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ホラーテラー作品群保管庫

72なつのさんシリーズ「公衆電話の夜」4:2014/06/08(日) 16:19:29 ID:BgaWrcjA0
「うあ、うあ、うわわわ……」
恐怖と驚きと混乱で、声にならない声が僕の口から洩れる。
尻もちはついたけれど、携帯はしっかり手に持って放り投げてはいなかった。
『……――あん?お前、○○(僕の名前)か?Kと一緒に居るのか?』
何が何だか分からない。どうしてSの声が電話口から聞こえてくるのか。どうして僕が怒鳴られなきゃいけないのか。
そして、ひっくり返った拍子に後ろを見てしまったわけだが、僕の部屋の中には今、僕意外に誰も居ない。
窓に写っていた顔半分の無い男も居なかった。
『おい、Kに代わってくれ。説教するから』
Kは未だ電話の向こうで『あひゃひゃひゃ』と心底可笑しそうに笑っている。
僕は何度も何度も細かい息を吐いて、ようやく理解した。
つまり今、Kは公衆電話の中で、自分の携帯と公衆電話の受話器を合わせているのだ。
Kを介して僕とSは互いの声が聞こえている。
『うっはっは。あーおもしれー。ってか、こんな風につなげても会話って出来んだなー』
『黙れボケが。何が可笑しいのか知らんが、明日会ったらお前、』
『あーワリーS、十円しか入れてないからよ。もう切れるわあっはっは!』
『テメ俺の安眠を、』
ガッチャン。どうやらKが受話器を戻したらしい。
『あー面白かった。ってかおめーも驚き過ぎだろ。マジで悲鳴あげてたし』
「……うん」
僕は恐る恐る窓ガラスを見てみる。見馴れた僕の部屋。僕一人。他は誰も居ない。
深い安堵の溜息を吐く。怖かったしグロかった。ああいうのは駄目だ。
幽霊というのは、もっとこうスマートで無くてはならないと切に思う。
『んー? どうしたお前、何かあったのか?』
そう言えば、Kがさっきの公衆電話からSに電話を掛けたのだとすれば、
さっきの頭なし男はSの部屋にも行ったのだろうか。
「……いや、ないない」
僕は何故か確信できた。それは無い。僕はSに怒鳴られた言葉を思い出していた。
やっと帰りついて、あんな言葉を言われたら誰だって消えたくなる。
『あ、そ?何もなかった?』
「うん。何も無かったよ。……それよりKさ、今からウチに来ない?目が冴えちゃってさ。何かして遊ぼうよ」
『あー行く行く!んじゃ、二十分くらいでそっち着くわ』
「うん。じゃあまたあとでね」
Kとの電話を切った後、僕はすぐにSに電話を掛けた。Sはもろ不機嫌だった。
『……ああ?』
「あ、S?ねえ、さっきのKの電話で目冴えちゃったんじゃない?」
『……ああ』
「じゃあさ。今からさ、ウチ来ない?」
『ああ?何で』
「Kも来るよ」
『行く。待ってろ』
これでよし。
僕は電話を切ると、ベットの上に倒れこんだ。
まずKが先に来るだろう。後でSがやって来るとも知らずに。僕はそっとほくそ笑む。
でも、それは二人を呼んだ理由の一つにすぎない。
僕は携帯を開けて、着信が来ない様に電源を切った。それから、はっと気づいてカーテンを全部閉める。
その瞬間、ヤモリが一匹窓を横切った。
「うひっ!」
悲鳴を上げて飛び退く。
……ああ怖い怖い。
読みかけていた本もホラーものだったけれど、今日はもう読めない。
これが理由の二つ目。
僕一人じゃ、今夜はどうにも眠れそうになかったから。


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