したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

二題噺スレ。

45夜辻の影がささやく。:2007/08/31(金) 05:20:06
>>44その1

  ゲシュタルトが自我というものについて考えるようになったのは、自分の名前の由来を父親に尋ねたときからだった。
 発掘現場の監督を務めていた父は、ゲシュタルトにこう語った。
「あれは俺が十代のころ、まだ人類型発掘重機すら普及してなかったころだ。あの頃の発掘現場は、原始的な作業機械がデカイ顔して現場に鎮座していてな、今とは作業のスピードも能率も段違いに劣っていやがった。まあ、それでも毎日を汗水垂らして働いていた俺たち穴掘り師のおかげで、ときにはすごいモンが発掘されることもあったさ。お前のイカした名前も、そうやって発掘されたものさ」
 ――発掘現場から発見されるモノ。それは用途不明の古代のガラクタであったり、不定形のエネルギーの塊であったり、生きた魔女であったり、朽ちた死屍であったりする。さらには、伝説級の発掘現場であれば、神そのものが発掘されることもあるといわれている。
 当時、まだ単なる作業現場員であったゲシュタルトの父親が発掘したもの、――それは、名前だった。
「こんくらいの」父親は自分の顔ほどの長方形を両手でえがいて、ゲシュタルトに示した。「大きさの石板だった。まだ駆け出しもいいとこだった俺は、飛び上がって喜んだな。ついに自分も神話の遺物を発掘したんだ! とな」
 日焼けた顔に生えた不精髭をなでながら、父親は大きく口を開けて笑った。ゲシュタルトは早く話の先が聞きたいと、父親に続きを促した。
「うん、それで、その石板には文字が書いてあったんだが、まあ、古代文字なんて俺に読めるわけがない。だが、大人しく現場の監督に渡しちまったら俺がそこに書かれた意味を知る機会は永遠に消えちまう。そこで俺は、その石板をこっそりと現場から持ち帰る決心をした」
 そんなことをして大人に怒られなかったのか、とゲシュタルトが聞くと、父親は「そりゃ怒られただろうさ! 見つかったらの話だけどな」と言った。
「監督にバレればクビは免れなかっただろうが、あの時は俺も若かったからな」
 ――そして彼は、石板を誰にも知られずに現場から持ち出すと、幼馴染の住む家へと向かった。彼女は彼と同じくまだ若かったが、熱心な勉強家で、特に古代文字についてはある程度までなら読み解くことができた。
「彼女は天才だったね。そして街一番の美人だった。――勿論、今では彼女は、お前の母親であり、俺の自慢の女房ってわけだ。つまるところだな、これは俺たち夫婦のプロポーズの話でもあるわけだ!」
 話の中心がずれてきたことをゲシュタルトは心配したが、上機嫌で昔話を語る父親に文句を言うのも気が引けた。結局、ゲシュタルトは大人しく父親の話の続きを待つことにした。
「それで、彼女の家へとやってきた俺は、彼女にこう言ったんだ――」


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板