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ホラーテラー作品群保管庫
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くらげシリーズ「転校生と杉の木」2
:2014/06/26(木) 16:38:53 ID:TrdgkZJA0
日付は変わり、次の日のこと。
学校に行く途中、保育園の前を通り過ぎる際に、私はあの杉の木を見上げてみた。
白い靴など影も形も見当たらない。角度を変えたり目を細めたりしたが、やはり何も見えない。
ふと、柵の向こう、園内から一人の赤い頬をした小さな男の子が、私のことを不思議そうに見つめていた。
私は取り繕うように笑って、そそくさとその場を後にした。
やっぱり、見間違いだ。
母の言う通り。アホなことだったんだろう。
幾分ホッとした私は、以降しばらくの期間、白い靴のことを思い出すことはなかった。
そうして、それからしばらく経った日のこと。
四月が終わりを迎え、五月。端午の節句がすぐそこまで近づいていた。
その日も前日は雨だった。
学校が終わり、一人での帰り道。道路には水溜りという置き土産がいくつも残っていた。
わざと水溜りを蹴飛ばしながら歩く。靴下まで水に濡れて、一歩歩くごとにガッポガッポ音が鳴るのが楽しい。
母には不注意で溝に落ちたとでも言い訳するつもりだった。
そうやって、私は保育園の横の道までやって来た。
歩くのを止めて立ち止まる。何か聞こえたのだろうか。虫の知らせだろうか。理由は忘れてしまった。
とにかく私は立ち止まった。
保育園では数人の子供が遊んでいるようだった。はしゃぐ声がする。
園内を見やると、丁度私の視界を遮る様にあの杉の木があった。
ふと、あの白い靴のことを思い出した私は、なんとなく、木の幹を辿って、視線を空へと向けてみた。
頭上にあの白い靴が浮かんでいた。
瞬きすら忘れて私はそれを見つめていた。
誰かが白い靴を履いている。
その時見えたのは靴だけではなかった。前は見えていなかった人の足首。靴を履いている。人間の足だ。
足は脛のところで途切れていて、それ以上は見えない。
色や輪郭は、まるで霧がかかったようにぼんやりとしている。しかし、
白い運動靴を履いた足が二本、確かに空中に浮かんでいた。
誰かが私の背後を通り過ぎる。
はっとして横を見やると、黒いランドセルが向こうの角を曲がろうとしていた。見覚えのある背中。
「ちょっと待てよ!」
私は咄嗟にその背中を呼びとめていた。彼は立ち止まり、ゆっくりとこちらを向いた。
その顔は無表情で、相変わらず何を考えているかわからない。
転校してきて一カ月。その頃、彼はすでに教室の置き物扱いだった。休み時間に教室に居ないのは変わらず。
最初の方こそ、寡黙な転校生を面白がっていた周りも、慣れてくるにつれ次第に相手をする者もいなくなっていた。
彼は黙って私の方を見ていた。
言葉で説明出来なかった私は、無言で、杉の木の下に浮かぶ誰かの白い靴を指差した。
彼が私の指差した方向を見やる。長い沈黙があった。
「……見えるの?」
杉の木を見上げたまま彼が口を開いた。
そんなことはないはずなのだが、私はその時、初めて彼の声を聞いたような気がした。
「白い靴と、足首」
私は見えたままを答える。
どうやら、彼にも同じものが見えているようだった。しらばっくれる気はないらしい。
「そう。でも、それ以上は見ない方がいいよ」
そして彼はゆっくりとこちらを見やった。
「あの人、君の方見てるから」
それだけ言い残し、彼は背を向けて歩きだした。
再び呼びとめることも出来ず、私はただその背を見送っていた。
その姿が曲がり角の先に消えてしまってから、私は杉の木を見上げる。
白い靴と人間の足首は、忽然と消えて見えなくなっていた。
一体全体、何だというのだ。
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