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ホラーテラー作品群保管庫
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くらげシリーズ「転校生と杉の木」5
:2014/06/26(木) 16:40:33 ID:TrdgkZJA0
その足も、その手も、その身体も、その顔も、口から少し飛び出た舌も、
瞬きもせずじっと私を捉える、その虚ろな目も。
「……あ」
思わず声が出ていた。
どうして今まで気づかなかったんだろう。
私はその人を知っていた。
彼女は、私がここの保育園で年中組と年長組だった時に、世話になった先生だった。
私は幼い頃。母が入退院を繰り返していて、小さな私は寂しい思いをしていた。
だから、十分に母に甘えられない分を、私は保育士だった彼女に求めたのかもしれない。
私はよく先生の足に縋りつくのが癖だった。まるで猿やコアラの赤子のように。
彼女は私を足にくっつけたまま、「よいしょよいしょ」と歩くのだ。そのまま他の用事をすることもあった。
優しい人だった。
その先生が首を吊って死んでいる。
私はそっと手を伸ばして、その白い運動靴に触れようとした。
指の先が少し触れたが、感触はどこにも無く、私の指は空を掻いた。
触れられない。
「大丈夫?」
気遣ってくれているのだろうか。
「……知ってる先生なんだ」
私は答える。それは自分でも驚くほど冷静な声だった。
おかしなことに、先生の死体を前にしても、実感はまるで湧かなかった。
それは、テレビの向こう側で行われる有名人のお葬式のようだった。
ロープで木にぶら下がった彼女は、ずっと私の方を見ている。
もしかしたら、私と彼女が知り合いであることに、彼は最初から気付いていたのかもしれない。
「『見守り杉』っていうんだねぇ、……この木」
隣で彼が小さく呟いた。
それから、どこで彼と別れて、どうやって家で帰ったのかは、記憶にない。
家に帰ってから、私は母に事情を聞いた。
先生の名前を出すと、母は観念したようで、色々と話してくれた。
黙っていたのは、忘れているのならそのままの方がいい、と思ったからだという。
先生は自ら命をたった。
失恋の果ての自殺。時期は、私が保育園を卒園してすぐのこと。
恋人は、当時同じ保育園に勤めていた人で、私の記憶にもある人物だった。
破局の理由は喧嘩でも浮気でも無く、先生の生まれ育った場所にあった。
周りから忌み嫌われる土地。
知識としてはあったが、そんなものはずっと昔の話だと思っていたし、何より理不尽で、やりきれなかった。
母は「あんた一時期、あの先生のことを、『お母さん』って呼んでたんよ」と言って、懐かしそうに笑った。
記憶の中の先生の姿が、目の前の母と重なる。
私の目から涙がぽろぽろと勝手にこぼれ落ちた。先生は死んだのだという実感がようやく沸いてきたのだ。
私は小さな子供のように泣いた。そんな私の頭を母はわしゃわしゃと撫でてくれた。
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