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「新入生は日野下花帆くん」√梢

1名無しさん@転載は禁止:2024/07/31(水) 00:52:44 ID:B1WnxJww
とってもいい天気。
窓から覗く日差し。ぽかぽかのお日様。

最高の目覚めだったけど、絶対におかしな光景。

どうしてじっかの

2名無しさん@転載は禁止:2024/07/31(水) 00:56:54 ID:B1WnxJww
とってもいい天気。
窓から覗く日差し。ぽかぽかのお日様。

最高の目覚めだったけど、絶対におかしな光景。

どうして実家の私の部屋?

花帆「なんで寮じゃ……あ、あれ?」


もう一つの違和感。
壁には何故か学ラン……男の子用のものがかけられていた。
どうして?

気になって近づいていく、その前に。
鏡に映ったあたしの姿。

花帆「え……へ、へぇ!?」

髪は短く、胸は平坦。
そこに映る人を、それでも脳はあたし自身だと言っている。

可愛げな顔を──自画自賛?──しているけれど、そこに映るのは……間違いなく男の子だった。

花帆「なっ……なんじゃこりゃ〜〜〜!?」

3名無しさん@転載は禁止:2024/07/31(水) 01:03:17 ID:B1WnxJww
☆☆☆

状況を整理しよう。
一先ず1週間を過ごしてわかった事。

まず、あたしは今は中学3年生。
高校生ですらなかった。

男の子である事も、周囲は当たり前の様で。
どうやらおかしいのはあたしの方みたい。

それともう一つ。
……これはあたしにとってはマイナスな事。
身体が病弱である事が治っていない。

激しい運動は避ける様に生きてきたらしい。
女の子の頃よりも体力が無いと感じている。

4名無しさん@転載は禁止:2024/07/31(水) 01:09:10 ID:B1WnxJww
それでも案外適応してきたあたしは、なんだかんだ中学生を謳歌していた。

でも、心にぽっかりと穴が空いている。
皆に会いたい……。

蓮ノ空女学院じゃないから、スクールアイドルクラブの皆に会えない。
それどころか、知り合いですら無いんだと思うと。
ひどく、たまらなく寂しくなった。

でも帰る方法も分からない。
それを考えだしたら日に日に憂鬱になってしまっていた……けれど。

あたしはそれを見つけた。

蓮ノ空女学院が共学化する事を。
しかも来年! 受験に間に合う……!

私の頭には、もうそこに入学する事しかなかった。

5名無しさん@転載は禁止:2024/07/31(水) 01:13:22 ID:B1WnxJww
お母さんをなんとか説得して蓮ノ空女学院、じゃなくて蓮ノ空学院への受験を勝ち取った。

それからは絶対に落ちるわけにはいかないと猛勉強。
もしかしたら、誰も居ないかもしれない。無駄な努力をしているかもしれないけれど、やらない訳にはいかない。

そしてその努力の甲斐もあり、あたしは見事蓮ノ空に入学を果たした。

……そして入学早々にとんでもない障害とぶつかる事になる。

共学化したはずなのに……。
男子が……!

花帆(あ、あたしだけ〜……!?)

6名無しさん@転載は禁止:2024/07/31(水) 01:13:52 ID:B1WnxJww
今回はこう言う感じです。
また明日に。

7名無しさん@転載は禁止:2024/07/31(水) 04:25:38 ID:EJFjvkVk
期待

8名無しさん@転載は禁止:2024/07/31(水) 06:33:54 ID:U.Z6O7jY
記憶が残ってるのはいいですね
性欲うさぎに期待

9名無しさん@転載は禁止:2024/07/31(水) 08:15:39 ID:A2aexQtM
期待大の始まりですね、やっぱり花帆君は女子の時同様虚弱体質なんですね、共学化したばかりの蓮ノ空で男子は花帆1人か、更新楽しみです。

10名無しさん@転載は禁止:2024/07/31(水) 09:39:17 ID:kBrbPN1Y
女性陣から冷たい目で軽蔑されそう
初対面でもまともに相手してくれるの綴理ぐらいかな…

11名無しさん@転載は禁止:2024/07/31(水) 23:59:12 ID:xv/mUZSE
梢とさやかちゃんから白い目で見られたら辛すぎる
ちょっとめぐちゃんが甘やかしてくれたら即堕ちですよ

12名無しさん@転載は禁止:2024/08/01(木) 00:25:51 ID:wzm2sAFs
「どういう事? 女子校じゃなかったの?」
「なんか今年から共学になってるんだってー」
「だからって普通女子校だったところに来る?」
「なんかやらしー……」

花帆(うぅ、こんなはずじゃ……)

……教室に入るまでに、他の誰も姿を確認できていない。
上級生の梢センパイ、綴理センパイ、慈センパイならまだしも……同級生のさやかちゃんと瑠璃乃ちゃんが見当たらないのは……。

いや、まだわからない。
とりあえずこの後の入学式……そこで探してみよう。

☆☆☆

それにしても、というのかな。
肩身が狭い……!

当たり前だけど、あたし以外全員女子だから目立ってしまって仕方ない。

でも一つ幸いなのは、あたしの身長が変わらず155cmのままだから紛れ込めている気がしなくもない。

「わ……本当にいる」
「絶対下心あって入学してきたよ」
「やだ〜……」

そう思っているのはあたしだけみたい……。

13名無しさん@転載は禁止:2024/08/01(木) 00:31:25 ID:wzm2sAFs
……とにかく!
入ってしまったものは仕方ない!
いまはわずかな望みにすがるしかないけど、あたしの不安をかき消してくれる何かを……!

花帆(あ……)

クラスは分けられており、別々に体育館に集まるのだけれど。
その中に、ようやく見つけた。

花帆(さやかちゃん……! それに瑠璃乃ちゃんもいる!)

2人は同じクラスなんだ! どうせならあたしも一緒が良かったけど……この際贅沢は言っていられない。

でも良かった……ここに来た意味がちゃんとあった。

あとは、どうやって仲良くなるかだね……。

14名無しさん@転載は禁止:2024/08/01(木) 01:01:26 ID:wzm2sAFs
新たな課題に頭を悩ませていれば、入学式なんてあっという間に終わってしまった。
 
☆☆☆

この世界の蓮ノ空はどうやら、なんでもいいから部活動に入る必要があるらしく。

どうした物かと困っているところだ。
身体が弱いから運動部は避けたいし……。
それに本当は。

入りたい『クラブ』はある。
変わらずにある物。
蓮ノ空、学院スクールアイドルクラブ。

でも今のあたしでは……。

部室の前まで行って、分かりきっている事が頭の中で何周も駆け巡る。

体力もない、そもそも今の性別だって男子。
入れる……気がしない。

もしここに、梢センパイ達がいたとして、受け入れてくれるかも分からない。

……やっぱり帰ろう、そう思って引き返そうとした時。

梢「あら……あなた、どうしたの? 何か御用かしら?」

花帆「!」

とっても、聞き慣れた声。
でもこの1年間はとんと聞いていなかった。
ネット上に動画も何故か無かったから……!

