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ホラーテラー作品群保管庫

1712なつのさんシリーズ「異界」6:2014/06/16(月) 23:33:50 ID:mn6OmNt.0
魚を釣って料理していたのと同じだ。生きるために他の動物を食べることを止める権利など、誰も持っていない。
ふと、目の前を犬を連れた女の人が通り過ぎた。散歩が終わり、愛犬と自宅に戻るのだろう。
首輪に繋がれた小さな犬が、僕に向かって一つ吠えた。血の匂いでも嗅ぎ取ったのか。
犬だけを特別扱いする理由はない。その理屈は分かる。
でもやはり、もやもやとした何かは残った。嫌悪感と言っても良い。僕でなくても大抵の人はそうだろう。
僕の家では犬は飼ってはいなかったけれど、祖母の家が飼っていた。可愛い犬だった。
あの男だってそうだ。男は『自分の犬は食わない』とそう言ったのだ。
ペットとして飼っていたのだろうか。餌はどうしていたのだろう。
鳥籠の中にあった骨を思い出した。自分が食べた後の犬の骨。そこまで考えて、止めた。
人に飼われる犬。人に喰われる犬。犬を喰う人。犬を飼う人。
遠いようで、それらを隔てる壁は案外薄いのかもしれない。
少なくともこの場では、その隔たりは閑散とした林だけだった。
それとも、二つは完全に分かれていて、僕が迷い込んだことがただの例外だったのだろうか。
異界。
そんな言葉が思い浮かんだ。大げさだと自分でも思う。
僕は首を振って、重い腰を上げた。帰ろう。そう思った。
これから何をしようという気はなかった。夕飯の買い物に行く気にもならなかった。
公園に野良犬が多いと保健所に苦情を言う気も、ホームレスをどうにかしてくれと役所に頼む気も。
声が聞こえる。もう暗いのに、若者たちはまだ騒ぎ足りないようだった。
原付に跨り、エンジンをかける。
それでも、今年はここでの花見には来れそうもない。
走り出す直前に、ふと犬のなきごえが聞こえた気がした。
けれどもエンジン音のせいで、それが本物かどうかは僕には分からなかった。

終わり


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