幸 「おう、じゃあ頼んだぞー。いってきまーす!」

葉月&和樹 「「いってらっしゃーい!」」

成幸 (ふむ……)

成幸 (久々に水希の髪をいじったが、まだまだ俺も捨てたもんじゃないな)

成幸 (まぁ、ポニーテールが楽だから簡単だってのはあるけどな)

成幸 (もっと色々な結び方とかできるようになったら、水希も葉月も喜んでくれるかな……?)

成幸 (そういや、古橋ってしょっちゅう髪型変えるような……)

成幸 (ちょっと教えてもらおうかな)

87 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 23:39:06 ID:yfJ2n.4k
………………昼休み 一ノ瀬学園

大森 「なぁ、女子の髪型ってさ、いいよな……」

小林 「……いきなりどうしたの、大森」

成幸 「しみじみ言われるとさすがにキモいぞ」

大森 「女子ってさ、髪型を変えることで変身できるんだよ……」 沁沁

成幸 「どうした、大森。悪いモンでも食ったのか? それとも頭でも打ったか?」

大森 「ってことで、お前らの女子の髪型の好みを聞こう!」

小林 「急に変なこと言いだしたと思ったら、結局ソッチに持ってくのね……」

ヤレヤレ

小林 「俺はショートカットかなぁ。スポーティでかわいいとなお良し!」

成幸 「なんだかんだ、お前ってこういう話題結構好きだよな……」

大森 「っていうかそれそのまま海原さんじゃねーか! ノロケんじゃねー!」

小林 「ははっ、バレた。でも実際、昔からショートカットの方が好きだしさ、俺」

88 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 23:39:56 ID:yfJ2n.4k
大森 「俺は断然ロング派だぞ! カチューシャとかで流してるのが好きだ!」

大森 「お嬢様っぽくおしとやかにまとめてるのも良いな!」

成幸 「……お前たちはどうしてそう自分の性癖を事細かに語れるんだ」

大森 「なんだよー。男しかいねーんだから恥ずかしがんなよ、唯我ー」

大森 「俺たちも話したんだ。お前も話せよー」

成幸 「髪型の好みなんかねぇよ」

成幸 「そういうのはわからないっていつも言ってるだろうが」

大森 「良い子ぶんじゃねー! お前だけ聞き逃げするつもりかー!?」

成幸 「なんだその無茶苦茶な言いがかりは!? お前たちの女子の髪の好みなんかどうでもいいわ!」

成幸 (ああ、ちくしょう。早く飯食ってあいつらの教材作りたいってのに……)

成幸 (こうなったら、もう適当に答えるのが一番か……)


―――― 「……おいおい、お前中学生だろ。ポニーテールくらいいい加減できるようになれよ……』


成幸 「………………」 (……うん。ポニーテールは楽だし、嫌いじゃないな。ウソにはならない)

成幸 「あえて言うなら、ポニーテールかな。長さはべつになんでもいい」

89 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 23:41:25 ID:yfJ2n.4k
………………廊下

理珠 「ふふふ……。明日までの宿題を今日提出したら、成幸さんはどんな顔をしますかね」

うるか 「成幸、泣いて喜ぶんじゃないかな。あたしたちの成長を喜んで!」

文乃 「そ、そうだねー……」

文乃 (冷静に考えれば、次の宿題を出すスパンが短くなるんだから、)

文乃 (成幸くんを困らせることになりかねないんだけど、まぁそれは言うまい……)

文乃 (あとで成幸くんに、宿題無理して作らなくていいからね、って言わないと……)


  「ってことで、お前らの女子の髪型の好みを聞こう!」


うるか 「……!?」 (大森っちの声!? 教室の中からだ!)

理珠 (と、いうことは、この髪型のことを聞いている相手は……)

文乃 (成幸くん、だよね……)

うるか 「……ち、ちょっと聞いてかない? この会話。べつに成幸がどーとかじゃないけど……」

理珠 「せ、せっかくですしね。成幸さんの好みを聞いておくのも、今後の関係を考えると有益かと思いますし」

文乃 (……胃が痛いなぁ) キリキリキリ……

90 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 23:42:09 ID:yfJ2n.4k
  「俺はショートカットかなぁ。スポーティでかわいいとなお良し!」


うるか 「こばやんの声だ」 ヒソヒソ 「こばやんの彼女、海っちの髪型そのまんまだよ」

文乃 「微笑ましいねぇ……」 (胃が痛いなぁ。お願いだから成幸くん余計なこと言わないでよ……)


  「俺は断然ロング派だぞ! カチューシャとかで流してるのが好きだ!」

  「お嬢様っぽくおしとやかにまとめてるのも良いな!」


理珠 「………………」 うるか 「………………」

文乃 (大森くんの声には清々しいまでにどうでも良さそうな顔してるね……)


  「髪型の好みなんかないよ」

  「そういうのはわからないっていつも言ってるだろうが」

  「良い子ぶんじゃねー! お前だけ聞き逃げするつもりかー!?」


うるか 「そーだそーだ。もっと言ってやれ大森っち」

理珠 「……そうです。成幸さんは卑怯です」 フンスフンス

91 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 23:42:50 ID:yfJ2n.4k
文乃 「……ほっ」 (よかった。成幸くん、黙り込んじゃったし、このまま何も言わないで終わるのかな)

文乃 (ヘタなこと言われたらりっちゃんたちの勉強に支障が出るからね。よかったよ)

文乃 「……ほら、りっちゃん、うるかちゃん、もう行くよ」

文乃 「成幸くんに宿題見せて褒めてもらうんで――」


「――あえて言うなら、ポニーテールかな。長さはべつになんでもいい」


文乃 「……!?」

理珠&うるか 「「………………」」 ジーーーーーーッ

文乃 「な、なんでわたしを見るのかな、ふたりとも……」

ハッ

文乃 (し、しまったぁあああああ!! 今日のわたし、ポニーテールだー!!)

文乃 (そしてりっちゃんは元より、うるかちゃんも今日は髪をそのままおろしてるね!)

92 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 23:44:04 ID:yfJ2n.4k
………………

成幸 「ん……? なんか廊下が騒がしいな……」

理珠 「……し、宿題の提出は後にします! ちょっと用事を思い出しました!」

うるか 「あたしも! ちょっと用事を思い出したから放課後に提出するよ!」

文乃 「ち、ちょっとふたりとも落ち着いて……」

成幸 「……騒がしいと思ったらお前たちか」

理珠 「なっ、成幸さん!」 バババッ

うるか 「成幸、こっち見ちゃダメ!」 バババッ

成幸 「……? おい、古橋。このふたりは手で頭隠して何やってんだ?」

文乃 「わたしが聞きたいよ……」 (かわいいなぁ、ふたりとも……でも胃が痛いなぁ……)

成幸 「ん……」 (古橋、今日はポニーテールか。水希とおそろいだな)

ニコッ

成幸 「古橋も今日はポニーテールか。いいよな、ポニーテール」

文乃 「ふぇっ……!?」

文乃 (こ、このバカー! このタイミングでわたしの髪型褒めるかな、普通!!)

93 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 23:44:45 ID:yfJ2n.4k
理珠 「!?」


―――― 『な なんだ いつも通り 普通に元気そうじゃないか よかった』

―――― 『成幸マジで信じらんないッ!!』

―――― 『最低ッ!! 最低ッ!! 最低だよ成幸くん! これだから男子は……!!』


理珠 (わ、私が前髪を切ったときは全く気づいてくれなかったくせに……)

プルプルプル……

理珠 (私が前髪を切ったときは結局最後まで気づいてくれなかったくせに!!)

理珠 (あなたはどれだけポニーテールが好きなのですか!?)

うるか (成幸めー!)

うるか (あたしが胸元開けよーがスカート丈詰めよーが気にしないくせにー!)

うるか (どんだけポニーテールが好きなんだよー! 成幸のポニテ好き変態ー!)

理珠 (こうなったら私も……) ダッ

うるか (あたしもポニテにしてきてやるー!!) ダッ

文乃 「あっ、ふ、ふたりとも……! ……行っちゃった」

94 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 23:45:24 ID:yfJ2n.4k
文乃 (ヘアゴムだったら言ってくれれば予備を貸すのに……)

成幸 「……なんだったんだ? 最後にめちゃくちゃ睨まれたんだけど」

成幸 「俺、なんかしちゃったか……?」

文乃 (無自覚に何かしちゃってるんだよいつもー! 少しは気づいてよ……)

成幸 「……で、結局一体何の用だったんだ?」

文乃 「あっ……えっとね、宿題が早く終わったから、出しに来たんだけど……」

文乃 「ふたりはどこかに行っちゃったけど……」

成幸 「ん、そうか。じゃあ古橋のだけでも預かっとくな。ごくろうさん」

文乃 「いえいえ。いつもありがとうございます、先生」


―――― 『あえて言うなら、ポニーテールかな。長さはべつになんでもいい』

―――― 『古橋も今日はポニーテールか。いいよな、ポニーテール』


文乃 「っ……///」

文乃 (でも、そっか……) カァアアアア…… (成幸くん、ポニーテール好きなんだ……)

95 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 23:46:15 ID:yfJ2n.4k
………………放課後

うるか 「………………」 バーン!!!

理珠 「………………」 ババーン!!!

文乃 「おおう……」 (本当にポニーテールにしてきてるよ、ふたりとも……)

文乃 「……ふたりとも、ヘアゴムはどうしたの?」

うるか 「ふふふ、あたしは水泳部だよ? トーゼン、バッグの中には常備だよ」

理珠 「私は持ち歩く習慣はないので借りました」

文乃 「誰に?」

理珠 「……関城さんです」

文乃 「おおう……」 (はしゃぎ回る紗和子ちゃんが目に浮かぶようだよ……)

文乃 (それにしても……)

文乃 (うるかちゃんはいいとしても、りっちゃんは……) ジーッ

理珠 「?」

文乃 (ちょんまげみたいになっちゃってるんだけど、りっちゃん的にはそれでいいの……?)

96 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 23:47:00 ID:yfJ2n.4k
成幸 「悪い、遅くなった。HRが長引いてさ。待たせたな」

うるか 「なっ、成幸……」 サワッ 「おつかれさま! 全然待ってないよ!」

理珠 「え、ええ。我々も今さっき来たところですから!」 ピョコン

成幸 「よーし、じゃあ早速始めるか。ふたりも宿題終わらせてるんだろ? 早速見るからくれ」

うるか 「あ……う、うん……」 理珠 「……はい」

文乃 (胃が痛い……)

文乃 (ふたりの露骨なポニテアピールに対して、成幸くんはまったく目もくれていないよ……)

文乃 (仕方ない。ここは、ふたりの気持ちを鼓舞するためにも、わたしが一肌脱いで――)

成幸 「――ん。そういえば、古橋」

文乃 「へっ……? な、何かな?」

成幸 「お前、髪結ぶ位置変えたのか」

文乃 「えっ……」

文乃 (な、成幸くんが髪の変化に気づいた!?)

文乃 (あの女の子の感情にとんでもなく疎いニブチンの成幸くんが!?!?)

97 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 23:47:52 ID:yfJ2n.4k
文乃 (き、驚天動地だよ……)

文乃 (たしかに、これ以上うるかちゃんとりっちゃんの乙女騒動に巻き込まれたくなくて、)

文乃 (ポニーテールからサイドテールに変えたけど、よく気づいたね……)

文乃 (いや、これもわたしの教えが染みついてきたってことかな……)

ホロリ

文乃 (師匠として鼻が高いよ……でも、成幸くん……)

理珠 「………………」 ジトーッ (……私の前髪には気づかなかったくせに)

うるか 「………………」 ジトーッ (文乃っちの髪型の変化にはすぐ気づくんだね……)

文乃 (このタイミングはやめてほしかったなぁ……!!)

ギリギリギリ……

文乃 (い、胃が……壊滅寸前のダメージを受けてる気がするんだよ……)

成幸 「どうかしたか?」

文乃 「だ、大丈夫。大丈夫だから……」 (きみはもうできるだけ喋らないでくれるかな?)

成幸 「そうか。ならいいけど……」

98 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 23:48:42 ID:yfJ2n.4k
成幸 「でも、サイドテールってのもなかなかいいな」

理珠&うるか 「「……!?」」

文乃 「ふぇっ……?///」 (な、なんでそんな、わたしの髪型ばかり褒めるのかな!?)

成幸 (水希はいつもポニーテールだけど、部活で邪魔にならないならサイドテールにいいんじゃないだろうか)

成幸 (今度結んでやったら喜ぶかなぁ……)

理珠 「っ……」 (成幸さんの中で髪型のトレンドが動いたということでしょうか!?)

うるか (こうなったら、サイドテールにしてくるしかない!!)

ガタッ

理珠 「ちょっと用事を思い出したので一旦抜けます!」

うるか 「すぐ戻るね!」

タタタタタ……

成幸 「えっ……? うるか? 緒方?」

成幸 「なんだ……? そんな急ぎの用事があったのか……?」

文乃 「うん。あのふたりにとっては可及的速やかにこなさなくちゃいけない用事だよ……」

99 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 23:49:34 ID:yfJ2n.4k
………………

理珠 「………………」 ゼェゼェ 「お、お待たせしました……」 ピョコン

うるか 「えへへ……。こ、これでどうだ……」 サワッ

文乃 「………………」

文乃 (……ふたりとも、急ぎすぎて髪の結び方が雑だし)

文乃 (りっちゃんに至っては、ただ横で結んだだけだから、乳幼児みたいな髪型になってるよ……)

成幸 「お、おう。おかえり。宿題は見終わったぞ。この調子で今日も勉強がんばろう」

理珠 「えっ……」 うるか 「そ、それだけ……?」

成幸 「……? 宿題はしっかりとやってるように見えたが、何か分からないところでもあったのか?」

うるか 「いや、そーじゃなくてね……」

理珠 「ほ、他に私たちに言っておいた方がいいこととか、ありませんか?」

成幸 「……?」

ハッ

成幸 「ああ、なるほど。俺としたことが、忘れるところだったよ」

理珠&うるか 「「………………」」 パァアアアアアアアアア……!!!!

100 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 23:50:26 ID:yfJ2n.4k
成幸 「悪い悪い。お前たちが早く宿題を終わらせるから、危うく間に合わないところだったけど」

ドサッ

理珠 「えっ……」

成幸 「お前たちのがんばりに、俺も 『教育係』 として準じなければならないからな!」

成幸 「明日出す予定だった宿題、がんばって今日渡せるようにしたぞ。ふふふ……」

うるか 「あ、あの、成幸……?」

成幸 「今日は宿題がなくなるんじゃないかと不安だったんだろ?」

成幸 「安心しろ」 キリッ 「お前たちの 『教育係』 は、お前たちを手ぶらで返したりはしないからな!」

うるか 「そ、そっか……えへへ、嬉しいな……うれ、しい……な……」 ズーン

理珠 「……ええ。本当に。最高の気分です」 ズーン

成幸 「喜んでくれるなら、多少無理してでも宿題を完成させた甲斐があるよ」

文乃 (……あー、もう。どうしてきみは女の子のことになると心の機微を察する気持ちが皆無になるのかな!?)

文乃 「まったくもう……」 ガシッ 「ちょっとこっち来て、成幸くん」

成幸 「ん? どうかしたか、古橋?」

文乃 「いいから、来て。話があるの」

101 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 23:51:11 ID:yfJ2n.4k
………………物陰

成幸 「話ってなんだ?」

文乃 「……その前に、ひとつ聞きたいんだけど、うるかちゃんとりっちゃんがさっき何をしに行ったかわかる?」

成幸 「えっ……? 用事って言ってたけど、その中身までは俺は知らないぞ?」

文乃 「うん。そうだよね。そう。きみはまったく、そうあるべきなんだよ」

成幸 「へ……? わ、悪い。俺に分かるように言ってくれるか?」

文乃 「うん。まぁ、それはいいんだけど……どうしてきみは、わたしの髪型の変化に気づいたの?」

文乃 「きみは今まで、自他共に認めるくらい、そういう変化に疎かったよね」

成幸 「……ん、まぁ、その通りだけど」

成幸 「古橋の髪型は、(今朝から)ずっと気になってたから……」

文乃 「えっ……」

成幸 「お前の髪型を気にするようにしたら、(水希と葉月が)喜んでくれるかな、って……」

成幸 「もちろん、色々(結い方とか)教えてもらう必要はあるだろうけど……」

文乃 「………………」 カァアアアア…… 「なっ……何を、言ってるのかな、きみは……!?」

102 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 23:51:52 ID:yfJ2n.4k
文乃 (わ、わたしの髪型を気にするようにしたら、わたしが喜ぶかなって……?)

文乃 (つ、つまり成幸くん、きみは……)

文乃 「(わたしを)喜ばせたかったの……?」

成幸 「あ、当たり前だろ! (あいつらの)笑顔を見るために俺はがんばってるんだから!」

文乃 「ふぁっ……///」

文乃 (わ、わたしの笑顔を見るために……?)

文乃 「そ、それって……どういう、意味、なのかな……?」

成幸 「……教えてほしいんだ。色々と」

文乃 「い、色々って……わ、わたしのことを……?」

成幸 「ああ、そうだ。お前の……」


成幸 「……お前の、色々な髪型のセットの仕方を!!」


文乃 「っ……///」

文乃 「……ん?」

文乃 「………………」

103 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 23:52:40 ID:yfJ2n.4k
………………

文乃 「……うんうん。なるほどなるほど。よくわかったよ」

文乃 「つまりきみは、妹さんたちの髪型のバリエーションを増やしたいなーと思って、」

文乃 「毎日髪型を変えるわたしに結い方を教えてもらえたらな、と思っていた、と」

成幸 「あ、ああ。さっきもそう言ったつもりだったけど……」

文乃 「だから、わたしの髪型の変化に気づくことができた?」

成幸 「うん……」

文乃 「そして、ポニーテールが好きだと言ったのは、見た目ではなく機能性の話なんだね?」

成幸 「結いやすいし運動もしやすくなるからな。部活をやってる水希は毎日ポニーテールだし」

文乃 「うんうん、なるほどねぇ……」

シュッ

文乃 「……とりあえず、一発手刀を入れても良いかな?」

成幸 「なんでだ!?」

104 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 23:53:12 ID:yfJ2n.4k
………………

理珠 「………………」 ズーン

うるか 「………………」 ズーン

成幸 「ほ、ほんとだ。よく見たら、かなり凹んでるな……」

文乃 「でしょ? ほら、早く。さっき教えた魔法の言葉をかけてあげて」

成幸 「ほ、本当に言うのか?」

文乃 「……ふふ、おかしな成幸くん」 シュッ 「手刀を入れられたいのかな?」

成幸 「わ、わかったよ! 言うから! 手刀の素振りはやめてくれ!」

成幸 「……うー」 モジモジ

成幸 (ええい、ままよ……!)

成幸 「お、緒方、うるか、ちょっと話を聞いてくれるか?」

理珠&うるか 「「……?」」 モゾリ

成幸 「サイドで結んでる髪型も似合ってるけど……やっぱり普段のふたりが一番……」

成幸 「か、かわ……かわっ……」 カァアアアア…… 「かわいい、と、思う、ぜ……?」

成幸 (こ、こんなんで本当にこのふたりが復活するのか!?)

105 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 23:53:56 ID:yfJ2n.4k
理珠 「………………」 カァアアアア…… 「……そ、そう、ですか」 パッ

うるか 「………………」 カァアアアア…… 「え、えへへ……そ、そっか……」 パッ

成幸 (サイドテールを解いて顔に生気が戻った……。一体何だったんだ……?)

理珠 「や、やっぱり気づいてくれていたのですね、成幸さん……」

うるか 「気づいてたなら、もっと早く言ってくれれば良かったのに……」

成幸 「あ、いや、俺はまったく気づいてなかっもがっ」

文乃 「……お願いだから余計なこと言わないでね、成幸くん?」 ギラリ

成幸 (ヒッ……) コクコクコクコク

理珠 (普段の私が一番、ですか……)

うるか (変に成幸を意識するより、自然のあたしの方がいいってことかな……)

理珠 「ふふ……」

うるか 「えへへ……」

理珠 (嬉しいです、すごく……///)

うるか (成幸、ありがと……///)

106 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 23:54:40 ID:yfJ2n.4k
文乃 「……ふぅ」

文乃 (とりあえず一件落着かな。わたしの胃の安全は保たれたよ……)

成幸 「……悪いな、古橋。またお前に迷惑かけたみたいで」

文乃 「気にしなくていよ。わたしはきみのお師匠様だからね」

成幸 「ああ。いつもありがとうございます、古橋師匠」

文乃 「苦しゅうないぞ、弟子よ」

成幸 「ははは、なんだそりゃ……」

成幸 (……古橋の髪、本当に綺麗だな。一挙手一投足に反応して艶やかに動いてるよ)

成幸 (水希の髪だったら同じようにはいかないだろうなぁ……)

成幸 「古橋は得だよなぁ……」

文乃 「へ……? 得って何が?」

成幸 「古橋はどんな髪型でも似合うからさ。うらやましいよ」

文乃 「……えっ」

カァアアア……

文乃 「そ、そんなことないと思うけど……」

107 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 23:55:11 ID:yfJ2n.4k
成幸 「……? どうかしたか?」

文乃 「な、何もない! 何もないよ……」

文乃 (……まったくもう! なんできみは、ニブチンのくせに……)

文乃 (ときどきこうやって、わけのわからないことを言ってくるんだろう……!)

文乃 「………………」

文乃 (ごめんね。りっちゃん、うるかちゃん、違うからね……!)


―――― 『古橋も今日はポニーテールか。いいよな、ポニーテール』

―――― 『でも、サイドテールってのもなかなかいいな』

―――― 『古橋はどんな髪型でも似合うからさ。うらやましいよ』


文乃 (断じて違うけど……でも、少しくらい、いいよね)

文乃 (男の子に、髪型の変化に気づいてもらって、褒めてもらえることを、嬉しいと思うくらい……)

文乃 (許して、くれるよね……?)

おわり

108 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 23:55:52 ID:yfJ2n.4k
………………幕間1 「ポニーテールでいい」

成幸 (ってことで、勉強会の後に古橋に色々な髪型のセットの仕方を教えてもらったぞ!)

成幸 「水希ー、かわいい髪型にしてやるからちょっとこいよー」

水希 「すぐ行くいま行くもういる」 シュババババッ

成幸 「よし、じゃあ始めるぞ……ふふふ、刮目しろ! これが古橋直伝のヘアセット術だ!」

スカッ

成幸 「……あ、あれ? 水希? なんで避けるんだ?」

水希 「……古橋さんに髪型のこと教えてもらったの?」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 「あ、ああ。そうだ。古橋に聞いたら快く教えてくれたんだ」

水希 「いい」

成幸 「えっ……?」

水希 「ポニーテールでいい」

成幸 「なんでだ!? 古橋に髪まで貸してもらって覚えたんだ。お前をかわいくする自信があるぞ」

水希 「私はもう一生ポニーテールでいい」

成幸 「なぜ!?」

109 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/11(日) 23:56:42 ID:yfJ2n.4k
………………幕間2  「人間として」

紗和子 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

紗和子 (わ、私の目の前にはいま、緒方理珠が返してくれたヘアゴムがある……!!)

紗和子 (それはいま、私の手の中にあって、私がどうしようが自由……!!)

紗和子 (そ、そう。つまり、これを嗅ごうが食べようが、私の自由ということ……!!)

紗和子 「………………」 ゴクリ

ハッ

紗和子 (め、目を覚ましなさい、関城紗和子! あなたそんなことしたら最低よ!?)

紗和子 (緒方理珠の友人として失格というか、そもそも人間としてアウトだわ!)

紗和子 「………………」

紗和子 (……いや、でも、食べるのはダメとして、少し嗅ぐくらいならいいんじゃないかしら?)

紗和子 (いやいやいや、嗅ぐのもダメでしょう!? でも緒方理珠の頭皮を感じるチャンスが今後訪れるとも思えないし……)

文乃 「……? 紗和子ちゃん、ヘアゴムとにらめっこしてどうしたんだろう?」

理珠 「わかりませんし興味もありませんが、なんとなくヘアゴムは新品を買って返して正解だった気がします」

おわり

110 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 00:10:39 ID:Ygvqo2fQ
乙です
怒涛の更新ありがたい……

111 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 00:44:29 ID:joxzYPf2
>>1です。
読んでくれた方、ありがとうございます。
締めをしたつもりになって忘れていました。

乙や感想、ありがとうございます。
とても嬉しいし励みになります。

ポニーテールは、個人的にすごく好きな髪型です。
きれいにシンメトリーに作るのは難しいですが、アレンジが容易で誤魔化しがききやすいので。
動きやすいしものを食べるときも邪魔になりません。大好きです。
ただ唯一の難点は、一度ほどかないと仰向けで寝られないところでしょうか。
なので、文乃さんがポニテにしてる姿も大好きです。

タイトルは良いのが思い浮かばなかったので人気投票結果発表の関城さんの欄から拝借しました。
関城さんの基本髪型はお団子なのになぜポニテ押しなのかはわたしの目下一番の疑問です。

自分語りが長くなりました。申し訳ないことです。

9巻が発売されるまでにこのスレも潰したいところですがそれはさすがに叶わなそうです。

また折を見て投下します。

112 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 07:06:02 ID:LqMSlx/6
乙です。
面白いけど最近のは文乃の描写が多くてメインを食ってしまってる気がする。

113 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 12:09:39 ID:T6NmL7eM
文系かわいいからね仕方ないね

114 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 12:38:54 ID:NJ9jge1o
>>112
食ってしまってる(意味深

115 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 22:44:14 ID:joxzYPf2
>>1です。
>>112さんと>>114さんに着想を得たSSを投下します。
先に断っておきますが、アホな上にキャラ崩壊もしています。
読まない方がいいかもしれません。



【ぼく勉】文乃 「相談女」

116 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 22:45:40 ID:joxzYPf2
書き忘れました。
明確な同性愛的表現があります。
性行為を連想させるような言い回しや表現もあります。
閲覧注意です。

117 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 22:46:20 ID:joxzYPf2
………………ラーメンうめえん

うるか 「でね! その男の子ったらたらひどいんだよー!」 ズルズルズル……

うるか 「友達はもうこれでもかってくらいがんばってるのにー!」

うるか 「成ゆ――じゃなくて、その男の子は全然気づかないのー!」

文乃 「うんうん。それはちょっと、さすがにねぇ……」 ズルズルズル……

文乃 (今日も今日とてうるかちゃんの愚痴を聞いてるけれど)

文乃 (いつも通り友達の話の体だけど、もうボロが出てるってレベルじゃないよ……)

文乃 (っていうかわたしダイエット中なんだけどな……)

うるか 「聞いてる、文乃っち!?」

文乃 「うんうん。ちゃんと聞いてるよ」

文乃 「……あっ、店員さん、替え玉おかわりお願いします」

文乃 「あと追加でチャーシュー盛りとチャーハンも」

文乃 (困ったなぁ……。また太っちゃうよ……)

118 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 22:47:02 ID:joxzYPf2
うるか 「……大体、その男の子は鈍すぎるんだよ」

文乃 「うんうん」

うるか 「何であんなに色々してるのに気づかないのかなぁ……」

うるか 「でも、自分から告白して、いまの関係性を壊すのはいやだし……」

うるか 「成幸の――じゃなくて、その男の子の勉強の邪魔になるのはもっといやだし……」

うるか 「ねえ、文乃っち! あたし……の友達はどうしたらいいのかな!?」

文乃 「う、うーん……。どうしたらいいかなぁ……」

うるか 「……成幸がもっと鈍くなかったらな」

文乃 「そうだねぇ。成幸く――じゃなくて、その男の子がもう少し鋭かったらねぇ……」

文乃 (なんでわたしがうるかちゃんのうっかりをフォローしてるんだろう……)

うるか 「……こんな苦しくなるなら、もっと……」

うるか 「べつの人を好きになればよかった……」

文乃 (……ふぁぁああ……) キュンキュン (うるかちゃん、いちいち台詞が乙女すぎるよ。かわいいなぁ……)

119 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 22:47:38 ID:joxzYPf2
文乃 「そうだね。もしわたしがその男の子だったら……」

ニコッ

文乃 「うるかちゃんの友達にそんな辛い思いはさせないんだけどね」

うるか 「えっ……」 キュン

文乃 「……?」

うるか 「あっ……」 カァアア…… 「そ、そうだね……」

文乃 (おや……?)

うるか 「相手が、文乃っちだったら、きっと……」

ドキドキドキドキ……

うるか 「……あたしのこと、もっと分かってくれるよね」

文乃 (お、おやおや……?)

うるか 「そっか……。文乃っちだったら……」

文乃 (な、なんか雲行きがおかしいな……?)

ギュッ

文乃 「えっ……?」 アセアセ 「な、なんでわたしの手を握るのかな、うるかちゃん?」

120 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 22:48:20 ID:joxzYPf2
うるか 「……文乃っち」

文乃 「は、はい!」

うるか 「文乃っちって、実はあたしの憧れる女の子そのものなんだよね」

文乃 「えっ……えっ?」

うるか 「……文乃っちだったら、成幸と違って、あたしのことわかってくれるもんね」

文乃 「えっえっえっ」

うるか 「ふ、文乃っち……ううん。文乃」

文乃 「ふぇっ……」

うるか 「この後、時間ある? うちで一緒に勉強していかない?」

文乃 「……へ?」

うるか 「安心して。今日、親、帰ってこないから……」

文乃 「ち、ちょっと? うるかちゃん?」

うるか 「……えへへ。行こ、文乃っ」

121 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 22:48:57 ID:joxzYPf2
………………翌朝

チュンチュンチュン……

文乃 「………………」

文乃 (なんてこった、だよ……)

文乃 (朝起きたら、知らない天井が目に入った。そしてすぐ隣に、素っ裸のうるかちゃんが寝転んでいた)

文乃 (そしていま、目覚めたうるかちゃんがわたしの身体にすり寄ってきている……)

うるか 「えへへ、文乃……」

スリスリ

うるか 「愛してるよ。えへへっ」

文乃 「………………」

文乃 (……ま、うるかちゃんかわいいし、うるかちゃんも幸せそうだし)

文乃 「わたしも愛してるよ、うるかちゃん……っ」

文乃 (これはこれで、いっか)


うるか編おわり

122 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 22:49:27 ID:joxzYPf2
………………緒方家 理珠の部屋

理珠 「……ふぅ。だいぶ進みましたね。少し休憩にしましょうか」

文乃 「そうだね。最近はわたしたちふたりだけでも勉強がしっかり進むようになってきたね」

文乃 「これも何もかも、成幸くんのおかげだね」

理珠 「そうですね。成幸さんのおかげで、基礎が身についてきたからだと思います」

文乃 「でも、今日はごめんね。急に泊まりで勉強したいなんて言い出して……」

理珠 「構いません。家に帰りたくないのでしょう?」

文乃 「……うん」 (今日はお父さんが一日中家にいるから……)

理珠 「……そんな顔しないでください。以前のパジャマパーティみたいなものですよ」

文乃 「ふふ、あのときは楽しかったね」

文乃 「今回は急だったから、うるかちゃんも紗和子ちゃんも来られなくて残念だけど……」

理珠 「また今度、ふたりもまじえてやりましょう」

文乃 「そうだね。ふふ、楽しみになってきちゃった」

理珠 「……さて、では休憩ついでにお茶でもいれてきます」

文乃 「あっ、わたしも行くよ」

123 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 22:50:04 ID:joxzYPf2
………………台所

理珠 「緑茶でいいですか?」

文乃 「うん。カフェインで眠気もすっきりだね」

理珠 「では、緑茶に最適な80度程度のお湯を、っと……」

コポポポポ……

文乃 (手慣れてるなぁ……。さすがはうどん屋の娘だよ)

文乃 (お茶をいれるのも手間取っちゃうわたしとは大違いだなぁ……)

ボイン

文乃 (それにしても、どこがとは言わないけど、パジャマだとますます強調されるなぁ……)

文乃 (お茶をいれるとき腋を締めてるから、余計に強調されて今にもこぼれそうだよ)

文乃 (……って、わたしは何で成幸くんみたいなこと考えてるんだろ)

理珠 「……? お茶、いれおわりましたけど、文乃?」

ジトーーッ

理珠 「何か、邪な念を感じたのですが……」

文乃 「へっ!? き、気のせいだよ!?」

124 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 22:50:36 ID:joxzYPf2
親父さん 「おっ、文乃ちゃん。いらっしゃい」

文乃 「りっちゃんのお父さん。お邪魔してます」 ペコリ

親父さん 「今日泊まってくんだろ? ゆっくりしていってくれな」

キョロキョロ

親父さん 「と、ところで、今日はあのヤロウ――センセイは来ないのかい?」

理珠 「今日は呼んでいません。前回だって呼んだのは関城さんですし」

理珠 「では、私たちは部屋に戻りますが……」 ジロッ 「くれぐれも覗いたりしないでくださいね」

親父さん 「なっ、何を言ってんだ理珠たま」 ギクッ 「そんなことするわけないだろう?」

理珠 「どうだか、です。では文乃、行きましょう」

文乃 「あっ、うん。では、今晩お世話になります、お父さん」

親父さん 「おう。気兼ねせず、自分の家みたいに過ごしてくれていいからなー」

125 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 22:57:01 ID:joxzYPf2
………………理珠の部屋

文乃 「ふふ……」

理珠 「……? 急に笑い出して、どうしました?」

文乃 「いや、お父さん、良い人だなと思ってさ」

理珠 「どこがですか? 娘の電話の着信に勝手に出たり、急にハグしてきたりするような父ですよ?」

理珠 「成幸さんにも暴力を振るったり脅したりしますし……」

文乃 「それだけりっちゃんのことが大事なんだよ」

理珠 「……べつに、そんなの嬉しくありません」 プイッ

文乃 「……わたしはうらやましいよ」

文乃 「うちのお父さんに比べたら、はるかに優しくて温かい人だから」

理珠 「あっ……」 シュン 「ご、ごめんなさい……」

文乃 「い、いやいや。こちらこそ、急に変なこと言ってごめんね!」

文乃 「りっちゃんの美味しいお茶を飲んで頭も冴えたし、そろそろ勉強を再開しよっか」

理珠 「そ、そうですね。では、あともうひと踏ん張り、がんばるとしましょう」

126 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 22:57:44 ID:joxzYPf2
………………

カリカリカリ……

文乃 「………………」

文乃 (……りっちゃんに悪いことしちゃったな)

文乃 (せっかく泊めてくれてるのに、気まずくさせるようなこと言っちゃった……)

理珠 「………………」

文乃 (……それにしても、改めて見ると、りっちゃんってとんでもないくらいの美少女だよね)

文乃 (背も小さくてかわいいし、その割には顔もしっかり小さくて子どもっぽくはないし……)

文乃 (……何より、おっぱいめちゃくちゃ大きいし)

ストーーーン

文乃 (ほんと、わたしとは大違い。なんでこんなに差があるんだろ……)

ズーン

理珠 「………………」 チラッ (……文乃、落ち込んでます)

理珠 (私が父を卑下したせいで、嫌な気持ちにさせてしまいました……)

理珠 (せっかく遊びに来てくれたのに、申し訳ないです……)

127 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 22:58:36 ID:joxzYPf2
理珠 (文乃に元気を出してもらうために、私が一肌脱ぎましょう)

理珠 (あまり自分のことを笑いのネタにするのは気が進みませんが……)

理珠 (文乃に元気を出してもらうためです。がんばります!)

理珠 「……文乃」

文乃 「……? どうかした、りっちゃん?」

理珠 「今日は急に泊まりに来たから、パジャマもないでしょう?」

理珠 「今日は私のパジャマを貸しますね」

スッ

理珠 「……って、私のパジャマは文乃には着られませんね。小さすぎて!」

バーン

理珠 (ど、どうですか。私の一世一代の自虐ネタは!!)

文乃 「………………」

イラッ

文乃 (自分の胸の小ささについて思い悩んでいたら巨乳の友人に煽られたわけだけど)

文乃 (えっ、待って? ひょっとして喧嘩売ってる? りっちゃん?) ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

128 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 22:59:15 ID:joxzYPf2
文乃 「……りっちゃん。いい度胸だな! だよ……」

ムニッ

理珠 「えっ……? な、なぜ涙目で私の頬をつねるのですか、文乃?」

理珠 「いまのは笑うところでは……?」

文乃 「笑えると思う!?」 ムニムニッ

理珠 「い、いはいれふ! ふいの!」

文乃 「そっ、そもそもね! こんなに大きい方がおかしいんだよ!」

ムギュッ

理珠 「!? な、なぜ胸を鷲づかみにするのですか!?」

文乃 「このっ……この乳が……この乳が……!!」

理珠 「父!? お父さんのことで私の胸に当たらないでくれませんか!?」

理珠 (なぜ自虐ネタまで披露した私が責められているのですか……!) ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

理珠 「こっ、この……! どうせ文乃には小さいことによる苦悩なんてわからないでしょうね!!」

文乃 「それで小さいつもりなの!? とことん喧嘩を売るつもりだねりっちゃん!?」

文乃 「いいよ! その喧嘩勝ってやる!! だよ!!」

129 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 22:59:50 ID:joxzYPf2
文乃 「だいたい! りっちゃんはずるいんだよ!!」

文乃 「そんなにかわいくて!! 男の子に好かれる低身長で!!」

文乃 「しかもおっぱいも大きい!? なんだその魅力的すぎる身体は!」

文乃 「その上飲食店の娘だから家事も大丈夫!? この、いいお嫁さんになるために生まれてきたような娘が! だよ!」

理珠 「い、言わせておけば! 文乃こそ、そんなに美人に生まれて何が不満なんですか!!」

理珠 「私なんて、低身長だから似合う服も少ないし、足が短いのだってコンプレックスですし!!」

理珠 「文乃は胸にこだわりすぎです!! それだけスラリとスタイル良くて何が不満なんですか!!」

理珠 「文乃は人の気持ちに敏感で気遣いができます!! いいお嫁さんになれるのはそっちでしょう!!」

文乃 「なっ……こ、こっちはまだまだ言えるよ!!」

理珠 「こっちだって!!」

文乃 「りっちゃんの分からず屋!! めちゃくちゃかわいくてズルいよ!!」

理珠 「文乃こそ分からず屋です!! それだけ美人で何が不満なのですか!!」

文乃 「だいたい、りっちゃんはねぇ……」

理珠 「文乃はいつもそうです!!」

………………

130 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 23:00:22 ID:joxzYPf2
………………翌朝

チュンチュンチュン……

文乃 「………………」 (……えっ、待って。ねえ待って)

文乃 (わたし、昨日の記憶があんまりないよ?)

文乃 (あの後、少し口論になって、お互いの胸や身体をもみ合って……)

文乃 (なんか、いつの間にか変な雰囲気になって、そして……)

理珠 「……ふっ、文乃……お、おはようございます……///」

理珠 「昨夜は、その……お世話になりました……」

理珠 「こっ……これからも……」 ギュッ 「よろしくお願いしますね……///」

文乃 (目覚めたら隣でりっちゃんが寝ていて、なぜだかわたしに抱きついてくる)

文乃 (……まぁ、いいか) フゥ (りっちゃんが幸せそうだし、何より……)

ムニムニッ

理珠 「あっ……/// ふ、文乃……」

文乃 (この胸をいつでも揉めると思えば)

理珠編おわり

131 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 23:01:30 ID:joxzYPf2
………………とあるマンション前

文乃 「………………」

文乃 「……はぁ」

文乃 (お父さんが家にいる日だから、お父さんが寝るまで外にいようと思ったけど……)

ザァアアアアアアアアアアア……

文乃 (天気予報では雨が降るなんて言ってなかったのに……)

文乃 (傘も持ってないし、やむまでこのマンションのエントランスで雨宿りさせてもらおう……)

文乃 「……くしっ」

文乃 (うー、寒いなぁ……。少し雨に打たれちゃったし……)

文乃 (風邪、引かないといいなぁ……)

文乃 (あっ……ひとが来た。このマンションの人かな。邪魔にならないようにしないと……)

?? 「……? あら」

文乃 「……? あっ……。き、桐須先生!?」

真冬 「古橋さん、こんなところでどうしたのかしら?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

132 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 23:02:11 ID:joxzYPf2
文乃 「うぅ……」 (相変わらず怒ってるような顔で怖いなぁ……)

文乃 「じ、実は、雨に降られちゃって……。傘もないし、ちょっと雨宿りしてるんです……」

文乃 「へくしっ……」

真冬 「なっ……」

真冬 「あなた濡れているじゃない。雨に打たれたのね」

文乃 「そ、そうですけど……」

真冬 「バカ。もう冬も間近なのに、そんな格好で濡れたまま外にいたら間違いなく風邪を引くわよ」

真冬 「傘を貸してあげるから、すぐに家に帰りなさい」

文乃 「い、いや、それは……」

真冬 「……?」

文乃 「………………」 プイッ

文乃 (桐須先生は怖いから、言うことを聞きたいけど……)

文乃 (でも、それより、お父さんがいる家に帰るのは……)

文乃 「……いや、です」

133 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 23:02:44 ID:joxzYPf2
真冬 「………………」

ハァ

真冬 「……仕方ないわね。ほら、来なさい」

文乃 「えっ……?」

真冬 「私はこのマンションに住んでいるの。とにかく冷えた身体を温めなさい」

文乃 「えっ……? そ、それって……」

真冬 「……じれったいわね。家に来なさいということよ」

ガシッ

文乃 「あっ……で、でも、先生の家にお邪魔するなんて、さすがに悪いというか……」

真冬 「受験生をそのまま放置できないでしょう。風邪でも引かれたら迷惑だわ」

文乃 「うっ……」 (とても厳しくて怖い言葉……でも……)

文乃 (桐須先生の手、冷たくて……)

文乃 (少し、触れた感じが、お母さんみた――)

ハッ

文乃 (わ、わたしは何を考えてるのかな!?)

134 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 23:03:30 ID:joxzYPf2
………………真冬の家

文乃 「うわぁ……」

ピカピカピカ……

文乃 「桐須先生の家、きれいですね。先生の家、って感じです」

真冬 「当然よ。大人たるもの、身の回りのことをまず完ぺきにこなさなければならないわ」

真冬 (昨日唯我くんが掃除しに来てくれて助かったわ……)

真冬 「ほら、わたしの着替えとタオルを貸してあげるから、シャワーを浴びてきなさい」

文乃 「……すみません」

真冬 「謝るくらいなら家に帰るべきだと思うけれど」

文乃 「うっ……」

真冬 「………………」 ハァ 「……風邪を引く前にシャワーを浴びてきなさい」

文乃 「……はい」

135 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 23:04:22 ID:joxzYPf2
………………風呂場

文乃 「……うわぁ、すごい」

文乃 (お風呂場の壁や床はおろか、シャワーヘッドまでピカピカだよ……)

文乃 (本当にきれい好きなんだなぁ、桐須先生って……)

文乃 (やっぱり、仕事から家事まで、何もかも完ぺきな人なんだなぁ……)

文乃 「………………」

文乃 「……すごいなぁ」

文乃 (あんなに美人で授業も上手で仕事もバリバリこなしてるのに、家事まで完ぺきなんて……)

文乃 (……わたしとまるで正反対だよ)

文乃 「……はぁ。やめよう」

文乃 (考えたって、気が滅入るだけだよ)

136 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 23:05:17 ID:joxzYPf2
………………

文乃 「シャワーありがとうございました、先生」

真冬 「ええ。制服はエアコンの風を当てているから、すぐに乾くと思うわ」

文乃 「ありがとうございます。何から何まで……」

真冬 「……気にしなくていいわ。教師として当然のことをしているまでのことよ」

真冬 「温かいお茶もいれておいたわ。こっちに来て座って飲みなさい」

文乃 「す、すみません。いただきます……」

真冬 「………………」 カタカタカタ……

文乃 「……え、えっと……家でもお仕事ですか? 大変ですね」

真冬 「大変と思ったことはないわ。仕事だから当然のことよ」

文乃 「そ、そうですか……」

文乃 (やっぱり、冷たくて怖い人……)

文乃 (……でも、わたしをムリに家に帰すわけじゃなくて、家に招き入れてくれた)

文乃 (『教育係』 をしてもらっていたときは、気づかなかった……)

文乃 (先生はひょっとして、優しい人なのかな……?)

