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ホラーテラー作品群保管庫

145なつのさんシリーズ「やまびこ」5:2014/06/14(土) 20:50:02 ID:Hpd3syqU0
「あー……本当。誰か来てくれるのを待つしかないかな。ま、大丈夫じゃない?気付いてくれるでしょ。おじさんもいるし」
確かに助けは来るだろう。でも、それがいつになるかは分からない。
「……これ、おじさんに怒られるかもな」
すると姉貴は意味ありげに笑って、背後の岩の先端辺りを指差した。
「心配なら、『どうか怒られませんように』 って、向こうに立って叫べばいいんじゃん?きっと叶えてくれるから」
「いやぁ、……やめとく、やめとく」
その瞬間、俺の耳元で『……やめとく』 と囁くような声がした。
それは耳に直接息使いすら感じる程の至近距離からの言葉だった。
俺は飛び上がった。まさか、未だ隣にいるのだろうか。やまびことか良いから、もう勘弁してほしい。
そんな俺を見て姉貴は心底可笑しそうに笑った。
こいつの神経は一体どうなっているのだろう。俺はこの時程、姉貴が怖いと思ったことはなかった。

その後のことは姉貴の言う通り、捜索に来た大人たちによって俺たち姉弟は無事保護された。
もちろんおじさんには怒られたけれども、正直怖いとは思わなかった。たぶん、もっと怖い体験をしたからだ。

姉貴がすくった二匹の金魚は、二匹ともいつのまにか死んでいた。
酸素が足りなかったのか、姉貴に振り回されたことが原因か、
はたまた、『皆にも見せてあげて』 という姉貴の願いを叶えたその代償だろうか。
姉貴は「救ってあげられなかったね……」と肩を落としていた。

『やまびこ祭り』 の真相については、未だに確かなことは分かっていない。
その昔、あの地域で生贄、人身御供があったなんて話は聞かないし、姉貴の言葉が全部真実だとも思わない。
生贄とか、そんなもん妄想空想の類だ。と言えればいいが、生憎俺は『アレ』 の一部を見てしまっている。
結局、アレは何だったのか。
もしかしたら確かめる方法はあるのかもしれない。
それは、もう一度あの山に登り、岩の上から直接『叫んで』返事を聞くことだ。あんたらは一体何なんだ、と。
しかし、俺は未だに実行しないでいる。
もし、それを知って、代償として何かの命が要るのなら、割に合わないからだ。
金魚二匹分の命で答えてくれるのかもしれないが、生憎俺たち姉弟はそろって動物好きだった。

ちなみに、これは数年経って親戚の家に行った時に聞いたんだが、
あの夜の騒ぎのせいで、次の年の祭りから子供たちだけで山に登るという行事は無くなったらしい。
「……俺たちのせい?」と隣にいた姉貴にそっと尋ねると、姉貴はからから笑いながら、
「おれたちのせい」と、まるでやまびこのようにそう言った。


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