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ホラーテラー作品群保管庫

74なつのさんシリーズ「河童井戸」2:2014/06/08(日) 16:21:46 ID:BgaWrcjA0
車を停めたSがKを叩き起こし、それから一時間と半。
道は進むにつれ細く荒れてゆき、心配症の僕は少々不安になり、
手持ちのこの地図は本当にあっているのかと疑い始めた頃、
何だか地蔵が沢山並ぶ小さなお堂を通り越して、僕らはようやく目的の廃村に到着した。
「おー、ここだよ。ここ!」
車から降りたKが大声を上げる。
廃村と言っても、その村はまだ村としての形を残していた。
山の斜面にへばりつく様にして、いくつかの廃屋が左右にも上下にも立ち並んでいる。
と言っても木造の家自体は朽ちかけて、蹴り倒せるかと思う程ボロボロなものばかりだ。
辺りには膝より高い草がぼうぼうに生えていて、何処が道だったのかもよくよく見ないと分からない。
村の下方には小さな川が流れていて、その向こうはまた山。生い茂った緑の壁と言った方がしっくりくるかな。
「おーい。お前らこっち、こっちだっつーの!」とKの声がする。
停めた車の傍で辺りをぼんやりと見回していた僕は、ふっと我に帰り、Kの方へと向かった。
一番最後に車から出たSも僕の後からついて来る。
村の端、もうほとんど森の中と言った少しのスペースにKは立っていた。
「河童井戸だ」
Kが指差して言う。Kが井戸というそれは、石造りで、一辺が七十センチほどの正方形の形をしていた。
上に石の蓋がしてある。屋根もつるべもない。
井戸と聞いて、もう少し堂々としたものを想像していた僕は、正直がっかりしていた。
けれども、昔の村の井戸などと言うのは、大概こんなものなのかもしれない。
「おい、ちょっとお前ら、手を貸せ。この蓋あけっからよ」
僕とSは嫌々だったが、力を合わせて三人で蓋を開ける。すんごい重い。
蓋をずらした瞬間、冷蔵庫を開けた時の様な冷たい空気が頬を撫でた。
暗くて深い穴がその口をぽっかりと開ける。地面に垂直に掘られたうろ。覗きこむと、首筋辺りに毛虫が這う感覚を覚えた。
「わっ!」
穴に向かって突然叫んだのはKだ。その声は井戸の内壁に反射して、幾重にも重なって戻って来る。
次にKは地面に落ちてあった石を投げいれた。
……かつっ、
僅かな音。それは、この井戸に水が無いことを示していた。
「枯れてるな」とSが言った。
僕ら三人は、それから無言のまま視線を交わし合う。
Kが背に背負っていたリュックから懐中電灯を取りだした。井戸の中を照らす。
ライトの光は井戸の底を照らしはしなかった。光が弱いのか。しかし相当深くは掘ってあるらしい。
もちろんここに眠るとされる河童の姿など影も形も見えない。
「なーんも見えねー」
「少なく見ても、三十メートルはありそうだな。浅井戸かと思ってたが、そうじゃないのかもな」
そう言って、Sはまた石を投げ込もうと思ったのか地面の石を拾った。
それから、ふと何かに気が付いた様に手にした石を見やり、結局投げ入れずにKの方を向いた。
「で?これからどうすんだ」
Kは「おう」と元気よく返事をしてから、
「決まってんじゃん。話によるとだな、この井戸に水が湧くのは新月の夜、月が出てからだからー。それまで待とうぜ」


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