137 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 23:05:58 ID:joxzYPf2
真冬 「………………」

真冬 「……喋りたくなければ喋らなくていいのだけど」

文乃 「は、はい?」

真冬 「どうして家に帰りたくないのか、教えてもらってもいいかしら?」

文乃 「………………」

文乃 「……お父さんに、会いたくなくて」

文乃 「眠る時間まで、外にいたかったんです……」

真冬 「……なるほど。わかったわ」

スッ

文乃 「へっ……? ノートとペンを持って、どうしたんですか?」

真冬 「聞いてしまった以上、見過ごせないわ。どうしてお父さんに会いたくないのか、言いなさい」

文乃 「えっ……そ、それは……ちょっと、言いたくない、です……」

真冬 「ダメよ。あなたは “お父さんに会いたくない” と言ってしまった」

真冬 「子どものSOSの言葉を受けてしまった。教師として、それをそのまま見過ごすことはできないわ」

真冬 「あなたが喋りたくなくても、私は絶対に聞くわ。だから、喋りなさい」

138 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 23:07:17 ID:joxzYPf2
文乃 「せ、先生……?」

真冬 「………………」 ジッ

文乃 (厳しい言葉。義務感から来るような、堅苦しい、言葉……)

文乃 (でも、どうしてだろう。桐須先生のその言葉から、とてつもない温かみを感じる……)

文乃 「き、聞いてくれるんです、か……?」

真冬 「……ええ。もちろんよ。私はあなたの先生だもの」

真冬 「お願い。話して。子どもの言葉を、私は絶対に投げ出したりしないから」

真冬 「もしあなたがSOSを訴えているなら、教師として……」

真冬 「……いえ。大人として、それを見過ごすことは絶対にできないのよ

文乃 「………………」

グスッ

文乃 「……わたし……わたし……っ」

文乃 「……お父さんのことが、怖くて……」

139 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 23:08:02 ID:joxzYPf2
………………

文乃 「……すみません、先生。お話聞いてもらっちゃって」

真冬 「気にしないで。これも仕事よ」

真冬 (……話を聞く限り、ネグレクトと呼べるか呼べないかギリギリのラインね)

真冬 (小学生当時から今の生活を続けていたとしたら、間違いなくネグレクトだけれど……)

真冬 (高校生段階の今、明確にネグレクトと言うことはできないでしょうね……)

真冬 (直接的な心身に対する暴力もいまはないようだし)

真冬 (……彼女にとっては本当に心の底からいやなことなのだろうけど、)

真冬 (いまの生活を続けてもらうしかないわね……)

文乃 「………………」

文乃 (……仕事。まぁ、そうだよね)

文乃 (わたしなんて、先生にとってはたくさんの生徒のうちのひとりだもんね……)

グスッ

文乃 (あっ……ど、どうしてまた、涙が出てくるんだろ……)

140 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 23:08:32 ID:joxzYPf2
真冬 「………………」

ギュッ

真冬 「……つらかったのね」

文乃 「あっ……」 (やっぱり、そうだ……)

文乃 (先生の手、少しひんやりして、でも心地良く包み込んでくれる……)

文乃 (まるで、お母さんの手みたい……)

真冬 「……お父さんが寝るまで家にいてもらって構わないわ」

真冬 「ただし、高校生ひとりで帰れるような時間でないでしょうから、私が送っていくわ」

文乃 「……すみません。ありがとうございます」

真冬 「……ふふ」

文乃 「……? どうしたんですか?」

真冬 「ごめんなさい。『教育係』 をしていたときは、あなたの泣く姿なんて想像もつかなかったから、少しおかしくて」

文乃 「なっ……」

プイッ

文乃 「な、泣いてなんかないです! 少し涙ぐんじゃっただけで……」

141 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 23:09:25 ID:joxzYPf2
真冬 (さっきまでわぁわぁ泣いていたくせに、まったく、気丈な子ね……)

真冬 「部屋が暖まってきて、少し暑くなってきたわね」

真冬 「涙で水分も減ってしまったようだし、ジュースでも持ってくるわ」

文乃 「あっ、お構いなく……」 ハッ 「……じゃなくて! 泣いてなんかないですってば!」

文乃 (……まったくもう)

文乃 (でも、先生の手……)

文乃 (本当にお母さんみたいだった……)

ドキドキドキドキ……

文乃 (わ、わたし、何考えてるんだろ……)

真冬 「……はい、どうぞ」

コトッ

文乃 「あ、ありがとうございます。いただきます」 ゴクリ 「……?」

文乃 (このジュース、何か変な味がするような……?)

文乃 (あ、あれ? なんか心がふわふわする? 周りが回って見える……?)

真冬 (ノドが乾いたわね。私も一杯いただこうかしら) ゴクッ

142 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 23:10:21 ID:joxzYPf2
真冬 「………………」

文乃 「……? 先生?」

真冬 「……古橋さん」

文乃 「は、はい!」

真冬 「……ぐすっ……えぐっ……」

文乃 「……えっ?」

真冬 「うわぁああああああああああああああああん!!!!」

ギュッ

文乃 (何事!? 桐須先生が急に泣き出して抱きついてきたよ!?)

文乃 (あっ……でも、なんか変な気分。悪い気はしないというか……)

文乃 (なんか、身体が熱いなぁ……)

文乃 「せ、先生? 一体どうしたんですか?」

真冬 「いままでつらかったわね! 大変だったわね……」

真冬 「あなたの苦悩を思うと、涙が止まらないわ……」

文乃 「先生……」

143 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 23:11:12 ID:joxzYPf2
真冬 「古橋さん、あなたは偉いわね……」

ナデナデナデナデナデナデ

文乃 「………………」 ポワポワ

文乃 (あっ……桐須先生がわたしの頭を撫でるなんて……)

真冬 「いままで、大変なことに耐えてがんばってきたのね……」

真冬 「理系の勉強だって一生懸命がんばってるわね……」

真冬 「偉いわ。本当に偉いわよ……」

ナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデ

文乃 「せ、先生……」 (わたしたちのこと、本心では認めてくれてたんだ……)

文乃 (お母さんみたいな手が、わたしのこと、撫でてくれてるんだ……)

キュン

文乃 「せ、先生……」

真冬 「なぁに? 古橋さん」 ニコッ

144 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 23:11:48 ID:joxzYPf2
文乃 「わ、わたしも、抱きついてもいいですか……?」

真冬 「ええ。もちろんよ。いらっしゃい?」

文乃 「……えへへ。桐須先生……っ」

ギュッ

真冬 「ふふ。可愛い子ね、古橋さん。良い子よ。偉いわ」

文乃 「せっ……先生!」

ムギュッ

真冬 「甘えんぼさんね。ふふふ、偉いわ。いいこいいこ」

文乃 「えへへー、もっと撫でて?」

真冬 「いいわよ。ほら」

ナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデ

文乃 (ふぁ……なんか、車酔いしたときみたいに、視界がグルグル回って……)

文乃 (なんか、すごく幸せな気分……?)

文乃 (ああ、それにしても……) ゴクリ (桐須先生って、かわいいよね……)

145 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 23:12:18 ID:joxzYPf2
………………翌朝

チュンチュンチュン……

真冬 「………………」

サァアアアアアアアア……

真冬 (青ざめるどころの騒ぎじゃないわ。頭から血が一斉に抜け落ちたかと思ったわ)

文乃 「先生っ。おはようございますっ!」

文乃 「ねえ、先生。朝も撫でてください。お願いします」

真冬 「え、ええ……」 ナデナデ

文乃 「きゃーっ。嬉しいです、先生。えへへ、大好きっ」 ギュッ

真冬 (目覚めたら教え子の少女が裸で隣に寝ていた。しかも目をハートマークにして抱きついてくる)

真冬 (ああ、そうね。これはつまり……)

真冬 「……減俸、停職……いや、懲戒免職……と、いうよりは……」

ガタガタガタガタ

真冬 「……逮捕、かしら」

真冬編おわり

146 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 23:13:02 ID:joxzYPf2
………………古橋家 玄関前

あすみ 「………………」

あすみ (……まさかまた仕事でここに来ることになるとはな)

あすみ (ったく、古橋の奴。もう一回家事代行呼ぶくらいならあのときやらせろっての)

あすみ (今回も冷やかしだったら許さねーからな……)

ガチャッ

文乃 「……お待たせしました。小美浪先輩」 キョロキョロ

あすみ 「……? 心配しなくても、電話で言われたとおり今日はアタシひとりだよ」

文乃 「そ、そうですか……」 ホッ 「よかった……」

文乃 「さ、どうぞどうぞ。もうおなかペコペコなんですよ」

あすみ 「おう。じゃ、お邪魔しまーす、っと……!?」

あすみ 「ごはっ……!?」 (な、なんだ、この尋常じゃない異臭は……!?)

あすみ (この世のものとは思えないこの臭いは……台所からか!?)

文乃 「……お料理しようと思ったら少し失敗しちゃって……」

文乃 「すみませんが、よろしくお願いします、先輩」

147 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 23:13:36 ID:joxzYPf2
………………台所

あすみ 「……おい、古橋」

文乃 「はい」

あすみ 「これのどこが、“少し失敗しちゃって” なんだ?」

あすみ (……なんだこの大惨事は)

あすみ (何で魚をまるごと鍋にぶち込んでるんだ?)

あすみ (何で野菜を切らずにそのまま鍋に放り込んでるんだ?)

ゴトゴトゴト……!!!!

あすみ (何で炊飯器から何かが暴れるような音がするんだ!?)

あすみ 「お前この惨状は一体なんだ!?」

文乃 「……うぅ、面目ないです」

あすみ 「これの後始末を人に押しつけられるお前の胆力を恥じた方がいいと思うぞ……」

ハァ

あすみ 「……仕方ねぇ。仕事だしな」

あすみ 「ここは責任持ってアタシがきれいにするから、少し向こうで待ってろ」

148 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 23:14:16 ID:joxzYPf2
………………

文乃 「……はぁ」

文乃 (結局あれから、先輩は凄まじい速度で台所をきれいにして、)

文乃 (家中の掃除を終わらせ、晩ご飯の準備まで終わらせてしまった……)

あすみ 「いやー、悪いな。アタシまでごちそうになっちゃって」

文乃 「気にしないでください。作ったの小美浪先輩じゃないですか」

あすみ 「にしし、まぁそれはその通りだけどさ」

あすみ 「にしても……」

ゴォォオオオオオ!!!!

あすみ 「すげー嵐だな。こりゃ当分やみそうにないな……」

文乃 「天気予報だと、明け方まで続くそうですよ?」

あすみ 「しまったな。嵐が来るってわかってりゃ、スクーターじゃなくて徒歩で来たんだけどな……」

文乃 「すみません、嵐が来るような日に家事代行頼んでしまって……」

あすみ 「あ? いやいや、そんなのお前が気にするようなことじゃねーよ」

あすみ 「仕事受けたのはこっちだからな。ま、なんとか帰るさ」

149 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 23:15:37 ID:joxzYPf2
文乃 「でも、危ないですよ……」

文乃 「もし先輩さえよければ、今日はうちに泊まっていきませんか?」

あすみ 「えっ……? いや、それは……ありがたいっちゃありがたいが……」

あすみ 「親御さんだっていらっしゃるだろうし、迷惑だろ」

文乃 「大丈夫です。うちは父しかいませんし、その父も今日は帰ってきませんから」

文乃 「寝間着はわたしのを貸しますし……だから先輩、どうぞ泊まっていってください」

あすみ 「あー……」

あすみ 「……じゃあ、悪い。正直言ってすごく助かるし、お言葉に甘えさせてもらってもいいか?」

文乃 「もちろんです!」

文乃 「ごはん食べ終わったら、一緒に勉強しましょう?」

あすみ 「……お前、まさか、アタシに勉強教わるのを期待して泊まってけなんて言ったんじゃないだろうな?」

文乃 「えっ? い、いやいや、そんなこと……まぁ、少しはありますけど……」

あすみ 「……はぁ。ったく、仕方ねーな。ま、いまのお前はアタシの雇い主だからな」

あすみ 「家事代行ついでに、後輩代わりに臨時の 『教育係』 やってやるよ」

150 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 23:16:41 ID:joxzYPf2
………………

あすみ 「二次不等式は、早い話が二次方程式の応用だ」

あすみ 「単純に考えろ。イコールで結ばれていた両辺が、大なりと小なりで結ばれてるだけだ」

文乃 「ふむふむ……」

あすみ 「イコールがついてりゃ以上か以下、ついてなけりゃ “より大きい" か “より小さい" かだ」

あすみ 「ふたつの式で変数に対しての関係性が暴かれりゃ、あとは数直線で考えれば一目瞭然だろ?」

文乃 「なるほど! 今まで、数学って何が何でも数式で解かなきゃって思ってましたけど、」

文乃 「図を使った方が分かりやすければ図を使ってもいいんですね!」

あすみ 「共通一次はマークシートだ。最終的に答えさえ出りゃいいからな」

文乃 「よーし! 今の感覚を忘れないうちに練習問題解きまくるぞー!」

あすみ 「おう、がんばれ」

あすみ (……ったく。分かった途端目の色変えやがって)

あすみ (なんか、勉強をしはじめた小学生みたいだな、こいつ)

あすみ (……本当に、苦手なことでも、あきらめずがんばろうとしてるんだな)

151 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 23:17:37 ID:joxzYPf2
………………

あすみ 「風呂、貸してくれてありがとな。温まったよ」

あすみ 「着替えも、助かる。悪いな。雇われた身なのに、何から何まで……」

あすみ 「さすがに古橋のパジャマだから、あたしにはぶかぶかだけど……」

文乃 「いえいえ。気にしないでください、先輩。わたしも勉強を教えてもらって助かりましたから」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

文乃 「それより、ぶかぶかって、わたしが太ってるって意味ですか?」

あすみ 「太ってる太ってない以前にそもそも体格がアタシとお前じゃ全然違うだろ……」

あすみ 「……お前ってさ、そんだけスラリとしてスタイルいい身体に対して、何が不満なわけ?」

文乃 「不満だらけですよ。すぐに体重増えるし、そのくせ……」

文乃 (むねはこれっぽっちも大きくならないし!!)

あすみ 「ちんちくりんのアタシよりよっぽどいいと思うけどな」

あすみ 「背が低いと大変なんだぞ? この世は身長150cm以下の人間に対して厳しいからな」

あすみ 「図書館なんて、アタシが背伸びしたって届かない位置に本がたくさん並んでるんだぜ? 嫌にもなるよ」

152 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 23:18:22 ID:joxzYPf2
文乃 「……ないものねだりですよ。わたしだって、背が低い方がいいとは思いませんけど、」

文乃 「わたしにだって、わたしなりの悩みがありますよ」

あすみ 「……ま、そりゃそうか」

あすみ 「でも、後輩はお前みたいな正統派美少女がタイプなんじゃないか?」

文乃 「え……?」

カァアアアア……

文乃 「い、いきなり何を言うんですか、先輩……」

あすみ 「顔真っ赤にしちまって、かわいーなー、古橋?」 ニヤニヤ

文乃 「ま、前も言いましたけどね、わたしはべつに、成幸くんのことなんて、なんとも思ってないですから!」

文乃 「ヘンなこと言うのも大概にしてください!」

あすみ 「へー。なんとも思ってない、ねぇ?」

あすみ 「なんとも思ってない男子のことを、名前にくん付けで呼ぶのかー。すごいなー。恐れ入ったわー」

文乃 「そ、それは……だから、ただの、姉弟ごっこで……」

あすみ 「ほぅ。じゃあ、姉弟ごっこをまだ続けてるのか?」

文乃 「そうではないですけど……」

153 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 23:19:16 ID:joxzYPf2
あすみ 「にひひ。じゃあお前は、姉弟ごっことやらが終わった後も、後輩を名前で呼びたいわけだ?」

文乃 「ち、違いますよ! なんとなくそうなっちゃっただけで……」

あすみ 「ふーん。まぁ、そういうことにしておこうかね」

文乃 「……むっ。そういう先輩こそ!」

文乃 「成幸くんから聞きましたよ! キス写真を撮ったり、ふたりきりで海に行ったりしたって!」

あすみ 「あん? 仕方ねーだろ。あいつには恋人役をやってもらってるんだから」

文乃 「先輩の事情は知りませんけど、事情があるからって、何とも思ってない相手に恋人役なんかやらせます?」

あすみ 「うっ……そ、そりゃ、まぁ……後輩のことは、べつにキライじゃないし……」

文乃 「嫌いじゃない? それって好きってことじゃないですか!」

あすみ 「なっ……何を言い出すんだお前は。好きなわけないだろ」

文乃 「へー! じゃあ言いますけど、わたし成幸くんにキス写メ見せてもらいましたけどね!」

あすみ (何見せてんだあいつ!?)

文乃 「顔真っ赤にしてる成幸くんに誤魔化されがちですけど!!」

文乃 「先輩の顔もほんのり赤みがかってましたからね!? 恥ずかしそうに!」

あすみ 「なっ……そ、そんなわけねーだろ!!」

154 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 23:19:58 ID:joxzYPf2
文乃 「っていうかさっきケータイの待ち受け、ちらっと見ちゃいましたけど!!」

文乃 「先輩、成幸くんとのキス写メを待ち受けにしてますよね!?」

あすみ 「なっ……ち、ちがっ、こ、これは……っ」

あすみ 「お、親父を誤魔化すための、小細工、っつーか……その……」

文乃 「………………」

ハッ

文乃 「……す、すみません、先輩。言いすぎました。つい白熱しちゃって……」

あすみ 「いや、こっちこそすまん。アタシも言いすぎた……」

文乃 「………………」

あすみ 「………………」

文乃 「……あ、あの、先輩。これ、絶対、内緒ですけど……」

あすみ 「……ん?」

文乃 「正直言うと、わたし、成幸くんにときめいたこと、一度や二度じゃすまないくらい、あるんです」

あすみ 「えっ……」

155 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 23:20:36 ID:joxzYPf2
文乃 「好きとか聞かれると、わかりません……」

文乃 「でも、決して、嫌いじゃないというか……」

文乃 「成幸くんだったら、いいかな、なんて思うことも、時々合って……」

文乃 「でも、りっちゃんもうるかちゃんも成幸くんのことが好きだから」

文乃 「……こんな中途半端な気持ちじゃ、ふたりには勝てないって、わかるから……」

あすみ 「……そっか」

あすみ 「実は、アタシもそうなんだよ」

あすみ 「親父を誤魔化すためとか言いつつ、あいつとふたりで過ごす時間が楽しくてさ」

あすみ 「好きとか、そういう言葉にはできないけど……きっと、アタシはあいつを憎からず想ってる」

あすみ 「でも、あの緒方と武元が相手じゃな」

あすみ 「勝てるとも思えんし、そもそも自分に勝つ気があるのかもわからんし……」

文乃 「先輩……」

あすみ 「……アタシたち、似たもの同士だな」

文乃 「で、でも、先輩は家事が大得意だし、気配りもできるし、体力もあるし……」

文乃 「わたしにはないもの、たくさん持ってるから、きっと、成幸くんだって……」

156 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 23:21:23 ID:joxzYPf2
あすみ 「そんなの、さっきと一緒だろ。お前が持ってて、アタシが持ってないものだってたくさんある」

あすみ 「アタシはお前みたいに綺麗じゃないしさ。お前みたいにおしとやかでもない」

文乃 「なっ……!」 ムカッ 「だから、先輩はキレイですって! すごい美人のくせに、何言ってるんですか!!」

文乃 「わたしなんて、お菓子食べてばっかりのおデブなのに……!!」

あすみ 「なっ……」 カチン 「お前いい加減にしろよ!? あたしみたいなちんちくりんを前にして、自分をまだ卑下するか!?」

あすみ 「お前がデブだと!? それなら人類ほぼ全員デブだよ!!」

ギュッ

文乃 「ひゃっ……/// お、お腹に手を回さないでください!」

あすみ 「こんなに細いウエスト回りのくせに、何がデブだ!!」

文乃 「せ、先輩こそ! 何がちんちくりんですか!! 実は身長に対して脚すごく長いくせに!!」

文乃 「顔だって小さいし、すごい美人さんだし……何より!!」

ムニュッ

あすみ 「なっ……/// き、急に胸を揉むな!!!」

文乃 「先輩細いから目立たないけど、アンダーに対してトップ結構ありますよね!?」

文乃 「カップ的には大したことないかもしれないけど、これ実はかなりの胸ですよ!?」

157 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 23:22:07 ID:joxzYPf2
あすみ 「な、何をぅ〜〜〜!!」

あすみ 「この正統派美少女! おしとやか!! 黒髪美人!!!」

文乃 「こっちだって負けませんよ!!」

文乃 「かわいいのにキレイ! くびれもある!! 胸もある!!!」

あすみ 「ぬぬぬ……!!!」

文乃 「ぐぐぐ……!!!」

あすみ 「この!! こうなったら夜通しお前のいいところ言いまくってやる」

文乃 「望むところですよ! 先輩のいいところで言い負かしてやります」

バチバチバチバチ……!!!

158 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 23:22:40 ID:joxzYPf2
………………翌朝

チュンチュンチュン……

文乃&あすみ 「「………………」」 ズーン

文乃 「……あ、あの先輩」

あすみ 「おう……」

文乃 「……昨晩のことは、お互い、忘れましょう」

あすみ 「そうだな。忘れた方がいいな」

あすみ 「お互いのいいところを言い合っていたら、いつの間にか変な雰囲気になって……」

あすみ 「……チョメチョメ……しちゃったなんて……」

文乃 「なっ……/// なんで言うんですか……」 ウルウル

文乃 「せっかく忘れようとしてたのに……忘れられなくなっちゃったじゃないですか……///」

あすみ 「……忘れる気なんてなかったくせに」

ガバッ

文乃 「あっ……せ、先輩……///」

あすみ編おわり

159 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 23:23:20 ID:joxzYPf2
………………一ノ瀬学園 化学室

紗和子 「……ぐすっ、えぐっ……」

紗和子 「それでね、ひどいのよ、緒方理珠……」

紗和子 「私は、緒方理珠のことを思って、突き飛ばしたのに……」

紗和子 「“キライです” だなんて……」

紗和子 「えぐっ……」

文乃 「よしよし。つらいね。いやだね。大丈夫だよ、紗和子ちゃん」

文乃 「きっとりっちゃんも本心からの言葉じゃないからね……」

紗和子 「うぅ……うわぁああああああああああああああん」 ガバッ

文乃 「……っとと。おー、よしよし」 ナデナデ

文乃 (なんでわたし、紗和子ちゃんの相談受けて抱きつかれてるんだろう……)

文乃 (まぁ、いいけどさ……)

ムラッ

文乃 (……よく見たら、紗和子ちゃんってすごくおとなっぽくてきれいだよね)

160 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 23:24:03 ID:joxzYPf2
紗和子 「うっ……ぐすっ……」

文乃 「………………」

ゴクリ

文乃 (そんな子が、自分の胸の中で泣いてるって考えると……)

ゾクゾクッ

文乃 「……ねぇ、紗和子ちゃん」

紗和子 「……な、なに?」 ウルウル

文乃 (あっ、涙目で上目遣い。超可愛い。うん。もうむり)

ギュッ

紗和子 「えっ……? ふ、古橋さん……?」

文乃 「今は、“文乃” って呼んで?」

紗和子 「ふぇっ……?」

文乃 「今から、りっちゃんのことなんて忘れさせてあげる」

161 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 23:24:43 ID:joxzYPf2
………………翌朝

チュンチュンチュン……

文乃 「……ふぅ」

紗和子 「でへ、でへへ……」

紗和子 「文乃様ぁ……でへへ……」

文乃 「紗和子ちゃんの攻略難度、低すぎだよ。チョロいね」

文乃 「でもまぁ、悪くなかったし……」

ニヤリ

文乃 「ほら、起きて、紗和子ちゃん。もう一戦、行くよ?」

紗和子 「あっ……ふ、文乃様……っ」

紗和子編おわり

162 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 23:25:31 ID:joxzYPf2
………………唯我家

文乃 「あなたはだんだん、わたしのことをお兄ちゃんだと思うようになーる」

水希 「うっ……」

ブラン……ブラン……

水希 (だ、ダメよ。催眠術なんかに負けちゃ……)

水希 (この人はお兄ちゃんをたぶらかそうとする、女……)

水希 (決して、お兄ちゃんなんかじゃ――)

文乃 「どうしたんだ、水希? 俺だよ? 成幸だよ?」

水希 (あっ……)

水希 「………………」

水希 「……えへへ、お兄ちゃん♪」 ギュッ

文乃 「よしっ」

文乃 (……でも、さすがに中学生相手に朝チュンは犯罪だからやめとこう)

水希編おわり

163 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 23:26:01 ID:joxzYPf2
………………深夜 古橋家

文乃 「………………」

パチッ

文乃 「………………」

ガバッ

文乃 「は、はぁあああああああああああ!?」

文乃 (なんてアホな夢を見たのかな、わたしは!?)

ドキドキドキドキ……

文乃 「ゆ、夢だよね……? 夢でよかった……」

? 「……? どうかしたの、文乃?」 モゾッ

文乃 「いや、ちょっと怖い夢をみちゃって……」

文乃 「……えっ? う、うるかちゃん!?」

うるか 「もー、うるさいなー。ゆっくり寝られないよー」 ギュッ

理珠 「まったくです。ほら、ぎゅってしてあげますから、怖い夢なんかわすれましょう」 ムギュッ

文乃 「りっちゃんまで!?」

164 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 23:26:37 ID:joxzYPf2
真冬 「……まったく。いつまでたっても子どもなのだから」 ギュッ

あすみ 「ま、そんなところもかわいいんだけどな……」 ギュッ

紗和子 「文乃様ぁ、私の方にも来てください……っ」 ギュッ

水希 「お兄ちゃん。わたしがなでなでしてあげるね」 ナデナデ

文乃 「う、うそ……」

ガタガタガタガタ……

文乃 (全部夢じゃなかったの!? 現実!?)

文乃 (わたしほんとに全員に手を出して全員に惚れられたのーーー!?)

うるか 「えへへ、文乃。あたし、幸せだよ」

理珠 「私もです。幸せですよ、文乃」

真冬 「文乃さん。あなたは私が守るわ」

あすみ 「家事なら任せろ。お前の身の回りの世話は全部アタシがやってやる」

紗和子 「私は文乃様の犬です……はぁはぁ……」

水希 「お兄ちゃんのためだったら、わたしなんでもするからね」

文乃 「た、たたた……」 ブルブルブル 「助けてーーーーーーー!!」

165 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 23:27:14 ID:joxzYPf2
………………幕間 「全部夢です」

文乃 「ひっ……た、助け……助けて……」

成幸 「………………」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 「……どんな怖い夢を見てるのか知らないけどな」

成幸 「勉強中に寝るなー!!! 早く起きろ古橋ーーーーー!!!」


おわり

166 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/12(月) 23:31:09 ID:joxzYPf2
>>1です。
読んでくださった方、ありがとうございました。

そして本当にごめんなさい。申し訳ない気持ちで一杯です。
まとめサイトの方。まとめていただいても構いませんが、
>>115>>116の注意書きの部分も載せてもらえると助かります。
それから、念のため、桐須先生編で文乃さんが飲んでいるのは気分が良くなるジュースです。お酒ではありません。


>>112さんのご指摘も真摯に受け止めて、今後のSSに生かしたいと思います。

アホな話を書いてしまいましたが、また懲りずに読んでいただけたら嬉しいです。

ではまた、折を見て投下します。

167 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/13(火) 12:59:57 ID:GoDNbc2k
この投稿頻度はほんとすごい

168 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/13(火) 22:06:34 ID:4XzavnYU


>>112だけど、文句言っといてあれだけど>>1の好きに書くのが一番だと思ってるよ。
前スレの含め全作品楽しんで読んでます。

169 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/14(水) 00:17:19 ID:VRyh5Eec
ゆりゆりや

170 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/14(水) 00:35:35 ID:xdZFqhxY
>>1です。
投下します。



【ぼく勉】 紗和子 「あのときの私のように」

171 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/14(水) 00:36:31 ID:xdZFqhxY
………………公園

紗和子 「………………」

ゴクッ……

紗和子 「……ふぅ」

紗和子 (放課後に公園で飲む缶コーヒーは格別ね)

ワーワーワー……

紗和子 「……ふふっ。この公園は小さなサッカーコートがあるのね。フットサルって言うのかしら?」

紗和子 (遊び回る子どもたちを眺めながらコーヒーをすするというのもまた趣深いわね)

紗和子 (……サッカーはあまり得意ではなかったけれど、やるのは楽しかった憶えがあるわ)

紗和子 (小学生くらいのときは、私もあんな風に遊び回っていたかしら)

紗和子 (男の子と女の子がいりまじって遊んでるのね。楽しそうでうらやましいわ)

紗和子 (……なんて、高校生の私が考えることじゃないかしら)

172 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/14(水) 00:37:02 ID:xdZFqhxY
紗和子 (……いつからかしら。あんな風に遊べる友達が、いなくなってしまったのは)


―――― 『またガリ勉関城が平均点上げてるよ』

―――― 『平均点以下の奴補習だってさ』

―――― 『うえーっ』

―――― 『もっと空気読んでくれよー』


紗和子 「っ……」

紗和子 (……いけない。いやなことを思い出してしまったわ)

紗和子 「………………」

紗和子 (小学校の頃は、何も考えなくてよかったのに)

紗和子 (遊ぶのも勉強するのも、どちらも楽しくて……)

紗和子 (でも、中学校にあがって、勉強がすごく楽しくて……でも……)

173 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/14(水) 00:40:57 ID:xdZFqhxY
紗和子 「………………」

紗和子 (やめましょう。考えても詮無いことだわ)

紗和子 (それに、今は緒方理珠たちと一緒で、とても楽しいし……)

コロコロコロ……

紗和子 「あら?」

ヒョイッ

紗和子 (サッカーボール? あの子たちがこっちに蹴飛ばしてしまったのね)

クスッ

紗和子 (仕方ない。投げ返してあげるとしましょうか……――)


「――おまえ、いい加減にしろよ!」


紗和子 「えっ……?」

紗和子 (さっきまでサッカーをしていた子たちが、言い争ってる……?)

174 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/14(水) 00:41:27 ID:xdZFqhxY
女の子 「な、なんだよ……! なんでそんなに怒ってるんだよ!」

男子1 「さっきだって言っただろ! それじゃこっちが楽しくないって!」

男子2 「そうだよ。またひとりでドリブルして、ゴールして……」

男子3 「おまえと同じチームになるとボールが回ってこなくてつまらないし」

男子4 「おまえと敵になると、ドリブルだけで抜かれるからどうしようもないんだよ」

女の子 「そ、そんなの……」 ギリッ 「そんなの、ヘタクソなおまえらが悪いだけだろ!」

女子1 「ひっ……」 グスッ 「わ、わたしだって、好きでヘタなわけじゃない、のに……」

女の子 「あっ……ち、違う。きみに言ったわけじゃなくて……」

男子1 「ふん。じゃあ俺たちに言ったのかよ」

女の子 「っ……」

男子2 「……なぁ、もう帰ろうぜ。これ以上言っても、こいつにはわかんないよ」

男子3 「だな。ほら、泣き止めって……」

女子1 「えぐっ……ひぐっ……」

男子1 「……じゃーな」

女の子 「………………」

175 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/14(水) 00:42:15 ID:xdZFqhxY
紗和子 「………………」

ドキドキドキドキ……

紗和子 (と、とんでもないものを見てしまった気がするわ……)

紗和子 (っていうか、このサッカーボール、どうしたらいいかしら?)

紗和子 (子どもたちは帰ってしまうようだし、拾ってしまった手前、また置くのもはばかられるし……)

女の子 「………………」

チラッ

女の子 「あっ……」

紗和子 「……!?」 (め、目が合った……)

女の子 「………………」 トトトトト……

女の子 「……すみません。拾ってくれたんですね。ありがとうございます」

紗和子 「あ……ど、どういたしまして」

176 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/14(水) 00:42:51 ID:xdZFqhxY
………………しばらくして

女の子 「………………」

ポーン……ポーン……ポーン……

紗和子 「………………」 (あれからしばらく経つけど……)

紗和子 (あの子、他の子たちがいなくなってからずっと、ひとりで壁に向かってボールを蹴ってるわ)

紗和子 (受験生としては、そろそろ帰って勉強をしたいところだけれど……)

女の子 「………………」

紗和子 (……あの子の悲しそうな顔が気になって、帰る気にならないのよね)

紗和子 (まぁ、勉強道具がないわけではないし……)

紗和子 (近くの自販機で缶コーヒーならいくらでも買えるわけだし)

紗和子 (しばらくここで勉強していこうかしら)

177 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/14(水) 00:43:29 ID:xdZFqhxY
………………

女の子 「………………」

ポーン……ポーン……ポーン……

女の子 (……なんだよ、あいつら)

女の子 (こっちは全力でサッカーやってるだけなのに)

女の子 (何が、おまえとやるとつまらない、だよ!!)

女の子 (男のくせに、わたしよりヘタクソなおまえらが悪いんだろうが!!)

スカッ…………

女の子 (あっ……!?)

女の子 (しまった、目測誤った……バランスが……)

ドテッ……!!!

女の子 「……いてててて……」

女の子 (しまった。少し手を擦りむいちゃったな……)

女の子 (少し血が出てるけど、まぁこれくらいなら……――)

「――ちょっと! 大丈夫!?」

178 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/14(水) 00:44:04 ID:xdZFqhxY
女の子 「えっ……?」

女の子 「さっき、ボールを拾ってくれたお姉さん……?」

紗和子 「大変! 血が出てるじゃない! ほら、水道で洗うわよ」

ギュッ

女の子 「あっ……」 アセアセ 「こ、これくらい平気ですよ……」

紗和子 「ダメよ。ばい菌が入ったら大変だわ。破傷風って怖いのよ?」

紗和子 「きちんと洗って消毒をしないといけないわ!」

女の子 「わ、わかりました……」

女の子 (制服の上に白衣を着ていて、変なお姉さんだけど……)

女の子 (ボールも拾ってくれたし、良い人なのかな……)

179 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/14(水) 00:44:36 ID:xdZFqhxY
………………

紗和子 「……うん。傷口はしっかり洗って、エタノールで消毒して、絆創膏もしっかり貼れたわね」

紗和子 「ふふ。我ながらかんぺきな処置だわ」

女の子 「……どうして消毒液や絆創膏を持ち歩いているんですか?」

紗和子 「そんなの決まってるわ! 私が化学部部長だからよ!」

バーン!!!

女の子 (よ、よく分からない人だ……)

紗和子 「………………」

紗和子 (……さっきの口論のこととか、聞きたいけれど、)

紗和子 (きっと私が関わるべきことじゃないわね。子どもだもの。きっと翌日には仲直りしてるわね)

紗和子 (出過ぎたことをするものではないわね。そろそろ帰りましょうか)

紗和子 「……では、私は帰るわ。あなたももう暗くなるから、早く帰りなさい」

女の子 「あっ……は、はい。もう帰ります」 ペコリ 「お姉さん、本当にありがとうございました」

紗和子 「いえいえ。気にしなくていいわ。じゃあね」

180 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/14(水) 00:45:36 ID:xdZFqhxY
………………夜 紗和子の部屋

紗和子 「………………」

紗和子 (あの女の子、大丈夫かしら?)

紗和子 (私が遠目で見ていた限り、あの子が数人のお友達に一方的に責められているように見えたけど……)

紗和子 (その後、あの子以外の子たちは、公園からすぐにいなくなってしまったし)

紗和子 (まるで、あの子ひとりを置いてけぼりにするように……)

ハァ

紗和子 (……ダメね。あの女の子のことが気になって、まったく勉強に集中できないわ)

181 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/14(水) 00:46:18 ID:xdZFqhxY
紗和子 (勝手な話だわ。私、きっと……)


―――― 『またガリ勉関城が平気点上げてるよ』

―――― 『もっと空気読んでくれよー』


紗和子 (あの子と昔の自分を、重ねているんだわ)

紗和子 (余計なお世話。ただの杞憂。そんなの分かってるわ)

紗和子 (でも、どうしても、あの子がひとりで寂しそうにサッカーボールを蹴る姿が……目に焼き付いて離れない)

紗和子 (あの子が辛い思いをしているんじゃないかと思うと、心配でたまらない……)

紗和子 (……あのときの私のように)

182 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/14(水) 00:46:48 ID:xdZFqhxY
………………翌日 一ノ瀬学園

理珠 「関城さん」

紗和子 「あら、緒方理珠。何か用かしら?」

理珠 「用と言うほどのことではないのですが……」

理珠 「今日の放課後、息抜きがてら文乃たちと41アイスにでも行こうかと話しています」

理珠 「関城さんも一緒にどうですか?」

紗和子 「えっ……」

紗和子 「わっ、私も誘ってくれるの……?」

理珠 「……もちろんです」

プイッ

理珠 「関城さんも、私の友達……ですから」

紗和子 「緒方理珠……」 ジーン

紗和子 「嬉しいわ! もちろんご一緒させてもら――」


―――― 『お姉さん、本当にありがとうございました』

183 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/14(水) 00:47:34 ID:xdZFqhxY
紗和子 「………………」

紗和子 (……どうして、あの子の寂しそうな顔がちらつくのかしら)

理珠 「……? 関城さん?」

紗和子 「……ありがとう、緒方理珠。残念だけど、今日は予定があるの」

紗和子 「だから、私抜きで行ってらっしゃい」

理珠 「そうですか……」 シュン 「残念です。また今度、一緒に行きましょうね」

紗和子 「ええ。ありがとう。その言葉だけでおなかいっぱいな気分だわ」

紗和子 (……きっと、大したことなんてない)

紗和子 (これはただの杞憂で、余計なお世話で、ただの押しつけのお節介)

紗和子 (でも……)


―――― 『こ、これくらい平気ですよ……』


紗和子 (……仕方ないじゃない)

紗和子 (あの子の寂しそうな顔が、どうしても気になるのだもの)

184 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/14(水) 00:48:32 ID:xdZFqhxY
………………放課後 公園

紗和子 「……結局、また来てしまったわ」

紗和子 (せっかくの緒方理珠のお誘いまで蹴って、一体私は何をしているのかしらね)

紗和子 (今日はサッカーをする子どもたちの喧噪は、ない……)

紗和子 (その代わり……)

女の子 「………………」

ポーン……ポーン……ポーン……

紗和子 (ひとりで、やはり寂しそうにボールを蹴るあの子の姿だけが、ある)

女の子 「……? あっ……」

紗和子 「……あっ」

紗和子 (……しまった。気づかれないようにしているつもりだったのに、目が合ってしまったわ)

女の子 「お姉さん、昨日はどうもありがとうございました」

紗和子 「どういたしまして。ケガはもう痛くない?」

女の子 「はい! もうかさぶたになっちゃいました!」

紗和子 「そう。良かったわ」

185 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/14(水) 00:49:16 ID:xdZFqhxY
女の子 「……あっ、あの」

紗和子 「うん?」

女の子 「昨日のお礼がしたいです。何かさせてもらえませんか?」

紗和子 「お礼だなんて、そんな、気にしなくていいわよ」

紗和子 「傷を洗って消毒して絆創膏を貼っただけじゃない」

女の子 「でも、何もしないんじゃわたしの気が済まないです」

女の子 「お願いします! 何かさせてもらえませんか?」

紗和子 (うぅ……まっすぐな目をされると弱いわね)

紗和子 (小学生の女の子にしてもらうことなんて……)

紗和子 (……いいえ。プラスに考えるべきよ、関城紗和子。話をするチャンスだと)

紗和子 「……そうね。じゃあ……」

紗和子 「お姉さんね、受験生なの。だから、勉強ばっかりで嫌になってきちゃって……」

ニコッ

紗和子 「少し、話し相手になってもらってもいい?」

女の子 「話し相手……?」

186 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/14(水) 00:49:50 ID:xdZFqhxY
………………公園 東屋

紗和子 「はい、ココアで良かったかしら?」

女の子 「あ、ありがとうございます。すみません。わたしがお礼をするはずなのに……」

紗和子 「ふふ。律儀な子なのね、あなた」

女の子 (改めて見ると……。白衣は変だけど、このお姉さん、すごくきれいだなぁ……)

紗和子 「? 私の顔に何かついてるかしら?」

女の子 「えっ……!?」 アセアセ 「な、なんでもないです。すみません……」

紗和子 「そう? ならいいけど……」

紗和子 「……さて、じゃあ、お話をする前に、ひとつあなたに謝らなければならないことがあるわ」

女の子 「……?」

紗和子 (さすがに少し恥ずかしいし、怖い気もするけれど……)

紗和子 「……ごめんなさい。昨日のお友達との喧嘩、実は少し、内容を聞いてしまったの」

女の子 「えっ……」

紗和子 「ごめんなさい。悪気はなかったのよ」

女の子 「………………」 プイッ 「……べつに、いいですけど」

187 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/14(水) 00:50:33 ID:xdZFqhxY
紗和子 「ありがとう。それでね、その話を、あなたに聞きたいの」

女の子 「……お姉さんにお話するようなことはないですよ」

紗和子 「あなた、サッカーがとても上手なのね。でも、お友達はそこまでじゃない……」

紗和子 「だから、妬まれて、喧嘩になったのね?」

女の子 「………………」

紗和子 「……ごめんなさい。こんなこと、私が言うのは筋違いだと分かっているけれど、言わせてね」


紗和子 「あなたは何も悪くないわ」


女の子 「え……?」

紗和子 「それだけは言っておきたかったの」

紗和子 「あなたは何も悪くないわ。だから、そんな悲しい顔をしないで」

紗和子 「お願いだから、そんなつらそうな顔をしないでちょうだい」

188 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/14(水) 00:51:12 ID:xdZFqhxY
………………公園近く 道路

成幸 (ふー、今日はあいつらの 『教育係』 をしなくていい日だから気が楽だな)

成幸 (にしてもあいつら、41アイスに行くとか言ってたけど、お気楽だな)

成幸 (受験までそう日にちはないってことをわかってんのか? 心配だ……)

成幸 (……いかんいかん。あいつらのお守りをしなくていい日くらい、あいつらのことなんか忘れよう)

成幸 (さっさと家に帰って、あいつら用の教材を完成させないと……)

ガクッ

成幸 (……結局、あいつらの勉強で忙殺されるのな、俺)

成幸 (ま、いいけどさ……ん?)

成幸 (……あの公園のベンチに座ってるの、関城? 隣は……し、小学生くらいの女の子か……?)

成幸 (……あの関城が、幼い少女と一緒にいる……?)

成幸 「………………」

成幸 (……犯罪臭しかしないな!?)

