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ホラーテラー作品群保管庫
52
:
なつのさんシリーズ「夜泣き峠」3
:2014/06/03(火) 17:45:29 ID:j2Iwz4NM0
チャイルドシートに大の男が座っている。真夜中のこんな場所で。
その滑稽な光景に、先程までの恐怖の感情も消えうせ、僕は声に出して笑った。
「アホらし」と言いながらも、Sが自分の携帯を取りだして、カメラで撮った。
フラッシュ。Kはふんぞり返っていた。僕も笑いながら、その姿を携帯で撮った。
「……おぎゃあ、おぎゃあ!」とKが叫びだした。さらに座った状態で手足をバタつかせる。
僕はまた笑った。Sも笑っていたと思う。
「おぎゃあ、んぎゃああ、んぎゃああ」
僕が、おや、と思い始めたのはそのあたりからだった。
「んぎゃあ、ん、んぎゃああ、おぎゃああああ!」
「おーい、K、もういいよ。十分撮ったから」
しかし僕がそう言っても、Kは泣きやまない。それどころか、Kの泣き声はいっそう激しくなった。
「……お、おぎゃあ、おぎゃあ……ぐ、おぎゃああ、おぎゃああああ!んぎゃああ」
「おいK?」
「ぎゃああああ、おおぎゃあああ!んっく、っく、ぎゅっ……、おぎゃああああああ!んっく、ん」
いつの間にかKの泣き声は尋常ではなくなっていた。Kは本当に涙を流して泣いていたのだ。
顔が歪んでいた。手足をバタつかせ大声で泣く。
その声も、Kの声から、まるで本物の赤ん坊の声に変わっていた。
「おぎゃああおぎゃああおぎゃああおぎゃああああおぎぎゃああああああ」
「お、おい、……け、K」
僕がKに向かって手を伸ばそうとしたその瞬間、
Sが横からチャイルドシートごとKの身体を蹴飛ばした。
「……おい!Kを持て。逃げるぞ!」
Sが叫ぶ。地面に倒れたKは気を失っていた。
僕はSと一緒にKを担ぎあげると、車に向かって一直線に走った。
「S、S!どういうこと?」
「俺に聞くな!」
後部座席にKを押し込んで、Sが車のキーを差し込む。
「お、おい、S。ちょっと待て!」
車のエンジンが掛かる。しかし僕は思いだしていた。夜泣き峠に関する話。
赤ん坊の声を聞いたものは必ず……。
Sもそこに気がついた様だった。サイドブレーキを下ろそうとしていた手が止まる。しかし、躊躇は一瞬だけだった。
「……そりゃ、尾ひれだ」
Sは車を発進させた。
Sの額に浮かぶ大粒の汗とは裏腹に、車は非常にゆっくりとした安全運転で山を降りた。
Kは山を降りる際に意識を取り戻した。
また泣き声をあげられたらどうしようと心配だったのだが、幸い起きたKはちゃんとKだった。
「え……?何コレ。ってか、わき腹ちょーいてえんだけど……」
それはSが蹴り飛ばしたからだ。でもその事実は無かったことになり、全ては赤ん坊の霊の仕業ということで落ち着いた。
Kのわき腹にユウレイが噛みついていたのだと。
そうして、少なくともその日は、僕らは事故に遭うこともなく、山を降りることが出来た。
後日三人で集まり、知り合いの知り合いの知り合いという風に、
か細いつてを頼って、遠くの街の神社でお祓いをしてもらった。
その際、神主らしき人に「一応三人とも大丈夫だが、もうあの峠には行かない方が良い」と言われた。
お祓いが効いたのか、そもそも何も憑いてなかったのか。
あの夜の体験から数年たったが、今のところ三人とも何の事故もなく過ごしている。
『夜泣き峠』を通ってて、赤ん坊を見た、声を聞いたという話は、今でもたまに聞くことがある。
この前も、職場の後輩が彼女と行って、泣き声を聞いたそうだ。
後輩はその時の話を詳しく語ってくれた。
「事故とかは大丈夫だったんすけどね?……やっぱり、ほら。わき腹、噛まれたんすよ、ほら」
確かに、真剣に語る彼のわき腹には、噛まれた様な跡があった。
そりゃ、尾ひれだ。
笑って流していいものかどうか、少し迷った。
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