花帆(梢センパイ……!)

思わず呼びそうになったけれど、初対面である事を忘れてはいけない。

15名無しさん@転載は禁止:2024/08/01(木) 01:06:08 ID:wzm2sAFs
梢「……あなた、もしかして噂の新入生の子? 唯一の男子生徒っていう……」

花帆「あっ、は、はい……ひ、日野下花帆、って言います!」

梢「元気でよろしいわね。……それで、日野下くん。スクールアイドルクラブに用がありそうに見えたけれど……?」

花帆「あっ、えと……!」

どうしよう、何を言えばいいか分からない。
というかあたしとしては、なんとか心の安寧の為にここで梢センパイとの関係を作っておきたい……!

正直にいってみる

16名無しさん@転載は禁止:2024/08/01(木) 01:08:21 ID:wzm2sAFs
正直に言ってみる?
場合によってはドン引きされるかもしれないけれど、梢センパイならもしくは……!

花帆「あ、あの……ぼくも……スクールアイドルクラブに……」

梢「……?」

最後まで聞こうとしてくれている梢センパイ。
誤魔化せない、けど……!

花帆「……ま、マネージャー……とか、って募集してます、か?」

最後に捻りを加えてしまった。

17名無しさん@転載は禁止:2024/08/01(木) 01:09:54 ID:wzm2sAFs
また明日に。

口調がガバるかもしれません。
基本的に話はずっと明るいです。

18名無しさん@転載は禁止:2024/08/01(木) 01:10:46 ID:i/U228uU
期待してる

19名無しさん@転載は禁止:2024/08/01(木) 16:48:26 ID:F4w5l9TM
お話作るの頑張って下さい。

20名無しさん@転載は禁止:2024/08/01(木) 20:01:57 ID:6uhVWiPg
楽しみにしてます

21名無しさん@転載は禁止:2024/08/02(金) 01:00:57 ID:bxPIqkro
梢「……マネージャー? いえ、今までそういったのは特には……」

梢「いえ、待って。日野下くん、一つ聞かせてもらえるかしら? あなたは……スクールアイドルにはなりたくないの?」

花帆「え……え?」

……なんだか思ってたより前向きに考えてくれてる?!
さ、さすが梢センパイ……! 包容力がすごい!

花帆「あ……ぼくは、その身体が弱くて……部活も、運動部は避けようと思ってて……!」

花帆「でも、スクールアイドル……に、ちょっと興味もあって……」

梢「そういう事なら、一度見学してみてはどうかしら? 日野下くん以外にも、入部希望の子が2人いるの」

2人……もしかしてさやかちゃんと瑠璃乃ちゃんかな。

梢「……女子生徒ばかりで、男子1人なのは不安だと思うけれど、私はあなたを歓迎するわ」

梢「自己紹介が遅れていたわね。私の名前は乙宗梢」

花帆「……こ……乙宗、センパイ」

部室の前で、ようやく名前を呼んだその時。
部室の扉がガラガラと音を立て、中から──

綴理「こず、なに話してるの?」

22名無しさん@転載は禁止:2024/08/02(金) 01:11:26 ID:bxPIqkro
梢「綴理、入部希望の子よ。マネージャー志望だけど、ね」

綴理「……おとこのこ?」

花帆「は、初めまして! 日野下花帆、です!」

綴理「うん、はじめまして」

梢「……日野下くん、この子は夕霧綴理。ちょっと変わってるけど、きっと歓迎してくれるわ」

綴理「うん。ボク、来るもの拒まず」

……教室や、入学式の時の周りの反応が嘘みたいに、受け入れてくれる。

あぁ、やっぱり……ここに来て良かった。
それに、何より……。

また皆に会えた。それが本当に嬉しい。

23名無しさん@転載は禁止:2024/08/02(金) 01:13:44 ID:bxPIqkro
3年生組が卒業までには梢綴理慈はやっておきたいところです。また明日に。

24名無しさん@転載は禁止:2024/08/02(金) 05:30:01 ID:dxV0lz6k
共通ルートって感じで続きが楽しみです
さやかだけ最初のバスで個別ルート入りそうだけど

25名無しさん@転載は禁止:2024/08/02(金) 07:11:34 ID:09hsVODo
>>24
確かにさやかとの出会いはバスだったもんね、となると吟子との出会いは花帆が部室に赴くと吟子が寝転がってる所に出くわすわけね、まぁ徒町よりかはマシなファーストコンタクトかなぁ。

26名無しさん@転載は禁止:2024/08/03(土) 00:16:06 ID:jSsSVBuA
慈「ん〜、なになに? ……んん? その子は?」

更にもう一人、慈センパイが現れる。

慈「あ〜、そういえば。ハーレムを目論んだ勇敢な子が入学してきたって噂になってたっけ?」

梢「慈、あまりそういう事を言うんじゃありません」

慈「あはは、冗談冗談。ほんとは中から聞いてたんだって。……うんうん、私も別にいいと思うよ、可愛い顔して、人畜無害って感じだし」

梢「慈……あまりそれは褒め言葉にはならないのよ」

27名無しさん@転載は禁止:2024/08/03(土) 00:39:44 ID:jSsSVBuA
綴理「そうなの? 可愛い顔なのは褒め言葉じゃない?」

梢「いえそっちじゃなくて……まぁいいわ。とにかく、日野下くん。改めて、私達はあなたを歓迎するわ」

こうしてあたしはスクールアイドルクラブのマネージャーになった。

そしてやっぱりと言うべきか、入部希望の2人はさやかちゃんと瑠璃乃ちゃんで合っていた。

二人もあたしの事を受け入れてくれて──さやかちゃんはちょっと戸惑いつつも──あたしもこれでようやく安心できた。

だけど、それはそれとして。
授業中とか、移動中とか。
肩身が狭いのは変わらない。

せめて同じクラスにさやかちゃんと瑠璃乃ちゃんが入ればだいぶ違ったかもしれないけれど、もう今更言っても仕方ないよね。

28名無しさん@転載は禁止:2024/08/03(土) 01:13:57 ID:jSsSVBuA
……まぁ、お昼は1人でこっそり。
人気の少ない場所……屋上とかで食べる。