189 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/14(水) 00:51:51 ID:xdZFqhxY
………………

女の子 「つ、つらそうな顔なんてしてないです……」

紗和子 「してるわ。思い悩んでるような顔。ボールを蹴ってるときも、ずっと……」

紗和子 「だから言ってあげたかったの。あなたは悪くないって」

紗和子 「だって、あなたはサッカーが好きで、たくさん練習したんでしょう?」

紗和子 「今日みたいに、ひとりのときだって、壁に向かってボールを蹴ってきたのでしょう?」

紗和子 「だったら上手で当然だわ。それをやっかんで、ひどいことを言って……」

紗和子 「そんなの、絶対に許されることではないわ! あなたは何も悪くないのよ!」

女の子 「………………」

女の子 「……たしかに、わたし、サッカーが好きです」

女の子 「ひとりでもたくさん練習しました。だから、クラスで一番サッカーが上手になったんだと思います……」

190 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/14(水) 00:52:33 ID:xdZFqhxY
女の子 「……でも、わたしと同じチームでも敵でもつまらないって……」 グスッ

紗和子 「……つらかったわね。いいのよ、そんな言葉、気にしなくて」

紗和子 「あなたは悪くない。あなたは……――」


女の子 「――……違います。そうじゃ、ないんです」


紗和子 「えっ……?」

女の子 「たしかに、みんなに言われたことは、嫌でした……」

女の子 「でも、みんながそう言うのも、わかるんです……」

女の子 「だってわたし、みんなよりサッカーが上手だってわかってるのに……」

女の子 「ひとりでボールを無駄にキープしたり、わざと相手をおちょくるようなトリックをしたり……」

女の子 「……みんなが嫌がるってわかってて、そういうこと、しちゃったから……」

紗和子 「………………」

女の子 「……お姉さん、ありがとうございます。わたしのことを、“悪くない” って言ってくれて」

ニコッ

女の子 「おかげで、認められる気がします。わたし、悪かったんです。だから、みんなにちゃんと謝ります」

191 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/14(水) 00:53:41 ID:xdZFqhxY
紗和子 「……そう?」

紗和子 「お役に、立てたなら、嬉しいわ……」

女の子 「はい!」

女の子 「……ココア、ごちそうさまでした! お話も聞いてくれてありがとうございました!」

女の子 「わたし、みんなに謝りに行って来ます!」

紗和子 「……ええ。いってらっしゃい」

女の子 「はい。お姉さん、さようなら」 タタタタタ……

紗和子 「………………」 (……行ってしまった)

紗和子 (私……)

紗和子 「……私は、なんてバカなのかしら」

紗和子 (本当に、なんてバカな……――)


「――バカじゃないだろ」


紗和子 「えっ……?」

192 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/14(水) 00:54:27 ID:xdZFqhxY
紗和子 「ゆ、唯我成幸!?」

成幸 「よっ、関城」

紗和子 「どうしてここに……?」 カァアアアア…… 「っていうか、今の話、ひょっとして聞いてたの!?」

成幸 「……ああ。悪いけど、聞かせてもらったよ。ごめんな」

紗和子 「なっ……なななっ……」

紗和子 (私が小学生相手に力説してる姿を見られた……!?)

紗和子 (は、恥ずかしくて死にそうだわ……)

成幸 「……道路からさ、お前が小学生の女の子と話してるのが見えたから」

成幸 「お前がとうとう緒方の代わりに小学生によからぬことをしようと決意したのかと思って見張ってたんだよ」

紗和子 「あなた私のことをなんだと思ってるのかしら!?」

成幸 「結果的に盗み聞きをしたみたいになってしまった。それは本当にすまん」

成幸 「……オホン。まぁ、それは置いておくとして、だ」

成幸 「立派だったな。どういう関係かしらないけど、あの子、お前と話したおかげで元気が出たみたいだったぞ?」

紗和子 「………………」

紗和子 「……私は何もしてないわよ」

193 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/14(水) 00:55:09 ID:xdZFqhxY
成幸 「…… “あなたは悪くない”」

紗和子 「……何よ? からかってるの?」 ジトッ

成幸 「大真面目だよ。ああやって、自分のことを肯定してもらえたら、誰だって嬉しいだろ」

成幸 「だからあの女の子だって、自分の非を素直に認められたんだろ」

成幸 「だから、お前は本当にすごいよ、関城」

紗和子 「……違うわよ。私は、そんなことを考えて、あんなことを言ったわけじゃないもの」

紗和子 「私はただ単純に、あの子に、私を重ね合わせていただけだわ」

成幸 「……?」

紗和子 「……少し昔ばなしをするわね」

成幸 「昔ばなし……?」

紗和子 「ええ。昔ね、勉強が大好きな女の子がいたの。中学生の女の子よ」

紗和子 「その子は特に理科が好きでね、がんばって勉強をしていたの」

紗和子 「でもね、その子が勉強をがんばればがんばるほど、クラスメイトは嫌な顔をしたわ」

紗和子 「“平均点を無駄に上げるな” とか、“勉強ができたって仕方ない” とか……」

紗和子 「女の子はそんなクラスメイトの声が嫌になって、教室に行かなくなっちゃったわ」

194 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/14(水) 00:55:56 ID:xdZFqhxY
成幸 「なんだそれ! ひどい話だな!」

紗和子 「……そうね。ひどいと思ったわ」


―――― ((どうして…… 勉強できてほめられるんじゃなくて バカにされなきゃいけないのよ))


紗和子 「その子はずっと、そう思っていたわ」

紗和子 「……でもね、そうじゃなかったかもしれないって。最近そう思うの」

紗和子 「その子はもっとうまくできたんじゃないか、って」

紗和子 「バカにされたって、気にしなければいい。ううん。笑い返してあげればよかったかもしれない」

紗和子 「そもそも彼らにしてみれば、ただの冗談だったのかもしれない」

紗和子 「それを本気にして、ひとりで嫌な気持ちになって、逃げていただけなのかもしれない……」

紗和子 「……最近、その子はそう思うのよ」

成幸 「………………」

195 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/14(水) 00:56:51 ID:xdZFqhxY
紗和子 「あの女の子が友達と喧嘩してる姿を見て、昔ばなしの女の子のことを思い出したの」

紗和子 「ああ、ふたりはきっと、同じなんだ、って」


―――― ((あの子が辛い思いをしているんじゃないかと思うと、心配でたまらない……))

―――― ((あのときの私のように))


紗和子 「……でも、違ったわ。私の勝手な勘違いだったわ」

紗和子 「だって、あの女の子は自分の非を自分で認められていたわ」

紗和子 「昔ばなしの女の子だって、ひょっとしたら、勉強ができることを鼻にかけていたかもしれない」

紗和子 「勉強ができない回りを見下していたかもしれない」

紗和子 「……自分のことを棚に上げて、だから周囲から孤立していただけかもしれない」

紗和子 「あの子は偉いわ。昔ばなしの女の子とは、違う……」

紗和子 (私とは、全然……違う……)

196 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/14(水) 00:59:15 ID:xdZFqhxY
成幸 「………………」

ハァ

成幸 「……何言ってんだ。そんなの当たり前だろ」

紗和子 「えっ……?」

成幸 「性格だって環境だって何だって違うだろ」

成幸 「あの女の子には、たしかに友達に対して非があったかもしれない」

成幸 「でも、だからといって昔ばなしのその子にも、クラスメイトに対して非があったとは限らないだろ」

成幸 「その子は悪口みたいな冗談に言い返せるような性格だったか?」

成幸 「その子はクラスメイトのことを見下すような性格だったか?」

成幸 「……あの女の子と昔ばなしのその子は違うよ。全然違うよ。違うに決まってるだろ」

成幸 「そうやって自分を責めるのはやめろよ。お前の大好きな緒方は、そんな風に考えるか?」

紗和子 「………………」 フルフル

成幸 「だろ? だから、俺じゃ不満だろうけど、お前があの子に言ってあげたみたいに、俺が言うよ」



成幸 「お前は何も悪くないよ、関城」

197 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/14(水) 01:00:03 ID:xdZFqhxY
紗和子 「………………」

ウルッ……

紗和子 「……!?」 (な、なんで涙が……でて……くるの?)

成幸 「せ、関城……!?」

紗和子 「ゆ、唯我成幸っ、向こうむいてなさい!!」

成幸 「大丈夫か? どこか痛いのか?」

紗和子 「あー、もう! このニブチン男! 泣いてるから恥ずかしいから向こうむいてって言ってるの!」

成幸 「あっ……」 プイッ 「わ、悪い……」

紗和子 「……いいわよ、べつに」

グスッ……

紗和子 (……まったくもう。急に変なこと言うから……)

紗和子 (……どうしてくれるのよ)

ポタッ……ポタッ……

紗和子 (嬉しくて、涙が止まらないじゃない……)

198 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/14(水) 01:01:24 ID:xdZFqhxY
………………しばらくして

成幸 「……もう大丈夫か? 関城」

紗和子 「大丈夫よ。何も問題ないわ」

成幸 「目、真っ赤だけどな……」

紗和子 「……デリカシーのない男ね。それは思っても口に出さないの」

成幸 「……悪い」

紗和子 「いちいち謝らないで。私がいじめてるみたいじゃない」

紗和子 (……まったく。どうしてこんなに鈍い男が)


―――― 『お前は何も悪くないよ、関城』


紗和子 「あんなに、嬉しい言葉をくれたんだか……」 ボソッ

成幸 「ん? なんか言ったか、関城?」

紗和子 「……なんでもないわ」 (どうせこの鈍い男は、何も察してはくれないし)

紗和子 (……でも、このままやられっぱなしってのも性に合わないわね)

紗和子 (そうだ。いいこと思いついたわ)

199 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/14(水) 01:02:00 ID:xdZFqhxY
紗和子 「……ねえ、唯我成幸」

成幸 「うん?」

紗和子 「あなた、いつだかこんなこと言ってたわよね?」


―――― 『は 初デートはどこがいいかしら!?』

―――― 『なるべく金のかからないところが…… 公園とか』


成幸 「……お前、いきなり何の話を始めるんだよ」

紗和子 「いえいえ、奇しくも私は、あなたの希望通りのことをしてしまったと思ってね」

成幸 「?」

紗和子 「だってそうでしょう?」

クスッ

紗和子 「今日はふたりきりよ? あなたと私の初デートは、公園だわ」

成幸 「なっ……」 カァアアアア…… 「き、急に何を、変なことを……」

紗和子 (ふふっ……効いてる! 効いてるわ!)

200 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/14(水) 01:02:50 ID:xdZFqhxY
成幸 「は、初デートって、そんな……」

成幸 「こんなの、ただ学校帰りにダベってるだけで、デートじゃ……」

紗和子 「へぇ? なるほど? これがデートじゃないなら、また今度公園デートでもしましょうか?」

成幸 「なっ……///」 プシュー

紗和子 (ふふふ。照れてる照れてる。じゃあ、最後にダメ押しを……)

紗和子 「どうせだし、いっそのこと私たち付き合っちゃう?」

成幸 「えっ……」

成幸 「あっ……、えっと……いや、その……そういうの、俺、よくわからないし……///」

成幸 「いや、でも……そっか。お前と……付き合う、かぁ……」

紗和子 「……?」 (えっと……? この反応は、一体……?)

成幸 「……そう、だな。お前と付き合ったら楽しそうだな。悪くないかもな」

紗和子 「へっ……?」 ボフッ 「……な、ななななな、何を、言ってるの!? 唯我成幸!?」

紗和子 「じ、冗談に決まってるでしょう!? バカなのかしら!?」

成幸 「じ、冗談!? えっ、あっ……」

成幸 「そ、そうだよな! 冗談に決まってるよな! び、びっくりしたー!」

201 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/14(水) 01:03:25 ID:xdZFqhxY
紗和子 (ば、バカじゃないの……本当に……)

ドキドキドキドキ……

紗和子 (あなたと私が、付き合うなんて、そんなこと、できるわけないじゃない……)

紗和子 (だって私の大親友の、緒方理珠があなたのことを好きなのだから)

紗和子 (だから、絶対に違う。このドキドキは……)

ドキドキドキドキドキドキドキドキ……

紗和子 (違うわ。この男にドキドキしているわけでは、断じてない)

紗和子 (緒方理珠の好きな人のことを、好きになったりは、絶対しない)

ドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキ……

紗和子 (あーっ、もう!!)

紗和子 (いい加減静まりなさいよ!! 心臓!!)

202 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/14(水) 01:05:15 ID:xdZFqhxY
………………小学校 グラウンド

女の子 「……パス行くぞー!」

男子1 「よっしゃ任せろー! ……と見せかけて、スルー!」

女子1 「えへへ。このままゴールまで持ってくよー!」

女の子 「ナイススルーパス!」 (……楽しい。やっぱり、こうやって、みんなと一緒にサッカーができるから、楽しいんだ)

女の子 (名前も聞きそびれちゃったけど、あの白衣のお姉さんのおかげだよ)


―――― 『あなたは何も悪くないわ』


女の子 (あのお姉さんの言葉が、すごく嬉しかった)

女の子 (だからこそ、わたしは、自分の嫌なところを、素直に謝ることができた……)

女の子 「………………」 (あのお姉さんの制服、一ノ瀬学園の制服だよね)

女の子 (お母さんが言ってた。一ノ瀬学園はすごくレベルが高くて、勉強についていくのも大変だって)

女の子 (……勉強、がんばろう。あのお姉さんもきっと、たくさんがんばって、一ノ瀬学園に行っただろうから)

女の子 (わたし、あの人と同じ高校に行く! そしていつか……あの人のように、なりたい!)

おわり

203 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/14(水) 01:05:48 ID:xdZFqhxY
………………幕間 「41アイス」

文乃 「はぁ〜〜〜」 キラキラキラ

文乃 「夢の五段重ねなんだよ……」

ムシャムシャムシャ……

文乃 「ん〜〜〜〜〜、どのフレーバーも美味しい〜〜〜〜〜〜最高だよ!!」

理珠 「ふ、文乃? 急いで食べ過ぎではありませんか?」

うるか 「そうだよ文乃っち。アイスは味わって食べないと、お腹壊しちゃうよ?」

文乃 「ふたりとも何を言ってるの!? 今日は41デーだよ!? アイスの割引がきくんだよ!?」

文乃 「もちろん全フレーバー食べるでしょ!? だったらそんな悠長なことは言ってられないよ!?」

理珠&うるか 「「えっ」」

文乃 「さぁ、次の五段重ねは……これと、これとこれとこれ……あとこれ!! お願いします!!」

うるか 「………………」 ゲッソリ 「……先、帰ろっか、リズりん」

理珠 「賛成です、うるかさん」

文乃 「ん〜〜〜〜〜〜、この組み合わせも美味しい〜〜〜〜最っ高〜〜〜〜!!」 ムシャムシャムシャムシャムシャムシャ

おわり

204 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/14(水) 01:06:59 ID:xdZFqhxY
>>1です。
読んでくれた方、ありがとうございました。

毎度のことながら終盤駆け足になってしまって申し訳ないです。
乙や感想ありがとうございます。本当に励みになります。

また投下します。

205 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/14(水) 12:23:37 ID:hR1cadJc
いい話だなぁ

206 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/14(水) 23:44:01 ID:7CXMf8Y6
そういや先輩もレズさんも理科系科目だったが被り?

207 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/15(木) 23:38:28 ID:feM66L2E
>>1です。
投下します。


【ぼく勉】 あすみ 「ニセモノの恋人」

208 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/15(木) 23:39:35 ID:feM66L2E
………………とある休日 街中

あすみ 「……ふー」

小美浪父 「ん、どうした? 疲れたような声を出すなんてめずらしい」

小美浪父 「インフルエンザの出張予防接種、そんなに疲れたか?」

あすみ 「いや、ずっとかしこまってたら肩こっただけだよ」

小美浪父 「? お前、たしか接客業のバイトをやっているんじゃなかったか?」

小美浪父 「普段からかしこまることも多いだろうに」

あすみ (やべっ……)

あすみ (接客業っつっても、客相手にゲームして稼ぐようなメイド喫茶だからかしこまるも何もねーよ)

あすみ (……なんて言えるわけねーし、適当に誤魔化さなきゃな)

あすみ 「ん、まぁ……今日は会社にお邪魔したし、さすがにいつもより緊張するさ」

小美浪父 「……それもそうか」

あすみ (……ほっ。誤魔化せたみたいだ)

小美浪父 「まぁ、うちみたいな小さな診療所は、こういう予防接種が収入の大半を占めるからな」

小美浪父 「毎年うちに連絡をくれるあの会社さんには、頭が上がらないよ」

209 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/15(木) 23:40:16 ID:feM66L2E
小美浪父 「ともあれ、せっかくの休日に手伝ってもらって、悪いな」

あすみ 「いいよ。浪人生に平日も休日もないからな」

あすみ 「それに、いつかアタシが継がなくちゃいけない仕事だしな」

あすみ 「今のうちから、手伝いをしておいて損はないだろ?」

小美浪父 「……はぁ。まったく、おまえも諦めが悪いな」

あすみ 「あきらめも何もねーよ。アタシは絶対医者になって、あの医院を継ぐからな」

小美浪父 「勝手にしろ」

あすみ 「勝手にするよ」

あすみ&父 「「………………」」

小美浪父 「……もう昼過ぎか」

小美浪父 「バイト代のかわりだ。どこかで昼ご飯でも食べて帰るか」

あすみ 「……ん。食べる」

小美浪父 「あのレストランでいいか?」

あすみ 「レストランて……間違いじゃないけど、ファミレスって言えよ。恥ずかしいな……」

210 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/15(木) 23:41:01 ID:feM66L2E
………………ファミレス ジョモサン

ワイワイガヤガヤ……

あすみ 「なんだ、えらく混んでんな」

小美浪父 「まぁ、休日の昼過ぎだ。こんなものだろう」

あすみ 「ま、勉強でもしながら待つからべつにいいけどさ」

店員 「あの、お客様」

小美浪父 「うん? なんですか?」

店員 「相席でよろしければ、すぐに席が用意できますが……」

小美浪父 「む、本当ですか。あすみ、どうする?」

あすみ 「どっちでもいいけど、腹も減ってるし、すぐ食えるならそれに越したことはないかな」

小美浪父 「それもそうだな。では、相席をお願いします」

店員 「わかりました。では、ご案内致します」

211 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/15(木) 23:42:01 ID:feM66L2E
あすみ (相席か。まぁ、混んでるし仕方ないよな)

店員 「こちらの席になります」

店員 「では、お客様、注文が決まりましたらお呼びください」

小美浪父 「いや、すみません。相席になってしまって。失礼します」

成幸 「あ、いやいや、混んでるし仕方ないですよ。どうぞどうぞ」

小美浪父 「あっ」

成幸 「えっ」

あすみ 「……後輩?」

成幸 「えっ、せ、先輩とお父さん!?」

あすみ 「……こりゃまたすげー偶然だな」 (ってことは……)

葉月 「あっ、メイドのお姉ちゃん!」 和樹 「おひさー!」

あすみ 「よー、おチビちゃんたち。おひさー」 (……で、あっちが)

花枝 「えっ? どういうこと?」 パァアアアアアア 「あんなに綺麗な子とどこで知り合ったのよ、成幸!」

水希 「また新しい女が……」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

あすみ (あれが、後輩のお母さんと中学生の妹か……)

212 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/15(木) 23:42:50 ID:feM66L2E
………………

小美浪父 「いやいや、すみません。まさか相席の相手が唯我くん――いや、成幸くんのご家族だったとは」

花枝 「いえいえ、いつも成幸がお世話になっています」

小美浪父 「とんでもない! いつも世話になってるのは私と私の娘ですよ」

あすみ 「……おい、後輩」 コソッ

成幸 「なんですか、先輩」 コソッ

あすみ 「この状況、とてつもなくヤバいと思うのはアタシだけか?」

成幸 「何言ってんですか、先輩。俺なんかさっきから冷や汗とまりませんからね」

あすみ 「だよなぁ……」 (っつーか……)

小美浪父 「本当に、成幸くんにはいつもお世話になってるんです」

小美浪父 「娘が連れてきた彼氏が、こんなに良い青年で、本当に良かったですよ」

水希 「えっ? えっ? えっ? えっ? えっ? えっ?」

葉月&和樹 「「彼氏!?」」

花枝 「……あらあら、まぁまぁ……」 パァアアアアアア……!!! 「こんなにきれいな娘さんが、成幸の彼女……」

花枝 「よくやったわ、成幸!」

213 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/15(木) 23:44:10 ID:feM66L2E
あすみ (まぁこーなるよな……)

小美浪父 「あれ? 成幸くんから娘の話は聞いていませんか……?」

あすみ (そして、こうなるよな……)

あすみ (……っつーか、こうなるのは運命だったのかもしれない)

あすみ (アホみたいなウソをついて、メイドの仕事を誤魔化して……)

あすみ (後輩を担保に、医学部受験も大目に見てもらって……)

あすみ (そんなズルをしたから、こんな最悪のカタチでウソをバラさなくちゃならなくなったんだな)

あすみ (……仕方ねえ。これは、アタシに対する正当なバチだろう。公開処刑みたいなもんだが、我慢するしかねーか)

あすみ 「……あー、えっと。親父。もうこの際だから、言ってしまうけどな」

あすみ 「実は……――」


成幸 「――いやー! 実は、家族に打ち明けるのが恥ずかしくですね!」


あすみ 「……へ?」

成幸 「ごめんな、母さん、水希、葉月、和樹。兄ちゃん、実はこのあすみさんと付き合ってるんだ」

成幸 「恥ずかしくて内緒にしてたんだ。ごめんな」

214 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/15(木) 23:45:23 ID:feM66L2E
水希 「………………」 ピクピクピク……

葉月 「あっ、水希姉ちゃんが白目剥いて泡吹いてる」

和樹 「こりゃまずいな。後で記憶操作しておかないと」

あすみ 「後輩……? おまえ……」

成幸 「しっ。わざわざバラす必要もないでしょ」 コソッ

成幸 「ウソをバラすにしても、それは受験が終わって、先輩が医学部生になってからですよ」

あすみ 「後輩……」

花枝 「まー、なんてめでたいのかしら!」

花枝 「今日は月に一度の家族で外食デー! せっかくだし成幸のおめでとう会も兼ねちゃいましょう」

成幸 「いや、母さん、そんな盛り上がらないでいいから……恥ずかしいから……」

花枝 「この前臨時ボーナスも入ったし、今日は少し高いメニューを頼んでもいいわよ!」

花枝 「特別に今日はドリンクバーも許可するわ!」

葉月 「ほんとに!?」   和樹 「やったー!」

小美浪父 「いや、うちの娘ぐらいでこんなに喜んでもらえるとは……」

215 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/15(木) 23:45:56 ID:feM66L2E
………………

小美浪父 「……それでですね、そのとき、成幸くんは言ってくれたんですよ」

小美浪父 「“あすみさんのことは、俺が一生守ります” ……と」

花枝 「きゃー! 我が息子ながらかっこいいわー!」

成幸 「………………」

カァアアアア……

成幸 (そんなこと言った憶えはないよ!?)

あすみ (あの親父、テンション上がってあることないこと言ってやがる……)

花枝 「でも、大丈夫かしら。あすみさん、成幸と一緒で大変なこととかないかしら?」

あすみ 「へっ? あ、アタシが大変、ですか?」

あすみ 「いや、特にそういうことはないですけど……」

あすみ (あんまり、無辜の後輩の家族にウソをつきたくはないし……)

あすみ 「すごく頼りになりますし、アタシのために色々してくれますし……」

あすみ 「本当に、良い人に出会えて良かったって……そう思います」

花枝 「まぁ……まぁまぁまぁ」 パァアアアアアア……!!!

216 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/15(木) 23:46:52 ID:feM66L2E
成幸 「せ、先輩、変なこと言わないでくださいよ……」

成幸 「俺が恥ずかしいし、母さんのテンションも上がるじゃないですか」

あすみ 「し、仕方ねーだろ。でも、ウソはついてないからな!」

成幸 「……そ、それは、まぁ……」 カァアアアア…… 「嬉しい、ですけど……」

花枝 「もー! 成幸ったら! 見せつけてくれるわね!!」 バシッ

成幸 「いたっ!? 母さんどんだけテンション上がってるんだ!?」

水希 「………………」

和樹 「水希姉ちゃん起きないなー」

葉月 「兄ちゃんがあすみ姉ちゃんとラブラブしてても反応なしね」

和樹 「こりゃ相当重傷だなー」

成幸 「先輩」 コソッ

あすみ 「おう」 コソッ

成幸 「俺はもうこの空気に耐えられそうにありません。さっさと食べて、ふたりで抜け出しましょう」

あすみ 「……だな。どこかでふたりで勉強でもするか」

217 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/15(木) 23:48:07 ID:feM66L2E
花枝 「デート!? デート!? ふたりでどこ行くの!?」 キラキラキラ

成幸 「だー、もう! 母さん興奮しすぎだから!!」

水希 「………………」

ピクッ……

葉月 「……あ」

和樹 「水希姉ちゃんが……」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

葉月&和樹 「「起きた!!」」

水希 「……ちょっと、待ってください」

あすみ 「お、おう、妹ちゃん。どうした?」

水希 「お兄ちゃんの彼女さんだって言うなら……」

水希 「逃げないでくださいよ……!!」

あすみ (こ……怖っ……。なんて気迫だよ……)

218 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/15(木) 23:49:00 ID:feM66L2E
成幸 「逃げるって……。べつに俺たちはそんなつもりじゃ――」

水希 「――お兄ちゃんは黙ってて?」

成幸 「はい」

あすみ (そして弱いな後輩……)

水希 「……おじさん」

小美浪父 「ん? なにかな?」

水希 「この後、娘さんを借りてもいいですか? ぜひ、うちにお招きしたいので」

あすみ 「えっ……」

小美浪父 「本当かい!? おうちに娘を招待してくれるのかい?」

水希 「ええ。それはもう……」 ニヤリ 「……歓待しますよ。嫌ってほど……」

小美浪父 「よかったな、あすみ! 私に気を遣わずお呼ばれしてきなさい」

あすみ 「お、おい、親父……」

水希 「……来てくれますよね、あすみさん?」 ニコッ

あすみ (怖え……けど……) ハァ (逃げるわけにはいかねーよな)

あすみ 「……わかった。じゃあ、ぜひお邪魔させてくれ」

219 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/15(木) 23:49:36 ID:feM66L2E
水希 「……ふふ」

水希 (わたしの知らない間に、お兄ちゃんのことをたぶらかしてた女……)

水希 (ふふふ、どんな風にお兄ちゃんを騙したのか知らないけど……)

水希 (わたしまで騙せると思わないでくださいね……!)

水希 (今日うちにご招待して、散々こき使ってやりますから!!)

水希 「………………」

水希 (……でもまぁ、お兄ちゃんの魅力に気づいたところは、褒めてあげますけど)

水希 (あと、べつにお兄ちゃんを嫌いになってもらいたいわけでもないし)

水希 (……はぁ)

水希 (複雑な心境)

220 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/15(木) 23:50:10 ID:feM66L2E
………………唯我家

あすみ 「お邪魔しまーす」

花枝 「はい、どうぞ。ぼろくて狭い家だけど、ゆっくりしていってね。あすみちゃん」

あすみ (……まぁ、実は一度来たことはあるんだが)

水希 「………………」 ジトーーーーーッ

あすみ (あの妹が怖そうだから黙ってよう)

成幸 「すみません、先輩。予定もあっただろうに、家にまで来てもらっちゃって……」

あすみ 「そんなの気にすんなよ。元々は……」 コソッ 「お前がアタシのことを庇ってくれたから、こうなったんだ」


―――― 『いやー! 実は、家族に打ち明けるのが恥ずかしくですね!』

―――― 『ごめんな、母さん、水希、葉月、和樹。兄ちゃん、実はこのあすみさんと付き合ってるんだ』


あすみ 「……ありがとな、後輩。さっきは少し……ううん。かなりカッコ良かったぜ」

成幸 「っ……」 カァアアアア…… 「こ、こんなときまでからかわないでくださいよ」

あすみ (今のは結構本気だったんだけどなー……って言っても信じねーか)

あすみ (ま、普段散々からかい続けてるアタシが悪いんだけどさ)

221 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/15(木) 23:51:23 ID:feM66L2E
水希 「あすみさん、このエプロンをお貸しします」

あすみ 「……うん?」

水希 「エプロンをつけたら、早速働いてもらいますよ」

ニヤッ

水希 「……まずは、家中の掃除です」

花枝 「こら、水希。あすみちゃんはお客さんなのよ?」

花枝 「掃除なんかさせられるわけないでしょ。あんた、いい加減に……――」

あすみ 「――いえ、お母さん。やらせてください」

花枝 「えっ?」

あすみ 「……ふふ、いいぜぇ? 妹ちゃん?」 ニヤリ 「アタシがやられっぱなしで終わると思うなよ?」

成幸 (あっ、いつもの先輩だ……)

水希 「むっ……?」 (さっきまでと雰囲気が変わった……?)

あすみ 「家中の掃除だな? 任せろ。大得意だ。妹ちゃんは居間でくつろいでな」 グッ

葉月&和樹 「「あすみ姉ちゃんかっこいいー!!」」 キラキラキラ

222 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/15(木) 23:51:58 ID:feM66L2E
………………

あすみ 「まずは上から!! はたきでホコリを落とす!!」

シュババババババ

あすみ 「で、次はほうき! ゴミや埃を要所に集める!!」

シュババババババ

あすみ 「そして局所的に掃除機! 使用電力は最低限で!!」

シュババババババ

水希 「!?」 (電気代のことも考えて掃除をしている……!? この女……)

水希 「できる……!!」 ギリッ

あすみ 「最後はきつくしぼったふきんで、テーブルや棚回りを磨く!」

あすみ 「拭く程度じゃ汚れが伸びるだけだからダメだ! 磨き上げるつもりで!!」

シュババババババ

あすみ 「そして最後に、雑巾で床を磨き上げる……!!!」

あすみ 「畳も水分が残らないように磨く……!!!」

シュバババババババババババババババババババ!!!!!!

223 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/15(木) 23:52:57 ID:feM66L2E
………………

ピカピカピカピカ……

花枝 「すごい……。かつてないくらいピカピカだわ」

あすみ 「後輩――成幸くんにはいつもお世話になってるので、気合い入れちゃいました」 キャルン

花枝 「美人なだけでなく、お掃除も完ぺきだなんて……成幸!? こんなすごい女の子どうやって捕まえたの!?」

あすみ 「えへへ、違うんですよ、お母様っ」 キャルン 「アタシが、成幸くんを捕まえたんですっ、なんて! きゃーっ」

成幸 (先輩、なんか “あしゅみー” 感が出てきたな……)

水希 「ぬぬぬぬ……」

水希 「ま、まだですよ! 次は大量の洗濯物をたたんでもらいますから!」

あすみ 「うん?」 ペタペタペタパタパタパタ

水希 「……!?」 (も、もうたたみ始めてる……!?)

水希 (しかもなんて素早いの……で、でも、たたみ方が雑では本末転倒……――)

水希 (――なっ……!?)

キラキラキラ……!!!

水希 (寸分の狂いもない、なんて美しい折り目なの……!?)

224 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/15(木) 23:53:35 ID:feM66L2E
水希 「……す、すごい」

ハッ

水希 (感心してどうするの! この程度、わたしだって少しがんばればできるもん!)

水希 「あ、あとは! 今日やる予定はなかったけど、水回りの掃除を徹底的に――」

ピカピカピカピカ……

水希 「……!?」

あすみ 「うん。普段から清潔にしてある良いトイレと風呂だな。すぐピカピカになった」

水希 「う、うそ……」 (なんてできる人なの、この人は……!?)

水希 「っ……あ、あとは……」

あすみ 「おっ、もういい時間だな。今日の晩ご飯は何にする予定だったんだ?」

水希 「えっ……えっと……。今日は、お米を炊かずに、残り物の野菜ですいとん風鍋を……」

あすみ 「よーし、オッケー。じゃ、アタシが作るな」

あすみ 「冷蔵庫の食材、使ったらダメなやつとかあるか?」

水希 「………………」

あすみ 「……? 妹ちゃん?」

225 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/15(木) 23:54:12 ID:feM66L2E
水希 「……なにも、ないです。自由に使ってもらって大丈夫です」

あすみ 「ん、そうか。じゃあそうさせてもらうな」

あすみ 「〜〜〜♪」

水希 (……鼻歌混じりに、意気揚々と台所へ行ってしまった)

水希 「………………」

ガクッ

水希 (……認めたくはないけど、仕方ないのかもしれない)

水希 (わたしの、完敗だ……)

水希 「……はぁ」

あすみ 「……?」 (なんか、妹ちゃん凹んでんなぁ……)

あすみ (……売り言葉に買い言葉で、気合い入れて家事をやっちまったが)

あすみ (普段、あの子がこの家の家事をやってるんだよな。やりすぎちまったかな……)

あすみ (悪いことしたな……)

226 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/15(木) 23:54:44 ID:feM66L2E
………………晩ご飯 食卓

あすみ 「はい、できましたよー」

コトッ

花枝 「あらあらあら……良い匂いだわ。とても美味しそう」

あすみ 「お口に合うと嬉しいですけど……」

あすみ 「……ほら、葉月、和樹。お前たちの分もよそうからな」

葉月 「きゃー!」 和樹 「姉ちゃんと母ちゃん意外のお料理を家で食べるなんて、新鮮だな!」

水希 「………………」 ズーン

あすみ 「ほら、妹ちゃんも、どうぞ」

水希 「……どうも」 ズーン

あすみ (うーむ。明確な敵意は消えたけど、代わりにめちゃくちゃ暗くなっちまったな……)

あすみ (どうしたもんか)

あすみ 「ほら、こうは――成幸くんの分も」

成幸 「あ、すみません。ありがとうございます、せんぱ――あすみさん」

あすみ 「お、おう……」 (……なんか名前を呼ばれるとこそばゆいな)

227 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/15(木) 23:55:39 ID:feM66L2E
花枝 「それじゃ、いただきましょうか。あすみちゃん、本当にありがとうね」

花枝 「いただきます」

『いただきます!』

水希 「……いただきます」

パクッ

水希 (……やっぱり、想像通りだ)

水希 (すごく美味しい。普段から料理をやり慣れてる人の、お料理の味)

水希 (わたしが作ろうとしていた節約メニューの意図をよく理解している……)

水希 (華美でも貧相でもない、素朴な料理……)

水希 「………………」

あすみ 「ほらほら、ゆっくり食べろ。こぼれちゃうぞ」

葉月 「だってー、あすみお姉ちゃんのお料理、とっても美味しいんだもの!」

和樹 「……はむっ。姉ちゃんおかわり!」

あすみ 「嬉しいねぇ。もう食べ終わったのか。ほら、おかわりどうぞ」

和樹 「わーい! ありがと、姉ちゃん!」

228 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/15(木) 23:56:57 ID:feM66L2E
水希 「………………」 (……悔しいな。悔しいけど、もう認めざるを得ない)

水希 (この人を厭う要素がない。この人は、絶対に兄を幸せにしてくれる人だ……)

水希 (わたしより、はるかに……――)


あすみ 「――妹ちゃんはさ、学校から帰ったら、いつも家事をこなしてるんだろ?」


水希 「えっ……?」

水希 「ま、まぁ、そうですけど……」

あすみ 「すごいな。アタシなんて浪人生なのに、そうそう家事なんてやらないのに」

あすみ 「お前らの姉ちゃんはすごいな。なぁ、和樹、葉月」

和樹 「そりゃーなー!」 葉月 「水希姉ちゃんは世界一の姉ちゃんだもの!」

あすみ 「……悔しいな。アタシが一番になりたいところだけど、」

あすみ 「きっと掃除も料理も滅茶苦茶上手いんだろうな。悔しいけど、アタシは二番目で我慢するか」

水希 「………………」 (……ああ、そっか)

水希 (この人は、ずっと嫌な気持ちにさせていたわたしのことも気遣ってくれるような人なんだ……)

水希 (……ダメだ。とことん、この人を嫌いになる理由がなくなってしまった)

229 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/15(木) 23:57:29 ID:feM66L2E
………………食後 台所

あすみ 「ふんふーんふん……♪」

キュッキュッ……

水希 「……あの、お皿洗い、手伝います」

あすみ 「うん? いいよいいよ。あと少しで終わるし、アタシひとりで大丈夫だよ」

水希 「いえ、あの……やらせてほしいんです」

あすみ 「……そっか。じゃあ、アタシがスポンジで汚れを落とすから、洗剤を流してくれ」

水希 「わかりました」

あすみ 「………………」

水希 「………………」

バシャバシャバシャ……

水希 「……あの」

あすみ 「んー?」

水希 「……今日は、すみませんでした」

あすみ 「何の話?」

230 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/15(木) 23:59:13 ID:feM66L2E
水希 「……とぼけないでくださいよ」

バシャバシャ……

水希 「今日、ファミレスで会ってからずっと、嫌なことばかりして、言って……」

水希 「もう、わたしのことを嫌いになってるかもしれないですけど……」

あすみ 「………………」

水希 「……お願いします。兄のことは、嫌いにならないでください」

水希 「お兄ちゃんは悪くないんです。わたしが勝手に、嫌な気持ちになって、嫌なことしただけだから……」

水希 「……ごめんなさい」

あすみ 「………………」 ハァ 「……とぼけてねーよ。何の話だか、これっぽっちも分からない」

あすみ 「妹ちゃんのこと、嫌ってないし嫌う予定もないよ」 ニコッ

水希 「あすみさん……」

あすみ 「……いつまでも、“妹ちゃん” 呼びじゃ分かりにくいし、」

あすみ 「アタシも、“水希” って呼んでもいいか?」

水希 「あ……は、はい! ぜひ!」

231 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/15(木) 23:59:55 ID:feM66L2E
あすみ 「ん。じゃあこれからはそうするな。水希」

水希 「……はい」

あすみ 「………………」

あすみ (……水希も、後輩のことが好きすぎるだけで、すごく良い子だ)

あすみ (お母さんも、葉月も、和樹も……。温かくて、良い家族だ)

あすみ (アタシはこんな人たちを騙してるのか……)

あすみ (そして、そんな家族を騙すような真似を、後輩にさせてるのか……)

ズキッ

あすみ (……ダメだ。そんなのは、絶対)

あすみ (アタシがついたウソが、後輩に迷惑をかけている……)

あすみ (それに留まらず、後輩に家族に対して無用なウソをつかせている……)

あすみ 「……なぁ、水希」

水希 「はい?」

あすみ 「洗い物が終わったら帰るけど、その前に話がある」

あすみ 「……お母さんと葉月と和樹、全員に聞いてほしい話があるんだ」

232 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/16(金) 00:00:29 ID:RTwzERjA
………………居間

花枝 「話って何かしら、あすみちゃん」

花枝 「ま、まさか、成幸と結婚させてほしいとかかしら……。ど、どうしましょう。神社? チャペル?」

花枝 「白無垢? ウェディングドレス? あすみちゃん美人だからどっちも似合うでしょうし、迷うわね〜」

あすみ 「いや、あの……」

水希 「お母さん! あすみさんすごく真剣な顔してるから、茶化すのはやめてあげようよ」

花枝 「えっ……? あ、そ、そうね……」

花枝 (水希のことだから、まだ嫉妬心むき出しだろうから場を和ませようと思ったのに……)

花枝 (当の水希にたしなめられるとは思わなかったわ……。随分と懐いたものね)

葉月 「あすみ姉ちゃん?」 和樹 「お話ってなーに?」

あすみ 「……あ、あの」

成幸 「先輩……?」

あすみ (……怖い。せっかくよくしてくれた人たちに、前提を覆すようなことを言うのが、怖い)

あすみ (でも……) キッ (家族大好きな後輩に、家族に対してウソをつかせたままにしておくわけにはいかない)

あすみ 「……申し訳ありませんでした」 ペコリ

233 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/16(金) 00:01:18 ID:RTwzERjA
水希 「えっ……? ど、どうしたの、あすみさん。いきなり頭を下げて……」

あすみ 「……ごめんなさい。アタシ、みんなにひとつ、ウソをついています」

成幸 「せ、先輩! それは……――」

あすみ 「――成幸くんもウソをつきました。でも、それはアタシのためにウソをついたんです。だから、許してあげてください」


あすみ 「アタシと成幸くんは、お付き合いしていません。恋人でもなんでもありません」


あすみ 「……ただの、予備校の先輩後輩の間柄です」

花枝 「………………」

水希 「えっ……ど、どういうこと……?」

水希 「あすみさんは、お兄ちゃんの彼女さんじゃない、の……?」

あすみ 「……ああ。違う」

花枝 「……成幸」

成幸 「は、はい」

花枝 「あすみさんの言っていることは本当なの?」

成幸 「……うん。本当だよ」

234 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/16(金) 00:01:55 ID:RTwzERjA
花枝 「なら、どうしてあんなウソをついたの?」


―――― 『ごめんな、母さん、水希、葉月、和樹。兄ちゃん、実はこのあすみさんと付き合ってるんだ』


成幸 「それは、その……」

あすみ 「夏休みにアタシが頼んだんです。父をごまかすために、恋人役をやってくれ、って」

あすみ 「それが尾を引いて、今日、成幸くんにご家族を騙すようなことをさせてしまいました」

あすみ 「アタシが悪いんです。すみません。本当に……ごめんなさい!」

花枝 「……頭を上げて、あすみちゃん」

あすみ 「はい……」

花枝 「………………」

クスッ

花枝 「やっぱり、そんなことだと思ってたわ。うちの成幸にこんな出来た彼女がいるわけないと思ってたのよ」

あすみ 「へ……?」

花枝 「ほんの一時だけでも夢を見させてもらったわ。ありがとね、あすみちゃん」

あすみ 「い、いやいやいや、お礼なんてそんな! っていうか……怒らないんですか?」

235 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/16(金) 00:02:40 ID:RTwzERjA
花枝 「あなたにも事情があるんでしょうし、騙そうとして騙そうとしたわけじゃないでしょう?」

あすみ 「ま、まぁ……そうですけど……」

花枝 「それに、今日あの場で最初にウソをついたのは成幸だし。怒るなら成幸かしら」

成幸 「……まぁ、確かにその通りだな。すまん。母さん、水希、葉月、和樹」

あすみ 「いや、やめろよ、後輩! お前、アタシのためにウソついてくれたんだろ?」

あすみ 「悪いのはアタシだから、後輩を怒るのはやめてあげてください!」

花枝 「……そんな風に言える良い子を怒らないわよ」

クスクス

花枝 「あなた、本当に良い娘さんね」

あすみ 「そ、そんなこと……」

水希 「………………」

あすみ 「あっ……その……水希も、ごめんな」

あすみ 「後輩のこと大好きなお前には、本当に嫌な思いをさせちまったと思う……」

水希 「……やめてください。今、本当に複雑な心境なんですから」

あすみ 「え……?」

236 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/16(金) 00:03:25 ID:RTwzERjA
水希 「お兄ちゃんに彼女ができたって聞いて、ショックで、怖くて、嫉妬して……」

水希 「でもいざ家に来てもらったらすごく良い人で安心して、良かったって思って……」

水希 「そうしたら、今度は実は彼女じゃなかったって……」

水希 「……お兄ちゃんに彼女がいなかったのは嬉しいけど、」

水希 「あすみさんだったらいいかな、って思い始めた後だから、複雑な気持ちなんです」

あすみ 「お、おう……。なんか、本当に、ごめん……」

水希 「謝らないでください。べつに、怒ってはいないですから……」

水希 (ああ、もう……本当に悔しい。だってわたし、今すごく残念な気持ちになってる)

水希 (あすみさんがお兄ちゃんの彼女さんじゃなかったって知って、残念に思ってる)

水希 (わたし……あすみさんに、お兄ちゃんの彼女になってほしいって、思ってるんだ……)

葉月 「じゃあ、あすみ姉ちゃんは嫁に来ないの?」 和樹 「こないの?」

あすみ 「ごめんな、葉月、和樹。たぶん嫁には……いかないん、だよな……?」

成幸 「!? お、俺に聞かないでくださいよ。自分でいかないって言ってくださいよ」

237 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/16(金) 00:03:56 ID:RTwzERjA
あすみ 「いや、まぁ、そうなんだけど……」 (なんだよ、後輩のやつ……)

あすみ (…… “来てほしい” くらい言ってくれてもいいじゃねーかよ)

ハッ

あすみ (って、アタシは何をバカなこと考えてんだ……)

あすみ (後輩はアタシの被害者だってのに、何勝手なこと思ってんだ……)

あすみ (……っつーか、アタシ、ひょっとして)

カァアアアア……

あすみ (後輩に、“嫁に来てほしい” って言ってほしかったのか……?)

