[
板情報
|
R18ランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
メール
|
1-
101-
201-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
ホラーテラー作品群保管庫
143
:
なつのさんシリーズ「やまびこ」3
:2014/06/14(土) 20:48:45 ID:Hpd3syqU0
俺が半ば本気で心配しかけた時、姉貴はカードの順番を無視して走るように進み出た。
周りの何だ何だという雰囲気も、順番を守れという声も、姉貴には届いていないようだった。
突き出た岩の先、落下防止のフェンスを掴み、姉貴は大声で叫んだ。
「誰!?答えてっ!」
大声だったのに姉貴の声は返って来なかった。
代わりに、地の底から吹き上げるような強い風が吹いた。
それはまるで人間の唸り声みたいで、その場にいた全員が固まったと思う。ただ一人、姉貴を除いて。
俺の直感が『何かやっべえぞ!』 と警告を発した。
それと同時だった。突然、姉貴が笑いだした。「うはははは」という、正気とも狂気ともつかない笑い声だった。
呆気に取られる俺を含め周りをよそに、フェンスを掴み崖下を覗き込みながら姉貴は笑う。笑いながら叫んだ。
「すごい、すごい、すごいっ。人だ。やまびこなんかじゃない!
這いあがって来る。わっ、すごい。ほら、来て。皆にも見せてあげて!」
その瞬間、別の叫び声が上がった。俺の傍にいた一人の子供が出したものだった。
その叫びはやまびことなり、こだまする。
俺も叫びたかった。
人だ。
何本ものあり得ないくらい長く細く白い腕が、崖下から伸びてフェンスを掴んでいた。
何かが這いあがって来ているのか。姉貴は胸から上をフェンスから身を乗り出して笑っている。それは心底楽しそうに。
気付けば辺りはパニックになっていた。叫び声は叫び声を誘発し、場の混乱は個人の思考の自由を奪う。
ほとんどの者がその場を逃げ出し、あっという間に岩の上に残っているのは俺と姉貴だけになった。
実際のところ、俺だって逃げたかった。けれどそもそも足が震えて動かない。それに姉貴を残して逃げるわけにもいかない。
「……ね、ねえちゃん」
辛うじて声が出た。けれど姉貴には届かない。
俺は目を瞑り、一度深呼吸をして、目を瞑ったまま叫んだ。
「ねえちゃん!」
一瞬の間、俺の声がやまびことなって戻って来る。
ゆっくりと目を開くと、姉貴がこちらを振り向いていた。いつの間にかフェンスを掴んでいた白い手も消えている。
「あらら、……皆いなくなってる」
辺りを見回して姉貴はそう言った。いつもの姉貴だ。途端に膝の力が抜けて、俺はその場にしりもちをついた。
「何してんの、あんた」
その言葉に緊張の糸が切れ、俺は長い長い溜息を吐いた。
「……そりゃこっちのセリフだよマジで」
姉貴がこっちにやって来て、俺の手を掴み引っ張り起こす。
「それにしても、すごかったね」
姉貴はまだ興奮している様だった。
フェンスをよじ登ろうとしていた、あの白い手のことを言っているのだろう。
もしかしたら、姉貴には全身像が見えていたのかもしれない。
「……なに、アレ?」
「わかんない。でも、みんな顔中が口だらけだった。目も鼻も無くて。それが、私の声を真似してた」
ぞっとする。
「大丈夫だったのかよ……」
「ん?ああ、大丈夫大丈夫。嫌な感じはしなかったから」
ヤツらの容姿と危険度は必ずしも比例しないというのが、姉貴の持論だけども。
こういうことに関しては、俺は姉貴に何か言える立場ではない。
そもそもヤツらとの付き合いの長さ深さが、俺と姉貴では比べ物にならなかった。
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板