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ホラーテラー作品群保管庫

99なつのさんシリーズ「Sとの出会い」3:2014/06/14(土) 01:19:35 ID:Hpd3syqU0
年月のせいで黄ばんだ書類がカウンターの下に散らばっている。ここに通っていた患者の個人情報だ。
あまりじろじろ見てはいけない、と自分に言い聞かせた後で、そうした心遣いの無意味さに気付いてひとり苦笑する。
次の瞬間、文章が不自然な箇所で途切れている書類を見つけ、苦笑は止んだ。
ロビーに出る。二人分の懐中電灯の光のみが照らす病院内には、月明かりすら入って来ない。
侵入してから、二人とも未だ無言。
院内は外観に比べると比較的綺麗だった。
割れた蛍光灯の破片やパイプいすや医療器具などが散乱しているが、
有名な心霊スポットの様に壁や床への落書きなんかは見当たらない。
ただ、それが逆にこの病院が未だ『生きている』 ように感じられて不気味ではあった。
それともう一つ、音がしていた。微かだが確かに聞こえる。
Kは何も言わなかったけれど、おそらく気付いている。『キィ……キィ……』 という何か金属がこすれるような音。
僕らは二人とも、風のせいだと思いこむか、もしくは聞こえないふりをしていた。
音は二階へと続く階段から聞こえていた。ただ、Kは先に一階を見て回るつもりのようだった。

一階の手術室、レントゲン室、診察室などを順に見て回る。
どの部屋も印象深いが、特に手術室にあった緑色の手術台が目に焼き付いた。まるでまな板の様だと思った。
けれど考えてみるとそうだ。手術台は人を捌くまな板だ。台の縁には血痕の様なシミも残っていた。

一階を一通り見て回る。
他のドアは全て鍵が壊されていたが、何故か一番奥の霊安室だけは、鍵が掛かっていて入れなかった。

ロビーに戻り、そのまま僕らは階段へと向かった。
その際に、Kがぼそりと言った言葉がある。
「本番は、病室のある二階だ」
今までは前座だったのか。

二階に上がる。
……キィ、キィ、キィ……
音がする。一階に居た頃よりもはっきりと。
「……さっきから、何の音だろう?」と僕は呟く。
「……ここには、車イスの霊がでるって噂もある」とK。
何故か二人とも囁く様な小声になっていた。そして二人とも声が少し震えている。
僕はKが例え僅かでも怖がっていることに驚いていた。こういうことは慣れっこだろうと思っていた。
存外頼りないのかもしれない。ああ、そうか、だから僕を誘ったのか。Sは来てくれないから。


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