さやかちゃんと瑠璃乃ちゃんを誘う……のは難しい。既に友達が出来ていて、さすがにそこには飛び込めなかった。

花帆「とほほ……まさかこんな事になるとは」

本当にスクールアイドルクラブの皆がいなかったら、今度こそ脱走してたかもしれない。

花帆「まぁ、放課後になれば……」

梢「放課後になれば?」

花帆「わっ!?」

全くの意識の外。
びっくりしすぎてお尻が浮いてしまった。

梢「ご、ごめんなさい、驚かせるつもりではなかったの」

花帆「あ、ぼくの方こそ……でもどうして乙宗センパイ、こんな所に……」

梢「どちらかといえば、それは私のセリフね。日野下くんこそ、どうして屋上で?」

花帆「……それは、まぁ」

かくかくしかじかと。

梢「そうね……確かに居心地は良くないかもしれないわね。それで、購買のパンをここで食べているのね」

花帆「学食も、やっぱり行きにくくて……」

梢「……日野下くん、もし良かったら、明日は私と一緒に学食に行く? もちろん無理にとは言わないけれど……」

花帆「えっ、そんな……乙宗センパイが良ければ、ぜひ……!」

やっぱり梢センパイは優しいなぁ……こんなに優しくされたら、すぐに好きになっちゃうよ。
もう大好きだけどね。

梢「それじゃあ、明日のお昼は食堂で待ち合わせましょう」

29名無しさん@転載は禁止:2024/08/03(土) 01:15:03 ID:jSsSVBuA
また明日に。

30名無しさん@転載は禁止:2024/08/03(土) 01:44:28 ID:klu6k3Ss
後輩組はしっかり5人分クリアしてからにして欲しいという思いがある

31名無しさん@転載は禁止:2024/08/03(土) 14:19:15 ID:cSb2tg2o
男でも関係なく距離感近い接し方の綴理に期待してる

32名無しさん@転載は禁止:2024/08/04(日) 00:57:40 ID:hhZSO1Zo
☆☆☆

そして翌日。
いざ食堂へ……しかし随分と緊張しちゃう。

もう皆、いい加減あたしに慣れたというか、飽きてきたというのか。あまり反応も少なくなってきた。

けれど、梢センパイと一緒となれば話は全くの別だった。

皆、どうして梢センパイとあたしが一緒に? と不思議そうにチラチラと。

33名無しさん@転載は禁止:2024/08/04(日) 01:29:10 ID:hhZSO1Zo
梢「日野下くん、学校には……まだ慣れてないかもしれないわね」

花帆「うぅん……今は、とにかくこの環境を当たり前にしないといけないな、って思ってて」

大浴場も、あたしが入るのはあたし以外全員が入浴を済ませた後。
それに寮の部屋も、あたしだけちょっと離れてるところだし……学院側も、共学化したはいいけど、その辺りはもう少しなんとかしてほしかったかも。

梢「さて……今日からいよいよ新体制のスクールアイドルクラブの活動を開始します。そこで日野下くんにやってもらいたいことを説明するから、放課後は部室に集合よ」

花帆「はい!」

34名無しさん@転載は禁止:2024/08/04(日) 01:45:08 ID:MK03Me9c
時間限定とはいえ、大浴場に入れるのか…

35名無しさん@転載は禁止:2024/08/04(日) 20:03:13 ID:fHvVrQ1c
>>34
いずれ男子寮が整備されたりするんだろうね、こういう女子校が共学化したハーレム物って意外と男1人って浮くって展開も多いよね…。

36名無しさん@転載は禁止:2024/08/04(日) 23:14:42 ID:I6E7.mOg
当然脱衣所も共用だよね…誰かの忘れ物とか見つけてドギマギしそう。

37名無しさん@転載は禁止:2024/08/04(日) 23:17:56 ID:wmNFfRMk
大浴場使わせてもらえるわけがないんだよなぁ
多少の時間を空けても湿度で匂いがものすごいことになっててフル勃起不可避
絶対シコってるだろ

38名無しさん@転載は禁止:2024/08/05(月) 05:04:49 ID:IXZmzFCY
梢センパイと楽しいお昼休みを過ごして、午後の授業。
を、乗り越えて放課後。

部室に集合し、今年度の目標等の展開。
その中でわかった事が複数。

蓮ノ空ではユニットでの活動が伝統とされていたけれど……この世界線では全員で一つのグループとして活動しているみたい。

まぁ確かに、すっごく変な話だけど、あたしが居ないのなら、梢センパイは誰と組むんだってなるしね!

それはさておき、次に学院でのLIVEについて。

撫子祭、竜胆祭、蓮華祭等で行い……

39名無しさん@転載は禁止:2024/08/05(月) 05:10:08 ID:IXZmzFCY
12月の全国突破を目指す。

梢「今年度からは、更に上を目指してやっていきます。練習もハードになると思うけれど、皆、問題ないわね?」

それに誰も、異を唱えない。 
あたしも皆が快適に練習出来るようにしないと……!

……本当はそこに居たい気持ちもあるけれど、本当に踊れそうにないから。

40名無しさん@転載は禁止:2024/08/06(火) 09:50:57 ID:DRFrAPMs
それはそれとして、あたしのやる事は。
タオルの準備とか、スポーツ飲料の準備。
マネージャーとは良く言うけれど、要は雑用係なのは間違いない。

これはあたしが活動していたから出来る事だけど、ちょっとしたアドバイスも。
アドバイスと言うと偉そうだけど、それがきちんと的を射ているから、皆も聞き入れてくれる。

梢「日野下くん、よく人を見ているのね」

梢センパイが感心したようにそう言う。

花帆「マネージャーとして、出来る事はしたいですし、皆さんには優勝してほしいですから!」

41名無しさん@転載は禁止:2024/08/07(水) 08:50:59 ID:284WUAT2
梢「……そうね。私達も、その期待に応えないとね」 

☆☆☆

あたしがスクールアイドルクラブのマネージャーになってから、約2ヶ月。
スクールアイドルクラブの活動も大切だけど、それとは別に学校行事も当然あるわけで。

体育祭……。

花帆(でも多分見学になるかな……)

正直、あたし自身が驚く程に体力が持たない。
普通の生活は出来るけれど、走ったり激しい運動は避けるべきで。

1種目くらいなら大丈夫かもしれないけど……。
 
「ねー、日野下くん何出る?」
「うちには男子がいるんだから、かなり有利なはず」

入学した当初こそ、扱いがぞんざいだったけど、あたしの事を理解してくれたクラスメイト。

その結果というべきか、妙な期待が集まっていた。
一応、身体が弱い事は話してはいるんだけどね。

42名無しさん@転載は禁止:2024/08/07(水) 08:57:53 ID:284WUAT2
☆☆☆

さやか「それで、リレーのアンカーになってしまった、と」

花帆「うん……」

放課後、部室に集まって雑談の時間。

梢「実際、注目は集まるでしょうね。……でも日野下くん、無理はしないのよ? あなたの身体の限界は、あなたしか分からないのだから」

花帆「はい……! ところで皆さんは、何の種目に……」

無理をしないで、か。
この時は、その言葉を守るつもりだった。
そのつもりだった。

43名無しさん@転載は禁止:2024/08/07(水) 09:03:51 ID:284WUAT2
☆☆☆

体育祭当日。
よく晴れた日、青空が広がる空。
6月、梅雨時期だったけれど、遮るものは何もなく日差しが強いくらいだ。

花帆(暑い……)

