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スコール
:2010/08/09(月) 22:43:04
「ゆめおちっ!」
「わかった。確認しよう。俺は若葉のお兄ちゃんだ」
「そうだよ。賢にぃは……若葉の大好きなお兄ちゃん!」
「……ありがとう。俺にはその気持ちが痛い」
若葉には俺の顔に巻いていたタオルで体を隠して撤退してもらい、今はバスタオルを体に巻いている。体を直視できないため、俺は項垂れるようにして目を手で隠し、若葉はその隣に座っている。いつまでもこうしてはいられない。時間がかかればかかるほど、俺には不利な状況になってくる。親が帰ってくるまでがタイムリミットだ。
「若葉、じゃあまず頭を洗おう」
「うん」
うなずいて、若葉は椅子を動かし俺の目の前に座る。膝と膝の間辺りだ。
「若葉……?」
「はい。どうぞ」
これは、つまり、俺に洗えと?趣旨が変わってきてないか?
「まぁ、いいか」
手のひらに若葉のお気に入りであるという母と一緒のシャンプーを取ると、髪に染みこませるように頭を撫で、ゆっくりと泡立たせ始めた。
「賢にぃ、くすぐったいよぉ」
本格的に頭を洗い始めると体をくねらせる若葉。悪戯心が精神を支配するのを感じた。
「ほぉー。ここか?ここがえぇんか?」
かゆくなるポイントなんてわかるはずが無いので、くすぐってやろうと思っても力攻めのごり押しにしかならない。
「きゃ、くすぐったいよぉ」
それでも体をくねらせる若葉にいつまでこうしていたいという気持ちがわき上がったが、鏡に映る自分の姿を見て気持ちを静めた。頭を洗い流すと、若葉は立ち上がり、ボディタオルへ手を伸ばす。
「おーい、俺はまだ頭洗ってないぞ」
「そっか。じゃあ早く洗お?」
といって座り直す若葉。って、俺の頭を洗ってくれるわけではないのですね。若葉はおもむろに椅子の向きを変え、俺と向かい合って座った。
「……まぁ、いいか」
これは試練なんだ。俺と若葉は正しく兄妹であるための。俺達が無事にこの風呂場から出られた暁には、俺達はきっと誰にも侵すことのできない絆を手に入れるんだ。
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