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白書さん
:2009/11/07(土) 17:46:35 HOST:wcache2.waseda.ac.jp
市場別価格設定行動と通貨バスケット政策
一橋大学大学院 日本学術振興会特別研究員 中村 周史
本稿では、現実にしばしば観測される市場別価格設定行動(Pricing to Market:PTM)を組み込んだ小国開放経済の確率的動学一般均衡モデルを新たに構築し、通貨バスケットの理論を整理、その構成通貨国ウエイトの決定について分析を行った。
従来の通貨バスケットの議論では、実効為替レートを安定化することで貿易収支を安定化しようという意図の下、構成通貨ウエイトにしばしば貿易量シェアが用いられていた。しかしながら、こうした決定は全ての貿易においてパススルーが完全であることを仮定した決定方法である。途上国を始めとし、実際によく観測されるPTMを考えれば、パス・スルーは不完全なものであり、こうした構成通貨ウエイトの決定は適切であるとは言えない。
本稿ではこうした議論を理論モデルの下で整理し、PTMと通貨バスケット政策の関係について示している。その結果、一物一価の法則が完全に成立するような場合においては、貿易収支を目的とし、交易条件の安定化するという部分均衡で考える場合、従来の議論で採用されてきた貿易シェアを通貨バスケットのウエイトとする事で大国の金融政策の変更によるショックを打ち消す事が可能となる。すなわち、伝統的な通貨バスケットの理論は、一物一価の法則を仮定する限りにおいては、有効性を持つ事になる。
しかしながら、PTMが存在し、パス・スルーが不完全で一物一価の法則が成立しないようなケースでは、貿易シェアをウエイトに用いても、パス・スルーの不完全性によって生まれたギャップの影響が交易条件に残る事になり、完全には交易条件を安定化する事は出来ない。つまり、PTMによりパス・スルーが不完全な場合には、実質実効為替レートと交易条件の対応関係が完全ではなくなるため、パス・スルーが完全な場合と比べ貿易量シェアを用いる政策は貿易収支は不安定化してしまうことになるという結果が得られた。
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