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ホラーテラー作品群保管庫

58なつのさんシリーズ「吊る這う轢かれる」1:2014/06/06(金) 12:02:19 ID:bXavpRb60
それは蛙とコオロギの鳴き声が響く、夏もおわりかけたある夜の出来事だった。
「……この家だってよ。出るって有名な家」
僕とKはその二階建ての一軒家を、周りをぐるりと囲む塀の外から眺めていた。
風は存外に冷たく、そういう季節はもう過ぎたのだと感じる。
なのに、僕らはまた肝試しに来てしまっていた。僕とKとS、いつものメンバーだ。
発案者はKだ。奴のオカルト熱は季節に関係なく、いつでも夏真っ盛りらしい。
「二階あたりに女の霊が出るって噂。今はー……見えねえけどな。窓に映るらしいぜ」
Kの言葉に、僕は二階の窓を懐中電灯で照らした。
Sはというと、道の脇に停めた車から出てこず、運転席側の窓から右肩と頭だけを出して、つまらなそうに家を眺めていた。
「おいS、出てこいよ。なに一人だけ車乗ってんだよおめーはよ」とKが言う。
Sは大きなあくびで返す。
「……さみーんだよ。それに、誰がここまでずっと運転してきたと思ってんだ。……俺は寝るぞ」
Sはそう言って、車の中に引っ込み窓を閉めてしまった。
「Tシャツ一枚で来た奴がわりーんだよ」と Kが、かかか、と笑う。
でも確かに今日の夜は存外冷える。
おそらく朝から曇っていたことが原因だと思うが……。お天気おねいさんは何と言っていただろうか。
そんなことを考えながら、僕はもう一度窓を見上げた。
ちなみに、僕とKがいる位置とSが乗る車の間には、この家の門がある。門は内側に開いていた。
でも、今日は不法侵入はしない。外から眺めるだけだ。理由は、ここがそういうスポットだから。
「噂じゃ女……っていうかここの家の娘な、事故で下半身が動かなくなったんだってよ。
 それから女はショックで段々頭がおかしくなって、そのせいで両親はその女を、自宅にずっと閉じ込めてたんだと。
 ビョーキ家族だな」
と隣でKが言う。
いつもならここらでSの鋭いツッコミが入るのだが、上がTシャツ一枚の人間にとっては、この寒さは多少分が悪い。
「で、事件は起きるわけだ。その女が夜、寝ている両親の首をナイフで掻っ切って、自分も自殺したんだな」
「……自殺?」
と問い返しながら、僕は何だか周りがさっきよりも寒くなった気がした。背筋がぞわぞわする。
「首吊りだってよ。首つり自殺。こう、ロープにぶら下がって、ぶらんぶらん揺れてたんだと」
Kが舌をべろんと出し、身体を揺らす。
しかし、僕はその時Kの話に違和感を覚えた。女は両親を殺して首吊り自殺をした。けれど、その女は確か……。
「……でもさ、それって、おかしくないか?」
「あ、何が?」
「足も動かないのに、どうやって首吊るんだよ」
「どうやってって。そりゃお前……」とKが何か言おうとしていたその口が止まる。
ぞわり、と冷たいものが僕の首筋を撫でた。
それはまるで、大きなつららを直接背中に当てられた様な感覚だった。足から頭まで、全身に鳥肌が立つのが分かった。
僕とKはほぼ同時に二階の窓を見上げた。
二階の一室の窓が徐々に開いていた。ゆっくり、音も無く。
隙間に女の顔が見えた。
髪がぼさぼさ。大きく見開いた目が、僕ら二人を見据えていた。
窓は開く。隙間が広がり、その首にロープが見えたその時、女は一気に窓の僅かな隙間から外へと身を乗り出した。
女が頭から落ちる。途中で、その首に巻いてあったロープが落下を食い止めた。
がくんと女の身体が上下に反転し、二階の窓を支点に振り子運動を始める。
ぶらん、ぶらん。
枯木のように細い足。その手にはナイフらしきものが握られている。一つ、二つ、三つ。
その身体が痙攣した。ナイフが手から落ちる。その手が宙を掻く。音は何も無い。
その内、女の両手がだらりと下に垂れさがった。口が開き、真っ赤な舌がその中に覗いていた。
死んだのか、死んでいるのか。しかし女の目だけは、未だこちらをぎょろりと見据えていた。
僕の口から何か悲鳴のようなものが出ようとしていた。
と、僕の首筋に冷たいものが当たった。


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