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ホラーテラー作品群保管庫

219鴨南そばさんシリーズ「四角い部屋」1:2014/10/07(火) 13:43:11 ID:N5E6U.uY0
バイト先の仲間及び上司と肝試しをすることになった。
常連のお客様一人とそのご友人二人。僕とユウキ(源氏名)、そしてガクト(仮)さん。
女二人、真ん中の人一人、男三人、計六人。
名目上は、お客様へのアフターサービスと新しい顧客開拓の準備行為。
売上が急激に下がったのが、このようなサービス残業をする理由だ。
不況を理由には出来ない。その時期にゴソっとお客様が来なくなったのだ。サービス低下の証拠だろう。
潜在的な顧客を含めても、お客様三人に僕たち三人を当てるのは少々過剰だと思う。
だが常連のお客様は、指名料ダントツのガクトさんを二時間以上拘束できる相当な太客。
なので、そのご友人にも期待をこめての放出なのだろう。
しかし正直言うと、ナンバー1であるガクトさんへの接待色が強い。お客様三人も「あれ」が目的だ。
つまらない話だろうが、大声で笑う。自慢話は褒め称える。わざとらしく、大袈裟ぐらいが丁度いい。
外面、男女が六人で和気藹々。内面、各人の思惑で虎視眈々。

「おい、リョウ。それお姉ちゃんマンションだろ?」
焚き火越しに、ガクトさんが僕の源氏名を呼ぶ。照り返しで元々深い彫りの顔立ちがまるでマネキンのようだ。
「流石!これ、僕の地元の話だから勝算あったんですけど。マジ何でも知ってますね」
「お、そうなのか。何度塗りなおしても赤い文字で浮かび上がるんだってな。TVで見た」
「なにそれ〜。怖〜い」
男ではないお客様予定の一人が黄色い声をあげる。全く怖がっているようには見えない。
食虫植物のような凶悪なマスカラに彩られた目で、ガクトさんを見つめる。
どうやら既にガクトさんのことを気に入ったようだ。言い忘れたが、女でもない。
ユウキが次の話に移る。
「じゃあ、ガクトさん、四角い部屋は?」
「あ。あーし、聞いたことあるかもぉ。四人が遭難して寝ないようにして、助かるのでしょ」
アピールするのはかまわないが、それではただの良い話だ。
「山岳部とかワンダーフォーゲル部だかの奴らが、遭難から命からがら帰還。
 実は、その生き残った方法に重大な欠陥があることに後で気づく、ってヤツか。有名な話。基本だな」
「知ってますねえ。なんでそんなに詳しいんですか?」よいしょ、よいしょ。
僕の言葉にユウキが被せる。
「違います、そっちじゃないです。
 マンションとかホテルのペントハウス、エレベーターから直結する部屋あるじゃないですか。
 あんな感じで、エレベーターで四角い部屋に直結するらしいんす。聞いたことありますよね?」
「はあ?部屋なんて大概四角だろ?」
「俺も詳しくは分かんないんすけど、その部屋は完全に四角なんですって。やっぱり知らないんすか。…俺1点ゲットですね」
「何だよ、その完全な四角って。意味わかんねえよ」
確かに意味が分からない。ただ四角い部屋に行くのが何故怖い話なのか。
恐らくは、元々意味のないものに意味を与える行為を楽しむ類の怪談なんだろう。
「じゃあ次、私の番ね。友達から聞いた話なんだけど――」
浜辺で一斗缶の焚き火を囲みながら話していた。

百物語のあとに心霊スポットに行くのが肝試しの王道だ、とガクトさんの案。逆らう理由も力もない。
最初は百物語のつもりで話していたのだが、思いの他ガクトさんが怖い話を知っているため、
徐々に趣旨が変わり、ガクトさんの知らない怪談を探すゲームになっていた。
今のところユウキの話以外は知っているようだ。
「あぁ、それ知ってる。足つかまれるオチ?」
「何で知ってるの、私もうないよ。ホントにガクト物知りだね」
百物語と言っても、百話も話すつもりがないのは全員理解している。
適当なところで心霊スポットの探索に行く予定だ。
本当にやるとしたら、六人で百話、一人当たり16,7話用意しなくてはならない。
普通なら知っている話など2,3話がいいところだ。相当難しい。
百物語を終えた後には怪異が起こるというのも、こういった理由からなんだろう。
肝試しは仲間内での遊びだ。


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