少し心配になるけど、練習の時はなんとかなった。
程々にしていれば、問題ないかな。   

そして体育祭は始まった。

その中でも注目を集めていたのは、やっぱり梢センパイだった。
黄色い歓声があがって、梢センパイの人気ぶりが窺える。

花帆(やっぱり、梢センパイはすごいなぁ……)

44名無しさん@転載は禁止:2024/08/07(水) 17:43:39 ID:TpFgBdvk
無自覚天然綴理の距離感バグったスキンシップ見たい

45名無しさん@転載は禁止:2024/08/08(木) 09:23:05 ID:zt6pKjag
身近になりすぎて、感覚が麻痺しそうになるけど。
なんでも出来るし──機械と、絵を除いて──美人でスタイルも良くて。

花帆「……」
 
花帆、って呼んでほしいな。
今は日野下くんだから……。

花帆(男子として会うと、仲良くなるまでのスピードが違う気がするや……)

46名無しさん@転載は禁止:2024/08/08(木) 09:33:36 ID:zt6pKjag
花帆(だったら……) 
 
ちょっとここで、かっこいいところ見せて梢センパイに褒めてもらおうかな!

リレーのアンカー。
正直あたしからしたら男子だとか、女子とかはあまり関係はない。
でも皆はそうは思わない。
だからこそ、ここで負けちゃったら、カッコ悪いよね!

そんな想いを胸にあたしは走った。

47名無しさん@転載は禁止:2024/08/09(金) 09:49:13 ID:3o3BE1D2
バトンを渡された時、最下位だった。
けれどそこまで差はなく、背中は見える。

虚弱とはいえ、ギリギリ男の子の身体のポテンシャル。
それに。
ここで1人も抜かせないなんて事になったら。

あたしが悔しい!

☆☆☆

綴理「みてみて、かほ。ごぼう抜き」

慈「張り切ってるね〜、良い所見せようしてる」

梢「……」

綴理「……こず? どうしたの?」

梢「いえ……あの子、身体があまり強くないという話だから、少し心配で」

48名無しさん@転載は禁止:2024/08/09(金) 09:59:27 ID:3o3BE1D2
梢「あんなに思い切り走って、大丈夫なのかしら……」

私の心配を他所に、日野下くんは走り切った。
1着で役目を果たして……。

梢「……!」

☆☆☆

花帆「はぁっ、はぁ……やった……!」

アンカーを任されて、どうなるかと思っていたけれど。
なんとかその役目を果たせた。

遠くでさやかちゃんと瑠璃乃ちゃんも喜んでくれている。
良かった……梢センパイ達も、見てくれてたかな。

花帆「はぁっ、はぁ……ハァっ……っ…っ!」

……肩で息をしている。
落ち着こう、深呼吸、深呼吸……。

花帆「っ、ひ……げほっ、ハァっ、ハァっっ……!」

足に力が入らない。
これは、まずい。

地面が浮く感覚。
地面が。近付いてくる。

花帆(違う……)

あたしが倒れてるんだ……。
ぶつかる……。

49名無しさん@転載は禁止:2024/08/09(金) 10:04:43 ID:3o3BE1D2
梢「──日野下くん!」

倒れかけたその身体を支えられる。
梢センパイ……駆けつけてくれたんだ。

梢センパイ達のテントからじゃ、かなり早くあたしの異変に気付かないと間に合わない距離……。

花帆「みててくれてたんだ……」

梢「日野下くん……少し、揺れるけど我慢して頂戴」

身体が浮く。
けどそれは、身体の異常じゃなくて。
梢センパイに抱きかかえられている。
お姫様抱っこだ……。

恥ずかしい気もしたけれど、そんな事考える気力もない。
梢センパイの腕の中で、気絶する様にぐったりとしていた。

☆☆☆

50名無しさん@転載は禁止:2024/08/11(日) 20:50:48 ID:/4oDZ1z6
待機

51名無しさん@転載は禁止:2024/08/14(水) 23:59:09 ID:ZdGylIu2
☆☆☆

……目が覚めると、あたしは保健室のベッドの上だった。
体育祭の途中だったけれど……。

梢「あ……日野下くん、具合はどう?」

花帆「梢センパイ……」

ずっとそこに居てくれたのか、梢センパイはあたしが目を覚ますと安心したようにほっと一息をつく。

梢「心配させて……無理をしてはいけないわ。日野下くん、あなたは……」

花帆「ごめんなさい……皆にいいところ見せたくて」

梢「もう……でも」

梢センパイがあたしの頭を撫でる。

梢「カッコ良かったわよ、日野下くん」

女神みたいな微笑みに、窓から夕焼けが差し込み、さながら後光の様だった。
そんな嘘みたいなシチュエーションに、あたしは。

花帆「……へ、えへ……」

分かりやすく照れてしまった。

52名無しさん@転載は禁止:2024/08/15(木) 01:23:17 ID:SOtur636
☆☆☆

体育祭から数日が経ち、あっという間に撫子祭がやってくる。
あたしとさやかちゃん、瑠璃乃ちゃんの3人でスクールアイドルクラブをアピールする校内新聞を作成する。

それとは別に文化祭らしくクラスでの出し物を決めるんだけど、準備段階で決まったのはメイド喫茶だった。

「去年までは女子校だったから、どーせ男子とかいっぱい来るよ」
「それなのにメイド喫茶ってのもやだな〜」
「まぁ投票で決まったしさー」

花帆「そうかもねー、じゃあ皆はメイドさん頑張って! ぼくは裏で料理とかを……」

「や、それなんだけどさー日野下くん」

53名無しさん@転載は禁止:2024/08/15(木) 01:32:32 ID:SOtur636
「わたしらは前から思ってたんだけど……日野下くん結構可愛い系の顔してるじゃない?」

花帆「……う、うん?」

「せっかくだしさ〜♪ ね、ね?」

花帆「……あ、あのぉ、その手はなんでしょうか……み、みんな!? なんか目が怖いよ!?」

☆☆☆

数分後……。

「きゃ〜ん♡かわいい〜!」
「写真撮らせて写真撮らせて!」
「いや〜これ程とは……」

花帆「ぅ、うう……どうしてこんな事に……」

メイド服にうさ耳。
メイクまでされてあっ、という間に女の子にされてしまった。

花帆(ほとんどあたしだぁ……)