成幸 「どうしたんですか、先輩。顔赤いですけど……」

あすみ 「なっ、なんでもねーよ!」

成幸 「?」

花枝 「………………」 (へー……)

ニヤリ

花枝 (これは、意外と、あすみちゃんもまんざらじゃないのかしら)

238 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/16(金) 00:04:37 ID:RTwzERjA
花枝 「……あすみちゃん」

あすみ 「は、はい!」

花枝 「ウソをついていたことは怒っていません。もちろん、成幸も」

成幸 「すまん。ありがとう」

あすみ 「すみませんでした」

花枝 「でもね、さっきの口ぶりだと、あすみちゃん、お父さんにウソをついているのね?」

あすみ 「あ……それは、まぁ……はい」

花枝 「人様のご家庭のことにとやかく言うことはできないし、あすみちゃんにも事情があるんでしょうけど」

花枝 「……ウソはよくないわ。できるだけ早く、今のように、ウソを打ち明けた方がいいと思うわよ」

あすみ 「……本当に、その通りだと思います。アタシも、来年度には打ち明けるつもりです」

あすみ 「でも、もう少しだけ、時間が必要なんです。だから……」

花枝 「………………」 ニコッ 「……わかったわ。私はこれ以上何も言わない」

花枝 「うちの成幸があすみちゃんの役に立てるなら、恋人役としていくらでも使ってちょうだい」

あすみ 「すみません。ありがとうございます……」

あすみ 「……後輩も、いつもありがとな」

239 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/16(金) 00:05:42 ID:RTwzERjA
成幸 「いや、俺はべつに、お礼を言われるようなことは……」

あすみ 「いつか、親父にもウソを打ち明けて謝るからさ」

あすみ 「……もう少しだけ、付き合ってもらってもいいか?」

成幸 「一度引き受けたことですから。先輩の夢が叶うまで、付き合いますよ」

花枝 「……ところで、ウソを本当にしちゃうってのも、アリだと思うわよ?」

あすみ 「ウソを本当に……?」

花枝 「お父さんはあすみちゃんと成幸が付き合ってると思っているのでしょう?」

花枝 「なら、このまま本当にお付き合いして、いつか結婚しちゃえば、」

花枝 「ウソも何もなくなっちゃうんじゃないかしら?」

成幸 「なっ……」 カァアアアア…… 「何言ってんだよ、母さん!」

あすみ 「………………」 プイッ

あすみ (ウソを本当にする、か……)

あすみ (そうだよな。本当に付き合っちまえば……アタシと後輩は、ニセモノじゃなくて……)

あすみ (ホンモノの恋人に、なれるのか……)

240 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/16(金) 00:06:42 ID:RTwzERjA
あすみ 「………………」

成幸 「ほら、母さんが変なこと言うから、先輩固まっちゃったじゃないか」

成幸 「先輩、母さんの言うことなんて気にしなくていいですからね」

あすみ 「ホンモノ、か……」

成幸 「えっ……? 先輩?」

あすみ 「お前となら、それもいいかもしれねーな」

成幸 「なっ……」

成幸 「ま、またからかうようなこと言って! もうその手には乗らないですからね!」

あすみ 「……にひひ、バレたか」

241 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/16(金) 00:07:15 ID:RTwzERjA
成幸 「まったくもう、先輩は……」

あすみ 「………………」


―――― 『……ありがとな、後輩。さっきは少し……ううん。かなりカッコ良かったぜr

―――― 『こ、こんなときまでからかわないでくださいよ』


あすみ (さっきと一緒だ。アタシの本心からの言葉は、全部ニセモノになってしまう)

あすみ (仕方ない。普段のアタシの行いのせいだから)

あすみ (素直になれない、素直になろうとしない、アタシのせいだから)

あすみ (もし、アタシのホンモノの言葉が、こいつに届いたら……)

ギュッ

あすみ (……アタシと後輩は、いつか“ホンモノ” になれるかな)


おわり

242 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/16(金) 00:08:30 ID:RTwzERjA
………………幕間1  「父」

あすみ 「ただいまー」

小美浪父 「おお、おかえり、あすみ! どうだった!?」

あすみ 「帰って早々騒々しいな。一体なんだよ」

小美浪父 「何を言ってる! こっちはお前が粗相をしていないか気が気じゃなかったんだぞ!」

あすみ 「自分の娘のことなんだと思ってんだ、あんた……」

あすみ 「何もなかったよ。順調だ。晩飯だってアタシが作ってきたよ」

小美浪父 「おお……」 パァアアアアアア……!!! 「これはめでたい。結婚まで秒読みだな」

あすみ 「っ……」 (こっちの気もしらないで、親父の奴……)

小美浪父 「いやー、しかし良かった良かった」 ドサッ

小美浪父 「五冊目に突入した唯我くんとお前の記録ノートが無駄にならなくて済みそうだからな」

小美浪父 「結婚式の挨拶は任せろ。馴れ初めムービーがいらないくらい、私が語ってやるからな」

あすみ 「あー、うん……」 (これでウソだったって知ったら、卒倒しそうだなこの人……)

あすみ (仕方ねぇ。あくまでこの親父のために……)

あすみ (……ホンモノ、目指してみようかな)

243 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/16(金) 00:09:00 ID:RTwzERjA
………………幕間2  「妹」

成幸 「先輩と一緒に行ったところ? えっと、カラオケボックスとか、海とか……」

成幸 「あとはファミレスで勉強したりとかだけだぞ?」

水希 「海……」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

水希 (ずるい! 海なんて滅多に行けないのに、あすみさんはお兄ちゃんと……!!)

水希 (アタシだってお兄ちゃんとふたりっきりで行きたいのに!!)

水希 (やっぱりあすみさん許すまじ……)

水希 「………………」

水希 (……悔しい)

水希 (お兄ちゃんとふたりでも行きたいけど……)

水希 (あすみさんも一緒にいたらもっと楽しいだろうなとか考えちゃう自分が……)

水希 (本当に悔しい……!!)

おわり

244 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/16(金) 00:09:32 ID:RTwzERjA
>>1です。読んでくれた方ありがとうございました。

また折を見て投下します。

245 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/16(金) 00:10:04 ID:ei8Z2GaQ
おつ!
やはりあしゅみー先輩こそ至高

246 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/17(土) 22:29:08 ID:CIrMnHwE
>>1です。
投下します。



【ぼく勉】 真冬 「それがあなたの長所でしょう?」

247 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/17(土) 22:34:56 ID:CIrMnHwE
………………一ノ瀬学園 職員室

鈴木先生 「桐須先生、お忙しいところすみません」

真冬 「? 何か?」

鈴木先生 「今日の放課後、二学期第二回目の面接練習があるのはご存知ですよね」

鈴木先生 「実は、担当ではない桐須先生にこんなことを言うのは大変恐縮なのですが、お手伝いいただきたいんです」

真冬 「構いませんよ。前回のように職員に体調不良者でもでましたか」

鈴木先生 「いえ、実はそういうわけではなく……」

鈴木先生 「桐須先生との面接練習を希望すると言う生徒がおりまして」

真冬 「私との面接練習を希望する……? ほぅ……」

ゴゴゴゴゴゴ…………

真冬 「なかなか威勢の良い生徒もいたものですね。いいですよ。引き受けます」

鈴木先生 (さすがは桐須先生。生徒に対しての教育に熱が入っていらっしゃるご様子だ……)

真冬 (どんな生徒か分からないけれど……)

ニヤリ

真冬 (私との面接練習を希望したことを、後悔させる勢いでやってあげるわ。ふふふ……)

248 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/17(土) 22:35:56 ID:CIrMnHwE
………………放課後

理珠 「今日はよろしくお願いします。桐須先生」 フンス

文乃 「よろしくお願いします!」 フンスフンス

真冬 (驚愕。まさかこの子たちだったとは……)

真冬 「……ええ。よろしくお願いします」

真冬 「私はあなたたちの面接練習を一度担当したわけだけれど、」

真冬 「……当然。以前よりは格段にレベルアップしているのでしょうね?」

理珠 「もちろんです。もう私に答えられない質問などありません」

文乃 「わ、わたしもです。成幸くんにも付き合ってもらって、練習もたくさんしてきました」

真冬 「感心。では、私も以前以上に気を引き締めて、本物の試験官のつもりで面接に臨みます」

真冬 「よろしいですね?」

理珠 「望むところです」 フンスフンス

文乃 「精いっぱいがんばります!」

真冬 「よろしい。では、一分ほど後に、緒方さんから順番に入室をしてください」

249 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/17(土) 22:36:35 ID:CIrMnHwE
………………

コンコン

理珠 「失礼します」

真冬 「どうぞ」

真冬 「では、学校名とお名前をお願いします」

理珠 「はい。私立一ノ瀬学園高等学校の、緒方理珠と申します。本日はよろしくお願いいたします」

真冬 (ふむ……以前より格段に言葉がなめらかになっているわね)

真冬 (自主練習をたくさんしたのでしょうね)

真冬 「はい。よろしくお願いします。では、おかけください」

理珠 「はい。失礼致します」

250 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/17(土) 22:37:34 ID:CIrMnHwE
真冬 「では、面接を始めます」

真冬 「まず、緒方さんが本校を志望する理由を教えてください」

理珠 「はい。私は、人の心の機微に鈍感です」

理珠 「人が何を考えているか分からず、自分だけ見当違いなことをしている、ということがままあります」

理珠 「私は、そんなとき、周囲の友人たちとの間に壁を感じます」

理珠 「私はその壁を乗り越えて、人が何を考えているか、分かるようになりたいです」

理珠 「以上のことから、貴学の水準の高い心理学部ならば、私の求める人の心の探究ができると思い、貴学を志望しました」

真冬 (ふむ。言葉はなめらか。棒読みでもなく心もこもっている。及第点ね)

真冬 「よく分かりました。緒方さんは、本校の心理学部で、人の心が分かるようになりたいということですね」

真冬 「では、続けて伺います。あなたの言う “人の心の探究” とは、具体的にどのようなことを指しますか?」

理珠 「え……?」

真冬 「大学は研究機関です。あなたの言う “人の心の探究” が、最終的にどのような研究に行き着くのか」

真冬 「本校としても、私個人としても非常に興味深いです。ぜひ、ご教授いただければと思います」

理珠 「け、研究……?」

251 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/17(土) 22:38:25 ID:CIrMnHwE
真冬 「? 大学進学を志望してらっしゃるのに、研究したいことがないのですか?」

理珠 「い、いえ、そういうわけでは……」

真冬 「では、あなたは本校での学びにより自身の苦手を克服した先にどのような研究をしますか?」

理珠 「えっと……」

真冬 「先ほども申し上げた通り、大学は学習する場であり、研究機関でもあります」

真冬 「自身の苦手を克服するという目的を達成するだけだけならば、」



真冬 「専門学校や終身教育機関など、叩くべき門戸は他にあると思いますが」



理珠 「………………」

真冬 「………………」

ハァ

真冬 「……ここまでのようね。長時間の沈黙が続いてしまった時点で、合格は絶望的だと思いなさい」

理珠 「……はい」

252 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/17(土) 22:40:49 ID:CIrMnHwE
理珠 「………………」 (悔しい……)

理珠 (たくさん練習してきたのに、その練習の前提が崩されたような気分です)

理珠 (……しかし、どう考えても、桐須先生の指摘の通り)

理珠 (大学は教育機関であり研究機関でもある。最終的に研究をして卒業をすることになる)

理珠 (私は目の前の大学入学という目標に囚われ、入学した後のビジョンをおろそかにしている)

理珠 (私自身が一番理解していなければならないような基本的なことを、桐須先生に指摘されてしまったということ)

理珠 (……悔しい。私、前回から、まったく成長していないじゃないですか)

グスッ

理珠 「っ……」 (ダメです。泣いたら、それこそ、完全に負けてしまう。前回と同じになってしまう)

理珠 (泣かない。自分に何ができるか。今後どう成長していくか。それを考えないと……)

理珠 (勉強に付き合ってくれて、面接練習にも付き合ってくれた、成幸さんに顔向けできない)

理珠 (もっともっとがんばらないと……――)

真冬 「――まぁ、及第点には程遠いけど、前回に比べればはるかに良くなっているわ」

真冬 「がんばったのね、緒方さん」

理珠 「えっ……?」

253 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/17(土) 22:41:24 ID:CIrMnHwE
理珠 「そ、そんな……だって、私はまた、前回と同じように……」


―――― 『どうなんですか 緒方さん 黙っていてはわかりませんよ』


理珠 「前回と、同じように……。黙りこくってしまって……」

真冬 「けれど、話をするときに固さや焦りが消えたわ。自信も少し見えていた。それは良い傾向よ」

真冬 「たくさん練習したのが見て取れたわ」

理珠 「でも……」

真冬 「そうね。結果としては惨憺たるものだわ。不合格という事実は変わらない」

真冬 「……でも私は今の面接で、あなたの可能性が見えた気がするわ」

理珠 「私の可能性……?」

真冬 「ええ。あなたは努力して、人の心を理解しようとしている」

真冬 「そして世の中には、一定数あなたのように、所謂 “空気が読めない” 人が存在するわ」

真冬 「緒方さん、あなたは、今のあなたがそうであるからこそ、そういう人たちのためになる研究ができないかしら?」

真冬 「他人に共感を覚えづらい、生きづらい思いをしている人たちを助ける研究ができないかしら?」

理珠 「私と同じような人たちを、助けるための研究……」

254 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/17(土) 22:42:27 ID:CIrMnHwE
真冬 「ええ。それはあくまで私の想像する未来のあなたの像だけれど」

真冬 「悪くはないのではないかしら」

真冬 (……なんて、少し喋りすぎかしら)

真冬 (進路選択は自分自身で決めること。そしてそのための答えも、自分自身でできる限り決めなければならない)

真冬 (緒方さんにとってヒントになればいいと思って話してしまったけれど、)

真冬 (……出過ぎた真似をしすぎたわね。反省だわ)

理珠 「……桐須先生」

真冬 「何かしら?」

理珠 「目から鱗です」

真冬 「……?」

理珠 「すごいです。私が、自分自身をモデルケースに、私と同じような人のために何が出来るかを研究する……」

理珠 「それは、私が大学を志望する理由として十分なものに思えます!」

理珠 (少なくともアナログなゲームを理由とするよりは、はるかに!)

真冬 「そ、そう? そう思えるなら、それを自分なりにかみ砕いて、自分の言葉に直して、使えるようになりなさい」

理珠 「わかりました!」 メモメモメモ

255 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/17(土) 22:43:11 ID:CIrMnHwE
真冬 (気むずかしいかと思えば、素直な子)

真冬 (つかみ所のない難しい子だけれど、悪い子では決してない)

真冬 (……願わくは、自身の得意分野を伸ばしていてもらいたいけれど)

真冬 (まぁ、仕方ない。本人が決めた進路に、教師が口だしできる範囲なんて限られている)

真冬 「……では、今後は大学入学後のビジョンを明確にして、面接練習に臨みなさい」

理珠 「わかりました」

真冬 「退出してください。一分後に入室するように、外の古橋さんに伝えてください」

理珠 「はい」

真冬 (……さて、次は古橋さんね。彼女もこの前からどう成長しているかしら)

理珠 「……あ、あの、桐須先生」

真冬 「? まだ何か質問があったかしら?」

理珠 「いえ、あの、これは質問というより、私の思ったことをそのまま言うだけのことですが……」


理珠 「ひょっとして、桐須先生は、わたしが文系受験をすることを認めてくれているのですか?」


真冬 「……!?」

256 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/17(土) 22:43:42 ID:CIrMnHwE
真冬 「そ、そんなわけないでしょう? 私は、未だにあなたの進路選択を認めていません」

真冬 「今からだって遅くはないわ。考え直せるなら、理系分野を志望することをおすすめするわ」

理珠 「……むっ」 ムスッ

理珠 「私だって、先生に認めてもらわなくたって構いません」

真冬 「生意気。そういうことは、面接を最後まで続けられるようになってから言いなさい」

理珠 「そのための練習でしょう。最初から上手くできるなら、こんな練習なんてする必要はありません」

真冬 「……相変わらず口の減らない子ね」

理珠 「そちらこそ、です」

真冬 「………………」

理珠 「………………」

理珠 「……でも」

理珠 「……今日はありがとうございました。先生のご指摘は、すごくタメになりました」

真冬 「……そう。なら、せいぜいがんばりなさい。応援はしないけどね」

257 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/17(土) 22:44:24 ID:CIrMnHwE
理珠 「………………」

クスッ

理珠 (“がんばりなさい” って言っておいて、“応援はしない” なんて……)

理珠 (ひどい矛盾です。この先生は、意外と抜けているのですね。今まで全然しらなかったことです)


―――― 『本当はな…… 緒方のこと すごく大切に思ってるんだよ』

―――― 『できれば…… 好きになってもらえたらって……』

―――― 『桐須先生のこと』


理珠 (……少しだけ、あのときの成幸さんの言葉が分かった気がします)

理珠 (この人は本当に……)

真冬 「……?」


―――― 『勘違いされやすいんだけど 本当はあったかくて生徒思いのいい先生なんだよ』


理珠 (……そういう先生なのかもしれませんね)

258 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/17(土) 22:45:40 ID:CIrMnHwE
………………

真冬 「では、古橋さん。続いての質問です」

真冬 「あなたの得意な教科、現代文、古文、漢文、日本史……それらが天文学にどのように活かせると思いますか?」

文乃 (うぅ……やっぱり怖いなぁ、桐須先生)

文乃 (でも、負けられない。桐須先生に負けてたら、そもそも自分自身に絶対勝てない!)

文乃 「……わたしは文章を読むことを苦痛としません」

文乃 「理系分野において、実験によって新しく発見をすることも大事ですが、」

文乃 「前提として、先行研究の文献を読むことが必要不可欠です」

文乃 「文系科目が得意なわたしは、先行研究を読み解き、自分自身の研究に生かすことが容易にできると思います」

文乃 「基礎研究において、それは何より役に立つ能力なのではないかと考えます」

真冬 (なるほど……。よく考えて、よく練られた回答だわ)

真冬 (自分の得意分野をしっかりと生かした言葉になっているわ)

真冬 「……なるほど。研究をする上では、それは確かに強みになりますね」

真冬 「では、続けて聞きますが、あなたは数学が得意ではないですね?」

文乃 「……はい」

259 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/17(土) 22:46:23 ID:CIrMnHwE
真冬 「天文学と数学は切っても切れない関係です。その苦手は大きなネックになると思いますが、どうするおつもりですか?」

文乃 「……教科書を読み解く力あるつもりです。だから精いっぱい、勉強します」

文乃 「その証拠になるかは分かりませんが、調査書を見て頂きたいと思います」

文乃 「わたしは、本当に数学が苦手です。テストでは全然点が取れないくらいでした。でも、今は……」

文乃 「がんばって、やっと平均点に届くかというところに来ました」

文乃 「絶対値としては足りないかもしれません。でも、相対的に見ればかなりの成長だと、自負しています」

文乃 「わたしの今までの伸びを、そしてこれからの伸びしろを見ていただければ幸いと存じます」

真冬 「……わかりました」

真冬 (なるほど。考えてきたわね。やはり文系科目が得意だと、対人能力……面接にも活かせるのね)

真冬 (苦手を苦手と認め、その上で苦手を克服したという部分を強調する良いやり方だわ)

真冬 (実際、彼女の数学の点数の伸びは驚異的なものがある。これは、大学の面接担当にも一考の余地が出てくることでしょう)

真冬 (……さて)

真冬 「……では、最後の質問です。あなたの長所と思える部分を教えてください」

文乃 「えっ……?」

文乃 (……わたしの、長所……?)

260 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/17(土) 22:47:43 ID:CIrMnHwE
文乃 (文系科目以外でわたしに長所って、何かあるかな……)

文乃 (そもそも、わたしにいいところなんてあるのかな)

文乃 (わたしには何ができるのかな。今まで、何をしてきたのかな)

文乃 (……文系科目が得意で、お話を作るのが得意なこと以外、わたしに何が……)

文乃 (わたし、ひょっとして、長所なんて何一つない……?)

真冬 「………………」

文乃 (……だ、黙ってたら、ダメ!)

文乃 (それじゃ何も伝わらない! 頭が混乱していたって、何か言わなければ面接はそこで終わってしまう!)

文乃 「わ、私は……! 先ほど申し上げたとおり、苦手な数学を、努力で補ってきました」

文乃 「そ、それは、苦手科目でもやりきるという、私の長所だと思います」

真冬 「学生が必要な科目の勉強をがんばるのは当然では? その当然の努力を長所と言い張るのですか?」

文乃 「うっ……」 (た、たしかに、その通りなんだよ……)

文乃 「ほ、他にも、わたしは……れ、恋愛相談、とか、が……得意、です……?」

真冬 「………………」

文乃 (無言の目線が痛い……!!)

261 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/17(土) 22:48:17 ID:CIrMnHwE
文乃 「………………」

真冬 「……残念。ここまでのようね。これくらいにしましょう」

文乃 「はい……」 (うぅ……結局わたし、また何も言えなかった……)

文乃 「すみません。大学に訴求できるような長所が、なかなか見つからなくて……」

真冬 「そうね。長所って言われても難しいものね。でも、それでも、言えなければならないわ」

文乃 「……はい。もう一度よく自分自身を見つめ直して、考えてみます」 ズーン

真冬 「………………」

ハァ

真冬 「……“人の心の機微に敏感で、他者との共感能力が高く、人の気持ちに寄り添える”」

文乃 「えっ……?」

真冬 「そして、その人のために全力でがんばれる優しさも持っている」


真冬 「……それがあなたの長所でしょう?」


文乃 「わたしの、長所……?」

真冬 「その結果として――これはあくまで予想だけれど――あなたは、恋愛相談とやらを受けたのではないかしら?」

262 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/17(土) 22:48:55 ID:CIrMnHwE
真冬 「それを大学用に、自分でカスタマイズしてごらんなさい」

真冬 「たとえば、“友人との人間関係を円滑にし、勉学にも研究にも協力して取り組むことができると思います” とかね」

文乃 「わ、わたしの、長所……」

文乃 「わたしの、がんばってきたこと……」

真冬 「……?」 (どうしたのかしら、古橋さん?)

文乃 (……そっか、わたし。そうだよね。今まで、成幸くんやうるかちゃん、紗和子ちゃんの相談にだって乗ってきたもんね)

文乃 (それは、わたしの長所でもあるんだ……)

文乃 「ありがとうございます、桐須先生。うまくまとめられるような気がしてきました」

真冬 「そう? よかったわね。なら、次の面接練習までにしっかりと言えるようにしておきなさい」

文乃 「はい!」

文乃 (……分かってたことだけど、改めて思うよ。この先生は、ただの怖くて厳しい先生じゃないんだ)

文乃 (わたしのことなんて嫌いだろうに、そんなわたしのこともよく見てくれているんだ……)

文乃 (わたしが理系受験をすることをよく思ってないはずなのに、結局はこうやってわたしのためにアドバイスをくれるんだ)

文乃 (……本当に、“良い先生” なんだなぁ)

263 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/17(土) 22:49:54 ID:CIrMnHwE
………………図書室

理珠 「………………」  文乃 「………………」

ガリガリガリガリガリ……

成幸 「お、おお、がんばってるな、お前ら……」

理珠 「……先生からアドバイスをいただきました。忘れないうちに、カタチにしておかないと」

文乃 「わたしもだよ。二回も面接練習をやってくれた桐須先生のためにも、がんばらないと」

成幸 (……前より先生に対しての苦手が少なくなったみたいだな。よかったよかった)

成幸 (というか、むしろ……) クスッ (“先生のためにがんばる” って気持ちすら見えるな)

文乃 「………………」


―――― 『……“人の心の機微に敏感で、他者との共感能力が高く、人の気持ちに寄り添える”』

―――― 『そして、その人のために全力でがんばれる優しさも持っている』


文乃 (あんなに温かい言葉をかけてくれた大人って……)

文乃 (お母さん以外で、初めてかもしれない)

おわり

264 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/17(土) 22:50:30 ID:CIrMnHwE
………………幕間 「次はあなたの番」

真冬 「探したわよ、唯我くん」

成幸 「き、桐須先生……!? ど、どうしたんですか? 俺に何か用ですか?」

真冬 「あなたはまだ面接練習が終わってないでしょう。早く始めるわよ」

成幸 「えっ!? い、いやいや、俺、今日は藤田先生にやってもらいましたから――」

真冬 「――なら、藤田先生に指摘された内容を私に教えてちょうだい。その上で面接練習をするわよ」

真冬 「面接練習は何度やっても損することはないわ。せっかくの面接練習の日なのだから、私ともやっておきなさい」

成幸 「いや、えっと……」

真冬 「いいから、ほら、来なさい……」 ガシッ 「とりあえず前回のことからおさらいね。ちゃんと考えているか、試させてもらうわよ」

真冬 「……もし前回から成長が見られないようであれば」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!! 「……分かっているわね?」

成幸 「ひっ……!? だ、誰か、助けて--ーーー!!」

ズルズルズルズルズルズル……

おわり

265 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/17(土) 22:53:21 ID:CIrMnHwE
>>1です。
読んでくださった方ありがとうございます。
乙や感想、励みになります。個別レスしませんが、ありがとうございます。


この話は桐須先生をメインに据えるか、文乃さんをメインに据えるか迷いました。
最終的に桐須先生メインにしたつもりでしたが、オチは結局文乃さんで落ち着いてしまいました。
結果として原作の面接回の模倣をした上で劣化させただけの抑揚のない話になってしまいました。
申し訳ないことです。


また投下します。

266 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/17(土) 23:03:07 ID:adZ4cVZk
おつおつ

267 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/18(日) 01:52:11 ID:WFgWIJUI
面白ければすべてよし

268 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/19(月) 00:02:25 ID:MRuKHTiA
楽しみに毎日少しずつ読んでるわ

269 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/20(火) 01:23:40 ID:tOhol3b2
なんかエレ速でまとめられなくなったな。
俺はここで見るからいいんだけど。

270 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/20(火) 22:40:02 ID:uB.im3Ew
今週のジャンプとよかったな!

271 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/21(水) 19:44:13 ID:OddFOdHY
追いついた支援

272 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/24(土) 15:01:56 ID:KEpMJF/M
楽しみに舞ってる

273 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/27(火) 00:19:09 ID:1jIqrhdE
最近新作来ないけど待ってる
あと今週の文乃も最高だった

274 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/27(火) 22:47:53 ID:Ik.X4.jA
ほんとそれな

275 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/11/27(火) 23:08:33 ID:3LaZHtO6
更新されないか毎日見にきてるほど楽しみ
気長に待ってよう

276 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/01(土) 09:24:47 ID:NWeuJPWo
生きてるのかどうか

277 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/02(日) 01:23:37 ID:q0PtpZHg
文乃の「起きてる」で心臓射抜かれた可能性

冗談はさておき気長に待ってます

278 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/02(日) 15:10:08 ID:I2CA3Xgw
>>277
その死因は草はえる

279 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/04(火) 21:54:45 ID:Y4rnAq.U
本当にもう来ないのか

280 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/05(水) 11:57:06 ID:yc33/4Vw
主来ないけど、ここってスレ主以外でも投稿するのはアリなの?

281 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/05(水) 12:35:10 ID:AvsQcYrM
どうなんだろ
誰かしら書いてくれても俺は見たいと思うけど

282 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/05(水) 15:55:40 ID:ZoTh8HoA
別でスレ立てた方が無難だと思う
もし参加型っぽくしたいのなら別で立てて>>1で書いておくというのも手だし
何にしてもぼく勉のSSが増えるのは嬉しいから書くなら楽しみにしてる

283 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/05(水) 16:15:25 ID:SQ64Un/I
>>280だけどありがとう。
今書いてるところなんだけどスレ立てたこと無いうえに単発ネタで、ここのスレ主さんみたいにスレ埋まるまで書き続けるのは無理だからどうしようか悩んでたんだ
書き上がったら頑張ってスレ立ててみます

284 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/05(水) 17:32:46 ID:fNE1Noao
このスレに自分のSSを書き込む勇気はないわ
主が凄まじすぎる

285 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/05(水) 21:50:00 ID:eXfAmxME
この調子で書く人増えてくれればいい
主のも見たいけど来ないのかな

286 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/05(水) 22:29:56 ID:KLOPkIEQ
このスレに投下するのはさすがにな

287 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/06(木) 23:07:12 ID:TbXVMSi6
>>1です。
投下します。

288 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/06(木) 23:07:56 ID:TbXVMSi6
【ぼく勉】 あすみ 「緒方ってハムスターに似てるよな……」

289 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/06(木) 23:13:38 ID:TbXVMSi6
………………夕方 繁華街

あすみ 「ふー……」

あすみ (ここのところお客様が多くてバイトが大変だな……)

あすみ (まぁ、その分時給も上がったし、ありがたいっちゃありがたいが……)

あすみ (ま、とりあえず今日は終わったし、明日は休みだし、時間とってしっかり勉強しとかないとな)

サササッ

あすみ 「……ん?」

ハミちゃん (おねーさま) キラキラキラ

あすみ 「ヒッ……!? げ、げっ歯類!?」

あすみ (み、見間違うはずもない。あれは間違いなく、例の奥様の家の、ハミちゃんだ……)

あすみ (またアタシに会うために抜け出してきたのか……)

ゾゾゾッ……

あすみ 「か、勘弁してくれよ……。アタシ、本当にお前たちは苦手なんだって……」

あすみ (とはいえ、このまま放置もできねーし……ど、どうしよう……)

ハミちゃん (おねーさま……えへへ、飛びついちゃおうかな……)

290 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/06(木) 23:14:13 ID:TbXVMSi6
ハミちゃん (おねーさまー!) ピョーン

あすみ 「ひっ……!?」 (と、飛びかかられ――)

――ムンズ

「……? なんですか、この子は? ハムスターさんですか」

あすみ 「へ……?」

あすみ 「お、緒方!?」

あすみ (ハミちゃんを捕まえてくれたのか……)

理珠 「どうも。こんにちは、小美浪先輩」

理珠 「この子は先輩のペットですか?」

あすみ 「い、いや、そういうわけではないんだが……」

あすみ (っていうかげっ歯類をペットとか考えたくもない!!)

あすみ (だが、まぁ、緒方のおかげで助かったな……)

あすみ 「ありがとな、緒方。おかげで……――!?」

理珠 「……? どうかしました、先輩?」

291 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/06(木) 23:14:50 ID:TbXVMSi6
あすみ (は、ハミちゃんを抱える緒方って……)

あすみ (少し、ハムスターっぽいというか、リスっぽいというか……)

あすみ (一般的には、きっと “かわいい” と言うべきなのだろうけど……)

あすみ (げ、げっ歯類の、ボスのように、見える……!!)

ゾワッ……!!!!

あすみ (や、やめろアタシ! 可愛い後輩になんて失礼なことを――)

理珠 「――先輩?」

あすみ 「ひっ……!!」 (め、目の前に、ハムスターと、ハムスターの親玉が……!?)

あすみ (い、いや、違う。緒方は人間だ。人間……いや、ちょっと待てよ)

あすみ (……もし、緒方がハムスター星人だったら……?) ※先輩は混乱しています。

理珠 「……?」 ジーーーッ

ハミちゃん (……?) ジーーーッ

あすみ (に、似てる! やっぱり似てるぞ!!)

あすみ (やはり緒方はハムスター星人なのか!?) ※先輩はとても混乱しています。

292 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/06(木) 23:15:34 ID:TbXVMSi6
理珠 「……あの、先輩?」

あすみ 「あっ!!! すまん緒方! アタシちょっと急ぎの用事を思い出したわ!」

あすみ 「ってことでスマン! そのハムスターはお前に任せた!!」

ダッ

理珠 「へ……?」

理珠 「い、行ってしまいました……」

理珠 (何だったのでしょうか。先輩、少し様子がおかしかったですが……)

理珠 「それよりもこの子ですね。どうしたものでしょうか」

ハミチャーン ハミチャーン

理珠 「……?」

奥様 「……!? あっ、ハミちゃん!」

ハミちゃん (おくさまー!!) ピョーン

奥様 「よかったわぁ、ハミちゃん。探したのよ〜」 ギュッ

理珠 (ほっ。あの人が飼い主さんみたいですね。これで一安心です)

理珠 (それにしても……。先輩、一体どうしたというのでしょうか)

293 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/06(木) 23:16:19 ID:TbXVMSi6
………………翌日 緒方うどん

あすみ 「………………」

ズーン

あすみ (……昨日は本当に最低のことをしてしまった)

あすみ (後輩である緒方にハミちゃんを押しつけ、逃走するに留まらず……)

あすみ (緒方をあの恐ろしいげっ歯類に似ているなどと考えてしまった……)

あすみ (……謝らねば)

あすみ (……と、思ってあいつん家に来たはいいものの、緒方の奴いるかな。とりあえず入ってみるか)

ガラッ

親父さん 「おう、いらっしゃい!」

あすみ 「どうも、こんにちは。あの、理珠さんはいらっしゃいますか?」

親父さん 「お? リズたまのお友達かい?」

あすみ (リズたま……?)

あすみ 「お友達……って言っていいのかな。一応、理珠さんの一つ上の先輩です」

あすみ 「同じ予備校の夏期講習を受けて知り合いました」

294 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/06(木) 23:17:07 ID:TbXVMSi6
親父さん 「おお、ってことは、ひょっとして “あすみ先輩” かい?」

あすみ 「そうですけど……」

親父さん 「話はよくリズたまから聞いてるよ。リズたまに色々アドバイスをくれたみたいで、どうもありがとな」

あすみ 「いえいえ。そんな……」

あすみ 「ところで、理珠さんは……?」

親父さん 「ああ、わりぃわりぃ。リズたまはいまちょっと出前中でな。店にはいねぇんだ」

親父さん 「でも、すぐ戻ってくると思うから、うどんでも食べて待っててくれな」

あすみ 「あ、でも……」

親父さん 「気にすんなって。リズたまの友達なんだからごちそうするから」

親父さん 「とりあえず超特急で激うまうどんを作ってくるから、座って待っててくれな!」

あすみ 「あっ……行っちまった」

あすみ (……よくわからんが)

あすみ (うちの親父と同じで、経営が苦手なニオイがするな、あのお父さん)

あすみ (アタシとは違う方向みたいだが、緒方も父親で苦労してそうだな……)

295 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/06(木) 23:17:51 ID:TbXVMSi6
………………

あすみ 「………………」

ズルズルズル……

あすみ (……学園祭でも食ったけど、ここのうどん本当にうめーな)

あすみ (こんな家に生まれりゃ、緒方くらいうどん好きになっても不思議じゃねーかもな)

あすみ 「すみません、お父さん。うどんいただいちゃって」

親父さん 「なに、気にすんなって。そんなに美味しそうに食ってくれりゃうどん屋冥利に尽きるってもんよ」

あすみ 「はい、本当に美味しいです。ご馳走様です」

親父さん 「……いや、ほんと、気にしなくていいんだよ」

あすみ 「……?」

親父さん 「うちのリズたまはさ、こう言っちゃなんだが、ちょっと人の気持ちが分からないところがあってさ」

親父さん 「友達もそう多い方じゃねぇし、友達と喧嘩したっていうのも多かったんだ」

親父さん 「……そんなリズたまがさ、ここ一年くらい、本当に楽しそうでさ」

親父さん 「俺は本当に嬉しいんだ」

296 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/06(木) 23:18:38 ID:TbXVMSi6
あすみ 「お父さん……」

親父さん 「それも全部、文乃ちゃんやうるかちゃん、それからアンタみたいな先輩もいてくれるからだと思う」

親父さん 「だから、本当にありがとな。これからも、リズたまの友達でいてくれると、嬉しいぜ」

あすみ 「………………」

あすみ 「……理珠さんは、アタシにとっても大事な後輩ですから」

あすみ 「こちらこそ、これからも仲良くお付き合いさせてもらいたいです」

あすみ (……うぅ。この親父さん、小さい頃から緒方のことをずっと心配してたんだろうな)

あすみ (なのに、アタシはそんな緒方に、昨日あんな失礼なことをしてしまった……)

親父さん 「……? それにしてもおかしいな。リズたま、もうそろそろ戻ってくると思うんだが……」

親父さん 「まさか、事故にあったりなんか……」 オロオロ

あすみ 「あっ……じゃあ、アタシ探してきますよ」

あすみ 「うどんいただいたお礼です! ちょっと行ってきますね!」

あすみ (早く緒方を見つけて、昨日のことを謝らないと……)

297 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/06(木) 23:19:24 ID:TbXVMSi6
………………

あすみ (……と、急き込んで飛び出したものの)

理珠 「……うーん、どうしたものでしょうか」

あすみ (こんなに早く見つかるとは。あの和服姿は間違いなく緒方だ)

あすみ (……が、)

理珠 「あなたは昨日のハムスターさんですね。今日も脱走してきたのですか?」

ハミちゃん (昨日のおねーさん!) ハミハミハミ

あすみ (なんで緒方とハミちゃんが今日も一緒にいるんだよー!!)

あすみ (これじゃ怖くて話しかけられないじゃねーか!)

298 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/06(木) 23:20:00 ID:TbXVMSi6
理珠 「どうしましょうかね。あなたの飼い主さんも心配しているでしょうし」

理珠 「うちで保護してあげたいところですが、うちは飲食店なので動物は連れ込めませんし……」

理珠 「でも、出前帰りに偶然出会えて良かったです。今日もかわいいですね」

ハミちゃん (このおねーさんも優しいから好きー!) ハミハミハミ

理珠 「さて、どうしましょうか……」

ハミちゃん (おねえさまに会いたいの! 連れてって!) ハミハミハミ

理珠 「……? ハムスターさん? そっちに行きたいのですか?」

理珠 「………………」

ムフー

理珠 「まぁ、今はお店にお母さんもいますし、少しくらい空けてもいいですよね」

理珠 「わかりました。ハムスターさん。あなたの行きたいところまで私が連れて行ってあげましょう」

299 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/06(木) 23:20:42 ID:TbXVMSi6
………………物陰

あすみ 「………………」

ゾクッ

あすみ (お、緒方の奴、ハムスターと楽しげにお喋りを始めやがったぞ)

あすみ (き、昨日の今日で、さっきの今で、反省したばかりで、これは大変、遺憾なことだが)

あすみ (やはりあいつはハムスター星人なのでは……!?) ※先輩は混乱しています。

あすみ (いや、違う。あいつは人間だ。人間でありながら、人類を裏切ったのか!?) ※先輩は混乱しています。

あすみ (だ、ダメだ。正常な判断ができない。こういうときは……)

ピッ……prrrr……

成幸 『もしもし?』

あすみ 「後輩! 悪いが今すぐ来てくれ! 緒方がハムスター星人で人類を裏切ったんだ!!」

成幸 『先輩が混乱しているのはよく分かりました。今すぐ行くのでそこを動かないでください』

300 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/06(木) 23:21:30 ID:TbXVMSi6
………………

あすみ 「かくかくしかじかというわけなんだ」

成幸 「……はぁ。まぁ、話は分かりましたけど」

成幸 「それで緒方をつけ回してるんですか?」

あすみ 「し、仕方ねーだろ! アタシは先輩として、あいつを正しい人類の道に戻してあげる必要がある!」

成幸 (この人、げっ歯類が絡むとほんとぶっ飛んじゃうよなぁ)

成幸 「俺が緒方と話してきましょうか?」

成幸 「で、俺がハミちゃんを預かっちゃえば、先輩も緒方と話せますよね?」

あすみ 「だ、ダメだ!」

ギュッ

成幸 「せ、先輩!?」 (お、往来で急に抱きつかれるのはさすがに……)

あすみ 「お、お前までげっ歯類側に行ってしまったら、アタシは……アタシは……」

成幸 「……あ、はい」

成幸 (げっ歯類側って何だろう……)

301 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/06(木) 23:22:15 ID:TbXVMSi6
………………

ハミちゃん (次はこっち!) ハミハミハミ

理珠 「こっちですね。わかりました」


………………

あすみ 「な!? 緒方の奴、ハムスターの言葉がわかってるんだよ!」

成幸 「まぁ、たしかにそう見えますけど……」

成幸 「そんなことより、緒方はどこに向かっているんでしょうね」

あすみ 「ん……そういえば……」

ハッ

あすみ 「こ、この辺は、見覚えがある……というか、アタシがよく通る道だ……」

成幸 「……うん、まぁ、俺も薄々そう思ってましたけど」

成幸 「間違いなく先輩の家に向かってますよね」

あすみ 「なんだと!? 緒方の奴、本当に人類を裏切るつもりか!?」

成幸 (……この先輩見るの少し楽しくなってきたな)

302 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/06(木) 23:22:45 ID:TbXVMSi6
………………小美浪診療所

理珠 「ここは……」

理珠 「小美浪先輩の家……?」

小美浪父 「……おや? 君はたしか、娘の友達の緒方さんだったかな?」

理珠 「どうも、こんにちは」

ハミちゃん (おねえさまの家!) ピョーン!!

理珠 「あっ、ハムスターさん!」

トトトトトト……

303 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/06(木) 23:23:34 ID:TbXVMSi6
理珠 「す、すみません、すぐ捕まえます」

小美浪父 「ああ、気にしなくていいよ」

小美浪父 「あのハムスターはたまに来る娘の友達だ。たぶん娘の部屋に行ったんだろう」

小美浪父 「最近、娘はよくあの子と遊んでいてね」

小美浪父 「きみが連れてきてくれたんだね。娘のために、わざわざありがとう」

理珠 「いえ、そんな……」

理珠 「あっ……す、すみません。お仕事中ですよね。お邪魔をしてしまって……」

小美浪父 「気にしなくていいよ。今はお昼休憩中だからね」

304 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/06(木) 23:24:06 ID:TbXVMSi6
………………

あすみ 「お、緒方の奴本当にうちに入っていきやがったぞ!?」

あすみ 「あいつは本気でアタシたちを裏切ったのか!?」

成幸 「そんな自覚はないと思いますよ。ほら、先輩、少し落ち着きましょう」

成幸 「お父さんは先輩がげっ歯類を苦手だって知ってるんですよね?」

あすみ 「……まぁ、多分」

成幸 「それなら、きっとなんとかしてくれますよ。とりあえず入りましょう?」

あすみ 「そ、それもそうだな……」

あすみ (……いや、しかし、げっ歯類は狡猾だ。どんな罠を張り巡らしているか分からない)

あすみ 「……とりあえず、こっそり行くぞ」

成幸 「えっ? まぁいいですけど……」

コソコソコソ…………

305 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/06(木) 23:24:45 ID:TbXVMSi6
あすみ 「ん……。親父と緒方が何か話してるな……」

小美浪父 「ああ、気にしなくていいよ」

小美浪父 「あのハムスターはたまに来る娘の友達だ。たぶん娘の部屋に行ったんだろう」

小美浪父 「最近、娘はよくあの子と遊んでいてね」

小美浪父 「きみが連れてきてくれたんだね。娘のために、わざわざありがとう」

あすみ 「……親父」

成幸 (お父さん、ハミちゃんから逃げ回る先輩を見て、“遊んでる” と思ってるんだな)

成幸 (あのお父さんならさもありなんだけど、先輩、怒ってるだろうなぁ……) チラッ

あすみ 「……親父ぃ」 ボロボロボロ

成幸 「……!?」 (な、泣いてる!?)

