したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

書き込み代理スレ

266数を持たない奇数頁:2016/09/25(日) 17:24:15 ID:mvlJSYZ60
傾国の聖女と救国の魔女

百年以上続く戦争を繰り広げていた「東の大国」と「西の大国」。
その百年戦争に終止符を打ったのは、それぞれの国に同時に生まれ落ちた2人の少女だった。

「西の大国」に、聖女と呼ばれた少女がいた。少女の言葉は人を惹き付け、誰もが彼女を愛した。
聖女は数多くの奇跡を呼び起こした。手をかざせばどんな傷もたちどころに癒え、人里を襲う魔獣を神へ祈るだけで追い返した。


「東の大国」に、魔女と呼ばれた少女がいた。みすぼらしい少女は戦場の屍から武器や金品、肉体を漁って僅かな金を稼ぐ日々だった。
魔女は誰からも嫌われていた。死肉漁りと罵られ、彼女の往く道は動く死者で溢れかえったからだ。

百年以上続く戦争に、両国は疲弊していた。これ以上長引かせることは出来ないと判断し、総力戦を仕掛ける事となった。
聖女は兵士たちの矢面に立ち、前線で鼓舞し続けた。彼女の言葉は万人を突き動かし、剣を執った事のない只人すら戦場へ導いた。
圧倒的な兵力差。「東の大国」は「西の大国」の、これまでとは比べるべくもない物量作戦によって前線を押されていったのだ。

東まであわやという所で、思わぬ事態が起きた。戦場で倒れた兵たち…東西も関係ない、動く死者の群れに襲われ、「西の大国」の最前線は瓦解した。
魔女である。前線が押し返された事で「東の大国」にほど近い場所が戦場となり、そのお陰で魔女の戦場荒らしが捗り、そして彼女の往く道に動く死者が溢れかえったのだ。
たった一夜で追い返された「西の大国」。先遣隊の報を受けた聖女は正しく激怒した。聖なる剣を執れ、悪しき魔を打ち砕くのだ、と。
一方で「東の大国」の将の1人は、魔女に価値を見出した。彼女を最前線に出向させ、死者を蘇らせ、「西の大国」へ攻め入るのだと。

戦争は、かつてない程の被害を生む泥沼と化した。
聖女は兵を激励し、最前線で戦い続けた。魔女の生み出す死者と「東の大国」の兵を相手に奮闘し、彼女に続くべく「西の大国」も勢力を増した。
しかし、戦争で両国に死傷者が出る程、「東の大国」は勢力を得る。そして聖女の言葉に導かれ、より多くの兵力を投入するという地獄がそこにあった。
事ここに至って、聖女の言葉は、激励は、呪いの様相を呈す。彼女が奮闘するほど死者は嵩み、死した同胞を斬る事に耐えかね発狂する者も少なくない。
しかし、それでも、聖女の言葉は絶対的である。悪しき魔女を打倒せよという言葉に従う「しかない」兵たちは、狂いながら、骸を斬り続ける。

結果として、「東の大国」は勝利した。死に侵され、死に満たされ、それでも戦争を止めなかった魔国として語られる事になろうとも、百年戦争は「東の大国」の大勝であった。
聖女は誰よりも苛烈に正しかった。誰の目にも間違っているのは「東の大国」であり、魔女であった。

2人の少女の存在は、後世に語り継がれる事となる。
最期まで戦う事を諦めず、正しき義を貫こうとした傾国の聖女。
誰からも蔑まれ、利用され、多くの犠牲者を生みながらも前線に押し出された救国の魔女。
2人の少女の存在は、明らかな矛盾を孕んだまま、神話として語り継がれる事となる──。

─────

単発ネタを思い付いたので、誰かお願いします


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板