鏡に映る自分は、女子の時そのままだった。やっぱり顔とかはほとんど変わってないんだ。

「可愛すぎてなんか悔しい……」
「余裕で私たちより可愛いんじゃ……」

花帆「……え、ちょっと待って? 本当にぼくがこの格好で?」

「う〜ん、そうだなぁ……そうだ! 呼び込みしてよ! 看板持ってさ、下手に話さなくてもいいから、多分楽楽!」

☆☆☆

さやか「……それでそんな感じになってるわけ、だと」

瑠璃乃「花帆くんめっちゃ可愛い〜!」

花帆「2人まで……」

この姿を梢センパイたちに見られたら……。

54名無しさん@転載は禁止:2024/08/15(木) 01:37:51 ID:SOtur636
梢「あら、さやかさん、瑠璃乃さん……それ、と……?」

花帆「あ……」

恐る恐る振り向くと、梢センパイと綴理センパイ、慈センパイがそこに。

慈「あれ? もしかして花帆くん? おもちゃにされてるね〜」

綴理「……」

花帆「わっ、え、綴理センパイ?!」

無言で綴理センパイが胸を触ってきた。

綴理「ほんとに、かほかなって」

花帆「そこで判断するんですか!?」

綴理「おっぱい、なかったから」

花帆「そ、そりゃあそうですけど……」

55名無しさん@転載は禁止:2024/08/15(木) 01:41:56 ID:IVXjoM4A
つづ良いね

56名無しさん@転載は禁止:2024/08/15(木) 01:42:39 ID:SOtur636
というか、梢センパイのリアクションがさっきから何も……。

梢「……」

花帆「……梢センパイ?」

スマホを扱っているけど、いつものように上手く扱えていない。何をしたいんだろう……?

梢「綴理、これはどうしたら……」

綴理「ん……ここ、おして」

指定された様に梢センパイがタップすると、カシャリとシャッター音。

花帆「え……写真撮りました?」

梢「日野下くん……これは記録に残しておくべきよ」

花帆「梢センパイ!?」

☆☆☆

57名無しさん@転載は禁止:2024/08/15(木) 01:52:55 ID:SOtur636
いろんな騒動はあったけど、それからはしばらく看板娘(?)を続けてメイド喫茶に貢献し続けた。

梢「日野下くん、頑張ってるわね」

お昼頃に、梢センパイがまた来てくれた。
今度は様子のおかしくない普通の状態で。

梢「そういえば……日野下くん、まだここに居ていいの?」

花帆「へ? まぁ……そろそろ戻ろうかなとは思ってましたけど」

梢「あら……もしかしたら、皆黙っているのかしら」

花帆「?」

梢「そういう事なら、日野下くん。急いで体育館に向かった方がいいかもしれないわね、一緒に行きましょう」

☆☆☆

『さぁ〜実はこっそり人気企画! 蓮ノ空ミスコン! 今回も3名の審査員と、会場の男性投票で蓮ノ空クイーンを決めてまいります!』

花帆「なにそれぇ〜〜〜!?」

58名無しさん@転載は禁止:2024/08/15(木) 02:10:19 ID:SOtur636
花帆「て、ていうかまさか……!」

梢「参加者に日野下くんの名前があったから……」

花帆「どうしてですかぁ!?」

いや、絶対みんなが面白半分でエントリーさせたんだ!

『審査員は前回人気すぎて同点1位、殿堂入り扱いとして、スクールアイドルクラブの乙宗梢さん、藤島慈さん、夕霧綴理さんの3名です!』

梢「そういう事だから、日野下くん、頑張って!」

花帆「が、頑張るも何も……!」

こ、こうなったらヤケクソだぁ!

☆☆☆

『え〜、それでは最後に……ふ、ふ……』

花帆(何笑ってるの!?)

『新入生の日野下花帆ちゃん、です〜!』

花帆「あ……ひ、日野下花帆です……!」


「うお……かわいいぜあの子……」
「うさ耳も似合ってるな……」
「胸はねーけど、小柄で守りたくなっちまうな……」

『さてさて日野下花帆ちゃんのアピールタイムは何を話してくれるのでしょうかぁ?』

花帆「えっ!? え、えっ〜と、その……ぼ……あ、あたしは……」

そこであたしは完全に言葉につまり、顔を真赤にして下をうつむくだけで終わってしまった。

なのになぜか「恥ずかしがる姿も可愛い」とか「守ってあげたい」とか前向きに捉えられた。

慈「ていうか女声完璧すぎて別の才能あるんじゃないの、あの子」
梢「えぇ、一瞬日野下くんが男の子って忘れそうになるわ」

☆☆☆

59名無しさん@転載は禁止:2024/08/15(木) 02:26:46 ID:SOtur636
☆☆☆

瑠璃乃「いやあ〜まさか花帆くんがクイーンになっちゃうとはねぇ」

花帆「これ来年からぼくはどうすればいいのかな……?」

スポットライトが当たった瞬間、女子の歓声がすごかった。
笑い声も多かった気がした。ちょっとそれは気持ち分かるから許せてしまった。

だってさ……。

綴理「みんな、かほにメロメロ」

慈「他の子は複雑かもだけどね〜」

梢「まぁ私たちも後押しをしてしまったから……」

さやか「でも実際、この状態の花帆くんは可愛いですから」

花帆「もう……ま、いっか。皆楽しそうだったし。それより、この後は皆の頑張る時間ですよ!」

スクールアイドルクラブとしての活動……ライブだ。
あたしにとっては、それが一番の楽しみだった。

60名無しさん@転載は禁止:2024/08/15(木) 02:28:57 ID:SOtur636
また明日に。

61名無しさん@転載は禁止:2024/08/15(木) 03:40:55 ID:I5BzjKAY
すっかり打ち解けて受け入れられてる感じがいいね。
花帆くんちゃんの人たらしもあるのかな

62名無しさん@転載は禁止:2024/08/15(木) 07:50:13 ID:b3rgXEb.
元々の自分である女性を演じるんだからむしろ恥ずかしさなんて無さそうな気もするのだけれど

もう心も身体もすっかり男性になってしまったのね、花帆…

63名無しさん@転載は禁止:2024/08/15(木) 11:41:18 ID:.0IDMERk
☆☆☆

あたしが出る訳ではないのに、なんだか妙に緊張してしまう。

梢「さあ、新体制では初のLIVEにになります。気を引き締めて、楽しんで行きましょう」

☆☆☆

5人でのパフォーマンス。
そこにあたしが居ない事が、ほんの少しだけ寂しいけど。
その分あたしは、その光景を記録に収める。

動画で撮っている間、それぞれの写真を撮っていく。

花帆(皆楽しそう……)

写真でも、動画でも。
もちろん、直で見る皆が一番だ。

そうして撫子祭は無事に終了した。

☆☆☆

花帆「写真現像出来ましたよ〜」

数日後の放課後、部室に集まり撫子祭で撮った写真を広げる。

瑠璃乃「お〜、めっーちゃたくさん撮ったね」

梢「来年の校内新聞にも使えそうね」

64名無しさん@転載は禁止:2024/08/15(木) 11:54:39 ID:.0IDMERk
慈「……ね、なんか梢の写真だけ多くない?」

花帆「……へ?」

綴理「3倍は多いね」

……そんなに撮ってたっけ。

梢「あらあら……ふふ」

花帆「と、とりあえずファイルに保管しちゃいましょう!」

65名無しさん@転載は禁止:2024/08/15(木) 12:07:17 ID:.0IDMERk
誤魔化すようにファイルを取り出す。
そこには去年の写真があり、1年生の時の梢センパイ達が載っている。