あすみ 「お、親父……どうして侵略の手引きなんかを……」

あすみ 「パパまでげっ歯類側についたのかよぉ〜〜〜!!」 シクシクシク

成幸 (先輩ってとことんまで弱るとパパ呼びなんだ……っていうか、まさか泣き出すとは……)

成幸 (……先輩は本当に辛いだろうから、不謹慎な話ではあるけど)

成幸 (……少し可愛いな)

306 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/06(木) 23:25:29 ID:TbXVMSi6
………………

小美浪父 「お茶とようかんだよ。どうぞ」 コトッ

理珠 「すみません……」

小美浪父 「いやいや。こちらこそ、おうちのお手伝い中なのにすまないね」

理珠 「いえ。父にはもう連絡を入れたので、大丈夫です」

小美浪父 「そうか。それならよかったよ。きみたちとは、一度ゆっくりお話がしたかったんだ」

理珠 「?」

小美浪父 「……とりあえず、まず、言わせてほしい」

ペコリ

小美浪父 「……娘と仲良くしてくれて、本当にありがとう」

307 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/06(木) 23:26:21 ID:TbXVMSi6
………………

あすみ 「うぅ……まさか、家族にまで裏切り者がいるとは……」 ブツブツブツ

成幸 「……先輩」

あすみ 「なんだよぅ……」

成幸 「盗み聞きみたいになっちゃって嫌ですけど、先輩もこっち来て聞きましょう?」

あすみ 「裏切り者たちの話なんか……」

成幸 「ほらほら、いつまでも混乱してないで、来てくださいってば」

成幸 「先輩は絶対に聞いといた方がいいですよ。この話」

クスッ

成幸 「先輩のお父さんも先輩とそっくりで、なかなか素直になれない人ですから」

あすみ 「……?」

308 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/06(木) 23:27:13 ID:TbXVMSi6
………………

理珠 「へ? へ? い、いえいえ、そんな……頭を下げられるようなことでは……」

小美浪父 「いや、本当にきみたちには感謝をしているんだ」

小美浪父 「あすみは小さい頃から活発で人好きのする性格でね」

小美浪父 「友達も多かったし、いつも楽しそうだったよ」

小美浪父 「……でも、浪人し始めてから、あの子はずっと必死でね」

小美浪父 「もちろん私のせいもあるのだろうが、どうにも、余裕がないようだった」

小美浪父 「……しかし、夏くらいからかな。それこそ、唯我くんやきみたちと出会ってからだ」

小美浪父 「あの子から余計な力が抜けて、余裕が出てきたように見えるようになった」

小美浪父 「間違いなく、唯我くんや緒方さん、古橋さん、武元さんのおかげだ」

小美浪父 「……だから、ありがとう。私はいま、本当に安心しているんだ」

小美浪父 「娘がきみたちと出会ってよかった。きみたちが、娘のお友達になってくれて、本当によかった、とね」

理珠 「お父さん……」

309 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/06(木) 23:27:57 ID:TbXVMSi6
理珠 「そうやって言われると、なんて言っていいのかわかりませんが……」

理珠 「私もお勉強のことやその他のことで、先輩からは色々とアドバイスをもらったりします」

理珠 「私にとって、とても頼りになる先輩です」

理珠 「……だから、私の方こそ、先輩に出会えてよかったです」

小美浪父 「そうか……」

小美浪父 「……そう言ってもらえると、私も嬉しいよ。ありがとう、緒方さん」

理珠 「あっ……さすがにそろそろお店に戻らないとです」

理珠 「お茶とようかん、ごちそうさまでした」

小美浪父 「いやいや、おじさんの話に付き合わせてしまって悪かったね」

小美浪父 「また遊びに来なさい。あすみともども、歓迎するよ」

理珠 「はい! また来ます!」

310 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/06(木) 23:28:27 ID:TbXVMSi6
………………

あすみ 「………………」

成幸 「ね? 聞いて良かったでしょ?」

あすみ 「……ふん」 プイッ

あすみ (……緒方の奴、嬉しいこと言ってくれるじゃねーか)

あすみ (親父も親父だ。恥ずかしいことばっか言いやがって……)

あすみ (いや、しかし、アレだな……)

ズーン

あすみ (……さっき緒方のお父さんと話をして反省したばかりだというのに)

あすみ (またげっ歯類に混乱して、わけの分からんことを口走ってしまった……)

あすみ (ハミちゃんもいなくなったことだし、今度こそ緒方に謝らないと……)

311 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/06(木) 23:29:06 ID:TbXVMSi6
………………

理珠 「さて、急いでお店に戻らないとですね……」

理珠 (さすがに、長く外に出すぎました。帰ったらお父さんに謝らないと……ん?)

あすみ 「……よう」

理珠 「あ、小美浪先輩」 キョトン 「びっくりしました。今、ちょうどおうちにお邪魔していたんですよ」

あすみ 「……みたいだな」

あすみ 「……なぁ、緒方」

理珠 「はい?」

あすみ 「昨日は、その……逃げ出すような真似して悪かったな」

理珠 「……はい?」

あすみ 「いや、その……ハムスター、お前に押しつけたみたいになっちまっただろ?」

理珠 「ああ、そういえば、昨日もハムスターさんと会いましたね」

理珠 「大丈夫ですよ。あの後すぐに飼い主さんが来て引き取ってくれましたから」

あすみ 「そ、そうか……」 ホッ 「それならよかった」

あすみ 「でも、すまん。悪いことをした」

312 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/06(木) 23:29:52 ID:TbXVMSi6
理珠 「? そんな、頭を下げるようなこととは思えないのですが……」

あすみ (まぁ、実際にはそれだけじゃなくて、お前のことをハムスター星人だのなんだのひどいことを言ってしまったんだが……)

あすみ (緒方が気分を害しても嫌だし、それはいつか、別のときに告白するとして……)

あすみ 「あ、あのさ……」

理珠 「はい?」


あすみ 「アタシにとって、お前は大切な後輩だから」


理珠 「……? はい?」

あすみ 「……いや、お前、そこはもう少し笑顔になってくれてもいいだろうが」

カァアアアア……

あすみ 「アタシがひとりでこっぱずかしいこと言っただけみたいになっちゃうだろ」

理珠 「すみません。そういうものなんですね」

理珠 「ありがとうございます。私も、先輩のことは尊敬していますし、大切に思っていますよ」

あすみ 「っ……」 (そ、そうだ。こいつはこういう奴だ。照れるようなことを、何でもないように言えるんだ)

313 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/06(木) 23:30:22 ID:TbXVMSi6
あすみ 「……引き留めて悪かったな。それだけ言いたかったんだ」

理珠 「そうですか」

理珠 「では、また、小美浪先輩」

あすみ 「おう。またな」

あすみ 「………………」

ズーン

あすみ (……ほんと、いくら混乱してたとはいえ、あんなに良い奴をげっ歯類の手先だと思い込むなんて)

あすみ (アタシもヤキが回ったもんだ。ごめんな、緒方……)

314 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/06(木) 23:30:54 ID:TbXVMSi6
成幸 「終わりました?」 ヒョコッ

あすみ 「おう。後輩も、くだらねーことに付き合わせちまって悪かったな」

成幸 「いえいえ」

あすみ 「……お詫びに勉強付き合ってやるよ。うち寄ってけよ」

成幸 「お詫びって……。どうせ理科で教えてほしいところがあるんじゃないですか?」

あすみ 「にひひ、バレたか。ま、いいだろ。大好きな “先輩と密室” シチュなんだからよ」

成幸 「だからそれは勘違いだって言ってるでしょーが!」

成幸 (……あれ?)

成幸 (そういえば、何か忘れてるような……?)

315 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/06(木) 23:31:32 ID:NI3MJeIE
うひょおおおおおお!!!!

316 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/06(木) 23:31:39 ID:TbXVMSi6
………………小美浪家

あすみ 「大体だな、お前はもう少しこのシチュエーションに感謝した方がいいぜ?」

あすみ 「アタシとふたりっきりで勉強できるんだ。店のファンなら垂涎モンだぞ?」

成幸 「俺はべつにハイステージのファンではないので……」

ドキドキドキドキ……

成幸 (な、なんだろう。先輩とふたりきりということに対してのドキドキじゃない、この胸騒ぎは……)

成幸 (先輩の部屋に近づくにつれて、どんどん動悸が激しくなっていく……)

成幸 (何か、忘れてはいけないものを忘れているような……)

あすみ 「ったく。つれねー後輩だな。ま、いいや」

ガチャッ

成幸 「……!?」

ハッ

成幸 「あっ!! せ、先輩! 部屋の中にはきっと……――」

――――ピョーン!!!

ハミちゃん (おねえさまー!!)

317 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/06(木) 23:32:17 ID:TbXVMSi6
あすみ 「へ……?」

ムギュッ

あすみ 「………………」

ハミちゃん (えへへー、おねえさまー!) はみはみ

成幸 「せ、先輩……」

成幸 (む、胸元にダイブをキメるとは、やるなハミちゃん……)

あすみ 「………………」

ブワッ

あすみ 「うわあぁあああああああああん!! なんでこうなるんだよぉおおおおお!!」

あすみ 「後輩取って後輩取って後輩取ってぇえええええええええ!!」

あすみ 「ハムスター怖いよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

成幸 「お、落ち着いてください先輩! 今取りますから!!」

318 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/06(木) 23:32:49 ID:PxM1298I
待ちに待ってた

319 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/06(木) 23:33:02 ID:TbXVMSi6
あすみ 「ダメ! お願い! 早く取ってぇええええ!!」

成幸 「ちょっ、暴れないでください! 取れないでしょ!」

あすみ 「緒方〜〜〜〜〜!! やっぱりお前はハムスターの手先なのか〜〜〜〜〜〜!!!」

成幸 「またわけわからないこと言い始めた!? 先輩どんだけげっ歯類苦手なんですか!?」

成幸 「……うわっ、脱いだ服振り回さないでください! ハミちゃんもう床に降りてますから!」

成幸 「ってなんでブラジャーまで取ろうとしてるんですか!?」

あすみ 「緒方〜〜〜!!」

グスッ

あすみ 「やっぱりお前はハムスター星人だったのかーーーー!!」


おわり

320 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/06(木) 23:33:55 ID:TbXVMSi6
………………幕間  「まぁ誤解するよね」

あすみ 「……はぁ……はぁ」 ゼェゼェ……

成幸 「落ち着きました? 先輩……」

あすみ 「……ああ。また恥ずかしいところを見せちまったな」 ギロッ 「……とりあえず忘れろ」

成幸 (どうやって忘れろと言うんだろう……) 「……っていうか、先輩、ハミちゃんはカゴの中に入れましたから」

ハミちゃん (出してー! 出してー!) ハミハミ

成幸 「いい加減、俺から離れてくれませんか? っていうか、その……」 カァアアアア…… 「せめてブラジャーだけでもつけてもらえると……」

あすみ 「も、もう少しだけくっつかせといてくれ……身体の震えが止まらないんだ」

成幸 「……まぁ、いいですけど……」

小美浪父 「あすみ! 何を暴れているんだ!?」 ガチャッ 「大丈夫か!? ……っと」

小美浪父 「………………」 ポッ 「……すまん。取り込み中だったか」

成幸 「ま、待ってください! お父さん!? 違いますよ!? 違いますからね!?」

小美浪父 「いや、大丈夫だ、唯我くん。私は分かっているから。理解ある父親を目指しているから」

成幸 「それ絶対分かってないですからね!?」

おわり

321 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/06(木) 23:34:59 ID:TbXVMSi6
>>1です。
読んでくださった方ありがとうございました。


また投下します。

322 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/06(木) 23:35:21 ID:NI3MJeIE
おつんこ

323 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/07(金) 00:22:56 ID:Kt4k9.rI
おっつ!

324 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/07(金) 09:02:08 ID:AznPBsbY
やはりあしゅみー先輩が最強

325 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/07(金) 12:49:03 ID:YbxNUzQA
生きてたようで何よりや
乙乙

326 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/07(金) 13:01:54 ID:73y8ue3k
そういや文乃って動物とも意思疎通できたな

327 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/08(土) 00:24:27 ID:uk9Tgtt.
文学を極めし者万物と対話したり
って言葉もあるくらいだし

328 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/09(日) 00:40:28 ID:kzaYf5dA
おつです
おかえり!

329 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/09(日) 22:34:39 ID:pNLIM/2k
>>1です。
投下します。

【ぼく勉】 小林 「幼なじみの餌付けにハマってたら彼女に怒られた」

330 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/09(日) 22:35:20 ID:pNLIM/2k
………………帰り道

陽真 「ほら、見て見て智波ちゃん」

智波 「? 写真?」

陽真 「うん! この前成ちゃんが家に来たとき、カツカレーをごちそうしたんだ」

陽真 「幸せそうな顔でしょ? 可愛いよね〜」 ニヘラ

智波 「……あ、うん。そうだね」

智波 「………………」 (……また唯我くんの話かぁ)

智波 (陽真くん、本当に唯我くんのことが好きなんだなぁ。ちょっと妬いちゃうよ……)

智波 (唯我くんはきっと、わたしの知らない陽真くんもたくさん知ってるんだろうな……)

智波 (うらやましいなぁ……)

陽真 「成ちゃんは美味しいものを食べるとき、こういう幸せそうな顔をするんだよねー」

智波 「へー……」 (っていうか……)

智波 (陽真くん、わたしがどういうとき、そういう顔をするかとか、知ってくれてるのかな)

ズキッ

智波 (……ああ、なんか。わたしすごく、めんどくさいこと考えちゃってるな)

331 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/09(日) 22:36:09 ID:pNLIM/2k
陽真 「……? 智波ちゃん?」

智波 「へっ?」

陽真 「どうかした? なんか、少し……」

陽真 「少し、悲しそうに見えたから……」

智波 「あっ……」 アセアセ 「そ、そんなことないよ! ないない!」

陽真 「………………」

智波 「………………」

智波 「あっ、えっと……」

智波 「じゃあ、わたしこっちだから! じゃあまた明日ね! 陽真くん!」

陽真 「あっ、うん……。また明日、智波ちゃん」

タタタタタ……

智波 「……はぁ」

智波 (……サイテーだ、わたし。陽真くんにウソついて、逃げ出しちゃった)

智波 (……うぅ)

332 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/09(日) 22:36:41 ID:pNLIM/2k
………………翌日 3-B教室

陽真 「………………」

ズーン……

成幸 「……おい、大森」 コソッ 「小林の奴どうしたんだ? めずらしくめっちゃ凹んでるぞ」

大森 「お前が知らないあいつのことを俺が知ってるわけないだろ」

大森 「尋常じゃない凹み方してるから、お前ちょっと聞いてこいよ」

成幸 「……うん。そうだな。そうするよ」

成幸 (小林があんな風にもろに感情を表に出すってめずらしいからな……)

成幸 (幼なじみとして、看過するわけにはいかない。よし、行くぞ……!)

333 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/09(日) 22:37:14 ID:pNLIM/2k
成幸 「よー、小林。おはよう。どうしたんだ、元気がないけど」

陽真 「……ああ、成ちゃん。おはよう」

陽真 「昨日、ちょっとね……」 ニコッ 「大丈夫。大丈夫だよ……」

成幸 「いや、全然大丈夫に見えないんだけど……」

ハァ

成幸 「なんかあったんだろ? 俺は頼りないかもしれないけど、お前の幼なじみだからさ」

成幸 「何かあったなら教えてくれよ。相談に乗るくらいはできるからさ」

陽真 「成ちゃん……」

陽真 「ありがとう。じゃあ、少し聞いてもらおうかな……」

成幸 「おう!」

334 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/09(日) 22:37:59 ID:pNLIM/2k
………………3-D

智波 「……それでね、陽真くんがあんまりにも唯我くんの話ばっかりするもんだから」

智波 「わたし、段々悲しくなってきちゃって……」

智波 「陽真くんは、唯我くんと同じくらい、わたしのこと分かってくれてるのかな、とか……」

智波 「……陽真くんは、わたしより唯我くんと一緒にいる方が楽しいんじゃないかな、とか……」

智波 「そしたらね、陽真くんが心配そうな顔で……」


―――― 『どうかした? なんか、少し……』

―――― 『少し、悲しそうに見えたから……』


智波 「……わたしはその後、ウソついて逃げ出しちゃって……」

智波 「……そのときから気まずくて、メッセージも返信してないし」

智波 「うぅ……陽真くんに申し訳なくてさぁ……」

あゆ子 「……なるほどなぁ」

うるか 「海っちが朝からヘコんでたのはそういうワケだったのかー」

335 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/09(日) 22:38:43 ID:pNLIM/2k
智波 「うぅ〜、うるかぁ、あゆ子ぉ、陽真くんきっと、もう……」

智波 「もう、わたしのことなんか……」

グスッ

智波 「……嫌いになっちゃったよね……」

あゆ子 「……!? お、おいおい、智波。泣くなよ。あの小林がそんなことでお前のことを嫌いになるわけないだろ」

智波 「でもぉ……」

あゆ子 「……というか、だ」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

あゆ子 「彼女の前で唯我とのノロケを話す小林に、私から一言言ってやらないと気が済まないぞ」

うるか 「ま、まぁまぁ。こばやんにも悪気はないだろうから、おさえておさえて」

うるか (……とは言ったものの、海っちは本当に辛そうだし、このまま放っておけないよね)

うるか (……よーしっ)

うるか 「ふふ、ここは恋のキューピッド、うるかちゃんに任せなさい!」

智波 「うるか……?」

うるか 「あたしが絶対、海っちとこばやんを仲直りさせたげるから、オーブネに乗ったつもりで任せてよ!」

うるか (とはいえ、どうしたらいいか分からないし……。とりあえずは、成幸に相談かな)

336 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/09(日) 22:39:52 ID:pNLIM/2k
………………昼休み

うるか 「……っていうわけでね。海っちは成幸に嫉妬してるんだよ」

成幸 「なるほどなぁ……」

ハッ

成幸 「って、俺に嫉妬!? 俺男だぞ!?」

うるか 「オトメゴコロは複雑なんだよ、成幸」 チッチッチ 「そんなんじゃモテないぞ〜?」

成幸 「余計なお世話だよ。悪かったな……」

成幸 「……それにしても、俺に嫉妬ねぇ」

成幸 「まぁ、それに関しては完全に小林が悪いな。彼女に俺の話してどうするんだよ……」

成幸 「もっと他に面白い話してやれよ……」

うるか 「まぁ、こばやんにしてみれば、成幸の可愛さを大好きな海っちにも共有したかっただけなんだろうけど……」

成幸 「はぁ? 何度も言うけど、俺男だぞ? 俺が可愛いってなんだよ……」

うるか 「……!?」 (し、しまったー! つい、成幸の前で、成幸の可愛さとか口走っちゃったよー!)

うるか 「あ、あたしが思ってるんじゃないよ? あくまでキャッカンテキな目線の話だよ!?」

成幸 「客観的に見て可愛いのか!? 俺が!?」

337 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/09(日) 22:40:33 ID:pNLIM/2k
うるか 「……オホン、オホン! 話がズレたね。元に戻すとしよーか」

成幸 (なんか誤魔化された気もするが、まぁいいか……)

うるか 「海っちもね、こばやんが成幸のこと大好きなのは知ってるから、理解は示してるんだよ」

うるか 「こばやんが成幸のことを話してるのを聞いて、少し不安になっちゃっただけなんだよ」

成幸 「わかってるよ。小林も海原もすごく良い奴らだ。ただのボタンの掛け違いだろ?」

成幸 「小林だって、少し俺の話をしすぎたって反省してたぞ」

成幸 「海原に謝りたいってさ」

うるか 「うんうん。さすがこばやんは、オトメゴコロをよく理解してるよね」

うるか (成幸とは大違いだよ) ジトッ

成幸 (……なんか、無言で責められている気がする)

成幸 「なんにせよ、海原も小林と仲直りしたいと思ってくれてるなら簡単だ」

成幸 「今話したことを俺が小林に、うるかが海原に話せば解決だな」

うるか 「オッケー! じゃあ、ゼンは急げってことで、あたし早速海っちと話してくるね!」

成幸 「ああ。じゃあ俺もすぐ小林のところに行くよ」

338 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/09(日) 22:42:25 ID:pNLIM/2k
………………

成幸 「……ってことで、海原は全然怒ってないよ」

成幸 「お前が俺の話ばっかりするから、少し不安になってしまっただけなんだと」

成幸 「で、今は猛烈に反省していて、お前に嫌われたんじゃないかってうるかに泣きついてるみたいだぞ?」

陽真 「そっか……」

ホッ

陽真 「……よかった。嫌われたわけじゃないんだね」

陽真 「でも、智波ちゃんに不安な思いをさせてしまったのは、本当に反省しないと……」

陽真 「同じようなことをしないために、今後のことをしっかり考えないと……」

成幸 「………………」 ハァ 「まったく、お前は……。チャラい見た目のくせに根がまじめすぎるだろ」

陽真 「へ……?」

成幸 「いいからとにかく、会って謝ってこいよ」

成幸 「考えるのはそれからでもいいだろ?」

陽真 「成ちゃん……。うん、そうだね。とりあえず、智波ちゃんに会って、謝って、話してくるよ」

成幸 「おう!」

339 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/09(日) 22:42:59 ID:pNLIM/2k
陽真 「本当にありがとね、成ちゃん。やっぱり成ちゃんは、俺にとって……」

成幸 「?」

陽真 「……ううん、何でもない。本当に頼りになる幼なじみだよ、成ちゃんは」

成幸 「そうか? そう言われると、幼なじみ冥利に尽きるってもんだな」

成幸 「ほら、早く行ってこいよ。川瀬の奴は少し怒ってるみたいだから、気をつけろよ」

陽真 「……まぁ、そうだろうね。川瀬と智波ちゃんは仲良いしね」

陽真 「武元にもお礼を言っておかないと……――」

――ビュォオオオ!!!

成幸 「っ……!?」 (痛つつ……突風で目にゴミが入ったな……)

陽真 「すごい風だったね。成ちゃん、大丈夫?」

成幸 「ああ、ちょっと目にゴミが入ったみたいだ……」 ゴシゴシ

陽真 「あっ、目をこすったらダメだよ。角膜に傷がついちゃうよ」

成幸 「そうは言ってもな、ゴミが取れなくて、痛くて……いててて……」

陽真 「ほら、こっち向いて、成ちゃん」 クイッ 「取ってあげるから」

成幸 「悪い、小林。頼む」

340 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/09(日) 22:43:37 ID:pNLIM/2k
………………少し前

うるか 「かくかくしかじか、ってわけなんだよ」

智波 「………………」

ブワッ

智波 「よ、よかったよぅ〜……。陽真くん、怒ってないんだね……」

智波 「うぅ……陽真くんに嫌われたらどうしようって、気が気じゃなかったから……」

智波 「力が抜けたよぅ……」

うるか 「よしよし。辛かったねぇ、海っち。もう大丈夫だよ」 ナデナデ

うるか 「ほら、早速こばやんのところに行こう? こばやんも海っちに謝りたいみたいだし」

智波 「うん。そうするよ。わたしも陽真くんに謝らないといけないし……」

智波 「っていうか、彼氏の男友達に嫉妬するって、やっぱり重いよね、わたし……」

智波 「わたし、自分がこんなに嫉妬深いなんて思ってなかったよ。改めないといけないよね」

うるか (少しヤキモチを妬いて、少し悲しくなるくらい、べつにいいと思うケド……)

うるか 「……今度から、こばやんとちゃんとお話すればダイジョーブだよ」

うるか 「悲しくなったら悲しいって言えばいいし、嫉妬しちゃったら甘えればいいし!」

341 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/09(日) 22:44:08 ID:pNLIM/2k
うるか 「こばやんなら絶対、海っちの言うことを聞いてくれるだろうし、理解もしてくれるから!」

うるか 「女の子は少し嫉妬するくらいが可愛いって文乃っちも言ってたし!」

智波 「うるか……」 グスッ 「そうだね! わたしも、ちゃんと話をしなきゃダメだよね」

智波 「いくら彼氏だって、言わなくてわたしの考えが伝わるわけないもんね!」

うるか 「うんうん。その意気だよ、海っち」

うるか 「それに、少しくらい嫉妬しても仕方ないよ。だって、成幸とこばやんは本当に仲良しだし!」


うるか 「なんてったって、あのふたりはキスマークをつけるくらい仲が良いんだからね!」


智波 「……へ?」

うるか 「……うん?」

うるか (あ、あれ? おかしいな? 海っちの目が急に真っ暗になったよ?)

うるか 「海っち……?」

智波 「……ねえ、うるか? 今、わたしの聞き間違いかな?」

智波 「陽真くんと唯我くんが、キスマークをつけるくらい、仲が良いって聞こえたんだけど?」

うるか 「い、言ったけど……」

342 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/09(日) 22:46:26 ID:pNLIM/2k
智波 「……キスマーク」

智波 「どこに?」

うるか 「えと……成幸の、首に……二箇所くらい」

智波 「首に二箇所」

智波 「それはいつ頃の話?」

うるか 「ついこの前だけど……」

智波 「本当に陽真くんがつけたの?」

うるか 「たぶん……」

智波 「……うん。そっか。うんうん。よくわかったよ」

うるか 「い、いやいや、海っち? あのふたり仲良いから、それくらいなら……――」

智波 「――それくらい!? キスマークつける関係は仲良いとかそんなレベルじゃないよ!?」

智波 「うるかはいいの? 大好きな唯我くんが、陽真くんにキスマークをつけられてて」

うるか 「へ……? あ、うん。こばやんだったらいいかな、って……」

智波 「……うん。うん。うるかはそうかもね」

343 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/09(日) 22:46:59 ID:pNLIM/2k
智波 「………………」

ズーン

智波 「……そっか。ずっと、もしかしたら、って思ってたけど」

智波 「……やっぱり、陽真くんが一番好きなのは、唯我くんなんだね」

うるか (ま、まずいよ) ダラダラダラ (せっかくきれいにまとまりかけたのに……)

うるか (あたしが余計なこと言ったせいで、また海っちが沈んじゃったよーー!!)

智波 「はは……そっか……。首にキスマークつけるくらいかぁ……」

うるか 「う、海っち! とりあえずこばやんとこ行こ? ね?」

グイッ

智波 「……はぁ」

うるか (ま、まずいよー! とにかく早く、こばやんのところ連れて行かないと……)

ズルズルズル……

智波 「はは……あはは……」

344 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/09(日) 22:47:31 ID:pNLIM/2k
………………

成幸 「いててて……」

陽真 「ほら、成ちゃん。動かないでってば。取れないよ」

成幸 「そんなこと言われても、痛いんだから仕方ないだろ……」

陽真 「まったくもう」 クスッ 「成ちゃんは仕方ないなぁ……」

成幸 「あとお前、ちょっと近いぞ……」

陽真 「仕方ないでしょ。これくらい顔近づけないとなりちゃんの目の中なんか見えないよ」

成幸 (まぁ、それもそうか……)

陽真 「……よいしょっ、と」

成幸 「ん……」

陽真 「どうかな? 大きいゴミは取れたと思うけど」

成幸 「ああ、ゴロゴロしてたのはなくなったよ。ありがとな」

陽真 「どういたしまして」

  「こ、こばやん……?」

陽真 「……? あれ、武元と……智波ちゃん!?」

345 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/09(日) 22:48:14 ID:pNLIM/2k
成幸 (お、うるかの奴、海原を連れてきてくれたのか。ちょうど良いタイミングだな)

成幸 「ちょうど良かったよ、海原。いま、小林をお前のところに――」

智波 「――……か、顔を近づけて、お互いのことを見つめ合って……」

智波 「い、今、ふたりでキスの余韻に浸ってたよね……?」

成幸 「………………」

成幸 「……は?」

智波 「き、キスマークなんて話があったから、多分そうだろうとは思ってたけど……」

グスッ

智波 「やっぱりふたりは、そういう関係だったんだね……」

成幸 「いや、待て待て待て! 海原!? お前何を言ってるんだ!?」

成幸 「小林も何か言ってやれよ……って」

陽真 「智波ちゃんが、泣いてる……」

陽真 「俺はまた、智波ちゃんに悲しい思いをさせてしまった……」

成幸 「ショックを受けるのは後にしてくれないか!? 海原がよくわからん勘違いをしてるぞ!?」

346 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/09(日) 22:48:46 ID:pNLIM/2k
智波 「……否定もしてくれないんだね」

智波 「もういいよ。陽真くんなんか知らない! 唯我くんのことなんかもっと知らない!」

成幸 「いや、待て! 話を聞いてくれって!」

うるか 「成幸ー! こばやんとの仲良しは許してあげてたけどー!」

うるか 「キスまでしていいなんて言ってないんだからねー!」

成幸 「お前までわけわからんことを言い出さないでくれないか!?」

智波 「うぇーーーーーーーーーん!!!」

タタタタタ……!!!

成幸 「あっ、ちょっ、海原! 待てって!!」

ガシッ

成幸 「へ……?」

陽真 「……ごめん、成ちゃん。ちょっと今、成ちゃんにまでどこかに行かれたら、立ち直れないから」

陽真 「しばらくそばにいて」

成幸 「あ、ああ……」 (こんなに弱ってる小林、久しぶりに見たな……)

成幸 (やっぱり、海原に拒絶されたのがショックだったんだな……)

347 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/09(日) 22:49:32 ID:pNLIM/2k
………………放課後

うるか 「えっ? さっき、こばやんと成幸、キスしてたんじゃないの?」

成幸 「するわけないだろ!? 何考えてんだお前は!?」

うるか 「いやー、でも……成幸とこばやんだったらありえなくはないかな、って……」

成幸 「……お前は俺たちのことを何だと思ってるんだ」

成幸 「まぁいい。とりあえず、それは置いておくとして……」

陽真 「………………」 ズズズーン

成幸 「……この今にも溶けそうなくらい沈み込んだ小林をどうするかだ」

成幸 「うるか、海原は……」

うるか 「HRが終わってすぐカバンを持って行っちゃったよ……」

成幸 「とりあえず、海原の誤解をとくしかないよな。俺はただ、目に入ったゴミを小林に取ってもらってただけなんだが、」

成幸 「それを説明すれば納得してくれると思うか?」

うるか 「……うーん、それはちょっとムズカシイかもしれないよ」

成幸 「どうしてだ?」

うるか 「……あたしが、ちょっと、余計なことを言っちゃったから」

348 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/09(日) 22:50:19 ID:pNLIM/2k
成幸 「余計なこと?」

うるか 「……ごめん、成幸。ちょっと口が滑っちゃってさ……」

うるか 「成幸がこばやんにキスマークをつけられたこと、海っちに話しちゃってさ……」

成幸 「は?」

うるか 「ごめん! 悪気はなかったんだ。つい、ツルッと、口が滑っちゃって……」

成幸 「いや、ちょっと待て。キスマーク? 俺が、小林に? つけられた?」

成幸 「何の話をしてるんだ? っていうか、何わけのわからないことを言い出してるんだ?」

うるか 「へ……? いやいや、とぼけないでよ、この前、首に跡がついてたでしょ?」

うるか 「バンソーコだって貸してあげたじゃん」


―――― 『成幸それ…… 虫にでも刺されちった…… のかな?』

―――― 『あっ あぁ! そんなトコ……! やっぱ…… 目立つ……よな』

―――― 『バンソーコあるけど』


成幸 「……!? あ、あのときのアレか!? いや、あれは、たしかに、キスマークと言えなくもないが……」

成幸 「でもなんで小林!?」

349 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/09(日) 22:50:54 ID:pNLIM/2k
うるか 「あの前日、成幸が最後に会ってたのがこばやんだったから……」

成幸 「いや、たしかにそうだけど! そうだけれども!」

成幸 「違うよ! あれは……」 カァアアアア…… 「……寝ぼけた葉月と和樹に吸われてできた跡だよ」

うるか 「えっ!?」

カァアアアア……

うるか 「あっ、じゃあ……こばやんにキスマークをつけられた、っていうのは……」

うるか 「あたしの、ただの、カンちがい……?」

成幸 「……そういうことだ」

うるか 「………………」

うるか 「ど、どどどどうしよう、成幸!? 海っちにウソ教えちゃったよ!?」

成幸 「どうするもこうするも、しっかりと話をして誤解を解くしかないだろ……」

成幸 (とはいったものの、だ……)

成幸 (海原の誤解をといたとして、今回はいいとしても、また同じようなことが起こらないとも限らないし……)

成幸 「………………」

成幸 「……うるか。海原に連絡を取ることはできるか?」

350 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/09(日) 22:51:24 ID:pNLIM/2k
うるか 「う、うん。もちろんできるけど……」

成幸 「なら、居場所を聞き出してくれ」

成幸 「あいつの居場所がわかったら、俺が話をしに行く」

うるか 「へ……? あ、あたしが行くよ? その方がいいでしょ?」

成幸 「いや……」

成幸 「……わからないけどさ、これは、俺が行かなきゃいけない気がするんだ」

成幸 「お前は、小林と一緒にいてやってくれ」

成幸 (……そうだ。これは、元を正せば、俺が海原を嫉妬させるようなことをしてしまったせいだ)

陽真 「………………」 ズーン

成幸 (小林は俺の大切な友達だ。俺のせいで、これ以上小林に悲しい思いをさせるわけにはいかない)

成幸 「……俺に任せてくれ、うるか」

うるか 「……うん! わかったよ、成幸!」

351 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/09(日) 22:52:13 ID:pNLIM/2k
………………公園

智波 「………………」

智波 (……バカみたい。わたし)

智波 (陽真くん、きっとムリしてわたしと付き合ってくれてたんだよね……)

智波 (なのに、わたし……)

…………トッ

智波 「あっ、うるか……?」

智波 「えっ……?」

成幸 「……よう」

智波 「な、なんで……唯我くん……」

成幸 「……悪い。うるかに連絡を取らせたのは俺だ。だから、うるかを責めないであげてくれ」

成幸 「ちょっと、お前と話をしたくてさ」

智波 「……そっか」

智波 「いいよ。お話しよ、唯我くん」

352 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/09(日) 22:53:53 ID:pNLIM/2k
………………生け垣 陰

うるか 「………………」

ドキドキドキドキ……

うるか 「だ、大丈夫かな、成幸」

うるか 「海っちのことも心配だし……」

うるか (成幸にはついてくるなって言われたけど、そういうわけにはいかないよね……)

うるか (ここで隠れてどうなるか見守ってよう……)

小林 「智波ちゃん……成ちゃん……」

うるか (こばやんも、ふたりのこと心配だよね……)

うるか (ここから見守ってるからね、成幸! がんばって!)

353 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/09(日) 22:54:44 ID:pNLIM/2k
………………

智波 「………………」

成幸 「………………」

智波 「……お話したいことって何かな、唯我くん」

成幸 「ん、ああ……」

成幸 「……まぁ、わかってるとは思うけどさ、小林のことだよ」

智波 「うん」

智波 「……安心して。もうふたりの邪魔をしたりしないから」

智波 「今までごめんね。わたし……」

成幸 「………………」

成幸 「……うん、まぁ、お前の勘違いを正すのは後にするとして、」

成幸 「少し、小林の話をしてもいいか?」

智波 「……?」

354 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/09(日) 22:55:16 ID:pNLIM/2k
成幸 「知ってるとは思うけど、小林とは幼なじみでさ」

成幸 「小さい頃、あいつの両親がいないときとか、よく家で一緒に遊んだよ」

成幸 「妹の面倒も見てくれてさ。本当に、ずっと一緒だったんだ」

智波 「……うん。そういう話も、陽真くんから聞いてるよ」

智波 「でも、どうしてそんな話をわたしにするの? 自慢?」

成幸 「……かもな。小林っていうすごい友達がいることを、お前に自慢したいのかもしれない」

成幸 「でもな、そんな小林も、最近はお前にべったりでさ」

成幸 「俺たちと一緒にいるときも、お前とのノロケ話を何度聞かされたことか……」

智波 「……え?」

成幸 「やれ “智波ちゃんとどこへ行った” とか、やれ “〜をしていた智波ちゃんがすごく可愛かった” とか」

成幸 「…… “智波ちゃんは、こういうときこういう顔をする” とかな」

成幸 「……分かるんだよ」

成幸 「ああ、こいつは本当に彼女ことが大好きなんだな、って」

成幸 「そして思うんだ」

成幸 「小林はもう、俺の友達っていう以前に、海原の彼女なんだな、って」

355 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/09(日) 22:56:04 ID:pNLIM/2k
智波 「陽真くん……」

智波 (そっか……)


―――― ((陽真くん、わたしがどういうとき、そういう顔をするかとか、知ってくれてるのかな))


智波 (……そう、だよね。陽真くんって、そういう人だもんね。知ってるに、決まってるよね)

智波 (わたし、バカだな……)

智波 (わたしばっかり陽真くんのこと考えてると思ってた……)

智波 (陽真くんも、わたしのこと、考えてくれてたんだね……)

成幸 「……なぁ、海原」

智波 「……?」

成幸 「だから、これからも、小林のことを、よろしくお願いします」

ペコリ

成幸 「……俺の幼なじみのことを、よろしくお願いします」

智波 (……そして、そう)

智波 (わたし以外にもたくさんの人が、陽真くんのことを思ってくれてるんだよね)

356 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/09(日) 22:56:43 ID:pNLIM/2k
智波 「……顔を上げて、唯我くん。ごめんね。ありがとう」

智波 「わたし、自分が恥ずかしいや……」

成幸 「いや、俺の方こそ、誤解されるようなことをして悪かった」

成幸 「あっ、そうだ。本題に戻るけどさ、さっきは俺の目に入ったゴミを小林が取ってくれてただけだからな?」

成幸 「それから、うるかが勘違いしてた、キスマークの件だけど……」

成幸 「あれは、俺の弟妹が寝ぼけてつけただけであって、断じて小林につけられたものじゃないからな」

智波 「……うん。よく考えてみたら、陽真くんと唯我くんがそういう関係なわけないよね」

智波 「バカみたいな勘違いしてたね、わたし。ごめんね……」

成幸 「いや、まぁ……俺は気にしてないからいいよ」

成幸 「ただ、小林とは仲直りしてほしいかな」

智波 「……うん。もし陽真くんが許してくれるなら、わたしも仲直りしたいな」

智波 「だってわたし、やっぱり、陽真くんのことが……」

智波 「……大好き、だから」

ガサッ

陽真 「智波ちゃん!」

357 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/09(日) 22:57:21 ID:pNLIM/2k
智波 「へ……? は、陽真くん!? な、なんでそんなところに!?」

うるか 「こ、こばやん。飛び出したら隠れてたのがバレちゃうよー!」

成幸 「うるか!?」

陽真 「ごめん、智波ちゃん! 俺、全然智波ちゃんのこと考えてなくて……!」

陽真 「不安にさせてごめんね? 苦しい思いをさせてごめんね」

智波 「違うの! わたしが、勝手に勘違いして、勝手に嫉妬してただけだから……」

智波 「陽真くんは悪くないよ。こちらこそ、ごめんなさい」

陽真 「俺は気にしてないよ。だから、大丈夫。智波ちゃん、俺のこと許してくれる?」

智波 「許すも何もないよ。陽真くんの方こそ、わたしのこと、嫌いになってない?」

陽真 「嫌いになんてならないよ。俺も、智波ちゃんのこと……」

陽真 「……大好きだよ」

智波 「陽真くん……」

ギュッ

陽真 「……ごめんね、智波ちゃん」

智波 「こちらこそ、ごめんなさい、陽真くん」

358 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/09(日) 22:57:57 ID:pNLIM/2k
成幸 (め、目のやり場が……) カァアアアア……

成幸 (お、俺もいるんだから、いきなり抱き合うのはやめてくれよ……)

チョイチョイ

成幸 「ん……? うるか?」

うるか 「しーっ。静かに」

うるか 「……お邪魔虫になっちゃうから、このままこっそり退場しよ?」

成幸 「ああ……」

陽真 「智波ちゃん……」

智波 「陽真くん……」

成幸 「……それもそうだな」

成幸 (……小林が元気になってよかった)

クスッ

成幸 (じゃあな、小林。もう喧嘩すんなよ)

359 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/09(日) 22:58:35 ID:pNLIM/2k
………………

うるか 「今日は本当にごめんね! 成幸!」

成幸 「もういいって。うるかばっかりが悪いわけじゃないしさ」

成幸 「ふたりが仲直りしてよかったじゃないか」

うるか 「……うん」


―――― 『だってわたし、やっぱり、陽真くんのことが……大好き、だから』

―――― 『嫌いになんてならないよ。俺も、智波ちゃんのこと……大好きだよ』


うるか 「はうっ……///」

うるか (あのふたりが抱き合ってるのを思い出すと、すごくドキドキする……)

うるか (いつか、あたしも、成幸と……――)

成幸 「――……悪くないんだな、ああいうのって」

うるか 「へ!?」

360 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/09(日) 22:59:07 ID:pNLIM/2k
成幸 「いや、さっきの小林と海原を見て思ったんだ」

成幸 「俺は恋愛とかそういうのはよく分からないけどさ、」

成幸 「いいもんだなって、思ったんだ」

うるか (び、びっくりした。あたしの考えてることがバレたのかと思ったよ……)

成幸 「俺もいつか、誰かとああいうこと、するようになるのかな、とか……」

成幸 「あはは、何言ってるんだろうな、俺。恥ずかしいな」

うるか 「………………」

グッ

うるか (……うん。いつか)

うるか (いつか、あたしも……)

うるか 「……きっとなるよ。いつか、成幸も。大切な人を見つけて、大好きになるんだよ」

成幸 「ん……」

成幸 「……はは、なんかそういう風に言われると恥ずかしいな」

361 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/09(日) 22:59:40 ID:pNLIM/2k
成幸 「……そうだな。いつか、俺も、いつか、そういう風になるんだろうな」

うるか 「ふふふん、ま、がんばんなよー、成幸」

うるか 「がんばんないと、こばやんみたいにはなれないぞー?」

成幸 「わかってるよ。ま、何にせよ受験が終わってからだな」

成幸 「……さて、ヘンなことで時間使ったし、この後挽回しないとだな」

成幸 「ファミレスで勉強でもしてから帰ろうぜ」

うるか 「うん! 行こ行こー!」

うるか (……いつか)

うるか (いつか、成幸が、恋愛をするようになったとき、)

うるか (どうか、その相手が、あたしでありますように)

うるか (成幸が、あたしのことを……)

うるか (大好きになってくれますように)

おわり

362 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/09(日) 23:00:14 ID:pNLIM/2k
………………幕間1 翌日 「川瀬あゆ子」

智波 「ってことで、心配かけてごめんね! ちゃんと陽真くんと仲直りできたよ!」

あゆ子 「ほー。そりゃ良かった。何よりだよ」

あゆ子 (すっかり明るい顔になっちゃってまぁ……)

うるか 「ほんとごめんね、海っち。あたしがヘンな勘違いしたせいで……」

智波 「いいっていいって。元はといえばわたしが唯我くんにヤキモチ妬いたせなんだから、気にしてないよ」

あゆ子 「勘違い?」

うるか 「あ、いや……恥ずかしい話なんだケド……」

うるか 「成幸とこばやんがキスしてるように見えた、とか……」

うるか 「成幸の身体についてたアザを、こばやんがつけたキスマークだと思った、とか……」

うるか 「あはは、あたし、どうしてそんな勘違いしちゃったんだろうね」

あゆ子 「詳しく」

うるか 「へ?」

あゆ子 「それ、もっと詳しく教えなさい、うるか」

363 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/09(日) 23:00:47 ID:pNLIM/2k
………………幕間2 「古橋文乃」

うるか 「……ってことがあってさ。昨日は大変だったんだよ」

文乃 「詳しく」

うるか 「へ?」

文乃 「それもっと詳しく教えて。特に、成幸くんと小林くんの目にゴミのくだりとか」

うるか 「ど、どしたん、文乃っち? なんか川っちも同じようなこと言ってたけど……」

文乃 「当然だよ。だって……」

文乃 「お耽美が嫌いな女の子なんていないんだから!」

バーン

理珠 (お耽美……?)

うるか (お耽美ってなんだろ……?)

