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ホラーテラー作品群保管庫
178
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くらげシリーズ「死口内海」2
:2014/06/26(木) 16:25:32 ID:TrdgkZJA0
次の日から私は病院に入院し、常に点滴で水分を取るようになった。
普通の方法ではどうしても水分を取ることが出来なかったのだ。
たとえ成分がただの水であっても、どうしても呑みこむことが出来なかった。飲んだとしても、すぐに吐いた。
固形物も、水分が多く含まれていると無理だった。お粥も駄目、果物も駄目。
果ては自分の唾液すら塩辛く感じられて、しばしば水を飲まなくても嘔吐した。
吐き気は常に感じていて、突然ベッドの上で吐き、何度もシーツを汚した。
加えて熱や下痢もあった。
これは体調の悪化による副次的なものだろうが、しかしまるで私の身体の一部でなく、全部が狂ってしまった様だった。
人間、物は食べなくてもある程度生きていけるが、水が飲めなければあっという間に死ぬ。
入院してからたった数日で、驚くほど体重が減った。
自分の身体がカラカラに乾いて行くのを感じ、天井を見つめながら、このままミイラになって死ぬのだろうかと考えた。
この状況が続けば、間違いなく死ぬだろうなと思った。
母も父も、毎日看病に来てくれた。普段は絶対そんなことはしないのだが、入院中母はずっと私の手を握っていた。
それを見ながら、自分は大事にされているのだなと実感した。
死にたくないな。今までの自分の人生で、初めて強くそう思った。
そんな生活を送っていたある日、一人の友人が病院に見舞いに来た。
当たり前だが、入院中は学校を休んでいた。
両親も何と学校に説明したらいいか分からなかったのだろう。
理由は伏せられていて、後で訊いたら、原因は夏風邪ということになっていた。
その友人は、学校のプリントを届けに家に来た折に、私の入院を知ったのだった。
彼は病室に入るなり、無表情のままぽかんと口を開けた。
そうして、私が寝ているベッドの傍に来ると、しみじみとした口調でこう言った。
「痩せたねぇ……」
その言い方が可笑しくて、私は少しだけ笑ってしまった。
笑ったのは久しぶりだったし、自分にまだ笑う元気があったことが驚きだった。
その時は母も父もおらず、他に入院患者も居なかったので、病室に居たのは私と彼だけだった。
彼は『くらげ』というあだ名の、ちょっと変わった男だった。海に浮かぶくらげのように、クラス内でもちょっと浮いている存在。理由は、彼が常人には見えないものを見るからだ。所謂、『自称、見えるヒト』だ。
何でも、ある日自宅の風呂の中に何匹ものくらげが浮いているのを見た日から、そういうモノを見るようになったのだとか。
と言っても、彼自身はそのことを吹聴もせず、そのことについて問われると、「僕は病気だから」と答えていた。
当時、私はよくくらげと遊んでいた。彼といると面白い体験ができたからだ。
「マジでやばくてさ。なんか、死ぬかも」
私はくらげに向かってそう言った。その言葉は思ったよりあっさりと口から出てきた。
くらげは黙って私のことを見ていた。
その視線は、左腕の関節部分に刺さった点滴の針から伸びる細いチューブを辿り、
頭上にある栄養と水分の入ったパックに行きついた。
「これ……、夏風邪じゃないよね。どうしたの?」
私は、ことの始まりから今までのことをくらげに話した。途中、彼は相槌も頷きもせずにじっと耳を澄ましていた。
話が終わると、「ふーん」と言った。
「ねえ、ちょっと、口開けてみて」
「……口?」
「うん。歯を治療する時みたいに、『あー』って」
私は言われるままに口を開けた。すると、くらげは少し腰をかがめて、私の口の中を覗き込んだ。
「……あー、これじゃ塩辛いよね」
くらげが上体を起こした。
「海になってるよ。君の口の中」
訳が分からなかった。
くらげは納得したように一人頷くと、「じゃあ、ちょっと僕、海に行って来るよ」と言って、私に背を向けた。
私は意味が分からず、口を開けたまま、彼が病室を出るのをただ見ていた。
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