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ホラーテラー作品群保管庫

221鴨南そばさんシリーズ「四角い部屋」3:2014/10/07(火) 13:44:36 ID:N5E6U.uY0
路上に駐車し、歩くこと五分。
「着いた。ここ」
「え?コレ?全然普通のビルじゃん。死ぬほどぼろいけど。電気は点いてるけど、ホントに人住んでるのか」
「あの潰れたホテルよりはマシだ」
ユウキは先導して入り口へとずんずん進む。見たところ十階程度のマンションだ。
外灯からの距離が離れているせいか、建物の壁面が薄汚れた灰色をしているせいか、
マンション管理会社が電気代をケチっているせいなのか分からないが、いやに暗い。
「これがそのエレベーター」
ボタンを押すと、チンという音が鳴り、すぐさま扉が開いた。
しばらく誰も乗らなかったのか、中にある蛍光灯がチカチカと瞬きながら点く。
「あっそ。んで、どうするの?」
「まずは、一階から十階までの階数を全部押す」
何度やっても全部は点かない。
若干飽きてきている僕とは正反対にユウキは必死だ。
当たり前だ。今一階に止まっているのだから、一階のランプなんて点かない。
「なあ、謎解きしたいんだろ?取り合えず一番上行こうぜ。それで解決するかもだろ?」
ユウキは僕の言葉を聞き、口をポカンと開け、呆けた。
「お前、頭良いな」
誰でも考え付きそうなものだが、お馬鹿なユウキ君は考え付かなかったようだ。
こいつジャニーズの高学歴アイドルに似てるのに天然だったのか、知らなかった。
しかし、頭が良いと言われてちょっと嬉しくなる僕もまた、頭が悪いのだろう。

最上階に着く。居住用の部屋のドアが通路の壁に均等に並んでいるだけだ。
天井の蛍光灯がパチパチ音を立て切れかけているのが少し怖い。
だが、通路が四角くもなければ、トワイライトゾーンに繋がっているわけでもない。
きっとこのエレベーターの怪談を知る者は、一階のエレベーターで悪戦苦闘して先に進めず……。
そうか、何となく分かった。

「なあユウキ。俺、分かっちゃったんだけど」
一階に戻り、小学生のようにエレベーターのボタンを連打するユウキ。見ていて滑稽だ。
「うるさい。今忙しい」
イライラが伝染する。冷たく言う一言に、カチンと来る。
「ねえもう帰っていい?僕疲れちゃったよ。主に精神面で」
「はあ!?ふざけんな!俺と一緒に謎解くって言ったじゃねーか!」
いや言ってないし。何熱くなってんだよ。
「もういいよぉ、飽きたよぉ」
「帰るんなら帰れよ!マジむかつくわリョウ。お前ぜってえ後悔させてやるからな」
おお、こわ。それじゃあお言葉に甘えて帰らせていただきます。


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