慈「あ、これ去年のミスコンの時の」

さやか「そういえば去年の同点1位だと……」

慈「そうそう……あっ、そうだぁ……」

にぃ〜、と慈センパイが口角を上げる。
……なんだろう、イヤな予感。

66名無しさん@転載は禁止:2024/08/15(木) 12:31:45 ID:.0IDMERk
慈「もし花帆くんが審査員だったらさ、私達の中なら誰を選ぶのかな〜って」

花帆「えっ!? そ、それは……!」

慈「あ、皆1番とか無しだからね!」

梢「慈……あんまりいじめないの」

そうは言うけれど、梢センパイの目線もチラチラとこちらに向いている。

あたしは……。

花帆「……ぼくなら……梢センパイを選びます」

67名無しさん@転載は禁止:2024/08/15(木) 13:01:42 ID:9wPBX.UY
そこはよぉ
照れ隠しも込めて綴理を選ぼうぜ

68名無しさん@転載は禁止:2024/08/15(木) 15:12:08 ID:.0IDMERk
☆☆☆

自分の名前が呼ばれると、考えていなかった。

梢「あら……そ、そうなの?」

花帆「あ、あぁいやでもその! そんな変な下心とかじゃなくて、頼れるセンパイというか……!」

分かりやすく顔を赤くして慌てふためく。
なんだかそれが可愛らしくて、少しいじわるをしたくなる。

梢「……私の、どんなところが良いのかしら?」

花帆「えっ!? えと、え、と……」

慈(案外ノってきたな……)

花帆「……そ、の。綺麗なとことか……優しいとことか……」

69名無しさん@転載は禁止:2024/08/15(木) 15:32:18 ID:.0IDMERk
部室の空気がしっとりとしてきた。
この話題は、もうこれくらいにしておいた方がいいかもしれない。

梢「ごめんなさい、少しからかいすぎたわね」

そう言って、その場は一先ずお開きとなった。

☆☆☆

綴理「ねぇ、こず」

梢「何かしら」

綴理「暑い?」

梢「……?」

綴理「ううん、さっき部室で話してる時から……耳がずっと赤いから」

70名無しさん@転載は禁止:2024/08/15(木) 21:00:33 ID:/ckQ9yos
ええぞ〜

71名無しさん@転載は禁止:2024/08/15(木) 22:17:52 ID:IaPLsp5g
そういうのって、今までにあまりにも言われ慣れてるから別に動じないのかなって思いました

72名無しさん@転載は禁止:2024/08/16(金) 06:37:03 ID:CDvkS24o
僕の梢先輩だからね

73名無しさん@転載は禁止:2024/08/16(金) 23:01:48 ID:wrAEKG9M
梢「えっ」

思わず自分の耳を触って確認してしまう。
……わずかに熱が残っている。

梢「……どうしてかしら」

どうしても何も、思い当たるものは一つしかない。
……男の子にそんな事を言われるのは、初めてだったから。

梢「……そうね、暑いかもしれないわね。……『花帆』くんのせいね」

綴理「?」

☆☆☆

そして夏が来る。
夏休みに突入して数日。
カンカン照りの空の下、あたしたちは6人揃って梢センパイの別荘に来ていた。

合宿の夏が、やってきた。

とは言っても、初日は。

慈「うぅみだー!」

瑠璃乃「めぐちゃん待ってぇ〜!」

梢「さや、うきわ膨らませて」

さやか「はいはい、少し待っててくださいね」

海で遊ぼうとなり、水着を着て砂浜へ。

花帆(しっかり日焼け止め塗っとかないと……)

こういう所にも気を使う必要がある。
中々やっかいな身体だ。

74名無しさん@転載は禁止:2024/08/16(金) 23:16:45 ID:wrAEKG9M
花帆「ぐ、ぐぐ……背中……」

梢「……花帆くん、背中、私が塗ってあげるわ」

花帆「あ……梢センパイ」

水着姿の梢センパイ。
今のあたしには刺激が強い……。

梢「ほら、日焼け止め。貸して頂戴」

花帆「お、お願いします……」

ひんやりとした液を、梢センパイの手で塗りたくられる。

花帆「うっ、ふはっ、こ、梢センパイくすぐったいです……!」

梢「ほら、動かないの。ちゃんと塗れないから……」

なんとか手の届かない背中も塗ってもらい。

梢「……花帆くん、申し訳ないのだけれど、私にもお願い出来るかしら、背中……」

あたしに背を向け、髪が邪魔にならないように手で束ねる。

花帆「じ、じゃあ……」

……その背中の、柔らかさに驚く。
しなやかな筋肉、綺麗な身体。

手のひらに、吸い付くようで……。
イケない事をしているみたいだった。

75名無しさん@転載は禁止:2024/08/16(金) 23:18:40 ID:wrAEKG9M
梢「……んっ……」

花帆「わぁ!? ご、ごめんなさい冷たかったですか!?」

梢「いえ……ちょっぴりくすぐったい、だけよ」

高めの声が漏れて、あたしの心臓が一瞬激しく飛び跳ねる。

花帆(び、びっくりした……)

76名無しさん@転載は禁止:2024/08/16(金) 23:25:23 ID:wrAEKG9M
その後は日焼け止めを塗ったあたし達も海へ。
夕方になるまで遊んで、くたくただった。

それでも皆でご飯を食べて、お風呂に入り──しっかり順番を守って──後は寝るだけといった所で。

梢「ごめんなさい、少し良いかしら」

全員の前で梢センパイが挙手。
その内容は……。

梢「ベッドなんだけど……困った事……いえ、困ったというと、花帆くんに悪い気もする事なのだけれど」

慈「なにー? はっきり言ってみなよ」

梢「これはきちんと確認していなかった私の不手際なのだけれど……ダブルベッドが3つしかなくて」

77名無しさん@転載は禁止:2024/08/16(金) 23:34:00 ID:wrAEKG9M
つまり、誰かはあたしと一緒のベッド……という話で。

花帆「……ぼく、ソファとかでも良いですけど」

慈「だめだめ、身体痛めるよ」

梢「そうよ、花帆くん……確認していなかった私が悪いのだから、花帆くんが嫌じゃなければ、私と同じベッドでも良いかしら?」

☆☆☆

……と言うことがあり。

梢「それじゃ、……おやすみなさい」

花帆「おっ、おやすみなさい……」

……すぐ隣に梢センパイ。
お風呂上がりだからか、まだ良い香りが漂っている。

花帆(こ、こんな状態で眠れるわけないよ〜!)