おわり

364 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/09(日) 23:04:58 ID:pNLIM/2k
>>1です。
読んでくださった方、ありがとうございました。


問72〜76の間だと思ってもらえれば幸いです。

小林くんも海原さんもすごくニュートラルな子たちなので、
実際こんなことが起きてもここまでこじれないとは思います。
それから、幕間で川瀬さんと古橋さんに勝手に余計なキャラ付けをしてしまいました。
申し訳ないことです。

また投下します。

365 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/10(月) 00:18:34 ID:1FDkoLRw
うーん

366 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/10(月) 11:06:06 ID:zxEILIHc
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367 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/11(火) 00:41:11 ID:ZwxQdVUY
原作でも小林って成幸大好きだし、海原さんに色々ノロケてそう

368 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/11(火) 01:04:11 ID:azK4iaDk
きっしょ

369 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/16(日) 22:44:51 ID:KRWibcSc
先生かわいい

370 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/20(木) 13:50:25 ID:b8v8c0vg
えたってるやんけ…

371 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/25(火) 11:10:50 ID:B1.sXYhM
クリスマスssはよ…

372 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/25(火) 18:28:18 ID:42VB03HE
まだあと6時間あるから

373 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/25(火) 21:55:33 ID:USYRGz46
>>1です。投下します。

【ぼく勉】 うるか 「ラストクリスマス」

374 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/25(火) 21:56:34 ID:USYRGz46
………………駅前

〜〜♪

うるか 「おー、もうクリスマスソングが流れてるね」

あゆ子 「まだ一ヶ月くらい先だけどな。世間は気が早いな」

智波 「またあゆ子ってば、おばさんみたいなこと言って……」

あゆ子 「……ほほう。そんな生意気なことを言うのはこの口か?」 ウリウリ

智波 「あーうー……。やめてよあゆ子ー」

あゆ子 「……ま、それはそれとして、智波はクリスマスのご予定は?」

智波 「えーっ、それはもちろん、陽真くんとデートだけど?」

あゆ子 「……分かってて聞いたけど、ムカつくもんはムカつくな」

うるか 「まぁまぁ、川っち。海っちが幸せそうであたしは嬉しいよ」

智波 「……ありがと、うるか」 ニヤリ 「で? うるかはどうするの?」

うるか 「へ? 何の話?」

あゆ子 「唯我に決まってるでしょ。クリスマス、デートでも誘ったら?」

うるか 「………………」

375 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/25(火) 21:58:07 ID:USYRGz46
あゆ子 (あれ……?)

智波 (予想では……)


―――― うるか 『で、デートなんて……はうっ……』


あゆ子 (って反応だと思ってたけど……)

うるか 「……無理だよ。クリスマスは、家族の日だもん」

智波 (優しい顔して微笑んで……。なんか、いつものうるかと違う感じ?)

智波 「家族の日って、うるかの家はそういう決まりがあるの?」

うるか 「ううん。あたしん家じゃなくて、成幸の話」

うるか 「成幸にとって一番大事なのは家族だから」

うるか 「あたしは、成幸が幸せな時間を邪魔したくないんだ」

うるか (……ああ、なんか思い出しちゃうな)

うるか (あれは、去年のクリスマスイヴだよね……)

376 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/25(火) 21:58:48 ID:USYRGz46
………………昨年 12月24日

うるか 「へ……? ほ、補習!?」

担任 「ああ。他の教科もだが、英語だけはこのままじゃ進級できないレベルらしいからな」

担任 「英語の担当者から必ず来るようにとのことだ」

うるか 「でも、あたし、部活が……」

担任 「滝沢先生にも伝えてある。今日は部活停止だ」

うるか 「そんなぁ〜……」

担任 「……進級したくないのか?」

うるか 「うぅ……わかりました。行きますよ……」

うるか (せっかくのクリスマスイヴなのに〜……)

377 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/25(火) 21:59:29 ID:USYRGz46
………………教室

先生 「では、補習を始めましょうか」

うるか 「あ、あの、先生!」

先生 「なんですか?」

うるか 「あたししかいないんですけど、他に補習を受ける生徒は……?」

先生 「二学期末の補習なんてよっぽど成績が悪い生徒にしかしませんよ」

先生 「よっぽど成績が悪いのがあなただけ、ということです」

うるか 「……なるほど」

うるか (ま、マンツーマンで個人授業……。うー……)

先生 「あ、でも、すぐにもうひとり来ると思いますよ」

ガラッ

「遅くなりました、先生!」

うるか 「……!? 成幸!?」

成幸 「おお、武元か」

378 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/25(火) 22:00:05 ID:USYRGz46
うるか 「成幸も英語の成績が悪かったの?」

成幸 「いや、先生が補習をやると聞いてな。復習のために俺も受けさせてもらえるように頼んだんだ」

先生 「基礎的な部分しかやりませんから、唯我くんには必要ないと思いますけどね」

成幸 「すみません。HRの方が長引いて遅くなりました」

先生 「構いませんよ。ちょどいま始めようとしていたところですから」

先生 「では、改めて、始めましょう」

成幸 「はい、よろしくお願いします」

うるか 「お、お願いします……」

うるか (な、成幸とふたりで補習……これは……)

うるか (せんざいいちぐーのチャンス!!)

うるか (ほ、補習が終わった後、ふたりでデート、なんて……)

うるか 「にへへ……」

成幸 「……?」

379 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/25(火) 22:00:44 ID:USYRGz46
………………補習中

先生 「……と、いうわけで、この場合、"before I got home" から過去完了形と判断できます」

先生 「そこまで分かれば、この場合空欄に入るのは "had known" だと判断できるわけですね」

先生 「まぁ、実際の英会話でそんなことを意識するのはナンセンスですから、あくまで入試のテクニックと思ってください」

成幸 「なるほどなるほど……」 メモメモメモ

うるか 「………………」

うるか (き、基礎しかやらないとか言ってたのに……)

うるか (めちゃくちゃ難しいんだけど!?)

うるか (ってゆーか……)

成幸 「じゃあ先生、こっちの問題の場合は……」

先生 「これは過去完了進行形になりますから、やや複雑ですね」

先生 「つまり……」

うるか (ふ、ふたりで盛り上がっちゃって全然あたしの方を気に留めてない……)

380 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/25(火) 22:01:45 ID:USYRGz46
………………最終下校時刻

先生 「おや、もうこんな時間ですか。では、武元さん」

うるか 「ふぁい……」

先生 「今日の内容についての宿題です。冬休み明けまでに仕上げて提出してください」

先生 「二学期の赤点解消のための加点にしますから」

うるか 「……わかりました」

先生 「それでは、良い冬休みを。さようなら」

成幸 「さようなら、先生」

うるか 「………………」

クタリ

うるか (うぅ……こんな量の宿題、どうやって終わらせろって言うのさ……)

うるか (部活だってあるし、お正月は目いっぱい遊びたいのに……)

うるか (こんな状況じゃ、成幸をデートに誘うどころじゃないよ……)

うるか (お気楽なこと考えてた少し前の自分をひっぱたいてやりたいよ……)

成幸 「武元? どうかしたか?」

381 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/25(火) 22:02:34 ID:USYRGz46
うるか 「……宿題、出ちゃった」

成幸 「まぁ、宿題というと聞こえは悪いが、要は武元の進級のための加点材料だろ?」

成幸 「ちゃんとやって提出すれば赤点解消だろ? よかったじゃないか」

うるか 「……でも、こんな難しい内容、あたしわかんないもん」

成幸 「へ……? でも、今日先生が補習してくれた内容じゃないのか?」

うるか 「……補習って言ったって、ほとんど先生と成幸のマンツーマン授業だったじゃん」

ジトッ

成幸 「あっ……」

成幸 「……よく思い返してみれば、たしかに」

うるか 「……ふんだ」

成幸 (……しまったな。二学期の英語の範囲が微妙に理解しきれてなかったから補習に混ぜてもらったが)

成幸 (そのせいで、本当に補習が必要な武元の邪魔をしてしまったようだ……)

成幸 (一考の余地もない。これは完全に俺が悪いな……)

成幸 「スマン、武元。俺のせいでお前に迷惑をかけたようだ」

うるか 「……?」

382 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/25(火) 22:03:11 ID:USYRGz46
成幸 「……本当なら補習はお前のためのものだったのにな」

うるか 「……べつに、成幸は悪くないよ。先生だって、成幸に教えた方が楽しいだろうし」

うるか 「冬休みほとんど潰すことになるだろうけど、がんばって宿題終わらせるよ」

成幸 「いや……」

スッ

成幸 「……武元、この後予定はあるか?」

うるか 「へ……?」 カァアアアア…… 「へぇ!? こ、この後って……」

うるか 「今日は部活に出られないし、特に、予定とかはないけど……」

成幸 「よし、ちょうどいいな。いくら何でも、分からない宿題が大量に出されちゃお前もたまったもんじゃないだろう」

成幸 「俺が教えるから、その宿題、今日終わらせてしまおう」

うるか 「え……?」

383 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/25(火) 22:03:48 ID:USYRGz46
………………

成幸 「……ってことは、そこは?」

うるか 「“私は明日、役所に行く前に郵便局に行きます” かな……?」

成幸 「正解だ。明日行う予定に対して順番をつけるようなイメージだな」

成幸 「郵便局が1番目。役所が2番目って感じだ」

うるか 「ふむふむ……」

うるか (……はぁ)

うるか (ま、そんなコトだろーと思ったけどさ)

うるか (一瞬ドキッとしちったよ。デートにでも誘われるのかと思って)

成幸 「じゃあ、次の問題だけど……」

うるか (……ま、でも、悪くないかな)

うるか (ふたりっきりで勉強教わるのも、結構オツな感じ、なんてね) ニヘラ

384 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/25(火) 22:04:41 ID:USYRGz46
………………

うるか 「お、おおお……」

うるか 「……終わったーーーー!!!」

うるか 「ありがとー、成幸ー! おかげで宿題終わったよー!」

うるか 「これでお正月ものんびりできるしたくさん遊べるよー!」

成幸 「いやいや、元はといえば俺のせいだからさ。気にしなくていいよ」

成幸 「ふー、すっかり遅くなってしまったな。もう真っ暗だ」

うるか (えへへ、成幸、あたしのためにこんな夜遅くまで手伝ってくれて……)

うるか (これはもうクリスマスデートをしたと言ってもカゴンではないのでは……!?)

うるか (なんてねなんてねなんてねー!!)

成幸 「もう遅いし、そろそろ帰ろうぜ。送ってくよ」

うるか 「あ、う、うん!」

成幸 「……あ、でもその前に、ちょっと寄りたいところがあるんだけど、いいか?」

うるか 「……?」

385 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/25(火) 22:05:12 ID:USYRGz46
………………学校 公衆電話

うるか 「寄りたいところって、ここ?」

成幸 「ああ、俺は携帯電話を持ってないからさ。連絡手段はこれしかないんだ」

成幸 「今からちょっと電話かけるから、えっと……」

成幸 「……向こうで待っててもらってもいいか?」

うるか 「へ? あ、うん。わかった」

うるか 「………………」

うるか (……あたしに電話の内容を聞かれたくないのかな?)

うるか (怪しい……) ピーン (ひょっとして、電話の相手は、女……!?)

成幸 「………………」

うるか (電話、かけたみたいだ。少し趣味が悪いかもしれないけど……)

コソコソコソ……

うるか (ちょと盗み聞きさせてね、成幸)

386 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/25(火) 22:05:56 ID:USYRGz46
成幸 「……あっ、水希か? 俺だよ」

うるか (“水希” って、たしか妹ちゃんの名前だ……)

ホッ

うるか (なーんだ。家に電話かけてるだけかー)

成幸 「わっ……ご、ごめん。そんな大声出すなって……」

成幸 「悪かったよ。でも、仕方なかったんだ。ごめんな」

うるか (……? 謝ってる? どうかしたのかな?)

成幸 「クリスマスパーティできなかったのは、本当にごめん。せっかくごちそう作って待っててくれたのにな」

うるか (へ……?)

成幸 「ケーキも……。うん。葉月と和樹にも謝るよ。わかってる」

うるか (ひ、ひょっとして……)

成幸 「……いつも苦労をかけてごめんな、水希。うん。今から帰るよ」

うるか (あ、あたしのせいで……)

うるか (あたしのせいで、成幸にとんでもない迷惑をかけちゃったんじゃ……)

387 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/25(火) 22:07:13 ID:USYRGz46
………………帰路

うるか 「………………」

成幸 「……冷えるなー」 ブルッ 「天気予報じゃ、雪が降るかもしれないとか言ってたもんな」

うるか 「………………」

成幸 「? 武元?」

うるか 「……あ、あのさ、成幸。あたし、ひとりで大丈夫だし、もう家に帰ったら?」

成幸 「へ? いやいや、さすがにこの時間だし、危ないだろ。家まで送ってくよ」

うるか 「いや、でも……」

成幸 「? なんかヘンだぞ? どうかしたのか?」

うるか 「………………」 スッ 「……ごめん、成幸。さっき、ちょっと電話、盗み聞きしちゃった」

成幸 「へ……?」

成幸 「……あー、聞かれたか。あんまりお前に聞いてほしくなかったんだけどな」

うるか 「……ごめん」

成幸 「いや、べつにそれはいいんだけど……」

成幸 「気にしなくていいからな? そもそもお前の補習を邪魔しちゃった俺が悪いんだから」

388 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/25(火) 22:07:52 ID:USYRGz46
うるか 「で、でも! そのせいで、成幸にも、成幸の家族にも迷惑かけちゃったし……」

うるか 「ごめんね……。ごめんなさい、成幸」

成幸 「いや、だから、そもそも俺が悪いんだから、お前が申し訳なく思う必要はないんだけど……」

うるか 「……でも、あたしの宿題のせいで、成幸に迷惑かけちゃったのは事実だし……」

成幸 「うーん……」

パラッ……

成幸 「……うん?」

うるか 「あっ……」

パラパラ……パラ……

うるか 「雪……?」

成幸 「雪だな……」

うるか 「………………」 ポーッ 「キレー……」

成幸 「だなぁ……」

うるか 「……ホワイトクリスマスだね」

389 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/25(火) 22:08:26 ID:USYRGz46
成幸 「……なぁ、武元」

うるか 「? 何?」

成幸 「俺さ、電話で妹には怒られたし、下の弟妹にもこれから怒られるだろうし、悪いことしたなって思うけどさ」

うるか 「……うん」

成幸 「でもやっぱり、お前に宿題教えてよかったよ」

うるか 「へっ……?」


成幸 「だって、普通に帰ってたら、雪が降ったなんて絶対気づかなかっただろ?」


成幸 「武元に宿題教えて、帰るのが遅くなったから、この雪を見ることができたんだ」

成幸 「帰ってあいつらにも、ホワイトクリスマスだってことを教えてあげなくちゃな」

うるか 「成幸……」

成幸 「ほら、早く帰ろうぜ。武元の家までダッシュだ!」 タッ

うるか 「あっ……ま、待てー! 成幸ー!」 ビュン!!

成幸 「待てとか言っておいて一瞬でぬかすのは勘弁してくれないか!?」

うるか 「遅いよー、成幸ー! 早く帰らないと、雪やんじゃうよー!」

390 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/25(火) 22:08:59 ID:USYRGz46
………………現在

うるか (……なつかしいな。もう一年前か)

うるか (あれから色々あったよね。リズりんや文乃っちと友達になって……)

うるか (一緒に成幸に勉強教わるようになって……)

うるか (成幸に、名前で呼ばれるようになったり、“好きな人” の勘違いとか……)

クスッ

うるか (……ほんと、色々あったなぁ)

あゆ子 「おーい、うるかー?」

智波 「遠い目をしてどうしたの?」

391 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/25(火) 22:09:33 ID:USYRGz46
うるか 「……ううん。なんでもないよ」

うるか 「クリスマスじゃなくてもデートはできるしさ」

うるか 「クリスマスは、成幸にとって家族の日だから」

うるか 「だから、いいんだ」

智波&あゆ子 「「……?」」

うるか (……去年は、あたしのせいで家族と過ごせなかったけど)

うるか (今年は、成幸が、幸せなクリスマスを過ごせますように)


おわり

392 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/25(火) 22:10:14 ID:USYRGz46
………………幕間  「ラスト」

智波 「あ、ラストクリスマスが流れてるよ。わたしこの曲好きなんだよねー」

あゆ子 「私も嫌いじゃないな。ただ、歌詞の内容は結構ダークな感じだよな」

智波 「ねー。わたしも明るいクリスマスソングだと思ったら、ねぇ?」

うるか 「メロディは明るい感じなのに、結構物騒な曲だよね」

あゆ子 「へ……? う、うるか!? あんた、洋楽が語れるだけの英語力が身についたの!?」

うるか 「むっ、川っち、あたしのことを見くびってるね?」 フフン 「いくらなんでもラストクリスマスくらいわかるよー、だ」

智波 「まぁ、有名ってレベルの曲じゃないもんね……」

うるか 「そもそもタイトルからして物騒じゃん!」 クワッ 「“最後のクリスマス” なんて、すごく怖いタイトルだよね!」

智波&あゆ子 「「………………」」

うるか 「……? 海っち? 川っち?」

智波 「……うん。やっぱり、うるかはうるかだね」 ポン

あゆ子 「安心したよ。アホなあんたはまだ健在だね」 ポン

うるか 「なに!? あたしなんかヘンなこと言った!?」

おわり

393 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/25(火) 22:16:56 ID:USYRGz46
>>1です。
読んでくれた方ありがとうございました。

また投下しますと言っておきながらなかなか投下できずすみません。
師走で生活が忙しいのと、年末の某イベントの原稿でなかなか投下できませんでした。
もし待っていてくれている方がいたら嬉しいですが、同時に申し訳ないことだと思います。

>>371さんと>>372さんのレスを偶然見かけて書けるなら書きたいなと思い二時間ほどで書き上げました。
誤字脱字表現のおかしなところ多々あるかと思います。申し訳ないことです。
ただ、期待されて書くというのはとても嬉しいもので、書いていてとても楽しかったです。

あまり本編の時間軸を飛び越えるのは好きではないので、本編でやっていないクリスマスの話は避けました。
ハロウィン回は、単行本のオマケ漫画でやっていたので、まぁいいだろうという判断で書きましたが。
本編の話の流れ的に間違いなくクリスマス回は話を動かすエピソードになると思います。今から楽しみです。

年末の某イベントがあるので、今年はまず間違いなくこれで投下は打ち止めだと思います。

自分語りが長くなりました。申し訳ないことです。
また投下します。失礼します。

394 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/25(火) 23:16:14 ID:42VB03HE
来とるやんけ!!
おつおつ

395 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/25(火) 23:32:09 ID:B1.sXYhM

書く速度は相変わらずのようで何より

396 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/25(火) 23:48:46 ID:DVNYyga2
シエンタ
>>1のおかげか知らんがもう1つ僕勉スレ立ったしな

397 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 02:28:36 ID:7pmaNqWk
おつ!
また書いてくれてめちゃくちゃ嬉しい!

398 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:13:27 ID:Co5zvoAw
>>1です。
気分転換に書いていたら書き上がってしまったので投下します。
やや長い上に話がくどいかもしれません。


【ぼく勉】 あすみ 「そういやあの日、まふゆセンセと何してたんだ?」

399 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:13:59 ID:Co5zvoAw
………………ファミレス

成幸 「へ……?」

成幸 「いや、あの、“あの日” って、一体……」

あすみ 「いつだか、まふゆセンセが制服着てた日のことだよ」

成幸 「う゛ぇっ……」


―――― 『誤解! 絶対君は何か勘違いをしているわ唯我君! この格好には深いわけが……』

―――― 『え…… 俺はてっきり……』

―――― 『溜め込んだ洗濯物つい全部洗っちゃって着れる服がそれしかないのかと……』


成幸 (あの日のことかぁああああああああ!!)


―――― 『……古橋さんの目に…… さっきの私達はどう映ったのかしら』

―――― 『制服だからやはり恋人同士に見えたのかしらね……』


成幸 (あっ……/// あの日のことか……////)

400 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:14:42 ID:Co5zvoAw
あすみ 「……あん?」

あすみ (なんだ、後輩のヤロウ、急に顔を真っ赤にしやがって……)

あすみ (興味本位で聞いたつもりだったが、まさか、こいつ……)

あすみ (桐須先生と、マジで制服デートしてたわけじゃねーだろうなぁ)

ジトッ

あすみ 「……おい、後輩?」

成幸 「へっ!? あ、いや、全然、その大したことじゃないですよ?」

成幸 「ただ、ちょっと先生が……」

ハッ

成幸 (い、言えるかーーーーーーーーー!! この愉快的な先輩に!!)


―――― 成幸 『桐須先生が服を全部洗ってしまって制服以外着る服がなかっただけですよ?』

―――― 成幸 『ほんと、そそっかしい先生ですよね。あはははは』


成幸 (なんて言えるかぁあああああああああああああああああ!!)

成幸 (最悪そんなこと言ったのがバレたら桐須先生にコロされるわ!!!)

401 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:15:17 ID:Co5zvoAw
あすみ 「後輩、お前さっきから百面相だぞ? どうした?」

ジーーーッ

成幸 「い、いえ、何も……」

成幸 (まずい。先輩が疑うような目をしている……)

あすみ (こいつ……アタシという恋人がいながら、まさか教師とイケない関係なんてこたぁねーだろうな……)

あすみ 「………………」

あすみ (……いや、まぁ、もちろん、アタシとこいつの関係は、ただの “フリ” ではあるわけだが)

成幸 「ほ、ほんと、大したことじゃないんですよ。ただちょっと……」

あすみ 「ただちょっと? ただちょっと何だよ?」

成幸 「……すみません」

402 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:16:10 ID:Co5zvoAw
あすみ 「ん?」

成幸 「すみません。言えません……」

成幸 (桐須先生の名誉を守るために……)

あすみ 「っ……」

あすみ (言えねーってことは、つまり……そういうコトってわけか……)

ズキッ

あすみ (……ま、べつに、アタシにはカンケーねーことだけどさ)

あすみ 「……わかった。変なこと聞いて悪かったな。勉強に戻るとするか」

成幸 「そ、そうですね。そうしましょう」 アセアセ

あすみ 「………………」

あすみ (あんだよ……)

あすみ (ほんとにアタシには言えねーようなことなのかよ)

403 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:16:46 ID:Co5zvoAw
………………

あすみ 「……んじゃ、アタシはそろそろバイトの時間だから、もう行くな」

成幸 「はい。では先輩、明日はバイト先に伺いますね」

あすみ 「おう、また明日な」

モヤモヤモヤ

あすみ (……結局あれから、あの話はなく、なんとなく気まずいまま時間だけすぎてしまった)

あすみ (いや、気まずいなんて思ってるのはアタシの方だけか)

あすみ (何でアタシはこんなに、後輩と先生のことを気にしてるんだ……?)

成幸 「先輩?」

あすみ (後輩はケロッとした顔で、普段通りだ)

あすみ (アタシが勝手に気にしてるだけ、か……)

あすみ (アタシらしくもない。でも……)

あすみ 「……なぁ、後輩」

404 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:17:20 ID:Co5zvoAw
成幸 「? なんです?」

あすみ 「……もう一度だけ聞く。あの日、制服姿の先生と何してたんだ?」

成幸 「えっ……」

あすみ 「もし本当に答えられないなら、答えなくてもいい。しつこくてすまん」

成幸 「あっ、えっと……」

あすみ 「………………」

成幸 「………………」

ウェイトレス (す、すごい雰囲気だわ、あの席……)

ウェイトレス (あれが修羅場ってやつね……!?) ドキドキ

成幸 「……すみません。答えられません」

あすみ 「………………」

あすみ 「……そっか」

あすみ 「恋人のアタシにも言えないようなことなんだな」

405 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:17:59 ID:Co5zvoAw
成幸 「へ……?」

成幸 「や、やだなぁ、先輩」



成幸 「俺たちはフリをしてるだけのニセモノの恋人じゃないですか」



あすみ 「っ……」

成幸 「また俺をからかおうって魂胆ですね。そうはいかないですよ」

あすみ 「………………」

クスッ

あすみ 「んだよー、後輩。もっと初々しい反応期待してたってのによ」

あすみ 「拍子抜けだよ」

あすみ 「……んじゃ、今度こそ、またな」

成幸 「はい、先輩! また明日!」

406 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:18:33 ID:Co5zvoAw
………………メイド喫茶 High Stage

あすみ 「………………」

ボーーーッ

マチコ 「……? ねえねえ、あしゅみーどうしたのかな?」

マチコ 「あんなに仕事に身が入ってないあしゅみー初めて見たよ」

ミクニ 「どうしたんだろうね」

ヒムラ 「恋かな? 恋の悩みかな」

マチコ 「!? だとすれば、もちろん相手は……」

ミクニ 「唯我クン一択でしょそんなの!」

マチコ&ヒムラ 「「だよねー!」」

ワイワイガヤガヤ

あすみ 「………………」

あすみ (……アタシ、何してんだ? いや、何しちまったんだ)

ズーン

407 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:19:23 ID:Co5zvoAw
―――― 『……もう一度だけ聞く。あの日、制服姿の先生と何してたんだ?』

―――― 『恋人のアタシにも言えないようなことなんだな』


あすみ (何やってんだ、アタシ……)

あすみ (自分があんなに面倒くさい女だと思わなかった……)

あすみ (……っつーか)

あすみ (あれじゃまるで、アタシが後輩とセンセに嫉妬してるみたいじゃねーか)

あすみ (そりゃ、あれくらい言われても仕方ねーわな)


―――― 『俺たちはフリをしてるだけのニセモノの恋人じゃないですか』


あすみ 「ッ……」 ズキッ

あすみ (……何で、あいつのあの言葉を思い出すだけで、こんなに辛いんだ)

あすみ (アタシは、そんなに……)

あすみ (そんなに、あいつに “ニセモノ” って言われたことがショックだったのか)

408 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:19:58 ID:Co5zvoAw
あすみ (アタシは……)

あすみ (アタシは、あいつのこと……――)

客 「――あしゅみーちゃん! 注文お願いしまーす!」

あすみ 「あっ……」

あすみ (……切り替えろ、アタシ。今のアタシは、小美浪あすみである前に……)

あすみ (メイド喫茶ハイステージの、小妖精メイド、あしゅみぃなんだ)

あすみ 「はーいっ! ただいままいりまっしゅみー!」 タタタ


―――― 『俺たちはフリをしてるだけのニセモノの恋人じゃないですか』


あすみ (っ……今は、思い出しちゃダメだ)

あすみ (今、考えたら、きっと仕事ができなくなる……。そんなのはダメだ)

あすみ (今は、笑顔で、接客に集中しなければ)

ニコッ

あすみ 「ご注文、お伺いしましゅみー♪」

409 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:20:54 ID:Co5zvoAw
………………夜 小美浪家

小美浪父 「………………」

あすみ 「………………」

ボーーーッ

小美浪父 (めずらしい……)

小美浪父 (……あすみが勉強も家事もせず無為に時間を使っている)

小美浪父 「……あー、あすみ?」

あすみ 「ん……」 モゾッ 「……あんだよ」

小美浪父 (声に元気もない。さすがにこれは心配だな……)

小美浪父 「今日はバイトの前に唯我くんとデートだったんだろう?」

小美浪父 「今日はどこへ行ってきたんだ?」

あすみ 「………………」

あすみ 「……べつに。いつも通り、受験生らしく勉強しただけだよ」

小美浪父 「そ、そうか……」

410 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:21:31 ID:Co5zvoAw
小美浪父 (こ、これは、まさか、ひょっとして……)

小美浪父 「つかぬことを聞くが、」

あすみ 「?」

小美浪父 「まさかとは思うが、唯我くんと喧嘩なんて、してないだろうね?」

あすみ 「っ……」

あすみ (喧嘩……)

あすみ (……だったら、もっと気持ちは楽かもしれねーな)

あすみ (喧嘩以前のことだ。そもそも、あいつは、アタシのことなんか……)


―――― 『俺たちはフリをしてるだけのニセモノの恋人じゃないですか』


あすみ (……アタシは、何を考えてる?)

あすみ (アタシは、どうしたいと思ってる? アタシはどうしたい?)

あすみ (アタシは……)

411 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:22:09 ID:Co5zvoAw
小美浪父 (私の問いに対して答えることもできず、急に暗い顔に……)

あすみ 「……べつに、喧嘩なんてしてねーよ。ただ……」

小美浪父 「ただ……?」

あすみ 「……なんでもない。言いたくない」

小美浪父 「!?」

小美浪父 (この反応は、考えるまでもない……)

小美浪父 (あすみと唯我くんの間に何かがあったんだ……!)

あすみ 「……もう寝るわ。おやすみ」

小美浪父 「あ、おい、あすみ!」

小美浪父 (振り返りもせず行ってしまった。ストレートに聞きすぎただろうか……)

小美浪父 「………………」

小美浪父 (いやしかし、あのあすみが、恋愛がらみで悩むことになるとはなぁ……)

シミジミ

小美浪父 (不謹慎な話ではあるが、少し感慨深いな……)

412 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:23:13 ID:Co5zvoAw
………………あすみの部屋

あすみ 「………………」

ボフッ

あすみ 「……はぁ」

あすみ (布団、落ち着く……)

あすみ (このまま、何も考えず寝ちまえば、明日になる……)

あすみ (明日になれば、さすがにこのヘンな気持ちもどっかに行くだろ……)

あすみ (……明日)

あすみ (明日は、店に後輩が来る日だ……)


―――― 『……もう一度だけ聞く。あの日、制服姿の先生と何してたんだ?』

―――― 『恋人のアタシにも言えないようなことなんだな』


あすみ (あいつ、ちゃんと来てくれるかな……って、店でのバイトも兼ねてるんだ)

あすみ (あいつは責任感の強い奴だ。来るに決まってる……)

413 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:23:43 ID:Co5zvoAw
あすみ (ああ、もう、ちくしょう)

あすみ (このまま寝かしてくれよ……)

あすみ (なんで……)


―――― 『俺たちはフリをしてるだけのニセモノの恋人じゃないですか』


あすみ (……思い出したくもない言葉ばっかり、頭に浮かぶんだ)

あすみ (わかってるよ。アタシは、お前にとって、ただのニセモノだって)

あすみ (でも……)

あすみ (……あんな言い方しなくたって、いいじゃないか)

あすみ 「………………」

あすみ (……やっぱり後輩は、アタシみたいなちんちくりんじゃなくて、)

あすみ (まふゆセンセみたいな、スタイルのいい美人さんの方がいいんだろうな)

あすみ 「………………」

あすみ (……寝よ)

414 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:24:14 ID:Co5zvoAw
………………翌日 メイド喫茶 High Stage

あすみ 「おかえりなさいませっ、御主人様!」

あすみ 「……って、後輩かよ」

ケッ

あすみ 「営業スマイルして損したわ」

成幸 「いつもより投げやり!? それはひどすぎないですか!?」

あすみ 「いいから早くエプロン着てこいよ。早速床掃除してもらいたいんだ」

成幸 「わかりました。じゃあ、すぐエプロン取ってきます!」

ミクニ 「……よかった。あしゅみー、いつも通りに戻ったみたい」

ヒムラ 「だねぇ。唯我クンと喧嘩でもしたのかと思ってたけど、そんなことなさそうだね」

マチコ 「………………」

あすみ 「……はぁ」

あすみ (いつも通り。いつも通り。いつも通り)

あすみ (……まぁ、大丈夫だろ。いつも通りできてるだろ。多分)

415 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:24:53 ID:Co5zvoAw
あすみ (昨日、寝る前に色々考えた)

あすみ (アタシは、自分のことしか考えてなかったんだ)

あすみ (後輩に言われた言葉で勝手に悩んで、怒って……)

あすみ (そもそもアタシは、そんな立場にないってのに……)

あすみ (後輩は、アタシのために恋人のフリをしてくれてるだけ。ただ、それだけ)

あすみ (そんな後輩に言われたことで悩むなんて、それこそ自分勝手だ)

あすみ (……後輩が真冬センセと何をしてようが、アタシには関係ない)

あすみ (アタシがそのことについて考えるなんてことがそもそもおこがましいんだ)

あすみ (……だから、アタシはもう、後輩に不用意に近づいたり、からかったりしたらいけない)

あすみ (……うん。だから、大丈夫)

あすみ (アタシはもう、大丈夫)

マチコ 「………………」 (“いつも通り” ……?)

マチコ (……そうかなぁ? なんか思い詰めてるように見えるけど)

416 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:25:32 ID:Co5zvoAw
………………

あすみ 「……ん、じゃあ、後輩。ここはどう解くんだ?」

成幸 「ああ、それも基本は一緒ですよ。方程式を正しく立てられれば解けるはずです」

成幸 「その釣り合いの問題なら、連立方程式が立てられると思います」

あすみ 「む……。悪い、式を一度立ててもらえると助かる」

成幸 「ああ、分かりました。ここに書きますね」

ズイッ

あすみ 「……っ!?」 ササッ

成幸 「……? 先輩?」

あすみ 「あ、いや……わ、悪い。何でもない」

成幸 「………………」 ズイッ

あすみ 「っ……」 ササッ

成幸 「………………」 ズイッ

あすみ 「………………」 ササッ

成幸 「……何で逃げるんですか、先輩?」

417 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:26:12 ID:Co5zvoAw
あすみ 「に、逃げてなんかねーよ」

成幸 「どう見ても逃げてますよね!?」

あすみ 「お前が近づくからだろ!」

成幸 「近づかないと書きながら教えられないですよね!?」

あすみ (っ……こいつ、こっちの気もしらないで……)

あすみ (アタシはもうお前に近づかないって決めたんだよ。なのにそっちから近づいてきやがって……)

あすみ 「……よし。じゃあこうしよう」

スッ

あすみ 「アタシはお前の対面に座る。これでアタシに見せながら式を書けるな?」

成幸 「まぁ、書けますけど……逆さ文字か。難しいんだよな……」

あすみ (……すまん、後輩。だがこれもお前のためなんだ)

マチコ 「………………」

ジーーーッ

マチコ (……うん。やっぱりヘンだよね)

418 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:26:44 ID:Co5zvoAw
………………閉店後

あすみ 「……今日もありがとな、後輩」

あすみ 「おかげでまた苦手がひとつ潰せた気がするよ」

成幸 「いえいえ。バイト代をもらいながら勉強できるんだから、願ったり叶ったりですよ」

成幸 「まだそう遅くはないですけど、暗いですから送っていきますよ」

あすみ 「あっ……いや……」

あすみ 「……ありがとな。ただ、今日はちょっと寄るところがあるから、遠慮しとくよ」

成幸 「? そうですか」

成幸 「わかりました。じゃあ、また。先輩」

あすみ 「おう。またな、後輩」

419 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:27:33 ID:Co5zvoAw
………………公園

あすみ 「………………」

あすみ 「……はぁ」

あすみ (……あれ以上後輩と一緒にいたら、また辛い気持ちになりそうだったから)

あすみ (ウソついちまったけど、仕方ないよな……)

あすみ (っつーか、今さらな話だけど)

あすみ (よく考えたら、恋人のフリをしてもらってるって、とんでもないことだよな)

あすみ (アタシがよく知らない男の恋人のフリ……)

あすみ (たとえば、吉田、坂本、高橋あたりで想像すると……)

あすみ 「……うぇっ」

あすみ (……うん。五秒と保たずに想像の中で殴りそうになったな)

あすみ (それを考えると、知り合いでもなかったアタシの恋人役をしてくれる後輩って……)

あすみ (聖人か何かなのか?)

420 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:28:10 ID:Co5zvoAw
あすみ (……まぁ、大変申し訳ないことではあるが、恋人のフリはこれからも続けてもらうとして、)

あすみ (やっぱり、さっき決めた通り、あいつをからかったりするのは金輪際なしにしよう)

あすみ (……今まで散々後輩に迷惑かけてきたことだし)

あすみ (受験に成功しても失敗しても、たくさんお礼をしてやらないとな……)


―――― 『俺たちはフリをしてるだけのニセモノの恋人じゃないですか』


あすみ 「………………」

あすみ (……まぁ、後輩はアタシからのお礼なんかいらないかもしれないけどな)

あすみ 「……はぁ――」


「――驚愕。あなたでもそんな顔をすることがあるのね。小美浪さん」


あすみ 「へ……?」

あすみ 「あ……ま、真冬先生?」

真冬 「まったく」 ハァ 「だから、その呼び方はやめなさいと言っているはずよ」

421 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:28:54 ID:Co5zvoAw
あすみ 「どうしてこんな公園なんかに……?」

真冬 「学校からの帰り道よ。まぁ、公園の中に入る予定はなかったのだけど」

真冬 「――ベンチでしょぼくれた顔をしている元生徒を見かけたりしなければ、ね」

あすみ 「っ……。しょぼくれてなんか……」

真冬 「……まぁ、あなたも高校は卒業しているわけだし、私もあまりかたいことを言うつもりはないのだけど、」

真冬 「あなたはまだ未成年でしょう。夜中に公園にひとりでいるのは感心しないわね」

あすみ 「………………」

あすみ (……聞いてしまえば、楽になるだろうか)

あすみ (“あの日、後輩と何をしてたんですか?” って……)

あすみ (この人に直接聞いてしまえば、楽になるのだろうか)

あすみ (ニセモノの恋人のくせに、そんな出しゃばるようなことを聞けば、)

ズキズキズキ……

あすみ (少しはこの胸の痛みもやわらぐのだろうか……)

真冬 「……ふぅ」

真冬 「まるで、受験に失敗したときのあなたを見ているようだわ。小美浪さん」

422 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:29:41 ID:Co5zvoAw
あすみ 「なっ……」

真冬 「半年くらい前かしらね。あのときも、あなたはそんな風に、あなたらしくない顔をしていたわね」

真冬 「何かを後悔するような、何かを迷うような、そんな、小美浪さんらしくない顔を」

あすみ 「………………」

あすみ (……そっか。アタシ、今、そんな顔をしてるのか)

あすみ (受験に失敗して、つらかったあのときみたいな、そんな顔を……)

真冬 「……隣、失礼するわね」 スッ

あすみ 「あっ……な、何でまふゆセンセまで座るんですか……」

真冬 「……あなたはもう私の生徒ではないけれど、」 クスッ

真冬 「アフターサービスみたいなものよ。何か悩みがあるのでしょう? 話くらいは聞くわ」

あすみ 「そんなの……」

真冬 「必要ないかしら?」

あすみ 「………………」

あすみ 「……じゃあ、少しだけ、話聞いてもらっても、いいですか?」

真冬 「ええ。どうぞ」

423 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:30:11 ID:Co5zvoAw
あすみ 「……恥ずかしい話ですし、ひょっとしたら “そんな程度のことで” って思われるかもしれないけど……」

あすみ 「……実は、その……友達、というか、彼氏、というか……いや、なんていうか……」

カァアアアア……

あすみ 「……まぁ、彼氏みたいな相手、と喧嘩をしてしまいまして」

真冬 「………………」

真冬 「……な、なるほど?」

真冬 (す、少しかっこつけて、元生徒の悩みを聞いてあげるつもりが……)

真冬 (急にとんでもない悩みが飛んできたわ……)

真冬 (か、彼氏……? いや、まぁ、小美浪さんくらいの年頃なら当然かもしれないけど……)

真冬 (恋愛関係の悩みなんて私の専門外よ……!?)

あすみ 「……先生?」

真冬 「あ、な、なんでもないわ。続けてちょうだい」

あすみ 「……まぁ、喧嘩というか、一方的に私が怒ってるだけというか、ヘコんでるだけというか……」

あすみ 「それで、ちょっと公園でボーッとしてたんです」

424 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:30:43 ID:Co5zvoAw
真冬 「そう……」

真冬 「……ちなみに、小美浪さんは、その彼氏さんにどうして怒っているのかしら?」

あすみ 「……大したことじゃないです。ただ、あいつが隠し事をするから……」


―――― 『……もう一度だけ聞く。あの日、制服姿の先生と何してたんだ?』

―――― 『……すみません。答えられません』


あすみ 「……でも、それは仕方がないことだったのかもしれないとも思えてきて、」


―――― 『俺たちはフリをしてるだけのニセモノの恋人じゃないですか』


あすみ 「少し、傷つくようなことも言われてしまって……」

あすみ 「……でも、あいつが言ってることが正しいんです。だから、アタシはそもそも、怒る立場にない」

あすみ 「それからずっと自己嫌悪というか、頭の中でグルグル同じ考えが回ってて……」

真冬 「……なるほどね」

真冬 (……どうしよう。小美浪さんが何を言っているのか全然分からないわ)

真冬 (恋愛経験の豊富な人なら分かるのかしら。ダメだわ。私には荷が重すぎる……)

425 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:31:18 ID:Co5zvoAw
あすみ 「……すみません、先生。話聞いてもらっちゃって……」

あすみ 「わけわからなかったでしょ? 色々はしょりすぎたし」

あすみ (……まぁ、何もかも包み隠さず話したら、先生と後輩が制服で何をしてたのかも問いただすことになっちまうし)

あすみ (仕方ないっちゃ仕方ないんだけど……)

真冬 「………………」

真冬 (……然りとて、たとえ元生徒といえど、それを放っておいていいわけではない)

真冬 (荷が重かろうと、経験がゼロだろうと、できることをしなければ、教員である意味はない)

真冬 (私は、小美浪さんの “元” 先生なのだから)

真冬 「……言わないと、伝わらないわ」

あすみ 「え……?」

真冬 「言ったかしら? 伝えたかしら?」

真冬 「たとえ筋違いであろうと、その彼の発言に傷ついたという旨を、彼に」

あすみ 「い、言えないですよ、そんなの……。あいつは悪くないのに」

426 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:31:53 ID:Co5zvoAw
真冬 「そうでしょうね。でも、言ったらきっと伝わるわ」

真冬 「解決するかは分からないけれど、伝わったら、きっと……」

真冬 「……あなたの気持ちを理解してくれるのではないかしら」

あすみ 「………………」

真冬 「……だって、その彼は、他でもないあなたが選んだ男の子なのでしょう?」

あすみ 「ん……」

あすみ 「………………」

真冬 (……そ、その沈黙はどういう意味なのかしら、小美浪さん)

カァアアアア……

真冬 (す、少しかっこつけすぎたかしら。今さら恥ずかしくなってきたわ)

あすみ 「……アタシのこの、モヤモヤした気持ち、わかってくれるかな、あいつ」

真冬 「……ええ、きっと。わかってくれると思うわ」

あすみ 「……そう。そうですね」

427 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:32:23 ID:Co5zvoAw
あすみ (……アタシは、今までずっと、きっと後輩に迷惑をかけてきた)

あすみ (まずはそれを謝ろう。その上で、もし、言えるなら……)

あすみ (……そんなことを言える立場ではないのはわかっているけど、)

あすみ (ニセモノの恋人って言葉にモヤモヤしていることを、伝えよう)

あすみ 「っ……」 カァアアアア……

あすみ (そ、それってもう、つまり、そういうこと、だよなぁ……)

あすみ (いやいやいや、単純にアタシがモヤモヤしてるだけであって、決して……)

あすみ (ホンモノになりたいとか、そういうわけじゃなくて……)

あすみ (……あー、ちくしょう。またわからなくなってきた)

あすみ (でも、不思議だ。なんか……)

あすみ (まふゆセンセのおかげかな。今は、後輩に会って、早く話したくて仕方ない)

真冬 「ふふ……」 (少し表情が明るくなったかしら)

真冬 (それにしても、小美浪さんが恋愛で悩むなんて……)

真冬 (小美浪さんにこんな一面があるのね。在学中は全然知らなかったわ)

428 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:33:08 ID:Co5zvoAw
………………翌日

あすみ 「………………」 ドキドキドキドキ……

あすみ (昨日の今日で呼び出してしまった……)

あすみ (一昨日から三日連続、後輩に会うことになるな)

あすみ (あいつにも予定があるだろうし、そもそも勉強で忙しいだろうし、)

あすみ (さすがに迷惑だよなぁ……。また悪いことしてしまった……)

あすみ 「……後輩、来てくれるかな――」

成幸 「――来られないなら来られないって、最初から断りますよ」

あすみ 「……あ、後輩……」

成幸 「どうしたんです、先輩? なんか元気ないですけど……」

あすみ 「いや、べつに……」

あすみ 「悪いな、後輩。なんか、毎日アタシに無理に付き合わせて……」

あすみ 「今までだって、恋人のフリとか、勉強とか、バイトとか、色々なことに付き合わたし……。本当に、ごめん」

成幸 「? 誰かと一緒に勉強した方が捗りますし、海とかカラオケとか、息抜きにもなりましたし、」

成幸 「俺は、先輩に無理に付き合わされてるとは思ってないですけど」

429 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:33:46 ID:Co5zvoAw
あすみ 「そ、そっか。ならいいんだ」

成幸 「で、今日は一体どうしたんです? 昨日の力学の範囲でまた分からないことでも出ました?」

成幸 「それとも別の分野ですか?」

あすみ 「あー、いや……。勉強の前に、お前に話したいことがあってさ」

成幸 「話したいこと?」

あすみ 「……おう。聞いてもらってもいいか?」

成幸 「そりゃ、もちろん聞きますよ。なんですか?」

あすみ 「……ん。ありがとう」 (……なんて、言ったらいい?)


