[
板情報
|
R18ランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
メール
|
1-
101-
201-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
ホラーテラー作品群保管庫
77
:
なつのさんシリーズ「河童井戸」5
:2014/06/08(日) 16:23:56 ID:BgaWrcjA0
Kはバッグの中から、小さなプラスチック製のバケツと、細いロープを取りだす。
Sはそれらを受け取り、バケツの取っ手に無言でロープを巻き付け、
ロープの端をしっかり握ると、そのままバケツを井戸の中へと放りこんだ。
バケツが水の上に落ちる音がする。
「おいS何だよ。さっきの『当たって欲しくなかった』っつーのは」
僕の代わりにKがもう一度Sに尋ねる。
しかしSは答えてくれず、手に持つロープを小刻みに操っている。バケツの中に水をすくっているのだ。
そしたら急にSはロープをぐいと大きく引っ張った。その瞬間、井戸の中から何かが音がした。
まるで積み木で作ったお城が崩れるような音。積み重なった何かが下から崩れていく時の音だった。
Sがゆっくりとロープを手繰り寄せる。
「……Kがさっきした河童の話。あれが本当だとしたらな」
「え、え?」
唐突で身構えても無かったので、僕は変な声を出していた。そんなことはお構いなしにSは話を続ける。
「あれは、河童が入ったせいで井戸の水が枯れてしまった、ってな話だ。
井戸が枯れたのを河童のせいにする。それなら納得できる」
僕はまだSが何を言おうとしているのか分からない。
「でも、実際に井戸はまだ使える。水があって、こうして汲むことが出来るんだからな。
飲み水に使用できなくても、畑にまく、洗濯、洗い物の水、用途はいくらでもある。
この村の人間は、わざわざ河童の話を創ってまで、使えるはずの井戸を『枯れている』 ってことにしたかったんだ」
Sがロープを手繰る。僕はその動きだけを目で追う。
「水があっても、使えない。この水は使えないんだ」
バケツが井戸の縁まで上がってきた。Sがそれを掴み上げる。
黄色いバケツの中には透き通った水。それともう一つ。何だろう、細長い石?
「……まさか、こんなものが釣れるとはな」
Sの言葉には苦笑が混じっていた。
「お前ら、これが何だか分かるか?」
分からない。僕もKも首を横に振る。
Sがバケツの中からそれを取りだす。やはり石だ。
人の形をしている様にも見える。但し、頭、顔が無い。まるでボーリングのピンだ。
Sは次いで自分のポケットに手を入れ、何かを出した。
それも石だった。丸い石。
Sは細長い石の上に、丸い石をゆっくりと乗せた。ライトで照らすと、丸い石には表情がある。つまりは顔。
「……河童というものが、昔、貧困ゆえに間引きされた子供の暗喩だ、という話は聞いたことがあるか?」
Sは一体何を言っているのだろうか。
「そうして間引かれた子供のことを、水子と言う」
ぞくり、と生ぬるい風邪で体中を撫でまわされる様な感覚。
視線が井戸の中へと向かう。今にもあの中から何かが這いあがって来ているのではないか。そんな錯覚に陥る。
「お前らには分からないかもしれんが、ここに子供が縋りついている」
Sが手にした地蔵の足の部分。確かに小さく盛り上がってはいるが、あれが子どもなのだろうか。
「こいつは水子地蔵だ。水子を供養するための地蔵なんだよ。それが井戸の中にあったんだ。……分かるか?」
井戸から這いあがって来る。何かが、何が?
水子、間引かれた子どもたち。
たち?どうしてそう思うんだろう僕は。
「こいつは井戸じゃない。墓だ。たぶん、一人じゃないだろう。共同墓地か。
河童の話でもあったな、食うためにってさ。直接じゃなくて、自分たちが食っていくために、って意味だろうな」
そして、Sはバケツを持ってKに差し出す。
「飲むか?ある意味長寿の水かもしれんぞ。何てたって水子だ。
あと何十年も生きるはずだった子らのダシが、たっぷり出てるんだからな」
Kは半笑いで、力なく首を振った。
「飲むわけねーだろ」
「……ま、だよな。お前は?飲むか?」
そう言ってSは僕にもバケツを差し出してくる。
「無理無理無理無理無理ムリむり」
「だよな」
そうしてSはくっくと笑うと、バケツの中の水を井戸の中に戻した。
それは試合終了の合図でもあった。
蓋を閉め、首の取れた水子地蔵をその上に置き、僕ら三人は手を合わせた。
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板