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ホラーテラー作品群保管庫

97なつのさんシリーズ「Sとの出会い」1:2014/06/14(土) 01:18:27 ID:Hpd3syqU0
大学一年生の春、僕は生まれて初めて自らの意思で心霊スポットに赴くことになった。
大学主催の新入生歓迎会で、オカルティストのKと知り合ったのがきっかけだ。
歓迎会があったその週の土曜日、深夜十時。僕は待ち合わせ場所の大学正門前でKと落ち合った。
Kの話によると目的の廃病院は、街を北西に向かい、その先の山を少しばかり上った場所にあるらしい。
もちろん歩いては行けない。
当時の僕は原付バイクの免許すら持ってなかったし、
そもそもこの歳で自転車すらまともに乗れない程の、『車輪オンチ』 だったのだけど、まあ、それはいいとしてだ。
廃病院までは、Kの友人のSという人が車を出してくれるらしい。
Sは僕と同い年で同じ学科だとKが教えてくれた。
僕はSと面識が無い。先日の歓迎会にも来ていなかった様だし、まともに会うのはその時が初めてだった。
僕はKに、Sはどういう人かと尋ねてみた。するとKは「うーん、まー、そーだなー……」と一つ間を置いてから、
「理屈好きで説教好きで頑固で皮肉屋でリアリスト」
そして可笑しそうに「うはは」と笑った。
僕は何を言えるでも無く、「ふーん……」とだけ述べておいた。
とりあえず僕の中でのSのイメージが、
一昔前の特撮アニメで出てきた白髪で眼鏡のマッドサイエンティストで固まったことだけは確かだった。
「KはS君と、前々から知り合いなん?」
「おう、小坊のころからだから、もう腐れ縁だな」
そう言ってKはまた「うはは」と笑う。
噂をすればなんとやらと言うが、Sがやって来たのはその直後だった。
正門前で待っている僕ら二人の前に、やけに丸っこいボディをした小型車がやって来て停まった。
窓が開いて、運転手が外に顔を出す。
若干細目で、髪ぼさぼさ、セットしていないのか所々寝癖の様にはねていた。この人物がSの様だ。
残念ながら白髪では無かったが、眼鏡はかけていた。
Kが僕のことを紹介しようとすると、Sは面倒くさそうに方手を振り「後でいい。とりあえず入れ。さみぃから」と言った。
Kが僕の方を向いて『だろ?』 と、そんな表情をした。僕は、なるほど、と思った。

新たに僕とK二人を乗せてSの車は走り出した。運転するのはSで、助手席に僕、後部座席にはKが座っている。
正直、今日が初対面であるSの隣よりは、後部座席の方に座りたかったのだけど、
Kが言うには、後ろは彼の特等席だから駄目らしい。
そしてKはと言うと、車が発進するや否や、二人分のシートにバタリと横になって眠ってしまった。
Kが僕とSの間を取り持ってくれると思っていたので、これは予想外の事態だった。
しばらくの沈黙。車内にBGMは無い。
「……Kから何処まで聞いた?俺のこと」
さてどうしようかと悩んでいると、Sがいきなり口を開き僕は慌てる。
「あ、それはえっと、えーとだね。……S君って名前と、あと理屈と説教と頑固と皮肉とリアリストが好きって」
しまった、間違えた。別にリアリストが好きだとは言っていなかったな。
しかし弁解する間もなく、Sは怪訝な顔をしてバックミラーを見やる。
「別に好きなわけじゃない。ってか何吹き込んでんだあの馬鹿は……」
すんませんK。僕は心の中で謝った。
「まあ、名前さえ間違ってなきゃそれでいいんだがな」
「……S君で合ってるよね?」
「ああ。それと、『君』 は要らない。Sでいい」
それから僕とSは互いに自己紹介も兼ねた会話を交わした。
初対面の時は気難しい印象を受けたのだけど、話してみれば意外とそうでも無く、
少なくともKよりはよほど常識を持った人の様に思えた、その時は。


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