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オークションの理論と実際: 金融市場への応用

13白書さん:2015/06/21(日) 23:40:34 HOST:i153-144-186-116.s61.a027.ap.plala.or.jp

イ.中央銀行による公開市場操作の目的

第1 には、収入最大化が挙げられる。Daripa [2001]は、中央銀行の収入最大化を通じて、入札価格と市場価格の差を小さくし、政策スタンスのシグナルへのノイズ混入を抑止すること、入札参加者間の競争を促進できることを理由に、収入最大化は中央銀行にとって中心的な目的であると論じている。
第2 の目的としては、効率性がある。Morgan [2001]は、財を最も欲する者に配分するという意味での資源配分の効率性に注目する
Morgan [2001]は、複数価格方式と単一価格方式について検討し、複数財取引においては、どちらの方式を採っても正直な申告の誘因を作り出すことはできず、効率性を達成できないと論じている。
Morgan [2001]は続けて、効率性の点で、金融市場におけるオークションで通常行われる(単一価格方式、複数価格方式を含む)封印入札方式は、入札過程が観察可能となる公開入札方式にしばしば劣ると論じている。しかし公開入札方式のもとでは共謀が容易になるとの問題を指摘し、競り上げ方式と第一価格方式のハイブリッド型(Anglo-Dutch auction)(3 節参照)が、共謀等の非効率性の源泉を打ち消す手段として検討されている。

第3 には、政策スタンスの効果的なシグナリングがある。中央銀行がこれに重点を置くのであれば、変動価格方式(複数価格方式、単一価格方式)よりも
固定価格(固定金額供給、全額供給)方式の方が望ましいと考えられる。
確かに一見すると、変動価格方式の方が、落札金利の政策金利からの乖離から、市場が、政策金利には表れない政策的なシグナルを読み取ることが可能である分、透明性が高いかもしれない。
しかし、Bank of England [2008]が主張するように、こうした市場の予想は間違いを伴う。このため、イングランド銀行は、固定価格・固定金額供給方式を導入している。
欧州中央銀行も、設立当初は、効果的なシグナリングを目的として、固定価格・固定金額供給方式を導入していた(Hartmann, Manna and Manzanares [2001])。

最後に第4 の目的として、安定性の確保が考えられる。近年、2007 年からの国際金融市場の混乱を受けて、金融調節の目的として、金融市場・金融システムの安定性、流動性管理の重要性が改めて強調されている。
この場合は、変動価格方式よりも固定価格方式、特に、米ドル資金供給オペなどで用いられている固定価格・全額供給方式の方が望ましいかもしれない。
むろん、固定価格方式には、市場の価格発見機能が損なわれ、収入最大化、効率性の達成も阻害されるといった側面があることには留意が必要である。

Morgan, John, “Efficiency in Auctions: Theory and Practice,” Journal of InternationalMoney and Finance, 20, 2001, pp.809–838.
Bank of England, “The Development of the Bank of England’s Market Operations: A Consultative Paper by the Bank of England,” October, 2008.
Hartmann, Philipp, Michele Manna and Andrés Manzanares, “The Microstructure of theEuro Money Market,” Journal of International Money and Finance, 20, 2001,pp.895–948.
Daripa, Arupratan, “A Theory of Treasury Auctions,” Journal of International Money and Finance, 20, 2001, pp.743–767.


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