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ホラーテラー作品群保管庫

92なつのさんシリーズ「千体坊主2 晴」5:2014/06/11(水) 18:04:29 ID:hD.sYvCs0
部屋の中でKは、僕らが出ていった時と同じ体勢で作業台の横に倒れていた。
Sがその背中を軽く蹴る。起きない。蹴る。起きない。
それからSはKの上半身を背後から抱き起こすと、両脇の下から腕を入れて両手をKの首の後ろで固定する。
その状態でSが「んっ」と力を入れると、Kの半開きの口から「ほひゅっ」と変な音が漏れた。
「……う、うおう!?」
Kが起きた。
するとSはすかさずKの目の前に自分の手をかざし、人差し指と中指と薬指を立て、極々小さな声で言った。
「……何本だ?」
Kは未だに状況が上手く掴めていないらしく、数回高速で瞬きした。
「何本だ?」
Sがもう一度、囁くように訊く。
「う、あ?……あ。えー、三本、だ?」
「よし。耳は聞こえてるな。目も意識も問題ないようだ」
そこでKはようやく自分の変化に気がついたようだった。
「お、おー!ホントだ。雨が、やんでら……」
それを聞いた瞬間、僕の中で張りつめていたものが煙の様な音を立てて抜けていった。
安心すると、油断をしたのか腹の底から大きな大きな欠伸が出た。そのせいでちょっと涙が混じった。
欠伸がてらに、上手く呑み込めていないKに状況の説明をしてやった。
こっちは真剣に話しているのに、相槌がいちいち「へーえ」とか「ほーお」とかばかりだったのが気になったが、
まあ、それは良いとしておこう。
「……呪いかよ。こえーなあ、しかも無差別なんだろ?」
「インターネットの様な環境は、そういうものをばらまくのに最適だからな。
 まあ、そんなもんに迂闊に手を出す奴も悪いんだが」
「あー、いや。マジ反省してる。……今回はキツかった。いやマジまいった。次からはさ、こういうことの無い様にすっから」
「次があったら見殺すぞ。あとバイト代よこせよコラ」
「はっはっは。またまた冗談を」
そんな今日も冴えている漫才コンビの後ろで、僕は先程ポストから持ってきた今日の朝刊の週間天気の欄を見ていた。
六日間晴れマークの続いた後に、ぽつんと傘のマークがついている。
ふと思い出す。
もしも今回のことが呪いのせいならば、
僕がKの耳元で聞いたあの本物の雨の音も、やっぱり呪いの類だったのだろうか、と。
分からない。呪いは伝染するのかもしれない。良い意味でも悪い意味でも。
その証拠に、SがKを絞め落とす際に見せたノートに書いた言葉、机の上に開きっぱなしになっているそれには、
『耳鳴りで眠れないか?』 の下に走り書きで、『目が覚めたら、全部終わってる』 と書かれていた。
もしかしたら、これがSの言っていた呪いには呪いというヤツだろうか。

ちなみに、四コマ漫画『わたる君』 の今日のネタは、
『どうしても遠足に行きたいわたる君が、てるてる坊主を百個作ってベランダに吊るして、
 作り過ぎだとお天道様に呆れられる』
というものだった。
Kに見せると、「ギャグ漫画にリアルで勝つとかオカルトだろ……」などとわけの分からないことを口走っていた。


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