―――― 『たとえ筋違いであろうと、その彼の発言に傷ついたという旨を、彼に』

―――― 『そうでしょうね。でも、言ったらきっと伝わるわ』

―――― 『解決するかは分からないけれど、伝わったら、きっと……』

―――― 『……あなたの気持ちを理解してくれるのではないかしら』


あすみ (……うん。大丈夫。わかってる)

あすみ (ただ、伝えるだけ)

430 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:34:23 ID:Co5zvoAw
あすみ 「……一昨日のことだから、後輩は覚えてないかもしれないけどさ、」

成幸 「一昨日?」

あすみ 「……お前、“ニセモノ” って言っただろ?」

成幸 「……?」


―――― 『俺たちはフリをしてるだけのニセモノの恋人じゃないですか』


成幸 「ああ……」

あすみ 「……すごく勝手なことだし、自分でもわけわかんないんだけどさ、」

あすみ 「それが、すごく……なんていうか、嫌でさ……」

成幸 「へ……?」

あすみ 「わ、わかってるんだ! 実際ニセモノで、ただのフリで、そんなの、分かってるんだけど……」

あすみ 「……でも、嫌だったんだ。“ニセモノ” って言われるのが、すごく」

成幸 「………………」

あすみ 「わ、悪い。ヘンなこと言って。忘れてくれていい。すまん……」

431 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:34:59 ID:Co5zvoAw
あすみ (い、言ってしまった……)

あすみ (何言ってんだろ、アタシ。もっとこう、ドキドキするもんかと思ってたけど……)

ドキドキドキドキ……

あすみ (このドキドキは、想像してたドキドキじゃない)

あすみ (怖いだけだ。糾弾されて、拒絶されて、絶交される。そんな、恐怖のドキドキだ)

成幸 「先輩……」

あすみ 「っ……」 (怖い。怖くて、後輩の顔も見られない。後輩はどんな……――)


成幸 「――――すみませんでした!!」


あすみ 「ふぇっ……?」

成幸 「いま思い返してみれば、すごく無神経なことを言いました。すみません」

あすみ 「あ……えっと……」

カァアアアア……

あすみ (ああ、そっか……。後輩、アタシの勝手な言い分を、聞いてくれたんだ……)

432 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:35:29 ID:Co5zvoAw
あすみ (……まふゆセンセの言った通りだ)


―――― 『……だって、その彼は、他でもないあなたが選んだ男の子なのでしょう?』


あすみ (後輩、分かってくれたんだ……)

成幸 「そりゃ、嫌ですよね。っていうか、俺だってそんなこと言われたら嫌ですよ……」

成幸 「本当にごめんなさい、先輩……」

あすみ 「あ、いや、そんな、謝れってわけじゃなくて、ただ……」

あすみ 「少しモヤモヤしてたから、それを言いたかっただけだから……」

あすみ 「むしろ、ごめんな。変な気を遣わせるようなことを言って」

成幸 「いや、先輩は悪くないですよ」

成幸 「先輩と俺の恋人関係はただのフリですけど……」

成幸 「先輩と海に行ったり、バイトを手伝ったり、家事代行をしたり……」

成幸 「先輩としてきたことは、ニセモノなんかじゃないですもんね!」

あすみ 「あっ……いや……///」

あすみ (な、なんて恥ずかしい台詞を言えるんだ、こいつは……。こっちが恥ずかしい……)

433 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:36:02 ID:Co5zvoAw
あすみ (でも、そっか……)


―――― 『先輩としてきたことは、ニセモノなんかじゃないですもんね!』


あすみ (この関係がニセモノでも、アタシたちがしてきたことはニセモノじゃない、か……)

あすみ (……うん)

成幸 「先輩、あの……」

あすみ 「……なぁ、後輩? 悪いと思ってるか?」

成幸 「へ? そ、そりゃもう。申し訳ない気持ちでいっぱいですよ」

あすみ 「わかった。じゃあ、詫び代わりにひとつやってもらいたいことがある」 ニィ

成幸 「はい! 俺にできることだったら、何でも!」

あすみ 「うん。じゃ、とりあえず」

スッ

成幸 「せ、先輩……?」 (ち、近い……っていうか、)

成幸 「なんで俺の耳を塞ぐんですか?」

434 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:36:49 ID:Co5zvoAw
あすみ 「……聞こえるか?」

成幸 「えっ? 何です、先輩? 耳を塞がれてるから何言ってるのか分からないですよ?」

あすみ 「うん。それでいい。そのまま聞いてくれ」

あすみ 「……鈍いお前は、“ニセモノって言われて嫌だった” って言ったくらいじゃ気づかないみたいだからな」

あすみ 「まぁ、気づかれるかもしれないって怖さもあったから、虚しさ半分安堵半分ってとこなんだが、」

成幸 「えっ? なんです? 何を言ってるんですか?」

あすみ 「……だから、聞こえないままで、聞いてくれ」

あすみ 「今は、どんなに否定しても “ニセモノ” かもしれない」

あすみ 「でも、いつか……」


あすみ 「……いつか、アタシはお前の “ホンモノ” になりたいんだ」


あすみ 「っ……///」

あすみ 「それだけ、だよ……」

スッ……

435 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:37:27 ID:Co5zvoAw
成幸 「あっ……先輩? 耳を塞ぎながら、なんて言ったんですか?」

あすみ 「……なんでもねーよ。今のでチャラにしてやるから、感謝しろよ?」

成幸 「先輩がそれでいいならいいですけど……」

あすみ 「……それから、」

成幸 「?」

あすみ 「今まで、色々なことに付き合わせて悪かったな。ありがとう」

成幸 「へ……?」

あすみ 「……あと、これからもよろしくな。後輩」

成幸 「………………」 クスッ 「はい、先輩!」


おわり

436 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:37:57 ID:Co5zvoAw
………………幕間 あすみの部屋 「娘の彼氏の趣味」

成幸 (……とりあえず、先輩の家で勉強をすることになったが、家についた途端先輩はどこかへ消えてしまった)

ガチャッ

成幸 「あっ、先輩。やっと戻って来……――!?」

あすみ 「にしし、さすがに外で着る勇気はないが、着てみるもんだな。我ながら悪くないんじゃねーか?」

成幸 「な、何で制服着てんですか!?」

あすみ 「いやな、まふゆセンセの制服がイケるならアタシもイケるだろ、って思ってさ」

成幸 「イケるって何が!?」

あすみ 「言わせんなよー、ドスケベくーん?」

成幸 「アンタ何言ってんすか!? っていうか、その……」

あすみ 「む……。なんだよ。まふゆセンセは大丈夫で、アタシの制服姿は見られたもんじゃないってか?」

成幸 「い、いやいや、似合ってますよ。違和感がまるでないです。後輩って言われても自然なくらいです」

あすみ (……それはそれでムカつくけど) ニィ (にしても、後輩の奴、顔真っ赤だな。制服好きなのか、こいつ)

あすみ 「……じゃ、今日はこのまま勉強会といこうか」

成幸 「なぜ!?」

437 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:38:28 ID:Co5zvoAw
ガチャッ

小美浪父 「大声が聞こえるが、どうした? まさかまた喧嘩をしているんじゃ……」

あすみ 「あっ……」

成幸 「あ……」

小美浪父 「………………」

ポッ

小美浪父 「す、すまない。制服で、と……なるほど、ああ、邪魔をしてしまったな」

成幸 「ち、ちょっと待ってくださいお父さん!? なんか勘違いしてますからね絶対!」

小美浪父 「いや、大丈夫だ。何も勘違いしていない。その……まぁ、唯我くんがコスプレさせる趣味があるのは知ってるから」

小美浪父 「大丈夫。許容範囲だ」

成幸 「許容しなくて良いです! 全部勘違いですからね!? あ、いや、メイド服の件はたしかにその通りですけど!」

小美浪父 「メイド服だけでなく高校の制服も好きなのだね……。い、良い趣味だと思うよ」

小美浪父 「では、これ以上は本当にお邪魔だろうから失礼するよ。唯我くん。えっと……ごゆっくり」

成幸 「ちょっと待ってください! 待って!? 俺の話を聞いてください! お父さん!?」

おわり

438 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 21:41:00 ID:Co5zvoAw
>>1です。
読んでくださった方ありがとうございました。

毎回あすみさんのSSを書くたびに言っている気がしますが、
本編のあすみさんはこんなにチョロくないですし、好意も明示されていません。
わたしは単純なのでついチョロくしてしまいます。申し訳ないことです。

幕間も1レスで収められませんでした。それも反省点です。


また投下します。

439 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 23:07:22 ID:9HQ5Bh0Q
おつんこ
寝る前の楽しみが復活したわサンクス

440 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/26(水) 23:50:36 ID:HCkEQ9GU
やはりあしゅみー先輩が最強よ・・・。

441 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/27(木) 20:14:11 ID:BnW2v6Oc
乙です

442 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/27(木) 20:57:20 ID:B7SVs8J6
おつおつ

443 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/30(日) 22:25:45 ID:1sIqWGVU
これはひょっとして大晦日お正月のSSを期待したら書いてくれるんじゃないか?
期待

444 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/31(月) 01:28:05 ID:3jPs3JVQ
大掃除ssはよはよ

445 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/31(月) 12:46:23 ID:j6WLDCu2
初詣も頼むわ

446 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/31(月) 21:54:29 ID:F6bN4iBg
各ヒロインの初夢話お願いしますわ

447 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/31(月) 21:57:13 ID:F6bN4iBg
各ヒロインの初夢話お願いしますわ

448 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/31(月) 23:10:50 ID:T80BSgvU
>>1です。
投下します。

環境がいつもと違うので、変なミスなどあるかもしれませんが、ご容赦ください。
それから、あまり本編の時系列を超えるのは好きではないのですが、今回、明確に超えました。
今後本編が進んだらこのSSはなかったことにしてください。
その時点で二次創作として破綻しているとわたしは思います。

それを踏まえた上で、読んでいただけたら嬉しいです。


【ぼく勉】 真冬 「今年こそ」

449 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/31(月) 23:11:56 ID:T80BSgvU
………………年の瀬 真冬の家


『拝啓 真冬お姉様

 こちらはとても寒いです。日本も、とても寒いようですね。

 今週末には実家に帰ります。お姉様も帰ってくれると嬉しいです。

 ……もし無理そうなら、日本にいる間に、一度お姉様のおうちに伺います。

 それでは、風邪などに気をつけて、良い年をお迎えください。

 敬具

 美春』


真冬 「……わざわざ遠征先から手紙だなんて、まったく、マメな子ね」

真冬 「でも、ごめんなさい、美春。今年も実家へは帰れそうにないわ」

真冬 「なぜなら……」

グッチャアアアァアアアア

真冬 「この部屋の惨状をどうにかしなければならないから……!」

450 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/31(月) 23:12:49 ID:T80BSgvU
真冬 (二学期の成績処理や担任団と進路指導部のヘルプに入ったおかげで、)

真冬 (家に帰っても寝るだけという生活をしていたせいね)

真冬 (毎年のことではあるけれど、二学期の後半からこっち、)

真冬 (“どうせ大掃除をするのだからそのときでいい” なんて考えてしまうのが悪いのよ)

真冬 (……そして毎年毎年、結局、綺麗な部屋で年を越せた憶えがないわ)

真冬 (今年こそ、大掃除をやりとげなければ!!)

真冬 (……とりあえず、通販で買ったものを開封するところから始めようかしら)

真冬 (段ボールをまとめて捨てて、それから、部屋を片付けるだけのこと)

真冬 (大丈夫よ、真冬。ひとつずつこなしていけば、今日中にでも終わってしまうわ)

451 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/31(月) 23:13:26 ID:T80BSgvU
………………図書館

成幸 「……はー、今日は勉強はかどったな」 ホクホク

成幸 (今日は久々にひとりでゆっくり勉強できたし、まんぞくまんぞく……)

成幸 (午後からは家の大掃除の約束だからな。名残惜しいけど、急いで帰らないと)

成幸 「……ん?」

真冬 「………………」

成幸 (桐須先生? 真剣な顔して、何か本でも探してるのかな……?)

成幸 (……それにしても、桐須先生は知的に見えるから、図書館が似合うなぁ)

成幸 (ジャージにコートを羽織った装いじゃなければ、だけど……)

真冬 「……ん、あった」

成幸 (お、本、無事見つけられたみたいだ) ハッ (って、これじゃ俺、先生のストーカーみたいだ)

成幸 (挨拶だけして帰ろう)

真冬 「……届かないわね」

成幸 (ん? 近くにあった踏み台を持ってきて、置いて、乗って……)

成幸 (先生大丈夫かな。いや、さすがに踏み台に乗ったくらいで落ちたりしないよな……) ハラハラ

452 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/31(月) 23:14:22 ID:T80BSgvU
真冬 「む……これでもまだ足りないかしら。仕方ないわ」

ピョンピョン

成幸 (あっ、俺この先の展開読めた)

真冬 「あっ……」

グラッ……

成幸 「やっぱりドジって落ちるー!」

……ドサッ

真冬 「……あ、あれ? 痛くない……?」

真冬 (何か、やわらかいものが下に……?)

真冬 「!? ゆ、唯我くん!?」

成幸 「……間に合って良かったです。ケガしてないですか?」

真冬 「え、ええ。ケガはないけれど……きみは?」

成幸 「俺も大丈夫です。けど、とりあえず、上からどいてもらってもいいですか?」

真冬 「あ、ごめんなさい! すぐ降りるわ!」

真冬 「……大丈夫? 立てるかしら」 スッ

453 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/31(月) 23:14:57 ID:T80BSgvU
成幸 「あっ……すみません」 ギュッ

真冬 「でも、一体どうしてきみが私の下敷きに……?」

成幸 「あー、えっと……」

成幸 (……先生が踏み台に乗った時点で嫌な予感がしたから駆け寄りました!)

成幸 (なんて言ったら絶対怒るよなぁ……)

成幸 「本を探してたら偶然近くにいただけです」

真冬 「そう……? まぁ、何にせよ助かったわ。ありがとう」

成幸 「いえ……」

成幸 「ところで、どの本を取ろうとしてたんですか? 俺、取りますよ」

真冬 「本当? 助かるわ。えっと、一番上の列の……」

ハッ

真冬 「………………」

成幸 「……先生?」

成幸 (一番上の列って……あっ)

『年の瀬に最適! 片付け・掃除術コーナー!!』

454 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/31(月) 23:15:40 ID:T80BSgvU
成幸 (先生、また部屋を汚くしたのか……)

真冬 「……不覚。生徒にあんな棚の本を取ろうとしていたところを見られるなんて」

成幸 「い、いやいや、ああいう本を読んで基本を確認するのも大事ですよ」

成幸 「べつに恥ずかしい話ではないと思いますよ」

成幸 「っていうか、今まで散々部屋を片付けてきた俺に見られたところで何の問題が……?」

真冬 「へ、変なこと言わないでちょうだい。散々っていうのは言いすぎだわ」

成幸 「……あー、はい。すみません。……ってことで、どの本ですか? 取りますよ」

真冬 「……一番右の」

プクゥ

成幸 (またむくれて……。子どもみたいだ)

成幸 (えっと、一番上の列の、一番右の本は、と……)

『馬鹿でも猿でもできる! ゴミ屋敷脱出術!!』

成幸 (……挑戦的すぎるだろあのタイトル)

成幸 「よっ……と。はい、取れましたよ、先生」

真冬 「……ありがとう」

455 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/31(月) 23:18:18 ID:T80BSgvU
成幸 (……っていうか、この人の場合、本を読んでできるようになるレベルの掃除オンチじゃないよなぁ)

成幸 (新年までそう日にちもないし、汚い部屋のまま年越しっていうのは辛そうだ……)

成幸 「……ところで先生。秋ごろに一度俺が掃除をしたはずですけど、」

成幸 「まさかもうグチャグチャに……?」

真冬 「ち、違うわ。少し、片付けを工夫しようかな、って思っただけよ」

真冬 「決して、汚くなった部屋を大掃除しようとして逆にゴミ屋敷のようにしてしまったわけではないわ!」

成幸 「………………」

ハァ

成幸 「……俺、手伝いに行った方がいいですか?」

真冬 「………………」

真冬 「……ごめんなさい」 カァアアア 「お願いしてもいいかしら」

成幸 (はぁ。まぁ、放ってはおけないよなぁ……)

成幸 (後で水希に謝らなくちゃいけないな)

成幸 「じゃ、行きましょうか」

456 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/31(月) 23:19:40 ID:T80BSgvU
………………真冬の家

成幸 「おおう……」

グッチャアアアァアアアア……!!!!

成幸 (な、なんだこれは……想像を絶するぞ……)

成幸 (今までで一番グチャグチャじゃないか……!?)

真冬 「あっ、あんまり見ないでちょうだい、唯我くん……」 カァアアアア…… 「恥ずかしいわ……///」

成幸 (時と場合によってはドキドキしそうなセリフだけど……)

成幸 「本気で恥ずかしがってます!? よくここまで散らかせましたね!?」

真冬 「し、失礼。大掃除に失敗してしまっただけよ」

成幸 「大掃除に失敗ってあります!?」

真冬 「ため込んだ通販の荷物を取り出してから掃除をしようと思ったら……」

真冬 「段ボールから出した荷物とゴミが混じり合ってわけのわからないことに……」

成幸 「何でまず段ボールを開けるんです!? 普通、掃除してから開けません!?」

真冬 「め、面目ないわ……」 シュン

457 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/31(月) 23:20:19 ID:T80BSgvU
成幸 「あっ……」

ハッ

真冬 「………………」 ズーン

成幸 (……今ここで先生を責めても仕方ない。っていうか、そんなことをするためにここに来たわけじゃない)

成幸 「すみません、先生。言いすぎました」

真冬 「え……?」

成幸 「俺も手伝いますから、なんとか今日中に片付けが終わるようにがんばりましょう!」

真冬 「あっ……」 プイッ 「そ、そうね。がんばりましょう」

458 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/31(月) 23:21:29 ID:T80BSgvU
………………唯我家

水希 「………………」 ルンルン♪

花枝 「どうしたの、あの子。ごきげんね」

和樹 「今日は午後からみんなで大掃除だからなー」

葉月 「姉ちゃんずっと楽しみにしてたからー。久しぶりにお兄ちゃんと一緒、って」

花枝 「ふーん……」

水希 「えへへ……お兄ちゃん早く帰ってこないかな〜」

prrrr……

水希 「あっ、電話。わたし出るよー」

ガチャッ

水希 「もしもし?」

成幸 『あ、水希か? 俺だ』

水希 「お兄ちゃん? どうしたの?」

成幸 『すまん。今日、大掃除の約束だったけど、事情があって帰れなくなった……』

水希 「えっ……」

459 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/31(月) 23:22:12 ID:T80BSgvU
成幸 『本当にごめん! 埋め合わせは必ずするから、今日だけは許してくれ!』

水希 「………………」

水希 (ずっと楽しみにしてたけど……)

水希 (お兄ちゃん、すごく真剣な声だもん。きっと、やむにやまれぬ事情があるんだよ……)

水希 (ワガママを言っちゃダメ。ここは、妹として余裕を見せてあげないと……)

水希 「だ、大丈夫だよ。みんなでやっておくから。お兄ちゃんは気にしないで」

成幸 『すまん。助かる。みんなにも謝っておいてくれ』

ドンガラガッシャーン

成幸 『あ……』

水希 「!? お兄ちゃん!? すごい音したけど大丈夫?」

成幸 『あ、ああ。だ、大丈夫……だと思う、けど、ちょっと、もう切るな?』

水希 「えっ? ちょっと待って。お兄ちゃんいま何を――」


  『――ゆ、唯我くん! 悪いけど、助けてくれると嬉しいわ!』


水希 「!?」 (女の声!?)

460 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/31(月) 23:22:51 ID:T80BSgvU
成幸 『わかりました! いま行きます!!』

成幸 『ってことで、ごめん、水希。もう切るな』

ブツッ

水希 「お兄ちゃん!? お兄ちゃんってば!!」

花枝 「……? 成幸、どうかしたの?」

水希 「………………」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

花枝 「水希……?」

水希 「……女」

花枝 「女?」

水希 「お兄ちゃん、女と一緒にいた……」

花枝 「ああ……」

水希 「わたしのお兄ちゃんを奪った女……!! 絶対許さない……」

花枝 「……さ、お姉ちゃんは放っておいて、そろそろ大掃除を始めましょうか」

葉月&和樹 「「はーい!!」」

461 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/31(月) 23:23:27 ID:T80BSgvU
………………真冬の家

成幸 「何でゴミ袋にゴミを入れていただけなのに棚が倒れてくるんですか!?」

真冬 「ゴミを拾うのに夢中になっていたら、お尻から棚にぶつかってしまって……」

成幸 (相変わらずドジだけは器用な人だ……)

成幸 「よい、しょっ……と」

ゴトッ

成幸 「……ふぅ。気をつけてくださいね、先生」

真冬 「面目ないわ。穴があったら入りたいくらいよ……」

成幸 「気にしなくていいですから。とにかく、いらないものを捨てていきましょう」

成幸 「俺はグチャグチャの台所を片付けてますから」

真冬 「……ごめんなさい。よろしくお願いするわ」

462 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/31(月) 23:24:10 ID:T80BSgvU
………………数時間後

成幸 (……ふぅ。だいぶ片付いていたな)

成幸 (この分なら、夕飯には間に合うかな……)

成幸 (っていうか、お昼食べてないからお腹空いたな……)

真冬 「………………」

キュッ……キュッ……

成幸 (さすがに部屋が汚いまま年越しは嫌なのか、先生もいつになく真剣だ)

成幸 (……ん、そういえば……)


―――― 『それに 姉さまがこっちの道に戻ってくればきっと』

―――― 『父さま母さまだって……』


成幸 「……先生」

真冬 「? どうかしたかしら?」

成幸 「年末年始は、ご実家に帰られたりしないんですか?」

463 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/31(月) 23:25:08 ID:T80BSgvU
真冬 「……そうね」

フッ

真冬 「実家には帰るつもりはないわ。しばらく帰ってもいないしね」

成幸 「あっ……」 (やっぱり、何か事情があるんだ……)

成幸 「すみません……変なこと聞いて」

真冬 「……気にしないでいいわ。べつに、どうでもいいことだもの」

成幸 「ん……」 (どうでもいい、こと……?)

真冬 「……? 唯我くん?」

成幸 「……すみません。えっと、その……」

成幸 「すごく、失礼なことを言ってしまうことになってしまうかもしれませんけど……」

成幸 「どうでもよくなんて、ないんじゃないですか……?」

真冬 「えっ……?」

成幸 「だって、どうでもよかったら、そんな顔、しないですよね……」

真冬 「っ……。そんなの、べつに……」

464 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/31(月) 23:25:46 ID:T80BSgvU
成幸 「あと、たぶん、これは想像ですけど……」

成幸 「先生みたいなまっすぐな人のご家族だったらきっと……」

成幸 「どうでもいいような人たちじゃ、ないんじゃないですか……?」

真冬 「………………」

成幸 「あっ……す、すみません! また、変なこと言ってしまって……」

成幸 「俺には関係ないことでしたよね! 忘れてください!」

真冬 「……そうね」

成幸 「……?」

真冬 「家族のことを、どうでもいいなんて言うのは、ダメね」

真冬 「……あなたは家族のことが大好きなのね、唯我くん」

成幸 「へ? あ、ああ、まぁ……そうですね。大好きです」

真冬 (……やはり、まっすぐな子。唯我くん、本当に良い子ね、きみは)

真冬 (あなたにとって、家族とは、本当に大切な存在なのでしょうね……)

真冬 (私も、あなたみたいに……なんて、そんなこと考えても仕方ないわね)

真冬 (私は、私にしかなれなかったのだから)

465 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/31(月) 23:26:17 ID:T80BSgvU
………………

成幸 「………………」

真冬 「お、終わったわ……」

ピカピカピカピカ……

成幸 「……なんとか終わりましたね」

成幸 (結局、夕飯の時間を過ぎてしまった……水希、怒ってるだろうなぁ……)

真冬 「結構な時間になってしまったわね……」

真冬 「お礼というとアレだけれど、出前でも取るわ。何か食べていきなさい」

成幸 「あっ……いえ、その……、今日はすみません。もう家に帰らないといけないので……」

真冬 「そ、そうよね。年の瀬だもの。お家でやることがあるわよね……」

真冬 「……忙しい師走の終わりに、私事に巻き込んでしまって本当に申し訳ないわ」 ズーン

真冬 「今日は本当にありがとう。埋め合わせは必ずするから、気軽に何でも言ってね」

成幸 (また何でもとか言ったぞこの人……)

成幸 「では、先生。今年は大変お世話になりました。また来年もよろしくお願いします」

真冬 「ええ。こちらこそ、来年もよろしくお願いします」

466 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/31(月) 23:27:20 ID:T80BSgvU
………………大晦日

水希 「〜〜〜〜〜♪」

成幸 「なんだ、水希? ご機嫌だな」

水希 「えへへ、わかる?」

成幸 「そりゃ、まぁ……」 (鼻歌してりゃな……)

成幸 「どうしてご機嫌なんだ?」

水希 「ふふ、内緒♪」

成幸 「……?」

水希 (……えへへ、お兄ちゃんったら!)

水希 (そんなの、お兄ちゃんと一緒におせち作ってるからに決まってるよ……///)

葉月 「姉ちゃんほんとにご機嫌ねー。大掃除の日はおかんむりだったのに」

和樹 「兄ちゃんが埋め合わせにおせち作り手伝うって言ったら途端にアレだもんなー」

花枝 「……あの子の将来がそろそろ真剣に心配だわ」

水希 「えへへ……えへへへへ……」

水希 (こうやってふたりで台所に立ってると……新婚さんみたい)

467 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/31(月) 23:28:25 ID:T80BSgvU
………………

花枝 「……で、ご機嫌でおせち作りをしていたら、こうなった、と?」

水希 「……はい」

バーーーーン

花枝 「こんなに作ってどうするのよ……。お重に入りきらないじゃない」

水希 「ごめんなさい……。つい、やる気が入り過ぎちゃって……」

成幸 「すまん。俺も、作りすぎだって気づくべきだった……」

花枝 「……ま、いいわ。あんたに任せっきりにしちゃった私も悪いし」

花枝 「こんにゃくとかゴボウの煮物とか、茶色い物ばかりだけど……」

花枝 「ご近所さんにちょっと配ろうかしら……」

成幸 「……ん」


―――― 『実家には帰るつもりはないわ。しばらく帰ってもいないしね』


成幸 (……そういえば、先生はああ言ってたけど)

成幸 (たぶん、おせちなんて何年も食べてないんだろうな……)

468 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/31(月) 23:29:23 ID:T80BSgvU
………………真冬の家

真冬 「………………」

カタカタカタカタ……

真冬 (部屋がきれいだと仕事もはかどるわ……)

真冬 (……って、なぜ私は大晦日に仕事なんかしているのかしら)

真冬 (やっぱり、年末年始の休業日に仕事なんか持ち帰るべきではなかったわね)

真冬 (まぁ、どうせ、家にいたところですることもないのだけど)

真冬 (……暗いことは考えない方がいいわね。区切りも良いし、カップ麺のソバでも食べようかしら)

ピンポーン

真冬 「……?」 (こんな時間に一体誰かしら? 何か注文していたかしら……?)

真冬 「ん……?」

真冬 「唯我くん……?」

469 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/31(月) 23:29:59 ID:T80BSgvU
………………

ガチャッ

成幸 「あっ、先生。夜分にすみません……」

真冬 「唯我くん、こんな時間にどうしたの?」

成幸 「大したことじゃないんですけど……」 スッ

成幸 「今日、妹とお正月のおせち料理を作っていたら作り過ぎちゃって……」

成幸 「良かったらもらってくれませんか? 妹の料理はとても美味しいので、味は保証します!」

真冬 「おせち料理……?」

真冬 「あっ……」 (まだ温かい……作ったばかりなのね……)

真冬 「……とても、嬉しいわ。もらってもいいの?」

成幸 「はい! 尋常じゃない量なので、もらってくれるとありがたいです」

真冬 「ありがとう。いただくわ。明日、食べさせてもらうわね」

成幸 「はい、ぜひ!」

真冬 (……あまり、利害関係者からの物の授受というのはよくないのだけど)

真冬 (そんな固いこと言うものではないわね。こんなに美味しそうなお料理、もらえなかったらもったいないわ)

470 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/31(月) 23:31:34 ID:T80BSgvU
真冬 「……ごぼうとこんにゃくの煮物ね」

成幸 「あ、はい。恥ずかしいですけど……」

成幸 「うちはあまり裕福ではないので、おせちの中身もそういう安上がりなお料理ばかりで……」

真冬 「恥ずかしいことなんてないわ。これも立派なおせち料理よ

真冬 「ゴボウはまっすぐ伸びることから、ゴボウの煮物は子どもたちの健やかな成長を祈るお料理よ」

真冬 「そして手綱こんにゃくは、家庭内の不和をなくし、家庭円満を祈願するお料理よ」

真冬 「だから誇るといいわ。とても良いおせち料理だわ。素敵なご家庭ね」

成幸 「そ、そうですか……?」 テレテレ 「そう言ってもらえると、嬉しいです」

真冬 (本当に嬉しそうな顔をして……。ご家族のことを褒められるのが本当に嬉しいのね)

真冬 (家族……か)

真冬 「………………」

真冬 (……私も、いつまでも逃げてはいられないかしら)

真冬 「……唯我くん、二度目の挨拶になってしまうけど、」

真冬 「良いお年を」

成幸 「はい! 先生も、良いお年を!」

471 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/31(月) 23:32:09 ID:T80BSgvU
………………

『美春

 手紙が届く頃にはもう日本にいないかもしれないと思い、メールで返信します。

 家には帰りません。ごめんなさい。

 でも、あなたが私の家に来る必要もありません。

 そんな暇があるなら、このオンシーズンの調整に当てなさい。

 勝手な姉と思うかもしれません。そう思われても仕方ないと思います。

 でも、勝手なお願いとは分かっているけれど、もうすこしだけ待ってほしいです。

 ……勝手なことばかり言ってごめんなさい。

 あなたも体調管理に気を遣って、良いオンシーズンを。

 真冬』


おわり

472 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/31(月) 23:32:40 ID:T80BSgvU
………………幕間 「ひどい」

真冬 「ひどい……」

真冬 「ひどすぎるわ、唯我くん……!!」

ムシャムシャムシャムシャ……!!!!

真冬 「こんなにおだしの効いた美味しい煮物を食べちゃったら、」

真冬 「レトルト食品やカップ麺が美味しく食べられなくなっちゃうじゃない……!!」


おわり

473 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/31(月) 23:35:12 ID:T80BSgvU
>>1です。
読んでくださった方ありがとうございました。
年末の某イベントが無事終わったので、気兼ねなくSSを書くことができました。

今年は「ぼくたちは勉強ができない」という素晴らしい作品と出会えたいい年でした。
また来年も投下すると思います。
失礼します。

474 以下、名無しが深夜にお送りします :2018/12/31(月) 23:59:59 ID:F6bN4iBg
乙です、新年も期待しています

475 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/01(火) 10:04:11 ID:M6HgD6Js
おつんこ

476 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/01(火) 10:55:51 ID:NMC6XEFU


477 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/01(火) 22:18:31 ID:pgVjrWLQ
おつ
明けましておめでとう。今年もお世話になります!

478 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/04(金) 13:03:59 ID:pikOTF8Q
ちなイッチはコミケではどんな作品を書いてるの?

479 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/04(金) 13:53:32 ID:UAb/649Q
今までどんなSS書いてたのかも知りたい

480 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/05(土) 23:28:44 ID:GTAXl2Ic
>>1です。
投下します。

以前、作品の時系列を飛び越えるのは嫌だと言いましたが、それをやってしまいました。
想像していたら止まらなくなり、書き上げてしまいました。
完成したものを消そうとも思いましたが、手前味噌ながらとても面白く仕上がりました。
もったいないと思ってしまいました。

自分では、すごく面白いと思います。
なので、勝手ではありますが、投下します。
本編で言及されていないことについて、多く書いています。
わたしの想像によるところも多いので、不快に思われる方もいるかもしれません。
それだけ、前置きしておきます。

まとめサイトの方、載せていただいても構いませんが、このレスを最初においてくれると嬉しいです。


【ぼく勉】 成幸 「クリスマス、うちに来ないか?」

481 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/05(土) 23:34:44 ID:GTAXl2Ic
………………唯我家

カリカリカリ……

文乃「……できた!」

文乃「成幸くん、採点お願いしてもいい?」

成幸 「ああ、任せとけ」

キュッキュッ……キュッ……

成幸 「……ふんふん……うん……おお」

成幸 「すごいぞ、古橋。満点じゃないか。初めてじゃないか?」

文乃「ほんとに!? ケアレスミスもなし!?」

パァアアアアアア……!!!

文乃「やったー! やったよ成幸くんっ!」 ギュッ

成幸 「っ……」 (う、嬉しいのはわかるが、古橋……!)

成幸 (急に両手を握るのはやめてくれ……!!) カァアアアア……

成幸 「ふ、古橋っ」

文乃「? なぁに、成幸くん?」

482 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/05(土) 23:35:15 ID:GTAXl2Ic
成幸 「……ち、近い。あと、手……」

文乃「……?」

ハッ

文乃「わぁ!」 パッ

文乃「ご、ごめんね、成幸くん。数学で満点なんて、びっくりして、嬉しくて……」

文乃「つい……」

成幸 「あ、ああ。気持ちはわかるし、分かってくれればいいよ……」

文乃「………………」

成幸 「………………」

ドキドキドキドキ……

文乃「あっ、あの……――」


「――――……ウォッホン!!」


文乃「……!?」 ビクッ

文乃「み、水希ちゃん……?」

483 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/05(土) 23:35:55 ID:GTAXl2Ic
水希 「………………」

ジトーーーッ

水希 「……まじめに勉強してると思ったから、少し目を離したらこれですか?」

水希 「もう試験までそう日にちもないんでしょうから、」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

水希 「もう少しまじめに勉強した方がいいと思いますよ?」

文乃「た、たしかにその通りなんだよ……ごめんね、成幸くん」

文乃 (うぅ……相変わらずすごい圧だよ、水希ちゃん……)

成幸 「い、いや、俺の方こそ、ごめんな……」

成幸 (怖え……。一体何に怒ってるんだ、水希の奴……)

水希 (まったく、油断も隙もあったもんじゃないんだから)

水希 (目を光らせてないと)

和樹 「……なぁなぁ、母ちゃん。頼むよー」

葉月「わたしからもお願いー。おーねーがーいー」

花枝 「そんなお金はないの。これで我慢しなさい」

484 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/05(土) 23:36:40 ID:GTAXl2Ic
水希 「……? こら、和樹、葉月。またわがまま言ってるの?」

水希 「お母さん内職で忙しいんだから、邪魔しないの」

葉月&和樹「「はーい……」」 ショボーン

文乃「……? わっ、小さくてかわいいクリスマスツリーだね」

文乃「そっか。もうクリスマスの季節かぁ……」

葉月「……そうなの。小さいの」 ショボーン

和樹 「テーブルに置くようなやつだよ。飾り付けとかできない……」 ショボーン

成幸 「……あー、飾り付けとかしたいのか。俺も小さい頃憧れたなぁ」

成幸 「兄ちゃんが働いてお金稼げるようになったら買ってやるから、今はこれで我慢しな」

葉月「うん……」

文乃「クリスマスツリー……」

ハッ

文乃「……ねえ、成幸くん」

成幸 「うん?」

文乃「もし良かったら、なんだけど……」

485 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/05(土) 23:37:26 ID:GTAXl2Ic
………………翌日 唯我家

葉月「わぁああああああああ!!!」

和樹 「うおーーーーーーー!!!!」

葉月&和樹 「「大きいクリスマスツリーだぁ!!!」」

キラキラキラ……

成幸「……ふぅ。持ってくるだけで一苦労だったな」

文乃「おつかれさま、成幸くん。車でも出せたら良かったんだけど」

成幸 「いやいや、そんな贅沢は言えないよ。それより……」

成幸 「いいのか? あのツリー、借りちゃって……」

文乃「いいのいいの。もう十年くらい物置から出してなかったし」

文乃「……お母さんが亡くなってから、出したことなかったし」

成幸 「あっ……そ、そうか……」

文乃「……ん、ごめんね、変な話して」

文乃「もう使ってないから、使ってくれた方がきっとツリーも嬉しいと思うし」

成幸 「……おう。ありがとな、古橋」

486 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/05(土) 23:40:34 ID:GTAXl2Ic
葉月「わー、飾り付けもいっぱいはいってるー!」

和樹 「兄ちゃん、文姉ちゃん、一緒に飾り付けしようぜ!」

成幸 「……そうだな。じゃあ、やるか、古橋」

文乃「うん! よーし、久しぶりにやっちゃうぞー!」

ワイワイワイ……

葉月「この大きなお星様は、てっぺんね。兄ちゃん、つけて」

成幸 「よしきた。任せとけ」

成幸 「……よいしょっ、と。おお、様になるな」

文乃「ふふ……」 (成幸くん、いいお兄ちゃんだなぁ……)

文乃 (……なつかしい)

文乃 (昔、わたしも、お母さんとお父さんと、三人で飾り付けしたなぁ……)

文乃 (お父さん、そういうセンスがないから、お母さんとふたりでダメだししたりしたっけ)

文乃 (ふふ……)

487 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/05(土) 23:42:25 ID:GTAXl2Ic
成幸 「……ん」

成幸 (古橋、なんか……笑ってて、楽しそうなのに……なぜか、)

文乃「………………」

成幸 (“寂しそう” ? に、見えるような……)

成幸 (そういえば……)

成幸 「……なぁ、古橋。今年のクリスマスは、お父さんとパーティか?」

文乃「……ううん。お父さん、クリスマスは研究室の忘年会なんだって」

成幸 「なっ……」

成幸 「あのお父さん、またそんなこと言って……!」

文乃「あっ、ち、違うんだよ? わたしが、忘年会の方に行ってって言ったんだよ」

文乃「お父さんは、忘年会は欠席しようかなって言ってくれたんだけど……」

文乃「……お父さんの仕事の邪魔になりたくないから。だから、行ってって言ったんだ」

成幸 「ん、そうか……。なんか、ごめん。いきなり、お父さんのこと悪く言いそうになって……」

文乃「……ううん。そうやって、わたしのことで怒ってくれるのは、嬉しいよ」

文乃「でも、わたしは大丈夫だよ。もうお父さんと仲直りできたし。気にしないで」

488 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/05(土) 23:43:20 ID:GTAXl2Ic
成幸 (……俺は短絡的すぎる。てっきり、また古橋が寂しい思いをするのかと思って、頭に血が上ってしまった)

成幸 (っていうか、研究室もクリスマスなんかに忘年会を入れるなよ……)

成幸 (俺は絶対、大学進学しても、クリスマスは家に帰って家族と過ごすぞ)

成幸 (……いや、そんなことは今はどうでもよくて)

文乃「わっ、葉月ちゃんも和樹くんもきれいに飾り付けしてるねぇ。わたしも負けられないな」

成幸「………………」

成幸 「……なぁ、古橋。もしよかったらなんだけどさ、」

文乃「うん?」

成幸 「クリスマス、うちに来ないか?」

文乃「へ……?」

ボフッ

文乃「へぇえ……?///」

489 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/05(土) 23:44:02 ID:GTAXl2Ic
………………夜

成幸 「……ってことで」

成幸 「母さん、水希、頼む! クリスマスパーティ、古橋を呼んでもいいか?」

花枝 「まぁ……まぁまぁ……」 パァアアアアアア……!!!

花枝 「文ちゃんをクリスマスに誘ったの!? まぁ……」

花枝 「いいに決まってるでしょ! よくやったわ、成幸!」

成幸 「え? ああ、うん……」 (よくやったってなんだ? まぁ、賛成してくれてよかったけど……)

成幸 (問題は……)

水希 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 (こっちだよなぁ……)

葉月「ねぇねぇ、姉ちゃん見て見て!」

和樹 「クリスマスツリー! きれいだろ。文姉ちゃんが貸してくれたんだ!」

水希 「うん、とってもきれい」 ニコッ 「ふたりとも飾り付けがんばったのね。えらいえらい」 ナデナデ

葉月&和樹 「「えへへ〜」」

490 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/05(土) 23:45:02 ID:GTAXl2Ic
水希 「………………」

水希 (……葉月も和樹も嬉しそうだわ。悔しいけど、古橋さんのおかげ、だよね)

水希 「……いいよ」

成幸 「ん……?」

水希 「いいよ。古橋さん呼んでも。きっと、葉月と和樹も喜ぶだろうし」

成幸 「ほ、本当か!?」 パァアアアアアア……!!!「ありがとう、水希!」

水希 「……べつに、わたしにお礼言うことないと思うけど」

花枝 「……ふふっ」

水希 「なに、お母さん?」

花枝 「べつに〜」 クスクス 「なんだかんだ、あんたも文ちゃんのこと大好きだもんね」

水希 「なっ……」 カァアアアア……「そ、そんなわけないでしょっ! べつに、古橋さんのことなんて……」

水希 「………………」

水希 「……嫌い、では、ないけど」 プイッ

花枝 「ふふ」

491 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/05(土) 23:45:55 ID:GTAXl2Ic
花枝 「文ちゃんが来るなら、クリスマスパーティ、気は抜けないわね」

花枝 「水希。特別に牛肉の購入を許可します。ローストビーフを作ってちょうだい」

葉月「牛肉!?」  和樹 「ローストビーフ!?」

水希 「いいの?」

花枝 「もちろんよ。文ちゃんが来るとなっては手は抜けないわ。気合い入れてごちそう作るわよ、水希」

水希 「……ま、まぁ、そうね。美味しいごちそうを山ほど用意して、唯我家の女のすごさを見せてあげないと」

水希 (……古橋さんって、本当に美味しそうにごはん食べてくれるから、作りがいがあるんだよね)

水希 (えへへ。ごちそう用意したら、どんな顔して食べてくれるかな。美味しいって言ってくれるかな)

水希 「……?」

ハッ

水希 (い、いけないいけない。あの女は、お兄ちゃんによりつく悪い虫)

水希 (たとえどんなに良い人でも、気を許しちゃダメなんだから)

水希 「………………」

水希 (……まぁ、でも)

水希 (ごちそうは、たくさん食べてもらおうっと。えへへ、何作ろうかな)

492 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/05(土) 23:47:07 ID:GTAXl2Ic
花枝 (水希ったら、表情コロコロ変えて、なんだかんだ楽しそうじゃない)

花枝 (本人は否定するけど、ほんとは文ちゃんのこと大好きなのよね)

クスクス

花枝 (でも、そっか……古橋さん、クリスマスは忘年会なのかぁ。まぁ、お付き合いもお仕事の内だものね)

花枝 (でも今の古橋さんだったら、忘年会が終わってすぐ、家に駆けつけそうなものだけど……)

花枝 「………………」

花枝 「……いけるかしら」 ボソッ

成幸 「? 母さん、何か言ったか?」

花枝 「……ううん。なんでもない。文ちゃんに喜んでもらうには、どういしたらいいか考えてただけよ」

成幸 「はは。あいつは食いしん坊だからな。食べ物山ほど用意すれば喜ぶよ」

花枝 「………………」

成幸 「……母さん?」

花枝 「あんたさ、もう少し女心ってものを勉強したら?」

成幸 「古橋みたいなことを母親に言われた!?」

493 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/05(土) 23:47:41 ID:GTAXl2Ic
………………古橋家

零侍「文乃」

文乃「……? なぁに?」

零侍「いや……」

零侍「……クリスマスは唯我さんの家に伺うのだろう。失礼のないようにな」

文乃「わかってるよ。ちゃんとするよ」

零侍「美味しい美味しいと、人様の家で食い意地を張らないようにな」

文乃「わかってるよ! それが年頃の娘に言うこと!?」

零侍「す、すまん……」

文乃「あ、いや……そんな、本気で怒ってるわけじゃないから、気にしないで……」

零侍「そうか……。すまない。私も、冗談のつもりだった」

文乃「……うん。わかってるよ。大丈夫」

零侍「………………」

文乃「………………」

494 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/05(土) 23:48:27 ID:GTAXl2Ic
文乃 (……気まずい、けど)

文乃 (嫌じゃ、ない。お父さんが、必死で、がんばって、わたしと会話をしようとしてくれてるって、わかるから)

クスッ

零侍「……ん、どうかしたか?」

文乃「ううん。あのね、お父さん。クリスマスツリー、成幸くんに貸したって言ったじゃない」

零侍「ああ」

文乃「成幸くんの弟妹ちゃんたちと一緒に飾り付けもしたんだよ。そしたらね……」

文乃「……そうしたら、思い出したんだ。昔、三人でクリスマスツリー、飾り付けしたこと」

零侍「………………」

文乃「……えへへ。すごく楽しかったなぁ、って。それだけ」

零侍「……ああ。私も、楽しかったと思うよ。なつかしいな」

文乃「うん」

零侍「………………」 スッ 「……今年のクリスマスも、楽しんできなさい」

ポンポン

文乃「……うん!」

495 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/05(土) 23:49:06 ID:GTAXl2Ic
………………

零侍「……はぁ。我ながら、本当に……なんというべきか。不器用だな」

零侍「……まぁ、いい。今日明日で気を許せるわけもない」

零侍「文乃が受け入れてくれるなら、私は、私に出来る範囲で、会話を続けなければ」

prrrrrr……

零侍「ん……? 電話?」 (こんな時間に、なんだ? 研究室からか?)

