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ホラーテラー作品群保管庫

95なつのさんシリーズ「Kとの出会い」3:2014/06/14(土) 01:16:19 ID:Hpd3syqU0
それはつまり、箱の内がわの『南京錠に鍵を掛けて鍵も中に入れてから、蝶番を取りつけて密室を作りだす』 、
それが出来ないということ。
「二つ目の可能性は、そこを踏まえてなお、俺が細工をした、っていうことだ。ここまで、二つは理解出来たな?
 よし。おーけーおーけー」
Kが立てている指が、いつの間にか左手の人差し指だけになっている。
「じゃ、最後だ。
 最後の可能性は、ここまでの俺の話は全部本当で、鍵を入れて箱を閉めた後、『何かが、箱の中で、鍵を掛けた』」
Kの左手の人差し指が、僕の手の中にある箱をさす。ことり、と箱の中で音がした。
「……だとしたら、その『何か』 は、まだ箱の中に居ることにならないか?なるよな?うん」
片手で持ててしまうくらいに小さな箱の中。
その中に、鍵を掛けてしまえる何かが存在する。常識的に考えれば、あり得ない。
しかし、今の僕の口からは何故か、その『ありえない』 という五文字の言葉が出てこなかった。
「もう一度聞こうか。『○○は、オカルトを信じるか?』」
Kが先程の質問を繰り返す。
「答えがNOなら、その箱、無理やり開けてみな。
 蝶番はネジ止めになってるから、そこのナイフでも使えばいけるだろ。石コロが入ってるかもな。
 ……しかしだ。し、か、し」
ずい、とKがこちらに一歩近づき、僕は思わず一歩下がる。
「その時、もし、箱の中にとめられた南京錠とその鍵が入っていたら……どうなる?」
どうなる。鍵が入っていたら。どうなる。
僕はその状況を想像してみるが上手くいかない。
ナイフで蝶番を壊し、開けた箱の中身、そこには靄が掛かっている。まるで浦島太郎の玉手箱だ。
僕は目を瞑った。暗闇の中でイメージはよりリアルになる。箱の中の靄が徐々に晴れて行く。雑音が消えた。靄が晴れる。
箱の中には、内側に掛けられた小さな南京錠と、小さな鍵が一つずつ。
その瞬間、足元が崩れ、僕の中の世界は壊れた。
刹那の落下の感覚。それが僕を想像の中から現実の世界に引き戻した。
目の前にはKが居て、腰に手を当てニヤニヤ笑いながら僕のことを見ていた。
僕は僅かに高まった動悸が鎮まるのを待って、一つ大きく息を吐いた。
「……箱は開けない。オカルトを信じるも信じないも、僕には分からないよ」
手にしていた箱をテーブルの上に置く。
するとKが噴き出した。笑う。「うはは」と。今までで一番大きな笑い声だった。周りのみんながこちらを見る程に。
呆気にとられた僕は、ぽかんと口を開けてKを見つめていた。
「うはははははっ、……あーいやー、ワリーワリー。はは、ゴメン。いややっぱお前おかしいよ。
 おかしいだろ?ふつー開けるだろ?はっ、うははは。分からないから、開けたくないって、マジかよ、はっは……」
よほどおかしかったのか、Kは腹を抱えて笑っている。
僕がこいつ今日初めて話したんだけど、殴ろうかどうしようか真剣に迷っていると、ようやくKの笑い地獄は収まった。
「あー、久々に笑ったわ。いやマジごめん。悪気は無いんだって。ただ、予想外の答えで面白かったからよ」
Kが箱を手に取る。
「俺よー。なんか自分と気が合いそうな奴みつけたら、この箱見せんだけどよ。さっきみたいに話しながらさ。
 そんで相手に訊くんだ。『オカルトを信じるか否か、箱を開けるか否か』 ってな。
 ……でもみんな結局は、箱を開けるって言うんだよな」
話しながらKは箱を回転させたり、軽く上に放ったり、色々弄んでから、箱の底部分に左手を、フタの部分に右手を添えた。
「そう言う時はネタばらしをすんだけど、『ごめんごめん。全部俺の嘘でした』 っつってさ。
 箱を取り返して、そいつとは縁を切る」
「……、え?」
「だーかーら、実際に箱を開けて見せるのは、お前で二人目だな、うん」
何かを問う暇もなかった。Kが「んよっ、」と妙な掛け声で気合いを入れると、
箱の蓋がまるでルービックキューブの一列だけ動かす時の様にスライドした。


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