78名無しさん@転載は禁止:2024/08/16(金) 23:35:42 ID:wrAEKG9M
こゆか文化祭とか、体育祭や夏合宿の話のベースをそのままに、キャラ変更して細かく変えていく感じです。

79名無しさん@転載は禁止:2024/08/17(土) 00:57:03 ID:70VKMS3g
無粋なツッコミだが、流石にソファか何かで寝ないか…?

80名無しさん@転載は禁止:2024/08/17(土) 03:29:09 ID:jP7io1Nk
創作なんだからもっと気楽に考えなさいな

81名無しさん@転載は禁止:2024/08/17(土) 21:08:54 ID:eT0t7LsU
作者さん、暑いので熱中症に気を付けて下さいね、更新ありがとうございます。

82名無しさん@転載は禁止:2024/08/17(土) 23:16:14 ID:qLsG52vM
☆☆☆

慈「……ね、るりちゃん。あの2人、どう思う?」

瑠璃乃「んん? どう、って……」

慈「花帆くんと梢の事。最近仲良いし、頑なに日野下くん呼びだったのに、気付いたら花帆くん呼びだったし」

慈「しかも今日、海に入る前なんかは日焼け止め塗り合ってたよ」

瑠璃乃「……妬いてるの?」

慈「違う違う、そうじゃなくってさ……なんというか、仲良くするのはいいけど……」

瑠璃乃「友達に彼氏ができるかもってジェラシーってぇ感じ?」

慈「ちーがうってば……いや、純粋にさ、同じベッドで寝るってさ……変な事してないよねって……」

瑠璃乃「大丈夫だと思うよー、花帆くん、そゆことはしなさそうだし」

慈「なら良いけどね〜……」

☆☆☆

花帆「……う、うん……」

なんだかんだと眠っていたけれど、夜中に目が覚める。
トイレ……と起き上がるけれど、隣に梢センパイがいない事に気付く。

花帆「あれ……梢センパイもトイレかな」

☆☆☆

でも別荘の中にはどこにもいなくて、もしかしてと砂浜へ向かうと。

花帆「梢センパイ……」

梢「あら……花帆くん、眠れない?」

梢センパイが海を眺めていた。 

花帆「梢センパイこそ……」

梢「私も眠れなくて……」

☆☆☆

梢「私も眠れなくて……」

その理由が、花帆くんが隣で眠っているからとは言えない。
大人ぶって、一緒のベッドで問題ないとは言ったけれど、大アリだったわね……。

83名無しさん@転載は禁止:2024/08/17(土) 23:26:30 ID:qLsG52vM
梢「少し話さない?」

花帆くんを隣へ誘う。
眠たくなるまで、真夜中の海を眺める。

花帆「……わ、お月さま……綺麗に浮かんでますね」

梢「本当……辺りの照明も何も無いから、月明かりと星が特に輝いて見えるわね」

海に反射する月がゆらゆらと揺れる。
波の音と共に。

花帆「……梢センパイ、こんな機会だから、話したい事があるんですけど……いいですか?」

梢「? なにかしら」

84名無しさん@転載は禁止:2024/08/17(土) 23:27:09 ID:qLsG52vM
綴理はいろいろ考えています。
梢の次は綴理予定です。

85名無しさん@転載は禁止:2024/08/18(日) 03:09:36 ID:GmoOW3kU
わぁい

86名無しさん@転載は禁止:2024/08/18(日) 13:55:16 ID:N8a8bd.2
>>84
良い順番だと思います。

87名無しさん@転載は禁止:2024/08/18(日) 23:52:42 ID:IdupT/tM
少し頬を染めて、照れくさそうに。

花帆「入学してから、4ヶ月くらいですけど……ぼく、本当に今が充実してて……これも全部、梢センパイのおかげです」

梢「……私は何もしてないわ。充実させられているのは、花帆くん、貴方の力よ」

……本当にこの子は。
素直で、可愛らしい子ね……。
思わず頭を撫でてしまいたくなる。
よしよししてあげたい。

梢「それに、花帆くんが来てくれたおかげでスクールアイドルクラブも活気があって……私からも感謝を伝えたいくらい」

波音が心地よいBGMになり、会話が弾む。
……そろそろ瞼も重たくなってきた。
花帆くんと共に、ベッドへと戻る。

……緊張も溶けている。
お互いに、ぐっすりと……。

☆☆☆

88名無しさん@転載は禁止:2024/08/19(月) 00:21:37 ID:OAYYJhPE
☆☆☆

花帆「うぅん……ん、ん……!?」

ぐっすりと眠って、頭はスッキリしている。
だからゆっくりと瞼を開く……と。

お互い寝返りをうつから、そうなるタイミングがあってもおかしくないのだけど。

目の前に、すやすやと寝息をたてる梢センパイの顔があればびっくりもしてしまう。

胸がドキぃっ、と跳ねた事がよくわかる。

花帆(……やっぱり、梢センパイって本当に綺麗だなぁ……)

寝顔も見惚れてしまう。 

花帆「……」

こうして梢センパイの事を見てると……ずっと胸がドキドキしてしまう。
今までは、こんな感じになる事、なかったのに。
ここ最近は増えてしまっている。

花帆「……」

まだ頭が驚いていて落ち着かないのかもしれない。
先にベッドから出て、顔を洗ってくる。

☆☆☆

二日目は初日と変わり、たっぷりと練習。
あたしもタオルや飲み物、見直し用の動画撮影、活動報告用の写真撮影、お昼ご飯を用意したり。

皆の練習が滞りなく進む様に様々な雑用を行う。

花帆「ごはんできましたよー!」

お昼ご飯には海の家チックに焼きそば。
エネルギー満タンになった後は、夕方まで練習を続ける。

☆☆☆

汗を流してさっぱりして、眠るまでゆっくりと……と考えていた時。
慈センパイがこんな提案をしてきた。

慈「夏の合宿といえば、肝試しだよね〜!」

89名無しさん@転載は禁止:2024/08/19(月) 00:34:54 ID:OAYYJhPE
肝試しかぁ……。
あんまりそういうのは得意じゃないけど……。

梢「花帆くん、平気?」

花帆「も…、もちろんです! 任せておいてください!」

梢センパイの手前強がってしまった。

肝試しのルートとして選ばれたのは暗い夜の森。
どうやら慈センパイが昼間に、肝試し様に仕掛けを用意しているらしく、目的地まで行き、それを持って戻る……までが流れらしい。

だから、草陰から何かが飛び出してくるとか、誰かが驚かせてくるとかは無いとは考えられるけれど……。

花帆(このおどろおどろしい感じ……得意な人いるの?)