零侍「……!?」

ピッ

零侍「……古橋ですが」

零侍「ええ。おかげさまで、一応、順調ではあるかと……」

零侍「……え?」

零侍「は、いや、しかし……私は……」

零侍「……わ、わかりました。そうさせていただきます。はい……はい。では、失礼します」

零侍「………………」

零侍「……な、なんてことだ」

496 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/05(土) 23:49:37 ID:GTAXl2Ic
………………クリスマス当日 唯我家前

文乃「………………」

ドキドキドキドキ……

文乃 (服装、よし。髪型、よし。プレゼント、よし。うん、完ぺき……だと思う)

ドキドキドキドキ……

文乃 (い、いつも勉強教わりに来てる成幸くんの家とはいえ……)

文乃 (さすがに、余所様の家庭のクリスマスパーティに参加するのは緊張するなぁ……)

文乃 (それに……)


―――― 『クリスマス、うちに来ないか?』


文乃「はうっ……」

カァアアアア……

文乃 (あ、あくまで家庭のクリスマスパーティにお呼ばれしただけだから!)

文乃 (だから……)

ドキドキドキドキ……

497 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/05(土) 23:50:09 ID:GTAXl2Ic
ガラッ

文乃「……!?」

成幸 「お、いたいた。来てたなら入ればいいのに。どうしたんだ?」

文乃「な、何もないよ。えへへ……」

文乃 (きみのことを思い出してドキドキしてたんだよ!)

文乃 (……なんて、口が裂けてもいえないよ)

文乃 (……っていうか、うるかちゃん、りっちゃん、違うからね! これは、ただの……)

文乃 (ただの、クリスマスパーティだからね!)

成幸 「? どうした? 早く入れよ」

文乃「あ、うん! お邪魔します」

パンパンパン!!!

文乃「わっ……」

葉月&和樹 「「文ねーちゃん! メリークリスマス!!」」

文乃「葉月ちゃん、和樹くん」 ニコッ 「メリークリスマス!」

498 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/05(土) 23:50:59 ID:GTAXl2Ic
成幸 「ごめんな、古橋。ふたりがお前のこと驚かせたいって言ってたからさ……」

文乃「ううん。クラッカーの音なんて久々で、少しびっくりしたけど、」

文乃「こうやって出迎えてくれるの、すごく嬉しいよ。ありがとう、葉月ちゃん、和樹くん」

葉月&和樹 「「えへへ〜」」

成幸 「さ、上がってくれ。水希と母さんが、古橋が来るからって大はりきりで作ったごちそうが待ってるぞ」

葉月「そうそう! すごいごちそうなの!」 ギュッ

和樹 「文姉ちゃんも絶対すごいって言うぞ!」 ギュッ

タタタタ……

文乃「わっ、わわわっ……」

ガラッ

花枝 「あら、文ちゃん。いらっしゃい」

水希 「……こんにちは、古橋さん」

文乃「どうも、こんにちは。お邪魔してます……って」

キラキラキラ……!!!!

文乃「す、すごい……!!」 パァアアアアアア……!!!「ほんとにすごいごちそうだぁ〜〜!!!」

499 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/05(土) 23:51:55 ID:GTAXl2Ic
水希 「べっ、べつに……そんな、大したお料理じゃないですよ」

水希 「古橋さんがいつもお料理を美味しそうに食べてくれるから、ついつい気合い入れて作っちゃったとかじゃないですから!」

和樹 「? なんだ、姉ちゃん? 新手のツンデレってやつか?」

葉月「姉ちゃんも文姉ちゃんのこと大好きなのね!」

水希 「なっ……///」 ボフッ 「べ、べつに、そういうのじゃないもん……」

花枝 「ふふ……。さ、成幸も文ちゃんも、席について。お料理が冷める前にいただきましょう」

文乃「あ、はい!」

花枝 「……じゃ、いただきましょう。いただきます」

 『いただきます!!』

文乃 「どれも美味しそう……。どれからいただこうかな……」

水希 「……ん、では、これからどうぞ」

文乃「? これって……ローストビーフ?」

水希 「……牛肉なんか滅多に買えないから、作るの初めてですけど」

水希 「食べてみてください」

500 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/05(土) 23:52:37 ID:GTAXl2Ic
文乃「うん。じゃあいただくね」

パクッ……モグモグ……

文乃「………………」

水希 「……ど、どうですか?」

文乃「……ふにゃ〜、美味しい〜〜〜〜!!」

文乃「お肉がすっごくやわらかくて、ソースとよく合うよ! 本当に美味しいよ、水希ちゃん!」

水希 「そ、そうですか。それなら、よ、よかったです……」 プイッ

和樹 「? 姉ちゃん、顔赤いぞ?」

葉月 「文姉ちゃんに美味しいって言ってもらえて嬉しいのねー」

水希 「ち、ちがうわよ! そんなのじゃないんだから……」

成幸 「いやー、しかし、ほんとにどれも美味しいな……」 モグモグ

成幸 「水希みたいな妹がいて、俺は本当に幸せ者だなぁ……」

水希 「も、もうっ。お兄ちゃんったら……///」

花枝 (兄の発言に照れる方を恥ずかしいと思ってほしいところだけど……)

花枝 (……まぁ、しょうがないわね。水希だものね)

501 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/05(土) 23:53:15 ID:GTAXl2Ic
文乃「でも、ほんとにどれもこれも美味しいよ」

文乃「いいなぁ、成幸くん。わたしも水希ちゃんみたいな妹ちゃんがいてくれたらなぁ……」

水希 「……え?」

文乃「へ?」

葉月 「……文姉ちゃん。いい方法があるわ」

文乃「?」

和樹 「文姉ちゃんが、兄ちゃんの嫁に来たら、姉ちゃんは文姉ちゃんの妹になるぞ!」

文乃「っ……//」

成幸 「なっ……///」 ボフッ 「ば、ばかなこと言うんじゃない!」

水希 「………………」 ギリッ (……悔しい)

水希 (古橋さんが姉になるのを想像して、それもアリかな、なんて思っちゃう自分が、悔しい……!)

成幸 「ほら、せっかくのごちそうが冷めちゃうぞ。どんどん食べろ」

葉月&和樹 「「はーい」」

502 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/05(土) 23:55:37 ID:GTAXl2Ic
………………食後

文乃「……はふぅ」

文乃「本当に美味しかったよ。ごちそうさまでした。お母さん、水希ちゃん」

花枝 「お粗末様でした。文ちゃんは本当に美味しそうに食べてくれるから、作りがいがあるわぁ」

花枝 「……ね? 水希?」

水希 「っ……」 プイッ 「ま、まぁね。美味しく食べてくれるから、嬉しいことは嬉しいかもね」

文乃「えへへ……。ありがと、水希ちゃん」

水希 「べつに……」 プイッ

文乃「あ、そうだ。あのね、クリスマスプレゼント持ってきたんだよ」

和樹 「クリスマス」  葉月 「プレゼント!?」

文乃「うん。えっと……」 ガサゴソ 「……はい、葉月ちゃんと和樹ちゃんには、クリスマスブーツ」

文乃「お菓子がたくさん入ってるよ。一気に食べちゃダメだよ」

葉月&和樹 「「ありがとう!! 文姉ちゃん!!」」

成幸 「……悪いな、古橋。プレゼントなんて用意させちゃって」

文乃「ううん。気にしないで。クリスマスパーティにお呼ばれしたんだから、これくらいは当然だよ」

503 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/05(土) 23:56:56 ID:GTAXl2Ic
文乃「あと、水希ちゃんには、これ」

水希 「えっ……わ、わたしにもあるんですか?」

文乃「もちろん! はい、保湿クリーム。これわたしのお気に入りなんだ〜」

水希 「あ、ありがとうございます……」 (すごく高そうなやつ……っていうか……)

文乃「わたしが使ってるやつと同じだよ。おそろいだね!」

水希 「っ……/// そ、そうですね……」

文乃「あと、お母さんにも。どうぞ。水希ちゃんと同じ保湿クリームです」

花枝 「私にも? なんか、気を遣わせちゃったみたいね。ありがとう」

文乃「いえいえ。気にしないでください。こちらこそ、こんな素敵なパーティにお招きいただいて、ありがとうございます」

水希 「……じゃあ、わたしからも」

文乃 「へ?」

水希 「プレゼントです。どうぞ」

文乃 「えっ……? わ、わたしに……? 用意してくれたの?」

水希 「……はい。いつも、兄と葉月、和樹がお世話になってますから。ツリーも、ありがとうございました」

文乃 「あっ……」 パァアアアアアア……!!! 「ありがとう、水希ちゃん!」

504 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/05(土) 23:57:45 ID:GTAXl2Ic
文乃 「開けてもいい?」

水希 「……は、恥ずかしいので、おうちに帰ってから開けてください。大したものじゃないので」

文乃 「うん。わかった! 開けるまで楽しみだよ〜」

水希 「大したものじゃないから、そんなに期待しないでください……」

花枝 (……うんうん。水希とも良い感じじゃない。いいことだわ)

花枝 (文乃ちゃん、本当に良い子だし、まじめな話、本当に嫁に来てくれないかしら……)

水希 (お母さん、またろくでもないこと考えてる顔してる……)

水希 「……ケーキも作ってあるんです。持ってきますね」

文乃「ケーキ!?」 キラキラキラ……!!!!

文乃「はぁああ……水希ちゃんが作ったケーキ。絶対美味しいやつだよ……」

ジュルジュル

文乃「楽しみだね、成幸くん!」

成幸 「あ、ああ。よだれ垂れてるぞ、古橋……」

505 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/05(土) 23:58:33 ID:GTAXl2Ic
水希 「……ちゃんとしたオーブンなんてないですから、なんちゃってケーキですよ」

水希 「そんなに期待しないでくださいね」

トトト……

葉月 「わたしたちもケーキ作り手伝ったの!」

和樹 「かーちゃんがフルーツ使う許可もくれたから、豪華なフルーツケーキだぜ!」

文乃「本当に? 楽しみだなぁ〜」

ピンポーン

成幸 「? インターフォン? 誰だろう?」

花枝 「……あら。来たわね」 クスッ 「私が出るからいいわ」

成幸 「? なんだろう。何かの配達かな?」



  「……お邪魔します」



成幸 「? 男の人の声……? お客さんか?」

文乃「……!?」 (こ、この声……まさか……!?)

506 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/05(土) 23:59:11 ID:GTAXl2Ic
ガラッ

零侍 「あ……こ、こんばんは」

文乃「お父さん!?」

葉月 「へぇ?」  和樹 「文姉ちゃんのお父さん?」

文乃「な、何で成幸くんの家にお父さんが来るの!?」

零侍 「なぜ、とはまたご挨拶だな。忘年会が終わったから来たのだが……」

文乃「そういうことじゃないよ!? お父さんが来るなんて聞いてないよ!?」

零侍 「聞いてない……?」 チラッ 「……やりましたね、唯我さん」

花枝 「ふふ。これくらいのサプライズはいいでしょう?」

零侍 「……まぁ、そうかもしれませんね」 フッ

零侍 「唯我さんに誘われたんだ。忘年会が終わったら、家に来ないかと」

零侍 「お言葉に甘えてお邪魔したのだが……嫌だったか? 文乃」

507 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/06(日) 00:00:02 ID:qnUp5uO.
文乃「っ……」

文乃「嫌とか、そういうのは、ない……っていうか……」

プイッ

文乃「嫌なわけないじゃない。お父さんが、来てくれたんだもん。嬉しいよ」

零侍 「そ、そうか……」

花枝 「ふふっ♪」

成幸 「……俺にくらいは教えておいてくれてもよかったじゃないか、母さん?」

花枝 「あんた、文ちゃんにバラしちゃいそうだから。敵を欺くにはまず味方から、ってね」

成幸 「……はぁ。母さんが楽しそうで俺は嬉しいよ」

零侍 「あー……はじめまして。文乃の父の、古橋零侍です。こんばんは」

葉月 「こんばんは! 双子の姉、葉月でーす!」 和樹 「双子の弟、和樹でーす!」

葉月&和樹 「「文姉ちゃんの父ちゃんめっちゃイケメンだー!!」」

零侍 「あ、ああ、どうも? ありがとう?」

文乃 「……イケメンではないと思う」 ボソッ

零侍 「……何か言ったか、文乃」

508 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/06(日) 00:01:14 ID:qnUp5uO.
………………

零侍 「む……このケーキは、本当に……美味しいな」 モグモグ

文乃 「本当だよ。すごく美味しい」 ジーーッ 「お父さんがいなければ、もっとたくさん食べられたのにな」

零侍 「……その言い方は、冗談でも傷つくぞ」

文乃 「あ、ご、ごめんね。うそだよ?」

零侍 「……すまない。今のも冗談だ」

文乃 「………………」

零侍 「……そう怒るな。私が悪かったよ」

文乃 「……べつに。怒ってないし」

水希 「………………」 (古橋さんのお父さんって言うから、どんなすごい人かと思ったけど……)

水希 (少し暗い雰囲気だけど、普通の人だな……)

零侍 「あ……水希さん、だったかな?」

水希 「え? あ、はい」

零侍 「ケーキ、とても美味しいよ。ありがとう」

水希 「あ……ありがとうございます。そんな、大したものじゃないですけど……」

509 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/06(日) 00:01:46 ID:qnUp5uO.
水希 「……ん、そういえば、あのクリスマスツリー」

零侍 「うん?」

水希 「貸していただいて、ありがとうございます。おかげで、葉月と和樹も大喜びで……」

葉月 「ああいう大きなツリーに飾り付けするの夢だったの!」

和樹 「めちゃくちゃ楽しかったんだ!」

零侍 「……そうか。それはよかった。ずっとしまっていたものだから、使ってくれるなら、逆にありがたい」

成幸 「……なぁ、古橋」 コソッ

文乃 「? なぁに?」 コソッ

成幸 「お父さん、来てくれてよかったな」

文乃 「ん……ま、まぁね。お父さんも楽しそうだし、良かったんじゃない?」

成幸 「そんなこと言って、古橋」 クスッ 「お前も楽しそうだぞ?」

文乃 「なっ……」 カァアアアア…… 「そ、それは、元々、この家にいるのが楽しいだけで……」

文乃 「べ、べつに、お父さんがいるかいないかなんて関係ないもん」

510 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/06(日) 00:02:27 ID:qnUp5uO.
成幸 「ふふ、そうかよ」


―――― 『うちのお父さんが そういう人だからかなぁ……』

―――― 『今日はお父さんが家にいるから…… あんまり帰りたくなくて』


成幸 (……古橋、お前は気づいてないかもしれないけどさ)

成幸 (お父さんが怖くて、お父さんがいる家に帰りたくないって言ってた頃に比べたら、)


―――― 『べ、べつに、お父さんがいるかいないかなんて関係ないもん』


成幸 (“いてもいなくてもいい” ってことは、すごいことだぞ)

成幸 (まだぎこちなくて、仲良しとは言えないかもしれないけど、)

クスッ

成幸 (お父さんと、ちゃんと、父娘に戻れたんだな)

零侍 「む……」

零侍 (……唯我くんと、文乃。何やら楽しそうにコソコソ話している)

零侍 (ふむ……)

511 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/06(日) 00:03:09 ID:qnUp5uO.
………………玄関前

文乃 「今日はお招きいただいて、ありがとうございました」 ペコリ

成幸 「そんなに改まらなくていいよ。お前にはいつも世話になってるしさ」

零侍 「私からも。本当にありがとう、唯我くん。とても楽しかったよ」

成幸 「はい。お父さんも来られて良かったです。ふるは――文乃さんも、嬉しそうでしたし」

文乃 「なっ……よ、余計なこと言わないでいいよ、成幸くん!」

成幸 「ははは……」

零侍 (……うむ。やはり)

零侍 「あっ、しまったな。大学に忘れ物をしてしまった」

零侍 「すまない、文乃。先に家に帰っていてくれ。私は一度大学に戻ってから帰る」

文乃 「それはいいけど……。もう遅いし、明日じゃダメなの?」

零侍 「今日必要なものなんだ」

零侍 「すまない、唯我くん。とても厚かましいお願いだとは思うのだが、娘を家まで送ってあげてくれないか?」

成幸 「もちろん、いいですよ」

文乃 「えっ……でも、さすがに悪いよ。寒いし……」

512 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/06(日) 00:03:46 ID:qnUp5uO.
成幸 「夜道は物騒だしな。もう夜も遅いし、いいから送らせろよ」

文乃 「……うん。ありがと、成幸くん」

零侍 「……ちなみに、帰りはかなり遅くなる。間違いなく日をまたぐ。2時以降の帰宅になる」

文乃 「そんなに遅くなるの?」

零侍 「ああ。もう一度言う。唯我くん。私の帰宅は間違いなく日をまたぐ。帰宅は2時以降だ」

零侍 「もし万が一早く帰宅してもそのまま寝室に直行してそのまま寝るだろう。だから何の心配もいらない」

成幸 「え……? あ、はい……」 (何で俺に言うんだ……? っていうか心配って何だ……?)

文乃 「じゃあ、わたしたち行くね。お父さんも気をつけて大学行ってね」

零侍 「ああ」

零侍 「……行った、か」 (……まったく。手くらい繋いだらいいものを。文乃のやつ、本当に楽しそうだ)

零侍 「……いかんな。ガラにもなく、唯我くんに嫉妬しているのか、私は――」

花枝 「――あら? いいと思いますよ? 年頃の娘さんのお父さんですもんね」

零侍 「……!? ゆ、唯我さん。いらっしゃったのですか……」

花枝 「ナイスアシストですね、古橋さん?」

零侍 「……アシストできているか、分かりませんが。娘の恋の応援くらいは、できるかなと」

513 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/06(日) 00:05:33 ID:qnUp5uO.
花枝 「せっかく相手のお父さんがご厚意を向けてくれてるのに、うちの息子はニブいですけどね」

花枝 「成幸がもう少し恋心を分かってくれればいいんですけど」

零侍 「彼のそういうまじめなところに、好感を憶えます。それは美徳だと、私は思います」

花枝 「だといいんですけどね」 クスッ

零侍 「………………」

零侍 「あ、あの、唯我さん……」

花枝 「?」

零侍 「今日は……いえ、いつも、うちの娘がお世話になっています。本当に、ありがとうございます」

零侍 「この間のことも……本当に、どうお礼を言ったらいいか……」

花枝 「気にしないでください。息子が勝手にやったことがほとんどですから」

零侍 「……とはいえ、大人として、このままでは、あまりにも情けないと思います」

零侍 「なので、あの……もし、ご迷惑でなければ……」

零侍 「お礼と言うと、浅ましいですが……今度、一緒にお食事でも、と……」

花枝 「お食事? 私とですか?」

零侍 「は、はい……」

514 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/06(日) 00:06:46 ID:qnUp5uO.
花枝 「……ふふっ」

零侍 「……?」

花枝 「いいですよ。ぜひ」

零侍 「!? ほ、本当ですか!?」

花枝 「うそなんかつかないですよ」

零侍 「あ……そ、それは、そうですよね」

零侍 「……では、また。その……電話をします」

花枝 「はい。待ってます」

零侍 「………………」

零侍 「……では、また」

花枝 「ええ。古橋さん、お気をつけて。それから……」

零侍 「?」

花枝 「メリークリスマス」 ニコッ

零侍 「あっ……」 ドキッ 「め……メリー、クリスマス」

515 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/06(日) 00:07:23 ID:qnUp5uO.
………………

文乃 「えへへ、今日は本当に楽しかったなぁ……」

成幸 「“美味しかったなぁ” の間違いじゃないのか?」

文乃 「むっ……成幸くん? きみは、わたしのことを、ただの食いしん坊だと思ってないかい?」 プンプン

成幸 「冗談だよ。悪かった」

文乃 「ふーん、だ」 プイッ

文乃 「………………」

クスッ

文乃 「……ふふ」

成幸 「? どうかしたか?」

文乃 「ううん。楽しくって仕方なくてさ」 ニコッ 「怒るフリもできないよ」

成幸 「っ……」 ドキッ (そ、その笑顔はいくらなんでも反則だろ……)

文乃 「……ねぇ、成幸くん」

成幸 「お、おう。なんだ?」

516 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/06(日) 00:08:02 ID:qnUp5uO.
文乃 「はい、これ」

成幸 「へ……? これ……プレゼント?」

文乃 「うん。成幸くんへのプレゼントだよ」

文乃 「さっき渡したら良かったんだけどね……えへへ」

文乃 (……なんか、みんなの前で渡すのが恥ずかしくて……なんて言えないよね)

成幸 「……あ、ありがとう。嬉しいよ」

成幸 「えっと……その……俺も」 ゴソッ 「……プレゼント」

文乃 「へ……?」

文乃 「あっ……ありがとう」 カァアアアア……

成幸 「俺も、さっき渡したらよかったんだけど……」

成幸 (みんなの前で渡すのが恥ずかしかった……なんて言えるわけないよな)

文乃 「……ふふ。なんか、わたしたち、似たもの同士だね」

成幸 「……だな」

517 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/06(日) 00:08:39 ID:qnUp5uO.
文乃 「………………」

ドキドキドキドキ……

文乃 (……ああ、もう。否定することも、難しいよね)

文乃 (こんなの、ずるいよ……だって……)


文乃 (――好きにならないわけ、ないじゃない)


文乃 (……ごめんね。りっちゃん、うるかちゃん)

文乃 (正々堂々、明日、ふたりに、ちゃんと言うね)



文乃 (わたしが、唯我くんのことが好きだって、ふたりに言うね)



文乃 (だから、今日だけは許して)

文乃 (ふたりから嫌われちゃうかもしれないけど……)

文乃 (今日、いま、このときだけは……)

518 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/06(日) 00:09:10 ID:qnUp5uO.
文乃 「……ねえ、唯我くん」

成幸 「ん?」

文乃 「わたし、初めてなんだ。こんな風に、男の子とふたりで、クリスマスを過ごすって」

成幸 「へ……?」

カァアアアア……

成幸 「い、いやいや、さっきまで俺の家族とお父さんと一緒だっただろ?」

文乃 「うん、そうだね。でも、今はふたりきりだよ?」

成幸 「いや、まぁ……それは、その通りだけど……」

文乃 「………………」

成幸 「………………」

ドキドキドキドキ……

文乃 「……ねえ、唯我くん。わたしが今、何を考えてるか、わかる?」

成幸 「えっ……?」

成幸 「そ、そんなの、わかるわけないだろ」

519 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/06(日) 00:10:06 ID:qnUp5uO.
文乃 「……うん。そうだよね。成幸くんは成幸くんだもんね」

成幸 「……?」

文乃 「じゃあ、それが分かるようになるまで、女心の授業は続くよ、成幸くん」

成幸 「!? 女心が分かれば、お前が今何を考えてるかも分かるようになるのか……すごいな、女心の授業……」

文乃 「わたしの授業は半端を許さないからね。覚悟しておいてね」

成幸 「……ああ、分かってるよ。お前が単位をくれるまで、お前の授業を受けないとな」

成幸 「はぁ。単位修得まで、どれくらいかかることやら」

文乃 「そうだね。がんばらないとだよ、成幸くん」

文乃 「……高校を卒業しても、単位を与えられなかったら、補習は続くからね」

成幸 「うへぇ。女心って大変だな……」

成幸 「でもまぁ、お前が付き合ってくれるなら、がんばって補習を受けるとするよ」

文乃 「ふふ……」

クスッ

文乃 「今の、言質とったからね。成幸くん」

おわり

520 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/06(日) 00:10:51 ID:qnUp5uO.
………………幕間1 「TOMODACHI」

文乃 「お、おう……」

文乃 「すごいセンスだね、水希ちゃん……」

文乃 「でかでかと 『TOMODACHI』 と刺繍されたエプロンとは……」


………………

水希 (古橋さん、プレゼント開けてくれたかなぁ。気に入ってくれたかなぁ)

水希 (ふふ……)

キラン

水希 (……まぁ、認めてあげないこともないですが、)

水希 (まずは清く正しく、お兄ちゃんのお友達から始めてもらわないとね……ふふふ……)

水希 「………………」

水希 (……来年のクリスマスプレゼント用に、『KOIBITOMIMAN』 エプロンも作っとこうかな)

521 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/06(日) 00:11:30 ID:qnUp5uO.
………………幕間2 「オマケ」

零侍 「……ゆ、唯我さん?」

花枝 「ごめんなさいねぇ、古橋さん。外食に行くって話をしたら……」

葉月 「こんばんは! 文姉ちゃんのお父さん!」

和樹 「ついてきちゃいました!!」

花枝 「お母さんだけずるいって言われてしまって……」

零侍 「あ、いえ……構いませんよ。葉月さんと和樹くんにもお礼をしなければなりませんから」

零侍 「葉月さん、和樹くん、何が食べたい? 私が何でも食べさせてあげよう」

零侍 (……まぁ、落胆していないと言えばウソになるが)

花枝 「あら、良かったわね、葉月、和樹」

葉月 「うーん、うーん……」 和樹 「何がいいかな……」

零侍 「……うむ」

零侍 (唯我さんの嬉しそうな顔が見られただけで、良し)

零侍 (しかし、まぁ……) ハァ (唯我くんのニブさは、間違いなく母親譲りだな)

おわり

522 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/06(日) 00:14:38 ID:XuaKvmLc
乙!!!!!

523 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/06(日) 00:16:13 ID:S8mU02Bk
乙!!!
いい最終回だった!

524 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/06(日) 00:19:27 ID:qnUp5uO.
>>1です。

まず第一に、わたし自身がコミックス派なので、本誌の話を先に出すことがためらわれました。
(文乃さんの家出のときだけ誘惑に負けてジャンプを買ってしまいましたが)。
また、明示されてない好意に関しても本編に先んじて描くのもよくないと思いました。
ただ、思いついて、書いていると、勝手ながらとても面白いと思ってしまいました。
なので、言い訳がましい前置きをして投下させてもらいました。
申し訳ないことだと思います。

今後、こういうのは控えようと思います。が、自分で面白いと思ったら、また投下すると思います。
不快に思われた方がいたらすみません。もうしわけないです。


>>478
あまり匿名掲示板で明言するのも正しくないと思うのでジャンルだけ言いますが、「プリキュア」の小説です。

>>479
今で匿名掲示板で投下したのは主に「とある」と「プリキュア」のSSです。
ギャグが苦手なのでシリアスばかりです。



また投下します。

525 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/06(日) 00:35:08 ID:FgSAvOmk
好きなように書いてくれてええんやで

526 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/06(日) 01:15:28 ID:1oT6qPsk
とりあえず無限の可能性を秘めた女の子の画像貼っときますね
https://i.imgur.com/4gRGYWO.jpg

527 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/06(日) 07:45:41 ID:ML9R6WoI
>>478だけどありがとう
委託してるか知らんが探してみるわ

528 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/06(日) 21:17:43 ID:X3tVyTOU
もう

529 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/06(日) 21:18:32 ID:X3tVyTOU
誤送信してしまった
もうこれ本編でいいだろって出来だな
最高だよ

530 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/06(日) 21:43:29 ID:u4hlzuRA
>>526
ぐうかわ

531 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/07(月) 18:44:39 ID:Ru94J.Qg
おつ

532 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/09(水) 01:11:47 ID:u39T5QFQ
今週のジャンプもいとおもしろく

533 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/10(木) 22:45:54 ID:1QrxQ.1A
>>1です。
投下します。


【ぼく勉】 文乃 「成幸くん、散々わたしの胸のことバカにしてたよね?」 ボイン

534 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/10(木) 22:46:48 ID:1QrxQ.1A
………………5年後

文乃 「で、今現在、これだけ大きくなったわたしの胸を見て、どう思う?」 タユン

成幸 「へ……?」

成幸 「バカにしてたって……べつに、そんなことないだろ……」

成幸 「あと、胸の大きさなんて……そんな……」

文乃 「ふふん。そんなおぼこみたいな反応したって無駄だよ」 ムギュッ

文乃 「文乃お姉ちゃんは全部お見通しなんだからね」 ムギュムギュ

成幸 「お、お姉ちゃんてお前……何年前の話だよ……」

成幸 「あとお前、その……さっきから、胸が、当たってるんだけど……」

文乃 「わ・ざ・と。当ててるに決まってるでしょ」

成幸 「……お前な。そういうの、はしたないからやめろって」

ジトッ

成幸 「まさかお前、俺以外の男にも、同じようなことしてるんじゃないだろうな?」

文乃 「……!? 他の男の子に? す、するわけないじゃん! 成幸くんのえっち!」

成幸 「……お前の恥ずかしがるポイントがまるで分からないよ」

535 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/10(木) 22:47:38 ID:1QrxQ.1A
文乃 「あっ……は、話を逸らそうったってそうはいかないよ?」

ムギュウムギュッ

文乃 「正直、成幸くん、付き合い始めた頃は、わたしのおっぱいに関しては色々あきらめてたよね?」

成幸 「胸に関して諦めるってどういうことだよ」

文乃 「わたしのおっぱいが小さいから、りっちゃんのおっぱいを揉みたいとか思ってたよね?」

文乃 「あの、最終的にIカップ寸前まで成長したハザード級のおっぱいを」

成幸 「思ってねーよ! 恋人と共通の友達のおっぱい揉みたいとかただのダメ野郎だろそれ!」

文乃 「えっ? じゃあうるかちゃんの健康的な日焼け跡おっぱい?」

成幸 「お前ほんと俺のことなんだと思ってるんだ?」

文乃 「……ふーん。じゃあ、成幸くんは、わたしのおっぱい以外はどうでも良かった、と?」

成幸 「……いや、それを肯定しても、俺、お前のおっぱい目当てで付き合ったことにならないか?」

文乃 「……当時のわたしのAカップおっぱいには何の価値もなかった、と?」 ゴゴゴゴゴ………

成幸 「そんなこと一言も言ってないよな!?」

536 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/10(木) 22:48:29 ID:1QrxQ.1A
文乃 「じゃあ、質問を変えるけど、」

ムギュッ

文乃 「今現在、きみの恋人のおっぱいは、Fカップですが、それに関して何かコメントは?」

成幸 「コメントって……」

カァアアアア……

成幸 「……えっと、その……どんなお前も魅力的だけど……」

成幸 「……とても、その……よろしいと、思います、です……」

文乃 「よろしい」 フフン

成幸 「………………」

成幸 (得意げな顔がムカつく……。どうでもいいとか言うと拗ねるくせに……)

成幸 (まぁ、でも、そんなところもかわいいけど……)

文乃 (……なんてことを考えてる顔だね。あれは)

ニヤリ

文乃 (まったく。成幸くん、かわいいのは、照れながらも正直に答えてくれるきみの方だよ)

537 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/10(木) 22:49:06 ID:1QrxQ.1A
成幸 「……ったく、お前が胸のコンプレックス爆発させたせいで時間食っちまったじゃないか」

成幸 「新婚旅行の行き先、今日中に決めるって約束なんだから、早く探さないとだぞ」

文乃 「わかってるよー、だ。しっかり者の旦那さんを持ててわたしは幸せ者だなー」

成幸 「……ほんっと、調子いい女になったよな、お前」

クスッ

成幸 「俺も、お前みたいな美人でおっぱいの大きい嫁さんもらえて幸せ者だよ」

文乃 「えへへ……」

成幸 「午後からは結婚式の最終打ち合わせもあるんだからな?」

文乃 「うん! えへへ……」

成幸 「? どうした?」

文乃 「……ううん。結婚式、楽しみだなぁ、って」

成幸 「……まぁ、そうだな」

文乃 「えへへ。幸せにしてね、成幸くん!」

成幸 「おう!」

………………

538 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/10(木) 22:49:39 ID:1QrxQ.1A
………………古橋家

文乃 「えへへ……えへへへへへ……」

文乃 「ふにゅ……」

パチッ

文乃 「……ん……う?」

文乃 「あれ……成幸くん……?」

文乃 「………………」

ハッ

文乃 (……夢!? えっ、ちょっと待って……夢!?)

文乃 (わ、わたし……夢を見てた……?)

文乃 「………………」

スカッ

文乃 (……あ、うん。わかってたけどね。うん。胸、こうだよね。これがわたしの胸だよね)

ズーン

文乃 (っていうか……) カァアアアア…… (わたし、なんて恥ずかしい夢を見てしまったんだろう……)

539 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/10(木) 22:50:29 ID:1QrxQ.1A
………………一ノ瀬学園

うるか 「おっはよー! 文乃っちー!」

文乃 「あ、お、おはよ、うるかちゃん」

文乃 「………………」 ジーーーーッ

うるか 「? どったの? あたし、なんか変?」

文乃 「………………」

文乃 (……うん。相変わらず、筋肉質ながらもやわらかそうなおっぱいがふたつ)

文乃 (でも、夢の中のわたしは、もっと大きかった……)

うるか 「ふ、文乃っち? そんなに見つめられると、恥ずかしいよ……///」

文乃 「……ふふっ」

文乃 (なんだかわからないけど、少し勝った気分だよ……!)

文乃 (それと同時に、とんでもない虚しさを感じるよ……)

成幸 「……? 朝っぱらから何やってるんだ、あのふたりは」

理珠 「なんだか分かりませんが、関わらない方がいいと思います」

540 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/10(木) 22:51:04 ID:1QrxQ.1A
………………放課後

理珠 「……はぁ? 胸が大きくなる夢を見た?」

文乃 「……うん」

文乃 (恥ずかしいけど、笑い話になるかなと話してしまった……)

うるか 「へぇー。文乃っちのおっぱいが大きくなる夢ねー……」

うるか (……もし、文乃っちのおっぱいが大きくなったら、きっと完全無欠の超絶美女のできあがりだよね)

うるか (そうなったら……) ジーッ

成幸 (……そういう話は女子だけのときにしてくれないかな……)

うるか (……きっと成幸も、文乃っちのこと大好きになっちゃうよね)

うるか 「だ、ダメだよ! 文乃っちはおっぱい大きくなっちゃ!」

文乃 「ダメ!? 禁止されるようなことなの!?」

うるか 「文乃っちにもひとつくらい欠点がないとダメだよ! じゃないと……」

うるか (成幸が文乃っちのこと好きになっちゃうかもしれないし!!)

文乃 「……さりげなくわたしの胸が小さいことを欠点扱いされた」 ズーン

541 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/10(木) 22:51:40 ID:1QrxQ.1A
成幸 「ほ、ほら! アホな話してないで、さっさと勉強に戻るぞ。受験生だろ」

理珠 「その通りですよ。胸が大きくなる夢なんて、文乃の潜在的な欲求が表れただけのことでしょう」

理珠 「取るに足らないことですよ」

文乃 「………………」

ムギュッ

成幸 「なっ……///」

理珠 「な、なぜ無言で私の胸を鷲づかみするのですか!? 文乃!」

文乃 「“取るに足らないこと” ……?」

ギラリ

文乃 「そんな悪いことを言うのはこの胸かー! この凶悪なおっぱいなのかー!?」 ムギュムギュムギュウ

理珠 「や、やめてください! 成幸さんもいるんですよ……っ」

うるか (……成幸がいないとこでなら揉んでもいいのかな? 今度やってみよ)

成幸 「お、落ち着け、古橋! 緒方の胸を揉んでもお前の胸は大きくならないぞ!?」

文乃 「何でそこで全力で煽りに来るのかな成幸くん!?」

542 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/10(木) 22:53:03 ID:1QrxQ.1A
………………

文乃 「……ごめんなさい。取り乱しました」

理珠 「いえ、こちらこそ、取るに足らないことというのは言いすぎでした。ごめんなさい」

成幸 「……うん。俺も空気読めないことを言って悪かったよ」

うるか (胸ねー。水泳選手的にはあんまりないほうがいいんだけど……)

うるか (それを言ったらまた文乃っちが暴れ出しそうだからやめとこーっと)

うるか 「ん、そういえばさ、リズりん。さっきなんか変なこと言ってなかった?」

理珠 「はい?」

うるか 「文乃っちのセンザイテキナヨッキューがどーの、とか……」

理珠 「ああ……。潜在的な欲求の表出ですか」

理珠 「……最近、受験勉強の合間に心理学の勉強をしているのですが、読んだ本に出てきたんです」

理珠 「“即物的すぎる夢は、当人の潜在的な欲求を示している場合が多い”」

うるか 「???」

理珠 「……オホン。うるかさんに分かりやすいように、簡単な言葉に直すと、つまり……」

理珠 「夢に出てきたことが、本人が望んでいることだ、ということです」

543 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/10(木) 22:53:34 ID:1QrxQ.1A
うるか 「夢がそのまま本人の望むもの……」

うるか 「……つまり、文乃っちはおっぱい大きくなりたいってこと?」

理珠 「……身も蓋もない言い方をするとそうなりますが、」

文乃 「………………」 ズーン

理珠 「今度こそ文乃の目が死んでしまったので、それ以上はやめてあげてください」

うるか 「えー、でもそれって面白いね!」

文乃 「……面白い? わたしが胸が小さいことで悩んでるのがそんなに面白いかー!!」

うるか 「ど、どうどう、文乃っち。そうじゃなくてさ……」

うるか 「夢に出てきたことをその人が望んでるってコトなんでしょ?」

うるか 「文乃っち、夢の中で、おっぱいが大きくなること以外に、何かなかったの?」

文乃 「えっ……」

文乃 「……あ」


―――― 『午後からは結婚式の最終打ち合わせもあるんだからな?』


文乃 「……っ」

544 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/10(木) 22:54:33 ID:1QrxQ.1A
うるか 「お、なんかあったのー? 教えてよー」

文乃 「だ、ダメ! ダメだよ! 絶対言えないよ!」

理珠 「? どうしたのですか、文乃。そんなに顔を真っ赤にして」

理珠 「胸が大きくなったこと以上に恥ずかしいことなのですか?」

文乃 「わたしがとんでもなく恥ずかしいやつみたいな目でみるのはやめてくれないかな!?」

うるか 「えーっ、じゃあいいじゃん。教えてよ〜」

文乃 「………………」 (い……言えるかー!!)


―――― 文乃 『いやー、実はふたりの好きな人と結婚する夢を見たよ』

―――― 文乃 『それがわたしの望みなんだとすると、今日からわたしたちライバルだね!』


文乃 (そんなこと言えるかーーーーーーー!!)

545 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/10(木) 22:55:17 ID:1QrxQ.1A
成幸 「……ったく。ほら、そろそろいい加減にしろよ」 スッ 「古橋も話したくないみたいだし」

文乃 「あっ……成幸くん……」

うるか 「えーっ! 文乃っちのガンボーが知りたいのにー」

成幸 「ダメだ。今から十五分後に英単語の確認テストをするぞ」

うるか 「へ!? 十五分後!? じ、時間ないじゃん! 早く勉強しなきゃ!」

成幸 「緒方も。十五分後に古文の活用の穴埋めテストするからな」

理珠 「は、はい! 今日こそ完ぺきにしてみせます!」

成幸 「古橋は、今日はひたすら計算だな。そろそろインテグラルとは友達になれそうか?」

文乃 「えっ、あ、う、うん。まだ殴り合いをしてる真っ最中かな……」

成幸 「存外熱血な友達の作り方だな。ま、いいや。不定積分の練習問題を繰り返しやっておいてくれ」

文乃 「うん!」

成幸 「気を抜くなよ。そろそろ積分と三角関数が同居を始めるからな」

文乃 「……あんまり考えたくない、けど……」 グッ 「がんばるよ。成幸くん!」

成幸 「ああ、その意気だ」

546 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/10(木) 22:55:59 ID:1QrxQ.1A
………………

文乃 「………………」

カリカリカリカリ……


―――― 『わかってるよー、だ。しっかり者の旦那さんを持ててわたしは幸せ者だなー」』


文乃 (……わたしの胸が大きくなくても)

文乃 (わたしたちが結婚式を間近に控えた恋人同士じゃなくても)

文乃 (きみがしっかり者であることは、変わらない)

文乃 (……ねえ、りっちゃん、うるかちゃん。そして、成幸くん)


―――― 『夢に出てきたことが、本人が望んでいることだ、ということです』


文乃 (……わたしは、それを望んでもいいのかな)

文乃 (わたしは……)

文乃 (きみを、好きになっても、いいのかな……)

おわり

547 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/10(木) 22:57:39 ID:1QrxQ.1A
>>1です。読んでくださった方、ありがとうございました。
個別レスしませんが、乙や励ましの言葉、嬉しいです。ありがとうございます。
感想をくれる方、とても嬉しいです。ありがとうございます。


また投下します。

548 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/10(木) 23:30:50 ID:56lcqZPA
乙です

549 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/11(金) 19:26:25 ID:NjlEfpX2
おつんこここ

550 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/11(金) 20:57:32 ID:F21GcOTU

今週ないのをこれで乗り切れる気がする

551 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/12(土) 02:20:13 ID:uWc/XS6A
これは正妻ですわね?

552 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/12(土) 10:52:40 ID:d1TmaCA2
おつぱい!!!!

553 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/12(土) 13:50:55 ID:0Y0Jaolc
おつ!

554 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/14(月) 09:54:02 ID:qxtQW6K.
母親も貧乳なので残念ながらね

555 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/19(土) 14:47:42 ID:XJCkUcqI
シエンタ

556 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/01/22(火) 01:27:38 ID:4hgKH4tU
まだかな


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