梢「……」

梢「花帆くん、一ついいかしら」

90名無しさん@転載は禁止:2024/08/19(月) 00:40:41 ID:OAYYJhPE
花帆「はっ、はい!」

梢「……実は私、あまりこういう事が得意じゃなくて……花帆くんが嫌じゃなかったら」

すっ、と手のひらを差し伸べる梢センパイ。

梢「私と手を繋いでいきましょう? そうすれば、怖さも半減するはずだから」

花帆「……こ、こちらこそ梢センパイが、良ければ……」

お言葉に甘えて、梢センパイの手を握る。
昨日背中に触れた時と同じ、しっとりとして柔らかい。

花帆(……梢センパイ、あたしに気を使ってくれたんだ)

怖がっている事に気付いて。
それを情けないと感じるあたしもいる。

けど、今はそれ以上に。
梢センパイと手を繋げたことが、嬉しかった。

91名無しさん@転載は禁止:2024/08/19(月) 00:40:52 ID:OAYYJhPE
また明日に。

92名無しさん@転載は禁止:2024/08/20(火) 00:19:23 ID:xgGa1Eww
繋いだ手から、全身に熱が巡る。
手に汗とかかいてないかな……。

梢「……花帆くん、最近体調はどう? 暑い日が続いているけれど、平気?」

花帆「はい、全然……いつかは心配させてごめんなさい」

梢「頑張りすぎてたものね。来年の体育祭は、セーブしておくように」

花帆「はーい」

他愛のない話をして、肝試しだという事を忘れてしまう。
ゴール地点にあったコインを手に、折り返して戻る。

その帰りも、ずっと手を繋いだままで……。

☆☆☆

慈「おかえりー、結構早かった……おやおや?」

瑠璃乃「手ぇ繋いでる……?」

綴理「こず、かほ。仲良し」

梢「あっ、いえ、これは別に……」

梢「や、やましい事があるわけでもないのだから、手を握るくらい、何も……」

93名無しさん@転載は禁止:2024/08/20(火) 00:31:19 ID:xgGa1Eww
さやか(なんだかいい雰囲気……) 

その後もやいのやいのといじられながら、二日目が終了した。

そして合宿が終わり、それぞれが帰路につく。
楽しかっただけに、終わる時は寂しく感じてしまう。

☆☆☆

梢「ふぅ……」

合宿を終えて、自室に1人。
常に誰かといて、賑やかな時間だったから、この一人だけの部屋の静けさが妙に感じてしまう。

梢「……」

いろいろあった……花帆くんと同じベッドで眠ったり、手を繋いで肝試し……。

梢「……もっと他にも、いろいろあったはずなのに」

真っ先に思い出すのは、彼が絡んでいる事ばかり。

94名無しさん@転載は禁止:2024/08/20(火) 01:12:43 ID:xgGa1Eww
健気な姿が可愛らしい男の子。
身体があまり強くなくて……だから、というわけではないけれど、つい甘やかしてしまいたくなる。

少しいじわるすると、困りながらも一生懸命なんとかしようとする姿も愛らしい。

梢「……いけないわね。こんなことばかり考えていては。花帆くんに失礼になってしまう」

そんな時だった、花帆くんから連絡があぅたのは。

95名無しさん@転載は禁止:2024/08/20(火) 11:02:24 ID:p.hZoh82
てぇてぇ

96名無しさん@転載は禁止:2024/08/22(木) 00:01:47 ID:qIP5mxqU
梢「花帆くん? どうしたの?」

花帆『あっ、梢センパイ……あの、ですね』 

なにやらモジモジとしていそうな声。

花帆『梢センパイ……もしご迷惑じゃなかったら……ぼくと出掛けませんか?』

梢「……? もちろん、それは構わないけれど……どこへ?」

花帆『えと……遊園地なんですけど……』

☆☆☆

遡る事しばらく。
実家から送られてきた荷物の中に、2枚のチケットが。

花帆「なんだろこれ……」

確認すると学園から少し離れた場所にある遊園地のチケットだった。
どうしてこんなものが?
気になってお母さんに連絡すると……。

『あぁ、それはね。最近よく話してる梢センパイと一緒に行けるかなぁ〜、って思ってね』

花帆「え、えぇ!? 一緒に?」

『いっつも話してるから、その梢センパイの事が本当に好きなんだろうなぁって』

花帆「す……」

好きって……いや、そりゃあ好きだけど。
今のあたしがそれを言ったら、意味が変わってきてしまう……。

97名無しさん@転載は禁止:2024/08/22(木) 00:13:12 ID:qIP5mxqU
花帆「……で。でも……確かに、せっかく送ってくれたんだし……無駄にするわけには、いかないよね……」

☆☆☆

と、いうわけで。
後は梢センパイがなんと答えてくれるか……。

梢『……そうね。可愛い後輩のお誘いだもの。一緒に行きましょう』

花帆「! ありがとうございます、梢センパイ!」

98名無しさん@転載は禁止:2024/08/22(木) 23:55:35 ID:qIP5mxqU
梢『……あ、一応なのだけれど……他の皆にはあまり言わないように。……慈が知ったら、とても、それはとても面倒な事になるわ』

花帆「あっ、はい! 内緒にします!」

☆☆☆

梢「ふぅ……」

とんとん拍子で花帆くんとデー……うぅん、お出かけする事になった訳だけれど。

梢「歳下の男の子と二人で出かけるのは、初めてね……」

こういう時はどういう格好で行くべきなのかしら。
遊園地と言っていたし、動きやすい格好の方がいいのか……。

梢「それとも……」

……いえ、変に着飾る必要もない、か。

☆☆☆

外出当日。

二人で同時に学園を出ていたら怪しいから、時間を分けて。

あたしが先に向かい、後から梢センパイがやってくる。

99名無しさん@転載は禁止:2024/08/23(金) 00:34:14 ID:idEUPO6w
入口の前で梢センパイを待つ。
この時間が妙にそわそわする。

花帆(……あたし冷静に考えたら、状況からしたら)

後輩が勇気出して先輩を遊びに誘っている訳で。

でも梢センパイも嫌とは言わずに受け入れてくれたわけで。
1人で勝手にもやもやしてる間に、梢センパイも到着。

ドレープの効いたシャツを、細めのデニムにタックイン。
梢センパイのスタイルの良さが際立つ。

花帆(あ、足ながぁ〜い……)

……こう見ると、あたしってせっかく(?)男の子になったのに、身長変わらないんだもん。
どうせなら梢センパイより背高くなって、見上げられてみたかった。

100名無しさん@転載は禁止:2024/08/23(金) 00:44:55 ID:idEUPO6w
梢「ごめんなさい、すこし待たせちゃったかしら」

花帆「いえ全然! さっ、行きましょう梢センパイ!」

☆☆☆

一方その頃。

慈「今日は梢と花帆くん居ないんだね」

綴理「どこか出掛けたんだ」

さやか「あぁ、確かに。私も花帆くんが門から出ていくのを見ました」

瑠璃乃「へ〜、2人同時に外出かぁ」

さやか「…」


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